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法律第百四号(平一〇・六・一二)

  ◎債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律

 (趣旨)

第一条 この法律は、法人がする債権の譲渡の対抗要件に関し民法(明治二十九年法律第八十九号)の特例等を定めるものとする。

 (債権の譲渡の対抗要件の特例等)

第二条 法人が債権(指名債権であって金銭の支払を目的とするものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。

2 前項に規定する登記(以下「債権譲渡登記」という。)がされた場合において、当該債権の譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に第八条第二項に規定する登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしたときは、当該債務者についても、前項と同様とする。

3 前項の場合においては、民法第四百六十八条第二項の規定は、前項に規定する通知がされたときに限り適用する。この場合においては、当該債権の債務者は、同項に規定する通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由を譲受人に対抗することができる。

4 前三項の規定は、第七条第一項第二号に掲げる事由に基づいてされた債権譲渡登記の抹消の登記について準用する。この場合において、前項中「譲渡人」とあるのは「譲受人」と、「譲受人」とあるのは「譲渡人」と読み替えるものとする。

 (登記所)

第三条 債権譲渡登記に関する事務は、法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所(次条において「指定法務局等」という。)が、登記所としてつかさどる。

2 前項の指定は、告示してしなければならない。

 (登記官)

第四条 登記所における事務は、指定法務局等に勤務する法務事務官で、法務局又は地方法務局の長が指定した者が、登記官として取り扱う。

 (債権譲渡登記)

第五条 債権譲渡登記は、譲渡人及び譲受人の申請により、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製する債権譲渡登記ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。

 一 譲渡人の商号又は名称及び本店又は主たる事務所

 二 譲受人の氏名及び住所(法人にあっては、商号又は名称及び本店又は主たる事務所)

 三 譲渡人又は譲受人の本店又は主たる事務所が外国にあるときは、日本における営業所又は事務所

 四 登記原因及びその日付

 五 譲渡に係る債権の総額

 六 譲渡に係る債権の債務者その他の譲渡に係る債権を特定するために必要な事項で法務省令で定めるもの

 七 債権譲渡登記の存続期間

 八 登記番号

 九 登記の年月日

2 前項第七号の存続期間は、五十年を超えることができない。ただし、五十年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合は、この限りでない。

3 債権譲渡登記(以下この項において「旧登記」という。)がされた譲渡に係る債権につき譲受人が更に譲渡をし、旧登記の存続期間の満了前に債権譲渡登記(以下この項において「新登記」という。)がされた場合において、新登記の存続期間が満了する日が旧登記の存続期間が満了する日の後に到来するときは、当該債権については、旧登記の存続期間は、新登記の存続期間が満了する日まで延長されたものとみなす。

4 債権譲渡登記がされた譲渡に係る債権につき譲受人が更に譲渡をし、当該債権譲渡登記の存続期間の満了前に民法第四百六十七条の規定による通知又は承諾がされた場合(第二条第一項の規定により通知があったものとみなされる場合を除く。)には、当該債権については、当該債権譲渡登記の存続期間は、無期限とみなす。

 (延長登記)

第六条 譲渡人及び譲受人は、債権譲渡登記の存続期間の延長の登記を申請することができる。ただし、延長により前条第二項の規定に反することとなるときは、この限りでない。

2 前項の規定による存続期間の延長の登記(以下「延長登記」という。)は、当該債権譲渡登記に係る債権譲渡登記ファイルの記録に、次に掲げる事項を記録することによって行う。

 一 当該債権譲渡登記の存続期間を延長する旨

 二 延長後の存続期間

 三 登記番号

 四 登記の年月日

 (抹消登記)

第七条 譲渡人及び譲受人は、次に掲げる事由があるときは、債権譲渡登記の抹消を申請することができる。

 一 債権の譲渡が効力を生じないこと。

 二 債権の譲渡が取消し、解除その他の原因により効力を失ったこと。

 三 譲渡に係る債権が消滅したこと。

2 前項の規定による抹消の登記(以下「抹消登記」という。)は、当該債権譲渡登記に係る債権譲渡登記ファイルの記録に、次に掲げる事項を記録することによって行う。

 一 当該債権譲渡登記を抹消する旨

 二 登記原因及びその日付

 三 登記番号

 四 登記の年月日

3 譲渡に係る債権が数個記録されている債権譲渡登記について、その一部の債権に係る部分につき抹消登記をするときは、前項第二号から第四号までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項をも記録しなければならない。

 一 当該債権譲渡登記の一部を抹消する旨

 二 抹消登記に係る債権を特定するために必要な事項で法務省令で定めるもの

 三 抹消後の譲渡に係る債権の総額

 (登記事項概要証明書等の交付)

第八条 何人も、登記官に対し、債権譲渡登記ファイルに記録されている登記事項の概要(債権譲渡登記ファイルに記録されている事項のうち、第五条第一項第六号及び前条第三項第二号に掲げる事項を除いたものをいう。次条第一項において「登記事項の概要」という。)を証明した書面(以下「登記事項概要証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 譲渡に係る債権の譲渡人若しくは譲受人又は当該債権の債務者その他の当該債権の譲渡につき利害関係を有する者として政令で定めるものは、登記官に対し、当該債権の譲渡について、債権譲渡登記ファイルに記録されている事項を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。

 (商業登記簿等への記載)

第九条 債権譲渡登記又は抹消登記をした登記官は、譲渡人の本店又は主たる事務所(外国に本店又は主たる事務所があるときは、日本における営業所又は事務所)の所在地の登記所に対し、当該登記をした旨その他当該登記に係る登記事項の概要のうち法務省令で定めるものを通知しなければならない。

2 前項の規定による通知を受けた登記所の登記官は、遅滞なく、通知を受けた事項のうち法務省令で定めるものを譲渡人の商業登記簿その他の譲渡人の登記簿に記載又は記録しなければならない。

 (債権質への準用)

第十条 第二条から前条までの規定は、法人が債権を目的として質権を設定した場合において、当該質権の設定につき債権譲渡登記ファイルに記録された質権の設定の登記について準用する。この場合において、第二条の見出し並びに同条第一項及び第二項、第七条第一項第一号及び第二号並びに第八条第二項中「債権の譲渡」とあるのは「質権の設定」と、第二条第一項中「譲渡の登記」とあり、同条第二項及び第四項、第三条第一項、第五条の見出し並びに同条第一項、第三項及び第四項、第六条、第七条並びに前条第一項中「債権譲渡登記」とあるのは「質権設定登記」と、第二条第一項から第三項まで及び第八条第二項中「債権の債務者」とあるのは「質権の目的とされた債権の債務者」と、第二条第一項及び第五条第四項中「民法第四百六十七条」とあるのは「民法第三百六十四条第一項の規定によりその規定に従うこととされる同法第四百六十七条」と、第二条第二項中「その譲渡」とあるのは「その質権の設定」と、同項から第四項まで、第五条第一項、第六条第一項、第七条第一項、第八条第二項及び前条中「譲渡人」とあるのは「質権設定者」と、第二条第二項から第四項まで、第五条第一項、第三項及び第四項、第六条第一項、第七条第一項並びに第八条第二項中「譲受人」とあるのは「質権者」と、第五条第一項第四号中「登記原因及びその日付」とあるのは「登記原因及びその日付並びに被担保債権の額又は価格」と、同項第五号及び第六号、第三項及び第四項、第七条第一項第三号及び第三項並びに第八条第二項中「譲渡に係る債権」とあるのは「質権の目的とされた債権」と、第五条第三項及び第四項中「譲渡をし」とあるのは「質権を設定し」と読み替えるものとする。

2 第五条第三項の規定は、債権譲渡登記がされた譲渡に係る債権を目的として譲受人が質権を設定し、当該債権譲渡登記の存続期間の満了前に質権設定登記がされた場合における当該債権譲渡登記の存続期間について、同条第四項の規定は、債権譲渡登記がされた譲渡に係る債権を目的として譲受人が質権を設定し、当該債権譲渡登記の存続期間の満了前に民法第三百六十四条第一項の規定によりその規定に従うこととされる同法第四百六十七条の規定による通知又は承諾がされた場合(前項の規定により準用される第二条第一項の規定により通知があったものとみなされる場合を除く。)における当該債権譲渡登記の存続期間について準用する。

 (破産法等の適用除外)

第十一条 債権譲渡登記がされている譲渡に係る債権及び前条第一項に規定する質権の設定の登記がされている質権については、破産法(大正十一年法律第七十一号)第百二十条後段(同法第百二十条ノ二及び第百二十一条又は他の法律において準用する場合を含む。)及び会社更生法(昭和二十七年法律第百七十二号)第十八条第一項(同条第二項、同法第十八条の二第三項及び第十九条又は他の法律において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

2 前項に規定する質権によって担保される債権については、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第六十四条(その例による場合を含む。)並びに民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百五十条(他の法律において準用する場合を含む。)及び第百六十四条第一項の規定は、適用しない。

 (行政手続法の適用除外)

第十二条 登記官の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。

 (審査請求)

第十三条 登記官の処分を不当とする者は、監督法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる。

2 審査請求をするには、登記官に審査請求書を提出しなければならない。

3 登記官は、審査請求を理由があると認めるときは、相当の処分をしなければならない。

4 登記官は、審査請求を理由がないと認めるときは、三日以内に、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。

5 法務局又は地方法務局の長は、審査請求を理由があると認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか利害関係人に通知しなければならない。

 (行政不服審査法の適用除外)

第十四条 行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第十四条、第十七条、第二十四条、第二十五条第一項ただし書、第三十四条第二項から第六項まで、第三十七条第六項、第四十条第三項から第六項まで及び第四十三条の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない。

 (手数料の納付)

第十五条 次に掲げる者は、物価の状況、債権の個数及び債権譲渡登記の存続期間に応じた登記に要する実費並びに登記事項証明書の交付等に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。

 一 債権譲渡登記、質権設定登記、延長登記又は抹消登記を申請する者

 二 登記事項概要証明書又は登記事項証明書の交付を請求する者

2 前項の手数料の納付は、登記印紙をもってしなければならない。

 (政令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律に定める登記に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (印紙をもつてする歳入金納付に関する法律の一部改正)

第二条 印紙をもつてする歳入金納付に関する法律(昭和二十三年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項第八号中「若しくは電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律(昭和六十年法律第三十三号)第三条第一項」を「、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律(昭和六十年法律第三十三号)第三条第一項若しくは債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成十年法律第百四号)第十五条第一項」に改め、同条第二項中「及び電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律」を「、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律及び債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に改める。

(法務・大蔵・内閣総理大臣署名) 

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