衆議院

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第12号 令和7年3月27日(木曜日)

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令和七年三月二十七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  令和七年三月二十七日

    午後一時開議

 第一 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 道路法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 道路法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長藤丸敏君。

    ―――――――――――――

 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔藤丸敏君登壇〕

藤丸敏君 ただいま議題となりました戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、令和七年が戦後八十年に当たることから、戦没者等の遺族に対し改めて弔慰の意を表するため、令和七年四月一日及び令和十二年四月一日における戦没者等の遺族で、同一の戦没者等に関し公務扶助料、遺族年金等の支給を受けている者がいないものに対し、特別弔慰金として額面二十七万五千円、五年償還の国債をそれぞれ支給しようとするものであります。

 本案は、去る三月十九日本委員会に付託され、二十一日福岡厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、昨日質疑を行いました。

 同日、質疑を終局したところ、立憲民主党・無所属より、本案に対し、令和十二年四月一日における戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の支給に関する規定を削除すること等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について討論、採決を行った結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第二、独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長堀内詔子君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔堀内詔子君登壇〕

堀内詔子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案の主な内容は、

 独立行政法人国際協力機構の業務に関し、開発途上地域の法人等に対する有償資金協力について、その手法として債務の保証及び債券の取得を追加し、また、開発途上地域の経済及び社会の持続可能性の向上に資する計画に係る業務を追加すること、

 無償資金協力の手法として財産の贈与及び開発途上地域の政府等に代わる債務の弁済を追加すること、

 開発途上地域に対する技術協力における委託先を拡大すること、

 無償資金協力のために管理している資金について計画が中断した場合の国庫納付の仕組みを設けること

などであります。

 本案は、去る三月十九日外務委員会に付託され、二十一日岩屋外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十六日に質疑を行い、質疑終局後、引き続き採決を行いました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 道路法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第三、道路法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長井上貴博君。

    ―――――――――――――

 道路法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔井上貴博君登壇〕

井上貴博君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、自然災害の頻発や道路の老朽化等により、安全かつ円滑な道路交通の確保の重要性が増大していること等に鑑み、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、道路啓開計画を法定化するとともに、被災地への出動が可能なトイレコンテナ等の占用許可基準を緩和すること、

 第二に、道路管理者間の協議により、道路の点検や修繕等を他の地方公共団体が代行できる制度を創設すること、

 第三に、国土交通大臣は道路脱炭素化基本方針を策定し、道路管理者は、同方針に即して、道路脱炭素化推進計画を策定できること

などであります。

 本案は、去る三月十八日本委員会に付託され、翌十九日中野国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、昨日二十六日質疑に入り、同日質疑を終了いたしました。

 質疑終了後、本案に対し、れいわ新選組から修正案が提出され、趣旨説明を聴取した後、採決の結果、修正案は否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣鈴木馨祐君。

    〔国務大臣鈴木馨祐君登壇〕

国務大臣(鈴木馨祐君) 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 現行の刑事手続等において、関係書類は、紙媒体で作成、管理、発受されており、また、公判における手続等の多くは、裁判官や訴訟関係人等が公判廷等において対面する形で行われています。

 こうした中、近年における情報通信技術の進展及び普及に伴い、刑事手続等においても、それらの技術を活用することにより、手続を円滑、迅速なものとするとともに、手続に関与する国民の負担を軽減することが喫緊の課題となっております。

 また、情報通信技術の進展等は、社会に恩恵をもたらす一方で、それらの技術を悪用した新たな犯罪事象も生じさせており、現下の犯罪情勢に鑑みると、そのような犯罪事象に対し、刑事法として適切に対処できるようにすることも急務であります。

 そこで、この法律案は、刑事手続等の円滑化、迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図るとともに、情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象に適切に対処することにより、安全、安心な社会を実現をするため、刑事訴訟法、刑法その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑事手続等において取り扱う書類について、電磁的記録をもって作成、管理、発受することを可能にするための規定の整備であります。

 すなわち、電磁的記録である証拠の閲覧、謄写の方法を定めるとともに、裁判所に対する申立て等について電子情報処理組織を使用する方法等によることや、令状について電磁的記録により発付、執行することを可能にするほか、裁判官の発する令状等に基づく強制処分である記録命令付差押えを廃止し、同様の強制処分としての電磁的記録提供命令を創設する等の措置を講ずるものであります。

 第二は、刑事手続等において関係者が対面する形で行われる手続について、ビデオリンク方式の一層の活用を可能にするための規定の整備であります。

 すなわち、勾留質問及び検察官による弁解録取について、被疑者等を刑事施設に在席させて同方式により行う場合の手続等を定めるとともに、公判期日における手続について、被告人や被害者参加人等を公判廷以外の場所に在席させて同方式により行うことを可能とするほか、同方式により証人尋問等を実施することができる範囲を拡充する等の措置を講ずるものであります。

 第三は、情報通信技術の発展等に伴う犯罪事象に適切に対処するための規定の整備であります。

 すなわち、行使の目的で電磁的記録文書等を偽造する行為等について、現行の文書偽造罪等と同様に処罰する規定を整備するとともに、暗号資産等の電子情報処理組織を用いて移転する新たな形態の財産について没収の裁判の執行及び没収保全の手続を整備するほか、犯罪捜査のための通信傍受の対象犯罪に財産上の利益を客体とする強盗罪、詐欺罪、恐喝罪を追加する等の措置を講ずるものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。柴田勝之君。

    〔柴田勝之君登壇〕

柴田勝之君 立憲民主党・無所属の柴田勝之です。

 ただいま議題となりました刑事デジタル法案につきまして、会派を代表して、全て法務大臣に伺います。(拍手)

 冒頭、一言申し上げます。

 参議院で新年度予算を審議中の一昨日に、石破総理は公明党代表と会談し、予算成立後に強力な物価高対策を打ち出す考えであると伝えたことについて、野党のみならず、与党からも不満や批判が出ています。本日の参議院予算委員会で石破総理は申し訳ないと釈明し、趣旨を説明されましたが、物価高対策は、我々立憲民主党が衆議院での予算審議において、ガソリン等の暫定税率廃止などを予算修正の形で提案したにもかかわらず、総理、与党側からはゼロ回答でした。新年度予算案の内容が不十分だということを自ら露呈しており、こうした石破政権の不謹慎な姿勢を厳しく指摘し、質問に入ります。

 私は弁護士を三十年やっておりますが、専門分野の一つとして刑事事件に取り組み、司法研修所の刑事弁護の教官というのを務めた経験もございます。その経験を踏まえても、本法律案には検討すべき点が多数あると思われます。

 まず、本法律案では、電子データを保管しているサーバーの管理者などから捜査機関等へ電子データを提供させる電磁的記録提供命令を新設しています。現行法でも、サーバーの電子データをCDなどの記録媒体にコピーさせた上で、その記録媒体を差し押さえるということができますが、電磁的記録提供命令では、電子データをサーバーからオンラインで捜査機関に提供させることもできるようになります。

 今日、クラウドサービスを提供する業者のサーバーには、犯罪と無関係の個人情報を含む膨大な電子データが保管されています。電磁的記録提供命令によりオンラインでの提供が可能となれば、記録媒体にコピーして差し押さえるという物理的な制約がなくなるため、更に大量の電子データを提供させることが可能になると思われます。

 また、現在の捜査実務では、差押えの令状には、差押物件の特定として、被疑者名、罪名のほかには、本件に関係あると思料されるといった程度の記載しかないのが実情であり、電磁的記録提供命令では命令違反に対する刑事罰も新設されていることから、命令を受けた者は、刑事処罰を恐れて、少しでも関係のありそうな電子データを幅広く提出することも予想されます。その結果、犯罪とは関係のない個人情報が捜査機関に大量に収集され、蓄積されてしまうのではないでしょうか。

 犯罪と関係ない個人情報の収集、蓄積を避ける必要性、本法律案にそのための規定はあるのか、また、その規定の必要性についてどう考えているのか、お答えください。

 犯罪捜査のために電話やメールなどの傍受を認める通信傍受法では、通信を傍受した後、一定期間内に、捜査機関からその通信をした当事者に傍受の事実が通知されることになっており、通知を受けた当事者は、傍受された通信が犯罪に関係ないことなどを主張して、裁判所に不服申立てができることになっています。

 本法律案による電磁的記録提供命令においても、サーバーなどに電子データを記録していた者、以下、ここでは電磁的記録者と言いますが、その者が記録していた電子データがサーバー管理者などから捜査機関へ提供された事実を捜査機関から電磁的記録者に通知しなければ、電磁的記録者は提供の事実を知ることができず、不当な電磁的記録命令を是正することができないのではないでしょうか。

 本法律案には、捜査機関が電磁的記録者に対し、電子データが提供された事実を通知する規定があるのか、また、電磁的記録者に不服申立ての機会を与える必要性をどう考えているのか、お答えください。

 捜査機関からの通知がなくても、電子データを提供したサーバーの管理者などから電磁的記録者に連絡があれば、電子データが捜査機関に提供された事実を知ることは可能です。しかし、本法律案では、電磁的記録提供命令に伴う秘密保持命令というものも新設されております。この命令が出されると、捜査機関に電子データを提供したサーバーの管理者などがその事実を電磁的記録者に連絡することすら禁じられてしまいます。

 不当な電磁的記録提供命令によって捜査機関に電子データが提供された場合でも、サーバー管理者などに対し秘密保持命令がなされれば、電磁的記録者には提供の事実が一切知らされない、これは問題ではないでしょうか。現行法の差押えにはない秘密保持命令を新設した理由、また、この命令は具体的にどのような場合に発令され、いつまでの秘密保持を命じることを想定しているのか、お答えください。

 通信傍受法では、不服申立てにより通信傍受命令が取り消された場合には、捜査機関が傍受したデータやその複製データを消去する規定が置かれています。しかし、本法律案では、電磁的記録提供命令への不服申立てによって命令が取り消された場合のデータ消去に関する規定がありません。

 裁判所によって命令が不当であったと認められて取り消された以上は、捜査機関は提供データや複製データを一切消去しなければならないのが当然ではないでしょうか。このような場合に提供データや複製データを消去する必要性、また、それを本法律案に規定する必要性をどう考えているのか、お答えください。

 通信傍受法では、傍受データの保管は、事件終了後、一定の期間に限られることとされています。ところが、本法律案では、必要のなくなった電子データや複製データの消去についての規定がありません。

 犯罪と関係あるかないかを問わず、捜査機関が個人情報をいつまでも保有することを認めるべきではないのではないでしょうか。事件の終了などによって必要のなくなった電子データや複製データを消去する必要性、また、それを本法律案に規定する必要性をどう考えているのか、お答えください。

 現行法による記録媒体の差押えにおいても、記録された電子データにパスワードがかかっていると、捜査機関からパスワードを尋ねられることがありますが、答えなくても処罰されることはありません。電磁的記録提供命令においても、自分が刑事責任を問われるおそれがある事項については供述を強制されないという、自己負罪拒否特権が憲法で保障されていることから、パスワードの供述が強制されないことは法制審議会でも確認されているところです。

 しかし、電磁的記録提供命令には応じない場合の刑事罰があるため、現場で命令を執行している警察官等から自己負罪拒否特権について説明なくパスワードを尋ねられた場合、尋ねられた者は、答えなければ犯罪になってしまうと誤解して、パスワードを答えてしまうおそれがあるのではないでしょうか。電磁的記録提供命令を執行する警察官等が命令を受ける者に自己負罪拒否特権の説明をする必要性、また、それを本法律案に規定する必要性をどう考えているのか、お答えください。

 ヨーロッパ諸国においては、刑事司法における個人情報の保護のための独立監督機関が設置されています。我が国でも、通信傍受法では裁判所による実効的な監督が図られています。今まで述べたような電磁的記録提供命令の問題点に鑑みれば、この制度が人権を不当に侵害することなく運用されていることを、裁判所、個人情報保護委員会、あるいは新設する独立監督機関によって十分に監督できるようにする制度を設けるべきではないでしょうか。お答えください。

 本法律案による刑事手続のデジタル化は、捜査機関や裁判所の利便性を大きく向上させますが、刑事手続の対象となる被疑者や被告人の利便性は取り残されています。

 例えば、身体拘束を受けている被告人等が弁護人との接見をビデオリンク方式でできるようにする、いわゆるオンライン接見について、本法律案には規定がありません。予算上の制約もあり、オンライン接見を全ての施設に直ちに導入するのが困難であることは理解できます。しかし、本法律案では、多くの刑事手続について、被告人等が裁判所に行かなくてもビデオリンク方式で手続ができるという、ビデオリンク設備の整備を前提とした制度を導入していますので、弁護人ともビデオリンク方式で接見できるようにすることは、それほど困難ではないと思われます。

 また、被告人等が弁護人の援助を受ける権利は憲法上の重要な人権ですが、身体拘束の場所が弁護人の事務所から遠隔地にあるために、迅速かつ十分な接見が困難になっている場合が少なくありません。何年か猶予期間を設けるとか、可能となった施設から順次導入するといった実務上の配慮をした上で、オンライン接見を導入することは可能なのではないでしょうか。

 被告人等が適時に十分な接見により弁護人の援助を受ける権利の重要性をどう考えているのか、そして、実務上の配慮はした上で、本法律案にオンライン接見を規定することはできないのかについて、お答えください。

 身体拘束をされた被告人等は、弁護人から電子データを受け取ってタブレットなどの電子機器で閲覧することはできず、電子データをプリントアウトした紙で受け取って閲覧しなければなりません。そのため、現状でも、電子データによる証拠の受取や検討に困難が生じています。本法律案によってますます大量の電子データが収集され、刑事裁判の証拠として提出される結果、この困難がますます拡大することが予想されます。

 自らの裁判に提出される証拠を自身で十分に検討することは、被告人の重要な権利です。刑事手続のデジタル化によって、捜査機関や裁判所の利便性を大きく向上させる一方で、被告人等は置き去りというのは、余りに不公平ではないでしょうか。刑事手続のデジタル化に伴って、被告人等に対しても電子データの受取や電子機器での閲覧を認める必要性をどう考えているのか、お答えください。

 刑事手続のデジタル化は時代の要請であり、それ自体を否定するものではありません。しかし、デジタル化に当たっては、捜査機関や裁判所の利便性だけでなく、刑事手続の対象にされる被告人等、また、電磁的記録提供命令などの影響を受ける関係者の人権を侵害することがないよう、十分な措置を講じなければなりません。

 そのことを最後に改めて指摘して、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣鈴木馨祐君登壇〕

国務大臣(鈴木馨祐君) 柴田勝之議員にお答え申し上げます。

 まず、電磁的記録提供命令による個人情報の収集、蓄積についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、捜査機関による電磁的記録提供命令について、必ず裁判官の発する令状によることとしており、捜査機関が提供を命ずることができる電磁的記録は、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定をされる上、その命令に対しては不服申立てをすることができることとしております。

 そのため、捜査機関による電磁的記録提供命令により、犯罪と関連性のない個人情報が収集、蓄積されることにはならないと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令に関する通知や、それによる不服申立ての機会の付与についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、捜査機関が電磁的記録提供命令により電磁的記録の提供を受けた場合に、被処分者以外の者に提供の事実を通知することとはしておりません。

 これは、現行刑事訴訟法において、捜査機関が差押え等により被処分者以外の者に関する情報を取得した場合に、その者に通知することとはされていないこととの整合性を踏まえたものであります。

 実質的にも、被処分者以外の者に対し電磁的記録提供命令による提供の事実等を通知することについては、罪証隠滅行為や被疑者の逃亡等を招いて捜査目的の達成が困難となるおそれがある、また、提供を受けた電磁的記録に記録された情報に関係する人物を全て特定して通知することは現実的には困難であるなどの問題があると考えております。

 そのため、本法律案において、御指摘のような通知の仕組みを設けないことに問題があるとは考えておりません。

 次に、秘密保持命令についてお尋ねがありました。

 捜査に協力的でない者や犯人との間に何らかの利害関係がある者等が電磁的記録提供命令を受けた場合には、その者が命令を受けたことなどを犯人等に伝え、犯人等が罪証隠滅行為や逃亡に及ぶことも想定されます。

 そこで、本法律案においては、被処分者が電磁的記録提供命令を受けたことなどを第三者にみだりに漏らすことにより、捜査に重大な支障が生ずることを防止するため、捜査機関は、電磁的記録提供命令をする場合において、必要があるときは、裁判官の許可を受けて、被処分者に対し秘密保持命令を発することができることとしております。

 ただいま申し上げましたとおり、秘密保持命令は裁判官の許可を受けた場合に限って発することができるものであり、その点について司法審査を受けることとなりますが、具体的にどのような場合に秘密保持命令を発することとなるかや、いつまでこれを維持するかについては、個別の事案ごとに、具体的な事情に基づいて適切に判断されるべきものと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令が取り消された場合における電磁的記録の消去についてお尋ねがありました。

 現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠を押収した場合において、その押収処分がその後取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することができなくなることともされておりません。

 したがって、御指摘のような規定を設けることは、我が国における刑事法の基本的な考え方と整合しないものであり、相当でないと考えております。

 次に、捜査機関が収集するなどした電磁的記録の消去についてお尋ねがありました。

 捜査機関が収集するなどした記録については、現行の刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法等により、刑事事件終結後も、刑の執行等の刑事手続の適正かつ円滑な遂行等のために保管、保存することとされております。

 したがって、御指摘のような規定を設けることは、現行法の基本的な考え方と整合しないものであり、相当でないと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令の執行の在り方についてお尋ねがありました。

 電磁的記録提供命令は、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を強要するものではないことから、自己負罪拒否特権と抵触するものではありません。

 そのため、御指摘のような規定を設ける必要はないと考えておりますが、捜査機関の活動が適正に行われなければならないことは当然であり、法務省といたしましても、本法律案が改正法として成立した場合には、電磁的記録提供命令が適正に運用されるよう、制度内容について適切に周知をしてまいります。

 次に、電磁的記録提供命令の運用を監督するための制度の新設についてお尋ねがありました。

 先ほども申し上げましたとおり、捜査機関が電磁的記録提供命令により提供を命ずることができる電磁的記録は、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定される上、その命令に対しては不服申立てをすることができることとしております。

 また、現行法上、捜査機関が収集した記録については、刑事訴訟法等に従って適正に管理されていると承知をしておりますが、電磁的記録提供命令により提供された電磁的記録についても、同様に取り扱われることとなります。

 こうした仕組み等を通じて、電磁的記録提供命令の適正な運用は十分に担保されることから、御指摘のような監督制度を新たに設ける必要はないと考えております。

 次に、弁護人との接見によりその援助を受ける権利の重要性と、いわゆるオンライン接見の法制化についてのお尋ねがありました。

 被告人等の防御権を保障する上で、弁護人との接見は重要な意義を有するものと認識をしております。

 その上で、オンライン接見については、例えば、弁護人の端末を用いて行う場合、弁護人以外の者による弁護人への成り済ましや、接見が認められていない第三者の同席等の防止が困難であると指摘をされており、猶予期間を設けたり、段階的に導入することとするとしても、オンライン接見一般を被告人等の権利として位置づけることは相当でないと考えております。

 他方、従来から、運用上の措置として、一部の検察庁や法テラスと拘置所等との間でオンラインによる外部交通を実施してきたところであり、法務省といたしましては、弾力的にその実施を拡大していくべく、現在、関係機関及び日本弁護士連合会との間で協議を実施しているところであります。

 今後、一層、その取組を加速してまいります。

 最後に、身体拘束中の被告人等による電磁的記録の授受と電子機器での閲覧についてお尋ねがありました。

 電磁的記録の授受や閲覧を身体拘束中の被告人等の権利として位置づけることについては、法制審議会で議論がなされたものの、授受や閲覧に用いる機器について、被告人等がこれを破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があるほか、不正な通信等の防止のための設備が必要となる、また、電磁的記録の検査のため、刑事施設等の業務全体が圧迫されかねないなどの問題点が指摘をされ、答申に盛り込まれなかったものと承知をしております。

 こうした議論等を踏まえますと、電磁的記録の授受や閲覧を身体拘束中の被告人等の権利として位置づけることは相当でないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 小竹凱君。

    〔小竹凱君登壇〕

小竹凱君 国民民主党・無所属クラブの小竹凱です。

 ただいま議題となりましたデジタル刑事訴訟法改正法案について、会派を代表し、質問をいたします。(拍手)

 この法案は、紙と対面が原則であった刑事司法現場において、デジタル化を図ることで、業務の効率化や迅速化を目指すものです。しかしながら、導入するに当たっては幾つか懸念すべき点もございます。本日は、それらの点について、鈴木法務大臣に質問いたします。

 まず、情報セキュリティーとプライバシーの確保について伺います。

 刑事手続をオンライン化し、捜査記録や裁判資料を電子データでやり取りするようになると、それらの機密情報がサイバー攻撃や不正アクセスの対象になるリスクが高まります。実際、近年は政府機関や企業に対するサイバー攻撃が頻発しており、大量の個人情報や機密情報が流出するといった事件も報じられています。

 こうした状況下で、警察、検察や裁判所のシステムに対する情報セキュリティー対策は本当に万全と言えるのでしょうか。サイバー攻撃や内部からの不正アクセスを防ぐために、具体的にどのような対策を講じているのか、お答えください。

 また、デジタル化された捜査情報や裁判資料が漏えいしないようにするための仕組みについてもお聞かせください。例えば、データの暗号化やアクセス権限などの厳格な管理、システムへの監査体制などはどのように整備されているのでしょうか。国民のプライバシーを守りつつ効率化を進める上で、この点の担保は不可欠と考えますが、大臣の御見解を伺います。

 電子令状の導入により、現場の警察官が遠方の裁判所に赴く必要がなくなり、迅速な捜査対応が可能になる点は大きな利点です。

 一方で、手続の簡略化により、令状請求や審査の慎重さが損なわれ、不当な令状の発付につながる懸念もあります。オンライン申請だと操作一つで手軽に令状が請求できてしまう分、対面で説明を尽くす場合に比べて、裁判官への説示や審査が形式的になってしまうのではないでしょうか。電子化によって令状の発付までのハードルが下がり過ぎれば、不当な令状の乱発につながるおそれも指摘されています。

 この点について、手続の迅速化と適正手続の確保をどのように両立させるお考えなのでしょうか。大臣の御見解を伺います。

 被疑者、被告人の権利保護についてお尋ねします。

 本法案では、裁判所と離れた場所を映像と音声でつなぐビデオリンク方式の活用範囲が拡大されることとなっています。例えば、勾留の可否を判断するための裁判官による被疑者への質問や、一部、証人尋問などがオンラインで可能になるとのことです。これらにより、様々状況に応じて、非対面であっても柔軟な対応ができるようになるのは望ましい点であります。

 しかし、刑事手続において対面で直接やり取りする機会が減ることで、被疑者、被告人の防御権、特に弁護人と十分に相談しながら手続に臨む権利が弱まってしまうのではないかと危惧します。例えば、遠隔での勾留質問や、公判に被疑者がビデオ出演する場合、弁護人がその場で耳打ちして助言したり、即座に打合せすることが難しくなるのではないでしょうか。画面越しでは微妙な表情や声のトーンを感じ取りづらく、証言の信用性の判断にも支障が出る可能性があります。また、証人に対する反対尋問でも、オンライン越しでは対面ほど踏み込んだやり取りができず、尋問の効果が制限される懸念も指摘されています。

 こうしたビデオリンクの活用によって、被疑者、被告人の弁護を受ける権利が弱体化したり、裁判の公平性が損なわれたりすることはないと断言できるのでしょうか。お聞かせください。

 また、被告人本人の意思に反してオンラインでの出席が強制されることは認められず、証人審問権や反対尋問権を保障するために、証人や鑑定人のオンライン尋問は本人の同意がある場合に限るべきと考えますが、そのような運用になっているでしょうか。御説明をお願いいたします。

 ビデオリンクの活用がされる一方、現在、被疑者、被告人の弁護人との接見については、対面によるものが基本とされており、遠隔地の勾留者にとって弁護人との接見が困難であることが指摘されています。

 法務省は、平成十九年以降、全国九か所にて外部交通制度を実施していますが、東京、立川、大阪を除いては電話連絡となるため、オンライン接見にはほど遠いと考えられます。さらに、真にリモート化が必要な地方や離島ほど導入が遅れていることや、利用には予約が必要で、通話時間も十五分から二十分と短いこと、秘密交通権が保障されていないことなど様々な課題があり、全国的な導入と法整備が求められています。

 そこでお聞きしますが、オンライン接見の法制化こそ、刑事司法のデジタル化に必要ではないでしょうか。また、迅速な助言、連絡手段の充実に向けた具体的な施策について、政府としてどのように取り組まれるおつもりでしょうか。答弁を求めます。

 捜査機関による電磁的記録の提供命令制度についてお尋ねします。

 本制度の創設により、電磁的記録の収集が一層容易になることが見込まれる一方で、その対象範囲が極めて広範に及ぶ点については、プライバシー等の保護の観点から懸念が残ります。例えば、犯罪と無関係な個人情報や秘匿性の高い通信情報までが収集、利用されるおそれがあり、企業の内部資料や報道機関の取材源など、本来保護されるべき情報が、捜査の名の下に目的外利用される危険性も否定できません。

 一方で、身体拘束中の被疑者、被告人に対しては、電子的手段による書類閲覧環境が整っておらず、いまだに紙媒体に限られているのが現状です。これにより、情報へのアクセスに著しい格差が生じています。

 こうした状況を踏まえ、デジタル化の利便性を真に生かすために、被疑者、被告人にも適切な電子閲覧手段を保障することが不可欠と思いませんか。大臣の御見解をお伺いします。

 また、自己の情報を取得される個人、企業、団体に対する不服申立ての機会が保障されていません。通常、捜査機関の命令によって情報提供が強制されますが、対象者が事前に異議を申し立てることができず、提供を拒めば刑事罰の対象となる仕組みは、明らかにプライバシー権を侵害するものではないでしょうか。そうでないのであれば、政府はどのように正当性を担保すると考えているのでしょうか。具体的にお示しください。

 さらに、提供されたデータが適法に取得されたかを精査し、不適切に収集された情報を破棄する仕組みが本法案には明確に定められておりません。これまで、捜査に直接関係のないプライバシー情報を基に、被疑者に対して脅迫まがいの取調べや、いわゆる人質司法のような尋問が行われているという報告もいまだ後を絶ちません。こうした行為は、被疑者の人格権やプライバシー権を侵害するものであり、適正手続の原則にも反する重大な問題です。

 デジタル機器に保存された情報を科学的手法で調査、分析し、法的証拠として活用するデジタルフォレンジック技術の進展により、削除されたデータの復元が可能になるなど、捜査の精度は高まっていますが、それに比例して、捜査と関係のないデータを基に人権侵害リスクが高まることなどあってはならないことと思いませんか。データを取得することに重きを置く一方で、取得後の適正な管理、破棄の仕組みが不明確なのではないでしょうか。答弁を求めます。

 スマートフォンは、単なる通信端末だけではなく、キャッシュレス決済や各種金融アプリの利用を通じて、個人の財産そのものと言える存在になっています。本制度の下では、スマートフォンに保存された決済履歴や暗号資産の管理データまでもが提供の対象となり得るのではないでしょうか。これは、事実上の資産押収に近い措置であり、財産権の侵害にもつながる可能性があると考えます。この点について、政府はどのような保護措置を講じるつもりなのでしょうか。答弁を求めます。

 自己負罪拒否特権についても伺います。

 憲法第三十八条は、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と定めており、自分に不利益な証拠の提出を強制されないこともその趣旨に含まれると理解しています。スマートフォン内のデータ提出を強制するこの提供命令は、結果的に自らに不利益となる証拠を自分で提出させられていることになり、憲法上の自己負罪拒否特権に抵触しかねないのではないでしょうか。とりわけ、スマートフォンのロック解除やパスワード開示を求める行為は、本人に秘密の情報をしゃべらせているのと同じではないでしょうか。答弁を求めます。

 また、このデジタル化の波は、司法に関わる人々自身にも及びます。裁判官や検察官、警察官はもちろん、弁護士を始めとする法律の専門家の中にも、IT対応に戸惑う方が少なくありません。法案を実効性あるものにするには、人材のデジタルスキル向上も不可欠です。

 そこでお聞きしますが、司法関係者全体のデジタル対応力を高めるために、研修の実施や専門人材のサポートなど、何らかの向上策を講じる予定はありますでしょうか。また、その点について具体的な取組はありますでしょうか。答弁を求めます。

 新たな犯罪の増加と対策について質問します。

 今回の法案では、電子データの文書偽造罪の新設が盛り込まれております。紙の文書に限らず、電子ファイルの改ざんも処罰対象とすることで、例えば、他人や架空の人物に成り済ましてネット上に虚偽の情報を発信するような行為にも対処できるようになります。デジタル社会の進展に伴い、これまで想定されていなかった新手の犯罪にも法の網をかける意義は大きく、必要な措置だと考えます。

 一方、電子データの偽造という犯罪を新設する際、例えば、SNS上に安易に投稿された軽微な違反に対し過度な処罰が行われてしまう危険性はないのでしょうか。本法律の趣旨に反した使われ方がなされないよう、運用面での監督やガイドラインの整備は十分でしょうか。答弁を求めます。

 また、既存の詐欺罪やサイバー犯罪に対する法体系との適用関係も整理が必要だと考えます。同じような行為がどの罪に問われるのか不明確なままでは、現場で混乱が生じかねません。新しい犯罪類型を導入することで実効性が高まる一方で、運用面での不安が残らないような十分な検討が求められます。

 そこでお聞きしますが、電子データの偽造罪と、現行の詐欺罪や不正アクセス禁止法など他の関連法規との境界線や適用範囲について、政府はどのように説明しているのでしょうか。御見解を伺います。

 以上、質問させていただきました。日本の刑事司法を時代に合った形にアップデートしていくことは不可欠だと思っていますが、国民の皆様が安心してこの変化を受け入れられるよう、情報セキュリティーや適正手続、権利保護など、懸念点について、政府として真摯に向き合い、丁寧に対応していただくことが重要だと考えます。

 是非とも前向きで具体的な答弁をお願い申し上げ、私の質疑を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣鈴木馨祐君登壇〕

国務大臣(鈴木馨祐君) 小竹凱議員にお答えを申し上げます。

 まず、警察、検察や裁判所のシステムの情報セキュリティー対策についてお尋ねがありました。

 刑事手続のデジタル化を実現するための新たなシステムについては、機微な情報を取り扱い、犯罪事象への迅速な対応が常に求められているという刑事手続の特性に鑑み、高い情報セキュリティーの確保を大前提とした上で、手続において取り扱う書類を電子データ化し、関係機関等の間で円滑、迅速にオンラインで発受することなどを可能とするシステムの整備に向け、警察庁や最高裁判所等の関係機関及び設計開発事業者と緊密に連携しつつ、検討を進めております。

 御指摘のサイバー攻撃への対処や内部からの不正アクセスを防ぐための方策等についても、刑事手続専用の閉域回線を通じて警察及び裁判所とデータの送受信を行うこととすることを含め、情報セキュリティー対策に万全を期すべく、関係機関等と検討を進めているところであります。

 次に、デジタル化された捜査情報や裁判資料の漏えいを防止するための仕組みについてお尋ねがありました。

 刑事手続については、関係者のプライバシー、名誉に多大な影響を及ぼしかねない機微な情報が取り扱われることから、万が一にも情報の流出等によって関係者の権利利益が侵害されることがないよう、特別の配慮が必要であると認識しております。

 そこで、御指摘のデータの暗号化等を含めた情報の流出等のリスクに対処するための措置についても、万全を期すべく、関係機関等と検討を進めているところであります。

 次に、電磁的記録による令状に関し、令状発付の手続の迅速化と適正確保についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、令状について電磁的記録によることを可能としており、これにより、令状手続の迅速化が図られるものと考えております。

 他方、本法律案においては、令状の請求や発付の要件を維持することとしており、その要件該当性の判断は、これまでと同様に適正に行われ、手続の適正は確保されていると考えております。

 次に、ビデオリンク方式を利用する場合における被疑者、被告人の権利保護等についてお尋ねがありました。

 本法律案において、勾留質問については、被疑者、被告人を裁判所に在席させて手続をすることが困難な場合に限って、ビデオリンク方式によることができることとしております。

 また、公判期日については、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがないなどの厳格な要件を満たす場合に限って、被告人を公判が開かれる裁判所以外の場所に在席させてビデオリンク方式によって手続を行うことができることとし、その場合、弁護人は、被告人の在席場所に在席できることとしております。

 さらに、証人尋問については、必要性が高いと認められる一定の場合等に限って、ビデオリンク方式によることができることとしております。

 そして、被疑者、被告人や弁護人は、ビデオリンク方式による場合であっても、映像と音声の送受信を通じて、陳述、供述、尋問等の行為を十分に行うことが可能です。

 以上のことから、本法律案におけるビデオリンク方式に関する法整備により、被疑者、被告人の権利保護等が損なわれるものとは考えておりません。

 次に、ビデオリンク方式による手続の運用の在り方についてお尋ねがありました。

 例えば、災害により、勾留質問のために被害者を裁判所に出頭させることが困難な場合など、被疑者、被告人の同意がなくても、ビデオリンク方式を利用する必要性、相当性が認められる場合はあり得ると考えられます。

 そのため、本法律案においては、ビデオリンク方式の利用について、被疑者、被告人の同意がある場合に限定することとはしておらず、同意がある場合以外は一切利用しないという運用となることは想定しておりません。

 次に、いわゆるオンライン接見の法制化と迅速な助言、連絡手段の充実に向けた取組についてお尋ねがありました。

 オンライン接見については、例えば、被告人の端末を用いて行う場合、弁護人以外の者による弁護人への成り済ましや、接見が認められていない第三者の同席等の防止が困難であると指摘されており、オンライン接見一般を被疑者等の権利として位置づけることは相当でないと考えております。

 他方、弁護人と被疑者等との間における迅速な助言、連絡手段の確保については、従来から、運用上の措置として、一部の検察庁や法テラスと拘置所等との間でオンラインによる外部交通を実施してきたところであり、法務省としては、弾力的にその実施を拡大していくべく、現在、関係機関及び日本弁護士連合会との間で協議を実施しているところであります。

 今後、一層、その取組を加速してまいります。

 次に、身体拘束中の被疑者等による電磁的記録の閲覧の保障についてお尋ねがありました。

 電磁的記録の閲覧等を身体拘束中の被疑者等の権利として位置づけることについては、法制審議会で議論がなされたものの、閲覧等に用いる機器について、被疑者等がこれを破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があるほか、不正な通信等の防止のための設備が必要となる、また、電磁的記録の検査のため、刑事施設等の業務全体が圧迫されかねないなどの問題点が指摘され、答申に盛り込まれなかったものと承知をしております。

 こうした議論等を踏まえますと、電磁的記録の閲覧を身体拘束中の被疑者等の権利として位置づけることは相当でないと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令の法制度としての正当性についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、捜査機関による電磁的記録提供命令について、必ず裁判官の発する令状によることとしており、捜査機関が提供を命ずることができる電磁的記録は、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定されます。

 また、電磁的記録提供命令については、不服申立てをすることができることとしているほか、その命令違反に対する罰則においては、処分対象となる行為を、条文上、正当な理由がない命令違反行為に限定しております。

 そのため、電磁的記録提供命令は、被処分者等のプライバシー等を不当に制約するものではないと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令による電磁的記録の収集、管理、破棄の在り方についてお尋ねがありました。

 先ほど申し上げましたとおり、本法律案においては、捜査機関が電磁的記録提供命令により提供を命ずることができる電磁的記録は、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定されるため、捜査と関係がない電子データが収集されることにはならないと考えております。

 また、現行法上、捜査機関が収集した記録については、刑事訴訟法等に従って適正に管理、廃棄されていると承知しております。

 電磁的記録提供命令により提供された電磁的記録についても、同様に取り扱われることとなることから、取得後の適正な管理や破棄の仕組みが不明確であるとは考えておりません。

 次に、電磁的記録提供命令による提供の対象と保護措置についてお尋ねがありました。

 現行法の下でも、御指摘の決済履歴のデータ等を捜査機関が差押え等により取得することはあり得ます。

 その上で、先ほど申し上げましたとおり、捜査機関が電磁的記録提供命令により提供を命ずることができる電磁的記録は、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定される上、その命令に対しては、不服申立てをすることができることとしております。

 したがいまして、電磁的記録提供命令は、被処分者等の財産権を不当に制約するものではないと考えております。

 次に、電磁的記録提供命令と自己負罪拒否特権の関係についてお尋ねがありました。

 電磁的記録提供命令は、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を強要するものではありません。

 そのため、自己に不利益な内容が含まれている電磁的記録の提供を命ずる場合であっても、憲法で保障されている自己負罪拒否特権と抵触するものではないと考えております。

 他方で、御指摘の、スマートフォンのロック解除やパスワードの開示を求める行為として、ロックの解除方法やパスワードを供述することを義務づけることは、自己負罪拒否特権と抵触をし、許されないものと考えております。

 次に、司法関係者のデジタル対応力を高めるための取組についてお尋ねがありました。

 例えば、検察庁においては、これまでも、個々の職員の能力に応じたデジタル化に対応するための研修、教養を実施し、専門人材の育成にも努めてきたところであります。

 御指摘の本法律案による刑事手続のデジタル化に向けた研修等についても、関係機関等と緊密に連携しつつ、検討を進めてまいります。

 次に、電磁的記録文書等偽造等罪の運用の在り方についてお尋ねがありました。

 一般論として申し上げれば、検察当局においては、個別の事案ごとに、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処するものと承知をしております。

 法務省といたしましても、本法律案が改正法として成立をした場合には、電磁的記録文書等偽造等罪が適正に運用されるよう、その趣旨や内容について適切に周知をしてまいります。

 最後に、電磁的記録文書等偽造等罪と他の罰則との関係についてお尋ねがありました。

 電磁的記録文書等偽造等罪と、お尋ねの詐欺罪や不正アクセス禁止法違反の罪等の他の罰則とは、それぞれの罪の保護法益や構成要件の相違により、明確に区別ができるものと考えております。

 いずれにいたしましても、本法律案が改正法として成立をした場合には、電磁的記録文書等偽造等罪が適正に運用されるよう、その趣旨や内容について適切に周知をしてまいります。(拍手)

議長(額賀福志郎君) ただいま議場内交渉係が協議中でございますので、そのまましばらくお待ちください。

 法務大臣から、答弁を補足したいとの申出がありますので、これを許します。法務大臣鈴木馨祐君。

    〔国務大臣鈴木馨祐君登壇〕

国務大臣(鈴木馨祐君) 先ほどの小竹議員への答弁の中で、いわゆるオンライン接見の法制化等について、例えば、被告人の端末等を用いて行う場合と発言いたしましたが、正しくは、例えば、弁護人の端末を用いて行う場合でありますため、訂正をさせていただきます。

 よろしくお願い申し上げます。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣   鈴木 馨祐君

       外務大臣   岩屋  毅君

       厚生労働大臣 福岡 資麿君

       国土交通大臣 中野 洋昌君

 出席副大臣

       法務副大臣  高村 正大君


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