法律第九十五号(平一二・五・三一)
◎農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 農水産業協同組合の再生手続の特例
第一節 監督庁による再生手続開始の申立て等(第六条―第十一条)
第二節 農水産業協同組合貯金保険機構の権限(第十二条―第二十八条)
第三章 農水産業協同組合の破産手続の特例
第一節 監督庁による破産の申立て等(第二十九条―第三十三条)
第二節 農水産業協同組合貯金保険機構の権限(第三十四条―第四十六条)
第四章 雑則(第四十七条・第四十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、農水産業協同組合の再生手続及び破産手続について、監督庁による申立て、農水産業協同組合貯金保険機構による貯金者等のためにするこれらの手続に属する行為の代理等に関し必要な事項を定めることにより、貯金者等の権利の実現を確保しつつ、これらの手続の円滑な進行を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農水産業協同組合」とは、農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)第二条第一項に規定する農水産業協同組合をいう。
2 この法律において「貯金等債権」とは、農水産業協同組合貯金保険法第二条第二項に規定する貯金等(政令で定めるものを除く。次項において「貯金等」という。)に係る債権をいう。
3 この法律において「貯金者等」とは、貯金等に係る債権者をいう。
4 この法律において「監督庁」とは、次に定める行政庁をいう。
一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行う農業協同組合、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合及び同法第九十三条第一項第二号の事業を行う水産加工業協同組合(第十一条第一項において「組合」と総称する。)については、都道府県の区域を超える区域を地区とするものにあっては農林水産大臣及び内閣総理大臣とし、その他のものにあっては都道府県知事とする。
二 農業協同組合法第十条第一項第二号の事業を行う農業協同組合連合会、水産業協同組合法第八十七条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合連合会及び同法第九十七条第一項第二号の事業を行う水産加工業協同組合連合会(第十一条第一項において「連合会」と総称する。)については、都道府県の区域を超える区域を地区とするもの及び都道府県の区域を地区とするものにあっては農林水産大臣及び内閣総理大臣とし、その他のものにあっては都道府県知事とする。
三 農林中央金庫にあっては、農林水産大臣及び内閣総理大臣とする。
(再生事件等の管轄の特例)
第三条 農水産業協同組合に係る再生事件及び破産事件について、次の各号に掲げる裁判所が当該農水産業協同組合の主たる事務所の所在地を管轄する場合には、民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第五条及び第六条並びに破産法(大正十一年法律第七十一号)第百五条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、再生手続開始及び破産の申立て(次項において「再生手続開始等の申立て」という。)をすることができる。
一 東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(東京地方裁判所を除く。) 東京地方裁判所
二 大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所(大阪地方裁判所を除く。) 大阪地方裁判所
2 前項の規定及び民事再生法第五条又は破産法第百五条の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、同項に規定する事件は、先に再生手続開始等の申立てがあった裁判所が管轄する。
(再生事件等の移送の特例)
第四条 裁判所は、前条第一項に規定する事件が係属している場合(同項の規定により係属している場合を除く。)において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、民事再生法第五条及び第六条並びに破産法第百五条の規定にかかわらず、職権で、これらの事件を同項の規定により管轄権を有する地方裁判所に移送することができる。
2 裁判所は、前条第一項の規定により同項に規定する事件が係属している場合において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、これらの事件を当該農水産業協同組合の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
(再生債権の確定に関する訴訟等の移送の特例)
第五条 裁判所は、第三条第一項の規定により同項に規定する事件が係属している場合において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、民事再生法第百六条第二項及び破産法第二百四十五条の規定にかかわらず、職権で、当該事件に係る民事再生法第百六条第一項に規定する異議の訴え又は破産法第二百四十四条第一項に規定する訴えに係る訴訟を当該農水産業協同組合の主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
第二章 農水産業協同組合の再生手続の特例
第一節 監督庁による再生手続開始の申立て等
(再生手続開始の申立て)
第六条 監督庁は、農水産業協同組合に破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるときは、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。
2 農林水産大臣及び内閣総理大臣は、前項の規定により再生手続開始の申立てをすることが信用秩序の維持に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、あらかじめ、信用秩序の維持を図るために必要な措置に関し、財務大臣に協議しなければならない。
3 第一項の規定により監督庁が再生手続開始の申立てをするときは、民事再生法第二十三条第一項の規定は、適用しない。
(監督庁への通知等)
第七条 農水産業協同組合について再生手続開始の申立てがあった場合(前条第一項の規定により監督庁が再生手続開始の申立てをした場合を除く。次項において同じ。)には、裁判所は、監督庁にその旨を通知しなければならない。
2 監督庁は、農水産業協同組合について再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、裁判所に対し、意見を述べることができる。
(他の手続の中止命令等の申立て等)
第八条 農水産業協同組合について再生手続開始の申立てがあった場合には、監督庁は、民事再生法第二十六条第一項、第二十七条第一項及び第三十条第一項(これらの規定を同法第三十六条第二項において準用する場合を含む。)、第六十四条第一項並びに第七十九条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)に規定する申立てをすることができる。
2 前項に規定する場合には、監督庁は、民事再生法第九条前段の規定にかかわらず、同法第二十六条第一項の規定による中止の命令、同条第二項の規定による決定及び同条第三項の規定による取消しの命令、同法第二十七条第一項の規定による禁止の命令、同条第三項の規定による決定及び同条第四項の規定による取消しの命令、同法第二十九条第一項の申立てについての裁判、同法第三十条第一項の規定による保全処分及び同条第二項の規定による決定、同法第六十四条第一項の処分及び同条第四項の規定による決定並びに同法第七十九条第一項の処分及び同条第四項の規定による決定に対して、即時抗告をすることができる。
3 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
(担保権の実行としての競売手続の中止命令の申立て)
第九条 農水産業協同組合について再生手続開始の申立てがあった場合には、監督庁は、再生手続開始の決定前に限り、民事再生法第三十一条第一項に規定する申立てをすることができる。
(再生手続開始の申立てを棄却する決定に対する即時抗告)
第十条 監督庁は、民事再生法第九条前段の規定にかかわらず、第六条第一項の規定による再生手続開始の申立てを棄却する決定に対して、同法第三十六条第一項の即時抗告をすることができる。
(信用事業の譲渡に関する総会又は総代会の議決に代わる許可)
第十一条 組合又は連合会についての再生手続開始後において、組合又は連合会である再生債務者(民事再生法第二条第一号に規定する再生債務者をいう。以下この項において同じ。)がその財産をもって債務を完済することができないときは、裁判所は、再生債務者等(同条第二号に規定する再生債務者等をいう。第二十三条第一項及び第二十八条第一項において同じ。)の申立てにより、当該再生債務者の信用事業(農業協同組合法第十一条第二項に規定する信用事業及び水産業協同組合法第十一条の三第二項(同法第九十二条第一項、第九十六条第一項及び第百条第一項において準用する場合を含む。)に規定する信用事業をいう。以下この項において同じ。)の全部又は一部の譲渡について農業協同組合法第四十六条及び第五十条の二第一項又は水産業協同組合法第四十八条第一項及び第五十条(これらの規定を同法第九十二条第三項、第九十六条第三項及び第百条第三項において準用する場合を含む。)に規定する総会又は総代会の議決に代わる許可を与えることができる。ただし、当該信用事業の全部又は一部の譲渡が信用事業の継続のために必要である場合に限る。
2 民事再生法第四十三条第二項から第七項までの規定は、前項の許可の決定があった場合について準用する。この場合において、同条第二項中「株主」とあるのは「組合員又は会員」と、同条第四項中「株主に」とあるのは「組合員又は会員に」と、「株主名簿」とあるのは「組合員名簿若しくは会員名簿」と、「株主が」とあるのは「組合員若しくは会員が」と、同条第六項中「株主」とあるのは「組合員又は会員」と読み替えるものとする。
第二節 農水産業協同組合貯金保険機構の権限
(包括的禁止命令に関する送達の特例)
第十二条 農水産業協同組合について民事再生法第二十八条第一項(同法第三十六条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する決定があった場合には、再生債権者である貯金者等に対しては、同法第二十八条第一項の規定による送達は、することを要しない。
2 前項の場合には、裁判所は、農水産業協同組合貯金保険機構(以下「機構」という。)に対して、民事再生法第二十八条第一項の決定の主文を記載した書面を送達しなければならない。
(再生債権届出期間についての機構の意見の聴取)
第十三条 裁判所は、農水産業協同組合について再生手続開始の決定をしょうとするときは、あらかじめ、民事再生法第三十四条の規定により定める再生債権の届出をすべき期間について、機構の意見を聴かなければならない。
(再生手続開始の決定等に関する送達の特例)
第十四条 農水産業協同組合について再生手続開始の決定をしたときは、再生債権者である貯金者等に対しては、民事再生法第三十五条第二項の規定による送達は、することを要しない。
2 前項の場合には、裁判所は、機構に対して、民事再生法第三十五条第一項に規定する事項を記載した書面を送達しなければならない。
3 農水産業協同組合の再生手続において、第十六条第一項の規定による貯金者表の提出があるまでに、民事再生法第三十四条の規定により定めた期間に変更を生じた場合又は再生手続開始の決定を取り消す決定が確定した場合においては、再生債権者である貯金者等であって同法第九十四条第一項の規定による届出をしていないものに対しては、同法第三十五条第三項において準用する同条第二項の規定又は同法第三十七条の規定による送達は、することを要しない。
4 前項の場合には、裁判所は、機構に対して、民事再生法第三十四条の規定により定めた期間について生じた変更の内容又は再生手続開始の決定を取り消す決定の主文を記載した書面を送達しなければならない。
(貯金者表の作成等)
第十五条 機構は、前条第二項の規定による送達を受けたときは、遅滞なく、知れている再生債権である貯金等債権(機構が債権者であるものを除く。第四項において同じ。)について、民事再生法第九十九条第二項に規定する事項を記載した貯金者表を作成しなければならない。
2 機構は、前項の規定により貯金者表を作成したときは、直ちに、その旨及び縦覧の場所を公告するとともに、民事再生法第三十四条の規定により裁判所が定めた再生債権の届出をすべき期間(以下この節において「再生債権届出期間」という。)の末日の前日までの間、貯金者表を貯金者等の縦覧に供しなければならない。
3 前項の規定による貯金者表の縦覧の開始の日は、再生債権届出期間の末日の前日の二週間以上前の日でなければならない。
4 機構は、貯金者表を縦覧に供することを開始した後、当該貯金者表に記載されていない貯金等債権があることを知ったときは、遅滞なく、当該貯金者表に、当該貯金等債権に係る第一項に規定する事項の記載の追加をしなければならない。当該貯金者表に記載されている貯金等債権について当該貯金者等の利益となる記載の変更を加えるべきことを知ったときも、同様とする。
5 機構は、貯金者表を縦覧に供することを開始した後でも、当該貯金者表に記載されている貯金者等の承諾を得て、当該貯金者等に係る貯金等債権について、その記載を削除し、又は当該貯金者等の不利益となる記載の変更を行うことができる。ただし、機構が、当該貯金者表に記載されている貯金者等に係る貯金等債権を、農水産業協同組合貯金保険法第六十条第一項若しくは第三項の規定により取得し、又は同法第七十条の規定により買い取った場合において、当該貯金等債権について、その記載を削除し、又は当該貯金者等の不利益となる記載の変更を行うときは、当該貯金者等の承諾を要しない。
(貯金者表の提出等)
第十六条 機構は、再生債権届出期間の末日に、前条の規定により作成した貯金者表を裁判所に提出しなければならない。
2 前条第四項前段の規定は、機構が、貯金者表を裁判所に提出した後、当該貯金者表に記載されていない貯金等債権(機構が債権者であるもの及び既に貯金者等が民事再生法の規定により裁判所に届け出ているものを除く。)があることを知った場合について準用する。
3 前項において準用する前条第四項前段の規定による記載の追加は、民事再生法第百七十一条第一項の規定による再生計画案について決議をするための債権者集会を招集する旨の決定又は同法第百七十二条第一項の規定による再生計画案を書面による決議に付する旨の決定がされた後は、することができない。
4 機構は、第一項の規定による貯金者表の提出又は第二項において準用する前条第四項前段の規定による記載の追加をする場合には、民事再生法第九十四条第一項に規定する事項(前条第一項に規定する事項を除く。)を裁判所に届け出なければならない。
5 農水産業協同組合の再生手続についての民事再生法第十七条第一項の規定の適用については、同項中「この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)」とあるのは、「この法律(この法律において準用する他の法律を含む。)及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律(平成十二年法律第九十五号)」とする。
(貯金者表の提出の効果)
第十七条 前条第一項の規定により貯金者表が提出されたときは、当該貯金者表に記載されている貯金等債権(貯金者等が当該提出があるまでに民事再生法第九十四条第一項の規定により届け出たものを除く。)に対する同法の規定の適用については、再生債権届出期間内に届出があったものとみなす。
2 前条第二項において準用する第十五条第四項前段の規定により貯金等債権に係る記載の追加がされたときは、当該貯金等債権に対する民事再生法の規定の適用については、同法第九十五条第一項の規定による届出の追完があったものとみなす。
(貯金者等の参加)
第十八条 前条の規定により届出又は届出の追完があつたものとみなされる貯金等債権(機構が民事再生法第九十六条の規定による届出名義の変更を受けたものを除く。以下この条及び次条において同じ。)に係る債権者は、自ら再生手続に参加しようとするときは、その旨を裁判所に届け出なければならない。ただし、再生債権の確定に関する査定又は訴訟に関する行為については、この限りでない。
2 前項の規定による届出(以下この条及び次条において「参加の届出」という。)は、再生手続が終了するまでの間、することができる。
3 参加の届出があったときは、裁判所は、これを機構に通知しなければならない。
4 参加の届出をした貯金者等は、前条の規定により届出又は届出の追完があったものとみなされる当該貯金者等に係る貯金等債権の全部をもって、自ら再生手続に参加するものとする。
(機構の権限)
第十九条 機構は、第十七条の規定により届出又は届出の追完があったものとみなされる貯金等債権に係る債権者(参加の届出をした貯金者等を除く。以下この節において「機構代理貯金者」という。)のために、当該機構代理貯金者に係る貯金等債権(以下この節において「機構代理債権」という。)をもって、再生手続に属する一切の行為(民事再生法第百一条第四項に規定する一般調査期間内又は同法第百三条第一項に規定する特別調査期間(第二十二条において「特別調査期間」という。)内に機構が異議を述べた機構代理債権に係る再生債権の確定に関する査定又は訴訟に関する行為を除く。)をするものとする。ただし、機構代理債権に係る届出を取り下げ、若しくは機構代理債権に関する届出に係る事項について当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の不利益となる変更を加えようとするとき、又は機構代理債権に係る再生債権の確定に関する査定の申立てを取り下げ、若しくは機構代理債権に係る再生債権の確定に関する訴訟において民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三十二条第二項第一号若しくは第二号に掲げる訴訟行為をしょうとするときは、当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の授権がなければならない。
(機構の義務)
第二十条 機構は、機構代理貯金者のために、公平かつ誠実に前条の行為をしなければならない。
2 機構は、機構代理貯金者に対し、善良な管理者の注意をもって前条の行為をしなければならない。
(届出に係る事項の変更)
第二十一条 機構は、機構代理債権に関する届出に係る事項について当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の利益となる変更を加えるべきことを知ったときは、遅滞なく、当該届出に係る事項について変更を加えなければならない。
2 第十六条第三項の規定は、前項の変更について準用する。
3 第一項の規定による変更は、民事再生法の規定の適用については、この章に別段の定めがある場合を除き、同法第九十五条第五項の規定による変更とみなす。
(特別調査期間に関する費用負担の特例)
第二十二条 機構代理債権に係る特別調査期間に関する費用は、民事再生法第百三条第二項の規定にかかわらず、機構の負担とする。ただし、機構は、同法第百三十三条の規定により原状に復した貯金等債権について調査するため特別調査期間が定められた場合その他の相当の事由がある場合には、機構代理貯金者に当該費用の全部又は一部の償還を求めることができる。
(異議の通知)
第二十三条 再生債権の調査において、機構代理債権の内容について再生債務者等が認めず、又は届出再生債権者(民事再生法第百二条第一項に規定する届出再生債権者をいう。)が異議を述べた場合(次項に規定する場合を除く。)には、機構は、遅滞なく、その旨を当該機構代理債権に係る機構代理貯金者に通知しなければならない。
2 再生債権の調査において、機構が機構代理債権の内容について異議を述べた場合には、裁判所は、これを当該機構代理債権に係る機構代理貯金者に通知しなければならない。
(債権者集会の期日の呼出しの特例)
第二十四条 裁判所は、農水産業協同組合の再生手続における債権者集会の期日には、再生債権届出期間の満了前においても、機構を呼び出さなければならない。
(債権者委員会)
第二十五条 機構が第十六条第一項の規定により貯金者表を提出する前における民事再生法第百十八条第一項の規定の適用については、同項中「再生債権者をもって」とあるのは、「再生債権者(農水産業協同組合貯金保険機構を含む。)をもって」とする。
2 機構が民事再生法第百十八条第二項に規定する債権者委員会を構成する者である場合には、第二十条の規定を準用する。この場合において、同条中「機構代理貯金者」とあるのは、「貯金者等」と読み替えるものとする。
(機構による議決権の行使)
第二十六条 機構は、民事再生法第百七十一条第一項(同法第百八十七条第二項において準用する場合を含む。)又は第二百一条第二項の債権者集会において機構代理貯金者のために議決権を行使しようとするときは、当該債権者集会の第一期日の二週間前までに、賛成しようとする再生計画案の内容を機構代理貯金者に通知するとともに、公告しなければならない。
2 機構は、民事再生法第百七十二条第一項(同法第百八十七条第二項において準用する場合を含む。)の書面による決議において機構代理貯金者のために議決権を行使しようとするときは、同法第百七十二条第二項に規定する回答期間の末日の二週間前までに、同意しようとする再生計画案の内容を機構代理貯金者に通知するとともに、公告しなければならない。
3 機構は、機構代理貯金者のために民事再生法第二百条第一項又は第二百六条第一項の規定により再生計画案についての同意並びに再生債権の調査及び確定の手続を経ないことについての同意をしようとするときは、その二週間前までに、当該再生計画案の内容を機構代理貯金者に通知するとともに、公告しなければならない。
(機構がする公告及び通知)
第二十七条 第十五条第二項及び前条の規定による公告については、民事再生法第十条第一項及び第二項の規定を準用する。
2 第二十三条第一項及び前条の規定による通知は、書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができる。
3 前項の規定により書類を通常の取扱いによる郵便に付して発送した場合においては、その郵便物が通常到達すべきであった時に、通知があったものとみなす。
(貯金等の払戻しの許可)
第二十八条 再生手続開始の決定があった農水産業協同組合に対し農水産業協同組合貯金保険法第百十一条第一項の規定による資金の貸付けを行う旨の決定があるときは、民事再生法第八十五条第一項の規定にかかわらず、裁判所は、再生債務者等の申立てにより、農水産業協同組合貯金保険法第百十一条第一項の貯金等の払戻しを許可することができる。
2 裁判所は、前項の許可と同時に、払戻しを行う貯金等の種別、払戻しの限度額及び払戻しをする期間を定めなければならない。この場合においては、当該期間の末日は、再生債権届出期間の末日より前の日でなければならないものとする。
3 裁判所は、前項の規定による定めをするときは、あらかじめ、機構の意見を聴かなければならない。
第三章 農水産業協同組合の破産手続の特例
第一節 監督庁による破産の申立て等
(破産の申立て)
第二十九条 監督庁は、農水産業協同組合に破産の原因たる事実があるときは、裁判所に対し、破産の申立てをすることができる。
2 第六条第二項の規定は、農林水産大臣及び内閣総理大臣が前項の規定によりする農水産業協同組合の破産の申立てについて準用する。
3 第一項の規定により監督庁が破産の申立てをするときは、破産法第百三十八条の規定は、適用しない。
4 第一項の規定により監督庁が破産の申立てをする場合においては、破産法第百四十条前段の規定にかかわらず、破産手続の費用として裁判所が相当と認める金額を予納しなければならない。
(監督庁への通知等)
第三十条 農水産業協同組合について破産の申立てがあった場合(前条第一項の規定により監督庁が破産の申立てをした場合を除く。次項において同じ。)には、裁判所は、監督庁にその旨を通知しなければならない。
2 監督庁は、農水産業協同組合について破産の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、裁判所に対し、意見を述べることができる。
(保全処分の申立て等)
第三十一条 農水産業協同組合について破産の申立てがあった場合には、監督庁は、破産法第百五十五条第一項に規定する申立てをすることができる。
2 前項に規定する場合には、監督庁は、破産法第百十二条前段の規定にかかわらず、同法第百五十五条第一項又は第二項の規定による裁判に対して、即時抗告をすることができる。
3 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
4 前三項の規定は、農水産業協同組合について強制和議取消しの申立てがあった場合について準用する。この場合において、第一項中「第百五十五条第一項」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百五十五条第一項」と、第二項中「第百五十五条第一項又は第二項」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百五十五条第一項又は第二項」と読み替えるものとする。
(責任制限手続の中止命令の申立て)
第三十二条 農水産業協同組合である漁業協同組合について破産の申立てがあった場合には、監督庁は、破産法第百五十五条ノ二第一項に規定する申立てをすることができる。
2 前項の規定は、農水産業協同組合である漁業協同組合について強制和議取消しの申立てがあった場合について準用する。この場合において、同項中「第百五十五条ノ二第一項」とあるのは、「第三百三十七条第一項において準用する同法第百五十五条ノ二第一項」と読み替えるものとする。
(破産の申立てを棄却する決定に対する即時抗告)
第三十三条 監督庁は、第二十九条第一項の規定による破産の申立てを棄却する決定に対して、即時抗告をすることができる。
第二節 農水産業協同組合貯金保険機構の権限
(債権届出の期間についての機構の意見の聴取)
第三十四条 裁判所は、農水産業協同組合について破産の宣告をしょうとするときは、あらかじめ、破産法第百四十二条第一項の規定により定める同項第一号の債権届出の期間について、機構の意見を聴かなければならない。
2 前項の規定は、農水産業協同組合について強制和議取消しの決定をしょうとする場合について準用する。この場合において、同項中「第百四十二条第一項」とあるのは、「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十二条第一項」と読み替えるものとする。
(破産の宣告等に関する送達の特例)
第三十五条 農水産業協同組合について破産の宣告をしたときは、債権者である貯金者等に対しては、破産法第百四十三条第二項の規定による送達は、することを要しない。
2 前項の場合には、裁判所は、機構に対して、破産法第百四十三条第一項各号に掲げる事項を記載した書面を送達しなければならない。
3 農水産業協同組合の破産手続において、第三十七条第一項の規定による貯金者表の提出があるまでに、破産法第百四十三条第一項第二号から第四号までに掲げる事項に変更を生じた場合又は破産取消しの決定が確定した場合においては、債権者である貯金者等であって同法第二百二十八条第一項の規定による届出をしていないものに対しては、同法第百四十三条第三項又は第百五十六条第二項において準用する同法第百四十三条第二項の規定による送達は、することを要しない。
4 前項の場合には、裁判所は、機構に対して、破産法第百四十三条第一項第二号から第四号までに掲げる事項について生じた変更の内容又は破産取消しの決定の主文を記載した書面を送達しなければならない。
5 前各項の規定は、農水産業協同組合についての強制和議取消しについて準用する。この場合において、第一項中「第百四十三条第二項」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十三条第二項」と、第二項中「第百四十三条第一項各号」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十三条第一項各号」と、第三項中「第百四十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十三条第一項第二号から第四号まで」と、「破産取消しの決定」とあるのは「強制和議取消しの取消しの決定」と、「第百四十三条第三項」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十三条第三項」と、前項中「第百四十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第三百三十七条第一項において準用する同法第百四十三条第一項第二号から第四号まで」と、「破産取消しの決定」とあるのは「強制和議取消しの取消しの決定」と読み替えるものとする。
(貯金者表の作成等)
第三十六条 機構は、前条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による送達を受けたときは、遅滞なく、知れている貯金等債権(機構が債権者であるものを除く。)について次に掲げる事項を記載した貯金者表を作成しなければならない。
一 貯金者等の氏名及び住所
二 貯金等債権の額及び原因
三 貯金等債権が破産法第四十六条第一号に掲げる請求権を含むときは、その旨
2 第十五条第二項から第五項までの規定は、機構が前項の規定により貯金者表を作成した場合について準用する。この場合において、同条第二項中「民事再生法第三十四条の規定により裁判所が定めた再生債権の届出をすべき期間(以下この節において「再生債権届出期間」という。)」とあるのは「破産法第百四十二条第一項(同法第三百三十七条第一項において準用する場合を含む。)の規定により裁判所が定めた同法第百四十二条第一項第一号の債権届出の期間(以下「破産債権届出期間」という。)」と、同条第三項中「再生債権届出期間」とあるのは「破産債権届出期間」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第三十六条第一項各号に掲げる」と読み替えるものとする。
(貯金者表の提出等)
第三十七条 機構は、破産債権届出期間の末日に、前条の規定により作成した貯金者表を裁判所に提出しなければならない。
2 前条第二項において準用する第十五条第四項前段の規定は、機構が、貯金者表を裁判所に提出した後、当該貯金者表に記載されていない貯金等債権(機構が債権者であるもの及び既に貯金者等が破産法の規定により裁判所に届け出ているものを除く。)があることを知った場合について準用する。この場合において、同項中「第一項に規定する」とあるのは、「第三十六条第一項各号に掲げる」と読み替えるものとする。
3 破産法第二百二十八条第三項の規定は、第一項の規定による貯金者表の提出及び前項において準用する第十五条第四項前段の規定による記載の追加について準用する。
4 貯金者表及び前項において準用する破産法第二百二十八条第三項の規定による届出に関する書類は、利害関係人の閲覧に供するため裁判所に備えて置かなければならない。
(貯金者表の提出の効果)
第三十八条 前条第一項の規定により貯金者表が提出されたときは、当該貯金者表に記載されている貯金等債権(貯金者等が当該提出があるまでに破産法第二百二十八条第一項の規定により届け出たものを除く。)に対する同法の規定の適用については、破産債権届出期間内に届出があったものとみなす。
2 前条第二項において準用する第十五条第四項前段の規定により貯金等債権に係る記載の追加がされたときは、当該貯金等債権に対する破産法の規定の適用については、破産債権届出期間後に届出があったものとみなす。
(貯金者等の参加)
第三十九条 前条の規定により届出があったものとみなされる貯金等債権(機構が届出名義の変更を受けたものを除く。以下この条及び次条において同じ。)に係る債権者は、自ら破産手続に参加しようとするときは、その旨を裁判所に届け出なければならない。ただし、債権の確定に関する訴訟に関する行為については、この限りでない。
2 前項の規定による届出(以下この条及び次条において「参加の届出」という。)は、破産手続が終了するまでの間、することができる。
3 参加の届出があったときは、裁判所は、これを機構に通知しなければならない。
4 参加の届出をした貯金者等は、前条の規定により届出があったものとみなされる当該貯金者等に係る貯金等債権の全部をもって、自ら破産手続に参加するものとする。
(機構の権限)
第四十条 機構は、第三十八条の規定により届出があったものとみなされる貯金等債権に係る債権者(参加の届出をした貯金者等を除く。以下この節において「機構代理貯金者」という。)のために、当該機構代理貯金者に係る貯金等債権(以下この節において「機構代理債権」という。)をもって、破産手続に属する一切の行為(債権調査の期日において機構が異議を述べた機構代理債権に係る債権の確定に関する訴訟に関する行為を除く。)をするものとする。ただし、機構代理債権に係る届出を取り下げ、若しくは機構代理債権に関する届出に係る事項について当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の不利益となる変更を加えようとするとき、又は機構代理債権に係る債権の確定に関する訴訟において民事訴訟法第三十二条第二項第一号若しくは第二号に掲げる訴訟行為をしようとするときは、当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の授権がなければならない。
(機構の義務)
第四十一条 機構は、機構代理貯金者のために、公平かつ誠実に前条の行為をしなければならない。
2 機構は、機構代理貯金者に対し、善良な管理者の注意をもって前条の行為をしなければならない。
(届出に係る事項の変更)
第四十二条 機構は、機構代理債権に関する届出に係る事項について当該機構代理債権に係る機構代理貯金者の利益となる変更を加えるべきことを知ったときは、遅滞なく、当該届出に係る事項について変更を加えなければならない。
(特別期日の費用負担の特例)
第四十三条 機構代理債権に係る特別期日(破産法第二百三十四条第二項(同法第二百三十五条及び第二百三十六条において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する特別期日をいう。以下この条において同じ。)の費用は、同法第二百三十四条第二項後段の規定にかかわらず、機構の負担とする。ただし、機構は、同法第七十九条の規定により原状に復した貯金等債権について調査するため特別期日が定められた場合その他の相当の事由がある場合には、機構代理貯金者に当該費用の全部又は一部の償還を求めることができる。
(異議の通知)
第四十四条 債権調査の期日において機構代理債権について異議があった場合(次項に規定する場合を除く。)には、機構は、遅滞なく、その旨を当該機構代理債権に係る機構代理貯金者に通知しなければならない。
2 債権調査の期日において機構が機構代理債権について異議を述べた場合には、裁判所は、これを当該機構代理債権に係る機構代理貯金者に通知しなければならない。
(強制和議のためにする債権者集会における機構による議決権の行使)
第四十五条 機構は、破産法第二百九十九条第一項に規定する債権者集会において機構代理貯金者のために議決権を行使しようとする場合において、同条第三項に規定する書面の送達を受けたときは、当該書面に記載された強制和議の条件及び監査委員の意見の要領並びに当該強制和議に係る機構の議決権の行使について必要な事項を当該機構代理貯金者に通知するとともに、公告しなければならない。
(機構がする公告及び通知)
第四十六条 第三十六条第二項において準用する第十五条第二項の規定及び前条の規定による公告については、破産法第百十五条の規定を準用する。
2 第四十四条第一項及び前条の規定による通知については、第二十七条第二項及び第三項の規定を準用する。
第四章 雑則
(権限の委任)
第四十七条 内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。
(事務の区分)
第四十八条 この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十三年四月一日から施行する。
(農水産業協同組合の再生手続の特例に関する経過措置)
第二条 第二章の規定は、この法律の施行前に農水産業協同組合について再生手続開始の申立てがあった事件については、適用しない。
(農水産業協同組合の破産手続の特例に関する経過措置)
第三条 第三章の規定は、この法律の施行前に農水産業協同組合について破産の申立てがあった事件については、適用しない。ただし、この法律の施行の日以後に当該事件について強制和議取消しの申立てがあったときは、その申立てがあった日以後においては、この限りでない。
(農水産業協同組合貯金保険法の一部改正)
第四条 農水産業協同組合貯金保険法の一部を次のように改正する。
第三十四条中第九号を第十号とし、第八号の次に次の一号を加える。
九 農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律(平成十二年法律第九十五号)第二章及び第三章の規定による貯金者表の提出その他これらの規定による業務
第六十七条第二項中「第九十四条第一項」の下に「又は農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律第十一条第一項」を加える。
(農水産業協同組合貯金保険法の一部改正に伴う罰則に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前にした前条の規定による改正前の農水産業協同組合貯金保険法の規定に違反する行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(地方自治法の一部改正)
第六条 地方自治法の一部を次のように改正する。
別表第一に次のように加える。
農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律(平成十二年法律第九十五号) |
この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務 |
(内閣総理・大蔵・農林水産・自治大臣署名)