第5号 平成31年3月22日(金曜日)
平成三十一年三月二十二日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 葉梨 康弘君
理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君
理事 平沢 勝栄君 理事 藤原 崇君
理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君
理事 階 猛君 理事 浜地 雅一君
赤澤 亮正君 安藤 高夫君
井野 俊郎君 奥野 信亮君
鬼木 誠君 門 博文君
門山 宏哲君 金子 俊平君
上川 陽子君 神田 裕君
黄川田仁志君 小寺 裕雄君
小林 茂樹君 中曽根康隆君
古川 康君 古川 禎久君
穂坂 泰君 三ッ林裕巳君
大河原雅子君 黒岩 宇洋君
松田 功君 松平 浩一君
山本和嘉子君 源馬謙太郎君
太田 昌孝君 藤野 保史君
串田 誠一君 井出 庸生君
柚木 道義君
…………………………………
法務大臣 山下 貴司君
法務副大臣 平口 洋君
法務大臣政務官 門山 宏哲君
文部科学大臣政務官 中村 裕之君
最高裁判所事務総局総務局長 村田 斉志君
最高裁判所事務総局人事局長 堀田 眞哉君
最高裁判所事務総局経理局長 笠井 之彦君
最高裁判所事務総局家庭局長 手嶋あさみ君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 内藤 浩文君
政府参考人
(法務省大臣官房長) 川原 隆司君
政府参考人
(法務省大臣官房政策立案総括審議官) 西山 卓爾君
政府参考人
(法務省大臣官房司法法制部長) 小出 邦夫君
政府参考人
(法務省民事局長) 小野瀬 厚君
政府参考人
(法務省刑事局長) 小山 太士君
政府参考人
(法務省矯正局長) 名執 雅子君
政府参考人
(法務省保護局長) 今福 章二君
政府参考人
(法務省訟務局長) 舘内比佐志君
政府参考人
(法務省入国管理局長) 佐々木聖子君
政府参考人
(財務省主計局次長) 神田 眞人君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 田中 誠二君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 田畑 一雄君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 諏訪園健司君
法務委員会専門員 齋藤 育子君
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委員の異動
三月二十二日
辞任 補欠選任
奥野 信亮君 三ッ林裕巳君
国光あやの君 金子 俊平君
中曽根康隆君 穂坂 泰君
和田 義明君 安藤 高夫君
逢坂 誠二君 大河原雅子君
遠山 清彦君 太田 昌孝君
同日
辞任 補欠選任
安藤 高夫君 小寺 裕雄君
金子 俊平君 国光あやの君
穂坂 泰君 中曽根康隆君
三ッ林裕巳君 奥野 信亮君
大河原雅子君 逢坂 誠二君
太田 昌孝君 遠山 清彦君
同日
辞任 補欠選任
小寺 裕雄君 和田 義明君
―――――――――――――
三月十九日
民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件(法務省の国会提出資料の誤りに対する再発防止策)
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○葉梨委員長 これより会議を開きます。
裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に法務省の国会提出資料の誤りに対する再発防止策について調査を進めます。
この際、山下法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山下法務大臣。
○山下国務大臣 このたび、階委員からの資料要求に対して当省が提出した資料に明らかな誤りがありました。
昨年の臨時国会以来、法務省においては、資料の記載誤りが続いており、そのような中で、またも資料に誤りがあったことはまことに遺憾であります。
法務行政の責任者として、法務委員長及び法務委員の先生方に多大な御迷惑をおかけしたことについて、心よりおわびを申し上げます。
本件資料は、東日本大震災により被災した水戸法務総合庁舎の新営計画等に関する階委員からの要求に基づくものであり、当該新営計画等に係る事業について、年度や事業名、予算要求をした当時の法務省の政務三役の氏名等をお示ししようとしたところ、その氏名等について複数の誤った記載をした資料を作成してしまい、これを階委員に提出してしまいました。
今回の誤りについては、階委員が求めている資料の内容やその趣旨を正確に把握し、どのような資料を作成すべきかについて管理職員から作成者に明確に指示した上で、作成者において原資料との照合等の確認作業を十分に行うとともに、管理職員等の決裁者においてその内容をしっかりとチェックすることによって、避けることができたものと考えております。
しかしながら、実際には、次のような事情に加え、速やかに作成、提出すべきことに気をとられたことから、これらのことが履行されず、誤りのある資料を作成、提出してしまったものであります。
すなわち、本件資料は官房施設課において作成したものでありますが、当時、同課においては、階委員から別の資料の提出も求められており、本件資料を本来作成すべき同課の予算担当職員等は、そちらの対応に注力してしまいました。
同課の管理職員においては、このような事情を踏まえた上で、本件資料の内容であれば予算を担当していない職員でも作成可能であると判断し、担当外の同課職員にその作成を指示しました。
当初、同課の管理職員は、作成者に対し、平成二十四年度以降の事業を対象とした資料を作成するよう指示しましたが、その際、予算要求時期について、概算要求時期である前年の八月末のみであると思い込み、要求当時の政務三役については、前年の八月末時点を基準として記載するよう指示いたしました。
その後、同課の管理職員は、作成者に対し、平成二十三年度の事業についても記載を追加するよう指示しましたが、その際、当該事業が補正予算に係るものであって、その要求時期が平成二十三年十月であることを伝えず、また、要求当時の政務三役の記載方法についても特段の指示をしませんでした。
その結果、作成者においては、各事業に係る予算要求が本予算であるか補正予算であるかという点についての考慮を欠いたまま、また、概算要求書等の原資料との照合もしないまま、歴代の政務三役が記載された資料のみを確認して本件資料を作成したものであります。
そして、その上司に当たる複数の管理職員においては、作成者から上がってきた本件資料に目を通したものの、その正確性についてのチェックを怠り、誤りを看過したまま本件資料の提出を了承したものであり、その後、官房秘書課等の他の部署によるチェックを経ることなく、本件資料を官房長に上げ、官房長において、その記載内容に誤りはないものと軽信して、本件資料の提出を了承したものであります。
国会議員の求めに応じて提出する資料は、国会における議論の前提となるものでございますので、誤った資料が提出されるという事態は決してあってはならないものと考えております。
そのため、私は、今回の事態について報告を受けた際、これを極めて重く受けとめ、強い危機感を持って、直ちに、官房長に対し、再発防止策を早急に講じるよう厳しく指示いたしました。
今回の事態を受けた再発防止策として、まず、資料の作成に当たり、その要求の趣旨を十分に確認して正確に把握し、作成者において原資料との照合等の確認作業を十分に行うよう、周知徹底することとしました。
その上で、再発防止策の重要なポイントは、国会提出資料が誤りなく的確なものとなることを担保するため、官房秘書課を含む形で複層的なチェック体制を構築し、国会提出資料の作成及び内容について責任者の明確化も図るということであり、具体的な仕組みは以下のとおりであります。
すなわち、国会提出資料を作成する各局部課においては、担当者が作成する資料について、その担当部署の課室長等の管理職員が内容を十分にチェックした上で、総務課長相当職にある者も必ずチェックを行うこととしました。
その際、総務課長相当職にある者は、そのチェックを確実なものとするために、国会提出資料のチェックを担当する課長補佐等を指名し、その補佐を受けながらチェックを行い、国会提出資料の作成及び内容に責任を持つこととしました。
このように、国会提出資料を作成する局部課内におけるダブルチェック体制を構築し、かつ、総務課長相当職にある者が国会提出資料の作成及び内容の責任者であることを明確化いたしました。
また、国会提出資料については、局部課内の決裁を終えた後、官房秘書課長が例外なくチェックを行うこととし、その際、官房秘書課長は、そのチェックを確実なものとするために、国会担当の課長補佐等の補佐を受けながらチェックを行うこととしました。
そして、官房秘書課長のチェックを受けた上で、官房長、さらには必要に応じて事務次官、政務三役等の了承を得て、資料を国会に提出することといたしました。
以上申し上げたとおり、私は、今回の事態を受け、直ちに再発防止策を講じることといたしました。
その上で、私は、本月十八日、法務省内で全局の局長等を集め、国会提出資料が正確かつ的確であることの重要性について厳しく指摘するとともに、各職員がその責任を自覚し、再発防止策の履行を徹底するよう、指示したところであります。
引き続き、更に職員を督励してまいりますので、今後とも、法務行政への御理解、御協力をよろしくお願い申し上げます。
―――――――――――――
○葉梨委員長 この際、お諮りいたします。
各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房長川原隆司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。
○藤原委員 おはようございます。衆議院議員の藤原崇でございます。
法務省の国会提出資料の誤りに対する再発防止策ということで、十分、質問をさせていただきます。
今、山下法務大臣から発言がございました。資料の誤りについてということで、経過等について御説明をいただきました。長らく、理事会、理事懇談会等では議論をされていたところでありますが、一般の委員の方々は、経緯をこれで知ったという方々もいらっしゃると思います。この再発防止について、十分ということで御質問させていただきます。
まず、再発防止の前提として、今回、資料作成の瑕疵により、国会審議が実質的には一週間近くストップをしてしまったということになっております。このことについて法務行政の責任者としてどのように責任を感じておられるか、お伺いをしたいと思います。
○山下国務大臣 御指摘のとおりのような事態を招いたことにつきまして、法務行政の責任者として、まことに遺憾であり、改めて、法務委員長及び法務委員の先生方に大変な御迷惑をおかけしたことについて、心からおわびを申し上げます。
国会に提出する資料は、国民の代表に対して提出するものでありまして、公の資料となるものであり、正確かつ的確でなければならないものであります。それにもかかわらず、今回、またも当省から国会に提出した資料に誤りがあったという事実は、極めて重く受けとめなければならず、国会において法務省に対する信頼が低下しているという危機感を、職員全体で共有しなければならないと考えております。
今国会においては、限られた日程の中で、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を始め、合計六本の重要法案を提出させていただいております。これらの法案審議がおくれ、仮にこれらの法律案のうち一部が成立しないということになれば、法律の成立を待ち望む国民の皆様にも大きな影響を与えてしまうことになります。
今回の事態はそれだけの大きな影響のあるものであると受けとめており、先日、先ほど御報告申し上げたように、法務省幹部に対し、国会提出資料が正確かつ的確であることの重要性について厳しく指摘し、再発防止策の履行を徹底するよう指示するとともに、部下職員に対しても周知徹底するように指示したところであります。
このような事態が二度と生じないよう、引き続き職員を督励し、法務省を挙げて再発防止策に取り組んでまいるとともに、職員には、再発防止策に取り組むこと、そして、それぞれがその責任を自覚し、みずからの職務を真摯に全うすることにより、その職責を果たしてもらいたいと考えております。
○藤原委員 ありがとうございます。
おっしゃるとおり、今回の国会では、非常に多岐な、多くの法律、そして、非常に各般において、執行法の改正あるいは民法の改正などが典型ですけれども、非常に大きな意義のある改正がございますので、ぜひ法務省の皆様にも緊張感を持って、我々委員も緊張感を持って審議をしていきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
それで、私の配付資料、二つあるんですが、A3の用紙、これが実際に問題になった資料でして、実際はA4の資料なんですが、「誤り」と書いてある左のが実際に法務省から誤りの資料として渡されたもので、それについて事後的に正しくしたというのが右の赤いところであります。
これは、先ほどの大臣の発言にもありましたけれども、複数の管理職そして官房長がチェックをした、まあ、チェックを怠ったというか、見て、その上で通したということなんですが、この左側の「誤り」を見ますと、平成二十三年から二十五年度の政務三役、そして、なぜか平成二十九年度の法務副大臣、これは現委員長の葉梨委員長でありますけれども、ここがなぜか間違っていたということで、少なくとも、私、この資料を理事懇談会で見せられたときも、平成二十三年、二十四年、二十五年の政務三役は、これは確かにちょっと調べなければわからないんですが、ぱっと見て、この平成二十九年の葉梨副大臣という記述、これは明らかにその横の金田大臣、井野政務官と在職年数がちょっとずれているということで、一読すればちょっとおかしいなとわかる資料だと思うんですね。
そうすると、ある意味では、管理職あるいは官房長が今回の資料を見て、少なくともこの葉梨副大臣と書いてあるところ、これはちょっとおかしいんじゃないか、そういうふうに一言言えば、それで少なくともこの段階で提出をすることはなかった、そういうような資料だとも思うんですが、官房長もこれを実際見ているわけなんですが、なぜそれが見逃されたんでしょうか。
○川原政府参考人 お答え申し上げます。
まず冒頭、今回、法務委員長及び法務委員の先生方に大変な御迷惑をおかけするとともに、当委員会における御審議におくれを生じさせてしまうという事態を招いたことについて、心からおわびを申し上げます。
国会に誤りのある資料を提出してはならないことは申し上げるまでもないことでありまして、責任を痛感しております。
今回、速やかな作成、提出ばかりに気をとられて、本件資料の、今御指摘の政務三役の記載部分は客観的な事実関係を記載するものであったことから、作成担当部署においてチェックした上で作成しており内容に誤りがないものと軽信してしまい、今御指摘のとおり、冷静に一読すれば容易に気づき得た誤りを看過して、全体を概観したのみで議員への提出を了解してしまったものでありまして、このことについては反省をしている次第でございます。
以上でございます。
○藤原委員 やはり、下から上がってきた資料、当然正しくできているだろう、そういう、思い込みというか、そういうものがあったんだと思うんですが、やはり今回のことは、ちょっとでも丁寧に数字を整合させれば、この資料を一枚見ただけで誤りがあるということは明らかな資料であったということは、やはり法務省としても重く認識をしていただきたいと思っております。
配付資料として、もう一つ、ポンチ絵で、国会提出資料の誤りに対する再発防止策という書類を配らせていただきました。
これは、理事懇談会のときに我々理事に対して法務省からの説明資料として出てきたもの、これを委員の皆さんにもお配りをさせていただきました。
ミスというのは、国会において、国会に出す資料にミスというのはあってはならないことだと私も思っております。その一方で、これは人間がやることですので、神様ではないということで、ミスがあり得るということも、これは残念ながら事実なんだろうと思っております。ミスがあってはならない例えば刑事裁判、これだって、残念ながら、今までミスがなかったわけではないですし、いろいろな改革をしても、もしかしたらミスがこれからも起きるかもしれない。
私が、この再発防止策で、ぜひ大臣そして政務三役、法務省の方々に認識してほしいのは、絶対にミスを起こさない体制をつくる、それと同時に、やはり人間というものはミスを起こし得るものだ、そのことをぜひ頭に入れて、今回再発防止策をつくったからこれでもう全部完璧だというわけではなく、やはりすり抜けてしまう可能性もあるので、常にブラッシュアップをして、よりミスが起こらない体制をつくっていただきたいと思っております。
そういう中で、最後に、先ほどの発言にもありましたけれども、国会提出資料の誤りに対する再発防止策、今後の確認体制の中で最も肝要な点について、この参考資料等を参照しながら、大臣から改めて説明をいただきたいと思います。
○山下国務大臣 今回の誤りの原因については、資料の速やかな作成、提出に気をとられる余り、その作成者において原資料との照合や十分な確認作業など正確な資料を作成するための作業を怠ったという点に加え、その後のチェックなどに関する責任の所在が明確でなかったために管理職員によるチェック機能等も働かなかったことが最大の原因であるというふうに考えております。
そこで、資料の作成者において原資料との照合及び十分な確認作業を行うよう徹底することは当然のこととして、責任の所在を明確にしたチェック体制を構築することに主眼を置いた再発防止策を講じることとしたものでございます。
具体的には、国会提出資料を作成する局部課においては、担当部署の管理職員が資料の内容を十分にチェックした後、必ず当該局の総務課長相当職にもチェックをさせること、そして、総務課長相当職を資料作成の責任者とすること、国会提出に先立って例外なく官房秘書課長にチェックさせることなどを柱とする対応策をとることとし、責任の所在を明確にした複層的なチェック体制を構築することとしました。
今回のような事態が二度と起きないよう、引き続き職員を督励し、法務省を挙げてこのような再発防止策に取り組んでまいりたいと考えております。
○藤原委員 ありがとうございました。
担当総務課長の役割というのも非常にまた大きくなるんだろうと思っております。ぜひ、法案審議、これから本格化しますので、法務省そして我々ともに緊張感を持って臨みたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
これで質疑を終わります。
○葉梨委員長 以上で藤原崇君の質疑は終了いたしました。
次に、階猛君。
○階委員 国民民主党の階です。
今回、私が関係したことについて間違った資料が出されてこうした問題になっているわけですけれども、きょうの、大臣からるる御説明はありましたけれども、やや腑に落ちない点もありますので、そうしたことを中心に質問させていただきます。
その前に、通告はしていないんですが、最高裁から十八日付で再審開始決定が出されていますね。もう御存じだと思いますけれども、殺人罪で懲役十二年の判決が確定して服役していた元看護助手の女性、三十九歳の方、この方について、最高裁が再審決定を下したと。この女性は、捜査段階の自白が虚偽だったとして公判では無実だというふうに主張したわけですが、最終的には自白調書を証拠採用されて、人生の重要な時期を棒に振っている、こういうことであります。
この点について、検察庁を所管し、また検事出身でもある山下大臣の見解を求めたいと思います。
○山下国務大臣 まず、階委員に対して提出した資料について誤りがあったこと、改めておわびを申し上げます。
御質問にお答えしますが、御指摘の事件について、本年三月十八日、最高裁判所が特別抗告を棄却する決定を行ったことは承知しております。しかしながら、この事件に関しては、個別的、具体的な事件における裁判所の判断でございます。そういったことで、法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきたいと考えております。
○階委員 唐突にこのようなことをお聞きした理由は、まず、きょうの大臣の説明の中で、冒頭で、またも資料に誤りがあったことはまことに遺憾ですというくだりがございますね。またもと言っているんですが、去年の技能実習生の問題と大きく違うのは、前回の誤りというのは法務省にとって有利となるような方向の誤りだったんです。ところが、今回の誤りというのは法務省にとっては不利となるような誤り。
なぜ不利か。資料の一ページ目をごらんになってください。
直接的には葉梨委員長の発言に端を発しているわけですけれども、葉梨委員長は、最終的には、誤り、私の主張が事実誤認のおそれがあるから議事整理権を行使したというお話だったんですけれども、それについては不適切だったということは認められて、これは撤回して謝罪されました。ところが、その後、山下大臣も答えられていまして、東日本大震災により庁舎機能が大きく損なわれることから庁舎新営の必要が生じたということを最初の方で述べられていますよね。
ここで大事なことは、東日本大震災によって庁舎機能が大きく損なわれて庁舎新営の必要が生じた、こういうロジックなわけですよ。ということは、本当に地震によってこの庁舎新営の必要が生じたかどうか。
撤回されましたけれども、当初、私の方が事実誤認のおそれがあると、なぜなら、葉梨委員長としては、茨城県も被災県で、水戸の法務庁舎が全壊した、地震でというふうにおっしゃっていて、地震で全壊したから建て直すということを言われていて、私は本当にそうかなと思って、事実関係をちゃんと調べたかったんですね。
その中で法務省が出してきた資料が、きょうの二枚目の資料でございます。
この最初のところ、水戸法務総合庁舎第一別館取壊し工事。取り壊すということは、再建するから取り壊すわけでありまして、この取壊し工事のときの要求大臣が千葉景子さん。あの震災の前にはやめられている名前がここに出てきた。これは、大臣の説明にとって決定的な矛盾となる、不利益となる証拠なわけですよ。
翻って、先ほど私が取り上げた再審開始決定の問題。これは、一般の方が被告人となった場合、捜査段階で間違ったことを言ってしまいました、でも、それが検察官に調書にとられてしまいました、裁判になって、あれは間違いでしたと言って撤回できるかというと、そうはなかなかならないんです。だから、ああいう十二年も服役するという中で再審開始決定が行われたりするわけですね。
一般の人は、検事にしゃべったことは、幾らあれは間違いでしたと言っても、実はその内容が本人にとって不利益だからこそ撤回が認められない、こういう刑訴法のたてつけになっているんですね。不利益だからこそ撤回したいのが人の本心じゃないですか。でも、刑訴法は、不利益であればあるほど、これは証拠力が高いということで撤回が認められないんですよ。だから、検事というのはそれほど重い責任を持っている。
他方、その検事、官房長も検事じゃないですか。検事が責任を持って我々に出した資料は、幾ら自分たちに不利益なものでも簡単に撤回が認められる。
これは本当におかしなことだと思いますよ。だから私は、これは大問題だと言っているわけですよ。ほかの官僚とは違うんです。責任重大なんです。
こういう中で、今回のこの大臣の説明を見ますと、何が起きたのか、どういう理由で間違いが生じたのかというのはあるんですけれども、そこからすぐ再発防止策に飛んでいる。
まず、責任の所在を明らかにすべきだと思います。その点について、大臣の見解をお願いします。
○山下国務大臣 まず、再審開始決定のお話と、また今回のことについて御指摘がございました。
私は法律家の一人でもございます。刑事手続であろうが行政手続であろうが、誤ったことに関しては、これは客観的な事実に基づいて直ちに訂正すべきであろうということが当たり前であると思っておりますし、また、訴訟手続においても、仮に誤ったものであるのであれば、それは撤回あるいはその主張は認められるべきであろうということは一般論としては考えておりますし、それは同じであろうと。特に、この国会の御審議において、誤った事実に基づいて御審議がされるということについては、これは法務行政の責任者としてあってはならないというところでございますので、その点の訂正をさせていただいたところであります。
まず、その責任の所在につきましては、これは、なぜこのようなことが起きたのかということについて、まず明らかにさせていただく、そして、その上で、この再発防止策をしっかりと組織として責任を持つ形でさせていただくということで、この再発防止に全力を尽くすということで、この責任を果たしていきたいと考えております。
○階委員 官房長にも伺いたいと思います。
検事出身の官房長や、そしてその部下である検事出身の職員が、法務省にとって不利益な証拠を一旦は国会に提出したわけです。でも、それをミスだったから済みませんと言って取り下げる。さっきも言ったように、一般人であれば、そんなことを公判段階でいきなり主張しても、これはなかなか認められませんよ。御自身の経験を振り返ってもそうでしょう。被告人の自白調書あるいは被告人以外の検察官面前調書、裁判になって、この証拠は捜査段階のもので、あれは間違いですから、同意しません、これは証拠にしないでくださいと言われた場合、多々あると思いますよ。そういったときに撤回に応じたことはありますか。お答えください。御自身の経験で結構です。
○川原政府参考人 お答え申し上げます。
まず、このたび、記載に誤りのある資料を階委員に提出してしまったことにつきまして、まことに申しわけなく、改めて心からおわびを申し上げます。
その上で、今お尋ねでございます、私の経験でそういった撤回に応じたことがあるかということでございますが、個々の具体的な事案における公判活動にかかわることですので、個別のお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、当該供述の内容が明らかな客観的事実に反しているような場合、このような場合には、当該供述の証拠価値は、当該客観的証拠との対比において、ないものと評価される場合がありますので、検察官として、そういった場合には、関係者の供述に対して適切に対応しているものと承知しております。
以上でございます。
○階委員 明らかな客観的証拠に反しなければ撤回しないということも今おっしゃったということでいいですか。
○川原政府参考人 お答え申し上げます。
今私が申し上げましたのは、明らかに客観的な証拠に反しているような場合は撤回することがあり得るという限りで申し上げたものでございます。
○階委員 だから、相当狭い要件のもとでしか撤回はしないということをおっしゃっているわけですね。そういうことなんですよ。違いますか。
○川原政府参考人 お答え申し上げます。
ただいまの階委員の御確認でございますが、私が先ほど申し上げました以外に撤回に応じることがないと申し上げているまでの趣旨ではございません。
○階委員 時間がもったいないので、これ以上は避けますけれども、私も、今回撤回したいと言っている内容が、これは明らかな客観的証拠に反するのかというところを見ています。今のところ、私はそこまでの証拠をもらっていません。だから私は、きょう訂正しますと言われても、にわかには信用できません。もと出されたものを私は証拠として認めていますし、今回出されたものが正しいものだとにわかに受けとめることはできません。だから、今も皆さんに証拠、新しい証拠を求めています。
こういう話なんですよ。皆さんは、被告人とか検面調書をつくるときに応じた証人などについては、そうやって撤回の要件を厳しくしている。ところが、自分たちが不利益なことをやってしまったときには簡単に撤回を求めようとする。その姿勢が、刑事司法に対する信頼を揺らがすんですよ。
責任を重く受けとめてください。私は官房長の責任は重いと思いますよ。どのように責任をとりますか。お答えください。
○川原政府参考人 お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたが、国会に誤りのある資料を提出してはならないことは申し上げるまでもないことでございまして、責任を痛感している次第でございます。
山下大臣からも厳しい御叱責を賜り、私を含む法務省幹部を集めた場において、二度とこのような事態があってはならないこと、そして、再発防止に法務省を挙げて取り組むべきことについて厳しい御指示をいただきました。
私としては、山下大臣の御指示に基づき再発防止に取り組むこと、そして、大臣官房の長として、法務省全体に目配りをしながら、その円滑な運営に尽力することにより、みずからの職責を果たしてまいりたいと考えている次第でございます。
○階委員 片や、自分に不利益なことを撤回しようとしたけれども撤回が裁判では認められなくて十二年懲役ですよ。ようやく再審開始決定。片や、国会にエリートの検事出身の官僚が携わって出した不利益な証拠、責任をとらずに撤回しよう。そんな姿勢で刑事司法への信頼が保てるとは思いません。
最後に、資料の三枚目をごらんになってください。
これは昨年の臨時国会のときの議事録です。もう御承知のとおり、技能実習生の際にも、これは不利益というよりも利益となる間違いでしたけれども、これを訂正する際に、山下大臣は、「今後こういうことがないように、しっかりとこういった精査をするようにということを改めて指示した」、また、次の段には、「とりわけ野党の皆様には、しっかりと御審議いただくために、しっかりとした資料を出すようにということは指示をしていた」、こういうくだりが既にあるわけですね。そういう中で今回のことが起きている。
一体、いかなる指示をこのときにしていたんでしょうか、具体的にお答えください。
○山下国務大臣 まず、統計データの誤りについても、また改めておわびを申し上げます。
そして、その際の統計データに関しまして、これはエクセル操作の誤りでございました。それを見抜けずに国会に提出してしまったといったことから、こういった集計上の、あるいは作業ミス、これをやはり我々はしっかりと見抜いた上でやらなければならないということで、これも、重層的なと申しますか、技術的な誤りというのは横の各部局にもまたがっているものですので、それとの突合の上でしっかりやるようにということで、別の課の目も、しっかりと見るようにということで申し上げておりました。
今回、これは集計というよりは内容の明らかな誤りであり、それについて、総務課長、局であれば筆頭課長である総務課長、あるいはその相当職においてもしっかりと確認をした上で行うということを改めて指示していたところでございます。
前回、こういった数値上の作業上の誤りに対して指示をしておいたところでございますが、今回に至るまで、資料作成の内容の明らかな誤りということについてしっかりと想定して指示をすべきであったということで、本当に申しわけないと思っております。
○階委員 やはりその指示が中途半端だったからこういうことが起きていると思いますよ。
その指示の具体的な中身、それから、それをどのように職員の人たちは受けとめていたのか、また、今回、撤回して、こっちが正しい資料だというのが出されていますけれども、その新しい方が正しいのかどうか、このことも検証していきたいと思っております。
引き続きこの問題については取り上げていきたいと思いますので、そのための時間の確保をお願い申し上げまして、質疑を終わります。
ありがとうございました。
○葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。
次に、井出庸生君。
○井出委員 まず、官房長に私からも伺いますが、私が改めて御説明を求めたいのは、階委員から資料の作成の要求があったとき、理事会、理事懇に参加をされていたのであれば、やはり平成二十三年の補正予算なのか一般予算なのかというところは、極めて階委員の関心事であったと思うんですね。
一連の説明を聞いておりますと、例えて言えば、私が誰かに、いろいろな人が参加するから名札をつくってくれと。それを、指示を受けた人間が、名札をつくるのに、人の名前を、自分の記憶をもとに、またさらに、事務方に打たせる。一番、これを間違ったらどうしようもないじゃないか、そういう部分だと思うんですよ。
それは、理事会に出ていらっしゃったのであれば、当然そこは、後段の三役の名前も明らかなんですが、一番そこはチェックしていただくべきところだったと思うんですが、どうして階さんの要求趣旨というものを頭から記憶で処理するような、そういう、どうしようもないとしか言いようがないんですが、ことになったのか、ちょっと改めて説明をお願いいたします。
○川原政府参考人 お答えをいたします。
ただいまの御指摘でありますが、階先生が、この件に関しまして、水戸の法務総合庁舎の建てかえが震災による被災をきっかけに行われたものであるかという問題意識をお持ちで、私どもにいろいろお尋ねになっていることは十分承知しておりました。
その問題意識につきましては、私自身が認識をいたしますとともに、本件資料の作成は官房の施設課でございますが、その施設課の職員も共有していると認識をしておりましたので、先ほども御答弁したところでございますが、そういった認識を前提に、作成担当部署である施設課においてチェックした上で、政務三役のお名前等、客観的な事実でございますので、チェックした上で作成しているものであり誤りがないものと軽信してしまったという次第でございます。
○井出委員 階委員のペーパー要求の趣旨、その際の指示、その際の趣旨の説明が、法務省のどの方と、面談で行われたのかとか、電話で行われたのかとか、私は詳細は聞いてはおりませんが、官房長は、理事会、理事懇にお出になっているわけですね。それは、毎国会ごとに、委員長のもと、与党、野党の理事がいて、法務行政に係る法務委員会だから法務省の方の陪席があってもしかるべきではないかということで、定期的に委員の中で決議をして、決めて、その上で陪席をしていただいているわけですね。
今回は、その理事会、理事懇に出ている人が、施設課の人は電話とかで仮にもし事務的に階さんの指示を受け取ったとしても、やはりそこの最後の確認者は官房長でなければいけないと思いますし、理事会、理事懇に出席をしているということは、国会への説明責任の正確性を期す上で一番重要なところだと思うんですね。
そこのところの御自覚がどれほどあるのか、改めて伺いたいと思います。
○川原政府参考人 お答えいたします。
井出委員御指摘のとおり、理事会、理事懇に官房長として陪席をさせていただきまして、その責任は極めて重大であるということは従前から自覚をしていたところでありますが、今回の問題もありますので、改めて深く自覚をしているところでございます。
○井出委員 官房長が国会対応の責任者的役割であるということは、法務省のみならず、どこの役所もそうであろうかと思いますが、それは、政府内、政府側のやり方というか、政府側の方針である。理事会、理事懇は、政府側が、官房長が国会の対応の責任者ということで、どこの委員会も理事会、理事懇での陪席を官房長にしてもらっていると思うんですが、そのお役目を果たせないようであれば、本当にもう理事会、理事懇は別の方に来ていただく。
実際、細かな法案のときに例えば民事局長がずっと座っていたケースも、それはこちら側の求めに応じてあるわけですし、あそこに座っていただくということは、あくまでも法務委員会の議事を円滑に進めていく、それも正確な政府とのやりとりに基づいた法務委員会を運営していく、そのためにあそこに法務省の方に来ていただいているわけですから、そのことを強く自覚をしていただきたいというふうに思います。
あと、それともう一つ、大臣にお尋ねをしたいんですが、先ほど、今回の問題が、法務委員会の審議の一週間ですか、おくれという話がございました。それも大変重要な問題であろうかと思いますが、本来であれば、やはりこういう問題がなくて、法務省におかれては、大臣以下、法案審議のみならず、与党それから野党からさまざまこの場で問題提起のある、最近の私でいえば性犯罪でございますが、そうした法務委員会の議論について省内全体で検討する、いろいろなことを調べたりする、対応する、そういうことに時間を使っていただきたいですし、それから、国会対応以外の本当にたくさんのお仕事もあろうかと思いますが、今回のことは、法案の審議のスケジュールということのみならず、法務省の業務全体にも大きな支障を与えたのではないか。その点についての見解を伺っておきたいと思います。
○山下国務大臣 今般のことについて、御指摘のとおり、この問題の原因そして再発防止について、一定の時間をかけさせていただいたことは事実でございます。その時点だけを捉えれば、確かに、その分、業務に影響があったということは、そういった御指摘もあり得るだろうと思います。
しかし、私としては、今般、こういった二重のチェック体制、二重、三重のチェック体制ができていなかったということに改めて気づかされた。そして、それを守る重要性について、全局、部の局長級を招集して、改めて指示して、励行するように厳しく叱責したということで、これをきっかけに全庁がそれを意識して、そして、こういったことのないようにという意識のもとでやることによって、その影響を取り戻してまいりたいというふうに考えております。
○井出委員 今回は、私どものお願いで、こうして委員会の場で、再発防止、その原因の究明ということをお願いいたしました。
正確な資料を国会に出していただくということはそれだけ大変重たいことでございますし、今申し上げた業務への支障もございますので、またこうしたことでここで議論することが二度とないようにしていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。
○葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○葉梨委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官内藤浩文君、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省矯正局長名執雅子君、法務省保護局長今福章二君、法務省訟務局長舘内比佐志君、法務省入国管理局長佐々木聖子君、財務省主計局次長神田眞人君、厚生労働省大臣官房審議官田中誠二君、厚生労働省大臣官房審議官田畑一雄君及び厚生労働省大臣官房審議官諏訪園健司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○葉梨委員長 次に、お諮りいたします。
本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志君、人事局長堀田眞哉君、経理局長笠井之彦君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○葉梨委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。
○石原(宏)委員 おはようございます。自由民主党の石原宏高です。
本日は、裁判所職員定数法の一部を改正する法律案に関し質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。
私は、議員歴がことしに入り十年を超えましたけれども、法務委員会は、自民党の国対で一時的になったことはあったんですけれども、本格的な審議に所属したのは昨年の臨時国会以降です。ある意味、法務行政の素人ですが、素人は素人の視点で質問をさせていただきたいと思います。
本当にシンプルな質問で、最高裁にお聞きしたいんですけれども、今回の法案の中で、判事の数を、定員を二千八十五名から二千百二十五名に四十名ふやしますけれども、その理由についてお聞かせください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
今回、判事の増員を四十お願いしているところでございますけれども、まず、事件動向それから事件処理状況について検討した上で、民事訴訟事件の複雑化ですとか、家事事件の増加、複雑化、また新たな事件類型への対応ということで、事件処理にたけた判事の増員が一定数必要だというふうに考えたものでございます。
また、今後の判事定員についての充員の見込みといったことも考慮をさせていただいているというところでございます。
○石原(宏)委員 昨年の同法案の審議の議事録を読んでいる中で、当時、無所属の会の黒岩委員の発言で、私のちょっと資料の一枚目に黄色線で載せていただいたんですけれども、こういうくだりがあります。結局は、判事補が判事になれないことを防ぐために判事の定員をふやしていくような員数合わせを、ともすれば、機械的に、算術的に定員の増の数字が決まっている、このようなうがった見方もされちゃうわけですよねという発言があります。
ただ、法務行政の素人の私からすると、そういう見方があって何か問題があるのかなというような思いがするんです。
私の資料の三枚目、これは衆議院の調査局の法務調査室の資料に書いてあるんですけれども、その十五ページにこういうくだりがあります。通常、十年間判事補として研さんした者については、特段の問題がなければ判事に任命されるというふうに記載があります。私は素人ですから、真面目に努力してきた判事補が十一年目に判事に昇格することは何の問題もないんじゃないかなというふうに思うんです。
そこで、質問をいたします。
私の資料の四枚目、これも衆議院の調査室の資料ですけれども、その抜粋で、司法修習終了者数及びその後の任官状況等という資料があります。十一年目に判事補の方が判事になられるというさっきの記述から考えると、実際に平成三十一年度に判事となられるのは、この資料の平成二十一年に判事補になられた、これは二つの数がありますけれども、何か試験のタイプが違うということで、七名と九十九名なんですけれども、この百六名の方が中心になられると思うんですけれども、この百六名のうち、平成三十一年に判事になられる人数は何人か教えてください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
平成三十一年度に新たに判事に任命される者の多くが平成二十一年度に判事補に採用された六十二期の判事補であることは、委員の御指摘のとおりでございます。
六十二期の判事補は、委員の資料にもございましたとおり、合わせまして百六名でございましたところ、行政官庁での外部経験等に伴いまして、ことしの一月十六日時点で裁判所に勤務しております者は八十六名となっております。この日以降にまた行政官庁との出入り等も想定されますので、一定の増減というのはあるかと思いますけれども、六十二期判事補のうち、おおむね八十六名前後が平成三十一年度中に所定の手続を経て判事に任命されることが見込まれております。
○石原(宏)委員 そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、私の資料の五枚目、資料五というところなんですけれども、この上のところに、これは去年の十二月一日現在の定員と実際の数というのが、判事の数が載っています。
今回四十名ふやすんですけれども、前の定員は二千八十五名なんですが、昨年の十二月一日現在の判事の人数は、実際いた人数は千九百七十二名なんですね。ですから、ここに欠員という、百十三名欠員なんです。今度、平成三十一年に、平成二十一年に入られた、判事に八十六名がなられるわけですから、実は、百十三名、要するに欠員があるんだから、定員をふやさなくてもいいんじゃないかなと思うところがあるんです。
ただ、もしかすると、平成二十一年の前に判事補になられた方もなるかもしれないので、また、平成三十一年度中に退官される判事もいらっしゃると思うので、そういうことで計算をされてこの四十人の定員増というのは決まっていると思うんですけれども、もし、こういう数字になってこういうふうに四十を、数字を置いたんですよという計算式があったら、それをちょっと教えてほしいんです。
○村田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
平成三十一年度中は、六十二期の判事補以外でも、既に判事補の身分から行政官庁等に外部経験ということで勤務を始めている者が判事になって戻ってくる、裁判所に復帰するという者も相当数いることが見込まれますし、また、判事の身分で出向して判事で戻ってくるというような者もございます。
ただ、これがそれぞれの期でどれぐらいの人数がいるかというところにつきましては、異動に左右されるところ、あるいは外部経験先の方の御都合等でいろいろ動くこともございますので、なかなか、何期の者が何人戻ってくるというところの見通しをお答えするのは難しいというのは御理解をいただきたいと思います。
その上で、四十の根拠でございますけれども、充員見込みというところから御説明をいたしますと、プラスの方は、先ほど御指摘のありましたとおり、八十六の六十二期の判事補プラス、今申し上げたような外部経験先から戻ってくる者ということで、八十六プラスアルファというところがふえる方の数字でございます。
他方、減る方の数字でございますけれども、平成三十二年一月までに定年退官を迎える判事の見込み数は十五名程度というふうに思っておりまして、さらに、このほかに、年によって人数にばらつきがあって予測が難しいところもございますけれども、依願退官、願いによりまして退官する判事も一定数おるというところが予想されます。ここ数年ですと、年間二十数名から三十数名というところが多いというところでございます。
このような流動的な事情がございますので、正確な予測は困難だということは御理解いただきたいと思いますけれども、平成三十二年一月時点の判事の現在員は二千七十五名から二千百二十五名の範囲かなというふうに思っておりますので、今回増員いただくところも、おおむね適切に充員するということが可能ではないか。むしろ、逆に申し上げますと、御増員を認めていただいたところで充員をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○石原(宏)委員 ありがとうございました。
次に、判事補から判事になられた場合、先ほど八十六名の方が、平成二十一年の方がなられる予定なんですけれども、年収は平均幾ら上がるんでしょうか。判事補の最終年度の平均の収入と判事の初年度の年収額の平均額を教えていただけますでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
平均的年収という数字は持ち合わせていないところでございますが、地域手当の支給割合を東京都特別区の二〇%とする諸手当を含めた年額で申し上げますと、判事補の最上位の区分であります判事補一号の場合は約九百五十万円、判事の最初の区分であります判事八号は約一千四十万円となります。
○石原(宏)委員 判事補から判事になられると、今だと九百五十万と一千四十万、これは平均ですけれども、九十万円ぐらい給料が上がるということです。
以前、ことしになっての法務委員会の質疑で、弁護士の収入について、法務省が日弁連の協力を得て実施したアンケートの内容を答弁されたと思いますが、私の記憶だと、初年度の年収が五百六十八万円、五年目が一千三百六十万円、そして十五年目が三千八十五万円だったと思うんですが、これで、法務省、正しかったでしょうか。
○小出政府参考人 お答えいたします。
数字につきましては、今委員御指摘のとおりでございます。
若干補足させていただきますと、この調査でございますが、法曹の収入等を把握することを目的といたしまして、法務省が平成二十八年七月に、日本弁護士連合会の協力を得て、登録一年目から十五年目までの全弁護士二万一千人を対象として書面によるアンケート調査を実施いたしまして、全体として三七%の回答を得ておりますが、その調査結果でございます。
御指摘の登録経過年数の弁護士の収入の平均値につきましては、委員御指摘のとおりでございます。
○石原(宏)委員 なぜこの質問をしたかというと、司法修習生のとり合いが厳しいと。昨年の質疑の中でも、大手法律事務所との競争が激しい旨の答弁がありました。私は法務行政の素人ですから、普通のサラリーマンから国会議員になったものですから、本当に頑張っている判事補の方が十一年目に判事に昇格して年収が上がることは、よい人材を確保する上でも必要だと思うんです。もちろん年収だけではありませんけれども、やはりそういう面もあるんではないかというふうに思うんです。
次に、ちょっと似たような、フリンジベネフィット的な観点で質問させていただきたいと思いますけれども、霞が関のいわゆるキャリア官僚の方は、海外のMBAやロースクールに留学する方も多いんだと思うんです。裁判所でも判事補の方がロースクールに留学する方がいると思いますけれども、平均的な十年間の判事補生活の中で何割程度の方がロースクールに留学するのか、教えていただきたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
判事補の外部経験のプログラムの一環といたしまして海外留学の制度を設けておりますところ、毎年三十五名ないし四十名程度が、一年又は二年間、海外のロースクールや裁判所等におきまして各国の司法制度等の研究を行っているところでございます。
ここ十年間の判事補の採用数は平均して約九十人でございますので、毎年、平均いたしますと、約四割の判事補が海外留学しているということになります。
○石原(宏)委員 この人数は法務省から留学する割合と比べて遜色がないのか、法務省にお聞きしたいと思うんですけれども、法務省の入省十年以内のキャリア官僚の方で、何割程度の方がロースクール等に留学するのかを教えてください。
○西山政府参考人 お答えいたします。
法務省では、人事院による在外研究員派遣制度を利用する場合も含めまして、毎年複数名の総合職職員や検事を諸外国の大学院等に派遣しているところでございます。
平成二十一年度から平成三十年度までの十年間で見ますと、各年度とも二十名前後程度の総合職職員等を海外に派遣しておりまして、これは、その十年間における総合職職員等の採用数の約二割に相当するものになります。
○石原(宏)委員 何でこういう質問をするかというと、要するに、法務省よりも裁判官になった方がそういう機会はあるということがわかったと思うんですけれども、だから、それがある意味、裁判官になる動機づけになってくれて、いい人材が入ってほしいという思いでちょっと質問させていただきました。
似たようなことなんですけれども、やはり私の友人で、弁護士で、独立して商業弁護士事務所を開業している友人がいるんですけれども、前いた事務所でアメリカのニューヨークのコロンビア大学のロースクールに留学させてもらって、ニューヨーク州の弁護士資格を取得しました。
裁判所、法務省両方に聞きますけれども、何人程度の方が海外の弁護士資格を取得されているのか、わかれば教えてほしいのと、あと、これはなかなかわからないかもしれませんけれども、海外弁護士資格の取得の状況というのは大手弁護士事務所と比較して遜色がないのかどうか、もしわかれば教えていただきたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 まず、裁判所の方からお答え申し上げます。
海外の弁護士資格を取得している判事補の人数は、裁判所としては把握をしていないところでございます。
なお、海外留学する判事補に対しましては、裁判官としての海外留学をより有意義なものとするため、海外の司法試験の受験勉強よりも裁判所等での実務的な研究が重要であると伝えているところでございまして、司法試験を受験する者は少ないものと認識しているところでございます。
○小出政府参考人 お答えいたします。
企業法務や渉外事案等を取り扱う法律事務所に所属する弁護士におきまして、海外のロースクール等に留学して外国の弁護士資格を取得する例が少なからずあるということは承知しておりますが、その具体的な人数や規模等については、法務省としては把握しておらないところでございます。
○石原(宏)委員 海外の弁護士資格を取っている人数というのは裁判所も法務省も把握していないし、それが、では、大手の法律事務所との比較はできていないわけですけれども、大手の法律事務所はやはりお金を出して留学をさせて資格を取らせているということで、そういうところでもやはり司法修習生の奪い合いのポイントになってくるんじゃないかなと思いますので、私は、先ほど裁判所は、勉強を中心にという話がありましたけれども、資格を取らせるようなこともこれから考えていってもいいのではないかと思います。
残り二分ぐらいになってしまいましたけれども、フリンジベネフィットのプラスのところで何問か聞こうと思ったんですが、あと二分なので、これはちょっと俗的ですが、やはり、偉くなっていったら公用車がついたりするというのも一つのフリンジベネフィットだと思うんですけれども、裁判所で何名程度の方に送り迎えの公用車がつくのか、どの程度の役職になるとつくのか、ちょっと教えていただけますでしょうか。
○笠井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
御指摘の送迎の点でございますけれども、最高裁判所につきましては、最高裁判所長官、最高裁判所判事の十五名と、事務総長、首席調査官各一名を対象としております。
ほかに、司法研修所、裁判所職員総合研修所の所長二名も対象となっております。
下級裁判所につきましては、現在、高等裁判所長官八名、知財高等裁判所所長一名、地方・家庭裁判所所長七十一名を対象としております。
○石原(宏)委員 そうすると、大体百名ぐらいの方が公用車がついているということではないかというふうに思います。
あと一分ですね。一分なので、もうまとめます。
何か損得の話ばかりしているなというふうに感じられる方もいられるのかもしれませんけれども、やはり私は、三権分立の民主主義の日本の中で、司法に魅力がなくなって、よい人材が集まらなくなってしまうことはまずいと思うんです。ですから、よりよい人材を確保するためにも、働きやすい、よりよい環境を用意する必要がある。
ですから、私は、判事補の方が、やはり一生懸命やっている方が判事になって百万円近く給料が上がることもいいことだと思うし、偉くなったら公用車がつくこともいいことだと思うので、まあ、法務行政の素人なので、ちょっと俗っぽい、サラリーマン的な観点から質問させていただきました。
これで質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○葉梨委員長 以上で石原宏高君の質疑は終了いたしました。
次に、浜地雅一君。
○浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。
今回の裁判所定員法の判事の増員の理由の一つに家事事件での増加ということがございましたので、きょうは、その家事事件の一つの特徴でございます成年後見制度について議論をしたいというふうに思っております。
御案内のとおり、二十八年の五月に成年後見制度の利用促進に関する法律が議員立法で成立をしたわけでございまして、この議員立法の成立に関しましては我が党も尽力をしたというふうに自負をさせていただいております。
その法律の成立後、平成二十九年の三月に、促進会議において基本計画案をつくりまして、閣議決定をされました。そこでは、いわゆるこの成年後見制度、これからどんどん認知症の方々がふえてまいります、二〇二五年には約七百万人の方が認知症に陥るというふうに言われている中、今後、この計画のポイントとしては、これまで財産管理が成年後見制度の主な仕事であったけれども、これからは、被成年後見人の意思決定、また身の上の保護も重視した適切な運用を行いたいこと、そして、地域の連携を、ネットワークをつくって協議会や中核機関を整備をして、これまでの法律の専門家であります弁護士や司法書士以外の民間団体や医療福祉団体、当然家庭裁判所も入ってまいりますが、地域でしっかりとこの成年後見制度を育てていこうという取組がなされていると承知をしております。
その中で、一つ、不正の防止の徹底もしなければならないということで、最近ニュースを見ておりますと、専門職の、いわゆる成年後見の財産をしっかりと預かっている中で、流用したりとか横領したりということがかなり報道されるわけでございますが、そこで、いわゆる成年後見制度における不正の現在の状況と、どのような取組を現在されておるのか。これは最高裁判所になりますか、ぜひ御答弁いただきたいと思います。
○手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
成年後見人による不正事案の状況につきましては、平成二十六年までは不正事案の報告件数は増加傾向にございましたけれども、平成二十七年以降、不正事案の報告件数、被害総額とも年々減少しております。
具体的に申し上げますと、平成三十年一月から十二月までの一年間に、成年後見人等の不正について対応を終えたとして全国の家庭裁判所から最高裁判所が報告を受けました件数は二百五十件、被害総額は約十一億三千万円であり、不正事案一件当たりの平均被害額は約四百六十五万円となっております。ピーク時であります平成二十六年と比べますと、不正件数は約七割減少いたしまして、不正総額としては約八割減少しております。
不正件数、被害総額のいずれにつきましても、親族などの専門的知見を有しない後見人による不正が全体の九割以上を占めておりまして、その原因としましては、後見人としての責任や義務に関する理解不足、知識不足といった点があるのではないか等と考えております。
○浜地委員 今報告いただきましたけれども、平成二十六年から比べると、不正件数は七割減り、そして被害額も八割減っているということですが、結構、報道に接していますと、かなりふえているんじゃないかというようなイメージがございましたけれども、しっかり減っているということもPRをしていただきたいと思っております。
ただ、そこで、先ほど御答弁の中でありましたとおり、専門職以外の人がいわゆる不正事案にかかわっている事例が九割あるということです。ですので、報道されているように、弁護士や司法書士の専門家が不正事案にかかわっている割合は少ないわけでございます。
しかし、そういう中、ちょっときょう、新聞記事で大変申しわけないんですが、三月十九日の朝日新聞の一面に、最高裁が、今後の成年後見人の選任についてはいわゆる専門職ではない親族が望ましいということを協議会の場で表明をしまして、既に一月に各家庭裁判所に通知をしたという報道がございました。
資料をいただきたいと言いましたが、資料はございませんということでしたので、新聞をそのまま読ませていただいたわけでございますが、それであれば、逆に専門職の不正事案は減っている、逆に親族等の専門職以外の方のこの割合というのが高い中、なぜこのような、親族が望ましいということを通知をしたのか。
特に現在は、協議会や中核機関の中で、市民後見人も含めて、親族以外の方で、かつ専門職以外の方を育てていこうというような取組が今行われている最中であるのに、最高裁が親族中心に選びなさいというような通知をしてしまうと、私自身は中核機関やまた地域の連携の協議会の場で非常に影響が強いんじゃないかと思っていますが、この通知についてどのような経緯で出てきたのか、御答弁いただきたいと思います。
○手嶋最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づきまして平成二十九年三月に閣議決定されました成年後見制度利用促進基本計画におきましては、成年後見制度において、後見人による財産管理の側面のみを重視するのではなく、身上監護や本人の意思決定支援の側面も重視し、利用者がメリットを実感できる制度、運用とするべく、家庭裁判所が後見等を開始する場合には、本人の生活状況等を踏まえ、本人の利益保護のために最も適切な後見人を選任することができるようにするための方策を検討することとされております。
この基本計画の趣旨を踏まえまして、最高裁判所といたしましては、成年後見制度の重要な担い手である弁護士、司法書士及び社会福祉士が所属する各専門職団体と、基本計画を踏まえた後見人の選任のあり方につきまして議論を行ってまいりました。
その結果、専門職団体との間で、本人の利益保護の観点から、事務処理上の課題の専門性、それから候補者の能力や適性、不正防止の必要性等も十分勘案しました上で、後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合にはこれらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましいこと、そして、親族後見人の支援等を担う中核機関の機能がいまだ不十分な場合におきましては専門職による親族後見人の支援を検討することなどの基本的な考え方について認識の共有に至りました。
そこで、平成三十一年一月に各家庭裁判所に対しまして、今後の運用の参考としていただくために、そのような趣旨で、最高裁判所と専門職団体との議論の状況について情報提供を行ったというところでございます。
基本計画における指摘や最高裁判所と専門職団体との間で共有された基本的な考え方も踏まえまして、各家庭裁判所において後見人の選任のあり方について更に検討が進められた上で各裁判官が判断をしていくというふうに認識をしておりますが、委員御指摘の市民後見人の活用との関係につきましては、基本計画で市民後見人の活用につながるような取組が求められておりますこと、十分認識をしております。
成年後見制度の利用者には後見人となるにふさわしい親族がいらっしゃらない方もいるというところでございまして、今後、成年後見制度の重要な担い手として、市民後見人の育成が進んでいくものというふうに認識をしております。家庭裁判所としましても、その適切な活用を図る必要があるというふうに考えているところでございます。
ただ、その前提といたしまして、市民後見人を各家庭裁判所において活用してまいりますためには、各地に設置される中核機関において市民後見人を支援する体制が整備され、各家庭裁判所に対しまして、各事案において成年後見人となるのにふさわしい市民の方を候補者として推薦していただくといった連携が必要になってくるというふうに考えております。また、市民後見人を育成する地方自治体等から、市民後見人の研修状況、支援体制についても家庭裁判所に情報提供していただくなどの連携も重要になってくるというふうに認識をしております。
いずれにしましても、最高裁判所としましても、各家裁と地方自治体等の関係団体との連携が円滑に進められるように必要な支援をしてまいりたいと考えておりますし、その旨、各家庭裁判所にも伝えたいと思っております。
○浜地委員 ありがとうございます。
丁寧にお答えいただいて、最高裁の思いというものは認識したところでございます。
先ほど御答弁の中で、成年後見人にふさわしい親族がいるかどうか、そして、実際に最終的に決定するのは実際の審判の場で裁判官の各自の判断だとおっしゃいました。これは当然のことで、裁判官の独立ということもありますし、当然のことだと思っています。
先ほども御答弁の中で出てきた中で、中核機関とか連携機関の中でしっかりやってほしいというのが、多分、にじみ出ていたと思います。現状ではなかなかこの中核機関や協議会というのが進んでいないというのも一つ理由になっているのかなというふうに思っておりますが、ただ、実際、やはり親族だけとなると非常に難しい面もございますので、やはり私は、市民後見人のもともとの理念の取組を促進することが大事だろうと思っています。
そこで、この基本計画を主に統括をしています厚生労働省の方としましては、最高裁判所が親族中心だと言ってしまえば、なかなか今後、協議会の場で、市民後見人等を育てていこうというインセンティブはどうしても下がってしまうんじゃないかなという危惧もしているわけでございますが、この最高裁判所の通知によって、厚生労働省として、市民後見人を中心とした第三者後見人の育成についてどういう影響があると考えているのか、御答弁をいただきたいと思います。
○諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。
後見人につきましては、先ほど御答弁がありましたとおり、家庭裁判所が本人の心身の状態や生活、財産状況等のさまざまな事情を考慮して、職権で適切な後見人を選任することとされていることは承知しているところでございます。
厚生労働省としては、そうした中で、事案に応じた適切な後見人の選任が行われるよう、まず、各地域において地域連携ネットワークや中核機関の整備をするための取組を推進しております。こうした地域連携ネットワークや中核機関において、市民後見人を含めた家庭裁判所への適切な後見人候補者の推薦、市民後見人の育成や活用、市民後見人その他の後見人の支援などがしっかりと行われるよう、各地域における体制整備を推進してまいりたいというのが基本的な考え方でございます。
なお、そうした中で、まだ不十分ではないかという御質問がございました。
確かに、地域連携ネットワークや中核機関の取組につきましては、二十九年三月に閣議決定されました成年後見制度利用促進基本計画におきまして初めて位置づけられたものでございます。今、まさに具体的な取組について御検討いただいている自治体が多いものと考えているところでございます。
そうした中、厚生労働省といたしましては、三十一年の予算におきましては、新たに中核機関の立ち上げ支援、市町村職員等に対する国の研修を盛り込みますなど予算の増額を行うとともに、全国会議や市町村セミナーの開催、ニュースレターの発行等を通じて自治体に働きかけを行っていくなどに取り組んでいきたいと考えております。さらなる取組の強化に向けて努力してまいりたい、このように考えております。
○浜地委員 ありがとうございます。
まさに成年後見制度は今後の超高齢化社会における法的なインフラでございますので、いわゆる介護施設云々という、実際にそういった介護をされる現場を支える法的なインフラでございますので、しっかりと三十三年のまずは五年間の計画に向かって頑張っていただきたいと思っております。
最後に、少年鑑別所についてお聞きをしたいと思っています。
ちょっと我が党の中に、まあ、誰と言うとちょっとおかしいんですが、少年鑑別所の稼働状況が非常に少ないんじゃないか、無駄なんじゃないかという指摘をされる方もいらっしゃいます。
実際、私は、少年鑑別所の稼働が少なければ、その分少年事件も減っているのかなという意識で、それは別に悪いことではないと思っておりますけれども、聞くところによりますと、かなり定員に比べて収容されている人数も少ない。
ただ、家庭裁判所内に設置をしなければいけませんので、五十二カ所、そういう部分でいいますと、少年鑑別所は鑑別以外にどういった取組を社会のために行っているのかということを一つ御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。
○名執政府参考人 少年鑑別所におきましては、収容された少年の鑑別、観護処遇を行うほかに、地域社会における非行、犯罪の防止に向けまして、子供に対する心理相談、問題行動のある子供を支援するための支援会議への出席、子供の能力、性格の検査等を行っております。
また、この援助の対象は子供に限らず成人も含んでおり、当事者以外の保護者、家族、学校の先生、支援者等に対しても必要な助言、援助を行っているところでございます。
対象者の相談内容は多岐にわたりますが、個々の相談者等の悩みに真摯に向き合い、関係機関と連携しつつ、少年鑑別所の有する非行、犯罪に関する専門的な知見を活用して、地域の非行、犯罪の防止に貢献する役割を地域で適切に果たしてまいりたいと思います。
○浜地委員 わかりました。
時間になりましたので、終わります。ありがとうございます。
○葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。
次に、山本和嘉子君。
○山本(和)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。
きょうは、裁判所職員定員法の審議ということで、よろしくお願い申し上げます。
毎年、裁判所職員の定員を定める改正案が国会に提出をされております。最近の委員会では、定員について大枠を定めてその範囲で毎年度の定員を定めてはどうかという議論もあったと思います。この点については、中長期の事件動向などの予測が難しいという答弁もありましたけれども、一方で、裁判所の定員が適正なものであるかどうかを毎年チェックすることは、国会の行政監視機能、今回の場合は司法行政ですけれども、その監視機能を果たすという意味で重要なことだろうと私は思っています。
ただ、来年度は何人減らして何人ふやしますということだけに毎年審議の時間を費やすのはどうなのかな、生産性があるのかなというふうにも思います。疑問に思う議論が毎年あるというふうにも聞いておりますが、例えば、今回は判事の枠を四十人増員するということですけれども、単純に申しますと、そうなることは十年前に判事補を採用したときにある程度わかっていたこと、さっきも質問がございましたけれども、ということだと、それを今追認しているということなのかなというふうにも思います。そのことのためだけに形式的な議論をするということだと思うんですけれども、せっかく毎年……(発言する者あり)
○葉梨委員長 ちょっと、静粛に。
続けてください。
○山本(和)委員 せっかく毎年議論するのであれば、人員の増減を追認するだけではなくて、裁判所が目指している方向性や、そのためにことし判事補が何人採用されて、その採用人数は方向性に即しているかということを国民が確認できる場にしていく必要があるのではないかと思います。
例えば、増員する理由として、複雑困難事件の増加や民事訴訟事件の長期化などを判事増員の理由に挙げておられますけれども、それであれば、何人程度の増加を目指しているのか、そのためにことしの判事補採用は何人で、それが目標に足りているのか足りていないかなどを示すことが、裁判所の状況を国民が知って、司法への理解を広げる機会にもなると私は思います。
また、判事補のなり手が弁護士や検事に比べて少ないという指摘も聞きました。そういうなり手や新規採用も含めて、今後の検討というか、どうあるべきか、そのことについてお考えをお聞きしたいと思います。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
判事補の採用に当たりまして、まずは司法に対する需要、すなわち、各種事件数の動向あるいは事件の質の変化、望ましい審理形態のあり方などを総合的に考慮して、全体としてどの程度の人数の裁判官が必要かというのを考えていくことになると思いますので、そういった意味では、委員の御指摘、ごもっともだなというところがございまして、我々としてもそうした検討の努力はしているところでございます。
しかしながら、なかなか将来の事件動向等を正確に予測するというのはそもそも難しいというところがございますのと、それから、社会情勢の変化やこれに伴う事件の質的変化、あるいは、それを前提とした法改正の状況等がございます。
今回増員をお願いしておりますのも、民事事件は数というよりは質的に複雑困難なものがより一層ふえている、しかも、先例の乏しいようなものがふえているといったところがございます。また、家庭裁判所の関係ですと、成年後見の関係の政府の基本計画に沿った対応をしていくと、これは事件の数とは全く別の次元のニーズがあるということになります。さらには、相続法の改正でもって新たな事件類型ができるといったところもございまして、こうした質的な変化といったところは、なかなか試算といった数字の形でお示しすることが難しいという点は御理解を賜りたいというふうに思います。
いずれにしましても、裁判所としては、司法に対する需要をさまざまな形で勘案しながら、裁判官にふさわしい資質、能力を備えた者を新任判事補として採用するという観点から、適正迅速な裁判を実現するために必要な人的体制、これを確保するよう、今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
ここの立法府の場で定員法の改正の是非を判断するということは、裁判所の現状や将来像、そういう課題に対して将来の定員について現在の事件動向やこれから予想される変化ということをいろいろ考える、そういう上では、裁判所の方向をしっかりと明らかにしていただく、そういうこともぜひ検討をお願いしていっていただきたいと思います。
次の質問に移らせていただきます。
入管関係のことなんですけれども、この四月から、特定技能制度による外国人人材の受入れが始まります。二十日にもガイドラインが発表されておりますけれども、政府はこの制度で五年で三十四万人、受入れを予想しています。
今後の日本社会に大きい影響をもたらすであろうと思いますけれども、政府は、こうした外国人材の受入れを、移民政策ではないというふうには言っています。あくまで一時的な労働力として外国人労働力を位置づけたように見えますけれども、毎年数十万人もの外国人が新たに来日して、五年、十年という単位で日本で働くことになります。彼らは決して単なる労働力ではなくて、普通の人間である。家族や子供を国に置いてきて、いずれ日本に呼び寄せたいというふうに考えるのもありかもしれません。日本で結婚して、子供が生まれることもあると思います。日本で生まれた子供たちが日本で教育を受けて、日本語しか知らずに成長するのかもしれません。大切なのは、移民かどうかということではなくて、国として外国人労働を受け入れる以上、そうした人々が送る人生、事象をしっかりと受けとめる制度を整えることだと思います。
政府は、特定技能制度を活用した労働者の受入れとして、日本人と同等以上の報酬をということを建前としています。それは、外国人の人々、本人の権利の保障という点からも、そしてまた外国人労働者の増加によって日本人の賃金が下がってはいけないという国内の労働市場から見ても、それぞれ重要な点であると思います。既に多くの企業で、外国人の低賃金や長時間労働、危険な作業などといった厳しい労働環境が今問題になっています。
技能実習生においても、低賃金で雇われた外国人たちが動員されて問題になりました。私も失踪者の個票の書き写しをやりましたけれども、労働環境から死亡したりけがをしたり、果ては失踪するというケースが多数見られることは、外国人本人にとっても、日本の社会にとっても、非常に不幸なことだというふうにも思います。
こういったことが起こらないように、労働環境全体の管理をしっかり行う必要があると思います。その中でも、まずは金銭的に日本人と同等以上の報酬が支払われるのかどうか、それをしっかりと確認する必要があると思いますが、それはどのようにして確認するつもりなのか。書類審査の確認だけでなくて、実際に支払われているかどうか、聞き取りとか、例えば抜き打ちで調査をするとか、そういうお考えがあるのかどうか、お聞かせいただければと思います。
○佐々木政府参考人 特定技能制度におきましては、特定技能外国人に対する確実かつ適正な報酬の支払いをするため、特定技能雇用契約の基準として、特定技能外国人の報酬を当該外国人の預貯金口座に振り込む方法とするか、又は、口座振り込み以外の方法により報酬の支払いをする場合には、支払い事実を裏づける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることを要するとしています。
その上で、特定技能外国人の受入れ後、受入れ機関は、四半期ごとに、出入国在留管理庁長官に対し報酬の支払い状況に係る届出を行うことが義務づけられており、その際の提出書類として、賃金台帳の写しのほか、支払い方法が口座振り込みの場合は当該振り込みの明細書の提出を求め、振り込み以外の方法による場合は特定技能外国人の給与明細の写し及び報酬支払い証明書の提出を求めることにより、支払われるべき報酬額を確認するのみならず、実際の支払い状況についても確認することとしています。
この届出等によりまして、日本人と同等額以上の報酬が支払われていないと疑われる場合は、出入国在留管理庁において事実関係を調査するとともに、受入れ機関に対し指導助言を行い、必要に応じ報告徴収や立入検査、改善命令等の措置を講ずることとしています。
これらの方策を通じて、特定技能外国人に対する報酬、支払い状況を的確に把握し、また同等報酬基準の実効性の確保に努めてまいります。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
就労外国人が給料をもらうことに関しまして、それぞれの企業の給与体系とかもありまして、その判断というのは結構難しいものかな、同等以上の給料の判断というのはどれを基準にするのかというのは結構難しい話だなというふうには思います。不当なものにならないように、しっかりと受入れ先の調査体制、今おっしゃったこと、しっかり確立をお願いしたいと思います。
外国人の労働者に、今申し上げましたお給料の問題、そのほか何らかの問題が生じたときに、外部に相談できる窓口の整備が重要だと思います。その問題の解決に当たっての支援の充実も必要かなと思います。このための取組内容について伺っていきたいと思います。
全国に約百カ所、多文化共生総合相談ワンストップセンターを設けるということですけれども、我が国に在留する外国人は既に二百六十四万人、働く人も百二十八万人、ことしも、毎年二十万人ふえると言われている在留外国人の多様なニーズに応えるためには、十分な体制と言えるのかどうか。
特に、労働相談は、外国人労働者にとってはよりどころとなると思います。働きに来たものの賃金が支払われないや、不当な賃金で長時間労働させられるとか、パスポートを取り上げられるといった相談も十分対応できるのか。ワンストップも重要ですけれども、労働時間の問題とかも含んで、労基署の体制強化も必要なのではないかと思いますが、そのあたり、いかがでしょうか。
○田中政府参考人 お答えさせていただきます。
本年四月から施行される改正入管法を踏まえて、外国人労働者からの相談体制を十分なものとすることは重要であると考えております。
このため、厚生労働省では、平成三十一年度、相談体制の拡充を図ることといたしております。
具体的には、現在三十四カ所あります、都道府県労働局及び労働基準監督署に設置しております外国人労働者相談コーナーを増設いたしますとともに、対応する言語も六言語から八言語にふやします。また、外国人労働者相談コーナーに来訪できない方への外国人労働者向け相談ダイヤルの対応言語を、同じように六言語から八言語にふやします。
さらに、都道府県労働局及び労働基準監督署の閉庁後や土日の相談に対応しております労働条件相談ほっとライン、これは平日十七時から二十二時、土日は九時から二十一時、対応しておりますけれども、これについても、外国人労働者からの相談に応じられるよう、八言語での対応を行ってまいります。
今後とも、引き続き、外国人労働者からの相談ニーズ等に適切に対応してまいりたいと考えております。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
しっかり、ぜひ対応を進めていっていただきたいと思うんですけれども、先ほども申し上げました、日本人と同等以上の報酬について、適正な労働環境を確保している企業のみがそういう外国人を受け入れられる、そういう考えはあるのかどうかだけちょっと教えていただければと思います。
○佐々木政府参考人 お話しのとおりでありまして、今回、入管法の改正、それに伴います政省令の整備によりまして、特定技能外国人を受け入れる機関の要件、それから雇用内容、雇用の条件等につきまして種々の基準を定めたものでございます。その意味では、きちんとこれまでも入管法関係あるいは労働関係法令の事項を遵守をしていただいている会社に限り、今回の受入れが可能というものでございます。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
この特定技能実習生の制度としては、賃金や手当を含む労働条件や社会保障の適用とか、そして職業訓練とか、そういうことについても日本人と同等の待遇をしないとだめなのかなとも思います。法令違反がもし起こったとしても、外国人労働者の受入れを停止処分するべきだとも思いますし、不合理な格差や差別的な処遇がないかはしっかり見ていっていただきたいと思います。
次に、先日、源馬委員や藤野委員が質問されていましたけれども、在留資格のない長期収容者に対する対応も問題視されています。また、日本で働く人たちが日本に溶け込もうと努力していても、下に見られる、ハラスメントを受けるなど、さまざまな苦悩も報道されています。
そこで、二十九年三月に公表された外国人住民調査報告書によれば、過去五年間に我が国で住む家を探した経験がある人、そのうち、外国人であることを理由に入居を断られた経験がある人は三九・三%、日本人の保証人がないことを理由に入居を断られた経験のある人が四一%、外国人お断りと書かれた物件を見たので諦めた経験がある人は二六・八%であったということです。
また、過去五年に我が国で仕事を探したり働いたりしたことがある人のうち、受けた差別として、外国人であることを理由に就職を断られたと挙げた人が二五・〇%、同じ仕事をしているのに賃金が日本人より低かったが一九・六%、外国人であることを理由に昇進できないという不利益を受けたが一七・一%等々、いろいろ上がってきております。
このように、我が国に在留する外国人が差別的な対応を受ける例は少なくないと思います。
留学生の受入れ三十万人を目標と文科省も言っておりますし、新たな外国人材受入れ制度が開始されて外国人の居住者の増加が見込まれる中、このような外国人が受ける差別的な扱いに対して、どのように取組を進めようとされているのか。特に、アジア系の住民などへの差別意識を扇動する人々もふえていると思います。大量の外国人移民を受け入れた諸外国では、低賃金の労働の多くが外国人によって占められて、外国人排斥の動きも強まった例もあると思います。実態に即した人権啓発施策等をとる必要もあると思いますが、その辺の御見解を、大臣、お願いします。
○山下国務大臣 山本委員御指摘のとおり、外国人に対する偏見、差別をなくすこと、これは極めて重要であります。そして、そのためには、互いの文化や言語、生活習慣等の違いを理解し、尊重するということが、やはり我々、受け入れる日本人側にとっても大事であろうと思います。
このような観点から、法務省としては、啓発ビデオや啓発冊子等を用いたさまざまな啓発活動に取り組んでおりますとともに、外国語人権相談ダイヤル及び外国人のための人権相談所等の窓口、これを多言語に対応したものを設けておりまして、これにより外国人からの人権相談に適切に対応しているところであり、これらの取組を継続、強化してまいりたいと考えております。
そしてさらに、昨年末に、私と菅官房長官が共同議長を務めております外国人受入れ・共生のための関係閣僚会議において了承された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策におきましては、外国人に対する差別解消を含む共生社会実現のための受入れ環境整備、これが必要であるということで、例えば、外国人が抱える職業生活上、日常生活上、社会生活上の問題点を的確に把握し、外国人材の受入れ環境整備に関する施策、企画の立案に資するよう、外国人に対する基礎調査を実施するなどの取組を行っていくこととしておりまして、法務省においては、現在、外国人に対するこういった基礎調査の内容及び実施方法について検討を行っておりまして、今後、この調査、これをしっかりと実施して、その結果を活用し、関係省庁と連絡しつつ、外国人に対する差別や偏見を解消するための施策の企画立案を進めてまいる所存でございます。
外国人が不当な差別を受けることなく、我が国において安全、安心に暮らしていけるよう、こうしたことが、我が国において多文化共生社会を実現することとなると考えております。こうした取組を迅速かつ着実に進めてまいりたいと考えております。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
今大臣がおっしゃった多文化共生という観点からも、文化や慣習、それが異なる外国人が共生するという中で、職場や地域でいろいろな摩擦も起きる可能性もあると思います。外国の方々が社会に溶け込めるように、しっかりとそういうきめ細やかな対策を考えていっていただきたいと思います。
それでは、次の質問に入らせていただきますけれども、犯罪被害者に対する制度について聞いていきたいと思います。さまざまな犯罪や、特に、殺人や強盗、傷害、重篤な犯罪における被害者とその家族の方々への救済措置について伺っていきたいと思います。
犯罪被害者がその被害の代償として受け取る損害賠償は、犯罪そのものを裁く裁判とは別に、被害者やその家族が加害者に対して損害賠償請求の民事訴訟を行うことによって争われて、勝訴した場合はその権利を得ることになると思います。
被害者やその家族は、犯罪被害に遭っただけでなくて、自分たちの力で民事訴訟を起こし、裁判を争わなければならない。その上、仮にこの裁判に勝って損害賠償が認められたとしても、多くの場合、加害者には支払い能力がなくて、実際は賠償が行われないケースも多いと言われています。
また、加害者は、例えば暴力団関係者などであれば、損害賠償請求を行うことで二次的な問題が発生するというおそれもあると思います。こうしたことから、損害賠償請求そのものを行わない被害者やその家族も多いというふうに伺っています。
損害賠償命令制度によって、民事裁判での被害者側の立証の負担は軽減されたとは言えましても、被害者救済が確実になったわけではないと思います。また、犯罪被害者給付制度は被害者救済の重要な支援制度になっていますけれども、それだけで被害者や家族の生活の安心が保障されるわけではないと思います。
こうしたことから、犯罪被害者やその家族を支援する方策について伺っていきたいと思います。
今回、今国会に提出予定の民事執行法の一部を改正する法律案では、損害賠償の実効性を向上させる仕組みがあるというふうにも聞いております。その内容を、損害賠償命令の執行にもたらす効果はどのようなものがあるか、教えていただければと思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
今国会に提出しております民事執行法等の改正法案は、債務者の財産状況の調査に関する制度の実効性の向上をその目的の一つとしております。
具体的には、財産開示手続の申立て権者の範囲を拡大し、債務者が手続に違背した場合の罰則を強化するとともに、債務者以外の第三者から、債務者の有する不動産、預貯金債権等に関する情報、さらには、生命身体の侵害による損害賠償請求権の債権者や養育費等の債権者につきましては、債務者の勤務先に関する情報を取得する手続を新設することとしております。
この改正によりまして、勝訴判決等を得た債権者は、債務者の財産を把握しやすくなり、強制執行が容易になるものと考えております。
一般に、犯罪被害者の方の中には、突然犯罪に巻き込まれて、あらかじめ加害者との接点がなく、その財産状況を知ることができない方がおられると考えられますことから、この改正は、犯罪被害者の方の権利実現の実効性の向上に資するものと考えられます。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
損害賠償そのものがやりやすいというか実行しやすいものになるのかなとは思いますけれども、民事訴訟等で損害賠償が認められても、加害者に支払い能力がなくて実行が伴わない、それはずっと言われていることであると思います。
被害者団体からは、被害者遺族に加害者が支払う損害賠償を国が代行して、その後、国が加害者から回収する代執行制度の導入も求められていると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
○西山政府参考人 委員御指摘の制度は、犯罪加害者が犯罪被害者に対して負う損害賠償債務について国が立てかえ払いを行い、その立てかえ分を国が犯罪加害者に求償するものである、このように承知をいたしております。
この制度につきましては、平成十七年十二月に閣議決定されました犯罪被害者等基本計画において、今後講じていく施策として、損害賠償債務の国による立てかえ払い及び求償等の是非に関する検討、これが盛り込まれたことを受けまして、法務省も参加した政府の経済的支援に関する検討会でも議論がなされたところでございます。
その上で、同検討会の最終取りまとめにおいて、犯罪加害者には資力がなく、犯罪被害者等が事実上損害賠償を受けられない実情に鑑み、犯罪被害給付制度が創設されたものであり、実質的な面から見ても、求償権行使については実効性の担保が期待できず、給付制度と異ならないから、結局、この問題については、給付制度の検討に帰着するものと考えられる、このようにされたところでございます。
もっとも、その後も、犯罪被害者等に対する経済的支援のあり方につきましては、法務省も参加し、絶えず議論が続けられているところでございまして、今後とも、御指摘のような制度を含め、どのような制度が適切であるか、関係省庁や有識者との議論を重ねてまいりたい、このように考えてございます。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
今後どんな議論がされていくのかも、しっかりまた見ていきたいと思います。
重篤な犯罪による被害では、後遺症を負ったり、一家の大黒柱を失って生活に困窮するケースもあると思います。ドイツやイギリスで行われている生活困窮被害者や遺族への年金支給、医療支援制度の導入を求める団体もあります。そうした制度の検討について、諸外国を参考にして、そういう制度の検討についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
○葉梨委員長 これはどなたが答えますか。
通告はされているんですか。(山本(和)委員「しています」と呼ぶ)
ちょっととめてください。
〔速記中止〕
○葉梨委員長 速記を起こして。
西山審議官。
○西山政府参考人 申しわけございません。
諸外国の制度も含めての検討はまだこれからということでございますので、よろしくお願いします。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
ぜひ、そういうことも含めて、検討していっていただきたいと思います。
次に、被害者支援について更に聞いていきますけれども、警察庁の調査では、自治体の犯罪被害者支援の総合窓口の存在を知らなかった人が八割以上あるというふうに聞いております。裁判所や警察、自治体など、さまざまな被害者支援制度の紹介や普及を進めていくためには、警察庁としてどのような対策をとっていかれるのか、教えていただければと思います。
○内藤政府参考人 警察では、刑事手続の概要はもとより、犯罪被害者等のための制度や犯罪被害者等支援に係る関係機関や団体等の連絡先等を記載したパンフレット、被害者の手引を作成し、これを活用するなどして、犯罪被害者等のための制度等の情報提供に努めているところでございます。
警察庁といたしましては、犯罪被害者等にとって必要な情報提供が適切に行われるよう、引き続き都道府県警察を指導してまいりたいと考えているところでございます。
○山本(和)委員 ありがとうございます。
性被害とかDVであったり児童虐待、かなりデリケートでプライバシーの問題があることについては、そういうことも守りつつ、相談窓口の方も体系を整えていって、周知を努めていっていただきたいと思います。
続きまして、現在、精神的に傷ついた被害者の保険診療が認められているということでございます。しかし、遺族については金銭的支援の対象外で、被害者本人についても最長三年に限定されているということです。また、精神的ケアに関する専門家のいる相談機関の整備もまだまだ不十分な状況であるというふうに言われています。
今後、これら精神的ケアに関する支援の拡充を図るべきだと思いますけれども、どのように警察庁、考えておられますでしょうか。
○内藤政府参考人 警察庁では、平成二十三年三月に閣議決定されました第二次犯罪被害者等基本計画等に基づき設置されました犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会の報告書における提言等を踏まえまして、犯罪被害者等がみずから選んだ精神科医、臨床心理士等を受診した際のカウンセリング費用、これは診療料又はカウンセリング料でございますけれども、これを公費で負担する制度の全国展開を図り、平成三十年七月に四十七都道府県の全てにおいて同制度が整備されたところでございます。
この制度は、犯罪被害者本人やその御遺族はもとより、必要に応じて犯罪被害者の兄弟姉妹等の関係者についても対象としているところでございます。
警察庁といたしましては、犯罪被害者等の精神的被害の回復に資する同制度の適切な運用について、引き続き都道府県警察を指導してまいりたいと考えているところでございます。
○山本(和)委員 ありがとうございました。
時間になりましたので、終わります。
○葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。
次に、山尾志桜里君。
○山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。
まず、定員法のことについて質問をします。
この定員法ですけれども、専門的な事件に対応させるためとか裁判の迅速のためという立法趣旨とこの増員の因果関係については、本当にここにきちっとした因果関係はあるんですかと、るる、毎年指摘があるところです。
私もその問題意識は持っておりますが、私としては、もう一つ、訟務検事の問題ですね。裁判官だった人が国の側に立って検事をやる、訟務検事をやる、そして場合によってはまた裁判官に戻っていくという、この制度がなくならないということであります。
裁判の迅速とかいうことで定員をふやすのであれば、まずこの訟務検事という問題のある派遣の制度、実質的な派遣の制度を速やかにやめる方向できちっと動いていただきたい、まずこういう趣旨で質問をしてまいります。
皆さんのお手元に今資料を配付していただいております。裁判官出身の訟務検事の数の推移と割合の推移の表であります。
まず最初に基本的なところを山下大臣にお伺いしますけれども、これは民主党政権のときに、やはりこういう内閣と司法のゆがみを正していこうということで、刑事裁判ではこういった判検交流をやめて、この訟務分野でも縮小していこうという方針が出て、それは政権がかわっても、上川大臣のときも確認しましたけれども、維持されているということですけれども、改めて山下大臣から、まずこの基本的な縮小方針の維持、あるいは私は更に一歩進んでやめるということであればよりいい答弁だと思いますが、今の方針をお聞かせください。
○山下国務大臣 縮小方針についてお尋ねがありました。
まず、前提として、法曹間の人材交流について申し上げますと、法曹は、法という客観的な規律に従って活動するものでございまして、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場においても、その立場に応じて職責を全うするというものであると考えております。
法曹間の人材交流につきましては、それ自体が直ちに裁判の公正中立性を害するものでなく、むしろ、これを適切に運用することは、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識経験を備えた法曹を育成、確保するため意義があると同時に、やはり国の機関でそういった訟務検事として裁判官としての経験を御提供いただくということは一定の意義があるものと考えています。
しかしながら、訟務検事というものは、国側の指定代理人として当事者的な立場になります。裁判官の配置先として余り多くなるのは問題であるとの御指摘、これは従前からいただいていたところでございまして、政府として、訟務検事に占める裁判官出身者の割合を次第に少なくするとの方針について、必要な見直しを行ってきたところでございます。そうした方針については変更はございません。
○山尾委員 縮小していくという方針は維持するということでありました。
でも、裁判の公正といっても、あわせてやはり国民から見た裁判の公正らしさというのも非常に大事なことだと思うんですね。例えば、集団公害訴訟なんかをやったときに、やはり、裁判官の顔を見て、あの人、この前は訟務検事をやっていた人じゃないのとか、訟務検事の顔を見て、あの人、これまで裁判官だった人じゃないのとか、実際、集団公害訴訟で、同一の事件だったらもちろん除斥ということがあるんですけれども、同種の事件であれば、これは制度として必ず、そういった同じ人が裁判官をやったり検事をやったりしているという状況を、制度としてきちっと排除する仕組みがないんですね。
そういうことを考えると、縮小というのは、しっかり縮小して最終的にはゼロにしてほしいと思うんですけれども、皆様のお手元に、まず、資料を改めてごらんください。
これは、訟務検事の数が左にあって、そのうち裁判官出身の訟務検事というのがこれだけありますと。その中でも、国の指定代理人として活動する者、つまり、そういった国の代理人として裁判をやる人ですね、こういう人がこの人数あって、訟務検事数に占める割合はこうですよと。
まず一点、事務方でも結構です、お伺いをいたします。
国の指定代理人として活動する者に入らない裁判官出身者の訟務検事、例えば平成三十年でいくと、五十二人が裁判官出身者であります、そのうち四十二人が国の指定代理人として活動する訟務検事でありますというふうになっているんですけれども、この差の十名についても、少なくとも去年までは、場合によっては応援という形で国の代理人として活動する場合もあるというのが去年の答弁でした。この直近一年も、その、応援としては入ることがありますという運用は、改まったんでしょうか、改まっていないんでしょうか。
○舘内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の点でございますけれども、国の利害に関係のある争訟につきまして、量的にも質的にも複雑困難化しているなどの状況のもとで、各訟務検事の知識経験などを踏まえまして、適材適所の観点から事件を担当することが必要であり、御指摘の国の指定代理人活動をする者でない訟務検事につきましても、個別事案に応じて、例外的、ごく例外的ではありますが、指定代理人となって活動するということがあり得たところでございます。
もっとも、この例外的な取扱いにつきましては、国の利害に関係のある争訟において国の代理人として活動する検察官の数に占める裁判官の職にあった者の数の割合を次第に少なくするという先ほどの御指摘の政府方針、これに反しない程度においてごくわずかに行ってきたものでありますが、もとより恒常化しないよう努めてきたものであります。
昨年四月の法務委員会での委員からの御指摘もいただいたところでありますが、その上で、適切に対応すべく検討を行い、平成三十年四月以降、このような例外的取扱いは行ってはおりません。
○山尾委員 以後も法務省としてはこういった例外的取扱いは行わないというふうにお聞きしていいんですか。この一年だけでなくてね。
○舘内政府参考人 例外的な取扱いの趣旨等につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、委員の御指摘も踏まえ、適切に対応すべく考えていきたいというふうに思っております。
○山尾委員 何だか最後、残念な感じになるんですけれども、これは何で聞いているかというと、もうそういう取扱いはしませんということであれば、割合を見ていくのには、この一番右の割合を見ていけばいいということなんですね。だけれども、これからも例外的取扱いはあり得るという前提に立つと、見るべき割合は、この指定代理人として活動する訟務検事の割合ではなくて、裁判官出身者の訟務検事の割合の全体における比率で見るべきことになるから、見るべき数字が変わるので、今聞いているわけです。なので、ここはちょっともう一回しっかりして、私もどっちの数字を見ていいかわからないので。
いずれにしても、今回の表に出てくる割合を見ても、この十年で五七・九から三四・七に減ってはいるんですけれども、例えば、直近三年はもう、およそ一・五%減、次が〇・三%減と、ちょっと、縮小というか微減という感じになります。
私は、やはりちゃんとこれは、少しよく検討していただいて、こんな〇・五%ずつ、一%ずつ減らしていくということではなくて、しっかり法務省の中で改めてやはり検討していただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。
○山下国務大臣 裁判官の構成については、例えば訴訟法など、忌避、除斥などの手続が定められているところであります。しかしながら、委員御指摘のとおり、その裁判官、裁判の公正に対する当事者の疑義ということについては重く受けとめなければならないと考えております。
そうしたことから、昨年四月以降、国の指定人として活動はしていないというような取扱いもさせていただいております。
今後も、委員始め皆様の指摘をしっかりと受けとめて、国民の、裁判の公正に疑義を抱かないような運用に努めてまいりたいと考えております。
○山尾委員 まず、一年間、そういう例外的取扱いをやめたというのは、小さな前進だとは思いますけれども、このペースでいくと、いつなくなるのかなという感じなので、しっかり検討していただきたい。
除斥、忌避、回避というような話もありましたけれども、除斥はやはり同一事件、まさにその事件そのものでないと除斥にならないわけですし、忌避についても、これは当事者が、それこそ集団公害訴訟でたまたまみんなでチェックし合ってわかったときにしか申立てができないわけです。裁判官みずからが回避するということも、これは義務ではありませんので、裁判官自身がどう思うかということにかかってしまいますので、やはりこれは制度として裁判の公正とその公正らしさをしっかり担保していくという方針で、しっかり前に進めていただきたいというふうに思っております。
次に行きます。
少し、やはりこの外国人出管法の関係が、できれば余りこういうほかの閣法のところではやりたくないんですけれども、施行日が迫っておりますので、指摘すべきところは指摘しなければなりません。
まず最初に、きょう、冒頭のところでは、国会提出資料の問題を、質疑をやっていただきましたけれども、実はもう一つ、この国会提出資料の問題としては、皆さん、覚えていらっしゃるか、入管法改正案の策定前に人数等がメディアに漏れた、そしてそれを官房長が責任を持って原因解明する、報告する、こういうお話がございましたが、これが報告を受けておりませんので、まずこの件、調査、分析、どうなったんでしょうか。
○山下国務大臣 これにつきましては、特定のテレビ局での報道に端を発した業種別受入れ見込み数等に関する報道について、これは当時の法務大臣官房長をトップとする調査チームにおきまして、こうした報道が当省職員によるものではないかという観点から調査を実施いたしました。
調査の中身について若干申し上げさせていただきますと、調査対象は、新しい外国人材の受入れに関する立案、決裁にかかわり、これを知り得る立場にある職員約六十名でございまして、その職員の職務内容や具体的な職務状況と本件報道がなされた時期周辺における報道機関との接触事実の有無等について、聞き取りによる調査、確認を実施いたしました。
その結果、当省職員が報道のもととなった情報を漏出した事実の特定に至らず、本件報道に至った具体的な経緯は判明しなかったものでございます。
○山尾委員 私もこの前聞いて、そういう報告を受けました。
結局、原因がわからなかったということなんですけれども、この点も、やはり国会にまず提出をして、しっかりとした審議をすべき前提が先にメディアに漏れていくということは、根っこが共通にある問題だと思いますので、しっかり指摘をしたいと思いますし、こうやって、もう去年の時点できちっと解明してくださいと言ったら、私が例えば質問するからということで、できているんですかと報告を求める前に、ちゃんと報告を理事懇等で、していただきたいと思います、法務省みずから。
次に行きますけれども、皆さんのお手元の、今度、受入れ機関、外国人の関係ですね、あるいは登録支援機関、この満たすべき基準や要件について聞きます。
それぞれ一ページ目と二ページ目、同種の文言に黄色いラインを引きました。一年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者等を発生していないこと、あるいは、過去一年間に責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させている者はだめ、同趣旨だというふうに思います。
これは政務官にお伺いをいたします。
政務官のもとのプロジェクトチームで、結局、行方不明を生み出す原因の究明、個々の行方不明案件についてもできる限り精査をして問題点を洗い出すということをやっているんだと思いますけれども、これは何年から何年の分をチェックされているんですか。
○門山大臣政務官 お答えいたします。
失踪事案の調査につきましては、これは失踪事案に関して、まず平成二十九年及び三十年一月から九月までの間に聴取票が作成された失踪技能実習生約五千二百人について、受入れ機関側の不正行為の有無などを調査しているものでございます。
そして、調査対象である四千二百以上の受入れ機関について、雇用契約書の確認などの基礎調査や電話等による事実確認や関係資料の送付要請、さらには、必要に応じた現地調査などを進めて、その調査作業についてはほぼ完了しておりまして、今、取りまとめに向けた調査結果の集計、分析作業を行っているところでございます。
また、死亡事案についても、これは二十四年以降の技能実習生の死亡事案について、死亡事故報告書や死体検案書などを精査して、実習との関連性の有無や、関係機関による対応状況などもあわせて調査しております。
○山尾委員 そうしますと、そのプロジェクトチームで、今の時期を聞きますと、この直近一年間で責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させている者かどうか、団体かどうかということをプロジェクトチームで検証していると。
では、この結果をこの基準等に当てはめて、しっかり、はねるものははねていかなきゃいけないわけですけれども、その連結体制というか、それはどういうふうになっているんですか。つまり、プロジェクトチームの結果を、ちゃんとその基準の該当性判断に、法務省の内部で連結させていく必要がありますよね。
○佐々木政府参考人 実際の審査方法になりますけれども、今回のプロジェクトチームでの調査において、ある機関でこういう問題があったということは私どもの記録に全部入りますので、もし仮にその会社から新たな外国人材を受け入れたいという申請があったときには、その審査の過程で、過去のこの事例でこういう問題があったということは、当然ながらつながります。
○山尾委員 じゃ、ちょっとその先、政務官に伺います。
そうすると、そういうファクトについてはきちっと法務省内で共有をすると。では、その原因が、責めに帰すべき事由かどうかという判断が必要になるわけですね、この物差しを使うときには。
そこで、お伺いをいたします。
契約賃金以下の賃金しかもらえていなかったという理由で行方不明になった場合には、そういった働いている方と、あるいは機関側と、どちらの責めに帰すべき事由になるんですか。
○門山大臣政務官 これは機関側の責任ということになると考えております。
○山尾委員 最低賃金以下の場合は、どちらの責任になるんですか。
○門山大臣政務官 当然のことながら、機関側の責任でございます。
○山尾委員 そうしますと、三ページを見ていただきたいんですけれども、皆さんのお手元の資料の三枚目ですね。これも私、こだわっておりますけれども、このペーパーが、今、現時点で法務省がまだ訂正をしていないものとして、ある意味、世の中に出回ってしまっている法務省の資料であります、評価も含まれた。
改めて見ていただくと、失踪の原因のところ、契約賃金以下、最低賃金以下、これは今の政務官の説明だと、行方不明になった実習生の責ではない、機関側の責任だというふうにおっしゃったわけですけれども、この紙ではそうなっておりませんね。
この紙では、こういった契約賃金以下、最低賃金以下については、実習生が不満を持ち、より高い賃金を求めて失踪するというふうに評価しているわけです。一方、そういった受入れ側の不適正な取扱い、帰責だという2は、これは当たり前ですけれども、労働時間が長い、暴力、帰国の強制というふうに例示されているということなんです。
政務官にお伺いしますけれども、当然、今のそのチームのもとでも、この「失踪技能実習生の現状」なる法務省のペーパーについての記載の修正、改め、これも検討されていると思いますが、今の問題意識を踏まえて、この失踪原因の書きぶり、どういうふうに訂正されるんですか。
○門山大臣政務官 お尋ねの資料の部分のうち、聴取票による聴取結果の集計を記載した部分、ここは、今問題にしていただいているところでございますけれども、これはあくまで集計結果をそのままお示ししたものでございまして、プロジェクトチームの調査を踏まえて修正すべき性質の記載とは考えておりません。
また、失踪原因のところでお示しした分析結果による記載は、聴取票の内容を含むさまざまな情報に基づく総合的判断をお示ししたものと理解しておりますので、この記載についても、現時点でここの記載を変えるということは考えておりませんが、しっかりとした調査をしたものは別に出します。
○山尾委員 ここできちっと言っていただいて終わると思ったんですけれども、ちょっと指摘だけさせていただきますよ。まだ取りまとめ途中なんでしょうから、ちゃんとやってもらいたい。
まず、下の赤括弧の部分は、聴取結果をそのまま記載したと言いますけれども、これは今までの、ずっと、理事懇、理事会、与党の皆さんの認識も含めて、この聴取結果そのものの手続にもいろいろな問題があるから、それをプロジェクトチームでも今検討中で、それ自体が本当に事実かどうかもわからないものだからとさんざん言ってきたものを、聴取票の結果をそのまま書いただけなので変えるつもりはないというのは、これはないんじゃないですか。おかしいでしょう。
上の赤括弧のところですけれども、これはもう、だって、契約賃金以下、最低賃金以下については機関の側の帰責性があると今政務官おっしゃったわけなので、それと明らかに整合しないペーパーを世の中に流しておいたままでいたら、法務省、余りにも無責任じゃありませんか、これは。
ちょっと、時間は過ぎていますけれども、もし大臣、何か一言あれば、いかがですか。
○葉梨委員長 山下大臣、簡潔に、ちゃんと整理して言って。
○山下国務大臣 まず、今、プロジェクトチームにおいてしっかり調査を続けております。その結果において、また改めて報告をさせていただきたいと考えております。
○葉梨委員長 山尾君、次回、しっかり整理してやってもらいましょう。
○山尾委員 大変問題があると思いますけれども、時間が終わりですので、また改めて、続けます。
○葉梨委員長 以上で山尾志桜里君の質疑は終了いたしました。
次に、階猛君。
○階委員 国民民主党の階猛です。
失踪技能実習生の今の話については、私も強く異論がありますので、大臣におかれましては、リーダーシップを発揮して、しかるべく対応をお願いします。
その上で、きょうは、定員法に関する質問をしていきたいと思っております。
最近の東京家裁前の殺人事件、これはちょうど、三月二十日、私どもが理事懇に入った三時二十分ごろの事件だというんですね。白昼堂々と、堂々とかどうかは知りませんけれども、でも、東京家裁の前ですよ、そこで殺人事件、しかも事件の当事者の間で起きている。とんでもないことだと思っています。
裁判所として警備面等で反省すべき点はないのかどうか、最高裁、お答えください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
三月二十日午後三時過ぎ、委員御指摘のとおり、東京家庭裁判所におきまして、家事調停事件の当事者が刃物で刺され、病院に搬送された後に死亡するという事件が発生いたしました。
多くの国民の方が来庁される裁判所におきましてこのような重大な事件が生じたということは極めて深刻な事態であるというふうに受けとめておりまして、亡くなられた被害者の方、またその御遺族の方には心よりお悔やみを申し上げたいというふうに思います。
東京家庭裁判所におきましては、入庁時に所持品検査を実施していたところではございますけれども、今回の事件の発生状況や経緯につきましては、警察による捜査が進められているところでございまして、裁判所としては、警察の捜査に引き続き可能な協力をするとともに、事実関係の把握に努めまして、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
反省すべき点があるかないかというところでございますけれども、裁判所内の安全の確保は極めて重要なことであると認識しております。
現段階では、事実関係が十分把握できておりませんので、警備面等での不備の有無、こういったことについては十分にお答えができないというところでございまして、今後、事実関係の把握に努めまして、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
○階委員 これは重大な問題だと思いますよ。法の支配を貫徹するべき裁判所で、力の支配のようなことが行われるということはあってはならないと思います。これは、徹底的に事実を明らかにした上で、この場で反省と再発防止のための見解をしっかり述べてください。これも後日、取り上げます。
ここから本題に関連する質問に移っていきます。
ところで、私の資料の二ページ目をごらんになってください。今回の法案で裁判官以外の職員の定数についても見直しがされていまして、一番右のところに、技能労務職員の定員の推移、そして欠員などについても書かせていただいております。書かせていただいておりますというか、これは最高裁からいただいた資料なんです。
平成二十一年度から平成三十年度までの推移と、あと、今回の法案で、更にここから定員が五十人、一番右の技能労務職員が減るわけですね。そうしますと、私の計算では、トータルで技能労務職員の定員は六百八十三人も減少します。この中には、今取り上げた警備の業務に従事する職員も含まれるわけですね。
私がそこでお聞きしたいのは、六百八十三人減少したうち、警備業務に従事する者の減少数は幾らなのか。そして、仮にこの減少分について幾ばくかを外注によって補ったのであれば、その数字も教えていただきたいと思います。さらに、加えて、今申し上げた二つの数字について、全国の数字だけでなくて、東京地家裁の所管の数字も教えてください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
委員御指摘の技能労務職員のうち、警備業務に従事する者としては守衛がこれに当たるということになりますが、守衛の平成二十一年から今回の法改正に至るまでの減少数につきましては、申しわけございませんが、集計等の準備が間に合いませんでしたので、平成二十九年から平成三十年度にかけて減少した数、これをこの場ではお答えさせていただきます。
全国で十六人の守衛が減少しておりますが、東京地裁管内及び東京家裁管内は、いずれも減少はございませんでした。
なお、技能労務職員の定員の削減に当たりましては、裁判所の事務に支障がないように、定年等による退職に際しまして、外注化による合理化等が可能かを判断して、問題が発生していないことを確認しているところでございまして、守衛についても同様に、警備体制を含めた裁判事務に支障がないことを確認した上で削減をしております。
さらに、守衛の削減分を外注化によって賄った場合の数字のお尋ねでございます。
これが必ずしも、守衛が何人減ったからその分がダイレクトに外部委託という直接の対応関係にないところがございまして、外部委託経費の中から守衛の削減分だけを切り出すというのが難しいというところがございます。
ですが、全国の警備業務の外部委託にどのぐらいお金がかかっているかということは申し上げられますので、それを申し上げますと、全国の警備業務の外部委託に係る予算額は、平成三十年度が約十四億円、平成三十一年度はこれが約十五億円となっております。これを東京高地家裁管内の予算額ということで見ますと、平成三十年度の数字ということになりますが、約二・四億円ということになってございます。
○階委員 私もちょっと、この事件、起きたばかりで、急遽御質問通告したので時間がないのはしようがないので、ぜひこれは調べていただいて。
私の問題意識としては、裁判官、特に判事補の方ですね、定員がたくさん余っているにもかかわらず、定員を温存する結果、予算はそれに見合った予算になっている。他方で、技能労務職員、さっき言ったとおり、二十一年から六百八十三人も減らしているわけですね。欠員も五十人ぐらいですよ、足元。分母の数が全く違うのに、こちらの方は定員を減らしに減らして、欠員の数も五十人ぐらいにとどめているわけなんですが、そのしわ寄せが警備の業務に来て、そして、国民の安全に来るようなことがあっては決してならないと思っています。
ですから、さっきのファクトは重要ですので、ぜひ教えてください。
その上で、今もちょっと申し上げましたけれども、現在の判事補の欠員数なんですけれども、また、分母に占める欠員率なんですけれども、一ページ目を見ていただくと、判事については、石原さんが御指摘になっていた点、身分保障は大事だ、私、それもしっかり認識しています。
判事については、事前に、欠員の数が妥当かどうか、少しは減らせるのかなと思いましたけれども、まだ許容範囲だと思っています。
ところで、判事補なんですが、一ページ目で見ますと、平成三十一年一月、直近の数字だと百五十七人となっていますね。二ページ目、さっき言ったとおり、一番右の技能労務職員は欠員五十一人です。ほかのところも見てみますと、事務官等というところは百二十八でちょっと多いんですが、分母が九千六百三十一ということで、判事補の十倍なんですね。だから、単純には比較できない。そして、ほかのところを見ていただくと、二十何人とか、書記官六十八人です。これも分母が判事補の十倍ですよ。
だから、こういうところを考えると、現在の判事補の欠員数は、裁判所関係の他の職種あるいは、その次のページには検察官もつけています、検察官などとも比べて、また、私、総務省で政務官をやっていたときに、他の府省の定員の管理も見ていました。そうした他の府省の職員とも比較して、余りにも多過ぎるのではないかということを感じるわけですけれども、まず、この点について最高裁からお答えいただきたい。
そして、この法案は予算関連法案ですので、財務省の主計局の参考人にもお答えいただきたいと思います。
○村田最高裁判所長官代理者 まず、裁判所の方からお答え申し上げます。
判事補の人数につきましては、八十三人が任官した平成三十一年一月時点で合計七百九十五人でありまして、委員御指摘のとおり、百五十七人の欠員が生じております。これは、裁判所の他の職種と比較して欠員の割合が大きいというのは委員の御指摘のとおりであるというふうに思っております。
判事補の増減に係る要素のうち、判事補の採用数につきまして、ここ十年を見ますと、多いときには百六人、少ないときに六十五人でありまして、毎年の判事補の採用数には幅がございます。また、行政官庁等との出入りにつきましては、受入先の事情によって一定の増減が生じているというところから、充員の正確な見込みを立てることはおのずと限界があるといった事情もございまして、こういった事情から、結果として、欠員の幅が拡大するような事態になるのも正直避けられない面があるということは御理解をいただきたいと思います。
ただ、裁判所といたしましては、定員の充足にはもちろん努めなければいけないと思っておりますし、必要に応じて、引き続き段階的な減員による欠員の是正にも努めて、適正な定員管理に努力してまいりたいというふうに考えております。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
裁判所の判事補、先ほど数字がございましたように、欠員が三十一年一月現在で百五十七人、これは欠員率にいたしますと一六・五%になります。
先ほど、先生が他省庁と比べてとおっしゃいました。国の行政機関全体を見ますと、二十九年度末定員は二十九万七千三十人、これに対し欠員は一万一千六百七十一人でございますので、全体の欠員率は三・九%。したがって、階委員御指摘のとおり、相対的に高い欠員率となってございます。
この要因につきましては、裁判所において審理の促進あるいは家事事件処理の充実強化などに対応するために、判事の不足が想定される中、将来判事となり得る判事補を多く任官すべく定員を確保したいものの、他方、判事補の供給源となる司法修習終了者の人数が減少していることや、法律事務所が大規模化して採用における競合が激しくなっているといった理由から採用が困難になっているのも事実でございまして、こういった採用に当たっての裁判所特有の構造、こういったこともありますので、国の行政機関と一概に比較できるものではないと考えられます。
なお、裁判所におきましては、二十九年度の裁判所定員法の改正に際しての附帯決議等も踏まえまして、その定員充足に努めつつ、段階的な減員等による欠員の是正、あるいは司法研修所教官等を通じ裁判所勤務の魅力等を伝えてもらうなどの取組を講じているものと承知しておりまして、私ども財務省といたしましても、裁判所と調整しつつ、適正な定員管理がなされるよう努めてまいりたいと存じます。
○階委員 今お二方から答弁がありましたけれども、要は、裁判官の需要があるからそのための定員は確保しなくちゃいけないというんですが、財務省から答弁があったとおり、供給的な制約があるわけですね。だから、幾ら定員を確保しても、供給力が追いつかなければ、定員を確保する意味がないんです。物理的に定員を埋められる見込みがないのに定員を確保するのは、意味がわからぬ。そこで、私は問題視しているわけです。
もう一問、財務省に聞きますけれども、今回の予算案、人件費に関する予算案ですけれども、資料の四ページ目です。こうしたもろもろの定員の見直しの結果を反映させると、最終的な差引き合計は約二千八百万円のプラスということになっています。
ただ、先ほども言いました、これは判事補を二十五人減らすということを前提とした数字なわけですけれども、私は、二十五人減らしても、これからるる述べますけれども、全然定員は余りがあると思っておりまして、これでは到底、人件費を抑制したとは言えないと思っております。
二十五人減らすということを前提にしても、なおこの人件費は過大だというふうに考えますけれども、財務省の見解をお願いします。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、判事補の定員措置、これは体制整備の必要性から重要でありますけれども、他方、欠員の状況、先ほど申し上げた附帯決議等も踏まえまして、定員充足に努めつつも、先生おっしゃったとおり、段階的な減員等による欠員の是正に努めていく必要もあると考えております。
私ども財務省といたしましては、定員及び人件費の査定に当たりましては、定員については、段階的ではあるものの、より実態に近づけるべく是正に努めるとともに、人件費についても、定員を基礎としつつも、人件費の使用見込み、欠員の状況や過去の執行実績、つまり不用額でございますが、こういったものを勘案した上で算定しているところでございます。
その結果といたしまして、例えば平成二十九年度の決算においては、判事補が任官される下級裁判所の職員基本給の執行実績といたしましては、歳出予算現額千二百六十六億円に対しまして不用額は四千七百万円と、不用率としては〇・〇四%と抑制してはございます。
ただ、いずれにいたしましても、階委員の御指摘も踏まえ、引き続き適正化に努めてまいりたいと存じます。
○階委員 それで、ちなみになんですけれども、今回、判事補を二十五人削減することによって人件費がどれだけマイナス要因になっているかというのは、この四ページ目の資料でいいますと、3番、「判事及び書記官への振替に伴う経費」ということで、マイナス二億七千七百万。ただ、この中には速記官二人分も入っていますので、ざっくり言って、二十五人で二億五千万ぐらい減っているんだろうなというふうに思うわけです。
これを、二十五人減らすところを、あとプラス二十五人減らせばここは倍になるし、あるいは、私は五十人ぐらいは減らせると思っていますけれども、五十人減らせば五億追加で削減できるわけです。
この五億という数字なんですけれども、その資料の2のところを見ていただきますと、「定員合理化に伴う経費」、この七十人の中には、冒頭申し上げました技能労務職員の五十人も入っていますよ。プラス裁判所の事務員ですか。こうした者を七十人減らすことで、四億二千七百万、人件費を圧縮している。
どっちを圧縮することがより容易か、そして圧縮することに合理性があるか。今回、裁判所の治安が侵される事件もある中で、私は、より容易で合理的な判事補の定員を削減することによって四億二千七百万よりも更に大きな予算の圧縮効果が得られるわけで、そっちをやるべきだと考えております。
財務省、見解をお願いします。
○神田政府参考人 お答え申し上げます。
先生おっしゃるとおり、単価とかさまざまな観点から判事補の方が有効である側面がある一方、他方で、外部委託の可能性を考えますと、そういった判事、判事補以外の方が代替性が高いので、一概には言えないところがあると存じます。
したがって、全体でどこで経費を合理化することが最も適切かというのを、しっかりと御指摘も踏まえながら、更に努めてまいりたいと存じます。
○階委員 それでは、五十人、本当に追加で減らせるのかどうかということを議論したいと思うんですね。
事前に、五ページ目で、来年の一月ぐらいに、今回、二十五人削減した法案が通ったと仮定した上で、来年一月の新任判事補採用後の欠員数はどの程度になるかということを掲げさせていただきましたけれども、改めてここで最高裁の方から、その欠員数の見込みの数字、端的に、結論だけで結構ですから、お答えください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
平成三十二年一月の七十二期司法修習を終了した者からの判事補採用者については、七十五人から九十人程度と見込んでおりまして、その他、弁護士任官や行政官庁等からの復帰による増加は、ゼロから五人程度かなと見ております。
他方、同じ期間の判事補の減少見込み数は、判事任官者八十六人程度に加えまして、その他の退官あるいは行政官庁等での勤務等による減少が五から十人程度というふうに見ておりまして、これらの増減を前提にいたしますと、平成三十二年一月には判事補の人数は七百七十五人から八百人程度の幅となると思っておりますので、判事補二十五人の判事への振りかえを認めていただいた場合の欠員の幅でございますけれども、百二十七人から百五十二人という幅になろうかと思っております。
○階委員 私の手元の資料は、その数字が九十一から百一で事前には出していただいたんですけれども、その後、打合せしまして、どこが大きく変わったかというと、上から二つ目の数字、百二十七となっていますけれども、これはあくまで修習の始まる段階で裁判官になりたいという人の数字なので、実際に採用されるのは、今おっしゃったような、これよりかなり目減りした数字になるわけです。そこも御親切にちゃんと勘案していただいて、最終的な欠員数、今の数字、百二十七から百五十二人、正直に言っていただいたと思いますよ。
この数字なんですけれども、先ほど来問題にしている裁判所の他の職種あるいは他の府省の数字と重ね合わせると、突出して大きいわけです。
さらに、判事補だけで見ますと、資料の一ページ目にあったとおり、判事補についても、任官後の欠員数、A引くBというところをずっと見ていただきたいんですが、つい十年ほど前までは、十八人とか三十三人とか三十七人、そういう水準で回っていたわけですよ。ところが、今お話を聞くと、百五十とか、とんでもない数字が出てきている。しかも、二十五人減らして、なおこの数字ですよ。
先ほど言いました、需要があるのは認めています。ただ、供給力が追いつかないんだから、物理的に欠員がこれだけ生じるのはしようがないことなんです。だから、皆さんを責めるわけでも何でもなくて、私は、供給能力がだめなことが問題だと思っているんです。後でこれは文科省に聞きますけれども、だから、最高裁は現実を直視していただいて、それこそエビデンスベースで、ここは、欠員は実態に合った数字、全く、追加で五十人減らすというのは問題ないと思います。やるべきではないですか。お答えください。
○村田最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。
先ほど答弁させていただきましたとおりの判事補の採用数の見込み、行政官庁との出入りといった変動要素を前提に、来年度の判事補の欠員数の見込みは、今委員の御指摘あったとおり、なお百数十人となる可能性がありまして、この計算につきましては全く委員の御指摘のとおりでございます。
他方、行政官庁等に勤務している判事補相当期の裁判官出身者の数が八十六人、それから、判事補の身分を離れまして弁護士職務経験中の人数が二十四人というところでございまして、これらは、現在判事補の身分は持っていないものの、判事補の身分を持ち得る、持つことができる者が外に相当数出ておる。これらの中には、予定外に早期に裁判所に復帰せざるを得なくなるという者も間々見られるところでございます。これが一つの要因でございます。
もう一つの要因として、これは数字ではないお話にはなるんですけれども、判事補の定員数が大きく減少したという場合に、見え方によっては、採用の余地というものが急激に狭まったかのように捉えられるおそれがあるのではないかというふうに思っておりまして、判事補について採用の努力を続けておるんですけれども、これを志望する、志望してくれる者の数ですとか志望者の意欲といったことに悪影響を及ぼさないかという懸念もあり得るところと思っております。
ですので、判事補の定員数を継続して削減すること、もう既に二十三人、二十五人と削減してきて、またことし二十五人というお願いをしておることでございまして、こういうことの影響も慎重に見きわめる必要があるなと思っている中で、更に判事補定員を大幅に削減するということにつきましては、なお慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
もちろん、平成三十一年度におきまして、事件動向、事件処理状況や平成二十九年の附帯決議の趣旨等を踏まえて検討しておるところでございまして、昨年に引き続き、二十五人の判事補を事件処理にたけた判事に振りかえて、人的体制の強化をお願いしたいというところでございます。
○階委員 全くエビデンスベースではないですね。
出向している人、合計すると百十人ぐらいですか。一遍に戻ってくることなんかあり得ないし、仮に戻ってきたって、その分、補って出すでしょう。何言っているんですか。
あともう一つ、何か理由を言っていましたね。もう一つは何だった。
○村田最高裁判所長官代理者 まず、出向との出入りの関係は、予定外に戻ってくる場合には直ちにかわりの者を送るというのが難しいところがございまして、そこで一定の定員を使うというのがございます。
もう一点申し上げたのは、やはり採用への影響でございます。
○階委員 この話は初めて聞きましたけれども、何で定員が減ることが判事補の採用にはね返ってくるのかわからなくて。それで、判事補から判事に上がる人がたくさんいるんですよ、今。たくさんいて、空き枠はたくさんある中で、何で採用に影響が及ぶのか全くわからない。これもエビデンスはありませんね。全くの臆測で言っている。証拠裁判主義が聞いてあきれますよ。
それで、やはり先ほど来申し上げているとおり、法務大臣に申し上げたいのは、こうしたお手盛りの、裁判官による裁判官のための裁判所の定員を確保するための法案、こんなことを裁判所が勝手に決めてはだめです。国会でこうやって議論する意味は多分にあるし、法務省も、所管の役所として、やはりただすべきはただす、こういう姿勢も大事ではないかと思っております。
法務省の立場は、私、よく存じ上げません、この法案について。ただ、大臣、政治家として、こうした法案について国会で議論する必要性は高いということについてどのようにお考えになるか、お願いします。
○山下国務大臣 まず、こうやって御審議いただいております、裁判所職員の定員を法律で規定することに関しまして、これについては、国家機関の組織に関する事項として法律で定めるべき事項であることに加え、裁判所の行う業務量は、その性質上、事件の質や量といった事件動向により大きく左右されるものであります。
提案理由にもございますように、例えば家庭裁判所、あるいは親子のあり方等について、裁判所の役割、司法の役割というのが増しているという状況にもございます。そうした状況について、例えば事件動向を中長期的に予測し、必要となる人的体制の見通しを立てることも困難であるということも考えられるので、裁判所において、毎年必要な検討がなされ、必要に応じて所要の見直しを行ってきたところであるというふうに考えております。
そうしたことについて、そうした裁判所の人的体制の整備の必要性について、委員御指摘のような充員の状況の観点も含めて、裁判所職員定員法の改正案の審議に際し国会で御審議いただくことにも意義あるものと考えているところでございます。
○階委員 これまで毎年議論してきた中心は、需要動向に即して定員を見直すという観点での議論だったと思うんですね。私が近年問題にしているのは、供給力に応じて定員を見直す、この必要性を毎年言っているわけです。
なぜ供給力が細ってしまったのか、衰えてしまったのか、それについてこれから議論させていただきたいと思います。
まず、判事補の採用に占める予備試験組の比率が近年上昇していますね。これはどういう理由でしょうか。最高裁、お答えください。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
司法試験合格者に占める予備試験合格者の割合は、平成二十四年以降、ふえ続けているものと承知しております。(階委員「なぜというところにだけ、端的に。時間がないので」と呼ぶ)
そういう状況にある中で、新任判事補採用者に占める予備試験合格者の割合もその影響を受けている可能性があると考えておりますが、他方で、判事補の採用数はこのところ平均九十人程度でありまして、その中で、全体の予備試験合格者がふえているものの中の任官者数の変動でございますので、若干数の変動によってもその割合は大きく変動いたしますので、その関係については直ちに、一概には言えないものと考えております。
○階委員 一概には言えないというのは理解しますけれども、ただ、客観的な事実として、司法試験合格者数に占める予備試験合格者数、司法試験に受かった人の割合は直近では一八・八%。ところが、判事補に任官する中で同じ割合を調べますと二六・八%なんですね。裁判官になる人というのは、私も修習を受けましたけれども、修習生の中でも極めて優秀な人が裁判官に採用されている。なりたくてもなれない人、たくさんいます。やはり優秀な人じゃないと裁判官になれない。だから、この数字を見ると、優秀な人は予備試験組に多いんじゃないかなというのが一つ。
それから、合格者の数字もそれを裏づけるような数字が出てきていると思うんですが、十ページ目をごらんになってください。
十ページ目は司法試験の結果ということなんですが、平成三十年、直近の数字ですけれども、最終合格者の中で、法科大学院修了資格で合格した人千百八十九人、予備試験合格者三百三十六人ということなんです。最終合格者は平成二十八年以降千五百人台で、これは政府の決定に基づいて千五百人は維持するということで千五百人台で来ているんですが、そうした中で、二十八年から三十年にかけて、合格者の中で、ロースクール出身者は百五十九人減っています。他方で、予備試験出身者は百一人ふえています。わずか三年の間にこれだけの、合格者の中に占める割合が変化があるわけですね。
法科大学院の集中改革期間、この今申し上げた期間を含んで、平成二十七年から三十年度まで行われています。この期間終了を目前に控えています。なお、ロースクールの志願者が減ったり、入学者が減ったり、これも資料を後でごらんになってください。あるいは、私が指摘したような、レベル低下をにおわせる、推測される、そういうような数字も出てきている。そういうことについてはきちんと総括すべきではないかと思います。
文科省、お願いします。
○中村大臣政務官 お答え申し上げます。
平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定においては、法科大学院集中改革期間の成果について、期間経過後速やかに分析、検討することとされていることを踏まえまして、総括については、この期間は間もなく終わりますので、その後速やかに行ってまいりたいと考えております。
一方、先生御指摘のとおり、法曹志願者の減少は解決すべき喫緊の課題でございまして、そうした課題を早急に是正するために法曹養成制度を再構築することが必要だというふうに認識をしておりまして、今国会に関連法案を提出しているところでございます。
以上です。
○階委員 私、気になることがあって、文科省に一つくぎを刺しておきたいと思います。
七ページ目に、養成会議でしたっけ、その会議体での結論のペーパーから抜粋したものをつけさせていただいております。これは公表されているものです。
第三、法科大学院というところで、平成二十七年度から三十年度までの法科大学院集中期間において、教育の質の向上を図ることにより、修了者のうち相当程度が司法試験に合格できるよう充実した教育が行われることを目指すとなっていますよね。問題はこの米印です。米印のところに、何とかかんとかに留意しつつ、各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率が概ね七割以上、これを数値目標にしている。これは、一つ間違うと、いいかげんなやり方でこの目標が達成したというふうに言われかねないので、くぎを刺しておきたいと思います。
累積合格率七割以上を達成したと言えるためには、基本的には、ロースクールにたくさん入学者が入って、その中でたくさん修了して、たくさん司法試験を受けて、そして予備試験よりも多くの割合が合格する、これが理想的な形なんですけれども、今の動きを見ていますと、ロースクールの入学者がどんどん減ってきていますね。減ってきておって、それに歯どめがかかっていない。
直近の数字、速報値というところで、九ページにつけましたけれども、適性試験がない中で、少し志願者はふえたけれども、合格者数だけで見ますと前年比と比べて三%ぐらいしかふえていないんです。ここから入学する人になると更に減るわけで、昨年の数字とかを参考にして、ここからどれぐらい入学するかというときに、推測しますと、大体やはり千六百七十人とか、そんなもんなんですよ。だから、ほとんど横ばいです。
千六百人しか入らないロースクールで司法試験の合格者千五百人、どうなっているんだろうな、こういう話ですよ。高校全入制じゃないですけれども、もう弁護士全入制の時代が近づいているかのような、とんでもないことになっていると思います。
それで、私が言いたいのは、この七割累積合格率目標、今言ったような、ロースクールの入学者が減り、合格者千五百人が維持され、さらに、予備試験組には厳しい参入条件を課して、要するに予備試験を難しくして、予備試験組が司法試験を受けれなくするようなことによって達成されても、全く意味はないと思いますよ。そういうことをもって七割達成したと誇るということは絶対にあり得ないということだと私は考えますが、その考えでいいのかどうか、お答えください。
○中村大臣政務官 法科大学院の設置目的について考えなければならないというふうに思っております。
法学部は、法的思考と政治学的見識の基礎を身につけた人材の養成など幅広い目的を有している一方で……(階委員「済みません。今の話は更問いなので、通告したこととはちょっとずれていますので、もし御見解がなければいいです、それは」と呼ぶ)
○葉梨委員長 立って発言してください。
○中村大臣政務官 先生おっしゃるとおり、しっかりとプロセスを重視した上で、法曹人材としてふさわしい教育を受けた上で合格していただくことが必要と思います。
以上です。
○階委員 今、法律の改正が検討されていますね。私の資料の後ろから二枚目ぐらいにたしかつけていたと思うんですけれども、この法律は、私は天下の悪法だと思っています。
というのは、法科大学院を中核とするプロセスによる法曹養成と言っていたものが、大学一年から司法試験を目指す勉強を始めて、優秀な人は三年で大学は卒業し、ロースクールに行ける、一年たてば、修了しなくても司法試験を受けれる。これは、予備校教育とどこが違うんでしょうかね。早く試験が受かればいい。まさに皆さんが批判して、そんな教育じゃだめだ、ちゃんと学ぶべきことを学んで、教養も身につけ、そして質の高い法曹を養成するということで法科大学院を鳴り物入りで始めたにもかかわらず、これは法科大学院の自殺行為だと思いますよ。
どうせ四年で受かれるようにするんだったら、法科大学院なんか要りません。法学部の教育を充実させればいいだけですよ。どうせ一年から法曹養成の、司法試験を受けるための勉強をさせるんだったら、四年で学部を卒業したら司法試験を受けれるようにすればいいじゃないですか。おかしいじゃないですか。これは天下の悪法だと思いますよ。どうですか。
もう時間がないので、私はこの場で思いついたことをしゃべっていますので、わからないならわからないでいいですよ。ただ、私は言わせていただきたい。こんな天下の悪法をよく出せるものだ。法曹志願者のためというよりは、法科大学院のためにやっていますよ。
もっと言えば、予備試験になるべく人が行かないようにしたい、こういう目的も透けて見えるわけです。そのために、目立たないように書いていますけれども、予備試験については、論文試験に法律選択科目を入れています。そのかわりに教養試験をなくしたと書いていますけれども、短答式にはちゃっかり教養試験は入っています。要するに、予備試験は負担をふやす、法科大学院組は途中でも試験を受けられる。
そして、もっと言うと、試験に受かった後はちゃんと修了しないと司法修習は受けられないということにして、一応、建前の法科大学院修了資格を受験資格とするということは守っているんだけれども、でも、それをやったおかげで、普通に法科大学院を修了して受けた人、あるいは予備試験を合格して司法試験も受かった人、この人たちは、逆に今よりも司法修習が始まるまでの待機期間が伸びますよ。なぜそんなことをするんですか。まさに、法科大学院のための、法科大学院による法案だと言わざるを得ません。
こんな法案は撤回すべきだと思いますけれども、最後に見解をお伺いします。
○葉梨委員長 質問時間が過ぎていますので、簡潔に。
○中村大臣政務官 法科大学院においては、法学未修者を含む多様な人材を法曹として養成するという基本理念を持っているのに加えて、実務や多様な法分野なども含めて少人数学習を通じて学ぶという、そうした学習の中身に変更はございません。
法科大学院の存在意義は引き続き重要だと考えておりますので、本法案の成立を目指してまいりたいと思いますので、御理解をお願い申し上げます。
○階委員 終わります。
○葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。
次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。
憲法は、三十二条で国民の裁判を受ける権利を保障しております。全国どこにいても、国民は、裁判を受ける権利、十分な司法サービスを受ける権利がある。
最高裁にお聞きしたいんですが、本法案は、その権利を実質的に保障していくために、裁判部門の体制の充実を図るものであります。これは裁判所にとっても最も大きな課題の一つだと思いますが、間違いありませんか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
国民の裁判を受ける権利を背景といたしまして、それを受けて、裁判所の使命が適正迅速な裁判の実現にあるということは委員の御指摘のとおりだというふうに考えておりまして、特にその責務を担っている裁判部門について、それを構成する裁判官、書記官等の職員の人的体制の充実、これは裁判所にとって適切な対応が必要な重要課題の一つだというふうに認識しておりまして、それに基づきまして本法案の御審議をお願いしているところでございます。
○藤野委員 昨年の参議院の法務委員会、二〇一八年四月一日では、裁判所にとって最も大きな課題の一つと答弁されているんですが、これは変わったということですか。
○村田最高裁判所長官代理者 裁判所の予算額のうちの八十数%を人件費が占めているというところからも言えますように、裁判所は人で成り立っている組織でございます。ですので、人的拡充が最も大きな課題であるというのは従前と変わらないところでございます。
○藤野委員 三権分立のもと、司法権の独立、さらに、先ほど申し上げた国民の裁判を受ける権利、それをいずれも実質的に担保していくのは、今おっしゃったように、人である裁判所の皆さんだというふうに思っております。
ところが、実態はどうかということでございます。
最高裁にお聞きしたいんですが、本法案の増員要求の前に概算要求もありまして、増員要求があったと思うんです。その概算要求ベースと、そして本法案と、それぞれ、書記官、事務官、増減はどのようになっていますでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 概算要求時と本法案における増員要求を比べますと、判事、判事補については変更はございません。
書記官につきましては、概算要求時は二十四人の増員を求めておりましたところ、本法案におきましては十五人の増員をお願いしておりますので、概算要求時から九人の減少をしております。
事務官につきましては、概算要求時が三十三人の増員をしておりまして、本法案においては四十四人の増員をお願いしております。増員要求数といたしましては十一人ふえていることにはなりますが、この十一人の増加は概算要求後に障害者雇用の推進のために十四人の増員をお願いしたことによるものでございますので、障害者雇用の推進のための増員分を除く増員要求数となりますと、本法案では三十人ということになりますので、概算要求時に比べますと三人の減少ということになっております。
その他、定員合理化等の七十二人の減員につきましては、概算要求時とは変わっておりません。
○藤野委員 今答弁があったとおり、概算要求時から、判事は変わらないんですが、書記官はマイナス九人、事務官も、形式的に見ますとふえているんですが、それは概算要求後に起きました障害者雇用推進定員十四人が措置されたことによるもので、これを除きますと三人の減という答弁でありました。
最高裁にお聞きしたいんですが、なぜ概算要求の段階から減ったのか。これは最高裁が自主的に減らしたのか。どのような理由なんでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
概算要求の後、財務省と意見交換をさせていただきまして、その中で、政府が国家公務員の定員につきましてこれまで以上に厳しい姿勢で合理化に取り組んでいらっしゃることや、他の行政機関が定員の再配置により業務の増大に対処して増員を抑制している、こういった情報提供をいただいたところでございまして、これを踏まえて、裁判所としても、国家機関の一つとして、現有勢力の有効活用を更に図れるかということで改めて精査をいたしました。
そこで、改めて増員の必要性について検討したところ、今回お願いした増員をお認めいただくことによって、的確な事件処理を図ることができるというふうに裁判所として判断したものでございます。
○藤野委員 これは裁判所が自主的に判断したということなんですか。ちょっと確認させてください。
○村田最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりでございます。
○藤野委員 なぜ、概算要求、これも自主的に出されたものをみずから削ると言うのかということなんですが、それを見ていく上で、ちょっと一つアンケートを御紹介したいんですね。これは、全司法労働組合が家裁調査官に対して行った超勤の実態調査アンケートでございます。昨年三月に行って、二百七十二名から回答があったと伺っております。
自由記載欄がありまして、幾つか紹介したいんですが、これは生の声なんですね。欠員不補充のため頑張ると、結果、減員される。ワーク・ライフ・バランスとは縁遠い職種と感じている。育児時間を取得していると超勤させてもらえないため、結果、持ち帰りとなる。この育児時間に関する声というのは非常に多いのであります。繁忙状況が超勤時間数にあらわれない、超勤にあらわれない負担がある、こういう声であります。出張が多く、移動だけで八時間、子供の調査が入ると二カ月ほぼ毎週。共同調査を要する困難事件も多く、スケジュール調整も難航する。事件数は減少しているが、困難事件も多く、一件にかかる時間がふえているので減員しないでほしい。こういった声であります。
本当に実態がよくわかる調査なんですが、最高裁にお聞きしたいんですけれども、これらはほんの一部なんですけれども、現場の生の声でありますが、こうした声も皆さん踏まえて、概算要求段階では一定の増員要求をされたと思うんです。
ところが、その最高裁自身が、必要な人員として要求した数を何で自主的に削る必要があるのか。これは納得できないんですが、どうしてなんでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 裁判所といたしまして、現場の声も、十分にそれに耳を傾けつつ、人的体制の整備を検討しているところではございます。
その上で概算要求をさせていただいたところではございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、政府におきましては、国家公務員の定員につきまして、これまで以上に厳しい姿勢で合理化に取り組んでいらっしゃる。そして、他の行政機関は定員を御自分の役所の中で再配置をされているということで、先ほど申し上げたとおりでございまして、かなりの努力をしておられるということを踏まえますと、やはり裁判所としても、国家機関の一つとしては、なお一層自助努力を重ねなければいけないというふうに考えたところでございます。
○藤野委員 他の行政機関とおっしゃいますけれども、やはり、裁判所は三権の一つであって、特別だと思うんです。実際、こういう生の声が起きているもとで、国民の裁判を受ける権利、そして司法府としての独立を担保する人的体制をみずから削っていくというのは、やはり私は問題だと思います。
そのもとで何が起きているかというのをもう一つ紹介したいと思うんですね。
裁判所の職場では、九十日以上のいわゆる長期病休者というのがこの間増加をしております。二〇一七年八月末現在で九十二名、昨年三月末で百三十六名、八月末には百四十一名となっておりまして、二〇一七年八月末の九十二名から二〇一八年八月末百四十一名ですから、一年間で五十人近くふえているわけであります。
最高裁にお聞きしたいんですが、この長期病休者のうち、精神疾患による休職発令者数は何名になっているでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
いわゆるメンタルヘルス疾患によりまして病気休職をした裁判官以外の裁判所職員の数字でございますが、平成二十四年度から平成二十九年度までの六年間で見ますと、年度によって波はあるところでございますが、おおむね九十人くらいから百二十人くらいで推移しているところでございます。(藤野委員「正確に言ってください。年度ごとに」と呼ぶ)
平成二十四年が百十一人、二十五年度が八十六人、二十六年度が九十八人、二十七年度が九十四人、二十八年度が九十七人、二十九年度が百二十人でございます。
○藤野委員 おおむねといいますか、この間、二〇一六年から一七年にかけて、九十七人から百二十人と急にふえているんですね。先ほどの長期病休者の推移とも合致するんですが、最高裁にお聞きしたいのは、なぜ短期間にこういうふうに長期病欠、とりわけ精神疾患がふえているのか。その理由は何であって、どのような対策を講じようとされているんでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
裁判所職員の病気休職者のうち、いわゆるメンタルヘルス疾患の職員につきましては、職場環境をめぐる問題だけではなく、自己の健康面での不安や家庭事情等を原因とするものもございまして、その原因はさまざまで、かつ各種の要因が複合していることも多いことから、メンタルヘルス疾患の増減状況の原因分析を直ちに行うことは困難と考えております。
また、裁判所におけるメンタルヘルス対策でございますが、一人一人の職員がみずからメンタルヘルス不調に早期に気づいたり予防できるようなセルフケアと、管理職員が部下職員のメンタルヘルス不調の発生防止や早期発見、早期対策といった適切な配慮を行うラインケア等を行っておりまして、これらを推進するため、セルフケアの知識付与やラインケアの重要性の理解の促進をしておりますほか、カウンセリングやストレスチェック等を行うなど、職員のメンタルヘルス対策に力を入れてきているところでございます。
○藤野委員 理由がさまざまで困難だという認識そのものが、それならいい対策が出てくるはずがないじゃないですか。この間、急増しているわけです、百二十人と、ぽんと。やはり何かがあるはずなんです。
この間でいえば、財務省から毎年査定を受けて、概算要求の水準にすら満たない、自分たちが要求した水準にすら満たない人員で推移してきているわけですね。そのもとで、事件は複雑化、困難化をしている。結局、一人一人の職員の方にかかるプレッシャーやストレスというのが増大している。
それがこうした精神疾患の急増という形であらわれているのではないかということをしっかりやはり、何かさまざまあってわからないとかではなくて、しっかり把握しなければいけないというふうに思うんです。これは、一人一人の労働者にとっても大問題であると同時に、裁判所が求められている役割との関係でも、ないがしろにできない問題だと思います。
結局、最高裁について、改めて聞きたいんですが、こういう長期の病欠や精神疾患がふえるということになれば、自分たちが求められている司法の独立や裁判を受ける権利の土台としての役割が掘り崩されることになる、こういう認識はお持ちなんでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、全ての職員が心身ともに健康で職務に精励できるということが裁判所の使命を適切に果たしていくために必要で重要なことと考えておりまして、そういった考えから職員の健康保持に取り組んできたところでございます。
メンタルヘルス対策も含めて、引き続き職員の健康保持に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
○藤野委員 何か全く形式的答弁で、実際にふえているわけです、こういうデータとかを見ても。それが、何か、取り組んでいる、取り組んでいるというやり方では、そういう急増している状況がなぜなのか、あるいはそれが歯どめをかけられるのかという質問に対して、やっていますということでは極めて問題だというふうに思います。
結局、協力義務のない定員合理化計画に協力してきた、この基本姿勢が変わっていないことが現場のしわ寄せを生んでいて、現場の職員さんにさらなるプレッシャーとストレスを与えることになっているという認識は私は必要だと思うんです。
ですから、協力義務がないわけですから、そこはやはり裁判所として、行政機関がどうこうというんじゃなくて、司法機関なんだから、その立場で人員と体制をやはりしっかりと拡充していく、今、そういうことが求められているというふうに強く言いたいと思います。
次に、各業種ですけれども、家裁調査官についてもお聞きしたいと思うんです。
家裁調査官については、二〇一七年三月二十九日に、当委員会に参考人として全司法労働組合の執行委員長の中矢正晴氏にも来ていただいて、お話をお聞きしました。調査官というのは、やはり、ほかの職種との違いというのは、心理学とか社会学、社会福祉学、そういった人間科学の専門知識を持った専門職種として配置を特別にされているという点でありました。そういうことが強調されておりました。
ところが、家裁調査官は、本法案でも現状維持ですし、二〇〇九年に五名増員されて以来はずっと同じ、現状維持なんですね。これはやはり、現場の実態にももう合わなくなってきている。実際、事件数を見ても、家事審判事件やあるいは家事調停事件、新規受件数は八九年以降ずっと増加をしております。あるいは、成年後見関係事件の新規受件数も高どまりをしているというもとであります。
最高裁にお聞きしたいんですが、こういう状況に加えて、今国会で改正が予定されている、特別養子縁組の上限年齢引上げの法案が今国会にもかかっておりますし、近時、やはり虐待事案の増加の問題というのがあります。親権の問題、さまざまな問題、児童福祉法二十八条事件など、家裁調査官による専門性が求められるような、そういう調査あるいは事案、これはふえているんじゃないですか。いかがですか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
近年、社会及び家族のあり方の急速な変化が見られるところでありまして、これに伴いまして、家事事件及び少年事件のいずれにつきましても、事件の内容が複雑困難化している。したがって、家庭裁判所の紛争解決機能に対する期待はますます高まっているというふうに承知をしております。
今委員御指摘のとおり、立法におきましてもさまざま御指摘のような点について手当てがされているところでございまして、家庭裁判所にそういった複雑困難な事件が今後一定数申し立てられるということは予測されるところでございます。
このような家庭事件の適正迅速な解決を図っていく上で、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の行動科学の専門的知見や技法を有する家庭裁判所調査官が果たす役割、これはますます重要になってくるだろうというふうには認識をしているところでございます。
○藤野委員 そういう認識ならふやしていただきたい。全然ふえていないわけです。十年以上、十年こういう状況で定員がふえないというのは、今の答弁からも矛盾しているというふうに思います。そういう意味では、お認めになったわけだから、本当にこれはかじを切っていただきたいと思うんです。
そういう意味では、今回、家裁調査官が現状維持にとどまっている、増員がないということは厳しく批判したいというふうに思います。
もう一点、地方から中央や大規模庁へのシフトの問題があります。
最高裁に確認したいんですが、二〇一七年から一八年で、各高裁管内で、書記官と事務官はそれぞれ何人増減員されたでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
平成二十九年度から平成三十年度におけます高裁ごとの定員数の増減ですが、まず書記官を申し上げますと、東京は二十六人のプラスでございます、大阪は四人のプラス、名古屋は六人のプラス、広島は増減がございませんでした、福岡は十人のマイナス、仙台は増減はございませんでした、札幌は三人のマイナス、高松は二人のマイナスでございます。
事務官につきましては、東京は五人のプラス、大阪は増減ございませんでした、名古屋は一人のプラス、広島は三人のマイナス、福岡は七人マイナス、仙台は三人マイナス、札幌は五人のマイナス、高松は二人のマイナスということでございます。
○藤野委員 つまり、東京、大阪、名古屋はふえているんですけれども、それ以外のところは減っている。
地方から中央への定員振りかえが続けられております。この結果、裁判所の職員が二名とか三名しかいない、いわゆる二人庁、三人庁と言われるところがふえております。
最高裁にこれも確認したいんですが、二人庁、三人庁の数の推移はどのようになっていますでしょうか。
○村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
二人体制の庁、二人庁でございますけれども、平成二十四年度には十七庁でございましたが、これが平成三十年度には三十五庁にふえております。
三人体制の庁、三人庁につきましては、平成二十四年度には百三庁でございましたが、平成三十年度には八十六庁というふうに推移をしてございます。
○藤野委員 結局、三人庁は減っているんですが、その分、二人庁がふえてしまっているということであります。
ことしについてもさまざまな、やはり東京はふえているんだけれども、東京は四十人増員、これに対して、北海道は五人減、中国では六人減、東北では六人減、九州で十六人減というような組合の調査もあるわけであります。この傾向はやはり続いているということなんですね。
やはり職場の方からは、もともと少ない中で、これがまた地方から減らされていく、これ以上の減員は無理だという声が上がっております。この減員が、先ほど見たような職員の方の精神疾患等にもつながっているわけですね。
最高裁に聞きたいんですが、全国的にやはりあまねく司法サービスを提供するという点から見ても、これ以上の地方の削減と中央へのシフトというのは縮減していくべきじゃないですか。いかがですか。
○村田最高裁判所長官代理者 裁判所の人的体制の整備につきましては、各地の裁判所の業務の量に見合った体制を整える必要があると思っておりまして、裁判所としては、これまで、各地の裁判所における事件数の動向や事件処理状況等に応じた体制整備に努めてきたところでございます。
こうした中、例えば事件が減少傾向となっている庁から増加傾向となっている庁へシフトするといったことも含めまして、各地の裁判所に必要な体制を整備することで、いずれの庁におきましても適切に事件処理が行われているものというふうに認識をしております。
裁判所といたしましては、地方を含めまして、どの地域においても滞りなく事件処理が行われるようにして適正迅速な裁判を実現するとともに、全国的に適切な司法サービスを実現するということが必要であって、その体制の整備に努めているところでございますので、今後とも、各地の事件数の動向等を踏まえまして、的確な事件処理が図られるよう、必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。
○藤野委員 適切な事件処理がされているといいますけれども、その認識はもう根本的に間違っていると思います。本当に今大変な状況で、職員の方が犠牲を払いながらやられているわけで、そのことは国民が受ける司法サービスを掘り崩している、その土台が掘り崩されているという認識がないと、やはりこれは大問題だというふうに思うんですね。
それに加えまして、ちょっともう一点お聞きしたいんですけれども、先ほどもちょっと出ましたけれども、運転手の問題なんです。
これは、裁判官の送迎よりも、今は中心は、家裁の、家庭裁判所の少年事件における少年の押送だとか、民事事件における分量のある記録を持参しての出張尋問だとか、あるいは極秘の移動、あるいは家裁事件のための家庭訪問や鑑別所の訪問、こういう、公共交通機関ではなかなか難しい、あるいは移動が不便な場所の移動手段として大事な役割を果たしております。
これが本当に減らされているもとで、例えば、少年のプライバシーの問題があるのにタクシーを使ってしまうとか、そういうことも起きていたり、あるいは田舎でバスが来なくて一時間以上待つとか、そういうことも起きております。
最高裁にお聞きしたいんですが、やはり職員としての運転手、これも確保する必要があると思うんですね。これはちょっと、もう時間も来ましたので、要求にしておきたいと思いますが。
そういう意味で、こういったこともやはり充実させていくことが国民の裁判を受ける権利、これを実質的に保障していくことになるわけで、その面でも抜本的な拡充に転換することを強く求めて、質問を終わります。
○葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。
次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。
今回の法案は判事が四十人ふえるということなんですが、この中で、憲法を守るということを約束してくれている裁判官というのは何人いるんでしょうか。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
今回増員をお願いしております分の裁判官を含めまして、裁判官はいずれも憲法に従って職責を果たしているものと承知しております。
○串田委員 国民は、そう思っていない人は結構多いんですね。
例えば、私、予算委員会でも質問させていただきましたが、面会権というのがありまして、審判で裁判官は判断するんですが、非常に良好な夫婦の中で、審判は、月に一回二時間、面会時間ですよ、月に一回二時間という裁判官が非常に実は多いんです。この件は、きょう時間が少ないですから、また後日やりますけれども。
裁判官は、憲法九十八条二項によって条約を誠実に遵守しなきゃいけないと、これは九十九条に示されています。そして、子どもの権利条約によると、共同して養育をするという条約を日本は一九九四年に締結しているわけですよ、批准しているわけです。
そうだとした場合、共同で養育をするということを、審判を決定するときにもこれはしんしゃくしていかなきゃいけないんじゃないかと私は思っているんです。九十八条二項に「誠実に遵守する」と書いてあるわけですから。条約と法律は、法律の方が上なんでしょうか。あるいは、勝手に判断していいんでしょうか。
大臣、法律の審判を決定するに当たって、批准をした条約をしんしゃくする必要があるのかどうか、そして、これは面会に関しても十分配慮しなければいけないのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
○山下国務大臣 お答えいたします。
憲法九十八条二項によって、我が国が締結した条約及び確立した国際法規、これらを誠実に遵守する義務というのが記載されております。また、憲法の尊重義務というのも九十九条等に記載されているところでございます。
そういったところで、一般的にはそうではございますが、では、個別の条約においてどのような規範が定立され、あるいは、この条約はどのような義務づけをしておるのかということに関しましては、これは国際法規を所管する外務省にも確認しなければならないところでございますが、一般論として申し上げて、個々の司法権の判断におきましては、そういった一般的な憲法の尊重義務、あるいは、確立された国際法規や締結した条約についてを誠実に遵守しているということで判断されている状況であろうと考えております。
○串田委員 これは、一つ、先ほどずっと試験の問題がありましたが、裁判官の司法試験の中に条約の問題が出ない、司法研修所においても個々の条約の指導がない。ですから、裁判官が、法律とひもづけられた条約の認識が全然ないんだと思います。
ことしの二月に、国連の子どもの権利委員会からの勧告の中に、裁判官はもっと研修を受けさせるべきだと書いてあるわけです。条約締結された場合には、自分が今携わっている法律の解釈も、条約に従って非常に考慮しなきゃいけないという教育あるいは研修をするというのは当たり前だと思うんですよ。何のために九十八条二項があるんですか。条約を遵守しろと書いてあるのに、現場は全くその条約を無視している。これは憲法違反だと私は思いますよ。この件に関しては後日また触れたいと思います。
また、ちょっと別の件なんですけれども、ニュースの中で、裁判官が非常に、そういう意味で、憲法の問題、憲法の体制、特に反天皇制というものをペンネームでずっと書き続けている、あるいは、自衛隊の派遣に関するデモに参加した上に、実名でそこで発言をしているというのが報道されました。
私は、普通の国民であれば、これは自由ですよ。思想、良心の自由、表現の自由。自由だと思うけれども、裁判官は、裁判所法五十二条によって、積極的な政治活動はできないと書いてある。デモに参加して発言をする、あるいは反天皇制をずっと別のペンネームで書き続ける、これは十年間ぐらいやられているという報道がありました。
こういうことがあると、例えばその裁判官は家裁の裁判官らしいんですが、片方は、自分と同じデモに参加した人あるいは共鳴している人、片方はそうでない人という場合には、やはり公平性は守られていないんじゃないかという国民の心配があるから、この裁判所法が決められていると思うんです。
こういうようなことに関して、今、そういうようなチェックをしているのか、どういうふうにこれについては対応されようとしているのか、お聞きしたいと思います。
○堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
委員御指摘の新聞報道の件に関しましては、裁判官の私生活上の自由や思想、表現の自由にも配慮しつつ、慎重に調査をしているところでございます。
現時点では、新聞記事の対象となったと考えられます裁判官からの事情聴取等を行いましたものの、本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして、服務規律違反の事実があったことは確認できていないというところでございます。
○串田委員 はっきりと、いろいろとビデオも残っているでしょうし、そういう否定をされたからといってそのままにするのではなくて、やはりこれは、司法への信頼ということでありますので、どういう考え方であるかは別にしても、積極的な政治活動にやはり参加するということは、裁判官としては適切ではないし、みずからそれを承諾して裁判官の職を選んだ以上は、やはりこれは法律を遵守していただかなければいけないと思うので、これは、やはり厳正な審査あるいは調査というものを続けていただきたいと思います。
もう一つ、これは別の委員からもありました、東京家庭裁判所の事件がありました。これは、今、審議をされているところでありますので、もう全く、この問題であるということとは関係がありません。ただ、私、入管法でも質問しているんです、この件に。そして通告でも、それに近いものを通告しているので、それとは関係ないんだけれども、事情がよく似ているので、ちょっと一般論として質問させていただきたいんです。
アメリカでは、両親にいる子供を片方が連れ去った場合は、これは、拉致だとか誘拐ということで刑事犯罪になるという州が多いですよ。そしてそれは、全世界的にそういう扱い方になっていますね。それで、アメリカの国内で連れ去られた場合には、連れ去った人間は犯罪人として容疑扱いされるから、すぐにそれは国家が守ってくれて、戻すというような体制になっている。
ところが、それがほかの国に連れ去られた場合には、自分の国の法律は適用できないので、ほかの国にも、この考え方というものはみんな納得しているので、みんなで条約を締結しているのがハーグ条約ですよ。日本は戻さないから、このハーグ条約の不履行国として今認定されているというのは御存じのとおりなんです。
問題は、国内にいるアメリカ人と日本人が結婚して子供がいた場合です。この場合に、どういう扱いになるかなんて、事前に勉強もしていませんし、調査もしていません。そんなことが訪れるとは思っていないんです。
突如、自分の奥さんが子供を連れ去った場合は、そのアメリカ人にしてみれば、自国と同じように、同じような扱い方がなされるだろうと思い込んでいるわけですよ。だから、これは国が何とかやってくれるだろうと思って、地方の自治体に相談に行く。ところが、地方の自治体は、日本は御存じのようにそこの点についてはほとんど無関心ですから、何とも返答がない。そこで、その人はどうするかというと、国務省に相談に行きます。そうしたら、国務省は、日本はけしからぬのだ、条約違反なんだということで、不履行国として国としては言っていますよと言う。そして、それでもらちが明かないから、今度は大使館に相談に行っている。大使館も同じような返答がある。
私は、EUの代表部にも行きましたが、EUもやはり怒っていましたね。
私が言いたいのは、こういうようなことが起きているときに、非常に感情的になりやすくなってしまうんですよ。これは、日本人同士以上なんです。日本人の場合には、連れ去りも、そんなのよくあるよねというような、それはひどいけれどもねというぐらいで済むんだけれども、ほかの国からしてみれば犯罪なんですよ。だから、それを国は守ってくれると思い込んでいたのに、守ってくれないという非常な絶望感、そういうようなものが発生しやすいんですよ。
これは、それをそのままにしておくということは、そうされてしまう側だけじゃないんです。女性に対しても大変な危険が伴うんですよ。そういう葛藤を生じるような制度のままにしておくということが、事件を発生させる温床になり得るんです。
そういうような部分に関して、法務大臣、どのようなお考えですか。こういうような葛藤が起き得るというようなことを、私は入管法でも指摘しましたよね。文化が違うから、そこに衝突が発生しますよと説明しましたよね。法務大臣、どうですか。これは、今回の事件とは関係がない、一般論として質問させていただきます。
○山下国務大臣 あくまで一般論でございます。
アメリカにおいては、ペアレンタルキッドナップということで、親による誘拐ということが犯罪化されている法制があるということは、一般的に承知しております。これは、それぞれどのような法規制あるいは強行法規を持つかということは、それぞれの法文化によるところでございますので、そうしたことについてコメントは差し控えますが、我々も、そういった国際基準というものを配意しながら、それに沿うような必要があれば法律を検討していくということで、今般、民事執行法の改正案とともに、ハーグ条約執行法に関しても関連法案を出させていただいているところでございます。結果としてそういったところにもこの改正案が資するのではないかとも思っておりますので、今私が申し上げられるのは以上のようなところでございます。
○串田委員 この件はまた触れたいと思いますが、一点、こういう事件が起きたときに、同じ場所に集合させるということは、私は必要ないんじゃないかと思っています。大変、そういう意味で、こういう高葛藤になり得るような状況のときの感情的な状況というのを、再犯を防ぐためには、同じ場所に集合させる、あるいは、調停にしても何にしても、成立をするときには両当事者に出頭させることが多いんですよ、同じ場所に出頭させるというようなことは、これは考えていかなきゃいけないと思いますので、提案だけさせていただきまして、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。
次に、井出庸生君。
○井出委員 よろしくお願いします。
まず、昨日遅くなんですが、イチロー選手の引退会見を私、テレビで見ておりまして、実は、意外にも、その最後のコメントが、野球から離れたコメントでありました。
記者の方からは、孤独を感じながらプレーした部分があったのかというような問いだったんですが、それに対してイチローさんは、それとは少し違うかもしれない、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから、外国人になったことで人の心をおもんばかったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分があらわれたんですよね。この体験というのは、本を読んだり情報をとることではできたとしても、体験しないと自分の中からは生まれない。孤独を感じて苦しんだことは多々ありました。ありましたけれども、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるだろうと。
こんなようなコメントをされているんですが、要は、御自身がアメリカに行かれて外国人として生活された部分について、会見の最後にそのことをお触れになったんですが、このことは、これからもう間もなく新たな在留資格制度が始まりますが、外国人の受入れを拡大する、その共生施策において一つの示唆を与えてくれているのではないかと思いますが、大臣にコメントをいただきたいと思います。
○山下国務大臣 イチロー選手の我が国及びアメリカにおける長年の活躍に心から敬意を表したいと思います。東大野球部として活躍された井出委員ほどではありませんが、それがどれほど大きなことかということは、私も思うところでございますし、アメリカでイチロー選手から勇気をもらったことも事実でございます。
そして、イチロー選手のコメントにつきましても、私自身もアメリカで生活して、イチロー選手ほどではありませんが、このような、外国人になったことで人の心を思ったり、人の痛み、実際、差別的なことを、そういう取扱いを受けたこともございます。私の子供もそういった差別的な取扱いを受けたこともございます。そうしたことで痛みをおもんばかったり、痛みを想像したりというのは、私も感ずるところがございます。
そして、その一方で、非常に親切にしてくれた外国の方もおられるわけでございます。それがどれほどありがたいことかということも感じておりますので、そういった思いの中で、外国人との多文化共生社会、これをしっかりとやらせていただきたいと思いますし、その思いで、受入れ・共生のための総合的対応策、しっかりと進めたいと考えております。
○井出委員 四月からそういう思いを持ってやっていただきたいと思います。
私は野球部時代は補欠でありましたので、そこは勘違いを、まあ、でも、褒めていただいたのかと受けとめておきます。
もう一つ、勘違いということで、ちょっと早目に、きょう聞いておきたいなということが、累次にわたって聞いている性犯罪のことが一つあります。
大臣と法務省はちょっと私のことを勘違いされているのかなと思うのは、私は強制性交等罪の暴行、脅迫要件をなくせとは言っていないんですよ。あれも、大臣おっしゃるように、客観的に明らかな行為類型だと。それは私もそのとおりだなと思うんです。ただ、じゃ、暴行、脅迫だけが性的自由や性的自己決定権の自由を侵害する客観的行為の全てなのか、それは恐らくそうではないんではないかというのが近年の、特に被害当事者の方のおっしゃっている主張であると思います。
そういう意味では、私が再三申し上げているのは、性的自由といった保護法益を、例えばその趣旨を刑法の条文に明記をして、性犯罪の犯罪性をしっかりと法律で定義をする、そのことで被害者も加害者も国民全体も、性犯罪とはこういうことがいかぬということなんだ、そういうことを認識してもらう。いろいろ実態把握、検討していただく中で、ひとつそういう検討も今後の法制度に資するのではないかな、そういうことをるる申し上げてきているんです。
ですから、きょう、少し誤解も解きつつ、マイルドにお聞きしますが、答弁を御期待申し上げて、お願いいたします。
○山下国務大臣 まず、井出委員の御指摘、これはやはり実態をしっかり把握した上で、性犯罪被害、これを少なくすべきだという点において私も全く同感でございます。その意味において、これも井出委員と全く同じでございますけれども、やはり外延の明確化というのが必要なんだろうというところでございます。
その上で、現在、暴行、脅迫要件、それも抗拒著しく困難なというふうな部分でもなっているわけでございますが、さらに、被害の実態調査、これをしっかりやった上でやらなければならないと考えておるところでございます。
ただ、他方で、規定ぶりについて、保護法益については性的自由又は性的自己決定権と解されているということは承知しておるんですが、これを規定ぶりにどう反映させるかということを考えた場合に、やはり刑法典でございますので、他の構成要件等との並び、規定ぶりの並びということもやはり考えなければならないのだろうというふうに考えております。
そうなると、刑法の各規定においては、例えば窃盗罪なども含め、一般に保護法益を明示しておらず、他の規定ぶりとの関係で問題が生じるということと、保護法益そのものが記載されていないからといって、犯罪の成立要件、これが外延が不明確になるということにはならないのではないかという指摘もあるところでございますので、なお慎重に、国会の議論も見据えながら、また実態調査も踏まえながら、検討してまいりたいと考えております。
○井出委員 性犯罪というのは、殺人とかと違って、やはり内面の部分の議論もありますから、あるがゆえにその保護法益をきちっと検討するということも一つの論点ではないかなと。刑法典、犯罪の行為を書くものだということは何となくわかるんですが、そこは元ミスター議員立法に、その刑法典の壁を乗り越えて、国会での立法に資する検討と実態把握をやっていただきたいと思います。
次に、定員法のことも少し聞かなければいけないので、最高裁にちょっと伺いたいんですが、裁判の合議制を進めようと。一〇%の目標で、半分ぐらいですかね、達成率。それから時短ですね、審理を迅速にしようと。十二カ月の目標で今二十カ月ぐらいだ、そんな議論があると思うんです。
これはいつか言わなきゃいかぬと思っていたんですが、それは両方とも大事なんですけれども、両方を一遍に追求すると、裁判官が忙しくてパンクしちゃうんじゃないかなと。合議でいっぱいかかわらなきゃいけない、さらに時短にしろ、そこの目標設定が果たしてそれでふさわしいのかというところを一つ聞いておきたいのが一点。
それともう一点は、先ほど東京家裁の事件もありましたが、人員のみならず、やはり施設面ですね。私の地元、長野県佐久市も裁判所の支部が、家裁なんですけれども、ありまして、調査官、人がいない。それから建物が、エレベーターがなくてしょぼい。事件数は結構あるんですね、人口変化とかがありまして。ただ、これはうちの問題だけじゃなくて、人がいない、エレベーターがないということは全国的にもあるようでございます。
事件数が佐久市は多いので何とかしてくれと言いたいところなんですが、そこはぐっとこらえて、家裁の事件もございましたし、もちろん、問題意識、施設の整備それから調査官の配置等、問題意識を持ってきていただいているとは思うんですが、今回、定員法で人員の問題それから施設面もしっかりと考えていただきたいと思いますが、その件についてちょっと答弁をいただきたいと思います。
○葉梨委員長 村田総務局長、簡潔にお願いします。
○村田最高裁判所長官代理者 まず、合議率とそれから迅速化の関係でございますけれども、合議率につきましては、今回増員をお願いしております理由の一つが、やはり事件の複雑困難化で、かつ、先例の乏しいような事件がふえているというところからしますと、これは合議で、三人の知恵を合わせてということが必要になってこようかなと思っておりますので、より、その充実に努めたいと考えております。
他方、迅速化の観点からしますと、迅速化に関する法律で定められておりますところの二年という期間を超えております事件の数がまだ一定数ございますので、こういったものを極力少なくできるようにしていかなければいけないというところも課題だと考えておりまして、この二つを調和させながらやって、体制の整備を図って調和させていきたいというふうには考えているところでございます。
その上で、人のみならず、もちろん物的体制の整備ということも必要になりますので、施設面におきましては、最大限バックアップができるように、現場のニーズとして何が必要かということを踏まえながら物的な体制の整備にも努めていきたいと考えております。
○井出委員 時間になりましたので終わりますが、きょう、少し答弁が心もとないと、何かツイッターに少し出ておったのが先ほどちらっと見えましたので、毎年の法案ですが、しっかりとまた答弁と中身含めて、お願いしたいと思います。
では、終わります。
○葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○葉梨委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。
○階委員 国民民主党の階猛です。
私は、国民民主党を代表し、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。
その前に、去る三月二十日、東京家裁建物内で刃物で刺され、お亡くなりになった被害者とその御遺族の皆様に対し、心よりお悔やみを申し上げます。
さて、私は、昨年の法改正の際にも、この場で反対討論を行いました。当時より改善された面もありますけれども、まだまだ不十分な面もあります。
特に、判事補の欠員については、今回、仮に法案が成立したとしても、来年一月時点で何と百二十七人から百五十二人の欠員の見込みがあることを最高裁自身が本日の審議で認めました。これは、裁判所を訪れる人々の安全を守る守衛さんなどを含む技能労働職員を始め、他の裁判所関係の職種の欠員の数や欠員率と比較すると、明らかに多過ぎます。また、過去の判事補自体の欠員数と比較しても、明らかに多過ぎます。
それでもなお大きな欠員を確保する理由として、判事補から出向者が突然戻ってくる場合に備えて多くの椅子を確保する必要があるだとか、定員を減らすと新規採用に支障を来すだとか、苦しい言いわけを最高裁は長々と述べました。しかし、かかる弊害が実際に生じることを示す証拠はありません。法の支配を実効あらしめるための重要な考え方である証拠裁判主義をみずから破っています。
裁判所は法の支配を貫徹するために存在し、その担い手である裁判官には厚い身分保障が施されています。しかしながら、法の支配を実効あらしめるための裁判所の安全を軽視したり、証拠裁判主義を踏みにじってまで裁判官の椅子を守るためにきゅうきゅうとしている最高裁の姿は、怒りを通り越し、情けなく思います。
そして、裁判所がこのような態度をとらざるを得ない最大の理由は、現在の法科大学院を中核とする法曹養成制度が破綻を来し、本来必要な人員数を裁判所が確保したくてもできない状況にあるということにあるわけです。
この状況を直視することなく、文科省からは、法科大学院を守ることを目的とするかのような、天下の悪法とも言うべき法案が今国会で提出され、審議されようとしています。
目指すべきは、法科大学院の入学者をふやして法科大学院を守ることではありません。法曹志願者をふやして、法の支配を守ることです。
三権分立を担う裁判所の健全な発展のためにも、危機的な状況にある法曹養成制度を抜本的に見直し、司法試験を自由に受けられる仕組みを導入して法曹志願者をふやしていくことを御提案申し上げ、私の反対討論を終わります。
以上です。(拍手)
○葉梨委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 私は、日本共産党を代表して、裁判所職員定員法改正案に対し、反対討論を行います。
反対理由の第一は、最高裁が、先ほどの答弁でも裁判所職員の増員は裁判所にとって最も大きな課題の一つと言いながら、本法案では、概算要求段階の増員数から最高裁みずから削減して、障害者雇用促進定員を除けば、十二名の大幅減となっていることであります。このもとで、現場では、長期病休者、精神疾患、これが急増しています。
内閣人事局の主導する定員合理化計画や財務省の査定に屈して、概算要求をみずから抑制し、司法サービスの向上への努力を投げ捨ててしまえば、裁判所の使命である国民の裁判を受ける権利をあまねく保障することなどできません。
第二に、法案には、現場の要求である家裁調査官の増員がないことです。
家裁調査官は、心理学や社会学、社会福祉学といった人間科学の専門知識を持った専門職種です。事件件数を見ても、家事審判、家事調停事件の新規受件件数は一九八九年以降増加し、また、成年後見関係事件の新規受件数も高どまりをしています。これに加えて、虐待事案の増加により、親権制限事件、児童福祉法二十八条事件など、家裁調査官の重要性はこれまで以上に大きくなっています。ところが、二〇〇九年に五人が増員されて以降、ことしも増員はありません。家裁の機能を充実するためにも、家裁調査官を増員すべきです。
第三に、地方から中央、大規模庁への職員のシフトの問題です。
審議の中で、増員が必要になった都市部の人員の手当てのために、地方の裁判所の人員が減らされている実態が明らかになりました。ことしも裁判所職員の抜本的増員がなされないことによって、地方から中央、大規模庁へのシフトが強行されています。地方へのしわ寄せをこれ以上続けるべきではありません。
最後に、三権分立を規定した日本国憲法のもと、司法権を担う裁判所には、独立してその定員や人件費等を定める権限が与えられています。今、最高裁に求められるのは、全国どこでも利用しやすく、国民の期待に応える司法サービスの提供を実現するために、政府に協力せず、予算の拡充とともに、裁判所職員などの人的体制、庁舎、設備などの物的拡充を行うことです。
このことを強く求めて、討論を終わります。
○葉梨委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○葉梨委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○葉梨委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五十分散会