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第9号 令和7年4月9日(水曜日)

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令和七年四月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      上田 英俊君    上川 陽子君

      神田 潤一君    河野 太郎君

      棚橋 泰文君    寺田  稔君

      中西 健治君    平沢 勝栄君

      森  英介君    若山 慎司君

      有田 芳生君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    寺田  学君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    萩原  佳君

      藤田 文武君    小竹  凱君

      大森江里子君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      竹上 裕子君

    …………………………………

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   国土交通大臣政務官    高見 康裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平城 文啓君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    森本  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小山 定明君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 町田 達也君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           橋爪  淳君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 佐々木俊一君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     中西 健治君

  島田 洋一君     竹上 裕子君

同日

 辞任         補欠選任

  中西 健治君     棚橋 泰文君

  竹上 裕子君     島田 洋一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官松田哲也さん、総務省大臣官房審議官伊藤正志さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、法務省矯正局長小山定明さん、出入国在留管理庁次長杉山徳明さん、外務省大臣官房参事官町田達也さん、文部科学省大臣官房審議官橋爪淳さん及び国土交通省道路局次長佐々木俊一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長平城文啓さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生さん。

井出委員 おはようございます。

 私は大臣には答弁を求めませんので、この後の厳しい野党の御質疑に備えていただければと思います。

 質問の順番を変えて、通告の四番からいきたいと思います。提供命令に今日も絞って質疑をしますが、記録の保管、管理、それから消去、廃棄のところですね。

 まず、法務省に、検察庁に送致をされたもの、これについては、確定記録法で、裁判で確定した記録、それから、不起訴の書類については、それぞれ規定で保存期間が定められているというふうに承知をしております。電磁的記録についても、これまでの答弁を見ていれば、確定した裁判記録は、当然、確定記録法によって保存期限があり消去、不起訴記録ですとか、それから裁判所に不提出のものも既にある規定が適用されるのかなと思います。

 その上で、電磁的記録というものには、電磁的記録を紙とか媒体として持っている、印刷をしたり媒体であったり、それと別に、今回の論点でもありますが、パソコン、端末間で生のデータの移動というものも、これからというか、もう既にあるんじゃないかなとも思っているんですが、その辺りの取扱いが、既存の法律とか規定によって、保存と、保存期間が来たら消去、廃棄される、そういう運用でいいのか、ちょっと教えてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 電磁的記録提供命令で収集されたデータにつきましては、刑事確定訴訟記録法のほか、法務大臣訓令である記録事務規程等の各種規定に従って一定期間適正に保管、保存された後、必要がなくなったものについて廃棄される、そういう流れを想定しております。

井出委員 少し細かく確認をしておきたいと思います。

 電磁的記録には、これまでは、通話履歴であればそれを印刷したものが記録となるですとか、物によってはCD―Rとかに収めて保存をしておいて、保存期間が来たら廃棄、ぶっ壊して処分するというようなこともあると思うんですが、もう一つちょっと気になっているのは、これから捜査機関とか同士で、端末間、パソコン同士で生のデータをやり取りすることもあるだろう。当然、だから、手に取ることはできない、パソコンの端末上の中に生のデータがあって、私はそういう生のデータも、確定記録法ですとか、それぞれの規定を適用するのがいいんじゃないかなと思いますが、その点、いかがでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 今先生がおっしゃられたように、基本的には、今までの法律の枠組みの中で保存、保管されていたものと同様の形で保管、保存し、そして廃棄するという流れを適正に行うことを念頭に置いております。

 他方で、例えば、先生御指摘のように、今回の電磁的記録提供命令で申し上げますと、百二条の二の一項一号のイの「電磁的記録を記録媒体に記録させ又は移転させて当該記録媒体を提出させる方法」という方法と、それからロで「電気通信回線を通じて電磁的記録を当該命令をする者の管理に係る記録媒体に記録させ又は移転させる方法」という、大きく二つ列挙してありまして、細かい議論になりますが、先生おっしゃるとおり、イの場合は、CD―RとかDVDとかそういう形のものとか、USBとかいろいろなものがあるでしょうけれども、ロの場合というのは、まさにデータとして送られてくるということになります。

 それで、今までの保存のたてつけで申しますと、イのもの、記録媒体として来たものはどちらかというと有体物ですので、証拠品として扱われることがこれまで多かった。他方で、ロのようなものというのは有体物じゃないので、証拠品というよりは、どちらかというと、今回でいうと電磁的記録になるわけですが、ほかの証拠書類と同じように、証拠書類も電磁的記録になりますので、物というよりは証拠書類的な扱いになるという意味では、記録の方になじむものが多いように思います。

 ですので、どちらかに規律するということになりますが、ここだけでも分かれていますので、どういうものが来るのかということを考えながら、今後、先ほど申しました記録事務規程であるとか証拠品事務規程の中で、どういう形で今までと同じような保存形態を取るのがいいのかということは細かく検討することになろうかと考えております。

井出委員 大筋の方向性は出ていると思いますので、またその細かい検討についても適宜説明をしていただきたいというふうに思います。

 次に、警察庁に伺います。

 資料を用意しておりまして、資料の二枚目ですね。これは、私が法制局と一緒に刑事手続における書類、証拠物の流れを一覧にしたもので、警察、一番上の送致のところの一番右側ですね、検察に送らない証拠それから記録、それから、検察には送るけれども、コピーというものかそういうものが保存をされているケースがあると思います。

 そうした警察の中でとどめ置いているものについては、令和六年五月二十日の厳格な管理等についての通達、これに電磁的記録が入っているんですが、保管期間については、捜査資料は、捜査幹部が必要がなくなったと認める場合には、確実に廃棄又は消去することと。これは、立憲民主党の階猛先生のようなきちっとした方であればこの規定でもいいと思うんですが、私のように、必要なくなるものは全て捨ててしまって、後で大事なものがないという人間にとっては極めて困る規定だと思います。

 警察庁に伺いますが、やはり今回の法改正で、さっき法務省とのやり取りであった紙それから媒体、物、まあ物は返却なんでしょうけれども、電磁的データについても、当然、生データがパソコンにある、形としては取り出さないけれども、そのものについても、その管理について新たな規定等が必要ではないかと思いますが、その点の答弁をお願いします。

松田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今回の改正で新設される電磁的記録提供命令により提供される電磁的記録につきましては、これまで警察において証拠物件として管理してきた有体物とは異なる保管、管理が求められることとなると考えられるところであります。

 一般論として、警察においては、法律の改正等に伴って新たな制度の運用が開始される場合には国家公安委員会規則や通達を改正することがあるところでございますが、改正法が成立し、電磁的記録提供命令が新設された場合においても、必要な規定の整備を検討してまいりたいと考えております。

井出委員 これは、きちっと保存をしなければいけない、それから必要のないものはやはり消去をするべきだという、両方あるんですが、消去してしまって後でなかったというようなことになっても困るので、そこの線引きというのは非常に難しいと思います。ただ、パソコン上の管理になりますので、アクセスをする者を限定するとか、そのフォルダの中をしっかりと整理するとか、コピーすればコピーの履歴も残りますから、パソコンならではの管理の仕方というものは十分にその制度を立案することは可能だと思いますので、そうした観点で、確実にとか、そういうちょっと精神論ではなくて、少しそのものに合った規定を作っていただきたいと思います。

 それから、次に最高裁に伺います。

 この提供命令の安全の担保は、令状を取る、そこが唯一、一番重要なところであると思います。この令状について、私がさきの、四月四日、参考人質疑で先生方に伺ったときに、法制審に出られていた池田先生と樋口先生が、私が提供命令には罰則があるから令状審査が厳しくなるのではないかという趣旨の質問をしたときに、お二人とも、実際上そのような効果が生じると思われるですとか、事実上の効果としては罰則を意識するようになるような変化はあると。一方で、お二方とも、令状審査の質的な差異はないとか、理論面から見た運用に変化はないはずと述べている。

 私のスタンスとしては、やはり、有形物、媒体ではなくなって、データで丸ごと取ってくることになるので、提出する方の気持ちとしても、よりきちっと指定された方がありがたい。ましてや罰則がかかっているという意味では、厳格な令状審査を求めたいと思います。

 そこで、その二人の参考人がお話をしていた、実際上、事実上の効果、罰則を伴うことによって令状審査が慎重、厳格になるということがあり得るのか。私はあり得ると思っているんですが、あり得るのか、それはあり得ないと否定をできるのか、そのどちらか伺っておきたいと思います。

平城最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 これまで裁判官は、嫌疑の存在、強制捜査の必要性、被疑事実と対象物の関連性等、諸般の事情を勘案いたしまして厳格に令状審査を行ってきたところでございます。このような姿勢は、電磁的記録提供命令に係る令状審査においても変わるところはないと認識しております。

 もっとも、電磁的記録提供命令違反に罰則が設けられていること自体が裁判官の令状審査に事実上どのような影響を与えるかという点でございますが、これは明確にお答えすることは困難でございまして、委員御指摘の事実上の効果があることを肯定することはできませんが、否定することもできないものと考えております。

井出委員 大変分かりにくいけれども、よく分かりました。ありがとうございます。

 それで、令状主義というのはただ令状を取ればいいということではないので、それはGPS捜査の違法判決、最高裁判決でも、令状を取ることはもちろんだが、きちっと立法措置もしろというような指摘もあったと思いますので、令状を取ればいいというものじゃないぞということはしっかり申し上げておきたいと思います。

 それと、最後に、法務省のこれまでの答弁について一点ただしておきたいと思います。

 違法に収集された証拠については直ちにその能力は失わない、昭和五十三年の最高裁判例に基づいてそういう答弁をしてきております。しかし、その最高裁判例を、今日、資料の一枚目につけておるんですが、ばあっと線が引いてあるんですが、前半は法務省のおっしゃるとおり。しかし、真ん中ら辺に二重線で「しかし、」というところがあって、「しかし、」以降は、令状主義の精神を没却するような重大な違反があれば云々とあって、重大な違法があり、相当でないと認められる場合はその証拠能力は否定されると。

 私は、この判例というものは、この「しかし、」の前と後、セットだと思いますので、是非今後の議論ではその二つを答弁していただきたいと思いますが、刑事局長に見解を求めます。

森本政府参考人 お答えいたします。

 今、先生が御紹介になられた判例は、違法収集証拠排除法則と言われるものの代表的な判例で、どのような場合に違法収集証拠として証拠が排除されるかということに関する最高裁の規範を示したものと理解しておりますので、先生がおっしゃったような両面があるものというふうに理解しております。

井出委員 刑訴法の一条は、刑事事件について、公共の福祉や個人の基本的人権の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法規を適正かつ迅速に適用するということになっております。このことをよく肝に銘じて、くれぐれも捜査側の真相究明のためだったら何でもというような思考に陥らないように、そのことだけは心してやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、松下玲子さん。

松下委員 立憲民主党、松下玲子です。

 本日は、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、通称刑事デジタル化法案についてと、人質司法について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、法案の提案理由説明には、情報通信技術の進展及び普及に伴い、刑事手続等においても情報通信技術を活用し、手続を円滑、迅速なものとするとともに手続に関与する国民の負担を軽減することが喫緊の課題となっていますとあります。今回の一部改正法律案が国民の負担軽減に資するものとなっているのか、本当に国民の利益となっているのかという視点で質問をしたいと思います。

 また、情報通信技術が進展して、およそ三十年が経過しています。情報通信技術の進展や普及とともに、スマートフォンやタブレット、パソコン等の情報通信機器は、私たちの日常生活にはなくてはならないものにもなっています。

 今回、初めて、情報通信技術の進展等に対応するため、刑事訴訟法等を一部改正する法律案が政府から提案され、西村委員長を始め委員会理事の皆様の御尽力によって、参考人質疑も行うなど、丁寧な審議を行っていると思っています。

 私自身、刑事手続のデジタル化には賛成の立場ですが、新たに創設される電磁的記録提供命令制度で、膨大な個人情報の取扱いに、個人情報保護やプライバシー権、通信の秘密の観点から、人権や尊厳が守られたものとなっているのかという疑問もあります。

 先日の参考人質疑でも、坂口参考人からは、現在の法案は、捜査機関の利便に資する多くの制度を創設する一方で、国民のプライバシーの権利や被告人の防御権を軽視し、バランスを欠いた内容になっているため、主に二つのポイントにつき修正を強く求めていますという意見がございました。

 今回の改正案の基となった法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会の議事録を、私自身確認をいたしました。情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備についてを議題として、一年半にわたり十五回会議が開かれています。この法制審議会刑事法部会の委員選定はどのように行ったのでしょうか。IT、デジタル等の情報通信技術や個人情報保護に関する専門家が、私が見る限り入っていないように見受けられるのですが、情報通信技術関係の部会にもかかわらず、両専門的知見を持った委員が入らずに会議が行われていたのであれば、これは大きな問題であると思います。

 情報通信技術や個人情報保護に関する専門家が部会委員にいたのかどうか、教えてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、法制審議会令におきましては、法制審議会の委員について、学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命し、そのうち、部会に属すべき委員は、法制審議会総会の承認を経て、会長が指名することとされております。

 そして、その上で、御指摘の刑事法(情報通信技術関係)部会の委員については、法制審議会令に基づきまして、諮問の趣旨及び内容に照らし、刑事法の学識経験を有する研究者四名が任命、指名されたほか、刑事司法制度に関する専門的知見を有する法律実務家等として裁判官二名、弁護士二名を含む委員七名が任命、指名されました。

 同部会におきましては、刑事法の研究者の委員等が刑事法分野における個人情報保護に関する専門的知見を有していたほか、関係官という立場で議論に加わった法務省デジタル統括アドバイザーがデジタル技術に関する専門的知見を有していたところであり、そうした専門的知見も踏まえて十分な議論が尽くされたものと考えております。

松下委員 今お答えがありました、委員の中には刑事法の中で個人情報保護に関しての知見がある方がいた、情報通信に関しては関係官にいたと。関係官の、この法務省デジタル統括アドバイザーの方のことかと思うんですが、関係官というのは、採決の権利も持っていないですし、委員とは異なりますよね。

 二十人以内で構成するとなっているところ、十一人、七人と四人なので、十一人の委員と部会長で構成されていたと思うんですが、これはまだ、二十人以内だと定員というか枠が余っているので、個人情報保護や情報通信に特化した専門家の意見も聞くべきだったんじゃないでしょうか。いかがですか。

森本政府参考人 関係官は、法制審議会がその調査に関係があると認めた者は、会議に出席し、審議の参考に供するために、議事に関して、説明し、又は意見を述べることができるとされておりまして、そういった立場で御参加いただいたというふうに考えておりまして、先ほども申しましたとおり、十分な審議が尽くされたとは思っておりますけれども、委員御指摘の点につきましては今後の参考にさせていただきたいというふうに考えております。

松下委員 今後の参考だと困っちゃうんですよ。今回、非常に、個人情報保護やプライバシー権、また情報通信技術の進展に伴った法改正を初めて刑事訴訟法で行うわけですから、この法制審の部会というのはとても重要だったと思うんですね。

 実は、この部会の前には検討会を行っていますよね。刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会、以下検討会と言いますが、ここの委員と私比べてみたんですね、検討会の委員と、この法制審の委員。ほとんど、同じ方もいらっしゃるんですが、一人、刑事訴訟法が御専門の学識で、情報、プライバシーにも特化していらっしゃる先生、これは笹倉宏紀先生と書いてあるんですが、論文もちょっと調べてみたんですけれども、何で、検討会には入っていらっしゃったのに、法制審にはいらっしゃらないのか、私はちょっと不思議でならないです。

 そして、この法制審の前段の検討会の中では取りまとめが出ていますので、そちらも確認をしてみました。法制審の議論と大きく異なっていることも気になりました。

 検討会では、例えば、オンライン接見に関しての異なる委員からの意見に関しても、取りまとめではきっちり両論併記になっているんですね。メリットやデメリットが両方示された後に、この検討結果を踏まえて、更なる協議が進められることが期待されると締めくくられています。

 一方、法制審の部会では、こうした検討結果を踏まえているとは思えない、例えば電磁的記録提供命令に関しては、懸念や留意事項を述べた委員の意見が、特に理由の説明がないまま、最後の案には反映されていないということがありました。オンライン接見に関しても、その必要性について同委員から強く求められていますが、法制審部会の骨子案には、残念ながら全く書かれていません。

 なぜ、被疑者、被告人がオンラインで弁護人等と接見する権利が実現されなかったのか、私はとても疑問に思います。検討会では議論されていましたからね。そして、そもそも現行法でオンライン接見は禁止されているのか、教えてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、刑事訴訟法三十九条一項に規定する接見につきましては、被疑者、被告人が収容されている刑事施設等に弁護人等が赴いた上で対面で行われるものであって、電話の使用は同項に規定する権利としての接見には含まれないものと解されておりまして、いわゆるオンライン接見も同項の接見には含まれないと解されておりますが、他方で、委員御指摘のとおり、刑事訴訟法上、オンライン接見を禁止する規定はないものと承知しております。

松下委員 参考人質疑で、この法制審の部会の委員でもありました池田参考人は、オンライン接見は、刑事訴訟法、今御紹介あった三十九条一項で許容されているという解釈を示されましたよね。弾力的にニーズの高いところから実施していくという運用を着実に推進してほしいといった陳述をされていました。

 今禁止はされていないというふうにおっしゃいましたが、対面でというのは第三十九条の刑訴法の条文には書いていないと思いますけれども、書いてありますか。

森本政府参考人 三十九条一項の解釈、考え方において、そのような考え方が示されているということで申し上げたところでございます。

松下委員 法文の解釈はいろいろあると思うんですけれども、まず条文には書かれていませんよね。私が先ほどお伺いしたときに、現行で禁止されているのかということで、禁止はされていないということでしたが、対面でとお答えがあったのは、これは誤解を招くので、解釈でというふうにちゃんと説明してほしかったと思います。

 そして、解釈というのであれば、池田参考人は、オンライン接見は許容されているという解釈を示されております。そこで禁止をされていないということは分かりました。

 次に、この法制審議会刑事法部会の試案の段階で、被疑者、被告人がオンラインでの弁護人等の接見についての制度導入が、残念ながら見送られています。オンライン接見の実現及び法制化は、全国五十六の弁護士会及び弁護士連合会から求められており、法制審においても久保委員が導入を求めて発言をしていますが、その理由が示されることなく法制審の答申からは外れ、今回の法案にも含まれていません。禁止されてもいません。

 オンライン接見の必要性はないというのが、政府のお考えなのでしょうか。法制審の議論の状況を見守った上でも、なお法案に採用しなかった理由を教えてください。

森本政府参考人 まず、弁護人との接見は、被告人等の防御権を保障する上で重要な意義を有するものと認識しておりまして、オンラインによる外部交通の実施に対するニーズが高い地域があるということも承知しているところでございます。

 その上で、オンライン接見につきまして、弁護人以外の者が弁護人に成り済ますことや接見が認められていない第三者が同席すること等を有効に防止できるのは、いわゆるアクセスポイント方式を取る場合に限られるというふうに考えられるところでございますが、そのアクセスポイント方式によるオンライン接見を被疑者等の権利として位置づけることについては、法制審議会において議論がなされたところでございます。

 刑事訴訟法上の権利として位置づけて、明文の規定を置くべきとの意見があった一方で、全ての刑事施設等でオンライン接見を実現できる見通しがないのに権利化してしまうと、大部分の施設において被疑者等が法律上認められた権利を行使できないという状態が長期にわたって続くことになるでありますとか、それから、刑事訴訟法上の権利とせず、運用として、ニーズの高い地域から弾力的に実施していくのが適切であるといった意見があり、答申には盛り込まれなかったところでございます。

松下委員 先日のこの委員会の質疑でも、立憲民主党の篠田委員が、弁護士として北海道で刑事弁護に当たって、直ちに依頼者の元に遠距離を車で駆けつけたというお話もございました。

 法務省としてもオンライン接見の必要性は認めていると、今、お答えから私は受け取りました。にもかかわらず、今回制度化できなかったのは、全ての、日本全国あまねく実現をすることが困難だからだというふうにも、今お答えを聞きました。

 でも、全てすぐできないからといって、今まさに困っている人がいて、必要な地域があって、オンライン接見を望んでいるにもかかわらず制度化されないということは、私は残念でなりませんし、これは何とか、制度化がもちろんベストではありますが、今、お答えの最後に、アクセスポイント何ちゃらかんちゃらといって、法律でも禁止されているわけではないですから、できるところからやろうかなみたいなふうに聞こえたのですが、そうしたところを少しでも今回の法改正で担保する必要があると私は思います。

 やはり、都市と地方では移動にかかる時間も費用も大きく異なりますよね。オンライン接見をあまねく全国で実現するためには、様々な環境整備が必要であろうということも理解をいたします。だからといって、できるところもできないままでは、これは本当に何のための刑事訴訟法のIT化、デジタル化なのか、理解に私は苦しみます。

 刑事手続において情報通信技術を活用することにおける重要な視点が、検討会において共有されています。とても大切な視点だと思いますので、その一部を御紹介します。

 刑事手続における情報通信技術の活用は、刑事手続に携わる者の負担を軽減し、その合理化に資するものであるが、それのみを目的とすべきではなく、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とする、刑事訴訟法第一条、刑事手続の円滑かつ適正な実施に資するために、そして、被疑者、被告人、被害者を始めとする国民について、捜査、公判に関与する負担を軽減し、それらの者の権利利益の保護、実現に資するために活用されるべきである。

 刑事訴訟法等の一部改正は、国民の権利利益の保護、実現のために必要な制度を設けるべきであると私は思います。今回の法改正で国民の利益に資する部分はどこかを教えてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 本法律案は、刑事手続等の各場面において情報通信技術の活用を可能とすることによって、手続の円滑化、迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図るものでございます。

 例えば、本法律案におきましては、証拠書類の電子データ化等によりまして、弁護人が、電子データである証拠書類について、裁判所や検察庁においてコピーの手間なく謄写することが可能となるとともに、オンラインにより閲覧、謄写することも可能としております。また、身柄拘束に関する不服申立て等をオンラインにより迅速に行うことも可能となっております。これらを通じて、被疑者、被告人、弁護人側の防御上の負担が大幅に軽減されることがまず期待されると思っております。

 それから、犯罪被害者の観点から申しますと、被害者参加人として公判廷以外の場所に在席してビデオリンク方式により公判期日における手続に参加することを可能とすることとしているところでございまして、これを通じて犯罪被害者等の負担の軽減が図られることも期待されます。

 さらに、本法律案におきましては、証人尋問をビデオリンク方式により実施することができる範囲を拡充し、例えば、多忙な医師に専門家としての証言を求める場合等においてもビデオリンクによる尋問を可能とすることとしているところでございまして、これを通じまして、証人の出頭に伴う業務上の負担も軽減されることが期待されるということでございまして、本法律案は、こういった様々な方々の立場に立って広く利益があるというふうに考えております。

松下委員 一定、オンライン手続によって国民の利益に資するところがあるのだということは分かりました。しかしながら、国民の権利利益の保護、実現のためには更なる修正が必要ではないかと私は思います。

 「刑事手続のIT化は、関係機関における事務の合理化、効率化にとどまらず、正に国民や社会全体の利益につながる有益なものであると、私どもは考えております。」とは、法制審の第十五回、最終回において、要綱(骨子)案が賛成多数、反対ありで取りまとめられた後に、警察庁刑事局長の渡辺委員の発言であります。

 法制審第十五回の最後には、渡辺委員に続いて久保委員が発言をなさっています。「今後の国会審議などでは、人権保障の観点からの更なる検討がなされること、そして、この法律を使う実務家たちが、易きに流されず、公正な裁判の実現を目指すことを願って、発言を終えます。」と。

 人権保障の観点からオンライン接見を制度化すべきと考えますが、鈴木法務大臣の御見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 先ほど、アクセスポイント方式によるオンライン接見、これは、被疑者等の権利として位置づけるということについての様々な論点、問題点については局長の方から答弁させていただいたところでありますけれども、先般の審議においてもそうですし、本日もそうですけれども、オンラインによる外部交通の実施、このニーズが高い地域がある、それは我々としても承知をしているところであります。

 そういった中で、刑訴法上の権利ということの位置づけではありませんが、実務上の、運用上の措置として、これまでも一部の地域において、検察庁と法テラスと拘置所等との間のオンラインによる外部交通の実施、これを行ってきましたけれども、現在、弾力的にその実施を拡大をする、そういったことをしっかりと行っていくべく、関係の機関であったり、あるいは日本弁護士連合会との間での協議を実施をしているところであります。

 今後、こうした関係機関等とも連携をしながら、一層この取組の加速、これをしていくことを我々としては考えているところでございます。

松下委員 今お答えいただいた取組の加速化のためにも、今回の法改正において、やはりそこはオンラインの接見の部分を明文化するべきであると私は思います。権利として、全て、全国ではできないけれどもというのであれば、それなりに今後加速化させるような修正なり附則なり、明文化としてきちっとこの法改正で残すべきであると私は考えます。

 続いて、人質司法についてお伺いをいたします。

 人質司法とは、逮捕、勾留された被疑者を自白するまで釈放しない運用を批判する言葉です。被疑者の身体を人質にして自白を強要していることから、人質司法と呼ばれています。このような批判、人質司法についてどのように考えているか、お伺いをいたします。

森本政府参考人 人質司法との表現は、先生今御指摘ございましたが、我が国の刑事司法制度について、被疑者、被告人が否認又は黙秘をしている限り、長期間勾留し、保釈を認めないことにより自白を迫るものであるといった批判がされる場合に用いられる表現だと理解しております。

 一般論として申し上げれば、被疑者、被告人の勾留や保釈につきましては、個々の事案における具体的な証拠関係に基づき、裁判所又は裁判官によって刑事訴訟法の定める要件の有無が判断されるものでございまして、被疑者、被告人が否認し、又は黙秘しているということのみを理由として長期間拘束するようなことはないものと承知しております。

松下委員 残念ですね。ないものと承知されたら困るんですけれども。

 否認を貫く被疑者に取締り官が罵声を浴びせたり、誤った見立てに基づいて捜査を進めたりするケースは、最近も相次ぎ発覚していますよね。だから、ないものではないですよね。

 大阪地検特捜部が捜査した業務上の横領事件では、不動産会社元社長の無罪が確定をしていますし、大阪高裁は、捜査に関わった担当検事を特別公務員暴行陵虐罪で審判に付す決定も出しています。また、生物兵器製造に転用できる装置を無許可で輸出したとして起訴され、その後取り消された大川原化工機の社長らが損害賠償を求めた訴訟でも、東京地裁は、二三年に、捜査を違法と認め、国と東京都に賠償を命じていますよね。

 今の局長の答弁の、ないものではないんじゃないか。これは事実がございます。

 日本の人質司法には、保釈申請への対応を、無罪の推定と個人の自由に関する国際基準に沿った運用に改善することとの提言がありますが、これに対する政府の見解を示されたいと、立憲民主党の中谷議員が、いわゆる人質司法について質問主意書を提出しています。回答は、今と近いんですが、保釈に関する裁判所又は裁判官の判断及びその評価に関わるものであり、政府としてお答えする立場にないとのことでした。

 もちろん、司法権の独立や三権分立に関して理解はしていますので、今同じ質問を私がしても、ここで裁判官の判断を伺うことはできないと思いますが、しかしながら、冤罪事件が起きてしまっている現状があります。そして、検察の捜査や裁判官の判断が本当に正しかったのだろうかと、冤罪事件の事後の検証を行うべきであると私は考えます。

 二度と同じような苦しみを冤罪被害者に与えることがないように、そして冤罪を起こさないようにするためにも、また、人質司法のような違法な捜査が行われないためにも、プレサンス事件や大川原化工機事件など冤罪事件の検証を検察自らが行うべきと考えますが、いかがですか。そしてさらには、冤罪事件の事後検証を外部機関も含めた第三者で行うべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

森本政府参考人 まず、今御指摘のような事案につきまして無罪判決があった場合でございますが、検証という形を取るかどうかというのは事案によりますけれども、御指摘のような事件につきましては、その捜査、公判上の問題点を検討して、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、今後の捜査、公判の教訓としているもの、まず検察庁内では、というふうに承知しております。

 第三者機関を設置するなどして、第三者を入れて検討することについてでございますが、司法権の独立の観点から問題が生じることに加え、関係者のプライバシーを始めとした秘匿性の高い刑事事件に関する情報について広く第三者に開示することになるため、関係者の名誉、プライバシーを侵害するおそれもあることなどから、御指摘のような対応をするかどうかについては慎重な検討を要するものと考えております。

松下委員 やはり、これだけ冤罪事件が残念ながら繰り返されてしまっているという事実にまずは目を向けるべきだと思います。

 そして、先日、参考人でお話をいただきました村木さんからも、御自身の冤罪事件に関して、その後、調査のようなこと、何か検察から聞かれたりしたようなことはないとはっきりおっしゃっていました。袴田さんの事件の検証においても、これは最高検として検証を出されていますが、あくまで内部の検証であり、その限界を示してもいると思っています。

 実際になぜ冤罪が起きてしまったのか、そこを二度と起きないための教訓とするためには、やはり冤罪事件の原因究明、そして独立した第三者を入れた、内部限りの検証ではない調査が必要だと私は思います。また、冤罪で長期に苦しむ被害者を救うため、二度と同様な冤罪事件を起こさないためにこそ、刑事訴訟法を改正し、再審制度を実現する必要があると私は考えます。

 十二月にも同じ質問をした際には、今在り方協議会で議論を行っているので、それを見守るというようなお答えでしたよね。再審法改正という、これはまさに立法事実が明らかで、超党派の議連も議員立法で刑訴法を改正し再審制度を確立しようとしている中、また全国の議会からも意見書も続々と上がってきている中、法務大臣がわざわざ今から法制審に再審制度の見直しを諮問した理由とその目的について教えてください。

鈴木国務大臣 再審制度でありますけれども、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化、これが指摘をされていることもございますし、今御指摘の点も含め様々な御議論、これは国民の皆様方の間での関心が高まっているということもございます。

 そういった中で、先ほど御指摘いただきました改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会でありますけれども、二月五日のこの協議会におきまして、複数の構成員の方々からも、この複数回の協議の結果、再審制度について法制審において更に検討を深めるべきとの御意見も示されて、異論がなかったということもございました。

 そういったことを踏まえまして、この再審手続に関する規律の在り方につきまして、今のこうした事件の現状、実情を踏まえながら幅広い観点から検討いただく必要があるということで、先般三月の二十八日に、法制審に私の方から諮問をさせていただいたところでございます。

西村委員長 松下さん、時間が来ていますので、まとめてください。

松下委員 はい、まとめます。

 法制審で一年も二年も議論をしている暇はないと私は思っております。そうした時間的猶予は残されていない。一刻も早く再審法を改正、これを実現することを求め、私の質問を終えたいと思います。

西村委員長 次に、藤原規眞さん。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 本改正案の全体の方向性についてまず伺います。

 日本の刑事訴訟は、当事者主義、検察官と弁護人、被疑者、被告人が訴訟進行の責任を負うという原則を基本としています。特に、刑事訴訟法二百五十六条六項の起訴状一本主義、これは日本が当事者主義を採用した証左だと多くの刑事訴訟法の基本書に書かれています。私も、恩師であり今は専修大学で教壇に立たれる加藤克佳教授にそのように教わっています。

 当事者主義の内容を成すものとして、当事者対等主義、いわゆる武器対等の原則が導かれます。しかし、まず日本の現状は、取調べに弁護人の立会い権がないとか、いつ取調べが行われるか事前には分からないですとか、捜査段階では捜査記録は被疑者、弁護人に一切開示されないとか、あるいは、被疑者は起訴されて初めて検察官から裁判のための記録が開示されますが、これは検察官が裁判に使おうと思っている証拠だけで、証拠の全ては開示されない。それゆえ、武器対等にはほど遠いという批判がもとより強いわけですね。

 加えて、本法律案は、全体の方向性として、電磁的記録による令状の発付や電磁的記録提供命令など、捜査機関の利便に資する多くの制度を創設する一方で、被疑者、被告人がオンラインで弁護人と接見したり、あるいは電子化された書類を授受する権利というのは認められていないなど、被疑者、被告人の防御権を著しく軽視されていると考えられます。それで、バランスを欠いているという声明が日弁連からも出されるに至っています。資料一です。

 これは、いわば強豪球団が弱小球団から主力選手をFAで取ったような不公平感が少なくとも弁護側から見たらあるんですね、そこまでやるかと。先ほど森本局長が、被疑者、被告人の利便性も大幅に増したというふうにおっしゃっていたんですけれども、現場から見たら、これは戦力差が拡大したというふうにしか思えないわけです。

 そこで、伺います。日弁連によるバランスを欠いたとする会長声明、それは、そもそもその捉え方に間違いがあると法務大臣は考えておられるんですかね。現状、十分公平だから、捜査側にメリットがある立法がされても問題はない、あるいは、捜査側と弁護側でバランスなど欠いても構わない、捜査側だけで利便性を享受できればいい、弁護側はせいぜい今の制度で頑張ってくれ、そういう趣旨と受け取っていいんでしょうか。

鈴木国務大臣 決して、別に今委員が御指摘されたような趣旨ということでは当然ありません。

 特に、今回の法律案ということで、法案審議ということで申し上げさせていただければ、この法律案は、先ほど局長からも答弁がございましたけれども、特定の立場にある者の便宜を図る、そのためのものということではなくて、これは刑事手続等の各場面において情報通信技術の活用を可能とすることによって、手続の円滑化、迅速化、さらにはこれに関与する国民の皆様方の負担軽減、これを図るという趣旨であります。

 重複になりますから全て申し上げませんけれども、やはりこれは、弁護人の方々あるいは犯罪被害者、さらにはまた証人等も含めて、幅広く、捜査機関だけではなくて、被疑者、被告人あるいは弁護人、犯罪被害者、証人など、刑事手続に関わる様々な立場の方々にとって広くメリットがある、そうした今回の法改正というふうに我々としては考えているところであります。

 そうした趣旨で、バランスを欠いているのではないか、こうした御指摘があることは承知をしておりますけれども、私どもとしては、バランスを欠いたものとはなっていない、そういった今の我々の思いであります。

藤原委員 現状について、捜査が弁護側よりも優越している、そういう認識はないということですか。

鈴木国務大臣 先ほど、そうした武器対等の原則等々の話もおっしゃいました。これは、様々な議論、見解というのも当然これはあると承知をしておりますけれども、私どもとしては、そうした中での対等性、こうしたところに今大きな問題がある状況ではないと考えているところであります。

藤原委員 では、捜査機関による電磁的記録提供命令について話を移します。

 現代において、企業、事業者が保有するコンピューターに大量の個人データが蓄積されています。例えば、交通系ICを使用した移動履歴ですとか、ネットショッピングでの購入履歴ですとか、あるいはSNSでの投稿、インターネットの閲覧履歴などなどであります。

 これらの個人データに捜査が行われた場合、データの帰属主体である本人が認識していない間にデータが入手され、本人が関与する機会も与えられないということも起こり得るわけです。

 捜査機関が提供命令によって情報を取得した上で本来の取得目的と異なる目的で利用することに対する歯止め、その規定は今回ないわけですね。例えば、捜査機関が被疑者不詳のまま電磁的記録提供命令による個人データを幅広く収集した後、これが他の犯罪捜査に流用されない、これを担保する制度は今回設けられていないわけです。

 在来の刑訴法の規定に、例えば別件捜索、差押えを規律する、そういう規定がないから本法案でも設けていないということだと考えられるんですけれども、例えば、紙媒体を前提とする今までの在来の捜索、差押えと今回の電磁的記録提供命令、これは同様に理解しているということなんですか、法務省は。書面と電磁的記録を同価値のものとして捉えている、あるいは、何らかの相違は見出しているんでしょうか。お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 証拠という意味でいいますと、例えば、その形態が違うというだけであって、そこに大きな質的な差があるということに、まず証拠であるということからつながるものではないというふうに考えます。

 他方で、今御議論にありますとおり、電磁的記録というものがどんどんどんどん社会に広まっている状況の中で、収集してくる情報の量が格段に増えるという側面があるということでは違いがあるというところはそのとおりかなというふうに考えております。

藤原委員 違いがあるのであれば、その違いに見合った規律を設けるべきだったんじゃないですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 例えば、先生が先ほどおっしゃられたような、被疑者不詳のままで、被疑者不詳でどさっと情報を入手してくるというようなことがまずそもそも想定されるか、できるかというところからしますと、これは大臣の方からも再三御答弁いただいているところでございますが、そもそも裁判官が、こういった犯罪についてこういった嫌疑があって、これについて電磁的記録提供命令を発することが相当であると判断をしない限り令状は出ないわけでございまして、先ほど言われたような網羅的なものが想定されるかというと、そうではないというふうに思っております。

 他方で、先生御指摘の点につきまして、現在の記録命令付差押えにおきましても、電磁的記録を提供してもらうという形、これは媒体を通じているかどうかの違いがあるだけで、同じようなものがあるわけですが、そのときには、やはり、これも前に御答弁申し上げたことがあるんですが、事業者側からすると、何を出していいのかということが特定できていないと出すことができませんので、例えばですけれども、例えば私だったら私が使っている電話番号の番号を表示して、この番号の表示に係る何月何日から何月何日までの通話履歴というような形で特定して、電磁的記録でその履歴を出してもらうというのが今の運用でございまして、そういった運用については記録命令付差押えのときと基本的に異なることはない、現行法と異なるところはないというふうに考えております。

藤原委員 しかし、その価値としての相違というものを法務省は認識されていると。

 電磁的記録提供命令は、やはり、そのデータ、その膨大さ、何が入っているか分からないというもの、そういう特質を考えたら、運用次第で違法、不当な別件捜索が容易に行われ得ることになる、その危険性は少なくともあると考えられます。

 例えば、そうしないための手当ては何か用意しているんですか。せめて立法に合わせて詳細な通達を出すなど、そういう手当ては準備されているんでしょうか。

森本政府参考人 もちろん、この法律が成立した上での検討になるわけですけれども、先生御指摘のとおり、最高裁判所の判例によりまして、捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で差押許可状に明示されたものを差し押さえることは禁止されているというところでございまして、その趣旨は電磁的記録提供命令にも妥当するところでございまして、例えば捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で電磁的記録提供命令を発することは許されないものと考えております。

 そういったことにつきまして、今後、今先生御指摘のような懸念等々も含めて、最高裁の判例の趣旨に照らして適正にこの制度が運用されるように、捜査機関に対しまして、制度内容等につきましては、通達等いろいろな形があると思いますけれども、そういったものにより適切な周知をしていきたいというふうに考えております。

藤原委員 じゃ、その通達というのはいつ出される予定ですか。

森本政府参考人 まだこれからでございますので分からないところではありますが、通常でありますと、法改正していただけて、その法改正が施行になる前の段階で、施行が分かれているときもありますけれども、施行になる前の段階で、こういった方針であるとか、あるいは、国会での御議論がこうこうこうであった、こういうところに留意されたいというようなことを盛り込んだ通達を出しているというのが一般的でございます。

藤原委員 違法、不当な捜査に対する歯止めとして、事前に令状審査があること、あるいは、事後に不服申立てがあること、最後に、違法収集証拠排除法則による証拠排除があるという答弁を森本局長は先週されました。先週の法務委員会で、柴田委員からの質問に対して森本局長がおっしゃっています。

 しかし、その違法収集証拠排除法則を裁判所が採用しているから歯止めがかかるという旨の答弁には、私は強い違和感と異論があるんですね。違法収集証拠排除法則というのは、現行でも、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑止の見地から相当でないと認められる場合に証拠排除されるというものなんですね。

 これはそもそも、立法の段階から、令状主義の精神を没却するような重大な違法、これは警察官の暴行とか証拠の偽造とか、それ自体が犯罪を構成し得るような代物なんですけれども、それを捜査機関が犯すことを想定する、これは法をつかさどる法務省として余りに不見識じゃないですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 私の答弁の趣旨が誤解されているとしたらお許しいただきたいと思いますけれども、違法収集証拠排除法則が抑止になっているという趣旨で申し上げているというつもりはございませんで、違法収集証拠排除法則について申し上げましたのは、電磁的記録提供命令で入手した証拠につきまして、あるいはこれを消去すべきかどうかという議論のときに、参考人質疑でもありましたけれども、現行法の刑事法の体系が、一旦入手した証拠につきましては、その後、刑事手続の中で適正に保管されなければならないので、なかなか、例えば、命令が取り消されたらすぐに消去するのかというと、そういうたてつけにはなっていないという、電磁的記録提供命令の消去とか、そういう文脈で申し上げたつもりでございます。

藤原委員 私の理解が及ばないのか分かりませんけれども、今の御説明でも全く私は納得ができないんですけれども、先週、参考人としていらっしゃった池田先生も、この排除法則について言及されているんですね。

 そもそも、この立法の段階で、捜査機関が重大な違法をした、令状主義の精神を没却するような重大な違法をした、それを想定してこの法案の許容性について論じるって、国民の理解がこれは得られないと思うんですけれども、今の議論を聞かれて、法務大臣としてはいかがお考えですか。

鈴木国務大臣 今の様々な御議論を拝聴いたしましての所感ということでありますけれども、もちろん、そうした違法性があるような状況、これを完全に全く想定しないで立法するということもまたどうなのかと思います。

 まさにそうした中で、そうした違法性がある場合がある、そういった場合のこうした排除ということ、それを考慮に入れての立法ということに、私としてはそんなに違和感を持つところではありません。

藤原委員 違法を犯す、それを想定して立法するということ自体は確かに重要なんですけれども、しかし、令状主義の精神を没却するような重大な違法、これを想定するということですよね。そうなった場合には証拠排除されるから大丈夫です、それはちょっと違うと思うんですけれども、今もそれは考えは変わらないですか。

鈴木国務大臣 もちろんあってはならないことだと思います。当然そういったことはないと思いますが、しかしながら、そういったことも含めた状況というものは当然考慮した上での法体系ということになると思いますし、その点での違和感ということは、私としてはそれは感じないところであります。

藤原委員 じゃ、法務大臣は、軽微な違法であればそれは目をつむってもいいというふうに捉えられても仕方がないと思うんですけれども。そもそも、違法収集証拠排除法則は出番が確かに少ないわけですね、重大な違法があった場合のみで。

 今回の法案は、捜査の適法性を広げる趣旨なんですね、そういう法案なんです。ということは、違法の範囲が狭まるんですね。ただですら出番が少ない違法収集証拠排除法則が、更に出番が少なくなる。これはもう出番がなくなるような、そんな法案になってしまうんですね。そこで更に、その違法収集証拠排除法則があるからと答弁で用いる、やはりそこは強い違和感を持ちますし、現場の弁護士であれば必ず持ちますし、法務大臣にも持っていただきたいと思います。

 森本局長にも伺いたいんですけれども、それでもなお、違法収集証拠排除法則があるからということは、これからもおっしゃるんですか。

森本政府参考人 重ねてで恐縮でございますが、違法収集証拠排除法則があるからいいんだというふうに申し上げているわけではございません。そもそも電磁的記録提供命令につきましては、違法の問題以前に、大臣も申されましたように、まず裁判官の令状審査があり、そこで、先ほど言いましたような、こういうものというものが列挙される形で、かつ事業者側にとっても何を提出すればいいのかが分かるような形で疎明されたものについて出るということが想定されております。

 他方で、それに対する不服申立てという点につきましては、申し立てることができまして、それによって、例えば準抗告で押収証拠が取り消されることもある、それが実務の前提でございまして、そういったほかのものと同じようなたてつけになっているということでございまして、そこはそういう理解でおります。

 違法収集証拠排除法則につきましては、この電磁的記録提供命令を創設するに当たって、これがあるからいいんだと申し上げているわけではなくて、池田参考人もおっしゃっておられましたけれども、現行法、現行刑事訴訟法上の建前というかたてつけとして、一旦収集した証拠を、どういうときにそれを廃棄したり処分したりしていいか、あるいは弁護人への開示とか、それから再審請求とか、そういったものに備えて、どの範囲で保管していなきゃいけないのかということとの関係で、例えば、取り消されたからすぐ消去していいのかという論点に対して、いや、そういった経過もきちんと残しておいて、その後、手続を争ったりいろいろなことができるようにする必要がありますよと。

 だから、例えば、違法収集証拠排除法則の事案が仮にあったとしても、その事案におきましては、裁判所の手続の中でこの覚醒剤が違法と認められたということになれば、押収経過とかそういうものは残っていくわけで、そういったところを残しておく必要があるという趣旨で、すぐに消去というわけにはいかないという文脈で、違法収集証拠排除法則について御説明をさせていただいているというのが現状でございます。

藤原委員 仮に違法収集証拠排除法則が適用されても、それは公判に臨む裁判官の目に入らないというだけなんですね。検察官が手にしているということには変わりはないわけです。なので、違法収集証拠排除法則を、今おっしゃったような文脈であっても、法案審議でその理由の一つとして持ち出すこと自体、間違っていませんかね。検察官が手にしていること自体を問題としているわけなんです。

森本政府参考人 押収手続に違法なものがあったものについて、例えば証拠物、典型的には証拠物等について、どのような取扱いが実務で行われているのかというのが、違法収集証拠に関する裁判所というか刑事司法の考え方だと思います。

 例えば、覚醒剤の押収手続において軽微な違法があったとしても、覚醒剤自体の証拠価値は変わらないからこれは証拠排除しなくていいんだと考えるのか、これだけのやはり違法があったんだったら、覚醒剤自体には証拠価値があろうとも、将来の違法捜査の抑止の観点から、やはり令状主義の精神を没却するような違法があるからこれは証拠とすることが駄目なんだというふうに考えるかというたてつけの問題になりますので、そこは、そういった証拠の価値というものは、そういうまさに裁判の中で判断されていくものだというふうに理解しております。

藤原委員 次に、秘密保持命令について伺います。

 本来の情報主体に不服申立て権が認められない、かつ、秘密保持命令の存在により、準抗告が無意味化するのではないかという問題が指摘されています。不服申立て制度として規定されても、事業者などが提供命令の対象となった場合に、本来の情報主体には不服申立て権が認められておらず、その本来の情報主体にとっては不服申立ての機会が認められない、すなわち違法なプライバシー侵害を回復する機会が与えられないことになるんですね。これは、被疑者であった場合、防御の観点からも問題なわけです。

 この秘密保持命令が本来の情報主体の不服申立て権を無意味なものにしている点、これは制度の欠缺と言われても仕方がないと思うんですけれども、法務省はこれは全く問題ないと考えているんですか。

森本政府参考人 秘密保持命令につきましては、まず、電磁的記録提供命令の被処分者としては、捜査に協力的でない者や、それから犯人との間に何らかの利害関係を有する者も想定されますところ、そのような者が捜査機関から電磁的記録提供命令を受けた場合に、命令を受けたことや命令により電磁的記録を提供したことなどを犯人等に伝え、それにより犯人等が捜査の状況を察知して、罪証隠滅行為や逃亡に及ぶおそれもあるというふうに考えております。

 そこで、本法律案においては、被処分者が電磁的記録提供命令を受けたことなどを第三者にみだりに漏らすことにより捜査に重大な支障を生ずることを防止するために、秘密保持命令を創設することとしております。

 この点につきましては、ほかの、例えばこれまでの差押え等についても、被疑者とは別のところに差し押さえてきたものがあったとしても、その被疑者の方に何らか通知するという制度にはなっていませんので、現行法と基本的には同じたてつけとなっております。

 他方で、先生、今、情報主体には申立て権がないとおっしゃられましたけれども、不服がある場合、正当な利益を有する者については、申立て権はあると思っております。

 そういう意味では、申立て権は有するけれどもそれが行使できるのかという問題はありますけれども、そこはまさに、そのことを知り得なければ不服を申し立てられないという方の要請と、それから他方で、伝えてしまったら、秘密保持命令をかけなかった場合には、それが伝えられて罪証隠滅のおそれがあるというものと、どちらを重視するのかという考え方かなというふうにも考えております。

藤原委員 行使できない権利なんか意味なくないですか。

森本政府参考人 まず、基本的に、被処分者、今回でいえば事業者が典型かもしれませんし、事業者だけで足りるのかどうかということはあるかもしれませんけれども、被処分者にとっては、権利は必ず行使できる。

 問題は、それを受けて、例えば、私の情報がその中に入っていたのに私が知り得ないという方の利益をどこまで認めるというか担保するかという話と、それから秘密保持命令をかけて罪証隠滅等を防ぐことのバランスをどう取るかという問題かと思います。

藤原委員 だから、今、森本局長がおっしゃるところの、私の情報が大事なんじゃないですか。その私が申立て権がない、行使できない、そのこと自体が問題じゃないですか。

森本政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、例えば、現在の刑事訴訟法の普通の捜索、差押えにおいても、基本的には全く同じ問題が妥当しているわけでございまして、例えば、私が何か犯罪をしました、私の知人のところに捜索があって、その彼から私のところに連絡が来るかもしれませんけれども、でも、私が誰か知人に預けていたものが押収された、例えば犯罪の贓物を預けていたものが押収されるという、これは典型的によくあることです。そのときに、私に対して通知がないのはおかしいということかと申しますと、現行法は、そういう場合は基本的には私に連絡が来るシステムにはなっておりませんので、その現行法のたてつけと同じであるというふうに申し上げたところでございます。

藤原委員 いや、違うと思います。

 だって、私のところにその彼から連絡が来るかもしれないとおっしゃいましたけれども、秘密保持命令でそれは禁止されるわけですよね、罰則つきで。これは同じじゃないですよね。森本局長が悪いことをして、その御友人が捜索、差押えを受けて、連絡をくれるかもしれない。でも、その御友人が罰則つきで禁止されたら、結局、知る権利はないですよね、知る機会もないですよね。そんな権利、行使できない権利、持っていても意味なくないですか。

森本政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、不服申立てをする権利というのは、正当な権利を有する人には認められるということになりますから、被処分者にあるとともに、被処分者以外にも、その情報に関係する、例えば所有者、賃貸人とか、いろいろな人が不服申立てをし得るということになるわけですけれども、その全ての人が、全員が十全にその権利を行使できなければ意味がないという立場には立っていないということでございます。

藤原委員 全然答えていただけないので、最後に移りますけれども、私がこの委員会で質問した、例えば白龍町事件で、DNA型の情報について、情報を保有しておく必要性がないとして情報の抹消が命じられた。あるいは、大垣警察の市民監視事件でも、情報収集の違法、あるいは保有の違法が判断されて、同じく情報の抹消が命じられた。いずれも、個人情報をみだりに収集、保有、利用されない自由というものが認められて、抹消請求が認められたという意味で画期的な判決だったと思います。そして、この二つの高裁判決が、警察の情報管理の在り方や公安警察の活動を規律する法律が必要である旨指摘しています。

 今回の法案、これは電磁的記録提供命令によって、プライバシー侵害の被害というのは格段に大きくなることが想定されます。これを機に、白龍、大垣の高裁判決の判決理由中の立法の要請に応えて、人権をつかさどる法務大臣として、このデジタル化法に併せて、広く情報管理の在り方について法律を定める、そういう政治決断をしてくださいませんか。

鈴木国務大臣 その点につきましてですけれども、捜査機関が電磁的記録提供命令によって提供を命ずることができる電磁的記録、これは、現行の差押えであったりあるいは記録命令付差押えによる場合と同様に、裁判所の裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限られる、これは答弁をしているとおりであります。

 そうしたことに鑑みれば、電磁的記録提供命令の創設によって、情報の収集、保管が現行制度下よりも格段に広範に行われるようになるということでは必ずしもないと考えております。そうした記録の保管、保存に関する現行制度の基本的な考え方、ここに変更を求められることにはならないと考えております。

 この基本的な考え方、すなわち捜査、公判といった刑事手続に必要なものとして作成、取得された書類、これは、刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法等によって、捜査中から刑事事件終結後に至るまで、刑事手続の適正かつ円滑な遂行のためにありのままの記録として保管、保存されるべきものであるというものでありますけれども、そうした今の考え方を変えなければいけないという状況ではないと思っているというのが私どもの今の立場でございます。

西村委員長 藤原さん、時間ですので、お願いします。

藤原委員 捜査機関の権限が質、量共に大きくなればなるほど、それを規律するルールが必要となる。人権の問題に問題意識を高く持っておられる、あるいは人権に造詣が深い鈴木大臣在任中に、これは政治決断で行うということを強く希望して、終わります。

西村委員長 次に、米山隆一さん。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、いわゆる刑事デジタル法についてお尋ねいたします。

 まず、ちょっとニッチなところで、関連する法律で、変わるところで、刑事確定記録訴訟法も変わるんですけれども、これも当然ながらデジタル化されるわけなんですが、これを閲覧する手続というのは一体どのように変わるのかというのを伺いたいと思います。

 というのは、私、前回の質問でも申し上げましたが、現在、恐縮ながら、都議会自民党の刑事訴訟記録の閲覧申請をしているんですけれども、もはや二か月がたっているんですが、いまだに音沙汰なしということでございまして、これは本当に、申請するのにわざわざ予約を取って検察庁に行かなきゃならなくて、そこで申請書を書いて、そして、今ほど申しましたとおり、随分待たされて、その間、しかも全然音沙汰もない上に、一体いつになるのかも一切知らされないという運用なんですけれども、これは少しは変わるんでしょうかね。

 また、そもそもどうやって見るのか。恐らく、あのだだっ広い部屋に、電磁的記録といっても困るでしょうから、ノートブックパソコンをぽんと置いて、これで見ろよと言われるのかということで、一体全体どういうふうにそれが変わるのか。少しはこの運用が改善するのか。黒塗りなんかも少しは早くなると思いますので、それについて御教示ください。

森本政府参考人 本法律案による改正後の刑事確定訴訟記録法においては、保管記録が電磁的記録である場合の閲覧に関しまして、まず、閲覧請求に関する規定には変更は設けておりませんということでございます。

 ですが、保管記録の全部又は一部が電磁的記録であるときは、その内容を表示したものを閲覧させ、又はその内容を再生したものを視聴させる方法による旨を規定しておりますので、先生御指摘のような方法も、一つ考えられるところでございます。

 本法律案が成立した場合の閲覧手続の在り方につきましては、閲覧を認めるべきものをできる限り迅速に閲覧でき得るようにすべく、検討を進めてまいりたいと考えております。

米山委員 要するに、何も変えませんというね。それは、私が言った方法も考えられるというけれども、それ以外考えられないでしょうということだと思うんですけれども。そんな、フロッピーディスクを渡されて、見ろと言われたって困るわけですから。せっかくデジタル化しているわけですから、せめてその辺の改善もどんどん進めたらいかがでしょうかと思いますよ。せめて申請ぐらい、何なら別に、それこそマイナンバーカードでやればいいわけじゃないですか。そういったことも是非進めていただきたいと思います。

 次に、では、電磁的記録提供命令についてお伺いいたします。

 これは、第百二条の二第一項一号で、移転というのがあります。これは、事前の質問で、この移転は、元のデータを消去して渡すことを移転というということで、そう理解されるわけなんですけれども。

 これは一体どのような場合に、通常、やはり、それは複写というか、データは送信するけれどもデータは残っているという方が多いんだと思うんですけれども、わざわざ移転というのが決めてある。それは、元データは消去するという意味だということなので、一体どういうときにこの移転を命令するのか。また、消去したということは、一体全体どのように判断するのか。消去しなかった場合、送信はしたけれども消去しなかった場合は、これは第百二十四条の二第一項の罰則の適用になるのか。また、いや、消去はしたんだ、消去はして、しばらくほっておいたんだけれども復元アプリで復元できたんだという場合は、それは罰則に当たるのか当たらないのか。ちょっと技術的なところですが、お聞かせください。

森本政府参考人 電磁的記録提供命令によりまして電磁的記録を提供させる場合、これを複写させるなどして記録させる方法によることで足りることが多いとは考えられますけれども、例えば、危険物の製造方法を内容とする電磁的記録でありますとか、それから、被処分者の下に残しておくことによって罪証隠滅等の捜査妨害を容易にするような電磁的記録など、被処分者の下に残しておくことが適当でないと思われる電磁的記録の場合には、記録させる方法ではなくて、これを移転させる方法により提出させることが考えられるところでございます。

 電磁的記録を移転させる方法による場合を含めて、電磁的記録提供命令の具体的な運用の在り方については、成立後に捜査機関において検討されるものと承知しておりますが、電磁的記録を移転させる方法による電磁的記録提供命令が発せられたにもかかわらず、対象者が元の記録媒体から電磁的記録を消去しなかった場合や、一旦消去した後、これを復元した場合に、電磁的記録提供命令違反の罪に該当するかどうかは、個別事案ごとに判断されるので一概にはお答え困難でございますが、一般論として申し上げれば、それが正当な理由がなく電磁的記録提供命令に違反したと認められる場合には、同罪による処罰の対象となることもあり得るものと考えております。

米山委員 相変わらずこういう答弁をしているのは、本当にどうかと思いますけれども。それは、駄目なら駄目と言ったらいいんじゃないですか。そんなふうに、駄目なのか駄目じゃないのか分からないというのは、本当に、運用する側だとしたって困ると思いますよ。

 だって、結構、これは別に冗談で言っているわけじゃなくて、サーバー会社とかからしたら、普通にそういうところは余り悪気もないわけですよ、移転というから普通にデリートを打ってやったら、いや、後からほかの業者が復元したら、それは駄目だろうとか言われたら困っちゃうわけですよね。だから、どうしたらいいかちゃんと決めなかったら非常に困るので、それはさすがに決めるべきだと思いますよ。

 次に、今度は、自己負罪といいますか、いわゆる証言を拒否するということについて御質問したいと思うんですけれども、この法案はなかなか実感が湧かないので、事例を基にしてお伺いしたいと思います。

 ここにいる皆さん、ほとんどの人が、ほぼ全員が選挙事務所を持っており、今どき大体、選挙事務所の中でのいろいろな相談というのは、候補者本人、スタッフ、ボランティアの方々を含めたSNSグループ、これは名前を出していいんだと思うけれども、最も使われるのはLINEグループで、LINEのチャットグループみたいなのを作ってやり取りをするということはもう全然少なくない、大体、議員間でもやっていますからね、ということだと思うんですよ。

 それで、あってはいけないことですけれども、このLINEグループで、それと意識せずに公職選挙法の例えば軽微な文書違反の相談がなされる、事前運動に当たるような文書を配布しようという相談がなされて、グループ全員が取締りの対象となったということはあり得るわけですね。これは何か、実は我々も、ここにいる全員が、いかにもそういうことはある、あり得るなと。それはしちゃいかぬですけれども、全員が当事者になり得るような事例だと思うんですよ。

 それで、個々人の携帯電話若しくは事務所のPC内のデータの内容を捜査しようというふうに警察が思いまして、文書違反でですよ、従前のように携帯電話やPC自体を押収するという方法もあるんですけれども、この電磁的記録提供命令では、その内容をコピーしなさいよ、さらには、コピーというか媒体に、ディスクなんかにコピーして出せよということもできるし、警察官にメールせよという命令も出せるということかと思います。これはまあ、質問を飛ばして、それを出せよというのはいいのは、それはもうこの法律はそれでいいです。

 その際に、大半の人は、携帯電話やパソコンにはログインパスワードというのを設定しているわけですよ。これも答弁でもう出ているのでいいんですけれども、このログインパスワードを教えろと言われたらそれは拒めるというのは、これは従前、何回も答弁されました。

 それは、じゃ、拒めるとして、では、今度は、捜査を受ける側の話として、いや、私は提供したいんだけれども、ちょっとこの携帯電話とパソコン、パスワードがかかっていて開かないんですよ、開かないから提供できないんですと。パスワードを打つということに関しては、それは私、拒否できます、自己に不利益な陳述に該当すると思うから拒否できると思うので、ちょっとパスワードは打てないんですよ、いや、出したいんですけれども、これは出せないんですと言われたら、それはどうなるんでしょうか。要は、パスワードを打つことを拒否というのはできるんですか。

森本政府参考人 電磁的記録提供命令は、必要な電磁的記録を提供することを命ずる命令であり、これを受けた被処分者は、提供することを命じられた電磁的記録を提供する義務を負います。そのことは、例えば、被処分者において、提供を命じられた電磁的記録を提供するに当たり、パスワード等の入力作業が必要となる場合であっても同様と考えております。

 したがって、そのような場合でも、捜査機関は被処分者に対し、電磁的記録提供命令により電磁的記録の提供を求めることができることとなると考えます。どういう言い方をするかはまた別ですけれども、要は、見える状況にして出してくださいということはできるというふうに考えております。

米山委員 だから、これはもう事実上、パスワードは打たせるということですね。パスワードを知らなくてもいいんでしょうけれども、少なくとも、パスワードを打つことは強制できるということなんだと思われます。その結果、例えば、今言ったみたいにLINEチャットみたいなものだから、ほぼほぼ自分が話しているのと同じような内容がそれは出てくるけれども、過去の話ですよね、過去の会話が出てくるけれども、それはもう強制できるということですよね。

 そして、次の事例で、例えば、事務所でレンタルしているけれども、使う人がそれぞれのパスワードを設定しているという携帯電話がある。これも選挙事務所でよくある話だと思うんですけれども、選挙事務所で一括してがっと携帯電話を借りてきて、それぞれの人が使ってくださいといって、それぞれの人が、パスワードを設定しない人もいるかもしれませんが、設定したりして使っているという場合に、どうもこの携帯が怪しい、この携帯にいろいろ入っていると思われると。

 じゃ、これが、きっとあなたが使ったでしょうと言って、あなた、今ここでパスワードを打ってくださいと言って、そうすると、そのパスワードを打った瞬間に、もうそれはその人がその携帯を使っていたということがほぼほぼ分かっちゃうわけなので、それはもう自己に不利益な供述と同視できるような行為だろうと思うんですけれども、そんなふうに、ともかくこの携帯をパスワードを打ってあなた出してくださいと、それも言えるということでよろしいですか。

森本政府参考人 なかなか具体例に即してというのは難しいところがありますが、電磁的記録提供命令は、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまるものであって、供述を強要するものではないため、憲法三十八条一項で保障されている自己負罪特権と抵触するものではなく、一般に、被処分者は自己負罪特権を理由に当該電磁的提供命令を拒むことはできないものと考えておりますので、どういう言い方をするかは別として、その捜索、差押現場に仮にあったものについて、立会人の方、どなたのものかということはなくて、これを見えるような状況にして出してくださいということは可能になるかなというふうに考えております。

米山委員 そうなんです。だから、基本的にここにいる全員が適用される事例だと思いますけれども、ともかく出させられるんですよね。

 さらに、また御質問しますけれども、パソコン内のデータ内にパスワードが、データそのものにパスワードがかかっている、そういうソフトもアプリもありますから、データにパスワードがかかっていて、パスワードがかかったものを、電磁的記録を提供した。いやいや、ファイルは出しました、ちゃんとこれは電磁的記録ですよねとファイルは出しました。じゃ、パスワードは、やはりそれはかかっていますから、パスワードを打つ義務、私はありませんといって、パスワードのかかったままのデータを出した場合、これはどうなるんですか。

森本政府参考人 裁判所から発せられる令状の形にもよりますので、すぐにこれということにはならないかとは思いますけれども、電磁的記録提供命令により電磁的記録を提供させる方法といたしましては、記録媒体に記録させて当該媒体を提出させる方法等がありますところ、ここで言っておりますのは、記録させるには、例えばですけれども、暗号化された電磁的記録を復号させた上で、これを他の記録媒体に記録させるような場合も含むものというふうに考えております。

 そのため、捜査機関等としては、パスワードがかけられている電磁的記録について、電磁的記録命令により、パスワードを解除して中身が分かる状態で電磁的記録を提供させるということを命ずるという処分も可能であるというふうに考えておりまして、そのようにして提供することを命じたにもかかわらず、命令を受けた者がパスワードを解除せずに当該電磁的記録を提供し、提供を受けた者においてその内容を知ることができない場合には、命令を履行したこと、すなわち必要な電磁的記録を提供したことには、その場合にはならないというふうに考えております。

米山委員 これも、そうなんですよ。

 なので、何せ、何かプロバイダーとかサーバーの会社ばかりに行くわけじゃなくて、あなたの携帯電話のデータを、パスワードがかかっていようが何だろうがともかくごっそり出しなさいという命令が出せて、それに従わなければいけませんという話になるわけなんです。

 もちろん捜査の必要というのもありますけれども、そこは、憲法三十八条の自己に不利益な供述を強制されないということはやはり大事なことであって、我々は、医師、弁護士などが電磁的記録提供命令を拒否することができることを定める百五条の二の次に、百五条の三として、電磁的記録提供命令を受けた者は、本人ですよね、要は。疑われている本人が、受けた者は、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある電磁的記録の提供を拒むことができる、そういう規定を設けるべきと考えておりますが、大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 今、様々なケースについていろいろとやり取りされていたことを拝聴いたしましたが、その上でも、やはりこの電磁的記録提供命令、これは既に存在している電磁的記録の提供を命ずるにとどまるものであって、パスワード等についてその供述を強要するものではないということであります。

 ということで考えれば、この電磁的記録提供命令によって電磁的記録を提供させることについて、今御指摘の憲法第三十八条一項の自己負罪拒否特権、これも保障しているこの条項との抵触が起きることは考えていませんので、そういった意味で、御指摘のような規定を設けることの必要性ということで、私どもとしてはその必要性はないのではないかと考えております。

 いずれにしても、先ほど来答弁で申し上げておりますけれども、現場の捜査活動は適正に行われなければいけない、これは当然のことでありまして、この法律案、改正法、これが成立した暁には、この電磁的記録提供命令について、その適正な運用が現場でされるように、そうした通達等々によって、こうした制度内容についての周知は当然行っていくということで御理解をいただければと思います。

米山委員 もう御答弁としてはそうなので、押し問答はしないんですが、でも、これはここにいらっしゃる皆さん全員がちょっと御認識いただきたいんですけれども、今までの押収とはやはり違うんです。今までは、携帯電話を押収されて、フォレンジックとかでそれは警察が一生懸命解読する、解読できなかったらそれはしようがないよねという話だったわけなんですけれども、これからは、今ほど答弁であったように、読める状態にして出せと言われるわけです。

 それは、大分違いますでしょう。ともかくあなたの携帯をあなたが読める状態に自分でして出しなさいという命令を、みんなされるわけです。結構それは被疑者とされる者にとって違うことだというのは、見てくださっている方もいると思うんですが、見てくださっている方もここにいる皆さんも是非御認識いただきたいと思います。

 そして、今度は次の例に行きますけれども、じゃ、今度はチャットグループで、先ほど、LINEのチャットグループでいろいろな相談をしていて、それが疑われるということで、そこに電磁的記録提供命令が出された、今度はLINEヤフー株式会社に出されたとしましょう。今までは携帯電話やPCの話だったんですけれども、今度は従前よく言われているようなプロバイダーにといいますか、LINEヤフー株式会社に電磁的記録提供命令が出された。この場合にも、先ほど藤原議員との答弁でありましたけれども、このLINEグループに入っている人には一切情報は提供されないということなんだと思います。知らない、分からない、いつの間にか提供されている。

 さらに例えば、これももう当たり前なので聞かないんですけれども、このチャットグループの、そのものはさすがに、そこで文書違反とはいえ違法な相談をしたんだから情報を提供されるのはしようがないとして、例えばそこにいるメンバーが、また別の小グループ、二、三人の小グループに更にほかの関係ない人も入っているようなグループをつくって、でも、そのグループも怪しいと疑われて、そのグループがやはり怪しいと疑われて電磁的記録提供命令を受けたら、全く今度は関係ない人も入っているその小グループの人も、これもまたやはり全く通知はされないということになるわけなんですよ。

 だから、結構これは、関連、関連で、全然自分の知らないところで、まるで関係ない電磁的記録がばあっと取られて、しかも私たちは知りませんと。これもここにいる全員があり得るわけです。いや、うちの事務所ではそんなことはしない、そうなんでしょうけれども、ほかの事務所の応援に行って、ほかの事務所のLINEチャットグループに入っていて、そこの事務所でおかしなことをした、先生はいきなり疑われていて、そちらのデータも全部抜かれていますということがここにいる全員に起こる。ほかの見てくださっている方も一緒ですよ。政治家を応援したい人は皆そういうことが、政治家以外でも起こり得るということなわけなんですよ。

 ということで、先ほども拒否されましたけれども、でも、あえて聞きたいと思うんですけれども、我々は、第百二十条に第四項を加えて、他人から委託を受けて電磁的記録を保管する者からその提供を受けたとき又はその記録された媒体を押収したときは、当該他人に対し、その旨を通知し、第一項又は第二項の目録を交付しなければならないという改正を求めている。これは要は、今ほど言った、チャットグループに入った人が自分から知らないところで提供されていたら、あなたのチャットは提供されましたよと通知してもらえるという規定を入れるべきだと。

 今までの運用はそんなことはしていない、ほかの押収物ではしていないとおっしゃられましたけれども、それはちょっと違っていて、やはりそれは物ですから、物というのはなくなれば気がつくわけです、押収されたら。友達のところに預けている物が押収されたら、いつかは気がつくでしょう、だって物がなくなるんだから。

 データは、さっき言ったみたいに、削除されたらそれは分かるかもしれませんけれども、LINEヤフーからいきなり送信されたものは、データはそのまま残っているわけなので、気がつきようがないんです。それはやはり違うものなので、ちゃんとそれを通知すべきだと思いますが、大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 今委員がおっしゃいました現行の刑事訴訟法において、捜査機関が差押え等によって被処分者以外の者に関する情報を取得した場合に、その者に通知をすることとはされていないということがございます。

 今回のこの件で申し上げると、そうした電磁的記録提供命令、これについてもやはり、ただ、これは令状に当然よるというところもありますし、そこはかなり限定的になる。そういったところの中で、その一方で、もしも捜査対象者等にそういった情報が伝わった場合の、そういった意味での捜査の密行性の確保への障害であったり、あるいは、罪証隠滅行為等やあるいは被疑者の逃亡等を招いて捜査の目的を達することができないといったこと、まさにそういったところの比較考量で考えたときに、そういった意味においては、こうした規定を設けるべきかということでいえば、それは相当ではないというのが私どもの考えでございます。

米山委員 先ほど来ずっと、裁判所が令状でやるからいい、いいと言いましたけれども、そんなことはないんですよ。何せ、やはり今までの物とかと違って、だってチャットグループの会話ががあって提供されるんですよ。そんな限定できっこない。相当範囲に、広いものがどっと行くんですよ、幾ら裁判所がやったって。逆に裁判所が、そんな細々と、それこそ、何月何日何時何分の記録だけを抜きなさいなんて言うわけがないわけだから。このグループの会話を一斉に全部出しなさいと言うに決まっているので、それは相当違うということは御指摘させていただきます。

 その上で、今度は異議と削除ということでお話ししようと思います。

 なかなか連絡は来ないとして、それにしたって、もしかして、LINEヤフー株式会社が、秘密保持命令も受けずに、しかも親切心で連絡してくれたりして、少人数のグループが、どうやら情報が、電磁的記録が提供されたと分かった、でも、俺たちは全く関係ない小グループだと。それは、元々の大本のところではそういう話をしたかもしれないけれども、そこから出てきた三人のグループは何の関係もないんだ、だからそれは不服だということで、これは先ほど答弁であって、そういう人も一応不服の申立ての権利はある、知りさえすればということで、その質問は飛ばしますけれども、じゃ、不服が認められたとき、認められました、ごもっとも、確かにこの命令はおかしかった、そのとおりですと言われたときに、提供された電磁的記録、これは削除されますか。

森本政府参考人 まず、不服申立てが認められた場合におきましては、捜査機関が提供を受けた電磁的記録につきましては……(米山委員「削除されるかどうかを端的に」と呼ぶ)

 まず、電磁的記録について、被処分者の方への返還には応じることとなると考えますけれども、それが、一律に削除するという取扱いは想定されていないところでございます。

米山委員 これもそうなんですよ。この返還というのも、さっき言ったみたいに、デリートしたものは返還してくれるけれども、要は、デリートしていない、ただ単に送信したようなものは削除されないんです。それは不服申立ての意味がないでしょう。取り消されているのに削除されていないって、何も取り消されていないじゃないかということになろうかと思います。

 さらに、小グループの会話で、不服申立てまではしません、しかし、このグループの会話で、犯罪ではないけれども、少々他人に知られたくない話をしてしまった、例えば、実は熱烈なアイドルオタクであるとか、実は、応援には行ったけれども、あの先生のことは大嫌いだったんだというような会話をしてしまった。だから、一定期間取り調べるのは、それは我慢するんだけれども、その記録は永遠に警察、検察に残っていて、しかも、場合によっては、私みたいな人が刑事確定記録を見て、何かの拍子に閲覧するなんということもあり得るので、それは到底耐えられないから、捜査が終わって事件が終わったら削除してほしいと思ったとき、削除してもらう方法というのはありますでしょうか。

 若しくは、その方法がある、ないとはまた別の問題として、取りあえず、取調べが終わって、しかも事件も終わって、関係ないなと分かった情報というのは削除されるんでしょうか。教えてください。

森本政府参考人 先ほど来答弁しておりますが、事件がどの段階に至っているかによって保管の形態は違いますけれども、終わった後も一定期間、確定記録法等によって保管されることになります。

 その時点で保管されているものについて、削除を求める規定ということは設けておりませんから、そのような請求はできないということになります。

米山委員 これも、ここにいるみんながやはり認識していただきたいんですけれども、削除は絶対されないんですよ、基本されない。だから、LINEチャットで何かの拍子にあの先生は嫌いだと書いたら、永遠にそれが残っているということが起こり得るわけですよ。しかも、それが、電磁的記録提供命令が不当だと取り消されたって削除されない。

 それは余りにもおかしいので、我々は、百二十条の二として、百二十条の二を加えて、第一項、電磁的記録提供命令が取り消されたときは、取り消されたときですよ、記録された電磁的記録についてはこれを消去し、移転させた電磁的記録については当該命令を受けた者に対しこれを移転し、かつ当該電磁的記録を複写した電磁的記録を消去しなければならない、第二項、電磁的記録媒体の押収が取り消されたときは、当該電磁的記録媒体を返却し、かつ当該電磁的記録媒体に記録された電磁的記録を複写した電磁的記録を消去しなければならないという改正を求めている。真っ当な改正だと思うんです、だって取り消されたんだから。

 是非、この改正をしていただきたいと思うんですが、大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 これまでのやり取りというところからも、そこは、私どものスタンス、恐らく想定をされていると思いますけれども。

 まず、電磁的記録提供命令、先ほど来申し上げておりますけれども、これは、裁判官が被疑事件との関連性を認めて令状に記載、記録されたものにまず限定をされる、そういった前提の中で、それなりの限定がされているという状況があると思われます。

 そうした中で、今回、この電磁的記録提供命令の創設によって、情報の収集、保管、これが現行制度下よりも格段に広範に行われるようになるものかというと、そうではない。まず、そういった認識としての前提が私どもとしてはございます。

 それと同時に、現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠を押収した場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされていない上に、これは直ちに裁判において証拠として利用することはできなくなることともされていないところであります。

 まさに、こうした我が国の刑事法の基本的な考え方、ここに照らしたときに、電磁的記録提供命令あるいは電磁的記録媒体の押収が取り消された場合であっても、それによって得られた電磁的記録、これは、証拠としての使用が直ちに否定をされるというものではないと考えております。

 そういった中で、例えば、国賠等々、いろいろ将来的な使用の可能性も当然あるわけでありますし、そういった意味において、こうした記録をきちんと残しておくということ、その意義というものは、私どもとしてはあると考えておりますので、そういった意味で、今御指摘されたような規定、それを設けるということが適切かといえば、私どもとしては、それは適切ではないのではないかと考えております。

米山委員 再三にわたって、今までと変わらない、今までと変わらないと言いましたけれども、違うんです。何せ、物というのは物理的限界があるので、そこまでそんなに広くは押収できないです。だけれども、情報で、しかも送信していいんだから、サーバーの側から、だあっと何ギガ、何テラで送信できるわけです。

 しかも、物というのは、物の中に、さすがに、あの先生は嫌いだとか、なかなか書かないわけですよ、人は。でも、いろいろな情報の中には、あの先生は嫌いだとか、実は私はアイドルオタクだとか、書いちゃうわけですよ。そういうものも全部ごっそり行くので、新たな、さすがにそういうのにきちんとした対処をする対処法が、今までとは違うのが要りますよというのはごく真っ当な意見だと思うので、是非御考慮いただきたいと思います。

 時間が迫っていますけれども、あと一問、ちょっと聞こうと思います。

 LINEヤフー株式会社の任意の情報の提供はあり得るとしても、先ほど来議論になっています秘密保持命令がかかっている場合は、それはできない。

 この秘密保持命令は、条文がやはりよく分からなくて、秘密保持命令は、必要がなくなったら、検察官自ら、それはいいんですけれども、やられた方から請求するということなんですけれども、検察官はできるとして、LINEヤフー株式会社は、一体全体どうやって、いや、もうこの秘密保持命令はいいですよね、もういいかげんこれを解除してくれませんかとどういうふうに言うのか、それを教えてください。

西村委員長 森本刑事局長、時間が迫ってきていますので、簡潔にお願いします。

森本政府参考人 まず、LINEヤフーからということは、事業者とすれば、まず、捜査機関に対して取り消してくれと言って、不服がある場合には裁判所に訴えるという形に……

米山委員 いや、捜査機関にどうやってやるんですか。捜査機関にどうやってやるかを聞いている。

 だって、いきなり、じゃ、ピンポンと検察庁のベルを押して言うわけじゃないでしょう。どういう手続をするんですか。

森本政府参考人 今後、もちろん制度が創設されてから事業者と協議していくことになりますけれども、基本的には、事業者とはやり取りしますので、窓口を設定して、そこに御連絡をいただいたら御連絡するという形かなというふうには思いますが、済みません。

米山委員 こんな漠然とした話なわけですよ。もっとその辺の制度もきちんと整えていただいて、しかも、期限もちゃんと切るような法改正を求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、柴田勝之さん。

柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之でございます。

 私にとっては本会議から通して三回目の質疑になりますが、ちょっと過去二回で十分理解できなかったところを、もっと突っ込んでお伺いしたいというふうに思っております。

 三月二十七日の本会議と四月一日の委員会で、大臣は、電磁的記録提供命令について、裁判官の発する令状によることと不服申立てをすることができることという二つの理由から、犯罪と関連性のない個人情報は収集されないと答弁されましたけれども、これが実務に即していないということについて、もう一度御質問したいと思います。

 まず、捜査機関が裁判所の令状があっても犯罪と関係ない情報を収集してしまう、そういう実情については、四月四日の参考人質疑で、指宿教授、池田教授、吉開教授が述べられていたところです。

 お配りした資料、ございますか。囲ってあるところですけれども、経験豊富な検察官である石山宏樹教授も、捜索、差押えの実務では、被疑事実の証明などに役立つ可能性があると判断される物件を差し押さえるんだけれども、結果的に被疑事実と無関係のものである可能性もあるとはっきり述べられています。

 そもそも、裁判官の令状による差押物件の絞り込みが今の実務上は極めて不十分であるというのが、日本弁護士連合会の坂口参考人の陳述にありまして、私も同様の認識を持っておりますが、そこはおくとしても、仮に裁判官の令状でできるだけ絞り込みがされたとしても、結果的に犯罪とは関係ない情報を収集してしまうことはあり得る、これは過去二回の質疑でこの点をどうしても答弁していただけなかったんですが、改めて法務省の御見解を伺います。

森本政府参考人 まず、令状で限定されるというところは繰り返し述べているところでございます。

 その上で、例えば、捜査機関のした押収について、不服申立ての結果、裁判所において、収集された証拠と被疑事件等との関連性が認められなかった場合など、収集された証拠と被疑事件等との関連性を否定する判断が事後的になされるということは、実務上あり得るものと考えております。

柴田委員 結果的に関係ないことがあり得るということはやっとお認めになったと思います。

 では、例えば、被疑者がクラウドサーバーに預けている電子データについて、犯罪に関連する可能性が高いと見込んで提供させたとしても、結果的には犯罪と関係なかったということもあり得ますし、しかも、それが被疑者や第三者のプライベートな個人情報を含んでいたこともあり得るわけです。

 その前提を押さえた上で質問を続けますが、もう一つ前提として確認しておきたいんですが、電磁的記録提供命令は、提供されたデータが第三者とのメールなどである場合は、憲法二十一条二項の通信の秘密を制約する、また、個人情報を含んでいれば、個人情報保護法の保護法益であるプライバシー権などを制約する、こういう認識で正しいかどうか、確認させてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、電磁的記録提供命令は、それにより提供される電磁的記録の内容によっては、憲法の保障する通信の秘密やプライバシー権を制約し得る性質の処分であるということは、そのとおりかと存じております。

 もっとも、本法律案におきましては、捜査機関による電磁的記録提供命令について、必ず裁判官の発する令状によることとしており……(柴田委員「もうそれはいいです」と呼ぶ)というようなことがございますので、この命令がプライバシー権等を不当に制約するものではないというふうにも考えております。

柴田委員 これは現行法による差押えも含めての話ですけれども、犯罪捜査のためとはいえ、国民の人権を制約するものである以上は、その制約は必要最小限のものでなければなりません。そのために、裁判官の令状による事前規制と、不服申立てによる事後規制が設けられている、そういう御説明なんですけれども、電磁的記録提供命令では、不服申立てによる事後規制も機能しない仕組みが設けられているわけです。

 四月一日の委員会で、サーバーの管理者に対する電磁的記録提供命令について、ユーザーも不服申立ての主体になり得るという御答弁がありました。

 通信傍受法においては、傍受された通信の当事者に不服申立ての機会を与えて処分の適正な実施を担保する趣旨で、当事者への通知が法律上なされるわけですけれども、電磁的記録提供命令ではそのような通知の制度がない上に、秘密保持命令が付されてしまうと、ユーザーは提供の事実を知り得ないということになりますが、その認識で正しいか、お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 秘密保持命令が発せられた場合には、電磁的記録提供命令により提供された電磁的記録に記録されている情報の主体は、事実上、電磁的記録提供命令による不服申立てがしにくくなる状況であるとは思われます。

柴田委員 しにくくなるというのは、いや、じゃ、どうすれば知れるんですか。お答えください。

森本政府参考人 基本的に、申立て権がありますので、どういう形か分かりませんけれども、それを知り得るということはあるということで、そういうふうに申し上げました。

柴田委員 では、御説明できないというふうに受け止めました。

 この点について、四月一日の委員会で大臣は、ユーザーに提供の事実を通知して不服申立ての機会を与える必要性はないと考えていると答弁されました。

 しかしながら、このようなケースでは、電磁的記録提供命令によって、通信の秘密とかプライバシー権、そういった人権を制約されているのは、サーバー管理者よりもむしろユーザーの方だと思います。そういう人が人権が不当に制約された場合に不服を申し立てるのは、ユーザーの法的保護に値する正当な権利です。

 ちょっと理屈っぽくなりますが、先日の法務大臣の御答弁は、ユーザーの不服申立てによる事後規制、その必要性自体は認めた上で、捜査の密行性などとの比較考量の結果、通知はしないということなのか、そもそも比較考量するまでもなく、ユーザーの不服申立ての機会を与える必要性なんか認めませんよ、そういう答弁なのか、大臣のお答えをお願いします。

鈴木国務大臣 まさにそこは、比較考量によるものと解していただいて結構だと思います。

 というのは、やはり、元々令状等によってかなり限定的にする、あるいは、秘密保持命令についても、かける必要がある場合ということ、当然そういうことになりますので、その上で、やはり、そうした場合というのがどういう場合かというと、当然、それは証拠隠滅であったりとか、様々な罪証隠滅行為、捜査の密行性、あるいは被疑者の逃亡等々の、そういったところのリスクがあるというところのまさに比較考量の結果として、私どもとしてはこう判断しております。

柴田委員 今おっしゃったとおり、ユーザーの不服申立ての機会を与える必要性自体はお認めになる以上は、少なくとも、それを上回るような捜査上の必要性などがなくなった段階で、ユーザーへの通知、これは行ってしかるべきだと私は考えます。

 ところが、四月一日の委員会の答弁では、通知をしない理由として、提供を受けた電磁的記録に関係する人を全て特定した上で、その所在を突き止め通知することは極めて困難であるという理由が挙げられておりました。

 しかしながら、例えば、被疑者である私のアカウントでサーバーに記録された電子データを提出させた場合、捜査の密行性という観点は別にして、私に通知すること自体は、要するに、私のアカウントと分かっているわけだから、私に通知すること自体は可能なんじゃないでしょうか。お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 これまで述べてきたのは、二つの側面で述べてまいりました。

 一つ目が、特定可能な人を、所在を突き止めるのはというのは、様々なデータがあって、その中にいろいろな利害関係者がいるよねという場合の理由として、それはなかなか困難であるというふうに申し上げました。

 それから、情報主体が単一である場合には、捜査対象者にその捜査の内容が広く知られることにより捜査の密行性を確保できなくなり、罪証隠滅や逃亡のおそれ等を招くおそれがあるから、そういうことで、捜査の目的を達成することが困難になるおそれがあるという点が、そのような通知を設けないこととしている趣旨として述べているところでございます。

柴田委員 今おっしゃった後段のことは質問していないんですけれども、要するに、通信傍受法でも、通信の当事者が特定できない場合やその所在が明らかでない場合は、通知しなくていいことになっています。通知が可能な場合だけ通知すればよいということになっています。これと同様にすればいいんじゃないですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 そこはまさに先ほど大臣おっしゃられた比較考量という点になると思うんですけれども、その人には通知できますというときに、電磁的記録提供命令という制度の下で、例えばそれが被疑者だった場合に、被疑者と分かっていて被疑者に通知するのがいいのか、それとも、それでは捜査の目的が達せられなくなるということを考えるのか、そういった点からの検討が必要になるというふうに考えております。

柴田委員 まあ、比較考量上可能になれば、やはり通知してしかるべきなんじゃないかという疑問は解消されませんが、いずれにせよ、これまでの質疑で、電磁的記録提供命令については、裁判所の令状による事前規制、そして、利害関係人の不服申立てによる事後規制のいずれも十分ではないということが明らかになったと思います。実は、これは現行の差押えでも同様でございます。

 これを踏まえると、本法律案に、電磁的記録提供命令又は電磁的記録媒体の押収に当たっては、できる限り犯罪事実と関連性のない個人情報を収集しないよう特に留意しなければならないという規定を置くことが適切と考えますけれども、このような規定を置くことに何か弊害はありますか。大臣の御見解を伺います。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、まず一つは令状でということで、一つは限定をかけるということは当然あろうと思いますし、その中で裁判官において関連性があると認めたもののみを記載、記録をするということになるということがあります。

 そういった中で、御指摘のような規定を重ねて設ける必要があるのかという点と、もう一つは、現行法上の規律に加えて具体的にどのようなことに努めるべきなのかというところがなかなか判然としないところがありますので、運用上の混乱というリスクがあるということ、あるいは個人情報以外の情報については被疑事実等と関連性のないものであっても収集することが許されるかというような反対解釈を招きかねないといったことから、そうした規定を重ねて設ける必要が果たして本当にあるのかというところでは、私どもとしては必要がないのではないかと考えているということでございます。

柴田委員 到底納得できないんですが、ちょっとそこは議論してもしようがないので、次の質問に行きます。

 次に、電磁的記録提供命令と自己負罪拒否特権の関係について伺います。

 本法案による改正後の刑訴法第百二十四条の二第一項は、正当な理由なく電磁的記録提供命令に違反した者に対する刑事罰を規定しておりますが、被疑者に対する電磁的記録提供命令において、提供を命じられた電子データが、自己が刑事訴追を受け又は有罪判決を受けるおそれのあるものであるということは、被疑者が提供を拒む正当な理由となり得ますでしょうか、お答えください。

森本政府参考人 どのような場合が改正後の刑訴法二百二十二条の二第一項の正当な理由がある場合に当たるかについては、個別の事案ごとに具体的な事実関係を踏まえて判断されるべき事柄ではあると考えます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、電磁的記録提供命令は、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を強要するものではないことから、自己に不利益な内容が含まれている電磁的記録の提供を命ずる場合を含め自己負罪特権に抵触するものではないというふうに考えますので、御指摘のような、電磁的記録を提供することにより自己の刑事責任を問われる可能性があること自体は、通常、命令違反についての正当な理由には当たらないものと考えております。

柴田委員 それで、現行法では、例えば、捜査機関が被疑者の家に差押えに来たそのときに、犯罪の証拠になる電子データが入っているようなUSBメモリーなどを被疑者が押さえられないように隠したり捨てたりしても、これは期待可能性がないということで証拠隠滅罪には問われないということになっているんです。

 また、被疑者のパソコンとつながっているクラウドデータを押さえたい、でもサーバーに接続するためのパスワードが分からないという場合、自己負罪拒否特権があるので、被疑者は捜査機関に聞かれてもパスワードを教えなくてもいいということになっているんです。

 ところが、先ほどの米山委員の質問への答弁のとおり、電磁的記録命令が導入されると、被疑者は、自分しか知らないパスワードを自分で入力してクラウドサーバーにアクセスして自分の犯罪の証拠となる電子データを捜査機関に提出しなければそれ自体が犯罪になってしまう、そういう制度になっているんです。これは期待可能性の観点から被疑者にはかなり酷なことだと思いますし、従来の差押えでいえば、パスワードを捜査機関に教えるのと同じ結果になるわけですから、自己負罪拒否特権との関係も本当は問題になり得るところだというふうに思っております。

 この点、四月四日の参考人質疑で樋口教授は、被疑者、被告人を名宛て人にする義務履行の罰則による強制の当否という問題、これ自体はあるということを指摘した上で、被疑者、被告人を名宛て人とする制度導入の必要性が高い場合には期待可能性の視点を後退させることも可能、そういうふうに陳述されました。

 この今回の制度の導入が樋口教授の言われるところの期待可能性の視点を後退させるほどの必要性が高いとお考えになっている理由、特に、既存の差押えなどで対応できない場合としてどのような場合を想定されてこの制度を導入されているのか、お答えください。

森本政府参考人 まず、被疑者、被告人につきましては、類型的に被疑事件、被告事件に関する電磁的記録を保管等している蓋然性が高いと考えられることから、電磁的記録提供命令を創設する趣旨に照らし、その対象者とすべき必要性が高いものと考えております。

 既存の制度で対応できない場合といたしましては、例えば、被疑者が捜査に必要な電磁的記録をクラウドサーバーに保存していることが判明しているが、サーバーコンピューターの管理者及び所在場所が不明であるため、サーバーコンピューター管理者等を名宛て人とした記録命令付差押えや、サーバーコンピューター自体の差押えをすることができず、かつ被疑者がその電磁的記録を記録媒体に記録させたりすることを拒んでいるため、記録命令付差押えによりこれらを入手することもできないような場合、そういったものが既存の制度で対応できない場合として考えられるところでございます。

柴田委員 では、法務省の方が最初に私に説明に来られた際には、電磁的記録提供命令というのは、今までは、電子データをわざわざ記録媒体に移して、そのものを差し押さえなければいけなかったのが、電子データのまま提供できるようになる、いわば便利になる、利便性を向上させるだけのものですというような御趣旨の御説明をされていたと私は記憶しています。

 ただ、実際には、単に利便性を向上させるだけではなくて、今までの差押えではできなかったこともできるようになっているということを特にここで指摘したいと思います。

 さらに、特に被疑者本人に対する電磁的記録提供命令については、期待可能性とか自己負罪拒否特権の観点から慎重な検討が必要であるというふうに思います。

 そのような観点から、本法律案の修正案として、電磁的記録提供命令を受ける者に対し、この命令は自己の意思に反して供述することを命じるものではない、いわば当然のことですが、これを念のため教示すべき旨の規定を置く必要があると考えますが、このような規定を置くことについての弊害はありますか。法務大臣に伺います。

鈴木国務大臣 まさにそのことでいいますと、これまでも答弁申し上げておりますけれども、パスワード等の供述、これも強制されるものではないという状況を私もこの場で答弁もしております。

 まさにそうした供述を求めるものではないということの中で、電磁的記録提供命令を受ける者に供述を求めることとなる場合、そもそもこれを想定していないということから、御指摘のような規定を設けるということについては、法制度の在り方として果たして合理的なのかという疑義は私どもとしては残ると思っております。

柴田委員 ちょっと弊害の御説明はなかったように思いますけれども。

 では、次に、電磁的記録提供命令に伴う秘密保持命令について伺っていきます。

 この新設の必要性はさっき藤原委員の御質問にお答えになりましたので、これはお答えいただかなくて結構です。

 秘密保持命令の要件である、必要があるときの意義、具体例をお答えください。そして、念のための確認ですけれども、秘密保持命令を出してもらうに当たっては、その必要があるという事情を裁判所に具体的に疎明するという理解でよろしいでしょうか。お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 二百十八条三項に言います必要があるときとは、捜査の目的を達するために電磁的記録提供命令を受けたこと等の漏えいを防止する必要がある場合等をいいます。

 どのような場合に必要があるときに当たるかにつきましては、個別の事案ごとに具体的な事実関係、証拠関係を踏まえて判断されるべき事柄でございますが、例えば、通信事業者等が顧客の通信に関する情報を第三者に提供したときに、当該顧客にそのことを通知すべき契約上の義務を負っており、その義務の履行として、捜査機関から電磁的記録提供命令を受けたこと及び提供を命じられた電磁的記録を提供したことを顧客に通知することにより罪証隠滅等が行われるおそれが多い場合などがこれに当たるというふうに考えております。

 それで、あと、疎明の点につきましては、裁判所の許可を受けるに当たって、捜査機関においてその必要性を疎明することとなると考えます。

柴田委員 秘密保持命令は、必要がなくなったときには取り消されることとされていますが、必要がなくなったときというのは、例えば今の例でいえばどういうときをいうのか、また、秘密保持命令の取消しについての運用指針など、策定される御予定があるのか、お答えください。

森本政府参考人 どのような場合がその必要がなくなったときに当たるかにつきましても、その個別の事案ごとに検討されるべき事柄ではございますけれども、捜査、公判等が進展し、電磁的記録提供命令を受けたことを被処分者以外に知らせても罪証隠滅行為等が行われるおそれがなくなったときなどにはそれに当たり得るものと考えております。

 また、その上で、じゃ、この秘密保持命令の適正な運用を確保するために、本法律が施行された場合には、捜査機関に対してその制度内容の十分な周知を行うことについては、今後検討していきたいというふうに考えております。

柴田委員 先ほど申し上げたとおり、電磁的記録提供命令は、通信の秘密やプライバシー権などを制約し得るものです。秘密保持命令は、その制約が不当であった場合にも、これを是正するための不服申立て権を制約しています。したがって、利害関係人に不服申立ての機会を保障する必要性と捜査の密行性、この二つを比較考量して、後者が前者を上回る場合に初めて認められるべきものであって、捜査の進展などによって後者が前者を下回るに至ったとき、つまり、秘密保持命令を得る際に疎明した必要性がなくなったとか乏しくなったときには速やかに取り消さなければならないと考えますが、そういう理解でよろしいでしょうか。

森本政府参考人 先生御指摘の二つを比較考量するかどうかというよりは、むしろ、秘密保持命令をかけていることについて、その必要性がなくなったときには取り消すべきものと考えております。

柴田委員 ちょっとよく分かりませんが、次に行きますけれども、捜査の第一線で実務に当たられている方が、秘密保持命令の必要がなくなったときに速やかに取り消すという運用を徹底することは、実際はやはりお忙しいのでなかなか難しいと思うんですね。その趣旨で、勾留による身体拘束などと一緒で、一定の期間をまず定めておいて、なお必要な場合には期間延長ができるという規定を設けることが適切と考えますが、そのような規定を設けることに弊害はありますか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 電磁的記録提供命令は捜査の初期段階で利用され得るものでございまして、秘密保持命令を含めまして、将来の捜査の進捗を見通して適切な期間を定めるということ自体が困難な場合も少なくないものと考えております。そのような点があろうかと思っております。

柴田委員 いや、だから、必要だったら延ばせるようにするんですよ。何か問題がありますか。

森本政府参考人 どの程度の期間とするのかということによりまして、法定の期間が短ければ、多くの場合に延長を繰り返すことになる一方、最初の期間が長ければ、被処分者の行動に必要以上に制約することにもなりかねないというような問題があろうかというふうに考えております。

柴田委員 長過ぎる場合は必要がなくなったといって取り消せるようにそれは別途設けておけばいいのであって、私が申し上げているのは、いたずらに長引かないように期限を設ける、それには弊害はないんじゃないでしょうか。もう一回伺います。

森本政府参考人 先ほども申し上げましたが、捜査というのは、まあ、短いときには一か月ぐらいで終わるものもありますけれども、長いものは一年、二年かかる捜査もございます。そのようなことを考えますと、初期段階で行われるものについてどの程度の期間を定めるのかという点については、難しい問題もあろうかと考えております。

柴田委員 もう聞いても仕方ないと思いますので、次の質問に移ります。

 次に、身体拘束中の被疑者、被告人による電子データの受領、閲覧について伺います。

 本会議で答弁された、身体拘束中の被疑者、被告人による電子データの受領、閲覧を認められない三つの理由のうち、一つ目の自傷他害のおそれについては、それを解消するための措置を検討する余地があるという御答弁を前回、委員会でいただいたと思っております。

 二つ目の不正な通信等の防止については、弁護人等以外の者との通信が行われないことの確保などが必要であるので難しいという答弁でしたけれども、外部との通信まで被告人の持っている電子機器で行わせる必要はなくて、電子データの受領は施設の電子機器で行った上で、被告人には通信機能を持たない電子機器で閲覧させることにすれば不正な通信は防止できると考えますが、いかがでしょうか。伺います。

小山政府参考人 電子データを閲覧するためには、通信機器のない電子機器を用いたといたしましても、刑事施設といたしましては、従前の書面等の媒体の場合に準じまして、当該電子データが真に弁護人等から送信されたものであることを確認するための所要の検査というものは必要であると考えてございます。

 この検査の過程で、弁護人等以外の者からの通信文書が電子データに混入されていることが判明し、当該電子データの閲覧を被告人等に認めるとすると、罪証隠滅の結果が生じるおそれや刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じるおそれ等が生じる場合には、所要の措置を取る必要があると考えられますことから、閲覧する電子機器に通信機能を持たせないことのみをもって不正通信等の防止が可能であるとまでは判断できないものと考えてございます。

柴田委員 時間がないので次の質問に行きますが、四月四日の参考人質疑でも、オンライン接見を推進する必要性については、五名の参考人、どなたも異論はありませんでした。また、電子データの受領、閲覧についても、元検察官の吉開教授は、勾留されている被告人が電磁的記録にデジタルでアクセスする必要性は否定できないと述べられておりました。

 これらを実現するためにいろいろな問題があることは理解しますが、だからやりませんというのと、実現に向けていろいろ頑張っていきましょうというのは、かなり方向性が違ってくると思うんですけれども、この方向性を確認する趣旨で、本法案に、オンライン接見や電子データの受領、閲覧を実施するために必要な取組を推進するという附則規定を定めることが適切と考えますが、これによる弊害はありますか。大臣の御見解を最後に伺います。

西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 オンライン接見については、その取組の加速ということ、運用上しっかりやっていくということは申し上げました。

 また、電子データの受領、閲覧についてということでいえば、今、答弁にもありましたけれども、様々な課題があって、実務上の措置として取組を推進することが困難だということもございます。

 そうした中で、まさに政府の取組の方針と整合するかどうかとか、そういった具体的なやはり検討を要すると考えておりますし、それはオンライン接見の方ですね、同時に、そうした整合が図れるのかという観点での検討が必要で。

 そして、電子データの受領、閲覧については、やはり実務上の措置として困難ということで、なかなかそうした規定を設けるということについては弊害も大きいと我々としては考えているところでございます。

柴田委員 残念な御答弁でしたが、終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、藤田文武さん。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 ちょっと声が余り出にくいんですが、失礼をいたします。

 今日は、刑事デジタル法の質疑に、私も三回目、出させていただきまして、先日、参考人の先生方にも来ていただきまして、様々な論点の陳述、御開陳がございました。そこも含めて、再度確認をすべきところをしたいというふうに思います。

 まず、電磁的記録文書等の偽造等の罪が新設されるわけでありますが、これは、経緯を考えてみると、きっかけは、デジタル化に伴う、令状データがデジタル化されることによって、それを偽造する、そういうことが想定され得るということで、これを抑制しようということなんですが、そこから更に広がって、SNS上の乗っ取り又は誤信させるに足るようなデータを作るということについても罪に問うということなんですけれども。

 そうすると、解釈的にはかなり広い概念になっていくということでありますから、当然、SNS上での表現行為が過度に又は広範に処罰されて、表現の自由が不当に制約されることにならないかという、このバランス論はやはり指摘がありましたが、ここについて再度見解を聞きたいと思います。

森本政府参考人 本法律案におきましては、電磁的記録文書等偽造罪につきまして、電磁的記録文書等の定義を規定するとともに、現行の文書偽造罪と同様の規定ぶりとしていることから、構成要件は明確であるというふうにまず考えているところでございます。

 したがって、電磁的記録文書等偽造罪の創設により、SNS上等での表現行為が広範に処罰され、表現の自由が不当に制約されることにはならないと考えておりますが、法務省といたしましては、本法律案が改正法として成立した場合には、同罪が適正に運用されるよう、その趣旨、内容について適切に捜査機関等関係機関に周知してまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 次に、電磁的記録提供命令について問いたいと思います。

 先ほど来も他の委員からもありましたし、参考人の先生方からも御指摘、御意見が多くあった点が、やはり、被疑事件等との関連性のないデータ、個人情報を含むものが幅広く収集されることについての指摘は、もう少し詰めないといけないかなというところはあるんですが、議論をいろいろ聞いていても、実務的に、ピンポイントで直接関連性のあるものだけを押収するというのは非常に難しいというのは、これは理解できるところでありますので。つまり、妥当な押収の範囲を事前に規定し、それをピンポイントで当て切るということは技術的に難しいので、ある種、事後的に抑制する手段というのが妥当である、つまり、事後的な抑制機能を強化するということが必要じゃないかという指摘が参考人の方からもございました。

 私は、これは一定の合理性があるなというふうに思うわけでありますが、これについての見解を聞きたいと思います。

森本政府参考人 まず、事前のところにつきましても、これも繰り返し御答弁申し上げているところでございますが、現行の記録命令付差押えと類似の仕組みでございまして、そこでは事前の判断が可能であるということで制度が運用されており、電磁的記録提供命令につきましても、その令状には提供されるべき電磁的記録を記載、記録しなければならないこととされており、また、提供されるべき電磁的記録については、被処分者において何を提供すればよいのか判断できる程度に特定されている必要があるところ、これらは先ほど申しました現行の記録命令付差押えと同様であって、電磁的記録提供命令についても、提供させる電磁的記録の範囲を事前に限定することは可能であると考えています。

 その上で、本法律案におきましては、電磁的記録提供命令に対して不服申立てができることとされており、また、電磁的記録提供命令により収集された証拠についても、いわゆる違法収集証拠排除法則が適用されるところでございます。令状主義を没却するような重大な違法があれば、それは証拠としては許容することが相当でないと認められて、証拠能力が否定されることになります。このような事後の規律も、電磁的記録提供命令の適正な実施に資するものと法務省としては考えております。

藤田委員 事前も、それから事後も、今回の御提案、法律の趣旨で問題がないという、そういう趣旨の御答弁かと思うんですけれども、さっき他の委員からもあったみたいに、やはり証拠物の押収と電磁的記録の送信による押収というものの規模感というのが違うということは、運用上気をつけないといけない最重要なポイントであることは私も納得感があるなと思って、米山議員でしたか、物という言い方をされていましたけれども、それは私もそう思うわけであります。ですから、比較考量で、そのバランスをどこに置くかという議論なんだろうというふうに思いますが、私も、もう少し事後的な抑制手段というものを強化するというところは必要なんじゃないかというふうには思います。

 その上で、正当な理由なく命令に違反、特に電磁的記録提供命令に違反するときには拘禁刑又は罰金刑に処するということが新設されるわけでありますけれども、この正当な理由というものを具体的に例示、想定されるものがあれば、していただけたらと思います。

森本政府参考人 本法律案による改正後の刑事訴訟法二百二十二条の二第一項の「正当な理由がなく、」とは違法にという意味でございまして、正当な理由には、法律上明文の規定によって電磁的記録提供命令の拒絶権が認められている場合のほか、実質的に違法性を欠くと認められる場合も含まれるものと考えます。

 どのような場合がそれに当たるかにつきましては、個別の事案に即して判断されるべき事柄でございますけれども、例えば、被処分者が電磁的記録提供命令により電磁的記録の提供を命じられた後に、提供すべき電磁的記録が記録されていたサーバーが災害等によって損傷して当該電磁的記録が消失し、これを提供することができなかった場合などは正当な理由に当たり得るものと考えております。

藤田委員 もし想定されるものがあるんだったら、もう少し御紹介いただきたいんですけれども、要するに、何でかというと、サーバーが災害で壊れてしまったからアクセスできないというのは確かに自分の責任の範疇を超えているんですが、それは物すごくレアケースだと思うんですよね。ですから、ほとんどの場合、こういう正当な理由というものについては余り該当し得ないんじゃないかと類推されるわけなんですけれども、もしほかに想定されるような事項があれば教えてください。

森本政府参考人 なかなか、当該案件ごとにこんな事情があったということで判断していくことになりますので、こういう例、こういう例というのは言いにくいところでございますが、その方の責めに帰すべき事由がない場合が正当な理由に該当すると一般論としては考えます。

藤田委員 分かりました。なかなかちょっと具体的な答弁は難しいかと思いますので、次に移りたいと思います。

 命令の対象者に事業者等の第三者に加えて被疑者、被告人も含めているということについては、他の委員からもいろいろ、様々な切り口から指摘がありましたが、ここについて、もう一度見解を確認したいと思います。

森本政府参考人 電磁的記録提供命令の場合には、先ほども申し上げましたが、罪証隠滅のおそれがある場合等々で、被疑者、被告人に対して電磁的記録の提供を命令すべきと考えられる事案もあることから、今回の命令には入っているということでございます。

藤田委員 分かりました。

 では、次に、違反への罰則の軽重の話が参考人の先生方からも御指摘がありました。

 電磁的記録提供命令及び秘密保持について、拘禁刑、罰金刑が規定されるわけでありますけれども、単純に、特に秘密保持について、それをたがった場合の罰則が重た過ぎるんじゃないかという御指摘がありましたが、ここについて御見解を聞きたいと思います。

森本政府参考人 まず、法定刑につきましては、一年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金というふうになっております。

 これにつきましては、刑事事件に関する証拠の顕出を妨害する行為という点で類似する、証人の出頭拒否の罪や証言拒絶の罪の法定刑との均衡でありますとか、それから、相当程度の規模の事業者も対象となり得る点の電磁的記録提供命令についての実効を確保する観点なども考えまして、罰金の方はですね、考慮したものでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 もう質問はこれで終わりなんですけれども、これは企業とかに提供命令を出して、企業が担当を決めて、それを提出したり送信しますよね。そうすると、企業のガバナンスの中で行われるので、それをどこまで企業側が被雇用者側に強制、徹底できるかというのは、結構難易度の高い部分もあるなというのがあって、この罰金、罰則についての軽重については慎重であるべきだというふうには個人的には思いますが、答弁は求めません。

 刑事デジタル法については今日はここまでにさせていただいて、ちょっと毎度取り上げているんですけれども、外国人労働者問題について少しやりたい、先週に引き続いてやりたいと思います。

 まず、在留の外国人が年々増えていますよ、そこについて、マクロでの管理をやはり予測も含めてすべきじゃないかという問題提起を何度もさせていただいております。先週も申し上げましたが、昨年末時点で三百七十六万八千九百七十七名ということで、三十万人強、前年度から増えている、その前も三十万人ぐらい増えている、こういうような状況があります。

 これは前回もお聞きしたんですが、二〇二五年末の在留外国人の予測というのは、理論上、私はできるというふうに思うんですが、これはもう一度、できるのかできないのかということ、また、予測があるのかということを聞きたいのと、せめて、その数値が予測できないのであれば、増えるのか減るのか、増え幅はどうなるのかということぐらいは想定できるかと思うんですけれども、そこについてお聞きしたいと思います。

杉山政府参考人 入管庁におきましては、在留外国人数につき、年末時点及び六月末時点のものを毎年統計上把握し、それぞれ公表しているところでございます。

 御指摘いただきました在留外国人数についての将来の予測というものは行っていないわけでありますが、これまでの傾向を見ますと、令和三年末時点の数値を底に、増加に転じております。コロナ禍前である令和元年末を超えて、引き続き増加傾向にある、特に令和四年以降は、三年連続で年間三十万人以上の増加となっているという状況でございます。

藤田委員 質問の趣旨は、要するに、予測する機能又は権限は付与されていないという話だと思うんですよね。ただ、予測しませんかね、普通。

 要するに、増え幅がどれぐらい増減するのかということは、出入国在留管理という面においてはもしかしたら範疇外なのかもしれませんが、人口政策的には非常に重要な論点でありますから、では、国家のどこにそれを予測する機能があるのかというと、ないわけなんですよね。

 だから、答弁で、例えば、今年は三十五万人ぐらい又は四十万人ぐらい、もうちょっと上振れして五十万人ぐらい増えるかもしれませんという答弁は難しいのは分かっているんです。分かっていますが、お願いとして、やはり予測してほしいし、その機能を持ってほしいというふうに思いますが、もし見解があったら。

杉山政府参考人 御指摘いただきましたとおり、予測は行っていないわけでございます。

 予測の重要性ということは、今後、外国人が増えていく中で重要な論点だろうというふうに思っております。

 他方で、例えば、観光目的で入ってくる外国人数には、二〇三〇年に六千万人を目標とするというような政府の別の数値もございますところで、どういった形で入管庁として数字を予測する必要があるのか、することができるのか、そういったことは考えていかなければならないと考えております。

藤田委員 大臣とは割と問題意識を共有している、質問しませんが、この重大さというのは、誤差の範囲だったらいいと思うんですが、かなり、この数年、十数年後に絵姿が変わってくるということなので、私の願いとしては、予測機能を公式にやはり持ってほしい。せめて、そこで数値を答弁できないのであったとしても、役所の機能としてそれをやってほしいということを申し上げたいと思います。

 それから、前回は移民という言葉がどうかというところをもう一度ちょっとおさらいさせていただいたんですが、移民と言わずとも、外国人労働者における政策の重要性、マネジメントは非常に重要であるという趣旨の御答弁を大臣からもいただいたので、ちょっともう言葉の定義等についてはいいんですが、諸外国における移民政策については、この出入国を管理するという政策と、社会にどう統合していくか、つまり社会統合政策という二つの側面がまずあります。その社会統合政策には、世界的に見ると分類ができて、大きく二つ。

 一つは、多文化主義的な政策。つまり、異文化を尊重して対等に受け入れていくというニュアンスの政策ですね。それから、もう一つは、同化主義的政策。居住国の価値観や行動様式を徹底的に学んでいただいて、そしてそれを最大限尊重する、つまり、同化していただく、そういう同化主義的政策がある。この後者の方はフランスが代表的なもので、前者の多文化主義的な政策はイギリスやカナダ、オーストラリアというのが代表的な事例として挙げられるわけであります。

 私は、これは研究すべきだというふうにまず思っていて、まず現状で、日本の社会統合政策における方針というのはどちらのに近いのか、又は日本のスタンスというのはどうなのかというのを確認したいと思います。

杉山政府参考人 外国人との共生の在り方につきましては、世界各国様々でありまして、日本の現実に合ったものを考えていく必要があると考えております。

 政府といたしましては、日本人と外国人とが互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現するために、令和四年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおいて、目指すべき外国人との共生社会のビジョンとして、安全、安心な社会、多様性に富んだ活力ある社会、個人の尊厳と人権を尊重した社会の三つを掲げ、地方公共団体等とも連携し、政府一丸となって受入れ環境整備のための各種施策を進めているところでございます。

 受入れ環境整備に当たりましては、受け入れる側の日本人が共生社会の実現について理解し、協力するよう努めていくだけではなく、受け入れられる側の外国人もまた共生の理念を理解し、日本の風土、文化や日本語を理解するよう努めていただくことが重要であると考えているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 聞いている感じでいうと、ハイブリッド的なバランス型なのかなというふうに思うんですが。

 一つ重要な、私はなぜ諸外国のこの動向を研究すべきかというと、多文化主義的政策によった幾つかの国はかなり苦しんでいるというのがあります。例えば、二〇一一年の、キャメロン首相がこんなことをおっしゃられたんですよね。英国の多文化主義は失敗した、様々な文化がお互いに干渉せず、主流の文化から距離を置いて存在することを推奨した結果、隔離されたコミュニティーが我々の価値観と正反対の行動を取ることすら許容してしまったという危機感を表明されたこともありました。

 ですから、このバランスというのは方針的に非常に重要で、そこについては、恐らくバランス型なんだろうというふうに思いますが、ここは、先行事例として、外国人のボリュームが増えていった諸外国の事例というのは研究対象としてしっかりとベンチマークしていただきたいというのがありますし、私も提案をさせていただきたいと思います。

 それから、家族の話は非常に重要な話でありまして、今の現状の家族の呼び寄せ、また、家族の帯同についての制度をおさらいだけしていただきたいと思いますが、特に育成就労、今後なりますね。今は技能実習、そして特定技能における家族帯同について、現行制度の説明をまずしていただいた上で、拡大していく方針というのがあるのかどうかを聞きたいと思います。

杉山政府参考人 現状、特定技能二号に至りました場合には、その在留資格を持って在留する者には配偶者及び子の帯同を認めておりますが、技能実習及び特定技能一号の在留資格を持って在留する者の家族帯同は原則として認めていないところでございます。

 育成就労においても、これまでの技能実習制度における取扱いを踏まえつつ、家族帯同は原則として認めないこととしておりまして、今申し上げましたのが現行の制度でございますし、まずは、これをしっかりと推進していくということが責務だと考えております。

藤田委員 今後出てくる声としては、やはり、家族の帯同について希望する声というのはあると思うんですよね。

 それで、育成就労は、趣旨が技能実習から変わって、明らかに中長期的な滞在を目指せる、そして特定技能に連結しやすくする制度変更でありますから、そういう意味で、趣旨としても選ばれる国になるということでありますから、結構希望があると思うんですよね。

 私は、そこについてはやはり抑制的に考えるべきだというふうに思っていて、これはマクロの視点ですけれども、マクロでボリュームが増えていった諸外国の幾つかの国が、先週も言及しましたが、入口を閉ざすという形、新規の受入れをしないということであったとしても、家族帯同、家族呼び寄せを開いていると、新規の受入れをしなくても移民の数が自然増し続けるという現象が起こるんですよね。ですから、ここについては、非常に慎重に私は今後もやっていく方針を堅持していただきたいというふうに思います。

 それから、マクロの話とミクロの個別事例の話は余り混同すべきではないという前提で、少し個別事例について、ちょっと順番を変えて、最後のところを先に、最後の二問を先にやりたいと思います。

 先週も取り上げて、ちょっと時間切れで一問しか聞けなかった話で、在留資格のない若い小中学生の学齢期における外国人が地元の公立学校に通いたいといった場合、最近では川口市の事例が、非常に急激に人数が、クルド人始めトルコ籍等が増えているということもあって、事例として取り上げられることが多いんですが、観光ビザで来て、難民申請があって、そして仮放免になり、市中で生活し、そして学校に、行政側からするといきなり来られて、通わせてほしいという、こういう事例があって。

 現場の先生も、そういうことがあるというのを知らない人もまた地域ではほとんどという状況の中で、これは基本的には、子供の権利を考えた上で、条約に基づいて受け入れるということだということは前回答弁をいただきましたが、これは学校や教育委員会は受け入れることを拒否するということが可能なのかどうか。そして、できるとしたらどのような理由によるものなのか、お聞かせいただけたらと思います。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、我が国では、国際人権規約や児童の権利に関する条約を踏まえまして、在留資格のない外国人の子供であっても、居住の実態がありまして、その保護者が希望する場合には、義務教育諸学校への就学の機会が確保されるよう、自治体にも通知を行ってきているところでございます。

 一方で、外国人の子供の居住地等の通学区域内の義務教育諸学校におきまして受入れ体制が整備されていない場合には、地域の実情に応じ、受入れ体制が整備されている義務教育諸学校への通学を認めるなど、そういった柔軟な対応も行っているところでございます。

 文部科学省としては、引き続き、外国人の子供たちの就学機会の確保に向けて、こういったことについて周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

藤田委員 丁寧に御説明いただきましたが、すごく端的に一応確認すると、拒否はできない、受け入れなければならない。そこのピンポイントの学校が、いろいろな制約があったり、受入れキャパシティーを超えていたり、能力が非常に難しいとなった場合、近隣の学校に協力してもらって、そっちに移行するということはあり得るが、基本的には受け入れなければならない、拒否権はないという理解でよろしいですか。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、条約等の関係もございますので、受入れということはお願いをしてまいりますけれども、先ほどのように、受入れ体制が整っていない場合には、そうした柔軟な対応ということが、それも行っていただくということで求めてございますので、そういったことを踏まえて、自治体さんの方でいろいろと御判断、適切に対応いただいていると承知してございます。

藤田委員 非常に難しい事案ですよね、学校側からすると。

 特に、例えば小さな市町村だと、その市町村内でうまくパスし合えないという事例もあるかもしれません。ですから、市町村任せ、基礎自治体任せでいいのかという疑問はやはり残るんですよね。

 その中で、文科省に聞きましょうか、文科省に、全国のどこで何人、在留資格のない外国人が通学しているかということは、自治体がそれをオペレーションしているわけですけれども、文科省自体は一元的に把握しているのか、聞かせてください。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、国際人権規約等を踏まえまして、在留資格の有無にかかわらず、外国人の子供に対する教育の機会の確保というのを進めていくということで努力してございます。

 したがいまして、その実態の調査でございますけれども、在留資格の有無ということではなくて、日本語指導が必要な児童生徒数の受入れ状況、これにつきましては隔年調査を行っておりまして、令和五年五月一日の時点で、公立の小中学校段階におきます日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数、これが五万二千五百人ということで承知してございます。

 以上でございます。

藤田委員 同じ質問を出入国管理庁に聞きたいと思います。

杉山政府参考人 入管庁は在留資格の有無という観点から把握しているものでございますので、在留資格のない外国人の通学状況につきましては、網羅的に把握しているわけではございませんので、お答えすることは困難でございます。

藤田委員 まとめると、文科省は毎年調査をして、在留資格のあるなしではなくて、日本語のサポートが必要であるという切り口において一応把握はしている。それから、出入国管理庁の方はしていないということなんですよね。

 私は、切り口をこの在留資格というところでやはりリアルタイムに把握すべきなんじゃないかなと思っていて、なぜならば、いわゆるすごくレアケースのイレギュラーだったらまだいいんですけれども、結構数が増えてきていて、それは個別事案として、個別事案というか、その問題に対応するやはり手段、手だてというのを考えていかないといけないステージに差しかかっているんじゃないかなという問題意識がまずあります。

 日本語ができる、できないという切り口と、在留資格がある、まあ、在留資格がない方がいきなり来られた場合、日本語ができない場合が非常に多いんですが、ちょっと切り口が違って、要するに、ちゃんと在留資格があって、親もちゃんと働いていて、いわゆる正規のルートで安定的に日本にいらっしゃる方の子弟が日本語がしゃべれないという状況と、非常に家庭が不安定で、そういう状況で通学の局面に差しかかっている人というのは、もうサポートの重たさというのが全然違うし。

 学校現場に私もちょっといたんですけれども、学校現場においては、やはり家庭環境というものは、学校外のものではあるけれども、かなり影響するし、親との連絡というのも、非常にそもそも論として教員の皆さんの負担にもなっているということでありますから、こういうこの状況を、自治体に運用を任せる、学校に運用を丸振りする、ちょっと言い方は悪いですけれども、そういう形で今後対応し続けるということで果たしていいのかなという疑問はやはりあると思うんですよね。

 これについて、見解を聞きたいと思います。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、そのお答えの前に、文科省の調査は隔年で行ってございます。

 それから、御質問のありました、現場への支援の関係でございますけれども、文科省としては、就学機会の確保について通知を行うということだけではなくて、外国人児童生徒等の学校への受入れに関しまして、例えば、日本語指導のための特別な教育課程というものを制度化していくとか、あと、日本語指導に必要な教員定数の着実な改善を図っていくだとか、それから、日本語指導補助者あるいは母語支援員の配置など、外国人児童生徒等への支援に取り組む自治体さんに対する支援、これをしっかり行ってまいりました。

 引き続き、日本語指導が必要な外国人児童生徒等に対する支援について、文部科学省といたしましても、できる限り取り組んでまいりたいと思います。

藤田委員 在留資格がある、つまり住民票があるという方は、来年こういう人が何年生にいるだろうということを事前に準備する期間、余力というのも自治体側や学校側にあって、その場合は、例えば、そういう制度を入れるとか、そういうクラスをつくるとか、そういう先生を加配するとかという、いわゆるちょっとした余力があるんですよね。

 ただ、この問題を、いわゆるさっきおっしゃっていただいたのは、外国人の方に、例えば日本語教育をサポートするとか、そういう制度をつくる、そういう者を加配するとかということの一般的な制度の中で吸収してくれという話だったと思うんですけれども、それでいいんかなというのもやはりあって、それで賄えるのであればいいんだけれども、そもそも、文科省そして入管庁が連携してやる話なんじゃないかなというのが私の問題意識であります。

 関連して、その在留資格のない仮放免中の外国人、市中で生活されているわけでありますけれども、居住の基礎自治体への情報共有の実態について聞きたいと思います。

 それぞれ、国は出入国や在留を管理し、例えば何か問題があれば、県は、警察がありますから治安を管轄するわけであります。市は、防犯とか、又は住民サービス、それから多文化共生の取組とか、そういうより身近なところを、教育もそうですけれども、そういうところを所管するわけでありますが、それぞれ、いわゆる部門横断的な連携というのが必要だろうというのが問題意識なんですね。

 その上で、基本的には、住民票がないから、どこに何人ぐらいそういう方がいるかということを基礎自治体は知りません。でも、何か問題が起こったときに対応しないといけないのは基礎自治体である、こういうことなんですけれども、情報共有というのはどこまで行われているのかというのを聞きたいと思います。

杉山政府参考人 前提といたしまして、在留資格を有する中長期在留者につきましては、先生御指摘いただいたとおり、住民登録ができ、それに基づく行政サービスを当然に受けられるという前提がございます。その上で、在留資格がない、仮放免された者については、この者については、適切に行政サービスを受けられるようにするという観点から、本人が希望する場合には、その者の情報を居住する市町村に通知しているところでございます。

 また、本人からの希望の有無にかかわらず、仮放免にされた者に関する情報につきまして市町村から照会等があった場合には、個別に法令に照らして相当性を判断の上、適切に回答を行っているところでございまして、一例ではございますが、照会があった市町村に対し、当該市町村に居住する仮放免された者全員の情報を回答した例もあるところでございます。

 なお、これらの取扱いにつきましては、本年三月に改めて市町村に対して周知したところでありまして、引き続き、仮放免された者に係ります情報の市町村への通知については、適切に対応してまいりたいと考えております。

藤田委員 分かりました。

 だから、柔軟に対応されていっているというのは、昨日もちょっとレクでいろいろディスカッションしたんですが、いいことだと思うんですね。ただ、基本的には、住民サービスを受ける、その中で本人が希望するというときに渡されることであるとか、何か起こったときに、又は何か特別な事情でここまでを開示してほしいという申出があった場合にするということなんだと思うんですけれども、何かさっきの議論と似ているんですけれども、私は、何かやはり、それはオーダーがあってお伝えするんじゃなくて、連携できるように積極的にすべきなんじゃないかなと思うんですね。

 というのは、もうこれはずっと同じことなんですけれども、何か起こったときにやるというのと、予測できて対応するというものの負担というのは全く違う次元であって、なので、そういうことが先手で自治体ができるという情報共有の在り方、私は、はっきり申し上げると、そういう全件、自治体に共有を国側からしてあげるべきだと思っている方なんですけれども、そういう情報共有の実態というのは、機動的に是非やっていただくように検討していただきたいというのが一つございます。

 それから、ちょっと順番、ごめんなさい、前後してあれなんですが、仮放免の話が出たので、仮放免の申請のときに、運用上、身元保証人というのをつけますね。その身元保証人を引き受けた方というものの位置づけというのはどうなっているかということと、それから、その役割とか責務みたいなものがあれば教えていただけたらと思います。

杉山政府参考人 仮放免についての身元保証人につきましては、仮放免された者について、仮放免中に法令を遵守させることなどを行う者として、請求による仮放免の場合に、運用上求めているものでございます。もっとも、この身元保証人は法令上求められるものではなく、法令に基づく責務や報告その他の義務は負っていないところでございます。

藤田委員 運用上の措置で法令上の義務はないということなんですが、事例で様々報じられてもいますけれども、一人で多数の仮放免者の身元引受人に、百人を超えるようなケースがあったというふうに報道もされていますが、そういった人数の多いケースがあれば御紹介をいただきたいと思います。

 それから、身元引受人というものを置いて、ある種のスポンサードしてもらうわけなんですけれども、それが多数の仮放免者の身元引受人になるというのは、そもそも運用上であったとしても適切なのかどうか。そして、それから法改正があって改善されたというふうに少し認識していますけれども、その辺りも含めて、トータルで御答弁いただけたらと思います。

杉山政府参考人 御指摘いただきましたとおり、改正前の入管法におきましては、この仮放免という制度が多く使われていたということでございまして、その改正前の状況下におきまして、例えば特定の者が約二百八十人の仮放免された者の身元保証人となり、そのうち約八十人が逃亡している例があるなど、仮放免された者が逃亡する事案というのが発生しておりました。改正前の法律下におきましては、身元保証人による監督は逃亡等の防止措置として不十分であったと言わざるを得ないと考えております。

 一方で、改正の入管法によりまして、監理人による監理に付することで逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり収容することなく社会内で生活することを認める措置として、監理措置が創設されました。その収容を解除するための原則的な手段として監理措置が創設されたことに伴いまして、仮放免は、あくまで健康上の理由等により一時的に収容を解除する必要が生じた場合の措置として位置づけられることとなりました。

 監理人の選定に当たりましては、入管庁が把握し又は関係機関から入手する情報等により、監理人としての任務の遂行能力を厳格に審査することとしております。

 引き続き、監理措置制度を適切に活用してまいりたいと考えております。

藤田委員 これは、改正入管難民法の中でも非常にポイントとなるところだと思うんですが、じゃ、その監理措置の監理人というのは、いわゆる役割、責務というのはどうなっているのかということと、それから、人数の話で、要するに、仮放免のときに、身元引受人に例えば行政書士とか弁護士さんとかがなって、さっき二百八十人ですか、そういう人間を引き受けるというのは、何か、知り合いだから引き受けた域を超えていますよね。つまり、何かスキームなんですよ、もうこれはもはや。

 そういうことがそのまま監理措置制度に置き換わるという懸念は、一応シミュレーションとしてはあると思うんですけれども、例えばそれが百人、二百人というのをスキーム的に受け入れるプロ監理人のような、そういうことが起こり得るのはよくないと思うんですけれども、人数の抑制、又はそれに歯止めをかける機能というのはあるんでしょうか。

杉山政府参考人 監理人の責務には、被監理者の逃亡等を防止するため、本人の生活状況等を把握しつつ指導監督を行うこと、被監理者の相談に応じ、住居の維持に係る支援、必要な情報の提供等の援助を行うように努めること、逃亡、証拠隠滅又は不法就労活動を疑うに足りる相当の理由がある場合等にその事実関係を届け出ること、監理措置条件等の遵守のために必要な場合に、被監理者の生活状況等のうち、主任審査官から求めのあった事項を報告すること等があり、監理人はこれらの責務を果たすことによって被監理者を監理することとなります。

 それから、多数の者の身元保証人になれるのかという点でございますが、入管庁では、監理人としての任務の遂行能力を審査することとしております。その審査の結果、例えば、過去に正当な理由なく監理人としての任務の放棄と認められる事情により選定を取り消されたことがあると判明した場合ですとか、御指摘いただいたように、単に多数の被監理者の監理人になっている場合等であって、任務の遂行能力に支障があり、被監理者の逃亡を防げないと思われるような者については、監理人として選定することはできないものと考えております。また、同様の事情により、監理人に任務を継続させることが適当でない場合には、監理人の選定の取消しが可能となっております。

藤田委員 この改正前の身元保証人で多数引き受けたようなスキーム的なものをやはり是正しないと、せっかく改正して、そういうのをしっかりとやっていこうという趣旨がざるになってしまいますから、そこについては運用上厳しく見ていただきたいというふうに思います。

 それから、ちょっと時間がなくなっちゃったので、最後に一問だけ。

 難民申請の中の一番上で、二〇一〇年代に毎年の難民申請者数が急激に増え続けて、二〇一七年には二万人弱となり、二〇一八年には一万人強と半減したんですが、この推移の経緯、理由というものの見解を最後に聞きたいと思います。

 なぜならば、最後にちょっとコメントだけ言っておくと、政策によって増減するし、制度の穴をついて、やはり悪用、濫用というのが起こりやすいのが平たく言うとこの移民問題だというふうな認識なんですね。ですから、それがなぜそういう増減をたどったかということを最後に聞きたいと思います。

杉山政府参考人 難民認定申請に関しまして、平成二十二年、二〇一〇年でございますが、申請から六か月経過後に一律に就労を認める運用を開始しましたところ、その後、難民認定申請者数が増え、平成二十九年、二〇一七年には一万九千六百二十九人に至りました。

 そこで、平成三十年一月に、濫用、誤用的な難民認定申請を対象として、就労や在留を制限する措置を実施したところ、同年の申請者数はほぼ半減し、一万四百九十三人となりました。

 こうした経緯から、我が国での就労や滞在を企図する者による濫用、誤用的な難民認定申請が相当数含まれており、平成三十年の措置により、それが一定程度抑制されたものと考えているところでございます。

藤田委員 つまり、七年間で、千二百人ぐらいだったのが二万人ぐらいになるというようなことが政策の間違いによって起こり得るということなんですよね。逆に言うと、そういう政策で抑制することもできるということで、この入口、出口、また在留の管理については、慎重な制度設計を今後もやっていかないといけないということを改めて問題提起というか問題意識を共有して、今日は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。円より子さん。

円委員 国民民主党の円より子です。

 先日、元厚生労働省の事務次官だった村木厚子さんに、この委員会に参考人として来ていただきました。

 彼女は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長をしていた二〇〇九年六月に突然逮捕され、無実の罪で百六十四日間も拘置所に勾留され、取調べを受けました。そのことは、皆様もよく御存じだと思いますが。大阪地裁が二〇一〇年九月十日に無罪判決を出しましたので、冤罪にはなりませんでした。しかし、逮捕から実に一年三か月もの年月を、彼女は、無罪が出ないで、大変な思いをしていたわけです。

 この事件では、村木さんの部下の係長のフロッピーディスクを差し押さえ、重要な証拠を大阪地検特捜部が書き換えていたことが発覚し、検察官が逮捕される事件へと発展いたしました。

 どうしてこのような改ざんが行われてしまったのか、きちんと検証はされ、そして、これについて解明をされ、こういったことが二度とないようなことになっているのかどうか、御見解をお伺いいたします。

森本政府参考人 最高検察庁は、いわゆる厚労省元局長無罪事件に関し、同事件の捜査、公判上の問題点、主任検察官による証拠隠滅事件、大阪地検特捜部長及び副部長による犯人隠避事件の問題点等を検証し、その結果を検証結果報告書として公表しております。

 その中におきまして、主任検察官による証拠隠滅事件について、当該主任検察官は、公判の紛糾及び上司からの叱責を避けるためにフロッピーディスクの改ざんに及んだものであるが、もとより、検察官において証拠を改ざんするなど、到底許されるものでないことは当然であり、改めて検察官の倫理意識の向上を図ることが必要不可欠であること、当該主任検察官がフロッピーディスクを改ざんすることができたのは、当時、電子データの内容の解析等は、電磁的記録媒体の原本そのものを利用して行われており、当該主任検察官においても、その原本を直接手にすることが可能であったことによるものであり、このような証拠物の保管、管理状況には問題があったなどと指摘されているものと承知しております。

円委員 そうしますと、今は、そうしたことが絶対にできないというような形になっているんですか。

森本政府参考人 同じく、同じ検証結果報告書におきまして、証拠物の保管、管理状況に問題があったことなどが指摘された上で、再発防止策として、電磁的記録媒体を押収した場合は、遅滞なくその複写物を作成した上で、電磁的記録媒体の原本を封印して保管するなど、その電子データの内容の解析、分析等に当たっては、原則として複写物を利用する方策を取ることができるような措置を講じることとされたものと承知しております。

 これを踏まえまして、検察当局におきましては、順次必要な機器の整備を行うなどいたしまして、まず、押収した電磁的記録媒体原本の内容の精査、検討は原則として複写物等を作成し、これを利用して行うこと、それから、電磁的記録媒体原本については封印を実施すること、その上で、封印を開封する場合には、他の検察官等の立会いの下で行うとともに、その経過等を記載した報告書を作成するなど、押収された電磁的記録媒体に保存されたデータの改ざん、改変を防止するための取組を実施しているものと承知しております。

円委員 つまり、原本をちゃんと複写をしておくから、その原本を改ざんするようなことは、もしあったとしても、複写したもので確認ができるから大丈夫だということでよろしいんですか。

森本政府参考人 お答えします。

 基本的には、コピーの仕方というのは幾つかの方法がありますけれども、検察庁の場合にはイメージファイル方式というのを取っておるんですが、全く同じものをコピーした上で、それが同じだということは確認できるという状況にしておりますので、今先生がおっしゃったような形で確認できることとなっております。

円委員 そのことについては、後でまたお聞きしたいと思いますが、技術的なことは。取りあえず、上司の叱責を恐れてとかということは、常に、何とか犯人を捕まえようという焦りからなのかもしれませんけれども、やはり改ざんはあってはならないことですよね。そのことはまた後で御質問させていただきます。

 今回のデジタル化は、捜査機関側の利便性が格段に上がります。一方で、拘置されている被疑者や被告人の権利が軽視されていると指摘されておりまして、犯罪と関連しない情報の取得を防止する仕組みや消去する仕組みが不十分だとも言われ、この法務委員会でも何度も委員の方々から御指摘をされているところだと思います。

 例えば、そうした仕組みをきちんと法律でつくったとしても、捜査する側で証拠を改ざんされては冤罪は絶対に防げませんよね。過去には、捜査機関が、押収した様々なデータを消去してしまったり、改ざんしたりということが起きました。今おっしゃったところで、その取組の一つだと思いますが、それ以外に本当に改ざんされないような仕組みというのはあるんでしょうか。

森本政府参考人 まず、技術的に改ざんできないような措置を取っておりますとともに、それらの証拠に関しましては弁護人に開示されることになりますので、その開示されたものについて弁護人の方で確認していただくという手続もあろうかと思います。

円委員 そもそも、犯罪に直接関係する情報だけをどのように選別して押収するのでしょうか。

 村木さんの事件では、フロッピーディスクを押収したことを取調べの際に教えてもらうことも、また、押収したという記録もございませんでした。これまでも、疑いがあり強制捜査が行われると、事務所の中の資料を根こそぎ持っていき、棚や机の中は空っぽになるのが常道だと聞いております。

 どのようなデータを押収したのか、きちんと詳細のリストを作成し、開示する用意が必要なのではないかと思うんですね。今、押収したものを弁護人に見せるとおっしゃいましたが、では、それは全てちゃんと弁護人に見せるということでよろしいんでしょうか、開示するということで。

森本政府参考人 まず、証拠開示の流れについてちょっと概観させていただきますが、現行法上、検察官は、まず、取調べを請求する証拠については、あらかじめ相手方に閲覧する機会を与えなければならないということになるので、裁判にまず提出するものを閲覧の機会に付します。

 その上で、争っている事件は公判前整理手続というものに付されるわけですが、その付された手続におきましては、取調べを請求した証拠をまず被告人、弁護人に開示するとともに、証拠の開示後、被告人又は弁護人から請求があったときは、検察官が保管する証拠の一覧表を交付しなければならないこととされております。

 さらに、その公判前整理手続におきましては、一定の要件の下で、検察官の請求証拠の証明力を判断するために必要な一定の類型の証拠、類型証拠と言っておりますが、それを開示すること。さらには、被告人側の主張が明示された後、その主張に関連する証拠を開示する、そういった仕組みが取られているところでございます。

円委員 それでは、もう一度お聞きしますけれども、犯罪に直接関係する情報だけをデータとしてどのように選別して押収できるのか。膨大なデータがあると思うんですが、押収するときにそれを選別して押収するのはとても難しいと思うんですが。

森本政府参考人 一般に、捜査当局におきましては、法令の趣旨を踏まえ、捜索現場において、令状に記載された物件の範囲内で、被疑事件等との関連性があると判断したものを差し押さえるというのがまず前提でございますが、その前の段階で、この委員会でも答弁しているところでございますが、まずは裁判官において、令状審査を行い、そこで被疑事実との関連性を判断して、さらに、判断されたものについて個別に列挙してきちんと書いて、それを捜査官側はその令状を持って現地に行って、令状に入っているものかどうかというものを確認しながら捜索、差押えを行うという手続を取っております。

 その上で、個々の事案において捜索現場で対象となる電磁的記録媒体等に保存されたその内容をどの程度詳細に確認を行うかにつきましては、対象となる電磁的記録媒体の点数や構造、保存されている電磁的記録の容量、さらには処分を受ける者の対応によっても異なるので一概にお答えすることは困難でございますが、その確認の在り方について、最高裁判例におきましては、捜索差押許可状による複写の処分の対象となる電磁的記録に被疑事件等と関連する情報が記録されている蓋然性が認められる場合、差押えの現場における電磁的記録の内容確認の困難性や確認作業を行う間に情報の毀損等が生ずるおそれ等に照らすと、許可状の執行に当たり、個々の電磁的記録について個別に内容を確認せずに複写の処分を行うことは許される旨を、事例判断ではございますが、示した最高裁の決定がございまして、捜査当局においては、そういった判例の趣旨も踏まえながら、適切に捜索等の捜査を実施しているものと承知しております。

円委員 刑事局長の御答弁を聞いておりますと、しっかりと適切におやりになっているし、これからもそうしたいと思っていらっしゃることもよく分かるんですが、実は、どんなにデジタル化の技術等が進んでも、やはり取調べをするのは人間ですから、例えば取調べの際に犯罪とは全く関係のない子供の日記や写真を使って、自白を誘導するための材料にしていることは数々の被疑者の証言で明らかになっております。実は、私も新聞やら本やらそういうもので、もちろんそういったことは知ってはいたんですが。

 私の秘書が経験した特捜部の取調べでは、その話をちょっとさせていただきたいんですが、任意の事情聴取であったんですが、事務所の書類を全て持っていかれたので、仕事にならないから早く返してほしいと言っておりましたら、ある日、その秘書をあなたが取りに来てほしいと特定して、取りに来させた。その行くところが特捜部だったんですね、普通、書類の返却だったらそんなところに行かないのに。任意の事情聴取で、あくまで参考人としての立場であったにもかかわりませず、検察官は彼女をまるで被疑者のように誤解させるような言動を行った。

 一つは、事情聴取といっても任意ですから、黙秘権がありますよなんということは言わなくたっていいわけですが、黙秘権がある、あなたは被疑者だよというような感じでおじけづかせて、まずスマホの電源は切れと言われたそうなんですね。本当は切らなくてもいいらしいんですが、切って、荷物も自分のところからかなり離れたところに追いやられたと。全然、弁護士とか誰かに、夫とか、子供を保育園に迎えに行きたいのに、迎えに行ってという電話もできなかった、そういう状況下で、例えば彼女のUSBも自分のパソコンに差して写真を全部見て、そして、こんなかわいいお子さんがいるんですね、この子供たちが犯罪者の子供と言われちゃうんだなとか、そういうことを彼女の前で言ったらしいんですね。

 さらに、言いたくないことは言わなくてもいいんだよというふうに言って、あなたは犯罪行為を疑われた被疑者だというような感じで、もう本当に誤認させるような形で、多分普通の人だったらおじけづきますし、何か子供を迎えに行きたいと言っても、かわいいお子さんを迎えに行きたかったら、早く白状すればいつでも迎えに行けるんだよと言われたらしいんですね。

 結局、君は秘書だから議員の先生に命令されて何かやっただけなんだろう、もう全部言っちゃえよみたいな感じで言われて、全く覚えがなくて、帰りたいと言っても、とにかく十一時間飲まず食わずで拘束されて、保育園の迎えにも行かせてもらえず、電話もかけることもできず、もう最後は気を失いそうになったそうです。でも、彼女はまだ強い人でしたから、もう、わっと自分のバッグを取って、そうしたら、やめろとすごいどなられたらしいんですけれども、携帯電話の電源を入れて、電話をしたらしいんですね、弁護士に。そうしたら、そのことも、弁護士はきちんと契約した弁護士なのかと言われたらしいんです。それは、事務所でとか、議員の先生は契約していても、彼女はそう言われたら、えっ、自分が契約した弁護士さんじゃないと駄目なのかしらと。何か言われたら、どなられるし、怒られるし、子供のことは、保育園に二人子供が行っているのに、朝は送っていって、ママが迎えに来るからねと言っていたのに行けない。夜の十一時ぐらいまでずっと勾留をされていたわけですよね。

 そういうことをやはり聞きますと、新聞やテレビで聞いたのとは違って、身近な、私の秘書ですから、もう十年ほど前のことですけれども、やはり、犯罪とは無関係な情報の閲覧は、子供の写真を見たりとか、そういうことはしないといったって信用できないように思うんですよね。

 信頼性をもう本当に高めていくことが必須だと思いますし、捜査機関による適正な取調べの在り方については、きちんと検討して、今後こんなことがないようにといっても、多分いろいろなところで行われているんじゃないかと不信感を持ってしまうんですが、適正な取調べの在り方について大臣から御答弁お願いできませんでしょうか。

鈴木国務大臣 今の円先生の御指摘も含め、国会の場でも、大変に、検察活動、特に取調べが適正に行われていないのではないか、そういった厳しい御指摘をいただいている、このことは重々承知をしております。

 そうした中で、一般論として申し上げれば、当然に、検察、捜査、公判活動、これは適正に行わなければならない、これはもう当たり前のことだと思います。

 私どもの「検察の理念」というものにおいても、「権限行使の在り方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである。」「被疑者・被告人等の主張に耳を傾け、積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う。」「取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるよう努める。」等とされているところであります。

 検察の活動、これは当然、国民の皆様方の信頼、この上に成り立っていることでありますし、まさに、検察権の行使、この適正さに疑義が生じるようなことがあれば、これは検察の活動の基盤が揺るがされることに当然なるわけであります。

 そうした中において、個々の捜査、公判活動が適正に行われる、これは当然のことでありますけれども、まさに、そうしたことをこれまでもしていると思いますが、そうでないケースもあるとの指摘もありますので、私も法務大臣として、しっかりそこは、検察の活動をきちんと注意深く見守っていきたいと思いますし、そこはしっかりと促していきたいと思います。

円委員 是非お願いいたします。

 今のようなデジタル社会ですと、もう本当に膨大なデータの解析が必要で、捜査の方々の御苦労もよく分かるんですが、事件に例えば無関係なものが山のようにあった場合に、技術的にその事件に関係があるかどうかを事前に峻別できるというか区別できれば捜査の方もとても楽になるんじゃないかと思うんですが、そうした個人のプライバシーを侵さないためにも、そうした技術的な取組というのはかなりやっていらっしゃるんでしょうか。

森本政府参考人 確かに、電磁的データの時代になりまして、データ量が膨大になってきております。それで、現実問題として、この委員会でも議論されておりますが、たくさんの証拠を持ってくるのではないかという話もありますけれども、例えば会社犯罪なんかの場合に、会社でのものなんかの場合には、とても押収できない量のデータというのが存在しているということもこれありますので、個々の事案ごとによるんですけれども、一律に自分たちで選別するのが難しいときには、仮に、例えば捜索差押許可状に基づいて捜索する場合であっても、会社側の方から説明を受けて、それで、これとこれとこれはこういうことで関連するデータだということが分かったら、その範囲内のものだけを入手してくるとか、そういった取組は進めているところでございます。

 他方で、今御指摘のような点につきましては、今後どういうふうに捜査を進めていく上でデータの取扱いについて考えていくかということは、この法律とも併せて検討していくべき課題と考えております。

円委員 実は、一九九九年のいわゆる盗聴法と言われた通信傍受法の審議の際、私は参議院の法務委員会の野党筆頭理事でございました。六月一日に衆議院で強行採決をされまして、いわゆる荷崩れで参議院に送られてきたんですが、もう六月十七日が閉会だったんですね。それで、とても通信傍受法は通らないということで、そのときは自民と自由党と公明党の与党だったんですが、二か月近く会期を延長いたしました。毎日、一日に五、六回も理事懇を開くというような厳しい攻防が七十三日も続きまして、そのとき、法務省は、組織的犯罪を取り締まるにはどうしても犯罪組織の本部を挙げる必要がある、もちろんそうだと思います、そのためには携帯電話の傍受が不可欠だとおっしゃったんです、答弁で何度も。

 それで、会期末の間際にNTTに視察に行きました。そのときに、私は弁護士でもありませんし、法律知識、そんな刑法の知識など余りないんですけれども、そこで、携帯電話の傍受ってどうやるんですかとNTTの技術者にお聞きしたんです。そうしましたら、お答えが、今の我が国の技術では携帯の傍受はできませんということだったんです。ずっと携帯電話を傍受して組織犯罪を捕まえると言っていたのに、携帯の傍受はそのときの日本の技術ではできなかったんですね。もう一度審議が白紙に戻るかというような、そんな状況になってしまって、法務省の方たちも顔を真っ青にしていらっしゃいましたけれども。

 今はもう日本の技術は格段に上がりましたし、電話を傍受するなんという時代ではもちろんなくなっているんですけれども。削除されたデータの復元もできますし。ただ、組織犯罪は、トクリュウを見ても、もう世界的に、物すごい、何か、多分警察よりもデジタル技術が進んでいるんじゃないかと。イタチごっこと言われますが、是非とも、ですから、そういう技術もちゃんとやっていただきたいし、そうした組織犯罪者に負けないぐらいのデジタルの技術者の、検察官や捜査の取調べ官や、そうした人たちの確保、育成については取り組んでいらっしゃるんでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、イタチごっこというような状況で、組織犯罪集団が情報通信技術を悪用したサイバー犯罪等が後を絶たないところであり、これにつきましては、政府を挙げて全力で取り組むべき課題であるというふうに考えております。

 そうしたものに対処するためには、いわゆるデジタルフォレンジック業務と言っておりますけれども、電磁的記録媒体の収集、保全、解析業務に関する人的、物的体制の整備を図ること、これが必要不可欠でありまして、検察当局におきましても、これも委員御指摘の厚労省の事件以降に、デジタルフォレンジック技術の習得のための研修等を実施するとともに、その機器の整備や保守、更新、さらには人材の育成等を行ってきておりまして、それを順次拡大しているところでございます。

 引き続き、そういった体制整備については整備を進めてまいりたいと考えております。

円委員 次に、弁護人のことについてお聞きいたします。

 やはり弁護人の立会いというのは大変必要だと私は思っているんですが、先ほど申しました村木さんや、それから大川原化工機事件の島田さんに、弁護人の立会いについてお聞きしましたところ、村木さんは、初めから弁護士さんに相談をしていたけれども、取調べのときには同席が認められていなかったので、検察官から何度かうその情報を与えられたり、机をたたいたりという脅しがあった、もし弁護士が同席していれば、そのようなことはなかったのではないかとおっしゃっておりました。

 また、島田さんは、会社の人たちが百何人もずっと取調べを受けたとおっしゃっていましたが、何と捜査が始まってから一年半たってようやく弁護士さんに相談したそうなんですね。最初から相談に乗ってもらっていたら、どんなに精神的に楽だったのかとおっしゃっておりました。

 やはり、弁護人の立会いの必要性というのは、すごく、先ほどの私の秘書の話もそうですが、やはり捜査の取調べとかというのは平場じゃないんですよね。検察官とか警察官とか、皆さん自分よりすごい権力があるところに突然行って、パニックになってしまう方が多いので、弁護人の立会いはとても必要かと思うんですが、いかがでしょうか。

森本政府参考人 被疑者の取調べへの弁護人の立会いを被疑者の権利として認めることにつきましては、法制審議会、それから、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会等においても議論がなされておるところでございます。

 法制審議会におきましては、証拠収集方法として重要な機能を有する取調べの在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に損なうおそれが大きいなどの問題が指摘されて、法整備の対象外、対象とされなかったところでございます。

 また、現在進めております先ほどの在り方協議会におきましては、不適正な取調べをその場で抑止できるよう、弁護人の立会いを制度化する必要があるなどの意見がある一方で、弁護人の取調べへの介入等により、被疑者からのありのままの供述を得ることがおよそ期待できなくなる、弁護人が取調べに立ち会えないときには取調べを行うことが不可能となるなどの意見も示されているところでございまして、こうしたことを踏まえて、現時点ではまだ権利として位置づけられていないところでございます。

円委員 組織犯罪なんかでは、もう最初からそういう弁護士さんをつけているとか、それから、犯罪用語についても、刑事用語についても、普通の一般の人に比べたらもう本当に、さっきのデジタルの技術ではありませんけれども、もう日本の警察や検察を上回る知識やいろいろ持っていて、それは真犯人を捕まえるためには大変かと思いますが、一般の人たちが取調べを受けるときには、どんなにパニックになるかということを考え、弁護人の立会いのことももっと検討していただければと思います。

 実は先日、こんな事例がございました。兵庫県内の小学校六年生の女児が突然警察に呼ばれて、加害者として、母親と離れた状態、母親と一緒に行ったんですが、母親とは別の部屋で、たった一人で三時間も自白を強要されたというんですね。後で父親とともに抗議をしたところ、事件そのものが子供たちの虚偽の申告によって呼ばれたらしくて、冤罪だったことが判明したんですが、大人でもパニックになりますので、子供を一人で取調べするなんというのは、ちょっと言語道断ではないかと思うんですね。

 最近はいじめが増えておりまして、加害の被疑者として、もしかしたら取り調べられるケースだって増えるかもしれません。やはり子供たちにはちゃんと弁護人がつくとか、様々なことを、きちんと被疑者の権利を告知するべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

森本政府参考人 個別の事件はおきまして、先生御指摘の十二歳の少年という形で申し上げますと、触法少年という部類に属して、犯罪少年ではないということになりますので、そこですと、例えば、検察庁には、犯罪少年であれば検察庁も関わりますけれども、触法少年だと検察等においては関わらないというまず問題がありますので、なかなか、その十二歳未満の人をどうするかというところについては、ちょっと法務省、検察の立場では答弁しにくいところはあるんですが、触法少年につきましては、そういった形で別途それ用の規則等がございまして、配慮することになっておりますし、それから、犯罪少年につきましても、やはり、その年齢とか境遇とか性格、性別その他もろもろの事情、さらには成長度合い等においてコミュニケーションの差があるというようなことも考えながら対処することが重要であるというふうに考えております。

円委員 最後にオンライン接見についてお伺いいたします。

 今、女性の容疑者や被告の留置施設の集約化が全国で進んでいるそうですが、これは、被疑者の権利である接見交通権、つまり、弁護人と面会し、書類や物をやり取りすることで、憲法で定められた弁護人依頼権に基づいて、警察官らの立会いなしに接見できる権利が侵害されることにつながるのではないかと思います。

 集約化されれば、弁護士の接見が地方では更にできにくくなる現状もありますし、例えば少数言語の通訳が必要な外国人の場合ですとか、それですと、通訳と弁護士の日程が合わず、接見が実現しないこともありますし、また、拘置所などの拘束された施設にいる聴覚障害者や視覚障害者などの方たち、そういう人たちのことを考えても、例えば弁護士や通訳が最寄りの警察署などのアクセスポイントからオンラインで接見する仕組みが進みますと、接見の機会が増えるかと思いますし、冤罪を防ぐことにもつながるかと思うんですが、そのためのデジタル化だとも思うんですが、いかがでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 この委員会でも議論になっておりますオンラインによる外部交通につきましては、大臣から答弁しておりますとおり、日弁連等と精力的に協議しながら進めているところでございますが、先生御指摘のように、ニーズのあるところとか、それから、例えば集約されて不便になったところ、今進めておりますのは、拘置支所がなくなって拘置所になってしまったがために遠距離になってしまったとか、あるいは遠隔地、そういうようなところから進めていっております。女子の場合もそのような状況に該当するかと思います。

 また、一点だけ、実務上の措置のオンラインの外部交通では通訳人も同席できることにはなっておりますので、そういった措置も含めて進めてまいりたいというふうに考えております。

円委員 是非オンライン接見は早く進めていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。

西村委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 公明党、平林晃と申します。本日もどうぞよろしくお願いをいたします。

 朝から非常に真剣な深い質疑がなされておりまして、私も非常に勉強になっているところでございます。

 今の円委員も御自身の貴重な御経験を御披瀝いただきまして、問題意識としては私も非常に共有するところでございます。取調べの適正化というものは本当に大事なことであると思っておりますので、またこれは別の機会にしっかりと議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 そして、米山委員も非常に臨場感に富んだ、すばらしい御事例を御披瀝をいただきまして、私も、なるほどと思いながらお話を伺っておったところでございます。

 そういった意味におきましては、私も、この電磁的記録提供命令に関しては強い問題意識を持っておりますので、ここの部分に関して質問をさせていただけたらというふうに思っております。

 まず一点目なんですけれども、今、米山委員は、こういう事例ということで、御自身で設定いただいたわけですけれども、法務省側として、どういったものを典型的な場合として考えているのかということをちょっと確認したいと思うんですけれども、電磁的記録提供命令の被処分者もそうですし、あるいは、提供される電磁的記録に想定されるものとしてどんなものを典型的に想定しておられるのか、伺います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 米山委員御指摘のように、被疑者を含む個人というのもあるんですが、典型的には、被処分者としては、携帯電話会社でありますとかインターネットプロバイダーなどの通信事業者を被処分者の典型として考えております。

 また、提供させる電磁的記録として典型的に想定しているものといたしましては、例えば、特定の期間における被疑者の使用する携帯電話番号に係る通話履歴でありますとか、特定の期間における特定のサーバーへのアクセスログなどが典型的なものと考えております。

平林委員 被処分者としては主に通信事業者であり、電磁的記録としては携帯番号だったりサーバーへの接続記録である、こういうお話であったかというふうに思います。

 若干僕が想像していたものと少しずれるところがあるんですけれども、クラウド事業者とか、そういったものは被処分者としては余り考えられないということなんでしょうか。ちょっとここをもう一回確認させてもらっていいでしょうか。

森本政府参考人 クラウド事業者も、そういう意味では事業者の一つとして想定され得るものだと認識しております。

平林委員 いずれにしても、まず通信事業者にアクセスすればそこからほかの情報も取れる、そういうような想定ということでよろしいですかね。はい、分かりました。

 それでは、電磁的記録提供命令を執行するときに、今、通信事業者が一番典型例だというお話であったわけですけれども、電磁的記録提供命令は自己の意思に反して供述することを命ずるものではないことを通信事業者にも教示しなくてはいけないんじゃないか、こういう内容の規定を設けるべきではないか、こんな意見もあることを私は承知をさせていただいております。

 この点に関しまして法務省はどのように考えておられるのか、御意見を伺います。

森本政府参考人 まず、条文上、必要な電磁的記録を提供することを命ずる命令と規定しているとおり、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、供述を求めるものではなく、一般に供述を強制されているとの誤解を被処分者に生じさせているものでもないと考えております。

 その上で、一般に事業者、通信事業者の場合には、組織的に業務として電磁的記録提供命令に対応するものであることから、電磁的記録提供命令を受けた場合に、供述を強制させていると誤解するとはより一層考え難いところでございまして、そのような通信事業者に対して、電磁的記録提供命令を発する都度、自己の意思に反して供述することを命ずるものでないことを教示すべき実益はないのではないかというふうに考えております。

平林委員 実益がないのではないか、こういうお話であったかというふうに認識をしております。

 それでは、典型的に想定している通信事業者へのお話を今伺ったんですけれども、それ以外、特に被疑者に対して、電磁的記録提供命令が自己の意思に反する供述を命ずるものではない、このことを教示しなければならないという規定、これも必要なのではないか、こういう意見も私も拝聴しているところでございますけれども、この点に関しましては法務省はどのように考えておられるのか、御見解を伺います。

森本政府参考人 まず、今御答弁申し上げたとおり、供述を求めるものではないことから、被処分者が被疑者であっても、一般に供述を強制されているとの誤解を生じさせるものではないというふうに考えております。したがって、被処分者が被疑者であっても、自己の意思に反して供述をすることを命ずるものではない旨を教示することを一律に義務づける必要性はないと考えております。

 他方で、捜査当局においては、電磁的記録提供命令が当該電磁的記録に係るパスワード等の供述を強要するものでないことを含め、その制度内容の正しい理解を前提として運用を行うべきでございまして、その運用に当たっては、同命令の内容について必要に応じて被疑者を含む相手方に対して適切に教示するなど、その権利を不当に侵害することがないよう適正に運用される必要はあるというふうに考えております。

 本法律案が改正法として成立した場合には、捜査機関において適切な運用の在り方を検討していくものと承知しておりますけれども、法務省も、今言ったような観点を含めまして、捜査機関や国民一般に対して制度内容を十分に周知するなど、必要な方策を講じてまいりたいと考えております。

平林委員 結局、適切な運用ということが重要になってくる、こういうお話であったわけですけれども、本当におっしゃるとおりだというふうに思います。

 そもそも、国民は、今、教示に関係して、自己負罪拒否特権というものも、国民というよりも、少なくとも僕は勉強不足で全然存じ上げなかった部分があるわけですけれども、黙秘権という意味で知っているとしても、それがどの場面で有効なのかというのを、取調べ室に入れられて黙秘権が使えるんだぐらいのことは分かったとしても、急に聞かれたときに黙秘権が使えるということをそう分かっている国民というのは結構少ないのかなというような邪推もしてしまうわけですけれども。

 いずれにしても、今おっしゃられたとおり、今回の電磁的記録提供命令等、こういう教示を求められている内容といったもののことも含めて国民に周知徹底する、このことは極めて重要なことではないかというふうに思っておりますので、成立することとなった暁にはそのことをしっかりとお願いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 その上でなんですが、四月一日の委員会でも質問したとおりではございますが、電磁的記録提供命令の執行におきましては、事件に関連しない個人情報等を収集することのないように、捜査機関はできる限り留意しなければならないと考えているということは、私もそのとおりに思っているところでございます。

 その四月一日の大臣の御答弁では、憲法や刑訴法に基づいて適正な運用に努めておられる、こういう趣旨の御答弁であったというふうに理解をしております。そのとおりであれば全く問題はないんですけれども、ただ、やはり現場の感覚とは少し乖離があるように感じております。

 先日の参考人質疑におきまして坂口参考人もおっしゃっておられましたが、今までの物の押収においても、被疑者の親族の書類まで押収をされるというようなこと、あるいは、それが戻ってきたときもそれがぐしゃぐしゃになっていた、こんなことも裏話として私もお聞きをしているところでございます。こういったことが弁護側においては枚挙にいとまがない、こういうニュアンスのことを坂口参考人は言っておられたというふうに認識をしております。

 物品の差押えにおいてもこのような経験があることからすると、電磁的記録におきましてはより一層の注意はやはり必要だというふうに考えております。

 さきの質問の冒頭で発言しましたように、行動のみならず、ある意味では思考すらも記録されている、自分が記録していると思っていないことすら記録されているのが電磁的記録でありまして、だからこそ、今まで以上の、より一層の注意を喚起する、このことが重要と考えておりまして、法務大臣の御見解を伺います。

鈴木国務大臣 先日の答弁の中で、憲法あるいは刑事訴訟法に基づきということで申し上げました。

 包括的な押収、これを禁止しています憲法三十五条第一項を受けまして、改正後の刑事訴訟法におきましては、裁判官が発する電磁的記録提供命令の令状に提供させるべき電磁的記録等を具体的に特定をして記載、記録をすることとしているところであります。

 その結果として、捜査機関が提供を命じることができる電磁的記録、これは裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録をしたものに限定をされることとなるわけであります。

 こうした形で、制度上、関連性があるものに限られることとなるわけでありますけれども、まさにその運用は大事でありまして、その運用において、憲法あるいは刑訴法の規定にのっとりまして、適正にこれは行われなければならないわけであります。

 そういったことで、捜査機関において適正な運用に努めていくことと我々も承知をしておりますけれども、まさに我々としても、この法律案が改正法としてもし成立をできれば、その暁には、捜査機関によるこうした電磁的記録提供命令が適正に運用されるように、やはりそこは捜査機関に対しても、制度内容について、通達等という形になるかと思いますけれども、適切に周知をきちんとしていくということに尽きると思っております。

平林委員 ありがとうございます。

 是非そのようにしていただきたいと思いますし、私どもとしてもしっかりと注視をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、ビデオリンク方式の証人尋問における利用拡大について伺いたいというふうに思います。

 そもそも、証人尋問におけるビデオリンク方式の活用に関しましては、現行刑事訴訟法第百五十七条の六の規定によりまして、性犯罪などの被害者等の三類型に該当する者を証人として尋問する場合には、同一構内において認められている。また、同一構内に出頭することで精神の平穏が著しく害される場合等、四類型に該当する証人を尋問する場合には、同一構内以外の場所においてビデオリンク方式で尋問できることとされている。後者の場合を構外ビデオリンク方式、このようにおっしゃるということで認識をいたしております。

 そして、この度の改正におきましては、同一構内のビデオリンク方式の要件は変更がないわけですけれども、構外ビデオリンク方式、後者の証人の類型において新たに四種類が加わることとされております。この点に関しまして、趣旨と概要を伺いたいと思います。

森本政府参考人 近時、例えば多忙な医師に専門家としての証言を求める場合など、構外ビデオリンク方式により証人尋問を実施できるようにする必要性が高い場合が生じていると考えております。

 そこで、本法律案におきましては、証人尋問において、対面での尋問を原則とすることは維持しつつ、構外ビデオリンク方式により、まず、証人が傷病等により同一構内に出頭することが著しく困難であると認めるとき、それから、証人が身体の拘束を受けている場合であって、同一構内への出頭に伴う移動により精神の平穏を著しく害され、その処遇の適切な実施に著しい支障を生じるおそれがあり、あるいは、その移動に際し証人を奪取、解放する行為がなされるおそれがあると認めるとき、そして、証人に鑑定に属する供述をさせる場合であって、証人が尋問の日時に同一構内に出頭することが著しく困難であり、かつ当該日時に尋問することが特に必要であると認めるときをビデオリンク方式に追加することとしております。

平林委員 その場合ですけれども、構外のビデオリンク方式ですけれども、やはり、適正な実施、これが大事になってくるというふうに思うんですけれども、構外に、いないとなると、カメラに映っていない第三者の示唆とか、また記憶ではなくて資料を見ながら証言してしまう、こういった可能性も出てくるかと思いますけれども、こういった懸念にどうお答えになられますでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、証人を裁判所外にある場所に在席させてビデオリンク方式により尋問する場合における証人の在席場所について、裁判所が適当と定める場所を選定することとしております。

 これは、証人をどのような場所に在席させ、どのような措置を講じた上でビデオリンク方式による証人尋問を実施するかは、裁判所が訴訟指揮権等の十全な行使や回線のセキュリティー確保の必要性などを踏まえて、事案に応じて決定し得るとすることが適当と考えられるためでありまして、その判断に当たっては、第三者による働きかけのおそれや、証人が例えば手元の資料を見ながら証言するおそれ等も考慮されますので、そういったことがないようなものを裁判所においてはきちんと担保した上で証人を裁判所外にある場所に在席させて、ビデオリンク方式により、そういったおそれに配慮した上で適切に選定することになるものと考えております。

平林委員 では、適正な実施を強く求めまして、私の質問を終わります。

 大変ありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 犯罪と関係のない個人の情報が収集、蓄積、利用される危険性についてお伺いをしたいと思います。

 通告の三番からまずお伺いをしたいというふうに思っております。

 電磁的記録提供命令によって、被疑、被告事件と関係のない人のデジタル個人情報が取得されるのではないかという心配の声に対して、法務省は、一応法案で、四百二十九条、四百三十条で、電磁的記録提供命令の令状に不服がある者は裁判所にその処分の取消しと変更を請求することができるんだというふうに、準抗告ができるんだというふうに御説明を私は受けました。

 しかし、クラウド事業者に命令が出た場合、被疑者、被告人も含まれるというふうに思いますけれども、事件と関係のない人がどういうふうに、電磁的記録提供命令の令状が出されたこと、自分の情報が取得されるのではないかということを確認したらいいのかという点、大臣にお伺いしたいというふうに思いますし、本当は準抗告はほとんど使えないのではないかというふうに思いますが、そのことをお認めいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 この法律案におきまして、電磁的記録提供命令により提供させた電磁的記録に記録された情報の主体に対する処分の通知、これは捜査機関に義務づけることとはしておりません。

 そういった中で、実質的に見ても、被処分者以外の者に対して不服申立ての機会を与えるために、電磁的記録提供命令あるいは差押え等がなされた事実の通知等をしなければならないとした場合には、先ほど来、いろいろ御答弁申し上げていますけれども、やはり捜査記録の活動内容が捜査対象者に広く知られることとなり得るということで、捜査の密行性を確保できなくなるといった点、あるいは、罪証隠滅行為あるいは被疑者逃亡等を招いて、捜査の目的を達することが困難となるおそれがあるということ、さらには、提供を受けた電磁的記録等に記録された情報に関係する人物を全て特定した上で、その所在を突き止めて通知等をしなければならないこととなりますが、そのようなことは現実的に困難である上に、捜査の迅速性も著しく損なわれることとなる等の問題があると我々としては考えております。

 そういった中にあって、この法律案においてそうした通知等の仕組みを設けないということとしておるのは、そういった背景ということでございます。

本村委員 多分、聞かれたことと答えていることが違うというふうに思うんですけれども。

 準抗告は全く犯罪と関係ない人はほとんど使えませんねということをお認めいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 そういったことで申し上げれば、例えば、情報通信事業者等からそうした情報主体に対して、そうした命令が発出されたということ、これが確認できない場合にはそういったこととなりますけれども、そこは必ずしも一〇〇%そうなるかということであれば、一〇〇%そうなるということではないと承知をしております。

本村委員 偶然知ることができたら自分の情報が収集されていることが分かる、その段階で不服申立てができるレベルでいいのかという問題なんです。それは本当に偶然知って不服申立てができるということになりますので、全く不十分だというふうに思います。

 この不服申立ての機会を保障するための通知について、通信傍受法ではどうなっているのか、お示しをいただきたいと思います。

森本政府参考人 通信傍受法の第三十条一項においては、検察官又は司法警察員は、傍受記録に記録されている通信の当事者に対し、傍受記録を作成したこと等を通知しなければならないこととされております。

本村委員 盗聴法と呼ばれる通信傍受法では通知をされるわけです。なぜ今回の記録提供命令ではできないのかという問題があります。

 盗聴法に関しましては、通信傍受法ですけれども、憲法二十一条二項の通信の秘密、十三条に基づくプライバシー権の権利を侵害するということで、私たちとしては廃止を求めているわけですけれども、それでも、皆さんの心配もあってだというふうに思いますけれども、皆さんの声が少し規制を強めたというふうに思いますけれども、傍受記録に記録された通信の当事者に対して通知がされます。

 この通信傍受法の対象犯罪と電磁的記録提供命令の対象犯罪、それぞれお示しをいただきたいと思います。

森本政府参考人 まず、通信傍受法の対象犯罪でございますが、いわゆる薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的な殺人が別表の一に定められているほか、殺傷犯関係犯罪、逮捕監禁、略取誘拐関係犯罪、窃盗、強盗関係犯罪、詐欺、恐喝関係犯罪、児童ポルノ関係犯罪が別表二に掲げられております。このうち、強盗、詐欺、恐喝につきましては、現在、ちょっと細かい言い方になりますが、一項犯罪というものだけが対象とされておりますが、今回の改正で二項犯罪を追加していただくことをお願いしているというのが対象犯罪の範囲でございます。

 他方で、電磁的記録提供命令につきましては、対象犯罪を規定することとはしておりません。

本村委員 今回の電磁的記録提供命令に関しましては、犯罪の限定もないわけです。

 今日は資料をお示しをしておりまして、先ほどの通知の点は、上から五番目の表を見ていただきますと、電磁的記録提供命令と通信傍受のところで違いがよく分かっていただけるというふうに思いますし、要件というところで、対象犯罪、今回は限定がないのだというところも含めて見ていただけるというふうに思います。

 通信傍受法では、例えば凶悪な犯罪でも不服申立ての機会を保障する通知はあるのに、記録命令つきの差押え、今の現行法でも、そして電磁的記録提供命令でもないのは不当であるというふうに考えますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今御指摘ありました通信傍受法によります通信傍受、これは現に行われている他人間の通信の内容を知るために、当該通信の当事者のいずれの同意も得ずに行うものであります。よって、これは継続的、密行的に、憲法の保障する通信の秘密、これを制約する性質の処分であります。

 一方で、電磁的記録提供命令でありますけれども、こちらの通信傍受とは異なって、これは繰り返し答弁もさせていただいていますけれども、既に存在をしている電磁的記録の記録や提供を命ずるというものにとどまるわけであります。そういった観点からいえば、先ほど通信傍受法の下での通信傍受において申し上げたような継続的、密行的に通信の秘密を制約する性質の処分ではないことから、その二つを同列に論じる、比較するということではないと考えております。

 実質的にも、被処分者以外の者に対して不服申立ての機会を与えるために、記録命令付差押えあるいは電磁的記録提供命令がなされた事実を通知しなければならないとすることについては、先ほど来申し上げている様々な問題があると考えておりまして、相当ではないと考えているのは先ほど御答弁申し上げたとおりであります。

 そうしたことから考えれば、記録命令付差押えあるいは電磁的記録提供命令について、そこで通信傍受法と異なるという御指摘だと思いますけれども、被処分者以外の者に対する通知の仕組みがないということ、私どもとしては不当であるとは考えてはおりません。

本村委員 通信傍受法はリアルタイムであるということも一方で法務省からも言われました。しかし、二〇二四年中の通信傍受の実施状況国会報告概要というものを見させていただきましたけれども、二〇二四年中の傍受方法でいいますと、一時的保存をされたもので盗聴しているというのがほとんどなんですよね。ほとんどのケースが一時的保存をして、それで聞いているという点で、リアルタイムなのか保存されたものなのかという点では全く理由にならないというふうに思いますし、継続性ということであれば、何月から何月までというふうに限定をしない場合も継続性はあるというふうに思いますけれども、その点、いかがでしょうか、大臣。

鈴木国務大臣 リアルタイムということではなく、まさに先ほど申し上げましたけれども、通信傍受の方は当該通信の当事者のいずれの同意も得ずに行うものであるというもので、これは継続的、密行的に憲法の保障する通信の秘密を制約をする性質の処分ということで、そうした趣旨から今回の電磁的記録提供命令とは異なるという趣旨で御答弁申し上げたところであります。

本村委員 済みません、電磁的記録提供命令は、じゃ、どこに同意を得るんですか。

鈴木国務大臣 電磁的記録提供命令は、先ほど申し上げましたように、既に存在をしている記録、ここの電磁的記録の記録や提供を命ずるにとどまっているところであります。これはそうした供述というものを強いるというものではないというのは答弁を申し上げているとおりでありまして、そうした趣旨から、通信傍受法に基づく通信傍受と電磁的記録提供命令、これはそうした同列での比較にはなじまないと考えております。

本村委員 全く理由になっていないというふうに思うんですね。

 通信傍受法については犯罪と関係のない情報の取得を防止するための手続はどうなっているのか、そして電磁的記録提供命令ではどうなっているのかという点をお示しをいただきたいと思います。

森本政府参考人 通信傍受法におきましては、別表に掲げる対象犯罪について、同法が定める厳格な要件を満たす場合に、裁判官が発する傍受令状により、傍受すべき通信が行われる蓋然性のある特定の通信手段に限り、通信を傍受することができるものとされております。

 また、同法におきましては、傍受の実施をしている間に行われた通信であって、傍受令状に記載された傍受すべき通信に該当するかどうか明らかでないものについては、いわゆるスポット傍受として、傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するのに必要な最小限度の範囲に限り、当該通信の傍受をすることができることとされております。

 なお、先ほど委員から、一時保存が多くてリアルがないという話がありましたが、一時保存というのも、過去にあるものではなくて、令状請求した段階ではないものについて、現在から将来に向けての通信を傍受した、その記録をもらってくるというものでございますので、やはり同列には論じられないものというふうに考えております。

本村委員 一時保存したものだけもあるんですけれども、その場合はどうなるんでしょうか。

森本政府参考人 一時保存のものが多いのは、委員御指摘のとおりでございます。

 一時保存のものというのも、通信傍受は現在から将来に向けての通信を傍受しますので、令状請求して、こういう要件で犯罪関連通信が行われるのが相当だといって令状が出ますと、ここから先の会話について傍受して一時保存したものが警察に事後にやってくる、記録として。そういう仕組みになっているものというふうに承知しております。

本村委員 じゃ、将来か過去かという点で違うということだとは思いますけれども、その内容については、どちらが重要なのかというのはその内容によるわけで、通信傍受法であるのか、電磁的記録提供命令であるのかという点では違いがないというふうに思います。

 そして、今言われた、答弁されましたように、通信傍受法の中では限定があるけれども、しかし、電磁的記録提供命令の方では、犯罪と無関係な情報の取得を防止するための手続がないということも答弁をしていただきました。

 そして、次に、通信傍受法では犯罪と無関係な情報を消去する手続はどうなっているのかという点、そして、電磁的記録提供命令ではどうなっているのかという点、お示しをいただきたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 通信傍受法二十九条におきましては、検察官又は司法警察員は、傍受をした通信の内容を刑事手続において使用するための傍受記録を作成しなければならず、傍受記録は、傍受をした通信を記録した記録媒体等から、傍受すべき通信に該当する通信等以外の通信の記録を消去して作成するものとされております。

 電磁的記録提供命令におきまして、電磁的記録提供命令に基づいて提供を受けた記録の消去に関する規定はございません。

本村委員 この表の四番目のところですけれども、通信傍受では、スポットモニタリングの記録は消去され、捜査機関の手元に残らないというふうにありますけれども、今回の電磁的記録提供命令ではずっと蓄積をされるという問題があります。

 そしてもう一つ、通信傍受法では違法な手続で取得をされた情報は消去をされるのか、電磁的記録提供命令では消去をされるのか、お伺いをしたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 通信傍受法第三十三条第三項におきましては、裁判所は、傍受等の処分を取り消す場合において、当該傍受に係る通信が傍受すべき通信等に当たらないときなどには、検察官等に対し、その保管する傍受記録等のうち当該傍受の処分に係る通信等の消去を命じなければならないこととされております。

 それに対しまして、電磁的記録提供命令につきましては、先ほど申し上げましたとおり、消去に関する規定はございません。

本村委員 違法に取得をされた情報を、通信傍受法では、裁判所は消去を命じなければならないとあるのに、電磁的記録提供命令はそれもないわけです。

 また、通信傍受法では捜査機関の濫用を防止するための制度的担保として罰則がありますけれども、その罰則をお示しいただきたいと思います。また、電磁的記録提供命令では、捜査機関の濫用を防止するための制度的な担保、どうなっているのかお示しをいただきたいと思います。

森本政府参考人 通信傍受法におきましては、捜査等の権限を有する公務員が、その捜査等の職務に関し、電気通信事業法等に規定する通信の秘密を侵す行為の罪を犯したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処することとされております。

 これは、通信傍受が、現に行われている他人間の通信の内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ずに行うものであり、継続的、密行的に憲法の保障する通信の秘密を制約する性質の処分であることを踏まえて、特別の罰則規定を設けることとしたものと考えられます。

 これに対して、電磁的記録提供命令につきましては、通信傍受と異なり、既に存在している電磁的記録の提供を命ずるものにとどまり、現行の刑事訴訟法における他の強制処分と同様に、先ほど申し上げたような、継続的、密行的に通信の秘密を制約する性質の処分ではないことなどを踏まえて、特別の罰則規定を設けることとはしておりません。

本村委員 捜査機関の濫用を防止するための制度的な担保が電磁的記録提供命令ではないわけです。その点も、盗聴法よりも危険性があるわけです。

 私たちは、盗聴法と呼ばれる通信傍受法、これも問題だと思いますけれども、その問題ある通信傍受法でさえ、被疑者、被告人の個人情報を慎重に扱う姿勢があるにもかかわらず、あるいは第三者の方々の個人情報を扱う慎重さがあるにもかかわらず、電磁的記録提供命令は、何の罪もない人の情報さえ捜査機関が容易に取得をでき、そしてプロファイリング、使われたり、人権侵害、プライバシー侵害を引き起こされる危険性が高いものとなっております。そういう認識を、法務大臣、持つべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、通信傍受法による通信傍受、これは現に行われている他人間の通信の内容を知るために、当該通信の当事者のいずれの同意も得ずに行うということで、これはまさに継続的、密行的に憲法の保障する通信の秘密を制約するものであります。

 その一方で、電磁的記録提供命令につきましては、通信傍受とは異なって、既に存在をしている電磁的記録の提供を命ずるものにとどまっておりまして、これは現行の刑事訴訟法における他の強制処分と同様に、先ほど申し上げたような、そうした継続的、密行的に通信の秘密を制約する性質の処分ではないわけであります。

 そうした中で、それを同じ次元での比較ということとは、我々としては、そういう認識ではおりませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。

本村委員 個人情報保護、プライバシーの保護にもっと真剣に向き合うべきだということを強く申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。

 刑事訴訟法改正に関連し、先日の質問ではシステムの開発の進捗について伺いました。本日は、その根幹を成す情報の保管と管理などについて確認をしてまいります。

 手続のデジタル化が進む中で、刑事手続に関する情報がどのように保管され、どこで管理されるのかは国民の信頼と国家主権に関わる極めて重要な課題です。現在、デジタル庁が進めるガバメントクラウドでは、戸籍、住民票、年金、介護、住民税など自治体が管理する個人情報が現段階ではアマゾンウェブサービスなど外資系を中心に海外企業のクラウドに保管されることになります。

 そして、今回の法改正では、電磁的記録の提供を可能とする新たな制度が導入されようとしています。事実と無関係な情報や性犯罪の被害記録のような極めて繊細なデータまでが外資に管理されるおそれがあるのではと不安を抱く声は決して少なくありません。

 ここで伺います。刑事手続に関するシステム運用のデータの保管について、クラウドの利用は想定されているのでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 刑事手続のデジタル化のためのシステムの整備につきましては、機微な情報を取り扱い、犯罪事象への迅速な対応が常に求められるという刑事手続の特性に鑑み、高い情報セキュリティーの確保を大前提とした上で、手続において取り扱う書類を電子データ化し、関係機関等との間で円滑に、迅速にオンラインで発受することなどを可能とするシステムを整備する必要がありますことから、一般的なクラウドサービスを利用することは想定しておりません。

吉川(里)委員 クラウドの利用は想定していないということでしたが、それでは、サーバー機器やその設置場所というのは国内に限定しているのか、また、その運用管理は国内企業によって行われるのか。全てが国内で完結しなければ情報の主権は守れないと考えますが、政府の見解を伺います。

森本政府参考人 法務省におけます刑事手続のデジタル化のためのシステムに用いるサーバーにつきましては、日本の民間企業が国内で製造したものを利用することとしておりまして、そのサーバーは国内に蔵置することとしております。

 また、サーバーの管理運用につきましては、セキュリティーの確保を大前提とした上で、適切な管理運用ができるように検討してまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 現段階では、日本の中で国内企業によって行われるということですけれども、これは仮に、データの蓄積というのは際限がありません。蓄積するほど管理コストというものが膨らんでまいります。もし今後、外資に頼るようなことになるとすれば、いわゆるデジタル赤字も膨らみ続けることになりますので、データ主権、デジタル主権というのは我が国が責任を持って守るべきものであると思います。国民からの信頼を得るためにも、初めから国内完結を原則として、明確な方針を示すよう強く求めます。

 次に、取調べの録音、録画についてお尋ねをしてまいります。

 前回の参考人質疑では、指宿参考人から、取調べの録音、録画は、取調べの透明性を高めるだけでなく、捜査官の取調べ技術の向上にもつながるという印象的な御指摘がありました。実際の現場でこうした効果というものは確認されているのか、また、政府として、この指摘をどのように受け止められているのか伺います。

森本政府参考人 検察当局におきましては、日々の捜査、公判活動における指導、それから取調べの適正等を確保するための各種通達の発出等を行って、取調べの適正確保等には格別の配意を払っているものと承知しておりますけれども、御指摘の録音、録画について申しますと、録音、録画を実施した取調べについては、決裁官ら、実際に担当している検事ではなくて決裁をする者ですが、において、その記録媒体を視聴するなど、適宜の方法によってできる限り速やかに内容を確認する、その内容の確認に際しては、任意性の有無という刑事訴訟法上の視点のみならず、取調べ中の個々の言動の適正さについても厳しくチェックするなどという指示がなされているものと承知しております。

 その上で、そういった形で録音、録画を実施した取調べについて、決裁官において内容を確認するなどして、取調べ方法について、部下、検察官を指導しておりますので、そうした取組を通じて、供述の任意性の確保その他必要な配慮をしつつ、真実の供述が得られるように、取調べの適正確保と取調べの技術向上という観点で、取調べの録音、録画というものが現在も用いられているものと承知しております。

吉川(里)委員 録音、録画が、現場の確認や指導を通じて、捜査官の技術向上に一定の効果をもたらしていることは理解しました。

 また、指宿参考人は、人に見られるという取調べの可視化は、捜査官の取調べ技術の改善や意識改革につながるとおっしゃっていました。

 我々参政党もまた、国民の意識改革と政治参加が社会を変える原動力と訴えてまいりました。国民を変えるのは意識から。だからこそ、現場の変化を広げていく取組を求めます。

 さて、平成二十八年の刑訴法改定では、附帯決議により、被疑者以外も含め、可能な限り録音、録画を行うとされました。一方、この対象事件は、全体の三%にとどまっていると参考人からの御指摘がございました。

 これを法務省に確認をしたところ、検察庁に限って言えば、被疑者の取調べの録音、録画率は九五%に達しているということであり、制度上の義務を超えた自主的な取組というものが進められているという点は評価ができるということなんですけれども、任意の取調べや参考人の取調べなどについてはまだ課題が残されているのではないかと思います。

 昨今、取調べに関する在り方が問われる中で、検察庁として、録音、録画に関して運用をどうしていくのか、大臣に伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今の録音、録画でありますけれども、最高検が公表した資料においても、令和三年度から令和五年度までの検察当局が取り扱った身柄事件の被疑者の取調べについて、検察当局は約九四%から九六%について録音、録画、これを実施をしているということであります。

 まさに、そういった中で、やはり適正化等々もございますし、様々な観点から積極的に録音、録画を行っているところでありまして、加えて、検察当局といたしましては、取調べの適正確保にも資する取組の一つとして、一定の在宅事件の被疑者の取調べについて、今年の四月の一日から録音、録画の試行を開始をしたと承知をしておりまして、今後もしっかりとそういった実施を行ってまいりたいと思っております。

吉川(里)委員 録音、録画というものは実施されているということですが、実際、取調べ中に、検事が、検察なめんなよとどなるような不適切な行為というのが明らかになったプレサンス事件というのがありました。こういう取調べの在り方が問われた事例もまだ記憶に新しいものでありますので、こういった取組だけでは解決に至らない現状があると考えますので、是非、運用の拡大に加え、全面的な可視化の法制化を改めて御検討いただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 村木厚子さんの事件では、検察自らが証拠を改ざんし、刑事司法への信頼が大きく揺らぎました。再発を防ぐには、証拠の保全や改ざんを防ぐ制度を整えることが必要かと思います。

 先ほどの円先生の御質問とも重なる点もあるかと思いますが、電磁的記録の証拠の保全、改ざん防止について現状を教えていただけますか。

森本政府参考人 御指摘の事件におきまして最高検察庁が取りまとめた検証結果報告書を踏まえまして、検察当局においては、順次必要な機器の整備を行うなどした上で、押収した電磁的記録媒体原本の内容の精査、検討は原則として複写物等を作成し、これを利用して行うこと、電磁的記録媒体原本については封印を実施すること、封印を開封する場合には他の検察官等の立会いの下で行うとともに、その経過を記載した報告書を作成するなど、押収された電磁的記録媒体に保存された電子データの改ざん、改変を防止する取組を実施しているものと承知しております。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 続いて、今般電子化される証拠書類の改ざん防止策について法務省ではどのような検討が行われているのか、大臣としての方針をお示しください。

鈴木国務大臣 証拠書類の電子データ、この非改ざん性の担保、これは極めて重要であると認識をしております。

 電子化された証拠書類の非改ざん性を担保する措置といたしましては、技術的に様々な方策があり得るわけでありまして、最高裁判所、警察庁等の関係機関、あるいは開発業者、こことも検討を重ねているところであります。

 引き続き、そうした関係機関ともきちんと連携をした上で検討を進めてまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 私は、証拠の改ざん防止については法律にしっかりと明記することが必要だと考えますので、そのことにより国民が検察に安心して捜査を任せられる信頼性の高い機関になることを願っております。

 最後に、重要なことなので確認をさせていただきたいことがございます。

 参考人質疑を通じて感じたのは、検察、警察、メディアなど社会的影響の多い組織ほど、情報の正確さと公平さが求められるということです。これは、経済団体などの民間の組織にも当てはまります。

 経団連は、昨年六月、夫婦別姓の推進を法務大臣に提言し、その根拠として、複数の旧姓通称使用によるトラブルの事例を挙げました。これをメディアが大きく取り上げて話題となり、総理も、今国会での争点だ、決着をつけなければならないとおっしゃられていたと。しかし、先日、トラブルの大半が既に改善されていたことが明らかになり、経団連自身も、情報が追いついていなかったと釈明していたと報じられています。

 法務大臣は経団連から陳情を受けている立場にあるかと思いますが、こういった特定の団体からの意見だったとしても、別姓議論の過熱の発端ともなった影響力の大きい組織であり、仮に情報が実態と違うのであれば、法務省として速やかに是正するなどの対応が必要だったのではと思いますが、大臣の見解を伺います。

西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 今御指摘の報道については承知をしております。他方で、経団連、当団体の会長が、トラブルがなくなったかといえばそうではないとの趣旨の発言をされたとの報道も同時にあったと承知をしております。

 何が実際の問題なのか、そういったことの把握、これは極めて大事だと思っておりますので、そうした把握を正確に行っていくとともに、まさにいろいろ、様々、国民の間でも議論がある問題であります。そうした中で、我々としては、しっかり情報提供をそういった趣旨も含めて行っていきながら、国民の各層、さらにはこの立法府における議論、これをしっかりと注視をしていきたいと思っております。

吉川(里)委員 刑訴法と同様に、夫婦別姓の議論においても、制度を変える根拠となる事実に基づいて議論がなされることを強く求めまして、本日の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、竹上裕子さん。

竹上委員 日本保守党、島田洋一代議士の代理となる竹上裕子でございます。代わりに質問いたします。

 では、刑事手続のデジタル化は、関係者にとっての利便性の向上が期待されますが、一方、ハッキングや人為的ミスによる情報漏えいや拡散の危険を高める意味を持ちます。

 そのために、北朝鮮や中国、ロシアなど、過去に大規模かつ巧妙なサイバー攻撃を繰り返してきた名うての情報機関による情報の入手や書換え、そういうものを狙ったサイバー攻撃が予想される中、高まるリスクにどう対処するのか。そして、これまで以上に法務省ではサイバーセキュリティーのレベルを数段上げる措置が取られているのか。機微情報へのアクセス規制、使用機器や使用アプリの限定規則に違反した職員への罰則規定は整備されているのか。鈴木法務大臣に答弁を求めます。

鈴木国務大臣 まさにこの刑事デジタルにおいては、新たなシステム、機微情報を取り扱う、そういった性質上、高い情報セキュリティーの確保は大前提になると考えております。

 そうした中にあって、先ほどの質疑の中でも御答弁申し上げましたけれども、まさにこうしたシステム開発においても、関係機関やあるいは関係開発業者と緊密に連携をしながら検討を進めているところであります。

 同時に、御指摘の海外等からのサイバー攻撃等のリスクへの対処法につきましては、刑事手続専用の閉域回線を通じて警察及び裁判所とのデータの送受信を行うこととする等々、そういったことも含めて情報セキュリティー対策に万全を期すべく、関係機関等と現在検討を進めているところであります。

 また、御指摘の機微情報へのアクセス規制、あるいは使用機器等の限定につきましても、従来から、機微情報へのアクセス制限、あるいは検察庁管理以外の端末の使用制限などをセキュリティーポリシーとして定めておりまして、違反をした場合には職責を問うこともあるものとしているところであります。

 今後とも、より一層こうしたセキュリティーポリシーを遵守をするように、職員の意識の徹底も含めて図ってまいりたいと考えております。

竹上委員 ありがとうございます。

 システム構築から人の管理まで、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問です。

 今年三月十四日、アメリカのトランプ政権において、機微な内部協議が外部に漏れる重大なミスが生じました。それは、中東のイスラムテログループ、フーシ派に対するミサイル攻撃実行をめぐる政権幹部間の協議が、特にセキュリティーの厳格な政府のシステムではない民間のメッセージアプリ、シグナルを用いて行われたという点が大きな問題となりました。特に、情報漏えいの直接の原因というのが、マイク・ウォルツ大統領安全保障担当補佐官がうっかり、雑誌アトランティックの編集者を、外部の人ですね、協議のサークル内に入れたためと言われています。

 他国の事案ではありますが、法務省として、この秘密漏えい事件からいかなる教訓を酌み取り、いかなる防止措置を求めるのか、鈴木法務大臣に答弁を求めます。

鈴木国務大臣 今御指摘の件、これは報道で承知をしているところであります。

 もっとも、実際何が起こっていたのか、そこについての評価、これは私はする立場にはございませんけれども、一般論として申し上げて、実際に使用されていた、そうしたメッセージアプリの問題なのか、あるいは、そうではなくて、その中に、ほかの関係者ではない者が入っていたことによるためなのか、そうしたことはしっかりとした分析を行っていく必要があるとは考えております。

 そういった中で、刑事手続におきましては、関係者のプライバシー、名誉に多大な影響を及ぼしかねない機微な情報が取り扱われておりますので、これは万が一にも情報の流出等によって関係者の権利利益が侵害されることがないよう特別の配慮、これが必要であると認識をしております。

 そうしたリスクに対処するための措置につきましては、まさに今御指摘をいただいたことを踏まえれば、そうしたことが起こらないように万全を尽くしていかなくてはいけないと思っておりますし、そういった中で、関係機関等とも検討を進めているところであります。

 そうした中で検察庁におきましては、デジタル化に対応するための研修、教養を実施をするなどしてきておりまして、本法律案による刑事手続のデジタル化に向けました情報セキュリティーに関する研修等につきましても、関係機関等と緊密に連携をしつつ検討を進め、まさに職員の意識、この徹底ということが大事だと思いますので、そうした職員の意識の徹底を図って、様々な、そうした事態というものが生じることが決してないように、この点についてはきちんと努力をしてまいりたいと考えております。

竹上委員 まだまだ原因がはっきりしていないということで、しっかりとした情報分析、それに対する対応をお願いいたします。

 事の大小にかかわらず、誤りが生じた際に臨機かつ誠実に善後処置を講じる能力において、石破内閣には重大な疑問を抱かざるを得ません。

 四月一日、この法務委員会において、同僚の島田洋一議員が、英利アルフィヤ外務政務官のSNS発信を問題にいたしました。世界の人権団体は日本保守党との関係を完全に切れとの英語発信、これなんですけれども……

西村委員長 竹上さん、理事会で協議していないものの掲示は控えてください。

竹上委員 申し訳ありません。うっかりしました。

 ということで、外務政務官の肩書で今なお国際的に発信され続けています。そのため、島田議員は、拉致被害者を救う会の副会長として長年築いてきた北朝鮮人権問題での国際連携についても支障が生じています。

 ところが、削除を求める島田議員の要請に対し、アルフィヤ外務政務官は、一政治家としての発信、国会議員という、全く理由にならない理由を繰り返し、不誠実極まりない応答に終始しています。このような内閣による刑事デジタル法の運営を信頼できるはずがありません。

 もう一度鈴木大臣にお尋ねしますが、外務政務官という国家権力を背景にした人物が、一政治家としての発信として、特定の国政政党との関係を全て切れと国際発信し続けること、つまり閲覧できる状態の放置を正しいと思うか、それとも、これが石破内閣の基本姿勢なのか、大臣の答弁を求めます。

鈴木国務大臣 この法務委員会におきましては、法務大臣として御答弁を申し上げる立場にございます。そういった中にあって、個々の政治家の活動、特にこれは外務政務官に就任する前の投稿ということでございますので、私、法務大臣としてこのことにコメントする立場にはないということを御理解をいただきたいと思います。

竹上委員 大変、私の方も失礼いたしました。

 では、最後の質問です。

 中日本高速道路システムの障害により、四月六日午前零時半頃からその翌日まで、当初、百六か所でETCレーンが閉鎖され、拡大してまいりました。すごい大渋滞が発生いたしまして、一般利用者、その中には私のスタッフもおりましたが、一時間以上の遅刻ということで、多大な被害を被りました。

 これにつきまして、中日本高速道路の経営陣の無能、不見識は言うまでもないがというのが島田先生のお言葉ではありますが、なぜ中野洋昌国土交通大臣が速やかに政治判断を下し、料金を取らずに車を流すようETCレーンの開放を指示しなかったのか、責任重大と言えるのではないでしょうか。

 このような危機管理能力が欠如した石破内閣の無責任な対応を見るにつけ、刑事デジタル法の運営にも懸念を抱かざるを得ません。

 なぜ障害発生の当初から、国民が非常に大きく関わった大規模な交通障害です、ETCレーンを開放しなかったのか、国交政務官に答弁を求めます。

高見大臣政務官 四月六日の午前零時半頃から、NEXCO中日本が管理する一部料金所におきまして、ETCの通信障害が発生をし、ETCレーンの通行ができなくなり、渋滞が発生するなどの事態が発生しましたが、七日十四時から、障害が生じた全ての箇所で応急復旧が終了し、正常な運用を再開しました。この間、利用者の皆様に御迷惑をおかけしたことは大変に遺憾に思っております。

 正常な運用の再開までに時間を要したことから、また、障害の発生している料金所が拡大をして複数箇所で渋滞が発生するに至ったため、六日の十三時三十分頃から、ETCの障害が発生した全ての料金所で、その場で料金徴収を行わずに、速やかに車両を通過させるという措置を取りました。

 御指摘のように、渋滞解消の対応が遅過ぎたのではないかという批判があることは承知をしております。

 国土交通省としては、NEXCO中日本に対して、原因の早期究明を図り、その上で今回の事案をしっかり分析をして、大規模システム障害の危機対応マニュアルの整備ということも含めて再発防止策を整理するように、引き続きしっかりと指導を行ってまいります。

竹上委員 答弁ありがとうございました。

 本当に、権限者そして責任ある立場の方の一言の指示というのは非常に大きく関わってまいります。それが全体の運営にも関わってまいりますので、今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

西村委員長 次回は、来る十六日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会


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