衆議院

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第6号 令和6年4月5日(金曜日)

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令和六年四月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      尾身 朝子君    黄川田仁志君

      高村 正大君    塩谷  立君

      島尻安伊子君    高木  啓君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    古川 直季君

      穂坂  泰君    宮路 拓馬君

      保岡 宏武君    小熊 慎司君

      佐藤 公治君    松原  仁君

      鈴木  敦君    徳永 久志君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   総務副大臣        馬場 成志君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   経済産業副大臣      岩田 和親君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   外務大臣政務官      穂坂  泰君

   防衛大臣政務官      松本  尚君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 千代延晃平君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡野結城子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官)           松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       堀内 俊彦君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片平  聡君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           杉浦 正俊君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            坂本 大祐君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     保岡 宏武君

  武井 俊輔君     尾身 朝子君

  穂坂  泰君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     古川 直季君

  高木  啓君     穂坂  泰君

  保岡 宏武君     黄川田仁志君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 直季君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官金井正彰君、大臣官房審議官岡野結城子君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官松尾裕敬君、大臣官房参事官門脇仁一君、欧州局長中込正志君、中東アフリカ局アフリカ部長堀内俊彦君、経済局長片平聡君、領事局長岩本桂一君、警察庁長官官房審議官千代延晃平君、出入国在留管理庁出入国管理部長君塚宏君、経済産業省大臣官房審議官杉浦正俊君、防衛装備庁装備政策部長坂本大祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 おはようございます。

 今日は、三つの条約審議ということであります。私は、三つとも、日本とそれぞれの国との経済活動を推進していく上でも、日本人の権利を守っていく上でも必要だというスタンスで質問に入らせていただきます。

 まず、日・アンゴラ投資協定でありますが、いつもこの委員会で、私は機会があるたびにTICAD、そしてアフリカに関連した質問をさせていただいております。

 改めてでありますが、ここ二十年間で各国からのアフリカへの投資が約六倍以上に増えております。日本の実に八十倍というアフリカの国土の広さ。十四億人余り存在する人口の多さ。日本の平均年齢は四十八・七歳に対し、アフリカで考えると十八・七歳という圧倒的な若さ、マンパワー。日本企業のアフリカ進出というものもなお一層重要になってくる。そして、それらの国は天然資源を豊富に有する国も多く、我が国にとっても経済安全保障上非常に重要だと思っております。

 今回の投資協定のアンゴラは、まさにその典型例の一つではないか。アフリカ屈指の産油量を誇り、豊富な鉱物資源を有する、経済的潜在力の高い国の一つであります。

 そのアンゴラでありますが、現在、日本企業はどれぐらい頑張っていらっしゃるのか。ロウレンソ大統領も何やら外資の誘致に向けて様々な取組に注力されているということでありますが、具体的にどのような環境整備に取り組んでいらっしゃるのか、外務省、お聞かせください。

堀内政府参考人 我が国からアンゴラには、二〇二三年三月現在で九社の企業が進出しています。

 ロウレンソ大統領は、二〇一七年九月の就任以降、汚職対策や税制改革等、ビジネス環境の改善に向けた取組を推進しています。例えば、同大統領による税関や警察の汚職対策強化の取組は、アンゴラの輸出入体制の改善や物流促進につながっていると承知しています。

 日・アンゴラ投資協定については、投資環境整備を進めるアンゴラ側からの要請も踏まえて交渉を行い、昨年八月に署名に至ったものです。本協定の締結によって良好な投資環境の創出又は整備が促されることは、企業がアンゴラを投資先の選択肢と検討する際の重要な要素となり得ると考えており、これにより、二国間の投資の増大及び経済分野での交流が一層促進されることが期待されます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 今、答弁の中でも、去年の八月に署名ということだったわけでありますが、当時、西村経産大臣でありましたけれども、署名でアンゴラを訪れた際に、ビジネスミッションも帯同されていらっしゃいました。そのビジネスミッションの中ではスタートアップミッションも中核を成していらっしゃったということで、前回のTICADもそうでありますが、スタートアップとアフリカ、これ自体は引き続き重要な要素になっていくのであろう、このように見ていたところであります。

 このスタートアップというのは、いわゆる社会課題解決型とよく言われておりまして、私はここが非常に重要だと思っております。というのは、アンゴラもそうですけれども、こういった天然資源というものは、単なる市場、マーケット、お金をつくる場所というだけではなくて、それを基にして環境汚染であったり様々な課題も出てくる。そういったところに社会課題解決型のタイムリーでかつスピーディーに動いてくれる機動的なスタートアップが入っていくということ、そして、それを日本が後押しできるということが非常に重要ではないかと思っております。

 今回の投資協定がスタートアップの促進につながっていくのではないかと私自身は考えますが、その関係性はいかがでしょうか。

堀内政府参考人 御指摘のとおり、スタートアップを含む企業の中には、個社で開発した技術をもって途上国の社会課題の解決に貢献している企業も多いと承知しています。

 日・アンゴラ投資協定は、日本及びアンゴラの投資家が安定的に、予見可能性を持って相手国において投資活動を行うための法的枠組みを定めるものであります。その主な内容としては、内国民待遇、最恵国待遇の付与、公正かつ衡平な待遇、不当な収用の禁止、紛争解決手続等が挙げられます。

 また、本協定は、参入後の投資財産の保護のみならず、参入段階の投資自由化についても規定する、いわゆる自由化型の協定であり、既に進出している日本企業による投資を保護し、良好な投資環境を整備することはもちろんのこと、今後アンゴラに進出する日系企業を後押しする上でも意義が大きいと考えております。

 本協定により、アンゴラにおける投資環境の透明性、法的安定性及び予見可能性が向上し、スタートアップを含む日系企業の海外展開並びに日本からの投資の促進及び保護が促進されることが期待されます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 スタートアップは本当に重要だと思っているんですけれども、まさに、これまでの我が国の歴史を振り返っても、広島、長崎、二度原爆が落とされ、そのときには、向こう百年ペンペン草一枚生えないだろうと言われていた。その中で、奇跡の復興とも評される現在の経済復活、復興を遂げた我が国であります。その背景には、私は、人材育成であるとか人への投資、教育、こういったことに我が国がしっかりと根を張ってきた、重きを置いてきた、その裏打ちではないか。そして、それら自分たちの歩みというものをアフリカ、そして諸外国にもしっかりとロールモデルの一つとして示していくことも重要だという観点から、是非この次の問いは大臣にお答えをいただきたいと思っているんです。

 今、TICADでスタートアップという話もありました。一方で、例えば、ABEイニシアチブであるとかNINJAプロジェクト、様々な枠組みがあるわけでありますけれども、女性にターゲットを絞っての枠組み、支えるというものをもう少し力を入れてもいいのではないか。上川大臣のイニシアチブで、まさにWPSの視点、若しくは、男女平等というよりも、メインストリーミングジェンダー、ジェンダー主流化という観点を常に取り入れてくださっている大臣であるからこそ、例えば、次のTICAD9の柱若しくはこれからの我々の柱の中に、WPS掛ける人材育成掛けるスタートアップ、こういった枠組みというものを柱として是非とも打ち出していただきたい、このように思っておりますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国は従来から、対アフリカ協力におきましては人づくりに着目した取組を進めてきているところであります。具体的には、御紹介いただいたABEイニシアチブに代表されるようなアフリカの若者の人材育成を通じ、アフリカ自らが主導する開発を後押ししてきているところであります。

 また、先ほど来テーマになっておりますスタートアップでありますが、これは、二〇二二年のTICAD8におきまして、ビジネスを通じてイノベーションを起こし、そして、複雑化する社会課題解決に対応するアフリカ自身の試みに共に取り組んでいく、こうした視点で推進してまいりました。

 その一環として、JICAを通じまして、プロジェクトNINJAによるスタートアップ支援などの起業家支援活動や、専門家の派遣等によるスタートアップ育成プログラム、法制の整備等に関わる協力を実施してきているところであります。

 私自身、就任以来、WPSの視点に注力してきておりまして、御一緒にWPSの取組もこの間精力的にしていただいてきたところでありますが、紛争問題の解決や開発におきまして女性の参画やリーダーシップを発揮していただくべく取り組んでいくという、まさにメインストリーム化、主流化に向けて動いているところでございますが、アフリカにおきましても政治やビジネス界で多くの女性が活躍しているところであります。こうした方々ともコミュニケーションをしっかり取りながら、二〇二五年八月のTICAD9と本年八月のTICAD閣僚会合に向けまして、WPSや女性のスタートアップ支援、こうした重要な取組につきまして、日本の強みを生かしながらどのようなものを具体的に打ち出すことができるのか、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 というのも、間違いなく私は、WPSの視点とスタートアップ、そして、それをTICADに反映させていく、非常に重要だと思っていたんですけれども、問取りレクのときになかなか外務省が渋かったんですよ、大臣。大臣が一丁目一番地でやっているものに対してまだ浸透し切っていないのではないかというような思いがあって、是非とも大臣と外務省の意思統一の懸け橋になりたいというような思いでこの質疑も投げかけさせていただきました。

 せっかくですから、今日こうやって見渡しましても、圧倒的に男性の方が多いんです。なぜ私がこの問題をやりたいかというと、例えば、今、能登半島地震でも生理用品、衛生用品の重要性が出ておりますが、アフリカでは生理用品というのはぜいたく品の扱いです。価格はここ数年だけでも一・五倍、二倍に上がっていってしまっています。アフリカといえば、日本人にもなじみの深い例えばケニア、あの大国ケニアですら六五%の人たちが生理用品を使えずに生理を迎えているんです。

 これがいかに不衛生であって、不快なことであって、人間の権利というものが尊重されていないかということの一つでもあるということを是非御理解いただきたいですし、国連人口基金はこのようなことも述べています。生理用ナプキンと引換えに、男性が女性らを性的関係に誘っている。若しくは、ケニア医学研究所とアメリカの疾病予防対策センター、いわゆるCDC、ここの二つは共に、これはケニア西部のとある農村部での調査でありますけれども、十五歳の少女の一〇%以上が生理用品を入手するために男性と性的関係を結んでいる。これが現実であります。

 また、ガーナでも、生理用品は二〇%の輸入関税、そして一二・五%の付加価値税というものをつけています。

 いかに女の子たちが、そして女性がそれを手に入れることが難しいか。

 という意味では、今のような例えば女性スタートアップ、そして日本の支援の中で、物を提供するだけではなくて、現地で生産する。そして、現地の人たちをしっかりと雇用していく。女の子たちの健康、人権尊重をしっかり守っていく。こういった枠組みというものが日本が果たしていく大きな役割であるし、上川大臣だからこそ今ここでしっかりと旗を掲げていただけるものではないか、私はこのように強く期待しております。

 実際に、タンザニアで日本人の女性が現地で製造販売、現地の女の子たちの教育、雇用もしながら頑張っていらっしゃるという実態もありますので、私は間違いなく近い将来大臣がアフリカを訪問してくださると期待しておりますが、そういったときにも、視察先であるとか意見交換の際に、現地で頑張っている女性たち、若しくは女性特有の課題解決に向けて頑張っている方たちと是非意見交換していただきたいと思います。

 大臣、これは通告を出しておりませんが、一言、乾坤一擲の決意をお願いいたします。

上川国務大臣 WPSの視点から広がる世界は、今皆さんが共有している世界とは全く違う広がりを持っているものと私自身強く感じているところであります。

 今、まさにアフリカにおける実態という形で御紹介をいただきましたけれども、そういったことを、しっかりとネットワーキングを広げながら、そして、実際の具体的な事例を掘り起こしながら、事例をつくりながら展開していく中にメインストリームの大きな流れができるというふうに思いますので、アフリカにおきましてもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 最後、残り一分だと思いますが、日・EU経済連携協定であります。

 サイバーセキュリティー、個人情報は非常に重要になってきますが、もう一つ新たな課題としてAI倫理があるのではないかと思っております。

 日本政府として、国際ガイドライン、ルールの重要性はAI倫理という観点でも重要かと思いますが、一言、端的にいただければ幸いです。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 AIの急速な発展は、生産性の向上など、様々なメリットをもたらす一方で、個人情報の保護やサイバーセキュリティーの問題等のリスクも存在いたします。これらに対応するためには、まさに委員御指摘のとおり、AIに関する国際ガバナンスの重要性が高まっていると認識しております。

 そのような観点から、日本は昨年、G7議長国として、生成AIの国際ガバナンスに関する広島AIプロセスを立ち上げ、国際的な議論を主導しております。同プロセスの議論を踏まえ、昨年十二月には、安全、安心で信頼できる高度なAIシステムの普及を目的とした国際指針と行動規範を含む広島AIプロセス包括的政策枠組みを策定することができました。G7が結束し、生成AIが社会や経済にもたらす影響に対処するための初の国際的な政策枠組みを迅速に世界に示せたことは大きな成果と認識しております。

 引き続き、広島AIプロセスに対する賛同国や企業の拡大に取り組んでおり、今後とも、安心、安全で信頼できるAIの実現に向け、関係省庁で連携し、AIガバナンスに関する国際的なルールづくりを主導してまいりたいと思います。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党、金城泰邦でございます。

 私の方から、冒頭、おととい、四月三日の朝の台湾の東部を震源としたマグニチュード七・七を観測した地震について、まず被災された方に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 花蓮市では建物の倒壊も報道されておりまして、多くの負傷者とお亡くなりになられた方もいらっしゃると伺っております。私の地元の沖縄においても津波警報が出されまして、多くの方々が高台に避難するなど、一時騒然とした雰囲気となっておりました。

 政府としても、台湾に対して早急に支援を行っていく方針があると伺っておりますけれども、現時点での被害状況と邦人に関する情報、また、政府からの支援の詳細についてお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 三日に発生をいたしました台湾東部における地震について、今朝までに死者十名、負傷者一千名を超える大きな被害が出ていると承知をしております。亡くなられた方にお悔やみ申し上げますとともに、被害に遭われた方々に対しまして心からお見舞いを申し上げるところでございます。

 日本台湾交流協会による確認及び台湾当局の発表によりますと、今朝の時点で邦人の生命身体に被害が及んでいるとの情報には接しておりません。

 東日本大震災、また先日の能登半島地震の際にも、大切な友人である台湾の皆様から本当に心温まる支援をいただいたことに、日本政府として心から感謝をしているところであります。

 総理からも言及されているとおり、日本政府といたしましても、必要に応じて支援を行う用意がございます。その上で、現時点で台湾側からの支援要請はございませんが、まずは台湾側での対応に注力していらっしゃるもの、そうした段階であると承知をしているところであります。

 引き続き、日本台湾交流協会を通じまして、支援のニーズを含めまして、台湾側と緊密に意思疎通をしつつ、支援要請があれば迅速に対応ができるよう準備を進めている状況でございます。

金城委員 ありがとうございます。

 日本は、東日本大震災や能登半島地震の際に台湾の政府また民間の両方から多額の寄附をいただいていると伺っておりまして、台湾からいただいた恩義に報いる意味でも、今回の被災に対しまして、日本として迅速かつ充実した災害復興支援をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、条約に関する質疑でございますが、日・アンゴラ投資協定に関しまして、グローバルサウスとの連携強化などについてお伺いしたいと思います。

 アンゴラ共和国は、サブサハラ・アフリカ地域最大の産油国であり、農業、漁業等の潜在能力も高く、経済成長率も高い水準を維持していると伺っております。また、アンゴラ共和国は、石油依存型経済からの脱却に向け、経済の多角化や安定化を目指しているということで、今後も更なるビジネス環境の改善についても期待できる。我が国とグローバルサウスとの連携強化においても、本投資協定の締結がアフリカ地域への日系企業の進出促進の大きな足がかりになると期待をしております。

 一方で、その他のアフリカ諸国との間では、依然としてFTA、EPA、投資協定、租税条約、社会保障協定などの政府間協定の締結が進んでいない状況がございます。その理由としては、アフリカ諸国においては、法制度がそもそも未整備であったり、整備されていたとしても不明瞭な箇所があったり、運用が不透明であったり、当局間での協力関係がうまく構築できていないというような様々な事情があると伺っております。

 我が国としましても、アフリカ諸国との経済による国際的な連携強化は、国際社会でのプレゼンス向上や国連での円滑な合意形成につながるなど、非常に重要な安全保障上の政策になり得ると考えております。

 そこで、政府には、経済的関係の強化を図る政府間協定が進んでいないアフリカ地域に対して、人的なリソースやODAなどをアフリカ諸国に投入して、法制度の整備支援やルールに基づく運用の徹底に向けた研修などを積極的に行っていただきたいと考えておりますが、現在の政府の取組と今後のビジョンや方向性について考えを伺いたいと思います。

上川国務大臣 ルールに基づく自由で公正な経済秩序を維持拡大していくということにつきましては、日本にとりましても不可欠であると認識をしております。

 また、アフリカにおきましての法制度の整備でありますが、各国が持続可能で包摂的な経済成長を実現するために不可欠な基盤となるものと認識をしております。このため、我が国は、アフリカとともに成長するパートナーとして、法の支配の促進を重視しているところであります。

 我が国の経済分野におきましての近年の具体的な取組として、例えば、本年二月でありますが、ケニアやガーナなどアフリカ四か国を対象として、競争法や知的財産法等のビジネス関連法の運用能力強化の研修を実施いたしました。また、本年一月でありますが、ジブチやエチオピア等八か国の法務官に対しまして、ビジネスと人権に関する能力強化に関する研修も実施しているところであります。

 アフリカにおきましては、委員御指摘のとおり、様々な可能性があるとともに、そうした環境整備の中の法の支配は極めて重要な要素である。それによりまして、日本の投資が今停滞している状況でありますが、それを転換していく時期にあると考えております。

 TICADのプロセスも活用をし、法の支配の促進や、経済制度の強化、改善を通じまして、投資、ビジネス環境整備に積極的に取り組み、日本企業の競争力強化を官民一体となって推進していきたいと考えております。アフリカの成長を日本の成長に取り込みつつ、アフリカの経済的な強靱性の強化を図ってまいりたいと考えております。

金城委員 ありがとうございました。

 先ほどの鈴木先生との議論にもありましたように、アフリカは、人口増加に見られるように、巨大なマーケットになり得る地域であります。日本企業がアフリカの発展に貢献をして、まさに我が国の国益にもつながる、そういった活動が展開していけるよう前向きに取り組んでいただきたいと思いますし、やはり二十一世紀はアフリカの世紀と言っても過言ではないと思いますので、日本との関わりを、連携強化をしっかりと取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 また、関連して、グローバルサウスとの連携強化を行う外務省としての体制についてお伺いをしたいと思います。

 日本政府としましては、グローバルサウスに対して、新FOIPプランを始めとするこれまでの政策を着実に実施する上で、ODAを始めとする投入リソースや進出日系企業の不足などの課題に対処し、我が国とグローバルサウス諸国の相互の経済成長やサプライチェーン構築の強化に向けて、個別の地域、国の事情に応じてきめ細かく対応していくとしております。

 このように、広範囲なグローバルサウス諸国を対象とし、個別の地域、国の事情に合わせて、日系企業の進出なども支援し、相互の経済成長やサプライチェーン構築の強化に対応していく上で、現在は、各地域局や経済局、在外公館と連携し、推進会議で取りまとめを行っていると認識しております。

 日系企業のグローバルサウスへの進出を後押しするためには、日本政府が、グローバルサウス諸国のリサーチはもちろんのこと、相手国からのニーズの聞き取りや、日本企業の担当者が相談できる窓口の設置、現在のビジネス環境の整備など、多岐にわたる支援や調整をする必要があると考えております。また、国際社会の安全保障における情勢を鑑みると、より戦略的かつ重点的に、スピードを上げて、グローバルサウスとの連携強化を図る必要があるのではないでしょうか。

 そこで、総合外交政策局など全省横断的な連携を可能にする局の下に、例えばグローバルサウス部のような部署を設置するなど、グローバルサウス連携強化のための戦略構築や、時宜に応じた適切な支援を可能とするような、グローバルサウス専門の組織を外務省として設置してはいかがでしょうか。外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、グローバルサウス、存在感を増している途上国や新興国であります、その連携を更に強化し、それらの国々をパートナーとしていくことは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、また、国際社会全体を分断、対立ではなく協調に導く上で極めて重要であると考えております。

 私自身、就任以来でありますが、多数のグローバルサウスと言われる国々からの日本外交への大変高い信頼と期待をいただいているということ、そして、日本との協力を深めていきたい、こうした意欲を肌で感じてまいりました。

 そうした信頼に基づきまして、グローバルサウスとの連携を深めるべく、外務省といたしましては、総合外交政策局を始めとし、各地域部局、また経済局、国際協力局等で議論を重ねながら、関係強化や支援に省内横断的に取り組んでいるところでございます。

 グローバルサウスの国々の御意見、また課題、置かれた状況は様々でございまして、決して一くくりに考えることはできないところでございます。引き続き、各府省庁、各部局の持っている知見総動員という形の中で、各国の多様性の理解と、様々なニーズをきめ細かな形で対応することができるアプローチ、このことについては工夫をしながら連携強化に努めてまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、ありがとうございます。

 今回は一つの可能性として提案をさせていただきましたけれども、グローバルサウス諸国との連携強化については非常に期待をしているところでございます。アフリカ諸国など、法整備やルール運用体制がままならない国であったとしても、早い段階から日本側から連携を働きかけることで、将来的な強い連帯を築くことができると思っておりますので、是非、進め方や体制について、予算の要望も含めて積極的な検討をお願いしたいと思います。

 続きまして、日・ギリシャ租税条約についてお伺いしたいと思います。

 ギリシャは、二〇〇九年の信用不安による経済危機が発生したものの、二〇二二年に欧州委員会の監視強化が終了するなど、経済危機から回復中であると伺っております。地理的にも地中海における交通の要であり、商社や船舶関連会社といった日系企業も進出していることや、欧州や中東、北アフリカと深い関係を持っていることから、今回の租税条約締結によって、更なる経済関係の緊密化やギリシャを通じた周辺国との連携強化についても期待しております。

 その上で、今回締結する租税条約に、OECD承認アプローチという、政府として導入を目指すとしている事業利得の算定方法の規定が盛り込まれていない理由についてお伺いをしたいと思います。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお話がございましたOECD承認アプローチ、AOAでございますけれども、これにつきまして、その導入によりまして、恒久的施設に帰属する利得の算定方法がより明確となり、二重課税や二重非課税のリスクをより小さくすることができるというメリットがあると考えております。したがいまして、政府としましては、日本が租税条約を締結、改正する際には、相手国との交渉結果次第ではあるものの、OECD承認アプローチ、AOAに基づいた規定とすることを目指すという方針でございます。

 しかしながら、このAOAの実施に当たりましては、本店と支店との間の内部取引の厳格な認識が必要であり、精緻な国内法と高度な執行能力が求められるということでございます。

 ギリシャとの租税条約交渉におきましては、ギリシャ側に、我々、AOAの導入を求めたわけですけれども、国内事情からAOAを導入することはできないという立場が示され、ギリシャとの間でAOAの導入に合意できる可能性はないというふうに判断をされたところでございます。

 他方で、ギリシャとの深化する経済関係を踏まえますと、早期に租税条約を締結することは、課税範囲や限度税率についての法的安定性、予見可能性を高めて、日本との間の投資、経済交流を促進するとともに、脱税、租税回避への的確な対処にも資するもので、日本にとって重要な意義があるというふうに考えましたところ、AOAに関する規定の導入は見送ることとし、租税条約の締結を優先することとした、このような経緯でございます。

 以上でございます。

金城委員 答弁、ありがとうございました。

 時間も参りましたので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 まず始めに、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定、いわゆる日・アンゴラ投資協定についてお伺いをいたします。

 アンゴラ共和国は、最近になって、石油輸出国機構、いわゆるOPECを脱退されました。これに関して、この脱退がもたらす影響、日本に対する影響も含め、あと世界に対する影響を含め、どういった見解を政府はお持ちか、まずお伺いをし、あわせて、一部では、この脱退に関して、アンゴラが国益に資せないということで脱退しているわけですけれども、中国、アメリカ共に、これはいいことだというふうに考えていると承知しているところですが、この脱退によって、アメリカとアンゴラとの間、アメリカと中国との間がどのように変化をしていくのか、どのような見立てを立てているのか、政府の見解をまずお伺いいたします。

上川国務大臣 ただいま委員から御指摘いただきましたとおり、昨年の十二月でありますが、アンゴラは、原油生産枠をめぐる対立等を理由に、OPECからの脱退を発表いたしまして、本年一月一日をもって同機構から脱退したと承知をしております。

 アンゴラと米中の関係についてでありますが、ロウレンソ大統領が、二〇二三年十一月に米国に、また二〇二四年三月に中国を訪問するなど、米中双方とのハイレベルの往来が行われているものと承知をしております。

 アンゴラは、輸出の九割以上を石油、天然ガスに依存しております。経済の多角化や経済のパートナーの多角化を図っているものと承知をしております。したがいまして、今次のアンゴラとの投資協定でありますが、アンゴラのこのような政策を踏まえますと、今後アンゴラに進出する日本企業を後押しする上で意義が大きいと考えております。

小熊委員 さっきの質疑でもありましたとおり、グローバルサウスの一角を占めていて、今、別に各国の覇権争いということではなくて、世界の安定のためにグローバルサウスをどうしていくかということは非常に重要なテーマになってきているわけであります。

 アンゴラ共和国は、伝統的には、いわゆる昔風に言うと東側陣営だったものが、いろいろ内戦とかもあったり、元首が交代したりして、これからは、バランスよく、中立的に、いろいろな国としっかり発展をしていくんだという外交戦略を取っているということで、これはいいことだというふうに思います。

 そういう意味では、今まで伝統的な友好国でなかったいわゆる西側陣営、我々も含め、日本も含めしっかりと交流をしていく、外交上友好関係を保っていくということは非常に重要なことであり、今回の協定というのはそれに資する一つの協定であるというふうには思います。

 ただ、これまでの伝統的な友好国との関係が強く、とりわけ、このアンゴラだけではなくて、今、こうしたグローバルサウス、また財政的に脆弱な島嶼国を含め、中国の債務超過をもたらしている国が散見をされますし、アンゴラにおいては、多分、対中債務は、GNI比にすると世界二位ぐらいに比率が大きい国となってしまっています。

 それはアンゴラと中国との関係を切らせようという話ではなくて、やはりこの債務状況を改善していくためにも日本は資する必要があるというふうに思います。ただ日本とだけよくしようということじゃなくて、この債務問題、対中債務の問題を解決するために、日本はどのようにアンゴラと協力していくのか、お伺いいたします。

上川国務大臣 アンゴラでありますが、サブサハラ・アフリカ地域において有数の経済規模を有する国でありますし、また、アフリカ屈指の産油国、そして豊富な鉱物資源を背景に高い潜在成長力を持っている、その意味で日系企業の関心も高いと承知をしております。

 他方、同国の経済でありますが、依然、石油依存が非常に高く、そして、産業の発展に資する人材及び資金が決定的に不足をしている。加えまして、内戦の影響によりまして、崩壊した基礎的な社会基盤の整備や地域開発につきましては、内戦後十数年たっている今も十分ではないということでございます。

 このような状況を受けまして、我が国自身、産業多角化のためのインフラ整備、また技術協力を通じました人材育成、こうしたことを通じまして、所得向上や産業育成に対する支援を行ってきたところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、アンゴラの債務の持続性の改善のためには、世銀やIMFといった国際機関とも連携をし、JICAを通じた技術協力によりまして、透明で公正な開発金融に向けた債務管理能力の構築支援等を実施してきているところであります。

 政府といたしましては、引き続き、アンゴラに対する開発支援を通じまして、その経済発展の後押しとともに、日・アンゴラ投資協定等を通じまして、日本企業のアフリカ投資を促し、官民一体となって、アンゴラの安定的で持続可能な経済成長に寄与していきたいと考えております。

小熊委員 もう一歩踏み込んでお聞きいたしますけれども、有数の産油国で、ただ、石油を輸出しても、中国に借金のカタで取られちゃう部分も結構あるわけですよね。今言ったとおり、安定的な石油の取り出しと、あと、石油だけじゃなくて、やはり多角的に経済発展をしなきゃいけない、まさに大臣のおっしゃるとおりなんですが。

 石油のここの部分の支援というのは、中国の借金のカタの部分もかなりあるので、だから、そのくびきをどう取っていくかということを意識してただ支援をしていかないと、ただ支援していくということは、ある意味、中国への支援になっちゃうというところがあるので、この対中国、アンゴラと中国の関係性を踏まえて、もう一言答弁をいただきたい。

 これはアンゴラだけに限らず、グローバルサウスの国に、元々これはアンゴラ方式とも言われていて、この中国のアンゴラとのやり方がほかのグローバルサウスに広がっているんですよ。だから、ここをどうするかということが、対中債務で苦しんでいる、真っ当な発展につながっていかない、中国にスポイルされているだけのほかのグローバルサウスの国に対しても大きなシグナルになるというふうに思います。

 中国のこの関係、いびつな関係と言うと中国に本当に申し訳ないけれども、ちょっとゆがんだこうした関係をしっかり正していく、真っ当なことにしていくということを意識して、日本はどうやるか。大臣、一言お願いします。

上川国務大臣 健全な成長を遂げていくためには、今の債務の状況をしっかりと解決する道筋を取った上で展開していくというのは、ビジネス上も、また国の安定的な関係構築の上でも極めて重要だと考えております。

 今、債務の問題ということで、世銀を始めとして関わりを持って、しかも専門的なサポートをするという支援もしているところでありますので、その意味での力発揮をしていくことができるように、日本としても全面的に支援をし、また、この投資協定を結んだこと自身をうまく活用して、将来に向けて両輪で進んでいくことができるようにしてまいりたいと考えております。

小熊委員 であるならば、そうしたら、とりわけ日本とアンゴラに絞りたいと思います。

 この協定で投資の促進を図るというふうにはしています。産油国としての支援、また多角的な経済発展とも言っていますけれども、石油以外も支援していくということは、とりわけどういう分野でどのぐらいの投資額を目指してやっていくのか、具体的な目標、また戦略的に後押ししていく産業の分野があればお示しをいただきたいと思います。

上川国務大臣 個別企業の投資関心分野がございます。政府としてこれを網羅的に把握することは困難でございますが、アンゴラということで申し上げると、鉱業、資源開発、さらに、インフラ整備等の分野に関心を有している日本企業が多いと承知をしているところであります。

 投資はそもそも各投資家が種々の要素を勘案しながら、自らの経営判断に従って行うものでございまして、政府として、アンゴラに対しまして日本からの様々な目標設定でありますとか、こういったことについて具体的にお答えすることはなかなか難しいところではございますが、日本とアンゴラの投資協定の締結によりまして、良好な投資環境の創出、整備が促されるということが期待されているところであります。

 企業の投資先の選択肢として、こうした環境整備が大きな決断の重要な要素になると確信をしておりまして、その意味で、投資の増大や経済分野での交流を一層促進するような形での動きを、これをてこに展開してまいりたいというふうに思っております。

 また、具体的に、例えば、これまでも様々な形で関係性を深めてきているところでありまして、官民合同ミッションの派遣は二十五か国に及んでいるところであります。また、ビジネス環境改善委員会そのものを設置している国は十二か国に及んでおります。また、昨年八月のアンゴラとの投資協定の署名でありますとか、あるいはオンラインビジネス対話の実施を通じまして、日本企業と第三国企業との連携促進につきましても、もう既に様々なニーズあるいはマッチングのチャンスを提供しているところでございます。

 また、本年八月にTICADの閣僚会合がございます、来年にはTICAD9も活用しながら、今後の、法の支配の促進、あるいは経済制度の強化、改善、また質の高いインフラ整備等を通じまして、日本企業の対アフリカへの投資、さらにアンゴラへの投資ということにつきましてもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

小熊委員 もっと踏み込んでいってもいいかなと思いますし、先ほどの公明党の金城さんも、グローバルサウスとどうしていくかということ、その重要性を述べられました。これはもう与野党超えて、まさに異体同心で、我々もそういうふうに思う次第であります。

 とりわけ、先ほど言ったように、アンゴラ方式と言われて、中国がここでの成功体験でほかの国にやっちゃっているわけですよ。そういう意味では、これをきっちり改善しなきゃいけないし、あとは、伝統的にいわゆる東側に近かった国がいきなり西に来る。赤勝て、白勝てみたいなことではなく、とにかく中立的にしっかり発展していくんだということを打ち出しているアンゴラをしっかり支援していくということが、まさにグローバルサウスのほかの国にも大きな影響を与えますので。

 何に踏み込んだらいいかというと、例えばODAですよ。今までオーダー型だったのをオファー型に変えてきているわけですよ。そういう意味では、こういうことも、それは民民の話ではあるんだけれども、日本のグローバルサウス戦略として、重要性は金城さんも訴えられました、まさにそのとおりですよ。

 であるならば、自然の流れに任せてそれを支援していきますよということじゃなくて、日本の外交戦略として、まさにオファー型で、こういうのをアンゴラがやっていったら、日本でこれを応援するよと、こういうオファー型の発想というのはあってもいいんじゃないですか。大臣、一言、もう一度。

上川国務大臣 グローバルサウスといかにこれから日本が戦略的なパートナーシップをつくっていくかということについては、委員と問題意識を共有するものでございます。

 まして、アフリカはこれから大きな潜在力を持っている地域でございますので、その意味では、これまでの過去の経緯を踏まえ、そして未来に展開していく上で、今、投資協定の位置づけをアンゴラを中心にして展開していくということの意味は大変大きなものがある。

 今委員御指摘のように、アンゴラ・モデルというネガティブなお話もありましたけれども、そういう意味で、日本との関わりの中で新しいモデルをつくっていきたい、こんなふうに積極的に考えているところであります。

小熊委員 今大臣が言われたように、新しいアンゴラ・モデルがグローバルサウスのスタンダードになれるように、とりわけ力を入れていかなきゃいけない。アンゴラが自主的にそういうふうにしようと言ったわけですから、是非それを強力に推進していかなきゃいけない。

 この中で、単にビジネスだけじゃなくて、こういうのはやはり国民相互理解が必要です、経済交流にしろ、政治との結びつきにしても。国際交流基金というのは、本当にすばらしい事業をいろいろやっていますし、逆に、政治家とか役所が考える以上にしっかりやっている部分もあります。

 古い話をすれば、「おしん」というのは百何か国の国と地域で放映されて、日本のまさにイメージアップ。いまだに海外の人と会うと、うちの妻が山形出身だから、おしんみたいかと。いや、ちょっと違うんだけれどもと言うんだけれども。でも、すばらしい妻でありますけれども。済みません、のろけてどうするのかという話ですが。文通で結婚したので、純愛なんです。まあ、どうでもいいや。済みません、ちょっと脱線しました。

 あのコンテンツがすばらしかったから広まったというのもありますけれども、御承知のとおり、国がお金を出して、放映してくださいとやったから、内容もよかったから世界で評価されたというのはあります。大々的にやったのが「おしん」なんですね。それ以降は、実は大々的にというのはないんですよ。

 国際交流基金が、いろいろな国にいろいろな日本の番組を少しずつ提供して、これをどうぞ放映してくださいとやっている、これはすごくいいことで、もちろん日本のアニメとかは評価されていますけれども、これはまさに別に支援しなくても売れていく、放映してもらっているということですが、良質なものをしっかりやっていくということが、逆にその国においての日本のイメージにも大きく関わってくるし、友好的な雰囲気をつくる。

 先日、ちょっとまた話は脱線しちゃうんですけれども、韓国の大使館の方と会って、失われた十二年が改善されて、最近いいねと言ったら、いや、小熊さん、それ以前に、実は国民の中では日本に対するイメージは変わってきていたんですと。えっ、何でと言ったら、「スラムダンク」という映画で変わったんだと。

 まさに、コンテンツというのはそれだけ大きな力を持っている、政治以上に力を発揮するときがある。そういう意味では、国際交流基金で行われている放送コンテンツの紹介事業というのはどんどんどんどんやっていくべきだけれども、今予算がもうないというふうに聞きました。

 アンゴラにおいても令和二年にこの事業が展開されていますけれども、今まさに投資協定を結ぶ段階において、投資の促進という意味では更にこれを仕掛けてやっていくべきだというふうに思いますが、この件について、今後の取組。実は予算がもうないんですと泣きそうな感じで事前に情報をいただいていますが、これはもっと予算をつけてやりませんか、アンゴラだけじゃなくて。

 これはすごくいい戦略で、実績が上がっているんですよ。ジャパン・ハウスとかもやっても、否定はしないけれども、その効果を考えたら、こっちの方が全然効果がある。

 大臣、どうですか。

金井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の国際交流基金によります放送コンテンツ海外展開事業でございますけれども、これは平成二十六年度から令和三年度にかけて実施された事業でございます。日本のコンテンツへの視聴機会が限られるような国、地域の放送局に対し、様々な日本のテレビ番組を無償提供するものでございまして、アンゴラに対しても実施させていただきました。

 アンゴラに対して、大変重要な国でございますので、このような重要性を改めて認識いたしまして、両国間の経済交流の推進に資するような様々な文化交流事業を組み合わせながら、引き続き計画を実施してまいりたいと存じております。

小熊委員 大臣にちょっと一言言っていただきたい。もっと予算をつけるべきですよ。これはすごくパワーがあるし、世界を変えるんです。いろいろな外交努力をしてきて、さっき言った韓国でいえば、失われた十二年を取り戻そうとして政治もいろいろ頑張ってきたけれども、たった一本の映画で国民の雰囲気が変わったというんです。

 それは、だから、今まで言ったように、国際交流基金がやってきたことで、日本人のイメージ、「おしん」というイメージを世界に広く、今でも浸透しているというのは、まさにこういう事業だったんです。

 これをもっともっとこれから戦略的にやる、アンゴラに限らずやっていくべきだというふうに思いますし、福島のことでいえば、原発事故災害から福島の情報発信を政府はやってくれているけれども、それもいいけれども、こういうことをやって福島のイメージを変えていくというのも力があるよというのをずっと言ってきていたんですね。

 広い意味で、放送コンテンツの紹介事業をもっと拡大して戦略的にやるべきだというふうに思いますが、今後の検討をしていただけるか、ちょっと一言だけお願いします。

上川国務大臣 放送の持つ力は、しかも、内容の、コンテンツの部分については、これまで日本としても、「おしん」を代表とする形で戦略的に取り組んできたものと承知をしております。その役割は極めて大きいと私自身は認識しておりますので、ある種の国民同士の相互理解を図るという観点から、少し文化外交的な形のものの中の大きなコアという形で、コンテンツの持つ力を強力に引き出していきたいというふうに思っているところでございます。

 今は、そのような形で準備を少しずつ積み上げていきたいと思います。

小熊委員 これは予算を倍増どころか、何十倍にもしなきゃいけない。だって、韓国は、映画に関して日本の三倍以上の予算をつけてやっているんですよ。これはやらなきゃいけないです。是非具体的に予算の確保をして拡大していくということを検討をお願いします。

 次に、おとといの質疑でちょっと積み残しがあったので、済みません、今日、馬場副大臣、門山副大臣にも来ていただいています。

 前回の馬場副大臣からは、特定技能、育成就労、外国人の多文化共生ということでお聞きして、その後、文科省の方から、いわゆる日本語教育の段階で日本の生活についてもしっかり教えているんだという話があったんですが、この点が、現場、各市町村、また各職場においての線になっていっていないんですね。

 そこで教えているけれども、実際日本に来てみて、ごみ出しも分からない、どこに聞いたらいいか分からない、日本語学校でこういうことをしなきゃいけないですよと教えてもらっている、そういうのをちゃんと文科省がやっているんだけれども、それが実際の生活者になっていったときにつながっていかない。

 おとといの質疑の中では、馬場副大臣は、いろいろな取り組んでいる好事例をしっかりほかの市町村にも紹介していきますと言いましたけれども、時間がないので、二、三、その好事例がどうあるのかということと、それをどういうふうに平準化していくのかという話、まず答弁をお願いします。

馬場副大臣 お答えします。

 市町村の好事例として、例えば、岡山県総社市においては、平成二十五年度より、総社市外国人防災リーダーの養成研修を実施しております。外国人防災リーダーは、災害時には、外国人住民の中心となって、避難誘導や地域の外国人住民への情報提供などを行うとともに、平時の防災訓練においては、地域住民に対する指導役を務め、支援する側の立場で活躍しております。

 また、山口県周南市では、平成二十五年度より、外国人住民と日本人住民の交流機会を継続的に提供する国際交流サロンを開催し、各国の料理や遊びなどの文化を互いに紹介し、楽しみながら交流を深めることで、友好な交流の場として活用されております。

 総務省としては、多文化共生の取組に関する先進的な知見等に基づく助言やノウハウの提供を行う多文化共生アドバイザー派遣制度や、多文化共生推進会議を実施するとともに、こうした取組を含め多文化共生の推進に係る地方財政措置を講じているところでありまして、引き続き地方自治体の取組を支援していきたいと存じます。

小熊委員 いろいろな紹介がありましたけれども、私の経験的なものでは、市町村がしっかり情報発信に努めるとともに、大事なのは企業側なんですよね。企業側が、役場のホームページを見ればいろいろ書いてあるから見ろよとかと言わないと、これはなっていかない。

 今一番最初に言った、私も消防団に入っているから、私の入っている消防団の中でも多言語化を今しているんですけれども、これはいざというのは大事なんだけれども、今、普通の生活者として、買物やごみ出しや、こういう生活をいかに多文化で共生していくか、溶け込んでいくかということが肝なんですね。それは働きに来ている方の視点に立って想像しなきゃ駄目です。それがつながっていっていませんから。

 それをきちっと後押ししていくように、馬場さんならできると思いますので、是非また後で個別にいろいろ情報交換、意見交換したいと思います。よろしくお願いします。

 門山法務副大臣に聞きたいと思うんですけれども、これは結局、労働力確保といっても、実は、これから日本が雇い負けしていくんですね。今、例えば、ベトナムの国は結構日本に来ていただいていますけれども、ベトナムのあの経済成長率からいえば、あと数年後には多分、平均所得が日本の半分ぐらいになっちゃえば、日本に来る、お金だけでいえば薄くなってしまう。

 この雇い負けということを含め、日本にどうやって来ていただけるか、どういうふうに戦略をお持ちか、お答えください。

門山副大臣 近年、委員御指摘のように、国際社会における人材獲得競争が激しさを増しているという認識でございます。その上で、人手不足を解消して、我が国の経済や産業を活性化するためには、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国になることが必要不可欠でございます。

 この点、外国人材の受入れ制度の一つである現行の技能実習制度につきましては、人材育成を通じた国際貢献という制度目的と運用の実態が乖離している点に加え、原則として転籍ができないことや、不適正な受入れ機関等の存在といった人権保護等の観点からの課題が指摘されているところでございます。

 そこで、今国会に提出している改正法案におきましては、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設し、転籍の制限を緩和するとともに、受入れ機関を適正化するための方策等を講じることとしております。これによって、見直し後の制度が外国人にとって魅力のある制度となることが期待されると考えているところでございます。

小熊委員 これも後でまた議論していきたいと思います。

 いわゆる外形的な話も大事なんだけれども、違うんですよ。日本に来ていただいている方々とお話しすると、日本の魅力は何かというと、条件だけじゃないんですよ。日本人の生き方を学べると言うんですよ。技能じゃない、生き方なんです、そこに日本の価値があるんですよ。こういうものをどうやって発信をしていって、しっかり平準化していくかということが大事なので、これはまた議論したいと思います。

 時間が迫っています。最後に、外務大臣にお聞きいたします。

 香港の話ですが、今、国家安全維持法、国安法というものが制定をされて、民主活動家の黎智英さん、ジミー・ライさんが裁判にかけられていますが、ここで、我々の仲間であった元衆議院議員の菅野志桜里さんとの共謀を香港政府が主張しています。

 菅野志桜里さんの国会議員としての活動が中国において犯罪化してしまうということは、日本の主権に関わる重大な案件です。これは日本の民主主義に対する、主権に対する不当な挑戦であると言わざるを得ません。到底許されるわけではない。これは中国政府、香港政府の出方を待つとか、推移を見守りますというレベルの話ではありません。我々自身、今の現職の国会議員の政治活動にも関わってくる話であります。

 これは政府として推移を見守るという話じゃなくて、強く中国政府、香港政府に非難を迫るべき案件だというふうに思いますが、今後の対応、見解、大臣、お伺いいたします。

上川国務大臣 二〇二〇年六月に国家安全維持法が制定されて以降の香港をめぐります情勢につきましては重大な懸念を強めておりまして、これまでも様々な機会に中国側に直接伝達をしてきているところでございます。委員御指摘の事案につきましても、香港当局に対して関心表明を行っております。

 また、香港に関しましては、先般、国家安全維持条例が成立したことを踏まえまして、三月二十日、改めて重大な懸念を表明する旨の外務報道官談話を発出したところでございます。

 主要各国とのバイ、マルチ会談の機会を含めまして、引き続き国際社会とも緊密に連携しつつ、中国及び香港当局に対しまして、香港基本法に規定されている言論及び報道の自由が保護されるよう強く働きかけをしてまいります。

小熊委員 もっと強くやるべきですよ。これは中国の内政問題じゃない。我々の主権に関わる問題、国会議員の活動、政治活動に関わる問題ですから。こんなものを脅かされることはできないので、強く懸念じゃない、強く非難が必要です。

 以上、述べまして、質問を終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 立憲民主党の源馬謙太郎です。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、私からも、台湾で発生した地震について、被害に遭われた方に心からお悔やみとまたお見舞いを申し上げたいと思います。

 先ほども御質問がありましたけれども、何らかの支援をする用意はあると総理は言っていますが、何らかの具体的な支援策あるいは支援金なのか分かりませんが、今検討しているものはありますか。できれば具体的に教えていただければと思います。

上川国務大臣 まず、東日本大震災、また先日の能登半島地震の際につきましても、大切な友人であります台湾の皆様から本当に心温まる支援をいただいたことに、日本政府として心から感謝をしているところであります。

 総理からも言及されているとおりでありまして、日本としても必要に応じて支援を行う用意がございます。その上で、現時点でありますが、台湾側からの支援要請はなく、まずは台湾側での対応に注力している段階と承知をしております。

 引き続き、日本台湾交流協会を通じまして、支援の具体的なニーズを含めまして、台湾側と現在緊密に意思疎通をしているところでございまして、支援要請があれば迅速に対応ができるよう準備を進めているところでございます。

源馬委員 是非お願いしたいと思います。やはり台湾は大事な友人ですし、大臣も今おっしゃったとおり、東日本大震災、能登半島地震のとき、大きな支援をしてくださっているので、是非前向きな支援をお願いしたいと思います。

 その上でなんですが、以前、また同じ花蓮市で地震が平成三十年に起きたわけですが、このときは、当時、河野外務大臣だったんですけれども、お見舞いのメッセージを出されています。

 上川外務大臣、今回お見舞いのメッセージを出されていないと思いますが、これはどういうあれでしょうか。なぜお見舞いメッセージを出されていないんでしょうか。

上川国務大臣 今回、台湾東部におきまして大変大きな地震が発生をいたしまして、大きな被害が出ているということでございまして、被害に遭われた方々に対しましては心からお見舞いを申し上げるということで、私も今答弁を先ほどの御質問に対しても申し上げさせていただきましたけれども、岸田総理からも、昨日、心からのお見舞いと、日本政府として必要に応じて支援を行う用意がある旨のメッセージを発出されたところでございます。これにつきましては、私、外務大臣も含みます日本政府全体としての思いという形で発信したところでございます。

 外務省といたしましては、地震発生直後から、日本台湾交流協会を通じまして、先ほど申し上げたとおり、支援のニーズ、具体的に台湾側と緊密に意思疎通をしている状況でございまして、支援要請があれば迅速に対応できるように、まさに準備を進めている状況であるということでございます。

源馬委員 平成三十年に起きた花蓮市での震災のときは、当時、安倍総理大臣からもメッセージを出し、更に河野外務大臣からもメッセージを出されておりました。なので、今回と対応が違うんですが。

 これも儀礼的、形式的なものでもあるとは思いますけれども、だとしたら、どういう場合には総理から出す、どういう場合には外務大臣からも出す、あるいは両方出すとかいう何か一定の整理があった方がいいのかなというふうに思います。

 事前に外務省の方にいろいろ伺いましたけれども、特に決めていなくて、何となくその場の雰囲気で、総合的にとかいって、その場の感じで総理が出したり、外務大臣が出したり、あるいは両方が出したり、そういうふうにしているように見受けられるので、何らかの、決まりじゃないですけれども、そういったものがあってもいいのかなと思いますので、是非検討していただけたらと思います。

 今回のメッセージも、総理のメッセージが首相官邸のホームページには載っています。でも、外務省のページには載っていない。当時の安倍総理が出したメッセージは外務省のホームページにも載っている。この辺もすごくちぐはぐな対応だなと思います。

 それから、加えて言うと、これも難しいところだと思いますけれども、中身もほぼ同じ文面ですよね。確かに、以前の台湾で起きた地震のときと今回の台湾で起きた地震のときのメッセージの中身もほぼ同じということもありますので。

 形式的なものにするのであれば中身はそれでいいですけれども、どちらが出すか、いつどういうタイミングで出すか、どこに載せるかということも含めてより形式的にしたらいいと思いますし、もっと心を込めた、形式じゃないというのであれば、メッセージの内容をもうちょっと、その場その場できちんと、コピペではなくて、心がこもったようなものにしていくという対応、どちらかが必要ではないかなと思います。

 大臣の御見解、その点について伺えたらと思います。

上川国務大臣 世界で様々な災害が発生している状況でございます。外務省の中で御質問にお答えしていたのかもしれませんけれども、被害の状況等を総合的に勘案して具体的な対応を判断する、こういう姿勢で臨んできたところでございます。

 今回につきましては、私自身を含みます政府全体としての立場で、昨日の岸田総理のメッセージとして集約する形で発出したということであります。

 今、ホームページにアップしているか否かという御指摘もございましたので、ちょっと私、それは存じ上げておりませんでしたけれども、そのことについては、形式的なのか内容なのかということもございますが、一つずつの被害に対しましてしっかりとしたメッセージを日本国として発出していくことは極めて重要であるというふうに認識をしております。その点も含めまして、きめ細かく対応ができるように検討してまいりたいと思っております。

源馬委員 是非よろしくお願いいたします。

 次に、今日は岩田経産副大臣にお越しをいただきました。

 ロシア経済協力担当大臣というポストがありまして、齋藤経産大臣が兼務されていると思います。これは予算委員会でも我が党の野田元総理が岸田総理に質問をされたりしていますが、こういった状況の中で、いまだにロシア経済協力担当大臣を置いているということです。

 まず、副大臣にお伺いしたいと思うんですが、経産省の中で、齋藤大臣が兼務されているロシア経済協力担当という意味では、所掌としてどんなロシア経済協力を行っているのか、教えていただければと思います。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 二〇一六年五月の日ロ首脳会談におきまして、当時の安倍総理からプーチン大統領に対して提案をいたしました八項目につきましてでございます。医療、都市環境、中小企業、エネルギー、産業多様化や生産性向上、極東、先端技術、人的交流、この八項目につきまして民間プロジェクトを創出するということで、八項目の協力プランということを行ってまいりました。

源馬委員 今の状況でそれは機能しているんですか。

岩田副大臣 申し上げたようなこの八項目の協力プランを通じてロシアとの経済協力を進めてまいりましたが、現下のウクライナの情勢を踏まえて、ロシア経済に資するような取組といったものは当面見合わせております。

 以上です。

源馬委員 見合わせていて、ほかにどんなことをされているんですか。

岩田副大臣 見合わせている一方で、八項目の協力プランに沿って投資等を行い、今も撤退を含めた難しい判断に迫られている日本企業といったものがおられます。こういった日本企業を支援するべく、関係機関と連携をいたしまして、現地法への対応のための情報提供や相談対応等を行っているところです。

源馬委員 現在、ロシアでどのぐらいの日本企業が進出していて、そのうち、どのぐらいの企業が事業を継続して、あるいは撤退しているのか、それは把握していますか。

杉浦政府参考人 お答え申し上げます。

 経産省におきましては、現地進出日本企業についてはジェトロを通じてアンケートを定期的に行っておりまして、最新のアンケートを今年二月に行ったものによりますと、回答いただいた六十三社のうち、事業を継続している割合というのは大体七割ぐらいになります。

 ただ、そのうちの半分ぐらい、三五%ぐらいについては一部事業を停止していてということでございまして、また、撤退であるとか、それから事業について全面的に停止しているような企業についても二五%から二七%ぐらいという回答をいただいております。通常どおりというか、侵攻前と同等程度の操業をしているというふうな回答については三五%をいただいているというところでございます。

源馬委員 事前にこれも聞きましたが、回答率は四〇%ということですよね。全然実態を把握していないと思います。

 ロシア経済協力担当までわざわざ置いて、引き続き日本企業への情報発信なんかをしていると言いますが、四割しか回答ももらえていないという状況で、本当に実態を把握できているのか。そもそもその業務はちゃんと行えているのかという疑問が湧きます。

 それから、いろいろ事前に聞いたら、企業へ情報提供したり情勢調査したりしているということでしたけれども、外務省にお伺いしますが、ロシア以外の国でも当然そういうことをやっているわけですよね。現地にいる法人、企業に対して情報提供したりあるいは情報収集したりしているんだと思いますが、そういう理解でよろしいですか、外務省。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ロシア以外の国におきましても、そこに進出している日本企業等の活動を支援するべく、必要な情報収集それから情報提供に努めているところでございます。

源馬委員 そうしたら、なおさら、特別にロシア経済協力担当大臣なんて必要ないんじゃないかと思います。元々外務省がどこの国にもやっているのであれば、外務省の在外公館がやればいいのではないかというふうに思います。今日は大臣を呼べませんでしたので、是非副大臣からもお伝えいただければと思います。

 これで副大臣と経産省の審議官は退出していただいて結構です。ありがとうございました。

勝俣委員長 どうぞ御退出ください。

源馬委員 次の、外務大臣へ質問する予定だったものは先に飛ばさせていただきます。条約の方の質疑をしていきたいと思います。

 まず、日・アンゴラ投資協定です。

 これは二〇一〇年に開始されて、一二年に第三回目の会合が開催されて以降、七年間全く動きがないまま、二〇一九年に四回目の会合が開かれたということだと聞いています。

 どういう理由があってこの間会合が行われなかったのか、教えていただきたいと思います。

堀内政府参考人 日・アンゴラ投資協定は、二〇一一年に一旦大筋合意に至ったものの、その後交渉が再開されたのが二〇一九年七月となっております。これは、アンゴラにおいて投資協定に関する政策の見直しが行われたことによるものです。

源馬委員 それは多分次の質問の答弁だったと思いますが、大丈夫です。

 署名までに十三年かかった一方で、その内容は、先ほども御答弁がありましたが、自由化型の投資協定になっているということで、中身も相当、例えば去年締結した日・バーレーン投資協定に比べても、かなり各要素が網羅されたものとなっているというふうに説明を受けました。

 この投資協定の交渉に関して、なるべくそれは早く締結した方がいいわけですが、早期締結と協定内容の質の確保、このバランスをどのような方針を持って取り組まれているのか、教えてください。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国として、投資関連協定の交渉に当たっては、我が国経済界からの要望や相手国の事情、国際的な動向等を踏まえた上で取り組んでいく考えでございます。

 協定交渉のスピード感につきましては、相手があることではございますが、現在交渉中の十八本の投資関連協定につきましては、可能な限り早期に署名、締結に至ることができるよう、引き続き鋭意取り組んでまいりたいと考えております。また、協定の内容に関しましては、例えば、幅広くカバーされた投資財産や、公正かつ衡平な待遇等、我が国が重視している規定が盛り込まれるよう努めてまいりたいと考えております。

 今後とも、そのような質とスピード感との両立を目指しながら交渉を進めてまいりたいと考えております。

源馬委員 今、経済界からの要望なんかも加味してという御答弁でしたが、経済界からは、アンゴラで租税条約も締結してほしいという要望もあるというふうに聞いております。しかしながら、今我が国はアンゴラとは租税条約の交渉もしていないというふうに理解をしておりますが、この点については、経済界からの要望もあるということも踏まえてどのようにお考えなのか、教えてください。

堀内政府参考人 投資協定及び租税条約は、いずれも企業の海外展開に向けた環境を整えるものであり、日本企業の海外展開支援のための重要なツールです。

 他方、それぞれの協定の必要性については、相手国の事情や制度等によって異なるため、協定ごとに個別に判断する必要があります。アンゴラとの租税条約締結の必要性についても、経済界からの要望、相手国の制度等を総合的に勘案した上で検討する必要がございます。

 その上で、租税条約についても、現在も、経済界からの強い要望があるアジア地域及びアフリカ地域の国を含む様々な国との間で、租税条約交渉開始の可能性を視野に入れ、財務当局間の協議を行っている、又は協議を行うこととしているところです。

 引き続き、新規の租税条約の締結や既存の租税条約の改正のための交渉に積極的に取り組み、租税条約ネットワークの一層の拡充を図ってまいりたいと思います。

源馬委員 先ほど来、各委員の先生方からアフリカの重要性ということを言われておりまして、私も非常にそれは強く共感しております。例えば、去年私はザンビアに行ってまいりましたが、あそこもすごく将来的な可能性を秘めた国だというふうに思います。

 アフリカでは、投資協定は今五本にとどまっているというふうに聞いております。交渉中が七か国あるということで、ただし、二〇一八年を最後にして交渉が行われていない、会合が行われていないというようなことでしたが、これは、今ずっと御答弁があるような、重要性とかを加味しながらスピード感を持ってみたいなことと反すると思うんですが、どういう理由で二〇一八年以降は交渉が止まってしまっているのか、教えてください。

堀内政府参考人 交渉上の具体的な課題、懸隔点や進捗状況については、相手国との関係もあり差し控えさせていただきたく存じますが、現在も交渉中となっているアフリカの各国との投資協定については、我が国が重視する規定を盛り込むという観点も踏まえ、今後も様々な外交機会も活用して、引き続き粘り強く交渉に取り組んでまいりたいと考えております。

源馬委員 次の質問を飛ばします。

 続いて、アンゴラではなく、ウクライナとの投資協定について伺いたいんです。

 岸田総理は、二月十九日に開催された日・ウクライナ経済復興推進会議で、投資協定の改正交渉を開始するという表明をされました。これは、今、我が国としては保護型の投資協定を自由化型に改めることを念頭に置いているのか。どういう交渉が行われているかではなくて、我が国としては自由化型を目指していくということでよいか、教えていただきたいと思います。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の日・ウクライナ投資協定でございますけれども、本年二月の日・ウクライナ経済復興推進会議の成果として、両国間で改正交渉を開始するということで一致し、発表したということでございます。

 委員御指摘の自由化型への改正の可能性も含めまして、ウクライナ側と今後具体的な改正の内容について交渉を進めることとなっておりますところ、現時点でこれ以上の詳細について明らかにすることは差し控えさせていただければと思いますけれども、いずれにしましても、日・ウクライナ経済復興推進会議の趣旨であります日本企業のウクライナ復興への参画の後押しに資するように本改正交渉を進めていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

源馬委員 事前に聞いていたときよりは少し踏み込んでくれたと思いますが、多分、自由化型を目指しているんだと思うんですよね。最初はそれも答えられないということでした。

 交渉の中身や過程で、日本がどういう主張をしていて、向こうがどういうふうに主張してきて、折り合っていないからとか、そういうことは言う必要はありませんが、岸田総理が投資協定を改正していきたいと表明をして、それをどういう方向性をもって変えていきたいかぐらいは、交渉の結果に影響するものではありませんし、それぐらいは、国会で質問があったら答えていただかないと。

 何でもかんでもお答えは差し控えさせていただきますと、外務省と防衛省はそれがすごく多過ぎると思うので。そのぐらいは全く差し控える必要はないと思うんですよね。もちろん、機微に触れることはあれですけれども。国民外交にならないと思います。きちんとそれは議事録に残していきたいと思います。

 続いて、ギリシャに行きたいと思います。

 もし、アンゴラ関係のみの方だったら、もうこれで御退出いただいて結構です。

 ギリシャの租税条約ですが、OECDの承認アプローチ、いわゆるAOAというものを導入したいと我が国は思っていると思いますが、この条約についてもAOAを導入したいという方針で交渉に臨んだのか、結果的にAOAが盛り込まれなかった理由は何であるか、教えていただきたいと思います。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 AOAにつきましては、その導入によりまして、恒久的施設に帰属する利得の算定方法がより明確となり、二重課税や二重非課税のリスクをより小さくすることができるというメリットがありまして、政府としては、今委員から御指摘がございましたとおり、租税条約を締結、改正する際には、相手国との交渉結果次第ではあるものの、AOAに基づいた規定とすることを目指す方針ということでございます。

 しかしながら、AOAの実施には、本店と支店との間の内部取引の厳格な認識が必要であり、精緻な国内法と高度な執行能力が求められるということでございます。

 ギリシャとの租税条約交渉におきましては、日本側から、まさにAOAに基づいた規定を目指したわけでございますけれども、ギリシャ側から、国内事情からAOAを導入することはできないという立場が示されまして、るる交渉しましたけれども、ギリシャとの間でAOAの導入に合意できる可能性はないと判断されたところでございます。

 他方で、ギリシャとの深化する経済関係を踏まえれば、早期に租税条約を締結することは、課税範囲や限度税率についての法的安定性や予見可能性を高め、日本との間の投資、経済交流を促進するとともに、脱税、租税回避への的確な対処にも資するもので、日本にとっても重要な意義があると考えたため、AOAに関する規定の導入は見送ることとして、租税条約の締結を優先することとした、このような経緯でございます。

 以上でございます。

源馬委員 分かりました。

 今御答弁があったとおり、AOAには二重課税を防いだりする効果があるということです。

 一方で、国税庁の発表によると、租税条約上の相互協議件数、これは二重課税とかが起きてしまったときに相手国と協議をするものですけれども、二年連続で過去最多を更新し、令和四年では三百一件あったというふうに聞いています。これはAOAが規定されていないことが原因だったということもある、そういう事案もあると思うんですよね。

 この事案の内訳について分析しているかということと、あと、AOAがない場合、特に相互協議にならないように、政府が何らかの対応を事前に企業なり相手国なりにしておくべきだと思いますが、その辺りの対応はどうなっているか、教えてください。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の国税庁による公表資料でございます。国税庁によれば、御指摘のような事案は、その資料の中で、その他の事案に分類されているものの中に含まれているということでございまして、令和四事業年度の発生件数でいいますと、十一件となってございます。

 政府としては、現時点でAOAがないことに起因した大きな混乱は生じていないと認識しておりますが、引き続き、租税条約にAOAが規定されていないことに係る影響について情報収集を進めてまいりたいと考えております。

 その上で、AOAがない場合のことでございます。

 先ほども御答弁さしあげましたが、租税条約においてはAOAが規定される方がより望ましいとは考えてございますが、国内法など相手国の事情により導入するのが困難な場合がございます。その場合においても、租税条約の締結によって恒久的施設に帰属する利得に関するルールが適用されることには変わりがございませんので、AOAが規定されていないことで直ちに二重課税や二重非課税というものが生ずるものではないと考えております。

 その上で、租税条約におきましては、条約の規定に適合しない課税措置が取られた場合には、納税者の申立てに基づきまして、当該事案について両締約国の権限ある当局間の合意により解決する枠組みとして、相互協議手続が設けられてございます。こうした手続を通じて、条約の規定に適合しない課税措置による二重課税を解消するよう努めているところでございます。

源馬委員 時間がなくなっちゃったので、日・EUを最後に一つやりたいと思います。

 情報のローカライゼーションという言葉が出てきますが、具体的に情報のローカライゼーションというのはどういうことを指すのか、教えていただきたいと思います。条文の中にもありますが。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の情報のローカライゼーションにつきましては、一般に、情報を一方の締約国の領域内にとどめ置かせる措置を意味するということでございまして、この点、日・EU双方の共通の認識であると理解しております。

 例えば、企業が国内で収集した情報を含む電子データを国外に移転することを規制するような措置は、情報のローカライゼーションに該当するものと考えられます。

源馬委員 例えば、国内にパソコンなんかがあって、そこにデータがある。それを例えばメモリースティックなんかに入れて国外に持ち出すことは情報のローカライゼーションの違反じゃない、持っていくことを禁止すると情報のローカライゼーションになるということなんですが、例えば、日本から現地にあるサーバーにアクセスをしてそれを見ることを禁止するのは情報のローカライゼーションになるんですか。

 まあ、では、いいです。済みません。これは事前に伺っていてもちょっと理解できなかったし、説明もなかったので、改めて聞いてみました。

 時間がなくなったのでこれで終わりますが、済みません、答弁に当たらなかった方がいたら、申し訳ございませんでした。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。

 私からも台湾地震で亡くなられた皆様に心からの弔意を申し上げたいと思うんですが、現地にいる邦人の安全確認の体制は今どうなっていますでしょうか。

上川国務大臣 三日に発生いたしました台湾東部におきましての地震について、大きな被害が出ていると承知しておりまして、亡くなられた方にお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われた方々に対して改めて心からお見舞いを申し上げます。

 現地に滞在する邦人の安全確認ということでありますが、我が国の民間窓口機関であります日本台湾交流協会がメールや電話等によりまして個別に連絡を取り合うとともに、台湾当局と緊密に連携しつつ、邦人に関する情報収集に努めているところでございます。

 現地の日本台湾交流協会による確認及び台湾当局の発表によりますと、現時点で邦人の生命身体に被害が及んでいるとの情報には引き続き接しておりません。

鈴木(庸)委員 メールでの確認ということですけれども、是非徹底していただきたいと思います。

 外務省の皆さんには釈迦に説法ですけれども、花蓮県というところと、これを機にという言い方もおかしいですけれども、是非連絡を密にしていただければと思います。

 というのは、あってはいけないし、起こしてはいけない台湾有事ですけれども、いろいろな機関のシナリオの中では、御案内のように、花蓮県にF16戦闘機があるわけです。今回の地震でも幾つかが被災して壊れたというような報道もありますけれども、まずF16の飛行場を狙ってミサイルが飛んでくるだろう。

 私は法務委員会でも質問させていただいたんですけれども、花蓮県と与那国島までは百キロしか離れていないんです。明治時代は、朝、花蓮の近くで魚を捕って、与那国で売っていたみたいなことが頻繁にあったんです。花蓮県は三十三万人の人口がいますけれども、ここから大量の人たちが、それこそ漁船でも船でも乗って八重山諸島に避難してまいります。法務省としては、そこに入管の職員も派遣して、かつ、八重山警察署しかないので、そこに警察も増員して対応するということで答弁はいただいているんですけれども、そこの取りまとめをされるのはやはり外務省だと思っております。

 ですから、これから支援ということになると思うんですけれども、是非、花蓮県の県の皆さん、そして市の皆さんとも外務省の皆さんには是非頻繁に連絡を取れるような体制を取っていただきたいと個人的にお願いをしたいと思います。

 その上で、国として今後の支援体制についてどのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 東日本大震災、また先日の能登半島地震の際にも、大切な友人であります台湾の皆様から本当に心温まる支援をいただいたことに日本政府として心から感謝しております。

 総理からも言及されているとおりでありまして、日本政府としても、必要に応じて支援を行う用意がございます。その上で、現時点におきましては台湾側からの支援要請はなく、まずは台湾側での対応に注力している段階と承知しております。

 引き続き、日本台湾交流協会を通じまして、支援のニーズを含めまして、台湾側と緊密に意思疎通をし、支援要請があれば迅速に対応できるよう準備を進めているところであります。

鈴木(庸)委員 是非、花蓮県と花蓮市というところにも重点を置いて今回の支援を組み立てていただいて、緊密な連絡が取れる体制だけは取っておいていただきたいと心からお願い申し上げます。

 前回、おとといの積み残しと申しますか、幾つか質問をさせていただき、その後、投資協定の話を伺えればと思うんですが、例の大使館に新設の経済広域担当官について、これはどのようなもので、新設されるとなぜ縦割りが打破できるのかということを簡潔に御説明いただけますでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣の海外出張に際しましては、できるだけ現地の日本企業の方々と意見交換をしていただくようにしております。この中で、日本企業が海外拠点から第三国向けの輸出に取り組んでいる事例や、現地企業と第三国市場での連携を進めている事例に接する機会がございました。こうした好事例も念頭に、日本企業と現地企業とのネットワーキングやマッチング機会を積極的に提供していくとともに、日本企業による第三国輸出に向けたハブ拠点の設置等の取組を支援してまいりたいと思っております。

 その際、多くの日本企業が広域の視点を持って戦略的に海外拠点を設置していることも踏まえまして、在外公館が企業側の事情やニーズに柔軟に呼応できるよう、今般新たに、個別の在外公館の担当地域を超えた経済広域担当官の設置を検討していくことといたしました。

 経済広域担当官の設置を通じ、個別の在外公館ごとの縦割りを打破するとともに、現地における様々な分野の情報や取組を横串を通して対応することにより、スタートアップ企業を含め、グローバルな活動を展開する日本企業を効果的にサポートできる体制を整えることが重要だと考えております。

 できるだけ速やかに、まずは地域ごとに設置する方向で検討作業を進め、在外公館の機能強化に取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 この話を聞いたときに、ジェトロと何が違うんだろうというのが率直な感想でございました。

 御案内のように、例えば、ジェトロのニューヨーク事務所とかは、経産省でもエース級の方がいらっしゃって、物すごい情報収集能力があるなと私も思っていたんですけれども、御案内のように、ジェトロ、JICA、JBIC、現地事務所同士、結局みんな一緒に国のためにやっているということなんですけれども、情報交換は現況でどうなっているのか。そこに更に経済広域担当官。当然、参事官級の人が来るしかグリップを利かせられなくなると思うんですけれども、取りあえず、ジェトロとかJICAとかJBICとか、更に経済広域担当官とどういった形で情報交換をされるのか、現況がどうなっているのかということ。

 もっと踏み込んで申し上げると、一元的に企業支援をするということであれば、全部統合した方が、事務所も三つも借りなくてもいいでしょうし、情報も密に取れると思いますし、いいと思うんですが、こここそまさに縦割りだと思うんですけれども、大臣、この辺りはいかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほど説明いたしましたけれども、私も、現地で様々な企業の皆様との懇談をいたすと同時に、ジェトロ、JICA、あるいは他の国際機関に所属している日本人の方々も含めて一緒に面談をする、会合をする機会をつくっているところであります。

 それぞれは相当現地で綿密に情報交換をしているようでありますが、大使館としてしっかりと連携のコアになっていくところ、あるいはそれぞれ独立にしているところ、国の大きさによりましてもその取組については千差万別であるなという印象が私はございまして、その意味では、日本のパワーをオール・ジャパンとして取り組んでいくためのスキームについては工夫する必要があるのではないか、とりわけ、これから官民連携という形でいく場合には、その要素についてはより機能を強化していく必要があると認識しているところであります。

 一律に何かつくっていくということばかりを考えると、ある意味では横並び的なものになりがちでありますが、それぞれの地域に応じた形でニーズを吸い上げることができるような仕組みづくりに力を入れながら、そのスキームの完成を目指して取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 僭越ですが、私は大臣とは違う考えを持っておりまして、現地でのJICA、JBIC、ジェトロの連絡体制というのは正直不十分かなと思っているので、ですから、この経済広域担当官に本当に大きな力を持ってリーダーシップを取っていただくような、せっかく設定するなら、そうしたポストとして頑張っていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、投資協定の方を伺いたいと思います。

 我が国はこれまでに八十を超える国と地域の間で投資関連協定を締結してきたわけでございますけれども、政府は、投資協定の締結によって投資環境の透明性、法的安定性、予見可能性が向上しているということなんですけれども、具体的にはどういうことになるんでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 投資関連協定は、締約国の投資家が安定的に、予見可能性を持って相手国において投資活動を行うための法的枠組みを定めるものでございます。

 その主な内容としましては、内国民待遇、最恵国待遇、公正かつ衡平な待遇、不当な収用の禁止、紛争解決手続等が挙げられ、こうした規定に基づく待遇等を享受することが企業にとってのメリットになると考えられます。例えば、内国民待遇、最恵国待遇は、他方の締約国の投資家及びその投資財産に対し、自国又は第三国の投資家及びその投資財産に与えている待遇よりも不利でない待遇を与えるという規定でございます。

 このような内容を含む投資関連協定により、相手国における投資環境の透明性、法的安定性及び予見可能性が向上し、日系企業の海外展開、日本からの投資の促進と保護及び相手国からの対日投資の拡大につながることが期待されます。

鈴木(庸)委員 今るるメリットはおっしゃっていただいたんですけれども、その後、我が国の企業の進出数が増加したといった具体的な効果は表れているんでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 投資は、投資家が様々な要素を勘案して自らの経営判断によって行うものでございますので、投資関連協定の締結自体が直ちに協定の相手国に対する投資の増大を保証するものではございません。

 しかしながら、投資関連協定の締結によって良好な投資環境の創出又は整備が促されることは、企業が投資先の選択肢として検討する際の重要な要素となり、これにより、投資の増大及び経済分野での交流が一層促進されることが期待されます。

 また、日本の経済界からは、例えば、投資受入れ国における現地子会社設立に関して、相手国による自国民雇用要求が参入障壁になったり、事業実施に際する代金不払いや一方的な約束の不遵守等に直面することもあるため、こうした問題を未然に防ぐためにも投資協定が必要であるとの要望が寄せられているところでございます。

鈴木(庸)委員 とにかく、そういった投資協定があることによって一定守られるということの周知が重要だと思うんですけれども、二〇二〇年にジェトロが実施した日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査というものがございます。ここでは、海外進出企業の半数以上が投資協定を全く知らないと回答しているんですね。この調査結果は過去にも外務委員会で取り上げられているんですけれども、そのときは経産省がその取組について答弁しているんですが、在外公館等を活用しつつ、積極的に周知、広報や利活用の促進を図っていきたいと答弁されているんですけれども、実際、今、外務省は投資協定の周知についてはどのように取り組んでいらっしゃるんでしょうか。また、周知の成果についてはどのように認識していますでしょうか。

片平政府参考人 投資協定及び投資章を含むEPAの周知を図っていくことは重要な課題だと認識しております。

 外務省といたしましては、例えば、EPAセミナーを日本各地において商工会議所等と連携して開催し、その中で投資関連協定の周知に取り組むとともに、ほぼ全ての在外公館におきまして日本企業支援窓口を設置しており、投資関連協定の活用を含む個別企業からの相談、支援要請に対して積極的に対応しているところでございます。

 また、在外公館においては、投資関連協定の署名、発効に際して、企業関係者を含めたセミナー等も開催してございます。例えば、昨年八月の日・アンゴラ投資協定の署名の際にも、日・アンゴラ・ビジネス・ラウンドテーブルを開催しております。

 今後も、現地情勢やニーズに応じた柔軟なサポートを積極的に行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 是非サポートをよろしくお願い申し上げます。

 次に、サブサハラ・アフリカ諸国の中で、アンゴラと最初に投資協定の締結交渉を開始した理由について伺わせてください。

 二〇〇八年のTICADにおいて発表されたアフリカの成長と発展を支援するロードマップの横浜行動計画の中で、具体策としてアフリカ諸国との二国間投資協定交渉を検討することが挙げられて、その後、サブサハラ・アフリカ地域で最初に投資協定締結交渉を開始した国がアンゴラでありました。

 数あるサブサハラ・アフリカの国の中で、今日もほかの委員の質疑にも出てまいりましたけれども、最初にアンゴラと交渉する理由というのは何だったんでしょうか。

堀内政府参考人 アンゴラは、サブサハラ・アフリカ地域において有数の経済規模を有するとともに、アフリカ屈指の産油量と豊富な鉱物資源を背景に高い潜在成長力を有しており、日系企業の関心も高いと承知しております。

 このような背景の下、日本の経済界からの要望、アンゴラ政府からの要請等を踏まえ、二〇一〇年四月に正式に投資協定交渉を開始いたしました。

鈴木(庸)委員 時勢がそういうことだったという理解でよろしいわけですね。

 先ほど来、アンゴラは産油量を誇るということはあるんですけれども、ロウレンソ大統領の下、経済の多角化にも取り組んでいるということなんですけれども、我が国として、政府として、この協定の締結を契機として、特にどのような分野での投資の促進を見込んでいらっしゃるんでしょうか。

堀内政府参考人 個別企業の投資関心分野について政府として網羅的に把握することは困難でありますが、アンゴラにおける鉱業、資源開発、インフラ整備等の分野に関心を有している日本企業が多いと認識しています。

 また、昨年二〇二三年八月に開催されました日本・アンゴラ・ビジネス・ラウンドテーブルにおいては、両国の企業間で、自動車、通信、農業等の分野においてもネットワーキングが行われております。

 このような中、日・アンゴラ投資協定は、日本とアンゴラの投資家が安定的に、予見可能性を持って相手国において投資活動を行うための法的枠組みを定めるものであり、特に、今回の場合、既に進出している日本企業による投資の保護に加え、今後アンゴラへの投資を検討している日本企業を後押しする上でも意義が大きいと考えております。

鈴木(庸)委員 次に、租税条約の意義について伺わせてください。

 今年四月一日現在、七十三の租税条約を締結している、八十か国・地域との間に適用されているんですけれども、そもそも論として、租税条約を締結する意義や効果というのはどういったものがあるんでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 租税条約の締結は、国際的な二重課税の除去、脱税及び租税回避の防止を通じ、二国間の健全な投資、経済交流の促進に資するものでございます。

 租税条約の締結により、例えば、配当や利子に対する源泉地国での課税が減免されることにより、日本から相手国に、また相手国から日本に投資、進出する企業や個人にとって、投資、経済活動に関する二重課税のリスクが低減することになります。また、租税当局間の協力に関する規定や条約の特典の濫用を防止するための規定を導入することにより、国際的な脱税及び租税回避に対して効果的に対処することが可能となります。

 これらにより、脱税及び租税回避を防止するとともに、日本と相手国との間での課税権の調整が図られることになり、人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

鈴木(庸)委員 そういう中でギリシャということだったんですけれども、先ほどのアンゴラの場合は、経済界の方からも要望があった。ギリシャも、この交渉に着手する判断には経済界等々の要望があったという理解でよろしいでしょうか、それとも、ほかの理由があったんでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 租税条約につきましては、相手国との経済関係、租税条約の締結から生じる効果といった観点に加えまして、日本の経済界からの要望も踏まえて租税条約の締結を進めてきているということでございます。また、租税条約の新規締結のみならず、既に租税条約を締結している相手国との間でも、経済関係の実態に即した内容の条約となるよう改正していく取組も重要であると認識しております。

 こうした方針の下で、租税条約の締結、改正に向けた交渉を行う相手国を検討してきたところ、ギリシャとの関係では、所要の調整を経て、二〇一九年五月に締結に向けた交渉を開始し、署名に至ったものでございます。

 これに当たりましては、ギリシャ側から累次にわたり租税条約締結の要望がなされていたこと、それから、ギリシャが海運大国でありまして、商社、船舶関連会社といった日本企業が進出している等、両国の経済関係が緊密化している、こんなことを考慮して交渉開始が決まったということでございます。

 以上でございます。

鈴木(庸)委員 今も御答弁がありましたけれども、二〇一九年の五月から交渉を行って、去年の十一月にようやく署名された。去年審議されたアゼルバイジャンとの租税条約は交渉締結まで約一年半、アルジェリアとは八か月だったんですけれども、ギリシャとは四年半かかっています。何か理由があったんですか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 租税条約の交渉に当たりましては、国際的な二重課税の除去、脱税及び租税回避の防止を通じて、二国間の健全な投資、経済交流の促進に資するものとなるように取り組んできております。

 他方、交渉相手国の税制や租税条約の締結方針等の違いがありますので、相手国によりまして交渉に要する期間は一様ではございません。例えばということで申し上げますと、日独租税条約の改正につきましては四年の交渉を要しておりますし、日・アラブ首長国連邦租税条約については六年七か月を要しているといったこともございます。

 ギリシャとの間でも、両国の事情を踏まえつつ、租税条約の目的により資する内容とすべく交渉に取り組んだ結果としてこのような期間がかかった、こういう経緯でございます。

 以上でございます。

鈴木(庸)委員 かしこまりました。どちらかというとそういう事情があるということなんですね。

 次に、AOAが導入されていない理由について教えてください。

 このギリシャとの租税条約には、事業利得の算定に関するOECD承認アプローチ、いわゆるAOAが導入されていないところでございますけれども、AOAを導入するメリットを改めて教えていただけますでしょうか。

中込政府参考人 OECD承認アプローチ、AOAにつきましては、その導入により、恒久的施設に帰属する利得の算定方法がより明確となり、二重課税や二重非課税のリスクをより小さくすることができるというメリットがあると考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 ちょっと飛ばさせていただいて、時間がなくなってきたので、済みません。

 本議定書締結の企業にとってのメリットについて教えてください。

 本議定書は、現行の日・EU・EPAに、情報の電子的手段による国境を越える移転及び個人情報の保護に関する規定を追加するための改正等について定めていますが、これは企業にとってどのようなメリットをもたらすことになるんでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正議定書により、日本及びEUは、情報の電子的手段による国境を越える移転を確保することを約束した上で、その約束を達成するために、情報の移転を禁止又は制限する措置を採用又は維持してはならないこととなります。

 欧州に進出する日系企業は、事業を行うに当たって国境を越えた情報のやり取りが不可欠であるということから、データの自由な流通に関する規定が一層安定したビジネス環境の構築に寄与するとして、このような規定を追加する本改正議定書に強い関心を示しておりました。

 本改正議定書の締結により、国境を越えたデータの流通に関する予見可能性が確保され、日・EU間のデータ流通が促進されることが期待されます。

鈴木(庸)委員 それで、DFFTなんですけれども、信頼性のある自由なデータ流通を我が国は提唱しているわけですが、政府は、本議定書について、DFFTを実現する上でどのような意義があると認識していますでしょうか。短めにお願いします。

片平政府参考人 我が国は、これまでDFFTの推進に向け様々な取組をしてきました。デジタル貿易分野の国際的なルールづくりを主導してまいりました。今回の日・EU・EPAの改正もこうした日本の取組の一環でございます。

 二十一世紀の成長エンジンであるデジタル分野の健全な発展を促す先進的なデジタル貿易ルールの範として、DFFTの実現に寄与するものと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございました。

 最後に、中国での邦人拘束について触れさせてください。

 私は、中国の姿勢が、経済重視だったこれまでのものから国家安全重視へと、国家戦略の目標が大分変わってきたのではないかと考えております。そういう中で、改正反スパイ法防止に当たって、中国政府に対して日本側の懸念とか安全確保について何らかの要求やアクションというのはあったんでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 中国のいわゆる反スパイ法につきましては、これまでも、中国側に詳細についての説明を求めるとともに、法執行及び司法プロセスにおける透明性の確保を働きかけてきております。

 同時に、改定された反スパイ法の施行を受け、外務省海外安全ホームページにおける注意喚起の内容を更新するなど、在留邦人への注意喚起を行ってきているところでございます。

 引き続き、中国側への働きかけ、在留邦人へのきめ細やかな情報発信、注意喚起を行い、在留邦人の安全確保に努めていく考えでございます。

鈴木(庸)委員 そういう中で、なかなか分かりにくいところも大変あると思うんですけれども、質問をまとめさせていただきたいんですが、アステラス社員の方の今の現況と、垂大使は一回会って、金杉大使も会われている、ただ、その前は大使の面会がないと聞いているんですが、大使の面会回数等の規定もあるんでしょうか。併せてお答え願えますでしょうか。

岩本政府参考人 今御指摘の昨年三月の事案でございますけれども、本年三月十八日に北京市人民検察院による起訴審査が開始されたと承知しております。

 ちなみに、中国における国家安全部門による拘束事案につきましては、拘束後、居住監視、刑事拘留、逮捕を経て、今申し上げた起訴審査が行われ、最終的に起訴又は不起訴が決定されるという具合に承知しております。

 そして、今お尋ねの大使による領事面会につきましては、回数に関する規定はございません。その時々の状況に応じまして、適当な館員が領事面会を行ってきているところでございます。

鈴木(庸)委員 居住監視のときに解放できなかったのは痛恨の極みだということを法務委員会で私も申し上げているんですが、最後に伺わせてください。

 大臣、今後、中国の改正反スパイ法の基準も明確ではないという中で、不安な人も増えていると思いますが、国としてどう対応していきますでしょうか。

上川国務大臣 政府といたしましては、これまで、中国側に対しまして様々なレベル、機会を通じて、邦人の早期解放、また、司法プロセスにおける透明性の確保に累次働きかけを行ってきております。昨年十一月の日中外相会談におきましても、私から邦人の早期解放を改めて強く求めたところであります。今後も引き続きそのような働きかけを粘り強く継続してまいりたいと思っております。また、邦人保護の観点から、領事面会や御家族など関係者との連絡等、できる限りの支援を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 とにかく、居住監視のときに何とか解放する。今回、ここまで来てしまって、なかなかこの後、ここから解放してもらうというケースが今までなかったとも聞いているので、本当に多くの反省を生かしていただきたいと思います。

 終わります。

勝俣委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 まず、投資協定についてお伺いをいたします。

 先ほどの鈴木先生の御発言にもありましたけれども、確認の意味でもう一度お聞きをいたします。

 今回のアンゴラとの投資協定によって、我が国が署名、発効している二国間の投資協定は幾つになるんでしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 日・アンゴラ投資協定を含め、日本については、投資協定及び投資章を含む経済連携協定を合わせ、現在までに五十六本の発効済み又は署名済みの投資関連協定があり、八十一の国・地域をカバーしております。これに現在交渉中のものを加えますと、九十四の国・地域をカバーすることとなります。

徳永委員 政府は、二〇一六年五月に、外務省を含む七省が合同して、投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプランを策定しました。そこでは、二〇二〇年までに、投資協定について、百の国・地域を対象に署名、発効を目指すと書かれています。本年二〇二四年については、現状、そこには届いていないということであります。

 百という数字の持つ意味については私は定かにはよく分かりませんけれども、数だけが問題ではないというのも事実だろうと思います。

 一方で、数値目標を掲げたわけですから、これに到達していないということもまた事実でありますので、こうしたことを踏まえて、これまでの投資協定締結促進に向けた取組をどう総括し、そして、これまでどのような成果があったと捉えておられるのかを伺います。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一六年に策定された投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプランを踏まえまして、投資関連協定の締結促進に向けた取組を進めてまいりました結果、現在までに我が国が署名済み又は発効済みの投資関連協定は、八十一の国・地域をカバーするに至りました。その結果として、署名済み又は発効済みの投資関連協定の相手国に対する投資が対外直接投資残高に占める割合は、二〇一六年の約三五%から約九五%に増加しております。

 また、CPTPP及びRCEP協定といったプルリの協定、日・EU・EPA及び日英EPAといったハイレベルの内容の協定の署名、締結を我が国が主導したこと等を踏まえれば、我が国の投資関連協定の締結促進に向けた取組は、二〇一六年からこれまでの間に着実に進展を遂げたと考えております。

徳永委員 百の国・地域を対象に締結を目指していくんだという目標には届かなかったけれども、投資残高等々を含めれば大きな成果が上がったと理解させていただきます。それで、よく御努力いただいたということで、率直に評価をさせていただきたいと思います。

 昨今の世界の経済状況を見ますと、特にコロナ禍からグローバル化がどんどんどんどん進む一方で、保護主義的な傾向も一部では見られるんです。特に私が指摘したいのは、今年はアメリカ大統領選挙がございます。もしトラとか、ほぼトラとか、もしも阪神タイガースが連覇したらという意味ではないですよ。余り受けませんでしたので、しっかりと真面目にやります。

 もしもトランプさんが大統領に当選したら、あるいは、ほぼほぼトランプさんが勝つに決まっているんだというような言われ方をします。これについて大臣はいかがですかとは聞きませんが、ただ、トランプさんがもし再登板となった場合には、アメリカ・ファーストをもう一度掲げてきて、保護主義的な傾向のある政策を推進するのではないかというようなことも容易に予想ができるわけであります。

 我が国としましては、自由で公正な、ルールに基づいた自由貿易の推進というものは我が国にとって生命線になるわけですから、この辺りは、しっかりとトランプさんの動向も横目でにらみながらも、自由貿易の旗をしっかりと掲げていくことが大事でありますので、その意味を含めまして、是非とも、地政学的にアメリカの強い影響を受けるであろう中南米を中心に投資協定の締結促進を一層スピード感を持って進めていくことが大事なのではないかと私は思っているんですけれども、大臣の御見解を賜ります。

上川国務大臣 まず、現在交渉中の協定につきましては、我が国が重視する規定を盛り込むことができるように最大の努力をしつつ、引き続き早期妥結に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

 また、新規の投資関連協定についてでありますが、これは、我が国経済界の具体的なニーズ等も踏まえながら、現在、御指摘の中南米及びアフリカを始めとした、今後の投資先として潜在性を有する国々との交渉開始の可能性につきまして検討している状況でございます。

徳永委員 今、大臣から、私が指摘させていただいた中南米のほかに、アフリカということもございました。アフリカも中国が非常に強い影響力を及ぼし始めておりますので、そういった部分をある意味スポットライトを当てて、締結促進に向けてスピード感を持って取り組んでいただきますようお願い申し上げます。

 続きまして、三月十三日の私の質問で十分にお聞きできなかった部分についてお伺いをいたします。大臣の外交演説についてであります。中国の関連についてです。

 戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ安定的な日中関係を構築するとありました。この戦略的互恵関係という言葉ですけれども、二〇〇六年、安倍首相と胡錦濤国家主席との首脳会談で初めて打ち出されたと理解しております。しかしながら、ここしばらくは日中関係を表すワードとしては使われておらず、建設的かつ安定的な日中関係という言葉が頻繁に使われてまいりました。

 それが、昨年十一月の岸田首相と習近平国家主席との首脳会談で、戦略的互恵関係を推進することについての再確認がなされたということであります。実に六年ぶりに戦略的互恵関係という言葉がスポットライトを浴びたわけであります。そして、当然ながら、今回の外交演説でも使用されたということです。

 まず、おさらいの意味で、中国との戦略的互恵関係というのはどういうものなのかをお伺いします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 戦略的互恵関係とは、国際社会の平和、安定及び発展に対して責任を負う日中両国が、将来にわたり、二国間、地域、国際社会など様々なレベルにおける互恵協力を全面的に発展させ、両国、アジア及び世界のために共に貢献し、その中でお互いに利益を得て共通利益を拡大し、そのことにより両国関係を新たな高みへと発展させていくという考え方でございまして、二〇〇八年五月の日中共同声明において、これを包括的に推進することで一致しているものでございます。

徳永委員 霞が関文学の極致のような御説明でございましたので、私なりに口語訳をさせていただくと、日中間には、歴史問題を始め、様々な懸案事項があります。この懸案事項についてはがんがん議論をするけれども、その一方で、お互いウィン・ウィンの関係になるような経済的利益の追求であるとか、あるいは人的交流であるとか、そういったものは積極的に進めていきましょうというふうに私は口語訳をいたしますけれども、正しいですか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 日中は、隣国ゆえに存在する様々な問題に対応しつつ、大局的な観点から様々な分野で協力や交流を推し進めていくということでございまして、委員の御指摘のとおりと思っております。

徳永委員 私の口語訳どおりだということですので、その旨に沿って進めてまいりたいと思います。

 それが、ここ数年使ってこなかった、使用を控えていた。その理由について伺います。

門脇政府参考人 お答えいたします。

 日中両国は、繰り返しになりますが、二〇〇八年の日中共同声明において、戦略的互恵関係の包括的推進で一致しております。この考え方は、この共同声明の発出以来、現在に至るまで一貫して維持されている考え方でございます。

 昨年十一月の日中首脳会談においてこれを改めて確認したということでございまして、政策が変更されたということを意味するものではございません。

徳永委員 政策を変更したのかとは聞いていません。この戦略的互恵関係というのはずっと生きていたんだ、ずっとその旨で対中国との外交を続けていた。しかしながら、それを表す言葉として戦略的互恵関係という言葉は使用は控えられていましたよね。外交青書にも載っていなかったじゃないですか。なぜそうなったのですかという理由を聞いています。

門脇政府参考人 外交におきましての中国との関係も含めた具体的な言及ぶりについては、その時々の状況や構成などを踏まえて総合的に判断しているところでございます。

 ということで、繰り返しになりますが、外交青書等で一時期使われていなかったことは事実でございますけれども、それをもって我が国の立場や政策が変わったということではございません。

徳永委員 その時々によって使う、使わないというのがあるのだというようなお話だったと思います。それでは、昨年の首脳会談で再び使われるようになった理由は何ですかということになります。

 これは報道ベースですけれども、戦略的互恵関係推進の再確認は、中国の王毅外相が昨年春に日本側にシグナルを送ったことが発端となって、いわば中国側が再確認を求め、日本側が受け入れたとする垂前中国大使のインタビューが載っておりました。

 この報道の事実関係を含めて、なぜ昨年の首脳会談で戦略的互恵関係の再確認に至ったのか、この言葉が再びスポットライトを浴びることになったのかについて、大臣に伺います。

上川国務大臣 日中両国でありますが、一昨年の日中国交正常化五十周年に続きまして、昨年は日中平和友好条約四十五周年、こうした節目の年を迎えているところであります。これらの節目の年に当たりまして、日中両首脳の間で、日中間のこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する中で、日中間の四つの基本文書の諸原則と共通認識を堅持し、戦略的互恵関係を包括的に推進することを再確認するということでありまして、極めて有意義であったと考えているところでございます。

 先ほどお話がございまして、日中間のこれまでの歩みの振り返りと今後の展望ということでございますが、そういう中で、再確認することが有意義であるとの認識におきまして双方がそうした認識に至ったということでありまして、日中のいずれかが一方的に求めたものではないと理解しているところでございます。

徳永委員 なぜこういうことを聞いているかと申し上げますと、もちろん、外交においてどのような言葉を使って二国間関係を示していくのかということは大変重要ですので、それについての説明はしっかりと国民に対してなされるべきだという思いのほかに、今、中国との関係においての絡みもあるんですね。例えば、尖閣諸島での中国の海洋活動の在り方、あるいは、いわゆる原発処理水海洋放出に伴う日本産水産物禁輸措置、それから、先ほども鈴木先生や小熊先生が指摘されておられました日本人ビジネスマンの拘束とか、あるいは、日本のEEZ内のブイ設置など、問題は山積みですよね。

 先ほど、戦略的互恵関係でお互いウィン・ウィンの経済的利益は追求していきましょうというような話でしたけれども、そうはいっても、日本人ビジネスマンの拘束があるわけです。こうした正当なビジネス活動が保証される環境の確保すらなされていない中で、つまり、ある意味、中国側の偏った国内法による支配が平然となされる中で、お互いウィン・ウィンで経済的利益を追求して互恵関係をつくっていきましょうと言われても、なかなかぴんとこない、そういった向きもあるのではないかなと思うんです。

 ですから、その辺りについてしっかりともう一度、大臣、御説明をしていただけますか。

上川国務大臣 先ほど答弁を申し上げたところでありまして、重ねて申し上げるのでございますけれども、日中両国につきましては、一昨年の日中国交正常化五十周年に続きまして、昨年は日中平和友好条約四十五周年という大変大きな節目の年を迎えております。その節目の年に当たりまして、日中両首脳の間で、日中間のこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する中におきまして、日中間の四つの基本文書の諸原則と共通認識を堅持し、戦略的互恵関係を包括的に推進することを再確認する、こうした状況に至ったところであります。

 まさに、戦略的互恵関係でありますが、隣国ゆえに様々な課題や問題が存在するということは事実でございます。そして、そうしたことに対応しつつ、大局的な視点から様々な分野での協力や交流を推し進めていこう、こうした考え方でありまして、これを再確認することは極めて有意義であったと思っております。

 先ほど御指摘がございました、例えば日本産の食品に対する輸入規制、こういった案件につきましては即時撤廃、また、拘束されている邦人の早期解放等につきましては、引き続き中国側に強く求めていくということについては当然のことであると考えております。

徳永委員 私は、中国との戦略的互恵関係に反対だと声高に言っているつもりはありません。これを再確認することによって日中関係がいい方向にどう改善していくのかといった部分について大臣の方から率直に国民に向かって語っていただきたいなという思いから質問をさせていただいているんです。

 ですから、お互いウィン・ウィンの経済的関係や、人的交流、あるいは環境問題の取組等々、お互いがテーブルに着ける部分についてはしっかりと共同歩調でやっていきながら、それで日中間の信頼関係を高めていくことを通じて、今大臣がおっしゃったなかなか解決が難しい様々な諸懸案についても、そういった関係が整っていけば解決に向かっていい方向に向かうのではないか、そういったことを是非語っていただきたいなと思ったのですが、時間もありませんので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 まず、台湾で大変大きな地震が起こりました。心からお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方にはお悔やみを申し上げたいと思います。さらに、今、救出をまだ待っておられる方がたくさんいると思います。一日も早い救出がなされますことをお祈りしたいと思います。そして、日本政府がしっかりと支援の手を差し伸べていただきたいということをお願い申し上げまして、質問に入りたいと思います。

 まず、上程中の条約等でございますが、もう随分と議論が進みまして、いろいろな角度から御議論がございましたので、確認の意味を兼ねてごくごく簡単にお伺いし、ごくごく簡単に御答弁を賜ればと思います。

 まず、アンゴラ投資の関係です。

 これは、二〇一一年に大筋で一度合意していたものが、しばらく交渉が止まって、そして、交渉が再開して今回締結に向かった。なぜこんなに時間がかかってこういう経緯を踏んだのか、そして、これが結ばれることによってどういう効果があるのかをお伺いします。

堀内政府参考人 アンゴラは、高い経済成長力、ポテンシャルを有しており、日系企業の関心も非常に高い国でございます。

 このような背景の下、この協定は、日本の経済界からの要請、アンゴラ政府からの要請を踏まえ、二〇一〇年四月に協定交渉を正式に開始いたしました。

 他方、二〇一一年、御指摘のとおり大筋合意に至った後に、アンゴラにおいて投資協定に関する政策の見直しが行われ、それに伴い、この協定の中身についても見直しを行う必要が生じました。その後、二〇一九年七月から再度アンゴラとの協定の交渉を行い、二〇二三年八月に両国間で署名に至ったものでございます。

和田(有)委員 日本の企業等の要請もあったということですので、しっかりとこれが結ばれて日本企業が活動しやすくなり、両国が経済的にうまく前に進むことを祈ります。

 次に行きます。日・EUの連携協定です。

 先ほども随分議論になりましたローカライゼーションの関係がございまして、情報のローカライゼーションの要求や、いわゆる自国内でのコンピューター関連施設などの使用の要求を禁止することになったということで、非常に分かりにくい話ですけれども、通信でやったときはどうなのかとか、いろいろなものはさっき議論がありましたけれども、これによって生まれる効果というのは一体何かということを教えてください。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 日・EU・EPAの交渉過程において、データの自由な流通についても議論がなされましたが、EUとの交渉がまとまらなかったことから、現行の協定におきましては、発効の日から三年以内に、必要性について再評価するという規定のみが置かれておりました。

 他方、欧州に進出する日系企業は、一層安定したビジネス環境を構築するという観点から、日・EU・EPAにデータの自由な流通に関する規定を置くことを引き続き強く求めてきておりました。このような要望も踏まえまして交渉した結果、本改正議定書の署名に至ったものでございます。

 本改正議定書の締結により、情報の電子的手段による国境を越える移転が促進され、日本とEUとの間の経済連携が一層緊密なものになることが期待されます。

和田(有)委員 緊密に連携ができるということだそうですので、喜ばしいことかも分かりません。しっかりとやっていただきたいと思います。

 では、次にギリシャの話です。

 ギリシャは、日本を除く大変多くの国・地域と既に租税条約が発効済みですのに、これだけ日本とギリシャは、海運国同士で、割とつき合いというんでしょうか、交流があるのにもかかわらず、今まで租税条約が結ばれていなかった。このことも驚きです。なぜ今頃こういうことになったのか、そして、これによってどのような効果が生まれていくのかをお伺いします。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしまして、租税条約をどこの国とやるかということでございますけれども、相手国との経済関係、日本の経済界からの要望、租税条約の締結から生じる効果といった観点を踏まえて租税条約の締結を進めてきているということでございます。また、租税条約は、新規締結のみならず、既に租税条約を締結している相手国との間で、経済関係の実態に即した内容の条約となるよう改正していくことも重要であると認識しているところでございます。

 こうした方針の下で、租税条約の締結、改正に向けた交渉相手国を検討してきたところ、ギリシャとの関係では、所要の調整を経まして、二〇一九年五月に交渉を開始して、今般署名に至ったものでございます。

 日・ギリシャ租税条約の締結によりまして、投資、経済活動に関する二重課税のリスクが低減されるとともに、国際的な脱税及び租税回避に対して効果的に対処することが可能となり、人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されるということでございます。

 以上でございます。

和田(有)委員 なぜこんなにギリシャが後回しになったのか、後回しという言葉は悪いかも分かりませんが、分からないんですけれども、いずれにいたしましても、今後、日本とギリシャの経済交流が進むことを祈るところでございます。

 租税条約の話が出ましたので、ちょっとお伺いしたいことがございます。

 それは、先月十九日に、先ほども出た話ですが、日本とウクライナの間の経済復興会議が行われました。その中で、これからウクライナの復興支援を進めていくためにはいろいろな条件を整備しなければならない、そういうふうなことでございまして、そんな中で、復興推進会議の中でいろいろな議論がなされる中で、懸案であるこれまでの日本とウクライナの間のまさに租税条約の話もあると思います。この日本とウクライナの間にある租税条約に関して、どのような状況かをお伺いいたします。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 日・ウクライナの租税条約につきましては、一九八六年に発効した日ソ、ソ連ですね、との租税条約に代わるものとして、政府間交渉を二〇二一年三月に開始いたしました。その後、政府間交渉を続けてきた結果、本年に入りまして実質合意に至りまして、日・ウクライナ経済復興推進会議の機会の本年二月十九日に署名をしたということでございます。

 政府としましては、日・ウクライナ租税条約の可能な限り早期の締結に向けて、しかるべきタイミングで国会において御審議いただけるように、必要な準備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

和田(有)委員 これから国会の方に回ってくるということでございます。

 こういうことを積み重ねてしっかりとウクライナの復興支援をこれからしていくということになるわけでございまして、そこで、次に、ウクライナへの支援のことでお伺いしたいと思うんです。

 今申しましたように、先月十九日に、日本政府はウクライナ政府との間で、ウクライナの復興についての協議をする日・ウクライナ復興推進会議を都内で開きました。そういう中で、日本とウクライナの間では、長期の復興支援をしていくために日本は投資をしていく、こういうふうな考え方に立っております。会議の中では、五十六の約束、たくさんのいろいろな復興メニューというものを用意されたり議論がなされました。日本とウクライナの間の協力文書は、租税に関する今の条約に始まって、金融やインフラや農業やデジタル分野、いろいろなものに及んでいます。

 その中で、ゼレンスキー大統領はどういう考え方に立ってこういうことに取り組んでいるかというと、実は、ゼレンスキーさんが言っているのは、これは人道的な見地からもちろんなされるものですけれども、ゼレンスキーさんがおっしゃるには、これは平和に向けたいろいろな取組であるといった趣旨のことをおっしゃっておられるんです。平和に向けた取組をしていくためにはいろいろな作業が要る。

 今、ウクライナでは、各都市はロシア軍から市民を標的とした戦略爆撃にさらされています。今年初めキーウを訪れた上川外相も、脆弱な立場にある女性や子供たちを守って、人間の尊厳が確保されるような取組にしなければならないと述べられている。人道的な見地からいろいろな支援をすべきだ、そういう中で考えると、防空装備というものもウクライナに供与する時期が実は来ているのではないかと私は思うんです。

 地雷の除去であったり瓦れきの処理であったり、そういうことは我々はやっています。しかし、現実に今ミサイルが飛んでくる、どうこうするというような中で、子供たちが、女性が大変苦しんでいる中で、それを守るために、人間の命を守るために防空装備を供与していく時期に入っているのではないかと思うんですが、この点についていかがでありましょうか。

上川国務大臣 我が国は、何といっても一日も早く公正かつ永続的な平和をウクライナに実現すべく、対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進してまいりました。その流れの中で、本年二月でありますけれども、官民一体となったウクライナ復興支援を推進すべく、御紹介いただいた日・ウクライナ経済復興推進会議を開催したところでございます。

 基本的に、まず、我が国の防衛装備の海外移転についてでありますが、防衛装備移転三原則に基づきまして、国連憲章を遵守するとの平和国家の基本理念とこれまでの平和国家としての歩みを堅持しつつ、厳格かつ慎重な対処を行ってきているところでございます。

 そのような中でも、ロシアによる侵略を受けているウクライナを最大限支えるべく、防衛装備移転三原則の範囲内で、自衛隊の車両等、我が国として供与可能な装備品を支援してきたところであります。さらに、ウクライナに対無人航空機検知システム等を供与するため、NATOの信託基金にこれまで六千七百万ドルを拠出してきているところでございます。

 委員の御指摘も踏まえつつ、我が国としては、どういったウクライナ支援を行うことができるか、ウクライナの人々のための支援でございますので、不断に検討してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 経済復興推進会議という名前ではあったんですけれども、会議では、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ支援は慈善事業ではない、これは世界の安全保障と民主主義への投資である、こういうふうにおっしゃっておられる。それを進める中でも、はっきり言えば、パトリオットであったりドローンであったり、そういった防空装備を移転するという考え方を検討を進めていただきたいと私は思います。そのことがまさにこれからの本当の平和をつくっていくための一里塚になるはずだ、私はそう思いますので、申し上げておきたいと思います。

 次に、台湾の関連のことをお伺いしたいと思うんです。

 今、先ほども申しましたように、台湾では大変な地震があって大変な状況なんですけれども、実は、五月には新しい総統が就任されます。頼清徳総統が五月二十日に就任式を迎えます。

 そういうこともありまして、ちょっとお伺いしたいんですが、日本政府は、外務省職員など公務員の台湾派遣については、基本的に、今までいろいろな規約があったようですけれども、外務委員会で私がお聞きしたときに、台湾出張者を原則課長級未満とすると定めた内規は現在は存在していない、こういうふうに述べました。外務省内規を撤廃したことを表明しました。二〇一七年三月にはあかま総務副大臣を台湾に派遣した例を挙げて、具体的な状況に応じて適切に対応したいと公務員の台湾派遣について見解を表明しています。

 一方、台湾の政府高官の来日というのは、トランジットなどについては全面的に認めないというようなことはしていない、こう言っていますが、個別具体的な状況に応じて対応するとも答弁しています。

 日本は、台湾について、非政府間の実務関係としている一方で、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーだ、こう位置づけています。先ほども、大切な友人だから、こういう表現がありました。双方向の交流が信頼関係を揺るぎないものにして、実務関係をスムーズにすることは間違いありません。

 ただ、日台間には、台湾の総統、副総統、行政院長、外交部長、国防部長の来日は受け入れないという暗黙のうちの了解があると言われています。実際に来たことはありません。いや、例外的には頼清徳さんは来ました。安倍さんの御葬儀に参りました。そういうことはあります。李登輝さんが副総統のときに、ウルグアイとパラグアイを訪問する途中に東京と横浜を訪問したという事実はあります。

 こういった中で、台湾とは国交を有しないアメリカはどうかというと、台湾旅行法というものを制定して、一切こういう規制はしない、高位高官の相互訪問はできるとしています。

 そこで、例えば、今回、五月に頼清徳総統就任式がある、そういったときに日本から政府高官を派遣することを考えてはどうか。そのことによって、一つの今までの暗黙の了解と言われていたようなものを破棄するというか、そういうふうにしてはいかがか。このことによって日台間の交流というものが深くなるのではないかと私は思うんですが、この点についてお伺いいたします。

上川国務大臣 本年一月に台湾の総統選挙が実施されたところであります。選挙結果の判明後直ちに、外務大臣として、民主的な選挙の円滑な実施と頼清徳副総統の当選に祝意を表する談話を発表いたしました。

 その上で、政府といたしましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえまして、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくこととしているところであります。

 日本政府関係者の台湾への派遣につきましては、引き続き、こうした立場を踏まえまして、個別具体的な状況に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

和田(有)委員 今、先ほど私が申し上げた、総統であったり副総統、行政院長、外交部長、国防部長の来日を受け入れないという暗黙の了解というのは実際にあるんでしょうか。これは政府参考人で結構ですが、ありますか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から答弁いたしましたが、日本政府といたしましては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえ、日台間の協力と交流を図っていくこととしております。

 御指摘の台湾当局関係者の訪日につきましては、こうした立場も踏まえ、個別具体的な状況に応じて対応することとしておりまして、以前答弁申し上げたとおり、ハイレベルの訪日やトランジットを全面的に認めないということはしておりません。

和田(有)委員 今日は時間がないのでこれ以上聞きませんけれども、やはり今までの既成概念にとらわれていてはいけないと思いますので、しっかりとやっていただきたいと思います。また時期を見てお伺いしたいと思います。

 次に、有事における台湾軍用機のことです。

 有事が起こったときに、台湾軍用機が日本国内に飛んでくる可能性があります。台湾の軍事施設が使えなくなったり空港が使えなくなったときに日本に逃れてくることがある。そういうときに、日本の空港に着陸あるいは避難することがあったときに、あるいは、それがまた日本から発進することがある。着いたのが帰るんですから。そういった有事のときに向けて、いわゆる極東アジアの安全保障に資するために台湾軍用機の日本国内の飛行場への発着を可能とする法整備を進めないと、これも全て超法規行動にこれからなってしまう。その点についていかがでしょうか。

上川国務大臣 仮定の質問についてお答えすることにつきましては差し控えさせていただきますが、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとりましても重要であると考えております。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。

 その上で、あくまで一般論として申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保するため、政府として、いかなる事態に対しても対応することができるよう、平素からの体制の整備を含め万全を期していくことにつきましては当然であると考えております。

和田(有)委員 この点を私は問題提起しておきます。やはりこういうことも法整備が必要だと思います。

 次に、もう一点、同様のことで、先ほどウクライナの侵攻の話で、ウクライナに対していろいろな武器移転が必要ではないかというような議論をしましたけれども、台湾有事が起こったときにこの話が出てくると思います。台湾の継戦能力を高めるために、日本から台湾への装備品の移転を可能にする法整備を進めておかないと物事はこんがらがってくると思いますが、この点についていかがでしょうか。

松本大臣政務官 和田委員の御質問にお答えしたいと思います。

 先ほど外務大臣もおっしゃいましたけれども、台湾有事という仮定の状況について回答するのは困難であるということは是非御理解いただきたいと思いますが、台湾との関係に関する我が国の基本的な立場は一九七二年の日中共同声明にあるとおりでございまして、非政府間の実務関係として維持していくとの立場に基づいて適切に対応することになります。

 その上で、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にも非常に重要であります。台湾をめぐる問題が対話によって平和的に解決されることを期待するというのが我が国の従来からの一貫した立場でございます。

 いずれにしましても、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に激しさを増す中、政府として、いかなる事態にも対応できるよう、平素から体制の整備を含め万全を期してまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。

和田(有)委員 これも、制度整備を含め、法案に関しても問題提起をさせていただきたいと思います。

 順番を変えまして、次に、拉致被害者のことをお伺いしたいと思うんです。

 実は、日本から拉致された方で、日本国籍を有しない人がいます。私は、去年の拉致特でもこのことをお伺いしました。その中で、特定失踪者の調査会の皆さんが把握している中に、沈静玉さんという台湾の方が、日本から拉致されたと思われる方がおられます。

 このことについて、まず、当局は把握しておられますでしょうか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 警察といたしまして、御指摘の方に関してお答えすることは、個人のプライバシーの保護等の観点から差し控えたいと存じます。

 他方で、御指摘の方につきましては、特定失踪者問題調査会が特定失踪者として公開していることにつきましては、私どもは承知しております。

和田(有)委員 昨年、拉致特で上川大臣も御答弁いただきました。支援法というのは日本国民を支援するということになっているので、原則的には日本国籍を有する人を支援する法律なんですね、この拉致の法律というのは。

 しかし、このように日本国籍を有しない人が日本から連れ去られたという主権侵害がある。こういった沈静玉さんも含めた、日本国籍を有しないけれども日本の主権を侵されて連れ去られた人に対してしっかりと対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 一般論として申し上げるところでございますが、我が国からの拉致は、被害者の国籍にかかわらず、重大な人権侵害でありまして、同時に、我が国の主権侵害に当たると考えております。

 政府といたしましては、拉致被害者として認定されました十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明の方々が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしてまいる所存でございます。

和田(有)委員 分かりました。

 それ以外の、例えば、去年お伺いした、とにかく、日本から連れ去られた日本国籍を有しない人々の救出を含めて努力するという話を伺いました。しっかりとやっていただきたいと思います。

 次に、今日も出ましたが、中国のスパイ法、国安法の関係で、日本から中国に行っている人が不当にとどめ置かれているパターンが続いている。アステラス製薬の人もそうです。その中で、私の地元の神戸ですけれども、神戸学院大学の教授で、元々は中国の方です、胡士雲さんという教授がおられる。報道ベースですけれども、この方が中国に行ったきり帰国していない、中国でどうやら公安当局に拘束されているのではないかと言われていますが、その点について把握していますか、どのように対応しておられますか。

上川国務大臣 御指摘の件については承知しております。

 胡士雲教授は、長年にわたりまして我が国の大学におきまして教職に就かれている方でございまして、同教授の人権に関わり得る事案でもあるため、本件を関心を持って注視しているところでありますが、事柄の性質上、これ以上のコメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 我が国といたしましては、国際社会におきまして普遍的価値であります自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国におきましても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした観点から、これまでも様々な機会を通じまして、中国における人権状況といった懸案につきまして様々なレベルで中国側に直接伝達してきているところでございます。

和田(有)委員 時間が来てしまいましたのでこれで終わりますが、胡士雲教授に関しても把握している、そして注視している。注視するだけではいけないわけでありまして、しっかりと解決に向けて取り組んでいただきたいということを申し添えて、終わります。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 本日の議題である三つの経済条約については、後ほどの討論で問題点を指摘することとしたいと思います。

 そこで、イスラエルによる入植活動の拡大問題に関して質問したいと思います。

 イスラエルでは、今年二月、占領地のヨルダン川西岸で新たなユダヤ人入植地の建設を承認したと発表しています。イスラエルの入植活動は、ガザへの攻撃が開始された昨年十月以降格段に強まっており、国際社会から厳しい批判を浴びているが、この問題について上川大臣の認識を伺いたいと思います。

上川国務大臣 我が国といたしましては、イスラエルの入植活動は国際法違反であるとの立場を取ってきており、また、二国家解決の実現を損なうという立場から、入植活動を完全に凍結するよう、イスラエルに対しまして累次の機会に強く求めてきているところであります。

 四月三日の日・イスラエル外相電話会談におきましても、私からカッツ・イスラエル外相に対しまして、入植活動は国際法違反との我が国の立場を改めて想起した上で、実効性のある対応を求めたところでございます。

 今後も、必要な働きかけ等を行ってまいりたいと考えております。

穀田委員 イスラエルの入植活動は国際法違反だというのが日本政府の立場だと述べられました。

 イスラエルは、ガザへの無差別攻撃にとどまらず、入植地の拡大という点でも国際法違反の行為を重ねています。

 国連安保理は、昨年二月、イスラエルの入植活動の拡大について、議長声明を全会一致で採択しています。この声明はどのような内容か、簡潔にお述べください。

上川国務大臣 昨年二月二十日でありますが、国連安保理は、イスラエルが同年二月十二日に発表した、入植地の更なる建設と拡大及び無認可入植地拠点の合法化について、深い懸念と憂慮を表明する旨の議長声明を発出したところでございます。

 同議長声明でありますが、イスラエルによるパレスチナ自治区への入植活動が続いていることに懸念を示し、入植活動を含む、和平を妨げるあらゆる一方的な措置に強く反対をしているものでございます。

穀田委員 議長声明では、イスラエルの入植活動の拡大について、今お話がありましたように、深い懸念と失望が表明された。

 ところが、そのイスラエルと日本政府は新たに経済連携協定を締結しようとしています。

 日本とイスラエルは、二〇二二年、経済協定に関する共同研究を立ち上げています。内容は、「あり得べき日・イスラエル経済連携協定に関する共同研究」という名前ですよね。ここで、共同研究の目的は何か、そして、現在の到達点はどういう到達点か、この二点についてお答えいただきたいと思います。

上川国務大臣 まず、委員御指摘の、あり得べき日・イスラエル経済連携協定に関する共同研究についてでありますが、その目的という御質問に対して、日本にとりまして、イスラエルは中東地域における主要な貿易相手国であります。近年、日系企業の進出先や投資先として一層その重要性が増してきている中で、こうした関係の更なる強化のために立ち上げたものでございます。

 現在の到達点という御質問でございますが、同共同研究の下でこれまでに会合を三回開催し、あり得べき経済連携協定交渉での双方の関心事項等につきまして、産官学を交え議論を行ってきたところでございます。

 昨年九月二十七日の第三回会合におきましては、本共同研究の下でこれまで実施した協議を総括した上で、その成果として作成する予定の共同研究報告書に関する議論を行ったところであります。その上で、日・イスラエル双方は、共同報告書の作成に向けた調整を着実に進めていくことで一致をしたところでございます。

穀田委員 最後にありましたように、三回開催されている、到達点は、報告書の作成に向けて調整を着実に進めているということで一致している、こういうことですわな。

 実は、経団連は二〇一六年、「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて」という提言を出しています。そこには、「イスラエルはハイテク技術の宝庫であり、」若干真ん中を略しますけれども、「サイバーセキュリティ等の安全保障分野に強いことや、軍民転用技術が豊富なことでも知られている。」と明記しています。

 今大臣お答えになったように、この共同研究は産官学を交えての経済連携協定に関する研究を行っているということですが、その共同研究のところにイスラエル側の軍事関連の政府機関や企業、団体が参加しているということはありませんか。

上川国務大臣 委員御指摘いただきましたあり得べき日・イスラエル経済連携協定に関する共同研究でありますが、日本側からは外務省の中東アフリカ局中東第一課長が、また、イスラエル側からは経済産業省二国間協定課長がそれぞれ団長を務め、これまでに、先ほど申し上げたとおり、会合を三回開催してきたところであります。

 なお、共同研究には両国の関係省庁や産業界や学界からも参加をしているところでありますが、現時点までにあり得べきイスラエルとの経済連携協定に関する共同研究は終了しておらず、詳細は公表をしていないため、具体的な参加者につきましてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

穀田委員 今、それぞれの団長を含めた省のそれぞれの政府関係者の方々がおられるということは分かっている。先ほど言いましたように、大臣もお答えのように、産官学となっているんですよね。簡単に言えば、終了していないから共同研究のメンバーは明らかにできないということだけれども。

 そこで、経団連は、二〇一九年十一月、イスラエルに調査団を派遣しています。そこで、サイバーセキュリティー分野で、軍を中心とするエコシステムが形成されている企業二社を訪問しています。さらに、デジタル分野でも、軍事などの領域で培ったAI、センサーなどの技術を活用する企業六社を訪れています。報告書が出ているんですね。

 そのことからも、共同研究のメンバーにイスラエルの軍事産業関連の政府機関や企業、団体が参加していないとはおよそ信じ難い。いかがでしょうか。

上川国務大臣 繰り返しでございますけれども、イスラエル側からも、関係省庁と、産業界、学界からも参加をされています。現時点までにあり得べきイスラエルとの経済連携協定に関する共同研究は終了しておらず、日本側の産業界からや学界からの参加者と同様に詳細を公表していないということで、具体的なお答えにつきましては、繰り返しになって恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思います。

穀田委員 先ほどから二回同じことを言っているんですけれども、終了していないからでけへんと。

 私が言っているのは、では、そういうことでいうと、今まで経団連はそういう提言を発表し、そして現地に赴いてそういうところを調査をやっているということからすれば、およそイスラエルの軍事関連の機関や企業、団体が参加していないということは信じ難いということですよね。

 そこで、二〇一七年に日本・イスラエル投資協定を締結していますが、これ自体、私は問題だと思っているんです。経済連携協定は、投資の促進や貿易の自由化にとどまらず、人の移動や知的財産権の保護を含め、いわゆる人、物、金の自由な移動、より幅広い分野で経済関係の強化を目指すものであります。

 このような協定をイスラエルと締結することは、入植地でのイスラエルの支配を日本政府として追認することにつながりかねない。入植活動の拡大に懸念を示してきた日本政府の立場と矛盾するのではないかと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 先ほど御説明をさせていただきましたけれども、あり得べき日・イスラエル経済連携協定に関する共同研究を含めまして、日・イスラエル間の経済関係における各種の協力案件に対してどう対応するかということでございますが、現時点で予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思いますが、イスラエルとの経済面におきましての協力の推進につきましては、日・イスラエル二国間関係等を総合的に勘案した上で、適時適切に判断をしていくということでございます。

 その上で申し上げるところでありますが、先ほど申し上げたとおり、イスラエルの入植活動につきましては国際法違反であるとの立場を取ってきておりまして、また、二国家解決の実現を損なうという立場から、入植活動を完全に凍結するように、イスラエルに対しまして累次の機会に強く求めてきているところであります。

 先ほどの電話会談につきましても、直近の四月三日でありますけれども、私からその旨も改めて申し上げたところでございます。

 働きかけを継続してまいりたいと考えております。

穀田委員 私が言っているのは、イスラエルとそういう協定を結ぶということは、今お話があったように、イスラエルの入植地での支配というのは駄目だ、拡大もあかん、こういう点と、一方、では、経済関係は仲よくしましょうねと言っているのは矛盾とちゃうか、まずいんじゃないかと私は言っているんですよね。

 つまり、日本政府として、国際法違反の入植活動を続けるイスラエルと経済協力関係をこのまま維持促進してええのか、ここを端的にお答えいただきたいと思います。

上川国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、我が国とイスラエルとの間の経済関係におきましての各種の協力案件への対応方針について、現時点で予断を持ってお答えをすることは差し控えさせていただきますが、イスラエルとの経済面における協力の推進につきましては、二国間の関係等を総合的に勘案した上で、適時適切に判断をしてまいりたいと考えております。

穀田委員 今の二回の答弁を聞いて、それは同じことを言っているだけなんですよね。

 私が言っているのは、矛盾とちゃうかと。しかも、大臣がおっしゃっている話からしても、そういう深い懸念を示してきている、国際法に違反しているということを平気でやっている人たちと、片っ方では仲よくしてええかというのはおかしいんちゃうかと言っているんですよ。だから、四月三日の外務委員会の中東アフリカ局長の答弁、これは今言っていることと全部同じなんですけれども、それをずっと繰り返し述べているだけにすぎないんですよ。

 私の意見は、それはあんまりとちゃうかと。イスラエルというのが今、入植を拡大している、一方でガザ攻撃をやっている。こういうときに、片っ方で手を握って握手するような状況かということを私は言っている。

 だから、ガザの無差別攻撃にとどまらず、国際法違反の入植活動の拡大を行うイスラエルと経済連携協定を締結することはあかん。共同研究の即時中止、締結に向けた交渉を行わないよう強く求めて、質問を終わります。

勝俣委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより各件に対する討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、日・アンゴラ投資協定、日・ギリシャ租税条約、日・EU経済連携協定改正議定書に反対の立場から討論を行います。

 日・アンゴラ投資協定は、日本の多国籍企業の海外展開を促すために、相手国との間で投資環境の整備を図るものです。

 財務省の二〇二三年度上半期の国際収支統計によれば、日本の経常収支が年度の半期としては過去最大の黒字となり、海外投資の収益は十八兆四千億円を超えています。大企業が収益比率を上げるため、海外投資を広げて内部留保をため込む一方、国内では、賃金や設備投資に回さない実態が浮き彫りになっている下で、本協定は、こうした大企業の海外投資の拡大を一層後押しするものです。

 日・ギリシャ租税条約は、配当や利子などの投資所得に対する源泉地国での課税の限度税率を定めて免除する措置を講ずるものです。

 先ほどの国際収支統計では、日本の企業が海外の子会社から受け取った配当や利子などの第一次所得収支は二兆八千億円に上る黒字で、過去最大となっています。こうした下で、本条約は、日本の多国籍企業とその海外子会社が、当該国での課税を免除された上、外国子会社配当益金不算入制度により国内税法でも優遇措置を受けるなど、二重に利益を享受することを可能とするものです。

 日・EU経済連携協定改正議定書は、新たに情報の自由な越境移転の規定を追加するものです。

 これは、情報技術を利用し国境を越えた事業展開で巨額な利益を上げる多国籍IT企業の要望に従って、自由なデータ流通の障害となる障壁を取り払うものです。IT企業の利益のために規制の緩和、撤廃を進めることは、将来、日本が個人情報や消費者保護のため、米国を含む外国企業の活動を対象に何らかの新たな規制を採用しようとする場合、本改正議定書の規定に抵触しないことを求められる可能性が高く、日本が取り得る措置の内容が制約を受けるおそれがあります。

 以上を指摘し、三つの条約に対する反対討論とします。

勝俣委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより採決に入ります。

 まず、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアンゴラ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とギリシャ共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

勝俣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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