法律第百三号(平一二・五・三一)
◎会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、会社の分割が行われる場合における労働契約の承継等に関し商法(明治三十二年法律第四十八号)及び有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)の特例等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的とする。
(労働者等への通知)
第二条 会社(株式会社及び有限会社をいう。以下同じ。)は、商法第二編第四章第六節ノ三及び有限会社法第六章の規定による新設分割又は吸収分割(以下「分割」という。)をするときは、次に掲げる労働者に対し、商法第三百七十四条第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)の分割計画書又は商法第三百七十四条ノ十七第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の分割契約書(以下「分割計画書等」という。)を承認する株主総会又は社員総会(以下「株主総会等」という。)の会日の二週間前までに、当該分割に関し、当該会社が当該労働者との間で締結している労働契約を当該分割によって設立し、又は営業を承継する会社(以下「設立会社等」という。)が承継する旨の当該分割計画書等中の記載の有無、第四条第一項に規定する期限日その他労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
一 当該会社が雇用する労働者であって、設立会社等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの
二 当該会社が雇用する労働者(前号に掲げる労働者を除く。)であって、当該分割計画書等にその者が当該会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載があるもの
2 前項の分割をする会社(以下「分割会社」という。)は、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条の労働組合(以下単に「労働組合」という。)との間で労働協約を締結しているときは、当該労働組合に対し、分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前までに、当該分割に関し、当該労働協約を設立会社等が承継する旨の当該分割計画書等中の記載の有無その他労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
3 商法第三百七十四条ノ六第一項及び第三百七十四条ノ二十二第一項の場合における前二項の規定の適用については、第一項中「を承認する株主総会又は社員総会(以下「株主総会等」という。)の会日の二週間前までに」とあり、及び前項中「を承認する株主総会等の会日の二週間前までに」とあるのは、「が作成された日から起算して二週間以内に」とする。
(営業に主として従事する労働者に係る労働契約の承継)
第三条 前条第一項第一号に掲げる労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割計画書等に設立会社等が承継する旨の記載があるものは、当該分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、当該設立会社等に承継されるものとする。
第四条 第二条第一項第一号に掲げる労働者であって、分割計画書等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載がないものは、同項の通知がされた日から分割会社が定める日(当該分割会社が作成した分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前の日から当該会日の前日までの日に限る。次項及び次条第一項において「期限日」という。)までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該設立会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。
2 分割会社は、期限日を定めるときは、前項の通知がされた日と期限日との間に少なくとも十三日間を置かなければならない。
3 商法第三百七十四条ノ六第一項及び第三百七十四条ノ二十二第一項の場合における第一項の規定の適用については、同項中「当該分割会社が作成した分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前の日から当該会日の前日までの日」とあるのは、「新設分割にあっては商法第三百七十四条第二項第八号に該当する日の前日までの日、吸収分割にあっては同法第三百七十四条ノ十七第二項第九号に該当する日の前日までの日」とする。
4 第一項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、商法第三百七十四条ノ十第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)又は商法第三百七十四条ノ二十六第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、設立会社等に承継されるものとする。
(その他の労働者に係る労働契約の承継)
第五条 第二条第一項第二号に掲げる労働者は、同項の通知がされた日から期限日までの間に、分割会社に対し、当該労働者が当該分割会社との間で締結している労働契約が設立会社等に承継されることについて、書面により、異議を申し出ることができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、商法第三百七十四条ノ十第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)又は商法第三百七十四条ノ二十六第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、設立会社等に承継されないものとする。
(労働協約の承継等)
第六条 分割会社は、分割計画書等に、当該分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約のうち設立会社等が承継する部分を記載することができる。
2 分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約に、労働組合法第十六条の基準以外の部分が定められている場合において、当該部分の全部又は一部について当該分割会社と当該労働組合との間で分割計画書等の記載に従い当該設立会社等に承継させる旨の合意があったときは、当該合意に係る部分は、商法第三百七十四条ノ十第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)又は商法第三百七十四条ノ二十六第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の規定により、分割計画書等の記載に従い、当該分割の効力が生じた時に、当該設立会社等に承継されるものとする。
3 前項に定めるもののほか、分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約については、当該労働組合の組合員である労働者と当該分割会社との間で締結されている労働契約が設立会社等に承継されるときは、商法第三百七十四条ノ十第一項(有限会社法第六十三条ノ六第一項において準用する場合を含む。)又は商法第三百七十四条ノ二十六第一項(有限会社法第六十三条ノ九第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該分割の効力が生じた時に、当該設立会社等と当該労働組合との間で当該労働協約(前項に規定する合意に係る部分を除く。)と同一の内容の労働協約が締結されたものとみなす。
(労働者の理解と協力)
第七条 分割会社は、当該分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。
(指針)
第八条 労働大臣は、この法律に定めるもののほか、分割会社及び設立会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、商法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第九十号)の施行の日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。
(中央省庁等改革関係法施行法の一部改正)
第二条 中央省庁等改革関係法施行法(平成十一年法律第百六十号)の一部を次のように改正する。
第六百十三条の次に次の一条を加える。
(会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律の一部改正)
第六百十三条の二 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成十二年法律第百三号)の一部を次のように改正する。
本則中「労働省令」を「厚生労働省令」に、「労働大臣」を「厚生労働大臣」に改める。
(労働・内閣総理大臣署名)