衆議院

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第4号 令和6年12月3日(火曜日)

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令和六年十二月三日(火曜日)

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 議事日程 第四号

  令和六年十二月三日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(額賀福志郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。小川淳也君。

    〔小川淳也君登壇〕

小川淳也君 立憲民主党の小川淳也です。

 会派を代表して、総理に質問いたします。(拍手)

 冒頭、総理の日々の激務に深く敬意を表します。

 その上で、総理にはお疲れもあったのでしょうか、さきのAPECにおいて、席上、スマートフォンの操作、海外首脳の挨拶に着座で対応、首脳陣の集合写真に遅れて間に合わない等、一部、外交儀礼上、批判の声が上がっています。これを擁護する声があることも前提としつつ、まずは、総理御自身の受け止めをお伺いします。

 さきの総選挙では、自公過半数割れという歴史的な結果となりました。

 この際、伺います。総理は、就任前から衆議院解散を公言、自らその必要性を唱えていた予算委員会を開催せず、否定していたはずの党利党略の批判が強い七条解散に踏み切りました。その時点で、何か国民の大事な期待を裏切り、魅力がうせたのではありませんか。一部に、発足即末期との酷評まで見られます。一連の衆議院解散・総選挙のてんまつを振り返り、御自身なりの反省や総括があれば、お聞かせください。

 関連して、私は、裏金に関与した議員はそもそも議員辞職すべきという立場です。裏金に関与した議員を党公認とした判断は正しかったのか。こうした議員を推薦した連立パートナーたる公明党の判断も含め、総理並びに国交大臣にお伺いします。

 再選した十二名の議員が、部会長等、党要職に起用されました。既にみそぎが済んだという御認識でしょうか。無所属で再選した議員も直ちに自民会派に入ったとか。これらを含め、判断が甘く、反省が足りないのではありませんか。総理の見解を伺います。

 非公認候補に二千万円が支給された件について伺います。

 まず、総理は、非公認候補党支部に公認候補同額二千万円が振り込まれた事実を知っていたのか。その判断は正しかったと今もお考えか。党支部の活動支援と称しながら、候補のいない選挙区支部になぜ振り込まれなかったのか。これらは総じて裏公認料、事実上の選挙資金とのそしりを免れない、そう断じざるを得ませんが、総理の反省と見解を伺います。

 総理は、さきの党首討論において、総選挙で政策活動費支給の可能性をほのめかしました。率直にお聞きします。今般の総選挙で政策活動費は支出したのか。したとすれば、昨日分までを含め、誰に幾ら、何のために支出したのか。事実関係を伺います。

 総理は、党首討論で、一連の裏金を不記載と強弁されました。単なる不記載なら、記載してください。できるものならやってみてください。書けないではありませんか。書くつもりもなければ、備えもない。それを裏金と呼ばずして何と呼ぶんですか。三月の自民党調査では明確に、裏金の招来を防げなかったと総括していることを踏まえ、発言の撤回並びに総理の答弁を求めます。

 更に伺います。自民党の政治改革論点整理では、裏金相当額の二倍を党から寄附すると明記しています。なぜ二倍なんですか。何の根拠ですか。これは、個々の議員から回収するのか、党が負担するのか。税を原資とする政党交付金はこれに充てられるのか。具体的な説明を求めます。

 今回明るみに出た裏金は、収支報告公開の五年分のみ。まさに氷山の一角です。率直にお聞きします。結局、この裏金づくりは、いつ誰が始めたんですか。どのような経緯ですか。途中、異を唱える声もあったようですが、なぜ、どのようにかき消されたのですか。そして、裏金は、幾ら、何に、何のために使われ、どのくらいが手元に残っているんですか。本来納税すべき額はそのうち幾らだと目されますか。

 この問いに、どれか一つでも答えられますか。分かる人が自民党内に一人でもいますか。それこそが最大の問題です。注意だ、非公認だ、二倍の納付だ、全て後づけで言い訳がましく、アリバイづくりにすぎないのではありませんか。結局、真相解明がないことが最大にして根本的な問題。新たな疑惑も出始めています。改めて徹底した再調査と国民への説明責任を果たすことを求め、総理の答弁を要求します。

 信任を失った政権が今後、国民生活に関わる政策の推進力を十分に得られるのか、甚だ疑問です。

 党総裁選における石破公約について伺います。

 総理は、総裁選で、最低賃金を二〇二〇年代に全国平均千五百円にすると掲げました。しかし、今国会での所信表明では、最低賃金を引き上げていくための対応策の策定を関係閣僚に指示したと述べたのみ。二〇二〇年代に全国平均千五百円、一体どのように実現されるのか、御自身のお考えを説明してください。

 国立大学、高専の授業料無償化、学校給食の無償化も総裁選公約です。是非とも早急に実現しようではありませんか。これもトーンダウンするのか、総理の本気度を伺います。

 その他、既に示された防災庁や地方経済・生活環境創生本部設置以外にも、経済、金融、市場の危機対応組織の創設、価格転嫁対策強化のため下請法改正案の提出、中央省庁の地方移転推進、住宅支援、修学旅行費の支援強化、給付型奨学金の拡充、自衛官給与の早急な引上げ、食料自給率と自給力の早急な引上げの数値目標化等々が高らかに掲げられていますが、これらは、先日の所信表明では何も触れられていません。一体どうなったんですか。今後どうなるんですか。個々に具体の説明を求めます。

 過去の発言に関してお尋ねします。

 まず、金融所得課税です。

 総理は、総裁選において、所得が一億円を超えると所得税負担率が低下する一億円の壁問題を念頭に、金融所得課税強化を実行したいと発言されました。しかし、総理就任後、現時点で具体的に検討することは考えていないと、事実上撤回。この短期間に、どのようにお考えが変わったんですか。今後、金融所得課税適正化の可能性はあるのか、消えたのか、明確に御答弁ください。

 アベノミクスについて伺います。

 安倍元総理は、かつて、一ドル三百円になれば、あっという間に経済は回復すると豪語されました。円安は輸出企業の収益を押し上げる一方、激しい輸入物価の上昇が厳しく家計を圧迫しています。

 温かい風が地方にも中小企業にもやがて届くと言うが、届くわけがない、うそはいけない、アベノミクスはトリクルダウン、東京が金持ちになれば地方の野菜が売れると言う安倍総理は分かっていない。これがかつての総理の言葉です。改めてお聞きします。総理は、アベノミクスをどう評価し、今後の金融政策はどこへ向かうのか、御見解をお聞きします。

 消費税について伺います。

 総理は、かつて、将来一〇%台後半が不可避と発言されました。私にも北欧型の福祉社会は一つの理想との思いがあります。

 しかし、消費税率二〇%から二五%の欧州では、食料品ゼロ税率、水、燃料の軽減税率等により、実効税率はフランス、イギリスが九%、ドイツで一〇%、北欧ですら一二から一三%。これらを前提とすれば、少なくとも現行制度を前提に、これ以上の負担の引上げは負担水準、逆進性双方から極めて困難かつ不適切と思われますが、当時の発言の真意並びに今後の方向性をお聞きします。

 専守防衛、非核三原則は見直すべきとの発言について伺います。

 この間、防衛費の倍増、敵基地攻撃能力、集団的自衛権など、防衛政策の一大転換が強引に推し進められてきました。昨年のある学会で総理から、核戦争なき世界をつくるため核を持つとの驚きの発言も飛び出しました。専守防衛、非核三原則は将来に向けて堅持すべきと考えますが、いかがですか。

 あわせて、総理はかねてより憲法九条二項の削除論者です。確かに、現状、国防政策の是非に加え、法的安定性という法治国家の根幹に関わる問題までが惹起されています。これらを含め、持論に沿って、在任中の改憲発議があるのかお聞きします。

 いわゆる森友、加計、桜問題もなお看過できません。

 森友も加計も桜も、分かったという国民は少ない、文書が改ざんされたり破棄されたり、検証のしようがない、根本的な問題、説明責任をどう果たすかだ、きちんと責任を取らなければいけない。これも総理御自身の言葉です。

 与党内野党との批判を恐れず、常に正論を吐き、ついに総理に就任されました。まさに有言実行、これらの真相究明、文書の公開を断行いただきたいと思いますが、いかがですか。答弁を求めます。

 旧統一教会について伺います。

 自民党総裁と教団最高幹部の面談など、新事実が報じられています。従来の答弁では、これに自主的な点検をとのことですが、不十分です。第三者委員会を設置し、厳正な調査を通じて説明責任を果たすことを要求し、総理の答弁を求めます。

 沖縄振興についてお尋ねします。

 総理は、所信の中で、沖縄の基地負担の軽減に取り組み、沖縄振興の経済効果を十分に波及、実感できるよう、沖縄経済の強化に向け支援を継続すると表明されました。しかし、実際には沖縄への交付金は減額続きなのではありませんか。沖縄からは、見せしめ、脅しとの声まで聞こえてくる始末です。関係予算の減額撤回並びに交付水準の回復を要求し、総理の答弁を求めます。

 全ての戦争は外交の失敗。実力行使に傾きがちな昨今、国会に席を預かる人間の一人として、改めてこの言葉を胸に刻みたいと思います。政治家の仕事をたった一つ挙げるとすれば、それは、戦争をしないこと、国民を戦争に巻き込まないこと。私はそう固く信じて疑いません。

 混迷を極める中東情勢について伺います。

 パレスチナでの戦闘が始まって一年余り、停戦と人質解放は今なお完全には実現していません。イスラエルによる国連機関への攻撃が事態を更に深刻化させています。イスラエル及びイスラム諸国と独自の関係を築いてきた日本こそが、停戦協議や国連機関の円滑な活動推進に指導力を発揮すべきと考えますが、総理の外交方針をお聞きします。

 昨年及び本年、国政調査の一環として現地調査を行いました。ここから幾つかお尋ねします。

 まず、離島振興についてです。

 本年夏、島根県海士町をお訪ねしました。今や日本で人口減が止まっているのは象徴的には東京都と海士町、そう言っても過言ではありません。住民の二割が島外、島の高校生の五割が島外、役場職員の六割が島外。島民の士気の高さとチームワークに圧倒されました。まさに革命は辺境より来る。

 振り返れば、本年亡くなられた前町長の自らの給与半減からスタートした島改革でした。これに幹部職員の給与三割減が続き、何と職員組合は自ら一割の給与削減を申し出、老人会は補助金の受取を辞退、むしろ町営バスの運賃引上げを嘆願するという耳を疑うような奇跡が連続したのです。そして、大人を含めた島留学が奨励され、新鮮な魚介類の域外輸出を含め、島の振興、発展に一丸となって取り組んでいます。

 もとより、永田町も裏金や巨額の政策活動費等に自ら厳しいメスを入れることが、国民の改革マインドに火をともす唯一の着火点と考えますが、改めて年内の政治改革実現に向けた総理の決意を伺います。

 加えて、もう一点。海士町を始めとした国境離島には、空路や海路の助成が行われています。今後、それ以外の内海離島に対しても、まさに航路は道路との観点から、公共交通予算の重点配分が必要と考えますが、お考えをお聞かせください。

 お地元、鳥取市内の青翔開智高校を見学しました。

 一組二十名前後。少人数で考え、対話し、発表、発信する力を養う教育は特筆に値し、校長先生は四十代前半。正解のない時代の教育を志すと言い切る姿に希望を感じます。

 生徒は、地場産業の課題を大人たちとともに悩み、考え、解決策を模索しています。与えられる課題は、例えば、明治維新は革命に該当するかという本質的なテーマ。革命とは何か、フランス革命やイギリス革命とどう異なるのか。あるグループは明治維新を革命に該当すると結論づけ、他のグループはそうではないと結論づける。そして、その理由はかくかくしかじかと。大切なことは、両方とも正解だということです。

 私たちは、たった一つの正解にいかに素早くたどり着くかを繰り返し訓練されてきました。しかし、今、今後まさに正解のない時代を生き抜くにふさわしい訓練と資質を子供たちが身につけ、育んでやらねばなりません。正解を探すどころか、むしろ問い自体を自ら立てる力、自ら調べ、考え、対話を重ねる力を教育課程で養わねばならないのです。

 今後の教育に求められる基本的な指針について、総理のお考えをお聞きします。

 五島列島沖の浮体式洋上風力を視察しました。

 山がちな日本列島で、メガソーラーの設置は限界に近づいており、平地当たりの設置面積は既に欧州を超えたと言われています。また、深い海溝に囲まれた日本近海は、欧州のように遠浅ではなく、着床式の洋上風力を拡大する余地は限られています。となれば、深い海に浮かぶ浮体式洋上風力が最後の切り札。世界第六位とも言われる海洋面積をフル活用し、浮体式洋上風力を十分整備すれば、現在の供給電力の二倍以上を自国生産できるとの試算もあります。

 これは、もはや民間企業が採算を気にしながら進める類いの話ではなく、かつて国家が鉄道を敷設し、郵便を整備し、電信電話網を整えたと同様、国策として大規模に進めるべき国家プロジェクトではありませんか。総理の見解を伺います。

 関連して、二〇三五年までの温室効果ガス削減目標は、二〇一三年比六〇%減にとどまるとの報道が散見されます。これは事実でしょうか。これまでの国際合意等に照らせば、そして、現在の温暖化の深刻化、国際社会に占めるべき日本の地位と責任に照らせば、更に野心的な目標設定が必須ではありませんか。総理のお考えをお聞きします。

 昨年夏、スウェーデンの老人ホームと労働組合を訪問しました。

 スウェーデンの老人ホームは、収入と資産に合わせ月額何と一万円台から入居でき、そこで働く介護従事者には全産業平均同等の賃金が支払われているとのこと。私は聞きました、この国に介護離職という言葉はあるのかと。聞いたことがない、明確な答えでした。

 今後、更に莫大な介護需要が発生する我が国こそ、国策として、スウェーデン並みの施設整備、抜本的な対策を講じるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 スウェーデンの労働組合には全労働者の七割が参加しています。中央での賃上げ交渉は国の隅々まで拡張適用され、まさに同一労働同一賃金が担保されています。日本の労働組合の加盟率は、いまだ一六%。集団的労使関係の枠外に置かれる労働者の増加は国家的な課題です。この点、スウェーデンでは労組が企業経営や雇用政策に参画する仕組みが整えられており、口先だけで賃上げを迫るより、はるかに実効性があると考えます。

 今後、中小零細、非正規の方々を含め、抜本的に労働基本権を確保し底上げする法的、制度的環境整備について、総理のお考えをお聞きします。

 さて、ネット選挙解禁から十年余り。さきの東京都知事選、衆院選、そして兵庫知事選、名古屋市長選等、ネットの影響力がいよいよ決定的なものとなったことを痛感しています。

 考えてみれば、既にショッピングも、仕事も、家探しも、人との出会いも、さらには結婚までが、ネットが主流ないし大きなウェートを占めており、政治だけがそうならないはずがないということかもしれません。

 一方、長年の商取引等に比べると、政治空間のネット活用は、まだまだユーザーの経験やリテラシーが十分とは思えません。通常厳しく規制される虚偽表示、誇大広告対策も不十分。加えて、有料での動画投稿募集、広告、さらに、視聴回数に応じて投稿者がお金を得る仕組み等が政治空間の言説にどのようなバイアスを加えているのか。今後、ネット上の言論を健全な民主主義の発展につなげていくために、新たな努力と試行錯誤が求められます。自民党総務会長は、この点、法規制の可能性に言及されましたが、総理の見解を求めます。

 関連して、同一党派による候補者の大量擁立、ポスター掲示枠の事実上の金銭売買、自らの当選でなく他者を応援するための立候補など、これまで法が予期していなかった事態が頻発しています。本来、法が予定しない、ある種社会規範によって抑止されてきた揺さぶり、法の間隙を縫う行為は、今後、民主主義を育むのか、廃れさせるのか、大いに危機感を感じています。この点についても総理の見解を伺います。

 あわせて、そもそも、こうした従来考えられなかった行為が容認、黙認、場合によっては歓迎される社会的風潮は一体どこから生じているのか。その背景に迫る総理の御見識を伺います。

 現在、国の内外において政治、社会情勢が極めて不安定化し、流動化しています。民主主義も危機にあると言ってよいでしょう。なぜ、多くの国々で、人々は不満や不安を募らせ、憤りを深めているのか。私には、国内外における格差と貧困の拡大、社会的疎外、これらが深刻化していることが最大の要因、そう思えてなりません。様々な格差指数が既に第二次世界大戦前夜に近づいていることは、多くの関心を集めるところです。

 こうした事態がもたらす閉塞感、不公平感、不平等感が、人々を絶望させ、将来への展望を失わしめている。場合によっては、社会への憎悪を募らせ、ある種の破壊衝動を抱かせてしまっている。それが社会不安の増長、増幅、政治不安と密接に関連している。この点、総理はどうお考えか、御見解をお聞かせください。

 格差や貧困の拡大に関連して、これに直結する経済の低迷、人口減や高齢化に関しては、残念ながら、我が国は世界のトップランナーです。昭和の時代、日本の人口は毎年百万人程度増加していました。令和の今、毎年百万人近くの人口減少に転じ、これが今後数十年続きます。

 高齢化率は、昭和の時代が五%、今三〇%、やがて四〇%の時代に突入します。少子化の進行も著しく、戦後の団塊世代は年間二百五十万人、我々団塊ジュニア世代は年間二百万人、今生まれてくる赤ん坊は年間僅かに七十万人。この超高齢化と超少子化の同時進行が、日本の人口構成を激変、逆転させています。まさに昭和の正三角形から令和の逆三角形へ。その激しい変化の中、日本の社会保障制度が根底から揺さぶられているのです。

 しかし、この重大な構造変化に正面から向き合わず、だましだまし、継ぎはぎで対応してきたツケ、矛盾が、この国の莫大な財政赤字の正体ではありませんか。この点、総理の御見解を伺います。

 積み上がった莫大な財政赤字が今度は金融政策のおもしとなり、国際市場で円はたたき売られました。アベノミクス前の一ドル七十円台から、今や一ドル百五十円、六十円。その価値は半減したのです。その安くなった円で、今なお食料の七割、エネルギーの九割近くを輸入していることが物価上昇の主たる要因。この点も併せて総理の見解をお聞きします。

 なぜこの国はもっと本気で農林水産業を支援してこなかったのか。食料の国産化に必死になってこなかったのか。なぜもっと本気で再エネを中心としたエネルギーの国産化に努めてこなかったのか。安くなった円で国際的に高くなった食料とエネルギーを買い続けているわけですから、物価が上がるのは当然ではありませんか。

 もちろん、物価上昇は日本だけではありません。アメリカでもヨーロッパでも物価は上昇しています。しかし、海の向こうでは、物価が上がるスピード以上に賃金や年金が上がっているではありませんか。なぜこの国ではそうならないのか。総理の根本的な御認識をお聞かせください。

 この三十年、日本では圧倒的に非正規雇用を拡大してきました。象徴の一つが派遣労働です。昭和の時代、多くの人々が正社員だった頃、それでも認められていた派遣労働は通訳や速記など、まさに特殊技能労働にのみ認められる例外でした。しかし、その後、小泉、安倍政権の下、一体誰の声を聞いたのか、どなたの利害をおもんぱかったのか、やがて製造現場からサービス業まで、ほとんど全ての仕事に派遣労働が拡大されたのです。

 今や働く人々の四割は非正規。女性は更に深刻です。こうして働く人々のいわばバーゲニングパワーを奪っておきながら、口先だけで賃上げしろと言うこと自体が随分むなしく、かつ不誠実、無責任と感じますが、総理、いかがですか。

 人口減、高齢化、社会保障の綻び、莫大な財政赤字、金融政策は可動域を失い、円はたたき売られ、それでも海外から輸入せざるを得ない食料とエネルギー、そして、物価は上がるが労働市場が弱体化し、賃金と年金は下がり続ける。これこそが、これこそが失われた三十年の正体ではありませんか。総理に反論があればお聞かせください。

 これら全てを逆流、逆回転させる政治を手にしなければ、今後、更に社会は行き詰まり、混迷を深め、人々は絶望と憎悪、相互不信、そして破壊衝動を抱き、やがては戦争や革命に至ることすら否定し切れない。そういう極めて不安定かつ不穏当な時代に入ったとの認識が必要ではありませんか。総理、いかがですか。

 かつて、作家の司馬遼太郎氏は作品の中で、法の支配は豊かさと平和を前提とすると記しました。まさに民主制も平和と豊かさを前提とし、民主制は平和と豊かさが保たれる限りにおいて存立し、その崩壊と同時に崩れる。こうした緊張感を持つべき時代なのではないかと思います。

 かつて、若者の国民年金保険料は月額百円でした。今、一万七千円近く。厚生年金保険料は、当時、収入の三%。今は一八%。健康保険と合わせて三〇%。これを労使折半しています。現役世代の負担は極めて重く、企業は正社員の雇用を控えるようになりました。今、若者はかつての何倍もの重い負担に耐え、しかし、それでも財源は不足し、莫大な財政赤字が垂れ流され、この国の持続可能性が崩壊しています。それでも歯を食いしばって、この重い負担に耐え続け、不安と闘いながら生きているのが現実です。

 ここであえて指摘したいことがあります。この現役世代の重く厚い負担は、誰一人、自分の親、自分の祖父母のためだけに耐えている人は一人もいないというシンプルな事実です。いわば全親世代、全祖父母世代のために、若者はその厚く重い負担に耐え続けています。

 こうして辛うじて維持されてきた社会保障制度を前提に、今度は形成された資産の多くを高齢者の諸先輩方が保有されています。そして、やがてその保有資産の多くは、今度は、決して次世代全体ではなく、自分の子に引き継がれていくのです。この負担と受益の相関関係は果たしてフェアなものと言えるか。不条理ではないのか。これは持続可能か。この点、是非、総理のお考えをお聞かせください。

 特に、人口減の中、毎年の死亡者数、相続財産総額は増加の一途です。しかし、そのうち全次世代に還元されるのは僅かに数%。仮にもう数%、全次世代に還元されれば、直ちに全国の国公立大学を無償化し、私立大学の授業料を半減させることができるでしょう。もう数%で若者に月額十万円程度、返済不要な奨学金を支給することができます。

 もう数%で今度は抜本的に農林水産業を支援し、食料の国産化、輸入依存からの脱却を図れる可能性があり、さらに、もう数%で本格的に再エネを導入すれば、やがてエネルギー自給国となり、気候変動対策に十分な成果を上げることも夢ではありません。これは、毎年三十兆円分もの輸入化石燃料を不要とし、流出する国富を国内で循環させることを意味します。加えて、もう数%で、今度は若者ばかりでなく、なお将来不安におびえる高齢者の皆様に、スウェーデン並みの安価で充実した老人ホームを用意することができるでしょう。

 昨年、私は、党税制調査会長として、資産格差が拡大、固定化している現状に鑑み、税率構造や非課税措置の見直し等により、相続税、贈与税の累進性を高めるとの党方針を取りまとめました。

 今後、超高齢化、人口減少時代を生き抜くために、いわば資産の一部を全ての若者に、財産の一部を全次世代へ、そして同世代内の助け合いへ。これこそが、この超高齢化、超少子化時代を生き抜く、恐らくは唯一にして最大の活路となる、私はそう確信します。総理にお考えがあればお聞きします。

 今、複数の壁の議論がなされており、どれも重要な論点です。しかし、加えてもう一歩、今の政治に本来求められるものがあるとすれば、こうした各論、個別論を束ねる全体構想ではないでしょうか。トータルの将来ビジョンであり、国家のグランドデザインです。社会を再設計し、全体観のある国家構想を描く、それこそが、今、本来政治に求められる本来の機能だと思いますが、総理、いかがですか。

 そして、このトータルの改革は、やがて日本を世界に冠たるモデル国家として、国際社会で光輝かせることにつながるでしょう。韓国は既に三年前から人口減、中国も二年前から人口減。やがて世界のあらゆる国々が、日本が苦しんできた超高齢化と人口減にいや応なく直面し、例外なく悶絶することになります。日本こそが世界に先駆けて変貌を遂げるべきです。世界に冠たるモデル国家として、課題先進国がいつしか世界最先端のソリューション国家となる。混迷する世界に貢献し、世界をリードするのです。

 立憲民主党は、こうした全体構想を描き、引っ張る、まさに改革の旗手とならねばなりません。新たな社会モデル、国家構想を描き、グランドデザインを示す。国中に満ちあふれる閉塞感を打破し、不安を払拭し、互いの信頼を基調とした持続可能な社会の再設計、再構築に向け、その改革の先頭に立つのです。この難しい時代だからこその国民の願い、そして希望に、正面から応えようではありませんか。

 やがて次世代にこの社会を、自信を持って、誇りを持って、胸を張って堂々と引き継ぐ、引き渡す、それこそが私の政治家としての夢であり願いでもある、そのことを強く訴え、高らかに宣言し、質問を終わります。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 小川淳也議員の御質問にお答え申し上げます。

 APECにおきます私の所作について、様々な御批判、御叱声、御指摘があることは重々承知をいたしております。私自身、足らざる部分が多々ございました、そのように認識をいたしておるところであります。謙虚に、真摯に受け止めた上で、改善に努めなければならないと痛感をいたしておるところであります。

 衆議院解散・総選挙の振り返り、所感についてであります。

 解散時期につきましては、新内閣の発足に当たりまして、国民の皆様方の御意思を確かめる必要があると判断をいたしました。この判断は憲法の趣旨にも沿うものだと考えております。

 衆議院選挙におきまして、自由民主党は、国民の皆様方から厳しい御批判を頂戴し、審判を頂戴したところであります。この結果は、自由民主党の、あるいは私の姿勢に対します国民の皆様方の叱責というふうに受け止めておるところであります。

 先般の選挙で示されました国民の皆様方の声を踏まえまして、比較第一党として、自由民主党と公明党との連立を基盤に、他党にも丁寧に御意見を承り、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、謙虚に、そして真摯に、国民の皆様方の安心と安全を守るべく取り組む所存であります。

 衆議院総選挙におきます公認の方針、党内人事等についてであります。

 お尋ねは政党の内部運営に関わることであり、政府としてお答えをすることは差し控えますが、自民党総裁として申し上げれば、さきの衆議院議員総選挙におきましては、自民党党則における選挙における非公認よりも重い処分を受けた者などについて非公認とするという判断をさせていただいたものであります。

 党内人事につきましては、人材育成の観点も踏まえつつ、適材適所で党において判断をいたしております。

 また、無所属で再選した議員の会派入りにつきましては、円滑な国会運営に向けて判断をいたしたものであります。

 再選を果たした関係議員は、政治資金収支報告書の不記載について真摯に反省し、それぞれの選挙区において主権者である国民の審判を受けてきたものであり、国民の負託に応えるため、引き続き力を尽くしていただくことを期待いたしております。

 自民党の支部政党交付金についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 お尋ねは政党の内部運営に関わることであり、政府としてお答えをすることは差し控えますが、その上で、総裁としてあえて申し上げれば、お尋ねの支部政党交付金は、党の政策を国民の皆様方に御理解いただくための広報活動など党勢拡大のために使用していただくべく、政党支部に対して党として支給をいたしたものであります。

 非公認の候補者となる見通しの方が支部長を務めている政党支部に対しましては、支給通知書に、党勢拡大のための活動費であることを明記いたしており、これが非公認候補者の選挙運動に使われることはないことから、裏公認料、事実上の選挙資金といった御指摘は当たりません。

 なお、選挙区支部自体が存在しない場合には、当然、支部政党交付金は支給しておらないものでございます。

 さきの衆議院総選挙におきます政策活動費の支出についてお尋ねがありました。

 政策活動費につきましては、現在、合法なものではありますが、その使い方は抑制的でなければならないと考えていたところであり、さきの衆議院議員総選挙においても、選挙運動のための政策活動費の支出は行っていないものと認識をいたしております。

 党首討論における発言等についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 我が党から依頼を受けた外部の弁護士が本年二月に取りまとめた聞き取り調査に関する報告書には、収支報告書に全く記載されず裏金として使用可能な金銭の招来を防ぐことができなかったとの指摘がございます。これは政治資金規正法上の不記載に当たるものであり、我が党として真摯に反省しなければなりません。

 関係議員においては、事実関係を確認し、収支報告書の訂正を行っており、党としても再発防止に取り組んでいるところでございます。

 なお、不記載相当額の二倍を自民党から寄附をするとの御指摘がありましたが、党として、これまで公表した資料にそのような内容を記載したものはなく、また、何らかの方針を決定しているというものでもないことから、コメントをすることは差し控えさせていただきます。

 自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載の問題に関する事実関係の確認についてであります。

 事実関係につきましては、第三者である検察により、厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたところであります。

 また、党においても、可能な限りの調査を行い、その結果を国民の皆様に説明をいたしてまいりました。さらに、各々が、政治倫理審査会の場を含め、あらゆる場を積極的に活用して説明責任を果たすよう、党として促してきたところであります。

 大切なことは、二度とこのような事態を繰り返さないということであります。政治と金の問題には厳しい姿勢で臨み、ルールを徹底的に遵守する自民党を確立してまいります。

 また、政策活動費の廃止を始め、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を率先して進め、政治資金規正法の再改正を含めた必要な法整備に誠心誠意尽力してまいる所存でございます。

 最低賃金の引上げについてのお尋ねを頂戴いたしました。

 最低賃金につきましては、先日、私の政権で初回となる政労使の意見交換を開催し、最低賃金を引き上げていくための対応策を来春までに取りまとめるよう、関係閣僚に指示をいたしました。

 持続的、構造的賃上げに向けた価格転嫁等の取引適正化の推進、省力化、デジタル化投資の推進、人への投資の促進及び中堅・中小企業の経営基盤の強化、成長の支援といった、生産性を向上させるための支援策などについて検討してまいっておるところであります。

 今後も、政労使の意見交換を開催し、官民挙げて問題の深掘りや環境の整備を図り、政権として、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続けてまいります。

 国立大学等の授業料と学校給食費についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 国立大学等の授業料を含め、高等教育費につきましては、本年度から、授業料の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充し、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしており、まずはこうした拡充を着実に実施に移し、その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見定めつつ取り組んでまいります。

 学校給食費につきましては、今回の経済対策において、現在の物価高などの状況を踏まえ、地域の実情に応じた保護者負担の軽減の観点から、学校給食費の支援も行えるように重点支援地方交付金を追加しております。

 学校給食費の無償化につきましては、学校給食の実態調査の結果を踏まえつつ、給食未実施校や、実施校でも喫食しない児童生徒には恩恵が及ばないといった児童生徒間の公平性、低所得世帯の児童生徒は既に無償化されていることに伴う支援対象の妥当性、給食費に係る就学援助について、いわゆる三位一体改革により税源移譲、一般財源化を図った経緯を踏まえ、国と地方との役割分担、少子化対策としての政策効果、給食に係る経費の負担を定めた学校給食法の在り方などの法制面等、考えられる課題を整理いたしてまいります。

 こうした際には、子供、子育て加速化プランにおいて、児童手当の抜本的拡充や、先ほど申し上げた高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要もある、このように考えております。

 総裁選の公約についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 新しい地方創生本部の創設、防災庁の設置、自衛官の処遇改善等につきましては、既に十月の所信表明演説で方向性を示させていただき、現在、具体的な取組や検討を進めております。

 下請代金法の改正、住宅支援などは、今般の所信表明演説や経済対策において方向性や具体的取組の第一歩を示しておるところでございます。

 そのほか、総裁選で私が取り組みたいと示したその他の政策案につきましては、引き続き真摯に検討を進め、結論を得たものから速やかに実施をいたしてまいります。

 金融所得課税についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 金融所得課税につきましては、税負担の公平性を確保することが重要である一方、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすることも重要であります。これらを総合的に考えていく必要があるものと考えており、現時点では、金融所得課税の強化について具体的に検討する考えはございません。

 アベノミクスと金融政策についてお尋ねをいただきました。

 アベノミクスは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながりました。他方、一人当たり平均の実質賃金が伸び悩むとともに、個人消費も力強さを欠いていたと認識いたしております。

 岸田内閣が進めてきた取組を着実に引き継ぎ、更に加速、発展させることで、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現いたしてまいります。

 金融政策の具体的手法については、日銀に委ねられるべきものと認識をいたしておりまして、政府としてコメントすることは差し控えます。日銀には、引き続き、政府と緊密に連携を図り、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、二%の物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることを期待いたしております。

 消費税についてお尋ねを頂戴しました。

 消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全世代型社会保障制度を支える財源であり、今後とも重要な役割を果たすべきものと考えております。現時点では、消費税率の引上げを含む将来の消費税率の在り方について、具体的に検討いたしておるわけではございません。

 専守防衛と非核三原則についてであります。

 我が国としての取組は憲法や国際法の範囲内で行われるものであり、平和国家として専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならないとの基本方針は、今後もいささかも変わるものではございません。

 また、非核三原則を政策上の方針として堅持いたしており、これを見直すような考えはございません。

 御指摘の学会での発言につきましても、核抑止の考え方を説明いたしたものであり、我が国の核保有については、その必要はない旨、併せて明示的に発言していることを申し添えます。

 憲法改正について、総理大臣の立場から内容について直接申し上げることは差し控えますが、総裁としてあえて申し上げれば、自民党においては、憲法改正の条文案の起草に向けた議論が行われており、本年九月には自衛隊の明記について論点整理が行われたところであります。党として行われたこの議論は、私も引き継いでいく考えであります。

 なお、憲法審査会におきましては、これまでも長年にわたり様々な議論が行われてきたところであり、これらの積み重ねの下に建設的な議論が行われ、国民的な議論が深まることを期待いたしております。

 森友学園案件、加計学園案件、桜を見る会案件についてお尋ねをいただきました。

 いずれの件も、それぞれ経緯や状況は異なるものと承知をいたしておりますが、国民の皆様方からの様々なお尋ねに対しまして、関係府省において今後とも丁寧に説明していく必要があるものと考えております。

 文書公開につきましては、情報公開法等の関係法令に基づき、適切な対応がなされるべきものでございます。

 旧統一教会と自民党との関係についての調査についてのお尋ねを頂戴しました。

 自民党におきましては、令和四年に、各議員が旧統一教会との過去の関係を詳細に点検、報告するとともに、それ以降に新たな接点が明らかになった場合には、その都度、追加的に報告、説明を行うよう求めてきたところであります。

 当該団体は、長年にわたり、多様な組織形態や名称の下で様々な活動を展開しており、個々の議員が全ての接点を網羅的に把握し切れない場合があることも事実であります。新たな接点が判明いたしました場合には速やかに報告、説明するとともに、未来に向かって当該団体と関係を持たないことを徹底することは大切であると考えており、引き続きこの方針を堅持いたしてまいります。

 沖縄振興予算についてでありますが、沖縄振興予算は、厳しい財政状況の下、毎年度、必要な予算を積み上げて決定されているものであり、見せしめ、あるいは脅しという指摘は全く当たりません。

 令和六年度当初予算につきましては、強い沖縄経済の実現に向けて総額二千六百七十八億円を計上しており、また、先般閣議決定した令和六年度の補正予算におきましても、沖縄における水道施設の老朽化対策の支援等を実施しますため、総額二百八十億円の沖縄振興予算を計上しております。

 これらの予算を効果的、効率的に執行するとともに、来年度におきましても、必要な予算を確保し、沖縄振興の経済効果を十分に沖縄県内に波及させ、それを実感していただけるよう、沖縄経済の強化に向けて支援を継続いたしてまいります。

 中東外交についてでありますが、日本政府として、現下の中東情勢の緊張の高まりを深刻に懸念いたしております。私自身も、地域における人道状況の悪化に心を痛め、超党派人道外交議連のメンバーとして活動いたしてまいりました。

 我が国は、独自の取組を通じて、これまで中東各国と良好な関係を築いてまいりました。こうした外交資産の土台の上で、関係国、国際機関とも緊密に連携し、中東の緊張緩和と情勢の安定化、そして国際機関による人道支援活動が可能な環境の持続的な確保に向け、積極的に外交努力を行ってまいります。

 政治改革実現に向けて決意をお尋ねいただきました。

 御指摘の海士町の取組は、改革を自ら実行するという前町長の山内様の姿勢が町民に波及し、相乗効果を生んだというすばらしい事例であり、お聞きして教訓とすべき点が多々あるように感じたところでございます。

 亡くなられました山内前町長とは、生前、個人的に大変親しくさせていただいておりました。私自身、海士町を訪問し、遅くまで山内さんと語り合ったことをよく覚えております。みたまの安らかならんことを心よりお祈りをいたすものであります。

 この事例は、先般御紹介いたしました伊仙町の事例とも相通ずるものがあろうかと思います。その精神には学んでいかなければなりません。

 政党の在り方や政治資金の在り方など、議会政治の根幹に関わります問題につきましては、各党各会派で御議論いただくべきものではございますが、総裁としてあえて申し上げれば、我が党としても、謙虚に、真摯に、誠実に国民の皆様方と向き合いながら、その共感を得られるよう、政策活動費の廃止、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築など、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を率先して進め、政治資金規正法の再改正を含めた必要な法整備に誠心誠意尽力をいたしてまいります。

 御指摘の有人国境離島につきましては、領海、排他的経済水域等の保全という目的に加えて、外海遠隔離島であるという著しい条件不利性に鑑み、特別の措置として、その他の離島よりも手厚く航路、航空路の運賃低廉化を図っております。

 離島航路に対する支援につきましては、唯一かつ赤字の航路に対する欠損補助と運賃割引額への補助を基本としつつ、離島航路の海運事業者の生産性向上を図るための交通DX、GXを支援しております。

 令和六年度当初予算に加え、今般の経済対策に盛り込んでおる予算も活用して、離島航路始め地域交通の維持、確保に努めてまいります。

 今後の教育指針についてでありますが、御指摘の鳥取市青翔開智高校、御来県いただきまして誠にありがとうございました、青翔開智高校の建学の精神にはこのようにございます。「情熱と好奇心をもって物事を探究し、自律と協調の両立をはかり、共に成長し、たゆまぬ挑戦と努力の継続でさらなる飛躍を目指す事ができる有為な人材の育成を目指す。」とございます。私も、この精神には大いに共感をするところでございます。

 正解のない時代に、自ら問題を探求し、他者と協調しながら、自ら考え、自由に人生を設計し、飛躍していく能力の育成を目指してまいります。

 小川議員の教育の在り方につきましての御所見、共感するところは多くございます。御指摘、誠にありがとうございました。

 洋上風力発電の推進についてであります。

 洋上風力発電は、再エネの主力電源化に向けた切り札であります。これまで、再エネ海域利用法等に基づき、全国で五百十万キロワットの案件形成を進めてまいりました。

 今後とも、二〇四〇年において三千万から四千五百万キロワットの案件形成を実現するという目標に向け、国が前面に立ち漁業者等と調整するとともに、排他的経済水域への設置を可能とする制度整備や技術開発など、浮体式を含め洋上風力発電の導入を積極的に進めてまいります。

 温室効果ガスの削減目標についてでありますが、気候変動問題は世界全体で取り組むべき喫緊の課題であります。エネルギー起源CO2の排出量で見れば全世界の約三%を排出しております我が国は、世界全体での一・五度目標の実現に向け、これまでも着実に排出を削減してきております。

 現在、次期削減目標の策定とその実現策について、国の審議会で検討を深めておるところでございます。脱炭素とエネルギー安定供給、経済成長の同時実現を目指すとの考えの下、世界全体での一・五度目標の実現に向け、科学的知見やこれまでの削減実績等を踏まえつつ、年内に案を取りまとめ、我が国のネットゼロへの道筋をお示ししたいと考えております。

 実効ある地球温暖化対策のためには、我が国に比べても排出量の多い国々の取組が必要であり、その取組強化に向け、対話も進めてまいります。

 今後の介護施設の整備及び職員の処遇についてであります。

 高齢化が進む我が国において、今後とも必要な介護サービスを提供していくことが必要であります。その際、御指摘のあった介護施設だけでなく、在宅サービスもバランスよく整備をし、全体として、地域で高齢者を支える体制を計画的につくってまいります。

 その中でも、介護職員の人手不足は喫緊の課題であります。介護職員の賃金は、全産業平均とは差があるものの、累次の処遇改善の措置により四・五万円程度改善してきております。令和六年度の報酬改定におきましても賃上げの措置を行うとともに、今般の経済対策でも介護人材の確保及び職場環境の改善に資する新たな事業を盛り込んだところでございます。引き続き、介護分野の更なる賃上げ等の支援の取組を進めてまいります。

 集団的労使関係及び労働基本権についてでありますが、労働組合は、集団として労働者の意見をまとめ、使用者と交渉し、労働者の働きやすい環境をつくっていく重要な役割を担っているものと認識いたしております。他方、その結成又は加入につきましては、基本的には労使自治に委ねられるべきものと考えております。

 中小企業等の労働者であっても、労働基本権を有することは当然であります。その上で、労働者の処遇の改善や働く環境の整備に引き続き取り組んでまいります。また、労働者が労働組合法を始めとする労働関係法令について知ることは、労働条件の確保の観点から重要であると考えており、引き続き、その周知等にも取り組んでまいります。

 ネット上の言論を健全な民主主義の発展につなげていくための取組についてお尋ねをいただきました。

 ネット上の偽情報、誤情報は、短時間で広範に流通、拡散し、国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼし得る深刻な課題であると認識をいたしております。

 多様な関係者と連携協力を行いながら、ネット上の情報には偽情報、誤情報も含まれ得る等の認識を幅広い世代に広めていきますとともに、大規模なプラットフォーム事業者に対して、情報の削除を求められた場合に迅速に対応すること、こうした取組の状況の透明化を進めることなどを求める法改正に取り組むなどの対策を講じてきております。

 鈴木総務会長の発言は承知をいたしており、引き続き、表現の自由に十分配慮しながら、現行法で対応できるかを検討し、必要に応じ、法規制も含めた更なる対応を検討してまいります。

 最近の選挙の認識についてでありますが、選挙は、国民が主権者として政治に参加する最も重要かつ基本的な機会であり、民主主義の根幹を成すものと認識いたしております。一定のルールの下、立候補者は選挙運動を通じて政見を訴え、有権者は各々の自由な意思に基づき投票先を選択するものと考えております。

 議員御指摘のように、最近の選挙では、これまで経験したことのない特異な状況が発生いたしております。これに問題意識を持った与野党が集まり、法改正に関する議論を行うなどの動きが出ていると承知をいたしております。

 他方、社会には様々な意見が存在しており、選挙を通じて、御指摘のような風潮も含めた多様な民意の反映と意見の集約を図ることは、民主主義を健全に機能させるためには重要であります。

 もとより完全な選挙制度は存在せず、これまでも様々な試行錯誤が重ねられております。国民が政治に関心をお持ちになり、国民から信頼される政治を確立するために、各党各会派が選挙制度の在り方について真剣に議論していくべきであると考えております。

 貧困と格差の拡大についてでありますが、格差や貧困を測るための国際的な指標には様々なものがありますが、我が国におきましては、近年、経済状況の好転や年金等の社会保障、税による再分配の効果により、これらの指標は基本的には横ばい又は改善傾向にあると認識いたしております。

 その上で、貧困等により厳しい生活を送られている方々にきめ細かく対応いたしますため、生活困窮者自立支援制度における相談支援、最低賃金の引上げ、非正規雇用労働者の正社員への転換の促進といった総合的な対策を講じております。

 また、誰もが地域で孤立せずに暮らせるよう、地域共生社会の実現を図るとともに、身寄りのない高齢者等が抱える問題への対応について検討を進めておるところでございます。

 全ての人に安心と安全を。それが私の思いであり、国民お一人お一人が将来への希望を持つことができるよう、今後とも力を尽くしてまいります。

 少子高齢化に伴う影響についてのお尋ねを頂戴しました。

 社会保障制度については、これまでも、社会保障と税の一体改革の着実な実施など、給付と負担のバランスを図りつつ、制度の持続可能性を維持する改革に取り組んできたところです。引き続き、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障の構築に向け、昨年末に策定した改革工程に基づき、歳出改革を含む歳出の最適化を進めてまいります。

 また、今回の物価上昇は、食料やエネルギー等の国際的な高騰を契機に、円安の進行も相まって、輸入物価が上昇したことを起点とするものであると認識しております。

 こうした中、今回の経済対策では、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々を支援するため、物価高の影響を受ける低所得者世帯向けの給付金や地域の実情に応じた物価高対策を後押しする重点支援地方交付金など、総合的な対応を講じてまいります。

 食料やエネルギーの国産化につきましては、引き続き取り組んでまいります。

 その上で、我が国経済は、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続いてまいりました。そうした中、実質賃金は、ほかの先進国では中長期的に上昇傾向にある一方で、我が国では横ばい傾向となっており、こうしたことから、物価上昇が家計に負担を生じさせる状況と認識をいたしております。

 こうしたことから、賃金の上昇傾向を定着することが急務であり、総合経済対策に賃上げ環境の整備のための具体策を盛り込み、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向けて取り組んでまいります。

 年金については、前年の物価等の変動に応じて年金額を改定することを基本としながら、マクロ経済スライドによって調整を行う仕組みとしております。これは、保険料負担が過重とならないようにするためのものであり、必要な措置であると考えております。

 非正規雇用労働者につきましては、近年では特に高齢者などの労働参加が進む中で、柔軟な働き方として増加してきた面があります。他方で、非正規雇用労働者は、相対的に賃金が低いこと、雇用が不安定であることなどの問題や、いわゆる不本意非正規の割合は減っているものの、若年層では割合が高い等の課題があると認識をいたしております。

 労働者派遣制度につきましては、労働者の多様な雇用機会を確保しながら、その処遇の改善を図ることが重要であると認識をしており、これまでの法改正を通じて、派遣労働者の雇用の安定のための措置の導入や、同一労働同一賃金の導入等による公正な待遇の確保を進めてきたところであります。

 非正規雇用労働者の処遇改善に向けましては、引き続き、希望する方々の正社員への転換を支援するとともに、同一労働同一賃金の遵守徹底を図ることが必要と考えております。このためには、短時間正社員制度など多様な正社員制度の普及促進を図ることも重要と考えており、こうした総合的な対策を進めてまいります。

 我が国経済は、バブル崩壊以降、金融システム問題やリーマン・ショックなど様々な困難に見舞われてまいりました。こうした中、企業は、賃金や成長の源泉である投資を抑制し、結果として、消費の停滞や物価の低迷、さらには成長の抑制がもたらされました。

 こうした状況により低物価、低賃金、低成長というデフレの悪循環につながったことは、失われた三十年の基本的な構造であったと認識をしており、御指摘のように、この悪循環を逆回転させるということが必要でありますが、今まさに、約三十年ぶりの高い水準の賃上げなどの明るい兆しが表れており、我が国経済は、長きにわたったデフレマインドを払拭し、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にございます。

 このため、今般の経済対策では、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行するため、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めるとともに、省力化、デジタル化投資の促進などの支援を盛り込んだところであります。人への投資や官民連携の国内投資によって、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を高めるなど、将来も継続的に所得が増加する手だてを講じてまいります。

 社会保障の給付と負担及び資産との関係についてでありますが、少子高齢化が進行する中にあっても、社会保障制度を持続可能なものとするとともに、現役世代の負担を軽減していくことは重要な課題であります。このため、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障を構築いたしてまいります。

 これに向けて、昨年末に策定した改革工程に基づき、医療DXによる効率化、質の向上や医療の提供体制の改革を始め、医療、介護保険における金融資産等の取扱いの検討など、歳出改革を含む歳出の最適化を進めてまいります。

 人口減少や少子高齢化等の経済社会の構造変化が進むとともに、税率の累進緩和等がなされる中、議員御指摘のように、所得再分配機能を有する相続税、贈与税は重要な役割を果たすものと考えております。

 今後の相続税、贈与税の在り方につきましては、経済社会の構造変化に加え、再分配機能をどの程度発揮させるべきかという観点も踏まえつつ、税制全体の中で考えていくべき課題であると認識をいたしております。

 政治に求められる機能についてのお尋ねでございますが、個別論を束ねる全体構造を示すことが政治の役割である、御提案につきましては、私自身は同じ認識であります。独立した、持続する日本の在り方を見出したいという思いで今後とも取り組んでまいります。

 全ての人に安心と安全を。十月の所信表明で申し述べたとおりでございます。これを基盤として、お一人お一人が将来への希望を持ち、多様な幸せを実現していただける豊かな国づくりを進めたいと考えております。

 この実現のためには、三つの重要課題に立ち向かってまいります。第一に、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、我が国の独立と平和、国民の命と暮らしを守り抜く。第二に、極めて深刻な人口減少の中にあっても、地域や経済全体の活力を取り戻す。第三に、激甚化する自然災害や頻発化する犯罪から国を守り抜く。こうした課題を乗り越えた先に、私どもが掲げます日本創生が実現できるものと考えております。

 先般の選挙で示されました国民の皆様方の声を踏まえ、自由民主党と公明党の連立を基盤に、他党にも丁寧に御意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られますよう、真摯に、謙虚に、国民の皆様方の安心と安全を守るべく取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣中野洋昌君登壇〕

国務大臣(中野洋昌君) 小川淳也議員から、さきの選挙における推薦に関する公明党の判断についてお尋ねがありました。

 お尋ねの点につきましては、国土交通大臣としてお答えする立場にございませんため、答弁は差し控えさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 日本維新の会の前原誠司です。

 党を代表し、全て総理に質問いたします。真摯にお答えいただきますようにお願いいたします。(拍手)

 元日に起きた能登半島地震から間もなく一年を迎えます。震災の大きな傷痕が癒えない中、九月の記録的豪雨が追い打ちをかけ、能登の復興復旧はままならない状況にあります。

 能登は厳しい冬に入りました。国を挙げ、生活再建に向けて懸命に立ち上がろうとしている全ての人たちに寄り添い、明るい展望を持って新年を迎えていただくよう、持てる力を総動員してサポートしていくことが不可欠。私たちも全力で被災地の皆様を支えてまいります。

 総理に対し石川県から具体的な支援措置の要望がなされていると伺っております。政府におかれましても、能登の復興に光明が差すようなきめ細かい支援を適切かつ迅速に届けていただくように強くお願いをし、質問に入ります。

 年末までの短い期間となる今国会ですが、石破総理と自民党が必ず成し遂げなければならないことは、与党過半数割れの民意に対して、自らが起こした裏金事件のけじめをつけることです。

 そもそも、裏金の金額五百万円で処分の線を引いたことを見直すべきではありませんか。そして、今すぐできる政治改革の法案を速やかに成立させ、年明けの通常国会では更に本格的な法改正の段取りをつけなければなりません。

 まず、政策活動費の廃止について、我が党は、さきの通常国会での衆議院での対応の反省の上に、臨時国会に完全廃止の法案を提出し、党内で先行実施することを決めました。現在、同様に廃止の方向で主要政党はまとまっています。

 しかし、自民党だけは、政治資金規正法の改正により廃止の方向と表向きは言いながら、内実は、相手に配慮が必要な支出は非公開にできる仕組みを新たにつくろうとしています。

 さきの総選挙で示された民意は、そうした政治資金の不透明な在り方を一切認めないものだということが、この期に及んでなお、どうして分からないのでしょうか。

 野党と世論に追い込まれてから表明するのではなく、政策活動費を廃止する、すなわち、渡し切りの方法による政治団体の経費の支出は完全に廃止すると、潔く、今日、この場で宣言すべきではありませんか。そして、それを年内に法改正までやり切ろうではありませんか。

 ここで曖昧な答弁で逃げるなら、石破総理も、御自身が否定してこられたこれまでの自民党の総理と何一つ変わりません。

 調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費については、使途公開と残金返納を義務づける方針で与野党が一致し、今国会で歳費法等の改正を目指すことになりました。期限を区切ったことは評価しますが、これ以上の先送りは絶対に許されません。

 前通常国会での旧文書交通費改革をやり遂げるという我が党と自民党との合意は、まだ生きているとお考えですか。党総裁たる総理として、改めて、旧文通費改革を今国会でやり切ると明言していただきたいと思います。宣言できなければ、自民党総裁が文書で約束できたことをなぜこの場で明言できないのかを説明してください。

 政治改革の本丸は、企業・団体献金の禁止です。

 企業・団体献金は、日本の重要なかじ取りに関わる意思決定をゆがめています。自民党の資金団体である国民政治協会に、各種団体、大企業が何千万円もの献金を毎年行っています。これだけのお金を出して何の見返りも求めないなど、あるはずがありません。

 企業・団体献金の禁止の代替措置で創設された政党交付金を受け取るなら、企業・団体献金や企業、団体のパーティー券購入を禁止することは当然ではないでしょうか。自民党はいつまで二重取りを正当化し続けるつもりですか。禁止できないなら、政党交付金の受取を即刻辞退すべきだと考えますが、併せて見解を求めます。

 自民党は、自ら企業・団体献金をやめることも、その法案に賛成することも、絶対にできないでしょう。企業、団体から資金や選挙の協力を受け、その後押しで選挙を戦い、政権の座に就くことで得た政府の予算執行権や許認可権で恩返しをするという、日本の根幹にあるしがらみの権力構造こそ、自民党を政権の座にとどまらせている最大の要因だからです。

 与党過半数割れの今、全野党で歩み寄れば、衆議院で法案を通過させることができます。衆議院で過半数の民意を得て通過した法案を、参議院で、自民党が自己都合で一方的に潰すことは容易にできることではありません。自民党も賛成に回るか、大幅に譲歩するしかなくなるでしょう。

 政治に歴史的な変化を起こせる千載一遇のチャンスが訪れています。

 自民党以外の各党会派にお願いをしたいと思います。企業・団体献金の禁止については、党派を超え、国民が我々に何を期待しているのか、もう一度真摯に向き合って実現させようではありませんか。

 自民党の中にも、心ある議員はいるはずです。石破総理もそうであったはずです。政党の枠にとらわれず、国会の場で、国民の前で、オープンな議論を通して、共に企業・団体献金の禁止という歴史的な偉業を成し遂げようではありませんか。一政治家としての石破総理の見解をお伺いします。

 日本維新の会は、将来世代のための政党であることを目指しています。結党以来、将来世代への投資の中核として、教育の無償化をナショナルミニマムとして掲げ、これまで憲法改正原案への盛り込みや法案提出を行ってまいりました。特に、所得制限のない高校授業料無償化は、次の通常国会までに恒久的な制度として実現させたいと考えています。

 さきの選挙では、自民党以外の主要政党も、高校までの所得制限のない教育の無償化を掲げました。自民党は、所得制限には触れず、安定財源を確保した無償化の拡大という表現にとどめています。

 所信表明演説で人づくりこそ国づくりと熱く語った総理ならば、教育を無償化すべしという我々の主張と方向性にそごがないと理解をしていますが、いかがでしょうか。

 高校について、現在大阪府で実施している方式であれば、約六千億円で所得制限のない無償化が全国で実現できると試算しています。自民党は、安定財源が確保できれば進めると腰が重いようですが、さきの通常国会では、子ども・子育て支援金制度の一兆円の確保を始め、全体で三・六兆円を賄うことを野党の猛反対を押し切って決めたではありませんか。令和五年度決算検査報告では、令和四年度の補正予算において、少なくとも五千九百八十五億円の不用額があったと会計検査院が検査しています。政府が腹をくくりさえすれば、所得制限のない高校無償化は実現できるのです。

 中学生の九九%が高校に進学する現状も鑑みれば、何より優先して六千億円のお金を高校生のために確保すべきですが、なぜ決断できないのか、合理的な説明を求めます。

 三月の参議院予算委員会で、我が党議員が大阪でスタートした高校授業料無償化の全国展開に対する考え方をただした際、当時の盛山文科大臣は、大阪の制度は、対象となる高校、ならない高校で差が出るので取り入れることができないと否定し、岸田総理も、各地域の様々な実情を踏まえ、都道府県と連携して教育費負担の軽減に取り組んでいくのが政府の姿勢だと答弁しました。

 すなわち、各地域の私立高校の生徒数や割合、学費等の違いを踏まえ、都道府県と国が連携を図り、全国の高校が一律対象となり得る制度であれば実現が可能というのが政府のスタンスだと受け止めますが、間違いないでしょうか。

 私たち日本維新の会は、日本に生まれた全ての子供が、家庭環境や親の経済状況にかかわらず、自分が頑張ればどこまでも成長できる、どんな夢でも追い求められる社会を実現したいと考えています。教育無償化は、未来の日本を支える子育て世帯や現役世代の負担軽減としても、減税や年収の壁解消以上に重要な施策でもあります。なぜ大学は三人以上の子供がいなければ無償化にならないのですか。おかしいではありませんか。一人から無償化にするのは当然です。

 そうした観点から、我が党は、高校だけではなく、大学も含む高等教育全般、ゼロ―二歳児の幼児教育、さらには小中学校の給食費の無償化を含め、教育の完全無償化を目指すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 我が党は、年収の壁の引上げには賛成です。国民の給与は三十年前からほとんど上がらない一方、税金と社会保険料は上がり続け、国民負担率は五〇%に迫る勢いです。現在は手取りが減り続ける中で物価高に見舞われており、国民生活は苦しい状況にあります。

 にもかかわらず、自民党政権は、毎年の補正予算で応急手当てを繰り返すのみで、抜本的な規制改革に取り組んでいません。しかも、その応急手当ては国民よりも既得権に配られています。電気、ガス、ガソリン代の負担軽減策と言いながら、消費者ではなく事業者に対する補助金投入を繰り返しているのが典型的な例です。

 こうした悪循環を断ち切るためには、一点突破で風穴を空け、全面展開していく改革手法が必要と考えます。

 その一点として、年収の壁の問題に焦点を当て、国民の可処分所得を増やして消費を喚起するとともに、働き控えを解消する策が有効であると考えます。現役世代を元気にするという我が党の方針にも合致するもので、さきの衆議院選以前から公約としても訴えてまいりました。政府が総合経済対策の中に年収の壁の引上げを盛り込んだことは評価します。

 一方で、幾つかの重要な課題が未解決のまま残されていると考えます。

 まず、百三万円の壁を仮に百七十八万円に増やした場合、七・六兆円の財源が必要です。そのうち四兆円は住民税であるため、自治体の税収減となります。地方交付税交付金の増額など、地方自治体の負担を解消する財源措置は当然の前提と考えますが、総理の見識を伺います。

 働き控え解消の観点では、扶養控除について、年収百三万円を超えた場合、配偶者特別控除と同様の逓減消失型にしていくこと、第三号被保険者の社会保険料徴収免除を逓減消失型にしていくこと、企業の扶養手当支給の基準となる国家公務員の扶養手当支給基準を見直すこと、以上三つの改革が本質的に重要です。これらを実行するお考えはありますか。

 厚生労働省が示した、百六万円の壁の年収要件を撤廃し、条件を週二十時間以上労働のみとする案は、二十時間の壁を新たに生むだけです。また、前倒しとなるケースも想定でき、就労抑制の効果も生むのではないでしょうか。働き控えの解消を目指すのであれば逆効果だと言わざるを得ませんが、いかに認識をされますか。

 年四十八万円という基礎控除の金額の根拠は何ですか。この金額は、憲法二十五条における健康で文化的な最低限度の生活を保障する最低保障費に課税しないとする基礎控除の趣旨に照らし合わせて、適切とお考えですか。

 あらゆる人に最低生活保障がなされるべく、マイナンバーのフル活用を前提として現行の社会保障制度を統合して改革し、給付つき税額控除を実現すべく検討を開始すべきだと考えますが、所見を伺います。

 国民の手取りを増やし、働き控えを解消する手だてとしては、超えても手取りは減らない所得税の百三万円の壁よりも、超えたら手取りが減り、会社負担も増える社会保険料の壁の方が実は深刻です。

 年収の壁に対する世論の高まりを契機として、少子高齢化が進む中で持続可能性を失いつつある社会保障制度の抜本改革を行うつもりはありませんか。現役世代の社会保険料負担は青天井で増え続けており、今やらないと次世代はもうもちません。

 我が党は、受益と負担の明確化が社会保障制度改革の肝であると考えています。未病、予防に力を入れて健康を心がけ、医療給付を受けない人は保険料が下がる、アメリカのペイ・フォー・パフォーマンスのような保険原理の適用強化策を検討すべきです。

 また、同国で行われたランド医療保険実験の結果では、医療費の自己負担割合が高くなれば、国全体で支払う医療費は減少することについて一定の根拠が示されました。医療費の抑制効果を生み出す観点で、日本では、全ての高齢世帯の負担割合が住民税非課税世帯を含む低所得の現役世代よりも低く設定されている現実にも向き合っていく必要があると考えます。

 こうした現状には高齢者や医療関係者から懸念の声が上がっており、政治家が覚悟を持って丁寧に説明を尽くしていけば、世論の支持を得ることは可能だと考えます。これらの提案について総理の認識を伺います。

 政府は、十一月二十二日、一般会計の規模が十三・九兆円に上る巨額の経済対策を決定しました。総理は、さきの総裁選挙の際、昨年を上回る大きな補正予算を成立させると述べており、規模ありきの編成方針であることは疑う余地はないでしょう。景気が穏やかに回復に向かう中で、なぜコロナ禍で膨張した相場観を引きずったまま、規模を予算編成の指標にする必要があるのですか。

 昨年の経済対策では、GDPを年率換算で一・二%引き上げるとしていましたが、政府は令和六年度の実質成長率を〇・七%増と見込んでいます。巨額の補正予算を経済対策の名目で成立させるならば、過去の経済対策がどれだけGDPの押し上げに寄与したかを検証し、本年度以降の経済対策に生かすべきではないですか。

 そもそも、現在の日本の官の在り方や政策の実行の仕方には無駄が多過ぎます。大量の国債発行や財政出動を前提に補正予算を考えるのであれば、同等の合理化と効率化を進めるのが先のはずです。

 例えば、年間四十兆円超の医療費は介護費と合わせてGDPの約一割を占め、自動車産業と同規模です。しかし、大半が税と保険で賄われ、市場のチェック機能が弱く、人件費が七割を占める労働集約型産業のため、資源配分や効率性に問題が生じています。さらに、人件費適正化や効率的運用モデルへの転換などの構造改革が進んでいません。

 アメリカでは、コロナ対策で莫大な政府支出を行った結果、強烈なインフレに歯止めがかからず、トランプ次期政権では実業家のイーロン・マスク氏を起用し、政府効率化省を立ち上げることで連邦政府の歳出三割削減を目指しています。マスク氏は、規制撤廃や公務員の人員整理、無駄遣いの圧縮で連邦政府の支出を年間約七十五兆円以上削減できると発言をしています。

 我が国も政府に民間の経営感覚と強力なリーダーシップを取り込み、アメリカの政府効率化省に匹敵するほどの大胆な改革を実行すべきだ、そういう状況にあると思いますが、総理の認識をお聞かせください。

 東京の地価の急激な上昇は子育て世代の家計を圧迫しており、東京二十三区の子育て世帯の収入中央値が一千万円に迫るというデータもあります。東京が全国から若者を吸収しながら、このような子育て環境にあることについて、どのように受け止めますか。東京と同等の雇用を生む第二極を育成することは、日本の持続的な成長に資するのではないでしょうか。

 地方の弱体化と東京への一極集中は、首都圏と他地域との間で経済格差を生むだけでなく、首都直下地震の影響が全国に波及する蓋然性も高まっています。関東平野を離れ、東京と同時被災しない位置にある東京に次ぐ規模を持つ大都市に、国の行政の代替機能や経済中枢機能など首都機能のバックアップを整備し、日本全体の強靱化を高めるべきではないですか。

 副首都の形成といった取組を全国に展開した先にあるのが、地域主権型道州制です。大阪府市では、来年四月開幕の大阪・関西万博によって高まる輸送ニーズに対応するため、ライドシェアの全面解禁を求めてきましたが、政府・与党の大半の議員と一部野党はかたくなに抵抗し、議論は全く進展していません。

 地域によって必要な規制は異なります。地域の発展は地域の創意工夫に委ねるべきであり、そのためには具体的に財源と権限の移譲を進めていくことが不可欠と考えますが、総理の認識をお伺いします。

 我が党は、日本の成長戦略として、道州制において州都の候補となる都市経済を権限を与えて強くし、多極分散型国家を目指す道筋を描いています。また、その第一歩として、大阪都構想のような大胆な都市構想が必要と考えています。

 一方、石破総理の掲げる地方創生は、日本全国津々浦々へのばらまき的な町おこしのような内容であり、地方の課題解決を行い、成長を促して持続可能な仕組みをつくり上げていくものとは到底思えません。

 石破総理肝煎りの地方創生二・〇とは、具体的にどんな構想なんでしょうか。これまでの地方創生をめぐる政策と一体何が違うのですか。また、これまで述べてきた我が党が掲げる構想について、総理のお考えをお聞かせください。

 アメリカ大統領選挙で、トランプ前大統領が返り咲きを果たしました。米国第一を掲げる次期大統領は多国間の協調より二国間のディールを優先し、同盟、同志諸国は身構えています。

 安倍元総理は、二〇一六年、法の支配による自由で開かれたインド太平洋、FOIP構想を提唱し、一期目のトランプ氏の支持を得て日米共通の基本戦略となりました。総理も、アジア版NATOなる机上の空論に固執せず、FOIPの機能を強化、拡大するような、トランプ氏も共鳴し得る現実的な防衛構想を提案し、アメリカと手を携え、防衛力、抑止力を増強していく意思を明確に示すべきではないですか。

 日米間の喫緊の懸案は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画です。バイデン政権、トランプ氏とも反対していますが、同盟国かつ最大の対米投資国の企業が絡む案件でアメリカが安保への懸念を持ち出すことは、余りにも理不尽です。

 アメリカはトランプ次期政権に最終判断を先送りするという観測が出ています。日本は、官民一体であらゆるルートを駆使し、アメリカ側に働きかけを強めるべきだと考えますが、具体的にトランプ氏側への説得に動いているのでしょうか。

 トランプ氏は脱炭素に否定的で、アメリカが地球温暖化対策の国際的枠組み、パリ協定から再離脱することが確実視されています。世界二位の温室効果ガス排出国であるアメリカの動向が、今後の国連気候変動枠組み条約の機能に重大な影響を及ぼすことは間違いありません。

 政府は、アメリカのパリ協定離脱を見据え、具体的にどのような対策を講じ、温暖化をめぐる国際協調をリードしていく考えですか。

 来年二月までに国連に提出する二〇三五年までの温室効果ガス排出削減目標について、我が国は、今年のG7で、世界で二〇三五年までに二〇一九年比六〇%削減という目標に合意しています。一方、先月行われた経産省と環境省の合同審議会では、二〇三五年に二〇一三年度比六〇%削減という、G7の合意よりも大幅に低い目標が政府から突如示されました。

 第二次トランプ政権による揺り戻しを見越して、日本がいち早く気候変動の国際約束を捨てて逃亡を始めたようにも映りますが、総理の見解を伺います。

 総理は、総選挙から一夜明けた十月二十八日の記者会見で、来年十一月に結党七十周年を控える中、党是である憲法改正を前に進めていく、与野党の枠を超え、三分の二以上の賛成が得られるように精力的に取り組むと宣言されました。しかし、言葉とは裏腹に、自民党は、平成二十四年の政権奪還以降維持してきた本院の憲法審査会の会長ポストをあっさり明け渡しました。

 この状況下で、具体的にどのように憲法改正を前に進めるべく指導力を発揮していくお考えですか。本気ならば、いつまでに憲法改正案をまとめ、国会発議を行い、国民投票を行うのか、タイムスケジュールをお示しください。

 本院の憲法審査会において、大規模災害時などに対応する緊急事態条項創設をめぐっては、日本維新の会、自民、公明、国民民主、有志の会の五党派がこれまでに、緊急時に必要に応じて衆議院議員任期を延長できる条項を設ける改憲の必要性で一致し、我が党、国民民主、有志の会の三党派は独自に条文案をまとめました。加えて、憲法九条についても、各党派でアプローチに差異はありますが、改正の方向性を共有しています。

 一昨年末、政府は、国家安全保障戦略など戦略三文書を決定し、防衛力の抜本強化に踏み切りましたが、その原動力たる自衛隊の存在を憲法にしっかり位置づけることはそれと表裏一体の関係にあります。

 自衛隊員に重い責務を負わせながら、憲法上の明確な地位を与えない、これが責任ある国家の姿でしょうか。私たちは、一足飛びに二項を削除するのではなく、まず自衛隊を憲法に明記することが大きな第一歩と考えますが、自衛隊の最高指揮者、そして自民党総裁としての見解を求めます。

 日本海国土軸を担う北陸新幹線は、分散型の国づくりや太平洋側の基幹交通に対する代替ルートの確保といった国土強靱化に寄与し、経済発展を促進する国家プロジェクトです。その効果を最大化するには、大阪までの全線開通が不可欠です。

 しかしながら、国土交通省は、小浜ルートの建設費が最大三・九兆円に達し、工期が二十八年に及ぶ可能性があることを公表しました。さらに、物価上昇次第では建設費が五兆円を超えるおそれもあり、地元自治体からは、負担増や二〇五〇年開業の遅さへの不満が出ています。費用対効果が一を下回る場合、着工五条件を満たさなくなる懸念も指摘されています。

 我が国の国土強靱化や経済成長を促す観点から、現実的なルート選定によって一日も早く大阪につなげることが不可欠ではないですか。現在、政府は小浜ルートしか検討していませんが、小浜ルートありきではなく、現実的な米原ルートと比較検討すべきではないでしょうか。建設費用に合わせて便益を水増しすることで国民の納得が得られるとお考えでしょうか。小浜ルートが着工五条件である費用対効果を満たせなかった場合は、ルートを見直すのでしょうか。

 以上、我が党の基本的な考え方に基づき質問をさせていただきました。石破総理の明快な答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 前原誠司議員の御質問にお答えをいたします。

 政策活動費についてであります。

 政治資金に関するルールにつきましては、各党各会派で御議論いただくべきものというふうに認識をいたしておりますが、総裁としてあえて申し上げれば、政党から各級議員に支出され、その先の最終的な使途が公開されていない政策活動費は廃止することといたし、我が党として、所要の法案を提出いたしてまいります。

 この結果、政党における最終的な支出先等については、基本的に全て公開をすることとなり、もはや従来の政策活動費ではなくなりますが、外交上の秘密、支出先のプライバシーあるいは営業秘密を害するおそれに配慮すべき場合など、一部の限定された支出については、相手方との信頼関係等にも関わることから、公開を行いつつも、公開の方法には工夫が必要であると考えております。

 我が党としては、これらの支出につきましても、政治資金に関する第三者機関が中立的な立場から厳格な監査を行い、支出の適正を担保することを想定しており、不透明な支出を存置するというものでは全くございません。

 今後、どのような公開の仕方があり得るのか、第三者機関の在り方をどうするかなどについて、我が党としても、各党各会派と真摯に議論を行いたいと考えております。

 調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費につきましては、本年五月、我が党の岸田前総裁と御党の馬場前代表との間において、衆参議長の下に置かれる協議の場において前向きに議論を行い、使途公開と残金返納を義務づける立法措置を講ずることについて文書で合意が交わされております。

 私も、自民党総裁として、その合意を引き継いでいるものというふうに認識をいたしております。

 調査研究広報滞在費に関するルールの在り方につきましては、既に衆参の調査研究広報滞在費に関する協議会において御議論をいただいている、このように承知をいたしておりますが、総裁としてあえて申し上げれば、その使途公開と残金返納について年内に必要な法整備が図られるよう、我が党といたしまして誠心誠意尽力をいたしてまいります。

 企業・団体献金等についてであります。

 政党助成制度は、政党が民主主義の重要な担い手であることに鑑み、その費用を国民全体で負担するために導入されたものと承知をいたしております。

 ただいま前原議員から、政党交付金は企業・団体献金を禁止する代替措置として創設されたとの趣旨の御発言がありましたが、政治資金規正法の平成六年二月の改正附則第十条が、改正法の施行後五年を経過した場合に、会社、労働組合その他の団体の政党及び政治資金団体に対してする寄附の在り方について見直しを行うものとすると規定していることから明らかなとおり、企業・団体献金の禁止が政党交付金の前提となっていたという事実はないものと承知をいたしております。

 その上で、政治資金に関するルールの在り方につきましては、既に政治改革に関する各党協議会において御議論をいただいており、政府としてお答えすることは差し控えますが、総裁としてあえて申し上げれば、企業・団体献金は、長年の議論を経て、政党等に対するものに限定されるなど、様々な改革がこれまでも行われてきたところであります。

 その上で、更なる規制の強化につきましては、最高裁判決でも認められている企業の政治活動の自由に関わるものであることから、必要性や相当性をよく議論する必要があるものと考えております。

 政党として避けなければならないのは、献金によって政策がゆがめられることであります。これには、個人献金も企業・団体献金も違いはございません。我が党としては、企業・団体献金自体が不適切とは考えておりません。

 他方で、企業・団体献金を含む政治資金について高い透明性を確保することは、政治資金規正法の目的及び基本理念に照らして、極めて重要であります。

 政治資金規正法第一条は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の公開などを行うと規定しております。また、同法第二条は、企業・団体献金を含む政治資金を民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であるとした上で、その収支の状況に関する判断は国民に委ね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないようにしなければならないとしております。

 我が党としては、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築に取り組む方針であり、これにより、企業・団体献金を含む政治資金の透明性が飛躍的に高まり、国民の皆様の御判断に資することになると考えております。

 教育の無償化についてのお尋ねを頂戴しました。

 御指摘の高校段階の支援につきましては、所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充してきたところであり、このような基盤となる国の制度と、地域の実情を踏まえて地方自治体が上乗せして実施する支援が一体となって行われることが適切と考えております。

 教育の機会均等という要請の中で、どこまで家計の負担軽減を図るべきかということにつきましては、引き続き考えるべき課題と考えております。

 高等教育費につきましては、本年度から、授業料等の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充をし、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしております。まずはこうした拡充を着実に実施に移し、その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見定めつつ取り組んでまいります。

 これらを考える際には、子供、子育て加速化プランにおいて児童手当の抜本的拡充や先ほど申し上げた高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要があると考えております。

 いわゆる百三万円の壁についてのお尋ねでございますが、今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。

 経済や地方税等の税収への影響など、専門的な観点も含めて様々考えねばならない論点があるものと認識をいたしております。そうしたことも踏まえ、今後、各党の税制調査会長間などで更に議論を深めていただきたいと考えております。特に、地方の首長の皆様の御意見は十分理解できるところであり、丁寧にお応えしてまいりたいと考えております。

 いわゆる百三万円の壁、第三号被保険者、公務員の扶養手当支給基準についてのお尋ねを頂戴しました。

 今般の経済対策におきましては、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだのは、先ほど来申し述べておるとおりでございます。

 経済や税収への影響など、専門的な観点も含めて様々考えなければならない論点があるものと認識をしており、そうしたことも含めて、今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めてもらいたいと考えております。

 第三号被保険者の在り方につきましては、従来からその縮小に向けて被用者保険の適用拡大を進めてきたところであり、引き続き、年末の取りまとめに向け、社会保障審議会年金部会の議論を進めてまいります。

 国家公務員の扶養手当につきましては、本年の人事院勧告において、配偶者の働き方に中立的な給与制度を目指し、配偶者に係る扶養手当の廃止及び子に係る扶養手当の増額が示されたところでありますが、引き続き、人事院勧告尊重の基本姿勢に立ち、適切に対応いたしてまいります。

 いわゆる百六万円の壁についてでありますが、被用者保険の更なる適用拡大につきましては、次期年金制度改正に向けた議論の中で論点の一つと相なっております。

 その際、百六万円の賃金要件につきましては、近年の最低賃金の引上げに伴い、週二十時間という労働時間要件を満たせば賃金要件を満たす地域や事業所が増えていることも踏まえ、検討が行われるものと承知をいたしております。

 引き続き、働き方に中立的な制度を構築する観点から、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 基礎控除及び給付つき税額控除についてでありますが、基礎控除の趣旨は、一定の額までの少額の所得については負担能力を見出すに至らないと考えられることから、税を課さないというものであります。

 基礎控除を含む課税最低限につきましては、生計費の観点とともに、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえ総合的に検討されてきており、その中で基礎控除の額も決定されてきたものと理解をいたしております。

 今般の経済対策におきまして、先ほど来申し述べておりますとおり、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んでおります。

 今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めてもらいたい、繰り返しになって恐縮でありますが、そのように考えております。

 給付つき税額控除につきましては、財源確保という課題に加えまして、企業や地方自治体の事務負担、現行制度では把握をしておらない非納税者等の所得や世帯所得の正確な把握、所得は低いが資産を多く持っている場合の取扱い、生活保護などのほかの低所得者支援制度との関係を十分に整理する必要といった課題が考えられるため、その導入には慎重な検討が必要であると考えております。

 社会保障制度改革についてでありますが、少子高齢化が進む中にあっても、国民が安心できる社会保障制度を構築するため、現役世代の負担を軽減し、誰もが年齢にかかわらず能力や個性を生かして支え合う全世代型社会保障を構築いたしてまいります。

 その際、公的医療保険制度において、医療をより受ける方の保険料を引き上げることは課題が大きいと考えておりますが、昨年末に取りまとめられた改革工程におきましては、健康の保持増進の推進や患者負担に係る様々な施策が盛り込まれており、患者に対する必要な保障が欠けることのないよう、見直しにより生じる影響を考慮しながら、政府として、具体化に向けた丁寧な検討を進めてまいります。

 補正予算の規模、経済対策の検証についてでありますが、我が国経済は、コストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にございます。今回の経済対策、補正予算は、この移行を確実なものとすることを目指して、必要な施策を積み上げたものであります。

 具体的には、現下の賃上げができますよう、価格転嫁や省力化、デジタル投資を促進するとともに、将来の賃金、所得の増加に向けて成長力を強化する施策を盛り込んでおります。さらに、能登半島の一刻も早い復旧と創造的復興を一層加速するための対応を始め、国民の安心、安全の確保に万全を期するための施策も盛り込んでおります。こうした施策の積み上げの結果、昨年を上回る規模となったものでございます。

 経済対策の経済効果につきましては、内外の経済動向や金融資本市場の動きなど、経済対策以外の影響もございます。したがって、専ら経済対策の効果だけを特定することは困難でございますが、各施策の執行状況や成果などの進捗管理を行っており、引き続きそのフォローアップに努めてまいります。

 米国の政府効率化省と行政改革についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 行政運営が経済社会の変化に応じてその時々の重要課題に的確に対応してまいりますためには、議員御指摘のとおり、行政の無駄や非効率を排除し、行政機能を高める不断の努力が必要と考えております。

 政府効率化省を始めとした米国の次期政権の動向について、引き続き注視をいたしてまいります。

 東京の子育て環境及び今後の地方創生についてでありますが、御指摘のように、地方から東京を含む首都圏に若年世代が移住してきている状況があることや、東京の子育て環境につきましては住居費や教育費が高い等の実情があることは、よく承知をいたしております。

 東京に続く第二極の育成との御提案でありますが、政府といたしましては、日本全国で今の子育て世帯に続く若者が増えることが重要であると考えており、若者や女性にも選ばれる地方づくりに取り組んでまいります。

 このため、昨年末に取りまとめられましたこども未来戦略や働き方改革など、子育て支援を強力に推進するとともに、持てるポテンシャルがまだまだ眠っている地方の産業の高付加価値化など、地方創生二・〇に取り組み、多様性のある地域分散型社会をつくってまいります。

 首都直下地震等の巨大災害の発生時に、首都中枢機能の継続性を確保することは極めて重要であります。

 昨年七月に閣議決定をした国土形成計画では、巨大災害リスクの軽減のため、人口や諸機能が分散的に配置される国土構造の実現を目指しますとともに、政府機能等の中枢管理機能のバックアップを強化することを図りたい、このように考えておるところでございます。

 これらに基づき、行政の代替機能につきましては、首都直下地震における緊急災害対策本部の代替機能の確保等に係る取組を推進いたしますとともに、経済中枢機能につきましては、企業における事業継続計画の策定等を促進してまいります。

 地方への財源と権限の移譲についてでありますが、地方の自主性、自立性を高め、地域の実情に応じた自治体行政を推進するため、地方からの提案募集方式に基づき、規制緩和や事務、権限の移譲、それに伴う財源措置などを着実に進めてまいりました。

 人口減少やデジタル化の進展など社会経済情勢の変化も踏まえながら、引き続き、地方の自主性、自立性を高めるための改革に取り組んでまいります。

 前原議員御指摘の道州制につきましては、国と地方の在り方を大きく変更するものであり、国会における御議論も踏まえつつ対応する必要がある、このように認識をいたしております。

 地方創生二・〇は、単なる地方の活性化策ではなく、日本全体の活力を取り戻す経済政策であり、国民の多様な幸せを実現するための社会政策であります。

 持てるポテンシャルがまだまだ眠っている地方の産業や文化、これらを支える人材の力を最大限に引き出し、日本全体を創生していくことを目指しております。

 この実現のために、産官学金労言の地域のステークホルダーが、いま一度、若者や女性にも選ばれる地域とするにはどうすべきかなどを真剣に考え、課題解決に向けた行動を起こすことが必要であります。

 各省庁の縦割り、ばらまきを排するため、こうした持続可能となる取組に、交付金や規制・制度改革等の統合された施策を重点的に講じてまいります。

 地方創生二・〇におきましては、多様性のある地域分散型社会をつくっていかねばならないと考えており、この点について御党の構想と同じ方向ではないかと考えております。

 我が国の防衛構想と、米国と連携した防衛力、抑止力の増強につきまして、我が国として、力による一方的な現状変更の試みの深刻化や、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、国民の命と暮らし、我が国の独立、平和を守り抜くため、防衛力の抜本的強化に努めております。

 また、日米間では、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組の推進に加え、指揮統制、防衛装備・技術協力、同志国との連携に加え、南西諸島におけるプレゼンス、領域横断作戦等、幅広い分野での協力を進め、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化するための取組を着実に実施していく考えであります。

 トランプ次期大統領に対しましても、こうした我が国自身の努力としての防衛力の強化、また、日米両国が共に協力していくことが、相乗的に、日本の国益にも合衆国の国益にもなり、インド太平洋地域の平和と安定にも資するものである、このようなことを説明してまいりたいと存じます。

 トランプ次期大統領とも率直に議論を行い、同盟を更なる高みに引き上げたいと考えております。

 USスチール買収案件についてもお尋ねを頂戴いたしましたが、本件につきましては、個別の企業の経営に関する事案であり、コメントは差し控えたいと存じます。

 その上で申し上げれば、日米相互の投資の拡大を含めた経済関係の一層の強化、インド太平洋地域の持続的、包摂的な経済成長の実現、経済安全保障分野における協力等は、互いにとって不可欠であると認識をいたしており、平素から日米の間で幅広く議論を行ってきておるところでございます。

 合衆国次期政権の気候変動対策と我が国の温室効果ガスの排出量削減の取組方針についてでありますが、気候変動問題は世界全体で取り組むべき喫緊の課題であり、引き続きCOP等における気候変動交渉に積極的に対応いたしてまいります。

 次期削減目標の策定とその実現策について、国の審議会で検討を深めております。脱炭素とエネルギーの安定供給、経済成長の同時実現を目指すとの考えの下、世界全体での一・五度C目標の実現に向け、科学的知見やこれまでの削減実績等を踏まえつつ、年内に案を取りまとめ、我が国のネットゼロへの道筋をお示ししたいと考えております。

 実効ある地球温暖化対策のためには、我が国に比べても排出量の多い国々の取組が必要であり、その取組強化に向け、対話を進めてまいります。

 次期政権発足後の合衆国政府による政策につきまして政府として予断を持ってコメントすることは差し控えますが、我が国としては、引き続き各国と連携し、気候変動問題に取り組んでまいります。

 憲法改正についてであります。

 総理大臣の立場から、憲法改正についての議論の進め方について直接申し上げることは差し控えます。

 自民党総裁としてあえて申し上げれば、我が党では、憲法改正について議論を加速すべく、本年七月以降、衆参の実務担当者等から成るワーキングチームで議論を重ね、衆参所属議員双方における共通認識の確認や論点整理を進めてきたところであります。本年九月には自衛隊の明記について論点整理が行われたところであり、総裁として、これは引き継いでまいる考えでございます。

 引き続き、これまでの議論の積み重ねの下、国会による早期の発議の実現に向け、自民党の憲法改正実現本部における党内での議論を加速してまいります。その上で、国会による発議の実現に向け、憲法審査会において、建設的な議論が行われ、国民的な議論を深めていただくことを期待いたしております。

 北陸新幹線敦賀―新大阪間のルートにつきましては、平成二十八年度に与党のプロジェクトチームにおいて、米原ルートを含めた三案のうち、関係自治体等からのヒアリングを経て、速達性、利便性等を総合的に勘案し、小浜・京都ルートとすることが決定されたものと承知をいたしております。まずは、詳細な駅位置、ルートを絞り込んだ上で、着工五条件の検討を深め、一日も早い全線開業を目指してまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、公明党を代表して、石破総理の所信表明演説に対し質問をいたします。(拍手)

 私が議員としての一歩を踏み出したとき、何も分からない不安そうな私に、ある女性先輩議員が教えてくれました。斉藤さん、大丈夫よ、目の前にいる方の声を聞くこと、真摯に、誠実に、真剣に、そして、人の心と心をつないでいくことも政治の役割よと。私は、その言葉を心に刻み、私なりに実践してきたつもりです。

 今、社会は大きく変化してきており、ややもすると、主義主張が異なる相手を排除しようとする傾向が強まっているように思います。分断と対立を必要以上に際立たせ、それをエネルギーにしていく手法がまかり通るような社会になってきている気がいたします。そのような時代だからこそ、公明党は、大衆とともにという原点に立ち返り、多様な意見を包摂する人間中心の中道政治を徹底して貫いてまいりたいと思います。

 中道とは、中間ということではありません。全体を幅広く包み込むという意味です。そして、国民の幸福と平和を目指し、一つ一つの課題に粘り強く取り組み、合意形成を図っていく、それが公明党の使命と強く決意しております。さきの衆院選挙で示された厳しい結果を厳粛に受け止め、現場第一主義の公明党らしく、国民の皆様に信頼をしていただける党となれるよう、全力を挙げてまいります。

 以下、具体の質問に入ります。

 初めに、政治改革についてお尋ねします。

 衆院選を通じて、多くの有権者が通常国会における法改正では不十分と考えていることが明らかになりました。こうした声に応えるためにも、今国会において、政治資金規正法の再改正を断じて行わなければなりません。焦点は、政策活動費の廃止と実効性ある第三者機関の早期設置です。

 公明党は、先月十五日、政治資金を厳しくチェックする第三者機関の機能や権限などについて、要綱案を取りまとめました。収支報告書の不記載や虚偽の疑いがある場合に、この第三者機関が、政党などに対し報告や資料提出を求めることや、立入調査を行う権限を持たせるなど、不正を許さない制度設計としています。さらには、企業・団体献金の在り方について、各党で引き続き議論しつつも、第三者機関で議論し提言していただく、そして、第三者機関が出した結論については各党とも従うということも一案です。

 調査研究広報滞在費の使途公開なども含め、政治と金の問題について今国会で結論を出し成案を得て、国民の信頼回復に努めるべきだと思いますが、石破総理の御決意を伺います。

 次に、日本経済の再生と家計の所得向上について質問します。

 先日、二〇三〇年度までの営業運転を目指す水素電車を視察しました。水素を燃料に、燃料電池と蓄電池の二つの電源を活用する画期的な次世代車両です。これは立派な電車ですが、電気を導く架線は当然要りませんので、電化されていない全国のローカル線も走れます。その姿を想像するだけで胸が躍りますし、脱炭素分野で世界をリードする最先端技術に感動しました。他の多くの分野を含めて、こうした日本が優位性を持つ技術を国際標準化し、世界を舞台に社会実装を進めることが、経済成長の大きな要因になるものと確信します。

 日本が得意とする技術を国際標準化するには、それを決定する国際機関で日本の発言力を高める必要があります。

 一例が自動車です。自動車の安全性能、環境性能の世界標準は、国連のWP29、自動車基準調和世界フォーラムで審議、策定されます。しかし、この会議体の幹部、議長、副議長は、従来、全てヨーロッパの国からの選出でした。このことが、例えば、日本が得意とするハイブリッドなどの内燃機関技術が公平に扱われてきたのか、疑念を持たざるを得ないような事態を生んでいたのではないかと私は考えました。

 このような状況の中、二年前ですが、WP29の副議長に国土交通省の技術官僚が、欧州以外からは初めて就くことになりました。世界標準の作成に日本が発言力を持って関わることが、我が国の技術が世界で公平に扱われることにつながると考えます。

 GXやDXの進展に伴い、産業構造が劇的に変化している今こそ、日本の強みとなる技術の国際標準化に注力することで、企業の稼ぐ力と国際競争力の向上につなげるべきです。そのためにも、例えば、官民で構成される仮称産業構造改革戦略会議を創設し、国家プロジェクトとして取り組んではどうでしょうか。官民の連携や人材育成などを戦略的に後押しし、我が国の企業価値、存在感を高める役割を担わせるべきだと考えます。

 日本経済の成長戦略について、総理の見解を求めます。

 政府は、AI・半導体産業基盤強化フレームの策定を打ち出し、二〇三〇年までの七年間に必要な技術開発や設備投資等の重点的な支援を検討しています。半導体分野に対する大規模な公的支援は、過去三年間で四兆円を超え、実際に地域経済への波及効果が見られます。九州では、中小企業を含めた設備投資の活性化や、税収増が見込める自治体での住民サービス向上などにつながり、賃金が上昇した、地元への就職希望が増加したといった声が上がっています。

 半導体投資への支援を通じて、全国にこうした好事例を横展開することで、持続的な経済成長と地域活性化を後押しすべきと考えます。そのために、半導体投資への直接支援だけでなく、必要な人材の育成、確保のための支援や、工業用水、排水、安定した安い電力、交通、物流網などのインフラ整備も重要です。

 AI・半導体産業基盤強化フレームの検討状況と、地域経済への波及効果について、総理の御見解を伺います。

 公明党は、最低賃金を毎年継続的に引き上げ、五年以内に全国加重平均千五百円の達成を目指すことにより、賃上げの勢いを中間所得層へ波及させ、物価上昇を上回る賃上げを実現するとの公約を掲げています。

 財務省の調査では、大企業と比べて中小・小規模事業者の労働分配率は極めて高く、リーマン・ショックのとき以上に差が広がっています。中小企業からは、人手不足で防衛的な賃上げに追い込まれていて、これ以上の賃上げは難しいとの悲痛な声も上がっています。

 雇用の七割を支える中小企業の賃上げの原資を確保するため、生産性の向上や稼ぐ力の向上が不可欠なのです。今回の総合経済対策では、持続的、構造的賃上げに向けて取引の適正化を図るほか、省力化、デジタル化投資やリスキリングなどの人への投資を通じた生産性向上など、様々な支援策を打ち出しています。政府には、多様な中小企業のニーズに寄り添い、十分に活用できるよう、努力をお願いしたい。また、元請と下請が対等の関係で適切な価格交渉が進むようにするための下請法改正も重要です。

 中小企業の持続的な賃上げと、その原資確保に向けた取組について、総理の答弁を求めます。

 総合経済対策には、いわゆる百三万円の壁については、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げることが明記されました。しっかりと与野党で議論を深め、結論に結びつけてまいりたいと思います。

 一方で、百三万円の壁を引き上げたとしても、社会保険料を納めるため手取りが減少する百六万円、百三十万円の壁が存在し、現在も多くのパート、アルバイトで働く方が働き控えをしています。家計所得向上のためにも、現在、政府が取り組んでいる年収の壁・支援強化パッケージを着実に進めるとともに、これらの方々が年収の壁を意識せずに働けるような制度設計を行うべきです。

 また、総合経済対策には、低所得世帯に対する給付金など、長引く物価高騰への支援も盛り込まれています。しかし、物価高の影響を受けているのは中間所得層も同じであり、実質賃金が継続的にプラスへと転じていくまでは、こうした方々を含めた幅広い支援策が必要だと考えます。

 どのように年収の壁を克服するのか、また、物価高に苦しむ中間所得層への支援について、総理の答弁を求めます。

 ライフスタイルの多様化が進む中で、誰もが希望に応じて活躍できる社会を築くことが重要です。とりわけ、人生百年時代を見据え、高齢者が活躍しやすい環境整備が求められています。一方で、現場を歩くと、働きたい思いはあるものの、ハローワーク等での対応に不満を感じている声も耳にします。

 先日、我が党の議員が視察をしたハローワーク墨田では、個々人の事情に寄り添った伴走型支援やマッチング支援などを行っています。一例を挙げれば、高齢の母親の介護を行う利用者に対し、担当者が、面談を重ねながら本人の希望を踏まえた仕事を提案するだけでなく、事業所に対しても事前に状況を説明した上で紹介を行うなど、手厚い支援を行った結果、採用に結びついた事例もありました。こうした丁寧な対応に、利用者も大変喜ばれています。

 このような取組を全国に広げ、ハローワークの機能強化を図るなど、高齢者の方々が希望に応じて経験と能力を生かせるような支援を進めるべきだと考えます。

 また、働きたい方が働きやすくなるよう、在職老齢年金制度の支給停止基準を見直すことも重要です。

 高齢者の就労支援や在職老齢年金について、総理の見解を伺います。

 二〇四〇年には、団塊ジュニア世代が六十五歳に到達するとともに、現役世代が減少し、高齢者が全人口の三五%を占めることが予想されています。団塊ジュニア世代は、就職氷河期世代と言われるように、非正規労働者が多く、国民年金のみの割合が高く、老後の準備は十分とは言えない状況です。

 こうした現実を踏まえ、基礎年金の給付水準を底上げすることが重要です。基礎年金は年金加入者全員に共通している年金であり、社会保障の柱です。基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整を早期終了し、所得代替率の低下を防ぐとともに、それに伴う将来の安定的な財源確保についても検討を進めるべきです。

 全ての方が安心できる年金制度の確立について、総理の見解を伺います。

 働き盛りの家計に影響があるものに、教育費の負担があります。

 公明党は、教育費の負担軽減を目指し、修学支援新制度を、令和六年度は多子世帯や理工農系の中間層へ、令和七年度は所得制限なく多子世帯へと、経済的に負担が大きい家庭を対象に支援の拡充を進めてきました。物価高騰の影響を受ける大学生等が学生の本分である学業に専念するためにも、給付型奨学金と授業料等の減免を行う修学支援新制度の中間所得層への対象拡大に向けて、思い切った拡充を求めます。

 また、大学進学以外の道を選び、自分の強みや得意を伸ばして、文化芸術分野や、マイスター等の専門性が求められる職種、業界等に進む若者への支援策の創設も必要だと考えます。

 高等学校等の授業料については、所得制限を撤廃し、国公私立を問わず実質無償化するとともに、特に経済状況が厳しい家庭への授業料以外の教育費、例えばパソコンや制服、部活動などにも使える高校生等奨学給付金の対象拡大や支援の拡充も急ぐべきです。

 オンラインによる簡便な申請やプッシュ型の認知を広げ、一人でも多くの高校生が支援を受けられるようにしなければなりません。

 人づくりは国づくり。教育負担の軽減について、総理の考えを伺います。

 次に、能登半島の復興加速を始めとした防災、減災についてお尋ねします。

 能登半島地震発災から十一か月が経過しましたが、能登半島では本格的な雪の季節が目前となっています。のと里山海道や国道二百四十九号など幹線道路の復旧整備が進む一方で、壊滅的被害を受けた市道や町道などの自治体管理の道路の復旧はまだまだ進んでおらず、公費解体の遅れなどが心配されます。

 特に、雪の影響で復旧復興を止めないためにも、除雪体制の構築や、適切な除雪情報等を地域住民に提供できるよう、除雪強化の取組を求めます。地元だけでは対応し切れない面もあり、人手確保を早急に進めるなど、道路復旧の支援に万全を期すべきです。

 また、切迫する南海トラフ地震を始め、激甚化、頻発化する自然災害に対する備えとして、防災・減災、国土強靱化の更なる推進が急務です。

 残り一年となる五か年加速化対策後も、災害への不安を抱える全国各地からの強い要望に応えるため、国土強靱化の取組を着実に進めなければなりません。改正法に基づく実施中期計画を今年度内に策定するとともに、次の五か年で二十兆円規模となる予算を確保することを強く求めます。

 能登半島地震の復興加速と防災・減災、国土強靱化の取組について、国土交通大臣の見解を伺います。

 大規模災害に備え、避難所環境の大幅改善が必要です。公明党はこれまで、TKB、トイレ、キッチン、ベッドの迅速配備やスフィア基準の導入などを政府に提言してきました。総理が掲げる本気の事前防災の実現のためにも、一刻も早い避難所環境の整備を進めていただきたい。

 公明党は、二十五年以上前から学校へのエアコン設置を訴え、国と地方議員が連携して粘り強く設置を進めてきました。普通教室は九九・一%まで整備されてきましたが、体育館のエアコン設置はまだ二割弱です。子供たちの命と健康を守るためにも、また避難所にもなる全ての学校の体育館のエアコン設置は急がねばなりません。五年を目途に一〇〇%の設置を政府に提言し、総合経済対策には、ペースの倍増を目指して計画的に進めるとの方針が示されました。

 しかしながら、体育館のエアコンの設置は地方公共団体にとって負担が大きいものです。五年間、毎回の議会で質問してやっと体育館にエアコンがつきましたという町や、市民からの署名を集め議会で質問していますが、まだ見通せませんといった声、また、より効果のあるエアコン導入を研究し予算を要求中ですなど、全国各地で我が党の地方議員が積極的に取り組んでいます。地方から要望が多いランニングコストの支援、災害時の電源確保、リース方式などは必須です。また、設置に使える補助金は文科省以外にもありますが、地方公共団体がそれを知らないケースもあり、情報提供不足も否めません。

 設置のペースを倍増させるためには、省庁の縦割りではなく、防災庁設置準備室が連携して、横断的に、着実に進めていくべきだと思います。各地方公共団体が計画的に空調設備を導入できるよう、令和八年度以降も国の支援を延長し、体育館の空調導入計画を示すとともに、地方公共団体へのアウトリーチや一本化された相談体制の整備、地方公共団体に配慮した柔軟な運用等の取組が必要です。

 避難所の環境改善、体育館のエアコン設置の取組について、総理の答弁を求めます。

 次に、外交について質問します。

 ロシアが核兵器使用を威嚇に使い、小型核兵器使用基準を引き下げるなど、核兵器をめぐる状況がかつてないほど緊迫している中、来週十日に、日本被団協、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞されます。被爆者の皆様が、私たちを最後の被爆者としなければならないと訴え続け、核兵器が二度と使用されてはならないと実証したこと、そして、それが国際規範となってきたことが評価されたことは極めて意義深く、これまで国際世論の形成をリードしてきた被爆者の皆様の活動に心から敬意を表します。

 公明党は、先月、被爆八十年を目前にした緊急要請を石破総理、岩屋外務大臣に提出し、その中で、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加することを強く要請いたしました。

 核禁条約は、核兵器を違法とした初の国際規範であり、画期的なものです。現実として米国の核抑止力に依存する日本が直ちに条約に参加、批准できなくても、唯一の戦争被爆国である我が国が締約国会議にオブザーバーとして参加し、核保有国と非保有国と対話しながら、実質的な橋渡しの役割を果たすというのは、国際社会からも理解されるのではないでしょうか。

 現実、核の傘の下にいることと核廃絶を目指すということは、矛盾しないと考えます。現に、ドイツはNATO加盟国ですが、締約国会議にオブザーバー参加しています。申入れの際、総理は、ドイツの例も検証したいと御返答くださいました。これまでの政府の姿勢が一歩進んだと思いました。

 来年は被爆八十年の節目を迎えます。私自身、広島選出の国会議員、そして党の代表として、核兵器のない世界の実現に向け、粘り強く取り組んでまいります。

 核廃絶に向けた取組について、総理の御決意を伺います。

 APEC首脳会議、G20サミットに出席された総理は、各国首脳と対面で会談され、地球規模課題の解決、地域情勢や貿易・投資など、様々な意見を交わされました。

 南米のペルーとは、最先端分野で重要な鉱物資源の確保や食料安保に関する対話の奨励、観光分野での交流、地震、津波、火山噴火といった自然災害による被害の軽減に向けた協力促進などで連携を深める成果を残されました。

 中国の習近平国家主席との首脳会談では、建設的で安定的な両国関係を構築していく方向性を確認した上で、意見の相違がある中でも会話を重ねていくことで一致しました。

 バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領とも、個別、また三か国での首脳会談が行われました。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル、ICBM発射を強行するとともに、ロシアとの軍事協力を進めている中、三か国は日米韓調整事務局を設置し、早速初会合が開かれたことを高く評価いたします。

 我が国を取り巻く安全保障環境と国際社会が複合的な危機に直面する中、積極的な首脳外交を行い、日本が平和外交をリードしていただきたい。公明党も、議員、政党外交を更に推し進めてまいります。

 今回の外遊の成果、今後の日米関係の深化、日中、日韓関係の改善について、総理の見解を伺います。

 地域活性化の取組について伺います。

 活力ある地方をつくり、豊かな国土を形成するためにも、国土の七割を占める森林を再生させなければならないと考えます。そのためには、林業、木材産業の生産性を向上させ、木材を利用しやすい環境を整備し、経済活動の循環の中に組み込んでいかなければなりません。

 欧州では、森林内での効率的な伐採等を行うCTLというシステムが普及し、林業の労働生産性が高まっています。また、ロボットの利用も進み、先端技術産業として若者の関心も高まっていると聞きます。我が国としても、高性能な林業の機械であるハーベスターなどによる伐採や、木材の板を垂直に重ねて接着した構造強度のあるCLTというパネルなど、日本の高い技術力を発揮し、世界最先端の産業モデルを構築していくべきであると思います。

 また、建築基準法の改正により、高層の木造建築が可能となり、今、全国で建築が始まっております。CO2吸収源として脱炭素に大きく資する観点からも、木材に関する技術革新を始め、国内の森林資源の活用促進や木材流通の効率化など、木材を利用しやすい環境整備をより一層促進すべきと考えます。

 こうした取組とともに、森で暮らす動物が山奥で生息できる森林環境をつくる、また、緩衝帯を確保するなど鳥獣被害対策を万全にすることも、今後の林野行政の方向性の一つとすべきではないかと考えます。

 森林整備の活用等を通じた地方創生、地域活性化への取組について、総理に伺います。

 最後に一言申し上げます。

 先月十七日、公明党は結党六十年を迎えました。これを機に、大衆とともにの立党の精神に立ち返り、清新で温かな新しい公明党を構築すべく、生まれ変わった決意で出発したところでございます。

 公明党の最大の強みである全国に広がる地方と国のネットワークの力を最大限に生かして、国民の皆様お一人お一人の声に真摯に耳を傾けて、中道の精神で内外の諸課題に体当たりでぶつかり、一つ一つ解決していくことを固くお誓いし、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 斉藤鉄夫公明党代表の御質問にお答えをいたします。

 政治改革の決意についてお尋ねを頂戴いたしました。

 政治資金や調査研究広報滞在費に関するルールの在り方につきましては、既に、政治改革に関する各党協議会や衆参の調査研究広報滞在費に関する協議会において御議論をいただいております。

 このため、政府としてお答えをすることは差し控えますが、総裁としてあえて申し上げれば、我が党としても、政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費の使途公開及び残金返納、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築など、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を率先して進めてまいる決意でございます。

 御指摘の政治資金に関する第三者機関につきましては、その在り方について丁寧に議論を進める所存であり、企業・団体献金の在り方につきましても、各党各会派との真摯な議論を開始しております。

 国民の政治に対する信頼を取り戻すため、これらの様々な課題について、党派を超えて議論し、年内に必要な法整備も含めて結論をお示しする必要があると考えており、誠心誠意尽力をいたしてまいります。

 国際標準化による日本経済の成長戦略についてお尋ねを頂戴いたしました。

 御指摘のとおり、グローバルに産業構造が変化する中、日本の強みとなる技術の国際標準化は国際競争に勝ち抜くために不可欠であり、日本経済の成長戦略として重要であります。水素電車のお話は、極めて感銘深く拝聴いたしました。同じく鉄道を趣味とする者として大変に感銘深かったところでございます。

 このため、官民の取組を抜本強化するための戦略を来春目途に策定をいたします。その中で、国際標準化の取組を強力に進める司令塔機能の強化、国際標準提案を検討する国際機関での日本のプレゼンス維持拡大、官民連携して、日本提案の立案や国際的な理解獲得を図る取組の強化、これらの鍵を握る人材育成、企業経営の強化等を戦略的に進めてまいります。

 AI・半導体産業基盤強化フレームの検討状況と地域経済への波及効果についてであります。

 AI、半導体への投資は、ほかのあらゆる産業の発展やGX等の社会課題解決に不可欠であり、地域の中小企業も含めて、幅広い波及効果を有します。

 このため、各地でのAI、半導体への投資を促進するとともに、人材育成やインフラの整備等も同時に進めることで、地域への波及効果を着実なものとしていくことが重要であります。

 先日閣議決定をいたしました総合経済対策に、民間事業者の予見可能性を高める観点から、七年で十兆円以上の公的支援を行うAI・半導体産業基盤強化フレームを盛り込んでおります。これにより、今後十年間で五十兆円を超える官民投資を誘発し、また、半導体生産等に伴う約百六十兆円の経済波及効果を実現することを目指しております。

 具体的にどのような投資を支援対象とするかは、事業者からの計画申請などを踏まえ、決定してまいる予定でございます。

 こうした支援を実施するために必要な法案を可能な限り早期に国会に提出するべく、検討を加速いたします。

 中小企業の持続的な賃上げとその原資確保に向けた取組についてであります。

 中小企業の皆様方が確かにもうかり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけますよう、生産性の向上や円滑かつ迅速な価格転嫁をより一層推し進めていくことが極めて重要であります。

 このため、政府として、多様な中小企業のニーズに寄り添い、省力化、デジタル化投資の促進や、リスキリング支援、経営基盤の強化、成長のための支援などを充実させてまいります。

 更なる価格転嫁、取引適正化の促進に向けて、毎年三月と九月の価格交渉促進月間における発注企業の価格交渉、価格転嫁の状況の公表や、事業所管大臣名での指導助言、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底などを粘り強く継続いたしてまいります。新たな商慣習として、サプライチェーン全体で価格転嫁、取引適正化を定着させるよう、下請法改正の検討も進めてまいります。

 いわゆる年収の壁への対応と中間所得層への物価高対策についてであります。

 社会保険の適用に関するいわゆる年収の壁につきましては、当面の対応として、年収の壁・支援強化パッケージの活用に取り組んでまいります。

 加えて、制度的な対応につきましては、現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っているところであり、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の更なる適用拡大など、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 また、今般の経済対策におきましては、物価高により厳しい状況にある方々を支援するため、地方公共団体が、地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、価格転嫁が困難な中小企業への支援、学校給食費への支援のほか、新たに厳冬期の灯油支援も行うようにいたします。

 あわせて、御家庭の電力使用量の最も大きい一月から三月の冬期の電気・ガス代を支援し、二人以上世帯の平均で電気、ガス合計で月千三百円程度の負担軽減を行うなど、中間所得層を含め、様々な物価高対策を講じることといたしております。

 高齢者の就労支援と在職老齢年金制度についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 高齢者の就労支援につきましては、ハローワークの専門窓口において、求職者の就労経験等を踏まえて再就職支援を行うなど、丁寧な支援に取り組んでおります。御指摘をいただきましたハローワーク墨田におきましては、課題解決型、伴走型の支援モデル事業を行っており、障害をお持ちの方に繰り返し面接を行って就職につなげた例もあるというふうに伺いました。そうした中で得られた好事例を全国に広く展開をしながら、引き続き、高齢者の方々の就労支援に取り組んでまいります。

 公的年金制度につきましては、現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っておるところであり、働き方に中立的な制度を構築する観点から、在職老齢年金制度の見直しにつきましても、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 次期年金制度改正についてでありますが、基礎年金は、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する所得再分配機能を有するものであり、その機能を将来にわたって維持していくことが重要であります。

 現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っているところであり、高齢期の所得保障や年金制度の所得再分配機能強化といった観点から、安定的な財源を確保しつつ、基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整を早期に終了するなどの論点について、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 教育費負担の軽減についてでありますが、高等教育費については、本年度から、授業料等の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充し、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしており、まずはこうした拡充を着実に実施に移し、その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見定めつつ取り組んでまいります。

 御指摘の高校段階の支援につきましては、所得制限を設けることで捻出した財源により、低所得世帯への支援を拡充してきたところでございます。教育の機会均等という要請の中で、どこまで家計の負担軽減を図るべきかということにつきましては、引き続き考えるべき課題と考えております。

 これらを考える際には、子供、子育て加速化プランにおいて、児童手当の抜本的拡充や先ほど申し上げた高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要もあると考えております。

 このほか、文化芸術の担い手につきましても、アーティストなどの育成プログラムの構築、無形文化財や文化財保存に必要な技術の伝承への支援等を通じて、若者が自分の強みを生かすことができるよう、御指摘を踏まえて取り組んでまいります。

 避難所の環境改善についてお尋ねをいただきました。

 我が国は世界有数の災害発生国ですが、いかなる地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということがあっては決してなりません。

 発災後、不安にさいなまれる被災者の方々に対し、避難所で、温かい食事、清潔なトイレ、安眠できるベッド、プライバシーを守るためのパーティション等を速やかに提供することが大切であります。そのためには、平時から、全ての避難所でスフィア基準を満たすことができるよう、十分な備えをしておく必要があります。絶望のふちにあり、心が折れそうになっておられる方々に最も温かい支援をするということは当然のことだと私は認識をいたしております。

 このため、今般の経済対策におきましては、避難所の生活環境の改善に資する自治体の先進的な取組を新地方創生交付金の活用により支援する枠組みを創設することといたしております。

 また、避難所となる公立小中学校の体育館への空調設備につきましては、御党の提言も踏まえ、新たに臨時特例交付金を創設し、整備のペースを二倍に加速することといたしております。

 防災庁の設置に向けた準備も着実に進めつつ、関係省庁等が緊密に連携し、縦割りを排除し、避難所の環境改善を始めとする防災対策を強力に進めてまいります。

 核廃絶に向けた取組についてのお尋ねをいただきました。

 我が国は、戦後一貫して平和国家としての道を歩んでまいりました。核兵器のない世界に向けた国際社会の取組を主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命であります。

 現地時間昨二日、我が国が国連総会に提出しておりました核兵器廃絶決議案が、核兵器国の米英を含む百五十二か国の支持を得て採択をされました。

 一方で、我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展するなど、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面いたしております。

 御指摘の核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約でありますが、この条約には核兵器国は一国も参加しておらず、いまだその出口に至る道筋は立っていないのが現状であります。これまでの締約国会合でのオブザーバー参加の例について、検証が必要であると考えております。

 こうした中で、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を参加させるよう努力していかねばなりません。NPT体制は、核兵器国、非核兵器国が広く参加する唯一の、核兵器のない世界に向けた普遍的な取組であります。

 政府といたしましては、抑止力を維持強化し、安全保障上の脅威に適切に対処していくとの大前提に立ちつつ、NPT体制を維持強化し、核軍縮に向けた国際社会の機運を改めて高め、核兵器のない世界に向けた現実的かつ実践的な取組を維持強化してまいります。

 一昨年、広島市のリニューアルされました原爆資料館を訪問させていただきました。改めて、核兵器の悲惨さに胸が詰まる思いがいたしたところであります。公明党の皆様方には、その際も大変お世話さまに相なりました。核兵器の悲惨さというものを常にリマインドしていかねばならない思いに一切変わりはございません。

 今回の外国訪問の成果、今後の日米、日中、日韓関係についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 今回の外国訪問では、ペルーでAPEC首脳会談、ブラジルでG20サミット、その間にペルー公式訪問を行ったところであります。

 APEC首脳会合では、アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に努めていく決意を表明いたしました。特に、自由で開かれた貿易・投資環境の重要性とその実現には、WTOを中核とする多角的貿易体制の維持強化が不可欠であると強調いたしました。

 G20では、議長国ブラジルが最重視する飢餓と貧困に対するグローバルアライアンスに積極的に参加する旨を表明いたしました。また、気候変動、エネルギー移行、環境、防災などの課題に共に取り組む方針を強調したほか、全ての国が責任を共有するグローバルガバナンスの構築を強く訴え、首脳宣言にも共通の責任の共有が盛り込まれたところであります。

 さらに、これら二つの会議を通じ、法の支配に基づく国際秩序の重要性を強調いたしました。特に、ロシアによるウクライナ侵略と中東情勢について、日本の立場を明確に申し述べたところであります。

 ペルーの公式訪問では、ボルアルテ大統領と共同声明及び今後十年間を見据えたロードマップを発出し、日本・ペルー関係の進展に向けた指針を示しました。ブラジルのルーラ大統領とも、来年の外交関係樹立百三十周年に向けて、協力の強化で一致をいたしました。さらに、ペルー、ブラジルの日系人の方々とお会いし、連携強化も表明をいたしました。

 アメリカ合衆国バイデン大統領とは、今後とも揺るぎない日米同盟を更に発展させていくことで一致をいたしました。日米安全保障体制は、我が国の外交、安全保障政策の基軸であります。トランプ次期大統領とも率直に意見を交わし、両国の国益を相乗的に高め合うことで、同盟を更なる高みに引き上げていく考えであります。

 中国の習近平国家主席とは、中国の安定的発展が地域全体の利益となるよう、戦略的互恵関係の包括的推進、建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性に基づき、今後も、首脳間を含むあらゆるレベルで中国との意思疎通を図ってまいります。

 韓国の尹大統領とは、来年、日韓国交正常化六十周年を迎える中、日韓関係を未来に向けて更に飛躍させていくことで一致をいたしました。大幅に改善した日韓関係を幅広い分野で包括的に更に発展させてまいります。

 森林整備についてお尋ねをいただきました。

 我が国の森林は、今まさに利用期にあり、伐採の伐という字を書きますが、「伐って、使って、植えて、育てる」という森林資源の循環利用を図ることが重要であります。

 このため、斉藤議員からも御指摘があるように、若者を含めた林業の担い手の育成、確保、林業の生産性向上に向けた森林の集積、集約化、高性能林業機械の導入や路網整備、地域材の付加価値を高める加工流通施設の整備、強度に優れたCLTの技術開発、普及による中高層建築物への国産木材利用の促進など、川上から川下まで総合的な取組を進めてまいります。

 我が国における鳥獣被害は大変深刻であると認識をいたしております。秋田におけますスーパーへの熊の侵入等々、国民の問題意識も非常に高まっており、極めて深刻であることを認識の下、侵入防止柵と併せた緩衝帯の確保等の鳥獣害対策を進めますほか、生態系、生物多様性の保全にも配慮した多様な森林づくりにも取り組んでまいります。

 森林資源の循環利用は、環境と地域経済を両立させ、新たな雇用を生み出すものとも言えます。地域の貴重な資源である森林を活用した地方創生、地域活性化の取組を後押ししてまいります。

 残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣中野洋昌君登壇〕

国務大臣(中野洋昌君) 斉藤鉄夫議員から、能登半島地震の復興加速と防災・減災、国土強靱化についてお尋ねがありました。

 まず、能登半島地震の復興については、インフラの復旧や町の復興は、被災者の方々の暮らしとなりわいの再建に不可欠であり、被災自治体の声をよくお聞きしながら全力で取り組んでまいります。

 特に道路については、国道二百四十九号の輪島市門前から珠洲市の間を年内に通行可能とし、全ての集落等へのアクセスも年内に再度確保いたします。また、復旧復興を止めないよう、除雪体制を強化し、雪に関する情報の一元的な収集、共有等を図ってまいります。

 次に、防災・減災、国土強靱化につきましては、近年、激甚化、頻発化する自然災害やインフラ老朽化から国民の生命と財産を守るためには、国土強靱化の取組を、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的、安定的に進めていくことが重要です。

 先週閣議決定がなされた令和六年度補正予算案におきまして、五か年加速化対策関連予算に緊急防災枠を合わせ、政府全体として約一・七兆円を計上したところです。五か年加速化対策後もこれまで以上に必要な事業が着実に進められるよう、関係省庁と連携し、国土強靱化実施中期計画の早急な策定に向けて、検討を最大限加速してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 山川仁君。

    〔山川仁君登壇〕

山川仁君 ハイサイ。れいわ新選組、沖縄代表の山川仁です。(拍手)

 今回は、まず初めに、総理肝煎りの防災庁についてお聞きします。

 総理は、本年九月七日、御自身のブログで、現在、内閣府防災担当の人員は百人程度、予算は七十四億円、職員がどんなに懸命に働いても、災害発生後の事態対処はパンク寸前であり、今の防災の体制はうまくいっていると認識している人があるとすれば、それは早急に改める必要があると主張をされています。

 災害大国日本においては、災害の司令塔的役割をしっかりと果たす防災庁は絶対的に必要であるとれいわ新選組も考えています。

 そこで、総理、現行の内閣府防災担当では、頻発する自然災害に対応できるだけの十分な人員がおらず、ノウハウの蓄積も難しいことを鑑みれば、国民の生命財産を守るためにも、防災庁を立ち上げ、対応力を上げる必要があるという認識でよろしいでしょうか。お答えください。

 御承知のとおり、先月の十一月八日から十日にかけて沖縄本島北部で降り続いた豪雨災害では、当初、大宜味村で約千七百世帯の断水が続き、国頭村では、約三週間以上が経過した昨十二月二日時点でもなお、十八人が宿泊施設での避難を続けている状態で、ほかにも東村、名護市と、被害は広範囲に拡大をしているところです。

 十一月十一日、沖縄県は、災害救助法適用について内閣府に打診をしました。同法が適用されれば、被災住宅の応急修理費や物資支援の費用は国から支給をされます。しかし、内閣府は、既に豪雨は収まったため要件を満たさない、災害救助法は適用しないとシャットダウン。このままでは、住宅復旧費用は住民の負担となってしまいます。

 災害救助法では、住宅被害件数などにかかわらず、発生した災害の程度が、多数の者が生命身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合には適用が認められるとあります。通称四号基準です。ただし、法が適用されるのは、豪雨で大雨が降っている間のみ、災害の渦中であることが条件であり、沖縄県が申請を打診してきたのは大雨が去った後、災害の渦中ではないから災害救助法の適用はできないと、かたくなに拒んでいますね。

 今回、十一月九日、豪雨災害のさなか、内閣府防災担当は災害救助法の申請について沖縄県に電話連絡をしたと言いますが、その電話連絡を行った正確な回数と時刻はどうだったのでしょうか。お答えください。内閣府によれば、九日未明とその三、四時間後の朝、このたった二回の電話のみ。電話がつながらず申請が遅れたら、おまえらが悪い、費用はおまえら持ちだといって突き放してしまう。被災者を保護し、社会の秩序を守り、維持するために作られた災害救助法の目的に反していると思いませんか。

 総理、内閣府防災担当では、電話がつながらない事態に対して、留守番電話メッセージを残すことや、ほかにもメールやファクシミリで文字メッセージを残すといった複数の連絡経路でアクセスをしたのでしょうか。お答えください。これも、内閣府によれば、連絡記録は残していないということです。そのような最低限のフォローすら、内閣府防災担当にはやる余裕がないのではないでしょうか。

 そして、現在、内閣府防災担当が抱える復旧復興に関する案件は何件あるのでしょうか。お答えください。具体的には、今年十一月二十五日現在で、災害救助法及び被災者生活再建支援法について、それぞれ、現時点、適用されている災害名と災害ごとの対象自治体数をお示しください。

 聞くところによると、災害救助法では十八災害、対象自治体は延べ百五十二、被災者生活支援法で十九災害、対象自治体は延べ百八十一自治体。多くの案件を同時進行で抱え、今、内閣府防災担当では様々なフォローをすることが不可能です。総理もブログで、今の防災の体制はうまくいっていると認識している人があるとすれば、それも早急に改める必要がありますと指摘をしています。

 沖縄担当大臣は、災害渦中の沖縄県に対する災害救助法の打診について、この二回の電話連絡で十分であったと考えますか。また、メールやファクシミリでの丁寧な連絡も必要であったと思いませんか。お答えください。

 十一月十四日、れいわ新選組として、私が代表し総理宛てに要請書を提出し、防災担当大臣が一刻も早く沖縄県北部の被災地を訪問して支援ニーズを聞き取るよう求めました。あれから二十日が経過しました。大臣は、いつ現地に行くのでしょうか。まさか、政務官が視察をしたから大丈夫だと、そんな国民に寄り添わない姿勢は私は求めていません。もし、それでも被災現場に行かないという判断ならば、その理由をお答えください。

 災害渦中の現場職員は、安否確認など精いっぱいです。申請が一日、二日遅れたからといって拒否することは余りにも非人道的で、内閣府防災担当から沖縄県への連絡は全く不十分であったものだと言わざるを得ません。内閣府は、事前の業務連絡もしている、自治体の担当者を集めた勉強会もしていると言いますが、人手不足の自治体では、災害が起こればその対応で手がいっぱいとなり、自治体職員らにその業務連絡や勉強会内容をすぐ思い出せというのも無理な要求だと思いませんか。

 沖縄県の救助法申請が豪雨が過ぎた後だから受け付けないといいますが、その一方で、過去には、災害のピークが過ぎた後、同法の四号基準により適用した例もあるじゃないですか。令和元年九月九日の台風第十五号と平成二十年富山県入善町高波被害では、停電が続く、避難継続中などを理由に、災害が過ぎた後の適用を認めましたよね。この両事例について、四号基準の適用理由をこの場で改めて説明をしていただきたいと思います。こういった事例を考慮すれば、当然、沖縄県にも災害救助法の適用は認められるべきではないでしょうか。

 何より、十一月十一日の沖縄県からの災害救助法適用申請を拒んだ内閣府の対応は、致し方ないものではなく、内閣府防災担当の業務が既にキャパオーバーで、災害中の自治体へ丁寧な対応ができていないことが分かりやすく露呈したものではないでしょうか。今回の沖縄県を切り捨てたままで、たとえ防災庁を立ち上げたとしても、現在の内閣府防災担当の運用の延長にしかならず、被災地と被災をされている方々を守るという政治の当たり前を総理が本気で考えているかどうかが問われています。

 総理、沖縄県北部豪雨の被害に見舞われた被災地には多くの県民が、いつも住んでいた場所に一日も早く戻り、ふだんどおりの生活へ希望を強く求めています。

 先ほどの事例で、災害が過ぎ去った後も適用事例もあると伺っていること。そして、何より、総理大臣所信表明演説では、財政的にも厳しい地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということは、国家としてあるべき姿ではありませんと総理は強く言っておられました。

 今、沖縄県民は災害からの苦難の中に置き続けられているんです。是非、国民を災害から守る強い国のリーダーとして、防災庁をしっかりと立ち上げる、その前提として、今からでも沖縄県に災害救助法の適用を認めていただきたいと思いますが、お答えください。

 続いて、沖縄振興と基地関連についてお聞きしたいと思います。

 政府は、沖縄を日本経済活性化のフロントランナーとなることを目指すと位置づけています。その意味をお答えください。

 沖縄県が本土に復帰をして五十二年。これまで、沖縄の自立発展のため、沖縄振興特別措置法等に基づいて沖縄振興がなされてきました。そして、沖縄振興特別措置法第五条では、「国は、沖縄県に対し、沖縄振興計画の円滑な実施に関し必要な援助を行うように努めなければならない。」と規定をされています。しかし、結果、一人当たりの県民所得は全国ワースト、子供の貧困は全国平均の二倍など、様々な貧困格差が生じています。

 政府は、沖縄は日本経済活性化のフロントランナーとなることを目指すと位置づけているにもかかわらず、その沖縄県民からの要望である振興予算額は、平成二十六年度をピークに減少を続け、ここ三年は三千億円を下回っており、毎年、減額、減額、減額と、そのような大きな重要な財源を切り続け、言動に整合性が全く取れていません。

 多年にわたる忍耐と苦悩の中で生き抜いてきた県民への償いの心とも言われている沖縄振興制度の根幹を成す沖縄振興特別措置法の制定趣旨からも矛盾し、沖縄県を日本国における貧困のトップランナーにしてしまったことへの反省はありますか。お答えください。

 加えて、振興予算を最低でも以前の水準、三千億円台に戻した上で、上乗せする措置を取っていただきたいと考えますが、こちらも真摯にお答えいただきたいと思います。

 次に、南西諸島地域を含む沖縄四区を選挙区にする私にとって、極めて懸念している問題についてです。それについてお尋ねします。政府の南西シフトの問題です。

 かつて、二〇一六年、日本とロシアの北方領土返還交渉の折に、日本とロシアの国境付近にある北方領土に米軍基地を、島に置く可能性について、ロシアが強い抵抗を感じたと報道されたことがありました。国境線周辺で軍拡を行うことは、周りの国の警戒感を呼び、軍事的緊張を高めるリスクがあります。

 同様に、南西諸島も国境の島々です。ここを軍事要塞化することは、アジアの緊張感を高めます。私たちの時代において、戦後、先人たちがイバラの道を歩みながら恒久の平和の島になるように紡いできたこの島を再び戦火にすることは、断じて許すことはできません。

 直ちに南西諸島へのミサイル部隊の配備を白紙撤回することを求めます。政府のお考えをお示しください。

 政府は、軍拡化を進める前に、まずやるべきことがあるのではないでしょうか。日本を守るために、一つしか方法はありませんよ。それは、相手がどんな国家であろうと、アメリカの仮想敵国であろうと、それが目の前にいる限りは、戦争回避をするための外交、予防外交をするしかありません。この国を守るためには、戦争が起きる前から、情勢がいかにきな臭くなってもアメリカの仮想敵国と対話をする、対話を続けることしかありません。そのために、信頼醸成、コンフィデンスビルディングのためのプラットフォームをつくり、それを維持することです。

 そのプラットフォームの拠点を沖縄県に置く、信頼醸成の外交を沖縄から発信することこそ、日本の安全保障だと考えます。総理の見解をお聞かせください。

 国を守るとは、軍事力による膨張主義により人々を不安にさせることが目的ではないはずです。平和外交の徹底こそが国益ではないでしょうか。それが、国民を守り、国土を守ることではないでしょうか。

 れいわ新選組がその平和外交の先頭に立つことをお約束し、今回の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 山川仁議員の御質問にお答えを申し上げます。

 我が国は世界有数の災害発生国ですが、いかなる地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということは決してあってはならないと考えております。

 国民を災害から守るためには、政府の災害対応体制を抜本的に強化し、事前防災を徹底する必要があります。このため、平時における防災業務の企画立案及び全国的な調整と、大規模災害発生時における政府の統一的な災害対応の司令塔として、防災庁の設置を進める考えでございます。

 防災庁につきましては、専任の大臣を置き、十分な人数の災害対応のエキスパートをそろえる方針であり、令和八年度中の設置に向けた準備を着実に進めてまいります。

 沖縄の豪雨被災地の視察についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 先月十一月八日からの豪雨では、人的被害は把握されなかったものの、家屋、ライフライン、インフラ等に被害がもたらされました。被害に遭われた皆様方には、心からお見舞いを申し上げる次第であります。

 政府といたしましては、発災当初から被害に関する情報収集に当たるとともに、速やかに沖縄・防災担当の内閣府大臣政務官を被災地に派遣し、ニーズ等の把握に努めてきたところであります。

 また、被災自治体の首長等の皆様方から災害復旧に対する支援の要請書をいただいた、かように承知をいたしております。

 これまで水道の復旧支援を行ってきたところでございますが、引き続き、被災地の支援要望等を踏まえ、必要な取組を行ってまいります。

 過去の災害に係る災害救助法の適用及び先般の沖縄県における大雨の対応についてでございます。

 災害により、多数の方が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じており、避難して継続的に救助を必要としているなどの場合には、御指摘の災害救助法施行令第一条第一項第四号の基準を満たし、当該災害に同法が適用されることになります。

 令和元年九月九日の台風十五号につきましては、その影響により停電が発生するなどし、千葉県内四十一市町村において多数の方が被災して継続的に救助を必要としておられたことから、同年九月十二日付で災害救助法が適用された、かように承知をいたしております。

 また、平成二十年二月二十三日から二十四日にかけて低気圧による被害が富山県入善町において発生をし、高波により大勢の方々が被災され、継続的に救助を必要とされておったところから、同年三月一日付で災害救助法が適用されたと承知をいたしております。

 本年十一月八日からの大雨に関し、沖縄県では、御指摘のいわゆる四号基準に基づく災害救助法の適用はなされておりませんが、現在、沖縄県において被害状況を調査中であるというふうに承知をいたしており、今後、災害救助法を適用するためのほかの基準を満たしているか否かにつきまして、沖縄県と連携をして精査をしてまいりたいと考えております。

 沖縄振興につきましてのお尋ねがございました。

 沖縄は、東アジアの中心に位置する地理的特性や日本一高い出生率といった多くの優位性、潜在力を有しております。これらを生かし、沖縄が日本のフロントランナーとして日本の経済成長の牽引役となるよう、国家戦略として沖縄振興策を総合的、積極的に推進することが必要であります。

 しかしながら、いまだ全国最下位である一人当たりの県民所得や子供の貧困の問題など、なお解決すべき課題も存在しておることはよく承知をいたしております。

 こうした課題に対応するため、令和六年度の沖縄振興予算におきましては、強い沖縄経済の実現に向けた各般の施策を推進するための予算や、子供の貧困対策のための予算を計上しており、これらの予算を効果的、効率的に執行いたしてまいります。

 沖縄振興予算につきましては、厳しい財政状況の下、毎年度、必要な予算を積み上げて決定されるものであります。来年度におきましても必要な予算を確保し、沖縄振興の経済効果を十分に沖縄県内に波及させ、それを実感していただけますよう、沖縄経済の強化に向けて支援を継続いたしてまいります。

 南西諸島へのミサイル部隊配備についてでありますが、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、南西地域の防衛力強化を含む防衛力の抜本的強化は、抑止力を向上させ、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させることにつながるほか、国民保護の観点からも極めて重要であると考えております。

 我が国の独立と平和、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くため、防衛力の抜本的強化を着実に進めてまいります。

 国際秩序に挑戦がもたらされ、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しておるということは、先ほど来申し述べておるとおりでございます。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の堅持は、ますますその重要性を増しておると考えております。

 こうした中、ともすれば抑止力か外交力かという二択のような議論になりがちでありますが、この二つはどちらも適切に備えていかなければ意味はございません。

 すなわち、我が国として、積極的な外交を展開し、各国との対話を重ね、信頼醸成を図っていく努力は間違いなく必要であります。

 同時に、外交には裏づけとなる防衛力が必要であり、日米同盟の抑止力と対処力の維持強化や、同盟国、同志国との連携により、我が国にとって望ましい安全保障環境をつくり出していかなければならないと考えております。

 我が国の平和外交において沖縄が果たす重要な役割を踏まえつつ、外交と防衛の両輪をバランスよく強化し、国際社会の平和と安定に寄与してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせていただきます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 山川議員より四問御質問をいただきました。

 まず、沖縄県に対する災害救助法の適用についてお尋ねがありました。

 災害救助法は、法に定める災害が発生した際に、都道府県知事等がその適用を判断することとなります。

 十一月九日土曜日午前二時五分頃、沖縄県大宜味村の一部地域に警戒レベル五に当たる緊急安全確保が発令されました。そのため、内閣府では、災害救助法の適用に関する連絡調整を図るため、午前四時四十分に沖縄県庁担当課に、午前四時四十二分に沖縄県庁の代表にそれぞれ電話したところ、いずれも不通であったと報告を受けております。

 同日午前六時五十分には、大宜味村の一部地域に発令されていた緊急安全確保を避難指示に切り替えた旨、大宜味村から発表があり、改めて午前八時四十二分に沖縄県庁担当課に、午前八時四十四分に沖縄県庁代表にそれぞれ電話したところ、いずれも不通であったと報告を受けております。

 次に、電話以外の手法による連絡の有無についてお尋ねがございました。

 先ほどお答えしたとおり、十一月九日土曜日の四時台、八時台に、内閣府より、沖縄県庁担当課と沖縄県庁代表の二系統に対し、それぞれ電話しておりますが、その際は留守番電話にはならなかったと報告を受けています。

 なお、内閣府では、災害救助法を担当する内閣府職員の公用携帯番号をリスト化し、沖縄県を含む全都道府県に共有をしており、土日祝日も連絡を取れる体制を構築しております。

 次に、災害救助法及び被災者生活再建支援法が適用されている災害数と自治体数についてお尋ねがありました。

 災害救助法につきましては、令和六年十一月二十五日現在でございますけれども、平成二十三年の東日本大震災から、直近では先ほど御指摘の令和六年十一月八日からの大雨による災害まで十八災害、延べ百五十二自治体で適用されております。

 なお、被災者生活再建支援法につきましては、令和六年十一月二十五日現在で、平成二十三年の東日本大震災から、直近では令和六年九月二十日からの大雨による災害まで十九災害、延べ百八十一自治体で適用されております。

 沖縄の豪雨被災地の視察についてお尋ねがありました。

 先月十一月八日からの豪雨では、人的被害はなかったものの、家屋への被害のほか、ライフラインやインフラ等に被害をもたらしました。被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 政府としては、発災当初から被害状況の把握を行うとともに、速やかに今井内閣府大臣政務官を被災地に派遣し、そして今井政務官から報告を受けており、復旧復興に向けたニーズ等の把握に努めてきたところでございます。

 また、被災自治体の首長等の皆様方から伊東沖縄担当大臣に対して、災害復旧に対する支援に関する要請書を提出いただいたものと承知しております。

 引き続き、政府一体となって、被災地の状況を的確に把握し、着実な復旧復興に向けて取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣伊東良孝君登壇〕

国務大臣(伊東良孝君) 山川仁議員にお答えいたします。

 災害救助法に関するお尋ねがありました。

 先月の沖縄北部地域一帯での大雨で被害に遭われた皆様に、改めて心よりお見舞いを申し上げる次第であります。

 災害救助法につきましては、ただいま坂井大臣から御答弁がありましたように、内閣府防災担当がこれを所管しており、私は所管外の立場ということもございまして、答弁は差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、内閣府沖縄担当としては、引き続き、被害状況等の情報を収集し、関係者や沖縄県等ともよく連携しながら、できる限りのバックアップを行ってまいりたいと存じます。

 また、被災地への視察についてのお尋ねがありました。

 坂井大臣からも御答弁ありましたが、先月二十日、今井内閣府大臣政務官が早急に被災地視察を行い、帰京後に状況報告を受けたところであります。また、被災自治体の市町村長、また議会の関係者の皆様から、災害復旧に対する支援に関する強い要請をいただいたところであります。

 私の被災地への視察につきましては、被害状況等を踏まえて、国会日程等を見ながら検討していきたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

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副議長(玄葉光一郎君) 田村智子君。

    〔田村智子君登壇〕

田村智子君 私は、日本共産党を代表し、石破総理に質問いたします。(拍手)

 冒頭、能登地域の復旧復興についてお聞きします。

 総理、所信表明演説には、被災者の生活と被災地域の再建への支援策が一言もありませんでした。能登の皆さんは、地震と豪雨により大切なものを失った悲しみ、支援が行き届かないことへの怒り、それでも能登に住み続けたいという切実な願いを持ち、先の見えない生活を何とか打開しようと苦しんでいます。避難生活の改善、医療費など被災者の負担軽減、地震と豪雨という二重の被害の実態に見合った支援の拡充、積雪時の安全と生活の確保など、今求められている支援を政府の責任で届け切る、そのために具体的にどうするのか、お答えください。

 総選挙によって、与党が少数の国会となりました。この臨時国会では、選挙で示された民意にどう応えるかが鋭く問われます。何よりも、自民党の裏金事件に対する国民の厳しい審判に総理がどう向き合うのか、その政治姿勢が問われています。

 まずお聞きしたいのは、非公認候補者の支部に自民党本部が振り込んだ二千万円の問題です。

 これを暴いたしんぶん赤旗の報道に、総理は、政党支部に支給したのであり、非公認の候補者に出しているのではないと説明された。しかし、赤旗の更なる調査で、自民党が小選挙区候補を立てていない支部には支給されていないことが分かりました。総理、これをどう説明しますか。非公認候補への選挙資金としか言いようがないではありませんか。

 裏金問題の真相に蓋をして、政治改革を語る資格はありません。総選挙での審判に誠実に向き合い、裏金がいつから、誰の指示で始まったのか、何に使われたのか、総理の責任で真相を明らかにし、国民に説明すべきではありませんか。答弁を求めます。

 裏金は、政治資金パーティーで企業から巨額の金を集めてつくられました。抜本的な再発防止策は、政治資金パーティーを抜け道とした企業・団体献金も、政党、政党支部への企業・団体献金も、きっぱりと禁止することです。

 ところが、総理は所信表明でこのことに一言も触れず、自民党の渡海政治改革本部長は、自民党は企業献金が悪で個人献金が善という立場には立っていない、党内の議論でも企業・団体献金をやめろと言う人は一人もいないと述べました。驚くべき無反省ぶりです。

 総理、そもそも三十年前、政治家個人への企業・団体献金は禁止したが、政党支部とパーティー券は温存する抜け道がつくられた。これが利権腐敗政治を生んできた。それでも企業献金をまだ放置するのですか。

 企業は利益を求めるのが当然であり、企業献金は本質的に賄賂性を持ちます。主権者である国民が支持する政党に寄附をする、これは政治に参加する権利そのものです。選挙権を持たない企業が多額の献金で政治に関与する、これは国民の政治参加の権利や選挙権を侵害するものではありませんか。

 国民一人一人に依拠して政治資金をつくってこそ、国民の立場で政治を行う確かな土台となると考えますが、総理の認識をお示しください。

 日本共産党は、企業・団体献金、政党助成金を一切受け取らず、党員、国民からの個人献金、新聞発行などの事業収入で党運営を貫いています。この活動によって、物価高騰での暮らしの大変さ、中小企業の苦難も我が事としてつかむことができると確信するものです。

 次に、経済政策です。

 総理は、所信表明で、三十年前との比較で日本経済の落ち込みに言及し、配当は増え、海外投資も増えた一方で、国内投資と賃金は伸び悩んできたと述べました。しかし、三十年間のほとんどは自民党が経済政策を担い、うち十二年はアベノミクス以降です。問われているのは、歴代自民党政権の経済政策そのものです。総理は、大株主への配当は増えたが、賃金が伸び悩んできた原因と責任がどこにあると考えているのですか。

 暮らしと経済を立て直すには、大企業と大株主の利益を最優先する経済政策のゆがみを正す、緊急かつ抜本的な改革こそ必要です。一つは、大企業の利益が賃金に回らずに、配当、役員報酬、そして巨額の内部留保へと流れてしまう、このゆがみを正すことです。

 上場企業一千七十一社の三月決算では、純利益が昨年より二〇%も増え、大企業は三年連続の史上最高益です。しかし、その利益にふさわしく賃上げが進んだとはとても言えず、その一方で、内部留保は、昨年一年間で二十八兆円増え、五百三十九兆円にも膨張しました。内部留保は株主の利益を増やすためには使われ、自社株買いが十六兆円に及びます。

 大企業は空前の利益、しかし、賃上げにも取引企業の単価引上げにも回らず、巨額の内部留保が毎年積み上がる。多くの労働者は、物価上昇に賃上げが追いつかず、暮らしが追い詰められていく。総理、この現状をどう思われますか。

 我が党は、大企業の利益がただただため込まれるゆがみを正して、労働者の賃金に還流させる政策を提案してきました。内部留保のうちアベノミクス以降の積み増し分に課税し、これを財源として中小企業の賃上げを大胆に直接支援する、大企業が賃上げに活用する分を控除することで大企業での賃上げも進めるという政策です。

 総理は、政治の責任で内部留保を賃金へと還流させることが必要だと考えますか。そうであるなら、我が党の提案以外に何か具体的な方策を検討しているのでしょうか。答弁を求めます。

 次に、税制のゆがみの改革です。

 税の在り方として、生計費非課税、応能負担という二つの原則が重要だと考えますが、いかがですか。

 消費税は、日々の生活、食事の回数を減らすような生活であっても容赦なく課税する最悪の生計費課税です。生計費非課税の原則に立ち、消費税廃止を目指すべきです。せめて、物価高騰が消費税負担を増やしているのですから、緊急の減税を行うことは当然ではありませんか。税制の民主的原則に照らして答弁を求めます。

 応能負担原則も大きくゆがめられています。中小企業よりも軽い大企業の税負担割合、所得一億円の壁をもたらす証券優遇税制、所得税、住民税の最高税率が九五年当時から一〇%下げられたまま。これらを応能負担原則から見て、どう評価しますか。抜本的な見直しが必要ではありませんか。

 百三万円の壁の問題は、こうしたゆがみの一部分であり、生計費非課税の原則に立って、物価高騰、賃上げを超える水準への引上げが必要と考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 学生のアルバイト収入が百三万円を超えると、保護者の扶養控除がなくなり、世帯の収入が減ってしまうという百三万円の壁。そもそも、学生がアルバイトに追われる生活をせざるを得ないことが問題ではありませんか。根本的な解決は、アルバイトをもっと増やせる環境整備ではなく、高過ぎる学費を下げ、無償化へと向かい、アルバイトをしなくても安心して学べる環境をつくることではないでしょうか。

 ところが、国立も私立も、大学授業料値上げが相次いでいます。我が党は、学費値上げを止めるために、大学への緊急助成を政府に要請しました。石破総理も、自民党総裁選で、国立大学授業料を無料にと掲げました。まず、政治の責任で、これ以上の値上げを止めることは当然と考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 今、日米同盟という四文字で思考停止となる政治でよいのかが問われています。

 端的に二点お聞きします。

 一つは、沖縄への姿勢です。

 沖縄県民は、名護市辺野古への米軍新基地建設に反対の意思を示し続けてきました。米兵による少女への性的暴行事件を隠蔽した政府への怒りも渦巻いています。第二次安倍政権の下で自民党幹事長だった石破総理は、沖縄県選出の党所属国会議員を辺野古容認へと態度を変えさせ、平成の琉球処分とまで評されました。こうした沖縄に象徴される強権政治にノーの審判を突きつけたのが、総選挙の結果だったのではありませんか。

 沖縄県民が自ら米軍基地を受け入れることはあり得ない。軟弱地盤に巨大基地建設は不可能。一体、辺野古新基地はいつ完成するというのでしょうか。辺野古新基地建設を中止し、普天間基地の無条件撤去をアメリカに求める、これこそ、沖縄の基地負担軽減として直ちに政府がやるべきことではありませんか。

 いま一つは、核兵器問題への姿勢です。

 今月十日、日本被団協のノーベル平和賞授賞式が行われます。核兵器の非人道性と、核兵器は二度と使われてはならないことを世界に訴え、約八十年にわたり戦争での核兵器使用を許してこなかった、これが授賞理由です。

 石破総理は、核兵器の非人道性を世界に知らせると言いながら、一方で、アメリカの核抑止の強化を主張しています。核抑止とは、いざとなれば核兵器を使用するぞと恐怖を与えることで相手の攻撃を思いとどまらせるというものです。まして、アメリカは核兵器先制使用の方針を掲げています。核兵器の非人道性を批判することと、アメリカの核抑止を強化、この主張をすることは、根本的に矛盾するのではありませんか。

 被爆者の皆さんの命懸けの訴えによって誕生したのが核兵器禁止条約です。唯一の戦争被爆国の政府として、被爆者とともに歩む責務があります。核兵器禁止条約への参加を決断すべきです。少なくとも、三月の締約国会議にオブザーバー参加することは表明いただきたい。答弁を求めます。

 最後に、ジェンダー平等についてお聞きします。

 十月、女性差別撤廃条約に基づく日本政府の取組について、国連女性差別撤廃委員会による審査が八年ぶりに行われ、選択的夫婦別姓の導入を求める四度目の勧告が出されました。

 総選挙での候補者アンケートによれば、選択的夫婦別姓に圧倒的多数が賛意を示して議員となった。これまでと同じ棚上げは許されません。総理は、参議院での私の質問に、様々な意見があると答弁された。ならば、その様々な意見を、法案審議の場で、国民の前で議論しようではありませんか。

 女性差別撤廃条約の批准国の多くが、条約の実効性を強めるため、個人通報制度と調査制度を定めた選択議定書を批准していますが、日本政府は、検討中のまま四半世紀がたっています。一体いつまで検討するのか。この姿勢が日本をジェンダー平等後進国にしているのではありませんか。

 答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 田村智子議員の御質問にお答え申し上げます。

 能登地域の被災者支援についてのお尋ねであります。

 これまでの数次にわたる予備費での対応に続き、今回の経済対策において、状況に応じて切れ目ない対応を迅速に行うため、被災地の方々の御要望を踏まえた支援策を盛り込んだところでございます。

 具体的には、トイレ、キッチン、ベッドなどの避難生活の改善、医療保険、介護保険の自己負担や保険料の減免支援、豪雨による被災者の方々にも地震と同等の各種支援を行う、除雪機械の増強や小型除雪機の貸出支援などの被災者支援を講ずることといたしております。

 活気ある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、復旧と創造的復興に向けた取組を講じてまいりたいと思います。能登の苦難を忘れたことは、ひとときもございません。

 自民党の支部政党交付金及び旧派閥の政治資金収支報告書の不記載についてのお尋ねでございますが、自民党の支部政党交付金の取扱いにつきましては、党の内部運営に関わることであり、政府としてお答えをすることは差し控えますが、総裁としてあえて申し上げれば、お尋ねの支部政党交付金は、党の政策を国民の皆様方に御理解いただくための広報活動など党勢拡大のために使用していただくべく、政党支部に対して党として支給したものであって、非公認の候補者に対して交付したものではございません。

 なお、選挙区支部自体が存在しない場合には、当然のことながら、支部政党交付金は支給いたしておりません。

 その上で、今回の選挙結果は、我が党の改革姿勢、姿勢そのものに対する叱責と受け止めております。

 事実関係につきましては、第三者であります検察により、厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたところでございます。

 また、党におきましても、可能な限りの調査を行い、その結果を国民の皆様方に説明してまいりました。さらに、各々が、政治倫理審査会の場をも含め、あらゆる場を積極的に活用して説明責任を果たすよう、党として促してきたところでございます。

 大切なことは、二度とこのような事態を繰り返さないということであり、政治と金の問題には厳しい姿勢で臨み、ルールを徹底的に遵守する自民党を確立いたしてまいります。

 また、政策活動費の廃止を始め、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を率先して進め、政治資金規正法の再改正を含めた必要な法整備に誠心誠意尽力をいたしてまいります。

 企業・団体献金についてお尋ねを頂戴いたしました。

 昭和四十五年の最高裁判決は、企業・団体献金と自然人である国民の参政権との関係につきまして、憲法上の選挙権その他のいわゆる参政権が自然人たる国民にのみ認められたものであることは所論のとおりだが、会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。会社による政党への寄附は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないなどと述べております。

 他方で、企業・団体献金を含む政治資金について高い透明性を確保することは、政治資金規正法の目的及び基本理念に照らしても重要であります。

 政治資金規正法第一条は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の公開などを行うと規定いたしております。また、同法第二条は、企業・団体献金を含む政治資金を民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であるとした上で、その収支の状況に関する判断は国民に委ね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないようにしなければならないと定めております。

 政治資金に関するルールの在り方につきましては、既に政治改革に関する各党協議会において御議論をいただいており、政府としてお答えすることは差し控えますが、総裁としてあえて申し上げれば、我が党といたしましては、収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築に取り組む方針であり、これにより、企業・団体献金を含む政治資金の透明性が飛躍的に高まり、国民の皆様方の御判断に資することになると考えております。

 我が国経済は、一九九〇年代のバブル崩壊以降、金融システム問題やリーマン・ショックなどの様々な困難に見舞われました。この間、企業は、収益確保のために賃金や成長の源泉である投資を抑制し、結果として、消費の停滞や物価の低迷、さらには成長の抑制がもたらされたことから、賃金が伸び悩んだものと考えております。

 しかし、近年では、岸田内閣の新しい資本主義の取組により、約三十年ぶりの高い水準の賃上げなどの明るい兆しが表れております。岸田内閣が進めてきた取組を着実に引き継ぎ、更に加速、発展させることで、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現いたしてまいります。

 内部留保についてでありますが、大企業を中心とした高水準の企業収益の一方で、賃金や投資が伸び悩んだ結果、内部留保が増加しているものと認識をいたしております。

 政府といたしましては、賃金が上がり、家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物価が適度に上昇する、それが企業の売上げ、業績につながり、新たな投資を呼び込み、企業が次の成長段階に入り、また賃金が上がるという好循環の実現が重要だと考えております。

 御指摘のような内部留保への課税につきましては、二重課税に当たるとの指摘もあることから、慎重な検討が必要であると考えておりますが、先般の政労使の意見交換において、約三十年ぶりの高い水準となりました今年の勢いで、来年の春季労使交渉におきましても大幅な賃上げを行うことへの協力を私から要請をし、また、最低賃金を引き上げていくための対応策の策定を関係閣僚に指示をいたしたところでございます。

 加えまして、中小企業を始めとした事業者の皆様方が確かにもうかり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけるよう、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めるとともに、省力化、デジタル化投資の推進や、経営基盤の強化、成長のための支援も充実をいたしてまいります。

 今後の税制の在り方についてでございますが、中長期的視点に立ち、持続可能な経済財政運営を行う観点から、経済社会の構造変化を踏まえ、応能負担を通じた再分配機能の向上、格差の固定化防止を図りつつ、あるべき税制の具体化に向け、累次の見直しを進めてきておるところでございます。

 例えば、所得税につきましては、令和五年度税制改正におきまして、金融所得を含め、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置を導入しており、一定の対応をいたしております。いわゆる百三万円の壁につきましては、経済対策において、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げるとされており、今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めていただきたいと考えております。

 法人税につきましては、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりました。その中でも、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベースの拡大により、財源を確保いたしております。

 消費税につきましては、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられておりますことから、政府として、その引下げを行うことは適当でないと考えております。

 高等教育費の負担軽減につきましてですが、大学の授業料など高等教育費につきましては、先ほど来お答えをいたしておりますとおり、本年度から、授業料の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充し、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしており、まずはこうした拡充を着実に実施に移し、その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見定めつつ取り組んでまいります。

 沖縄の基地負担軽減についてであります。

 普天間飛行場代替施設建設事業につきましては、沖縄防衛局におきまして、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに九年三か月である旨を示しており、また、その地盤改良工事につきましては、有識者の助言を得つつ検討を行いました結果、十分に安定した護岸等の施工が可能であることが確認されていると承知をいたしております。

 世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。政府といたしましては、辺野古移設が、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去するための唯一の解決策であると考えております。

 今後とも、様々な機会を通じて地元の皆様方への丁寧な説明を行いながら、基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。

 核兵器の非人道性と核抑止及び核兵器禁止条約についてのお尋ねがありました。

 核兵器の非人道性につきましては、私自身十分に認識をしておりますことは、先ほど斉藤議員の御質問にお答えをしたとおりでございます。

 世界に被爆の実相をしっかりと伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要であります。こうした観点からも、長年、核兵器の廃絶や被爆の実相に対する理解促進に取り組んでこられた日本被団協がノーベル平和賞という栄誉ある賞を受けられることは、極めて意義深いことであります。政府といたしましては、引き続き、唯一の戦争被爆国として、被爆地への訪問の呼びかけなどを通じ、被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促進をいたしてまいります。

 一方で、我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展するなど、我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しております。

 現実に核兵器など日本に対する脅威が存在する中で、それに対応し、国民の生命財産、日本の独立性を守り抜くためには、米国が提供する核を含む拡大抑止が不可欠であると考えております。

 我が国の安全保障を確保しつつ、同時に核兵器のない世界という目標に向かって努力していくことは、決して矛盾するものではなく、共に取り組んでまいります。

 御指摘の核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であります。同時に、同条約には核兵器国は一か国も参加をしておりません。いまだその出口に至る道筋が立っていないのが現状であります。

 こうした中で、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。NPT体制は、核兵器国、非核兵器国が広く参加する唯一の、核兵器のない世界に向けた普遍的な枠組みであります。我が国は、NPT運用検討会議においてリーダーシップを発揮することを含め、NPT体制の下で、現実的かつ実践的な取組が一歩一歩進められるよう取り組んでおります。

 政府といたしましては、抑止力を維持強化し、安全保障上の脅威に適切に対処していくとの大前提に立ちつつ、NPT体制を維持強化し、核軍縮に向けた国際社会の機運を改めて高め、核兵器のない世界に向けた現実的で実践的な取組を維持強化してまいります。

 選択的夫婦別氏制度及び女子差別撤廃条約の選択議定書についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 選択的夫婦別氏制度につきましては、令和三年に内閣府が行った世論調査を見ましても国民の御意見が分かれておるところであり、政府としては、引き続き、国民各層の御意見や国会における御議論の動向等を注視していく必要があると考えております。なお、国会の審議の在り方につきましては、国会において御判断をいただくことだろうと考えております。

 女子差別撤廃条約選択議定書で規定されております個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えております。他方で、同制度の受入れに当たりましては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無、制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識いたしております。そのため、その締結の見通しについてお答えすることは困難でありますが、引き続き、政府として早期締結について真剣に検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(玄葉光一郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  石破  茂君

       総務大臣    村上誠一郎君

       法務大臣    鈴木 馨祐君

       外務大臣    岩屋  毅君

       財務大臣    加藤 勝信君

       文部科学大臣  あべ 俊子君

       厚生労働大臣  福岡 資麿君

       農林水産大臣  江藤  拓君

       経済産業大臣  武藤 容治君

       国土交通大臣  中野 洋昌君

       環境大臣    浅尾慶一郎君

       防衛大臣    中谷  元君

       国務大臣    赤澤 亮正君

       国務大臣    伊藤 忠彦君

       国務大臣    伊東 良孝君

       国務大臣    城内  実君

       国務大臣    坂井  学君

       国務大臣    平  将明君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣   三原じゅん子君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 橘 慶一郎君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 岩尾 信行君


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