第22号 令和6年4月18日(木曜日)
令和六年四月十八日(木曜日)―――――――――――――
議事日程 第十六号
令和六年四月十八日
午後一時開議
第一 総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
岸田内閣総理大臣の米国公式訪問に関する報告及び質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、総合法律支援法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長武部新君。
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総合法律支援法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔武部新君登壇〕
○武部新君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、犯罪被害者等の支援に関する施策を一層推進する観点から、日本司法支援センターの業務として、一定の被害者等を包括的かつ継続的に援助するために必要な法律相談を実施する業務及び契約弁護士等に必要な法律事務等を取り扱わせる業務を追加する措置を講じようとするものであります。
本案は、参議院先議に係るもので、去る四月十五日本委員会に付託され、翌十六日小泉法務大臣から趣旨の説明を聴取し、昨十七日、質疑を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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内閣総理大臣の発言(米国公式訪問に関する報告)
○議長(額賀福志郎君) 内閣総理大臣から、米国公式訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 私は、四月八日から十四日まで、バイデン大統領からの招待を受け、日本の総理大臣として約九年ぶりに国賓待遇で米国を公式訪問いたしました。その概要を報告いたします。
米国は、自由、民主主義といった価値や法の支配などの原則を共有する、日本にとって唯一の同盟国です。日米同盟は、我が国の安全と繁栄の礎であり、また、国際社会の平和と安定の基盤の一つです。
国際社会が複雑かつ多様な課題に直面し、また、我が国を取り巻く安全保障環境がこれまでになく厳しさを増す中で、日米同盟の重要性は一層高まっています。
四月十日に実施した日米首脳会談では、バイデン大統領との間で、日米両国が深い信頼と重層的な友好関係で結ばれていること、そして、かつてなく強固な友好、信頼関係に基づくグローバルなパートナーとなっていることを確認しました。より具体的には、大きく五つの成果があったと考えております。
第一に、安全保障協力については、私から、防衛力の強化に取り組んでいることを説明し、バイデン大統領から改めて強い支持を得ました。また、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化が急務であることを再確認し、米軍と自衛隊との相互運用性強化など、安全保障、防衛協力を拡大、深化していくことで一致をいたしました。
第二に、地域情勢について、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは、世界のいかなる場所であれ、断じて容認できず、同盟国、同志国と連携し、毅然と対応していくことを再確認いたしました。また、その上で、中国をめぐる諸課題への対応、北朝鮮の核・ミサイル開発や拉致問題、ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢等につき率直に意見を交わし、引き続き緊密に連携していくことを確認いたしました。
なお、史上初の開催となった十一日の日米比首脳会談では、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現の観点から、極めて有益な成果を得ることができました。
第三に、日米経済関係について、日米両国が世界の経済成長を共に牽引していくこと、また、そのためにも双方向の投資の促進が重要であるとの認識で一致をいたしました。その上で、先端技術分野での競争力を維持強化し、経済的威圧、非市場的政策、慣行や、過剰生産の問題に適切に対応しつつ、サプライチェーンの脆弱性を克服し、持続可能で包摂的な経済成長を牽引していくための連携の必要性を確認いたしました。加えて、脱炭素化、AI、スタートアップ等についても協力を進めることで一致をいたしました。
第四に、宇宙分野での協力を一層推進していくことでも一致をいたしました。与圧ローバーによる月面探査の実施取決めの署名を歓迎するとともに、アルテミス計画の将来のミッションで、日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するという共通の目標を発表いたしました。
最後に、この揺るぎない日米関係を一層強化するべく、人的交流を更に促進していくことを再確認しました。
これらの点を含め、今回の訪米の成果として、「未来のためのグローバル・パートナー」と題する共同声明をバイデン大統領とともに発表しました。ここに記された指針を踏まえ、日米は、不退転の決意で、国際社会の平和と繁栄の礎である法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても維持強化してまいります。
首脳会談に続き、十一日には、米国連邦議会上下両院合同会議において、「未来に向けて 我々のグローバル・パートナーシップ」と題した演説を行いました。世界が歴史的にも大きな転換点を迎える中で、日米がグローバルなパートナーとしていかなる未来を次世代に残そうとするのか、そのために両国がなすべきことは何なのかという未来志向のメッセージを、米国連邦議員のみならず、広く米国国民、そして世界にしっかりと伝えることができたと考えております。
また、今回は、日本企業による大型投資が行われているノースカロライナ州を訪問しました。日本企業が投資や雇用創出を通じて米国経済に大きく貢献していることを発信するとともに、米国の地域社会における日米間の幅広い分野における草の根交流の重要性などについても、改めてハイライトすることができたと考えております。(拍手)
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内閣総理大臣の発言(米国公式訪問に関する報告)に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鷲尾英一郎君。
〔鷲尾英一郎君登壇〕
○鷲尾英一郎君 自由民主党の鷲尾英一郎です。(拍手)
冒頭、昨晩二十三時十四分、豊後水道で最大震度六弱を観測する地震がありました。被災した皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、深夜から災害対応に当たる全ての皆様に敬意と感謝を表します。
今般の地震の状況、政府の対応について、総理にお聞きします。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、岸田総理の米国帰朝報告について、全て総理に質問をいたします。
まず、今般、安倍総理以来、日本の総理として九年ぶりに国賓待遇で訪米し、バイデン大統領との首脳会談、連邦議会上下両院合同会議における演説、ノースカロライナ州訪問等を実施したことは、大変意義深かったと考えております。今次訪問により、日米が世界の課題に対して共に取り組むグローバルパートナーであるという決意、そして、一層盤石な日米関係を対外的に示すことができたと考えます。今回の訪米の意義と成果をお聞かせください。
今回の日米首脳会談で取り上げられた最大のテーマの一つが、日米両国の安全保障協力の更なる強化であったと思います。中国による力による一方的な現状変更の試み、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵略、不安定な中東情勢と、国際情勢がより一層混沌とする中で、会談を通じて達成された日米安全保障協力に関する具体的な成果をお聞かせください。
日米首脳共同声明には、二国間での連携にとどまらず、志を同じくする地域のパートナーとの関係構築として、日米韓や日米英、日米豪といった枠組みを通じた連携のほかに、AUKUS諸国は、AUKUS第二の柱に関して、日本との協力を検討しているとの言及がありました。実際に、日米首脳会談の前日、米英豪の国防相は共同声明を発出し、AUKUS第二の柱における先進能力プロジェクトに関する日本との協力を検討していると発表しました。AUKUS諸国との連携に関し、今後の具体的な方向性についてお聞かせください。
国際情勢のうち、三年目を迎えたロシアによるウクライナ侵略に関して、ウクライナ支援関連法案は、既に米国上院を通過し、九日から再開した下院での採決を控えていますが、一部共和党保守強硬派は同法案に対し否定的な立場を示していると理解しています。国際秩序の根底を揺るがすロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反であり、また、総理御自身、今日のウクライナはあしたの東アジアかもしれないと危機感を持って対応されているところだと考えますが、今回の首脳会談では、バイデン大統領との間でどのような議論が交わされたのか、お聞かせください。
今回の首脳会談は、バイデン大統領との間で行われたものとしては十五回目となり、会談の前日には、バイデン大統領夫妻による招待を受け、ホワイトハウスを訪問するとともに、郊外のレストランで夫婦だけの夕食会に出席されたと伺っています。今回の訪米でバイデン大統領と個人的な友好関係を一層深められたことと思いますが、非公式夕食会を始め、バイデン大統領との間でどのような個人的やり取りを行われたのか、お聞かせください。
また、岸田総理大臣からバイデン大統領に対して、輪島塗のコーヒーカップ及びボールペンを贈られたと承知していますが、その狙いをお聞かせください。
今次訪米の主要な行事の一つが、安倍元総理に続き、日本の総理として九年ぶりに行った米国連邦議会上下両院合同会議における演説であったと思います。「未来に向けて 我々のグローバル・パートナーシップ」と題し、国際社会が複雑かつ多様な課題を抱える中、日米が共に自由や民主主義といった価値を守っていくとの未来志向のメッセージは、米国議会の超党派や米国民の支持を得つつ、同時に世界に働きかけることができるものであり、大変効果的であったと評価しています。総理自身が込めた演説への思いと、振り返っての所感をお聞かせください。
今次訪米では、日米関係が、首脳間のみならず、国民間の強固な友好、信頼関係によって支えられていることを確認されました。その一環として、日米友好、協力を担う次世代との対話を実施し、また、日系人初の米国連邦議会議員であったダニエル・K・イノウエ氏生誕百周年を記念し、全米日系米国人慰霊碑も訪問をされました。今後更に米国人と、人と人との結びつきを強化していくべく検討されている具体的な内容についてお聞かせください。
ワシントンDCのみならず、今回はノースカロライナ州を訪問し、州知事夫妻との昼食会やトヨタを始めとする日系企業の視察、日本人留学生や日本語学習者との懇談等を実施され、米国社会に日米の結束の固さを発信されました。同州を訪問先に選定された理由及び同州への訪問の成果についてお聞かせください。
最後に、今回の訪米で改めて確認された日米間の重層的な友好関係と、かつてなく強固な日米関係の下、今後、日米両国が、未来のためのグローバルパートナーとして、インド太平洋地域のみならず、世界の平和と繁栄のためにより一層連携を深めていくことへの期待を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 鷲尾英一郎議員の御質問にお答えいたします。
まず、昨晩発生した豊後水道を震源とする地震についてお尋ねがありました。
お尋ねの地震については、地震発生直後に、私から、早急な被害状況の把握、地方自治体と緊密に連携した災害応急対策、そして国民に対する適時的確な情報提供、この三点を指示いたしました。また、地震発生後直ちに官邸対策室を設置し、被災自治体とも緊密に連絡を取り合いながら、夜間を含めて、被害状況の把握、災害応急対策等に全力を挙げているところです。これまでのところ、軽傷者数名がいるほか、一部の地域で断水が生じている等の報告を受けています。
全ての被災者の方にお見舞いを申し上げます。
また、伊方原子力発電所については、地震後、運転中の三号機の出力が約二%低下したということですが、環境への放射能の影響はなく、原発の安全機能に異常はないと報告を受けております。
政府としては、既に被災自治体へ関係省庁の職員の派遣等を行ったところですが、引き続き、被災自治体とも緊密に連携し、必要な対応を進めてまいります。
そして、今回の公式訪米の意義及び成果についてお尋ねがありました。
私は、世界が歴史的な転換点を迎える中で、日米がグローバルなパートナーとして、いかなる未来を次世代に残そうとするのか、そのために両国がなすべきことは何なのかという未来志向のメッセージを訴えたいとの強い思いを抱いて、今回の訪米に臨みました。
この点、日米首脳会談や連邦議会での演説といった様々な機会を通じ、私のメッセージを日米両国、そして世界にしっかり伝えることができたと手応えを感じております。
そしてまた、今回の訪米では、国賓待遇ということで、大統領夫妻との非公式夕食会、歓迎式典、公式晩さん会など特別な行事も催され、さらには初の日米比首脳会合も開催するなど、バイデン大統領とは合計で約九時間もの時間を共に過ごすこととなりました。
そういった充実した時間を通して、現在の国際情勢の下で日米が取るべき戦略、なすべき施策などについて、率直な意見交換を通じ、首脳レベルでしっかりとすり合わせをすることができました。
日米安全保障協力に関する成果についてお尋ねがありました。
今回の首脳会談においては、私から、国家安全保障戦略に基づき、防衛力の抜本的な強化に取り組んでいることを説明し、バイデン大統領から改めて強い支持を得ました。
バイデン大統領からは、日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが改めて表明され、その上で、私とバイデン大統領は、抑止力、対処力の一層の強化のため、米軍と自衛隊の相互運用性の強化など、安全保障、防衛協力を拡大、深化していくことで一致をいたしました。
このほか、沖縄を始めとする地元の負担軽減の観点から、在日米軍再編を着実に実施していくこと、日米豪、日米韓、日米英など、日米を基軸とした地域のパートナーとの協力や、防衛装備・技術協力における取組などの点が共同声明に盛り込まれました。
AUKUS諸国との連携の今後の方向性についてお尋ねがありました。
近年、日本は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、同盟国である米国、安全保障面での協力が進む同志国である豪州、英国との間で、平素から緊密な意思疎通を行い、協力を推進してきています。
国際秩序の根幹が揺るぎ、地域の安全保障が一層厳しさを増す中、AUKUSの取組は、インド太平洋の平和と安定に資するものであり、日本は一貫して支持しています。
その上で、先進能力分野に係るAUKUS第二の柱に関する協力については、今後、まずはAUKUS側において具体的な検討が行われることになると承知しておりますが、日本としても、AUKUSのこうした動きも見ながら、今後の協力の在り方について検討していきたいと考えております。
ロシアによるウクライナ侵略に関するやり取りについてお尋ねがありました。
今回の日米首脳会談では、私から、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれないとの認識の下、我が国が厳しい対ロ制裁と強力なウクライナ支援を継続していく旨を述べ、G7を始めとする同志国と緊密に連携していくことで、バイデン大統領との間で一致をいたしました。
バイデン大統領との個人的なやり取り及び贈呈品についてお尋ねがありました。
今回の公式訪米では、先ほども述べたとおり、合計九時間もの間、同大統領と過ごすこととなりました。このうち、大統領夫妻との夕食会など個人的な行事においては、家族のこと、趣味、日課などについて話が及んだほか、非公式夕食会が行われたレストランにまつわるバイデン大統領夫妻の思い出話、また、今回日本から持参した桜の苗木の贈呈、そして日米間の歴史的な交流などについて話題となりました。
また、今年一月の能登半島地震に際し、バイデン大統領を始め米国民の方々から温かいお見舞いと支援をいただいたことから、日米の固い友情と復興に向けた我が国の強い決意を象徴するものとして、能登半島の郷土品である輪島塗の若手職人が手がけたボールペン及びコーヒーカップを贈呈することといたしました。私からは、輪島塗の若手職人が、今回のために特別に、百以上の工程を経て、心を込めて制作した品である旨、説明を行いました。
連邦議会における演説についてお尋ねがありました。
国際社会が歴史的な転換点を迎える中にあって、日本と米国が次の世代にどのような社会を残そうとしているのか、そして、そのために日米は何をしなければならないのかといった未来志向のメッセージを、米国議会の超党派、そして広く米国国民、さらには世界に向けて具体的に訴えるものにしたいと思い、演説を行いました。
具体的には、これまでの国際秩序や自由、民主主義が世界中で脅威にさらされ、また新たな挑戦に直面している中で、引き続き、米国のリーダーシップが必要不可欠であるということ、そして、日本も共に責任を果たす用意がある、さらに、日米のグローバルなパートナーシップが今後も未来に向けて継続、進化していく、こういった私の思いについて、多くの米国議員の皆様にしっかりと伝えることができたと感じております。
日米間の人的交流の強化についてお尋ねがありました。
日米関係は、両国の社会の幅広い層における相互交流によって支えられています。これまでも、様々なプログラムを通じて人的交流を促進してきていますが、今後は、米国社会で影響力の高い層や、今後の日米関係を担う青年層における対日理解や知日派形成などにも意を用いてまいります。
また、今回は、ノースカロライナ州で日本人留学生と懇談する機会を得ましたが、政府としては、トップクラスの米国の理系大学院博士課程に留学する方の奨学金を、民間のトップレベルの奨学金を参考に、大幅に拡充することを決定いたしました。
ノースカロライナ州への訪問の理由及び成果についてお尋ねがありました。
今般の訪米では、首都ワシントンDCのみならず、地方都市を訪問することにより、日米関係が全米各地、そして米国社会の幅広く分厚い層により支えられていることを改めて確認し、発信したいと考えておりました。
こうした観点から、経済面その他で日本と深い関係を有するノースカロライナ州を訪問し、日本企業が投資や雇用創出を通じて米国経済に大きく貢献していることを発信するとともに、文化、教育、スポーツなどの幅広い分野の人々とお会いして、日米間の草の根交流の重要性などについても、改めてハイライトする機会にできたと考えております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 源馬謙太郎君。
〔源馬謙太郎君登壇〕
○源馬謙太郎君 立憲民主党の源馬謙太郎です。
立憲民主党・無所属を代表して、岸田総理の帰朝報告に対して質問いたします。(拍手)
まず冒頭に、昨夜、豊後水道を震源とする地震で被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
政府には、災害対応に全力で取り組むように求めます。
さて、今回の会談では、安全保障分野だけではなく、多岐にわたる分野において日米同盟の深化が進みました。我が国周辺のみならず、国際秩序への深刻な挑戦が起きている中で、両国が連携を強化していくためにも、日米首脳会談が行われたことは歓迎いたします。また、両国とも内政面で不確実性が高まる中で、リーダーが交代しようとも、米国内でも党派を超えて日米同盟の重要性が共有されており、日米関係は安定して強固であるということを確認できたことは評価すべきであると考えます。
共同声明では、日米同盟は前例のない高みに到達したと冒頭で述べられ、日米をグローバルパートナーシップと位置づけ、安全保障や気候変動、経済安全保障に加えて、AIや宇宙など幅広い分野での協力をうたっています。前例のない高みに到達させたと評価された、僅か数年前には不可能と思われたような方法で取られた勇気ある措置とは、それぞれ具体的に何を指すのか、総理自ら御説明ください。
総理は、米国議会での演説で、米国は、助けもなく、たった一人で国際秩序を守ることを強いられる理由はありませんと述べ、日本国民は米国とともにあると言い切りました。世界のパワーバランスが変化する中、アメリカ一国では国際秩序に対する挑戦に対抗するのが困難になっており、我が国としても、国際社会の平和と安定に相応に寄与することは重要だと思います。
しかし、超大国として世界中の情勢に関与してきたアメリカの役割を一部でも担い、今までよりも一歩踏み込んだ立場から国際秩序に関与していくことは、莫大なコストと責任を伴うものであり、リスクもあります。武力の行使等の軍事的手段も辞さない覚悟で責任を担うのか、外交手段によるのか、輸出規制等による経済的手段なのか。岸田総理は、具体的にどのように日本がアメリカとともに国際秩序を守っていくべきとお考えなのか、そのために何を約束してきたのか。日本国民を代弁して、アメリカとともにあると言い切ったのであれば、国民に分かりやすく説明してください。本来なら、米国と約束する前に国民に説明するべきです。
さらに、これまでの控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強くコミットした同盟国へと自らを変革し、米国の最も近い同盟国という枠組みを超えて、地域パートナーからグローバルなパートナーになったと強調しました。言葉どおりに見れば、今後、日本は、米国に従属的なパートナーではなく、対等以上のパートナーとして国際社会をリードしていくという、これまで以上に踏み込んだ意思表示に思えました。
しかし、果たして、その意欲に我が国の現状が追いついているのでしょうか。言葉は勇ましくても、日本側にそれだけの準備が整っているのか疑問です。
例えば、自衛隊員の数です。防衛力を強化して、今まで以上に国際秩序の維持にコミットしていくためには、人的基盤の増強も絶対的に必要になるはずですが、自衛隊員の定数はほぼ横ばいに据え置いています。
二十五万人弱で、本当に、我が国の防衛を担って、莫大に増える新たな防衛装備品を扱って、その上、これまで以上に国際平和に米国とともに積極的に関与していくことが、現実問題として本当に可能なんでしょうか。しかも、近年は充足率も足りていません。加えて、災害派遣が必要となる自然災害が頻発していることを思うと、とてもではありませんが、我が国の防衛がおぼつかなくなるのではないかと危惧します。残念ながら、政府は、この人的基盤の問題からずっと目を背けているように思えます。
我が国の防衛、これまで以上の国際秩序への関与に、総理は今の人員で十分だと認識していますか。十分でないなら、少子化がますます進む中でどのように人員を確保していくのか、総理の明確な答弁を求めます。
共同声明において、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、自衛隊と米軍の間の相互運用性及び計画策定の強化を可能とするため、それぞれの指揮統制枠組みを向上させる意図が表明されました。
指揮統制枠組みの向上をめぐっては、米国側が圧倒的に多くの装備や情報を持つ中で、実際に我が国政府が米国政府に対等に物を言う姿勢を持てるのか、自衛隊が米軍の指揮下に組み込まれるのではないかという懸念があり、我が国が独自の指揮権をどう担保していくのかが課題になります。政府は、自衛隊が米軍の指揮統制下に入ることはないと説明していますが、これは、日米首脳会談において、日米間の共通認識として明確に確認されたんでしょうか。伺います。
次に、防衛装備の共同開発についてです。
立憲民主党としても、防衛産業の国際的な動向や現実を踏まえれば、最新の防衛技術を獲得し、コストを抑えるため、共同開発、共同生産は支持します。日米が、防衛省と国防省が主導する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議を開催することは建設的だと考えます。
DICASにおいて、日米の防衛産業が連携する優先分野の対象として、ミサイルの共同開発、生産があります。ファクトシートでは日米共同生産を模索するとした高度で相互運用可能な防空ミサイルとは、どのミサイルなんでしょうか。それを第三国へ移転することも想定しているのでしょうか。次世代戦闘機のときのように、後からそうなったということのないように、明確に答弁してください。
次に、中国に対する対応について質問します。
一方的な現状変更に対して抑止力を向上することはもちろん重要ですが、同時に、偶発的な衝突を全面衝突へ発展させることも避けなければならず、平時からの日中間でのコミュニケーションは重要です。また、戦略的互恵関係にある中国とは、制裁だけではなく対話も行い、友好関係も促進することが長期的な緊張緩和につながります。
アメリカは、四月二日にバイデン大統領と習近平国家主席が電話会談を行い、直後、イエレン財務長官が訪中。中国側にロシア支援に関してくぎを刺す一方で、米中経済ワーキンググループを設立して、対話の枠組みをつくっています。
日本は、今後、中国との対話枠組みをつくったりするなど、日中間での課題を話し合う枠組みをつくる予定や、それに関する会談を行う予定はあるのでしょうか。伺います。
イスラエル・パレスチナ問題についてです。
ガザでの大規模な戦闘が始まって、半年がたちました。ガザの人道状況を考慮すれば、迅速な人道的停戦が求められます。日本が安保理議長を務めた三月に、ラマダン中の人道的停戦を求める安保理決議が提出されましたが、アメリカは棄権しました。その後、イスラエルがシリア領内のイラン大使館への攻撃を実行し、報復として、イランがミサイルや無人機をイスラエル側へ発射しました。この攻撃への更なる報復をイスラエルが予定しており、今後は、両国の域内を超えて報復の連鎖が起き、更に戦闘が激化するおそれがあると思います。
今回の訪米で、中東での紛争のエスカレーション防止に関して、日本側からアメリカに対して具体的に何か働きかけを行ったんでしょうか。
これらの地域の戦争では、法の支配に基づくべき国連の矛盾が浮上しています。ウクライナには国際法上の支援を適用した一方で、パレスチナには人道上の支援すら十分にできていません。法の支配に基づいてハマスを批判するのに、イスラエルの国際法違反は問えずにいる。
総理が、法の支配に基づいた国際社会の中で、アメリカ一国に任せずに、これまで以上にリーダーシップを発揮するという決意が本当にあるのであれば、言いにくいことであっても主張していく必要があるのではないですか。このダブルスタンダードについて、総理は、世界に向けて、どのような立場で何を発信していくのか、お聞かせください。
さて、総理は、米国議会での演説で、日本の国会ではこれほどすてきな拍手を受けることはまずありませんとおっしゃいました。岸田総理が国会で拍手されない理由は、自民党の裏金問題始め多くの問題に真摯に向き合わない岸田総理御自身にあるんじゃないですか。そうした御自身の問題をジョークに変えて矮小化する姿勢に、強い違和感を感じます。
特に政治改革については、与党案がまだ出されておらず、これは本気で取り組むつもりがないという表れじゃないですか。もう四月も終わります。日本の国会で拍手が欲しいなら、今こそリーダーシップを発揮して、すぐにでも自民党の政治改革案を出してください。我々は既に準備しています。基準も中身も曖昧な党内だけの処分でお茶を濁すのではなくて、自民党が本気で政治改革に取り組む覚悟があるなら、それを盛り込んだ案を是非今月中に提出していただきたいと思いますが、いかがですか。明確にお答えいただきたいと思います。
最後に、年金改革について質問します。
厚労省が国民年金の納付期間を六十歳までから六十五歳まで五年延長した場合の効果を試算するという話が出てきました。五年延長すれば、新たに約百万円の負担増になります。年金は百年安心と政府は説明していましたが、国民年金保険料の六十五歳までの五年間延長納付は、国民の義務として試算するのですか。また、この納付期間延長は、岸田総理、あなたの意思ですか。お答えください。
我々立憲民主党は、外交、安全保障政策については、理想は持ちながら、外交の継続性を重視して、現実的な路線を取る政党です。政権交代しても、外交政策や安全保障政策が大きく変わるべきではありません。一方で、中国が日本のEEZ内に設置したブイの問題など、主張できない岸田政権の様子見外交など、足らざる点は強く指摘していきます。
今回の訪米で、リーダー交代にかかわらず日米関係は安定して強固であることが米国で確認されたように、我が国でも、政権交代が起きた場合も日米関係は安定して強固であるとお約束して、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 源馬謙太郎議員の御質問にお答えいたします。
日米共同声明に記載した勇気ある措置についてお尋ねがありました。
日米首脳共同声明は、国際社会の平和と繁栄の礎である法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても維持強化していくという日米両国の不退転の決意を表明し、その指針を記したものです。
我が国は、外交、防衛、経済等あらゆる分野において日米連携を強化してきているため、御指摘の勇気ある措置について、その全てを網羅的に挙げることは困難ですが、その中で幾つか例を挙げるとすれば、例えば、今回、バイデン大統領からは、厳しい対ロ制裁を行い、ウクライナ支援を行ったこと、国家安全保障戦略を改定し防衛能力を整備したこと、韓国との関係を改善し、キャンプ・デービッドにおいて歴史的な日米韓首脳会合を実施したこと等に触れつつ、岸田政権におけるこれらの取組について、先見性があり、勇気があることであるとの評価が得られたところであります。
我が国が米国とともにどのように国際秩序を守っていくのかというお尋ねがありました。
今回の首脳会談では、バイデン大統領との個人的な信頼関係を始め、日米両国が、深い信頼と重層的な友好関係で結ばれており、二国間や地域にとどまらず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持強化するグローバルなパートナーとなっていることについて確認することができました。
そういった取組を行うに際しては、その手段として、外交、安全保障や経済的な手段も含めたあらゆる手段により、日米で様々な課題に取り組んでいく考えです。軍事的手段に関しては、憲法や国際法、法律にのっとり、かつ、我が国の国益に基づいて行っていく点、これまでと変わりはありません。
自衛官の定数の妥当性についてお尋ねがありました。
自衛官の定数については、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中において、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、自衛隊の任務遂行に必要な人員数を積み上げたものであります。
自衛隊においては、自衛官の総定数を維持しつつ、既存部隊の見直しや省人化、無人化の推進、部外力の活用等を進め、一層効率的な任務の遂行に取り組んでまいります。
指揮統制に係る認識についてお尋ねがありました。
今回の首脳会談においては、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化が急務であることを再確認し、米軍と自衛隊の相互運用性の強化など、安全保障、防衛協力を拡大、深化していくことで一致をいたしました。
指揮統制については、日米それぞれの枠組みを向上させることとしており、この点、例えば、二〇一五年に策定した日米ガイドラインにおいて、自衛隊及び米軍の活動について、各々の指揮系統を通じて行動すること、また、各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われること、これが明記をされております。こういった点は日米間の共通認識となっております。
次に、ミサイルの共同開発、生産についてお尋ねがありました。
日米首脳会談において、日米の防衛産業が連携する優先分野を特定するため、新たに、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASを開催することで一致をいたしました。
この優先分野の対象については、ミサイルの共同開発及び共同生産が含まれ、防空等のための高度で相互運用可能なミサイルの共同生産を模索するなど、今後、DICASにおいて具体的に検討され、日米2プラス2に進捗が報告される予定です。
本件は、第三国への移転を想定した検討ではありません。
中国との対話についてお尋ねがありました。
委員御指摘のとおり、数多くの課題や懸案がある日中両国間において、対話や意思疎通は重要です。
昨年十一月の日中首脳会談においても、私から我が国の基本的な立場を習近平主席にしっかりと直接伝え、日中関係の大きな方向性を確認するとともに、今後とも、両国の首脳同士で緊密な対話、意思疎通を図ることで一致をいたしました。
中国との間では、外相間の相互訪問について検討していくことや、日中ハイレベル経済対話及び日中ハイレベル人的・文化交流対話等の適切な時期での開催について一致をしております。引き続き、首脳同士を含むあらゆるレベルでの意思疎通を重ね、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な日中関係の構築を双方の努力で進めてまいります。
イスラエル・パレスチナ情勢への対応についてお尋ねがありました。
ハマス等によるテロ攻撃を受けたイスラエルは、こうしたテロ攻撃に対し、国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有しています。
しかしながら、同時に、全ての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われなければならず、政府は、これまで、イスラエルに対しても、一般市民の保護や国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきております。こうした点に関する我が国の立場は一貫しております。この旨、今回の会談においても、バイデン大統領に直接説明をいたしました。
引き続き、関係国、国際機関とともに、全ての当事者に対し、事態の鎮静化等に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。
自民党の政治改革案についてお尋ねがありました。
国民の信頼回復のための政治改革については、これまでも、コンプライアンスや責任体制の強化のための党則等の改正など、自民党単独でも対応可能なものは速やかに実行に移してきたところですが、法改正を伴う制度面の改革についても、厳格な責任体制の確立や政治資金の透明性の確保のため、私の指示の下、議員本人の責任の強化、外部監査の強化、デジタル化の推進を内容とする政治資金規正法の改正について、党として制度の詳細を詰め、考え方を整理してきたところです。
今国会での政治資金規正法改正の実現に向けて、既に公明党との協議も開始をしています。与党での議論も経ながら、我が党としての最終的な改正案を責任を持って取りまとめ、今国会での法改正を実現するべく、可能な限り早期にお示しをいたします。
国民年金制度における保険料の納付期間延長についてお尋ねがありました。
先日、四月十六日に、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で御議論いただいたのは、次期年金制度改正に関する検討の参考とするために、二〇一九年の前回の制度改正の際と同様の試算を行うというものであり、次期年金制度改正の方向性について、何ら予断を与えるものでもなければ、私の意思が反映されているものでもありません。
いずれにせよ、基礎年金の拠出期間の延長を含め、次期制度改正の内容について、現時点で何ら決まっているものではありません。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 三木圭恵君。
〔三木圭恵君登壇〕
○三木圭恵君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の三木圭恵です。
私は、会派を代表し、岸田総理による米国公式訪問の帰朝報告について、全て総理に質問いたします。(拍手)
自由で開かれた国際秩序が大きく揺らぐ中、日米両国首脳が結束し、安全保障や経済、エネルギー、宇宙など、多面的に協働していくことで合意するとともに、日米同盟をより強固にし、国際秩序の構築を担っていくと宣言した意義は大きいと評価します。特に、首脳会談で、日米同盟の抑止力、対処力を迅速かつ確実に向上させる防衛、安全保障協力に軸足が置かれ、インド太平洋で格子状に広がる安全保障体制の中核に日米同盟があるのだと明確に世界に示したことは新機軸です。
東アジア、インド太平洋、ひいては世界の安定維持へ、日本が向かうべき進路は、米議会での演説で総理が強調された、米国は独りではありません、日本は米国とともにありますという言葉に尽きると考えます。米国がオバマ政権時代に一旦捨てた世界の警察官の立場を、日本が米国とともに担っていくという重責を負う決意と受け止めますが、見解を伺います。
米国では、十一月に大統領選挙を控えています。状況は予断を許しませんが、結果次第では、トランプ前大統領が返り咲き、米国の外交、安保戦略が揺らぎかねない、不確実な米国のリスクにさらされています。政府として、そのリスクにどのように対処していく方針ですか。選挙結果にかかわらず、五年後、十年後、さらに、その先を見据え、米国のアジア、世界への関与を一層強め、逆戻りさせないことが不可欠と考えますが、所見を求めます。
とりわけ、自衛隊と在日米軍をより一体的に運用できるよう指揮統制の枠組みを向上させるとした合意は、バイデン大統領が日米同盟発足以来最も重要な改良だと意義を強調したように、具現化が急がれる喫緊の課題です。米国側は、日本が今年度末に陸海空三自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を創設する方針を見据え、管理にとどまっている在日米軍に対し、ハワイに司令部を置くインド太平洋軍の権限の一部を移行するとされていますが、自衛隊と米軍が作戦立案や部隊運用で日常的に連携し、より効果的に戦える即応態勢を整えることは不可欠です。
米国側も、陸海空、海兵隊はもちろん、戦略軍や宇宙軍、サイバーコマンドなど機能別統合軍も含めて、ワンストップで運用調整ができる権限を持った司令部組織であるべきです。そのために、四つ星クラスの司令官に率いられ、また、日本の統合作戦司令部と同様に、常設の上、近くにあるべきと考えますが、こうしたことを米国と大胆な議論をするべきではないですか。
我が国が保有を決めた反撃能力の発揮に当たっては、必要最小限にして、同じ拒否的抑止力の要たる統合防空ミサイル防衛能力との連動が求められており、米軍の打撃作戦の計画的な実施にも影響を及ぼしかねません。日米共同の観点からすれば、日本側の事態認定や武器使用、武力行使の条件などをめぐる法制は極めて複雑です。このままで、米軍と運用上、円滑にやっていけるのですか。米軍が反撃すると言ったとき、日本はどのようにするのかという政治的な意思決定の問題が必ず出てくると存じますが、どのように解決するとお考えですか。
平和安全法制で、自衛隊は、集団的自衛権の限定的行使や平時の米艦船等の防護が可能となりましたが、米軍への支援は武力行使の一体化にならない範囲に限られています。このままでは、戦闘現場で自衛隊が米軍を見捨てざるを得ず、同盟の信頼性が担保できないのではないですか。グレーゾーン事態でも後方支援できるよう法整備すべきだと考えますが、併せて見解を求めます。
日米首脳会談では、防衛装備・技術協力として、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議が開催され、日米の防衛産業を含めて、共同開発、生産、維持整備が進められることになりました。具体的に挙げられているミサイルの共同生産は、終わりが見えないウクライナ危機によって世界的に弾薬の需給が逼迫する中、日米両国の防衛力整備とウクライナ支援の双方の観点から有益な取組です。速やかに具体論を詰めるべきだと考えますが、見解をお伺いします。
日本に前方展開している米軍艦船や航空機の維持整備も、整備の都度、米国本土に戻る時間を短縮できるため、米軍の運用率向上に資することは明らかで、同盟の即応性維持に大きな寄与が見込めます。無論、単なる米国の下請にならないよう、日本の防衛産業への裨益もしっかり確保すべきであり、大胆な技術移転を迫るなど賢く交渉するべきだと考えますが、政府の対処方針をお尋ねします。
バイデン大統領は、日比米首脳による共同ビジョンステートメントで、日本の防衛装備品移転三原則の見直しを歓迎しました。しかし、先般、国際共同開発の装備品の第三国移転を英国、イタリアとの次期戦闘機のみに限って認めた措置は、今後の日本の防衛産業の発展に影を落としかねません。国家安全保障戦略で、防衛装備品の移転については、日本にとって望ましい安全保障環境の創出と位置づけていたこととそごがあると考えますが、所見を求めます。
これまでも、首脳会談等において、尖閣諸島に対する日米安保条約第五条の適用が確認されてきましたが、今回の日米共同声明には、中国による東シナ海における力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも強い反対の意を表明するとの文脈で、「尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとする行為を通じたものを含む、」という文言が追加されています。尖閣諸島に関して、米国が一歩、日本の立場に沿った見解を示したものと評価できるのではないでしょうか。この機会に、更に尖閣防衛に対する強い意思と能力を日米共同で示すための取組を検討するべきだと考えますが、併せて所見を求めます。
日米首脳会談では、北朝鮮による拉致問題の即時解決に向けて総理が目指す日朝首脳会談の早期実現について、バイデン大統領から支持されました。拉致問題の解決には期限があり、残された被害者の親世代が御存命のうちに解決することは、絶対の国家的至上命題です。もし解決の期限が守られなければ、拉致問題は永遠に未解決のまま日朝間に残り続け、日朝国交正常化交渉に甚大な悪影響を及ぼすと考えますが、認識をお伺いします。
去る十一日、我が党は拉致問題に関する要望書を林官房長官に提出し、その中で、拉致問題が解決する場合、核とミサイルの問題の解決に先行して、北朝鮮に対する人道支援を検討することを表明しました。これに対する政府の立場をお聞かせください。
ロシアのウクライナ侵略を機に、国際平和に主要な責任を負うはずの国連安全保障理事会の機能不全とその改革の必要性が叫ばれていますが、今回の日米共同声明では、常任、非常任理事国双方の拡大等を通じた安保理改革への関与と、日本の常任理事国入りへの米国の支持を再確認したとされます。
折しも三月下旬には、国連安保理で、北朝鮮への制裁の履行状況を調べる専門家パネルの任期を延長する決議案がロシアの拒否権によって否決されるゆゆしき事態に直面しましたが、今回の日米首脳会談では、常任理事国が持つ拒否権の剥奪など、従来方針の再確認にとどまらず、より突っ込んだ安保理改革の議論はなされたのですか。なされなかったならば、なぜですか。
今回の総理の訪米において、バイデン大統領、フィリピンのマルコス大統領が初の三か国首脳会談を開き、三つの海洋民主主義国が安全保障や経済など幅広い分野で連携協力を進めることで合意したことを歓迎します。国際法を踏みにじり、傍若無人に振る舞う中国から、自由で開かれた海であるべき南シナ海と東シナ海を守るためにも、日米比の協力関係を盤石にしていくことは不可欠です。
しかるに、今回の三か国首脳会談で、この会談の定例化を打ち出すことが検討されていたと聞いていますが、なぜ合意に至らなかったのですか。今後、日本は、この三か国の首脳会談を定例的に開催していく考えはありますか。
在沖縄の米海兵隊は、フィリピン、オーストラリアなど、インド太平洋各地に部隊をローテーション展開する運用を行っていますが、フィリピンは、中国に対する抑止力向上のために、自衛隊にもローテーション展開を求めていると伺っています。
この三月、離島奪還作戦を担う陸上自衛隊の水陸機動団、いわゆる日本版海兵隊の第三連隊が編成されました。これを機に、自衛隊は、水機団の三部隊が交代で任務、訓練、待機を担い、海外へのローテーション展開も本格化させる方針とされています。ならば、今後、対中牽制のために、フィリピンとの間で自衛隊とフィリピン軍の往来をスムーズにする円滑化協定等の締結を急ぎ、水機団をフィリピンに定期派遣すべきだと思料しますが、海外への水機団のローテーション展開方針を含め、政府のお考えをお尋ねします。
日本は、広島AIプロセスを主導し、成果として、高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範を取りまとめ、昨年十月に発出しました。これは今回の総理の訪米でも評価されましたが、我が国の生成AIに対する法整備は遅れています。
EU理事会では、昨年十二月、EU域内で一律に適用される、人工知能、AIの包括的な規制枠組み規制案、いわゆるAI法案に関し、暫定的な政治合意に達しました。また、バイデン政権は、昨年十月、人工知能、AIの安心、安全で信頼できる開発と利用に関する大統領令を発令しました。
日本では、AI事業者ガイドラインについて話し合われているものの、いまだ法整備に至っていません。今後、日本が生成AIに関する研究開発協力を日米で、また世界的に成し遂げていくには、日本国内において生成AIの規律と活用の面から法整備が急務だと考えますが、所見をお伺いします。
日本製鉄によるUSスチール買収に対し、バイデン大統領もトランプ前大統領も否定的な考えを表明するなど、日米間の大きな政治問題に発展しつつあります。しかし、この買収問題について、総理は、首脳会談後の共同記者会見で、日米両国にとってよい話合いになることを期待していると当事者間の協議に委ねる考えを示し、まるで人ごとのようでした。
USスチール買収に抵抗する同盟国たる米国の対応は、経済安全保障の観点からも極めて憂慮すべき問題ではないですか。首脳会談で、総理は、USスチール買収に関してバイデン大統領と具体的に議論されたのですか。もし触れなかったならば、グローバルパートナーとは名ばかりのものであると言わざるを得ません。見解をお伺いします。
総理は、共同記者会見で、日本は米国にとって最大の投資国であり、米国内で約百万人を雇用している、日本からの投資は今後ますます拡大基調にあると胸を張り、今回の訪米でノースカロライナ州を訪れ、日系企業の工場等を視察されました。
しかし、馬場代表ら我が党訪米団が、昨年七月、ワシントンで在米日本企業関係者と懇談した際、米国企業と対等にビジネスができる環境整備を米側に働きかけてほしい旨、要望を多数いただきました。このような声をどのように受け止め、いかに対応されていくお考えですか。
最後に、日本国憲法に関して質問します。
日本有事とされる台湾有事が生起しても、現行憲法は、自衛隊が米軍と一緒になって台湾を守るために戦うことを許しておらず、専守防衛に徹する自衛隊は、原則、我が国自身が攻撃されなければ反撃できません。平和憲法と言われる現憲法が、その実、国防への障害となっているならば、本末転倒、憲法を守って国を守れずです。これで日本は本当に米国のグローバルパートナーになり得るとお考えでしょうか。
岸田総理自身は、今年九月までの自民党総裁の任期中に憲法改正実現を目指すと繰り返し表明してきました。衆議院憲法審査会では、ようやく、起草委員会を設け、改正原案の取りまとめに着手する機運が出てきましたが、九月までに国民投票を行うには、今国会の会期末までに国会発議に持ち込めなければ時間切れとなります。
折しも、総理が会期末までに衆議院を解散するという観測が流れています。まさか総理が国会発議をほったらかして解散・総選挙に踏み切ることはないと信じていますが、それはないと約束できますか。もちろん、解散となれば、我々は正々堂々と受けて立ちます。
九月までの憲法改正実現への帰趨は、総裁たる総理の指導力にかかっています。憲法改正という国民への事実上の公約を果たせなかったら、総裁再選に挑む資格はないとはっきり申し上げます。いかがでしょうか。自民党総裁としての明快な答弁を求めます。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 三木圭恵議員の御質問にお答えいたします。
我が国が米国とともに重責を担う決意及び米国大統領選を念頭に置いた我が国の対応についてお尋ねがありました。
現在、これまでの国際秩序や自由、民主主義が、世界中で脅威にさらされ、また新たな挑戦に直面している中で、自由と民主主義を擁護し、国際社会の安定と繁栄を維持拡大するためには、引き続き、米国のリーダーシップが必要不可欠です。私は、今回連邦議会で行った演説において、その点を明確に述べた上で、米国が単独で国際秩序を守ることを強いられるべきではなく、日本が米国とともに役割を果たす用意がある、こうしたことを表明いたしました。
米国が国際社会において引き続き中心的な役割を果たしていくべきことについては、大統領選挙の結果によって左右されるべきものではありません。この点、私が今回訴えたメッセージが連邦議会の超党派からスタンディングオベーションで迎えられたことを見ても、この点が米国議会そして米国国民とも広く認識を共有されている証左であると考えています。
今回の訪米で得られた成果も踏まえつつ、かつてなく強固となった友好、信頼関係に基づき、日米両国は、二国間や地域にとどまらず、グローバルパートナーとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化すべく、共に取り組んでまいります。
自衛隊の統合作戦司令部と米軍の関係についてお尋ねがありました。
日米首脳会談では、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上させることで一致をいたしました。
御指摘の米側の今後の体制については、現時点で決まっていないと承知しておりますが、相互運用性と即応性を強化し、日米同盟としての連携を高めていくため、日米間でしっかりと議論を行ってまいります。
我が国の法制と円滑な日米協力についてお尋ねがありました。
まず、自衛隊の全ての活動は、御指摘の反撃能力の行使も含め、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われ、また、自衛隊及び米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することは当然のことです。
その上で、同盟国である米国との間では、様々なレベルで常に緊密な意思疎通を図っており、我が国の憲法や平和安全法制など関連法令についても、米国はよく理解をしています。
我が国としては、平和安全法制を整備し、グレーゾーン事態を含めあらゆる事態に切れ目なく必要な対応ができるようになったと考えており、現状において更なる法整備が必要であるとは考えておりません。
次に、日米防衛産業の連携、米軍艦船等の維持整備及び防衛装備品移転についてお尋ねがありました。
日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASは、日米の防衛産業が連携する優先分野を特定するため開催することとしたものであり、ウクライナ支援を念頭に置いたものではありません。
我が国の民間施設を利用した米軍艦船、航空機の共同維持整備については、日米両国にとって互恵的な取組となるよう、今後しっかりと協議をしてまいります。
また、先般、GCAPの完成品について、我が国から第三国に直接移転を認め得ることとしましたが、これにより、我が国の安全保障環境の改善に資する優れた戦闘機の実現が可能となることから、国家安全保障戦略との間でそごがあるとの指摘は当たりません。
尖閣諸島の防衛についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、今般の日米共同声明においても、尖閣諸島への日米安保条約第五条適用を含め、日米同盟の抑止力強化について改めて強い意思が示されたことは、非常に意義があると考えております。
日米間では、重層的なレベルで日頃から緊密かつ幅広く意思疎通を行い、様々な取組を積み重ねてきています。今後とも、こうした取組を通じて、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化を不断に進めてまいります。
拉致問題についてお尋ねがありました。
我が国の方針は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものであり、この方針に変更はありません。
その中にあって、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であり、切迫感を持って取り組まなければならない課題であると考えております。
日朝間の諸懸案の包括的な解決を目指す中での具体的な交渉の在り方については、仮定の質問でもあり、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向け、全力で、そして果断に取り組んでまいります。
国連安保理改革に関するやり取りについてお尋ねがありました。
今回の首脳会談においては、時間の関係で、安保理改革に関する突っ込んだやり取りはありませんでしたが、首脳共同声明、「未来のためのグローバル・パートナー」において、常任理事国及び非常任理事国の議席の拡大等を通じ、安保理改革に引き続きコミットしている旨を確認しております。
いずれにせよ、安保理改革を含む国連の機能強化は重要であり、我が国は、米国やG4、アフリカ、英仏等多くの国々と連携しつつ、粘り強く取り組んでまいります。
日米比首脳会合の定例化及び水陸機動団の海外展開についてお尋ねがありました。
日米比首脳会合の定例化については何ら決まっていませんが、こうした三か国協力の枠組みを今後も大事にしていくという認識で、今回、首脳レベルで一致したと考えています。
現時点において、御指摘のようなフィリピンにおける海外ローテーション展開について検討が行われている事実はありませんが、フィリピンとの間では、自由で開かれたインド太平洋を実現すべく、部隊間協力円滑化協定の早期妥結に向けた交渉を含め、安全保障、防衛協力を着実に進めてまいります。
生成AIに関する法整備についてお尋ねがありました。
生成AIについては、規律と利用促進のどちらかに偏るのではなく、両者を一体的に進めることが重要であり、これまでも、日本が主導してきた広島AIプロセスなどを通じ議論を進め、昨年には初の国際的な枠組みである包括的政策枠組みに合意をいたしました。
今後も、国際的な動向等を踏まえつつ、御指摘のような国内法の整備が必要かどうかも含め、AI戦略会議等においてしっかりと議論を行ってまいります。
USスチール買収及び企業のビジネス環境整備についてお尋ねがありました。
今回の日米首脳会談では、日米経済関係について様々な議論を行いましたが、外交上のやり取りの詳細についてはお答えは控えます。
その上で申し上げれば、日本としては、本案件が法に基づき適正に手続が進められると考えています。日本は現在、米国にとって最大の投資国であり、今後も、両国にとってウィン・ウィンな流れを確実なものにしていきたいと考えております。
企業のビジネス環境の整備については、米国連邦政府や州政府との間で、様々なレベルで関係を構築し、意思疎通を行っています。こうした活動を通じ、日本企業にとって適切なビジネス環境の確保を図ってまいります。
日米のグローバルパートナーシップと防衛協力についてお尋ねがありました。
御指摘のような仮定の質問にお答えすることは控えますが、その上で申し上げれば、今般の日米首脳共同声明及び米国連邦議会上下両院合同会議における私の演説において言及したグローバルパートナーといった表現は、かつてなく強固な友好、信頼関係に基づき、日米両国が、二国間や地域にとどまらず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持強化していくという両国の不退転の決意を示すものであり、軍事面のみを念頭に置いたものではありません。
政府としては、現行憲法にのっとり、日米同盟の抑止力、対処力の向上にしっかりと取り組んでまいります。
憲法改正についてお尋ねがありました。
内閣総理大臣の立場から憲法改正についての議論の具体的な進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、憲法改正は先送りできない重要な課題であり、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いは、いささかの変わりもありません。時間的制約がある中でも、一歩でも議論を前に進めるため、御党を含む党派を超えた議論を加速させるべく、最大限努力をしてまいります。今はそのことしか考えておりません。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 金城泰邦君。
〔金城泰邦君登壇〕
○金城泰邦君 ハイサイグスーヨー。公明党の金城泰邦ヤイビン。(拍手)
冒頭、昨日二十三時頃に発生した豊後水道を震源とする震度六の地震によって被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
それでは、公明党を代表して、岸田総理の米国帰朝報告について質問させていただきます。
今回の岸田総理の国賓待遇での米国公式訪問は、安倍総理以来、九年ぶりとなります。総理は、バイデン大統領に輪島塗のコーヒーカップとボールペンを贈られました。能登半島地震で被災した職人の方々が制作されたものとのことで、被災地、そして復興への希望につながったと思います。また、コーヒーカップに併せて、沖縄県産のコーヒー豆も贈呈されましたが、重要な外交の場で私の地元沖縄のコーヒー豆を選んでいただいたことに、心から感謝申し上げます。
今回、新しい時代の日米同盟を目指し、未来のためのグローバルパートナーと銘打って日米同盟の結束の固さを世界にアピールしたことは、大変意義深かったと考えております。特に、安全保障や宇宙、経済など、非常に重要な分野での日米の戦略的な協力を議論し、共同記者会見や共同声明を通じ発表したことで、日米の未来に向けた指針を明確に示すことができたと高く評価いたします。
私からは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化を始め、次の世代にどのような未来を残していくのかという観点で質問をさせていただきます。
我が国の周辺国、地域は、急速な軍備増強や、力による一方的な現状変更の試みを増加させており、安全保障環境は戦後最も厳しく複雑な状況だと認識せざるを得ません。国民の命や暮らしを守り抜くためには、不断の外交努力と外交の裏づけとなる防衛の両方の取組によって平和な国際環境をつくっていくことが必要です。その上で、専守防衛を掲げる我が国は、防衛力の強化と日米による抑止力を高めていくことが重要だと考えます。
今回の共同声明では、日本防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを再確認しました。また、日米安全保障条約第五条の尖閣諸島への適用も改めて確認し、日米同盟の強さと強固なきずなを内外に示すとともに、中国による東シナ海における力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する姿勢を示すものでした。それらのコミットメントが確認された意義、また、声明に込めた意図と狙いについて、総理の見解をお伺いします。
また、今回の共同声明では、自衛隊と米軍の連携をより円滑にするため、それぞれの部隊の指揮統制を向上させることが盛り込まれました。
指揮統制の在り方をめぐっては、自衛隊が今年度中に一元的な部隊運用を担う統合作戦司令部を新設するのに合わせ、在日米軍も司令部機能を拡充することを予定されています。周辺国の軍事能力が飛躍的に向上している今、日本が抑止力、対処力をしっかりと保つためにも、円滑な意思疎通、運用体制を日米で整えることは重要であると考えます。具体的には、今後行われる日米2プラス2などで協議、検討されていくと思いますが、今後、日米の防衛協力はどのように検討され、発展していくのか、総理の答弁を求めます。
一方で、自衛隊と米軍の相互運用性強化については、在日米軍の影響力が自衛隊を超えて高まることを懸念する声もあります。日本の防衛は、主権国家として、最高責任者である総理が指揮監督し、自衛隊が独立した指揮統制権を確保すべきと考えますが、平時及び有事の指揮統制の在り方について、総理の見解を求めます。
日米関係の強化とともに、日米豪、日米韓、日米英など、三か国間協力の推進についても確認がされました。今後、このような連携は重要性を増していくと考えますが、三か国協力の意義や、今回の米国公式訪問の機会に初めて開催された日米比首脳会合の成果について、総理の答弁を求めます。
宇宙協力についてお伺いします。
アポロ計画以来、約半世紀ぶりとなる有人月面探査アルテミス計画では、日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するという共通の目標が発表されました。日本の技術や日本人の起用、活躍は、同じ日本人として誇らしく、心躍る取組だと期待しております。
今回、バイデン大統領とどのようなやり取りがあったのか、また、日米で宇宙における新たなフロンティアの開拓に取り組む背景と意義、そして今後の影響について、総理の見解をお伺いします。
経済連携についてお伺いします。
日米両国において、イノベーションやサプライチェーンの強靱化を促進し、将来の戦略的新興産業を構築しつつ、温室効果ガスの大幅な排出削減を追求するため、経済、技術及び関連する戦略の最大限の整合を目指すことが確認されました。
また、AI、量子技術、半導体、バイオテクノロジーなどの重要先端技術分野の開発、保護や、脱炭素に向けた様々な枠組みでの協力強化、日本におけるマイクロソフト社による二十九億ドルの投資やノースカロライナ州におけるトヨタ自動車による累計百三十九億ドルの投資など、相互投資を通じた日米の強固な経済関係を印象づける内容も示されました。
日米の経済連携の強化は、自由や民主主義に基づく国際秩序を遵守する同志国の平和や安定、そして繁栄にもつながると考えますが、日米経済連携の先にある我が国の経済産業分野の未来、そして国際社会への波及効果についてどのように考えているのか、総理の見解をお伺いします。
気候変動対策についてお伺いします。
日米両国は、気候危機が時代の存亡に関わる挑戦であることを認識し、世界的な対応のリーダーとなることを示した上で、クリーンエネルギーへの移行の加速化という共通目標に向けたハイレベル対話の立ち上げを表明しました。
我が党は、二〇五〇年のカーボンニュートラル実現を国政で最も早く訴え、グリーンイノベーション基金創設や再エネの主力電源化、排出削減目標の野心的な見直しを求めるなど、率先して気候変動対策に取り組んでおり、今回の合意を高く評価しております。
浮体式洋上風力発電やフュージョンエネルギーなど、技術的ハードルもありますが、総理の今後のビジョンと、対応への決意をお伺いします。
人と人のつながりの強化についてお伺いします。
ジョージタウン大学のアダム・リッフ氏によると、長年にわたり、米国の日本外交専門家が日本の重要性の理解を進めてきたが、その専門家の多くは十数年以内に引退する可能性が高いと指摘しています。加えて、米大学の日米関係専門の教員や科目は急減しているとのことです。
その意味で、今回の日本政府の拠出によるマンスフィールド記念日本・インド太平洋研究教授職のモンタナ大学への創設は、米国での日本のプレゼンスの維持向上を図る重要な外交政策だと考えます。未来のためのグローバルパートナーとして、日本外交専門家の拡充に向けた取組をより一層推進すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
今回の共同声明で確認されたことは、目前に迫る安全保障環境のリスク低減を図り、世界の平和を維持する上で不可欠なものでありますが、私は、人と人との相互理解やきずなを深め連帯の輪を築くソフトパワーを生かす取組こそが、次の世代が安心して暮らせる社会の実現につながる大事なことだと考えます。
最後に、共同声明のタイトルは、「未来のためのグローバル・パートナー」とされていますが、未来の日米関係を担う人材を育成するための人的交流の重要性について、総理の思いをお尋ねしまして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。ニフェーデービル。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 金城泰邦議員の御質問にお答えいたします。
日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントについてお尋ねがありました。
日米安保条約の下での米国の条約上の義務へのコミットメントについて、今般の日米共同声明においても、バイデン大統領は、核を含むあらゆる能力を用いた、同条約第五条の下での日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明し、日米安全保障条約第五条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認するとともに、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとする行為を通じたものを含む、中国による東シナ海における力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに強く反対するとの文言を用いて、改めてこれを確認いたしました。
尖閣諸島周辺地域を含む東シナ海における力による一方的な現状変更の試みが継続、強化されているなど、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増しているという現状認識を踏まえ、日米同盟の抑止力を引き続き強化する意思が改めて明確にされたことは、非常に意義があると考えております。
日米の防衛協力及び指揮統制の在り方についてお尋ねがありました。
日米防衛協力については、日米首脳会談で、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上させることで一致をいたしました。今後、日米2プラス2を通じ、この新しい関係を発展させ、日米同盟の抑止力の強化と自由で開かれたインド太平洋を促進してまいります。
他方、自衛隊の全ての活動が、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われること、また、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することに何ら変更はありません。したがって、これまで同様、平時、有事を問わず、日本国内閣総理大臣が最高指揮官として自衛隊を指揮監督してまいります。
日米比首脳会合等、三か国間協力についてお尋ねがありました。
日米比協力を始めとする多国間の協力は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、インド太平洋地域の平和と安定に資するものであり、我が国としても積極的に推進していく考えです。
こうした認識の下、今回の日米比首脳会合では、太平洋でつながれた海洋国家である日米比三か国が、経済や安全保障などの幅広い分野において協力を更に強化していくことを確認し、その具体的内容を共同ビジョンステートメントとして発出いたしました。
宇宙における新たなフロンティアの開拓についてお尋ねがありました。
バイデン大統領との間では、日本人宇宙飛行士による二回の月面着陸を含む実施取決めの署名を歓迎するとともに、アルテミス計画において、日本人宇宙飛行士が米国人以外として初めて月面に着陸するという目標に合意をいたしました。
我が国は、持続的な月面探査を目指すアルテミス計画に協力しているところであり、世界各国でも月面探査に向けた取組が活発化しています。
今回の合意は、我が国単独ではなし得ない月面の有人探査に必要な技術等の獲得とともに、我が国のプレゼンスの向上や日米両国の協力関係の一層の強化につながるものであり、大きな意義があると考えております。
今後も、引き続き、民間と共同での与圧ローバーの開発や、月面での活動を通じて、人類の活動領域の拡大に貢献するとともに、我が国のイノベーション促進や産業発展にも寄与してまいります。
日米の経済連携の強化についてお尋ねがありました。
日米首脳会談では、日米経済関係について、世界の経済成長を共に牽引していく上で、民間企業を始めとする双方向の投資の促進が重要であるとの認識を共有した上で、先端技術分野での競争力の維持強化やサプライチェーンの強靱化、持続可能で包摂的な経済成長の実現に向けて協力していくことなどで一致をいたしました。
一例を挙げれば、現在進めている先端半導体での日米連携は、日本の経済成長のみならず、グローバルな半導体サプライチェーンの強靱化にもつながるものです。こうした協力を通じ、日本企業の競争力を高め、世界における日本の経済的プレゼンスの向上を図るとともに、日米で世界の経済成長を共に牽引してまいります。
気候変動対策における日米協力についてお尋ねがありました。
日本のGX推進戦略及び米国のインフレ削減法、IRAの相乗効果の最大化に向け、日米首脳間で新たな閣僚級対話の立ち上げに合意をし、早速、齋藤経産大臣とポデスタ米国大統領上級補佐官で政策対話を実施いたしました。
今後、浮体式洋上風力、次世代革新炉などのクリーンエネルギー技術の開発や投資を促していくための環境整備、特定の国に過度に依存しないサプライチェーンの構築等を日米で協力して進め、気候危機への対応において世界のリーダーとなることを目指してまいります。
日本外交専門家の拡充と人的交流の重要性についてお尋ねがありました。
日米関係は、相互交流を通じて、政治、経済、文化など、様々な分野で重層的に発展をしてきています。政府としても、JETプログラム、カケハシ、国際交流基金による日本語教員の派遣、米日カウンシルによる交流プログラムなど、様々な人的交流のイニシアティブを通じて日米間の交流を促進してきています。
今後の日米関係の深化、拡大のためにも、お尋ねの日本外交専門家を含む米国内で影響力の高い層や、今後の日米関係を担う青年層における対日理解や知日派形成の促進や持続的発展は極めて重要です。政府としても、米国シンクタンクにおけるジャパン・チェアの創設や様々な招聘、交流事業などを通じてこれを支援してきていますが、今後、更なる展開を検討してまいります。(拍手)
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○副議長(海江田万里君) 志位和夫君。
〔志位和夫君登壇〕
○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、日米首脳会談について総理に質問します。(拍手)
エマニュエル駐日米大使は、総理を米国に国賓待遇で招待した意義について、産経のインタビューでこう述べています。
岸田政権は二年間で、七十年来の日本の安全保障政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。防衛費のGDP比二%への増額、反撃能力、敵基地攻撃能力保有、そのための米国製トマホークの購入に踏み切った。防衛装備品の輸出にもめどをつけた。
七十年来の政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。私は、米国大使のこの評価は、ずばり真実を語っていると考えますが、総理はどう受け止めますか。総理、あなたがやってきたことは、歴代政権が憲法に基づく平和国家の理念としてきたことを、ことごとく根底から覆したものではありませんか。
今回の日米首脳会談の最大の問題点は、バイデン大統領が共同記者会見で、日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレードと述べたように、米軍と自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことにあります。
日米共同声明は、「我々は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」と明記しています。
そこで聞きます。
ここで言うシームレスな統合とは何か。米軍と自衛隊の統合を意味することは、文意から明らかではありませんか。政府は、自衛隊は独立した指揮系統で行動すると説明していますが、独立した指揮系統でなければならない理由をお答えいただきたい。米軍の指揮下に入ることは日本国憲法の下では許されないということですか。答弁を求めます。
問題は、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化の下で、自衛隊が独立した指揮系統で活動する保証がどこにあるのかということです。
安保三文書に基づいて、政府は、敵基地攻撃能力保有、統合防空ミサイル防衛、IAMDを進めていますが、その実施のためには、米軍との間で、攻撃目標の情報の共有、攻撃目標の分担、攻撃の成果についての評価の共有などが必要となり、指揮統制の緊密な協力が不可欠になると考えますが、いかがですか。日米首脳会談で合意された指揮統制の連携強化はそのためのものではありませんか。そして、この道を進めば、指揮統制は、情報でも装備でも圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、自衛隊は事実上、米軍の指揮統制の下に置かれることになることは明瞭ではありませんか。
さらに、米軍は、IAMDの基本方針に先制攻撃を明記しています。米国が国連憲章に違反する先制攻撃の戦争に乗り出した際に、米軍の事実上の指揮統制の下で自衛隊が参戦する道を開くことになるではありませんか。
日本共産党は、日米軍事同盟の文字どおりの歴史的大変質に断固抗議し、その中止を強く求めるものです。
日米共同声明は、総理が殺傷兵器の輸出解禁を決定したことを歓迎し、軍需産業でも日米を統合する協議体を開催し、ミサイルの共同開発、生産などを行うとしています。これは、武器輸出を国是として全面禁止した武器輸出三原則が根本理念としてきた、国際紛争の助長を回避するという平和国家の理念を根底から投げ捨てるものではありませんか。米国従属の下での死の商人国家への道を歯止めなく進むことは、絶対に許されるものではありません。
日米共同声明は、沖縄県辺野古新基地建設の強行を宣言するとともに、事故原因が不明なままでのオスプレイの飛行再開、全国の米軍基地周辺での有機フッ素化合物、PFAS汚染には一言もありません。沖縄県民の民意を無視し、日本国民の米軍基地に関わる不安には無関心。余りに卑屈な従属姿勢ではありませんか。
日米共同声明が、米英豪による軍事的な排他的枠組みであるAUKUSと日本が先端軍事技術での協力検討を行うことを明記したことも重大です。日米が中国を対象にこうした対応を取れば、東アジアでの軍事的分断と対抗の悪循環を加速することになるのではありませんか。
日米共同声明には、ASEANインド太平洋構想、AOIPへの支持も明記されました。AOIPは、対抗でなく対話と協力のインド太平洋を目指し、あれこれの国を排除するのではなく、地域の全ての国を包摂する東アジア・サミットを活用、発展させ、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にするという構想であります。この構想への支持とAUKUSへの参加検討は真っ向から矛盾すると考えませんか。お答えいただきたい。
今、日本が進むべきは、軍事的対抗の強化ではなく、ASEANと協力して東アジアに平和を創出する、憲法九条を生かした平和外交にこそあることを強調して、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。
今回の訪米の意義、憲法との関係等に関するお尋ねがありました。
今般の訪米に際し、私は、日米がグローバルなパートナーとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持、強化していくという未来志向のメッセージを発信いたしました。
また、バイデン大統領との間で、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを確認し、日米安全保障、防衛協力を一層強化していくことで一致をいたしました。
今回、首脳会談で一致した日米安全保障、防衛協力について、我が国としての取組は憲法や国際法の範囲内で行われるものであり、平和国家として専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないとの基本方針は、今後もいささかも変わるものではありません。
日米間のシームレスな統合、独立した指揮系統及び米軍の事実上の指揮下となるおそれについてお尋ねがありました。
日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、様々な領域での作戦や能力を切れ目なく緊密に連携させていく観点から、シームレスな統合を可能にするため、日米でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上することで一致をいたしました。
このように、日米間で、様々な能力の発揮のため、緊密な連携を図ることは当然ですが、自衛隊の全ての活動は、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われること、また、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動すること、これらに何ら変更はありません。
その上で、自衛隊の指揮については、法令で定めているとおり、日本国内閣総理大臣が最高指揮官として自衛隊を指揮監督することに変わりはなく、米軍の事実上の指揮統制の下に自衛隊が置かれることはありません。
日米防衛産業の連携と平和国家の理念についてお尋ねがありました。
日米首脳会談において、日米の防衛産業が連携する優先分野を特定するため、新たに、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASを開催することで一致をいたしました。
その上で、協議で議論される日米間の共同開発、生産については、現行の防衛装備移転三原則等に基づき、個別の案件ごとに厳格審査を行い、かつ、移転後の適正管理を確保することで平和国家としての基本理念を引き続き担保していく考えです。
日米共同声明における在日米軍等に関する記述についてお尋ねがありました。
日米共同声明では、抑止力の維持及び地元への影響の軽減に向け、沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施についてのコミットメントを確認しており、また、今回同時に発出したファクトシートにおいては、環境に係る協力も含め、在日米軍の安定した駐留に関する二国間の継続的な連携の重要性を確認しています。
政府として、引き続き、日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄を始めとする地元の負担軽減に全力で取り組んでまいります。
AUKUSとの協力についてお尋ねがありました。
国際秩序の根幹が揺らぎ、地域の安全保障が一層厳しさを増す中、AUKUSの取組は、インド太平洋の平和と安定に資するものであり、日本は一貫して支持しています。
その上で、先進能力分野に係るAUKUS第二の柱に関する協力については、今後、まずはAUKUS側において具体的な検討が行われることになると承知しておりますが、日本としても、AUKUSのこうした動きも見ながら、今後の協力の在り方について検討していきたいと考えております。
AOIPへの支持とAUKUSとの連携との関係についてお尋ねがありました。
AUKUSの取組も、ASEAN諸国によるAOIPの下の取組も、インド太平洋の平和と安定に資するものであり、我が国がこれらを同時に支持することは何ら矛盾しないと考えております。
引き続き、我が国は、ASEANが中心となった地域協力の取組を尊重しつつ、AUKUSの構成国を含むその他の国、地域とも連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、積極的な外交を展開してまいります。(拍手)
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○副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。
〔玉木雄一郎君登壇〕
○玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)
冒頭、国会のDX化について、一点、伺います。
この本会議場でのタブレットを使った原稿の読み上げが、品位に欠ける、権威の問題として認められません。総理、ペーパーレス化やDX化を進める中で、この国会の現状をどう考えますか。総理も、タブレットを用いた原稿の読み上げは品位に欠けると考えますか。お答えください。
岸田総理は、米国議会で、日本はアメリカのグローバルパートナーだと述べ、共同声明でも、日本の防衛力と役割を抜本的に強化し、安保条約の下で米国との緊密な連携を強化すると表明しましたが、総理の考えるグローバルパートナーとしての活動は、そもそも現行憲法を変えずにできるものなのか、それとも、憲法を変えてでもやろうとする内容が含まれるのか、総理の基本的な考えをお示しください。
特に、自衛隊と米軍の作戦及び能力のシームレスな統合を行うためには、国際法的にも国内法的にも、自衛隊の位置づけを明確にする必要があります。これまでの政府解釈は、自衛隊は一般には国際法上の軍隊に該当すると解されるが、通常の観念で考えられる軍隊ではなく、陸海空軍その他の戦力となるわけでもないと、国際法と国内法で位置づけが異なる理解困難なものでした。自衛隊の活動が国内や周辺地域にとどまっている間は通用したかもしれませんが、自衛隊が米軍とグローバルに、シームレスに共同活動すれば、そんな詭弁は通用しません。
憲法を改正し、自衛隊を戦力として憲法に明確に位置づける必要があると考えているのか、そして、それが自民党改憲案の自衛隊明記論で果たして可能となるのか、総理の考えを明確にお答えください。
また、日本が米国とともにある対等なパートナーであれば、治外法権的な状態が放置されている地位協定の見直しにも本気で取り組む必要があるのではないでしょうか。それが沖縄の皆さんの基地負担の軽減につながると思いますが、総理の見解を伺います。
日米同盟の最大の弱点はサイバーセキュリティーと言われています。日本の通信網や電力網がダウンすれば、戦闘が始まる前に、在日米軍や自衛隊が敵国の軍隊によって制圧される可能性も否定できません。にもかかわらず、いまだに能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンスを可能とする法案がこの国会に提出されていないことは問題です。いつ法案を出すのか、政府の方針を伺います。
経済安全保障上、重要な情報へのアクセスを国が適性を審査した人に限定するセキュリティークリアランス法案は、先週、衆議院で可決されましたが、総理が任命権を持つ大臣、副大臣、政務官や審議会の委員は適性審査の対象外です。総理は、いかなる方法で問題なしと判断するのですか。重要な情報にアクセスし政策決定に関与する政務三役や審議会の委員に対しても、何らかの事前チェックが必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
民主的な香港紙、アップルデーリーの創業者、ジミー・ライ氏の香港国家安全維持法違反をめぐる裁判の起訴状で、我が党の国会議員であった菅野志桜里氏が共謀者として名指しをされました。共謀とされた行為は、日本版マグニツキー法の整備を日本政府に働きかけるという、他国の干渉を受ける余地の全くないものです。日本の国会議員の正当な政治活動が他国で犯罪化されることは、国家主権、国民の自由の侵害であって、絶対に看過できません。
総理が訴えたとおり、平和には理解以上の覚悟が必要であり、中国からの挑戦が続く中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は決定的な課題です。国際法の世界では、抗議すべきなのに抗議しない者は黙認されたとみなされます。香港政府に関心表明しただけでは足りず、政府として抗議すべきです。総理の覚悟と見解を伺います。
イスラエル軍が侵攻したガザをめぐり、アメリカの下院議員が原爆投下を促すような発言をしましたが、看過できません。バイデン大統領や議会関係者に対して、総理は抗議の意を示したのでしょうか。唯一の戦争被爆国として、また、被爆地を選挙区とする総理大臣として、言うべきことは言うべきではありませんか。
日米共同声明では、日米共通のジェット練習機といった最先端技術の共同開発、生産の機会を追求する作業部会を設置することにコミットするとしていますが、これは、日英伊三か国で行っている次期戦闘機の共同開発と矛盾することはないのですか。両者の関係性について説明を求めます。
アメリカの鉄鋼大手USスチールは、臨時株主総会で日本製鉄による買収計画を承認しました。あとは、安全保障の観点から審査を行う規制当局やバイデン大統領の判断にかかっています。仮にこの買収が政治的な理由で頓挫するなら、米国への投資拡大の障害になるおそれがあります。USスチールの買収について、日米首脳間でどのようなやり取りをしましたか。円滑に買収が完了するよう働きかけるべきと考えますが、総理の見解を伺います。
他方で、経済安全保障の観点から、重要な技術や人を渡すべきではない国や企業に対しては、資金も提供すべきではありません。その意味で、対外的な投資に対しても、経済安全保障上、今後何らかの規制が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
アメリカが主導する国際月探査プロジェクト、アルテミス計画において、我が国の宇宙飛行士の初の月面着陸が可能となることは、わくわくするニュースであり、歓迎いたします。今後、宇宙分野を担う人材を、どのように我が国において育てていくのか、政府の戦略を伺います。
最後に、今回の日米首脳会談は成功だったと率直に評価をいたします。ただ、日米両国が平和を維持するための真のグローバルパートナーになるためには、首脳間だけでなく、両国国民の理解も覚悟も必要です。だからこそ、米国議会だけでなく、日本の国会においても、総理には堂々と話してもらいたいのです。
国民にこうした理解と覚悟を求めるつもりで私の質問に答えていただくことを求めて、国民民主党を代表しての質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、ただいまの玉木雄一郎議員の御質問にお答えさせていただく前に、先ほど、源馬謙太郎議員の御質問の中で、イスラエル・パレスチナ情勢への対応についてお尋ねがあった部分の答弁につきまして補足させていただきます。
先ほど、その答弁において、まず、ハマス等におけるテロ攻撃を受けたイスラエルは、こうしたテロ攻撃に対し、国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有しています。しかしながら、同時に、全ての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われなければならず、政府は、これまで、イスラエルに対しても、一般市民の保護や国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきております。
ここまでは先ほど答弁したとおりでありますが、その後の部分に、こうした点に関する法の支配に基づく我が国の立場は一貫しており、ダブルスタンダードであるとの指摘は当たりません。こうした一貫した立場について、これまでも国際社会に対して説明してきており、今回の会談でもバイデン大統領に直接説明をいたしました。このように答弁を訂正させていただき、その後は、引き続き、関係国、国際機関とともに、全ての当事者に対し、事態の鎮静化等に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。先ほど答弁したとおりのこの最後の部分につなげさせていただきたいと存じます。訂正して補足をさせていただきます。
そして、その上で、玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。
本会議におけるタブレットの利用についてお尋ねがありました。
国会での議論の在り方は国会においてお決めいただくべきものであり、議員御指摘の点も含めて、各党各会派においてしっかりと議論をいただければと思っております。
その上で申し上げれば、国会におけるデジタル化については既に検討が始まっていると承知をしており、引き続き、政府としても、国会におけるデジタル化の取組にしっかりと対応をしてまいります。
グローバルパートナーとしての活動と憲法との関係についてお尋ねがありました。
今回発出した日米首脳共同声明及び米国議会における私の演説において言及したグローバルパートナーといった表現は、日米両国が、両国間や地域にとどまらず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持強化していくという両国の不退転の決意を示すものであり、軍事面のみを念頭に置いたものではありません。また、この表現や、御指摘の米国との緊密な連携の強化といった表現は、これまでの日米の役割分担や責任分担を変えるものではなく、我が国が、外交、安全保障上の政策は、我が国の憲法、法律にのっとり、かつ、我が国の国益に基づいて行っていくものであります。
その上で、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上させることなど、今回の首脳会談で一致した安全保障、防衛協力については、現行憲法の範囲内で議論を進めていくものであり、憲法改正を要するものとは考えておりません。
日米地位協定の見直しについてお尋ねがありました。
日米地位協定について様々な意見があることは承知しておりますが、政府としては、これまで、手当てすべき事項の性格に応じて、環境補足協定や軍属補足協定の締結等も含め、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて、一つ一つの具体的な問題に対処してきているところであり、引き続き、そのような取組を積み上げることにより対応していく考えであります。
能動的サイバー防御についてお尋ねがありました。
我が国のサイバー対応能力を向上させることは、現在の安全保障環境に鑑みると、ますます急を要する重要な課題であると認識をしております。
国家安全保障戦略においても、NISCを発展的に改組し、サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する新たな組織を設置し、能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野における新たな取組の実現のために、法制度の整備、運用の強化を図る、こうしたことをうたっております。本年度は、その第一段階として、サイバーセキュリティー対策の強化のために、NISCの予算や人員の大幅な増員、そして増額を行ったところです。
能動的サイバー防御の実現に向けた法案については、現行法令との関係等を含め、様々な角度から検討を要する事項が多岐にわたっておりますが、可能な限り早期に法案をお示しできるよう、検討を加速してまいります。
政務三役や審議会委員に対する適性評価についてお尋ねがありました。
本法案第十一条第一項各号に掲げる者である国務大臣、副大臣、政務官などについては、内閣総理大臣がその任命に当たり必要な考慮を行っていることなどから、本法案の適性評価の対象外としています。この点については、本法案よりも機微度が高い情報を対象としている特定秘密保護法でも同様であることを踏まえたものであります。
また、お尋ねのあった審議会の委員、これは何を指すのかは存じ上げませんが、いわゆる審議会の委員に当たっては、重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことが見込まれる場合には、本法案における適性評価を受けることとなります。
香港での裁判について、菅野志桜里氏が共謀者として名指しされたことについてお尋ねがありました。
他国、地域における我が国国民の行動への制限については、それが我が国の主権の侵害に当たるかも含め、個別具体的に状況を見る必要がありますが、一般論として申し上げれば、我が国の民主主義の根幹を構成する言論の自由、とりわけ国の代表たる国会議員の表現の自由は尊重されるべきである、これは当然のことであります。
二〇二〇年六月に国家安全維持法が制定されて以降の香港をめぐる情勢については、我が国として重大な懸念を強めており、これまでも、様々な機会に中国側に直接伝達をしてきています。御指摘の事案についても、香港当局に対して関心表明を行っています。
いずれにせよ、我が国としては、我が国の国会議員の言論の自由が保護されるよう、毅然と対応していく所存であります。
ガザに関する米国下院議員の発言についてお尋ねがありました。
御指摘のティム・ウォルバーグ米連邦下院議員の発言は、適切ではないと考えております。
同時に、同議員がその後、声明を発出し、冷戦時代に幼少時代を過ごした身として、核兵器の使用を訴えることは決してないとして、自身の発言について釈明をしていることにも留意をしております。
いずれにせよ、我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならないとの信念の下、核兵器のない世界の実現に向けて、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねてまいります。
日米共通のジェット練習機に係る作業部会についてお尋ねがありました。
日米首脳会談では、日米共通のジェット練習機の共同開発、生産の機会を追求することも含め、将来の戦闘機パイロットの教育について検討する作業部会の設置について一致をいたしました。
作業部会においては、AIや先進的なシミュレーターの活用も含め、次世代機であるGCAPの運用にも資する効率的な教育等について検討していく考えであり、GCAPとの関係で矛盾するものではないと考えております。
USスチール買収及び対外的な投資の規制に関するお尋ねがありました。
今回の日米首脳会談では、日米経済関係について様々な議論を行いましたが、外交上のやり取りの詳細についてはお答えを差し控えます。
その上で申し上げれば、日本としては、本案件が法に基づき適正に手続が進められると考えています。日本は、現在、米国にとって最大の投資国であり、今後も、両国にとってウィン・ウィンな流れを確実なものにしていきたいと考えております。
対外的な投資については、我が国では、外為法において、制裁対象者に対する資金移転やロシア向け対外直接投資を禁止しているほか、北朝鮮向け支払いを原則禁止しています。また、武器の製造等に係る対外直接投資について、事前審査の対象としております。引き続き、経済安全保障の観点も踏まえつつ、こうした規制も活用しながら適切に対処してまいります。
宇宙分野を担う人材育成についてお尋ねがありました。
アルテミス計画の実現に向けた取組が加速する中、宇宙分野における人材育成は、今後の我が国の宇宙分野の更なる発展のために重要な課題です。
このため、政府では、令和五年六月に策定した宇宙基本計画に基づき、将来の宇宙分野の発展を支える次世代人材の育成のため、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」での大学生や高専生などの実験参加や、JAXAと大学の人材交流による大学院教育への支援など、人材育成への支援を強化するとともに、拡大する宇宙人材の需要に応えるため、他産業の人材による宇宙分野への流入及び宇宙分野内での人材の流動化促進などにも取り組んでおり、引き続き、宇宙活動を支える人材育成に戦略的に取り組んでまいります。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十五分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 岸田 文雄君
法務大臣 小泉 龍司君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 村井 英樹君