第24号 令和7年5月8日(木曜日)
令和七年五月八日(木曜日)―――――――――――――
議事日程 第二十二号
令和七年五月八日
午後一時開議
第一 民事裁判情報の活用の促進に関する法律案(内閣提出)
第二 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 民事裁判情報の活用の促進に関する法律案(内閣提出)
日程第二 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 民事裁判情報の活用の促進に関する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長西村智奈美君。
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民事裁判情報の活用の促進に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔西村智奈美君登壇〕
○西村智奈美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、民事裁判情報の適正かつ効果的な活用の促進を図るため、国の責務及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、民事裁判情報を加工して第三者に提供する業務等を行う法人の指定に関する制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。
本案は、去る四月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日鈴木法務大臣から趣旨の説明を聴取し、二十五日、質疑を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(額賀福志郎君) 日程第二、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生労働委員長藤丸敏君。
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労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔藤丸敏君登壇〕
○藤丸敏君 ただいま議題となりました労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、多様な人材が安全に、かつ、安心して働き続けられる職場環境の整備を推進するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、個人事業者を労働安全衛生法に位置づけ、労働者のみならず個人事業者等による労働災害を防止するための規定を設けること、
第二に、労働者数五十人未満の事業場におけるストレスチェックの実施を義務とすること、
第三に、化学物質の危険性及び有害性情報の通知義務違反に罰則を設けること、
第四に、産業機械の検査体制を見直し、民間の登録機関が実施できる範囲を拡大すること、
第五に、高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とすること
等であります。
本案は、参議院先議に係るもので、去る四月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日福岡厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、二十五日から質疑に入り、昨日質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、環境影響評価法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。環境大臣浅尾慶一郎君。
〔国務大臣浅尾慶一郎君登壇〕
○国務大臣(浅尾慶一郎君) ただ今議題となりました環境影響評価法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
環境影響評価法については、施行から四半世紀以上が経過し、環境影響評価の適用実績が着実に積み重ねられてきているところでありますが、今般、前回の改正法の施行から十年が経過したことから、同法の附則に定める施行状況の検討を行ったところ、次のような二つの課題が明らかになったところであります。
一点目は、今後、既存の工作物の建替えを行う環境影響評価の対象事業の割合が増加していくことが予想されているところ、現行法には、事業の位置や規模が大きく変わらない建替えに対する規定がなく、新規事業と同様に、事業位置や周辺環境の調査を事業者に課していることであります。
二点目は、過去の環境影響評価により得られた情報は、後続事業者による効果的な環境影響評価の実施等に資するものであるところ、現行法では環境影響評価に係る書類の公表がおおむね一か月程度に限られており、これらの情報を十分に活用できないことであります。
本法律案は、このような背景を踏まえ、工作物の建替えに関する環境影響評価手続の見直しを図るとともに、環境影響評価手続において作成された書類に含まれる環境情報の活用を進めるものであります。
次に、本法律案の内容の概要について、主に二点御説明申し上げます。
第一に、工作物の建替えに関する事業、具体的には、既存の工作物を除去又はその使用を廃止し、同種の工作物を同一又は近接した区域に新設する事業については、配慮書の記載事項のうち事業実施想定区域の選定に係る調査、予測及び評価に関するものに代えて、既存の工作物による環境影響に関する調査結果を踏まえ、環境の保全のための配慮の内容を明らかにするものとします。これにより、適正な環境配慮を維持しつつ、事業の特性を踏まえた効果的、効率的な環境影響評価手続を実施することが可能となります。
第二に、環境影響評価手続において作成される書類について、現行法の規定による公表の期間後においても、これらの書類を作成した事業者等の同意を得た上で、環境大臣が公開できるものとします。これにより、後続事業者による効果的な環境影響評価の実施や、事業の透明性の向上による地域の理解醸成に貢献します。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。川原田英世君。
〔川原田英世君登壇〕
○川原田英世君 立憲民主党の川原田英世です。
ただいま議題となりました環境影響評価法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、質問いたします。(拍手)
国内では、再生可能エネルギーの設備を中心に、環境影響評価法の対象となる建て替え事業の増加が見込まれます。本改正案は、そうした建て替え事業についての手続の合理化など一定評価できる点もありますが、幾つか問題点もありますので、現状における課題等を踏まえて、以下、全て環境大臣に質問いたします。
まず、環境影響評価制度の事業規模要件について伺います。
国内において、例えば再生可能エネルギー事業を進めていく上で、適正な環境配慮と地域の合意形成が十分に図られていない事例が散見されます。
生物多様性豊かな釧路湿原周辺において建設が相次いでいる太陽光発電事業については、そのほとんどが環境影響評価法と北海道環境影響評価条例の対象外の事業規模となることから、事前に市民が計画について知ることもなく工事が実施され、自然が損なわれて初めて事業の実態を知ることとなっています。
環境省や国交省も構成メンバーである釧路湿原自然再生協議会は、複数の事業区域が近接しているケースは相乗的に大きな影響が生じる可能性があるとし、個々の事業規模だけでなく、近接する複数の事業による累積的な影響への対応を提言しています。
このように、近接する複数の事業区を一体として捉え、累積的な環境影響を適切に評価する必要性についてどのように考えているのか、大臣の見解を伺います。また、地域住民などの懸念が事業者や自治体に共有され、実効性のある対策が講じられるようにする必要があると考えますが、見解を伺います。
次に、事業の工事中において、環境アセスメント時に分からなかった環境状況が判明した場合の対応について伺います。
沖縄県の辺野古基地建設の埋立工事では、計画時には分からなかったとされる軟弱地盤があることが判明し、工事の規模と内容が大きく変わり、工期、予算が当初計画と比べ実質約三倍となるなど大きく変更されましたが、住民への説明や地域の意見を聞く場は設けられず、強引に進められていると指摘されています。
このような、当初の環境アセスメント時においては分からなかった状況が工事中に判明した場合で、極めて重大な場合には、再度手続をやり直すことも含め、何らかの手続を踏む必要があるのではないかと考えますが、大臣の見解を伺います。
次に、工事が終了し、事業実施後に環境アセスメントでは想定していなかった環境への影響が生じた場合の対応について伺います。
北海道幌延町では、風力発電施設の稼働後、国の天然記念物であるオオワシなどが複数回バードストライクで死傷する事態が発生しました。環境アセスメントでは影響が小さいと報告されていましたが、実際には想定の十倍以上の被害が確認され、風車の稼働が一時停止するなど、実態との乖離が明らかになりました。
環境アセス段階で影響は小さいとされた被害が事業実施後に重大な影響を現にもたらした場合には、現行法ではどのように対応することになっているのか、大臣の見解を伺います。
また、発電所の環境アセスの場合、電気事業法の特例により、環境大臣への報告書の送付は義務づけられていないため、事業実施後に何らかの重大な影響が生じても、環境大臣には報告書に対して意見を述べる機会が与えられていません。報告書が送付されるための制度上の仕組みを早期に構築し、意見を述べることができる仕組みが必要と考えますが、大臣の見解を伺います。
次に、本改正案における建て替え事業に関わる手続について伺います。
国内の風力発電については、一九八一年に国内初の大型風車の開発が始まってから四十年以上が経過した今、風力発電施設の建て替えや解体が予想されます。このことから、本改正案では、古くなった発電所や設備を建て替える際、手続を合理的に進められる仕組みが取り入れられている点は一定評価いたします。
一方で、技術の進歩によって設備の大型化や大規模化が進んでおり、建て替えであっても環境への影響を考慮し、一定の基準を設けた上で事業者に環境配慮を求める必要があると考えます。さらには、建て替えの際の資材の運搬や置場のために、新たに自然環境に手を加えることの影響もしっかり考えることが大切だと考えます。
そこで、建て替えにおいて考慮すべき周辺環境の範囲をどのように考えているのか、大臣の見解を伺います。また、設備の大規模化、大型化によって環境影響が拡大するような場合は、どのように環境への配慮を環境大臣意見などで求めるのか、大臣の見解を求めます。
次に、施設の建て替えにおける環境保全のための配慮の内容について伺います。
風力発電施設の稼働時に、基準を超えた騒音や景観に影響を及ぼしている場合などには、建て替え事業においてその問題をどう改善するか、建て替えによって環境への影響が回避若しくは低減されるのかの調査と、その評価が必要になると考えられます。
そこで、施設の建て替えに際して、過去に生じていた環境への影響をどの程度改善する必要があるのか、そして、改善の基準を誰がどのように作成するのかについて、大臣の認識を伺います。さらには、内容が適切かどうか、どの指標で判断するのか、どのように判断する主体を設けるのか、大臣に見解を伺います。
次に、環境影響評価図書の公開について伺います。
環境影響評価図書とは、環境影響評価法に基づく手続として、事業者が作成し縦覧、公表する配慮書、方法書、準備書、評価書及び報告書等の書類の総称で、アセス図書ともいいます。現行法では、それぞれの段階において、一か月の縦覧、公表期間が終了した後、原則として閲覧することができません。本改正案では、事業者の同意を得た上で、環境大臣がアセス図書を公開することができるとし、その点は一定評価します。
アセス図書の手続や細かな基準は、法律や条例、告示により定められています。提出されたアセス図書がそれらの基準に合っているかどうかを確認する主体は、環境大臣や主務大臣並びに都道府県知事や政令市の市長などとなっていますが、アセス図書に求められる基準や提出すべき資料、データはどのように決められているのか、伺います。
また、事業者が提出したアセス図書について、必要なデータが十分にそろっていない、あるいは記載内容が形式的で実質を伴っていないなどといった問題が生じる場合、提出されたアセス図書が基準に適合しているかを誰がどのような基準で審査しているのか、そして、審査における判断の透明性をどう確保しているのか、大臣に伺います。
また、アセス図書の公開において、事業者が一部のデータなどを公開しない場合や虚偽記載があった場合、環境影響評価法あるいは条例で、政府や地方公共団体はどのような対応を取ることになっているのか、伺います。
そして、公開資料の透明性について、例えば、長野県のトンネル建設計画における意見書の黒塗りや、東京都の焼却施設計画における図面の黒塗りが報告されていますが、こうした資料の不透明な公開についてどのように考えているのか、見解を伺います。
さらには、アセス図書の公開期間については、少なくとも、該当する施設が稼働している期間中の公開が望ましいと考えますが、大臣の考えを伺います。
次に、環境影響評価図書の活用について伺います。
環境影響評価図書には、環境影響や生物調査に関する貴重なデータが含まれており、事業の実施以外にも、研究促進や技術向上に活用することが期待されています。また、継続的に公開されることにより、事業者が他事業者の環境保全措置等を参考にできるなど、情報共有を図ることができます。
環境省においては、環境影響評価図書に含まれる貴重なデータを収集するだけでなく、累積的影響評価の実施などを含む将来の利用に供するための環境データとして集積を行い、例えば、環境アセスメントデータベース、EADASに情報を反映するなど、検索、抽出できるシステムを構築することも可能になると考えますが、今後のデータの活用方針や具体的な取組についてどのように考えているのか、大臣に伺います。
最後に、戦略的環境アセスメントの導入について伺います。
一九九七年に法制化され、二〇一一年に法改正された我が国の環境影響評価法は、評価の対象を事業単位であることを前提としているため、国や自治体などの複数の事業に関係するような計画や、事業に先立つ上位計画や政策などの段階は、評価対象とされていません。
諸外国では、政策などの立案主体が環境影響を予測、評価し、その結果を政策等の意思決定に反映させる戦略的環境アセスメントの導入が進んでいます。
そこで、まず、二〇一一年の第百七十七回国会における附帯決議でも、戦略的環境アセスメントの制度化に向けた検討が政府に求められていますが、この附帯決議に対して、これまでどのように取り組んできたのか、伺います。
そして、事業実施段階の環境アセスではなく、国や自治体などが、事業に先立つ上位計画の立案段階や、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある道路、河川やダム、鉄道、発電所、廃棄物処理施設、広域複合開発などの計画等を立案する段階での戦略的環境アセスメント導入について、その必要性の有無も含め、政府はどのような認識を持ち、どのように取組を進めようとしているのか、お答えください。
以上、現段階における各課題、そして本改正において見えてきた課題、さらには今後における課題について質問をさせていただきました。
立憲民主党は、多様な生態系や自然環境との調和を図りつつ、地域ごとの特性を生かした自然再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、持続可能な社会を目指します。そのために、今後も現場の声を丁寧に拾い上げ、制度改革に全力を尽くすことをお誓いし、私の質疑を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣浅尾慶一郎君登壇〕
○国務大臣(浅尾慶一郎君) 川原田議員から、九問の質問をいただきました。
まず、環境影響評価法や条例の対象にならない事業が累積することによる環境影響評価の必要性及び当該事業に係る地域住民への懸念への対応についてお尋ねがありました。
再エネを始めとする開発事業が、森林法など個別の土地利用を規制する法律に従って適切に行われることを前提として、我が国の環境影響評価制度は、開発規模の大小により法律と条例で対象を分け、国と自治体が一体となって事業における環境配慮を確保する仕組みとなっています。
その上で、政府としては、環境影響評価法に基づく環境大臣意見において、必要に応じて、事業者に対し、累積的な環境影響について適切に調査、予測、評価を実施の上、必要な環境保全措置を講ずるよう求めています。
また、環境影響評価法の対象にならない規模の事業も含め、各事業において、地域全体の環境に配慮し、累積的な環境影響を把握した上で、回避、低減を図っていくことは重要であると考えており、累積的な環境影響評価に係る技術的な考え方等について検討を進めてまいります。
加えて、近年の再エネ導入拡大に伴う地域の懸念等を踏まえ、例えば、再エネ特措法において、認定に当たって説明会等の実施を求めるなど、事業者が地域住民への適切な情報提供を行い、地域の懸念に対応するための措置等を講じてきているものと承知しています。
次に、事業着手後の環境影響評価手続のやり直しについてお尋ねがありました。
環境影響評価法は、事業の実施前に、事業者自らが環境影響に関する調査、予測、評価を行うことで、環境保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていく手続を定めたものであるため、事業着手後の事業内容の変更については、同法に基づく手続の対象とはなっていないところです。
同法においては、事業者は、環境への影響の重大性に応じ、事業の実施による環境の状況等を把握するための調査の必要性を検討するとともに、調査の結果を踏まえ、環境の保全についての適正な配慮をすることを求めており、事業着手後についても、事業者において適切な環境配慮が行われるものと考えています。
次に、運転開始後に生じた環境影響への対応及び発電事業に係る報告書に対する大臣意見についてのお尋ねがありました。
まず、御指摘の事業については、平成二十九年六月に、環境影響評価法に基づき、設置基数及び配置の見直しや、必要に応じ、稼働制限等を含めた追加的な環境保全措置を講ずること等を求める環境大臣意見を述べており、今般の稼働停止措置等の事業者の対応は大臣意見を踏まえたものであります。
このように、事業実施後に重大な影響が懸念される事業については、環境保全の見地から大臣意見を述べ、当該意見を踏まえ、事業者が責任を持って対策を検討、実施することとなります。
また、環境影響評価法では、事業者は、事業着手後においても、環境への影響の重大性に応じ、調査の必要性を検討するとともに、調査結果を踏まえ、環境保全についての適正な配慮をしていくものとされており、こうした対応を通じ、適切な環境保全がなされるものと考えています。
発電所事業に係る報告書については、電気事業法の特例により、環境大臣が意見を述べることができる旨の規定等は適用除外とされているところであります。これは、電気事業法において、発電所事業が環境影響評価書に従っていることが工事計画の要件となっており、同法により、環境影響評価書に従って発電所事業が実施されていることが担保されていることを踏まえたものであり、引き続き、本制度を着実に運用していくことが適切であると考えています。
次に、建て替えにおいて考慮すべき周辺環境の範囲や、設備が大型化する際の環境配慮の考え方についてお尋ねがありました。
現行制度においても、事業の目的を達成するために行われる附帯的な工事や工作物の設置についても環境影響評価の対象としており、建て替え事業の実施に当たっても同様に、付随して整備される道路や資材置場等を含めて、事業者において適切に環境影響評価を実施することとなります。
また、設備の大型化によって環境影響が拡大する場合は、事業者において、これを可能な限り回避、低減するための環境配慮の内容が示されることが必要であり、事業者による環境配慮の内容が不十分であると判断される場合には、事業者が作成した配慮書に対し、事業計画の見直しを求めるなどの環境大臣の意見を述べることとなります。
次に、建て替えの場合における環境影響の改善に関する基準等についてお尋ねがありました。
環境影響評価法では、一定の目標値を設定し、それを満たすかどうかの観点からの目標クリア型ではなく、実行可能なよりよい対策を講じているかどうかの検討などを行うことにより、環境影響を可能な限り回避、低減するといったベスト追求型の環境影響評価を行うことを基本的な考え方としています。
このため、環境影響をどの程度回避、低減すればよいかという観点ではなく、環境影響をできる限り回避、低減しているかといった観点から事業者が評価を行うことが重要であり、環境大臣や主務大臣についても、同様の観点から審査を行い、必要に応じて、環境保全の見地から意見を述べていくものと考えています。
次に、環境影響評価書の記載内容や審査の基準等についてお尋ねがありました。
事業者が適切に環境影響評価の項目や当該項目に係る調査、予測及び評価の手法等を選定し、環境保全措置について検討できるよう、環境影響評価図書で記載すべき事項及び環境影響評価を行う際の留意事項等について、環境影響評価法及び下位法令において定められており、事業者は、これらの規則にのっとり、環境影響評価を実施することとなります。
また、審査については、環境影響をできる限り回避、低減していたかといった観点から環境大臣等が行い、データが不十分な場合や記載内容に問題がある場合には、環境保全の見地から意見を述べていく中で、その旨を指摘することになります。
さらに、審査に当たっては、環境省では、必要に応じて、各分野の専門家に対してヒアリングを実施するとともに、環境大臣意見を述べる際には、当該意見を公表することにより、透明性を確保しております。
次に、環境影響評価図書の公開に関して、その内容及び運用についてお尋ねがありました。
環境影響評価法においては、事業者が公表する環境影響評価図書の内容については、事業者による調査、予測、評価の内容が不十分な場合、事実と異なると判断される場合、科学的妥当性の確認が必要な場合には、例えば追加的な調査の実施を求めるなど、環境保全の見地から大臣意見を述べることとなります。
なお、個別の条例については、適切な環境配慮の確保の観点から、各自治体において必要な対応がなされるものと認識をしております。
また、情報公開については、関係法令に基づき適切に行われるものと考えており、環境影響評価図書の公表に当たっては、希少動植物の生息、生育地等の一定の配慮が必要な情報を除き、環境影響評価図書で記載が定められている事項は全て公表されるものと理解しております。
さらに、今回の法改正で環境大臣が公開する環境影響評価図書は、環境影響評価手続において既に事業者により公告縦覧又は公表されたものであるため、黒塗り等により一部のみを公開するような事例は想定されないものと考えています。
環境影響評価図書の公開期間については、今後、政令で定めていくこととなりますが、同図書に含まれる環境情報が有用性を持つと考える期間等も念頭に、関係者の意見も伺いながら、適切な期間を定めてまいります。
次に、環境影響評価図書に含まれるデータの活用や具体的な取組についてお尋ねがありました。
環境影響評価図書に含まれる情報に関しては、希少な動植物の生息、生育地のような機微な情報も含まれていること、事業によって、調査手法や調査時期等が異なり、データの粒度や精度等が異なっていること、事業者自らが取得した情報も含まれており、事業者が保有する知的財産権の侵害やデータ提供による不利益が生じるか否か等について慎重に検討する必要があること等に留意する必要はありますが、御指摘のとおり、環境影響評価手続で得られた環境データを適切な形で、より利便性の高い形式で活用できるようにしていくことは、環境保全の観点から重要であると認識しています。
引き続き、今後も、後続事業者によるより効果的な環境影響評価の実施、累積的な環境影響評価への活用、事業に対する地域やステークホルダーへの理解醸成に資するよう、環境アセスメントデータベース等の情報システムにおける活用等を通じて、環境影響評価図書を効果的に活用してまいります。
最後に、戦略的環境影響評価に係る取組状況や政府の認識についてお尋ねがありました。
戦略的環境影響評価については、早期段階の効果的な環境配慮の確保や地域における適切なコミュニケーションの推進等を図る観点から、地球温暖化対策推進法に基づき、市町村が協議会等における合意形成を図りながら、地域と共生し、環境配慮が確保された再エネの導入を図る促進区域の設定等を行う制度の導入や、洋上風力発電設備の整備に係る区域の指定に先立ち、環境大臣が海洋環境調査を実施することにより、計画段階での環境配慮を可能とする仕組みを盛り込んだ再エネ海域利用法の改正案の今国会への提出などの取組を進めています。
本法律案の検討に際して中央環境審議会からいただいた答申でも、これらの取組は戦略的環境影響評価の趣旨に資するものであるとされており、引き続き、こうした取組に加え、更なる知見の収集等に努めてまいります。
なお、道路等の国土交通省が計画する公共事業については、構想段階における計画策定のプロセスに関する国土交通省が定めたガイドラインに基づき、住民参画の下、社会面、経済面、環境面等の様々な観点から総合的に検討を行い、計画が作成されていると承知をしております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 仙田晃宏君。
〔仙田晃宏君登壇〕
○仙田晃宏君 国民民主党・無所属クラブの仙田晃宏です。(拍手)
昨年十月の第五十回衆議院選挙にて初当選させていただき、本日、初めて登壇の機会をいただきました。ありがとうございます。
衆議院議員になって迎える初のゴールデンウィークは、国政報告や後援会の立ち上げ、駅頭での挨拶や街頭演説、地元のお祭りや例大祭等への出席を通じ、地元の皆様のお声を聞いてまいりました。皆様からお声をいただく大半は、トランプ関税と物価高の二点です。
トランプ関税について、日本時間の五月二日にアメリカと交渉されたと伺っております。国民民主党は、関税の引下げの交渉材料に農産物をしないよう提言させていただいておりますが、現在の交渉状況及び今後の妥結点や着地見込み、見通しについて、赤澤経済再生担当大臣にお伺いいたします。
次に、物価高についてお伺いいたします。
国民の皆様の大半のお声は、お米とガソリン価格の高騰です。お米について、備蓄米を放出しているにもかかわらず、五キロ四千二百円程度と価格が下がっておりません。また、ガソリンについては、暫定税率廃止ではなく、補助金を活用し、一リットル当たり十円下げると表明されております。ゴールデンウィークもガソリン代が高いから近場で済まそうと、せっかくお出かけを楽しみにしている長期休暇ですら国民の皆様は我慢している状況です。働き控えに続き、お出かけ控えをしているこの状況を政府はどうお考えでしょうか。
昨年十二月十一日に、自民党と公明党、国民民主党の三党の幹事長間で、ガソリンの暫定税率の廃止に関する合意書を締結したはずです。その存在はどこに行ってしまったのでしょうか。国民民主党の主張は、取って配るなら最初から取るなです。一リットル当たり十円を引き下げるのではなく、一日も早く暫定税率の廃止を強く求めます。
武藤経済産業大臣にお伺いいたします。ガソリン価格を十円引下げにした根拠、何でしょうか。なぜ十円なのでしょうか。また、暫定税率の廃止はいつ実現していただけるのでしょうか。
明確な答弁を求め、本題である環境影響評価法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、質問いたします。
まず初めに、エネルギー政策についてお伺いいたします。
二〇二三年度の我が国における発電方式の割合は、火力発電が約六八・六%、再生可能エネルギーが約二二・九%、原子力発電は約八・五%を占めております。これに対し、資源エネルギー庁は、二〇四〇年度の電源構成について、再生可能エネルギーで四割から五割程度、原子力で二割程度、火力発電で三割から四割程度を見込んでおります。二〇四〇年度に向けたエネルギー基本計画は順調でしょうか。また、進捗状況について、武藤経済産業大臣にお伺いいたします。
また、こうした目標に向け、本法律案が再生可能エネルギーの導入加速に資するものとお考えでしょうか。浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
次に、事業者負担の軽減についてお伺いいたします。
本法律案は、建て替え後の事業の位置が大きく変わらないことを前提に、配慮手続について記載事項の一部を簡略化するものでございます。環境配慮を確保しつつ、制度について合理化を図っていくことは必要であり、こうした取組は、再エネ施設や火力発電所のリプレースの促進につながり、脱炭素や経済活性化にも資するものと考えられます。
ただ、本法律案による見直しは配慮書の内容に限定されており、配慮書の作成を含めた一連の手続は現行のまま維持されることから、発電所の建て替えに係るリードタイム短縮への効果は限定的ではないかと考えております。そこで、本法律案における措置で事業者負担の軽減策は十分とお考えなのか、浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
次に、事業者に応じた政府の対応についてお伺いいたします。
自然環境への配慮に係る対応は、開発事業者によって大きな差があるのが現状であります。環境保護団体の調査では、稼働中の風力発電、アセスメント手続中の風力発電のいずれにおいても、バランスよく環境への配慮を行っている企業がある一方で、顕著に自然環境への配慮を欠いている企業の存在も指摘されております。
こうした実態を踏まえますと、環境への配慮を欠く企業に対しては厳正に対処する必要があると考えます。そのような企業に対し、何らかのペナルティーを科すべきと考えますが、浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
次に、法対象になる前に設置された風力発電への対応についてです。
環境影響評価手続件数が最も多いのが風力発電事業であり、同事業は二〇一二年から環境影響評価法の対象とされております。風力発電の耐用年数は二十年程度とされていることから、今回の改正法施行後、対象となるのは、当面の間、二〇一二年以前に設置された設備の建て替え事業が中心となります。そのため、法に基づく環境影響評価の手続を経ていない可能性があり、適切な立地検討や環境影響の調査がなされていないおそれもあります。それにもかかわらず、本法律案では、建て替え事業の要件を満たす場合、事業実施区域の概況調査などを省略できるとされており、適切な環境配慮がなされているかどうか、懸念が残ります。
そこで、風力発電が環境影響評価法の対象となる前に設置された設備の建て替え事業に関しても、建て替え事業の要件を満たす場合に配慮書の記載事項を簡略化することの妥当性について、浅尾環境大臣にお伺いいたします。
次に、陸上風力のアセス対象の基準についてお伺いいたします。
現行の環境影響評価法では、事業規模が大きい方が一般的に環境への影響も大きいとの考えから、一定規模以上の開発事業を対象として環境アセスメントを求めております。二〇二一年十月、環境省は、陸上風力の第一種事業の対象を一万キロワット以上から五万キロワット以上へ引き上げました。
しかしながら、陸上風力発電の環境影響は、単に風車の数や大きさのみならず、立地などのほかの要素も大きく影響いたします。風力発電については、例えば住宅地に隣接していたり希少な野鳥の生息地に近い場合など、小規模な事業であっても環境への影響が大きくなることがあります。
また、環境影響評価の対象とならない小規模な事業であっても、複数の事業が一定地域に集中して事業を行うことで、結果として大規模な開発となり、累積的な環境影響を及ぼす可能性があるのではないでしょうか。こうした場合における政府の対応について、浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
次に、火力発電のリプレース事業における環境負荷についてお伺いいたします。
火力発電は高効率化が進んでいて、リプレースにより出力が大きくなることも考えられ、政令の内容次第では本法律案における建て替えの対象にならない可能性があります。
国として二〇五〇年カーボンニュートラルという大きな目標を掲げ、温室効果ガスの排出削減に向けて取り組む中においては、環境負荷が増えないことがリプレースの前提になるべきと考えるべきではないでしょうか。そのためには、容量、出力、規模ベースではなく、CO2、NOxなど、環境負荷が増えていないかどうかで判断すべきではないでしょうか。浅尾環境大臣にお伺いいたします。
次に、アセス図書の継続公開についてお伺いいたします。
本法律案により、アセス手続に関する文書であるアセス図書を環境大臣が継続的に公開することになります。せっかく作成した環境影響に係る資料であり、周辺の複数事業による累積的な環境影響を把握するためにも、是非とも有効に活用すべきものと思います。
一方で、図書を公開した事業者に事後的に過度な負担等、例えば第三者からの頻繁な問合せへの対応などが生じることのないように、制度化に当たっての運用方法等についても丁寧に検討していただきたく思いますが、浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
次に、国におけるアセス図書の活用方針についてお伺いいたします。
環境影響評価図書には環境影響や生物調査に係る貴重なデータが含まれており、事業の実施以外にも研究促進や技術向上に活用することが期待できます。
そこで、図書の情報を公開するにとどまらず、将来のアセスメント手続への利用や手続の効率化等を念頭に、例えば、デジタル情報として整備する、環境分野におけるオープンデータベースにアセス図書から得られる情報を反映させるなど、積極的に活用していくことについて、浅尾環境大臣にお伺いいたします。
次に、本法律案の原子力リプレースについてお伺いいたします。
本法律案における建て替え事業は原子力発電所も対象になり得ると考えられますが、原子力発電所に関するリプレースの定義についてお伺いいたしたく存じます。増設という定義になってしまうとゼロから立ち上げていかないといけなく、手続の効率化が図れないと思いますが、浅尾環境大臣の見解をお伺いいたします。
最後に、現行の環境アセスメント制度の課題についてお伺いいたします。
環境アセスメント制度は、事業者の自主性を尊重しつつ、一定の基準を押しつけるのではなく、事業者自身によるよりよい環境に向けた取組を促進する環境政策上の重要なツールであると考えております。この制度が、今後とも、より効率的、効果的なものとなるよう改善していくべきと考えますが、環境省の考える改正事項に含まれなかった現行制度の課題と今後の対応方針について、浅尾環境大臣にお伺いいたします。
国民民主党は、国民生活に現実的に向き合う改革中道政党です。政府が策定した第七次エネルギー基本計画に対し、エネルギーの安全保障、電力の安定供給の確保及び地球温暖化対策のための施策を盛り込むよう求めました。これらの政策の実現のため、本法律案が重要な推進力となることを期待し、私の質問を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕
○国務大臣(赤澤亮正君) 仙田議員から、米国の関税措置に関する日米協議について、一問お尋ねがありました。
現地時間一日十六時四十分から約百三十分間、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官及びグリア通商代表との間で、米国の関税措置に関する日米協議を実施しました。四月十六日に続き二回目の協議でしたが、今回は非常に突っ込んだ話ができました。
協議において、私からは、改めて、米国の関税措置は極めて遺憾であると述べつつ、米国による一連の関税措置の見直しを強く申し入れました。
その上で、可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な議論を行い、前進をすることができました。詳細は差し控えますが、例えば、両国間での貿易の拡大、非関税措置、経済安全保障面での協力等について、具体的な議論を深めることができました。米国側との間で、今後、事務レベルで集中的に協議を行った上で、次回の閣僚間の協議を、五月中旬以降、集中的に実施すべく日程調整していくことで一致をし、現地時間の二日には事務レベルの協議を実施しました。
お尋ねの今後の見通しなどについては、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、今回の協議結果も踏まえつつ、引き続き、政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣武藤容治君登壇〕
○国務大臣(武藤容治君) 仙田晃宏議員の御質問にお答えをさせていただきます。
ガソリン価格についてお尋ねがありました。
政府としては、物価高で苦しい生活を送る国民の現状に一刻も早く対応する必要があると考えています。このため、暫定税率の扱いについて結論を得て実施するまでの間、ガソリン等の定額の価格引下げ措置を実施することとしました。
暫定税率の扱いにつきましては、現在、安定的な財源確保などの諸課題の解決策や具体的な実施方法等について、政党間において真摯に協議がなされているものと承知しております。政府としては、協議の結果を踏まえた上で適切に対応してまいります。
次に、ガソリン等の定額の価格引下げ措置などについてお尋ねがありました。
定額の価格引下げ措置につきましては、現在のガソリン価格がリッター当たり百八十五円程度であるところ、これに十円の補助を行った場合、百七十五円程度の水準まで引き下がることになること、足下の物価高に一刻も早く対応するには、すぐに使える基金を活用して速やかに負担軽減を図る必要があること、また、国際的な脱炭素の流れ等も踏まえる必要もあることなどを総合的に勘案しまして、十円の定額補助としております。
また、ガソリンのいわゆる暫定税率の扱いにつきましては、繰り返しになりますが、安定的な財源確保などの諸課題の解決策や具体的な実施方法等について、政党間において真摯に協議がなされているものと承知をしております。このため、現時点で暫定税率の廃止時期について確たることは申し上げられる状況でないと考えております。
次に、二〇四〇年度の電源構成に向けた進捗についてお尋ねがありました。
二〇四〇年度のエネルギーミックスは、温室効果ガス七三%削減という野心的な目標を前提に、将来からバックキャストしたエネルギー需給の姿を示したものです。
二〇四〇年度の電源構成の見通しと、足下の二〇二三年度の実績について申し上げれば、再エネは四割から五割程度の見通しに対して足下の実績は二三%、原子力は二割程度の見通しに対して足下の実績は九%、火力は三から四割程度の見通しに対して足下の実績は六九%となっています。
足下の実績で脱炭素電源の比率が三割を超えるなどの進捗が見られる一方で、二〇四〇年に向けてはまだ道半ばの状況であります。引き続き、二〇四〇年に向けて全力で取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣浅尾慶一郎君登壇〕
○国務大臣(浅尾慶一郎君) 仙田議員から、本法律案と二〇四〇年度の電源構成との関係についてお尋ねがありました。
今般の環境影響評価法の改正により講じる措置は、事業の位置や規模が大きく変わらない工作物の建て替え事業に係る環境影響評価手続について、環境配慮は維持しつつ、一部の調査を不要とするなど適正化を図るものです。
このような措置を通じて、適切な環境配慮が確保された地域共生型の再エネの導入が促進されること等により、二〇四〇年度の電源構成の実現に資するものと考えています。
次に、環境影響評価手続における事業者負担の軽減についてお尋ねがありました。
本法律案では、建て替え事業に係る配慮手続を見直しておりますが、これに加えて、既設の発電所の稼働中に実施した調査結果等を効果的に活用すること等により、配慮書手続以外の手続についても環境影響評価の評価項目の絞り込み等を図ることが制度運用上可能であると考えています。
今後、建て替え事業の事業特性を考慮した評価項目の絞り込み等に係る技術的な考え方の整理など、更なる効果的、効率的な環境影響評価を実現するための取組を進めてまいりたいと考えています。
次に、環境への配慮が不十分な事業者への対応についてお尋ねがありました。
環境影響評価法では、事業者が行う環境影響評価に対し、環境大臣が環境保全の見地から意見を述べる機会を確保しています。
事業者による調査や環境保全措置等が不十分であると判断される場合については、環境大臣から追加的な調査の実施や事業計画の見直しも含めた意見を述べ、免許等の実施権者は環境大臣意見を勘案した意見を述べた上で、この意見を踏まえた最終的な環境影響評価の結果を免許等の審査に反映させることで、適正な環境配慮を確保していきます。
また、環境大臣意見では、事業活動によって重大な環境影響の懸念が生じた場合における環境保全措置についても必要に応じ求めてまいります。これにより、稼働中の風力発電事業についても、事業者が適切な環境保全措置を講ずるよう促してまいります。
次に、環境影響評価を実施していない風力発電事業の建て替えを本法律案の手続の見直しの対象とすることの妥当性についてお尋ねがありました。
既設工作物と位置や規模が大きく変わらない工作物を新設する建て替えの事業については、過去に環境影響評価を実施しているかどうかにかかわらず、既存事業が現に環境に及ぼしている影響に関する調査結果を活用することで、より効果的、効率的に環境配慮をすることが可能であることから、本法律案による手続の見直しの対象としています。
仮に、既存事業の環境影響を調査した結果、現に重大な環境影響が発生しており、かつ、建て替え後の事業においても当該環境影響の回避、低減が十分になされないような場合には、環境大臣から、立地も含めた事業計画の大幅な見直しを求める意見を述べることで適切な環境配慮を確保してまいります。
次に、環境影響評価法の対象にならない事業が累積することによる環境影響についてお尋ねがありました。
我が国の環境影響評価制度は、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業については法律により手続を義務づけ、比較的規模が小さい事業については、地域的な特性を踏まえ、自治体の判断に応じて条例により手続を義務づけることにより、国と自治体が一体となって事業における環境配慮を確保する仕組みとなっており、環境影響評価法の規模要件を下回る事業については、必要に応じ条例によって規制されることとなると考えています。
その上で、環境影響評価法の対象にならない規模の事業も含め、各事業において、地域全体の環境に配慮し、累積的な環境影響を把握した上で、回避、低減を図っていくことも重要であり、引き続き、我が国における累積的な環境影響評価に係る技術的な考え方等について検討を進めてまいります。
次に、本法律案による特例の対象となる火力発電事業の考え方についてお尋ねがありました。
環境影響評価法では、環境負荷を可能な限り回避、低減するベスト追求型の環境影響評価を行うことを基本的な考え方としており、御指摘のような、特定の環境負荷に関する一定の目標値を設定し、それを満たすかどうかといった観点で特例の対象となるか否かを判断する仕組みとすることは、必ずしも適当ではないと考えています。
このため、特例の対象はあくまで工作物の出力や開発される土地の面積等の規模によって規定することとし、建て替え事業によって生じ得るCO2の排出等の具体的な環境影響については、環境影響評価手続の中で事業者に調査、予測及び評価をさせるとともに、環境大臣が環境保全の見地から適切に意見を述べること等により、環境負荷の回避、低減のための検討が適正になされることを確保してまいりたいと考えています。
次に、いわゆる環境影響評価図書の継続公開に当たっての運用についてお尋ねがありました。
環境影響評価図書は、事業者のウェブページ等ではなく、環境省が管理運営するウェブページにおいて一元的に公開するなど、事業者により負担のかからない形式で継続的に公開することを念頭に置いています。その上で、今後、業界団体等の意見等もしっかり伺いながら、制度の施行に向けて、効率的、効果的な運用方法等を検討してまいりたいと考えています。
次に、いわゆる環境影響評価図書から得られる情報の積極的な活用についてお尋ねがありました。
環境影響評価図書に含まれる情報に関しては、希少な動植物種の生息、生育地のような機微の情報も含まれていること、事業によって、調査手法や調査時期等が異なり、データの粒度や精度等が異なっていること、事業者自らが取得した情報も含まれており、事業者が保有する知的財産権の侵害やデータ提供による不利益が生じるか否か等について慎重に検討をする必要があること等に留意する必要はありますが、御指摘のとおり、環境影響評価手続で得られた環境データを適切な形で、より利便性の高い形式で活用できるようにしていくことは、環境保全の観点から重要であると認識をしております。
環境省では、事業者が作成した環境影響評価図書に含まれる環境保全措置や地域の生物種等の情報を環境アセスメント事例全国マップとして整備、公表するなどして、事業者に情報提供を行ってきたところであり、引き続き、こうした方策を通じて環境影響評価図書を積極的に活用してまいります。
次に、本法律案の対象となる原子力発電所の考え方についてお尋ねがありました。
原子力発電所の設置に当たっては、放射性物質の放出による影響等を含め、その安全性については、独立性の高い原子力規制委員会において、科学的、技術的根拠を基に、厳格に審査が行われるものと認識しています。また、発電所の設置に伴う土地改変、温排水の排出等による環境影響については、配慮書手続を含む環境影響評価手続の実施を通じて、適切な配慮を確保していくこととなります。
その上で、原子力発電所の建て替え事業については、改正法案で定義する建て替えの要件に該当するもの、具体的には、既存工作物を除却又は廃止するとともに、既存工作物と同一又は近接する区域に同種の工作物を新設する事業であれば対象となりますが、建て替えの要件の詳細については、今後、技術的な検討を経た上で政令で定めることとしています。
なお、今回の改正は必ずしも環境影響評価法上の手続を緩和するものではなく、既存事業の環境影響を考慮した環境配慮の内容を配慮書に記載させる点も含めて、配慮書手続を建て替え事業の特性を踏まえて適正化するものとなります。
いずれにしましても、建て替えの要件の検討のため、丁寧な情報収集に努めてまいりたいと考えています。
最後に、本法律案によって措置する事項以外の現行制度の課題と今後の対応方針についてお尋ねがありました。
環境影響評価制度に対しては、中央環境審議会からいただいた答申においては、本法律案によって措置する事項のほか、環境影響評価の対象となる風力発電事業の規模要件の見直し、累積的な環境影響への対応といった事項等が制度の課題とされています。
これらについても、関係者の御意見を丁寧にお聞きするなどしながら、引き続き、下位法令の見直しや技術的な考え方の整理などの取組を着実に進めてまいります。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時七分散会
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出席国務大臣
法務大臣 鈴木 馨祐君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
経済産業大臣 武藤 容治君
環境大臣 浅尾慶一郎君
国務大臣 赤澤 亮正君
出席副大臣
環境副大臣 小林 史明君