衆議院

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第18号 令和7年5月7日(水曜日)

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令和七年五月七日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 大岡 敏孝君

   理事 黄川田仁志君 理事 國場幸之助君

   理事 西銘恒三郎君 理事 今井 雅人君

   理事 本庄 知史君 理事 山岸 一生君

   理事 市村浩一郎君 理事 伊東 信久君

   理事 田中  健君

      石原 宏高君    井野 俊郎君

      江渡 聡徳君    尾崎 正直君

      岸 信千世君    栗原  渉君

      小池 正昭君    田中 良生君

      土田  慎君    西野 太亮君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      宮下 一郎君    山際大志郎君

      山口  壯君    市來 伴子君

      梅谷  守君    岡田 華子君

      小山 千帆君    下野 幸助君

      長友よしひろ君    橋本 慧悟君

      藤岡たかお君    馬淵 澄夫君

      水沼 秀幸君    山 登志浩君

      三木 圭恵君    石井 智恵君

      菊池大二郎君    河西 宏一君

      山崎 正恭君    上村 英明君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

    …………………………………

   国務大臣         坂井  学君

   内閣府大臣政務官     西野 太亮君

   内閣府大臣政務官     岸 信千世君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総合政策推進室室長)       笹川  武君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          相川 哲也君

   参考人

   (筑波大学長)      永田 恭介君

   参考人

   (東京大学卓越教授)

   (元日本学術会議会長(第25期))         梶田 隆章君

   参考人

   (政策研究大学院大学客員教授)

   (国際学術会議フェロー) 有本 建男君

   参考人

   (弁護士)

   (日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長)   福田  護君

   内閣委員会専門員     田中  仁君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     土田  慎君

  宮下 一郎君     小池 正昭君

  おおたけりえ君    岡田 華子君

同日

 辞任         補欠選任

  小池 正昭君     宮下 一郎君

  土田  慎君     西野 太亮君

  岡田 華子君     小山 千帆君

同日

 辞任         補欠選任

  小山 千帆君     長友よしひろ君

同日

 辞任         補欠選任

  長友よしひろ君    おおたけりえ君

同日

 理事伊東信久君同日理事辞任につき、その補欠として市村浩一郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本学術会議法案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

大岡委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事伊東信久君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に市村浩一郎君を指名いたします。

     ――――◇―――――

大岡委員長 内閣提出、日本学術会議法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、筑波大学長永田恭介君、東京大学卓越教授、元日本学術会議会長(第25期)梶田隆章君、政策研究大学院大学客員教授、国際学術会議フェロー有本建男君、弁護士、日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長福田護君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、本当にお忙しい中、このように委員会にお運びくださいまして、ありがとうございました。

 本日、先生方の忌憚のない御意見は、私たちの審議の重要な参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、永田参考人、梶田参考人、有本参考人、福田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、永田参考人にお願いいたします。

永田参考人 御紹介いただきました筑波大学長永田と申します。

 本日、提案されている新しい日本学術会議の法案に対して、賛成の立場から、以下、意見を陳述させていただきます。

 その前に、学術会議とはどのような組織であるかということを考えなければなりませんし、それに至っては、学術とは一体何なのかということを一回考え直してみたいと思います。

 学術は、基本的には人文社会系、理工系、生物系、その他複合的な領域、幅広い領域における研究者の独創的でそれからオリジナルな知的活動とその成果のことを指しているということです。

 研究者は、これらの幅広い領域で、おのずから自分の知的好奇心と自由な発想に基づいて、個人で、あるいは他者と、他者というのは、他の研究者であったり、産業界であったり、時には官庁であったり、そういったところと協働して、基礎研究、応用研究、開発研究、その類いにいそしんで、真理の探求及び価値の創造につなげる試みをなしているというわけであります。

 研究者の知的な活動からは、当然ながら、知的好奇心が満足されるということもありますけれども、それ以上に、技術開発はやがて社会を変革するものにつながる場合がたくさんあります。それは、産業の発展であったり、経済の成長であったり、生活の質の向上や、はたまた文化的な変容にまで及ぶ場合があるということであります。AIの例を取っていただければ非常に分かりやすいかと思いますが、それが現実に今もう起こっているということです。

 学術には国境がありません。この成果は世界全体に波及し得る人類全体の財産であるということです。それから、研究者の仲間は世界中にいるわけであって、その中では、競争と共創、これはコンペティションとコラボレーションという意味ですが、その中で日々これをなしていくということであります。

 現在、インテグリティー、セキュリティーという難しい問題がありますけれども、研究者は、それに鑑みながら、その成果を生み出して、国の在り方あるいは社会、社会の課題の解決、生活の質の向上に資するような研究を続けているということですし、目的は、さっき言ったように、国はもとより世界の人々のウェルビーイングに資するような課題を解決しようともしていると考えて間違いないと思います。

 本法案では、ここは読ませていただきますが、学術会議の基本理念を、「学術に関する知見が人類共有の知的資源であるとともに経済社会の健全な発展の基盤となるものであることに鑑み、世界の学界と連携協力して学術の向上発達及び学術に関する知見の活用の推進を図り、もって人類社会の持続的な発展及び国民の福祉の向上に貢献するものとする。」と規定しています。まさに、去年の十二月二十日に有識者会議から出てきた最終報告書の冒頭にあるわけですが、「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」という理念を持って書かれております。私としてはこの理念に大いに賛同するところです。

 次に、四点ほど、この法案の中身について懸念されていると仄聞していることについて、私なりの考えを申し上げます。

 まず第一は、今次の法案では、学術会議の独立性が確保されていない、ナショナルアカデミーとしての活動に制約があるのではないかという御意見があるかと思います。

 これは、一番の大本は、現行の第三条、独立して云々の職務を行うという規定が新しい法案にはないということに端を発していると思いますが、それはなくて当然でありまして、現行の学術会議は国の機関として置かれているためこういう文言があります。したがって、特殊法人となる今次の法案では、国から独立した法人格を持つ法人として職務を行うということを逆に明確にしているということだと思います。

 諸外国のナショナルアカデミーが、二つの機能がありまして、多くの場合は提言機能と顕彰機能というのがあります。残念ながら、日本の学術会議には、提言機能はありますが顕彰機能がありません。それも、顕彰機能は、JST、JSPS、それから日本学士院に今付与されているわけであります。

 にもかかわらず、第一条で、「我が国の科学者の内外に対する代表機関」として規定してナショナルアカデミーであるというふうに位置づけていて、ついでに、第二条第二項では、国は、学術会議の「運営における自主性及び自律性に常に配慮しなければならない。」となっています。

 したがって、本法案は、学術会議がナショナルアカデミーとして独立して活動することを尊重しているというふうに読み取ることができます。

 最後に、この同じラインで、提言ということを申し上げたので申し上げておくと、法文の後ろの方に勧告という言葉が出てきますが、この勧告という言葉が若干この法文にふさわしくないと思っております。勧告というのは、行政府が他の組織あるいは他の行政府に対して行う権限でありまして、今般、これが政府の機関でなくなるということですから、勧告を行うということができるかどうか、皆さんで御議論を是非いただきたいと思います。

 第二に、学術会議の会員の選任方法です。

 法案では、会員の選任が、会員から選ばれる会員候補者選定委員会が分野別の業績審査委員会等を経て会員候補者を絞っていって、総会の議決で決定するとなっております。これは、現行法の内閣総理大臣が任命という手続でありますけれども、これを外したものでありまして、より学術会議による会員選任の自主性、自律性が高まっていると考えてよいかと思います。

 ただし、学術会議の会員にはあらゆる意味でのダイバーシティーが必要であり、それを多分担保するものとして会員候補者選定委員会があるんだと思われます。会員、大学、研究機関、学会、経済団体、あるいは地域、民間の企業、そういったものに、もちろんジェンダーも含めてですが、含めて幅広に推薦者を選んでいくというプロセスに必要な組織であると思っております。

 次に、第三点ですが、内閣府に設置され、会員以外の者で構成される学術評価委員会、これが政府の管理につながるのではないかということでありますが、よく読んでみると、その内容はそうとは読み取れません。

 明快に申し上げて、中間的な活動計画とその報告をするというのはどこでも当たり前なんですけれども、必要があると認めたときに学術会議に意見を述べることができるとなっておりまして、それは当たり前のことでしょう。改善は他者からの批判を受けてするものでありますし、自己批判も当然のことながらある中で、それを助長する、助けるという役目があります。政府が管理するというほど強い権限を、ここには表現されていません。

 それから、学術会議は国から独立した特殊法人となりますから、経営がほとんど国の支援によるというのが尋常ではない。多くの諸外国のナショナルアカデミーが自前で財源を確保しているという点、これに鑑みますと、ちょっと違う状況のナショナルアカデミーになります。

 しかし、外国のアカデミーも、ある事象ごとによっては引き受けるという形で、仕事の対価としてお金を国からいただいているという現状もあるので、それを鑑みて、今般、今次の法案では国が一定の費用を措置するという今条件になっているかと思いますが、できれば将来、国からは離れて、研究者の集団として、独立した自主自律の下の会議に育っていっていただきたいと思っております。

 最後に、監事について、独立性を損なうのではないかという御意見があることを仄聞しております。

 学術会議の会議等が適正に行われているかいないかということを、公正中立に行われているかどうかということを、監事というのは学術会議からは独立した形で見るものであって、そういう専門知識を持った者がやるべきものである。これは多くの会社や法人組織において当然のことであって、第三者としての監事の設置というのは非常に重要なものであります。一般の企業や国立大学法人でも通例のことですし、今次、内閣総理大臣が監事の任命をするということは、学術会議から独立して監事業務が行える権限と資格を与えるものです。

 一言苦言を呈せば、任命者が監事を通じて学術会議に影響を及ぼすという懸念が正しい、学術会議から出ている懸念ですが、だとすれば、学術会議が選んだ監事は自由に操れるというふうに読み取ることができます。これは大変いけないことでありまして、監事は、物が適正に行われているかを見る役割であって、内容についてコメントするのは忌避されるべきものであるということであります。

 以上、私から四点述べさせていただきました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

大岡委員長 ありがとうございました。

 次に、梶田参考人にお願いいたします。

梶田参考人 よろしくお願いいたします。

 それでは、あらかじめ提出してあります資料に基づきまして発言をさせていただきます。

 私の方では、学術会議法案への懸念ということでお話しいたします。

 まず、二ページ目ですけれども、日本学術会議と各国のナショナルアカデミーという観点で見ていきたいと思います。

 十七世紀以降、各国でアカデミーが設立されて以降、独立と自律を旨とする営みとしての学術を社会の中に備えてまいりました。政府などから独立し、自律的に発展する学術がもたらす多様な見解によって、我々の社会や世界の理解が豊かになり、そのことを通じて人類の福利への貢献が期待できる。そこに、学術、ナショナルアカデミーの役割があります。

 各国のナショナルアカデミーを比較した際に、米、英、仏、独のアカデミーと比べると、日本だけが政府機関であることは確かですけれども、設置形態はそれぞれの国の歴史的経緯を反映しているものと考えております。

 現在、各国のナショナルアカデミーは、その国の学者、科学者の代表として、科学的助言活動などとともに、様々な学術の国際活動に参加し、世界的に連携して世界の学術と社会の発展に貢献しております。

 日本では、日本学術会議がナショナルアカデミーとしての役割を担っております。

 なお、日本の場合、立法府への科学的助言のチャンネルがないということが、現状、課題といえば課題であります。法案に立法府への助言機能が明記されるということになれば法人化のメリットとなるというふうに考えております。

 続きまして、三ページ目で、ナショナルアカデミーの五要件ということでお話をしていきたいと思います。

 日本学術会議では、学術会議の設置形態を議論し、二〇二一年四月の二十二日の総会において、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を決定しました。その中で、ナショナルアカデミーが最低限満たすべき五要件を示しました。

 それらは、学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性です。

 上記の文書では、現行の日本学術会議の設置形態は、ナショナルアカデミーの五要件を満たしており、それを変更する積極的理由を見出すことは困難と結論しております。

 実は、この結論は、二〇一五年に科学技術政策担当大臣設置の、日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議で検討された際の報告書における設置形態についての結論、すなわち、国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、これを変える積極的な理由は見出しにくいというものとも合致しております。そして、この報告書は当時の大臣も了承されております。

 また、もう一言述べますと、政府が二〇二三年に法人化を検討するとした際に、政府も、学術会議自ら主張している五要件を満たし、G7参加国並みの制度、体制等を持った特殊法人などを検討とし、五要件の重要性を認識していただいております。

 さて、そのような中で、今の法案に関して懸念があるんですが、ナショナルアカデミーの五要件との関係で、懸念ということを見ていきたいと思います。

 まず、そもそも当事者の日本学術会議は、独自に、自律的改革の方策を議論し、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」で公表するとともに、実行してまいりました。新しい日本学術会議法を求めたことはありません。

 現行の日本学術会議法の前文は法案ではなくなり、その中にありました「科学者の総意の下」の文字も消えております。科学者の総意の下と言えない組織が、科学者の賛同を得て学術的に国を代表する機関なのか懸念があります。

 また、日本学術会議との真摯な協議を欠き、同意を得ないまま、その独立性、自律性に多大な影響を与え得る組織、選考などを変更し、法定化すること自体が、ナショナルアカデミーの独立性、自律性を脅かす懸念があります。

 現在の日本学術会議法では、「独立して左の職務を行う。」として、独立が明記されておりますが、法案では独立の文字は消え、「その運営における自主性及び自律性に常に配慮しなければならない。」との運営面における自主性、自律性への配慮義務にとどまっており、独立性への懸念があります。

 続いて、五ページですが、現行の日本学術会議法では、学術会議が自律的に規則を制定して組織運営を行うことを保障しております。例えば、日本学術会議は、国立大学協会などとその役割発揮に向けた意見交換を行い、また自律的に外部有識者に毎年その活動を評価してもらい、その評価を次年度以降の活動に反映しております。

 一方、法案は、幾重にも組織、運営に国が監督する仕組みとなっております。国からの独立性、自律性を制度的に保障することでその機能を有効に発揮することが可能となる日本学術会議には過重な監督であり、その独立性、自律性の観点から懸念があります。

 それから、少し違う観点で、現行法では国庫負担の原則を定めておりますが、法案は必要と認める金額を補助金により補助することができるとするにとどまっており、すなわち、必要性の判断は政府の大きな裁量となっていて、国家財政支出による安定した財政基盤への懸念となります。

 続きまして、六ページですけれども、会員選考に関してです。会員選考に関してもいろいろと自律的に改革を進めております。例えば、第二十五期学術会議では、選考方針を自律的に定め、新会員の選考対象者をより広くから求め、また選考には年齢、ジェンダー、地域などの多様性にも配慮するなどの改革を進めながら行いました。

 法案で、新たな法人発足時の会員選考では、特別な選考方式が法定されております。発足時に特別な選考を行わなければならない理由はなく、極めて不自然な選考方式で、懸念があります。

 また、法案での通常時の会員選考では、会員以外から構成される選定助言委員会が、選定方針のみならず、候補者選定についても意見を述べることができるとされ、候補者選定が特定の外部の影響を受ける懸念があります。

 一方で、今まで述べてきましたけれども、他の先進国のナショナルアカデミーは、これらの五要件は満たしております。

 なお、昨日、各国アカデミーの連合体と言える国際学術会議から、日本政府の、日本学術会議の運営と会員選考の手続に干渉しようとする度重なる試みに対し深い懸念を表明するとのメッセージをいただいておりますので、紹介させていただきます。

 続きまして、七ページで、ナショナルアカデミーとして取り組むべき課題ということで、前出の「より良い役割発揮に向けて」の中で、我々は、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議が取り組むべき機能強化の課題を挙げました。それらは、国際活動の強化、科学的助言機能の強化、これには立法府への助言機能創設にも言及しております。対話を通じた情報発信力の強化、事務局機能の強化です。

 今回の法案作成の過程で上記の課題を議論した形跡がなく、また法案にもその方向での機能強化を目的としているように見えません。すなわち、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議の機能強化に資するかどうかという点で、懸念が拭えません。

 八ページでまとめます。

 提案されました日本学術会議法案では、日本学術会議が求めているナショナルアカデミーの五要件の点で、また日本学術会議の機能強化に資するものかという点で、懸念が拭えません。

 そして、二月の十八日に発せられました元学術会議会長六名の連名による声明を読みますが、「特殊法人という法形式の下に日本学術会議の運営と活動を政府が幾重にも管理するやり方は、日本学術会議の固有の発展を阻害し、七十五年余にわたって培われてきた学術に基づいて社会と政府に発信するという機能を弱体化させ、ひいては日本の学術の終わりの始まりとすることになりかねない。」というものでした。

 最後。日本学術会議がよりよくその役割、機能を果たすことを可能とするという観点から、法案の再検討を強く求めます。性急な改革が学術に大きな混乱をもたらす懸念があるということは他国の例でも明らかになりつつあると思っております。

 私の方からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

大岡委員長 ありがとうございました。

 次に、有本参考人にお願いいたします。

有本参考人 おはようございます。有本と申します。

 私のちょっと自己紹介から始めたいと思います。

 私は、政策研究大学院大学の客員教授、それから国際学術会議のフェロー、それから政府科学助言国際ネットワークのボードメンバーを現在務めてございます。関連で、科学技術的助言あるいは科学技術外交につきまして、海外のアカデミーや科学技術顧問、あるいはOECD等と頻繁に議論をいたしてございまして、幾つか本とか論文も書いてございます。

 一方で、学術会議の本体の方では客員連携会員をやらせていただきまして、これはプロジェクトベースでございますけれども、後で御紹介したいと思います。関連で、今年の三月まで、学術協力財団というものが学術会議の外郭財団としてございましたけれども、これの民間寄附金のところの運営の副委員長ということで、若手の研究者の支援に携わってまいりました。

 こういう観点から、運営面あるいは実務面のところを中心に、今日は幾つか御紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、激変する世界の下でのアカデミーの重要性、それからアカデミー間の国際連携というものが極めて重要になっているということでございます。

 先ほど来ありますように、各国はそれぞれの歴史とか文化、これによってアカデミーができているわけでございますけれども、先生方御存じのように、米、英、独、仏、その他も政府から独立した法人ということになってございまして、私は、日本学術会議も法人化が重要というふうに思ってございます。

 近年は、先進国だけじゃなくて、途上国でも非常にアカデミー活動が活発になっているということ、それから、多国間、OECDとか国連のユネスコ、こういうところでも、今は大転換期ですので、科学とか技術、あるいはアカデミー、学術の在り方、あるいは研究のシステム、ファンディングとか、こういうものを再設計をやらないといけないということが盛んに行われておりまして、そういう意味で、学術会議は、法人化をし、是非機能を高めて、この世界のダイナミズム、こういうものにどんどん入っていただきたい。今もやっておられるわけですけれども、私は、外から見ますと、もう少しいろいろなダイナミズムがあるのではないかというふうに思ってございます。

 それで、ちょっと客観的に申します。科学技術、学術というのは、今、途上国も含めて、各国の国力ですね。国力というのは、決して安全保障というだけじゃなくて、研究技術水準、産業競争力、それから社会課題の解決力、こういうものについて全般としての国力というもので、科学技術あるいは学術がどう支えるかというところは、各国、全体としての今大きな流れになっているというふうに私は理解をしてございます。

 ちなみに、学術会議は、先生方よく御存じのように、物理学とか化学とか天文学とか、こういう個別の分野の学会活動とは違って、その分野を超える、あるいは組織を超える、あるいは国境を越えた異分野連携ということで、社会課題の解決とか学問のフロンティア開拓というものに対して助言をするという非常にユニークな組織でございます。

 例えば、海外のアカデミーで、独立した法人としての柔軟性ということで、国連のSDGsの解決に対して非常にダイナミックに、グローバルなレベルから、アジア、アフリカ、それから国内はもちろんですけれども、ローカル、こういう意味でのいろいろな活動をやられておるというわけでございます。

 一つ、私が見る限り、学術会議が世界レベルで貢献した事例を申し上げておきたいと思います。

 一九九九年ですけれども、ちょうど二十一世紀に入る直前でございましたけれども、ハンガリーのブダペストで、二千人以上の科学者、技術者、企業家、それから各国の行政、ジャーナリストも集まって、二十一世紀の科学と科学的知識の使用について、いわゆるブダペスト宣言というものがまとまりました。

 これは非常に大事な、今も非常に各国の科学技術政策、学術政策の基本になっていると私は理解しておりますけれども、二十世紀を反省して、二十一世紀は、知識のための科学、科学論文を書くだけではなくて、平和のため、あるいは持続可能な開発のため、それから、社会の中の、社会のための科学というもの、これを推進する必要がある、いわゆる四本柱ということで、ここでもよく議論になりますけれども、サイエンス・フォー・ポリシーというものがここで宣言をされた、非常に大事な原点というふうに思ってございます。

 この作成には、当時の日本学術会議は非常に大きな貢献をいたしました。こういうものの貴重なレガシーがあるわけですね。これをきちっと組織の記憶として今後のいろいろな活動に、あるいは若手に伝えていただきたいというふうに思ってございます。

 三点ほど、ちょっと実務的になりますけれども、機能強化について申し上げたいと思います。

 私は、先ほど来申しましたように、国際的な科学助言のネットワークに入ってございますけれども、もう一つは学術会議の特任連携会員ということで、東北大震災、福島の原発事故、それから自動車の自動運転、このプロジェクトに参画をしまして、助言のプロセスに実際に自分も入っていました。それで、やはりこれは、かなりその方法とかテーマのセッティングとかというものを時代に合わせて変える必要があるんじゃないかというふうに個人的には思っています。

 非常に学術会議自身、努力をされているとは思いますけれども、やはりデータとデジタルの時代であるということを踏まえた上でのテーマのセッティングの仕方、あるいはプロセスの中での方法、あるいはデータの収集とか分析、こういうものについて、是非新しい方法論なりを実践あるいは開拓していただきたい。このためには、行政や研究機関、シンクタンクもあります、それから企業、こういうものとの連携が必須でございまして、これは法人であることが非常に大事になるんじゃないかというふうに思います。

 ちなみに、海外のアカデミーは、先生方よく御存じだと思いますけれども、若手の方々を、まだ会員じゃないんですけれども、いろいろ雇った上で、この連中にそういう作業もやらせるし、それから、将来この人たちが会員になったときのキャリアパスというものとして戦略的に養成をしているということもございます。

 それから、第二に、多様な人材の選任と育成でございます。

 ちょっと世界の全体の流れを申しますと、二十一世紀の科学者、技術者というのは何者かということが今盛んに議論されているわけです。ずっと科学は、もちろん、ファーストプライオリティーは知識を生産すること、新しい学問、フロンティアを開拓し、それを論文にして世界の共有の財産にする、これが第一でございます。二、三、四として、二番目は、そういう知識を統合して社会を変えていくという意味での統合者とかシンセサイザーとかデザイナーといっていますけれども、三番目に、これを今度は社会とか政治あるいは行政につなぐ仲介者、あるいは科学的助言者といっています、それから最後に、科学コミュニケーターですね。

 こういう大きな十九世紀以来の科学者の在り方、あるいはそれを支える科学のコミュニティーというものについての今変革の時代を迎えているということで、私が見る限り、学術会議の若手アカデミーがいろいろ国際会議をやったり、新しい提言、十課題の提言をやったりして、結構いろいろな活動をされています。こういうものも是非応援したいというふうに思ってございます。

 そういう意味での、法人化によって、若手の支援の強化、あるいは外国人を会員にするということも含めて多様な人材の選任、特にもう一つ強調しておきたいのは、学術会議の会長ほか運営を支える専門スタッフ、これは非常に大事です。この辺をしっかり確保するということではないかというふうに思います。

 そういう意味で、海外のアカデミーは、法人としまして、公的資金や民間寄附金、シンクタンクやNGOとの共同事業、あるいは多様な人材交流といういろいろな手段をミックスした上で柔軟に、戦略的に活動しているということで、日本の学術会議は、国の機関としてはなかなかそれが難しい状況であるんじゃないかと思います。法人化をして、資金を拡充あるいは多様化をして、戦略的に内外の交流を行っていただきたいというふうに思ってございます。

 最後に、アジアの件でございます。

 二〇二六年に、世界科学会議がインドネシアで行われます、それから国際学術会議が北京で行われる。二〇二七年に、政府科学助言世界ネットワーク、私はボードメンバーですけれども、これの総会がマレーシアで開催されます。この二年間は、アジアで集中的にこういう大きな世界の会議がございます。

 これに対して、是非学術会議がインナーに最初から入って、プログラム設計あるいは運営に関わるということが、非常に今の日本にとってもアジアにとっても、それも、高飛車に、上から目線ではなくて、一緒に共同してやるということが分断の時代には大事じゃないかというふうに思っている次第です。これによって、学術会議に参加しようとしている若手の研究者、中堅もありますけれども、それからスタッフというものがおのずから育っていくということでございます。

 以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。(拍手)

大岡委員長 ありがとうございました。

 次に、福田参考人にお願いいたします。

福田参考人 御紹介をいただきました、日本弁護士連合会、日弁連ですが、憲法問題対策本部という、これは一つの委員会でございますが、その委員をしている弁護士の福田と申します。

 御審議いただいている日本学術会議法案、そしてこれに関連する問題について、日弁連の見解を中心に、法的な観点から意見を述べさせていただきたいと思います。ちなみに、日弁連は、この学術会議法案については反対の会長声明を発しております。

 本日、資料として、参考人のレジュメと、それから日本学術会議問題に関する日弁連の会長声明四件、そして意見書を一件提出させていただいておりますので、適宜御参照いただきたいと思います。

 私の方からは、最初に私の意見の趣旨、概要を申し上げ、大きい二番目として本法案の内容上の問題点、大きい三番目として本法案の立法事実が欠如しているのではないかという問題について述べたいと思います。

 まず、私どもの意見の趣旨、概要でございます。

 本法案の最大の、そして最も基本的な問題は、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議、この核心を成す独立性、自律性が損なわれることになるのではないかという点にございます。それは、憲法二十三条が保障する学問の自由に対する脅威でもあると思います。

 このことを、主に二つの点から指摘しておきたいと思います。

 一つは、本法案自体の内容の問題で、特に新法人の会員人事と業務運営の両面において、その独立性、自律性を制約し、阻害する幾重もの仕組みを設けようとしていること、また、ナショナルアカデミーとしての世界標準である会員選任に関するコオプテーション方式を、特に新法人発足に際して基本的に排除をし、これまでの学術会議との連続性を遮断しているということが指摘できると存じます。

 もう一つは、立法事実に関する点です。周知のように、内閣総理大臣は、二〇二〇年十月、学術会議の会員改選に際して、学術会議が推薦をした会員候補者のうち六名の任命を拒否されました。しかし、政府は、その意思決定の根拠、理由についての説明責任を果たさないまま、逆に、学術会議の方に問題があるかのようにおっしゃり、例えば、学術会議に対して政府等と問題意識や時間軸を共有することを求めるなど、その在り方を問題にして、今回の法人化法案に至っております。しかし、この過程は、全体として法的正義を欠くのではないかと考えております。

 また、政府は、本法案の立法理由として学術会議の独立性を徹底するためとしておられますが、これまでの学術会議は、私どもは十分に独立性を維持してきている、そう評価することができ、さきの任命拒否や本法案による法人化こそ、その独立性を侵害するものではないかと考えております。

 大きい二番目として、本法案の内容上の問題点を簡単に指摘させていただきます。

 まず、本法案は、独立性、自律性を制約する幾つもの機関を設置することとしております。

 新法人には、全て会員等以外の外部の者で構成をされる、一つ、選定助言委員会、二つ、運営助言委員会、三つ、監事、四つ、日本学術会議評価委員会、この各機関が設置をされ、監事と評価委員会は総理大臣が任命し、評価委員会は内閣府に置かれます。

 監事や評価委員会はほかの立法例に倣ったものと思われますけれども、これに加えて、余り他に立法例を見ない選定助言委員会や運営助言委員会を加え、幾重にも新法人の運営や会員人事を制約し、チェックをする、こういうことになっております。

 しかし、元々、学術会議という二百人以上で構成される民主的なボトムアップの合議体、外部、特に政治権力からの自立と独立が格別に求められる、そういうナショナルアカデミーとしての科学者集団に、独立行政法人や特殊法人のトップダウン的な政府による監督システムを持ち込む、それ自体が適切性がどうなのかという疑問を感じます。

 それらは、政府から独立して行うべき業務の自立した運営を阻害し、また、組織の独立性を担保する会員人事の自律性を損なうということになって、その独立性、自律性が由来する憲法二十三条の学問の自由をも脅かすものと考えます。

 次に、会員の選考、選任に関する自律性の阻害と連続性の遮断です。

 本法案によれば、新法人の会員の選任は、選定助言委員会の意見を聞いた上で作成される選定方針に従い、会員候補者選定委員会が、会員のほか、多様な関係者からの推薦に基づいて、多様な実績のある科学者を含める等の配慮の下で選定すべきことが法定されております。これらは、法律によって会員選定における自律的な判断を制約するものでありまして、これまで会員の推薦を基本に、学術会議が自ら基準を定めて会員候補者を選定してきたコオプテーション方式を制約するものと言えます。

 しかし、さらに問題なのは、新法人発足に当たって、特別な会員選定方法が取られ、ここではコオプテーション方式は基本的に排除をされているということです。すなわち、特別な候補者選考委員会なるものが設置をされ、その委員は内閣総理大臣が指定する者と協議の上で決定することとされ、かつ、会員以外の者で構成できるようになっております。そして、会員候補者についての現行会員の推薦権はこれを否定されています。

 加えて、新法人発足三年後の会員選任です。ここでは、通常の会員候補者選定委員会ではなく、発足に際して設置された、先ほどの候補者選考委員会の委員のうちから会員候補者選定委員会委員を選任するということに規定されておりまして、発足時と同じメンバーが三年後にも会員の選定に当たるものとされております。そして、承継会員は再任されないとされておりますから、この三年後の会員選任に参加できません。

 以上のようなこの法案の会員選考、選定規定は、現在の学術会議会員を新法人の会員の選任手続から殊更に排除をする異例なものと言わざるを得ないのでありまして、学術会議の会員人事の自律性を否定するものであり、かつ、これまで政府から独立して科学的助言を行ってきた従来の学術会議との連続性を遮断するものと言わなければならないと存じます。

 大きい三番目、立法事実の欠如について申し上げます。

 政府によりますと、本法案は、学術会議の独立性を徹底させ、あるいはその機能の強化のために独立性、自律性を抜本的に高めるため、国とは別の法人にするのだ、こう説明されております。

 しかし、私の見るところ、これまでの学術会議は、十分に政府から独立して活動をしてきているのではないかと思われます。それは、例えば、先ほど申し上げた会員任命拒否に対して、学術会議がその理由の説明と速やかな任命を求め続けていること、それ自体から明らかでございますし、典型的には、防衛装備庁が進める安全保障技術研究推進制度への慎重な対応を求めた二〇一七年三月の軍事的安全保障研究に関する声明に表れております。そして、二〇二一年四月二十二日の「学術会議のより良い役割発揮に向けて」との総会の決議で明らかにしたナショナルアカデミーの五要件、この確保を政府に対して要求をし続け、本法案の国会提出に対しても、本年四月十五日の総会において、これを非常に残念だとし、五要件及び懸念事項の全てを充足、払拭した法案への修正を求めていることにも見られるとおりであります。

 本法案の立法目的の中心に位置づけられている独立性の徹底は、立法事実たり得ないのではないかというふうに考えます。

 そして、二〇二〇年の会員任命拒否との関係です。

 先ほど申し上げた任命拒否は、任命制が導入されて以降四十年近くにわたって、総理大臣の任命は形式的な任命にすぎず、学術会議から推薦された候補者の任命を拒否をすることはしないという定着した政府解釈を覆すものでありました。そこで任命拒否をされた六名は、総理大臣によって、優れた研究又は業績がある科学者であることを否定され、かつ、国会、国民に対して責任を負うことができない者と位置づけられました。しかし、これほど科学者としての人格を傷つける任命拒否の具体的理由は明らかにされないまま、現在まで参っております。

 日弁連は、この任命拒否が学術会議の独立性と自律性を違法に侵害するものであり、その独立性と自律性を基礎づけている学問の自由を脅かすものであるということ、そして国民主権に由来をする行政の公正、透明性の原則及び説明責任の原則に背反するということを指摘してまいりました。

 学術会議の独立性を違法に侵害した任命拒否についての政府自身の責任を放置をしたまま、逆に、学術会議の方に問題があるから、これを廃止して新たな法人にしようとする本法案については、本末転倒であり、法的正義に反するものと言わざるを得ないというふうに考えます。

 以上です。(拍手)

大岡委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

大岡委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田委員 まず、本日、参考人として来られました四人の先生方、御多用中、誠にありがとうございます。私からも感謝を申し上げたいと思います。

 特に、梶田先生におきましては、本来、地元の越谷あたりでお酒でも飲みながらいろいろな話をしたかったわけでございますが、こういう立場で質疑応答をしなければならないということでございますが、お手柔らかに、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、会長選任について、梶田先生に質問したいと思います。

 現役会員の推薦に基づく現行の会員選考は、選考基準が不透明であるとか、似た専門の学者が選ばれ続けるとの指摘がこれまで出ております。

 それを裏づけるような発言が、先月の四月十四日から十五日の学術会議総会で出ております。ある会員から、この法案が通ることによって右の方に立っている人が入ってくる、そういう状態を許していいのかという発言がございました。

 これまでも政治的な考え方に基づいた選考を行ってきたということでしょうか。例えば、梶田会長の下で行われた令和五年十月の会員選考において、このような政治的な理由や曖昧な方針に基づく選考を行っていたということでありましょうか。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、私たち第二十五期学術会議が行いました会員選考のあらましにつきまして説明させていただきます。

 まず、第二十五期学術会議として、会員の選考方針というものを定めました。これを明確にしたのは多分私たちが初めてだと思いますが、その際には、様々な学術関連団体、大学等関連団体、それから研究機関、それからさらに、産業界、専門職団体その他にいろいろと意見をお聞きしながら選考方針をまとめました。そしてさらに、会員候補者となる方の情報提供も広く受け付けております。

 そのような中で、選考方針に基づきまして、しっかりとダイバーシティーも考慮しながら会員選考を進めました。そのようなことを思っております。

 そして、私が会長時代、多様な考えを持っている会員がおりまして、それが日本学術会議の財産であると認識しておりました。一方で、今御質問のありました政治的な考え方としましては私は意識しておりませんので、質問に対しては、そこの点につきましては本当かどうか分からない、そんなところかと思います。

黄川田委員 梶田会長在任中の会員選考に際して、そのような議論をしたことも聞いたこともないということでしょうか。もう一度はっきり答えていただければと思います。

梶田参考人 政治的な傾向がどうこうということにつきましては、全く議論したことはございません。

黄川田委員 ありがとうございました。

 であるならば、このような発言を聞くと、会長が知らないところで、特定の考え方に基づき、異なる考え方を持つ人を排除するような選考を行ってきた人がいるということが私は明らかになったというふうに考えます。

 次に、日本学術会議の法人化に関する質問をまた梶田先生にしたいというふうに思います。

 梶田先生は様々な、特に五点についての懸念をお話をしておりましたが、学術会議を法人化する理由がないということも取材等で述べております。

 そもそも、学術会議の法人化に反対ということでよろしいんでしょうか。

梶田参考人 お答えいたします。

 私の態度としましては、法人化か政府機関であるかということについては、別に、正直なところ、どちらであっても結構だと思っております。

 ポイントは、日本学術会議がナショナルアカデミーとしてよりよくその機能を発揮するため、そのためにどうすべきかということを考えるということが重要だというふうに思っております。

 先ほども申しましたけれども、今の法案を見させていただく限り、我々が先進国のナショナルアカデミーには普遍的にあるとした五要件のうち、少なくとも三つか四つについて言うと懸念を表明せざるを得ない、そういうことで、そこら辺につきましては、国会においてしっかりと御議論をいただきたいというふうに思っております。

黄川田委員 今、日本学術会議がナショナルアカデミーとしてよりよくその役割、機能を果たすことが大切であるということでお話がありました。

 ナショナルアカデミーとしての役割、機能というものはどういうものだというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 本日の私の発言の中でも述べさせていただきました。これは、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」という文書をまとめたときに、我々として、機能強化の課題として挙げたものです。

 一つ目が、国際活動の強化。二番目が、立法府への助言機能創設にも言及しましたけれども、科学的助言機能の強化。現在、日本学術会議は国の機関ということになっているたてつけ上、立法府への助言機能がありませんけれども、もし法人化して立法府への助言機能等が公的資格として認められるのであれば、これは非常にポジティブに考えたいと思っております。それから、対話を通じた情報発信力の強化と事務局機能の強化です。

黄川田委員 ありがとうございます。

 今、助言機能の強化というお話がありますが、今の日本学術会議の勧告、これは私、少ないんじゃないかというふうに思います。先ほどサイエンス・フォー・ポリシーという話がありましたが、本来、日本学術会議は政府に対して意思を表出することができるというふうに思っています。

 梶田先生が会長のときの二〇二三年に、日本学術会議の在り方の見直しについての勧告をしております。それ以前に遡ると、二〇一〇年になります。総合的な科学・技術政策の確立による科学・技術の持続的振興に向けてということであります。しかし、どれも学術会議の在り方や立場を主張するものであります。私は、この間、勧告すべき事項がなかったのかということを思うわけであります。

 例えば、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出について、学術会議は提言や見解を出しておりません。科学に基づく発言をすべきであったというふうに思います。また、AIについても、社会を大きく変える産業革命的な衝撃となり得るものであります。その対応には、理系や科学の知見のみならず、社会学又は歴史学、倫理学的な幅広い知見が必要であります。まさに日本学術会議が会員の知識を結集して政府に対して意思を表出する勧告を行ってもよかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 まず、今、福島原子力発電所の事故に係る処理水の問題の御発言がありましたので、この点につきまして、私の方から考えを述べさせていただきます。

 処理水の放出に関しましては、政府が主張し、また、国連の機関であるIAEAも、安全性に問題がないということを指摘しております。当然、日本学術会議の多くの会員も、科学的な安全性の点では同意見であったと思っております。

 その一方で、政府が例えば方針を決める前に、政府からこの問題に対して特段の審議の要請等はございませんでした。そして、科学的にはこの問題に関して争点は存在しなかったのではないかというふうに考えております。むしろ、あえて言いますと、争点は政治的なものであったのではないかというふうに認識しておりました。

 もちろん、本来、福島原子力発電所の事故がなければこのような海洋放出というものは必要がなかったということは確かであります。その意味で、望んで放出しているわけではありませんので、やむなく放出したということです。そのことの理解を、近隣諸国を含め、求めていくということが重要なのではないかというふうに個人的には思っております。

 また、AIにつきましては、日本学術会議は今、真剣に議論をしておりますので、それについては、むしろ現役の会員の皆さんから聞いていただければというふうに思います。

 以上です。

黄川田委員 ありがとうございます。

 私は、日本のナショナルアカデミーとして、しっかりと科学的見地に基づいて、この海洋放出は正しいというお墨つきを与えるような見地を出すべきであったと今でも思っております。やはりそれが、自主性、独立性を保つという上でも、国民、また国益に利する、そういう意思表明もこれからしていくべきだというふうに思っておりますので、その辺り、今後、そういう意味で私は改革が必要だというふうに考えております。

 今度は、現行法律の前文について、永田先生に御質問したいと思います。

 日本学術会議は、前文に書かれている設立の理念が条文の本則に移ることや、平和的復興などの言葉が現代的な用語に変わることで、学術会議の理念が失われてしまうといって不快感を示しております。永田先生は、現行法の前文や目的規定をどのように評価されていますでしょうか。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど新法の方の前文については意見を述べさせていただきました。現行法の方で欠けているのは、実は一番大切な国民、あるいは福祉という問題点が中心にはなっていないという点だったと思います。それが今回、社会とともにとか国民ということが背景にある書きように変わっていて、望むべき方向に書かれているなというふうに感じております。

 先ほど述べたように、基礎、応用、開発、そして社会実装まで、研究者が働く場所はたくさんあるわけですけれども、それらは最終的に人々の福祉につながるようなものでなければいけないだろう。そういう観点からは、今次の法案の前文は非常によくできていると思っております。

 以上です。

黄川田委員 最後に、有本先生にお聞きします。

 今回の法人化で、学術会議を先進諸国の自由なアカデミーから中国、ロシアのアカデミーに近づけることになるという意見もあるようです。しかし、私は逆であると考えます。この改革で、他の先進国に近いアカデミーになっていくのだと思っております。有本先生はどのようにお考えになりますでしょうか。

有本参考人 先生のおっしゃるとおりで、私の見方も、ロシア、中国のアカデミーがございますけれども、一方では、先進国、先ほど申しました米、独、UK、それからフランス等々ございます。この辺の全体を見まして、明らかに法人として自律的にやっているということで、一方ではどういうふうにやっているのかとはっきり分からないところもありますけれども、私も同じような見方で、今度の法律、法人化によりまして先進国の方に更に行くということではないかというふうに考えてございます。

 以上です。

黄川田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

大岡委員長 次に、山登志浩君。

山委員 立憲民主党の山登志浩でございます。

 四人の先生方、今日は貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 早速質疑を行わせていただきます。

 まず、先ほど梶田先生から、ナショナルアカデミーのいわゆる五要件について懸念が表明されました。

 ペーパーもございますが、その中でも特にどの部分を懸念されているのか、もう少し御説明いただけませんでしょうか。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 本日お話ししたとおりですけれども、まず、ナショナルアカデミーの五要件のうち、法案を見る限り、少なくとも、活動面での政府からの独立、それから会員選考における自主性、独立性ということについては明らかに大きな懸念を持っております。

 まず、活動面での政府からの独立ということについて言いますと、政府から幾重にも監視、管理、あるいは助言という形になっておりますが、そういう意見を聞きながらの活動を求められるということで、それで本当にナショナルアカデミーとしての独立した活動ができるのかということは懸念を持ちます。

 それから、会員選考につきましても、まず、新しい法人となったときに特別な選考方式を求めていて、基本的にそもそもコオプテーションではないというふうに理解しておりますので、そのような会員選考方式に対しては深い懸念を持っております。

 また、通常時につきましても、会員選定委員会が助言、それは選考方針のみならず、会員選考にまで意見を述べることができるとされている点につきまして、やはりそのような会員選定委員会の方々の意見に左右されるような、そういう会員選考にならないのかということについて懸念を持っております。

山委員 関連して、福田先生にお尋ねしたいんですけれども、日弁連はこの法案に反対という立場であります。選定助言委員会だとかいろいろな機関が設置されますけれども、これは、最終的に判断するのは例えば会員選考委員会だからいいんじゃないかという受け止め方もできるかもしれませんけれども、法文にそうした機関が明記をされるということは、やはり影響が出るというふうにお考えでしょうか。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 今の御質問の趣旨としましては、法文で、法律にそういういろいろな制約が書かれている、要件が書かれている、そのこと自体の影響がどうなのかということですよね。

 それで、私どもとしましては、法文で、例えばこういうことを配慮しなければいけないとかそういうことが書かれれば、それは事実上の拘束力を持つということになって、それが幾つも重ねて規定をされていることによって、学術会議全体としていろいろな制約を大きく受ける、事実上受けることになる、そして、それが法律の根拠を持つ、こういうことだと思いますので、やはり影響は大きいと思います。

山委員 この間、審議で政府にいろいろ尋ねていますけれども、そういう心配はないとか、そういう答弁はあるんですけれども、やはり法文に書かれるということの影響ということを私は重く受け止めたいし、受け止めなければいけないと思います。

 続いて、梶田先生にお尋ねしますけれども、今回の本法案には、独立性、独立といった文言がなくなってしまう、このことを懸念されるとおっしゃいましたが、これがなくなること、文言がなくなることが、日本学術会議のこれからの活動にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。お聞かせください。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 度々申しているとおり、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議がその機能を発揮するためには、やはり科学者の良心に基づいて社会や国に対して発信をしていく、そういう機能が非常に重要であると思っております。

 その意味で、独立という言葉は非常に重要な言葉だと思っており、残念ながら、今の法案では独立という文字が完全に消えておりますので、私は懸念を持っているところです。

山委員 続いて、会員選考のお話で梶田先生にお尋ねしたいと思いますが、先ほどのプレゼンの中でもお話がございましたが、「学術会議のより良い役割発揮に向けて」という方針を二〇二一年の四月に発表されています。総会で決めております。

 いろいろな取組をされてきたと思うんですけれども、この間の自主的な改革についてもう少し詳しく御説明いただきたいということと、あわせて、本法案では、外部の人間による選定助言委員会というものが設置をされることになっておりますけれども、現行の選考方法と比較をして、対比をして、何か評価できる点があるのか、また、別の言い方をしますと、現会員の、現選考方法では何か不十分なところがあるのか、この点をお尋ねしたいと思います。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、御質問の、我々がやってきた会員選考につきまして御報告させていただきます。

 先ほども申しましたけれども、我々の期に選考方針というものを定めて、どういう人を選ぶのかを明確にしてまいりました。そして、この選考方針を決める際に、原案を、各種団体、つまり、もちろん現会員や連携会員及び協力学術団体に意見を求めることはしておりますが、それに加えまして、大学関係団体、学術関連機関、経済団体、専門職団体その他の団体及び加盟国際学術団体の代表者からの意見を聴取しました。その上で選考方針をまとめてきております。

 このように、非常に広くの方々から会員選考について御意見を聞いた上でまとめたということを報告いたします。

 一方で、法案の方なんですけれども、五人以上七人以内で組織される選定助言委員会という、限られた委員からの意見を聞くというふうにされており、これで本当に幅広い意見を吸い上げることができるのか、偏りが生じないのかということについて懸念があります。

 現在の学術会議は、今の会員選考の仕組みを始めたばかりです。現行の仕組みの効果を見た上で考えるということも可能なのではないかと思いますが、どうして今やっていることを否定して、うまくいくかも分からない委員会を法定する必要があるのかということについて疑問に思います。

 以上です。

山委員 五人から七人ということで、そこに多様性とか幅広さがあればいいんですけれども、どういう方が選ばれるか分からないわけですし、新たにいろいろなところから意見を聞くといっても、既に今回、よく話題になっている経済界だとか産業界だとか、そういういわゆる実学系のところ、そこからもやはり聞いているわけですので、今の先生のお話を聞いていますと、現行の方法で、まだ年数は短い、浅いですけれども、特段私は問題が生じていないなというふうに受け止めました。

 時間も押しておりますので、次に、学問の自由の保障に関しましてお尋ねしたいと思います。

 新法人には、今までのお話にありますように、選定助言委員会、運営助言委員会、評価委員会、監事といったものが設けられます。四つのいずれも、もちろん科学者であるということは当然ですけれども、全て会員以外の外部の人間で構成をされ、評価委員会と監事については総理大臣の任命ということになります。

 政府からの独立性を徹底するための法人化であるといいながら、実態は全く逆方向へと向かっているのではないか、ガバナンスというふうに称して政府による管理が強化をされ、独立性や自律性が脅かされるのではないのか、それが行き着くところは憲法第二十三条の学問の自由の侵害ではないのか、私は非常に懸念をしております。

 学問の自由というのは、ただ自分の好きなことを研究して世間に発表するというだけのものではないと思いますけれども、学問の自由に関しまして、日本学術会議が求める、あるべき学問の自由というものはいかがお考えでしょうか。これは梶田先生と福田先生に是非お尋ねしたいと思います。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 学問の自由に関しまして、これはまさに、いわば学術あるいはアカデミーの生命線であると思っております。そして、少なくとも欧州のアカデミーにおいてはこれらがきちんと担保されていると思っております。

 先ほども述べましたけれども、国際学術会議から、日本政府が日本学術会議の運営と会員選出の手続に干渉しようとする度重なる試みに対し深い懸念を表明するというメッセージを出しているということは、まさに世界の学術界から今のこの日本学術会議法案が注目されている、本当に科学者の生命線である学問の自由ということについて守れるのかということが懸念されているということだと思います。

 そして、御質問のもう一つにあります学問の自由についてどう考えるかということですけれども、これは、私が思うには、科学者が何でも自分のやりたいことを好きにやっていい、そういうことではなくて、科学者が自律的に、学者はどういうふうに行動すべきかというようなことについて自分たちで考える、そういうことができる権利だというふうに思っております。

 以上です。

福田参考人 御質問についてお答えしたいと思います。

 学問の自由、憲法二十三条、これは一般的には、研究の自由、発表の自由、そして教授の自由というふうに三つほど挙げられることが一般的なのですが、伝統的な教授の自由ないし大学の自治の問題だけではなくて、学問に従事する研究者の集団、その集団が自律的に学問研究をし、それを他から妨害をされず、そして特に政治の世界からの介入、干渉を防ぐこと、これが学問の自由の基本的な在り方であろうということは、最近の、例えば長谷部恭男教授とかが正面からもおっしゃっておられることです。

 そういう意味でいうと、学術会議というものも、科学者集団として、科学者の集まりの中で自由に、そして真実を追求する、そういう目的の下に議論をするということができなければいけない。そして、運営や人選について幾重もの制約を受けるということは、そういう今申し上げたような学問の自由についての学術会議としての自由な選択、その余地を狭めてしまうことになるのではないか。そういう意味で、学術会議の学問の自由、これが脅かされることになるであろうということを申し上げたいと思います。

 以上です。

山委員 梶田先生のお話にもありましたように、今、世界から注目をされている、本当に日本の学術界は大丈夫なのかと。梶田先生の新聞紙上等での御発言で、日本の学術界の終わりの始まりになるようなことがないよう、やはり国会で徹底して私たちは審議しなければいけないなということを、今日の十五分間の質疑で私は受け止めました。

 これからもまだ時間はあります。時間をかけてしっかりと議論をして、こうした懸念、問題点について徹底的に議論していく、このことをお約束し、私からの質疑とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

大岡委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会、市村と申します。よろしくお願いします。

 本日は、本当に、参考人の皆様には貴重なお時間をいただきましたことを心から感謝を申し上げて、私の質問をスタートさせていただきたいと存じます。

 特に梶田先生におかれましては、ニュートリノ研究ということで、私は文系の人間ではありますけれども、素粒子とか物理学に大変興味を持っておるところでありまして、先生とこうして対話できると思うと、大変光栄でございます。

 ただ、光栄でございますが、先生にまずちょっと質問させていただきたいのは、先ほど学問の自由の話がありましたが、ちょっと今聞いていて、本当は質問するつもりはなかったんですが、疑問に思ったのは、日本学術会議の在り方によって学問の自由が侵されると考えるべきなのかどうか、学問の自由というのはそんなに狭い発想なものなのかどうか、御見解をいただければと思います。

梶田参考人 ありがとうございます。

 もちろん、学問の自由というものは非常に大きいものだというふうに思っております。そうはいいながらも、日本の科学者の代表団体である学術会議に対していわば学問の自由が脅かされるような、そういう状況にあるということは、日本における学問の自由全体に対しての波及効果というものをやはり考えておくべきなのではないかというふうに思っているところです。

市村委員 先生、特にニュートリノ研究なんというものは極微、極微の世界の研究でありまして、我々の目には当然見えないわけでありまして、やはりここは想像力を働かせないといけないわけであります、我々の頭脳の中で。今、AIというのが出てきていますけれども。

 その中で、だから、この法案審議なんというのも、基本的にはどうなのか、これは見えないんです、今のところは。そこで想像力を働かせるときに、本当に今回の法案が、学問の自由、若しくは日本学術会議の独立性、自律性を脅かすものなのかどうか、これはやはり我々想像しなくちゃいけないんですが。

 その観点から、今、先生、元会長もされていたというお立場もありますし、いろいろな御意見もあると思うんですが、本当に今回の法案が、それほどまでに学問の自由を脅かしたり、それから学術会議の自律性、独立性を脅かすものなのか、いかがでございますでしょうか。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 本日私の意見を述べたところですけれども、私は、ナショナルアカデミーの五要件というものに照らした際に、やはり今の法案は非常に懸念すべき点が多数あるというふうに思っております。

 特に、もちろん、先ほどおっしゃられましたように、想像しなきゃいけない部分、そういう部分もあるんですけれども、それを除いたとしましても、活動面での政府からの独立ということについては、私は、幾重にもある監視機能のようなものというのは独立性を脅かすというふうに思っておりますし、会員選考における自主性、独立性についても、今の法案に沿って最初の特別な選考が行われ、そしてその後も選定助言委員会からの意見を聞きながらというような形が、独自に独立して会員選考を行うという観点からは懸念があるというふうに考えております。

市村委員 そこで、永田先生にお伺いしたいんですが、先ほどお話の中で、特殊法人そのものが独立性というものを包含した概念であるということをおっしゃいました。実は、法人形態のことを私はちょっと議論させていただきたいんですが、特殊法人という形態自体が、先生がおっしゃるように、私は独立性というものを包含していると思っているんですが、改めて御見解をいただきたいと思います。

永田参考人 おっしゃるとおりだと考えています。

 以上です。

市村委員 ありがとうございます。

 ですから、私は、学術会議の法人形態としては今回特殊法人の形態を取るということでありまして、大切なのはやはり、何度もここで議論になっていますように、独立性、自律性をどう担保するかということが大切だと思うんですね、学問の自由の観点からも。そのときに、特殊法人という形態が取りあえず今は考えられているということでありますが、実は私は、もっと踏み込んで、日本は公益法人制度がまたどんどん今改まっていっていますので、そういう例えば公益財団法人という形のところでやる方法もあるんだとずっと思ってきたところなんです。

 というのも、そうなると、より自律性、独立性は高まると思うんですね。ただ、そのときには憲法八十九条との関係がありまして、公の支配に属さないところには公金は支出してはいけないということになっておりますから、じゃ、そこでどうなのかというところもあります。

 ただ、ここは非常に、私学助成のことでも公益法人をうまく利用して、公益法人は公の支配には及ばない、独立性があるから及ばないんだということが言われております。ですから、そこで、公金も支出できるけれども、やはり公益法人となりますと自立した財源というのも確保していく努力が求められてくるということになってまいります。

 だから、私は、公益財団法人、今回、特殊法人ということで取りあえずスタートしますが、将来的には、やはり、学問の自由、それから独立性、自律性をもし重んずるということ、それぐらいの矜持をアカデミーの皆様が持たれるということであれば、自ら、いやいや、特殊法人じゃなくていい、公益財団法人でアカデミーは独立するんだ、半ば独立する、半ばですよ。梶田先生がおっしゃったように、五要件、これは満たすべきだと私は思います。でも、じゃ、公益財団法人になったからこの五要件を満たせないかというと、私はそうも考えておりませんで、満たせると思います。

 ですから、やはり自ら、例えば学術会議はそもそも物理学からスタートしたというふうにお聞きしているんですが、しかし今は学際的、まさに学際的な象徴は梶田先生だと私は思います。物理学の先生が、こういう学術会議のアカデミーの会長になられて、しかもこういう法案審議でここに出てきて御答弁されるという、これはまさに学際的な方の、象徴であられるわけですが、学際的であるべきアカデミーをやはりもっとよりよく、独立性、自律性を持って運営していくためには、私は公益財団法人という在り方も一つあると思うんですが、これは梶田先生、いかがでしょうか。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 正直なところ、私、法律の専門家でもないので、公益財団法人につきまして何か軽々にここで物が言えないということは御承知いただきたいんですが、一つだけ述べさせていただきたいと思います。

 海外のアカデミーは国の機関ではないということは最初述べたとおりなんですけれども、そうはいいながらも、基本的にはその活動資金の多くは国から支えられている、そういうものがナショナルアカデミーであるということを御承知いただいた上で、日本学術会議がどうあるべきかということを国会において御審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。

市村委員 感謝いたします。

 ですから、私は、五要件は満たしながらもそういう道もあるんだというふうに思います。またこれは別の、ちょっとまたゆっくりと、それこそお酒でも飲ませていただきながらさせていただければ幸いでありますが。

 そこで、やはり学術会議のこれから私どもが求めている役割は、これは有本先生からもありましたが、社会課題の解決ということが大きいと私は思うんですね。国会に対する助言という話もありましたけれども、是非ともやっていただきたいと思います。学術会議は、私が聞いている範囲では、元々、戦争において例えば科学者がそこに加担をしたみたいなこともあって、そこに対して反省もあったがゆえにできたというふうにもお聞きしているところもあります。物理学から発展したと。しかし、今、社会課題の解決には、もうこれは学際的であるべきだと思います。文系、理系関係なくやるべきだと思います。

 そこで、ちょっとさっき黄川田委員の方からもあったんですが、少し意地悪な質問になりますけれども、一部のアカデミーの学術会議の会員の方が、要するに、右寄りの方はどうも排除した方がいいみたいな話をされたという話も聞いておりまして、それはやはり私は極めて学術的じゃないなと思うんですね。やはりどういう意見も包含した上で、そして議論をするというのがあるべき姿だと思うんですね。だから、一部の考え方の人間を排除しようとか、それは右側の話でも左側の話でも、どちらでも私はよくないと思っております。

 では何のために学術会議があるのかというと、私は社会課題の解決だと思うんですが、有本先生、ちょっとそこをまたお話しいただければと思います。

有本参考人 ありがとうございます。

 先生方御存じですけれども、今、世界的に見ますとサイエンス・フォー・ポリシーですね。これは、ポリシーというのは様々なポリシーがあるわけですね。それも、ナショナルなポリシーもあるし、社会課題、ローカルにもある、それからアジアもある。これがSDGsの基本だと思いますけれども、これに対して、どうやって従来の科学技術が対応するかというのが非常に大きな問題になっていまして、先ほどちょっと私申しましたように、先生も言われましたけれども、科学の分野だけでは駄目だ、統合しないといけない、それも社会科学も人文学も含め。これがサイエンス・フォー・ポリシーでございます。

 ただし、一方では、科研費を中心にして、基礎研究もしっかり支えないといけない。これはポリシー・フォー・サイエンスなわけですね。サイエンスを振興するためのポリシー。

 これをちゃんとバランスを取ってやるという一種の非常に論争があって、そこのバランスをきちっと取るというときに、学術会議といいましょうか、ナショナルアカデミーも非常にしっかり、ほかの国もしっかり議論をしておるということ。

 それから、一方では、科学技術行政もそういうふうにやっているということは是非御理解いただきたいと思います。

 以上です。

市村委員 ありがとうございます。

 そこで、福田参考人にちょっとお聞きしたいのは、特に福田参考人は、独立性、自律性の侵害があるという懸念があるということをおっしゃられていますが、お立場的にはそうおっしゃるんでしょうけれども、どうでしょうか、本当にこの法案が通ったら、おっしゃるように独立性、自律性が極めて侵害されて、とんでもないとやはり思われますでしょうか。いかがでしょうか。

福田参考人 先ほど申し上げましたとおりなんですが、やはりこれは、四つの機関も設けて、そして、それぞれの立場から、会員選考、運営、そして運営については監事と運営助言委員会と両方ですよね、そして、さらに、その成果について、評価委員会、内閣府が評価をする。こういう縛りが、ほかの法律でもちょっと私は見かけないんですけれども。これほどまでに厳重な網をかけるということは極めて異例だと私は思っておりまして、そういう意味でも、想像力をというお話なんですが、想像力を働かせれば働かせるほど、やはりちょっと厳しいのではないかと。

 そういう意味で、学問の自由の問題にも波及するのではないかというふうに思っております。

 以上です。

市村委員 感謝いたします。

 今日は参考人の質疑でありますので、この委員会質疑をよりよくするために、済みません、あえて質問をさせていただいております。

 日本のアカデミー、まさに学術会議は本当に私は大切なものだと心から思います。実は、私は今、宿舎が青山宿舎というところで、学術会議の隣に住まわせていただいておりまして、近くを、いつも前を通って、今日はここで日本の未来を考えていただいている先生方の集まりなんだなと思っていつも通っているところでありますので、是非とも、日本学術会議が、本当の意味で、今は国難ですから、今は国難の時代でありますから、日本の未来のために先生方のお知恵を本当にいただいて、日本のためになるような状況を、この国がより発展するような状況になってほしいということを心から願いまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。感謝を申し上げます。

大岡委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。

 本日は、参考人の先生方、ありがとうございます。

 早速質問に移りたいと思いますが、今回の法案、やはり何か大きなそれぞれ溝があって、何とかこの溝を埋めていかなきゃならないなと思っています。

 私自身は、これまでの質疑を聞いてきますと、国の機関から切り離す、独立するんだ、法人化するんだ、そして、法人になった後も財政支援は担保される、国への勧告権も堅持されるということでありますし、また、欧米のアカデミーが、多くが民間の運営形態を取っておりますから、これに近づくんだということでありますが、一方で、梶田前会長を始め、元会長の皆様が出した声明では、もはや国際的な科学アカデミーから信頼できる科学者アカデミーとして認知されない組織に変質をする、さらには、終わりの始まりだと。ここまで言わしめてしまうのは何なんだろうということを、ずっとこの議論を通じて感じてきたことであります。

 その中で、今日も御説明をそれぞれいただきました、任命者が総理である監事と評価委員会ということについてお聞きをしたいと思っています。

 その前段階として、先ほど梶田委員からは、この法人化については、賛成でも反対でも、どちらの形態であっても、いいものになればという話でありましたが、他の委員から、まずこの法人化について端的に賛成か反対かということをお聞きをさせてください。

永田参考人 ありがとうございます。

 元々賛成をしております。法人化をすることで、よりインターナショナルな意味での本当のアカデミーに近づくだろう。国の支えはあってしかるべきですが、それはミニマムであって、やはり独自の財源で自分たちの自由を守っていく、これが研究者や学者の基本的な態度だと思います。

 したがって、この法人の形態でよろしいかと思います。

有本参考人 私も、法人化に賛成でございます。

 繰り返しでございますけれども、私、冒頭申し上げましたけれども、法人化によって、非常に戦略的、弾力的に、もちろん資金の方もそうですけれども、いろいろな、世の中からタイムリーに受け止める、物事を。それで、科学助言をしていくという意味で、それから、若手をどんどん育成するという意味、それから、海外に対しても、今、物すごく努力はされているんです、今の国の機関として。しかし、それは、おのずから制約がある。予算の制約とか、タイミングとか。こういう意味で、法人化をするということが非常に大事じゃないかというふうに思ってございます。

 以上です。

福田参考人 先ほど意見陳述でも申し上げましたが、私どもといたしましては、この法案の内容による法人化というのは、これは反対というふうに考えております。

 それは、繰り返しになりますけれども、やはり、独立性、自律性を侵害する、あるいは制約する、そして、学問の自由についてもこれを脅かしかねない、そういう意味で、反対と申し上げているところでございます。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 独立性また自主性というお話が出ましたけれども、それを担保する中で、監事と評価委員会というのが今回設置をされるわけでありますが、監事においては、課題としては、年間十億円近くの資金を支出している、そうであるならば、やはり財政支援を受ける以上は監査があるのは当たり前じゃないかといった指摘もある一方、この監査が大きな、研究や、また学術会議の弊害になるんじゃないかという意見もございます。

 この監査についての任命権、そもそも、では、なくせばいいのか、さらには、総理任命をやめればいいのか、また、違った形の監査にすればいいのかという意見について、永田参考人と梶田参考人、それぞれ伺いたいと思います。

永田参考人 監事の件だと思いますが、この件に関しましては、独立性が担保される必要があります。それは、先ほども述べたように、全ての組織が運営される面に当たっては、必ず監事はそことは利害関係のない全く別のもの、しかも、ナショナルアカデミーが相手ですから、それには相応の裏づけを持った監事が必要である。したがって、今のこの法文に今次書かれている内容でよいかと思います。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、従来、国の機関として活動してきておりまして、国費を使っているということで、国費の使用ルールに加えて、会計検査院の検査対象でありました。もちろん、当たり前ですけれども、決して好きなように予算を使っていたわけではありません。仮に法人化された場合にも、国からのお金が入るということで、会計検査院の検査対象であり、予算規律は当然守られるものだというふうに思います。

 しかし、予算の論理から国との関係を意識して議論の内容や議題を忖度するようなことになれば、やはりナショナルアカデミーとしての本来の役割を放棄するということにもなりかねないというふうに思っております。

 度々申し上げますけれども、海外のアカデミーでも、基本的に国費によって運営されているのですけれども、独立、自律性は担保されておりまして、今回のように何重にも政府が関与するような、そういう仕組みを持っている国はないと思います。

 非常に感覚的な答えになって申し訳ないんですけれども、国から独立することによって、国からの管理が広く厳しくなるというようなことがあってはいけないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 梶田委員におかれては、まさに任命の拒否問題において最前線に立っていただきましたので、やはりそのような不信があるのは確かだと思っています。今回のそもそものやはり原因はこの会員の任命拒否によるものでありますから、これは、今回の議論とはまた別でしっかりと、任命権の、拒否の理由開示を求め、信頼を取り戻していかなくてはならないと思っています。

 その上で、さらに、監事と併せて評価委員会、これも任命者が総理でありますが、これは法人と併せてセットで行われます。これも永田参考人と梶田参考人に伺いたいんですけれども、独立行政法人や国立大学法人も、このように中期目標や計画の義務づけがあります。

 特に、永田参考人におかれましては、改正の国立大学法人法のときにこの議論をされておりまして、ちょっと趣旨が違ってしまうかもしれませんが、今回の法文、閣議で決定するまで知らなかった、コミュニケーション不足であった、予算の配分についても厳しい御意見があったのも聞いております。その上で、今回、この学術会議が、同じように評価委員会を設け、目標や計画の義務づけをすることを、国立法人と併せて見解を伺えればと思います。

 そして、梶田参考人は、実際、学術会議におられ、かつ大学でも研究また指導をされている、その立場において、この評価委員会の任命者が総理だということについての見解を伺います。

永田参考人 評価委員会の部分につきまして、法文を読む限り、その権限が余り強くない、意見を申し上げるということになっている。これは正しい方法でありまして、中期計画を立てて、それに対して誰かが評価をして、直しなさい、これが正しくて、そこの部分に対しては別に、それだけに関しては意見はありません。

 ただ、問題は、それをインセンティブあるいは逆のものに使うということに関しては、この法律には書いていないんですが、それをやられてはいけないだろうと思っています。

 評価は至る所からされるべきで、満足のいく状態になったときに組織も研究者も終わりなので、評価はたくさん受けるのが筋だと思っております。

梶田参考人 今の法案では、総理大臣任命の監事ということです。一方で、会長は会員の互選で選ばれる、それも国から独立した法人。ということで、私の懸念としましては、総理大臣任命の監事というのは、やはりそれなりの影響力を持つだろう、つまり、会員の中から互選で選ばれた法人の長としての会長と比べてという意味ですけれども。そういうことですので、私は、ここについてはやはり懸念が拭い去れないというふうに考えております。(田中(健)委員「評価委員会はどうですか」と呼ぶ)

 まず、一つ申し上げておきたいことがあります。今の学術会議でも、あるいは法案での学術会議においても、会長の任期は基本三年です。そういう中で、六年間の、済みません、法案の正確な言葉を覚えておりませんが、中期目標のようなものを作成するということに関して、私は強い違和感を持っております。

 というのは、そのようなものが作られたときに、後半の会長というのは、自分で何をするかということについての、ある意味、何も意思表示はできずに、既に定められた計画に沿って進めるということは非常に違和感を感じております。

 以上です。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 もう一点、懸念事項としましては、学術会議は、今まで内にこもり、なかなか社会との接点が少なかったということも指摘をされています。そういう中であって、この同じ梶田さんの声明文の中にも、機能強化とそのための改革が必要であるということは述べられておりますので、ここは皆さん一致をするところだと思います。

 その中で、有本参考人にお聞きしますが、有本参考人は、常日頃から国際連携を強化せよということで、先ほども、ダイナミズムから日本学術会議が取り残されているんじゃないかという指摘がありました。

 新聞の投稿欄の中には、日本学術会議は福島の原発事故後にも科学者の行動規範を改定し、世界から注目をされた、これを時代に合わせて見直す必要もある、さらには、国際ネットワークの強化や国際頭脳の循環が必須であるということを述べられていましたが、この改革の中で、是非、国際連携、また強化について御所見を伺えればと思います。

有本参考人 ありがとうございます。

 当然、現在の国の機関としての学術会議も国際連携はやっておられます。S7とか、それから学術会議の連携はあるわけですけれども、これは私の私見か分かりませんけれども、どうしてもやはり国の機関としてのおのずから限界がある、タイムリーに何かやろうというプロポーザルがあったときに、予算の制約とかいろいろな経理の制約とかがあるということは確かじゃないかと私は思います。

 それから、ヤングアカデミーも非常に頑張っているんですけれども、予算が十分配分されていないということがありまして、ここでやはり、先ほど来出ていますように、法人化をして、もちろん国のしっかりしたサポートというものは当然です、これは持続的なサポート。しかし、一方では、民間寄附金、日本はなかなか民間寄附金のカルチャーがないですけれども、こういうことで学術会議が社会のために動き出すということがだんだん分かるようになれば、おのずからサポートが増えるという今過渡期にあると思ってございますので、是非、国際的に、さっきも最後に申しましたけれども、アジアで物すごく動きがあるわけですね。

 ASEANの国でもどんどん今、御存じのように、上から目線で支援をしてやるという感じじゃもうないです。あるいは知識を移転するというだけじゃなくて、トップレベルのいろいろな研究者もいっぱいいるわけですから、そういう方々と一緒に行動を起こす国際連携をやる、そのときの基盤として学術会議が活躍してもらうというところでは、やはりダイナミズムというもの、それから若手をどんどん入れていく、もちろん若手は会員にはなかなかなれませんけれども、将来は会員の候補ということで鍛える機会にもなるということで、是非そういう観点から御審議いただきたいと思います。

 ありがとうございます。

田中(健)委員 最後に梶田参考人に伺いたいと思いますが、そのような改革の中で、今日の御提言の二ページの最後に、助言機能が明記されたなら法人化のメリットとなる、立法府への科学的助言のチャネルがないということが課題と書かれています。

 私も、政府がやる審議会は、どうしても御用学者や、ないしは政府の政策の意図に資する方が選ばれるといった指摘もある中、学術会議はこのような指摘の中で、例えば新型コロナウイルスもイギリスなどでは議会がしっかりとその検証をして提出するというようなことがありましたから、私たち立法府側が学術会議に科学的知見を聞き、また共に解決に向かっていくということが可能なんじゃないかと思っておりますが、これについて、最後にその可能性についてお聞きしたいと思います。

梶田参考人 どうもありがとうございます。

 まさに私たちも、二〇二一年に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」という文書を作成しているときから、日本学術会議がその機能をよりよく発揮する場所として立法府への提言機能というものが非常に重要だろうというふうに考えておりまして、残念ながら、やはりそれについて言うと、今の国の機関という立場ではそれはできないんだというふうに思っておりますが、確かに、法人化したらばそれが可能となりますので、残念ながら今の法案にはそのようなことが一切書かれておりませんけれども、もし法人化するのであれば、是非とも国会で御審議をいただきまして、立法府への提言機能というものにつきましても法文に明記していただきますようにお願いいたします。

田中(健)委員 四人の先生、ありがとうございました。

 終わります。

大岡委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 参考人の皆様、本日は、お忙しい中、大変にありがとうございます。貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、今回の法改正により日本学術会議が法人化されるわけですが、特に法人化によらなければ改革できない点、抜本的に改善できない点は何だと考えるのか。まず永田参考人と有本参考人にお伺いします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 五要件に関わることかと思っております。日本学術会議の方から出ている五要件であって、これは一般的な社会から出てきた五要件ではないので、アカデミーが捉える五要件という観点が変わること自体が重要なんだろうと思っています。

 とりわけて五要件の最初の二つというのが、学術的に国を代表する機関としての地位とか、そのために公的資格の付与というのは、本来そういうものではないんじゃないかと。ナショナルアカデミーというのは、その尊厳たるものは自分たちの活動そのものなので、これを法文に書くこと自体がどういうことなのかというのを一介の科学者としては思うところであります。同じように、今の国家公務員としての、議員として働けと言われたら、やはり僕は嫌で、それは、あくまでも私は科学者であり一介の研究者ですから、そういう働き方はしたくない。それが結局そういう問題、一、二の問題と関わるでしょう。

 それから、三番目の問題で、財政の問題をいつも言われますけれども、財政の中身が明快になっていないのでこういう言い方になるでしょう。当然ながら、いろいろな提言活動をこれからも行われるでしょうから、そのために、調査にはお金がかかるので、それは、じゃ、そのための資金が必要。ただ、それでは駄目で、急遽調査しろといったってできるわけじゃありませんから、日頃からそれをある水準で保つための費用は必要。そこが国費が使われても文句は言えないというか、使ってくださいという部分だと思うんです。これを一緒くたにして全部国費であるというのはやはりおかしいと思います。そこの部分をはっきり変えていただきたい。

 でありますから、今の議論で、財政基盤全部を国に頼るというのであると、当然ながら、第四項目めの、活動面での政府からの独立というのは、それはやはり、どこにも正解が、これが正しいということを言う方はいらっしゃらないんじゃないかと思います。やはりそこのところが変わっていかないといけない。

 それから、会員選考における自主性、独立性というのは、先ほどからも議論がありましたが、会長も自分たちで選べる、それから会員も最後は総会、会長が選ぶことになっている。全て最終的決定権は総会、会長。唯一、監事だけが違います。それは、先ほど申し上げたように、学術会議の会長というものに対して、巨大な科学者を相手にする一人としては、そのぐらいの任命権者から任命いただいた方がいいのではないかと。それから、誤解がないように申し上げますが、監事がもし運営そのものに口を出すのであれば、それは失格で、その時点で監事としては排除されなきゃいけないという問題だと思います。

 したがいまして、この五要件そのものをしっかり見直すことこそが実は今大切なことなのではないかと思います。

 以上です。

有本参考人 法人化によるメリットという観点からいたしますと、幾つか申し上げたいと思います。先ほど来、重複するところもあるんですけれども。

 まず一つは、今ちょっと外交的な観点から申しますと、先生方はよく御存じのことだと思いますけれども、トラック1とトラック2というのがあるわけですね。

 トラック1というのは国です。政府、行政としてどう今の国際対応をするか、いろいろな国があるわけですね。

 トラック2というのは、こういうアカデミーを含めて、NGOもあるわけですけれども、いろいろな基盤的なことをつなぐところはやっていくというのは、政府ができないところをやるという意味では、私は、法人化によって、今までも学術会議もやっておられましたけれども、更に一段として、そういう、海外のアカデミーはそれをやっているわけです。下を支える、いろいろな意味で。

 もちろん、だから、学問には国境はないという基本で、科学的な基礎研究のところを中心にして、もちろん、価値を生み出すところは非常に国益に絡むところはありますので、そういうところで、しっかり法人化すれば、更にダイナミックにできるんじゃないかということが一つございます。

 それから、先ほど来出ていますけれども、やはり、法人化によって、例えば、海外もやっていますけれども、外国人会員を入れる、これは大事ですよね。やはり、日本語だけでやっているとどうも日本文化になるものですから、どういうステータスにするかというのはまたいろいろ議論はあると思いますけれども。そういう、外国人会員もそうですし、多様な人を入れるということは非常に大事なんじゃないかと思いますけれども。

 最後に、科学技術とかイノベーションとか学術といいますけれども、物すごい勢いでボーダーが広がっているわけですね、いろいろな意味での。価値を生み出すといったところで、サステーナビリティーもありますでしょうし、経済力もありますでしょうし、いろいろな観点があるという意味でのダイナミズムをどうやって、どうしてもディシプリンベースのところでの論文生産というのが中心でございました。これを今変えないといけないという時期に来ている。特に次の世代の若い研究者あるいは専門職というものはそういうものにどんどん入れていくという意味での法人化というのは非常に大事だというふうに私は思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 次に、永田参考人にお伺いします。

 永田参考人は、二〇二三年八月に設置された日本学術会議の有識者懇談会のメンバーであります。有識者懇談会は、昨年十二月十八日まで計十五回開催され、二日後の十二月二十日にまとめられ、「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」というタイトルで取りまとめられたと承知しています。

 そこで、永田参考人は、有識者懇談会に実際に参加され、この報告書をどのように評価されるのか。この法案は報告書を十分に反映したものになっているのか。また、報告書では国民の視点を意識していると感じましたが、科学者の総意に基づいて学術会議を設立するという現行法の理念はもちろん大切ですけれども、学術会議は究極的には科学者も含む国民のものだと考えますが、その辺の見解についてお伺いいたします。

永田参考人 御質問ありがとうございます。

 御審議の過程を通じての問題はちょっと後で述べるとして、国民のためというのは、現況の、それが国からお金が出ていようがいまいが、我々が科学というものを考えるときの非常に重要なポイントです。実は、もう少し言えば世界のためになので、当然ながら我が国の学術会議は我が国のためにを含んでいるという観点からは、当然そうなるべきだと思っています。

 それから、一年数か月、委員をやってきましたが、本当の理想からいえば、完全法人化というのを何とかできないのかということは考えてきました。そのためには、率直に申し上げて、日本の寄附文化というのが十分醸成されていないこの状況下ではこれは難しいかもしれない。そうなると、学術会議をなくすわけにはいかなくて、法人化によるメリットも失いたくないという、このはざまでできている法案だと思います。そのどちらも全うしようとしている部分があって、極めてその中で、両方の条件の中でできてきたものだという認識があります。

 ですから、先ほどどなたか委員の方がおっしゃいましたが、次の段階へ向けてまた考え始めて、もっとよいものに変えていくということは必要でしょう。ただとどまっていては、いつまでたっても同じところに、地点から変わりませんから、一歩踏み出すための今法案になったのかなというふうに思っております。

 以上です。

山崎(正)委員 次に、有本参考人にお伺いします。

 海外のアカデミーには国が関与する監事や評価制度は置かれていないと聞きますが、我が国の学術会議にだけそのような仕組みを設けることは国際的な信用を失わせることになるのではないかというような御意見もありますけれども、その辺についての見解をお伺いします。

有本参考人 どうもありがとうございます。

 今の議論に、つながりになると思いますけれども、海外のアカデミーというのは歴史的にずっと独立をしながら来ているものですから、今、私も、この特殊法人というものは、やはり過渡期といいましょうか、しかし、しっかり基盤を固めて次に移るということで、そういう意味での法体系というものがおのずからあるんだと思います。

 もちろん、だから、法律的な文言と、それから運用する、一体誰が運用するんだと、これは行政側もそれから国会の先生方もよく見ていただきたいと思いますけれども、それから学術会議、これが今からしっかり運用した上で、それで次のステージに移っていくということでありますけれども。

 戻りますと、先生の、海外のアカデミーですね。これは全体としての監事とか何かというのはございません、それは歴史なものとして。ただし、御存じのように、国からいろいろなサポートを受けているわけですね、プロジェクトベースとかありますけれども。そういうものに対しては、きちっとやはり、監査とか、こういうものは、仕組みはあるということでございます。当然、公金を使うわけですから、そういうふうになっていると思います。

 以上です。

山崎(正)委員 続けて、有本参考人にお伺いします。

 海外のアカデミーは外部資金を一定程度獲得していると聞きますが、法案のコンセプトである自主性、自律性という視点を考えたときには、財政基盤の多様化の意義、必要性をどのように考えていくことがいいのか、お伺いいたします。

有本参考人 海外のアカデミーも、先ほど来出ていますように、かなりの部分は、政府、行政から公的資金をサポートされているということでございます。日本の場合も、そういうふうに、公的資金をきちっと、基盤的なところは維持しながら、新しい資金の多様性ということを努力をすると。

 さっき永田先生もおっしゃいましたけれども、日本には寄附のマインドセットといいましょうか、なかなかないところは確かでございます。しかし、努力をしていけば集まってくるぞというのは、あの上野の科学博物館の例も、最近クラウドファンディングもいろいろありますね。

 そういう意味では、それを努力をすることによって、子供たちも、科学、学術にも関心を持ってもらうというところで、次第にそういうものを、視野を広げていくという意味での非常に大事なきっかけになるんじゃないかというふうに思ってございます。

 以上です。

山崎(正)委員 先ほど少し、ちょっとその辺のお話も聞いたんですが、永田参考人に最後にお伺いしたいと思います。

 アカデミアに身を置く永田参考人から見て、ナショナルアカデミーの五要件という分析についてどう思われるのか、またこの法案はナショナルアカデミーの五要件を満たしているのかどうなのか、先ほど少し言及がありましたけれども、お伺いしたいと思います。

永田参考人 ありがとうございます。

 学術会議が考える五要件に関しては、財政の部分を、先ほど申し上げたように、基盤的な活動維持というのを政府に頼り、そのほかはやはり自己資金として獲得するという前提であれば、ほぼ認められていると思います。

 先ほど言いましたが、ちゃんとこれが我が国のアカデミーであるということも明記してありますし、独立、単語はありませんでしたが、それは法人化して外に出るということで保障されています。

 各面から見て、基本的にはこれで、五要件に関しては認められるだろうと思います。

 以上です。

山崎(正)委員 最後にお伺いしたいと思います。

 これも有本参考人にお伺いしたいと思いますけれども、新法案は、政府やいわゆる外部の関与を可能にする仕組み、評価委員会、監事、助言委員会などが盛り込まれているため、独立して職務を行うという現行法の根幹が損なわれるという指摘が様々なところから聞かれておるんですけれども、本当にこういったことがあることでその根幹が損なわれる可能性があるのかどうなのかというところについて見解をお願いしたいと思います。

有本参考人 私は、法文上の議論につきましては是非国会で更に詰めていただきたいと思いますけれども。

 私は、ここに出ましたのは、運用上が大事だと思っています。さっきの繰り返しですけれども、やはり、これが、法文がどうなるかあれですけれども、法人化をして、いよいよ次に出発するというときの、学術会議とそれから行政側、それから国会も是非お願いしたいと思いますけれども、よく支えてもらう、敵対するのじゃなくて。これを、どうやって日本のアカデミーをよくするんだというスタンスからやっていただければ、運用上、是非、よくなるんじゃないかというふうに確信を持ってございます。

 以上です。

山崎(正)委員 貴重な御意見をありがとうございました。しっかり今日の御意見を参考にして、また今後の質疑に臨んでまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

大岡委員長 次に、上村英明君。

上村委員 四人の先生方、今日はありがとうございます。

 れいわ新選組の上村英明と申します。

 私は、小さい女子大ですけれども、東京郊外にあり、間もなく閉校になりますが、恵泉女学園大学というところで、二〇〇二年から二二年まで専任教員をしておりました。専門は国際人権法であります。

 本日は、学問の自由に関する憲法第二十三条と民主主義における政府を批判する権利についてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、永田先生にお尋ねしたいんですけれども、今回の法案の基礎は、今もありましたけれども、二〇二三年の八月に設置された日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会と、二〇二四年十二月の同懇談会による報告書にあると考えています。

 先生は、その懇談会の中で、十二名の委員のお一人でした。

 この懇談会は十二名の委員なんですけれども、人文・社会系の学術に見識のある方というのを私なりに見ると、僅か二人です。ほとんど自然科学系の方が多いということがあり、人文・社会系は行政法と社会言語学の二人です。これはすごくマイナーな領域です、申し訳ないですけれども。

 どうしてこの点を気にするかといえば、二〇二〇年に菅政権によって任命拒否された会員候補六名は全て人文・社会系の研究者でした。

 日本学術会議は二百十名の会員組織ですが、人文・社会系七十名、生命科学系七十名、理学・工学系七十名で、全分野を等しく網羅していると思います。

 例えば、この有識者懇談会に、私の視点からいえば、憲法学や国際法学、あるいは歴史学などの研究者が不在だったことについて、先生は疑問を持たれなかったでしょうか。

永田参考人 今委員がおっしゃった分野の人がいないからといって、人文・社会が含まれていないという判断ではないと思います。お二人、学者としてはそうかもしれません。しかし、そのほかに二人ほど、実際の、現実の社会の中で活動されている方も入っていたと認識しています。

 したがいまして、二人ではなくて、社会を分かっている方々は四人いらっしゃったのではないかと私は認識しています。

上村委員 今の発言が少し問題だなと実は思っているんですけれども。

 最後に、永田先生、もう一点だけ。

 この報告書は、日本学術会議改革の提言書ということになっていますが、残念ながら私の経験からするとそう読めないです。

 何かというと、これは一般的な、高等教育機関としての大学や博物館などの改革をするための提言書ではないんですか。つまり、例えば、中期活動計画とか自己点検評価書、あるいは外部の知見の導入などというのは、私が大学にいるときにさんざん文科省から書かされました。その結果、閉校になったんです。なぜかというと、学生を教育する時間がなかったからです。

 こういう問題のときの、ある種のメカニズムがこの法案の基礎であって、こうした大学や博物館などのような機関の改革には適当かもしれませんが、日本学術会議という組織を改革するときにこの提言書が適切であるというふうにお考えでしょうか。

永田参考人 最終的に公費が活動費全部を占めるという現状にあっては致し方ないことだと思います。

 また、私のどこが問題か分かりませんが、それは問題だとおっしゃるのは、参考人に対して、それを参考意見としてお聞きになりたいという意味でなされているのであれば、必ず後で述べていただきたいと思います。

上村委員 では、梶田参考人にお尋ねしたいと思いますけれども。

 現在の政府は、学術政策として、競争的資金獲得などと結びついて、自然科学系の偏重を目指しているように私には見えます。しかし、理科系の研究者が社会問題と向き合ってきた歴史もあります。

 かつて私は明治学院大学の国際平和研究所で働いておりましたが、一九八六年から九二年まで初代の所長を務められたのが豊田利幸先生でありました。一緒に、お話を聞く機会も何回かあったんですけれども、先生は素粒子論を専門とする核物理学者でしたけれども、日本学術会議の初代会員であった湯川秀樹先生や朝永振一郎先生と核兵器廃絶の運動に熱心に取り組まれました。

 これは、ここにいらっしゃる皆さんは御存じだと思いますが、一九四三年、東条英機内閣の下で閣議決定した事項がございます。科学研究は大東亜戦争の遂行を唯一絶対の目標としてこれを推進するということがございました。

 こうして、軍事研究に動員された歴史をくぐってこられた研究者の方たちが、日本学術会議のこうした位置づけを、設立をされたというふうに考えております。

 その意味では、今、永田先生にちょっとお尋ねしたんですけれども、日本学術会議は、通常の学会や大学などの高等研究機関とは異なり、表層の社会課題に向き合うのではなくて、科学研究に従事されてきた研究者の科学的知見とプラス長年の経験を合わせて、深い洞察を示すというのが日本学術会議の本来の役目だというふうに私は思っています。

 もちろん、若手の研究者との交流、結構です。それから、多様性を認めること、結構です。ただし、それだけではなくて、科学的知見と長い経験を積まれた方たちが集まり、深い洞察を示すという意味では、従来の学会や大学とは異なる組織であるというふうに考えていますが、梶田先生の御意見はいかがでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 基本的に私も同意見です。

 やはり、学術会議あるいはナショナルアカデミーというのは、科学者が科学的な知見に基づいて、国あるいは世界の将来のこと、人類社会の将来のことについて考えていく、そういう組織だというふうに思っております。

 そうはいいながらも、一方で、エスタブリッシュされた、ちょっと言葉は悪いんですけれども、年を取った人と言ってもまた言葉は悪いんですけれども、そういう人だけでなくて、その一方では、いろいろな意見を入れるということもやはり重要であるというふうに認識しておりまして、そのようなことで、日本学術会議としては、若手アカデミーなどを組織して若手の意見もしっかりと取り入れるような、そういう取組をしてきております。

上村委員 ありがとうございました。

 その意味では、若手の意見を取り入れたり、それから、まさに多様性を、国籍を含めて取り入れる努力はされているというふうに思いますが、ある意味では御賛同いただいたと思いますけれども、やはり、深い洞察という、この社会に今一番欠けている、皆さんが表層の中で社会問題、社会問題とおっしゃいますけれども、それがどんな社会問題なのかということに対する見識を持たなければ、科学者としての役割は果たせないというふうに思っております。

 では、最後に福田参考人にお尋ねしたいと思いますけれども。

 国際人権法の世界では、政府から十分な独立性を確保された国内人権機関の設置というのが大きな課題になっております。残念ながら日本はまだできていないんですけれども。人権を扱うときに、裁判というのは物すごく時間がかかります。裁判に訴えると、最初の判決が出るまで大体二年ぐらいかかってしまうという。具体的な人権侵害にはなかなかタイムリーな対応ができないというので、国内人権機関というものを設置するということがあるんですけれども。

 ただ、これは設置すればいいという話ではなくて、国際的な要件が定められておりまして、これは一九九三年十二月に国連総会で採択されたパリ原則というものがあるんですけれども、その独立性の保障の中に、独自の職員と事務所を持つことが明記されています。

 先ほど梶田参考人からも事務局の強化という御意見があって、これは本当に賛同するところなんですけれども、法案の規定によれば、附則の十二条なんですけれども、新しい学術会議の事務局職員は、基本現職員が移行するということになっています。

 四月二十五日現在、事務局の正規職員は四十九名と聞いておりますけれども、そのうち、内閣府の職員が三十八名、そして文部科学省からの出向が四人、その他民間からの任期つきの出向職員が七名ということなんですけれども。

 もし、政府が本当に日本学術会議の独立性を強化するということを目的にしているのであれば、職員の独自性についてもっと踏み込んだ対応があったというふうに思うんですけれども、こうした点に関して福田参考人はどういうふうにお考えでしょうか。御意見を聞ければありがたいです。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 事務局職員の充実とか、それから、そういうものも含めて国際的に通用する、そういう独立性、そして人権の保障も含めた学問の提言、こういったことが本当に日本学術会議ができるようになることを私も祈っております。

 祈っておりますが、御指摘の、職員の方のお話もございましたが、そのためにはもっと財政的に充実をさせなければ到底賄うことはできないだろうと思います。十億円というお話がありますけれども、到底期待されるような学術会議の在り方を満たすものではないだろうというふうに私は思っております。

 そういう職員や、あるいは、さらに国際的に評価をされる学術会議の人権の側面、そういうものも充実をさせるために、是非これは、今、法人化をどうするかということを超えて、議論を広めていただければありがたいと思います。

 以上です。

上村委員 ありがとうございます。

 私が今日何を言いたかったかというと、どうもこの法案を読んでいて、何かごまかされているなということを感じておりました。先ほど言いましたように、本来であれば高等研究機関の改革に使えるような手法を、日本学術会議という全く種類の違う組織に対して適用しているのではないかなというふうに思います。このままいくと、残念ながら、ナショナルアカデミーがナショナルクロデミーになってしまうとか、そういうふうな懸念も、これは冗談ではないようなことを考えております。

 そういう意味でいけば、本来、有識者会議が提出された報告書を、司法的に言えば、裁判では差戻しというのを使うんですけれども、本来であれば差し戻して、日本学術会議を改革するとは何かということを、きちんとしたメンバーも入れてやるべきだというふうに思っております。

 大体時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

大岡委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、参考人の皆様には貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 それでは、梶田参考人にお尋ねをいたします。

 二〇二〇年に六人の会員候補者の方の任命がされなかった件につきましてですが、その理由の説明もないこと、また、速やかな任命を求めたにもかかわらず、任命されないままであることについてはどのように受け止めておられるんでしょうか。

梶田参考人 御質問ありがとうございます。

 第二十五期が始まった初日に、六人の任命がされなかったということを我々は知りまして、大変に驚きました。そして、その総会の最中に緊急に文書をまとめて、任命しなかった理由を教えてほしい、そして速やかに任命してほしいという文書を提出させていただきました。

 残念ながら、それ以降、我々には何も理由も教えていただけませんし、任命もされていない、そういう状況かと思っております。

塩川委員 説明を求めたにもかかわらず、説明がない、速やかな任命を求めたにもかかわらず、任命されないままであった。

 そういう下で今回のこのような法案が出されたことについてはどのようにお考えでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 これはちまたで言われていることなので、必ずしも私はこの場でどうこうということはございませんけれども、私たちとしましては、日本学術会議がやはり日本のナショナルアカデミーとしてよりよいものになっていくんだという、そういう不断の努力がまず必要なんだというふうに思っております。

 そのような中で、内閣府が有識者懇談会を設置して、今回法案として出てきたわけですけれども、そのようなプロセスにおいて、日本学術会議がよりよいものになっていくような法案なのか、あるいは、より機能が発揮できるような法案なのか、そして、もちろん、アカデミーとしてきちんとした独立性、自律性がある、そういう法案になっているのかということにつきまして、国会できちんとした御議論をお願いしたいと思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて梶田参考人にお尋ねしますが、現行の学術会議法の前文に、日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と協力して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立されると学術会議の使命について書かれているところであります。

 法案では、この前文が削除されます。この学術会議の使命の部分が削除されることについての受け止めはいかがでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 本日、最初の私の十分の話の中でも一部申しましたが、現行法の学術会議の使命を記した前文というのは私たちにとって非常に重要なもので、まさにこの使命を読んで、私たちは日本学術会議の会員として、私の場合は会長として、仕事をしてまいりました。

 そして、先ほども申しましたけれども、科学者の総意の下という言葉がありますが、それが今の法案では完全に消えており、恐らくこれは科学者の総意の下ではないということでそういうことになっているんだと思いますが、やはり私たちは、科学者の総意の下にある学術会議として発展をしていってほしいと思っております。

塩川委員 非常に重要な規定であるというお話と、この科学者の総意の下にという部分でありますけれども、やはり科学者自らの自主的な団体として科学者の総意の下に設立されたのが日本学術会議だということであります。

 今回の新法の提出に当たっては、学術会議との真摯な協議を欠いたまま、学術会議からの懸念も法案に反映されていないということについてはどのようにお考えでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 私が会長のときに、本日も度々出ておりますナショナルアカデミーの五要件、これは我々が言っているというよりも、世界のナショナルアカデミー、先進国のナショナルアカデミーをレビューしたときに、この五要件がどの国もしっかりと担保されている、そういうことに基づいて私たちは発言しております。

 ということで、まず、このナショナルアカデミーの五要件がしっかり担保されていること、そして、それとともに、やはり私たちは、学術が日本社会あるいは世界人類の将来のために重要であるというふうに思っておりまして、そのような観点から、日本学術会議が機能強化ができるように、具体的に四点今朝申しましたが、そのようなことがしっかりと新しい法律を作る際に意識されて、しっかりと議論された上で法律ができていく、そういうことを望んでおります。

塩川委員 五要件の担保の話をいただきました。

 新法におきましては、中期的な活動計画、年度計画の策定や、また総理任命の評価委員会による評価、総理任命の監事による監督、こういう組合せによる組織運営の仕組みを定めています。

 私は、事業実施機関ではない学術会議、つまり、審議機関としての学術会議において過重な関与の仕組みではないのか、その点でも独立性、自律性の観点から不適切ではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 私たちもまさにそのように考えておりまして、基本的に、やはり学術会議というものは独立して審議をする、そういう観点が非常に重要であり、今回の法案を見させていただく限り、過重な、言葉は悪いんですけれども、上からの機関が見ていくような、そういうようなものになっており、これで本当に独立してしっかりと学術会議が審議ができるのかということについて懸念を持ちます。

塩川委員 このような国の関与の仕組みというのは、主要な国々のナショナルアカデミーにおいては例がないというお話をお聞きしますが、具体的にどういう違いがあるのかということについて、もし御見識がありましたら、教えていただけないでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 これについて、もちろん、私は各国のナショナルアカデミーについての専門家ではないので、ちゃんとしたことは言えないということを言った上でなんですけれども、私たちが調べた限りでは、先ほどから申しましたような多重の監督のような、このような仕組みで運営されているナショナルアカデミーはないと思います。

 先ほど来申し上げていますように、ナショナルアカデミーの独立性、自律性、そのようなことが各国でしっかりと認識された上で、各国なりにナショナルアカデミーが運営されていると思っております。

塩川委員 同様に、会員選考についてですけれども、やはりナショナルアカデミーの独立性、自律性の根幹だと考えます。新法における会員選考の仕組みというのが学術会議の自主性、独立性を損なうのではないのかということを危惧するものであります。

 こういった点で、外国のアカデミーにおいて、こういった会員選考に関して政府が関与する、そういう仕組み、事例というのはあるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 外国一般についてということでは、正直なところ、全ての国を調べているわけではないので、G7参加国レベルでの調査の結果ですけれども、会員選考については、どこの国のアカデミーであっても、コオプテーション方式で自律的に選考が行われていると承知しております。

塩川委員 ありがとうございます。

 永田参考人、有本参考人、福田参考人にお尋ねいたします。

 梶田参考人の質問の冒頭でもお聞きしたんですけれども、二〇二〇年の会員候補者の方の任命がされなかった問題について、学術会議として、任命をしない理由について明らかにしていただきたい、速やかに任命をしてもらいたい、それが果たされていないといった六人の方が任命されなかった経緯について、政府の対応等についてのお考えをそれぞれお聞かせいただけないでしょうか。

永田参考人 任命拒否の案件ですかね。それに関しましては、人事でその内容をつまびらかにするという事例がほかにあれば、例えば、特に会社等で採用しない、それがあれば、当然ながら開示をされるものだろうと思います。

 それから、どうやって選ばれたか、過去の事例は分かりませんけれども、それなりの判定基準があって行われてきたことなんだろうと思います。それがある数を超えてきていれば、当然、ある一定の判断は働くであろう。

 皆さんも人事をおやりになったときに、採用されない人に採用されない理由を開示すべきだと思われるかどうかということです。

 以上です。

有本参考人 ありがとうございます。

 今日の参考人の範囲を超えているような気がいたしますけれども、私は、やはり政府側から本当にハイレベルで盛んに答弁をされているわけですから、それはそれで、もう私がここであえてコメントすることではないというふうに思っております。

 それとは、いろいろつながりはあるか分かりませんけれども、これは学術会議の法案ですからしっかり議論をして、ゴールは同じだと思うんですよ、いい学術会議を、世界に冠たるものをつくるという観点から是非御議論をいただきたいと思います。

 以上です。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 冒頭に私の方から参考人意見として申し上げたところに、基本的には申し述べたとおりなのですが、二〇二〇年の会員任命拒否の問題、これは政府として、やはりそれまでと違った取扱いをするその理由は何なのか、そして、なぜこの六人なのかということについての少なくとも説明責任が果たされていないだろうというふうに私ども日弁連としても指摘をさせていただいております。

 そして、もう一つ申し上げておくと、私もこの任命拒否問題についての情報公開訴訟に関与をしている弁護士の一人でありますが、政府側の答弁として、情報公開について、その理由、経過が分かる書面は不存在だ、存在しない、そういう回答なんですよね。これは情報公開諮問委員会の方も指摘をしているんですが、存在しないというのは妥当性を欠く、そういう指摘がございます。

 つまり、公文書管理法に基づいて、きちんとそのしかるべき経過が分かる、そういう文書を作成をし、保存しなければならない。それがされていないということも含めてですが、この問題については、やはり行政としての公正、透明性の原則と、それから説明責任の原則に背反をする。

 それをそのまま放置をしながら、学術会議の方に問題があるかのようにして今回の日本学術会議法案が提出をされていることについては、やはり本末転倒ではないかというふうに考えます。

 以上です。

塩川委員 福田参考人に、もう一問、最後にお聞きいたします。

 やはり今回の法案は、憲法二十三条の学問の自由との関係で極めて危惧するものであります。この学問の自由との関係で今回の法案をどのように評価をしておられるか、この点についてお教えください。

福田参考人 学問の自由については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、やはり科学者集団として、そこの規律に従って議論が進められる、その自由というのが根幹になければならないだろうと思います。そして、今回の法案については、やはりそういう学術会議としての自由な判断やその判断の枠組み、これも含めてですが、非常に制約が大きい。

 そういう制約の下で、学問の自由というのが、今申し上げたような意味での学術会議という科学者集団で貫かれるのかどうなのかということについては大変大きな危惧を持たざるを得ないと思います。

 以上です。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

大岡委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後、よろしくお願いいたします。

 四人の先生方、本当にありがとうございます。

 まず、ちょっと法案とは直接関係ないんですけれども、科学における批判的な視点の必要性ということについて、梶田先生に是非お伺いをさせていただきたいと思います。

 科学をつくり上げていくためには、やはり既存の理論を疑っていくということがとても大事だと私は思います。ニュートリノに質量がないという定説にチャレンジしていかれるのは本当に大変だったのではないかというふうに思います。

 私自身、ニュートリノに質量があって、そして時間を感じているということについては、とても驚いたことをよく覚えています。ニュートリノの寿命であれば、本来、非常に短い距離しか移動できないはずなのに、カミオカンデでニュートリノを捉えているのを知って、アインシュタインの相対性理論というのは本当に妥当するんだなということを思ったことをよく覚えています。

 科学の理論を鍛えていくには、科学史家カール・ポパーが述べたように、反証可能性のテストをひたすら繰り返していき、乗り越えていくことが必要なんだろうというふうに思います。そこには、当然、批判的な視点が必要なんだと思っています。批判的な視点を持つことの必要性、そして御苦労についてお聞かせいただければと思います。

梶田参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 まさに御指摘のとおり、科学が発展していくためには、批判的な精神というのは不可欠なものであるというふうに思っております。そのような批判的な精神を持った議論に基づいて、科学というのはより正しいものを見つけていく、より深い理解へ進む、そういうものだと思っており、本当に御指摘のとおり、批判的精神は科学にとって非常に重要なものだと思っております。

緒方委員 ありがとうございました。

 続きまして、福田参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 この日本学術会議の議論をするときに、デュアルユース研究の話がどうしても背後にあるのではないかと言われています。私自身は、デュアルユース研究というのは、科学技術の発展にとってとても重要なものだと思っています。これを阻むようなことは、科学技術の発展等々にとってとても望ましくないと私は思っているんですが、福田参考人の御見解をお伺いさせていただければと思います。

福田参考人 私は、科学の分野について、特に自然科学の分野については全くの素人でございまして、御質問に対する判断能力は基本的には持ち合わせていないというふうにお答えせざるを得ないのですが、おっしゃるようなデュアルユースの研究それ自体は、当然、分離ができるような、そういう問題ではないというふうには思っております。

 ただ、私どもが心配をするのは、やはり、例えば、先端技術を防衛目的に活用することが死活的に重要であるとか、そういう国の方針が出されている中でこのデュアルユースというのが過度に強調をされるということについては、もう少しいろいろ、十分な議論が必要ではないかというふうに思っています。

 以上です。

緒方委員 デュアルユース研究は、いろいろな国の事例を挙げるまでもないんですけれども、まさにデュアルなのであって、軍用、民用ということでありまして、余りここでイスラエルのケースを出すのが適当かどうかというのは昨今の事情からあるかもしれませんが、あの国のIT技術が進んでいることの背景には、あそこでIT技術で発展している会社の人たちというのは、大体、大半は軍人でありまして、余りそこを排除の論理で議論するのはよくないのではないかなというふうに私自身は思います。

 続きまして、永田学長に是非お伺いをさせていただきたいと思います。

 筑波大学の学長を十二年間務められ、そして現任期の満了時には十四年になるとお伺いをいたしております。そして、その後の任期延長も可能であるということだそうです。そして、国立大学協会長も六年務められ、今年の六月が現任期満了だと伺っております。

 筑波大学長については、二〇二〇年、二期六年の任期上限を撤廃する内規の改正を行い、また、意向調査の投票についても重視をされなくなったということです。そして、学長選考会議の選考委員については学長の任命だということだそうです。そして、二〇二三年の学長選考では、選挙は行われず、永田学長の意向を受けて再任審査を行ったのみだというふうに報じられておりました。

 学術機関の在り方について、二点お伺いをさせていただきたいと思います。選考会議の委員を学長が任命することの課題、二点目は、学長や国立大学協会長の任期が長くなることの課題、それぞれいかがお考えでございますでしょうか。

永田参考人 お答えしますが、今言われたのは、私が決めたものは一つもないので、そこを認識ください。

 まず、任期廃絶をしたのは、学長選考・監察会議が行っています。それから、学長選考・監察会議の委員は大学の教育研究評議会で選ばれています。私が選んでいません。それから、意向投票の撤廃、それから何でしたかね、とにかく、あらゆるものは、私だけが知らされない状況の条件変更です。当たり前ですが、私はその会には入れませんから。ですので、我々の大学のそういう方々が変えた案の内容に従って選考していただいたということです。特に、二回目、三回目は立候補もできない状況ですから、ただ単純に、この監察会議がやられることを僕らは受けて立っているということです。

 それから、国立大学協会の会長につきましては、これも二年ごとに投票ですから、私がどうのこうのしているわけじゃなくて、必要だと思われなくなれば、そこで辞めるということになるんだろうと思います。

 それで、問題は、長くやっていてどうか。長くやってよかったことと悪かったことがあります。よかったことは、考えたことの一部がようやく実現するだろう、あるいは、ようやく改革が進むであろう。

 長くやったことは、比較的次の方が育ちにくくなっているのかなというのがあります。それは若干問題なので、いずれの場合も、大学の方は副学長、それから協会の方は副会長をころころと替えて、なるべく多くの方々に出てきてもらえるようにはしております。ほかに問題点は多分ないと思います。

 以上です。

緒方委員 ありがとうございました。

 続きまして、梶田先生にお伺いしたいと思います。

 今回の法律で設置される監事について、任期制限がなくて、組織で一番長くいる役員が監事になるという可能性があるんですね。監事が最も組織に精通し、そして、監事ですから見張りを利かせるという非常に強い存在になることについて、先生はどう思われますでしょうか。

梶田参考人 ありがとうございます。

 その点につきましては、今おっしゃったように、やはり監事というものが実質的に大きな力を持つのではないかということで、つまり、会員ではない人がかなり力を持つ可能性があるのではないかということで懸念がありますので、その点につきまして国会でしっかりと審議をして、いいものにしていっていただければというふうに思っております。

緒方委員 続きまして、全ての参考人、お四方にお伺いをしたいと思います。

 今回の改正で設置される監事は、総理の任命で再任可であるということ。普通に、私も行政官をやっておりましたので思うんですが、そうなると、忠誠心は総理に向くと思われるということがございます。

 その監事が、法律第十九条で、会議の業務の調査を行い、総理に意見を提出することができるということになっています。また、二十条で、不正行為等について総理に報告できることになっています。そして、総理は、第四十九条で、会議に対して報告、検査をさせることができるということになっていて、さらには、不正行為等について是正措置を求め、それに対して会議は対応しなきゃいけないということまで書いてあります。これらの規定の解釈には幅があり、様々な可能性が想定されると思います。

 単純な質問であります。これだけの仕組みの中で、学術会議に集う方々に萎縮効果が働くという可能性はないのだろうかということについて、お四方から答弁をいただければと思います。

永田参考人 何度も申し上げていますが、監事というのは、定款や学則に従って物事が正しく行われているかどうかを見るのであって、内容で何の話がされたかを報告するような監事は失格。したがいまして、こんなことで、大学も、会議はましてやだと思いますが、萎縮するんだったら、よほど何か定款に触れていることをやっているんじゃないかと逆に疑いたくなります。

 ですから、監事というのは、そういう全くの第三者として置いておくべきものであって、文句を言えないわけじゃありませんから、定款に載っていない部分について文句が出てくれば、当然ながら、裁判になったって勝てません、監事は。

 以上です。

梶田参考人 ありがとうございます。

 私は、やはり今御指摘のとおり、法案の文に書かれております監事の権限が強いというふうに認識しております。

 さらに、会員の萎縮ということにつきましては、もう一つ加えますと、この法案の文中にたくさんの罰則規定がありますが、これも、ある意味、萎縮に働くおそれがあるのではないかというふうに思っております。

有本参考人 ありがとうございます。

 私は、この法人の法律のたてつけとして監事というものがある、これは当然だと思います。それから、監事は、あくまでも、先ほど永田先生もおっしゃいましたけれども、外形的なところをやるということで、そういう意味での初代の監事を誰にするかということは非常に大事になると思います。

 一方では、学術会議の方もしっかりしてもらう、軸を。監事とどういう具合に、監事も一緒になって学術会議をいいものにしていくということが大事なんじゃないかというふうに思ってございます。

 以上です。

福田参考人 御質問についてなんですが、全体的な問題になりますが、私が冒頭に参考人意見で申し上げましたように、この二百人を超えるような合議体、そういう組織について、このような監事を含めた監督機関を設けるということ自体に極めて違和感を持たざるを得ないです。そして、実際に規定をされている監事の役職としても、これは会長だけではなくて、又は総理大臣に対して意見の申出をすることができる。つまり、ある意味、総理大臣に直訴することもできるようなたてつけになっている。

 そういう中で、おっしゃるような萎縮効果というのは、これは実際にどういう運用になるかというのはなかなか難しい問題だろうと思うし、私どもとしましては、そういうたてつけ自体にやはり慎重な対応が必要だろうというふうに思っております。

緒方委員 最後の質問にしたいと思います。永田学長、よろしくお願いいたします。

 今回の改正によって設立される日本学術会議と現行の国立大学法人を比較したときに、どちらが独立性の高い組織になるというふうに思われますでしょうか、学長。

永田参考人 やっていることは双方違いますので一概に言えませんが、どちらも同程度だと僕は思います。自由に研究をして、大学であれば自由に教育活動をして、それから学術会議であれば、どうぞ自由に学術の在り方について議論をいただく、そのことに関して何ら支障はないと思います。

緒方委員 終わります。

大岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 本日は、参考人の先生方におかれましては、委員の質疑に対し丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございました。本日の御意見、そして本日の議論は今後の法案審議にしっかりと生かしてまいりますので、一言御礼とさせていただきます。

 本日は、誠にありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、日本学術会議法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房総合政策推進室室長笹川武君及び内閣府日本学術会議事務局長相川哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大岡委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、順次これを許します。坂井国務大臣。

坂井国務大臣 四月二十五日の本委員会冒頭におきまして私が発言した件につきまして、四月十八日の衆議院本会議における私の答弁を改めて精査したところ、候補者選考委員会と申し上げるべきところを候補者選定委員会と誤って答弁した箇所は、市來伴子委員に対する答弁で二か所、塩川鉄也委員に対する答弁で一か所でしたので、改めて訂正させていただきます。

 なお、三木圭恵委員に対する答弁は、会員候補者選定委員会と正しく答弁しておりまして、誤ったものではありませんでした。

 加えて、四月十八日の衆議院本会議における法案の趣旨説明において、会員候補者選定委員会と申し上げるべきところを会員候補選定委員会と、また、この法律案の施行期日と申し上げるべきところをこの法律の施行期日と、それぞれ誤って発言しておりました。ここにて訂正をさせていただきます。

 御迷惑をおかけをいたしまして、申し訳ありませんでした。

大岡委員長 次に、笹川内閣府大臣官房総合政策推進室室長。

笹川政府参考人 先日の四月二十五日のこの委員会の市來先生の質疑の中で、正確には会長職務代行者と申し上げるべきところ、三か所において、法人発足から新会長が選任されるまで会長の職務を行う者という意味で、会長を予定している方とか会長予定者というような不正確の言い方をしておりました。この場をかりて訂正させていただきます。

 申し訳ございませんでした。

大岡委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平沼正二郎君。

平沼委員 皆さん、お疲れさまでございます。自由民主党の平沼正二郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたこと、理事そして委員各位に改めて御礼を申し上げたいと思います。また、与党といたしまして五十分という長い質疑時間をいただくのはなかなかないことなので、より一層気合を入れてまいりたいと思っております。

 日本学術会議法について質問をさせていただきます。

 連休前にも、そして今日の午前中の参考人質疑でも様々な議論があったわけでございますけれども、つまるところ、最終的にやはり学術会議をよりよきものにしていこうというところは共通の認識点であると思っているわけであります。

 さて、本法案の策定前には有識者懇談会が開かれ、メンバーには学術会議の元会員の方や学術会議の会長にも出席を御依頼をして丁寧に議論を重ねていたものと承知をしておりますし、私自身がさきの内閣において内閣府政務官を務めておりましたけれども、本学術会議に関しても担当いたしておりましたので、今回の法案提出までの経緯も承知をしておりますし、その過程も報告を逐次受けておりました。内閣府の皆さんもかなり学術会議側の皆さんと慎重に本法案の策定に向けて真摯的に、そしてよりよい方向性に向けて調整をされていたと私自身は認識をしております。

 その上で、先ほど述べた日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会において、委員一同の「日本学術会議法案の閣議決定に寄せて」の中に、「日本学術会議法案においては、国民からの負託に実効的に応えるための体制整備と国の財政的負担により運営される法人としての説明責任の担保が、日本学術会議の独立性・自律性を尊重しつつ実現されており、最終報告書に沿って適切に法案化されたものとして評価したい。本懇談会における議論の積み重ねが実を結んだものであり、心から歓迎する。」「本懇談会は、日本学術会議が拡大・深化する使命・目的に実効的に対応していくには、現在のような国の機関のままの改革では限界があり、機能強化に向けて独立性・自律性を抜本的に高めるため、より良い役割発揮にふさわしい組織形態として法人化が望ましいと提言した。」との記載があるわけであります。

 つまりは、様々な見識を持つ方々からの御意見のまとめとしては、私が認識する限りでは、現在の法律案はその内容を満たすものであると考えているわけでありますが、そうした背景がある中において、今回の法案の目的と意義をまず坂井大臣にお伺いをいたします。

坂井国務大臣 今お話をいただきましたように、有識者懇談会において、学術会議の会長にも毎回参加いただきながら検討し、最終報告書を取りまとめました。

 この報告書におきましては、設立以来七十五年、七十六年と言われる学術の進歩と社会の変化を踏まえると、学術会議には拡大、深化する役割に実効的に対応していくことが求められており、国の機関のままの改革では限界があるとされました。すなわち、国のままでは、外部から資金の提供を受けることができません。国の機関としての人事、組織関係制度や会計法令の制約もかかってまいります。

 午前中の参考人質疑でも議論が出たようでございますが、海外アカデミーや内外シンクタンクとの共同事業、専門人材の登用や、官民や外国との研究者の交流など、実施が困難又は難しい活動が多く、ナショナルアカデミーに求められる現代的な役割を果たしていくためには、このような制約をなくして、活動の自由度を高めることが必要であります。

 以上のことから、機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化することが提言されました。

 この法案は、この報告書の内容を踏まえて取りまとめたものであり、独立性、自律性を抜本的に高めることによる学術会議の機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を主な内容とするものであり、アカデミーの自由な活動を阻害するものではありません。

 私といたしましても、学術会議が拡大、深化するアカデミーの役割にふさわしい組織にステップアップし、海外アカデミーのような活動しやすい体制を整えていくことが今回の法人化の目的だと受け止めております。

 この改革を通じて、学術会議がサイエンス・フォー・サイエンスのみならず、サイエンス・フォー・ソサエティーやサイエンス・フォー・ポリシーなどの役割に主体的にチャレンジし、国民の期待に応えていくことを期待をしているものでございます。

平沼委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣の答弁をいただいたとおり、よりよいものにしていくためには、やはり今回の本法案でしっかりと担保していく必要があるんだというお話だったと思っております。

 これは先ほども触れましたけれども、有識者懇談会など丁寧な議論の積み重ねをしてきたと私は認識をしているのですけれども、法案提出後様々な声明が出ていることや、私のところにも、法案質疑に入った前後から法案修正を求める意見書や要請文が届くようになっております。

 それらの意見を大まかに大体まとめると、主にやはり、先ほど大臣も述べられたような自主性、独立性に関する内容が阻害されるのではないのかといったような内容でありまして、その辺り、先ほどの大臣の意義と認識のそごみたいなところがちょっとあるのではないかと感じております。

 その上でお伺いをいたしますけれども、今回の法案の策定に当たって学術会議側の意見をどの程度取り入れたのか、協議の経緯を教えていただけますでしょうか。

坂井国務大臣 学術会議が示した懸念点の一部につきましては、懇談会での議論の過程でお互いの理解が進んだものもあると思っておりますし、政府においても、これらの懸念や意見を受け止めて、必要な配慮や修正も行ってきております。

 例えば、学術会議の意見を踏まえて、選定助言委員会の意見の対象を選考に関する方針や手続に限定をいたしました。また、各会員の個別の選考について意見を言うことは想定されていないと報告書に明記したと聞いております。

 そして、この法案は、報告書を踏まえ、二月十三日の学術会議幹事会で内容的にほぼ法案と言えるような詳細な資料で説明するなど、学術会議と可能な限りコミュニケーションを取りながら作成したものであります。

 具体的には、学術会議を特別な法律により設立される法人、特殊法人として、独立性及び自主性、自律性を尊重しつつ、学術会議にふさわしい固有の制度設計を行うこととし、会員の選任プロセス、評価、監事などについて、学術会議の意見を反映させております。

 例えば、新法人発足時の会員の選び方でありますが、現会員が候補者選考委員会の委員になることを可能とし、総会による承認、推薦の手続も追加をさせていただいたところでございます。

 また、補助金より交付金の方がよいのではないかという意見もあるようでございますが、運営費交付金は、独立行政法人制度を前提とした仕組みであり、独立行政法人のような中期目標や中期計画の法定が必要となりますが、こういったものは認め難いという学術会議の当初からの主張を尊重した結果、結局、補助金の形というものを採用したということでございます。

 この法案については、懇談会からも、国民からの負託に実効的に応えるための体制整備と国の財政的負担により運営される法人としての説明責任の担保が、日本学術会議の独立性、自律性を尊重しつつ実現されており、最終報告書に沿って適切に法案化されたものとして評価をいただいたところでございます。

 さらに、閣議決定後も、学術会議に対しましては、法案に関して示された懸念事項について、四月八日に内閣府から詳細な見解を文書で示すなど、丁寧に説明を努めてまいりました。

 学術会議には、先日行われた総会などでの御発言等を見れば、法案や法人化自身に反対するものではないというところまでは御理解をいただけております。現会員の総会では、さらに、学術会議の懸念に対してゼロ回答ではなかった、やり取りを通じて相当の内容をかち取ることができた、予算、活動面や会員選考の独立性については学術会議側の活動次第で問題にならない可能性もあるなどという議論もあったと聞いておりますので、法案の趣旨、内容につきましては、国会での質疑の中で更に丁寧に説明を尽くしてまいりたいと思っております。

平沼委員 ありがとうございます。

 大臣自ら経緯を御説明いただいたことによって、かなり丁寧な積み重ねをしてきたんだろうなということが私も改めて分かりましたし、やはり、ある一定数、学術会議側の意見もしっかり取り入れて、法案の策定前から修正に入ったり、今も、まさしくこの国会の審議もそうですけれども、非常に真摯的にお話を、私は、聞いて、今、よりよいものにしていこうという動きになっているんだろうなと改めて感じている次第でございます。

 私も、今回の法案の話を受けていろいろなものを見たりしていますけれども、例えばネットなんかを見ると、コメントなんかを見ると、これはネットだけで判断できるわけではないんですけれども、様々な賛否があるように見受けられて、そのキーワードとなっているのがやはり独立性という部分ではないかと思っておりますし、政府に対して提言などを行う機関であるわけでありますので、公平で中立な立場を担保するというのは重要なことであると思います。

 一方で、政府からの運営の資金が出ている関係上、どのように独立性という部分が担保されているのかというのはやはり気になりますし、また一方で、独立性を持つがゆえに、公平、中立性というものを果たして学術会議側は今までしっかりと確保できていたのかという部分も気になる部分でもあります。

 その上で、その辺りを整理したいのでお伺いをいたしますけれども、日本学術会議は独立性をかねてから主張しております。今回の法案によってその独立性が損なわれるとの懸念も出ているようでございますけれども、政府はどのように認識をされていますでしょうか。

笹川政府参考人 独立性についてでございます。

 先ほど大臣から答弁ありましたとおり、この法案は、独立性、自律性を抜本的に高めることによる学術会議の機能強化と説明責任の担保を図るものでございます。法人化によって、学術会議の独立性が組織面でも明確になり、海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できる、独立性が高まるというふうに考えております。

 その上で、そういった懸念という点については、現行法の、独立して職務を行うという規定がなくなるというような話なんですが、この規定は、政府各省の制肘を受けない、要するに邪魔されないという意味だというふうに答弁しておりまして、法人化によって学術会議の独立性が組織面でも明確になることで、こういった規定を置く法制的な必要がなくなるということでございます。

 法制局ともいろいろ相談したんですが、書く必要がなくなったことを条文に書いておくのはできないということでしたので、条文には書いておりません。ただ、独立性が書いていないから不安だともちろんおっしゃる方はいらっしゃいまして、我々としては、あくまでもそれは法制的な理由であるということと、独立性をないがしろにする趣旨ではないということははっきり申し上げたいと思います。

 組織面だけじゃなくて人事、業務、さっきお話がありました、そういった面でも独立した組織でちゃんとやっていけるということ、それから、この法律は、もちろんですけれども、政府の不当な介入を許容するものではないということをこの委員会でもしっかり御説明させていただきたいと思っています。

平沼委員 ありがとうございます。

 先ほどの大臣の答弁もそうですけれども、規定がなくなったのでというお話がこの質疑の中でもかなり出ているとは思っておりますけれども、今回、かなり政府側も、説明としては、そんな意図はないというところでありまして、その辺りは今のこの質疑の中でも一つ明らかになったと思いますので、そこの辺りの懸念点というのも、学術会議側としっかりとコミュニケーションを取っていただいて担保していただくというのが非常に重要なんだろうなと思っております。

 続きまして、公平と中立性に関してお伺いをいたします。

 公平である、中立であるというのはなかなか判断が難しいところであると考えます。それを判断する指標として一つ重要であると思うのが、その組織がどのようなものであって、どのように動いているのかという部分がどのぐらい明示的であるのかなというのじゃないかなと私は考えております。簡単に言うと、この組織はどんなことをやっているんだというのが分かりやすいかどうかというところが肝になるんじゃないかなと思っております。

 そこでお伺いをいたしますけれども、政府は、学術会議の透明性、ガバナンスの担保を挙げております。つまり、開かれた組織を目指すとしておりますけれども、そもそも学術会議が閉鎖的であるという部分が何に起因をしていると考えているのか教えていただけますでしょうか。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、学術会議が開かれた組織であるというのは大事なことだと思っています。我々も、活動の学術的な価値、内容を判断するものではございませんので、おっしゃるとおり、透明性は大事な話だと思っています。

 それで、有識者懇談会ではこう言われていました。学術会議は、最終的には国民や社会に対して責任を負うはずなので、社会とコミュニケーションができる組織であることを示して、会員選考も透明にして、会員が仲間内で選ばれる印象が残らないようにしないと、国を代表する学術の組織としての正統性を維持できないということでした。

 その閉鎖性の原因というのもなかなか難しいんですけれども、懇談会の中での議論を幾つか御紹介いたしますと、例えば、前文とか目的規定の中に国民とか社会という言葉とか視点が入っていない、出てこないというようなこと、それから、政府ばかり意識しちゃっていて、国民、社会という視点がないのは国の機関だからではないかということ、これはあくまでも一つの意見ということですが。それから、目的規定、行政、産業、国民生活に科学を反映浸透させる、今の条文なんですが、これは、科学というよきもので国民を啓発するという感じがして、今の時代の、科学の在り方を問うとか、科学リテラシーとか、そういう時代に法的な目的が合っていないんじゃないかというような指摘もされていました。

 閉鎖性というか透明性の話はいろいろ議論の仕方はあるんだと思いますけれども、仮にこういう感じで組織の目的みたいな話でいくとすると、先日の記者会見で元会長がおっしゃっていたことをそうだなと思って聞いていたんですけれども、こんなことをおっしゃっていました。

 学術会議の設立から七十五年、七十六年たって、政府の内部で審議会とか総合科学技術・イノベーション会議が整備されてきた、その中で学術会議の意義を考えると、当初は科学技術を政策に応用するための唯一の回路だったんだけれども、今や、政策決定の中枢からむしろ距離を置いて、幅広い観点から意見を述べるという役割に変わってきているんじゃないかということをおっしゃっていました。

 これは結局、アカデミーの本来の役割というか欧米的な意味でのアカデミーの役割に立ち返ることなので、我々としては、設立から七十五年余りたって、先進国型のアカデミーへの移行を志向していくというようなことを意味している。だから、学術会議を今より更に発展してほしいと考えたときに、法人化がベストだという結論に懇談会はなったのかなというふうに思います。

 いろいろくどく言っていますけれども、アカデミー本来の役割というのは、やはり現代的な社会課題解決という役割も含まれていると思っています。そうすると、閉鎖性とは対照的な意味合いになるんですけれども、国民としっかり対話をして社会に働きかけていくということがやはり重要で、そのためには、海外アカデミーのような民の立場に移行して、国民、社会と直接向き合いながら活動していくというのが一つの答えではないかなと思っています。

 もちろん、学術会議も、今、アクションプランを作って、国民とのコミュニケーションを一生懸命やっています。同じ方向だと思っていますけれども、将来に向かって伸びやかに発展してもらうためには、この機会に、大臣も言っていました、ステップアップしていただきたい。国民の皆さんにも賛同していただけるのかなと思っています。

 ありがとうございました。

平沼委員 ありがとうございます。より開かれたということで、国民との距離が今まであったのではないかというようなお話であったと思いますけれども。

 私も、さきのいわゆる任命拒否問題というものが発生するまで、恥ずかしながら学術会議というのは存じ上げておりませんで、当時私は国会議員ではなかったですけれども、おりませんでしたし、一体どういう組織なのかなというところからスタートをしているわけでありますけれども。これも、国のお金の話も関わるところではあると思いますけれども、どういうふうに役に立っているんだというところがしっかりと認知されることによって、閉鎖的ではないということになってくるのかなと思っております。

 先ほど述べた閉鎖性に関して、それでは今回の法律案ではどのように解消されると考えているのか、教えていただけますでしょうか。

笹川政府参考人 それでは、法案の中の具体的な仕組みについてでございます。

 懇談会では、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される法人なので、活動、運営に外部の知見を取り入れる仕組み、活動、運営を国民に説明する仕組み、それから、ちょっと違いますけれども、活動、運営が適法、適正に行われる仕組みを法定して担保する必要があるということでございました。

 具体的には、報告書を踏まえて、まず、会員の選考基準、手続などについて意見を述べる選定助言委員会、ステークホルダーの意見とか会員だけでは対応しにくい組織管理、経営といったことに外部の知見を取り入れるための運営助言委員会、予定する活動、運営を国民に説明するための中期的な活動計画、年度計画、それから、自己評価を前提とした評価といった仕組みを法定して、先生おっしゃる開かれた組織、国民に責任を負う組織というふうに制度的に担保しているものでございます。

 ちなみに、これらは最低限の仕組みということにしておりまして、独立性、自律性とは別な、財政民主主義の話だというふうに思っております。

 以上です。

平沼委員 ありがとうございます。

 続いて、また独立性に関してお伺いをいたしますけれども、今回のこの独立性という部分で多く懸念が上がっているのは、先ほど述べましたとおり、やはり任命拒否問題に起因する会員の選考についてであります。今回の法案の廃案だったり改正の意見の多数もこの部分に焦点が当たっていると承知をしております。

 そこでお伺いをいたしますが、今回の改正によって、会員の推薦、任命プロセスに学術会議における自主性、独立性が損なわれる可能性はないと考えてよろしいでしょうか。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案は、独立性、自律性を高める法案ということでございます。

 御指摘のとおり、選考の方の自律性についてですが、国が設立する他の法人のような人事、業務への関与というのはなくしています。

 まず、総理は、法人の長の任命というのは行いません。それから、会員についても、総理任命はやめて、海外アカデミーと同じような、学術会議だけで自律的に選べるようになるということでございます。

 それから、ちょっと外れますけれども、国による目標の指示とか計画の認可も行わない。それから、組織管理も自由化するために、連携会員、部、事務局といったものも内部組織に委ねようとしています。

 こういった、選定助言委員会とか計画、評価、監事などの仕組みは、特別な法律によって設立される特別な法人、特殊法人として、独立性、自律性を尊重しながら固有の制度設計を行いました。先ほど大臣が申し上げたとおりです。条文には、さらに、国の責務として、学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならないというふうに書いているところでございます。

 そういうことで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、学術会議が心配しているようなことは、制度上もありませんし、運用に関しても起きない、政府の不当な介入を許容しないということだと考えております。

 ありがとうございます。

平沼委員 ありがとうございます。

 次の質問にちょっと参りたいんですけれども、先ほどの会員選考の質問の流れに関連して、ちょっと通告はしていないんですけれども、午前中の参考人質疑の中で気になった点があったので、お伺いをいたしたいんですけれども。

 これも参考人質疑であったやつですけれども、先月の学術会議総会で、この法律が通ることによって予想されるのは、コオプテーションが一旦途切れて、その後、これまでとは違う人が入ってくる、特に第一部は大きく変化する可能性があります、というのは、文系の中には、理系の人たち以上に政府にすり寄る、そして、政府だけではなく、かなり右の方に立っている人が少数ではありますが確実にいます、そういう人たちがここに入ってくると思います、そういう状態を許していいのかということも考える必要があります、このような発言があったと聞いております。

 この発言を素直に解釈すると、右の人には入ってほしくないと捉えることができるわけでありますが、これまでの学術会議は、一定の政治的な考え方を持つ人たちを意図的に排除し、特定の思想の方たちだけで会員を固めてきたのではないかという疑念が生じるわけでありますけれども、午前中の参考人質疑の中では、本当にそのようなことがあったのか、ちょっとよく分からないというような発言であったかと思います。

 少々、分からないというのは困るというわけでありまして、その上で、今回の法律案が成立した際には、特定の政治的思想の会員が同じ思想の継続会員を指名し、異なる考え方を持つ者を排除し続けるような選考は行えなくなる、又は、言い換えれば、より幅広い形で真に平等な選考が行われるようになると考えてよいでしょうか。

笹川政府参考人 その発言は、私も総会のとき、脇でというかインターネットで聞いていまして、えっと思いました。ただ、実際どうなのかはよく分かりません。

 それで、この法案、大丈夫なのかということなんですけれども、答えとしては、大丈夫というか、ある意味、そういうことに資するために作っている法案だと思っています。

 ちょっと細かい説明は省きますけれども、選考、選定手続の中で、実質的な絞り込みを二回やるようにしました。かつ、その選定、選考の過程を公開するということにいたしましたので、細かい専門分野のグループ、例えば地域研究とか法学とか政治学とかいったところで候補者を選んだときに、その人たちがそのままスルーして会員になるわけではなくて、さらに、大きな委員会とか総会とかで実質的に絞り込んでもらうという仕組みを取っていますので、一〇〇%かどうかというとあれなんですけれども、かなりそういったことは、やろうと思ってもやりにくくなるということかなと思っています。

 それで、会長や何かの御存じないところで、もしかしたら、文系だけでやっていたとか、場合によったら委員が属されている専門分野だけでやっていたというようなことかもしれませんけれども、それを聞いて思ったのは、まさに懇談会の報告書でそれを書いていて、「会員が仲間内だけで選ばれる組織だと思われないために、外部に説明できるような選考の仕組みを整えること」、まさにどんぴしゃだと思いますので、事実関係がどうだったかどうかは別として、是非この法案、重要性を御理解いただければと思います。

 ありがとうございました。

平沼委員 ありがとうございます。会員の推薦、任命における自主性と独立性に関しては理解をいたしましたし、やはり学術会議においては、より広範で、そして当然専門性を持った知見が必要であると考えております。

 政府が直面しているような様々な課題に関しては、当然のことながら、技術の進歩や国際化の広がりにより、国内だけでなく海外も含めた形での対応が必要となります。

 その上で、学術会議がこのような様々な課題や政府対応に関して関わるに当たり、会員に関しても多様なやはり人材が必要であると当然ながら考えるわけであります。先ほど答弁をいただいたとおり、今回の法案では、より広範な方が入っていただけるのではないかというところは担保しているという御説明であったと思います。

 その上で、日本学術会議の会員選考プロセスをより今回のようにオープンにすることで、多様性や専門性がどのように今後高まると期待をしていらっしゃいますでしょうか。

笹川政府参考人 会員選考の透明性とともに、その多様性が大事だということは懇談会でも言っていました。学術会議は、一義的には審議機関ですので、その提言がやはり社会から尊重されるため、国民から納得感を持ってもらうためということで、会員構成に学術の進歩と社会の発展が自律的に反映されることが必要だ、それから、さっきと一緒ですが、客観性、透明性が高い、国民に説明できる方法で会員が選ばれること、あと、もちろんすごい優秀だということ、その三点が挙がっていました。

 専門性については、それぞれ専門分野別の審査会を置いて、まさに法学だとか政治学、選んでもらうわけですけれども、その上で、学術会議が選考に先立って作る選定方針の中で、こういうことをやってもらおうと思っています。今後六年間の活動を見据えた新会員の専門分野の設定を議論してきちんとオープンに作ってもらう。もちろん、所属機関の属性とか活動地域なんかも書いていただいて構わない。そして、それぞれのそういったカテゴリーごとに、どういう人に会員として貢献してほしいか、選考基準をはっきり書いてもらう。

 さらに、会員以外からも幅広く候補者の推薦を受けるような仕組み、大学ですとか学協会、国研、いろいろあると思います、産業界、そういったことも法律でお願いしているところです。

 そして、そういった選定方針を作成するときには、外部の科学者から構成される選定助言委員会の意見を聞いて、会員だけではカバーし切れないような学術の分野動向とか社会の動きなども考慮していただきたいということです。

 さっき言った話をもうちょっと詳しく申し上げますと、それで、分野別業績審査委員会は割り当てられた人数より多い候補者を選考して、その中から会員候補者選定委員会が人選する。会員候補者選定委員会が選んだ候補者から総会が選ぶときも同じ。絞り込みを二回やるということで、繰り返しになりますが、狭い範囲で選ばれた人たちがそのままスルーしてしまわないようにするということです。

 海外のアカデミーは、英、米、独、仏、ちょっとずつ違いますけれども、基本的にはこういう実質的な意味のある投票で絞り込みをしているということなので、そのようにお願いできないか、この辺は懇談会でも学術会議を交えていろいろ議論させていただいたところです。

 それから、会員の選任の過程を国民に明らかにするということも条文化していて、いろいろなことを記録に残しながら、ただ、個人情報には留意が要ると思いますけれども、公表していただきたいと思っています。

 このようにして、選考プロセスの客観性、透明性が高い、オープンのものにしてもらうということで、会員の選考の自律性、コオプテーションの要請を前提としながら、繰り返しですが、会員構成に学術の進歩と社会の発展が自律的に反映されて、先生おっしゃるとおり、会員の多様性、ダイバーシティーが確保され、あと、分野の固定化の防止ということが図られるというふうに思っています。

 ありがとうございます。

平沼委員 ありがとうございます。いろいろ工夫をされているということでございます。ここは、今回の法改正において重要な点であると思っておりますので、是非ともよろしくお願いをいたします。

 また、関連してお伺いをいたしますけれども、今回の法改正の会員の任期制限や更新手続の見直しによって、組織の活性化や新陳代謝がどう進むと期待をしていらっしゃいますでしょうか。

笹川政府参考人 申し上げます。

 長くなるので出だしは簡単にしゃべりますけれども、会員の任期とか再任については、長くした方がいいという意見と、やはり活性化云々の話で、短い、短いというか現状ぐらいがいいという、両方ありました。折衷案じゃないんですけれども、いろいろ議論して、間を取った感じに結果なっていて、任期の延長は一回のみ可能、それから定年も七十五歳ということにしました。

 大事なのは、条文に書いていないんですけれども、その任期の延長とか定年というのは、希望すれば延びるんじゃなくて、ちゃんと会員としての活動実績を考慮して、新会員と同じような厳格な審査が必要だということを懇談会で言っていました。ここは学術会議も異論なかったと思います。

 それから、さっきもちょっと言いましたけれども、専門分野をどう置くかというのが実は大事で、会員の改選時に、よく議論しないで、六年前あの分野が何人だったから同じねというふうにやっちゃうと、結局、まさに会員構成が時代の変化に合わなくなる。だから、専門分野の設定についても、自分たちだけで閉ざされた形で決めるんじゃなくて、さっき言った、外部の人を、学術会議が任命しますけれども、入った選定助言委員会でよく話し合って議論の過程を公開してほしい。決めるのは学術会議ですが。そういうことを言っていました。

 ということで、この新制度を適切に運用していただくことによって、優れた人材を確保しながら、分野の固定化とか、既得権化という言葉もちょっと出ていましたが、そういう誤解を避けるようなことも配慮しながら、組織の活性化、新陳代謝、進めてほしいと思っています。

平沼委員 ありがとうございます。是非、その方向性で進めていただければなと思っております。

 次に、会長に関してお伺いをいたします。

 法人化に伴い、組織運営に関する会長の責任は増大すると考えられます。会長にはやはり十分なマネジメント力がある人が選ばれるような仕組みになっておりますでしょうか。また、発足時は、これは議論もありましたけれども、会長が不在となる期間があると思いますけれども、その間のマネジメントの体制についてお伺いをいたします。

笹川政府参考人 会長についてでございます。

 法案で、会長の仕事は、会議を代表し、議長の職務を行うほか、会議の経営に関する事務を総理する役職ということになっています。要件、資質としては、卓越した研究、業績に加えて、学術及び学術会議の方向性への明確なビジョン、組織マネジメント及びガバナンスに係る能力、経験、会員や国民、社会とのコミュニケーション能力などが必要ではないかということが懇談会で言われていました。それを踏まえて、法案では、会長の要件の一つとして、学術会議の業務を適切かつ効果的に運営することができる能力を有することということも明記いたしました。

 会長の選考方法については、報告書では、慎重かつ丁寧なプロセスで選んでほしいということで、例えばですけれども、内部に会長選考委員会というようなものを置いて会長候補者の資質、業績を整理して会員の間で十分な情報提供を事前にする、それから、所信表明みたいなことをやったらいいんじゃないかというような意見も出ていました。

 条文上は、学術会議の独立性、自律性、自主性に配慮して、法案では細かい規定は置かないで内部規則に委ねることにしましたけれども、学術会議においても懇談会による議論には大筋異論はなかったと思いますので、慎重、丁寧なプロセスで選出を期待しているところです。会長選任の理由なんかも公表することになっています。

 それから、最後、会長選任までのマネジメントですけれども、成立時総会で会長が選ばれるまでの間のマネジメントについては、会長の職務を行う者、会長職務代行者ですが、が施行日前に指名されているということですので、発足時の体制に問題はないかなというふうに思っています。

平沼委員 ありがとうございます。答弁いただいたとおりだと思っております。

 続いての質問に参りたいんですけれども、ちょっと気合が入り過ぎて、結構時間が足りなくなってきまして、二問ほどちょっと飛ばしていただいて、デュアルユースのところに入りたいと思いますけれども。

 日本学術会議は、これまでデュアルユース技術に関してどのような立場を取ってこられたかというところを改めて教えていただけますでしょうか。

相川政府参考人 お答えいたします。

 デュアルユース技術に関しましては、令和四年七月、当時の梶田日本学術会議会長より、先端科学技術、新興科学技術は、人類社会のウェルビーイングの実現に欠かせないものであるばかりか、一国の研究力や国際競争力を支えるものであるという基本認識の下、従来のようにデュアルユースとそうでないものとに単純に二分することはもはや困難であり、研究対象となる科学技術をその潜在的な転用可能性をもって峻別し、扱いを一律に判断することは現実的ではないとし、より広範な観点から、研究者及び大学等研究機関が研究の進展に応じて適切に管理することが重要となるといった考え方が示されておるところでございます。

平沼委員 ありがとうございます。

 最新のところでは、先ほど答弁をいただいたとおりの内容でございまして、過去はやはり、戦争を目的とする科学研究は行わないという声明を発表をされておったり、二〇一七年の声明においては、防衛装備庁が推進する安全保障技術研究推進制度に対して、政府による研究への介入が著しく、問題が多いと指摘する声明を公表されたりもしております。

 一方で、現代において、軍事研究から生まれた革新的な技術が多数あるのは皆様承知をしているとおりかと思います。少し例を挙げますと、インターネットは米国の国防総省の研究機関が開発したARPAネットが始まりであります。また、GPSも米軍のために開発された衛星ナビゲーションシステムが基になっております。マイクロ波、これはレーダーの技術でございますけれども、これの応用が電子レンジであります。この三つは米国発祥でありますけれども、日本でも、防衛技術関連で、カーボンファイバーなども航空機、スポーツ用品、自動車、風力発電と多くの産業分野で使用されておりまして、そして、このカーボンファイバーは日本が世界の主要生産国となっておりまして、重要な産業ともなっております。

 このように、防衛技術が民生に転用され、なくてはならないインフラやサービスになっておりますし、日本の産業として確立されているものも多数あるわけであります。やはり時代の変遷とともに防衛の分野も広がって、今や宇宙からサイバーまであらゆるところに関連が出てきておるわけでありまして、研究分野を防衛に関して切り分けるというのはほぼ不可能であると思っております。

 そのような中、日本学術会議のスタンスは、一部、大分許容の方向性に向かっていると思いますけれども、やはり限界も生じているのではないかと思っております。

 その上でお伺いをいたしますけれども、防衛関連研究に対する日本学術会議の態度は、他国、例えばアメリカなどのアカデミアのスタンスと比べてどう異なっているのか教えていただけますでしょうか。

相川政府参考人 お答えいたします。

 近年、研究活動のオープン化、国際化に伴いますリスクへ対応するため、G7諸国を中心に、研究インテグリティーについて議論が積み重ねられてきておりまして、各国の事情により様々なコミュニケーションが模索をされております。

 日本学術会議におきましても、こうした諸外国における研究インテグリティー等に関する取組状況を踏まえまして、令和五年九月に、「見解 研究活動のオープン化、国際化が進む中での科学者コミュニティの課題と対応 研究インテグリティの観点から」を取りまとめたところでございます。

 この見解におきましては、今日の科学技術、とりわけ先端科学技術、新興科学技術、これらはデュアルユース技術が含まれるわけでございますが、これらにおける研究活動のオープン化、国際化という科学の理念の中核の実現に伴うリスクへの対応について、各国における取組状況にも触れつつ、研究インテグリティーの確保は、科学者コミュニティーが主体的に考える重要な事柄であるとの認識の下、その課題と対応について取りまとめておるところでございます。

平沼委員 ありがとうございます。

 研究インテグリティーの言及がありましたけれども、これは非常に重要であると思いますし、しっかりとそこに担保していくというのが今後ますます重要になってくると思っております。

 その上で、大臣にお伺いいたしますけれども、デュアルユースに関わる研究に関して、大臣の見解をお伺いをいたします。

坂井国務大臣 まず、日本学術会議におきましても、今事務局長から説明がありましたように、単純に二分することは困難であり、その研究対象となる科学技術を、潜在的に様々な軍事へ転用できる可能性をもって峻別したり、扱いを一律に判断することは現実的ではないというスタンスだということになっていると認識をしております。

 その上で、令和五年九月には、研究インテグリティーの観点から見解が取りまとめられておりまして、こういったものがそろってくることによって、今まで以上に、大学等の研究機関の現場においてこれらの研究が進み、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などにつながってほしいと考えております。

平沼委員 大臣、ありがとうございます。

 私が思うに、研究から生み出された成果や技術というのは、要は使う側のやはりリテラシーが求められるんだと思います。例えば、推進燃料だったり姿勢制御を生み出した研究者が、ロケットになるかミサイルになるかというのは分からないわけですし、科学者や研究者もこの研究が何かに役に立つだろうということで研究されているというのが根本であったと想像いたします。

 よって、学術会議というものは、有意性やまた懸念点も含めて、専門的知識からしっかりと提言や提唱を行うということが私は重要なんだと思っております。今回の法案によってそれが促進をされることを願いますし、特にデュアルユースに関しては、今までの観点から、やはり少し転換をしっかりしていただくというのは必要なのかなと個人的には思っている次第であります。

 続いての質問に参ります。

 頻繁に議論されるテーマの一つとして、予算措置が挙げられます。要は、学術会議に国費が投入されているんですけれども、何に使用されているのかいまいち分かりにくいというのが一般国民の一つの意見でもあると思っております。

 そこでお伺いをいたしますけれども、必要な予算の規模の適正に関してはどのように判断をするのか、また、今回の法案により国民に対する予算措置の適正や透明性は向上いたしますでしょうか。

笹川政府参考人 予算措置の適正性、透明性、大事なことだと思っております。

 学術会議に対する支援、条文上は、「業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができる。」というふうに書いていて、これまでも予算編成過程のプロセスを経て必要な金額が措置されてきたわけでございますが、今後とも必要な財政的支援は行っていくということです。

 その上で、おっしゃるような、必要な金額が適切に支援されるためということですが、ここは当然、予算要求の前提として、活動、運営についての考え方、学術会議はどうしたいのかというのが示されていないといけません。なので、実施しようとする活動は、年度計画の中に主なものはしっかりと位置づけられて、その意義、コンセプトを国民に説明していただく必要があるということです。

 今年度、令和七年度予算も、実は、学術会議、増額を認めていただいています。これは、単にアカデミーが大事だから増やしてくれとかそういう話ではなくて、防災、復興に関する地方学術会議でありますとか、それから、研究力強化、地方活性化、そういった審議をやります、そういう御説明をいただいたからかなというふうに思っています。

 その上で、事業年度が終わった後は自己点検評価というのを行って、その結果を学術会議は提出し、公表する、そういったことで合理性、透明性を図っていきたいと思っております。

平沼委員 ありがとうございます。

 私も、必要な予算はしっかり必要な予算として認めて使っていくというのは必要だと思いますし、やはり、いろいろな研究とか、例えばいろいろな調査とかを行う目的でも当然費用もかかると承知をしております。過去の質疑の中でも、今まで学術会議が果たしてきた役割に関して答弁がありましたけれども、そこの強化というのが重要になると思っております。

 そこでお伺いをいたしますけれども、様々な社会的課題、例えば、今であれば気候変動だったり、AI、安全保障への迅速な対応や助言が学術会議の重要なミッションであると思っておりますけれども、政府と学術会議の連携強化に関してはどう考えているのか、教えていただけますでしょうか。

笹川政府参考人 御指摘のとおり、社会課題解決、連携、大事なことだと思っています。

 懇談会の報告書でも、政策のための科学、大事だということを言われていますし、学術会議も、アクションプランに基づいて、タイムリー、スピーディーな意思表出とか、産業界、国民等とのコミュニケーション、一生懸命取り組んでいるところだというふうに承知しています。

 その上でなんですけれども、科学的助言の実効性を高めて、そして政策にインパクトを与えるような助言をしていただく、そのためには、やはり、社会の関心とか状況を踏まえて、政府とか産業界、社会とコミュニケーションを取りながら学術的な知見を提供していただくということが大事だろうと思っています。

 政府がアカデミーの助言の内容に関して何かプレッシャーをかけるとか、こういうことを言ってくれというのはいけないのは当然なんですけれども、社会の問題認識とか状況、いろいろな制約条件、そういったものについて、ある程度、関係者で認識を共有した上で議論を進めていただく、始めていただくというのは、提言の実効性を高めるためにも必要なことだというふうに思っています。それは、アカデミーの独立性、自律性と何かそごを来すというようなものじゃなくて、逆に、政府とか経済界、社会から信頼を獲得する、高めるためにもつながるものかなと思っています。

 いずれにしても、政府としても学術会議の知見をかりたいんだということは、これまで何度も、何度もというか、申し上げてきたとおりですし、学術会議も、この前の声明や何かで、世界及び国内の社会課題の解決に寄与するというふうにおっしゃいました。

 学術の発展を含めた意味での、国民や社会のために連携をしていくことについて、基本的な考え方に相違はないというふうに我々思っておりますので、そういった学術会議の独立性、自律性を前提としながら、しっかりコミュニケーションを取って連携を強化していきたいというふうに思っています。

平沼委員 ありがとうございます。やはり、連携の強化に関しては日頃からのコミュニケーションが非常に重要であると思っておりますし、引き続き、学術会議側とのコミュニケーションの強化に是非とも取り組んでいただきたいと思っております。

 もう時間がなくなったので最後の質問にいたしますけれども、先ほどコミュニケーションの話も出たんですけれども、ちょっと触れましたけれども、やはり国民の皆さんにもいろいろ知っていただくというのが非常に重要であると思っております。今回の法改正によって、日本学術会議の成果を分かりやすく社会に伝えるための広報、アウトリーチ機能の強化というのは盛り込まれていらっしゃいますでしょうか。

笹川政府参考人 御指摘のとおり、学術会議の活動成果を分かりやすく伝えていく、本当に大事なことだと思っています。結構、ビジビリティーがないという話も懇談会でされていました。

 それで、法案の中でも、目的の一つとして、学術に関する研究を円滑に進めるための社会環境の整備というのを明記して、それから、そのための業務としても、学術に関する国民の関心及び理解の増進というのをはっきり書きました。こういったことは、今の法案では、はっきりは書かれていない、やっているんですけれども、はっきり書かれていないということです。具体的な取組としては、運営助言委員会を活用して、組織管理とか経営の専門家、広報の専門家など、会員でカバーできない分野のサポートを受けるとか、あと、事務局に、専門人材、博士課程を持っている人とかを入れて、さっきおっしゃった必要な調査分析をやるとか、活動の成果の普及、活用、そういったサポートを期待しているところです。

 学術会議においてもアクションプランでそういったことを進めていますので、法人化後の学術会議でも広報、アウトリーチをしっかりやっていっていただくことを期待しています。

平沼委員 ありがとうございます。

 午前中の参考人質疑でもありましたけれども、よりよい学術会議の方向性に向かってしっかりと尽力していただければと思います。

 以上で質問を終わります。

大岡委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一でございます。

 本日は、与党として四十分質疑の時間をいただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 これまでの対政府質疑、また午前中の参考人質疑を拝見いたしておりまして、政府、また坂井大臣の方からも、法理論上、また制度論的に、一つずつ丁寧にお答えをいただいているというふうに思っております。

 ただ、私も政治家として四年間が過ぎまして、説明は尽くすことが最近大変多くなってきたなというふうに思う中で、理解はできるんだけれども納得はできないというお言葉をよくいただくことがあります。やはりそういったことは多分にあるんだろうなというふうに思っております。

 理論的には筋は通っているんだけれども、なかなか納得、すとんといかない、そういうようなところを、なるべく距離を縮めていくことのための質疑だというふうにも思っておりますので、是非、大臣、また政府の皆様には、真摯かつまた誠実な御答弁をお願い申し上げたいというふうに思っておりますし、私もしっかり質疑を行ってまいりたいというふうに思っております。

 ですので、これまでと重なるところ、また改めてのところもありますけれども、少し丁寧に質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず冒頭、大臣に何問かお聞きをしたいというふうに思っております。

 まず、これまでの課題と経緯ということでありますけれども、日本学術会議の在り方につきましては、平成十五年、二〇〇三年の総合科学技術会議での議論以降、様々な検討が行われてきたというふうに思っております。その上で、端的に、今回の法案提出、そこに至った直接のきっかけは何だったのかということであります。

 令和二年のいわゆる会員任命問題のことを、その関連性を御指摘される方もいらっしゃいますけれども、その上で、いずれにしましても、有識者懇談会の議論の過程におきまして、日本学術会議の自己改革の取組、意見、これがどう反映されたのかということが大事であるというふうに思っております。

 また、今回の立法措置、政府主導で進められたのではないか、こういう御批判もあるわけでありますけれども、それに対してどうお答えになられるか、大臣の御見解をいただきたいと思っております。

坂井国務大臣 まず、令和二年十月の会員任命につきましては、当時の内閣総理大臣が判断を行ったものであり、一連の手続は終了していると承知をしておりますが、その上で、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などの観点から、学術会議の機能強化は先延ばしできない喫緊の課題であるということを認識したということだと思います。

 学術会議の在り方については、これまでも様々な場で検討をいただきましたが、学術会議において、自らが検討すべき課題があるとして、令和三年四月に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」という文書が取りまとめられました。

 これを受けて、政府としても、学術会議の在り方について検討し、国の機関のまま存置した上で、学術会議の運営や会員選考等の透明性を制度的に担保するための法案提出を検討しました。

 しかしながら、学術会議の理解を得られなかったことから、学術会議を国から独立した法人とする案と国の機関のままとする案の両方を俎上にのせて議論することとし、令和五年八月から有識者懇談会を開催し、学術会議に求められる機能及びそれにふさわしい組織形態の在り方について検討を重ねてまいりました。

 有識者会議には学術会議にも毎回御参加いただき、会長自ら参加いただき、合計三十三回の議論を重ねたところでございまして、こういった場を通じた様々な学術会議の意見も踏まえながら検討を重ね、会員の選考方法、評価、監事の仕組みなどを取りまとめたところであります。

 その上で、有識者懇談会の報告書を踏まえて、二月十三日の学術会議幹事会で、内容的にはほぼ法案と言えるような詳細な資料で説明するなど、学術会議と可能な限りコミュニケーションを取りながら、会員の選任プロセス、評価、監事などについて、学術会議の意見を反映させた法案を取りまとめました。

 閣議決定後も、学術会議の懸念事項に対して詳細な見解を文書で示すなど、丁寧に説明をしてきており、学術会議も、法案や法人化自身に反対するものではないというところまでは御理解をいただけたものと思っております。

 個別の論点につきましても少しずつ御理解をいただきつつあるようなので、法案の趣旨、内容については、この質疑の中でしっかり説明を尽くしてまいりたいと思います。

河西委員 御答弁ありがとうございました。

 学術会議の皆様も、この法案化、法案の中で法人化、その趣旨自体は御賛同いただいているということで、今日も午前中、有本参考人の方から、運用が大事だという強い御意見がありまして、そのとおりなんだろうというふうに思っております。

 そこで、法案の中身でありますけれども、法案の第一条、目的の中で、現行法と比較いたしますと、特に社会課題の解決への寄与、この視点が追加をされているわけであります。この意図についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 具体的には、どういう社会課題への対応を想定されているのかということであります。例えば、日本学術会議が、政策立案の質的向上を通じて、社会の今問われている持続可能性の確保、あるいは国民生活の向上、こんなことが考えられるわけでありますけれども、政府として、より具体的に、どのような貢献を期待しているのか、大臣の御見解をいただきたいと思っております。

坂井国務大臣 学術会議につきましては、懇談会においても、例えば、我が国の研究力の向上、東日本大震災やコロナ禍などにおいてどのような貢献があったかといった指摘がありました。

 また、成立後七十五年、もう五月で七十六年かと思いますが、現行法の目的、理念については、国民や社会という用語が、言葉が出てこないというような指摘があったと承知をしております。

 そして、学術会議の外部評価有識者による評価書におきましても、国民のアカデミアへの期待に応えるためには、喫緊の社会課題をしっかり取り上げて検討していくべきである、また、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故が起きたとき、放射線の生物影響に関する科学的知見が国民に正しく伝わらなかったのではないかという反省もあるなどと、この評価書において指摘されているものと承知をいたしております。

 今回の法案の目的には、「学術の向上発達を図るとともに、学術に関する知見を活用して社会の課題の解決に寄与する」としております。これは、科学技術の急速な発展、社会の複雑化に伴って、学術の在り方を問い直すことも含めた学術と社会との関係に関する議論、社会課題解決への貢献など、学術会議の使命、目的、これらが拡大、深化しているものでありますので、それを明確化したものと考えております。

 私も河西委員と同様の意識を持っておりまして、気候変動や人口減少、新興感染症対策とか、あと、AI等の新技術への対応、社会課題の複雑化、深刻化が進んでいる、こういった分野等において、これまで以上に学術的な分野が生かされることが期待をされている、その期待が高まっていると認識をしておりますので、国民の皆さんが、学術会議があって我々の生活が変わったと本当に肌で感じられるような、そういう成果にこういう分野ででもなることを期待したいし、我々も努力をしたいと思っております。

河西委員 是非、国民の皆様が生活の中で実感できる日本学術会議の役割、それを期待したいというふうに思っております。

 また、続きまして、これもこれまで何度も取り上げられてきておりますけれども、第二条の基本理念のところであります。

 現行法の前文には、平和的復興でありますとか人類社会の福祉、これは大変に大切な言葉かと思いますけれども、その代わりといいますか、今回の基本理念の中には、学術に関する知見が人類共有の知的資源であるとともに経済社会の健全な発展の基盤となるもの、こういう表現になっております。

 当然、文化とか平和という文言をなぜ使用しなかったのかとか、日本学術会議の成り立ちからしてもそういった文化、平和は不可欠な要素なのではないか、こういった御指摘もあるわけであります。あるいは、独立性の確保、今日も何度も言及がされておりますが、明確な規定がない、こういった点も懸念の声があるわけでありますけれども、この点につきましても、改めて大臣の御説明をいただきたいと思っております。

坂井国務大臣 「科学が文化国家の基礎」「わが国の平和的復興」という現行法の理念は、現代の視点から捉え直して適切な用語を用いたところでございまして、それが、「学術に関する知見が人類共有の知的資源」「経済社会の健全な発展」という表現になったということを認識しております。国が設立する法人に対して国民が負託する使命、目的を表現する用語は、より恒久的、普遍的なものとすることが適切であり、法制的な観点からこのような表現をしたものであります。

 加えて、この法案の基本理念及び目的規定には、有識者懇談会での意見も踏まえて、国民、社会などの視点も加味しております。

 あと、独立という言葉がありましたが、今までありましたのは国の機関でございましたので、通常の役所は、様々な役所同士で話をしたり、会を持って相談をしたりしながら政策を決めてまいりますが、つまり、学術会議は、国の機関ではあってもそういった関係省庁の影響を受けないということで、独立して職務を行うという規定が置かれていたところでございますが、今回は特殊法人ということでございまして、明らかに、既に国から独立していることが自明でありますので、これも書く必要のないことは書かないという法制的な理由によるものであります。

 その上で、国の責務として、学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならない旨を規定しており、独立性に関する規定がないからといって、この法案が政府の介入を許容するようなものではないことは、審議の中で引き続き御説明させていただきたいと思います。

河西委員 学術会議の法人化によって、独立性、自律性が向上するとの御説明でございました。

 その上で、今日午前中も、梶田元会長が、感覚的なことになって申し訳ないんだけれども、国から独立した機関になることによって、むしろ国からの管理が広く厳しくなるというようなことの懸念なんですが、懸念というのは、辞書で引くと、不安で気にかかる、こういうことでありまして、感覚的という言葉にもかなり思いが込められていたのかなというふうに思うわけであります。

 そこで、確かに今回、監事とか評価委員会とかいろいろ仕組みが設けられるわけでありますけれども、そういう中で独立性の低下が懸念をされている。ただ、その一方では、そうではないんだということであります。

 そこで、より具体的に、内閣府の特別の機関から特殊法人になることによってなぜ独立性が高まるのかということを、具体的に頂戴したいというふうに思っております。また、逆に、国の機関から外れることで、政府への提言、この影響力が低下する可能性はないのか。こういうようなことに対しても是非お答えをいただきたいというふうに思いますので、これは政府参考人からお答えいただきたいと思っております。

笹川政府参考人 法人化によって政府から独立した法人格を有する法人になるということで、まず、独立性が組織面で明確になるということかと思います。

 それで、懇談会の報告書の中で時々言っているんですけれども、政府の方針と一致しない見解も含めて政府に意見を言う機能を十分に果たすためには、政府の機関であることは矛盾を内在していると指摘されております。これは結構言われていたことです。

 先日の元会長の記者会見を聞いていてもこんなことが言われていまして、一つには、学術の立場と政府の立場、それぞれの立場からそれぞれのメッセージが社会に出ていくことが重要で、一元化してはいけない。それから、海外アカデミーと話すときに、日本は政府組織じゃないか、それで独立性が保たれるのかというふうに聞かれて、いや、条文に独立と書いてありますと説明するんだけれども、社会主義国を除いて、先進国の中で政府組織に入っているアカデミーはないわけですよというようなことをおっしゃられていましたので、要するに、法人化によってそういった状態が解消されて、海外アカデミーと同様に、政府とは別だということが明らかになる、そういった立場で活動できるということが一つだと思います。

 それから、同じように重要なのは、総理による会員の任命がなくなるということで、これも、会員を国の関与なく選べるというのはアカデミー本来の姿です。まさにこの辺はちょっと抽象的なんですけれども、懇談会の中では、だからこそ一番大事なんだという指摘がされていました。

 それで、具体的な話としては、要は自由度が高まるという話については、組織運営の自由度が高まって、一つには、国の機関としての人事、組織関係制度、会計法令による制約が離れて、人材登用とか事務局の強化ができるようになる。それから二つ目は、外部から資金を取れますので、財政基盤を多様化して自律的に動けるようになるということでございました。

 先生ちょっと言及がありました監事、評価委員会、これは、国が設立して国の財政的支援を受けて運営される法人の適切な運営を担保するためのものということで、時々御説明していますけれども、必要最小限の仕組みにしたつもりです。学術的な内容とか価値に入るものではありません。

 それから最後に、法人になると勧告の影響力がなくなるんじゃないかというお話については、まず、勧告権を法律上維持していますということと、それから、影響力が下がるという点はむしろ逆じゃないかと私は思っていて、私というか懇談会も思っているんですが、それはさっきの、やはり政府とは別の学術の立場からの提言ですというのがはっきりするので、何かどこかで政府に遠慮しているんじゃないかというのがなくなる。したがって、提言の信頼性が高まるということが非常に大きいと思っています。

 それから、懇談会の中で、雑談じゃないですけれども、出ていた意見としては、海外のアカデミーは国とは別の法人なんですけれども、だから格下で言うことを聞いてもらえないということはないでしょう、要するに中身次第でしょうという話がありましたので、是非、制度上も独立性は高まりますので、頑張っていい提言を出していただきたいと思います。

河西委員 続きまして、会員の選考方法、今回焦点にもなっております。この点について少しお伺いをしたいというふうに思っております。

 今回、会員の選考方法を、法案では大きく変更するということであります。今御答弁にもありましたとおり、内閣総理大臣による任命を廃止する、これは分かりやすいことかなと思います。総会が選任する方式に変更し、さらには、会員以外の者で構成される選定助言委員会、これを設置するということであります。この点について、これまでのコオプテーション方式との関係をどのように整理をするのか、改めて御答弁をいただきたいと思います。

 また、加えまして、新法人発足時の特別の選考方法、これを採用するということでありますけれども、日本学術会議側からは、人的継続性が失われるのではないか、こういうような懸念も示されているわけでありますが、これについても御説明をいただきたいと思っております。

笹川政府参考人 大きく二つ御質問がございました。結構答弁が長くなるので、早口でいきたいと思います。

 まず、総理の任命がなくなるので、むしろコオプテーションが徹底されるというふうに我々は思っています。そう言いつつ、ツールとして選定助言委員会というのをつくって、外部の意見を聞くこととしています。

 これは、独立性、コオプテーションの理念と、外部の意見を聞く必要性、それから、さっきちょっと言っていましたけれども、分野の固定化とかそういったことを抑止する、説明責任、いろいろ調和させたうまい仕組みじゃないかということを懇談会に言っていただきました。

 それで、学術会議の懸念とか意見を聞きながら、委員の要件を大ぐくりにしたり、法律上の要件ですけれども、それから所掌事務の規定も、人選には意見を言わないで選定方針だけに言うんだとか、そういうふうに法律上手当てしました。

 そもそも、委員は学術会議が選ぶことになっていますし、意見に拘束力はないし、だから人選にも意見を言わないので、一部の人たちが懸念するような制度ではないし、選考に何か影響力が及ぶ、そういった運用は許されないというふうに思っています。

 やはり狭い範囲でのコオプテーションは独善的な結果に陥る可能性があって、社会の信頼性を失う危険があるというのは、学術会議の少し前の報告書でも言われていましたので、選定助言委員会、ちょっと心配されている方がいらっしゃいますけれども、コオプテーションがよりよく機能するための環境整備だというふうに捉えていただければと思います。

 それから次に、新法人発足時の会員の選考です。

 これは、平成十七年改正に倣って、オープン、慎重かつ幅広く選考ということにしました。やり方としては、学術会議会長がアカデミアを代表する科学者二名と相談して候補者選考委員会の委員を任命し、候補者選考委員会が会員予定者の候補者を選考して、総会の承認を受ける。学術会議が内閣総理大臣に推薦する。

 学術会議の意見に配慮して、十七年改正に比べてコオプテーションの要請をかなり入れていて、二つ入れています。一つは、現会員が候補者選考委員会の委員になることができるということ。二つ目は、会員予定者の候補者に対する総会による承認、推薦の手続を入れたということで、現会員の意向がかなり反映されるようになっています。

 その上で、さらに、総会からの推薦に基づいて内閣総理大臣が会員予定者を指名するんですけれども、この推薦を受ける権限と指名する権限は、設立委員のうちから内閣総理大臣が指名した者に委任されます。この人は優れた研究、業績がある科学者という前提ですが、委任されます。設立委員に現会員が選ばれることも可能です。

 それから最後に、もう一つ、人的継続性ということですけれども、設立時、発足時に任期が残っている会員が半分ぐらいいるわけですが、この方は引き続き新法人の会員となります。承継会員ということです。それから、法人発足時に任期が切れる人とか元会員も、定年とかにひっかからなければですが、新会員になることも可能なので、組織としての継続性は十分に担保されているということだと思います。したがって、何でも途切れるというようなことではないということは、学術会議の中でも御意見をいただいているように承知しています。

 いずれにしても、さっき大臣からも答弁がありましたけれども、少しずつ御理解をいただけているようですが、しっかりと説明していきたいと思います。

河西委員 丁寧な御答弁をいただきました。

 今ありましたように、特別の選考方法では、候補者選考委員会委員に現会員を任命できるということ、あと、二点目に、会員予定者の候補者を現行の日本学術会議が承認、推薦をするということ、加えて、三点目、いわゆる総理が新会員予定者の指名を委任する設立委員でありますけれども、これも現会員を指名できるということで、いわば三重のコミットが最大限発生をし得るということで、人的継続性についても配慮をされているということを理解させていただいたところであります。

 なお、設立委員の在り方については、我が党としても、現役員を指名することを含めて、継続性、また多様性、透明性の確保を要請させていただきたいというふうに思っております。

 その上で、そもそも、なぜ新法人発足時にあえて特別の選考方法を採用するのかということがあります。また、新会員の予定者を指名する設立委員、この委任元である内閣総理大臣と設立委員の関係性、これについて御説明をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

笹川政府参考人 三重のコミットということで、しっかりやっていきたいと思っています。

 まず、新法人発足時に通常の方法を取らない理由ですが、これは会員を四十人増やしたこととも関係していて、新分野、融合分野への対応なども考えます。そうすると、現会員でカバーできていない分野の会員を選ぶとか、現会員にいない属性の会員を選ぶというときに、現会員だけでは必要十分な選考は難しいんじゃないかということです。

 学術会議は我が国の科学者を代表する機関ですし、国がつくって国の財政負担で運営される組織ですので、やはり現会員だけのものではなくて科学者全員のものですし、究極的には国民のものだと思っていますので、新法人発足時の会員を現会員だけではなく現会員も含む科学者コミュニティー全体で選ぶのは自然なことであり、国民の理解を得やすい方法だというふうに考えております。

 それから、設立委員について、これは国の業務を切り出して法人をつくるときに一般に置くのが通例です。設立に向けた事務的な行為をする人たちなので、裁量判断できない内容をやるということになります。委任ですので、委任元である内閣総理大臣は設立委員に対して何か命令するというようなことはできないということになります。

 それから、学術会議からの推薦に基づいて新会員予定者を指名する設立委員も、現会員が指名されることが可能だというのは御指摘のとおりです。

 それで、最後、設立委員の人選ですけれども、これは総理が適切に判断しますとしかお答えできないんですけれども、河西先生からいただいた要請、多様性、透明性というような与党からの要請についてはしっかりテイクノートしておきたいというふうに思っております。

河西委員 よろしくお願いをいたします。

 続いて、ちょっと一問飛ばしまして、評価委員会についてお伺いしたいと思います。評価委員会、また、監事ということであります。

 監事についても、これまでも何回も、科学的助言の内容でありますとか学術的な判断には立ち入らない監事である、あくまで一般的ないわゆる監査を行う、こういう役割であるということで私も理解をしております。

 その上で、評価委員会でありますけれども、これは日本学術会議の自己点検評価の方法や結果、また中期的な活動計画、これについて意見を述べるというふうにされております。

 科学的助言の中立性確保、これは大事でありますけれども、政府からの独立性が重要とされる日本学術会議であります。総理が任命をする委員によって評価が行われることで、実質的に政府の意向に沿った活動を求められるのではないかというような御懸念があるんだろう。これも、やはり外形的にといいますか、感覚的にそういったことが、そういう懸念が出てくるのは当然のことなんだろうというふうに思います。

 その上で、その懸念を払拭するために、評価の具体的な範囲や方法、また評価結果の拘束力、これについてお伺いしたいというふうに思いますし、また、評価と予算配分の連動、こういったことというのはないのか、実質的な圧力となり得る仕組みはあるのかないのか、この点についても明快に御答弁をいただきたいと思っております。

笹川政府参考人 評価委員会の役割は、学術会議が行った自己点検評価の方法及び結果について調査審議し、意見を述べることに限定されています。活動内容そのものを評価するわけではないですし、主務大臣が認可した中期計画に基づいて業務の実績を主務大臣が評価するような独法の評価制度とは大きく違う。この辺も学術会議の意見を入れて設計したものでございます。

 具体的には、学術会議が行った自己点検評価の結果とその方法について意見を述べるということで、おっしゃったとおり、内容や価値を評価するものではありません。それから、意見には法的拘束力はなく、意見を踏まえた、最終的にどう改善するかといったことは、学術会議が判断するということになります。

 それから、中期的な活動計画についても、独法と違って、国から目標をあらかじめ指示するとか認可するということは行いません。作成に当たって評価委員会の意見を聞くことになっているんですけれども、これは、計画期間が終わった後で自己点検評価が適切に行われて、その結果、それに沿って評価委員会が評価するということなので、そこは何かずれてくるとよろしくないので、あらかじめコミュニケーションを取っておくという趣旨でございます。

 それから、予算との関係ですが、評価は、やはりあくまでも業務の改善とか活性化から、あえて言えば国民とのコミュニケーションを考えていますので、予算配分を直接連動させる仕組みにはなっていません。

 予算については、むしろ年度計画の方の話で、年度計画に基づいて、来年やろうとする活動をちゃんと説明してもらって、予算編成過程を経て必要な額が措置されるということで、これまでと変わらないつもりです。

 なので、まとめると、評価委員会は、政府の意向に沿った活動を求めるようなものではなくて、むしろ、学術会議が政府から独立して自律的に活動していることを国民に説明して理解と支持を得るための仕組み、ツールとして活用していただきたいということでございます。

河西委員 評価委員会、評価結果については予算配分と直接連動する仕組みにはなっていないということで、明確に御答弁をいただきました。非常に大事なポイントかというふうに思っております。

 中期的な活動計画についても言及をいただきましたので、ちょっと次の質問は一問飛ばしたいというふうに思っておりますけれども、いずれにしても、様々、当然、国から補助金が出ることによって、こういった仕組みというのは一定程度必要なんだろうというふうに思っておりますので、過度な運用にはならないように、その点の御配慮は是非お願いをしたいというふうに思っております。

 今ちょっと補助金と申し上げましたが、財政基盤についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 本法案では、政府は、予算の範囲内において、日本学術会議に対して、その業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができるというふうに規定をされております。この補助することができるという、できる規定については、必要な経費の一部しか認められないんじゃないかとか、補助金という形式では自由度が低いのではないかとか、そういう御懸念もあります。

 現在の国庫負担とする仕組みと比べて、財政基盤がどうなっていくのかということでありますけれども、また、財政での自律性を高めていくために、寄附金等の自己財源の確保、これも今日、特殊法人のその先の話として参考人質疑でも様々交わされたと思いますけれども、この点に関する政府の御見解もいただきたいと思っております。

笹川政府参考人 補助することができるという話でございます。

 これは法制的な理由による表現で、これまでと同様に、予算編成過程のプロセスを経て必要な金額が措置されるということに変わりはありません。大臣からも何回か答弁しました。今後も必要な財政的支援は行っていくということでございます。

 それで、制度設計の話なんですけれども、交付金にしてほしいというような話もありましたが、運営費交付金は、中期目標、中期計画と連動した独法特有の仕組みであって、これは計画の認可が前提となっています。

 この法案では、国は目標を示すとか計画を認可するということをやらないので、交付金という形にはならなくて、補助金ということになります。独法みたいな中期計画は嫌だと、ある意味、学術会議がおっしゃっていたので、それを入れて補助金になったということになります。したがって、交付金を希望するのであれば、計画の認可という違う方向に行っちゃうということです。

 その上で、河西先生おっしゃった使い勝手の話です。

 ここは補助金の設計の話で、これについては我々も大事だと思っていますので、補助金の交付要綱については、学術会議の自律性、独立性に配慮した制度設計をしっかりやっていきたいと思っています。

 補助金とはいっても、法人の組織運営全般に出せるような補助金というのは例がありますので、そういったことを参考にして、運用上の自由度が高い、独法の交付金と同じようなものにしていきたいというふうに、これから査定当局とかとやるわけですけれども、やっていきたいというふうに思っております。

 それから、自主財源の話。

 ここは、やはりメリットを午前中もいろいろ言われていました。やはり寄附金の受入れ、自己収入の確保を行えるようになるし、それから、我々が大事だと思っているのは、そういう外部に対する働きかけの努力が活動の活性化につながっていくんじゃないかということ、これは学術会議の昔の報告書でも、それから懇談会でも言われていました。我々としても、財源多様化に向けた必要な支援というものもしていきたいというふうに思っております。

河西委員 補助金の運用の在り方、御答弁をいただきまして、こういったことも踏まえながら、政府と、また日本学術会議と、何とか同じ方向を向いて次の一歩を踏み出せればというふうに思っております。

 続きまして、定年延長と再任とか定数増、あと、若手科学者の参画についてもお伺いいたしたいと思います。

 本法案は、定年を現行の七十歳から七十五歳に引き上げ、さらには一回に限り再任を可能とする。その一方で、会員の定数も四十人増やして二百五十人に増やすというふうになっております。こういった変更は、今回、そもそも法案の目的が日本学術会議の機能強化にあるわけでありますが、これに対してどう資するのかということであります。

 また、特に若手、非常に大事な観点かと思いますけれども、やはり科学技術、イノベーションの担い手としての若手研究者の育成、また活躍促進、これは国の重要課題であります。こういった若手科学者の参画機会の確保、あるいは現在の若手アカデミーの位置づけ、これについてどう考えるのか。

 さらには、会員選考における年齢構成でありますとかジェンダーのバランス、地域バランス、ダイバーシティーの確保、こういったことについても政府の御見解をいただきたいというふうに思っております。よろしくお願いします。

笹川政府参考人 御指摘のとおり、会員数を四十名増やしました。

 それから、再任と定年について、さっき答弁をちょっとはしょったんですけれども、現在の任期六年で再任不可、七十歳定年、この形だと、優秀な人が若いときに一回会員になっちゃうとその後もう一回なれなくて不都合だ、これは学術会議からもかなり、要望と言ったら変ですけれども、意見が出ていました。一方で、三回も四回もやるのかという話もあったので、一回に限りということにいたしました。

 この点については、国際的な面でも、必要な会員が比較的長く活動を担っていただいて、人的なつながり、リソース、継続性、そういったものを確保することも大事だというふうに思っています。

 ということで、定員増とか、それから任期等々の話は、おっしゃった若手の活躍促進という観点からも非常に重要なことだというふうに我々は思っています。

 それから、若手アカデミーについてです。

 ここは今、法律上の組織ではそもそもないわけなんですけれども、今後もその自由度を高めていくということで、法律には書いていません。

 時間もないので、余り、御説明するのは省略しますけれども、やはり自主的、柔軟に対応していただければいい。ただ、一つ申し上げておきたいのは、懇談会でも、若手アカデミーの成果とか活動ぶり、それから改革意欲は非常にポジティブに受け入れられて、評価と言うと失礼ですけれども、非常に期待が表明されていました。

 それから、最後、ダイバーシティーについては、配慮事項として条文に書こうとしていて、年齢構成、それからジェンダーバランス、所属機関や地域、専門分野のバランスなどを含む、そういったことを会員選定方針の中で書いていってほしいというようなことを条文でも書いているところでございます。

 以上です。

河西委員 是非、若手アカデミーも含めて、更なる機能強化、取組をお願いしたいと思います。

 恐らく最後の質問になろうかと思います。最後、改めて大臣にお聞きをしたいというふうに、総括的にお伺いしたいというふうに思っております。

 今、やや細々と、我が党としても、改めてというところで質疑をさせていただきました。この法案の目的とか基本理念、加えまして、監事、評価委員会、中期計画の策定の義務づけ、また、交付金ではなくて補助金方式にしていくというようなことも含めて、各種制度設計の必要性と合理性、こういったところを私は確認をさせていただいたというふうに思っております。

 また、会員の選考方法につきましても、選定助言委員会は個別の選考に立ち入らない、こういった点も確認をさせていただき、さらには、新法人発足時に採用される特別な選考方法、この必要性も、いずれのプロセスにおいても、日本学術会議の継続性、独立性、また自律性が確保されていく。

 また、ナショナルアカデミーの五要件ということで、今日の参考人質疑でも度々上がりましたが、あるいは会長声明で示された五つの懸念、こういったことに対しても、政府の見解、説明の合理性は私も十分にあるというふうに思っております。

 その上で、冒頭申し上げましたとおり、やはり理解と納得、これは全く別物でございまして、これからが大事でありますし、運用の中で、互いの信頼関係というんでしょうか、こういったものが形作られていくことが大事かと思っております。

 今後の過程において、日本学術会議とどのようにコミュニケーションを図っていくお考えなのか、対応していくお考えなのか、最後、大臣の御見解をいただきたいと思っております。

坂井国務大臣 河西委員も御指摘をいただいておりましたが、我々も学術会議側も、学術会議の機能強化というのは同じ方向を、目標を持っているということは認識をしておりまして、そのために、今日も幾つか説明をさせていただいてまいりましたが、事務局と学術会議側とも丁寧に今までもやり取りを行ってきて、法案や法人化自身に反対するものではないというところまでは御理解をいただくところまで来たということかと思います。

 大事なのは、引き続きこういった対話を続けていくことだと思っておりますし、具体的に、この審議の中で、学術会議側が懸念をする点、懸念をされているとはおっしゃっても、我々は実質ちゃんと継続性、独立性、自律性は確保していると考える制度設計でございますが、ですから、そこの違いに関しましては、我々の考え方と認識を、今申し上げたように、丁寧に今後も対話をすることによって、学術会議と政府の信頼関係、そして、それを築いた後、その上に立って、いわば国内の社会課題の解決といった具体的な結果に結びつくように努力をしてまいりたいと思っております。

河西委員 是非よろしくお願いいたします。

 これから建設的な対話を続けていただいて、学術というのはこの国の力の根幹に関わることかと思いますので、是非そうした取組と、また、最終的には距離が縮んで、同じ方向を向きながら、学術の発展に各位が寄与されることを期待申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

大岡委員長 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十二分散会


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