衆議院

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第9号 令和6年4月9日(火曜日)

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令和六年四月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武部  新君

   理事 熊田 裕通君 理事 笹川 博義君

   理事 仁木 博文君 理事 牧原 秀樹君

   理事 道下 大樹君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      高見 康裕君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    中野 英幸君

      永岡 桂子君    平口  洋君

      藤原  崇君    細田 健一君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      山田 美樹君   おおつき紅葉君

      鎌田さゆり君    鈴木 庸介君

      寺田  学君    山田 勝彦君

      阿部 弘樹君  斎藤アレックス君

      美延 映夫君    日下 正喜君

      平林  晃君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         小泉 龍司君

   法務大臣政務官      中野 英幸君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          高橋 宏治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          坂本 三郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     細田 健一君

  三ッ林裕巳君     永岡 桂子君

同日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     三ッ林裕巳君

  細田 健一君     宮澤 博行君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     斎藤 洋明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

武部委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁長官官房審議官野村知司君、こども家庭庁長官官房審議官高橋宏治君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、法務省大臣官房司法法制部長坂本三郎君、法務省民事局長竹内努君及び法務省刑事局長松下裕子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武部委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。永岡桂子君。

永岡委員 おはようございます。自民党の永岡桂子でございます。

 私は、自民党の母子寡婦福祉対策議員連盟の会長をしております。そんな中で、いつも連携をしております全母子協の皆様方、今日は傍聴に来ていらっしゃいます。そして、全母子協の方々は、全国的に今、一人親家庭を支援をしているというところで御活躍をしていらっしゃいます。どうぞ今日はよろしくお願いいたします。

 様々な事情がありまして、配偶者と離別をして、また働きながら子育てをするということは、やはりとても大変なことでございます。一人親家庭は、相対的貧困率、これが四四・五%。ほぼ半分の一人親家庭が貧困に苦しんでいるというところでございます。特に、コロナ禍、そして現在の物価高と、経済的に今苦しい立場に置かれている一人親家庭はたくさんいるということでございます。改めまして、一人親として子供を育てている皆様に心から敬意を表したいと思っております。

 離婚は当然あり得るものとして、そのような状況にあっても子の利益の確保を最優先に対応する、それが今回の法案の趣旨だと考えております。今回の法案が成立した後も、同居親であります一人親家庭の子供たちの利益が守られるよう質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 早速でございますが、子の利益を考えず、自分の権利のみを主張し、子供に会えないならば養育費を払わないという主張がこれまで多く見られました。離婚時に、養育費の支払いという、親としての子供に対する義務をまず果たすべきだと考えております。

 今回の法案では、このような主張がどう変わっていくか、法務大臣に伺います。

小泉国務大臣 養育費の履行確保、これは子供の健やかな成長のために非常に重要な課題であると認識しております。

 そこで、本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無や、更に言えば親子交流の有無にかかわらず、父母は子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと等を親の責務として定めております。

 法務省としては、施行までの間に、こうした点を含め、本改正案の趣旨が正しく社会一般に理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めてまいりたいと思います。

永岡委員 今大臣がお話しいただきましたように、親としての責務を明示したということはやはり大きな進展だと思っております。また、扶養の程度につきましても、自己と同程度の生活を維持することができるようにと、明確に一般の親族間の扶養の程度よりも重くしているということでございます。

 さて、離婚の際に養育費の協議ができなかった場合、今回導入されております法定養育費自体はすばらしい考えだと私も思っておりますが、あくまでも最低限のものと承知をしております。その最低限のものから協議をして養育費を決める段階で、協議への支援はどうなっているのでしょうか。今実施しております法務省、こども家庭庁の支援施策は今後どのように変わるのでしょうか。法務省にありましては、法定養育費の額、考え方も併せてお答えいただければと思います。法務省、こども家庭庁、お願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法務省では、これまでも、養育費の取決めを促進するため、養育費に関する合意書のひな形を記載したパンフレットの配布や、養育費の取決めの重要性を説明した動画の配信など、様々な取組を行っております。

 また、養育費の不払い解消に向けて、複数の自治体と協力して実証的な調査研究を実施したところでありまして、効果のあった施策については横展開できるように、こども家庭庁等と協力、連携をしております。

 また、一人親の方が養育費を請求するために民事法律扶助を利用した場合に償還等免除の要件を緩和するなどの運用改善を図ることとしまして、令和六年四月一日から開始をしております。

 養育費の履行確保のためには、法制度の見直しのみならず、養育費についての相談対応や情報提供等も重要でありまして、引き続き、これらの支援等を担当する関係府省庁としっかりと連携をしてまいりたいと考えております。

 また、法定養育費の額や考え方でございますが、本改正案において新設する法定養育費制度は、父母が養育費の取決めをせずに離婚した場合に、養育費の取決めを補充する趣旨で、父母の生活水準に即した養育費の取決め等がされるまでの当面の間、父母の収入等を考慮せずに離婚時から一定額の養育費を請求することができるというものであります。

 このような法定養育費制度の補充的な性格に鑑みまして、改正法案では、法定養育費の額を子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して法務省令で定める一定額とすることとしております。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 法定養育費の位置づけなどにつきましては、今し方法務省さんの方から御答弁あったとおりでございますけれども、先生御指摘のように、父母の間で養育費の取決めが行われて、それがしっかり履行されていくこと、これはやはり子供の育ちのためにも非常に重要な課題であると認識をしております。

 こども家庭庁におきましては、令和元年度から離婚前後親支援モデル事業というのを展開しておりまして、弁護士などによる個別相談援助などの養育費の履行確保に資する取組を行ったりする自治体を支援してきたところでございます。

 このモデル事業でございますけれども、今年度からは、実施主体、全ての自治体において実施していただけるように、モデル事業という位置づけを変更して普通の支援事業というふうに再編をいたしまして、かつ、一自治体当たりの補助基準額を増額する拡充なども行ったところでございます。

 今回の民法改正法案による法定養育費による養育費の確保などと併せまして、この離婚前後親支援事業の活用を通じまして、養育費の取決めでございますとか履行の確保、こういったものがしっかり進むように、法務省さんなどとも連携しながら引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

永岡委員 ありがとうございます。

 やはり法定養育費は最低限ということで、かなり少ないものになるわけでございます。その最低限の法定養育費から協議をしまして養育費をもらう、これはしっかりと支援があるということをお聞きいたしました。ただ、協議、そして調停、審判、裁判という中で、やはり時間とお金がかかります。そんな中で、養育費の取決め率を向上させるということにおきましても支援を更に拡充していく必要があると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、親子交流の際の子供の安全確保に必要な手続や費用への支援についてお尋ねいたします。裁判所、法務省、こども家庭庁、よろしくお願いいたします。

竹内政府参考人 まず法務省からお答えいたします。

 父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると考えております。また、親子交流の実施に当たりましては、その安全、安心を確保することも重要になってまいります。

 法務省では、これまでも、親子交流に関する合意書のひな形を記載したパンフレットの配布や、親子交流の取決めの方法に関する動画の配信などを行ってきたほか、親子交流支援団体向けの参考指針を作成してホームページ上で公開するなどの取組を行ってきたところでございます。

 親子交流に対する支援の在り方につきましては、関係府省庁等と連携しつつ検討してまいりたいと考えております。

馬渡最高裁判所長官代理者 私の方からは裁判手続についてお答えいたします。

 具体的な調停、審判手続の運営は、個別の事案における調停委員会や裁判官の判断に委ねられているところでございますが、一般論として、親子交流に関する事件につきまして、家庭裁判所では、民法の趣旨を踏まえ、子の利益を最も優先して考慮した運用がされているものと考えております。

 すなわち、子の意思や心情、生活状況、親子の関係に関する事情、DVや虐待の有無といった子の安全に関わる事情など、様々な考慮要素を総合的に考慮して、親子交流を実施するか否かも含め、子の利益を最も優先した親子交流の在り方が検討されておりまして、中でも、DVや虐待といった子の安全に関わる事情につきましては最も優先して考慮されているものと承知しております。

 調停、審判手続におきましては、調停委員において、父母からDVや虐待に関する事情の有無を含む親子交流に関わる様々な事情について丁寧に聴取したり、必要に応じ、家庭裁判所調査官において、父母や子から、親子交流についての意向等のほか、別居親と子との関係性や父母間の関係性に関する事情を丁寧に聴取するとともに、関係機関への調査等も実施したりするなどしておりまして、また、調停成立や審判に先立ちまして、必要に応じて、家庭裁判所調査官立会いの下に親子交流を試行的に実施して、子の安全、安心の面で問題がないかを確認するなどしているものと承知しております。

 このように、家庭裁判所では、子の安全、安心の確保について十分に検討しながら手続が進められているものと認識しているところでございます。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 こども家庭庁におきましては親子交流支援事業というものをやっておりまして、自治体における親子交流支援員の配置など、親子交流の支援を進めていただいているところでございます。

 この親子交流でございますけれども、親の所得にかかわらずやはり重要なものであろうということから、今年度予算におきましては、この事業の対象者の要件につきまして所得要件を撤廃するということを盛り込んだところでありまして、引き続き事業の普及に取り組んでまいりたいと思っております。

 親子交流、これは引き続き進めていくことが望ましいものではありますが、一方で、児童虐待やDV関係などがあってなかなか実現が困難な場合もあるというふうな声をよくお聞きするところであり、そういった場合に、より専門的な支援が必要となることもございます。

 先ほど法務省さんでのお取組についても御紹介がございましたけれども、こういった専門的な支援が必要な場合もありますので、法務省さんなどとも連携しながら、地方自治体が民間の親子交流支援団体あるいは地元の弁護士会などの協力を得ながらこういった親子交流の事業を実施していけるよう、支援してまいりたいと考えております。

永岡委員 ありがとうございます。

 親子交流の支援の伴走というのは現在は一年、そして一回限りと伺っております。当然、答弁にもありましたように、DVや虐待のおそれのある場合は利用できないわけですね。つらい思いをして離婚あるいは別居をした方や子供が第三者の目がないところで会うとなれば、やはり危険が伴うわけです。まずは、裁判所の実務で、安全ではないおそれのある面会は徹底的に排除すべきだと思っております。そのためにも、調査官の研修や調停委員の充実をしっかりと図るようにしていただきたいと思います。その上で、安全な場で親子交流が実現するよう、こども家庭庁は支援の拡充をお願いいたします。

 次に、今回の法案で養育費確保が進んだといたしましても、法定養育費であれば金額が少ないし、親子交流や、各種調停、審判、裁判の手続、また弁護士費用などで時間やお金がかかります。同居親、一人親家庭支援策は引き続きまして継続して実施する必要があると思っております。

 例えば、高等職業訓練促進給付金につきましても、一人親が安定した所得が得られなければ、公費による支援というものは継続すべきだと考えております。この給付金も含めまして、一人親支援についての考えをこども家庭庁にお尋ねいたします。

 また、最後になりますが、今回の法改正に際しまして、法務省が主体的に地方自治体や関係省庁による支援を連携させていかなければならない中で、法務大臣がどのようにリーダーシップを取っていくか、決意をお伺いいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 一人親家庭の親御さんというのは、やはり、仕事などを通じて家計を支えるということと子育てを一人で両立をしなければならないという、非常になかなか難しいといいましょうか、大変な暮らしをしておられるというふうに承知をしております。

 こうした子育てをしながら経済的により自立をしていけるようにしていくということが、政策上、重要な論点であるというふうに考えております。就業支援を柱としつつ、個々の家庭に寄り添ったきめ細かな支援を展開していく必要があるというふうに考えてございます。

 今し方先生から御指摘ございました高等職業訓練促進給付金でございますとか、あるいは自立支援教育訓練給付金でございますけれども、今年度予算におきましては、高等職業訓練促進給付金については対象となる資格の拡大を行い、自立支援教育訓練給付金については、給付率、つまりカバー率を上昇させるといったような拡充を行ったり、あるいは、児童扶養手当の受給と連動した対象者要件、これは児童扶養手当の支給が所得制限を上回るなどして止まった場合にはこの給付金も止まるということだったんですが、それを扶養手当が停止した後も一年間は引き続きこの給付金の対象になり続けることができるといったことなどの拡充を、今年度予算において行ったところでございます。

 今般の改正におきます養育費の確保の強化などと相まって、こうした各種自立支援、就業支援に向けての支援、こうしたものを組み合わせてお届けしていくことによりまして、一人親家庭の生活をしっかりと支援してまいりたいと考えております。

小泉国務大臣 今回の法改正は、子供の利益を確保するためのいわば骨格でございまして、これに肉づけをしていく必要がある、御指摘のとおりだと思います。その肉づけというのが、例えば一人親家庭支援、あるいは共同養育支援、あるいは裁判手続の利便性向上といった個々の措置はありますけれども、委員のおっしゃっているのは、これを連携させることですよね、私もそのとおりだと思います。

 個々に各省庁が頑張りますが、それを司令塔というか総合調整するというか、引っ張る、全体像をいつも見ていく、そういうリーダーシップが法務省には求められていくというふうに思います。

 法務省の努力、プラス関係省庁等との連携協力体制の構築に向けて、具体的に検討して、また実行していきたいと思います。

永岡委員 ありがとうございます。

 一人親の支援の話をするときに、一人で子供を育てられなければ離婚しなければいいという発言をされた方もいると承知をしております。夫婦間に問題があって離婚したいと思っている人たちを結婚生活に縛りつけておくということはやはり間違いだと思っております。

 私は、婚姻中であっても、離婚しても、まず子供が第一と考えております。今回の法改正を経まして、どのような状況でも子供を安心して育てられる日本を、社会をつくっていただきますことを心から祈念いたしまして、終わりにします。大臣、よろしくお願いします。

武部委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林と申します。昨年の秋に一旦法務委員会を離れておりましたけれども、二月に戻りましたので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 この度の民法等改正案の審議も回が重ねられてきておりまして、私も理解を深めさせていただいております。

 民事局資料にありますとおり、改正案のポイントは、父母の責任の明確化や、事案に応じた適切な解決を可能とする規律整備など、大きなものが四項目列挙されておりまして、多岐にわたっていると思っております。

 議論の中心となっております親権の規律整備だけでも、共同親権を選べるようにすることとともに、DVや虐待など子の利益を害する場合には単独親権となること、また、父母双方が親権者であるときであっても、急迫の事情や日常的な監護、教育においては単独行使可能である、こういう規定がされておりまして、その事例や判断基準など、これまで極めて熱心な議論が重ねられてきたところでございます。

 一方で、周辺から聞こえてくる声には誤解も含まれているなと思っているところでございます。私の元に届いた知人のお話では、共同親権を選べば面会交流が促進される、こういうようなことを言っておられる節がありましたけれども、そうではないという明確な御答弁もございました。養育費の支払いに関しましても、これは共同親権とは別であると、この件も答弁があったというふうに理解をしております。

 このようにポイントが多岐にわたる法改正であり、それらが正しく伝わっていない部分もあるかというふうに思っておりまして、公明党は、本年二月の提言で述べましたとおり、今般の民法等改正案について、当事者もそうなんですけれども、関係機関や民間団体等に対しましても、QアンドAなどの分かりやすい資料を作成しまして、その趣旨と内容の周知を図ることが重要だというふうに考えておるわけでございます。

 この点に関しまして、法務大臣の御見解を伺います。

小泉国務大臣 どのような制度もそうだと思いますが、制度というのは、法律の取決めであると同時に、また一方で、国民の理解がなければ稼働しない、その制度と制度に対する国民の理解が一体となってでき上がっているのが制度だと思います。

 特に、今回の民法改正は子供の利益を確保するということを最上位の目的に掲げました。ただ、この子供の利益というのは非常に抽象的です。また、それぞれの御家庭の事情がそれぞれありますから、やはり不安があったり、またいろいろな心配もここから起こってくる。そういう意味では、この法案の審議を通じ、あるいは、この法案、法律が成立した後も、国民に対してしっかりと具体的に理解を求めていくということを継続していく必要があると思います。

 そのときに、QアンドA等分かりやすい資料、こういった具体的な御提案もいただいておりますので、十分参考にさせていただきながら、関係省庁とも連携して対応したいと思っております。

平林委員 本当におっしゃるとおりでございまして、これは当事者のみならず関係機関と申し上げましたけれども、局長の御答弁でもありました、急迫の事情の例として、期限が迫る入学手続でありますとか、緊急医療行為を受けるための診療契約締結など、こういった例示もございまして、これは、親が知っていることもそうですけれども、学校とか病院も理解している、そういう必要もあるということもございますので、こういったことも考慮しながら、省庁間連携もしながら御対応いただけたらというふうに思っておりますので、是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、父母が離婚後もその責任を適切に果たし、父母の協議が子の利益の観点から行われることを確保するために、離婚後の子の養育に関する情報提供を行う親講座や親ガイダンスの実施は重要であり、離婚前後のカウンセリング支援を新たに行うこと、どこに住んでいてもひとしく十分な支援が受けられるようにすることは、党提言においても要望させていただいたとおりでございます。

 これに関連しまして、過日の犬伏参考人が配付されました立命館大学二宮名誉教授の親ガイダンスに関する論文を拝読をさせていただきました。その中に大阪家裁が実施されている内容が掲載されていたわけですけれども、例えば、両親の争いに子を巻き込まない、そのために親は余りすべきでないこととして、子から相手の様子を聞き出す、こういうことがありました。何か自分自身やったことがあるなというふうに思い当たるわけでございます。また、子の気持ちを酌み取るという観点では、親に語る気持ちが本心とは限らない、このようなことも記載がございました。

 これは、以前テレビを見ていまして、東日本大震災でお母さんを失った娘さんとお父さんのシーンがありまして、娘さんの心をお父さんはテレビのインタビューで初めて知った、そのシーンを見てお父さんは非常に愕然とするし落ち込む、そんなシーンも拝見しておりますし、私も似たような経験をさせていただいております。

 こういったこともありまして、この親ガイダンスの内容は本当に重要なこと、重要なことといいますのは、離婚直前とかそういうことではなくて、子供を持った以降はずっと重要なことが書いてある、このように感じたわけでございます。

 一方で、親ガイダンスの受講を協議上の離婚の原則的な要件とする規律を設けるという議論があったというふうに認識しておりますけれども、これについては、昨年の三月の家族法制部会で多くの反対意見が示されたということだそうでございます。幾つも理由はあるんですけれども、理由の一つには、受講には経済的又は精神的な負担が伴うため、父母が受講することが困難な場合があるというものも含まれていたということで、確かに、離婚直前の高葛藤の状況においては非常に困難な場合があるということはよく理解できるところでございます。

 申し上げたいことは、親ガイダンスの内容というのは、子を持つ夫婦が離婚を決断するような状況になる以前からある程度は持っておくべき知識であると考えたわけでございます。

 そこで、伺います。親ガイダンスで伝えるべき内容を部分的にでも、子を持つ夫婦に対して、高葛藤に至る以前の段階から情報提供することについて、法務省のお考えを伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母が子の養育に関するガイダンスや講座を受講することなどを通じて子の養育に関する適切な知識を得ることは、子の利益を確保する観点から重要な課題だと認識をしております。

 法務省におきましては、法律や心理学の専門家の協力を得まして、離婚時に知ってもらいたい情報をまとめた離婚後養育講座の実施に必要な動画等のコンテンツを作成し、複数の自治体と協力して、離婚当事者に実際に視聴していただき、その効果を検証するなど、適切な講座の在り方を探るための実証的な調査研究を実施しているところでございます。

 また、委員から、父母が子の養育に関して適切な知識を得ることの重要性は離婚時や離婚を考えている段階に限るものではないという貴重な御示唆をいただいたと受け止めております。引き続き、子を持つ父母に対する情報提供の在り方について適切に検討してまいりたいと考えております。

平林委員 また、続きまして、党の提言では、親講座や親ガイダンスに関しまして、外国文化にも配慮しながら、各言語に対応したガイダンスを整備し、外国人への配慮も行うことの重要性について要望させていただいております。

 この点につきましては、日本語の読解力、理解力が不十分な外国人配偶者が、離婚手続を理解できずに、結果として一方的に離婚をされ、困難な状況におとしめられるといったことが過去にもあったようであります。こうしたことがないようにするために、従前の制度においても、また今回の改正がなされた場合においても、その制度が外国人にもきちんと伝えられることは重要だと考えております。

 この点に関しまして、外国人との共生社会の実現という大きなテーマにも関係すると思っておりますので、大臣の御意見を伺えますでしょうか。

小泉国務大臣 まさに委員御指摘のとおりだと思います。

 父母が子の養育に関して適切な知識を得ること、これは、国籍の別にかかわらず、子の利益の観点から重要であります。特に、共生社会をつくると我々は高らかに宣言をしておりますので、こういったところへの目配りをしっかり進める必要はあると思います。

 具体的に法務省として何ができるか、これはまた具体的に検討していきたいと思いますが、御指摘はしっかり受け止めたいと思います。

平林委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、この度の改正案では、財産分与の請求期間が五年に伸長されることとなっております。これは、党の令和二年十二月の提言に合致したものでございまして、本改正案に盛り込まれていることを高く評価をいたしているところでございます。

 そもそも、財産分与について、現状では離婚から二年という期間制限があります。しかし、夫婦間にDV等の問題がある場合や高葛藤である場合には、相手方と財産分与の協議を離婚時にすることはもちろん、離婚後速やかに調停や審判を行うことも非常に難しいという指摘がございます。財産分与の制度のことを知らないまま離婚に至ることもあり、こうした状況を改善していくことは重要と考えております。

 また、今般の改正では、財産分与における考慮要素を列記する、例えば、寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入、こういったことを列挙することによって明確化することとしている。そして、寄与の程度が異なることが明らかでなければ、寄与の割合を原則二分の一ずつにすることとしております。

 また、家裁が必要と認めれば、当事者の財産状況に関する情報開示、こういったことを命ずることができるようになるということでございます。

 そこで、伺います。財産分与に関するこれらの改正を行う趣旨とそれによって期待される効果について、法務省の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 御党からは、財産分与請求権の請求可能期間を二年から五年に伸長する見直しを求めるという提言をいただいたところでございます。

 本改正案におきましては、財産分与の取決めを促進し、離婚後の夫婦間の財産上の公平を図るため、財産分与を家庭裁判所に請求することができる期間を二年から五年に伸長するとともに、その請求において家庭裁判所が考慮すべき要素を明確化することとしております。また、本改正案では、財産分与に関する家庭裁判所の手続において財産情報の開示命令の規定も新設しておりまして、これらの改正によりまして、より適正な財産分与が行われることを期待しております。

平林委員 是非その実行をお願いできればと思っております。

 最後に、ちょっと細かい点になりますけれども、離婚届、ちょっと私も確認をさせていただきました。自治体ごとに微妙な違いがあるようですが、地元広島の区役所で入手して確認をしたり、また、ホームページ、インターネットにも記載がございますので、そういったものも確認しました。

 その中に、未成年の子の氏名を記入する欄があります。その欄、左と右に分かれておりまして、左が夫が親権を行う子、右の欄は妻が親権を行う子を書き込むということになっておりまして、これによって離婚後の親権が定まっていくと理解をしているところでございます。

 これまでの単独親権のみであれば、選択が単独親権のみであれば、子の名前はどっちかにしか表れませんので、そんなに混乱はなかったと思うんですけれども、今後、この法改正が成立して共同親権が導入されることになった場合には、このままこの書式を用いると、例えば、一人の子の名前を両方に記入するとか、あるいは、複数の子供がいてそれぞれに親権をする場合に、一人の子は単独で一人の子は共同みたいなこともあり得るわけですけれども、その場合には、一部の子の名前が両欄に記入されたりとか、一部の子は片方だけとか、ちょっと紛らわしいということを感じたわけでございます。

 こんな懸念に応えるために、離婚届を分かりやすい書式に改変することも必要だと考えますけれども、法務省の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現在の離婚届出書の標準様式は、父母のいずれか一方のみが親権者となることを念頭に置いたものでありまして、父母双方が親権者となることを想定したものではありません。

 本改正案が成立した際には、離婚後に父母双方が親権者になることが可能となるため、離婚当事者や地方自治体における戸籍窓口等において混乱が生じないよう、離婚届出書の標準様式について適切に検討してまいりたいと考えております。

平林委員 是非検討していただければというふうに思っております。

 ちょっと時間が早いかもしれませんけれども、以上で私の質問を終わらせていただきたいと思います。子の利益を確保するという観点から、これからも真摯に議論をしてまいりたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

武部委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願いします。

 前回に引き続いて、法定養育費に絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、平成二十三年に民法が改正されました。改正条項では、未成年の子を持つ父母が離婚する際には、父又は母と子との面会交流と、子の監護に要する費用の分担、養育費の分担を取り決めるように明文化しているというところになるわけですけれども、ここから十年がたちました。今、取決め率とか受給率の推移というのはどういった状況でしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省において行われました全国母子世帯等調査や全国ひとり親世帯等調査によりますれば、母子世帯における養育費の取決め率は、平成二十三年度が三七・七%、平成二十八年度が四二・九%、令和三年度が四六・七%でありました。

 また、母子世帯における養育費の受領率は、総数で見ますと、平成二十三年度が一九・七%、平成二十八年度が二四・三%、令和三年度が二八・一%でありまして、そのうち、養育費の取決めをしている世帯における養育費の受領率を見てみますと、平成二十三年度が五〇・四%、平成二十八年度が五三・三%、令和三年度が五七・七%でありました。

鈴木(庸)委員 順調には見えるんですけれども、この効果についてはどのように評価していらっしゃいますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員が御指摘なさったとおり、平成二十三年の民法等改正では、父母が協議上の離婚をする際に当事者間の協議で定める子の監護について必要な事項として、子の監護に要する費用、養育費ですが、これの分担などを条文上明示するなどの改正をしたところでございます。

 平成二十三年の改正前の条文では、養育費の分担等について明示されていないこともあって、協議上の離婚をするに際して明確な定めがされないことも少なくないと言われておりました。このような背景の下、養育費の分担等を子の監護について必要な事項の具体例として条文に明示することによって、当事者間の取決めを促すこととしたものであります。

 そして、先ほど申し上げましたとおり、平成二十三年以降、養育費の取決め率は一定の増加傾向にはありまして、平成二十三年の民法等改正は一定程度効果があったものと受け止めております。

鈴木(庸)委員 大臣に伺いたいんですが、今、答弁の中でも、一定程度の効果はあった、数字だけ見ればそういうことになるわけなんですけれども、その上で、あえてまた今回改正する理由というのはどこになるんでしょうか。

小泉国務大臣 民事局長が御説明しましたように、一定程度の増加は見られるわけでありますが、それにしても、母子世帯の養育費の取決め率が四六・七%、五割に満たない。受領率が二八・一%、決して高い水準とは言い難いものでございます。

 そこで、更に手当てを前に進めるために、本改正案では、養育費の履行確保のため、養育費等の債権に先取特権を付与する、あるいは法定養育費を定める、こういった改正の内容になっております。

 また、本改正案では、民事執行申立ての負担を軽減する規定や家庭裁判所の手続における収入情報の開示命令に関する規定を新設する、こういった手続面でもバックアップをしていこうということでございます。

 これが実施されますれば、受領率の上昇には間違いなく寄与するものと考えております。

鈴木(庸)委員 受領率の上昇に寄与していくかと思います。

 次に、また、引き続き法定養育費について伺わせてください。

 法定養育費は、子が成年に達するまでの間の支給であるため、高校在学途中に十八歳になった場合には、授業料がかさむのに支給が打ち切られる、このことの妥当性については、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 改正法案において新設をいたします法定養育費制度は、父母が養育費の取決めをせずに離婚した場合に、養育費の取決めを補充する趣旨で、父母の生活水準に即した養育費の取決め等がされるまでの当面の間、父母の収入等を考慮せずに離婚時から一定額の養育費を請求することができるという制度でございます。

 このような法定養育費制度の補充的な性格に鑑みまして、協議等により養育費の定めがされたことを法定養育費の終了時とすることのほか、子が成年に達したときを法定養育費の終期としておるものでございます。

 もっとも、できるだけ速やかに、父母の生活水準や子の進学等に必要な費用に即した養育費の取決め等がされることが望ましいことから、法務省といたしましても、養育費の取決めの重要性やその履行の重要性について引き続き周知、広報を行っていくほか、支援等を担当する関係府省庁としっかり連携をしてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 同じように、経過措置なんですけれども、法律の施行日前に離婚が成立していた場合には、法定養育費規定が適用されないということなんですが、そのことについては、どのように考えますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法定養育費の制度でございますが、先ほど申し上げたような趣旨で、補充的な性格を有するものでございます。

 法定養育費制度が本改正案の施行日前に離婚した父母にも遡及適用されるとなりますと、法定養育費の仕組みがないことを前提として離婚の際の条件を定めた離婚の当事者に、過去の離婚時からの法定養育費が遡って発生することとなってしまいますが、それは、既に離婚をした当事者の予測を害する結果となりかねないところでございます。

 そこで、本改正案は、法定養育費に関する規定は、本改正案の施行日前に離婚等をした場合には適用をしないとしておるところでございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 繰り返しの質問にちょっとなるんですけれども、協議によって養育費の取決めがある場合は、優先的に先取特権が付されるということですけれども、改めて、なぜ必要になって、そして、現状の問題点をどう考えていらっしゃるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行法によりますれば、父母間で養育費の取決めがされていた場合であっても、公正証書や家庭裁判所の調停調書等の債務名義がない限り、債権者は民事執行の申立てをすることができないことになります。

 養育費の履行確保は、子供の健やかな成長のため重要な課題でありますが、債権者にとって手続の負担が重く、取決めの実効性が十分でないとの問題がございます。

 そこで、本改正案では、養育費の取決めの実効性を向上させるために、養育費債権に先取特権を付与することとしております。これにより、債権者は、債務名義がなくても民事執行の申立てをすることができ、かつ、その執行手続において、他の一般債権者に優先して弁済を受けられることとなります。

鈴木(庸)委員 そうすることによって、当然受領率というところにもなってくるわけですけれども、結局どういう効果を期待していらっしゃるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたとおり、改正法案では、養育費の取決めの実効性を向上させるため、養育費債権に先取特権を付与することとしておりまして、これにより、養育費債権の存在を証する合意文書等が作成されていれば、債権者としては、債務名義がなくても民事執行の申立てをすることができますし、その執行手続において、他の一般債権者に優先して弁済を受けられることとなります。

 したがいまして、養育費債権の合意文書等を作成していれば、民事執行の申立てが容易になることから、養育費の取決め率、あるいは受給率の双方が向上されることを期待をしております。

鈴木(庸)委員 その中で、子の監護に要する費用として相当な額に限定をする理由というのは、どこになってくるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案では、養育費等に先取特権が付与される額を、確定期限の定めのある定期金債権の各期における定期金のうち子の監護に要する費用として相当な額としております。

 養育費等に先取特権が付与される額を、このように子の監護に要する費用として相当な額といたしましたのは、養育費の債権者と、これに劣後する他の債権者との均衡を考慮しながら、子の養育に必要な費用に優先性を認めようとしたからでございます。

 すなわち、仮に相当な額を上回る高額の養育費等の合意ができる当事者間であれば、あらかじめ公正証書によって養育費の合意をし、これにより民事執行の申立てをすることもできると考えられますし、また、高額な養育費全額について養育費の債権者を他の債権者に優先させる必要性も相当性も認め難いという理由からでございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 そうすると、額の多寡はあると思うんですけれども、具体的な支給水準のめどについてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、養育費等に先取特権が付与される額を、確定期限の定めのある定期金債権の各期における定期金のうち子の監護に要する費用として相当な額としておりますが、この相当な額とは、子の監護に要する標準的な費用その他の事情を勘案して当該定期金により扶養を受けるべき子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定して定めることを予定しております。

 したがいまして、先取特権が付与される額の具体的な水準につきましては、今後、本改正案が成立後、法務省令において定めることとなるため、現時点でお答えすることは困難でございます。

鈴木(庸)委員 その辺が一番ポイントになってくる一つかとも思うんですけれども。

 あと、前回、法定養育費について最低限度の生活とされたことと異なる理由についてなんですけれども、どちらも子の教育のために必要な限度という意味では、表現を変える必要というのはあったんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、法定養育費制度の趣旨でございますが、改正法案において新設をいたしますこの制度は、父母が養育費の取決めをせずに離婚した場合に、養育費の取決めを補充するという趣旨で、父母の生活水準に即した養育費の取決め等がされるまでの当面の間、父母の収入等を考慮せずに離婚時から一定額の養育費を請求することができるというものでございます。

 このような法定養育費制度の補充的な性格に鑑みまして、改正法案では、法定養育費の額を子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して法務省令で定める一定額とすることとしたものでございます。

 これに対しまして、養育費債権に一般先取特権を付与することといたしましたのは、養育費の取決めの実効性を向上させ、養育費の履行を確保するためでありますことから、補充的な性格を有する法定養育費とは異なりまして、先取特権が認められる額を子の監護に要する費用として相当な額としたものでございます。

鈴木(庸)委員 当然、子供の生育環境とか成長状況によって違ってしかるべきだと考えるんですけれども、これをあえて省令で一律に定める何か理由があるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案では、養育費の取決めの実効性を向上させるため、養育費債権に先取特権を付与することとしております。これにより、債権者は、公正証書や家庭裁判所の調停調書等の債務名義がなくても民事執行の申立てをすることができるようになるほか、その執行手続において、他の一般債権者に優先して弁済を受けられることになります。

 御指摘のとおり、個別具体的な適正な養育費の金額は、父母の具体的な収入等に照らして、それぞれの事案ごとに異なり得るものでございます。しかし、養育費債権に一般先取特権を付与する趣旨は、先ほども申し上げましたとおり、養育費の債権者に劣後する他の債権者との均衡を考慮しながら、子の養育に必要な費用に優先性を認めようとすることにあります。

 そこで、改正法案では、養育費等の取決めがされた場合に、どのような高額であっても取り決められた全額に先取特権を付与するのではなく、先取特権が付与される上限の額を設定することとしているものでございます。

 このように定めたといたしましても、仮に相当な額を上回る高額の養育費等を合意するのであれば、あらかじめ公正証書等によって養育費の合意をすることもできると言えますし、その場合、債権者は、公正証書に基づいて民事執行の申立てが可能でありまして、高額な養育費を合意するような場合に、債権者が民事執行の申立てに関して特段不利益となることはないと考えております。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 さらに、省令ではその他の事情を考慮して定めるということであるんですけれども、例えば、この委員会でも度々質疑に上がってきたことですけれども、私立学校に通ったりとか、医療上の特別の療法が必要だったりする場合とか、こうした個別の事情というのは考慮されるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、養育費の債権者とこれに劣後する他の債権者との均衡等の観点から、養育費等の取決めがされた場合に、取り決められた全額に先取特権を付与するのではなく、先取特権が付与される上限の額を一律に設定しております。

 具体的には、養育費等に先取特権が付与される額を、確定期限の定めのある定期金債権の各期における定期金のうち子の監護に要する費用として相当な額としておりますが、この相当な額とは、子の監護に要する標準的な費用その他の事情を勘案して、当該定期金により扶養を受けるべき子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定して定めることとしております。

 ここで、委員御指摘の、その他の事情を勘案するとしておりますのは、法務省令で先取特権が付与される額を定めるに当たって、子の監護に要する標準的な費用の額を基本的な考慮要素としつつも、例えば、子の監護に要する標準的な費用の額に反映されていない突発的な経済事情の変動があった際に、そのような事情も勘案することができることを示したものでございます。

 したがいまして、個別の事情を考慮して先取特権が付与される額を法務省令で定めるというものではございません。

鈴木(庸)委員 ただ、特に、先ほど申し上げた医療上の特別な療法が必要だったりする場合とか、こういうのは養育費を増額する必要は高いと思われるんですけれども、これは重ねてなんですが、特別に考慮する必要というのはないんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法定養育費の制度は、先ほど申し上げましたような補充的な性格を有するものでございまして、その性格に基づいて額を定めるということにしております。

 また、民事基本法制は、国民の意識や社会情勢の変化等にも対応し見直しをしていくことが重要でありますので、引き続き必要な検討を行っていきたいというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 今、見直しというお話も出たんですけれども、現在かなりの物価高にありますけれども、このような状況を踏まえて、頻繁に見直すこともあるかと思うんですけれども、具体的にどのぐらいの頻度でとか、見直しについてはどのような方針を持って臨む予定なんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今回、民法等の改正案でございますので、民事基本法制に該当いたしますが、民事基本法制は、国民の意識や社会情勢の変化等に対応し見直しをしていくことが重要でありまして、今後も引き続き必要な検討を行っていきたいと考えておるところでございますが、養育費等の債権に先取特権を付与する規律は、今般の改正によって新設される仕組みでありますことから、まずはその施行後の状況を注視することとしたいと考えております。

鈴木(庸)委員 具体的には決まっていないということなわけですね。かしこまりました。

 まず、次に、その立替え払いについて少し伺わせてください。

 いろいろな地方公共団体、今、立替え払いというのが、ちょっと新聞記事が手元にあるんですけれども、例えば千葉県の松戸市は、離婚前後の夫婦に養育費の重要性を伝える講座を開いている。練馬区などについては、当事者が合意した内容を公正証書として作成する費用を補助している。あと、兵庫県の明石市なんですけれども、養育費の支払いが滞った際に、同居親の世帯に最大三か月分、上限で月五万円分を立て替えて支払って、別居の親側に請求するといった、こうした施策を地方自治体側も取って、何とか養育費の確保というところに邁進しているわけでございますけれども、かなり地方公共団体は頑張っているところは頑張っているんですけれども、何かちょっと地方公共団体任せにしてしまっていて、当然、地域間格差がかなり出てしまっているなという思いもございます。

 そういう中で、例えばですけれども、地域間の格差の解消に向けて、地方公共団体任せにするのではなくて、国で全国的に立替え払いの取組を支援する、こうした必要性についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 養育費を必要とする一人親家庭への公的支援として、公的機関による立替え払いの仕組みの導入を期待する声があることは承知をしております。

 もっとも、そのような仕組みの導入につきましては、償還の確実性も見込まれない中、本来当事者が負担すべき養育費を国民全体で負担することが合理的と言えるか、当事者のモラルハザードにつながらないか、他の公的給付との関係をどのように考えるかなどといった観点からの慎重な検討が必要であると考えております。

 本改正案では、法定養育費を新設するなど、養育費の履行確保に向けた改正をしているところでありまして、まずはその施行後の養育費の履行状況を注視することとしたいと考えております。

鈴木(庸)委員 先ほど永岡委員からのお話とかにもありましたけれども、一人親世帯の貧困率というのが、結果的に子供から様々な教育を。それで、こういう法律ができて、結果的にどう子供に利益をもたらしていくかというところなんですけれども、では、今のお話だと、立替え払いについてはまだ一切検討をしていない、そういった理解でよろしいんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、公的機関による立替え払いの仕組みを導入する、それを期待する声があるということは承知をしておりますが、先ほど申し上げたようないろいろな観点からの慎重な検討が必要であると考えておるところでございます。

鈴木(庸)委員 ですから、慎重な検討は当然分かるんですけれども、その期待というところで、こういう法律も出てきている中で、重ねての質問なんですけれども、一切考えていないということなんですか、それとも、もう具体的に。先ほど、日本の様々なところからいろいろな声が上がるとは承知していますけれども、実際、大変ですよね、立替え払いがないと。

 そういう中で、先ほども、繰り返しになるんですけれども、自治体任せになっているような状況の中で、国として全く検討していないんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、先ほど申し上げたような法定養育費の新設など、養育費の履行確保に向けた各種の改正をしているところでございまして、まずはその施行後の養育費の履行状況を注視することとしたいと考えておるところでございます。

鈴木(庸)委員 同じ答弁は分かるんですけれども、この立替え払いの話とこの法律の話というのは違う話ですよね。法案の審議の中で、ちょっと話がずれているという御指摘もあるかもしれないんですけれども、これ以上堂々巡りのことをやってもしようがないんですけれども、立替え払いの仕組みを全く検討もしていない、取りあえず先取特権で何とかしようというのもちょっとどうなのかなという気がしておりまして、是非是非……(発言する者あり)まさにそうですね。ありがとうございます。子の最善の利益のために、立替え払いについても、少しでも前向きなコメントというか、答弁をいただくことはできないですかね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 立替え払いの仕組みにつきましては、一度厚生労働省と論点整理をしたことはございまして、何といいますか、全く何もしていないというわけではないのですが、先ほど申し上げたような観点からの慎重な検討がやはり必要になってくるというところでございます。

鈴木(庸)委員 論点整理はどこでもやっていると思うんですけれども、重ねて、全く、全然、前向きな答弁が出てきていないので、ちょっと残念なんですけれども。

 とにかく立替え払いということについては、是非是非、どういった形がいいのかとかいうことも含めて御検討を強くお願いしたいんですが、済みません、ちょっとこれは大臣に聞くつもりじゃなかったんですけれども、大臣、この辺はどうお考えになられますでしょうか、立替え払いについてなんですけれども。

小泉国務大臣 事務レベルではいろいろな議論がございます。法務省の中で整理をしている段階での話でありますけれども、やはり課題もあるんですよね。先生のおっしゃっている必要性、ニーズ、それはよく分かります。ただ一方で、課題もたくさんあります。

 まず財源の問題、また回収手続に要するコスト、これも財源に関わってくる問題。それから、一人親家庭を対象とする給付型社会保障制度との関係、整合性をどう取るかという問題。そして、基本的な問題としてモラルハザード、こういったベーシックな問題も、テクニカルな問題も、制度にまたがる問題もあります。かなり問題の範囲が広くて奥が深いので、我々はまだそこを見切ることができない、そういう状況です。

 先生の御指摘は、しかと承りたいと思います。

鈴木(庸)委員 前向きな答弁、どうもありがとうございました。是非包括的に前に進めていただければと思います。

 次に、最高裁判所の算定基準の見直しについては、どのように検討されていますでしょうか。

馬渡最高裁判所長官代理者 現在利用されている養育費の標準算定方式及びこれに基づく算定表は、平成十五年に初めて発表された標準算定方式及び算定表について、時の経過や社会実態の変化等を理由に、その内容に改良する点がないかを検討する必要が生じているのではないかとの指摘を踏まえ、司法研修所における司法研究として、家裁実務を担当している裁判官によりまして、改めて研究が行われた結果として、令和元年十二月に報告、公表されたものでございます。

 標準算定方式及び算定表の改定につきましては、今後も、時の経過、社会実態の変化、また、実務における安定的な運用の要請等を踏まえた適切なタイミングで検討されることになるものと考えられますが、現時点でこれを改定する具体的な予定があるものとは承知しておりません。

鈴木(庸)委員 かしこまりました。

 今のところないということだったので、ちょっと一つ質問を飛ばさせていただきまして、最後に、民事執行法の改正について伺わせてください。

 一人親世帯の養育費の確保に関しては、平成十五年、平成十六年、令和元年に民事執行法が改正されて、強制執行手続の改善も図られてきておりますけれども、これまでの制度改正の効果については、どのように受け止めていらっしゃって、どのような課題があると考えていますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、養育費履行確保に関しましては、これまでの民事執行法の改正において、例えば、その一部が不履行となっていれば、まだ支払い期限が到来していない将来分についても、一括して給料等に対する強制執行を開始することができる旨の特例ですとか、給与等の差押えが可能な範囲を拡大する旨の特例、間接強制を可能とする特例、あるいは、第三者から債務者の給与債権に関する情報を取得することができる旨の手続などを設けてきたところでございます。

 これらの改正につきましては、養育費請求のための民事執行の手続を利用しやすく、実効的なものとした点で、養育費の履行確保に一定の効果があったものと認識をしております。

 もっとも、これらの法改正がされた後も、養育費の履行率は依然として低調にとどまっており、民事執行の手続については、例えば、現行法によれば、父母間で養育費の取決めがされていた場合であっても、公正証書や家庭裁判所の調停調書等の債務名義がない限り、民事執行の申立てをすることができないとの課題や、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、これらの手続によって判明した財産に対する差押えの手続について、それぞれ別個に申立てをしなければならず、このことが一人親家庭にとっての負担となっているとの課題が指摘されていたところでございます。

 そこで、本改正案では、養育費の取決めの実効性を向上させるため、養育費債権に先取特権を付与することとしており、これにより、債権者は債務名義がなくても民事執行の申立てをすることができることになります。

 また、民事執行手続の申立ての負担を軽減するため、一回の申立てで、財産開示手続、第三者からの情報取得手続、これらの手続によって判明した財産に対する差押えの手続を連続的に行うことができる仕組みを導入することとしております。

鈴木(庸)委員 同じ答弁、ありがとうございます。

 最後、大臣に伺いたいんですけれども、具体的に、これはどの程度負担が軽減されると考えていらっしゃいますでしょうか。

小泉国務大臣 三つの手続を、それぞれ申立てをすることなく、一回の申立てで三つの手続が進められるということになります。

 どれぐらいその期間が短くなるのか、これはいろいろなケースがあると思いますし、実務上の問題でありますので、ちょっとここで確たるお答えはしにくいわけでありますが、間違いなく大きな効果はあると我々は思っております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。終わります。

武部委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。よろしくお願いします。

 参考人の方をお招きをしながらいろいろな御意見を聴取し、そしてまた、委員から様々な点を指摘して議論しているんですが、審議を聞いておられる方及びこの法案に対して様々な思いをお持ちの方からの意見を聞く限りにおいて、実質的にやはり本人同意、共同親権と認められる、判断される場合には、まずは本人同意があるケース、しかも、その本人同意は真摯な合意に基づく本人同意から、共同親権という仕組みを始めるのであればやっていくのが、私は、様々な懸念というものを払拭するのではないかなと思います。

 やはり、この八百十九条、まあ七項二号のことは後でやりますけれども、本人たちが同意していないにもかかわらず裁判所が判断することができるという仕組み自体が、多くの方々に対して、特にDVや、DVのみならず、夫婦の不和及びモラルハラスメントも含めて、一緒に過ごしていくことができないと判断している父母間において共同親権という新たな仕組みが裁判所によって判断されるのではないかという強い懸念が、この法案に対する大きな声を生んでいるんだと私は思います。

 もし真摯な本人同意に基づいたもの以外も認め得る法案を通していくのであれば、まさしくそのことについて書かれている八百十九条七項二号の「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」、その前段にもいろいろありますけれども、この辺の解釈というものをはっきりと政府としては示していく、審議の中で明らかにしていくことが必ず必要だと私は思います。

 という点で、この八百十九条七項二号の「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」というものの具体的な解釈について聞きたいと思います。

 まず、この「困難である」という判断は、どの時点における困難性をいつ判断するのか、御答弁をお願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの点につきましては、離婚後に父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるか否かを家事審判の審理終結時やあるいは人事訴訟の口頭弁論終結時に判断することになると考えております。

寺田(学)委員 これを通じて一般の方々も聞いていると思いますので、分かりやすく申し上げると、将来、この父母に関しては共同で親権を行使することは難しいなと審判のタイミングで考えて、審判のタイミングでそういうことを見越して判断していくという解釈でよろしいですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 家事審判の手続におきましては、家事審判の手続の中で審理終結の期日というのを決めますので、その期日の時点で判断するということ……(寺田(学)委員「将来」と呼ぶ)その期日についての共同親権の親権の行使が困難であるかどうかということを判断するということになります。

寺田(学)委員 いや、判断するタイミングはまさしくそこだとは分かっているんですけれども、その時点で、判断のタイミングで、この父母に関しては共同して親権を行うことが困難な状態にあることをもって、その判断のタイミングで、これは無理だなと判断するのか、いや、将来的にこの父母たちが共同で親権を行使することは難しいなと審判のタイミングで判断するのか、未来予測的なものを入れるのかどうかというニュアンスです。

竹内政府参考人 失礼いたしました。

 父母が共同して親権を行うことが困難であるかどうかについては、これは離婚後の話でございますので、そういう意味では、委員御指摘のとおり将来ということになります。

寺田(学)委員 だから、見越すわけですよ。なので、すごく難しい判断だと思うんですよ。なので、非常に慎重に考えなきゃいけないと思うんです。

 この二号の、今日お手元にも資料を配っているのかな、二号のところに、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められたら単独親権になるという条文なんですけれども、父母が共同して親権を行うのが困難であるとは言えない状態というのはどういう状態なのか、御説明ください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案は、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無のほか、父母間に協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難と認められるときにも、裁判所は必ず単独親権としなければならないこととしております。

 どのような場合にこれに当たるかということにつきましては、個別具体的な事情に応じて判断されるべき事項でありまして、一概にお答えすることは困難ではありますが、一般論といたしましては、父母間に協議が調わない理由等の事情を考慮し、およそ共同して子の養育に関する意思決定を行うことが困難であるような場合には、父母が共同して親権を行うことが困難と認められるときに当たると考えられます。

寺田(学)委員 ほぼ何も言っていないに等しいと思うんですけれども。

 法文上は、父母が共同して親権を行うことが困難だと審判のタイミングで認められたら単独親権になるわけで、これは一点確認しておきますけれども、もちろん、父母が共同して親権を行うことが困難であるとは言えない場合でも、単独親権になることは当然あるんですよね、制度上。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき、すなわち、八百十九条の七項二号に該当する場合には必ず単独親権になりますが、これに該当しない場合でも、裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮して親権者について定めることになります。

寺田(学)委員 だから、親権者の定めとして、単独親権という判断が下りることはありますよねと言っているんです。

竹内政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

寺田(学)委員 もう一回御指摘を、ちゃんと言いますけれども、父母が共同して親権を行うことが困難であるとは認められないときであっても、単独親権を判断することはあり得ますよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 八百十九条七項一号、二号はそれぞれあくまで例示でございますので、委員の御指摘のとおりかと思います。

寺田(学)委員 あくまでも単独親権になる場合だけを、こういう場合は単独親権になるということを定めたものであって、これに該当しないからといって直ちに共同親権になることではないということでいいですよね。

竹内政府参考人 委員御指摘のとおりです。

寺田(学)委員 父母間の葛藤が高過ぎて、審判のタイミングですよ、そういう場合においても、困難と言えるのか言えないのか、どういう場合がこの親権を行うことが困難であると認められる場合なのか。僕が一番関心があるのは、困難ではないなというふうに審判するその状態というのは、極限値でいうとどれぐらいの状態まで、いや、これは困難とは言えないなと言える状態なのかを、それをちゃんとお話ししてくださいよ。そこを、裁判官、人それぞれに任せますというのは、余りにも無責任ですよ。

 大臣、どういう場合ですか。今、局長が何か調べているから。

小泉国務大臣 あくまで一般論でございますが、父母間で葛藤が高い、非常に感情的になっている、父母間の問題については話し合う余地もない、そういう状態であるにもかかわらず、あり得るとすれば、子供の利益のためにということについて幾ばくかの理解が双方に成り立つならば、共同して親権を行使するための最低限のやり取り、最低限のコミュニケーション、感情はもう激しく葛藤しているんですけれども、でも、子供のためにという切替えができる親がいらっしゃるならば、その何がしかの部分でコミュニケーションが成り立つ可能性を最初から切って捨てるということは適当ではないのかと思います。

寺田(学)委員 最低限のコミュニケーションというのが大臣から概念として出されました。

 この最低限のコミュニケーションというのはどういう状態なのかというのが大事だと思うんですよね。お互い、離婚するわけですから、一般的には仲よくはないですよ。お互いに対して非難し合うときもあれば、単純に、お互いとして、非難はないけれども、この人と一緒にやっていくのは難しいと合理的に冷静に理解している場合もあると思います。

 いずれにせよ、その最低限のコミュニケーションというのは、物事を話し合って、コミュニケーションというのはいろいろありますよね、メールは届く、そのメールに対して返す、これもコミュニケーションですが、あんたなんて最低よと言われて、おまえこそ最低だろうと言っているものも、一応コミュニケーションにはなっていると考えるんですか。

小泉国務大臣 それは、子供の親権の行使に関わるコミュニケーションが取れる状態ということを言っているわけでございます。

 ですから、子供の進学について……(寺田(学)委員「今僕が言った話」と呼ぶ)済みません、もう一度ちょっと。

寺田(学)委員 いや、コミュニケーションといっても、広義の意味のコミュニケーションといえば物すごい広いですよ。メールで、大臣と僕はつながっていないですけれども、あなたはちょっと駄目な大臣だよと、それで、何言っているんだよというふうに返すのもコミュニケーションですよ。

 ただ、この文脈における、どういう状態なのかといったら、最低限のコミュニケーションが成り立っている、子供の利益のために最低限のコミュニケーションが成り立っていることが大事なのだと言われる際には、そのようにお互いがお互いを非難し合う状態であっても、最低限のコミュニケーションが成り立っているというんですかと言っているんです。大臣が言われた定義です。

小泉国務大臣 それは、夫婦間の問題に関しては非難し合う状態が続いていたとしても、その親権の共同行使に関わる情報に関してはやり取りができる、意見が交換できる、これは、自分たちの問題ではなくて子供の利益のために子供のことを話し合う、そういう余地がそれぞれの御夫婦に生まれるならば、そのコミュニケーションは、子供の利益のために共同で親権を行使することに関わる最低限のコミュニケーションは取れるということを申し上げているわけです。

寺田(学)委員 お互いがもう罵り合ったとしても、事子供のことに関しては何かをちゃんと話し合っている。ただ、そのときにも、おまえの子育ての仕方おかしいよ、いやいや、あんたの子育てだっておかしいじゃないかという概念に基づいて、いや、離婚というのはそういうことでしょう、そういうことも含んでいるでしょう。そのときに、単純にやり取りはできている、お互いが、あんたの子育ての考え方はおかしいよとか、そういう教育方針がおかしいよ、いやいや、あんたの方がこういう教育方針がおかしいんだよと言っていること自体が、さっき大臣が言った最低限のコミュニケーションにさすがに該当はしないですよね。

 ちゃんと、コミュニケーションというこの含意は、お互いが子供のことについて話合いをする中において、親権を共同して行使していくわけですから、何かをちゃんと決めていく、そういうことができる環境にあるのを最低限のコミュニケーションと言われているのでよろしいですか。

小泉国務大臣 はい、そう思います。

寺田(学)委員 なるほど。何かしら、夫婦間においては感情が高まっていろいろ言い合うことはあるかもしれないが、事子供のことに関してはコミュニケーションを取るというのは、ただ言い合うだけではなくて、物事をちゃんと決めていくような、そういう関係が整っているかどうかということですよね。なるほど、ブレークダウンできました。

 過去、三谷議員とか他の先生方が言われているところにもあったのであれなんですけれども、夫婦間において様々なことを話し合うことがまず大事で、協力して子供のためにやっていくということが大事だということを言いながら、今までの答弁、局長とかの答弁の中でいうと、本改正案によれば、親権の指定の裁判においては、様々今法文のことを言っていただいた、父母相互間の人格尊重義務や協力義務を遵守してきたかどうかも考慮要素に一つ入りますという話がありました。

 これは、なので、単純に、お互いが罵り合っているとしても、お互いの人格をちゃんと尊重しましょうよということが父母間において大事だということでよろしいですよね。答弁のことです。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 そこは委員御指摘のとおりかと思います。

 家族法制部会のヒアリングで出た御意見を御紹介させていただきますと、委員おっしゃるとおりなんですが、父母間の感情的な対立等があったとしても、相互の人格を尊重し、子の養育のために最低限のやり取りが可能であるというケースもあり得るという御指摘があったところでございます。

寺田(学)委員 さっき、最低限のやり取り、最低限のコミュニケーション、大臣として、最低限のコミュニケーションというのは、父母間が非常に葛藤が高くても、事子供のことに関してはしっかりと話し合い、コミュニケーションを取った上で物事を決めていけるような状態を指すのだという話でした。

 この人格尊重義務というのは、とはいえ父母間において人格の尊重義務はありますよねということを言われていて、例えばですけれども、父母の一方が相手に対して、あんたは犯罪者だ、あんたは犯罪行為を犯しているというようなことを言い合う関係というのは、人格尊重されているかどうかというのはどう考えますか、大臣。

小泉国務大臣 これは、やり取りの中でぽっと口をついて出てしまう場合はあると思うんですよね。ですけれども、それが繰り返し、他者に対して誹謗中傷、人格否定、こういった言動が繰り返されるような場合には、やはり共同して親権を行うことの困難性に該当してくると思います。

寺田(学)委員 いや、大臣、ぽっと出ても駄目ですよ。あんたね、あんたなんて犯罪者だよと言われたら、それは言われた側にしてみれば、言った側はぽっと思わず言ってしまったと言うのかもしれないですが、言われた方にしてみれば、犯罪者だと言われることというのは物すごい大きいですよ。

 なので、ぽっとでも駄目ですよ。やはり私は、相手を犯罪行為を犯しているぞと言うような関係は父母相互間の人格尊重義務を損ねていると思いますが、改めて、答弁、どうですか。

小泉国務大臣 その御夫婦の日頃のコミュニケーションの在り方、関係性の在り方、そのニュアンス、その言葉が出た状況、総体によりますよね。よります。と思います。

 多くの場合は先生がおっしゃるとおりかもしれません。でも、一〇〇%、全部、常に、その隙間がやはり残ると思いますね、その全体の状況性において判断するべき部分は残ると思います。

寺田(学)委員 日々、日常からお互いを犯罪者と罵り合っているような方々がいるのかどうか私は分かりませんけれども、やはりそれは、離婚をする中において、相手に対して一方的に犯罪行為を犯したと決めつけた言動をするのは、私はもうこの人格尊重義務を失っていると思うんですね。

 その意味において、今までは、子連れで別居することに関して、理由があって別居していることに関して、略取誘拐だというふうに一方の親を罵る、まあ、罵っていない、指摘でもいいですよ、相手を犯罪者、犯罪を犯している人だ、あなたのやっていることは犯罪行為だというふうに一方的に言い、それをまた対外的に、ソーシャルメディアでも結構ですし、友人に対してでもそうですけれども、相手に対してその理由自体の存否を確認するまでもなく、及び、確認したとしても一方的に相手に略取誘拐なのだというふうに言っているような方は、私は、今、前段で一般論とお話しいただいた人格尊重義務を損ねていると思いますけれども、大臣、どう考えますか。

小泉国務大臣 あくまで一般論として申し上げれば、そのとおりだと思います。

寺田(学)委員 実子誘拐だ、略取誘拐だと言っているような状態で、いや、本当にそういう行為が、もちろん論理上は起こり得ることはあると思いますよ、そういう罪目があるわけですから、その構成要件に該当するようなケースが論理上あるとは思いますけれども、事こういう、先日、私、質疑の中で立ちましたけれども、生活基盤を全部なげうってほかのところに逃げるということは、生活基盤をつくる苦労を知らない人にしてみれば簡単にやったことだというふうに見えるかもしれませんけれども、一個一個つくっていった方々にとってみると物すごい大きな判断ですから、私は、何かしらの理由、もちろんDVのみならず様々な理由があって、生活基盤を全て捨てて逃げざるを得なかったんだろうなということは一般的に推測できます。

 ただ、それに対して、全て実子誘拐なのだ、略取誘拐なのだというふうに決めつけて言うような関係性の中で、要件にあるような人格尊重義務が果たされているとはおおよそ言えないと思いますので、先ほど大臣が一般論として、そういうような相手に対して犯罪行為をしているぞというふうに言う人にとっては一般的にそういう義務を果たしていないと思うという答弁をされたことは大きい一つの指針だと思います。

 これは、冒頭申し上げたとおり、どういう場合においては単独、どういう場合には双方合意していなくても共同になり得るのかということが物すごく判断が分かれているというか、不安になっている方が多いので、単純にですけれども、DVやDVのおそれ、それが存在しない場合においても、当然ながら単独親権と認められることはありますよね。いや、うちはDVもない、DVのおそれもない、だから共同親権なのだということではないですよね。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、裁判所は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないものとした上で、必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待等のおそれがあると認められるとき、DV被害を受けるおそれ等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことは困難であると認められるときを挙げております。

 この規定によりましても、DVの事実やそのおそれがないことのみをもって裁判所が必ず父母双方を親権者と定めるというわけではありません。

寺田(学)委員 もう一点、養育費を払っているから共同親権として認められるのだ、直ちに認められるのだというのも解釈としては間違っていますよね。

竹内政府参考人 先ほど申し上げましたような基準の中で、養育費の支払いのような子の養育に関する責任を果たしてきたかも重要な考慮要素の一つであると考えられます。もっとも、本改正案は、養育費の支払い実績があるという事実のみをもって裁判所が必ず父母双方を親権者と定めるというわけではありません。

寺田(学)委員 今回、この法改正自体が、先週も申し上げましたけれども、法制審の中においても、そして与党の議論の中においても慎重派と賛成派の方々の激しい意見を重ね合わせた上で、お互いが了解できるところということで出されてきた部分があるので、物すごく玉虫色になっている部分があります。その玉虫色の部分をこうやって審議の中で一つ一つ整理をしていくことは非常に大事なことだとは思っていますが、とはいえ、過去において、もちろんそれは自由なんですけれども、その法文、法案に対して御自身の解釈を対外的に発信することによって誤った情報発信になっていることも私は散見されるなと思っています。玉虫色であるがゆえに、自分の解釈を重ね合わせて、こういうふうに決まったのだと言って、それが拡散されていくことは私は望ましいことじゃないと思っています。

 いろいろあるんですが、一点、自民党の先生の中で、これは先々月ですかね、ツイッターで発信された内容ですけれども、党の法務部会で、家族法改正案の条文審査の中で、子の利益のための父母(離婚後含む)の協力義務に加え、一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときは他を親権者とされるとなっており、フレンドリーペアレントルールが採択されたというふうに解釈をして発信をされて、かなり多く広がっているんですよね。

 このフレンドリーペアレントルールに関しては、再三、民事局の方が決まった定義はありませんということを言われているので、今定義を聞いたところで意味はないのであれですが、この方が発信されている、一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときは他を親権者とされるとなっており、フレンドリーペアレントルールが採択されたと言っていますけれども、一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときは他を親権者とされること自体は、父母間の協力義務を定めたものですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案の民法第八百十九条第七項第一号は、裁判所が必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときを挙げております。

 この規定は、父母と子との関係に着目したものでありまして、父母相互間の関係を直接規定するものではありません。

寺田(学)委員 なので、フレンドリーペアレントルールが何なのかということは、それぞれの解釈はあると思いますが、そもそも、今申し上げた、一方が子の心身に云々というところは父母間の協力義務を定めたものではないという、当然ながら、当たり前ですけれども、見解がなされました。

 この手のことも含めて、様々なこと、私が非常に危惧しているのは、先週の議論の中でも、特段の理由なく、ここはすごく大事な言葉なんですけれども、特段の理由なく子供を連れ去ったということは精神的なDVになるかということを、特段の理由なくというところはなしに、子供を連れ去ったこと自体が精神的DVになるのだとか、子供を理由なく引き離して相手側に会わせないということを、相手側に会わせないということ自体は略取誘拐にもなるのだみたいな、特段の理由とか、子供を理由なくとか、そこが物すごく大事なことであるんですが、そこをある種重要視せずに、後段の、子供を連れ去ったとか、引き離した、相手に会わせないということをもって精神的DVということが成り立つというふうに答弁されたのだと誤解される方々も多くて、ここは本当に、特段の理由というのは民事局的には急迫の事情ということになるとは思いますけれども、しっかりとそこを踏まえた上で正しい理解を広げていかないと、結局のところ、誤解に基づいて訴訟を起こされる場合においては、全くもって本当に負担、本質的にはしなくてもいい負担をするケースが増えますので、そういう正しい見解というものをしっかりと告知していく必要があると思いますし、そういう意味では審議というのは物すごくこれからも大事であると思います。

 子連れ別居の議論の際にいろいろ略取誘拐罪の話が出てきているんですけれども、これは刑事局に聞きますけれども、一方の親が子を連れて住所を変更した場合に略取誘拐罪で有罪になった事例というのは把握されているんですか。

松下政府参考人 まず、前提として、親権者でありましても、子を自己又は第三者の実質的支配の下に置く行為の態様等によっては刑法第二百二十四条の未成年者略取誘拐罪が成立する場合があり得ます。

 委員御指摘の事案における犯罪の成否についてはお答えは差し控えますけれども、未成年者略取誘拐罪が成立し有罪となった事案についてということでございますが、法務当局としては、そのような観点から網羅的、統計的に把握をしていないので、お答えすることは困難でございます。

寺田(学)委員 だから、脅迫や欺罔を使って何とかという構成要件があると思いますが、安易に、やはりさっき言ったとおり、特段の理由というか、その人の理由があってそういう行為をしていること自体を、その理由があるなしをほぼ捨て去って、子を連れて別居した状態のことをそういうふうに言う人が物すごく多くて、私に対しても指摘をする方も多くて、非常にこれ自体は先ほどの共同親権を認める要素の人格を尊重する義務にも私はもとると思いますし、大臣も一般的にはそういう相手を犯罪者と言い放つこと自体が人格、協力義務を損ねているという判断がありましたので、こういうこと自体は本当にクールダウン、クールダウンという言い方がいいのか、そういうような主張を繰り返すこと自体を厳に慎んでしっかりと真実を認める関係というものがあるべきだと私は思います。

 子連れ別居の際に、その理由があるかないかみたいな話をしていますが、特段の理由ということも、民事局、質問者に答える形で理由をお話ししていますが、この特段の理由、急迫の事情ですけれども、それにはどういうものがあるのかというのを列挙していただけますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、特段の理由なくというところについて御説明させていただくのでよろしいでしょうか。(寺田(学)委員「はい、どうぞ」と呼ぶ)四月五日の衆議院法務委員会におきまして、父母の一方が子を連れて別居することが父母相互の人格尊重義務に違反するとかやDVに当たるかにつきましては、個別具体的な事情の下でそう判断されることがあり得ると答弁させていただいたものです。委員お尋ねの特段の理由なくというのは、例えばDVからの避難などの急迫の事情があるわけではないのにという意味で用いたものでございます。

 その上で、本改正案の内容について改めて御説明をさせていただきますと、父母双方が親権者である場合には、子の居所の変更を含めて親権は父母が共同して行うとした上で、急迫の事情があるときは父母の一方が親権を単独で行うことが可能であるとしておるところでございます。

寺田(学)委員 最後、大臣にちょっと聞きたいんです。

 今、DVの件は非常に大事なので、DVやDVのおそれがある場合においては共同親権を避けて単独親権にするという仕組みにすること自体は当然というか大事なことだと思うんですが、ちょっと、ややDVやDVのおそればかりに集中をして、また、推進される方々においても、いや、それは当然ながら除外すべきだという言い方をしているんですが、私は、夫婦間においては、DVやDVに準じるような、そのおそれも含めた行為だけではなくて、本当の不和というものもあると思うんです。

 全くもって価値観が違うとか、全くもってコミュニケーションが取れない。それは威圧的な態度じゃなくてもです。モラルハラスメントもよく言われますけれども、お互い、食卓に着いても一切言葉を交わそうとしないであったり、交わすにしろ、夫婦間であるにもかかわらず物すごく冷たい言い方でしか言わないとか、すぐ部屋に閉じこもってコミュニケーションを取ろうとしないとか、様々そういうケースがあると思いますので、制度上、どういういきさつかは別として、本人合意がない中においても裁判官が共同親権を審判できるという仕組みにしているんですが、DVやDV以外のことについても十分考慮して、そういう慎重な判断をするということについて御答弁をいただければ。

小泉国務大臣 これまでも御説明していると思いますが、親権の在り方を裁判所が決めるときには、全ての要素、全ての人間関係、全ての経緯、全ての状況を勘案して決める、その中に今の問題も当然含まれると思います。

寺田(学)委員 終わりますけれども、大臣から、先ほどの条文の読み方として、最低限のコミュニケーションが必要だという状態で、最低限のコミュニケーション自体は、ただ言い合うではなくて、しっかりと物事を決めていくような状態のことをお話しをされました。そういうことをどんどん積み重ねて、この法文自体の内容を今後も明らかにしたいと思いますので、よろしくお願いします。

武部委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹でございます。

 私からも、まず、今回の民法改正案の審議において、今寺田委員がおっしゃいましたけれども、離婚協議中、若しくは離婚後の同居親、別居親、どちらか一方の立場に立って我々議論することは十分にあると思いますけれども、どちらかを犯罪者扱いして議論する傾向が残念ながら散見されております。私どもはそういう認識は捨て去って審議しなければならないというふうに思います。本委員会全体で確認したいというふうに思います。

 それでは、四月三日に参考人質疑が行われました。これについて、当時、そのときは法務大臣いらっしゃらなかったんですけれども、どのように御覧になったんでしょうか。リアルタイムで院内放送なのか、後で御覧になったのか、未定稿の速記録を御覧になったのか、それとも、後で担当の職員の方から御報告があったのか。

小泉国務大臣 速記録をゆっくりと読ませていただきました。

道下委員 特に、速記録でしたら大体想像、イメージはつくと思いますけれども、私どもがお招きした斉藤参考人、つい立てやボイスチェンジャーを使用するという特別な措置を講じたことに感謝をおっしゃっていらっしゃいましたけれども、そうした特別な措置を講じても、元夫から居場所を突き止められることや、SNS等での誹謗中傷、犯人捜しのおそれがあり、この場に立つことはとても怖いですと語られながらも、同じ状況にあるDV被害者の代表として意見陳述と質疑応答をされたこの斉藤参考人について、どのように思われたでしょうか。

小泉国務大臣 身体的な暴力、精神的な暴力、あるいは性的暴力を含むDVによって、本当に傷ついていらっしゃる、また、様々な生命に対する不安もある、そういう厳しい状況であるにもかかわらず、国会の場にお越しをいただいて御意見を述べていただいたこと、本当に勇気のある、大変敬意を表するべき行動であるというふうに思いました。

 また、お話しされている内容も、DV被害の厳しさ、また、それによって傷つくことの苦しみ、そういったものがじかに伝わってくるのを感じました。

道下委員 そうした思いを受け止められた大臣であれば御理解はいただけると思いますが、今日、私、資料を配付させていただきました。

 我が党が、この民法等の一部を改正する法律案に対する修正項目案というものを御提示して、今、与野党間で協議をさせていただいております。この中には、斉藤参考人や他の参考人、これは、今回の民法改正案に賛成する立場の方も、また慎重、反対の立場の方も、それぞれ、おっしゃっているようなことも非常に網羅したものだと私どもは思っています。

 本則の修正としては、離婚後の父母双方が親権者となる場合における監護者の定めの義務づけや、離婚等の場合の親権者の定めに関する修正として、父母の双方の合意がない場合には共同親権を認めないこと、親権者変更の厳格化、意見聴取等により把握した父母及び子のそれぞれの意思の考慮の明記、それから、親権の行使方法等に関する修正としては、共同親権が原則でないことの明確化、それから、共同親権行使の例外の拡大、ここには、例えば、今、急迫の事情ということは、対象としては非常に狭められてしまうのではないかということなので、必要かつ相当である場合というふうに文言を修正すべきではないかというもの。

 それから、附則に関しては、今、公布の日から起算して二年というものを、五年を超えない範囲において政令で定める日とかいうことを書いていますし、家庭裁判所の人的体制の整備、親権者の定めの規定の趣旨及び内容の周知、配偶者からの暴力に係る加害者の更生のための措置、それから、協議による親権者の定めの真意性の確認措置等についての検討を、我々としては修正項目として出させていただいています。

 これは事前の通告はないんですけれども、これは事前に御覧になりましたでしょうか。どのような御意見をお持ちでしょうか。

小泉国務大臣 全く拝見しておりません。国会で検討されるべき事項だと思います。

道下委員 是非、もしお時間がありましたら御覧いただいて、多くの参考人や我々の議論、そして、国民の多くの意見が含まれているものだというふうに御理解をいただきたいというふうに思っています。

 この修正項目案について、我々としては、特に、アメリカの心理学者であり、離婚が子供や当事者に与える影響について長年研究された、本当に大きな権威でいらっしゃいます、ジュディス・ウォラースタイン博士、この方の考え方も盛り込ませていただいているんです。この博士が、離婚後も父母が協調、協力して、子と継続して交流を続けることができれば、離婚は必ずしも子の生育にとって悪影響を生じさせるものではないという研究発表をしたことについて、大臣は御存じでしょうか。また、その見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 御指摘のウォラースタイン博士の研究発表があることは承知しておりますけれども、御指摘の研究内容についての詳細は存じ上げません。

道下委員 ウォラースタイン博士のこの研究結果が出された後、欧米は、その研究結果を受けて、父母で面会交流の実施などにおいて均一的、平等的な共同養育を積極的に推進する法改正を実施してきたのですけれども、実は、それによって子と同居親の生命身体に深刻な事態を生じさせることが実際多発したわけであります。

 葛藤的なコペアレンティングは、子と同居親に悪影響を与えたということは御存じでしょうか。また、その見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 御指摘の欧米諸国の法改正の経緯については、詳細は存じ上げておりません。

 もっとも、法制審の家族法制部会の調査審議においては、心理学分野の先行研究に関する報告がなされたほか、児童精神科医からのヒアリングも実施されたと伺っております。

 その中で、離婚後の父母の葛藤が高い関係性、葛藤的コペアレンティングは、子供の環境への適応を直接低下させることが知られており、これをいかに協力的な関係性に転換していくかが重要であるということが指摘されたと承知をしております。

道下委員 今、大臣からの答弁で、海外の法改正については承知していないという答弁、ちょっとびっくりしました。ある程度御理解なさっているのかなというふうに思ったんですけれども……(小泉国務大臣「詳細はね」と呼ぶ)詳細は御存じないということで、大体は御存じだということですね。はい、分かりました。

 そのウォラースタイン博士がこの研究結果で最も訴えたかったのは、裁判所の命令の下で厳密なスケジュールに従って行われる親と子の交流などについては、子の成長に有益どころか有害であるということなんですね。子供の心身に取り返しのつかないような事態を生じさせることになるというふうに、この研究結果の発表の後段でそういったことを訴えているわけです。

 そういった点があることは御存じでいらっしゃいますでしょうか。また、その見解について伺いたいと思います。

小泉国務大臣 法制審の家族法制部会では、御指摘の研究結果についての御指摘の点が同部会の委員から紹介されたほか、児童精神科医のヒアリングにおいても、親子交流の実施が子に悪影響を与える場合もあることが指摘されたと承知しております。

道下委員 そういう法制審家族法制部会等での議論も御承知ということであれば、なおさらこうしたことは御理解いただけると思いますけれども。

 民法改正で共同親権が導入された場合、子供と父母双方が柔軟に受け入れて、協力、協調して面会交流などが行われることは私はよいと思いますけれども、ウォラースタイン博士が警鐘を鳴らしたような、共同親権を理由に厳密なスケジュールに従って強制的に行われる親と子の交流などが実施されることにより、子と同居親の生命身体に深刻な事態が発生し得る可能性が増えるおそれがあるのではないかというふうに、非常に多くの皆様が不安に、また恐れを持っていらっしゃいます。

 そんな深刻な事態は発生しないというふうに言い切れますでしょうか。是非、言い切っていただきたい。そのための様々な法制度や今後の様々な対応をしていくというふうにおっしゃっていただきたいというふうに思います。

小泉国務大臣 離婚後の親権者、これをどのように定めるかという問題と親子交流の頻度や方法をどのように定めるかという問題は、別のものとして基本的には捉える必要があると思います。

 その上で、親子交流の頻度や方法は子の利益を最も優先して定めなければならないとされており、この点は本改正案による改正後も変わらない、こうした本改正案の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めてまいりたいと思います。

道下委員 これは、国民に対する周知、広報もそうですけれども、やはり家庭裁判所の裁判官や調停委員また調査官という皆様もそうした点はしっかりと認識をしていただかなければならないというふうに思います。

 前回の参考人招致のときに、この家裁における調停又は調査官から、本当にそういうDV被害を説明しても、とにかくこの親子交流を、面会交流をするのが当たり前なんだというような認識をずっと持っていらっしゃる調査官だとか調停委員が、やはり参考人の質疑でそういった方がいらっしゃるということが発言されたわけでありますので、やはりそういった点は、今、大臣がおっしゃったようなことがしっかりと家裁の関係者の方々にまで行き渡るように、浸透するように、最高裁判所等とも連携して取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 次に、親権の行使方法等について伺いたいと思います。

 まず、ちょっと大きな話なんですけれども、これは政府参考人に伺いたいと思います。

 離婚後共同親権の一方の親が、自治体の行政手続で、民法改正案第八百二十四条の二、三号、「子の利益のため急迫の事情があるとき。」の「急迫」であるとして、手続申請した場合、自治体は急迫をどのような基準で判断し、手続の受理、不受理を決めるのか。法務省はその基準を設定していますか。伺いたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 地方自治体における行政手続に関しまして、子の親権者や保護者が行うべき行為につきましては、第一次的には当該行政手続の根拠となる法令を所管する各府省庁において検討されるべき事項ではありますが、当然のことながら、法務省といたしましては、この法案提出に至るまでの間に関係府省庁等と検討を行ってきたところでございまして、その際には、法律関係が類似する婚姻中別居の場合の各法令における取扱いを参考にして、離婚後共同親権を導入した場合にどのような取扱いがされることになるかについて検討してもらうよう、協議を重ねてきたところでございます。

 その上で、親権者が行う行政手続を検討する上でも、親権の行使方法に関する民法の規定の解釈を明らかにすることは有益であると考えておりまして、例えば、お尋ねのあった急迫の事情につきましては、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合を指す、こういうふうにされております。

 今後も、本改正案の趣旨が正しく理解され、離婚された方々が各種手続において困惑することのないよう、関係府省庁と連携して、地方自治体の現場などに対し適切かつ十分な周知をするよう努めてまいりたいと考えております。

道下委員 今、政府参考人が急迫における説明をしていただきましたけれども、かといって、やはりいろいろ様々な具体例を挙げなければ、なかなか現場で対応する方々が分からないというふうに思います。

 ちょっと順番を入れ替えまして、今日、中野政務官にも答弁に立っていただきます。どうもありがとうございます。

 それで、子の居所、進学、手術などについて、急迫の事情があるときの単独親権の行使は、今後、法務省として限定列挙する予定なのか、それとも例示にとどまるのか、伺いたいと思います。

中野大臣政務官 お答えいたします。

 本改正案では、父母双方が親権者である場合には、親権は父母が共同して行うこととした上で、子の利益のため急迫の事情があるときは親権を単独で行使することができることとしております。

 子の利益のための急迫の事情があるときとは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがある場合のことを言わせていただいております。

 急迫の事情に該当する例としましては、これまで国会の審議の中で、入学手続のように一定の期限に親権を行うことが必要な場合や、DVや虐待からの避難が必要であるような場合、緊急の医療行為を受けることが必要な場合があることを説明してきたところでありますけれども、いずれも例示であり、急迫の事情が認められる場合はこれらに限定されるものではございません。

 今後も、この法案が成立した後にも、その趣旨を正しく理解されるよう、関係省庁とも連携をして適切かつ十分に周知を進めてまいりたいと存じます。

道下委員 私の問いに対する答えということは、例示ということだというふうに思います。

 この例示に関しても、これは特にDV被害者の方も含めてなんですけれども、本当に、離婚している父母の方々、全体的に、こういった場合はどうなるのかというのが非常にまだまだ分からないところがたくさん出ています。

 今、質疑、答弁で少しずつ、例えばワクチンはとか、あとは海外への修学旅行だとか、いろいろな場合分けで答弁がいろいろ返ってきていますが、ただ、もう一つ、当事者のみならず、自治体や病院や学校現場で、こういったときどうするのかというのは、今回、単独親権のみだったものが、単独親権と共同親権という二つができるわけであって、それで非常に複雑化していくわけですね。そうした中で、現場が、今もどうなるんだろうということで不安に思い、そして、早くガイドライン、何かいろいろなものを提示してもらいたい、設定してほしいというような声を受けております。

 そこで、今日、総務省、政府参考人にお越しいただきました。どうもありがとうございます。

 そこで、離婚後共同親権を持つ同居親と子が転居する際、転出元と転入先の自治体は別居親の同意の有無を確認しなければならないのか、確認は不要なのか、伺いたいと思います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 住民基本台帳制度におきましては、住所は、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の主観的意思を総合して決定することとされています。その上で、住所に関する市町村長への転入又は転居届は、転入又は転居した日から十四日以内、転出届は、転出することが確定した後、その住所を去るまでの間にその事実を届け出る取扱いとされております。

 未成年者に係る届出につきましては、転入転出などの事実や、現に届出を行っている者の代理権等を確認し、転入転出等の処理を行っておりまして、共同親権者である父母双方の同意は求めておりません。

 今回の民法改正後における転入転出等の届出につきましても、現行の共同親権である婚姻中における取扱いと同様と考えておりまして、基本的には現行の事務の取扱いを変更することは想定していないところでございます。

道下委員 今の御答弁で考えますと、どちらか一方の親が子供と転居した、その届出をした、それを受理した、一方で、別居親はその話は聞いていないと言って、それで自治体を訴えるということはない、訴えられても、それは自治体側には非はないということでよろしいですね。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、住民基本台帳制度におきましては、住所は、客観的居住の事実を基礎として、これに居住者の主観的意思を総合して決定することとされております。

 未成年者に係る届出につきましても、転入転出の事実と、それから現に届出を行っている者の代理権等を確認し、転入転出等の処理を行っているところでございまして、共同親権者である父母双方の同意は求めておらないところでございます。

 今回の改正後におきましても、この取扱いについて、基本的には現行の取扱いを変更することは想定していないというところでございます。

道下委員 別居親の同意は取ったんですかとか、そういう確認はしないということであり、別居親からなぜ受理したのかと訴えられても、いや、それは総務省というか法務省というか、国として、そういう受理をした自治体は、それは非はないと。

 改めて、ちょっと、明確に答えていただきたいんですけれども、これは、総務省では無理でしょうか。

三橋政府参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、住民基本台帳制度におきましては、住所は、客観的居住の事実を基礎として、これに居住者の主観的居住意思を総合して決定するというふうにされております。

 したがいまして、今回の民法の改正後におきましても、この届出につきまして、客観的居住の事実と、それから届出者の代理権等の確認をした上で届出を取り扱うということを想定しておりまして、現行の取扱いを変更するということは想定していないというところでございます。

道下委員 ちょっと明確な答弁がないので、これは、改めて総務省と法務省で事実確認等を含めて法制度上の整理をしていただきたい。今度、後日また伺いたいと思います。

 時間も参りましたけれども、婚姻中若しくは離婚後共同親権に合意した場合のDV避難の行政手続について、DV避難してきた場合、住民登録の異動は、制限なく、本人、これは、子供を連れたDV被害を受けた一方の親の主張で可能だということは、先ほどの答弁のとおりですね、よろしいですね。

三橋政府参考人 先ほどから答弁しておりますとおり、この届出につきまして、共同親権者である父母双方の同意は求めていないというところでございます。

道下委員 ありがとうございます。

 もう一つ、総務省の政府参考人に伺いたいと思います。

 民法改正案が成立、施行された場合、自治体が行政事務において、離婚後共同親権を持つ父母双方の同意を得る必要、義務が発生した場合、条例や規則等の改正が必要になる可能性はあるのでしょうか。伺いたいと思います。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 総務省は自治体が行う行政事務全般については所管しておりませんので、行政事務全般についてお答えすることはできないところでございますけれども、住所の居住関係の公証など、住民に関する事務処理の基礎となる住民基本台帳事務に関して申し上げますと、先ほどお答えしましたとおり、今回の民法改正後におきましても、転入転出等の事務の取扱いについて、基本的にはこれまでの取扱いを変更することは想定していないところでございまして、現時点では、住民基本台帳関係事務において、各自治体が条例や規則等の改正を行うことは想定していないところでございます。

道下委員 ありがとうございます。

 ただ、全般は承知していないということでありますので、もしかしたら条例や規則の改正等が起こる。そうすると、また時間がかかって、様々な議会での改正などをやらなきゃいけない。これは非常に時間がかかると思います。

 そういうことを考えると、私は、この法公布後二年以内に施行するというのは余りにも拙速ではないかというふうに意見を申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の池下卓です。本日もよろしくお願いしたいと思います。

 今回の共同親権の審議といいますのは、慎重派、また推進派の方々、それぞれ当事者の方々が多くいらっしゃいます。参考人質疑におきましてもDV当事者の女性の方からお話がありましたし、私の方にも、夫婦間のDV被害者といいますのは、女性ばかりではなくて男性の方々もたくさんいらっしゃるということを聞いております。

 今回は、子の連れ去りに関しまして、妻ばかりが連れ去りを行っているわけではなくて、逆に夫側に連れ去られた妻側の悲痛な声を議事録に残させていただきたいこと、また、家庭裁判所の判断の際に、こういう事例が本当にたくさんあるんですよということを知っていただきたいこと、また、大臣にもこの声を聞いていただきまして、法改正についてどのように感じるのかということについてお伺い、そして紹介をさせていただきたいと思います。

 資料の方を御覧いただきたいと思いますが、これは実際に発生した片親による実子の連れ去りの事例です。四例ほど資料の方にも入れさせていただいております。

 一例目は、お母さんからのお手紙をお預かりをさせていただいておりますので、後ほど拝読させていただきたいと思います。この一例目の例なんですけれども、これは、面会交流調停で直接交流の審判が決まったんだけれども、親権者拒否のため六年間交流ができていないというお母さんと娘さんの例になります。

 二例目ですけれども、これは、子供たちに気づかれないように遠くから見守るという形の調停条項に不本意ながら応じざるを得なかった結果、親子断絶が二十七年間も続いているという例になります。これはお手紙の後半の方で挙げさせていただきたいと思います。

 三例目、こちらの方は、婚姻中に元夫が不貞相手の女性に子供を産ませて家族のふりをしていた事例というものになります。この女性は自宅から締め出されて、連れ去り後に住所を隠蔽されて、四年間、母と子が断絶しているという例になります。

 四例目、これは、離婚時に定期的に面会交流等の取決めをしたんですが、十五年間お子さんと会えなかったものになります。これは後に親権を持った父親が亡くなったということなんですけれども、別居親との関係がもう完全に断ち切られていたため、そのお子さんは、その後の人生でもう一方の親から受けられたはずの支援が受けられていない状況で放置されているという事例。

 もう本当にいろいろなケースがあるんですけれども、例として載せさせていただいております。

 それでは、先ほど申し上げました一例目の、私の方に託されたお手紙の方をちょっと読まさせていただきたいと思いますので、お聞きください。

 離婚を経験し、元配偶者が親権者となり、親権者が拒否をしているというだけで自分の子に会うことができなくなった女性当事者です。それぞれ親子の交流がない期間が四年、六年、十五年、二十七年と長期にわたっています。資料で提出した女性は誰一人DV加害者ではありません。もちろん児童虐待もしておりません。誰にも危害を加えたことがありません。親子の関係が長期断絶してしまっているので、親子関係に溝が入り、関係構築が難しい状況であるということも共通しています。

 私は離婚後、元夫に娘に会わせてもらえなくなったので面会交流調停を申し立てた結果、裁判所の審判で娘と会うことが決定されました。面会交流調停は二年半もかかりましたが、これで決まればやっと娘に会えるようになると信じて長年裁判所に通いました。しかし、元夫が裁判所の審判に従わなかったため、娘に会うことはできませんでした。調停で決まったことを守るよう裁判所が元夫に履行勧告をしましたが、無視されました。元夫やその家族に電話やメールをするも無視され、一切連絡が取れなくなりました。

 そのとき、既に三年近く娘に会えていませんでしたので、心配の余り、娘の住む義母の家を訪ねましたが、警察に通報され、追い返され、娘の無事を確認することすら許されませんでした。その後、娘に会いたいとの一心から、面会交流の審判が守られないことに対する慰謝料請求の裁判を起こしました。

 調停でも裁判でも、元夫が強く拒否したため、一度も娘の意見の聞き取りが行われていないにもかかわらず、一審では、娘が会いたくないと言っているという元夫の一方的な主張が認められ、棄却されました。

 高等裁判所での控訴審では、裁判官から、娘さんのことを引き合いに出してお母さんが勝訴をしてお金を取ること、この裁判で勝つことが一番よくないと言われ、取り下げるよう説得され、面会交流調停を申し立てるように言われましたが、二年半もかけた面会交流調停での娘に会えることができる審判は何の意味があったのでしょうか。

 司法の場を通した手続で会えることが決定しても、相手が約束を守らなければ会えるようになりません。親子の交流に対する審判に強制力も拘束力も罰則もなく、裁判所の審判を守らせる方法がないからです。司法の決定が意味を成さないため、自力で動けば警察に任意同行を求められます。私はどうしたら娘に会えるようになりますか。もう六年間も我が子と会えません。

 そもそも、私が親権者を元夫にすることを了承したのは、離婚後にシングルマザーになる予定であると正直に伝えながら就職活動をしていたところ、正社員として仕事が見つからなかったためです。企業側も、一人で子育てをしながら勤務する女性に十分な働きは期待できないと考えたのでしょう。そこで、仕方なく親権者を元夫としたところ、職を得ることができましたが、親子関係に問題はないにもかかわらず交流を拒否するという元夫の理不尽な行為に対抗することができなくなってしまいました。

 次に、別の女性当事者さんのケースでは、離婚後に二人のお子様と会えなくなり面会交流調停を申し立てましたが、子らに気づかれないように遠くから見守るという条件を守れば学校行事に参加することは妨げない、子らに話しかけるなど、子らが気づくような方法の接触をしないという余りに理不尽な内容で調停に応じざるを得ませんでした。それでも、いつか子供たちと会えるようになると信じ、自分が産んだ子供に話しかけてはいけない、気づかれてはいけないという裁判所の理不尽な取決めを守り続けました。自分の産んだ子供たちを抱き締めたい、愛情を注ぎたい、成長を見守りたい、そんな感情を押し殺して、遠くから子供たちを見守りました。

 しかし、その結果、二十七年間も二人のお子様と会うことができず、親子の縁が途絶えてしまいました。成人した子供たちに対して面会交流調停を起こすも、子供の頃から交流がないから親とは思えないと言われてしまいました。こんな悲しいことが今この日本では頻繁に起きています。

 DVや虐待の加害者でもないのに、子に話しかけてはいけない、子に気づかれないよう遠くから見守るという余りに理不尽な条件を裁判所は平然と言い渡します。間接交流という、写真を送付するだけの交流形態が言い渡されることもよく耳にします。子に会えたとしても、月に一回、二時間程度の日帰り交流が日本の裁判所で言い渡す標準となっています。このように、親子交流についての裁判所の判断は、DVや虐待などがなく親子関係に問題がない別居親子に対して余りにも非人道的なものであります。

 単独親権制度の下、何も問題のない多くの仲のよい親子が引き離され、親子関係を絶たれています。この度の法改正で、別居や離婚をしただけで親子が生き別れになるような日本の制度は終わりにしてほしいです。共同親権制度への法改正が行われ、離婚をしたとしても子供は父母が共に関わり育てるということが世間に浸透すれば、片方の親からの連れ去りや引き離しと呼ばれるひどい行為を抑制することができるようになると思います。

 単独親権制度により、愛する娘との関係を絶たれ、死ぬほどの悲しい思いをさせられている当事者の一人として、この手紙を書かせていただきました。親に会えなくて苦しんでいる子、子に会えなくて悲しんでいる親が一人でも減るように、実効性のある法改正を何とぞよろしくお願いします。

 今、御紹介を申し上げました。私、読んでいてもちょっと涙が出そうになったわけなんですけれども、このお話、このお手紙、この事例、これを聞かれまして、大臣、この法改正に対する思いを改めてお伺いをしたいと思います。

小泉国務大臣 御紹介いただきました今の例を拝聴しますと、お子さんと引き裂かれて、別居が続き、会えなくなる、縁が切れてしまう、そういう親御さんの苦しみ、つらいお気持ち、本当に伝わってまいります。こういう事例があるんだということもよく念頭に置いて、またこの委員会においても皆さんとともに共有をして法改正に取り組みたいと思います。

池下委員 ありがとうございます。

 今回の審議の中では、DVの方を守ってあげなきゃいけないというのは当然のことながら承知をしております。参考人の方もつらい思いをされたというのを承知をしておりますし、ただ、やはり、一方で、こういう、親子が引き離されているという環境にある方々がたくさんいらっしゃるということが、まずこれが議事録に載るということが私は大事だと思いますし、この審議が始まる前に、なかなか前例がない、単独親権から共同親権になるということですので、やはりこの審議の内容というものが裁判所での判断に非常に重要になってくるという話もさせていただきましたので、あえてちょっと挙げさせていただきましたことで、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、改めて、ちょっと時間もなくなってきますので、質問の方をさせていただきたいと思いますが、監護権の方についてお伺いをしたいと思います。

 今改正案の中でも何度も出てきていますけれども、父母の協議が調わない場合に、家裁が共同親権にするか単独親権にするか判断することになっていますが、加えて、共同親権とした場合に監護者の指定ができるということがうたわれております。

 そこで、父母が協議で監護の分掌をする場合の事例、これを改めて国民の方に分かりやすく例示をしていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

小泉国務大臣 御指摘の監護の分掌の定めの具体的な内容としましては、例えば、子の監護を担当する期間を父と母で分担をする、あるいは、教育に関する事項など監護に関する内容、事項の一部を父母の一方に委ねる、こういったことがあり得ると考えられます。

池下委員 これまでも議論に出てきたと思うんですけれども、一方に任せる、どれだけの時間を負担をしてもらう、こちらが見るとかということにもなるので、やはりこれは、ある程度というか、しっかりとした共同養育計画、監護計画というものがなされていないと実効性がないものだと思います。当然、内容についても、初めての内容ですので、離婚後、親御さんに対してしっかりとガイダンスをしていくということは、もうこれは必要不可欠なことだと思っております。

 それでは、裁判所が命ずる監護の分掌におきまして、家庭によっては、当然、多種といいますか、いろいろな御家庭があるということは理解をさせていただいておるんですが、裁判所の判断基準、裁判所も、どういうケースがあるということで判断基準をしっかりと準備することが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。また、これはしっかりやった場合の法的担保があるのか。個別事案によって、本当に裁判所がこれまでのような自由裁量になってしまうという懸念もありますけれども、ガイドラインというのをしっかり作っていくべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 監護の分掌の在り方については、先ほども述べました、養育計画に関する調査研究を進めていますけれども、こういった取組を通じて具体的な事例を示してまいりたいと思います。

 その上で、家庭裁判所が、監護の分掌について定める必要があるか、どのような定めをするかは、個別具体的な事情に応じて判断されるべきものであります。

 もっとも、一般論として申し上げれば、家庭裁判所は、当事者が監護の分掌としてどのような内容の申立てをしたかを踏まえ、そのような定めをする具体的な必要性あるいは相当性等について、子の利益を最も優先して考慮しつつ、そのような定めをするかどうかも含め、判断することになると考えております。

池下委員 今後、調査研究というお言葉も出たんですけれども、今回は非常に大きな改正になります。ただ、当然、初めて単独親権から共同親権に変わる大きな改正になりますので、何年かたったら、やはり知見というのもどんどんどんどん積み重なってきて、いずれまた新しい改正ということになってくる可能性もあるかと思います。

 そういうときに、今、今後研究ということで言われていたと思うんですけれども、そういうところも、まだ全然早い話なんですけれども、次の改正のときにしっかりと反映できるような形で調査研究の方を是非していただきたいという具合に思います。

 ちょっと関連でお伺いをしたいと思うんですが、子の利益ということでお話もちょっと今あったんですけれども、では、実際、これは家庭裁判所で調停とか審判が下ったときに、先ほどもお手紙のお話をさせていただいたんですけれども、守られていないケースというのが本当にたくさんあるんです。法改正した後、どのように裁判所の決定やら審判やらが守られていくのか。ちょっと改めて大臣に、関連なのでお尋ねしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所において定められました、例えば親子交流等の条件でございますが、こういったものについては、家庭裁判所で定められた条件の内容が具体的に特定されていれば、間接強制というような手段もございますし、今回の改正におきましても、そもそも、親子交流の頻度や方法を定めるに当たっては子の利益を最も考慮しなければならないというような規律にもしているところでございますので、こういった規律を通じて守られていくものと考えております。

池下委員 この間も私は同じような質問をしたんですけれども、間接強制ということで、罰金的なものが積み立ったとしても、履行勧告をして、勧告ですから促すだけですので、結局守られていないというところになって落ち着いちゃっているのか、そういうケースがたくさんあるよということを今日御紹介させていただいたんですけれども、もう一回ちょっとお答え願いたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないことですとか、あるいは、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化することとしております。

 家庭裁判所が親子交流についての定めをしたものの、父母の一方がこれを履行しない場合、個別具体的な事情によりましては、先ほど申し上げました、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価される場合があると考えておりますし、あくまで一般論としてお答えをいたしますと、夫婦の一方が父母相互の人格尊重義務や協力義務等に違反した場合、親権者指定あるいは変更の審判や親権喪失、親権停止の審判等において、その違反の内容が考慮される可能性があると考えております。

池下委員 改めて確認させていただきました。人格尊重義務、協力義務ということで、改めて、親権の変更等の際にペナルティーになるというのは前回いただいていたかなと思うんですけれども、そういうところも含めてしっかりとやっていただきたいという具合に思います。

 時間の方もなくなってきますので、もう一つ質問をさせていただきたいなと思うんですけれども、今日も改正法のあれで急迫の事情の質疑があったかなと思います。急迫の事情があるとき、また、父母の双方が親権者だったとしても、監護の指定がある場合、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使は単独でできるとしております。

 急迫の事情、そして監護及び教育に係る日常行為での親権の行使というところなんですけれども、これを余りに極大に解釈してしまうことは逆に法理念に反するんじゃないかと思うんですけれども、見解をお伺いします。

小泉国務大臣 一般論としては、まず、子の養育に関する重要な決定について父母双方が熟慮の上で慎重に協議し判断することが子の利益に資することとなると考えております。

 他方で、その協議には一定の時間を要すると考えられることから、本改正案では、適時に親権行使をすることが困難とならないよう、子の利益のため急迫の事情があるときは親権の単独行使が可能であることとしております。また、本改正案では、監護又は教育に関する日常の行為をするときについても親権の単独行使が可能であるとしております。

 これらの場合に加えて親権の単独行使が可能な場合を拡大することは、子の養育に関し父母双方が熟慮の上で慎重に協議する機会を狭めることとなり、子の利益の観点から相当ではないと考えております。

池下委員 ありがとうございます。

 時間の方が来ましたので、質問をこれで終了させていただきたいと思うんですけれども、本当に当事者の方々がたくさんいらっしゃいますので、そういう方の気持ちをおもんぱかっていただきまして、是非とも実効性のある内容の方にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の美延映夫でございます。

 本日は、先日の法務委員会の参考質疑において各参考人の皆様から御説明をいただいた内容を基に質問をさせていただきます。先ほど、小泉大臣も速記録でお読みになったということを伺いましたので、よろしくお願いいたします。

 まずは、子の利益に関してです。

 四月二日の質疑における質問に対して、大臣からは、一般論としては、子の人格が尊重され、その子の年齢と発達の程度に配慮して養育がされ、心身の健全な発達が図られることとの答弁がありました。

 また、私、四名の参考人の皆様からそれぞれ御意見を伺いましたが、特に、山口参考人は明確に、米国では親子の頻繁かつ継続的な交流が子の利益であること、個人的な意見としても、双方の親から愛情と養育を受け交流し続けることが第一と御説明をいただきました。また、犬伏参考人も、子どもの権利条約の理念を具体的に子供たちの生活に落としていくことが重要と述べられました。言うまでもなく、子どもの権利条約では、第七条、父母により養育される権利、第九条、児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利が明記されています。

 四月二日は、先ほど我が党の池下議員が質疑されておりましたが、池下議員が、家庭裁判所で親子交流の手続において直接交流が認められるのは五一・三%にすぎないということを申しておられました。日弁連の調査結果からも、裁判所で合意した親子交流の四四%が全く会えていない、そもそも認容されない、また、仮に認容されても実効性がないことを指摘されております。

 四月三日の参考人質疑においては、我が国では月二回以上の親子交流ができている別居父については四・二%、一方、共同親権で先行する英国では月二回以上の交流は七一・四%にも上っているという頻度に関しての指摘をされてもいます。

 子の利益が切実に問題になる場面の一つとして、親子交流の認容をするか、認容するとして、どの程度の頻度や方法で行うかについて、裁判所で判断があるかと思います。これを判断するに当たって、どのような判断が一般的に言って子供のためになるのか、そうした指針を可能な限りエビデンスに基づいて決めておくことが私は肝要だと考えます。

 そこで、お尋ねをいたします。法制審議会家族部会において、参考資料十の一として、国内の心理学、社会学的な先行調査事例をまとめた資料が提出されています。この中で、親子交流が子供に及ぼす影響を取りまとめた章があると思いますが、ここにおいて、親子交流の有無及び頻度がそれぞれ子供にどのような影響を与えるとまとめられているのか、お答えください。また、親子交流の方法についても、宿泊つきでの実施とそうでない場合との比較があれば、その結果も含めてお答えいただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の報告書でございますが、父母の離婚後の子の養育の在り方に関する心理学及び社会学分野等の先行研究に関する調査研究報告書でございまして、これによれば、親の別居、離婚を経験した子供を対象とした心理学分野の複数の研究結果において、DV等がある事案を除き、親子交流が継続して行われている群の方が、親子交流が行われたことがない又は親子交流が中断した群と比べ、自己肯定感が高く、親子関係も良好であることが指摘されていると承知をしております。

 親子交流あり群の中で満足度と宿泊の有無の比率の差を検討したところ、宿泊ありの方が満足している割合が有意に高いことも指摘されていると承知をしております。

美延委員 そうなんですよね。交流した方がいい、交流するなら宿泊をした方がいいというのが指摘されているわけなんです。

 この資料なんですけれども、法務省の委託調査として行われたものと認識しておりますが、ちょっと確認させていただきたいんですけれども、法務省としては、この資料は、提出された令和三年十一月の時点において、ベストを尽くして国内の先行研究をまとめた信頼できるものと考えてよろしいでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の調査研究報告書は、日本における父母の離婚後の子の養育の在り方に関する心理学及び社会学分野等の先行研究につきまして、網羅的に調査及び収集を行うとともに、各研究成果相互の関係性等の整理を行うことを目的として行った調査研究報告書でございます。

 この調査研究は、五名の研究者が、米国家庭裁判所協会が示した社会科学の活用に関するガイドラインを参考に、特定の立場に偏らず網羅的に文献を収集するとともに、各研究の解釈の妥当性や限界に関しても可能な限り言及しているものでありまして、その方法、内容共に適切なものであると認識をしております。

美延委員 そういうことなんですよね。認識しているということで、適切なものであるということなんです。現在国内で得られている最も信頼性の高い調査結果からして、DVなどの場合を除けば、親子交流が継続的に行われていることが子にとってポジティブな影響を及ぼすということが分かってきたかと思います。

 そこで、小泉大臣に確認させていただきたいんですけれども、このような法務省としての調査結果からいいますと、DVなどの例外を除けば、親子交流が継続的に行われることは原則として子供の利益に合致すると私は思うんですけれども、大臣のお考えはいかがですか。

小泉国務大臣 父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると思います。また一方で、親子交流の実施に当たっては、安全、安心を確保することも同様に重要であると考えております。

美延委員 ありがとうございます。

 親子交流を継続的に行うことは基本的に子の利益に資するということで、本改正案が成立した際には、是非、そのような運用を裁判所でも実際行うよう、改めて趣旨を徹底していただければと思います。

 親子交流の頻度につきまして、更に伺います。

 同参考資料、十の一なんですけれども、頻度と子の発育には直接的な関連は見られなかったとのことですが、一方で、国内においての親子交流の頻度に関する調査研究はそもそも少ないことが指摘をされております。さらに、欧米の先行研究のように、量的研究を統合し、結果を一般化することが必要であるという指摘もされております。

 先ほど申し上げました山口参考人が法制審議会に提出した資料においては、欧米の論文が参照されておりまして、かなりの高頻度での親子交流が子の健全な発達に役立つということが統計的に分かってきているということのようであります。文化や制度の違いはもちろんありますが、子が両親をどれだけ必要とするか、そこは、同じ人間ですから大きな差はないと思います。

 そこで、法務省に伺います。こうした調査が国内で充実されるまでには長い時間を要すると思いますので、海外の既に共同親権を導入した国の調査結果、これはたくさんあると思うので、これを先行事例として取りまとめて、大いに参考にすることは有用ではないかと思いますが、法務省の御見解をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると認識をしておりますし、離婚時に親子交流も含めた子の養育に関する事項を取り決める養育計画を作成することも、子の利益の観点から重要であると認識をしているところでございます。

 委員御指摘のとおり、海外の調査結果でございますが、法務省では、これまでも、親子交流に関する海外法制を調査いたしまして、家族法制部会の調査審議の参考としてきたところではございます。

 今後も、適切な親子交流の実現に向けて、その支援を担当する関係府省庁と連携して取り組むとともに、親子交流を含む養育計画の作成を促進するための方策についても、関係府省庁と連携して引き続き検討してまいりたいと考えております。

美延委員 ともかく、国内のはまだ少ないわけですから、是非、海外の事例を参考にしていっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次、二点目の質問に移らさせていただきます。

 四月二日の法務委員会において、質問に対して、家裁が共同親権にするか否かを判断する際に、一方親の高葛藤等を理由に父母間で合意ができなかったとしても必ずしも単独親権を命じるわけではないと、大臣から答弁がございました。五日にも同様の質問、同様の答弁があったと私は認識しております。

 改めて伺います。そのような認識でよろしいんでしょうか。

小泉国務大臣 離婚後の親権者の定めについて父母の協議が調わない理由、それには様々なものが考えられます。そのため、当事者の一方の主張のみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さない、これはかえって子供の利益に反する結果となりかねないと考えます。

 したがって、本改正案では、裁判所は、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質、総合的に離婚後の親権者を判断すべきこととしております。

美延委員 これはもう一度確認なんですけれども、高葛藤で合意ができないという理由のみで単独親権が命じられることはないということでよろしいですか。もう一回、ちょっと確認、ここだけお願いいたします。

小泉国務大臣 いろいろな要素を総合的に勘案して決定されることになると思います。一つの要素があればもうそれで決まりというような仕組みではなくて、重要な要素かもしれませんが、その他の要素も、全体を見て決めていくということをこれは述べているわけです。

美延委員 ありがとうございます。

 そういうことで、高葛藤だけでということではないということで。

 次に、四月三日の参考人質疑でも、山口参考人は、父母の合意がなくても共同親権を命じる場合、一つには、両親と子供の関係性、二つには、親が自分たちの争いと親子関係を切り離す能力や素質があるかなどを考慮要素としていることを紹介していただきました。米国同様、我が国でも考慮要素としていくことを検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案におきましては、離婚後の親権者の定めについて父母の協議が調わないときは、裁判所が、子の利益の観点から、親権者を父母双方とするか、その一方のみとするかを判断することとしております。

 父母の協議が調わない理由には様々なものがあると考えられますことから、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねません。

 そこで、本改正案では、裁判所は、父母の協議が調わない理由等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であるかなどの観点も含め、親子の関係、父母の関係その他一切の事情を考慮して実質的、総合的に離婚後の親権者を判断すべきこととしております。

 委員御指摘のような事情につきましても、このような一切の事情に含まれ得るものと認識をしております。

美延委員 次に、共同親権を導入することによって、ずっと今も質疑にあるんですけれども、家裁の要員不足を懸念する声も多く聞こえてきます。これも山口参考人が、米国の州では全部こういう親教育があるということで述べられておられましたが、この親教育が有効な解決策になり得ると私は考えておるんですけれども、日本においても、アメリカ等の諸外国の事例を研究して、調査して、親向け講座の受講を促進していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると認識をしております。また、父母が離婚する際に、父母が養育費や親子交流を含めて子の養育に関する適切な知識を持った上で協議することは、子の利益を確保する観点から重要であると認識をしております。

 法務省は、これまでに、離婚後養育講座に関する調査研究を実施いたしまして、その中で、諸外国の取組についても調査を行い、その結果を公表したところでございます。

 今後も、関係府省庁等と連携して、親ガイダンス、講座の実施、受講を促進するための方策について引き続き検討してまいりたいと考えております。

美延委員 我が党としても、親向け講座は必要な施策と考えており、これは法改正後も政府に引き続き求めていきたいと思っております。

 続いて、共同養育計画書の作成についての質問なんですけれども、四月三日の参考人質疑において、法制審の大村部会長からの答弁で、法制審での議論において、共同養育計画書の作成が離婚後の子の養育に対して有効であるということに反対する意見はなかった、ただ、それを義務化することは見送られたとの答弁があったと思います。山口参考人からも、政府の養育計画書のサンプルや手続書を作っていく必要性についても述べられていました。

 そこでお尋ねいたします。このような共同養育計画書の作成に向けた支援について、政府としてどのように取り組んでいくのか、既に計画しているものがあるのか、併せて教えていただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の離婚時に養育費や親子交流を含めた子の養育に関する事項を取り決めることは、子の利益にとって望ましく、このような養育計画の作成の促進は重要な課題であると認識をしております。

 法務省といたしましては、委員御指摘の養育計画の作成を促進するための方策につきましても、関係府省庁等と連携して、調査研究等を含めて、引き続き検討したいと考えております。

美延委員 ありがとうございます。法改正に向けて、共同養育計画書の作成及び支援についても是非取り組んでいただきたいと思います。

 もう時間がないので、あと一問だけさせていただきます。

 改正案では、監護の分掌の定めが提案されています。この監護の分掌と現行民法第七百六十六条に既に規定されている親子交流や養育費の取決めを組み合わせると、ほぼ共同養育計画に近いものを作成することができると理解してよろしいでしょうか、どうでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 本改正案では、父母の離婚後の子の監護につきまして、監護の分掌の定めをすることができることを明確化しております。監護の分掌とは、子の監護を父母が分担することでありまして、例えば、子の監護を担当する期間を分担することや、監護に関する事項の一部を父母の一方に委ねることがこれに該当すると考えられます。

 委員御指摘のように、父母の離婚時に、個別具体的な事情に応じまして、子の利益の観点から、監護の分掌のほか、養育費や親子交流も含めた子の養育に関する事項についての計画を取り決めることは可能であり、また重要であると認識をしております。

美延委員 済みません、時間が過ぎましたので、また残りは次の機会ということにさせていただきます。

 ありがとうございました。

武部委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、子供の意見表明権に関してお伺いをしたいというふうに思います。

 参考人質疑の中でも参考人の方から修正の提案が出されましたし、また、立憲民主党の方からも今修正の提案がされております。そして、私どもも、その点を強化するということで、今日、それに対する修正ということでまたお願いをしているところですけれども、両親の離婚というのは子供の人生にとって一大事だということで、子供の利益、子供の最善の利益を判断するに当たって、親権、監護、面会交流、養育などを決めるあらゆる段階で子供の意見を聞くことが不可欠だというふうに私どもは考えております。

 是非、改めて、子供の意見表明権の保障を法案に本来入れるべきだったんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 子の意見聴取、これは現行の家事事件手続法において規定が設けられております。また、本改正案においては、父母が子の人格を尊重するべきこと、これを明確化していますが、子の人格の尊重には、子供の意見あるいは意向等が適切な形で考慮され、尊重されるべきであるという趣旨も含むものでございます。

 一方で、これに加えて、子供の意見表明権を民法上明文化することについては、法制審家族法制部会において、離婚の場面で子に親を選択するよう迫ることになりかねず、かえって子供の利益に反するとして、慎重な意見が多く出されたわけでございます。

 そこで、本改正案では、子の人格の尊重に加えて、子の意見表明権を明文化することはしておりませんが、子の人格の尊重には、子供の意見、意向等が適切な形で考慮され、尊重されるべきであるという趣旨を含んでいるものと考えております。

本村委員 子供の意見を丁寧に聞く、意思や心情を丁寧に酌み取るというプロセスを大事にするということが必要ですし、それに対していろいろ判断があると思いますけれども、それをちゃんと子供さんに返していくという一連のプロセスも大事なんだということが参考人の中からも強調されたというふうに思いますけれども、一片を取って言うのではなく、丁寧なプロセスこそ必要なのだというふうに思っております。

 先ほども大臣から、家事事件手続法の中には、家事審判の手続における子の意思の把握等ということで規定がございます。それで、現状をまず共有したいというふうに思うんですけれども、離婚時の親権、監護、面会交流、養育費などの判断に関し、子供本人の意見聴取、調査官の関与はどのくらい今行われているかということで、これは最高裁にお尋ねをしたいと思います。

 できれば、十五歳以上と十五歳未満ということで、十五歳を一つ強調されている法文などもございますので、是非その点、数字をお示しをいただきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 令和四年に未成年の子を対象として家庭裁判所調査官に対する調査命令が出された件数は、各裁判所からの情報提供による実情調査の結果に基づく概数としてでございますが、離婚調停を含む夫婦関係調整調停事件におきましては千六百五十六件、離婚訴訟を含む人事訴訟事件では六百十件、監護者指定の調停、審判事件では合わせて二千七百四十二件、子の引渡しの調停、審判事件では合わせて二千三百三十九件、面会交流の調停、審判事件では合わせて五千六十六件でございます。

 また、十五歳以上、未満というふうな子の年齢に応じた調査件数に係る統計は取っておりませんので、お答えは困難でございます。

本村委員 今数字をいただいたんですけれども、その母数となる数字を言っていただきたいんです。今のは意見を聴取した数字だというふうに思いますけれども、その母数についてお示しをいただきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 今申し上げた調査件数とあと事件種別ごとの事件数、これについては統計の取り方が異なっておりまして、割合についてはお答えすることはできないというところでございます。

本村委員 面会交流でも五千六十六件しか子供の意見は聞いていないということなわけです。ですから、まだまだ全く不十分であるということが分かるというふうに思います。

 子どもの権利条約の四大原則の一つとして、子供の意見表明権、この保障があるわけですけれども、これはこども基本法にもしっかりと位置づけられております。

 家事事件の手続に関しても、子供の意見表明権があらゆる段階で保障されなければいけないというふうに思っております。

 こども庁も強調しておりますけれども、保護者の意見を聞いたからよしとしてはいけないんだと。子供本人から意見を聞くことの重要性、低年齢の子供さん、声を聞かれにくい子供さんということでこども家庭庁さんも配慮をしているんですけれども、声を聞かれにくい子の意見表明権も保障することの重要性も書かれているわけですけれども、これはこども庁にお伺いしたいというふうに思います。この点、この重要性をどういうふうに考えているか、お示しをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 こども基本法におきましては、全ての子供について、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会が確保されることが重要であることを、子供施策の基本理念として規定してございます。

 先生からも御指摘ございましたとおり、一般的に、子供の意見を聞き、政策に反映することは、子供のニーズ等を踏まえることができるほか、子供の主体性を高めることにもつながり、こどもまんなか社会をつくっていく上で重要であると考えているところでございます。

本村委員 子供の中でも、声を聞かれにくい子ということで強調をしている点もあるかというふうに思いますけれども、声を聞かれにくい子という点で、どういう子がいるかですとか、どういう点に気をつけたらいいかという点もお示しをいただければというふうに思っております。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先般、こども家庭庁といたしまして、こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドラインというものを策定いたしました。

 この趣旨というものは、個別の手続というよりかは、そのプロセスですね、一般的なプロセスについて考え方をお示ししたものでございまして、あとは、それぞれのケースに応じて、このガイドラインなども参考にしていただきながら、子供の意見を適切に聴取していただければというふうに考えているところでございます。

本村委員 済みません、私がお伺いしたかったのは、声が聞かれにくい子というのが、まだ一般的には理解が深まっていないかなというふうに思うので、どういう子かという子をお示しをいただいて、その重要性についてお示しをいただきたいと思っております。

高橋政府参考人 具体的に、どのような子がなかなか声が聞かれにくいかというところにつきましては、それぞれのケースごとによってあるかと思いますが、こども家庭庁といたしましては、いずれにいたしましても、全ての子供について適切にその意見を聞くことが大事だということで考えているところでございます。

本村委員 全ての子供から意見を聞くことが重要なんだということで、子供にとって一大事である離婚の面会交流、親権、監護、こういう部分でもしっかりと子供の声を聞くことが必要なんだということでございます。

 両親の離婚という一大事で子供の意見を聞くこと、そして低年齢の子、声を聞かれにくい子、意見表明権を保障するべきで、今、まだ全く不十分な状況を数字として聞いていただいたと思うんですけれども、その点、全ての子供から意見を聞いていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 二つ問題があるんですね。一つは、言語的に表現がなかなか難しい子供の意見をどうやって聴取するか、また、全員から声を聞くべきである、そういう御議論もあるわけです。

 まず、言語的に表現することが十分できない子については、家庭裁判所の調査官、これが介添えをして、子供の状況を調査し、子供の認識、こういったものを把握するという仕組みが今稼働しております。また、全員から声を聞く、これも必要なことかもしれません。

 まず、我々は、子供の人格尊重ということを今回中心に据えて、そして、その中に、子供の意見を聴取する、子供の意見も尊重する、そういう趣旨をここに込めて運用をしていかなければならないと思っています。

 したがって、この趣旨が行政各分野を含めて国民にも理解されていくことが重要である、そのように思います。また、そういう努力をしていきたいと思います。

馬渡最高裁判所長官代理者 裁判所の立場からお答えいたします。

 家事事件手続法六十五条、二百五十八条一項で調停事件にも準用されておりますが、この規定に基づきまして、家庭裁判所は、未成年の子がその結果により影響を受ける事件におきまして、適切な方法により、子の意思を把握するように努めるものとされているところ、調停委員会等において、その事案に応じた適切な方法により、子の意思を把握し、審理運営に当たっているものと承知しております。

 その上で、子の監護権や親権、面会交流等、子をめぐる紛争のある事案におきましては、子の利益を適切に考慮するために、事案の必要、また御指摘のようなお子さんの状況も踏まえつつ、必要に応じて、家庭裁判所調査官が行動科学の知見等を活用して適切に関与しているものと承知しているところでございます。

本村委員 適切にとよく答弁されるんですけれども、しかし、先ほどもお話がありましたように、面会交流でも子供さんに意見を聞かれたのは五千六十六件ということで、まだまだ全く不十分だというふうに思います。

 この法案には人格の尊重ということが書かれているんですけれども、これで改善するわけですね、大臣。

小泉国務大臣 例えば親権者を変更するような手続の場合、子供の人格尊重権というのがありますので、子供がこちらの親を親権者にしたいという強い声があれば当然それは聞き入れられることになるというふうな形で、この趣旨がしっかりと生かされていけば、多くの子供の意見を徴することが可能になると思います。

本村委員 一人一人の子供の声を大切にするという点で、私の地元で、全国各地であるわけですけれども、性虐待がございました。子供への性虐待です。それで、性虐待に関しまして、早期に子供のSOSをどうやってキャッチをすればいいのか、どうやって早期に保護をすればいいのかということを考え続けてまいりまして、そして、児童相談所の所長さんにも御相談したことがございます。この点では、どうやったら早期にキャッチをできるのか、SOSを酌み取ることができるのかということをお伺いしたときに、子供の声をじっくり聞くことが必要ですというふうに言われました。

 例えば面会交流の点でも、先ほど、まだ五千幾つだというふうに申し上げまして、先週も、面会交流のときに性虐待があったケースの事例を申し上げましたけれども、子供の声を聞かずにどうやってその点で早期にキャッチできるんでしょうか。面会交流の点でも、性虐待のケースを取り除くために、声を聞かずにどうやってキャッチするんでしょうか。

小泉国務大臣 そのために、子供の人格尊重ということが我々の法案の重要な趣旨になっているわけであります。子供の人格の中には、子供が表明する意見、あるいは話をすること、そういったことが全部含まれておりますので、そういうものをしっかり受け止めていくということが可能になる、そのように思います。

本村委員 是非、全ての子供たちの意思や心情の尊重という点を重視、最重要ということで位置づけていただきたいということを重ねて申し上げたいというふうに思います。

 それで、子供の声をもっと聞いていくためには、家庭裁判所の人的、物的体制の増強というのがどうしても必要になってまいります。裁判官、調査官の大幅増員も必要ですし、特にDV虐待ケースでは、児童精神科医ですとか児童心理司などの専門家による子供の意見の確認ということも本来は義務づけるべきだというふうに思っております。三日の参考人質疑の中でも、家庭裁判所の人的、物的整備というのは必須であるということが明らかになりました。

 家庭裁判所に関しまして、予算、人員をどういうふうに充実していく計画にあるのかという点を最高裁にお伺いをしたいと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましては、これまでも、適正かつ迅速な事件処理を安定的に行うために必要な人的、物的体制の整備及びこれに必要な予算の確保に努めてきたところでございます。

 例えば裁判官につきましては、平成二十五年以降は、民事訴訟事件の審理充実を図るほか、家庭事件処理の充実強化を図るために、事件処理にたけた判事の増員を継続的に行ってまいりました。また、各裁判所におきましても、家事事件を担当する裁判官等を増員するなど、事件数増も見据えて、家事事件処理のために着実に家裁の体制を充実させてきたところでございます。

 本法案により家族法が改正された場合におきましても、裁判所に期待される役割を適切に果たせるよう、引き続き、必要な体制の整備及び予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 一般論でいつもおっしゃるわけですけれども、家庭裁判所の充実に関しては、数百人規模の裁判官の拡充ということや、調査官も大幅に増員しなければならないと。参考人質疑では二倍、三倍でも足りないんだというお話もございました。是非、こういう点も含めて、裁判所の人員や物的整備、この点を充実させていただきたいというふうに思っております。

 次に、協議離婚のケースのことでお伺いをしたいというふうに思います。

 離婚後共同親権制度がもし導入される場合、父母どちらか一方が共同親権にしなければ離婚に応じないと強く主張した場合、もう一人の親が、離婚したい、だけれども共同親権にしないと合意できないということになり、合意せざるを得ず、そして外形的には父母の協議により共同親権を選択したというような、外形的にはそういうケースになるということが十分想定されるのではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 協議離婚の際、御指摘のようなDVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがなされる場合には、子にとってそれは明らかに不利益となるものであります。それを是正する必要があります。

 そこで、本改正案では、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、その際に家庭裁判所が父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきことを明確化することとしております。

本村委員 もう一回繰り返しお伺いすることになると思いますけれども、DV、虐待ケースにもかかわらず、外形的に合意型の共同親権となる危険性を、協議離婚の場合そういうケースが多々あるのではないかということが懸念をされております。むしろ、DV、虐待ケースこそ、加害者の離婚してほしいなら共同親権にしろという要求を被害者が断れないまま共同親権に合意するように追い込まれることになるのではないか、そうしますとDV、虐待から逃れることができなくなるのではないかという懸念が広がっておりますけれども、その点、大臣、どういう御認識でしょうか。

小泉国務大臣 表面上の形の上での合意があったとしましても、その背景にある事情、そのお二人の置かれている状況を裁判所が見て、その合意がどういう形で、本当に真なる合意なのか、そういったことについても視野に入れた審判が行われることになりますので、形式上合意があればそのまま共同親権に行くというものでもないわけです、その逆もそうですけれどもね。その逆もそうですけれども、総合的に裁判所が判断をする形になると思います。

本村委員 そうしますと、離婚後に改めて単独親権への変更の申立てを余儀なくされると当事者の方の大きな負担になるのではないか、負担が強いられるのではないかというふうに考えますけれども、大臣、その点の御認識、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 これは確かに、何もない状況と比べれば負担が増えるかもしれません。しかし、慎重に裁判所で判断をしていただくための手続は踏まなければいけないと思いますし、そういう形を取っていただくことができれば、適切な判断を裁判所が導く、それも可能になると思います。

本村委員 共同親権で単独行使した場合も訴えられるリスクがあるわけです。そうしますと、結局、弁護士費用などがハードルになり、経済力のない親の方が不利になる制度ではないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 本改正案が施行された場合、父母の一方が経済的な理由で不利益を受けることとなる、これは子の利益の観点からも適切ではないと考えられます。もとより、本改正案について、父母の一方が経済的な理由で不利益を受けることになる制度とは考えておりませんが、施行までの間に改正案の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知、広報に努めるとともに、一人親家庭支援や裁判手続の利便性向上といった支援策や体制整備等の環境整備について、関係府省庁等と連携して取り組んでいきたいと思います。

本村委員 経済力のない親の方がやはり不利になるんじゃないか、様々裁判に申し立てないといけないということが多くなり、不利になるんじゃないかという点は、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 そのために、裁判制度の利便性向上ということを常に整えていく必要があると思います。

本村委員 それで、例えば、民事法律扶助の制度でいいますと、結局、立て替えて後で返すという制度でございまして、経済的に困難を抱えるシングルマザーの方々始め、経済的な困窮を抱える方々にはハードルが高いものに実際になっているということを参考人の方もおっしゃっておりました。

 今の基準では、給付型のものを増やすですとか、そうしない限り、今ハードルがあるわけです。経済的な理由で泣き寝入りすることがないように、経済的困難を抱える方に弁護士費用は公費でしっかりと持つ制度を創設するべきだというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

小泉国務大臣 法テラスの民事法律扶助、これは今立替え制でありますけれども、給付制に、こういう御議論でありますが、本来当事者が負担すべき弁護士費用等を国民負担の下に置くということが必ずしも合理的であるかどうか、そういった観点からの慎重な検討も必要だと思います。

 法務省では、法テラスあるいは日本弁護士連合会との間で、より利用しやすい民事法律扶助の在り方について協議、検討を行っております。

 その中で、一人親の方が養育費を請求するために民事法律扶助を利用した場合には、償還等免除の要件を緩和するなどの運用改善、これを四月一日から開始をしたところでございます。

 法務省としても、困難を抱えた方々が適切な支援を受けられるように、その必要性、これを十分把握した上で、十分踏まえた上で、引き続き協議を行い、検討も行っていきたいと思います。

本村委員 参考人の斉藤参考人も、弁護士費用を出す資金がなくなったらどうしたらいいのかという御不安の声があったと思いますけれども、先ほど、議事録を読んでいただいたというふうにお伺いしましたけれども、大臣、斉藤参考人の声をどういうふうに受け止めたんでしょうか。

小泉国務大臣 大変厳しい経験をされ、まだその渦中にいらっしゃり、また、経済的な負担感というものの中にもいらっしゃいます。何とか手を差し伸べてさしあげたいという思いはあります。

 しかし、制度全体をつかさどる立場でございますから、国民全体の負担、そういったもの、あるいはほかの制度との公平性、そういったものも考えなければいけない、しかし、しっかりと胸に留めて取り組んでいきたいと思います。

本村委員 経済力のない親の方が不利になる制度に実際にはなっているというふうに思います。やはり、このまま進めるのは駄目だということを強く申し上げ、引き続き質疑を続けたいと思います。

 ありがとうございました。

武部委員長 次回は、明十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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