衆議院

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第5号 令和6年4月3日(水曜日)

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令和六年四月三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      塩谷  立君    島尻安伊子君

      杉田 水脈君    武井 俊輔君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    穂坂  泰君

      宮路 拓馬君    小熊 慎司君

      佐藤 公治君    松原  仁君

      鈴木  敦君    徳永 久志君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   総務副大臣        馬場 成志君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   外務副大臣        辻  清人君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   外務大臣政務官      穂坂  泰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 竹谷  厚君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 藤本健太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       堀内 俊彦君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           坂  勝浩君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       柏原 恭子君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     高村 正大君

    ―――――――――――――

四月二日

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官竹谷厚君、大臣官房審議官北村俊博君、大臣官房参事官藤本健太郎君、大臣官房参事官林誠君、大臣官房参事官宮本新吾君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北川克郎君、中東アフリカ局長安藤俊英君、中東アフリカ局アフリカ部長堀内俊彦君、領事局長岩本桂一君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、農林水産省大臣官房審議官坂勝浩君、経済産業省通商政策局通商機構部長柏原恭子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自民党の中川郁子です。

 質問の機会を頂戴しまして、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。

 最初の質問は、北朝鮮による日本人拉致についてです。

 ちょうど一か月前の三月四日でありましたけれども、岸田総理は家族会の皆様方と面会し、何としても自分自身の手で解決すると述べて、日朝首脳会談の早期実現を図り、全ての被害者の帰国に全力を挙げる決意をお伝えになりました。

 そのときに、新たな活動方針をお手渡しをされたわけでありますが、方針では、親の世代が御存命のうちに全ての被害者の一括帰国が実現するなら、北朝鮮に対する日本独自の制裁措置を解除することに反対しないと、初めて制限の解除に言及されました。

 三月二十六日には、金与正朝鮮労働党副部長の、日本側との接触や交渉を拒否するとの談話、二十九日には、崔善姫外相から、日本のいかなる接触の試みも容認しないとの談話の発表がありました。昨日の早朝も、日本海に向けて弾道ミサイルの発射がありました。いずれも北朝鮮側の揺さぶりであると想像いたします。

 詳細についてお答えは難しいかと思いますけれども、家族会の皆様や関係者の皆様方も大変不安に思っていると思われますので、ここで上川陽子外務大臣から改めて拉致問題に対する決意をお聞かせいただきたいと思います。

上川国務大臣 拉致問題は岸田政権の最重要課題でございます。二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来二十二年、一人の拉致被害者の帰国も実現していないことは痛恨の極みでございます。御家族も御高齢となる中にありまして、時間的制約のある拉致問題であります。また、ひとときもゆるがせにできない人道問題と捉えております。

 引き続き、米国や韓国を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するため、あらゆるチャンスを逃さず、全力で行動してまいります。

 また、拉致問題は国際社会共通の課題でもあります。岸田総理はこれまで、各国首脳との会談等におきまして、拉致問題について支持を働きかけておられます。私自身も、御家族の強い思いをしっかりと受け止め、外務大臣として、あらゆる機会を捉え、拉致問題に関する日本の立場を説明し、各国から理解と支持を得ているところでございます。

 北朝鮮との間におきましては様々な懸案がございますが、それを解決し、日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与する、そうした考えの下、日朝間の懸案の解決に向けて首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていく旨を岸田総理御自身も繰り返し述べられているところであります。政府として、そのための働きかけを引き続き行ってまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 恐らく大臣も、北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」や「ふるさとの風」で横田早紀江さんがお嬢さんに向けて呼びかけをしておられる声を聞いたことがおありになると思います。北朝鮮に拉致されている横田めぐみちゃん、お母さんですよ、お母さんが必ず助け出してあげますよ、こういう呼びかけであります。お母さんであれば、お父さんであれば、自分自身の手で助け出してあげたい、こう思うのは当然であります。それがかなわないのです。

 でも、救出できるのは御両親ではなく政府であると思います。私も地元で仲間とともに街頭に立って署名活動を続けています。署名してくださる皆さんは、自分の子供だったらという思いを私たちに託してくださっています。

 時間的制約のある問題だというふうにお話をいただきました。有本明弘さん、横田早紀江さんは御高齢であります。同時に、北朝鮮におられる横田めぐみさんも今年十月で六十歳になられます。拉致被害者の皆様方も、認定されていない被害者の皆様方も、六十五歳以上の皆様方がほとんどであると思います。拉致問題は政治課題、最重要課題でありますので、政府の強い決意の下、全員の帰国の実現をどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次の問題に移らせていただきます。

 UNRWAへの資金拠出再開についてです。

 十月七日に始まったイスラエルとハマスの武力衝突から半年になります。罪なき女性や子供を含めた一般市民への極めて深刻な人道危機に深く憂慮しているところです。

 当委員会におきましても、勝俣委員長宛てに、シアム駐日パレスチナ代表部大使を始め、駐日アラブ諸国二十名の大使、日を置かずにコーヘン駐日イスラエル大使から面会のお申出があり、委員長の御配慮をいただいて、理事及び理事会オブザーバーがお話を伺いました。十二月までに交互に二回ずつ計四回、それぞれの主張と心情をお聞きしたところです。ハマスによって拉致監禁されているイスラエル側の御家族の皆様方にもお会いし、家族を返してほしい、その切実な思いもお聞きしたところです。

 そうした中、一月二十八日、UNRWA職員がテロ攻撃に関与したとの疑惑を受け、日本政府は、UNRWA側において本件に関する調査が行われて、対応策が検討される当面の間、UNRWAへの追加的な資金提供を停止したところです。この間もパレスチナ難民の人道状況は深刻化しており、報道などでも痩せ細った子供たちや食料を求める人々の映像が世界中に配信されています。UNRWAのスタッフは一万五千人、そして、次にスタッフを抱えている組織の人数は二十人ということですから、必要な支援を届ける手がないということになります。

 三月二十八日に上川外務大臣は、来日したUNRWAのラザリーニ事務局長と会談をされました。その翌朝、事務局長は、私ども自由民主党国際協力調査会にもお越しいただき、疑惑について、国連の内部監査局、OIOSによる調査及び国連事務総長が任命したグループによる第三者検証が進んでいること、三月二十日に第三者検証の中間報告を提出し、アクションプランをドナー諸国に提供していることなどを説明いただきました。

 事務局長は私たちの質問にも丁寧にお答えいただいたわけでありますが、疑惑発覚後、十二人の疑惑の当事者を解雇せずに真相を究明するべきではなかったのか、アメリカや事務局長御自身の母国スイスで拠出を再開しないのはなぜかという問いかけには明確なお答えを頂戴することがありませんでした。

 そこで、お聞きしたいと思います。UNRWAへのアメリカ、スイスの資金提供について、そして真相究明について、日本政府としてUNRWA側にどのように求めていくのかをお尋ねします。

上川国務大臣 御質問のUNRWAの状況でございますが、今般のUNRWA職員の疑惑を受けまして、国連による調査とUNRWAのガバナンス強化策を提言する第三者検証の二つのプロセスが今進んでいる状況でございます。

 こうした中におきまして、先ほど委員からも御指摘いただきましたとおり、先週二十八日でありますが、ラザリーニ事務局長が訪日されまして、私との会談におきましては、ガバナンス改善のためのUNRWAの取組としての全ドナー向けのアクションプランが説明されるとともに、日本との間の追加的な措置として、日本・UNRWAプロジェクト管理・モニタリングの設置といった取組が示されたところでございます。

 これらを踏まえつつ、ガザ地区の人道状況の一層の悪化、また、我が国が主導した安保理決議を始めとする国際的な責務、そして、疑惑を受けたUNRWA側の改善策に関しまして検討を行った結果、我が国の支援によるプロジェクトの適正性の確保を図りつつ、拠出の一時停止を解除するものといたしたところでございます。

 UNRWA側におきましては、本件の疑惑の真相につきまして、その真相にかかわらず、疑惑自体の深刻さに鑑みて職員の解雇を行った旨、説明しているところでございます。

 本疑惑につきましては、現在まさに国連の内部監査室による調査が行われているところでございまして、我が国といたしましても、引き続き協力しつつ、しっかりとフォローしてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 我が国のUNRWAへの資金拠出がテロに使われることはあってはならないと思います。拠出金の原資は日本国民の税金、血税です。ですので、政府は国民の理解を得るための努力を怠ってはいけないと思っています。そのためには、追跡可能性を担保し、実施方法を明確にすることが必要であると考えます。

 例えば、戦後間もない日本では、ユニセフにより子供たちに脱脂粉乳が配付されました。子供たちの栄養状態が飛躍的に改善され、平均身長も伸びたと言われています。八十年近い時間の経過があって、我が国の脱脂粉乳は世界一高品質、そして栄養価も高水準であると思います。日本の脱脂粉乳を当地に送って、それをUNRWAの皆さんに配付してもらうという役割をしていただければ、実施方法を明確に示すこともできますし、追跡可能性を高めることもできるのではないかと思っています。検討していただければと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、日本国民の税金を原資とする日本政府からの拠出金、令和五年度の補正予算につきましては、資金の適正な活用を確保することが極めて重要だと考えております。

 そうした観点から、先ほど大臣からも答弁がありましたように、先週訪日したラザリーニUNRWA事務局長との会談におきましては、日本政府との追加的な措置としまして、日本・UNRWAプロジェクト管理・モニタリングメカニズムというものを設置しました。このメカニズムを通じましてプロジェクトの進捗管理や資金の流れをモニタリングしていく考えでございまして、これを通じまして我が国の支援のプロジェクトの適正性を確保していく考えでございます。

 委員から御指摘のありました脱脂粉乳でございますけれども、まず、大前提としまして、日本の拠出金によるものでありましても、人道支援をUNRWAが行う際には、まずUNRWAの調達の手続にのっとるということになっております。したがいまして、仮に脱脂粉乳を含む食料、物資の調達を行う場合、これが高いニーズがあるということが認められる場合には、輸送のコストや衛生管理の状況など、そういうものを踏まえまして個別具体的に検討がなされることになると考えております。

中川(郁)委員 是非検討をよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 イタリア・プーリア・サミットについてです。

 もう閣僚の方でイタリアの会合に出られているというお話を聞いていますが、昨年は我が国がG7議長国であり、二月に岸田総理からイタリアのメローニ首相へ引継ぎが行われました。

 昨年のG7広島会合では、食料安全保障が成果文書の主なポイントとして挙げられていたと思います。日本は人口が減少する中、世界人口は恐らく百億人に達していくだろうと言われています。食料安全保障は極めて重要な課題であります。

 食料安全保障について、広島会合ではどのようなポイントがあり、イタリアにどのように引き継がれていくのか、注目されるところであります。この点について御説明いただければと思います。

勝俣委員長 竹谷大臣官房審議官、答弁は簡潔に願います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日本は、昨年、G7議長国を務めまして、食料安全保障を重要議題の一つとして取り上げたわけでございます。その結果、広島サミットでは、G7と招待国の首脳が共同で、強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明の発出に至ったわけでございます。

 ロシアのウクライナ侵略によって悪化いたしました食料不安はアクセスに大きな影響を及ぼしていることから、日本は、食料支援、特に中東、アフリカ諸国などに対する支援や、ウクライナからの穀物輸出再開の支援なども行っておりますし、また、アジア、アフリカ諸国の水の安全保障が脅かされている結果から食料不安に陥っている方々への支援も行っているところでございます。

 今年はイタリアでございます。引き続き、食料安全保障を現下の重要課題の一つとして捉えていると聞いておりますので、私どももしっかり緊密に連携協力しながら食料安全保障の確保に取り組んでいきたいと考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 自然災害が多発していたり人口増加の中で、日本の国際的信用を背景に、施設の維持管理まで含めた国際貢献が可能な分野である水の安全保障の分野も、天皇陛下も水の講演を行っておりますので、是非その辺りもよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党会派、金城でございます。

 私の方からも、先ほどの中川先生とかぶりますが、UNRWAの問題について質問させていただきます。私の方からは、UNRWAへの資金拠出再開についてお伺いしたいと思います。

 昨日、午前十時頃でしょうか、上川外務大臣より、UNRWAへの資金拠出再開についての発表があったと伺っているところでございます。

 UNRWAにつきましてはガバナンスの強化が大前提であるということで、私の方もそういう認識を持っております。その上で、その規模やネットワークから、ガザ地区での人道支援において他の国際機関に代わることができない重要な役割を担っており、我が党としましても、UNRWAへの資金拠出再開については、三月六日に、辻外務副大臣に直接要請をさせていただいておりました。資金拠出再開の決定について、我が党としましても大変評価したいと思っております。

 そこで、改めて、資金拠出再開の判断に至った経緯と、論点となっておりましたUNRWAのガバナンスの強化や資金利用の透明性の確保への対応など、拠出再開の詳細について御説明をお願いできればと思います。

上川国務大臣 UNRWAにつきましては、我が国として、これまで、国連、UNRWA、そして関係国との間で様々なチャネルを使いまして意思疎通を続けるとともに、国連による調査、第三者検証の進捗、UNRWA自身の取組等につきまして注視をし、積極的にこのプロセスに関与、協力をしてまいりました。

 先週訪日されましたラザリーニ事務局長と私との会談におきましては、ガバナンス改善のための、UNRWAの取組としての全ドナー向けのアクションプランが説明されるとともに、日本との間の追加的な措置として、日本・UNRWAプロジェクト管理・モニタリングメカニズムの設置や、女性のリーダーシップ層への参画の強化、WPSの視点も取り入れた研修の実施といった取組が示されたところであります。

 これらを踏まえつつ、ガザ地区の人道状況の一層の悪化、深刻化している状況の中で、我が国が主導いたしました安保理におきましての決議を始めとする国際的な責務、そして、疑惑を受けたUNRWA側の改善策に関する検討を行いました結果、我が国の支援によるプロジェクトの適正性の確保を図りつつ、拠出の一時停止を解除することにしたものでございます。

 ガザ地区の人道状況はまさに悪化の一途をたどっている状況でありまして、我が国が重視をいたしております人間の尊厳が脅かされている極めて厳しい状況にございます。

 先般決定をいたしました三千二百万ドルの緊急無償資金協力や、また今般の拠出再開による支援に際しましては、ただいま指摘しましたとおり、様々な視点を織り込むということでございますが、特にWPSの視点も取り入れて、そして、特に女子や子供といった脆弱層に焦点を置いた衛生分野におきましての物資供与等を実施する予定でございます。

 今回の意思決定につきましては、昨日、ムスタファ・パレスチナ首相兼外務・移民庁長官と電話会議を行いまして伝達したところでございますが、引き続き、各国、国際機関とも意思疎通を図り、国際的な理解を得る努力も行ってまいりたいと考えております。

金城委員 この度のメカニズムの創設などをしっかりと踏まえた上で、大臣のビジョンとしてのWPSという観点から、女性や子供を救済していくという取組は是非推進をしていただきたいと思います。頑張っていただきたいと思います。

 続きまして、オスプレイの飛行再開についてお伺いしたいと思っております。

 昨年十一月、鹿児島県の屋久島沖でアメリカ軍のオスプレイが墜落をして乗員八人が死亡した事故を受け、飛行を見合わせてきたオスプレイでありますが、三月八日に、アメリカ軍は事故原因を特定したとして、飛行停止の措置が解除されました。既に私の地元の沖縄県では、事故以前と変わらない様子で住宅地等の上空を現在飛行しているところでございます。

 このオスプレイの飛行再開に対しては、沖縄県内では、沖縄県議会、宜野湾市議会、沖縄市議会、那覇市議会、中城村議会などの各議会で次々と抗議決議案が全会一致で可決されております。

 抗議決議案では、今回の墜落事故の原因究明と有効な再発防止策が講じられない中でアメリカ軍が普天間基地所属のオスプレイの飛行を強行しているのは県民の不安感を著しくあおるもので断じて容認することはできないとされており、私としましても、米軍側の、アメリカ海軍航空システム司令部が安全に飛行できると判断したためという主張だけでは、飛行再開に対する県民の不安払拭は難しいと考えております。

 そこで、上川外務大臣、今後大臣が訪米されるような機会があれば、その際は是非、沖縄県内の状況を御認識いただいた上で、アメリカ政府からオスプレイ墜落の事故原因を説明してもらえるよう、日本政府として働きかけていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 昨年十一月のオスプレイ墜落事故につきましては、事故発生直後から、私からブリンケン国務長官やエマニュエル駐日大使に対しまして、飛行の安全確保が最優先であり、日米で緊密に連携していくことを直接申し入れてまいりました。こうした点につきましては認識を一致させてきているところであります。

 防衛省は、事故発生直後から、技術情報を含めました米側との緊密なやり取りを踏まえまして、専門的見地及び運用者としての立場から、今回の事故に関する米軍の原因分析や安全対策は合理的であり、各種の安全対策を講じることで安全に運用を再開できると主体的に評価をし、運用再開に至ったものと承知をしております。

 事故原因につきましては、米側から、事故調査委員会における調査には訴訟や懲戒処分などに関わることも含まれており、報告書が公表されるまでは、米国内法上の制限によりまして、詳細につきまして対外的に明らかにすることはできないと説明を受けているところでございます。

 事故報告書が公表された際に、事故原因を含むその内容について防衛省が丁寧に説明するということになりますが、外務省といたしましても、防衛省と緊密に連携しつつ、安全確保につき、引き続き様々なレベルで米側に協力を求めていく所存でございます。

金城委員 米軍のオスプレイも再開していますが、自衛隊の方でもオスプレイも存在しますので、国民の安心、安全な暮らしを守っていく、そういう観点から取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次の質問に変わります。

 三月二十四日に東京の国立競技場にて開催されたイベントについてお伺いいたします。

 このイベントは、核兵器廃絶や気候危機の問題解決を目指す若者や市民団体が意識調査を行い、調査結果を踏まえた共同声明を国連の関係者に届けるというイベントでありまして、様々なアーティストによるパフォーマンスや、国連広報センター所長と市民団体の代表団による核兵器や気候変動に関するトークセッション、約十二万人から回答が寄せられた青年意識調査の結果の報告と実行委員会による共同声明、国連大学学長、国連事務次長のチリツィ・マルワラ氏のスピーチなどが行われました。

 青年意識調査では、若者たちの社会貢献への高い意欲や、核兵器は不要だとする認識、国連への期待などが示され、その結果を踏まえた、今年九月に行われます国連未来サミットの議論に貢献するための具体的な提案が共同声明という形で発表されました。

 このユースイベントの開催とイベントで発表された共同声明について、政府の見解をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘の三月二十四日のイベントでございますが、先ほどのお話のとおり、大規模な青年意識調査がされたと承知をしております。その上で、気候危機の打開、核兵器なき世界の実現、意思決定プロセスへの若者の参画、国連改革に焦点を当てた共同声明が発出されたと承知をしているところであります。

 これらの課題でありますが、これは九月の国連未来サミットにおきましても大変重要な論点となると考えております。昨年の未来サミット閣僚級準備会合におきまして、私は、地球規模課題の解決を自らの課題として取り込む、新しい価値観を持つ若者や未来世代が育つ環境を提供するということが我々の責務であるということを強調いたしました。

 この点、共同声明におきましても、「人類の存続に関わる地球的課題を、一人でも多くの若者・市民が自分事として捉え、今いる場所から、行動の連帯を広げていきたいと念願します。」こうされているものと承知をしております。

 政府といたしましては、若者や未来世代が活躍できるよう、国連を中核とした実効的な多国間主義を実現、強化すべく、未来サミットの機会を積極的に活用してまいりたいと考えております。

金城委員 ありがとうございます。

 若者の視点は持続可能なSDGsにもつながっていくと思いますので、是非推進をお願いしたいと思います。

 このイベントでの共同声明は、気候危機打開のために、核兵器なき世界の実現のために、意思決定プロセスへの若者の参画のために、国連改革のためにといった四つの大きな項目に分かれております。

 ここからは、その共同声明のうち、外務省所管の項目についてお伺いをいたします。

 およそ十二万人が回答を寄せた意識調査を基に作成された共同声明では、核兵器なき世界の実現のためにということで、核兵器禁止条約の署名・批准国の拡大、第三回核禁止条約締約国会議への日本政府のオブザーバー参加、グローバルヒバクシャの経験を共有、継承する核軍縮教育の推進の場として、国連での第四回核軍縮特別総会の早期開催の訴えがありました。

 核兵器なき世界の実現には高度かつ複雑な外交が求められると認識しており、現時点で政府の立場で言及できる範囲も限られているかとは思いますが、こちらの核兵器廃絶に関する声明についてどのように受け止めておりますでしょうか。政府の考えをお伺いいたします。

上川国務大臣 委員御指摘のイベントにおきまして発出された共同声明でありますが、核兵器禁止条約、被爆経験の共有、継承、第四回国連軍縮特別総会等について言及があったと承知をしております。

 その上で、核兵器禁止条約についてでありますが、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約でありますが、この条約には核兵器国は一か国も参加をしておらず、いまだその出口に至る道筋は立っていないというのが現状でございます。こうした中におきまして、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければならないと考えております。

 また、被爆の実相に関する正確な知識を持つということにつきましては、核軍縮に向けましたあらゆる取組の原点として重要と考えております。唯一の戦争被爆国である我が国といたしましては、引き続き、被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促進してまいりたいというふうに考えているところであります。

 加えまして、第四回の国連軍縮特別総会につきましては、例年、国連総会において関連決議が採択をされてきているところでございますが、国連軍縮特別総会は一九八八年を最後に開催をされていないのが現状と承知をしております。

 こうした状況におきまして、我が国といたしましては、既存の核兵器不拡散条約等を通じまして、核兵器のない世界に向けての現実的かつ実践的な取組を継続、強化してまいりたいと考えております。

金城委員 ありがとうございます。

 このイベントの共同声明の中には、国連改革のためにという柱があり、そこには、国連のユースオフィスを中軸とした、貧困地域に住む若者や複合的な差別に苦しむ若者の声を国際社会に届けるユース理事会の創設などをうたっております。

 この共同声明にあるこれらの項目について、政府の考えをお伺いできればと思います。

勝俣委員長 時間が来ていますので、答弁は簡潔に願います。

上川国務大臣 若者世代からも、多国間の信頼醸成に向けて国連がリーダーシップを発揮することへの期待とともに、中には、ユース理事会とか安全保障理事会の改革委員会の創設なども提案されているものと承知をしております。

 この未来サミットは、まさにあらゆる世代、そして、特に若い世代が関与していくということは、持続可能な地球社会の中の大変重要なアクター、プレーヤーということになりますので、その意味で積極的にこうした御提言を生かしてまいりたいと思っております。

金城委員 ありがとうございました。終わります。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 上川大臣は、大変に日本の国益を考える大臣として私は期待をしておりますので、きちっとした分かりやすい答弁をお願いしたいと思っております。

 まず、冒頭の質問でありますが、三月二十五日、アメリカのミシガン州ダンディーで、ティム・ウォルバーグ議員、この議員がとんでもない発言をしたわけであります。パレスチナのガザ地区について、アメリカによる日本の原子爆弾投下を引き合いに出して、長崎、広島のようにすべきだ、早く終わらせるべきだ、こういう発言があったわけであります。

 大変聞き捨てならない発言でありまして、我が日本は原爆を使われた被爆国として、しかし、その後の長い戦後の関係の中で日米関係を培ってきて友好をつくってまいりましたが、この友好に大きなダメージを与えることがこのティム・ウォルバーグという議員の発言で明確であると思っております。彼は、被爆者や被爆国の尊厳を傷つけることを平然と、同盟国の議員でありながら行ったわけであります。

 彼の発言に対して、大臣はそのことを承知しているか。また、この発言が日米の友好、同盟関係に大きなダメージになると思うが、そうお考えか、お伺いしたい。

上川国務大臣 今委員から御紹介をいただいたこのティム・ウォルバーグ米連邦下院議員、ミシガン州の共和党の議員でございますが、三月二十五日にミシガン州で開催されました集会において、参加者からの質問に対して御指摘の趣旨の発言を行ったことは承知をしております。

 この議員は、その後でありますが、三月三十一日付の声明におきまして、冷戦時代に幼少時代を過ごした身として、核兵器の使用を訴えることは決してないと、短く編集されました動画において、私は、米軍を危険にさらすことなく、可能な限り速やかにイスラエルとウクライナが共に勝利する必要性を伝えるために比喩を使用したとして、自身の発言の意図を説明したものと承知をしているところでございます。

 このような発言の趣旨を、また更に説明を加えているということも併せて理解していかなければいけないと思っております。

松原委員 大臣、ちょっと物分かりがよ過ぎるんじゃないですか。メタファーで、比喩として広島、長崎のことを引き合いに出し、ガザに原爆を落とせばいいという趣旨の発言をして、後でさすがに幾ばくか撤回したけれども、それはアメリカの国民に対しての撤回というか弁明であった。日本に対して何らかの謝罪、何らかのそういった発言はあったのか。余りにも日本をばかにしていると私は言わざるを得ないと思っている。

 これに関して、日本政府は抗議をどこかのレベルで行ったのか。また、これに対して謝罪を求める、そういった思いはないのか。こんなことを言われて、広島原爆という固有名詞を使われて、被爆国や被爆者の尊厳を否定するような発言をしておいて、それで、後で弁明があったから、まあまあ、このまま見過ごしますと。そんなばかなことを、外務大臣、言っていていいんですか。

 お答えください。

上川国務大臣 まさに我が国は唯一の戦争被爆国であります。核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならない、こうした信念の下、引き続き、核兵器のない世界の実現に向けて、米国とも協力をしながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねていく、これが重要であるというふうに考えております。多くの人に広島、長崎の訪問等を通じまして被爆の実相に触れてもらう、これが重要であると考えております。

 引き続き、唯一の戦争被爆国として、被爆地への訪問を始めとして、被爆の実相の正確な理解を世代と国境を越えて促進してまいりたいと考えております。

松原委員 質問したことに答えてくださいよ。抗議、謝罪というのをするのかしないのか。こんなことを言われて、そうですか、私たちも被爆国として被爆の実相を言います、そんな話じゃないでしょう。

 アメリカの下院議員が、広島、長崎という固有名詞を挙げてガザの問題を語った、メタファーで使うような軽々しい問題として大臣は捉えているんですか。そんな軽々しい問題として捉えているんだったら、そうおっしゃっていただいていいですよ。この発言に対してどう思うんだと言っているんですよ。このウォルバーグの発言をどう思うんだと言っているんですよ。けしからぬと思わないんですか。

上川国務大臣 三月二十五日に同議員が核兵器の使用を容認するかの発言を行い、これがメディアを通じて拡散していることを大変憂慮しております。

 同時に、同議員が声明を発出し、自身の発言の意図を説明したことにも留意をしている状況でございます。こうした状況の中で、現時点におきまして、同議員に対しまして抗議を行うことが必要な状況にあるとは認識をしていない状況であります。

 いずれにいたしましても、米国とも協力をしながら、現実的なまた実践的な取組でありますが、多くの人に広島、長崎を訪問していただき被爆の実相に触れていただく、このことの重要性は大きくなっていると思っております。

松原委員 とんでもないですな。抗議をする意思がない、今、国会のこの外務委員会で、抗議をする意思がないと言った。どういうことですか、これは。

 広島、長崎を比喩に使って、原爆投下をガザにしたらいいと言っているんですよ、彼は後で撤回したにしても。そのことに対して抗議もしませんと言ったら、日本は全くもってアメリカに何も言えない国ということが世界に分かってしまう。何で外務委員会で外務大臣がそんなことを言えないんですか。

 岸田さんが訪米する前に謝罪を求めるなり、岸田さんが、このことがあるにもかかわらず、平然として、何事もなかったかのように訪米するというのは、私は一人の日本国民として解せないし、許せない。

 大臣、抗議しないとよくおっしゃいましたね。これ自体は問題のある発言だと思わないんですか、日本の外務大臣として、広島、長崎の被爆国の外務大臣として。こんなことをメタファーで使うというのはばかにしていますね、はっきり言って。まともな答弁をお願いしますよ、冒頭お願いしたように。

上川国務大臣 同議員が声明を発出して、自身の発言の意図を説明したことに照らしまして、今申し上げたように、現時点におきましては、同議員に対して抗議を行うことが必要な状況にあるとは認識していないと申し上げたところでございます。

松原委員 完全にあきれました、これは。非常にばかげた答弁ですよ。

 広島、長崎、同じようにしますよということを比喩にしても言った、とんでもない話だ。そのことに対して、彼は、日本の皆さんに大きな誤解を与えたので申し訳ないという釈明もなければ何もない。しかし、岸田さんは、そのことがなかったかのようにアメリカを訪問する。あり得ない外交の敗北だと思いますよ。大変に残念です。

 抗議する意思がないということが明らかになったので、これから更に様々な場所で言っていきますが、このウォルバーグの発言を抗議しないということは、認めたということになりますからね。とんでもない話ですよ。肝に銘じてくださいよ。まさに認めた、肯定したということですよ。とんでもないよ。長崎や広島の人はどう思うんですか。あり得ないでしょう。

 余りこればかりやっていると時間がたってしまうので、二つ目は拉致。

 小泉訪朝時、拉致問題解決がなければ日朝国交正常化なしの原則は今も生きていますか、大臣。

上川国務大臣 拉致問題につきましては、被害者御家族も御高齢となる中におきまして、時間的制約のある問題でございまして、ひとときもゆるがせにできない人道問題であると認識をしているところであります。

 そのような中にありまして、我が国の方針でありますが、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものでございまして、この方針に変更はございません。

松原委員 小泉訪朝時の、拉致問題解決がなければ少なくとも日朝国交正常化の要因は成立しない、こういうことです。

 次に、横田早紀江さんが、昨年の十一月に、産経新聞に「めぐみへの手紙」というのを連載といいますか書きまして、その中で、このところの日本政府の動静を見るにつけ、本当に解決する気概はあるのか、不安や不信ばかり募ります、明々白々な主権侵害を受け、半世紀にわたり同胞を救えないありようは日本の国の恥ではないでしょうか、こういうことをおっしゃっています。

 その前には様々なことを言っているわけでありますが、子供を、めぐみさんを取り戻したいという思いで、こういうふうな強い危機感を訴えている。受け止めをお伺いしたい。

上川国務大臣 横田早紀江さんのお手紙、私も読ませていただきました。

 この間、家族会の皆さんとともに力を合わせて、一日も早い肉親の御帰国を目指して頑張ってこられている。そして、先ほど申し上げたとおり、御高齢になる中におきまして、ひとときもゆるがせにできない人道問題である、こうした認識を強くしているところでございます。

 お手紙を受けまして、岸田総理御自身も、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けての取組につきまして、首脳会談を実現するということで、直轄のハイレベルで協議を進めていきたい、こう述べてきているところであります。政府として、そのための様々な働きかけを引き続き行っていく考えでございます。

松原委員 真剣に寄り添って、拉致問題解決はお願いしたいと思っています。

 その上で、北朝鮮が、この間、政府も頑張っただろう、拉致対策本部も頑張っただろう、こういった中で、従来まれに見る融和的な発言が昨年から続いてまいりました。

 私も、この拉致問題はオール・ジャパンで、与党、野党関係なくやっていかなきゃいけない。前々回のこの委員会でも申し上げましたように、民主党政権時代も、ボードをつくる、そこには安倍総理にも参加していただく、そのときは総理じゃないですが。そういったボードをつくる努力もして、合意もいただいていたわけであります。それは繰り返しになりますから申し上げませんが。

 そういう中において、私も、この問題の解決のために、拉致担当大臣の皆様とも一定の綿密な連絡を取り続けてきました。野党になってからも様々な関係者と活動してまいりました。平沼さんとも一緒になって、北側のエージェントと会ったりもしてきました。

 その上で、私は、今回の北朝鮮の雪解け、つまりは金正恩氏から能登のお見舞いがあって、しかも、従来そんな発言は彼らからなかったであろう閣下という言葉がついて、そのお見舞いが来た。これもかつてないことだと私は思っておりますし、また、金与正氏も、会えない理由がない、それは、昨年、外務担当者が北朝鮮に行ったわけでありますが、金与正さんも、やりましょう、進めましょうという話があった。

 私は、その分析は、北朝鮮の中にも拉致については強硬派がいるので、それに対する国内向けのメッセージとして、強いことも言いながらという理解をしてまいりました、一定の情報を取りながら。これは非常にいい形で二月まで推移をしたと思っております。

 しかし、この間、三月二十六日の金与正発言、三月二十八日の外務大臣の発言、二十九日の中国の北朝鮮大使の発言、三人が立て続けに、もう一切の接触を認めないと。明らかに、誰がどう見ても、北朝鮮側の融和的な雪解けの、我々拉致を御家族の皆様と一緒にやっている側からすれば、何とかしてこのムードの中でやりたいと思っていたものが一気に変わってきた。

 この変わってきた理由というのは、どういうふうに大臣は受け止めておられるのか、変わってきたことをどう分析しているのか、お伺いしたいわけであります。

上川国務大臣 今委員御指摘の状況でございますが、政府といたしましては、北朝鮮側の意図、狙いについて述べる立場にはなく、コメントをすることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 総理直轄のハイレベルで協議を進めていきたい、この方針は、まさに岸田総理がミッションとして位置づけているものでございまして、先ほど申し上げたように、どんな状況であろうとも働きかけを引き続き続けてまいりたいと考えております。

松原委員 これ、二月までの融和的な雪解けのイメージと全く変わっていますよね。この事実認識はあるんですか、ないんですか。簡単に答えてください、大臣。

上川国務大臣 日朝関係に焦点を当てたものとして、今委員がお話しになりましたとおり、金与正副部長の談話はこれまで三件のみでございまして、崔善姫北朝鮮外相の談話、これも初めてでございますが、そういう意味で、両者の談話が立て続けに発出されている。この間の状況については初めてということでありますので、そういう状況については、非常に注視をしているところでございます。

 そこで、先ほどの御質問の前段にありました、これがどういう意図や背景があったのかということについては政府としてお答えする立場にはなく、コメントすることについては差し控えさせていただくと申し上げたところであります。

松原委員 今、ちゅうちょするとおっしゃいました。(上川国務大臣「注視」と呼ぶ)注視、ちゅうちょじゃなくて注視。まあ、注視するのは当たり前だよね。でも、これだけ態度が変わっていることを注視しているだけというのはいかがなものかと思うんだけれども。

 そこで、更に質問します。

 私は、これだけ、金与正副部長を始めとする三人の北朝鮮の外務関係者が、急に、もう一切の交渉はいいですよ、接触はいいですよと言ってきた。その理由というのがあるわけですよ。あるんですよ。これはなかなか微妙な問題だからお答えにならないというのであれば、それはきちっと頭の中で整理しておいてもらいたい。

 私は、拉致被害者御家族の、これがある意味で、最後とは言いたくないが、大きなチャンスだというふうに思っているのであれば、我々が求めている親と子供が抱き合うということのほぼラストチャンスに、時間的制約でぎりぎりまで来ているということを考えるのであれば、これは何としても成就させなきゃいけないと思うから私は言っているんですよ。

 金与正さんが、過去の日本側と北朝鮮との水面下の交渉と異なる窓口で接触をしてきた、こういうふうに言っているわけですよね。これは分析があるわけですが、異なるルートを通じて、可能な限り早いうちにと。一月、二月までの北朝鮮側の認識のルートとは違う、異なるルートと言ってきたんですよ。それまでの日本との水面下の交渉とは違った窓口、こういうことなんですよね。それも、できる限り早く会いたいと言ってきたと。

 これを金与正氏が暴露するというのもとんでもない話だと思うが、暴露される方もとんでもない話で。北朝鮮と日本との間の信頼関係は、この暴露された事実を見て、あるとお考えですか。まあ、答えられないんだったら答えなくていいんだけれども、あると思いますか。うなずくだけでもいいですよ。

上川国務大臣 北朝鮮の発表の一つ一つ、またワードにつきまして、コメントすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 完全に変わっているんですよ。別のルートって何なんだろうと私もいろいろと情報を集めましたが、別のルートってよく分からない。ただ、それが功を焦ったルートであるという印象を私は持たざるを得ない。それまで積み上げてきていい感じでやってきたものが、急にここで北朝鮮の態度が、まさに三人の発言で組織的に変わった。明らかにこれは事実だ、何があったんだ、しかも、信頼関係がないあかしのようにして、別のルートでやってきたと金与正は言っているんですよ。

 岸田総理が自身の直轄ハイレベルで働きかけていると昨年末以来発言をしております。結論から申し上げるならば、このルートが十分機能していない。これが問題だと言いませんよ。でも、この新しい別のルートというのは、日本にも十年も十五年もずっとこれをやってきたルートがあったわけですよ、私も担当大臣をやっていましたから。そうではないルートですよ。新しいルート。

 これは総理直轄の、誰かということは大体臆測はできますが、この場では言いませんよ。それが急いでやろうと出てきた。その人たちが北側にとっては忌避する人間だったのじゃないか。これは後で質問するつもりですが、時間がないので飛ばすかもしれませんが、従来の北朝鮮と日本の外務省との信頼関係の議論も出てきますよ。いろいろな課題が三つぐらいありますから。

 私は大臣に申し上げたいんだけれども、岸田さんのハイレベルの動きをするグループ、これが十分機能していないのではないかという思いを私は持っているんです。ある種の、直感ではないですよ、思っているんですよ、それ以上言いませんが。これはどう思いますか。

上川国務大臣 北朝鮮側には様々なルートを通じて働きかけを行ってきているところでありますが、それ以上の詳細につきまして明らかにすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 少なくともこの一か月に日朝間で何らかのトラブルがあった。その中身は分かりません。金与正が暴露しているのは、別の新しいルートを岸田総理はやってきた、これがその原因だろうと普通は思います。それがどういうルートかは明確には分からない。しかし、それは非常に焦っていた、早くやってくれ、こう言ってきた。

 結果的に、私は、日本側は、従来の、一月、二月までやってきた、長いことこれをやってきた交渉ルートにもう一回戻してやっていかなければ、北朝鮮側の信頼は受け取れないのではないかというふうに思っているわけであります。

 この辺、お答えはなかなかできないかもしれないけれども、私の発言を外務大臣として、それは、拉致を私もずっとやってきた人間です、受け止めていただけますか。受け止めていただけるかどうかを聞きたい。

上川国務大臣 岸田総理でございますが、これまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向けて、首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていくと述べてきているところでございます。その意味で、様々なルートを通じて働きかけを絶えず行ってきているところでございまして、そのことにつきましては、状況がどういう状況であるという評価は、先生の方の評価もありますけれども、この目的の中で様々なルートを通じて働きかけを更にしていく、このことについてはこれからもそうするところでございます。

松原委員 そんなことを聞いていないんですよ。私のこういった考え方も含めて受け止めてもらえますかと聞いているんですよ。私も当てずっぽうで言っているんじゃないんですよ。一定の、私なりの情報を集めた上で言っているんですよ。受け止めてもらえますかと聞いているんです。それは一つの考え方としてあるなと受け止めてもらえますか、拉致被害者のために。答えてください、それだけです。

上川国務大臣 様々な考え方ということで、委員は長い間、この問題に向き合って、そして、活動、行動をしてこられたお立場であります。そのお立場の中から様々な考えがあるということでございますので、そのことについては受け止めさせていただきます。

松原委員 是非受け止めて、そして、一定のルートや交渉の在り方の見直しをやっていただきたいと思います。繰り返しますが、私は当てずっぽうで、思いつきで言っているのじゃありませんから、よろしくお願いします。

 次に、徴用工の問題に入ります。時間がありません。

 この間の外務委員会で、徴用工の問題でほとんど上川大臣にお答えいただけなかったわけでありますが、外務省は、過去、韓国大法院が日韓請求権協定に違反した判決を行ったときに、当時の外務大臣が仲裁裁判所に提起した事実があるということでありますが、政府参考人、この経緯を簡潔に教えていただきたい。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一八年、韓国大法院判決及び関連手続等によりまして韓国が国際法違反の状態にあるとの問題を解決するため、我が国は、二〇一九年一月、日韓請求権協定に基づきまして韓国政府との協議を要請したところでございます。

 この協議の要請に対しましては韓国政府が応じなかったため、同年、すなわち二〇一九年五月に、韓国政府に対して、日韓請求権協定第三条に基づきまして仲裁付託を通告し、仲裁の手続を進めたところでございます。韓国政府はこうした手続にも従わなかったことから、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会を設置することができなかったということでございます。

松原委員 大臣、これ、前回質疑をしましたが、既に過去、安倍政権下では、この問題をこのように、仲裁裁判を起こそうということを行ったり、後でも話に出ますが、ハーグ司法裁判所にも提訴する可能性を、それは訴えているわけであります。

 前回の質疑で、全く予断を持って答えられないし、お答えできませんと言いましたが、後でいろいろと質問を続けていきますが、岸田政権というのは、安倍政権のときよりは全くこの韓国の日韓請求権協定を否定する行動に対して歯切れが悪いし、何も物を言っていない。

 安倍政権のときは、仲裁裁判を行おうとしたし、国際司法裁判所にも提訴しようとした。しかし、全くそういった事実すら忘れたかのように、岸田政権、上川外務大臣は一切口を閉ざし、予断を持ってこれを語らないと言っている。このことで相違ありませんか、大臣、お答えいただきたい。

上川国務大臣 今、過去の状況の中で、これまでの経緯の御説明がございましたが、様々な対応策ということはもちろんあるわけでありますので、そこのところを排除しているというような、ちょっと聞こえましたけれども、そういうことでは全くございません。いろいろな可能性については検討の対象であるということを申し上げたいというふうに思います。

松原委員 なかなか、前回よりはいい答弁ですね。つまり、排除しない。仲裁裁判を行う可能性もあるし、また、ハーグに持っていく可能性もある、それを否定するわけではない、こういうことを今大臣おっしゃいましたが、よろしいですね。確認です。

 後ろから出てこなくていいよ。あなた、出てきちゃ駄目だよ。

上川国務大臣 今申し上げたのは一般論として申し上げたところでありますので、いろいろ今の事態に対しましてどう対応していくのかということにつきましても、その意味で、様々な可能性について俎上にのっている、そう申し上げたところであります。

松原委員 つまり、安倍政権下のときに行った、仲裁裁判を求める若しくは司法裁判所に持っていこうとする意思も含めて、その可能性は否定しない、こういう今答弁ですよ、よろしいですね。それをまた、後ろの政府参考人か秘書か分からないけれども、出てきて、紙を持たれても困るんですよ。大臣の生の言葉で、大臣の思いで語ってもらいたいんですよ。それで質問を続けてまいります。今そういうふうにもう理解しましたから、よろしいですね。そういうふうに私、理解しましたから。いいことですよ、それは。

 産経の記事があるんですが、これは、二〇一八年十一月六日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所に提訴する方針を政府が固めたと産経は報じています。この問題をめぐり、二〇一八年の予算委員会で、安倍首相は、国際裁判を含め、あらゆる選択肢を視野に入れて、毅然として対応していく。

 これ、当然の態度だと思うんですよ。これを前回の質疑でずっとぼやかしていた。非常に残念ですよ。初めからこういうふうに言ってもらえばいいんですよ、かつてやっているんだから。安倍政権のときから、岸田政権、上川外務大臣になって、二十歩、三十歩、四十歩後退しましたよと、そんなことを言われたくないでしょう。そのことは、きちっと外務省当局も御理解いただきたいというふうに思っています。

 その上で、質問を続けてまいります。

 この内容を考えるときに、だから、したがって、この日韓請求権協定、今の記事があるわけですが、日韓請求権協定を完全に踏みにじった韓国の行動は、国際社会では圧倒的に見られない、そういう行動だと私は思っていますが、このことに関して、政府は事あるごとに遺憾ですと言っているだけという認識であります。

 私は、今の記事にあったように、韓国が財団をつくって、そこからお金を拠出するということで、その姿を見て、我々は、ああ、それは評価してもいいな、こういうふうに日本政府は思ったというのがこの間の我々の認識なんですよ。であるならば、その我々が評価したスキームが崩れていることに対して、やはりちょっと評価は崩れるよなというのは当たり前でしょう。

 更に言うならば、韓国のその財団が、定款上そういう定款がないならば、定款を変えて、日立造船にその部分のお金を戻すべきだと前回も聞きました。これは当然、どこかで日本政府はそのように仕込んでいるんでしょうね、上川さん。なかなか言えないだろうから、首を縦に振るだけでもいいですよ。お願いしますよ。

上川国務大臣 今後の対応について、予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思いますが、専ら、今の諸懸案の中の一つでございますけれども、我が国の安全保障また経済上の国益ということにとりまして何が最善か、こういう視点から様々な対応をしてまいりたい、検討し、対応してまいりたいと考えているところでございます。

松原委員 その何が最善かという観点からは、事実上何もしていない。これは最善なんですか。何か具体的に行わせないと駄目でしょう。

 私は、韓国の財団が定款を変えて日立造船にお金を戻すというのは、これは当然、韓国が本気で申し訳ないと思うならやるべき行動だと思いますよ。しかしそれは、日本の政府はそのことを評価しただけであって、握っているわけじゃないですから。

 だから、私が言いたいのは、少なくともこの状況は安倍さんのときよりひどいですよ、実際没収したんだから。ハーグ国際司法裁判所に提訴するべきだと思っています。

 外務省のホームページを見ますと、国際司法裁判所に関してこう書いてあります。一九五八年以来、合意なく相手国が一方的に我が国を提訴してきた場合でも、国際司法裁判所の強制的な管轄権を原則として日本政府は受け入れてまいりました。しかし、韓国はこのような立場を取っていません。したがって、仮に我が国が一方的に提訴を行ったとしても、韓国が自主的に応じない限り国際司法裁判所の管轄権は設定されませんと書いてありますが、日本は、こういった場合、管轄権があるという判断をした場合は、我が国は真面目な国なんですよ、全部応えていますよ。

 そこでお伺いしたいわけでありますが、この国際司法裁判所というものに対しては提訴できるんですよ。できるということを言っているわけですよ。安倍さんも言っているんですよ。みんな言っているんですよ。改めて、大臣、物理的にできるんですか。お答えください、簡潔に。

上川国務大臣 物理的にできるという、ちょっと趣旨が分からない。分かりません。

松原委員 結果的に、韓国が乗ってこなければ管轄権の議論まで進まないんですよ。ただし、乗ってくるかどうかは別にして、日本がこれは国際的な両国間の協定違反であると言って訴える、管轄権があるかどうかを判断するのはハーグですよ。それ以前に、韓国が乗ってこなかったら、仲裁裁判と同じで進まないですよ。

 しかし、我々は、今回の日立造船のお金を持っていったということは看過できないと思うならば、遺憾、遺憾と言っているんじゃなくて、我々がやれることをやるんじゃないんですか。だから、その意味でできるんですかと聞いているんです。扱われるかどうか、管轄権があるかどうかという議論は司法裁判所が判断することです。聞いています。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がありましたように、国際司法裁判所に付託することにつきましては、我が国は強制管轄権受諾宣言を行っておりますけれども、韓国はこれを行っていないということで、仮に我々が一方的に提訴を行ったとしても、韓国が自主的に応じない限り、今御指摘にあったように、ICJの管轄権は設定されないということになるということでございます。

松原委員 つまり、我々が仮に行ってもと言いました。できるんですよ。意思ですよ。政治は意思ですよ。その意思を外務大臣は持たれていますか、必要な場合には。必要な場合にはやりますぐらいのことは言ってもいいんですよ。答えてください。

上川国務大臣 まず、昨年の十二月の韓国大法院が日立造船に対しまして損害賠償の支払い等を命じます判決を確定させた時点におきまして、日韓請求権協定第二条に明らかに反しているものであります。その上で、この判決に基づきまして日本企業に不当な不利益を負わせることは、極めて遺憾であり、断じて受け入れられるものではないと申し上げてきたところであります。

 今御指摘の点も含めまして、一連の判決への対応につきましては、ハーグへの提訴も含めまして、様々な御意見、可能性があるところでございます。今の時点で、今後の対応につきまして、予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、様々な可能性につきましては検討の中に含まれ得るものであると認識をしております。

松原委員 前回とは大分変わりましたね。前回、それも予断を持って答えない、一切答えなかった。

 私は、冒頭言ったように、安倍さんの時代には、ハーグも、仲裁裁判所も、全部やろうとしたんですよ。その外交圧力で韓国はいろいろとなびいてきたんですよ。

 だから、それも言わないでいるというのはとんでもないし、まず、冒頭のアメリカの下院議員の発言も抗議しませんと、これは大チョンボですよ。抗議しませんなんてことはあり得ないでしょう。広島、長崎に対してどう思うんですか。岸田さんも上川さんと同じ意見だったら、ちょっとこれは大問題ですよ、広島なんだから。本当にそういうことでいいんですね。

 抗議しませんと言ったことは、歴史上大きな恥辱として残る可能性があるということを明確に申し上げ、しかし、上川さんが本当に日本の国益のために汗を流すことに深く期待をしながら、やはり自分に正直にしゃべることが大事だと思いますよ、正直に。そのことを申し上げまして、私からの質問を終わります。

 残余の皆さんには、本当にお越しいただきまして、申し訳ありませんでした。次回にまたつないでまいります。

 ありがとうございます。

勝俣委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。

 イスラエル情勢について、まず伺わせていただきたいんです。

 前提のお話なんですけれども、今、松原さんからもあったんですが、憲法に基づく国際協調主義というのが日本の外交の基本路線だとはもちろん承知しているんですが、最近では、御案内のように、この協調主義と対偶を成すナショナリズムや大国主義が紛争を引き起こしている。そういう中で、小学校の頃、外交官に憧れた私としては、やはり外務省の皆様には、格好いい外交であり、尊敬される外交を目指していただきたいと一国民として改めて思うんですね。

 しかしながら、各国のリーダー、後ほどマクロン大統領やバイデン大統領の件にも触れたいと思うんですけれども、強い言葉で自分の国の主張を対外的に強く発信する、それが大手メディアに報道される一方で、残念ながら、日本の外交のニュースというのは、とりわけ政治家の言葉というのは海外のニュースに載るケースは少ないし、弱いと思っております。

 例えば、昨日、北朝鮮のミサイルが飛んできました。総理のコメントは、地域社会や国際社会の安全にも関わることであり、断じて容認できない。先月飛んできたときには、地域、国際社会の平和と安全を脅かし、断じて容認できない。去年十二月、十一月に飛んできたときには、地域や国際社会の安全にも関わることであり、断じて容認できません。コピペですか。そして、また飛んでくる、挙げ句の果てには超音速のものを造って飛んできている、そんな状況になっております。

 理屈が通じない相手に対しては、言葉だけではなく、何らかの硬軟併せた実行力のある対策を取っていかなくてはいけない。遺憾砲といいますけれども、断じて容認できない砲を空砲のように発射し続けるしかないという今の状況。具体性のない言葉を発し続けていけば、今は大きなハレーションは起きないと思うんですけれども、長期的に見たら、超音速ミサイルを造られて飛んできたりとか、足下を見られて国益を損なうのではないかと私は思っております。

 その上で、あえて聞きます。日本の外交というのは、協調主義を超えて、先ほどの松原議員のウォルバーグさんの話にもしかり、とにかく表立ったトラブルを起こさないように、言葉だけで体裁を整える事なかれ主義なんでしょうか。

上川国務大臣 我が国は、国際社会に今分断、対立が進行している状況でありますが、そういう中であるからこそ、協調に導くべく、人間の尊厳や法の支配を中心に据えた外交を積極的に展開をしているところでございます。

 事なかれ主義という御説明、先ほどコミュニケーションの仕方の一つということで御紹介をいただきましたけれども、非常に様々な御意見があろうかというふうに思いますが、私は、事なかれ主義、こうした御指摘は当たらないというふうに思っております。

 その意味では、まさに国際社会の平和と安定のために八十年来努力をしてきたこと、このことそのものが信頼のベースになっているところでありますので、それを大事に、これからも日本らしいメッセージを発信し続けていくということは必要であるというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 日本外交のオプションというのは、アメリカ外交とか中国外交と比べてもちろん少ないということは承知しているんですけれども、やはりそれでも、超音速ミサイルも飛んできているわけですから、相手に伝わる強い言葉で存在感のある外交を是非お願いをして、質疑を始めさせていただきたいと思います。

 昨日、上川大臣が、二〇二三年度補正予算に計上した三千五百万ドルを順次拠出するということであったんですが、資金の適正な支出、これを具体的にどうやって確認しながら進める予定でしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の二〇二三年度補正予算三千五百万ドル、これは一時停止を解除しましたUNRWAへの令和五年度補正予算からの拠出でございまして、我が国とUNRWAの間で合意したプロジェクトに対して実施をするために拠出をするものでございます。

 具体的には、ガザ地区でございますけれども、女性や乳幼児を対象とする衛生分野での物資の供与を実施します。また、ガザ地区以外の、西岸、ヨルダン、シリア、レバノン、そこにおきましては、医療サービスの提供等を行っていく予定でございます。

 また、資金のモニタリングということでございましたけれども、この点につきましては、先週訪日しましたラザリーニUNRWA事務局長と上川大臣との間で、日本・UNRWAプロジェクト管理・モニタリングメカニズムというものを設置することを確認したところでございます。これは日本との間で追加的な措置として設置をしたものでございまして、このメカニズムを通じまして我が国の支援によりますプロジェクトの適正な実施を確保していきたいと考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 これとは別に百億円の追加的な人道支援の表明をされているんですけれども、私も外務委員会でUNRWAについては何度か質問させていただいていますが、このときに、百億円についても、その多くがUNRWAに行くということで御答弁をいただいております。フランス政府も今同時に支援を再開している中で、また巨額のお金がUNRWAに流れることになるわけですね。

 繰り返しになるんですけれども、ハマスとの関係もそうなんですが、組織として本当に適切にお金を管理しているのかという絶え間ない確認をお願いしたいと思っております。

 我々の税金は、本当にあした生きているか分からないような絶望にある家族や子供たちの命のために使われるわけであって、ハマスに流れるのはもちろん、職員による着服や幹部の遊興費などに使われないように、重ねて重ねて、先ほどおっしゃったモニタープロジェクト等々を通じて確認をお願いしたいと申し上げたいと思います。

 次に、同じパレスチナなんですが、国際司法裁判所が先日、イスラエルに対して、パレスチナ自治区ガザ地区での飢饉を回避するために、援助物資を流入させるように命じました。この命令の中で、子供二十七人を含む三十一人が既に栄養不良と脱水症状で死亡したとしておりますし、ラファでは援助トラックの長い行列ができていて、これもイスラエルが複雑で恣意的な検査を行っていると一部では報道されているところでございます。

 一月には、ガザ地区でのジェノサイドを防ぐためにあらゆる対策を講じるよう暫定的に命じたICJの命令もあるわけでございますけれども、御案内のように、ICJの決定というのは法的拘束力を持ちますけれども、執行力はありません。

 大臣はよく法の支配という言葉を、先日の徳永議員の質問にもあったと思いますけれども、法の支配という言葉を用いられるんですけれども、ICJの命令というのはまさに法の支配であって、これにもし従わないとするならば、イスラエルは無法者ということになってしまうのではないかと危惧しております。

 このようなイスラエルの動きを法の支配という観点からはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、南アフリカがイスラエルを国際司法裁判所、ICJに提訴した件でございます。南アフリカが暫定措置命令の発出を要請したのに対し、ICJは、一月二十六日暫定措置命令を発出し、また、三月二十八日に追加的な暫定措置命令を発出しております。

 こうした暫定措置命令につきましては、イスラエルがジェノサイド条約違反を行っているかを現時点で判断したものではございませんが、国連の主要な国際司法機関であるICJの暫定措置命令は当事国を法的に拘束し、誠実に履行されるべきものであり、我が国として、その旨を外務大臣談話で表明した上で、イスラエル側にも伝えてきているところでございます。

 その上で、御指摘の法の支配でございますが、法の支配とは、一般に、全ての権力に対する法の優越を認める考え方というふうに承知しております。今回の事案を含めまして、国際社会におきまして、法の支配が貫徹されることが重要であるということは言うまでもありません。各国は国際法を誠実に遵守する必要があると考えております。

 我が国といたしまして、本件の事案に関しましても、イスラエルを含めた全ての当事者が国際法に従って行動することを一貫して求めてきており、また、先ほど申し上げましたように、国連の主要な司法機関であるICJの暫定措置命令は誠実に履行されるべき旨を述べてきております。

 我が国といたしましては、引き続き、関係国、国際機関と緊密に意思疎通を行いつつ、全ての当事者に対し、国際人道法を含む国際法の遵守、関連の安保理決議に基づいて誠実に行動することを求めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 イスラエルにも伝えたということなんですが、遺憾、遺憾と言う先ほどの遺憾砲でいえば、実際にイスラエルに対してこうしたジェノサイドの動きを止める力になっているのかなと大変疑問を持っております。

 お配りさせていただいた資料を御覧いただければと思うんですが、これはイスラエルの閣僚名簿です。イスラエルの国会に当たるクネセト、これも御案内のように、ネタニヤフさんのリクードを中心とした連立政権が百二十議席中六十四議席で、何とか連立政権を維持しているという状況です。イスラエルのこちらにある閣僚三十一人のうち、極右のユダヤの力と宗教シオニズムから合計六人出ているわけですね。もう数字的にも明確なんですが、このように、極右政党の協力なくしては、イスラエルというのはもう政権を維持することができない。

 今日、金城議員からも、松原議員からもありましたけれども、原爆の話。このユダヤの力の一人、アミハイ・エリヤフさん、エルサレム問題・遺産大臣ですね。この方はラジオ番組で、御案内のように、ガザ地区に核爆弾を落とすのも選択肢だと話しているわけですね。核兵器の恐ろしさを理解していないのだろうなという疑問を持ってしまう人物なんですけれども。

 このユダヤの力の議員の中には、家族で既にヨルダン川西岸、パレスチナに入植している閣僚も複数おると聞いております。さらに、BBCの報道によりますと、壊滅状態のガザに入植を開始しようとしているイスラエル人のグループもある。

 これまでも、日本は占領地への入植は国際法違反という立場を貫いてきましたけれども、今回のことについて、この一連の動きについては明確な国際法違反という理解でよろしいんでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の報道は承知をしております。現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、御指摘のとおり、我が国としては、イスラエルの入植活動は国際法違反であるという立場を一貫して取ってきております。また、二国家解決の実現を損なうという立場から、入植活動については完全に凍結するよう、イスラエルに対して累次の機会に強く求めてきているところでございます。今後も必要な働きかけ等を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 そうすると、閣僚の入植も含めて国際法違反、そういった答弁だと理解をさせていただきました。

 正直、イスラエルの極端な行動に対しては、世界の潮目は変わってきているのではないかと思っております。イスラエルの国内世論にも変化が出ているんですけれども、まず伺いたいのは、バイデン大統領の、イスラエルについて、信じられないほど保守的な政府を維持するのであれば世界中からの支持を失うと発言して停戦要求したことについての評価を伺わせてください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 他国の政府関係者、高官の発言の逐一についてコメントすることは差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、我が国といたしましては、ガザ地区の危機的な人道状況を引き続き深刻に懸念しており、人道支援活動が可能な環境を確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦が速やかに実現し、そして持続可能な停戦が実現することを目指して、様々な外交努力を行ってきているところでございます。

 イスラエルに対しましても、国際人道法を含む国際法の遵守、関連安保理決議に基づき誠実に行動することを繰り返し求めてきているところでございまして、引き続きそうした外交努力を続けてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 これはアメリカは棄権しましたけれども、潮目は変わっていると思いますか。

安藤政府参考人 御指摘の安保理決議でございますけれども、三月二十五日、国連安保理におきまして、我が国が議長を務める中で、ラマダン期間中の停戦を求める決議第二七二八号が賛成多数で採択されたことを歓迎いたしております。

 他国の投票態度についてコメントすることは差し控えたいというふうに考えておりますけれども、我が国としては、この決議案の共同の起草国として、理事国内の議論、調整に積極的に取り組み、賛成票を投じたということでございます。

鈴木(庸)委員 さらには、マクロン大統領は、ラファの人々を強制的に移動させることは戦争犯罪に当たる、戦争犯罪という言葉まで使って警告をしていますけれども、これについては、日本政府の捉え方はどうでしょうか。

安藤政府参考人 他国の政府関係者、高官の発言の逐一にコメントすることは差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、引き続き、我が国として、ラファハへのイスラエルの軍事行動の動きを深く懸念しているところでございます。

 人口過密地域にあるこの地区におきまして、民間人の避難、保護のための十分な措置が取られないまま軍事作戦が継続すれば、更に多くの犠牲者が発生する惨事となり、人道支援活動がますます困難になるということは明らかだというふうに考えております。

 ハマスが人質を一刻も早く解放すべきことは当然だというふうに考えておりますけれども、同時に、ガザの無辜の民間人がこれ以上犠牲になることは何としても防がなければならないというふうに考えております。今も、人質の解放と戦闘の休止をめぐりまして、関係国の仲介による調整が行われており、このような動きが実現するよう関係国と緊密に連携しつつ、二国間での働きかけ、安保理やG7の一員としての外交努力を重ねてまいります。

鈴木(庸)委員 最初のところで申し上げたんですけれども、圧倒的な力で大量の一般人を殺しているのに、更にそこに核爆弾を落とすのも選択肢なんと言っている閣僚を辞めさせていないわけですね。そこに対して、遺憾、遺憾を繰り返して国際協調の視点でお願いしたとしても、状況は変わるんでしょうか。

 さらに、御案内のように、収賄罪でネタニヤフさんは起訴されています。これは、政権を維持するためでなく、自分に対する汚職訴訟を妨げて、自身への介入を防ぐために司法制度を変えようとしているのではないかという指摘も、イスラエル内外の様々なメディアで言われています。

 イスラエル国内でも、これについては大きく国論も分かれていて、イスラエル民主主義研究所という結構データを取っているところがあるんですけれども、ここの二月九日の調査では、何に重点を置くかというところで、人質解放が五一%で、ハマスの壊滅は三六%、政権が至上命題とするハマスの壊滅よりも、捕らえられている人質の解放の方をまず世論が重視していることが示されているわけであります。

 潮目が変わっているんじゃないかというところの延長で伺いたいんですが、この世論調査の結果については把握されていますでしょうか。

安藤政府参考人 御指摘の調査につきまして、政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、確かに、イスラエル国内におきまして、現在のガザ地区における戦闘について批判的な声があるということは承知しております。

 先ほども申し上げましたとおり、我が国として、子供、女性、高齢者を含む多数の死傷者が発生していることを、ガザ地区の危機的な人道状況を引き続き深刻に懸念しているところでございます。

鈴木(庸)委員 外務省が把握している範囲でいいんですけれども、ハマスには今反撃の力というのはどの程度あるんでしょうか。

安藤政府参考人 現在もなお、ガザ地区において、ハマスは一定の勢力を有しているというふうに承知しておりますけれども、政府としてそれ以上具体的な評価を行うことは差し控えたいというふうに考えております。

 いずれにしても、我が国といたしましては、ラファハにおけるイスラエルの軍事行動の動きを深く懸念している中で、人口過密状態にある同地区において、民間人の避難、保護のための十分な措置が取られないまま軍事作戦が継続すれば、更に多くの犠牲者が発生する惨事となり、人道支援活動がますます困難になることは明らかだと考えてございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 ここで、イスラエルと日本との経済協力の現状について教えてください。

安藤政府参考人 イスラエルとの間では、二〇一七年十月に投資協定が発効しておりまして、また、二〇二二年十一月には、あり得べき日・イスラエル経済連携協定、EPAに関する共同研究を立ち上げ、同共同研究の下でこれまで三回会合を開催し、あり得べきEPA交渉での関心事項等について、産官学を交え議論を行ってきたところでございます。

鈴木(庸)委員 いわゆるFTAの経済協力交渉まで始めて、かつ、投資協定が既に結ばれている。それと同時に、我々としては、イスラエルで行われているガザの人たちに対する攻撃を一刻も早くやめてくれという話をしている。

 繰り返しになるんですが、この遺憾砲を撃ち続けているだけではガザの人たちを守ることもできませんし、核兵器をちらつかせているロシアに対しては大変強い非難をして経済制裁まで行っているのに、同じく重要閣僚が核兵器の使用を否定しないイスラエルに対しては引き続き経済協定についての話合いも続けていく方針である。少しバランスが欠け始めているのかなという感じもしています。

 しかし、核による話というのは、先ほどのお話もそうですけれども、とにかく日本にとっては断じて容認できないという姿勢をイスラエルに対してもしっかりと示す。イスラエルも、彼が発言した後にいろいろ釈明はしていましたけれども、しかし、言うだけではなくて、実行力が伴わなくてはいけないかと思っております。

 例えば、経済協定の研究や投資協定を見直すといった具体的な圧力を通じてガザの人たちを守る選択肢というのは日本にはないんでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました我が国とイスラエルとの間の経済関係における各種の協力案件への今後の対応方針につきましては、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいというふうに考えておりますが、こうしたイスラエルとの経済面における協力の推進については、日・イスラエル二国間関係を総合的に勘案した上で、適時適切に判断してまいりたいと思います。

 その上で、我が国としては、岸田総理、上川大臣を含むあらゆるレベルで、累次にわたって、イスラエルを含む全ての当事者に対し、国際人道法を含む国際法の遵守、関連の国連安保理決議に基づいて誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、そして事態の早期鎮静化を呼びかけてきており、こうした外交努力を今後も粘り強く続けていきたい、このように考えてございます。

鈴木(庸)委員 イスラエルの内政に関して干渉できないというのはもちろん分かっているんですけれども、我々としては、ガザでの戦闘を終わらせて、子供たち、家族を守るということを明確に打ち出しているわけでございますので、是非是非具体的な、力強い、大変強い言葉の力をもってイスラエルに対して伝えていただきたいということを改めてお願いを申し上げたいと思います。そして、事なかれ主義じゃなくて、本当に格好いい日本の外交、はっきりと物を言う日本の外交というものを伝えていただきたいと思います。

 あと、時間がなくなってしまったので、途中は次回に回すかもしれないんですけれども、次に、大使館の新しいポストについて伺わせてください。

 経済広域担当官について、概要を教えてください。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣が外国出張をいたす際で、現地の日本企業の方々などと意見交換する場にも、海外拠点から第三国向けの輸出に取り組んでいる事例、あるいは現地企業と第三国市場で連携を進めている事例、こうしたお話が多く上がってきているわけでございます。

 こうした好事例を念頭に置きまして、日本企業と現地企業とのネットワーキングあるいはマッチング機会を積極的に提供していくとともに、第三国への輸出に向けましたハブ拠点の設置等の取組を支援していくということを考えております。

 その際に、現在多くの日本企業が広域の視点を持って戦略的に海外拠点を設置しているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、在外公館が企業側の事情、ニーズに柔軟に呼応できるように、今般新たに、個別の在外公館の担当地域を超えまして、経済広域担当官の設置を検討していくこととしたわけでございます。

 この経済広域担当官の設置を通じまして、個別の在外公館ごとの縦割りを打破するとともに、現地における様々な分野の情報、取組に横串を通して対応していきたい。こうしたことによって、スタートアップ企業を含めましてグローバルな活動を展開する日本企業を効果的にサポートできる体制を整えていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 済みません、時間がなくなってしまったので、質問の続きは次回やらせていただきたいというのと、あと、中国・モンゴル課の皆さん、せっかく質問の準備をしていただいたのに届かなくて、申し訳ありませんでした。こちらについても次回質問させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。終わります。

勝俣委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 今、日本は少子高齢化で、人口減少で、生産年齢人口も激減していて、さらに東京一極集中も加速化しているので、特に地方においては本当に深刻な状況になってきています。

 せっかくコロナも昨年、二類から五類に引き下げられて、いろいろな産業が動き始めている、インバウンドも堅調に推移している中で、しかし、そこに経済的需要があるのに供給が追いついていかない。また、二〇二四年問題と言われて、人手不足があらゆる分野で深刻化しているところでありますが、国はコロナ前から人手不足、労働力不足解消のために四つの柱を立てていたと承知しております。

 一つは、シニア層の活躍。定年制の延長とか、希望があればいつまでも働けるということをもっと推進していこう。あと、女性の社会進出。一頃日本のM字曲線と言われたものも解消しつつあるということで、これも一定の成果がある。あと、デジタル化やAI、ロボット化の推進によって省力化を図っていく。もう一つの柱が、外国人材の登用ということであります。

 ここに来て、特定技能の枠も拡充していく、そして、特定技能実習制度も育成就労という形に変えて、今までの課題を全部はまだ解決しない、でも前進はするなというのは私も確認しているところであります。

 ただ、国でも、外務省は外国人の社会統合という言葉を使っているんですけれども、括弧書きで多文化共生ということですが、僕は多文化共生の方がしっくりくる。社会統合というのは民族同化みたいなイメージを私は個人的には持っちゃうので。そういう意味ではないんですよ。でも、外務省のホームページでは、社会統合。多文化共生は括弧書きなんですよ。ほかの省庁、総務省は多文化共生にしているんです。本当は統一した方がいいんだけれども、世間的には僕は多文化共生を一番で使っていった方がいいと思います。これは提言で、答弁は要らないんですけれども。

 そこで、確実に外国人労働者が増えてくるということで、しっかりこれまで以上に多文化共生に力を入れなきゃいけないと思っています。

 その前段として、人手不足、人手不足と言っていますけれども、国として、外国人材登用ということではなくて、まず、人手不足を全体的な意味でどのように把握して深刻に捉えているのか。先ほど私は四本の柱を政府に先立って御紹介させてもらったけれども、この人手不足を全体としてどう捉えてどう対応しているのか、まずお聞きいたします。

浜地副大臣 お答えいたします。

 まず、厚生労働省として、現在の人手不足の実態を表すものとしましては、有効求人倍率が端的に表せるデータであると思っております。この有効求人倍率は、生産年齢人口が減少する中、人手不足に対して適切に対処するため、全国のハローワークを通じて求人、求職の動向を把握しているものでございます。

 具体的なものを少し言いますと、例えば、介護におきましては有効求人倍率は四・〇八倍、建設では五・二五倍、運輸では二・二四倍など、これは直近の令和六年二月のデータでございますけれども、有効求人倍率が二倍を大きく超える業種がございまして、このことが端的に人手不足の実態を厚生労働省として認識させていただいております。

 これに対する対策としまして、まずは働き方改革に取り組み、そして、女性、高齢者、また障害をお持ちの方も含め、全ての方の活躍を促進することが重要であると思っております。

 そのため、全国の主なハローワークに人材確保対策コーナーを設置しまして、企業の人材確保の支援にまず国内として取り組んでおります。その上で、なお不足する場合には、我が国の人手不足に対応して、外国人が経済社会の担い手となっていただきたい、また、なっているという実態があろうかと思っております。

 この外国人材につきましては、委員御指摘のとおり、特定技能制度が平成三十一年四月から施行されております。そして、御指摘のありました育成就労制度でございます。これまでの技能実習は国際貢献を目的としたわけでございますけれども、この度法案として提出しました育成就労制度につきましては、人材確保と人材育成の両方を目的として提出しているところでございます。

 いずれにしましても、外国人材につきましては、我が国が魅力ある働き先として選んでいただける、選ばれる国になるという視点に立って今後も取り組んでまいりたいと思っております。

小熊委員 丁寧な御答弁をありがとうございました。

 有効求人倍率が今問題があると浜地副大臣は認識していますか。二〇二〇年以降乖離があるんですよ。これを基にいろいろな労働政策とか景気動向とかにも反映していくわけじゃないですか。数値が間違っていたら政策を間違えますよね。何でこの乖離が出てきたのかというと、多様性で働き方が変わってきているということと、ハローワークを通じないで就職していく、職を見つけるというのが激増しているんですよね。

 先ほど介護は有効求人倍率が高いという話をしましたけれども、全体はざっくりと下がっているんですよ、去年の上四半期連続で。だけれども、日銀の短観を見ると逆ですよね。今までは、民間との数値とは違いがあっても、ハローワークを基にした有効求人倍率はほぼほぼトレンドは連動していたんだけれども、この数年逆になっているんです。

 指標の見直しが必要じゃないですか。ハローワークだけじゃなくて、もっと多様な働き方になっているし、正規雇用だけじゃなくて、短期の雇用、パートだけじゃなくてスポットだけの働き方も出てきているので、見直しを検討しませんか。有効求人倍率だけだと間違えますよ。実態と違うんです。全体でいうと有効求人倍率は下がったんですよ、去年の上四半期連続で。でも、皆さんだって地元で聞いて、人手は足りているよ、改善したなという話は聞かないじゃないですか。副大臣、どうぞ。

浜地副大臣 小熊先生の問題意識は私も理解するところでございます。

 まずは、先生が御指摘になりましたハローワークを通じて果たして人手不足の実態が正確に反映されているかどうかという問題意識についても、まずはそこから、ハローワークでの求人等の把握の仕方も含めて、しっかりと検討することが出発点だろうと思っております。

 当然、ほかの媒体を使っての就職、求職というのも私も認識しておるところでございますので、そうはいいましても、まずはハローワークを通じてということが厚生労働省としての正確なデータを出す上でのツールでございますので、そこがしっかりと機能しているかどうか、そこの検討から入りたいと思っております。

小熊委員 労働市場を正確に把握できなくなっちゃっているんですね、残念ながらここ数年においては。もう一回点検してみてください。正確な労働市場の把握がなければ労働政策を間違えますから。

 実際、全体的には有効求人倍率は下がっているんですよ、去年の上四半期連続で。そんなことじゃないですよね、実感として。もう一回見直してください、正確な労働市場の把握にどういう数値を使ったらいいのか。

 今、ハローワークを通して就職している人たち、職を見つけている人たちと、民間を通じてやっているものの乖離はありますからね。民間の方が断トツで多いですよ。こっちは増えている。ハローワークを通じる方が逆に少なくなった。この実態を見極めて、しっかりと今後、データを取るやり方、これでいったら労働政策を間違えますから。そこをまず指摘して、外国人材登用についての質問に入っていきます。

 こういう状況で、とにかく人手不足でありますが、外国人材登用に関しては、現地の国の入口は外務省が日本語教育とかを担って所管しています。日本に入ってくるときは法務省。入ってきてからは職種によっていろいろな省庁が関わっている。また、生活者としては市町村が関わるから、この支援をどうするかというのは総務省が関わって、多岐にチームワークでやっているわけですよね。だけれども、本当の監督は誰みたいになると、質問通告しても、それはうちじゃありません、うちで答えられませんとボールの投げ合いをしていて、この政策は大事なんだけれども、実は司令塔がいないんです。

 今後ともちゃんとしたチームワークを取れる司令塔をつくるべきだと思いますが、まず、改めて、これについて外務省としてはどういう役割を担っていて、外国人材登用は多分増えていきますから、更なる充実化をどういうふうに取り組んでいくのか、お聞きいたします。

上川国務大臣 まさに今、国境を越えて人が自由に移動できる時代になっているところであります。

 外務大臣として、私は今、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議が開催されているところでありますが、その一員として、外国人材の受入れ及び我が国で生活する外国人との共生社会の実現に向けまして、関係省庁と緊密な連携の下で関連の取組を進めてきているところであります。

 同会議では外国人との共生社会の実現に向けたロードマップが策定されているところでありますが、これに沿いまして、外務省として、第一に、国際交流基金を通じまして、来日前の外国人に対する日本語教育環境の整備、第二に、国際移住機関、IOMとの共催によります国際フォーラムを通じた啓発活動、第三に、JICAとの連携によります外国人、日本人の双方が共生社会の担い手となるような仕組みづくりに取り組んでいるところでございます。

 また、地方の魅力を世界に発信するプロジェクト等を通じまして、地方と世界各国の交流強化を図り、地方における多文化共生の環境整備にも努めているところでございます。

小熊委員 これからもっと拡大していくんですけれども、今までもいろいろな課題があって、それは雇主の問題だったり、来る人にも問題がなかったケースがないわけではないんですけれども、人数が増えるわけですから、いい話もいっぱい出てくるだろうし、問題点も数多く出てくると思います。

 私の地元のいろいろな地域の人とお話をすると、そんな問題があるのというのが、例えばごみ出し。教える企業があればそこの地域は問題が起きないんだけれども、その企業が教えていないと、ごみ出し一つで地域の人と外国の方がいざこざになって、お互い不幸なんですよ。日本はいい国だと思って来たんだけれども、冷たい。文句ばかり言われると。こっちも、外国人はいいなと思ったけれども、マナーがなっていないじゃないかと。そんなのは教えれば簡単なこと。でも、これが企業によって、地域によってばらつきがあるんですね。

 さっき言ったように、入口で、日本語学校で語学だけじゃなくてそういうオリエンテーションもやるべきだと思うんですよ。来てから教えていたら大変ですよ。一番最初の入口のところで、語学だけじゃなくて生活習慣とか、自治体によって違うから、総務省でもリーダーシップを発揮して市町村にこういうことをやってくださいよとやっているのを、現地の段階でこういうのを見て生活を覚えてくださいよとやった方がいい。

 あと、僕の地元では、スーパーが夕方にタイムセールをしているでしょう。低所得者とか年金生活の人たちが行って買っていたんだけれども、外国人が来たら、その時間に来て買えなくなった。でも、それでイメージが悪くなったりするのも、お互いに不幸だな。

 こういうことから出ているんですよ、現場としては。国としては、ざっくり、労働をどうするということである。

 大臣、日本語学校のところで、生活習慣とか基礎とか、あと、ポータルサイトがあるよ、これを見て現地の生活になじんでくださいねというのをやりませんか。日本語教育の中の一時間でも全然違うと思いますよ。ツールはあるんですよ。そこに行き着くところがそれぞれの努力に任されちゃっているから、日本語学校でそういうこともやりませんか。どうですか、大臣。

上川国務大臣 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議、まさに横断的な視点で、受入れから、生活をし、帰国する一連の流れをフォローしていく、寄り添っていくということについては、基本的な考えの中に盛り込まれているところであります。

 まさに委員御指摘のとおり、情報を活字で見るだけではなく、言語を通して理解していただくというのは非常に重要であると思っておりまして、今のようにオリエンテーションのようなタイプの日本語学習のテキストを用意すれば、日本語の習得と生活上の習得は一つになって習得できるということでありますので、そういった取組については、恐らくやっている状況であると思いますが、それにつきまして徹底していくことが必要かと思います。

 きめ細かなサポートと同時に、言語を通してサポートしていくということについて、二重の目的でこの点につきましては積極的に取り組んでいきたいと思います。

小熊委員 これから人数は増えていきますから、是非徹底してお願いします。

 実際、先ほど言ったように、生活者としてその地域に住むというときに市町村がどう関わるかなんですけれども、既にいろいろな機関でもデータが出ていますけれども、十人といったって、ちっちゃい町の十人と大きい町の十人ではインパクトは違うわけですね。人口比率でいうと、例えば、新宿区は在留外国人が多い市区町村の一つですけれども、新宿の人数の中でのインパクトと地方においてのインパクトは大きく違います、同じ百人でも、十人でも。となると、逆に、財政が決して豊かでない市町村ほど実は大変なんですね。サポートしていくといっても、財政によってもサポートの仕方が変わってきます。企業だけじゃなくて地域としての多文化共生ですから、溶け込んでいく上で市町村の役割というのは非常に大きい。

 総務省も多文化共生に取り組んでいるのは分かります、ホームページも拝見して。実態的には、日本語教室も開いてくださいよといったって、そんな余力もない。先立つものがないということです。実際、予算的な措置を含めて多文化共生をやっていかなきゃいけないんじゃないか。ある町によっては、三割ぐらい外国人がいるという町だって出現しているわけですよ。財政負担してあげないと支えられないですよ。

 多文化共生のための、外国人材の受入れのための財政負担も含めた市町村支援は国としてどうしますか。

馬場副大臣 お答えします。

 現状の説明になりますが、在留外国人が増加する中、御指摘のあった点も含めて、多文化共生を推進するためには、市町村が地域の実情に応じた施策に計画的かつ総合的に取り組むことが重要でありますので、総務省では、地方自治体における取組に資するよう、地域における多文化共生推進プランを平成十八年に策定し、令和二年には、在留外国人数の増加や入国管理制度の改正等の社会情勢の変化を踏まえ、改定を行いました。

 総務省としては、各自治体に対し、このプランを参考に、多文化共生の推進に係る指針、計画を策定するよう促すとともに、自治体の取組事例の収集、周知や、自治体の取組への地方財政措置を行っております。

 これに加え、特に災害時の情報伝達などについては、平成三十年度より、災害時外国人支援情報コーディネーターの育成などの支援を講じておるところであります。

 今後とも、関係府省と連携し、地方自治体に対し、国の施策や自治体の好事例に係る情報提供を行うとともに、必要な地方財政措置を講じるなど、地方自治体の取組を支援してまいりたいと存じます。

小熊委員 時間が来たので、門山法務副大臣には出番がなくて済みません。

 馬場副大臣、馬場さんは熊本で、熊本市は大都会だけれども、でも、県議会の議長もやったから、ちっちゃい町もあるわけでしょう。そういうところでやれといったって、なかなかしんどいところも分かるじゃないですか。これはきちっとやっていかなきゃいけないですから、これから増えていくわけですから、是非、更なる充実、財政支援を含めた検討をお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦でございます。

 質問に入る前に、冒頭、今朝方、台湾周辺で地震が発生いたしました。現地では建物が倒壊しているというような報告も受けておりますし、この委員会を見渡してみますと沖縄県出身の方が三人もいらっしゃるんですけれども、沖縄県にも津波が到達したということでございますので、国内においては、内閣としても情報を把握していただいて必要な措置を取っていただきたいと思いますし、台湾に対しても、申出があれば支援の手を差し伸べていただきたい。これは、これまで我が国の地震災害に対しても支援をいただいていますので、是非検討していただきたいと思います。

 発災から二時間しかたっておりませんので御答弁は求めませんけれども、何かあれば大臣からお言葉をいただければと思います。

上川国務大臣 三日、台湾東部を震源とする最大震度六強の地震が発生したものと承知しております。被害状況につきましては、今把握をしている状況でございます。(発言する者あり)

勝俣委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

勝俣委員長 速記を起こしてください。

 上川外務大臣。

上川国務大臣 三日、日本時間八時五十八分でありますが、台湾東部を震源とする最大震度六強の地震が発生したものと承知しております。

 今、被害状況について把握している最中でありまして、今のところ、現時点では邦人の被害には接していない。これは本当に緊急の状況の中での情報でありますが、一報ということでお伝えさせていただきたいと思います。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。急な質問で申し訳なかったんですが、災害ですので、事前の通告ができないことは御了承いただきたいと思います。引き続きこの点については、いろいろな支援等々も含めてこれから議論されると思いますので、折に触れてお願いしたいと思います。

 次に、事務的に確認だけさせていただきたいと思いますが、諸外国も含めて、原子力発電所から排出される物体ないし物質について、将来的な賠償制度を要求するような国際的な取決めだったり賠償の制度といったものがこの世界に存在するのか、まず確認させてください。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 近隣諸国を含む国内外の多くの原子力関連施設におきましては、それぞれの国やその地域の規制基準にのっとって、例えばトリチウムを含む液体廃棄物等を海洋等に排出しております。

 その上で、委員御指摘の、排出されるそういった処理水等に関しての将来に備えた近隣諸国に対する賠償制度がこれら原子力関連施設を運用する国で設定された事例があるとは承知しておりません。

鈴木(敦)委員 原子力発電所は世界中で使っているわけでございますし、我が国だけが特別なことをしているわけではありません。

 ALPS処理水の海洋放出について是非があることは承知しておりますけれども、先日、三月の報道では、中国から我が国の海洋放出に対して将来的な賠償制度の要求があったという報道がありました。仮にこれが事実であったとしたら、とんでもない話であります。不当でありますし、科学的根拠に基づかない要求ですから、これを受け入れることは断じてできないと思います。

 なぜこれを申し上げるかというと、今、外務大臣が持っておられるお力の源泉は国民の意思なんですよ。なぜなら、行政権は内閣にあると憲法に書かれています。内閣総理大臣は国会議員が指名して、総理大臣が各大臣を指名しています。つまり、皆さんは何段階かを含めて国民の力を体現する権限があるわけですね。

 ですから、我が国はこんな不当な要求は絶対に応じられない。それは日本国民全体がそうです。このような、科学的な根拠もなく、風評被害を世界に蔓延させるような行動は、我が国の国民は絶対に許せないということははっきり申し上げるべきだと思います。仮に本当にそんなことがあったんだとしたら、日本国は決して受け入れることはできないと毅然とした対応を取っていただくべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 ALPS処理水の海洋放出につきましては、まさにIAEAによります中立的、公平な関与を得つつ、科学的根拠に基づき、高い透明性を持って、その安全性について丁寧に説明していく姿勢を貫いてきております。これからもそうした姿勢を堅持してまいりたいと考えておりますし、これは中国に対しても例外ではございません。

 この姿勢の下で、委員御指摘の点も含めまして、日本側の立場につきましては、あらゆるチャネルを活用し、私自身もしっかり説明してきたところでありますが、ALPS処理水に係る中国側の科学的根拠に基づいた正しい理解が進むようしっかりと取り組むとともに、中国側に対し、何ら科学的根拠のない日本産の食品に対する輸入規制の即時撤廃を強く求めてまいります。

鈴木(敦)委員 日中間に諸懸案があることは承知していますし、皆さんもそれは分かっていると思います。だからこそ、大臣の所信でもおっしゃったように、主張すべきは主張するということは貫いていただかなきゃいけない。

 この後に触れますけれども、インドのジャイシャンカル外相と会談されたと思いますが、私もジャイシャンカル大臣の講演を拝聴いたしました。非常に示唆に富んだお話だったと思います。後々触れますから軽く言いますけれども、ジャイシャンカル大臣がおっしゃったのは、外交は自己満足ではいけないんだということです。国民の意思をしっかり体現していただきたい、このことを強く求めたいと思います。

 その上で、絡みますけれども、アフリカについてお伺いしたいと思います。

 日本もアフリカに対して様々な援助、支援をこれまでもしてきたと思いますけれども、これは日本だけではありません。欧米も含めたいろいろな国、中国もロシアもやっています。

 その上で、日本と中国の支援の在り方だとか姿勢についてどういう違いがあるのか、その日本の強みを明らかにしていただきたいと思います。

北村政府参考人 お答えいたします。

 まず、中国でございますけれども、中国は、中国・アフリカ運命共同体、こういう考え方を提唱しまして、一帯一路に関する取組を含めまして、途上国に対するインフラ投資等を進めております。ただし、一部のプロジェクトにおける遅延とか建設コストの増大、あるいは債務の持続可能性等の課題も指摘されていると承知しているところでございます。

 また、そもそも中国は、国際的な援助協調の場でありますOECD開発援助委員会、通称DACと呼んでおりますが、DACのメンバーではございませんので、国際的な基準にのっとった援助データの報告等は行っておりません。中国財政部は、いわゆる対外援助という費目あるいはデータというものを発表しておりますけれども、その範囲や対象国別の実績等の詳細な情報は明らかにはされておりません。

 一方で、日本でございますけれども、日本は、自助努力の後押し、社会的価値を共につくるいわゆる共創、あるいは、質の高い経済成長、人間の安全保障、こういった概念に重点を置いて開発協力を実施してきております。特に、対アフリカ協力につきましては、アフリカ自らが主導します開発をパートナーとしての日本が協力していく、そういうことを重視しておりまして、オーナーシップとパートナーシップという考え方の下に、一九九三年にTICADプロセスを立ち上げまして、特に人づくりに着目した取組を進めているところでございます。

 我が国は、開発協力における透明性あるいは適正性の確保、向上に努めつつ、アフリカ自身のニーズあるいはアジェンダに基づいた取組を地道に進めることで、これまでアフリカにおいて信頼を獲得してきたと考えているところでございます。

 今後ともこういう取組を着実に進めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 今おっしゃったことにかなり大部分が含まれていると思いますけれども、日本が大事にしてきたのは自助、あるいはアフリカの主導を後押しするというやり方です。それを一歩踏み込んで自分の国が主体となってやってしまったら、これは援助じゃないんですよ。勝手に造っているだけに近いです。

 今、これは過去の話かもしれませんけれども、ケニアで鉄道が敷設された。大変いいインフラ投資だと思いますけれども、運転手も中国人、運行会社も中国企業、これでは開発にならないんですよ。自助にならない。彼らが自分たちの力で鉄道を運用するようになることが本来の援助の在り方であるはずです。しかも、ケニアのナイロビの鉄道については採算レートに乗っていません。むしろ赤字が続いていて、このままだとどうなるか分からない。こういうことが繰り返されている。

 日本の場合はそういうことはありません。なのに、債務のわなと言われるものが度々議論に上るにもかかわらず、アフリカだけに限りませんけれども、なぜか中国の支援を受けたいという国が多いですね。かつ、中国の援助でこれを建てました、これを造りました、そういう話はたくさん聞いております。

 なぜこんなことが起こるんでしょうか。日本がやれば、あるいは欧米がやれば、自助で自分たちの手で運用するものを造ることができるのに、中国に頼んで中国が運用するような、あるいは採算にも乗らないような事業を進めなければならないのか。どのように分析されていらっしゃいますか。

上川国務大臣 アフリカにおいての状況ということで、対外債務全体に占めます対中債務の割合が大きい国が複数存在しておりまして、状況につきましては注視しているところでございます。

 これらの諸国は、感染症の世界的拡大やウクライナ危機といった国際情勢の影響を大きく受けております。そして、中国による借款等が資金需要を満たすための選択肢となってきたと理解しているところであります。これにより、一部のプロジェクトにおいて債務の持続可能性等の課題があるということで、様々な指摘がなされていることについては承知しているところであります。

 我が国のこれまでの取組ということで先ほど説明いたしたところでありますが、何といっても途上国の持続可能性を支える開発金融というところに力を置き、開放性や透明性、経済性、債務持続可能性等も考慮しながら行っていくということの重要性が高い、こういう考えの下で進めてきているところでございます。これまでも、様々な国際場裏におきまして、こうした国際ルールやスタンダードを遵守した透明で公正な開発金融の重要性を提起してきたところであります。

 その意味で、我が国におきまして、先ほど委員からも触れていただきましたが、アフリカ自らが主導していく、そこに協力するという姿勢、まさにオーナーシップとパートナーシップを合わせ技で進めていく、この精神の下で、特にTICADの大きな枠組みの中で、まさに自助をしていくための人づくりに大きな力を注いできたところであります。

 取組の一環といたしましては、世銀、IMFといった国際機関とも連携いたしまして、JICAを通じた技術協力により、透明で公正な開発金融に向けまして、アフリカ各国の債務管理能力の構築支援、こういった今非常に問題になっている課題につきましてもサポートしていこうということでございます。

 今後とも、まさに国際ルール、スタンダードの遵守と、そして、アフリカ自身がそうしたところの意識を持って持続可能な自立をしていくための努力ということをしっかりと把握しながらサポートし続けていくことが重要であると考えております。

鈴木(敦)委員 日本の姿勢は正しいと思うんです。自助を促すということは非常に正しいやり方だし、それに対して支援するやり方も我々は今までずっと正しかったと思っています。

 ただ、今大臣がおっしゃった、彼らアフリカ諸国が中国からのそういった援助を資金援助の方法として現在見出しているという状況そのもの、なぜこうなったのかということなんですよ。

 彼らに採算の合わない事業を依頼したり、鉄道もそうですし、港もそうです。シエラレオネだって空港の整備計画を白紙にしました。タンザニアも港の計画を白紙にしました。それは、これから先九十九年間租借させろとか、こういった要求があって、債務のわなに陥ると分かっているからお断りしたわけですよね。でも、分かっていながら、それでも資金調達を中国に頼まなければいけないという現状があるから彼らに頼んでいるわけですよね。

 ここを解決しない限り、恐らく、いろいろな基準や水準、規範がある日本型、OECD型の支援よりも、中国からの資金援助に頼りたいという国が増えるんじゃないですか。ここを解決しないといけないと思います。どうでしょうか。

上川国務大臣 解決のアプローチの仕方はいろいろある中にありまして、日本は、日本のやり方をこれまでの実績の上にしっかりと理解していただき、そして、パートナーシップの下で進めていく、持続可能なアプローチを推進していくという間違いのない姿勢をしっかりと相手に理解していただく。そして、それに伴って開発金融についてのフレームワークをしっかりと使っていただく。このための対話をこれからも、特に、アフリカにつきましては、人口減少の地球規模の動きの中で、アフリカだけは、二〇五〇年には世界人口の四分の一を占める、二十五億人という人口を占める巨大消費市場になるということでありますので、私も最後のフロンティアではないかと思うぐらい、この地域の自立していただきながら持続可能な発展につなげていくことに日本としての大きな可能性と同時に大きな役割がある、こんなふうに思っているところでございます。

 世界各国が様々なアプローチの仕方でアフリカの各国とつながっているわけでありますが、私は、日本は日本らしいアプローチを貫き通すことが長い目で見ると効果を発揮していくことができると思いますので、そのための外交努力については全力で取り組んでまいりたいと思っております。

 今、日本企業によりますアフリカ進出の促進におきまして、まさにアフリカの投資環境の透明性、予見可能性の向上は、進出する企業側にとりましても非常に高いニーズでございます。そして、アフリカ市場においての日本企業そのものの競争力を強化していくことが極めて重要であると考えておりまして、アフリカにおきましての在外公館の力を活用しつつ、官民一体となった取組を実施してきておりますし、また、それに向けて最大の力を注いでまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 独自路線を貫くというのはすごく力の要ることで、ライバルがどういう方針でやっているかを理解しないと、恐らく独自の方法というのはできないと思います。

 アフリカに限らず、どうしてグローバルサウスの国々が、中国の援助が危ないと思いながら受け入れるのかというのは、恐らく外務大臣の立場ではお答えできないと思いますけれども、今まで日本も含めて西側諸国が支援をするときに、ある一定の例えば民主化というものを求めてきたりとか、あるいは人権問題はこうですねとか、こういった規範をある程度枠にはめて、それにのっとった形の国に支援をするということで世界の民主化を図ってきた。

 中国は、つい先日、民主というフォーラムを開いて、中国が民主というのもあれですけれども、中国が民主というフォーラムを開いて、いろいろな民主の形がありますね、それは諸外国の事情とか歴史を踏まえた民主という在り方があるし、むしろ、民主化を推進し続けて国内を混乱させるぐらいだったら経済成長とか福祉を優先した方がいいんじゃないですか、こういうような民主の在り方を彼らは提言しているわけですから、広く受け入れられやすいですよね。アフリカからしたら、自分たちの問題は解決しなくても中国は助けてくれる、こういうことになればやりやすいということですから、日本が独自のやり方をするのであれば、中国独自のやり方はこうなんだということをしっかり分析して、その上で独自路線を歩んでいくという方針でいっていただきたいと思います。

 今ほど日系企業の話がありましたけれども、これは委員会で言わないようにしようと思っていたんですけれども、あえて申し上げます。TICADで二百億ドルの支援をします、三百億ドル規模の支援をします、拠出しますと言っていますけれども、純増じゃないですよね。二百億ドル投資が増えたかもしれないけれども、その分撤退している企業もあったりして、実質そんなに純増しているわけではない。これはいつまでもできることじゃないですよ。だから、来年TICADが横浜でありますけれども、それに向けて国内でもいろいろ話をしなきゃいけないと思います。

 でも、今、OECDの枠組みに日本がとらわれたままで、加えて、こういう経済支援の規模の実態があるということを踏まえると、そろそろ観点を変えないと正しい方向に導いていけない。独自路線が正しいかどうかを常に考えなきゃいけないと私は思いますけれども、今のTICADの話も含めて、上川大臣、今後独自路線でいくという方針の肉づけをしていただけますか。

上川国務大臣 企業側の進出を後押ししていく中におきまして、アフリカの成長に対しての期待感というものも企業側から大変寄せていただいているところであります。私も、アフリカの各国の代表、カウンターとお話をする機会がたくさんございますが、日本に対しては大変期待感が大きい。その部分については、これまで取り組んできたオーナーシップとパートナーシップの連携の中での持続可能な開発金融あるいは様々な技術協力が高い評価を得ていることについては、私は自信を持っていいと思っております。

 もちろん、選ぶのは相手の国あるいはその地域で活動していらっしゃる方でありますが、その方々から日本の企業に対しましても日本の政府に対しましても大変高い期待感が寄せられている。これは事実でございますので、そうしたベースを基に、これから先のアフリカの発展に日本としても貢献できるフレームワークにのっとって進めてまいりたいと思っております。

 一例を申し上げたいと思いますが、官民合同ミッションの派遣は二十五か国に及んでおります。そして、ビジネス環境改善委員会は十二か国で設置している状況でございます。また、昨年はアンゴラと八月に投資協定を署名いたしました。また、オンラインのビジネス対話につきましても、日本企業と第三国の企業が連携促進しながら、それぞれの持ち味、強みを生かした形で連携して展開していく、ここについても大変高いニーズがございます。

 こういったことをよく評価、検証しながら、そして、力強く進めていくためのフレームワークと新たな取組ということについては、絶えず、TICADの成功に向けて、また、それが次なる展開になりますので、日本としての外交の大きな柱の取組としてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 今ほど御説明いただいた官民共同ミッションだとか、第三国経由で連携しているようなパターンもあると思います。これは数字に表れないので分かりづらいんだと思うんですけれども、ODAでインフラを整備したりすることについては日本は大分奏功していると思いますが、こういった政策をもっと分かりやすく広くアプローチを広げていただかないと、民間セクターからの投資がなかなか進んでいかない。諸外国は、そういうところに対する投資意欲というか考え方が違うので、すぐに動きますよね。日本がちゅうちょしている間に外国が先に入ってしまうということも考えられるので、スピード感を持ってここの点については広げていただきたいということをお願いしたいと思います。

 この点については次の質問にも関連します。次はインドについて伺います。

 先ほどジャイシャンカル外相の話をさせていただきましたけれども、あらましはプレスリリース等々で承知しておりますが、その中で、特に上川大臣としてジャイシャンカル外相との話の中で印象強かった日印関係の強化という部分の議題、ないし解決するべき諸懸案があれば御披露いただきたいと思います。

上川国務大臣 まず、インドでございますが、我が国と基本的価値と戦略的利益を共有する特別戦略的グローバルパートナーということでございます。まさに対話と協働を通じまして新たな解決策を共につくり出すという共創が求められている今日におきまして、インドとの関係は、インドがグローバルサウスの代表格の国であるとともに、多様性を抱えながら独自の民主主義の歴史を築いてきたということでありまして、関係の構築、さらに強化ということについては極めて重要であると認識しているところであります。

 こうした認識の下におきまして、先般、三月でありますけれども、ジャイシャンカル外相が日本に来られまして、まさに十六回目となる日印外相間の戦略対話を行ったところでございます。

 この対話におきましては、予想を超えた時間を費やさせていただくぐらい話が非常に多岐にわたりまして、二国間の関係のみならず、先ほどの第三国との関係、アフリカとの関係も含めましていろいろな課題に及んだということでありまして、私自身は、こうした会合を更に頻繁に行っていきたいと思うぐらい非常によい会談だったと思っているところでございます。

 特に、まず、自由で開かれたインド太平洋、このことにつきましては、この実現に向けて一層協力していくことを確認いたしました。また、その協力の基盤となりますのは何といっても二国間の協力ということでありますので、その更なる深化のための取組につきましても議論したところでございます。

 そして、こうした議論も踏まえまして、日印間の連携の分野につきましても、今後、防衛や安全保障分野、そして、経済分野はもちろん、人的交流の分野等、幅広い分野におきまして連携をより一層強化していこうということにつきましても大きな議論が起こったところであります。

 具体的に少し申し上げますと、宇宙、サイバー等の新たな領域におきましての協力でありますとか、対印の官民投融資五兆円目標の達成、そして、第三国における開発協力の連携、さらには、日印の観光交流年を延長しようということにおきまして、積極的な取組について意見交換したところでございます。

 ジャイシャンカル外務大臣とは、昨年九月の国連の総会におきましても、安保理改革を含めますメンバーの一つということでお会いしたところでありますが、今回、二国間関係、あるいは国際的な展開、さらに国際場裏におきましての協力ということについてもしっかりと意見交換をすることができました。これからも緊密に連携しながら、一層の発展に尽力してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 二国間の協力のお話については幾つか質問がありますので、二つに分けますけれども、まず、民間企業の進出についてでございます。

 ジャイシャンカル外相もおっしゃっていましたけれども、日本企業は慎重過ぎるというような趣旨の御発言があったと承知していますけれども、慎重過ぎるというよりは、企業の皆さんと意見交換をすると、情報がそもそもないんですよ。いろいろなセクターの話、報告書なり提言なりいろいろあるんですけれども、どうしても核心的部分の情報が少ない。だから、つまり現地の情報がないということですね。恐らく政府としては、外務省、在外公館を通して内政の話だとか法的な規制の話だとかは政府にはあるんでしょうけれども、民間に全く落ちていない。だから入っていかないんですね。

 一方で、入っている企業は入っているんです。例えば、今、インドは建設ラッシュでいろいろなものを造っていますけれども、私は毎週インド大使館に行っていますからあれですけれども、大使に言われたのは、インド国内で使っているクレーンの大半は日本製だと。ということは、日本のクレーンの企業は進出できているということですね。それに加えて、例えば、すごく分かりやすい話だと包丁ですね。日本の包丁はすごく切れるという話があって、すごく受け入れられているという話もありましたけれども、一方で、企業がだあっと進出しているかというと、そういう実態にもないわけです。

 実際、現地にいていただく外務省というのは一番情報を持っているわけですから、もうちょっと国内向けに開示できる部分は開示していただいて、企業が入りやすい下地をつくっていただくということをしないと、外国から見たら日本は慎重過ぎるんじゃないかという意見に総括されてしまうので、国内の状況を分析して民間に流すということを外務省としてもやっていただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。

上川国務大臣 まさに、新しい経済外交のフロンティアを開いていく、この方針で今動いているところでありますが、官民連携の形も新たな時代の要請に応えて変化させる必要があると認識しているところであります。その意味で、経済界とも緊密に連携しながら、オール・ジャパンでの取組が重要と考えているところであります。

 委員が御指摘いただきました日本企業によるインドへの進出の促進でございますが、政府といたしましては、インドにおける投資、ビジネス環境整備に積極的に取り組んでいるところでございます。

 具体的に申し上げますと、例えば、現地のインド日本商工会がインド政府に提出した提言がございまして、それにつきましては、大使館としてもインド政府との間で定期協議の場を設けまして議論しているところでございます。

 加えて、先月の日印外相間の戦略対話の機会も含めまして、ハイレベルの接点におきましても、インド側にビジネス環境そのものの改善、整備についての実施も、具体的な要請を受けた形でそれを申し入れているところでございます。

 日印間におきましては、先ほど申し上げたところでありますが、何といっても大使館が極めて重要な役割を果たす。その意味では、国を越えた広域の経済的な活動を支援していくということのアプローチの仕方が私は大事であると思っておりまして、まさにインドと連携しながら例えばアフリカに進出していく、こういったことを通して、よりパワーアップした形でまさにオーナーシップとパートナーシップを発揮していく、こういう中でスキームを新たにしてまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

 今後、経済界の要望をしっかりと踏まえるということ、同時に、情報をしっかりと提供するということ、そして、インド自身が非常に豊富な人材がございますので、この高度人材の取り込みも含めまして、目下、GX、DXの新しい分野におきましては協力が発展していく余地が非常に大きいということであります。それは、先進国であるからとか途上国であるからとかいう問題ではなく、どの国にも重要なことであると認識しておりますので、そういった分野についても果敢にチャレンジしていただくことができるような環境整備については、しっかりとその役割を外務省としても果たしてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 こういったオペレーションはかなり高度なものになると思います。第三国連携みたいなことまで含めて外務省でやっていただくとすごく複雑になると思いますけれども、これを戦略的にやっていくからこそ我が国の国際競争力は上がっていくと思いますし、外国への進出企業も増えていく。返ってくれば日本の国益にかなうことですから、難しいと思いますし、大変だと思いますけれども、新しいやり方をいろいろ模索していただいて推進していただきたい、このように思います。

 日本とインドの間にはもう一個大きなプロジェクトがありまして、これは四年ほど話が止まっております。コロナがあったので仕方がないと思いますけれども、日印の原子力協定についてでございます。

 昨年、日印フォーラムがニューデリーで開催されて、私もエネルギー関連のパネリストで出席いたしましたけれども、インドの国内のエネルギーミックスは日本とほとんど変わらないので、石炭がインドは多いですけれどもほとんど変わらないので、原子力については一定程度頼らなきゃいけないというのが彼らの考え方でした。

 水素にシフトするかしないかみたいな話も議論になったんですけれども、水素に完璧にインフラを合わせる余裕がないというのが彼らの本音です。なので、水素モビリティーは確かに造ります、タタも造っていますけれども、それが全て置き換わることは恐らく難しいだろうなという彼らの考え方があります。日本も同じですよね。だから、水素とEVの両輪でやっています。

 プラスアルファで、インドはエネルギー関連の外交については非常にうまくやっているので、ロシアからも石油を買っていますし、日本はそれをやめていますけれども、こういう事情もあるので、日本とインドの間でエネルギーを両国で解決しましょうねということが言える下地は既にできているんです。できているんですけれども、四年前までに三回会合を開いて、それ以降議論が止まっていて、課題は二つ積み残ったままになっています。まず事務的に御説明ください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御指摘がありましたとおり、原子力分野につきましては、インドとの間で原子力協力に関する作業部会を実施しているところでございます。

 具体的に申しますと、二〇一八年から始まりまして、二〇一八年に二回、それから第三回目を二〇二〇年に開催したものでございます。それ以降開催していないのは事実でございます。

 インドとの作業部会の中身につきましては、外交上のやり取りであるため、明らかにすることは差し控えたいと思いますけれども、これまでのやり取りを踏まえまして、関係省庁とも連携の上、インド側とも意思疎通を図っていきたいと考えているところでございます。

鈴木(敦)委員 先ほども言いましたけれども、私は毎週のようにインド大使館に行っているので、インド大使館に今原子力の専門家がいるのを知っていますよね。あの方と何度かお話をしてきましたよ。外務省は表に出しませんと言うけれども、彼らは全部教えてくれましたよ。なぜこれを表に出さないのか全然理解できません。

 サプライヤーに対する求償権の問題ですよね。どこまで損害賠償が広がるかという部分について、インドの国内法と国際協定の間に差がありますよねというところまでで終わっていますよね。それ以降、日本国内で四年間議論がなされていないというのが事実ですよね。確認してください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がありました原子力賠償についての点でございますけれども、原子力賠償については、国際的には電力事業者への責任集中が一般的という中で、メーカー、サプライヤーが直接訴えられることはないというふうに承知しております。

 一方で、御指摘がありましたように、インドでは、二〇一〇年に成立したインド原子力賠償法におきまして、明らかな、また隠れた瑕疵のある設備や標準以下のサービスによる原子力事故が発生した場合は、メーカー、サプライヤーへの求償、すなわち補償することが可能になっていると承知しているところでございます。

 そういうことも含めて、様々インド側と議論しているところでございます。

鈴木(敦)委員 今ほどおっしゃったインド国内法の内容は、国際条約にも同じ内容が書いてありますよ。もうちょっと踏み込んだ内容がインド国内法に書いてあるからそれはのめませんねと言っているだけであって、情報交換してもう一回すり合わせをするべきだと思いますよ。

 ここから先は外務省の仕事ですよ。ここについてはこういう考えがある、でも、結局、日本とインドの間で原子力協力していきましょうよと。これは、日本が原子力発電所を向こうに造るという話だけじゃないですよ。どういう形の安全な新しいエネルギーをつくっていこうか、こういう部分もその下地になるわけじゃないですか。

 だから、外務大臣にはこの交渉をしていただきたいんです。決して日本の利益だけを考えたことではないんです。日本とインドの技術力とマンパワーで新しいものを造りましょうよということを申し上げている。このための交渉を是非していただきたいと思いますけれども、大臣、お願いします。

上川国務大臣 今委員が御指摘いただきました原子力の分野においてということでございますが、日本企業は豊富な実績がございますし、また、我が国の原子力技術に対します期待は各国からも実は寄せられている状況でございます。

 こうした認識の下におきまして、日印間におきましては原子力協定に関する作業部会を実施してきた。この経緯につきましては、先ほどのお話のとおりでございます。同作業部会でのやり取りも踏まえまして、関係省庁とよく連携した上でということで今進めているところでございますが、インド側とも意思疎通をしっかりと図ってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ジャイシャンカル外相とは人間関係がおできになっていると思いますから、ここは胸襟を開いて議論を進めていただければということをお願い申し上げます。

 最後になりますけれども、少しエリアが飛びまして、ヨーロッパについて伺います。

 つい先日、ヨーロッパのEU理事会で、新しいプラスチック規制について政治的な合意がなされました。これ自体は二年前から議論があって、どういう内容なのかは事前に分かっていたものであります。それからの間、飲物の包装紙、ボトルまでリサイクルを可能にする、しないという議論がずっとあって、これは一部のロビイストの活動でなくなっていることなので日本酒については回避されましたけれども、これから先、二〇三〇年までに、食品の個包装に使われる多層プラスチック素材は、原則リサイクルできるものにしてくださいということになります。

 でも、多層プラスチックは分離できないんですよ。リサイクルができない。だから、このままいくと、二〇三〇年までにヨーロッパで真空パックだとかレトルト食品だとかカップラーメンも売れなくなるかもしれないということになっています。

 食品に触れるプラスチックの話ですから農水省に伺いますけれども、この規制について、現状、私の認識が正しいかどうか、それから、今後どういう展望を持っていらっしゃるか、御説明願います。

坂政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、先月三月四日、欧州委員会、EU理事会及び欧州議会による三者協議が開催されまして、その場において、包装及び包装廃棄物の規則案について暫定合意がなされたという発表があったと承知しております。現在の規則案が正式に合意されることになれば、EU向けの日本産の食品、農林水産物の輸出にも影響を与える可能性がございます。

 このため、過度の規制を行うことは食品の安全性、保存性を損ねることにつながることを関係当局、EU加盟国に働きかけるとともに、EUの規則案について、現状及び今後の展望について国内事業者に情報発信することを通じまして、包装資材メーカー等による代替資材の研究開発を促していくことにしております。

鈴木(敦)委員 まだ正式合意ではないので時間はありますけれども、それでも五年か十年ぐらいしかないんです。

 まず、大前提として、ヨーロッパは、プラスチックの規制をしたところで、陸続きなので保存期間についてそこまで考えなくていいかもしれませんけれども、日本から送るものは船荷なので保存期間が長期にわたりますから、同じ土台で勝負できないんですよ、そもそも論として。だから、今農水省さんが素材開発とかあるいはいろいろなことを考えていらっしゃると思いますけれども、それはプランBとして考えるべきです。

 まず、プランAでは、外務省が外交努力で、この多層プラスチックは分離はできるんだけれども、何%残っちゃいますよというところまで認めてくれということを交渉していっていただかないと、日本はヨーロッパとは勝負できないんですよ。

 なので、外務省、外務大臣ですけれども、ヨーロッパとはいろいろとチャンネルをお持ちだと思うので、この点については、今もやっていると思いますけれども、引き続きプラスチックの規制についてはお話をしていただかなきゃいけないと思います。これはあくまで一点目。

 それで、日本が最も下手なのがプランBを考えることですけれども、プランBについては今農水省さんが考えていただいているので、まずプランAの部分を外務省として進めていただきたいと思いますけれども、いかがですか。

上川国務大臣 御指摘のEUの規則案に関しましては、欧州委員会が包装のリサイクル、再利用の促進や廃棄の削減を目的として提案しているものでありまして、委員が御紹介いただきましたとおり、三月四日には欧州委員会、EU理事会及び欧州議会におきまして暫定合意がなされたと承知しております。現在、欧州議会におけるプロセスが進行中であると承知しております。

 我が国といたしましては、EUの関係当局に対しまして、これまでも日本産の食品の輸出が困難になることがないように働きかけを行ってまいりました。引き続き、関係省庁とよく連携して、政府一丸となってEUの関係当局等の関係者に働きかけをしてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 利害関係があると思いますけれども、よろしくお願いします。

 終わります。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、先月二十五日、国連安保理で理事国十五か国のうちアメリカを除く十四か国の賛成多数で採択されたガザ地区でのラマダン期間中の即時停戦を求める決議について、上川大臣の認識をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 ガザ情勢をめぐりまして、日本時間の三月二十五日でありますが、国連の安保理におきまして、ラマダン期間中の即時停戦や全ての人質の即時無条件の解放を求める等の内容の安保理非常任理事国提案によります決議二七二八号でありますが、採択に付されたところであります。

 我が国といたしまして、ガザをめぐる危機的な人道状況を引き続き深刻に懸念しております。人道支援活動が可能な環境を確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦が速やかに実現し、そして、持続可能な停戦が実現することを目指して、この間尽力してきたところであります。

 このような基本的な立場に鑑みまして、我が国は、本件決議案の共同の起草国として理事国内の議論、調整にも積極的に取り組み、本決議案には賛成票を投じたものでございます。その結果、同決議案が賛成多数で採択されたことにつきましては歓迎をいたしているところであります。

 我が国といたしましては、引き続き、状況の改善のために何が現実的なアプローチかという観点から、関係国への働きかけ等の外交努力につきましては積極的に、粘り強く行っていくという方針を貫き、全ての当事者につきましては、国際人道法を含みます国際法の遵守、関連の安保理決議に基づく誠実な行動をしっかりと求めてまいりたいと考えております。

穀田委員 国連安保理が即時停戦を求める決議を採択したのは、昨年十月にハマス、イスラエルの間の戦闘が始まって以来初めてのことであります。ラマダン期間中との限定はあるものの、ジェノサイドを一刻も早くやめよという世界の運動と世論による重要な前進と考えます。

 上川大臣は昨日ようやくUNRWAへの資金拠出の再開を表明されたが、先ほど来他の委員からも質問がございました。これも、人道支援の提供に対する全ての障壁の撤廃を求めた今回の決議の共同起草国として、今お話がありましたけれども、当然行うべき責務だと考えます。

 イスラエルは、安保理決議が採択された後もこれを無視し、連日ガザへの空爆を続けています。決議に棄権したアメリカも、イスラエルに戦闘機や弾薬など百八十億ドル、何と日本円で二兆七千億円相当の売却を承認すると報じられています。

 上川大臣、国連憲章第二十五条は、安保理の決定について、国連加盟国は、この憲章に従って受諾し、かつ履行することに同意すると規定しておりますが、そうですね。

上川国務大臣 委員おっしゃったとおり、国連憲章第二十五条でありますが、「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従つて受諾し且つ履行することに同意する。」と規定しているところであります。

穀田委員 今大臣がお読みになった国連憲章第二十五条、国連安保理の決議には法的拘束力があり、国連加盟国はその決議を履行する義務があるということであります。しかし、イスラエルは決議を無視し、アメリカも、国連大使が決議には拘束力がないなどと述べて、イスラエルへの軍事支援を続ける姿勢を崩しておりません。先ほどお話があったように、外交努力を積極的に続けていくというのであれば、安保理決議に基づき、イスラエルとアメリカに対して、これ以上の蛮行とそれへの加担は許されないと正面から履行を迫るべきだ、そのことを強く求めておきたいと思います。

 次に、陸上自衛隊の幹部らによる靖国神社への集団参拝問題について、鬼木防衛副大臣に質問します。

 この問題をめぐっては、今年一月、陸上幕僚監部の小林副長ら航空事故調査委員会のメンバーが実施計画を作成した上で靖国神社を集団参拝したことが明らかになり、防衛省は、宗教施設への部隊参拝を禁じた一九七四年の事務次官通達に違反する疑いがあるとして、木原防衛大臣の責任の下、内局の人事教育局が事実関係の調査を行いました。

 ところが、二月十三日の予算委員会で私が調査結果についてただした際、木原大臣は、「全員が」「休暇を取得し、玉串料を私費で支払った私的参拝」で、実施計画についても「私的文書として作成をされたもの」だと述べ、事務次官通達が禁じた部隊参拝ではないとの認識を示しました。

 そこで、改めて鬼木副大臣に伺いたい。

 配付資料の一枚目、二枚目は、私の資料要求に対して防衛省が提出した実施計画のうちの一部であります。これを見ると、例えば、実施計画の表紙に令和六年一月十日とある日付の下、この箇所が塗り潰されている。ここを隠した理由は何ですか。

鬼木副大臣 お答えいたします。

 本件は、私的参拝という隊員個人の信教の自由に基づく行動に関わるものであるところ、隊員が特定され得る情報については、憲法二十条第一項により隊員個人に保障されている信教の自由を侵害するおそれがあることから、極めて慎重に取り扱うべきであると考えました。

 このため、資料の提出に当たりましては、記載内容を精査した上で、資料を作成した者の所属部署など、靖国神社を参拝した隊員が特定されるおそれがある情報などを不開示とさせていただいたところであります。

穀田委員 今の答弁は、小林副長らの行動があくまでも私的参拝という前提に立ったものであります。しかし、実施計画には、航空事故調査委員会の委員長を務める小林副長が委員会を代表して記帳することなど、組織として参拝を行う要領が定められています。

 私は、予算委員会の質疑で、この実施計画は私的文書として作成されたものではなく、陸上幕僚監部の装備計画部が公務として作成した疑いがあると指摘しました。この表紙の黒塗りされた部分には、まさに装備計画部と書かれているのではないか。イエスかノーか、簡潔に、明確に答弁いただきたい。

鬼木副大臣 陸幕副長等の参拝につきましては、参加者全員が各々の自由意思に基づく私的参拝と認識した上で、休暇を取得し、玉串料を私費で支払った私的参拝であります。

 御指摘の不開示箇所につきましては、参拝の案内の幹事役が自らの所属部署を便宜的に記載したものでありますが、いずれにせよ、当該所属部署の記載をもって陸上自衛隊が部隊参拝を行ったと評価されるものではありません。

穀田委員 話が苦しいね。せやけど、どう考えたかて、これで個人の名前が特定できるか。見たかて誰もそんなん思えへんよ。だから、事は隊員個人の信教の自由の問題じゃないんですよ。憲法の政教分離原則に反する行動なのかどうか、事務次官通達に違反する部隊参拝なのかどうかという問題なんですよ。

 この表紙の黒塗りされた箇所に装備計画部と明記されているとすれば、実施計画は私的文書として作成されたのではなくて、航空事故調査委員会の庶務を担当する部署が公務として作成したことになる。しかし、その有無を正面から答えようとしない。極めて不誠実な態度だと思います。

 私は、黒塗りが外れた実施計画の表紙の写しを入手しました。これです。これを見ると、令和六年一月十日とある日付の下に、装備計画部とはっきり書かれています。

 鬼木副大臣は、私がこの資料を示さずとも、こうした記載があることは、本来、見ているわけだから知っているんですよ。だから、隠さずに認めるべきではありませんか。

鬼木副大臣 御提示の資料につきましては、少なくとも、防衛省としてこれまで公表した資料であるとは承知しておりません。どういった経緯によって入手されたものか明らかでない限り、当該資料の性質や位置づけについてお答えすることは困難でございます。

穀田委員 相変わらずの答弁で情けないなと思うんですけれども、これだけ示しているんだから、笑ってはりますけれども、要するに、装備計画部と記載されていることは否定できないということなんですよね。

 この記載からも明らかなように、実施計画は私的文書として作成されたものではなく、まさに航空事故調査委員会の庶務を担当する装備計画部が公務として作成したもので、小林副長らの行動は、私的参拝ではなく、調査委員会の組織として行われた、まさに事務次官通達違反の部隊参拝ということであります。

 この事実を隠し、私的参拝だったなどと国会と国民を欺く調査結果を公表した木原大臣、防衛省の責任は極めて重いと言わなければなりません。

 更に伺いたい。

 配付資料の三枚目から五枚目、これは、私の資料要求に対して防衛省が提出した一月九日付の「令和六年の年頭航空安全祈願ロジ」と題する文書のうちの一部であります。この文書を防衛省が保管していた理由は何ですか。

鬼木副大臣 一月九日付の「令和六年の年頭航空安全祈願ロジ」は、参拝の案内の幹事役が、有志による参拝のため、私的に作成したものでありますが、爾後、陸上幕僚監部内の共有のために取得され、危機管理のために参拝参加者の所在場所等を共有するという目的で陸上幕僚監部内に組織的に共有されていた。そのことをもって行政文書となり、保管されていたものであります。

穀田委員 この文書も、ロジの方ですね、実施計画と同じく陸上幕僚長に報告されたもので、今お話があったように、行政文書として保管されていたということであります。

 文書には、実施計画に基づいて、実際に参拝を行った一月九日当日の行動が細かく定められています。内局人事教育局の見解が記載されて、そこには、「私人としての参列については、以下の要件を満たす必要がある。」と、六つの要件が列記されています。何と書かれているか、御紹介いただきたいと思います。

鬼木副大臣 御指摘の六つの要件については、一、記帳に関して、職名、肩書を記載しない。二、玉串料等については、私費で支弁する。三、官用車の使用を控える。四、随行者はつけない。五、職務専念義務との関係から、休暇を取る。六、制服の着用は可能であるが、礼服を避けると記載されております。

穀田委員 これで皆さんよう分かったと思います。防衛省からの文書回答では、この記載は、過去に陸上幕僚監部の担当者が人事教育局の担当者から聴取したと認識している内容を取りまとめたものだということでありました。この人事教育局の見解に基づけば、六つありましたわな、参拝を私的参拝とするには今の六つの要件全てを満たす必要がある。一つでも反すれば私的参拝とはみなされない。

 しかし、小林副長らは、参拝当日、公用車を使用し、勤務員を随行させていたわけで、要件の三番目と四番目に明らかに反している。したがって、あなた方の文書によっても小林副長らの行動は私的参拝とは認められない。明確な部隊参拝、事務次官通達違反ではありませんか。

鬼木副大臣 御指摘の記載は、陸上幕僚監部の担当者が人事教育局の担当者から聴取したと認識している内容を取りまとめたものであります。これは、防衛省・自衛隊として正式に取りまとめたもの、オーソライズされた内容ではないということでございます。

穀田委員 私は最初から言いましたやん。過去に聴取したと認識している内容を取りまとめたものだと言ってから言うたわけで、それをもう一遍言うたかて、それの反論になりませんで。

 要するに、人事教育局から聴取した事実もないのに、陸上幕僚監部が勝手な思い込みで人事教育局の見解として取りまとめ、陸上幕僚長に報告したということになるんですか。

鬼木副大臣 陸上幕僚監部の担当者は、聞き取りをしてこういうことを言っていたと認識してここに書いたのかもしれませんが、それは防衛省・自衛隊として、これを満たせばよい、これを満たさなければいけないと正式に決まったもの、オーソライズされたものではないということであります。

穀田委員 正式に決まったものではないが存在していて、遵守しなければならないということはある、こういうことですな。

鬼木副大臣 陸幕としては、部隊参拝に当たらないように事前に十分配慮したのだと思います。そうならないためにはどういうことに注意したらいいですかということを聞き取って、それを彼らが紙に落としたということであります。

 あくまで彼らの本意は、有志による私的参拝、それを踏み外さないようにきちんとやろうとしたということだと思います。それが残っているということだと思います。

穀田委員 いろいろ言うてはりますけれども、要するに、こういう項目からしたら全然外れている。この基準からしたら私的参拝じゃないということは誰が見ても明らかだと思うんですね。小林副長らは、公用車を使用し、勤務員を随行させるという参拝が、公にされている私が示したこの文書でも私的参拝の要件は満たさない、部隊参拝に当たることを十分認識した上で参拝を行ったということだと私は思います。

 問題は、何で靖国かという問題なんですよね。こういう点でいうと、靖国神社とは何かという問題をはっきりさせなあかんと私は思います。

 戦前は、はっきり言って、天皇制政府と軍部は、天皇への忠義を尽くして戦死し、靖国の英霊になることを最大の美徳として宣伝し、靖国神社を侵略戦争に国民全体を動員するための精神的な支柱として持ち上げた。今はどうか。靖国神社は、過去の日本の侵略戦争を自存自衛、アジア解放の正義の戦争とするということを自らの立脚点に置いている特殊な神社であります。

 ですから、こういう一連のことを考えますと、今お話がありました事実関係の調査を担当した人事教育局も、私的参拝の要件を満たさないということを知りながら事務次官通達に違反しないとする調査結果をまとめ、木原大臣はそれを自らの責任で公表した。お手盛りの調査以外の何物でもない。

 小林副長らの行動は事務次官通達違反の部隊参拝であることはいよいよ明白だ。防衛省は、私的参拝とした調査結果を撤回し、調査をやり直すべきだ、そのことを強く求め、誰が見ても当たり前のことを要求して、終わります。

     ――――◇―――――

勝俣委員長 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣上川陽子君。

    ―――――――――――――

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 ただいま議題となりました三件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和五年八月九日に協定の署名が行われました。

 この協定は、アンゴラとの間で、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資の自由化、促進及び保護に関する法的枠組みについて定めるものです。

 この協定の締結は、投資環境の整備を促すとともに、両国間の経済関係の更なる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和五年十一月一日に条約の署名が行われました。

 この条約は、ギリシャとの間で、二重課税の除去を目的として、投資所得に対する源泉地国課税の減免等について定めるものです。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、ギリシャとの間での課税権の調整が効果的に行われることとなり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件は、令和六年一月三十一日に議定書の署名が行われました。

 この議定書は、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定に、情報の電子的手段による国境を越える移転及び個人情報の保護に関する規定を追加するための改正等について定めるものです。

 この議定書の締結により、欧州連合との間で、情報の電子的手段による国境を越える移転が促進され、経済関係が一層強化されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

勝俣委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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