第3号 令和6年12月2日(月曜日)
令和六年十二月二日(月曜日)―――――――――――――
議事日程 第三号
令和六年十二月二日
午後一時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
永年在職の議員海江田万里君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
国務大臣の演説に対する質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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永年在職議員の表彰の件
○議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。
本院議員として在職二十五年に達せられました海江田万里君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。
表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
表彰文を朗読いたします。
議員海江田万里君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する
この贈呈方は議長において取り計らいます。
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○議長(額賀福志郎君) この際、海江田万里君から発言を求められております。これを許します。海江田万里君。
〔海江田万里君登壇〕
○海江田万里君 この度、院議をもって永年在職議員の表彰を受けましたことは、誠に光栄の至りであり、額賀議長を始め、御在席の各位に深甚なる謝意を申し上げます。(拍手)
私が衆議院に初めて議席を得ましたのは、一九九三年七月の第四十回選挙においてであります。爾来、衆議院議員選挙に当選すること九回、議員として在籍すること二十五年。この間、浅学庸才の私を長年にわたり御支援いただいた選挙区の有権者の皆様、多くの労苦を共にした事務所の諸生、そして家族に、心から感謝の意を表します。(拍手)
初当選した第四十回選挙では、細川政権の誕生により、いわゆる五五年体制が崩壊し、政治改革が叫ばれ、政治と金の問題を解決するため、小選挙区比例代表並立制の選挙制度が導入されました。しかし、それから三十一年が経過して、再び国会で政治と金の問題が取り上げられ、政治改革が大きなテーマとなっていることに対し、この間、政治は何をしていたのか、私自身、内心じくじたる思いがいたします。
二十五年の議員在職中、私は、主に財務金融委員会、決算行政監視委員会で委員を務め、それぞれ委員長も経験させていただきました。国民に負担を強いる租税の内容を定め、その使い道を監督することは、議会の最重要の役割です。長年にわたりその重責の一翼を担えたことは、私の最も喜びとするところであります。(拍手)
初当選からの三十年余りの政治人生を振り返り、脳裏に浮かぶ事跡の一つは、二〇一一年三月、福島の原子力発電所事故に際して、経済産業大臣として対応に当たったことです。事故の収束に向け心血を注ぎましたが、その評価は後世の歴史家に委ねたいと思います。
更に忘れられないことは、二〇一四年十二月の選挙で、民主党代表を務めていた私が、自身の議席を失ったことであります。恥ずかしさに消え入りたい思いの私に対し、世の中には勝利より誇るに足る敗北があると励ましてくれた支持者に支えられ、二年十か月にわたる浪人生活を耐え忍び、復活を果たすことができました。(拍手)
その後、二〇二一年十一月の特別国会で第六十八代衆議院副議長に選ばれました。身に余る栄誉です。功遂げ身退くは天の道なりとの老子の言葉に従い、田園に帰ることも考えましたが、現在の混迷する世界情勢、日本が置かれた厳しい環境の中で、人々の豊かで安心できる暮らしを実現するため、そして、非戦、平和の日本を守るため、いましばらくは力を尽くそうと決意し、今日に至っています。(拍手)
結びに、今は亡き父母に感謝の念を伝えることをお許しいただきたいと思います。特に、代議士になる夢を諦め、一政治記者として一生を終えた父親が、この議場のどこかから、万里おめでとうと声をかけていてくれる気がいたします。
本日は、永年在職議員表彰、誠にありがとうございました。(拍手)
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国務大臣の演説に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野田佳彦君。
〔野田佳彦君登壇〕
○野田佳彦君 立憲民主党の野田佳彦です。
会派を代表して、石破茂内閣総理大臣の所信表明演説に対して順次質問を行います。(拍手)
まずは、所信表明演説に対する率直な感想からお話をしたいと思います。
組立てに驚きました。いきなり外交から始まり、内政の重要課題に移り、いつ政治改革をお話しされるのかなと待っておりましたが、後半の後半、取ってつけたように、最後に触れられました。
私は、外交を最初に持ってくる辺りは石破総理らしいなと、平時なら、むしろ評価すると思います。でも、先般の総選挙の後、少数与党に陥った、その結果を真摯に受け止めて、政治と金の問題が一番重要な課題であった、それについて国民は厳しい審判を下したわけでありますので、深い反省の下に、これから政治をどのように正していくのか、国民の政治に対する信頼をどのように取り戻すか、そこから始めるのが本来の組立てではなかったのかと私は思いました。
私は、信なくば立たずという状況がいつまでも続くというのは、日本にとって大きなマイナスだと思います。政治資金規正法、この抜本的な改革は、年内にも実現をしなければいけないと考えています。だからこそ、代表質問は、政治改革から入っていきたいと考えます。
まず質問をさせていただきたいのは、政治倫理審査会の開催についてであります。
通常国会においては、八十三名の裏金議員に対して出席要求をいたしました。七十数名が出席しないで通常国会が終わってしまいました。
ところが、総選挙の後、状況が変わりました。総選挙の際に、説明責任を果たさなかった議員が非公認となったということもあるんでしょう。来年夏の参議院選挙で非公認では困ると思っている参議院議員のいわゆる裏金議員全員が、政倫審に出席を希望しているということであります。手のひらを返したように、随分変わったなと思います。
一方で、衆議院の選挙は終わったのでもうみそぎが終わったと思っているんでしょうか、衆議院においては、残念ながら、政倫審に出て弁明をしようという動きは、残念ながら聞けません。
そこで、お尋ねをしたいと思います。
政治資金収支報告書への不記載があった議員に対して、野党は政治倫理審査会への出席を求めています。参院側で出席していなかった不記載の参院議員二十七人は全員政倫審に出席するそうですが、衆院選で当選した不記載議員に対しても、政倫審への出席を促しますか。自民党総裁である総理にお尋ねをしたいと思います。
次に、企業・団体献金の廃止についてお尋ねをいたします。
政治活動の共通の土俵づくりは、幅広く与野党が合意をしていくということが前提になると思います。その上で、多くの野党が主張している企業・団体献金の廃止について、総理が所信では全く触れていない、これについては違和感を感じました。
先ほど謝辞を述べられた海江田先生と同じく、私も九三年初当選でありましたけれども、そのときは、九三年から九四年、政治改革が開かれて、政治改革関連法が成立をいたしました。
そのときの大きな柱の一つが、国民の皆様から一人当たり二百五十円、当時、コーヒー一杯分と言っていましたが、お金を頂戴して、それを原資として政党の活動を助成する政党交付金が導入をされ、それと併せて企業・団体献金は廃止をするということが確認をされていたはずであります。
その法律によって個人に対する企業・団体献金は廃止され、その後、資金管理団体への献金も廃止をされましたけれども、政党に対する企業・団体献金は、五年後に見直しをすることになっていました。ところが、ずっと見直しもされることもなく、今、政党本部でも、そして多くの支部でも、企業・団体献金を受け取っているという状況であります。
政党交付金と企業・団体献金の私は二重取りだと思っています。この三十年前の宿題を清算することこそ、平成の政治改革の宿題をきちっと今応えることこそ、抜本改革の柱に私はなると考えています。
当時、万年筆を交換してサインをして合意書を交わした細川元総理も、そして自民党の河野洋平総裁も、共に、企業・団体献金廃止はどうしたんだと今嘆かれているじゃありませんか。
そして、共同通信においても世論調査を行って、企業・団体献金は禁止すべき、これが六七・三%でありました。そして、必要なしというのが二六・二%でありました。こうした世論も踏まえて考えるならば、改革の本丸である企業・団体献金の禁止をなぜ議論の俎上にのせようとしないのですか。端的にお答えをいただきたいと思います。
次に、政策活動費についてお尋ねをしたいというふうに思います。
政党から党幹部に対して渡される、いわゆる使途公開義務のない渡し切りのお金でありますが、自民党では大体一年間で十億円ほど使われているようであります。党勢拡大という名目ではありますけれども、幹事長の軍資金になっているのではないのか、あるいは陣中見舞いに使われているのではないのか、支援者に対する飲食代に使われているのではないのかなどなど、数々の指摘がされているところでありますが、仮にこのお金が余ったとするならば、雑所得としてカウントされて課税の対象になりますけれども、使い切ったか切らないかも分からないお金であります。法律上は認められているとはいえ、これこそ合法的な裏金と言っても過言ではありません。
野党は全て、この政策活動費については廃止をすべきだという立場であります。ところが、自民党案なる一枚紙を拝見させていただきましたところ、外交上の秘密に関する支出や有識者のプライバシー、企業の営業秘密に配慮すべき支出には公表方法を工夫するとあり、新たなブラックボックス、第二の政策活動費をつくろうとしているのではないかと思わざるを得ません。
そこで、自民党総裁としての総理にお伺いをいたします。政策活動費を全廃せず、外交秘密などを名目に非公表の支出を温存しようとするのはなぜですか。お答えをいただきたいと思います。
次に、第三者機関についてお尋ねをいたします。
さきの通常国会で成立をいたしました改正政治資金規正法の附則には、第三者機関の設置が明記をされています。私は全ての政治資金のチェックをするものだと受け止めておりましたが、これも自民党の一枚紙を見てみると、政党が外部に対して行う支出のうち、公表内容に配慮が必要な一部の限定された支出については公表方法を工夫する、この支出の適正を担保するため、第三者機関を設置し、必要な監査を行うと書いてあります。しかも、その設置場所については、国会に置くことを基本としつつ、行政に置くことも視野に入れて検討すると。要は、まだ考え方が整理されていません。
改めて、総裁である総理にお伺いをしたいと思います。第三者機関については、その権限や体制、設置場所をどのようにお考えですか。お示しをいただきたいと思います。
次に、政治資金規正法改正案の審議の在り方についてお尋ねをしたいと思います。
政治の信頼回復のためには、国民の目の前で与党も野党も案を示して、それを比べながら丁寧な審議をして一致点を見出していくということが私は望ましい姿だと思っています。政治改革こそは、熟議と公開という意味においては最もふさわしいテーマであると確信をしています。ところが、残念ながら、自民党にこうした姿勢が見えません。通常国会のことをもっと反省してほしいと思うんです。
四月十日前後に政治改革特別委員会が設置をされました。しかし、当事者である自民党案がなかなか出ないから開店休業の状態がずっと続いて、自民党案が出てきたのは五月の中旬だったんですね。会期末まで残り一か月、短い期間で審議をせざるを得なくて、衆議院の特別委員会の審議時間は十三時間と八分です。短過ぎました。
そして、最後は自民党、公明党に野党の一部を加える形で衆議院は可決をし、参議院においては自民党と公明党だけで成立をさせました。一般の法案ではあり得る形かもしれませんが、政治改革は与党と野党のほとんどが合意をして進めるのが基本じゃありませんか。
私は、今回も同じことになるんじゃないかととても心配をしています。いまだに自民党法案の出す動きはないじゃないですか。会期末は二十一日ですよ。これで丁寧な議論をやって一致点を見出せるんですか。私は、強い疑問、そして懸念を持っているところであります。
総理にお尋ねをしたいと思います。できるだけ多くの野党とともに我々は政治資金規正法再改正案を国会に提出をいたします。総理も、政治資金の問題については我が党が率先して答えを出したいとお話をされていました。政治改革特別委員会を始め、国会のオープンな場で与党案と野党案を議論しようではありませんか。
次に、外交について六問御質問をいたします。
まずは、核兵器禁止条約についてであります。
十月に日本原水協がノーベル平和賞を受賞されました。長い間にわたって、被爆の悲惨さと、そして核廃絶の必要性、平和の尊さを地道に訴えてきたことが世界に評価をされたということは、大変意義があると思います。加えて、ウクライナや中東において、核兵器の使用を威嚇するように今使っているような状況でもありますので、これまたメッセージ性があって意義があると思います。
十日、間もなくオスロで授賞式が行われます。被爆者の方がどのような御挨拶、メッセージを出すのか、世界中の人々に耳を傾けていただきたいと思います。
このような大事な節目でありますので、政府も核廃絶に向かって足を一歩前に踏み出すべきときだと私は思います。
十月十二日、解散の直後の日本記者クラブ主催の党首討論会で、私は、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加すべきではないかと総理にお尋ねをしました。そのときには、残念ながら明快なお答えがありませんでした。
我が党は、締約国会議が行われるたびに国会議員会議も開かれますけれども、そのたびに議員を派遣させていただいております。公明党もそうですね。連立与党の公明党もオブザーバー参加を強く主張されていると承知をしています。
来年三月に開催される核兵器禁止条約第三回締約国会議において、日本もオブザーバー参加すべきではないでしょうか。前向きな答弁をお願いしたいと思います。
次に、首脳会議についてお尋ねをします。
私は、総理になる直前に、今は亡き中曽根元総理に、短い時間でありましたけれども御指導いただきました。忘れられないのは、トップの仕事というのは外交だ、一番大事だ、特に首脳外交は大事であるということを熱っぽく教えていただきました。短い期間でありましたけれども、私もそれを実感することができました。
首脳会議で最も重要なのは、何といっても日米首脳会談だと思います。日米同盟は日本の外交、安全保障の基軸であります。
バイデン大統領との会談は、先般実現をされました。次期大統領のトランプ氏との会談も日程調整をされていたようでありましたけれども、残念ながら実現できませんでした。この点についてお尋ねをしたいと思います。もし、トランプ次期大統領とお会いをする機会が実現できたら、総理はどのようなお話をするつもりでしょうか。
アジア太平洋地域の平和と安定のために、まず個人的な信頼関係を結ぶことは大事です。政治は理屈で動くのではなく信頼で動くと私は思います。その意味からも早期の会談を希望したいと思いますけれども、その際には、率直な意見交換をすべきだと思うんです。
例えば、世界の平和、安定のために、言わなければいけないことがあるんではないんでしょうか。高い関税によって保護主義を広げていくということは、世界経済をスタグフレーションに陥らせる可能性があります。パリ協定からの再離脱は、異常気象を広げて、人類の危機につながります。ウクライナから安直な形で手を引けば、それは、侵略国が喜び、同盟国に亀裂が入ることになります。これらのことを、私は率直に意見交換をすべきだと思います。
トランプ次期大統領との会談が実現をした場合に、総理はどのようなお話をされるおつもりでしょうか。
次に、日中関係についてお尋ねをしたいと思います。
トランプ次期大統領の就任を控えて、APECやG20で、中国は、意識的に反保護主義を強く訴えて存在感を示しておりました。しかし、日本こそが、保護主義の広がりに対して防波堤となり、自由貿易の旗手として国際社会をリードしていくべき、そういう立場ではないんじゃないでしょうか。
その日中間にまたがる問題として、CPTPPへの中国の加盟申請があります。十二月十五日にイギリスの正式加盟が決まります。今、アメリカが離脱している中において、TPP11の主導している立場は日本であります。日本がどういう対応をするか、注目をされています。
TPPは、高いレベルの貿易や投資のルールを定めた枠組みであります。中国は、残念ながら、国有企業があり、そして不透明な形の産業補助金があり、時には経済的な威嚇をすることもあります。この中国の加盟申請に対して、日本が主導するTPPにおいて、どのような日本は立場を取るのか、対応をするのか、お考えをお示しいただきたいと思います。
次に、日中首脳会談についてお尋ねをいたします。
APECにおいて、習近平主席との初めての会談が行われました。戦略的互恵関係という大きな方向性について確認をされたということであります。戦略的互恵関係、魔法のような言葉で、考えてみると、よく分かりません。具体的に、やはり互恵関係を築いていくためには、一つ一つの課題を解決していくということが大事です。
その中でも、私は、今最も注目をしているのは、中国における日本人の安全確保の問題であります。
蘇州やシンセンで日本人児童の貴い命が奪われました。これについて、今まで納得のいく説明が行われたとは私には思えません。加えて、二〇一四年の反スパイ法が施行されて以来、日本人十七人が拘束をされました。いまだに五人が拘束されたままであります。短期滞在ビザ免除措置、これが再開をされたとはいいながらも、子供が襲われたり、自らが拘束されるリスクがある国において、中国に進出している企業あるいは駐在している日本人は、これは不安で不安で仕方がないと思います。
そこで、習主席との首脳会談において、在中日本人の安全確保策について具体的な説明がありましたか。そして、不透明なスパイ容疑で拘束が続く邦人についての議論が行われましたか。総理のお答えをお聞かせいただきたいと思います。
総理は所信表明演説の中で、日ロ関係については、日ロ関係は厳しい状況にありますが、我が国としては領土問題を解決し平和条約を締結するとの方針を堅持するとお話をされました。その具体的な方針についてお尋ねをしたいと思います。
二〇一八年の十一月、シンガポールで当時の安倍総理とプーチン大統領が会談を行いました。そのときの、領土問題についての交渉の基礎について、四島の帰属問題を解決するとした一九九三年の東京宣言から、平和条約の締結後に歯舞、色丹を日本に引き渡すとする一九五六年宣言に交渉の基礎を移す、変えるということが合意されたと言われています。いわゆるシンガポール合意であります。
四島のうち二島返ってくるんならいいじゃないかと思う人もいらっしゃるかもしれませんけれども、面積でいうなら僅か七%が返ったにすぎません。ハードルを下げたけれども、しかし、二〇二〇年にロシアは憲法改正をし、領土の割譲を禁止しました。結局は石ころ一つ返ってこなかったんです。その結果、今後の交渉に当たっては、むしろ重い負債が残ったんじゃないでしょうか。
安倍元総理が四島返還論から二島返還論へとかじを切った二〇一八年のシンガポール合意は、今どのような位置づけなのか、お答えをいただきたいと思います。
そのロシアに、今、北朝鮮が急接近をしています。軍事同盟を結び、北朝鮮の兵士たちがロシアに今派兵をされて、ウクライナとの戦いにどうやら関わっているようであります。そのロシアは、核兵器やあるいはミサイル等の開発において、北への技術供与も相当に行っているようであります。これはウクライナ戦争のアジアへの波及につながりかねません。そして、朝鮮半島有事の際のロシアの参戦の可能性も出てまいりました。
我が国の安全保障上の大きな危機だと認識しなければなりません。日中韓、日韓でどのように対応しているか。そして同時に、この危機的な状況のときに、拉致問題も一方では早く進展させなければならない喫緊の課題であります。
こうした中で、今申し上げたようなロシアのウクライナ侵略に加担する北朝鮮に、総理はどのように対応しようとされているのか。拉致問題の解決のためには東京と平壌に連絡事務所を設置するという考えをまだ持っていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。これは家族会も反対をしていることなので、私は強い疑問を持っています。
次に、政府の新経済対策などについて五問質問をしたいと思います。
十月十五日に総理は、国費十三兆円、事業規模三十七兆円が昨年の補正予算だった、それを上回る大きな補正予算を国民に問い、成立させたいとお話をされました。十月十五日というのは選挙の公示の日です。いきなり、中身の話をしないで規模ありきの方針を示されました。公示の日ですから、経済対策というよりも選挙対策のばらまきではないかと思いました。
事実、編成された補正予算は十三・九兆円、事業規模で三十九兆円、昨年を上回りましたけれども、財政法の二十九条には、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行う限り、内閣に補正予算編成、提出を認めています。緊要性のない支出が多数含まれているのではないか、来年度の当初予算に計上するために概算要求をしていた項目が前倒し、横滑りされて入れているんじゃないのか、疑問が尽きません。
なぜ昨年を上回る規模にしなければならないのでしょうか。そもそも経済対策になじまないものもたくさん含まれており、スリム化を図る必要があるのではないでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
なぜならば、原資は総理のポケットマネーではありません。国民の皆様の納めた税金です。そして、足りないところは国債発行、将来の世代のポケットに手を突っ込んでお金を借りる形になるんです。厳しく、九日から始まる補正予算の審議においては、しっかりと精査をしていきたいと思います。
この補正予算に絡んで、能登の復旧復興についての対策を盛られていますが、一月の震災、九月の豪雨によって複合災害が発生をしました。この能登地域には、きめ細やかで、そして手厚い支援が必要です。にもかかわらず、これまでの政府の対応は、七回に分けて予備費で小刻みな対応をしてきた。誠意ある対応だったとは私には思えません。
立憲民主党は、早くから、補正予算を編成し、被災者の皆さんに安心を与えるように訴えてきましたが、とうとう十二月になってしまいました。
我々は、改めて、震災そして豪雨災害からの復旧復興策をまとめさせていただきました。被災者生活支援金の実質倍増、公費解体等の対象の拡大、あるいはなりわい補助金の拡充など、極めて充実した、多岐にわたる項目を入れた、六千億円の支出が見込まれる対策であります。充実していると思います。この能登の復興策については、被災地の近藤和也議員を中心にまとめていただきました。立憲民主党のは、まさに質、量共に充実した自信作であります。復興が加速すると思いますが、総理の評価をお伺いしたいと思います。
このような自信作でありますから、その実現をするためには、補正予算の審議のプロセスの中で修正を求めていきたいと考えています。
物価高対策についてもお尋ねをいたします。
政府は、住民税非課税世帯に三万円給付するという方針であります。住民税非課税世帯は全国で千三百万世帯、六十五歳以上の方が七割を占めています。その半分以上は千五百万円以上の資産を有しています。多額の金融資産を有する人でも、所得が一定額以下であるならば給付の対象になります。一方で、例えば、東京在住の単身者で給与収入が百万円を超えると、住民税の均等割が課せられます。すなわち給付の対象外になってしまいます。
物価高対応の給付措置を住民税非課税世帯に絞ると、金融資産の多い高齢者にも恩恵が及びます。一方、いわゆるワーキングプア層など、住民税を納めながらも生活が厳しい層には支援が行き届かないということになります。この点について、総理のお考えをお示しいただきたいと思います。
次に、百三十万円の壁対策についてお尋ねをいたします。
働き控え対策という意味においては、百三万円の対策を講ずるということも大事でありますけれども、あわせて、百三十万円の対策もセットでないと実効性がないと思います。
我が党は、既に、配偶者の扶養家族である方が年収百三十万円を超えて働く場合の手取り減収分を補うため、就労促進支援給付として、年収が百三十万円を上回って二百万円に達するまでの間、徐々に金額を減らしながら給付金を支給することを盛り込んだ法案を提出いたしました。
百三万円の壁が話題になっていますけれども、手取りへの影響という意味においては、より深刻なのは社会保険の百三十万円の壁であります。立憲民主党は、就労支援給付制度の導入に関する法律案を提出いたしましたが、総理は、百三十万円の壁対策に取り組む決意はありますか。お答えをいただきたいと思います。
最後に、学校給食の無償化についてお尋ねをいたします。
学校給食は、子供たちの成長、食育という観点からしても重要な教育活動の一環であります。この学校給食を無償化するならば、例えば、小学校の保護者の給食費の負担は年間およそ五万円であります。これがなくなれば、物価高対策としても資することになると思います。また、給食費未納の子供たちの心理的な負担も減ります。給食費を徴収しなければならない教職員の実務的な負担も減ります。
地域によっては、独自財源によってこの無償化を進め始めました。でも、地域によって差があっては私はならないと思います。政府は、重点支援地方交付金により学校給食費を支援しようとしていますが、国の責任において公立小中学校の給食費を無償化すべきではないでしょうか。
立憲民主党の前身である旧民主党は、高校授業料の無償化を実現いたしました。当時は自民党、公明党からばらまきと厳しい批判を受けましたが、今は教育の無償化はどの党も訴えている時代になりました。これからも教育の無償化の道を開くために先頭に立っていく決意を申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 立憲民主党代表野田佳彦議員の御質問にお答えを申し上げます。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載に関し、衆議院の政治倫理審査会への関係議員の出席についてのお尋ねを頂戴いたしました。
国民からの信頼を回復するためにも、国民の疑問がある場合に丁寧な説明をしていくことは重要であります。自民党におきましては、それぞれの議員に対し、自らの置かれた状況をよく省みて、引き続き必要な説明責任を果たすよう促しております。
その上で、衆議院の政治倫理審査会で審査を行うか否かにつきましては、まずは国会で御議論をいただくべき事柄である、このように承知をいたしております。
企業・団体献金の禁止についてであります。
政治資金に関するルールの在り方につきましては、既に政治改革に関する各党協議会において御議論をいただいており、政府としてお答えすることは差し控えますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、企業・団体献金につきましても、御党と我が党の出席者の間で議論が開始されたと承知をいたしております。
企業・団体献金への考え方は各党各会派によって様々であると承知をいたしております。政党として避けなければならないのは、献金によって政策がゆがめられることであります。これには、個人献金も企業・団体献金も違いはございません。我が党としては、企業・団体献金自体が不適切であるとは考えておりません。
他方で、企業・団体献金を含む政治資金について高い透明性を確保することは、政治資金規正法の目的及び基本理念に照らしても重要であります。
政治資金規正法第一条は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の公開などを行うと規定をいたしております。同法第二条は、企業・団体献金を含む政治資金を民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であるとした上で、その収支の状況に関する判断は国民に委ね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないようにしなければならないとしております。
我が党といたしましては、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築に取り組む方針であり、これにより、企業・団体献金を含む政治資金の透明性が飛躍的に高まり、国民の皆様方の御判断に資することになると考えております。
企業・団体献金について何ら議論をしていないというものでは全くもってありません。引き続き、各党各会派との真摯な議論を行ってまいります。
政策活動費についてお尋ねをいただきました。
政治資金に関するルールにつきましては、各党各会派で御議論をいただくべきものであると認識しておりますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、政党から各級議員に支出をされ、その先の最終的な使途が公開されていない政策活動費は廃止することとし、我が党として、所要の法案を提出いたしてまいります。
この結果、政党における最終的な支出先等については、基本的に全て公開することとなり、もはや従来の政策活動費ではなくなりますが、外交上の秘密や支出先のプライバシーあるいは営業秘密を害するおそれに配慮すべき場合など、一部の限定された支出につきましては、相手方との信頼関係等にも関わることから、公開を行いつつも、公開の方法に工夫が必要であると考えております。今後、どのような公開の仕方があり得るかにつきましては、我が党としても、各党各会派と真摯に議論を行いたいと考えております。
第三者機関についてのお尋ねがありました。
政治資金に関する第三者機関につきましては、国会と政府のいずれに置くべきか、いかなる権限を付与するべきかなどの点について、各党各会派によって考えが様々であると承知をいたしております。政党等による政治活動の在り方とも密接に関わる事柄であることから、政府としては、各党各会派において御議論いただくべき問題であると考えております。
その上で、自民党の考え方についてあえて申し上げれば、政党、政治団体は、民主主義を支える重要な役割を果たしており、自由が尊重されるべきそれらの政治活動に対する行政庁の関与は必要最小限にとどめるべきという考え方から、お尋ねの機関は国会に置くことを基本として、各党各会派との議論に臨んでおるところであります。
政治資金規正法の改正に関する議論の進め方についてお尋ねを頂戴いたしました。
政治資金規正法の改正につきましては、既に政治改革に関する各党協議会が開催され、公開での議論が行われているものと承知をいたしております。その上で、今後の議論の進め方につきましては国会で御議論いただくべき事柄であると考えておりますが、この議論は、政治活動のインフラをつくるという重要な議論であり、引き続き、公開での議論を行うことは重要であると考えております。
国民の政治に対する信頼を取り戻すための政治改革の議論には、与党も野党もございません。党派を超えた建設的で真摯な議論を期待しておるところであります。
核兵器禁止条約についてのお尋ねをいただきました。
我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展するなど、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しております。
加えて、核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約でありますが、この条約には核兵器国は一か国も参加しておらず、いまだにその出口に至る道筋は立っておらないのが現状であります。
こうした中で、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるように努力をしていかなければなりません。
NPT体制は、核兵器国、非核兵器国が広く参加する唯一の、核兵器のない世界に向けた普遍的な枠組みであります。我が国は、運用検討会議において、リーダーシップを発揮することを含め、NPT体制の下で現実的かつ実践的な取組が一歩一歩進められるよう取り組んでおります。
政府といたしましては、抑止力を維持強化し、安全保障上の脅威に適切に対処していくとの大前提に立ちつつ、NPT体制を維持強化し、核軍縮に向けた国際社会の機運を改めて高め、核兵器のない世界に向けた現実的で実践的な取組を維持強化してまいります。
アメリカ合衆国のトランプ次期大統領の会談についてであります。
トランプ次期大統領との会談について、具体的に決まっているものはなく、会談の場で想定される議題について、予断を持ってお答えすることは差し控えます。
その上で申し上げれば、厳しく複雑な国際社会において、日米安保体制は、引き続き、我が国の外交、安全保障政策の基軸であります。同時に、合衆国も、この体制から戦略上大きな利益を得ておるものであります。
合衆国には合衆国の国益があり、我が国には我が国の国益があるのは当然のことでありますが、だからこそ、率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高め合うことで、自由で開かれたインド太平洋の実現に資することができると考えております。
トランプ次期大統領の会談の際には、こうした考えの下、率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げてまいりたいと考えております。
CPTPPについてお尋ねを頂戴いたしました。
CPTPPは、幅広い分野をカバーした高い水準の新たな共通ルールを維持し、世界に広めていく意義を有しております。新規加入に当たりましては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現するパートナーとしてふさわしいかどうかが重要となります。
中国の貿易慣行やビジネス環境に関しましては、様々な意見があると理解をいたしております。中国が協定の高いレベルを完全に満たすことができ、加入後の履行においても満たし続けていく意図と能力があるかについては、まず適切に見極める必要があると考えております。
いずれにせよ、加入要請を提出したエコノミーの扱いにつきましては、他の参加国ともよく相談する必要があります。我が国としては、戦略的観点や国民の理解を踏まえながら対応をいたしてまいります。
日中首脳会談でのやり取りについてであります。
先般の日中首脳会談では、私から習近平国家主席に対し、在留邦人の安全対策の強化を要請いたしました。これに対し、習主席からは、日本人を含む在中国の外国人の安全を確保する旨の発言がありました。
また、中国における邦人拘束事案につきましても、私から邦人の早期釈放を改めて求めたところであります。
引き続き、これまでに生じた個別の事案について中国側に具体的な説明を求めていくとともに、在留邦人の安全確保には全力を尽くしてまいります。また、邦人拘束事案につきましても、様々なレベルや機会を通じて働きかけを行ってまいります。
北方領土問題についてのお尋ねを頂戴いたしました。
北方領土問題につきましては、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるという点で、我が国の立場は一貫いたしております。これまでにも、御指摘のシンガポールでの合意を含め、ロシア側と粘り強く交渉を進めてまいりました。
ロシアによるウクライナ侵略によって日ロ関係は厳しい状況にありますが、政府として、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたしてまいります。
ロ朝軍事協力や拉致問題を含む北朝鮮問題への対応についてのお尋ねを頂戴いたしました。
北朝鮮兵士によるウクライナに対する戦闘への参加や、ロシアによる北朝鮮からの武器弾薬の調達といったロ朝軍事協力の進展を強く非難いたします。ウクライナにおける一日も早い公正かつ永続的な平和の実現に向け、国際社会と緊密に連携して取り組んでまいります。
また、北朝鮮との間の武器及び関連物資の移転等を双方向で全面的に禁止する関連安保理決議の完全な履行に向けて取り組んでまいります。
その上で、我が国の北朝鮮に対する基本方針は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するというものであります。
とりわけ、拉致被害者やその御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であるとともに、その本質は国家主権の侵害であり、政権の最重要課題であります。
御質問の点を含め、今後の対応について具体的にお答えをすることは差し控えますが、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決意の下、総力を挙げて最も有効な手だてを講じてまいります。
経済対策の規模についてのお尋ねを頂戴いたしました。
我が国経済は、コストカット型の経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあります。今回の経済対策は、この移行を確実なものとすることを目指して、必要な施策を積み上げたものであります。
具体的には、現下の賃上げができるよう、価格転嫁や省力化、デジタル投資を促進するとともに、将来の賃金、所得の増加に向けて成長力を強化する施策を盛り込んでおります。さらに、能登地域の一刻も早い復旧と創造的復興を一層加速するための対応を始め、国民の安心、安全の確保に万全を期すための施策も盛り込んでおるところであります。こうした施策の積み上げの結果、昨年を上回る規模となったものであります。
能登の復興策についてのお尋ねを頂戴いたしました。
今回の経済対策におきましては、被災自治体からの要望をきめ細かく伺い、能登の復旧復興に必要な施策を盛り込んだところであります。
例えば、災害公営住宅の整備への支援の拡充、在籍型出向支援の創設と雇用調整助成金の特例措置の延長、豪雨による被災者にも地震と同様の各種支援など、御党が御提案されている施策についても講ずることといたしております。
活気ある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、復旧と創造的復興に向けた取組を講じてまいります。
物価高対策の給付金についてのお尋ねをいただきました。
今般の経済対策におきましては、特に物価高の影響を受ける低所得の方々を支援する趣旨で、住民税非課税世帯を対象に給付を行うことといたしております。この中には金融資産の多い高齢者も一部含まれるものと承知をいたしておりますが、迅速に支援を届けるとともに、給付事務を担う地方公共団体の負担を軽減する観点から、住民税非課税世帯を対象としたものでございます。
住民税非課税世帯以外の方々に対しましては、重点支援地方交付金を活用して地方公共団体が行う物価高対策や賃上げを支援する施策など、様々な物価高対策を講じることにより、必要な支援を行うことといたしております。
いわゆる百三十万円の壁への対応についてのお尋ねを頂戴いたしました。
社会保険の適用に関するいわゆる百三十万円の壁につきましては、当面の対応として、被扶養者認定を円滑化するなど、年収の壁・支援強化パッケージの活用にまずは取り組んでまいります。
その上で、就業調整を行っている労働者が希望に応じて働くことができるよう、制度的な対応を図ることも重要であると考えております。
現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っているところであり、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の更なる適用拡大など、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。
学校給食費についてのお尋ねがございました。
野田議員御指摘のように、今回の経済対策において、現在の物価高などの状況を踏まえ、地域の実情に応じた保護者負担の軽減の観点から、学校給食費の支援も行えるよう、重点支援地方交付金を追加しております。
学校給食の実態調査の結果も踏まえつつ、関係省庁が連携をし、児童生徒間の公平性や、国と地方の役割分担、政策効果、法制面等の課題を整理いたしてまいります。その際、子供、子育て加速化プランにおきまして児童手当の抜本的拡充や高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要もあると考えております。
以上でございます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 福田達夫君。
〔福田達夫君登壇〕
○福田達夫君 自由民主党の福田達夫でございます。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、先般の石破総理の所信表明演説に対して質問いたします。(拍手)
我々は、今、大きな時代の転換点にあります。
三年にわたったコロナ禍は、世界中の人々の考え方を変え、国際的な産業構造の転換を加速させました。ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化は、世界の分断を深めています。
その大転換の時代に、各国は、変化の先にある新しい世界を目指して果敢な挑戦を進めています。我が国は、さらに、四半世紀続いたデフレからの脱却、そして、その過程である物価の上昇という難題に挑んでいる最中であります。
この十年以上にわたり、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進めることにより、もはやデフレではないという状況にたどり着き、この三年は物価上昇の世界に入りました。
しかし、四半世紀に及ぶデフレ構造は、我が国全体に閉塞感をもたらし、平均賃金やGDPの伸びは主要先進国を大きく下回っているのも事実であります。デフレ下では、よい製品を生み出しても高く売れず、働きが正しく評価されず、賃金も上がらず、経済も成長しない。その状態が四半世紀に及んだ結果として、世界の物価、賃金との差が拡大しました。内外価格差の問題、いわゆる安い日本であります。デフレ構造に逆戻りするわけにはいかない、このことを改めて社会の共通認識としなければなりません。
そのことをまず申し上げた上で、石破政権の内外の諸課題に対する基本姿勢について質問いたします。
総理、今、何より重要なのは、ひたむきに働く方々の頑張りが正しく評価され、給料が上がり続ける、当たり前の安心社会を取り戻すことではないでしょうか。
それを実現するまでの間、物価高が国民生活や事業活動を脅かすことがないよう、これまでも累次の負担軽減策を講じてきました。先般閣議決定された経済対策にも具体的な政策メニューが盛り込まれましたが、国民の皆様がイメージできるような説明を総理からいただきたいと思います。
短期的には、足下の不安を払拭するための支援は必要です。しかし、上がり続ける給料こそが中長期的な答えであります。十年以上にわたる経済再生に向けた取組によって、株価は歴史的な高値水準、雇用者数は過去最高を更新、三十三年ぶりとなる大幅な賃上げや、過去最大となる設備投資など、成長と分配の好循環の機運は生まれ始めています。
ただし、輸入インフレが始まった二〇二一年から考えれば、消費者物価はこの三年間で約一〇%上昇、生活関連物資に限れば約二〇%上昇しています。一方、賃金の引上げ幅は約八%。まだまだ賃金の引上げ幅は上がり負けしている状態であります。また、景気の状況も、産業ごと、地域ごとにまだら模様となっています。
私は、地元群馬において、金融関係者、企業調査、労務の専門家、スーパーや家電などの小売業の社長さんなどに四半期ごとに一堂に会していただく群馬景気定点観測を行っています。
そこで気がつくのは、どの視点からも、地域のキャッシュフロー圧力が弱まっているという事実であります。例えば、スーパーで買物をするお客様の一日当たりの支払い額は、このところ伸びなくなってきています。物価上昇は、落ち着いてきたとはいえ、止まったわけではありませんから、家計が生活防衛に入っていることがうかがえます。他方で、統計を見ると、久しぶりに家計の貯蓄率が増加しています。これからも物価が上昇し続けることを予想しての備えでありましょう。
しかし、インフレの世界では、今日の百円は明日には九十八円に価値が下落してしまいます。経済学は、経済的利益を最大化しようとするホモエコノミクスを前提として構築されていますが、三十年にわたるデフレ環境下で、デフレ経済しか経験していない、特に現在五十代以下の人は、デフレ環境に合わせて縮小的に合理的な行動を取るホモデフレエコノミクスとなってしまっているのではないか。
二〇二一年の物価上昇局面の当初より、我が党の中では、物価上昇をてこにしてでもデフレからの完全脱却を求める、そういう議論を進めてまいりました。デフレに最適化した日本人の縮小均衡的な行動様式を変容させる、すなわち、日本社会の常識を変えることこそが、経済対策が効果を発揮させるための大前提であります。
来年以降も、物価は上がっても賃金も上がる安心感を最低でも三年は持続させる環境をつくり出し、人々のデフレマインドのくびきを断ち切り、社会常識を転換させることこそが現在の政治の最重要課題と考えますが、総理の考えを伺います。
最低賃金を全国単純平均で二千円を目指せないか。二〇一六年、今から八年前のある政府高官のこのような投げかけを受けて、総理補佐官の一人とともに動き始めたのが、雇用の七割を担う中小企業、小規模事業者群に賃上げの原資を確保するための政策、価格転嫁の促進の始まりでした。
それに先立つ二〇一四年、我が党の中小企業・小規模事業者政策調査会の提言書において、大企業の利益を従業員や取引先企業へ賃金や適正な取引価格で還元させる仕組みの必要性に言及しており、二〇一六年九月には下請Gメンによる調査もスタート。官邸が関係省庁連絡会議を設置してからは、動きは更に活発化し、その後八年にわたり、中小企業庁や公正取引委員会とともに様々な環境整備を重ねてきました。
型の保管手数料の有料化、約束手形の支払いサイト決済期限の短縮と利用の廃止、手形取引サイトの短縮。そして、昨年二月からは、アンケートに基づく、価格転嫁に後ろ向きな企業の社名公表にまで踏み切り、価格転嫁が非常識なことではないところまでは着実に進んでまいりました。
しかし、少なくとも全国約三百五十万者を超える中小企業、小規模事業者群が、賃上げを持続的にできるような面的な広がりを実現するところまでは達成できていないことも事実であります。中小企業の価格転嫁率は、最新の調査でも四九・七%にとどまっており、全く転嫁できなかった企業も二割、転嫁できていても十分ではない企業も多い状況です。
中小企業、小規模事業者群の価格転嫁は、賃上げを持続可能なものにするためのみならず、デフレから完全脱却するためにも、地域に暮らす人々を養う力を再生するためにも、鍵となる取組です。現在それを進めるのは、それぞれ二百人の職員を抱える中小企業庁と公正取引委員会、そして約三百人の下請Gメンです。これまでも確かな効果を上げてきましたが、全国家的課題の解決に対しては限界があります。
本来、地域に暮らす人々の生活に、より責任を負うべき地方自治体を、中小企業の賃上げ、取引適正化という大切なミッションの担い手に巻き込むことや、価格形成への公的機関の関与の仕方に留意の必要はあるものの、持続的な食料供給を可能とする価格形成の仕組みを構築することなども必要と考えますが、構造的な価格転嫁の実現に向けた取組について、総理の御所見を伺います。
また、やりがいや所得向上等の観点から、もっと働きたい、仕事を通じて成長したい、自己研さんや技能伝承、研修のために勤務時間以外の時間を使いたい、そういうお声を多くいただきます。そのような方々にとっての働き方改革の位置づけを、あくまでも労働者の健康をしっかり確認することを前提に、再検討する必要があると考えますが、総理の御所見を伺います。
昨年、岸田政権では、医療、介護、福祉分野で、今年度に二・五%、来年度に二%の賃上げを目指す方針を決定し、処遇改善に向けた診療報酬、介護報酬の改定が行われました。公務員の給与も、昨年には三十年ぶりの高水準となる引上げが行われ、今年の人事院勧告では過去最大の引上げ幅が示されました。また、公立学校教員の処遇改善についても、我が党内で二年前から議論され、この年末の予算編成に向け具体化が行われておりますが、給与の引上げが実現できれば、実に五十年ぶりとなります。
このように、政府が実現可能な分野で、率先して賃上げに向けた環境整備に取り組んでまいりました。持続的な賃上げの実現に向け、まず政府が賃上げに取り組み、好循環の流れを加速させていくことが重要と考えますが、総理の御所見を伺います。
経済の好循環において最も重要なのは、国民の皆さんに所得や賃金が増えたと実感していただくことです。しかしながら、いわゆる年収の壁があることによって、賃金が上がったにもかかわらず、就業調整を行おうと考えている方が多くいらっしゃることが改めて指摘されています。岸田政権で既に昨年から年収の壁・支援強化パッケージを実施していますが、制度の更なる見直しが急務であります。
総理は、さきの所信表明演説において、引上げについて言及されました。詳細については、自民党、公明党、そして国民民主党の三党で議論が行われている最中でありますが、年収百三万円の壁の引上げについてどのように取り組むのか、総理から国民の皆様にお伝えいただければと存じます。
成長型の経済へ移行し、好循環を実現させるためには、積極的な投資も不可欠です。
石破政権では、国内のAIや半導体産業を下支えするため、新たに公的支援を行う枠組みを設け、今後十年間で五十兆円を超える官民投資につなげる方針を掲げています。AIや半導体の活用が日本社会の隅々まで行き渡る当たり前のことになれば、生活の利便性を高め、地域の社会課題を解決することを通じ、地域に住まう普通の方々にも恩恵が及ぶことになります。
我が国は課題先進国です。現在の我が国が生み出す社会課題の解決力は、将来、アジアなどの諸外国においても活用することができます。岸田総理の掲げた新しい資本主義の要諦であったと理解しています。
そうした将来の稼ぎをつくり、日本人の新しい挑戦の場をつくる意味でも、投資をコストではなく成長のチャンスと捉え、このチャンスを官民共同で積極的に生かしていくことが、国民の安心、安全、日本経済の持続的な成長、そして人々の新しい活躍の場づくりであると信じますが、総理の御所見を伺います。
次に、外交、安全保障政策について伺います。
国際社会では、ロシアによるウクライナ侵略の長期化やイスラエル・パレスチナ情勢の急激な悪化などの力による現状の変更や、自国中心主義的な動きが目立つようになっています。一方で、グローバルサウスの台頭や、コロナ禍を経た価値観の変化などが急速に進んでいます。世界は、冷戦後、米国一強の時代を経て、新たな局面を迎えようとしています。
その中で、一時期はジャパン・パッシングとまで言われた日本は、国際的な発言力を回復してきました。二〇一六年に安倍総理が掲げた自由で開かれたインド太平洋、FOIPという概念は、この新たな局面に新機軸を打ち出すものであり、事前の綿密な準備もあって世界からも受け入れられました。これを引き継いだ岸田総理が取りまとめたG7広島サミットのコミュニケは、日本が主導したこのFOIPという地域枠組みが基調となる初めてのものとなりました。岸田総理は、さらに、エネルギーや気候変動といった複合的な変化を真正面から受け止めた、アジア太平洋地域の新しい取組として、アジア・ゼロエミッション共同体、AZEC構想を打ち出しています。
世界の形が変わり、価値観が変わり、相対的な国力バランスも変わる中だからこそ、我が国は、回復した国際的な発言力に乗せて、国際社会の結束を高め、米国や欧州各国との協調を高めるとともに、特にASEAN諸国との関係を一段と強化すべきと考えますが、総理の御所見を伺います。
我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑な状況にあります。
政府は、一昨年、我が国の防衛力を抜本的に強化するため、新たな国家安全保障戦略などを策定しました。石破政権では、我が国防衛力の最大の基盤は自衛官であるとの認識の下、処遇改善や人材育成の強化など、必要な体制整備に向けた議論を行っていると承知しています。
国民の命や暮らしを守り抜く総合的な防衛体制の構築は急務です。リスクが多様化する中で、厳しい安全保障環境を踏まえ、国民の安心、安全に資する防衛力の強化、特に自衛官の処遇、勤務環境の改善に向けた総理の御所見を伺います。
サプライチェーンや技術開発、情報保全など、経済分野における安全保障の強化は喫緊かつ重要な課題です。
我が党は、二〇二〇年から経済安全保障の具体的な議論を始めており、経済安全保障推進法の制定やセキュリティークリアランス制度導入に向けた法整備など、様々な提言を行いながら、政府・与党一体での我が国の経済安全保障の確保、強化に向けた取組を進めてまいりました。
一方で、サイバー攻撃を始め、我が国の経済安全保障を揺るがす事案はますます巧妙化し、我々の経済社会システムに大きな影響を及ぼしています。様々な影響から国家国民を守り抜くためには、常に時代を先取りし、先手先手で万全の備えを講じていかなければなりません。
いわゆる能動的サイバー防御に向けた体制整備など、今後、経済安全保障の更なる強化が必要と考えますが、総理の御所見を伺います。
農業は国の基です。
私は、自民党の農産物輸出促進対策委員長として、稼げる農業という概念を掲げました。食料安全保障は、国民に食が届くだけでは終わりません。届けることを続けられる体制をつくることが必要です。国内で食を作り、加工し、運び、安全に販売する。それぞれの役割を担う人々のつながりである食料システム全体に利益が回り続け、持続的に稼ぐことができて初めて、届けることを続けることができる。そのような体制を構築することが、本当の意味の食料安全保障であると考えるからであります。
日本の食の水準は、世界的に見ても高い。農産物も、加工品も、そして外食店で供される品々も、そのまま海外に持っていっても高く評価される品質があります。しかし、それを続けるための経営力が、よいものを作り出す力ほどには十分ではないと感じています。
政府は、さきの通常国会で農政の憲法と言われる食料・農業・農村基本法を改正し、農産物や資材の安定的な輸入や、スマート技術を活用した生産性の向上など、食料安全保障の確保に向けた取組を強化しました。また、日本がアジア・モンスーン地域の食料生産をリードする意欲的な枠組み、みどりの食料システム戦略も打ち出しています。
我が国の食料供給の総合力を高め、さらには世界にも貢献できる食料システム構築に向けた総理のお考えを伺います。
必要十分なエネルギーを継続的に確保することは、国民生活や社会経済活動にとって極めて重要です。しかしながら、我が国のエネルギー自給率は一三%。資源国ロシアにおけるウクライナ侵略や中東情勢の不安定化を受け、エネルギー供給への不安も高まっています。
我が国の電力需要は、AIやデータセンターの普及発展に伴って二〇五〇年までに四〇%増えるとも言われており、安定的なエネルギーの確保はまさに重要な国家課題です。現在、第七次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が行われていますが、今後の我が国のエネルギー政策をどのように進めていくお考えか。特に、新規制基準に適合すると認められた原発は、安全性の確保を最優先に、地元自治体の理解を得られたところから再稼働を進めていくべきだと考えますが、総理の御所見を伺います。
近年、気象災害が激甚化、頻発化しています。今年の夏も、全国各地で災害級の猛暑や線状降水帯による豪雨被害が相次ぎました。また、南海トラフ地震や首都直下地震など、巨大地震が発生する可能性も強く指摘されています。我々は、百年に一度と言われてきた大きな災害が、今や、いつどこでも発生し得るという現実と向かい合い、国民の命や暮らしを守り抜く体制を早急に整えなければなりません。
自然災害をなくすことはできません。しかし、二次被害を含め、被害を最小限に食い止めることはできるはずであります。災害対応の司令塔機能を担う防災庁の設置を表明された総理に、防災、減災に向けた御所見を伺います。
今年は、地方創生の取組が本格的に始まってから十年となります。
地方の元気なくして日本の再生なし。地域の活性化は、活力ある日本社会の再生の基盤となります。
国家的には、二〇六〇年に一億人程度の人口の維持を。地域的には、多様性ある人を生かす社会をどれだけ多くつくれるか。地方創生は、この二つの同時実現を目指す、息の長い取組であります。
その取組は、たゆまぬ継続を基本に、日本は世界に先駆けて人口減少、少子高齢化と向き合う課題先進国であるという健全な危機感を共有した上で、将来の創造という前向きな意識を持ち、誰一人取り残さない社会の実現を目指す、希望としての地方創生であるべきです。
また、地方創生の視点は、国内における東京と地方のバランスとして捉える傾向が強いですが、豊かさのみならず、世界と伍する地方社会を取り戻すとの視点も強く持つべきです。東京とのゼロサム的思考や国内の横並び思考に余りに拘泥することで、世界が大胆な挑戦で目覚ましく変化している事実を見落としてはなりません。
初代担当大臣として地方創生の推進に尽力されてこられた総理に、地方創生二・〇に向けた基本姿勢や理念をお伺いいたします。
これらの歴史的な仕事を果たすためにも、政治は国民の信を必要といたします。政治への信頼なくして、政策だけでなく、政治そのものを前に進めることはできません。そのために、我々は、政治資金や政治制度が国民の皆さんが納得し共感していただけるものとなるよう、不断の改革を行ってまいります。
信頼を得られる政治基盤を構築するための責任政党としての役割をどう考えるか。政治のあるべき姿、その中で政党の役割とは何か。政治改革の実現に向けた総理の決意を伺います。
継続的に賃金が増えることで、先行きが見通せ、生活に対する安心が育まれ、働けば報われると実感ができる社会。新しい挑戦の一歩を踏み出そうという意欲が生まれ、こうしたマインドが地方や中小企業、小規模事業者にまで浸透するような社会。現在の安心が人々の心に将来の希望を生み出す社会。国民お一人お一人が、新たな時代に応えて、新たな役割を身につけ、それがきちんと評価されていると実感ができる社会。
政治の役割は、成長戦略や経済対策をつくることだけではない。その先の社会づくりであることは言をまちません。
足下の難局に打ちかち、世界的な変化の時代だからこそ、つかめるチャンスを逃さず、更なる飛翔を目指す。我が国は一層成長できるという希望を取り戻すことが、デフレ脱却の向こうにある目標であり、政治はそのために常に国民とともにあり続ける。
このことを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 福田達夫議員の御質問にお答え申し上げます。
物価高対策についてお尋ねがございました。
今回の経済対策は、副題にございますように、全ての世代の現在や将来の賃金、所得を増やすことを最重要課題として作成をいたしております。そうした取組に当たりましては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々への支援が必要であります。
具体的には、地方公共団体が、地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、価格転嫁が困難な中小企業への支援、学校給食費への支援のほか、新たに、厳冬期の灯油支援も行うようにいたしております。また、家庭の電力使用量の最も大きい一月から三月までの冬期の電気・ガス代を支援し、二人以上世帯の平均で、電気、ガス合計で月千三百円程度の負担軽減を行います。さらに、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯の方々に対する給付金の支援などの施策を盛り込んでおります。
デフレマインドの転換についてであります。
福田議員御指摘のとおり、我が国経済は、長きにわたったデフレマインドを払拭し、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にございます。
コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行するため、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めるとともに、省力化、デジタル化投資の促進や、経営基盤の強化、成長のための支援を充実いたします。人への投資や、官民連携の国内投資によって賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を高めるなど、将来も継続的に所得が増加する手だてを講じてまいります。
価格転嫁の実現に向けた取組についてのお尋ねを頂戴いたしました。
中小企業を始めとした事業者の皆様方が確かにもうかり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけるよう、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めることは極めて重要であります。
御指摘のように、賃上げや取引適正化を地域の中小企業に行き渡らせていくために、地方自治体が果たす役割は非常に大きいと認識をいたしております。これまでも、都道府県と地方の経済団体による協定の締結を促すこと等を通じましてパートナーシップ構築宣言の普及を図るなど、地方自治体と連携して進めてまいりましたが、今後一層、情報交換や連携を進めてまいります。
食料の価格形成につきましては、持続的な食料供給を可能とするため、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、資材費、人件費等のコストが考慮される仕組みを検討いたしてまいります。
これらに加えまして、毎年三月と九月の価格交渉促進月間における発注企業の価格交渉、価格転嫁の状況の公表や、事業所管大臣名での指導助言、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底といった対策を粘り強く継続をいたしてまいります。
さらに、新たな商慣習として、サプライチェーン全体で価格転嫁、取引適正化を定着させるよう、下請法改正の検討も進めてまいります。
働き方改革は、働く方々の生命と健康を守るための取組にとどまらず、働く方お一人お一人が多様で柔軟な働き方ができるようにするための取組も含むものであります。
今後とも、こうした観点から、長時間労働の是正のみならず、副業、兼業やテレワークの促進、短時間正社員などの多様な働き方の活用、リスキリングを含む人への投資の強化など、働き方改革を進めてまいります。
医療、介護、公務員等における賃上げについてであります。
医療、介護等の分野につきましては、令和六年度の報酬改定における賃上げの措置が最大限活用されるよう、書類の簡素化や幅広い周知に取り組むとともに、今般の経済対策においても、更なる賃上げを目的とする支援策を盛り込みました。
また、公務員の給与につきましては、人事院勧告どおり月例給及びボーナスを引き上げる等の改定を行うため、今国会に給与法改正法案を提出する予定であります。
教師の処遇改善につきましても、骨太の方針等を踏まえ、実現に向けて取り組んでまいります。
いわゆる年収百三万円の壁についてのお尋ねを頂戴いたしました。
今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しましては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。
経済や税収への影響など、専門的な観点も含めて様々考えねばならない論点があるものと認識をいたしております。そうしたことも含めて、今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めていただきたいと考えております。
課題解決に向けた国内投資の促進についてであります。
岸田政権の取組もあり、ようやく、約三十年ぶりの高い水準の賃上げと過去最大規模の投資が実現をし、明るい兆しが表れております。コストカットではなく、付加価値の創出に力点を置いた経営、経済への転換を進めていくチャンスと考えております。
今般策定した経済対策におきましても、DXを切り口として、日本の潜在的な強みであるAI、量子、バイオ、宇宙、フュージョン、GX等の戦略分野のイノベーション支援を進め、社会課題の解決と国内投資の促進につなげてまいります。
熊本におけるTSMC誘致のような地方創生の好事例も全国で増やしてまいります。GXの例では、洋上風力、地熱や原子力などの脱炭素電源を目指して、工場やデータセンターの進出が進み、教育機関との連携などによって、新たな地域の活力につながる動きが始まりつつあります。
投資の予見可能性を高め、今こそ賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現し、我が国を、課題解決の分野で世界をリードするイノベーションが常に生み出される豊かな国といたしてまいります。
ASEANとの関係強化を含む外交政策についてであります。
国際秩序に大きな挑戦がもたらされる中、国益に基づく現実的外交により、日米同盟を基軸に友好国、同志国を増やすとともに、各国との対話を重ねます。これによって、分断と対立を乗り越え、法の支配に基づく国際秩序を断固として堅持をいたしてまいります。
その際、特に、インド太平洋の中心という地政学的要衝に位置するASEANとの関係は重要であります。本年十月にASEAN関連首脳会議に出席いたしました際には、私から、日本・ASEAN関係を強化し、心と心のつながる信頼のパートナーとして共に未来を切り開いていきたい旨、強い決意を直接伝達いたしたところであります。
引き続き、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導いたしてまいります。
防衛力の強化と自衛官の処遇、勤務環境の改善についてであります。
私は、厳しい安全保障上の現実を直視し、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化を着実に進めることで、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守り抜きたいと考えております。
そして、防衛力の最大の基盤である自衛官の充足率が約九〇%にとどまっていることは、極めて深刻な課題であると認識をいたしております。処遇、勤務環境の改善及び部隊の精強性確保のため若くして定年退職を迎える自衛官の新たな生涯設計の確立に向け、私を議長とする関係閣僚会議で議論を重ねており、施策の方向性について年内に結論を得ます。自衛官諸官が国防に専念できる体制を構築し、自衛官の充足率が向上するよう、実効性のある施策を実施いたしてまいります。
能動的サイバー防御に向けた体制整備及び経済安全保障の強化についてであります。
能動的サイバー防御の実現に向けた法制度の整備につきましては、十一月二十九日に有識者会議から提言をいただいたところであり、この提言を踏まえて可能な限り早期に法案としてお示しできますよう、検討を更に加速いたしてまいります。
その上で、経済安全保障につきましては、重要経済安保情報保護活用法の施行に向けて準備作業に全力で取り組むほか、国家安全保障戦略等に掲げられた課題についても着実に取り組んでまいります。
食料システムにつきましては、我が国の食料安全保障の確保に向け、食料の生産から消費までを含めて一体的に捉え、持続可能なものとして構築していくことが必要であります。
こうした考えの下、福田議員の御指摘にもありますように、農林水産業の生産基盤の強化、スマート技術の導入、世界市場に向けた輸出の促進、みどりの食料システム戦略に基づく環境負荷低減等を着実に進めていくことが重要であります。
今後、新たな食料・農業・農村基本計画を策定する中で、こうした取組に必要な具体の施策を体系的に整理し、その充実強化を図ってまいります。
エネルギー政策についてお尋ねを頂戴いたしました。
AI時代の電力需要増加が見込まれる中、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を高めますため、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの拡大とともに、安全性の確保を大前提とした原子力発電の利活用を進め、日本経済をエネルギー制約から守り抜くことが極めて重要であります。
原子力発電所の再稼働につきましては、高い独立性を有する原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。
防災、減災に向けた所見についてであります。
我が国は世界有数の災害発生国でありますが、いかなる地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということが決してあってはなりません。
国民を災害から守るためには、政府の災害対応体制を抜本的に強化し、事前防災を徹底する必要があります。このため、平時における防災業務の企画立案及び全国的な調整と、大規模災害発生時における政府の統一的な災害対応の司令塔として、防災庁の設置を進める考えであります。
防災庁につきましては、専任の大臣を置き、十分な人数の災害対応のエキスパートをそろえる方針であり、令和八年度中の設置に向けた準備を着実に進めてまいります。
地方創生二・〇に向けた基本姿勢、理念についてであります。
地方創生二・〇は、単なる地方の活性化策ではなく、日本の活力を取り戻す経済政策であり、多様化の時代の国民の多様な幸せを実現するための社会政策であります。
持てるポテンシャルがまだまだ眠っている地方の産業や文化、これらを支える人材の力を最大限に引き出し、日本全体を創生していくことを目指しております。
この実現のためには、産官学金労言の地域のステークホルダーが、いま一度、若者や女性にも選ばれる地域とするためにはどうすべきかなどを真剣に考え、行動を起こすことが必要であります。
現場の方々の話をよく承り、これまでの成果と反省の検証を進め、年末に向け、基本的な考え方を取りまとめ、その後、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定いたします。
いち早く地方の皆様方が動き出せるよう、新しい地方創生交付金を倍増しつつ、前倒しで措置をいたします。デジタル技術の活用や、地方の課題を起点とする規制・制度改革を大胆に進めてまいります。
地域活性化と併せて、この国の在り方、文化、教育、社会を変革する大きな流れをつくり出してまいります。
政党の役割と政治改革の決意についてのお尋ねを頂戴いたしました。
政治は国民のものであります。謙虚に、真摯に、誠実に国民の皆様と向き合いながら、国民全般の利益と幸福のために奉仕をすることが政治のあるべき姿であると考えております。
そのような中で、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、国民の政治意思を形成、集約し、国政に反映させる上で重要な役割を担っております。国民の多様な声を十分に反映し、全ての国民の安心と安全を守るための施策を前に進めていきますためには、政党の政治活動の公明と公正を確保し、国民の皆様からの信頼を取り戻すことが不可欠であります。
政党の在り方や政治資金の在り方など、議会政治の根幹に関わる問題につきましては、各党各会派で御議論いただくべきものではありますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、我が党としても、国民に対する責任を果たすべく、政策活動費の廃止、収支報告書の検索を容易にするデータベースの構築など、政治資金の透明性を更に高めるための党派を超えた議論を率先し、政治資金規正法の再改正を含めた必要な法整備に誠心誠意尽力をいたしてまいります。
以上でございます。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(玄葉光一郎君) 石川香織君。
〔石川香織君登壇〕
○石川香織君 立憲民主党の石川香織です。
私は、会派を代表いたしまして、石破総理の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)
まず、選択的夫婦別姓について伺います。
一九九六年に法務省の法制審議会において選択的夫婦別姓制度の導入の答申をしてから二十八年がたちました。立憲民主党は、選択的夫婦別姓実現を求めて、既に衆議院で九回、参議院で十五回、民法改正案を提出しておりますが、一部議員の反対などにより、長い間審議されてきませんでした。
しかし、今年六月には、経団連が早期実現を求める提言を発表。衆議院選挙中に共同通信社が実施した調査では、選択的夫婦別姓の導入に六七%の人が賛成をしています。先日も、女子差別撤廃委員会から、夫婦同姓を定めた民法の改正を求める四度目の勧告が出され、法務省の調査では、夫婦同姓を義務化している国は日本しかありません。
石破総理は、総裁選時に、実現は早いにこしたことはないと発言されていました。しかし、総理になった十月の国会答弁では、選択的夫婦別姓の実現について、国民の間に様々な意見があり、更なる検討をする必要があると、大幅に後退をしています。
総理、衆議院選挙を経て、選択的夫婦別姓に賛成する政党の議員数が大幅に増えました。国内外の機運も高まっている今、選択的夫婦別姓実現を決断するべきではないのですか。石破総理が答弁した更なる検討は、いつまでに終えるおつもりでしょうか。
次に、物価高の中で働く人を支援する方法について伺います。
まず、年収の壁です。
壁がある中で、最も重く、重大な壁だと考えるのは百三十万円の壁です。配偶者の扶養家族だった人が年収百三十万円以上で働くと、国民年金、国民健康保険の保険料負担が生じて手取りが約三十万円減ってしまう、これがいわゆる百三十万円の壁です。
立憲民主党は、収入に応じて社会保険料の負担が発生する壁による働き控え、手取りが減ることをカバーできるよう、就労支援給付制度の導入に関する法律案を提出しました。年収が百三十万円以上になると、社会保険料の負担分が、収入が増える分よりも多くなります。私たちの法案では、年収が百三十万円を上回って二百万円に達するまでの間、徐々に金額を減らしながら給付金を支給し、手取りが減るのを抑え、手取りが右肩上がりになるようにします。百三万円の壁を引き上げると数兆円の減収になると試算がされておりますが、この法案は約七千八百億円で実現できます。
十一月二十七日の自公の幹事長・国対委員長会談では、百三十万円の壁の見直しも併せて議論していくことで一致したと報道されていますが、総理、百三十万円の壁の見直しはどんな中身になるのでしょうか。また、立憲民主党案は、予算さえ組めばすぐに実現します。総理、早くやるべきではないでしょうか。
百三万円の年収の壁を引き上げることによる地方財政への影響について伺います。
百三万円の壁を引き上げることで、地方にとっては大きな減収になるという懸念が知事や市町村長から上がっています。十一月二十五日の全国知事会も、地方の減収分を国が十分補填するよう総理に要望しています。
住民税と所得税、両方の壁の引上げをやるのでしょうか。それとも、一部報道に出ているように、所得税の壁だけを引き上げるのですか。それぞれの場合でも、地方への減収は全て補填されるのでしょうか。所得税収が減ることによる地方交付税の減額分を国が補填するのでしょうか。住民税非課税世帯への各種支援策の対象が広がることに伴う地方公共団体の歳出増も補填されるのでしょうか。
百三万円の壁を引き上げて控除額を増やすと、低所得者より高所得者の方の税率が高いため減税額は高所得者ほど大きくなると思われますが、これは不公平だという指摘について、総理はどのようにお考えですか。
現行の制度では、年収が百六万円を超えると社会保険料を支払わなければなりません。これがいわゆる百六万円の壁です。しかし、所得にかかわらず、週二十時間働けば社会保険料を払わなければならないという案について、厚生労働省の審議会で議論が続けられています。百六万円の壁の撤廃については、その方向で最終調整に入ったなどの報道がなされていますが、壁を撤廃するのですか。それはいつからでしょうか。
今度は、雇う側の視点から伺います。
例えば、五人のパートタイマーの従業員を雇う事業主は、現行において、五人とも収入が百六万円になったら、新たに厚生年金だけで年間五十万円ほどの負担増になります。これは、中小企業の社長にとっては大変な負担です。
さらに、百六万円の壁を撤廃する場合、労使折半である社会保険料の負担割合を労使合意で変えるという特例が厚労省から提案されました。つまり、社会保険料の負担割合が事業主と労働者の間での半分半分ではなく、事業主九、労働者一ですとか、七対三などというように変えることができるようになるというものです。
しかし、会社によって負担割合に格差が出るため、結果的に大企業に人材が流出するのではないかという懸念もあります。日本商工会議所の小林会頭は、この厚労省の特例案に対し、不公平で、企業により多い負担を求める理由がないと不快感をあらわにしています。
一方、私たち立憲民主党は、さきの国会で既に社会保険料事業者負担軽減法案を提出しています。この法案は、新たに正社員を雇用した中小企業の社会保険料負担を補助して、正社員を増やし、結果的に経済的な理由で結婚や出産を諦めないことにもつながるものです。
総理、様々な物価が上がる中で、賃上げの原資を確保するのに大変苦労されている中小企業が求めるのは、社会保険料の更なる負担よりも補助だと思いますが、いかがでしょうか。
次に、介護、障害、保育について伺います。
総理の所信表明演説の中では、介護については一切触れられておりませんでした。残念です。
訪問介護は、利用者一人一人に応じたサービスを提供するため、より高いスキルが求められ、在宅でできるきめ細やかなサービスが受けられる、地域の最後のとりでとも言えます。それにもかかわらず、基本報酬が引き下げられました。二四年度の上半期、訪問介護事業所の倒産は過去最多となっています。訪問介護事業者に支援金を支給するべきではないでしょうか。
昨年十一月に決定された介護、障害福祉職員を対象に収入を引き上げる措置は評価しますが、月六千円では余りにも少な過ぎです。また、支給対象は事業所が限定され、支給額の算定には事務職員や調理員が含まれません。立憲民主党は、全ての介護、障害福祉事業所の全ての職員に対し、漏れることなく、政府の処遇改善六千円に月額一万円を上乗せする形で処遇改善を行う法案を再提出する予定です。
総理、国の処遇改善六千円にプラス一万円を上乗せして、額を引き上げるべきではないですか。さらに、支給対象も、全ての事業者、全ての従業員にするべきではありませんか。
立憲民主党は、保育士、幼稚園教諭の処遇を改善する法案も提出予定です。
次に、教育について伺います。
残念ながら、教育分野に関しても、所信表明演説では一行と五文字のみでしか触れられていませんでした。教育の現場で先生たちは疲弊をしています。授業や授業準備だけではなく、テストの採点や、絵などを廊下に掲示するなどといった仕事に先生たちは日々膨大な時間を費やしています。先生たちの仕事量を減らす取組が重要です。
十月の代表質問で、先生たちの仕事量を減らすための具体策を聞いた吉田はるみ議員の質問に対し、石破総理の答弁は、働き方改革、デジタル技術の活用のみで、具体的な答弁はありませんでした。デジタル化で仕事を効率化することに対して否定はしませんが、先生たちが行っている優先順位の低い仕事を減らし、先生たちの数を増やす取組が必要ではありませんか。また、石破総理の教育現場における働き方改革とは何ですか。具体策を伺います。
教員の処遇改善として、残業代の代わりに基本給に上乗せする教職調整額を四%から一三%に引き上げる方針については一定評価しますが、定額で働くことには変わりありません。立憲民主党は、定額働かせ放題と言われる今の状況を打破するために、給特法を廃止し、通常の民間企業と同じように残業代が全額支払われるべきだと考えますが、総理の所見を伺います。
さて、今日十二月二日は、現行の紙やプラスチックの保険証の新規発行が停止される日です。今日から直ちに紙の保険証が使えなくなるわけではありませんが、今お持ちの紙の保険証が使えるのは有効期限までです。
石破総理は、総裁選の際、不利益を被る国民が一定数いた場合は、紙の保険証と当面併用することも選択肢として当然だと発言しました。しかし、総理就任後の十月の代表質問では、現行の健康保険証の新規発行終了につきましては法で定められたスケジュールで進めると答弁しました。総裁選のときはあたかも一年以上、紙の保険証を併用できるようにも受け取れる言い方をしておきながら、結局は元々決められた話をしただけということなんでしょうか。総理の真意を伺います。
全国保険医団体連合会のアンケートによると、マイナ保険証を利用の際のトラブルとして、名前や住所が正しく表記されないことや、カードリーダーの接続不良、認証エラーなどが報告されています。周知が十分とは言えない中、引っ越しや新入社員が入社する来年三月や四月が切替えラッシュになるとも予想され、更に混乱する可能性があります。
また、総理の所信表明演説で、マイナ保険証について、国民の皆様の不安には迅速に応え、丁寧に対応するというのが私の考えですと述べておられましたが、具体的に何をするのか、お答えください。また、お持ちでない方には資格確認書を速やかにお届けすると声高に言われておりましたが、実際に届けるのは健康保険組合や国民健康保険組合など保険者です。国民一人一人の手元に、紙の保険証の有効期限が違う中で、速やかにとは、いつ頃届くことをおっしゃっているのでしょうか。目安がありましたらお示しください。
次に、一次産業の課題についてお伺いします。
石破総理は二〇〇八年に農林水産大臣に就任されていますが、あれから十六年がたちました。この間、一次産業の現場はどうなったでしょうか。農家戸数は百八十万経営体から八十八万経営体になり、半減しています。食料自給率は四一%から三八%と減少しました。農水省によると、国が安定供給を目指すニンジンやホウレンソウなどといった指定野菜のうち十品目が、今年、統計開始以来最小の作付面積になったそうです。省力化などの取組も努力されていますが、高齢化や労働力不足の影響が大きくなっています。
総理の所信表明演説では、人口減少においても、食料産業の生産基盤を強化し、安定的な輸入と備蓄を確保することなどを通じて、食料安全保障を確保となっていました。
総理、農家戸数も食料自給率も、十六年間で減少しています。食料産業の生産基盤を強化するためには、どんなことが必要だとお考えでしょうか。具体的な目標や方法があればお答えください。
今年は、あちこちでお米が買えない異常事態が発生しました。お米の価格高騰や特定の銘柄が手に入らないことなどは、今年初め頃から米農家や卸などで既に認識をされていました。それにもかかわらず結果的に混乱を招いたことは、政府の見通しの甘さがあったのではないかという点をまず指摘します。
所信表明演説では、この夏、店頭から米が一時消えたことは記憶に新しいところですと、どこか他人事のような表現でした。今年の夏にお米が手に入らなくなった原因を総理はどう分析されていますか。また、もし石破総理だったら、どのような対応をされましたか。
現在、お米は流通しているものの、価格は高いままです。消費者からすると、少しでも値上げは避けたいものですが、長い間、米価が安く、農家が苦しめられてきたのも事実です。消費者と農家の双方が納得する適正な価格形成は簡単ではありません。立憲民主党は、だからこそ、価格は市場で、所得は政策でと切り分けるべきだと考えます。
九月二十八日の日本農業新聞の記事によると、総理は、米の増産にかじを切り、輸出を拡大するべきだと訴えた、生産拡大に伴う米価下落には直接所得補償で対応するとし、水田転作などに充てている約三千五百億円を財源とする考えを表明とされています。一方で、石破総理は、十月の代表質問で、他党の議員から、米にも直接支払い制度が必要ではありませんかと問われた際、農業者の創意工夫や日々の努力にブレーキをかけ、また、農地の集積、集約化が進まなくなる等の指摘もございますと答弁しました。
民主党政権で始まった戸別所得補償制度は自民党政権でなくしてしまいましたが、総理の案は、農業者が米を増産することを可能にし、米価下落に対しては直接所得補償で対応するということでしょうか。
二十五年ぶりの食料・農業・農村基本法の改正と同時に、さきの国会で食料供給困難事態対策法が成立しました。これは、自然災害や世界情勢の影響などによって国内での食料供給が大幅に不足した際、増産や作る作物の変更などを国が生産者に指示できるというものです。さらに、計画の作成や提出を拒否すると農家に二十万円の罰金を科すことも決められました。これに対し、農家からは、国への不信感になる、生産意欲を損なうといった声が上がっています。
総理、今からでも農家への罰則規定は撤廃するべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、総理の地元、鳥取県の農家の皆さんからは、農家の罰金についてどんな声が聞かれましたか。
所信表明演説では、人口減少下においても、農林水産業、食料産業の生産基盤を強化し、安定的な輸入と備蓄を確保することと述べられていました。
コロナ禍、生乳生産が過剰と言われていた状況がようやく改善した矢先で、バターが追加輸入されました。二年前、政府は、十五万円の奨励金で牛を処分するといった政策まで実施しましたが、生産現場は、需給と供給のバランスのために、生産調整に協力してきました。バターの追加輸入は夏の暑さの影響で生乳が足りないという理由ですが、生乳が足りなくなったのは、この数年間、酪農家が生乳生産を抑制、減産したことによる生産基盤の弱体化の影響も大きかったのではないでしょうか。
日本の人口が減る中で、国内の一次産業の発展のためには輸出も重要だと考えます。安心、安全な日本の農作物は海外で人気があります。例えば、ロングライフ牛乳という常温で約九十日間保存が利く牛乳も、アジアで輸出を伸ばしています。また、世界でも高い評価を受ける和牛は、生産量のうち五%ほどしか輸出しておらず、伸び代があると思います。
こうした日本の農林水産物の輸出の販路拡大や輸出国のニーズに応えていくためには、国が積極的に民間をサポートする必要があると思いますが、総理はどうお考えでしょうか。また、具体的にどのようなサポートをしますか。政府は、農林水産物、食品の輸出額目標を、二〇二五年までに二兆円、二〇三〇年までに五兆円達成としています。総理、来年、輸出二兆円を達成できますか。
収量や品質を維持するために必要な肥料について伺います。
肥料の価格上昇分に対して補填するという国の制度は、昨年まではありましたが、終了しました。今年六月、当時の坂本農水大臣が、肥料価格について、急騰とは言えないとして、支援対象ではないという認識を示しました。しかし、農業物価統計において、肥料価格は、令和二年を一〇〇とすると、今年九月は一三九・五%となっています。
総理、肥料価格高騰について、今年は国として直接支援する必要はないという認識なのでしょうか。
家畜の餌である飼料も高止まり状態です。家畜の餌として複数の穀物などを混ぜた配合飼料は、価格が急騰したときは補填される仕組みがありますが、価格が高止まり状態だと価格が変動していないという算定になり、生産者に十分補填されません。
ダメージが今後も長期にわたる可能性がある今、収入を支えるという本来の機能を発揮できる仕組みを早急につくるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
漁業について伺います。
所信表明演説では、農林水産業や農山漁村という言葉はありましたが、水産業についての具体的な言及はありませんでした。
しかし、浜は気候変動の影響を大きく受けています。近年は、北海道や東北地方で、高温により、ホタテやアワビの稚貝と呼ばれる成長前の貝がへい死する壊滅的な被害を受けています。貝は出荷されるまで二年から五年ほど要するため、将来の影響が懸念されています。赤潮被害で壊滅的な被害を受けたウニも、食べられるまでに育つのは約四年かかりますが、ようやく三年目です。
総理は、党の水産総合調査会長も務められていましたが、気候変動による影響が避けられない中、浜の皆さんを中長期的にどう支えていきますか。
林業について伺います。
日本の森林率は先進国で三位であるにもかかわらず、木材の自給率は約四割程度であり、十分ではありません。国産材を活用することは、切って、植えてのサイクルを活性化し、災害防止となる治水や地球環境への配慮の観点からも大変重要です。
国産材をもっとたくさん活用するための振興策を伺います。
二〇一四年、政府が人口減少克服と東京一極集中の是正を目指し、地方創生をスタートさせてから十年がたちました。初代地方創生担当大臣に就任されたのが石破総理です。
総理は、所信表明演説で、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増すると述べられましたが、予算ありきではなく、例えば、東京一極集中は是正されたのか、人口減少のスピードを遅らせられたのか、どのような指標でこの十年間の地方創生を評価するのか、具体的に定量的な数字でお答えください。
また、地方創生推進交付金は、定量的にどのような効果があったのでしょうか。もし仮に、はっきりとした定量的な効果が示せないとしたら、予算を増額だけしても効果は薄いのではないでしょうか。
いわゆる闇バイト対策について伺います。
犯罪実行者の募集を適法な求人かのように装って行い、応募者に詐欺や強盗などを行わせる、いわゆる闇バイトによる犯罪被害が深刻化しています。警察庁始め、関係省庁の対策を一層強化する必要があります。
犯罪実行者募集のSNS投稿を、警察庁の委託事業であるインターネット・ホットラインセンターによれば、削除依頼しても、速やかに削除されるのは八割程度にとどまります。問題は、削除されていない二割の投稿です。総理は、所信表明演説において、闇バイトを募集する情報のインターネット上からの削除にも一層努めてまいりますと述べましたが、残りの二割の投稿について、どのように削除するのでしょうか。闇バイトによる犯罪被害防止をどのように徹底していくのか、見解を伺います。
石破総理が就任されて二か月がたちました。しかし、総理は、十月に予算委員会をやると言ったのにすぐ解散、マイナ保険証の併用期間延長の可能性や選択的夫婦別姓への積極的姿勢など、多くの国民を期待させたのに裏切ってしまっています。そのことは、衆議院選挙の結果でも明白です。僭越ながら申し上げれば、総理大臣になることと引換えに、政治家石破茂らしさを失ってしまったとすれば、余りにも残念です。
総理が総裁選で政治家のあるべき姿として語ってきた、勇気と真心で真実を語る姿勢で、石破総理らしい答弁に期待をいたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 石川香織議員の御質問にお答えをいたします。
選択的夫婦別氏制度についてのお尋ねであります。
選択的夫婦別氏制度につきましては、内閣府において行った令和三年の世論調査を見ても、国民の御意見が分かれておるところであり、こうした状況に鑑みると、しっかりと議論し、より幅広い国民の御理解を得る必要があると考えております。
また、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方については、各党において様々な考え方があるものと承知をいたしております。
政府といたしましては、引き続き、こうした国民各層の意見や国会における議論の動向を注視していく必要があると考えております。
いわゆる百三十万円の壁への対応についてお尋ねがありました。
社会保険の適用に関するいわゆる百三十万円の壁につきましては、当面の対応として、被扶養者認定を円滑化するなどの年収の壁・支援強化パッケージの活用にまずは取り組んでまいります。
その上で、就業調整を行っている労働者が希望に応じて働くことができるよう、制度的な対応を図ることも重要であると考えております。
政府におきましては、現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っておるところであり、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の更なる適用拡大など、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。
いわゆる百三万円の壁についてであります。
今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる百三万円の壁につきましては、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しましては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。
経済や税収への影響、議員御指摘の個人住民税の取扱いや公平性など、専門的な観点も含めて様々考えねばならない論点があるものと認識をいたしております。そうしたことも踏まえ、今後、各党の税制調査会長間などで更に議論を深めていただきたいと考えております。
いわゆる百六万円の壁への対応についてであります。
いわゆる百六万円の壁とされる短時間労働者の被用者保険への加入要件の在り方につきましては、社会保障審議会年金部会において検討しており、引き続き議論が必要とされておるところでございます。
次期年金制度改正に向け、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の適用拡大について、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。
中小企業の社会保険料についてのお尋ねをいただきました。
いわゆる百六万円の壁とされる短時間労働者の被用者保険への加入要件の在り方につきましては、社会保障審議会年金部会において検討しており、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。
中小企業に対して社会保険料の事業主負担を助成すべきであるとの御提案につきましては、社会保険料は医療や年金の給付を通じて労働者を支えるための事業主の責任であり、働く人の健康保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資するものであることから、慎重な検討が必要であると考えております。
介護、障害福祉分野の支援につきましてお尋ねを頂戴しました。
これまでも、介護職の処遇改善については、人材確保を図る観点から、介護職の配置があるサービスを対象としつつ、事業所内で柔軟に配分することを認めるなど、累次の取組を講じてまいりました。
また、先般の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬は見直しつつ、介護職員の処遇改善に充てる加算措置は、ほかの介護サービスと比べて高い加算率とし、職員の処遇改善が図られるようにいたしたものであります。
その上で、訪問介護につきましては、人材確保に特に課題があると認識をいたしており、今般の経済対策において、ヘルパーの同行支援を強化するなど、地域の特性や事業者規模等に応じたきめ細かい対策を講じることといたしており、こうした対策も併せて活用いたしてまいります。
さらに、今般の経済対策では、人手不足の状況等を踏まえ、介護人材の確保及び職場環境の改善に資する新たな事業を盛り込んだところであり、介護、障害福祉分野の更なる支援の取組を進めてまいります。
教師の働き方についてのお尋ねをいただきました。
業務の仕分を行った、学校、教師が担う業務に関する三分類に基づく業務の更なる厳選、見直しや、標準を大きく上回る授業時数の見直し、校務DXの加速化を進めるとともに、学校の指導、運営体制の充実により、教師の時間外在校等時間を削減いたします。
給特法につきましては様々な御議論があると承知をいたしており、予算編成過程で調整を進め、こうした教師の働き方改革や給与面を含む処遇改善などを通じて、公教育の再生を進めてまいります。
マイナ保険証は、本人の健康医療情報を活用した適切な医療の提供に大きく寄与するものであります。
健康保険証の新規発行が終了いたしますが、マイナ保険証の利用を促進しつつ、マイナ保険証が利用できない方も確実に保険診療が受けられますよう、最大一年間、発行済みの保険証は使用可能であるほか、マイナ保険証をお持ちでない方には、保険証が使用できなくなる前に、申請によらず資格確認書を発行することといたしており、こうした点について丁寧に周知することなどにより、国民の皆様方の不安に迅速に応えてまいります。
なお、資格確認書が交付される時期については、保険証の有効期限により異なりますが、期限が切れて使用できなくなるまでの間に確実にお届けすることといたしており、これにより、これまでどおりの保険診療が受けられることとなります。
食料産業の生産基盤の強化についてであります。
食料安全保障の確保に向け、その基本となりますのは食料の生産基盤の強化です。このため、スマート技術の導入や農地の集積、集約等による生産性の向上、農林水産物のブランド化等による付加価値の向上、世界市場に向けた輸出の促進などを着実に進めていくことが必要と考えております。
今後、新たな食料・農業・農村基本計画を策定する中で、こうした取組に必要な具体の施策や目標を体系的に整理し、その充実強化を図ってまいります。
夏の米の品薄と米の直接所得補償についてであります。
今夏の、今年の夏の米の品薄状況は、八月の端境期において、南海トラフ地震臨時情報等による需要増に対して、スーパー等への供給が追いつかなかったために生じたものとの指摘があります。当面の対応としては、適切な情報収集と発信であり、端境期の前から米の流通状況を丁寧に把握し、円滑な流通の確保に向けた働きかけを行っていくとともに、消費者への分かりやすい情報発信を行うことだと考えております。
米政策につきましては、海外も含め市場を開拓し、需要に応じた生産を進めていくことが重要であります。今後、新たな食料・農業・農村基本計画の策定や、令和九年度に向けた水田政策の在り方の検討の中で、米政策や農業者への直接支払いの在り方についても議論を深めてまいります。
食料供給困難事態対策法についてであります。
事業者に生産等の計画の届出を求めておりますのは、食料供給が大幅に不足をし、買占めや価格の高騰など国民生活等に支障が生ずるような場合に、政府として、確保可能な食料供給量を把握し、必要な対策を講ずるためであります。御指摘の計画の届出をしない事業者に対する罰金は、こうした極めて例外的な場合に限ったものであり、国民生活等への支障を最小限にとどめようとするために設けているものであります。
私の地元、鳥取県におきましても、農林水産省職員が自治体やJA等との意見交換を三十回以上行う中で、罰則規定まで設けるのは厳しいのではないか等の御意見をいただき、規定の趣旨等について丁寧な説明に努めたと承知をいたしております。
今後とも、各地で丁寧な説明を行い、関係者の皆様の御理解をいただけるよう、努力をいたしてまいります。
バターの追加輸入についてであります。
この数年間、生乳の需要先のうち、バターの需要は堅調なものの、脱脂粉乳の需要は低迷している状況が続いております。生産者団体においては、そうした状況を踏まえ、需要に応じた生乳の供給計画を策定しています。
今年末に向けてのバターの輸入を増やしましたのは、令和五年夏の猛暑の影響が長引いたことなどによって、計画を下回る供給が続くことが懸念されたことによるものと承知をいたしております。
今後とも、牛乳・乳製品の需給の安定を図りつつ、酪農の生産基盤と経営安定を確保いたしてまいります。
農林水産物、食品の輸出についてであります。
昨年の輸出額は過去最高の一兆四千五百四十一億円と、十一年連続で増加をいたしました。
今般の経済対策では、更なる輸出拡大に向け、国内での生産から海外での販売まで、輸出に取り組む意欲ある事業者を支援する施策を盛り込んでおります。また、先日の習近平中国国家主席との日中首脳会談では、日本産水産物の輸入解禁の早期実現、日本産牛肉の輸入再開、精米の輸入拡大も求めたところであります。
こうしたあらゆる努力を通じ、政府一丸となって、輸出額二兆円目標の達成に向けて取り組んでまいります。
肥料価格についてであります。
肥料価格を示す物価指数は、原料の国際的な需給逼迫により、令和五年四月に一五五・三まで急騰し、その後、需給が落ち着きを取り戻し、直近の令和六年十月の同指数は一三九・五となっております。
肥料につきましては、国際情勢等の影響を受けにくい構造に転換をしていくことが喫緊の課題であります。このため、原料を海外に依存する化学肥料の使用低減に向け、土壌診断による適正施肥、有機質肥料の活用等を促進していくとともに、今般の経済対策において、肥料の国産化に向けた製造施設の整備等を行う施策を盛り込んでおります。
また、物価高騰対策として重点支援地方交付金も追加しており、これを活用して、引き続き、地方公共団体において地域の実情に応じた肥料対策が講じられるよう、積極的に働きかけてまいります。
畜産経営の収入を支える仕組みについてであります。
石川議員御指摘の配合飼料の価格高騰に対する激変緩和対策に加え、畜種ごとの生産実態等の違いに即した生産コストの変動を考慮した経営安定対策や金融支援、畜産物の需要拡大支援など、各般の施策により経営の安定を図っております。
今後とも、これらの施策を適切に実施していくとともに、耕畜連携の推進や飼料生産組織の運営強化など、国産飼料の生産、利用の拡大を進めることにより、国際情勢の影響を受けにくい畜産経営への構造転換を後押しいたしてまいります。
中長期的な水産政策につきましてであります。
我が国の漁業は、海洋環境の変化に伴うスルメイカ、サケ等の長期的な不漁などの課題に直面しておりますが、領海及び排他的経済水域の面積は世界第六位を誇り、浜の皆様方が、この恵まれた環境を生かし、持てる力を最大限発揮できる環境整備が重要であります。
このため、海洋環境の変化に対応した魚種、漁法の追加、転換や、養殖業への転換、スマート技術の導入による生産コストの削減、漁村の地域資源を生かした海業の全国展開などを後押しすることにより、食料安全保障を確保しつつ、漁業所得の向上、漁村の活性化を図ってまいります。
国産木材の活用についてであります。
戦後造成してきた我が国の人工林は、今まさに利用期を迎えており、切って、使って、植えて、育てるという森林資源の循環利用を図り、各地域の林業の活性化と二〇五〇年カーボンニュートラルの実現につなげていくことが重要であります。
このため、林業の担い手の育成、確保を図りつつ、路網の整備と森林の集積、集約化、木材の加工流通施設の整備、強度に優れたCLT等を用いた建築実証等々、川上から川下まで総合的な取組を講じ、これを通じて国産木材の更なる利用促進を図ってまいります。
地方創生の評価についてであります。
地方創生につきましては、十年前の始動時に、様々な評価指標を設定いたしました。例えば、二〇二〇年までに地方拠点における雇用者数を四万人増加させるという指標につきましては、二〇一五年度から二〇二三年度の合計で約三万人。お試し居住に取り組む市町村の数を倍増させるという指標につきましては、二〇一四年二三%から二〇二二年に四四%。東京圏への転入者数と転出者数を均衡させるという指標を掲げた一方、東京一極集中は続いており、足下で東京圏への転入超過となっております。
地方創生推進交付金事業につきましては、事業ごとに地方創生の評価指標に対応する定量的なKPIを自治体が作成し、PDCAサイクルを回す仕組みとしております。例えば、関係人口の増加数や移住者数などをKPIとして設定しており、複数のKPI目標のうち、一つ以上達成した事業の割合が約七割から八割、目標値に達したKPIの割合が約五割となっております。
新たな地方創生の交付金につきましても、自治体において事業ごとに定量的な評価指標を設定し、評価結果と改善方策を、住民を始めとする国民の皆様方に明らかにしていこうと考えております。産官学金労言の参画により、効果的な評価がなされるよう取り組んでまいります。
いわゆる闇バイトによる犯罪被害の防止についてのお尋ねがありました。
闇バイトなどと称し、高額な報酬の支払いを示唆するなどして犯罪の実行者を募集する投稿が見られますが、そのような投稿は、それ自体が犯罪に該当するものであります。
政府といたしましては、投稿が確実に削除されるよう、SNS事業者等に対する働きかけを行うほか、SNSの返信機能を活用した投稿者に対する個別警告等を推進しております。引き続き、このような取組を強化いたしてまいります。
また、このような投稿をSNS事業者等が削除することができる場合の基準の明確化などについても、検討を進め、成案を得るものといたします。
以上でございます。(拍手)
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○副議長(玄葉光一郎君) 浅野哲君。
〔浅野哲君登壇〕
○浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。
初めに、さきの総選挙で当選された全ての議員の皆様に対し、心からの敬意を表します。我が国が抱える課題の解消と国家の更なる発展を目指し、互いに真摯な議論を交わしていけることへの期待を表明し、質問に入ります。(拍手)
去る十一月十九日、予算委員会の皆様とともに輪島市を訪問しました。地震から十一か月、九月の豪雨災害から二か月が経過した今もなお、現地では、多数の被災した建物や土砂崩れ、河川氾濫の跡を生々しい姿で確認することができました。ある住民の方からは、仮設住宅に入居後二日目に豪雨災害が発生し、心が折れてしまったという悲痛な声も伺いました。
被災地域では、これから降雪期に入ります。現地では、雪が降る前の土砂や解体建物などの撤去、河川修復作業の加速を求める声が出ています。
総理、能登半島の復旧は待ったなしです。政府として、十分な予算措置と、現地の要望に寄り添った迅速な対応を改めて求めます。また、政府の総合経済対策の中には、国民民主党が提案した、避難所となる体育館等への空調設備導入のペース倍増が盛り込まれましたが、ランニングコスト支援も含めていただくことを求めます。
国民民主党は、さきの総選挙において、手取りを増やす経済対策を公約に掲げました。
大手企業では五%を超える賃上げが実現し、長く続いた賃金デフレの終わりがようやく見えてきました。国の税収も過去最高を更新し続けており、円安で外為特会などの税外収入も増えています。一方で、給料が上がったけれども税金や社会保険料が高くなって、結局手取りが増えないという声が多く寄せられています。
総理、政治の役割は、国の懐を豊かにすることではなく、国民の懐を豊かにすることです。賃上げの波をもっと大きく、もっと持続させるには、手取りを増やして消費を拡大し、売上げを増やすことで更なる賃上げにつなげるという好循環が何より重要です。今こそ、みんなの手取りを増やすことで、個人消費から始める経済の好循環を実現しようではありませんか。
いわゆる百三万円の壁の引上げについて提案します。
皆様、少し想像してください。もし、皆様がパートで働いている立場だとして、手取りが年七十五万円増えたら、それを何のために使いたいですか。社会保険料を支払った場合でも、家族旅行に行ったり、記念日に大切な人と食事をしたり、子供にかわいい服を買ってあげたり、習い事のための十分なお金が手元に残ります。年収の壁を引き上げることで、働き方の自由が生まれ、豊かな暮らしを手にする機会を多くの人々に届けることができます。
幾つかの事実を提示します。
一九九五年から今日までの三十年間で、日本の最低賃金は一・七三倍に上昇しました。これと同じペースで壁の高さが変われば、現在は百七十八万円になるはずです。この壁の高さは高過ぎるでしょうか。そんなことはありません。令和四年度の生活保護事業の総予算を総受給者数で割ると、受給者一人当たりが生きていくために必要な予算は年約百八十万円です。日本で必要最低限度の生活を送るためには、この程度の手取りが必要であることの証左です。
一方、総務省と厚労省の調査によると、就業調整をしている人は五百三十七万人、パートタイム労働者の四五%が、就業調整を行った理由として百三万円の壁を挙げています。年収の壁が文字どおり障壁となって、極めて多くの労働者の労働意欲を阻害し、年収を抑制していることは、これらの事実からも明白であります。
このような事実を見ても、百三万円の壁は、最低賃金の上昇率などを勘案して、百七十八万円に引き上げるべきです。
また、年収の壁を引き上げる効果は、税負担の軽減だけではありません。百三万円で働き控えをしている人々が働くことをちゅうちょする理由を取り除くことで、手取りを年七十五万円増やすことができます。これらの効果が、個人消費拡大や中小企業等における労働力向上につながることを我々は確信しています。
今、このような考えの下、十一月二十八日には百三万円の壁を引き上げる法案を提出いたしました。是非、関係各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。
総理も、所信演説において、百三万円の壁を引き上げると明言されました。改めて、その御決意を伺います。また、あわせて、特定扶養控除の基準額も引き上げ、その適用における年齢条件は年ではなく年度を基準とし、就学年での適用ができるよう運用改善をすべきです。総理の見解を併せて伺います。
中学生以下の子供たちにも当然生存権は保障されています。ただし、彼らは収入を得られないため、基礎控除の恩恵は及びません。現状、児童手当のみです。一方、扶養されている成人や高齢者には扶養控除が適用され、さらに、第三号被保険者制度や国民年金制度の下、事実上の現金給付が行われています。あえて付言すれば、年金受給者には最大百十万円の年金控除制度も準備をされています。
つまり、現状は子供に対する生存権保障が手薄なのです。だからこそ、子育て罰という言葉が生まれ、若い世代が子供をつくることに不安を感じ、少子化が止まらないのです。
総理、かつての自民党は、年少扶養控除の復活を選挙公約に掲げていました。その提案は正しかったと思います。年少扶養控除は再導入すべきです。この制度がないこと自体がおかしい。また、高校生の扶養控除が縮小される議論がありますが、我が党は明確に反対を表明します。見解をお聞かせください。
本年四月、補装具費支給制度に係る所得制限が撤廃されましたが、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当等に関しては、依然として所得制限がかけられています。
厚労省調査によれば、近年の賃上げによって児童がいる世帯の所得も増加していますが、所得制限が適用されると自己負担も増加し、実所得の逆転現象が起こってきた現実があります。それを避けるため、働き控えが増加する可能性は十分に考えられます。
全ての子供たちに寄り添い、その御家族を支えるためにも、障害児福祉の所得制限を全て撤廃してください。総理の答弁を求めます。
現在のレギュラーガソリンの本来価格は約百九十円、それを補助金で百七十五円程度に抑えています。この施策がスタートした二〇二二年以降の予算総額は約八兆円に上ります。三年間で八兆円ということは、年間約二・三兆円がこの施策に投じられてきたことになります。総理、ガソリン代への補助金はいつまで続けられるのでしょうか。
国民民主党は、五十年前から続いている一リットル当たり二十五・一円の暫定税率の廃止を求めます。これにより、ガソリンの販売価格は百六十五円程度まで下がり、それでも減税幅は年一・五兆円程度です。国民負担が軽くなり、財政負担も軽くなる、地方の減収分を補填してもお釣りがやってきます。明らかに現行施策よりも優れています。
また、ガソリン代は物流コストに直結することから、企業の利益を削り、来年の賃上げ原資をも奪います。地方創生をうたっている石破総理こそ、ガソリン減税に取り組むべきです。
総理、先日政党間で約束した自動車関係諸税全体の見直しは早急に着手し、来年度からガソリン税の暫定税率廃止を実現すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
連合は、十一月二十八日に開催した中央委員会の中で、来年の春闘賃上げ要求水準を、大手企業五%以上、中小企業六%以上としました。来年は、賃上げの継続のみならず、大企業と中小企業の賃金格差是正も課題となる見通しです。
まず、継続的賃上げのために総理は何から着手をするか、答弁を求めます。また、総理は所信演説の中で、男女間の賃金格差と、女性の雇用におけるL字カーブに対する問題意識を表明されました。これらの解決に向けた総理の御認識を併せてお聞かせください。
加えて、継続的な賃上げのためには価格転嫁が必要です。一方、民間団体が実施したアンケートによれば、賃上げのために使った経費の半分以下しか価格転嫁できなかったと答えた企業は約六割に上りました。現状、十分な価格転嫁ができているとは言えません。労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針が公表されてから一年。これまでの評価と、迅速かつ円滑な価格転嫁の実現に向けた具体策をお聞かせください。
また、企業の収益力強化も必要です。これまで、中小企業向けには多数の支援メニューが提供されていますが、新たに定義された中堅企業向けの支援策は手薄となっています。中堅企業の経営支援についても充実させていくことを求めます。
教職員の労働環境改善について伺います。
総理は、人づくりこそ国づくり、教職員の働き方改革や給与面を含む処遇改善を通じて公教育の再生を進めると明言されましたが、具体策について伺います。
総理の発言は、教職調整額を四%から一三%に引き上げた上で、更なる処遇改善や働き方改革推進、教職員定数の改善など、学校現場における人への投資を一層強化する意思の表明と受け止めました。その理解で正しいでしょうか。答弁をお願いいたします。
訪問介護報酬について伺います。
訪問介護事業は、要介護者が住み慣れた地域や自宅で自立した生活を続けられるよう支援するためのものです。しかし、政府は、本年の介護報酬改定において、訪問介護をマイナス二・四%としました。現場からは強い抗議の声と悲痛な叫びが上がっています。政府は、改定を行った理由として、訪問介護の平均的な利益率の高さを挙げていますが、これは現場の実態が全く見えていない机上の空論だということを強く訴えます。
事実、令和五年度の調査によれば、月当たりの訪問回数が多い事業所と少ない事業所との間で、利益率は十一・三倍もの差が開いています。事業者規模や地域性などへの配慮に欠けたまま訪問介護報酬が引き下げられたことにより、訪問介護事業者の倒産件数は、本年十月時点で七十二件と、二か月を残した時点で過去最高を更新してしまいました。
ビジネスケアラーが増加する二〇三〇年には、およそ九兆円の経済損失が発生することも予想されています。高齢者と御家族の生活を支え、一人一人が尊厳ある人生を送るためにも、訪問介護報酬については、次の改定時期を待たず、早急に見直すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
薬価の中間年改定について伺います。
中間年薬価改定は、二〇一六年の四大臣合意に基づき実施されていますが、近年、度重なる薬価の引下げ、需給逼迫に対応するための業務コスト増大などが発生し、製薬メーカーやCMO、卸、薬局、医療機関等の経営を圧迫し、新薬創出力の低下を招いています。そもそも価格転嫁が制度上できない産業構造であるため、賃上げの不調や離職者の増加にもつながっています。
こうした現状を踏まえ、中間年薬価改定は廃止し、時代に即した薬価制度を再構築すること、そして、中医協改革に着手することを求めます。総理の見解を伺います。
健保連によれば、令和五年度の健保組合の経常収支は千三百六十七億円の赤字、令和六年度は千七百億円の赤字を見込んでいるとのことです。その最も大きな要因は、賃上げでも物価高騰でもなく、高齢者医療費への拠出金の増加です。後期高齢者医療制度への拠出額だけを見ても、令和三年度は六・五兆円に上っています。
高齢者の健康を守り、医療へのアクセスを保障することは当然です。一方、このままでは存続できない健康保険組合が出てくるおそれもあります。また、このままでは、幾ら賃金が上がっても、社会保険料率も上がり、手取りが増えない状況が続きます。
国会には、不都合な真実から目をそらすことなく、持続可能な医療保険制度の在り方について議論を行っていく責任があります。窓口で三割負担する現役並み所得者の対象範囲や保険料率、給付抑制策、公金支援の拡充など、聖域なき議論が求められています。
これらを踏まえ、後期高齢者医療保険制度の今後のあるべき姿について、総理の見解をお伺いします。
石破総理は、地方創生に関する点を集めて面にしたいとの意欲を表明されましたが、そのためには、点と点とをつなぐ線が必要です。そのための具体策は考えられていますでしょうか。
地方創生のポイントは、移動のコストを下げることです。地方への産業誘致、観光産業の活性化、二拠点居住促進などを図るため、高速道路料金を引き下げるべきです。
一九七二年に刊行された「日本列島改造論」。その本旨は、工業再配置と交通、情報通信の全国的ネットワークの形成をてこにして、人と金と物の流れを巨大都市から地方に逆流させる地方分散を推進することでした。あれから約五十年がたち、今再び、交通、情報通信の全国的ネットワークの再構築が求められています。
国民民主党は、高速道路の年間収入と年間走行台数のデータを分析し、乗用車であればワンコイン五百円で高速道路走り放題の料金制度が導入可能であると考えています。利用者全員が負担を分かち合うことで、移動コストを大幅に抑制できます。総理、是非やりませんか。
暗号資産の世界市場規模が急速に成長を続ける中、日本においては、現在、暗号資産の売買益は雑所得として最高五五%の税金が課せられています。これらの規制や税制が足かせとなり、ウェブ3企業や個人資産が国外へ流出しています。
スタートアップ支援を含むウェブ3市場でのビジネス振興及び資産の国内回帰を促すために、暗号資産の取引から生じる利益について、一律二〇%の申告分離課税を導入し、加えて、株式や投資信託と同様に損失繰越控除の対象とするなど、税制改正によって日本市場の育成や競争力強化を図ることなどの対応が必要と考えます。また、仮想通貨ETFの取引環境整備が急務だと考えますが、総理の御見解を伺います。
エネルギー政策について伺います。
エネルギー政策を取り巻く環境は、三年前とは大きく変化をいたしました。生成AIの普及や、電化、電動化などのメガトレンドが出現したことにより、国内の電力需要は今後増大していくことは確実です。また、日本の新たな排出削減目標として、二〇三五年に六〇%、二〇四〇年に七三%という野心的な数値が議論されています。このような状況の下、先週、我が党は総理に対し、第七次エネルギー基本計画に対する要請書をお届けいたしました。
安全、安定、安価なエネルギー供給とGXの実現を両立するためには、再エネや原子力発電などの脱炭素かつ他国依存度の低い電源を最大限活用することが必要不可欠です。そのため、次期エネ基では、再エネ最優先や原子力依存度の低減というような二項対立的な電源の特定は行わず、原子力の必要性についても明確に示し、安全を大前提とした原子力発電所の稼働とともに、建て替えや新増設についても明記をすべきです。総理のお考えを伺います。
政府や企業へのサイバー攻撃が広がっていく中、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐための能動的サイバー防御を可能とする法整備が遅れています。政府は、重要インフラ向けのソフトウェアを登録制にして、リスク管理能力を高める方針のようですが、これはあくまでも攻撃を受けることを前提とする受け身の対策です。
能動的サイバー防御を可能とするためには、不正アクセス禁止法やウイルス作成罪の適用除外、ハックバックの正当性を担保するための関係法整備も必要です。日米同盟最大の弱点とも言われるサイバー領域でのセキュリティー向上のためにも、早急に全体像を示し、この国会での成立を目指しませんか。総理の見解を伺います。
先日の所信演説では農政に関する言及が少なく、農政に強い思いを持たれてきた石破総理らしさが出ていないように感じました。
国民民主党は、現場に不安の広がっている水田活用直接支払交付金の五年の水張り要件は撤廃するべきであると累次にわたって訴えてまいりました。石破総理は十月の本会議において、交付金要件の見直しは適切なものであると答弁されましたが、改めて、年度内策定予定の次期食料・農業・農村基本計画の中で、この要件は撤廃すると明言していただけませんか。答弁を求めます。
また、世界的な食料安保や気候危機への対応が叫ばれる中、今こそ、農業、農地の公共的、環境的役割を重視した農政への転換を推進すべきです。
国民民主党は、現在ある複数の直接支払い制度を整理統合した上で、営農継続可能な所得を国が補償する食料安保基礎支払いを創設するとともに、主要農産物、食料ごとの自給率目標を定める食料自給基本計画を策定することを提案しています。総理の見解を伺います。
我が国の土地は、国民生活及び経済活動の基盤であり、かつ、国土として防衛、安全保障としての役割を併せ持っています。そのため、その取得、利用、管理の在り方は、我が国の安全保障に深く関わっています。
二〇二二年九月、重要土地等調査法の施行により、自衛隊の基地周辺や離島など、重要な地域での土地等の利用を規制することとなりましたが、安全保障の観点からは、外国人や外国資本による不動産や水源地の取得も懸念されます。
日本は、WTO加盟時に、外国による土地取得を規制する権利を留保しませんでした。しかしながら、後に加盟した中国を含むRCEPやTPPでは留保をしています。これらの整合性の整理も踏まえて、我が国の安全保障に対する懸念を否定できないのであれば、外国人による土地等の取得、利用について、一定の規制ができるように踏み込んでいくべきと考えますが、総理の見解を伺います。
来年一月に再び大統領に就任するトランプ氏は、日本製鉄のUSスチール買収に対し、厳しい姿勢を貫いています。一部報道では、総理からバイデン大統領に対し、買収の承認を求める書簡が発出されたとされています。これは事実でしょうか。また、その趣旨は何でしょうか。
本件については、民間の案件には関与しないとする政府の姿勢に沿わない特例的な行為である一方、民間の経済活動を米国内の政治的圧力から守り、市場の自由や経済活動を担保するための一石を投じられたことと評価をしています。このように、今後も民間同士の取引が政治的な駆け引きの材料となっていくことが懸念されています。自由で公平な市場取引を担保するためのお考えを総理にお伺いします。
米国との宇宙分野における連携についても伺います。
次期トランプ政権における政府効率化省が注目を集めています。同省が連邦政府の歳出を五千億ドル以上削減することを目標にすることが表明をされました。米国会計検査院が勧告した未解決事業に分類されるものから削減対象になることが予想され、日本も関わる事業が複数含まれています。
例えば、月面着陸を目標とした有人宇宙飛行計画であるアルテミス計画の宇宙発射システムや、月面着陸を目指すアルテミス3ミッションが含まれます。日本はアルテミス計画に当初から参画し、今年四月には日本人宇宙飛行士が月面着陸に参加することなどを合意しており、日本の宇宙開発計画においても重要なプログラムです。
政府効率化省の活動が、これまで日本と米国の間で協力関係を築いてきた様々なプログラムへ影響を与えることはないのでしょうか。両国間で合意された重要事業がむやみに変更、ほごにされないよう、政府は政府効率化省の動向に注視すべきです。本件に関する総理の見解をお伺いいたします。
憲法改正について伺います。
今年六月に自民、公明、維新、国民民主、有志の会の五会派で合意した、緊急事態における国会機能維持のための改憲条文案を基に、国会としての条文化作業に結論を得るべきと考えますが、総理の御所見を伺います。
また、石破総理は、本年七月に出版した著書の中で、戦力不保持をうたった九条二項を削除した上で、現在の自衛隊を国防軍に改め、憲法に明記すべきと主張されていましたが、この考えに変更はありませんか。
私は、かつて中山太郎先生が会長時代に示した、いわゆる中山協調主義の考え方は大変重要だと認識しています。お互いの相違点があるのは当たり前です。そのような状況を前提としながらも、議論を避けず、歩幅は小さくとも丁寧な合意形成を重ねていくことこそ、憲法審査会のあるべき姿だと考えています。長年、憲法審査会に所属されてきた石破総理の憲法審査会に対する期待について伺います。
総理は、政治改革に取り組むことを宣言されました。ここで信頼を取り戻せなければ、今後の政権運営はより一層難しいものになります。
国民民主党は、政策活動費の廃止、旧文通費の使途公開の両方を自主的に行っている唯一の政党です。これらを全ての政党が実践することはもちろん、公正を期すための第三者機関の設置、違反を犯した議員が所属する政党に対する政党交付金の減額措置の創設、また、政治資金の徹底的な透明化によって不正使用を予防し、追跡可能にするキャッシュレス化の推進などを求めます。総理の見解を伺います。
国民民主党が提案をした百三万円の壁を引き上げる政策について、多くの皆様から賛否両論の御意見をいただいています。財源はどうするか、地方財政への配慮も必要だ、高所得者優遇ではないか、百六万円や百三十万円の壁対策も必要ではないかなど。与党も野党も、有識者の皆様も、メディアの方々も、そして国民の皆様も、みんなが真剣に考え、幅広い論点で議論を重ねていることに改めて希望を感じております。
だからこそ、私たちは、これからも、税金を使う側ではなく、税金を納める側の立場に立ち続けます。現場主義を貫き、国民の声を形にした政策の実現を通じて、国民生活の安定と日本社会の発展に貢献していくことを改めてお誓い申し上げ、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 浅野哲議員の御質問にお答えをいたします。
能登半島の復旧のための予算措置と体育館等の空調設備についてのお尋ねを頂戴いたしました。
今般の経済対策には、能登地域の皆様方が受けられた地震、豪雨の度重なる被害からの一刻も早い復旧と創造的復興を一層加速するため、二千六百八十四億円の施策を盛り込んでおります。
具体的には、災害公営住宅の整備費の補助限度額の引上げや、見守り、相談支援の充実、在籍型出向を活用する事業主に対する助成金や新たな一年間の雇用調整助成金の特例措置の創設、豪雨被害に対する農業用機械等への支援、道路、河川、港湾、水道、国定公園などの早期復旧や降雪期を前にした除雪機械の更なる増強、公費解体の体制の充実強化、災害廃棄物処理体制の拡充などの施策であります。
避難所となります公立小中学校の体育館等への空調設備につきましては、新たな交付金を創設し、整備のペースを二倍に加速することといたしております。議員から御指摘がありましたランニングコストにつきましても、設備設置の進捗を踏まえつつ、地方交付税措置を検討いたしてまいります。
いわゆる年収百三万円の壁及び特定扶養控除の基準額等についてであります。
今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。
経済や税収への影響など、専門的な観点も含めて様々考えなければならない論点があるものと認識をしておりますので、そうしたことも含めて、今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めていただきたいと考えております。
年少扶養控除及び高校生年代の扶養控除についてのお尋ねをいただきました。
十六歳未満を対象としたいわゆる年少扶養控除につきましては、所得控除から手当へという考え方の下、子ども手当の創設に伴い、平成二十二年度税制改正において廃止された経緯がございます。
十六歳から十八歳の扶養控除の見直しにつきましては、令和六年度政府税制改正大綱におきまして、高校生年代に支給される児童手当と併せ、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図るという方針が示されており、令和七年度税制改正において結論を得ることとされております。
国民民主党から年少扶養控除の復活や扶養控除の維持拡大を御要望いただいておることは承知いたしておりますが、まずは与党税制調査会において検討が進められるものと考えております。
障害児福祉の所得制限についてであります。
障害児福祉において、子供の成長に合わせて補装具を頻繁に買い換える必要があり、経済的な負担が重いことを踏まえ、本年四月から、補装具費の支給制度の所得制限を撤廃したところであります。
一方、御指摘の特別児童扶養手当等は、制度発足時から所得制限を設けているものですが、これは、障害児の生活の安定に寄与するよう必要な範囲で支給するという制度趣旨や、障害基礎年金などのほかの制度との均衡を踏まえたものであります。
引き続き、制度趣旨を踏まえつつ、障害児に対する各種の給付制度について適正に運用いたしてまいります。
ガソリン税についてお尋ねを頂戴いたしました。
今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる暫定税率の廃止を含むガソリン減税については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し結論を得る、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。
今後、こうした方針に沿って、自動車関係諸税の見直しに向けて、各党の税制調査会長間で議論が行われているものと考えております。
賃上げについてのお尋ねをいただきました。
家計を温めるためにも、物価上昇を上回る賃金上昇を実現していく必要があり、まず、先般の政労使の意見交換におきまして、約三十年ぶりの高い水準となった今年の勢いで、来年の春季労使交渉においても大幅な賃上げを行うことへの協力を私から要請いたしました。また、最低賃金を引き上げていくための対応策の策定を関係閣僚に指示いたしました。
中小企業を始めとした事業者の皆様方が確かにもうかり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけるよう、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めますとともに、省力化、デジタル化投資の促進や、経営基盤の強化、成長のための支援を充実いたします。
男女間賃金格差と女性の雇用におけるL字カーブについてのお尋ねをいただきました。
男女間賃金格差の是正やL字カーブの解消は、職業生活において性別にかかわらず希望に応じて活躍できるようにするとともに、人口減少下において若者、女性にも選ばれる地方づくりをしていくためにも重要な課題であると認識をいたしております。
政府といたしましては、女性活躍推進法に基づく取組の推進、非正規雇用労働者の正社員への転換に取り組む事業主への支援、短時間正社員等の柔軟な働き方の促進等に取り組んでおります。
これらの取組を通じて、誰もが安心して暮らせる働き方の実現や、それによる社会の構造、意識の変化に向けて取り組んでまいります。
価格転嫁や中堅企業の経営支援についてであります。
労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針につきましては、令和五年十一月に公表し、周知徹底に取り組んでおります。その結果、価格交渉が行われたケースが増加し、転嫁率も上昇するなど、一定の成果が出ております。
同指針の認知度が全体として半数程度にとどまっていることも踏まえ、引き続き周知徹底を進めるとともに、コスト上昇局面における価格据置きへの対応の在り方等に関し、下請代金法の改正を検討し、早期に国会に提出することを目指します。
中堅企業につきましては、日本経済の成長の鍵を握る重要な存在であることから、大規模設備投資の補助制度や、MアンドAを促進する税制措置等を新たに講じております。今般の経済対策にて三千億円規模の予算を追加するとともに、成長を促進するための様々な支援を充実させます。
教師の勤務環境についてであります。
業務の仕分を行った、学校、教師が担う業務に係る三分類に基づく業務の更なる厳選、見直しや、標準を大きく上回る授業時間の見直し、校務DXの加速化を進めますとともに、学校の指導、運営体制の充実により、教師の時間外在校等時間を削減いたします。
こうした教師の働き方改革や給与面を含む処遇改善などを通じて、公教育の再生を進めてまいります。
訪問介護についてのお尋ねを頂戴いたしました。
先般の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬は見直しつつ、介護職員の処遇改善に充てる加算措置はほかの介護サービスと比べて高い加算率とし、職員の処遇改善が図られるようにしたものであります。
こうした介護報酬改定の影響につきましては、引き続き、適切な把握に努めてまいります。その上で、訪問介護につきましては、人材確保に特に課題があると認識をいたしており、今般の経済対策において、ヘルパーの同行支援を強化するなど、地域の特性や事業者規模等に応じたきめ細かい対策を講じることといたしており、こうした対策も併せて活用いたしてまいります。
薬価制度と中医協改革についてであります。
薬価制度につきましては、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性確保の両立を図ることが重要であり、令和七年度の薬価改定につきましても、こうした考え方に基づく骨太方針二〇二四を踏まえ、適切に対応いたしてまいります。
また、中央社会保険医療協議会、中医協の委員に医薬品関連業種の代表者を加えるべきとの御党の御意見は承知をいたしておりますが、薬価制度を議論する専門部会には製薬業界の団体の代表も委員として参画をされており、引き続き、関係者の御意見も伺いながら、丁寧に議論が進められるものと承知をいたしております。
後期高齢者医療制度についてお尋ねを頂戴いたしました。
本格的な人口減少の中にあって、医療保険制度を今の時代に合った持続可能なものにしていくことは重要な課題であり、現役世代の負担を軽減し、誰もが年齢にかかわらず能力や個性を生かして支え合う全世代型の社会保障を構築する必要がございます。
後期高齢者医療制度の見直しに当たりましては、昨年末に閣議決定した改革工程に掲げられている事項を具体化していくことが必要であり、医療における現役並み所得の判断基準等を含め、患者に対する必要な保障が欠けることのないよう、見直しによって生ずる影響を考慮しながら、丁寧な検討を進めてまいります。
移動コストを引き下げる具体策としての高速道路料金についてのお尋ねであります。
御提案のワンコイン五百円定額制による移動コストの引下げにつきましては、高速道路への過度な交通集中と渋滞を引き起こすおそれや、鉄道、航空、フェリーなどのほかの交通機関への影響、維持管理費への影響、道路債務の返済への影響などもあることから、慎重に考える必要があると考えておりますが、高速道路の渋滞対策や観光を含む地域活性化等の観点から、混雑に応じた柔軟な料金体系の転換に取り組んでまいります。
暗号資産についてのお尋ねであります。
御指摘のように、暗号資産を税法上、上場株式等と同様に扱うことにつきましては、給与等の所得には最大五五%の税率が適用されます一方、暗号資産による所得には二〇%の税率を適用することに国民の御理解が得られるか、家計が暗号資産を購入することを、国として、投資家保護規制が整備されている株式や投資信託のように推奨することは妥当なのかなどの課題があり、丁寧な検討が必要と考えております。
また、暗号資産をETFの対象とすることにつきましては、暗号資産を国民にとって投資を容易にすることが必要な資産とすべきかどうかを踏まえ、検討する必要があると考えております。
次期エネルギー基本計画における原子力の位置づけについてであります。
AI時代の電力需要増加が見込まれる中、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を高めることが重要であります。
そのため、省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを拡大するとともに、安全性の確保を大前提とした原子力発電を利活用することも必要であります。
そのため、省エネルギーを徹底し再生可能エネルギーをということはただいま申し上げたとおりでございますが、再生可能エネルギーか原子力かという議論ではなく、利用可能な脱炭素電源は適切に活用していくという考えで、次期エネルギー基本計画について国の審議会で検討をいたしてまいります。
能動的サイバー防御についてであります。
我が国のサイバー対応能力の向上は、現在の安全保障環境に鑑みますと、ますます急を要する課題と認識をいたしております。
能動的サイバー防御の実現に向けた法制度の整備につきましては、十一月二十九日に有識者会議から提言をいただいたところであり、この提言を踏まえて、可能な限り早期に法案としてお示しできますよう、検討を更に加速いたしてまいります。
水田活用の直接支払交付金の水張り要件、農業の所得補償、食料自給率目標についてのお尋ねを頂戴いたしました。
食料安全保障を確保するため、水田農業を始め農業経営の安定を図り、食料自給率、そして食料自給力を高めることが重要であります。このため、水を張る機能を有する水田を確保することも必要なことと考えております。
今後、新たな食料・農業・農村基本計画の策定や令和九年度に向けた水田政策の在り方の検討の中で、農業者の支援の在り方など、議員御指摘の点も含め、議論を深めてまいります。
外国人による土地等の取得、利用の規制についてであります。
重要土地等調査法は、国会や地方議会等での長年の議論を踏まえ、我が国の安全保障等の観点から、重要施設周辺と国境離島等を対象として成立したものであり、まずは、これらの地域における土地等の所有、利用状況について、外国人によるものも含めて実態把握を進めているところであります。
その上で、同法には、施行後五年を経過した時点での見直し規定も置かれているところから、法の執行状況や安全保障をめぐる国内外の情勢などを見極めた上で、更なる対応の在り方について検討してまいりたいと存じます。
日本製鉄のUSスチール買収及び自由で公平な市場環境の確保についてであります。
御指摘の日本製鉄のUSスチール買収に関する報道は承知をいたしておりますが、個別の企業の経営に関わる事項でございますので、コメントは差し控えます。
自由で公平な市場環境を確保することは、民間企業が安心して事業活動を営む上で非常に重要であります。ルールに基づく、自由で開かれた、公正で透明性のある貿易・投資環境を維持強化していかねばならないという認識の下、米国を始め各国政府等とよく意思疎通を図っていく考えであります。
日米宇宙協力に対する政府効率化省の活動の影響についてのお尋ねを頂戴いたしました。
持続的な月面探査を目指すアルテミス計画は、日米両国において、人類の活動領域の拡大への貢献や、イノベーションの促進、産業発展に寄与するものであり、有人の月面探査車の提供、日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現は、日米宇宙協力の重要な柱であると認識をいたしております。
米国新政権における政府効率化省の活動内容については、政権発足に向けて検討が進められていくものと考えておりますが、御指摘のとおり、その活動に注視をいたしてまいります。あわせまして、米国航空宇宙局を始め、様々なルートによる意思疎通を通じて、日米宇宙協力を円滑に実施できるよう取り組んでまいります。
憲法改正についてのお尋ねがございました。
内閣総理大臣の立場からは憲法改正についての議論の進め方等について直接申し上げることは差し控えますが、憲法改正を党是とする自由民主党の総裁としてあえて申し上げれば、政局にとらわれない、与野党協調の下での憲法議論を重視された中山太郎先生のお考えは、大変に貴重なものであったと私自身記憶をいたしておりますし、中山先生の下で議論に参画をしたときのことをよく覚えているところでございます。
憲法審査会におきましては、これまでも長年にわたり様々な議論が行われてきたところであり、これらの積み重ねの下に建設的な議論が行われ、国民的な議論を深めていただくことを期待いたしております。
自民党におきましては、憲法改正の条文案の起草に向けた議論が行われており、本年九月には、自衛隊の明記についても論点整理が行われたところであります。この議論は、総裁として私も引き継いでいく考えであります。
政治改革の取組についてお尋ねを頂戴いたしました。
我が党におきましては、政治資金に関する諸課題の改革に向けて、既に各党との協議を開始いたしております。政策活動費の廃止や、所属国会議員が起訴された場合における当該議員分の政党交付金の交付停止など、基本的な問題意識は御党とも共有しているところと認識をいたしております。
政治資金のキャッシュレス化についても御意見を頂戴いたしました。
政治資金規正法第一条は、その目的として、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにすると規定していることを踏まえ、我が党からも、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築を提案いたしております。
政治資金の透明性の向上は重要であり、その具体的方策につきましては、引き続き真摯に議論を行ってまいります。
議員御指摘のとおり、国民からの信頼なくして政治の安定はございません。そして、政治の安定なくして政策の推進もございません。国民の政治に対する信頼を取り戻すため、党派を超えて真摯に政治改革の議論を進め、責任を持って結論をお示しする必要があると考えており、私も誠心誠意尽力をしてまいる所存であります。
以上でございます。(拍手)
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○鈴木隼人君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○副議長(玄葉光一郎君) 鈴木隼人君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(玄葉光一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時二十五分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 石破 茂君
総務大臣 村上誠一郎君
法務大臣 鈴木 馨祐君
外務大臣 岩屋 毅君
財務大臣 加藤 勝信君
文部科学大臣 あべ 俊子君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
農林水産大臣 江藤 拓君
経済産業大臣 武藤 容治君
国土交通大臣 中野 洋昌君
環境大臣 浅尾慶一郎君
防衛大臣 中谷 元君
国務大臣 赤澤 亮正君
国務大臣 伊藤 忠彦君
国務大臣 伊東 良孝君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 坂井 学君
国務大臣 平 将明君
国務大臣 林 芳正君
国務大臣 三原じゅん子君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 橘 慶一郎君
出席政府特別補佐人
内閣法制局長官 岩尾 信行君