衆議院

メインへスキップ



第4号 令和6年2月1日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年二月一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  令和六年二月一日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員辞職の件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


このページのトップに戻る

    午後二時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員辞職の件

議長(額賀福志郎君) 今一日、議員柿沢未途君から、今般、一身上の都合により衆議院議員を辞職いたしたく御許可願いたい旨の辞表が提出されております。

    ―――――――――――――

    辞職願

  今般 一身上の都合により衆議院議員を辞職いたしたく御許可願います。

   令和六年二月一日

          衆議院議員 柿沢 未途

  衆議院議長 額賀福志郎殿

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) これにつきお諮りいたしたいと思います。

 柿沢未途君の辞職を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。

 教育無償化を実現する会との統一会派を代表し、総理に質問をいたします。(拍手)

 冒頭、令和六年能登半島地震でお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表し、御遺族と被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 また、被災地で救助、復旧に力を尽くされている全ての皆様に深く敬意を表します。

 あわせて、物資輸送等の支援をしていただいた在日米軍や、市民から寄附金を募っていただいた台湾始め世界各国・地域の政府、関係機関の御厚情に深く感謝申し上げます。

 新春をことほぐはずの元日に襲った地震は、風光明媚な半島に大きな爪痕を残しました。

 私も、一月二十一日、二十二日の両日、石川県内の被災地を視察しましたが、ほぼ無傷だった金沢市に隣接する内灘町は、インフラが壊滅的な打撃を受けました。復旧作業は手つかずの状態でありました。輪島、珠洲、七尾各市と比べると、作業が非常に立ち遅れていました。

 復旧支援に当たっては、各地の被災状況をしっかり把握し、きめ細やかに対応していただくよう、政府に強く要望いたします。

 我々は、一月二十六日、自然災害による被災世帯への支援金の上限を現行の三百万円から六百万円に引き上げることを柱とした被災者生活再建支援法改正案を、立憲民主党、国民民主党とともに衆議院に提出いたしました。是非、政府・与党に賛同いただきたいと存じます。

 我が党は、身を切る改革の一環として、所属議員が返上した歳費の一部を預かり、内外の被災地等に寄附してきましたが、能登半島地震で被災した各自治体に、近く寄附金をお届けいたします。また、北陸が雪解けを迎えた頃に、被災地の方々に元気になってもらおうと、御当地の物産品を全国にPRする北陸応援プロジェクトを開催いたします。

 復旧、再建への道のりは平たんではありません。我が党は、長い目で、プッシュ型のサポートを適宜行い、被災地の方々に寄り添っていくことをお約束いたします。

 日本の政治は、かつてない危機に直面しています。自民党の派閥と所属国会議員による、政治資金パーティーの不正な売上げ操作とキックバックによる多額の裏金づくりは、まさに組織的犯罪集団であると言わざるを得ません。国民の政治に対する信頼は、完全に地に落ちました。

 長らく権力を握ってきた自民党は、既得権を守るためのシステムを組織的に政界の隅から隅まで張り巡らし、民間感覚など全く無縁の政党に成り下がりました。今、党内にたまり切ったうみが白日の下にさらされたと言えます。

 リクルート事件を受け、自民党が平成元年に策定した政治改革大綱は、収入は公正明朗な資金によるべきであり、いやしくも不当、違法なもの、疑惑を招くような関わりは厳に慎むと宣言し、パーティーについては、閣僚、派閥などによる開催の自粛を更に徹底するとしていました。三十五年を経た今、いずれも絵空事であることがはっきりしました。しがらみを断ち切れない自民党政治を象徴しています。

 なぜ、自民党は、政治改革大綱に掲げた改革を軒並み放置してきたのですか。金権腐敗の反省から大綱でやると言ったことさえやらなかった自民党が、今後、しっかり襟を正し、公明正大に政治改革を断行する力があると堂々と言えますか。

 失墜した国民の政治への信頼を取り戻すためにも、政治と金の問題で二度と国民を裏切ることができないよう、実効力がある政治改革を速やかになし得ることが不可欠と考えます。しかし、総理は、一月二十九日の衆議院予算委員会で、党の改革方針を取りまとめる時期をはぐらかし、政治改革に終わりはないと逃げました。

 自民党の政治刷新本部は、一月二十六日、中間取りまとめを公表しました。内容は、肝腎の政治資金規正法改正など法整備について具体的に示さず、刷新にはほど遠い内容です。最終の取りまとめはいつまでに公表されますか。言えないというならば、何がネックになっているのですか。

 各議員に毎月百万円支給される調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費の改革の問題でもしかりです。

 日本維新の会は、使途公開と残金の返納の義務化を主張し続けてきましたが、主に自民党の抵抗でたなざらしにされてきました。原資が税金の旧文通費の使途を透明化するのは当然です。この期に及んで自民党が旧文通費改革に反対するならば、一事が万事、国民の政治不信は解消されません。自民党は旧文通費の改革に賛成すると明言していただけませんか。

 日本維新の会は、一月二十九日に独自の政治改革大綱を発表しました。我々は、政権交代が起きにくい緊張感の欠如こそが金権政治や癒着の根本原因と考えており、大綱を踏まえ、政治資金問題のみならず、選挙制度と国会の改革もセットで実現をさせ、政界の負の遺産を一掃することをお約束します。

 政治資金の在り方を見直すことを機に、現職に有利な選挙制度や昭和の時代からほとんど変わらない国会運営まで、幅広い改革を一気通貫で実行し、腐敗の根底にある構造問題自体を解決すべきと考えますが、見解を求めます。

 自民党の中間取りまとめでは、派閥からの資金、人事機能の分離が目玉になっています。岸田総理自身も岸田派を解散し、また、追随する派閥も相次ぎ、派閥解消を政治改革の中心に据える動きが加速しています。これは目くらましと言わざるを得ません。本筋は裏金問題です。裏金問題の全容を明らかにせず、派閥を解散して幕引きとするのは許されるものではないと思料しますが、どのようにお考えですか。速やかに全数調査に着手すべきではないですか。

 平成六年に誕生した政党交付金は、企業、団体からの献金が政策決定をゆがめる弊害を取り除くことが目的でした。趣旨を踏まえると、企業・団体献金は当然廃止し、また、パーティー券を企業、団体に販売することも同様に禁止するのが筋です。それにもかかわらず、政治資金規正法には、政党支部への献金などの抜け穴がいまだに残されています。

 日本維新の会は、企業・団体献金も、企業、団体にパーティー券を販売することも完全禁止を打ち出しました。我々は、さきに企業・団体献金の廃止法案も提出しています。我々の主張が実現しなければ、政党交付金導入の高邁な趣旨に反し、筋が通らないと考えますが、所見を求めます。

 かつての民主党は、政権交代前に、企業、団体の献金やパーティー券購入の禁止を公約していましたが、政権の座に就いた途端にあっさり撤回しました。イコールフッティングなるへ理屈を持ち出し、提言はするが、野党では法案を成立させられないからと、自身がやらないことを正当化するような野党では、結局のところ、同じことが繰り返されるだけです。

 企業、団体からの金の流れを断ち切り、真にしがらみのない政治を実現し、改革を実行できるのは、それを実践してきた政党のみであるとの考えの下、維新は、このルールを今から内規として徹底していきます。

 一方で、不足する政治資金を補うためにも、日本では活発とは言い難い個人献金について、政治活動を支える重要な要素として、今後一層推進すべきです。個人献金について、献金者のプライバシーに配慮した情報公開制度や、寄附控除の範囲の全ての地方議員や首長への拡大、税額控除の適用が必要と考えますが、自民党として、目指すお考えはありますか。

 今般、政策活動費を名目に、捜査の手から逃れようとする者が続出しました。政策活動費は、使途が追えず、政治資金の支出の適正性が確保できない点が問題となっています。闇金を生み出す現行の政策活動費制度は廃止し、将来的な公開や外部監査の強化などを前提とした新たな制度を構築すべきと考えます。見解を求めます。

 今般の裏金事件では、政治資金規正法上、収支報告書に関して会計責任者が一義的に責任を持つとする法律構成を悪用し、政治家が責任を会計責任者になすりつけ、検察も現行法の下では立件できない事態が明るみに出ました。民間会社ではあり得ない、責任逃れです。国会議員は自らの事務所の社長とも言える立場であり、その運営に全責任を負うべきです。

 我々は既に、議員にも責任を負わせる連座制を実現させるために、政治資金規正法と政党助成法の改正案も提出しています。法改正による連座制の導入について、賛同していただけますか。

 我々は、やると言ったことは、法整備される前に率先して実行する政党です。連座制の導入を訴えると同時に、法改正を待たず、今すぐ、国会議員の政治団体について議員自らを会計責任者とする措置を取ることを検討しています。同様に連座制を掲げる政党は、是非一緒に実行し、国会議員が率先して覚悟ある態度を示すことで、自民党の裏金問題に端を発する国民の政治不信を今すぐ払拭しようではありませんか。まずは問題の大本である自民党の総裁として、見解を伺います。

 政治と金の問題を包括的に整理し、新たな立法措置を行うことは不可欠ですが、我が国では、会社法における会社のように、政党を規定する法律は存在しません。そのために、資金や組織等、それぞれの規制が結合せず、政党の公共性を曖昧なものにして、ガバナンスを失わせてきました。政党を公的存在と認め、必要な内部組織規定を加えた政党法を策定し、公党にふさわしい政党ガバナンスを確立すべきではないでしょうか。

 多過ぎる議員定数が、過当競争や派閥抗争を招き、政治と金問題の一因となっていると考えます。平成二十四年には当時の与野党で議員定数の大幅削減を決めたものの、いまだにその約束は履行されていません。議員定数は三割を目途に大幅に削減すべきではないですか。所見を求めます。

 令和六年度予算案の総額は、表向き、五年度比で約一・八兆円減少しました。コロナ禍で膨張した特定目的予備費の減額や、当年度中に支出しない防衛力強化資金の繰入れ停止などが主たる要因です。これらを差し引くと総額約百十二兆円で、前年度比六兆円増えました。減額したというのは数字のトリックです。

 コロナ禍を脱して初の当初予算編成に当たって、経費の膨張トレンドは反転できていないと考えますが、見解を伺います。

 内閣府は、一月、二〇二五年度に国と地方のプライマリーバランスは赤字となるとの見通しを示しました。我が国の債務残高はGDP比約二五五%とG7で突出して高水準にあり、その黒字化は積年の課題です。経済の需給ギャップやインフレ率を勘案した上での経済状況に合わせた戦略的な国債発行を否定するものではありませんが、今の自民党政権は単に予算のばらまきにより無制限に借金を増やし続けているだけです。全くコントロールが利いておらず、将来の日本にとって極めて危険な財政運営の状態であると言わざるを得ません。

 二〇二五年度黒字化目標の実現可能性を客観的に精査し、現実的な目標期限の再設定も視野に入れ、歳出改革を着実に進めるべきだと考えますが、併せて見解を伺います。

 自民党政権は、国民には税や社会保険料等で痛みを強い続けながら、自分たちの身を切る改革はほっかむりに徹してきました。国民負担率が四〇%台後半で高止まりする中、国民の可処分所得は前年同月比で二十か月連続減っています。

 防衛力の抜本的強化に伴う防衛費の財源の手当てを名目とする、いわゆる防衛増税の開始時期の決定が先送りされました。厳しい安全保障環境下で防衛費の増額は必要ですが、この期に及んで、その負担を安直に国民に転嫁することは容認できません。今年度予算で減額したコロナ対策等の特定目的予備費の四兆円は、防衛増税額の四年分に相当します。こうした歳出削減ができるのに、なぜ防衛増税が必要なのでしょうか。歳出改革はやり切ったと胸を張れるのですか。前国会で、政府は、歳出と歳入を個別にひもづける形で予算編成していないことを認めました。防衛予算ゆえに安定財源が必要という論理は成り立ちません。防衛増税の方針は見直すべきではないでしょうか。

 政府は、昨年末に決定した子供、子育て加速化プランの財源三・六兆円を賄うために、子ども・子育て支援金を創設するとしています。前国会で政府は一貫して国民に追加負担を求めないとしていましたが、閉会後に、医療従事者等の賃上げ分はその限りではないという後づけの説明を始めました。これでは医療従事者以外の国民には負担増となります。だまし討ちです。総理、なぜ多くの国民に負担増を強いる方向性に転換したのですか。真摯に説明してください。

 高齢化や人口減、所得減など国民の不安が強まる中、オール・フォー・オールの理念の下、国民が負担を分かち合い、誰もが尊厳ある生活を保障されなければなりません。その一丁目一番地が教育です。

 子供、子育て加速化プランに羅列されている向こう三年間の施策は、子育てに対する経済支援に軸足が置かれ、少子化をどう克服するか、未来像が見えません。背後にある構造的な問題に踏み込みが足りないからです。少子化の最大の要因は非婚化です。若い世代が自らの就労で経済的基盤を安定化させ、出産、子育てへの意欲を持たせる政策こそ求められているのではないでしょうか。政府のプランにはその観点が欠けていると考えますが、見解を伺います。

 特に政策効果に疑問があるのは、三人以上の子供がいる多子世帯に対する所得制限なしの大学授業料無償化です。約八五%を占める二人以下の世帯が対象から外れるほか、三子世帯は一人が扶養から外れれば対象でなくなるため、三人目をもうける動機づけになるか不透明です。教育を受ける権利は万人にあり、子育てに費用がかかるのはどの家庭も同じですから、不公平感も拭えません。この大学授業料無償化の施策は不公平ではありませんか。多子世帯への大学等授業料無償化が少子化打開に十分な効果をもたらすとお考えでしょうか。

 大阪市は塾代助成や小中学校の給食費無償化などを実現し、大阪府では来年度から所得制限なしの高校、公立大学、高専等の授業料無償化を導入します。これらの財源は、増税や借金ではなく、歳出改革により捻出しています。東京都も、大阪府に倣い、来年度から所得制限なしの高校授業料無償化を導入すると宣言されています。

 未来を担う子供の教育への投資は不可欠です。中途半端な大学授業料無償化ではなく、維新が進めてきた、幼児教育から高等教育まで全教育課程における所得制限なき授業料無償化の実現に国が率先して取り組むべきではないでしょうか。

 日本維新の会は、志を共にする教育無償化を実現する会と統一会派を組みました。我々は、先頭に立って社会の意識を変え、若者たちが真に子供を持ちたくなる社会の構築を牽引してまいります。

 医療の進歩による長寿化で、現役世代の社会保障負担が増加の一途をたどっています。家計金融資産の六三%を六十歳以上の方が所有している現状を踏まえれば、経済成長や世代間公平性のみならず、制度の持続可能性の観点からも、負担の在り方を真剣に見直すときが来ています。政府の示す応能負担の方向性は理解しますが、踏み込みが全く足りません。

 元をただせば、高度成長期の一九六〇年代後半に革新自治体で始まった老人医療費無料化制度は、持続性を度外視し、負担の一切を現役世代に押しつけました。この制度は適切だったと考えますか。

 医療保険は、いざ病気にかかったときの安心の制度であり、世代にかかわらず平等に負担するという考え方もできます。経済力のある高齢者には現役と同水準の医療負担を求めるくらいの踏み込みが必要ではないでしょうか。後期高齢者の医療費は福祉と捉え、税による負担割合を高める考えはありますか。

 医療分野のDXは、医療費の適正化や診療報酬、薬価の見直し、電子カルテの標準化など、聖域とされてきた社会保険制度の中核にメスを入れることにつながりますが、規制改革と新しい技術の活用なくして進みません。

 今、能登半島の被災地では、自宅や医療機関以外での受診が一部解禁されたオンライン診療が活躍し、避難所に身を寄せる被災者の方々に安らぎを与えています。全国あまねく日常的にオンライン診療を活用できる環境を早急に整えるべき現実を突きつけられました。

 能登半島の被災地での実例をオンライン診療の本格実施への突破口とし、医療DXを強力に拡大していくべきだと考えますが、見解を求めます。

 二〇二三年の日本の名目GDPがドイツを下回り、世界四位に転落する見通しです。国民生活を見れば、実質賃金は前年割れが続き、雇用の約七割を担う中小企業は賃金の価格転嫁にも苦しんでいます。最大の要因は、自民党政権の成長戦略の施策が補助金、融資、税制上の優遇措置の三点セットにとどまり、既得権の保護ばかりに目を向けていることです。

 成長力の強化に必要なのは、既得権に切り込む規制改革と新たな市場の創造にほかなりません。自民党政権が成長の芽を摘み続けてきた結果がGDP世界四位への転落であり、その罪と責任は大きいと考えます。総理の見解を伺います。

 成長の原動力として、イノベーションとデジタル社会への変革は不可分の関係にあります。しかし、政府がデジタル社会のパスポートと呼ぶマイナンバーカードの普及、活用さえ足踏みが続き、今年十二月からのマイナ保険証への完全移行は、笛吹けど踊らずの様相です。昨年四月に六・三%だったマイナ保険証の利用率も下がり続け、十二月には四・三%まで落ち込みました。使い勝手の悪さが改善されず、広く国民の要求に応えるものにはなっていません。

 今後、マイナ保険証への切替えと利用促進をどのように拡大していくお考えでしょうか。マイナカード活用による国民の利便性向上はまさに公共の福祉であり、私的事情で取得していない人たちの権利より優先されてしかるべきではないでしょうか。マイナカードの取得義務化への見解と併せ、お答えください。

 日本版ライドシェアが四月に解禁されます。方針では、タクシー会社の運行管理の下、車両不足が深刻な地域や時間帯などが絞られ、限定的なものとなり、ライドシェアと呼ぶに値しません。実情は、タクシー業界の人材確保を多少手助けするだけの措置です。

 前国会で、総理は、ライドシェアを新しい産業にする旨表明されました。政府は、六月、タクシー会社以外からの新規参入を含む全面解禁の方向性について結論を出しますが、新しい産業を見据えるなら、新規参入が可能な仕組みにするとともに、本格的な新法を制定すべきではないでしょうか。市場規模は一兆円と言われています。ライドシェア導入にあらがう業界団体や族議員の既得権を打破し、日本の成長のために真のライドシェアを育てていく決意をお示しください。

 世界では、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルとハマスによる戦闘など、深刻な戦争、武力衝突が続いています。それは、日米欧などの民主主義陣営、中国、ロシアなどの強権主義陣営、グローバルサウスの三極化を加速させ、国際秩序を揺るがしています。

 こうした中で、さきの台湾総統選に次いで、三月のロシア大統領選や四月の韓国総選挙、十一月のアメリカ大統領選など、国際情勢に影響を与える重要な選挙がきびすを接して行われます。言えるのは、大統領選の結果を問わず、アメリカが中ロと中東の三方面の脅威を並行して抑え込むことは軍事能力上も国際政治上も難しく、同盟国の日韓、欧州などが果たす役割が一段と大きくなっていくことです。

 国連安保理の非常任理事国である日本は、米欧と連携しつつ、新興、途上国との友好関係も生かしながら、世界の安定に向けて能動的かつ主導的に行動すべきだと考えますが、見解を求めます。施政方針演説で、総理は、世界の安定へ、日本ならではのアプローチで国際社会をリードすると述べました。どのような行動を想定されておられますか。

 一昨年末に決定された国家安全保障戦略で、政府は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐための能動的サイバー防衛の導入により、サイバー防衛能力を欧米主要国と同等以上に向上させると宣言しました。ところが、一年を経ても、必要となる不正アクセス禁止法などの関連法改正や、憲法二十一条が保障する通信の秘密との関係整理の進捗が見えてきません。国内法に縛られた自衛隊のサイバー防衛隊は竹光の部隊にすぎず、日米同盟の最大の弱点とも指摘をされています。

 施政方針演説で、総理は、サイバーセキュリティー強化に取り組むと改めて表明されましたが、なぜ法整備が遅れているのですか。喫緊の課題として、今国会で関連法の改正をなし得るべきではないでしょうか。

 安全保障に関わる国の機密情報へのアクセス権限を有資格者に限定する、セキュリティークリアランス制度を導入するための法案が今国会に提出されます。欧米先進国では情報保全制度が整備されていますが、我が国には経済安保分野で国際的に通用する制度がなく、日本企業が国際共同開発や研究を進める上で大きな支障になってきました。政府の対応は遅過ぎるぐらいです。

 政府が指定する機密情報の範囲や資格者に求められる基準などの制度設計に当たっては、米国などに倣い、国際水準に合致したものにしなければ通用しませんが、いかなる方針で取り組みますか。対象となる機密の定義が曖昧だと、民間企業が萎縮し、自由な経済活動が阻害されかねません。産業界の懸念をどのように払拭していくお考えか、お示しください。

 この資格制度は政府が保有する経済安保上の機微情報にアクセスするためのもので、問題の本質はこれにとどまりません。企業が保有する技術情報の保全体制も抜本的に強化すべきではないでしょうか。必要ならば政府がガイドラインを示すべきだと考えますが、併せて所見を求めます。

 十三歳のとき、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんは、今年十月、還暦を迎えます。北にとらわれる直前まで、彼女が中学の合唱コンクールで同級生たちと歌っていた「翼をください」の歌詞には、こんな一節があります。「この大空に翼を広げ 飛んでいきたいよ 悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ行きたい」。これは、半世紀近くも、早く自由になって日本に帰りたいと願い続けるめぐみさんの思いそのものでしょう。再会を祈り続ける母親の早紀江さんは、この四日に米寿を迎えられます。昨年は四度、入退院を繰り返されたそうです。

 総理は、拉致問題は政権の最重要課題と繰り返し強調していますが、被害者奪還への視界は全く開けてきません。途方もなく耐えていらっしゃるめぐみさん、早紀江さんらの思いをどう受け止めていますか。今、北朝鮮との交渉はどうなっているのですか。少なくとも、拉致被害者家族の方々だけには、可能な限り、適宜状況を伝えることはできないのでしょうか。

 来年四月十三日の大阪・関西万博開幕まで、あと四百三十七日です。政府によると、本会場の土木工事は九割を終え、リングやパビリオンなどの建設工事を中心とするフェーズに入るなど、準備はほぼ順調に進んでいます。

 総理、政府として、万博を予定どおり開催する方針に変わりはありませんね。世界にも向け、力強い答弁を求めます。

 総理は、九月の自民党総裁任期までに憲法改正の実現を目指すと明言されています。国民投票の実施には、国会発議後六十日から百八十日間、広報、周知期間が必要のため、この国民への重い約束を果たすには、今国会中に発議しなければなりません。リミットは五か月足らずです。与野党五党派で合意形成されつつある緊急事態条項の創設を軸に、改正案の取りまとめに直ちに入るべきです。予算審議が終わるまで憲法審査会を開かないという立法府のあしき慣例に唯々諾々としているわけにはいきません。求められるのは、自民党総裁たる総理のリーダーシップです。

 今国会での発議に向け、衆参の憲法審査会について、予算審議にとらわれず、必要なら定例日以外も開いて改正案の集約を加速させると約束していただけますか。

 前国会最終盤に自民党から改正条文案を起草する作業機関設置が提案されましたが、具体的な中身は、今日現在、何の連絡もありません。

 日本維新の会は、広く国民に憲法問題への理解を深めていただけるよう、審査会の模様をNHKテレビで中継できるよう提案もしてきました。賛同していただけますか。党総裁としての答弁を求めます。

 安定的な皇位継承は国家の根幹に関わり、立法府が目をそらすことができない喫緊の課題です。

 日本維新の会は、一昨年一月の政府有識者会議の報告書の国会報告を受け、一昨年四月、立法府が静かな環境の中で丁寧に議論し、総意をまとめるよう求める意見書を衆参両院議長に提出しましたが、他党の動きは鈍いと言わざるを得ません。この問題は、憲法改正と同様に、政治改革や政局にかまけて後回しにしているいとまはありません。

 総理は、施政方針演説で、立法府の総意の早期取りまとめに期待を示されましたが、今国会で与野党が議論する枠組みを設置し、自民党が意見集約に主導的な役割を果たすと約束していただけませんか。党総裁としてのお考えをお聞かせください。

 今こそ、経済や社会など、あらゆる面で構造改革に着手し、その流れを軌道に乗せなければなりません。今国会を、我々は、失われた三十年をもたらした元凶たる自民党政治の一掃に道筋をつけるための大改革実行国会に位置づけ、果敢に政策提言を行うなど、アクションを起こしてまいります。そして、必ずや政権交代を果たし、真に国家国民のための政治を実現させることをお誓いし、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。

 自民党の政治改革の取組についてお尋ねがありました。

 政治改革大綱については、小選挙区制の導入など具体的な制度改革等につながったものもあると承知しておりますが、派閥の弊害除去などが言及されているにもかかわらず、政策集団がお金や人事のための集団と見られても仕方がない状況が継続していたことは率直に認め、真摯に反省しなければなりません。

 党の政治刷新本部においては、政策集団による政治資金パーティーの禁止など、運用面から自民党単独でも対応可能なものについて速やかに実行に移すことを決定するとともに、各党各会派で議論が必要な制度的対応については党として真摯に協議に臨む、このことを決定いたしました。

 政治資金規正法改正など、より具体化しなければならない項目については、今国会でしっかりと議論できるよう、党としての考え方を取りまとめてまいります。私が先頭に立って、国民の信頼回復に向けてしっかりと取り組んでまいります。

 そして、調査研究広報滞在費についてお尋ねがありました。

 今回、党の政治刷新本部においては、政治資金の透明性の向上について、運用面から自民党単独でも対応可能なものについて速やかに実行に移すことを決定するとともに、各党各会派での議論が必要な制度面の対応については党として真摯に協議に臨むことを決定いたしました。

 御指摘の調査研究広報滞在費は、議員活動の在り方に関わる重要な問題であり、全議員共通のルールの在り方として、まさに各党各会派で議論が必要なものと認識をしております。自民党としても真摯に議論に参加してまいります。

 そして、選挙制度の改革や国会改革についてお尋ねがありました。

 党の政治刷新本部の中間取りまとめにおいても、不断の改革努力が不可欠な項目として、選挙制度の在り方や国会運営の在り方を掲げているところです。

 いずれも、国民の政治に対する信頼を維持し、有権者の負託に応えるためにどうあるべきかという観点から、各党各会派における真摯な議論を行っていくことが肝要であり、我が党としてもこのような議論に貢献していきたいと考えます。

 そして、派閥の解散と政治資金の問題に関する調査についてお尋ねがありました。

 今般、政治資金収支報告書への不記載の温床となったのは政策集団によるパーティーであり、政策集団から人事と資金を切り離すことは政治改革の本丸の一つであると考えています。

 また、こうした政策集団の在り方の改革に加えて、関係者による明確な説明責任が果たされるべきことは当然のことであり、党としても関係者に促しているところですが、党としても関係者の聞き取りを行うこととしており、目くらましとの御批判は当たらないと思います。

 なお、聞き取りの範囲については、事実関係の把握の状況等を踏まえて適切に判断をいたします。

 企業・団体献金についてお尋ねがありました。

 企業・団体献金については、各党各会派による長年の議論を経て現在の姿になっているものであり、政党等がその受取を行うこと自体が不適切なものとは考えておりません。

 また、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を有するとの最高裁の判決もあると承知をしております。

 いずれにせよ、企業・団体献金の在り方については、政党、政治団体の政治活動の自由と密接に関連している問題であり、民主主義のコストを社会全体でどのように負担していくかという観点も踏まえつつ、各党各会派による真摯な議論を経て結論を得ていくべき問題であると認識をしております。

 個人献金及び寄附金控除についてお尋ねがありました。

 個人情報に対する意識が高まる中、寄附者について、住所等が公表されることで寄附者のプライバシーが侵害されるおそれがあるとの指摘があることは承知をしております。

 また、寄附金控除制度は、政治資金の個人拠出を促進するという見地から設けられたものであり、国税としての税制上のインセンティブであることから、政治活動の広域性等の観点を踏まえて対象範囲が定められたものであると承知をしています。

 いずれにせよ、個人献金の公開や寄附金控除の対象範囲などの在り方については、政治団体の政治活動の自由を確保することと政治資金などの透明性を図ることとのバランスをどう考えるか、また、民主主義のコストを社会全体でどう負担していくかという観点を踏まえつつ、各党各会派とともに、不断の議論を重ねてまいりたいと思います。

 そして、政策活動費についてお尋ねがありました。

 政策活動費は、各党によってその呼称は様々であるものの、政党などの政治活動のために用いられるものと承知をしており、その在り方は、政治活動の自由とも密接に関わる問題です。したがって、各党各会派の真摯な議論を経て、各政治団体共通のルールを定めていくことが重要であると考えます。

 我が党としても、このような議論について真摯に対応していく所存です。

 いわゆる連座制等についてお尋ねがありました。

 政治資金が政治資金規正法にのっとって取り扱われるべきことは当然のことであり、違反した場合に厳正な対応が行われるべきとの問題意識は共有いたします。

 我が党としても、党の政治刷新本部における中間取りまとめにも明記しているとおり、より厳格な責任体制の確立、厳格化について、各党との真摯な協議を行う方針です。

 連座制の導入については、対象とする政治団体の範囲、対象とする違反の種類等、様々な課題について丁寧な議論を行う必要がありますが、今後、党としての考え方を取りまとめ、議論していきたいと考えています。

 なお、会計責任者の選任については、会計に関する知識の程度など、本人の適性を踏まえて判断すべきであると考えます。

 政党法についてお尋ねがありました。

 政党のガバナンス強化等の観点から、いわゆる政党法を定めるべきとの御意見があることは承知をしております。

 他方で、議会制民主主義の主要な担い手である政党がその期待される役割を十二分に果たしていくためには、何よりもまず政治活動の自由が最大限尊重されなければならないという意見も存在するところであり、政党法の制定については慎重な検討が必要であると認識をしています。

 いずれにせよ、お尋ねについては、政党の政治活動の自由と密接に関係する事柄であることから、各党各会派における十分な議論が必要であると考えます。

 議員定数の削減についてお尋ねがありました。

 議員定数の削減については、これまでも取組が続けられてきたところですが、民主主義の根幹に関わる重要な問題であり、引き続き、国民の政治に対する信頼を維持するためにどうあるべきなのか、議論を続けていく課題であると考えています。

 令和六年度予算編成についてお尋ねがありました。

 令和六年度予算案においては、議員御指摘のとおり、歳出構造の平時化の観点から、特定目的予備費を減額しているほか、社会保障関係費について、実質的な伸びを高齢化による増加分に収めるとともに、社会保障関係費以外について、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続しています。

 更なる歳出構造の平時化を進めるとともに、歳出改革の継続を行うことで、財政健全化を着実に進めてまいります。

 財政健全化についてお尋ねがありました。

 先日の経済財政諮問会議で報告された中長期試算では、民需主導の高い経済成長の下、歳出改革を継続した場合には、二〇二五年度の国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化が視野に入ることが示されました。

 財政の持続可能性への信認が失われることがないよう、歳出改革を継続しながら、賃上げの取組等を通じて所得の増加を先行させ、経済を立て直し、これらにより、引き続き財政健全化を着実に進めていくことが重要であると考えます。

 防衛力強化と少子化対策についてお尋ねがありました。

 防衛力強化のための財源確保に当たっては、行財政改革の努力を最大限行い、それでも足りない分について税制措置をお願いすることとしており、一昨年末の閣議決定の枠組みに基づいて方向性を明確にし、取り組むこととしております。

 少子化対策における支援金制度は、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築することとしており、全体として実質的な負担が生じないこととしております。

 御指摘の医療、介護報酬改定における賃上げ加算部分は、それ自体は社会保険負担の増加要因ですが、医療、介護の従事者を含む全体の賃上げによって雇用者報酬が増加することで、その実質的な社会保険負担軽減の効果により打ち消されることから、実質的な負担にはならないと考えます。

 歳出改革と賃上げによって社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、全体として実質的な負担が生じないという、先ほど述べた考え方は一貫していると考えています。

 少子化対策に関する加速化プランについてお尋ねがありました。

 加速化プランは、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てできる社会を目指します。そして、若い世代の所得を増やすこと、社会全体の構造や意識を変えるということ、そして、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援するということ、この三つを理念として掲げ、これを実現するものであります。

 若い世代の所得向上に関し、岸田政権では、最重要課題として賃上げを掲げ、三位一体の労働市場改革を進めているほか、正社員化に取り組む事業主への支援やハローワークにおけるきめ細かな就職支援を実施しており、こうした施策を通じて若い世代の賃上げや正社員化を支援してまいります。

 授業料の無償化についてお尋ねがありました。

 子育てや教育費により理想の子供の数を持てない状況が、三人以上を理想とする夫婦で特に顕著であることから、この現状を打破していきたいと考えています。

 令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料等の無償化については、三人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが三人同時に扶養している期間であることを考慮し、財源が限られている中で、このような内容を設定した次第であります。

 また、御指摘の授業料無償化の所得制限については、個々の制度の目的や支援方法などに応じて、それぞれ判断されるものと考えており、政府としては、教育費の負担軽減を着実に進めてまいります。

 医療保険制度改革についてお尋ねがありました。

 老人医療費無料化については、老人医療費の増大や、病院のサロン化や社会的入院といった弊害が指摘されたことから、高齢者にも定率の一割負担を導入し、現役並み所得のある高齢者には三割負担を導入するなど、見直しを行ってきています。一昨年十月からは、一定以上の所得のある高齢者について二割の窓口負担も導入したところです。

 また、後期高齢者医療制度は、世代間で支え合う観点等から、現役世代による支援金の拠出を行っていますが、その負担増を抑制する観点からの制度改正も行っております。

 今後とも、年齢に関わりなく負担能力に応じて公平に支え合うことで、給付と負担のバランスを図りつつ、制度の持続可能性を高める方策を不断に検討してまいります。

 オンライン診療についてお尋ねがありました。

 能登半島地震においては、避難所などにおいて、避難者の方と能登のかかりつけの医療機関との間でオンライン診療が行われており、被災地における医療の確保に大きく貢献をしています。

 政府としては、幅広く適正にオンライン診療が普及されるよう、医療機関が参考にできる事例集や手引書の作成、国民への周知広報資料の作成等を行っており、今回の事例も踏まえ、更に取組を進め、医療分野のDXを推進してまいります。

 自民党政権のこれまでの経済政策についてお尋ねがありました。

 日本経済は、三十年間続いたコストカット型経済の縮み志向の下で、投資や賃金までも削減されてきましたが、今まさに、新たな成長型経済への移行の途上にあります。これまでの新しい資本主義の様々な取組を通じ、三十年ぶりの水準となる賃上げ、設備投資など、明るい兆しが確実に見られつつあります。

 企業の稼ぐ力の強化を図り、生産性を引き上げていくためには、言うまでもなく、規制・制度改革、これは必要です。デジタル行財政改革を強力に進める中で、スピード感を持って取り組んでまいります。デフレからの完全脱却を果たすため、引き続き、あらゆる政策を総動員し、経済社会構造の変革を実現してまいります。

 マイナ保険証の利用促進とマイナンバーカードの義務化についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証は、我が国が医療DXを進めるための基盤となるものであり、本年度の補正予算で設けた医療機関への支援金による支援や、そのメリットの周知、広報を通じて、医療機関や保険者等の関係者と連携し、積極的な利用促進を図ってまいります。

 そして、御指摘のマイナンバーカード取得の義務化については、最高位の身分証として厳格な本人確認の下で交付する必要があり、カードに顔写真を表示するとともに、対面での厳格な本人確認をするため、本人の申請によることとしていることから、現段階では難しいと考えております。

 ライドシェアについてお尋ねがありました。

 地域交通の担い手や移動の足の不足といった深刻な社会問題の解決に向けて、昨年のデジタル行財政改革会議及び規制改革推進会議の議論を踏まえ、地域の自家用車や一般ドライバーを活用した新たな運送サービスが四月から実装されるよう、制度の具体化と支援を進めてまいります。

 あわせて、これらの施策の実施効果を検証しつつ、ライドシェア事業に係る法制度について、デジタル技術を活用した新たな交通サービスといった観点も含め、六月に向けて議論を進めてまいります。

 世界の安定に向けた日本ならではのアプローチについてお尋ねがありました。

 G7広島サミットにおいては、法の支配、主権や領土の一体性の尊重といった国際社会全体が従うべき原則について、G7以外の首脳らも交えた上で認識を一致させ、その成果を世界に向けて発信することができました。

 本年も国連安保理非常任理事国を務める我が国は、今述べたような成果の土台の上に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化のため、同盟国、同志国はもとより、グローバルサウスとの連携も深め、多様性と包摂性を重視するきめ細かなアプローチで、世界を分断や対立ではなく協調に導いてまいります。

 サイバー安全保障についてお尋ねがありました。

 能動的サイバー防御の実現に向けた法案については、現行法令との関係等を含め、様々な観点から検討を要する事項が多岐にわたっているものと認識をしています。

 我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境に鑑みると、ますます急を要する課題であり、可能な限り早期に法案をお示しできるよう、検討を加速してまいります。

 セキュリティークリアランスについてお尋ねがありました。

 一昨日の経済安全保障推進会議において、セキュリティークリアランス制度に関する新法案の今国会への提出に向け準備を加速するよう、高市大臣に指示をしたところです。その中で、御指摘のような、対象とする機密情報の範囲等について、これまでの有識者会議等での議論も踏まえつつ、鋭意、政府としての検討を進めてまいります。

 そして、御指摘のあった、企業が保有する情報の保全等については今回の制度の対象外ですが、有識者会議の最終取りまとめも踏まえながら、引き続き検討してまいります。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 横田めぐみさんを始め、いまだ多くの拉致被害者の方々が北朝鮮に取り残されていることは、痛恨の極みであり、誠に申し訳なく思います。

 我が国の方針は、日朝平壌宣言に基づき、諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものです。とりわけ、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題です。早紀江さんを始めとする御家族の差し迫った思いをしっかりと共有しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。

 北朝鮮に対して、様々な働きかけを行っております。しかし、その内容については、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにできないことは御理解いただきたいと思います。しかしながら、今後とも、御家族の気持ちに寄り添い、丁寧な対応に努めてまいりたいと思います。

 万博についてお尋ねがありました。

 新型コロナや大規模な自然災害を乗り越え、命への向き合い方、社会の在り方を問い直す機会となる万博の成功を目指し、来年四月からの開催に向け、オール・ジャパンで着実に準備を進めてまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法審査会における具体的な議論の進め方については、審査会においてお決めいただくべき事柄であり、内閣総理大臣の立場から直接申し上げることは控えなければならないと考えております。

 いずれにせよ、憲法改正は先送りできない重要な課題であり、時間的制約がある中でも一歩でも議論を前に進めるため、党派を超えた議論を加速させるべく、自民党としてもしっかりと貢献をしてまいります。

 憲法改正に関して、国民的な議論が必要であり、その議論の状況は広く国民に知っていただくことは重要であると私も考えます。ただ、御提案のNHKテレビでの憲法審査会の中継の実施については、放送番組の編集を行うNHKにおいて判断されるものであると承知をしております。

 安定的な皇位継承についてお尋ねがありました。

 内閣総理大臣の立場からは、国会における具体的な議論の進め方について申し上げることは差し控えますが、現在、衆参両院議長の要請の下、各党各会派において安定的な皇位継承等に関する意見の集約が進められているものと承知をしております。

 自民党総裁としてあえて申し上げれば、我が党においても、総裁直属の会議体を設けており、国会の議論に資するよう、党としての見解の取りまとめを進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表して、施政方針演説等政府四演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭、能登半島地震においてお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 大きな不安の中での生活を強いられている被災者の皆様が一刻も早く安全、安心の暮らしを取り戻すことができるよう、あらゆる施策を総動員して、復旧復興支援に総力を挙げなければなりません。

 多難な幕開けとなった二〇二四年は、そのほかにも、長期間に及ぶ物価高騰を乗り越えるための家計支援や、デフレ完全脱却を目指しての中小企業の賃上げへの取組、子供、子育て支援の充実、いまだ解決の糸口が見えないウクライナへの侵略、パレスチナの紛争問題など、政治がスピード感を持って取り組むべき内外の課題が山積しております。

 こうした国難ともいうべき難題を突破するには、その大前提として、政策を推進する政治家が国民の信頼に足る存在でなければなりません。その意味で、昨年末に発覚した政治と金をめぐる不祥事は、まさに言語道断であります。

 まずは、私たち国会議員が、真摯な姿勢で真っ正面から政治改革に挑むことが何よりも大切であります。公明党は、その先頭に立って、国民の皆様の信頼回復に努めていくことをお誓いいたします。

 以下、諸課題について質問いたします。

 初めに、能登半島地震について伺います。

 発災から本日で一か月がたちます。被災地では、厳寒の中、いまだ多くの方が不自由な避難生活を余儀なくされております。

 政府は、災害関連死を断固防ぐため、全ての避難所への支援物資の責任者を明確化し、避難者のニーズにきめ細かく十分に応えられるよう万全を期すとともに、感染症や持病の悪化などを防ぐため、医療、介護、保健体制を強化し、バリアフリーの仮設トイレの設置など、避難者に寄り添った避難所の環境改善に、官民の総力を挙げて不断に取り組むべきであります。

 また、在宅避難、自主避難、二次避難等をされている方へ状況に応じた支援も課題であり、行政サイドから積極的に訪問するなど、アウトリーチ型の見守り、相談支援の継続的な実施が重要です。

 加えて、能登地域で被災し、子供や親戚宅に避難している高齢者が要介護状態になったにもかかわらず、金沢市内など、避難している地域で介護施設の受入れ限度を超えてしまっている現状があります。県外からの介護職の応援も喫緊の課題であり、広域的な対応、支援を進めるべきと考えます。

 輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町、羽咋市、内灘町の八市町では、浄水場の損傷や、浄水場に通じる道路の被害、配水管も広範囲に損傷したことにより、その復旧に時間を要し、発災後一か月たった今なお約四万戸の断水が続き、被災者の健康維持並びに復旧復興の最大の足かせとなっております。

 県の水道用水供給事業の点検、補修が進捗した結果、先月二十九日に七尾市藤橋供給点まで送水が開始されたことは朗報でありますが、七尾市以北の六市町での早期断水解消に全力を尽くすべきであります。総理の見解を伺います。

 被災者の生活再建の大前提は罹災証明書の発行ですが、いずれの被災市町村においても本格的な罹災証明書の発行は始まっておりません。

 政府は、公明党の二次にわたる提言を受け、先週、被災者の生活と生業支援のためのパッケージを発表いたしましたが、被災者生活再建支援法の適用を始め、様々な支援メニューを受ける条件が罹災証明書となっております。罹災証明書の早期発行を可能にするためには、一軒一軒の家屋調査を前提とせず、被災地域単位で全壊地域と認定する等、発行の手続を大幅に簡素化し、被災者の生活となりわい支援を前に進めるべきと考えます。

 そして、被災者の生活再建の第一歩は、家屋の解体撤去、修理や建て替えであります。被災地域の特性から、家屋のみならず、納屋、車庫などの解体、瓦れき処理の費用も公費負担と認めるよう強い要望があります。また、空き家の解体、瓦れき処理についても公費負担が必要であり、政府として早期に決定すべきであります。

 住宅の応急修理は、災害救助法で、一世帯当たりの限度額は七十万六千円以内、応急修理の期間は災害発生の日から原則三か月以内に完了することと定められておりますが、近年の資材高騰から、限度額を引き上げること、また、被災地の実情に照らし、適用期間の延長は必要不可欠と考えます。

 仮設住宅の建設も急務です。被災者の多くが高齢者であり、住宅の再建が容易ではなく、寒冷地対応で、かつ恒久的な住宅として払下げできるスペックの仮設住宅の建設を進めるべきであります。

 また、内灘町を始め、液状被害が著しく、住宅の再建が困難な地域の再生についても、政府を挙げて対応することが必要です。

 以上の課題解決に向けて、総理の決意を伺います。

 次に、政治資金問題について質問いたします。

 政治資金パーティーの収入について、収支報告書に適切に記載されないまま多額のキックバックがなされていた問題が発覚をし、逮捕者が出るなど、政治に対する国民の信頼は著しく損なわれております。一月のNHKの世論調査でも、政治資金のルールの厳格化を求める声は八割を超えており、政治改革は待ったなしの状況です。

 公明党は、このような問題を二度と繰り返さないために、金の流れの透明化と罰則の強化を柱とする公明党政治改革ビジョンを一月の十八日に発表いたしました。

 ビジョンでは、政治資金の透明性の強化を図る具体案として、パーティー券の購入について、収支報告書に記載する基準を現行の二十万円超から五万円超まで引き下げ、全ての入金を口座振り込みのみとすること。さらに、一部の政党で議員に支払われている政策活動費の使途公開とともに、国会議員に毎月支給される調査研究広報滞在費については、使途明確化、使途公開、未使用分の国庫返納を行うこと。そして、政治資金を監督する第三者機関の設置や、誰もが簡単に閲覧できるよう、収支報告書のデジタル化の促進も掲げております。

 また、収支報告書について、国会議員などの代表者に適法に作成されていることの確認書の提出を求め、虚偽の記載などがあった場合、秘書などの会計責任者だけではなく、監督責任などを怠った議員などの代表者も罰金刑と公民権を停止する連座制を導入し、罰則の強化を図ることも極めて重要であります。

 今こそ、国民の政治への信頼を取り戻すため、派閥の解消にとどまらず、政治資金規正法の改正に与野党の枠を超えて取り組むべきと考えます。自民党政治刷新本部の本部長を務める岸田総理の決意を伺います。

 次に、三十年余り続いたデフレの完全脱却に向けて、物価高を乗り越える家計づくりを目指す我が国の経済政策について伺います。

 今年も物価高による家計への影響が続いております。賃上げや所得向上の流れができるまでの間、しっかりと家計を支える対策が重要です。

 既に昨年の補正予算で措置した住民税非課税世帯に対する七万円給付が順次開始されておりますが、まだ、およそ半分の自治体の実施にとどまっております。速やかな支給が望まれます。今後は、これに続いて、低所得者の子育て世帯に子供一人当たり五万円の追加給付を、また、住民税均等割のみ課税されている世帯等に対しては十万円を給付いたします。さらに、六月以降には一人当たり四万円の定額減税を実施し、減税分を引き切れない方には差額を給付で補填することとします。物価高での暮らしに大きな安心を与える支援策になると期待をいたします。

 ただし、制度が複雑で、自分はいつ、幾ら支援を受けられるのかが分かりにくいとの指摘もあります。支援の見通しが立つことは生活の安心につながります。政府においては、例えば、関係省庁や各自治体等の情報を統括し、支援の全体像や個別の相談先を分かりやすく紹介するまとめサイトを作成するなど、国民に分かりやすい広報を是非ともお願いしたい。

 また、この際、現在、国で開発している、申請から給付までのプロセスを一気通貫でデジタルで完結できる給付支援サービスの導入を一気に進め、全国の自治体における給付金の迅速な支給体制の確立や、住民からの質問に直接回答する問合せセンターの設置に向けた改革に取り組んでいただきたい。総理の見解を求めます。

 デフレ完全脱却に向けて最も大事なことは、物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現です。特に、日本商工会議所の昨年十二月の調査で、業績の改善は見られないが賃上げを実施した企業が六二・九%に上っており、中小企業が賃上げを継続できる環境整備が喫緊の課題であります。

 そこで、公明党は、昨年の秋、中小企業等の賃上げ応援トータルプランをまとめ、二十の具体策を政府に提言いたしました。そのうち、赤字企業も対象となる賃上げ促進税制の拡充、労務費転嫁のための新しい指針、前例のない思い切った投資減税や中小企業の省力化投資の支援など、企業の稼ぐ力を強化し、賃上げの原資をつくろうとする施策が徐々に動き出しております。

 中でも、深刻な人手不足解消、生産性向上のための設備投資に役立つと中小・小規模事業者から期待の声が大きいのが、IoTやロボットなどの製品をカタログ形式で簡単に選択できる省人化投資補助事業であります。

 昨年末に発表された労務費転嫁のための指針も含め、中小企業の現場で十分に活用され、効果が最大限に発揮できるよう、着実に推進をしていただきたい。

 総理からは、現場に近い中小企業庁を司令塔にして、よく実情を確認して対応していくことが重要との答弁もありましたが、これらの施策を価格転嫁や生産性向上などに確実に結びつけるためには、省庁横断的に政府一丸となった取組が欠かせません。持続的な賃上げをどのように進めていくのか、総理の答弁を求めます。

 物流、建設の二〇二四年問題について伺います。

 まず、物流では、本年四月から時間外労働の上限規制が適用されると、このままでは、二〇三〇年には三四%の輸送量が不足をし、物が届かないという混乱に陥る危険性があります。ドライバーの年間所得額は全産業平均に比べて五から一二%程度低く、高齢化が進み、倒産件数も増加をしており、輸送量の更なる減少が予想されております。

 政府は、昨年六月に物流革新に向けた政策パッケージを、また十月には物流革新緊急パッケージをまとめ、今国会での法改正を予定しておりますが、現場におけるあしき商慣行の見直しを始め、標準的運賃の引上げ、人手不足の解消、生産性の向上などに総力を挙げて真剣に取り組むことを求めます。また、下請になればなるほど手数料が引かれ、運賃が安くなる多重下請構造にも対策を講じる必要があります。

 さらに、公明党はこれまでも荷主企業への働きかけの強化を求めてまいりましたが、ドライバーの業務環境改善のため、トラックGメンによる荷主、元請への監視を強化し、悪質な企業は社名を公表するなどの対応を取るべきであります。

 また、建設業におきましても、四月から時間外労働の上限規制が始まりますが、公共工事設計労務単価を更に引き上げるとともに、適切な労務費や賃金の行き渡りの担保を確保すべきであります。また、適切な工期設定と施工時期の平準化を図るとともに、週休二日、四週八休の取得促進、ICTを活用した生産性向上への支援等、働き方改革も進める必要があります。政府は、こうした内容を含む法改正を予定しておりますが、確実に実行すべきであります。総理並びに国土交通大臣の見解を伺います。

 次に、子育てや女性、若者支援など、社会保障について伺います。

 初めに、子供、子育て支援について申し上げます。

 昨年、政府は、こども未来戦略を決定し、様々な子供政策を反映した加速化プランを、初年度となる今年から三年をかけて実施することとなりました。

 加速化プランでは、児童手当の大幅拡充、高等教育費の負担軽減、育児休業制度の拡充などに加え、公明党が一貫して推進してきた一人親家庭への支援や子供の貧困対策、障害児支援など、様々な困難を抱える子供や家庭に対する支援も強化されております。

 これらを実現するため、財源確保は不可欠です。

 政府は、財源について、まずは歳出改革の徹底や既定予算の最大限の活用によって捻出をし、さらに、二六年度から新たに導入される支援金制度によって確保するとしております。

 一方、この支援金制度は、全世代が加入する医療保険制度を活用し、広く国民から支援金を徴収するとしておりますが、政府は、少子化対策の財源について、実質的な国民負担は生じないとしております。しかしながら、物価高騰など昨今の社会情勢の中、現役世代を中心に、新たな負担増になるのではないかといった懸念の声が上がっております。

 少子化対策の財源確保に向けた支援金制度の必要性とともに、実質的な負担が生じないこと等について、国民が納得できるよう、丁寧で分かりやすい説明をお願いしたい。総理の答弁を求めます。

 育児、介護と仕事の両立支援について伺います。

 こども未来戦略では、共働き、共育ての推進として、育児休業給付を最大二十八日間は手取りで八割相当から十割相当へ引き上げるなど、育児休業制度を抜本的に強化することとしております。是非、今国会で育児・介護休業法等の改正を行うべきであります。

 一方で、同法をめぐっては、介護と仕事の両立支援も重要な課題です。介護休業を始めとした両立支援制度が知られておらず利用が進まないことや、制度の趣旨への理解が不十分で効果的な利用がされていないことから、両立が困難となっている状況があります。こうした状況を改善して介護離職を防止するため、介護に直面した全ての労働者に対して、事業主が個別に制度を周知したり、介護休業等を利用する意思を確認することが重要です。また、介護と仕事を両立するため、労働者がテレワークを選べるようにすることも有効です。

 育児、介護と仕事の両立支援について、総理の答弁を求めます。

 若者や女性の所得向上に向けたリスキリング支援について伺います。

 若者が希望を持って将来を展望できる環境を整備するために、また、男女賃金格差を縮小して女性の経済的自立を推進するために、若者や女性の所得を持続的に向上させていくことが重要であります。

 例えば、中長期的なキャリア形成につながる専門的、実践的な教育訓練を受講する方には、雇用保険の専門実践教育訓練給付金により、受講費用の最大七〇%が支援されており、受講後に約四割の方が賃金が増加をし、特に、四十歳未満では五割以上の方の賃金が増加をしております。

 賃上げを一過性のものとせず、構造的賃上げを実現するためには、こうしたリスキリングによる能力向上への支援を更に強化することが有効であります。教育訓練給付を拡充するとともに、生活費の不安なく教育訓練に専念できるよう、教育訓練期間中の生活を支える新たな給付、融資制度の創設など、労働者一人一人が主体的にスキルアップできるよう、制度の充実に取り組むべきであります。

 若者や女性の所得向上に向けたリスキリング支援について、総理の答弁を求めます。

 性暴力、性犯罪は、人間の尊厳を踏みにじり、生涯にわたり心身に深刻な傷を負わせる極めて悪質な行為であり、断じて許されません。

 政府は、現在、子供と接する職業に就く人に性犯罪歴がないことを確認する日本版DBSの導入に向けた制度設計を進めております。大事なことは、一つは、刑の消滅を定める刑法第三十四条の二の規定にかかわらず、子供に対する性犯罪等の記録は性犯罪歴証明に記載をすること、二つ目は、学校や保育所はもちろん、学習塾、スポーツクラブなど民間教育施設も幅広く日本版DBSの対象にすることであります。

 また、再犯を防ぐ観点を含め、初犯から性犯罪を防ぐ総合的な取組も必要であります。例えば、教員や学習塾など子供に係る職種での性犯罪防止の研修、学校だけでなく学習塾や放課後児童クラブ等における安全教育の実施、保護者や社会全体への啓発、犯罪の機会をつくらない場所づくり、加害者の適切な治療など、総合的に取り組まなければなりません。

 日本版DBS及び子供への性犯罪を防ぐ総合的な取組について、総理の見解を伺います。

 本年一月、公明党が主導してまいりました認知症基本法が施行されました。今後、政府は、認知症基本法に基づく基本計画を策定いたしますが、認知症の本人や家族などの意見を十分に踏まえた計画としていただきたい。

 基本法の基本理念には、認知症の人が社会参加できる機会を確保する必要性が明記されておりますが、認知症になると何もできなくなるという誤解や偏見はいまだ根強く残っております。しかし、実際には、認知症の人は、地域や社会とつながりを持てる居場所や、社会における役割を求めております。そうした居場所や社会参加の機会の確保に全力を挙げていただきたい。

 一方で、家族らへの支援も、基本理念の大事な項目の一つとして盛り込まれております。地域で認知症の方やその家族を支える仕組みづくりを進めるとともに、仕事と介護の両立支援を強化することが重要です。

 認知症の人も、その家族も、生きがいや希望を持って自分の人生を大切に歩んでいける社会の実現に向け、総理の決意を伺います。

 続いて、福島の復興と風評、風化対策、防災、減災について伺います。

 先月、政府は、昨年の福島県大熊町と双葉町に続き、浪江町の復興再生計画を認定いたしました。帰還困難区域への住民の帰還に向けた第一歩であると評価をいたします。スピード感を持って、着実に除染とインフラ整備を進めることが重要であります。

 一方、原発事故の風評、風化は今なお続いております。

 ALPS処理水の海洋放出に伴う風評被害には、引き続き、国内外に向けた透明性の高い情報発信を強化すべきであります。

 また、昨年、環境省が実施した全国調査で、四七%もの人が、原発事故被災地で将来生まれてくる子や孫が放射線による健康影響の可能性が高いと回答し、一昨年から増える結果となりました。

 全くの誤解であり、ゆゆしき事態であります。若い世代や子供への科学的根拠に基づいた分かりやすい情報発信が必要であり、政府によるSNSでのプッシュ型広告の活用や、放射線教育副読本などを活用した教育現場での学びを全国で一層広げるべきであります。また、震災の記憶や教訓の伝承を通して、風化対策も重要です。政府一体となって、連携して風評、風化対策を進めるべきです。総理の答弁を求めます。

 能登半島地震においても多くの学校が避難所になったように、災害時には地域住民の命を守る避難所として、平時には地域コミュニティーの拠点として活用されている学校でありますが、体育館へのエアコン設置など、その防災機能強化や老朽化対策は多くの自治体の課題となっております。

 昨年は、福岡県北九州市の小学校で、老朽化した外壁が落下する事故で児童五人がけがをし、埼玉県久喜市の小学校では、畳一畳分ほどの外壁が落下する事故が起きました。文部科学省によると、全国の公立小中学校の約半数の施設が築四十年以上経過をし、そのうち約七割が改修を必要としており、平成二十七年度から昨年十一月までに発生した外壁落下は三十八件に上っております。

 地方公共団体は修繕や建て替えを計画的に進めているところでありますが、今後の国土強靱化に関する政府の指針となる国土強靱化実施中期計画に学校施設の老朽化対策を位置づけ、しっかり対策を進めていくべきであります。

 被災地の学校施設の迅速な復旧と併せて、学校施設の老朽化対策について、総理の見解を伺います。

 次に、外交政策について質問いたします。

 ロシアによるウクライナ侵略は長期化し、開始から間もなく二年を迎えようとしております。国際秩序の根幹を揺るがしているこの侵略は、エネルギー、交通インフラ、住宅、学校等、人々の生活を支えるインフラや施設にも被害をもたらしており、ウクライナの人々は厳しい状況に置かれております。二月に日本で開催予定の日・ウクライナ経済復興推進会議も活用し、日本政府として、ウクライナに対する人道支援や復旧復興支援を引き続き力強く進めていただきたい。

 ガザ地区では、イスラエル軍とハマスとの戦闘が続いております。連日、多数の死傷者が発生をしており、また、水や食料、医薬品が不足するなど、現地では危機的な人道状況が更に深刻化しております。人道状況の改善と事態の早期鎮静化は最優先の課題であります。

 そうした中、国連パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAのスタッフがイスラエルへのテロ攻撃に関与したとの疑惑を受け、日本を含む主要ドナー国が資金拠出を一時停止する事態になっております。同機関のガバナンス強化を求めるとともに、結果としてガザの人々の命が脅かされることがないようにしなければなりません。

 復旧復興を含めたウクライナ支援、また、ガザ地区における人道状況の改善と事態の早期鎮静化における日本の役割について、総理の見解を伺います。

 総理は、昨年十一月、中国の習近平国家主席との首脳会談で、戦略的互恵関係の包括的推進と、建設的かつ安定的な関係の構築について再確認をし、各種対話の再活性化についても一致されました。

 我が党の山口代表もその直後に訪中をし、蔡奇政治局常務委員や王毅政治局委員と今後の日中関係の在り方について議論を深めました。また、その際、首脳会談のフォローアップに関する習主席宛ての総理親書を届けましたが、これに対しては、後日、習主席から返書があり、両国首脳の更なる意思疎通の強化を後押しできたと考えております。

 今後、政府のみならず、政党、議会、地方、文化、観光などの幅広い分野において対話と交流を拡大し、二国間関係の課題に限らず、気候変動などのグローバルな課題についても成果を積み上げていくことが重要であります。今後の日中関係のあるべき姿に向けた進め方について、総理の見解を求めます。

 マイナ保険証について伺います。

 政府は、今年十二月に現行の健康保険証を終了し、マイナ保険証を基本とする方針を決定しております。一方、この方針は、国民の不安払拭の取組が完了することが前提でありますが、マイナ保険証の低い利用率が課題と指摘されております。

 こうした中、現行の保険証が終了するまでの移行期の対応が重要です。例えば、終了後、最大一年間は現行の保険証も使用可能であること、マイナ保険証をお持ちでない方には資格確認書を発行することなど、正しい情報発信とともに、全ての方が安心して保険診療を受けられるよう、きめ細かな対応が求められます。

 マイナ保険証は、正しいデータに基づいた質の高い医療の提供、成り済ましの防止など、国民の命と健康を守る新たな仕組みの基盤になります。国民の皆様にメリットや必要性を実感いただけるよう、関係省庁や医療機関等と連携し、マイナ保険証を利用しやすい環境づくりに努めていただきたい。総理の答弁を求めます。

 外国人技能実習制度の見直しについて伺います。

 技能実習制度は、実習生に対し日本の技術や知識を教え、その経験を母国の発展に生かすことを目的としております。しかし、実際の運用は、企業側が労働力確保として活用するケースが多いなど、目的との乖離が指摘されており、日本の国際的評価にも影響を及ぼしております。

 国際社会において人材獲得競争が激化している中、海外からの人材を確保するためには、外国人の人権を更に尊重し、転籍要件の緩和や待遇改善を図るなどの健全な労働環境を提供することが必要不可欠であります。

 政府は法改正を予定しておりますが、制度の見直しに当たっては、外国人労働者の人権擁護と労働者としての権利性向上を図るとともに、人材確保や人材育成をより重視した制度を構築すべきと考えます。日本が国際社会の中で魅力的な国として選ばれるために、どのような制度の見直しを考えているのか、総理の答弁を求めます。

 結びに一言申し上げます。

 本年、公明党は結党六十周年を迎えます。この間、大衆とともにとの立党精神を胸に、全国津々浦々の地方議員の皆さんと連携をし、一貫して国民の小さな声を聞き、政策として練り上げ、政治の現場で実現をしてまいりました。

 今後も、こうした公明党ならではの取組を粘り強く続けながら、連立政権を支え、国民生活の向上に全力を挙げることをお誓いし、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員の御質問にお答えいたします。

 能登半島地震の被災者支援についてお尋ねがありました。

 避難所運営については、政府としても、震災後、直ちに応援職員を派遣し、被災地のニーズを把握する体制を構築したほか、災害関連死を防ぐため、衛生環境の維持向上を図るための物資のプッシュ型支援、DMAT、DHEATなどの専門家の派遣などを行ってきたところです。

 また、在宅避難者等についても、自治体職員や保健師などが巡回等により状況の把握に努めているほか、関係団体と連携して、被災地の社会福祉施設等への介護職員等の応援派遣を進めていると承知をしています。

 水道についても、人的支援や財政支援を行っているところであり、珠洲市の一部地域など、特に復旧に時間を要する見込みの地域もありますが、七尾市以北の六市町の水道施設の早期復旧に全力で取り組んでまいります。

 被災者の生活再建に向けての取組と決意についてお尋ねがありました。

 罹災証明書の迅速発行に向け、全国の自治体から支援も得て、航空写真の活用、リモート判定等による被害認定調査の簡素化を積極的に取り入れてまいります。

 半壊以上の家屋及びこれと一体的に行う納屋や車庫の解体、撤去についても、空き家か否かにかかわらず、自治体が住民負担ゼロで行えるよう、柔軟に対処してまいります。

 住宅の応急修理の基準額については、毎年度、物価変動等を踏まえて引き上げています。また、今回の被害の甚大さに鑑み、修理期間については特例的に発災から一年に延長することといたしました。

 このほか、仮設住宅の利用後の活用方法も見据えた地域型の木造仮設住宅の建設や、宅地も含めた液状化対策を含め、被災地の実情を踏まえ、住宅再建支援にしっかり取り組んでまいります。

 政治資金規正法の改正についてお尋ねがありました。

 政治資金規正法改正などの制度面については、自民党の政治刷新本部の中間取りまとめにも明記しているとおり、政治資金の透明化、公開性の向上、より厳格な責任体制の確立、厳格化などに、各党と真摯な協議を行っていく方針です。御指摘の政治資金規正法の改正についても、我が党としての考え方もまとめた上で、しっかりと議論をしていきたいと考えております。

 定額減税及び給付金に関する広報についてお尋ねがありました。

 定額減税や各種の給付金の趣旨、内容等については、丁寧に周知、広報してまいります。具体的には、議員の御指摘を踏まえ、関係省庁間、地方公共団体との間で連携をし、制度全体を分かりやすく説明するホームページを作成いたします。さらに、相談内容に応じた的確な回答や窓口の紹介に資するチャットボットの活用等について検討を進めます。

 また、給付の申請受付から振り込みまで数日でデジタル完結できる給付支援サービスを政府で開発しており、順次、希望する自治体に御利用いただけるよう、周知や導入支援を行ってまいります。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 中小企業の賃上げに向け、私自身、車座対話や政労使の意見交換などを通じ、昨年を上回る賃上げを働きかけ、機運醸成を強力に行ってまいりました。

 また、生産性向上や労務費転嫁に向け、より政策の実効性を高めるべく、官房副長官が主導する関係省庁連携の会議を開催するなど、省庁横断的な政府を挙げた取組を強化していきます。

 引き続き、現場に近い中小企業庁を中心に、賃上げ促進税制や労務費転嫁の指針の活用促進、省力化投資などの生産性向上支援を進め、中小企業の賃上げを実現してまいります。

 物流、建設の二〇二四年問題への対応についてお尋ねがありました。

 物流については、標準的運賃の八%引上げや、トラックGメンによる悪質荷主等への是正指導の大幅強化、物流DXに加え、適正な運賃導入と物流効率化を進めるための法案を今国会に提出し、物流革新を図り、物流の持続的成長を実現してまいります。

 建設業についても、最新の賃金上昇の実勢等を踏まえた労務単価の速やかな改定や建設現場のDXに加えて、適正な労務費を確保した請負契約や働き方改革を促すための法案をこの国会に提出し、持続可能な建設業を実現してまいります。

 子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 支援金制度は、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造、意識を変える、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援する、この三つの理念に基づく子供、子育て政策の抜本的強化を支える安定財源の一つとして導入されるものです。

 財源確保に当たっては、一つ目の、若い世代の所得を増やすとの理念との調和を図るべく、まずは徹底した歳出改革等で確保することを原則としていますが、この歳出改革と、まさに若い世代の所得向上策の一環として取り組む賃上げにより実質的な社会保険負担軽減効果が生じることから、その範囲内で支援金制度を構築することで、全体として実質的な負担が生じないこととしています。

 さらに、支援金制度は、企業とともに高齢者も含めた全ての世代が皆で子育て世帯を支える仕組みであり、社会全体で子供、子育て世帯を応援する機運を高めるという点で、社会全体の構造や意識を変えるという、先ほど申し上げた二つ目の理念とも合致いたします。また、三つ目の、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援するという理念にふさわしい使い道とすることとしています。

 加えて、支援金制度のこのような性格や、実効性のある少子化対策を通じて少子化、人口減少に歯止めをかけることができれば社会の一員としても受益を受けるといった点についても理解が深まるよう、丁寧で分かりやすい説明を続けてまいります。

 仕事と育児、介護の両立支援についてお尋ねがありました。

 子育て世帯の共働き、共育てを推進するため、育児休業給付の給付率の引上げや、出社や退社時刻の調整、テレワーク、短時間勤務などの柔軟な働き方を選べるようにする制度の創設のため、今国会に育児・介護休業法の改正法案を提出することとしております。

 また、仕事と介護の両立支援についても、同法案に、従業員に対して制度に関する情報を個別に周知し、その意向を確認することを事業主に義務づける等の措置を盛り込むこととしており、これらを通じ、仕事と育児、介護の両立支援を充実させてまいります。

 若者や女性の所得向上に向けたリスキリング支援についてお尋ねがありました。

 若者の経済的基盤を確保し、将来にわたる展望を描けるようにするとともに、女性の所得向上、経済的自立に向けた取組を推進していくことが重要です。

 このため、持続的な賃上げを可能とするための人への投資として、無料の公的職業訓練や教育訓練給付などのリスキリング支援を始めとする三位一体の労働市場改革に取り組んでいるところです。

 引き続き、三位一体の労働市場改革を早期かつ着実に進めるとともに、多様な働き方を促すためのセーフティーネットの拡充、教育訓練やリスキリング支援の強化を図るための法整備も進めてまいります。その中で、御指摘の教育訓練中の生活を支えるための新たな給付の創設などの内容を盛り込みます。

 いわゆるDBS法案及び子供への性犯罪を防ぐ総合的な取組についてお尋ねがありました。

 性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、あってはならないことです。このため、政府においては、子供の性被害防止のため、昨年七月に策定したこども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ等に基づき、対策を加速して取り組んでいるところです。

 子供の性被害を防止するための法制度については、今国会での法案提出を目指しており、与党とも緊密に連携しつつ、御指摘の、性犯罪歴を確認の対象とする期間や、制度の対象となる子供に接する事業者の範囲といった点を含め、より実効的な制度となるよう検討を進めてまいります。

 認知症施策の推進についてお尋ねがありました。

 私が議長を務めた認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議では、認知症基本法の施行に先立ち、認知症の方御本人や御家族にも参画いただきながら議論を重ねてきました。

 認知症とともに希望を持って生きる新しい認知症観の理解促進、仕事と介護の両立支援制度の活用推進など、その成果を基本計画の策定に生かし、全ての方が生きがいを感じられ、その尊厳が損なわれることなく、多様性が尊重される共生社会を実現してまいります。

 福島の復興についてお尋ねがありました。

 帰還困難区域において、帰還意向のある住民の方々全員が一日も早く帰還できるよう、特定帰還居住区域制度に基づき、除染やインフラ整備を始めとする避難指示解除の取組を進めます。

 また、ALPS処理水の海洋放出に関する風評払拭に向け、モニタリング結果も含め、引き続き国内外に透明性高く情報発信を進めるとともに、放射線による健康影響に関する若年層や子供への情報発信についても、分かりやすい動画やイベント、放射線副読本の活用を含めた教育現場での学び等により、更に進めてまいります。

 風化対策については、震災遺構や伝承館のガイドブック、また、復興政策十年間の振り返り等を公表しておりますが、引き続き、政府一体となって、東日本大震災の教訓の継承を進めてまいります。

 被災地の学校施設の迅速な復旧と老朽化対策についてお尋ねがありました。

 学校施設の復旧については、国庫補助の補助率のかさ上げや専門家の派遣などの技術的支援を行い、迅速な復旧を進めており、引き続き、被災地に寄り添った対応に万全を期してまいります。

 また、学校施設の老朽化対策については、子供の安全確保や防災機能の強化の観点からも取り組んでいます。御指摘の国土強靱化実施中期計画の策定に向けた議論において、老朽化対策の位置づけの検討や必要な予算措置等を進め、自治体による計画的な学校施設の整備への支援を行ってまいります。

 ウクライナ支援及びガザ情勢への日本の対応についての考えについてお尋ねがありました。

 我が国からウクライナに対しては、様々な分野で、現地ニーズを踏まえ、日本らしいきめ細かな支援を実施しています。今月には日・ウクライナ経済復興推進会議を開催し、官民一体となった復旧復興支援の機運を盛り上げていくこととしています。

 また、ガザ地区の人道状況改善及び事態の早期鎮静化に向けては、これまでも、私からネタニヤフ首相を含む関係国首脳への働きかけ等を実施してきており、引き続き、あらゆるレベルでこうした外交努力を粘り強く続けてまいります。

 日中関係についてお尋ねがありました。

 中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力によって進めていくというのが我が国の一貫した方針です。

 この点、先般の山口公明党代表の訪中は、両国の意思疎通強化に資する有意義なものであったと考えています。

 引き続き、首脳同士を含むあらゆるレベルでの意思疎通を重ね、日中関係を深化、発展させていきます。

 マイナ保険証についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証の利用促進のためには、医療機関等を始め関係者との連携が重要であり、本年度の補正予算で設けた医療機関への支援金の支給を着実に行うとともに、令和六年度の診療報酬改定においても利用実績に応じた評価を検討しています。

 引き続き、医療機関や保険者等による周知、広報の取組も促しながら、マイナ保険証の利用促進を積極的に推進するとともに、マイナ保険証への移行に際して、デジタルとアナログの併用期間をしっかりと設け、全ての方が安心して確実に保険診療を受けていただける環境整備に取り組んでまいります。

 技能実習制度の見直しについてお尋ねがありました。

 技能実習制度の見直しについては、有識者会議の最終報告書等を踏まえ、発展的に解消して新たな制度を創設すべく検討を進めているところです。

 見直しに当たっては、我が国が外国人材から選ばれる国になるため、転籍制限の緩和を含めて、外国人の人権に十分に配慮し、外国人材の育成やキャリアアップが適切になされる仕組みを構築していきたいと考えます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、物流、建設の二〇二四年問題への対応についてお尋ねがありました。

 物流、建設業は、いずれも国民生活や経済活動を支える重要な産業です。間近に迫る二〇二四年問題も踏まえ、物流、建設業を持続可能なものとしていくためには、処遇改善による担い手確保や生産性の向上といった喫緊の課題に取り組む必要があります。

 このため、まず、トラック運送業については、標準的運賃の引上げや適正な運賃収受を促すための新たな運賃項目の設定などに取り組むとともに、トラックGメンによる是正指導を強化し、本年一月には、悪質な荷主等二社に対する勧告、公表を行ったところです。その上で、荷主に対する物流の効率化に向けた取組の義務づけや、元請事業者に対する多重下請構造の是正に向けた取組の義務づけなど、物流の持続的成長を図るための法律案を今国会に提出いたします。

 建設業につきましては、引き続き、公共工事設計労務単価の適切な設定に努めるとともに、建設業法等を改正する法律案を今国会に提出し、国が示す基準を踏まえた労務費の行き渡り確保や、適正な工期の徹底、生産性向上の促進など、処遇改善と働き方改革を進めてまいります。

 国土交通省としては、これらの取組を通じて、関係省庁、産業界とも連携し、持続可能な物流、持続可能な建設業の実現に全力を尽くしてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 冒頭、能登半島地震で亡くなられた方々に心からの哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。自らも被災しながら懸命の救援活動を行っている地元自治体を始め関係者の方々に、心からの敬意と感謝を申し上げます。

 被災者の命と健康を守り抜き、災害関連死を防ぐことは、政府の最優先の責務です。

 総理は、一月九日、物資集積所の先にある、実際に必要な場所に、物や支援を行き届けると述べました。

 ところが、地震発生から一か月がたっても、災害救助法で定められた温かく栄養のある食事が行き届いていません。段ボールベッドがどう被災者に届いているのか、車中泊や農業用ハウスなどに避難されている方々、自宅避難や二次避難をされている方々の実態がどうなっているのか、十分に把握がされていません。プライバシーの確保を始め、ジェンダーの視点に立った支援で、東日本大震災の教訓が生かされていないとの厳しい指摘がされています。

 総理、被災者の置かれている実態をつかみ、求められている支援を現場に届け切るために、必要なマンパワーの確保を含め、政府としていつまでにどうするのか、具体的に示していただきたい。答弁を求めます。

 能登に住み続けることができる希望が欲しい。被災者の方々の痛切な願いです。今、政府が希望のメッセージを発信することが必要です。

 ところが、政府が決定した支援パッケージはどうか。住宅再建のための被災者生活再建支援金は、最大でも従来と同額の三百万円。資材高騰、高齢化率の高さを考えるなら、これでは住宅再建への希望は持てません。半壊、一部損壊に支援対象を広げるとともに、少なくとも六百万円以上に支援額を引き上げるべきではありませんか。

 中小・小規模事業者の施設等の復旧支援も、補助率は従来と同率の四分の三です。全額補助をすべきではありませんか。

 総理は、施政方針演説で、異例の措置でもためらわず実行と明言されました。ならば、従来並みの支援にとどまるのでなく、災害の特別の深刻さに見合った異例の措置をちゅうちょなく実行していただきたい。答弁を求めます。

 今回の震災に関わって、二つの点で政策の緊急の見直しを提起します。

 一つは、原発の問題です。

 今回の地震は、原発事故の際の避難計画が絵に描いた餅にすぎないことを明るみに出しました。志賀原発の避難計画は、高速道路、国道、県道、市町の道路を使って三十キロ圏外に十五万人が避難するというものですが、至る所で道路網が寸断される下で、全く実行不可能な計画でした。

 総理、地震、津波など自然災害によって原発事故が起きたら、住民は避難することさえできない。それでも再稼働せよというのが政府の方針ですか。我が党は全ての原発の廃炉を求めますが、とりわけ深刻なトラブルが発生した志賀原発、柏崎刈羽原発は、直ちに廃炉の決断をすべきではありませんか。

 いま一つは、大阪万博の問題です。

 能登半島地震では、住宅の被害も、道路、水道、港湾などインフラの被害も極めて甚大です。総理、万博に建設資材、重機、マンパワー、そして巨額の税金を使っているときか、能登半島地震の復旧復興こそ最優先でという声が広がるのは当然だと考えませんか。この期に及んで、カジノのための万博にしがみつき、限られた資源を半年で潰すパビリオンなどに費やすべきではありません。大阪万博は、きっぱり中止の決断をすべきです。答弁を求めます。

 しんぶん赤旗日曜版のスクープに端を発した自民党の政治資金パーティーをめぐる巨額の裏金問題に、国民の深い批判と怒りが沸き起こっています。総理の基本的な認識と対応について、三点伺います。

 第一は、総理がこの問題の性格をどう認識しているのかということです。

 今回の事態は、自民党の主要派閥がそろって政治資金パーティーにおける政治資金収支報告書を偽造していたという、自民党ぐるみの組織的犯罪です。ところが、総理の施政方針演説では、国民から疑念の目が注がれる事態を招いたことへのおわびを言うだけで、この問題がどういう重大な性格を持っているかの認識と反省は、かけらもありません。

 政治資金規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の流れを透明化し、民主政治の健全な発達に寄与することを目的とすると明記されています。総理、自民党が行っていたことは、政治資金規正法のこの根本精神をじゅうりんし、民主政治の健全な発達を妨害する組織的犯罪行為だという認識と反省はありますか。答弁を求めます。

 第二は、自民党内でシステム化していた裏金づくりの全容解明の意思が総理にあるのかという問題です。

 既に、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者が政治資金規正法違反で起訴されましたが、政治資金収支報告書を偽造し、巨額の裏金をつくるシステムが自民党の中に確立していたという認識が総理にはありますか。

 総理は、施政方針演説でも裏金という言葉を一切使っていませんが、総理が繰り返す実態の解明の実態とは、一体何の実態なのですか。なぜ、裏金づくりの実態を解明すると言えないのですか。説明していただきたい。

 総理、誰が、どれだけの裏金をつくり、何に使ったのか、どのような裏金システムがつくられていたのか、それらを、自民党の責任者として、過去に遡って洗いざらい明らかにすべきではありませんか。裏金問題の全容解明に蓋をしたまま、幾ら口先で政治刷新を言っても何の意味もないと考えますが、いかがですか。お答えください。

 第三は、総理が金権腐敗政治の根本にある企業・団体献金禁止に背を向けているという問題です。

 一九八〇年代末以降、金権腐敗事件が相次ぎ、政治改革が唱えられました。しかし、当時の非自民政権と自民党の談合によって、問題が小選挙区制の導入にすり替えられました。それでも、一九九四年の細川首相と自民党の河野総裁の会談で、政党助成金をつくることと引換えに、五年後に企業・団体献金を禁止することが合意されました。

 ところが、この約束はほごにされ、九九年の法改定で、政党や政党支部に対する企業・団体献金は合法とされ、政治資金パーティー券購入という形での企業・団体献金も合法とされるという二つの抜け穴がつくられました。このごまかしのツケが、今、巨額の裏金問題として噴き出しているのであります。

 選挙で一票を投ずることができるのは主権者である国民だけであり、企業に一票を投ずる権利はありません。総理、経済的に圧倒的な力のある企業が献金をすることは、金の力で政治をゆがめ、一人一人の国民の参政権を侵害することになることは明らかですが、あなたにそうした認識はありますか。

 さらに、企業・団体献金禁止と引換えに政党助成金を導入したはずなのに、自民党が毎年、百数十億円もの政党助成金を手にしながら、企業・団体献金はもらい続けるという二重取りを続けていることは、国民を愚弄する公約違反ではありませんか。

 日本共産党は、この国会に、パーティー券を含めて企業・団体献金を全面禁止する法案と、政党助成制度を廃止する法案を提出しております。我が党の提案に対する総理の見解を問うものです。

 物価高騰からいかにして暮らしを守り、経済を立て直すか。岸田政権の著しい特徴は、これまでの経済政策の失敗を自ら認めながら、失敗した道を転換することができないという、文字どおりの政策破綻に陥っていることにあります。

 例えば、税金の問題です。

 自民党が昨年十二月に決定した税制改正大綱では、日本の法人税率が約四十年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は最高時より二〇%ポイント程度低い二三・二%となっていること、法人税率の引下げにより企業経営者が内部留保を活用して投資拡大や賃上げに取り組むことが期待されたこと、しかし、それは実現せず、賃金や国内投資は低迷し、企業の内部留保は五百五十五兆円と名目GDPに匹敵する水準にまで増加したことを指摘し、次のように特徴づけています。近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった。要するに失敗したということです。

 総理、そうであるならば、長年続けてきた、法人税を減税し、その穴埋めに消費税を増税する路線を根本から改めることが必要ではないでしょうか。来年度予算で相変わらず大企業と富裕層向け減税のばらまきを続けるのは、失敗の繰り返しになるだけではありませんか。富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を五%に緊急に減税し、インボイス増税を中止することこそ、失敗から学ぶ道ではありませんか。答弁を求めます。

 賃上げについても同じです。

 自民党の税制改正大綱では、労働者の七割が働く中小企業について、その多数が赤字企業であり、賃上げに向けた税制措置のインセンティブが必ずしも利かない構造となっているという事実を認めています。

 ところが、総理が施政方針演説で強調したのは、自分で利かないと認めた賃上げ税制の拡大強化です。五年先に黒字になったら減税すると言いますが、今赤字経営に苦しんでいる中小企業が五年先の減税を当てにして賃上げをするというのは、誰が考えても絵空事ではないでしょうか。

 中小企業の賃上げに税制措置が利かないと認めるなら、赤字企業も含めて全ての中小企業への支援となる社会保険料減免などの直接支援が必要ではないでしょうか。

 日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、十兆円の税収を中小企業の賃上げ支援に充て、最低賃金を時給千五百円に引き上げる提案を行っておりますが、こうした抜本的方策を取ることこそ、失敗から学ぶ道ではありませんか。答弁を求めます。

 政府は、介護保険について、利用料の原則一割負担から二割負担への引上げ、要介護一、二の在宅サービスの保険給付外し、ケアプラン作成の有料化などの制度改変を二〇二六年から二七年を目途に検討し、具体化に動き出すとしています。

 利用料が二倍になったら払えない、施設を退所して在宅介護を選ぶしかないとの不安が広がっております。さらに、既に実施されている要支援一、二の保険給付外しに続いて、要介護一、二の在宅サービスまで保険給付を外すとなれば、要支援、要介護と認定された方の実に六五%が保険給付でサービスを受けられなくなります。総理、これでは国家的詐欺だという批判にどう答えますか。

 苦しめられるのは、高齢者だけでなく、現役世代の介護離職を更に加速させるなど、全ての世代です。経済にも社会にも悪循環をもたらす介護保険大改悪の検討を直ちに中止することを強く求めます。

 真に持続可能な公的介護制度にする唯一の道は、国庫負担の増額しかありません。自民党も公明党も、民主党政権の野党だった時期に、介護保険の公費の負担割合を五〇%から六〇%に引き上げることを公約しています。かつて自公両党も掲げていたこの改革以外に、公的介護制度を維持発展させる道はないと考えますが、いかがですか。総理の答弁を求めます。

 米国と中国の対立が強まる下で、日本の進路はどうあるべきか。

 私は、昨年末、東南アジア諸国連合、ASEANに加入する三つの国、インドネシア、ラオス、ベトナムを訪問しました。徹底した対話の積み重ねによって東南アジアを平和の共同体に変えたASEANの経験に、目が見開かされることの連続でした。

 ジャカルタのASEAN本部を訪問した際のASEAN事務局次長との意見交換で、私が、ASEANの成功の秘訣は何ですかと尋ねますと、先方から、ASEANの中心性が重要ですという答えが返ってきました。つまり、大国の関与を歓迎するが、一方の側に立たない。アメリカの側にも立たないし、中国の側にも立たない。中立と自主独立を貫くことがASEANの立場とのことでした。

 私は、ここには日本外交が学ぶべき英知が示されていると考えますが、総理はASEANの中心性についてどういう見解をお持ちですか。

 翻って、日本政府の立場はどうでしょうか。アメリカに言われるままに、専守防衛を投げ捨て、敵基地攻撃能力保有と大軍拡を進めています。国際紛争を助長しないという理念を投げ捨て、殺傷武器輸出解禁を強行し、死の商人国家に堕落しようとしています。沖縄県民の圧倒的民意に背いて、代執行という前代未聞の乱暴なやり方で辺野古新基地建設を強行していることは、決して許すわけにいきません。総理、これらの全てが世界における平和国家日本の評価を大きくおとしめ、北東アジアにおける軍事対軍事の悪循環を加速させているという自覚があなたにありますか。

 総理、米国言いなりで戦争国家づくりに突き進むのではなくて、現にASEANが実践しているように、自主自立の外交によって平和をつくる道に転換することこそ、日本に強く求められているのではないでしょうか。

 ASEANの国々と協力し、東アジア・サミット、EASというこの地域の全ての国を包摂する枠組みを活用、強化し、対抗でなく対話と協力の東アジアを目指すASEANインド太平洋構想、AOIPを共通の目標として、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法九条を生かした平和外交に取り組むことこそ、未来ある道ではないでしょうか。

 総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。

 能登半島地震の支援についてお尋ねがありました。

 段ボールベッドや温めて食べられる食事を始め、被災者のニーズに応じた様々な物資をプッシュ型で被災地に届けているほか、自衛隊等による炊き出しなどの取組もなされているものと承知をしています。

 また、DHEATや保健師等の派遣により、避難所以外で避難生活を送る方についても健康管理を行っているほか、避難所運営等についても、全国の自治体から千二百名以上の自治体職員の応援派遣を行い、女性の視点に立ったチェックシートも活用しながら支援を行っているところです。

 引き続き、自治体と連携し、被災地のニーズを踏まえつつ、必要な支援が現場に届くよう、適切に取り組んでまいります。

 被災地への支援策についてお尋ねがありました。

 被災により住宅の被害を被った被災者への経済的支援の在り方については、被災地のニーズやその実情、さらには現下の経済情勢も踏まえて、能登の実情に合わせて追加的な方策を現在総合的に検討しております。

 中小・小規模事業者の施設復旧等を支援するなりわい補助金については、幾つかの要件の下、一定額までは自己負担のない定額補助を行います。

 令和六年度予算案を変更し、一般予備費を一兆円に倍増する極めて異例な対応を行っており、引き続き、できることは全てやるとの考えで取り組んでまいります。

 原発についてお尋ねがありました。

 先般の規制委員会において、志賀原発については原子力施設の安全機能に異常はなく、その他の原発についても安全確保に影響のある問題は生じていないとされたと承知をしています。

 また、志賀原発及び柏崎刈羽原発の立地地域においては、既に、自然災害と原子力災害との複合災害を想定し、緊急時対応の取りまとめに向けて取り組んでいるところであり、今般の地震で得られた教訓をしっかりと踏まえて取りまとめていくこととなります。

 いずれにせよ、高い独立性を有する規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り原発の再稼働が認められることはないという政府方針は今後も変わりません。それを前提として、個別の原子力発電所の廃炉をするかどうかということについては、それぞれの事業者が判断することになります。

 万博についてお尋ねがありました。

 能登復興に万全を期すことは当然であり、支援パッケージを実施し、令和六年度予備費を一兆円に倍増するなど、復旧復興の段階に合わせた機動的、弾力的な財政措置を行うこととしております。

 先週には、齋藤経産大臣に対して、資材等の需給を丁寧に把握し、復興に支障のないよう、万博関連の調達を計画的に進めるよう指示したところであり、早速、経産省では、窓口を設置し、石川県との連携体制を構築したと承知をしています。

 現時点において、万博関連の資材調達等によって復興に具体的な支障が生じるとの情報には接しておらず、万博を延期、中止する必要があるとは認識しておりませんが、今後も、能登復興に支障が生じることがないよう、政府を挙げて取り組んでまいります。

 自民党の政策集団の政治資金の問題に関する認識についてお尋ねがありました。

 政治資金が政治資金規正法にのっとって取り扱われるべきことは当然であり、今回の一連の事態を生じたことについては、自民党として真摯に反省するとともに、国民の皆様におわびを申し上げます。

 政治資金は民主主義の重要な構成要素であり、その運用に疑義が生じ、国民の信頼が失われれば、民主主義の基盤が揺らぐことにもなりかねません。政治は国民のものとの自民党立党の原点に立ち返り、私が先頭に立って、国民の信頼回復に向けた取組を進めてまいります。

 自民党の政策集団の政治資金の問題に関する調査についてお尋ねがありました。

 現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、党としても、これらの状況を把握するとともに、事実関係の把握に向けて関係者の聞き取りを行い、不記載の実態の把握に努めております。

 聞き取りの進捗状況を踏まえながら、党としても、必要な説明責任を果たすとともに、再発防止等についても同時に進めてまいります。

 企業・団体献金及び政党助成制度についてお尋ねがありました。

 企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を有するとの最高裁判決があるにもかかわらず、企業・団体献金が金の力で政治をゆがめ、国民の参政権を侵害するというのは、論理の飛躍があると考えます。企業・団体献金については、各党各会派による長年の議論を経て現在の姿になっているものであり、政党等がその取扱いを行うこと自体が不適切なものとは考えておりません。

 また、政党助成制度についても、政治改革について議論を積み重ねた結果、政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくこととなったものであり、民主主義の発展に重要な意義を持つ制度であると認識をしています。

 いずれにせよ、企業・団体献金及び政党助成制度の在り方については、政党、政治団体の政治活動の自由と密接に関連する問題です。

 民主主義のコストを社会全体でどのように負担していくかという観点も踏まえつつ、各党各会派における真摯な議論を経て、結論を得ていくべき問題であると認識をしております。

 法人税減税と消費税についてお尋ねがありました。

 消費税については、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源となっているため、これが法人税減税を穴埋めしたという御指摘は当たりませんし、税率を引き下げることは考えておりません。また、インボイス制度は、複数税率の下での課税の適正性を確保することにおいて必要であり、中止は考えておりません。

 なお、令和六年度税制改正においては、賃上げ促進税制の強化や戦略分野国内生産促進税制の創設を措置していますが、これらは、物価高に負けない賃上げや企業の稼ぐ力の強化のためのものであり、御指摘の大企業と富裕層向けのばらまきだとは考えておりません。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 賃上げ促進税制を拡充しましたが、税額控除の繰越措置は、赤字でも、優秀な人材確保のために賃上げに挑戦する中小企業の後押しになると考えています。あわせて、労務費の価格転嫁や省力化投資の支援等の施策を総動員することにより、中小企業の賃上げを後押ししてまいります。

 なお、社会保険料の負担軽減については、医療や年金給付の保障を通じた就労基盤の整備が事業主の責任であり、働く人の健康保持や労働生産性の増進を通じて事業主の利益にも資することから事業主負担が求められているものであること、また、内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることから、慎重な検討が必要であると考えております。

 介護保険制度の見直しについてお尋ねがありました。

 要介護一、二の方への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、二〇二七年度からの第十期介護保険事業計画期間の開始までの間に検討を行い、結論を出すこととしております。

 介護保険制度が全ての世代にとって安心なものとなるよう、サービスの質を確保し、給付と負担のバランスを図り、制度の持続可能性を維持することは重要な課題だと認識をしており、改革工程に基づき、引き続き丁寧に検討を進めてまいります。

 ASEANの中心性についてお尋ねがありました。

 我が国は一貫してASEANの中心性を支持してきており、先月の特別首脳会議においても、私自ら、ASEANの首脳との間でこの点を改めて確認いたしました。

 引き続き、ASEANが中心となった地域協力の取組を尊重しつつ、その他の国、地域とも連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、積極的な外交を展開してまいります。

 我が国の安全保障政策とASEANとの連携についてお尋ねがありました。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の下で、日本国民の生命財産を守り抜くには、防衛力の抜本的強化や、日米同盟の深化等を通じた望ましい安全保障環境の創出に能動的に取り組んでいくことが必要です。

 その上で、我が国は、インド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIPを強く支持し、東アジア首脳会議等のASEAN主導のフォーラムに貢献しつつ、地域の平和と繁栄に向けて、ASEANほか関係各国と連携をしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 本日で、能登半島地震の発災から一か月。被災された皆様にお見舞いを、失われた貴い命に心からのお悔やみを申し上げます。

 一月十五日に被災地を訪ねましたが、そこで見聞きした現場の声を届けるべく、震災対応から伺います。

 一月五日の与野党党首会談で、私は、二〇〇四年から変わらない最大三百万円の被災者生活再建支援金を増額すべきと総理に直接申し上げ、野党各党とも法案を提出しました。

 政府は高齢者世帯などに限って最大三百万円を上乗せする制度の創設を検討しているようですが、被災したのは高齢者世帯だけではありません。総理、なぜ被災者の間に分断を持ち込むんですか。シンプルに上限額を倍増して全ての被災者の生活再建を支援すべきと考えますが、総理の決断を求めます。

 発災当初、志賀原発の安全性について情報が混乱しました。まず、総理の口から志賀原発の安全性に問題がないことを宣言してください。

 原子力規制庁の担当者は発災翌日に現地に入って確認したはずですが、規制庁から現地確認の結果についての情報発信はありませんでした。情報発信を電力会社任せにせずに、国がもっと積極的に発信すべきではありませんか。

 また、原発に関する情報に限らず、今回の震災でも偽情報や誤情報がネット上で拡散されました。悪質な偽情報、誤情報について、EUのように削除義務などの法整備が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 能登半島地震に対応するため、令和五年度第二次補正予算を編成すべきではないですか。年度内にもう一つ大きな災害が発生すれば、予備費は足りなくなります。また、国民の中には復興増税を心配する声もあります。総理、復興増税はないと明言してください。

 自民党派閥の裏金問題は言語道断です。派閥の解消や法改正の前に、まず、誰がどのような法令違反を犯したのか、その全容を岸田総裁の手で明らかにすることが最優先です。病気を正確に把握せずに手術をしても、治療は失敗します。党として聞き取り調査を進めるとのことですが、来年度予算案の審議が始まる前、来週月曜日の朝までに、自民党総裁として違反者のリストを出してください。

 国民が怒っている理由の一つは、会計責任者だけ責任を問われ、政治家本人の責任が問われないことです。国民民主党は、政治団体の代表である政治家本人の責任も問える政治資金規正法の改正案を提案していますので、自民党も是非改正に賛成してください。

 自民党には、今回の裏金事件で起訴された議員分も含めて十二月の政党交付金が全額支払われています。岸田総理、自民党として、起訴された議員に係る政党交付金は返還すべきではありませんか。国民民主党は、起訴された議員の所属する政党への交付金は減額できる法改正を提案しています。是非賛成してください。

 私は、二年前の一月、三つの四を達成する経済政策を提唱しました。まず一つ、名目賃金上昇率四%、次に名目GDP成長率四%、そして日経平均株価の四万円です。当時は無理だと言われましたが、その実現が近づいてきています。中でも、四%を超える賃上げの実現が最重要です。

 その鍵を握るのが中小企業の賃上げです。それに不可欠なのが適正な価格転嫁です。昨年十一月、政府が価格交渉に係る指針を作り、関係省庁に点検を指示したことは評価していますが、民間の調達部門では、できるだけ安く調達した方が評価されます。そうした慣行も変えない限り、価格転嫁は進みません。取引実態や人事評価まで踏み込んだ実態調査が必要だと思いますが、総理の見解を伺います。

 今年四月末で石油元売各社への補助金によるガソリン値下げは終了しますが、被災地支援のためにも、五月以降もガソリン値下げが必要です。

 しかし、業界への補助金は会計検査院や財務省から無駄遣いを指摘されており、やはりトリガー条項凍結解除によるガソリン減税に切れ目なく移行することが必要です。自民党の裏金づくりへの対応策にもなります。税を取って補助金で業界に配るから、その一部がパーティー券の購入に流れてしまいます。最初から税を取るのをやめれば、業界にお金は漏れません。

 五月からスタートするには法改正や周知期間に時間が必要なので、今日にも総理が政治決断しないと間に合いません。総理、自民党を守るための派閥の解散の決断は誰にも相談せずお一人でされたのですから、今度は国民生活を守るための決断をしませんか。生活者、納税者、そして被災者、被災地のために、トリガー条項凍結解除によるガソリン減税の英断を求めます。

 二〇二五年度のプライマリーバランス、国と地方の基礎的財政収支が一・一兆円の赤字見通しになると内閣府が発表しましたが、大騒ぎする数字ではありません。適度な物価上昇と持続的な賃上げがあれば、財政はおのずと健全化します。むしろ今、賃金や所得が上がる以上に税収が増えるブラケットクリープ現象が生じています。

 各国は、可処分所得が減らないよう、所得税の基礎控除の引上げなどの対策を講じています。日本でも、一回限りの所得税減税ではなく、基礎控除の引上げなど、インフレや賃上げに適応した本質的な所得税改革が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 現役世代の社会保険料負担も限界に来ています。その中で、診療報酬が上がり、少子化対策の支援金制度も始まれば、負担は更に増えます。政府として、現役世代の社会保険料負担をこれ以上増やさないための戦略をどう考えていますか。公的保険制度の対象とすべき医療の範囲を再整理するなど、医療制度改革が必要ではありませんか。

 また、社会保険料の事業主負担が高くて賃上げができないとの中小企業の声を多く聞きます。賃上げした中小企業には、税金だけではなく社会保険料負担も減免することで賃上げを促すべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 年収の壁対策が始まりましたが、日経新聞によると、対策があっても就労時間を増やす人は三割にとどまっています。政府として、年収の壁対策の効果をどのように考えていますか。また、対策が終わったら再び就労時間の調整をするとの回答が六五%もある中で、時限措置終了後の抜本改革についてどう考えているのか。併せて伺います。

 国が賃上げを主導するのであれば、まずは公務員の給料を上げるべきです。特に、公立学校の先生が置かれている状況は厳しいものです。給特法を見直し、教員の皆さんにも残業代をきちんと払い、過度な長時間労働を是正すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、教員のなり手不足も深刻です。かつてのように、教員になれば奨学金の返済を免除する制度を復活してはどうでしょうか。総理の見解を伺います。

 次に、介護報酬について伺います。

 政府は、訪問介護の基礎報酬を引き下げますが、施設から在宅へといいながら、訪問介護の基礎報酬を引き下げて本当に大丈夫でしょうか。人手不足で地域の訪問介護が崩壊するのではないでしょうか。また、民間には昨年の三・五八%を上回る賃上げを要請しているのに、政府が直接賃上げできる介護分野の二・五%の賃上げは、物価高に負ける賃上げではないですか。併せて伺います。

 介護のケアマネジャー資格の更新研修について伺います。

 国としても実態把握の調査を行っていると承知していますが、更新研修が大変だからケアマネを辞めるという方もいて、今のままでは人手不足、人材不足が深刻化します。地域ごとに受講料も中身もばらばらな現行のケアマネの更新研修は一旦廃止し、国として統一的に制度を見直すべきではありませんか。

 薬価制度について伺います。

 薬の原材料価格も高騰する中、医療費削減を薬価の引下げに依存する今のやり方では、薬の安定供給、イノベーション、ひいては国際競争力を阻害します。何より製薬業界の賃上げも困難です。総理、中間年改定を決めた二〇一六年末の四大臣会合をやり直すべきではありませんか。そもそも薬不足は解消したのでしょうか。答えてください。

 異次元の少子化対策の財源について伺います。

 医療保険に上乗せして徴収する支援金制度によって社会保険料の負担率は変わらないとしていますが、これは賃金が上がることを前提に、社会保険料の負担額は上がっても負担率は上がらないというへ理屈です。総理、取りやすい現役世代から少子化対策の財源を徴収するのはもうやめませんか。賃金が上がらなければ負担率が上がることも、正直に説明すべきです。

 児童手当の給付を十八歳まで延長しても、高校生に対する扶養控除を縮減したのでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものです。トータルでマイナスになる世帯はいないと政府は胸を張りますが、その程度ではとても異次元とは言えません。高校生の扶養控除を維持した上で児童手当を延長し、併せて年少扶養控除を復活させるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 障害児福祉のうち、補装具の補助について所得制限が撤廃されたことは評価しますが、福岡市は先月から、鎌倉市は四月から、独自に通所支援や福祉サービスについての所得制限のない低額化や無償化を決めました。総理、成人の障害年金には所得制限はないのに、児童の障害年金とも言える特別児童扶養手当や障害児福祉手当に所得制限があるのはおかしいと思いませんか。障害児福祉の所得制限は全廃すべきです。

 扶養する子供が三人以上いる世帯の大学授業料無償化について、所得制限を設けないのはいいんですが、上の子が卒業したら下の子が対象から外れてしまう。下の子も無償化の恩恵が受けられるようにすべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 異次元の少子化対策というのであれば、財源調達にこそ、従来とは異なる新しい手法を取り入れるべきです。国民民主党は、教育、科学技術など人的資本形成に資する予算は教育国債という新たな国債を充てることを提案し、法案も提出しました。家庭の経済事情に関係なく、大学や大学院に無償で通えるようにするためにも、HECS債ではなく、教育国債の発行を前向きに検討してください。国民民主党は協力をいたします。

 世界的に見て、我が国の研究開発力が失速しています。選択と集中の名の下、そのとき注目を集める分野にどかんと大きな予算をつけても、予算執行時には既に時代遅れになっていたり、そもそも研究を担う人材がいなければ効果的に予算を使うことはできません。総理、競争的資金に偏ったこれまでの政策を見直し、大学の運営費交付金を増額して、成果がすぐに出ないような基礎研究にも研究者が腰を据えて取り組めるようにすべきではありませんか。

 学生だけでなく、既に学生などを卒業した人も、多額の奨学金の返済に苦しんでいます。国民民主党は上限百五十万円の奨学金債務の免除を提案していますが、アメリカのバイデン政権は、三百六十万人に対し約二十兆円の債務免除を行いました。総理、二十代、三十代の結婚を応援する観点からも、奨学金債務を免除してはどうでしょうか。

 また、高校を卒業してすぐに働き始める人もたくさんいます。こうした若者を支援するため、国民民主党は、ポーランドの政策を参考に、三十歳未満の若者の所得税、住民税の減免や若者控除を創設する所得税法の改正案を国会に提出しました。総理、若者を応援する若者減税を政府としても検討してはいかがでしょうか。

 大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行うヤングケアラー支援をめぐっては、国民民主党が法制化を求め、三党協議を経て、内閣提出法案が今国会に出されます。御協力をいただいた政府、そして自民党、公明党の関係者には感謝を申し上げます。他方、自治体間で支援に格差があるのも事実で、法案成立でヤングケアラー支援がどのように拡充するのか、特に四月に設置されるこども家庭センターがどのような役割を果たすのか、具体的な支援の在り方を伺います。

 子育てをしながら介護にも追われるダブルケアの状態にある人が、毎日新聞の調査で、少なくとも二十九万三千七百人、そのうち九割が三十代、四十代であることが分かりました。総理、国としてもダブルケアの実態調査を速やかに行いませんか。また、介護と育児は以前は厚労省がまとめて担当していましたが、育児が内閣府のこども家庭庁に移管されたため、新たな行政の縦割りが生まれています。総理としてどのように対応しますか。

 教員などに性犯罪歴がないことを確認する日本版DBS制度について伺います。

 今国会に提出を検討している政府案は、学習塾など民間事業者が認定制度にとどまり、義務化の対象外となっています。総理、魂の殺人など絶対に許さないというのであれば、塾などの民間事業者も性犯罪歴の確認を義務づけるべきではないでしょうか。

 また、諸外国同様、性犯罪者、特に小児性犯罪者に対する化学的去勢や地域住民への注意喚起、GPS装着などの厳罰化も導入すべきです。被害者には一片の落ち度もありません。恋も知らない幼い子供たちが性犯罪の被害者になっている現状を、私たち立法府の責任で変えていこうではありませんか。

 政府や企業へのサイバー攻撃が広がっているのに、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐアクティブサイバーディフェンス、能動的サイバー防御を可能とする法整備が遅れています。日米同盟の最大の弱点との指摘もあります。政府として、いつまでに能動的サイバー防御を可能とする法整備をするつもりですか。お答えください。国民民主党は、今国会に関連法案を提出する予定です。

 自民党は、郵政民営化方針を撤回し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式保有を継続する法案の提出を検討しており、条文化作業に内閣法制局が関与しているとの報道もありますが、これは事実でしょうか。総理は、郵政民営化は間違っていたと考えていますか。

 また、政府が提出予定のNTT法改正案の附則にNTT法廃止の方向性が盛り込まれ、料金が高止まりしたり、過疎地域の光サービスが提供できなくなるなど、国民の利益が損なわれるとの懸念が指摘されています。総理、NTT法廃止には慎重に対応すべきではありませんか。

 スマホの普及で、社会経済活動の基盤となっているクラウドサービスは、アメリカの大手三社、アマゾン、マイクロソフト、グーグルが圧倒的なシェアを持っており、デジタル基盤を米国企業に握られているのが現実です。

 物の移動を伴わないデジタル貿易による我が国の赤字は、日銀の統計で、二〇一四年で二兆円から二〇二二年には五兆円と、八年間で二倍以上に膨らむ一方、我が国で十分な税金を納めておらず、いわば日本は、IT植民地、デジタル植民地になっています。このIT植民地、デジタル植民地から脱却する具体策について、総理の戦略を伺います。

 世界でデータセンターの電力消費量が急増しています。デジタル化や経済成長の前提は、安価で安定的な電力供給です。そのためには、原子力発電所の早期再稼働が必要です。とりわけ、東日本における安価で安定した電力供給のためには、柏崎刈羽原発の再稼働が必要です。一方、能登半島地震で地域住民に不安が広がっているのも事実です。そんな中、国として、原発再稼働に向けて具体的にどのような役割を果たすつもりか、総理の見解を伺います。

 自由化した送配電部門に新規参入がないから停電解消が遅れたとの報道もありましたが、むしろ逆で、自由化によって電力の安定供給が脆弱になっているのではないでしょうか。能登半島地震では、北陸電力と北陸電力送配電会社、そして他の電力会社や送配電会社が応援に駆けつけて一体となって取り組んだことで、早期の停電解消につながりました。有事も想定し、これまで進めてきた電力自由化について、冷静な検証と見直しが必要ではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 農林水産省が水田活用直接支払交付金の五年に一度の水張り要件を発表してから、農村には不安と混乱が広がっています。このままでは離農と耕作放棄地が増えます。総理、五年に一度の水張り要件は、地域事情に応じて柔軟に緩和すべきではありませんか。

 半農半Xという言葉がはやっています。でも、皆さん、究極の半農半Xは兼業農家です。香川県では、兼業農家に対する独自の支援策を始める予定です。今までは非効率の象徴として支援対象から外してきましたが、今後は、地域の実態も踏まえて、兼業農家も国として支援していくべきではないでしょうか。総理のお考えを伺います。

 岸田総理は、総裁任期中に憲法を改正するとしていますが、総裁任期も残り九か月。六月の今国会会期末までに発議しないと、国民投票に間に合いません。改憲項目さえ絞り込めていないのに、本当に改憲できるのか、大いに疑問です。今日木曜日も、衆議院の憲法審査会の定例日です。しかし、審査会は開催されていません。もう一日も無駄にできないはずなのに、やる気が感じられません。憲法改正に向けた総理の本気度をスケジュールでお示しください。

 私たち国民民主党は、これからも、対決より解決の姿勢で、必要な政策を先手先手で打ち出していきます。しかし、その前提は、正直な政治が担保されていることです。

 今、自民党の派閥の裏金問題で、その前提が大きく崩れています。自民党、そして岸田総理には、徹底した全容解明と本気の政治改革を強く求めて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。

 被災者生活再建支援金についてお尋ねがありました。

 先週取りまとめた被災者の生活と生業支援のためのパッケージに沿って、被災者生活再建支援金を迅速に支給してまいります。

 その上で、被災により住宅の被害を被った被災者への経済的支援の在り方については、被災地のニーズ、その実情、さらには現下の経済情勢も踏まえて、能登の実情に合わせた追加的な方策を現在総合的に検討しております。

 災害時の情報発信等についてお尋ねがありました。

 原子力規制委員会において、志賀原発発電所につき、発電所の安全確保に影響のある問題は生じていないとされたと承知しています。

 規制委員会が発災当日からホームページやSNS等を通じて情報発信を行っておりましたが、必要があれば、今後、規制委員会にて審議され、必要な対応の見直し等が行われると承知をしております。

 また、インターネット上の悪質な偽・誤情報対策について、御指摘のような法律に基づく削除義務は表現の自由との関係で慎重な検討が必要と考えておりますが、様々な権利に配慮しつつ、制度面も含め、総合的な検討を行ってまいります。

 能登半島地震への予算面での対応と復興増税についてお尋ねがありました。

 今般の震災対応に必要な財政需要については、残額が三千億円を超える今年度予備費と一兆円に倍増した来年度予備費を活用し、復旧復興の段階に合わせ、数次にわたって機動的、弾力的に財政措置を講じていくこととしており、現時点で補正予算の提出は想定しておりません。

 復興増税については、東日本大震災による巨額の財政需要を賄うために導入されていますが、今般の震災による財政需要への対応は今申し上げたとおりであり、このような状況の下、復興のための増税を行う考えはありません。

 自民党の政策集団の政治資金の問題に関する調査についてお尋ねがありました。

 現在、自民党の各政策集団、議員側の政治団体において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところであり、その訂正作業を踏まえつつ、可能な情報提供を行ってまいります。

 政治団体の代表の責任の在り方についてお尋ねがありました。

 政治資金が政治資金規正法にのっとって取り扱われるべきことは当然のことであり、違反した場合に厳正な対応が行われるべきとの問題意識を共有いたします。

 我が党としても、党の政治刷新本部における中間取りまとめにも明記しているとおり、より厳格な責任体制の確立、厳格化について、各党との真摯な協議を行う方針です。

 我が党としても、政治資金規正法改正について、今後、党としての考え方をまとめた上で、しっかりと議論してまいりたいと考えております。

 政党助成制度の見直しについてお尋ねがありました。

 政党助成制度は、民主主義の費用を社会全体で負担するという観点から導入されたものであり、政党の政治活動の自由にも密接に関わる問題であることから、お尋ねについては、各党各会派における十分な議論が重要であると考えます。

 御指摘の点も含め、我が党としても真摯に議論を行ってまいります。

 中小企業の価格転嫁についてお尋ねがありました。

 価格転嫁実現に向け、取引実態調査公表に加え、企業の経営陣に対する指導助言等を通じ、経営陣が責任を持って調達行動の改善等に取り組むよう促してきました。また、策定した労務費転嫁の指針では、転嫁の取引方針について、経営トップまで上げて決定するといった具体的な対応を盛り込んでいます。

 こうした指針の徹底活用や企業への調査、指導などを通じ、適正な価格転嫁を新たな商習慣としてサプライチェーン全体で定着させてまいります。

 トリガー条項の凍結解除についてお尋ねがありました。

 燃料油価格の激変緩和措置は四月末まで継続しますが、その後の出口戦略としては様々な手法があると考えており、御指摘のトリガー条項凍結解除についても、与党と国民民主党の政策責任者の下で、国際エネルギー情勢、脱炭素に向けた国際的な潮流なども総合的に勘案して検討を進めていただいております。

 現在、三党の検討チームによる協議が行われていると承知をしており、その協議を踏まえつつ、政府としても適切に対応してまいります。

 所得税改革についてお尋ねがありました。

 基礎控除の引上げ等の所得税改革は、何年も物価上昇や構造的賃上げが継続的に持続する局面においては検討課題となり得ますが、我が国の経済は、現時点では、賃上げ上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねない状況にあると認識をしております。

 こうした段階にあっては、むしろ所得税、住民税の定額減税によって国民の可処分所得を直接的に下支えすることこそ必要であると考えております。

 賃上げと所得税、住民税の定額減税を組み合わせることで、今年の夏には可処分所得の伸びが物価上昇を上回る状態を官民で確実につくり上げてまいります。

 社会保険料負担の抑制についてお尋ねがありました。

 政府としては、昨年十二月に閣議決定した改革工程に従って、医療、介護制度等の改革を実現することを中心に取り組み、社会保険料負担抑制の効果を積み上げてまいります。

 中小企業の賃上げ促進の観点から、社会保険料の事業主負担を減免してはどうかという御提案がありましたが、社会保険料の事業主負担は、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であり、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資することから求められているものであり、その減免は慎重な検討が必要であると考えます。

 中小企業へは、賃上げ促進税制、労務費の価格転嫁、省力化投資の支援等により、賃上げを後押ししてまいります。

 年収の壁対策についてお尋ねがありました。

 若い世代の所得向上や人手不足解消の観点から、当面の対応策として取りまとめた年収の壁・支援強化パッケージについては、壁を意識していた労働者が希望どおり働くことができるようになる効果があると考えており、引き続き、本パッケージの活用拡大に取り組んでまいります。

 その上で、被用者保険の更なる適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととし、次期年金制度改正に向けて議論を行っており、今後も関係者の意見を伺いながら丁寧に議論をしてまいります。

 教師のなり手不足対策についてお尋ねがありました。

 教師不足への対応については、喫緊の課題への対応として、教師人材の発掘を強化する取組を支援することとしました。

 教師の処遇改善については、給特法の在り方を含め、現在、中央教育審議会で議論が行われています。

 また、教師に対する奨学金の返還支援については、文部科学省において検討を進めているところです。

 政府としては、優れた教師を確保するため、働き方改革の更なる加速化、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実、育成支援、これを一体的に進めてまいります。

 訪問介護の基本報酬と介護分野の賃上げについてお尋ねがありました。

 今般の介護報酬改定では、訪問介護について基本報酬の見直しを行う一方、処遇改善の加算措置は他の介護サービスと比べて高い加算率を設定しています。加算措置の取得を促進することで、人材確保を進めてまいります。

 また、今般の介護報酬改定では、政府経済見通しで令和六年度の一人当たり雇用者報酬の伸びが二・五%と、物価上昇と同水準と見込まれている中、こうした見込みと整合的にベースアップを求めているところであり、物価高に負けない賃上げを実現してまいります。

 なお、御指摘の昨年の三・五八%という春季労使交渉における賃上げの水準は、定期昇給分込みの水準であり、介護従事者のための二・五%というベースアップ分のみの水準とこれを比較して論じることは適当ではありません。

 ケアマネジャーの更新研修についてお尋ねがありました。

 ケアマネジャーの資格は介護保険法に基づき都道府県ごとに管理されており、更新研修についても、各地域におけるケアマネジャーの業務の適正な遂行を確保する観点から、都道府県において適切に実施されているものと承知をしています。

 国としては、研修の実施状況等について実態把握をした上で、更新研修のオンライン化の推進など、現場のケアマネジャーが研修を受講しやすい環境の整備に引き続き取り組んでまいります。

 薬価改定についてお尋ねがありました。

 薬価改定については、御指摘の四大臣会合の合意に基づき、毎年改定を行うこととしており、二〇二三年度改定では、原材料費の高騰や安定供給問題に対応するため、特例的に、不採算となっている医薬品の薬価の引上げ等を行い、また、二〇二四年度改定では、安定供給の確保等に加え、イノベーションの観点からも評価を行っています。

 また、医薬品不足に対しては、企業による更なる増産のための投資への支援や産業構造の課題への検討を通じ、その安定供給を図ってまいります。

 今後とも、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性を両立する観点から薬価改定を行ってまいります。

 子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 政府が総力を挙げて賃上げの取組を行う中、雇用者報酬が一層増加すれば、高齢化等による社会保障に係る国民負担率の上昇が抑制されることとなります。

 この上昇を確実に抑制するには、まずは徹底した歳出改革を行うことが基本ですが、政府としては、賃上げの取組によって生じる実質的な抑制効果も活用しながら支援金制度を導入することで、全体として実質的な負担が生じないこととしたいと考えております。

 なお、支援金制度は、現役世代のみならず、企業とともに高齢者も含めた全ての世代が皆で子育て世帯を支える仕組みです。

 扶養控除についてお尋ねがありました。

 児童手当の支給期間を高校生まで延長する一方、十六歳から十八歳までの扶養控除については、十五歳以下の取扱いとのバランスも踏まえ、全ての子育て世帯に対して児童手当と併せた実質的な支援を拡充するとの方針の下、令和七年度税制改正において見直しの結論を得ることとしております。

 他方で、前例のない規模で子供、子育て政策の抜本的な強化を図ることにより、我が国の子供一人当たりの家族関係支出は、GDP比で一六%とOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進をします。

 このように、主として歳出面の取組で子供、子育て政策の強化を図る中、年少扶養控除の復活は検討課題としてはおりません。

 障害児福祉の所得制限についてお尋ねがありました。

 障害児福祉においては、子供の成長に合わせて補装具を頻繁に買い換える必要があり、経済的な負担が重いことを踏まえ、本年四月から補装具費の支給制度の所得制限を撤廃することとしています。

 御指摘の特別児童扶養手当等については、制度の発足時から所得制限を設けていますが、これは、障害児の生活の安定に寄与し、福祉の増進を図るとの目的に照らして必要な範囲で支給するという制度趣旨を踏まえたものであります。

 この取扱いは、御指摘の障害基礎年金について、二十歳前に傷病を負った方は、本人が保険料負担をしておらず、その財源が国庫負担と他の加入者の保険料で賄われることから、所得制限を設けていることとも整合的なものであると考えております。

 大学授業料の無償化や教育国債についてお尋ねがありました。

 子育てや教育費により理想の子供の数を持てない状況は、三人以上を理想とする夫婦で特に顕著であることから、この現状を打破していく必要があります。

 令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料等の無償化については、三人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが三人同時に扶養している期間であることを考慮し、財源が限られている中で、このような内容を設定したものであります。

 また、教育国債については、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。

 我が国の研究開発力の強化についてお尋ねがありました。

 政府としては、大学における研究活動を安定的、継続的に支えるため、国立大学法人運営費交付金と、研究者が多様で独創的な研究に機動的、発展的に取り組むため、科学研究費助成事業等の競争的研究費の双方を確保してきました。

 これらの基盤的経費や競争的研究費について必要な額を措置するとともに、世界最高水準の研究大学への支援、また、地域の中核大学等への支援、こうした支援を含めて、バランスのよい支援を行って、我が国全体の研究力の抜本的な強化に取り組んでまいりたいと考えています。

 若者の奨学金の返還免除や減税についてお尋ねがありました。

 奨学金については、奨学金の返還が負担となって結婚等をためらうことがないよう、令和六年度から減額返還制度の収入要件を緩和し、拡充することとしております。御指摘の奨学金の返還を免除することについては、既に返還を完了した方との公平性の観点から、慎重な検討が必要であると考えております。

 また、御指摘の若者減税については、所得税が、税を負担する能力を納税者の個々の事情に応じて調整した上で税負担を求めるものであるということからすれば、年代によって一律に税負担を免除するということは、公平性の観点などを踏まえ、慎重な検討が必要であると考えております。

 政府としては、こども未来戦略に基づき、高等教育費の負担軽減を着実に進めてまいります。

 ヤングケアラー支援についてお尋ねがありました。

 ヤングケアラーについては、今国会に子ども・若者育成支援推進法を改正するための法案を提出し、国及び地方公共団体等が支援に努めるべき対象に明記することで、自治体間の取組格差の是正につなげてまいります。

 その際、本年四月から全国展開を進めることとしているこども家庭センターは、自治体において、学校等と連携してヤングケアラーを把握し、必要な支援につなげる重要な役割を担うことになるものと考えております。

 ダブルケアについてお尋ねがありました。

 育児と介護のダブルケアについては、二〇一五年度に調査を行うなど、国としても実態把握に努めているところであり、誰もが安心して子育てできる環境を整備するとともに、家族介護者についても社会全体で支えていくことが重要です。

 このため、政府においては、家族介護者に着目した支援として、地域包括支援センターでの総合相談の支援や、ダブルケアラーのような複雑化、複合化した課題を抱える方や家庭にも適切に支援できるよう、包括的な相談体制の整備等に取り組んでいます。

 今後とも、厚生労働省やこども家庭庁を始め、関係省庁が連携しながら総合的に取組を進めてまいります。

 いわゆるDBS制度等についてお尋ねがありました。

 性犯罪、性暴力は重大な人権侵害であり、あってはならないことです。子供の性被害を防止するための法制度については、今国会での法案提出を目指しており、与党とも緊密に連携しつつ、制度の対象となる、子供に接する事業者の範囲といった点を含め、より実効的な制度となるよう検討を進めます。

 その上で、更なる性犯罪対策についてですが、令和五年にいわゆる性交同意年齢の引上げを含む刑法改正等の法整備が行われたところであり、まずはそれらが適切に運用されること等が重要であると考えます。まずは、昨年七月に策定したこども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ等に基づく対策について、加速して取り組んでまいります。

 サイバー安全保障についてお尋ねがありました。

 我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境に鑑みると、ますます急を要する課題であり、国家安全保障戦略を踏まえ、様々な角度から政府全体で検討を進めているところです。

 可能な限り早期に法案をお示しできるよう、検討を加速してまいります。

 郵政民営化及びNTT法についてお尋ねがありました。

 郵政民営化について、御指摘の条文化作業に内閣法制局が関与しているという事実はありません。

 また、民営化により、それまで提供されていなかった新たなサービスが開始されるなど、国民の利便性向上につながっているものと認識しており、間違っていたとは考えておりません。

 NTT法を含む通信政策の在り方については、国際競争力強化、研究開発の促進等の観点から、時代に即した不断の見直しを行うため、料金の低廉化や不採算地域を含むサービスの提供など、国民の利益確保の視点も踏まえつつ、丁寧に検討を深めてまいります。

 IT植民地からの脱却についてお尋ねがありました。

 クラウドサービスを始めとするデジタルサービスは、国民生活や経済活動の多くの場面で活用されており、外国ではなく日本国内に事業基盤を持つ事業者によってサービスが提供されることは、経済安全保障の観点のみならず、国際収支の改善や納税確保の観点からも重要であると認識をいたします。

 政府としては、デジタルサービスの研究開発投資やデータセンター等のインフラ整備、AI分野を始めとする人材育成やスタートアップ支援などに総合的に取り組んでまいります。

 原発再稼働についてお尋ねがありました。

 原発については、高い独立性を有する規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です。

 先般の規制委員会において、志賀原発については原子力施設の安全機能に異常はなく、その他の原発についても安全確保に影響のある問題は生じていないとされたと承知しています。

 柏崎刈羽原発の立地地域においては、既に、自然災害と原子力災害との複合災害を想定し、緊急時対応の取りまとめに向けて取り組んでいるところであり、今般の地震で得られた教訓をしっかりと踏まえて取りまとめていくこととなります。

 その上で、地元の理解を得られるよう、国が前面に立って、原子力の必要性や意義を丁寧に説明してまいります。

 災害対応と電力自由化の検証についてお尋ねがありました。

 電力システム改革においては、災害の可能性等も考慮し、電力融通や電力各社連携による復旧対応ができる仕組みとしており、今回も発災当初から、北陸電力のみならず、電力各社等からの応援で復旧体制を構築いただいたと認識をしております。

 また、これまでの電力自由化について、改正法の検証規定に基づき検証を進めることとしており、今回の震災対応での教訓等もしっかり踏まえ、二〇二五年三月までに取りまとめます。

 水田活用の直接支払交付金についてお尋ねがありました。

 御指摘の要件の見直しは、本交付金が水張りの機能を有する水田を活用した生産を支援するものであることを明確にするものであり、一方、地域によっては、水田から畑地への転換をし、麦や大豆、野菜等の畑作の産地化を本格的に図るケースもあり、そうした地域には、地域の実情に応じて、畑作物の生産が安定するよう、昨年の経済対策において支援の充実を図ったところです。

 こうした点を各地域で丁寧に説明をし、需要のある畑作物への本格的な転換を進め、農業所得の向上等を図ってまいります。

 兼業農家への支援についてお尋ねがありました。

 将来にわたる食料の安定供給の確保に向け、農業の担い手の育成、確保を図っているところですが、担い手以外の兼業農家についても、農地の保全管理や集落機能の維持等の役割に鑑み、水路の泥上げなど地域の共同活動への支援、六次産業化や農泊などの農村地域の仕事づくりへの支援などを行っています。

 このように、兼業農家についても、その役割に応じた支援を行い、地域の農業生産の継続等を下支えしてまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての具体的な議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、憲法改正は先送りできない重要な課題であり、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いは、いささかの変わりもありません。

 時間的制約がある中でも、一歩でも議論を前に進めるため、党内の議論を加速させるなど、憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意です。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    小泉 龍司君

       外務大臣    上川 陽子君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  盛山 正仁君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  坂本 哲志君

       経済産業大臣  齋藤  健君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    新藤 義孝君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    土屋 品子君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣    松村 祥史君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 村井 英樹君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.