衆議院

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第2号 令和6年3月13日(水曜日)

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令和六年三月十三日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      井野 俊郎君    上杉謙太郎君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      金子 俊平君    黄川田仁志君

      塩谷  立君    島尻安伊子君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      武井 俊輔君    中川 貴元君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    穂坂  泰君

      本田 太郎君    宮路 拓馬君

      佐藤 公治君    末松 義規君

      松原  仁君    鈴木  敦君

      徳永 久志君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   内閣官房副長官      村井 英樹君

   内閣府副大臣       古賀  篤君

   外務副大臣        辻  清人君

   外務副大臣        柘植 芳文君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   外務大臣政務官      穂坂  泰君

   農林水産大臣政務官    高橋 光男君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣官房経済安全保障法制準備室次長)      品川 高浩君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          七澤  淳君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     木村 公彦君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 仁威君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         金子万里子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 濱本 幸也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局南部アジア部長)      中村  亮君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       堀内 俊彦君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片平  聡君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           笹路  健君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            坂本 大祐君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     高木  啓君

  武井 俊輔君     井野 俊郎君

  宮路 拓馬君     尾身 朝子君

  小熊 慎司君     末松 義規君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     武井 俊輔君

  尾身 朝子君     宮路 拓馬君

  高木  啓君     本田 太郎君

  末松 義規君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     金子 俊平君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     中川 貴元君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     高村 正大君

    ―――――――――――――

三月十三日

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長志水史雄君、大臣官房審議官中村仁威君、大臣官房審議官北村俊博君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房政策立案参事官金子万里子君、大臣官房参事官濱本幸也君、大臣官房参事官宮本新吾君、総合外交政策局長河邉賢裕君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北川克郎君、アジア大洋州局南部アジア部長中村亮君、北米局長有馬裕君、欧州局長中込正志君、中東アフリカ局長安藤俊英君、中東アフリカ局アフリカ部長堀内俊彦君、経済局長片平聡君、国際協力局長石月英雄君、領事局長岩本桂一君、内閣官房内閣審議官平井康夫君、経済安全保障法制準備室次長品川高浩君、内閣情報調査室次長七澤淳君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長木村公彦君、出入国在留管理庁出入国管理部長君塚宏君、農林水産省大臣官房審議官笹路健君、経済産業省通商政策局通商機構部長柏原恭子君、防衛装備庁装備政策部長坂本大祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属、鈴木庸介と申します。よろしくお願い申し上げます。

 突然食事の話で申し訳ないんですけれども、私はタコが大好きで、よくタコを食べるんですけれども、御案内のように、日本のタコの七割がモロッコとモーリタニア、この辺りのいわゆる西アフリカ諸国から来ているというところで、そんな話を先日ある居酒屋でこの地域の研究者の方と話していたんですけれども、その方いわく、西サハラに行くと、向こうでもかなり中国の存在感が強くて、今、日本は、どちらかというと、モロッコと一緒にイスラエルとアメリカべったりだというようなイメージを持たれている、そうすると、サハラ・アラブ共和国、地域紛争がありますけれども、ここが万が一独立したときに、この辺りの資源アクセスにかなり支障を来すのではないかというような指摘をいただきました。

 今日は、そうした問題意識の中で、西サハラの問題から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、外務大臣にお伺いをいたします。

 この西サハラに限らず、アフリカ外交全般に対しての日本と中国のアプローチの違いというところについてどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

上川国務大臣 今、世界におきましては、グローバルサウスの国々が大きな存在感を示している状況でございます。その一角を成しますアフリカ諸国との連携強化につきましては、我が国の経済安全保障面におきましても国益にかなうものと考えておりまして、さらに、国際社会におきましての分断と対立の動きを協調へと導くものとも考えているところであります。

 その際、各国の直面する課題や現状に応じまして、きめ細やかな対応が重要と考えております。債務状況を無視した過剰融資、依存関係を高めた上での経済的な威圧、こうした手法は各国の長期的な健全な成長にはつながらないと考えております。

 我が国は、TICADを立ち上げまして、アフリカ自らが主導する開発を支援していくとのオーナーシップとパートナーシップを重視する精神によりまして、この三十年間、共に取り組んでまいりました。

 我が国といたしましては、引き続き、共に成長するパートナーとして、TICADで打ち出してきた人に着目したアプローチ、グリーン投資、スタートアップ支援など、日本らしい取組を通じアフリカ外交を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 御案内のように、この西サハラの問題なんですけれども、モロッコとポリサリオ戦線の間で領有権について争われておりまして、前はこれにモーリタニアなども加わっていたわけでございますけれども、ポリサリオ戦線のつくるサハラ・アラブ民主共和国というのは、西サハラの三割程度ですけれども、実際に支配しているわけです。これは、実効支配というよりは、一方的に独立宣言をしているというものではなくて、AUの多くの国もここを国家として承認している、サハラ・アラブ共和国が隣国アルジェリアからの強い支援を受けているという現状がございます。

 このアルジェリアに長年アプローチしてきたのが中国で、関係はアルジェリアがまだフランスとごたごたやっている一九五〇年ぐらいから続いているんですけれども、二〇一四年には包括的戦略パートナー、去年には、習近平さんとアルジェリアのテブン大統領が、安全保障や国防など、ほかの分野でも協力を強化して、両国関係の一層の強化を図るということで合意しております。相互に中核的な利益を支援して、主権と領土保全を確保するということで一致している。べったりという感じなんですけれども、このサハラ・アラブ共和国に対する日本の姿勢というのは一体今どうなっているんでしょうか。

安藤政府参考人 我が国は、いわゆるサハラ・アラブ民主共和国を承認していない、こういう立場でございます。したがって、外交関係も存在していない状況でございます。

 いずれにいたしましても、西サハラ問題については、国連の枠組みの下、当事者間の協議により平和裏に解決されることが重要という立場でございます。

鈴木(庸)委員 承認していない、かつ外交関係もない、国連の枠組みということなんですけれども、そんな中、二〇二〇年には、トランプ大統領がモロッコとイスラエルが国交正常化で合意したと発表して、アメリカはその引換えに、領有権の続いている西サハラに対してモロッコの主権を認めているわけです。これに対してポリサリオはもちろん猛反発したんですけれども、承認もしない、外交関係もない、国連の枠組みでやってくれという今の姿勢を伺うと、日本はモロッコ、アメリカ、イスラエルの考え方に連なるところになってくるかと思うんですけれども、以前、実際に、サハラ・アラブ共和国に対して、数年前に質問主意書を出した方がいらっしゃって、そのとき、この地域に日本人は一人しかいないということだったんです。

 今の話の流れの中だと、外交チャンネルが全くないという理解でよろしいでしょうか。

安藤政府参考人 先ほどお話ししましたとおり、我が国はいわゆるサハラ・アラブ民主共和国を承認しておらず、したがって外交関係も存在しないわけでございますけれども、西サハラ問題について、国連の枠組みの下、当事者間の協議により平和裏に解決することが重要という立場から、その取組を後押しするような実務的なやり取りは行っておりますけれども、詳細については差し控えたいと思います。

鈴木(庸)委員 詳細は差し控えるとおっしゃっていますけれども、御案内のように、選挙の方は全然進んでいないというのがあると思うんですけれども、この地域は、最初に申し上げたようなタコだけじゃなくて、多くの漁業資源とか、リン鉱石とか、多くの鉱物資源もある地域でもございます。

 今局長からもお話がありましたけれども、選挙でいろいろ決めようみたいな話があって、国連も入っていますけれども、小康状態になっているところなんですけれども、逆に、これから更に不安定にとか、さらには、逆に、不安定化が安定してきたときに、チャンネルがないと、鉱物資源等にもタコにもアクセスができなくなってしまうのではないかと私は個人的にも大変不安を持っているんですけれども、この資源アクセスという視点についてどのようなお考えを持っていらっしゃいますでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の資源アクセスの関係ですけれども、日本企業による経済活動のためには、現地での衝突を含む治安状況の改善が必要であるというふうに認識しております。

 まさに、そのためにも、西サハラ問題については、国連の枠組みの下、当事者間の協議により平和裏に解決されることが重要という立場でございまして、我が国としては、国連による仲介努力を支持しているところでございます。

鈴木(庸)委員 同じような答弁になってしまうかと思うんですけれども、最後に西サハラのところで伺いたいのは、中国が本当に長く、こつこつこつこつアフリカ外交をやっているわけです。御案内のように、アジアが発展し尽くした後、最後に残るのはアフリカだと思うんですけれども、こうした現状を見ると、西サハラだけ見てもかなり差し込まれているのかなという気がしております。

 アメリカに歩調を合わせるのは理解するんですけれども、特にアフリカについては、日本独自の外交、バランス外交について進めていただきたいと思うんですが、これについての大臣の所見をお知らせください。

上川国務大臣 アフリカの成長力については、極めて注目をして外交としても取組を進めております。

 特に、北アフリカ地域におきましては、先ほど委員から御指摘がありましたように、豊富なエネルギー資源の地域でございますし、また、欧州とサブサハラ諸国をつなぎますアフリカ市場のゲートウェーの位置を占めているところでございます。エネルギー安全保障、まさにそうした面、あるいは国際貿易、物流、こういった観点からも重要であると考えております。

 アルジェリアにつきましては、天然ガスや石油の供給拠点である一方、モロッコにつきましては、特に若年層を中心とした豊富でかつ安価な労働力を生かして外国投資を積極的に呼び込んでいるという状況にもございます。

 北アフリカや中東をめぐる問題につきましては、なかなか難しい民族の問題あるいは歴史上の問題が絡まっている状況でございまして、日本は、一九五六年にモロッコ、また、一九六二年にアルジェリアを、いずれも独立後速やかに承認するとともに、これまで、独自の協力や支援を通じまして、各国との間におきましては、友好で、また信頼関係を築いてきたところでございます。

 そのような中にありまして、委員御指摘の西サハラの問題でございますが、先ほど答弁いたしましたとおり、我が国は、国連の枠組みの下におきまして、当事者間の協議によりましての平和裏の解決ということについて重要と考える立場でございまして、その意味で、国連による仲介について支持してきたところであります。

 こうした立場に立ちまして、また、大きなアフリカ外交という中におきましても、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 是非、バランスを取りながら、我々の国益を考えて頑張っていただければと思います。

 次に、タイムリーな話題ですので一つだけ伺いたいんですが、ロシアであさってから行われる大統領選挙ですけれども、ロシアが占領しているウクライナの地域でも選挙が行われるとされていますけれども、ウクライナは疑似選挙だと主張しております。この地域で行われる選挙とロシアが主張しているものについての日本政府の見解を改めて伺えますでしょうか。

上川国務大臣 三月十五日から十七日に予定されておりますロシアの大統領選挙につきましては、ロシアは、自ら違法に併合したウクライナ国内の地域におきましても、いわゆる大統領選挙を実施するとしているところであります。

 そもそも、ロシアによるこれらの地域の自国領への併合は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明らかな国際法違反でありまして、更に言えば、関連の国連総会決議とも相入れないものであって、決して認められるものではないと考えております。

 また、ロシアがこれらの地域でいわゆる大統領選挙を実施することも、同様の理由により、決して認められないと考えております。

 この点につきましては、先月でありますが、G7の首脳テレビ会議の際に、G7の首脳声明におきましてもこの旨を確認したところでございます。

 引き続き、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するべく、我が国といたしましては、G7を始めとする国際社会と連携いたしまして、厳しい対ロ制裁と同時に、強力なウクライナ支援にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 国際法違反には毅然とした態度で引き続き取り組んでいただければと思います。

 ただ、大統領選挙の結果でプーチン氏が勝って、一応民主的に選ばれた大統領という理屈が立つと、ウクライナにも影響を及ぼしてくると思うんですけれども、ウクライナが抱えている問題の一つに穀物輸出の問題があると思います。

 ロシアが本格的な侵攻を開始する前まで、ウクライナは年間六千万トン以上の穀物を輸出していて、経済のほぼ中心と言っても過言ではなかったと思います。ウクライナの輸出収入の四〇%でもありましたし、雇用の一四%も穀物が供給していたことになるわけですね。

 勃発する前までは、特に、小麦、大麦、トウモロコシ、ヒマワリ油の九〇%が黒海の港を通って出航していたということなんですけれども、それが侵略によって黒海からの輸出が厳しくなって、黒海穀物イニシアティブということになってくるわけなんですが、黒海穀物イニシアティブの概要と、あれからしばらくたって、現在の黒海の状況について御説明願えますでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 黒海穀物イニシアティブでございますが、二〇二二年七月の発足以降、黒海を通じて約三千二百万トンの穀物等の食料をグローバルサウスを中心に世界各地に届け、世界の食料不安の解消と食料価格の安定化に貢献してまいりました。

 こうした中、昨年七月、ロシアが黒海穀物イニシアティブを一方的に終了させたことは極めて遺憾でございまして、日本を含む多くの国が様々な場で、食料を武器化するロシアの行動を強く非難しております。

 終了後の黒海の状況でございますが、黒海の防衛が強化された結果、ウクライナ産の穀物等の輸出は侵略開始前の水準まで回復しつつあるとの報道もあると承知しておりますが、政府として、事実関係の把握に努め、情報分析を鋭意進めているところでございます。

 引き続き、黒海からの穀物輸出の状況を注視し、とりわけ途上国などの最も脆弱な人々の食料安全保障を危うくする事態をもたらすことがないよう、国際社会と緊密に連携してまいりたいと思っております。

鈴木(庸)委員 穀物をめぐっては日本も支援していると思うんですが、ソマリアへ支援していると思うんですが、その御説明をいただけますでしょうか。

堀内政府参考人 令和四年十一月、日本政府は、ロシアによるウクライナ侵略の影響による小麦価格等の高騰により深刻な食料危機に直面するソマリアに対して、一千四百万ドルの緊急無償資金協力を実施しました。本支援は、ウクライナ政府から無償で供与されたウクライナ産小麦を国連世界食糧計画、WFPを通じてソマリアに輸送し、現場への配布を行うものです。

鈴木(庸)委員 ソマリアだけじゃなくて、中東、アフリカ諸国を対象とした食料関連支援もしていると思うんですが、そちらの御説明もお願いできますでしょうか。

片平政府参考人 日本は、ロシアによるウクライナ侵略の影響を受けて悪化しているグローバルな食料安全保障への対応としまして、二〇二二年七月及び二〇二三年三月に、中東及びアフリカ諸国等において合計約二・五億ドルの食料関連支援を決定し、実施してきているところでございます。

鈴木(庸)委員 もうちょっとディテールを教えていただきたかったんですけれども、まあいいです、いいことをやっていると思うんです。

 黒海からの穀物の輸出が開戦前の水準にほぼ戻っているということで、ただ、ここで例の連帯レーンの問題があると思うんです。

 連帯レーン、皆さんには釈迦に説法ですけれども、黒海からの輸出がうまくいかなかったときに、EUがウクライナの穀物に関税をかけないでポーランドなどを通じて西ヨーロッパなど諸外国に穀物を持ってくるという中で、結局、輸送のときのキャパシティーとか貯蔵の問題から、穀物がポーランド国内でかなり滞留して、その一部がポーランドの市場に流通してポーランドの穀物価格を下げて、ポーランドの農業をしていらっしゃる皆さんが困って、これ以上持ってくるなと閉鎖する。映像で御覧になった方も多いかと思うんですけれども、鉄道の線路に穀物をだあっと流すような、そんな事態となっております。

 この連帯レーンについて、日本政府は、令和四年七月の段階ではこの連帯レーンを支持するとしているんですけれども、この状況が今変わってきているんですが、今、この連帯レーンについてはどのような見解を持っていらっしゃいますでしょうか。

片平政府参考人 ロシアのウクライナ侵略によって引き起こされた食料価格の高騰と一部の供給途絶は、世界中の特に脆弱な層による食料へのアクセスに大きな影響を及ぼしておりまして、こうした状況への対処としまして、日本は、ウクライナからの穀物等の食料輸出を促進するための国際的な取組を支持してきたところでございます。昨年五月のG7広島サミットにおいて発出したウクライナに関するG7首脳声明などでも、ウクライナからの穀物等の食料を輸出するEUの連帯レーンの取組を支持してきているところでございます。

 委員御指摘のありましたとおり、ウクライナ産食料の輸出をめぐり、周辺国で様々な反応や、ウクライナと周辺国の間で様々なやり取りがあるということは承知しておりますが、今後の事態の推移を注意深く見守ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 引き続き、基本的には支持する、そういう理解でよろしいということですね。ありがとうございました。

 日本として、いろいろ復興、復興となってきている中で、今後、ウクライナ産業の根幹を成す、根幹を成すといっても、農地の三割は既に地雷等々で使えないというような指摘もあるんですけれども、外交的、経済的には今後どんなサポートができると考えていらっしゃいますでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ支援を行っていくに当たりまして、御指摘のとおり、ウクライナにとって非常に重要な産業でございます農業分野、穀物産業に注目した取組を行っていくことは重要というふうに我々は考えているところでございます。

 これまで、政府といたしましては、ウクライナにおける農業の生産力回復のため、種子の配布であるとか、あるいは、もちろん今御指摘がございました地雷対策も重要でございます。それから、研究機材の供与、農業分野の関係者を日本に招聘する、こういった様々な取組を行ってきているところでございます。

 それから、先日二月十九日に日・ウクライナ経済復興推進会議を開催いたしましたけれども、この際に、岸田総理から、大いなる潜在性を有するウクライナの経済成長につながる経済復興、産業高度化に向けて、農業等、第一次産業を含む網羅的な経済発展を目指し、官民一体となって強力に支援する考えを表明したところでございます。

 この機会に日本とウクライナの間でいろいろな協力文書を署名いたしましたけれども、農業分野におきましても、日本の民間企業も関わる形で複数の協力文書を署名したということでございます。

 今後も、農業分野も含めまして、実施した支援のフォローアップを行うとともに、ウクライナ政府を始めとして関係機関と密接に連携して取組を進めていきたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(庸)委員 今の御答弁の中でも、官民一体となってとか農業分野の協力ということがあったんですけれども、当然、これからもっと多くの日本人がウクライナに行くと思うんですけれども、ここでウクライナの日本大使館のお話をさせてください。

 ある親子がいました。お母様と子供二人です。この外務委員会で紹介していいという話だったのでいいんですけれども、ウクライナの家族なんですけれども、どうしても日本に行きたかったというところで、まず、ウクライナのキーウの日本大使館に行ったら、ここでは管理できない、一切書類は受け取らないので、ポーランドに行ってくれと言われたわけですね。それで、家族そろって一生懸命電車に乗ってポーランドまで行きました。そこで書類を提出したんですけれども、またキーウに戻ってきました。キーウに戻ってきたら、今度は面接に来てくださいと。またポーランドまで行ったわけですね。またポーランドまで行って、そしてポーランドからまた戻ってきて、今度はビザを出しますからといって、またポーランドへ。要は、ポーランドまで三回行っているわけですね。

 何を申し上げたいかというと、まず、僕は、最初にその話を聞いたときに、結局、彼らが来て補完的保護対象者になって定住者ビザとなると日本の負担が増えるから、組織的にある程度抑えようとしてやっているんじゃないのかなと勘ぐっちゃったんですけれども、そういうことではないらしいと。ただ純粋に体制の問題ということで伺ったんですが、現在のキーウの日本大使館の体制はどのようになっていますでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年三月に、ロシアのウクライナ侵略を受けましてキーウの情勢が緊迫化したことを受けまして、我が方のウクライナ大使館を一時閉鎖いたしましたけれども、その後、十分な安全対策を講じることによりキーウにおいて大使館業務を行うことは可能と判断して、令和四年十月に大使館を再開してございます。

 その後でございますけれども、キーウにおきまして、必要な安全対策を講じるとともに、業務遂行に必要な人員体制を構築しまして、ウクライナ政府関係者や各国大使館関係者との意見交換、調整、邦人の保護業務、情報収集等を行ってきている、こういう体制になっているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(庸)委員 全く具体性のない答弁をいただいているんですが、要は、機能していないという指摘が一部でございます。

 ウクライナ人に対してビザをどうこうというのはいいんですけれども、日本人がこれから大量に行く可能性があるわけです。もうJICAの事務所がキーウにできていて、二人働いていらっしゃる。先日のウクライナ復興会議、今御答弁にもありましたけれども、これからかなりいろいろな支援等も始まる中で、今後は、条件付だとしても、間違いなく往来は増えていくと思うし、領事業務も出てくると思うんですね。

 質問取りのときも伺ったんですけれども、サイレンが鳴っている、危ないので行かせられないというのは、理屈は分かりますよ。ただ、私の理解では、ウクライナの国内法では、ロシアからミサイルが飛んできたときに、賠償責任があるのは、例えば、お店にミサイルが飛びます、そうしたら、お店のオーナーが建物の所有者に対して賠償責任を負う。なぜかというと、サイレンが出たのに店を閉めずにお店に人をいさせたから。そういう国内法の仕切りになっているらしいですね。

 済みません、ここは一〇〇%の確認ではないですけれども、いろいろな方に聞くと、それなので、サイレンが鳴ると、すぐに店から出して皆さんは地下のシェルターなり地下ごうに行ってもらう。そういうような形でみんなサイレンが鳴ったら逃げている、店も閉めるということなんですけれども、言い方を変えれば、要は、警報が鳴ったら、領事業務の途中でも、ウクライナの人たちは出て地下に行ってくださいと言えばいいだけの話であって、退避してもらえばいいだけの話だと思うんです。

 もっと言えば、ただでさえ生活が苦しい人たちにポーランドの大使館まで三回も往復させる。また、伺ったら、大使館同士をオンラインでつないでインタビューなり面談をしてはいけないという規定もないわけです。

 そう考えると、例えば、キーウの大使館と、ワルシャワでもどこでもいいんですけれども、ポーランドをつないでオンラインで面接をするとかいう形にして少しでも負担を減らすというようなことについても、今後、日本人がもっと来るとなると必要な検討なのではないかと私は考えております。

 キーウの大使館の再開についても、先ほどおっしゃいましたけれども、日本はG7で最後でした。かなり遅れました。私もおととし現地に行って怒られましたけれども、外交官の皆さんも、国内にいないと取れない情報があるということは重々御承知のことだと思うんです。

 ですから、重ねてですけれども、ウクライナ復興が本格化してきて、JICAの現地事務所、いろいろな商社の方とかがいらっしゃる中で、引き続き、警報が鳴っているからといって同じ体制でいくんでしょうか。それとも、これからどこかで変えようという考えがあるんでしょうか。

岩本政府参考人 まず、委員御指摘の領事窓口での問題でございますが、これは、委員御指摘の点も踏まえまして、引き続き、何ができるか検討してまいりたいと思っております。

 その上で、今、ウクライナの危険情報の関係でございますけれども、これにつきましては、引き続き、全土にいわゆる退避勧告というものを出しております。

 一方で、先月、ウクライナの復旧復興のために関与が不可欠な民間企業、団体等から、キーウ市への渡航の必要について強い要請が寄せられておりましたので、このことに鑑みまして、真にやむを得ない事情でキーウ市に渡航する必要がある場合には十分な安全対策を講じていただくということについて、この危険情報の内容を一部改定させていただいたところでございます。

 今後も、引き続き現地の情勢をしっかりとフォローしながら、我々の対応につきましても適切に判断していきたい、このように考えております。

鈴木(庸)委員 是非、現地に出張した日本人の皆さんが困らない程度の体制だけは最低限整えておいていただきたいと思います。

 次に、ビザの扱いについて伺わせてください。

 インバウンド観光で最も効果のあることはビザの発給要件の緩和ということに疑いの余地はないと思うんですけれども、その視点からいくと、インドネシア、タイ、マレーシア、こうした国に対して査証免除になった後、観光客が飛躍的に増えたというのは御案内のとおりかと思います。しかし、同じように経済が発展して富裕層が急激に増えているフィリピンについてはまだ実施されていないということになってくるわけです。

 まず、大臣に伺わせてください。フィリピン経済に対する今の御認識はいかがでしょうか。

上川国務大臣 フィリピンでございますが、コロナ禍を除きまして、今、経済成長は大体六から七%台ということでございまして、上位の中所得国入りを目指している状況でございます。二〇五〇年まで人口ボーナス期が継続する見込みであるということなどがございまして、経済面におきましても存在感を高めていると認識しております。

 また、現在、千四百社を超えます日系企業がフィリピンに進出しておりまして、フィリピンの経済発展は日本にとりましても大きな経済的なチャンスとなっている状況でございます。

鈴木(庸)委員 私も一月に行ってみて現地を見たんですけれども、多くの皆さんのイメージだと、まだ、ホステスを送り出してきた貧しい国というイメージの方も日本全体ではいるかと思うんですけれども、大臣から今おっしゃっていただいたように、千四百社が進出しているとか、経済発展がこれからもかなり進むのは間違いないと思います。

 私も、どこに行けばフィリピンの経済発展が一番見られますかという話をいろいろしたら、ディスコに行けと言われたんですね。年がいもなく行ってみたんですが、フィリピンは一人当たりのGDPが年間三千五百ドル程度なんですけれども、今、いいところは入場料だけで四千円するんですね。中へ入ると、テーブルを取るのは五万円からで、それこそドンペリのゴールドとかがぼんぼんぼんぼんいろいろなところで開いている。

 日本航空のマニラ支店長とも情報交換させていただいたんですが、今JALのマニラ便に乗る方の九割がフィリピンの方でいらっしゃるということなんですね。それで、ほぼ満席。

 こういうフィリピンの経済発展を他国も見逃していなくて、例えば、日本の観光のライバルとされるタイとか台湾とか、こうしたところは早々にフィリピンからの査証免除を実施しています。査証免除に応じて多くのフィリピン人の観光客の皆さんもこうした場所を訪れているということなんですけれども、観光というのは短期で成果の出る日本に残された数少ない成長産業だと思っておりますので、フィリピンの査証免除というのは、起爆剤とまではいかないとは思うんですけれども、ある程度の潤いを日本の経済にもたらすのかなと思っております。

 ただ、今、もし日本に観光で来ようとすると、現地の代理店に申請するんですけれども、必要書類も、出生証明書とか預金残高証明書とか滞在中の計画云々と、書類作成でうんざりしてしまって、出されるのも一週間から三週間程度もかかってしまうということなんです。

 そうした状況も踏まえて、外務省さんに伺いたいんですが、フィリピンの査証免除について今検討はなされているんでしょうか。

中村(亮)政府参考人 お答え申し上げます。

 フィリピン人渡航者に対する査証免除の検討状況についてでございますけれども、一般論として申し上げれば、査証免除は、我が国の治安等への影響、あるいは相手国・地域からの要望等を踏まえまして導入を検討することとしております。

 それ以上の検討状況につきましては、相手国との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきます。

鈴木(庸)委員 治安当局との相談とか、いろいろ障壁はあると思うんですけれども、今年からブラジルも査証免除になったということで、やろうと思ってできないことはないと思うんですね。是非、経済発展が著しい国から誘客するためにも汗をかいていただければと思います。

 同じ短期滞在でも、観光だけでなく、働こうとする不届きな連中がいるのも事実でございます。

 先ほど来申し上げているように、私は、観光目的のビザを大幅に緩和するべきだ、それが経済発展につながるという考えを持っておりますので、特に、短期滞在で来ている人たちには、働かないように厳重な取締りが必要だなとも思っています。

 ただ、都内でも、短期滞在の外国人をホステスとして使っている店が数多くあるとされておりますし、また、名前を出しませんけれども、北海道のスキーリゾートに行くと、本来バーで働いてはいけない資格の人たちが平気でバーでバーテンダーをやっているような、そうした現状が見受けられるのも事実ではないでしょうか。

 こうした人たちが総じてやっているのは、例えば、査証免除国の出身者ならば百八十日間いられるんですけれども、短期滞在で九十日を過ぎそうになったら、一日だけ韓国に行く、台湾に行く、中国に行って、戻ってきてもう一回九十日ビザをリセットして、合計で百八十日を日本で滞在しようとする、こうした人が多いんです。

 ですから、個人的には、九十日日本に滞在して、韓国、台湾、中国に一泊だけして戻ってくるような外国人に対しては総じて厳しく入国理由を吟味するべきだと思っているんですが、まず、百八十日という根拠について教えていただけますでしょうか。

岩本政府参考人 まず、短期滞在査証でございますが、これは、短期滞在という在留資格で、基本的には、九十日以内の日本滞在を予定している方に発給するものでございます。

 したがいまして、今委員御指摘のように、短期滞在査証の申請を繰り返すことで、結果的に一年間のうち百八十日を超えて在留資格が短期滞在のまま日本に滞在されるということにつきましては、先ほど申し上げましたそもそも短期滞在の趣旨に反しているということでございますので、こういう場合には、特別な理由が認められない限りは査証を発給しないという具合にしております。

鈴木(庸)委員 実際には、究極的には、働いているという情報を得て、そこに立ち入って摘発するみたいなやり方しかなくなってしまうとは思うんですけれども、これも数が多過ぎて難しいところがあるかと思います。

 ですから、短期滞在を繰り返したとか、先ほど申し上げたようにアジアから一泊で帰ってくるような人たちについては、例えば、再入国の際に誓約書のようなものにサインをさせて、決して働きませんと一応誓約はさせる。少しのプレッシャーにしかならないかもしれないですけれども、それを破った場合に入管が科すペナルティーについてもしっかりと書いておくような、そういった運用面での工夫をする中で、短期滞在で働くという不届きなやからを少しずつでも減らしていただいて、観光でちゃんと入ってくるような人たちが楽しめる国にしていただきたいなという思いがございます。

 例えば、今、私の個人的なアイデアですけれども、こうしたアイデアを、ルールの実効性を担保する方法みたいなものについて何か検討されていることはございますでしょうか。

君塚政府参考人 今委員から御指摘がございました短期滞在の在留資格につきましては、御案内のとおり、観光、ビジネス、親族訪問、保養などを目的に、就労活動を伴わず、かつ、文字どおり短期間のうちに用務を終えるという性質の在留態様でございます。したがいまして、就労、留学、同居などの目的により中長期に在留しようとする外国人よりも、入国、在留面での要件が簡素化されております。

 今御指摘がございましたけれども、近隣諸国に向けて一旦出国し、いわゆるトンボ返りすることで、結果的に中長期にわたり日本に在留するというのは、この在留資格の趣旨にそぐわず、ましてや、不法就労活動を意図しようとするのは入管の秩序を乱すものでございまして、出入国及び在留の公正な管理をうたった入管法の目的を逸脱するものと考えております。

 そこで、私どもといたしましては、こういう問題のある外国人の入国を未然に防ぐことは極めて重要な課題と認識しております。

 そこで、出入国在留管理庁におきましては、個々の外国人の入国、在留履歴に関する情報のほか、指紋及び顔写真情報、ICPO紛失・盗難旅券情報等を活用した不法入国対策、乗客の予約記録等の情報分析により、不法残留を意図するおそれのある旅客の絞り込みなど、各種の情報を活用しまして、外国人の入国目的や各在留資格該当性等を慎重に確認するなど、上陸審査を厳格に実施の上、問題のある今御指摘のあったいわゆる短期滞在資格の濫用などを、上陸審査を厳格に実施することを通じて未然に防止するための取組を進めているところでございまして、今後、事前スクリーニングを強化するための取組についても、現在検討しているところでございます。

鈴木(庸)委員 オーバーステイといった人たちだけではなくて、資格外活動、とりわけ短期滞在のビザの厳格な運用についてもお願いをしたいと思います。

 済みません、中国の原発の話をやりたいと思っていたんですけれども、時間切れになってしまったので、次回やらせていただきたいと思います。準備していただいて、どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 いわゆる日中中間線というか、若干日本側に食い込んだところでブイが発見されたということであります。七月十一日、日中の排他的経済水域の中間線やや日本側で、五百メートルぐらいですか、中国製のブイが発見されたというふうな報告がされました。

 二〇二三年の中国の標準地図では尖閣諸島を中国領としておりますが、元々施政権がアメリカにあったときは、中国はこの領有権は主張していたのでしょうか。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も疑いのない我が国固有の領土であり、現に我が国はこれを有効に支配しております。したがって、尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しないということでございます。

 その上で、お尋ねの点につきましては、中国政府が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは、一九六八年秋に行われた国連機関の調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとの指摘を受けて尖閣に注目が集まった一九七一年十二月以降からと承知しております。

 それ以前につきましては、サンフランシスコ平和条約第三条に基づいて米国の施政下に置かれた地域に尖閣諸島が含まれている、その事実について、中国側は何ら異議を唱えていないと承知しております。また、中国側が異議を唱えていなかったことについても何ら説明を行っていないと承知しております。

松原委員 分かりました。

 この尖閣に、これは沖縄返還のときに日本に返還されたということになるわけでありますが、したがって、誰が見ても日本領でありますが、今実効支配しているという部分に関しては、日本人が自由に上陸できるかどうかという議論もありますが、今日はここではいたしません、時間の都合で。

 岸田総理が習近平氏と直接会ったときにブイのことを抗議したというふうに仄聞をしております。通常ですと、排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学的調査は沿岸国の同意を得て実施するということもあって、全くそういったことがなされずにこのブイが設置されたということに関して、岸田総理は、習近平さんに対してそれを撤去するように、このように要請したと聞いておりますが、これは事実でしょうか。

濱本政府参考人 昨年、二〇二三年でございますが、十一月の日中首脳会談及び外相会談を始めとしまして、ハイレベルで様々なルートで、中国側に対してこのブイの即時撤去を求めているということでございます。

松原委員 上川大臣、報道では、岸田さんが直接抗議をしたが、何もこれに関して中国側はブイの撤去等をしていない、こういうふうに聞いておりますが、こういったことは、日本の総理大臣がそれを言って、そして習近平氏がそれを無視したというのは、大変に私は日本の国家として恥ずべきことだと思っておりますが、御答弁をお伺いします。

上川国務大臣 今答弁をしたとおりでございますが、昨年の十一月の日中首脳会談、そして私も外相会談をいたしましたけれども、ハイレベルを含みます様々なルートで、中国側に対しましては即時撤去を求めているにもかかわらずということで、現時点で現場海域の状況が改善していないということについては、極めて遺憾であると考えております。

 我が国といたしましては、中国側が当該ブイを放置しているという状況につきましては深刻に受け止めておりまして、引き続き、あらゆる機会を捉えて、中国側に対しましてはブイの即時撤去を強く求めてまいります。

松原委員 七か月ぐらいたっているという話ですが、政府参考人にお伺いしますが、ブイの設置に関して、これは国際法の違反ではないかという声がありますが、違反でないという証拠というか、法文というか、あるんでしょうか、お伺いします。簡潔にお答えください。

濱本政府参考人 日中間の当該海域につきましては海洋境界が未画定でございます。そのような中、国連海洋法条約第七十四条三に従いまして、最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う、そういう義務があるということでございます。

 この点につきまして、我が国としましては、中国が中間線の東側の海域に一方的に気象観測機器と見られるものを搭載したブイを設置したことは、この海域における海洋調査活動の相互事前通報の枠組みの存在を踏まえれば、上述の境界未画定海域における関係国の義務との関係で問題がある、そういう行為であると認識しております。

松原委員 中国のこのブイの設置を正当化する条文というのはあるんですか。

濱本政府参考人 繰り返しになりますが、国連海洋法条約第七十四条三に従って一定の義務が双方あるということでございます。そのような状況下において……(松原委員「そんなの聞いていないよ。あるかないかを聞いているんだよ」と呼ぶ)国際法上問題があるという行為だと認識しております。

松原委員 国際法上問題があるということでいいんですね、今の話は。

 少なくとも、これを違反でないという理由はないんですよ。中国は極めて非常識にこれをやってきているわけでありますが、南シナ海において、フィリピンとの係争、国際海洋法条約、仲裁裁判所の判断を中国の戴秉国さんが紙切れだと言った。

 結局、その国際法の決めといいますか、それを紙切れと言うような中国は、場合によっては国際法を守ることをしない国家だというふうに思いますが、大臣、御所見をお伺いします。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、二〇二一年七月に、中国の外交部の報道官が定例会見におきまして、比中の仲裁判断につきまして、違法かつ無効、紙くず同様であると発言したと承知をしております。

 しかし、UNCLOSの規定に基づきまして、この仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものでありまして、当事国はこの判断に従う必要がございます。受け入れないといった中国の主張につきましては、UNCLOSを始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しておりまして、国際社会におきましての基本的価値であります法の支配を損なうものというふうに考えております。

 当事国は、まさに仲裁判断に従うということによりまして、紛争の平和的解決につながるということについて強く期待をしているところであります。

松原委員 もっと簡単におっしゃっていただいた方がいいんですが、要するに、国際法をこのケースでは遵守する意思を示していない、こういうふうに私は思っております。

 大臣、今回の比中の係争における国際法にのっとった判決に対して、中国はそれを紙切れだと言った。中国は少なくともこのことに関して国際法を守っていると言えないということを明確に言ってください。長い答弁は結構ですから、お願いします。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、中国の主張は、国連の海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会における基本的価値である法の支配を損なうものであると認識をしております。

松原委員 要するに、国際法の精神に反するということを大臣はおっしゃったので、それはそういうことであります。

 そこで、日本がこのブイを回収するべきと考えるが、それができない理由というのは一体何ですか、お伺いします。できない理由を簡単に言ってください。ないならば、できない理由はないと言ってください。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 境界未画定海域における関係国の義務は先ほど答弁したとおりでございますが、一方で、そのような義務に反する形でブイを設置したことに対して関係国がどこまで物理的な措置を取ることが国際法上許容されるかについては、国連海洋法条約上明確な規定はなく、国家実行の蓄積も見られないということでございます。

松原委員 聞いたことに答えてよ。これができない理由はあるのかと聞いているの。回収はできない理由はないと、大臣、それは明確に答えてくださいよ、回収できない理由はないと。

上川国務大臣 今答弁をした状況の認識ということについては共有をしていただきたいというふうに思っておりますが、委員御指摘の回収も含めまして、我が国の対応につきましては、今国際法上の基準が不明確な中でということでありますが、政策的観点等を踏まえた総合的な判断の下で行われるべきと考えております。

松原委員 聞いたことに答えてください。回収できない理由はあるのかと聞いているんです。回収できない理由はないと私は認識しているんですが、回収できない理由はあるんですか、ないんですか、それだけ。

上川国務大臣 今も申し上げたとおり、総合的に判断すべきことであるということでございます。

松原委員 総合的な判断を聞いているんじゃなくて、回収できない理由はないでしょうと聞いているんです。

上川国務大臣 国際法上の基準が不明確であるという状況でということでございますので、その中におきましては、政策的判断ということになります。

松原委員 回収できない理由がないということを言ってくれればいいんですよ。ないんだから。あるんですか、政策的な、総合的なのじゃない、理由が海洋法条約であるんですかと聞いているの。このことは、まさにエアポケットのようにそのことに関して想定していないから、回収できない理由もないということを言ってください。

上川国務大臣 国際法上の今基準が不明確であるという状況があるということを前提にということで申し上げているところでございます。その意味では、そうした理由については、様々な判断ということになると考えております。

松原委員 何でないと言えないんですか、それ。そういうふうに発言をしていると、ああ、いいんだなという話になりますよ。

 明確にないということを言った上で、その上での行動は政治的判断だったらあると思うんですよ。総合的な判断をするというのは政治的判断ですよ、それは結構ですよ。ただし、国際法上の、関連、海洋法条約における中においては、そのことに関してできないという理由はないんだよ。

 もう一回答えてよ。余り中途半端な答えじゃなくて、時間もないんだし、上川さん、それはきちっと答えてくださいよ。お願いしますよ。

上川国務大臣 この状況の中では、国際法上の中の法の支配、このフレームワークの中で日本としては行動をする、この前提の中で動いている状況であります。最終的には政治的判断でありますが。

 その意味で、基準が不明確である、こういう状況であるということを前提にということでございますが、その上で政治的な判断を、最終的には政策的判断をすべきと考えております。

松原委員 もうこれをこれ以上やっていても水かけ論だから、はっきりないと言った方がいいんですよ、これ。

 それは、ないとかあるとか、要するに、国連海洋法条約にこのことについて何か示唆する文章はあるんですか。国連海洋法条約の中にはこういった状況を想定していないから、こういったことに関する文章というのはないでしょう。あるんですか。ないということは理由がないということですよ。あるんですか、上川さん。

上川国務大臣 ですから、先ほど答弁をしたとおりでございまして、設置をしたことに対しての物理的な措置を取るということについての明確な規定はないということでございます。

松原委員 規定がないんですよ。だから、最終的に政治判断なんですよ。初めからそう言ってもらえればいいんですよ。

 その上で、中国は国際法を時として自己都合によって無視するような国家である。全て無視しているとは言いませんよ。自分に都合がいいときは無視しない、都合が悪いときに無視する、こういった判断をする国家に対して、我々は、まさに政治判断で、決断で行動しなければ国益は保たれないというふうに思っております。

 その意味で、中国の行動を放置するのか対抗措置を取るかの選択をする時期に来ていると思っております。政治判断で上川さんまた日本の岸田内閣がブイは放置するというふうにするなら、それは私は認めることはできないが、そういう判断をするならそういうふうにおっしゃればいい。

 しかし、時間が七か月たってこの判断をいまだにしないということは、事実上放置するという判断をしているとしか見えないんだけれども、いつになったらこのことに対しての具体的な行動の判断をするんですか。それとも、このまま判断しないんですか。答えてください。

上川国務大臣 今の現状につきまして、それが正しい、間違っているということではないというか、今の状態についてきっちりと対応する必要があると認識をしているところでございます。

 じゃ、どのような形でということでありますが、ブイの撤去、移動、我が国によるブイの設置を含みます様々な対応につきましては、今、前段の御質問の中にもございましたけれども、関係国が有する権利及び義務、また国内の法令、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動へ与える影響、こうしたことを関係省庁間で連携をして検討している状況でございます。可能かつ有効な対応を適切に実施していく考えでございます。

 時期については、今ここで具体的な時期を明示することはできませんし、また、検討状況については、今申し上げたことを検討しているという状況でございますが、詳細についてはお答えは差し控えさせていただきます。

松原委員 先ほど、大臣、これに関する国連海洋法条約等における決めがないということを言った。ないということに関して、最終的に政治決断だと言ったわけですから、政治決断してくださいよ。各省庁も議論をしてどういう政策的な方向性があるか、そういうふうな生っちょろい議論じゃないと思うんですよ。やるかやらないか、これはもう撤去するかしないか、そこを明確にしないと、やはり日本の国益は守れないと思っております。

 次の質問に入ります。韓国徴用工問題。

 今回の、日立造船の供託金が現実に支払われたことは日韓請求権協定を否定するものだと思いますが、大臣の御所見を、大臣、答えてください。

上川国務大臣 昨年の十二月でございますが、韓国大法院が日立造船に対しまして損害賠償の支払い等を命じます判決を確定させた時点で、日韓請求権協定第二条に明らかに反しているということでございます。

 その上で、この判決に基づきまして日本企業に不当な不利益を負わせるということにつきましては、極めて遺憾であるということでございまして、断じて受け入れられるものではないと考えております。

松原委員 つまり、日韓請求権協定を否定している、こういうことであります。今既に大臣が、大法院の判断自体が日韓請求権協定を否定している、こういったことをおっしゃって、そのとおりだと思っております。

 こういった日本企業の賠償を求める韓国大法院判決は今何件ぐらいありますか。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでに日本企業に対して損害賠償の支払い等を命じる判決は、十二件確定判決が出ていると承知しております。

松原委員 私は、一回こういった韓国と日本との間の請求権協定を事実上否定する具体的な行動が起こったということは、残りの十二件に関しても蒸し返しというものが起こるんじゃないか、そのリスクを非常に強く感じております。

 そこで、私は、基本的に、今回のこの案件だけではなくて、韓国の大法院の判決全体を、間違っているということを国際司法裁判所等に申立てを行うべきだと。既にそういったことが一回議論されたということも聞いておりますが、申立てを今行うべきだと思っておりますが、御所見をお伺いします。

上川国務大臣 日本政府といたしましては、昨年三月六日の韓国政府が発表した措置を踏まえた適切な対応がなされるよう、韓国政府に対しまして求めているところでございまして、今後の対応につきましては、予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 相手が行動で、現実に日本の日立造船から原告に金を渡した。行動対行動というのが私は外交の原則だと思っています。

 その意味で、韓国がそういったことを、国として結果的に、その前のいろいろな話がありますよ、日本の企業も一緒に汗をかいてほしいとか、それも大統領が言ったり、外務担当者が言ったり、明らかにそういう地ならしをしてこういうふうになっているということを考えれば、これ、日韓請求権協定に違反していると明確におっしゃっている、その大本は大法院の判決です。まだ十二件ある、判決が下されている、蒸し返される可能性がある。

 であるならば、この一番本から正していくということで、なぜ行動を起こさないんですか。そんな日本に不利益を与えることが、大臣にとっては全然意に介さないことなんですか。お伺いしたい。

上川国務大臣 昨年末から続いております一連の大法院の判決、そしてまた日立造船の事案につきましては、先ほど来申し上げているとおりでございますが、日本政府としては、これらを極めて深刻に捉えておりまして、韓国政府に対しまして厳重に抗議を行い、そして、昨年の三月六日に韓国政府が発表した措置を踏まえた適切な対応がなされるよう、政府に求めている状況でございます。

 引き続き適切に管理をし、相手方と緊密に意思疎通を図るということにつきましては、政府としても当然の責務と考えておりまして、我が国の先ほど申し上げた一貫した立場を主張し、適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 大法院が十二件の日韓請求権協定に違反する判決を既に下していると。今回、このことで寝た子が起きるかもしれない、こういう状況ですよ。その状況の中で、大法院の判決、判断を明確に否定するためには、韓国政府とのやり取りは別ですよ、この条約を否定しているわけだから、日本の国益上、大法院を少なくとも国連の組織に提訴する。その提訴できない理由というのは一体何なんですか。

 物理的に提訴することはできるんですか。それだけまず大臣に聞きたい。大臣、大臣、答えてください。極めて重要な国益についての議論です。

上川国務大臣 この他国の司法判断の結果につきまして、日本政府として予断を持ってお答えすることについては差し控えたいというふうに思っております。

松原委員 ちょっとそれは聞き捨てならないですね。

 この日韓請求権協定を韓国の大法院が否定して行動している、それについて、少なくとも国際的な関係からこれはおかしいんじゃないかというのを訴えることは、私は日本の国益上必要だと思いますが、できないんですか、それは。できないんですか、法律的に。上川さん、答えてください。

上川国務大臣 今申し上げたとおりでございまして、司法判断の結果につきまして、日本政府として予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 その上ででありますが、先ほど来御指摘の日立造船の事案でございます。これは日韓請求権協定の第二条に明らかに反する判決に基づきまして日本企業に不当な不利益を負わせるものであり、今申し上げたとおり、極めて遺憾であるということで、韓国政府に対しましては厳重に抗議をしたところでございます。

 本件につきましては、供託金が韓国の裁判所に納められていた点で特殊でありまして、同種の事案の中で他に例がないものであるということでございます。いずれにいたしましても、三月六日、昨年でありますが、韓国政府が発表した措置を踏まえまして適切な対応がなされるよう、韓国政府に求めているところでございます。

松原委員 適切な対応をするように求めていて、適切な対応がずっとなかったら、どういうふうに責任を取るんですか、大臣、国益を考えた上で。答えてください。

上川国務大臣 今この状況の中にありまして、七か月というお話もございましたけれども、今後の具体的な対応につきまして、この場で予断を持ってお答えするということについては差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、我が国の安全保障また経済上の国益にとって何が最善かという観点から総合的かつ不断に検討、判断してまいりたいと考えております。

松原委員 そういうことをおっしゃっていると、やはり外務省は何もしないという話になりますよ。遺憾ですと抗議をしました、行動はしません、それじゃいかぬと私は思っていますよ。遺憾、遺憾と言っているだけじゃいかぬのですよ、大臣。これは本当に。

 その上で、これほどとんでもないことが行われているのに対して、まず、その怒りを、政府を代表して、とんでもないというのをもっと怒ってほしいと思うのと、もう一点は、これは遺憾ですと言っているだけでいいのかと。

 私は、この財団から日立造船に対して、支払われたお金を、財団が日立造船に対して払い戻すというか、払うべきだと思うんですよ。財団の定款上それができないというのであれば、財団の定款を変更してでも、日本の政府は韓国政府と協議をして、何かしてくれじゃないですよ、協議をして、定款を変えて、財団から日立造船にお金を戻す。これぐらいのことをやらなかったら、全くもって日本政府は腑抜けだと言われてしまいますよ。何も行動していない、常に遺憾という言葉しか言っていない。

 今申し上げたような、定款を変えて、お金を日立造船に戻すような、少なくともそれぐらいのことは政府がやるべきだと思うが、御所見をお伺いしたい。

上川国務大臣 政府におきましての立場は先ほど申し上げたとおりでございます。

 その上で、まさに今後の対応につきましては、予断を持ってお答えすることについては差し控えさせていただきますが、今後とも、日本の安全保障また経済上の国益にとって何が最善かという観点から総合的かつ不断に検討、判断してまいりたいと考えております。

松原委員 これは何で言えないんですか。

 韓国と日本で請求権協定に関してもう一回議論をして、財団が代わりに払いますよと言って、そういった形で合意したわけですよ。違う現象が起こった。

 では、財団が、若しくは百歩譲って違う形でもいいですよ、定款を変えるなり、どういう形でも、そこから日立造船にそのお金を戻すということを当然日本は韓国政府に対して主張するべきだと思うんですよ。そういうことは何で主張できないんですか。少なくともそういうことを言わないということであれば、本気で日本はこの問題に怒っているというふうに見えないですよね。予断を持って答えられないと言いながら、これぐらいのことは検討したらいいんじゃないですか。大臣、答えてください。

上川国務大臣 先ほど来申し上げてきたところでありますが、何が国益に資するのか、安全保障上の観点、また経済上の観点、こういった観点から総合的に検討をしてまいりたいというふうに考えておりまして、その中で判断をしてまいりたいと考えております。

松原委員 国益に資するという点では、言葉で遺憾だとか抗議をするとかと言うことは、それは国益に合致しないから。最低限、アリバイ的に言うというのは結構ですよ。しかし、その後の行動が伴っていない。行動が伴っていない。先ほどのブイのことも同じですよ。一体いつになったら行動するのか。

 今回のいわゆる日韓請求権協定を真っ向から否定するような現実が起こったことについてもそうですよ。できるんですよ。今みたいに知恵を振るえば、様々なことを韓国政府に対して申入れができるのに、それもしない。

 具体的に何か、そういう申入れをするような事象について検討しているんですか。単に抗議をしただけなのか。具体的な、いいですよ、この場で中身を言わなくても。こういうことをしないと日本の国益は収まらない、我々の怒りは収まらない、そういう具体的な話合いというのを水面下でやっているんですか。やっているかどうか教えてください。

上川国務大臣 二国間の関係の中で今のような懸案事項についてどのようにしているかということ自体、今申し上げるということについては差し控えさせていただきますが、安全保障、経済上の国益にとりまして何が最善かということについての具体的な対応のメニューということについては、様々な角度から検討をしているということであります。

松原委員 検討だけじゃなくて、行動してください。行動してください。こうやって、行動が一年もたってやらなければ、まさにそれ自体は黙示の了解ですよ。抗議をしているだけだったら黙示の了解ですよ。きちっと行動してもらいたい。私は期待しているから言っているんですよ、上川さんに、大臣に。行動してくださいよ。

 拉致問題。

 日本は、拉致問題が解決したときに、国交正常化について検討を始めることが一般論として可能かどうか、お伺いしたい。

濱本政府参考人 お答えします。

 拉致問題についての御質問でありますが、我が国の方針としましては、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものでございます。

 もちろん、中でも拉致問題につきましては、拉致被害者の御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある問題であり、ひとときもゆるがせにできない人道問題であるとは認識しています。

 その上で、仮定の状況における我が国の対応について予断を持ってお答えすることは差し控えますが、拉致、核、ミサイルの諸懸案については、あくまでもこれを包括的に解決するということでございます。

松原委員 聞いていることに答えてください。

 私が言っているのは、ドイツとかイギリスは、国連の北朝鮮に対する制裁措置は一緒にやっているが、国交はあるわけですよ。つまり、拉致問題が解決したときに、一般論として、国交回復というものに関する議論が進むことは一般論としてあり得るかと聞いているんですよ。答えてください。

濱本政府参考人 お答えしますが、我が国の方針というのは、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、日朝国交正常化の実現を目指すということでございます。

松原委員 方針を聞いているんじゃなくて、一般論を聞いているんですよ、一般論を。だから、ドイツとかイギリスは国交がありますね、制裁はやっていますね。国連制裁でない部分は、我々は、拉致による人道制裁であったり万景峰92であったりしているけれども、これが解決されたら、一般論として、そういった議論というものが起こる可能性があるのかと。

 一般論ですよ、一般論。ドイツは国交を持っているわけですよ、制裁しながら。大臣、答えてください。大臣、大臣の認識をお答えください。

上川国務大臣 今、方針ということでございますが、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決と不幸な過去の清算ということでございます。そうした先に、日朝国交正常化の実現、まさにそのことを目指すということでございます。

松原委員 何というんですかね、全く答えていないというのが大変残念ながら大臣の答弁だと思っています。外務省の答弁も、ほとんど答えないで時間が過ぎ去ればいい、こう思っているんじゃないかと思っていて、もうちょっと国益的な観点から、真剣にお互い体当たりで議論しようじゃないですか。そういうのをしないから全然駄目なんですよ。駄目なんですよ、進まないんですよ。

 それでは、幾つか飛ばしながら、時間もあるので話をしますが、今回、二〇〇二年のときの反省を少ししたいと思います。

 二〇〇二年、外務省は、北朝鮮が八人死亡と言った、これをうのみにして、それを当時の官房長官か誰かが報道したわけでありますが、仮に、今回、拉致問題が進捗した場合、この失敗を繰り返さないための仕掛けというのは考えていますか。大臣、お答えください。

上川国務大臣 この間の状況につきまして、特に二〇〇二年のときのということでございますが、この拉致問題の全面的な解決につきましては、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しが実現するということが必要であるというふうに考えております。

 その意味で、二〇〇二年のこの状況でございますが、これは、委員がもうずっとこの問題につきまして取り組んでこられたということでありますが、五人の拉致被害者の方々が御帰国されまして、北朝鮮主張の、八名の死亡及び四名の入境否定又は入境未確認ということで、証拠及び説明には問題点がある、こうしたことから、北朝鮮主張の、裏づけるものが一切存在しなかったということであります。このため、被害者が生存しているという前提に立ちまして、もちろんのこと、被害者の即時帰国、そして真相究明を求めているところでございます。

 今後の交渉における対応方針にも関わることでございますので、つまびらかに申し上げることは差し控えますけれども、そうした過去のいろいろないきさつ、経緯、その他を全て踏まえた上で、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国、この実現のために全力で取り組んでまいりたいと考えております。

松原委員 いろいろとおっしゃるけれども、じゃ、何が解決なのかという話ですよね。時間がないので、これは次回に延ばしてもいいけれども。例えば、認定被害者、八名死亡と言ってきた、それはインチキだと。この間も予算委員会の分科会で林さんが言っていましたよ。

 それで、私が聞きたいのは、今回、少なくとも、北朝鮮側が真摯に向き合ったときに、本当はその前に、金与正の発言とかを確認したかったんだけれども。このときに、帰国しない人間に関しては合理的な説明を求める。例えば、じゃ、これだけ帰しますよといったときに、帰国しないメンバーに関しては、なぜ帰国できないかということを、合理的な説明を当然求めるということでよろしいですか、大臣。

上川国務大臣 先ほど、拉致問題の解決につきまして、方針というか一つの基準というか、これを申し上げたところでございますけれども、拉致に関する全ての被害者の方の安全確保と即時帰国ということでございます。これに関わって様々な可能性があるという御指摘であるというふうに思いますが、全てこうしたことにつきまして事実を明らかにするということについては、当然のことながら重要な部分だと思います。

松原委員 全然言っていることの意味がよく分からないんですよ、私はこれを専門にやってきているけれども。何をおっしゃりたいのかなと。

 じゃ、絞って言いますよ。認定被害者で戻ってこない人に関しては改めて合理的な説明を、なぜ戻らないのかを求めるのは当然ですわね。二〇〇二年だって、向こうは言ってきているんだから、死亡診断書で。偽死亡診断書が多かった。その後に、横田さんはまだ生きているということも明らかにされた。

 これは合理的な説明を、認定被害者に関しては、いいですよ、もう、非認定の議論まで進めたいけれども今日は時間がないから。認定被害者に関しては合理的な説明、なぜ戻ってこないんですかと聞くんですかと。聞くんですと答えるのは当たり前だと思うんですよ。聞く意思がないんですか、答弁してください。大臣です。

上川国務大臣 認定の被害者でまだ帰国をしていない方々ということでございますが、我が国といたしましては、今、北朝鮮に対して、全ての被害者の方々を戻すということを求めるということでありますので、その上で、拉致問題の真相究明、これも求めている状況であります。全ての被害者につきましては一刻も早く帰国させるということを今、北朝鮮に強く求めているということでございます。

 時間的制約のある中での拉致問題ということでございますので、ひとときもゆるがせにできないということでございます。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けまして、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

松原委員 全然答えていないんですよ、大臣、答えていないんですよ、自分で分かっていると思うけれども。

 要するに、帰国しなかった人に関しては、なぜできないのかという合理的な説明を求めるというのは当然のことじゃないですか。それすらこの場で言えないというのは、そんなことじゃ、出口論として解決できないですよ。もうちょっと詰めてもらわないと解決できないですよ。

 私は、この間も林さんに言ったんだけれども、拉致問題担当大臣に。少なくとも政府だけでそれを判断すると、一回外務省はとんでもない間違いをしましたから、言いなりになって死亡者八名を発表しましたから、ああいう恥さらしなことを二度やっちゃいけない。

 だから、関係者、私は、家族会の信頼の厚い西岡さんや、非認定に関しては荒木さん、こういった人をやはりどこかで巻き込みながら議論を進めていく、また、北朝鮮に行くときはこういった二人を連れていくとか、そういったことをしなかったら、知見が乏しい人が判断して、同じような愚昧なことが起こったら、二〇〇二年と同じように、八人死亡と発表した後で、実は死亡は間違いでした、こういうことは二度ないように絶対にお願いしたいと思っております。一言だけ言ってください、これに関して。

上川国務大臣 まさに、拉致被害者御家族も御高齢となる中にありましての時間的制約のある拉致問題でございます。その意味で、ひとときもゆるがせにできない人道問題であると考えております。全ての方々の一日も早い御帰国の実現に向けまして、あらゆる努力を積み重ねてまいりたいと思います。

松原委員 終わりますけれども、もうちょっと自分の言葉で語ってほしい、真剣に語ってほしい。全然真剣さが伝わってこない、これでは。上川さんの本来の真剣さで語ってほしい、これだけ要望しておきます。

 終わります。

勝俣委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 今日は質問の機会をお与えいただきまして、理事の皆様始め、皆様に感謝を申し上げます。

 私は、元々一九八〇年に外務省に入って、そのときにアラビア語研修というのを命ぜられまして、そこで中東の外交については研さんを積んでまいりました。そして、国会議員になっても、ガザも訪問したことがあります。

 今、ガザの方で、報道等にも広く知られていますけれども、イスラエルのこの申立てで、今UNRWAに対して支援を停止するという国が十四か国出てきておりまして、これは非常にUNRWAの活動が危機にさらされているという状況であるとともに、そのUNRWAの活動がかなり阻害されると、ガザの市民あるいは難民の命が本当に大きく危険にさらされているということでございますけれども、その状況、深刻な状況をどのように外務大臣として認識しているのか、また、今後の見通しについてはどうなのかということを問います。

 私は、昨日、WFPの津村康博さんという日本の代表にお聞きをしたら、もうガザの地域は壊滅的な飢餓に襲われていると。二百二十万人そのものが飢餓状態と言っていいくらいに生活困難に陥っていて、特に、この津村さんがハンガーマップというのを見たときに、もう真っ赤であると。こういうふうな体験は今までに見たことがない、そういうふうに言っていました。特に、ガザ北部は全く入れない、餓死者がもうかなりに上っていると思うと。

 特に、この前も報道がありましたけれども、トラックに支援物資を積んでいったときに、ガザの関係の人が群がって略奪状況になったので、発砲して、死人が報道では百人ぐらいとか言っていましたけれども、これは本当に、人間が死の直前で、何とか食料が欲しい、生活必需品が欲しい、こういう状況だと思うんですね。特に、ガザでは、市場というかマーケットがもうない。だから、幾ら金を持っていても、それを使うこともできない、こんな状況になっているわけですね。

 だから、私、二十五人餓死者が出たと保健省の発表がありましたけれども、これというのは、国際機関とかの方々に聞くと、病院に搬送されてきた人で亡くなったのが二十五人であって、それに至るまでに、いわゆる野たれ死にみたいな、そんなことで亡くなっていること、私の想像では数十人あるいは数百人が、それも毎日そういう状況になっていると思うんですけれども、大臣の認識をお伺いします。

上川国務大臣 昨年の十月七日に、ハマス等によりますイスラエルに対しまして残虐なテロ攻撃が発生をいたしまして、ガザ地区での戦闘が始まってから既に五か月以上が経過している状況でございます。

 今まさに、人質解放と戦闘の休止をめぐりまして、今のガザ情勢を深刻に受け止めた状況の中で、関係国間の仲介によりましてぎりぎりの調整が行われる中にある。こうした中におきまして、悪化する食料そしてまた衛生事情も相まって、現地の人道状況は極めて厳しい状況にあると認識をしているところでございます。

 私も、日本の報道機関、さらには海外の報道機関の、ガザに対しまして連日のように報道がなされている、その映像の場面も見ておりますけれども、大変厳しい状況であるということにつきましては、言葉では言えないぐらい厳しさを増していると認識をしている状況であります。

 その意味では、無辜の民間人の方々がこれ以上犠牲になることは耐えられないという思いもしているところでありまして、何とか一刻も早い現地の人道状況の改善、さらには、人道支援活動が可能で、また、持続的な環境の確保ができるように、これを最重要の課題として取り組まなければいけないと極めて強く認識をしているところでございます。

末松委員 今大臣の方で、言葉にできないほどの悲惨な状況だということはよく認識されておられるわけですね、今御発言されたように。

 私、これは歴史的な虐殺というのかな、その大量虐殺の現場にいて、世界が見て見ぬふりをしているような、特に日本が見て見ぬふりをしているような、こんな印象も持つんですよ。

 だから、早く、今、日本がUNRWAに対する支援停止というのを決めたということなんですけれども、これは早く再開してやらないと、ひょっとして、これをずっとこのまま放置していたら、悪いけれども、上川大臣、あなたも、そういった人道的措置をしなくて、そしてそれを見て見ぬふりをしたという最悪の外務大臣の一人になってしまうということを私は危惧をしているわけでございます。だから、とにかく早い対応をしてほしいというのが私の今日の質問の趣旨なんですね。

 このUNRWAに対する日本政府の支援停止の措置について、これについては私も批判的に見ているんです。これはちょっと判断が早過ぎて、拙速過ぎるんじゃないですか。今年の一月二十六日、アメリカが支援停止ということをやった。これに続いて、二日後の二十八日に日本政府が支援停止ということを発表しているんですよ。

 ちょっと思うんですけれども、ちなみに、今UNRWAへの支援、資金提供停止を表明しているのが十四か国と承知していますけれども、アメリカやイスラエルの主張の根拠をしっかり確認して、そしてその判断を決めたんですか。

 もうちょっと言うと、私も外交官をやっていたから、いろいろと、例えばイスラエルの情報機関とか、アメリカの情報機関とか諜報機関とか、その辺がかなり調べて、それを日本に提示してきたのかどうか、そこはちょっとうかがい知りませんけれども、とにかくそういうことを確認してやっているんですか。それを簡潔にお答えください。

上川国務大臣 今、UNRWAの職員の疑惑に関してでございますが、まさにテロ攻撃が行われました際に、UNRWAの職員が関与したという疑惑でございます。現在、国連の内部監査部によりましての調査が行われている状況でございます。

 我が国といたしましては、国連、またUNRWA自身、関係国と緊密にコミュニケーションを取っている状況でございますので、国連による調査に積極的に協力をするという、そうした主張の中で今いるところであります。

 その上で、停止をした状況の中でということでございますが、この間、そうした国連及び様々な機関におきましての様々な情報を基に、ベースにした形で判断をさせていただきました。

 しっかりとした形で持続的に役割を果たしていただきたいという思いを非常に強くしているところでございまして、なるべく早い段階でこれが再開できるように、何といっても、まず、国連の調査及び第三国の調査、こういったことに委ねてそれに協力をする、こういう姿勢で今臨んでいるところでございます。

末松委員 そういう調査に協力をすると言っているから、自分の国、日本では判断していないんでしょう。ちょっと情けないことなんですけれどもね。

 十二人が疑惑の職員だという話で、UNRWAの方はすぐに彼らを解雇しているんですよ。一万三千人、UNRWAの職員が現地で働いてですよ、たったの十二人ですよ、疑惑を持たれたのが。それも、即時に解雇されているわけですよ。職員の数のパーセンテージは〇・一%以下ですよ。

 そういう方々がもう解雇もされているということであれば、まさしく状況を見て、ガザの状況を見ると、人道的な活動をしなきゃいけないじゃないですか。UNRWAの方は、ガザのこういった人道的措置、支援措置の中核的な機能を担っているわけですよ。それに資金を提供しないということの意味というのは、本当に日本政府の対応を私は疑う。

 疑惑であるならば、まずは、疑惑が晴れるか晴れないか、そういう調査が終わってから、そして、人道的な措置、支援措置を停止するということが筋じゃないんですか。

上川国務大臣 まさにUNRWAの職員に対しましての疑惑については、極めて憂慮している状況でございます。

 本件の疑惑を受けまして、先ほど委員からも御指摘がありましたが、国連及びUNRWAが当該職員の契約を直ちに解除をし、そして調査を開始したこと、また、テロ攻撃への関与への疑惑という事態の重大性に鑑みまして、当面の間、UNRWAへの令和五年度の補正予算の拠出を一時停止せざるを得ない、こうした判断に至ったところでございます。

 UNRWAがパレスチナ難民支援に対しまして極めて不可欠な役割を果たしてきたということについては、その認識でこの間支援をし続けてきた日本でございまして、何といっても、UNRWA自身が、信頼を取り戻し、そして本来の役割を果たすことができるようということで、ガバナンスの強化も含めまして適切な対応を強く求めてきている状況でございます。

 今の状況は、UNRWAにつきましては、国連による調査、第三者の検証の推進、またUNRWA自身がガバナンス強化のための取組をするということで、コミュニケーションを今取りながら動いている状況でございますので、こういったことがしっかりとベースになるようにというふうに思っております。

 ただ、今の状況が大変厳しいということについては、現実は変えることができないわけでございますので、喫緊の課題として、ガザの一人一人に食料や医療、こうしたことを早期に届けることが重要である。そのことを鑑みまして、我が国としては、調査結果を待つことなく、WFP、WHO、ユニセフ等を通じまして、三千二百万ドルの緊急無償資金協力の実施を決定したところでございます。こうした取組については、即時届けられるようにということで意思決定をしたところでございます。

末松委員 私が言っているのは、調査結果が出るまでUNRWAの支援停止、支援をやめたらいけなかったんじゃないかと思うわけですよ。

 〇・一%以下の職員の人がそういった疑惑を持たれた。疑惑を持たれたから、本来は調査してそれを白黒つけるんだけれども、その前に、UNRWAはもう処分したんですよ、解雇したんですよ。だったら、支援を続けながら、そして調査をしてもらえばいいじゃないかというのが私の主張なんです。それに対しては何ら答えていない。ちょっと答えてくださいよ、それは。

上川国務大臣 大変大きな支援をこの間ドナーとしてしてきた日本としては、UNRWAの役割、そして、これからもガバナンス強化をしっかり発揮してやっていただかなければならないというふうに思っております。その間の間の措置をしっかり取り、そして、しっかりと結論が出た上でということで、協力もし調査をしていただくということで今動いている状況であります。

 先ほど申し上げた、UNRWAはUNRWA、国際機関は機関ということでなく、ガザの人々に届けるということでございますので、そういった動きをしているところでございます。

末松委員 何で答えないんですか。人道的な措置が本当に重要ということを分かっているわけでしょう。それなのに、イスラエル、米国の主張に対して、あなたの方は結局は自国で判断していないわけですよ、日本で。調査に協力すると言っているだけでしょう。それは順序が反対だと言っているわけですよ。

 それに、〇・一%以下の方が問題を国際機関で起こしたとして、じゃ、UNRWA全体の支援を何で止めなきゃいけないんですか。それなりの、それ相応の程度の措置でやっていけばいいじゃないですか。

 現に、ドイツはすぐに、同じような形で一月二十六か七に支援停止をしましたよ。でも、ガザに対する支援をやめているだけで、UNRWA全体に対しては彼らは支援をして、要するに、人道的な大きな問題が出ないように配慮しているんですよね。

 いろいろなやり方があったじゃないですか。それを何で、アメリカ、イスラエルに乗って、いつもアメリカ追随の外交と言われて蔑まれるんですけれども、そういうことは拙速じゃなかったかというのが私の主張なんですよ。それを答えてくださいよ。

上川国務大臣 委員の御指摘また御意見につきましては、中東の御専門家としての状況を十分に認識した上でということで、大変重要なものと受け止めさせていただきます。

 その上で、今、国連とかUNRWAとのやり取りにつきましてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、何といっても、UNRWAが、信頼を取り戻して、本来の役割をしっかり果たしていただけるようにしていくということが重要であると認識しておりまして、その意味で今のような措置を継続している状況でございます。

 しかし、このUNRWAの役割ということの重要性はもちろん十分に私も承知をしているところでありますし、この間の外務省におきましてのUNRWAとのやり取りにつきましても密接にしているところでございますので、しかるべき対応の判断ができる、なるべく早くということで考えているところでございます。

 しかし、申し上げたように、様々な国際機関がこの中東の中でも様々な援助をしている状況でございまして、その意味で、先ほどのお話の中にございましたとおり、非常に広範にUNRWAは支援をしているところでございますが、様々な国際機関もそれぞれの持ち場を持って取り組んでいるという状況でございますので、このUNRWAを含めます国際パートナーの緊密連携の上で、ガザの一人一人に、ある意味では人道支援を届けていると承知をしているところであります。

 先ほど申し上げた緊急無償資金協力につきましても、そうした国際パートナーとの実施能力、しっかりと確認した上で、様々な取組をしている状況でございます。

末松委員 今のその上川大臣の発言を聞いていると、何となく美しくやっているような感じなんだけれども、私も、昨日、ガザ地域における国際機関とかNGOの人と話をして、そしていろいろと得たことは、彼らが一様に言っていたのは、とにかくUNRWAは一万三千人、そして、ほかの、例えばWFPとか、いろいろな諸機関には現地人員が三十人とか五十人とか、ユニセフも五十人。そういった諸機関は、ほとんど微々たる、UNRWAに比べてほとんど力が、なかなかできないんですよ。UNRWAの一万三千人の職員がもう本当に中核的にメインにやっていて、彼らの協力なしには私たちは活動できないと、ほかの国際機関の方が言っているわけですよ。

 そこを踏まえてやらないと、その大本を支援停止ということを続けているということの意味が分かりますか。そこが一番のポイントでしょう。

 先ほど、三千二百万ドル緊急支援をやりましたと言った。UNRWA以外と言っているわけですよ。彼らに聞いてみたら、UNRWAなしでそれの支援ができにくい、ほとんどできないと言っているわけですよ。そこを事情を分かってやっているのかというのが、それはおかしい。

 今、支援停止について、資料の一と二なんですけれども、UNRWAに対して大体百か国が支援をしているわけですね。

 そのうち上位十か国をちょっと見ますと、例えばアメリカが一番なんだけれども、これは停止をしている。そして、ドイツは、さっき言った事情で、UNRWAにできるだけ悪影響が起きないような、そんな措置をしながら一時停止をやっているんですね。あとそれから、EUは停止をしていないんですね。あとそれから、スウェーデンはもう再開をしました。一時停止したけれども、再開をした。五位のノルウェーも一時停止をしていたけれども、再開をしました。そして、六位の、フランス、これは停止していないんですよ。

 そして、僕は大したものだと思ったのは、フランスは独自で今調べているんですね、調査をしているんですよ。しているけれども停止をしていない。でも、真理はどこかということを調査をしている。これは日本と違うわけですよ。日本は調査に頼っているわけでしょう、自分で調査をしようとしていないんですよね。

 あとそれから、サウジアラビアは当然のことながら停止をしていない。サウジは八位ですね。九位のスイスも停止をしていない。十位のトルコも停止をしていない。十一位になりますけれども、カナダも三月八日に再開しているんですよ。

 だから、こういうアメリカ追随の外交も、人道支援についてはしっかり日本も独自の立場をやらないと、これはちょっと本当に見誤っているんじゃないかというのが、私は情けないと思っているわけです。

 私の方で更に言いますと、UNRWAに対する中東諸国とかアジア諸国、これもかなりやっていますよ。

 中東諸国なんかは、一時停止をしている国はないですね。これを私はアラブの人とも話をしたんですけれども、昔は、日本は我々アジアの盟主というか、そういったアラブのことも非常に考えてもらって、アメリカべったりじゃなくて、それなりの独自の外交をしていたんだ。でも、それが今は、ほとんどアメリカ追随で、何も考えていないじゃないかというふうな不満をもらったんですね。情けない話じゃないですか。これこそ日本の外交資産を毀損、壊しているんですよ。そういうことも含めた判断をしていかなきゃいけないわけですよ。

 あと、アジア諸国、見てみましょう。中国とか韓国とか、支援の停止をしていないじゃないですか。こういう、アジア諸国もほとんどしていないですよ、支援停止。彼らはアジア的なアプローチを含めてやってきているわけですよ。なのに、日本だけが支援停止をいち早く決めている。これは彼らから見ても、やはり昔は、日本は盟主と思っていたんだけれども、今は中国、中国のような筋をはっきりさせる国が重要だと言い始めているんですよ。日本の外交資産がまたここで毀損されているわけですね。そういうのも含めた幅広い視点で判断をしないといけないんじゃないかというのが私の主張なんです。

 だから、拙速に判断を早くやり過ぎたと私は言っているわけですね。これについて、コメントありますか。

上川国務大臣 今の委員の御意見につきましては、御指摘を承っておりますが、大変重要な御指摘であると認識をしております。

 今、ガザの情勢につきましては、先ほど冒頭の認識ということでありますが、そうしたことを踏まえまして、日本としての取り組む姿勢ということで、方針で今までしてきたところでございます。

 UNRWAにつきましては、ガザ地区におきまして百七十万人もの避難民がいらっしゃるということでございますので、そうした中での不可欠なサービスを大きな体制の中で展開しているということについては極めて重要な役割というふうに認識をしております。

 そういう意味で、美しい言葉だというような言い方では語れない状況であるということを前提に、三千二百万ドルの緊急無償資金の協力を、様々な国際機関が現場で連携をして動いている状況でありますので、そこに出してきたところでございます。一人一人に届けられるような方法につきまして更に検討してまいりたいと思っております。

末松委員 私の言うことを余り御理解されていないようですね。三千二百万ドルを緊急支援、あれで私が言ったのは、それを様々な国際機関と協力してと言いました、その言い方が美しいと言っているんですよ。

 本来、UNRWAが一万三千人いる、そういう中核を本当に担っていて、UNRWAがないと支援ができない、大臣がおっしゃるように一人一人に緊急物資、食料が届かないんですよ。だから、日本は三千二百万ドルをやったからこれで終わりだというような、そういう理屈は通じないんです。まず、UNRWAの三千五百万ドルのあれを早く、本当に一日も早く再開させて、そうしたら、ほかの国連機関と、NGOとか、連携できるんですよ。そのことを見誤らないでくれということを言っているわけです。

 だから、さっき大臣の方から、調査結果が出なくても日本で判断してやります、これは私は評価するわけですよ。

 その調査の関係でいいますと、国連の正式な調査というのはいつ頃終了すると見通しているんですか。あともう一つ、同時並行的に進められている、先ほどから大臣が言われている、国連の正式な監査機関であるOIOSですか、これの調査はいつ頃終了するんですか。

上川国務大臣 調査結果が、いつなされて、そして出されるのかということについては、私の方からは、今まさに国連の調査でありますし、フランスの元外相がトップになりました第三者の検証も同時並行で行われているということでございます。そういう中におきまして、検証にも参加をしながら取り組んでいくということでございます。よく意思疎通を図ってまいりたいというふうに思っております。

 国連の内部監査部による終了の時期につきましては差し控えますけれども、第三者の方の検討につきましては、国連は三月下旬に中間報告、そして四月の下旬に最終報告、こういう予定であるというふうに承知をしているところであります。

末松委員 その検証が四月下旬にならないと出ないというんだったら、そこまで支援停止の再開はないということですか。ちょっと改めて確認しますよ。

上川国務大臣 今、いろいろな国連機関、さらにはUNRWA自身、そして今の第三者の様々な検討チームと連携を取っている状況でございますので、その内容については今つまびらかにはできる状況ではございませんけれども、様々な可能性については、今の緊急な状況の中におきまして、できることはしっかりと検討しておりますし、また対応してまいりたいというふうに思っております。

末松委員 検討していますとおっしゃいました。具体的に何を検討していらっしゃるんですか。

上川国務大臣 今ここで、この具体的な案ということをちょっとここの場所で申し上げる今状況ではございませんけれども、今のお一人お一人の厳しい状況を踏まえた上で、それにしっかりと届けることができるような方策について検討をしている状況でございます。

末松委員 それと、もう一つ質問がありまして、予算委員会でも外務大臣の方が言っていたのが、何か調査に協力をするという言い方をよくしているんですよね、積極的に協力してまいりたいと。調査に積極的に協力というのは、具体的に何を指すんですか。

上川国務大臣 国連と、またUNRWA、こうした機関とも様々なチャネルで今やり取りをしているところでございまして、そういう状況の中で、問題点あるいはそれに対しての情報、こういったことについてやり取りをしている状況でございます。

 いずれにいたしましても、UNRWAが信頼回復のための本来の役割を果たすことができるように、特にガバナンスの面で極めて重要だというふうに認識をしておりまして、適切な対応をどう取るかも含めましてやり取りをしている状況であります。

末松委員 だって、いろいろな情報交換をしている間に、あなたはUNRWAとも非常に深い情報交換をやっていると言っていた。だったら、UNRWAの厳しい状況とか、それから餓死を救うためにどうすればいいかということはよく把握されているはずですよね。

 だから、調査機関に対する協力とはいっても、そこはまさしく、そういった協力の前提の、いろいろと、国連機関、それとNGOとか、そういう方々に対して、本当に聞けば聞くほど、これはいかぬ、早くこれを再開せにゃいかぬということになると思うんですけれども、そこら辺をちょっと、具体的なことは言えないかもしれないけれども、感想を言ってくださいよ。

上川国務大臣 現場でまさに命と向き合っている様々な機関のその声ということにつきましては、私も、先ほど申し上げた一般的なニュースのみならず、様々なチャネルの中で得た情報については触れている状況でございます。その意味では、本当に一日も早くというふうに思っている状況は、これは、どのように見えているかはよく分かりませんが、私自身、そういう思いで動いているということについては申し上げたいというふうに思います。

末松委員 何回も私も繰り返しますけれども、やはり重要なので。歴史的な大虐殺が行われているような場面に私たちは今直面しているということを、是非そこは再度認識していただいて、早く、一日も早い対応を取っていただきたい。

 先ほど、調査の結果前にも日本政府としてしっかりとした対応をしたいと、要するに、それは具体的には再開ということを含めてやりたいということをおっしゃったと私は今記憶していますけれども、それをもう一回確認してくれますか。

 四月末に調査が、第三者機関の調査が終わるまで待つんだ、これじゃ遅過ぎると思うんですが、そこは、今私の言ったことを確認してくれませんか。

上川国務大臣 日本として、中東の状況につきましての対応については、ドナー国としても非常に、上のドナー国ということでありますので、その重要性については十分に認識をしているところであります。

 今の危機的な状況をしっかりと踏まえた上で、時々刻々の変化でありますので、そういったことに対して、対応については、あらゆる可能性も含めて今検討しているところでございます。しっかりと対応してまいりたいと思います。

末松委員 ちょっと話題を変えるんですけれども、要するに、UNRWAへの支援の方法は今とにかく一刻も早くということで繰り返しお願いしていますけれども、今、ガザ地域の支援として、フランスとかアメリカは空中投下してやっています。そういうところ。あるいは、ガザ沖合から人道支援物資を運び込もうと。これはイスラエル政府が承認しているということなんですね。

 日本も、こういったガザ沖合から、第三国とか国連機関と協力しながら人道支援物資をガザ地域に送るということも私は一法だろうと思うんですけれども、そこについてはいかがですか。

上川国務大臣 人道支援物資のガザ地区への安定的な搬入が大きな課題になっているところでございまして、まさに改善策の一つとして、キプロス、米国及びUAE等が中心となりまして、海上輸送によります人道支援物資の搬入の取組が今進められている状況でございます。

 この取組につきましては、ガザ地区への人道支援の搬入量の拡大に貢献するというふうに認識をしておりまして、我が国として歓迎し、支持をするところでございます。また、我が国として、この取組に貢献をすべく、いかなる具体的な協力が可能かを積極的に検討していくという考え方につきましては、もう既に関係国に対しまして伝達をしているところでございます。

 引き続き、連携をしながら、まさにガザ情勢の安定的な食料及び様々な物資の輸送ということについての貢献になりますので、これにつきましては十分なる対応をしてまいりたいと思っております。

末松委員 検討はいいですから、早くアクションを起こせるような、検討のスピードアップ化をお願いして、実際に行動して、日本もここで協力しているんだということを見せてくださいよ、世界の人間に。特に、アラブ地域とかアジア地域を含めて。

 あと、最後のガザ地域の質問ですけれども、病人がほとんど、二百二十万人がほとんど飢餓状態だと言われていて、みんな海外に搬送してやっていくようなことというのも、いかんせんそれはちょっと大変なので、病人とかを日本で受け入れるということ、これも検討してほしいと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 重傷病の患者さんたちの受入れということでございますが、命の一番重要なところだと認識をしております。こうした観点から、日本といたしましては、様々な取組ということでございますが、先ほど三千二百万ドルと緊急無償資金協力のお話をさせていただきましたけれども、それにつきましても、WHOを通じました医薬品の提供等を実施するということでございます。

 また、今般、十一日でありますが、ガザ地区から重傷患者また新生児等の受入れを実施いたしますエジプトの病院に対しまして、約八百三十万ドルの無償資金協力を通じまして、医療資機材の供与、また医療従事者の緊急対応能力強化のための研修等を実施することを発表したところでございます。

 何が一番最善な道かということを絶えず改善をしていきたいというふうに思っておりまして、現実的なアプローチとしてまさに行動するところでございますので、それについては追求をし続けてまいりたいと考えております。

末松委員 技術者の研修とか、ある程度中期的な話を今やられても、私の方からはぴんとこないんですよ。とにかく命を助けるということ。

 これは、イスラエルの方々にとってもセキュリティーの話になるんですね。ずっと餓死者が、どんどん、数十人、数百人、毎日出ていって、それを世界の人がみんな見ている。そうしたら、イスラエルというのは本当にけしからぬ国だな、まさに虐殺国だ、そういう認識が高まってくると、世界にいるユダヤ人も、本当にひょっとしたら殺されたり、あるいは負傷をされたり、テロが起こったりして、イスラエルにとってもそこは逆の意味でセキュリティーの問題になると思うので、そこを踏まえながら、イスラエルの当局にも自制を促していきたいと思っております。

 いずれにしても、この緊急人道支援については、とにかく早く、調査結果が出る前にしっかりやるというお話をいただきましたから、それはいいんですけれども、是非目に見える結果を示してくださいね。よろしくお願いします。

 終わります。

勝俣委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青柳仁士です。

 おととい、国際刑事裁判所、ICCの所長に、日本人の赤根智子さんが選出されました。上川大臣は、日本人で初めてICC所長に選出されたことは、高い評価の表れで、大きな意義がある、更なる活躍を期待する、日本政府は引き続き、ICCの発展を支援し、国際社会における法の支配の推進に積極的に貢献していくという談話を発表しました。

 一方で、赤根さんは、ICCの裁判官時代に、ウクライナ侵攻についてプーチン大統領に逮捕状を出したことで、ロシアから指名手配を受けています。今後、ロシアから不当に拘束されたり命を狙われたりする可能性も否定できないと思います。

 赤根さんに国際社会で重要な役割を果たしていただくためにも、外務省の本来業務である在外邦人保護の一環として、外務省が赤根さんの身辺の安全を確保し、毎日安心して仕事に集中できる環境を整えてあげるべきではないでしょうか。外務大臣としての御所見を伺います。

上川国務大臣 まず、ICCの所長に選出された赤根判事に対しまして、今後ますますの活躍を、そして、日本人として頑張っていただきたいということで、この支持をICCに対してもしておりますし、また、その活動については支援してまいりたいと考えております。

 赤根さんでありますが、昨年の七月に、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を発付したということで、ロシア内務省の指名手配リストに掲載されたと承知しております。ICCが扱います個別の事態をめぐりまして、ICCの関係者個人に対しまして報復的な措置を取ることは不当であると考えております。

 ICC、そしてICCが所在しておりますオランダ当局に対しまして、我が国といたしましては、これまでも赤根判事の警備には万全を期するように申入れを行ってきているところでございまして、既に具体的な措置が講じられていると承知しているところであります。また、今般の赤根判事のICC所長就任を受けまして、警備に更に万全を期するよう、改めてICCやオランダ当局に対しまして申入れを行ったところでございます。

 赤根所長の身柄の安全確保が最優先であるということでありますが、同時に、赤根判事が所長としての役割を十全に果たすことができるように、引き続き、緊張感を持って、ICCとよく連携しながら対応してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 是非、ICCそしてオランダ当局に対して継続的な働きかけ、申入れを行うことで安全を確保してあげていただきたいと思います。

 上川大臣も法務相時代に、役割で、個人の非常に危険な、地位を顧みずに仕事に打ち込んだということを誰もが知っていると思いますけれども、やはり誰かがやらなきゃいけない仕事です。それを勇敢な女性判事が日本人としてやっているということは、我々としても国際的にも極めて誇らしいことです。こういった方に万が一安全上の不安があってはならないと思いますから、邦人保護は外務省の第一業務ですから、是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 続いて、今国会で条約が審議される予定のグローバル戦闘航空プログラム、GCAPについて。

 パートナー国のイギリスとイタリアは、完成品の輸出を前提に枠組みに加わっています。一方で、日本は、防衛装備品移転三原則の運用指針によって、第三国への完成品輸出はできません。そうなると、開発に当たっては応分の負担を求められる一方で、完成品ができたときには、同盟国、同志国への最先端の防衛装備品供給によって得られる同盟強化、抑止力強化といったことや、あるいは、販売によって得られる収益などのリターンは十分に受けることができません。これは投資として割に合わないのではないかというふうにも思います。

 また、今後、AI、ドローン、宇宙といった新しい技術を搭載した防衛装備品は、基本的に国際共同開発となることが想定されます。日本だけ都度承認を求めるような体制では、これからのパートナー国から声がかかることも少なくなるのではないかと危惧します。

 この点について、政府の現状の認識を伺います。

鬼木副大臣 まず、次期戦闘機につきましては、我が国防衛に必要な性能を有する機体を実現するためにも、第三国への直接移転を行い得る仕組みを持つことが国際共同開発の成功に必要と考えております。

 その上で、防衛生産・技術基盤の面から申し上げれば、防衛省は、次期戦闘機の国際共同開発を通じて、国際的に活躍する次世代エンジニアの育成やサプライチェーンの強化等を図ることで、我が国の防衛生産・技術基盤を維持強化していく考えであります。

 さらに、航空機産業は、高度な技術力と、部品、素材に至る幅広い裾野を有する、民間防衛部門共通の産業基盤であります。このため、次期戦闘機の開発において、様々な先端技術に投資するとともに、優秀な人材が育成されることで、防衛産業はもとより、産業界全般への幅広い波及効果が期待できます。

 なお、完成品の第三国移転を戦闘機のみ認めることにより、日本は他国からパートナーとして敬遠されるのではないかとの御指摘につきまして、国際共同開発、生産した完成品の我が国から第三国への直接移転については、現在検討を進めているところであり、その具体的な内容に関わる御質問についてお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

 その上で、一般論として、国際共同開発、生産による完成品である次期戦闘機において、我が国が直接移転を行い得る仕組みを持たないこととなれば、我が国は国際共同開発、生産のパートナー国としてふさわしくないと国際的に認識されてしまいます。

 今後、国際共同開発、生産への参加が困難となれば、我が国が求める性能を有する装備品の取得、維持が困難となり、我が国の防衛に支障を来すとともに、先ほど申し上げたような防衛生産・技術基盤の維持強化についても困難となると考えております。

青柳(仁)委員 今御答弁があった内容がまさに現実だと思います。

 合理的に判断すれば、日本維新の会と教育無償化を実現する会が共同で会派を組んで様々な政策協議を併せてやっておりますが、その中では、今後の国際関係を踏まえて、国際共同開発に関しては、原則的に第三国移転を認めるべきではないか。これは、認めるべきではないかという意見ではあるんですが、今お話があったことも踏まえ、現実を考えれば、それが最も合理的な選択肢だというふうに考えております。この点は、引き続き、党としても党を挙げてしっかりと主張していきたいと思っております。

 続いて、セキュリティークリアランスについてお伺いします。

 日本維新の会は、国際局を通じてアメリカの政府やシンクタンクと独自に政策協議を行っています。その中で、今四百万人に付与されているというアメリカのセキュリティークリアランス制度の運用の現状について伺う機会がありました。これは、様々な要人の方々から聞いた話ですが、明らかに不要な人々にも付与されている、また、一般的な情報が秘密情報に指定されることもある、これはオーバークラシフィケーションが非常に問題になっているということでした。

 日本政府としては、今後、セキュリティークリアランスが導入された後、どういった社会像を想定されているのか、どのような青写真を描いているのか、現状で答えられる範囲で教えていただきたいと思います。例えば、最低限の想定として、セキュリティークリアランスは大体何万人程度に付与することを想定しているんでしょうか。お答えください。

古賀副大臣 青柳委員から、経済安保分野のセキュリティークリアランス制度について、運用あるいは姿という御質問をいただきました。

 同制度におきましては、今国会において御審議いただく予定の重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に規定を置いているところでございまして、同法案が成立した暁には、施行までの期間において、重要経済安保情報の指定及び解除などに関する統一的な運用を図るための基準を、有識者の意見を伺いながら策定することとしております。

 こうした基準に基づきまして、各行政機関において指定する重要経済安保情報の範囲ですとか、それに関しての調査、その件数なども出てくると認識しております。それを受けて、必要な政府の体制ですとか人数、こういったものを関係省庁と調整し、運用体制を整備していきたいと考えているところであります。

 そうしたことでございますので、法案の審議の際にしっかり御審議いただく中で今後の対応を考えていきたいと思っております。

青柳(仁)委員 順番が逆だと思うんですよね。四百万人に付与した場合には非常な問題が起きているという以上、まず、法案を提出する前に、何万人ぐらいに出して、それがどういうふうに運用されるのかという青写真をきちんと持たないと、法案の議論もできませんよ。でき上がってから詳細を詰めますというふうに考える類いのものではないと思っています。

 保有者数すら答えられないのであれば、その官民比率、指定される重要経済安保情報の量、制度の更新とか資格喪失、罰則の具体的な運用、身辺調査や資格付与を行う組織のありよう、こういったものも法案の中には入っていますけれども、本来は、どれぐらいの規模を想定しているのかがなかったら議論なんかできませんよ。これは法案を提出している政府の責任としてしっかり明らかにしていくべきだと思います。

 同様に、我が党では、セキュリティークリアランスの制度は、秘密情報を保護するという側面がもちろんありますが、むしろ、機密情報を流通させるためのインフラをつくることであると捉えています。その意味で、同盟国、同志国との制度としての同等性、互換性が極めて重要だと考えています。

 それらを突き詰めていきますと、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドによる機密情報共有の枠組み、いわゆるファイブアイズというようなシステムにもたどり着き得るというふうにも考えております。

 これまで明示的ではなかったと思いますが、今後、こういうセキュリティークリアランスの政策を進めた先に、ファイブアイズそのものに加盟するというような選択肢もあり得るのでしょうか。お答えいただければと思います。

村井内閣官房副長官 青柳委員の御質問にお答えをさせていただきます。

 情報分野に関する同盟国との具体的な連携の在り方につきましては、事柄の性質上、お答えを差し控えさせていただきますけれども、我が国は、米国、英国、豪州を始めとする関係国と平素から緊密に連携し、様々な情報交換などを行っているところでございます。

 引き続き、我が国の情報収集、分析能力の充実強化及び情報保全に一層取り組んでまいります。

青柳(仁)委員 先ほど申し上げたとおり、セキュリティークリアランスというのは、基本的には機密情報を流通させるためのインフラです。だから、これは、どれぐらいのクオリティーとどれぐらいの規模を流通させるのかということを考えていくときには、最終的な青写真が重要だと思うんです。ですから、そういうファイブアイズのようなものを目指すとか、そうでなくてもいいんです。そうじゃないのであれば、どういうものを目指すか、こういう青写真をきちんと省庁の方で考えられないのであれば、政権を担当する政務の方でしっかりと出さないと、国民でも不安に思っている方ももちろん多いですし、民間企業にも負担をかける話ですから、それは最低限の責任としてやっていただければと思っております。

 村井副長官におかれましては、答弁が終わられましたら御退室いただければと思います。

 続きまして、ティックトックについてお伺いしたいと思います。

 中国企業が運営するSNSのティックトックは、現在、日本国内にユーザーが千七百万人おります。十代の六割以上が現在使用している状況です。しかし、このティックトックには安全保障上の懸念が度々指摘されています。例えば、アメリカでは、半数以上の州で州から支給された端末でのこのアプリの使用は禁止されています。また、衆議院に相当するアメリカの下院では、ティックトック禁止法案が超党派で提出され、今後採決される見込みです。バイデン大統領もこれを支持しています。

 この背景には、中国の国家情報法の、いかなる組織や個人も国家の情報活動に協力しなければならないという定めに基づいて、ティックトックの運営元企業バイトダンスは、中国共産党からデータ提供を求められた場合に逆らえない可能性が高いということが指摘されています。位置情報やアプリの利用履歴などを分析すると、利用者の住所や職業の特定も現在の技術では可能です。例えば、上川大臣がティックトックを使っていたら、上川大臣の行動から嗜好から筒抜けになるわけです。

 政府や企業の要人の個人情報が中国政府に渡って、それが例えば脅迫に使われたり、あるいは安保上の情報分析に使われたりすると、国家の安全保障上深刻な事態を招きます。実際に、アメリカではFBIの高官の方も同様の指摘を何度もされております。

 こうした状況や各国の対応がある中で、日本では引き続きティックトックは自由に使える状態なんですけれども、日本政府として、これに関しては、国家の安全保障上問題は全くない、こういう認識でしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、欧米諸国等において、セキュリティー上の懸念から、御指摘のSNSの利用制限に係る議論が行われていることは承知しております。

 日本国内における特定のSNSの利用状況の我が国の外交に対する影響について一概にお答えすることは困難でございますが、情報操作等を通じた国際的な情報戦が恒常的に行われていることは事実でございます。

 外務省としましては、情報空間の動向把握の強化をしつつ、戦略的な対外発信に努めてまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 今日は総務省も来てくれていると思うんですけれども、総務省として規制は考えないんですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省としましては、現時点におきまして、電気通信事業法に基づき、個別の電気通信サービスの利用の禁止といった措置を行う考えは持ち合わせておりません。

 SNS等の利用につきましては、セキュリティーだとかプライバシーの確保が重要だということは認識しておりまして、令和四年の電気通信事業法の改正により、利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信サービスを提供する電気通信事業者に対しまして、利用者に関する情報の適正な取扱いを求める新たな規律を導入したところでございます。御指摘のありましたティックトックにつきましても、当該規律の対象事業者として指定しているところでございます。

 今後、総務省におきまして、同社から利用者情報の取扱いに係る規程、社内ルールの届出を受けるとともに、情報取扱方針を公表させることとしておりまして、こうした制度の運用を通じて、ティックトックを含む電気通信事業者には利用者情報の適正な取扱いを求めてまいりたいと考えているところでございます。

青柳(仁)委員 今お答えがあったとおり、外務省としては、まだそれほどの脅威だと思っていないということですよね、これに対して何もやらないということは。それから、総務省としては、一般的な情報通信、SNSとの横並びで見ていて、これも、結果、今規制する状況にはないということをお答えいただいたわけです。でも、アメリカ政府は、安全保障上の問題だということで、とっくに規制に入っているわけですよ。

 こういう、想定外だから何もしていませんみたいなこと、こんなことをやっていたら、中国の、中国だけじゃないですけれども、今、情報戦と言われる中で、いろいろな国にやられたい放題になると思うんです。これは政務の方できちんと方針を打ち出す、まさに政治判断をして一定の方向性を示すことが重要だと思うんですが、上川大臣、これについての御意見をお願いします。

上川国務大臣 外交の舞台に行きますと、サイバーセキュリティーとかAIについて大変議論が出てくる、大変重要なテーマになっているところでございます。その意味で、SNS等に関して、利活用ということでございますが、様々な情報戦が行われているということにつきましては事実でございます。

 先ほど答弁いたしましたとおり、情報空間の動向把握につきましては強化してまいりたいと思っておりますし、また、戦略的な対外発信にも努めてまいりたいと思っております。それぞれの国際的な環境につきましても、十分情報を収集し、分析の上で、対応についても検討してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 各省庁の部分最適が日本にとっての全体最適ではないというのは当たり前のことだと思うので、全体的な最適を考えるときには、是非大臣としての判断をしっかりとしていただきたいと思います。

 その一つの大きな事例としてあるのが、中国のブイの問題。先ほども取り上げられていましたけれども、尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域内あるいはその周辺に中国が大型の観測ブイを設置している問題。

 先日、産経新聞の報道で、中国の研究者がブイの観測データを基に少なくとも四本の学術論文を発表しているという報道がありました。ブイのデータを活用することで尖閣周辺海域の管轄権の既成事実化を狙っていると見られ、ブイのデータは軍事利用されている可能性もあると指摘されています。

 これまでどおり中国へ申し入れているだけでは何の効果もないと思います。中国のブイの強制撤去、対抗措置としての日本のブイの設置、先ほど来から議論があります国連海洋法条約七十四条、ブイの撤去に関する規定をこういうところにしっかり盛り込んでいくこと、また、既に出されてしまった論文の差止め、こうした具体的な措置を至急行うべきではないかと思いますが、外務大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 中国によります当該ブイでございますが、これまで、現場海域におきまして必要な警戒監視及び状況の把握を行うとともに、様々な角度からの調査、分析を重ねている状況でございます。

 もちろん、先ほど来お話をいたしたところでございますが、当該ブイの設置は、一方的な現状変更の試みでありまして、全く受け入れることができないということで抗議をするとともに、昨年十一月には、日中首脳会談で岸田総理から、また、日中外相会談におきまして私から王毅部長に対しましても直接ブイの即時撤去を求めたことを含めまして、あらゆる機会を捉えて、中国側に対しましてブイの即時撤去について強く求めている状況でございます。

 その上でということでございますが、それにもかかわらず、中国側が当該ブイを設置している、放置しているという状態を深刻に受け止めておりまして、引き続き、これらの取組については継続するとともに、ブイの撤去や移動、我が国によるブイの設置を含みます様々な対応につきまして、当該海域における関係国が有する権利及び義務、また、我が国の国内法令、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動に与える影響等も踏まえまして、関係省庁間で連携して検討した上で、可能かつ有効な対応を適切に実施していく考えでございます。

青柳(仁)委員 中国のブイの設置は力による現状変更であって、それは決して認められない、しかしながら、行っていることは申入れだけである、そういう御答弁だったわけですけれども、先ほど私が申し上げたような具体的な措置は今すぐにでもできるわけですから、これは今すぐやるべきだと思いますし、先ほど来から何度も議論がありますので、これは政治判断ですから、しっかりと外務省の政治判断としてやっていただきたいと思います。

 続いて、IPUについてお伺いします。

 今月末にジュネーブで、列国議会同盟、IPUの総会が開かれます。これは国連委員会において国連安保理改革に関する動議が提出される予定になっています。私はこの委員会の理事を務めているんですけれども、動議は事前に外務省にも共有させていただきました。ウクライナを中心に様々な国が求めている動議でして、具体的な内容として、今年開催予定の未来サミットを転換点として、国連安保理改革の批准を、最終的な国連改革の承認と国内手続に従って準備することを求めています。また、その国連と政府でのプロセスに議会人が介入するように求めています。

 私は、今度、日本代表団の一員としてもジュネーブに行く予定になっておりますが、政府として、今回の国連安保理改革に関する動議、これまで、前回の総会のときに、外務省とも相談しまして、一定、総理の発信している内容に合わせた形で日本代表団としては伝えているところではありますけれども、この動議についての受け止めについてお伺いします。

上川国務大臣 安保理がまさに試練のときにある中でございます。安保理改革を含みます国連の機能強化は極めて重要と認識しております。

 御紹介いただきましたが、安保理改革につきましては、昨年の国連総会の一般討論演説におきましても、岸田総理から、本年の未来サミット、二〇二五年の国連創設八十周年を見据えまして、具体的な行動に移っていくべきということについて強調したところでございます。

 今、青柳議員が御出席されます今月下旬に開催予定の第百四十八回IPU、列国議会同盟でございますが、その総会に安保理改革に関する動議案が提出されると承知しているところであります。我が国を含めまして、各国議会の間で安保理改革に関する議論が活発化していることは極めて重要であると考えておりますし、また、歓迎をいたしたいと思っております。

 私自身、昨年の国連総会の際に、安保理改革に関しまして、日本、ドイツ、インド、ブラジルの四か国の枠組みでありますG4の外相会合に出席いたしましたほか、様々な二国間会談や多国間の会合の機会を捉えまして、安保理改革を含みます国連の機能強化の重要性について一貫して働きかけを行ってきたところでございます。

 安保理改革は決してたやすいことではないと考えておりますが、まさに、日本、ドイツ、インド、ブラジルのG4、アフリカ、米、英、仏等の多くの国々と連携し、粘り強く取り組んでいかなければいけない極めて重要なことだと思っております。

青柳(仁)委員 おっしゃるとおり、様々な安保理改革の努力をこれまで外務省としても行ってきたと思うんですけれども、この問題は、安保理を改革できるのが安保理のメンバーしかいないという大本の矛盾をはらんでおりますから、どれだけ国際的な世論あるいはそういう支持を広げられるかというところが結局は勝負になってくると思いますので、IPUでもしっかりと世論を、大きな声を発信していけるよう私自身も頑張っていきたいと思いますが、是非、日本政府とも連携しながら国連改革を進められたらと思っています。

 それから、ミャンマーの軍政についての対応についてお伺いします。

 これもIPUに関連することなんですが、外務省は今月八日に、軍政下のミャンマーでの人道状況の悪化を受けて、国際機関やNGOを通じた約五十五億円の人道支援を行うということを発表しました。

 IPUには、実は、軍事政権ではなくて、民主派の国民統一政府、NUGがミャンマーを代表して参加しています。ミャンマーは、参加しているのか、いつもただ来ているだけなのか、よく分かりませんが、いずれにしてもその場におります。

 これまでの彼らと日本代表団との協議では、日本を含む各国の国際機関経由の人道支援は軍事政権の影響を受けやすい、そしてまた、現場では国際機関から結局NGOに再委託されるわけですから、初めからNUGにとって信頼性の高いNGOに資金を拠出してほしい、こういう要望を度々聞いております。また、軍事政権ではなくて、NUGとの正式な対話の場を日本政府として拡充してほしい、こういう要望も受けております。

 こうした声は日本政府にも届いていますでしょうか。また、外務大臣としてのこうした声に対する受け止めを教えてください。

上川国務大臣 ミャンマーの人道状況につきましては悪化の一途にあるということで、ミャンマー国民への人道支援は喫緊の課題であると認識しております。

 我が国は、クーデター以降でございますが、これまでに、国際機関、NGO等を経由いたしまして、直接ミャンマー国民が裨益する形で、合計約一億五千万ドルの人道支援を実施してきている状況でございます。

 各国際機関に対しましては、国内避難民を含めまして、真に支援を必要とする人々に支援が届くよう申入れを行っているところでございまして、日本といたしましても、国軍を利することのないよう、細心の注意を払って実施している状況でございます。

 現時点で国際機関のアクセスが難しい地域があるということは事実でございまして、一人でも多くの人々に届くことができるように、日本や現地のNGOともより一層連携しながら、様々な方法を駆使して人道支援に引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

 ミャンマー国軍によるクーデターの正当性を日本政府としては認めておりません。その意味で、民主的な体制への回復に向けまして、ミャンマーの国民の声をしっかりと聞くことが重要だと考えております。そのため、国軍に限らず、様々な関係者との対話を行っているということでございまして、その上で申し上げるところでありますが、ミャンマー問題の解決の上にNUGは重要なステークホルダーだと考えております。

青柳(仁)委員 今おっしゃったとおり、NUGは重要なステークホルダーですから、ステークホルダーというか、彼らの方がより一般のミャンマーの方々の声を代表しているという部分も相当あろうかと思いますので、しっかりと対話の場を開いて話をしていただきたいと思います。

 それで、彼らの話の中で気になったのが、国際機関に拠出したお金を日本政府としてちゃんと把握しているのかということなんですね。

 彼らの不安というのは、結局、現場では国際機関からNGOに再委託されているんですね。例えば、私も実はかつてUNDPという国際機関で働いていたことがあって、スーダンだとかアフガニスタンとか、いろいろなところにおりました。現場へ行きますと、国際機関のインターナショナルスタッフは、セキュリティーの問題もあるので、行けるエリアも限られますし、できる活動も結構制限されます。ですから、より多くの奥地にいろいろなものを届けようとすれば、そこから先は、また現地のNGOに再委託することが必要になります。

 それから、日本のODAと違って、要望書みたいなもの、要請書みたいなものを取り付ける必要はありませんが、ただ、プロジェクトドキュメントと呼ばれる、なぜこの支援を行うのかを国連として決定するための決裁文書というか、プロジェクトのドキュメントを作るに際しては、当然、相手国政府とコンサルテーションするという厳密な決まりがあって、これを破ることはできません。ですから、今、国際機関がプロジェクトドキュメントを作るとしたら、いわゆる軍事政権の承認の下に、そことのコンサルテーションがやはり必要だと思うんですね。その上で、そこが認めたNGOに発注するというか、委託するという形にならざるを得ないと思うんです。

 だからこそ、NUGは、そもそも自分たちとのつながりの深い、常に自分たちと一緒にやってくれているNGOに直接お金を出してくれないかと言っているわけです。

 ですから、外務省にお伺いしたいんですけれども、現状、ミャンマーにおいて、例えば、今回の五十五億円、行き先はまず国際機関とか、直接NGOに行くこともあるでしょうけれども、ユニセフとかに行くと聞いていますけれども、ここから先のお金の使い方、使われ方というのは現地でどのようにモニタリングをされているんですか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 各国際機関に対しては、国内避難民を含めて、真に必要とする人々に支援が届くよう申し入れておりまして、日本政府としても、国軍を利することがないよう、細心の注意を払って実施してきているところでございます。

 その上で、委員御指摘のとおり、国際機関のみならず、日本や現地のNGOともより一層連携して支援を行っていくことが重要であると考えておりまして、三月八日に発表した追加人道支援のうち、六百四万ドルにつきましては、NGOを通じた人道支援を行うことを考えているところでございます。

 委員の御指摘も踏まえつつ、現地のニーズや今後の情勢の推移も見極めながら、どのような支援が効果的か、不断に検討していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 現状どういったモニタリングをしているのかということだけお答えいただけますか。

石月政府参考人 現状、今ミャンマーはなかなか大変な状況ではございますけれども、大使館を通じて、最大限しっかりと、我々の行っている支援が人道支援を必要としている人々に届けることができるよう、国際機関とも連携しながら対処しているところでございます。

青柳(仁)委員 国際機関にお金を出すなと言っているわけじゃないんですよ。ただ、モニタリングの仕組みが脆弱過ぎる。ほかの国もそうですけれども、特に、こういった軍政下にあるような国では有効なモニタリングがほぼされていません。国民の税金を使っているわけですから、国際機関の方でしっかりモニタリングできないんだったら、外務省がしっかり見なかったら、お金を使う根拠はないですよ。

 先ほど来から、軍事政権そのもの、あのクーデターは認めないと言っているわけですから、それであれば、本当に現地の人たちのために使われているのか、汚職に流れていることだって当然ありますよ、現場に行けば。そういうことをしっかり見ないで、国際機関に拠出したらもうそこで予算執行はおしまい、こういう考え方では、支援という意味でも駄目ですし、国民の税金を使うという意味でも使う資格がないと思いますよ。その辺りのことをしっかり今後も引き続き求めていきたいと思います。

 時間になりましたので、質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 徳永久志です。よろしくお願いいたします。

 まず、上川大臣は、衆議院本会議における外交演説の中で、これからの日本外交の基本方針として三つ挙げられています。日本の国益をしっかり守ること、二つ目が、日本の存在感を高めていくこと、そして三つ目が、国民の皆様からの声に耳を傾け、国民に理解され、支持される外交の三つを挙げられました。この三つ目に国民に理解される外交を挙げられたわけですから、是非、これからの国会審議におきましても、今までの方々のように、お答えは差し控えるというような発言が格段と少なくなるということは御期待を申し上げますので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、三月十一日は東日本大震災の発災の日でありました。あれから十三年が経過して、いろいろな思いがあるわけでありますけれども、この三月十一日、東日本大震災発災の年の、遡ること同じ年の二月二十二日には、ニュージーランドのクライストチャーチで大地震が起こりました。日本から語学留学で来ていた若い人たち二十八名が貴い命を落とされたわけであります。

 ニュージーランドでは毎年犠牲者の追悼式典が行われておりまして、今年も行われました。日本からも御遺族の方々が出席され、その際に、ニュージーランドのラクソン首相も出席されて、日本人遺族の方々お一人お一人に言葉をかけていただいたということであります。本当に感謝を申し上げたいと思います。

 このニュージーランド地震発災直後、私は当時、民主党政権、外務大臣政務官を務めさせていただいておりまして、すぐに現地に入り、対応に当たりました。日本からも若い人たちの御家族が大勢ニュージーランドに入られました。御家族の方々のお声を聞きながら、ニュージーランド政府に対しての折衝等々をやらせていただいたということでもあります。

 夢と希望を抱いてニュージーランドで語学留学していた若者たちが犠牲となった大惨事でもあります。彼らが学んでいた語学学校のビルが倒壊しています。私は現地を見ましたが、大体同じ規模のビルが三つ並んでおりまして、日本人留学生が入っていた語学学校のビルだけが倒壊してぺしゃんこになっていて、両脇のビルはガラスが割れる程度で収まっている。こういった状況を見るにつけ、こういうことになったのは一体なぜなのかといったことであります。

 御遺族の方々も、一体なぜこういうビルに我が子たちが学ぶことになってしまったのか、本当に憂えておられました。御家族の方々は、この真相を知りたいと切実に訴えておられたのが今も記憶に残っております。

 こうした部分の解明はニュージーランド政府が責任を持って当たっていただけるということでありましたので、既に結論が出ていると思います。どのような結論になったのか、改めて御説明をいただきたいし、特に補償関係を含めてお願いしたいと思います。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一一年二月に発生したニュージーランド南島地震を受けて、ニュージーランド政府は、同年四月、同地震に起因する建築物倒壊の原因を調査するため、行政機構から独立した王立事故調査委員会を設置したということでございます。

 同委員会は、二〇一二年十二月、最終報告書を公表しまして、二十八名の邦人犠牲者を出したビルについて、設計、建築許可、施工、安全検査の各段階で問題があり、これら一連の問題が倒壊につながったと指摘したものと承知しております。

 補償についても御質問がございました。

 ニュージーランドの事故補償協会から、邦人被害者を含む地震の被害者の御遺族に対して補償金が支払われたと承知しております。また、ニュージーランド政府は、留学生の御遺族の渡航費用を支援したとともに、授業料等の一部を返還しまして、加えまして、ニュージーランド赤十字は御遺族にお見舞金を提供したと承知しております。

徳永委員 ある意味、人災であったということでもございますので、しかも、しっかりニュージーランド政府もお認めになられて、補償も対応していただいているということでありますから、その辺りのところを踏まえて、御家族の方々との対応はしっかりとやっていただいたんでしょうか。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省としましては、これまで、犠牲者の御遺族がニュージーランドを訪問される際の各種支援、あるいは、ニュージーランド側の補償、見舞金、遺留品返還等の手続の支援、事故調査に関わるニュージーランド側よりの伝達内容の情報提供などを実施しておりまして、引き続き、御遺族に対して必要かつできる限りの支援を行っていきたいと考えております。

徳永委員 是非、今後とも引き続いて御家族の方々への真摯な対応をお願いしたいと思います。

 また、上川大臣におかれましては、先ほど私が申し上げました、毎年ニュージーランド政府として追悼式典をやっていただいている、そして、ラクソン首相も御出席をいただき、しかも、日本から来られた御家族の方々お一人お一人に真摯に声をかけていただいている。本当にありがたい対応をしていただいていると思いますので、是非、機会があれば、ニュージーランド政府に対して感謝の言葉を伝えていただきたいと思っておりますので、よろしいでしょうか。

上川国務大臣 大変痛ましい事故であったということでございまして、私も、あの当時の風景というか、焼き付いて離れない状況であります。とりわけ、子供たちの犠牲者があったということについては、夢を断たれたということで、胸が潰れる思いでございます。

 ニュージーランド政府が今のような対応をこの間していただいてきたことについての感謝の気持ちについては、折々の中でしっかりとお伝えしてまいりたいと思っております。

徳永委員 そのように御対応いただきますようお願い申し上げます。

 それでは、次に参ります。

 本会議における上川外務大臣の外交演説、そして本委員会での国際情勢に関する報告について質問いたします。

 外交演説をお聞きをさせていただいて、また、その原稿の文章を拝読して気になっている点が幾つかありますので、断片的ではありますけれどもお聞きをして、認識を深めさせていただければと思っております。

 一つ目、気になった点といたしまして、これまで日本政府、特に外務省が多用してきた文言があるんですね。すなわち、例えば、自由、人権、民主主義といった普遍的価値観を守りとか、そういった普遍的価値観を共有する国々と連携しとか、そういった言葉がこれまでよく出てきたと思っております。しかしながら、今回の外交演説の中には普遍的価値観という言葉すら見当たりませんでした。この点についてお伺いしたいと思っているんです。

 一昨年末の防衛三文書では、明らかに、普遍的価値観を共有する国々と連携し云々かんぬんというのが、これでもか、これでもかというぐらい出てきます。しかしながら、昨年あたりから、当時の林大臣あたりから、この普遍的価値観云々ということが余り見受けられなくなりました。逆に、外交演説では、国境や価値観を超えて対応すべき課題が山積しているというふうに、乗り越えるべきものとしての価値観という言葉が使われているというのが、ほおという感じで思いました。

 一頃、価値観外交などと言われましたけれども、この時点におきまして普遍的価値観云々ということを言わなくなった、そういったことを唱えなくなった、その辺りの理由について、大臣、御説明をお願いいたします。

上川国務大臣 外交演説等におきましてどのような表現を用いるかということにつきましては、外交演説をする外務大臣ということでありますが、そうした様々な状況を踏まえた上で判断しているものと私は思っております。

 その上で、御質問でありますが、普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則ということでありますが、これは、国際社会の平和と安定、繁栄の礎、基礎となるものでございまして、我が国といたしましては、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値や原則の維持、擁護に各国と協力する形で取り組むということについては、一貫して重視していることでございます。

徳永委員 ですから、一貫して重視している普遍的価値観云々かんぬんということが今回の外交演説で触れられていなかった理由をお聞きしています。

上川国務大臣 今回、普遍的価値という言葉とイコールであります自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、こういったことの部分を申し上げたところでございます。とりわけ、法の支配ということについては、外交の場におきましても極めて大切と考えておりまして、その展開については、私の外交の中でも展開している状況でございます。

徳永委員 法の支配という言葉が上川大臣の外交方針のキーワードになるんだということはこの後お聞きしますが、私が聞いておりますのは、これまでの、外務省として、あるいは日本の外交として、普遍的価値観を守り抜く云々という言葉が外交演説で見られなかった理由についてお伺いをしています。

上川国務大臣 外交演説等におきましていかなる表現を用いるかということでございますが、その時々の状況を踏まえての判断ということでございます。

徳永委員 冒頭に私が触れましたけれども、上川大臣は、日本外交の基本方針として、国民に理解される外交、支持される外交を掲げておられるわけですよね。そうした場合に、では、上川外務大臣はどのような外交を責任者として展開されるのであろうかということを知る一番いい機会が外交演説だと思うんです。ですから、その外交演説の中で、今まで取り組んできたことを引き続きやっていくんだということであるならば、そこは、普遍的価値観を共有する国々云々というところも触れないといけなかったのではないですかという点をお聞きしているんです。

 私は、実は、あえて触れずに一種の新しい外交方針の機軸を打ち出そうとされたのではないかというような理解の下でこの質問をしていると理解していただくならば、もう一度同じ質問です、お答えをしていただきたい。

上川国務大臣 我が国の外交の基本ということでございますが、まさに、普遍的価値に立脚した国際的な規範や原則は国際社会の平和と安定、繁栄の基礎となるものであり、我が国といたしましては、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値や原則の維持、擁護に各国と協力する形で取り組むということを一貫して重視してまいりました。

 今回の外交演説におきましてそうした形で普遍的価値という言葉を使用しなかったのはなぜかということでございますが、その時々の状況を踏まえての判断ということでございます。

徳永委員 時々の状況、判断を踏まえて今までキーワードとしてきたことが浮かび上がったり消え去ったりすることでいいんですかね。そこはちょっと私は理解に苦しみます。

 では、ちょっと見方というか角度を変えます。

 昨年九月の国連総会におきまして、岸田首相が一般討論演説なるものを行いました。ここで岸田首相はこうおっしゃっています。各国の協力がかつてなく重要となっている今、イデオロギーや価値観で国際社会が分断されては課題に対応できない、我々は、人間の命、尊厳が最も重要であるとの原点に立ち返るべきだというふうにおっしゃっているんです。私はこれは一つの見識だと思っているんです。

 この岸田首相の国連演説と、今回の外交演説の中で普遍的価値観というものがなくなっていることは、私は平仄が合うのではないかと思うんです。そのときの状況によってたまたま抜け落ちましたよという話ではなくて、今回あえてこうした部分に外交の新機軸を打ち立てたんだと言えるのではないかと思うんですけれども、この考え方は間違いですか、大臣。

上川国務大臣 今の岸田総理の国連総会におきましての演説でございますが、岸田総理の外交の真髄のところを、非常に限られたワーズの中で何を織り込むかの選択ということになろうかと思います。その意味では、明確に、岸田総理の外交について、今のところに象徴されるメッセージをお伝えしたいという強い思いで発言されたと思っております。

徳永委員 ですから、岸田首相がこれから外交を展開していくに当たっての基本方針の一つを示されたということですから、これは当然上川外務大臣としても共有されるということですよね。その中で、今回、普遍的価値観を守り云々という言葉が外交演説から見当たらなくなったという一連の流れがあるのだという確認をさせていただきますが、よろしいですか。

上川国務大臣 何を削って何を入れるかということについては、外交演説は、十五分か二十分という中におきましてワーズについては厳密にいろいろ精査させていただきながらということでありますが、私も、人間の命に関わる部分、特に人間の尊厳ということを極めて重視し、この間の外交につきましても取り組んできているところでございまして、これは岸田政権の中の柱ということで、私もそれを体現してしっかりと外交をしてまいりたいと考えております。

徳永委員 何を申し上げたいかというと、普遍的価値観というものを前面に掲げた外交をすると、ちょっと待てよ、それにはついていけないよといった国々が出てくる可能性というのは昨今非常に強まったんだろうと思うんです。

 大臣がおっしゃった自由、人権、民主主義、法の支配もそうかもしれません、これは、ある意味、私たち日本だと慣れ親しんだ西洋発の概念ですよね。私としても、今申し上げた自由、人権、民主主義、法の支配、これは崇高な理念だと思うし、私も大事にしたいし、守り育てていきたいという思いは誰にも負けないつもりをしています。

 しかしながら、これを普遍的価値観と言ってしまったら、普遍的というのは、広く世界にあまねくということですよね。これを言ってしまったら、ちょっと待てよという国は出てくるんだろう。その普遍的というのは一体誰がどこで決めたんだという話ですよね。それぞれの国は、宗教や民族や様々違って、それぞれの背景の中で国を治めているわけですから、ここを強調し過ぎると、ついてこれなくなる国々が出てくるんだろう。

 もっと具体的に言うと、今、国際社会の中でグローバルサウスという国々が大変発言力を増してきて、彼らとの連携というものがどこの国も必須の条件になってきているときに、普遍的価値観というものを余り強調し過ぎると、彼らがついてこれなくなる。彼らとの連携に様々な困難が生じてしまう。だから、今回、これからは、こういった普遍的価値観というのは大事に日本として守り育てるけれども、これはこれで声高に主張するのではなくて、岸田総理が言われた命の尊厳であるとか、そういったことを前面に出した方が彼らの理解が得られるのではないかというような新しい機軸を打ち出されたのではないかと推察しているんですが、間違いでしょうか。

上川国務大臣 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、命の尊厳、さらには人間の尊厳、命の大切さ、こういった一つの大きなコンセプトでありますが、いろいろな角度でこれを育てていくということは非常に重要であると考えておりまして、その意味では、固定したコンセプトがずっと続くということよりも、その中に様々な状況の中で思いが込められたりするものではないかと私は思っております。

 自由ということについても幅がありますし、逆に言うと、自由の阻害が何なのかというのも幅があります。こういったことを丁寧に、外交の中におきましても、ある意味では確認したり、相手に寄り添った形で意見を伺ったりというようなやり取りの中で、共通したものをしっかりとコンセプトとして打ち出していくということが、私は、短い外交のやり取りの中でも強く感じてきているところであります。

 その意味で、今のこの状況の中では、人間の尊厳ということについての非常に大きな立ち位置については、これは普遍的価値という中に属するものだと私は思っておりまして、ここはしっかりとした形で丁寧に進めていく必要があるのではないか、こんなふうに思っておるところでございます。

徳永委員 そうですよね。人間の命を大切にする、人間の尊厳を大切にするといった部分について、恐らくほとんどの宗教、民族、どのような風土であろうとも、これに異を唱える国、人、民族はいないはずなので、これを普遍的価値観というならば分かるんです。ですから、こういった部分におきまして、ここを前面に掲げるのだという岸田首相の声明、そして、その部分について、それに賛同される上川大臣の姿勢というものが私は外交の新機軸たり得るという思いでお聞きしていると理解してください。

 それで、人間の尊厳、命の大切さというもので共有ができたと思うんですが、そういった中で、今回、先ほどもちらっと大臣がおっしゃいましたけれども、法の支配という言葉が盛んに外交演説の中では見られるわけです。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序というものがたくさん出てきます。

 この法の支配という言葉は、岸田首相が広島サミットでもテーマとして挙げられたと承知しておりますが、法の支配が上川大臣が外交をされるに当たってのキーとなる言葉であるということでありますので、改めてその真意をお伺いします。

上川国務大臣 現状の国際情勢でございますが、まさに、法の支配の脆弱さによりまして平和と安全が脅かされている、こういう現実の認識でございます。武力による領土の取得の禁止、国際法の誠実な遵守、こうした中で法の支配を目指していくということが重要と考えておりまして、まさにそのことを法の支配という体系の中で位置づけ、そして推進していきたいと考えているところでございます。

 このような認識の下におきまして、今般の外交演説でございますが、法の支配はその意味で平和と繁栄の基礎を成すものであるということを述べた上で、対話と協力に基づく、国際社会における法の支配の強化のための外交を包括的に進めていく、こうした考えを述べたところでございます。

 私自身、今年の初めに、ICC、ICJ、そしてITLOSを訪問いたしました。国際社会の中で、このような国際社会の分断と対立が非常に進んでいる状況の中であるからこそ、法の支配という観点の中で、こうしたICCやICJ、ITLOSの役割は極めて重要であると認識し、そして、この裁判所が、まだスケールとしては小さいところではございますが、その役割に強い支持をしてきたところでございます。

 そして、その上で申し上げるところでありますが、この間、日本として取り組んできた法制度整備支援、相手の立場に立ったきめ細やかな法体系の整備でありますとか、国際法務人材の育成等につきましても日本として様々な協力をしてきた。この実績の上に、こうした大きな体系を更に強めていくために、日本としては、同盟国、同志国との連携を推進しつつ、世界の平和と安定、そして繁栄に向けまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化していく、このことに積極的に取り組んでまいりたい、このことを外交演説の中で申し上げたところでございます。

徳永委員 外交にとって、どのようなワードを使うか、ワーディングをするかというのは非常に大切だと思うんですね。そして、それに伴って、その付随する意味、概念というのが大切になってきますので、そういった思いの中でもう少し聞かせていただきます。

 法の支配を前面に掲げられるわけですけれども、それとよく似たというか、言葉面は似ているんですけれども、例えば、法治主義という言葉があります。ですから、法治主義に基づく自由で開かれた国際秩序と言えなくもありません。あるいは、もっと一般に分かりやすい形にするならば、国際法という言葉を使って、国際法に基づく自由で開かれた国際秩序でも意味としては通るんだろうと思います。

 法治主義、あるいは国際法、こういった言葉を使わずに、法の支配を選ばれた理由についてお聞かせ願います。

上川国務大臣 国際社会におきまして、先ほど申し上げたとおり、武力による領土取得の禁止、国際法の誠実な遵守、この重要性について広く共感を得ていくという観点から、国連等におきましてもその重要性は広く確認されてきているところの法の支配、こうした言葉を介してこのことについてしっかりと議論を深めていくということにおきましても、大変有意義であると思っております。

 全ての権力に対して法の優越を認めるという考え方、これは一般に法の支配ということでございますが、これはまさに、友好的で平等で国家間の関係から成る国際秩序の基盤でもあると考えております。

 先ほど来、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現するという大きな目標に向かいまして、法の支配という、ある意味では国連の中でも議論を積み重ねてきている理念、考え方でありますので、これを更に体系的に、しかも、今の大変厳しい国際情勢の中にありましても貫いていく姿勢をしっかりと日本として外交の基軸に据えて、様々な課題や問題についても、よく議論をしながら、対話をしながら、協力を仰ぎながら、法の支配についての実態を伴う形での方向性に向かっていかに進めることができるのか、これには努力をしてまいりたい、こういう思いでございます。

 対話と協力に基づきまして、国際社会におきましての法の支配の強化のための外交につきましては、包括的なところで、今、いろいろな可能性、場所があるということで考えているところでもございますが、ICJやICC、また、今取り組んでいることも含めましてしっかりと対応してまいりたい、追求してまいりたいと思っております。

徳永委員 法治主義に基づく国際秩序、国際法に基づく国際秩序、法治主義、国際法を使わなかった理由はとお聞きしました。大臣の御答弁からすると、法の支配という言葉が国連あるいは国際社会の中で一般的に肯定的に見られているということの御説明はあったという理解はさせていただきます。

 それでは、私の理解を申し上げます。

 法の支配というのは大臣がおっしゃったような部分がありますけれども、法治主義というのは、ある意味、議会とかで制定された実際に存在する法律、これに基づいて統治を行っていきましょうというのが法治主義と理解しています。

 片や、今回の法の支配というものは、実際に制定された法律だけではなくて、ある意味、道徳的な価値観や倫理的なものや、正しいとされる、そういった法の前提となる部分も含めて従っていきましょうというふうにしていると理解しているんです。

 ですから、国際社会で様々な民族や宗教がある中でいくならば、法治主義という言葉を使うよりも、法の支配を使った方がすっかりといくんだという理解でよろしいでしょうか。

上川国務大臣 今の御質問についてでございますけれども、法の支配の重要性につきましては、国連総会やコンセンサスで採択された決議におきましても累次にわたりまして確認されてきているところでございます。イスラム法体系を採用している国々も含めまして、まさに宗教や文化の違いを超えて共有されているものでございます。

 二〇二三年一月に我が国が安保理の議長国として主催した法の支配に関する安保理閣僚級公開討論におきましては、イスラム法体系を採用している国々も含めまして計七十七か国等の多くの国々から、法の支配は時宜を得たテーマであるとして歓迎されたところでございます。

 こうした点も含めまして、まさに対話と協力が極めて重要であると考えております。国際社会全体に法の支配の強化、法の支配が行き届くことができるような外交につきましては重要であると私は認識しておりまして、その包括的な外交をどう進めていくのか、着実な前進をしてまいりたいと思っているところでございます。

徳永委員 今大臣がおっしゃっていただいた法の支配という言葉は私も賛成なんですよ。これに基づいて国際秩序をつくっていきますというのも大賛成です。

 ただ、一つの懸念として、法の支配という言葉そのものがイギリスの発祥であるということ、西洋型民主主義の考え方であるということ、これによって、イスラムの方々、特にグローバルサウスの主要となるイスラムの方々にとってどう受け止めておられるのかなという部分については大変疑問に思っておりました。一般的には、アッラーが預言者ムハンマドに下したものが法ですよね。それを法と言うわけで、法の支配と言ったときに、我々と同じ感覚を持っていただけるのであろうかと甚だ心配しておったんですけれども、大臣は、今ほどの答弁の中で、文化的、宗教的な違いがあってもここは十分に理解、共感されるのだとおっしゃっていただきましたが、それでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 まさに、理解と協力を得るための、違いを乗り越えて一つの大きな秩序をつくるための努力を国際社会がするための枠組みとして、法の支配ということについては、先ほど申し上げたとおり、宗教、文化の違いを超えまして、象徴的に申し上げたところでありますが、イスラム法の体系を採用している国々も含めまして共有されている。こういう状況を重ねていくことは極めて重要であると思います。

 対話と協力がなければ理解し合うことができませんので、そのためには、法の支配、このことについては、日本としての一つの大きな柱として安保理議長国の中で推進してきているところでございますが、これについては、更にこの方向も含めて進めてまいりたいと考えております。

徳永委員 時間がありませんので、次に移ります。

 先ほど、イスラムは法の支配という概念を同じように受け止めてくれるのだろうかという危惧の思いを申し上げましたけれども、同様の国がお隣にあります。中国ですよねという質問をしても大臣はそうですとはお答えにならないので、質問はしませんけれども。

 今回の外交演説で、中国について、戦略的互恵関係を包括的に推進し云々という文言が出てきました。この戦略的互恵関係という考えは、二〇〇六年、安倍首相と胡錦濤国家主席との首脳会談で初めて打ち出され、それ以降、日中関係を表現する際の一つのキーワードとなってきたと理解しています。

 ところが、ここ数年間、この戦略的互恵関係という言葉が余り耳にされなくなりました。そして、昨年十一月の岸田首相と習近平国家主席との首脳会談で戦略的互恵関係の再確認がなされたということでありますので、ほおという思いがしたわけであります。

 そこで、ちょっと質問を飛ばしますから、事務方の方、よろしくお願いしますね。まず、ここ数年、戦略的互恵関係という言葉が用いられなかった理由について簡単に御説明ください。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 戦略的互恵関係でございますが、日中両国は、二〇〇八年の日中共同声明において、戦略的互恵関係を包括的に推進するということで一致しており、これは、共同声明の発出以来、現在に至るまで一貫して維持されている考え方でございます。

 昨年十一月の日中首脳会談におきましては、これを改めて確認したものでありまして、政策の変更を意味するものではございません。

徳永委員 時間が来ました。外務省の方、申し訳ないです、答弁を作っていただいて。次回、必ず同様の質問をさせていただきますので、この中国との関係は次回に続くということにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 イスラエルによるガザ地区での無差別攻撃について質問します。

 私は、昨年の十一月十日の本委員会で、ガザ地区では、戦闘が始まって以降、一か月で一万人を超える死者が出ており、その四割以上が子供たちだと指摘し、上川大臣に、ガザ地区の深刻な人道的危機の打開は一刻の猶予も許されない、イスラエルによる攻撃の中止、即時停戦を強く働きかけるべきだと求めました。

 ガザ地区では、その後もイスラエルによる激しい攻撃が続き、配付資料一枚目にありますように、死者の数は三万人を超え、犠牲者の七割が女性や子供とされています。イスラエルは、ラマダンが始まった今日も攻撃をやめず、ガザ地区南部のラファへの本格的な地上侵攻作戦を強行する姿勢を崩していません。

 上川大臣は、この極めて重大な局面をどう認識されているのか、お伺いしたいと思います。

上川国務大臣 我が国といたしましては、ラファハにおきましてのイスラエルの軍事行動の動きを深く懸念をしている状況でございます。この地区は人口が過密状態にある地域でございまして、民間人の避難、保護のための十分な措置が取られないまま軍事作戦が継続することになれば、更に多くの犠牲者が発生する惨事となる、人道支援活動がますます困難になるということは明らかであると考えております。

 ハマスが人質を一刻も早く解放すべきことは当然でありますが、同時に、ガザの無辜の民間人がこれ以上犠牲になることは何としても防がなければならないと考えているところでございます。そのためにも、ラマダン月に入った今もまさに、人質の解放と戦闘の休止をめぐりまして、関係国の仲介によりますぎりぎりの調整が行われているのでありまして、我が国といたしましても、このような動きが実現するよう関係国と緊密に連携しつつ、二国間での働きかけ、また、安保理、G7の一員としての外交努力を通じまして環境整備に取り組んでいるところでございます。

穀田委員 イスラエルが本格的な地上作戦を強行すれば、今お話がありましたけれども、まさに未曽有の人道的な大惨事になることは明らかであります。

 こうした中で、EUに加盟する二十六か国は、先月、共同で声明を発表し、ラファでの軍事作戦は、既に壊滅的な人道状況をより悪化させ、緊急に必要な支援の提供を妨げる、こう批判して、イスラエル政府に軍事作戦の中止を要請しました。オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの首相も、相次いで攻撃の中止を求める声を上げています。フランスのマクロン大統領は、ラファへの軍事作戦に断固反対すると表明し、作戦の中止を求めています。スペインやアイルランドの首相は、ラファへの軍事作戦の拡大は国際社会が緊急に立ち向かわなければならない重大で切迫した脅威だと述べ、ベルギーとともに、EUの中で最も厳しくイスラエルの軍事作戦を批判しています。

 上川大臣、ラファへの本格的な軍事作戦が展開されれば、更に多くの犠牲者が発生する惨事になる、こう認識されているならば、日本政府として軍事作戦に断固反対する立場を明確にすべきではないんですか。

上川国務大臣 この間の日本の状況でございますが、一貫して、人道支援活動が可能な環境の確保、また、人質の解放につながるような人道的停戦が速やかに実現し、持続可能な停戦が実現することを期待しているところでございまして、こうした考えの下で、当事者に対しまして、直ちに人道的な観点から行動することを求めてきてまいりました。

 こうした立場につきましては、先般、私、G20の外相会合に参加をいたしましたけれども、私から改めて表明をしたところでございます。また、二月末には、イスラエルを訪問いたしました辻外務副大臣からも、イスラエル側に明確に伝えたところでございます。

 この事態におきましては、ラファハ、ガザ地区が極めて人道的に厳しい状況であるとともに、この事態の早期鎮静化や地域全体への飛び火を防ぐということの外交努力は国際社会で一致したところでございまして、更に軍事作戦が継続すれば、ヨルダン川西岸、またレバノン、こうした地域への波及のリスクも高まる、こういったことにつきましての懸念、そして、これについては深刻な懸念として表明をしてきているところであります。

穀田委員 今、辻副大臣の話が出ましたけれども、その発言その他については昨日私どもの山添議員が批判したところであることは御承知かと思います。

 住民の多くは、イスラエルの攻撃から逃れるために、ガザ地区の北部や中部から避難を繰り返し、最後の避難場所としてようやくラファにたどり着いた人たちであります。このラファで大規模な地上作戦が展開されれば、甚大な犠牲が出るのは明白です。ガザの無辜の民間人がこれ以上犠牲になることは何としても防がなければならないと、この間、一貫して大臣はおっしゃっています。とするとすれば、日本政府として軍事作戦に断固反対するという立場を明確に表明すべきだと私は考えます。

 上川大臣は、イスラエルを含む全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守の徹底を働きかけていると言われます。何が国際法違反で、何が国際人道法に違反するのか、明確にする必要があると思います。子供を含む無辜の民間人が過密状態にある場所に無差別攻撃を行うことは国際人道法に違反しないのか、この点の見解をお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 まさにイスラエルが、ハマスの攻撃を受けまして、国際法に基づいて自国及び自国民を守る権利を有すると認識をしているところでございますが、同時に、全ての行動は国際法に基づいて行わなければならず、いかなる場合におきましても国際人道法の基本的な規範は守らなければならないと考えております。均衡性の要件ということは必須であると考えているところであります。

 委員御指摘のとおり、子供を含みます無辜の民間人を無用に巻き込む攻撃は国際人道法の基本的な原則に反するものでありまして、正当化することはできないというふうに考えているところでございます。

 先ほど申し上げたように、当事者に対しましては、直ちに人道的な観点からの行動を求めてきているところでありまして、いろいろな場でそうしたことを表明してまいりました。先ほど申し上げたとおり、G20の外相会合におきましては明確にその旨を表明をいたしたところであります。また、二月末のイスラエル訪問の辻外務大臣からも、その旨をイスラエル側、当事者に明確に伝えたところでございます。

穀田委員 今、上川大臣は、子供を含む無辜の民間人を無用に巻き込む攻撃というのは国際人道法の基本的原則に反するもので、正当化できないということは答弁されました。

 この間、私は今日資料で出しましたけれども、三枚目にありますが、日本政府として、イスラエルの行動の評価の問題についても、予算委員会の第三分科会で述べておられます。この点の見解について改めてお聞きしておきたいと思います。

上川国務大臣 先ほど申し上げた上でということで大変恐縮でございますが、イスラエル軍の行動に関しましては、今次事案の個別具体的な事情、関連情報につきまして、事実関係、十分把握がなかなか困難であるということで、確定的な法的評価を行うことは差し控えさせていただきますが、民間人の犠牲者が増加している、しかも厳しい状況にある、さらに、軍事行動が国際法上正当化されるかどうか、これにつきましての当事者による一層の説明が求められる状況となっているということについては確かであると認識をしているところでございます。

 戦闘が長引く中にありまして、しかも今のような状況の中で、連日、これまでもそうでありましたが、多数の子供たちが、また女性や高齢者の皆さんも含みます死傷者が多数発生しているということについて、人道状況はまさに看過し得ない危機的な状況であると認識をしております。

 イスラエルに対しましては、国際人道法を含む国際法の遵守を繰り返し繰り返し求めてきているところでございます。

穀田委員 私が聞いているのは、レクでも提案して、こういうことについていいんだなということをお話をさせていただいています。つまり、資料を皆さんのところにお配りしているように、イスラエルの行動が国際法と完全に整合的であるという法的評価を行っているわけではございません、こう発言していること、これは今もお認めになるということでありますね。

上川国務大臣 まさにこの法的評価につきましては、ICJで今審議をされている状況であるということでございます。暫定措置命令は出されましたけれども。

 法的評価につきましてはICJの中で判断をされるべきことだ、見守っていきたいと思っております。

穀田委員 それを言っているんじゃなくて、当時、この二月二十七日衆議院予算委員会第三分科会で政府が答弁した、今お話があったように、今まで、事実関係について十分把握することは困難である中で、法的評価をすることは差し控えておりますけれども、これは我が国として、イスラエルの行動が国際法と完全に整合的であるという法的評価を行っているわけではありません、これはこのとおりお認めになっているということでよろしいね。

上川国務大臣 今委員おっしゃったとおりでございます。その考えに変わりはございません。

穀田委員 そういうことで答弁されたということを確認しておきたいと思います。

 そこで、ハマスによる民間人の殺害は国際法に反するもので、人質は即時解放されなければならない。しかし、このハマスの行為に対して、ガザ地区の無辜の民間人を無差別に攻撃するイスラエルの行動は国際法上正当化されない国際人道法違反の蛮行だ、直ちに人道的観点から行動することを求めたいと言うんだったら、そのことをはっきりイスラエルに私は迫るべきだと思います。

 そこで、今大臣も少しお触れになりましたけれども、国際司法裁判所は、一月、ガザ地区でジェノサイドを防ぐために、配付資料の二枚目にあります、イスラエルに対して暫定措置命令を発出しました。命令では、集団の構成員を殺害する、集団の構成員に重大な肉体的又は精神的な危害を加えるなど、ジェノサイド条約が禁じた行為を防止するあらゆる措置を取るよう命じています。いずれもガザ地区の住民を救うために緊急に必要なことであります。

 イスラエルは、この司法判断に従い、直ちに無差別攻撃をやめるべきだと考えます。大臣のこの点についての御所見を伺いたいと思います。

上川国務大臣 一月二十六日発出をされましたICJの暫定措置命令でございますが、まさにイスラエルに対しまして、ガザ地区のパレスチナ人との関係において、ジェノサイド及びその扇動を防ぐための措置を取ること、緊急に必要とされる基本的サービス及び人道支援を供給することを可能とする措置を取ること等を命じるものと承知をしております。

 国連の主要な司法機関でありますICJでございまして、この暫定措置命令は当事国を法的に拘束をするものであるということでありまして、誠実に履行されるべきものであり、その旨外務大臣の談話で強調をしたところでございます。

穀田委員 誠実に履行すべきものであると大臣も言われていましたように、この暫定措置命令は当事国を法的に拘束するものであります。イスラエルは命令に従って全てを履行しなければならない。ところが、しかし、この命令に対して、ネタニヤフ首相は、イスラエルには自衛権があると主張し、この基本的権利を否定する卑劣な試みだと命令の履行を拒否しています。

 更に重大なのは、米国の対応であります。米国安全保障会議のカービー戦略広報調整官は、一月の記者会見で、この暫定措置命令について、ICJの判断だけで米国の取組方が変わるわけではない、米国はイスラエルを支援し続けると述べ、イスラエルを擁護する姿勢を明確にしています。

 上川大臣は、今、履行すべきだと話がありましたけれども、この米国の対応を是とするのかどうか、お聞きしたいと思います。

上川国務大臣 御指摘の暫定措置命令に係る第三国の立場につきましては、コメントすることにつきましては控えたいというふうに思います。

 日本としては、先ほど申し上げた内容につきまして、私の方から、談話という形で、履行遵守と、そして要請されている内容についてイスラエルが誠実に実施すべきということについては、これは法的に拘束するものであるということを明確にしてきているところでございます。

穀田委員 法的に拘束するものである、それを繰り返しているわけですけれども、アメリカがそういう発言をしていて、イスラエルもそういう自衛権があると主張し、その命令の履行を拒否している。その下でアメリカがそういう発言をしている。これは許されないということをはっきりする必要があると私は思うんですね。

 カービー調整官は、米国は停戦が最良の方法とは考えていないと述べ、昨年十二月の国連総会で、日本を含む国連加盟国の八割が求めた即時の人道的停戦に背を向ける姿勢を示しています。

 少し余談になりますけれども、昨日、私たちは、外務委員会として様々な活動をしているわけですけれども、エストニアの外務大臣に来ていただいて、いろいろな議論をしました。そのときにも、やはり、あの国が、そういう人道的停戦という決議に、今までの問題について棄権から賛成に回ったというときの最大の問題は、人道的に、無辜の方々が殺されるこの事態を許してはならないということでありました。

 そういう意味でいいますと、今、米国は停戦が最良の方向とは考えていない、こんなふうに述べて、背を向ける姿勢を示しているのは、私は許されないと思うんですね。

 さきの一般教書演説でも、バイデン大統領は、イスラエルはハマスを追跡する権利があると述べて、自衛権を名目にした同盟国の国際法違反を擁護しています。こうした米国の姿勢に対して、先月行われた国連安保理の緊急会合では、ロシアのウクライナ侵略を批判する一方で、イスラエルのガザ地区攻撃を擁護するなど、二重基準だとの批判が出されています。

 上川大臣、この米国が取る二重基準、ダブルスタンダードが、国連憲章の下に世界が結束する上で大きな障害となっているという認識はありますか。

上川国務大臣 米国についての立場について、特に御指摘いただいた暫定措置命令に係るコメントということで、先ほど差し控えさせていただきましたけれども、その上で一点申し上げたいわけでございますが、ガザ情勢、極めて人道状況が厳しさを増す中にありまして、米国等が人質の即時解放や現場の人道状況改善等のために精力的な外交努力を行っているということにつきましては、高く評価をしている状況でございます。

 アメリカは、イスラエルが米国人を保護する責任があり、また、ガザ地区への人道支援を受け入れる必要があるということ等につきましても、様々な機会に発信をしてきていると承知をしている状況でございます。こういった観点については、今の状況からして極めて重要であると考えているところであります。

 御質問でございますが、ロシアによるウクライナ侵略は、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反でありまして、国連憲章の重大な違反であるという認識でございます。

 これに対しまして、今般のイスラエルの行動につきましては、ハマス等によるイスラエル領内へのテロ攻撃を直接のきっかけとするものでございまして、ロシアが一方的にウクライナに侵攻している行動と同列に扱うことにつきましては適当ではないと考えているところでございます。

穀田委員 この国連総会等では、エジプトを始め多くの国々が、今日のアメリカの対応に対して二重基準であるという批判を強く行われたことは御承知かと思うんです。

 いつも人道的支援とこちらを切り離すわけですけれども、私は、人道支援が切実で必要なことは論をまたないし、言をまたないと思うんですね。

 しかし、米メディアの報道によれば、バイデン政権は、イスラエルの侵攻開始以来、米議会に正式な通告をほとんどせずに、多量の武器弾薬を百回以上提供しています。人道状況の改善の外交努力どころか、米国のダブルスタンダードは、国連憲章を守れの一点で全世界が結束する上でまさに大きな障害となっているということ、この事実を見ても明らかだと思うんです。

 私は、外交努力を積極的に行うのであれば、米国追随の姿勢を改めて、米国に対して自国と同盟国を優先するダブルスタンダードを是正するよう働きかけるべきだ、そのことを強く求めておきたいと思います。

 次に、日本政府は、パレスチナ難民支援の中核を担う国連パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAへの資金拠出を停止しています。この問題、今日も随分議論になりました。拠出の停止は、人道危機に陥っているガザ地区の住民の命を更に奪うことになる問題であります。

 EUの欧州委員会は資金拠出の継続を発表し、カナダやスウェーデンも拠出を再開すると発表しました。日本政府も改めて拠出を再開すべきではないか、改めて私の方からもお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 UNRWAの職員の疑惑につきましては、極めて憂慮をしているものでございます。

 UNRWAはパレスチナ難民の支援におきまして不可欠な役割をこの間担っており、また、UNRWAが、信頼を取り戻し、本来の役割を果たすことができるよう、ガバナンスの強化を含めまして適切な対応を強く求めてきているというところでございます。

 今最も喫緊の課題でございますが、ガザの人々一人一人に食料や医療等を早期に届けることであると認識をしておりまして、我が国といたしましては、今、国連による調査、そして第三国の検証、こうしたものが行われているところでございますし、UNRWA自身もこのための対応策ということについて検討、調整をしている状況だと認識をしているところであります。様々な視点で、国連、またUNRWA自身、関係国との緊密な意思疎通を続けている状況でございます。

 その間も、今の状況が非常に深刻であるという認識の下で、我が国としては、調査結果を待つことなく、他の国際機関を通じまして、新たに三千二百万ドルの緊急無償資金協力の実施を決定したところでございます。この点につきましては、再三申し上げてきたところでございますが、しっかりと国連の体制の中でもよく連携をして取り組んでいくということでお受けをいただいていることでございますので、しっかりとした対応をしてまいりたいというふうに思っております。

穀田委員 本日の委員会においても、この問題は様々な角度から論じられました。現在の危機的状況があるという発言もございました。

 私たちは、何度も言いますけれども、ハマスのテロ行為は断じて許されない、しかし、三万人近いUNRWAの職員のうち一部の現地職員の関与を理由に拠出を停止することは、パレスチナ難民全体を危機に陥れる、こここそ非人道的な行為だと私は思います。

 先ほど上川大臣は、ICJの暫定措置命令というのは、人道支援を供給することを可能とする措置を取ることを命じるものだ、こういう点では認識は我々と一致しています。問題はここなんですよね、人道的というだけじゃなくて、この拠出の停止はこの命令にも明らかに反する措置ではないか、ここを私は問いたいと思うんです。

上川国務大臣 拠出につきまして、今一時停止をしている状況でございます。

 今申し上げたとおり、国連による調査が進行中であり、第三者によります検証も進捗している状況でございますし、UNRWA自身もガバナンス強化に向けた取組を進めているということでございますので、よく連携をしながら意思疎通を続けてまいりたいというふうに思っております。

 その上で、先ほど申し上げた、今の喫緊の課題についてしっかりと対応していく必要性に鑑みまして、緊急無償資金援助をしている状況でございます。

穀田委員 二度同じことを繰り返しているんですけれども、私は、違うんですよ。ICJの暫定措置命令という、それに反しているんじゃないかということを言っているわけです。

 人道的な問題は、先ほどるるお話がありました。

 この点では、国境なき子どもたちや日本国際ボランティアセンターなどNGOの団体は、一月三十一日に上川大臣宛てに要請文を出していますよね。その要請文では、UNRWAへの拠出停止という決定は、ガザの人々の生活条件を破壊し、現在求められているジェノサイド防止のためのあらゆる措置に反するものであり、人道的な支援提供を確保するために迅速で効果的な措置を取るよう求めるICJの命令にも明らかに違反している、ここが大事だと私は思っています。

 改めて見ますと、ICJの暫定措置命令は、人道的な支援提供を確保するために迅速で効果的な措置を取ることを求めているわけです。昨年十二月の国連総会では、日本を含む国連加盟国の八割が賛成し、即時の人道的停戦を求める決議を採択しました。そういう意味でも、UNRWAへの拠出停止はこれらの決定に反する措置と言わなければなりません。

 私、最後に言いたいんですけれども、これらの問題を考える場合に、基本問題をはっきりさせなあかん。やはりパレスチナの難民問題が長期化した責任はイスラエルにある。武力でパレスチナ人を追放し、ヨルダン川の西岸とガザを占領下に置き、国際法で占領国に義務づけられた住民保護も放棄している。これに代わり役割を担っているのがUNRWAなのです。

 日本政府の資金拠出の停止は、イスラエルや米国の主張をうのみにした恥ずべき外交姿勢と言わなければならないと私は思います。停止措置を撤回し、拠出を再開すべきであります。そのことを重ねて求め、質問を終わります。

勝俣委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 今日は、あえて大臣所信と言いますけれども、先日の外務委員会で上川大臣が述べられた外交方針について質問いたします。

 まず、私の問題意識を披露させてもらうと、その中で述べられていた個々の外交方針というのは間違っていないというか、すばらしい外交方針だと思っています。

 ただ、私に言わせれば、私は日米同盟というのが死活的に重要だと思っている人間ではあるんですけれども、その日米同盟を維持強化しなければいけないという状況の中で、先ほど穀田委員からもありましたけれども、私から見ても、やはり過度な米国追従というものが見られる。そして、その過度な米国追従外交と照らし合わせたときに、大臣がいろいろ述べられた外交方針と相矛盾してしまうのではないか。こういう問題意識の中で質問をさせていただきます。

 まず最初に、これまでも各委員から出されたことでありますけれども、中東、私に言わせるとハマス・イスラエル戦争。

 このことについて大臣は、「中東情勢は引き続き予断を許しません。我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を改めて断固非難します。その上で、ガザ地区の人道状況の改善が目下の最優先課題です。事態の早期沈静化、周辺地域への波及防止のための取組も継続していきます。」このように述べておられます。

 私の問題意識は、十月七日のハマスによるイスラエル攻撃、これはやはり断固非難されるべき蛮行だったと思っています。ただ一方、多くの人が感じているとおり、だからといって、今の、無垢な罪のない民間人がこれだけ大量に殺りくされていることが許されていいはずがないと思っています。

 そういう意味で、ハマスによるテロ攻撃を改めて断固非難しますと言いながら、イスラエルによる民間人の非人道的殺りくについてなぜ非難をしないのか。もちろん、先ほど、ロシアのウクライナ侵攻との比較においての大臣の答弁、私も聞いていましたけれども、それを聞いた上であえて問いたいと思っていますし、なぜ停戦の必要性、停戦に向けた取組を日本外交として取り上げないのか、このことについてまずは伺います。

上川国務大臣 十月に発生をしたハマス等による攻撃によりまして、多数の一般市民を標的として殺害や誘拐を行う残虐な無差別攻撃が行われ、それに対して我が国として、これをテロ攻撃という形で非難したところでございます。

 その上で、イスラエルが、ハマスの攻撃を受けまして、国際法に基づいて自国及び自国民を守る権利を有すると認識をしております。同時に、全ての行為でありますが、この行動は国際法に基づいて行わなければならないということでありまして、いかなる場合におきましても国際人道法の基本的な規範は守らなければならないと考えているところであります。

 法的な評価につきましての部分については、今ICJのところで動いている状況でございますので、イスラエルの行動が国際法と完全に整合的であると私どもが法的評価を行うことについては、これは行っているわけではないという状況で、まさにICJの動きを今注視している状況でございます。

 一方、民間人の犠牲者、特に無辜の市民が亡くなるということにつきましては、この軍事行動が全体として国際法上正当化されるかどうかにつきましては、当事者による一層の説明が求められるような状況となっていることは確かであるということでございます。

 今、バイの会談、更に様々なチャネルを通じまして、当事者に対しましてもしっかりと、人道的休戦も含めまして、何とかこの状況を、国際的な連帯の中で、今のガザの人道的な状況を止めるための措置については、あらゆる努力をしていかなければならない。

 その中にありまして、日本としても、まず人質の即時解放、そして一刻も早い現地の人道状況の改善、またそのための環境の確保、こういったことにつきましては、関連する安保理決議に基づきまして、誠実に行動すべきということについて強く求めてきているところでございます。

吉良委員 るる説明がありましたが、もう答弁までは求めませんけれども、私の問題意識は、仮に、米国がイスラエルに対して即時停戦だと、そして、イスラエルの現在の攻撃についてアメリカが強くイスラエル政府を非難していたとすれば、また非難するとすれば、私は日本も即座にイスラエルを同じく非難すると思いますよ。

 ですから、結局は、アメリカがイスラエルの生存権というものを強調して、それを認める中で、イスラエルの攻撃を、いろいろな形でやめろ的なことは言っていますけれども、結局は支援している。強い非難をしているわけではない。何が何でもやめろという行動を起こしているわけではない。そのアメリカへの忖度が、日本政府をして停戦の必要性、停戦に対する取組をしていないというふうに私は受け止めています。

 そういう意味で、今大臣が、あらゆる努力をするとおっしゃいましたけれども、その中で最大のものは、この苦難の歴史を歩いたイスラエルの行動を止めさせられるのは、残念ながら米国しかありませんよね。私たちがというか、日本政府が言ったって、それはやめないですよ。だから、アメリカにやめさせてもらうしかない。あらゆる努力のまず第一歩は、日本政府が米国政府に対して即座に停戦するように強く求めることではないでしょうか。短く答弁を願います。

上川国務大臣 停戦に係る御主張でございますが、日本政府としては、先ほど申し上げたとおり、人質の解放と、ガザ地区の人道状況の一刻も早い改善と、そのための人道支援活動が可能な環境の確保、極めて重要であるとの立場を一貫して取ってまいりました。この間、安保理におきましても、ヒューマニタリアンシーズファイアという決議が出され、そして、まさにガザの人道的な状況を踏まえた上で、これについても日本としても賛成をしてきている状況でございます。

 一刻も早くということについては、命そのものとイコールということでありますので、そのために外交努力もしてきたということであります。

 おっしゃった即時停戦というお話、このことでありますが、停戦がなされたとしても、またすぐに合意が破られて戦闘が再開するというようなことになりますと、これは人質の解放や人道状況の改善にとりまして十分持続的なものとは言えないということでありまして、この間、何が現実的なアプローチか、こうした観点から行動をしてきたところでございます。

 今、この期間の中で、国際社会全体がこの問題を何とかスピルオーバーしないような形でしっかりと早期に対応しなければいけない、ここについては、まさに人道的な状況の部分を本当に見詰めながら、それぞれが意思決定をしている状況でございまして、日本としても、そうした努力についてはしっかりとしてまいりたいし、G7の中でもそうした激しい議論を重ねてきている状況でもございます。そして、その上で、それぞれがそれぞれの役割の中で、十全に果たしていくべき役割を果たすということでございます。

 今、人道的停戦が速やかに実現をし、そして持続可能な停戦が実現することを期待いたして、当事者に対しましても、先ほどのICJではございませんけれども、それに対してしっかりと対応すべきということについて、日本としての立ち位置の中で外交を続けているという状況でございます。

吉良委員 持続可能な停戦状況、終戦状況が持続可能であるということは極めて重要ですけれども、第一歩がまずは停戦だということに、誰も、異論を唱える人も国もいないと思いますよ。ですから、持続的な云々ということで、現在の即時停戦というものを働きかけることをためらう理由には全くならないと私は思います。

 その上で、かなり長い答弁になったので時間配分を考えなきゃいけないんですが、私は、先ほど冒頭言いましたように、日米同盟、日米関係というのは日本にとって死活的に重要だとずっと思い続けているし、今も思っています。ただし、一つには九・一一以降の米国の対外外交、そしてトランプ大統領を生み出してしまった米国、その後の対外政策、これはことごとくと言っていいほど間違っていると思っているんです。

 アフガン戦争しかり、結局はタリバンが復活している。イラク戦争についても、大量破壊兵器なんかなかった。そして、イラク政府をある意味では崩壊させて、そこのバース党員たちがISの、ある意味では、国というぐらいですから、その統治に関わってくる。それがまたテロの温床になっていく。

 私は、本当に、九・一一以降、トランプ大統領を生み出して以降のアメリカ外交というのは間違っていると思っているんですね。そういう意味で、先ほど来言っていますけれども、米国への過度な忖度、過度な追従、これを見直すべきとき。私は、日本外交の岐路に立っていると思っています。

 個別に聞きたかったんですが、過度な米国追従外交を見直すべきであるということについては、私の問題意識の披露、指摘にさせてもらいたいと思います。

 また、もう一点、大臣所信の中で、対グローバルサウス外交、これについて、「グローバルサウスと呼ばれる途上国、新興国の成長を日本経済に取り込むため、きめ細やかで戦略的な経済外交を推進し、」とあります。

 まず、私の問題意識一点目は、先ほど来言っています、日本外交が米国第一、そしてG7協調第一とする限り、今のグローバルサウスは、国連決議に対する態度でも明らかなように、アメリカ嫌だ西側嫌だ、ロシア大好き中国大好きとは言わないまでも、少なくとも米国、西側にべったりついていくような行動は取っていません。逆に、それに対しては批判的な思いを持っているのが多くのグローバルサウス諸国だと思っています。これについても、今言いました、日本が米国第一、G7協調ということを強調すれば強調するほど、グローバルサウスは実は離れていってしまう、こういう問題意識を持っています。

 続けてもう一点言わせていただきますと、経済安全保障についての言及もありました。「経済安全保障も新しい時代の外交の重要な柱です。サプライチェーンの強靱化や経済的威圧への対応などを強化していきます。」というふうに述べられています。

 ここは外務大臣の所掌ではないんですけれども、私は予算委員会等で、日本の現在の事実上の円安誘導策、つまりゼロ金利政策、異次元の金融緩和策をいまだに収束させようとしていない。出口を探りつつあるというのは分かりますよ。けれども、外交にとって円安というのは、私に言わせれば、何一ついいことはないです。日本が援助しようとか協力を求めようとするときに、ドルベースのGDPで見られたら、日本ってこんなにGDPがちっちゃくなったんですか、毎年下がっているんですかと。

 外交というのは、例えば、中国がいろいろ問題はあっても、なぜグローバルサウスからそれなりに支持を得るのか。買う力を持っているからですよ。世界中から買う力を持っている。日本がいろいろ援助しているけれども、特にグローバルサウスにとって一番ありがたいのは、自分のところが買ってほしい物や、場合によっては人の派遣、それをやってくれるところが外交上一番ありがたいです。それを過度な円安によって台なしにしている。

 そして、身近なところでは、外務省職員の皆さんがいらっしゃいますけれども、在外公館に出たときの給与、待遇、これは円安によって皆さんは悲鳴を上げていますよね。足腰を強くして、外交、それっ、みんなで行くぞとやらなきゃいけないときに、事実上給料をこんなに下げてごめんねという中で、やれないですよね。

 ですから、外交当局として答えてくれとは言いませんけれども、私の要望は、日本外交にとって円安というのは何一ついいことはないし、外務省の職員にとっても何一ついいことはないので、大臣として、内閣の中で、この円安政策について、外交上は是非見直してくれということを主張していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 グローバルサウスについての御主張をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、時間もない中ではございますが、グローバルサウスは、今、世界におきまして大きな存在感を示しているということでありまして、今後、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化、その意味での、対立、分断から協調という意味では極めて重要と考えておりまして、今精力的に進めている状況でございます。

 このことは、これまでのその国々との関係性が長い、まさにODAでいきますと七十年の歴史があります。そういう中で今動いてきているところでございますので、そういう中の信頼と期待については、私は外交の最前線でやり取りをしているときに極めて強く感じます。その際、去年一年G7の議長国として日本が活動したことについても、相手の国から、非常にいい仕事をしたということの評価もいただいております。

 やはり、そうした全てのものが結集してこそ、初めてこれからのグローバルサウス外交にもつながっていくというふうに思っておりますので、そこは丁寧にやってまいりたいというふうに思っております。

 そこで、為替ということでございまして、今外務省の在外、在勤の手当、また職員の旅費、外交実施体制におきましても、本当に、環境整備については極めて重要なテーマであると考えているところでございます。

 この決済通貨に係る部分、また為替の問題につきましては、要するに、所掌ではございませんので、申し上げるということについては差し控えなければいけないことだとは思いますけれども、まさに現場でやり取りをする企業の活動を見ていても、決済通貨の問題、海外での生活を通じました為替変動によりましての様々な影響について耳にしてきているところでもございます。関係省庁と緊密に連携しながらということで、日々の外交の遂行にも努めてまいりたいというふうに思っております。

吉良委員 本当はもっと突っ込みたいですが、もうほとんど終わりなので、あと二点、短く。

 経済安全保障についても述べられておりましたけれども、先ほど言いました円安というのは、高い技術を持つ日本企業が買収されるリスクが高まるんです。有能な人材、高い技術を持つ人材を引き抜かれる、そういうリスクが高まるんです。

 そういう意味でも、さっき相矛盾すると言いましたけれども、一方で、経済安全保障だといって何か国益を考えて言っているようだけれども、同時に円安が進行している中では、今言ったように、高い技術を持つ企業が買収され、人が引き抜かれるというリスクがあるということは指摘しておきたいと思います。

 そして最後に、グローバルサウスのある意味では支持を得る最善の方法は、私は、バングラデシュ発祥でありますマイクロファイナンスをより強化していくことだというふうに思っています。

 それは、日本が、さっき言った米国第一とかG7第一というのではなくて、世界全体、特にグローバルサウスにも目配りする。その意味で、世界の貧困を、日本から、日本発で撲滅するんだ。そして、貧困がテロの温床になっているわけですから、そのテロの温床をこの世から消え去らせるという意味でも、マイクロファイナンスを有効活用する。

 そして、大臣、所信の中でも、日本の成長にもつなげるという発言もありましたので、もう短いので頭出しだけになりますけれども、日本に眠っている埋蔵金のような金融資産を何とかこのマイクロファイナンスの原資として、そして、世界に大々的に、日本がこのマイクロファイナンスのリーダーになるということをお願いしたいと思います。

 また、これは、詳細は別の機会に譲りたいと思います。もう時間は来ましたけれども、もしあれば。終わるんだったらもう結構です。

勝俣委員長 ここまでで。時間ですので。

吉良委員 はい。じゃ、これで終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 午後四時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時二十分開議

勝俣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でありますので、早速質疑に入らせていただきます。

 まずは、TICAD9に関連した質疑をさせていただきます。

 TICADは、まさに世界で、まだアフリカに対してその可能性というものを見出していないといいますか、日本がどの国、地域に先駆けて取組を進めてきた、それがまさにアフリカの開発である、このように認識しております。

 昨年でTICADの立ち上げからちょうど三十年の節目を迎えまして、八月末には、三十年の節目の記念のセミナーといいますか、シンポジウムも開催していただいたところでありますが、まさに、この立ち上げの三十年の中でも、アフリカの中の情勢も、そしてまた世界の情勢も様々に変わってきていると思います。

 理念、TICADは何たるかという変わらない部分と、そしてまた、逆に言うと、変えていかなくてはいけない部分があると思っておりますが、そういった中で、TICAD9をどう迎えていくのか、是非お聞かせいただきたいと思います。

堀内政府参考人 日本は、一九九三年にTICADを立ち上げて以降、約三十年間にわたり、アフリカ開発におけるアフリカ諸国のオーナーシップと国際社会によるパートナーシップを重視し、アフリカ自らが主導する開発を支援していくとの精神で取り組んでまいりました。

 そのような中で、近年、アフリカは、国際社会においてその存在感を高めるとともに、各国もアフリカに対する関与を強化しています。

 このように、アフリカをめぐる状況が三十年間で大きく変化する中、TICADは、アフリカへのODAを通じた開発協力のみならず、民間投資の促進を通じて、官民一体となったアフリカの開発を後押しし、日本とアフリカが共に成長するパートナーとして連携するフォーラムへと進化してきました。

 アフリカ諸国との信頼関係、人材育成等、TICADを通じてこれまで築き上げてきた成果の上に、TICADのよい部分を維持強化しつつ、時代の変化に即してTICADの内容を進化させ、さらには、時代を先取りしていくことが重要と考えております。

 次回TICADであるTICAD9は来年に横浜で開催予定であり、その準備のため、TICAD閣僚会合を本年東京で開催予定です。

 TICAD9の方向性や具体的な議題については、TICAD共催者等とも協議しながら、現在、将来のアフリカを取り巻く課題に共に取り組める内容をつくり上げていきたいと考えています。その際、若者を中心とした人材育成、法の支配、人間の尊厳といった日本ならではのテーマ、アプローチについてもしっかり取り入れていきたいと考えています。

 両会合を、日本とアフリカ、国際社会が直面する様々な課題への革新的な解決策をアフリカとともに共創する、共につくる機会とすべく、アフリカ諸国や関係者とも議論を重ねながら準備を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 堀内部長は、外務省の中でもミスターアフリカと呼ばれておられるわけでありますし、アフリカへの思いというものは大変強いと思っております。その上で、部長のお取組にも大変期待をしているところであります。

 という中において、まさに部長もおっしゃられるように、アイデンティティー、コアな部分、変えてはいけないというか、例えば、共に成長するパートナーであるとかオーナーシップ、こういったところはこれからも、TICAD9でも変わらないんだと思っています。

 一方で、今、若者の人材育成であるとか、法の支配、人間の安全保障、日本らしさというものもしっかりと出していきたい、この点も強く賛同するところであります。

 こういった取組をしっかりと双方確認し合いながら、いわゆるPDCAといいますか、グッドウィルディスカッションに終わらせない、そこからしっかりと行動につなげていく、若しくは課題解決につなげていくことが重要だと思っています。

 三年に一度TICADは開催されるわけでありますけれども、そこら辺、しっかりと、今どの状況にいるのか、今、何合目まで登り詰めているのか、逆に、てっぺんまでたどり着くにはあと何が足りないのかということを丁寧に確認する場が私は必要だと思っています。

 もっと言えば、アフリカ開発といっても、アフリカという国は存在しないわけです。あの大きな大陸の中で、北、南、東、西、真ん中、それぞれの地域課題がある。日本も同じだと思います。北は北海道、南は九州、沖縄、面積的には小さいですが、様々に地域課題が異なるのと一緒で、アフリカも同じである。

 と考えたときに、例えば、地域別で準備会合を行っていく、こういったような形で、効率性であるとか、若しくは、PDCAの進捗状況の確認という意味では、何らかの新しいプラットフォーム、確認の場みたいなものをTICAD9に向けて考えていくことも必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

堀内政府参考人 アフリカは、五十四か国を数え、国、地域ごとに政治経済事情や直面する課題が異なる中、アフリカ各国、地域の声にできるだけ丁寧に耳を傾けることは重要だと考えます。その観点から、御指摘のとおり、地域別に意見交換を行う準備会合を開催することも一つの方法と考えます。

 実務面では、グループの分け方や参加国を含め、アフリカ連合委員会、AUCを始めとするTICAD共催者やアフリカ各国との調整が必要になるほか、地域内での対立が存在するケースなどもあり、困難な点も存在いたします。

 ただ、いずれにしましても、様々な形で事情が異なるアフリカ各国、地域の声に丁寧に耳を傾けながらTICADの準備を進めてまいりたいと考えております。

 アフリカ諸国との丁寧な意見交換を含め、TICADをより双方向で有意義なプロセスにしていくため、応援いただいている議員の皆様を始めとする様々な関係者の御意見も踏まえながら、本年のTICAD閣僚会合、来年のTICAD9に向けた準備を進めてまいります。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 地域別準備会合などはどうですかと提案させていただいたわけですが、私も決して地域別にこだわっているわけでもない。ただ、アフリカという国があるわけではない。それぞれの地域事情であるとか発展の度合いとかによってニーズも異なってくる、若しくは優先順位も異なってくる。そういったところを丁寧に刈り取っていく必要があるという思いでありましたので、今、堀内部長が、丁寧に耳を傾けていく、また、双方向でということを答弁で述べていただいたという意味では、課題認識をしっかりと共有させていただいていると確信しておりますし、是非とも引き続きの御尽力をお願いしたいなと思っております。

 質問ではありませんが、そういう意味では、在京の大使館、我が国に所在する各国の大使館の皆さん方ともネットワークを平時からつくっていくことも重要ではないか、このように思っておりますので、その点も、我々AU議連やアフリカを応援する議員外交、こういったものも是非とも積極的に活用していただきたいなと期待をさせていただきます。

 アフリカの並びでもう一点、国際保健であります。

 国際保健も、コロナを経験しまして、我が国だけでというものではない、まさに感染症は国境を越えてくるのだということを痛切に我々は痛感したと思っております。

 そういった中で、アフリカにおけるワクチンなどを含む医薬品であるとか医療品の製造も重要だと思っています。ただただでき上がったものを日本が供給する、資金を供給するだけではなくて、アフリカがいわゆる対外依存に陥らないような、そういった技術協力も含めて、まさにオーナーシップを尊重する日本ならではの外交努力が私は求められていると思っておりますが、どのように支援していくお考えでしょうか。

北村政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大を契機としまして、ワクチンを含む医療品、医薬品を輸入に頼っておりますアフリカ諸国、そこにおける保健医療体制の脆弱さというものが顕在化したというふうに私どもとしても認識しております。

 その上で、日本としましては、アフリカにおけるアフリカ自身による課題解決を後押しすることが重要であるという考え方の下、JICAを通じまして、現在、アフリカ連合開発庁が立ち上げましたパンデミックに対する強靱性を強化するためのプログラム、これはホーム・グローン・ソリューションズ・アクセラレーターという名前でございますけれども、このプログラムと連携いたしまして、現地医薬品、医療関係企業への経営指導あるいは資金調達支援など、実践的なビジネス支援を行ったところでございます。

 例えば、注射器でございますけれども、注射器といったような基礎医療用品の製造を手がけますケニアの企業でリバイタル社という会社がございます。このリバイタル社は、このプログラムによります支援を受けまして資金を調達しまして、製造ラインを拡大して製造数を増やすとともに、それをアフリカ域外への輸出にもつなげているという状況がございます。

 また、国際機関を通じた取組でございますけれども、アフリカ連合が、二〇四〇年までにアフリカで必要なワクチンの六〇%以上をアフリカで製造するということを目標として掲げているところでございまして、このために、二〇二一年にアフリカにおけるワクチン製造パートナーシップを創設したところでございます。

 この取組への国際的な支援としましては、例えばGaviワクチンアライアンスというものがございますけれども、そこで、現在、アフリカにおけるワクチン製造アクセラレーターの取組、その設計を進めているところでございます。

 また、ユニットエイドという国際機関がございます。これは、低中所得国において高品質の医薬品が安価かつ迅速に供給されるように支援をします官民連携のパートナーシップでございますけれども、日本は、このユニットエイドを通じまして、東アフリカ地域におきますハブであるところのケニア及びタンザニアにおいて、医療用酸素の現地生産能力を高めるための支援をしているところでございます。

 このように、日本としましては、アフリカにおける保健医療分野において長年の様々な支援を展開してきているところでございますので、来年のTICAD9に向けましても、アフリカの課題を共に解決していく、先ほどアフリカ部長の方から共創という考え方がありましたけれども、それを念頭に保健医療分野でも取組を進めたいと考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 日本は、まさに九州・沖縄サミットのときに感染症をいち早く打ち出していて、日本といえば感染症対策、日本といえば国際保健、こういったタイトルを、名誉をいただいていると私も思っております。だからこそ、例えば、さっきのGaviのアフリカにおけるワクチン製造アクセラレーター、AVMAも今、設計が進んでいる。

 一方で、日本はまだそこに参画することは表明されていないと私も認識しております。これに絶対に入ってくれということをこの場で確認を取りたいのではなくて、もう既に、例えばAUを中心としたその動きの中に日本も入っていて、その中で責任を果たしていくという方針なのか。若しくは、TICADなどのように、日本は独自に先行してアフリカを見てきたんだ、国際保健も我々はずっと手がけてきたんだというのであれば、日本のまさに日の丸、ジャパンフラッグの新しい何かを立ち上げる、こういったやり方もあるんだと思います。

 日本として国際保健に取り組んでいく。アフリカの製造から、まさにオーナーシップを尊重しながらの支援をしていく。まさに、グッドウィルディスカッション、これは誰も反対しないし、外務省がやると言うのは分かっているんです。では、どうやるのか。どこに日本は軸足を置いていくのか。北村審議官、一緒にドイツ・ベルリン開発大臣会合に行った仲であります、審議官、もう一声お願いします。

北村政府参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、いろいろな取組をこれまで日本はやってきております。それと合わせまして、今委員御指摘のGaviの取組あるいはアフリカ連合自身の取組、そういうものもございますので、いいとこ取りというわけではございませんけれども、これまで長年積み重ねてきた日本の独自性は維持しながら、使える国際機関は同じように使っていって、まさに共創、あるいは、更に一段高まるような保健医療分野での支援を提供できたらというふうに考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 北村審議官、私は、委員会の質疑、やり取りというのは、今やります、いついつまでにやりますということを引き出すだけが質疑の醍醐味というか面白さではないと思っていまして、経緯、経過、若しくは、それこそどこを目指しているのかみたいな、何だったら、外務省が何に今苦しんでいるか、悩んでいるのかを共有するのが委員会審議の面白さだと思っているんですね。なので、リラックスしながら是非やり取りしていただきたいんです。

 例えば、今の話を聞いて、いいとこ取り、つまり、どっちに軸足を置くのというところがやはり気になっちゃうんですよ。

 例えば、さっきの話だけじゃなくて、資金拠出も大事なんですけれども、日本とアフリカのまさにウィン・ウィンみたいなところを考えていくと、日本の民間企業が持っている技術、こういったものをアフリカにいかに出していくか。日本側にとっては、新しい市場の開拓にもつながる、社会課題の貢献にもつながっていく。そして、アフリカにおいては、さっきから出ているように、自分たちが対外依存に陥らない環境をつくっていく。まさにウィン・ウィンの構図じゃないかなと思っています。

 その先にUHCの達成という国際社会のみんなの目標の達成というものがあるのではないかなと思うんですけれども、是非もう一点、達成していく上で、お金だけではなくて、例えば民間企業のアフリカ進出の必要性みたいなところ、課題感でも結構ですし、必要性みたいなところをお答えいただければ幸いです。

北村政府参考人 お答えいたします。

 日本企業、日本の優れた技術、これを我々としても活用したいと考えているところでございます。

 そのためには、幾つかハードルがございまして、アフリカに対して日本企業が出ていく上での投資のリスクをどのように軽減していくのかというのが一つあろうかと思います。

 もう一つは、国際的なスタンダードというものがあります。例えば、アフリカのある国が医薬品あるいは医療機器を導入する上では、独自の規格等々がございまして、そういうところは、国際機関あるいはWHOなどを通じた、PQと呼ばれておりますけれども、そういうものを取得していかないと、日本企業単独だとなかなか出ていけないというような問題もございます。

 我々としては、独自に二国間で行うような支援に加えて、国際機関を通じて、国際機関から更に調達してもらって、アフリカをより面で展開していくような取組をやりたいと考えているところでございますけれども、そこについて、引き続き、今の御指導も踏まえながら検討してまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 という課題感も出たところでありますので、TICAD9に向けて私もしっかりと応援させていただきたいと思っております。

 続いて、私の外務副大臣時代に担当する所掌の一つに新しく追加していただいた分野、働き方改革であります。

 そこなんですけれども、質問を一問飛ばさせていただいて、健康診断に関する話をさせていただこうと思いましたが、健康診断も、今、人間ドックと健康診断の受診率を合わせますと大体八〇%を超えてきたと伺っております。目標の八〇パーは超えていますけれども、一〇〇%に是非到達するように頑張っていただきたい、このことを申し述べさせていただいて、二問目の質問。

 若手の離職、霞が関離れ。NHKでも特集されています。各種メディアでも結構何度となく私も目にするところであります。

 私も、副大臣時代などに大変お世話になった若手が顔を出しに来てくれたなと思ったら、実は私は辞めますという挨拶だったというところで、喜んでいいんだかというような場面に何度も遭遇しているところです。

 今、この問題の一つとして、勤続年数が役職と連動する国家公務員制度、これ自体がワーク・ライフ・バランスの観点として問題なのではないかと思っています。

 例えば、外務省の場合は、入省してまず二年本省、その後大体留学に行かれて、二年の留学の後に在外公館勤務がまた二年あって、その後本省で約十年というパスになってくると、大体、三十代の結婚をしたり妊娠、出産があったり子育てがあったりというところで、ライフイベント、プライベートも仕事の部分でも忙しい時期というのが思い切りかぶってくる。だからこそ、まさにその世代、二十代、三十代のところで、仕事、キャリアを取るか、プライベートを優先するかというとてつもない究極の二者択一を迫られている。これが一つの課題になっているのではないかと思いますが、外務省としてどのように認識し、若しくはどのように克服していきたいかという部分を、是非とも乾坤一擲の答弁をお願いいたします。

志水政府参考人 お答え申し上げます。

 若手省員の中途退職は深刻な問題だと強く認識しております。

 その理由は、様々な事情があり、人それぞれに異なっているんだろうとは思いますし、複合的な場合もあるでしょう。

 けれども、私なりの理解としては、以下のような理由があると考えております。

 一つには、日本における社会労働環境の変化に伴い、省員の中で、期待している働き方と当省での実際の働き方に差があると感じている人が増えているだろうと考えられます。

 我が国におきまして労働人口が減少しつつある中、女性の働き手が増え、共働きの方も増えております。先ほど委員が御指摘のような出産や育児の問題に直面する方が多くおられて、家庭、家族との生活と仕事との両立を重視する職員が増えてきていると思います。

 他方、率直に申し上げて、現下の外交環境の中で、当省職員ないし外務省に求められる業務量は減ってはいない、ないし増えていますし、求められるスピードも上がっていますし、質の高さも求められているという中で、これも率直に申し上げまして、必ずしも効率的とは言い難い作業、仕事もまだ少なからずあります。国会の御理解を得まして外務省定員が少しずつ増えておりますけれども、一人一人の業務量を見てみますと、家庭、家族との両立がつらいと感じる職員がいることも現実だろうと思います。

 また、若手を中心とした職員が、外務省で働いて何が得られるかということに関しての時間的な感覚、意識も変化していると感じます。

 すなわち、かつては、今は苦しくても、長い目で見れば自分のためになっていると思って辛抱する、ないしは、しばらくすればやりたいことができるようになると期待して若い時期を乗り越えるという方が多かったのではないかと思いますけれども、これに対して、近年におきましては、現在進行形で成長を感じたい、今希望する仕事、業務に従事したいといった形で、今を重視する考え方の方が多くなっていると感じます。

 更に申し上げますと、世界的な物価高、円安傾向の中で、在外勤務時を含めて給与、手当面で不満があって、それが離職の一つの原因となっている可能性も考えられます。

 以上、様々な原因が考えられますけれども、これら職員の方々は、日本外交を支えたいという高い志を持って入省してきたのでありまして、これらの職員が持続的に勤務していくのに適した勤務環境を整備し、職員がやりがいが感じられるようにしていく必要を強く感じているところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 官房長は働き方改革に対して大変強い思いを持っていただいていることをよくよく存じ上げております。その上で、効率化であるとかDXの部分も外務省は大変取り組んでいただいておりますけれども、本質的な根本的な解決にはつながらないんだと思うんですよね。

 例えば、諸外国の外交官と話をしていても、まさに、人生でプライベートにおいて子育てとかで忙しくなるときは、ベビーシッターの文化があったり活用するアクセスがしっかりとある程度担保されている国に逆に配置するという弾力的な人材育成もしているように伺っています。

 冒頭述べたように、入省後、まず二年本省、そして留学に行って、在外に行ってという決まったパターンから卒業してもいいんじゃないかな。もっと弾力的な、まさに新しい発想で人事院に対しても外務省から提案していく。俺たちが外交を担っているんだ、俺たちなくしてやっていけないじゃないかぐらいの思いで是非何か考えていただければ、そして、我々もしっかりとサポートをさせていただきたいと思っております。

 本当は、極東地域の安定に向けたということで、日ロの話題も質問を是非ともさせていただきたかったんですが、質疑持ち時間が終了ということで、上杉先生にバトンタッチをさせていただきたいと思います。

 外務省の皆さん、全て、アフリカにおいても、国際保健においても、働き方改革においても期待しております。引き続き愛のむちを振るわせていただきますので、応えていただければと思います。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、上杉謙太郎君。

上杉委員 自民党の上杉謙太郎でございます。質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 今日の外務委員会は国際情勢に関する件でありますけれども、今日は三月十三日で、おとといは三・一一で、東日本大震災から十三年でありました。福島の議員として追悼式も参加してまいりました。そういった点から、今日は、東日本大震災に関係する外務省所管の部分についてを中心にお伺いをしたいと思います。

 その前に、それと関わることでありますが、今年は太平洋・島サミットの年であります。太平洋島嶼国は我々日本にとっても非常に大事な部分でもあります。これは、昨今、安全保障環境が目まぐるしく、また厳しくなっている状況にあって、重要な地域であるわけであります。一方で、太平洋島嶼国の地域は、原発の処理水を懸念している国々がまだあるということで、我々日本としては丁寧に説明していかなければならないところであります。

 そこで、まずは太平洋・島サミットについてお伺いしたいと思いますが、三年前にPALM9が開催されて、今年の開催に行く前に、まずはその総括と、そして、それを受けてPALM10はどうするのかということが必要だと考えております。まずは、改めてPALM9の成果と、その後、実績はどんなことがあったのか、教えていただけたらと思います。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、PALM9の成果でございますが、三年間で重点分野として五つの分野、すなわち、第一に、新型コロナへの対応と回復、第二に、法の支配に基づく持続可能な海洋、第三に、気候変動、防災、第四に、持続可能で強靱な経済発展の基盤強化、第五に、人的交流、人材育成を中心に議論を行ったところでございます。日本からは、オール・ジャパンの取組を通じて、日本と太平洋島嶼国との間の協力を更に強化する太平洋のキズナ政策を発表し、三年間でしっかりとした経済協力と五千五百人以上の人的交流、人材育成を実施することを約束したということでございます。

 その上で、この三年間の実績でございますが、日本は、PALM9の全ての協力分野におけるコミットメントを着実に実施し、太平洋島嶼国との協力を推進してきているところでございます。

 先月のPALM中間閣僚会合におきましても、上川大臣からは、日本はしっかりとした持続可能な開発協力の実施を継続し、PALM9のコミットメントである五千五百人を超える、六千五百人の人材育成、人的交流を支援したことを表明したところでございます。

 こうした実績は、日本と太平洋島嶼国との関係づくりに最大限活用していきたいと考えています。

上杉委員 ありがとうございます。

 PALM9はそうでありました。しかし、三年前と今の状況は結構変わっているところでありますから、これからどの部分を重点分野にしていくかというのは、今ちょうど十四か国からそれぞれ要望を伺って、しっかりと省内でいろいろ検討されているところだと思いますが、是非、PALM10に向けて、どのようなことを重点分野として、どういうところを成果にしたらいいかというのを教えていただけたらと思います。

 その前に、私の個人的な気持ちとしては、今もおっしゃってくださいましたけれども、特に防災関係は日本は非常に知見があるわけであります、震災国でありますし。十四か国は津波もたくさん起きます。そういった意味では、防災の協力というのは日本がイニシアティブを取ってできることでありますし、大事なのは教育だと思うんですね。人的交流ですとか人材育成ということをおっしゃってくださいましたけれども、その中でも、特に子供から大人に向けての教育は重視すべきだと思います。

 また、海洋においては、もちろん海洋安全保障ということもありますし、いろいろな分野でコミットしていって協力していけると思いますので、是非お願いしたいと思います。

 そういった意味で、次回の七月に向けてどういうことを重点分野にしていくのか、今答えられる範囲で構いませんので、教えていただけたらと思います。

辻副大臣 委員は外務政務官時代からかなり精力的にこの地域を回られて、PALM10、TICADと同じで、三年に一回行われるんですけれども、この三年間で島嶼国の我が国を取り巻く環境というのは、委員がおっしゃるようにかなり変化しています。

 ちょうど先月、来年に向けて、PALMの中間閣僚会合を行いました。そこで、二〇五〇年戦略ということで今策定しているんですが、上川大臣からは、今後、太平洋島嶼国の優先事項に沿った協力を推進していきたいということで、今意見を聴取している段階でございますが、委員御指摘の教育や防災は極めて重要な分野だと我々も認識しておりますので、本日のこのやり取りを含めて、今後こういったことを盛り込めるようにしていきたいと思います。

 また、若者を中心とした人的交流ももちろん大切でございますので、これも含めてこれから検討をしっかりしてまいりたいと考えています。

上杉委員 副大臣、ありがとうございました。

 御指摘のとおり、政務官時代にソロモンも伺わせていただきましたし、その頃から、ソロモンの方は中国と安全保障協定を結ぶということになりましたし、現状も、ソロモンのみならず、キリバス、バヌアツがそうでありますし、最近は、政治においても、ツバルにおいては親台派の首相が選挙で落選するということもありました。バヌアツは、首相が一か月で二人替わるということもありましたね。そういう意味では、いろいろ政治情勢も変わっております。

 そういったときに、日本は日本らしい支援をしていく。特に、米中競争のはざまで、十四か国は平和を希求する島の方々であるわけですから、日本らしい支援をしていく。そういう意味で、是非十四か国の要望を聞いて、しっかりとやって、成功に向かっていただけたらありがたいと思います。

 また、太平洋・島サミットで、是非、第一原発の処理水の放出に関してもしっかりと理解を得られるようにやっていただけたらありがたいと思います。太平洋島嶼国は、昭和の時代に水爆実験等で、核また放射線に対してナイーブな感情もお持ちであるわけでありますから、そこは日本がしっかりと丁寧に説明していかなければならないと思っております。

 昨年の海洋放出が始まってから、ソロモン、また、四か国ぐらい懸念を表明していた国がありましたが、外務省さんを始め経産省さんもいろいろと親身に科学的見地に基づいて丁寧な説明をしてくださった結果、その懸念も少なくはなってきております。ただ、まだ懸念している国々が残っているところでありますから、是非お願いしたいと思います。

 そこで、太平洋島嶼国の中でいまだ少し懸念を表明している国はどういったところがあるか、教えていただけますでしょうか。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 今委員からも言及がございましたソロモン諸島、それからキリバス、こういった国々は、過去にALPS処理水の海洋放出について懸念を表明しておりました。日本政府はこれまで、これらの国を含む太平洋島嶼国に対して、ハイレベルの対話や専門家の間の対話を通じて、極力丁寧な説明を行うことをやってまいりました。先ほど上杉委員から、外務大臣政務官時代にソロモンの首相にお会いになったというお話に言及いただきましたが、その際にも説明をしていただいたところであります。

 加えて、海洋放出の開始後も、モニタリングの結果を示しつつ丁寧な説明を行うことで、不安の払拭に努めてきているわけであります。

 こうした取組を積み重ねた結果といたしまして、先月のPALM中間閣僚会合では、IAEAを原子力安全の権威として認識した上で、科学的根拠に基づく対応の重要性で一致いたしました。本件について各国の理解が着実に進んでいることを示すものと受け止めています。

 こういう状況でございますので、引き続き、政府といたしましては、太平洋島嶼国に対して、科学に基づく丁寧な説明を積み重ねて安心感を高めていく、こういう努力を続けたいと思います。

上杉委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 七月の島サミットにおいて、せっかく十四か国から来日されるわけでありますから、なかなかその行程の日程の中で福島に行っていただくのは難しいかもしれませんけれども、実際に処理水の施設、また、第一原発の今の現状を見ていただくことによって理解も得られると思いますので、なかなかアレンジは難しいかと思いますが、難しい場合はまた別の機会でも構わないんですけれども、実際に見てもらう等を通じてそういう理解を増やしていってもらえたらありがたいと思いますので、是非その点も御検討いただけたらありがたいと思います。

 そして、そのALPS処理水でありますが、まさに今、IAEAのグロッシー事務局長が来日されております。そして、昨日は林官房長官、齋藤経産大臣、伊藤環境大臣にお会いされて、今日は恐らく福島に行っていると思います。私たち日本は、このIAEAのお墨つきといえばいいのか、第三者機関がしっかりと管理をしてくださっていることが非常に大事だと思っております。

 そこで、今グロッシーさんがお越しいただいておりますが、今回の来日の目的について教えていただけますでしょうか。

中村(仁)政府参考人 お答えいたします。

 今回のグロッシーIAEA事務局長の来日でございますが、ALPS処理水の海洋放出の開始から約半年を経て、改めてIAEAとして現地を視察し、その状況を確認することなどを目的としたものでございます。

 ちょうど今日、事務局長は福島におりまして、漁業関係者ですとか若い世代を含む地元の方々との意見交換を行ったり、東電福島第一原子力発電所の視察などを行っている最中でございます。

 ALPS処理水の海洋放出において、原子力分野での国際的権威であるIAEAの関与は引き続き重要であり、緊密に連携してまいりたいと思います。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 上川大臣も去年の九月にグロッシー事務局長にお会いされていると思いますし、グロッシー事務局長がちょこちょこ来日して見ていただくというのは非常に重要だと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 そして、今日、ちょうど東日本大震災の三・一一に合わせてお越しいただけているというのは非常にありがたく思っております。

 ただ、この処理水の問題があるがゆえに、農林水産分野でいえば輸入規制が続いているということであります。これは変えていかなければならない。

 ただ、震災以降、外務省としても、風評払拭、日本産食品のPRですとか復興支援をいろいろな形で、本省を挙げて、在外公館も含めてやってきてくださいました。去年の処理水放出からも、毅然と対応してくださったりですとか、ロンドンの大使館を始めいろいろなところで海産物をPRするようなイベントをしてくださったりですとか、いろいろな風評払拭、復興支援の活動をしてくださったこと、本当に感謝しております。福島県を代表して御礼を申し上げたいと思います。

 そしてまた、おとといの東日本大震災の追悼式は、福島市で行われたんですが、岸田総理もお越しくださいました。総理も記者会見の中で、しっかりと輸入規制については即時撤廃を求めていくという力強い発言もしてくださったところであります。

 ただ、一方で、規制はずっと続いているわけであります。三年前から比べると、三年前は十四の国と地域がまだ規制がありました。その頃は、外務省さんが非常に頑張ってくださって、米国の解除を筆頭に、イギリス、インドネシア等々、どんどん解除されていって、そして、去年の秋口、EUもとうとう解除してくださったということであります。

 これによって、残りは五つの地域と国になったということであります。その五つの中身を見てみると、中国、韓国、地域でいうと香港等があるわけであります。そういった地域の輸入規制の撤廃をしていくことが大事な中にあって処理水の放出もあったわけでありますので、非常に厳しいというのが今の状況であります。

 そういったところで、一問飛ばさせていただいてお伺いしたいと思いますが、特に中国の輸入規制について。

 米を始めとした農産物もさることながら、海産物、水産物についても輸入規制が続いております。中国の方は解除についてはなかなか難しいというのが私の感覚でありますけれども、総理も頑張ると言ってくださっているわけでありますし、現状はどのような状況なのか、また、解除の見込みがありますとはなかなか言えないと思いますけれども、輸入規制の撤廃に向けてどのような取組をされているのか、教えていただけたらと思います。

辻副大臣 東日本大震災から十三年を迎えまして、当時からいわゆる輸入規制を行っていた国々で、特に二〇二一年以降、委員御指摘のように、アメリカ、EUを始め十か国・地域による輸入規制を撤廃することができました。残すところは、現在、中国、韓国、香港、マカオ、台湾、ロシア、フランス領ポリネシアが輸入規制を継続しています。

 それに併せまして、先ほどから委員御指摘のALPS処理水、こちらについては、日本としては、これまで様々な機会を捉まえて、科学的根拠に基づいて、今来日中のIAEAのグロッシー事務局長も支持されているように、しっかりとした根拠をもって日本は大丈夫だということは多くの国々に賛同いただいていまして、最近、公的なデータでも、中国の原発の方が日本の原発を上回る放射性物質が出ているというデータも出ている中でございますが、我々外務省としましても、科学的根拠に基づきながら、冷静に、あらゆる機会を捉まえて、そういった説得をこれからも粘り強く行っていく次第でございます。

上杉委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 副大臣がおっしゃってくださったとおり、福島第一原発は二十二兆ベクレルの放出基準があるんですけれども、それをはるかに上回る量を中国が出しているということも承知しております。また、中国の方は、この処理水の放出に併せて、損害賠償制度の創設を外務省さんに求めてきていると思います。それは毅然と対応してくださったということでありますが、そういう意味では、平行線がずっと続いているところであります。

 水産物については、それゆえに、中国向けに輸出していたものを今度は違うところに海外展開するということで、多角的な輸出をしていこうということになっておりますけれども、これはこれでいいことだと思います。農水省も輸出促進をやっているわけでありますから。

 それはそれでやりながらも、しかしながら、我が日本国にとっては、農林水産品の輸出先として中国はすばらしい市場であるということは事実であります。

 例えば、特に米でいえば、日本人は七百万トンも食べなくなっていますけれども、中国人は何トン食べているか御存じですか、皆さん。一億四千九百万トン食べているんです、一年間に。桁が二つ違うわけであります。

 であれば、我々、地方選出の国会議員にとっては、米の価格の問題、そして米を輸出していこうというときに、魅力的な市場であるわけであります。米一つとってもそうであるわけでありますから、ここを解除していくのはやはり外交だと思います。

 是非、そういった意味で、外務省さん、経産省、農水省が連携して、もちろん科学的根拠に基づいてしっかりと説明をしながら、駆け引きもいろいろあろうかと思いますが、解除に向けて是非お願いしたいと思います。それが、東北、北陸、北海道を始めとして、米どころの農家の皆さんの切なる願いだと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 あわせて、今度は、中国ではなくて、韓国もまだ輸入規制をしているところであります。同じく韓国についても、どのような具合か、教えていただけたらありがたいと思います。

辻副大臣 韓国についても、東北等八県の水産物の輸入禁止を今継続している状況でございます。また、十三都県からの食品等の輸出に対しては、放射性物質検査証明書の添付等を要求しているなど、日本産食品に対しての輸入規制を維持しています。

 一方で、韓国とも、先ほどの中国に対してもそうですが、しっかりと双方向でのやり取りはこれからも継続しながら、一刻も早く日本産の食品を輸出できるような体制をつくっていきたいと思います。

 韓国にも中国にもつながることですが、冷静にしっかりと対応させていただく中で、委員が御指摘のような我が国のそういった現実的な背景もちゃんと理解しながら我々も外交に取り組んでいきたいと思います。

上杉委員 辻副大臣に期待して、質問を終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 最後でございます。よろしくお願いいたします。

 公明党会派、金城泰邦でございます。

 これまでもガザ地区をめぐる情勢等につきまして質疑等がありましたが、私からも質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ガザ地区における人道状況の悪化を受けた緊急無償資金協力についてお伺いしたいと思います。

 先日、NGO団体の方々より、ガザ地区の現状について説明をいただきました。死者数が約三万人、負傷者約七万人、行方不明者八千人に上り、およそ百七十万人に及ぶ避難民の方々が、今なお厳しい寒さの中で食料や飲料水にアクセスできず、戦闘に加え、疾病や栄養不良の三重苦に直面している状況であると伺いました。特に、女性や子供たちのような社会的弱者は飢餓や病気によって亡くなっており、困難を極めた状況であるとの報告でした。

 その上で、NGO団体より、一月二十八日に日本政府が発表した、国連パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAの職員がイスラエルへのテロ攻撃に関与したとの疑惑を受けてのUNRWAへの資金拠出の一時停止について、即時撤回してほしいと切実な思いの要請をいただきました。

 UNRWAは、国連機関として国際社会と協力しつつ、パレスチナ難民を対象に、保健、医療、教育、福祉、食料支援など人道支援における不可欠なサービスを提供しており、現在、およそ百七十万人ものパレスチナ避難民がUNRWA施設内で避難生活をしていることや、食料などの備蓄品がUNRWAの倉庫でしか保管できないという状況もあり、UNRWAに代わる支援はできないとユニセフの職員の方が話されていました。

 日本政府が二月二十七日に発表した三千二百万ドルの新たな緊急無償資金協力についても、国連世界食糧計画、世界保健機構、国連児童基金等を通じ、食料、保健等の分野で人道支援を実施されると伺っており、UNRWAへの資金拠出は行われません。

 冒頭に述べましたが、ガザ地区への人道支援は今待ったなしの状況であります。先週、カナダ政府とスウェーデン政府がUNRWAへの資金拠出を再開すると発表しました。カナダ政府のアーメッド・フッセン国際開発大臣は、職員への疑惑について精力的な調査が進行中だという認識の下で拠出再開を決定したと説明しております。この問題については、フランスのコロンナ元外相が主導して独立調査が行われており、来週報告書が公表されるようです。

 日本政府としても、国連による検証が速やかに実施され、UNRWAのガバナンスの強化がなされるよう促すことや、UNRWAへの資金拠出の早期再開の検討を進める必要があると考えておりますが、外務副大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

辻副大臣 ありがとうございます。

 委員御指摘のように、今現在、ガザにおける状況は、数日前からいわゆる断食の月であるラマダンが始まりましたが、それまでに解決をしたいという国際社会の期待を裏切って、いまだにこの現状を継続している中で、多くの、特に罪のない子供たちや女性が被害に遭っている状況でございます。

 UNRWA、委員御指摘のように、実際私もパレスチナを訪問した際に、UNRWA以外の三千二百万ドル分の緊急無償資金協力を発表したんですが、今現在、十月七日のテロに関与していた職員がいるんじゃないかということで、スウェーデンとカナダは再開しましたが、日本を含めた十四か国が資金を停止している状況でございます。

 その分の資金が今停止されていますが、ラザリーニ事務局長と話をする中で、この資金を是非とも再開してくれという希望はいただきましたし、委員が、先週ちょうど、公明党の外交部会長代理として申入れを大臣にしていただいた際にもそれは盛り込んでいただきました。中間報告が出ています。その中身については我々はまだ承知していませんが、今後、正式に、こういったことが起こったということで、無実が証明されて罪が晴れれば、我々はすぐにでも再開をする用意ができていますので。

 そういった中で、我々としても、UNRWAには一九五三年以来ずっと、日本が国連に加盟したのが一九五六年ですから、それよりも前からUNRWAを通して様々なことをやっているということは国際社会も理解をしているので、そういった背景も含めて、委員の御指摘をしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。

金城委員 副大臣、御答弁ありがとうございます。現地にも行かれて、様々な状況も確認されたと思います。

 今後も、我が国のUNRWAへの拠出がどのような事業に使われているのか、透明性を確保するなど、国民への説明を丁寧に図っていただきながら進めていただきたいと思います。

 次に、NGO団体からのヒアリングの際に、ガザ地区への物資搬入トラックが厳しい検閲によって進入を許可されないケースが多く発生していることについても報告を受けました。検閲の基準などは公表されておらず、検閲を受けてみないと分からない、基準を満たさない一部の物資によって問題のない物資も搬入できず立ち往生している、エジプト側のラファ検問所前にはトラックが千台ほども並んでいる状況があるとのことでした。

 日本政府としても、検問所での人道支援物資の搬入が迅速に実施されるよう、円滑な人道支援活動が可能な環境をつくるよう取り組むべきであると思います。

 例えば、検閲の基準を公表することができると、検閲の基準を満たせる物資搬入トラックが増え、必要な物資をより迅速に搬入することが可能となります。また、テントなど鉄パイプの使用が基準にひっかかると指摘されているようなものについても、素材をプラスチックに変更するなど、基準を満たす製品を開発し、提供するといった、日本の技術力を活用した新たな支援も可能になると考えております。

 イスラエル政府に対し検閲の基準を公表するように働きかけを行うべきであります。外務副大臣、御答弁いただきたいと思います。

辻副大臣 実際、今検問所が設けられている中で、十月七日以降と以前を比べて、本当に、ガザ地域に入れる、物資を搬入できる経路というのが極めて限られている状況です。それに対して、我が国としても、このような問題意識を踏まえて、人道支援物資の搬入量を拡大させてくれと、これは我が国を含めて国際社会で様々なやり取りを行っています。

 実際、人道支援が可能な環境を確保すること、また、人質の解放につながるような停戦を、人道的な停戦を速やかに実現すること、そして持続可能な停戦が実現することが我々にとっての最大の関心事項であり、イスラエルに対しても、それに対しては様々な経路から訴えさせていただいています。当事者に対しては、本当に、直ちに人道的な観点から行動することを求めさせていただいています。

金城委員 御答弁ありがとうございました。

 また、NGO団体よりいただいた提言には、ガザの重傷者や患者の日本への受入れについても要望がありました。

 心ある日本国内の医者からは、外務省主導で枠組みを用意してもらえれば、医療チームを編成し、患者受入れについても対応できるのではないかという議論もあると聞いています。加えて、手術を受けるといった医療に関わる事由であれば、ガザ地区からエジプト経由で国外に移動することが許されているケースもあるというように伺っております。

 日本政府として、ガザにおける重傷患者などの移送が適切に行われるよう、イスラエルに働きかけるべきであります。また、医療滞在ビザの申請手続を人道的な特別な対応として簡素化したり、拠出金からの医療費補助を行うなど、日本への患者の受入れがしやすい環境づくりについても検討していただきたいと考えます。政府の考えを伺います。

辻副大臣 ありがとうございます。

 これまで、イスラエルに対しては、人道状況の改善に向けて、何が状況の改善のために現実的なアプローチかという観点から、NGO等の関係者の声も伺いつつ対応を検討していきたいと思っていますが、委員が御指摘のいわゆる医療ビザ、医療査証の発給については、要件が整った査証申請があった際には、人道的案件として迅速な査証審査や発給を行うことといたしたいと思っています。

金城委員 是非、人道的支援の観点から取組をお願いしたいと思います。

 また、公明党としましても、三月六日に辻外務副大臣に対しまして要請を申入れをしました。申入れでは、先ほど言及させていただいた内容に加え、即時かつ持続的な人道的停戦の実現に向けて、関係国に対して強く働きかけることについても提言をさせていただいております。

 即時かつ持続的な人道的停戦の実現に向けた関係国への働きかけに関する政府の考えをお伺いいたします。

辻副大臣 先日、委員を含めて公明党の外交部会からの申入れをいただいた際にも報告させていただきましたが、先月、パレスチナ及びイスラエルを訪問した際に、事態の早期鎮静化に向けて、人道的な停戦を一刻も早く行うべきだという我が国の立場を申し入れさせていただきました。

 ガザ地区の危機的な人道状況を深刻に懸念をした上で、こういった停戦が可能な環境を確保して、また、人質の解放につながるような停戦を速やかに実現すること、そして持続可能な停戦が実現することを強く期待する旨、パレスチナ並びにイスラエルと今精力的に交渉、申入れをさせていただいている状況でございますので、委員の御提言も含めてしっかりと受け止めさせていただきます。

金城委員 今後も是非頑張っていただいて、一日も早い停戦を目指していただきたいと思います。

 質問が変わります。

 ODAについてお伺いいたします。

 日本が開発途上国に対して行う開発支援の理念や重点政策、実施の在り方について定めた開発協力大綱には、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に一層積極的に貢献すること、及び、そのような取組を通じて日本の国益の確保を図るという日本の基本的方針が明記されております。

 この国際社会の繁栄の確保と日本の国益の確保を図るという点において、ODAを食料安全保障を支える一つの施策として活用することについて検討していただきたいと考えております。

 我が国は島国であり、世界各地での紛争などにより国際社会が不安定化しているような状況においては、食料の安定供給に細心の注意を払い続けないといけません。また、今後二十年間で日本の基幹的農業従事者は現在の約四分の一にまで減少することが見込まれるなど、国内の生産性を高めるだけでは食料安定供給を実現するのが難しい局面が迫っていると感じております。

 是非、優先的に日本の商社等が調達可能な基盤をつくる交渉が行えるよう、大規模農業が展開できる発展途上国に対し、ODAによる農業支援を戦略的かつ重点的に行うべきだと考えます。政府の考えをお伺いいたします。

辻副大臣 昨年六月に改定したODA大綱において、まさに食料、エネルギー安全保障など経済社会の自律性と強靱性の強化を重点政策の一つに掲げておりまして、食料増産等のための協力も推進しています。

 例えば、我が国は、ブラジルのセラード地域の農業開発を支援して、大豆やトウモロコシの増産に貢献してきました。かかる我が国の協力も背景に、同国は食料輸出国に成長し、現在、我が国にとって、アメリカに次いで、大豆及びトウモロコシの輸入相手国になっているという実例もございますので、今後、引き続き、食料安全保障の観点も踏まえつつ、ODAを通じた農業支援を実施していきたいと考えています。

高橋大臣政務官 お答え申し上げます。

 ウクライナ情勢の長期化や気候変動に伴う異常気象などを背景に、食料安全保障の確保が我が国及び世界で大きな課題となっております。

 先ほど辻外務副大臣からの御答弁のとおり、我が国の大豆やトウモロコシの調達先多角化につながったブラジルのセラード開発には、農林水産省としても協力を行ってきたところでございます。実は、ここに協力をしたのが、ミスター・セラードと言われる方がいまして、足利知巳さんという方は元々農林水産省の国際協力課長をして、現地で十五年以上協力に携わった、そうした歴史もございます。

 これ以外にも、例えば、現在におきましては、日・ASEANみどり協力プランに基づき、持続可能な農業に必要な我が国のイノベーション技術の普及、活用を図るほか、国際機関と連携して、アフリカ諸国における学校給食向けの地元の農業生産を支援するなどの取組を実施しているところでございます。

 ODAの活用も含めたこれらの農業支援を通じて、我が国の技術を世界的に利用拡大させることにより農業生産性の向上を図るほか、持続可能な農業生産をグローバルサウスへ更に拡大させることにより我が国及び世界の食料供給の安定化につなげ、そして、我が国の食料安全保障の確保を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

金城委員 時間が参りましたので、終わります。

 御答弁ありがとうございました。

     ――――◇―――――

勝俣委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣上川陽子君。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。

 改正の第一は、在ナイロビ国際機関日本政府代表部を新設するとともに、同代表部に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を定めることであります。

 改正の第二は、既設の在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額を改定することであります。

 改正の第三は、在外公館に勤務する外務公務員の子女教育手当の小学校に係る加算額の限度の適用対象年齢を引き下げることであります。

 改正の第四は、在外公館に勤務する外務公務員の在勤手当の月額を規定する通貨を改定することであります。

 以上の改正内容のうち、在勤基本手当の基準額の改定及び子女教育手当の加算額の限度の適用対象年齢の引下げ並びに在外公館に勤務する外務公務員の在勤手当の月額を規定する通貨の改定については、令和六年度予算案に計上しているため、四月一日に実施する必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。

勝俣委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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