衆議院

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第15号 令和7年4月3日(木曜日)

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令和七年四月三日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十三号

  令和七年四月三日

    午後一時開議

 第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員中西績介君は、去る一月二十四日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 中西績介君に対する弔詞は、議長において去る三月三十一日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに農林水産委員長 沖縄及び北方問題に関する特別委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた従三位旭日大綬章 中西績介君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 日程第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長井林辰憲君。

    ―――――――――――――

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔井林辰憲君登壇〕

井林辰憲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国際開発協会及び米州投資公社に対する加盟国の出資総額がそれぞれ増額されることとなることに伴い、国際開発協会に対し、従来の出資の額のほか、四千六百四十一億五千七百五十万円の範囲内において出資することを可能とするとともに、米州投資公社に対して国債で出資することを可能とし、当該国債の発行条件、償還等に関して必要な規定を追加するものであります。

 本案は、去る三月二十五日当委員会に付託され、翌二十六日加藤財務大臣から趣旨の説明を聴取し、四月二日から質疑に入り、同日質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第二、漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長御法川信英君。

    ―――――――――――――

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔御法川信英君登壇〕

御法川信英君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国の漁業をめぐる諸情勢の変化に対応して漁業災害補償制度の改善を図り、漁業経営の安定に資するため、漁獲共済及び特定養殖共済を統合して漁獲・特定養殖共済を創設し、併せて当該共済において二以上の漁業種類を一括して対象とする共済契約の成立等を可能とする等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月二十四日本委員会に付託され、翌二十五日江藤農林水産大臣から趣旨の説明を聴取し、昨四月二日質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、医療法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣福岡資麿君。

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) ただいま議題となりました医療法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 地域における医療提供体制については、二〇四〇年頃を見据え、医療、介護の複合ニーズを抱える八十五歳以上人口の増大や現役世代の減少等の課題に的確に対応できるようにするため、質が高く効率的で持続可能な体制を構築することが求められています。

 こうした状況を踏まえ、地域における医療機関の機能分化、連携の推進、医師偏在の是正及び適正な医療の提供のための環境整備並びに担い手が不足する医療現場における業務効率化の促進により、良質かつ適切な医療提供体制を構築することを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、二〇四〇年頃を見据えた新たな地域医療構想について、病床のみならず、入院、外来、在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とするとともに、地域医療構想調整会議の構成員として市町村を明確化し、在宅医療や介護との連携等を議題とする場合の参画を求めます。さらに、病床の機能に加え、医療機関機能の報告制度を設けます。

 また、オンライン診療を医療法に定義し、その手続やオンライン診療を受ける場所を提供する施設に係る規定を整備するとともに、美容医療を行う医療機関に対する定期報告義務等を設ける等の措置を講じます。

 第二に、医師偏在是正に向けた総合的な対策として、都道府県知事が、医療計画において重点的に医師の確保を図る必要がある区域を定めることができることとするとともに、保険者からの拠出による当該区域の医師の手当の支給に関する事業を設けます。

 また、外来医師が過多である区域において、無床診療所の開設希望者に対して、都道府県知事が必要とされる外来医療を確保するための要請を行うことができるようにする等、無床診療所への対応を強化します。さらに、保険医療機関の管理者について、保険医として一定年数の従事経験を有する者であること等を要件とし、当該保険医療機関の管理運営に関する責務を課すこととします。

 第三に、医療DXの推進を図るため、電子カルテ情報共有サービスを活用した電子カルテ情報の医療機関での共有等や感染症の発生届の届出、厚生労働大臣が保有する医療、介護関係のデータベースの仮名化情報の利用及び提供を可能とします。

 また、社会保険診療報酬支払基金を医療DXの運営に係る母体とするため、法人の名称、目的及び組織体制等の見直しを行うとともに、厚生労働大臣は、医療DXを推進するための医療情報化推進方針を策定することとします。その他、公費負担医療を受ける患者等の利便性の向上に資するよう、所要の規定を整備します。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和九年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。宗野創君。

    〔宗野創君登壇〕

宗野創君 立憲民主党の宗野創です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました政府提出、医療法等の一部を改正する法律案に対して質問をいたします。(拍手)

 私は、小学生のとき、祖母がパーキンソン、祖父が脳梗塞を患い、家族で十年にわたる療養支援、介護を経験しました。今、私がここに立っているのは、我が国の医療、介護制度のたまものです。この誇るべき医療サービスを国民の皆様が将来にわたって変わらず享受できることができる体制を構築するために、以下、質問をいたします。

 初めに、地域医療構想の見直しに関してお尋ねします。

 立憲民主党は、地域医療構想そのものについて否定するわけではありません。

 しかし、政府は、二〇一九年秋、地域医療構想において、病床削減、病院の統廃合を推し進めるため、地域医療確保のために重要な役割を担ってきた公立・公的病院を再検証対象医療機関のリストに載せて公表し、狙い撃ちにしてきました。自治体や医療関係者、住民などからは、医療提供体制の崩壊につながると多くの懸念や不安の声が上がりました。

 そこで、これまでの地域医療構想についてどのように考えているのか、厚生労働大臣に答弁を求めます。

 再検証対象医療機関とされて既に検証や措置が終わった医療機関に対して、更なる検証や病床数の見直しなどの措置を求めることはないと明言していただけますでしょうか。厚労大臣の答弁を求めます。

 また、再検証対象医療機関のリストについて、二〇二五年度に作成する新たなガイドラインにおいてどのように位置づけられるのか、御説明ください。

 先月発表された調査によると、経営難で赤字の病院は前年度より増えて六割にも上り、日本病院会などは、危機的状況であると警鐘を鳴らしています。

 公立・公的病院は、僻地における医療や、救急、小児、周産期などの不採算部門の医療を担う、まさにセーフティーネットの根幹です。これまでも公立・公的病院は厳しい経営を余儀なくされてきましたが、物価高騰の影響や人件費の増大によって、更に厳しい状況に置かれています。こうした状況は、首都圏も例外ではありません。私の地元、川崎市でも、三つの市立病院で計百八十億円近い累積赤字を抱えている旨の報道がありました。医療従事者の人材確保も課題です。

 地域医療を支える公立・公的病院の経営強化や人材確保等に重点的に取り組む必要があると考えますが、具体的な対策を厚労大臣に伺います。

 一方、総務省は、計画的に経営改善に取り組む公立病院の資金繰りを支援するため、経営改善の効果額の範囲内で活用できる病院事業債を創設しますが、経営改善の効果額をどのように算定するのでしょうか。総務大臣に伺います。

 立憲民主党は、かかりつけ医を法制度上定義し、地域住民との結びつきを確保するための事前登録を可能とする日本版家庭医制度を創設することを提案しており、二〇二一年には法案を提出しました。かかりつけ医は、地域住民に対して、日常からの健康相談、あらゆる健康上の問題に対して、その初期の段階で適切な対応を行い、必要に応じて予防管理や継続的な医療を総合的に提供するプライマリーケア機能を持ちます。

 政府は、二〇二三年の法改正で、かかりつけ医機能に関する規定を整備しましたが、機能報告の創設など、極めて小規模な制度変更にすぎません。二〇四〇年頃を見据えた医療提供体制確保に向けて抜本的な地域医療構想の見直しを行うのであれば、かかりつけ医の認定、登録制導入の必要性についてどのようにお考えでしょうか。厚労大臣の見解を伺います。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、医療提供体制の様々な課題が明らかになりました。コロナ禍では、入院すべきなのに入院できず、自宅で亡くなる方が相次ぎました。コロナ禍での課題をどのように総括し、どのように新たなガイドラインに反映させようとしているのか、厚労大臣の見解を伺います。

 本法案では、地域医療構想について、病床のみならず、入院、外来、在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とするとしています。医療と介護は密接な関係ではありますが、医療提供体制の確保については都道府県が、介護保険事業の運営は市町村が取り組んできており、その連携においても今も課題が山積しています。

 市町村にとってノウハウや体制も十分でない中で、国から市町村への対応が丸投げになってしまうことを危惧しています。国は、市町村への情報提供、具体的支援について検討していますか。厚労大臣の答弁を求めます。

 また、介護と連携するといっても、その基盤は大きく揺らいでいます。政府は、介護、障害福祉職員を対象に処遇改善を行っていますが、賃金は依然として全産業平均と比較して約八万円低い状況です。

 福岡大臣は、三月二十一日の記者会見で、特定の産業を対象とする特定最低賃金を介護分野に適用することに関して発言されましたが、本当に職員不足解消につながるのでしょうか。

 立憲民主党は、新年度予算の修正案を提出して、処遇改善を財源とセットで提示をしました。また、本年一月三十日には、議員立法、介護・障害福祉従事者処遇改善法案を日本維新の会、国民民主党と共同提出し、取り急ぎ月一万円、年十二万円の処遇改善を求めています。この議員立法を与野党協力し成立させて、処遇改善を実現するべきと考えますが、処遇改善に対する政府の見解を厚労大臣に伺います。

 次に、医師偏在対策に関して伺います。

 外来医師過多区域への規制的手法の導入は、一定評価できます。

 一方、本法案では、重点的に医師の確保を図る必要がある地域として、重点医師偏在対策支援区域を定め、保険者からの医師手当拠出金等による当該区域の医師への手当を支給する事業を設けることが規定されています。

 現在、地域に必要な医療提供体制の確保は、国、都道府県の責務であり、公的責任において負担するものとされ、消費税を財源とした基金が充てられています。

 そもそも、医師の人件費は医療費の一部であり、保険者は診療報酬を通して既に負担をしています。それにもかかわらず、医師偏在対策に係る費用を更に保険者に拠出金として納付義務を負わせるのは、合理性が不十分と考えます。

 社会保険料の活用は給付と負担の関係性が明確でなければならず、保険給付との関連性が乏しい施策の財源に保険料を充てることは制度を逸脱するおそれがあるのではないでしょうか。厚労大臣の見解を伺います。

 最後に、医療DXについて伺います。

 私は、かつて社会保障制度の研究のためスウェーデンを訪れました。そこで私が目にしたのは、スマートフォン一つで自らの医療情報にアクセスでき、病院の予約をし、処方箋を受け取る、そして、必要に応じてオンライン診療を国内のどこからでも受診することができる、そんな社会でした。

 世界に目を向ければ、デジタル技術によって医療サービスの利便性の向上とその適正化が両輪で進んでいます。日本の医療DXは周回遅れの感が否めません。本改正によって、絵に描いた餅の医療DXが、今度こそ真に進展することを望みます。

 その上で、電子カルテの普及について伺います。

 電子カルテ情報共有サービスを実効性のあるものとするためには、個人情報漏えいリスクを回避しながら、電子カルテの普及が大前提となります。しかし、厚労省の医療施設調査によると、二〇二三年十月時点で、診療所における電子カルテ普及率は五五%にとどまっています。そして、四〇・八%もの診療所が電子化する予定なしと回答をしています。

 政府は、遅くとも二〇三〇年には、おおむね全ての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテ導入を目指すとしていますが、この目標は実態と大きくかけ離れていると言わざるを得ません。普及が進まない要因をどのように分析されていますか。もし二〇三〇年に導入率一〇〇%を導入するのであれば、よほどの抜本的な現状打開策が必要と考えますが、厚労大臣の答弁を求めます。

 また、電子カルテ情報共有サービスの構築に必要な費用負担について、医療機関から不安の声が上がっています。医療機関の電子カルテシステムの改修、体制整備について、国の支援が必要ではありませんか。その具体策をお尋ねします。

 社会保険診療報酬支払基金から医療情報基盤・診療報酬審査支払機構に名称を変更し、組織体制を見直すことについて伺います。

 機構への改組に伴い、医療DXの運営を行うべく、これまでの診療報酬等の審査支払い業務に加えて、医療DX業務を担当する常勤理事を設けることなどが盛り込まれています。電子カルテ情報データベースの運用開始も、電子カルテの導入が完了する二〇三〇年までということでよろしいですか。厚労大臣に伺います。

 そうだとすると、あと五年しかありません。これまでとは比べ物にならない規模での専門人材の確保、そのための報酬水準の設定が急務であると考えますが、具体的なロードマップをお示しください。

 私たちは、医療DXの推進や、希望する人がマイナ保険証を利用することには賛成の立場です。ただし、その方法には課題があると考えます。

 今年度、千五百八十万人がマイナンバーカードの電子証明書の更新時期に当たります。五年ごとの更新に当たり、通知が来ますが、何らかの理由で更新しそびれてしまった場合、ある日突然、病院でマイナ保険証が使えなくなってしまうというケースが今後多発することも考えられます。

 病院に行った際、電子証明書の期限が切れており、マイナ保険証が使えない場合、その患者さんは保険診療を受けられるのでしょうか。それとも、一旦全額自己負担になるのでしょうか。一旦全額自己負担になり、治療が遅れたり治療が受けられなかったりするリスクに対して、政府はどのような対策を検討されているのでしょうか。

 加えて、電子証明書更新のため、役所に行く必要がありますが、高齢者の方がホームヘルパーなど付添いを必要とする場合、当該サービスを介護保険の対象として利用できるのでしょうか。厚労大臣に伺います。

 医療DXも、それそのものが目的ではありません。医療DXの先にはどんな社会があるのか、それを国民全体が共有できていることが肝要です。将来の医療提供体制のビジョンを明確に描き、発信する、政府のリーダーシップを期待して、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 宗野創議員の御質問にお答えいたします。

 これまでの地域医療構想についてお尋ねがありました。

 地域医療構想は、病床の削減や統廃合ありきではなく、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの変化に応じて、病床機能の分化、連携を図るものであり、都道府県を中心に、医療関係者、保険者等が参画する地域医療構想調整会議などにおいて協議を行いながら、地域の実情に応じた取組が進められております。

 その結果、病床数については、再検証対象医療機関を含め、二〇二五年に必要と推計した病床数に近づいており、機能別の病床数を見ても、急性期と慢性期が減少し、回復期が増加するなど、全体として地域医療構想の進捗が認められるものと考えます。

 再検証対象医療機関についてお尋ねがありました。

 再検証対象医療機関につきましては、二〇二五年に向けた地域医療構想の議論の活性化に向けて、対応方針の検討を行ってきたものです。再検証対象医療機関リストについては、リストに基づき更なる検証等を求めることや、新たな地域医療構想のガイドラインにリストを位置づけることは考えていません。

 その上で、新たな地域医療構想においては、高齢化や生産年齢人口の減少に伴う医療需要の変化に対応した提供体制の構築を行うこととしており、御指摘の再検証対象医療機関も含めて、地域での医療機関の役割分担や病床に関する協議を進めてまいります。

 公立・公的病院の支援についてお尋ねがありました。

 公立・公的病院を含め、地域に必要な医療を担っていただいている医療機関においては、現在、物価高騰や医療需要の急激な変化などに直面しています。

 こうした中、令和六年度の診療報酬改定や昨年の補正予算において、物価高騰や賃上げに対応する対策を講じつつ、令和七年度予算では、入院時の食費基準の引上げを行うこととしており、まずは必要な支援が現場に行き届くよう取り組みます。

 その上で、これから現場に行き届く補正予算の効果など、足下の情勢変化もしっかりと把握した上で、必要な対応を検討してまいります。

 かかりつけ医についてお尋ねがありました。

 身近な地域において日常的な診療等を行うかかりつけ医機能がますます求められるため、国民がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう、令和五年の医療法改正において、医療機関からかかりつけ医機能の報告を求め、地域の関係者で協議して必要な機能を確保する仕組みを創設しました。

 御指摘の登録制も含めて様々な議論が行われた中で、医療機関は患者が選ぶという国民の意識を踏まえると、登録制は抵抗感が強いのではないか等の御指摘をいただいており、令和五年に創設した仕組みを円滑に実施してまいります。

 新型コロナ対応を踏まえた地域医療構想の見直しについてお尋ねがありました。

 新型コロナ対応の課題として、医療機関の役割分担が明確でなく、また、医療人材確保の困難さ等から、地域によっては病床確保や発熱外来等が十分に確保されなかったことなどが指摘されています。

 このため、これまで、医療法や感染症法を改正し、医療計画に新興感染症への対応を記載するほか、平時から、都道府県と医療機関との間で、病床確保や発熱外来、人材派遣等に関する協定の締結を進めることとしています。

 新たな地域医療構想においても、感染症対策の観点も踏まえ、医療機関の役割分担、連携を推進していくことが重要であり、具体的な内容については、ガイドラインの検討に併せて検討してまいります。

 地域医療構想における市町村への支援についてお尋ねがありました。

 新たな地域医療構想においては、入院医療だけでなく、在宅医療、介護との連携等も対象としており、市町村の役割は重要です。

 このため、本法案では、地域医療構想調整会議の構成員として市町村を明確化しており、議題に応じて市町村に参画を促してまいります。その際、市町村への支援として、市町村の職員を対象とした研修の実施、都道府県から市町村への調整会議に関する情報提供、地域医療介護総合確保基金による市町村の取組の支援などを進めていきたいと考えております。

 介護、障害福祉分野における特定最低賃金や処遇改善についてお尋ねがありました。

 介護従事者を対象とした特定最低賃金の設定につきましては、総理や私からは断定的に制度の導入について検討とは申し上げておらず、特定最低賃金の制度趣旨等を踏まえ、労使の皆様の御意見や特定最低賃金の実態について再度確認し、検討することとしています。

 また、御党提出の法案の取扱いは国会で御判断いただくものと承知していますが、令和六年度の調査では、介護職員の平均給与額が前年比較で四・三%増と、報酬改定での想定の令和六年度二・五%を上回り、各種取組の効果は反映されているものと考えています。

 一方で、介護、障害福祉分野の処遇改善は引き続き喫緊の課題であり、処遇改善加算の要件の弾力化や、補正予算において賃上げに向けた支援を講じており、これらの措置が行き届くよう取り組んでまいります。

 その上で、施策の実施状況や処遇改善に与える効果を把握し、財源と併せて必要な対応を行ってまいります。

 医師手当事業の財源についてお尋ねがありました。

 重点的に医師を確保すべき区域における医師手当事業の財源については、医師の人件費は本来診療報酬により賄われるものであることや、診療報酬で対応した場合、特定の地域の患者負担の増加を招くことから、保険者の役割も踏まえ、保険給付と関連性があるものとして保険者からの拠出金により対応するものであり、医療保険制度の趣旨を逸脱するとは考えておりません。

 本事業の財源は診療報酬改定において一体的に確保することとしており、本事業の実施により、医療給付費や保険料の増加となるものではありません。

 電子カルテの普及についてお尋ねがありました。

 電子カルテを導入していない理由としては、異なる電子カルテを導入している医療機関の間では円滑に情報を共有できないなど、導入のメリットを感じにくいことや、導入コストへの懸念があるといった意見があると承知しています。

 このため、医療機関等の間で電子カルテ情報を共有するための電子カルテ情報共有サービスを構築するとともに、小規模な医療機関が導入しやすい安価な標準型電子カルテの開発を進め、病院に対しても、必要なシステム改修費用を補助することとしています。

 医療機関への負担にも十分配慮しながら、電子カルテの早期の普及に努めてまいります。

 電子カルテ情報のデータベースや社会保険診療報酬支払基金の改組についてお尋ねがありました。

 電子カルテ情報のデータベースについては、本法案において、公布後三年以内に構築のために必要な改正事項を施行することとしており、早期の構築と運用開始を目指してまいります。

 また、今般の改組に伴い、国が定める医療情報化推進方針に基づき中期計画を策定し、その中で、医療DX推進のために必要な人材の確保策を定めることとしています。

 データベースの運用開始に向けても、計画的な人材確保にしっかりと取り組んでまいります。

 マイナ保険証の電子証明書の期限切れ対策についてお尋ねがありました。

 マイナ保険証を利用する方々に確実に電子証明書を更新していただけるよう、電子証明書の更新を促す取組として、有効期限前から更新の案内や、医療機関等を受診した際のカードリーダー画面での更新アラート表示といった対応を行っています。

 また、有効期限を過ぎてから三か月間は、お手元のマイナンバーカードで資格確認を可能とするとともに、期間内に更新手続が行われない方には、マイナ保険証が使えなくなる前に、申請によらず資格確認書を発行するなど、更新を忘れた場合でも適切な負担割合で保険診療を受けられるような対策を講じています。

 このような取扱いについて、国民の皆様や医療機関等に対して、丁寧な周知を実施してまいります。

 電子証明書の更新手続と介護保険の関係についてお尋ねがありました。

 電子証明書の更新については、本人でなくても、本人からの委任を受けた代理人が行うことができるものと承知しています。

 その上で、身体介護等が必要な高齢者であって、役所に出向いて必要な手続を行わなければ日常生活に支障が生じる場合などにおいては、保険者の適切な判断やケアプランの変更の上、ホームヘルパーの付添いなどを介護保険サービスとして利用することが可能となっています。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 宗野議員からの御質問にお答えいたします。

 公立病院を支援するための新たな地方債における経営改善の効果額について御質問がありました。

 一つ、公立病院が厳しい経営環境に直面していることを踏まえ、公立病院の資金繰りを支援し、経営改善を促進するため、経営改善効果額の範囲内で発行できる新たな地方債を創設したところであります。

 この経営改善の効果額は、新たに策定する経営改善実行計画に位置づけられた経営改善の取組による収支改善見込額を基に算出することとしております。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 猪口幸子君。

    〔猪口幸子君登壇〕

猪口幸子君 日本維新の会の猪口幸子です。

 ただいま議題となりました医療法等の一部を改正する法律案について、日本維新の会を代表して質問します。(拍手)

 医療は日本社会を支える基本的なインフラであり、その中でも高額療養費制度は、国民の命を守るセーフティーネットとして重要な役割を果たしています。もしも深刻な病気にかかるという困難に直面した場合にも、生き続けることを諦めることが決してないように、患者と家族を支える制度です。

 医療費については、ほかに改革すべき部分が数多くあります。手をつけやすいところからといって高額療養費の負担を増やすのでは、国民の皆さんは納得しません。国民の声を受けて、政府は、衆議院を通過した予算を組み直して、今年八月からの高額療養費負担増を見送ることにしました。この政府の行動については一定の評価をしています。

 新型コロナウイルスによる感染への対応で大きな役割を果たした全国の医療機関は、コロナ以降になって経営的に大きな問題を抱えるようになりました。独立行政法人福祉医療機構の調査によれば、令和二年以降の病院の医業利益率は、急性期、慢性期、精神科共に年々低下する傾向にあり、特に急性期病院について、令和五年度の医業利益率はマイナス二・三%にも低下しています。政府は今、しっかりと重要なインフラを維持する対応をすべきです。

 医療の本質は人対人です。医療DXは、人が不足する部分を補い、また人でなくてもできることを行うものと理解しています。デジタル技術を導入し、効率化を進めることはとても重要ですが、常に倫理観を持って、医療を提供する側も医療を受ける側も、限られた医療資源を丁寧に、無駄のない効率的な方法で持続可能な制度として維持していくことが今求められているのだということを改めて主張いたしまして、質問に入ります。

 政府が本法案で進めようとする地域医療構想は、入院、外来、在宅医療、介護の各分野が連携を図ることを実現しようとするものです。二〇四〇年頃には、過疎地域では高齢者は減少し、都市部では高齢者が増加するため、地域ごとに必要となる医療体制は異なります。地域ごとに異なる医療ニーズに対し適切な対策を取るために、今回、地域医療構想調整会議の構成員として市町村を位置づけています。

 厚生労働大臣に質問します。地域医療構想調整会議における市町村の役割をどのように考えているのでしょうか。都道府県よりも現場医療の声に近い市町村が果たせる地域医療への役割は大きいと考えますが、今後どのように活用していくのでしょうか。お答えください。

 これまで政府は在宅医療を進めてきました。有料老人ホームなどの施設への医療提供は、自宅に住む患者に対する本来の在宅医療とは異なるものであり、在宅医療の中でゆがみが生じています。現在はサービスつき高齢者向け住宅への紹介業といった業種が出てきており、非営利という医療本来の在り方からすれば、余り適切とは言えない状況にあります。

 厚生労働大臣に質問します。自宅在住者に対する在宅医療の仕組みを、そのまま、本来の自宅ではない施設に適用することについて、その適切性をどのように認識されているのでしょうか。お答え願います。

 オンライン診療は、災害時や医師が少ない医療過疎地、パンデミック発生時には必要ですが、ただの問診だけのオンライン診療については、あくまで臨時の対応として位置づけるべきと考えます。オンライン診療の多用は、歩行状態、血圧、脈拍、心音、呼吸音、下肢の浮腫など、対面の診察でしか分からない症状を見逃す結果につながります。また、簡便であることから頻回受診につながり、医療費の増大をもたらすことが考えられます。オンライン診療については、国民の不安もあり、それを払拭するためにも適正なルールを設定する必要があると考えます。

 厚生労働大臣に質問します。オンライン診療に関しては、不正請求の事例も散見されていますが、適正な管理、運用に当たり、政府は何を課題とし、どのような管理と対策を実施するのでしょうか。

 新たにオンライン診療を受ける専門施設として、本法案では、公民館等の施設を利用することを想定しています。医療過疎地域において公民館等の利用は適切と考えますが、医療機関が多い地域では医療提供が過剰になります。そこには、医療費増大や不正請求の温床になる可能性が危惧されます。新たな設置に当たっては、地域医療のニーズを踏まえた上で適切に判断できる仕組みが必要と考えます。

 厚生労働大臣に質問します。オンライン診療受診施設の設置者は、設置後十日以内に届け出ることになっています。しかし、事後届けでは設置が適切かどうか判断することができません。被災地を例外として、設置前の届出にすべきと考えますが、本件について見解を伺います。

 本法案では、オンライン診療を行う医療機関の管理者が、オンライン診療受診施設設置者に対して、オンライン診療基準への適合性を確認することとなっています。オンライン診療を行う医療機関と受診施設が同一法人であるときや経営を一にする場合は、適切な確認がなされるとは思えません。

 厚生労働大臣に質問します。オンライン診療を提供する側と受診施設に対する保健所の立入検査や視察を徹底するべきと考えますが、見解を伺います。

 昨今、美容医療をめぐるトラブルが増えています。美容医療を行う医療機関における医療事故や、オンライン診療不正、術後管理のトラブル、専門性のない医師が治療に当たる等の問題が起きています。医師の資格のない経営者が営利目的で運営することは問題です。また、若い医師が収入のよさに引かれて十分な経験を積むことなく治療を実施することも問題です。

 厚生労働大臣に質問します。美容医療について、医師の偏在対策と併せて、専門医資格の有無の調査をすることや、広告の規制等の対応が必要と考えますが、見解を伺います。

 医師偏在是正に向けた総合的な対応については、地域医療の中核にある大学病院の活用が重要であると考えます。特定機能病院としての大学病院本院の在り方をより明確にし、基礎的基準として、医師派遣の機能を必須化することが必要と考えます。このことで地域医療構想の実現と医師偏在の対策の両方を改善できるのではないでしょうか。

 厚生労働大臣に質問します。大学病院の在り方としては、専門的医療、先進医療、難病医療の実施、基本診療科の幅広い設置、教育、研究に加えて、新たに地域に一定の医師の派遣を行うことを明記することで、地域の医療機関や地方自治体とのネットワークが構築され、医師の偏在も解消されると考えますが、見解を伺います。

 医師の偏在とともに、診療科の偏在も深刻です。外科や産婦人科については、長時間勤務になりやすいために希望者が減少しています。また、近年は高齢出産が増加し、母子共に命の危険を伴う出産が多くなっており、裁判リスクを考えた負担も選択を避ける原因となっています。

 厚生労働大臣に質問します。外科や産婦人科などの外科系医療を維持するために、チームによる診療を促進し、特定の医師にかかる負担の軽減を図る必要があると考えますが、見解を伺います。

 高齢化が進んでおり、二〇四〇年まで医療ニーズは上昇するため、医療の効率化、医療DXは進めていかなければなりません。医療DXの初期の段階として進めている電子カルテは、病院への導入は進んでいますが、国民からすれば、医療機関の窓口とも言える中小の診療所への普及は余り進んでいません。医療機関全体の普及率はいまだ五〇%程度でしかありません。

 厚生労働大臣に質問します。電子カルテで共有される医療情報において、中小の診療所は情報を拠出する側であり、導入に余りメリットを感じません。そのような診療所に電子カルテを導入するためには大きなインセンティブが必要と考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

 本法案では、医療機関が、三文書六情報を社会保険診療報酬支払基金に提供し、同基金が有する電子カルテ情報共有サービスとして、全国の医療機関、医療保険者、そして個人に情報が提供される仕組みが構築されるとしています。電子カルテ情報共有サービスの構築に当たっては、システムの構築と運用には費用がかかります。現在、医療機関への保険料の支払いは、社会保険診療報酬支払基金と国保連合会の二本立てとなっており、支払基金に情報集約をするためのシステム改変など、新たな取組が必要と考えられます。

 厚生労働大臣に質問します。医療保険は、被保険者、雇用者、そして国が負担していますが、この構築と運用の費用は誰が負担するのでしょうか。被保険者や雇用者の負担が増えるのでしょうか。お答え願います。

 本法案では、社会保険診療報酬支払基金は、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構に名称を変更し、組織改編をするとしています。実際には、情報通信に強い人材を多数導入しなければ実現は難しいのではないでしょうか。

 厚生労働大臣に質問します。情報通信に強い人材を集めるには、どのような施策があるのでしょうか。全国的なシステム構築に必要な人材の確保策についてお答えください。

 電子カルテで集約した医療情報は、パーソナル・ヘルス・レコードとして活用し、生涯にわたる健康の維持のための礎となる仕組みと考えています。生活習慣病の改善や遺伝情報を活用した健康づくりなど、新しい健康社会の在り方をこれからも議論していくべきであると考えます。

 厚生労働大臣に質問します。全ての日本国民が最適な医療を受けられる仕組みを構築していくことと、そのための施策のあるべき姿について見解を伺います。

 日本維新の会は、現役世代の社会保険料の負担を軽減することを主張しています。その施策を実施する上で大事なことは、患者目線を忘れないことと実行可能であることです。日本中の病院が経営の危機に直面している現状において、地域医療を守るための方策を進めていかなければなりません。誰かが暴利を得られるような欠陥を排除した適切な医療制度を実現するための努力を続けてまいりますことをお約束しまして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 猪口幸子議員の御質問にお答えいたします。

 地域医療構想調整会議における市町村の役割についてお尋ねがありました。

 新たな地域医療構想においては、入院医療だけでなく、在宅医療、介護との連携等も対象としており、介護保険事業などを運営する市町村の役割も重要です。

 このため、本法案では、地域医療構想調整会議の構成員として市町村を明確化しており、議題に応じて市町村に参画を促してまいります。これにより、市町村とともに、在宅医療、介護連携、かかりつけ医機能の確保等の取組を推進してまいります。

 在宅医療の仕組みについてお尋ねがありました。

 在宅医療については、有料老人ホーム等の住まいを含め、住み慣れた地域で患者が生活できるよう、必要な提供体制を整備するとともに、診療報酬においても、患者の居住場所や患者の状態等に応じて必要十分な医療が提供されるよう、適切に評価することが重要であると考えています。

 二〇四〇年頃を見据えると、高齢化に伴い在宅医療等の需要が更に増加することが見込まれており、在宅医療の体制確保の在り方について、自宅以外の住まいに対する効率的な医療の提供も含め、関係者の意見も伺いながら検討を進めてまいります。

 オンライン診療の課題と対策についてお尋ねがありました。

 オンライン診療は、医療資源が少ない地域を始め、医療アクセスの確保に有用であることから、適切な実施と推進を図ることが重要です。

 これまで通知によって運用してきましたが、法令の解釈で適切な実施を図るには課題があり、本法案においてオンライン診療を行う基準を示し、医療機関が遵守する義務等を新たに創設することとしています。

 オンライン診療受診施設の届出についてお尋ねがありました。

 オンライン診療受診施設は、医療そのものは提供せず、患者がオンライン診療を受ける場所として、本法案により医療法上に創設するものです。

 また、地域の需要に応じて、患者が適切にオンライン診療を受けられる場所を速やかに設置できるようにしておくことも重要です。このため、事前の届出を求めることとはしていないところでございます。

 オンライン診療を提供する医療機関や受診施設に対する立入検査についてお尋ねがありました。

 本法案では、オンライン診療を提供する医療機関に対して、受診施設でのオンライン診療に係る各種遵守義務を課しており、これにより適切な実施を図ることとしています。

 提供する医療機関が、この義務も含め法令違反が疑われる場合には、都道府県知事等は、開設者と管理者に対して立入検査等を行うことが可能となります。

 また、受診施設についても、設置の届出の内容と運営の実態が異なるなどの法令に反している疑いがある場合などは、同様に立入検査を行うことができることとなります。こうしたことを通じて、適切なオンライン診療の推進を図ってまいります。

 美容医療への対応についてお尋ねがありました。

 近年、美容医療の需要が増加している一方で、苦情相談も増加している状況を踏まえ、本法案において、医療の安全の確保に必要な情報の把握等を目的として、医療機関による定期的な報告、公表制度を創設することとしており、報告、公表の内容については、専門医資格の有無も含めて検討しています。

 また、これに加えて、関係学会によるガイドラインの策定や医療広告のネットパトロールの強化などの必要な対応を着実に進めてまいります。

 大学病院の在り方についてお尋ねがありました。

 新たな地域医療構想においては、検討会の取りまとめを踏まえ、医療機関の役割分担、連携を進める中で、広域の観点から求められる医師の派遣や医療従事者の育成、広域診療の機能について、大学病院本院の役割として位置づけ、地域全体で確保していくことを検討しています。

 大学病院本院が担う具体的な機能や大学病院の在り方については、本法案の御審議も踏まえ、引き続き、医療関係者や地方自治体、大学関係者等の御意見を伺いながら、関係省庁とも連携し、検討してまいります。

 外科医師等の負担軽減についてお尋ねがありました。

 医師の診療科偏在を含めた医師偏在の是正に向けては、昨年末に策定した総合的な対策パッケージなどを踏まえて取り組むこととしています。

 特に、外科を担う医師の現状として、外科医師等の数が増加しておらず、医師の働き方改革を進め、医師から看護師等の医療従事者へのタスクシフト・シェアなど、業務効率化や医師の負担軽減を図ってまいります。また、今後、新たな地域医療構想による医療機関の連携、再編、集約化を通じて、医療従事者の効率的な働き方を可能にし、持続可能な医療提供体制の確保に取り組んでまいります。

 診療所における電子カルテの導入についてお尋ねがありました。

 電子カルテを導入していない理由としては、異なる電子カルテを導入している医療機関の間では円滑に情報を共有できないなど、メリットを感じにくいことや、コストへの懸念の意見があると承知しています。

 このため、医療機関等の間で電子カルテ情報を共有するための電子カルテ情報共有サービスを構築するとともに、小規模な医療機関が導入しやすい安価な標準型電子カルテの開発を進めてまいります。

 その上で、医療DX工程表において、未導入の医療機関を含め、必要な支援策を検討していくこととしており、医療機関への負担にも十分配慮しながら、電子カルテの早期の普及に努めてまいります。

 電子カルテ情報共有サービスの費用負担についてお尋ねがありました。

 電子カルテ情報共有サービスは、国、医療機関、保険者それぞれにメリットをもたらすことから、費用全体をそれぞれが一定程度負担することとしています。

 具体的には、国がシステムの構築費用を負担し、各医療機関は共有のために必要な電子カルテの改修費用等を負担することにしています。保険者は、電子カルテ情報の共有により、効率的な医療提供や保険者の事務負担の軽減等のメリットがあることを踏まえ、制度として一定程度確立した後において運用費用を負担していただくことを想定しています。

 関係者がサービスのメリットを早期に実感できるよう、速やかな普及に努めてまいります。

 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構の人材確保策についてお尋ねがありました。

 医療DXを推進するためには、専門的な知見を持った有能なIT人材の確保を計画的に進めていくことが重要だと考えています。

 社会保険診療報酬支払基金では、現在でも、有能なIT人材の確保に向けて、専門的知識を有する新卒、社会人の採用の強化、DX人材のキャリアパスの設定などの取組を進めているところです。

 さらに、今般の改組に伴い、国が定める医療情報化推進方針に基づき中期計画を策定し、その中で医療DX推進のために必要な人材の確保策を定めることとしており、計画的な人材確保にしっかりと取り組んでまいります。

 最適な医療のための施策についてお尋ねがありました。

 患者本人の医療情報を活用するなど、よりよい医療を受けることができるよう、本法案では、患者本人の電子カルテ情報の医療機関での共有や、患者本人がマイナポータルで自身の電子カルテ情報の閲覧を可能とする医療DXの推進を図ることとしています。

 加えて、こうした医療DXの基盤の下で、全ての地域で全ての世代が将来にわたって適切な医療を受け、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができるよう、本法案では、新たな地域医療構想や医師偏在対策などを盛り込んでいるところです。各地域において、医療DXも活用した持続可能な医療提供体制を構築してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 沼崎満子君。

    〔沼崎満子君登壇〕

沼崎満子君 公明党の沼崎満子です。

 ただいま議題となりました医療法の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 私は、昨年の総選挙で初当選し、それ以前は、二十六年間、麻酔科医として地域の中核病院で働いてまいりました。その中で急激な高齢化を実感しておりました。私が医師となった当初、八十歳以上の方が手術を受けることはまれでしたが、今では多くの高齢者が手術を受けており、私自身、百歳以上の方の手術も経験しております。

 高齢者においては、慢性疾患の合併等により回復に時間がかかり、入院をきっかけに介護が必要になることも多く、医療と介護の連携、治し支える環境の整備が必要であると強く感じています。

 日本は、少子高齢化と人口減少により、二〇四〇年頃に向けて高齢者人口がピークに達し、生産年齢人口が大幅に減少する見込みです。こうした大きな変革期にあって、国民一人一人が安心して医療サービスを受けられる環境を構築しなければなりません。

 そのための具体策として、私たち公明党は、昨年九月に二〇四〇ビジョンの中間取りまとめを発表しました。その中で、全国どこでも命と健康が守られる社会をつくることを掲げ、全国各地の医療ニーズを把握した上で必要な医療者を確保し、遠隔医療や訪問医療を組み合わせた総合的な医療プランの策定などを求めています。

 そこで、全て厚生労働大臣に伺います。

 本法律案は、高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口構造の変化に対応し、地域で良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の構築に必要な措置を講じるものですが、二〇四〇年頃に向けて医療に関する課題は山積しています。それぞれの課題について、政府が的確な対策を実行できるかどうか、極めて重要な局面を迎えています。

 地域により直面する課題も様々ですが、国が大きなビジョンを描き、力強いリーダーシップを発揮していただきたい。二〇四〇年頃に向けた医療提供体制の構築について、大臣の決意を伺います。

 本法案では、地域医療構想について、二〇四〇年頃を見据えた医療提供体制の確保を目指し、病床だけでなく、入院、外来、在宅医療、介護との連携を含む医療提供体制全体の構想としています。特に、医療と介護の複合ニーズが必要な八十五歳以上の高齢者が増加することを見据えた構想であり、必要な見直しだと考えています。

 医療提供体制は地域によって格差が存在しており、地域の実情に合わせた構想が必要です。この点について、具体的にどのように作成していくことを想定しているのか、また、それによって医療提供体制がどのように変わることを期待しているのか、大臣の見解を伺います。

 次に、オンライン診療について伺います。

 オンライン診療は、医師の少ない地域で住民の健康を支える重要な手段となり得ます。今回の改正でオンライン診療を医療法に定義することによって、よりオンライン診療が提供しやすくなることを期待しています。

 しかし、容体の悪化や緊急で治療が必要な場合など、対面でなければ実施できないケースも存在します。このような場合の解決策の一つとして、ドクターヘリやドクターカーの活用も考えられますが、政府として具体的にどのような方針で進めていくのか、大臣の見解を伺います。

 私が指導した研修医の中にも、最初から美容医療を希望する人が増えていました。最近では、直美といって、医師が二年間の初期研修を修了してすぐに、一般的な保険診療科での実務経験を積まずに、直接美容外科に就職するケースも見受けられます。美容医療に関する相談件数は、二〇二一年に二千六百二件が二〇二三年には五千五百七件と倍増しており、研修や教育が不十分な医師が対応していることや、安全管理の体制や実施状況の把握ができないなど、様々な問題が生じています。

 今回の改正では、美容医療を適切に実施するために、美容医療を行う医療機関における定期報告義務等が設けられることとなっており、安全な医療の提供のために必要な措置と考えます。

 自由診療においては、利益追求の傾向が強くなること、保険診療と異なり、安全管理や報告義務も不十分で課題が多いと認識しています。今回、特に自由診療においても美容医療に関して改正を行った理由についてお聞かせください。

 また、今後、指導や監視が実効的に行われるためにどのような対策が必要と思われますか。美容医療への医師の流出は保険医療の医師不足にもつながりますが、保険医療の先行きや働き方への不安が流出の要因となっているようです。病院経営が厳しいとの声を多くいただいており、引き続き安定した保険医療の構築が必須と考えますが、大臣の見解をお伺いします。

 次に、医師偏在対策について伺います。

 特に地方での医師不足は顕著となっています。私自身も地方の病院で、緊急手術に対応できず、救急車を何台も断る場面や、人手不足の中、過重労働の中で働く医療従事者の姿を見てきました。医師の偏在対策として、医学部の地域枠を設けるなどの施策が取られており、地方の病院で一定の効果があったとの意見も伺っています。今までの対策で得られた評価と、まだ不足している点について、更に解消するための具体的な対策を講じることが重要と考えます。

 また、現在、外科医の希望者が少なくなっており、診療科の偏在も深刻な問題です。この診療科の偏在対策についても、医療の質を維持し、地域住民の健康を守るため、早急に取り組む必要性があると考えています。医師偏在対策に向けて総合的な対策を実施すべきと考えますが、大臣の見解を伺います。

 次に、医療DXの推進について伺います。

 効率的な医療提供体制を構築する上で、医療DXの推進は欠かせません。本法案において電子カルテ情報の医療機関での共有が可能となることは、医療の質向上に寄与する重要な一歩です。本法案で共有情報として定められている三文書六情報については、今後更に拡張すべきであり、医療現場のニーズに応じてより多くの情報を共有することで、患者の安全性や治療の質を向上させることができると考えています。

 また、神奈川県では、さくらネットという地域の医療連携システムがいち早く稼働しています。このような既存のシステムとの連携や、既に稼働している電子カルテシステムとの統合は、医療DXの成功に不可欠です。一方で、電子カルテシステムの導入や維持管理には多大なコストがかかります。国として、医療機関が負担を軽減できるような支援策や助成金制度の整備を進めることが重要です。医療DXの推進について、大臣の見解を伺います。

 全ての人が安心して医療を受けられる体制を維持するために、国として全力を挙げて取り組むことを期待し、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 沼崎満子議員の御質問にお答えいたします。

 二〇四〇年に向けた医療提供体制の構築についてお尋ねがありました。

 二〇四〇年頃に向けて、生産年齢人口を中心に人口は減少し、八十五歳以上を中心に高齢者の増加が見込まれます。また、こうした変化は地域で異なり、地域ごとに求められる医療提供体制は一律のものにはならないと考えています。

 こうした認識を都道府県を始めとした関係者と共有し、本法案に盛り込んでいる新たな地域医療構想、医師偏在是正に向けた総合的な対策、医療DXの推進などを通じて、各地域において、良質かつ適切な医療提供体制を構築してまいります。

 地域医療構想の見直しについてお尋ねがありました。

 二〇四〇年頃を見据え、八十五歳以上の高齢者の増加や人口減少が進む中、新たな地域医療構想を通じて、全ての地域、世代の方が適切に医療、介護を受けられるとともに、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を構築することが重要です。

 新たな地域医療構想においては、都道府県を中心に、医療機関からの機能報告等のデータに基づき、地域の関係者で協議を行い、将来の医療提供体制の方向性や、医療機関の役割分担、連携を推進するための取組などを定めることを想定しています。

 こうした取組を通じて、地域の実情に応じて、今後の高齢者救急や在宅医療の需要に対応し、治し支える医療を担う医療機関や、一定の症例を集約した急性期医療の拠点となる医療機関を確保していくことを期待しています。

 オンライン診療の推進やドクターヘリ等の活用についてお尋ねがありました。

 オンライン診療は、医療資源が少ない地域における医療アクセスの確保に有用と認識しています。その際、患者の安全性の担保は重要であるため、指針を定め、医療機関に対し、患者の急病急変時等に対面診療を速やかに提供できる体制を整備するよう求めており、引き続き周知を図ってまいります。

 また、特に離島など医療資源の少ない地域においては、緊急の治療を要する場合など、ドクターヘリやドクターカーも有効な場合があると考えており、引き続き効果的な活用に向けた財政支援を進めてまいります。

 美容医療の法改正などについてお尋ねがありました。

 美容医療については、健康被害を含む相談件数の増加等を踏まえ、安全に提供されるよう、本法案において、美容医療を行う医療機関による定期的な報告、公表制度を創設することとしています。

 その際、未報告の場合の命令といった履行確保措置を設けるほか、報告、公表された内容を基に都道府県等において必要な確認等を行うことにより、実効性を担保してまいります。

 また、地域の保険医療機関が物価高騰や医療需要の急激な変化などに直面する中、安定的な運営に向け、これまでも診療報酬や補正予算などで対策を講じており、まずは必要な支援が現場に行き届くよう取り組んでまいります。

 医師偏在対策についてお尋ねがありました。

 医師偏在対策については、これまで医師養成過程の取組を中心に取組を進めてきました。

 今般、診療科偏在対策を含めた更なる対策を進めるために、医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージを策定した上で、本法案を提出し、経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組み、医師のリカレント教育や全国的なマッチング機能の支援、外科等の分野における処遇改善に向けた支援などを組み合わせた総合的な対策を進めてまいります。

 本法案が成立した際には、御審議の内容も踏まえ、地方自治体、医療関係者、保険者等の御意見を伺いながら、実効性のある取組を進めてまいります。

 医療DXの推進についてお尋ねがありました。

 医療DXを推進し、医療機関のカルテの情報が医療機関等の間で電子的に共有されれば、より質が高く安全な医療の提供や、医療機関等の事務コストの軽減に資するものと考えています。

 このため、本法案においても、全国の医療機関等で電子カルテ情報を共有、閲覧できるようにするために必要な措置を盛り込んでいます。

 あわせて、医療機関の負担を軽減するため、病院に対し必要なシステム改修費用を補助するなど、医療機関の負担等にも配慮しながら医療DXを推進してまいります。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    村上誠一郎君

       財務大臣    加藤 勝信君

       厚生労働大臣  福岡 資麿君

       農林水産大臣  江藤  拓君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣 仁木 博文君


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