衆議院

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第13号 令和7年4月25日(金曜日)

会議録本文へ
令和七年四月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    上田 英俊君

      鬼木  誠君    上川 陽子君

      神田 潤一君    工藤 彰三君

      河野 太郎君    土田  慎君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      森  英介君    山本 大地君

      若山 慎司君    有田 芳生君

      篠田奈保子君    柴田 勝之君

      寺田  学君    平岡 秀夫君

      藤原 規眞君    松下 玲子君

      萩原  佳君    藤田 文武君

      小竹  凱君    大森江里子君

      平林  晃君    本村 伸子君

      吉川 里奈君    島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   外務大臣政務官      生稲 晃子君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局民事局長            福田千恵子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    尾原 知明君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小山 定明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   大鶴 哲也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 柏原  裕君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     鬼木  誠君

  稲田 朋美君     土田  慎君

  棚橋 泰文君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     井出 庸生君

  工藤 彰三君     棚橋 泰文君

  土田  慎君     山本 大地君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 大地君     稲田 朋美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事裁判情報の活用の促進に関する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として消費者庁審議官尾原知明さん、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省矯正局長小山定明さん、外務省大臣官房長大鶴哲也さん及び外務省大臣官房参事官柏原裕さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也さん、民事局長福田千恵子さん及び家庭局長馬渡直史さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若山慎司さん。

若山委員 おはようございます。自由民主党の若山慎司でございます。

 本日は、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案ということで質問をさせていただきます。

 この民事裁判情報を提供するという意義として、司法の透明性の向上であったり、また、行動規範、紛争解決指針の提示、そして紛争解決を補助するAIの開発基盤整備などということが意義として挙げられていますけれども、これまで年間二十万件ほどあった民事判決のうち利活用されてきたものというのは、私も学生時代、いろいろ文献をあさったりもいたしましたが、出版社等で個別に集めてきて、人手と費用をかけて処理をして世に出てくるというのは、やはり全体の中で数%しかありませんでした。

 そうしたときに、このようなシステムができて網羅的なデータベースができることによって様々な可能性が生まれてくることは、実に歓迎すべきことであると思っております。特に、若い法曹人であったり図書館にこもっている学生にとっては、近く、もう少し楽になるのではないかというようなことも予想されます。

 そうした中で、このシステムを用いて裁判例の統計的、横断的な分析が行われることで、例えば、特定の事件類型における慰謝料の額であったり、また、交通事故の態様ごとに事故の形態の分類分けの中で過失割合なんかの目安についても、判例の積み上げの中でAIによって分析され、出される、そうすると、様々な企業や団体にとって、業務の効率化であったり、また適正化が図られるというようなことが期待されるのではないかと思われます。

 他方で、特定の民事裁判情報を一件だけ取得したいとか、また、交通事案など特定の分野に限って小口に取得したいというようなニーズもあることも事実ではないでしょうか。

 そうしたとき、検討会の有識者ヒアリングでは、システムの構築に一億五千万、年間のランニングコストで四千四百万円程度かかるというようなことも数字としてはお示しされているようですけれども、一件ずつ入手したいというニーズに応えようと思うと、どうしてもやはり単価はかかるんだろうなと思っているときに、いろいろなものを見てきますと、決済システムやいろいろなものにお金がかかる、だから小口はちょっと最初は無理かなというようなお話も検討会でも出ているやに伺っております。

 提供料金としては、指定法人が決まってから定められることとは思いますけれども、小口提供のこういったニーズに対して、今後、長期的な視野に立って、技術的な課題や運用上の課題を踏まえて、法務省として、制度として検討いただけるものかということをまずはお聞きしたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、大量の情報を処理する技術を用いて多数の裁判例の横断的分析を行うなど、デジタル社会における新たなニーズに応えるために、指定法人において基幹となる網羅的な民事裁判情報のデータベースを整備、提供し、民事裁判情報の幅広い利用を可能とするものでありまして、基本的に、その一次利用者においては、利用料金を支払ってデータベースの全部を利用するということを想定しております。

 御指摘のようなニーズは有識者検討会においても指摘されましたが、指定法人に対して特定の類型や一件ずつの民事裁判情報の提供を求めることについては、委員御指摘のとおり、そのための検索機能や決済手段等所要のシステムの整備に相応の費用を要すること、また、一件ずつの提供を求められるのは先例性や社会的関心の高い事案に係るものと想定されますが、こうした事案については既に裁判所ウェブサイトにおいて無償で公開されていることなどを踏まえ、まずは、先ほど申し上げた新たなニーズに応えるために本制度を整備することとしたものです。

 御指摘のニーズへの対応は、民事裁判情報のより幅広い利用に向けて有用なものとなり得ると思っておりますが、指定法人のデータベースの運用状況やデジタル技術の進展状況に応じて、将来的に検討されるべき課題であると考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 これからこれが成立をしてシステムとして構築されていく過程の中で、また検討していただける機会があればということを思う次第でございます。

 他方で、今出ました網羅的なビッグデータを構築していくということも、今回、そのビッグデータを使って様々に利活用していこうとしているわけですので、まずはその網羅的なビッグデータをどう構築するのかということが第一義的にはあるんだと思います。

 その中で、今回はまずシステムの構築に、いわゆる電子判決書を対象にして行うということなんだと思いますが、それが成った後ということにはなるのでしょうけれども、紙媒体の判決書、これについてもデータベース化することを、より網羅的なビッグデータをということであれば、将来的にこれも考えていかなければならない課題だと思いますが、いかがでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案では、既存の紙媒体の判決書については、デジタル化して指定法人のデータベースに収録することとはしておりません。

 より網羅的なデータベースを整備するという観点からは、既存の紙媒体の判決書についてもデジタル化した上でデータベース化することが望ましいとは考えられます。しかし、現在、判決原本の保存期間が五十年とされるなど、対象となる判決書の物量、ひいてはデジタル化の作業に伴う負担が膨大なものとなりまして、また、紙媒体で作成された判決書等の原本とデジタル化した情報の同一性を確認し、情報の正確性を担保する方策を講ずる必要があるなど、様々な課題がございます。

 そこで、まずは、デジタル化された後の民事、行政事件の訴訟手続で作成される電子判決書等を対象として、基幹データベースの円滑な整備及び安定的な運用を図ることとしており、紙媒体の判決書の収録については、費用対効果も含め、将来的に別途検討すべき課題であると認識をしております。

若山委員 ありがとうございました。

 今、二点、小口のお話と紙媒体のお話を申し上げましたが、たまたま私も、図書議員連盟、国会図書館の関係の議連の活動に事務方としてちょっと関わらせていただいたことが秘書としてございましたけれども、やはり、マイクロフィルムに残していかないといけないということもあって、図書館もデジタル化にはいろいろ苦労を、国立国会図書館も苦労してまいりましたけれども、今の話で、本当に、保存期間が限られておりますので、そうした中で、なかなか容易には成りませんけれども、意識してそういったものも取り組めるようになってくるといいなと願う一人でございます。

 他方で、私は、このデジタル化のデータベースを作っていくことというのは、紛争の予防にも寄与してくれるのではないかと思うところでございます。

 例えば、AIがODR等において活用される、AIで学習した、このデータベースを基にして活用した内容がODR等で活用されることで、適切な紛争解決に資する知見や助言を提供できるようになってきたり、また、紛争の傾向やパターンが明らかになることで、紛争の解決のみならず予防にも寄与するのではないかというのが私の思いでございます。

 例えば、基幹データベースに含まれる名誉毀損に関する大量の裁判例を放り込むことによって学習させたAIをソーシャルメディアのコンテンツモデレーションに活用することによって、名誉毀損に関する紛争を事前に予防できるのではないか。これは、要は、SNSで公開される情報に、これは名誉毀損に該当し、過去の判例にもこういうのがあるなということになった場合に、自動的に排除するような仕組みも可能になるかもしれない。

 また、先ほどちょっと挙げましたけれども、交通事故紛争処理への活用という点では、損保業界も新たな利活用機関というふうに数えられるのかもしれません。

 紛争予防への期待と新たな利活用機関の拡大という点でどのようにお考えになっておられるか、お聞かせいただけますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、民事裁判情報は、民間企業、団体にとってもその事業を行う指針となり得る情報であり、指定法人のデータベースについては、様々な企業、団体によって活用される可能性があると考えております。

 この法律案の提出に至る検討の課題においても、例えば、民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議においては、民事裁判情報の活用が国家経済の活性化にもつながり得るものであると指摘されたところです。

 また、有識者検討会においては、委員から、企業が訴訟への対応のみならず訴訟前の紛争への対応を検討する際に、類似の判決情報を容易に入手できるため、企業活動の利便性向上の観点から大いに価値のあるものと評価しているとの意見や、また、法律において示された規範をより具体化することができ、ビジネスの基盤になるとともに、市民生活の安定や発展に関係し、ひいては対外的な日本の信用の向上にもつながるだろうとの意見があったところです。

 法務省としては、指定法人のデータベースが適切に運用され、より多くの主体に利用されるよう努めてまいりたいと考えております。

若山委員 ありがとうございました。

 ここまで、データベース化されることでのメリットについて、メリットや今後の課題について少しお話ししてまいりましたが、一番やはり大事なところは、データベース化した後のシステムの中で、プライバシーが脅かされるというような事態があってはならないということだと思っております。

 個人情報を含む判決書がデータベース化されることで、訴訟関係者のプライバシーが脅かされたり、差別的な判断に用いられるおそれも高まる。特に、DVやストーカー被害者に、被害に関わる損害賠償請求事案等、当事者を含む訴訟関係者のプライバシー等には格別の配慮を要する案件があろうかと思いますが、そうしたときに徹底した安全管理が求められております。

 個人に関する情報を含む民事裁判情報を提供するための規律は、どのように考えておられるでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定法人の保有する民事裁判情報等の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理に関する事項を業務規程に定めなければならないものとし、法務大臣による認可の対象とすることで、適切な管理が行われることを担保しております。

 安全管理の具体的な内容については指定法人の業務規程において定められることになりますが、有識者検討会においては、業務マニュアルの整備等の組織的安全管理措置、従業者に対する教育等の人的安全管理措置、端末の盗難防止等の物理的安全管理措置、情報セキュリティー対策等の技術的安全管理措置などを講ずる必要があると指摘されております。

 法務省としては、こうした指摘を踏まえつつ、十分な安全管理措置が講じられるよう、業務規程の認可を適切に行ってまいります。

若山委員 ありがとうございました。

 実は、いま一問、企業の営業秘密の保護ということについても用意はしておりましたのですけれども、ここについては、多分、今の個人情報の延長線上にもあろうかと思いますけれども、しっかりと取り組んでいただけることであるという前提で、ちょっと質問ではなく、少し私自身が今回のことについて思うところを述べて終わりにしたいと思います。

 AIによるデータ分析というのは、様々な相関関係を明らかにすることでは非常に有意義なことだと思います。しかし、不正確な結果を招くこと、そういうおそれがあることもまた事実だと思います。

 というのは、時代の流れによって、過去の判決に、必ずしも今の社会に過去の判決が追いついていないというようなものもデータ化されるわけですから、そうしたときには、そこに予測の限界というものがあるんだということを十分に留意する必要があるんだと思います。

 司法分野における真のDXの実現という意味では、あくまでこれはスタート地点にすぎず、新制度については、広く国民の理解を得ながら、よりよい制度としていくべく、創設後も制度の在り方については不断の見直しを行っていく必要があると考えます。

 利用しやすい検索システムとともに、法律実務家等にこういったものを提供することで、法的な安定性、公平性、そして一貫性が高まることを期待して、私の質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、篠田奈保子さん。

篠田委員 おはようございます。立憲民主党・無所属の篠田奈保子でございます。

 今回の法案は、民事判決をデータベース化し、それを活用するということで、大変意義のある法案だというふうには思っております。

 しかしながら、弁護士として、民事裁判の実務の立場から、若干懸念をする点もございますので、今日は、その点をまず中心に御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の法案に関する資料をいただきました。この統計資料によりますと、令和五年の民事判決、簡裁、地裁、高裁、最高裁の判決の総数が年間約二十五万件と多数に及ぶんですけれども、まず、このような大量の判決を匿名処理、この法案では仮名処理と言っておりますが、を実施するということでございます。どの程度の規模の人員でこのような作業をすることを想定されているのでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、仮名処理やデータベースの整備、運用について、民間に蓄積された知見や技術を生かして、適正かつ確実に業務が行われるよう、一定の要件を備える民間団体に当該業務を行わせることとしており、業務効率化を図るためのAI技術を積極的に活用するなどして、適正かつ確実に仮名処理を始めとする業務を遂行することが期待されております。

 仮名処理に必要な人員体制については、指定法人において業務の効率化を図るためにどのようなシステムを用いるかなどといった事情によることになりますので、現時点で確定的なお答えをすることは困難ではございます。

 なお、有識者検討会において紹介された実証実験の結果では、AIを利用して仮名処理を行い、出力された結果を人手で二重に確認する方法を前提として、一件当たりの作業時間は平均十数分であり、年間約二十万件の判決の仮名処理を十六人程度の体制で確認、処理できるというふうに言われております。

篠田委員 御説明ありがとうございました。

 そして、先ほど若山委員からも御指摘がありましたけれども、やはり仮名処理、匿名処理をしっかりと徹底していただくことがプライバシー保護の観点から重要だというふうに思います。

 今回、データベースを運用する指定法人は、法務省の承認を得てですが、業務の一部を他の者に委託でき、また、委託を受けた者も、指定法人の同意を得て、業務の一部を更に再委託できるということになっております。

 民事裁判情報は個人のプライバシーの情報の宝庫でございまして、センシティブな内容も多く含まれる関係で、委託、再委託と、このような形になると、より情報漏えいのリスクなどが高まるのではないのかなということが懸念されるんですけれども、その辺のリスクの手当てをする方策としてどのようなものが予定されているか、御説明いただけますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定法人の保有する民事裁判情報等の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理に関する事項を業務規程の記載事項とし、法務大臣の認可を受けなければならないものとしており、指定法人は、御指摘のとおり、委託先及び再委託先における取扱いも含めて、その安全管理を確保すべき義務を負っております。

 したがって、指定法人が、民事裁判情報管理提供業務の一部を委託し、又は、再委託に同意をするに当たっては、指定法人において、委託先との契約及び再委託に係る同意を通じて、それらの委託先等を適切に監督することにより、情報セキュリティーを確保することが求められます。

 加えて、本法律案では、業務の一部の委託又は再委託に当たり、指定法人が法務大臣の承認を受けなければならないということにしております。

 法務省としては、業務委託が行われることによって、民事裁判情報に係るデータベースの整備、運用を適格性のある法人が行うこととする本法律案の趣旨を損なうことがないよう、情報セキュリティーの適切な確保の観点も含め、承認の可否について適切に判断してまいります。

篠田委員 是非徹底いただきたいというふうに思います。

 あと、民事裁判情報、判決の中には、いじめによる自殺、それからいじめに対する損害賠償事件や、学校などでの子供の事故、子供の虐待事件、性被害に関する損害賠償請求など、未成年の子供や家庭を取り巻く事案も当然含まれてまいります。

 判決の中で詳細に、家庭の事情、子供の生育歴、高度なプライバシーに及ぶ情報が当然含まれてまいります。当事者が特定された場合には、子供や関係者の生活において重大な影響が及びます。

 そこで、仮名処理、匿名処理が大変大事なんですけれども、匿名処理をしたとしても、近時、報道やSNSなど、様々なほかの情報を合わせることによって当事者が特定される、こういったことを何かネット上で得意げにやる方とかということも一部あるようでございますけれども、そういったリスクは消えないと思うんですね。

 特に、私は、小さな町で弁護士をしております。小さな裁判所の支部ですと、そこで管轄される自治体は、一万人だったり数千人だったりするわけです。支部の裁判所の名前だけで判決を見ると、大体ここの、この人の事案なのかというようなことが特定されることも想定されて、都会で、大きな裁判所で、いつも匿名性が保たれて、裁判所に行けば傍聴人がいて、裁判が公開されているということを体感している当事者の方々とはまた違う感覚で、地方では民事裁判の原告や被告になっておられる方々もいらっしゃいます。

 こういった匿名処理を、仮名処理を仮にしても、当事者の特定されるリスクがなかなか消えないというふうには思うんですけれども、これに対してどのような対処が予定されているか、お答えいただけますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、民事裁判情報には、訴訟関係者の権利利益に特に配慮する必要がある事案も含まれます。

 そのため、本制度においては、法務省令及び業務規程の定めるところに従い、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる情報などに仮名処理を行うことに加えて、そもそも、指定法人は、民事訴訟法上の秘匿決定や閲覧等制限決定の対象となった情報については取得しない、また、個別の事情を踏まえた申出を受けて、必要に応じた追加的な仮名処理を行うことによって、事案の性質に応じた訴訟関係者の権利利益に対する配慮を行うこととしております。

 この申出の処理に関する事項は、指定法人の業務規程の必要的記載事項とされた上で法務大臣が認可することになりますが、有識者検討会では、民事裁判情報が利用者に提供される前の段階においても、訴訟関係者等による追加的な仮名処理を求める申出を受け付けることが考えられる、そのために、指定法人が行う第一次的な仮名処理の基準を公開することが考えられるなどと指摘されているところです。

 法務省としては、有識者検討会における議論も参考にしながら、訴訟関係者の権利利益に対する適切な配慮が行われるよう、業務規程の認可等を通じて適切に対応してまいります。

篠田委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 それから、私は、女性の弁護士として、女性の方々の御依頼に応じることが大変多くございまして、DV被害者、それから性犯罪、ストーカーの被害者に係る損害賠償請求などを手がけておりました。

 判示される、判決される内容は、これもまた高度にプライバシーに及ぶ情報が含まれております。仮名処理が仮になされるとしても、被害者としては、自らの判決が、民事裁判情報のデータベースとして、指定法人に管理されて、利用されるということにすら、やはり心理的な嫌悪感ということを生じる方もいらっしゃるのではないのかなというふうに、私の過去の依頼者などを思い出して、そう考えております。それにより、訴訟提起そのものや判決に至ることをちゅうちょするようになったりはしないかとの懸念もございます。

 こういった懸念があることもちょっと念頭に置きつつ、そういったことに対する手当ては何かございますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 御懸念の点につきましては、有識者検討会においても議論されました。そこでは、御指摘のような事案に係る民事裁判情報についても、同種事案において参考にすべき規範が示されたり、規範への当てはめに際して考慮された重要な事実関係が明らかにされたりするものが少なからずある、これらを活用することで、むしろ同種事案の解決に役立ち、適切な権利の実現に資することになることから、指定法人は、これらの事案を含め、あらゆる事案の民事裁判情報を取得し、データベースに収録する必要があるとされたところです。

 本法律案では、先ほど申し上げたとおり、指定法人による民事裁判情報の取得、管理、提供の各場面において訴訟関係者の権利利益に対する配慮をしておりまして、具体的には、指定法人は、民事訴訟法上の秘匿決定や閲覧等制限決定の対象となった情報を取得しない、保有する民事裁判情報等については、目的外使用を禁止するとともに、漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理措置を講じる、利用者への提供に当たっては、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる情報等に仮名処理を行う、さらに、個別の事情を踏まえた申出を受けて、必要に応じた追加的な仮名処理を行うこととしております。

 法務省としては、このような制度の意義、内容を適切に周知するなどして、訴訟手続を利用しようとする方々がちゅうちょを覚えることのないように努めてまいりたいと考えております。

篠田委員 御答弁ありがとうございました。

 今も、民事訴訟の関係者に対して、訴訟記録の閲覧制限の制度や住所、氏名の秘匿制度、それから、指定法人が行った仮名処理に対する苦情申立ての制度など、しっかりと活用するというお話がございました。

 実務の立場からすると、閲覧制限とか秘匿決定というのはなかなか裁判所で実はハードルがまだまだ高くて、これをするためには精神科医の診断書を出してくださいとかいって、なかなか精神科にかかることもハードルが高いところで、診断書を出してようやく決定が認められるとかというような実務上のハードルもあるんですが、その辺をしっかりと、ちょっと下げていただくような形になればいいかな、ここは私の意見でございます。

 こういった制度なんですけれども、具体的に、では当事者にどのような方法で周知をするのかということがやはり大事になってくるというふうに思います。ちょっと、この点に関しては裁判所に対して質問通告をしていないので私の意見になりますけれども、民事裁判の判決書が当事者に送達、郵送されるときなどに、あなたのこの民事裁判の判決はそういった民事情報のデータベースに仮名処理をされて掲載をされます、これに関しては様々に、仮名処理に苦情申立て等の制度がありますよみたいな形で、裁判所からそういった注意書きを判決の送達のときに同封いただくとか、そういった工夫を是非裁判所には善処いただきたいというふうに思います。済みません、ここに関しては通告しておりませんので、裁判所の回答は結構でございます。

 この法案に関して最後に、民事裁判情報の提供料金についてはどの程度の額を想定をしているのかということが、やはり実務家にとっては大変気になるところでございます。

 私は、法律事務所で判例を検索するというシステムを自分の法律事務所でも導入しており、今回の法律では二次利用の利用者ということになると思うんですけれども、私の実情をお話ししますと、今うちの法律事務所で利用している検索システムは、月額で五千二百八十円ということでございます。割と低額に抑えて検索システムを使っているんですけれども、何とか現在のこういった利用金額を目安として提供料金を設定いただければ大変助かるなと思います。これが五万円ぐらいになるとちょっとなかなか導入にも厳しいものがあるなと思っているんですが、その辺の二次利用者の利用料金についてはどのようにお考えになっているということになりますでしょうか。

鈴木国務大臣 私どもとしては、この制度、今、一次利用者、二次利用者というお話がありましたけれども、民間の判例データベース事業者等の一次利用者が、指定法人から提供を受けた民事裁判情報に判例解説あるいは高度な検索機能等を付加した利用性の高いデータベースを整備、提供する。国民等の幅広い利用者ということで申し上げれば、今申し上げた一次利用者の提供する製品、サービスを二次的に利用するということを想定しているところであります。

 この一次利用者が二次利用者に民事裁判情報を提供する料金ということであろうかと思いますけれども、そこについては、民間事業者の事業活動ということで、自由競争に委ねられるということとなろうかと思います。

 そういった意味で、そこに、法務省において、直接その設定に関与するということは適切ではないと思っておりますが、その一方で、一次利用者からの提供料金、これは、指定法人から一次利用者に対する提供料金、その影響も当然受けることになると思いますので、この法律案におきましては、指定法人が一次利用者に民事裁判情報を提供するための料金に関する事項、これについては、業務規程の必要記載事項として、法務大臣が認可をするということとなっております。

 そういった中で、不当に高額な料金設定とならないこと、これは指定法人から一次利用者のところでは担保をしているところでありますので、そういったことを踏まえて、私どもとしましては、そこのところが高額とならないことをもって二次利用の状況についても適切な対応となるように、我々としては期待をしたいと思っております。

篠田委員 是非、今どんな料金体系で二次利用者が利用しているかということをしっかり調査の上、できるだけそれに合わせた適切な料金設定をいただければ大変助かるかなというふうに思います。

 残りの時間で、いわゆる離婚後共同親権制度の施行に向けた準備について御質問させていただきます。

 今、いわゆるQアンドAの解説資料を作成中ということで聞き及んでおります。前回の委員会のときに、いわゆる関係省庁の連絡会議の幹事会の三回の会議が開催されたということをお聞きをいたしました。この関係省庁連絡会議幹事会においてはQアンドAの資料が具体的に提示されて議論されたのかどうか、そこをまずお聞かせいただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のQアンドA形式の解説資料でございますが、今月二十二日に開催をされました関係府省庁等連絡会議幹事会の第三回会議においても意見交換等が行われたところでございます。

 QアンドA形式の解説資料は、民法改正法の円滑な施行の観点から、関係府省庁等連絡会議に参加している各府省庁それぞれの所管に係る様々な場面を含む内容となっておりまして、その全体が同会議における検討対象となっております。

 この解説資料でございますが、先日の会議におきまして、たたき台段階のものを資料として配付をしております。

篠田委員 全体を網羅する形でたたき台として検討されたということで、若干前進をしているのかなというふうに安心をいたしました。

 この解説資料なんですけれども、検討会のホームページにアップされる予定ということでよろしいでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 QアンドA形式の解説資料でございますが、完成後は速やかに法務省のウェブサイトに掲載する等、適切な方法で周知、広報を行っていく予定というふうにしておりますが、現在はまだたたき台段階のものでございまして、これは関係府省庁等との検討、調整の途上にあるものでありますので、現時点での公表の有無や時期については未定でございます。

篠田委員 現時点ではまだ未定ということで、施行までに一年をもうすぐ切る形になるので、完成版を各現場で皆さんで検討できるように、是非、早めに御準備いただけたらと思います。

 そして、完成後のQアンドAの解説資料なんですけれども、具体的にどのように現場に周知をしていくのかということで、その段取りをお聞かせいただきたいと思います。

 子供は様々なところで生活をしています。保育現場、学校現場、児童福祉の分野、障害福祉、児童養護分野、金融、保険の分野でも子供を当事者とする契約は当然ございます。そしてまた、住民票の異動などを取り扱ったり、児童手当、児童扶養手当などを対応する自治体の現場、そしてDVの支援の現場、様々に周知先、多数あるんですけれども、現場へ下ろすための段取り、スケジュールはどのようになっていらっしゃいますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 民法改正法の円滑な施行のためには、自治体の担当部署などの関係諸機関等への周知が非常に重要であると認識をしております。

 具体的な段取りやスケジュールにつきましては、現時点では未定ではございますが、関係府省庁等の協力も得ながら、関係諸機関等への周知を行っていく予定としております。

篠田委員 済みません、様々なことが未定ということで大変不安に思いますけれども、是非、早めに周知をしていただきたいと思います。

 なぜこんなに周知を早くしてくださいということを私が訴えているかといいますと、やはり、相当、今回の法律は複雑なんですよね。具体的にどんな現場でどのように対応すればいいのか、多くの方々が困惑する内容が含まれております。ですので、まずは周知をしたら、そこから多分、それを見て、また現場から様々に疑問が起こることが寄せられるというふうに想定されるんですね。

 この解説資料が公表されて周知した後に様々な現場から寄せられる疑問などについては、どのように対応する御予定でしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 QアンドA形式の解説書につきましては、関係機関等の現場の方々にも民法改正法の趣旨、内容を十分に理解していただけるよう、法案審議の過程や今国会で御質問いただいた点のほか、法務省や関係府省庁等に対して寄せられた御疑問等も踏まえながら、具体的な場面を想定したものとなるように検討を行っております。

 委員御指摘のように、QアンドA形式の解説資料の公表後、更に御疑問等が寄せられた場合には、必要に応じて解説資料を改定することも含め、適切な対応を検討してまいりたいと考えております。

篠田委員 ありがとうございます。

 その提示されたQアンドAが必ずしも、もうそこから動かないものではなく、様々に疑問が寄せられた場合には、改定版などの措置を取っていただけるということで確認ができました。しっかりと早急に御準備のほど、お願いをしたいと思います。

 次に、このQアンドAの解説資料について、実際に家庭裁判所においてどのように周知をされるのか。特に調停を担当する調停委員など、家裁の関係者にどのように周知をされるのか。また、家裁での研修の実施など、もう一年を切っておりますので、具体的に決まったスケジュールはあるのかどうか、裁判所にお聞きをいたします。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、前段の御質問ですが、最高裁といたしましても、改正家族法の円滑な施行に向けて、これまでも、各家庭裁判所において改正法の趣旨、内容を踏まえた適切な審理がされるよう、施行の準備に資する情報提供を始めとした必要な支援を行ってきているところでございます。

 委員御指摘のQアンドA形式の解説資料の周知につきましては、最終的にはその内容を拝見した上で取扱いを検討するということになりますが、いずれにせよ、家事調停委員を含む関係職員が改正法の趣旨、内容を適切に理解するために有益な資料等につきましては、引き続き各家庭裁判所に提供していきたいと考えているところでございます。

 また、研修の予定という後段の御質問でございますが、まず、委員御指摘のとおり、最高裁といたしましても、改正家族法の円滑な施行のためには、改正家族法の趣旨や内容につき、裁判官等の関係職員、特に調停委員が理解を深めることが重要であって、そのために、各家庭裁判所においても十分に時間をかけて研修等を行うことが重要であると認識しているところでございます。

 各家裁における調停委員の研修につきまして、最高裁として網羅的に把握しているものではございませんが、一般的には、裁判官等の裁判所職員が講師になるなどしまして、まずは改正法に関する基礎的知識を付与するための講義を行うほか、架空事例を題材とした事例研究等を順次行っていくものと承知しております。

 裁判官等による全国的な協議会におきまして、改正法の施行に向けて、調停委員に対する研修の重要性とか、各家裁の具体的な取組の内容等の共有が図られたところでございまして、今後、各家裁において必要な研修が実施されていくものと考えているところでございます。

 最高裁としても、そういったことについて様々な支援をしてまいりたいと考えているところでございます。

篠田委員 やはり、QアンドAの具体的な解説資料を拝見した上でこれから様々に研修等のスケジュールも組まれるということで、その実際のものがとにかく早く現場に出していただくことが大切だと思いますので、引き続きの迅速な作業をお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、柴田勝之さん。

柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之です。

 この法律案におきましては、民事裁判情報の管理提供業務を行う指定法人、これが適切に指定され、適切に業務を行うことが特に重要と考えられますので、この指定法人について、先ほどの篠田委員とはまた別の角度から何点かお伺いいたします。

 指定法人は、営利を目的としない法人を全国に一つだけ法務大臣が指定するとされています。この指定は公募を経て行うと伺っていますけれども、この法案が本国会で成立したとして、その公募というのはいつ頃行われるのか、また、指定法人の業務開始はいつ頃になるのか、さらに、その業務の対象となる電子判決書に関する民事訴訟法の施行との時期的関係についてもお教えいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案のうち、指定法人の指定に関する諸規定等は公布後九月以内に先行して施行し、指定法人の業務に係るその余の規定は公布後二年以内に施行することとしています。

 公布後九か月以内に先行して施行する諸規定に基づき、法務大臣において本制度に係る基本的な方針を定めた上で、指定法人の公募、指定を行うことになります。

 指定法人が仮名処理等の業務を行うには、令和八年五月までに全面的に施行される民事訴訟手続のデジタル化を踏まえた上で所要のシステムを整備する必要があることから、本法律案においては、指定法人が所要の準備に要する期間を確保するため、その全面施行を公布後二年を超えない範囲内で政令で定める日としております。

 したがいまして、令和八年五月までに民事裁判手続のデジタル化が全面的に施行され、その後、本法律案に係る二年内施行部分の規定が施行された後、これらに基づいて指定法人の業務が開始されるということになります。

柴田委員 ある程度、一年ぐらい余裕を持って始めるということかと思います。

 指定法人の業務というのはどのようなもので、そのためにどのくらいの労力とコストが必要と想定されるでしょうか。先ほど篠田委員からも一部お聞きしましたが、改めて、まとめてお答えをお願いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度において、指定法人は、最高裁判所から提供される年間約二十万件を超える民事裁判情報に仮名処理を行いデータベースを整備した上、一次利用者との間で情報提供契約を締結してこれを提供することになります。

 このような業務に必要な労力、コストについては、指定法人において業務の効率化を図るためにどのようなシステムを用いるかなどといった事情によることになりますので、現時点で正確なお答えをするのは困難ではございます。

 なお、有識者検討会において紹介された実証実験の結果では、AIを利用して仮名処理を行い、出力された結果を人手で二重に確認する方法を前提として、一件当たりの作業時間が平均十数分であり、年間約二十万件の判決の仮名処理を十六人程度の体制で確認、処理できるとされております。また、仮名処理に要する費用について、システム開発費用に一億五千万円程度、いわゆるランニングコストとして人件費に年間四千四百万円程度を要するとの試算が示されたところであります。

柴田委員 ランニングコストとしては、今おっしゃったほかに、システムのメンテナンスとか、そういうことも必要になるかなというふうには思います。

 その上で、指定法人が業務を開始した後の収入と支出というものはどのようなものが想定されますでしょうか。そして今、初期投資は一億五千万円くらいというお話がありましたけれども、業務を始めて収入を得られるまでの間、指定法人はそのお金をどのようにして賄うのでしょうか。教えてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度において、指定法人は、利用者に対し、仮名処理後の民事裁判情報を有償で提供することとしており、業務上必要となる費用は、利用者から収受する料金によって賄うことを想定しています。

 業務上必要となる費用につきましては、公募の手続を経て指定される法人が備えるシステムの内容等によることから、現時点で正確なお答えをすることは困難ではございますが、有識者検討会では、先ほどのような試算が示されたところでございます。

 業務開始までの支出については指定法人においてこれを負担し、業務開始後、利用者から収受する料金をもって回収をすることを想定しているところでございます。

柴田委員 そういうことなので、初期費用が結構な負担になるような感じなんですね。

 それで、本法律案の五条一項一号に、指定法人として指定されるための要件として、業務を適正かつ確実に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力と挙げられているんですが、ここに言う経理的基礎、技術的能力というのは少し具体的に言うとどういう内容か、お教えください。

 また、指定されようとする法人がそういう能力を応募する時点で備えておかなければならないとすると、応募して、結局指定されなかった場合は結構な損害になってしまうように思いますし、逆に、応募のときには立派な計画を出して指定してもらったけれども、計画倒れだったということになっても困ると思いますけれども、その辺りはどのようにお考えになっていますでしょうか。お答えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人は、年間約二十万件の民事裁判情報に仮名処理を行ってデータベースを整備し、情報セキュリティー対策を始めとする適切な安全管理措置を講じつつ、利用者に対して提供することが求められることから、それにふさわしい人的、物的体制を備えていることが求められます。

 そこで、本法案では、指定法人の要件の一つとして、このような業務を適正かつ確実に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有することを掲げているところです。

 必要な経理的基礎や技術的能力の程度について一概にお答えすることは困難でございますが、それぞれの要件該当性の判断に当たっては、当該団体の保有する資産を始めとする財務状況、基幹となるデータベースを整備、管理するために用いるシステムの概要や委託の有無、相手先を含む人的体制などを考慮して判断していくこととなります。

 これらの要件は指定をする時点で判断をすることとなりますが、例えば技術的能力は、指定を受けた後に整備されるシステムの内容にも左右されるものでございまして、申請時点において予定、計画されている内容等も踏まえて判断するということになると考えます。

柴田委員 なかなか兼ね合いが難しいと思いますが、その辺り、考慮して指定されるというふうに理解しました。

 次に、指定法人が民事裁判情報を提供する一次的な利用者としては、どのような者を想定しておられますでしょうか。

 また、法律実務家とか研究者その他の個人は、恐らく、一次的な利用者から提供を受ける二次的な利用者として主に想定されているのかなとは思いますが、そういう人も一次的利用者となることは可能なのでしょうか。

 また、利用の仕方として、必要な裁判情報について、この件を下さいとか、そういう、一件ずつあるいは数件ずつ提供を受けるというような方法でも利用できるものなのでしょうか。お答えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、大量の情報を処理する技術を用いて多数の裁判例の横断的分析を行うなど、デジタル社会における新たなニーズに応えるために、指定法人において基幹となる網羅的な民事裁判情報のデータベースを整備、提供し、民事裁判情報の幅広い利用を可能とするものでありまして、基本的に、その一次利用者においては、利用料金を支払ってデータベースの全部を利用することを想定しています。

 指定法人から直接民事裁判情報の提供を受ける者としては、主に、このような利用を行う判例データベース事業者、出版社、いわゆるリーガルテック企業、研究機関などを想定しています。

 なお、指定法人は、正当な理由があるときを除いて情報提供契約の締結を拒絶してはならないこととしておりますので、制度上は個人の利用が制限されるものではございません。しかし、指定法人による民事裁判情報の提供は、主たる利用者のニーズに対応するべく、機械判読に適した形式で行われることが想定されるため、必ずしも一般の個人が個々の判例を閲読するのに適した形式とはならないものと考えられます。

 また、指定法人に対して一件ずつの民事裁判情報の提供を求めることについては、そのための検索機能や決済手段など所要のシステムの整備に要する費用を増大させ、指定法人が収支を賄うため、提供料金の高騰を招いて、ひいては民事裁判情報の幅広い利用を阻害しかねないと考えております。

 これらの事情に鑑み、委員御指摘のとおり、一般的には、個人の方については、一次利用者が提供する製品、サービスについて二次的な利用をしていただくということを想定しております。

柴田委員 そういうことなので、一次的な利用者としては、さっき一億五千万という話もありましたけれども、結構な金額を払って年間二十万件どばっともらう、そういう人が一次的な利用者になるというふうに理解いたしました。

 次に、裁判所では、今の紙の民事判決書、保存期間が五十年ということで、電子判決書になっても、多分、五十年以上保管されるのではないかと思いますけれども、指定法人は、裁判所から提供を受けた仮名処理前の民事裁判情報そして仮名処理後の民事裁判情報、それぞれいつまで保管されるのでしょうか。

 また、この点、保管にはそれなりに費用がかかると思いますので、ただ、費用がかかるといって、保管期間を余り短くされるのも困ると思いますけれども、保管期間が適正であるかどうかというのは、監督官庁である法務省による認可ないし監督の対象にされるのでしょうか。また、される場合は、その根拠となり得る本法律案の条文も含めてお教えいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 保有民事裁判情報は、訴訟関係者の氏名や住所など仮名処理前の情報を含むものであり、有識者検討会では、利用の必要がなくなったときは遅滞なく削除をすべきとも指摘されておりますが、その保管期間については、仮名処理の訂正などのために引き続き利用する必要性や必要な安全管理措置を講じつつ保管するコスト等を考慮して、今後、指定法人において検討することとなります。

 これに対し、仮名加工民事裁判情報は、基幹となるデータベースを構成するものとして、できる限り長期間保管され、利用者の用に供されるのが望ましいと考えられますが、有識者検討会では、保管に要する費用等の観点から一定の限度があるのもやむを得ないとの指摘もございました。

 これら保有民事裁判情報や仮名加工民事裁判情報の保管期間については、まずは指定法人において検討されるべき事項ではありますが、まず、保有民事裁判情報については安全管理措置に関わるものであり、また、仮名加工民事裁判情報については民事裁判情報管理提供業務の在り方そのものに関わるものでございますので、具体的には法務省令や業務規程の定めによることとなりますが、業務規程の認可、本法案の第八条第一項などを通じて、その在り方が適切なものとなるよう対応してまいりたいと考えております。

柴田委員 ありがとうございます。

 技術がどんどん進めば、五十年後ぐらいになれば何か無限に取っておけるんじゃないかという気もしておりますが、なるべく長く使えるようにしていただければというふうに思います。

 次に、本法律では、指定法人が業務を委託、更に再委託することが認められていますが、この委託、再委託の対象業務というのはどのようなものが想定されますでしょうか。一旦ここまででお答えをお願いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、指定法人が行う仮名処理については、AI技術を活用して機械的な処理を行いつつ、人手による確認作業を行うことを想定しておりますが、こうした確認等の作業について業務委託を行うことも想定されます。

 また、再委託については、例えば、仮名処理等の確認作業全体を統括する会社が指定法人から業務委託を受け、実際に作業に従事する者に対して業務の一部を再委託するなどの例も想定されるところです。

柴田委員 そうすると、さっきの仮名処理、十六人、四千四百万円というお話があったと思いますが、それも委託されるかもしれないし、システムの運用とか、そういうのも委託されるということなので、実際には、何か指定法人が行う業務、実際の作業の大部分は委託になるのかなという気もちょっとするんですね。

 そうすると、指定法人は営利を目的としない法人ではありますが、委託先は営利法人もなれる、そして、指定法人による委託契約には公共入札の適用はないというふうに聞いております。そうしますと、指定法人の関係者が経営する会社に高い値段で委託してもうけさせるというようなことも、ないことはないと思います。

 公共入札のような制度的担保がない中で、委託費用の適正性、これはどのように担保されるのか。また、この委託費用の適正性は法務省による認可、監督の対象となるのか、その根拠条文も含めてお教えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案第十四条第一項では、指定法人の行う業務の委託、再委託に際しては法務大臣の承認を要することとしており、それに当たって、委託、再委託の契約内容やその要否、当否を審査することとなります。また、本法律案第八条では、料金に関する事項を業務規程の必要的記載事項とし、法務大臣による認可の対象としております。

 法務省としては、これらの承認や認可を通じて、委託、再委託の費用等によって民事裁判情報の提供料金が不当に高額なものとなることがないように、適切に対応してまいりたいと考えております。

柴田委員 それから、指定法人というのは、必ずしも専業である必要はなくて、他の業務との兼業の法人でもよいと伺っております。そうすると、民事裁判情報管理提供業務で収益を上げて、その収益をほかの業務に使われてしまうということもあり得るかなと。そのようなことがないようにというのは、法務省による認可、監督の対象になりますか。その根拠条文も含めてお知らせください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案第五条第一項においては、指定の要件として、民事裁判情報管理提供業務を適正かつ確実に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること、民事裁判情報管理提供業務以外の業務を行っている場合は、その業務を行うことによって民事裁判情報管理提供業務が不公正になるおそれがないことを設けており、これらの要件については、申請をした法人が行うほかの業務の状況も踏まえて、該当性の審査を行うこととなります。

 また、本法律案では、指定をした後も、第九条第二項及び十五条により、指定法人に民事裁判情報管理提供業務に関する事業報告書や収支決算書の提出並びに帳簿の備付けを義務づけて、その収支等を把握し、民事裁判情報管理提供業務の適正な実施を確保するため必要があるときは、第十七条の報告徴求権を通じるなどして、他の業務を含めた貸借対照表や損益計算書等の資料を確認し、第八条において、利用者への提供料金に関する事項を業務規程の必要的記載事項として、これを法務大臣が認可することとしております。

 したがいまして、法務省としては、これらの規定を通じて、指定法人が民事裁判情報の提供の対価として収受した料金が他の事業に流用されるなどして不当に高額な料金が設定されることがないように、適切に監督してまいります。

柴田委員 以上のやり取りも踏まえた上で、指定法人の適切な指定、認可、監督に当たっての基本的なお考えを大臣に伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今回の法律案でありますけれども、法務大臣において、基幹となるデータベースを整備、提供する主体となる指定法人の指定、あるいは指定法人が定めた業務規程を認可をする、さらには、いろいろな監督権限、これを通じて、指定法人によるこうした業務の監督をするということとされているところであります。

 実際、この法文上でも、業務規程というところで、加工の方法であったりとか、いろいろな契約について、あるいは、さらには、安全管理、料金等々、様々なそうしたことが規定をされることとされております。

 まさにそういった意味において、どのようにしてこうした様々な観点、恐らく御懸念の観点を中心に、そうした指定法人の業務の安定性あるいは適切性、これをしっかりと監督をしていくということになろうかと思います。

柴田委員 ありがとうございます。

 また別の質問になります。

 現在は、裁判所のウェブサイトでも裁判例の提供がされておりますが、本法律により民事裁判情報の提供が始まった後は、裁判所ウェブサイトにおける裁判例提供というのはどうなっていくのでしょうか。本法律による提供との役割分担という観点も含めて、お答えをお願いいたします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 本法律に基づく民事裁判情報の提供は、デジタル技術を用いて多数の裁判例を横断的に分析するなど、デジタル社会における新たなニーズに応えるために、指定法人において基幹となる網羅的な民事裁判情報のデータベースを整備、提供するものであるというものでありますのに対しまして、裁判所ウェブサイトにおける裁判例の掲載というのは、先例的な価値や社会的関心の高い裁判例を国民の皆様に適時に提供するというものでございます。両者の目的や役割は必ずしも同じではないというふうに理解しているところでございます。

 したがいまして、裁判所といたしましては、本法の施行後も、裁判所ウェブサイトにおける裁判例の掲載は引き続き行ってまいりたいというふうに考えております。

柴田委員 ありがとうございます。

 それから、本法律案の二条一項一号では、提供の対象となるものとして、電子判決書、電子調書に加えて、電子決定書のうち法務省令で定めるものが挙げられておりますが、法務省令で定める電子決定書というのはどのようなものを想定しておられますでしょうか。弁護士からすると、文書提出命令とか、あと、ちょっとテクニカルですが、時機に後れた攻撃防御方法の却下決定、そういうものなど、関心が高いところなのですが、これらも含まれるものなのでしょうか。最初はごく限られたものにして、順次拡大していくというお話を聞きましたけれども、その辺りも含めて、どういうものが対象になっていくのか、お教えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 決定や命令は、その内容や方式が多様であり、収録の必要性も一様ではないと考えられるところ、その全てを収録の対象とした場合には、指定法人が行う加工や管理の事務負担が増加し、提供料金が過度に高額化することも懸念されます。

 そこで、本法律案においては、指定法人のデータベースに収録する決定、命令を、法令の解釈適用について参考となる裁判に係るものとして法務省令で定めるものに限定をしております。

 その上で、その収録の具体的な範囲については、データベースの運用状況等も確認しつつ、社会的なニーズの高いものから順次拡大していく予定でございます。

 まず法務省令においてどのような裁判を定めるかについては、最高裁の意見も聞きつつ、有識者検討会の指摘も参考としながら、適切に検討してまいりたいと考えております。

柴田委員 だんだん拡大していただけることを期待したいと思います。

 それから、本法案では提供の対象とされていませんが、令和五年に成立した法律で電子化されることになっている民事執行、倒産手続、家事事件、あるいは非訟事件の民事関係手続についての決定書などですね、これもニーズが高いものはあると思っておりますが、将来的には提供されるというお考えもありますでしょうか。伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定法人の基幹データベースに収録される対象を、令和四年の民事訴訟法等の改正により作成されることとなる民事、行政事件訴訟手続の電子判決書としておりまして、令和五年の法改正によって電磁的記録として作成されるような民事執行手続や非訟事件手続における裁判書というものは入れておりません。

 非訟事件の手続は非公開とされ、記録の閲覧についても民事訴訟事件等とは異なる規律が設けられているなど、本法律案において対象としている民事、行政事件訴訟手続における電子判決書等とは異なる考慮が必要になると考えております。

 したがいまして、御指摘の各種手続における電子裁判書を指定法人のデータベースに収録することについては、そのニーズや手続の性質などを踏まえて検討する必要があると考えております。

柴田委員 紙媒体の、電子化される前の判決書については今後御検討ということで若山委員への御答弁にありましたので、次に、つい先日、衆議院で可決された刑事デジタル化法が成立、施行された場合、刑事事件の判決書も電子化されることになりますが、弁護士としては、特に量刑の傾向を見たいということでデータベース化の要請が強いと思います。将来的には、刑事事件についても拡大の見込みというか、お考えなどありますでしょうか。お聞かせください。

西村委員長 松井司法法制部長、時間になりましたので、答弁は簡潔にお願いします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事裁判に関する情報は、一般に、刑事事件の被告人である特定個人の前科情報そのものであるとともに、被害者などの関係者のプライバシーに関する情報など機微性の高い情報を含むものです。

 そして、刑事裁判に関する情報は、犯罪の手法に関する情報、捜査手法に関する情報などを含む上、その公開により公の秩序や善良な風俗を害するおそれもあることからすれば、その取扱いには民事裁判に関する情報とは異なる格別の配慮を要するところであり、確定記録の閲覧についても、民事訴訟記録と対比して、より厳格な要件が設けられております。

 そのため、刑事事件の判決をデータベース化することについては、慎重な検討を要すると考えております。

柴田委員 我が国の司法が社会のデジタル化にしっかり対応して、更に充実、発展していけるようにこの制度を運用いただくことをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、鎌田さゆりさん。

鎌田委員 おはようございます。鎌田でございます。

 声が復旧しましたので、今日も臨ませていただきたいと思います。

 まず、今日、配付の資料を、お許しをいただいたんですけれども、理事会で御指摘をいただきました私の配付資料の二、三、四枚目なんですが、こちらは法務省と国交省さんがお作りになったベースの資料に私の方で赤線で囲みましたので、正しくは、法務省、国交省さんが作成した資料に私の方でペンを入れたというふうに書かなきゃいけないところを、私のペン不足でございましたので、まずもっておわびを申し上げたいと思います。済みません、申し訳ございません。

 では、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案について伺いたいと思います。

 民事裁判情報の公共財としての価値が高まっている点、データベースの運用にかかる費用を考慮しつつ、コストパフォーマンスを踏まえて、民間の指定法人に委ねるのではなく、国が直接行うことも考えられたのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 データベースの整備、運用でありますけれども、やはり時宜にかなったデジタル技術を用いるなどして、適正かつ効率的な業務運営、これを図る必要があるところでありますが、これまで民事裁判情報の提供に大きな役割を果たしてきた民間においても相応の知見が蓄積をされておりますし、また技術開発もかなり進んでいる、そういった状況がございます。

 国が、例えば民事裁判情報に係るデータベースの整備、運用した場合には、所要の体制整備のためのコスト、これはかなりかかるであろう、そういった見込みもありました上に、知見、技術、これもやはり必要であろう。あるいはまた、私人間の紛争の解決に係る民事裁判情報を行政機関が網羅的に収集、管理すること等への懸念も招きかねない、そういったこともございました。

 そういったことから、民間の知見、技術を十分に活用すること、これが相当であり、やはり必要であろう、そういった観点から、我々といたしましては、この法律案におきましては、有識者検討会の報告書も踏まえまして、基幹データベースの整備、運用、これは国ではなくて、法務大臣の監督する、民間といってもしっかり監督はしなくてはいけないと思いますが、様々な安全管理等もございますので、ということで、やはり法務大臣の監督する民間の団体、国ではなく、そちらに行わせるという判断をしたところでございます。

鎌田委員 基本的に私ども会派も賛成をしておりますので、今後注視していきたいと思うんですけれども、日弁連さんから、将来的には指定法人を国が運営することの要否も含めて必要な検討を行うべきとの指摘もございました。その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から御答弁ありましたとおり、民事裁判情報の提供については、民間の知見、技術を十分に活用することが必要かつ相当と考えているところでございます。

 したがいまして、法務省としては、本制度の枠組みの下で制度が円滑かつ安定的に運用されるように、まずは努めてまいりたいと考えております。

鎌田委員 ありがとうございます。是非、御尽力をいただきたいと思います。

 ところでなんですけれども、一昨日、こちらの法務委員会で私が質問した際に、民事局長の御答弁、法制審議会の区分所有法制部会では、旧区分所有者による別段の意思表示を標準管理規約の定めにより制限することについて議論をされておりまして云々という答弁があったんですけれども、この標準管理規約、法制審で審議されていた旨を答弁されたんですけれども、これは第十五回、十六回には私も確認することができたんですが、第何回の審議で、どなたの発言を根拠にされた答弁だったんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 前回の、一昨日の委員会で私が御答弁申し上げたときに念頭にありましたのは、法制審議会の区分所有法制部会第十五回会議における大桐委員の発言等を念頭に置いたものでございます。

鎌田委員 ありがとうございました。

 今日は、配付資料で、一番最後のページ、資料右上に五と記したものを私は資料として使わせていただいております。

 これは第十六回の会議の議事録で、赤い文字のところは私の方で作成したものですけれども、この赤い文字のところを要約しますと、確かに話題にはなっています、ただ、管理規約で損害賠償請求権の個別行使の禁止イコール使途の限定をできるかどうかは解釈に委ねられる問題であり、今回の法改正の射程にはないというふうに、これは官僚の方ですね、説明をされています。

 つまり、法案の提出後に管理規約で損害賠償請求権の個別行使禁止イコール使途の限定をするということで対処すると言い出したのであって、一昨日の竹内民事局長の答弁は、私は、不正確であって不適切であると思います。

 民事局長、一昨日の答弁の修正を求めたいと思うんですが、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 一昨日の答弁のときに念頭にありましたのは、先ほど申し上げましたように、十五回会議における大桐委員の発言等を念頭に置いておりました。

 大桐委員からは、この第十五回会議に、ここにも先生が今日の資料で御提出いただきましたとおり、平成二十七年という最高裁判例がございますが、この最高裁判例の趣旨からして、今回の改正法の二十六条二項にある別段の意思表示についても、個別行使の禁止というのを管理規約に盛り込めないか、あるいは、現在の標準管理規約の解釈でも可能かもしれないというような御提言をいただいたところです。

 十六回会議で、それに応えて望月幹事がこのように答弁したというような経過になっておりまして、直接は、委員御指摘のとおり、別段の意思表示に係るところであると認識はしておりますが、標準管理規約を使って個別行使を禁止するというようなところで御提案をいただいたものと認識して御答弁申し上げたものです。

鎌田委員 ですから、この法制審議会の区分所有法の部会で、標準管理規約については、これは射程内じゃない、これからの法改正の審議に委ねたいというふうに言っているんだから、前回の答弁は不正確であって、私は、そのまま議事録に残すことはよろしくないと思うんですよ、だから修正を求めているんですよ。いかがでしょうか、再度。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 ここでの十五回、十六回の直接のやり取りといいますのは、標準管理規約、管理規約をどうするかという問題でございまして、確かに、法案としてはその射程には入っていないというのはそのとおりだと思います。これは管理規約の話でございますので、法案と規約のすみ分けをどうするかという中での議論というふうに認識をしておるところでございます。

鎌田委員 委員長にお願いいたします。

 一昨日の委員会で、標準管理規約の定めにより制限することについて議論をされておりましてというふうに、私の質疑に対する答弁の速記録でそのように民事局長は答弁していますので、これは理事会で、私は修正を求めたいと思うんですけれども、どのようにすることがベターなのか、是非御協議いただきたいということで、お取り計らいをお願いいたします。

西村委員長 後刻、理事会で協議いたします。

鎌田委員 ありがとうございました。

 そもそも、この区分所有法の法案を責任を持って曇りなく提出したんであれば、なぜポンチ絵での説明をし、標準管理規約の改定なるものが出てきたのか伺いたいんですけれども、管理規約で損害賠償請求権の個別行使禁止イコール使途の限定をできるかどうかは解釈に委ねられる問題であって、今回の改正の射程にはないと説明していたにもかかわらず、何で法案の提出後に、管理規約で損害賠償請求権の個別行使禁止イコール使途の限定とするということで対処すると言ったんでしょうか。私には本当に理解できません。

 現行法の区分所有法の下では、そして改正法の下でも、損害賠償請求権が、旧ですね、原始区分所有者に帰属する結果、管理組合が損害賠償金全額を取得することができなくて、共用部分の一〇〇%の補修が困難になるとの指摘を受けたから、慌てて、まさにつけ焼き刃的に法案提出後に、このポンチ絵でもって、管理規約で損害賠償請求権の個別行使禁止イコール使途の限定をするということで対処すると言い出したことは明らかだと私は思うんですよ。反証はございますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、ポンチ絵の方ですが、委員御提出の資料、前回あるいは今回の御提出の資料の三ページにおきまして、標準管理規約の改定について記載をしておるところでございます。

 まず、このポンチ絵でございますが、御党の部門会議におきまして、共用部分に係る損害賠償請求権に関する点について、その権利の帰属ですとか、あるいはマンションの修補費用の確保の仕方などに関する複数の御質問や御意見を頂戴いたしました。そこで、これらの点についてより一層丁寧に説明させていただくことが必要というふうに考えて、国土交通省の協力を得て作成したものでございます。

鎌田委員 ありがとうございました。

 御党の部門会議においてそういう指摘を受けてという御答弁がありました。ですから、最初に出てきた法案について、我々は、これじゃ、今住んでいる、今そこのマンションに住んでいる住民の方々の安全、安心を担保できないじゃないかと様々な点を指摘をして、そしてその後、国交省さんと法務省さんでポンチ絵として三枚御用意されて、だから、私は、今指摘をしたように、まさにつけ焼き刃的に法案提出後に、管理規約で損害賠償請求権について対応ができるというふうに御説明なさったんだと思うんですよ。その標準管理規約については遡及効がなされないということは、昨日の本会議で法務大臣の答弁でも明らかになりました。

 そこでなんですけれども、資料の一枚目を御覧いただきたいと思うんです。

 「こんなに違う!!「共有」の意味の違い」というタイトルをつけさせていただきましたが、共有の意味なんですが、法務省の今回の改正案は、共有部分の共有を、左側、これはイチゴのショートケーキのホールケーキと思っていただきたいんですけれども、イチゴのホールケーキを共有する場合のように一人ずつに切り分けて分割をするということができる、これが民法の二百五十六条に基づく共有論理に沿っているんですね。これが今回の区分所有法の根底にある論理です。民法の共有の論理です。

 しかし、区分所有建物の共有部分の共有というのは、これは右側、飛行船に例えているんですが、民法の共有とは異なっていて、継続を前提とした共有、つまり、分割を前提としない共有と考えるべきなんです。

 例えば、この飛行船なんですけれども、飛行船の個室部分、下にありますね、個室部分は、これは専有部分です。飛行船の風船の部分がこれは共用部分です。風船の共用部分は、個室部分のためにこれは存続し続けなければならない、分割できないのと同様で、共有部分は専有部分のために存続し続けなければならないということなんです。だから、分割は前提としていないんです。

 民法のそもそもの二百五十六条の分割、これを前提としていない、これが区分所有建物の共有部分の共有についての根本的な考え方なんです。これが特別法の考え方なんですよ。

 局長も、この法務委員会に所属している方々も、専門家の方々がたくさんいらっしゃいますので、篤と御存じのことだと思うんですけれども、でも、今回のこの区分所有法の改正については、区分所有法という特別法の使命を軽んじているというふうに断じざるを得ません。その自覚は民事局としてお持ちじゃないんでしょうか。伺います。

竹内政府参考人 買ったマンションに瑕疵があった場合の契約不適合責任に基づく損害賠償請求権の性質というところを委員御指摘いただいたというふうに認識をしております。

 区分所有法の考え方ですと、確かに、マンションの共用部分は専有部分と離れて処分はできない、専有部分が処分されれば共用部分もついていく。

 これは、マンションといいますか、区分所有建物の特質上、専有部分と共用部分が切り離せないというところで、そのような規律をしているものと認識をしておりますが、他方で、売買契約の契約不適合責任に基づく損害賠償請求権と申しますのは、これは一つの債権でございまして、その共用部分の持分とは全く別個に、分譲業者と個々の区分所有者が売買契約を締結することによって発生する権利でありまして、あくまで、その買主たる区分所有者と売主たる分譲業者との間の契約に基づいて発生して、それぞれの区分所有者に帰属する請求権というふうに認識をしております。

 したがいまして、共用部分に関する議論と、この損害賠償請求権に関する議論とは、少し論理的に違うのかなという認識でおります。

鎌田委員 いや、それは私は誤用だと思います。

 まさに今、局長の御答弁がおっしゃったのが、民法の考え方に基づく、二百五十六条、そこに基づいての考え方であって、私は、転売が、AさんからBさん、BさんからCさん、あるいはDさん、Eさんに転売が移っていくかもしれませんよね。そのときに損害賠償請求権も当然に承継していかないと、原始区分所有者まで、万が一瑕疵があって損害賠償請求の訴えを起こすときに、その人を捜して捜して、たどり着かなくて、公示をしても、公示をすれば何とかなるという法務省さんの、民事局のお考えのようですけれども、でも、前回も指摘をしましたけれども、その後にトラブルだって起きるんですよ、それが現場なんですよ。そのことを私は是非分かっていただきたいと思っています。

 お聞きしますけれども、転売した原始区分所有者が請求権を持ち続けるという今回の法改正なんですけれども、十五条一項、随伴性と、十五条の二項、分離処分の禁止に反していますよね。今の御答弁にもちょっと触れられたと思うんですけれども、これは反しているこのままでいいんですか。そのままこの法改正を進めるんですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の区分所有法十五条の規定でございますが、先ほど申し上げました、その共用部分の持分が専有部分の処分に従う、あるいは、専有部分と分離処分はできないという規定になっておりまして、今回問題になっておりますのは、持分、それ自体ではなくて、共用部分の瑕疵から発生する損害賠償請求権の話でございます。

 ですので、ちょっと規律が違うというふうに考えておりまして、損害賠償請求権自体は、個々の売買契約から発生して、個々の区分所有者にそれぞれ帰属する権利というふうに認識をしておるところでございます。

鎌田委員 いや、共用部分の補修に代わる損害賠償請求権は、共用部分の価値を回復するためのものですよ。とすれば、専有部分の処分に随伴するし、専有部分の処分と分離することはできないと考えるべきです。

 法務省さんの案では、区分所有法十五条一項、十五条二項の趣旨に反することは、私は明らかだと思います。当然承継する方が区分所有法の十五条一項、十五条二項の趣旨により合致することは、私は明らかだと思います。

 予定していたのもたくさんあるんですけれども、時間ですので飛ばしていきたいと思いますが、通知による意思表示の問題について伺っていきたいと思います。

 通知による意思表示の問題ですが、旧区分所有者が公示があったことを知らず、したがって、管理者によって損害賠償請求権の代理行使を知らないままの場合、旧区分所有者が新区分所有者に債権譲渡したり、管理者に対して修繕にお金を使うことを承諾したり、賠償金の返還請求権を放棄することもないということも起き得ますよね、想定として。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、改正法の中身でございますが、共用部分について生じた損害賠償請求権につきまして、管理者は、旧区分所有者のために訴訟追行をすることができますが、旧区分所有者にその旨を通知しなければならないこととしております。この通知はあくまで一方的な通知でございまして、通知の内容について、旧区分所有者の承諾を得るという必要はございません。

 そのため、旧区分所有者が共用部分について生じた損害賠償請求権についての管理者による訴訟追行を知らなくても、別段の意思表示がない限りは、管理者は旧区分所有者のために当該損害賠償請求権について訴訟追行をすることは可能となっております。

 お尋ねは、所在が不明となっている旧区分所有者については、管理者が当該旧区分所有者を代理して受領した損害賠償金を修繕費用等に充てることを承諾することは考えられないんじゃないか、こういうものと理解をしております。

 御指摘のように、管理者が、所在等が不明となっている旧区分所有者から、当該旧区分所有者を代理して受領した賠償金等の使途について承諾を得ること等ができるとは考えにくいところでございます。

 もっとも、共用部分の管理に関する事項として、共用部分について生じた損害賠償金につきまして、各区分所有者又は旧区分所有者が個別に受領をすることを禁じ、その使途を建物の瑕疵の修補のために用いるものとする旨を、集会の決議で決し、又は規約で定めておくことは可能であると考えております。

 あらかじめこのような集会の決議又は規約の定めをしておくことで、損害賠償金を旧区分所有者に返還せずに建物の修繕費等に充てることが可能となってまいりますし、これにより、損害賠償金を修繕費等に充てるために旧区分所有者の承諾を得ること等は必要とはならないものと考えております。

鎌田委員 今、局長、早口で御答弁くださったんだけれども、その御答弁の間に、別段の意思表示というのがちゃんと入っていたんですよ。だから、別段の意思表示があると、法制審議会の区分所有法部会で別段の意思表示があればということがはっきり入っちゃっていて、今の御答弁でも、別段の意思表示があると、これがもうもたなくなるんですよ、崩れちゃうんですよ。

 だから、私は、この別段の意思表示が入っているし遡及もされないし、そうすると、今、全国に七百万戸以上あると言われているマンションの方々、お住まいの方々の、外壁のタイルが落ちてきた、どうする、修補、修繕しなくちゃいけない、一刻も早く修繕しなくちゃいけない、分譲業者は修繕してくれない、じゃ、もう裁判に訴えるしかないというときに、どうしたっていろいろなトラブルが現場では起きてきますよ。

 前回も指摘しましたけれども、例えば転売した外国人、これは外国人だけに限らないんですが、管理組合に対する返還請求権は、前回、私は五年と時効を申し上げたんですけれども、十年の時効というふうに昨日教わりましたので、そこを私は訂正したいと思いますが、この時効が発生するまでずっと待たなきゃいけないんですよ。使えないじゃないですか、使っていいよということを言われない限り。なので、結局、その五年間は塩漬けになるし、業者さんとの話合いで一年間かかるし、塩漬けになるし、その後もっと時間がかかる。そうすると、修繕に実際に入るまで九年から十年かかるんですね。

 ですから、私は、今回の法改正については、これで終わりにします、答弁は要りません、転売時に損害賠償請求権も当然承継をすべきで、標準管理規約も改定するなら遡及するべきとずっと主張していきたいと思います。

 区分所有法という特別法の根本原則に従って、今そこに暮らしている住民の安全と安心のために、この趣旨を盛り込んでのしかるべき修正がなされることは大事だと申し上げて、私の今日の質問といたします。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、金村龍那さん。

金村委員 日本維新の会の金村龍那です。どうもありがとうございます。

 まず、改めて、他の委員もお伺いしておりましたが、今回の法案提出に至った経緯や意義のところをもう一度問いたいと思います。

 経緯については様々お話しいただいているんですけれども、ただ単にデジタル化、時代の要請とともに民事裁判のデータベース化をただやるだけでは、イノベーションにもつながりませんし、本当の意味での活用には至らないと思います。

 そういう意味では、司法の分野においても本法案の提出に至った経緯と意義を改めて確認させてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 民事訴訟手続のデジタル化については、令和二年三月に公表された民事司法制度改革の推進に関する関係府省庁連絡会議の取りまとめにおいて喫緊の課題とされておりまして、この取りまとめにおいては、電子データとして作成される判決書を広く国民に提供することについて、法務省において必要な検討を行うこととされました。そして、令和四年五月に民事訴訟法等の改正法案が成立しましたが、その際、両院の法務委員会において、判決書については国民が調査や分析をしやすいものとなるよう努めることとの附帯決議がされているところです。

 こうした経緯も踏まえ、法務省においては、同年十月から各界の有識者の協力を得て民事判決情報データベース化検討会を開催し、デジタル社会にふさわしい民事裁判情報の提供の在り方について検討を進めてまいりました。令和六年七月、この検討会の報告書が取りまとめられ、デジタル化された判決書等について法務大臣の監督する非営利の民間団体がこれを集約し、訴訟関係者の氏名、住所等に仮名処理を行って利用者に有償提供するという制度が提案されたものでございます。

 そこで、この報告書の内容も踏まえ、所要の法整備を行うため、本法律案を提出したものでございますが、本法案は、デジタル社会の進展に伴い民事裁判情報に対する需要が多様化していることに鑑み、民事裁判情報の適正かつ効果的な活用のための基盤整備を図るという意義を有しているものと考えております。

金村委員 せっかくやるのであれば、本当に国民にとって生かしやすいものであっていただきたいと思いますし、一方で、それを法務省や裁判所がいかに活用していくかも問われていると思います。

 その上で、既に現在でも判例のデータベースや雑誌を提供している民間事業者がいると認識しておりますが、これらの事業者は裁判所からどのように判決を入手しているのか、最高裁、お答えいただけますか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 各地の裁判所におきまして、判例のデータベースや雑誌を提供している民間事業者から裁判例の提供を求められた場合につきましては、いわゆる司法行政上の便宜供与といたしまして、当該裁判例情報の利用目的や当該裁判例についてのプライバシー保護の観点から問題がないかといった点について総合考慮した上で、各庁の判断に基づいて提供しているものというふうに承知しております。

金村委員 ありがとうございました。

 その上で、大臣にお伺いしたいと思います。先ほど、いわゆる指定法人について、なぜ指定法人が、民間の団体に担わせるのかという他の委員の質問にはお答えいただいたと思います。私からは、裁判所や法務省が行うことも実際には検討したとは思うんですけれども、本法案において、民間の団体、指定法人に担わせることのメリットですね。先ほど、民間の知見というお言葉は大臣からもあったと思うんですが、では、これは本当に指定法人に担わせるメリットというのはどのようにお考えか、お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 先ほど、民間の知見、技術ということを申し上げました。今現在、現状において、これは政府あるいはそれに準ずる者でやるのか、あるいは民間でやるのかといったことを考えた場合には、やはりまさに、繰り返しで申し訳ありませんけれども、知見あるいは技術、これまで様々なそういった技術の蓄積は民間側にもあるということで、そちらの方がより効率的というか、そういったことであろう。

 同時に、もちろん、そこは法務大臣としてしっかりと様々な監督をすることで、いろいろな、様々な安全といったことについてはしっかりと配慮させる上で、そこは民間の方が適切ではないかと判断したということでございます。

金村委員 私も、自分で質疑しながら、民間が担った方がいいんだろうなとは思うんですね。ただ、一点、そうであれば、私は一つの法人である必要性というのは実は余り感じておりませんでして、やはり四つ、五つ、そんなに多くある必要性は感じませんが、少なくとも、一つであることによるメリット、デメリットというのはやはりあって、民間が担うのであれば、競争環境というものが必然的に質を高めたり、サービスを供給される側の満足度につながったり、そもそもの技術論的なイノベーションも実現していくんじゃないかと考えています。

 その上で、これを全国に一つだけとした根拠についてお答えいただけますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、広く利用者の用に供し得るものとして、指定法人において、最高裁判所から民事裁判情報の提供を受け、基幹となるデータベースを整備することを予定しておりまして、このような基幹という位置づけや仮名処理等の作業を集約して効率化できることを踏まえると、指定法人は一つに限ることが相当であると考えております。

 また、複数の法人がこれを取り扱うこととなれば、仮名処理前の訴訟関係者の氏名などに関する情報の漏えい、拡散のリスクが高まる上、訴訟関係者等は複数の法人に対して仮名処理の訂正等の申出をすることが必要になるといったケースが生じる、そのような支障が生じると考えております。

 これに対し、委員御指摘のような、競争原理が働かないことに伴う御懸念については、法務大臣の定める基本方針において指定法人の業務の在り方を示すほか、業務規程の認可等を通じた適切な監督によって対処してまいることができると考えています。

 こうした事情を踏まえ、本法律案においては指定法人を全国に一つだけ認めることといたしたところです。

金村委員 既に今、現時点で、一応、最高裁を通して情報も得られるわけですから、仮名処理とか、必要な個人情報、プライバシーの侵害等配慮してやっていることを考慮すれば、余り、一つである必要性というのは、やはり今の答弁を聞いても私自身はそこまで納得のいくものではなかったなと思いますので、一つの指定法人でどういう運営がなされ、そしてそれが本当に価値のあるものになっているのかというのは今後の検討課題ではないのかなという認識を持っています。

 加えて、利用者にとって基幹となる一つのデータベースを整備するというのであれば、幅広くデータを収録する必要があると考えられるが、指定法人のデータベースに収録される民事裁判情報の範囲について教えていただけますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、令和四年の民事訴訟法等の改正によりデジタル化される民事訴訟手続及び行政事件訴訟手続において作成された電子判決書、電子判決書に代えて作成された電子調書、電子決定書の内容について、指定法人のデータベースに収録される対象としております。

 このうち、電子判決書と、これに代えて作成された電子調書については、事案の内容にかかわらず、広く収録することを想定しています。他方、電子決定書については、法令の解釈適用について参考となるものに限って収録することとし、具体的な範囲は今後省令で定めることを予定しております。

金村委員 改めて、プライバシーのところをお伺いしてまいりたいと思います。

 ここは一番大切だと思うんですね。やはり民事裁判情報ですから、多分、ものすごい数のプライバシーが情報としてあふれている中で、どのようにそれをしっかりと、仮名処理となっていますけれども、仮名処理をして、個人が特定されない、紛争や係争になった者が特定されないということが必要になってくると思うんですけれども、訴訟関係者の氏名や住所等の情報を含むもの、プライバシー等への配慮、本法案について、仮名処理、これは様々な規定を設けると先ほど他の委員の答弁でもお答えになっていましたけれども、どのボリュームの規定を求めているのか、その辺りも含めて、プライバシーのところを少しお伺いさせてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定法人が行う仮名処理について、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないようにするために必要なものとして法務省令で定める基準に従い、加工しなければならないものとしております。

 また、加工の方法に関する事項は、業務規程に定めて、法務大臣の認可を受けなければならないものとしており、詳細な仮名処理の基準については指定法人の業務規程に定められることを想定しております。

 なお、基準に沿って仮名処理を実施しても、報道された情報などと組み合わせると特定の個人が識別される場合もありますので、個別の事情により基準を超える仮名処理を要する場合は、申出により、指定法人において必要な仮名処理を追加的に実施することとしており、これを含めて、苦情処理に関する事項につき、業務規程の必要的な記載事項としているところです。

 指定法人が、このような法令及び業務規程の定めるところによって、全ての民事裁判情報について仮名処理を実施することとなります。

 以上でございます。

金村委員 全国に一つだけ指定される指定法人ですから、当然、業務規程も相当厚みのあるものになると思いますし、不測の事態を招かないような運用というのは当然だと思うんですけれども、やはり一度でも民事裁判を抱えた人が、裏を返せばデータベース化される前提に立つわけですから、そこは十分配慮が必要なんじゃないかなと思っています。

 加えて、私自身は民事裁判の当事者にもなったことはありませんし、弁護士でもないので、こういった裁判に立ち会ったこともないんですけれども、一つ教えていただきたいのが、仮名処理のルールを定める観点や対象というのは、もう既に範囲が決められているものなんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 仮名処理の基準を定めるに当たっては、訴訟関係者のプライバシー等に適切に配慮しつつ、データベースを有意なものとするため、具体的な事実関係に基づく裁判所の判断及びその過程を読み取ることができるようにする必要もございます。

 本法律案において、指定法人は、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように仮名処理をしなければならないものとしており、対象となる情報としては、訴訟関係者の氏名の全部、生年月日の一部、個人の住所のうち市郡より小さい行政区画、マイナンバー等の個人識別符号の全部などを想定しているところでございます。

 法務省といたしましては、先ほど申し上げたような観点を踏まえ、法務省令において適切な基準を定めてまいりたいと考えております。

金村委員 とにかく個人情報は秘匿するということと、事件というか、民事裁判の概要というものはきちんとなければ今後に生かせないということですよね、多分今おっしゃったのは。

 だとすると、何万件、何十万件と、多分民事裁判は知見がどんどんどんどんたまっていくでしょうから、極めてレアなケースというのはそんなにないのかもしれないですけれども、概要によって個人が特定されないような特段の配慮というのはやはり意識して、全国に一つある指定法人が運営していくことが望ましいと思っています。

 加えて、指定法人は仮名処理後の民事裁判情報を利用者に提供していくことになるが、どのような方法で提供していくことになるのか、提供の概要というのを教えていただけますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人は、民事裁判情報を利用しようとする者との間で情報提供契約を締結し、電磁的方法により、仮名処理後の民事裁判情報と民事裁判関連情報を併せて有償で提供することになります。

 提供料金に関する事項は、指定法人の業務規程に定め、法務大臣の認可を受けなければならないこととしており、指定法人が適正かつ確実に業務を実施するのに必要な範囲でできるだけ低廉な価格となるよう認可をすることを想定をしています。

 情報提供契約の具体的な在り方については、法務大臣が認可する業務規程の内容も踏まえ、指定法人と利用者との間で個別に合意されることにはなりますが、例えば、継続的契約に基づき仮名処理をした民事裁判情報を順次提供する方法や、直近数年分の民事裁判情報を提供する方法などを想定しているところです。

金村委員 まさに指定を受けて規定が決まり、さらにそこからどう運営、運用していくかというところなので、始まってみなければ一定分からないレベル感があるというのはよく分かりました。ですけれども、とにかくやはり後世に生かすためにやろうというところがまずお題目である中で、余りにもそればかりが先走ってしまうと、そこに不利益を被る人が増えてしまいますので、しっかりと指定法人とまた利用者の関係値というのも適正なものをつくっていただきたいなと思います。

 その上で、私個人で考えたときに、利用するというのは全くイメージがありませんし、一方で、他の委員の質疑にも、利用者というのはどういう者を想定しているのかというのがあったと思うんですけれども、ちょっと答弁の聞き漏れもあったので改めてお伺いしたいんですけれども、私は、利用者を想定しているのは、いわゆる個人ではないと想定しているんですけれども、指定法人から民事裁判情報の提供を受ける利用者というのはどういう方を想定しているのか、いま一度お伺いさせてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、大量の情報を処理する技術を用いて多数の裁判例の横断的分析を行うなど、デジタル社会における新たなニーズに応えるために、指定法人において基幹となる網羅的な民事裁判情報のデータベースを整理、提供し、民事裁判情報の幅広い利用を可能とするものであり、基本的に、その一次利用者においては、利用料金を支払ってデータベースの全部を利用するということを想定しています。

 したがいまして、指定法人から直接民事裁判情報の提供を受ける一次利用者としては、このような利用を行う判例データベース事業者、出版社、いわゆるリーガルテック企業、研究機関等を想定しております。

 御指摘のように、一般の個人の方は、高度な検索機能や判例解説などが付加され、閲読に適する形式に整えられた民間事業者の判例データベースの方がより利便性が高いと思われますので、一次利用者である民間事業者が整備したデータベースなどを通じた二次的な利用者となっていただくことを想定しているものでございます。

金村委員 どちらかというと、個人情報が危険にさらされるというのは、そういった一次利用者ではなくて、そこからサービスを提供された人たちがどうそれをある意味悪用するかによってそういう方向性に行ってしまうかなと思うので、一次利用者から二次利用者に広がっていく、裾野が広がっていくところも一定の何かルールを課していくことが私は必要なんじゃないかなと思っています。

 改めて、法務大臣にお伺いさせてください。

 本制度は一般の個人や国民にとってどのような利点があるのか、お答えください。

鈴木国務大臣 今回の利便性ということですけれども、基本的なたてつけ、これまでも、質疑の中でも出てきていますが、基本的には、民事、行政事件の判決書等が広く指定法人のデータベース、これに収録をされます。そこでしっかりと仮名処理等々をきちんとした上で、そこから民事裁判情報の提供を受けた一次利用者、今答弁もありましたけれども、ここが出版社であったり判例データベース事業者、あるいはいわゆるリーガルテックのようなスタートアップを中心とした、そういうイノベーターとか、研究機関等を想定をしているところであります。さらに、それが、企業であったり、あるいは個人も含めて二次的な利用者に提供されていくという状況であります。

 もちろん、どういった形の付加価値を一次利用者が付加するか、これは当然それぞれの自由競争の世界でのイノベーションに懸かっていると思っていますけれども、そういった中で、例えば、一次利用者などにおいては、裁判例の体系化であったり、解説、英訳の付加、あるいは裁判例の横断的な分析、より精緻な統計的分析、機械学習の素材にした上での様々なAIの研究開発等々が想定をされるところであります。

 こうした付加価値をつけた上で二次的な利用者に提供されていくということでありまして、もちろん様々なイノベーション、これは私も期待したいと思いますけれども、そういった意味でのいろいろな複層的な利便性、これが増すことになっていくことを我々としては期待をしたいと思っております。

    〔委員長退席、鎌田委員長代理着席〕

金村委員 デジタル化の波はもう大きな波になっておりますので、しっかりそこで日本にとっても、そして国民にとっても有益な法律となるようにしっかりしていただきたいと思います。

 その上で、最後に、幾つか前回の質疑でもさせていただきました再犯防止について少しお伺いさせてください。

 再犯防止で少年犯罪をいろいろ勉強させていただくと、少年院の中のカリキュラムが非常に充実しているというところを前回質疑させていただきましたが、その中で少し気になった点をまずお伺いさせてください。

 少年院に在院している少年のうち、いわゆる障害、知的障害や発達障害を含むこういった障害があると思われる少年、又は、少年院に入るときに知能検査をされると聞いておりますので、IQが境界知能にある少年というのはどの程度いるのか、教えてください。

小山政府参考人 少年矯正統計というのがございますけれども、これによりますと、令和五年の少年院新収容者数が千六百三十二名でございます。このうち知的障害、人格障害、神経症性障害、発達障害、その他の精神障害として診断をされた者、これには疑いというものも含みますが、これが四百八十四名、約三割でございます。

 また、委員御指摘の境界知能につきましては、直接的にこれを示す数値は統計上ございませんが、同じく少年矯正統計におきまして、知能指数が七九未満といった者は六百五十二名、約四割でございます。

 なお、いずれにも該当する者は、それぞれにおいて計上されているということでございます。

    〔鎌田委員長代理退席、委員長着席〕

金村委員 少年院にいる少年のうち、三割は障害が疑われていて、四割程度の少年がいわゆる境界知能と言われる帯域にある。これは、大いに想像できるのが、気づいたら犯罪に巻き込まれている、誰かの例えば指示や、巻き込まれて、それが当たり前化して、普通に犯罪を犯すようになってしまう、まあ慣れみたいなものもあるのかもしれませんが。

 罪を犯した者が再起を期すところを社会全体で支援していくというのは必要だと思いますし、また、こういった知能指数が高くない人たちが今犯罪の現場に多く携わっていることは、もう既にこの統計で明らかだと思いますので、より少年院における支援のカリキュラムが必要になってくると思うんですが、こういった障害を持っていたり、またいわゆる境界知能と言われる少年に対する支援教育課程というのはどういったカリキュラムがあるのか、教えてください。

小山政府参考人 少年院におきましては、在院者の特性に応じまして体系的、組織的な矯正教育を行うものとされておりまして、在院者の年齢、心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度、在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らしまして、一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに、矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めました矯正教育課程というものを定めてございます。

 この矯正教育課程は複数ございまして、その中には、御指摘のように、支援教育課程というのがございます。これは、障害等その特性に応じた、社会生活に必要となる基本的な生活習慣を身につけるための指導や、社会生活に適応するための生活態度及び対人関係を築くことができるようになるための指導の一つとして、資質や情緒等の課題の変容を支援するための治療的指導等を重点的に実施しております。この支援教育課程も、犯罪的傾向の進度や障害の程度に応じまして、更に五つに細分をされております。

 この支援教育課程が指定されている少年院でも、他の少年院と同様、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって指導が行われております。

 その上で、障害を有するといった在院者の特性に応じまして、例えば、生活指導といたしまして、在院者に対して、学習の土台となります認知機能の強化を図るため、覚える、写す、見つける、数える、想像するといった五つのトレーニングから構成されます認知機能強化トレーニングや、身体的な不器用さを改善するため、実際に体を動かしてコントロールをする認知作業トレーニング、主に眼球運動を中心とした視覚機能を補正することで視覚による情報の取り入れを円滑に行うことができるようにするビジョントレーニングといったものに取り組んでおるところでございます。

西村委員長 金村さん、時間ですので、御協力お願いします。

金村委員 たっぷり支援していることが分かりましたので、納得できました。

 これからも、就労支援だけではなくて、課程を、働ける人になるための支援を力を入れていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、円より子さん。

円委員 国民民主党の円より子です。

 質問がもう六番目ですので、大臣にも同じような質問になってしまうかもしれませんが、お許しくださいませ。

 まず、デジタル社会の進展に伴いまして、民事裁判情報に対する需要が多様化していることは大変理解しておりますが、どのような要望や需要があって今回の民事情報のデータベース化をすることになったのか、また、このデータベース化が今後どのように利活用されていくと考えられているのか。その利活用の中には、紙ベースと違いまして、悪用される可能性も十分増大するという懸念も含めて、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木国務大臣 令和六年の七月に取りまとめられました、有識者検討会、民事判決情報データベース化検討会でありますけれども、その報告書におきましては、デジタル社会における民事裁判情報の意義ということで、デジタル技術を活用したデータの収集、分析が容易になったことを背景として、民事裁判情報全体を通じてその傾向を分析をするということや同種の事案を地域ごとに分析することが可能になっており、そのためにより多くの民事裁判情報が提供される必要があるなどの指摘があったところでございます。

 そこで、本制度といたしましては、こうしたデジタル社会における新たなニーズ、こうしたことに応えるために、指定法人において基幹となる網羅的な民事裁判情報のデータベース、これを整備、提供し、民事裁判情報の幅広い利用を可能とするものとなっております。

 本制度の下では、民事、行政事件の判決書等が広く指定法人のデータベースに収録をされる、そのところについては様々これまでも議論が行われておりますけれども、そして、指定法人からこのデータベースというか民事裁判情報の提供を受けた一次的利用者、これは先ほど申し上げましたけれども、出版社であったり判例データベース事業者、あるいはいわゆるリーガルテック企業、研究機関等々、様々想定されるところでありますけれども、こうした一次的な利用者が様々な付加価値を付加をして、そして、製品化あるいはサービスの商品化を行っていく。それが、弁護士さんもそうですし、あるいは企業や個人、こういった二次的な利用者に提供されて活用されるということを我々としては想定をしております。

 もちろん、これは民間の創意工夫というところに大いに期待をしたいと思っているところでもございますし、我々として、こういったものということで予断を持って申し上げることはいたしませんけれども、やはりそうしたことを通じて、例えばでありますが、裁判例の横断的分析を通じて、慰謝料額に関する考慮要素あるいは判断の傾向等を把握をすることが可能となるなどが想定をされますので、そういったことで、民間の利活用を通じてより高度な法的なサービス、こういったものが世間に提供されていく、そして受益をされる方も大勢いらっしゃるような状況というものを我々としては期待をしております。

円委員 一つの法案ができますと、よし、これでもうかるぞとか、うまくと言うとあれなんですが、悪用してしまうような人たちが必ず出てくると言われておりますので、この法案がそういうふうにならないようにしっかりと運用していかなければいけないと思っておりますが、今大臣がおっしゃったような出版社やリーガル関係の方々がこれまでもこうした情報を取得なさっておりましたが、これまではどのようにして取得していらしたんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 出版社や判例データベース事業者などは、従来、裁判所ウェブサイトに掲載される情報のほか、各地の裁判所から便宜供与として一定の条件の下で判決書の写しの貸与を受けるなどして、民事裁判に関する情報を取得してきたものと承知をしております。

 また、弁護士などは、裁判所ウェブサイトに掲載されるものに加え、出版社による出版物や、判例データベース事業者によって提供されるデータベースを活用するなどして、民事裁判に関する情報を取得してきたものと承知をしております。

円委員 質疑通告しなかったんですが、今、もし補足していただければ、今までは、そういう取得した情報は無償で取得していたんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、出版社が裁判所ウェブサイトの情報を入手するというのであれば、裁判所ウェブサイトは無料でございます。

 他方、弁護士が出版物や判例データベース事業者によるデータベースのサービスを受けるに当たっては、それの対価を支払っているということでございまして、例えば、判例データベース事業者については、いわゆるサブスクのような形で、月々定額幾らで一定の範囲の情報を使い放題というふうな形で提供されているものと承知をしております。

円委員 ありがとうございます。

 今回、民事裁判情報のデータベース化をするに当たりまして、指名法人を一つ指定することになるわけですが、その指名法人に提供する情報というのは、これは全て無償で提供するということでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度において、最高裁判所が指定法人に対して民事裁判情報を提供する際に対価を得ることは予定はしておりません。

円委員 そうしますと、指定法人は、データは無償に提供される。しかし、仮名処理などにはかなりのコストがかかると思うんですが、そのコストは、国が予算は出さないんですか。そして、どのくらいのコストになると試算されているんでしょうか。もし国が出さないんだとしたら、これは有料の提供情報料金でカバーするということなんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人において必要な費用については、業務の効率化を図るためにどのようなシステムを用いるかなどといった事情によることとなりますので、現時点で正確にお答えするのは困難ではございます。

 なお、仮名処理に必要となる費用について、有識者検討会におけるヒアリングでは、システム開発費用に一億五千万円程度、いわゆるランニングコストとして、人件費に年間四千四百万円程度を要するとの試算も示されています。

 これらの費用については、国からではなく、指定法人の業務開始後、利用者から収受する料金によって回収することを見込んでいるものでございます。

円委員 そうしますと、民事裁判情報の提供料金というのは、今おっしゃったようなランニングコストや様々含めて、どういうふうにするかを多分指定法人が考えるんだと思いますけれども、それは、先ほどお聞きした、弁護士さんたちが出版社などにやるときには少し対価を支払うとおっしゃっていましたが、これまで情報提供を行っていた企業等への圧迫にはならないんでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人は、本制度の下で基幹となるデータベースの構築、管理と出版社や民間の判例データベース事業者などの一次利用者への提供を行うことを業とするものでありまして、それらの事業者と競合するものではございません。むしろ、出版社等の既存の事業者は、従前はそれぞれが人手とコストをかけて行っていた仮名処理を自ら行う代わりに、仮名処理済みの民事裁判情報を対価を支払って入手することが可能になるものでございます。

 これらの事情に照らし、本制度は、既存の事業者の業務を圧迫するものではないと考えております。

 なお、有識者検討会で実施したヒアリング及びパブリックコメントでも、判例データベース事業者から本制度に反対する反対の意見などはございませんでした。

円委員 ありがとうございます。了解いたしました、その点は。

 ただ、データベースの整備とか仮名処理などには高度な技術が求められますし、これには、先ほどからも、出版社もすごいコストをかけてやっていたとおっしゃいましたが、本当にコストがかかるんですよね。国が予算を出さずに指定法人に任せるとなりますと、先ほど言ったような費用だけで本当に済むのかどうかというのも大変心配をしております。

 コストを抑えたいからということで、電子判決書などのデータをAIに仮名処理させた場合、その後も、仮名処理をしても、AIでやった場合は個人を特定することが可能だと。私のブレーンには、皆さん、官僚の方々がよく使っておられる法令検索をつくった仲間たちがおりまして、その人たちに今回のことを聞きましたところ、これはAIに仮名処理させたら必ず個人を特定できるというようなことが出てきたんです。それが私はとても今心配しております。

 一番最初にもちろんAIを多分使うと思いますが、民事情報データを最初からAIに処理をさせると、学習に利用され、回り回って個人が特定されてしまう可能性は物すごく高まるんだそうです。そのようなリスクを想定なさっているかどうか、そのこともお聞きしたい。

 まず、機密情報を守るためには、最初からAIを利用するのではなくて、手作業で、丁寧にツールや人手で個人情報の処理をした後に、AIで個人情報が入り込んでいないかをまた確認するような、そうした対策が必要だそうです。

 手作業には膨大な人件費がかかります。指定法人は、多分、指定された法人がこのようなこと、仮名処理はできないと私は思われますから、再委託されるんだと思いますが、その下請された会社にまた相当な予算を出さないと、そこでコストを下げるために最初からAIで作業されてしまいかねないと私は大変懸念を持っておりまして、そのことをしっかり見定めた上で指定法人をお決めになるのかどうか。非常に高度な技術を持つ人材がいるのかどうかも、指定法人を選定するときに確認なさるのかどうか。その辺、大変心配ですので、お答えいただけますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人の選定は公募による予定でございますが、その手続の詳細については、候補となる法人の適格性や業務執行能力を総合的かつ的確に評価できるよう、適切な方式を検討してまいりたいと考えております。

 本法律案においては、指定に当たって、民事裁判情報管理提供業務を適正かつ確実に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであることという要件を設けているところでございます。

 先ほど委員御指摘のようなAIの利用の仕方については、様々な知見があろうと思いますけれども、その時々においてしっかりとその知見を入手した上で、法務省の方で適切に対応してまいりたいと考えております。

 公募の方式については今後検討することとなりますが、この要件の判断に当たり、指定を受けようとする法人が仮名処理を行うためにどのような人的、物的体制の整備を予定しているか、また、業務に係る収支予算についてどのような計画をしているかなどの事項について適切に把握できるよう検討してまいります。

円委員 もちろん、指定法人がそのような技術をちゃんと持っていらっしゃるかどうか、どういうところが指定されるのかまだ分かりませんし、今おっしゃったように、これから公募なさるんだそうですが、そもそも、国が予算を用意しないのであれば、この膨大なコストを指定法人がどのように用意するのか、それも心配なんですね。

 指名法人と再委託される下請の法人との間に情報漏えいのリスクはないのか、安易にAIで処理をするようなシステムの会社に再委託されないのか。その辺、膨大なコストがかかるこのデータベース化、指定法人に丸投げするようなことでは、大変貴重な国民の財産である、資産価値のある民事情報データを扱うときに無責任だと思われますので、その辺、しっかりやっていただきたいと思いまして、大臣に御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 指定法人が行う仮名処理についてのAI活用ということで、いろいろ御懸念がある、そういった御指摘もいただきました。もちろん、それはどう仕組むかということにもよるかと思いますので、そこは恐らく、そういった適切な対応、これは十分可能だと思います。

 そういった中で、AIプラス人手による確認作業ということで想定をしておりますけれども、場合によっては、指定法人の方で委託あるいは再委託ということもこれは考え得るということの中で、効率的かつ的確にこうした確認作業を進めるためにも、業務の一部委託を認める規定を設けております。

 まさにそういった中で、指定法人においては、やはり、民事裁判情報等の漏えいあるいは滅失、さらには毀損の防止、保有している情報についてですね、そういったことは当然必要でありまして、その他の安全管理に関する事項、これは業務規程に記載をさせます。その記載事項とした上で、法務大臣の認可を得なければならない、そういったたてつけとしております。

 そうした中で、指定法人が例えば委託をする場合、あるいはその先の再委託をする場合、それぞれの委託先の取扱い、再委託先の取扱い、そこについて、安全管理を確保する義務を指定法人が負う、そういったことで私どもとしては今提案をしているところであります。

 そうした意味において、情報漏えいということ、これはやはり大変大事なことでありますので、そうした情報セキュリティーの確保、ここにつきましては、指定法人がこの民事裁判情報管理提供業務の一部を委託、あるいは再委託に同意するに当たっては、その委託先を適切に監督をするということを通じて、これを確保するということで考えております。

 加えまして、この業務の一部の委託又は再委託に当たって、指定法人が法務省令の定めるところにより法務大臣の承認を得なければならないこととしておりまして、委託に係る承認の手続の在り方は、今申し上げましたように、今後法務省令で定めるということになりますけれども、私どもといたしましては、業務委託によって、民事裁判情報に係るデータベースの整備、運用を適格性のある法人が行うこととするこの法律案の趣旨、これを損なうことのないよう、情報セキュリティーの適切な確保の観点にも十分留意しながら、委託される作業の内容の適切な把握、これにも努めてまいるとともに、委託の承認の可否についても適切に判断していきたいと考えているところでございます。

円委員 民事訴訟においては、弁護士がつくケースは、二〇二三年で、地方裁判所では双方に弁護士をつけた割合が四二・一%ですが、簡易裁判所ですと、弁護士が選任されているケースはたったの一一・七%なんですね。本人訴訟という、当事者が自分でいろいろ調べて訴えを起こすケースも、地裁では七・九%、少ないですが、簡裁だと八六・三%にもなります。

 この数字から分かりますように、一般の方からの需要は非常に高いと思われますので、先ほど柴田委員からの御質問で答弁も同じことを言っていただいてはおりますけれども、裁判所の、最高裁のウェブサイト、これはもちろん維持していただくどころか拡大していただいてもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましても、裁判所ウェブサイトにおいて、先例的価値や社会的関心の高い裁判例を国民に提供するということは重要であるというふうに考えております。

 これまでも、最高裁の判決についてはおおむね掲載をしているところでございます。下級裁を含めますと約四万件、民事事件に関しましては掲載しているというようなところでございます。

 引き続き、このような先例的価値あるいは社会的関心の高い裁判例を提供することは重要であるというふうに考えているところから、利用者の方々の利便性等も考慮しながら、今後とも適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

円委員 ちょっと最後に、民事裁判ということで、最近気になることがございまして、女性の少額破産が増えているんですね。全体のうち月収十五万未満では、女性が六五%も破産事件に遭っているというふうなことがございまして、裁判所などでは男女別のそうした統計がないようなんですが、そうした破産した女性たちが例えばSNSの副業に手を出して、被害者になったり、闇バイトの実行犯に知らず知らずのうちにさせられてしまっているというケースもあると聞いております。

 最後に消費者庁にお伺いしたいんですが、そうした被害をなくすためにも、どんな啓発活動をなさっているのか、お教えください。

西村委員長 消費者庁尾原審議官、時間が来ていますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

尾原政府参考人 お答え申し上げます。

 全国各地の消費生活センターには、いいねを押すだけ、スタンプを押すだけ等の簡単な作業で稼げると言いながら、実際には報酬が得られなかった等の副業トラブルについての相談が寄せられており、その件数は増加傾向にあります。

 そのため、消費者庁及び国民生活センターでは、そのような消費者被害の未然防止を図るために、引き続き、SNSの活用を含めた多様な手法を用いて、消費者に強く注意喚起を行ってまいります。

円委員 終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、大森江里子さん。

大森委員 公明党の大森江里子でございます。

 質問の機会を頂戴し、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案について質問させていただきます。

 令和六年七月二十九日の民事判決情報データベース化検討会による報告書において、「判決書は憲法上公開が要請され、民事訴訟法においては訴訟記録の一部として何人も閲覧することができるものとされており、その内容は本来誰でもアクセスできるものである。」とあります。

 また、「民事裁判情報は、社会全体で共有すべき公共財としての価値が高まっているというべきであり、先例性の高い事件や社会的に関心の高い事件等に限ることなく、これを広く国民に提供することに重要な意義があると考えられる。」ともあります。

 制度創設の目的や国民にとっての利点についてはほかの委員の皆様からの質問もございましたし、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会も、今回の制度設計の大枠については賛成していることは承知しております。

 その上で、幾つか質問をさせていただきます。

 民事裁判情報に含まれる個人の氏名などは仮名処理がされるようですが、法人の名称や所在地は仮名処理の対象となるのでしょうか。法人は大企業や中小企業など規模も様々ですが、規模によって取扱いが異なるのか、また、個人事業主の屋号などは取扱いがどのようになるのか、お伺いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案では、有識者検討会の議論を参考にしつつ、仮名処理の対象とすべき情報を検討し、規模の大小を問わず、法人の名称や所在地については一律の仮名処理の対象とはしないこととしております。

 有識者検討会においては、保護しようとする権利利益の性質に照らして、仮名処理によって保護を図るのが相当かという観点から議論が行われ、法人については、プライバシーが観念できず、民事裁判情報の利用の態様によって侵害され得る名誉や信用については不法行為責任の追及等による回復が可能であること、また、近時、企業経営における説明責任の社会的要請が高まっていることを踏まえると、規模の大小を問わず、法人が説明責任を尽くすことによってその不利益が回避されるべきであること、これらが理由とされているところでございます。

 また、先ほど屋号についてのお話もございました。屋号については、一般的に営業の主体を示すものであり、これは、明らかにしても直ちに個人の特定に結びつくとまでは限らず、一律に仮名処理の対象とする必要はないものと考えております。

 このように、法人等の名称や所在地については一律の仮名処理の対象とはしていないところですが、個別の事情に応じて必要な限度で追加の仮名処理の対象とはなり得るものであり、法務省としては、本制度の運用によって被害が生ずることのないよう適切に対応してまいりたいと考えております。

大森委員 御答弁ありがとうございました。

 民事裁判情報の質問を続けさせていただきます。

 民事裁判情報の誤記載や仮名処理の漏れなどが発生しないとは言い切れないと思っております。誤りが判明した場合の対応方法はどのようになるのか、お伺いいたします。

松井政府参考人 本法律案においては、指定法人の業務規程に、仮名処理の加工の方法に加え、苦情の処理に関する事項を定め、法務大臣の認可を受けなければならないものとしております。

 仮名処理に漏れがあった場合には、指定法人が自主的にこれを修正し、あるいは、苦情処理の一環として、訂正の申出を受けて必要な処理を行うことを想定しております。

 法務省としては、指定法人による業務の遂行状況を注視し、必要に応じて監督命令を行うなど、適切に対応してまいります。

大森委員 ありがとうございました。

 対応方法については承知いたしました。

 訴訟関係者から追加の仮名処理の申出なども想定されるかと思います。本制度の創設に関する日弁連の意見書でも、民事裁判情報の中には、いじめ、体罰等不適切指導、学校等事故、少年事件、さらに子の虐待事件や子に対する性被害に関する損害賠償訴訟など子を当事者や関係者とするものも含まれる、こうした事案については、判決の中で詳細な家庭の事情や関係者の生育歴について触れられることも多く、また、被害内容自体が高度のプライバシーにわたる場合もあり、当事者、関係者の特定がされた場合、その当事者、関係者に及ぼす影響は甚大であるとあります。

 ちょっとここからは個人的な希望も含めてなのですが、指定法人は、仮名処理の基準をなるべく明確な形で公表し、訴訟関係者自身が、どの部分が仮名処理の対象になるのかをあらかじめ把握できるようにするべきではないかと思っております。また、指定法人が民事裁判情報を受け取ってから提供するまでの間に一定の猶予期間を設けて、事前の申出を可能にする必要もあると思いますが、御見解をお伺いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、仮名処理基準の公表に関し、有識者検討会においては、追加的な仮名処理の申出の参考となるよう、第一次的な仮名処理の基準をあらかじめ公表するなどの必要性が指摘されたところです。

 また、有識者検討会では、指定法人が民事裁判情報を提供した後に、当該民事裁判情報に係る電子判決書等について閲覧等制限決定が行われる事態をできる限り回避するために、判決言渡しが行われた後、指定法人が民事裁判情報を取得するまでの間に一定の期間を設けるなどの運用が期待されると指摘されたところでもございます。

 法務省としては、訴訟関係者にできる限り負担なく適切な時期に申出をしていただけるよう、指定法人における運用の方針等も踏まえつつ、監督権限を通じて適切に対応してまいります。

大森委員 ありがとうございました。

 続きまして、裁判所から指定法人へ仮名処理前の民事裁判情報が提供をされますが、その際におけるサイバー攻撃などによる情報漏えいリスクへの対策はどのように検討なされているのか、お伺いいたします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 ただいま委員の方から、裁判所から指定法人に情報を提供する際の情報漏えい等に対する問題意識をお聞かせいただいたところでございます。裁判所といたしましても、民事裁判情報の漏えい等を念頭に置いた情報セキュリティー対策、これの重要性については認識しているところでございます。

 指定法人においてデータベース化に用いられるシステムの詳細は、今後検討されるということになると承知しております。そうしますと、具体的なデータの提供方法につきましては、指定法人が指定された後で、その法人と協議の上で定めていくということになろうかと考えております。

 ですので、現時点においては、今申し上げたように、これからの検討ということになりますけれども、問題意識を持って、適切なセキュリティー対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

大森委員 ありがとうございました。

 是非とも御検討をよろしくお願い申し上げます。

 次に、今後、多数の民事裁判情報が提供されることになりますと、これらを学習素材としてAIの研究開発をすることも可能になると考えられますが、本制度を利用したAIの研究開発、活用事例としてはどのようなものが考えられるか、御見解をお聞かせください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 有識者検討会のヒアリングでは、AIを活用して効率的に判例検索を行うシステムが民間のサービスとして提供されている海外における例も紹介されております。

 我が国においても、判例データベース事業者と連携して、効率的に判例を検索するサービスが提供され始めており、例えば、指定法人のデータベースを利用し、民事裁判情報を学習素材として活用することにより、同様のサービスの更なる発展が期待されるところでございます。

大森委員 ありがとうございました。

 続きまして、今までの委員の方からもございましたが、改めてお伺いいたします。

 検討会の報告書において、仮名処理や安全管理措置を実施するためには、相応の費用を要することとなるから、民事裁判情報の提供は有償で行われる必要があるものの、公共財としての側面からは、提供の対価をできる限り低廉なものとされることが期待されるとあります。

 指定法人が民事裁判情報を提供する際の提供料金ですが、どのくらいの料金を想定しているのか、重ねてで申し訳ございませんが、改めてお伺いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 指定法人による仮名処理に必要となる費用については、有識者検討会におけるヒアリングでは、システム開発費用に一億五千万円程度、いわゆるランニングコストとして人件費に年間四千四百万円程度を要するとの試算が示されております。

 仮に仮名処理費用の試算をベースとして、指定法人がシステム開発費用を始めとする初期費用を五年程度で回収しようとした場合には、ランニングコストと合わせて年間一億円程度の費用を要することになりますので、料金はこの費用を利用者数で按分して賄えるように設定することが想定され、より多くの者に利用されれば、より低廉な金額になることが見込まれます。

 本法律案においては、指定法人が一次的な利用者に民事裁判情報を提供するための料金に関する事項を業務規程の必要的記載事項として、これを法務大臣が認可することとしており、法務省としては、利用料金が不当に高額にならないよう、業務規程の認可を適切に行ってまいりたいと考えております。

大森委員 ありがとうございました。

 済みません、質問をちょっと二つほど飛ばさせていただきまして、次に日弁連の意見書においてですが、本法案では対象外とされている非訟事件手続等についても基幹データベースに収録すべく検討を行うべきであると指摘されておりますが、御見解をお聞かせください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定法人の基幹データベースに収録される対象を、令和四年の民事訴訟法等の改正により作成されることとなる民事、行政事件訴訟手続の電子判決書等としておりまして、令和五年の法改正の対象である民事執行事件や非訟事件等については対象としておりません。

 非訟事件の手続は非公開とされ、記録の閲覧についても民事訴訟事件等とは異なる規律が設けられているなど、本法律案において対象としている民事、行政事件訴訟手続における電子判決書等とは異なる考慮が必要になると考えております。

 したがいまして、御指摘の非訟事件手続等における電子裁判書を指定法人のデータベースに収録することについては、そのニーズや手続の性質等を踏まえて検討する必要があると考えているところでございます。

大森委員 ありがとうございました。

 引き続きまして、本制度に基づいて民事裁判情報のより積極的な活用が行われていきますと、法律の専門家以外の方にとっても裁判がより身近になると考えられます。そうしますと、裁判によらない紛争解決も促進されると思っておりますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 御指摘の裁判外の紛争解決手続、いわゆるADRに関しても、例えばその手続をオンライン上で行うODRにおいて、民事裁判情報が紛争解決の指針として活用をされるということ、あるいは、AIの機械学習の素材に用いられるということで、高度なAIの研究開発が可能となり、ODRの利便性が高まるということが想定をされるところかと思います。

 このように、この制度の活用によって民事裁判情報の活用が更に進むということで、ODRを始めとする裁判によらない、今御指摘ありました、そうした紛争解決についてもより促進がされていくということを私どもとしては期待しているところでございます。

大森委員 ありがとうございました。

 時間が近づいてまいりましたので、まとめさせていただきます。

 この度の制度が、是非広く国民の皆様の理解を得ながら、よりよい制度としていけるよう、制度の創設後も制度の在り方について定期的に見直しを行っていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 民事の判決の個人情報とプライバシー保護について質問をさせていただきたいと思います。

 今回の法案、民事の判決の個人情報の加工、提供、管理、これをなぜ国の事業として行わず、民間の法人に委託をするのかという点、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 これまでも何人かの委員の方々から同じような御指摘がありました。

 私どもといたしましては、時宜にかなったデジタル技術を用いるなどして、適正かつ効率的な業務運営、これを、データベースの整備、運用においては図っていく必要があると考えております。そうした中で、民事裁判情報の提供にこれまでも大きな役割を果たしてきた民間セクター、民間において相当の知見が蓄積をされ、さらには技術開発も進んでいる、そういった状況があろうかと思います。

 そういった中で、私どもとしては、こうした民間の知見や技術をしっかりと活用していくこと、これが相当ではないかと考えたところでございますし、あるいはまた、国がもし仮にこうした整備、運用を行ったとした場合には、かなり所要の体制を整備するためのコストが必要であり、またあるいは、民間の方により蓄積をしているこうした知見や技術をどう獲得をするのかという問題も出てきます。

 さらには、私人間の紛争の解決に係る民事裁判情報を行政機関が網羅的に収集、管理をするということへの懸念を招きかねないといった、そういったことも私どもとしては考慮したところでございます。

 こうしたことに鑑みまして、さらには、有識者検討会の報告書も踏まえまして、基幹データベースの整備、運用については、国ではなく、法務大臣が監督をする民間の団体に行わせることとしたところでございます。

本村委員 これまでも民間の方が判決の写しの提供を受け、そして匿名加工、仮名の加工をして、有償で提供してきたというふうに思いますけれども、今までとは桁の違う判決の量を、二十五万件ということですけれども、膨大な個人情報、センシティブ情報が蓄積をされるということで、フェーズが違う段階に入ってくるということは、よく私たちは注意をしなければいけないというふうに思っております。

 民事裁判の情報を、先ほどもおっしゃられたように、法務大臣が指定をする営利を目的としない法人が加工し、提供するという中身ですけれども、指定法人は様々な事業を行うということを想定しているのかという点、法務省に伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、指定の要件として、民事裁判情報管理提供業務を適正かつ確実に行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること、民事裁判情報管理提供業務以外の業務を行っている場合は、その業務を行うことによって、民事裁判情報管理提供業務が不公正になるおそれがないことその他を定めており、これらの要件については、申請をした法人が行う他の業務の状況も踏まえて、該当性の審査を行うこととなります。

 したがいまして、指定法人が他の業務を行うことそれ自体が制限されるものではございませんが、民事裁判情報の提供業務以外にどのような業務を行うかについては、指定の要件を備えるか否かを審査する際に考慮されることとなります。

本村委員 指定法人には仮名加工前の情報が蓄積をされるわけです。個人情報が一度流出をしてしまえば、取り返しのつかないデジタルタトゥーとして残ってしまうこともございます。

 加工前の情報がほかの業務に利用されるということはあってはならないというふうに考えますけれども、その点はいかがでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃったようなことは、決してあってはならないと私どもとしては考えております。

本村委員 民事裁判情報の加工、仮名加工情報の提供、そして管理という部分だけを非営利として考えるのか、ほかの事業のところは営利でいいのか、その点もお示しをいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案においては、民事裁判情報の提供等を行う者として営利を目的としない法人を指定することとしておりますが、ここに言う非営利法人とは、構成員に利益を分配することを目的としない法人をいうものでございます。委員御指摘の業務の非営利性というものが法人が事業から利益を得ないという趣旨であるのであれば、この点は、非営利法人であっても、事業から収益を上げること自体がおよそ否定されるものではございません。

 本制度に基づく民事裁判情報の提供業務についても、利用者からの料金等によって適切な収益を上げ、仮名処理を含め、民事裁判情報管理提供業務を適正かつ確実に行うための費用を賄うことになると考えております。

本村委員 先ほど来議論がありますけれども、私も確認をしたいんですけれども、指定法人が仮名加工の民事裁判情報を提供する際の値段は幾らになるのかという点、お示しをいただきたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 利用料金は、指定法人がそのデータベースを適正かつ確実に整備、運用するための費用を賄うことができるように、一義的には指定法人において設定することとなりますが、不当に高額な金額とならないよう、料金に関する事項を業務規程の必要的記載事項とし、法務大臣による認可の対象としております。

 具体的には、指定法人による提供料金は、適切なシステム整備に必要な費用や仮名処理に要する人件費等を踏まえた上で、利用者数の見込み等を勘案して定められることになりますが、民事裁判情報には公共財としての側面があり、その活用を幅広く促す観点から、なるべく低廉なものとする必要があると考えております。

本村委員 次に、指定法人全体の事業が非営利であるべきだというふうに考えております。暴利を貪ったりですとか役員報酬が高かったり、本来、判決は、先ほど来御指摘がありますように公共財ですから、その利益は国民、住民の皆様にお返しをしなければいけないということになります。ですから、一部の人が一般の方の収入よりもかなり高い収入を得るということは、納得は全くされないというふうに思います。

 指定法人全体の事業が非営利であるべきというふうに考えますけれども、御見解を伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案におきましては、非営利の法人を指定法人として指定することとしておりますので、指定法人が行う他の業務についてもまた非営利法人として行う業務ということになります。

 もっとも、先ほどお答えしたとおり、およそ指定法人がその事業により収益を上げることが許されないものではないと考えているところでございます。

本村委員 その利益は国民、住民の皆様にお返しできるようにということでしていただきたいというふうに思います。

 民事訴訟法の第九十二条第一項には、訴訟記録の公開の原則を、例外的に認める規定で、当事者の申立てによって訴訟記録の一部を閲覧制限することができると定めております。しかし、事件に何の利害関係もない第三者が、プライバシーや個人情報の塊である訴訟記録を一切のマスキングがされないまま閲覧をできる状況にあるということが報告をされております。

 この法案は、この現行法の閲覧制限の場合は提供しないというふうにありますけれども、しかし、今のままでは不十分だというお声がございまして、この法案で本当にプライバシー情報が守られるのかという点も大変懸念をしておりますけれども、その点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 まさにこの訴訟関係者のプライバシー、この権利利益は極めて大事だと思っております。

 そういったことの配慮ということで、先ほど委員からも御指摘がありましたけれども、まず、指定法人は、民事訴訟法上の秘匿決定あるいは閲覧等制限決定の対象となった情報については、取得をまずしないということがございます。

 そのことに加えまして、利用者への提供に当たっては、法務省令及び業務規程の定めるところに従い、特定の個人を識別することができる情報等に仮名処理を行う、あるいは、申出を受けて、必要に応じた追加的な仮名処理を行う等の仕組み、これを私どもとしては設けているところであります。

 こうした仕組みの下で、訴訟関係者のプライバシー、こうした権利利益の保護、これは十分に図られるものと私どもとしては考えておりまして、法務省令を通じて適切な仮名処理の基準を定める、あるいは、先ほど質疑の中でも、どなたかとの審議でございましたけれども、この制度の適切な周知徹底、これは極めて重要だと思っておりますので、訴訟関係者の方々ができる限り負担なく必要な申出をしていくことができるよう、我々としては努めていきたいと考えております。

本村委員 それで、これから仮名加工されるということですけれども、個人情報については、本人と分からないように提供することが必要だというふうに考えます。

 以前、デジタル関連法案の質疑のときに、行政が保有している個人情報の利活用の匿名加工の部分で、名前は消すけれども、郵便番号ですとか職業ですとか家族構成ですとか年齢とか性別、これを百十八万人分、銀行に提供したという事例がございまして、郵便番号と職業、家族構成、これでもうかなり、例えば弁護士ですとか医師とか、そういうところになれば、とりわけもう個人は特定されてしまうということになってしまいます。

 そうしたことがないようにするべきだというふうに思いますけれども、法務省に伺いたいと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案では、個人情報を含む民事裁判情報について、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないようにするため、法務省令で定める基準に従い、指定法人において仮名加工処理をしなければならないものとしております。

 また、加工の方法に関する事項は、業務規程に定め、法務大臣の認可を受けなければならないものとしており、詳細な仮名処理の基準については指定法人の業務規程に定められることを想定しておりますが、具体的には、訴訟関係者の氏名の全部、生年月日の一部、個人の住所のうち市郡より小さい行政区画、マイナンバー等の個人識別符号の全部などについて仮名処理の対象とすることを想定しております。

 さらに、基準に沿って仮名処理を実施しても、報道された情報等と組み合わせると特定の個人が識別される場合もありますので、個別の事情により基準を超える仮名処理を要する場合は、申出により、指定法人において必要な仮名処理を追加的に実施することとしておりまして、以上の措置を通じて、訴訟関係者の特定を避け、その権利利益に配慮することとしております。

本村委員 本人と分からないように提供していただくということが肝要だというふうに思います。

 特に性暴力被害当事者の方やDV、虐待の被害当事者の方、あるいは暴力団の関係で被害を受けた方々など、仮名加工したとしても非公開を望む原告の方々はいらっしゃるというふうに思います。そういう原告の方々の意思はどのように反映されるのか。必ず意思は確認されるのか。閲覧制限の制度ですとか、あるいは追加で仮名加工できるというふうになっておりますけれども、そのことの制度を知らなかったら利用することができないわけですから、最高裁の方には必ずそうした制度を教示をするということを求めたいというふうに思いますけれども、これは最高裁と法務大臣にお伺いをしたいと思います。

西村委員長 最高裁福田民事局長、時間が来ますので、答弁は簡潔にお願いします。

福田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、現在においても、性暴力被害当事者など、訴訟記録に私生活についての重大な秘密が記載され、それが明らかになることにより社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがある方から、そのような私生活上の秘密について第三者に知られたくないとの相談があった場合には、裁判所において閲覧等制限の制度について教示をし、その申立てを促すなどしているものと承知をしております。こうした実務の取扱いは、本法案の成立後においても続けられるものと認識しております。

 また、本法案成立後につきましては、民事裁判情報の非公開を望む当事者に対し、委員御指摘の追加の仮名加工処理制度の利用も含め、手続が適切に周知されるように検討してまいります。

鈴木国務大臣 今の点でありますが、当然のことながら、性暴力被害者、当事者などの方々については、そのプライバシー、権利利益に十分に配慮する、これは当然のことでありますし、極めて大事なことだと思っております。

 その上でありますけれども、こうした民事裁判情報、まずは公開の法廷における裁判の結果ということでありまして、今これは裁判所の方からも御答弁があったかと思いますが、そもそもが閲覧等制限の決定がない限り何人も記録を閲覧できるものであります。その上で、こうした制限がかかるかどうかについて今御答弁があったところだと思います。

 加えて、こうした同意を全てさせるのかといったことでありますけれども、それはやはりなかなか基幹データベースとして成り立たなくなる、そういった指摘も様々あったことから、そうしたことはいたしませんが、しかし、この制度で設けられました追加的な仮名処理などの仕組み、さらにはその適切な周知、私どもとしては、それをしっかり図っていくことで、訴訟関係者の権利利益、適切に配慮していきたいと思っております。

西村委員長 本村さん、終わってください。

本村委員 裁判を受ける権利を保障するためにも個人情報の保護というのは必要だというふうに思いますので、是非その点を強く求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。よろしくお願いいたします。

 民事裁判情報の活用の促進に関する法律案に関連し、質問をしてまいります。

 令和四年の民事訴訟法改正により、令和八年五月から始まる訴訟記録のデジタル化では、日本マイクロソフト社のクラウドが使われると聞いております。当時、私たち参政党には議席がなく、反対することができませんでしたが、日本の重要な情報を外資系企業に委ねることには反対をしております。

 本法案についても懸念があります。指定法人に情報管理を行わせるとのことですが、民事裁判情報は、本来、国が責任を持って管理すべきではないのかと思いますが、いかがでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度におけるデータベースの整備、運用に当たりましては、大量の民事裁判情報に仮名処理等を行い、これを適切に管理する必要があり、時宜にかなったデジタル技術の活用を含む適正かつ効率的な業務運営が求められます。

 こうした業務の実施方法については、これまで民事裁判に関する情報の提供に大きな役割を果たしてきた民間において知見が蓄積され、効率化を図るための技術開発も既に進められており、このような知見や技術を生かしてデータベースの整備、運用が行われることを期待して、本法律案では法務大臣の監督する民間団体に行わせることとしたものでございます。

 加えて、国産のサーバーの話もお答えした方がよろしいでしょうか。(吉川(里)委員「それは次の質問です」と呼ぶ)失礼いたしました。

吉川(里)委員 国民の信頼に関わる大切な情報を、私は、国が外部委託するというのは、効率性ばかりを求めるばかり、無責任だというふうに感じるんですね。情報の重要性を踏まえれば、本来は国が責任を持って管理するべきであると思います。

 指定法人に管理をさせるというのであれば、サーバーを国内に置き、クラウド利用する場合も外資系ではなく国内で完結するべきであると思いますが、いかがでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、指定法人が取り扱う情報には仮名処理前の訴訟関係者の氏名や住所等が含まれることになるため、情報漏えい等に留意しつつ、適切に管理する必要がございます。

 本法律案においては、指定法人の保有する民事裁判情報等に関する漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理に関する事項を業務規程の必要的記載事項としており、所要の提出書類等により適切な情報セキュリティー対策が講じられているかについて審査することを想定しています。

 利用サーバー等に関しましては、もとより適切な情報セキュリティー対策が講じられるべきものでございますが、その管理運営等に外資系事業者が関与していることの一事のみをもって直ちに情報漏えいが懸念されるとまでは考えておらず、現時点で利用サーバーの事業者等について限定を加えることは予定してはおりません。

 いずれにいたしましても、法務省としては、その時々の情報セキュリティーに関する知見を踏まえた上で、個人情報等の取扱いに関して、指定法人において十分な安全管理措置が講じられるように業務規程の認可を適切に行うとともに、各種監督権限の行使を通じて、指定法人における民事裁判情報の適正な管理が徹底されるよう努めてまいります。

吉川(里)委員 適正な管理を行うと申しましても、外資系のクラウドを利用すると、本社のある国の法律よりも、日本国内のデータであっても国外に提出されるおそれというものがございます。また、緊迫し、かつ不安定な社会情勢を踏まえれば、重要な情報は安全な国内環境で管理するべきであると考えます。私は、国内のデータインフラが未整備のままこれを進めていくということに関しては時期尚早であると考えます。

 本法案には、プライバシー保護の観点からも懸念があります。平成十三年の司法制度改革に関する審議会では、ウェブ公開は、先例的価値の乏しいものを除き、プライバシーに配慮して行うべきとの意見が示されました。にもかかわらず、本法案では先例性を問わず全ての情報が公開対象とされ、プライバシーへの配慮は条文に書かれておりません。地域名や屋号などから個人の特定、被害手口の模倣、ノンフィクションとして拡散されるリスクについて大臣はどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、そのプライバシーへの懸念、これは極めて大事なことだと考えております。

 その上で、まず今回の対象について申し上げれば、やはり公開の法廷における裁判の結果ということで、本来、閲覧等制限の決定がない限り何人も記録を閲覧できるものということがあります。

 その上で、今もおっしゃられましたようなリスク、ここへの対応のために、個人を識別し得る情報をあらかじめの仮名処理を行うほか、そうした訴訟関係者の方からの申出によって追加的な仮名処理を行うこともできることとしておりまして、そうしたことについては、我々としてもこうした対応を含めて対応できると考えております。

 そもそも、プライバシー侵害のような人権侵害、これは決してあってはならないことでありまして、こうした誹謗中傷等については民事あるいは刑事上の法的責任の追及もあり得るということで、こうした様々なこれまでの制度を含めて対応をしっかりとできると我々としては考えておりますが、きちんとそうした懸念のような事態にならないよう、我々としてもしっかりと運用に努めてまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 しっかり努めていくということですが、この情報公開に関しては、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスというのはそもそも全件公開をしておりません。こういったところも考えますと、私はリスクにおいてもっと目を向けてしっかり議論するべきではないかと考えます。

 最後に、一つだけ法案以外の質問をさせていただきます。

 同性婚の訴訟においては違憲判決が続いております。その中で、LGBT法や民間のアンケートが根拠として使われている例があり、それが多様な民意を反映しているのか懸念しております。今こそ国としての世論調査を実施するべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

西村委員長 鈴木大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

鈴木国務大臣 今御指摘のことも含めて特定のテーマに関する世論調査の実施、これはその必要性も含め我々として検討していくところであろうかと思います。

 国民の様々な御意見、あるいは皆様方の様々な御意見、あるいは国会における議論の状況、あるいは同性婚に関する訴訟の動向等について注視をしながら、適切な判断を行ってまいりたいと思っております。

西村委員長 吉川さん、終わってください。

吉川(里)委員 同性婚は、家族制度の根幹に関わる社会的なテーマであります。これは同性婚のみならず別姓に関しましても……

西村委員長 吉川さん、時間ですので終わってください。

吉川(里)委員 世論調査をしっかりやっていただくことを申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 この法律の施行に当たっては情報セキュリティーの確保は非常に重要なわけですけれども、そして行政当局の監督責任も大きい。

 鈴木大臣に伺おうと思った質問はほかの委員の方が出されたので、時間の関係で生稲外務政務官に伺いたいと思います。

 ちょっと通告していた質問の順序は変わりますけれども、外国人絡みの紛争事案、訴訟が増えるほどに、やはり外国からのハッキング、データを盗もうとするような試み、この可能性も高まると思います。今、日本で難民認定申請する人が最も多い国というのはスリランカであって、昨年も一昨年も、二年連続で難民申請者の数が一位となっていて、スリランカ一国で、昨年の場合でいうと、難民申請者全体の二〇%を占めています。

 生稲政務官は、今年二月にスリランカを訪問されて、向こうの大統領、首相と会談されたということなので、それで今日おいでいただいたんですが、この難民問題に関して、どういうやり取りが向こう側と行われて、どういう申入れをされたのか。私、質問時間が七分しかないので、スリランカの一般的な政治経済情勢等はもう一切省いていただいて、難民に関するやり取りだけ、ちょっと答弁をお願いします。

生稲大臣政務官 本年二月に、第五十八回人権理事会ハイレベルセグメントに出席をしました。その際、ヘーラット・スリランカ外相と会談を行ったんですけれども、この会談では難民について話題にはなっておりません。

 会談の詳しい中身に関しましては、回答することは控えさせていただきますけれども、外相とは、二国間関係の更なる発展や、地域全体の安定と繁栄の実現に向けた連携について議論をいたしました。

 この人権理事会のハイレベルセグメント、ジュネーブの方に行ったときですけれども、ここでは、中満泉国連事務次長、また、ナダ・アル=ナシフ国連人権副高等弁務官、また、ミリアナ・スポリアリッチ……(島田(洋)委員「スリランカ大統領との話は」と呼ぶ)

西村委員長 島田さん、許可を得てから発言をしてください、今答弁中ですので。

 答弁を続けてください。

生稲大臣政務官 先生、申し訳ありません。

 大統領とも、このときには、難民については話題には上っておりません。

島田(洋)委員 このやはり難民認定申請者が最も多い国の大統領、首相と会われて、それを話題にしないというのは、私は外交当局として非常に、問題意識すらないんじゃないかと大変疑問に思うんですけれども。

 ちょっと時間の関係で次に移りますけれども、そもそも、石破内閣の情報セキュリティー意識、どうなっているんだと疑問を感じるケースが多い。

 以前もここで松本尚外務政務官にちょっと伺ったんですが、時間の関係で途中で終わったので、生稲政務官にも伺いますけれども、今年一月に、岩屋外務大臣の宿舎に訳の分からぬ女性が数時間滞在していた。これに関して岩屋さんは、ちょっと精神的に不安定な人だったので帰ってもらったと、それで説明が済んだような、何を考えているのかというようなことを言っておられるんですけれども。

 この間も言いましたけれども、外国の情報機関なんかは、ちょっと知的に軽度の障害があるような方を工作活動の最終的な実行者として使うというのがよくあるわけで、その人がもし捕まった場合でも、背後の組織の様々な情報とか分かりませんから、使い勝手がいいと。あるいは、中東のテロ団体なんかも、知的障害のある子供のおなかにダイナマイトを巻いて、それで敵方に行かせて、歩いて行かせて自爆テロをする。とんでもない話ですけれども、そういうことをやってくるので。

 そこで、伺うんですけれども、これはいまだに、何らかの盗聴器とか、あるいは、パソコンからデータを盗むガジェットのようなものが設置されなかったのかという調査を、私、松本さんには言いましたけれども、これはいまだにやられていないわけですが、海外は日本に機微な情報を教えていいのかと大変な疑念を持つと思うんですけれども、直ちに岩屋さんの部屋のそういう調査を行うべきじゃないですか。

大鶴政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきました調査を含めまして、爾後、これまでにどういった対応を取ってきたか、その内容についてお答えすることで、悪意を持つ者ですとか、便乗して悪さをしようと考えるような者、これらの人々にあらぬ考えを起こさせない、そういった視点から、政府としまして、具体的な対応についてはお答えしない、こうした決定を行っているということで、御理解いただければと思います。

島田(洋)委員 今の答弁を聞いて、海外諸国は余計不安を持ったんじゃないですか。だから、岩屋さんの部屋をきちんと検査して、盗聴器等はなかったと発表した方が、私は日本の国益にかなうと思いますけれどもね。

 それで、やはり日本外交が、政務三役を中心に常に毅然とした姿勢を見せるということが、それが海外からの侵入事案を防ぐ抑止力にもなる。その点で、前回も生稲政務官に対して質問しましたけれども、過去に靖国神社、行ったことあるんですかと聞かれて、答えられないと。これでは、その逃げの答弁ではやはりばかにされる。

 じゃ、ちょっと視点を変えますけれども、アメリカのアーリントン国立墓地、行かれたことはありますか。

西村委員長 島田さん、質疑は議題の範囲内でお願いいたします。

島田(洋)委員 じゃ、もう一回聞きますけれども、要するに毅然とした態度を見せていただきたいという趣旨で聞いているんですけれども、靖国神社に、姿勢に関係するので聞いているんですけれども、政務官就任後は行ったことがないと明言されるんですね。それ以前は答えられないと。

 これは、整合性というか、よく分からないんだけれども、もうちょっと説明してもらえますか。

生稲大臣政務官 先生には十八日にもこの御質問をいただきましたけれども、本日も政務官の立場として答弁をしておりますので、現在の立場に鑑みて、お答えは差し控えさせていただきます。申し訳ありません。

島田(洋)委員 それでは、時間が来たので終わりますけれども、私は、日本外交にとって、もうちょっとはっきり言われた方がいいと思います。

 では、これで終わります。

西村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、民事裁判情報の活用の促進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の皆さんの起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、津島淳さん外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、参政党及び日本保守党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。藤原規眞さん。

藤原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    民事裁判情報の活用の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 民事裁判情報管理提供業務を行う法人を指定する際には、民事裁判情報に含まれる個人情報について遺漏なく仮名処理を実施するとともに漏えい等を防止するために必要な安全管理措置を講じることができる技術的能力及び経理的基礎について、厳格かつ公平に審査すること。また、指定後においても、民事裁判情報は仮名処理後も個人を容易に特定し得る場合があり、広く社会に拡散しやすい性質を有することに鑑み、業務の委託先及び再委託先を含め、当事者や関係者のプライバシー保護の要請に十分に配慮した措置に加え、適切な安全管理措置を講じるとともに、保有民事裁判情報等の目的外使用を行わないよう、指定法人に対し必要かつ適切な監督を行うこと。

 二 仮名加工民事裁判情報等の提供料金については、民事裁判情報管理提供業務の適正かつ確実な実施のために必要な経費を勘案しつつ、利用者にとって過度な負担とならないよう配慮すること。

 三 先例的価値及び社会的関心の高い判例情報を幅広く国民に提供することが本法の施行後も引き続き重要であることに鑑み、現在行われている裁判所ウェブサイトにおける判例情報の提供について、今後とも更に適切な運用に努めること。

 四 附則第五条に基づく五年経過後の検討を行うに当たっては、諸外国における判例情報の公開に関する法制の動向等も勘案し、民事裁判情報の確実かつ安定的な公開のために必要な体制の在り方について検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の皆さんの起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木法務大臣。

鈴木国務大臣 ただいま可決されました民事裁判情報の活用の促進に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

西村委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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