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第4号 令和7年3月18日(火曜日)

会議録本文へ
令和七年三月十八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      東  国幹君    井出 庸生君

      上田 英俊君    上川 陽子君

      神田 潤一君    河野 太郎君

      國場幸之助君    棚橋 泰文君

      田畑 裕明君    土田  慎君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      森  英介君    若山 慎司君

      有田 芳生君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    寺田  学君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    萩原  佳君

      藤田 文武君    小竹  凱君

      大森江里子君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局経理局長            染谷 武宣君

   最高裁判所事務総局民事局長            福田千恵子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大濱 健志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          竹林 悟史君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     大村 真一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           中村 功一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    森本  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小山 定明君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  杉浦 直紀君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           江崎 典宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松浦 重和君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     國場幸之助君

  上川 陽子君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     東  国幹君

  土田  慎君     上川 陽子君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     田畑 裕明君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     稲田 朋美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官大濱健志さん、警察庁長官官房審議官松田哲也さん、こども家庭庁長官官房審議官竹林悟史さん、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長大村真一さん、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官中村功一さん、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、法務省矯正局長小山定明さん、法務省保護局長押切久遠さん、法務省人権擁護局長杉浦直紀さん、出入国在留管理庁次長杉山徳明さん、文部科学省大臣官房審議官江崎典宏さん及び文部科学省大臣官房審議官松浦重和さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也さん、経理局長染谷武宣さん、民事局長福田千恵子さん及び家庭局長馬渡直史さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若山慎司さん。

若山委員 おはようございます。自由民主党の若山慎司でございます。

 今日は何点か質問をさせていただきます。

 まず一番最初に、私のようなアナログ人間でも、最近は、いろいろなお会計のときにはキャッシュレスでカードを使ったり、いろいろな支払いのシステムを利用させていただいております。こういったものが一般的化してきた中での法務局でのキャッシュレス実現についてということで、まずは一つ目、させていただきたいと思います。

 法務局では、不動産や会社の登記申請、証明書の取得などについて、年間で七千万件以上の御利用があるということを伺っておりますが、そのうちオンラインで申請をしているものが七割以上と、大分進んでいるというふうに伺っております。そうした各種の手続に、登録免許税や手数料の支払いといったものは、収入印紙であったり、またオンラインでネットバンキングが用いられているというようなことも伺うんですが、その中で、まだクレジットカードによるキャッシュレスの運用というのが実現していないということも耳にいたします。

 そうした中で、利用者目線で利便性の向上という観点からも、法務局での登記部門でクレジットカードが使えるように、そういうキャッシュレスサービスの早期導入ということを検討していただく必要があると思いますが、これについての取組をお伺いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現状では、法務局の窓口において国民の皆様が登記申請や証明書の請求を行う際にお支払いいただく登録免許税や登記手数料は、収入印紙で納付をいただいております。他方で、近時、社会全体で広くキャッシュレスサービスが利用されるようになっておりまして、法務局を利用される国民の皆様から、クレジットカードの利用など、より利便性の高いキャッシュレスサービスを使えるようにしてほしいと要望があることは承知をしております。

 法務省といたしましては、このような要望をしっかり受け止める必要があると認識をしておりまして、費用対効果や運用コストの負担の問題も踏まえつつ、登記手続の利便性を向上させるという観点から、どのような方策や課題があるか、先行するサービスの情報収集や整理を早急に行うなど、具体的検討を加速して進めてまいりたいと考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 次に、同じく法務局の登記情報について、地方自治体の方でいろいろな形で使われる機会が多いわけですが、自治体とのデジタル連携についてお伺いしたいと思います。

 自治体では、開発であるとか調査であるとか、それから徴収の部分で、様々な行政業務の中で不動産や会社の登記情報を見て業務を行っていかなきゃならないというようなことが多くあるわけですが、これまで自治体職員の皆さんは、法務局に出向きまして、登記事項証明書というものを取りに行かなきゃいけない、個々にそれを取得して確認をしていくというような作業をしておられたわけですが、この点は労力の面でもコストの面でも、大きな負担になっていたということをいろいろな自治体からも耳にいたします。

 そうした中、今般、全国の自治体とシステムネットワークでつないで、自治体職員が職場にいながらにして、端末上で登記情報を確認できる新たな取組を本格化させていくということを伺っております。

 自治体の負担軽減という観点からも、またデジタル行政推進という観点からも、登記情報のデジタル連携、こういうものをスピード感を持って進めていかなければならないところではございますが、今後の取組についてどのようにお考えかというところをお伺いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体等が、業務上必要な場合に、法務局に赴くことなく、各職場の端末から登記情報を直接かつ直ちに確認することを可能にすることは、行政デジタル化の推進や地方自治体等の行政事務の効率化の観点から非常に重要であると認識をしております。

 そこで、法務省では、デジタル庁と連携をいたしまして、地方公共団体の負担軽減のための登記情報連携の取組を進めているところでございまして、令和六年度に一部の地方公共団体で試行的に実施をいたしました。その結果、コスト削減効果が見込まれるため、令和七年度からはその対象となる地方公共団体を大幅に拡大をいたしまして、全国的に取組を拡充する方針としております。

 今月中に全国八都市で地方公共団体向けの説明会を開催しているところでございまして、既に多数の地方公共団体の皆様に参加いただくなど、大きな期待が寄せられていると認識をしております。

 今後とも、地方公共団体からの要望等も踏まえつつ、可能な限り登記情報連携を開始していくなど、この取組を着実に進めてまいりたいと考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 では次に、戸籍の振り仮名通知についての取組についてお尋ねをしたいと思います。

 これも既に、戸籍法の改正を端緒に、振り仮名通知についての確認作業というものがこれから進められていくということでありますが、実際にその作業をしていくというのは自治体ということになろうかと思います。この自治体の負担軽減という観点からの取組について、お伺いしたいと思います。

 戸籍法の改正で、今年五月の二十六日以降、自治体から、戸籍に記載される予定の振り仮名について、それぞれ確認を求める通知が発出されるというふうに伺っております。全国民を対象とする大規模な施策でありまして、自治体においては、通知の発送に加えて、様々な問合せが発生することが予想されるものですから、これへの対応、また様々な届出に対する対応ということも求められていくというふうに予想されるわけでございます。

 そうした中で、戸籍の振り仮名の記載について、行政サービスのデジタル化につながる重要な施策でありますから、しっかりとやっていかなければならないんですけれども、他方で、通知を受け取って対応する国民や自治体にとって過度な負担とならないように取り組んでいかなきゃいけないということもまた事実でございまして、これについて、法務行政、法務省としてどういうふうにお考えになられるかというところ、取り組み方をお伺いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 戸籍において氏名の振り仮名を公証し、官民の手続で利用可能とすることは、各種デジタルシステムの検索や管理の効率化等に資するものでありまして、デジタル社会の重要なインフラであると認識をしております。

 法務省といたしましては、新制度の円滑な施行に向けて、特に自治体の負担軽減や国民の皆様の安心のため、現在、今年五月以降に自治体が行う通知発送業務等に係る補助金の交付を行うほか、国民に対して、記載予定の振り仮名が通知されることや、通知内容に誤りがなければ届出をしなくてもそのまま戸籍に記載されるので安心いただきたい旨の周知、広報を徹底して進めているところでございます。

 また、自治体への問合せ減少のため、法務省においてコールセンターを設置するほか、マイナポータルを利用した届出も可能とし、その手続の丁寧な案内もする予定でございます。

 法務省といたしまして、引き続き、施行準備に万全を期するとともに、施行後に届出を必要とする国民や窓口対応を行う自治体職員の負担軽減にもしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 戸籍というのは、国民一人一人、生まれてから命を、人生を全うするまでの間に、一つの戸籍として、一人の人物と一人の法律上の身分といいますか、立場を確定するためのものでありますので、その一対一の関係をしっかりと維持していくためには必要な制度、重要な制度である。振り仮名を通じて、今回、それがよりしっかりとしたものとして成立していくことを期待するところでございます。

 そのお話をしましたので、その延長線上で、少しだけ夫婦別氏制度についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 前提として、私自身、実は、大変不勉強なことで恐縮ではございますが、まだ思案の途中、いろいろな勉強の途中でありますけれども、そういった中で、先日、別氏制度について推進のお立場の方々との御面談を少しさせていただきました。

 そうしたやり取りの中で私自身が感じたことではありますが、よく出ましたのは、平成八年の法制審議会が出した民法改正要綱のそういう答申がもう出ているんだからというようなお話がしきりと出たわけなんですけれども、その内容について、率直に事実だけでお伺いをしたいと思います。

 これはこの話のときにも出たんですが、この制度が導入された場合、既に同氏、もう既に戸籍上同氏、同姓になっている御夫妻が片方の配偶者の御意思で別氏になろうとした場合に、その場合、配偶者の同意というものはどういうふうに予定をされていたのか。またさらに、お子さんの意思というものは、もし別氏に今から変えたいといった場合に、手続の中で子供の意思というのはどういうふうに反映されることを想定されているのかということ、勉強させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 平成八年の法制審議会の答申におきましては、改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から一年以内に改正後の戸籍法の規定に従って届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができるものとするとされております。したがいまして、この答申どおりの改正法が成立したとすれば、その施行前の同氏夫婦が当該経過措置に基づいて別氏夫婦となる場合には、配偶者との合意が必要となります。

 他方で、この場合には、子供の同意等は必要とされておりません。これは、改正法の施行後に改正法に基づいて夫婦が別氏を称するのは婚姻の際における合意に基づくものというべきであるところ、これとの均衡上、改正法の施行前の同氏夫婦が経過措置に基づいて別氏夫婦となるのも、夫婦の合意に基づくものであることが相当であるとされたことによるものと承知をしております。

若山委員 ありがとうございました。

 今のお話を伺って、私は、だからどうだということを余り申し上げるつもりはないんですが、一番やはり大事なのは、現在、お父さん、お母さんがいてという中で、そのお子さんが何らかの意思を持ってこうしてほしいということを望んだ場合に、それが何らかの形でやはり反映されるようであっていただきたい。

 これは家庭の中で話す話だということもあるかもしれませんけれども、子供の意思というものもやはり尊重していっていかなければならないだろうなと思うのと同時に、やはり、今の現行制度の中で夫婦となってという中で、話合いを持たれるときに、一年という期間を長いと見るのか短いと見るのか、まだまだ我々が議論を深めていかなければならないことは多いのかなということも感じた次第でございます。

 では、もう一問。済みません、今のような大きな問題をこの程度でといって思われるかもしれませんが、また委員会の場以外のところでの議論を深めさせていただきたいと思います。

 最後に、所有者不明土地の問題、これも地元からよくお話をいただきます。問題の解消を目指して、民事基本法制が見直され、相続登記の義務化を始めとした対策が進んでいます。亡くなった親御さんの不動産がどうだったかということをなかなか確認する方法がないということがあった中で、所有不動産記録証明制度というものがスタートしていく、来年二月二日にスタートと伺っております。

 こういったことのために、手続をデジタル化して、簡単に所有不動産や記録証明書を入手できるようにするためにどういう検討をされておられるか。

 また、いま一つ、相続登記の義務化とともに、住所変更登記の義務化も進められるところではございますが、まだまだ認知度が低い。一年後にはやらなければいけない、住所変更も義務化されるということを伺っておりますが、住所変更登記の義務化を円滑に進めていくために、所有者不明土地の問題解決のため、どのような取組をされているか、お伺いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地の解消に向けた新たな制度といたしまして、令和八年二月二日から、委員御指摘のとおり、所有不動産記録証明制度が施行されます。

 また、令和八年四月には住所等変更登記が義務化をされまして、その前提といたしまして、今年の四月二十一日から検索用情報の簡易な申出制度を先行して開始することとした上で、この仕組みをスマート変更登記と称しまして、専用の広報用ウェブサイトを今月五日に開設もしたところでございます。

 法務省といたしましては、所有者不明土地の解消に向け、引き続き、新制度の施行準備や周知、広報にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 様々、やはり、自治体からもお金の問題や何かでいろいろな御指摘もいただいています。国民の皆さんに寄り添った法務行政をこれからもお進めいただきますようお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、柴田勝之さん。

柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之でございます。

 私からはまず、刑事施設視察委員会についてお伺いしたいと思います。

 まず、そもそも、刑事施設視察委員会とは何か、また、どういう活動をされているか、分かりやすく御説明いただければと思います。

小山政府参考人 刑事施設を含みます矯正施設には、人格識見が高く、矯正施設の運営の改善向上に熱意を有する方を委員といたします視察委員会が置かれておりまして、主に、地域住民の方のほか、弁護士や医師の方などが任命されております。

 視察委員会は、施設の視察、被収容者等との面接、被収容者等が提出する意見、提案書の確認などによりまして施設運営の実情を把握し、施設運営全般に関しまして矯正施設の長に対して意見を述べることとされております。

柴田委員 そういう視察委員会の意見、いろいろ出されると思いますけれども、そういう意見というのは刑事施設の運営のために役に立っているというふうに法務省としては認識されておられますでしょうか。具体例を含めてお答えいただければと思います。

小山政府参考人 刑事施設の長は、できる限り委員会が述べた意見を刑事施設の運営に反映させるために必要な措置を講じるよう努めることとされておりまして、これまで各施設において適切に対応してきたところでございます。

 また、施設限りで対応できないものにつきましては、法務省において必要に応じ運営の見直しを図るなどしております。

 例えば、令和五年度に視察委員会からいただいた意見の中には、地域の感染状況に応じた感染症対策の継続、職員研修の一層の充実、物価高騰を踏まえた食事内容等の充実などを求める意見が多く認められましたところでございます。

 これらの視察委員会からの意見を踏まえまして、各施設において適切な感染症対策の継続及び職員研修の充実を図りますとともに、法務省矯正局におきまして、関係通達を改正するなどして、受刑者が自費で購入できる菓子の購入金額の上限の見直しなどを行ったところでございます。

柴田委員 法務省の皆様にとって、視察委員会というのはどういう存在なんですかね。うるさい存在ですか、それともありがたい存在ですか。どうでしょう。

小山政府参考人 私どもといたしましては、地域の方々、それからお医者様の方々、弁護士の先生方といった方々から外部の立場として御意見をいただいているということで、非常に運営改善に資するありがたい存在だと思っております。

柴田委員 この視察委員会というのは、今から二十年ほど前に、名古屋刑務所で刑務官が受刑者に暴行して死傷させたという事件がきっかけになった、監獄法、今でいいますと刑事収容施設法の改正によって始まったものですけれども、私は、弁護士として、この名古屋刑務所事件で死傷した受刑者と遺族の国家賠償請求事件の代理人をしておりまして、そういうことからも、この視察委員会という制度にも大いに関心を持ってまいりました。

 ところが、令和四年に、同じ名古屋刑務所でまた受刑者に対する暴行事件が発覚しまして、この事案を調査した第三者委員会が令和五年の六月に提言書を出しております。

 この提言書によりますと、名古屋刑務所の視察委員会は施設側の非協力的な対応などのために十分に機能できていなかったということで、視察や調査に施設側がもっと協力するなどして視察委員会の運用を改善することが求められておりますが、この提言の内容というのは実施されておりますでしょうか。

小山政府参考人 今委員御指摘のとおり、名古屋刑務所職員によります暴行、不適正処遇事案に係る第三者委員会の提言書におきまして、名古屋刑務所は、視察委員会の意見を施設運営に十分反映させることができていなかったと言わざるを得ず、視察委員会制度の運用改善が強く求められる旨が指摘されてございます。

 そのため、矯正局におきましては、関係通達を改正いたしまして、例えば、当該事案のような重大事案が発生した場合には、速やかにその概要について視察委員会に情報提供すること、視察委員会から求められました場合には、秘匿性の高い資料であっても必要に応じて閲覧、視聴できるようにすること、被収容者等に施設の運営状況に関するアンケート調査を実施し、委員会に提出することなどといった運用改善を図っております。

柴田委員 今までお答えいただいた内容からも、刑事施設視察委員会というのは大変意義深い制度であって、その活動の充実をますます図っていく必要があるというふうに私は考えておりますが、この点についての法務大臣の御見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 従前より、視察委員会、外部のお立場から、非常に有益な、様々な御意見を頂戴をしていると承知をしております。

 まさに委員御指摘のとおり、その委員の思いにも私は共感するものでありまして、視察委員会制度は施設運営の改善向上に寄与する極めて重要な役割を担っていると考えておりますので、引き続き、様々な形で御指導いただきたいと思っております。

柴田委員 ところが、このような視察委員会の活動の充実を妨げる問題として、刑事施設の支所化に伴う視察委員会の廃止という問題がございます。

 法務省では刑事施設の統廃合を進められておりまして、施設自体が廃止されてなくなる場合は視察委員会も当然廃止で問題ありませんけれども、廃止はされないんだけれども、ほかの施設の支所になりましたということで視察委員会は廃止ですという事態が幾つも起こっております。

 ついては、支所化による視察委員会廃止の法的根拠、また、視察委員会制度が始まって以降の刑事施設の支所化の事例、そして今までの事例と今後予定されている事例についてお答えいただきたいと思います。

小山政府参考人 お答えいたします。

 例えばでございますが、刑事施設視察委員会の場合は、刑事施設に置くことが規定されております。それまで本所でございました矯正施設が支所化された場合には、新たに当該支所を所管することとなった矯正施設の本所の視察委員会が、元からありました別の支所と同様に、当該支所を所管するということになります。

 このような本所におきましては、当該支所を視察する機会を設けたり、本所と支所等をテレビ会議システムでつないで会議を開催するなど、視察委員の負担軽減にも配慮しつつ、視察委員会制度の意義が損なわれることがないように配慮した取組を行っております。また、一部の少年鑑別所におきましては、少年鑑別所を支所化する際、視察委員であった一部の方を本所の視察委員として新たに任命させていただくなどの対応も行っております。

 それから、御質問の二つ目でございますけれども、視察委員会制度の運用開始以降、刑事施設の本所が別の刑事施設の支所となったものといたしましては、平成十九年度以降、五庁ございまして、平成十九年度におきましては釧路刑務所が帯広刑務所釧路刑務支所に、横須賀刑務所が横浜刑務所横須賀刑務支所に、平成二十九年度におきましては奈良少年刑務所が京都拘置所奈良拘置支所に、平成三十一年度におきましては佐世保刑務所が長崎刑務所佐世保拘置支所に、令和四年度におきましては滋賀刑務所が京都刑務所滋賀拘置支所にそれぞれ再編されております。

 今後でございますけれども、こちらにつきましては、令和八年度、宮崎刑務所が鹿児島刑務所宮崎拘置支所に、令和九年度、帯広刑務所が札幌刑務所帯広刑務支所にそれぞれ再編される予定でございます。

柴田委員 今の御答弁ですと、要するに、支所化に伴って法務省としては十分配慮されているという御答弁だったんですが、私は、地元の弁護士会からはちょっと違う話を聞いているところでございます。

 例えば、再来年に帯広刑務所が札幌の支所になるというお答えがありました。そうすると、以前から帯広の支所になっていた釧路も札幌の支所になることが予想されます。しかし、札幌から帯広までは車を飛ばしても片道三時間、釧路までは更に二時間かかります。札幌の視察委員が帯広、釧路まで行くのは本当に大変です。

 それで、例えば、施設に赴いて、提案箱、これは要するに、入所者の方が視察委員しか見られないものを提案箱に入れて視察委員に見てもらうというものですけれども、そういう提案箱を開けたりとか、被収容者、職員から何か問題がないか話を聞くというのが視察委員の重要な業務なんですけれども、行けて多分年一回、到底そういう業務の実効性が図れないと思います。

 また、視察委員の中には弁護士の委員がおりまして、地元の弁護士会や、弁護士会からの情報提供も視察に役立っていると聞いておりますけれども、今のお話で、例えば札幌と帯広、あるいは奈良、滋賀と京都、あるいは宮崎と鹿児島だと弁護士会が違っておりますので、そういった情報提供も難しくなってしまうんです。

 このように、支所化に伴う視察委員会の廃止によって制度の意義が損なわれる事態が生じるという状況を本当に認識されているのかどうか、法務大臣にお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 私どもの基本認識として、その施設が本所であれ支所であれ、これは視察委員会の御意見を踏まえて施設運営の改善向上を図るべき、この認識は変わりはありません。その上で、今、様々御指摘をいただきました。その上で、しっかり、そういった状況というものは変わらないようにしていくことに最善を尽くしていく必要があると思っています。

 例えば、支所化に当たっては、弁護士会の皆様方始め、関係の機関から御推薦をいただいている視察委員の御意見を踏まえて、あるいはまた視察委員の御負担にも配慮しながら、やはり支所に対する視察委員会の活動、これをより一層効果的に行えるような方策を検討していく。

 先ほど若干答弁をさせていただきましたけれども、例えばオンラインテレビ会議ということもありましょうし、あるいは、これまで、支所化するに当たって、本所の視察委員であった方を新たにまた任命するとか、様々な方策があろうと思います。もちろん、足りないとおっしゃるところもあろうと思いますので、そこはしっかりと改善をしていきたいと思いますし、視察委員会制度の意義が損なわれないようにしっかりと取組を進めてまいりたいと思います。

柴田委員 実は、弁護士会はこの問題を以前から懸念しておりまして、何度か法務省にいろいろ御相談しているんですけれども、法務省サイドは、法律なので、廃止で仕方ありませんというような、お役所的対応であったというふうに伺っているんですね。

 したがって、今大臣からもお話がありましたけれども、やはり、支所における視察の機能を損なわないような方策を、今後、特に弁護士会などともよく協議しながら検討していただきたいと思うんですが、そういう意思はありますでしょうか。法務大臣のお考えを確認したいと思います。

鈴木国務大臣 この意義が損なわれないようにということで、これはもちろん弁護士会の皆様方もそうですし、しっかりとその御意見を踏まえながら対応していきたいと思います。

柴田委員 ありがとうございます。

 じゃ、次は、今年の六月から拘禁刑というものが導入されますので、この拘禁刑導入に向けた準備状況についてお伺いしたいと思います。

 拘禁刑になりますと、受刑者の皆さんの改善更生、社会復帰というものがかなり重視されます。受刑者に対する処遇についても大きな変革が行われるものと理解しております。

 まず、受刑者の集団編成の見直しというものがあると思います。従来は、犯罪傾向が進んでいない人をA分類、進んでいる人をB分類ということでやっていたと思いますが、それでは、暴力団関係者と窃盗を繰り返している高齢者、障害者といった人が同じB分類ということで、それぞれの特性に応じた処遇を行うことが困難であったと指摘されています。

 この点について、拘禁刑導入でどのように変わりますでしょうか、お答えください。

小山政府参考人 拘禁刑の導入に当たりましては、受刑者の特性等に応じた矯正処遇等の充実という趣旨を踏まえまして、今委員の御指摘のありました、これまでの犯罪傾向の進度に重点を置いた受刑者の集団編成を見直すことといたしました。

 具体的には、一定の共通する特性等を踏まえて類型をいたしまして、例えば、依存症回復処遇課程であるとか高齢福祉課程、福祉的支援課程、これは知的な制約や発達上の課題のあるような方々ということでございますが、こういうような二十四の処遇課程を新たに設けることといたしまして、処遇指標の在り方の見直しを行いまして、それぞれの受刑者の特性等に応じた適正な矯正処遇課程が指定できるように、アセスメント機能の充実も強化を図っているところでございます。

柴田委員 それで、拘禁刑の施行は今年の六月からと言われているんですが、これは六月以降の犯罪行為について拘禁刑が科されるということなので、これからも懲役刑や禁錮刑の新しい受刑者は入所してくるし、もちろん、既に施設にいる受刑者もいます。こういった懲役刑、禁錮刑の受刑者に対する処遇というのはどうなっていくのか、お答えください。

小山政府参考人 拘禁刑に処せられますのは、改正後の刑法が施行された後、令和七年六月一日以降にした行為の処罰を受けた者でございまして、施行の時点で存在しております懲役受刑者及び禁錮受刑者の法的身分が変わることはございません。また、施行後も、施行前にした行為の処罰を受ける者につきましては、新たに懲役及び禁錮の執行のために刑事施設に収容されることとなります。

 このように、懲役及び禁錮の執行を受ける者が今後も存在いたします。懲役受刑者につきましては作業の実施が前提でございまして、また、禁錮受刑者につきましては本人からの申出により作業を実施することは、これまで同様変わることはございません。

 他方で、先ほどお答え申し上げました矯正処遇課程や作業の再構築などの拘禁刑導入に伴います処遇の充実策といいますものは、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものでありますことから、刑の趣旨に反しない限りにおきまして、懲役受刑者及び禁錮受刑者も対象として実施することとしておりまして、禁錮受刑者及び懲役受刑者を含めた受刑者処遇の充実を図ってまいりたいと考えております。

柴田委員 要するに、従来の禁錮、懲役の方にも、できるだけ拘禁刑の方と同じような処遇をしていくということと理解しました。

 拘禁刑の導入によって、作業以外の処遇が増えると予想されていますけれども、そういった処遇について、受刑者の皆さんの動機づけというものはどのようにされていくのでしょうか、お答えください。

小山政府参考人 拘禁刑下におきましては、個々の受刑者の特性等に応じたきめ細やかな矯正処遇を実施することとしております。そのためには、受刑者自身が処遇の必要性を理解し、自主的、意欲的に取り組めるよう、動機づけを強化することが重要であると認識しております。

 そのため、刑執行開始時の指導におきまして、矯正処遇の意義や、処遇要領に定めます一人一人の矯正処遇の目標並びにその達成のために実施する矯正処遇の内容及び方法について理解を促すようにいたしますほか、必要に応じて、一般改善指導、対話というものを用いるなどいたしまして、動機づけの向上を図っていくこととしてございます。

柴田委員 実は、受刑者の皆さんにとっては、作業をすると少しですが報奨金というものがもらえて、そのお金で日用品やお菓子を買えるということがかなり動機づけになっていると。それに対して、今の刑事収容施設法では、作業以外の職業訓練などでは報奨金が出ない。それが職業訓練を希望する受刑者が少ない原因の一つになっているという話を伺ったことがあるんです。

 少年院の方では職業能力習得報奨金というものがあるのですが、まずこの少年院の制度はどういうものか、実際の運用状況を含めて御説明をお願いいたします。

小山政府参考人 今御指摘のございました職業能力習得報奨金は、職業上有用な知識及び技能の習得を奨励する趣旨で支給されるものでございます。これは、職業指導を受けた受刑者に対して支払っているものだということでございます。

柴田委員 要するに、職業能力の習得を奨励する、そういう趣旨のことだと思うんですけれども、そうすると、拘禁刑の理念に照らすと、やはり、拘禁刑における職業訓練についても奨励する、そういう趣旨のお金もあっていいのではないかというふうに私は考えております。

 先ほどお答えのあった、作業以外の処遇の動機づけ、いろいろ検討されているんだと思いますが、その効果について、本当に効果がそれであるのかどうか十分に検証いただいて、それで余り実は効果がないということであれば、報奨金を支払えるようにする法改正も検討すべきと私は考えておりますが、この点について法務大臣のお考えを伺います。

鈴木国務大臣 今こちらが答弁もさせていただいたように、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律においては、作業を行った受刑者に作業報奨金を支給はいたしますが、改善指導あるいは教科指導について報奨金を支給するということにはなってございません。

 今後の見直しということでおっしゃいましたけれども、一つの趣旨として申し上げますと、やはり、この改善指導あるいは教科指導ということ、これは報奨金を与えてインセンティブづけをするというような性質のものではないというふうにも考えられるということであったり、あるいは、一般社会とのこれは比較考量ということになると思いますけれども、一般社会においては、類似のそういった教育だったりとか、あるいは様々なそういったこと、これは有償で、むしろお金を払って受ける、そういった例もあるわけであります。

 そういった中で、この改善指導といったものに報奨金を支給するということ、お金を出すということ、これが果たして、これは一般国民の方と受刑者ということになりますから、そこで国民の理解、皆様方の理解を得られるかということもやはり考えていかなくてはいけないと思っています。

 そういった中で、こうした動機づけ、これが大事なことはまさにそのとおりでありますので、しっかりこれは、先ほど答弁でも申し上げましたように、理解をしっかり促していく、あるいは対話を通じてしっかりとそういった動機づけができるように、我々としてもしっかりと努力をしてまいりたいと思っております。

柴田委員 今日のいろいろなお答えで、拘禁刑施行に向けて法務省の皆さんも相当尽力されているということに敬意を表したいと思いますが、特に第一線の刑務官の皆さんにとって、拘禁刑の理念を現場で実践していくのは相当大変なことであるというふうに思っております。

 今までの刑事施設では、受刑者の皆さんはとにかく出所の日を目標に頑張る、そして、刑務官の皆さんも、問題や事故を起こさずに無事出所してもらう、つまり、受刑者も刑務官も、出所までの間に意識が向いていた面が大きかったと思っております。

 ところが、拘禁刑では、刑務官は出所後の社会復帰に意識を向けること、そして、受刑者にも社会復帰に意識を向けてもらわなければならない、そういう相当の意識改革が求められると思っております。

 そして、従来、刑務官の職責の第一は施設の規律、秩序の維持であって、そのためにはかなり画一的な対応も必要ですし、個々の受刑者と余り親しくなってはいけないということも言われていたと思います。

 ところが、先ほど述べた令和五年六月の提言書では、規律、秩序の維持は、あくまで受刑者の改善更生や社会復帰支援などの刑事施設の目的を全うするための前提となるものであって、刑務官にとって、改善更生や社会復帰支援等の職務こそが重要であることを忘れてはならないと言われております。

 今後の刑務官には、個々の受刑者の特性に配慮して、改善更生、社会復帰に資する処遇を提供する、あるいは、処遇チームの一員として、専門家のスタッフとも有効に連携して受刑者との良好な人間関係を築く、そしてその中で、受刑者のささいな変化や問題行動の予兆を敏感に察知して動的保安にも貢献しなければならない、いわばスーパー刑務官のようなものが求められると言っても過言ではないと思います。

 このように、拘禁刑の理念を実現するためには、大変なこれからも道のりであるというふうに考えておりますけれども、最後に、この点について法務大臣の所見と意気込みをお伺いしたいと思います。

西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 まさに拘禁刑の導入、これは極めて大きな大転換でありまして、一番、そういった意味では、こうした矯正の職員の皆様方に、大変な、ある意味での大きな変革、意識改革も含めてこれを求めることにもなりますし、大変なこれは負担が出てくると思っております。

 そういった中で、様々これまでも、いろいろ、組織風土とかそういったことで御指摘もいただきましたので、それをしっかりと変えていくという、そういったことに粘り強く取り組んでいくことも必要だと思っておりますし、また、現場からも、やはり彼らから、矯正行政のミッション、ビジョン、バリューを策定する、ある意味自主的なそういった動きというものも出てきていますので、そういった動きも含めて、これから新しい次の拘禁刑、これにしっかり対応できるような刑務官あるいは矯正職員を、しっかりとこれからも我々としては努力して育成をしていきたいと思います。

柴田委員 終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、藤原規眞さん。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 三月十四日、鈴木法務大臣は記者会見で、同性愛を理由に迫害されたとして来日したチュニジア人の方による難民申請訴訟について、上告断念を発表なさいました。私はすばらしい御決断だったと思っています。もちろん法務大臣として難しい御判断だったとは思いますけれども、私は、大臣の人権感覚は高く評価されるべきものと考えています。

 一つ確認させていただきたいと思います。

 大臣所信表明で、基本的人権の尊重といった価値をうたいつつ、外国人の人権については配慮という文字を用いられています。尊重ではなくて配慮、これは何らかの意図があるんですか。それとも、ここに言う尊重と配慮というのは同義、同じ意味なんでしょうか。

鈴木国務大臣 特段違いはございません。同義と考えていただいて結構であります。

 例えば、令和四年六月に決定をした外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおきましても、ここには、我々の目指すべき、我が国の目指すべきビジョンの一つとして、外国人との共生について、個人の尊厳と人権を尊重した社会ということもございますし、これはまさに同義と考えていただいて結構です。

藤原委員 どうもありがとうございます。

 次に、本年の三月十二日の衆議院法務委員会で触れた、いわゆる闇バイトの末端実行犯の再犯防止に関して、今回、デジタルタトゥーの問題について伺おうと思っています。

 闇バイトの末端実行犯をめぐるデジタル記事がインターネット上に半永久的に残り続けるいわゆるデジタルタトゥー、これが社会復帰の妨げになっていると考えています。私みたいに弁護士なんかやっていると、刑事裁判の元被告人の方がお勤めを終わって挨拶に来てくれたりするんですね。どんなに立派に更生されても、あるいは弁護した私なんかよりもはるかに人格者になって戻ってこられても、インターネット上に記事が残っていて就職できないなど、社会復帰の妨げになっているんですね。

 デジタルタトゥーにより社会復帰が困難になり、苦しんでいる人がいるということについては、認識はされていますか。

押切政府参考人 お答えいたします。

 インターネット上に犯罪歴に関する記述が残っていることにより就職に困難が生じているとの相談が刑務所出所者等から保護観察官や保護司になされた事例があることは、承知しているところでございます。

藤原委員 これについては、私の質問主意書に対する政府答弁で、「インターネット上の特定の者の前科又は前歴に関する情報がその者の権利を不当に制約し、又はその者の更生改善を阻害することはあってはならないと認識している。」という御見解も示されています。これは資料一に載せています。

 この資料一の答弁からも、権利の不当な制約や改善更生の阻害について懸念を持っておられるわけなんですけれども、デジタルタトゥーあるいは実名報道について法務省として何らかの発信をする、具体的にはガイドラインを作成するなど、具体的な対策というのは考えておられるんでしょうか。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねが、インターネット上の前科前歴に関する情報の流通について一定の制約を課すガイドラインを作成すべきではないかというお尋ねであるといたしますと、そうしたガイドラインはプロバイダー事業者の活動を制約する可能性がございますところ、電気通信事業を所管しておらない法務省といたしましては、この点についてはお答えを差し控えさせていただきます。

 もっとも、法務省としましても、インターネット上の特定の者の前科前歴に関する情報がその者の権利を不当に制約し、又はその者の改善更生を阻害することはあってはならないと認識しております。

 法務省の人権擁護機関では、いわゆる闇バイトに関するものも含めまして、インターネット上の前科前歴に関する情報が人権侵害に当たるとして相談を受けた場合には、相談者の意向に応じ、削除依頼の方法を助言するほか、違法性の有無を判断した上で、プロバイダー等に対して情報の削除要請をするなどの対応をしているところでございます。

 今後も、インターネット上の人権侵害事案に対し、適切に対処してまいりたいと考えております。

藤原委員 今お答えのとおり、現在は法務局で個別的な対応を行っておられると。必要があれば削除依頼の方法をレクチャーするとか、場合によっては法務局が能動的に動く、今お答えのとおりです。

 ただ、資料二、資料三を御覧になっても、最高裁の判例も、インターネットの犯罪歴について厳しい評価をするようになってきている。これはもう時代の流れだと思うんですね。もちろん、同じ犯罪歴でも再犯率が高い性犯罪、これについて削除に至らないというのは合理的なんだろうなと思いますけれども、一方で犯罪は多種多様です。

 法務省としては、例えばデジタルタトゥーに関する今御説明いただいた現行の対応、これは十分だという認識でしょうか。それとも、まだ改善の余地があるとお考えですか。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 法務省の人権擁護機関においては人権相談をやっておりまして、これは様々な方法で受け付けてございます。全国の法務局や支局で対面の相談を受け付けているほか、電話、インターネット、LINE等のチャットによる相談も可能でございます。

 また、人権相談窓口を多くの方に利用していただくために、法務省では、ホームページやインターネット上のバナー広告、ポスター等で人権相談窓口の周知を行っているところでございます。

 こういった人権相談をしやすい環境を今後も整備するとともに、法務省の人権擁護機関において実施している削除要請の取組や人権相談の窓口の周知、広報に努めてまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 聞けば聞くにつけすばらしい対応だと思うんですが、いかんせん全く知られていないという実情も一方で深刻だと思っています。電話やインターネット、チャットでの対応もしていますということなんですけれども、それ自体知られていない現状があると現場では思いますので、その周知徹底については更なる工夫をしていただきたいというふうに思っています。

 次に、令和六年八月三十日に名古屋高等裁判所である判決が下されました。マンションの反対運動のリーダーの方が、現場監督ともみ合って暴行罪で逮捕、勾留、起訴された。しかし、無罪になった。しかし、無罪判決確定後に、自ら警察で採取されたDNA型等の抹消を求めて名古屋地裁に提訴する、そういう事件の高等裁判所の判決です。

 この名古屋高等裁判所の判決、これは抹消を認めたんですけれども、それに対して国は上告を断念して、確定しています。上告を断念した理由というのをお聞かせいただけますか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の判決の中では、本件暴行事件当時の状況につきまして改めて詳細な事実認定を行った上で、警察の保管するDNA型記録等を抹消すべきであるとの判断が示されたものと承知しております。

 この判決で示された事実関係を前提として総合的に考慮した結果、当該DNA型記録等を抹消するという結論については、警察庁としても争う理由がないと判断をし、関係省庁と協議の上で上告及び上告受理の申立てを行わないこととしたものであります。

藤原委員 DNA型の採取や保管管理の在り方について、各種規制を持つ国がある中で、我が国ではDNA型の採取、保管がほぼ限定なしに行われています、本件もそうですね。

 例えば、マンションの反対運動のリーダーが現場監督ともみ合いになる、これは果たしてDNA型まで採取する必要性があったのかという話なんですけれども、諸外国がこういうルールあるいは規律を設けている中で、日本はほぼ限定なし。その点について、法務省としてはどのような認識をされていますか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましてですけれども、被疑者に係るDNA型鑑定資料は、犯罪捜査上必要な場合に刑事訴訟法に基づき採取しております。また、その採取の必要性については、個別具体の事案に即して組織的に検討を行うよう都道府県警察に指示しております。

 また、保管ですが、警察庁で保管する被疑者DNA型記録につきましては、個人情報保護法、警察法及び警察法施行令に委任を受けたDNA型記録取扱規則等に基づき保管管理しているところ、同規則において、当該被疑者が死亡したとき又は保管する必要がなくなったときに抹消しなければならないと規定されており、これらに該当するときには抹消することとしております。

 ただいま申し上げましたとおり、警察においては、その必要性を適切に判断しつつ、DNA型鑑定資料の採取や被疑者DNA型記録の保管を行っているところであります。

藤原委員 質問にお答えいただけていないんですけれども、今お答えの答弁でも、例えば、必要な場合に個別具体的に検討して採取する、あるいは抹消も、必要がなくなったと判断したときに抹消する。結局判断の主体は警察なんですけれども、結局、警察が必要だと判断したら今実施できてしまっている、保管できてしまっている、そんな状況なんですけれども、このままでいきたい、このままでいくべきだというお考えだということですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 お答えいたしましたとおり、DNA型記録については、犯罪捜査に用いるため刑事訴訟法等に基づいて採取いたしまして、また、保管につきましては個人情報保護法、警察法及び警察法施行令の委任を受けたDNA型記録取扱規則並びに関係通達に基づき保管しているところであります。

 警察庁としては、これらの関係規定に基づき、DNA型記録の適切な保管管理に努めるなどしてまいりたいと考えております。

藤原委員 お答えいただけないので、次に行きたいと思います。

 DNA型というのは、例えば思想、信条や病歴や犯罪歴等の情報に劣らないほどの要保護性を有するというふうに言われています。専門技術的な鑑定によって検出される、本人ですら知っていることがまれな情報でもあります。

 DNA型について、その重要性、どのようなお考えを持っていますか。プライバシーの核心を成す情報だというふうに認識されていますか、それとも、さほど重要ではないというお考えですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 警察で行うDNA型鑑定は、DNAに含まれる情報のうち身体的特徴や病気に関する情報を含まない部分を使用して行っており、警察が保管するDNA型情報から身体的特徴や病気が判明することはありませんが、これが犯歴等と結びつけて個人の識別に用いられる情報でありまして、その取扱いには慎重を要するものであると認識しております。

藤原委員 重要か重要じゃないか、お答えください。

松田政府参考人 DNA型記録自体に身体的特徴や病気に関する情報は含まれておりませんが、犯歴等と結びついて個人の識別に用いられる情報ということで、重要であると考えております。

藤原委員 刑事弁護をやってきた弁護士としては、例えば第三者による悪用とか捜査機関による恣意的な利用、誤用、誤認逮捕の危険などが考えられ、捜査機関に制限なく採取されることに非常な危機感、危険、怖さを感じるんですけれども、もうそれは、今まで必要性に応じて警察が判断した、これは間違いなかったし、これからも間違いないから、このままの法制度のままで全く問題はないというお考えでよろしいんですね。

松田政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮ですけれども、警察においては、採取につきましては、必要性が認められた場合に、刑事訴訟法に基づきまして被疑者からDNA型記録を採取をしております。

 この点について、個別具体の事案に即して適切に今後も対応していきたいと考えております。

藤原委員 本件は無罪事案なんですね。被告人は無罪をかち取った。にもかかわらず、別途、国家賠償請求訴訟を提起してやっと抹消が認められたわけです。これは、抹消請求しなくても、無罪判決が出た時点で直ちに抹消すべき、そうじゃないですか、DNAが重要な情報だという御認識があるのであれば。

松田政府参考人 お答えいたします。

 警察においては、これまでも、誤認逮捕の場合など被疑者が罪を犯していないことが明らかとなったような場合には、保管の必要がなくなったものとしてDNA型記録等を抹消する運用を行っていたところであります。

 引き続き、保管の必要性については、個別具体の事案に即して適切に判断してまいりたいと考えております。

藤原委員 これはもう、ルールで規律する、立法化するなり通達を出す、そんな予定はないですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 既にお答えいたしましたが、DNA型記録につきましては、犯罪の捜査に用いるため、個人情報保護法、警察法及び警察法施行令の委任を受けたDNA型記録取扱規則並びに関係通達に基づき保管しているところであります。

 警察庁としては、これらの関係規定に基づき、DNA型記録の適切な保管管理に努めるなどしてまいりたいと考えております。

藤原委員 名古屋高等裁判所は、立法の措置を判決理由中で要求している。それに対して、国は上告を断念した、そういう環境に、状況にあります。それでも立法化は必要ないという判断だということですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の判決理由の中で、DNA型記録等の保管について、立法による整備が行われることが強く望まれるとの言及があったものと承知をしております。

 しかしながら、この点につきましては、御指摘の判決のほかに裁判例も様々なものがございまして、直ちに立法等の措置が必要になるとまでは考えておりません。

藤原委員 それでは、例えば、抹消したことの担保はどのようにしているのか。大垣警察署の市民監視事件、公安委員長がシュレッダーに立ち会ったとされています。これは昨年十二月の法務委員会で私は質問しました。本件は更にいい加減で、資料五にもありますけれども、これは、抹消しました、消しました、私が言っているんだから間違いない、そんな内容ですね。

 DNA型データを採取された者としてこれは信用できますか、この資料五の内容。これで信用せよということなんですかね。これで十分事足れりというふうに考えていらっしゃるんですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 警察庁が保有しているDNA型記録の抹消については、DNA型記録取扱規則第七条に規定されておりまして、犯罪鑑識官は、当該被疑者が死亡したとき又は保管する必要がなくなったときに抹消が義務づけられているところでございまして、当該規定に従って業務を行うことを通じて信用性が担保されることと考えております。

藤原委員 このぺら一の紙を渡されて、信用します、民事裁判、国家賠償までやって、かち取って、この紙一枚で信用しますと。随分不安に陥れられると思うんですけれども。

 例えば、人権をつかさどる法務大臣として、この資料五を見て、御自分が当事者だったら信用できますか、これは。

鈴木国務大臣 この場は法務大臣として立っておりますので、なかなか個人的な所感ということを申し述べることは難しいんですけれども。

 まさに今の法律の議論について申し上げるとすれば、それは、DNA型のデータの保管等については警察庁において対応するものと承知をしておりますので、そうした対応を私どもとしてはしっかりと見守っていくということに尽きるかと思います。

藤原委員 鈴木大臣らしくないと思うんですけれども、警察の動きを人権をつかさどる大臣として見守る、それに尽きるということで、ちょっと私は正直、失望したんですけれども。

 立法による解決の必要性という意味では、例えば、ドイツの刑事訴訟法には、DNA型の採取、管理について詳細な規定が設けられている。あるいは、韓国も、別途、DNAの身元確認情報の利用及び保護に関する法律というものを設けて、データベース収録後の廃棄義務なり、無罪判決が確定した場合等の削除義務なり、専門性に鑑みた第三者機関による管理委員会が設置されている。そういうふうに整備がされている国もどんどん増えているんですけれども、日本はこのままでいい、法務省は警察の取組を見守る、警察が必要と判断したらそれでいいと。

 大臣、本当にそれでいいんですか。

森本政府参考人 法務省の立場は大臣から述べたとおりでございますが、その上で、御参考として紹介させていただきますと、以前に法制審議会において、捜査手法としてのDNA型資料の採取について議論が行われた際、併せて、採取したDNA型資料の保管等についても議論の対象とされたことがございます。

 そのときの御議論といたしましては、DNA型資料は、近年の刑事裁判において極めて重要な証拠と位置づけられるものであることから、DNA型資料の採取及び保管等の在り方について法律で定めるとともに、その目的外使用を禁止した上で弁護人によるアクセスを認めるべきであるなどとする意見が示された一方で、DNA型情報の採取は適法に行われている上、DNA型データベースは、現行の個人情報保護法及び国家公安委員会規則に基づき適正に運用されており、DNA型データベースの管理運用につき新たな単独法を制定する必要はないなどとする反対意見が示されて、一定の方向性は得られなかったという御議論があったものと承知しております。

藤原委員 当然そのような反対意見は出るでしょうけれども、適正に運用されていなかったから名古屋高裁で国は負けちゃったんじゃないですか。その後者の意見のみを採用して、立法措置をやらない、それは理由になるんでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますが、もちろんどちらがということでなく、双方の意見があり、その一致を見なくて一定の方向性が得られなかったということであったというふうに承知しております。

藤原委員 無罪の場合も、あるいは嫌疑なしの場合の不起訴のケースも同様なんですけれども、このままで人権の問題はないというふうに考える態度、姿勢というのは、ちょっと甚だ人権意識を疑われても仕方がないと思っています。

 例えば、再審無罪になった冤罪被害者の袴田さんも同じですね。御本人が別途民事訴訟を起こさなければいけないというのが今の日本の環境です。そして、仮に勝訴できたとしても、本当に抹消されたのか、その資料五を見ても、これは確認すべくもないわけですね。

 DNA型の情報が重要な情報だ、あるいは、今、極めて重要だというふうにお答えになった以上、このまま、今の制度のまま放っておくというのはあるべき姿ではないんじゃないですかね。お答えください。

森本政府参考人 様々な議論はあると思います。

 例えば、無罪判決一つ取った場合に、先ほども警察庁の方から答弁もありました、誤認逮捕という場合もあれば、一定の犯罪を行われたことは事実だけれども例えば責任能力が認められなかったとか、そういう場合に、果たしてDNA型を抹消すべきなのか、それとも、そのまま、犯罪を行われたことは認められるという状況の下でどうするのかというのは御議論もあると思います。

 今後も議論を続けていくことは大切なことだというふうに認識しております。

藤原委員 では、バリエーション、無罪にいろいろあるのであれば、誤認逮捕の場合はすぐに立法なり通達なり出せるんじゃないですか。

松田政府参考人 抹消の基準は、DNA型取扱規則におきまして、保管する必要がなくなったときと規定されております。これに該当するか否かにつきましては、個別具体の判断に即して判断する必要がありまして、一概にお答えすることは困難でありますけれども、誤認逮捕の場合や保管されている被疑者DNA型記録に重複が確認された場合などには、その方のDNA型記録を抹消することとしております。

藤原委員 では、その必要性の判断を、せめて警察から第三者機関に移すべきじゃないですか、平等性、公正性を担保するために。

松田政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますが、警察庁で保管する被疑者DNA型記録につきましては、先ほどからお答えしている個人情報保護法、警察法及び警察法施行令の委任を受けたDNA型記録取扱規則等に基づき保管管理しているところでありまして、これらの規定を適切に運用してまいりたいと考えております。

西村委員長 藤原さん、時間ですので、御協力お願いします。

藤原委員 これは人権の問題です。人権に対して高い問題意識を持っておられる鈴木大臣の在任中に飛躍的な改善が図られる、このことを強く望みつつ、終わります。

 ありがとうございます。

西村委員長 次に、鎌田さゆりさん。

鎌田委員 おはようございます。立憲の鎌田でございます。

 まず、大臣に冒頭伺いたいと思います。

 大臣の初当選時、当時は小泉総理大臣だったと思うんですけれども、法務大臣、鈴木大臣は、ねぎらいのスーツお仕立券ですとか、商品券ですとか等は受け入れられていますか。

鈴木国務大臣 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 そういった中ですけれども、私の初当選時、当時は小泉総理ということで、そういった様々なことからは、ある意味変人とも言われたような方だったと記憶しています。

 そういった中で、確たることをお答え、正直言って、二十年前ということでできませんので、お答えについては差し控えさせていただきたいと思います。

鎌田委員 大臣、済みません、これは議事録に残りますので、そこは訂正された方がよろしいんじゃないかなと思うんですけれども。

 じゃ、済みません、ちょっと、もう一回御答弁いただけますか。

鈴木国務大臣 当時の状況ということで申し上げた話で、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━まさに二十年前で今と状況も違う、そういった趣旨で申し上げたわけです。

鎌田委員 では、やはり、二十年前で記憶も曖昧だしということで、聞いたことがあったようなということですので、ちょっと、最初の冒頭のところは訂正された方がいいんじゃないですか。

鈴木国務大臣 そういった状況の背景で申し上げたわけで、今の御質問ということでいえば、二十年前ということで、私としては、なかなかはっきりと確たることを申し上げる状況ではありませんので、お答えについては差し控えさせていただきたいということであります。

鎌田委員 委員長、済みません、理事会で、今の大臣の冒頭の御答弁のところの、これは議事録に残る大臣の答弁ですから、理事会にきちんと精査した上で御報告をいただきたいと思いますので、御協議をいただきたいと思います。お取り計らいをお願いします。

西村委員長 必ず協議します。

鎌田委員 法務大臣、改めて伺います。

 我が党会派では藤原委員、それから松下委員からも質問をして、それで理事会での協議ということになっています。大臣が法務省の職員の方々に月餅のお菓子をお配りになった。

 改めて私からも伺います。何個、何人、総額幾らだったのか教えてください。

鈴木国務大臣 この件につきましては、いろいろと御答弁申し上げておりますけれども、この国会が始まるタイミング、様々、職員の皆さんにも、いろいろと大変な作業であったり、あるいは御苦労もおかけをするということで、やはり、私も役所出身なものですから、本当に大変な状況というものは承知をしております。

 そういった中で、やはり、どうにか慰労をしたい、あるいはそうした元気づけをしたいということで、お菓子を全ての職員に行き渡るようにということで差し入れをさせていただいたということに、まさにそれに尽きるということであります。

鎌田委員 ねぎらいの気持ちを込めて全ての職員へというふうに今御答弁をなさいました。

 法務省の全ての職員となると、膨大過ぎるんですね。これは先ほどの今朝の理事会でも、自民党の小泉筆頭が、引き続き持ち帰って詰めたいと思うというお話でした。そして、大臣官房は、これは大臣個人としてねぎらいの差し入れだったので、事務方からは答えられないと。

 もうこれ以上、逆に、大臣はねぎらったつもりでお菓子を配ったんだと思うんですけれども、今、理事会では、大臣官房が私見ていて気の毒でしたよ。こうやって理事会の協議事項になって、毎回そうやって確認をされて、でも、大臣官房はお答えられない。当然だと思います。

 だから、大臣次第なんですよ。大臣が個人でなさったんだから。大臣次第で、何もやましいことはない、潔癖なんだ、自分の比例選挙区のブロックの中にも該当者はいない、だから、全然潔白だから、真っ白だからというのならば、大臣次第なんだから、きっちり、何個、何人、幾らでしたよ、何も問題ありませんとここで御説明されればもう終わるんです。これは引っ張りますよ、石破総理の商品券の話もありますから。

 ですので、引き続き、委員長に、私からは、当会派では三人目となりますけれども、引き続き理事会での協議事項として取り扱ってください。

西村委員長 後刻、理事会で協議いたします。

鎌田委員 改めて、次の質問に移ります。

 狭山事件についてです。

 一九六三年に起きたいわゆる狭山事件で、無期懲役が確定して、仮出所後、無実を訴えて、二〇〇六年、十九年前になりますが、三回目の再審請求をして、今も審理が続いている石川一雄さん、ちょうど一週間前、入院先の病院で、八十六歳でお亡くなりになりました。

 法務大臣、石川さんや御家族、支援者に対して何かお言葉はありませんか。

鈴木国務大臣 今御指摘の石川さんが亡くなられた、そういった報道については承知をしております。

 御指摘の事件につきましては、再審請求がなされた、そういった事件でございまして、個別事件の当事者の方の身の上に関わる事柄につきまして、大変申し訳ございませんけれども、法務大臣の立場ということでこちらに立ってございますので、その立場から所感を述べるということは差し控えさせていただきたいと思います。

鎌田委員 いや、法務大臣に聞いているんです。

 私は、今の答弁は全く納得できないし、理解できません。最低でも、故人に対して、無念であったろうとか、御冥福をお祈りしますとか、そういう言葉はあってしかるべきだと私は思うんです。別に再審の審理状況がどうとかという言葉を求めているわけではないんですから、もう生き返ることはない命に対して、私は、法務大臣として、御冥福をお祈りします、その程度の言葉はあってしかるべきだと思いますが、再度伺います、それもございませんか。

鈴木国務大臣 個人として亡くなった方にお悔やみを申し上げるということ、それは誰しもあるんだろうと思います。

 ただ、その一方で、ここで法務大臣として石川一雄さんに対してということでおっしゃいました。そういった意味でいうと、先ほど申し上げた経緯で、大変申し訳ございませんけれども、私個人として、法務大臣としての所感をこちらで述べる立場にございませんので、その点は御容赦をいただきたいと思います。

鎌田委員 これ以上は聞きません。残念です。

 二〇二四年九月二十六日、昨年、静岡地裁で袴田巌さんに対して言い渡された無罪判決に対して、同じく昨年の十月八日、最高検発表の控訴断念の旨の検事総長談話と、それから、再審手続及び捜査、公判に関する検証結果を記載した報告書について伺っていきたいんですが、今日は資料としてお配りをしています。

 その検事総長の談話についてですが、私は、下線を引いたところを特に御覧をいただきたいと思っております。この談話を読みますと、下線を引いたところからも明らかなんですけれども、検察庁が自ら上訴権放棄という判断によって無罪判決を確定させておきながら、裁判手続外で再審無罪判決を一方的に批判するのみならず、袴田巌さんの名誉を毀損しかねない内容になっています。私はそのように読めました。

 本件の談話は、刑事司法の一翼を担う公益の代表者たる地位にある者として、極めて適切さを欠いたものであると言わざるを得ません。大臣の所感はいかがですか。

鈴木国務大臣 検察当局が検事総長談話を発表したこと、あるいはその内容など、御指摘の事案の判決への対応に関する事柄についてでございますけれども、個別事件における検察当局の活動に関わるものということでございますので、法務大臣としてそこに対しての所感を述べるということについては差し控えをさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、御指摘の談話、これは検察当局が不控訴という判断を行った理由あるいは過程を説明するために発表したものでございます。そのために必要な範囲で判決内容の一部に言及をしたものであります。

 検察当局におきましては、検事総長談話発表当初から、無罪判決を受け入れ、そしてこれを確定させる以上、今後、袴田さんが本件の犯人であるなどと申し上げることはない旨、対外的に述べるなどしております。袴田さんを犯人視する意図がないことを明らかにしていると私は承知をしております。

鎌田委員 次に行きます。

 政府参考人に伺いますけれども、今後の方針についてということで、この談話の結びのところで所要の検証を行うということで結ばれていまして、同じく昨年の十二月にその報告書が発表されていますが、その報告書の目的なんですけれども、作成の目的、再審請求手続の長期化の原因や捜査、公判上の問題点の検証に焦点を当てているというふうに読めますが、いかがでしょうか。イエスかノーでお答えください。

森本政府参考人 御指摘の検証につきましては、検察として袴田さんの無罪を受け入れた上で、逮捕から再審無罪が確定するまでに約五十八年もの年月がかかったことの問題点について検証したものであるというふうに理解しております。

鎌田委員 済みません、聞いたことにお答えいただきたいんですけれども、そして、イエスかノーでお答えいただきたいというふうにお願いしたんですが。

 次に行きます。

 死刑冤罪の原因究明、これは目的にしていませんよね。イエスかノーでお答えください。

森本政府参考人 冤罪究明という表現につきまして、それがどういうふうに受け取られるかというところについては必ずしも定かであるとは思いませんけれども、繰り返しになって恐縮ですが、逮捕から再審無罪が確定するまでに約五十八年もの年月がかかったことの問題点について検証したものというふうに理解しております。

鎌田委員 局長、済みませんが、ちゃんと答弁、私はストレートにお聞きしているつもりですから、ストレートにお答えをいただきたいと思います、昨日も打合せしたと思いますけれども。

 次に伺います。

 この報告書なんですが、独立した第三者を入れないで、内部限りで検証を行っているということは間違いないですよね。これもイエスかノーでお答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 検察部内で検証作業を行っております。

鎌田委員 私は、そこに大きな問題があると考えている一人なんです。この報告書は、結局、内部検証の域を超えられていないというふうに感じられます。それは逆に露呈してしまっている。結局、自分たちの身内で身内のことを検証して、そして、最も大事な、袴田さんを、人生全てを失うに等しいくらい苦しめたという死刑冤罪のそこの検証のところ、原因究明はなされていないということなんです。

 その報告書の中を読みますと、特に第五と第六のところに、再審請求手続が長期化した要因ですとか捜査、公判等の問題点が挙げられているんですけれども、実験と鑑定、それから検察官抗告、再審公判における有罪立証、これらについては検察官の対応には問題なかったと結論づけていますよね。これは間違いないですか。イエスかノーでお答えください。

森本政府参考人 長い報告書でございますので、今の一言だけでまとめられるかというと、なかなか難しいところがございますが、問題点ももちろん指摘しつつ、先生が御指摘のような意味での問題点はなかったというふうに書いてあるところももちろん存在するものと承知しております。

鎌田委員 局長はもうちゃんと隅から隅までお読みいただいているということを前提にお聞きをしておりますので。

 私は、先ほど申し上げた点については、検察官の対応には問題なかったというふうに厚いこの報告書に書かれていることは確認をいたしました。ただし、打合せの頻度、各種書面の提出時期については、この書きぶりを見ますと、裁判所が打合せの期日を三回しか開かないとか、裁判所が積極的に審理を促進する方策が十分でない、だから長期化なんだというふうに断定しているんですね。

 それから、証拠開示については、弁護団が五回にわたって証拠開示命令の申立てを行ったけれども、当時の状況の下では検察官の対応に問題があったとは認められないと結論づけています。

 そして、静岡地裁が職権発動せず、命令も勧告も行わなかった、弁護人が求めた証拠開示命令の中には関連する新証拠を提出しないまま行っているというふうに、検察は、裁判所や請求人、弁護人側に問題があったというような指摘がされているんです。

 私は、この報告書全てを否定はしませんけれども、やはり身内が身内を検証しているからこういうふうになるんだろうなというふうな印象を拭えません。

 それで、今度は大臣に伺います。

 せめて第三者を入れて、死刑冤罪の原因究明も目的にした再検証の報告書、こういうものが必要だと思いますが、見解を伺います。

鈴木国務大臣 今御指摘のこの検証でありますけれども、本件の一連の刑事手続、これは訴訟当事者の一員として遂行してきた検察当局において、まさに個別事件における検察当局の活動を対象として行ったものであります。

 まさにそういったことで、例えば第三者機関を入れることをやり直せとかそういった話になりますと、法務大臣である私が、その当否、まさに検察の活動の検証についての当否について言及するということになりますし、そうなれば、これは司法権と密接不可分の関係であります検察権、この行使に影響をまさに及ぼそうとしているようなことになります。あるいは、司法権の独立という観点からも、当然これは問題が生じてくると思います。

 まさにそうした指摘につながりかねないことでありますので、私の立場として、こうしたお尋ねにお答えをすることについては、正直、これは適当ではないと私は考えておりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思っております。

鎌田委員 移ります。

 日本の死刑制度について、大臣、絞首刑について、いわゆる身体的苦痛について、法務省内で医学的見地から検証はなされているでしょうか。これは、イエスかノーでお答えいただきたいです。

鈴木国務大臣 医学的な検証ということでは、私は承知をしておりません。

鎌田委員 政府参考人の方に伺います。

 死刑の執行について、リハーサルのようなことはなされていますか。伺います。

小山政府参考人 刑場を置きます施設では、定期的に機器の作動状況の確認を行うなど、日頃から適正な執行に備えております。

鎌田委員 済みません、私が伺ったのは死刑執行のリハーサルです。だから、模擬の人形を使ってなどのリハーサルのようなことは行われているかということです。イエスかノーでお答えください。

小山政府参考人 今お尋ねのような具体的な内容につきましては、保安警備上の理由や死刑確定者の心情への配慮をする必要もありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

鎌田委員 執行の一、二時間前に死刑囚本人に告知されているというこの当日告知、これは法律で規定されているものではなくて、法務省による行政運用でよろしいですよね。伺います。イエスかノーでお答えください。

小山政府参考人 法律により規定されているものではございません。

鎌田委員 刑務官への執行の手当は一律二万円。これは、何年から一律二万円になったんでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの手当につきましては、平成三年から二万円となってございます。

鎌田委員 確定死刑囚の処遇について伺いますけれども、土に触れる機会はあるか、花を育てる機会はあるか、生き物を育てる機会はあるか、楽器に触れる、そして演奏する機会はあるか。伺います。

小山政府参考人 現時点におきまして、御指摘のような処遇は一般的には実施しておりませんが、刑事収容施設法第三十二条第一項は、死刑確定者が心情の安定を得られるようにすることに留意するものとするという死刑確定者の処遇の原則を定めておりますことから、その心情の安定を図るための処遇を工夫していく必要があると考えておりまして、昨年七月から、一部の死刑確定者を対象に観葉植物に触れさせる処遇の試行を開始しておりまして、その運用状況等を慎重に検討しているところでございます。

鎌田委員 昨年の七月から、一部の確定死刑囚に対して花を育てるということを試行的に運用しているという今御答弁がありました。私にとっては初めてお聞きする内容で、この法務委員会で確定死刑囚の処遇を、心情の安定ももちろんですけれども、処遇を見直していくべきだということは再三この委員会で何回も質問してまいりましたので、今、局長からの御答弁、それは、これから広げていくということ、計画か何か作られているんでしょうか。私は、それは是非進めていただきたいと思っている一人なんですが。

小山政府参考人 委員、今、お花とおっしゃいましたけれども、私どもとしては、観葉植物に触れさせる処遇の試行を開始しておるところでございます。

 この点につきましては、死刑確定者の法的地位の特殊性から慎重な検討を要するものの、引き続き適切な死刑確定者の処遇に努めてまいりたいと考えております。

鎌田委員 恐らく、法務省の、そして矯正局の中では、確定死刑囚の処遇について、より心情が安定するようにということを議論されていると私は信じたいし、そのような声もたくさん受けられていると思いますから、是非、また私、これからずっと伺っていきますので、観葉植物のみならず、いわゆる生き物を育てるですとか、楽器に触れる機会ですとか、そういうものを確定死刑囚の処遇の中で今後検討していただきたいと思います。

 大臣にちょっと改めて伺いますけれども、確定死刑囚に対して国家が奪っていいものとは、私は一つだけだと思うんですけれども、何だとお考えになりますか。

鈴木国務大臣 死刑、これはまさに生命刑ということであります。そういった趣旨であれば、生命を奪うということになろうかと思いますけれども、まさに、ただ同時に、死刑の言渡しを受けた者については、その執行に至るまで刑事施設に拘置をするということともされております。刑事施設への拘置に伴う制約として、法令によって、一定の自由の制限、これも同時に受けるということになっている、そういった状況はございます。

 そういったことの中で、私どもとしても、そうした心神、その安定というもの、あるいは精神的苦痛や動揺に陥ることを防ぐために様々な対応をしているということでございます。

鎌田委員 最後にします。

 大臣、この日本の死刑制度については議連もつくられておりまして、これからの日本の死刑制度を考える会という、平沢先生を会長にして、そういう議連もあります。

 私から一つ提案というか要望を強くさせていただいて、お考えいただきたいんですが、法制審に日本の死刑制度について諮問をする。そして、法制審で何年かかるか分かりませんけれども、諮問するというお考えを持っていただきたいと思いますが、いかがですか。それで終わりにします。

鈴木国務大臣 まさにこの死刑制度、この存廃、これは我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であります。まさに、国民世論に十分に配慮しつつ、社会における正義の実現等々、種々の観点から、これは慎重に検討すべき問題と考えております。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、萩原佳さん。

萩原委員 日本維新の会、萩原佳でございます。

 本日は、まずは二月六日の予算委員会で、無罪判決があった場合の刑事補償法について議論をさせていただきました。内容的には、刑事補償法第四条、これは刑事補償金を一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額と定めていて、かかる金額は一九九二年、平成四年から変わっておらず、近年の物価上昇の状況を考慮し、補償金額を引き上げるべきではないのかという議論をさせていただきました。

 鈴木大臣からは、上限額については、経済事情の推移を考慮いたしまして、賃金水準、そして物価水準の上昇率を基準として、一定の計算式に基づいて上限額が算定されているところでありますとの御答弁があり、その上で、最新の金額についても平成四年の改正時と余り変わりがないという状況でありますので、ちょっと中を飛ばしますけれども、上限額を引き上げるということは、なかなかその必要性を見出すことは現状ではないというのが大臣の御答弁でした。

 ただ、近年の物価上昇の状況を考慮すると、どうしてそのような結論になるのか、判断になるのかというのがなかなか理解し難いのですけれども、質問の前提として、金額の算定根拠について、より詳細にお聞きしたいと思います。お願いいたします。

森本政府参考人 算定根拠についてお答えいたします。

 まず、刑事補償法が昭和二十五年に制定された当時、補償の上限日額は、当時の平均賃金などを考慮して四百円と決められておりました。この上限額については、これまで累次にわたる法改正により引上げがなされてきておりまして、それらの改正時には、改正時までの経済事情の推移を考慮するという考え方の下、賃金水準及び物価水準の上昇率を基準として補償金額を算出してきたところでございます。

 その上で、補償金の上限額が現状の一万二千五百円に引き上げられた平成四年改正時においても、同様の考え方の下、法制定時との比較において、一般給与水準及び消費者物価水準の双方の上昇率を基準として引上げを行ったということでございます。

 具体的には、補償の上限日額について、これを逸失利益の部分と慰謝料の部分とに分けまして、逸失利益につきましては一般給与水準の上昇率を基準といたします、慰謝料につきましては物価変動一般。つまり、私どもといたしましては、一般給与水準と消費者物価の双方の上昇率を基準として算定する、こういう考え方に基づいて算出しております。

萩原委員 詳細な御説明、ありがとうございます。

 この金額に関して、いかがなものかという話をさせていただいたところ、さきの予算委員会では、不足するんじゃないかという話に対しては、刑事補償金、これを超える賠償の請求は、国家賠償請求法、これに基づいて可能という御答弁でした。

 ただ、国家賠償請求での訴訟を提起するとなると、時間がかかり、負担を強いられることになります。加えて、国家賠償による場合、違法性の認定にハードルがある。判例によると、逮捕、勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められる限りは適法であるとしています。

 このように、無罪になっても直ちに国家賠償が認められるわけではなく、だからこそ刑事補償法があるというところですけれども、だからこその見直しだとも考えております。

 今るる御説明いただきましたけれども、刑事補償の算定根拠というのは、昭和二十五年の数字と、それ以降の物価と賃金、これをベースにされているとのことです。

 ただ、基礎的支出項目の、消費者物価指数が、一九九五年、これを一〇〇とすると、二〇二三年は一二〇となっていて、約二〇%ほどの物価上昇がある。また、賃金構造基本統計調査、これによると、金額改定が行われた一九九二年の一般労働者の賃金の月額は二十七万五千百円だったところが、二〇二四年は三十三万二百円という形で、こちらも約二〇%ほどアップしているような額になります。

 そして、今御説明いただいた算定根拠、それについては、計算要素として出てくる各種指数の伸び率というのを詳細に見たわけではないんですけれども、全ては昭和二十五年の数字というのをベースにしていると理解はしております。

 ただ、ここ何十年かで、物価や賃金状況、これが大きく変わっている実感があって、さらに、これを裏づけるように各種統計資料が大きく伸びている中、機械的に計算した計算結果が平成四年当時と変わらないというのであれば、それは、その計算的に行っている計算方法や計算要素がおかしいんじゃないのかなと考えております。金属疲労が来た計算式というのは見直すべきじゃないのかなと考えております。

 所得税の百三万円の壁、これを見直されたように、鈴木大臣も、是非、来年度中に、物価上昇や賃金上昇に合わせてこの算定基準というのを再度見直されるように表明されてはどうかなと考えておるんですけれども、大臣のお考えをお示しください。

鈴木国務大臣 過去をずっと見渡しますと、やはり、まず、長年、デフレという状況の中で、物価、賃金、なかなか上がらない状況というのが続いてきたということがありました。様々な環境の変化、あるいは政策転換の効果も含めて、いろいろそういった形で、今まさに分かれ道になっていると思います。

 直近で申し上げれば、正直、おっしゃるように、賃金、物価、かなり上昇トレンドに入ったのかなという感じはしなくもありませんけれども、まさに、アメリカの経済状況であったり、あるいはグローバルな経済状況、あるいは国内の金融政策等々も含めて、この先行き、これは正直、私どもとしても、確たることを言える状況にはありません。

 まさに、そういった中で、これからもそういった上昇のトレンドが続くということになれば、その見直しということ、これは当然視野に入ってくるんだろうと思います。

 そういったことで申し上げれば、これまでの計算式を見直すということではなく、やはり、私は、賃金あるいは物価の水準というものに基本的には応じて決まっていく、これは基本的には正しいことだと思います。

 その一方で、その見直しをいつやるのか、あるいは見直しの頻度をどうするのか、こういったことでまさに実勢をきちんと反映できる形にしていく、そのことは我々としても不断の見直しは当然していかなくてはいけないと思っております。そういったことでいえば、これからのそうした賃金、物価動向、これは我々としてもきちんと注視をした上で、必要があれば、それはきちんと速やかにそういった対応もしていきたいと考えています。

萩原委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただきましたけれども、物価動向を見ていく、あと、頻度についてもという話もされておりました。

 必要ないと計算されたものに関しては、令和四年をベースに計算していたというふうにお聞きはしているんですけれども、この二年、非常に各種数字というのが伸びているという意味では、頻度というのが三年前でいいのかというところは是非御検討いただければなと思っております。

 また、とはいえ、物価動向を見るとおっしゃっていましたけれども、四百円という昭和二十五年の数字、その中には逸失利益部分と慰謝料部分というものの組合せでこの数字になっていると理解しておりますが、その組合せというのも、どの時点で行うのか、二十五年当時の割合がそのままでいいのかというところも検討する必要があるのかなと思っています。設定当時は妥当な計算方法であったかもしれませんが、時代が変われば計算方法や結論というのは変わるのかな、その設定が七十五年たてば当然その割合的なところも変わってくるのかなと思っておりますので、是非その検討も併せてお願いできればなと。

 最後、これは予算委員会でも言いましたけれども、かかる計算式の話に加えて、現状、単純に日数を掛ける形で補償金の請求をしておりますけれども、袴田さんのように本当に長期にわたる方については、やはり金額掛ける日数掛ける係数というのも必要かなと考えております。十年と五十年、数字に掛けて五倍だという話ではないと思っておりますので、是非そこの係数、じゃ、どう設定するんだという割り切りの話も出てくるとは思うんですけれども、そこも併せて御検討いただければなと思っておりますので、この点、よろしくお願いいたします。

 続きまして、二つ目、自動車所有者への処罰というところで、先日の委員会での続きにはなるんですけれども、その質問をさせてください。

 本日、資料一をお配りさせていただきましたけれども、お配りした資料一を御覧ください。

 札幌の脱輪事故、これがあって、五歳の女の子が重体になりました。事故を起こした軽自動車は違法改造車。女の子は、走行中の違法改造車から外れたタイヤにぶつかって、一年以上たった現在も意識不明の状態。自動車の所有者は、脱輪の原因となったナットの緩みなどは点検していなかった。また、運転手は、そのまま、制限速度三十キロのところの下り坂を五十四から六十八キロの速度で走行して、左前輪が脱落して、悲惨な事故となった。

 自動車の所有者は別の車でその違法改造車のすぐ後ろを走っていた状態で、また、ナットの緩みは点検しなかったということで脱輪、そのタイヤによって、女の子に当たって重体になったとしたら、その点に関しては過失や因果関係、これが認められることになろうかと思います。

 北海道警察は、自動車の所有者を過失運転致傷と不正改造の疑いで逮捕しましたが、検察は、不正改造を起訴しただけで、過失運転致傷については起訴しませんでした。

 個別の事案についてのコメントはなかなか難しいとは思うんですけれども、一般論として、運転をしていなかった車の所有者に過失運転致傷を適用することはできないのか、この点、お示しください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 過失運転致傷につきましては、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の第五条におきまして、「自動車の運転上必要な注意を怠り、」というのが構成要件となっております。

 もちろん証拠によってケース・バイ・ケースではございますけれども、「自動車の運転上」というふうに書かれているというところからすると、基本的に念頭にあるのは、自動車の運転をしている人ということにはなろうかと思いますが、それが果たしてどの範囲で認められるかというのは証拠関係次第かというふうに思います。

萩原委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったとおり、基本的には運転者というのをベースに考えられている、そのようになっているんですけれども、今回、この事件に関しては、検察が自動車の所有者に対して求刑したのは不正改造の罪のみということで、道路運送車両法違反で罰金が二十万円のみということです。この結果が、御家族の気持ちを考えると、妥当かどうかというのは、妥当でいいのか、これでいいのかとはなかなか思えない状況です。

 この事案のように、因果関係、これが一定認められる場合であれば自動車の所有者を処罰できるよう、法改正を行うことを検討していくことも考えられるかなと思っております。ぱくった車で死亡事故を起こしたとかそういうものではありませんので、オーナーを処罰すべきという話、そういう車で事故を起こしたという話をしているわけではなく、因果関係があるという話だと思っております。

 大臣は、犯罪被害者に寄り添った対応をしていくとおっしゃっております。被害者や被害者の御家族に寄り添った対応として、この件についても、明確に処罰ができる等、改正を見据えて検討をお願いしたいと考えていますけれども、その点についてどのようにお考えになるのか、大臣のお考えをお示しください。

鈴木国務大臣 この記事も読ませていただいて、まさに、この被害者の方、大変、私も非常に心が張り裂けそうな、そういった思いであります。

 同時に、個別の案件、個別の事件ということを申し上げましたが、やはり、犯罪の成否、これは捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断をされるべきものと思いますし、まさに法と証拠に基づいて刑事事件として取り上げていくというものだろうと思います。

 そういった中で適切に対処をしていく、まさにそのことに尽きると思っておりますし、そういった意味で、処罰できるようにするべきではないかということについても、私としては、証拠に基づいて個別に判断をされるべきものということで、法務大臣として、そのことについてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

萩原委員 証拠に基づいてということと、差し控えるということでした。

 今回、過失運転致傷の話をさせていただきましたけれども、一定これはハードルがあるということはもちろん理解しておりますし、時間が必要な場合というのもあるケースであるとは理解していますが、ただ、先週質疑させていただいた、トラックに巻き込まれてお亡くなりになった事案もそうなんですけれども、やはりちょっと命に対する処罰というのが軽いんじゃないのかという問題意識がございますので、是非、被害者の方、そしてその家族の方に寄り添った御対応、これをお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日最後の質問として、オンラインカジノについてお聞きしたいと思います。

 最近、オンラインカジノの摘発が続いている状況です。プロ野球選手であったりお笑い芸人などの、任意での警察からの聴取が行われています。

 オンラインカジノを含むオンライン上の賭博行為に関しては、厳正な取締りを行っていると思います。昨年のオンラインカジノの立件人数は二百七十九名で、一昨年の百七名に比べると二・六倍と増加しています。日本では賭博は犯罪ですけれども、違法であることを認識せずに気軽に始めてしまう方が多いという問題があります。

 単純賭博罪は五十万円以下の罰金又は科料となっています。他方、常習賭博罪は三年以下の懲役となっております。そして、今年の六月一日から、これが三年以下の拘禁刑になるというふうに理解しております。

 まず最初に、この点、常習性がなければ軽い法定刑になっていますけれども、今回のようなケースで、単純賭博罪で起訴に至るようなケースというのはあるのかないのか、お示しください。

森本政府参考人 まず、一般論として申し上げますと、個別の事案ごとに、法と証拠に基づいて、その事案の犯罪の軽重及び犯罪後の状況などといった様々な事情を総合考慮して起訴するか不起訴にするのかというものを検察当局としては判断しているものと承知しております。

 その上で、単純賭博罪のことを法律では賭博罪、裸の賭博罪と呼んでおりますが、賭博罪で起訴されて罰金刑に処せられた例はあるものと承知しております。

萩原委員 ケースとしてはあるということでした。

 オンラインカジノを検索すると、政府広報オンラインの、オンラインカジノによる賭博は犯罪ですというリンクが出てきますけれども、それより前にオンラインカジノランキングというページが表示されます。こうしたサイトは、オンラインカジノのサイトにリンクが張られていて、普通にアクセスをしてしまうという危険があります。

 こうしたサイトの管理者、彼らは海外のサーバーでサイト運営をしているものと考えられますが、そもそもこうしたサイトの運営者は、単純賭博あるいは常習賭博の幇助罪として立件できるのでしょうか。立件できるとすれば、立件が進んでいる、まあ、ちょっと先ほどと質問はかぶるんですけれども、お願いいたします。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 犯罪を構成するか否かにつきましては、個別具体の事案の事実関係に即しまして、法と証拠に基づき判断されるものでございますが、その上で、一般論として申し上げますと、オンラインカジノサイトの利用を勧誘し、賭博を行わせた場合には、賭博の幇助犯に当たる可能性もあると考えられるところでございます。

 これまで、御指摘のいわゆるリーチサイトの運営者を検挙した事例の把握はございませんが、警察といたしましては、今後、日本語でオンラインカジノの情報を発信しているリーチサイトやアフィリエイターの実態把握を更に進めまして、刑罰法令に触れる行為があれば厳正に対処していく考えでございます。

萩原委員 あり得るということですけれども、事案としてはない、立件されたケースはないということです。

 このオンラインカジノ、アクセスした人から聞くと、本当に、日本語が載ってあって、普通のゲームを始めるように始めてしまう、非常にゲームとオンラインカジノの区別というのがなかなか難しいという話はお聞きしておりますが、それゆえに、いろいろな方がしてしまっているということになっているのかなと考えています。

 警察庁が先日、実態調査を、この点について推計をまとめています。それによると、オンラインカジノの利用者は三百三十七万人、年間の賭け金額は一兆二千四百億円にも上るということです。一人当たり六十三万円をオンラインカジノに使っている計算になって、その中で、違法性の認識のない方が四割に達しているということでした。

 ただ、この賭け額とか市場規模についてはかなりの過小評価になっているという専門家もいらっしゃる状況ですけれども、この発表された実態調査の結果についての所感と今後の対応をどのように考えられているのか、お願いいたします。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 警察といたしましては、違法なオンラインカジノでの賭博がこのように蔓延している状況を極めて深刻に受け止めており、厳正な取締りを一層推進するとともに、依存症対策という観点からも、社会全体で更なる対策が不可欠であると認識しており、特に次の三点について取組を強化したいと考えております。

 まず第一は、オンラインカジノの違法性についての周知徹底でございます。オンラインカジノは、海外において適法に運営されているものであっても、日本国内からこれに接続して賭博を行うことは犯罪でございます。引き続きこのことを様々な広報媒体を通じてしっかりと周知してまいりたいと考えております。

 第二は、違法なオンラインカジノの運営に関与している者に対する取締りの強化でございます。日本国内から接続し、賭博が行われているオンラインカジノサイトに関しましては、国内の決済代行業者やオンラインカジノを宣伝することにより獲得したユーザー数に応じて報酬を受け取っているアフィリエイター等が運営に関与していると見られることから、これらの者に対する厳正な取締りを一層推進してまいります。

 第三は、オンラインカジノサイトに関する情報を提供している者への対策でございます。警察といたしましては、日本語でオンラインカジノの情報を発信しているリーチサイトやアフィリエイターの実態把握を更に進めまして、オンラインカジノの利用を勧誘するなどしている者に対しましては、賭博への依存症を助長するだけでなく、賭博の幇助に当たる可能性があることから、そのような行為を行わないよう働きかけを行うとともに、関係省庁と連携いたしまして、日本国内に向けてオンラインカジノの情報が提供されることを抑制するための措置としてどのようなことが考えられるのか、早急に検討を進めてまいります。

萩原委員 ありがとうございます。

 三点、把握されているものと今後の話をしていただきました。

 その中で、警察庁については今話されたような対応を取るということですけれども、総務省では、それに関しては、オンラインカジノ利用の広がり、これが問題になる中で、サイトにアクセスできないようにするブロッキングの在り方については、有識者とともに検討を始める方針を明らかにしています。早急に検討を開始できるよう進めたいということですけれども、ただ、有識者を交えて論点を整理すると、事業者などからも意見を聴取するというところで、一定時間がかかるのかなとも考えています。ただ、海外ではブロッキングを行っている国もある状況です。

 以前、ブロッキングとなると、漫画村などの海外サイトが問題になって、二〇一八年に政府は、三つの海賊版サイトをブロッキングすることが適当という緊急対策を発表して、民間事業者サイドの自主的な取組としたものの、政府からの要請を受けて、NTTグループ等四社は、ブロッキングが整い次第実施するという発表をしていました。

 結局、漫画村などの海賊版サイトは閉鎖されて、ブロッキングの前に閲覧できなくなりましたが、かかる対策は、当時の菅官房長官が中心となって官邸主導でまとめたものでした。その中で、政府は、海賊版サイトは被害が甚大で、止めるべき理由があって、かつ、対象先も限定されていたため緊急避難として認められるとブロッキングについて考えていたようです。ただ、総務大臣は、先日の記者会見で検討の場の立ち上げに関して準備している、スピード感を持って対応したいとおっしゃっていますけれども、どのような時間軸で対応する予定なのか。

 また、二〇一八年の緊急対策としてブロッキングを発表したことについて、当時の所感をお示しください。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 ブロッキングを含むオンラインカジノサイトへのアクセス抑止の在り方につきましては、検討の場を設けて有識者を交えて具体的な課題や論点を整理するとともに、事業者を始めとする関係者の意見を丁寧に聴取し、技術的課題や想定されるコストを含め検討していく予定でございます。

 御指摘の、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策におきましては、ブロッキングについては、緊急避難の要件を満たす場合には違法性が阻却されるものと考えられるとした上で、ブロッキングの対象としては上記緊急避難の要件を満たす形で実施できる特に悪質な海賊版サイトに限定することが適当としたものと承知をしているところでございます。

 この緊急対策につきましては、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で決定されたものでございまして、これを評価することは差し控えたいと思いますが、いずれにしましても、オンラインカジノサイトのブロッキングについて、緊急避難などの法的要件の在り方を含めて、早急に検討をしていきたいと考えているところでございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 二〇一八年当時とは政治の状況も異なっていますので。法的な問題、これを十分検討せずに対応するということに関してはもちろん課題があると思っています。ただ、今回のように被害が大きくて緊急性が認められる場合はそうした対応、ブロッキングも考えられるんじゃないのかと思っています。賭け金の額は一兆二千四百億円にも達しているという意味で、影響は大きいのかなと思っています。賭博は被害者のない犯罪と言われて、犯罪に利用された資金は被害額ではありませんが、影響額は二〇一八年の漫画村よりも大きいと評価できます。鳥畑与一静岡大学名誉教授などは、ブロッキングの導入、これを急ぐべきだとしていらっしゃいます。そういう識者もいらっしゃいます。

 そういう中で、今回のケース、緊急避難に当たると考えられますので、緊急対策としてブロッキングについて発表する、これはどのように考えられているのか、お願いします。

西村委員長 総務省大村部長、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 オンラインカジノサイトのブロッキングを含むアクセス抑止の在り方につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、検討の場を設け、有識者を交えて御指摘の緊急対策の内容なども参考にしつつ、事業者の意見を踏まえながら検討してまいりたいと考えているところでございます。

萩原委員 もう時間がということなので、一言だけ言うので。

 本当は法務大臣にお聞きしようとは思っていたんですけれども、対応策というところ、また、そういう対応を取ったとしても、結局はイタチごっこみたいなところもありますので、まずは法意識の醸成というところが大事かなと考えておりますので、法務省としてどのように考えますかというのを言おうかと思ったんですけれども、是非、四割の方が違法性がなかったというところがかなり減るような対応を、法務省としてもできることを、警察庁若しくは、小さいときからということなので文科省等と協力して、対応を取っていただくことをお願いして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

西村委員長 次に、小竹凱さん。

小竹委員 国民民主党の小竹凱です。

 本日、質疑の時間をいただき、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 質疑に入る前に、先ほどの立憲民主党の鎌田委員の質疑に対しての大臣の答弁で、ちょっと気になったので、通告していないので答弁を求めませんが、先日の報道からの件を踏まえて、大臣が当選時の件について聞かれた際に、与党も野党もそういう時代でのような見解がありましたが、今回の件、改めて事実をなぞるようなことは私はいたしませんが、今回の件については、総理の件も含めて、鈴木大臣にも改めてちょっと反省を是非していただきたいと思いますし、本質的なことを、何が問題かと考えますと、やはり、時代が昭和から平成から令和に変わっている中で、まだ昭和の時代を世襲しているという、この本質的なところが今、世間から再認識されているところなのではないかというふうに私は感じます。

 先日、ちょっと余談になりますが、地元の大学生とお話しする機会がありまして、この総理の報道に関しても、どういうふうに思っているか、率直に伺ったところ、興味ないと言うんですね、皆さん、正直。その中身を深掘りしていくと、正直、政治家という皆さんは裏にお金がたくさんあって、金銭の授受はしているものだと考えているというようなことを私は直接伺って、本当にショックを受けましたし、政治の役割ってたくさん、いろいろあると思いますが、一番には、やはり、若者、子供たちに、将来に希望が持てるようなビジョンを描いていくことが確実に必要なことだと思います。

 そういう中で、そういうことを大学生に言わせてしまっていることが、国のかじ取りをする政治がそういうことを思わせてしまっているということが本当に私は悔しい思いですし、そこはまた改めて、答弁を求めませんが、このことは本当に強くお願いをして、本日の質疑に入りたいというふうに思います。

 前回に引き続き、共同親権の運用について、続きの質問をしたいと思っております。

 前回の答弁で、様々なケースに関してQアンドAを作り、法務省として一定の方向性を示していくというような回答がありましたので、今回は、幾つかのケースにおいて質問していきたいというふうに考えます。

 まず、別居、離婚後の災害時の子の安否確認に関する課題について伺います。

 昨年の能登半島地震の際に、安否の連絡が取れないことによる現制度に対しての不安と不満の声が届いておりました。一部抜粋して読み上げますが、被災地域に住む者です、性格の不一致で離婚、子供二人と会うことに制限があります(DVや虐待被害はなし)、連絡が取れず、元妻に子供の安否を連絡、確認しても返事がありませんと。後日、続けて、昨日、娘とだけ会うことができました、娘によると息子も元気だそうです、娘は、怖かった、泣いた、パパが心配だったと言っていたというようなことが私の元に届いておりました。

 この件に関して、もちろん、母と子供同時に被災していた可能性もありますので、即時連絡がなかったからといって、責め立てるようなことはしませんが、しかし、この件に関して言うと、一週間以上安否の確認ができなかった事案だそうです。

 そこでお伺いしますが、災害時に、子と同居する親が、別居親からの安否確認の連絡を受けながら、仮に支障がないにもかかわらず子の状況を知らせない場合、今回の法改正で新設される父母間の人格尊重、協力義務に違反するのではないでしょうか。また、人格尊重、協力義務違反は親権制限の要件となり得るのか、答弁を求めます。

鈴木国務大臣 まず、冒頭の御指摘について申し上げますと、これは与党、野党ということではなくて、この国会にいる国会議員一人一人、全ての国会議員が、それはそれぞれの大義、誠意ということの中で、どうそれを実現すべく議論するのか、そういった真摯な姿勢で当然臨んでいる、私はそう感じております。そういった中で、私もしっかりとそういった意味での職責をこれからも果たしていきたい、そのことはまず申し上げたいと思っております。

 その上で、今の御質問でありますけれども、災害が発生した場合等において、親にとって子の安否に関する情報、これは極めて重要なものであります。御質問のように、何ら支障がないにもかかわらず子の状況を知らせないという場合という、これは仮定の話でありますから、そういう想定、仮定であれば、これはその同居親の人格尊重、協力義務の問題、これが生ずる可能性は当然ございます。

 その上で、一般論として申し上げますと、人格尊重、協力義務の違反については、親権喪失等の審判等において、その違反の内容、これは考慮される可能性があると考えられるというところでございます。もちろん、これは個別のそれぞれのケースということでございますので、どのケース、個別のことについて申し上げるつもりはございませんけれども、そうした状況と申し上げたいと思います。

小竹委員 ありがとうございます。

 個別の事案、それぞれありますから、確信的なことは申し上げられないのは重々承知ですが、人格尊重義務違反に関しては、そういった可能性もあるというような答弁をいただけたことはありがたく思います。

 私の両親も和倉温泉にいて、能登の被災をいたしました。数時間後に連絡がついたので安心できましたが、一週間以上安否が取れないとなると、本当に不安に縛りつけられていたことと思います。この例では、明らかに子の不利益が出ているのではないかというふうに考えますし、それに関してはしっかりと取り組んでいただきたいというふうに感じております。

 これに関しては、防災と一緒で、事前に備えていく必要があると考えます。例えば、家庭裁判所において、別居、離婚時の災害時の安否確認、親権者間の協議や調停の条項に含めて、共同親権導入後の実務として災害時の連絡方法などを明文化し、適切な運用を行うべきと考える見方もあるかと思いますが、見解を伺います。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 離婚調停における調停条項の定め方の問題というふうにお聞きしますが、一般的に、離婚調停の成立時には、身分関係、金銭給付、親子交流等の当事者間の基本的な権利義務関係に関する合意内容を条項として定めておりまして、当事者双方が特に希望した合意内容についても条項として定められる場合があるものと承知しております。

 個別の事案において具体的にどのような条項を定めるかは、裁判官一名及び調停委員二名以上で構成される調停委員会が、当該事案における当事者双方の意向や具体的な事情も踏まえつつ、必要かつ十分な範囲で検討しているものと承知しているところでございます。

 この家族法の改正法施行後においてもこの点は変わるものではございませんで、事務当局といたしましては、調停委員会が調停条項をどのように定めるべきかについては、一定の方向性を示す立場にはないということを御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 また、この同様の件に関して、災害時の対応について、公教育の面においても制度運用に伴った準備が進められているのかということについて伺いたいと思います。

 学校や保育施設は、校内、園内又は通学、通園中に災害が発生した場合の安否確認の連絡を、一般的には緊急連絡先として、自宅の電話番号、父母の携帯番号を控えていることが一般的だと思いますが、今回の民法改正により、別居、離婚後も親子関係の継続が前提となる以上、別居親にも安否情報が共有される仕組みを導入すべきと考えますが、見解を伺います。

江崎政府参考人 お答えいたします。

 学校につきまして申し上げますと、各学校は、学校保健安全法に基づきまして、児童生徒等の安全の確保を図るために、危険等発生時に当該学校の職員が取るべき措置等を定めた対処要領としまして、危機管理マニュアルを作成することとされております。子供の在校中に災害が発生した場合においても、各学校においては、この危機管理マニュアルを踏まえた対応を取ることが基本となっております。

 文部科学省におきましては、各学校に示している危機管理マニュアル作成に係る参考資料の中で、危機発生に備えた対策としまして、複数の手段を含めた有事の際の保護者への連絡方法、児童生徒等の一斉下校や引渡し等の基準、これらについて、保護者と適切に共通認識を図っておくことが重要であることを示しておるところでございます。

 各家庭の状況は様々であることが予想されるため、文部科学省において、一律で安否連絡の方法の指示等はいたしておりませんけれども、各学校におきまして、子供の安否に関する情報を保護者に適切に連絡することができるよう、引き続き必要な対応を促してまいりたいと存じます。

竹林政府参考人 保育施設に関する部分について、お答え申し上げます。

 災害の発生時に、保育所等が保護者等への連絡や子供の引渡しを円滑に行うため、国が定める保育所保育指針等におきまして、日頃から保護者との密接な連携に努め、連絡体制や引渡し方法等について確認をしておくことというふうに示しております。災害発生時の具体的な連絡先等について、一律に示しているものではございませんが、子供に別居の親がいるかいないかも含め、各家庭の状況は様々であることを踏まえ、各保育所等において、子供の安全を確保する観点から適切に確認しておくべきものと考えています。

 こども家庭庁としては、保育所等が子供の安否に関する情報を保護者に適切に連絡することができるよう、引き続き必要な対応を促してまいりたいというふうに考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 家庭の状況がいろいろあるのは、婚姻の有無にかかわらず、いろいろあるとは思います。是非、今回の民法改正を機に、世界一の災害大国の日本だからこそ、ここをしっかりと整備していただきたいというふうに思っております。

 次は、親子交流支援の高額負担と運用の課題についてお伺いいたします。

 前回の質疑で、親子交流支援の費用について一回約一万円とお話ししましたが、例えば、日本で最も古い親子交流支援機関である公益社団法人FPICは、昨年十一月に支援料金を値上げしており、更に高額となっております。

 当支援機構の支援内容には、第三者機関の支援員が面会交流の際に親子に付き添う付添型、子供の受渡しに同行する受渡し型、連絡調整型と、三段階がございます。本来は、段階的にステップアップし、最終的に支援機関自体を卒業することが目標ではありますが、実際には、そういったケースはなかなか見受けられることが難しいというようなことを伺っております。

 先進各国でも親子交流機関はありますが、DVや虐待の危険がある場合に限られ、特に、この付添型支援というのは、実際に危険があるケースのみで適用されることが一般的だそうです。しかし、日本では、同居親が、連れ去りが怖いと主張することで、付添型が長く続くケースがございます。これは、ある種、これまで日本国内において、子の連れ去りが、海外と異なり、法で裁かれてこなかったことも一つの原因だと考えることができます。

 実際に、DVや虐待の証拠がなくても、比較的高額な付添型が適用されることが多く、一回三時間以内で、当支援機関の場合、二万四千二百円という金額となっておりました。監視されながら子供と会っているケースが存在するということでございます。このような高額負担と不合理な運用は、親子関係の維持を妨げる要因ともなっていると考えます。

 そこでお伺いしますが、支援の適正基準や費用の見直しが必要ではないでしょうか。あくまでも民間委託のため、金額を決めることは難しいにしても、全ての子供たちが不利益を被らないような、国としての一定の方向性を示すことが必要と考えますが、その点、当局の見解がありましたら、御回答をお願いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 父母の別居後や離婚後も適切な形で親子の交流の継続が図られることは、子の利益の観点から重要であると考えております。また、親子交流の実施に当たっては、その安全、安心を確保することも重要であります。

 親子交流については、父母間の協議又は家庭裁判所における調停等による適切な取決めに基づき、父母及び子によって安全、安心に行われるのが理想であると考えられます。法務省におきましては、親子交流の重要性や、適切な取決めをするために必要な事項についての周知を行うとともに、自治体等と協力して、取決めを促進するための方策について検討してきたところでありまして、引き続きこれらの取組を続けてまいりたいと考えております。

 他方で、実際の交流場面等において支援を必要としている方々がいることも御指摘のとおりであります。法務省におきましては、民間の親子交流支援団体向けの参考指針の作成ですとか、親子交流支援団体の周知を行うなどしているところではございますが、民間団体の個別の活動について、法務省として何かを申し上げられる立場にはないことを御理解賜りたいと存じます。

 また、自治体においては、親子交流への付添支援や親子交流支援団体と連携した支援事業を実施しているところもあると承知しておりまして、これらの事業に対しては、こども家庭庁の親子交流支援事業の対象とされるものもあると承知をしております。同庁とも連携しながら、支援における好事例の横展開に取り組んでまいりたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 もちろん好事例は、横展開、広げていただきたいと思いますが、一方で、住んでいる地域や親子の関係といったことによって格差も広がらないように、そういったところも対応していただきたいというふうに思います。

 次に、親子交流に際してですが、中止になった際の対応について伺います。

 予定されていた親子交流が、急遽拒否、中止となるケースが、複数回にわたり確認されているそうです。明確な理由さえ伝えられず、一方的に交流が中止される場合のケースに限ってお伺いしますが、仮に、これも、支障がないにもかかわらずこのような対応が発覚した場合は、民法改正で新設された父母間の人格尊重、協力義務に違反するのではないでしょうか。見解をお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 親子交流の取決めがされている場合には、その取決めに基づき、安全、安心を確保した適切な親子交流が実施されることが、子の利益の観点から望ましいと考えております。

 もっとも、親子交流は子の利益のために行われるべきものでありまして、例えば、子の体調が優れないというような場合にまで親子交流を実施しようとすることは、子の利益に反するものと考えられます。その上で、一般的に、別居親にとっても、子の健康状況は重要な関心事であると考えられます。したがって、子の体調の原因で取決めどおりに親子交流を実施することが困難だという場合には、適切な情報提供も重要であると考えられます。

 もっとも、同居親の人格尊重、協力義務が問題となり得る場合でありましても、子の健康状態が悪いときには同居親もその対応等に追われたり、あるいは同居親も同様に体調を崩したりしているということも少なくなく、このような事情も当然に考慮されることになると考えられます。

 なお、別居親についても、人格尊重、協力義務の観点から、そのような状況をも想定した対応が求められることになると考えられます。

小竹委員 ありがとうございます。

 体調不良は、もちろんケースとして考えられますし、そういったこと、一度、二度は致し方ないというふうに考えますが、また、例えば、これが一度だけでなく、再三にわたって親子交流の不適切な拒否がされた場合、それを防ぐため、中止、変更の際には、代替日、振替日を求めて、合理的な説明を義務づけるなど、運用の改善を設けるべきではないかと考えます。

 特に、正当な理由のない交流拒否が続く場合、場合によっては法的措置なども検討する必要があるのではないかと考えますが、これに関しても見解をお伺いします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 親子交流の取決めをする場合において、当初の候補日に親子交流を実施することが困難な事情が生じたときは、その代替日を取り決めておくことや、困難な事情について、同居親から別居親に対してある程度具体的に説明することとする取決めをすること等もあると承知をしております。一般論として申し上げれば、このような取決めは、親子交流に関する事後的な紛争を予防するという効果もあると考えられます。

 他方で、父母の関係や子の状況は様々であることから、具体的な親子交流の在り方や、そのための父母の協力の在り方については、個別の事案に即して、子の利益の観点から定められるべきものでありまして、特定の内容の取決めを義務化したりすることは子の利益に反する場合もあり得ると考えられます。

 いずれにしても、親子交流に関する事項について調停や審判等で定められたときは、家庭裁判所による履行勧告や、一定の要件を満たす場合における間接強制の方法による履行の強制など、親子交流の履行を確保するための仕組みも整備されているところであります。

 また、親子交流について取り決められた場合において、父母の一方がこれを履行しないというときには、個別具体的な事情によっては、先ほど申し上げました、父母相互の人格尊重義務や協力義務に違反すると評価されることもあると考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 まさに、日の変更、振替などをしっかりと取り組んでいただき、事後紛争にならないように、この紛争が起きると一番被害を被るのは子供になってくると思いますので、そういったところもしっかりと整備を整えていただきたいというふうには感じます。

 今回、個別の様々な件についてお尋ねしましたので、是非これもQアンドAに入れていただき、これからも第一に子供たちの利益のために、実効性のあるものにつながる改正になるということが私のお願いでありまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 公明党の平林晃です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 前回に引き続きまして、AIの司法分野における利活用について重ねてお伺いをさせていただきます。

 前回、AI・フォー・サイエンスというプロジェクトについてお話をさせていただきました。このプロジェクト、私も少しは勉強しているところではありますけれども、やはり担当者にはかなわないというふうに思っております。きちんと分かっておられます文部科学省の御担当の方に、どんなプロジェクトが走っているのか、また何を目指しているのか、この辺り、少し詳しめに御説明いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

松浦政府参考人 AI・フォー・サイエンスについてお答えいたします。

 AIを科学研究に活用するAI・フォー・サイエンスは、実験やシミュレーションデータなどの科学研究データを扱えるAI基盤モデルを開発し、その利用を産学に開放することで、多様な分野における科学研究の革新を狙った取組であります。

 このため、文部科学省におきましては、まずは、理化学研究所を中心として、ゲノムや細胞から生体全体までの生命現象を統合的に解釈し、疾患と生命現象の連関などの予測を目指す生命医科学モデルの開発、新たな物質の候補とその合成法を提案することで、これまでにない機能を持つ材料の開発に活用可能な材料物性科学モデルの開発に取り組んでおります。

 このようなAI・フォー・サイエンスの研究開発は、我が国の科学研究の加速と質の向上のために大変重要であるというふうに認識しておりまして、引き続きしっかりと推進してまいる所存です。

平林委員 もう少し詳しく説明してもらってもよかったんですけれども、生命医科学でありますとか物質、材料でありますとか、そういった分野で基盤モデルを作っていく、そういうようなお話であったかというふうに思います。

 例えば、前回もお話ししましたたんぱく質の構造解析であれば、アミノ酸の構造式と三次元構造を基盤モデルに学習させておいて、そして、着目物質の化学式、水でいえばH2Oというやつですね、それの着目物質を与えることによって三次元構造が出力できるようになっている、こういうものというふうに理解をさせていただいておりますけれども、これは、AIであれば人間の手に負えないような巨大なレベルでできるようになる、そういったことが評価をされてきているということなわけです。

 これを司法分野に当てはめれば、憲法であったり、法律だったり、法令を基盤モデルに学習をさせる。当然、訴状であったり、判決文とか、こういったことも大量に学習をさせる。これによって司法基盤モデルを構成しておく。そして、これを使って、AIに、例えば、訴状を提示したら判決文のようなものが自動生成されてきたり、あるいは、事案を何らかの方法で提示をしてやれば訴状が生成されるとか、こういったことにも適用されるのではないか、このように考えているというところでございます。

 当然、精度がいいものができなければ意味がありません。生成AIにはどうしても、ハルシネーションという現象が伴っているということがございます。現実にない住所を生成してしまったりするような、そういう現象になりますけれども、こうした現象の発生を低減することは非常にこれは難しいことではありますけれども、やはり良質な学習データをきちっと与えてあげる、増やしてあげる、そういったことが基本になるかというふうに思います。

 その点、司法分野におけるデータは、法律や判例等々、インターネット上にある何のチェックも受けていないテキストデータとは質が異なるわけでありまして、こういった意味では非常にアドバンテージがあるのではないかな、このように考えているところがございます。それでも完璧ということにはならないと思いますので、あくまでやはり支援ということが中心になるのではと考えております。

 例えば、医療分野ではコンピューター支援診断というものがありまして、診断は医師が責任を持って行います、コンピューターはその支援を行うという意味でございます。CTなどのセンサー技術が向上して大量の画像が瞬時で得られるようになったものの、でも医師の読影が間に合わない、こういうことで求められた技術であります。

 先週の委員会でも、裁判官が一人当たり二百から三百の事件を担当させられて慢性的な過剰労働状態にあるということが、複数回にわたって言及があったわけでございますけれども、こうした状況の中、やはり、AIが支援することによって一件にかける労力を低減する、こういうことも可能になっていくのではないかなというふうに思っておりまして、是非こういった技術開発は進めていくべきであると考えております。

 そこで、関連してお伺いいたしますけれども、こうしたプロジェクトを進めていくためには、当然人員体制が必要になってまいります。現在、法務省においてICT系を中心とする技術分野を担う体制はどのようになっておられるのか、法務省の御見解を伺います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省におきましては、省内全体のITガバナンスを機能させるため、官房長をデジタル統括責任者、それからサイバーセキュリティ・情報化審議官を副デジタル統括責任者といたしまして、法務省のデジタルガバメントの推進及び情報システムの整備等を含むプロジェクトの全体管理を行う体制を整えております。また、システムの専門家でありますデジタル統括アドバイザーを複数名置きまして、技術的、専門的観点からの必要な支援、助言等を行ってもらっております。

 また、委員御指摘のとおり、AIなどの技術革新が進む中で、その強みやリスクを理解した上で活用を検討することは重要であると認識しております。

 法務省におきましては、先ほど述べました体制の下、引き続き、最新技術の適切な活用を含め、デジタルガバメントを推進してまいりたいと考えております。

平林委員 今、先行して民事関係のシステム開発が進んでいると思いますし、今後審議していくであろう、法令、判例をデータベース化して民間に提供していくようになる、こういったことも認識をさせていただいております。こういった担当、また刑事関係もこれから進んでいくということになると思いますけれども、しっかりとついていて、またなおかつ、統括する責任者もおられるということであったかというふうに思います。

 その上で、司法のための、今最後の方でおっしゃられましたけれども、今後どういう技術を開発していくべきなのか。これによって、例えば、今様々な委員からも御指摘いただいていますけれども、共同親権で家裁の負担が増す、こういったようなこともあったりするわけでありますけれども、こういったところに対しても技術で対応することが何かしらできるのではないかというようなことも考えながら、何かそういったことを、新しいことを考えていく、そういった体制といいますか、担当者といいますか、そういったものも必要なのではないかなというふうに考えておりまして、この辺はまたしっかりと私の方でも検討して、まとまりましたらまた大臣にでも御質問させていただけたらというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、刑務所における種々の課題について質問をさせていただきます。

 先日、広島刑務所を、私の地元ですけれども、視察をさせていただきました。施設の状態、受刑者の様子、現場で働かれる刑務官の職務内容など拝見をさせていただいたところでございます。

 平成十五年からここの刑務所では施設の改修を行われまして、二十年近くに及ぶ改修だったわけですけれども、それが令和四年に完了しておりまして、設備は全体的に新しいものになっておりました。ただ、独房を見学をさせていただきまして、その中身等を拝見させていただいて、やはり刑務所であるな、このようなことを実感をさせていただいたところでございます。

 全体の中で特に強調された点でありますけれども、二つございました。第一が、医療スタッフ確保の困難性であります。要するに、医師、看護師等のスタッフであります。

 御存じのとおり、所内に医療設備があり、内視鏡があったり、歯科診療設備もあったり、様々対応できるわけですけれども、状況によっては対応し切れないレベルが当然発生するわけで、こうなってくると、外部病院に移送する、それだけで四名から六名の職員が配置されることになり、通常業務が圧迫される、こういったお話がございました。だからこそ、刑務所内の医療レベルの維持向上は重要でありますけれども、医師や看護師の採用がなかなか難しい、こういった点を訴えておられました。

 この点に対しまして、法務省としてのサポートも必要と考えますけれども、御見解を伺います。

小山政府参考人 医師を始めといたします医療スタッフの確保のため、矯正医療の重要性に関する広報啓発活動の推進や積極的な採用活動を実施しておりますけれども、まだ十分な確保にはなお困難な状況が続いていると認識しております。

 また、矯正施設におきましては、全国から選抜された刑務官等を東日本成人矯正医療センター内の准看護師養成所で育成いたしまして、准看護師の資格を取得させ、医療に関する知識、技能を有する者を育成し、矯正医療体制の強化に努めているところでもございます。

 矯正施設の医療を担う医師、看護師、准看護師等の医療スタッフの確保につきましては、被収容者に対します適切な医療の提供において必要不可欠でございまして、今後とも、矯正医療に関する国民の関心と理解を深めますとともに、地域の医療機関や関係機関との良好な関係を構築しつつ、矯正局、それから矯正管区及び各矯正施設が一体となって、医療スタッフの確保及び育成に努めてまいりたいと考えております。

平林委員 日本全体として医師、看護師が不足しておりますので、なかなか大変と思いますけれども、是非よろしくお願いを申し上げます。

 もう一点、拘禁刑についても現場からお話がございました。前回の委員会でも、また今日の委員会でも様々御指摘いただいておりますけれども、私からも触れさせていただきます。

 本年六月一日から導入される拘禁刑ですけれども、そうなりますと、刑務作業を行わせるかどうか受刑者ごとに決定をされ、受刑者の特性に応じた更生プログラムが行われるということになるわけであります。

 広島刑務所でも、現状では、三十名程度の受刑者を、一名が正面から、一、二名が側面から監視をしておられますけれども、これは一律、作業に対してですので、この人数で監視が可能ということになろうかと思います。

 ただ、受刑者に応じた対応が必要になったときにこの人数で対応し切れるのか、私自身も見ていて感じましたし、そういったお話は現場からも聞かせていただいたところでございます。負担が増大することに対しての刑務官の皆様の不安、こういったところを推察するところですけれども、津島委員が前回の御質問で、チーム処遇ということをお話をしていただいておりました。

 この場合にも、人員の確保、これは重要になってくるというふうに思いますけれども、この点に関しましても政府としてどのような支援を行っていくのか、御見解を伺います。

小山政府参考人 委員御指摘のとおり、チーム処遇を実施するなどいたしまして、拘禁刑下におきましては、受刑者に対します処遇を今まで以上にきめ細やかに行っていく必要があると思っております。

 このような拘禁刑の導入に伴います矯正処遇の充実強化に当たりまして、刑務官を始めとする職員の負担は、御指摘のとおり、増大するものと考えられます。これに対応するためには、まず刑務官の能力等の向上が求められるものと考えておりまして、受刑者の特性や問題性に応じた適切な処遇対応力を向上させるための研修を一層充実することとしております。

 また、専門スタッフの確保も重要だと認識しておりまして、順次、社会福祉士や作業療法士などのほか、心理学を専門とする調査専門官、それから改善指導を専門とする教育専門官などの配置も拡大してきたところでございます。

 こうした刑事施設の人材を確保いたしますため、採用広報活動を体系的、効果的に推進するなどしてきたところでございまして、今後とも、引き続き、必要な人材確保の取組を進めてまいりたいと考えております。

平林委員 専門スタッフのお話がございましたけれども、そういった人たち、結構前向きに採られているというふうに思いますので、引き続きの御対応を是非よろしくお願いいたします。

 最後、入所者の高齢化に関しても報告がございました。国全体でございますけれども、広島刑務所では三割近くが七十代以上という状況で、それに伴って様々な対応の変化、例えば、認知症患者が増えるなど、あるいは、刑務作業が困難になっている、こんな影響をお聞きしているところでございます。

 入所者の高齢化、全国的にどんな状況が見られているのか、また、それにより生じている影響、また対応について御見解を伺います。

小山政府参考人 まず、全国的な状況でございますけれども、令和五年の入所受刑者のうち、六十五歳以上の高齢受刑者の割合は約一四・三%でございまして、十年前に比べまして約一・五倍に増加しております。特に、高齢受刑者の中には認知機能や身体機能の低下が認められ、実施させる作業が限定的とならざるを得なかったり、又は、限定的な作業でさえも行うことが困難であるといった者が増えつつございます。

 刑事施設におきましては、令和二年度から、このような受刑者に対しまして、作業療法士が定期的に助言や指導を実施しながら、手指の巧緻性を高めるための紙折り作業などを実施したり、体の柔軟性を改善させるアプローチを実施するなどいたしまして、認知機能等の維持向上を図る機能向上作業を実施しておりまして、令和六年十二月末におけます全国十二庁において、百三十三名がこの作業に従事しておるところでございます。

 今後も、拘禁刑の導入を見据え、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

平林委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 裁判所の体制と裁判所のシステムのトラブルに関して質問させていただきたいと思います。

 今年六月から、児童虐待などの一時保護を判断する司法審査、これがスタートいたします。その点でも体制強化が必要だというふうに考えております。

 この一時保護の司法審査に関しましては、昨年もこの委員会で質問をさせていただき、民法の関係の、子供の意思の把握、尊重と、そしてDV、虐待の判定の質の向上ということとともに、裁判官も、調査官も、書記官も、事務官も増員をしてほしいんだということで質問させていただきました。

 また、児童相談所の児童福祉司、ここについては、今年度で増員計画が終わってしまうので、来年度からもしっかりと増員の計画を持ってほしいんだという質問をいたしました。

 これに対しまして、こども家庭庁では、各自治体で司法審査のモデル事業をやっておりまして、司法審査で業務が増えるということが分かった、それで、二〇二五年度、二〇二六年度、児童福祉司を九百十人増やすということになっております。また、足りなければ、更に、司法審査でいろいろ業務が増えるということであれば、計画期間の途中でもこの人数を増やしていくんだということを決めております。

 その一方で、裁判所は、人が足りないのに、各高等裁判所管内、書記官、事務官などが減らされるという計画になっております。

 私が聞いておりますのが、常勤の配置の定員が、例えば、東京高裁の管内では、書記官が十四人減らされ、事務官が十二人減らされる。激務の東京の部分でもそうなっております。

 大阪高裁管内は、書記官七人が減らされ、事務官九人が減らされる。大阪の場合は代わりに短時間の方が配置されるようですけれども、常勤の定員は減らされるということになっております。

 福岡高等裁判所管内は、書記官四人、事務官四人減らされる。

 仙台高等裁判所管内は、書記官七人、事務官八人、定員が減らされる。ここの仙台も、短時間の方が配置されるようですけれども、常勤の定員は減らされる。

 そして、激務の岡崎支部、豊橋支部を抱えております名古屋高等裁判所管内でも書記官四人減らされるということで、増やさないといけないのになぜ減らされるのかということが、私は、大変問題だというふうに思っております。豊橋支部、岡崎支部でも、ほかの部署から異動させれば、ほかの部分が苦しむわけですから、やはり定員の純増というものが必要だというふうに思っております。

 児童福祉司は二年間で九百十人増やす計画であるにもかかわらず、その児童相談所が、児童福祉司が作った一時保護の資料を読み込んで司法審査をする、そうした裁判所あるいは支部は人を減らすというのではおかしいのではないかというふうに考えますけれども、最高裁、お答えをいただきたいと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 一時保護の開始の判断に対する司法審査は、制度上、家庭裁判所のみならず、地方裁判所や簡易裁判所の裁判官が行うことが予定されており、どのような体制で司法審査を行うかにつきましては、各地の裁判所において、各地の事件処理の状況や処理体制を踏まえつつ、最適な形になるように検討が進められているものと承知しております。

 裁判所は、これまでも、司法制度改革以降の平成十四年から令和二年までの間に裁判官を約八百三十人増員するなど、各庁の事件動向や事件処理状況等を踏まえまして、それぞれの裁判所に必要な体制を整備してきているところでございます。また、各庁の事件動向や事件処理状況等を踏まえながら、全国的な見地から、各庁の繁閑差も考慮して人員配置を行っているところでございます。各庁において必要な見直しが行われた結果として、人員の増減が生じているものというふうに考えております。

 人員配置の見直しにおきましては、各庁各部署の事務処理状況等を踏まえた検討がされており、人員配置の見直しによって各地の裁判所の事務に支障が来すというようなことはないというふうに考えております。

 今申し上げましたような近年の裁判所全体の事件動向や事件処理状況等のほか、各地の裁判所での適切な形での事件処理体制が構築されることなどを踏まえますと、事件処理に支障を来すことはないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、施行後の司法審査の件数や処理状況を踏まえまして、また、裁判所全体の事件動向や事件処理状況等にも注視しつつ、引き続き必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 業務に支障が来しているということを、先週、岡崎支部、豊橋支部のことで言わせていただきました。今でも支障が起きております。そこにまた司法審査、あるいは親権の問題、面会交流の問題、子供の意思の確認やDVに関しても慎重に審査をしていただきたいのに、人が減らされていくということは、本当に、こども家庭庁と比べても、なかなか軽視をされているのではないかというふうに私は感じております。

 例えば、事務官が減りますと、書記官と事務官で仕事をどう減らすかという話になり、裁判官と話し合うと、結局、裁判官が引き取れる部分は引き取るということになり、裁判官の仕事も増えていくんだという現場の声を聞いております。そういう意味では、書記官や事務官を減らしてしまうと、裁判官の仕事も増えてしまうということになってまいります。

 来年度の予算を、最高裁の予算を見てみますと、今年度より人件費は減らされ、そして物件費はかなり増えております。その中で、大きく増やされているのがデジタル化の関連の経費です。今年度が五十五億八千百万円だったものが、来年度は百八十億二千三百万円に増額をしております。

 刑事手続等のデジタル化の関連のシステム、リンケージが入っていると思うんですけれども、ここはNTTデータが受注をしております。この予定価格と落札価格、ちょっと順番を変えますけれども、十番、十一番の辺だと思いますが、予定価格と落札価格、お示しをいただきたいと思います。

染谷最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御質問がございましたリンケージ、刑事の関係の新システムがございますが、こちらにつきましては、いずれも五年間の総額ということになりますが、予定価格は百四十一億八千七百九十七万六千円で、落札価格、すなわち入札金額に消費税額を加えた額ということになりますが、こちらが百四十一億八千七百九十七万六千円ということになっております。

本村委員 物すごい額の高額な契約なんですけれども、事前に予定価格を知っていたとしか思えない、予定価格と落札価格が全く同じ、落札率一〇〇%ということになっております。どういうことなのか、お示しをいただきたいと思います。

染谷最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 システム関係の予定価格の一般的な作成手順について申し上げますと、システムにつきましては、個々のシステムの具体的な内容が様々であるということなどから、個別のシステムごとに、市場価格の参考にするために、入札参加希望業者に協力を仰いで参考見積書を提出してもらうということがございます。

 その上で実際に予定価格の積算を行うということになりますが、その際は、裁判所内のデジタル関係の専門人材にも意見を求めるなどして、その参考見積りの金額の相当性も検討した上で積算を行っているところでございます。

 こうした手続を経て決めた予定価格と入札参加業者が入札した額というのが一致するということ、それが結果として落札金額となるということはあり得るものというふうに認識しております。

本村委員 落札率一〇〇%ということで、結局企業の言い値になっているという問題がございます。この刑事の分野だけではありません。民事の分野でも様々な問題が起きております。

 ルーツですけれども、一月からルーツが導入され、使っているが、前のシステムよりも癖があるというか面倒くさくなった部分があって、人員を削減していい理由などないということでした。実際に、その方の部署では、主任は朝の七時半過ぎに出勤をして、ほかの三人も八時前には来て、毎日夜七時、八時まで残っても十分に仕事が終わらない、デジタル化だけで人員削減をしてほしくないと。この部署では十一時間から十二時間職場にいて頑張っているということですけれども、むしろ人を増やさなければなりません。

 また、別の部署ですけれども、ルーツが入って、新システムが入って、体感で一・一倍、一・二倍ぐらいの時間がかかるようになった、仕事の時間は減っていない、出てくる書面も使い物にならないので、旧システムに保存しておいた書類を使い回して対応している、簡素化、効率化と全く真逆の方向に進んでいるという現場のお声です。

 また、別の方は、新システムに関して、私は業務的に二倍くらいになった気がしている、昔のシステムの方がよかったと思っている人は結構多くいて、何がよくなったか分からないというお声です。

 また、基本的なデータベースに関しましても、ほかの部署ですけれども、基本的な事前処理のためのデータベースの部分も不具合があってうまくいかず、統計的に間違ったデータが出るなど、よくあったそうです。基本的なこうした部分もうまくできていないのに、将来的に導入されるシステムがちゃんとできるか不安、すごい不安だというお声が出ております。

 様々、こういう問題が起きておりまして、ミンツですとか、ルーツですとか、ツリーズですとか、どのようなトラブルを把握しているんでしょうか。

福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 幾つかシステムがございます。今委員御指摘のルーツでございますけれども、まずルーツに関しましては、裁判所職員が事件管理のために利用するe事件管理システムでありまして、令和六年七月から一部の庁で先行的に導入され、令和七年一月から全庁で導入をされております。

 現時点までに、例えば、送達に要する費用を支出する際の別のシステムとの連携に伴う問題事象が報告をされているほか、上訴審との記録授受に伴う問題事象などが報告をされているものの、システムを停止せざるを得ないような問題は生じておらず、事件処理に利用をされております。

 職員から寄せられた問合せに関しましては、件数、内容、回答内容を集約しておりまして、問合せの中には使用方法に関する質問も多く含まれておりますが、この中で不具合と認められたものについては運用、保守業者において管理をしておりまして、先ほどお答えをしたトラブルも含め、現在必要な対応を行っているところでございます。

 以上でございます。

本村委員 これだけじゃなくて、ウェブ会議用のTeamsというところもトラブルがかなり発生をしております。マイクロソフトのTeamsですけれども、こういうお声があります。長い時間かけて、二人で行って準備をして、結局何が原因か分からないが、つながらないということがかなりある、最終的に原因が分からないで終わってしまう、こういうお声です。ちゃんとそれぞれのシステムのトラブルをつかんで、改善をしていただきたいというふうに思っております。

 来年、二〇二六年五月までには改定民事訴訟法が施行されるということで、弁護士の方々を始め、電子データで提出することが原則になってまいります。こういうシステムのトラブルで裁判等の実務に支障を来さないのか、あるいは個人情報、企業情報、かなり機微な、重要な情報が取り交わされるわけですけれども、その流出がないかどうか。そして、無理な開発工期、改修工期になっていないか、過労死を生むような状況は、こちらの裁判所の職員も、そして開発の方々も過労死することがないか、実証試験の期間が十分取れているのかなど慎重に検討し、改定民事訴訟法の施行の原則の部分、取りやめることも含め、検討することが必要だというふうに思いますけれども、大臣、最後にお答えをお願いしたいと思います。

西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 裁判手続のデジタル化に当たりましては、今御指摘の様々な点、様々な御懸念、そういったことがないように、裁判手続の実施が円滑に行われ、また、個人情報が流出する事態などが生じることがないようにシステムが開発されること、これが重要だと考えておりますし、あるいは、開発従事者の業務の負担、これも配慮をされるべきだと思っております。

 そうした中で、最高裁判所の方でそうした形でしっかりと対応していただいていると思いますけれども、私どもも、そうした関連機関と連携しながら、裁判手続のデジタル化、この円滑な実現に向けて努力をしてまいりたいと思います。

本村委員 とにかく人を増やしていただきたいということを重ねて申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。どうぞよろしくお願いいたします。

 今国会では、国民の合意が十分得られていないにもかかわらず、選択的夫婦別姓の推進を数の力で強引に進めようとする動きに、私は強い懸念を抱いております。

 というのも、法務行政においては、移民問題、入管行政、国家機密の漏えい防止など、国として一丸となって取り組むべき喫緊の課題があるからです。

 政府は、高度外国人材の永住許可や、中国富裕層向けビザの要件を次々に緩和しておりますが、安全保障上のリスクが軽視されていないのかと懸念の声が国民からも上がっております。

 中国には、国家情報法、国防動員法があり、中国国籍の個人や企業は、海外でも、政府の要請に従い、諜報活動や動員に応じる義務を負っています。さらに、中国共産党員は、党の指示で諜報や影響力工作を求められる立場にあります。こうしたリスクから、アメリカでは令和二年に、中国共産党員とその家族のビザを最長十年から一か月に短縮し、入国制限を強化いたしました。

 そこで伺います。

 政府は、在留資格や永住許可の審査で、中国の安全保障上のリスクをどのように考慮しているのでしょうか。特に、中国共産党、人民解放軍、情報機関員について、審査の考慮要素に含まれていますか。もしもそうでないのであれば、安全保障の観点から、当然、審査要素とすべきではないのかと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。

鈴木国務大臣 まさに中国の安全保障上のリスク、これは極めて深刻でありますし、政府としてきちんとした対応をしていかなくてはいけない、これは当然のことだと思っております。

 そういった中で、今、中国共産党、人民解放軍、情報機関員ということを例示でいただきましたけれども、まさにこれに限らないんだと思いますね。それは、表立って中国共産党員という方でなくても、そういったリスクは当然ある話になりますので。

 私どもといたしましては、国内外の様々な情報を収集し、さらには関係機関ともきちんと連携をした上で、適切に対処をしていきたいと思っております。

吉川(里)委員 私たちは、留学生や研究者に対しても、しっかりと慎重に判断をするように、審査要素に考えていくべきだというふうに思っております。

 また、外国人に対して、私は差別をする意味でこういうことを申しているのではないんですね。様々な思想であったり、信仰されている方はたくさんいらっしゃる。しかし、国民がなぜリスクを感じているのか、こういったことを、実際に起きている事件、そういったところの現実化しているところから考える必要があると考えています。

 令和七年二月、経産省が所管する世界トップレベルの研究機関である産業技術総合研究所において研究データの流出事件が発生し、中国籍の主任研究員に有罪判決が下されました。この研究員は、営業秘密を中国企業に不正送信し、この企業は技術の実用化を進めていたといいます。この事件で明らかになったのは、単なる個人の不正ではなく、国家ぐるみで技術を獲得しようとする組織的な動きの一端であります。この研究員は、中国人民解放軍との関係深い国防七校の一つで教職を兼任していました。つまり、日本の最先端技術が国外へ流出し、軍事転用される可能性があったということです。

 しかし、現行法では、こうした行為を十分に抑制はできていません。近年では、ソフトバンク元社員がロシアへ、積水化学工業の元社員が中国企業へ情報を漏えいする事件が起きています。いずれも執行猶予つきの判決となり、情報を渡した者への軽い処罰にとどまっております。しかし、一度流出した情報は回収不能であり、厳しい判決が出たとしても、国家機密や先端技術は既に外国の手に渡ってしまっています。

 このままでは同様の事案が繰り返されることが予想され、機密情報の流出は、事後の処罰でなく、事前に防ぐ必要があると考えます。このためには、入国制限や研究者の厳格なスクリーニングを導入し、リスクを未然に防ぐ仕組みが必要です。さらに、中国の影響力工作や統一戦線工作など我が国の政治を標的にした工作は、日本の安全保障に対する重大な脅威となっています。しかし、日本には、これを効果的に取り締まる法律がありません。

 そこで、抜本的な対策として、入国制限や研究者のスクリーニング強化に加え、政治工作に対する法整備を急ぐべきだと考えますが、大臣の所感を伺います。

鈴木国務大臣 今御指摘の政治工作に対する法整備、これは、法務大臣としてということで、若干所管を超えることでありますので、お答えをすることは困難であります。ただ、その上で、やはり今御指摘の点、極めて大事なことだろうと思います。

 機微技術情報流出防止の観点から、留学生あるいは外国人研究者の受入れに当たっての厳格な審査、これは、実績であったり、あるいは様々な研究内容等もそうですけれども、しっかりとした対応を、私どもとしてもこれまでもしているところであります。

 先ほどの中国の当局あるいは党関係者ということも含めて、これは、なかなか手のうちを明かすことになりますので詳細は申し上げませんけれども、様々な内外の情報、あるいは関係機関と連携を通じて、きちんとした対応を引き続き行ってまいりたいと思います。

吉川(里)委員 アメリカには、外国人代理人登録法というものがあります。外国の利益のために活動する個人、団体に登録を義務づけ、監視、規制をしております。オーストラリアにも同様の法律があります。こうした、日本も、政治工作を抑制するために、日本版の外国人代理人登録法というような具体的な政策の制定が必要だというふうに私は考えます。

 というのは、日本はスパイ天国というふうに世界で非常にやゆされ、不名誉極まりないと私は考えております。世界で日本が最も後れを取っているのはスパイ対策ではないかと。あらゆる法令を尽くして、違法なスパイ行為の取締りに今我が国では当たっています。警視庁のホームページでは、技術流出の防止に向けて、様々な工夫をされて情報発信をされていて、動画なんかも作成をされていました。

 しかし、スパイは、スパイという名札を貼って歩いているわけではありません。先ほども、大臣もおっしゃられていました。こういうことを未然に防ぐための法律というものを作るのが政治家としての役割、政治の在り方だと私は考えております。私は、日本の国益を守りたいんですね。技術流出をしっかりと守るためには、日本の技術を守る、それを、政治の在り方として、問題の本質を解決するような具体的対策をどうかお願いしたいことを要望いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 まず、人権擁護についてですが、昨年の二月に、法務省主催の人権シンポジウムに当時の岸田首相が次のようなメッセージを寄せています。これは今でも官邸のホームページに載っていますし、文字つきで、さらに英語で翻訳されて、国際発信もされている。その中で、岸田首相はこういうふうに言っていますね。近年、外国にルーツを有する人々が、偏見により放火や名誉毀損等の犯罪被害にまで遭う事案が発生し、日々恐怖を感じながら生活することを余儀なくされている方々がいると。

 名誉毀損に関しては、私も日々受けていますけれども、これは内外無差別の事象で、けしからぬ話ですけれども、放火が外国人に対して頻繁に行われていると少なくとも認識していませんし、こういう特殊な、まれな事案をわざわざクローズアップして国際発信するというのは、これは日本に対する偏見を助長する行為じゃないですか。私は、岸田氏は首相としての自覚を全く欠いていたと思いますけれども、これは今でもホームページに、英語版もここに載っているわけですよ。

 大臣、この岸田さんの認識、これは賛成ですか。賛成じゃないというんだったら、これは削除すべきだと思いますけれども、ホームページから、いかがですか。

鈴木国務大臣 今御指摘のメッセージですけれども、法務省として、昨年の二月三日に開催をした共生社会と人権に関するシンポジウムに対して、岸田前総理から共生社会の実現に向けたメッセージとしてお寄せをいただいていると承知をしております。

 今、御指摘の部分の後でもありますが、この趣旨として、恐らく、その後の発言をそのまま読ませていただきますが、特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、まして、そのような動機で行われている暴力や犯罪は、いかなる社会においても決してあってはなりませんということであります。

 こうした趣旨について、今、メッセージ、その他の部分も拝見をしておりますけれども、そうした趣旨につきましては、私としては偏見を助長するものではないと考えております。

島田(洋)委員 今、鈴木大臣が引用されたその一般論的な部分はいいんですけれども、放火が頻繁に起こっているかのような、こういうところだけでも削除をすべきだと私は思いますけれども。でないと、これは在外邦人が暴力を向けられる際の言い訳にも使われかねないと思います。

 さて、次に、安倍首相の暗殺事件ですけれども、もう二年半以上がたつのに、まだ公判が始まらない。これは、公判前整理手続が難航していると伝えられていますけれども、安倍首相暗殺事件の翌年に起こった岸田首相の爆殺未遂事件、これは先月、既に和歌山地裁で懲役十年の判決まで出ているわけですね。何で安倍さんの事件は、こんなに開始に時間がかかっているんですか。

森本政府参考人 お尋ねは、現在公判中の個別事件に関わる事柄でありまして、また、公判期日の指定については裁判所の判断に関わる事柄であるため、法務省としてはお答えするのは差し控えますが、その上で、あくまで一般論として申し上げますと、裁判所は、公判前整理手続に付された事件については、充実した公判の審理を継続的かつ計画的かつ迅速に行うことができるよう十分準備が行われるようにするとともに、できるだけ早期にこれを終結させるように努めるものとされておりますことと、それから、訴訟当事者であります検察官においても裁判所の手続が速やかに進むよう協力しているものと承知しておりますが、個別事案によってやはり事情が違いますので、そこについてはなかなか申し述べるのは難しいところかと思います。

島田(洋)委員 個別事案と言われますけれども、前首相が暗殺されて、まだ首相復帰の可能性も十分あった方で、国際的にも注目されているわけですから、日本の警察、検察の能力とか司法システム全体に対する疑念を呼びかねないので、これはしっかり大臣としても情報提供してくださいよ。

 それから、もう最後になりますけれども、埼玉県の川口市において、トルコ国籍のクルド人の若い男性が、これは難民申請中で仮放免中だったわけですけれども、女子中学生に性的暴行を働いたとして、懲役一年そして執行猶予三年の判決を受けた、この執行猶予中に再び十二歳の少女に性的暴行を加えて、現在、起訴、公判中です。

 ちょっと時間もないので飛ばしますけれども、こういう事件が起こっている中で、やはり同じ埼玉県川口市で、別のトルコ国籍の男性、クルド人でしょうけれども、この人が女性を七十メートルぐらいつけ回して公園で性的暴行を働いた。この事件が、さいたま地検、不起訴処分にしているわけですね。不起訴の理由は明らかにしていない。

 これは当然、特に女性の間で不安が高まっておるわけですし、逆に、全然不起訴理由を明らかにしないということになると、外国人に対するいわれのない形での不安感が高まるというそっちのマイナスもありますから、当然女性のプライバシーに配慮しないといけませんけれども、これだけ続いているわけなので、やはり不起訴の理由に関してある程度開示すべきだと私は思いますけれども、いかがですか。

森本政府参考人 不起訴処分の理由の開示につきましては、事案ごとに検討した上で検察当局において判断しているものと承知しておりますけれども、今先生おっしゃられたように、特に性犯罪の場合にどこまで言及できるかというのはなかなか難しいところがあるのかなというふうに考えております。

島田(洋)委員 一般論としてはそうなんですけれども、やはり出稼ぎ目的の、特にクルド人のケースとか、難民申請を繰り返して滞在の期間を延ばす。その期間は仮放免されて、こういう女性をターゲットにした犯罪を犯す人間が現に連続して出ているわけなので、私は、こういう一般論的な話でかわされるというのは不信感を呼ぶので、これは大臣もある程度ちょっと指導していただきたいんですけれども、その辺の情報提供。

鈴木国務大臣 特に先ほど再犯での話もおっしゃいましたけれども、そうした状況で、再犯ということで発生しているという状況、これは一般論ということになりますけれども、私自身も非常に強い危機感、これは持っております。そうした中で、適切に、入管、これはまさに、厳しくするところは厳しくする、しっかりと厳しくしていくということだと思いますし、そこは我々としても、きちんとそうした適切な運用が図られるように、さらには迅速な送還が実施できるように努力をしてまいりたいと思っております。

西村委員長 島田さん、時間が来ていますので、御協力お願いします。

島田(洋)委員 それでは、時間が来ましたので、これで終わります。どうも。

     ――――◇―――――

西村委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に刑事手続に関する諸問題について調査のため、来る二十六日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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