衆議院

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第23号 令和6年4月19日(金曜日)

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令和六年四月十九日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  令和六年四月十九日

    午後一時開議

 第一 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律案(内閣提出)

 第四 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長谷公一君。

    ―――――――――――――

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔谷公一君登壇〕

谷公一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、子供、子育てに関連する各種給付の新設及び拡充を行うとともに、子ども・子育て支援金制度を創設するものであります。

 本案は、去る四月二日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会においては、同日加藤国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、翌三日から質疑に入りました。翌週九日には参考人から意見を聴取し、また、十一日には厚生労働委員会との連合審査会を開会しました。さらに、十六日には岸田内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を行い、同日質疑を終局いたしました。

 十八日、本案に対し、立憲民主党・無所属及び日本維新の会・教育無償化を実現する会から、それぞれ修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、両修正案について内閣の意見を聴取した後、原案及び両修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、両修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。坂本祐之輔君。

    〔坂本祐之輔君登壇〕

坂本祐之輔君 立憲民主党・無所属の坂本祐之輔です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 初めに申し上げます。立憲民主党は、チルドレンファーストの考えの下、社会全体で子供の育ちを応援する政党です。子供や子育てにお金がかかるのは当然のことであり、子供、子育て政策にかける予算は、より拡充する必要があると考えます。

 それでも政府提出法案に反対する最大の理由は、政府が新たに創設する子ども・子育て支援金制度に関して、多くの重大な問題があるからです。

 第一に、支援金の負担額に関する政府の説明が小出しで、極めて不誠実だったことです。

 今年二月には、子供を含む医療保険加入者一人当たり月平均五百円弱を徴収することとされました。我々立憲民主党の強い要求の結果、被保険者一人当たりを含む医療保険ごとの試算が示されたのは三月末です。そして、今月九日に政府はようやく被用者保険の年収別の試算を示し、その後、十一日に国保の年収別試算を、十六日に後期高齢者医療制度の試算を提出いたしました。

 子供を含む保険加入者一人当たりの数字を強調したせこさも含め、このように小出しで、後手の説明に終始した背景には、金額を小さく見せたいという政府の思惑が透けて見えます。このような政府の情報開示に対する後ろ向きの姿勢が国民の不信を招いたことは明らかです。

 第二に、今般の支援金制度が明らかに国民負担を強いることです。

 政府の試算では、被用者保険の場合は年収六百万円で被保険者一人当たり月千円の徴収となり、国保の場合は年収四百万円で月五百五十円の徴収、後期高齢者医療制度の場合は年収二百五十万円で月五百五十円の徴収となります。

 岸田総理は、歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築すると主張しますが、歳出改革による負担軽減は本来そのまま国民に還元すべきものである上、賃上げで実質負担軽減というのであれば、賃上げがあれば消費税を増税しても実質負担なしと強弁するのでしょうか。総理の発言は詭弁であり、支援金制度によって国民負担が増えることは、もはや火を見るよりも明らかではないでしょうか。

 第三に、支援金制度が社会保険制度の趣旨を大きく逸脱することです。

 今般の支援金制度は、現行の医療保険料に追加する形で徴収するものであり、これでは保険の本来の機能を毀損しかねません。医療保険を始めとする社会保険は、基本的には、保険料負担の見返りに給付を受けるものです。しかし、子ども・子育て支援金は、医療に直結しない費用を医療保険の枠組みで徴収するもので、給付と負担の関連性が極めて希薄であり、問題であると言わざるを得ません。

 第四に、支援金制度が現役世代の手取り額を減じさせ、子供、子育て支援策や少子化対策と逆行してしまうことです。

 支援金制度は、社会保険料と同様、収入の多い現役世代に負担が偏ります。これでは、子育て世帯を支えるべき政策が、本来の意に反したものになることが懸念されます。

 第五に、支援金制度が賃上げや安定雇用に与え得る負の影響についても触れなければなりません。

 今般の支援金制度は、被保険者だけでなく、事業主にも新たな負担をお願いするものです。本来であれば、その分を社員の給料や新社員の採用に回せたかもしれません。支援金制度が賃上げの原資を減らしたり、安定雇用に対して逆効果になったりしたら本末転倒です。

 るる述べてきたように、子ども・子育て支援金制度は数多くの欠陥を抱えています。そのため、立憲民主党は、政府案の子ども・子育て支援金制度を廃止し、その代替財源として、日銀が保有するETFから得られる分配金収入を充てることとする修正案を提出いたしました。

 先日の委員会では、我が党のこの提案に対して、日銀が保有するETFの分配金収入は既に国の一般財源として活用されており、子供、子育て政策の財源と考える余地はない旨、岸田総理が答弁されました。しかし、修正案の趣旨説明の中で詳細に明らかにしたとおり、そもそも政府は、ETFの分配金収入を歳入として見込んでいないのです。したがって、この総理の答弁は、国民の誤解を招くものであり、我が党の提案を不当におとしめるものであることから、速やかに撤回すべきであります。

 最後に申し上げます。

 政府案の子育て支援拡充策は、児童手当拡充が第三子以降に限定されているなど不十分な点はありこそすれ、一歩前進ではあると考えます。本来であれば、与野党の垣根を越え、議論を尽くし、共に前へ進めたかっただけに、財源について政府・与党の皆様から理解が得られなかったことは残念です。しかし、私たち立憲民主党は、自民党の裏金や脱税の疑念が全く払拭されない中、国民に対して、負担増をごまかし、真摯に説明をせず、不公平な形で新たな負担を強いる本法案には、断固として反対いたします。

 立憲民主党は、引き続き、分断をなくし、社会全体で子供の育ちを支えるという理念の実現に向けて全力で取り組んでいく所存であることを申し上げ、討論を終わります。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 河西宏一君。

    〔河西宏一君登壇〕

河西宏一君 公明党の河西宏一です。

 採決に当たり、自由民主党・無所属の会並びに公明党を代表して、政府提出の子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 本法律案は、我が党が一貫して取り組んできた児童手当の更なる拡充を図るほか、こども誰でも通園制度や、妊婦のための支援給付及び妊婦等包括相談支援事業を創設するものであり、育休取得や時短勤務の際の給付を大幅に拡充するなど、我が党提言の子育て応援トータルプランに照らして、いまだ道半ばとはいえ、岸田総理の言葉をおかりすれば、参考にして作られた法案として、責任と覚悟を持って賛成票を投じるものであります。

 今回、特に焦点が当たったテーマは、これら給付を支える負担の面、つまり、子ども・子育て支援金を国民の皆様に拠出いただく制度が、財源を確保する仕組みとしてふさわしいのかという点でございました。

 政府は、この法的性格について、子供や子育て世帯を、少子化対策で受益がある全世代、全経済主体が支える仕組みであり、支援金は保険料と整理されるとし、拠出額の目安については、我が党も質疑を重ねた結果、令和三年度の実績でいえば、医療保険料額の四から五%程度であり、子育て世帯における負担と給付を平均的な額で比較した場合、約十万円の拠出に対し、約百四十六万円の給付が拡充されることも明らかとなりました。

 これに対し、野党の皆様からは幾つか対案が示され、そのうち、具体的な額が示されたものは、立憲民主党の皆さんによる、政府が、日銀が保有する時価七十兆円程度のETFを簿価三十七兆円で買い取り、その分配金収入一兆円程度を支援納付金一兆円の代わりに充てる案でございました。

 御提案に敬意を表しつつ、この分配金収入は、一般会計の歳入、また、当初予算からの上振れ分は決算に計上され、いずれにしても日銀から政府に国庫納付されるため、既に一般財源として活用されている点、また、含み益三十数兆円が日銀から政府に移動をするため、日銀の財務体質をめぐる市場混乱のリスクが否定できない点などが明らかとなっており、加えて、仮に、日銀がETFの分配金収入に頼らず経営すべきとおっしゃるのであれば、同時に、政府がこれを安定財源として活用することにも疑問符がつきます。

 いずれにせよ、修正議決には至らなかったものと認識をしております。

 他方、政府は、支援金拠出をめぐる負担の考え方について、歳出改革一兆円を行った上で、支援金を総額一兆円拠出いただくものであり、加えて、医療、介護現場従事者の賃上げに資する報酬改定などによる追加的な社会保険負担約三千四百億円についても、令和五年度及び六年度で見込まれる雇用者報酬の伸びにより六千億円程度の相殺効果が生じるため、全体として社会保障に係る国民負担率は上がらない、したがって、実質的負担は生じないとしています。

 ただし、この実質的負担という言葉については、政府が説明しようとすれば国民負担率というマクロの視点になる一方で、国民の受け止め方は、やはり、家計に及ぶ影響などミクロの視点になる。ここに、いわばマクロとミクロのすれ違いが生じているものと考えます。

 また、静かなる有事と指摘される少子化、人口減少は、多忙な日常では気づかぬほど静かに進行し、対策の効果が及ぶにも時間がかかる一方、社会に及ぼし得る影響から、対策は待ったなしという緊急性も持ち合わせており、一種の二面性や複雑さがあると考えます。

 これらの点も踏まえ、政府には、引き続き、丁寧かつ誠実な説明を求めるとともに、私自身、粘り強く説明し、現場の声に耳を傾け続けてまいりたい、このように思っております。

 その上で、少子化、人口減少に歯止めをかけるラストチャンスとされる二〇三〇年代に入るまでの六、七年を俯瞰するならば、今後三年間の加速化プランに続く第二のプランの策定や、子供、子育て予算倍増に向けた財源の在り方も極めて重要となります。先般、この点を岸田総理に問うたところ、加速化プランの実現に全力を挙げ、効果検証を丁寧に行いながら、更なる政策の内容と予算について走りながら検討していく旨、表明がありました。

 この走りながらの検討に向けて、最後、一点申し上げたいことは、政策の大義名分として、少子化、人口減少に歯止めをかけることは重要ですが、それにも増して大切なことは、こども基本法にうたわれた、全ての子供、若者が個人として尊重され、基本的人権が保障されるとの基本理念、また、こどもまんなか社会の実現といった原点であるということであります。年齢や発育状況を問わず、人は、生を受けた瞬間から一人の確固たる人格であります。

 現代社会において子供を産み育てることは大変である一方、何にも代え難い価値を与えてくれると、二児の父として心から感謝をしています。しかし、今、子供を持つことがリスクという意識が若者の間に広がっているとの指摘に大きな危機感を抱くとともに、児童虐待死を根絶する仕組みづくりなど、対策は急務であると考えます。

 そのためにも、本法律案を新たな一歩として、子供、若者、子育てを支えることが家族責任から社会全体の連帯へと転換されていく社会を目指すことをお誓い申し上げ、賛成討論といたします。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 赤木正幸君。

    〔赤木正幸君登壇〕

赤木正幸君 日本維新の会の赤木正幸です。

 教育無償化を実現する会との統一会派を代表し、政府の子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論をいたします。(拍手)

 昨年、我が国で生まれた子供の数は七十五万人、過去最少を更新いたしました。一方、死亡者数は百五十八万人であり、人口の自然減少は八十三万人、毎年一つの都道府県がなくなるほどの人口減少がいよいよ加速し始め、既にどの業界でも人手不足がしきりに騒がれています。

 このような状況において、人口問題に正面から向き合い、少子化に終止符を打つべく、加速化プランを始めとする本改正法案を作成したこと自体は敬意を表するものであり、若者が結婚、出産、育児に前向きになれるのではないかと大変期待をいたしました。

 しかし、提示された具体策は非常に物足りない内容でありました。特に、財源確保のための子ども・子育て支援金制度は、大臣の説明のたびに数値が変わり、誰も正しく制度を理解していないのではないかとしか思えません。欠点だらけの制度であるにもかかわらず、強引に可決し、国民からこっそりと財源を徴収せしめんとする不誠実な姿を断じて見過ごすことはできません。

 子ども・子育て支援金制度には、大きく三つの問題がございます。

 第一の問題は、社会保険料の目的外利用であるという点であります。

 二〇〇八年、後期高齢者制度が始まる際、誰しもが高齢者となりサービスを享受し得るという理由で、現役世代から高齢者への支援金が創設されました。今回も、同じような連帯の観点から、高齢者を含む全世代から子供への支援金制度が創設されますが、高齢者が再び子供になることはないのですから、同じ理屈で制度を拡張することには無理があると断じざるを得ません。委員会では、子供が増えれば将来的に税収が上がることをもって被保険者の受益となるとの説明もありましたが、そのような理屈で社会保険料を徴収できるのであれば、今後、どのような名目にも社会保険料の使途を拡大できることになります。

 第二の問題点は、社会保険料を財源とすること自体が少子化対策に反するというものです。

 社会保険料に上乗せする政府・与党案について、社会保険料は一定収入で負担が頭打ちになるため逆進性が強く、現役世代の中間所得層に特に重く負担がかかることは、委員会で再三御指摘したとおりであります。結婚、出産に臨むべき世代の可処分所得を圧迫することは、少子化を反転させるどころか、少子化を加速しかねません。

 もちろん、政府が、その社会保険料について、所得だけでなく資産も含めた応能負担を検討していることは承知していますが、検討ばかりで一歩も前に進んでいません。真の応能負担に必要不可欠な預貯金口座へのマイナンバー付番についても、全く議論が進んでいません。岸田総理も、社会保険制度の持続可能性の観点から、全ての国民がその能力に応じて負担し支え合う全世代型社会保障の構築が重要であると繰り返しおっしゃっていますが、口で言うばかりで、そのためのリーダーシップは全く発揮されておりません。

 第三の問題点は、増税ならぬ増保険料ばかりを急ぎ、少子化傾向の反転に向けた総理の覚悟が見えないことであります。

 国民一人一人の結婚や出産に係る人生の選択が自由であることは当然ですが、その上で、国としての長期的な人口ビジョンなくして加速化プランの実質的な成功はないと私たちは考えております。政府の目標は、結婚、妊娠、子供、子育てに温かい社会の実現に向かっていると思う人の割合を現状の二七・八%から引き上げようといったものにとどまっています。

 他方、どのようなエビデンスに基づいて積み上げられたのか全く分からない三・六兆円という予算の金額のみが先行し、そのための増税ならぬ増保険料だけが具体的に決まっていくというのは、本末転倒ではないでしょうか。そもそも、少子化対策に明確な正解はなく、世界の国々が試行錯誤、トライ・アンド・エラーを続けているのが現状です。そうした中で、恒久的な財源を確保するための支援金制度の構築を急ぐことに合理性はなく、国民の皆様の御理解を得ることもできません。

 こうした観点から、私たちは、子供支援に関する施策の負担と給付について抜本的に見直しを行い、この見直しが行われる間の財源について、三つの財源を代替案とした修正法案を提出いたしました。一つ、国会議員の定数の削減を始めとする行政改革による支出の削減等、歳出の削減を図ること。二つ、国の不要な資産の売却等によって歳入を増やすこと。三つ、その他の足りない部分には特例公債の発行をすること。

 我々国会議員が先頭に立って身を切る改革を実践し、財源を見出す覚悟を示す必要があります。私たちにはその覚悟がございます。二〇二八年までに、我々国会議員が覚悟を示した議論をしっかりと行い、国民の皆様の十分な御理解を得られる恒久的な措置を検討していこうではありませんか。

 今回、政府・与党が数の力でこうした問題の多い制度を規定した法案を仮に可決するとしても、私たちは、来るべき選挙でしっかり力をつけて、近い将来、必ず支援金制度を廃止に追い込むことを国民の皆様にお誓いして、反対討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法等改正案に対する反対討論を行います。(拍手)

 政府は、二〇三〇年までが少子化傾向を反転させるラストチャンスと強調し、三年間に集中して取り組む加速化プランに三兆六千億円を充てるとしました。しかし、本当にそれだけの危機感があるなら、実質負担増はないなどという、まやかしの説明はやめるべきです。

 反対の最大の理由は、財源問題です。

 政府は、子育て支援の財源を全世代と企業で担うとして、医療保険料に上乗せして支援金を徴収するとしています。ところが、それがどれだけの負担になるかは審議入りするまでに明らかにすると答弁を避け続けました。しかも、不十分な試算を公表した後は、一定の範囲内に収まると開き直ったのです。

 しかし、元々、社会保険は逆進性が高く、保険者や市町村によって負担に差があるため、そこに支援金を乗せると格差が広がることになります。そのことは、予算委員会中央公聴会並びに地域・こども・デジタル特別委員会参考人質疑の中でも、複数の陳述人から厳しく指摘されました。

 政府は、歳出改革によって公費も削減できるとし、その範囲で支援金を徴収するので負担増にはならないと繰り返してきました。しかし、質疑の中で、政府は、改革工程表のメニューの中には負担増となるものもあること、公費の削減とは利用者にすれば自己負担が増えたにほかならないこと、実質負担増にならないとは社会保障負担率というマクロの数字でしかないことを認めました。現瞬間の企業の賃上げトレンドを当てにして、その分も計算に入れているこそくさも許せません。

 次に、こども誰でも通園制度についてです。

 孤立する子育ての不安に応え、全ての子供の育ちを応援するという理念は共有できるものです。しかし、その内容は、これまで教育・保育給付の対象とさえなっていない子育て支援拠点なども新たな給付の対象とします。全国どこでもアプリで空き状況が分かり、直前でも予約ができるシステムをつくります。これでは、利便性の名の下に、子供の利益よりも保護者の都合を優先するものと言わざるを得ません。一時預かりと同じ基準で、保育者の半分は無資格でもよいこと、空き定員の活用型なら保育士を一人も増やさなくてもできるのです。

 子供の育ちや安全をないがしろにし、保育者らに負担を強いるこの制度を認めることはできません。保育士の処遇改善と配置基準の抜本改善は待ったなしであり、公的保育の拡充でこそ、誰でも通園の土台をつくることができます。

 加速化プランに児童手当の拡充などが盛り込まれたことは評価します。一方、子育て世帯が最大の負担は教育費と訴え、社会に出た若者が背負わされている奨学金返済は十兆円にも上っているのに対し、加速化プランは余りに貧弱過ぎます。それどころか、加速化プランでは明記されていない子供の貧困対策や医療的ケア児等困難を抱える子供への支援策は、後回しにされるのではないかとの懸念は拭えません。

 政府は、若者の可処分所得を増やす必要性については強調しています。しかし、失われた三十年、諸外国に比べて賃金がほぼ横ばいの日本は、労働法制の相次ぐ改悪で、不安定雇用と長時間労働の中に若者を置いてきました。その上、毎年十万人という介護離職やヤングケアラーなど、若い世代が結婚や子供を持つ希望を持てないだけではなく、社会保障の担い手を掘り崩し、脆弱な制度にしてきたのは、政治の責任そのものであります。

 終わりに、子育て支援は社会保障の抑制と支援金で国民に負担を押しつけ、それ以外の予算のやりくりは防衛力強化のためになどという政府に、未来を託せるわけがありません。子供や子育て支援は予算の真ん中に据え、大企業や富裕層に応分の負担を求めるなど税制の見直し、そして、戦争準備の大軍拡をやめ、防衛予算の削減で確保するべきです。

 以上述べ、反対討論とします。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党・無所属クラブの田中健です。

 私は、会派を代表して、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 国民民主党は、子供、子育て支援の拡充そのものには賛成です。また、我が党が重ねて訴えてきたヤングケアラーや児童手当の所得制限撤廃などが内容に含まれていることは、一歩前進と評価をします。

 政府は、少子化対策の財源として、子ども・子育て支援金を新設し、健康保険料に上乗せをして国民と産業界から徴収するとしています。最大の問題は、健康保険に充てるべき保険料の目的外流用であることです。

 将来の予期せぬ病気や介護などに備えるのが社会保険の本来の役割で、受益と負担の関係が明確であるのに対し、今回の支援金は、この関係が不透明なため、実質的なステルス増税にほかなりません。それでも岸田総理が無理筋の支援金制度に固執してきたのは、国民の反発が強い増税を避けたいとの思惑があり、給料から天引きされる社会保険料であれば国民は痛みを感じにくい、何ら合理的な理由がないにもかかわらず、まさに取りやすいところから取るという発想です。

 政府は、支援金は歳出改革と賃上げによって実質的な負担は生じないと繰り返し強弁をしてきました。社会保障の歳出改革で社会保険料負担が抑制されれば国民の追加負担も抑えられる、そして、大幅な賃上げが実現すれば実質的な国民負担は生じないとの論法です。しかし、委員会で何度も質疑をし、要望する中で、年収によっては毎月の負担額が千円や千五百円を超えることも明らかになり、この政策で保険料負担が増える以上、詭弁であります。

 春闘においても賃上げに至っていない中小零細企業が数多く存在する中で子ども・子育て支援金を新設することは、負担が増えないという発言と矛盾をします。さらに、上乗せ分は世代一律でなく、現役世代に偏って負担が増すことになり、子供を産み育てる世代への支援という少子化対策とも逆行します。また、保険料の事業主負担分は雇用者報酬の一部と捉えることもでき、事業主の保険料負担が増加することで従業員の賃上げが抑制されるといった懸念が生まれ、政労使、国を挙げて取り組む賃上げに水を差すことになりかねません。

 異次元の少子化対策のためには、若者世代、子育て世代、両世代の異次元の可処分所得対策が必要であり、一日も早く教育無償化を実現し、子供たちを奨学金返済から解放し、結婚や出産がリスクだと思わない社会をつくらなくてはなりません。

 国民民主党は、結婚したくてもできない、子供を産みたくても産めない、社会保険料負担で手取りが増えない、もう限界だ、そういった国民から寄せられた一つ一つの声を大切に、人づくりこそ国づくりをこれからも愚直に訴えていきます。

 税、社会保障、そして国債発行を含め、ごまかすことなく、真正面から堂々と、あらゆる選択肢を視野に入れて財源の議論をし、真の意味で、この国の未来のための、子供、子育てを始めとする人づくりの政策に取り組むべきであることを強く訴え、本法案に対する反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第二、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長野中厚君。

    ―――――――――――――

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔野中厚君登壇〕

野中厚君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、近年における世界の食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国における人口の減少等の食料、農業及び農村をめぐる諸情勢の変化に対応し、食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農業の持続的な発展のための生産性の向上、農村における地域社会の維持等を図るため、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定めるものであります。

 本案は、去る三月二十六日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会においては、同日、坂本農林水産大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入り、四月四日には参考人から意見を聴取し、十日には宮城県及び福島県において視察を行い、十五日には鹿児島県及び北海道においていわゆる地方公聴会を開催いたしました。十七日には岸田内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行い、翌十八日には、立憲民主党・無所属及び有志の会の共同提案に係る修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑を行うなど慎重かつ熱心に審査を重ね、同日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党・無所属の会、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案により、先端的な技術等を活用した農業の生産性の向上に資する施策について、その対象として多収化に資する新品種を明記するとともに、育成に加えて導入の促進を明記することを内容とする修正案が提出されました。日本共産党及び国民民主党・無所属クラブからもそれぞれ修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論、採決を行った結果、国民民主党・無所属クラブの提案に係る修正案、日本共産党の提案に係る修正案並びに立憲民主党・無所属及び有志の会の共同提案に係る修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、自由民主党・無所属の会、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案に係る修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。渡辺創君。

    〔渡辺創君登壇〕

渡辺創君 立憲民主党の渡辺創です。

 所属会派を代表し、政府提出の食料・農業・農村基本法改正案に反対の立場で討論いたします。(拍手)

 今回の改正に向けて、立憲民主党は、同法検討ワーキングチームを設置し、有識者や関係団体からのヒアリングを重ねるとともに、昨年七月からは、各地の生産現場を訪問し、当事者との対話を重視した農林水産キャラバンを全国十三道府県で展開してきました。

 私たちは、今回の改正に期待を寄せました。戦後農政を俯瞰し、旧農業基本法、そして現行基本法の下で、この国の農政は本当に十分な成果を上げたのか。食料や農業、農村を取り巻く環境が深刻になるからこそ、政府・与党がこれまでの農政を真剣に総括し、政策転換を図る好機になるはずだと願ったからです。そのために、政府案の充実に向けて野党も真摯に努力をしようと、昨年六月に見直しに向けた提言を行い、法案提出後も、審議や修正協議を通して、よりよい基本法となるように合意形成に注力しました。

 しかし、政府・与党は、修正を提起した全ての項目に対し、規定済み、あるいは対応不可と返答するばかりで、一顧だにすることはありませんでした。日本の農業を守り、食料安全保障の向上に資するために我々が費やした努力は水泡に帰したため、政府案に反対の立場を取らざるを得ません。

 具体的な指摘を始める前に、戦後農政を振り返るとき、各種の貿易交渉の結果が農業者に犠牲を強い、日本の食料生産基盤を脆弱化させてきたことは論をまちません。経済的に優位な立場であれば輸入による食料確保はたやすいとの意識が背景にあったことを、私たちは率直に反省すべきと考えます。もちろん、その時々の国益をてんびんにかけ、苦渋の選択もあったことは否定しませんが、結果に対する責任は政治全体が共有するべきものであるはずです。

 その前提に立ち、政府の真摯な総括と批判的な検証が不十分であったことに起因する課題について、以下、三点に絞って指摘します。

 まず第一に、三八%に低迷する食料自給率についての認識です。

 現行基本法の下において、自給率目標は一度も達成されておりません。坂本農林水産大臣は、今月二日の委員会答弁において、小麦や大豆の国産化推進などは一定の効果を上げたと強調した上で、米消費量の減少などが低迷の原因との認識を示されました。しかし、国内の人口減少や米の消費量減少は見通せた現象です。二十五年間全く実現できなかった政策目標に対しての認識としては、余りに緊張感を欠いていませんか。

 しかも、政府案は、基本計画で必ず定めるべき事項であった自給率目標を、食料安全保障の確保に関する事項の目標の中の一つの指標に後退させています。実現できないのでフェードアウトさせるかのような対応は看過できません。私たちは、自給率目標を必要的記載事項とする修正を提案したものの、受け入れられませんでした。

 第二は、新自由主義的政策からの転換を明確に打ち出すべきと考えます。

 自民党の森山裕総合農政調査会最高顧問は、昨年五月、JA全中、全国農政連の大会において、改正案の方向性を、新自由主義からの転換である、新自由主義が軽視してきた食料自給、環境、地方重視、食料安全保障の強化も含めて、豊かで強固な日本社会、経済をつくり上げることが大事だ、改革や成長は必要であるが、新自由主義的な改革では持続可能性や広く国民のためになるのかということが非常に大事な視点という旨発言されたと報じられています。

 まさにそのとおりです。しかし、委員会審議を通してこの点を繰り返し問いましたが、坂本大臣を始め農水省の姿勢は不明瞭なままです。

 安倍政権の下、農業でも成長産業化に重きが置かれ、競争力のある経営体を育てることが重要視され、コスト削減などによる体質強化や経営安定に光が当てられました。いわば、農政においても、強いものをより強く、大きいものをより大きくという新自由主義的な考え方が幅を利かせたことが、幅広い農業者の不安を招いているということを重く受け止めなければなりません。安倍農政からの転換を自ら明確に示す気概はないのでしょうか。

 第三に、多様な農業を維持するという姿勢を明確に示すべきです。

 この国土は、必ずしも効率的な集約がかなう農地ばかりではありません。条件不利地でも、工夫と努力で営まれてきた農業があります。政府は、効率的かつ安定的な経営を行ういわゆる担い手や専業的農家が農業者の大宗となることを前提に政策推進を図っていますが、それ以外の多様な農業者が、付加価値の高い農産物の生産や有機農業などに意欲的に取り組み、地域農業を発展させているケースは幾らでもあります。そのような存在が農地を維持し、国内生産の増大に寄与していることは否定し難い事実です。

 私たちは、改正案二十六条第二項に、多様な農業者が果たす役割の重要性を鑑み、その位置づけをより強調するように求めました。修正が受け入れられなかったことは残念ですが、今後も引き続き主張し続けます。

 討論の最後に、二〇二二年に死去した佐賀県唐津の反骨の農民作家、山下惣一氏の言葉を紹介します。これまで当たり前だと思ってきた日本の四季折々の風景は、当たり前のこととしてそこにあるのではなく、農業の中の農の営みがつくり出し支えてきた景観であり、景色であったというものです。

 農は国の基です。その意味を改めて反すうし、立憲民主党は、農業者の所得確保に資する直接支払いの充実など、この国の食料と農業、農村を守るため、積極的な政策を打ち出していくことをお誓いし、討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 小島敏文君。

    〔小島敏文君登壇〕

小島敏文君 自由民主党・無所属の会の小島敏文です。

 私は、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案及びその修正案について、自由民主党及び公明党を代表して、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 一九九九年に食料・農業・農村基本法が制定されてから二十五年、我が国の食料、農業、農村をめぐる情勢は大きく変化しています。世界を見れば、気候変動による生産の不安定化、人口増加による食料需給の逼迫、国際情勢の緊迫など、食料がいつでも自由に手に入るというのは当たり前ではなくなってまいりました。

 食料安全保障を確保していくためには、国内で、できるだけ物は国内で作り、そして、賄い切れないものは安定的な輸入の確保も図るといった現実的な対処が必要であります。加えて、国内では、近年、物理的、経済的要因による食品アクセス問題が顕在化しています。国民一人一人が食料を入手できるようにするといった視点も加えて、食料安全保障を捉え直す必要があります。

 次に、国内の食料供給能力という観点から、人口減少への対応は避けて通れない問題でもございます。

 基幹的農業従事者が、今後二十年間で約四分の一に減少するおそれがあります。多くの人に参入してもらえるような、農業の魅力を高めつつ、少ない人数でも食料供給ができるよう、備えが必要であります。

 担い手の方が農地を引き継ぎやすくするように、農地の集約化、スマート技術等による省力化、サービス事業体によるサポートなどの環境整備が欠かせません。また、全てを担い手に引き受けていただくことはできません。地域の話合いを通じまして、担い手以外の多様な農業者の方も、生産活動を通じて農地を保全管理していく。生産し切れない場合には、管理できる方に円滑に渡していく。地域の農地を守っていくことが大切になってまいりました。

 同時に、食料を持続的に供給するためには、スマート農業などを通じた生産性の向上、ブランド化等による付加価値の向上、また輸出を通じた販路の拡大など、若い人が希望とやりがいを感じられる、稼げる農業を実現していくことが大切でございます。

 あわせて、資材費や人件費が中長期的に高騰する中で、食料供給が持続的なものとなるよう、合理的なコストが関係者間の価格交渉を通じて価格に考慮されるような仕組みづくりにチャレンジをいたします。農産物の価格は上げられない、このような諦めた気持ちが、長年にわたってデフレの一因だというふうに考えます。その上で、恒常的なコスト上昇分の価格への反映が間に合わなければ、生産資材の高騰対策などの経営安定化対策が重要でございます。

 加えて、持続可能性を高めるためにも、環境と調和の取れた産業への転換が必要となってまいります。

 以上、こうした観点から、自民党では、基本法改正には、これに向けた議論を二年前から続けてまいりました。今回の法律案は、党で議論してきた内容とも方向性を同じくする、時宜にかなっているものと考え、賛成するものであります。農林水産委員会では、農業者の方々の収益性などについて様々な議論が行われました。自由民主党、公明党及び日本維新の会・教育無償化を実現する会が提出しました、多収化に資する新品種の導入促進を明記する修正案についても、生産性向上に必要な取組であり、賛成をいたします。

 食料安全保障の基本的強化、抜本的強化等に向けて、本法律案及び修正案につきまして、政策をしっかりと推進していくことを政府に期待するものであります。

 以上申し上げ、私の賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、食料・農業・農村基本法改正案に反対の討論を行います。(拍手)

 今回の基本法の見直しは、世界的な食料危機が進行する下で、先進諸国で最低に落ち込んだ日本の食料自給率を向上させ、崩壊の危機が広がる農業と農村に希望をもたらす改正にしなければなりませんでした。ところが、本改正案は、現行法で第一の目標としてきた食料自給率の向上を、食料安全保障の動向に関する事項などと変更し、農政の最重要課題を投げ捨ててしまったのであります。

 一九六五年に七三%だった日本の食料自給率は、今や三八%に落ち込んでいます。その原因が輸入自由化にあったことは明白です。歴代自民党政権は、麦、飼料、大豆など、アメリカの余剰農産物を進んで受け入れ、その後も、牛肉、オレンジの自由化、WTO農業協定、TPP、日欧EPA、日米FTAなど、次々に輸入自由化を行い、その度に安い農産物が大量に流入してきました。

 ところが、度重なる輸入自由化を反省するどころか、法案では、安定的な輸入の確保を明記し、輸入に依存することを正面から認めています。それどころか、輸入相手国の多様化、相手国への投資まで盛り込み、輸入の拡大を正当化しています。到底認められません。

 政府は、米の需要が減退していると言いながら、義務でもないのに、米需要の一割を超える七十七万トンものミニマムアクセス米を輸入し、累積六千三百五十一億円もの税金を投入しました。その半分はアメリカ産米です。農家に希望を失わせる異常な輸入依存と、卑屈なまでの米国追従をやめるべきです。

 現行基本法は、旧基本法にあった農家の生活水準の維持や農業の自然的、経済的、社会的制約による不利を補正との文言を削り、農業を市場原理主義と新自由主義政策に委ねることとしました。その結果、この二十五年で農業従事者は半減し、五十三万ヘクタールの農地が失われました。今や、中山間地の水田が次々と耕作放棄地となり、畜産、酪農農家は過去最悪のペースで離農しています。農村から学校がなくなり、商店がなくなり、ATMやガソリンスタンドもなくなって、生活の基盤が失われようとしています。

 それなのに、法案では、農業者の減少を前提に、対策を諦めています。疲弊する農村に対しては、共同活動を支援することしかない無策ぶりです。担い手の規定も相変わらず、効率的、安定的な農業を営む者、専ら農業を営む者だけを支援の対象とし、定年帰農や半農半X、自給的農家、消費者グループなどによる小規模で多様な農業はそれ以外と、政策の軸に据えていません。

 農家を苦しめている肥料、飼料などのコスト高に対しては、価格転嫁を唯一の方法としているだけです。しかし、実質賃金が低下し続け、低価格農産物の大量輸入をし続けて、再生産可能な販売価格が実現できる保証はありません。農業従事者の倒産は、過去最多を更新しています。農業予算を抜本的に増やし、価格保障、所得補償を行うべきです。

 国内農業の生産基盤を維持する方策は、輸出の拡大とスマート農業だけです。輸出といっても、加工食品が半分以上を占め、輸入原材料を使えば、国内農業の助けにはなりません。

 環境への負荷の低減は盛り込んだものの、最重要課題である温室効果ガス、CO2削減の文言もなく、自然の生態系に依拠した農業の実現が政策の中心に据えられていません。さらに、有機農業の推進については全く規定がなく、食の安全を徹底する姿勢も入っていません。

 以上、本法案は、食料と農業の危機を打開するにはほど遠いものと言わざるを得ません。政府がやるべきことは、食料自給率の向上を国政の柱に据え、際限のない輸入自由化路線を転換し、規模の大小を問わず、農家の経営を全力で支えることです。

 そのことを強く求め、反対討論とします。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 掘井健智君。

    〔掘井健智君登壇〕

掘井健智君 日本維新の会の掘井健智でございます。

 私は、日本維新の会・教育無償化を実現する会との共同会派を代表いたしまして、食料・農業・農村基本法改正案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 農政の憲法とも言える基本法が改正されるのは二十五年ぶりのことであります。この間、現行の基本法は、国民への必要な食料供給、水と緑豊かな国土と農村の保全、そして、国の基幹産業である農業の経営維持に対して、大きな役割を果たしてきました。

 しかし、その一方、この四半世紀で、食料や農業をめぐる国内外の情勢は大きく変化してきたことも事実であります。国内では、人口減少と、国民の嗜好と食生活の変化は、農作物の需要と供給に大きな影響を与えております。海外に目を向ければ、気候変動や伝染性の病によって、農産物の不作や家畜の被害の発生も続発するようになりました。

 さらに、ロシアによるウクライナ侵略によって、穀物輸入の途絶という危機が現実のものとして国民生活を脅かすようになってまいりました。さらに、世界規模の急激な人口増加と経済成長によって、食料をめぐる争奪戦が生じつつあり、我が国の国力低下による輸入農産物の買い負けも危惧されているところであります。

 こうした中で、従来の食料の安定供給の確保という観点を進化させ、食料安全保障の確保という新たな概念がこの改正基本法に盛り込まれたことは、大きな意義があると思います。

 もっとも、食料安保という言葉だけを書けば食と農業が守られるわけではありません。

 我が会派は、改正基本法の実効性をより高めるために、各党各会派に対して、積極的に法案の十三の修正項目を提案してまいりました。我が会派の提案は、一つは、食料安全保障について、食料供給能力確保策に言及するということ、二つは、望ましい農業構造の確立について、現行法の方針を維持、充実させるということ、三つは、農業関係団体について、農協改革の推進を図ることなどを柱とする修正案でありました。

 まず、一つ目の食料安全保障については、食料供給能力の確保につき、米は我が国の主食としての役割を果たしておって、日本の風土に適し、連作障害もなく、生産性も高く、米こそが不測の事態におきましても安定的に供給されるべきであるということから、食料安全保障の根幹である食料供給能力の維持を図る方策としてそれを明記すべきとの問題意識によって、不測の事態においても我が国の主要な食糧である米穀の安定的な供給のために水田機能を維持する必要があるといった趣旨を明記することなどを指摘してまいりました。

 我が国において、将来にわたる食料の安定供給を考えた場合、一番に見直す必要があるのが米の問題であります。

 改めて言いますと、日本の気候風土に適して生産技術が確立した米は、我が国にとって極めて重要な作物であります。今、転作助成を含めて生産調整がなされておりますけれども、国内需要に合わせて生産調整を繰り返していけば、高齢化や人口減少に伴って、需要も生産も縮小し続けることになります。そんなことから、米の輸出を強力に推進し、米の生産を維持拡大していくということが、食料安全保障上、最も効果的であります。我が国の食料安全保障には、米の鎖国政策から米の開国政策への大転換を図ることが重要であります。

 二つ目は、望ましい農業構造の確立関係についてであります。

 新第二十六条の第一項と第二項には、相反する内容が書かれております。本来、理念法にそのような矛盾を記載するべきではないと考えました。第二項のそれ以外の多様な農業者として想定される兼業農家は、現行基本法の効率的かつ安定的な農業経営を営む者、つまり、担い手として既に含まれておりますことから、兼業農家を含めるために効率かつ安定的な農業経営の例外設定を設ける必然性がないのではないか、こういう問題意識となり、第二項を削除いたしますか、あるいは、国は、望ましい農業構造の確立に当たっては、地域における協議に基づいて、効率的かつ安定的な農業を営む、兼業者も含めた多様な農業者によって農業生産活動が行われるよう配慮する、このような修文をすることなどの議論も、実際はしてまいりました。

 長期的な視点を持って、将来の輸入や備蓄計画の中で国内の農業生産を拡大していくためには、ふだんから緊急事態に対応できる農業構造が本当に必要であると思います。

 戦後の農業構造は、農村社会の平等化のために農地改革が行われ、農村の民主化、また、雇用、食料供給等、経済社会の安定には多大な貢献があったと思います。しかし、その後の農業構造は、経営規模が零細で、経営農地が分散錯圃するという要因にもなりました。そこで、農業を国民経済的視点から捉えて、農業の生産性を向上させるということのためには、効率的かつ安定的な農業経営である専業農家に小規模な農地利用を集積、集約するということで農業の最大化また効率化を目指してきたというのが、戦後一貫した農業の構造政策であります。

 しかし、新第二十六条の二項は、国は望ましい農業構造の確立に当たってはというフレームにおいて、多様な農業者によって農地の確保が図れるように配慮するということでありまして、兼業農家を望ましい農業構造に組み入れたとしか、なかなか読み取れません。このように、農業を副業的に営む経営体や自給的農家を含む兼業農家を法文で明示するということは、農地バンクや農地の集積率目標というこれまでの構造政策に反するようにも見えました。

 小規模な農地を専業農家に集約することで農業の大規模化また効率化を目指してきた従来の政策と矛盾しないのか、また足かせにならないのか、こういう構造政策の問題について、農業の担い手をより広く捉え、農地の確保を図れるように配慮する、これが日本の農業にとって本当にいいのかどうか、これも含めて議論しました。

 生産調整や価格安定、同じ課題が繰り返されるという懸念から、これまで議論を重ねてきたわけでありますけれども、国内には多くの中山間地域を抱えて、そこで集約、集積を行って効率的かつ安定的な経営が実際営みにくい、そういった現状は確かにあります。

 兼業農家には、農地の保全管理を担っていただく役割としてきちんと位置づけて、農業生産に携わる農家としてフル活動させることが有効であるということでありました。農地が小規模なところに帰っていくのじゃないということであります。

議長(額賀福志郎君) 申合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いをいたします。

掘井健智君(続) 今後は、兼業農家の課題、こういったものを取り組んでいきたいと思います。

 兼業農家を中心とした生産調整や、また価格安定の課題、農家の所得補償の問題、こういった課題解決のために、これからも努力していただくことを期待して、賛成討論といたします。

 皆さん、御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 私は、会派を代表し、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に反対の立場で討論いたします。(拍手)

 基本法は理念法です。しかし、理念が複数ある場合、そこには、あちらを立てればこちらが立たずというトレードオフの関係がしばしば生じます。今回改正される食料・農業・農村基本法は、五つの基本理念を掲げていますが、その関係はどのように整理することができるのでしょうか。

 例えば、現在の食料・農業・農村基本法の基本理念は、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興の四つを掲げています。この関係を説明すると、農業の持続的な発展を図ることができれば、国内の農産物供給が確保されるので、食料の安定供給の確保は実現され、農地も有効に活用されて守られるので、多面的機能の発揮も実現することになります。そのため、農業の持続的な発展から食料の安定供給の確保と多面的機能の発揮に一方向の矢印が引かれる関係になっています。また、農業の持続的な発展と農村の振興は、手を携えながら、まさに車の両輪として進んでいくという関係が想定されています。そのため、両者の間は双方向の矢印となっています。

 もちろん、これは青写真にすぎず、実際にはそのとおりにいかないケースも見られますが、曲がりなりにも理想的な関係を描こうとしていました。現行法には、一本筋の通った哲学が確かに存在しています。

 しかし、今回の改正案では、そうした全体的な体系は示されていません。現行法の一番目に掲げていた食料の安定供給の確保に代わり、改正案では、食料安全保障の確保と、環境と調和の取れた食料システムの確立が新設されましたが、部分にとどまっており、全体像が見えてきません。

 これまでの審議で見えてきたことは、政府は、食料自給率を向上させ、国内への食料供給を増やし、農業を発展させようとしているのではなく、農業を輸出産業化することによって国内の農業生産基盤を確保し、それによって食料の供給能力を維持しようとする姿勢です。

 これは、第二次安倍政権が進めてきた新自由主義農政と全く同じです。そのときのロジックは次のようなものでした。

 少子高齢化によって国内農産物市場が縮小する一方、国際農産物市場は拡大しているので、国内農業を輸出志向型で発展させなければならない。そのためには、低賃金の外国人労働者に依拠しつつ、農業規模を拡大し、さらに、法人化することでコストを下げ、輸出農産物の低価格化を実現する必要がある。そして、農産物の輸出拡大に向けて国内農業生産を拡大し、それによって食料自給率を向上させていく。

 しかし、このロジックが破綻していることは、安倍政権以降、食品、農林水産物の食料自給率が向上していないことから明らかです。この方針を続けるなら、幾ら基本法を改正したとしても、食料安全保障を確保することはできません。

 さらに、食品産業の輸出が食料安全保障につながると政府は主張しますが、輸出といっても、多いのは、ウイスキーを始めとするアルコール飲料やカレーのルーなどの調味料であり、その原料も、国産の農作物ではなく輸入品に頼っています。これでは、日本の農家の所得の向上にも寄与しません。

 また、二年前に成立したみどりの食料システム戦略が、農業ではなく環境に区分された点は問題です。有機農業の栽培面積の拡大など、これまでの農業生産の在り方を根本から見直し、そこから新たな農村社会を展望することがみどりの食料システム戦略には求められ、期待されていました。しかし、残念ながら、今回の改正案に有機農業という言葉すら盛り込まれませんでした。二十五年ぶりに改正される基本法で有機農業が明確に位置づけられなかったことで、有機農業に取り組む現場の生産者は目標を失いかねません。やはり、ここはしっかりと盛り込むべきです。

 農業政策をころころ変えていると、生産者は、どうせまたすぐに政策は変わるだろうと思い、政府がどんな政策を打ち出しても、まともに対応しなくなってしまいます。現に、農協と農林水産省の関係において、そのような場面が生まれていないでしょうか。

 以上、本法案に反対する理由を申し上げ、討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第三、風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長小泉進次郎君。

    ―――――――――――――

 風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小泉進次郎君登壇〕

小泉進次郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するため、電波障害防止区域の指定、同区域内における風力発電設備の設置等に係る届出等の義務及び設置者と防衛大臣との協議等に関する制度を創設するものであります。

 本案は、十五日本委員会に付託され、十六日木原防衛大臣から趣旨の説明を聴取しました。十八日、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第四、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、誹謗中傷等のインターネット上の違法、有害情報に対処するため、大規模なSNS事業者等を大規模特定電気通信役務提供者として指定し、投稿に係る削除対応の迅速化及び運用状況の透明化を図るための義務を課す等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月八日本委員会に付託され、翌九日松本総務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、質疑に入り、まず十六日に参考人に対する質疑を、昨十八日には政府に対する質疑を行い、同日これを終局しました。

 質疑終局後、本案に対し、自由民主党・無所属の会、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案により、大規模特定電気通信役務提供者が毎年一回公表しなければならない事項として、送信防止措置の実施状況及び当該実施状況について自ら行った評価を追加する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

    〔議長退席、副議長着席〕

     ――――◇―――――

 情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(海江田万里君) この際、内閣提出、情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣河野太郎君。

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、デジタルによる手続完結に加え、行政機関等が円滑なデータ連携を行い、手続において一度限りの情報提出とすること等の環境整備を行うことで、国民の利便性向上と行政運営の簡素化、効率化を図ることを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、デジタル社会形成基本法において、施策の策定に係る基本方針にデータの内容を正確かつ最新に保つこと等のデータの品質の確保のための措置を講ずることを追加するとともに、デジタル社会の形成に関する重点計画において定める事項にデータの品質の確保に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策を追加することとしております。

 第二に、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律において、公的基礎情報データベースの整備等の推進に係る措置を講ずるとともに、他の法令の規定により変更届出を行わなければならない法人に係る名称等の登記事項について、行政機関等がデータ連携により入手した場合は、当該変更届出が行われたものとみなす旨の措置を講ずることとしております。

 第三に、独立行政法人国立印刷局法及び情報処理の促進に関する法律において、公的基礎情報データベースの整備等を効果的に推進するための体制整備として、独立行政法人国立印刷局にデータの加工等の業務を、独立行政法人情報処理推進機構にデータの標準化に係る基準の作成等の業務を追加した上で、関係業務の主務大臣に内閣総理大臣を追加する措置を講ずることとしております。

 第四に、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律において、内閣総理大臣が特定個人情報を利用して事務処理を行う行政機関等に対し当該情報の正確性の確保のための必要な支援を行う旨の規定を定めることとしております。また、個人番号カードについて、本人確認に係る機能を移動端末設備に搭載するための措置を講ずるとともに、次期個人番号カードの導入にあたり、同カードの電磁的記録事項として性別は残した上で、券面記載事項から性別を削除する等の措置を講ずることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年三か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(海江田万里君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。中谷一馬君。

    〔中谷一馬君登壇〕

中谷一馬君 立憲民主党の中谷一馬です。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 立憲民主党は、誰一人取り残されないデジタル社会というビジョンを掲げ、デジタル政策を推進するに当たっては、政府による国民の監視手段にしない、個人情報保護の徹底、セキュリティーの確保、利便性の向上、苦手な人も含め誰も取り残さず、使わない人が不利にならないという五原則の下、DXを進めます。

 デジタル社会形成は、理想を突き詰めれば、自動的にあらゆるものの生産とサービスの提供がなされる社会につながり、様々な分野においてその発展が期待されます。

 技術革新も速いスピード感で進展しており、みずほ銀行の産業調査では、二十六年後の二〇五〇年にはスマートフォンやパソコンを使っている人がゼロ%、いなくなると想定され、デジタル機能を搭載したスマートコンタクトレンズなどの新しい技術が主流になると報告されています。

 コペルニクスが、天動説が主流の時期に地動説を唱えたときのように、物事の見方、価値観が百八十度転換するエポックメイキングは、いつの時代にも訪れます。こうした時代において、私たち未来をつくる政治家の役割は、無知の知、知らないことに気づき、日々の研さんを怠らず、十年後、二十年後はどういう時代かを推察しながら未来のスタンダードを構想し、国民が明日はもっとよりよくなると実感できる政策を実践することです。

 そこで、まず伺いますが、二〇三〇年代、二〇四〇年代の近未来はどういったデジタル社会が形成されているという構想を持った上で、二〇二〇年代の今におけるデジタル政策を講じているのか、お示しください。

 さて、ベースレジストリーの整備に関しては、社会活動の様々な場面で活用できる基盤となるデータベースを作成することが求められており、EBPMを推進する土台としても期待されていますが、政府は、国民からの信頼に足り得るベースレジストリーの整備をどのように行うのか、また、データの品質の確保に関し、政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策を具体的にはどのように講じて運用を行うのか、見解をお示しください。

 次に、スマートフォン用電子証明書のiPhoneへの搭載などについて伺います。

 日本における現状のスマートフォンの個人保有割合は七七・三%。メイン利用率は、iPhoneが五〇%、アンドロイドが四九・七%です。すなわち、現時点で電子証明書をスマホ搭載できるのはアンドロイドの端末のみであり、メイン利用の半数を占めるiPhoneユーザーが利用できません。改善を進めるべきであると進言を続けていますが、政府からは、調整をしている、お待ちいただきたい旨の答弁が繰り返されるばかりで、いまだ実現には至りません。

 そこで伺いますが、スマートフォン用電子証明書のiPhone搭載に関する交渉はいつから始めていますか。また、実現しない状況は、一体どういう理由からですか。

 さらに、本改正案が成立した際には一年以内にカード代替電磁的記録のスマホ搭載が始まりますが、開始と同時にiPhoneユーザーも電子証明書、カード代替電磁的記録のスマホ搭載ができる状況となるのか、アンドロイドユーザーとの格差が生まれるのか、明確にお示しください。

 そして、二〇二六年に導入予定の次期マイナンバーカードの発行時にも間に合わない可能性があり得るのか、明快にお答えください。

 そして、マイナンバーカード機能のスマホ搭載や次期マイナンバーカードへの切替えに当たっては、利用する各機関及び利用者への影響を考えなければなりません。

 医療機関など各利用機関等のカードリーダーで、カードサイズなら入るが、スマートフォンサイズだと入らない読み取り機はありますか。また、入るが、スマートフォンだと読み取れない機器はありますか。さらに、読み取りが困難になる場合、外づけのカードリーダーを設置する必要などが生じると考えますが、いかがですか。

 それに加え、次期マイナンバーカードの新暗号に対応したソフトウェアの提供なども必要になりますが、政府は、これらの課題に対して、各利用機関等への継続的な支援策を具体的にはどのように講じ、どの程度の予算感を見据えているのか、詳細をお示しください。

 次に、ジェンダーニュートラルなデータの管理と身元証明書の発行について伺います。

 本改正案では、次期マイナンバーカードの導入に当たり、マイナンバーカードの電磁的記録事項として性別は残りますが、券面記載事項から性別を削除する方針とのことで、率直に評価します。

 一方で、現在の住民基本台帳に登録されている性別は、男性、女性のツーパターンで管理されています。

 しかしながら、アメリカでは、運転免許証などの身分証で性別欄の表示を、男性、女性のほかに、トランスジェンダーを表すXとする公共機関が増えていますし、ノンバイナリージェンダーの考え方を取り入れているカナダ、デンマーク、ドイツなど多くの国では、パスポート上にXの表記が可能です。世界的にも、データベースアプリケーションなどの情報システムでは、人の性別表記について、国際規格ISO5218が定められており、一は男性、二は女性、九は適用なし、〇は不明とし、性の多様性を当たり前に包容しています。

 本件について、二〇二一年三月二十四日の衆議院内閣委員会において私から国務大臣に伺わせていただいた際、データの標準は国際標準に準拠することが非常に重要、各施策を検討する中で関係省庁と連携していく必要があるテーマと述べられていたものの、検討は進んでいません。

 日本においても、性別の在り方については、ジェンダーニュートラルな発想で国際標準を捉えたデータの管理と身元証明書の発行に関して、関係省庁横断的に課題を整理し、実行することの検討を含めた議論を行っていただけませんか。見解を伺います。

 次に、健康保険証の在り方について伺います。

 二〇二四年三月のマイナ保険証の利用率は五・四七%であり、普及が進んでおらず、ピーク時の二〇二三年四月の六・三〇%より約一ポイント低い状況です。

 広く普及している今の健康保険証を無理に廃止してマイナ保険証に置き換えるという壮大な無駄を進めるよりも、健康保険証を残した方が効率的ですし、健康保険証を二〇二四年の十二月に廃止することにこだわる必要は全くありません。

 政府が本来行うべき政策は、利便性、効率性の向上に資するUXに優れたソリューションを提供し、結果としてマイナ保険証を誰もが自然に欲しくなる仕組みを構築することであり、健康保険証を強行廃止することではありません。

 立憲民主党は、健康保険証の廃止を延期する法案を昨年国会に提出しています。一度立ち止まることは決して恥ずかしいことではありません。この法案に御賛同いただき、デジタルとアナログを併用しつつ、丁寧にデジタル社会の形成を進めませんか。見解を伺います。

 次に、避難時のマイナンバーカードの取扱いについて伺います。

 二〇二四年一月の能登半島地震を受け、河野大臣は、避難時にマイナンバーカードを持つように呼びかけました。

 一方で、災害発生時は荷物を持たず命を持って逃げろというのが原則であり、災害リスク学専門の東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は、マイナカードを捜している間に津波が襲ったらどうするのか、河野氏の呼びかけは災害の危険を理解しておらず、誤ったメッセージになりかねないと危険視しています。

 実際に、能登半島地震の避難者から、逃げるのに必死でマイナンバーカードを持ち出すどころではなかったという声がありますが、これらの状況を踏まえても、河野大臣は当該呼びかけが適当であったと考えていますか。さらに、四月十七日には豊後水道を震源とする地震が発生しましたが、今後も、避難する際にはマイナンバーカードも一緒にと呼びかけを続けますか。

 また、こうした呼びかけを行うことよりも先に、例えば、マイナンバーカードを紛失した者に対しては即日再交付できる体制を整備するなど、被災者のニーズに寄り添った仕組みを導入する方が大切ではありませんか。河野大臣の見解を伺います。

 次に、インターネット投票について伺います。

 現在、マイナンバーカードは人口の約七三・五%が持っており、デジタルインフラが整いつつあります。

 私は、インターネット投票の実現を一つのライフワークとしており、三年前の二〇二一年には、筆頭提出者として衆議院にインターネット投票導入推進法案を提出いたしました。ネット投票は、今の投票制度に不自由を感じている多くの人たちの不便を解消できると確信をしており、速やかに実現すべきと考えています。

 二〇二二年の参議院選挙の際に行われたネット投票に関するアンケートでは、各党が実現に賛成と答えており、反対表明はありませんでした。

 そうした中、国会でネット投票に関する質問を行うと、お決まり文句で、各党各会派で議論との答弁が返ってまいりますが、ネット投票法案は、国民民主党とも日本維新の会とも共同提出をしてきた経緯がありますので、与党がやると言えば、明日からでも実施に向けた具体的な検討を進めることができます。

 本件を先月河野大臣に伺った際、自民党の中でもしかるべきタイミングで議論が始まると思いますし、公明党の方にもお話をしているところでございますとの答弁がありましたが、具体的にまだその動きは見えてまいりません。

 そして、残念ながら、現状は自民党がボトルネックとなり、政治と金の問題は、実態解明は不十分、処分は甘い、改革案はいまだ出てこないなど、多くの政治改革が進んでおりません。

 そこで伺いますが、河野大臣は、先月開催された民主主義ユースフェスティバルで、今やっている国会は今年の六月まで会期がありますから、そこの間にしっかり議論をしてもらう、この通常国会が間に合わなければ、秋に臨時国会が行われるなら、そこで法改正をやるということも最速できると発言していますが、今年中にはインターネット投票に関する自民党内の合意形成が行われ、少なくとも二%の方しか投票できていない在外有権者の投票環境を改善する在外インターネット投票を可能とする法改正を実現できる見込みはありますか。国会の場でも明快に御答弁ください。

 本日質問した内容を政府がはぐらかし、実現に至らぬ場合には、政権交代を実現して、真の政治改革、デジタル改革を皆様とともに進め、新時代を切り開くことをお約束申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) まず、中長期的なデジタル社会構想についてお尋ねがありました。

 デジタル分野の技術革新スピードは速く、新技術など予測不可能な要素もありますが、デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な国民が価値ある体験をし、多様な幸せが実現できる社会を目指してまいります。

 その上で、労働力不足や災害の激甚化などの課題を的確に捉え、最適なデジタル技術を迅速に活用し、最も効果的な施策を講じることがデジタル政策として重要です。

 このためには、政府の課題把握力やデジタル対応能力を高める必要があり、知見を有する民間人材の積極活用なども行いながらデジタル政策を講じてまいります。

 次に、ベースレジストリー整備とデータ品質確保についてお尋ねがありました。

 ベースレジストリーの整備については、法案において創設することとしている法定計画に基づき、データを登録する行政機関やデータ連携を担う行政機関と協力し、政府一体で整備を推進してまいります。

 また、手入力による転記ミス防止のため、自動入力の推進や整備したベースレジストリーの参照徹底により、政府一体でデータの品質確保に努めてまいります。

 次に、マイナンバーカード機能のiPhone搭載についてお尋ねがありました。

 まず、電子証明書機能の搭載に関する交渉開始時期と、実現しない理由については、相手方のある交渉という性質上、回答を差し控えさせていただきます。

 また、改正案によるカード代替電磁的記録のスマホ搭載は、制度的にOSを問いませんが、OSごとに異なる開発が必要となることから、二〇二六年を超える可能性を含め、実現時期を申し上げることは困難です。

 いずれにせよ、利便性向上にもつながることから、マイナンバーカード機能のスマホ搭載の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、医療機関等におけるカードリーダーの対応についてお尋ねがありました。

 マイナンバーカード機能のスマホ搭載への対応については、現在のカードリーダーの中にはスマートフォンを置けないものも一部あり、その対応も含め、厚生労働省において、スマートフォンによる健康保険証の利用が円滑に可能となるよう検討を行っていると承知しています。

 また、次期マイナンバーカードへの対応については、新旧両方のカードを取り扱うことができるようにするため、カードリーダーなどのソフトウェアを更新することが必要になると想定しています。各利用機関における負担の低減や支援と併せ、具体的な検討を今後行ってまいります。

 次に、性別の管理と記載についてお尋ねがありました。

 まず、一般論として、各施策において多様な性の情報を取り扱うことが必要な場合に、情報システムにおいてそれに対応できるよう、国際標準に準拠することは大切であると考えます。

 その上で、性別に関するデータの管理と身元証明書の発行の在り方については、性の多様性に関する様々な議論を踏まえた検討が必要であると考えています。

 次に、健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証は医療の質の向上につながるものであり、その効果の早期発現のため、現行の健康保険証の発行を十二月二日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することとしており、この方針に変更はありません。

 なお、マイナ保険証への移行に際しては、デジタルとアナログの併用期間をしっかり設けて、マイナ保険証の恩恵をできるだけ多くの方に受けていただきつつ、全ての方に安心して確実に保険診療を受けていただける環境を整えてまいります。

 次に、避難時のマイナンバーカードの取扱いについてお尋ねがありました。

 能登半島地震では、マイナンバーカードをお持ちの方は、避難所における薬剤情報の確認や、罹災証明書のオンライン申請などに活用いただいており、今後の災害では、避難者情報の把握にも活用予定です。

 こうした災害時だけでなく、平時からカードを携帯していただくことが重要であり、救急業務での活用など、利用シーンの拡大を通じ、ふだんから持ち歩くメリットも広げていくことで、携行率の向上を図ってまいります。

 また、災害時のカード紛失への対応として、申請から最短五日で交付できる環境の整備を進めています。

 最後に、インターネット投票についてのお尋ねがありました。

 インターネット投票は選挙制度の根幹に関わるものであり、その実現に向けては、まず、各党各会派における御議論が欠かせないものと考えます。

 その際、各党各会派における議論の参考としていただけるよう、利用者起点に立って課題発掘対話を実施し、実際に在外投票に当たって苦労された御経験や、若者の目線から見たインターネット投票の必要性、実際にインターネット投票の導入に向けた取組を進められている地方公共団体の首長の声などをお聞きしたところです。

 課題発掘対話についてはインターネットでも公表しており、今後、これらの知見が導入の機運醸成、さらに、各党各会派の御議論につながることを期待しています。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    松本 剛明君

       農林水産大臣  坂本 哲志君

       防衛大臣    木原  稔君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    河野 太郎君

 出席副大臣

       デジタル副大臣 石川 昭政君


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