衆議院

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第8号 令和6年4月26日(金曜日)

会議録本文へ
令和六年四月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      島尻安伊子君    武井 俊輔君

      中曽根康隆君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    深澤 陽一君

      古川 直季君    宮路 拓馬君

      小熊 慎司君    佐藤 公治君

      松原  仁君    鈴木  敦君

      徳永 久志君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   外務副大臣        辻  清人君

   財務副大臣        矢倉 克夫君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中溝 和孝君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上村  昇君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局次長)       筒井 智紀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 千代延晃平君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            岡田  大君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 藤本健太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 欣幸君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高橋美佐子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 斉田 幸雄君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 藤井 大輔君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (環境省大臣官房政策立案総括審議官)       大森 恵子君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 前田 光哉君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     中曽根康隆君

  穂坂  泰君     古川 直季君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     小田原 潔君

  古川 直季君     穂坂  泰君

    ―――――――――――――

四月二十五日

 グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第九号)

 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書の二千九年の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第一一号)


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件、欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件及び千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書の二千九年の改正の受諾について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官赤堀毅君、大臣官房審議官中村和彦君、大臣官房参事官藤本健太郎君、大臣官房参事官門脇仁一君、大臣官房参事官山田欣幸君、大臣官房参事官高橋美佐子君、大臣官房参事官斉田幸雄君、北米局長有馬裕君、国際協力局長石月英雄君、領事局長岩本桂一君、内閣官房内閣審議官中溝和孝君、内閣府大臣官房審議官上村昇君、総合海洋政策推進事務局次長筒井智紀君、警察庁長官官房審議官千代延晃平君、金融庁総合政策局参事官岡田大君、財務省大臣官房参事官藤井大輔君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君、環境省大臣官房政策立案総括審議官大森恵子君、大臣官房審議官前田光哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 先般、岸田総理が訪米されて、日本と米国はグローバルパートナーであるということが確認された、非常に有意義なことであったというふうに思っております。

 ただ、日本とアメリカは、八十年前は戦火を交えていた状況でありました。戦後は、日米安保条約の下、同盟国として歩みを進めてきた日米関係でありますが、しかし、三十年前、一九八五年前後は、実は日米貿易摩擦ということで、経済戦争と言われるような関係にあったことはまだ記憶に新しいところであります。

 先般、隣で経済産業委員会が開催されておりますが、齋藤健経済産業大臣から、当時、通産省において日米自動車摩擦の交渉に担当官として当たられていたときの話を聞く機会がございました。

 当時はジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるような時代にあって、米国から経済摩擦の問題の解消を強く求められていて、なかなかに厳しい国際交渉が約二年にわたって繰り広げられたという話でありました。

 米国は紛れもなく当時も超大国である中で、日米自動車交渉は非常に難航を極めた。そして、米国が最もこだわったのは、米国製の自動車部品等を日本の民間の自動車会社にどれだけ使わせるのか、使うべきなのか、その数値目標をしっかり示せ、そして政府としてコミットメントしろというところが最大の焦点であったというふうにお聞きをしたところであります。

 民間に数値目標を設けさせ達成させるというのは、計画経済じゃあるまいし、自由主義経済の下でそれだけは認められないというのが我が国のスタンスであったというふうに聞きました。

 そうした中で、しかし、米国は、ありとあらゆる手段を使い、三〇一という米国にとっては切り札とも言える条項を突きつけて、法律を突きつけて、日本に数値目標の設定を迫ったわけでありますが、その際、最後に日本のよりどころとなったのが、実は、当時、OECD各国による日本のスタンスを支持するという姿勢だったというふうに伺いました。つまり、自由主義経済をしっかりと守るためにも、日米自動車交渉における日本のスタンスは支持すべきものであるということを、OECD各国、米国を除く全ての国が支持をした。

 そんな中で、OECD各国の中で孤立することを恐れた米国は、最後、妥結というか、妥協というか、数値目標の設定については日本政府に迫ることはなかった、そういう結論だったというふうに伺っております。

 三十年前の話になりますが、こうした過去の話を聞いたときに、今回の条約についてはいわゆるマルチの条約だと理解しております。マルチラテラル、多国主義でありますが、昨今、バイラテラル、二国間交渉、はたまたユニラテラル、自国優先主義、自国第一主義、あるいはブロック経済圏志向、そういった内向きな外交姿勢を見せる国が見られるところ、そうはいっても、現下の国際情勢においてもマルチの枠組みは我が国にとって引き続き重要である。それが三十年前の日米自動車交渉が示したところだというふうに思っておりますが、それは現代においても変わるところはないと思っております。

 そこで、伺います。

 我が国の外交政策、外交戦略上、マルチ外交の枠組みに期待することは何か、現下の情勢において何を期待しているか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 今委員から三十年ぐらい前というお話がありまして、私も当時、アメリカに留学していたときに貿易摩擦の真っただ中におりまして、まさにオムニバス貿易法案とスーパー三〇一につきましては大きなバトルが行われていたことをまざまざと思い出すところとなりました。

 改めて御質問をいただきましたけれども、委員御指摘のとおり、我が国の外交政策上の多国間外交、マルチの外交は大変重要な要素となっていると理解しております。我が国外交上の目的や理念の多く、すなわち、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化、あるいは、自由で公正な貿易秩序、また、SDGs、核兵器のない世界などは、多国間の場でのルール形成によって課題解決の成否が左右される面が大変大きいと理解しております。

 現下の国際情勢におきまして国連やWTOといった多国間のフォーラムでの意思決定がなかなか難しくなっているということについては事実でございますが、しかし、多くの国が関与することの国際的な正当性や、大国と小国が対等な立場で議論に参画できる点など、多国間外交には二国間外交にはない、あるいは二国間外交ではできないこうした有用性があると理解しております。

 日本としては、多国間での議論や交渉におきまして引き続き我が国の国益の実現を目指すとともに、多国間外交の場での合意形成に粘り強く貢献してまいりたいと考えております。

宮路委員 そうした中で、今般のマルチの条約である国際復興開発銀行あるいは欧州復興開発銀行等への拠出の在り方を見直すという話と位置づけられるというふうに思っております。

 一方で、昨今、岸田政権のODAやこうした国際機関への拠出については、ばらまきではないかというような批判も一部で耳にされるところであります。

 とりわけ、我が国経済がデフレを何とか克服し、構造的な賃上げに向かうところだというふうに期待しているところでありますが、依然として大きな国の借金、債務を抱え、そしてまた経済動向もまだ予断を許さない中、更に言えば過度に進む円安となる中で、こうしたODAや国際機関への拠出というのがばらまきではないか、もっと自国の内政を優先すべきではないかという声も聞かれるところであります。こうした声は、一方で国民の切なる素直な感覚なのではないかと思われるところであります。

 そうした中で、こうした国際機関への拠出であるとかODA、国際貢献がいかに我が国の国益にかなうかということをしっかりと国民の皆さんに説明すること、これこそが外交の基本でもあるというふうに思っております。

 そこで、お伺いいたします。

 今後も我が国が国際社会でのプレゼンスを維持しながら国際機関との協力を進めていくに当たり、国際機関への拠出金を始めとするODAの予算について国民に対してその意義や必要性についてどう説明、広報していくおつもりか、政府の考えをお伺いいたします。

高村大臣政務官 お答え申し上げます。

 本年は、我が国が国際協力を開始してから七十周年を迎える年であります。我が国は、開発協力を進める上で重要なパートナーである国際機関への拠出を含め、ODAを通じてこれまで多くの開発途上国の発展に尽力してまいりました。その確かな実績は我が国の成長と信頼にもまさに寄与しているところであります。

 また、我が国は資源の多くを外国に依存しており、直近のエネルギー自給率は約一三%、食料自給率もカロリーベースで三八%と言われる中では、日本一国のみで繁栄を続けていくことはできません。ODAを通じて世界の平和と安定を図ることは、同時に、我が国への資源、食料などの安定供給を確保することにもつながっております。

 さらに、国際機関への拠出については、それぞれの国際機関が有する専門的知見やネットワークを通じて現地ニーズに迅速に対応した支援が可能であり、国際機関に在籍する邦人職員の活躍を通じて日本のプレゼンス向上にも資するものであります。

 このように、ODAが国民の平和と安定を確保し、国民生活の維持や日本の生活に寄与していること、そして、そのためのODAの在り方を不断に追求していくということを様々な機会を通じて丁寧に説明してまいりたいと思います。

宮路委員 ありがとうございます。自国だけではやっていけない、日本はまさにそうした国なんだろうと思います。

 そうした中で、冒頭に御紹介申し上げました、日米自動車交渉の際、マルチの枠組みが、国際的な支持が我が国の貿易交渉においても大きな力となったということ、まさに国益にかなったということも是非改めて国民の皆様に知らせていただきたい、そうした努力を積み重ねていただきたいというふうに思っております。

 それでは、今般審議にかかっておりますIBRDの協定改正についてお伺いいたします。

 今回の改正の意義として、将来の支援ニーズへの対応を可能とし、IBRDの機能強化と説明されておりますが、具体的にどのような支援ニーズがあり、そして、本協定の改正によりIBRDのどのような機能が強化されるのかについてお伺いしたいと思います。

赤堀政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動や感染症等の地球規模課題の深刻化に加え、国際社会全体が様々な複合的危機に直面し、SDGs達成に向けた進捗が大きな困難に直面する中で、国際復興開発銀行を始めとする国際開発金融機関に対し、特に資金面を始めとする支援ニーズが高まっております。

 こうした状況を受けまして、G20の取組として、国際開発金融機関の既存資本を最大限活用するための方策を検討する、自己資本の十分性に関する枠組みの見直し、CAFレビューが進められており、二〇二二年七月には独立パネルの提言が提出されたところでございます。

 今回の改正は、同提言において融資上限の撤廃が求められたことに対応して行うものであり、同改正により、国際復興開発銀行が中長期的に、限られた既存資本の効率的な活用を通じて融資余力の拡大を図り、開発資金ニーズの増加に対応することが可能となるものでございます。

宮路委員 ありがとうございます。

 続いて、EBRD、欧州復興開発銀行協定の改正についてもお伺いしたいと思います。

 今回、受益国の地理的範囲を限られた数のサブサハラ・アフリカ諸国に拡大するとされておりますが、一方で、アフリカ開発銀行の存在もあります。その二つの間でどのように役割分担がなされているのか。併せて、日本は欧州主要国と並ぶ第二の出資国としてEBRDに出資することになるわけでありますが、日本の外交政策上の課題をEBRDの活動にどのように反映し、進めることができるのかについてお伺いしたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 アフリカ開発銀行は、主に政府部門を対象とし、アフリカ諸国の持続可能な経済社会開発を促進することを目的として、アフリカ域内の加盟国等に対する直接貸付け、株式投資、保証等を行ってございます。これに対し、EBRDは、民間部門を主な対象とし、市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動の促進をその目的として、民間企業及び市場指向型経済への参加へ移行しつつある国有企業に対する貸付け、株式投資、保証、技術協力等を行っております。

 今般の受益国の地理的範囲の拡大に当たっては、AfDB等による支援と重複が生ずることのないよう、適切に連携を図ることになります。EBRDとしましては、これまでの支援を通じて蓄積してきた豊富な経験、ノウハウを活用し、民間企業及び市場指向型経済へ移行しつつある国有企業に対する協力を実施していくことになります。

 EBRDによるグローバル課題への対応は日本の外交政策上の課題や日本の国益にも資するものと考えてございますが、政府としては、EBRDにおいて発言権を確保し、御指摘のとおり、第二位の投票権シェアを有しておりますし、また、理事も輩出して積極的に貢献してきてございます。こうした発言権を確保して、主要な役割をしっかりと果たしてまいりたいと考えてございます。

宮路委員 時間となりました。

 マルチの枠組みは我が国にとって死活的に重要であるということをしっかり意識して、それを国民に伝える務めを果たしていただくことを御期待申し上げ、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党の金城泰邦でございます。

 今日は、経産省や財務省からも政務二役にもお越しいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、条約等について、基本的なことの確認も含めて質問をさせていただきます。

 まず、ロンドン条約の一九九六年議定書二〇〇九年の改正についてお伺いいたします。

 カーボンニュートラル社会への移行に大きく貢献するとして、CCSやCCUSが注目されております。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、徹底した省エネ、再エネや原子力といった脱炭素電源の利用促進などを進めるとともに、脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であり、CCSやCCUSは、すぐにはCO2の排出を減らすことが難しい設備などにおいてCO2排出量削減を可能にする技術であります。

 今回の改正は、こうしたCCS事業での二酸化炭素を含んだガスを輸出するニーズを受けて、輸出国と受入れ国が協定等を締結していることを条件として、海底下の地層への処分のため、二酸化炭素を含んだガスの輸出を行うことができることなどについて定めるものと伺っております。

 そこで、まずは、一般の方にもよく分かるように、CCS事業とはどのような事業なのか、また、用いる技術はどういったもので、輸送する際にはどのような方法を検討しているのか、分かりやすく御説明をお願いいたします。

吉田大臣政務官 お答え申し上げます。

 CCSは、CO2を回収して地下に貯留する事業でございます。約五十年の歴史がある石油や天然ガスの増産技術を気候変動対策に転用したものでございます。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、産業や発電の脱炭素化、ブルー水素の製造などの分野においてCCSの導入が想定されてございます。

 CCSの工程は、CO2の分離・回収、輸送、地下貯留から構成されてございます。分離・回収工程では、排ガスをアミン溶液に溶かした後に、加熱によりCO2を分離することでCO2を取り出します。次に、輸送工程では、地理的条件により異なりますけれども、パイプラインや液化輸送船によってCO2の大量輸送を行います。加えて、貯留工程では、CO2が漏えいしないよう、蓋となる遮蔽層が上部に存在することを前提とした上で、地下約千メートルから三千メートルにある砂岩の隙間に貯留を行います。

 我が国では、昨年七月に閣議決定したGX推進戦略において二〇三〇年までのCCS事業開始が位置づけられておりまして、必要な制度的措置を整備するため、本国会にCCS事業法案を提出させていただいているところでございます。また、世界的にも、ノルウェー、カナダ、英国、オランダ、米国などにおいてCCSを実施又は計画している事例が存在をしていると承知をしております。

 引き続き、二〇三〇年までのCCS事業開始に向けて、事業環境の整備を積極的に進めてまいる所存でございます。

金城委員 基本的な部分を教えていただきまして、ありがとうございます。

 海外でのCCS事業の推進の方針についてお伺いしたいと思います。

 CCS事業の普及、拡大には事業の大規模化とコスト削減が不可欠であり、輸出する際には、受入れ国の技術水準や管理体制、コストなども確認する必要があると考えます。受入れ国に求める要求水準が高いように思いますが、今後、どのような地域を対象に、どのように海外におけるCCS事業を推進していくおつもりでしょうか。政府の考えをお伺いしたいと思います。

吉田大臣政務官 お答え申し上げます。

 外国において海底下の地中にCO2を貯留する目的でCO2を輸出する際には、今審議いただいております改正ロンドン議定書に基づき、受入れ国との協定の締結や取決めが必要となります。

 輸出の対象となる地域を検討するに当たりましては、我が国からのCO2の受入れの意思があり、CCS事業をロンドン議定書の求めに即して適切に規定しており、貯留量やコストなどの貯留の諸条件が我が国の企業にとって受け入れられることなどの要素を考慮することが重要となります。

 既にカーボンニュートラル宣言を行った国の中では、脱炭素化のためにCCS技術や操業ノウハウの獲得を求めているものが存在してございます。こうした国に対し、そのニーズを踏まえてCCSに関する技術移転や貯留事業の共同実施を含めて対応を検討し、我が国と受入れ国双方の経済成長やカーボンニュートラル実現に資するなど、互恵的な関係となるように海外におけるCCS事業を推進していく所存でございます。

金城委員 政務官、答弁ありがとうございました。

 続いて、外務大臣にお伺いいたしますが、今回のロンドン議定書の改正は、我が国における二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けたCCS事業推進のために必要な改正だと考えます。一方で、受入れ国から見ますと、産業廃棄物処理の受入れという捉え方をされてもおかしくはありません。実際に、海外のCCS事業において、東南アジアなどからは、先進国が排出した二酸化炭素の受入れに反発が出ている地域もあるという報道もございます。

 我が国のGXの着実な推進と国際社会全体への貢献に資する外交政策の展開が必要と考えます。海外CCS事業の推進に当たって、受入れ国側の理解を得るために外務省として具体的にどのような取組を行っていくおつもりでしょうか。外務大臣の御見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けまして、CCS事業は、二酸化炭素の大気中への放出を抑制する有効策の一つとして国際社会におきまして広く認識されているところであります。ロンドン議定書改正の受諾を通じまして、国をまたいだCCS事業を実施することが可能となるところであります。

 実際に、二酸化炭素の貯留の潜在的な可能性を持つ国の中には、CCSに関します技術移転や、貯留事業の共同実施を通じました二酸化炭素を含んだガスの受入れを積極的に模索している国もございます。

 我が国といたしましては、二酸化炭素を含んだガスを輸出する際は、本議定書その他の国際法に適合した形を確保しつつ、協議を通じ、受入れ国の意思、技術力、規制の整備状況等を確認しながら、まさに双方の利益になるような形で進めていくところであります。

 なお、世界の脱炭素化に向けましては、各国の事情に応じた多様な道筋の下、ネットゼロという共通のゴールを目指すことが重要であると考えております。我が国のあらゆる技術、エネルギー源を活用してイノベーションを推進し、各国の取組を後押ししながら国際社会をリードしてまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、御答弁ありがとうございました。

 続きまして、国際復興開発銀行協定の改正についてお伺いいたします。

 国際復興開発銀行、IBRDは、一九四五年の第二次世界大戦後、戦争破壊からの復興と開発途上国における生産施設及び生産資源の開発を活動目的として、米国主導で設立された国際開発金融機関であります。近年は、各国の紛争以外にも、気候変動やパンデミック等の国境を越える課題による貧困や不平等の深刻化や拡大が見られ、国際開発金融機関のニーズの高まりを感じております。

 今回の改正は、国際開発金融機関の既存資本を最大限活用するためのG20の取組である、自己資本の十分性に関する枠組み見直しの提言を踏まえて実施されるものとしておりますが、協定改正の背景と意義、そして、融資などの上限を撤廃することによる具体的な効果と国際社会への影響について政府の御見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 国際社会におきましては、気候変動や感染症等の地球規模課題の深刻化に加えまして、国際社会全体が様々な複合的な危機に直面しております。また、SDGs達成に向けた進捗が大きな困難に直面する中にありまして、国際復興開発銀行を始めとする国際開発金融機関に対しまして、特に資金面を始めとする支援ニーズが高まっている状況であります。

 こうした状況を受けまして、G20の取組といたしまして、国際開発金融機関の既存資本を最大限活用するための方策を検討する、自己資本の十分性に関する枠組みの見直しが進められておりまして、二〇二二年の七月には独立パネルの提言が提出されたところでございます。

 今回の改正は、その提言におきまして融資上限の撤廃が求められたことに対応して行うものでございますが、同改正によりまして、国際復興開発銀行が中長期的に、限られた既存資本の効率的な活用を通じまして融資余力の拡大を図り、開発資金ニーズの増加に対応することが可能となるところであります。

 政府といたしましては、本改正が途上国による地球規模課題への対応に対する支援強化につながるものであり、大変有意義であると考えているところでございます。

金城委員 大臣、ありがとうございました。

 続きまして、欧州復興開発銀行設立協定の改正についてお伺いしたいと思います。

 欧州復興開発銀行、EBRDは、冷戦終了後に、旧ソ連や中東欧諸国における民主主義や、市場経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を支援するために、一九九一年四月に設立された国際開発金融機関であります。

 今回の改定では、EBRDがグローバルサウス諸国でもある限られた数のサブサハラ・アフリカ諸国も受益国の対象とすることを可能にするものということですが、今回の協定改正の背景と意義、具体的な効果と国際社会への影響について政府の御見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 まず、改正の背景と意義という御質問でございますが、サブサハラ・アフリカは、開発上の支援ニーズが非常に高く、現在のEBRDの受益国との結びつきの強い地域であります。この地域に対しましてEBRDがその目的とする開放された市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動の促進を達成するために業務を行うことは、この地域の経済発展に大変有意義であると考えているところであります。

 また、具体的な効果と国際社会への影響についての御質問でありますが、この改正発効後におきましては、EBRDの受入れ国に選定されるサブサハラ・アフリカの加盟国につきましては、現行のEBRD受益国と同様に、貸付けや投資を含む支援を受けることが可能となります。EBRDが主に民間部門を対象として培ってきたノウハウも活用することができるものと期待されるところであります。

 国際情勢が不透明さを増す中にありまして、サブサハラ・アフリカ地域におきましては、テロや紛争等によりまして多くの難民や避難民が発生し、その多くが脆弱な女性や子供となっている状況であります。この地域に対しまして貸付けや投資を含みます支援を実施し、経済発展を通じた社会の安定化に貢献することは、ウィメン・ピース・アンド・セキュリティー、WPSの視点からも大変有益であると考えております。

金城委員 最後に、両復興銀行の日本人職員の増加策について伺いたいと思います。

 我が国は、IBRDとEBRDの出資国のうち、米国に次いで第二位の出資、拠出を誇っております。今後、日本人職員や幹部職員を増やす取組を政府としてどのような戦略を考えているのか、伺いたいと思います。

勝俣委員長 矢倉財務副大臣、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

矢倉副大臣 日本が国際社会の持続可能な開発をリードする意味でも、IBRD、EBRDなどの国際機関で勤務する日本人職員や幹部職員の増加は大変重要であると政府として認識しております。

 これまで、両銀行の幹部の方との面会の機会などを捉え、日本人職員の積極的な採用、昇進を要請するとともに、主要会議において両銀行における職員の多様化の重要性を強調するといった働きかけを行ってまいりました。

 こうした働きかけを受けまして、両銀行は具体的に、各東京事務所と連携しつつ、日本人採用のための採用チームの派遣や広報ビデオの作成、幹部を含む職員による日本の大学等での学生向けの講演やキャリアセミナーの実施、海外で学ぶ日本人留学生向けの職員対談などの取組も行ってきたものと承知しております。

 今後とも、両銀行に対して日本人職員や幹部職員の増加に向けた取組をしっかり求めてまいります。

金城委員 答弁ありがとうございました。

 終わります。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 欧州復興開発銀行を設立する協定の改正に関し、欧州復興開発銀行の支援対象が今後サブサハラ・アフリカ諸国に拡大するとのことでありますが、その理由及び改正を受諾する意義がどこにあるか、お伺いします。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正は、欧州復興開発銀行、EBRDが総務会において決定する限られた数のサブサハラ・アフリカの加盟国においても、EBRDがその目的とする開放された市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動の促進を達成するために業務を行うことを可能とするものでございます。

 サブサハラは、開発上の支援ニーズが高く、現在のEBRDの受益国との結びつきが強い地域でございます。この改正発効により、この地域に対し、現行のEBRD受益国と同様に貸付けや投資を含む支援を受けることが可能となりますけれども、EBRDが主にこれまで民間部門を対象として培ってきたノウハウも活用できるようになることが期待されます。この地域に対してこのような支援を行うことは有意義であると考えてございます。

松原委員 通告しておりませんが、大臣、日本は、従来、アフリカとはほかに比べて関係が弱いという認識を持っておりますが、今回サブサハラ・アフリカ諸国に拡大することは、日本の外交力の強さを高めることになると私は期待しております。答弁をお願いします。

上川国務大臣 日本は、アフリカに対しましては、TICADの枠組みの中で関係国との関係を高めるべく、この間粘り強く努力してきたところであります。

 まさに委員御指摘のとおり、今、サブサハラを含めますアフリカの地域は、人口増もございますし、また、鉱物資源等も含めますと大変潜在力のある地域でございますので、こうした改正によります効果を日本との関係強化のための大きな手段としてうまく活用していく必要がある、積極的にそれを活用していくことが必要だと思っております。

松原委員 すばらしい答弁だと思います。他の質問もすばらしい答弁をいただきたいと併せてこの場で私は頭を下げてお願い申し上げます。

 次に、協定上の融資の上限を撤廃するということでありますが、それに代わる融資のリスク管理は適切に行われますでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 本改正により撤廃される協定上の融資の上限とは別に、EBRDは既に融資ごとのリスク評価に応じて必要資本額を定める等のリスク管理手法が導入されてございます。現存の払込資本準備金等の範囲内で融資のリスク管理を適切に実施する体制が確保されてございます。

松原委員 次に、廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する議定書改定でありますが、この手法によってどれだけの二酸化炭素が日本又は世界において地中に貯留される、その見立て、見通しをお伺いします。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、世界でございますが、二〇二三年版のIEAの世界エネルギー見通しでは、二〇五〇年時点の世界全体のCO2回収量は約三十七億トンから六十億トンでありまして、これは現在の世界の排出量の約一、二割に相当する水準です。

 また、我が国についてですが、二〇二三年三月に策定したCCS長期ロードマップにおいて、二〇五〇年時点のCCSによる想定年間貯留量の目安を一・二億トンから二・四億トンと推計してございます。これは、CCSに関する有識者の議論や政策的な検討を行うため、一つの材料としてお示ししたものでありますけれども、現在の我が国のCO2排出量の約一、二割に相当します。これは他の主要国が設定している想定とほぼ大差ない水準でございます。

松原委員 いずれにしても、CO2対策というのは地球温暖化を抑止するために極めて重要でありますから、更にこの数字が上がるような技術的な努力も含めてお願いしておきたいと思います。

 二酸化炭素、CO2が貯留されるというのは極めて大胆な発想だと思っておりますが、リスクがどうなのか。つまり、地震等によってこの貯留されたものが外に漏れ出してくる可能性がないのか、非常に心配しております。地震が来た瞬間にぶわっと地表にCO2が出てきたら困ってしまうわけであって、この点のリスクはどうなのか、お伺いいたします。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 CO2の漏えいの可能性でございますけれども、CO2を貯留する層から地上に至る断層や、CCS事業などに利用する井戸が漏えいの経路となり得ます。リスクはございますけれども、公益財団法人地球環境産業技術研究機構、RITEによれば、これまでにCO2の漏えいが発生したとの報告例はないと聞いております。

 我が国におけるCO2の貯留に対しては、今国会に提出しておりますCCS事業法案では、CO2の漏えい防止の観点を含む必要な安全性を確保するため、貯留事業を実施する場所の選定やCO2の注入に当たって事業者に適切なリスクマネジメントを求めることとしております。

 絶対漏れないという断定はできませんけれども、国としても、最新の科学的知見を踏まえて、地質学などの外部専門家の意見も聞きつつ、適切に審査、監督を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 我々日本は地震列島でありますから、リスクはほかのところよりは高いと思っておりまして、これ以上は質問しませんが、それを楽観視していると、ほかではうまくいったが日本では駄目でした、こうならないように強く要請しておきます。

 次に、四月二十九日から拉致議連、家族会、救う会の三団体が、私も何回も行っているんですが、ワシントンを訪問して拉致問題についての様々な意見交換や啓蒙をする機会が訪れます。私も拉致議連の幹事長として、今回は参加できないんですが、この場でこの会合に対する外務大臣の強いエールを御期待申し上げます。一言お願いいたします。

上川国務大臣 北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の家族会及び北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会が四月二十九日に米国を訪問する御予定であると承知しているところであります。

 拉致問題の解決のためには、我が国自身の主体的な取組に加えまして、アメリカを始めとする国際社会との緊密な連携が極めて重要であると認識しております。

 こうした観点から、昨年を含めましてこれまで行われました三団体によります米国訪問も、米国関係者の拉致問題に対しての理解を深める上で非常に有意義であったと考えているところであります。

 今回の三団体の米国訪問につきましても、引き続きしっかりと支援してまいりたいと考えております。

松原委員 ありがとうございます。極めて重要な発言だと思っております。

 前回、おとといの質問で私は申し上げましたが、拉致に関しては、北朝鮮側の反応は昨年来より非常に前向きであったが、三月に入って急転直下、一気に変わってしまったと指摘しました。政府としてはなかなかお認めいただけないかもしれないけれども、明らかに態度が変わっているということは私は諸般関係者から聞いております。

 くどいようでありますが、私は外務省は尊重したいと思っておりますが、これは外交交渉というよりは、もちろんその要素がゼロとは言いませんが、人質解放交渉でありますがゆえに、前回申し上げたように、実務的な北朝鮮との交渉は、このことに二十年、三十年、ずっと知見を使い、時間を使ってきた拉致対策本部の事務局に是非ともそれは委ねてほしい。

 そうしないと、私は、被害者家族と被害者の抱き合う姿は外務省主導で生まれるんだろうかと若干疑念を持っております。もちろんそれが杞憂であればいいんですが、是非ともそれは強く要請したい。一言コメントしてください。

上川国務大臣 政府を挙げて、また、国民の皆さんも支援をしながら、拉致問題を一日も早く解決できるように全力を尽くしてまいるということであります。これは、総理自身がしっかりと直轄でやっていくというメッセージを発しているところでありますので、その下でしっかりと対応してまいりたいと思っております。

松原委員 分析をしていただきたいわけでありますが、総理が首相直属のと言ってから話がちょっと変わってきた。この切れ目が変わったのはこの場でおっしゃらなくても分かっているはずですから、より注意してください。

 次に、前回の積み残しであります。

 中国の国防動員法第九章四十九条。満十八歳から六十歳の男性公民と満十八歳から五十五歳までの女性公民は国防役務を担当しなければならないとあります。

 政府参考人にお伺いしますが、中国のパスポートを持つ日本にいる中国人はこの場合の中国公民に該当するでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 中華人民共和国憲法には、中華人民共和国の国籍を有する者は全て中華人民共和国公民であるというふうに規定されていると承知しております。また、中華人民共和国旅券法には、中華人民共和国旅券は中華人民共和国公民が国境を出入りし並びに国外において国籍及び身分を証明する証書であるとの規定があると承知しておるところでございます。

松原委員 その承知していることを考えれば、中国のパスポートを持って日本にいる中国の方は中国公民である、こういうことでよろしいですね。

 さて、そこで、同じ九章四十九条の六項目めに、政府間国際機関に役務している者は国防役務を担当することを免除する、こういうふうに書いてあります。このことは、解釈すれば、例えば、ニューヨークの国連事務所に勤務している中国公民は国防役務を免除されるというふうに理解できると思っております。御所見をお伺いします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 中国の国防動員法は他国の法律でありまして、その個々の規定の解釈、運用について日本政府としてお答えする立場にはございませんが、御指摘の国防動員法第九章四十九条及び同条六に、満十八歳から満六十歳までの男性公民と満十八歳から満五十五歳までの女性公民は国防役務を担当しなければならないが、国連などの政府間国際機関に役務している公民は国防役務を免除されるというふうに規定されていると承知しております。

松原委員 ニューヨークにおける国連事務所に勤務している人間は国際機関に役務している者という認識でよろしいか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、他国の法律の個々の規定の解釈、運用についてお答えする立場にはございませんけれども、先ほども申し上げましたとおり、国連などの政府間国際機関に役務している公民は免除されるという規定があると承知しております。

松原委員 これは極めて重要なことでありまして、つまり、適用除外、免除規定というのがあって、国連職員は免除なんですよ、公民であっても。よろしいですか。

 あと五項目は言いませんが、妊娠している方とか病院で働いている方とかは免除なんです。国際的な病院で働いていてもいいんですよ。免除されます。

 ということは、政府参考人にお伺いしますが、中国公民で、日本で中国のパスポートを持っている人間で、国際機関に働いていない若しくは免除される六項目に属していない人間は国防動員法の対象者になるのではないかと思います、規定がありませんが。その辺をお伺いしたい。法的な解釈。

門脇政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のまさに法律の解釈ということになりまして、他国の法律の解釈でございますので、我が国としてお答えする立場にはございませんけれども、御指摘の国防動員法については、海外在住の中国公民へのその適用に関する明示的な規定は置かれていないということについては確認して承知しております。

松原委員 明示的な規定が置かれていないが、国連職員等は明示的に除外すると書いてある。

 除外すると書いていないということは、これは解釈がなかなか難しいが、国防動員法がなされた場合、海外の公民はどういう行動をするか分からない、こういうことであります。それにひっかかるのかひっかからないのかも分からない、適用除外されていないということは理解される。大臣、これでよろしいですか。

上川国務大臣 今答弁したとおりと理解しております。

松原委員 日本国内にも多くの中国パスポートを持っている中国公民はいるという認識でありますが、通告していませんが、答えられる人はいますか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 人数は、済みません、手元に資料がございません。

松原委員 その人たちに対しては国防動員法が適用除外にはしていない、法文上。大臣、このことだけはお認めください。発言してください。

上川国務大臣 国防動員法につきましては、海外在住の中国公民へのその適用に関する明示的な規定はないものと承知しております。

松原委員 明示的な規定がないということは大変ですよ。秘密警察があったりする、組織的な様々な動員があったりする、こういったことを彼らがしない保証はないということを大臣は今言ったんだと私は認識しております。少し危機感を持った方がいいと私は思っております。

 次は、范雲濤教授が失踪しました。人権、人道上の観点から外務省はどう考えているか、大臣。

上川国務大臣 范雲濤教授は、長年にわたり我が国の大学におきまして教職に就かれている方であります。この教授の人権に関わり得る事案でもあるということでございまして、今関心を持って本件を注視しているところでございます。事柄の性質上、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 我が国は、国際社会において普遍的な価値であります自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした観点から、これまでも様々な機会を通じまして、中国においての人権状況といった懸案につきまして様々なレベルで中国側に直接伝達してきているところでございます。

松原委員 そこでお伺いしたいわけでありますが、今回の范教授の失踪について、中国に対してこの案件で外務省は申入れをしたでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、范教授の人権に関わり得る事案でございます。関心を持って本件を注視しておりますけれども、事柄の性質上、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 人権に関わる問題であると林官房長官が提起したのは評価しているんですよ。評価しているんですが、そうであるならば、では、まず、大臣、何でこれは犯罪ではなく、人権に関わる問題だと判断したのか、お答えください。

上川国務大臣 今御質問のところで委員から述べられたとおり、中国帰国後にいまだ戻っていらっしゃらないということ、このことを捉えて、どのような状況にあるかということの状況を注視しているという状況でございます。

松原委員 なかなか明示的におっしゃらないが、人権問題であるという認識を持っているんだと思うんですよ。

 その際に、この范教授のことで外務省は中国に抗議をしたんでしょうね。大臣はそのことを知っているはずだ。お伺いします、大臣。

上川国務大臣 繰り返しになるところでありますけれども、この教授の人権に関わり得る事案であるということでございまして、先ほど申し上げたとおり、関心を持って注視しているところでございます。

 これ以上のコメントについては、事柄の性質上、控えさせていただきたいと思っております。

松原委員 それが間違っているんですよ。いいですか。それが間違っている。何で明示的に言わないんですか。大臣が言ったなら大臣が私が言いましたと。担当の政府参考人が言ったなら私が言いましたと。

 この案件に関して日頃から法治国家であるべきだということを言っていますというのはそれはそれで大事ですよ。しかし、我が日本において鑑真の研究をしているこの教授が失踪したとマスコミは一斉に騒いでいますよ、共同通信から読売新聞だって日経新聞だって。これだけ我々が関心を持って、しかも、政府は人権問題であると官房長官が提起している。なぜこの問題に関して中国に対して、人権問題という観点からそれはどうなっているんだと。我が日本に永住資格か何かの資格で、彼は京都大学を出ていますよ。三十年日本にいますよ。確かに国籍はさっき言ったまさに中国公民かもしれない。しかし、彼に対して、その思い、日本の国のプライドを持って、明示的に何でこういうことをやったんだと言わぬのですか。そういうことを口をつぐんで言わないというところが日本の国の問題だと私は思っております。

 大臣、もうちょっとその辺は毅然としてもらいたい。事柄の性質上じゃないだろう。全く残念ですよ。恐らくこれ以上は言わぬでしょう。これ以上お答えできないんでしょう。岸田政権のやり方でできないんでしょう。できるなら答えてください、大臣。

上川国務大臣 今申し上げたところでございます。人権に大変関わり得る事案でございますので、事柄の性質上、これ以上のコメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 逆なんですよ。事柄の性質上、言わなきゃ駄目なんですよ。言ったか言わないかも言わない。どのレベルで言ったか言わないかも言わない。何ですかそれは。いる意味がないじゃないですか。黙っていればいいという話じゃないと思うんです。この場は委員会だから、家に帰って真剣に考えてくださいよ。日本の外務大臣として、ノーコメント、ノーコメント、ノーコメント、ノーコメント、これがふさわしいのか考えたらいいですよ。

 どのレベルで言ったか明示的に言うことのデメリットなんてないと思う。日本が人権国家であるならば、あなたたちはそれすら言わないのと海外は思いますよ。いいですか。

 何かあったら答えてください。

上川国務大臣 人権に関わることにつきましては、世界で起きていることも含めまして、一人一人の人権に関わることでありますので、この点については極めて憂慮する事態というものを想定しながら、様々な考え方でこの問題についても立ち向かっていく必要があるというふうに思っておりますが、この懸案につきましては、教授の人権に関わることでありますので、事柄の性質上、これ以上のコメントについては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 いつもながら非常にがっかりする答弁でして、もうちょっと切れ味のいい答弁をしてくださいよ。

 人権問題だというところまでは、林さんがよく提起したなと。でも、それで黙っちゃった。言わなきゃいかぬでしょう。言うことのデメリットより言わないことのデメリットの方がはるかに大きい。全部外交の性質上と言っているけれども、そんなことをしたら、ばんばんそういうことを言っている国が得をするんですよ。中国はばんばん言っているじゃないですか。本当に言うべきじゃないことは言わないけれども、言うべきことは国益にかなうんだから言うんですよ。

 国益にかなうことすら言わない。日本は人権大国としてこの問題は言う。この教授の個別の問題は言う。国益にかなうじゃないですか。それを言わないのはどういうことですか。がっかりしますよ。

 次に、この前質問しましたアメリカ下院議員の、ガザに広島、長崎のように原爆を落としていいと。これは、本人がそれを撤回したと言っている。これは本会議場で、玉木議員の質問に対して、総理が不適切だと言ったということであります。

 大臣、このウォルバーグ下院議員の発言に対しての御所見をお伺いします。

上川国務大臣 今回の岸田総理の米国公式訪問におきまして、岸田総理大臣も私も御指摘のティム・ウォルバーグ米国連邦下院議員の発言について個別に取り上げるということはいたしませんでしたけれども、岸田総理大臣は、日米首脳会談や連邦議会での演説等におきまして、核兵器のない世界の実現に向けた取組の重要性について改めて訴えたところであります。

 岸田総理大臣は、四月十八日の衆議院本会議におきまして、同議員の発言は適切ではないと考えている旨、答弁したところであります。

 私も、四月三日の衆議院外務委員会におきまして、委員の御質問をいただいた際に、同議員が核兵器の使用を容認するかの発言を行い、これがメディアを通じて拡散していることを大変憂慮しておりますと答弁させていただきました。その認識であります。

松原委員 メディアを通して拡散していることを憂慮する。意味が分からないですな。その発言は構わないが拡散していることを憂慮する、そういう御認識なんですか。時間がないから簡単に答えてください。大臣、拡散していることを憂慮する。一体どういうことですか。答えてください。

上川国務大臣 ウォルバーグ米国連邦下院議員が御指摘のような発言を行いまして、これがメディアを通じて拡散されたことについて大変憂慮している状況であります。

 このような同議員の発言自体が、核兵器の使用を容認しているかに受け取れる適切でないものであると考えております。

松原委員 ずっと同じ答弁原稿を読んでいるけれども、外務省、これは誰が作ったんですか、この答弁はひどいね。よっぽど無責任な人間が作ったとしか思えないな。今日座っている中にいらっしゃるんだろうけれども、とんでもない答弁だよ。

 その上で、この下院議員に不適切だと言っているということはきちっと伝わっているんですか。日本の国内で日本の国内向けにアリバイ的に不適切だと言っただけで終わったのではどうしようもないんですよ。ウォルバーグ議員に対して不適切であるということは伝わっているんでしょうね。大臣、答えてください。

上川国務大臣 この議員の発言自体につきましては、まさに核兵器の使用を容認しているかに受け取れるものでありまして、適切ではないものと考えているところでございます。ウォルバーグ議員の発言は、その意味で大変不適切であると認識しております。

 同時に、同議員がその後、声明を発出いたしまして、冷戦時代に幼少時代を過ごした身として、核兵器の使用を訴えることは決してないとして、自身の発言について釈明していることに照らし、これまでのとおり、同議員に対して抗議を行うことが必要な状況にあるとは認識していない状況であります。

 その上で、唯一の戦争被爆国でありますので、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならない、こうした信念に基づきまして、米国とも協力しながら取組を積み重ねてまいりたいと考えております。

松原委員 答弁を本人は分かっていて、心の中で申し訳ないなと思っているんでしょうね。

 いいですか。私は、不適切であるという日本政府の本会議における総理の発言を含めて、本人に伝わっているかと聞いているんですよ。日本の総理が日本の国会と国民に不適切だと言ったって、それは当たり前の話ですよ。相手に伝わっているかどうかを聞いているんですよ。相手に伝わっていることに対して全然コメントしていないということは、伝わっていないということですな。

 ウォルバーグさんは、日本の広島、長崎の被爆者は怒っているということも含めて一切分かっていないし、不適切だということで自らの発言が批判されていることも一切知らない。これでいいんですか。日本は自分の意思を誰にも言わない国家としてこれからもやっていくのかという話ですよ。

 ウォルバーグさんには、この不適切だという話を、別に大臣が言わなくてもいいですよ、北米局長が今日来ているけれども、北米局がワシントンの日本大使館から、我々の国においてあなたのこの発言は不適切と言われていますよと伝えてくださいよ。伝えることをここで約束してくださいよ。言ってください。

 本人に伝わらなければアリバイですよ。日本国内で自分たちで納得しているだけだ。言った人間に伝わらないというのは国家としておかしくないですか。総理が不適切だと言うならば、それは結構ですよ。それを相手の下院議員に伝える。総理が言わなくてもいいですよ。大臣が言わなくてもいいですよ。日本の大使館の公使か誰かでもいいですよ、伝えてください。答えてください。

上川国務大臣 まさに議員の発言ということでございますので、議員がこのように釈明をしているということであります。このことそのものは、日本における様々な言動があったということについて十分に理解した上での釈明で、それに対して同議員に抗議を行う状況にあるとは、その意味では認識しておりません。

松原委員 時間が来たので終わりますが、時系列が違うんですよ。ウォルバーグが釈明したのは総理が不適切だと言う前ですよ。ウォルバーグが釈明したのは、私がこの委員会で質問して、大臣が抗議しませんと。えっと思ったけれども、抗議しませんと繰り返し言った、その前ですよ。だから、総理が不適切だと言ったこと、大臣が今、内心、総理と一緒の思いを持っているとしても伝わっていないですよ。時系列が違う。

 勘弁してくださいよ。本当によく考えてくださいよ。そんなことでいいんですか。日本の外務大臣として恥ずかしいと思わないんですか。僕はおかしいと思うよ。

 時間が来たから終わります。

勝俣委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 IBRDの改正、EBRD協定の改正について伺います。

 現行の融資額の上限は、現在では近年のリスク管理手法と比べて過度に保守的なものになっているというんですけれども、この保守的とはどういう意味で、具体的には何をもって保守的と言っているんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の協定上の融資額等の上限につきましては、IBRD、EBRD共に、その設立時に設定されたものでございまして、これは融資等の単純な総額を資本額等までに制限するというものでございます。他方、現在は、どの国際開発金融機関におきましても、民間銀行等と同様、いわゆるリスクベースの考え方の下で、融資ごとのリスク評価に応じて必要資本額を定めるなどのリスク管理手法が一般的に用いられてございます。

 こうした状況を踏まえまして、国際開発金融機関の既存資本の活用を通じて融資余力を拡大するための、G20の自己資本の十分性に関する枠組みの見直し、いわゆるCAFレビューの提言におきまして、金融手法や慣行が現在と異なる時代において設定された協定上の融資上限というのは、現代のリスク手法の上では実現可能な融資能力を今後制限する可能性があるという評価がなされてございまして、その撤廃が提言されたところでございます。

鈴木(庸)委員 総務会で、二〇二二年四月、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアとベラルーシに対して財源の利用停止を決定したということなんですけれども、この停止の具体的な内容を教えてください。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けまして、IBRDにつきましては、二〇二二年三月二日に、ロシア及びベラルーシにおける全てのプログラムを直ちに停止するという声明を発出してございます。

 EBRDにつきましては、二〇二二年四月一日に、EBRD設立協定上の措置として、両国における全ての支援停止を内容とする財源停止に係る総務会決議を採択しております。具体的には、両国に対しまして、新規の投融資の全停止、技術支援の全停止、既存案件のディスバースの停止若しくは取りやめを行っているところでございます。また、EBRDにつきましては、モスクワそれからミンスクの事務所も閉鎖してございます。

 なお、二〇一四年のクリミア侵攻以降、両銀行によるロシア及びベラルーシに対する新規の投融資の決定は行われていないところでございます。

鈴木(庸)委員 そういう中で、七か国からスタートして、今三十八か国になっているんですけれども、国の選定には何か基準があるんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDの受益国は、一九九一年の設立時に七か国でございました。その後、旧ソ連邦を構成しました共和国がそれぞれ加盟するですとか、モンゴル、地中海の南部及び東部の諸国の加盟などを経まして徐々に拡大いたしまして、現在三十八か国となってございます。

 こうした受益国化に当たりましては、当該国が、協定第一条に規定してございますが、複数政党制民主主義、多元主義、それから市場経済の諸原則を誓約しかつ適用しているという条件がございまして、これを満たすかどうか等につきまして総務会で決定するということになってございます。

鈴木(庸)委員 となると、世銀とのアプローチの違いはどこになるんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDにつきましては、先ほど申し上げました複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則を誓約しかつ適用している中欧及び東欧の各国、モンゴル、それから総務会が決定いたします地中海の南部及び東部の加盟国を対象といたしまして、開放された市場指向型経済への移行それから民間及び企業家の自発的活動を促進することを目的としまして、生産的であり、かつ競争的である民間の分野、特に中小企業の活動の育成、改善、拡大の促進等の支援を行うことをその任務としております。

 IBRDが全世界の公共部門を中心に支援を行うということでございまして、EBRDは、中東欧ですとか中央アジア等の民間企業及び市場指向型経済への参加、移行する国有企業を中心として、開放された市場指向型経済への移行、民間及び企業家の自発的活動を促すというところに強みがございまして、支援を行っているところが特徴的だと思っております。

 具体的には、プロジェクトファイナンスを中心とした商業ベースの融資ですとか株式の一時取得を行うほか、エネルギー効率化のための助言ですとか中小零細企業への経営指導といった技術協力等を行っているところでございます。

鈴木(庸)委員 株式の一時取得とか技術指導までやっているんですね。

 両方とも日本の出資率は二位ということなんですけれども、ざっくり言って国益はどうなんですか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、新型コロナウイルスですとか、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料の不安といった、途上国が様々な危機に直面している中で、両銀行を始めとしましたいわゆる国際開発金融機関、MDBsへの支援拡大への期待が高まっているところでございます。

 こうした重要な役割を期待されております両銀行におきまして、日本が第二の主要出資国として、その発言権を確保しながら開発課題に対する議論を主導することは、国際社会における日本のプレゼンスを高めるとともに、両行の知見やリソースを活用することでより一層効率的、効果的な支援が可能となり、国際保健ですとか質の高いインフラ投資といった日本が重視しております開発課題の解決の推進につながるものと考えております。

鈴木(庸)委員 日本もIBRDからの融資で新幹線を造っているわけです。

 EBRDの方は、主に債券を発行して市場から資金を調達している、これができるのは債券市場で格付が高いからということなんですけれども、今回、融資の上限撤廃を行ったことによって格付が下がる可能性が十分あり得るところで、こういうときに調達しづらくなるリスクというのはどの程度あると考えていらっしゃいますでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたが、両銀行におきまして、協定上の融資額等の上限によらず、現在、リスクベースの現代的な手法に基づいてリスク管理の下で業務を既に実施してございまして、格付会社からも高い格付を得ているところでございます。

 また、両銀行の総務会におきまして融資額等の上限の撤廃に関する協定改正に係る決議が採択されて以降、格付会社から何らかの指摘等がなされたということはございませんで、今般の協定上の融資上限の撤廃が格付に影響するということは考えづらいのではないかと認識しているところでございます。

鈴木(庸)委員 先ほど出資率二位ということだったんですけれども、投票権のシェア率は今どうなっているんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 IBRDにおけます日本の投票権シェアは、現在約七・二%となってございます。

鈴木(庸)委員 七・二%、これはほとんど変わっていないんですか、若干上がっているという理解でよろしいんですか。なければいいです。これは通告していないのでいいです。分かりました。

 質問を一つ飛ばさせていただいて、IBRDでは、一人当たりのGNI、グロス・ナショナル・インカムが六千七百九十五ドルを超えた国については卒業に向けた議論を開始するという規定があると承知しているんですけれども、中国はこの卒業基準をはるかに超えているわけですね。約一万三千ドルですから。それでも依然IBRDの主要の貸出先になっております。

 中国は、御案内のように、一帯一路を掲げてアジアやアフリカへの融資を増やしているわけでございます。IBRDからの多額の資金調達を懸念する声も上がっているわけなんですが、このことについて大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 IBRDによります支援からの卒業につきまして、一人当たり所得等を基準とした上で、柔軟かつ段階を追って進めるべく運用されてきているものと承知しておりますが、中国の一人当たり所得は既にこの基準を超えているということであります。こうした中におきまして、我が国はこれまで一貫して、IBRDによります支援からの中国の速やかな卒業を促していくことが重要である旨、主張してきてまいりました。

 こうした我が国の主張も踏まえまして、二〇一九年の十二月に世界銀行グループが公表した対中支援方針では、中国向け融資について、融資量を縮減するとともに、融資対象を国際公共財等に限定する等の方向性を示しており、実際に、足下の国際復興開発銀行によります中国向け融資は減少しているところであります。

 引き続き、中国の国際復興開発銀行からの卒業が速やかに図られるよう主張してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 既得権益になってそれがずっと続くようなことがないように、ちゃんとルールに従ってやってもらえるように声を上げていただきたいと思います。

 今回、融資上限の撤廃がなされるということなんですけれども、これによって更にどういった民間部門への投資効果の向上が期待できるのでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDにつきましては、民間部門に対する業務を中心に行ってございまして、例えば、プロジェクトファイナンスを中心とした商業ベースの融資、株式の一時取得、エネルギー効率化のための助言、中小零細企業への経営指導などの技術協力をやってございます。

 今回の融資上限の撤廃によりまして、今後、このようなEBRDの強みを生かしまして、民間セクターへの更なる投資を呼び込むということが期待されてございまして、途上国が直面する課題への対応が強化できるものと期待してございます。

鈴木(庸)委員 その期待できるということの中で、EBRDの受益国にウクライナが入っております。ウクライナにはいろいろな国がいろいろな支援をしているので、支援の交通整理がどうなっているのかなという疑問も湧いてくるところなんですけれども、今後のウクライナ復興のフェーズでどういった役割をEBRDは果たすことができるんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナの支援につきましては、民間の資金、技術、ノウハウを動員して対応していく必要があると考えてございます。こうした観点から、EBRDは地域の国際開発金融機関でございまして、市場指向型経済への移行、民間及び企業家の自発的活動を促進するというEBRDの役割が重要であると考えてございます。

 ロシアによる侵略以前からEBRDはウクライナに対する支援を積極的に行ってきてございますけれども、昨年の十二月に、今後のウクライナの復興需要に対応することを目的としまして、総額四十億ユーロの増資をEBRD総務会で決定しているなど、今後も一層ウクライナ支援に取り組んでいくこととしているところでございます。

 EBRDの強みを生かしまして、今後の復興段階で、民間セクターの支援、国有企業支援等で重要な役割を果たすことが期待されると考えております。

鈴木(庸)委員 更問いなんですけれども、EBRDが対象とする案件というのは、ウクライナは今いろいろなお金が入ってきていますけれども、EBRDはどうやって投資案件を見つけてくるんですか。済みません、これは通告していないんですけれども、今のでお答えを聞きたいんです。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDにつきましては、ウクライナにも事務所を持ってございまして、もちろん、先生御指摘のとおり、世界銀行ですとかほかの連携する機関とも相談しつつ、現地の方で案件を開拓し、需要を見つけた上でそれを支援するということをやっているところでございます。

鈴木(庸)委員 同じくEBRDの受益国にヨルダン川西岸及びガザ地区が含まれているんですけれども、これはほぼ壊滅しているような状態ですが、この地域については今後EBRDはどうやってプレゼンスを持っていく予定でしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 パレスチナ自治政府につきましては、EBRDに加盟しておりませんものですから、加盟国の出資を基にして支援の対象にするということはやってございません。

 一方、EBRDは、パレスチナ自治政府の要請を受けまして、二〇一七年以降に信託基金を通じましてヨルダン川西岸、ガザ地区における民間セクターへの支援を行っております。昨年二〇二三年末時点で九千万ユーロを超える支援を実施しているところでございます。

鈴木(庸)委員 僕の質問は今後どうなるかという話なんですけれども、今後は決まっていないという理解でよろしいでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDにおきましてはパレスチナ支援向けの信託基金というものを設けてございまして、その一つは、EBRDの純益に財源を求めた信託基金でございまして、もう一つは、ほかのヨーロッパの国がドナーになった信託基金でございまして、こういったものを通じて、今後、信託基金の下でどういう支援をしていくのかを議論していくということでございます。

鈴木(庸)委員 まあ、そうですよね。まだ決まっていないということですよね。

 あと、ジョージアとかキプロス、アゼルバイジャンやアルメニア、さらに旧ユーゴの国々など、実際に紛争があった国においてこれまで具体的にどういった復興支援に従事してきたんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 EBRDは、現在のウクライナ同様、紛争があります受益国がおるものですから、ほかの世銀等の国際機関ですとかドナー国とも連携して、民間セクターを中心に復興支援を行ってきてございます。

 例えば、今名前を出していただきましたアゼルバイジャンとアルメニアにつきましては、中小零細企業の資金アクセスですとか、ビジネス活動の再開、インフラのリハビリテーションなどの支援を行ってきております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 同じように、余り治安のよくないところというか、紛争が起こっているところでサブサハラ・アフリカがあるんですけれども、二〇二二年の十月の総務会でサブサハラ・アフリカの加盟国を受益国に追加するべきであるということで一致したということなんですけれども、具体的にこの地域だと活動はどのような活動になるんでしょうか。同じような活動になるんでしょうか。この地域に特別な何かがあるんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、具体的には、EBRDは民間部門の支援、市場指向型経済に移行する国有企業等への支援というところに強みがございますので、例えば、中小企業に対する助言の提供ですとか、金融機関の中小企業向け融資の指導、貿易金融の提供といったところでその付加価値を発揮できるのではないかと思っております。

 これは以前の取組事例でございますが、例えば、北アフリカで取り組んだ事例を申し上げますと、モロッコ、エジプト、チュニジアにおける中小企業向けの経営改善支援ですとか、モロッコの電力市場の自由化の支援をやってございますので、同様なことが今後考えられるのではないかと期待しております。

鈴木(庸)委員 ただ、政情不安定な国も少なくない中で、結構面倒見がいいんだなと思ったんですけれども、EBRDとして、中小企業等に貸したときの利子率というのは、今までのとアフリカのケースというのは何か変化が出てくるようなことはあるんでしょうか、それともケース・バイ・ケースということになるんでしょうか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 サブサハラ・アフリカの加盟国が受益国になった場合につきまして、EBRDは銀行でございますので、既存の受益国同様、融資先のリスクに応じまして金利、期間を適用することが想定されてございます。

鈴木(庸)委員 そうですよね。

 次に、ロンドン条約一九九六年議定書二〇〇九年改定について伺わせていただきます。

 まず、海底下へのCO2の貯留について、日本は許可制と承知しているんですが、この許可というのはどのようなときに下りるんでしょうか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、海底下の二酸化炭素の貯留につきましては、これまで、海洋汚染等防止法におきましてロンドン議定書担保のための許可制度を設け、運用してまいりました。

 海洋汚染等防止法では、事業者は、事業の実施計画、監視計画及び海洋環境への影響に関する事前評価書を提出することが求められております。これらの申請書類に基づき、地層構造の安定性、監視の項目、方法、頻度、海洋環境に及ぼす影響等を審査し、CCSの実施が当該海域の海洋環境の保全に障害を及ぼすおそれがないと認められる場合に許可することとしております。

 答弁は以上です。

鈴木(庸)委員 状況によってということは当然だと思うんですけれども、ただ、海底のCCSの設置の工程を全体から見たときに、鉱業の関係法とか、先ほどおっしゃった海防法とか、実際には様々な規制がぐちゃぐちゃになっているようなイメージがあるんですけれども、こうした中、今後、この許可制をもってしていろいろな問題の整合性というのは取れるとお考えでしょうか。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、海域におけるCO2の貯留は、先ほどの海洋汚染等防止法において規制しております。他方で、陸域も含め、民間企業による安定的かつ安全なCCS事業の実行を確保するための包括的な法律はまだないというのが現状でございます。このため、昨年七月に閣議決定したGX推進戦略において、二〇三〇年までのCCS事業開始に向けて制度的措置を講ずるとしたところでございます。

 これを踏まえて、今国会にCCS事業法案を提出し、事業に必要な許可制度や事業規制、保安規制などの措置を講ずることとしてございます。また、このCCS事業法案におきましては包括的な事業法の整備を行うことになりますので、現行の海洋汚染等防止法に基づく海域における貯留事業に関する規制は本法案に一元化することとしてございます。事業者にとって二重規制にならないようにしているところでございます。

 加えて、様々な他法令のお話がございましたが、貯留事業などの許可を行う際には、鉱業、農業、漁業などの他の産業への悪影響を及ぼさないことを経済産業大臣がしっかりと確認するということになってございます。

 これらを通じまして他の法令等との整合性を確保し、CO2の安定的な貯留やCCS事業の適切な運営を実現していく考えでございます。

鈴木(庸)委員 CCSですけれども、環境影響評価法の対象とされていないということでよろしいんですよね。されていないなら、なぜそうなっているのかを伺えればと思うんですが。

大森政府参考人 お答えいたします。

 CCSは環境影響評価法の対象ではございません。

 今国会に提出いたしましたCCS事業法案におきまして、事業の許可や事業実施計画の認可、事業実施中のモニタリングの義務づけなど、貯留した二酸化炭素が貯留層から一般環境中に漏出することを防止するための規制的措置が設けられております。また、許可の際には、利害関係者の意見提出や自治体への協議規定といった合意形成手続も設けられております。特に、海域の底生生物は二酸化炭素による影響に対し脆弱であることから、海域で実施する事業につきましては、事業者が実施の際に周辺環境への影響の事前評価を行い、環境大臣が確認することとしております。

 CCS事業における環境保全はこのような規制的措置や合意形成手続によって確保することとしておりますが、加えて、CCS事業を環境影響評価法の対象とする必要があるか否かにつきましては、今後の事業の動向を注視し、検討を深めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 済みません、時間がなくなったので、最後、東南アジアに輸出して地中に埋めるという計画が十三件に上るということですけれども、現地で反発を受けているということなので、しっかりと現地の理解を確保しながら進めていただければと思います。

 終わります。

勝俣委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 おはようございます。立憲民主党の小熊慎司です。

 質疑に入る前に、委員長、理事の皆様に申し上げますが、この大事な外務委員会、野党は一〇〇パーそろっていて、ほぼほぼずっと見ていたけれども、与党が五割から六割しかいない。大事な外務委員会でこれはどういうことなのか。

 委員長、是非理事会で、特に野党筆頭においては、与党の責務をしっかり意見していただきたいし、与党筆頭においては、このだらしなさ、今は自民党内も派閥もなくなってぼろぼろになっているけれども、委員会は公務なんですからちゃんとしてもらわなきゃいけない。

 まして、上川大臣は秋になったら総理になるかもしれない、そういう重要な大臣が来ているこの委員会、しかも、世界各国が注目している委員会ですよ。

 委員長、是非これを理事会で協議してください。

勝俣委員長 理事会で協議いたします。

小熊委員 質疑に入ります。

 条約の質疑の前に、おとといの質問の際に残した件がありまして、日本はもしカミとなっていますけれども、まだもしカミは言っていないのかな。もしリツもあると聞いているんですが。

 もしトラで、個人のことは関与しないということでありましたが、麻生さんのトランプ大統領との会談です。

 トランプ・リスクをどうするかというのは、日本政府として本当はやった方がいいと思っているんです。だって、イギリスだって外相が会っているんですよね、今月。ただ、あれだけバイデンさんに歓待された後に行ったのがどうかという疑問は投げかけましたし、やるのであれば、政府の人間が会っている国もあるわけですから、これも検討しなきゃいけない。やり方がちょっと中途半端だったという指摘をさせていただきました。

 確認ですけれども、我々も海外に行ったとき、国会議員として便宜供与を外務省から受けさせていただいて、充実した海外視察をさせていただいていますけれども、今回の麻生さんの訪米に関する便宜供与、また、トランプ会談に関する便宜供与はどのように行われたか、確認させてください。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の麻生自民党副総裁の訪米に際しましては、麻生太郎衆議院議員事務所からの依頼に応じて、外務省の便宜供与基準にのっとって対応いたしました。具体的には、出入国支援、借り上げ車両の手配、宿舎留保及び現地情勢ブリーフを行ったところでございます。

小熊委員 会談に当たって特段努力したわけではない、外形的なところだけだということの確認はされました。

 これはあえて聞きますけれども、世界各国がもしトラに備えていろいろやっていて、日本は麻生さんが行ったことは関与していないということですが、上川大臣におかれては、今後トランプさんと会う予定は一切ないという確認でいいですか。ほかの国は大臣も会っていたりしていますけれども、もしトラに備えて政府自身は一切やらない。議員個人でそれぞれやるのはあずかり知らないけれども、今後、政府としてはもしトラに備えるとか特別の配慮はしないということですか。確認させてください。

上川国務大臣 そのような方向で考えております。

小熊委員 日本のやり方は日本のやり方で、バイデンさんがなったら、政府は何もしていませんでしたと。

 ただ、外見はそうだけれども、中身を見れば、でも、やっているじゃないかということだから、バイデン政権も不快な気持ちを表明されているわけですから、取り繕ってやっていたって足下は見られますから、それを分かった上でいろいろやった方がいいということを申し述べて、条約の質疑に入ります。

 国際復興開発銀行協定の改正の受諾についてですが、IBRD、今ほども質疑にありましたけれども、日本の出資比率、また投票権シェアは第二位という重要な地位を占めている。非常に重要な役割を果たしてきたと思います。今後もこの重要な役割を果たしていかなければいけないということでありますが、実際、日本の国力が縮小してきていますし、急激な円安によっていろいろ経済的にもマイナスが働いてしまっているわけであります。

 長期的に日本の人口が減っていく、また、株価は好調ですけれども、経済が全体としては厳しい状況が続いている中で、こうした今までのシェア二位というところをどう維持していくのか。それとも、そこはそんなにこだわらず、とにかく内容で勝負していくということなのか。今後の日本の役割の果たし方についてどうしていくのかをお聞きいたします。

上川国務大臣 気候変動や感染症等の地球規模課題が深刻化しておりまして、開発資金ニーズが拡大する中におきまして、開発に関する知見や人材や経験を豊富に有するIBRDが果たす役割は増大していると認識しております。

 委員御指摘のとおり、我が国は米国に次ぎます第二の投票権シェアを維持し、そして、IBRDの意思決定に積極的に参画するということ、これは、我が国の人間の安全保障の考えの下で、質の高いインフラ整備、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジや防災といった我が国が重視する開発アジェンダ、こういったことを国際復興開発銀行と共に推進していくという観点から極めて重要であると考えているところでございます。

 引き続き、我が国の現在の投票権のシェアが維持されるよう、財務省とよく連携しつつ、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

小熊委員 これまでの責務をしっかり今後も果たしていくということでありますが、ちょっと横に外れるかもしれませんけれども、国際協力支援全般を見たときに、IBRDも一つの重要なツールであるわけですが、国際協力全般を見渡してみると、日本の場合、今年が国際協力七十周年という節目の年になりますし、この七十年間、歴代の外務大臣、また外務省の皆さん、そしてそれを支えている日本の国民の皆さんの努力によって、国際協力というのは、それぞれいろいろな国がやっていますけれども、私は世界一の内容だというふうに評価をさせていただくところでありますし、そうした役割はほかの国でも評価を得ているところだと思います。

 今、世界が分断されたりいろいろ混乱期に当たって、この間の質疑でも言ったとおり、多国間主義をしっかり成立させるということが世界の平和に一番近道だと思いますから、そういう意味で、それを支えている国際協力支援も更に進化させていかなきゃいけないと思っています。

 僕はODA予算倍増論者で、この委員会でも度々言っていたんですけれども、今は前よりは予算をつけてもらえるようになっていますが、ピークは一九九七年の一兆一千六百八十七億円、これが量としてはピークでした。

 考えると、この頃のGDPは、日本は一九九五年時点で世界のシェアの一七・六%です。近年、ランキングでいうと、ドイツに抜かれたけれども、GDPは四位ですよね。世界のシェアでいうと四%台です。かつて世界の六分の一を占めていた日本が、今、シェアでいうと四%になっている。ランキングは四位でトップレベルですけれども、世界全体、特にアジア地域の経済がよくなってきているので、日本のシェアが下がった。

 そうすると、日本の国際協力の支援の在り方は、これからもたゆまずやっていかなきゃいけないんですが、多国間主義にのっとれば、ほかの国も頑張ってやってもらおう、日本を見習って日本のいい国際協力のやり方をやっていこう、そうした責任を果たしていく。量ではなくて、まさにリーダーシップを発揮していくことが必要になってくるのではないかなと思っています。量は、確かにこの比率でいうと、逆に、ほかの国も頑張ってねと言わなきゃいけない立場に日本はこの三十年間でなったんだなと思います。

 GDPの関係、シェアが縮小したということですが、そういう中でもどうやって国際貢献を果たしていくのか、改めてお聞きいたします。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、今年は我が国が国際協力を開始してから七十周年という節目の年を迎えるところであります。

 ODAを通じましてこれまで多くの開発途上国の発展に尽力してきた、その内容あるいは質、量共に様々な国々の中で発展に貢献してきたということについては、七十年の歴史の足跡をたどればたどるほどこの重みは大変大きなものがあると私自身感じておりまして、そのことが、今もODAに対しまして非常に評価が高い、あるいは信頼を我が国にいただける、その意味での大変大きな役割を果たしてきたし、また、これからもその意味での期待が大きいものと理解しているところであります。

 とりわけ、国際社会の複合的な危機がございまして、これに対しまして、全体の危機克服のために、価値観の相違等もございますけれども、そういったものを乗り越えて国際社会が協力していく、この重要性も同時に増しているところであります。

 その意味で、二重三重に、ODAのこれからの在り方につきましては、その役割の重要性とともに、在り方そのものについても絶えず検証し、また、新しい形を模索、実践していくことが必要な時期に入っていると認識しているところであります。

 昨年改定いたしました開発協力大綱におきましては、まさにODAを一層戦略的、効果的に活用すること、そして、開発途上国の課題解決と同時に、開発途上国との対話と協働を通じました社会的価値の共創、コクリエーションによりまして我が国自身の国益実現にも資する、こういったことを併せて努めていく、こうした方針を打ち出しているところであります。

 国民の平和と安定を確保し、生活の維持や、日本自身が成長に寄与していること、そして、そのためのODAの在り方は何かということについては不断に追求していきつつ、私自身、先頭に立ってこの点について頑張ってまいりたいと思っておりますし、国民への理解も深めてまいりたいと思っております。

小熊委員 その国民の理解で、今回の改定に至っては戦略的にとか国益という言葉が明記されたということですが、国際貢献というのはチャリティーではないんだ。東日本大震災のときに、私は参議院でしたけれども、ODA特委の有志のメンバーで官邸に行ってODAの予算を削るなとやって、でも、大変な抗議を国民から受けました。被災地の人間としても地元からも受けました。チャリティーだったら削って当たり前なんですけれども、チャリティーではないんだからODAは削ってはいけなかったんです。あのときは民主党政権だけど。僕は、あのことで国民に国際支援というのはチャリティーだということを植え付けてしまったと思っている。

 国益と書いたけれども、国益、国益と言い過ぎるのも、被ドナー国からすれば、自分のためにあんたはやっているのと見られる。国際益が国益なんだよという国民に向けてのメッセージですよ。こうやるから日本はこれだけもうかりますよという国益ではなくて、そういう言い方をしていかなきゃいけない。その理解を求めていくという方向性が大事で、国益という言葉を使わないと、日本は自分のためにやっているんでしょうと見透かされます。

 なおのこと、さっき言ったGDPの世界シェアで言うと、かつての日本が一七%で、今中国が一七%です。中国もいろいろな国際支援をしているけれども、めちゃくちゃなこともやっているし、債務のわなに陥らせている。そういう新しいドナー国に対して日本が指導的役割を取らなきゃいけない。ODAにしても今回のIBRDにしても。そういう役割を、今度は量ではなくて、まさにそういったことを、間違った支援をほかの国がしないようにしっかりピン打ちしていくという立場でやっていかなきゃいけない。

 そのときに、国民とも一緒で、国益、国益と言っていたら、中国に我々だって国益のためにやっていますよなんて言わせられないんだから。国際益が国益とどうつながっているかというのを見せていく。ODAの国民への説明、そして、ほかの国への説明としてやっていかなきゃいけない。国益の言葉の使い方を間違えないようにしてもらいたい。時間が来たので、一言あれば。

上川国務大臣 私は、七十年のODAの歴史の中で、まさに日本の立ち位置というのは、委員がおっしゃったとおり、国際益そのものが国益に資する、これが一つになっている、こういう中での国際的な社会の中での日本の立ち位置、役割を果たす、こういうことがずっと地道に積み重ねられてきたと思っております。

 この流れは、しっかりと守るというよりも、積極的にリーダーシップを振るっていくときの大切な物の考え方あるいは理念として、世界的にも打ち出し続けてまいりたいと思っております。

小熊委員 ありがとうございます。

 秋には総理になるかもしれない上川大臣、是非今後も頑張っていただきたいということを申し述べて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 鈴木敦でございます。

 今日もいろいろCCSについて議論がありましたけれども、まずロンドン条約について伺いたいと思います。

 せんだっての議論の中で吉田政務官からありましたとおり、海外にCO2を輸出しようと思えばパイプラインかタンクしかないわけです。一方で、答弁の中にもありましたけれども、前向きな国として挙げられているのがノルウェー、オランダ、カナダ、アメリカということがありました。いずれも陸続きないしパイプラインが通っているエリアですので、日本とは違って同じ土俵で勝負できないわけです。先日の私のEUのプラスチック規制の話もそうでしたけれども、同じ土俵で勝負できない、まずこれが大前提です。日本はタンクで輸出するしかないわけです。

 それを申し上げた上で、今日も同じような議論がありましたけれども、外務省としては、諸外国に対して日本のCO2を受け入れていただかなければいけない。先ほどの大臣の答弁の中でも、協定を結ぶという前提条件についての御答弁はいただきました。これは当然のことだと思いますし、守らなければいけない。とはいえ、彼らに対してウィン・ウィンの関係を築くことが我々のツールであるのかどうか、あるいは、何を我々として彼らに提示することができるのか、まず外務大臣に伺いたいと思います。

上川国務大臣 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けまして、CCS事業は、二酸化炭素の大気中への放出を抑制する有効策の一つとして国際社会におきまして広く認識されている状況であります。ロンドン議定書改正の受諾を通じ、国をまたいだCCS事業を実施することが可能となったところであります。

 受入れ国の協力の状況を踏まえた形で、実際には、二酸化炭素の貯留の潜在的な可能性を持つ国の中におきましては、CCSに関する技術移転、また、貯留事業の共同実施を通じました二酸化炭素を含んだガスの受入れを積極的に模索している国もございます。

 我が国といたしましては、二酸化炭素を含んだガスを輸出する際におきましては、先ほど申し上げたとおりでありますが、本議定書その他の国際法に適合した形を確保しつつ、協議を通じまして、受入れ国の意思でありますとか、その国が持っている技術力、さらには規制の整備状況等をしっかりと確認しながら、双方の利益となるような形で進めていく、これが今進めていこうとするアプローチであります。

鈴木(敦)委員 大臣、技術というところが今回は非常に重要なんです。

 ここから先はテクニカルな話になりますので経産省をお呼びしておりますが、今、現段階において、CO2をタンクで低温高圧で輸出するような技術は存在しません。日本はそれの実証実験に既に入っています。まず、そのあらましについて伺いたいと思います。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、国内で回収されたCO2を海外で貯留する場合には、一般的には輸送距離に応じて輸送コストも増加する可能性がございますが、船舶による大量輸送はいまだ商業化はされていないという状況でございます。このため、経産省では、船舶輸送のコスト低減に向けて、LNG船並みの数万トンクラスの船舶による大規模輸送能力の獲得が急務と考えてございます。

 現在、大型化が可能な低温低圧のタンクを搭載した船舶の輸送実証を開始しておりまして、二〇二六年度までの技術の確立を目指しております。また、船の経済性の向上、あるいは効率的な運用を図る観点から、CO2だけではなく、LPガス輸送との兼用の可能性についても試験を行うこととしてございます。

 公益財団法人地球環境産業技術研究機構、RITEでは、二〇五〇年時点で輸送に係るコストは現状の約七割以下まで低減できるとの試算が示されているところでありまして、引き続き輸送コストの低減に向けた取組を進めていきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 我々はこういった技術をもっと表に出していかないといけないと思います。

 LPG船並み、数万トンクラスとおっしゃいましたけれども、最新型のLPG運搬船は八万四千立方メートル入ります。今実証実験をしているものは、実験船なのでしようがありませんけれども、千四百五十立方メートルということなので、これから大型化していかないと商業的には使えないというものです。

 私は、エネ庁とも話をしたんですけれども、水素を入れて持って帰れないかと最初は思ったんですが、水素は腐食性ガスなので、同じタンクでは入らない。あるいは、帰りにLPガスを積んで帰ってこられるかと言ったら、洗浄しなければいけないので、毎回洗浄するのはコストが高いということで、日本からCO2を持っていくときは持っていく、ただ、CO2を出さないとき、発電所なり事業所が休止中はLPガスの運搬船として使いましょう、こういうことが想定されているようです。

 これであればコストの削減を図ることは当然できると思いますし、輸送コストをどんどん減らすことができるんですけれども、経産省として考えていただきたいのは片荷の問題です。片荷を何とかすることを考えていただかないと経済性は成り立たないんです。

 だから、先ほどの答弁に追加して、この片荷問題。我々一般国民が荷物を送るときも、島に送ったりするとちょっと割高になりますね。片荷だからですよ。片荷の問題は国土交通省も関係することですけれども、解決しないとコストは下がりませんので、この点についての考え方を伺います。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 今開発しておりますCO2の輸送船のタンクは、先ほど申し上げたとおり、LPガスとの兼用としておりまして、先ほどの洗浄などの工程が必要になるということもあるわけですけれども、何とかそこは、輸送船を有効利用するために、できる限り柔軟にCO2とLPガスの積荷の変更ができないか、今後実証事業の中で検証を行っていきたいと考えてございます。

鈴木(敦)委員 この点が解決すれば多分これはすごくうまくいく、現実的にできることだと思うので、これは経産省として進めていただきたいと思いますし、仮にこれが実現したとすれば外務省としては大きいツールなので、大臣には積極的にこれを外国に伝えていただきたい、このように考えております。

 話を変えまして、スーダンについて伺いたいと思います。

 昨今、大きい武力紛争が起こっているので余り目に触れていませんけれども、アフリカではいまだに武力紛争が多数起こっております。今日は触れませんけれども、昨年十一月、ニジェールでクーデターが起こりまして、政権が倒れて、駐留米軍が撤退の協議に入ったというような報道もありますけれども、スーダンは今でも内戦が続いておりますし、難民の数も桁違いに発生しております。

 まず、この問題についてどのように考えておられるかということと、これからどういうふうに我々は見ていくのかということを伺います。

上川国務大臣 昨年四月に武力衝突が発生した後、戦況の改善が見通せない中にありまして、スーダンの治安状況が悪化しております。六百五十万人とも言われる国内の避難民の発生を始めといたしまして、スーダン国内の人道状況が一層深刻化していることを懸念しているところであります。

 我が国はこれまで、アフリカの角特使等を通じまして、スーダン及び関係国政府に対して地域の平和と安定に向けた働きかけを行っております。

 我が国が安保理議長を務めました三月には、ラマダン中の停戦を要求する安保理決議第二千七百二十四号が採択されました。また、二〇二三年以降、スーダン及び周辺国に対します支援として、約一億四千九百万ドルを拠出している状況であります。

 引き続き、スーダンの人道状況の改善に向けた取組については進めるとともに、G7等の同志国、そして地域の関係国とも連携しつつ、あらゆる機会を捉えて、紛争当事者に対して敵対行為の完全な停止と民政移管のプロセスへの復帰を求めてまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 スーダンの内戦については、サウジアラビアですとかアメリカですとか、いろいろな国々が入っていると承知しています。ですから、我々としてできることは注視していくことと支援を検討することになりますけれども、こういった大国の思惑が働かないような人道危機についても日本はちゃんと見ていくんだということを示していかないといけないと思います。

 今日は通告していないのであれですけれども、タンザニアとケニアでは今豪雨災害が発生していますし、多数の被害も出ています。

 それも含めて、私もそうですし、上川大臣もインドのジャイシャンカル外相から言われたことです。外交は自己満足ではいけない。つまり、見えるものだけを見ていてはいけないということだと思います。我々外務委員としても肝に銘じなくてはいけないと思いますし、これから外交をやっていく上では日本としては持っておくべき考え方だと思います。これは次の質問にもつながります。

 次は、開発協力について伺いたいと思います。

 今までも開発協力の議論は委員会でもされていますけれども、開発協力大綱の中に戦略的という言葉が入ったことは私は評価しています。なぜかというと、言葉が似ているので勘違いしやすいんですけれども、戦略と戦術というのは似て非なるものです。戦術というのは一つの戦いでどうするか、戦略というのは全体的にどうするかということですから、規模が違うんですね。

 今まで我々がやってきた開発協力というのは多分に戦術的なやり方だったと思います。このカテゴリーで、この事業でどういうプラスが出るかとかどういう効果があるかということを効果測定してきたと思うんですね。効果測定はしなきゃいけないんです。開発協力大綱にも書いてあるとおり、原資は税金なので、出した分の効果がどんなものが出たのかということは十分検討しなければいけないものの、全体的に見て双方にとっていいことになるという考え方が明示されたことは非常に大きな前進だと思います。

 その考え方でやるのであれば、今までは各事業単位で考えていたような効果測定を、地方であるとか地域であるとか、もっと大きな全体的なメリットを見て我々はやっていくという認識に変わられたということで間違いないでしょうか。

上川国務大臣 まさに委員が御指摘いただきました昨年改定された開発協力大綱でありますが、現在の複合的危機の時代におきまして、対話と協働を通じた途上国との社会的価値の共創、コクリエーションによりまして、開発途上国の問題解決と同時に、我が国の成長等の国益実現にも資するODAの推進をしていくということを表明したところであります。まさにオーナーシップとパートナーシップという二つの理念を併せ持つということであります。

 実際、地球規模課題の深刻化によりまして、途上国と一緒に取り組む中におきまして、相手側のコミットをしっかりと引き出しながら、我が国にとっても望ましい国際環境を創出するために、まさに戦略的に対応していくことが求められていると考えております。

 オファー型協力の一環におきまして、例えば、相手国の経済強靱化を通じましたサプライチェーンの強化等の重点分野につきましても取り組んでいるところでございます。その際には、相手国から現地のニーズをしっかりと酌み取り、そして、民間企業等の様々な主体と連携、連帯しながら、我が国の強みを生かした協力のメニューを総合的に提案していき、そして、途上国自らがどのような優先順位を持って課題解決を図っていくのかということを、しっかりと対話しながら日本の役割をしっかりと果たしていく、この作業を丁寧にやってまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 これは、これから先も続いていくことですし、これまでの歴史も踏まえて不断に見直しをしていただいて続けていただくことだと思います。

 ただ、一点ここで注視しなければいけないのは、我々のような一緒に共創型の支援を行う、相手の意思を尊重してニーズを引き出して共に歩んでいく、最終的に自立を目指していくという我々の考え方に反する考え方の国も同様の支援をしていて、彼らの支援は、鉄道を通したら、その鉄道の乗務員も運行会社も支援国がやっているとか、全く自立に至らないような支援をしている国々もあります。明言は避けますが、そういう国もありますし、一方で、そういう国々の方が支援の審査とか基準が緩いというのが彼らのやり方だと思います。

 開発協力大綱の中の開発協力の適正性確保のための実施原則という項目の中に、OECD諸国もそうですし、我々も入っているんですけれども、民主化の定着という言葉が入っています。

 先ほど例示した我々とは全く違うアプローチをしている国の開発協力は、民主というものについては多様な民主が存在するという考え方の国です。さらに、民主化を追求して国内を混乱させるぐらいだったら、国民の福祉と経済発展を重視した方がいいという考え方の下に、緩い基準で融資を行ったり支援を行って、債務のわなに最終的に陥るということになっております。

 受入れ側としては、恐らく短期的には受け入れやすいんでしょうけれども、長期的に見たらわなにはまってしまうということなんですけれども、我が国がやっているものは、短期的にはもしかしたら審査が厳しいかもしれない、ただ、長期的に見たら、一緒にやっていただいてよかったと思ってもらえるものだと思うんです。

 この二つの差別化、どう説明していくか。これから先必要になってくると思いますが、どう考えていらっしゃいますか。

上川国務大臣 これは、まさに日本のこれまでのODAの方針、相手の国の立場に立って、そして寄り添うことによってお互いにウィン・ウィンになっていくという意味で、様々な社会問題の解決にこれまで対応してきたところであります。そして、基本的なところの底流は持続可能性ということにあると思っております。

 まさに委員がおっしゃったように、短期で物を考えるのではなく、持続可能な環境整備をしっかりとしていく、インフラ整備も含めてしていく、こういう考え方を、SDGsという概念が出たから持続可能性ということではなく、これまで七十年にわたってそうした考え方で取り組んできた。このことについて、途上国の中でも様々な考え方がある中にあって、日本のやり方に対しての評価が高い、これは私自身も肌で感じているところであります。

 こうした姿勢をしっかりと国際社会の中の王道として取り入れていくべくリーダーシップを発揮していくことが求められていると思っておりますので、いろいろなアプローチの仕方があろうかと思いますが、今のようなことについては、エビデンスが見えているところも私も何度も見てきているところでありますので、しっかりとその方針を貫き、また、先ほどのように、絶えず検証しながら進んでいくということは、限られた予算あるいは人員の中で対応していく上では極めて重要であると思っておりますので、いろいろな観点から総合的に、戦略的に取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 世界各国はこういう危機意識を持ってEBRDの対象地域をサブサハラ・アフリカ地域に広げていると思いますので、日本としても考え方を不断に見直していただきたいということと、もう一点、これは通告していないのでお願いですけれども、開発協力大綱の中にも、質の高いインフラとか、質の高いという言葉が多数出てきます。質ということでいうと、今アフリカ地域では道路とか鉄道といったインフラの整備が進んでいますが、言うまでもなく世界最高の高速鉄道は新幹線です。新幹線よりいいものは私は地球上には存在しないと思っていますけれども、とはいえ、そんなにすごい新幹線はアフリカには必要ないわけです。彼らの水準で必要に見合ったものを必要なように配備していくというのが彼らの考え方ですから、是非、質という点は、彼らにとっての最良の質ということを念頭に置いて考えていただきたいと思います。

 では、最後の質問になりますが、これは外交という点は余り関係ないかもしれませんけれども、日本でも外国でも地震は発生して、そのたびに避難所が開設されますが、昨今言われていますのは、台湾の地震のときにはすぐに避難所が開設されて、パーティションもそうだし、寝具についても速やかに整備されたのに、日本はなぜできないんだというような話が地元でも聞けますし、報道等でもございます。

 確かに、かつての日本に比べたら、体育館に雑魚寝というのは大体なくなってきて、段ボールベッドだとか間仕切りだとか、整備されてきてはいますけれども、とはいえ、今回、ロンドン条約の改正議定書を今議論していますけれども、CCSの海外移転について、まだ発効はしていないものの、暫定的適用を宣言するほど我々はカーボンニュートラルに前向きだと言っているのに、毎回毎回避難所で廃棄物は出ているわけですね。これは問題が逆行している。ある意味で、災害は発生するんですから、それに対する備えは持続可能なものであるべきだと私は思います。

 まず一点目に、これは確認ですから確認だけしてください、大規模災害が発生した場合、国からプッシュ型の支援が届くのは何日目以降になりますか。

上村政府参考人 お答えいたします。

 プッシュ型の支援につきましては、一般的には四日目からということになっておりますが、この度の能登半島地震では一月二日から入ってございます。

鈴木(敦)委員 基本的な防災の考え方は、今回は早くできたからよかったんですけれども、基本的には、一日目から三日目までは自治体に備蓄をしてください、四日目からプッシュ型支援で標準対象品目と言われるものが届くことになっています。

 一方で、自治体に備蓄をお願いしているのは、基本八品目というのがあって、食料とか毛布とかが入っているんですけれども、この中には段ボールベッドは入っていないんです。寝具としては毛布が入っているんですけれども、寝るものについては入っていない。だから、一日目から三日目までは昔と同じように体育館に雑魚寝するしかないという状況になっているんですね。

 であれば、一日目から三日目の間に、自治体にある程度の備蓄をしておいていただく必要があると私は思います。ただ、段ボールベッドを大量に、しかも、災害が発生したときにしか使わない段ボールベッドを自治体の倉庫に眠らせておくというのは自治体の負担になるわけです。当然こんなことはできない。

 私の地元の川崎だったり、今日は古川さんがいらっしゃいますけれども、横浜だったらできるかもしれない。でも、それ以外の自治体では当然そんな大規模なお金も場所もないわけですから、事前に用意できて、しかも、平時で使っていて災害時には転用が可能なベッドのようなもの、寝具のようなもの、こういったものは整備しておいた方がいいと思う。パーティションにしてもそうです。若しくは、この基本八品目の中に寝具を入れるべきだと思う。どちらかをやらないとまた同じことが起こりますよ。

 首都直下地震が起こります、起こりますと言ってまだ起こっておりません。これはいいことだと思いますけれども、準備しなきゃいけないんですよ。そのときになって段ボールベッドをまた送りますとか、東京が被災地なのに、東京でその議論をして各地に送るということがそもそも可能なのかどうかも私は疑問だと思うので、いろいろなガイドラインが国から自治体に出ています。出ている中に、平時でも使えて緊急時には転用が可能な物資の備蓄が望ましいということは自治体に言っていただいた方がいいと思うんです。

 例を出しますけれども、幾つかの自治体では、ふだんは受付のベンチ、これを災害時には倒してベッドにできるというものを配備している自治体もあります。この点については、これは消防庁なのか、あるいは内閣府防災担当なのか分かりませんけれども、是非自治体に配備を促すというか、決めるのは自治体ですから、必要だということは認識しておいていただく努力をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

上村政府参考人 お答えいたします。

 委員がおっしゃるように、避難所で必要となる物資につきまして、備蓄や物資供給協定の締結などを通じて平時から物資の確保を進めていく上で、災害時のみならず平時にも利用できる物資を活用するという視点は重要であると認識しております。

 例えば、この度の能登半島地震にも派遣されましたトイレカーにつきましては、常に車庫の中にあるというわけではなくて、平時は地域のイベントの際などに利用されているような事例もあるほか、災害時のみならず平時に利用できる物資としましては、災害時に担架として利用できるベンチ、それから、災害時にテントとして利用できるようなラックなどがあると承知しております。

 内閣府としましては、御指摘のような物資を活用している事例の把握に努めるなど、自治体による災害時に必要な物資の確保が進むよう取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(敦)委員 この視点は非常に重要ですので早期にやっていただきたいのと、時間がないので、最後にこれはお伝えだけします。

 平成二十五年に作られた避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針、あるいは首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画、いずれの中にも必須項目として段ボールベッドもパーティションも入っていません。どちらかを入れていただかないと自治体は配備できませんので、これは見直しをしていただきたいと思います。

 終わります。

勝俣委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青柳仁士です。

 今回、IBRDとEBRDの融資上限を撤廃するということで、その理由、背景の一番大きなところに、開発資金ニーズが高まっているというのがあると思うんです。ただ、少し疑問に思うのは、開発資金ニーズ、つまり、世界各国の開発ニーズが高まっているというのは分かるんですが、そのニーズを満たすのは、果たして国際開発金融機関と言われるIBRDとかEBRDであり続ける必要があるのかどうかというところが非常に疑問に思っております。

 国際開発金融機関というのは、この二つのほかに、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、米州開発銀行とありますけれども、いずれも第二次世界大戦後のいわゆるブレトンウッズ体制というところで生まれてきた古い機関であります。

 一方で、最近は、まさにSDGsとかESG投資というものがありまして、ESG投資のEとSというのはエンバイロンメントとソーシャルですから、環境と社会、SDGsのほとんどの項目を含むようなことをファイナンスとして企業が民間の活動で行っている。その規模が世界で四千兆円というふうになっている。これは国際開発金融機関が扱う資金量とは桁違いに違うものです。

 それから、かつての国際開発金融機関は、途上国側から、受ける側の国から、口出しし過ぎだ、こういう批判がありました。昔はコンディショナリティーなんて言われて、今も言われていますけれども、こういう条件の中で融資を行います、こういうゴールを達成したら追加の融資が来ます、こういう仕組みが受ける側にとってはやりづらい、あるいは内政干渉である、こういう批判はこれまでもずっと行われてきました。

 それから、そういうことに対応するために、例えば、グローバルファンドは最近できた仕組みです。最近といっても、ここ十数年ですけれども。そういったことを解決するために、途上国の政府を含めた、様々なドナーを含めたコンサルテーションの仕組みをつくり上げていたり、それから、ゲイツ・ファウンデーションみたいなところは、今およそ六兆三千億円ぐらいの資金規模ですが、投資によって毎年五千億円ぐらいのお金を調達しています。ですから、これを貸し付けるのではなくて、そのままお金を渡すということを民間ベースで行うものも出てきております。

 こういった様々な時代の変化の中で、開発ニーズを満たすようなアクターがたくさんいる中で、果たして融資上限を撤廃してこれからも国際開発金融機関がその中心であり続けるべきなのかどうか、ここについてのお考えをお聞かせいただければと思います。

上川国務大臣 気候変動や感染症等の地球規模課題が深刻化しておりまして、開発資金ニーズが拡大する中にあります。こういう中にありまして、援助主体も多様化している状況であります。ドナー国、国際機関、民間のプレーヤー等がそれぞれの特色を生かしつつ、協力して対応していく必要性がますます高まっていると認識しているところであります。

 IBRDやEBRDを始めとする国際開発金融機関、MDBsでありますが、途上国に対しまして効率的に投融資を行うとともに、民間資金の効果的な動員に重要な役割を果たしているほか、開発に関する知識、人材、経験を豊富に有しているところであります。

 MDBsが、民間プレーヤーとの協調融資等も含めまして、様々な援助主体とも協調しながら、国境を越える開発課題への対応におきましても引き続き大きな役割を果たしていくことが重要であると考えております。

青柳(仁)委員 今、新しい資本主義という岸田政権が抱えている一つのプランがあります。その中でも、民間企業がビジネスで社会課題を解決していく、こういう理念が書かれております。まさにそれを体現しているのがサステーナビリティーとかESGと言われるような現在の潮流であると思うんですが、そこに呼応する形でさっき申し上げたようにたくさんのお金が動いております。

 かつては、MDBsのようなものが、開発の潮流、世界はこういうふうに発展していくんだという流れをつくってお金を入れて、そこに民間がついていく、こういう発想だったわけですが、最近は違うわけです。マーケットが先に先行する、そして、そこで生まれてきた社会課題、社会価値というものを、ある意味、こういった国際開発金融機関みたいなところが支援していく、サポートしていく、あるいはその呼び水になっていく、こういう役割が求められていると思います。

 先日来、日本でいえば、バイの支援をしているJICAの方でも、ODA大綱を踏まえてそういった方向性での事業も行われていると承知しておりますが、大臣の認識をお伺いしたいんですが、ここの分野は非常に時代が変化していると思うんです。かつてのように、こういう国際開発金融機関が引っ張っていく、限られた方々が考えていくのではなく、新しい資本主義にも書いていますが、マーケットが、民間が先行していくような、そういう全体の潮流をつくり上げていくべきじゃないかと思うんですが、その点について改めて大臣の認識を教えていただけますか。

上川国務大臣 国際社会の様々な問題は、日本の国内でも様々な課題と共通するところがあります。途上国であるから遅れているとか、そういうものではなく、新しい時代に対応していくためには、様々なアクターがそれぞれの持ち味を生かしてこれに貢献していく。今委員がおっしゃったように、社会的課題の解決のため、企業がまさにビジネスという形でこれに関わっていく大きな流れもございますし、それは国内のみならず、国際的にも、今おっしゃったゲイツ財団も含めまして、国際医療の分野におきましても、Gaviの仕組みの中にもそうした資金が複数、様々な形で連携しながら取り組んでいる、こういう事情がございます。こういった流れにつきましては、これからも多分主流になっていく大きな流れであると思います。

 その中にありまして、これまでのMDBsを中心として進めてきた流れについても、発展段階には様々な段階がありますし、また、そこにおきましての人材、あるいは、それに対応して成果を上げながらエビデンスベースでフィードバックしていく流れ、こういったことについて、役割分担をしながら、しかし協力し合いながら進めていくということについては、ある意味で日本のリーダーシップを振るっていく非常に重要な分野だと認識しております。

 その意味で、様々なツールがアップデートする形で、また先取りする形で進めていくことができるように、絶えず検証、そして開発努力をしてまいりたいと思っております。

青柳(仁)委員 すばらしい御答弁をいただきまして、ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりかなと思うんです。

 その上で、大臣に申し上げておきたいのは、国際開発金融機関の中で働く人々、あるいは国際開発金融機関そのものの認識というのは過去とそんなに変わっていません。いろいろな方と意見交換しても、世銀がまず先行する、国際開発金融機関がまずルールを作る、あるいは仕組みをつくる、そこに民間が乗ってくる、こういう昔ながらの伝統的な考え方をいまだに根強く持っております。ですので、今大臣がおっしゃったような世界が変わっている認識とは、ここには相当ギャップがあるということはまず申し上げておきたいと思います。

 その上で、もう一つ、日本企業は、こういったサステーナビリティーやESGという中で、世界的に見てもかなり優良な国であり、優良な企業が多いと思います。ですから、そういった日本企業が取り組んでいる社会課題を解決するようなビジネスというものが、そういったサービスだとか商品が世界でどんどん売れていくように、そういうマーケットをアジア、あるいはその外に広げていくような枠組みをつくったり価値観を広めたりするのは国際開発金融機関は得意ですから、そういうところに積極的に、戦略的に使っていただきたいと思います。

 その上で、そのように使うためには、国際機関の中で日本人がある程度働いている必要があると私は思うんです。

 私自身もかつて国連の職員をしておりましたが、国連の中では、国連という組織があって、正直、そこのトップにみんながロイヤリティーを感じているわけではありません。もちろん、国連に入るときに誓約書を書かされて、どの国のためにも働きませんということは言うんですけれども、ただ、私であれば、やはり日本人ですし、日本の外務省とのつながりも強いですから、できるだけその国の国益をというふうに思うのは自然だと思います。中国だとかオランダだとかイギリスだとか、もっともっとそういうことを極端にやろうとする国ももちろんあります。という中で、やはり日本人の数が一定程度必要だと思うんです。

 そこで、二つ目の質問ですけれども、一方で、MDBs、国際機関に対する拠出金、今回は融資上限を撤廃ですから拠出金を増やすという話ではないですけれども、ただ、まさに開発資金ニーズが増えて更に融資が増えてくればもちろん拠出金も増えるんでしょうけれども、その拠出金を決めるときに、いつも大体、最初は為替で、昨年ベースで今は外務省は考えていると思うんです。その上で多少の政策評価みたいなものを加味してやっているんですが、実は、イギリスとかオランダとかほかの国はもっと極端に差別化しています。アメリカはユネスコから撤退するとか、そこまで極端なことをすることによって、国際機関側からも、そういった国の言うことは聞かなきゃいけないな、こういう認識を持たれています。日本はとても優しくて親切な国なので、適当に聞いておけば何とかまた来年もお金をくれるだろう、これが偽らざる国際機関側の日本への見方だろうと思います。

 私もドナーリレーションという仕事をやっていたことがあるんですけれども、日本の政府からお金を国際機関としていただくときには、国際機関側の上司から、もしそこが余り出てこなかった場合は、なぜ出てこなかったんだと、自分自身の業績の評価として、しっかりやれと言われてしまうんです。そういう日本のドナーリレーションをやる人は大抵日本人が多いんですが、日本の場合は青山にある国連大学の中にいる人たちがほとんどやっています、本部にももちろんいますが。本部のスタッフも日本人である場合がかなり多いです。

 そのときに、本来は、その人たちが責任を負うわけではなくて、適切な数の日本人職員をちゃんと配置しているかどうかだとか、あるいは、日本が求める成果をきちんとその国際機関が出しているのかどうかだとか、そういったところで拠出金が評価されるべきだと思うんですね。ですから、本部にいる例えば上司とドナーリレーションをやっている人は日本の外務省との間でいつも板挟みになるわけですけれども、そういうのは適切じゃないというか、おかしなことだと私は思うんです。

 日本側が、今ずっとアンダーリプレゼンテーションと言われていますが、日本人のスタッフの数は日本の拠出金の額に比べてずっと少ない状態が続いている。じゃ、少ない状態だったら拠出金もそんなに出せませんよ、ちゃんと増やしてくれるんだったら拠出金も増やしますよ、こういうことであれば、もし日本からの拠出金がきちんと出てこなかったとしても、その責任は、ドナーリレーションの日本人ではなくて、上司がちゃんと人事あるいは事業の計画を立てなかった、実行しなかったから。こういうことになると思うんです。

 そういう仕組みが必要だと思うんですけれども、この点について外務大臣の見解をお聞かせください。

上川国務大臣 まず、国際機関への拠出金と人事という形の中の連動の話がございましたけれども、国際機関への拠出に当たりましては、厳しい財政状況の中にありまして、外交政策を推進していく上での必要性に加えて、国際機関評価の結果を最大限考慮しつつ、個別具体的に検討しているところであります。国際機関の評価の評価基準の中には日本人職員やポスト数の状況等も含まれておりまして、評価結果につきましては外務省のホームページで公表しております。

 国際機関で働く日本人職員の方々ということでありますが、先ほど委員が、御自分が体験なさった経験を踏まえて、あるいは、そこでお伺いになった様々な御意見を踏まえてということでございますけれども、日本としては、そうした場合に、今申し上げたような基準で評価した上で拠出を決定しているということであります。

 日本人の職員の方々でありますが、日本と国際機関との連携強化のために大変重要な役割を果たしているわけでございます。この機関で働く日本人職員の増加でありますとか昇進の支援、また、国際機関への効果的な拠出の在り方につきましては、今まさに御指摘いただきましたことも含めて検討してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 評価がホームページにも書いてあるというのは存じ上げておりますけれども、もう少し分かりやすく相手方に伝わるように、また、極端に分かるようにですね。

 かつてイギリスがストラテジックレビューという国際機関の評価を始めたときは、国際機関はほとんど震え上がっておりましたので、幹部の話題はそればかりになっているときがありました。アメリカがユネスコから撤退したときもそうでした。ですから、それぐらいのインパクトを与えるような評価をある程度日本もやるんだというところを一回でも見せておかないと、今の状況がなかなか変わらないのかなと思います。

 それから、もう一つ、少し質問の順番を変えまして、ポストSDGsへの日本政府の戦略ということについてお伺いしたいと思います。

 先ほども申し上げたんですが、今、国際開発は非常に大きな転換点を迎えております。その中で、主には民間セクターの参入といいますか、民間セクターの役割の拡大というところが一番大きなところだと思うんですが、次の社会課題の潮流をつくっていくのは、二〇三〇年以降のSDGsの次の世界の目標だと思うんです。

 私も、このSDGsが決まる少し前にまさにニューヨークにおりまして、国際機関で働いておりましたが、あのときは、MDGsという目標があって、二〇一五年まであったんですが、日本がMDGsフォローアップ会合というものを開きました。そのとき私もお手伝いさせていただいたんですが、何を言われたかというと、二〇一一年ぐらいから動き始めたと思うんですが、早過ぎると。まだ二〇一五年まで目標期限があるのに、今それをやったら国連と国際社会がMDGsの達成を諦めたというメッセージになるから、動いてはならないという強いプレッシャーを受けたんです。ところが、ほかのところでいろいろなアクターが実は動いている。ですから、ある意味、そういったアクターを抑え込むためだけのプレッシャーであったということが後で分かったんです。

 そんな中で日本はMDGsフォローアップ会合を開いたんですが、残念ながら、最初は、スタートはすごくよかったんですが、だんだんだんだん、様々な国々の思惑もありまして、主流化することはできなかったというふうに私は認識しております。最終的に、SDGs、サステーナビリティーという言葉が入っていったのはリオ・プラス20という二〇一二年の会合でしたが、そのときに突然出てきたことに対して、それ以前に日本が主導してやっていたMDGsフォローアップ会合で議論された内容はほとんど主流のところには盛り込まれていないというのが現状だったと思います。

 ところが、SDGsが始まったら、今度はサステーナビリティーだ、ESGだということで、世界中の先ほど申し上げた四千兆円という非常に大きなお金が動くようになれば、当初後ろ向きだったアメリカも無視できなくなってそこに参入せざるを得なくなる、こういう構図が今起きているわけです。

 ヨーロッパとしては、その中に気候変動という目標を入れたかった。最初はSDGsの中に気候変動は入れないというコンセンサスがあったわけですが、そこも、それをねじ込んでくることによって、最終的には今のようなGXの流れをつくることに成功しているわけです。

 ですから、極めて重要な国際潮流をつくる非常に大きな節目が、恐らく二〇三〇年の次のSDGsだと思うんです。

 こういった中において、前回のフォローアップ会合の反省も踏まえて、外務省、日本政府としてはどういった取組を行おうと考えているのか、その戦略性についてお伺いできればと思います。

上川国務大臣 今、国際社会全体が様々な複合的危機に直面する中におきまして、SDGs達成に向けた進捗そのものも大きな困難に直面しているものと考えております。

 こうした中におきまして、まずはSDGs達成に向けました取組の加速が重要であると考えております。同時に、現行SDGsが二〇三〇年の目標年でありますので、今の段階から、その先を見据えた国際的な議論の主導につきましては極めて重要であると思っております。

 MDGsからSDGsに転換するときのダイナミズムについては今委員から御指摘いただきましたけれども、そういうこともありますが、同時に、これから未来に向けて日本としてどのような役割を果たしていくかということについては、積極的なリーダーシップを発揮していくべき課題であると認識しているところであります。

 この点も踏まえまして、昨年十二月には、SDGs実施指針におきましても、これは改定されたわけでありますけれども、その旨が明記されてきたところであります。既に、内閣総理大臣を本部長といたしますSDGs推進本部の下で、我が国自身の取組をまず強力に進め、様々な分野におきましての国際的なルール形成におきましての指導力を発揮すべく取り組んでいるところでございます。

 また、今般、私の下に国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会を立ち上げたところでありまして、二〇三〇年以降も見据えながら、また、我が国自身の持続的成長と国際社会全体の持続可能性の確保に向けまして我が国として国際社会をいかにリードしていくことができるのか、この点につきましても大きな課題にし、様々な潮流の動きもしっかりと見据えながら、長期展望でこの問題に取り組んでいきたい、こういう思いでこの委員会を中心に検討を進めてまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 ポストSDGsに関しては、四月二十二日に上川陽子外務大臣直轄の国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会というのが開かれたと承知しております。赤堀地球規模課題審議官が今日いらっしゃっていますけれども、一緒に出られていて、様々な有識者の声を聞かれていたと思います。

 前回のMDGsフォローアップ会合の一つの大きな失敗の要因は、ハイレベルが出てこなかったということにもあると思うんです。大臣級の会合にはもちろん外務大臣は出てきていましたけれども、自ら何かを発信することは当時はなかったですし、それから、ある意味現場任せであったというか、あるいは、出てくるのは主に外務省の課長さんであるとか、それぐらいのクラスの方々で動かそうとしていた。あるいは、現場の国連代表部で動かそうとしていた。こういったところが、次の世界の潮流を決める話ですから、他国は全力で大臣とかを動員してやってくるわけです。日本の勢いが全く足りなかったと考えておりますので、是非外務大臣が先頭になって進めていただきたいと思います。

 それから、最後に、今日はアフガニスタン支援に関する通告をしておりましたが、これは次回私はまた質疑の時間をいただきますので続けてさせていただきますが、一問だけお伺いしたいと思います。

 少し前の話になりますが、二〇〇一年からおよそ八年間、断続的に続いていたインド洋の給油というものがありました。これは二〇一〇年の一月に停止されたものですけれども、自衛隊がテロとの闘いに参加しているアメリカを含む十一か国に対してインド洋で給油活動を行うというものですが、これをやめたということが当時の政権の決断でありました。それによるどんな国際的な影響があったか、特に日米関係にどんな影響があったかということについて御認識をお伺いできればと思います。

上川国務大臣 我が国は、平成十三年、二〇〇一年でありますが、十二月以降、テロリズムの防止、根絶に向けた国際社会の連帯におきまして責任を果たし、我が国を含みます国際社会の平和と安全の確保のための取組の一翼を担うため、補給支援活動を実施したところであります。

 これに対しまして、アフガニスタンや米国を含む多くの国や国連などから、アフガニスタンの平和と安定に寄与するものとして歓迎の意が示されておりましたし、また、一定の成果があったところでありますが、平成二十二年、二〇一〇年一月十五日、補給支援特措法が失効することに伴いまして、インド洋における海上自衛隊の補給支援活動が終了したものと承知しております。

 委員の御質問でございますが、日米関係にどういうインパクトを及ぼしたのかということでありますが、本件に関します米国とのやり取りの詳細につきましては、外交上のやり取りにつき、差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、現在、日米両国間におきましては、深い信頼と重層的な友好関係で結ばれているということでありまして、かつてなく強固な友好、信頼関係を築いているところであります。

 今後も日米関係の更なる強化に向けまして取り組んでまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 今、外交上のことですのでお答えいただけないということでしたけれども、このインド洋の給油というのがなくなったことによってアフガニスタン支援の現場で実際に何が起きていたのかということ、また、その中で様々な問題点があったと私は感じておりますので、その点についてまた次回質問をさせていただきたいと思います。

 本日の質問は以上で終わります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 本日の議題である条約について質問する前に、先日発表された日米首脳共同声明について伺いたいと思います。

 共同声明は、自衛隊と米軍の作戦や能力をシームレスに統合し、相互運用性と計画策定を強化するために、それぞれの指揮統制の枠組みを向上させるとともに、米国製の巡航ミサイル・トマホークについて、米国はトマホークシステムの運用能力を日本が獲得するための訓練計画を開始するとのコミットメントが表明されました。

 そこで、防衛省に伺いたいと思います。

 配付資料の一枚目にあるように、米第七艦隊は、先月、海上自衛隊と航空自衛隊が、米海軍のミサイル駆逐艦マッキャンベルでトマホークの対地攻撃訓練を実施したと発表しています。この訓練は、日本が二〇二五年度からトマホークの運用を開始するために行われたとされるが、訓練の内容はどのようなものでしたか。鬼木副大臣。

鬼木副大臣 お答えします。

 本年三月二十五日から二十九日にかけて、米海軍横須賀基地において、海上自衛官等に対するトマホークの運用に係る要員養成講習が行われました。

 この講習については、参加者は海上自衛官等約二十五名で、トマホークの運用に必要な知識に関する座学教育や、米艦艇でのトマホーク運用手順に係るデモンストレーションの見学が行われました。

 以上です。

穀田委員 共同声明で示された米軍のトマホークシステムの運用能力を獲得するための訓練が既に始まっているということであります。

 第七艦隊の発表では、この対地攻撃訓練は、米海軍のSCSTC、水上戦闘システム訓練司令部により、教育カリキュラムに従って、実際の攻撃作戦を想定したシナリオに基づき行われたとあります。そうした訓練が米海軍の計画によって実施されたということでよろしいな。

鬼木副大臣 本年三月に行われた講習については、米海軍からトマホークの運用に必要な知識に関する教育を受けたものであり、米海軍の計画により実施されたものであります。

穀田委員 今、後半の方でお認めになったように、そうした訓練だったということを今答弁されたということであります。

 そこで、米海軍の公表資料によれば、SCSTCは、米国製システムを運用する国際的なパートナーに対して米軍と同様の訓練を実施しているとあります。そして、この訓練によって、同盟国の作戦能力が向上するだけでなく、米軍との相互運用性も促進させることができると強調しています。今回のトマホークの訓練もそうしたことに力点が置かれたということであります。

 配付資料の二枚目は、酒井海上幕僚長が先月二十六日に行った記者会見の記録であります。この中で酒井氏は、トマホークを日米で連携して運用することになれば同じ攻撃目標も共有することが可能になるかと問われて何と答えているか、読み上げて紹介いただきたいと思います。

鬼木副大臣 御指摘の質問に対しまして、酒井海上幕僚長からは、「運用に関することなのであまり詳しくお答えはできませんが、システムとしては、日米がそれぞれのトマホークを保有し、同じ目標に対して攻撃を行うということは可能だと思います。それを実施するかどうかは、その時の作戦、戦術判断によるものと認識をしております。」とお答えしております。

穀田委員 今、鬼木副大臣がお読みになった内容は極めて重大だと思うんですね。

 トマホークは、対地攻撃、つまり敵基地攻撃能力としての使用が想定される兵器なんですね。それを日米が連携して運用することになれば、攻撃目標の情報を共有し、互いに保有するトマホークで同じ目標を攻撃する、そうした一体運用が既に想定されているということがこれでお分かりになると思うんですね。

 しかも、酒井氏は、次の質問に対して、海上自衛隊が一部米軍のシステムを使うこともあると認めています。システム上も日米一体の運用が想定されているということであります。

 政府は、自衛隊と米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動すると繰り返しています。しかし、トマホークを日米一体で運用することになれば、自衛隊が事実上米軍の指揮統制の下に置かれるのは自明ではありませんか。

鬼木副大臣 情報収集、分析を始め、様々な協力を行っておりまして、日米間で状況に応じた双方向の調整を行い、緊密に連携していくこととなりますが、この際、自衛隊の運用は、米国の情報だけでなく、我が国自身で収集した情報を始め、全ての情報を総合して行われるものであります。

 その上で、大前提として、自衛隊による全ての活動は、米国との共同対処を含め、我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われることとなっており、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動することから、運用に係る意思決定はあくまで自衛隊が行うこととなっております。

穀田委員 結論から言えば、自衛隊が主体的に判断するということです。これをいつも繰り返すんですよ。

 でも、敵基地攻撃能力の運用では、攻撃目標を発見、識別、捕捉して攻撃を行い、その効果を確認するということが必要ですよね。いわゆるキルチェーンの構築が必要とされます。

 配付資料の三枚目は、吉田統合幕僚長が先月二十八日に行った記者会見の記録です。この中で吉田氏は、日本単独でトマホークを反撃能力として運用する際、攻撃目標のターゲティングなどが難しいという指摘があるがと問われてどう答えているか、読み上げて紹介いただきたい。

鬼木副大臣 御指摘の質問に対して、吉田統幕長からは、「仰るとおり、スタンド・オフ・ミサイルはミサイルが入ればそれで完結ではなくて、俗に「キルチェーン」と言われている、目標情報を取り、それを伝えて、そして発射をするというところが作られていくということだと思います。そこの具体的にどう構築していくかというのは正にこれからですので、今あまり具体的にどうこうということは言えませんけれども、トマホークに関してはやはり元々米軍の装備ですので、様々な形で日米連携が行われていくものだと推察をしています。」とお答えしております。

穀田委員 やり取りを見ていただくと分かるんですけれども、ターゲティングという質問に対して、わざわざいわゆるキルチェーンという話をしているんですよね。それは今報告があったとおりであります。

 そこで、大事なことは、トマホークというのは今お話があったように元々米軍の兵器なんですよね。そのために、キルチェーンはどうなっているか、要するに、捕捉し、攻撃し、そしてどういう成果があったかということを構築するにも、自衛隊単独ではできないわけですよね。できるんですか。

鬼木副大臣 スタンドオフミサイルの運用に係る具体的な要領等については、現在、省内において検討中であり、具体的にお答えできる段階にないことをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、日米間において情報収集、分析を始めとして様々な協力を行っておりまして、状況に応じた双方向の調整を行い、緊密に連携していくことになります。

 その上で、何度も繰り返しますが、我が国の主体的な判断の下、独立した指揮系統に従って行動するということであります。

穀田委員 文書を読み上げているんですけれども、私が聞いているのは、わざわざ統幕長が言っているように、キルチェーン、つまり、結局のところ、捕捉し、攻撃し、成果があった、これを全部調べようと思うと自衛隊単独でできるのかと聞いているんですよ。単独でできるのかと聞いているんですよ。

鬼木副大臣 目的は日本の国を守るためでありますので、様々なアメリカの情報などの力もかりる場面もあると思います。日本独自の力もあります。そうした中で、あらゆる力を使って日本の国を守ろうということであります。

穀田委員 守る話をしているのではなくて、要するに、アメリカ軍の実際上の指揮になるんじゃないかという話をしている。要するに、独自に努力するけれどもというわけでしょう。だから、そう簡単じゃないんです。共同声明が示したシームレスな統合というのは、平時から有事まで、あらゆる段階で切れ目なく日米が事実上一つの軍隊として行動することと言わなければなりません。

 大体、圧倒的な軍事力と情報収集力を持つ米軍との一体化が進めば進むほど、自衛隊が主体的判断を発揮する余地などなくなる。トマホークの運用でも、自衛隊が米軍の指揮下に置かれ、米軍の軍事行動に組み込まれることは明らかであります。

 あれやこれや言って弁明して、日本を守る、そっちの話ばかりするねんけれども、要するに、この一体化というのは紛れもない事実だ。そういうことについて明らかになって、しかも、肝腎の実際やっている方々もそう言っておられるということを皆さんよくお分かりいただけたかと思います。

 ここで鬼木副大臣は御退室いただいて結構でございます。ありがとうございました。明らかになったということで、どうぞ。

勝俣委員長 どうぞ御退席ください。

穀田委員 次に、本日の議題であるロンドン条約議定書の改正について伺いたいと思います。

 本改正は、海洋への投棄などのために廃棄物その他の物を他国に輸出することを許可してはならないということを定める現行のロンドン条約議定書の第六条の規定の例外として、二酸化炭素を含んだガスの輸出を一定の条件の下で可能とするものであります。

 そこで、上川大臣に伺いたいと思います。

 本改正により追加された第六条の2にある「輸出国と受入国との間の許可を与える責任の確認及び配分」とは具体的にどのような内容を想定しているのか、お答えいただきたいと思います。

上川国務大臣 ロンドン議定書でありますが、廃棄物等の海洋への投棄を原則として禁止している一方で、二酸化炭素を含んだガスなど幾つかの廃棄物等については、一定の条件の下で投棄を可能とする旨を定めている。ただし、当該一定の条件の下で投棄が可能とされる廃棄物等であっても、海洋への投棄のために他の国に輸出することは許されていない。これが現在のロンドン議定書の規定であります。

 そこで、改正後におきましては、海外におきまして二酸化炭素回収、貯留事業のために二酸化炭素を含んだガスを輸出するニーズの高まりを受けまして、二〇〇九年に採択されました本改正で、二酸化炭素を含んだガスについては、一定の条件の下で、海底下の地層への処分のための輸出を可能とするものであります。

 ロンドン議定書でありますが、廃棄物その他の物の投棄には許可が必要であると規定しております。その上で、締約国が許可を与えるに当たっては、本議定書に規定する要件とともに、締約国の適当な当局が適切と認める追加的な基準、措置要件に従うこと等を義務づけているところであります。

 御指摘の許可を与える責任の確認及び配分ということでありますが、以上申し上げましたこれらの関連規定に基づく許可を与える責任とその配分について意味している内容でございます。

 具体的に貯留の許可を与える責任は、輸出国と受入れ国の間でどのように配分するか等については、関係国間で締結される協定等でそれぞれの国の状況に応じて個別具体的に定められるべきものと考えております。

穀田委員 それなりにがっちりした規定があるわけです。

 そこで、日本企業は、脱炭素対策の一環として、排出した二酸化炭素を東南アジアなど海外に輸出し、処理する計画を相次いで打ち出しています。その数はここ数年で急増し、少なくとも十三件に上ると報じられています。いずれの計画も前提にしているのは、火力発電所などの排出ガスから二酸化炭素を分離、回収し、液化して地下深くに封じ込めるCCSという技術であります。

 本改正は、二〇〇九年に採択されて以降既に十五年経過しているにもかかわらず、受諾国は僅か十一か国にすぎません。その主な理由は何でしょうか。

上川国務大臣 CCSを実施するためには、二酸化炭素を回収して海底下に貯留するための高度な技術が必要になるところであります。このため、各国間でCCSの実用化に向けた政策や技術開発の進展に差が生じている現状でございます。例えば、英国やノルウェーなど、既に国内でそうした技術が確立し、CCSを実施している国もあれば、将来的な実施の検討を始めている段階にある国もございます。その結果、各国の受諾のタイミングにも差が生じていると考えられるところであります。

 なお、パリ協定が発効した二〇一六年以降、カーボンニュートラルの宣言を行った各国におきましては、排出削減が困難な分野の対策として、CCS目的による二酸化炭素を含んだガスの輸出を検討する国が増えている状況であります。パリ協定の発効前に本改正を受諾したのは三か国でありましたが、同協定発効後には八か国増加しているところであります。

穀田委員 極めて僅かにすぎないということはあるんです。

 それで、ロンドン条約の締約国は八十七国なんですね。一九九六年議定書の締約国の五十四か国と比べ、本改正は十一か国と圧倒的に少ない。国際エネルギー機関、IEAは、本改正の受諾が進まない理由について、ロンドン条約議定書の締約国のうち、全ての国が洋上CCSやそのための越境輸出に関心を持っているわけではなく、受諾の優先度は低いと指摘している。ですから、先ほど報告がありました英国やノルウェー、先ほども一連の質疑の中で何回も出ているんですけれども、そういう意味でいうと優先度は低いといういわば大きな流れの中でそういう問題があるということについて、日本が本改正を受諾してこなかった理由はどこにあるのかだけ私は聞いておきたいと思うんです。

上川国務大臣 我が国は、二〇一六年のパリ協定発効も踏まえ、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを実現することを目標としております。この目標への貢献のため、二〇二三年六月、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMECが先進的CCS事業七事業を選定いたしまして、二〇三〇年までの事業開始を目指しているところであります。これら事業におきましての貯留先につきましては、現時点で、国内、海外いずれか一方に限定せず、双方を視野に入れていることから、今般、本改正の受諾を目指すこととしたものでございます。

穀田委員 昨年十月に行われた中央環境審議会のCCS制度専門委員会で、環境省は、日本が改正案を受諾してこなかった理由について、日本においてまだ二酸化炭素をCCS目的で輸出するということが具体的に想定されていなかったからだと説明しているんですね。

 それもそのはずですよ。CCSは安全面やコスト面で様々な問題が指摘されています。二酸化炭素の回収や液化はもちろん、輸出するとなれば、先ほど来多くの方々も指摘されましたように、長距離の運搬に多くのエネルギーを費やすことにもなります。海外の貯留現場で二酸化炭素の漏えい事故や汚染が起きないとも限らない。万全を期しているとかなんとか言っていますけれども、大変だという話がさっきありましたよね。

 こうした問題がある下で日本が本改正を受諾することには非常に問題がある、この点を指摘しておきたいし、このような問題についてメディアも若干指摘を始めているということについてきちっと留意してほしいと思います。

 もう一つ、欧州復興開発銀行の協定改正についても伺いたいと思うんです。

 開発銀行は、中東欧諸国などにおける市場指向型経済への移行と民間及び企業家の自発的活動を支援することを目的としています。

 本改正は、二〇二三年五月にウズベキスタンで開催された年次総会で、サブサハラ・アフリカの加盟国を支援対象に追加する決議が採択されたものであります。

 大臣、開発銀行から支援を受けるには、被支援国から開発銀行に対する加盟申請と開発銀行による承認が必要であります。現在、サブサハラ・アフリカ諸国からは、ベナンを始めとして、コートジボワールだとかケニア、ガーナ、ナイジェリア、セネガルの六か国が加盟していると聞いていますけれども、それらの国々から主にどのような分野への支援の関心が持たれているのでしょうか。

上川国務大臣 今、サブサハラ・アフリカ諸国六か国ということで想定されているところでございますけれども、加盟の手続を進めている国々でございますが、具体的なニーズについては様々であると考えられますけれども、これまでの受諾国に対しては、例えば、プロジェクトファイナンスを中心とした商業ベースの融資でありますとか株式の一部取得、あるいは、エネルギー効率化のための助言、中小零細企業への経営指導などの技術協力等を行ってきているところでございます。

 これまでEBRDが行っている具体的なこうした支援内容も含めて、加盟に際しましては、そうしたニーズをしっかり顕在化すべく手続を進めているものと承知しております。

 今、六か国が想定と申し上げましたけれども、その中でベナンにつきましては、四月十日にEBRDに加盟したところでございます。

穀田委員 私たちは、二〇〇四年及び二〇一二年に銀行業務の地理的範囲を追加する協定改正を審議した際に、関係国の側が自国での市場経済を促進するために自ら開発銀行の支援対象となることを求めていることを重視しました。本改正に当たっても、サブサハラ・アフリカ諸国の側から開発銀行の支援対象になるため加盟申請がされていることを重視したいと考えています。

 今日はこの程度で終わります。

勝俣委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより各件に対する討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、ロンドン条約一九九六年議定書二〇〇九年改正に反対の立場から討論を行います。

 本改正は、海洋への投棄などのために廃棄物その他の物を他国に輸出することを許可してはならないことを定める現行のロンドン条約議定書第六条の規定の例外として、二酸化炭素を含んだガスの輸出を一定の条件の下で可能とするためのものであります。

 日本国内には、石炭火力発電事業を始めとして、大量に二酸化炭素を排出する産業がある中、CCS事業は、本来必要とされる十分な排出削減に取り組むことなく化石燃料の使用を継続できる仕組みであり、その推進は、日本の脱炭素を遅滞させるだけでなく、日本が事業展開を狙う東南アジア地域などでも、脱炭素の取組を阻害するものになりかねません。

 CCS事業をめぐっては、再生可能エネルギーに比べて圧倒的に高コストであること、二酸化炭素の回収率の低さなど、技術の有効性に対する疑問、長期貯留や漏えいに関するリスクなど、様々な問題と批判があります。

 本改正は二〇〇九年に採択されたものですが、ロンドン条約の締約国が八十七か国、一九九六年議定書の締約国が五十四か国であるのに対し、本改正を受諾した国は現時点で僅か十一か国にすぎず、採択から相当の期間を経てもなお未発効であり、国際的にも広がりを欠いていると言わざるを得ません。

 以上を指摘し、反対討論とします。

勝俣委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 これより採決に入ります。

 まず、国際復興開発銀行協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、欧州復興開発銀行を設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の千九百九十六年の議定書の二千九年の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

勝俣委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

勝俣委員長 次回は、来る五月八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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