衆議院

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第11号 令和6年5月15日(水曜日)

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令和六年五月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      島尻安伊子君    杉田 水脈君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      西銘恒三郎君    深澤 陽一君

      藤丸  敏君    松島みどり君

      宮路 拓馬君    山口  晋君

      小熊 慎司君    佐藤 公治君

      松原  仁君    鈴木  敦君

      徳永 久志君    和田有一朗君

      金城 泰邦君    穀田 恵二君

      吉良 州司君    塩谷  立君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   総務副大臣        馬場 成志君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   外務副大臣        辻  清人君

   外務副大臣        柘植 芳文君

   文部科学副大臣      あべ 俊子君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   総務大臣政務官      西田 昭二君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  門松  貴君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局次長)       筒井 智紀君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            岡田  大君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           海老原 諭君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     木村 公彦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 竹谷  厚君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         金子万里子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 藤本健太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高橋美佐子君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   野口  泰君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 弓削 州司君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     杉田 水脈君

  平沢 勝栄君     松島みどり君

  穂坂  泰君     山口  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     高木  啓君

  松島みどり君     藤丸  敏君

  山口  晋君     穂坂  泰君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     高村 正大君

  藤丸  敏君     平沢 勝栄君

    ―――――――――――――

五月十四日

 日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 航空業務に関する日本国政府とクロアチア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 社会保障に関する日本国とオーストリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 刑事に関する共助に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 航空業務に関する日本国政府とクロアチア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 社会保障に関する日本国とオーストリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 刑事に関する共助に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、外務省大臣官房長志水史雄君外二十名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。

小田原委員 おはようございます。自由民主党の小田原潔であります。

 御指名をいただいて本日質問させていただくのですけれども、本日この場で質問させていただくことに格別の感慨がございます。それは理由があります。私がこの仕事をしたいと思ったきっかけが、五十二年前の今日、一九七二年五月十五日の出来事だったからであります。私が八歳のとき、沖縄が日本に返ってきました。大変感激いたしました。

 個人的なことで恐縮ですけれども、私の父親は自衛官でありました。当時、自衛隊に対する風当たりは必ずしも今ほど、例えば、国民の支持が九二%とか、そういう時代ではありませんでした。それでも、自衛官の子供というのは、私に限らず、平時であっても、いざというときは親が命を失うかもしれないという覚悟を持って育つものであります。名誉ある殉職であれば残された家族は胸を張って生きていけると思いますが、できれば、ばかな思いつきとか無謀な作戦で犬死にしてほしくないという切実な子供心がありました。ということもあって、沖縄の返還は、一発の銃弾も発射せず、一滴の血液も流さず、戦争に負けて取られてしまった領土が返ってくるなんて、外交と政治の力はすごいと思いました。

 私は庶民の家でありましたし、十三年前に初当選させていただくまでにそれから四十年かかりましたけれども、それも天命でありましょう。本日は、ちょっと僭越ですけれども、我が国の独立と平和を託す外交を担う皆さんの在り方、生き方、そういったところまで質問できればというふうに思います。

 私は、プロフィールとか略歴とか、そこはいいことしか書かないんですけれども、尊敬する人物のところには必ず陸奥宗光公を挙げています。

 ついこの間まで、日経新聞の朝刊の小説に陸奥公の青春時代のお話がありました。かみそり陸奥と言われてはいるものの、女郎屋通いをしたり、政府転覆のたくらみがばれて山形に投獄されたり、紆余曲折がありましたけれども、不平等条約を解決し、私たち日本人に夢と希望を与えてくれた立て役者であろうと思います。

 また、陸奥宗光公に見出された小村寿太郎大臣も、退官直前であったところ、その才能を買われたということであろうと思います。

 現在は、卓越した個人の力やチームの力だけではなくて、一か国同士の外交にとどまらず、近年ではクアッドとかFOIPとか、同盟国とまでは申しませんけれども、ライク・マインデッド・ステーツというんですかね、価値と目的、国益を共有する国々で枠組みをつくっていく、そういう力、さらには、国際連盟ができてからは、地球上の秩序を守ったり、もっとよくしたり、人類共通の課題を力を合わせて解決していく、そういう力も求められていると認識いたします。

 さて、私が七年前、外務大臣政務官を拝命した直後、我が党の中でも、国際機関に働く日本人の幹部の数が少ないんじゃないかという議論がありました。それについて少し取り組んだこともありました。この話題は、恐らく七十年近く、起きては収まり、起きては収まりという課題だと思います。

 ただ、少ないんじゃないかと言う方も、そして、それを構築する方も、無責任ではないかと思うことがちょっとあります。国際機関に働く日本人幹部の数が少ないというのは何に対して少ないと言うのか。例えば、拠出している金額の割合に対して幹部の数が少ないのか。それとも、扱っている課題、例えばGDPの金額とか順位に比べて日本人が少ないと言っているのか。さらには、例えばCO2の排出量が多い順になっていないとか、いろいろな尺度があると思います。また、人材の出どころも、どういうふうにすれば、日本人で国際機関に勤め、そして人生をそれにささげたいという人を培うことができるのか。そういった裾野の広い努力も必要だと思います。

 まず、伺います。聞き方が漠として恐縮ですけれども、現在、主な国際機関において日本人の幹部というのはどれぐらいいるのでしょうか。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 国際機関における日本人職員の総数は、現在、九百六十一名でございまして、このうち幹部は九十一名となってございます。

小田原委員 千人弱の方々が勤務されていて、そのうちの一割ぐらいが幹部だということであります。

 大臣にお伺いします。私は、何に対して多い少ないという観点は非常に難しいと同時に、それをはっきりすることによって多いと考えるのか少ないと考えるのかが重要だと思います。大臣の御所見をいただきたいと思います。

上川国務大臣 国際機関におきまして活躍する様々な皆様の御努力に対し、平和な国際秩序あるいは安定した国際秩序を高めるために極めて重要な役割を果たしていると思っております。今、職員は中立的な存在ではありますが、外務省出身者を含めまして日本人の幹部職員が活躍することは、国際機関との連携強化につながるものと考えております。

 国際機関における日本人職員幹部の総数は、二〇〇〇年の六十一名に対しまして、現在、九十一名となっており、着実に増加していると思っております。

 こうした職員でありますが、日本の顔ともなっておりまして、緒方貞子元国連難民高等弁務官のように、日本人幹部職員の活躍は日本のイメージ向上やプレゼンスの強化にもつながっていると考えております。

 また、SDGsの実施、国際社会におきましてのルール形成を主導するに当たりまして、国際機関において日本人がトップを含む幹部ポストを獲得することは極めて重要でありまして、そうした点からも政府として幹部職員の増加を重視しております。

小田原委員 ありがとうございます。増加傾向にあるということは、恐らく好ましいことなのであろうと思います。

 実は、批判するつもりで言うわけではないですけれども、この質問のレク、やり取りをしている際に、幹部職員というのは外務省から行っている人の数でしょうか、それとも日本人全体でしょうかというお問合せがありました。私は、そこに我が国の戦略性をもう少し突き詰めるべきだと考えているポイントがあるんです。と申しますのは、国際機関の幹部職員が外務省から来ている人というのが大事なのであれば、増やすべきであろうと思います。

 また、実は昨日、国連の事務次長さんが来られていました。彼女は元々プロパーでありますし、個人的に話したときも、国際機関は完全に日本じゃないから精神的に非常にやりやすいのよみたいなことを言ったことがありました。外務省が精神的にやりにくいと言っているんじゃないですけれども、外務省からなぜ国際機関に出向するのか。それは、その間中、赴任の期間で我が国の国益を反映させたり目的に貢献するということだと思いますが、後で官房長にも伺いたいと思いますが、外務省の職員の方は、国際機関に出向して、ビルマの竪琴みたいにそっちが面白くなって退職して、そこでずっと偉くなろうという人は多分余りいないんじゃないかと思います。国際機関に行ってそこで経験を積んで、箔をつけてと言うとちょっと下品ですけれども、外務省に戻って外務省で国益のために働きたい、だから我が国は国際機関に外務省の職員を幹部として送っているのではないかと思うんです。そうでなければそのとおり言っていただきたいと思いますが。

 さらには、先ほど大臣がトップの話をされました。国際機関のトップの選ばれ方は様々であります。現在の国連の事務総長は元々学者さんでありますし、その前も学者さんでありましたし、例えば、WHOの事務局長は某国の外務大臣だったし、その前は某国の首相だったし、我が国の精神科医の方がお務めだったこともありました。

 選挙で選ばれるトップと、その機関を支えるというか、実際にかじ取りのお世話をする幹部の役割、そして、その幹部の構成を完全に自然体に任せてプロパーの日本人が集まるように祈るというのもなかなか難しいでしょう。かといって、外務省から出向された人が本当にその国際機関全体でいつまでも当てにされているのか、どうせ帰ってしまう人だと思われてはいないのか。そういったことも含めて、今後、国際機関を通して我が国の国益やそれぞれの国際機関が果たすべき役割にどのように貢献していくのか、人材育成や派遣の戦略について所見がございましたら教えてください。

上川国務大臣 日本人の国際機関における役割については先ほど申し上げたところでありますが、何といっても国際機関の職員は中立的な立場であります。日本としても、世界が直面する喫緊の外交課題に率先して取り組む上でも、外務省職員を含みます日本人職員が国際機関で活躍するという人的貢献を進めることが必要と考えております。

 国際機関側の人事に係る状況はありますが、今後とも、外交官としてのキャリア形成や、日本の国際機関におけるプレゼンス強化という観点からも、外務省職員の国際機関への派遣に係る取組につきましては進めてまいりたいと考えております。

 その上で、政府として、日本人幹部数の更なる増加を目指し、内閣官房と外務省が共同議長として関係省庁連絡会議を開催するなど、中長期的な視野に立ちまして政府全体として戦略的に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、政府全体として国際機関の幹部ポスト獲得に向けまして一層戦略的に取り組んでまいりたいと考えております。

小田原委員 ありがとうございます。

 中立性を重んじるのは、建前と言うと失礼ですけれども、十分理解いたしますが、例えば、ユネスコの世界遺産をめぐるやり取りで、時々、委員の中に特定の地域や国やバックグラウンドを持つ方々が我が国に対して何らかの意思があるような行動や論文を出す事例も散見されています。私たちがその中立性に貢献できるような戦略的な人材育成と派遣を期待してやみません。

 この国際社会の状況に関連してでありますが、昨年十月七日の事件から、ガザ地区の状況は我々も特に人道的な観点から胸を痛めるばかりでありますが、また昨日も新しい報道がありました。現状の認識を教えてください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 戦闘が長期化する中、現地の危機的な人道状況が更に深刻さを増していることを深く憂慮しており、特にラファハにおけるイスラエルの軍事行動の動きを深く懸念しております。

 さきのG7外相会合でも一致したとおり、ラファハへの全面的な軍事作戦には反対であり、我が国として、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待しております。

 また、ガザ地区では、これまでも援助関係者を含む多くの民間人が攻撃を受け犠牲になっており、国連職員や援助関係者を含む民間人に犠牲、被害が発生していることを深く憂慮しております。

 これ以上一般市民や援助関係者の死傷者が出ないよう、引き続き全ての関係者が国際人道法を含む国際法に従って行動することが重要であると認識しており、引き続きイスラエルへの働きかけを始めとした外交努力を粘り強く積極的に行ってまいります。

小田原委員 ありがとうございます。

 人道的な観点から深く憂慮するのは我々も全く同じでありますが、私たちも日々いろいろな専門家から勉強させていただいております。受ける印象は、双方とも全く引く気がないということであります。

 ちょっと言いにくいですし、いろいろなことを主観をもって話すわけではないのですが、私たちは、我が国に地上の国境がありません。大まかに見た目がよく似た人たちででき上がった国で、ほぼ日本語しか交わさない国であります。また、宗教や何かの価値観で殺し合いになるような大きな対立もありません。こういった国は、世界で百九十何か国あるうちの多分物すごく少ない貴重な国であろうと思います。

 ただ、同時に、ほかの圧倒的多数の国は多民族、多国家、多宗教で、しかも、多くの国が一時植民地になり、強制的に引かれた国境で地域性や文化は全く関係ない国ができ上がってしまったが、百年、二百年たっている間にそこで新しい秩序や権益が生まれ、今更元に戻せない、こういった苦悩を抱えながらの国が圧倒的だということであります。

 例えば、近年では、アウン・サン・スー・チー政権を支えたタン・ミン・ウーさんが書かれたビルマ、危機の本質、ザ・ヒドゥン・ヒストリー・オブ・バーマとか、アミタフ・アチャリアというインド系のアメリカン大学の教授が書いたアメリカ国際秩序の崩壊、ジ・エンド・オブ・アメリカン・ワールド・オーダーとか、今のインドの現職の外務大臣が書かれたインド外交の流儀、ジ・インディア・ウェイ、二冊目がホワイ・バーラト・マターズ。バーラトというのは、今年になってモディ首相が国際会議にインディアと書かないでバーラトという国のプレートを書くようにしました。それぞれ書評で大変絶賛されていて、こういうのを参考にいたしますと、民族も違う、言葉も違う、宗教も違う、でも国である一国をまとめるのがどれだけ大変かという苦労が伝わってくるものであります。

 昨年十一月七日、勝俣委員長を中心に、外務委員長と衆議院の理事を表敬するという名目で、在京のアラブ外交団が二十一か国来られました。表敬というのは名ばかりと後から思ったわけですが、団長はパレスチナの大使で、見るに堪えない悲惨な写真を回付しながら、どれだけ人道的にひどいか、また、我が国が全くイスラエルを非難しないというのは世界が我が国を見る目が変わるぞ、今までは民主的で良心的な国だと思ったのにがっかりだというようなことを言われたことがありました。

 人としては大変胸の痛むことでありましたが、十日後、案の定、今度はイスラエル大使が来られまして、百八十度真逆の主張をされました。それで、ここにもいらっしゃるので言いづらいんですけれども、理事のお一人が、分かったけれども、国連決議があるだろう、真摯に考えてもらえませんかというふうに発言されました。それは全く僕も同感でありましたが、イスラエル大使は、もしその決議をのんで停戦したら、人質はどこか知らないところに連れ去られて、取り返すのに何年かかるか分からない、皆さんは青いバッジをしているけれども、そのバッジをつけたら拉致被害者は帰ってきたのかと、かなり辛辣なことを言われ、場の雰囲気は凍りつきました。

 しかし、同時に、大使が言わんとしたことは、人質を取り返すというのは、武力であろうが何であろうが徹底的に懲らしめて降参させて、何でも言うことを聞くから勘弁してくださいと言わせない限りは人質は返ってこないんだという強い決意も感じました。それがいいとも悪いとも言いませんが、国を守るとか国民を守るということの感覚が私たちと全く違う人たちが世界にはたくさんいる、むしろ、そういう人たちの方が多いということであろうと考えた次第であります。

 そこで、お聞きします。

 人道的には立場は揺るがないわけですが、我が国のこの事案に対する対処というのは、国としてはどうしても国益を重視するわけですが、どういった国益を重視して今対処しているのか。日・イスラエル関係なのか、日・パレスチナ関係なのか、若しくは日米関係なのか、はたまた日・アラブ社会の関係なのか。どれも軽視していないという前提ではありますが、どういったバランスで今の対処が選ばれているのか、教えてください。

上川国務大臣 まさに委員がおっしゃったように、国際関係でありますが、それぞれの国の中も大変複雑な状況にありますし、国際関係も相互に複雑に絡み合う今日であります。

 私は、中東問題は遠く離れた場所での出来事ではなく、日本にも影響を与える問題であると考えているところであります。中東地域はエネルギー資源の宝庫かつシーレーンの要衝でありまして、日本は原油輸入の約九割を中東に依存しているところであります。同地域の平和と安定はエネルギー安全保障の観点からも極めて重要であると認識しております。

 地域の安定のためにも、まずは現下のガザ情勢への対応が最優先事項でありまして、私といたしましても、日本がこれまで築いてきたイスラエルや、パレスチナを含むアラブ諸国との良好な関係を踏まえまして、人質の解放と停戦が実現することができるよう、米国を始めとする関係国とも緊密に連携しながら、安保理やG7の一員として環境整備に取り組んでいるところでございます。

 また、危機的な人道状況の改善と事態の早期鎮静化に向けまして、最近では、イランのアブドラヒアン外相とイスラエルのカッツ外相に対しましてそれぞれ電話会談で直接働きかけるなど、積極的かつ粘り強い外交努力を行ってまいりました。

 その上で、地域の平和と安定のためには、イスラエルとパレスチナが平和に共存する二国家解決の実現が不可欠であります。今後も、中東各国との良好な関係を生かし、米国を含む関係国とも連携しつつ、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けまして我が国独自の積極的な外交努力を粘り強く展開してまいりたいと考えております。

小田原委員 ありがとうございます。

 それでは、外交官の人材、それから一か国同士の外交についてお聞きしたいと思います。

 私自身は、少年時代、外交官になりたいなと思った頃がありました。これまた個人的なことですが、しかしながら、大学に入るのに大変苦労しまして、中学生の頃から全ての青春を犠牲にして必死に受験勉強にいそしみ、何とかぎりぎりでひっかかりましたけれども、疲れ果ててしまって、もう二度と人生で試験のために勉強するのは勘弁してもらいたいというふうになって十八歳を迎えました。同級生で外交官になった立派な人もいますが、とてもじゃないけれども、大学四年生のときにもう一回、無味乾燥と言うと失礼ですけれども、受験勉強する気力は湧かず、こういった人生を歩んでしまいました。

 今般、大学の同級生が外務次官になりました。これまた大変感慨深いものがございます。国連の演説は彼が書いてくれました。熱意を感じる原稿に胸を打たれながら国連総会で演説をさせていただきました。

 外交官若しくは外交の仕事は、その担当の国と仲よくならなければ仕事にならないし、その文化を熟知していると仕事がしやすいと思います。しかしながら、最後の最後、選ぶべきは国益であろうと思います。

 例えば、日露戦争の広瀬武夫中佐は、駐在武官としてロシアに行き、アリアズナとプラトニックな恋仲でありながら、部下の手前、手を出さなかったという手紙を書いていたことからすると、それも事実なのでしょう。戦死し、しかも情報をロシアから持ち出してロシアを負かした張本人のうちの一人であるにもかかわらず、その遺体は、アリアズナの兄たち、お父さんもお兄さんたちも海軍の軍人だったということでありますが、に引き揚げられ、陸上で手厚く葬られたということであります。

 私が申し上げたいのは、最後の最後、せっかく仲よくなった外国の親友を裏切ってでも国益を守るという行為は、決してその国の人たちから恨まれ、蔑まれるということではなく、その生き方によっては敬意を表されることがあろうということであります。

 だからこそ、最後にブイの話も聞きたいわけですけれども、ブイを取り払ったら中国の人が怒るじゃないか、中国で働きづらくなるじゃないかという判断はしてほしくないわけであります。

 広瀬武夫はロシア語がぺらぺらだったという伝説は余り残っていません。むしろ、講道館柔道の達人で、柔道を教えたりとか強かったとか、生き方が立派であったからたたえられたということであろうと思います。

 今も現職の職員で、例えば、今のメキシコ大使はまさにミスター・メキシコみたいな人であります。また、ついこの間までペルーの大使をされたKさんは、「遙かなる隣国ペルー」という本を書かれて、ペルーだけじゃなくて南米全体に極めて詳しくて、その造詣には頭が下がる思いがします。しかし、どうせだったら、そこになじむということに加えて、我が国の文化や産物で魅了してほしい、日本のファンを現地でつくってほしいという思いがあります。

 私が副大臣のときに、和食マニアなものですから、来られる外国の要人は九割が日本食を御所望になります。それがおいしいとかヘルシーとか、我が国では高いとか、そういう理由で選ばれたとしても、前菜の練り物をこれは何だろうなと思いながら飲み込んでしまうのはもったいないので、私は、外務省の職員の方にも役立つと思って、今日は不謹慎だから配付資料にはしませんでしたけれども、ゲストと共に和食を二倍楽しむレジュメというのをA4判一枚にまとめました。

 日本食が十日ごとに変わる旬を、初めに初物の走り、一番おいしくて値段も手頃な盛り、そろそろなくなる名残をそれぞれの料理人が提案し、十日ごとの同じものをいただいている一期一会の料理だということが伝わるものなんだということが大まかに書いてあります。欲しい方には後で幾らでも差し上げたいと思いますし、私もぱくっているので、どうか十年前から知っているふりをしてしゃべっていただきたいと思います。

 そうやって大勢の外交官が、その外交官と食べるといつもの和食が倍おいしい、そういう経験をしてくれると、恐らくその人は日本が嫌いにはなりません。芸風は柔道であろうが和食であろうがいろいろなやり方があると思いますが、そういった外交官を育てていただきたいと思います。

 中国の話をする前に、一問だけ。

 さはさりながら、心配なのは、円安が進み、国際会議に出張するときに、ホテルの格にこだわるつもりは余りありませんけれども、遠いとか治安が悪いとか、そういうところに泊まらざるを得ない、そういったことを何とか立法府で守ってさしあげたいと思っております。苦労した御経験がもしあれば、官房長、おっしゃってください。

勝俣委員長 志水大臣官房長、時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

志水政府参考人 お答え申し上げます。

 外国出張の際の宿泊料につきましては、円安などの影響で所定の定額では足りず、委員の御指摘があったように、職員が自己負担を余儀なくされたり、やむを得ず利便性の低い宿舎、例えば、まさに委員が御指摘のような、会議場から遠い宿舎などを利用せざるを得ない事例もございました。

 また、個別に、財務省との協議により、一定の条件下で定額を超えた宿泊料について支給されることにもなってございますけれども、その協議に時間がかかる場合もございました。現在では、旅費法の規定に基づく財務大臣との協議がより簡素化され、必要な実費額を支給することとしております。

 さらに、先月には旅費法の改正が成立したところでございまして、旅費制度全体の見直しの中で、宿泊料につきましても、上限つきの実費支給とする方向で検討が進められていると承知しているところでございます。

小田原委員 国益のため、全力で支えてまいりたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官中村和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 冒頭、グラハム上院議員がNBCの放送で原爆投下を正当なものとする発言をしたということを大臣は承知しておりますでしょうか、お伺いいたします。

上川国務大臣 承知しております。

松原委員 グラハムさんのこの発言に対して、林官房長官が大変残念であるという事実上抗議の意思を表明したことについては、私はこれを評価したいと思っております。

 また、私もこの外務委員会で累次にわたって上川さんにお話をしているわけでありますが、上川大臣も昨日の記者会見で、このグラハム発言に対して大変残念である、こういうふうにおっしゃったということを評価したいと思っております。

 今日は外務委員会の場ですから、改めてそのグラハム発言について大臣の御所見をお伺いしたい。

上川国務大臣 まず、現地時間の八日の上院歳出委員会の小委員会におけるやり取りを受けまして、日本といたしまして、米国政府及びグラハム上院議員事務所に対しまして、広島及び長崎に対する原爆投下に関する日本側の考えにつきまして申入れを行ったところであります。グラハム上院議員の再度の発言ということでございまして、これが繰り返されたことにつきましては大変残念に思っているところでございます。

松原委員 今大臣は二つのことをおっしゃいましたが、一つは、アメリカの政府に対して申し入れた。このグラハム氏の上院公聴会における議論というのは国の機関の中における議論であって、議事録に残る議論で、それをゆゆしき大事であるということを私は申し上げました。

 したがって、オースティン、若しくはブラウン、アメリカの政府関係者二人に対しては、このことは個別に申入れはしていないけれども、政府に対する申入れでできた、このように考えているかどうか、御所見をお伺いします。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣より御答弁申し上げましたとおり、先般の上院歳出委員会小委員会におけるやり取りを受けまして、米国政府及びグラハム上院議員事務所に対し、広島及び長崎に対する原爆投下に関する日本側の考えについて申入れを行ったところでございます。

 繰り返しで恐縮でございますが、それ以上の詳細につきましては、外交上のやり取りでございますので、控えさせていただければと思います。

松原委員 それは全く納得できないです。外交上のやり取りといいながら、日本人の琴線に最も触れる部分の議論であります。

 大臣にお伺いいたしますが、このことに関して、それは越権行為でありますからなかなかできないわけでありますが、しかし、あえて日本の怒りを、日本の立場を貫徹するために、アメリカ側に対して議事録からそういった議論を削除するように、こういうことをおっしゃる決意はありますか。大臣、答えてください。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、現地時間八日のまさに上院歳出委員会の小委員会におけるやり取りを受けまして、米国政府及びグラハム上院議員の事務所に対しまして、広島及び長崎に対する原爆投下に関する日本側の考えについて申入れを行ったところであります。

 日本は唯一の戦争被爆国であります。核兵器によります広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならないとの信念の下、核兵器のない世界の実現に向けまして、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、グラハム上院議員側と意思疎通を重ねることも含めまして、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 私は、日本の立場を主張し、申し入れるには甚だ弱いと思わざるを得ないわけであります。

 冒頭、私は、上川外務大臣、林官房長官はよくぞ言ってくれた、私が問題意識として思っていることを、外務委員会でも度々発言したことに対してきちっと日本のスポークスマンとして官房長官がおっしゃったということを評価した上で、しかし、我々の基本的な立場は十分に伝わっているというふうにお考えであるとすれば、もっと強く、今言ったような議事録削除ができるかどうか分からないけれども、それぐらいのことを言っていかないと、私は、またこのような発言が蒸し返されるのではないかと大変に心配しております。

 こういう発言が繰り返されると、日米という基本的な同盟関係にある意味において大きな問題が発生する可能性があるのであって、我々は、先ほどの自民党の議員の質問もありますが、主張するべきことを主張したことによって、むしろ、日本は国益を尊重する国家である、こういうふうな判断をアメリカ側もするのではないかと思っております。

 もちろん、申入れをしているということは承知しておりますが、一度目のグラハム発言の後にもう一回NBCで言った、この経緯が分からないのであります。

 申入れをしたけれどもグラハム氏はNBCでもう一回発言した、こういう理解でよろしいかどうか、大臣の御所見をお伺いします。

上川国務大臣 繰り返しになるところでございますが、先般の申入れにもかかわらず、グラハム上院議員が御指摘のような発言を繰り返したことにつきましては極めて残念に思っておりまして、グラハム上院議員側とは十二日の同議員の発言以降も含めて意思疎通を重ねてきているところでございます。

 引き続き、日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならないとの信念の下、核兵器のない世界の実現に向けて、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、グラハム上院議員側と意思疎通を重ねることを含めまして、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 今大臣は重要な時系列のことをおっしゃった。大変正直でよろしいと思っております。つまり、グラハム氏に対して申入れをしたにもかかわらず、その後、NBCにおいて再び広島、長崎の原爆投下は正しかったということを言ったわけであります。

 二重の意味において、一つは、我々日本の申入れが極めて軽々しく扱われたと言わざるを得ない。同盟国日本の申入れはその程度の扱いでいいと大臣はお考えでしょうか、お伺いします。

上川国務大臣 グラハム上院議員がどのような受け取りをされたのかということを私自身が知ることはできませんけれども、現下の中東情勢の文脈でまた広島、長崎に対する原爆投下を引用した議論を提起したことは適切ではなかったと考えておりまして、受け入れることができません。同上院議員がこのような発言を繰り返したことは極めて残念に思っております。

松原委員 申入れをしたということですが、もう一回グラハムさんが違うところでこういった発言をするリスクは私はあると思っております。こういうリスクに対して、それがないように、従来と同じやり方では不十分だと私は思っております。どういうことを考えていますか、大臣。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおり、先般申入れをいたしたにもかかわらず、上院議員が御指摘のような発言を繰り返したことにつきましては極めて残念に思っているところであります。

 グラハム上院議員側とは、十二日の同議員の発言以降も含めまして意思疎通を重ねてきているところでございます。そういったことを含めまして、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 被爆の実相を訴えるだけではアメリカ側のこういった発言は止まらない可能性があると思っているんです。広島、長崎を原爆投下をして成功した事例として軽々に言うなよということはきちっと申入れをしなければいけません。

 質問の順番が変わりますが、今日は配付資料で昭和二十年八月十一日の朝日新聞を配っておりますから、御覧いただきたい。

 この中に、「国際法規を無視せる惨虐の新型爆弾 帝国、米政府へ抗議提出」とあります。私は、この文章の中を見ると、極めて真っ当なことを言っていると思っております。

 朝日新聞の文章を読みます。

 「去る六日広島市に対して行はれたB29による新型爆弾の攻撃に関し帝国政府は十日左の如き抗議をスイス政府を通じて米国政府に提出すると共に同様の趣旨を赤十字国際委員会にも説明するやう在スイス加瀬公使に対し訓令を発した」と書いてあります。これは八月十一日の朝日新聞であります。

 その中の文章でありますが、「本月六日米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を潰滅せしめたり」これは事実であります。「広島市は何ら特殊の軍事的防衛乃至施設を施し居らざる普通の一地方都市にして同市全体として一つの軍事目標たるの性質を有するものに非ず、」これは、いや、そうだったというんだったら後で反論してください、大臣。

 「本件爆撃に関する声明において米国大統領「トルーマン」はわれらは船渠工場および交通施設を破壊すべしと言ひをるも、本件爆弾は落下傘を付して投下せられ空中において炸裂し極めて広き範囲に破壊的効力を及ぼすものなるを以つてこれによる攻撃の効果を右の如き特定目標に限定することは技術的に全然不可能なこと明瞭にして右の如き本件爆弾の性能については米国側においてもすでに承知してをるところなり、」彼らは完全にこれが一般の老若男女に対しても大きな惨劇を加えることを承知している。

 その後、「非交戦者の別なく、また男女老幼を問はず、」これは日本側が言っております。さらに、「交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものに非ざること及び不必要の苦痛を与ふべき兵器、投射物其他の物質を使用すべからざるとは戦時国際法の根本原則にして、それぞれ陸戦の法規慣例に関する条約附属書、陸戦の法規慣例に関する規則第二十二条、及び第二十三条(ホ)号に明定せらるるところなり、」こう書いてあります。

 今日は中村審議官も来られていると思います。この点について、ハーグ陸戦条約について、今の二十二条、二十三条のホを説明してください。

中村政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問にありました陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約、ハーグ陸戦条約の附属書でございますが、陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則第二十二条でございますが、「交戦者ハ害敵手段ノ選択ニ付無制限ノ権利ヲ有スルモノニ非ス」こう規定しております。

 続きまして、第二十三条ホでございますが、第二十三条は柱書きで、「特別ノ条約ヲ以テ定メタル禁止ノ外特ニ禁止スルモノ左ノ如シ」とした上で、ホ号として「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」このように規定しております。

 以上です。

松原委員 ハーグ陸戦条約は、当時、アメリカ、日本は締約国として入っていたのか、現在も生きているのか、確認します。

中村政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げたハーグ陸戦条約は、当時、米国、日本、いずれも締約国、当事国でございました。したがって、日米間で当時有効でございましたし、現在も条約としては有効ということでございます。

松原委員 大臣、ハーグ陸戦条約のこの箇条を読むと、明らかにアメリカの原子爆弾は、当時の日本政府がアメリカに対してスイスを通して抗議をしたように、陸戦条約の二十二条若しくは二十三条ホ号に違反していると私は思っておりますが、御所見をお伺いしたい。

中村政府参考人 お答えいたします。

 ハーグ陸戦条約及びその附属書の陸戦規則の規定内容及び日米の締結状況については先ほどお答えしたとおりでございますが、同時に、他方、ハーグ陸戦条約につきましては、交戦国の全てが同条約の当事者である場合に適用するいわゆる総加入条項が定められてございます。それであるにもかかわらず、さきの大戦に関しましては、幾つかの交戦国がハーグ陸戦条約に加入していなかったという点が一つございます。

 また、さきの大戦時にハーグ陸戦条約附属書の陸戦法規の内容が条約の当事国を越えてほかの国にも適用されるような慣習国際法化していたかどうか、この点については様々な議論がございましたということでございます。

松原委員 私は大臣の所見を聞きたい。この二十二条若しくは二十三条ホ号に明らかに原爆は該当していると思いますが、大臣の所見をお伺いしたい。大臣、答えてください。考えたことがないなら考えたことはないと言ってください。

 後ろから出てこなくていいよ。横を見ないで答えてよ、大臣。大臣の個人的な所見を聞きたいんですよ。

上川国務大臣 大変重要な条約に関することでありまして、当時の状況、また、現在に至るまでのプロセスについて私がここでそれを全部総括する形で申し上げるということは、これは慎重を期して答弁しなければいけないことと認識しているところであります。

 そこで、今答弁させていただいたところでありますが、当時の国際法という観点からいきますと、ハーグの陸戦条約におきましては、まさに総加入条項が定められていたにもかかわらず幾つかの交戦国が同条約に加入していなかったこと、また、第二次大戦時に同条約の附属書の陸戦法規の内容が慣習国際法化していたかどうかについて様々な議論があるということについて承知しているところでございます。

 ただ、今お示しのありました東京大空襲についてでありますが、まさに国際法の根底にあります基本思想の一つたる人道主義に合致しないものであったということについては、そのように考えております。

松原委員 東京大空襲はこの後に聞くつもりなので、答弁が先に来たわけでありますが。

 当時の日本側がスイスを通して、二十二条、二十三条ホにこれはまさに問題を持っているということを米側に抗議した。この事実に対しては、私は、その抗議は間違っていたのか、正しいのか、今判断できないから今後検討するのか、その三つしかないと思うんですよ。大臣、御所見をお伺いします。

 いいですよ、なかなか大変なことですから、簡単に言えないんだったら今判断できないから今後検討するでもいいですよ。おっしゃってください。

上川国務大臣 失礼いたしました。

 広島及び長崎に対します原爆投下でございますが、まさに大変多くの貴い命を奪い、病気や障害などで言葉に尽くせない苦難を強いた、人道上極めて遺憾な事態をもたらしたものと認識しております。

 かねてから政府として明らかにしてきたところでありますが、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しないものと考えております。

 政府といたしましては、人類に多大な惨禍をもたらす核兵器が将来二度と使用されることがないよう、核兵器のない世界の実現を目指し、国際社会の取組を主導していく決意でございます。

松原委員 昭和二十年八月十一日の日本側がスイスを通してアメリカに抗議をした文書、その後に、一つパラグラフを飛ばしますが、「新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性惨虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪悪なり 帝国政府はここに自からの名において、かつまた全人類および文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す」こう書いてあります。この部分に関して大臣の御所見をお伺いします。

上川国務大臣 ただいまの委員の質問は、その前の質問に対して私が申し上げた、まさに、核兵器の使用につきましては、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しないと考えているところでございます。

松原委員 一番大事なところをおっしゃっていない。

 そして、ここに、こういったことを抗議し、要求していると書いてあるんです。「放棄すべきことを厳重に要求す」と。昭和二十年八月十一日に、こういったものを要求するとアメリカに対して日本は言っているんです。このことに関して、この発言は正しいと思うか、正しくないと思うか、今は判断できないか、おっしゃってください、大臣。

上川国務大臣 今申し上げたとおり、人道主義の精神に合致しないと考えているところでありますので、その意味で、人類に多大な惨禍をもたらす核兵器が将来二度と使用されることがないよう、核兵器のない世界の実現を目指し、唯一の原爆被爆国としての立場をしっかりと基本に据え、国際社会の取組を主導していく決意でございます。

松原委員 昭和二十年八月十一日でありますが、同じことを言っているんです。ただし、それをアメリカに要求すると言っているんです。

 要求するということを言うことは強いわけです。今、大臣は、要求すると言わない。言っていないから、グラハムさんは何回も広島、長崎は正しかった、投下は判断として正しかったと言っているんじゃないですか。

 我々は、ここまでアメリカが広島、長崎を軽々に出して、原爆投下は正しかった、あれは我々にとっての成功体験だと言うならば、そういうことを言うなと明確にこういった形で要求していかなければ同じことが繰り返されますよ。今の答弁は日本の外務大臣として非常に残念な答弁であります。

 今日は竹島問題で法務省の政務三役の方にもお越しいただいていますから、次の東京大空襲の前にそれをしてから東京大空襲に移っていきたいと思います。

 竹島に上陸しました韓国の曹国国会議員、このことに関して、まず大臣の所見をお伺いしたい。

上川国務大臣 今般、韓国の野党代表による竹島上陸が強行されたことを受けて、外交ルートで強く抗議するとともに、再発防止を強く求めたところであります。

 竹島問題につきましては、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠でありまして、このような不法占拠に基づき韓国が竹島に対して行ういかなる措置また行為も法的な正当性を有するものではありません。

 韓国側が関連の行為を行った際には我が国の立場を先方に明確に伝達する必要があり、今回も遅滞なく外交ルートで抗議を行ったところでございます。

松原委員 何回も外交ルートで抗議を行っているけれども、全然そんなものは無視して行動している、だから、従来の日本側の行動というのは全く効果がない、極端な言い方をすれば無意味であったというふうに言わざるを得ないと思っております。

 時間もないので確認します。

 法務省にお伺いしますが、入管法第五条一項十四号は、上陸拒否者に関して明確に罰金三百万円以下等が該当できると条文上はなっていると思います。このことについて御所見をお伺いします。

門山副大臣 特定の個別事案への対応については本来はお答えを差し控えるわけでございますが、一般論として申し上げれば、入管庁におきましては、適正な入国審査等のための資料として、入管法上の上陸拒否事由に該当する者や、入国目的などにつき慎重な入国審査をすべき者等を登載した出入国リストを作成しております。

 また、竹島問題については、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜く決意の下、毅然として対応していく必要があると認識しておりますので、必要に応じ入国者リストへの登載を行い、また、委員が御指摘になった入管法第五条第一項十四号に該当するなど、上陸条件に適合していないと認める場合には上陸を拒否するなど、適正に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 私が条文を読みましょう。「十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」これはブラックリストなんです。ということは、竹島に上陸した曹国氏は日本に対してこういった不利益を与える者ということになると思いますが、大臣の御所見をお伺いします。

上川国務大臣 竹島問題についてでありますが、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠でありまして、このような不法占拠に基づく韓国が竹島に対して行ういかなる措置また行為も法的な正当性を有するものではございません。

 その上で、引き続き、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜く、こうした決意の下で毅然と対応していく考えでありまして、関係府省庁とも連携し、何ができるか、更なる検討を進めてまいりたいと考えております。

松原委員 私が申し上げているのは、第五条の第十四号は該当するでしょうと言っているんですよ。曹国氏は竹島に上陸して日本に不利益を与えているわけでしょう。ブラックリストに載らなくて、この間も質問したように、いけしゃあしゃあと正式に日本に、京都に来ました、奈良に来ました。あり得ないでしょう。こんなことを許しちゃいけないですよということは明確に申し上げておきたい。

 次に、入管法第七十条一項二号、これも適用対象になる。これは文言上は施設がある、ないを問うていないんですよ。これは、日本の入国審査官が上陸を許可していない者が上陸した場合は罰金三百万円以下、懲役刑もある、こういうことです。副大臣、認識はそれでよろしいですね。

門山副大臣 入管法第七十条一項第二号は、入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した場合に成立する不法上陸罪の規定でございます。

 竹島につきましては、現実に我が国が施政を行い得ない状態にあり、我が国の法律を適用することができない地域であることに照らすと、不法上陸罪について規定する入管法の適用の前提を欠くものと思料いたします。

松原委員 そういうばかなことを言っては駄目なんですよ。

 この法律には、入国審査官の許可を受けずに上陸した者は罰金三百万円以下、懲役三年以下、こう書いてあるんですよ。だから、入国審査官が曹国氏の竹島上陸を認めていない以上、当然この第七十条の規定は該当するんですよ。

 二つあるんですよ。我々は現行の法律で相手の挙動を抑止する、ペナルティーを与える。さらには、日本に対する入国を拒否できる理由が既に法文として二つある。あとは、それを適用するかどうかのいわゆる政治の決定なんです。

 大臣、大臣は先ほどから何ができるか今後考えていきたいとおっしゃっている。何ができるか考えていきたいの中でこれを取り上げてください。時間がないから簡単に答えてください。

上川国務大臣 ただいまの入国に係る法制度につきましては外務省の所管ではございません。法律の解釈、運用につきましてお答えすることは差し控えさせていただきたいということを申し上げた上で申し上げるところでありますが、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜く、こうした決意の下で毅然と対応していく考えに変わりはなく、関係府省庁とも連携しながら、何ができるか、更なる検討を進めてまいりたいと考えております。

松原委員 今の答弁は全く了解できませんな。うちの部署の担当ではないからと言った。あり得ない。大臣は内閣を構成しているんですよ。全ての内閣の法律は内閣の閣議決定で出てくる。つまり、法務省の法律だって内閣で決めて出てくるんですよ。大臣はそれぞれの一般の政府参考人と違って、大臣は全部に対して閣議で責任を負えるんですよ。また、負うんですよ。例えば、私が質問主意書を出す場合、全大臣が副署するわけですよ。

 そういういいかげんな逃げ口上を言ってもらっては困るんですよ。大臣は特別なんです。日本の全体のことに対して議論ができるんです。だから大臣に私は問いただしているんですよ。法律を作れとは言っていない。こういう法文がある以上は、その法文を使って曹国氏のような行動は抑止できるということを言っている。

 いいですか。時間がないから言いませんよ。後ろから出てきているあなた、これは時間がないから更問いしないから。同じような答弁で本当に無責任だね。がっかりするような大臣であってほしくない。我々が上川大臣の後をついていけば日本の国益は守られる、そういう大臣になってくださいよ。演説で言っていることとここでやっていることが違うじゃないか。いいかげんにしてくださいよ。

 さっき北米局長がおっしゃったんだけれども、私は申入れをして済む話じゃないと思うんですよ。申入れをして済む話じゃない。私が拉致議連で十年以上前にアメリカに行ったときに、なかなか上院議員、下院議員のアポイントが取れなかった。そのとき、行った議員の一人が、何でアポイントが決まっていないんだと言いましたよ。誰に言ったかは言いません。当然ワシントンで言っているわけですから臆測してください。何と言ったか。我々は僅か四、五人でアメリカの上院議員、下院議員をオルグして回っています、ロビー活動をしていますと。言ってみれば、当時の韓国や中国はおびただしい人数でオルグをしていた。四百人のロビイストがいれば一つの事務所に週に一回行けますよ。

 日本の場合は、極端な事例を言うならば、ハレーすい星のように、一回行ったら次は四年後。今度日本から平沼さんという国会議員を団長にして議連、救う会、家族会が来ます、会ってもらえませんかと言ったら、まず、あなたは誰ですか、ここから始まってしまう。韓国も慰安婦の問題では頻繁にロビー活動をした。その当時の中国や韓国のように頻繁に、毎週一回行っていれば、その議員の誕生日に花を持っていく、奥さんの誕生日にチョコレートを持っていく、こういう日頃のつき合いをしていれば、今度うちから平沼議員という方を団長にする議員団が来ます、会ってもらえませんか、分かりましたとなりますよ。それを、突然四年ぶりに行って、日本の外交部の誰々です。あなたは誰。いや、今度。それではアポイントは取れないですよ。

 何が言いたいか分かりますか。日頃からのロビイスト活動が圧倒的に日本は欠けているんじゃないかと思っています。

 グラハムさんのところに一年間で一体何回行っているんですか。資料はないと思いますが、これぐらい行っていますというのがあったら、局長、言ってくださいよ。

有馬政府参考人 手元に資料がないので正確な数を申し上げることはできませんけれども、大使がグラハム議員と今年に入ってから会談を行っているとともに、議会スタッフとの間で接触を行ってきているところでございます。

松原委員 韓国が慰安婦像をそこら中に造るときは圧倒的にこういったロビイスト活動をやったと私は聞いていますよ。日本の外務省も反撃の一定のロビー活動をしたことを私は評価しますが、しかしながら、ロビイスト活動を徹底してやらないと、グラハムさんに対して物を言うだけじゃない、グラハムさんのスタッフに対して、関係者に対して徹底したロビイスト活動をするということは大事なんですよ。それを日本はアメリカに対してやるべきであるということは、時間もないので、明確に要請しておきます。

 質問時間が極めて少ないのでもう一点言いますが、大臣、日本とアメリカは大変重要な同盟国である、この認識はよろしいですね、簡単に答えてください。

上川国務大臣 そのとおりでございます。

松原委員 つまり、そのときに私が明確に申し上げておきたいことは、要するに、東京大空襲についての議論は次回に回しますけれども、いわゆるアメリカと健全な同盟関係を築き上げていくためには、敵対国家とやる必要はないですよ。やれればいいが、実際できないし、やる必要はない。真の同盟国との間、今の日本だったらアメリカです。アメリカとのみ、これが必要だと私は明確に言いたい。

 ドイツが西ドイツ時代にポーランドとの間で西ドイツ・ポーランド教科書会議を設置し、一つの議論をした。同じように、原爆投下、東京大空襲、こういった歴史的意義を検証する委員会を米側に提起して、ある種のこういった誤った、広島、長崎に原爆を投下したのは正しかったというふうなことをアメリカ側に言わせないように、日米の同盟関係をきちっとするように、こういったいわゆる検証の会も、歴史的なこういったことが何度も出るから、グラハムさんは何回も言っているから、こういったものは必要だと思う。

 大臣、今言った内閣の一員として、所管が違うとかそんなことは聞いていない。内閣の一員は全てのことが所管ですよ。だからこそ内閣は閣議決定をして全ての省庁に関しての法律を出してくるんだ。大臣の所見をお伺いしたい。

上川国務大臣 西ドイツとポーランドとの間におきましてそのような委員会が設置された理由には様々な理由があると思いますが、日本といたしましては、一般的に、歴史的な事象に関する評価につきましては、専門家等によります議論がなされるべきと考えているところであります。

 その上で、我が国としての体験及び戦後の歩み等を踏まえまして、米国とも協力しながら今後も世界の平和と繁栄に貢献してまいりたいと考えております。

松原委員 要するに、やるということでよろしいですか、大臣。

上川国務大臣 専門家による議論が重ねられていく、このことが極めて重要であると思っております。

松原委員 答えてほしいんですよ。これはどこの国ともやれなんて僕は言っていませんよ。日本とアメリカの間でこういう原爆投下肯定論が出てくるから言っているんですよ。こういう日米の同盟を毀損するような議論が平然と複数回、先ほど大臣がおっしゃったとおり、グラハム氏に申入れをした後、もう一回言いよった。どういうこっちゃという話ですよ。だから私は日米の一番同盟の基軸においてこういったことを議論するべきだと言っているんですよ。

 やる気があるんですか、ないんですか。大臣。

上川国務大臣 日米の関係は様々なチャネルにおきまして様々な深化を遂げている過程でございます。並々ならぬ戦後の努力をベースにした形で今があるということ、そして平和であるということの今の日本の取組、こういったことにつきましても共有をしながら進めてきているところでありますし、また、こうした我が国としての体験、戦後の歩み等を踏まえまして、米国とも協力しながら今後も世界の平和と繁栄に貢献していく、こういう未来志向で臨んでいるところでございます。

 歴史的な事象に関する評価でございますので、専門家等による議論がなされるべきものと考えております。

松原委員 原子爆弾投下が正しかったかどうかを含めてアメリカと議論しなければ、グラハムさんのようなあり得ない議論を引用する議論もどんどん出てくる、そういうことを言っているんですよ。

 東京大空襲もまさに国際法違反ではないかというのは次回に聞きますが、これだって言うことを言わないと駄目なんですよ。さっきの小田原さんの議論と一緒ですよ。言うことをしっかり言うことによって我々は日米の間の議論を進めていく。

 今、並々ならぬ努力をしてきたと言っているけれども、していないじゃないですか。現実にグラハムさんは、広島、長崎への原爆投下は正しかったと二度も言っているんですよ。どこに並々ならぬ努力があったんですか。

 根本的なところで戦略が違うんですよ。アメリカに対して昭和二十年の日本政府が言ったように、要求をし、抗議をするという明確な態度が必要なんですよ。抗議をしないから大丈夫だろう、このように彼らは思うわけですよ。単に平和な世界を目指すというだけではなく、アメリカに対しては抗議をするということが必要なんじゃないかと強く要請しておきます。

 その上で、今言ったように、原爆の問題、東京大空襲の問題、きちっと、日米基軸が大事だからこそ、それに関する共同した共通認識をつくる努力をする。当然、我々の琴線に触れるものは我々日本国民の民族としての思いを貫徹するということになろうかと思っております。

 最後に一言だけ所見をお伺いして終わります。どうぞ。

上川国務大臣 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならない、こうした信念の下で、核兵器のない世界の実現に向けまして、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を重ねてきているところであります。

 また、オバマ元大統領、バイデン大統領におかれましては、広島を実際に訪問していただきまして被爆の実相に触れていただきました。今後も、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 既に次の質問者の時間ですから言いませんが、それがやり方として間違っているんですよ。明確に抗議をしないから駄目なんですよ。被爆の実相を知ってもらうのは大事ですよ。しかし、アメリカさんよ、我々は同盟国として明確に申し上げたい、これは間違ったことをしましたねと一言も言っていないでしょう。一言も言っていないから、こういうふうに繰り返しグラハム氏のような発言が出てくる。知ってもらうことと意思を表示することは違うということを明確に申し上げて私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 上川大臣におかれては、週末、外務大臣になってから初めて地元に戻られて、先週富士山の話をしましたけれども、富士山を眺めてすがしい気持ちで帰られてきていると思いますので、いい答弁を期待したいなと思っているところであります。

 松原議員も質問されていましたけれども、島根県の竹島の件についてであります。

 四月にも韓国の最大野党の共に民主党の国会議員が韓国が不法占拠している竹島に上陸したのに続いて、今月十三日には祖国革新党の曹国代表らがやはり上陸いたしました。大変許し難い暴挙が続いています。

 先月の共に民主党の国会議員が上陸した際も、日本政府としては遺憾の意を表明して抗議しているということであり、また、今回も抗議したということではありますが、引き続きしているということは、今ほどの松原議員の件ともつながりますけれども、言っていても結果が出ていないということは、ちゃんと伝わっていないということであって、やはりしっかり形に変えていかなきゃいけないということもあると思います。

 確認ですが、まず、韓国政府に伝えたということですけれども、どういうセクションのどういう人に伝えてどのような返答があったのか、確認させてください。

上川国務大臣 今月五月十三日でありますが、韓国の野党代表によります竹島上陸が強行されたことを受けまして、外務省の報道発表にて公表したとおりでありますが、同日、東京で在京韓国大使館次席公使に対し、ソウルで韓国外交部アジア太平洋局長に対し、強く抗議するとともに、再発防止を強く求めたところでございます。

小熊委員 韓国側のコメントはどんなコメントがありましたか。

上川国務大臣 これに対し、韓国側からは従来の立場に基づく反応がありました。

小熊委員 従来の反応を確認させてください。

上川国務大臣 竹島は明白な韓国固有の領土であるというのが韓国側の主張と承知しております。

小熊委員 領土問題で平行線をたどっていることでありますから、韓国はこういうことですけれども、上陸したことに関しての言及はなかったですか。

上川国務大臣 私の方から申し上げられることは今申し上げたようなことでございまして、それ以上のことについて申し上げることはできない状況であります。

小熊委員 残念なのは、尹大統領は対日外交政策を変えて、地域の安全、発展のためには日韓がしっかり協力していくことが大事だという趣旨で進めていることを、どの国もそうですけれども、政治ですから変な政争の具に扱われてしまっている。

 本来は領土問題という冷静にしっかり当事国が交渉していかなきゃいけない問題を、低いレベルに落としてしまっている。非常に残念な結果で、ありていに言えば、韓国の野党の議員たちのやっていることはパフォーマンスとしてやっているということで、非常にゆゆしき問題でもありますから、殊更日本側でヒートアップしていくと、逆にそういう低俗な議論に陥ってしまうので、金持ちけんかせずじゃないけれども、下手なパフォーマンスには過剰に反応する必要はないとは思うんですが、続いてきてしまっているというのは非常によくないし、竹島の領有権については我々はしっかり主張していくことはやっていきながらも、そうした政治ショー化しているような議論には入っていかないことも重要であると思います。

 四月の上陸と今回の上陸がちょっと違うのは、どちらも共通しているのは、尹大統領の外交政策に対してパフォーマンスをしたということは共通していますが、曹国代表の場合は、今起きているLINEの問題について言及しました。

 LINEについても、支配的な資本関係をしっかり解消しましょうということと、個人情報の保護ということで総務省が行政指導したと私は認識しておりますけれども、曹国はここにも食いついてきてしまっている。

 ここで、このLINEの問題について政府の見解をお伺いいたします。

西田大臣政務官 お答えさせていただきます。

 LINEヤフー社の事案については、同社において通信の秘密を含む情報の漏えいというセキュリティー上の重大な事案が発生したことを踏まえ、三月五日、再発防止の徹底、利用者の利益の確実な保護を求める行政指導を実施したものでございます。

 行政指導の内容については、安全管理措置等の強化やセキュリティーガバナンスの見直しなどの措置を講じるよう求めたものでございます。このセキュリティーガバナンスの見直しには様々な方策があり得ると理解しているところでございますが、いずれにせよ、委託先管理が適切に機能する形となることが重要と認識しているところでございます。

 今後とも、再発防止の徹底、利用者の利益の確実な保護を図ってまいりたいと思います。

小熊委員 松本総務大臣もしっかり真意が伝わるようにしていきたいということですが、外務省としては総務省のやっていることに対してもちゃんと韓国政府側に説明されましたか。そこは別に言及はしませんでしたか、抗議をしたときに。

勝俣委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

勝俣委員長 速記を起こしてください。

 上川外務大臣。

上川国務大臣 外交上のやり取りに関することということで、この場につきましては答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

小熊委員 これは総務大臣がちゃんと伝わるようにと言っているんですから、外務省としてもそこも言っておいた方がいい。言っているはずなんですけれども。

 松本総務大臣はかわいそうなことに、伊藤博文の末裔だからみたいなことまでやゆされている。私だって会津人ですけれども、松本総務大臣ともいい関係でいます。伊藤博文の末裔だから俺はつき合わないなんて、会津人として言わないですよ。でも、そういうことまで言われている。まさに変な政治ショー化してしまっているというのもありますし、総務省の言っているとおり、個人情報が流出したことはゆゆしき問題でもあるし、資本が支配的であるのもよくないということ。だから、竹島も政治ショー化しちゃいけないというのと、このLINE問題も政治ショー化しない、矮小化しないということを、しっかり抗議をしていかなきゃいけないと思います。

 まして、他国の政治家のことを一々あげつらうわけにはいかない、余りそういうのはしない方がいいのかもしれないですけれども、曹国さんは韓国国内でもタマネギ男とやゆされていて、それなりにスキャンダルを抱えていて、逆に炎上商法なのかなというぐらいのパフォーマンスをしかけていますから、ここは冷静に対応していかなければいけない。

 ただ、続いてきてしまっているということで、こうした政治ショー化したようなものが続かないように、これは対日政策を協力関係に持っていこうという尹政権ともある意味協力しながらやっていかなきゃいけないところでもあると思いますので、改めて、友好的に変化している日韓関係が再び悪化しないように配慮しながらも、しっかり日本の主張をしていくことが、まさに大臣が地元で言われていた日本の顔として外交の最前線で頑張っているということですから、この件についても頑張っていただきたい。

 そういった観点から、もう一度、日韓関係の今後について大臣の御所見をお願いします。

上川国務大臣 今委員から御指摘いただきましたとおり、尹錫悦韓国大統領と岸田総理の間におきましての首脳会談をきっかけにし、今非常にいい関係にあるということについて、この流れを大きくしていく必要が二国間の様々な課題解決におきましても重要であると認識しているところでございます。

 今、課題が冷静に、しかも政争の具にならないようにという御発言がございましたけれども、まさに外交は、極めて現実的ではありますが、しっかりとした連携協力の上で成し遂げていくべきことであると思っておりますので、そうした姿勢でこれからも臨んでまいりたいと考えております。

小熊委員 これは提言にとどめますけれども、韓国政府に物申すだけじゃなくて、公的な党ですから、党の代表ですから、共に民主党また祖国革新党の党本部にも日本の政府としては抗議をすべき、そういうアプローチも必要だということを提言させていただいて、次の質問に移ります。

 今、国会でも審議されている入管法等の改正で、外国人労働者を増やしていこうという政策についてお伺いいたします。

 人口問題戦略会議の提言でもあったとおり、二一〇〇年に日本の人口が半減するという推測がなされている中で、何とか二一〇〇年、八千万人を維持しようというのが戦略会議の提言だったと思いますが、その中にも、二千五、六十年代には一定程度の外国人が、一割程度居住しているということが前提になっていると私も資料で見ましたけれども、それは別に政府の目標ではないわけでありますが、拡大していこうということでの今回の改正であります。

 改めて移民の定義を、外国人労働者との違いを含めながら御説明願います。

門山副大臣 移民という言葉は様々な文脈で用いられており、明確に定義することは困難でございますが、政府といたしましては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする、いわゆる移民政策を取る考えはございません。

 現在、衆議院法務委員会において審議中の法案において創設する育成就労制度は、三年間の就労を通じて特定技能一号の技能水準の人材に育成するための受入れであり、特定技能制度と同様に、人手不足分野において受入れ見込み数を上限に受入れを行うこととし、かつ、家族の帯同も認めないことなどからすれば、いわゆる移民政策には該当しないものと認識しているところでございます。

小熊委員 国際法上も移民という明確な定義があるわけでもなく、また、更に広げて言えば、外国人というものについても、いわゆる移民国家であるアメリカとかカナダとかオーストラリアにおいては、外国人というのは、そこで生まれたか、生まれていないかという定義ですけれども、日本は違う。国籍を持っているか、持っていないか。

 天下の広辞苑だと、労働に従事する目的で外国に移り住むことが移民と定義されています。日本も加盟しています国際移住機関の定義でも、ある意味、日本は移民政策を取らないと今確認しましたけれども、国際移住機関、IOMも明確に規定していませんが、移民というものは日本の外国人労働者も実は当てはまるような定義をされています。また、日本においては、IOMの国連移住グローバルコンパクトに署名していますから、移民の権利は守っていくんだということを国際社会でも確認しているし、推進しようとしているのが日本の立場です。

 日本国内でも狭義の移民にしてしまっているんですが、国際的にもぼわっとした感じで、移民かどうかというのが規定はされていませんけれども、国際的な一般論でいうと、外国人労働者は移民と定義されるというのが国際的な認識だと思っています。

 そこについて、受入れについては、移民じゃないといっても外国人労働者は一定期間いますから、受入れをちゃんとしていかないと、この間のバイデンの発言のようにゼノフォビックな国だ、ゼノフォビアだと言われてしまう。あれは取ってつけたバイデン大統領の発言だとは私は思っていないです。海外で日本社会に対する印象がゼノフォビックになっているというのは、一般的な認識というか、印象だと思っています。

 そういう中で日本が外国人労働者枠を広げていくわけでありますから、しっかりとした受入れをしていかなきゃいけないし、ある意味、移民じゃないといっても、準移民だ。僕が地元で外国人労働政策を語るときには、準移民国家と同じですよと。だから、まさに地方の各コミュニティーがしっかりとした受入れをしていかないと日本の印象が変わってしまう、お互い不幸になるよという話をしています。だから、移民政策は取らないと言っていても、ある意味、現実は移民に近いんですよ。

 昨日も、国会に来られた韓国の上院、下院の方々と日韓議連で、藤井さんも一緒にテーブルを囲みましたけれども、どんな問題があるかと言ったら、日本はホームレスが少ないねという話もあったけれども、ホームレスと移民の問題だという話をしていましたから、そういう意味では、労働者が増えるということは、ある意味、何か問題が起きたらそれは移民の問題だというぐらいに認識していかないとちゃんと対応できないと私は思います。

 定義は日本では移民に入れていかないわけでありますけれども、社会に対するインパクトは、ほかの国で移民の問題が生じているのと同じ程度の課題は抱えてくると思います、問題が起きてくるときは。起きてくる問題というのは、外国人労働者だから移民問題とは違うと言えないと思います。今起きている問題も似たような問題になっていますから。

 そこで、質問したいと思いますけれども、外国人労働者の枠を増やすというのは、高度な人材を日本に受け入れて発展に寄与していただく、また、日本で学んで母国に帰って発展に寄与してもらうという大義はあるものの、人口減少の中で働き手不足の担い手として枠を広げるというふうにもなっていますし、今回の法改正はまさに労働力として確保するんだということも表向きも言っていただいていますから、そうした目的の下で法律が改正されていきますけれども、直近の日本に来ていただいている労働者の国籍の上位は、御承知のとおりベトナム、中国、フィリピンです。でも、前年比の増加率でいうと、インドネシア、ミャンマー、ネパールといった国です。ネパールにおいては、国内でいろいろな状況がある中で、受入れについては非常にセンシティブな問題もはらんでいますけれども、これはまた後日の議論にしていきたいと思います。

 前年比の増加率のトップを走っているインドネシアについてですけれども、ないとは思うんですけれども、日本の就労支援の会社を経営しているのが総理の実弟の方であります。だから、親族に便宜が図られたという、私はないと思うんですけれども、うがった見方を払拭していかないと、また官邸に、いろいろな問題を総理は起こしましたけれども、そういううがった見方をされかねない。李下に冠を正さずという態度が必要だと思います。

 その点について、そうした間違った印象が事実かは私も判別はしませんけれども、そうした懸念に対する払拭の努力はどうされるのか、お聞きをいたします。

上川国務大臣 今、外国人の方々が日本の社会にいらっしゃるということで、あらゆる現場におきまして働き手不足が深刻化しているところにおいて、労働という形でこうした問題が期待も含めて大きくなっている、こうした問題意識を御指摘いただきました。

 そうした方々をまさに地域社会で受け入れる、つまり、労働者のみならず、生活者としての目線、このことをしっかりと受入れ側の我が国あるいは地域社会の中でも受け入れる必要がある、こういう認識の下で、受入れと同時に、多文化共生の仕組みづくりということにつきましても、各自治体が受入れの主なる者でありますので、そういったところと協力しながら、まさに新しい時代、選ばれる日本という形の中で進めていく政策であると認識しているところであります。

 今、育成就労制度の創設と特定技能制度の適正化に関する法律について審議がなされているものと承知しております。こうした新しい制度の実施に当たりましては、公正に運用されることが極めて重要であると考えておりまして、外務省といたしましても、関係省庁と連携しながら適切に対応してまいりたいと考えております。

小熊委員 次の西田政務官が答えるべきところを大臣が答えてしまったんですけれども、聞きたかったのは、インドネシアの件で総理にそういう懸念が話題としてあるということで、どう払拭するんですかというのが質問だったんですが、そこにはお答えしにくかったので、いいです。秋には総理が替わって上川大臣が総理になっているかもしれないので、ここはおいておきますけれども。

 政務官、答えますか。地域との交流が必要だというのも外務大臣が答えてしまったので。

 これは必要だし、あと、この際、馬場さんに提言しておきますけれども、僕の地元でなかなかコミュニティーとの交流がない。何でと聞いたら、短期の場合はできないと言うんです。短期の人もいるんですよね。長期にわたっていればコミュニティーに入っていく機会があるんだけれども、短期だとなかなかしにくいんですよね。そういうところも配慮しながら、短期、中期、長期にかかわらず、コミュニティーとどう交流していくかということが重要なので、これはしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 あわせて、子供の頃からの教育が大事で、国際理解教育というのは文科省においても取り組んでいますが、まだ充実していないと思っています。

 あべ副大臣にお聞きしますけれども、度々紹介する私の妻は青年海外協力隊の隊員で、帰ってきてからはボランティアであちこちの小学校に出向いて国際理解教育というのを出前講座で行っているんですが、やっている学校、やらない学校、やっても一年に一遍ぐらいということで、ちょっと足りていない。

 今まではそれでよかったかもしれない。でも、日本は準移民国家に踏み出そうとしている。これから外国人に生活の場で触れる機会が多くなってくるときに、今まで経験のない子供たちがゼノフォビックな態度を取らないように、全然悪意がなくても慣れていないから取ってしまう場合も考え得るので、是非これは充実化していかなければいけないと思いますが、あべ副大臣、お願いします。

あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。

 委員御指摘のように、小学校、中学校の段階から、異文化、異なる文化を持つ人々を受容し、共生することのできる態度また能力を育むことは重要であると私どもも認識しているところでございます。このため、小学校、中学校の学習指導要領におきましては、各教科において国際理解に関する教育が行われることとされているところでございます。

 例えば、小学校の社会科におきましては、グローバル化する世界と日本の役割を学ぶ中で、世界の人々と共に生きていくために大切なことなどを多角的に考えたり、選択、判断したりできるよう配慮することとされているところでございますが、特別の教科道徳等におきましても、国際理解に関する内容を取り扱うこととされております。

 文部科学省といたしましては、今後とも、各学校において、学習指導要領にのっとり、国際化した社会において地球的視野に立って主体的に行動できるための必要な態度、能力を育成するための教育が取り組まれるよう努力してまいります。

 以上でございます。

小熊委員 あべ副大臣、ありがとうございました。モバイルを使っての答弁がすばらしいなと思いました。本会議でもやったらいいのにと思います。副大臣、頑張ってください。

 時間が来たので、最後に、門山副大臣が言ったとおり、移民政策を取らないというのが日本政府の見解でありますけれども、今後起きてくる課題とか、より国際理解を深めていくという意味では、ほかの移民国家が取っている課題とか取り組んでいることをやっていかなきゃいけないんです。移民政策を取っていないからやらなくていいという話ではなくて、実質移民ですから。やるべき対処法は、問題の解決また理解の進展のためには移民国家が取り組んでいるような政策をしっかり推進していくことが大事だということをそれぞれの省庁の皆様方にお伝えして、それを検討、実行していただくことをお願いして、今日議論できなかった馬場副大臣におかれましては、また別個でいろいろこの件について議論したいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

勝俣委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 徳永久志です。

 本日は、ウクライナ情勢、ウクライナ戦争についてを中心にお伺いをしたいと思います。

 さきの二月二十四日を過ぎまして、ロシアのウクライナ侵略が三年目に突入をいたしました。

 侵略前の二〇二一年当時のロシアのGDPはウクライナの九倍ありました。実は、ちょっと調べてみて、おっと思ったんですが、太平洋戦争開戦時のアメリカの当時のGNPも日本の九倍でした。そして、開戦後三年を経て、インパール作戦失敗、サイパン陥落、本土空襲、敗戦へとつながっていくわけであります。当時の日本とウクライナとを比較すべくもありませんが、私も、ウクライナにとっても大変大きな節目となる三年目になるのではないかという気がしてなりません。

 そこで、まず、現下のウクライナ情勢について、外務省としてどのように分析をされておられるのか、大臣に伺います。

上川国務大臣 ウクライナの情勢の現状についてでありますが、ロシアによるウクライナ侵略がまさに長期化する中におきまして、新たに東部ハルキウ州へロシア軍が攻勢を強めており、ゼレンスキー大統領も、現地の状況は厳しいと述べているものと承知をしております。

 我が国といたしましては、一日も早く公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するために、対ロ制裁そしてウクライナ支援を強力に推進していく立場でありまして、こうした方針については揺るぎないものでございます。

 情勢は日々刻一刻と動いておりまして、極めて流動的でありますが、今後の状況の推移につきまして、引き続き不断に情報収集と分析を行ってまいりたいと考えております。

徳永委員 ずっと膠着状況が続いている中で、ロシアのハルキウ侵攻など大規模な攻撃をしかけるということが今行われているという御答弁でもありましたし、そういった意味では、ゼレンスキー大統領が、戦争がどのように終わるかは今年にかかっている、転換の年だというふうに述べておられます。

 そうした中で、スイス政府の呼びかけで、この六月中旬に、ウクライナ和平を話し合うウクライナの平和に関するサミットというんですか、開催されるとのことであります。私は、タイミングを見計らって、大変いいことだというふうに思います。

 日本政府にも当然呼びかけがあったものと思いますが、会議の開催の目的、趣旨についてどのように知らされているんでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 五月二日に、スイス政府は、六月十五、十六日にスイスのルツェルン近郊にございますビュルゲンシュトックというところで、ウクライナの平和に関するサミットを開催するという発表をしたということでございます。

 スイス政府の発表によりますと、このサミットでございますけれども、ウクライナ政府が提唱してきた平和フォーミュラ等に係るこれまでの議論の積み上げを図るもので、その目的は、将来の和平プロセスの触発であるということ、それから、このサミットにおきまして、国際法及び国連憲章に基づく形での包括的、公正かつ永続的なウクライナの平和に向けた道筋についての対話を提供すること等も目指すというふうにしていると承知しております。

 我が国としましても、このサミットにつきましては、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するために重要な会議であるというふうに認識をしておりまして、我が国としまして、本件サミットが成果あるものとなるように、スイス、ウクライナを始めとする各国と連携しながら取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

徳永委員 今事務方の方から、大変重要な会議であって、日本としてもしっかりと対応していきたいというようなお話がございましたので、大変心強く思います。

 となってくると、ここは、当然、岸田総理及び上川大臣も御出席をされるものというふうに思います。それでよろしいですね。

上川国務大臣 このサミットの重要性については極めて重要であるというふうに認識しておりますので、スイス、ウクライナを始めとする各国と連携し、そしてしっかりと対応してまいりたいと考えているところであります。

 このサミットへの日本政府からの出席者については、決まっておりません。

徳永委員 決まっていない。

 これ、大臣、決まっていないとおっしゃって、報道等では総理の出席を調整しているというふうになっておりますが、その辺も踏まえて、含めて決まっていないんですか。

上川国務大臣 出席につきましては、現段階では決まっている状況でなくということで、調整を様々な形でしているところでございます。

徳永委員 台湾の地震のときの話でありましたけれども、こうして、この委員会ではそのようにお答えになられて、その直後の記者会見等で、総理が出席しますということになったら、これは、さすがにあの温厚な源馬筆頭も激怒されることだろうというふうに思いますので、そういうことのないように。大丈夫ですね。

中込政府参考人 今大臣からお話がありましたとおりでございまして、今調整中でございまして、現時点でまだ決まっておらず、まだ発表できるような状況にない、こういうことでございます。

徳永委員 くれぐれも、先ほど、源馬筆頭がおっしゃったように、夕方で記者会見になるということがないようにしていただきたいと思います。

 確認です。それならば、もし岸田総理あるいは上川大臣の出席がかなわなくても、しかるべく政務の人間が出席をして、主導的な役割を日本として果たしていく、そういう覚悟を持って会議に臨まれるということでよろしいですね。

上川国務大臣 ウクライナの状況につきましては、今年二月にも日・ウクライナ経済復興推進会議を開いて、そして、私自身、G7でこうしたことを、全体の平和の構築、まさにゼレンスキー大統領が平和フォーミュラという形でこの間継続してこのことについて国際社会で訴えてきたことでありますので、そのテーマがメインのテーマになるということにつきましては、その意味でも重要であると考えているところであります。しかるべき対応をしていくということであります。

徳永委員 そこで、今大臣もお答えをいただきましたけれども、今回のこの会議では、ウクライナが提唱している平和フォーミュラ、平和の公式と日本語ではなりますけれども、についてを中心に議論をされるということでもあります。

 この平和フォーミュラは十項目から成ります。まずは、この平和フォーミュラをどう評価するのかというのがポイントになろうかと思います。総論で言えば、私なりに考えますと、これはウクライナがロシアが再び侵略するおそれのない安定的な平和を維持するための最低限の条件が、ウクライナとしてはこの十項目ですよというふうに示しているんだろうと理解をしています。

 日本は、G7広島サミットでもこれを支持するというふうに表明をしたわけでございますけれども、もう一度確認のために、どのように評価をされたのかということ、そして、どのように評価をされ、支持するという決断に至ったのかについて、大臣に改めてお伺いします。

上川国務大臣 いわゆる平和フォーミュラでありますが、二〇二二年十一月、バリで開催されましたG20首脳会合におきまして、ゼレンスキー大統領が提案されたものであります。ウクライナに平和をもたらすに当たって、ウクライナが必要と考える十項目を列記したものであり、ウクライナが国際社会を巻き込みながら、これまで議論を喚起し続けてきたものと考えております。

 我が国を含みますG7各国におきましては、これまでの累次のG7首脳声明、また外相声明におきまして、公正かつ永続的な平和を実現するためのゼレンスキー大統領の取組への支持を表明してきているところであります。

 私も出席いたしました本年四月のG7のカプリ外相会合の成果として発出されましたG7外相コミュニケの中で、ウクライナの平和フォーミュラの主要原則及び目標に対し、可能な限り幅広い国際的な支持を得るべく、引き続き取り組んでいくことを確認いたしました。

 今後とも、我が国といたしましては、ウクライナにおきます公正かつ永続的な平和が一日も早く実現するよう、国際社会と連携しつつ、ウクライナを強力に後押しをしてまいりたいと考えております。

徳永委員 今大臣がおっしゃっていただいたように、ウクライナの外交の主な取組というのは、実際の戦場での戦いのほかに、まさしくこの平和フォーミュラを国際社会に広め、そして、一か国でも多くの賛同を得て、それを具現化を図るということが、今ゼレンスキー大統領の外交の本当に唯一最大の目的なんだろうということは十分に理解をさせていただきます。

 そして、前提として私が思いますのは、この戦争がどのような終わり方をするのかということはまさしくウクライナの未来に関わってくるということですので、少なくともここは、ウクライナの未来に関わってくることである以上、ウクライナの人たちの意思を最大限尊重されるべきものであるというふうに思いますし、ウクライナの人たちの公正な選挙で選ばれたゼレンスキー大統領の意思というものを最大限尊重しなければいけないというような思いをしています。

 このことの前提の上に、さはさりながら、百点満点全てできないとずっと戦争は続きますよでいいのかどうかという部分。我々も、経済制裁をやっております、少なからず返り血も浴びています。加えて、こうしたヨーロッパのあの地域で戦争が起こることによっての様々な経済的影響も無視できなくなってきています。

 ですから、そういった部分も踏まえて、ただ単にゼレンスキー大統領の思いを遂げさせてあげようということは大事ですけれども、そこは、いろいろな国々が知恵を出し合って、少なくとも一日も早い停戦にまずは持っていく、そういったことが私は重要だというふうに思っています。

 ですから、まず、その観点から少し質問をさせていただきたいと思います。

 この戦争が始まって以来のプーチン大統領あるいはロシア政府の言い分を聞いていますと、ロシアとしては、ウクライナの国土を占拠することが目的ではないという気がするんです。ウクライナとロシアは一体なのだから、ロシアに逆らえない属国にするということがロシアの戦争目的ではないかという気がしてきます。

 そうなると、首都キーウを占拠して、ゼレンスキー政権を崩壊させてかいらい政権をつくり、ウクライナ軍を解体して、NATOにも加盟させない。そうなると、どこかの段階でウクライナが国家として組織的な抵抗ができなくなるところまで戦争を継続するということになるのではないかと思うんです。

 そうしたロシアに対して、主権侵害だから、国際法違反だから、人道的観点から云々かんぬんといった指摘にはなかなか耳をかしてもらえない。これが今までの現状だったというふうに思います。

 そうした中でいきますと、平和フォーミュラの中にある六番目、ロシア軍の撤退と戦闘の停止の部分は、乗り越えるべきハードルは非常に高いものがあるというふうに現状は思わざるを得ません。その辺について、大臣の御見解を伺いたいと思います。

上川国務大臣 ロシアによりますウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。我が国は、このような力による一方的な現状変更の試みは決して許してはならず、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれないという強い危機感を持って、自らの問題としてこの問題に取り組んできたところであります。

 こうした観点から、先ほど申し上げたとおりでありますが、私も出席いたしました本年四月のG7カプリ外相会合の際にもコミュニケを発出したところでありますが、G7で一致して、ロシア軍の即時、完全かつ無条件の撤退を求めているところであります。

 G7を始めとする関係国と緊密に連携しながら、ロシアによる侵略を止め、一日も早く公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するため、まさに、おっしゃった対ロ制裁とウクライナ支援を強力に推進していくところでございます。

徳永委員 それを二年以上続けてきてなかなかその状況に達していないことについて、現実に即した議論がやはり必要だと思うんですね。原則論をぶつけ合うのも当然大事ですけれども。

 そういった観点から、もう一つお聞きをします。

 ロシア軍の撤退と平和フォーミュラにありますけれども、では、どのレベルまで撤退させることを求めるのかという部分です。考えられるのは二つ。一つは、二〇二二年二月二十四日、ロシアによる侵略が開始をされたラインまでの撤退でよしとするのか、あるいは、一九九一年、ウクライナが独立を達成した際の国境線の外まで押し出すのをよしとするのか、この大きく二つあると思うんですね。

 ここは前回でもいろいろとお答えをいただいていますが、もう一度確認のためにお答えください。

上川国務大臣 我が国といたしましては、これまでも、クリミアを含みますウクライナの主権及び領土一体性を一貫して支持してきております。先ほども答弁申し上げたとおりでありますが、こうした観点から、本年四月のG7のカプリ外相会合の際に発出いたしましたコミュニケにおきましても、G7で一致して、ロシア軍の即時、完全かつ無条件の撤退を求めているところでございます。

 こうした状況の中で、引き続き、ロシアによる侵略を止め、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するため、G7やグローバルサウスと呼ばれる諸国を含む各国と連携しつつ、取り組んでまいりたいと考えております。

徳永委員 確認です。今の御答弁でありますと、ロシア軍の撤退はどのラインまでかということに対しては、クリミア半島を含む、一九九一年、ロシア建国当時の国境外という理解でよろしいですね。

上川国務大臣 一貫してクリミアを含むウクライナの主権及び領土の一体性を支持してきたところであります。

徳永委員 一九九一年の建国当時の国境ラインを主張するウクライナの心情というのは、とてもよく分かります。しかしながら、現実的な目標としてはどうなのかという議論も、やはり国際社会でしておかないといけないと思うんですね。

 私は、この戦争は、何か担当者が会議で集まって、テーブルの上で終わるのではなくて、戦場の状況、現場が、戦場の現実がテーブルの上で反映をさせて決まっていくというような形になるのではないかという思いがしているんです。ですから、今の段階でなかなかロシアがテーブルに着こうとはしないだろうというような思いがするわけなんですね。

 今、ロシア軍は、ウクライナの国土の大体一八%を占拠しています。ウクライナがこれを全て奪回できれば、恐らくロシア軍の撤退はスムーズにいくんでしょうけれども、なかなか現状そうはいっていない状況を考えると、少なくとも、占領地域、今一八%だけれども、これが一五%、一四%と減っていった、ウクライナ軍にとって有利な状況がつくられないと、なかなかロシア側は耳を傾けようとはしないのではないか。その耳を傾けようとしたときに持ち出すロシア軍の撤退ラインが、一九九一年と言われると、ちょっと待てよという話にもなるんだろう。

 ここは一旦、二〇二二年の侵略開始のラインまで下がる。そして、それ以降については、その後様々な交渉の中で取り決めていきましょうというような、二段構えというのは考えられないでしょうか、大臣。

上川国務大臣 先ほども答弁で申し上げたところでありますが、ロシアはウクライナに対する攻勢を強めておりまして、ロシアが和平に向けて歩み寄ろうとする兆しは一切見られません。

 ウクライナが懸命に祖国を守る努力を続ける中、あり得べき停戦交渉の在り方等、ウクライナの将来を決める交渉にいかに臨むべきかということでありますが、まずもってウクライナの人々の意思によるものでなければならないと考えております。

 かかる状況下、我が国としての責務でありますが、ウクライナ支援と対ロ制裁を強力に推進するとともに、国際社会が結束してウクライナに寄り添った対応を続けていくための外交努力を継続していくこと、そして、引き続き、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現すべく、G7あるいはグローバルサウス、こうした国々とも連携をし、取り組んでまいりたいと考えております。

徳永委員 ウクライナの方々に寄り添い、ウクライナの人々の思いを実現するために支援を惜しまないという答弁はそのとおりだと思いますし、私はそれを無視しろと言っているのではないんです。ウクライナの主張するラインは一気には無理だろう、現実的にはしんどいので、段階的に順序立ててやってはどうですかという提案をさせていただいているという理解をしていただきたいと思います。

 今、グローバルサウス等々の理解を得ながら云々という言葉を答弁の中で再三おっしゃっていただいています。そこは大変大事なポイントだと思います。

 実は、なぜならば、昨年からの動きとして特徴的なことは、幾つかの国がウクライナとロシアの和平についての提案を行っています。

 例えば、中国による、ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場、あるいは、インドネシアの国防大臣がシャングリラ対話での演説で語った和平案、アフリカ政府代表団がロシアとウクライナ両国に提示した和平案などなどであります。

 ここで、やはり驚くべきことは、これらの提案はいずれも、ウクライナが最も重視をする平和フォーミュラの中にあるロシア軍の撤退については一切盛り込まれていないんですね。ロシアに近い中国も、あるいはグローバルサウスの国々も、この部分での賛同と理解が得られないといけないと私は思うんです。

 少なくとも、今回、この六月に行われるサミットにおいて、国際社会の総意はロシア軍の撤退であるという世論をまずつくっておかないと。つくっておかないと、ロシアから言わせれば、撤退を求めているのは西側の欧米各国だけでしょう、他の大多数はどうなのという話にもなりかねないので、まずは、この六月で、ロシア軍の撤退という総意を図っていただく。その手段等々については、先ほど来議論してきた、また別の議論でしていけばいいと思うので、まずそこに注力をしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今委員御指摘いただきましたように、また委員からも御提案がありましたように、国際社会におきましては、和平に関する様々な提案、またアイデアが出されてきているということは事実でございます。

 他方で、ロシアの侵略開始一年に当たります昨年二月でありますが、百四十一か国の圧倒的多数の賛成を得て採択されました国連総会の決議におきましては、ロシア軍によります即時、完全かつ無条件の撤退が求められているところであります。

 スイスにおきましてのウクライナの和平に関するサミットの成果につきましては予断をすることはできませんが、グローバルサウスを含みます各国の参加を得て、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現するための会議となるよう、我が国としても貢献してまいりたいと考えております。

徳永委員 上川大臣もお会いになられましたウクライナのクレバ外相がインタビューで、ロシアが誠実な行動を取るような状況に持っていくには、戦場で成功を収めるか、原則的な立場を共有する国々で連合を組むしかないということであります。

 まさしく戦場で有利な状況をつくって停戦に持ち込むということと、加えて、それを後押しする国際社会の総意といった部分でいきますと、今回のこの六月の会議というのは非常に重要な意味があるということでもありますので、是非そういった思いで、上川大臣、少なくとも御出席を、万難を排してやっていただきたいと思いますし、万が一、もし国会日程等々があるのならば、行っていただけるように我々も努力をさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

 もう一つ、戦争を終わらせるに当たっては、世論の動向というものも非常に重要になってきます。戦争三年目に入って、ウクライナの世論というのは恐らく厭戦気分に満ち満ちているんだろうというふうに思います。うんざり感といったものがもう満ち満ちているということは容易に想像ができます。

 そうした中で、戦場で命を懸けて戦っている人、あるいは命を落とした人がいる一方で、ウクライナの国防省の高官が汚職をしているというふうな報道、発覚もされているわけですよね。こうしたことになると、何をやっているんだということで、ウクライナの取組についてますます冷や水を浴びせかけるような状況にもなります。

 国民としてもしっかりとした思いを持っていただくためにも、こうした国のガバナンスもしっかりとしてくださいよということは、やはりウクライナ側にも日本からも強い言葉で言い続けていただかなければいけないというふうに思いますので、ここは答弁は求めませんが、よろしくお願いを申し上げます。

 一方で、ロシアの国民世論というのはどうなっているのかなという部分であります。その動向はどうなっているのかなということです。

 私、この連休中にウラジオストクぐらいに行って、どんな雰囲気なのかなということを探りたいと思ったんですが、私、どういうわけか、ロシアへの入国禁止の対象者になっておりまして、入国できませんので、テレビとかそういった部分でしか見られないんです。

 そこから得る映像等々によりますと、少なくとも、ロシア崩壊前に、スーパーで品物が全然足りなくなるとか、あるいは国民が食料をよこせと言って大騒ぎしているとか、そういった状況にはどうやらないんでしょうねということです。少なくとも厭戦気分という状況にはなっていないような気がするんです。

 ここで、配付資料の図一を御覧ください。

 ロシアの実質GDPの成長率です。侵攻を開始した二〇二二年には大きく落ち込みましたが、徐々に上昇をして、二〇二三年四月―六月期には四・九%になっています。これは中国の五・二%には及びませんが、アメリカの二・五%、日本の一・九%、EUの〇・四%を大きく上回っています。

 また、経常収支で見ても、二〇二二年の黒字額は二千億ドルに達して、過去最高ということであります。これは石油、天然ガスの輸出が好調であったということがその原因とされています。

 こうして見ると、ロシア経済というのは良好で、ロシアの国民は厭戦気分どころか何も困ってはいないし、逆にプーチン大統領への支持が高まってきている。少なくとも、もうこの戦争はノーというような声も上がらないだろうということであります。

 そういうことを考えると、ちょっと待てよと言いたくなるんですね。私たちは、侵攻後すぐに欧米各国と協調をして、大規模かつ多岐にわたる経済制裁をロシアに科しています。しかし、このような状況。

 対ロシア経済制裁の効果について、どのように分析されているんでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略でございますけれども、力による一方的な現状変更の試みで、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙ということで、そのような行動に高い代償が伴うことを示していくことが必要という考え方に立ちまして、我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、九百九十二個人、二百五十六団体に対する制裁、銀行の資産凍結等の金融分野での制裁、輸出入禁止などの、今委員からも御指摘がありました幅広い分野での厳しい制裁措置を実施してきているということでございます。

 効果でございますけれども、こうした我が国を含む各国の制裁措置によりまして、ロシアに対して一定の効果が出てきているというふうに我々は考えておりまして、具体的に申し上げますと、直接投資の減少、あるいは、原油価格ですけれども、国際的な価格に比べて、ロシア産原油がほかの国の原油に比べて割引をされて売られているという実態がございまして、それに伴う収入の減少、それから、先端精密機器へのアクセスが制約をされているといったことから、中長期的観点からのものも含めてロシア経済に否定的な影響をもたらしているというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

徳永委員 だったら、何で実質GDPは成長していくんですかということです。

 私は、効果がないじゃないか、けしからぬと言う気はないんです。ただ、上川大臣が答弁の中で、ウクライナ支援と経済制裁を一対として後押しをしていくんだと言うのであるならば、三年目に入ったこの経済制裁の検証というのをやっていきながら進めないといけないだろうということです。

 恐らくロシア側としては、例えば資産凍結とか、あるいは先端技術や軍事物資を抑えられること、そういった部分についての抜け穴はもう見つけてあって、自分たちが受ける打撃を最小限にとどめる手だては講じているんだろうというふうに推測をするんです。そういった部分について抜け穴があるとするならば、それをやはり我々は塞いでいかないといけないというような思いがします。

 一例を申し上げます。ロシア経済を支える大きな要素は原油です。資料の図三を御覧ください。

 ボリューム全体の変化はないわけですけれども、輸出先の変化に注目してください。EUへの輸出は制裁措置によって激減していますが、その穴を中国とインドが十分に埋め合わせています。EUが輸入制裁を科す一方で、中国、インドは原油の輸入を続け、そして精製加工をします。中国、インドで作られた石油精製品はロシア産とみなされないために、結果として、制裁を回避する形でEUへあるいは各国へと輸出をされていくわけであります。まさしくこれは抜け穴ですよね。

 これを抑えるためには、いわゆる二次制裁という考え方があろうかと思いますけれども、現状はどのような感じになっているんでしょうか。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がありましたとおり、制裁の迂回、回避の問題は大変深刻に考えておって、これが大きな問題だというのはG7各国としても一致をしているところでございまして、政府としましても、制裁の実効性を高める観点から、第三国による制裁の回避、迂回への対処は重要だというふうに考えているところでございます。

 我が国といたしましても、昨年十二月でございますけれども、制裁の回避、迂回に関与した第三国の団体の制裁指定を行ったということでございます。

 それから、本年二月のG7首脳テレビ会議の際に発出された首脳声明におきましても、第三国を経由した制裁の迂回対策の必要性について確認をされているところでございまして、今後も、G7を始めとする国際社会と連携しながら適切に取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

徳永委員 二次制裁というのは難しいですよね。

 二次制裁に限らず、経済制裁でいくと、最も効果があるのは、ロシアとの貿易を続ける中国、その中国の幾つか有名な銀行がありますよね、あそこを制裁の対象とするということが一番効果が上がるんだろうと思うんですけれども、中国の金融機関を制裁の対象としてしまうと、世界経済は大混乱ですよね。だから、そこをどう考えるかということは非常に難しい論点だろうというふうに思うんです。

 もし、局長、通告はしておりませんけれども、何かお考えがあれば、ちょっと教えてください。

中込政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘もありました点も含めまして、更なる制裁措置の在り方につきましては、今後の状況を踏まえながら、ウクライナの公正かつ永続的な平和を実現するために何が効果的かという観点から、G7を始めとする国際社会と連携しながら検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

徳永委員 繰り返しますけれども、経済制裁をなぜやるのかという部分については、制裁をやりましたということを宣言することだけが目的ではなくて、やはり、ロシア経済に一定の打撃を与えて、そして、もうこれ以上戦争を続けるのは懲り懲りだよねという、戦争継続意思をそいでいかないといけないということがあると私は思うので、そういった部分では、上川大臣がおっしゃっていたウクライナ支援との両面でこれを進めていかなければ、というか、日本としては、ここに頑張らないと、戦場に対して何かなんてできないわけですから、そういった部分については、是非ともこの会議で主導的な役割を果たしていただきたいと思います。

 大臣、最後に御所見をいただきます。

上川国務大臣 まさに、ウクライナの状況については、三年目を迎えるということでありまして、大変厳しい状況の中で、今、日本としても、G7やグローバルサウスを含めまして、国際社会で連帯をしてこの問題に取り組む、こういう姿勢で臨んでまいりました。

 今回のスイスにおきましての会議でありますが、まさにウクライナのゼレンスキー大統領が主張し続けてこられた平和フォーミュラ十項目ということをベースに、しっかりとその成果が上がるように、知恵を絞り、また協力をし合う、こうした姿勢で臨んでまいりたいと考えております。

徳永委員 是非、今回の会議では、それぞれの参加国が原則論や各国の主張を述べ合うだけ、披露し合うだけに終わるのではなくて、しっかりと国際社会の総意としての成果を上げていただきますよう、その主導的な役割を果たしていただきますよう御要望申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、今国会に政府が提出した入管法、技能実習法改正案について質問します。

 大臣、今国会に提出された入管法の改正案の中に、唐突に、永住許可制度の適正化と称して、在日外国人永住者の永住許可取消し制度が盛り込まれました。これは、八十八万人と言われる在日外国人の永住資格を、納税や社会保険料の滞納、軽微な刑事罰等でも簡単に取り消すことができるようにするもので、永住者の人権とその地位を著しく侵害するものであります。

 今、連日、在日大韓民国民団中央本部を始め各県の地方本部から山のように抗議と反対の要請文が来ていますが、外務大臣はこの事実を御承知でしょうか。

上川国務大臣 この永住許可制度の適正化を含みます今般の法改正に当たりまして、様々な議論があるものと承知をしているところでございます。

穀田委員 議論があるというんじゃなくて、今私が聞いたのは、要請が来ている、そういう声があるということは知っておいてほしいと思うんですね。

 問題は、この問題の背景には、日本の侵略戦争と植民地支配という不幸な歴史問題が横たわっています。

 一八九五年、日本が台湾を編入、統治し、一九一〇年には日韓併合を行いました。この日本の統治、植民地支配の下で朝鮮人、台湾人は日本国籍とされ、自国の国籍を奪われました。しかし、敗戦後、一九五二年のサンフランシスコ平和条約にて朝鮮半島や台湾が日本の領土でなくなり、同時に、朝鮮人、台湾出身者は日本国籍を一方的に剥奪されました。その後、日本にとどまった人は特別永住者となりました。一方、韓国に帰国した方々は様々な差別と迫害を受け、再び日本に入国せざるを得なくなり、この方々が永住者となりました。このような苦渋の歴史があります。

 なぜこうした事態になっているか。大臣は、永住者はなぜ生まれたのか、その経緯と歴史についてどう認識されているのか、お伺いしたいと思います。

上川国務大臣 先ほど御質問がございました永住許可ということに係る今回の法改正において、適正な在留管理の観点から、永住許可後に故意に公的義務を履行しないなど、永住許可の要件を満たさなくなった一部の悪質な場合について、その在留資格を取り消すことができるものとするものでありまして、日本で生活をする大多数の永住者に影響を及ぼすものではないと承知をしております。

 また、在留資格を取り消そうとするときは、当該外国人が引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合を除きまして、法務大臣が職権によりまして永住者以外の在留資格への変更を行うなど、永住者の本邦への定着性に十分配慮したものとしていると承知をしております。

 受け入れた外国人と日本人が互いに尊重して生活できる共生社会の実現ということでの、このための法改正であるということを前提に、歴史的な認識ということで今御質問がありますが、戦後の七十周年の内閣総理大臣の談話で発表しているとおりでございます。

穀田委員 そんな簡単に大丈夫だと言うのやったら、民団の方々がこれだけ意見を言うとは思いませんね。

 民団関係者はこんなふうに言っているんですね。韓国民団では、特別永住者の在日韓国人だけでなく、韓国から起業や就労、留学、結婚などで渡日した韓国人や日本人の配偶者として日本に暮らす韓国人は大勢おり、永住者となっている韓国人が少なからずおる、この人々への重大な不利益をもたらす、こう言っているんですね。さらに、歴史的な背景により日本に居住するに至った在日韓国人の永住者とその子孫までも対象として、簡単に永住資格を取り消されることは憂慮すべき問題と訴えておられます。

 この声は聞いておられますよね。

上川国務大臣 申し上げたとおり、様々な声を伺わせていただいているところであります。

 今、私、永住許可制度の適正化ということで申し上げたところでありますが、このことにつきましては、日本で生活する大多数の永住者に影響を及ぼすものではないと承知をしているところでございます。

穀田委員 民団の方々は、影響を及ぼす可能性があると言われている。ないと言われている、それは、私ども、今後を含めて、そういう問題について確かめながらやりますけれども。

 問題は、先ほど、共生社会という問題もお話がありました。七十周年の談話の問題もありました。詳しくは言うてはりませんけれども。

 一九九八年十月の日韓パートナーシップ宣言では、「小渕総理大臣は、」「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、」「痛切な反省と心からのお詫びを述べ」、こう言っているわけですね。「金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、」「両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力する」「旨表明した。」とされています。

 また、その宣言では、こうあるんですね。「両首脳は、両国政府が、今後、両国の外務大臣を総覧者として、定期的に、この日韓パートナーシップに基づく協力の進捗状況を確認し、必要に応じこれを更に強化していくこととした。」とされているんですね。

 入管法の改悪はもとより法務省の所管ではあるけれども、私は、日韓パートナーシップ宣言の立場に立って、今こそ外務大臣の職責を果たし、永住許可制度の適正化に関する部分については、これはいかがなものかという点で、制度改革から削除するよう今からでも意見を述べるべきだと思いますが、いかがですか。

上川国務大臣 委員御指摘の一九九八年の日韓共同宣言でありますが、ここにおきましては、「両首脳は、在日韓国人が、日韓両国国民の相互交流・相互理解のための架け橋としての役割を担い得る」、そうした認識を示しているところであります。

 在日韓国人の中で特別永住者に当たる方々につきましては、平和条約の発効によりまして本人の意思に関わりなく日本の国籍を離脱した者で、終戦前から引き続き我が国に在留している者及びその子孫でございまして、歴史的経緯を背景とした法的地位であるため、そもそも在留資格取消し制度の対象とはされていないものと承知をしております。

穀田委員 それは違う話ですやんか。

 だから、私は、韓国民団の方々も言っておられるように、この問題が共生社会とは反するじゃないかという声を上げているわけですよ。しかも、併合し、そして日本国籍でやられ、次は戦争との関係で国籍をまた奪われる、そしてまた戻ったらまたあれされると、二重三重に被害を受けているわけですやんか。特別永住者の問題もしかりだけれども、私は永住者の問題を言っているわけですからね。

 そういう問題が背景にあるということからしても、私は、日韓両国が到達した歴史認識、この点をしっかり理解して進めていただきたいというふうに思います。

 次に、これも日本が過去に起こした侵略戦争と植民地支配の正当化に関わることだけれども、先月三日の質問に続き、陸上自衛隊の靖国神社への集団参拝問題に関連して、鬼木副大臣に聞きます。

 陸上自衛隊には、防衛大臣直轄の教育機関として、十五歳以上十七歳未満を採用対象にした陸上自衛隊高等工科学校というものがあります。防衛省、防衛副大臣、この学校は何を目的とした教育機関なのか御報告ください。

鬼木副大臣 陸上自衛隊高等工科学校は、自衛隊法施行令第三十三条の二により、「施設器材、通信器材、火器、航空機等の整備、操作その他の技術関係の職務を遂行する陸曹長以下三等陸曹以上の自衛官となるべき者に必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練を行うこと。」を目的としております。

穀田委員 今ありました、だから、技術関係を担っていくということですよね。

 高等工科学校の組織規則を定めた訓令によれば、「校長は、陸将補をもって充てる。」「副校長は、一等陸佐をもって充てる。」と定められています。これは間違いございませんね。

鬼木副大臣 自衛隊法施行令及び陸上自衛隊高等工科学校組織規則により、「陸上自衛隊高等工科学校の校長は、陸将補をもって充てる。」こととされており、「副校長二人のうち、一人は自衛官をもつて、一人は教官をもつて充てる。」こととされ、「自衛官をもって充てる副校長は、一等陸佐をもって充てる。」こととされております。

穀田委員 間違いないと。

 そこで、今、高等工科学校の生徒総数、一学年当たりの生徒数は、それぞれ直近の年度で何名か、少しお教えいただけますか。

鬼木副大臣 高等工科学校の直近年度の各学年の生徒総数については、各年度の四月一日時点において、令和六年度は、第一学年は約三百七十名、第二学年は約三百四十名、第三学年は約三百二十名、全学年生徒総数は約千三十名であります。

 令和五年度は、第一学年は約三百六十名、第二学年は約三百三十名、第三学年は約三百三十名、全学年生徒総数は約千二十名であります。

 令和四年度は、第一学年は約三百五十名、第二学年は約三百四十名、第三学年は約三百四十名、全学年生徒総数は約一千二十名となっております。

穀田委員 大体、一学年当たりの生徒数は約三百五十名ということで、総数全体は約千名程度ということになりますね。

 この高等工科学校の公式X、旧ツイッターによれば、この学校では、一学年を対象に、研修として、二〇一九年一月十六日から十八日及び八月二十八日から三十日に、それぞれ靖国神社に行き、遊就館を見学したとあります。

 防衛副大臣、そうした研修を生徒に対して行ったのは事実でしょうか。

鬼木副大臣 陸上自衛隊高等工科学校の第一学年は、平成三十一年一月十六日から十八日の間と令和元年八月二十八日から三十日の間に、市ケ谷地区において、市ケ谷記念館及び殉職者慰霊碑の見学を行い、遊就館では、館内に展示されている遺書、遺品、絵画、武具甲冑等の資料の見学を行いました。

穀田委員 遊就館は、第二次世界大戦を大東亜戦争と呼び、そして、自存自衛、アジア解放の正しい戦争だったとし、日本の侵略戦争を礼賛する靖国神社の中心施設であります。ここを研修の対象とするなど、これは、軍国主義の精神的支柱だった靖国神社の参拝と併せて、戦前回帰の思想教育にほかなりません。

 今、鬼木副大臣は、靖国神社に行ったとは言っていますけれども、その大事な問題は、高等工科学校の公式Xには、生徒らが整列しながら靖国神社の大鳥居を通る動画が添付されています。これを見ても、問題の研修で遊就館には行ったけれども、靖国神社の問題については不問に、今何にもありませんでしたけれども、靖国神社も含めて参拝したということで、理解でいいですよね。

鬼木副大臣 確認をちゃんといたしまして、その結果、当該研修において靖国神社への参拝は行っていないと承知しております。

穀田委員 今私が言ったのは、この公式Xには、生徒らが整列しながら靖国神社の大鳥居を参る動画が添付されている。これは見てはりますか。

鬼木副大臣 済みません、私はその動画は確認いたしておりません。

穀田委員 見たら分かるように、そういうことについて言えば、事実としては、これを見ても、問題の研修で遊就館には行ったけれども、靖国神社に参拝していないというのはあり得ないのではないかと思います。

 そこで、今、参拝を行っていないと承知していると答弁がありました。それでは、聞きますけれども、この学校では、これまでの研修で靖国神社は参拝していないと断言できるわけですか。そして、過去も含めて徹底調査したわけですか。お答えいただきたいと思います。

鬼木副大臣 過去に遡って徹底調査をしているわけではありませんが、部隊での参拝を強制するということは慎む行為でございますので、そうした方針に従って、部隊で参拝する、そして強制するということはないと承知しております。

穀田委員 まず、そういう、したわけではない、していないということですよね。徹底調査しているわけじゃない。だけれども、こういうことだろうと。まあ、だろうですな。

 そこで、私は見たんですけれども、これなんです。遊就館の出口には、拝観者が感想などを書くことができる自由記述ノートが置かれています。靖国神社の社報「靖国」の二〇一九年十月号を見ると、そのノートには、高等工科学校の生徒が、遊就館の見学と併せて靖国神社を参拝したと書いていることが紹介されていますよね。だから、研修で靖国神社を参拝しているというのは疑いようがないということは明らかだと思うんです。

 今一生懸命、そういうことはないんだ、ないんだということを言ってはるぐらい大事な問題だということは認識しておられる。そこで、聞きますけれども、靖国神社を、靖国の参拝を研修として行っていることが事実だとすれば重大問題だということは、どうも認識されておられるようだ。

 そこで、一九七四年の事務次官通達では、宗教教育及び布教活動について、次のように述べています。「部隊の長等は、特定の宗教のための宗教教育を行い、職務上の地位を利用して特定の宗教を奨励し、若しくは布教活動を行ってはならない。」と定めている。これは間違いありませんね。

鬼木副大臣 宗教的活動に関する事務次官通達においては、宗教教育及び布教活動について、「部隊の長等は、特定の宗教のための宗教教育を行い、職務上の地位を利用して特定の宗教を奨励し、若しくは布教活動を行ってはならない。また、特定宗教を信仰することのみを理由として身分上の取扱いに特別の利益又は不利益を与えてはならない。」と規定しております。

穀田委員 私が説明したんやから、そのとおりやと言ってくれたら簡単に済まへんか。

 今確認してわざわざお述べになったように、事務次官通達は、部隊の長等が特定宗教のための宗教教育や職務上の地位を利用して特定宗教の奨励を固く禁じている。

 高等工科学校は、陸将補が学校長、一等陸佐が副校長を務めるなど、主要メンバーは陸自の現職幹部であります。学校が行う研修がこの事務次官通達に違反する疑いは、先ほど述べたように、過去に上って調べていないということになっては分からぬわけやから、まさしく私が指摘していることは濃厚だと思うんですね。

 鬼木副大臣、先ほど調べていないと言ってはったんやから、過去の実施状況を含めて、研修の実態を徹底調査し、その結果を公表すべきだと思いますが、先ほどの答弁の関係でいえば、それは当然のこととなりますわな。

鬼木副大臣 徹底調査、過去に遡って調べることはどこまでできるか分かりませんが、申し上げましたとおり、部隊としてそうした参拝を強制することは厳に慎む行為でありますことからも、私はないと考えております。

 また、一般教養として、自衛官としての教養としての遊就館見学であったと考えますが、その際に隊員個人が自分の意思で参拝して記帳したということはあり得る話だと思いますので、そこはまさに信教の自由や内心の自由というものではないかと考えます。

穀田委員 それは間違っていますよ。この研修は、集団で行われていて、学校がやっているものなんですよ。それを勝手に、自由にやっているなんということを言ったら駄目ですよ。研修という中身が問題なんだという話をしているのに、一人一人が勝手にやっているなんて、そんなことはあり得ないですよ。そこが間違っているんですよ。

 そこで、遊就館とはどういう施設かという問題ですよ。靖国神社の戦争観の宣伝機関、宣伝部門ですよ。

 靖国神社「遊就館図録」、冊子の中で、靖国神社の宮司は、日本の過去の戦争についてこう言っています。「近代国家成立の為、我国の自存自衛の為、さらに世界史的に視れば、皮膚の色とは関係のない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった戦ひ」と述べているわけですね。

 さらに、もう一冊、増補改訂版が出ていますよ。そこには、日本民族の誇りを懸け死力を尽くして戦った大東亜戦争と述べ、解題というところがあります。自らもやむを得ず自存自衛の戦いに決起せざるを得なかった、大東亜戦争の緒戦における日本の輝かしい勝利は、アジア、アフリカの独立運動の布石となった、そんなことまで言って自賛しているんですよ。何か、日本が行った戦争がアジアの独立、アフリカの独立に役立ったみたいな、そういうことを書いているんですよ。

 あの戦争を、自存自衛のための戦争とか、アジアとかアフリカの解放のための戦争としている。ここには、むき出しの形での、日本の戦争は正しかったとする歴史観、戦争観があからさまに述べられています。

 ですから、この施設自身の研修が事務次官通達に違反することは明らかであり、今の事態というのは、戦争する国づくりへと進む戦前回帰の思想教育の動きとして許せないと私は思います。

 私は一等最初に入管法の問題を取り上げましたが、これもやはり、いずれも根は一緒で、侵略戦争と植民地支配の真摯な反省の上に立ってこそ、国際社会の信頼を得る基礎だということなんですね。だから、私は、そういう立場から物を言っている。

 日本の本来の平和国家としての役割を果たす上で、今防衛省が行っているこの研修というのは、今お話がありましたように、いずれにしても事実は調べていただくということになっていますので、次はそのことを含めて回答をいただいて、またやりましょう。

 終わります。

勝俣委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 質問通告の質問に入る前に、先ほどちょっと徳永委員から出たウクライナのことについて、答弁は求めませんので、私がどうしても言いたいことを。

 これまでも何回もウクライナ問題についてはこの委員会、予算委員会でも取り上げさせてもらっているんですけれども、先ほど来聞いている上川大臣、また政府参考人のある意味原則論的な方針、主張、これでは何の解決策にもならないし、これを主張し続ける間にも、ウクライナの兵士が亡くなり、ウクライナ国民が亡くなり、そして、以前も言いましたけれども、世界の感覚が麻痺して、ロシアの兵士が亡くなるというのは全然構わないというか、かえって、よっしゃみたいになっていますけれども、ロシアの最前線に送られている兵士も、貧しいがゆえに地方から、兵士たらざるを得ないという方々も、そういう人たちも犠牲になる。

 そういう意味で、原則論に終始している間にそういう貴い命がなくなってくるので、解決策にならない原則論ではなくて、あくまでも平和につながる、そのためには、先ほど徳永委員も言っていたように、ある程度、現実を直視して、妥協も必要になってきます。それでも平和にこぎ着ける必要があると私は思っています。

 そのことだけ最初に申し上げて、通告の質問に入らせてもらいます。

 まず最初は、前回審議されましたGIGOの議論の中で、私は質問に立たなかったんですけれども、恐らく議論になるだろうなと思っていた点、それが議論にならなかった、又は触れられているけれども突っ込まれていなかったと思われる問題について、三点質問したいと思います。

 まず最初は、三国開発の戦闘機の間接輸出といいますか、迂回輸出、又は玉突き輸出ということについてです。

 どういうことかと申しますと、ABCのAで言うとイギリスとこんがらがるので、紛争国B国があるとします。その紛争国B国に対して、C国が、自国保有の例えばユーロファイターを持っている、そのユーロファイターを紛争国に供与しようとします。今、ウクライナでも現実にあるような話ですけれども。そのC国に対して、日本が三国開発の戦闘機を輸出する。

 これは紛争国に対する直接的な輸出ではないんですけれども、仮に、C国が紛争国B国に自国保有の戦闘機を輸出しようとする、その意思決定に、日本から新たに開発された戦闘機が新たに輸入できる、だから玉突き式に自国保有の戦闘機を輸出してもいいんだと。

 こういうケースについて、政府としてどう考えるのか、また対応するのかについて、お伺いしたいと思います。

上川国務大臣 委員御指摘いただきました、我が国から移転されたものではない各国の防衛装備品の移転ということでございますが、これにつきましては各国政府の責任で行うものでございます。

 その上で、我が国から防衛装備を海外移転する際、仕向け国の適切性につきましては、国際的な平和及び安全並びに我が国の安全保障にどのような影響を与えているか等を踏まえまして厳格に審査をするところでございます。

 したがいまして、仮定の御質問へのお答えとなるところでありますが、次期戦闘機を我が国から移転する際には、その移転が他国の紛争に与える影響等を含めまして、仕向け国の適切性について検討することになると考えております。

吉良委員 今の答弁である程度納得いたします。納得するというのは、紛争国に対する影響、今私が言ったのでいうと、C国の紛争国Bに対する装備品の輸出、戦闘機の輸出、それらも全部踏まえて総合判断するという回答だ、答弁だというふうに理解しますので、それでよしとします。

 続いて、参議院での質問でも出ているようですけれども、次期戦闘機が実用化されるのは早くて十年後、二〇三五年でありますけれども、一言で言うならば、時代遅れにならないかという問題意識です。

 今のように目まぐるしい技術進歩がある時代、特に、AI技術の進歩、それに伴う、例えばミサイル、ドローン、サイバー、そして特に宇宙から戦闘をある意味ではコントロールするという時代がすぐそこまでやってきている可能性もあると思っています。

 その場合に、今まで戦闘機といえば、空対空もあれば、対艦、対地もあるわけですけれども、一つの大きな役割というのは、制空権の確保、又は航空優勢の確保だったと思っています。

 しかし、今言ったような、技術進歩に伴う新しい時代には、もう戦闘機自体が、今言った航空優勢又は制空権を確保するというような時代ではなくて、もう宇宙からAIで、いろいろな、今で言う制空権、航空優勢も含めて、もう戦闘機ではないものが支配するような、又はコントロールするような時代になってくるのではないかということも考えています。

 そういう観点からの、時代遅れにならないかということについての政府答弁を求めます。

弓削政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、戦い方の様相は従来のそれとは大きく変化してきておりまして、これまでの航空侵攻や海上侵攻といった伝統的なものに加えまして、AI技術の飛躍的な発展を踏まえつつ、宇宙、サイバー、電磁波の領域や無人アセットを用いた攻撃等を組み合わせた新しい戦い方が顕在化しております。

 こうした新たな戦い方に対応していく中におきましても、四面を海に囲まれた島国である我が国に対する侵略は、必ず空又は海を経由して行われます。このため、航空機や巡航ミサイルによる空からの攻撃や艦艇による海からの攻撃をできる限り洋上、遠方で阻止することが重要であります。

 戦闘機は、引き続き我が国防衛にとって重要な航空優勢を維持、確保し、これらの防御的な任務を遂行するための中核的な装備品として、引き続き防衛力において不可欠な役割を担うものと考えております。

 同時に、各国が新世代戦闘機の開発や配備を進めている中で将来にわたって我が国の平和と安定を確保するためには、我が国自身として、それらの戦闘機を超える最新鋭の次期戦闘機を整備していく必要がございます。

 また、今後の航空領域における活動のためには、無人機と有人機の連携が極めて重要な要素であると認識しておりまして、次期戦闘機と連携する無人機につきましても、米国とのAI技術に関する共同研究を含め、各種研究を進めつつ、検討を進めているところでございます。

 その上で、新たな戦い方に対応し、我が国の防衛を全うしていくためには、統合的な運用構想の下で、戦闘機を始めとする航空防衛力のみならず、AIを活用した無人アセットを含め、陸、海、宇宙、サイバー、電磁波の領域を有機的に組み合わせた防衛力を整備していくことが必要であると考えております。

 国家防衛戦略等に基づき、引き続き、防衛力の抜本的な強化を推進してまいる所存でございます。

吉良委員 私も民主党政権のときに、こういう武器輸出三原則の議論の際に、共同開発、共同生産は必要だということを主張してきた人間でもありますので、賛成もしましたし、これ自体に反対ということではないんですけれども、今言った問題意識は、この委員会の場で指摘しておきたいと思っています。

 次期戦闘機を共同とはいえ自主開発していく意味というのは、今政府委員から答弁がありましたけれども、やはり時代に伴ってアップグレード、アップデートしていくためにも、それをブラックボックスではなくて自前でやれるということの意味は大きいと私も認識はしています。

 次に、戦闘機の技術的な主導権を日本が握り得るのか。

 これも審議の中で議論にはなりましたけれども、私が一番心配しておりますのは、日本のIHIが自前の戦闘機エンジンを開発しているとはいえ、それでも、世界的にはP&W、それからGE、そしてロールス・ロイスが圧倒的な力を持っている中で、やはり戦闘機といえば五割以上の付加価値がエンジンにあると私は思っていますので、そういう中で、イギリスが、ロールス・ロイスが存在する中で、本当に日本が主導権を握れるのかということについて、再度確認をしたいというふうに思っています。

 私、ワシントンDC郊外のロッキード・マーチンの支社に行って、F35のシミュレーターに乗ったというのか、やって、一つは、びっくりするのは、世代が違うと、第四世代のF35に対して第三世代というのは、ステルス性もあるので、こっちは相手から全く見えない、こっちからはもう全部が丸見えで、ロックオン即撃墜できる。

 世代が違うと全く戦にならないということから考えると、次期戦闘機は大事だと思っているんですけれども、先ほど言ったロールス・ロイスという圧倒的な技術的優位があるところと組みながら、日本がその技術的優位性を握れるのかということについて、簡潔にお願いいたします。

弓削政府参考人 お答え申し上げます。

 FSXと呼称されていたF2の開発の当時は、国産の戦闘機用エンジンの開発技術が確立されておらず、米国製エンジンを採用しましたが、戦闘機の開発を主導するためには、エンジン技術を始め主要な技術を国内で保有しておくことが重要であるとの教訓を得ました。

 こうした教訓を踏まえ、我が国では、これまでに、XF9エンジンの試作を通じまして、大推力とコンパクト化を両立するためのエンジン技術を実証しておりまして、得られた知見や教訓は今後開発される次期戦闘機搭載用エンジンに生かされるものでございます。

 こうした取組を踏まえまして、国内の企業には十分な技術力が蓄積され、日英伊の共同開発を主導できる技術レベルにあると考えておりまして、これまでのエンジンに関する技術や経験を踏まえて共同開発に取り組んでまいります。

吉良委員 ロールス・ロイスが持っている既存のエンジンにIHI技術が加わって、ある種アウフヘーベンしたエンジンになっていくんだろうと思いますけれども、技術の優位というか、開発の主導権を握れるようにお願いをしたいと思っています。

 これから残りの時間は、今更そんな過去の事案を取り上げるのかという二点を取り上げた上で、日本の外交の在り方について、議論といいますか、大臣に問いたいと思っています。

 一点目は、最後、時間があればというふうにしていたんですけれども、三番目を先に持ってきまして、二〇二〇年一月三日に、米国がイランの革命防衛隊の当時の司令官、ソレイマニ氏を殺害しました。ソレイマニ氏は、主権を持つイランの国民であります。殺害した場所はイラク、主権を持つイラク。米軍駐留の許可を得ているイランと米国の関係ではありますけれども、イラク政府の許可なく、同意なく、一方的に、イラクにおいてイラン国籍を持つソレイマニ氏を殺害した。

 この件について、質問主意書も出ていますけれども、いま一度、簡潔に政府の見解を問いたいと思います。

上川国務大臣 お尋ねの事案に関しまして、令和二年、二〇二〇年二月四日の質問主意書の答弁書におきまして、政府としては、中東地域の緊迫の度の高まりに対して深く憂慮し、事態の更なるエスカレーションは避けるべきであり、全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求めるとの立場である旨説明しておりまして、この基本的な立場については変わりはございません。

吉良委員 今の質問主意書の答弁の中でも、エスカレーションを避けるべしということについては言及しているんですけれども、米国のソレイマニ氏殺害についての非難はないんですね。

 以前、私、ハマス・イスラエル戦争のときにも取り上げたことでありますけれども、ハマスのイスラエル領内での攻撃については強く非難すると言いながら、私はそれは当然だと思っています。でも、一方で、イスラエルのガザ攻撃については、人道的に云々とか国際法にのっとってということで、それ自体を非難していない。これは、アメリカへの過度な忖度、アメリカへの過度な追随、余りにもアメリカに合わせ過ぎ、アメリカに配慮し過ぎということについて私は指摘をさせてもらいました。

 このソレイマニ氏の殺害についても私は同様だと思っていまして、先ほど徳永委員とのやり取りの中でもグローバルサウスの理解ということが出ていましたが、日米同盟は死活的に重要だという立場は私も持っていますけれども、ただ、アメリカは、最近は余りにもダブルスタンダードが過ぎる。そこに日本が追随してしまうと、グローバルサウスの信頼を失い、日本の外交、そしてその先にある経済に大きなマイナスを及ぼすというふうに思っていますので。

 この件もあえて出しましたのは、さっき言った今のハマス・イスラエル紛争より以前にも、こういう本来アメリカといえども批判してしかるべきことを日本は批判しない、それによってグローバルサウスの信頼を失っているということについて指摘させてもらいたいと思います。

 最後になりますけれども、一九九六年十二月十七日、古い話は若い人は知らないかもしれませんけれども、ペルーの日本大使公邸で、当時のペルーのトゥパク・アマル革命運動のゲリラといいますかテロリストが侵入して、日本人を中心に人質になっていた事件がありました。

 実は、私の大親友が人質でありましたし、私が最も親しくしていた尊敬する先輩も人質でありました。先輩の方は、当時、日商岩井ペルー法人の社長だったので、最後の、九七年四月二十二日、現地時間ですけれども、そこまで人質でありました。

 私の親友は十日間で解放されましたが、彼が最初、何を思ったか。最初は奥さんも一緒に行っていまして、女性、高齢者は即日、翌日に全員解放されたので、親友はどう思ったかというと、自分も死ぬだろう、けれども、女房が外に出てくれたので、これで三歳の息子は何とか生きていける、そう思ったそうです。

 私が問題にしたいのは、当時、私がいた会社のみならず、商社それからメーカー、それからいろいろな、現地に駐在事務所を持っている、人質になった会社というのは、総動員でペルーに滞在して、その救出を見守りました。そして、人質になっていた人の人生は、その後、大きく、いろいろな意味で影響を受けて変わっています。けれども、日本政府から一言の謝罪もない。まして、補償もありません。

 これは、第一義的にはペルー政府の責任であるという立場を堅持する、責任を認めたならば謝罪も必要、補償も必要になるということで、恐らく責任を認めなかったんだと思っています。だから、謝罪もしなかったんだと思っています。

 けれども、上川大臣が再三言っている上川外交というのは、国民の理解と支持を得ながら、その支持と理解を得た外交を推進していくんだというときに、広く国民一般はもちろんですけれども、私のいた商社も含めて、外交の中で、特に経済的に外交を支えている最前線にいるのは、そういう海外に出ていっている企業だったり、その人たちじゃないですか。その人たちの恨みを、極端に言ったら、謝罪もないぞ、一言もない、ここまで迷惑かけていながらということに関して、本当に支持を得られるのか、理解を得られるのかという問題意識を私は持つわけです。

 残念ながら、さっき言った、生き字引でもあった、私が尊敬する大先輩はその後もペルーにい続けて、実はペルーに永住して、昨年亡くなりました。いろいろなことを、事件そのものも、山のように内輪、内々の話も聞きましたけれども、そこは披露せず。

 ただ、その先輩、また大親友の無念も背に負いながら、日本政府の、当時、責任を一切認めず、そして謝罪もしなかったということについて、上川大臣は現在どう思っているのか。今後、世界で起こり得るかもしれない邦人保護、それから日本の大使館等が関わった事件に対しての、ある意味今後の指標にもなると思いますので、大臣の見解をお伺いします。

勝俣委員長 上川外務大臣、既に持ち時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

上川国務大臣 この事件でございますが、私もよく記憶をしているところであります。改めて、御質問をひもときながら、この後の経緯がどうなっているのかということにつきましても学ばせていただきました。

 そして、この当時は橋本総理大臣と池田外務大臣の時期でございまして、まさに四月二十二日に人質が解放された後、直ちに委員会を設立いたしまして、この事件がどういう状況の中で起きたのか、そして、どういう対応であるべきだったのかのためにもしっかりと検証し、そして、その結果については、国会の方で池田外務大臣が報告をするという形で説明をされたということを承知しております。

 そこの中について詳しく説明をするということについては、時間の関係もございますが、もちろん、在外公館の安全の確保は、まさに外交関係に関するウィーン条約の定めによりまして、第一義的には接受国が責務を有するということであります。当時のペルーの、中には亡くなられた方もいらっしゃいますし、そういう中におきまして、では、大使館はどういう役割を果たしてきたのかということについて、本当に真摯に報告を、調査をした上で、二度とこうしたことが起きないような対応をしていく、こういうことについては明確な方針を示されております。

 そういったことを踏まえて考えますと、その後も、人質になられた方々を、総理大臣もまた外務大臣も何度かお招きをし、そのときのお慰めをするという形で大変心を砕いて動かれていたということも事実でございます。

 こうしたことが二度とないような対策をしっかり取るということと同時に、今御質問のあったようなことも含めまして、より過去の教訓をしっかりと学んでいく姿勢ということは、これからの大使館、あるいは海外で御活動される方々が本当に必死に、そして身を賭しても動こうという形で活動していらっしゃるということを考えてみれば、そこが最後のとりでになるということでありますので、そのことにつきましては、全力でこのために頑張っていきたいというふうに思っております。

 外務省を挙げて、この点につきましては真剣に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

吉良委員 もう時間なので、これで終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

勝俣委員長 次に、日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国政府とクロアチア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とオーストリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び刑事に関する共助に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣上川陽子君。

    ―――――――――――――

 日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 航空業務に関する日本国政府とクロアチア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とオーストリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 刑事に関する共助に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 ただいま議題となりました四件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、日本国の自衛隊とドイツ連邦共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とドイツ連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和六年一月二十九日に協定の署名が行われました。

 この協定は、自衛隊とドイツ軍隊との間で、それぞれの国の法令により認められる物品又は役務の提供における決済手続等を定めるものです。

 この協定の締結により、自衛隊とドイツ軍隊が行う活動においてそれぞれの役割を一層効率的に果たすことを促進し、国際の平和及び安全に積極的に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、航空業務に関する日本国政府とクロアチア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和五年七月二十一日に協定の署名が行われました。

 この協定は、クロアチアとの間で定期航空路線の開設及び定期航空業務の安定的な運営を可能にするための法的枠組みについて定めるものです。

 この協定の締結により、両国間の人的及び経済的な交流が更に促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、社会保障に関する日本国とオーストリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件は、令和六年一月十九日に協定の署名が行われました。

 この協定は、オーストリアとの間で年金制度、医療保険制度等に関する法令の適用について調整を行うこと等を定めるものです。

 この協定の締結により、両国の年金制度への二重加入の解消等を通じ、人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間の関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、刑事に関する共助に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和六年一月二十五日に条約の署名が行われました。

 この条約は、一方の締約国が他方の締約国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続について共助を実施すること、そのための枠組みとして、両締約国が指定する中央当局が相互に直接連絡すること等を定めるものです。

 この条約の締結により、我が国から請求する共助がブラジルにおいて一層確実に実施されることを確保できるとともに、共助に関する連絡を中央当局間で直接行うことにより、共助の効率化、迅速化が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

勝俣委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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