衆議院

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第2号 令和7年11月19日(水曜日)

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令和七年十一月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 階   猛君

   理事 木原 誠二君 理事 高見 康裕君

   理事 武村 展英君 理事 有田 芳生君

   理事 寺田  学君 理事 米山 隆一君

   理事 池下  卓君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    伊藤 忠彦君

      稲田 朋美君    上川 陽子君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      高村 正大君    土田  慎君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      三反園 訓君    宮路 拓馬君

      森  英介君    鎌田さゆり君

      黒岩 宇洋君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    山 登志浩君

      藤巻 健太君    三木 圭恵君

      小竹  凱君    平林  晃君

      山口 良治君    本村 伸子君

      吉川 里奈君    島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣         平口  洋君

   内閣府副大臣       津島  淳君

   法務副大臣        三谷 英弘君

   厚生労働副大臣      長坂 康正君

   法務大臣政務官      福山  守君

   外務大臣政務官      大西 洋平君

   文部科学大臣政務官    福田かおる君

   最高裁判所事務総局総務局長            清藤 健一君

   最高裁判所事務総局人事局長            板津 正道君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平城 文啓君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  桝野 龍太君

   政府参考人

   (内閣官房外国人との秩序ある共生社会推進室次長) 岸川 仁和君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 由布和嘉子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 服部  準君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鈴木 敏夫君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          竹林 悟史君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          源河真規子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       村松 秀樹君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          内野 宗揮君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    佐藤  淳君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    日笠 和彦君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    吉川  崇君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  杉浦 直紀君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 内藤惣一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 渡邊  滋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 貝原健太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大塚 建吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 上田  肇君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       堀野 晶三君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文部科学戦略官)       神山  弘君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         小林万里子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊澤 知法君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    高橋 広道君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十九日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     三反園 訓君

同日

 辞任         補欠選任

  三反園 訓君     宮路 拓馬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

階委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣参事官桝野龍太君外二十四名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

階委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、お手元に配付いたしておりますとおり、最高裁判所事務総局総務局長清藤健一君外三名から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

階委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武村展英君。

武村委員 おはようございます。自由民主党の武村展英でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。初めて法務委員会で質疑をさせていただきますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、早速質疑に入ります。

 昨日、平口大臣の所信をお聞かせいただきましたが、改めて、法務省の所管が多種多様であることを実感いたしました。大臣はその冒頭で、再犯防止に向けた取組について推進をしていくとの決意を示されました。

 私の選挙区は滋賀県です。昨年、大津市で保護司の方が殺害をされたという痛ましい事件が起きました。再犯防止に関して、保護司の方々は、保護観察対象者との面接など欠かすことができない大変重要なお仕事をされています。保護司の方々の安全確保は喫緊の課題です。政府においては、この点を含んだ保護司法等の改正法案を閣議決定をされた旨承知をしておりますが、今後、しっかりと審議に臨んでまいりたいと考えております。

 さて、再犯防止における大きな課題の一つは薬物犯罪であります。薬物の依存症は本当に怖く、薬物事犯者の刑務所への再入率は非常に高いと承知をしております。もちろん、犯罪ですから、その処罰は大切ではありますが、薬物犯罪は処罰をするだけで再犯を防ぐことができるものではありません。依存症そのものへの専門的な治療支援も重要です。

 そこで、まず薬物事犯の再犯防止についてお尋ねをいたします。

 資料一枚目を御覧ください。この資料は、保護観察所における薬物依存症に係る専門医療機関等との連携状況を示したものです。

 この資料を踏まえてお尋ねをいたしますが、薬物事犯者の社会復帰を促すに当たっては、保護観察所としては、薬物依存症を病気として捉えて、治療や支援を行う専門的な医療機関と十分に連携を取っているのか、お伺いをいたします。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 薬物依存の問題を抱える者に対しては、保護観察中はもとより、保護観察終了後を含めて、専門的な治療等を継続的に受けることができるようにすることが重要であると認識しております。

 保護観察所では、薬物依存の問題を抱える者に対し、保護観察期間中に専門的処遇プログラムを実施しつつ、必要に応じて地域の専門的な医療機関等が行う治療や支援が受けられるよう、それら医療機関等との連携を広げ、かつ深めているところでございます。

 もっとも、資料でお示ししたように、地域によってその連携の進度には差があるものと承知しております。この点については、現在、厚生労働省において、薬物依存症の専門的な医療機関の拡充を進めており、法務省としては、厚生労働省と連携しつつ、各地域において保護観察所と専門的な医療機関等との間で頻度高く情報共有が行われるよう促すなど、連携体制の一層の強化を図ってまいります。

武村委員 ありがとうございました。

 引き続き、しっかりと連携を深めていただきたいと思います。

 次に、資料の二枚目を御覧ください。再犯防止に当たっては、罪を犯した人たちが刑事手続を終えた後であっても、地域において孤立をすることなく社会に立ち戻っていくことが大変重要です。そのためには、地方公共団体の取組が重要です。

 資料三枚目にありますとおり、政府の再犯防止推進計画においても、地域による包摂の推進が重要課題の一つとされているところです。

 その上で、資料四枚目、五枚目を御覧ください。再犯防止推進法では、地方公共団体が地域の実情を踏まえて再犯の防止等に関する取組を切れ目なく実施するための指針として、地方再犯防止推進計画を定めるよう努めることとされています。

 この資料はその策定状況を示したものですが、この資料を踏まえまして、現在の地方再犯防止推進計画の策定状況や、法務省として考えておられる課題をお答え願います。

村松政府参考人 委員御指摘のとおり、平成二十八年に成立し施行された再犯防止推進法におきましては、地方公共団体は地方再犯防止推進計画を定めるよう努めなければならないとされてございまして、令和六年四月までに全ての都道府県及び指定都市にこの計画を策定いただいたほか、それ以外の地方公共団体におきましても策定数は着実に増加をしております。当省において把握している限り、令和七年四月現在で、千十五団体において計画を策定いただいてございます。

 法務省といたしましては、地方公共団体による再犯防止の取組を促進するための協議会、こちらにおける計画策定に係る働きかけでありますとか、地方再犯防止推進計画策定の手引き、この作成及び配付、あるいは保護観察所による相談対応や助言などを行ってきてございます。引き続き、未策定の地方公共団体に対し、地方再犯防止推進計画の策定に向けた働きかけを行ってまいりたいと考えてございます。

武村委員 お答えをありがとうございました。

 地方再犯防止推進計画は、五枚目の資料のとおり、おおむね半数の地方公共団体において策定をされています。

 地方は地方としてそれぞれの事情があろうかと思いますが、より一層多くの地方公共団体が再犯防止に取り組むための環境整備が必要だと考えます。法務省として、こうした環境整備についてどういった取組をされているのか、お尋ねをいたします。

村松政府参考人 令和五年三月に閣議決定をしております第二次再犯防止推進計画におきましては、関連する具体的な施策として、都道府県による再犯の防止等の推進に向けた取組の促進や、再犯の防止等の推進に関する知見等の提供及び地方公共団体間の情報共有等の推進、こういったことを掲げてございます。

 これを踏まえまして、法務省は、令和五年度から、都道府県に対し、再犯防止の取組を実施するに当たって法務省から都道府県に補助金を交付する地域再犯防止推進事業を実施してございます。令和七年度からは、全ての都道府県におきましてこの事業を活用した再犯防止の取組が実施をされてございます。

 また、全ての地方公共団体を対象に、地方公共団体による再犯防止の取組を促進するための協議会を開催し、成果や課題等を共有するとともに、講師を派遣いたしまして、人材育成の方に努めてございます。

 引き続き、地方公共団体による再犯防止の取組を一層促進できるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

武村委員 ありがとうございました。

 地方再犯防止推進計画の策定は、五枚目の資料のとおりでありますが、都道府県によって、二割程度のところから、一〇〇%策定をしているところまで、ばらつきがあります。

 我々国会議員は、日常的に首長の皆様と接する機会が多いと思います。是非、この法務委員会の委員の皆様におかれましては、それぞれの御地元で首長さんに働きかけをするのがよいのではないかというふうに思います。それぞれ地域、地方によって御事情があろうかと思いますが、まずはやはり計画を策定をするところがスタートですので、是非、委員会の委員の皆様挙げての取組をしてまいりましょう。

 それでは、再犯防止について最後の質問をさせていただきます。

 再犯防止に当たりましては、国、地方公共団体のほか、冒頭述べましたとおり、保護司の方々を始めとする民間協力者の皆様の支援連携体制を深めていくことが不可欠であります。特に、民間協力者の皆様の熱意には頭が下がる思いです。

 そこで、改めて再犯防止について、法務省としての熱意、決意を三谷副大臣からお願いをいたします。

三谷副大臣 御質問ありがとうございます。

 武村委員におかれましては、自民党の法務部会長といたしまして、再犯防止を含め、非常に造詣が深くいらっしゃって、日頃より御指導いただいておりますことに、まずは感謝を申し上げたいと思います。

 その上でではございますけれども、この再犯防止、新たな被害者を生まない安全、安心な社会の実現に向けまして、再犯防止というものは非常に重要な施策であるというふうに認識をしております。

 これまでも、法務省といたしましては、拘禁刑の創設や、就労、住居の確保等に向けた施策等の再犯防止に向けた取組の結果、出所受刑者の二年以内再入率が着実に減少するなど、一定の成果があったものの、刑法犯検挙者の約半数が再犯者という状況は続いておりまして、その取組を一層推進していくことが重要だというふうに考えております。

 再犯防止のためには、犯罪をした者が地域社会の中で孤立することなく生活していくことができるように、息の長い支援というものを行っていくことが非常に重要であります。

 法務省といたしましては、第二次再犯防止推進計画に掲げられた施策につき、必要な検証等を行いつつ、先ほどの御指摘いただいた表によりますと、地方再犯防止推進計画、滋賀県では一〇〇%と承知をしております。本当に、こういった取組が進むことをしっかりと促していくということも必要だというふうに理解をしておりますけれども、こういった一層の働きかけを進めるとともに、保護司の方々を含めた民間協力者との連携を進めまして、再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 次に、話は変わりますが、大臣は、出入国在留管理に関する取組について御決意を述べられました。高市総理も、外国人との秩序ある共生社会実現に向けた決意を繰り返し御発言をされています。

 私の選挙区である滋賀県は、JR琵琶湖線を通じて京都とつながっております。京都には多くの外国人の方々が観光客として訪れますが、我々滋賀県も、琵琶湖のほか、近江牛など、観光資源に恵まれているということもありまして、多くの外国人の方々が訪れています。外国人との関わり合いの在り方は大変重要な課題だというふうに思っております。

 資料六枚目、七枚目を御覧ください。

 この資料にありますとおり、法務省におきましては、外国人の受入れの基本的な在り方について、論点整理や調査検討が進められていると承知をしております。こうした取組の現状についてお答えを願います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの外国人の受入れの基本的な在り方に関する調査検討につきましては、関係閣僚会議におきまして、高市総理大臣から平口法務大臣に対して指示がございました。

 人口減少及び在留外国人数の増加が加速度的に進む中で、外国人の受入れの基本的な在り方について中長期的かつ多角的観点から検討を進めていく必要があると考えております。

 この点、鈴木前大臣の下で論点整理を行い、八月二十九日に公表し、出入国在留管理庁内にPTを設置しております。現在、関係省庁と連携し、このPTにおきまして基礎的な調査検討を可能な限り進めているところでございます。具体的には、有識者のヒアリング、また基礎資料の収集、こういったことを行い、現在調査を進めているところでございます。

武村委員 ありがとうございました。

 さて、外国人との秩序ある共生社会実現に向けまして、不法に我が国に滞在している外国人については、強制送還を含め厳正な対処が必要です。

 資料八枚目、九枚目を御覧ください。出入国在留管理庁におきましては、不法滞在者ゼロプランを実施をしており、本年十月にはその実施状況が公開をされました。

 そこでお伺いをいたしますが、このプランにおける各施策、さらには、今後、これらの施策についてどのように取り組んでいかれるのか、お答えを願います。

内藤政府参考人 不法滞在者等の法令に違反する者に対して厳格に対応していくことは、外国人との共生社会の実現のために必要と考えております。

 その上で、退去強制が確定したにもかかわらず退去しない者を放置すれば、不法滞在等を企図する者を更に我が国に誘引することにつながりかねないことから、退去強制が確定した外国人を速やかに送還することが重要であると考えております。

 御指摘のゼロプランにおきましては、JESTAの早期導入、難民認定申請の審査の迅速化、護送官付国費送還の促進などの対応策の着実な実施に取り組んでおります。

 この点、このゼロプランの取組は開始したばかりでございまして、その効果につきまして分析、評価するには時間が短いため、今後の状況を更に注視していく必要があると認識しております。

 その上で、護送官付国費送還について申し上げますと、本年六月から八月までの三か月間で百十九名を送還しております。これは昨年同時期の五十八名に比しまして二倍以上に上っており、着実に実施できているものと考えております。さらに、長期間にわたって仮放免となり送還を拒んでいた方の中で、自発的に帰国の意思を示す方が出てきた等も聞いております。これを踏まえると、引き続き、着実にこれらの施策を実行していく必要があると思います。

 今後もゼロプランの下、退去強制が確定した外国人を速やかに送還するなど、国民の皆様の安全、安心を守るべく、力を尽くしてまいりたいと考えております。

階委員長 武村君、そろそろ。

武村委員 はい。

 ありがとうございました。

 今回、十一月四日に、高市総理から、このゼロプランの推進など、総理指示がなされました。

 そこで最後に、法務省としての決意を福山政務官からお聞かせください。

福山大臣政務官 委員御指摘のとおり、本年十一月四日の関係閣僚会議において、高市総理から、不法滞在者ゼロプランの強力な推進、在留資格の在り方の検討、外国人の受入れの基本的な在り方に関する基礎的な調査検討などについて取組を進めるよう、指示を受けました。

 人口減少に伴う人手不足の状況において外国人人材を必要とする分野があり、またインバウンド観光も我が国にとって非常に重要である一方で、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じております。

 ルールを守って暮らしておられる外国人の方々が我が国に住みづらくなってしまうようなことがあってはなりません。排外主義とは一線を画しつつ、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し政府として毅然と対応し、国民の皆様の不安や不公平感を解消することは、外国人との秩序ある共生社会の実現に必要なものと考えております。

 法務省としては、総理指示に基づき、今後とも関係省庁と緊密に連携し、国民の安全、安心のため、不法滞在者ゼロプランの取組として、誤用、濫用的な難民認定申請の迅速な処理や、護送官付国費送還の促進、また、入管庁に設置した外国人の受入れの基本的な在り方の検討のためのPTにおける調査など、各種取組を着実に進めてまいりたいと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

武村委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

階委員長 次に、藤原規眞君。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 タイ人の十二歳の女性の人身売買事件が発覚いたしました。性的サービスを強要されて、六十名余りの男性がその客となった、それが東京で発生した。

 社会を震撼させたこの事件について、検察庁を所管する法務大臣はどのような所感を持たれましたか。伺いたいと思います。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 個別具体的な刑事事件につきまして、法務大臣として所感を述べることは差し控えたいと思っております。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、人身取引は重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速的確な対応が求められるものでありまして、政府を挙げて対策を講ずる必要があるところでございます。

 検察庁等を所管する法務省も、政府の一員として、令和四年十二月に策定された人身取引対策行動計画二〇二二に基づき、人身取引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となった総合的かつ包括的な人身取引対策を推進していく必要があるものと認識しております。

藤原委員 これほどの重大事件に所感すら述べられないという法務大臣の姿勢には寂しさを感じます。

 女性の客となった男性六十数名には、刑法百七十六条の不同意わいせつ罪、あるいは百七十七条の不同意性交等罪、若しくは児童買春防止法四条の児童買春罪が成立するかに見えますけれども、本件の客となった男性に対して何らかの刑事責任を問い得るという認識を法務省は持っておられますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、個別具体的な刑事事件における犯罪の成否について問うものでございまして、法務省としてはお答えを差し控えるところでございますけれども、あくまで一般論として申し上げれば、人身取引が疑われる事案について、検察当局においては、事案ごとに、人身取引事案に適用し得る様々な法令と、捜査によって収集した証拠に基づいて、犯罪の成否等を適切に判断しているものと承知しております。

藤原委員 今のお答えの後段を少なくとも聞くと、客だから、客にすぎないから、そういうことで捜査対象とはならないというものではないと考えていいですね。

佐藤政府参考人 個別具体的な事案のことでございますけれども、あくまで一般論として申し上げれば、ある行為について、委員御指摘の不同意わいせつ罪、不同意性交等罪等々が、規定する罪の構成要件に該当する場合には、それぞれの罪が成立するということでございます。

藤原委員 じゃ、刑法二百二十六条の二の人身売買を処罰する規定について伺います。

 まず、法定刑について、国内の場合は、最高が、営利、わいせつ、結婚、加害目的、売渡しを定めた三項、四項が一年以上十年以下の拘禁刑というふうに定められています。これは、万引きなどの窃盗罪、刑法二百三十五条と同じなんですね。「条解刑法」の第五版にも、拐取罪の法定刑を踏まえというふうに記されています。法定刑の設定にほかの罪との均衡を考慮した旨が記載されています。

 しかし、人身売買が万引きと同程度の刑罰水準ということがなかなか衝撃的なんですけれども、例えば、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの指針七も、人身取引は、一度その被害が生じたときには、完全な回復は不可能な深刻な損害を被害者に与えるというふうに記されています。

 にもかかわらず、被害弁償によって完全な回復が可能な窃盗と同じ法定刑というのが日本の刑法です。到底国民の納得は得られないというふうに考えるんですが。なお、米国では、人身売買罪は終身刑もあります。英国も終身刑あり。ドイツ、韓国でも最長十五年です。日本の十年というのは余りに短いという指摘があります。

 現行の二百二十六条の二の法定刑について、法務省は適正だとお考えですか。一般予防の見地から、このままでいいというふうにお考えですか。法定刑を引き上げるべきじゃないですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、刑法二百二十六条の二各項の法定刑について申し上げますと、第一項の人身買受けについては三月以上五年以下、これが第二項の未成年者買受けになりますと三月以上七年以下、それから、第三項、四項の営利目的あるいは人身売渡しにつきましては一年以上十年以下、それから、第五項の所在国外移送目的人身売買については二年以上の有期拘禁刑、これは二十年以下ということになりますが、これらの法定刑は刑法の同一の章に規定されておりまして、保護法益が共通する他の罪、具体的には略取誘拐でありますけれども、未成年者、あるいは営利目的等、それから所在国外移送目的の略取誘拐罪の法定刑が同じものとなってございまして、これとの比較においても適正なものと認識しております。

 その上で、一般に、検察当局におきましては、これらの規定に限らず、様々な法令を駆使して人身取引事案について対応しているものと考えておりまして、現時点において、刑法二百二十六条の二に規定されている犯罪につきまして法定刑を引き上げる必要はないと考えております。

 一方で、先ほど万引きの話がございましたけれども、窃盗というのは、万引きも窃盗でありますけれども、例えば億単位を超えるような窃盗というのは現に存在する、被害回復が行われない事案も存在するということでございまして、これを十年以下としていることとの均衡というのは、必ずしも万引き等との関係では語れないのではないかというふうに思っているところでございます。

藤原委員 今、拐取罪、同じ章にある誘拐等についての均衡で適正さは欠かないというお答えでしたけれども、例えば人身売買罪は、対価を伴う点で、その客体、被害者の自由を拘束し続けるという強い動機があります。法益、ここでいえば客体の自由と保護者の監護権ですけれども、を更に侵害する危険が高いのが人身売買罪です。刑法二百二十四条の拐取罪との均衡というのを殊更に顧慮する必要はないんじゃないですか。

佐藤政府参考人 殊更にということでございましたけれども、先ほど申し上げましたのは、今の刑法の考え方が人身売買と略取誘拐が同一の章に規定されていること、それから、法益が似たようなもので、似たようなというか類似のものであるということも踏まえて、そのような考え方でできているということでございます。

藤原委員 これほど世界を震撼させる事件が起きて、大臣は今どうお考えですか。法定刑を引き上げるべきじゃないですか。政治決断すべきじゃないですか、ここは。

平口国務大臣 ただいま刑事局長の方から答弁したとおりでございまして、刑法二百二十六条の二に規定される犯罪につきましては、法定刑を引き上げる必要があるとは考えてございません。

 いずれにせよ、人身取引事犯に対して厳正な刑罰が必要であるということは申し上げるまでもないことでありまして、検察当局においては、様々な法令を駆使して悪質な事情を適切に主張、立証することで厳正な科刑の実現に努めておりまして、引き続き適切に対処していくものと承知しております。

藤原委員 例えば、米国の国務省の人身取引監視対策部の二〇二四年の人身取引報告書において、日本に対して厳しい指摘がされているんですね。具体的には、厳しさが十分ではない刑を規定している法律に基づき、人身取引犯を訴追し、有罪判決を下した、また、少なくとも七年連続で裁判所は、有罪判決を受けたほとんどの人身取引犯に対して、実刑の全ての執行を猶予するか、罰金刑のみを科したというふうに記されています。

 これは国際的にも恥ずべきことじゃないですか。法務大臣、どう思われますか。

平口国務大臣 お尋ねの人身取引報告書は、米国国務省が米国国内法の基準に照らして独自に作成したものでございまして、個々の内容について法務大臣としてコメントする立場にないということを御理解いただきたいと思います。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、刑法二百二十六条の二を始め、法務省所管の人身取引事犯に適用され得る法令の規定について、その法定刑が軽きに失するということは考えておらず、人身取引事犯に対しては、適用し得る様々な現行法令を駆使してその撲滅を図ることが肝要であると認識しております。

藤原委員 様々な適用法令を駆使しても軽きに失するんじゃないですかという指摘をさせていただいているんです。様々なものを駆使したから十分だという回答では答えになっていないと思います。そのことだけは指摘させていただきたいと思います。

 次に、人身売買罪が実際に機能しているのかという点について伺おうと思います。

 例えば、平成二十七年から令和五年までの間、人身売買罪の検挙件数としてはゼロ件なんですね。この数字を見て、刑法二百二十六条の二の人身売買罪、これは有効に機能しているというふうに考えますか。実際に、日本国内において人身売買はこの九年間の間発生していないということはないはずなんですけれども、いかがでしょうか。

服部政府参考人 お答えいたします。

 法令の適用につきましては、個別具体的な事実関係に即して判断されるべきものでございます。このため、検挙件数の多寡によって、お尋ねにつきまして、警察において一概にお答えすることは困難であります。

 しかしながら、いずれにいたしましても、御指摘の刑法第二百二十六条の二に規定された人身売買罪に該当する行為につきましては、人身取引議定書に定義された人身取引に該当する行為のうちの一つと承知しているところであります。

 警察といたしましては、人身取引事犯の取締りに当たりまして、刑事事件と立件できるものがあれば、刑法も含めたあらゆる法令を駆使して適切に対応しておるところでございます。

藤原委員 一般予防の見地から、人身売買罪、これを適用すること自体が重要だというふうに考えませんか。

服部政府参考人 警察といたしましては、個別の事案ごとに、それぞれの事情に応じまして、刑法等を含めまして適切な法律の適用を図っておるところでございます。

藤原委員 例えば、内閣府が、人身取引、人身売買について比較的物々しい、これは意図的にだと思いますけれども、ポスターをいろいろなところで掲示されています。それは毎年更新されています。人身取引が近いところで起こっていても見逃さないでほしい、ここに通報してほしいということを記したポスターです。

 しかし、そのポスターの重要性は理解しますけれども、ポスターでの啓発と、実際に人身売買、人身取引の事件が発生したときに報道された場合、これに人身売買罪が適用されるかどうかということでは、国民に与える影響の度合いが違うと思うんですね。

 今の人身取引に対するポスターでの啓発、ああいったもので一般予防効果としてはもう十分だというふうに考えていらっしゃるんですか。

服部政府参考人 広報啓発によりまして、一般の方あるいは関係者の方に知っていただくということは大変重要なことだと認識しておりますが、あわせて、繰り返しになりますけれども、事案に応じて、御指摘の人身売買罪に当たるものがあり、法と証拠に基づきまして対応できるものがあればしっかり対応してまいりたいと考えておるところであります。

藤原委員 例えば、人身売買事件が起きました、今回でいえば、あのマッサージ店、違法マッサージ店の経営者の人が、人身売買罪ではなくて、労働基準法違反で逮捕されているわけですね。そうすると、結局、世の中の人は人身売買が起きたということを深く認識することなく、そのニュースは流れ去ってしまうわけです。

 今の現状で、人身売買、これを抑止することができるというふうにお考えでしょうか。

服部政府参考人 繰り返しになりますが、警察は、認知した事案に応じまして、その事案ごとに適切な法律の適用を図っております。その結果として、予防効果ということもあるんだと思います。

 私どもとしては、認知した事案に応じて、人身売買罪も含めて適用を図ってまいりたいと考えております。

藤原委員 結局、このような事件でも、労働基準法違反、何か被用者を酷使したんだなという印象しか国民に与えないと思うんですけれども、こういう状況でも、法務大臣、このままでいいというふうにお考えですか。

平口国務大臣 既に何回も答弁しておりますとおりであろうかと思います。個別具体的な事案についてはお答えできませんし、一般論として申し上げれば、法律の組合せによって対応しているということでございます。

藤原委員 法律の組合せによって対応しているんです、今は。それが適切だとお考えですかという質問をしたんです。

平口国務大臣 いずれにしても、人身取引事犯に対して厳正な処罰が必要であることは申し上げるまでもないことであり、検察当局においては、様々な法令を駆使して悪質な事情を適切に主張、立証することで厳正な科刑の実現に努めておりまして、引き続き適切に対処していくものと承知しております。

藤原委員 いずれにしてもといずれにいたしましてもばかりが出てくるんですけれども。

 例えば、政府発表で、日本国内で人身取引の被害者として保護された人は、令和六年だけで六十六人に及んでいます。その前の年、令和五年も六十一人です。にもかかわらず、なぜか人身売買罪による検挙はゼロ件。人身売買罪が機能していないというふうに考えますけれども、もしこれを問うたところで、全く同じ、いずれにいたしましてもという回答しか来ないと思いますので、次に移りたいと思います。

 人身取引被害者弁護団で活動されている弁護士の先生は、日本の法律では人身取引とは何かということが明確に定義されていない、被害者の認定基準も不明確だという指摘をされています。

 例えば、人身取引議定書、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書、これの三条は、人身取引の定義を明確に定めているんですね。「搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受すること」と、かなり長い定義ですけれども、明確な定義を定めているんです。

 日本でも定義規定を含む包括的な法律を新たに制定すべきだと。そうでなければ、結局、人身売買罪の適用というのが望めないというふうに考えるんですけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 人身取引は重大な人権侵害があるとともに深刻な国際問題であり、その対策が政府の重要課題の一つであるとは考えてございます。

 政府としては、先ほど法務大臣からありましたけれども、令和四年十二月に決定した人身取引対策行動計画二〇二二に基づきまして、関係省庁が連携して、取締り、被害者の保護や支援等の取組を進めております。

 そして、この行動計画におきましては、委員御指摘の人身取引議定書三条に定める人身取引の定義に従いまして、関係行政機関で取組を進めているところでございまして、また、外国の関係行政機関や国際機関、NGOの皆様等とも協力させていただきまして、人身取引対策に取り組むこととしております。

 政府としては、まずは現行の対策を着実に実施していくということが重要であると考えておりますけれども、今後とも、人身取引の根絶を目指しまして、政府一丸となって、総合的かつ包括的な人身取引対策を進めてまいりたいと考えております。

藤原委員 現行の制度を着実に進める、その結果が今回のタイ人の女性の事件なんじゃないですか。現行ので十分だ、必要にして十分だというふうにお考えなんですか。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、まずは現行の対策、行動計画に記載されているものを政府としてはしっかりやっていきたいというふうに考えております。そこの中で、人身取引の根絶というものを目指して対策を進めてまいりたいと考えているということでございます。

藤原委員 十分ですかと問うたんです。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 現行の行動計画の対策を進めていけば、政府としては、かなりの効果が上がるというふうには考えております。

藤原委員 例えば、タイ人少女の事案、マッサージ店経営者は、先ほど申し上げたとおり、人身売買罪ではなくて、労働基準法違反で検挙されています。

 現行の労働基準法、児童福祉法、職安法、これを駆使してと、駆使という言葉がやけに出てくるんですけれども、駆使して対応する方法では、先ほど来申し上げている一般予防の見地からも不十分だというふうに考えるんですが、政府はこれでも十分だと考えるんですか。桝野参事官に伺いたいと思います。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 現時点におきましては、繰り返しになりますけれども、まず、行動計画にある政府の取組を進めるということが政府の課題として考えているところでございますけれども、それを進めれば、これからの話にはなるかもしれませんけれども、一定程度の効果は上がるものと期待しております。

藤原委員 じゃ、これからならよくて、今は駄目な理由は何ですか。教えてください。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 今が不十分だということを申し上げているわけではなくて、今の計画にある取組というものは、それを進めていけば効果が上がる、上がるのではないかというふうに考えておりますけれども、現行法令の中で、こういった駆使する、関係法令を駆使する対応という点におきましては、それは大丈夫だ、十分だというふうに考えております。

藤原委員 国際的にもこれだけ厳しい評価をされているにもかかわらず、今が不十分だとは思わないという自己評価をされていることに大変驚いたんですけれども。

 人身取引議定書の五条は、締約国は、故意に行われた三条に規定する行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置を取るというふうに定めているんですけれども、日本政府は、現行の対応でこの五条の責務、これを十分果たしているというふうに認識されているんですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 議定書の担保状況につきましては所管外ではありますけれども、人身取引議定書第五条は、同議定書第三条に規定される人身取引を犯罪化することを締約国に義務づけているところでございます。

 同条に言う人身取引とは、先ほど委員が御紹介いただいたとおり、端的に申し上げますと、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫等の手段を用いて人を獲得等することをいうものと承知しております。

 そして、この人身取引につきまして、我が国においては、刑法及び児童福祉法の規定によりいずれも犯罪化されておりまして、人身取引議定書に規定される義務は果たされているものと承知しております。

藤原委員 現行の状態で義務を果たしている、十分に機能している、これはただの自己満足じゃないですかね。一般予防の観点から、より強いメッセージを発すべきじゃないですか。大臣、どう思われますか。

平口国務大臣 基本的に刑事局長が申し上げたとおりでございますけれども、この人身取引について、我が国においては、刑法及び児童福祉法の規定によりいずれも犯罪化されており、人身取引議定書第五条に規定される義務は果たされているものと承知しております。

藤原委員 より強いメッセージを発すべきじゃないですかと問うているんです。

平口国務大臣 現在の法律でちゃんと運用できる、このように考えております。

藤原委員 人身取引、この需要の抑制ということも大切な機能だというふうに言われています。

 UNHCRの指針七は、被害の深刻性に加えて、未然防止が極めて重要な意義を持ち、加害者処罰による一般予防だけでなく、需要の抑制、潜在的被害者への情報提供、被害を増加させる要素の是正等が必要であるというふうに記載しています。

 ここに言う需要の抑制というのが重要であるということはよく指摘されています。例えば、昨年の人身取引被害者として保護された六十六人のうち、実に五十八人が性的搾取を受けているわけですね。売買春の買春、これを処罰しなければ需要の抑制など到底望めないというふうに考えるんですけれども、政府はどのように考えておられますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 売春防止法による処罰の在り方が現在のようになっているのは、性の問題に関しては、判断能力の十分な者については、私生活上の行為としてあえてこれを処罰の対象とすることまでは適当ではないものの、売春を助長する行為等については、私生活上の行為を超え、売春を蔓延させる可能性があるなどといった様々な議論を踏まえた結果でありまして、売春行為及びその相手方となる行為を処罰の対象とせず、売春を助長する行為等を処罰することによって、売春による種々の弊害を防止しようとしたものであると承知しております。

 売春の相手方の行為を処罰することについては、その保護法益をどのように考えるか、あるいは国民の自由を不当に制限することとならないかなど、もろもろの点につきまして十分に検討していくことが必要であると考えられるところでございます。

 いずれにしましても、売春防止法を所管する法務省におきまして、近時の社会情勢を踏まえた売買春に係る規制の在り方について、必要な検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

藤原委員 別に、売春防止法の歴史を教えていただきたいというんじゃなくて、買春を処罰しなければ需要の抑制など到底望めないんじゃないですかと伺っているんです。答えてください。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 そういった御議論もあるかとは思いますけれども、そういったことも含めまして、今後、法務省といたしまして必要な検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

藤原委員 上記議定書が言っている営利目的で人を売る行為を処罰するためには、当然、買受けした者についても捜査の射程に捉えてこれを取り締まっていかなければ、議定書が目的としている人身取引の撲滅などかなわないわけです。殊に、人身売買被害者の大多数が性的搾取の対象となっているというのは、先ほど申し上げたとおりであります。

 法務大臣は、高市総理から、買春者の処罰について検討の指示を受けておられます。予算委員会の場で指示を受けておられます。その後、具体的な指示はあったんでしょうか、あるいは個別に検討しているものはあるんでしょうか。お答えください。

平口国務大臣 政府部内でいろいろやり取りをしておりまして、その中で御指示はきちんと受けております。

藤原委員 そのいろいろを伺っているんです。

平口国務大臣 少なくとも、当日、予算委員会の日に、個別に指示を受けたところでございます。

藤原委員 その検討内容、個別の検討内容について教えてくださいという質問です。

平口国務大臣 具体的な進め方につきましては事務方において検討中でございまして、現時点で公表できる段階にはございませんが、いずれにせよ、総理指示を重く受け止め、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

藤原委員 現時点で公表できるものではありませんと今おっしゃいましたけれども、昨日配付された大臣の挨拶、全二十四項目中十一番目に、「売買春に係る規制の在り方」と題して、「売買春に係る規制の在り方について、近時の社会情勢などを踏まえ、必要な検討を行います。」というふうに掲げておられます。

 これは、冒頭の「はじめに」において、「これから述べる具体的課題に全力で取り組んでまいります。」とあるんですね。全力で取り組むと銘打ちながら、現時点で公表できないんですか。何か公表できることがあるんじゃないですか、具体的な検討について。教えてください。

平口国務大臣 政府部内における詳細なやり取りについては差し控えるところでございますが、その後、法務大臣から法務当局に同様の指示をしたところでございまして、近時の社会情勢などを踏まえた売買春の規制の在り方について必要な検討を行うということでございます。

 まずは、売買春に係る規制の在り方についての検討の一環として、現行法令の運用状況について調査するほか、例えば、売買春をめぐる国内の実態把握に資する調査とか、諸外国における売買春の規制状況に関する調査などを行い、検討を進めていきたいと考えております。

藤原委員 公の場で総理から具体的に指示されたものについて調査にとどまるというのは、随分腰が引けた姿勢だというふうに考えるんですけれども。

 例えば、売春防止法一条、この目的規定の、しかも最初に書かれている「売春が人としての尊厳を害し、」という趣旨に立ち返って、男性が女性を買春の相手方となるよう勧誘することそのもの、これも罰則の対象にすべきだというふうに考えるんですけれども、大臣の見解はどうですか。

平口国務大臣 繰り返しになりますけれども、事務方において検討中でございまして、いずれにせよ、総理指示を重く受け止めて、必要な検討を行っていきたいと考えております。

藤原委員 別に事務方においてじゃなくて、大臣の所感、思うところ、決意を伺っているんです。答えてください。

平口国務大臣 きちんと御指示のとおり調査検討を行ってまいりたいと考えております。

藤原委員 調査検討ということではなくて、政治決断として、これだけ日本が性売買においても女性の人権が軽視されているという指摘がされている中で、人権をつかさどる大臣として、政治決断としてこの問題、人身売買もそうですけれども、この買春の問題、どのような決意で臨むのか。大臣挨拶の中に、十一番目の項目に入っているわけです。そこについて思うことを御自分の言葉で述べていただきたいと思います。

平口国務大臣 その御指摘の点を含めて、今後検討したいと考えております。

藤原委員 タイ人の十二歳の少女の件に、冒頭の件に戻りますけれども。

 あれだけの社会を震撼させた事件が起こって、ニュースにもなって国際的な批判も浴びている、そういう状況で、現行で足りる、このまま努力をしていけばもう必要にして十分だという姿勢だったら、問題は解決しないと思います。私は現場で元々弁護士をやっていましたけれども、人身取引、これはかなり深刻な問題なんですね。

 大臣、御自身の任期中にこの問題を抜本的に解決する、そういう決意を示していただけませんか。

平口国務大臣 いろいろございますけれども、そのような方向で努力はしたいと思いますが、やってみなければ分からないところでございまして、検討すると答えるしかないと思います。

藤原委員 例えば、人身取引と売買春というのはもう一連になっている、そういうことはよく言われているわけです。いろいろやってみなければ分からないということですけれども、具体的に高市総理からも指示されているわけですよね、検討を。そうであれば、御自身の任期の間に、やってみなければ分からないという姿勢じゃなくて、例えば法律を制定するとか、そこについて何か決意はないですか。大臣の挨拶の中にも挙げてくださっているんです。

平口国務大臣 いずれにしても、事態を重く受け止めて対応したいと考えております。

階委員長 藤原君、そろそろ。

藤原委員 いずれにいたしましてもばかりだったんですけれども、平口大臣の在任中にこの問題が解決することを強く望んで、質問を終わります。

 ありがとうございました。

階委員長 次に、松下玲子君。

松下委員 立憲民主党・無所属、松下玲子です。

 質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 今日は、順番をちょっと入れ替えて、人権政策を最後に、最初に佐賀県警DNA鑑定不正問題についてお伺いをしたいと思います。

 本年九月八日、佐賀県警の科学捜査研究所元技術職員がDNA型鑑定の不正を行ったことが公になりました。不正発覚は更に一年前に遡りますので、発覚から公表までに一年も経過している事実を指摘をいたします。元職員による不正は七年四か月という長期間にわたり、百三十件もの不正があったとされています。報道等の様々な発表によると、この元技術職員は、短期間で鑑定を終わらせることで自分の評価を上げることができると思った、仕事が遅いと思われたくなかったということが理由だったと述べているようです。

 DNAなどの鑑定書は、弁護人の意見にかかわらず、伝聞例外の規定、これは刑事訴訟法三百二十一条四項の準用により証拠として採用される特別な証拠とされております。これは、捜査機関の嘱託に基づく科学捜査研究所の鑑定書が高度の客観性と信用性が担保されているからであります。

 しかし、今回の不祥事は、このような刑事訴訟法の前提を根底から覆すものであり、極めて危機的状況だと思い、以下何点か質問いたします。

 この佐賀県警DNA型不正行為事件では、DNA型鑑定を実際には実施していないのに、実施したかのように偽装したものまであったということです。犯人を確保することよりも事件を処理することが優先されてしまっていた。それを七年余り誰も気づけなかった。科捜研の技術職員がたった一人で、いわば密室で鑑定を実施していて、それをチェックできる体制が全く整っていなかったということです。

 DNA鑑定をしたのかしていないのかすら誰も気づけない、一人の技術職員が不正をしようと思えば幾らでもできるという環境だったということ、これは刑事司法における科学捜査の信頼性を根本から揺るがす大変な不祥事と言えると思いますが、いかがですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 DNA型鑑定は、警察が取り組む客観証拠に基づく緻密かつ適正な捜査の重要な柱の一つでありまして、その適正と信頼を確保することは極めて重要であると考えております。

 お尋ねの佐賀県警察科学警察研究所の職員がDNA型鑑定作業において不適切な取扱いを行った事案については、DNA型鑑定に対する国民の信頼を損なうものであり、警察庁としても重く受け止めております。

 そこで、警察庁といたしましては、本年十月八日から佐賀県警察に対しまして、国家公安委員会の指導の下、首席監察官等の担当職員のほか、警察庁の附属機関である科学警察研究所のDNA型鑑定の専門家を派遣いたしまして、DNA型鑑定の実施体制とその実施状況及び不適切事案の原因究明とそれを踏まえた再発防止策、この二点について特別監察を実施しているところであります。

 また、佐賀県警察以外の都道府県警察に関しても、今回の事案を踏まえて警察庁から通達を発出し、鑑定における不正を防止するための対策を早急に講じるとともに、その取組状況を点検の上報告するよう指示したほか、今後、佐賀県警察に対する特別監察の結果も踏まえながら、他の都道府県警察の科学警察研究所についても順次監察を実施するなどして、業務の適正確保を図っていくこととしております。

 警察庁としては、これらの対策を確実に実施することにより、今後このような事案を二度と発生させることのないよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

松下委員 今後の対策まで聞いていないんですね。私、まず今回のこの事件ですよ、不祥事、私は不祥事だと思います、これをどう受け止めていますかということをまず伺いたかったんですね。

 そうすると、お言葉の中で今、不適切な対応と重く受け止めと、これは不適切な対応じゃないと思いますよ、不正です。

 今御指摘のあった全国に出している通達も、「鑑定における不正を防止するための対策について」と出しているんですね。これは、警察庁、九月八日付です。警視庁刑事部長、各都道府県警察、方面も併せて本部長に宛てて、複数人でチェックする体制を構築するようにと、鑑定における不正を防止するための対策についての通達です。

 これは、不適切だという認識だと私は困ると思っています。事件です。不祥事です。そして、不正が働かれていたということを重く受け止めてください。

 その上で、この出された通達の意味を、私は、読んで私なりに考えました。これは、佐賀県警だけでなく他の都道府県警でも、技術職員が一人でDNA型鑑定に当たっていて誰もチェックしていないということや、不正が行われていても気づきようがないという現実や、そういう状況が全国どこでも同じだったと思われるので、全国の県警に対して同じ通達を出したということではないですか。そうであれば、全都道府県の科捜研について同じような不正がないか確認する必要があると私は思いますが、いかがですか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 その前に、先ほど私、佐賀県警察科学捜査研究所と申し上げるところ、佐賀県警察科学警察研究所と申し上げてしまいましたので、訂正させていただきます。申し訳ございませんでした。

 その上で、お答えいたします。

 繰り返しになりますが、警察庁では、通達を発出しまして、都道府県警察に対しまして、鑑定における不正を防止するための対策を早急に講じるとともに、その取組状況を点検の上報告するよう指示しているところであります。

 また、今後、佐賀県警察に対する特別監察の結果も踏まえながら、他の都道府県警察の科学捜査研究所についても順次監察を実施するなどして、業務の適正確保を図っていくこととしております。

松下委員 他の都道府県にも今後順次科学捜査の調査をしていくということでよろしいですか、今お答えのあった。本当に、佐賀で起きたことが佐賀だけじゃない可能性もあると私は思うんですね。これまで、法律ではなくて、通達とか要領とかに基づいてDNA型鑑定というのは運用がなされています。そうした中で、今回起きた事件というのは決して特異な例ではないのではないかなという思いで質問をしています。

 現在の通達、お出しになった通達では、その前のも含めた通達では、鑑定はなるべく一部をもって行い、使用しなかった資料の残りや鑑定時に使用した資料の残余については、再鑑定に配慮し、保存しなければならないと規定されております。しかし、佐賀県警DNA型不正事件を見ると、ほとんど遵守されていないのではないかと危惧をしております。

 DNA型鑑定のルールについては、単なる行政部内での通達ではなくて、弁護士会推薦の弁護士や刑事訴訟法及び鑑定実務に詳しい学識経験者の御意見をいただきながら、これは国会での議論を十分に経た法的拘束力のある立法、すなわち法律の制定が必要なのではないかと私は思えてなりません。

 今回の佐賀県警のDNA型鑑定不正事件について、佐賀県議会は、県議会議員全員出席した上で、三つの決議を全会一致で可決をしました。非常に重要な決議を全会一致で可決をされたと私は思いました。

 そのうちの一つが、「説明責任を果たすため、独立性、透明性、専門性などを備えた第三者による調査を行うこと。」という決議です。これに対して佐賀県警本部長は、第三者による調査は不要だと述べております。

 しかし、今回の事件を契機に、DNA型鑑定という犯人との識別を図る重要な意義を有するものの信頼は残念ながら失墜していると考えます。だからこそ、信頼回復のためには、佐賀県議会の決議のとおり、第三者による調査が必要不可欠と考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

松田政府参考人 お答えいたします。

 佐賀県警察においては、本件の取扱い、調査を、警察の民主的管理を保障し、政治的中立性を確保するため、県民を代表する独立の合議体として設置された佐賀県公安委員会の管理の下、数次にわたる指導を受けながら実施してきたものと承知しております。

 加えて、現在警察庁が行っている特別監察においては、国家公安委員会の指導を受けつつ、警察庁の附属機関である科学警察研究所のDNA型鑑定の専門家を派遣するなどして実施しているところでありまして、警察庁としては、まずはこの特別監察をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

松下委員 議会の決議、県議会の決議が、全員出席の下、全会一致で可決したというのは、これはすごく重いことだと思うんですね。そこをやはり受け止めてほしいと思います。

 そして、県議会決議がなされています。佐賀県民の不安や、信頼、科学捜査に対する信頼というのも大きく損なわれています。例えば民間であれば、第三者機関の調査が行われて、問題発生の原因解明や役員に対する厳しい責任追及、不正防止策など提案されると思うんですね。今回の件も同様に、第三者の調査が必要と私は思います。

 今、お答えは、やはりあくまで警察組織の調査であって、限界があると思うんです。そして、捜査におけるDNA型鑑定は、非常に信用性も高く、重要な証拠であります。そう先ほどもお答えされていました。今回の事件で信用性がなくなったと言っても本当に過言ではありませんので、信頼回復のためには、独立性、専門性のある第三者による調査が必要と私も思います。

 県民の代表機関である県議会が、独立性、透明性、専門性などを備えた第三者による調査を行うことを決議した重みを重く受け止めて、無視することなく、まずは特別監察という今お答えをいただきましたので、まずはに続いて、是非今後、第三者による調査も行っていただきたいと思います。

 続きまして、再審法改正について伺いたいと思います。

 現在の刑事訴訟法には、再審の手続に関する規定は僅か十九か条しかなく、いわば再審のルールが整備されていない状態にあります。そのため、再審格差とも呼ばれる裁判所ごとの格差、事件を担当する裁判官の姿勢によって冤罪被害者の救済が左右される実情や手続の長期化などの問題が生じています。しかし、再審法の規定は、現行法が施行されてから七十六年間、一度も改正されていません。冤罪被害者の速やかな救済のためには、一日も早く再審法改正を実現する必要があります。

 こうした課題に対して、法制審議会の部会においても検討はなされておりますが、その審議は、制度の安定性や運用上の配慮に重きを置く傾向が強く、冤罪被害者の視点に立った抜本的な制度改革には限界があるとの指摘もあります。実際、これまでの法制審の審議内容からは、冤罪救済の実効性を高めるための十分な改正が期待できる状況にはないと考えます。

 これに対し、超党派の再審法改正議員連盟が提出した再審法改正案は、冤罪被害者の救済を中心に据え、証拠開示の制度化や即時抗告制度の見直しなど、実効性ある改革を具体的に盛り込んだ内容となっております。私は、こうした議員立法による改正こそが、真に必要とされる、再審制度改革で取るべき方向と考え、以下、政府の見解を伺います。

 再審制度の目的と現行制度の限界について伺います。冤罪救済を目的とする再審制度において、現行法がその目的を果たしているとお考えでしょうか。再審制度の意義についてどのように考えているのか、その認識をお伺いいたします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続であり、重要な意義を有しているものと考えているところでございます。現行法の下においても、再審制度は基本的に非常救済手続として適切に機能していると考えられますが、他方で、近時、一部の再審請求事件につきまして審理の長期化が指摘されるなどしているものと承知しております。

 そこで、法務省では、再審制度の在り方について、現在、法制審議会において、幅広い観点から精力的に御議論いただいているところでございます。

松下委員 私は、今、現行法が適切だと思えないので、適切に機能しているというお答えはちょっと理解がしかねますね。

 証拠開示制度の改善についてなんですけれども、再審請求において、検察官が保有する証拠の開示が任意に委ねられている現状です。任意です。請求人の立証活動を著しく制約するものであります。

 袴田事件の場合、再審段階で約六百点もの証拠が開示され、その中には再審開始の判断に大きな影響を与えたいわゆる五点の衣類に関する証拠も含まれていますが、これらの証拠が開示されたのは、死刑判決が確定してから三十年もたってからのことであります。

 証拠開示を制度的に保障する必要性について、政府の見解を伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる再審請求審における証拠開示を含めまして、再審制度の在り方については、先ほど申し上げたとおり、法制審議会の部会において、再審請求事件の実情を踏まえて精力的に御議論いただいているところでありますので、現時点において法務当局としての認識を述べることは差し控えたいと思いますけれども、その上で、法制審議会の部会の議論の状況を申し上げますと、いわゆる再審請求審における証拠開示の規律の在り方については、委員及び幹事から、法整備を行うこと自体に反対する意見は示されていないところでございます。もっとも、実際に法整備を行うこととするかや、法整備を行うこととした場合どのような規律を設けるかといったことについては、引き続き検討がなされるものと承知しております。

 いずれにしても、法務当局としては、引き続き、法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう力を尽くすとともに、議論の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

松下委員 今、法制審議会の中では証拠開示に関して法整備の反対の意見はないということでしたが、これはやはり現状を踏まえても、死刑判決が確定してから三十年もたってから新たな証拠が開示されている。三十年ですよ、三十年。この重みというのをよく考えてほしいと思う。人の人生の重みですね。人の人生を三十年も奪っておいて、今ルール化しないなんということは本当にあり得ないと思っています。証拠はやはり開示をする、全て証拠を開示するという方向で考えていただきたいと思います。

 そして、再審開始決定に対して検察官が即時抗告できる制度は再審開始のハードルを不当に高めているとの指摘があります。袴田事件や福井事件で無罪が確定するまでに長期間を要した原因として、再審開始決定に対する検察官の不服申立て、いわゆる検察官抗告の問題があります。

 袴田事件では、二〇一四年三月に再審開始が決定しました。つまり、冤罪の疑いがあるから裁判をやり直しなさいという判断がなされたにもかかわらず、検察官がそれは認められないといって不服申立てを行ったために、やり直しの裁判、再審公判が始まるまでに九年以上もの年月が無駄に費やされています。

 福井事件では、二〇一一年十一月に再審開始決定がなされたにもかかわらず、検察官の不服申立てを受けてこれが取り消され、二〇二四年十月に二度目の再審開始決定がなされましたが、この間、十三年もの間、これも時間が無駄に費やされています。

 この制度の廃止又は制限について、政府としてどのように検討されていますか。お答えください。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げたとおり、再審開始決定に対する不服申立ても含めまして、再審制度の在り方については、法制審議会の部会において御議論いただいているところでありますので、現時点において、議論をお願いしている立場の法務当局としての認識を述べることは差し控えたいと思うところでございます。

 その上で、法制審議会の部会の議論の状況を申し上げますと、再審開始決定に対する不服申立てについては、まず、検察官の不服申立てによって再審請求審が長期化しているのであるから審理の迅速化のためにこれを禁止すべきだとの御意見が示されている一方で、再審開始決定に対する不服申立てを禁止すると、最高裁判所まで審理が尽くされて確定した有罪判決も、簡易裁判所、地方裁判所の一人の裁判官の判断によって確定的に覆せることとなり、裁判の紛争解決機能が失われる、あるいは、争いが再審公判に持ち越されるだけであり、審理の迅速化にはつながらないなどの御意見も示されているところでありまして、今後更に議論が行われるものと承知しております。

 いずれにしましても、先ほど申し上げたとおり、法務当局としては、十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう力を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。

松下委員 法制審議会での審議について御紹介をいただきました。

 冤罪被害者のための抜本的な制度改革が期待し難いとの指摘がある中、再審法改正議員連盟が提出した改正案は、こちらは冤罪救済の実効性を高める内容となっています。

 政府として、こうした議員立法による改正の意義というのも認識をしていただきたいと思いますし、私は、法務大臣に、再審法の改正について、その必要性をどのように認識されているのか、伺いたいと思います。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 再審制度につきましては、法改正に関するものを含めまして、様々な議論があるということは承知しております。

 再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手続であり、同制度が適切に機能するということは大変重要なことであると考えております。

 その上で、再審制度の在り方につきましては、非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、現在、法制審議会において精力的に御議論いただいているところでございます。

 私としては、引き続き、法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう力を尽くすとともに、法制審議会の議論の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

松下委員 法制審議会の議論を踏まえてということをすごく強調されるんですね。でも、過去、法制審議会から答申が出たにもかかわらず、国民の間にも国会の中にも様々な議論があるといって、選択的夫婦別姓制度については民法改正していないんですよ。答申が出ているのにですよ。片方では法制審の答申に従わずに、もう片方では法制審には全権を委ねるかのごとくですよ。国会の中でも、法務委員会でもいろいろな意見も出ています、議論が出ています、冤罪救済になっていないんじゃないのという。やはり、過去の反省に立ってほしいと思いますね。これまでも再審制度はあったにもかかわらず、証拠が開示されるまでに三十年もかかった。一人の人間の人生の三十年ですよ。奪ったことに思いを巡らせてください。そして、裁判のやり直しをするにも、何年も何年も何年もかかっているんですよ。

 そうした事実を重く受け止めたら、法制審の議論ももちろんあるかもしれない、でも、議会の議論だって、この法務委員会の議論だって参考にすべきじゃないんですか。法制審だけが正しいんですか。

 大臣は、刑事再審制度の在り方、昨日の大臣挨拶の中でも、国民の関心も高いところとおっしゃっています。どんなところに関心が高いと思われていますか。今、冤罪被害者を救済するために再審法を改正する、そういうお気持ちで取り組んでいただけませんか。お答えください。

平口国務大臣 再審制度につきましては、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されるなど、法改正に関するものも含め、様々な議論がなされていることは承知をしております。引き続き、このようなことを考えて、職務に精励したいと思っております。

松下委員 このようなというのは、冤罪被害者の救済と受け取っていいですか。冤罪被害者を救済するためにと受け取っていいですか。このようなとか、指示語をちょっと転換してください。

平口国務大臣 もちろんそのことも含めるわけですが、様々な総合的事情を考慮したいと思っております。

松下委員 袴田事件の冤罪の被害者、袴田巌さんは、そのお姉さんのひで子さんが、献身的な努力によって無罪をかち取っています。事件から五十八年後です。一人の人間の人生を五十八年も国家が奪ったという認識を是非持っていただきたいです。

 そして、その袴田ひで子さんは、巌が救われたからいいとだけは思っていない、冤罪被害者を救済するために、残りの人生を懸けて、この事件を教訓として再審法の改正に取り組みたいといって活動されています。御高齢です。

 長年人生をささげてこられた、そういう人がいるということを是非知っていただきたいですし、再審法の改正は、冤罪被害者救済のため、検察抗告の禁止や証拠開示のルール、証拠は全て開示をする、そうした方向で考えていただけませんか。大臣、お答えください。

平口国務大臣 そのことも重要な論点ではありますが、そのほかにもいろいろ議論がございますので、それらを総合的に判断してまいりたいと考えております。

階委員長 松下君、そろそろ。

松下委員 はい。

 そのこと、それら、そもそもとか、何を指しているか分からない言葉がやはり多いんです。特にこれは人権問題です、冤罪というのは。冤罪被害者救済、そこを是非強く認識をしていただきたいですし、被害者の、当事者の声も聞いてほしい。法制審だけじゃなくて、この法務委員会や、この間の議論の積み重ね、議連の意見なども聞いた上での法改正をしていきたいと思いますので、是非考えてください。

 質問を終わります。

階委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立憲民主党の黒岩宇洋でございます。

 平口大臣、おはようございます。今日はよろしくお願いいたします。

 せんだって、予算委員会の初日に高市総理の午前三時からのレクというのが話題になりまして、それが飛び火して、ある自民党の副大臣から、二日前通告という、これも今はなき幻のルールに野党議員が違反したんじゃないか、こんな御指摘を受けました。そんなこともあって、法務省の職員の負担軽減と、それら雑音への当てこすりも込めて、私は先週の木曜日に質問を通告させてもらいました。ただ、残念なことに昨日の所信的挨拶を聞き逃しての通告だったので、ちょっと私は聞いていて、違和感というより聞き捨てならない箇所もありましたので、昨日の昼に二問追加通告をして、まずはその点から質問させていただきたいと思います。

 私があれっと思ったのは、大臣挨拶の九ページ目、タイトルは「性同一性障害特例法の違憲決定への対応等」とあるんですが、最後の項なんですね。夫婦の氏の在り方について、内閣府など関係省庁と連携して、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行い、更なる拡大に取り組みますと。

 これは私、今まで法務大臣ないしは法務省、つまり法務大臣でこういった表現というのは今まで聞いたことがなかったですし、少なくとも、三十年前の法制審議会の、諮問して、いただいた答申とは異なることを書いている。これは、どうしてこの表現をされたのか、この点についてお聞かせください。

階委員長 ちょっと時計を止めてください。

    〔速記中止〕

階委員長 再開してください。

平口国務大臣 法務省としては、旧姓の通称使用の拡大についての総理指示があったことから、内閣府など関係省庁と連携して対応を検討していく必要があると考えたものでございます。

黒岩委員 確かに総理指示書にありましたよね。それで平口大臣がこの表現を使った。

 これも通告していますけれども、では、平口大臣御就任前の大臣ないし法務省がこういった表現というのは用いられていましたか。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 これまでの法務大臣が御指摘の表現そのものを使用した事実は承知しておりません。

 もっとも、旧姓の通称使用拡大は男女共同参画基本計画に掲げられている政府の方針でございまして、この方針を踏まえて、これまでの法務大臣も、政府として社会生活での不便や不利益を軽減する観点から旧姓の通称使用の拡大に向けた取組を進めていく旨の答弁をしてきたものと承知をしております。

黒岩委員 大臣、総理指示書は今手元にありますか、総理指示書。総理指示書と大臣のこの挨拶、これは決定的に違うんですよね。大臣、総理指示書を見てください。

 総理指示書にはこうしか書いていないんですよ。関係大臣と協力して、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行い、更なる拡大に取り組むと。要は、その前段の、夫婦の氏の在り方については触れていないんですよね。

 先ほど大臣がおっしゃった内閣府云々というのも、これも、夫婦の氏の在り方、別姓なのか通称使用拡大なのか。違うんですよ。これは、例えばパスポートだとか銀行の名義だとか、法務省であったら登記とか、こういったものに通称が使えるという、非常にある意味事務的な、手続的なものへの、これはある意味、便宜性を図っていきましょうという話で、根本的な夫婦の氏の在り方については内閣府も法務省も何ら方向性を示さないどころか、高市大臣もその方向を示していない。

 そんな中で、大臣、この表現は、これは正直におっしゃっていただきたいんですけれども、これは大臣が書き込んだんですか。それとも、役所が短冊を、そのまま入れちゃったんですか。どちらですか。

平口国務大臣 原案は役所が作りましたが、私も十分内容を検討して、これを了解したものでございます。

黒岩委員 では、更に聞きますが、これは総理大臣指示と違うじゃないですか。のりを越えていませんか。ある意味、本質的には全く違いますよ。総理は、夫婦の氏の在り方については何にも指示をしていない。だから、今の答弁はおかしいじゃないですか。理由が間違っていますよ。答弁をちょっと直された方がいいんじゃないですか。

平口国務大臣 総理の指示は、関係大臣と協力して、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行い、更なる拡大に取り組むということでございますので、取り立てて矛盾しているものとは考えておりません。

黒岩委員 大臣、よく聞いてください。

 じゃ、夫婦の氏の在り方って、これは大臣が入れたそうですけれども、何で入れたんですか。

平口国務大臣 これまでも、法務省は、夫婦の氏の在り方については、現在でも国民の間や各党、各議員の間に様々な意見があるものと承知しておりまして、法務省といたしましては、国民の間により幅広い理解を得ていただくために積極的に情報提供を行ってきたところでございます。

黒岩委員 大臣、ストレートに答えてください。そんなことを聞いているんじゃないんです。

 総理指示にはない夫婦の氏の在り方についてというのは、なぜ大臣がここに入れたのかということを聞いているんです。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員御指摘のとおり、関係大臣と連携して、旧姓の通称使用における課題の整理や必要な検討については総理指示そのままでございます。

 その上に夫婦の氏の在り方についてという言葉を冠しましたのは、例えば世論調査におきましても、夫婦の氏に関する質問として、夫婦同氏制度の維持や選択的夫婦別氏制度の導入、また夫婦同氏制度を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設ける、このような事柄を全体として指している、そのような観点から、冒頭に夫婦の氏の在り方についてと冠したものでございます。

黒岩委員 局長、何の理由にもなっていないです。

 局長、この後、答えてもらいますよ。いいですか。今言ったように、通称使用だとか、選択的夫婦別氏だとか、別氏についても幾つかのやり方とか、そういういろいろな国内の国民の声があるからといった中で、何でそれ、一本決め打ちでこれを入れるんですか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、決め打ちというものではなく、総理の御指示に基づきまして必要な検討を行うということでございます。

黒岩委員 局長、答えてください。

 総理の指示にはないんですよ、氏の在り方というのは。総理の指示を越えているじゃないですか。そんなこと、官僚がそんな答弁できるんですか。もう一回答えてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 総理指示のございました旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討、これは、先ほど申し上げたとおり、世論調査の中でも夫婦の氏の在り方に関する問題の一つであるというふうに認識をしているところでございます。

黒岩委員 じゃ、局長、この総理指示には夫婦の氏の在り方についてが含まれるという解釈でいいんですか。これは本当に、総理の意思と違ったら大変なことになりますよ。局長、この総理指示には、夫婦の氏の在り方についてというものがこの総理指示から文言として読めるということでよろしいですか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほど申し上げたとおり、夫婦の氏の在り方に関しましては、国民の間にも、また国会議員の先生の中にも様々な意見がございます。そのような観点から先ほど世論調査の結果を御紹介いたしました。

 総理指示としては、その中で、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行う、このような指示が来ているところでございます。

黒岩委員 局長、ストレートに答えてください。この総理指示については、今私どもが議論の論点になっている、夫婦の氏の在り方についてがこの総理指示から読めるという局長の解釈ですか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、まず問題の所在は、夫婦の氏の在り方について様々な議論があるということでございます。その中で、総理の指示とされておりますのは、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行うべきであるということでございます。

黒岩委員 委員長、これ、よく聞いてくださっておりますけれども。

 いいですか、総理の指示には夫婦の氏の在り方というのは全く書いていない。その下の、内閣府等関係省庁と協力して、ここまでは入っているんですよ。じゃ、何で入っていない夫婦の氏の在り方というものがこの総理指示から読めるのか。私としては甚だ疑問ですけれども、局長の今の表現で、これは、夫婦の氏の在り方についてが、総理の指示書、この文言から読めるということでよろしいのか。イエスかノーでお答えください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 総理の指示の中には夫婦の氏の在り方についてという言葉が書いていないのは自明のことでございます。

 その上で、法務大臣の御挨拶、所信としまして、問題点の所在についてまず明らかにする観点から、夫婦の氏の在り方についてという問題提起、問題の所在を明らかにした上で、その上で、総理の指示に基づきまして、旧氏の通称使用における課題の整理と必要な検討を行い、更なる拡大に取り組むということを書いているものでございます。

階委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

階委員長 黒岩君。

 黒岩君、もう一度お願いします。

黒岩委員 いいですか、読めるということになったら、それが正しいならば、これは総理指示が、総理大臣指示が夫婦の別氏についてということを指示したということになる。総理の意思だということになるんですよ。これはこれで、実は大変な問題がはらむ。逆に、読めないけれども入れちゃったとなれば、これは総理指示が根拠にはならないし、ないしは総理指示を逸脱したことになる。

 二つのうちどっちですかということの意味合いで、局長、助け船で出てきたんだから、ちゃんと、読めたのか読めなかったのか、答えてください。どちらかですよ。

松井政府参考人 高市総理の予算委員会における御答弁の中におきましても、政府としては夫婦の氏の在り方についての国民各層の意見の把握に努めてきたとおっしゃっていらっしゃいます。

 このような観点を踏まえて、夫婦の氏の在り方についてという言葉を冠することについては、総理のお考えと食い違っているものではないというふうに認識をしております。

黒岩委員 局長、まず、まだこの文言で、この指示で読めるかどうかを答えていないし、もう一つ、またあらぬところをくっつけちゃったんですよ。

 夫婦の氏の在り方についてはいろいろな声がある、ここまではいいんですよ、当然。でも、それだから、では、この通称使用について、総理が法務大臣に指示して、これを決め打ちで進めなさいと。こんなこと、つながるわけないじゃないですか。これは、今言ったように、氏について通称拡大と、これをはっきりと法務大臣の挨拶として入れているんですよ。だから、そうやってぼかさないでくださいよ。

 後段のことについては、今の答弁としてはそぐわないということを認め、そして、この総理指示の文言で夫婦の氏の在り方についてが読めるか読めないか。これ、ちゃんと答えてください。

階委員長 簡潔に答えてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、総理の御答弁として、夫婦の氏の在り方についての国民各層の意見の把握に努めてきたという前提の下に今回の御指示があるわけでございます。

 その意味で、私が先ほど申し上げた、夫婦の氏の在り方について世論調査などを行っている、それを前提とした上で、総理指示について大臣所信の方に書いているということは、食い違うものではないと考えております。

黒岩委員 これ、本当は、もう止めちゃって引き揚げてもいいような話ですよ。堂々巡りという話で。これを詰めるのならね。

 ただ、私はもっともっと大事な話をこの後しなきゃいけないから先に進みますけれども、委員長、そして大臣も、こういうような、ほとんど議論になっていない、かみ合わない、こんなことは、法務委員会に対する、私、正直言って、非常にないがしろにした話ですよ。こんなのは、私は政府参考人つけ放題ですよと役所に言っています、いつも。だけれども、こんなやり方されたら何にも議論が煮詰まっていかない。

 大臣の方からも、特に委員長の方から、これはやはり、議事進行権は、指揮権は委員長にあるので、この後は、これからちょっと厳しくやっていただきたいと思います。今厳しくないと言っているんじゃないですよ。こういう対応がはびこるようだったら非常に問題だと思います。

 それで、誰が聞いてもこの総理指示書とは非常に大きく違ったということは問題だと思いますが、やはり、あと二つ、大きな問題点を指摘します。

 平口大臣、先ほど申し上げた三十年前、これは法務省、法務大臣が法制審にお願いして諮問して、法制審としては、通称使用、これも案でありましたけれども、これは真っ先に落とされましたね、問題の解決にならないと。

 それはともかく、最後に絞られたのが法制審案と言われるものでした。これが、本来でしたら、今日も議論になっていましたけれども、当然法務省として、自分たち以上の知見のある専門家に諮問して、いただいた答申を役所として立法化するのが法務省の責務でしょう。それが、今いろいろな声があるからなかなか進まないと。百歩譲ってその理屈が通ったとしましょう。その状況で、何でその、恐れ多くも法制審の答申と違う方向をこうやって打ち出しちゃうんですか。これは非常に違和感があると思いませんか。

平口国務大臣 三十年の間にいろいろ事情も変更しまして、国民の意見もいろいろ変わってきておりますので、そのようなことになったということでございます。

黒岩委員 これは審議会そのものが形骸化しますよ。今言ったように、百歩譲って、審議会の意見もあるけれども国民各層の意見がある、なかなか進まないと。そこを飛び越しちゃって、今、その最初に削られた案でいきますと。何のために審議会があるんですか。何のために諮問するんですか。何のために審議会の皆様は答申するんですか。

 大臣、こっちを見てください、目をそらさないで。

 最も重要なところに触れますよ、三つ目。

 今、選択的夫婦別姓については、当法務委員会にその審議が継続でかかっていますよね。今、議法で審議していますよね。

 では、大臣が進めると言った夫婦の氏の在り方、これはどこの案ですか。

平口国務大臣 法務省の案でございます。

黒岩委員 民事局長、いいんですか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 総理指示を受けまして、現在、関係省庁とともに検討を進めているという段階でございます。

黒岩委員 今言った、継続している議法の審議の中の何案だというときに、これは法務省案というのでよろしいんですか。

 大臣の後で訂正しなきゃ駄目だよ、秘書官。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、法務委員会に議員提案で三つの法律案がこの案件に関してかかっていることは重々承知をしております。

 現在、高市総理から御指示のありました法案の検討につきましては、議員提案の内容も含め、さらに、関係省庁と連携して今検討を進めているという内容でございます。

黒岩委員 平口法務大臣、先ほどの答弁でよろしいんですか。修正するなら今ですよ、訂正するなら。

平口国務大臣 ただいま局長が答弁したとおりでございます。

黒岩委員 議事録に載るんですよ。法務省案ですということは撤回するんですか、しないんですか。

階委員長 もう一回。黒岩君、今大事なところだから、質問をもう一回最初から言ってください。

黒岩委員 昨国会から継続審議でこの選択的夫婦別姓、民法改正について、我々はここで真摯な議論を非常に丁寧にやってきました。その中で出ている案は一体どこの案なんだと聞いたときに、法務省の案だと言いましたけれども、全く法務省の案なんて審議していないんですよ。だから、法務省の案ということは、明らかにこれは撤回した方がいいんじゃないんですか。

平口国務大臣 私が法務省の案と申しましたのは、私の所信表明に書いてある案について法務省の案だと申し上げたものでございます。

黒岩委員 私の質問に対する答弁としては、違った、撤回しますと言う必要があるんじゃないんですか。

平口国務大臣 前提になる事柄にそごがありましたので、私の方の意見は撤回をいたします。(発言する者あり)私の申し上げたことは撤回したいと思います。

黒岩委員 私もこんなところでつまずくとは思わず、重要なところって、まだイントロダクションというか、重要なことは、いいですか、私はこれから議院内閣制と三権分立まで踏み込んだ話をしますけれども。

 大臣、行政府と立法府の関係、我々は今、この立法府、法務委員会にいます。大臣は、議院内閣制でどちらにも籍を置く立場ですけれども、行政府は、閣法というものを我々委員会にお願いして、審議してください、成立させてください、こういう立場ですよね。これはもちろん、三権分立としては当然の姿です。ただ、我々は、議法として、立法府として議員提案をして、そこで完結して成立させる、これも我々の自由な議会活動です。

 そんな中で、今言ったように、継続して、何せ三十年前の答申を受けても法務省が法案を提出しないからですよ。ないしは、提出しても審議もされなかった。提出したのかな。うん、したな。でも、それは滞っているから、じゃあといって、我々が知恵を尽くして三案を審議しているんですよ。今継続中なんですよ。

 そんなときに、行政府が、大臣が、その三つのうち一案、これは当時野党だった維新の案ですよ、その案を後押しするようなこと、これは行政府として決定的に越権行為じゃありませんか。三権分立ののりを越えていませんか。いかがですか。

 これは大臣ですよ。そんな、局長で答えられる答弁じゃない。大臣、政治責任を持って、行政府の人間として答えてください。

平口国務大臣 議員提案の法案につきましては、私は答える立場にございませんので、お答えを差し控えさせていただきます。

黒岩委員 今、局長も言ったように、これは維新案なんですよ。それを、今言ったように、我々はこれを今度継続して議論しようとしている、真摯に。

 しかし、それに先立って、行政府としてその一党の案、私があれしているのは、私どもの案を推してくれとか、そういう話をしているんじゃないんですよ、選択的夫婦別姓を成立させてほしい、そういうことを言っているんじゃないです。一つの政党の案を行政府の長が後押ししていく、更なる拡大に取り組みますと。これはいささか以上に不適切なのではないですか。のりを越えているんじゃないですか。

 これは、我々立法府として、ここにいる与野党抜きにして、全ての議員が大変問題視する重要な発言をしてしまった、私はそのように認識しています。この発言、私は撤回されるべきだと思いますよ。いかがですか。

平口国務大臣 維新さんの案にしても立憲さんの案にしても、立法府の案でございますので、それについてコメントする立場に私はないと思います。

 ただし、所信の表明の中で書いた趣旨は、総理大臣から指示を受けたということでございますので、その立場で書いたものでございます。

黒岩委員 正直、手加減しますよ、今日は。何の答弁にもなっていない。

 総理の指示書って、基本的に、内閣官房を含めて、今言った、非常にそごを来したりとか問題があることというのは、ちゃんとやはりそこは見ていますよ。だから、例えば外国人政策にしたって、総理が総裁選で言ったこととか、自民党と維新の連立合意書等、政党同士がやったことでも、やはり、いざ政府の立場になると打ち出せる範囲でしか打ち出さない。だから、総理の指示書というのは、今までのことを継続し、なおかつ、様々な大きな枠内、もちろん、憲法に触れるなんということはあり得ないし、そこはしっかりしている。

 それが、なぜか法務省がこれを入れちゃったんですよ、夫婦の氏の在り方について。これははっきり言って、よく忖度という言葉がありますけれども、忖度を通り越して御機嫌取りだ。それは、高市総理はそのことを腹の中で思っているかもしれないけれども、総理となってからは一言も言っていない。当然、立法府に対しても謙抑的である。私はあるべき姿だと思っている。しかし、この一文はそれを乗り越えちゃっているんですよ。

 そもそも、見てくださいよ、これは項目立てが性同一性障害ですよ、性同一性障害。それと今言った総理指示の、内閣府と連携して、通称使用。これは今言ったように単なる手続の話。何で性同一性と、今言ったように、登記とかパスポートとかの通称拡大という本当に事務的な話と、何が関係するんですか。多分、関係ないところに入れちゃったものだから、今まで、同性婚とか性同一性障害とか、ここに夫婦別姓も入れて多様性とかいうくくりだったんだけれども、じゃ、多様性のくくりにこれを入れるので夫婦の氏と入れちゃった、そんな辺りかなと思っているんですよ。

 これから、大臣、大臣も官僚出身で、行政府にいたわけだから、きちんと立法府との関係も、立法府にも二十年いるわけですから、その点、これは重要なことなんですよ。うっかりと、こんなもの、我々は見逃さないですよ。

 これは委員長も、こういったところについて、今日のやり取り等も、非常に立法府との関係、やはりこれは行政府としても、もうちょっと真摯に、誠実に見直していただきたい。このことを強く、この一つの例でこれだけ時間を取っちゃいましたけれども、申し上げさせていただきます。

 では、先週通告したところに入りますよ。

 じゃ、外国人政策、よろしいでしょうか。総理指示書について、これもなぞるように聞きますから、官僚でも結構ですから端的に答えてください。

 総理指示書で不動産の移転登記の国籍把握の仕組みということがありましたけれども、これは具体的にどういうような仕組みなのか。そして、何で国籍を把握する必要があるのか。二点、お聞かせください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 本月四日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議が開催され、総理から、不動産の移転登記時に国籍を把握する仕組みを検討するよう指示がございました。

 現在、法務省において具体的な仕組みについて鋭意検討を進めておりますが、例えば所有権の移転の登記の申請がされた際に新たな登記名義人となる者の国籍をどのような資料に基づいて判断するかですとか、その資料を誰からどのように取得するかといった国籍情報の把握方法を検討する必要があると考えております。また、不動産登記の情報は一般に公開されているものであるのに対し、国籍情報についてはプライバシー保護の観点から適切に取り扱う必要もあると考えられるため、その保有方法も検討する必要があると認識をしております。

 法務省としては、関連するシステムの改修等の制度運用面を含め、スピード感を持って検討を進めてまいりたいと考えております。

黒岩委員 何で国籍を把握する必要があるんですか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 総理からの指示は、国土の適切な利用及び管理の観点から、外国人による不動産保有の実態を把握するためというふうに承知をしております。

 また、外国人を含め、新たに所有権の登記名義人となる者の国籍を把握することは、相続登記における相続関係の確認の円滑化にも資するものであって、所有者不明土地の円滑な解消を図る上でも重要であると考えているところでございます。

黒岩委員 その考え方は私も至極共有します。私どもも、この土地利用、外国人の規制という観点とはちょっと違うんですけれども、土地利用について国籍も把握する必要があるべしと、実態把握といったときに。多分、松井局長が答弁された今の文言というのは、土地基本法とか国土利用計画法とか、こういったところに使われていると思いますから、国土の適切な利用、管理のために国籍を把握する、ここまで分かりました。

 その先がやはりちょっと違ってきて、これは予算委員会でも総理ともちょっと詰めてきたんですけれども、総理は、やはり必要があれば外国人の土地取得規制を行う、強化する、こうおっしゃっているんですが、まず、なぜ外国人の土地取得、規制を強化する必要があるのか。立法事実と言ってもいいですが、それをお答えください。

岸川政府参考人 お答えいたします。

 先日の衆議院予算委員会におきまして、総理から、外国人による不動産取得に対して規制を導入するのかという質問に対して、必要とあれば規制をかける可能性があるという御趣旨の御発言をされたことは承知しております。

 規制をする、あるいはその必要がある場合ということでございますが、規制をすること自体、その是非を含めまして、規制の目的の正当性ですとか、規制の手段、対象、そういった必要性や合理性などの観点から総合的に検討する必要がありますので、現時点で予断を持って、この規制をしなきゃいけないですとか、そういうことをお答えすることは困難でございますけれども、まずは、政府といたしましては、実態把握を進めるとともに、総理の指示にもございましたように、土地取得等のルールの在り方を含めまして、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって総合的な検討を進めてまいりたいと考えております。

黒岩委員 大臣、今の答弁を聞いていてほしいんですけれども、これは我々からすれば及第点だし、政府とすれば満点なんですよ。

 要は、総理も、総裁選でも外国人の土地規制というのはもう本当に打ち出していた。自民党と維新の連立合意書にも土地規制の強化と入っているけれども、今言った、実際に立法事実とかを照らし合わせていくとなかなか難しいんですよ。だから、今はそこまでしか言えない。だから、聞いても、一月の取りまとめを待ってと。だから、規制するともしないとも言えないけれども、総理もあの日はお疲れだったのか、必要があればと言って、うっかり自分の本音を言っちゃったんですけれども。だから、そこを止めるのが役所の仕事なんですよ。別に松井局長に言っているわけじゃないんだけれども。まあ、半分言っているんですけれどもね。

 今言ったように、行政府と立法府とののりというところもあるし、あともう一つは、行政府というのは、いろいろな意見があるけれども、様々な法令だとか、ましてや憲法に照らし合わせて、できること、できないことを精査して、私は、謙抑的に打ち出していく、これが特に事務方の仕事だと思っているんですよ。

 その意味で、私は、政府の一個一個の発言とか取組というのは、若干スピードは遅くても信頼しています。やはり踏み入れちゃいけないところには、ゾーンは入らないという、そこは非常に、のりを越えないというところで、私は日本の政府を信頼していますよ。それを、法をつかさどる法務省で、ましてや大臣の挨拶の中で、どう考えても、論理的に、今聞いている人からすれば、これはなかった方がいいでしょう、そんなことを大臣が堂々と挨拶で述べられた。

 今日、この話、外国人の土地規制、もう十一時で終わりでしょう、幾つも聞きたかったんですけれども、今日はあえて、法務委員会の初日ですから、今言った、我々法務委員会というのも、先ほどの別姓議論もそうですが、真摯に立法活動をしている。そして、行政府の様々な閣法についても、我々も誠実に受け、応える、その強い意思を持っています。その信頼関係をなしにして、議院内閣制なんというのは成立しませんよ。このことを強く申し上げて、私からの質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

階委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 大臣、よろしくお願いいたします。立憲・無所属の鎌田でございます。

 まず、資料一を御覧ください。今日、配付のお許しをいただきました。

 この資料一なんですけれども、大川原化工機冤罪事件をめぐっての記事であります。この記事は、警視庁公安部と東京地検の捜査が違法だと認定され、賠償を命じた東京高等裁判所の判決、これは、今年、二〇二五年五月二十八日に確定しています。

 この記事は、大川原化工機側が、公務員個人に故意や重い過失がある場合、国や自治体が本人に支払いを求める求償権の規定に基づいて、東京都に住民監査請求を、先週金曜日、十四日付で都に郵送されたということを紹介している記事であります。

 大臣、大川原化工機冤罪事件は、国賠が終わったから終わりではないんです。法務省も検察庁も裁判所も、そして立法府の我々も、二度と同じようなことを繰り返してはならないという決意を持たなければならないということを肝に銘じなきゃいけないと思うんですね、私は。

 そこで、大臣に伺いますけれども、昨日の所信では、様々な人権問題への対応について触れていただきました。ありがとうございます。大川原化工機冤罪事件は、まさに、無辜の民を逮捕、起訴し、日本の刑事司法における人権感覚が問われる重大な事案なんです。

 そこで伺いますが、なぜこのような冤罪事件が起きたとお考えでしょうか。我が国の人質司法に対する向き合いの不十分さ、改善しようとする姿勢のなさがいまだに根深くあるという認識を持つべきだと私は痛切に感じています。その認識を伺います。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 お尋ねは、個別事件における検察当局の活動内容に関する事項であるため、法務大臣として所感を述べることは差し控えたいと思います。

 その上で、最高検察庁においては、本件の捜査、公判上の問題点等を明らかにして、今後の適正な検察権行使のために講ずべき方策を検討するということのために、法令解釈、消極証拠の評価、保釈請求への対応などの各項目に分けて、本件の捜査、公判上の問題点を検証したものと承知しておりまして、検察当局においては、本件の問題点、反省点について、検察全体の問題として捉えているというふうに考えております。

鎌田委員 今の御答弁を要約すると、検察当局の問題だ、最高裁の判決に基づいて、それを検証してというふうに聞こえます、とおっしゃっていました。

 でも、検察庁を所管する法務大臣として、なぜこの冤罪事件が起きたかということについて、人ごとのようにではなくて、法務大臣、法務大臣として、このようなことは二度と起こしちゃいけないという気持ちがあるならば、何でこの冤罪事件は起きちゃったんだろう、それを、総括的な言葉でも結構ですよ、おっしゃってください。

平口国務大臣 あくまで一般論として申し上げるわけですけれども、検察の活動は国民の皆様方の信頼の上に成り立っておりまして、検察権の行使の適正さに疑いが生ずるようなことがあれば検察の活動の基盤を揺るがしかねないということでございます。

 検察の活動が適正に行われ、かつ、その適正さを国民の皆様方に正しく御理解いただき、国民の信頼という基盤に支えられ続けるためには、「検察の理念」を踏まえた職務の遂行を徹底する気風を持ち続けるよう努力することが重要であると考えております。

 私としては、検証結果報告書で示した具体的取組を通じて、より一層、適正な検察権行使が確保されることが重要だと考えておりまして、検察当局の今後の対応について強い関心を持って注視していきたいと考えております。

鎌田委員 報告書を本当に読まれたのか、疑わざるを得ない御答弁でした。

 検察の報告書は、警視庁公安部、何をやってくれたんだというような、検察に泥を塗ってくれたなみたいな、そういうような印象を持たざるを得ない報告書でした。

 次の質問に移ります。

 資料二を御覧ください。これも新聞記事です。

 公安、不利なデータを除外かという見出しの記事なんですけれども、結果、国賠訴訟では、データ除外かどころか、捜査関係者は、この国賠の法廷で、まあ捏造ですね、捜査員の個人的な欲でこうなりましたねという証言をしているくらいなんですね。

 続いて、資料三を御覧ください。国賠請求控訴事件裁判で、原告側提出証拠の公判検事との打合せ結果です。

 二〇二一年七月時点になって、これは一番右上に日付が書いてあります、七月時点になって、このときには公判検事は、意図的に立件方向にねじ曲げたという解釈を裁判官にされてしまうリスクがあるとして、初公判前の二〇二一年八月三日前までに公訴の取消しの申立てを裁判所に行うとの旨をここで述べています。そのメモです。しかし、そのときに一緒にいた警視庁公安部管理官、これは、外為法所管の経産省が一つ一つの規制内容を把握しているわけではない、捜査側から資料提供し、経産省が判断した事例もあるという旨の発言をしています。

 つまり、どういうことかというと、警視庁公安部と起訴を行った検事が、逮捕、勾留さえすれば、無理筋であろうと自白を取り、有罪判決に持ち込むストーリーを描いて、そのとおり走ればいいという危険な考えに支配され、それは何十年と踏襲されてきているということだと。ここに原因があると断じざるを得ません。

 私は、法務大臣から、少しでもそのようなお考えがあるのかなというふうに期待をして最初お聞きしましたけれども、まさに我が国の人質司法に対する甘え、これがずさんな捜査の根底に存在していることを表していることをまず認める必要があると思います。

 大川原化工機冤罪の真相を直視して、人質司法を正す契機にしていこうではありませんか、大臣。いかがですか。

平口国務大臣 一般論として、検察においては、個々の事案ごとに当該事案に係る諸事情を踏まえ、保釈の除外事由の有無を検討して、公平かつ適切に対応しているものと承知をしております。

 その上で、最高検においては、いわゆる大川原化工機事件に係る検証において、保釈請求への対応に対する問題点、反省点が明らかになったことを踏まえて、保釈請求により適切に対応することについて、本年八月に検察庁に向けて通知を発出したものと承知しております。

 検察官においては、これまでも、個々の事案に応じ、保釈の除外事由の有無を検討し、適切な対応に努めているものと承知しておりますが、今回発出された通知の内容も踏まえて、保釈請求への対応の適正確保により一層努めていくものと承知しております。

鎌田委員 大臣、今の御答弁の認識を改めていただきたいと思います。

 保釈請求に対して、それを認めるか却下するか、裁判官に検察官が文書でもって申入れをして行っているんですけれども、大臣、大川原化工機事件では、逮捕された社長、元役員、元顧問、合わせて二十回、保釈申請しているんですよ。亡くなった相島さんも何度も保釈請求しているんです。そして、もっと申し上げれば、これは、逮捕される前に、捜査に着手されてから十七か月以上、任意で取調べに全面的に協力して、誠意を持って捜査機関に対して出向いて、ちゃんと聴取に応じているんです。なのに、保釈申請は二十回も断られて。そして逮捕の身柄になり、長期の勾留になっているわけなんですね。

 今大臣がおっしゃったのを改めていただきたいと申し上げるのは、保釈の手続は適正に行われているというのを改めてもらいたいんです。これは、この事件の関係者の方で見ている方がいらっしゃいますからね。

 身柄の拘束は、犯罪の嫌疑があって住所不定とか罪証隠滅、逃亡のおそれ、そして勾留の必要があるときにのみ認められているはずです。

 でも、大川原化工機事件のこの冤罪事件では、まず、外為法の解釈が確立していませんでしたよね。そもそも犯罪の嫌疑の存在が疑わしかった事件です。十分に取調べを受けており、会社も住所も明らかでした。しかし、黙秘していたから、起訴された上、長期にわたり身柄を拘束されたということになったんですよ。

 そこのところ、大臣、御認識を共通に持っていただけますか。

平口国務大臣 お尋ねは個別事件における検察当局の活動内容に関する事項であるため、法務大臣として所感を述べることは差し控えることと思いますが、その上で、保釈請求において、被告人の健康に関わる事情が主張された場合には、必要に応じて留置施設等への照会を行うことなどして、当該事情の有無、程度を把握した上で、決裁官に報告し、適切に対応する、あるいは、保釈請求の対応に当たっては、決裁官も、個々の事案ごとに、主任検察官からの報告内容や証拠関係を踏まえ、罪証隠滅のおそれの有無及び程度や被告人が受ける健康上の不利益等を具体的に確認し、主任検察官に対する的確な指導を行うことを徹底する必要があるという内容を通知いたしておりますので、これでやろうということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

鎌田委員 今、健康上のこともおっしゃったんですけれども、それは後で触れますので、まず、改めて聞きます。

 とにかく、日本の人質司法は、国際的にも強く批判されています。被疑者から自白を引き出すことを目的とした拘禁、黙秘権の行使や弁護人との相談を希望した被疑者の取調べ、弁護人立会いのない取調べ、起訴前拘禁期間の長期化を目的とする再逮捕、こういう実務慣行がもう長年にわたって繰り返されてきているんです。それが人質司法だという指摘を国際的にも受けているんです。そして、冤罪事件も生み出してしまっているんです。取調べの録音、録画による可視化も同じなんです。

 もう一回聞きます。大臣の今のこの代で、人質司法に関連するような刑事司法を本格的に見直すとおっしゃっていただけませんか。再び伺います。

平口国務大臣 お尋ねの人質司法につきましては、法令上の用語ではないわけでございますけれども、我が国の刑事司法制度について、被疑者、被告人が否認又は黙秘をしている限り、長時間勾留するなどして自白を迫るものであるといった批判がされる際に用いられることが多い用語だと理解しております。

 一般論として申し上げれば、被疑者、被告人の身柄拘束については、個別の事案に応じ、裁判所又は裁判官によって刑事訴訟法の定める要件の有無が判断されるものでありまして、被疑者、被告人が否認し又は黙秘していることのみを理由として、あるいは、必要性もないのに長時間身柄が拘束されるということはないというふうに承知しております。

 いずれにせよ、犯人でない人を処罰することはもとより、理由のない長期間の身柄拘束や自白はあってはならないということは言うまでもないことでございます。

 検察当局においては、「検察の理念」を踏まえ、基本に忠実で適正な捜査、公判活動の遂行に努めているものと承知しております。

 引き続き、こうした基本に忠実で適正な捜査、公判遂行に努めていくことが肝要であるというふうに考えております。

鎌田委員 大臣、ちょっと、もう一回確認させてください。黙秘をしているから長期勾留しているわけではないと、今御答弁の中に入っていましたか。

    〔委員長退席、有田委員長代理着席〕

平口国務大臣 被疑者、被告人が否認し又は黙秘していることのみを理由として、あるいは、必要性もないのに長期間身柄が拘束されるということはないということを承知しておると。

鎌田委員 そこのところを修正してください。現場はそうなっていないですよ。否認したり黙秘したら、とにかく勾留されるんです。そして、取調べの検察官が描いたストーリーどおりに持っていかれて、もうこれ以上勾留されるのは嫌だという気持ちに追い込まれていって、事実じゃないことを言ったときに初めて保釈されるんですよ。黙秘と否認で、これはもう勾留なんですよ。長期勾留の原因で、人質司法の大本だと言われているの。修正してください。

平口国務大臣 あくまで一般論として申し上げれば、被疑者や被告人の供述態度は、証拠隠滅行為や逃亡することについての被疑者や被告人の主観的意図を判断する資料として重要な意味を持つとの指摘があるものと承知しております。

鎌田委員 態度って何ですか。

平口国務大臣 態度というのは立ち居振る舞いのことだと思います。

鎌田委員 ちょっと、態度、立ち居振る舞い。立ち居振る舞いが、取調べのときに、検察官による事情聴取のときに、立ち居振る舞い、態度でもって勾留するかどうか決まるの。

 ちょっと法務大臣として、その態度、立ち居振る舞いというのが議事録に残りますよ。

平口国務大臣 態度というのは供述態度ということでございます。

鎌田委員 供述態度って何ですか。

平口国務大臣 文字どおり、供述するときの態度だろうと思います。

鎌田委員 供述態度って何ですか。私が聞いているのは、黙秘、否認するとそれは勾留だということになっているんだということです。なのに、今、大臣は、黙秘とか否認は関係ない、態度だ、立ち居振る舞いだとおっしゃったんですよ。それで、態度って何ですかと聞いているんです。

平口国務大臣 一般論として申し上げれば、被疑者や被告人の供述態度は、証拠隠滅行為や逃亡することについての判断する資料として重要な意味を持つというふうに考えております。

    〔有田委員長代理退席、委員長着席〕

鎌田委員 じゃ、済みません、さっき質問をまとめて言ったけれども、それの御答弁がないので、今の大臣の御答弁を基に、今、録音と録画の取調べの可視化は、裁判員裁判制度、それから検察官のもの、それは事件全体の僅か三%と言われています。全部やってください。

 いいですか、今まで、プレサンスの事件のときに、検察官が事情聴取しているとき、相手に対して侮辱的、罵倒的な発言をした、それが録画に残っていて、録音に残っていて、弁護団がそれを必死に探して、いかに検察官が暴言を吐いて取調べを、事情聴取を行っていたかということが明らかになっているくらいなんです。

 全ての事件の録音、録画、可視化、やるというふうに、大臣、おっしゃっていただけませんか。大臣が言う態度とか立ち居振る舞いも見られますから、ちゃんと。

平口国務大臣 取調べの録音、録画制度については、平成二十八年成立の刑事訴訟法等一部改正法によりまして、一律に録音、録画を義務づける必要性、合理性や、運用に伴う人的、物的な負担等を考慮して、裁判員対象事件及び検察官独自捜査事件における逮捕又は勾留されている被疑者の取調べが制度の対象とされたものでございます。

鎌田委員 もうずっと今日は、最初の議員のときから何を答弁されているのかよく分からない。私の頭が悪いんだろうなと思いつつも、でも、やはりちょっと理解に苦しむ答弁ばかり続きます。

 済みません、続いて警察庁に伺う予定だったんですけれども、ごめんなさい、ちょっと待ってください。

 資料四を御覧ください。

 資料四には、今回の大川原化工機事件で、胃がんのために亡くなった相島静夫さんの、二〇二〇年七月七日、東京拘置所に入所をしてからの時系列で体調の変化が書かれているこれは資料であります。

 先ほども申し上げましたけれども、二〇二〇年三月十一日に大川原社長と島田元役員、相島元顧問の三名が逮捕されるまで、会社役職員四十八名は、延べ二百九十一回の取調べに丁寧に応じているんです、大臣。

 亡くなられた相島静夫さんの診療経過一覧表、これは裁判でも資料として出されています、証拠として。それを私、医療の専門家に御意見を聞きました、見てもらって。

 そうすると、七十二歳の男性で高血圧、これは相島静夫さんのことを一般論で、七十二歳男性で高血圧、そして糖尿病をお持ちだったんですね。こういう方が東京拘置所に入所した時点での血液検査、この結果、ヘモグロビンなんですけれども、十・九グラム・パー・デシリットル、これは貧血の状態なんです。高血圧、糖尿病の患者さんだったら、もうこの時点で悪性疾患を疑うべきだという所見を医療関係者から私はいただきました。検査データを見ますと、相島さんはこのとき、貧血以外の栄養障害は認められていなかったんですね。ですので、この時点で精査が必要だと。

 そして、貧血のある胃痛に対して、このとき、矯正局所管の施設の医務官からはFK配合散が処方されています。でも、このFK配合散というのは、効能としては、食欲不振、胃もたれ、胃部の不快感、吐き気、嘔吐などなんですね。胃潰瘍や逆流性食道炎などには効果はないんです。でも、相島さんは胃痛を訴えていました。みぞおちの、心窩部の痛みを訴えていました。こうなると、一般的には肝臓、胆のう、膵臓の疾患、そして心筋梗塞を疑う、これは医療の定石だという御意見を医療の専門家から私は意見として伺いました。

 この医療の専門家は更に言いました。これが通常の患者さんに起きたとすれば、医療ミスとして訴訟にもなる、がんの放置なんだから、死刑宣告と同格とも言えるというふうにその医療の専門家は言っていました。

 この時系列を見ると、その後にも、胃痛を訴える、黒色便が出ている、ヘモグロビンはどんどん下がる一方です。まさに保釈申請は九月二十九日に四回目を出している、十月二日にまた却下されている、こんなことがなされていたんですよ、大臣。

 相島静夫さんに対して、命を削らせて死に追いやったと思われてもしようがない、私はそう思います。相島さんに対して早期に入院させることは義務だったとは思いませんか。伺います。

平口国務大臣 被収容者に対しまして、社会一般の医療の水準に照らして適切な医療上の措置を講ずることは、国の重要な責務であると認識しております。

 東京拘置所においても必要な対応を適切に行ってきており、この点は、御遺族から提起された医療に関する国家賠償請求訴訟において、東京拘置所が行った治療内容には医学的合理性があり、外部の医療機関への入院に向けた調整も進められており、治療義務違反や転医義務違反があったとは認められず、また、本人が自身の病状等を理解するのに必要な説明が行われていたという旨の判断が示されているものと承知しております。

 矯正施設に収容されている以上、本人が希望するとおりの外部の医療機関に自由に入院することはできないなどの一定の制約が被収容者に生じるのは事実でありまして、だからこそ、国の責務として、社会一般の医療の水準に照らし、適切な医療を講ずることは、被収容者の人権を尊重するためにも重要だと認識しております。

 引き続き、適切な医療の提供を行ってまいる所存でございます。

鎌田委員 大臣、一定の制約が課せられるのはあって普通というような趣旨の御答弁がありましたよね。それも撤回してください。収容されている人は一定の制約を受けるの、医療のサービスを受けるのに。そんなのあり得ないでしょう。推定無罪なんですよ、この方々は。まだ未決の方たちですよ。おかしいですよ。

 委員長、済みません、今の大臣の御答弁の中で、被収容者、医療は一定の制約を受けるという趣旨の答弁が含まれていましたので、ここのところについてはもう一度精査をして、修正が私は必要だと思いますので、理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。

階委員長 後刻、理事会で協議します。

鎌田委員 お願いいたします。

 大臣、私は、亡き相島静夫さんの御遺族から、法務大臣に是非聞いていただきたい言葉を託されてまいりました。全文は通告していますので、答弁を求めます。

 令和七年六月十一日の東京高裁判決の確定を受けて、八月二十五日に父の墓前で市川宏次席検事と小池最高検公安部長に謝罪をいただきました。また、全ての検事に対して検証結果と再発防止策について説明を行ったとの報道を拝見しました。再発防止に向けて一定の進歩があったと評価しています。しかし、私どもは、謝罪は受けるが許してはいないと墓前にお越しになったお二人にお伝えしました。私たちは、父を起訴した塚部検事、公判を担当し、がんが判明してからも強固に保釈に反対し続けた加藤検事に直接事実を問いただしたいのです。そして、その上で、彼らは父や私たち遺族に謝罪すべきです。謝罪し、反省の意思を示すことが真人間としての行いではないでしょうか。謝罪を行い、二人の検事は辞職すべきです。これ以上検事の職にとどまることは、国民の一人として許すことができません。法務大臣におかれましては、是非法務省において二人の検事の処分を再度検討してください。これだけの事件を起こしておいて処分なしというのは、法治国家として許されませんという内容であります。

 警視庁においては公安職員が処分されています、減給処分です。ですが、検事では誰一人処分されている人はいません。大臣、答弁を求めます。お願いします。

階委員長 じゃ、最後の答弁です。大臣、お願いします。

平口国務大臣 ただいまの御意見ですけれども、法務大臣としては大変重く受け止めさせていただきます。

 前法務大臣も記者会見において、大川原株式会社、その他関係者の皆様に多大な御負担や御心痛をおかけしたことについておわびを申し上げたところでございまして、その思いは私も同様でございます。

 その上で、本件については、検証結果を踏まえ、検察当局において必要な対応が取られることが重要と考えており、私としては、引き続き、検察当局の対応を強い関心を持って注視してまいりたいと考えております。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

階委員長 次に、柴田勝之君。

柴田委員 立憲民主党・無所属の柴田勝之です。

 国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランについてお伺いいたします。

 お配りしている資料1が不法滞在者ゼロプランなんですが、まず、ここに言う不法滞在者の定義、また具体的にはどういう人が含まれているのか、お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランにおける不法滞在者とは、不法入国や不法残留等の入管法第二十四条各号に規定する退去強制事由に該当する者でございまして、我が国に入管法に違反して滞在している外国人を総称する用語として使用している言葉でございます。

柴田委員 それで、令和六年末における在留外国人の数は三百七十六万八千九百七十七名、そして、不法残留者の数は令和七年一月一日現在で七万四千八百六十三名とされています。

 これに対して、令和六年の入管による退去強制令書及び出国命令による出国数、また、令和六年末に入管施設で収容中であった人数を教えてください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和六年中に退去強制令書により送還した者の数については、七千六百九十八人でございます。また、同年末時点で収容中の者の数は五百二十九人でございます。なお、同年中に出国命令により出国した者の数については、一万二百八十一人でございます。

 以上です。

柴田委員 今お答えいただいた人数と不法残留者七万人以上という人数の対比からしても、不法滞在者を本当にゼロにするのはかなり大変ではないかという印象を受けるところです。

 そして、入管において手続が継続している人として、仮放免中の人、また監理措置中の人、また難民認定申請中の人がいますが、これらの人も不法滞在者に含まれるのか、また、令和六年末現在のこれらの人の人数、そして、ゼロプランはこれらの人もゼロにすることを目指しているのか、お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランにおける不法滞在者につきましては、先ほど申し上げたとおり、我が国に入管法に違反して滞在している外国人、退去強制事由が認められる方でございまして、その退去強制事由が認められる方に当たる限り、お尋ねの仮放免中、監理措置中又は難民認定申請中の者であっても、不法滞在者に含まれるものとしてその用語を使用させていただいております。

 なお、令和六年末時点で仮放免中の方の数は三千四百七十八人、監理措置中の方の数は四百九人でございます。また、難民認定申請中であった者の数については、正規滞在の方、それから不法滞在の方、両方いますものですから、その別で統計は取っておりません。ただ、合計を申しますと、一万九千五百人ということでございます。

 その上で、退去強制が確定したにもかかわらず我が国から退去しない者を放置すれば、不法滞在、不法就労を企図する者を更に我が国に招き寄せる、誘引するということにつながりかねませんので、退去強制が確定した外国人を速やかに送還することが重要であると当庁では考えております。

 そのため、将来的に不法滞在者ゼロを目指すことを理念として掲げつつ、当面の目標として、退去強制が確定した外国人の数を二〇三〇年末までに半減することを目標としているものでございます。

 以上でございます。

柴田委員 今お答えいただいた人たちは、退去強制事由には当たると。でも、いろいろな事情があって日本での滞在を希望して、自ら入管に出頭して手続中であるという人が大部分なんです。したがって、不法滞在者である以上は日本から出ていってもらうというような硬直的な運用がゼロプランで進められることがないようにということを申し上げたいと思います。

 次に、ゼロプランを見ると、一番上の欄に「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている」とあります。このルールを守らない外国人のルールとは何を指しているんでしょうか。例えばごみ捨てのルールなどは含まれるんでしょうか。お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ルールという言葉は、やはり文脈、背景等によって異なってき得る用語だと思っております。

 それを前提としまして、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの策定の背景となったルールを守らない外国人とは、国民が不安を感じるような、入管法や刑罰法令に違反する者など一部の外国人の方でございます。その中でも、ゼロプランの対象となるルールを守らない外国人とは、先ほど申し上げた不法滞在者、すなわち退去強制事由に該当する外国人の方でございます。

 したがって、ゼロプランに関して申し上げれば、ルールを守らない外国人のルールにおいては、今先生御指摘にありました、ごみ捨てのルールやマナーは含まれないものとして用語を使用させていただいております。

 以上です。

柴田委員 要するに、ここに言うルールというのは入管法令であるというふうに理解しました。今、うなずいておられますけれども。

 そして、ただ、私としては、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランというこのタイトルはミスリードになっている、最近強まっている外国人差別や排外主義を政府があおることになっているのではないかという懸念を持っております。

 どういうことかというと、普通の人がこのタイトルを読めば、ああ、不法滞在者が国民の安全、安心を脅かしているんだな、だから、不法滞在者ゼロになるように、入管庁さん、頑張ってもらわなきゃというふうに思うのが普通だと思います。

 しかし、不法滞在者の中には、例えば母国での迫害を恐れて日本に逃げてきて、難民申請をしたけれども認められていないという人もいます。令和六年における難民認定の申請件数は一万二千三百七十三人、それに対して、難民認定されたのは百九十人しかいません。国際基準からは難民と認められるべき人が日本では認められていないということは、難民を支援しているNPO、あるいは弁護士会からも指摘されているところです。

 また、在留手続に対する知識がなかったり、DVとか人身売買の被害を受けていて在留手続ができなかったという人もいます。また、先ほど申し上げたように、自ら入管に出頭して仮放免とか監理措置を受けているという人もいます。不法滞在者という言葉は、そういう人たちも全部一くくりにして、国民の安全、安心を脅かす、あたかも犯罪予備軍であるかのような印象を与えてしまいます。私は、正規の手続を取っていないという意味で、非正規滞在者という言葉の方が適切であると考えています。

 その点はおくとしまして、当局として、不法滞在者が国民の安全、安心を脅かしていると言われる根拠は何か、また、不法滞在はそれ自体が入管法違反の犯罪ではあるんですけれども、それ以外の法令違反とか犯罪を不法滞在者が多く起こしている、そういうことを示すデータがあるのかということを法務大臣にお尋ねしたいと思います。

平口国務大臣 お答えいたします。

 ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど、国民の間で不安が高まっている状況を受けまして、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランの策定に至ったものでございます。

 その報道には、外国人の刑罰法令違反に関する法令も含まれているものと承知しております。また、それらの報道に加え、国会においても、ルールを守らない外国人の方々にはきちんと日本から退去してもらうべきという御指摘を度々受けていたところでございます。

 いずれにしても、不法滞在者というものは、きちんと法令に従ったことにしてもらわなくてはいけないということがございますので、このような措置を取っているものでございます。

柴田委員 今質問したことは、不法滞在者が入管法令以外の法令違反や犯罪を多く起こしていることを示すデータはあるんですかという御質問をしました。その点について御答弁をお願いいたします。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点について特に絞ったデータ等を客観的に把握しているものではございませんが、やはり、背景となった事情は大臣が御答弁になったとおりでございまして、それに適切に対応しなくてはいけないということで、今年の五月、当時の政務三役の御指示に基づいてゼロプランの策定に至ったということでございます。

柴田委員 そういう客観的なデータはないということですよね。違いますか。ちょっとそこをはっきり答えてもらいたいと思いますが、いかがですか。

階委員長 内藤さん、簡潔にお願いします。

内藤政府参考人 今申し上げたとおりでございます。

柴田委員 もう一回答えてください。データはあるんですか、ないんですか。

階委員長 簡潔に結論を答えてください。聞かれたことに答えてください。

内藤政府参考人 客観的なデータの定義でございますけれども、いわゆる統計的なかちかちとした数字をイメージすればそれはなくて、一方、様々な御指摘等については客観的にあるという側面があるかとは思います。ただ、そこのところを意を酌み取っていただければと思います。

柴田委員 だから、結局、データはないんだけれども、何か指摘があるんだという答弁ですね。

 私は、弁護士として非正規滞在の方から御依頼を受けたこともあります。その経験からは、非正規滞在者が法令違反や犯罪を多く起こしているということはない、むしろ逆ではないかという感覚を持っています。

 どういうことかというと、非正規滞在の人というのは、犯罪とかじゃなくても、ちょっとしたもめごとでも起こして、警察官とか呼ばれて、身分証を見せてくださいとか言われたらもう捕まっちゃうわけですよね。ですから、非正規滞在の方というのは、ささいなことでも、少しでも問題なんか起こさないよう、すなわち、日本人の安全、安心を決して脅かさないようにして暮らしている人がほとんどだと私は思っています。よって、非正規滞在の人は、正規滞在の外国人あるいは日本人と比べても、入管法以外の犯罪率はむしろ低いはずであるというふうに私は考えています。

 法務省さんの方でそういうデータを取ることは難しくないと思いますので、是非取ってみていただきたいと思います。入管当局から見ると、非正規滞在自体が犯罪ですから、非正規滞在とその他の犯罪を切り離して見ろといってもなかなか難しいのかもしれませんけれども、要するに、法務大臣が所管する法制度全体としては、非正規滞在が国民の安心を脅かしていると安易に結びつけるべきではない、両者は別の問題として、正確な事実確認と認識共有をしていくことが必要です。

 もちろん、非正規滞在の人が犯罪を起こすこともありますし、それを厳しく取り締まらないといけないことは当然です。ただ、それが報道やSNSでクローズアップされて、非正規滞在者というのは危険な存在であるという印象が世の中に流布して、外国人差別、排外主義をあおる、そして、本来は難民認定とか在留特別許可を受けられるような保護されるべき外国人に対しても、不法滞在なんだからさっさと出ていけ、もう日本にいないでください、そういった雰囲気の社会になっていくことを大変懸念しているところです。

 法務省は、元々、人権を守る、差別をなくすということも重要な役割です。ゼロプランを作られた入管庁の皆さんも、外国人差別や排外主義を助長することは決して本意ではないと思います。ですから、そういった報道とかSNSはきちんと正していく、差別や排外主義が広がらないようにしていくことが必要ではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

平口国務大臣 外国人との共生社会を実現していくためには、外国人に対する差別や偏見をなくすとともに、全ての人が多様性を尊重し、共に社会をつくっていくということの意義を理解することが重要だと思います。

 令和四年六月に決定された外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおいては、我が国の目指すべき外国人との共生社会のビジョンの一つとして、個人の尊厳と人権を尊重した社会というものを掲げております。このような社会に向けて、法務省では、啓発冊子の頒布や啓発動画の配信等、各種人権啓発活動を実施しているところでございます。

 引き続き、外国人を含め、全ての人がお互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会を目指して、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

柴田委員 ちょっと今のは物足りないんですけれども。

 要するに、今、こういう不法滞在者も含めた外国人が危険だ、そういうSNSとか報道があふれていると思うんですよ。だから、そういうのは違いますよという積極的な広報啓発活動をお願いしたいんです。大臣、いかがですか。

平口国務大臣 一般的に、外国人がいても、平穏な社会をつくっていくということで、共生する社会が大変大事であるということを念頭に置いて広報活動を続けていきたい、このように思います。

柴田委員 念頭に置くのはいいんですが、要するに、そういうやはり偏見が世の中にあふれないように、しっかりと、そういうことはないんですよと打ち消すような広報啓発活動をやっていただけないですか。

平口国務大臣 法務省の人権擁護機関では、年間を通じて、外国人の人権を尊重しようというものを人権啓発活動における強調事項の一つとして掲げております。そして、外国人の人権に関する理解や関心を深めることを目的とする講演会等の開催、啓発冊子の配布、啓発動画のDVDの貸出しというもの、これらを実施しているところでございますけれども、御指摘のような事案についても取り入れていかなくちゃいけないだろうというふうに思っております。

柴田委員 さっき申し上げたように、要するに、国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプランという打ち出し方自体が、不法滞在者が国民の安全、安心を脅かしているというミスリードになっていると思うんですね。だから、そこについてきちんと打ち消していく、排外主義あるいは外国人差別をあおらない、そういうことについては全く足りていないということを指摘させていただいて、次に移りたいと思います。

 ゼロプランの(3)にあります、難民認定申請の審査の迅速化について伺います。

 ここでB案件という、これは難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張している案件ということですが、B案件を類型化するという記載がありますが、B案件に分類されると、要するに、難民認定申請が迅速に処理されるということになるんでしょうか。お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 B案件につきましては、ただいま御指摘いただきましたように、難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張するというものでございまして、これにつきましては、従前から誤用、濫用的な申請として迅速処理の対象とするとともに、在留制限等を実施してきたものでございます。

柴田委員 要するに、速やかに不認定になっちゃうということなんですね。

 それで、ここにある、B案件について、出身国情報等を踏まえて類型化するとありますが、これは具体的にどういうことでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の措置は、誤用、濫用的な申請を抑制するため、地方出入国在留管理官署において適切にB案件に振り分けられるように、最新の出身国情報等を踏まえて、申立て内容の類型化、具体化、明確化を行って、従前の運用を抜本的に改善してスピードアップを図るものでございます。

 具体的な類型の詳細についてはお答えすることを差し控えますが、随分以前に典型的だと言われていたのが、借金取りに追われているみたいな、全く条約該当性のない事案とかが典型的な例として挙げられておりました。かなり多数に上っていたところでございます。

 それから、あと、例えば、私人間の争いなどの非国家主体による迫害を理由にした申請、これは原則として国家主体でないので難民条約上の事由に当たらないんですけれども、例外的に、国籍国が刑罰法令の整備や法執行の意思と能力を備えていない場合には、そういう私人間であっても難民条約上の迫害事由に当たるということがございます。

 これを前提としまして、従前は法秩序とかが全然守られていない国だった、しかし、そこから長い時がたってすごく安定して、治安機関もしっかりしてきまして個々人が守られるようになった、こういうふうな場合には、従前でしたら私人間の迫害というものが難民条約上の迫害事由に当たっていたものが当たらなくなったというようなことが、こういう出身国情報とかではあり得るわけです。

 そういうふうな諸外国のいろいろな情報等を踏まえて、客観的な事情というものを類型化しまして、それと明らかに矛盾するようなものについては、これは信用性がなかなか類型的に低いんじゃないか、こういうことを個々の審査官が個別にやっていきますとすごく事務が不合理になってきますものですから、そういう客観的な情報を広く共有しまして、それに基づいて的確に判断、迅速にやっていこうね、こういうものがB類型の趣旨でございます。

 それを支えるために、済みません、ちょっと長くなりました……

階委員長 簡潔にお願いします。

内藤政府参考人 はい。

 当庁におきましては、最新の出身国情報を適切に収集、分析する体制を構築し、適切な判断が行うことができるように努めているところでございます。

 済みません、長くなりまして。

柴田委員 令和六年におけるB案件の割合、そして、そのような少ない割合になった理由、そして、この類型化によりB案件の分類をより積極的に行うという理解でよろしいのか、お答えください。

内藤政府参考人 振り分けの現状としましては、令和五年の難民認定申請者数が一万三千八百二十三人、令和六年が一万二千三百七十三人である中で、令和五年のB案件の振り分けは〇・八%、令和六年の振り分けは〇・六%にとどまっております。

 それに伴い、難民である可能性の高いA案件、それから、難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張しているB案件、それから、再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返しているC案件。これらのいずれにも該当しないとして振り分けられるD案件にいずれの年も八割以上が振り分けられているという実情にございまして、振り分けが効果的に機能していない実態がございました。

 これは、振り分けの制度導入時に、B案件の具体例として先ほど申し上げた借金事由等を明らかにしたため、急にその事由が減りまして、B案件自体が減ったというような実態がございました。

 今般の不法滞在者ゼロプランにおきましては、B案件として処理するものを確実に振り分けられるように、先ほど申し上げましたように、最新の出身国情報等を踏まえて、B案件を類型化し、通知として示すことで、従前の運用を抜本的に改善するものでございます。

 この運用は、御懸念にありますように、B案件への振り分け件数に具体的な目標値を設けるとか、積極的に行うとか、そういうものではございませんで、類型化の結果としてB案件への振り分けが増えることはあり得る、こういうふうに考えております。

柴田委員 本当は増やすつもりなんじゃないかという印象は拭えませんが、次の質問に行きます。

 早期かつ迅速な処理体制を整備するとありますが、資料の裏側の難民認定申請の平均処理期間というのを見ますと、二〇二四年が二十二・三か月とあり、「二〇二六年中に新規受理した申請の六か月以内(平均)の処理を目指す」といった記載があります。

 そこで、令和六年におけるAからD、各案件ごとの割合と平均処理期間を教えてください。また、ゼロプランの文章からすると、B案件について迅速に処理すると書いてあるようにも読めてしまうんですが、AからDの全てについて、不認定だけではなくて認定も迅速化していきますという理解でよろしいのか、お答えください。

内藤政府参考人 令和六年に難民認定申請に対し認定又は不認定の処分をしたものに係る振り分け別の平均処理期間とそのパーセンテージ、取り急ぎ集計した速報値として申し上げますと、A案件が十・一月でございまして、これは全体の八・二%を占めます。B案件が六・三月で全体の〇・六%、C案件が二十一・〇月で、これが全体の九・六%、D案件が二十・〇月で全体の八一・五%となっております。

 また、案件の振り分け導入前の申請と案件の振り分け導入後の申請で統計を作成する前の申請というものがございまして、これが平均処理期間八十九・三月と、かなり長期にわたっております。これら全部をひっくるめますと、全体の平均処理期間は二十二・三月ということになっております。

 その上で、お尋ねのありました標準処理期間である六か月以内での処理を目指して、二〇二六年中に新規受理した申請の平均六か月以内での処理、二〇三〇年までに全ての申請の平均六か月以内での処理を目指すこととしているため、当該目標を達成すべく、B案件の類型化などの審査の迅速化のための施策に着実に取り組んでまいりたいと思っています。

 補足しますと、これは全てということで、保護すべき者を迅速に保護するというのは、我々、日々旨として仕事をしているところでございまして、A案件の方はなおさら迅速に保護をしなくちゃいけないなと思ってやっております。

柴田委員 時間の関係で、通告した質問をちょっと飛ばしていきますが。

 次、法改正施行前の複数回申請者について早期の審査を実施するとありますが、これは、令和六年六月から施行された、難民認定申請中の人でも三回目以降の申請者については強制送還できるようにする、いわゆる送還停止効の例外を早く適用できるようにすることを意図しているんでしょうか。お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和五年改正入管法の施行以前に難民等認定申請をした複数回申請者につきましては、経過措置規定により、当該申請中は送還停止効の例外が適用されないこととなっているため、速やかな送還が実施できないこととなっております。これを解消するため、複数回申請者に対する迅速処理を実施し、難民等と認められない者の迅速な送還につなげていくものでございます。

 もちろん、この判断につきましては中立的な観点から行いますので、その結果として保護すべき者ということであれば当然に保護する、こういうふうな枠組みになっております。

柴田委員 それで、資料2としてお配りしているのは、日本弁護士連合会がゼロプランに反対している会長声明になります。

 B案件については、インタビューをしないで不認定とする場合も多いと認識しておりますが、インタビューなしで不認定にすることについては、弁護士会からも、あるいは難民を支援しているNPOからも批判が強いところです。

 この点についてどういうふうにお考えになるか、法務大臣の見解をお伺いします。

平口国務大臣 先ほど入管庁の次長から答弁したとおり、難民等認定手続においては、保護すべき者を確実に保護するという前提の上で、B案件への振り分けは、誤用、濫用的な申請に限って慎重に行っておりまして、B案件へ振り分けた場合であっても、適切な難民該当性の判断を行っているところでございます。

 その上で、B案件は難民条約上の迫害に明らかに該当しない事情を主張しているものであることから、案件によっては、申請書の記載内容や最新の出身国情報等に基づき判断できるものがあり、その場合には、申請者へのインタビューを行わなかったとしても適切な保護に欠けることはないと考えております。

 いずれにしても、法務省としては、保護すべき者について、引き続き迅速かつ確実に保護していきたいと考えております。

柴田委員 ただ、この日弁連のにもあるように、要するに、自分で適切に申立て書を書けないという人もいるわけですから、やはり一度はインタビューをして、きちんと事情を拾い上げる審理を行うべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 次に、ゼロプランの(5)の護送官付国費送還の促進についてお伺いします。

 この護送官付国費送還はどのような場合に行われるのか、お答えください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 入管法上、退去強制令書が発付された者については速やかに送還することと入管法の第五十二条三項で定められております。退去強制令書が発付され、自らの意思で帰国するように説得してもなお自発的な出国が期待できない者、あるいは、疾病を有するため一人では航空機に乗れない者については、護送官付国費送還を実施しているところでございます。

 以上でございます。

柴田委員 この(5)を見ますと、その主たる対象として、送還停止効の例外として送還が可能になった者というものが挙げられております。

 それで、資料3と4なんですが、これはいずれも、ゼロプラン発表後の、難民申請中に送還停止効の例外が適用されていると思われる事例になります。

 資料3は、十年以上日本に暮らしていて、奥さんと子供もいる。資料4は、四半世紀も日本にいて、お子さんもいて、病気も持っているという大変酷なケースと思われるんですけれども、こういった事情を考慮して、難民認定は無理でも在留特別許可を出すといったような運用は、入管としては考えないんでしょうか。お伺いします。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 在留特別許可をするかどうかの判断につきましては、従来より、個別の事案ごとに、在留を希望する理由、家族関係など、諸般の事情を総合的に考慮して適切に行っているものと承知しております。

 また、難民認定につきましても、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者を適切に認定しているところでございます。

 したがって、不法滞在者ゼロプランで掲げた不法滞在者をゼロにするという理念を達成するために、意図的にというか、そういう中立的な立場をゆがめて、在留特別許可や難民認定の判断基準を変えることは考えておりません。ただ、いずれにしろ、保護すべき方はきちっと保護する、こういうふうな立場で適切に業務を進めていきたいと思っております。

柴田委員 結局、このゼロプランを見ると、不法滞在者には日本から出ていってもらってゼロにするということを志向した内容になっているように思われます。

 ただ、この不法滞在者を減らす方法としては、難民認定とか在留特別許可といったものを積極的に行うことによって不法滞在者を正規の滞在者にしていく、そういう方向も考えられるのではないかというふうに思っておりますが、この点について法務大臣のお考えをお聞かせください。

階委員長 大臣、最後の答弁です。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 在留特別許可をするかどうかの判断については、従来より、個別の事案ごとに、在留を希望する理由、家族関係など、諸般の事情を総合的に考慮して適切に行っているところでございます。

 また、難民認定についても、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定しているところでございます。

 したがって、不法滞在者ゼロプランで掲げた不法滞在者をゼロにするという理念を達成するために、在留特別許可や難民認定の判断基準を変えるということは考えてございません。

柴田委員 積極的なお答えがなくて残念ですけれども、最後に、このゼロプランが外国人差別や排外主義を助長することが決してないようにということを改めて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓でございます。

 一年ぶりの法務委員会で質疑をさせていただきますので、大臣また理事者の皆様、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、昨年の五月に、民法改正、いわゆる選択的な共同親権について改正がなされました。この点につきまして質問の方を最初にさせていただきたいと思いますが、一番大事なのは、父母が離婚をした際に子供の利益をいかに守っていくのか、こういう観点というのが私は一番重要であるという具合に思っております。

 一方で、やはり夫婦間でDVがあった場合、若しくは児童虐待があった場合、こういった場合には単独の親権にもなります。また、夫婦間の協議が調わない場合にも家庭裁判所の判断によるということになるかと思いますけれども、私もこの場で様々議論をさせていただきました。離婚した場合も養育費はしっかりと守られなければなりませんし、子供は別居親にも定期的に面会をしていただいて、愛情豊かに育っていただくということが大事であると思っております。

 この共同親権、共同養育の問題といいますのは、当然、別の側面でいいますと、DV、児童虐待、こういったところは別の法律でもしっかりと体制を整えていくということが大事ではないのかなという具合に思っております。

 ただ、昨年の審議過程におきまして議論がされた点を幾つか挙げさせていただきますが、DV等がない場合であれば、父母の一方が別居する際に子供を無断で連れていってはならないこと。もし、そういうことがなされると、親権の考慮の際には不利になるよという点があったかと思います。加えて、離婚時には共同養育計画をしっかりと作成するということも重要であるということなどなどが確認されたのではないかと承知をしているところです。

 離婚される父母にとりまして、一番身近な相談先といいますのは基礎自治体、いわゆる市町村の窓口というところになるかと思いますけれども、同法の趣旨そして目的、こういうところを実現させていくためには、このような国会の議論等を基礎自治体にもしっかりと理解をしていただいて、そして行政サービスにつなげていくということがこれから非常に大事だと思っています。

 法施行が令和八年、来年の四月一日と一年を切る中で、現在、関係省庁連絡会議というものが行われているということは承知をしているところでありますけれども、国会における審議等を基礎自治体に理解していただくために、今後、法務省としてどのような取組や連携というものをしていくのか、三谷副大臣の方にお伺いしたいと思います。

三谷副大臣 御質問ありがとうございます。

 そして、まずもって、池下委員におかれましては、共同親権の導入そして共同養育の推進に向けましてこれまで御尽力いただきましたこと、改めて敬意を表したいと思います。

 その上で、お答えをさせていただきます。

 先ほど委員が御指摘いただきましたとおり、離婚をされる方々にとって最も身近な相談先というのは自治体の窓口でありまして、自治体における支援の拡充は重要な課題であるというふうに認識をしております。

 法務省においては、御指摘の関係府省庁等連絡会議の参加府省庁等に対しまして、この会議において取りまとめたQアンドA形式の解説資料を活用した関係機関等への情報提供を依頼しておりまして、参加府省庁等においてはそのような自治体の関係部署への周知、広報に取り組んでいただいているものというふうに承知をしております。

 この解説資料では、例えばではありますが、父母相互の人格尊重、協力義務に違反すると評価され得る場合といたしまして、先ほど御指摘いただきましたとおり、父母双方が親権者である場合において、その一方が何ら理由なく他方に無断で子の居所を変更する場合ですとか、父母の一方が、養育費や親子交流など、子の養育に関する事項についての協議を理由なく一方的に拒否する場合が明記されております。

 この解説資料は、これまでの国会における法案審議の過程ですとか、法案成立後における御議論を反映したものとなっておりまして、今後も、必要に応じまして、本委員会を含めて、国会での御議論等を踏まえた改定等の検討を行う予定としております。

 いずれにいたしましても、冒頭申し上げたとおり、地方自治体の役割というのがこれまで以上に重要になってまいりますので、池下委員におかれましては、その観点からも引き続き御指導賜りたいとお願い申し上げます。

 以上です。

池下委員 三谷副大臣も共同養育議連の幹事長職をされているということですから、この点に関しましては非常に思いのある先生だと承知しておりますので、やはり基礎自治体に対する対策というのはしっかりと続けていただきたいという具合に思いますし、私も引き続きウォッチの方をさせていただきたいと思います。

 次、前回の法改正では、このように書かれています。政府は、法律の施行後五年を目途として、改正後の各法律の施行状況等を勘案し、父母の離婚後の子供の養育に係る制度及び支援施策の在り方等について検討を加え、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすると定めております。

 ということは、離婚後、共同親権がどの程度選択されているのかであったり、共同養育計画というのがスムーズに作成されているといった様々なデータ、当然、DVとかのお話もあるかと思いますけれども、それをきっちりとデータ化していくということが大事であると思います。

 逆に、それらが増えていない、進んでいないよということでありますと、なぜ増えていないのか、こういう原因調査ということも必要になってくるかと思いますが、今後どのようにこの問題につきまして取り組まれていくのか、大臣の方に見解をお伺いしたいと思います。

平口国務大臣 お答えをいたします。

 お尋ねの改正法施行後の共同親権の選択状況につきましては、離婚届の記載により把握することができるわけであります。また、共同養育計画の作成状況につきましては、離婚届に監護の分掌についての取決めの有無を尋ねるチェック欄を加えることにより把握することを検討いたしております。

 御指摘の見直しを進めるに当たっては、改正法施行後の状況を適切に把握することが重要であり、要因分析を求める委員の御指摘も踏まえながら、その在り方について検討してまいりたいと考えております。

池下委員 今回、大きな改正であったと認識しておりますので、やはりこういった点をしっかりと分析するということが今後の改正に非常に重要になってくると思いますので、よろしくお願いします。

 次に、成年後見制度についてお伺いをさせていただきたいと思いますが、先日、当事者の方、またその家族を含めた団体さんと意見交換をさせていただきました。

 特に、法定後見人の報酬についてお伺いをしますが、家裁が後見の事務内容、財産状況、専門性、事件の難易度等を考慮して、総合的に報酬の額について判断するということを承知をしております。ただ、一方、当事者の方々から聞きますと、弁護士、司法書士といった専門職後見人の報酬が高額なんじゃないかという点であったりとか、家族に十分な説明がないまま、財産、例えば家屋敷であったりとか有価証券であったりとしたものを処分されてしまうということを聞かされております。

 当然、具体的に言いますと、後見人の方に、後見人のお父さん、お母さんが介護老人ホームのようなところに入れられて、同居している家屋敷を売られて家族が追い出されてしまったりとか、本来であれば配当金が入ってくるような株なんかというものを処分されてしまって預金化されてしまう、こういったケースが聞かれております。こういった事案は、やはりこの制度の信頼そのものを損なうということもありますし、本人の権利保護にも重大な問題になってくるかと思います。

 そこで、法務省として、家庭裁判所による後見人監督の在り方や、報酬決定過程の透明性、並びに家族との情報共有の制度的強化について今後どのように進めていくのか、見解をお伺いいたします。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 成年後見制度については、現在、法制審議会において、本人の自己決定をより尊重する観点等からその見直しに関する調査審議が行われており、御指摘の、後見人の監督、後見人の報酬なども議論がされているところです。

 後見人の監督の在り方については、見直し後においても家庭裁判所が後見人を監督する規律自体は維持する一方で、後見人は、毎年一度、一定の時期に本人の状況を家庭裁判所に報告しなければならないとの仕組みを導入することが議論されております。

 後見人の報酬については、後見人の事務の内容が考慮要素であることを明確化することが議論されております。さらに、実務上の運用として、最高裁判所において、全国の認容で終局した報酬付与申立て事件について、報酬付与額の分布を公表することを通じて利用者にとっての予測可能性をできる限り確保することに向けた取組が検討されていると承知をしております。

 そして、後見人が本人の意向を尊重してその事務を行うべきことを明確にする観点から、後見人が適切な方法により本人の意向を把握するようにしなければならないとの仕組みを設けることが議論されており、家族が本人の意向を把握している場合には、後見人が家族からその意向に関する情報の提供を受けることもその適切な方法に含まれ得ると考えております。

 引き続き、法制審議会において、御指摘の観点も含めて充実した調査審議が行われるよう、事務当局として対応してまいります。

池下委員 来年、二〇二六年にはこの後見制度の改正が行われている、今も、現在法制審の方で議論されているという具合に聞いておりますが、成年後見人制度については、先ほど申し上げた報酬のトラブルや、家族が後見になれない等、様々な問題があるという具合にいろいろ当事者の方からも聞いているところであります。

 そこで、この制度の見直しに当たりまして、もっと利用者の方々や御家族の声というものをしっかりと聞いていく、それを反映させていくということが大事であると思っております。当然今までも聞いているんですけれども、一度法制審へ来られたということも聞いておるんですけれども、やはりここは丁寧な形で御意見を聴取して、制度改正につなげていくということが大事であるかと思いますけれども、そういう当事者の方々の意見も踏まえて、今後どのような法改正をしていくのかという見解をお伺いしたいと思います。

平口国務大臣 御指摘の点も含めて、成年後見制度に関しては、成年後見人の代理人が広過ぎるとの指摘や、必要がなくなっても利用をやめることができないなどの指摘があると承知しております。

 法制審議会では、部会の委員として認知症や知的障害の方々のための団体のメンバーが参加され、制度利用者の家族からのヒアリングも行いつつ、制度の見直しが検討されていると承知しております。

 引き続き、多様な意見を踏まえ、充実した議論がされることを期待いたしております。

池下委員 まさに今、法制審、大臣の諮問機関というところになりますが、そこで議論されていて、そういう御答弁になるのかなということは分かるわけなんですが、やはりこういう当事者のお声を聞いていただいて、制度の信頼性向上のためにちょっと御提案ということなんですが、例えば、家庭裁判所における後見人の報酬決定の基準をより明確なガイドラインという形で示すことであったりとか、定期的な第三者の評価を導入していったり、若しくは後見による財産処分に関する場合に家族にしっかりと情報を、説明義務等の拡充というのをしていくということが大事であるという具合に思っております。

 今日は十五分しか質問時間がありませんので、この点で終わらせていただきたいと思いますが、是非、今後とも、この問題につきましてはしっかりと議論をさせていただきたいと思いますので、皆様には引き続き対応の方、よろしくお願いいたします。

 時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

階委員長 次に、小竹凱君。

小竹委員 国民民主党の小竹凱です。

 本日は、質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まずは、民法改正、離婚後の共同親権に向けた取組について伺わせていただきます。

 今回の民法改正の部分で、子供の利益、子供の最大利益が明記されたこと、これは大きな前進と言えるというふうに思っておりますし、海外の情勢を見ても、日本の離婚後の在り方を見直していくということの前進にはつながったというふうに思っています。

 しかし、現場の行政であったり、学校、家庭裁判所、福祉などと、この横の連携、横につないでいく制度についてはまだまだ設計は極めて不十分で、現場を回っていますと、全国の現場から混乱や不安な声も同時に聞こえてきております。

 これからこの制度を、法改正は決まりましたけれども、しっかりとこういった社会をつくっていくことに対して、現状の課題、そしてどういうふうにこういった社会を醸成していくのか、法務省としての取組を教えてください。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 改正法の円滑な施行のためには、子の利益のためという改正法の趣旨やその内容について、自治体や学校等の現場にしっかりと周知することが重要であると考えております。引き続き、関係府省庁等連絡会議において作成したQアンドA形式の解説資料等を活用し、政府全体で連携して現場への周知、広報に努めてまいります。

 また、法務省では、本年度、離婚した父母による共同養育計画の作成を促進するための調査研究を実施しております。この研究で得られた支援のモデルについては、支援を所管する府省庁等と連携して横展開に努めてまいりたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 今、QアンドA、もちろん、作っていただきましてありがたい一方で、やはり明確なガイドラインがないと、なかなかこのQアンドAが、実際、じゃ、どこまで効力を持つのかも不確かであると。

 そして、今共同養育の話もありましたので、まずこちらについて質問させていただきますが、今後養育計画を作成していくことが大事であるということは共通の認識だと思っています。その上で、家庭裁判所の役割が大きくなっていくというふうに考えておりまして、順番にお伺いしますが、全国二百三の家庭裁判所のうち、家庭裁判所調査官が配置されている支部、配置されていない支部の数をそれぞれお示しください。

清藤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 全国二百三の家庭裁判所の支部のうち、家庭裁判所調査官が配置されている支部は百十三庁でありまして、配置されていない支部は九十庁でございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 これは先日も教えていただきまして、そのときには、特に不備のないようにしっかりと努めていくということでありましたが、場所によって見ますと、いわゆる事案数もほかの家庭裁判所とほとんど同等であったりとか、広域の連合会、地元からの要望書、要請書が出ているのにもかかわらず、長年にわたって家庭裁判所の調査官が配置されていない場所もありますので、またこれは現場にしっかりと即した形で順次対応していただきたいというふうに思っています。

 そして、さきの国会で配られた資料、これは最高裁の事務総局の資料ですけれども、家庭裁判所の充実強化という部分、定員の関係の話の法案で説明がありました。家族法の改正を受けて、円滑な施行に向けた検討、準備を行うとともに、現行法下での紛争解決においても家庭裁判所調査官の専門的知見をより適時適切に活用し、紛争解決能力の向上を図る必要がある、また、人員の増加による支援も必要だ、こういったことが様々書かれておりまして、そのことで、令和七年度では調査官がプラス五名という、これは余りにも示す方向に対しての支援が手薄なんじゃないかというふうに思っていますし、全国を見て、先ほどの数もいただきました、まだまだ、調査官が現場とのコミュニケーションを取る必要な役割だと思っていますので、ここが不足しているんじゃないかと考えますが、御見解をお願いします。

清藤最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 家庭裁判所調査官の具体的な配置につきましては、事件数だけではなくて、近隣の支部からの交通事情、それから扱っている事件の種別、事件処理状況などを総合的に踏まえた上で必要な体制を整備しているところでございまして、家庭裁判所調査官が配置されていない庁につきましても、近隣庁に配置されている家庭裁判所調査官が当該庁に出向くなどして事件を担当することで、事件処理には支障が出ないように必要な体制が整備されております。

 家庭裁判所調査官が配置されていない支部も含めまして、各庁で、委員御指摘の改正家族法の趣旨、内容も踏まえた適切な運用による安定的な事件処理が行われますように、引き続き必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。

小竹委員 今まさにおっしゃっていただきました適切な運用であったり、安定的な事件の処理、これが行われるようにお願いしたいと思います。

 また、家庭裁判所調査官のメンタル疾患による休職者も増えているというようなことも伺っております。最新の状況を教えていただけますでしょうか。

板津最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 令和七年四月一日時点で、メンタル疾患、すなわち精神及び行動の障害による九十日以上の長期病休中の家庭裁判所調査官の人数は、十人となっております。

小竹委員 ありがとうございます。

 この十人という数ですけれども、令和三年度の四月一日から順番に見ていきますと、二名、令和四年度が四名、令和五年度が三名で、令和六年度、令和七年度が十二名、十名と、やはり法改正があって世の中的にもしっかりと認知がされていった中でメンタル疾患の数が急に増えているようにも感じておりますので、今後またしっかりと、これは毎年毎年数がはっきりと出ますから、こういったことにも、もちろん最高裁の判断を尊重しつつも、法務省もしっかりと対応していただきたいというふうに思っています。

 その上で、家庭裁判所の調査官による調査報告書について伺います。

 といいますのも、調査報告書がしっかりと公平公正に保たれているかというところに関しては様々な声を聞いておりまして、もちろん個別の事案に口を出すことはできませんが、子供の意向聞き取りに関しても、弁護士がいるときといないときによって態度が違ったりとか、また、報告書自体が本当のことをしっかりと反映されているのか、こういったことには甚だ疑問が残るような現場からのヒアリングも聞こえてきております。

 そこで、提案といたしまして、この聞き取りに関しても、録音、録画、こういったことを取り組んでいく必要があるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、委員御指摘のとおり、家裁調査官による調査報告書というのが公平な立場から作成されるべきというのはそのとおりでございまして、その上で、子の監護等をめぐる家事事件における家裁調査官の調査におきましては、一般的に、家庭内における高度なプライバシーや機微にわたる事項が取り扱われるところでございます。このようなことから、適切な調査の実施のためには、調査対象者が率直に事実関係や心情等を述べる環境を確保することが非常に重要であると考えております。

 この点、御指摘のように、調査対象者との面接等の際に録音、録画を原則実施するとした場合には、調査対象者が率直に事実関係や心情等を述べることが困難となるおそれが高くなって、適切な調査の実施に支障が生じることが危惧されることから、御指摘の録音等につきましては、現在は実施しておりませんし、今後につきましても慎重な検討を要する事柄であると考えております。

小竹委員 録音、録画をされると正直に発言しにくくなるというのが、ちょっと私は理解できないんですが。

 例えば、令和五年度の刑法及び刑事訴訟法の改正の法案、これは性被害に遭った方の聴取方法に関しての法案の特則でありました。録音、録画記録媒体に係る証拠能力を保持するというようなことがございまして、このいわゆる心理学的意義というふうに書かれておりましたが、年少者は成人に比べて被暗示性であったり被誘導性が高いというようなことから、こういった記録媒体に関しても証拠能力として十分認めるというようなこともございます。

 今回の件に関しても、子供たちにこういった現場の聞き取りであったりすることに録音、録画に証拠能力を認めることは何ら問題はないというふうに考えますが、これはいかがでしょうか。

馬渡最高裁判所長官代理者 委員御指摘のような知見もあろうかと思いますし、他方で、この調査目的というのをどうやって適切に達するかというところが最も大切だと思っておりまして、そういった観点から、慎重な検討を要する事柄であるというふうに考えているところでございます。

小竹委員 公平公正に調査報告書がなされれば、もちろんそれは双方から見て公平な調査ですので、当たり前にいい話であります。それが果たして今行われているのかどうかが怪しいところで、こういったデジタル技術、いろいろな技術を導入して公正な司法の在り方というのを提案しているわけでありまして、これは引き続き検討していただきたいというふうに思います。

 次に行きます。

 共同親権の趣旨、また、特に学校運営上の留意点について、教育委員会や各学校などへ明確な通知、ガイドラインは十分になされていると思いますか。現状を伺います。

堀野政府参考人 お答え申し上げます。

 共同親権制度につきまして、その内容等を周知するパンフレットやポスターが法務省において策定されておりますけれども、文部科学省においても、各都道府県等に対してこの内容を学校等にお知らせいただくことを依頼しております。

 さらに、先ほどもありました、文部科学省を含む関係府省庁による連絡会議におけるQアンドA形式の解説資料が作成されて、法務省のホームページにも公開されておりますが、この資料の中にも学校教育に関する内容が含まれております。日常の学校の手続の中で共同で親権を行使していただかなければいけない場面と日常的な行為として単独でいいという場面と、どういうものがあるかとか、あるいは経済的支援のときに収入要件をどういうふうに見るかとか、様々な具体的なQアンドAについても掲載をしているところでございます。

 文部科学省といたしましても、こういった解説資料についてしっかりと、都道府県、各都道府県教育委員会に対して周知を依頼したところであり、引き続き改正法の適切な周知に取り組んでまいります。

小竹委員 これは、現場のヒアリング、様々なところを聞いておりますと、当事者はもちろん問題意識があります。当事者以外の方も同じ学校の中にいますので、当事者以外の方にもこういった世の中の法律が変わっていくということが広く知られるために、私はポスターなどもすごく効果はあるものだというふうに思っておりますし、一方で、今いただきましたQアンドA、ここがどうしても骨抜きになってしまっているといいますか。

 例えば、運動会や卒業式、こういった学校行事に参加の希望を受けた場合、別居親からですね、受けた場合、どういうふうに学校は対応すべきか。これは学校側が求められているもので、QアンドAに、申出があった場合は「基本的に、学校はその親権者の参加を認めることができる。」とあります。この「基本的に、」とか、こういった言葉が余りにも並ぶと、そもそも基本というのがどういった状況を指しているのか、基本的な状況というのがよく分かりません。

 まず、親権を持つ別居親、親権を持った時点で、その別居の方に関しても、人格的な不備であったり、DVとかはもちろん、そういったことがないと認められて親権を持っている方ですので、この「基本的に、」という文言を外していただいて、学校が分かりやすい明確な運用ができるようなQアンドAの更新というのを是非、随時お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

堀野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、学校行事への別居親からの参加について、QアンドAにも書かれておりますけれども、なかなか個別の事情、様々なケースがございますので、なるべく様々なことに配慮して書いておりますけれども、今後とも、個別のまた新しい、実は、通知の方には更に、どういうやり方が可能かというのを実例を挙げて、場合によっては子の希望を勘案して別居親と同居親の来校時間を分けるという形で実現した例があるとか、個別の工夫の例もございます。

 今後とも、学校現場が分かりやすくなるように、随時アップデートしていきたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 QアンドA、これでもちろん完成ではありませんので、随時更新していただいて、学校現場側に調整能力をそこまで求めるのでなくて、あくまでも学校側に負担がかからないように、そして子供たちにしわ寄せが行かないようにということをいま一度求めたいというふうに思います。

 その上で、現在、文部科学省が取り組んでおられるコミュニティースクール制度というものがございます。この説明をしていただけますでしょうか。

神山政府参考人 お答え申し上げます。

 コミュニティースクールでございますが、教育委員会により任命された委員が学校の運営とそのために必要な支援について協議する合議制の機関であります学校運営協議会を置く学校でございます。

 学校運営協議会の委員は、地域住民や保護者、地域と学校をつなぐコーディネーターの役割を担う地域学校協働活動推進員のほか、教育委員会が必要と認める者で構成されております。

 学校運営協議会は、校長が作成する学校運営の基本方針を承認する、教育委員会又は校長に対して学校運営について意見を述べるなどの権限を有し、地域の関係者が学校運営へ参画することにより、例えば、特色ある学校づくりや学校安全の推進などの成果が上げられているところでございます。

 令和七年五月一日現在で、公立学校の約六五%の学校が学校運営協議会制度を導入しておりまして、義務教育段階ですと約七二%に達しているという状況でございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 コミュニティースクール、今、六五%、どんどん加入率も上がってきていて、学校独自の課題であったり、こういったことを地域と連携して解決できる、非常に有意義な取組だと思っております。

 その上で、今回、民法改正されますと、家庭の事情、それから学校の事情、子供たちに様々な影響も出てくることもあるかと思いますので、今回、コミュニティースクールの構成委員の中の規定のところに地域住民や保護者、活動推進員等、いろいろ書いてあるんですが、協力団体のところには民生児童委員があるものの、一番家庭、そしてそういった家の中の事情、こういったことを分かっている民生児童委員というのが規定に含まれていないのがどうしても、なかなか学校と家庭の共通認識が生まれないというふうに思っておりまして、もちろん含まれているところもあります。しかし、規定では決められていません。

 ですので、民生児童委員をコミュニティースクールの運営委員に必ず入れるといったような改正、これは運用の部分でできるのでしょうか。教えていただけますでしょうか。

神山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の民生委員と児童委員でございますけれども、委員からも御指摘がありましたように、既に学校運営協議会の委員となっていただいている自治体の事例もありまして、社会福祉の専門的知見を生かしながら学校運営に参画いただいているところというふうに認識してございます。

 また、文部科学省におきましては、学校を支援していただける関係団体との連携促進を図るために協力団体リストを作成してございます。先生からも御指摘がございましたけれども、このリストにも全国民生委員児童委員連合会にも御登録いただいているところでございまして、各教育委員会及び学校に対しまして、地域の実情を踏まえて民生委員、児童委員を含む関係者との連携を図るよう促しているところでございます。

 学校運営協議会に民生委員、児童委員を必置にできないかということでございますが、各地域ごとの状況というのもございまして、現行では、具体的にどのような委員を任命するかにつきましては、地域と学校の実情を踏まえて各教育委員会において判断されるということにしてございますので、文部科学省としては、引き続き、事例の共有など必要な支援を行い、各教育委員会において適切に御判断いただきたいというふうに考えてございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 コミュニティースクール制度、始まってもう二十年ほどですか、取り組まれている様々な好事例ももちろんあることかと思いますから、いい事例に関しては展開していただいて、その中でまた家庭の事情もよく知る民生児童委員というところを取り入れていただけると、今後も検討していただけるとありがたいと思います。

 そして、次のところですが、法改正後も、やはり子供の連れ去りであったり親子の断絶、日本が国際的にも非難されている部分が大きくあります。DVなどの真に緊急の例外を除き、連れ去りは禁止であるという極めて基本的な原則において国がはっきりとメッセージを出して、QアンドAにも、分かりやすい明確なガイドラインの規定、骨抜きな法改正にならないよう、法務大臣に決意を伺いたいと思います。

平口国務大臣 改正法のパンフレットにおきまして、夫婦の一方が特段の理由なく他方に無断で子供を転居させることは、父母間の人格尊重、協力義務に違反する場合があるというふうに明記してございます。また、関係府省庁連絡会議において作成したQアンドA形式の解説資料においても同趣旨の記載をしております。

 改正法の趣旨、内容が正しく理解されるよう、引き続き、関係府省庁とも連携しながら、周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 是非、引き続き、これは海外の事例を見ていますと、法改正から長年をかけて少しずつ社会が醸成されていく、そういった理解が広まっていくということもうかがえますので、引き続きの取組をお願いしたいと思います。

 次は、刑事訴訟法の再審規定、いわゆる再審法について質問させていただきます。

 今国会冒頭の高市総理による所信表明演説には、再審制度の見直しについて言及がありました。その後、総理は答弁の中で、あえて入れ込んだというようなコメントもされておりました。大変期待をさせていただきたいというふうに思います。

 本年七月十八日、私の地元、石川県金沢市ですけれども、名古屋高裁の金沢支部は、いわゆる福井女子中学生殺人事件について、前川さんに対し、再審無罪判決を言い渡しました。本年八月一日に、検察官の上訴権放棄により、再審無罪判決が確定したわけであります。これにより、逮捕から実に三十八年以上が経過して、ようやく前川さんの無罪が確定したわけであります。

 逮捕されたときに二十二歳、前川さんは今年六十歳ですので、こういった、人生を三十八年間も奪ってしまった国家の大きなミスとも考えますが、この件に関して大臣の受け止めをお願いいたします。

平口国務大臣 御指摘の事件については、平成九年十一月、被告人とされた前川彰司さんに対する懲役七年の判決が確定したものの、令和七年八月一日、再審無罪判決が確定したものと承知しております。

 個別事件における裁判所の判断に関する事柄について法務大臣として所感を述べることは差し控えますが、御指摘の事件について、検察当局においては、前川さんが相当期間にわたり服役し、無罪になったことについて厳粛に受け止めているものと承知しております。

 検察当局においては、無罪判決等があった場合には、当該事件における捜査、公判活動の問題点を検討し、その後の捜査、公判活動の教訓としているものと承知しており、法務大臣としては、こうした検察当局による取組をしっかりと見守ってまいりたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 大臣の受け止めではなく、まあいいです、私、聞きます。

 本件の長期化ですね、長期間にわたる審理の過程に関しては、第一に、これは何度も言われています、再審請求における証拠開示規定が存在しないこと、また第二に、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが認められていることなどが、今回の事案で特にですけれども、再審に関する現行法の問題点を如実に示すことになったと考えます。

 大臣は、昨日の発言の中で、この再審法の不備、問題点について、再審法をスピード感を持って改正するというような、スピード感を持ってというような文言がありましたけれども、私が今言いました第一、第二、こういったところに対して同じような考えであるというふうに伺ってよろしいでしょうか。

平口国務大臣 議員立法に関わる事項について法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきますが、今後のスケジュールについては、法制審議会の議論の状況にもよることから、現時点において確たることを申し上げることは困難でございます。

 いずれにしても、法務省としては、法制審議会において引き続き充実した議論が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう努力してまいりたいと考えております。

小竹委員 今私が言ったのは、大臣が昨日の発言の中でスピード感を持ってという言葉が使われておりました。その中で、私が、この福井女子中学生事件が、こういった証拠開示規定や検察官の不服申立て、ここがポイントなんじゃないかというふうに思っておりますが、この思いは共通するものと考えてよろしいですか。

平口国務大臣 再審制度につきましては、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されるなど、法改正に関するものを含め様々な議論があることは承知いたしております。

 その上で、再審制度の在り方については、現在、法制審議会において、再審請求事件の実情を踏まえつつ、精力的に御議論いただいているところでございます。

 法務当局としては、引き続き、法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう、スピード感を持ってしっかりと取り組んでまいりたいという趣旨でございます。

小竹委員 法制審のところは後で聞きます。

 大臣は、この再審制度の意義についてどういうふうに考えておられるでしょうか。

平口国務大臣 お答えいたします。

 再審制度は、十分な手続保障と三審制の下で確定した有罪判決について、なお事実認定の不当などがあった場合にこれを是正する非常救済手段であり、重要な意義を有しているものと考えております。

 再審制度の在り方については、非常救済手続として適切に機能することを確保する観点から、現在法制審議会において御議論いただいているところでありまして、法務当局としては、引き続きスピード感を持って取組を進めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、有田委員長代理着席〕

小竹委員 先ほどから、法制審にスピード感を持って取り組んでもらいたいという答弁が続いておりますけれども、今、国民的な理解も議論も深まっている中で、我々は、受け身じゃなくて、しっかりと議論をしていかなければいけません。

 さきの通常国会で、野党六党が再審法改正議連でまとめた改正法案を出しました。それは、しっかりと現場の当事者団体のヒアリングであったり、日本弁護士連合会であったり、こういったところの声を基に、しっかりと被害、冤罪の救済に基づく、反映された法案だと私は承知しております。

 一方で、再審法改正に関し、先ほどから大臣がおっしゃられているように、本年の四月二十一日以降、法制審議会で審議が行われていることも承知しております。

 しかし、まず、この法制審では、先ほどの松下委員との議論の中でも明らかになった部分、ここは若干はしょりますが、再審法の不備を指摘して法改正を求める声がもちろんある一方で、再審手続の証拠開示範囲、それに基づく主張に関連する限度にとどめようとする意見や、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止すること自体に消極的な意見も出ている。意見がまとまっていないというのが明らかだと思います。

 これを受けて、そこから法務省が原案を取りまとめる形で、そこから更に出てくるというふうに考えますと、法制審議会での取りまとめを待っていては、スピード感を持って取り組んでほしいといっても、この経過を待っていては、法改正の根幹部分が後退するおそれもありますし、法案化までに相当な時間が要することは明らかだというふうに思います。

 国民的関心が高まっている今こそ、この再審法改正を現場の声に即した形で、議員立法で成立させる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

平口国務大臣 議員立法に関わる事柄については、法務大臣として所感を述べることは差し控えます。

 その上で、再審制度の在り方については、確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性の双方を考慮しつつ、様々な角度から検討する必要があると考えております。再審制度の改正は、基本法である刑事訴訟法の改正に関わるものであり、刑事裁判実務に非常に大きな影響を及ぼし得るものであることから、現在、法制審議会において精力的に御議論いただいているところであります。

 いずれにしましても、法務省としては、先ほど申し上げたとおり、法制審議会において十分な検討が行われ、できる限り早期に答申をいただけるよう努力してまいりたいと考えております。

小竹委員 法制審じゃなくて、国会でしっかりと話をするべきだと思います。まずは国の唯一の立法機関である国会において、今議員立法が継続審議されておりますので、速やかに成立をさせて再審法改正の方向性をまず示す、これが非常に大事だと思います。

 その上で、法制審には、改正法が示した方向性に沿って、残された論点、これを審議していただく、こういった役割を担うことがふさわしいと考えますが、いかがでしょうか。

平口国務大臣 国会における御審議はあずかり知らぬところでございますので、できるだけ早期に行われることを期待したいと思います。

 いずれにしましても、先ほど申し上げたとおり、現在法制審議会において精力的に御議論いただいているところでございまして、今後のスケジュールについて現時点において確たることを申し上げることは困難でございますが、いずれにしても、法務省としては、できる限り早期に答申をいただけるように、引き続きスピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。

 ちょっと誤解があったら恐縮なんですが、私の言っている趣旨は、議員立法として出ているものについては、いろいろコメントすることは差し控えますという趣旨でございます。

小竹委員 六月十八日にこの改正法案が提出されて、法務委員会に付託されて、閉会中審査、そして継続審議となっています。あずかり知らぬということは、これは撤回された方がいいんじゃないでしょうか。

平口国務大臣 あずかり知らぬという言葉はちょっと不穏当だと思いますので、お答えする立場にないというふうに訂正させていただきます。

小竹委員 まさに今、国民的にすごく関心が高まっています。今やらずにいつやるんだというふうに思っておりますので、是非、今国会、成立に向けて議論をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次のテーマに移ります。

 昨今も、先ほどの藤原委員の質疑の中にもありましたけれども、いわゆる児童買春であったり児童ポルノ、こういったことの被害が多発化しております。ここに関して受け止めを聞こうと思いましたが、この質問は飛ばさせていただきます。

 特に、SNSやチャットアプリが勧誘の仲介の役割を果たしていることが多くて、こういったところが隠れている。後から発覚してもそのときには時既に遅しということがよくありますので、例えば、イギリスなどではオンライン安全法が、プラットフォーム側に、子供への危険を検知し、リスクを軽減するような法整備がなされています。

 日本においても、特にこのSNSの事業者に対して取組をしていくべきじゃないかと思いますが、現在どういったことがなされているでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、海外でプラットフォーム事業者への規制等を制度化する動きがあることは承知をしております。

 我が国でも、例えば、ネット上のいじめでありますとか誹謗中傷、児童ポルノなど、SNSに起因する子供の被害への対応が大きな課題となっており、青少年が安全に、安心してインターネットを利用できるような環境整備が必要である、重要であるというふうに認識をしております。

 本年八月、こども家庭庁に設置いたしました有識者会議におきまして、児童ポルノ被害などの送信に係るリスクを含むリスクの多様化への対応、あるいはアダルト広告など、青少年有害情報に当たる可能性のあるものを含むコンテンツリスクへの対応などの課題について論点を整理したところでございます。

 これに基づきまして、今年の九月には論点ごとに政府の工程表を取りまとめまして、できるものから速やかに着手する、中長期の検討を要するものについては令和八年を目途に具体的な内容を取りまとめる、このような方針を立てております。

 引き続き、こども家庭庁が司令塔となり、多数の関係府省庁がございますので、関係府省庁と連携しながら、法制上の対応の必要性の有無も含め、工程表に沿った取組や検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

    〔有田委員長代理退席、委員長着席〕

小竹委員 特に今、もう子供の段階から、皆様、SNS、チャットアプリをされておりますので、こういったことがなかなか発見しづらくなっていますので、海外などの事例もしっかりと見ていただきながら運用に努めていただきたい、必要であれば法改正もしていただきたいというふうに思います。

 やはり、日本の子供への性被害、いわゆる児童買春であったり児童ポルノ、こういった事案が減らない大きな要因として、日本の実際の刑が軽過ぎるというのは言わざるを得ません。

 これは、二〇二三年度の検察統計年報によりますと、児童買春、児童ポルノ禁止法違反で正式起訴された人数に対する全部執行猶予の割合は三七%というふうになっております。三件に一件が全て執行猶予がついてしまうというような、なかなか、生活している中、そしてお子さんを持たれている人、さらには当事者に関しては理解し難いような感情になると思いますし、海外では原則執行猶予はつかない。特に、アメリカなどでは州により終身刑などもございますから、こういった海外との量刑の格差、日本が加害に甘い国になっていないかということに関して御指摘をさせていただきますし、各事案に関して何か求めるわけではありませんが、執行猶予の運用の在り方について、いま一度法務省として実態把握をしっかりと行っていただき、その背景要因であったり分析等々を行っていただいて、必要な対策、これが甘過ぎるんじゃないかという声にしっかりと耳を傾けていただきたいというふうに思います。

 そして、再犯防止の欠如も大きな問題と考えます。海外であれば、GPSであったり薬物による治療であったり、いろいろな再犯防止がある中で、日本であれば、まずは司法の外側に出たら追えないというような形になっています。

 その中で、昨日の大臣の発言の中で、性犯罪、性暴力の対策で、再犯防止施策の更なる充実強化を図るというふうにございました。現状そして今後、国の再犯防止の取組について教えていただけますでしょうか。

村松政府参考人 法務省におきましては、性犯罪を犯した者に対しまして、刑事施設とそれから保護観察所において、認知行動療法に基づく再犯防止のプログラムを実施してございます。このプログラムにおきましては、職員等とのグループワーク、こういったものを通じまして、性犯罪の背景にある自身の認知の癖に気づかせ、問題行動を起こさないように対処する方法を身につけさせるというものでございまして、必要な者に受講させているものでございます。

 また、性犯罪を含む犯罪をした者等の再犯防止を図る上では、刑事司法手続を離れた者に対して地域社会において継続的に支援を行っていくことが重要であり、地方公共団体が性犯罪の再犯防止の取組に活用可能な、性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドライン、これを策定し、各都道府県等に提供をしてございます。

 引き続き、そういった地方公共団体との連携も図りながら、性犯罪者に対する再犯防止対策を進めてまいりたいと考えてございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 再犯防止の取組、そして地方自治体との連携、特に大阪が条例で運用されているのがいい例だというふうに思います。大阪は、独自の条例で、十八歳未満の子供に性犯罪を行い、服役の上で刑期満了から五年を経過しない者の府の区域内に住所を定めた者に対して、住所等の届出義務を課すとともに、社会復帰に関する相談その他必要な支援を実施とありますので、国としても、子供たちが暮らす、そして親たち、もちろん地域の人たちが安心して暮らせるために、各条例に任せるのではなくて、国としてのしっかりとした取組、今後していただきたいというふうに思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなりましたが、売春防止法に関しても提案させていただきます。

 先日の予算委員会の中で、高市総理から検討の在り方について指示するとありました。昨日の発言の中にも含まれておりました。私も、地元の方、また、顔はつながっていませんが、ネット上で様々な方にヒアリングをしてきまして、例えば性風俗店の経営者の方とか、いろいろなヒアリングもしてまいりました。

 その中で、いわゆる規制の在り方といいましても、まだ法務省の中でどういった規制をするか決まっていないというふうに聞いておりますが、いわゆる北欧型、買う側を処罰する北欧型であったり、非犯罪化していくようなニュージーランドであったり、そういったいろいろな方向性を示していただきました。特に、買う側を処罰する買春の処罰法に関しては、買われる側、いわゆる売る側を危険に追いやるというような声もありましたし、一方でその反対の声もありました。

 特に、少しのヒアリングの中で様々な声がありましたので、是非、こういった議論こそ、私は、国会で様々な参考人を呼んで、現場の声に即した、そして一番には人権が守られる、安全、命が守られるような法改正をしていただきたいというふうに思いますし、現場の声に即さないような法改正になってはいけないという、もちろん、何か規制したい気持ちはよく分かるんですが、それが果たして適正な運用になっていくのかということも考えて法改正をしていただきたいというふうに思います。

 現場の声を一ついただきましたので、これを紹介します。

 買春処罰を導入した国のデータにもあるように、暴力や詐欺、リスク被害が増える傾向もあります。買手が犯罪者となるため、客はこれまで以上に身元を隠し、それが危ない方向に行くこともございます。また、仲介者も闇に潜るかもしれませんし、売る側も買う側も危険な目に遭うこともございます。ただ、性風俗事業者としては、本音であれば、買春、もちろんこれは違法でありますから、違法行為はなくなってほしい一方で、果たして現実的にそれがしっかりと規制できるのかというような疑問も残っておりました。今後の在り方に関して、こういったいろいろな方の意見も踏まえながら、売春防止法であったり、同時に風営法の在り方であったり、こういった時代に合わせて改正を行っていただきたいというふうに思っております。

 様々な方、特に若い方にもヒアリングをして、私が印象的だったのが、売る側を支援するということになる、保護する対象になるということがよくあるんですが、支援が必要な人ももちろんいますが、本人たちが支援を求めないケースもあるということもございましたので、果たしてどういった支援の在り方がふさわしいのかということは今後の議論にしていただきたいと思いますし、国会でこういった議論こそ開いて話をしていただきたいというふうに思います。

 時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

階委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党、平林晃でございます。

 連立を離脱し、野党になって初めての質問をさせていただきます。席が大分変わりましたけれども、しっかり頑張ります。よろしくお願いいたします。

 まずは、平口大臣、御就任、誠におめでとうございます。私も大臣と同じ広島でございます。折に触れて御一緒させていただく機会もありましたので、御就任のことを大変うれしく思っております。恐らく支援者の方もお喜びになられていると思いますし、常に身に影の添うがごとくお支えになられている奥様も本当に喜んでおられるのではないかなというふうに思いますので、祝意を改めて申し上げるところでございます。

 さて、平口大臣は、二〇一三年に法務大臣政務官を御担当になられ、二〇一七年に法務副大臣を御経験しておられます。法務行政の御経験を豊富にお持ちであられるからこそ、私が地元でも御一緒させていただいたときにお話しかけていただいた内容は司法外交のことであったと記憶がございます。どの場面だったか、東南アジアに行って法整備のサポートをやってきたことがあるんだといったことを、熱を込めてお話しをいただいたことを記憶しているところでございます。

 そこで、大臣にまずお聞きさせていただければと思いますのが、司法外交に本当に精力的に取り組んでこられたのではないかなと思っておりまして、その情熱の源泉、これが何であったのかということ、また、特に印象に残っておられること、多くの労力を注いできたことなど、特筆すべき取組、さらには、今後、司法外交という意味においてはどんなことに取り組んでいかれたいのか、これらについて大臣の御所見を伺います。

平口国務大臣 司法外交とは、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を日本から世界に発信し、世界各国に浸透させていくための取組であると承知しております。

 私自身、司法外交には大変思い入れがありまして、平林委員とともに、いわゆる司法外交議連のメンバーとして、法務省の取組である司法外交を国会議員として後押ししてまいりました。

 また、政務官在任中にはラオスとベトナムを訪問して、法制度整備支援等について意見交換をしたほか、副大臣在任中にはドイツを訪問し、ドイツ要人と会談して京都コングレスへの協力を要請するなど、司法外交の推進に取り組んでまいりました。

 最近の取組でいえば、先週末、フィリピンを訪問し、第一回目となる日・ASEAN法務大臣会合に出席をいたしました。この会合は、閣僚レベルで定期的に対話を行うものでありまして、日・ASEAN間の法務、司法分野における協力関係を更に強化していくことを改めて確認をいたしました。また、私から日・ASEAN再犯防止協力対話の実施を提案し、各国から賛同する意見が相次ぎました。

 長年にわたるASEAN諸国への法制度整備支援等が種となって、我が国に対する高い信頼という実を結んだものであり、日・ASEAN法務大臣会合で新たにまいた種を大きく成長させていきたいと考えております。

 今後も引き続き、対話と信頼に基づいて司法外交を積極的に推進し、法の支配を始めとする価値を有する各国と我が国との連携を強化し、ひいては国際社会の平和と安定にも寄与してまいりたいと思っております。

 以上です。

平林委員 本当に、まさに熱のこもった御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 法の支配、本当にしっかり広げていかなくてはなりません。私もしっかり、そういった部分で今後質問させていただきたいというふうに思っておりますし、フィリピンの会合は非常に強行軍だったというふうにも伺っております。お体はくれぐれも大事にしていただきたいというふうに思います。

 さて、先日、そのASEANに所属するタイ王国の下院から、法務・司法・人権委員会御一行が本委員会に御来訪いただきまして、委員長始め委員会のメンバーで歓迎を申し上げたところでございました。熱心に我々日本側の議員に質問される姿に、とても勉強家だなと感じたところでございました。

 そうした懇談の中で出された話題の一つが、同国で本年一月に認められた同性婚でございました。私は、タイの議員の皆様に御質問申し上げたのは、タイの中でも同性婚はそれほど多くないと推察します、実際、一〇%以下ということですけれども、マジョリティーでは決してないにもかかわらず、同性婚が成立したのはどんな要因なのか、こんなことをお聞きしました。

 一点目は、よく聞く話ですけれども、同性婚が認められなければ、様々、病気のこととか、問題が生じる。また、二点目は、若者の平等意識が高く、社会全体でそれが高まってきたため、広まってきたため、こんなことも言っておられまして、また、タイにおいても簡単にこれが認められたわけではなかった、二回目の法案提出だったということもあって、今回は機運の高まりを受けて成立に至った、このようなことが回答としていただいたところでございました。

 我が国におきましても、同性婚訴訟、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、全国五地裁で計六件起こされており、控訴審における計五件の判決は全て違憲となっている。来週金曜日には六件目の判決も出される予定である。この結果次第では明年にも最高裁の統一判断が示されるのでは、こんなことも予想されている状況でございます。

 タイ国における同性婚、法整備も踏まえまして、大臣の同性婚に関する御見解を伺います。

平口国務大臣 御指摘のタイ王国の同性婚制度については、報道の限りで承知をいたしております。

 いずれにせよ、同性婚制度の導入については、国民生活の基本に関わり、国民一人一人の家族観とも密接に関わるものと認識しております。

 法務省としましては、引き続き、国民各層の御意見、国会における御議論の状況、そして同性婚に関する訴訟の動向についても注視していく必要があると考えております。

平林委員 おっしゃるとおりだと思います。司法の判断がどのように下されるのか、これをしっかりと私も注視していきたいと思っておりますし、それに応じてしかるべき対応を取っていただきたい、このようにも思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、夫婦の氏制度に関して、簡潔に一問のみ質問させていただけたらと思うんですけれども。

 同氏を義務づけている国は日本のみということは、もう何度も議論されてきたことでございます。それは、逆に、諸外国は選択的夫婦別氏であるとか原則別氏というようなことになっているわけですけれども、こうした国の中には、イギリスのように、法律上の規定が元々なかったり、あるいは韓国のように、儒教の伝統的な文化から別氏、こんなこともあるということであり、一方で、従前は夫婦同氏を義務づけていたけれども、何らかの別氏を導入した国もある。先ほど同性婚の話をしましたタイにおきましては、二〇〇五年から別氏制度が導入されているということでございました。その制度の目的は、多くの場合、全部ちょっとシラミ潰しに調べられているわけではございませんが、男女平等の観点、こんなふうにも認識をさせていただいているところでございます。

 いずれにしましても、こうした歴史の流れの中で、夫婦同氏を義務化しているのは日本だけ、こういう状況になっているわけであります。

 そして今、我が国におきましては、選択的夫婦別氏制度とともに、さきの通常国会におきましては、同氏制度は維持したままで旧姓の通称使用の拡大という方向性、あるいは、この方向性が、高市総理から指示が法務大臣の方にあったということも認識をしておりますけれども、ここで法務省にお聞きできればと思います。

 諸外国において、このような類似の制度を採用したり、あるいは、採用までいかなくても議論されたりしたことはあるのでしょうか。伺います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省が主要十九か国を対象に行った調査により把握している限りでは、委員御指摘の、夫婦同氏制度を前提に旧氏の通称使用制度を採用している国は承知しておりません。

 各国により夫婦の氏に関する考え方や歴史的経緯などが異なることから、我が国と一概に比較することは困難ではないかと考えているところでございます。

平林委員 ありがとうございます。

 現状、ないということなわけで、一つのファクトとして、現状、同氏制度が日本だけなので、同氏の上に通称を採用するということはあり得ないというようなこともあるわけですけれども、昔、同氏だった国がその頃に議論したことがあったのかどうかも、ちょっとその辺も含めてきちっと理解したいなというふうに思っているところではございます。

 通称関連で興味深いなと思ったのは、フランスの例でございます。皆様も御存じかもしれませんけれども、同国では、結婚しても法律上の姓が変わらない、原則別姓が歴史的に確立されており、法律が制定された時点から夫婦別姓が続いている。ただ、結婚後に配偶者の姓を通称として使うことが認められているということだそうでありまして、日本の旧姓の通称使用とは別の立場である、こういうようなことになっているということでございます。

 こういったことも参考にしながら考えますことは、当然のことながら、法制度は手段でありまして、何をするのか、目的こそが重要でございます。私は、夫婦の氏を考えるに当たって、現行制度における不都合を減らす、こういう観点よりも、ジェンダー平等や人権といった、より基本的な価値の実現、こういう観点が重要ではないかと考えております。また、これからの日本をつくっていく若い世代の意見も重要と考えているところでございます。こういった立場から、今後の議論、参画していければと思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、ちょっと話が変わります。今、カキが大変なことになっています。カキというのはオイスターですね。

 広島、私の地元、大臣の地元でもございますけれども、先月後半ぐらいからこういった話をよく聞くようになってまいりました。地元紙では、今月一日に、広島県南部の呉市でありますとか中部の東広島市の養殖場で八割から九割のカキが死んでいる、こんな報道がなされ、そうした被害が県全域、西側にもそうですし、最新の報道、十六日だったんですけれども、岡山県、兵庫県にも広がってきている、こんなことを報道で知るようになっております。私自身も、十日の日に広島市内の漁協で実態を調査してきたんですけれども、そのときよりも状況は確実に悪化していると感じているところでございます。

 そこで、まず、農林水産省さん、今日来ていただいていると思います。現在のカキ養殖の被害状況をどのように認識しておられるのか、確認いたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今般のカキのへい死につきまして、十月二十日頃から水揚げを開始した広島県の東広島市、呉市などを中心に発生していると承知しております。このため、本日、鈴木農林水産大臣が現地へ赴き、被害状況を視察するとともに、現場の漁業者の方々と意見交換を行ったところでございます。

 また、広島県のほか、水揚げ前の岡山県や兵庫県等でも一部でへい死が発生していると聞いており、へい死の要因といたしましては、高水温、降雨量が少なかったことによる高塩分など複数の可能性が挙げられております。

 引き続き、県や市と連携しつつ、被害の状況の把握と原因究明に取り組んでまいりたいと考えております。

 その上で、判明した被害の状況及び原因の分析結果を基に、有効な対策について、国の研究機関や関係機関と連携しつつ検討してまいります。

 なお、高水温等によるカキのへい死に対しましては、養殖共済による補填のほか、漁業経営の維持安定に必要な資金について、長期、低利の農林漁業セーフティネット資金を利用することが可能となっております。

 いずれにいたしましても、現場の声を聞きつつ、本日現地に赴いた大臣の御指示を仰ぎながら、丁寧に、かつ早急に対応してまいりたいと考えております。

平林委員 大臣が今日行かれていらっしゃるということで、お昼のニュースでも流れていたということでございます。

 このカキの問題、なぜここで、法務委員会で取り上げているのかということですけれども、これは続いて入管庁さんに御質問することになるんですけれども、実は、カキ関連の水産事業者で働く外国人労働者の方は広島県内にもそれなりに多く存在している、それなりというか、かなり多く存在していると認識をさせていただいております。

 私自身も、以前から広島県廿日市市内の水産事業者の現場を視察をさせていただいて、大量のカキが降りてくる、サイロのようなものですかね、の下に座って、カキの殻を割って中身を取り出す、カキ打ちと言うんですね、大臣はよく御存じだというふうに思いますけれども、カキ打ちという作業をしている外国人労働者の方を、視察といいますか、拝見をさせていただいてございます。

 生ものでありまして、作業は基本的に冬場ですので、手が冷たく大変な作業だろうと拝見したところでありまして、こういう皆様がいなければおいしいカキを食べられない、事業者の皆様も回らない、そういったことを感じたところでございます。もし勤務している水産事業者に何かあったらなどと、考えたくはないことを考えてしまうところでございます。

 そこで、入管庁にお伺いしますが、広島、岡山、兵庫、今名前が出た県ですけれども、こういった県で、カキ事業者で働く外国人労働者はどの程度おられますでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 カキ事業者で働く外国人労働者数は把握しておりませんため、現在把握できている数字をお示しいたしますと、広島県、岡山県及び兵庫県に在留する漁業分野、養殖業区分の特定技能外国人は、平成七年六月末現在で合計七百十人でございます。

 また、技能実習については、都道府県別、職種別の在留者数は統計としては整理しておりませんが、技能実習計画の認定件数ということでお示ししますと、令和六年度中に認定された技能実習計画のうち、事業所が広島県、岡山県及び兵庫県に所在し養殖業を職種とするものは合計九百五十八件、こういうふうになっております。

平林委員 ありがとうございます。

 特定技能七百十、技能実習九百五十八ということで、これは別にカキに限定したものではないということではございますけれども、どうなんでしょう、やはりそれなりの数というか、かなりの人数、外国人労働者の方がこの事業に携わっておられるということは間違いないというふうに思います。

 先ほど農水省さんのお話の中で、共済等々のお話がございました。私が聞いてきたお話の中では、今回まず被害に遭った東広島の方とかというのは、西部の廿日市の方たちとちょっと違う雰囲気があると。

 といいますのは、廿日市の皆様というのは結構へい死というのを経験しておられた、でも、呉と東広島の方は今まで余りそういう経験がなかった、だからこそ保険にも入っていない、こういう状況もあるようなことも伺っているところでございまして、そういった意味でも事態は複雑であり、事業者様もそうですし、外国人労働者の方も不安に思っておられることが多々あるのではないかなというふうに思います。

 そういった皆様が混乱しないようにするためにも支援は重要であると考えておりまして、本日、先ほど、繰り返しますが、農林水産大臣が現地を訪問しておられるということでございますけれども、外国人労働者という観点からは、平口法務大臣もしっかりと御支援をしていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

平口国務大臣 今回のカキのへい死の問題は、水産業を所管する農水省とも連携しながら、現場のニーズも踏まえつつ、技能実習生等や関係者を支援する観点からしっかりと対応していきたいと考えております。

平林委員 いろいろ思いはおありでしょうけれども、かなり簡潔に御答弁いただいたというふうに思っております。

 この委員会には寺田稔先生もいらっしゃいまして、広島でございます。一緒になってこの支援をしっかりとしていけたらというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、外国人労働者という観点で関連してお話を伺えたらというふうに思います。

 昨年、令和六年三月二十九日の閣議におきまして、特定技能在留資格の対象分野に、林業、木材産業、鉄道分野に加えまして、自動車運送業分野が追加されたということでございます。これはいわゆる物流の二〇二四年問題や、ドライバーの高齢化といった要因による深刻な人手不足に対応するためであります。二〇二四年九月三十日に省令が改正をされ、昨年の十二月から受入れが開始されているということでございます。

 その中で、バス、タクシー運転手に係る日本語能力要件は、特定活動入国時及び特定技能一号への移行時において、日本語能力試験N3レベル以上とされているということでございます。要するに、まず特定活動で入国をされるわけですね。そして、様々スキルアップをして、業務に就くときには特定技能一号に移行していく、これが大体一年ぐらいかかるというわけでございまして、入国のとき、移行時、両方において現状ではN3が求められている、こういうことでございます。

 この要件に関しまして、業界団体から、やはり受入れをしっかりと促進をさせていただきたい、こういう思いで、人手不足が本当に深刻なんだというふうに思いますけれども、要望が出されております。

 まず、特定活動入国時に関しまして、現行のN3要件をN4に緩和できないであろうかということでございまして、さらに、一年たって、特定技能一号に移行する際には、現行のN3要件を日本語サポーターの同乗ありという条件付、もう一人、だから、運転手さんが外国人労働者さんですけれども、日本語サポーターというまた別の方をつけるという条件でN4に緩和できないか、こういう要望でございます。

 そして、もう少し将来的なことも言っておられまして、翻訳機器や無線機器等の技術的進展に応じて、日本語サポーターを不要とする見直しもできたらいいのではないか、こういう要望をいただいているところでございますが、これらの点に関しまして、入管庁の御見解を伺います。

内藤政府参考人 冒頭、大変恐縮なんですけれども、先ほどの私の答弁で、特定技能外国人の人数の起算時点で、平成七年六月末現在で合計七百十人と申し上げてしまったんですけれども、令和七年六月末の間違いでございますので、訂正させていただきます。

 それを前提にお答えさせていただきますと、特定技能制度における自動車運送業分野のバス、タクシー運転者に求める日本語能力水準の見直しにつきましては、分野所管省庁であります国土交通省から、日本語サポーターを同乗させる等の一定の条件を満たす場合には、日本語能力水準を日本語教育の参照枠A2相当以上、例えば日本語能力試験N4レベル以上とする分野別運用方針の見直し案が示され、現在、政府の有識者会議において御議論いただいているところでございます。

 特定技能制度を所管する出入国在留管理庁としましては、引き続き、国土交通省等の関係省庁と緊密に連携しつつ、御指摘いただいた点につきまして、分野別運用方針の策定に向けて適切に取り組んでまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 国交省から要望が出されて、現在、有識者会議で御議論いただいている、こういう状況を確認をさせていただきました。

 日本語サポーター、例えば、退職された方で、もう運転はさすがに難しいかもしれないけれどもサポートぐらいはできますよ、こういうような方を想定しておられるということでございまして、いろいろなトラブルのときも御自身の御経験に基づいて対応していただけるのではないかな、こんな期待も申し上げるわけでございまして、その議論の推移をしっかりと見守らせていただけたらと存じます。

 仮にこの緩和が実施をされていった場合、N3を取得しようとすると、日本語能力試験、ジャパニーズ・ランゲージ・プロフィシエンシー・テスト、JLPTを受けることとなり、こちらは年二回しか実施をされていない。そういった意味におきましても、取得が若干難しいというか、利便性という意味においてはやや劣る、こういう状況にあったわけですけれども。

 もしこのN3がN4に緩和されれば、日本語能力試験、今申し上げたJLPTに加えて、JFT―Basic、国際交流基金日本語基礎テスト、こちらの利用も可能になるということでありまして、こちらであれば年六回ですか、二か月に一遍程度実施をされている、このように認識をさせていただいておりますので、年二回と六回では大きな違いでございまして、そういった意味におきましても、チャレンジしていただく方の利便性は向上するのではないかな、このように認識をしているところでございまして、こちらも併せて議論の推移をしっかりと見守りをさせていただきたいというふうに思っております。よろしくお願いを申し上げます。

 続いて、入国審査の迅速化に関しましても要望をいただいているところでございます。

 現在の入国手続にちょっと時間がかかっている、これは主観的な部分があるかもしれませんけれども、その後の外免切替えをしなくてはいけなくなるわけですけれども、こういったところに遅れが生じている、こういう認識もお伝えいただいているところでございますが、本件については、入管庁の皆様は御見解をどうお持ちでしょうか。よろしくお願いいたします。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 特定技能外国人に係る在留申請については、従来から手続負担が指摘されていましたことから、同一年度内で複数回受け入れる場合には所属機関に係る書類の提出を不要とするなど、手続の簡素化に努めております。自動車運送業分野での稼働を予定している外国人に係る特定活動の在留申請に関しましても、同様の簡素化措置を取らせていただいているところでございます。

 在留申請の処理期間につきましては、本年九月の特定活動全般に係る在留資格認定証明書の平均処理期間は四十四・三日であるところ、標準処理期間が一か月から三か月であることから、この標準処理期間を超過する状況とはなっておりません。ただ、自動車運送業分野の特定技能一号になるための準備を行う在留資格である特定活動五十五号に関しましては、処理期間が長くなる傾向があるとのお声も耳にしております。

 出入国在留管理庁としましては、受入れ機関等の負担にも鑑み、効率的な審査を実施して、迅速な案件処理に努めてまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 標準処理期間というものを設定をしておられて、実績は、現状はそこに何とか入っているというお話でございまして、もう一つが特定活動、そちらの方は少しちょっと長めになっているかもしれないという御答弁であったかということでございます。

 様々工夫もしていただいているということですので、そういったところに関しては感謝を申し上げるところでございます。引き続き、当然、粗雑になってはいけませんので、しっかりと審査をしていただく、それが工夫をしていただくことによってより速くなっていけば事業者にとっても非常に助かるということでございますので、御努力をいただけたらありがたく存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、残り、今僕の認識的には大問を三つやってきたところなんですけれども、最後の、大問の四番目という内容で、大川原化工機事件に関しまして質問をさせていただけたらというふうに思っております。先ほど鎌田委員も御質問されたと認識をしております。鎌田委員のようにシャープにできるかどうか分かりませんが、頑張って質問してまいりたいというふうに思います。

 今更申し上げるまでもないですし、先ほどの鎌田委員のお話にもございましたけれども、本件に関しましては、国賠訴訟の判決が本年六月十一日に確定をしたということでございます。最高検察庁、警視庁、警察庁がそれぞれこれまでの経緯の検証結果の報告書を作成し、八月七日の日に公表しておられるということでございます。

 私ども公明党は、九月二十五日の日に、法務部会を開催をいたしまして、報告書の内容を聴取させていただきました。そして、その内容を受けまして、十月八日に、当時の鈴木法務大臣に対しまして、こういった事件を絶対に起こしてはならないという強い思いを込めた再発防止の申入れをさせていただいたところでございます。

 報告書、今申し上げたとおり、三通あるわけですけれども、今日はちょっと、法務委員会ということで最高検察庁の部分に着目をさせていただきたいと思っておりまして、警視庁、警察庁の方に関しましては内閣委員会のチャンスを使って質問できればというふうに考えているところでございますけれども、まず、では、法務大臣に御質問させていただきます。

 御就任になられたばかりで恐縮ではございますけれども、国賠訴訟の判決が確定をしている、また、その後最高検察庁が報告書をまとめておられて、我々もその後動きを取らせていただいたわけでございますけれども、こうした経緯に関しまして、法務大臣としての御所感をお伺いいたします。

平口国務大臣 検察当局においては、いわゆる大川原化工機事件に係る国賠訴訟について、第一審に続き控訴審においても検察官の勾留請求及び公訴提起が違法であると判断されることについて真摯に受け止めた上で、大川原化工機株式会社及びその関係者の皆様方に多大な御負担をおかけしたことについておわびの意向を表明するという旨のコメントを令和七年六月十一日に公表したものと承知しております。

 また、大川原化工機事件については、最高検察庁において国賠訴訟判決確定後に検証を実施し、同事件の捜査、公判上の問題点が明らかになったことを踏まえ、より一層適切な検察権行使を確保するとの観点から、様々な取組を行うこととしたものと承知しております。

 そして、最高検察庁の検証結果の公表を踏まえ、御党の法務部会から鈴木前法務大臣に対し、第三者による検証、取調べの可視化の拡大、保釈請求への対応の見直し、必要な医療体制の整備という四つの柱から成る再発防止を求める申入れをいただきました。私としても、御党から重い御指摘をいただいたものと受け止めております。

 こうした経緯を踏まえて、私としては、検察当局において、検証の結果明らかとなった問題点や反省事項を踏まえた各取組を実施して、適正な検察権行使の確保により一層努めていくものと承知しており、引き続き、検察当局の対応について強い関心を持って注視してまいりたいと考えております。

平林委員 非常に重いということ、この事案もそうですし、私どもの提言も重く受け止めていただいている、こういう答弁であったわけでございますが、私は法律の世界に生きてきた人間ではありませんので、こんなことを述べる資格がないのは重々承知しておるところではございますが、それでも今回の事件というのは、日本の刑事事件の歴史における痛恨の事案なのではないかと考えさせていただいております。

 あってはならないことが度々重なって、こういった最悪の事態も含めて起きてしまっている事件でございます。であるからこそ、このことから本当にしっかりと学んで、絶対に繰り返さない、このことが求められているのではないかと真摯に思っているところでございます。

 だからこそ、検察と警察が一致団結をして再発防止に邁進をしていくこと、これが亡くなられた相島さんへのせめてもの償いになるのではないか、このように考えているところでございます。

 やはり、警察の捜査に対して検察が検証して歯止めをかける、この機能がしっかりと働いたのかどうかというところは、本当に今回の事案においてとても重要なことなのではないかなというふうに思っているところではございます。

 そういった意味におきまして、私どもの申入れでは、まず、最高検察庁の検証報告書を中立的また第三者的な視点によって検証することにより、今回の検証の妥当性を明らかにすることを求めてきたところでございます。

 今回の事案の検察側の直接の当事者は東京地検でありまして、今回の報告書は最高検察庁が作成をしておられます。そういった意味では、客観性が全くないと考えているわけではございませんが、ただ、やはりあくまで検察組織の中で作っておられるものでありまして、より客観性を持った、しかも専門的な目で検証することは重要ではないかとの問題意識で提言をしたものでございます。

 申入れに先立って開催した部会におきましても、当部会におきましても、このことは参加者一同強く求めたところでありまして、この第三者検証に関しまして、その後の状況を伺います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 最高検察庁におきましては、本検証に当たりまして客観的な事実関係を踏まえて実施しておりまして、また、第三者的視点を取り入れる観点から、当事者の問題意識を把握されている原告代理人弁護士の方からも事情聴取を行うなど、当事者の皆様方がお持ちの問題意識も踏まえつつ、客観性を持った検証になるよう努めてきたものと承知しております。

 その上で、御指摘の点につきましては、今後、検察当局におきまして、有識者から成る参与会におきまして、本件の問題点、反省点等について御説明を行うとともに、その後の改善状況等についても報告を行い、参与の皆様方から聴取した意見を今後の検察の組織運営に反映させることとしているものと承知しております。

平林委員 ありがとうございます。

 参与会ということがございました。来年の年明け、二月、三月ぐらいに開催をされる予定であるということでございまして、まずはその評価をしっかりと確認をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 また、繰り返しになって恐縮ですけれども、本件の痛恨の極みは、何といっても相島さんが亡くなられたことでありまして、この国賠訴訟の中でそのことが十分に評価されていないということはちょっと苦言を呈したいというか、確認させていただきたいんですよね。

 訴状においては、敬称略になりますけれども、原文、亡相島が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は一億円を下らないとしていましたが、判決文では、同じ原文のまま敬称略になりますけれども、亡相島の損害は、経済的損害百九十四万円と慰謝料四百万円の合計から刑事補償二百九十七万円を控除した二百九十七万円となっているということでございます。余りに低い金額に、素人の私は驚いてしまいます。いずれにしましても、こんなことは絶対に起きてはならないというふうに思っているところでございます。

 被収容者への医療体制の整備については、被収容者に対する医療が適切に提供されるよう医療体制を整備し、外部との連携についても更に拡充を求めることを提言しております。現在の検討状況を伺います。

日笠政府参考人 お答えいたします。

 被収容者の健康を保持するため、社会一般の医療の水準に照らし、適切な医療上の措置を講じることは国の重要な責務であると認識しております。

 矯正施設におきましては、これまでも必要な医師の確保等に努めてきたところですが、今後も広報啓発活動を通じて矯正医療の重要性に関する国民の関心と理解を深めるとともに、積極的な採用活動を行うなど、矯正医官や看護師等の医療スタッフの安定的な確保に努めてまいります。

 また、被収容者の傷病の種類や程度によって施設内では対応できない場合には、近隣の外部医療機関に通院又は入院させて対応する必要があることから、各施設においては、地域医療機関等の関係機関を構成員とする協議会を開催するなどして、矯正医療に対する理解と協力を求めているところでありまして、今後も、被収容者に対する適切な医療の提供のため、地域医療機関等との連携を進めてまいりたいと考えております。

平林委員 ここは本当に大事なところだというふうに思っておりますので、本当にしっかりとした体制整備をしていただきたいというふうに思っております。

 もうあと時間が非常に厳しくなってきたんですけれども、保釈請求の対応に関して質問をしようと思っていたんですけれども、また次の機会に質問自体はしようというふうに思っておりますが、報告書の中でも、この保釈請求の対応については五ページ余りを費やしておられまして、一つのポイントになっているのではないかな、こんなように考えているところではございます。その一文においては、「本件においては、客観的構成要件該当性に関して罪証隠滅のおそれがあったとは考え難く、」と、その考え方に検討の余地があったと思われるとしていただいているところでございます。

 こういった考え方に基づいて、またしっかりと確認をさせていただけたらというふうに思っておりまして、またちょっと次の一般の場面でこの続きの質問をさせていただけたらというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、大変にありがとうございました。

階委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 タイ国籍の十二歳の女性が、母親と日本に来て置いておかれ、そして、六月から九月の間、性暴力、性搾取、人身売買の被害を受けていた問題について質問をさせていただきたいと思います。

 一か月六十人、相手をしていたという報道がありますが、六月から九月までということで、報道されている店だけではなく、複数の店で働かされていたというふうに言われております。十二歳のAさんを買った性購買者はもっと、六十人以上いるということを、その可能性があるということを認識しなければなりません。被害当事者十二歳のAさんへの深刻な人権侵害の事件であり、日本として本当に恥ずべき事件です。

 性暴力被害者Aさんは、PTSDなど、中長期に影響が出るおそれがあります。早期の手厚いケアが必要です。そして、Aさんのタイ現地の家は、母親や十二歳のAさんが働かなければ生活が困難とも報道をされております。また性搾取に巻き込まれることがないよう、そして報復がされることがないよう、住宅を含む今後の安全確保が何よりも必要だというふうに痛感をしております。

 今後の安定した暮らしを保障し、心身へのケア、中長期の手厚いケア、本人が希望している教育の保障と、Aさんの思いも尊重しながら、Aさんを真ん中にしたケースワークを専門性のある方々が行い、日本側の負担で中長期の支援をするべきだというふうに思います。

 本人にとってワンストップでなければならない、相談しやすい環境もつくらなければいけないというふうに思っております。子供の権利保障について専門性のある子供パートナー弁護士、これは一人ではなくチームが必要だというふうに思いますけれども、そうした子供パートナー弁護士をつけるべきだというふうに考えますけれども、こども政策担当副大臣、外務大臣政務官、そして法務大臣、そして警察庁にお答えをいただきたいと思います。

津島副大臣 こども家庭庁に関わる部分、お答えをさせていただきます。

 まず、児童の性的搾取は、児童の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であります。断じて許されるものではありません。

 そのことを申し上げた上で、個別の事案に関する内容については、今捜査中ということもありますので、お答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、人身取引の被害者が児童である場合には、関係機関と連携しつつ、必要に応じて、児童相談所において児童心理司等による面接、医師等による診断等を行うとともに、高度の専門性が要求される場合は、専門医療機関と連携するなど、心理的ケアや精神的治療を実施することになります。

 引き続き、人身取引の被害者については、被害者児童の最善の利益の確保の観点から、関係機関との連携確保に努め、適切に対応してまいりたいと考えております。

 以上です。

大西大臣政務官 お答えを申し上げます。

 御指摘の事案は、現時点で捜査中であると承知をしております。

 被害少女への今後の支援を含む外務省の対応に関して、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えますが、外務省としても、必要に応じて、国内関係省庁に加え、現地の大使館を通じてタイ政府とも緊密に連携し、人道的観点から適切に対応してまいります。

平口国務大臣 お尋ねは、現在、捜査機関による捜査が行われているとの報道がされている個別の事案に関わる事項でありまして、所見を述べることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げれば、法テラスにおいては、無料法律相談等の民事法律扶助、日本弁護士連合会が法テラスに委託する子供に対する法律援助などを案内し、必要な方に対し、契約弁護士等による法的支援を行っているところでございます。

 引き続き、法務省としては、必要な方に必要な法的支援が行き届くよう努めていきたい、このように考えております。

服部政府参考人 お答えいたします。

 個別事案についてお答えすることは差し控えますが、その上で、一般論として申し上げれば、警察では、人身取引の被害者につきまして、大使館、国際機関、入管当局、女性相談支援センター、児童相談所などの関係機関と緊密に連携し対応しているところでございます。

 今後とも、被害者に寄り添った支援をしてまいりたいと考えております。

本村委員 法務大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど、民事法律扶助、法テラスというふうに言われましたけれども、日本に住所がない、その方でも利用できるというわけですね。

平口国務大臣 一般論として言えば、いいということでございます。

本村委員 ありがとうございます。

 法務大臣は入管庁も所管をしております。一番最初にAさんが逃げてきたのが東京入管です。東京入管の方から、こども家庭庁ですとか、あるいは女性支援をやっている厚生労働省とか、そういうことを指示していく必要もあるかというふうに思っております。

 人身取引の処罰の議定書の方には、被害者の人権の十分な尊重、保護、援助が書かれております。締約国は、訴訟関係ですとか、住居の提供、理解できる言語でのカウンセリング、権利の情報の提供、そして医学的、心理的、物的援助の提供、雇用、教育、訓練の機会の提供、特に子供には特別の提供の必要があるのだというふうに書かれております。そして、安全確保、損害賠償を受けることを可能とする、そういう措置も取る責任があります。また、被害者が再び被害を受けることがないようにすることなどの締約国の責務もございます。

 人身取引の処罰の議定書に書かれていることを、やはり法務大臣がイニシアチブを取ってこうしたことをやるべきだというふうに思いますけれども、入管庁に駆け込んできた、入管庁で保護したということですから、法務大臣、お願いをしたいと思います。

平口国務大臣 人身取引の被害者の可能性がある者に対する保護につきましては、平成二十三年七月一日に関係省庁での申合せがなされ、できるだけ幅広く保護を念頭に置いた措置を講ずることとしております。

 出入国在留管理庁においては、外国人が人身取引の被害者である可能性を認めたときは、事情聴取を行うなどした上で、被害者の立場に十分配慮し、不法残留等の入管法違反の状態になっている被害者について在留を特別に許可するなど、適切に対応しているところでございます。

本村委員 先ほど、人身取引処罰の議定書に書かれている締約国の義務を果たすために総合的な援助、保護をやっていただきたい、そのイニシアチブを入管庁、法務省に取っていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

平口国務大臣 先ほども御答弁したとおりでございますが、人身取引の被害者の可能性がある者に対する保護については、関係省庁で申合せがなされ、できるだけ幅広く保護を念頭に置いた措置を講ずることとしております。

本村委員 法務大臣、入管庁がしっかりとそのことを、子供の最善の利益ということで、子供さんを真ん中にしたケースワークをしっかりとやっていただき、中長期に援助をしていただきたいというふうに思います。

 複数の店舗でAさんを買った性購買者に関し、体制をしっかりと取り、捜査し、厳正に処罰をするべきだというふうに考えますけれども、これは警察庁、法務大臣、お答えをいただきたいと思います。

服部政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事案につきましては、現在、全容解明に向けて警視庁が捜査を進めているところでございます。

 今後の捜査方針等について予断を持ってお答えすることは差し控えますが、警察としては、法と証拠に基づいて、刑事事件として立件できるものがあれば適切に対応してまいりたいと考えております。

平口国務大臣 個別具体的な刑事事件に法務大臣としてお答えは差し控えるところでございますが、その上で、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局においては、個別の事件における犯罪の成否や起訴、不起訴の判断について、個々の事案ごとに法と証拠に基づいて適切に行っているものと承知しております。

 なお、先ほどの民事法律扶助について正確に申し上げますと、日本に住所を有し適法に在留する外国人について認められるものでございます。

本村委員 そうすると、Aさんは使えないということですか。だから、子供パートナー弁護士をつけてほしいと、複数の体制で、子供の権利を守る観点から。是非その点、お願いをしたいと思います。

平口国務大臣 一般論として申し上げれば、子供については、関係機関からの情報提供により、必要に応じて法テラスの法的支援につながり得るものと承知をいたしております。

 その上で、お尋ねは個別事案に関わる事柄でありまして、所見を述べることは差し控えることを御理解いただきたいと思います。

 いずれにしましても、引き続き、法務省としては、支援を必要とする子供に必要な法的支援が行き届くよう、周知、広報や関係機関との連携強化に努めてまいりたい、このように考えております。

本村委員 子供パートナー弁護士をつけてほしいというのは、私は、入管庁に対して、再三、子どもの権利条約に違反しているという論戦もしてまいりました。ですから、大変心配しております。

 また、アメリカの人身取引に関する報告書を見ましても、被害者に様々な権利をお知らせしないで帰してしまうという事例があるというふうにアメリカのレポートにも書かれているからです。

 是非、法務大臣と、そしてこども家庭庁と連携をしながら、子供の権利がしっかりと守られるようにしていただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いをしたいと思います。

平口国務大臣 一般論として申し上げれば、御指摘のように、子供の権利を十分に守るというふうな努力は続けなくちゃいけない、このように思っております。

本村委員 先ほど、性購買者に対する処罰という点で、法と証拠に基づき厳正に対応するということでしたけれども、続きまして、複数の店舗でAさんに性被害を与えていた背景にある組織を捜査し、厳正な処罰をするべきだというふうに思います。

 この点では刑法でもあります、刑法違反の疑いもありますし、売春防止法、労働基準法、児童福祉法、児童買春禁止法、そして児童虐待防止法、風営法、様々な観点があるかというふうに思いますけれども、その点も捜査をし、厳正な処罰をするべきだというふうに思います。

 また、ある報道では、現地報道によると、二〇二二年までの過去十年間で、タイの女性や子供が年間一万から一万五千人も売春のために日本に人身取引をされているとの調査結果が報告をされており、日本は最大の市場とも言われております。明らかになっていない被害も相当数あるかもしれませんという報道がございます。

 ほかの事件も含めて、捜査、厳正に処分をするべきだというふうに考えますけれども、これも警察庁、法務大臣、お願いをしたいと思います。

服部政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事案につきましては、現在、全容解明に向け警視庁が捜査を進めており、今後の捜査方針等につきまして予断を持ってお答えすることは差し控えますが、警察としては、あらゆる警察活動を通じた人身取引被害の迅速な認知に努めるとともに、法と証拠に基づいて、刑事事件として立件できるものがあれば、背景にある組織や関連事件も含め、適切に対応してまいりたいと考えております。

平口国務大臣 個別具体的な刑事事件につきまして、法務大臣としてお答えは差し控えるわけでございますが、その上で、あくまで一般論として申し上げれば、検察当局は、厳正公平、不偏不党を旨として、個々の事案の真相を明らかにするために、必要な事項について捜査を尽くした上で、法と証拠に基づいて、刑事事件として取り上げるべきものは取り上げ、適切に対処しているものと承知をいたしております。

本村委員 なぜ未然に防ぐことができなかったかという問題があります。

 ネットの中では、違法な風俗店は性購買ができるという話題になっていたというふうに報道をされております。ネット上のチェック、捜査はやっていたのか、伺いたいと思います。

 また、Aさんだけではなく、日本の子供も性搾取の犠牲になっていると支援者の方からお伺いをしております。根絶のために、対策、体制の強化が必要だというふうに考えますけれども、これは警察庁にお願いをしたいと思います。

服部政府参考人 お答えいたします。

 具体の捜査手法につきましては、今後の捜査に支障を及ぼすおそれがありますことから、お答えすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、警察といたしましては、被害者の早期保護のため、情報提供や被害申告を呼びかけるリーフレットを複数言語で作成し周知する取組や、SNSの広告配信を活用した広報を行っているほか、人身取引事犯を市民から匿名により犯罪に関する情報を受ける匿名通報ダイヤルの対象とし、情報収集を図りつつ、取締りを推進しているところでございます。加えて、インターネット上の違法情報を把握するために、都道府県警察ではサイバーパトロールを実施しております。

 引き続き、関係機関と連携し、これらの取組を強化しつつ、人身取引事犯の取締り、被害者の保護や支援等の取組を進めてまいる所存でございます。

本村委員 二〇二五年のアメリカの人身取引に関する報告書には、日本の対策は遅れていると書かれています。先ほど来議論もありましたけれども、二〇二四年の報告書では、捜査のチームの数が少ないという体制の問題も指摘がありました。

 そして、二〇二五年にはこのような記述があります。児童の性的搾取目的の人身取引に関する政府の刑事捜査及び起訴件数は、問題の規模に比べて依然として低水準であった、法執行機関は、商業的性産業で搾取されている数百人の児童を特定し続けているが、人身取引に対する兆候に対する十分なスクリーニングが行われておらず、その結果、児童の性的搾取目的の人身取引業者の大多数が処罰を免れたまま活動している、人身売買業者の起訴、有罪判決に用いられる法律は不十分な罰則を規定しており、大半の業者は執行猶予つきの拘禁刑又は罰金のみを科せられているというふうに書かれております。

 国内外で子供が買われる性暴力、性搾取、人身売買、これを根絶するために、包括的な、より強固な戦略を取るべきだというふうに考えますけれども、これも、こども担当の副大臣、そして法務大臣、外務副大臣、警察庁にお願いをしたいと思います。

津島副大臣 お答え申し上げます。

 児童の性的搾取等に対する対策の基本計画としては、子供の性被害防止プラン二〇二二が策定されております。このプランに基づき、関係省庁が連携しながら各種の取組を推進し、毎年度そのフォローアップが行われているところであります。

 今般の事案等については、今後の事案の詳細が明らかになる中で各課題ごとに関係省庁において検討を進めていくものと考えておりますが、同プランの次の見直しに当たっては、このような関係省庁における検討や対策の実施を踏まえ、必要な取組が盛り込まれるよう、関係省庁と連携して対応してまいりたいと考えております。

大西大臣政務官 お答えを申し上げます。

 子供が被害者となる性暴力、性搾取は、国際社会全体で取り組むべき課題であり、我が国としても、関係する国際機関や各国と協力しながら対応を進めてきたところでございます。

 我が国は二〇一八年に、児童に対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップにおいて、児童暴力撲滅へ自国の取組をコミットするパスファインディング国入りを表明し、児童に対する暴力撲滅国連事務総長特別代表とも緊密に連携してきております。また、ユニセフ等とも連携しつつ、性暴力の防止と被害を受けた子供の保護等の支援を実施しています。

 今後とも、子供が被害者となる性暴力、性搾取の課題の解決に向け、関係国際機関を含め国際社会と連携し、取り組んでまいります。

平口国務大臣 人身取引は重大な人権侵害でありまして、人道的観点からも迅速、的確な対応が求められるものであって、政府を挙げて対策を講ずる必要があります。

 検察庁を所管する法務省も、政府の一員として、令和四年十二月に策定された人身取引対策行動計画二〇二二に基づき、人身取引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となった総合的かつ包括的な人身取引対策を推進していく必要があるものと認識をしております。

服部政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、児童買春等の子供が被害者となる性犯罪が、児童の権利を著しく侵害し、その心身に有害な影響を及ぼすとともに、多くの国民に不安を与える悪質な犯罪と認識し、これらの取締りを強化するとともに、児童の保護、支援等を推進しております。

 また、このような子供が被害者となる性犯罪は、国内だけでなく海外でも発生していることから、国際共同オペレーションを実施するなど、国内外の関係機関、団体と連携した取組を実施しているところであり、今後とも、子供を対象とする性犯罪に対して効果的な取締りを行ってまいりたいと考えております。

本村委員 強固な戦略を作っていただきたいというふうに思います。

 少しテーマを変えます。

 フランスでは、二〇一六年、性を買う者を処罰する、そして性を売る側は処罰はされない、そういう法改正がございました。その前に行われたのが、フランスにおける性販売に関する実態調査団の情報レポートです。今日お持ちをしました。これほど分厚いものですけれども、このフランスの実態調査報告書には、彼女たちが、性を売る側が真の選択を行えるように、野心的な社会政策を通じて信頼できる代替手段が提供されなければならないとあります。

 このことは、日本の女性支援の団体の皆さんも求め続けていることです。困難女性支援法ができましたけれども、全国各地で家に居場所がない子供たちに安心できる場を提供できておりません。そして、貧困、孤独、借金など、問題解決のために有効に機能しているとはまだ言い難い現状があります。

 元性販売者の方を含む性販売者の方の声を聞き、支援団体の皆さんの声を聞き、住宅確保や別の仕事への就職の支援ですとか生活保障ですとか借金の整理など、手厚く支援するように、できるように、抜本的に体制を強化するべきだというふうに思いますけれども、これは、法務大臣や厚生労働副大臣、そして男女共同参画担当副大臣にお願いをしたいと思います。

階委員長 ちょっと待ってください。もう時間が過ぎていますので、どなたか一人に絞っていただけませんか。

本村委員 じゃ、厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。

長坂副大臣 お答え申し上げます。

 性被害や暴力被害など様々な困難を抱える女性を支援するためには、官民それぞれにおいて必要な体制を整備することが重要だと考えております。

 各都道府県の女性相談支援センターや市町村の福祉事務所等に配置されている女性相談支援員は、困難な問題を抱える女性にとっての最初の窓口として、相談に応じ、女性の状況に応じた必要な支援のコーディネートを行うなど、必要な役割を担っております。

 女性相談支援員は地方公務員であるために、その任用や労働条件については自治体において判断されるべきものでありますが、常勤化に向けて、各自治体において、女性支援の重要性や女性相談支援員の役割について御理解をいただいた上で、必要な体制について検討していただくことが重要だと考えており、厚生労働省といたしましても、全国会議や女性支援特設サイト等の場を活用いたしまして、こうした点の理解増進に努めてまいりたいと考えております。

 また、公的機関と民間団体が密接に連携し、アウトリーチからの相談対応や居場所の確保、地域での自立、定着まで切れ目なく支援を行うために、こうした活動を行う民間団体について平成三十年度から国庫補助を行っており、今年度からは、自立に向けた地域生活への移行、定着支援も補助対象に追加したところでございます。

 今後とも、困難な問題を抱える女性に対して官民が連携して安定的な支援を行えるよう、必要な体制整備に取り組んでまいります。

本村委員 自治体任せじゃなく、国が責任を持って予算と人を増やしていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

階委員長 次に、吉川里奈君。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。

 本日は、我が国の外国人受入れ政策に関して、法務行政に幅広い御経験をお持ちの大臣と、国民の不安と実態に寄り添った議論をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 我々参政党は、さきの参議院選挙で日本人ファーストというスローガンを掲げました。これは、行き過ぎたグローバリズムに歯止めをかけ、国民の利益と安全を最優先にするという思いを込めています。もっとも、私たちは国際化そのものを否定するつもりはありません。国ごとの文化や制度の違いを尊重しつつ、対等な立場で交流、協力を深めていくことは、日本が世界と協調していく中で欠かせないと考えています。

 一方、私たちが問題視しているグローバリズムについて、九州大学大学院教授で政治学者である施光恒氏は、国家の事情より国際市場の効率を優先し、世界共通ルールへの画一化を進め、結果として、普通に暮らす国民の声よりも一部の大規模資本が優先されやすくなる特徴であると参政党の公式ユーチューブ等でも丁寧に解説してくださっています。この行き過ぎた画一化は、国の制度や文化、地域のつながりを弱め、国家が国民の生活、安全を守る力を損なわれる懸念があり、私たちが問題視しているのはまさにこの点です。

 したがって、参政党は、排外主義とは一線を画しつつ、国家の根幹を揺るがす制度改変、例えば過度な移民の受入れや家族の在り方に直接影響を及ぼす制度改変については、国の文化や社会の安定性を踏まえ慎重に検討すべきであり、専ら選択的夫婦別氏制度についても、家族の制度への影響が大きいことから明確に反対の立場を示してまいりました。

 今回、法務省として、旧姓の通称使用における課題の整理と必要な検討を行い、更なる拡大に取り組むとの意向は心強く思っております。我が国だけのオリジナルな選択的夫婦同氏制度、これも多様性の一部として私は守られるべきであると考えております。

 通告二へ参ります。

 まずは、外国人の受入れの政策について伺います。

 私の住む新宿区では、金曜日にモスクに入り切れないムスリムの方々が歩道や道路で礼拝を行う様子が確認され、区が現地調査を実施しました。室内で収容できない場合は礼拝を二回に分けることを依頼し、現在も職員が毎週確認をしています。現場ではおおむね約束が守られているとのことですが、この事例というのはSNSの誤情報ではなく、外国人受入れの拡大に伴い現実に生じている生活の不安の一例です。

 ほかにも、騒音や生活ルールの違い、公園に貼られているセミの幼虫を捕らないでと多言語で書かれている注意喚起表示など、宗教、生活習慣、文化の違いによる不安の声が全国から寄せられております。

 また、他の自治体では、犯罪が起こったような場合でも、相手が外国人であれば警察官がなかなか取り合ってくれないというお困りの声も聞いており、このような事案は検挙件数などの統計には表れないため、実態が把握しにくいという問題も指摘されています。

 このため、数字に表れない国民の不安や体感治安の悪化を踏まえて検討をしていかなければならないと考えますが、国民の声を拾い上げるために政府は何を実施しているのか、教えてください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 出入国在留管理庁におきましては、国民の皆様を始めとする様々な方の声を伺うために、外国人との共生に関する意識調査と出入国在留管理行政に係る関係者ヒアリングを実施しております。

 意識調査の方でございますが、令和五年度に、我が国が目指すべき共生社会のビジョンや共生社会の実現に向けた施策に関する国民の皆様の理解、考え方等の実態を把握し、今後必要とされる共生施策の企画立案、実施に活用することを目的とし、国民の皆様の外国人とのつき合いの有無、交流頻度、外国人増加への考え方等について調査を行ったものでございます。調査対象は、日本国籍を有する十八歳以上の方一万人を住民基本台帳から無作為に抽出しております。

 これに対し、関係者ヒアリングは、今後の出入国在留管理行政の在り方に関する検討に資するため、広く国民の声を聞くという観点から、幅広い関係者から意見等を聴取することを目的に、令和二年度から実施しているものでございます。外国人の集住する地方公共団体等を対象に、現在までに七十件実施し、地方公共団体における課題や共生に向けた取組等について意見を聴取させていただいております。

 出入国在留管理庁におきましては、引き続き国民の皆様を始めとする様々な方の御意見を的確に把握してまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 それではお聞きしたいんですけれども、外国人比率の多い都市での意識調査や地域住民からのヒアリングというのは行う予定はありますでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 外国人との共生に関する意識調査についての今後の実施予定は現時点では未定でございますが、引き続き、御指摘のありましたような国民の皆様の考え方を的確に把握するため、必要な調査の実施については検討してまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 是非検討をして進めていただきたいと思います。

 というのも、関係者ヒアリングというのも支援団体や受入れ事業者が中心であって、一般の国民の声が十分反映されているとは思えません。

 この点、ハーバード大学の政治学者であるロバート・パットナム氏の多様性と信頼の低下の研究によりますと、人種多様化が人種間のみならず人種内でも共同体メンバー間の信頼を低下させるとの論文が発表されており、治安の悪化や分断につながったり、外国人の受入れは慎重にすべきとの意見があります。

 したがって、外国人比率の高い地域で分断が起きていないかどうかも是非とも調査していただき、客観的なデータとして集計していただきたいというふうに思います。

 次に、外国人受入れによるトータルコストについてお伺いします。

 外国人労働者の受入れには、税収増があるなどプラスがある一方で、多面的行政コストも伴います。入管行政の運用コスト、教育現場や司法の通訳の対応、自治体の支援費用、犯罪トラブル対応、医療、福祉の負担増など多面的であります。

 ここで、大臣に伺います。

 政府として、外国人受入れによって生じるトータルコストというものを体系的に試算したことはあるのでしょうか。端的にお答えください。

平口国務大臣 お答えいたします。

 外国人の受入れの基本的な在り方については、社会保障や教育等を含め、日本の経済社会等に与える様々な影響が考えられることから、多角的な観点から検討していく必要があると認識しております。

 この点、外国人の受入れの基本的な在り方に関する基礎的な調査、設計については、高市総理からも進めていくように指示を受けているところでございます。

 このような調査検討については、外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣である小野田大臣と相談しつつ、入管庁に設置したプロジェクトチームにおいて可能な限り進めてまいる予定でございます。

吉川(里)委員 今の大臣の御答弁では、コストというところの面というのは試算はしていないというような御回答の認識でよろしいでしょうか。

平口国務大臣 一概にコストといってもいろいろな局面があるものですから、そういう計算はしていません。

吉川(里)委員 それは、是非今後取り組んでいただきたいというふうに思います。

 これは、移民を受け入れてきた先進諸国では、経済社会のコストの増大を背景に政策転換が進んでいます。オランダの報告書では、福祉国家の維持と移民政策は両立困難と結論づけ、スウェーデンでは、移民、難民として受け入れた外国人に約五百万円の帰国支援金を支払う例さえあります。将来的に外国人労働者が帰化や永住して高齢化した場合にも、現状よりもコストが増大して歯止めがかからなくなるというおそれもありますので、日本も同様の検証なしに受入れを続ければ、国民負担率の増大を招きかねないと考えております。

 次に、労働者問題について伺います。

 大臣は、昨日の御挨拶で、我が国が外国人材から選ばれる国となるための制度整備を進め、特定技能制度によって長期的に産業を支える外国人材を確保していく方針を示されました。

 政府は、人手不足を理由に、二〇二四年度から五年間の特定技能の受入れ枠を、これまでの約三十五万人から、その二倍以上となる八十二万人へ拡大し、自動車運送業も追加をしました。大手運送業者や引っ越し業者が特定技能一号として外国人運転手を大量採用する方針を示し、SNSでは、安い賃金で働く人手が不足しているだけではないのかといった声が上がっております。

 ここで、大臣に伺います。

 こうした国民の声をどう受け止めていらっしゃいますでしょうか。

平口国務大臣 お答えいたします。

 人口減少に伴う人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実でございます。この点、特定技能制度による外国人の受入れは、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上で、なお人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に限って行うこととしております。

 この国内人材確保のための取組には、各分野における女性、高齢者のほか、各種の事情により就職に困難を来している者等の就業促進、人手不足を踏まえた処遇の改善等が含まれていると認識しております。

 また、特定技能制度においては、法務省令において、外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることが求められております。

 このように、日本人の労働者の待遇低下を招かないように配慮しており、引き続き制度の適正な運用に努めてまいりたいと思っております。

吉川(里)委員 今、日本人の労働賃金と外国人の労働賃金が同じでなければならないというような御趣旨の御発言がありましたが、実際、特定技能や技能実習生の外国人労働者の方の賃金は日本人よりも実態として低いというデータが出ていると思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

平口国務大臣 あくまで特定技能制度におきましては、法務省令で、外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることが求められているわけでございます。

吉川(里)委員 ただ、日本人がいないと、結局、外国人の方を受け入れるということになりますので、日本人ですら足りていない部分に外国人が入ってくると、外国人労働者の方が安い労働力として使われているというような現状があるのではないかと思いますので、私は、この点、非常に改善すべきであるというふうに思います。

 次に、経営・管理ビザについてお聞きします。

 報道では、民泊目的のペーパーカンパニーが大量に登記されている事例も指摘されています。私は、以前から、経営・管理ビザの悪用について問題視し、厳格化を求めてまいりました。経営・管理ビザが本当に日本経済に利益をもたらしているのか、調査や検証を行っているのか、端的に教えてください。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今、経済的な効果が上がっているのかという、この点につきましては、定量的にお示しすることは困難かと思います。

 その上で、在留資格の経営・管理で受け入れる外国人につきましては、本邦での起業等を通じて我が国の経済社会の活性化等に資する専門的、技術的分野の外国人として積極的に受入れを図ってきたものでございます。

 その一方で、その許可基準が諸外国の同様の制度と比べて緩く、御指摘のとおり、移住目的の方法として悪用されているなどの指摘がされてきましたほか、在留審査において事業の実態がないと判明する事案が散見されていたことも事実でございます。

 このような問題に対処するため、本年十月十六日に許可基準の改正を行ったものであって、本来の制度趣旨に沿った受入れが行われるよう、今後とも、在留資格、経営・管理の適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 経営・管理ビザ、取得要件が厳格化されたということですけれども、そもそもは、日本の経済成長と競争力強化に資する外国人材の受入れを目的とした制度であります。ですので、そもそも安い資本金で入れたこと自体も私としては疑問がありますし、経営実態のない移住目的の悪用というものは論外です。

 したがって、我が国に経済的利益をもたらすものでなければ在留資格の存在価値はないはずですので、実証が引き続き必要だというふうに考えます。

 経済界の人手不足という必要性に基づいて、一次産業や介護人材、様々な業種で外国人労働者受入れを拡大し続けておりますが、日本のことは日本人の力で回していかなければ成り立たなくなってしまうという不安があります。人手不足で実質賃金が上昇したり、人手不足に対応したイノベーションを起こしたりすることによって国力を保っていかなければならないのではというふうに考えます。

 外国人材の受入れは、産業政策、社会保障、治安、教育など省庁横断の課題となっております。労働力不足の穴埋めに偏らず、日本人雇用や社会秩序を守る観点から、横串を刺した政策立案を法務大臣に期待しておりますが、いかがでしょうか。

平口国務大臣 お尋ねの点は、外国人の受入れの基本的な在り方に関する問題と認識しております。この点につきましては、高市総理大臣から指示を受け、小野田大臣と相談しつつ、基礎的な調査検討を可能な限り進めていきたいと考えております。

吉川(里)委員 外国人の受入れを所管する大臣として、この辺りのことも他省庁と横串を通してしっかり連携してやっていただきたいというふうに思います。

 選択的夫婦別氏制度について伺います。

 今回、政府の方で、旧姓の通称使用拡大というところの方針が発表されているかと思いますけれども、今後、維新案と、与党となりますと高市案というふうになるかと思いますけれども、この辺り、どのように制度設計を行っていく予定となっているのか、大臣、お聞かせください。

平口国務大臣 連立政権の合意書に記載された旧姓の通称使用の法制化につきましては、その制度の具体的な在り方として様々な考え方がありまして、各議員の間にも様々な意見があり得るものと認識しております。

 法務省としては、男女共同参画社会の形成促進を担当する内閣府など関係省庁と連携して、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 旧姓の使用の拡大というものは、ダブルネームを認めることとなり、マネーロンダリングのような不正使用のおそれというものが指摘されておりますが、私においては、これは外国人の通名の方に関しても、ダブルネームに対する懸念も大きいと思っておりますので、この辺り、引き続き議論が必要であるというふうに考えております。

 二〇一〇年度前半は毎年数万人程度だった在留外国人の増加ペースが、コロナ禍以降には約三十万人を超え、昨年度は三十五万人を超えました。本年六月末の在留外国人の数は約三百九十五万人を超えております。

 これまでの大臣の答弁からも分かるとおり、外国人受入れに当たっては、まだまだ広く国民の声を聞けていないのではというふうに思うところもありますし、トータルコストというものも不明なままで、実質的には低賃金で働いてくれる外国人労働者をたくさん受け入れてしまっている状況があると私は思います。

 現状では労働者であっても、その後、定住、永住、帰化といった問題もあり、急速な多文化共生は、我が国の言語や文化、慣習を変容させ、先人が何千年も築き上げてきた国柄を変えてしまうような重大な事柄であり、外国人労働者を雇用した企業側の意見だけではなく、そして産業界の意見だけではなく、経済界の意見だけではなく、民意というものをしっかりと聞いていただく必要があると思っております。

 ですから、少なくとも、国民の実態、トータルコストの試算、外国人受入れによるメリット、デメリットが明らかになるまでは、私は、外国人の受入れというものは蛇口を閉めるべきであるというふうに考えております。

 我が党の党員のアンケートでも、永住及び帰化の要件を厳格化してほしい、技能実習生や育成就労制度を厳格化して受入れを制限してほしいという声も多くありました。

 外国人労働者受入れ制限を掲げる我が党が、今回、参院選で躍進をしましたが、先日のJICAによるアフリカ・ホームタウンの問題や、自動車運送業の外国人労働者受入れの件でも、非常にSNSの中で炎上をしておりました。これは、国民がこれ以上の外国人受入れに対して明確に反対の声を上げているという、この一面もしっかりと受け入れる必要があると考えます。

 今回、外国人との秩序ある共生社会の実現に関する関係閣僚会議が設置され、外国人の受入れの基本的な在り方に関する基礎的な調査検討を進めるということでありますが、先ほども申しましたように、繰り返しになりますが、一旦外国人の受入れに関する蛇口、これを閉めていただくということも検討に据えていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

階委員長 次に、島田洋一君。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 まず、不法滞在者に対する在留特別許可について伺いますけれども、例えば、二〇二三年、齋藤健法務大臣のときですけれども、不法滞在で退去強制対象となった未成年者、十八歳未満、約百四十名について、人道上の配慮から一回限りの措置として在留特別許可を付与した。それに併せて、子供だけを置いて親は本国に帰るというわけにいかないので、家族共々いてもいい、こういう措置を取られたわけですが、私は、これは非常に問題だと思います。

 子供がなれ親しんだ土地から離れて帰らないといけない、これはいろいろ小さな胸を痛ませるという面もあるでしょうけれども、例えば、日本でビジネスをしている外国人、母国の本社から帰国命令が出たら子供を連れて帰らないといけない。これは子供にとっては同じなんですよね。あるいは、日本人で海外でビジネスをしている人が日本に帰らないといけない。子供も一緒に帰ることになる。現地の友達なんかとは別れないといけない。

 しかし、流動性のある社会ではこれは当たり前の事実であって、人道問題でないことは確かなわけです。それが、子供さえ産んでしまえば不法滞在者であっても日本におれるんだとなれば、アメリカで頻発しているように、臨月に近い女性がやってきてそこで産む、そうしたら、法執行当局も甘く見て、家族共々いられる、こういう抜け穴を作っちゃう。

 あるいは、もっとひどいケース、これもアメリカで頻発していますけれども、子供がいたらアメリカが甘く対応してくれますよというので、他人の子供をあっせんするブローカーがいたりして、子供を連れてメキシコから例えばアメリカに入ってくる、子供は邪魔だから放置されるというような、そういうケースが頻発している。

 ということで、私、昨年、この場で当時の鈴木馨祐法務大臣に対して、これは齋藤法務大臣は一回限りの措置と言われたんだけれども、鈴木さんはこれを繰り返すことはないんですかと聞いたところ、鈴木さんははっきりと、これは一回限りですから繰り返すことはございません、こう答弁されました。

 そこで、まず確認しますけれども、鈴木大臣の任期中に、齋藤健大臣がやったような在留特別許可を未成年者に出すということはなかったんでしょうか。

平口国務大臣 御指摘の対応方針は、改正前の入管法の下で迅速な送還を実現することができなかった子供のうち、本邦で出生するなど一定の要件を満たす者について、家族一体として在留特別許可をする方向で検討するというものでございました。

 この対応方針についてはこのとき限りのもので、その後、前法務大臣である鈴木さんのときも含めて、一度も行ってはおりません。

島田(洋)委員 じゃ、一応確認しておきますけれども、平口大臣の任期中には、こういう齋藤さんがやられたような特別在留措置はやらないということを明言されていいんでしょうか。

平口国務大臣 お尋ねの対応方針については、そのとき一回限りのもので、今後繰り返し行うことは考えてございません。引き続き適切に対応してまいりたいと思っております。

島田(洋)委員 では、次の問題に移りたいと思うんですけれども。

 二〇二三年ですけれども、安倍元首相の暗殺に関して、法政大学教授の肩書を持つ島田雅彦氏という方が、インターネット番組で、安倍さんの暗殺が成功してよかったというとんでもない発言をしておる。

 これは、今年、数か月前ですけれども、アメリカでチャーリー・カークという保守系の言論人が暗殺された。それに対して、この島田雅彦氏と同じように、暗殺が成功してよかったとか、そういう発言をした大学教員とか、あるいはニュースキャスターとか、次々解雇されているんですよね。ところが、日本ではそうなっていない。

 しかも、法政大学がこの人物を処分しないというのは問題だと思うんですが、その法政大学に我々の税金から毎年三十億円、私学助成金が払われている。これは国家が暗殺を奨励しているようなことにもなるんじゃないですか。暗殺を礼賛した人物を雇い続けている大学に我々の税金から毎年三十億円、出していいんですか。文科政務官に聞きます。

福田大臣政務官 お答えいたします。

 個別の大学の教員の発言について詳細は承知しておりませんが、殺人やテロ行為を礼賛するような言動は適切な発言ではないと考えております。

 その上で、一般論として申し上げますと、学校法人内の教員の配置などの人事の内容については、各学校法人において判断されるものであると考えております。

 また、私学助成については、学校法人の内部統制、ガバナンスの機能不全などが生じているなど、管理運営などに適正を欠くと判断された場合に、当該学校法人に対して減額して交付することとしております。

 このため、御指摘の事案のような、個別の教員の発言のみによって、直ちに当該法人が私立学校振興助成法の減額事由などに該当するとは考えておりません。

島田(洋)委員 では、今後、別の大学の教員等が安倍さんの暗殺はよかったと発言しても、文科省はこれを黙認するんですか、放置するんですか。

福田大臣政務官 仮定の質問について、詳細を存じ上げないため、適切にお答えできる部分も限られておりますが、一般論として申し上げますと、個別の教員の発言のみによって、直ちに当該法人が私立学校振興助成法の減額事由などに当たるかどうか判断することはございません。

島田(洋)委員 個別の教員の発言といっても、その辺のどうでもいいような発言を問題にしているんじゃないんですよ。元首相の安倍さんが暗殺された、これはとんでもない話でしょう。暗殺されてよかった、こういう発言、これは問題を感じないんですか。

福田大臣政務官 先ほどお答えいたしましたとおり、殺人やテロ行為を礼賛するような言動は適切な発言ではないと考えております。

 その上で、学校法人内の教員の配置などの人事の内容については、各学校法人において判断されるべきものであると考えております。

島田(洋)委員 これは全く納得できない発言ですけれども。

 例えば、じゃ、日本大学のアメフト部で部員が大麻を吸っていたという事件がありました。そういうことを理由にして、日大には年間九十億円出されていた私学助成金、五年間連続で止められているんですよ。

 部員が大麻を吸っているという事件と安倍さんが暗殺されてよかったという発言、どっちが問題なんですか。

小林政府参考人 失礼いたします。

 日大の件について、事実関係を少し補足させていただきます。

 日大の件は、元理事長の逮捕、これは所得税法の違反だったかと思いますが、それとガバナンス不全、これは先生が御指摘になりました薬物事案への対応ということで、組織全体としての問題があったということで、現在、私学助成が不交付となっております。

島田(洋)委員 これは、文科省の幹部の方、自民党の議員でもある方が、安倍さんが暗殺されてよかった、こういう発言に対して税金からお金を出すことに問題意識を感じないというのは信じ難いんですが、これは自民党でも、ちょっと木原さん、問題にしてください。

 それで、大臣はどうなんですか。安倍さんが暗殺されてよかったという発言をするような教員を雇い続ける、そこに税金から毎年三十億円出していいんですか。

平口国務大臣 所管外のことでございますので、お答えが不可能でございます。

島田(洋)委員 こういうのに常識をもって答えられないという大臣の認識、姿勢に強い人格的疑問を持たざるを得ないんだけれども。

 自民党はそういう態度なんですか。これは非常に不思議ですけれども、皆さんが大変お世話になった元首相が暗殺された。それをよかったという発言をしている人間が大学教員として教鞭を執っておるところに税金を毎年三十億円出しているんですよ。これは一体、どういうふうに説明するのか。

 では、もう一回だけ聞きますけれども、文科政務官、これは考え直す気はないんですか。

福田大臣政務官 繰り返しのお答えとなってしまいますが、殺人やテロ行為を礼賛するような言動は適切ではないと考えております。

 その上で、学校法人内の教員の配置などの人事の内容については、各学校法人において判断されるべきものであると考えております。

島田(洋)委員 ここは木原さんに質問する場ではないんですけれども、これはやはり自民党としても考えてもらいたいと思います。

 それから、ちょっとさっきの問題に戻るんですけれども、外国人の不法滞在者に関することですけれども、医療費の不払い、踏み倒し、これも相当深刻化してきています。

 そこで、医療費を不払いしている外国人の不法滞在者、外国人一般と言ってもいいんですが、あるいは国民健康保険滞納者に対して、新規入国申請、これを不許可にするとか、こういう措置は取っておられるんでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 医療費の不払いにつきましては、令和三年五月から、厚生労働省において医療費の不払いの経歴がある短期滞在者に係る情報を収集し、出入国在留管理庁が当該情報の提供を受けることで、医療費の不払いの経歴がある外国人旅行者を把握し、医療費を払わなかった外国人に対する再来日時の入国審査を厳格に行っております。

 この仕組みについて、対象を短期滞在者から中長期在留者へも拡大し、在留審査にも活用することなどについて現在検討を進めているところでございます。

 他方で、国民健康保険料の納付状況につきましては、特定技能等の一部の在留資格で在留審査時に確認しているものの、その確認につきましては電子化されていないほか、その他の在留資格につきましては納付状況を把握しておらず、適正かつ合理的な在留管理を実施する上で課題となっておりまして、こうした課題に対応するため、在留審査等における未納付情報等のより一層の活用やマイナンバー等を活用した適時適切な情報連携について、出入国在留管理庁及び関係省庁において検討を行っているところでございます。

 国保料のマイナンバー連携につきましては、厚生労働省と連携し、令和九年六月からの運用開始に向けて準備を進めているところでございまして、未納が判明し、申請者が納付勧奨にも応じない場合には、原則として不許可とする方向で検討しているところでございます。

島田(洋)委員 関連なんですけれども、外国人の入国者に対して民間医療保険への加入を義務づけるというのが方向として打ち出されていますけれども、その加入状況はどの程度なんでしょうか、今。

階委員長 最後の答弁となります。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現状では、我が国を訪れる外国人旅行者について、民間医療保険に加入していることは上陸のための条件とはなっておりません。入国前における外国人旅行者の民間医療保険への加入の検討につきましては、令和七年十一月四日付の内閣総理大臣の指示に基づき、関係省庁において検討を行っているものと承知しております。

島田(洋)委員 じゃ、是非急いでください。

 これで終わります。

     ――――◇―――――

階委員長 次に、内閣提出、更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。平口法務大臣。

    ―――――――――――――

 更生保護制度の充実を図るための保護司法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平口国務大臣 更生保護制度の充実を図るための保護司等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 更生保護制度は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会の中で適切に指導や支援を行うことにより、再犯を防ぎ、非行をなくし、これらの者の自立と改善更生を助け、もって個人及び公共の福祉を増進することを目的としています。

 近年、人と人とのつながりが希薄化し、孤独、孤立が深刻化している社会において、この目的を実現していくためには、更生保護の活動をより一層充実強化し、切れ目のない継続的な指導や支援を行っていくことが急務であります。

 そして、保護司は、地域社会において、犯罪をした者等の指導や支援を行い、また、犯罪予防活動を行うなど、我が国の更生保護において中核的な役割を担っています。

 しかし、社会環境の変化等に伴い、保護司の担い手の確保が次第に困難となっており、その高齢化も進み、また、保護司がその活動中に犯罪被害に遭う事案も発生しています。

 こうした状況に対応するため、保護司の安全確保を含めた持続可能な保護司制度の確立を始めとし、更生保護制度の充実を図るための法整備を行うことが喫緊の課題となっています。

 そこで、この法律案は、以上に述べた情勢に鑑み、保護司法、更生保護事業法及び更生保護法の一部を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、幅広い世代から多様な保護司の担い手を確保するための規定の整備を行うものです。すなわち、保護司の委嘱条件等を現代に求められる保護司像に即したものに見直すとともに、保護司の推薦を行う保護観察の長が、保護司の職務に関する広報の実施や、関係機関の協力を得ることに努めるものとし、また、保護司に委嘱された者がより長く安定的に活動できるよう、その任務を延長するものです。

 第二は、保護司の活動環境を改善するための規定の整備を行うものです。すなわち、保護司の活動拠点として保護司会が運営する更生保護サポートセンターを法定し、保護観察所の長が、保護司会等に対して必要な支援を行うものとするとともに、地方公共団体が、保護司や保護司会等の活動に対して必要な協力をすることに努め、また、保護司を従業員として雇用する民間事業者が、保護司の活動のための休暇を取得しやすい環境等を整備することに努めなければならないこととするものです。

 第三は、保護司が安全に安心して活動できるようにするための規定の整備を行うものです。すなわち、保護司が保護観察対象者等と面接をするのに適当な場所を確保することを国の責務とするとともに、保護司が面接場所を柔軟に選択できるよう、その職務の執行区域を弾力化し、また、保護観察対象者の有する再犯リスクや特性に応じ、保護観察官と保護司が適切に役割を分担できるよう、保護観察所の長が、保護観察対象者が犯罪に至った要因をより的確に把握するための措置を講ずることとするものです。

 第四は、更生保護制度をより一層機能させるための規定の整備を行うものです。すなわち、生活環境の調整を行う対象者や、更生保護事業における保護の対象者の範囲を拡大するとともに、地方公共団体が、更生保護の諸活動や更生保護事業に対して必要な協力をすることに努めなければならないこととするものです。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

階委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会


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