衆議院

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第5号 令和7年3月25日(火曜日)

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令和七年三月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 鈴木 貴子君 理事 西田 昭二君

   理事 葉梨 康弘君 理事 神谷  裕君

   理事 野間  健君 理事 渡辺  創君

   理事 池畑浩太朗君 理事 長友 慎治君

      岩田 和親君    大空 幸星君

      栗原  渉君    小池 正昭君

      坂本竜太郎君    武村 展英君

      田野瀬太道君    田畑 裕明君

      根本  拓君    根本 幸典君

      長谷川淳二君    平沼正二郎君

      宮下 一郎君    森下 千里君

      簗  和生君    山本 大地君

      若山 慎司君    石川 香織君

      岡田 華子君    金子 恵美君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      篠田奈保子君    西川 将人君

      福田 淳太君    緑川 貴士君

      柳沢  剛君    山田 勝彦君

      市村浩一郎君    空本 誠喜君

      林  佑美君    岸田 光広君

      許斐亮太郎君    村岡 敏英君

      庄子 賢一君    角田 秀穂君

      八幡  愛君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       江藤  拓君

   農林水産副大臣      笹川 博義君

   農林水産大臣政務官    庄子 賢一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口  靖君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       堺田 輝也君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          深水 秀介君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           森  重樹君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  松本  平君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            前島 明成君

   農林水産委員会専門員   千葉  諭君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  大空 幸星君     坂本竜太郎君

  田野瀬太道君     田畑 裕明君

  根本 幸典君     岩田 和親君

  森下 千里君     若山 慎司君

  柳沢  剛君     篠田奈保子君

  空本 誠喜君     市村浩一郎君

  村岡 敏英君     岸田 光広君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     根本 幸典君

  坂本竜太郎君     大空 幸星君

  田畑 裕明君     田野瀬太道君

  若山 慎司君     森下 千里君

  篠田奈保子君     柳沢  剛君

  市村浩一郎君     空本 誠喜君

  岸田 光広君     村岡 敏英君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

同月二十五日

 国産食料の増産、食料自給率向上、家族農業支援強化に関する請願(長友慎治君紹介)(第六六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 新たな食料・農業・農村基本計画に基づく施策の推進に関する件


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官山口靖君、大臣官房技術総括審議官堺田輝也君、大臣官房統計部長深水秀介君、消費・安全局長安岡澄人君、輸出・国際局長森重樹君、農産局長松尾浩則君、畜産局長松本平君、経営局長杉中淳君、農村振興局長前島明成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、食料・農業・農村基本計画の策定に関して質問させていただきたいと思います。

 今日は、江藤大臣、何かお風邪を召されて喉の調子がいま一つというお話も伺っております。くれぐれもお大事になさっていただければと思います。

 この基本計画の策定に至る道のりを考えますと、まず、基本法に関する大議論を行って法改正が行われ、そして今、その具体的なKPI等を示す基本計画がいよいよ作られようとする大詰めということであります。まさに農業の大転換の一つの大きな節目となる計画でありまして、その重要性は本当に大きなものがあります。そういう意味で、幾つかの論点について明らかにできればという思いで質問に立たせていただきました。

 まず、食料・農業・農村基本法の第一の柱であります食料安全保障の確立でありますけれども、これは、国内の農業生産の増大、安定的な輸入の確保、また備蓄の確保、この三本柱が必要だというふうに基本法には明記されておりますが、中でも、国内の農業生産を増やして、そして地産地消、国産国消の取組を推進していくことが特に重要であります。そして、その状況を示す大切な指標が食料自給率であることは間違いありません。

 残念ながら、過去のカロリーベースの食料自給率の推移を見ますと、一九九八年、それまでもなだらかに低下してきたわけですが、九八年は四〇%を記録しまして、以来二十五年間、ほぼ横ばい、やや低下、令和五年では三八%という状況であります。こうした状況を踏まえますと、過去二十五年間はほとんど水平。こういうことを、今回の基本計画では、五年間で四五まで引き上げよう、急速に上げよう、こういうことで、かなり意欲的な目標が盛り込まれております。

 では、この高い目標をどうやって実現しようとするのか。具体的に、どの品目で、どういう取組でこの自給率向上を図っていくのか。政府としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 本基本計画案では、農地の大区画化などによる農地の集積、集約化の支援や、多収量品種の導入による単収の向上、スマート農業といった施策をフルに動員し生産性向上効果を見込み、二〇三〇年度に食料自給率四五%の達成を目指すこととしております。

 具体的には、先ほど申しました生産性向上効果を図ることで、米の輸出量を三・八万トンから三十五・三万トンに増やすことで一・一%、小麦、大豆につきましては、多収品種の開発や普及、大区画化や汎用化、畑地化等の基盤整備の推進、単収の向上と作付面積の拡大により国内生産を、小麦につきましては百九万トンから百三十七万トンへ、大豆につきましては二十六万トンから三十九万トンへそれぞれ増産することで一・二%、野菜につきましては、スマート農業技術、省力化品種、高温耐性を備えた品種の開発導入等により単収を向上し、国内生産を千八十七万トンから千二百一万トンに増産することで〇・六%、果樹につきましても、省力樹形の導入や高温適応性を有する品種の開発導入等により単収を向上し、国内生産を二百四十五万トンから二百五十六万トンに増産することで〇・三%、それぞれ食料自給率の上昇に寄与することを見込んでいるところでございます。

宮下委員 次に、地域計画の位置づけについて確認をさせていただきたいと思います。

 ただいま、各品目での増産等々、また米の輸出拡大等々のコメントをいただきましたけれども、また、みどりの食料システム戦略もこれから進めていくということを考えると、有機農業の拡大も重要であります。こうしたこれからの新たな取組、各地域のどの農地で実際にそうした取組を行っていくのかを明確にすることが非常に重要だと考えております。また、農業従事者の減少に対応するためにも、地域計画に基盤整備の計画を盛り込んで、スマート農業への対応を進めることも急務であります。

 今月末には地域計画が全国から上がってくる予定となっておりますけれども、各地の現状を伺いますと、必ずしも、そうした新しい取組を盛り込んだ、地域の農業の将来のあるべき姿を表した計画ばかりではないというふうに感じております。

 今回の地域計画の策定を新たなスタートとして、農業収益力の向上につながる好事例などの情報提供をプッシュ型で行い、また、横展開をサポートして、地域計画を更に充実したものにしていくことが必要だと考えます。この点について、農林水産省としての認識をお聞かせいただきたいと思います。

笹川副大臣 御質問ありがとうございました。

 委員御指摘のとおりでありまして、今、年度内策定に向けて、それぞれの地域で、関係者の皆さんに大変御尽力いただいて、地域計画の策定の作業をしていただいております。地域農業の将来設計の基本となる、また、将来の設計図としていくことが肝要でございます。そのためにも、やはり上がってきた地域計画をしっかりと分析をしていくということが大事だと。そして、今現在、食料・農業・農村政策審議会企画部会においても御議論をいただいております。

 そういった意味では、次期の基本計画の内容を踏まえながら、一つには、農地の大区画化等の基盤整備、地域の特性を生かした有機農業の推進、輸出に取り組む産地の拡大など、様々な施策との更なる連携について検討を進め、基本計画に掲げる目標の実現に邁進をしていかなければならないというふうに思っております。

宮下委員 次に、農業者の所得確保を図るための政策についてお聞きしたいと思います。

 基本は、需要に応じた生産、価値あるものを生産いただいて、それに合理的な価格がついて、そして持続可能な経営があって、所得も安定するというのが基本でありますけれども、しかし、なかなか条件が厳しい品目、産地もあります。そうした意味で、直接支払いという手法も大変重要だと思います。

 この直接支払いについてですが、お手元に資料を配付してございます。

 一枚目の資料を御覧いただきますと、二〇二一年にWTOに各国が通報した額が記されております。これによりますと、農業所得に占める直接支払いの割合は、日本が五七%、米国が一二%、EUが六三%となっておりまして、米国やEUと比較しても日本は決して低い水準ではないというふうに考えられます。

 一方、二枚目の資料を御覧いただければと思うんですが、これは何を表しているかというと、青い方が経営体数がどういうふうな比率であるかということで、三十ヘクタール未満の経営体が約八八%、九割近くを占めている、一方で、直接支払いを支給された先は、ほぼ一割のところに六五%の直接支払いが行われている、こういったことを示しているグラフであります。このため、ヨーロッパでは、EUでは、小規模農家にも配慮した、より公正な支援に見直すことが必要ではないか、こういう指摘もあると伺っております。

 一方、我が国の直接支払いの現状を見ますと、通称水活と言われる水田活用の直接支払交付金、通称ゲタと言われる畑作物の直接支払交付金、通称牛マルキンと言われている肉用牛肥育経営安定交付金、通称豚マルキンと言われる肉豚経営安定交付金、また、野菜の価格安定制度、中山間直接支払制度など、政策の目的ごとに、きめ細やかな政策が行われておりまして、必要な支援が必要なときに行き届くという仕組みを取っておりまして、これはある意味優れた仕組みなのではないかなというふうに考えております。農林水産省としてこれをどう評価されているのか、認識を伺いたいと思います。

 もう一つ、あわせて、水田政策の見直しが今後行われるということで大臣も表明されているわけですが、その見直しに当たっても、引き続き農業者の所得をしっかり確保していくことが重要であります。水田活用の直接支払交付金を受けなければ営農を継続できない方など、必要な方に制度の見直し後も必要な支援が行われるようにすべきだというふうに考えますが、この点についても併せてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

笹川副大臣 それぞれ委員から御指摘をいただきまして、ありがとうございました。

 直接支払いについては、我が国はやはりEUとは違いまして、農地面積についても考慮し、それからまた、それぞれの農地の条件も考慮しということで、きめ細やかな直接支払いを行っております。

 同時にまた、先般、大臣からも、水田政策の見直し、それからまた直接支払いについても様々答弁をさせていただいております。

 支援を受けなければ営農を継続できない、そういった必要な方に必要な支援が行き渡るようにすることも大事である、こういうふうに考えております。同時にまた、各種の実態調査を行った上で、その結果をしっかりと分析をし、意欲を持って取り組んでいる農業者の皆さんの営農に支障が生じない支援の在り方について、令和七年度中に方針を策定し、令和九年度から新しい水田政策に向けた、令和八年夏の概算要求につなげていきたいというふうに考えております。

宮下委員 世界的な人口増加、そして国際情勢の不安定化、また気候変動の影響の拡大、国内農業者の減少、高齢化、こういったことを考えますと、我が国の食料安全保障は大きな岐路に立たされております。この中でも、特に国内農業者の減少や高齢化を考えますと、今、農業の体質強化を抜本的に行って、農業を持続可能なものとして次世代につなげていくことが喫緊の課題であると考えております。

 更に具体的に言えば、基本計画を推進していくこれからの初動五年間を農業構造転換集中対策期間と位置づけて、農地の大区画化、共同利用施設の再編、集約化、スマート農業技術の導入加速化、輸出促進、これらの施策を強力に推進していくことが必要でありまして、そのためには、既存の農林水産予算とは別枠で予算を確保していくことがどうしても必要になると考えております。

 この五年間の対策について、別枠での予算確保に向けた江藤大臣の決意を是非お聞かせいただきたいと思います。

江藤国務大臣 宮下委員とは、三年にわたりまして、基本法の改正について、本当に一緒に、もう毎日のように顔を合わせて議論をしてまいりました。私は非常に雑な性格ですが、宮下委員は非常に細部にわたって気配りのできる方なので、法案の細にわたった検討に当たってはまさに主役を務めていただき、集中五か年計画というこの言葉についても、宮下委員が我々に提案をしてくれたものでありまして、これが今、新しい基本法、それの基本計画の柱になっていることは大変ありがたいというふうに思っております。

 今言われましたように、これから五年がやはり勝負であります。昨日も参議院の予算委員会、予算の審議ですから、二十億しか増えていないじゃないかと大分言われました。このことについては、私の力不足ですということでおわびを申し上げたところでございます。

 しかし、今度基本計画がしっかりでき上がれば、やらなきゃいけないことがはっきり分かる。やらなきゃいけないことをやるには、お金が全てではありませんが、お金がなければできないこともたくさんある。特に、構造を変えるということであれば、これは、一次産業であろうが、二次産業であろうが、三次産業であろうが、構造を変えるには大きな投資が必要であります、構造転換なんですから。

 ですから、我々は財務当局と話をするときに、具体的にかくかくしかじかの未来予想図を描きます、そしてKPIもしっかりやります、それからPDCAサイクルも回しますと。その中で、年次目標を設け、そして達成度をしっかり示しながらやりたいと思っております。

 その中で、宮下委員が言われるように、国土強靱化の五か年計画、これは宮下委員のまさに説でありますが、このようなはっきりとした中期計画をしっかり立てて、予算の総額もしっかり確保した上で計画が立てられれば、農業者の方々に対しても非常に強いメッセージになるんだろうと思います。国の本気度を示すことができる。そして、本当にこれから五年間は集中的に構造改革するんだという決意が、我々政治家だけではなくて現場の方々にも伝わるということでありますから、令和八年の概算に向けての努力でありますが、是非、与野党の垣根を超えてしっかりとした議論をしていただき、この基本計画がいいものになって、そして堂々と予算の要求をできるような体制にしていくことがまずは肝要であろうというふうに考えております。

宮下委員 力強い決意をいただきまして本当にありがとうございます。共に頑張っていきたいと思います。

 今出た農業構造転換の話になりますと、ややもすれば農地の大区画化とかスマート農業技術の導入などが中心にならざるを得ませんので、こういうことから、地元のミニ集会でも、構造転換というのは中山間地農業のことを余り考えていないんじゃないの、こういう質問を受けたりしまして、残念な思いをしました。それは誤解ですよという説明もしたんですが。

 私自身、平成二十八年に自民党の中山間地農業を元気にする委員会の初代委員長を務めさせていただいて以来、ずっと中山間地農業の応援をしてまいったところでありますし、今回の基本計画でも、中山間地域等の振興が明確に章立てをして位置づけられております。一方、その中でも触れられていますけれども、中山間地域でも、例えばスマート農業の導入による省力化というのはこれからますます重要になるだろうというふうに思います。

 地元中山間地でのスマート農業の実証では、水田の水位の測定また水量の調整がスマホで可能となる通信機能つきの自動給水栓が、見守りなどの作業時間を大幅に削減できたということで大変好評でありましたし、さらに、畦畔の草刈りの負担を減らすリモコン草刈り機がもっと性能がよくなってくれれば、もっと安くなってくれれば、こういう期待も高まっております。

 一方、自動の農機については大型のものがほとんどで、機械を農地に搬入するための進入路がないといった課題も多くあります。こういうことから、中山間地域に対応した、例えば小型の農機を開発するとか、小規模な基盤整備をどんどんやるとか、こうしたサポートも重要だと思います。

 中山間地域におけるこうした課題にどのように対応していかれるのか、農林水産省の考えを伺いたいと思います。

前島政府参考人 お答えいたします。

 中山間地域は、食料供給基地としての重要な役割を担っておりますが、中山間地域の特性に応じた支援を行っていくことが重要であると考えております。

 このため、集積要件がなく、基盤整備と生産、加工、販売施設等の総合的な整備を行う中山間地域農業農村総合整備事業、面積要件がなく、地域の多様なニーズに応じたきめ細やかな基盤整備等を行う農地耕作条件改善事業などによりまして、農地や農道の整備を行うとともに、中山間地域の省力化に資する自動給水栓の設置や、リモコン草刈り機に対応したのり面の緩傾斜化など、スマート農業技術導入のための基盤整備を進めてまいる考えでございます。

 あわせまして、中山間地域を含む多様な現場ニーズに対応したスマート農業技術の研究開発、スマート農業技術を用いた農業支援を行うサービス事業体の育成や活動促進などを支援いたしまして、中山間地域でのスマート農業の導入を推進してまいりたいと考えております。

宮下委員 もう時間ですので最後にさせていただきますが、輸出目標の実現について質問させていただきます。

 輸出は、大量に作って余ったから売るということじゃなくて、相手のニーズに合わせて作るとか、それから、日本食のすばらしさを広げて、マーケットメイクということでやっていくとか、丁寧なやり方が必要だと思います。しかし、五兆円目標というのは非常に意欲的な目標でありまして、具体的に今どういう積み上げをしてこれをやろうとしているのか、簡潔に御説明をいただければと思います。

森政府参考人 輸出目標に向けた取組についてお尋ねがございました。

 世界の食市場は、二〇三〇年には一千五百兆円に拡大すると見込んでございまして、輸出五兆円目標に向けまして、輸出戦略を現地発で組み立てるマーケットイン、マーケットメイクの考え方で輸出を推進する必要があると考えてございます。

 二〇二四年の輸出額は初めて一兆五千億円を突破したところでございまして、品目別に見ましても、冷めてもおいしい日本米の特徴を生かした食べ方などが広がりつつある米を始め、牛肉、お茶、みそ、しょうゆなど、多くの品目で過去最高を記録しているところでございます。

 また、海外における日本食レストランは十年間で三倍以上となっていまして、十八万店を超えております。訪日外国人も三千六百万人余りということで過去最高、こういうことでございまして、こうした旺盛な海外需要を取り込むために、輸出拡大と併せまして、日本食レストランなど食品産業の海外展開、また、インバウンドによる食関連消費の拡大、こういったものとの相乗効果を発揮しまして、海外から稼ぐ力を強化していくというふうな考え方でございます。

 このため、例えば農地利用の中に有機米の輸出産地を位置づけるなど、地域計画と連動した輸出向け産地の育成でございますとか、みそ、しょうゆといった伝統的な製造技術など、日本食、食文化の魅力を発信して、海外需要を更に拡大していく。さらには……

御法川委員長 答弁は簡潔にお願いします。

森政府参考人 コールドチェーンが確保された輸出物流を備えた戦略的なサプライチェーンの構築など、具体的な課題に取り組んでまいりたいと考えてございます。

宮下委員 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 前回、令和二年、二〇二〇年の際も、やはり食料・農業・農村基本計画を策定した際の大臣は江藤大臣でありました。そのときの資料等を見ていますと、当時も度々そういう議論はあったと思うんですけれども、農政の一番基本的な方針として、地域政策と産業政策、これを車の両輪のようにやっていくのが基本的な方針であるということが高らかにうたわれ、基本計画のポイントとして五つポイントがありましたけれども、その中でも、関係府省庁と連携して農村の振興政策を総動員した地域政策の総合化をやっていくんだ、こういうことがうたわれていました。

 ですから、今お話がありましたように、稼ぐ農業をやるんだ、大規模化をするんだ、輸出をするんだ、こういう産業政策をやる一方で、やはりなかなかこれに対応できない中山間地も含めて、地方、田舎、これはこれで地域政策として守っていこう、こういう姿勢が非常にはっきり打ち出されていたと思うんですが、今回の基本計画の中では地域政策という言葉はもう全く出てきません。

 それで、これはどうなってしまったのだろうか、地域政策はなくなったのか、こういうことを事務方の方にも聞きましたけれども、いやいや、そんなことはないですと。先ほど宮下議員からも、中山間地についてもこうこうしていますよというお話はあるんですが、やはり、一般の皆さんの受け止めは、どうも自分たちは、中山間地で農業をやっている人たちは、決してもうかる農業でもない、隣近所に分け合ったり、自家消費したり、少しはお小遣い稼ぎで売ったりしているけれども、そうやって農村を守っている、こういう自分たちの存在というのは認められていないんじゃないか、こういう危惧、不安、不信を持っている方も少なくないわけであります。

 とりわけこれが正直明らかになったのは、昨年十一月に、中山間地直接支払制度の中の一つの加算の条件として、集落機能強化加算というのを、この七年度の概算要求から農水省が外したということで、これは全国五百五十五の集落が協定を結んでやっておりましたけれども、これは大臣も、後ほど申し上げますけれども、突然といいますか、これは余り農業生産に効果がないということで、農水省としたらこの予算を切ったわけですけれども。

 実際、確かにこれは農業生産と関係のないことについても交付金が出る。例えば、これは岩手県の花巻市の協定を結んでいるところですけれども、車による外出の支援とか、高齢者が多い地域です、高齢者の見守りを兼ねた配食のサービス、食事ですね、それから除雪作業の支援。あるいはまた、島根県なんかですと、いろいろな公会堂とか公共施設の草刈りとか。そういったものまで、直接農業には関係ないけれども、その地域を、中山間地を、農村を守るための加算ということで行われていたのが、これは農業に関係ないんだということで切ってしまう。

 しかし、大臣は、ちょっとそのやり方はおかしいということで、もう少し経過措置を置いてみようということで、大臣の恐らく本心はその辺でうかがい知れるわけですけれども、しかし、こういうことが起きますと、中山間地、直接農業の生産ではないけれども、自分たちがその地域で生きていくための様々な手だてを農水省がしてくれていたということが切られてしまう、非常にこれは残念な思いを皆さんは持っています。

 そして、今日資料でも配らせていただきましたけれども、石破総理は、今年の施政方針演説の中で、今もお話があったように、農業を基幹産業にするんだ、大区画化をする、輸出をする、スマート農業だ、米の輸出もどんどんやっていくんだということを高らかにうたい上げている。もちろん、こういう方向があることはもう承知していますし、やらざるを得ないということは分かるんですけれども、どうも、こちらの方向に完全にかじを切って、地域政策が顧みられなくなっているということが非常に危惧されます。

 大臣、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 まず、先ほど御指摘いただきました加算のお話ですが、私も、この席に着きまして、そういう報告を受けました。しかし、確かに周りと連携することによって支援の幅は厚くなるんですが、しかし、今のままの方がやりやすいという声も多分にありました。ですから、今この制度を使っていただいている方々については、当面の間、これは切らずに継続するという措置を取りましたので、それは御理解をいただけているものだと思います。

 今おっしゃるように、私も、農政をやってもう二十年以上になりますから、車の両輪という言葉は嫌というほど聞きました。多分、二十年近く前に出てきた言葉なので。この基本計画を書く段階で、これを書こうかどうか、ちょっと考えました、正直なところ。書いた方がいいのかなと。ただ、私は、正直に言いますけれども、ちょっと言葉が古いかなというふうに思いまして。ですから、全くないということではなくて、地域政策の観点から、農村が農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることを踏まえた上で、地域社会が維持されるよう、所得の向上や雇用の創出を図る経済面の取組と生活利便性を確保する生活面の取組を総合的に推進し、農村振興を図ることということを、今回、基本計画の方に書かせていただきます。

 これが私としては車の両輪という意味合いではあるんですけれども、ただ、熟議の国会でありますので、諸先生方から、ちょっと古いなという感じがしても、やはり、なじみがあるということであって、この言葉を残した方がいいということであれば、その方向で検討することも考えさせていただきます。

野間委員 古いかどうかは別としても、やはり地域政策はきちんとやっているということは、是非周知をしていただきたい。やはり大臣の地元もそうだと思いますけれども、何千年、恐らく何万年、地域を耕しながら暮らしを営んでいる皆さん、それは、もうかっているのか、もうかっていないとかいうことを抜きにして、やはり地域をそうやって守ってきている誇りもあります。是非、そういった皆さんへの評価というのはなくさないでいただきたいと思います。

 それで、先ほど、前回の基本計画のポイントの中で、府省をまたがって、省庁の垣根を超えて総合的な地方、地域に対する地域政策をやっていかなきゃいけないということでありましたけれども、今、ちょっとまた資料を配らせていただきました。いろいろ、石破総理になって地方創生二・〇ということで、地方創生をもう一回見直してやっていこうということですけれども、残念ながら、この十年、一兆三千億ぐらい予算を使っていますけれども、地方創生の効果が思ったほど上がっていないというのが現実ですね。二十六事業で予算の過半を余したり。

 いろいろな地域に行けば、正直、似たようないろいろな物産館があり、同じようなクッキーやジャムやジュースが売っています。それはそれぞれ、本当に皆さん一生懸命頑張って作ったものですけれども、それがどこまで地域のための効果を上げているのかというと、それが上がっていないのがこの十年来の現状ですよね。

 私は、こういうお金、それこそ農水省が主導して、総務省ともよく話して、これは農業に、一次産業にびしっと使ってほしい。先ほど、別枠の予算を取らなきゃいけないということでありましたけれども、そういう農業に関連する、地域に関連する、中山間地、過疎地に関連する様々な予算がありますから、これは農水省に任せてくれと。自分たちがきちっと農業を、一次産業を地域で元気にすることが本当の地方創生でありますから。それ以外のことが駄目というわけではないですけれども、是非そういうことも考えていただきたいということで、これは一つの提案ということでありますけれども、大臣、いかがでしょうか。

笹川副大臣 委員の御指摘、大変受け止めさせていただきたい。

 私の群馬県も、私の選挙区は平地でありますけれども、大半が中山間地ということであります。農業、農村の振興というのは本当に群馬県にとっても要の政策というふうに思うし、移住先とすると、群馬県も大変高い評価をいただいております。そういう意味では、移住先というのは、私の選挙区よりも、やはり中山間地の方を移住先として選ぶということでありますので、やはり、委員の御指摘のとおり、中山間地の振興というのは、そういう意味では人を呼び込むきっかけにもなるというふうに思いますので。

 限られた農水省の予算の中でということになれば、それはやはり関係省庁と連携をし、様々な交付金の制度を活用していくということ、連携をしてやっていくことは、もちろん委員の御指摘のとおりであります。

 改めて、本年の二月に、農山漁村の経済・生活環境創生プラットフォームを活用して、内閣府、それから総務省等々の関係省庁と連携し、事業内容の紹介等を行う地域密着型の創業、新規事業支援に係る特別交付税措置も含め、これからも総務省と連携をしながら、同時にまた、地方公共団体のそれぞれの関係部局とも連携をしなきゃなりませんので、やはりきちっと理解をしてもらうことが大事でありますので、そういったところにも説明をするとともに、新たに創設された地方創生の伴走支援制度など、財政措置の活用を含めた現場の問題解決に我が省もしっかりと絡んで、伴走支援の中でやっていきたいというふうに思っております。

野間委員 是非、省庁の縦割りをぶち破って、一次産業振興のためにやっていただきたいと思います。

 続いて、やはり中山間地が多い畜産業、とりわけ肉用牛の問題で、今ようやく子牛を含め相場が少し戻ってきて、農家の皆さんも安心をし始めているところですけれども、ただ、残念ながら、事、牛に関して、肥育を含めて、飼料価格が高止まりで、まあ多少下がってはきていますけれども、そういう状況がずっと続いて、あとは餌代さえ少し下がってくれれば利益が出るところまで来ているんだけれどもということを聞きます。

 配合飼料の価格について、昨年、いろいろな基金が枯渇したり、もろもろあって、いろいろな検討をする協議会等もできて、いろいろなまとめも出ていると思うんですけれども、どういう方向に今行こうとしているんでしょうか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 飼料価格高騰対策としまして、累次補填を行ってきました配合飼料価格安定制度につきましては、現在、基金の蓄えを大きくすることにより、借入れをしなくても補填金を交付できるような運用改善につきまして、関係者と最終的な調整を行っているところでございます。

 一方、委員御指摘の配合飼料価格の高止まりにつきましては、こちらは畜種ごとの事情に応じまして対策を講じております。例えば肉用牛につきましては、出口対策としまして和牛肉の需要拡大事業を措置していますほか、肉用子牛の補給金の発動水準の累次の引上げ、優良和子牛生産緊急支援事業、いわゆる六十万円事業でございますが、これや、緊急特別対策事業などの補助事業や金融支援を措置することにより、経営の安定、生産基盤の強化を図っているところでございます。

 これらは引き続きしっかりと対策を講じていきたいと思っております。

野間委員 配合飼料メーカーは、厳しい状況もあったんでしょうけれども、今、史上最高益を上げたり、非常にもうかっているところも出てきていますので、そういったところの、逆の意味の価格転嫁ですね、値下げをする、この前、全農さんはされましたけれども、そういったこともやっていってもらいたいと思います。

 続いて、これは政府も強力にずっと進めてきているところでありますけれども、いわゆる鳥獣、ジビエを活用した鳥獣被害の防止、イノシシや鹿、私たちの地元のところでも、多く捕ってジビエに活用するということが行われているんです。

 近年、ジビエを、イノシシ、鹿を捕らえて、これを解体し、肉に仕立てていく、業者の皆さんは一生懸命頑張ってやってきましたけれども、燃料の高騰等を始め、いわゆるジビエで処理をした後の残渣の処分が、なかなか従来のように廃棄物として取ってくれなくなっている、焼却場あるいは公的な機関も含めて。それで値段が非常に合わなくなって、厳しくなっているのは全国的な状況であります。

 せっかくジビエのために各業者がやってきたのが、もう自分たちでちょっとお手上げだ、できないというところが出てきているんですけれども、これに対する対策はどうなっているんでしょうか。

前島政府参考人 お答えいたします。

 捕獲した鹿やイノシシなどの解体を行うジビエの処理加工施設において発生する皮や骨、内臓などの解体後の残渣につきましては、産業廃棄物となり、事業者が処理することになります。その際の費用につきましては、ジビエの販売収入から賄うことが基本となりますことから、鳥獣対策交付金の支援対象とはなっておりません。

 しかしながら、処理負担の軽減は重要な課題であると認識しておりまして、皮や骨、内臓の一部などは、ペットフードや皮革製品などに有効利用する多用途利用を推進すること、それでも利用できない残渣につきましては、微生物分解などによる減容化処理施設や焼却施設を導入し、廃棄量を減らすことが有効であると考えております。

 このため、鳥獣対策交付金におきましては、多用途利用に向けた加工設備の導入や商品開発のほか、減容化施設の導入などを支援対象とするとともに、こうした取組が進むよう、地域の取組の事例集なども公開しているところでございます。

 鳥獣被害対策を進める上でも、捕獲後の個体を処理する処理加工施設が安定して運営されることは重要なことから、引き続き、解体残渣の処理への対応を含めまして、施設の取組に係る優良事例の把握に努め、情報提供の充実と必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

野間委員 今、その減容化とか焼却施設への補助があるということなんですけれども、ほとんど、私の地元では随分ジビエの処理施設がありますけれども、知らないですよね。ですから、焼却の、買ってもこれも高いですし、合わない、こういうことではもう廃業せざるを得ないということで、両手を上げようとしている方も多いんですね。

 ですから、これは正直、なかなか市町村も周知されていないですよね。是非、きちっと周知をして、今、どんなふうに市なんかには連絡されているんでしょうか。あるいは、ジビエをどこでやっているかというのは、恐らくデータを御存じでしょうから、そういうところに対して積極的に周知するということをやっていただけないでしょうか。

前島政府参考人 お答えいたします。

 鳥獣対策交付金の内容につきましては、私ども職員が農政局を通じまして、また、農政局の職員も含めまして、都道府県、市町村への説明会などで周知を図っておりますし、要綱、要領などに、整備することのできる施設の内容などについても詳細に記載をしておるというところでございます。

 また、優良事例などにつきましてはホームページなどでも公表するなどという取組もしておりますので、そういったことを通じて、優良事例を全国の皆さんに知っていただくという努力を続けたいと思っております。

 現に、例えば、昨年の初めですけれども、宮城県の大崎市の方にイノシシの処理加工施設というのが造られましたけれども、そちらには減容化施設がやはり併せて設置されておりまして、こうなりますと、先ほどの答弁でも御説明したとおり、残渣については骨だけが残る、骨だけ産廃処理をすればいいという状態にもなります。

 このような取組、全国各地で行われておりますので、まだまだ取組が始まったところでございますけれども、周知に努めてまいりたいというふうに考えております。

野間委員 ありがとうございました。

 時間となりましたので終わりますけれども、基本計画の実施に向け、地域政策、産業政策を両輪として、我々もできることは一生懸命共にやっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまです。

 改正された基本法の理念の中心になった、国民一人一人の食料安全保障、その確立のためには、安定的な輸入、備蓄、これからも大切でありますし、何より、改正の大きなきっかけになった、国内外の情勢の変化、そして気候変動、輸入が途絶するリスクなどに備えて、いかに食料自給力を確保して国内生産の維持拡大ができるか。その生産基盤として重要な、人、農家の所得の確保は重要でありますし、農地を守るという対策はこれからも取りながら、その中で、しかしながらどうしても生じてくる人と農地の不足、この減少を生産効率でカバーしていく必要がございます。

 基本計画案で、今後五年の生産性向上に係る具体的な目標として、一経営体当たり、どれだけ生産量が増えるか、生産コストをどれだけ低減するかということを目標にしています。

 その目標への到達度合いを評価する指標、KPIの一つに、スマート農業技術活用促進法の目標に掲げる技術の実用化というKPIがありますけれども、その実用化の割合が、五年後には、全部、一〇〇%、つまり掲げた技術が全て実用化されているということを目指しているわけですけれども、まず、技術が実用化したと考える基準についてお伺いしたいと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業技術活用促進法において、人手を要する作業の労働時間の削減に資する技術を重点開発目標として位置づけているところでございます。この目標に沿った取組の開発供給実施計画を認定し、この認定計画の取組をフォローアップしながら、具体的には製品の市販化、あるいはサービス事業体によるサービスの提供など、現場で活用可能なレベルまで開発が進んだ段階を実用化と評価する考えでございます。

緑川委員 メーカーとかその前に、まず開発したというところで実用化というふうに捉えているわけですけれども、では生産現場に供給されているかどうかというのはまた別の話なんですよね。

 ほんの一部の経営体でそうした技術が導入されているのではなく、やはり広く普及していることをもって、そうした実用化でなければ意味がないと思います。普及しているということを反映した、これを直接反映するような指標が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたスマート農業技術活用促進法に基づく重点開発目標に位置づけた技術につきましては、令和十二年度の実用化の目標達成に向けて今後五年間で開発を推進していくために、実用化割合を目標としているところでございます。

 一方で、委員御指摘のありました生産現場への導入、普及につきましては、既に普及が始まっているスマート農業技術、それからこれから開発する技術も含めまして、スマート農業技術を活用した耕地面積の割合を令和十二年度までに五〇%以上とするという目標をもう一つ掲げまして、スマート農業技術の活用、普及に向けた取組を進めていく考えでございます。

緑川委員 スマート農業技術を活用しているという面積割合についても、これは、経営規模ごとにどのぐらい活用されているかということが面積割合だけでは分からないんですね。メーカーとしては供給可能な状況ができたとしても、その導入コストが非常に高くて、やはり多くの経営体が導入できない可能性もあります。

 これまで、例えばトマトの収穫ロボット、これは、実証事業がありましたけれども、労働時間の削減にこそつながりましたが、ロボットの導入費を含めると経営の収支は赤字になったという実証事業でした。

 汎用性が高いものでも導入コストが大きな障壁になっていますし、特に、コストの低減がやはり簡単ではない中規模以下の経営体のスマート農業技術の活用面積割合のKPIも、例えばこういうKPIも併せて示して、それを達成してこそ、生産現場全体でコストの低減が図られているということの説得性を持ち得るのではないかというふうに思いますので、活用面積割合を経営規模ごとに分けて示す必要があると思いますが、いかがですか。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 今回のKPIの目標の達成度合いにつきましては、統計調査の中で、客体については数が、限定はございますけれども、それぞれの農家が何の作物でスマート農業技術を導入したかというものをベースに数字を把握する考えでおります。

 ただ、経営規模ごとに階層を区分するというのは、客体の数等々を踏まえますとなかなか難しいという状況でございますけれども、面積については客観的なデータとして整理をしていきたいというふうに考えているところでございます。

緑川委員 水田などではやはり経営規模の内訳などはちゃんとはっきりしているんですけれども、今回の面積割合に限ってはそれを区切らないというのは、やはりそこの整合性といいますか、経営規模というところの目安は一定程度必要であるというふうに考えていますけれども、そこはいかがですか。

堺田政府参考人 KPIでございますので、これは毎年進捗状況を把握するすべがやはりないと、KPIとしてはなかなか設定できない。そういった中で、私どもが今考えられる手段というのをいろいろ省内的にも検討いたしまして、統計調査の中で、先ほど申し上げましたように、どの作物にこの技術を導入したかというところで面積は拾ってこようというふうに考えていますけれども、規模階層を区分するというところについては技術的に難しいという判断を今しているところでございます。

緑川委員 客観的な、完全に全部の統計を取るというよりは、やはり意向調査とか農家のアンケートも取っていらっしゃいますよね。そうしたところでのサンプリング的な部分で、やはり目安なども、そこでどのぐらいの母数を考えるのかということもあると思いますし、それをまず、何か目安を目指してそれに取り組むということは私は求めたいなというふうに思っておりますので、引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 そして、地域類型で見ても、経営規模もそうですけれども、これは大臣にお伺いしたいんですけれども、中山間地域、やはり地域類型で見ても、どのぐらい活用していく方向性なのかということはしっかり基本計画に盛り込んでいく必要もあるんじゃないかというふうに思っています。

 スマート農業技術活用促進法には、担い手に加えて、中小・家族経営、中山間地域、高齢の農業者、幅広い農業者がスマート農業技術を活用できるよう配慮するというふうに基本方針には定めているわけです。中小・家族経営や高齢農家なども含めた経営体が、こういう中山間地域で国内農業生産額の四割を支えている。中山間地域の多い東北ではその半分です、生産額の半分を占めますし、県によっては六割というところもあります。

 こういう基本計画案の中の、これまで多面的機能の発揮とか農村の振興に係る項目は、確かに、中山間地域が果たす目標、KPIが今回示されていますけれども、もう一歩、さらに、こうした重要な農業生産を中山間地域で維持するために、平地よりもかかる労務の負担を軽減を図ったりとか、やはり、作業効率を高める上で重要な、条件不利をカバーするためのスマート農業技術の活用、これを中山間地域で五年以内にどれだけ導入、普及を進めていくのか、こういう観点から、食料供給の観点からも中山間地域は重要であるということを目標あるいはKPIで明確に示すことが必要ではないかと思いますが、大臣、御見解をお伺いしたいと思います。

江藤国務大臣 KPIは極めて厳しいものであります。これは客観的な数字で示すものでありますから、いいかげんなことはできないということでありまして、局長も答弁いたしましたけれども、平場、中山間地を問わずにスマート技術を導入していこう、これだけ、百十一万人から三十万人台まで基幹的農業従事者が減るというトレンドの中で、やはりそれを埋めていかなきゃいけない、生産性も、その減る中でも上げていかなきゃいけないということでありますから。

 しかし、委員がおっしゃるように、中山間地域は高齢化率も高いですし、そして人口の減少率も高いわけですよ。そして、中には消滅可能集落というようなものもたくさんあって、そういうところが生き残るためには、こういうところこそ新しい技術、新しいそういう先進的なテクノロジーを使って支えていかないと、なかなか将来は厳しいんだろうと思います。

 これを分けて出すことが果たして可能かどうかということは考えますが、大体、中山間地域も、中山間というと、みんな面積が狭いというふうに思いがちですけれども、統計を取ると、大体二・七ヘクタールぐらい、中山間地域も家族農業で大体持っているんですよ。ですから、二・七ヘクタールあればそれなりの経営規模ですから、これも導入が可能になってくるのかなというふうに思います。

 ですから、これをやるということであれば、自分で機械を持つということ自体はなかなか今のコストでは難しいので、やはりサービス事業体が、集落営農も含めて、地域でそれなりの機械を持って機械を使い回すということの方が効率的にはかなりいいわけですから。

 ただ、委員がおっしゃったような中山間地域を切り分けたKPIというのは、今後の検討課題になるんだろうというふうに思います。

緑川委員 是非御検討いただきたいと思いますし、おっしゃったサービス事業体もやはり、サービスを提供する以前に、この事業体も投資をしなきゃいけません。初期投資によって、やはり、高いこういうスマート農機であるとかあるいはシステムの導入費というのをまず捻出する、そういう苦労があります。年間を通じて、やはり農業は冬はお休みするところが多いので、こういう農業支援業務も繁忙期もあれば閑散期もあるわけですね。この平準化にもやはりサービス事業体としては苦労しているという面があり、となれば、一年、この間で一件当たりのレンタル費用というのは、高くなるような事業体というのはやはり採算を取るためには出てくる可能性もあるわけです。

 ですから、やはりレンタルということももちろんこれから考えなきゃいけませんけれども、多機能で高額なスマート農機の需要もあれば、やはり、あくまでも必要最低限の機能が備わっているような、量産化によって低コスト化を図れるようなモデルであったり、幅広い価格帯というものが生まれるように、是非、今、開発段階からしっかり工夫を凝らしていただいて、まず多様な経営体でそれぞれ活用していただけるように取り計らいをお願いしたいなというふうに思っています。

 施設園芸についてなんですけれども、やはり優先して開発に取り組むべき技術というものがありますので、それについてお尋ねをしたいと思います。

 秋田県では、農地の集積と圃場整備等を一体的に進めて、大規模な施設園芸の拠点づくりが今行われています。このうち、能代市では世界遺産の白神山地の名前を取った白神ネギ、そして鹿角市では末広ネギとしてブランド化を進めています。その認知度、販売額も年々伸ばしながら、新規就農や、あるいは女性、高齢者の方々の雇用の受皿にもなっています。こういう大きな団地で作業効率を高める上で、そして、輸入依存度の高い加工・業務用野菜の国産化への切替えをやはり進めていく上でも、施設野菜の生産はスマート農業技術の活用が非常に重要だというふうに思います。

 ただ、水田作以上に、やはりこの施設野菜、野菜作り全般、これは労務コストがかかります。収穫作業がやはり最も時間がかかるわけですし、不要な葉っぱであったりとかあるいは茎を取り除くという調製の作業、非常に時間がかかるわけです。そのために必要なのが自動収穫ロボットや収穫機ですけれども、これは、ちょっと調べると、実証の件数がやはり多くないです。農研機構のスマ農成果ポータルというサイトがありますけれども、施設園芸のうち、収穫に関わる技術の実証件数は二十八件中七件、四分の一しかまだ実証がありません。

 スマート農業技術の中でも、施設園芸の省力化に特にこういう効果を発揮するような、収穫に関わる重要な技術の実証を優先的に進めて、可能な限り早期に導入を図っていただくことが必要ですけれども、大臣、お考えを伺いたいと思います。

江藤国務大臣 収穫はとても大事なことであります。収穫しなければ出荷できないわけでありますから。

 例えば、今年は寒暖の差が激しかったです。私の地元のイチゴ農家なんかも、急に暖かくなって、急に色づいて、本当に夜を徹して働いても収穫が間に合わなかったというような声も聞きました。しかし、そういうときに収穫のロボットが夜の時間に働いてくれれば、これは労力的にも随分楽になりますし、農家の収入アップにもつながりますので、大変有益なものだと私も思います。

 私のところでは、ピーマンなんかもそういう収穫ロボットがあるんですよ。この間の宮崎で行われた農業大臣サミットでもお披露目はしたんですが、かなり精度は上がってきましたけれども、ただ、高いんですよ。高いんです、かなり。導入したいけれども、導入するのはやはり合わないということでまだ二の足を踏んでいる。宮崎県も補助を出して導入について応援をしておりますが、なかなかそれが進んでいかない。

 それはやはり、委員がおっしゃるように、実証している件数が少な過ぎるということだろうと思います。私もオランダやいろいろな国の農業施設は視察をさせてもらいましたが、日本の技術が劣っているとは言いませんけれども、ダンチですよね。まさに、どれだけ熟れているかとか、色とか、そういうものまで全部、AIとロボティクスが完全に融合して、完全に自動でやるというところまで進んでいるところを見ると、やはり日本は実証も足りないし、少ないなと思います。

 委員がおっしゃった、特に日本の農業の中で頑張らなきゃいけないのは業務用の野菜、まさにそのとおりですよ。これを非常に外国のシェアに取られてしまっている。ここは我々は取れるはずです。大きい白菜を作る、大きいキャベツを作る、そして業務用に、加工用に出すというところについては、日本は生鮮では出していますけれども、その部分では非常に海外の輸入に押されています。そういう部分は、やはり輸入からシェアを奪還するという意味でも非常に有効だと思いますので。

 やはりこういったものについては、これからの基本計画を作る中で、実証の件数を増やして、実証が増えることによってやはり精度も上がり、コストも下がり、導入件数も上がっていくと思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。

緑川委員 喉の調子がよろしくない中、本当に丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 農水省のアンケート調査でも、やはり大臣のおっしゃったように、野菜であるピーマンであるとかイチゴであるとか、こういう施設園芸、果樹、また茶の分野で、いずれも収穫ロボットのニーズは、導入コストはかかるにしても、それでもやはり導入をしたいというニーズが高いということです。こういうコストの低減も含めて、早期の開発供給をお願いしたいなと思います。

 最後にお伺いをしますが、農地バンクに係る一連の法改正がこの間もありました。先週衆議院で可決した改正土地改良法では、農地バンク関連事業が拡充して、農地バンクが賃借権を持っていたり所有している農地の基盤整備を都道府県だけでなく市町村も行えるようになりました。そして、農業経営基盤法のこのほどの改正によっても、農地の貸し手と借り手の直接の貸し借りができなくなって、来月からは、市町村が策定した地域計画に基づいて、農地バンクを介した貸し借りにこれから一本化されていきます。つまり、市町村の役割、農地バンク関連事業の取組というものがより重要になっていくことになります。

 地域内のまとまった農地をこれまでも農地バンクに貸し付けた場合に交付される地域集積協力金も、要件も緩和して、五年前の農地バンク法の改正で、交付単価が引き上がったり、あるいは、農地バンクに貸し付ける中山間農地の最低面積割合も引き下げるということで、交付対象が広がりました。

 それによって担い手への中山間農地の集積の実績も、確かにこれはつくられているんですけれども、資料をちょっと御覧をいただきたいんですけれども、昨年度末までに担い手への集積率八割を達成するというのが政策目標ですが、現状では六〇・四%。中段にある都道府県の集積率も四九%で、中間地では四八%、山間地では四〇%。中山間地の数字の低さが全体の集積率に影響しています。中山間での集積を更に進めていく必要があると思いますし、左のブロック別では、集積率の比較的高い佐賀県や、秋田県など東北、そして北陸の各県では担い手への集積がある程度進んでいても、必ずしもまとまった農地にはできない、こういう集約化が課題になっている県もあります。

 秋田のように、中山間農地の集約化、それによる団地化を進めようという県もあるんですけれども、農地バンク関連事業でその基盤整備を進めるために、市町村の地域計画に基づいて、更なる農地の集積、集約化に向けた話合いを続けていかなければなりませんけれども、今現状では、市町村の職員も人手がなかなか足りていません。そして、農政担当の経験もやはり浅かったりということで、地域の話合いにも十分に対応し切れていないという声をいただいています。農地バンクが現地コーディネーターを派遣したりとか、農業委員も協力するけれども、市町村に求められる業務をやはりそれでもカバーし切れないんだ、こういう声があります。

 職員をフォローしながら地域の効率的な話合いをサポートできるような、改めて人材の確保が必要でありますし、地域集積協力金の交付要件は、拡充は五年前にしましたけれども、更なる緩和、交付単価の引上げを図っていくことも検討する必要がある、そんな時期に来ていると思いますが、最後にお伺いをしたいと思います。

江藤国務大臣 まさに三月三十一日を一応の期限として地域計画を今作っていただいて、これがまさに地域の未来予想図ということになるわけでありまして、これが有効に効果を発揮しなければこれからのいわゆる構造改革もできないという、まさに設計図そのものでありますから、これについての話合いが十分に進んでいないということはやはり大変問題だと思います。

 市町村合併等も進んで、なかなか、市町村に農政課というものがなくなってしまったり、担当者の数が減ってしまったり、農業委員の方々も様々な組織改編があって御苦労が多いということは重々承知しておりますので、我々本省も、それから農政局も、サポートできるところはしっかりしなきゃいけないと思っています。

 令和元年だったと思いますけれども、要件の緩和をいたしました。そのとき私は総理補佐官で、安倍総理に相談したことをよく覚えています。総理が、なるほど、そういうことかといって農水大臣に指示を出していただいて、要件の緩和をしていただいた、私にとっては非常に思い出深い要件なんですが、これについても、御存じのことでありますが、あえて申し上げますけれども、面積については、平場は下限面積四〇%、中山間地域では一五%ということに要件を下げてありますけれども、しかし、昨今の中山間地域の人口の減少の率とかそういうものを考えると、交付の単価であったり要件の見直しであったり、そういったものはこれから不断に行っていく必要があるんだろうというふうに思っております。

緑川委員 ありがとうございます。

 今後、目標地図のブラッシュアップ、修正もやはり求められる中でも市町村の負担はありますので、どうか国としてきめ細かく目配り、御対応をお願いしたいというふうに思います。

 ありがとうございます。

御法川委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 まずは、またこの質問の場に立たせていただいたこと、心から感謝と御礼を申し上げたいと思います。

 熟議の国会と言われる中において、昨年の基本法の改正を受けた基本計画の閣議決定の前に、二度にわたり、こうやって委員会での審議が実現したことに、委員長を始め委員会各位の御努力にまずは敬意を表したい、このように思います。

 先般は、我が党の野田代表も本席に立たせていただいて、江藤大臣と議論が展開をされたところでございます。その際にも御確認いただきましたけれども、今後、様々な制度の設計に当たって、与野党向き合って、しっかりと農業者のための真摯な議論をしていく、そういうことが実際に、これからやっていかなきゃいけないなと思いますし、しっかりとできたらいいなというふうに思っているわけでございます。

 まずはそのことを申し上げさせていただいて、以下、質問に入らせていただきたいと思います。

 これまでも江藤大臣から御発言ございましたけれども、今回の基本計画はこれからの農政にとって大変大きな大転換になるということ、私もそういうふうに考えているところでございます。この間、農政の重要政策であった米政策や水田活用直接支払交付金、直接支払いについての方向性を示す、これは本当に大事なことだと思います。

 一月三十一日ですが、大臣は、「水田政策の見直しの方向性について」を発表され、水田政策を令和九年度から根本的に見直す方向を示されております。今後議論をしていただくことだということは承知をしておりますけれども、これから先どうなるかと不安に思っている農業者の方も大勢いらっしゃるんじゃないか、このように思います。

 そこで、幾つか伺いたいと思います。

 まず、水田活用直接支払交付金、いわゆる水活について伺いたいと思いますが、既に、五年水張りの要件は求めないと表明されましたし、作物ごとの生産性向上等への支援と打ち出されているところでございます。

 そこでまず課題となるのは、作物ごとの単価についてはどうなるかという点であるというふうに私は思います。

 先般、簗委員も質問され、先ほど宮下委員も同様の質問をされていたかなというふうに思うんですけれども、予算は現行の水活予算の見直しや既存政策の見直しに伴う財源を活用というふうに言っておられまして、実際には、今回、いわゆる田だけではなくて、畑も含めて対象となるということであれば、当然ながら対象面積は大変に広がってまいります。一方で、水活予算の枠の中でとなれば、単価の引下げは避けて通れないんじゃないかなというふうに誰もが思うわけでございます。

 単価の水準によっては、これまで水田を使って、しっかり麦や大豆など生産を増やしてやっていこうという方々も、ひょっとすると、もうこれでは合わなくなってしまうということで、主食用米への再転換や、そもそも生産を諦める農業者の方も出ないとは言えないのではないかと思います。

 もちろん新たな財源獲得は簡単ではないということは、この間、大臣も御努力をいただいていますので、簡単ではないということは十分に承知をしておりますけれども、先般、我が党の野田代表も指摘をさせていただいたとおり、食料安全保障をしっかりと実行するための予算というのは、農水省の責任を超えて政府全体で確保すべき予算であるということを私たちも承知をしているところでございます。

 大臣から改めて、予算獲得への決意、並びに、単価の水準について、なるべく現行の水準、これをしっかり頑張っていくんだということの思いというか決意というか、これをお聞かせいただきたい、このように思います。いかがでしょう。

江藤国務大臣 言いぶりについては、物すごく推敲を重ねた言い方なんですよ。現行の制度の見直しをして、それからできたお金を使いますという言い方をすれば、委員がおっしゃるような御心配の声は当然出るだろうということはもう容易に想像できました。

 しかし、もうストレートに言うと、今の制度を全く触らずにそのまま次の制度に移行すると言うと、なかなか御当局との話の仕方が難しくなりますので、やはり改革をするという姿勢も示しながら、しかし、その裏側には、委員がおっしゃったように、今度は、畑地で作っていたものも、水田から転作していただいたものについても同等に扱うということであれば、対象面積は莫大に増えるわけでありますから、それは当然、予算の総額は増えるだろうことは容易に想像できるところであります。

 そして、新しい制度に移行したその暁に、支援の内容が薄くなって、営農の意欲を失ってしまった、今委員がおっしゃったように、もうやめてしまおうとか、そういうことになってしまったら、何のためにやったんだと。食料自給率を上げるためにやったんじゃないのか、安全保障の確立のためにやったんじゃないのかというところが全く本旨から外れてしまいますから。

 今、これだけの予算をしっかり、幾ら幾ら確保しますということはなかなか明示的には申し上げられませんが、しかし、政策をしっかり立てれば、私は論理的に十分に戦えると思っております。

 ですから、宮下委員がおっしゃっていただいたように、五か年計画を立てるようなことがもし可能であれば、これは中期計画、そして、農政は中期じゃなくてもっと長いスパンのものもありますから、五年計画、十年計画というものが立てられれば、しっかりと予算の要求もできますし、今、現行で農業を一生懸命頑張っていただいている方々が不安にならないような予算の要求を、令和八年のときに私が閣僚かどうかは全く分かりません、多分違うと思いますけれども、しっかり、私も政治家の一員として、内閣を督励して、応援していきたいと思っております。

神谷委員 ありがとうございます。

 具体的な懸念はもう大臣十分お分かりだと思いますし、農業者の皆さん方がどう考えておられるか、何を懸念されているか、十分御承知だと思いますので、改めて言うことではありませんが、やはりどうしても先々を考えながら当然農業者は考えていきますから、早めにメッセージを出していただきたいと思いますし、それに当たって、経営、大丈夫なんだ、今回の改革を経てもしっかり経営できるんだというメッセージ、そのためのメッセージの一つが予算の確保であり、あるいは先ほどあった五年の集中改革期間ということなんだろうと思います。

 もちろん、五年の集中改革期間を経た後、当然その後もずっと農業は続いていくわけですから、この五年を経過した後も含めてしっかりと支えていただけるものをこの五年間でつくるんだというメッセージだと受け止めました。うなずいていただいていますので、私もその方向性は了とさせていただきたいと思います。

 その上で、素直に文章を読みますと、作物ごとの生産性向上に対する支援とあるものですから、だとすると、現行制度の趣旨、方法とはちょっと違ってくるのかなと思いますし、もちろん、改革するわけですから、同じということにはなりませんが、一方でいうと、生産性向上に対する取組に対する支援とも読めなくはないかなということになってしまうのですけれども、率直に、こういうふうな形での改変を考えているのか。具体的な制度というのはこれからなんだと思うんですけれども、単価、いわゆる作物ごとにつけているものなのか、あるいは取組に対する支援なのか、それによっても大分、在り方そのものが変わってくるなと思います。

 この辺については、この表現ぶりだとどうなのか、教えてください。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 水田活用の直接支払交付金につきましては、水稲の作付が可能な水田において、これまで外国に依存してきた麦、大豆、飼料作物などの作物の生産を振興し、水田をフルに活用しようとするものであります。

 他方、担い手の急激な減少などの構造変化が見られる中で、少ない人数でもこれらの作物の生産を確保するためには、水田、畑にかかわらず、品目ごとの生産性向上に着目した支援に転換する必要がある、これを水田政策の見直しに当たって検討の大きな方向性として示させていただいております。趣旨としては、水田を対象として支援する現行の水活とは異なるという形の趣旨になろうかと思います。

 他方で、令和九年度以降の水田政策の見直しの内容につきましては、現時点で決まったものではなく、委員御指摘の方法につきましても、内容はまだ固まっていないという状況でございます。検討の方向性を基本計画に盛り込んだ後に、来年実施する各種の実態調査の結果をよく分析し、大臣の御指示の下、与野党の先生はもちろん、現場の方々、関係団体を含めた幅広い方々の御意見を丁寧に伺った上で、令和七年度中に制度設計の方針を策定してまいりたいと考えております。

神谷委員 まだ制度設計はこれからかなというふうなところで今承ったわけでございますが、最終的には農業者の方々に納得してもらわなきゃいけない、あるいは農業者の方々が将来見通しが立つようにしなければいけない、そのことも念頭に、今後、議論を一緒にさせていただけたらと思います。

 次の質問でございますが、産地交付金について伺いたいと思います。

 産地交付金についても見直すという文脈の中で、既存の産地交付金の配分が大きく変わるのではないか、あるいは、地域で支えていこう、伸ばしていこうという産地形成の努力や、地域での主食用米の生産の目安の配分に影響が出るような形に変わるのではないかということが懸念されるというか、農業者の間では不安に思われているところだろうと私は思います。

 産地交付金は、御案内のとおり、産地や農業者の産地形成や戦略作物などの積極的な取組を支援する、時には農業者間の円滑な生産の目安の配分にも活用されている面は否めないと思います。

 もちろん、中山間地など条件不利地域に対する支援を厚くしていくことについては喫緊の課題であるということも理解しているところでございますが、農村に、この産地交付金というのは当然、交付金でございますから、その後、配分等、様々決めていかなければならないわけでございますけれども、そういったところで、どっちが高くどっちが低くなんというところで自分たちで決めていく際に新たな火種とならないようにしたいなとも思いますし、既存のものがそのまま既得権化してはいけないのかもしれませんが、一方で、それを計算に入れながら経営をされている皆さん方も多くいらっしゃるということもあるので、この産地交付金についてもやはり十分な予算を確保していただくこと、これが非常に重要なんじゃないか。

 今のままでは薄まってしまうんじゃないか、そんなことも考えていらっしゃる方は大勢いらっしゃると思います。この辺について、改めて、これも大臣の決意というのでしょうか、方向性というか、お示しをいただきたいと思いますが、ごめんなさい、副大臣、お願いします。

笹川副大臣 先ほど来、委員からの御指摘もあり、農家の懸念それから予算への思いは大臣からも全般的に御答弁をさせていただきました。また、産地交付金についても、システム的なことも委員からの御説明がございました。

 今回基本計画で設定するKPIの達成に資するもの、これも大切な観点でございますので、このため、地域の農業振興にどれだけ政策効果を生んだかの現場の実態の調査と分析を検証した上で、意欲を持って取り組んでいる農業者の皆さんの営農に支障の生じない支援の在り方について、令和七年度中に方針を策定し、令和九年度からの新しい水田政策に向けた令和八年夏の概算要求につなげていきたいというふうに考えておりますので、委員の御指摘、懸念についてもしっかりと受け止めていきたいというふうに思っております。

神谷委員 是非、副大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問なんですが、米の輸出について伺いたいと思います。

 政府は三十五万トンという非常に野心的な目標を掲げられているところでございます。これについてはあえて反対とは申しませんけれども、現在の国内向け主食用米のコストといわば輸出用のために作られる米のコストは大きく違っているところでございます。

 これが幾つかの懸念になるんじゃないかな、こういうことで、ちょっと頭の体操をしてみたいと思うんですけれども、国内で米があふれた場合に、多少逆ざやであっても輸出用に仕向けていくということはあるのかなというふうにも思います。また、その逆もあるのかなというふうに思うんですけれども、実際に、例えば、国内向けに作っていたものを輸出用に向けたとすると、当然逆ざやが生まれます。逆ざやというのか、損が出てくるんじゃないか。この損の部分は、もうそのまま農業者がかぶることになるのか。

 あるいは、今後、それがだんだんだんだん多く行われてくると、当然ながら、国内の価格と海外の輸出用の価格が近づいてくるんじゃないか、だんだん平準化してくるんじゃないか、そんなことが起こり得るんじゃないかなとも思ったりするわけでございますが、政府においても、輸出を進めていくに当たって、国内の市場あるいは海外の市場がリンクしていくなんということが、ないとは思うんですけれども、そういったことがやがて起こり得る可能性もあるんじゃないか。

 そんな様々な懸念、具体的に何か検討されたことがあるのか、このことについて参考人から伺いたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 まず、輸出の拡大に当たっては、安定的に拡大していくということが必要でございます。そのためには米の生産コストの低減が最も大きな課題でございまして、低コストで生産できる大規模輸出産地の形成ということを行っていきたい。

 それで、輸出用米、輸出用に向けられる米は、今でも、何かあふれたから出ていくということではなくて、やはり作付の段階から、輸出先の需要を見ながら作付されているわけでございます。そういう意味では、今後も、そういった輸出産地を中心に、基本的には、安定して輸出用にこういったものを作っていこうということでやっていくんだと思っております。

 他方で、国内で一時的に米の需給が相当程度タイトになった場合、輸出用として田植をして作付けられていたものが、やはり国内が相当タイトなので一部国内に回そうかということは、それはあるんだと思っております。我々、そういったバッファーもこれからきちんとやっていかなきゃいけないと思っておりますけれども、ただ、その際、輸出用に作付けられたお米の一部が結果的に国内に振り替えられるというんですかね、そういった場合でも、それによって国内の米の需給が大きく緩和するとか変動するとかそういったことがなければ、農業経営に大きな影響というものはないんじゃないかというふうに考えております。

神谷委員 今そういうふうにおっしゃいましたけれども、ある意味、補完市場をつくるということも大事なんじゃないかなと思っていまして、この国であふれたもの、かつて、米価が下がることを懸念して大量に、いわば対策を打った、そんなこともありましたし、調整保管事業とか様々、米ではないですけれども、あったというようなこともあります。

 そういった意味においては、海外の市場というのはいわば補完市場としても使えるわけでございますし、今、米価はこういうような状況でございますから、そういったことも含めていろいろな使い方ができるんじゃないか。その際に、今ほどおっしゃっていただいたように、作ったときのコスト、この問題はあるのかもしれませんけれども、やがてそういうことが克服できるとすれば、また違う世界も見えてくると思いますので、その辺も含めて頭の体操は是非やっていただきたいと思います。

 時間も参りましたので、これで終了させていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。兵庫の西播磨、中播磨から参りました。

 今回も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、農林水産関係基本施策に関する件について質問させていただきたいと思います。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回、食料・農業・農村基本計画について、食料の自給率の向上とあります。何度か私も自給率の向上については質問をさせていただきました。予算委員会では、普通に自給率の向上の話をしてもというふうに思いまして、当時の消費者担当大臣とか国土交通大臣にも、少し工夫を凝らして、自給率を上げるべきじゃないかという質問をさせていただいたことを思い出しますが、なかなか思ったような返答はありませんでした。

 というのも、一〇〇%を目指すといったって、国土の問題もありますし、具体的な問題もあるということで、私自身もいろいろ考えた結果、食料の自給率を向上させようというふうに思ったときには、何が実現可能で効果的かというふうに改めて考えをさせていただきました。

 私は、前の委員会でも質問させていただきましたが、やはり、とどのつまり、多収化にちょっとこだわって今回は質問させていただきたいと思います。

 自給率の問題は、分子が国内生産、分母が消費でありますから、食料自給率を上げるには、基本的には国内生産を増大させる必要があるというふうに私は考えております。国内生産を増大させることで自給率をどう上げるかが基本だというふうに思っておりますので、では、国内生産をどう増大させるかということの考えがあります。

 国内生産は、基本的には農地面積掛ける単収、こちらを品目ごとに足し上げたものになります。この中で農地面積を上げるかというと、趨勢的にも減少し続けている中で、今回の基本計画でも、四百二十七万ヘクタールから四百十二万ヘクタールの下げ止まり目標であります。農地面積が増えるわけではありません。となると、先ほどから申し上げております、単収を上げるしかないというふうに思っております。

 ちなみに、これは計画的ではないんですが、自然減というふうになっておりますが、野菜なんかの面積も五千ヘクタールほど減っていますし、果物も三千ヘクタールほど減っております。これは別の問題でありますが、問題であるというふうに指摘をさせていただきたいと思います。

 多収化を目指すことが、恐らく、恐らくですよ、唯一の現実的な自給率向上の方策であるというふうに考えております。

 多収化の効果は何かといいますと、単に生産量が増加する、それだけではないと思っております。最も重要な効果は、単位当たりのコストが下がって所得が増えるという点にあります。だからこそ、今回、食料・農業・農村基本法の改正のときにも、我が党は多収化を修正案として提案をさせていただきまして、与党の賛成も得られて成立をさせていただきました。

 まず、そこで質問に移らせていただきます。

 基本法の制定時から比較して、これはバランスのよい年次で構いませんので、米、小麦、大豆について、生産コスト、単収はどれだけ改善してきたのか、お聞かせいただきたいと思います。

深水政府参考人 お答えいたします。

 生産コストにつきましては、平成十一年と、データがそろっております令和五年との農産物生産費統計のデータで比較いたします。

 米については、十アール当たりの生産費では、十六万五千五百二十二円から十三万二千八百六十三円と一九・七%低下、六十キロ当たりで見ますと、一万八千九百三十二円から一万五千九百四十八円と一五・八%低下しております。

 一方、小麦、大豆につきましては、近年の資材費の高騰等の影響もございまして、小麦は、十アール当たりでは、六万三千三百六十円から七万四千二百四十三円と一七・二%上昇しておりますけれども、六十キロ当たりで見ますと、単収が大きく増加しておりますので、九千八百四十二円から八千六百三十四円と一二・三%の低下になっております。大豆につきましては、十アール当たりでは、七万六百七十五円から七万一千七十三円と〇・六%上昇、六十キロ当たりでは、二万二百四十七円から二万八十七円と〇・八%低下しております。

 単収につきましては、それぞれの年における天候等による作柄の変動がございますけれども、平成十一年と令和五年、同じく十アール当たりの単収を作物統計で比較いたしますと、主食用の米は五百十五キロから五百三十三キロと三・五%上昇、小麦は三百四十五キロから四百七十二キロとなっており三六・八%上昇、大豆は百七十三キロから百六十九キロとなりまして二・三%低下となっているところでございます。

池畑委員 今、答弁いただきましたのは、まず質問のうったてとしてお聞かせいただきました。

 今回、珍しく資料を添付しておりますが、これは参考までに見ていただきまして、是非今の答弁を加味しながら見ていただきたいなというふうに思いますが、まず、単収を上げるには、新品種の開発、多収品種の普及、適切な栽培方法など、幾つかのステージがあるというふうに思います。

 我が国の状況として、これの課題、そしてボトルネックがどの辺りにあるのかというのを農林水産省にお聞きをさせていただきたいと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 単収の向上を図るには、委員お話がありましたように、多収性に優れた新品種の開発導入が極めて重要だというふうに考えております。

 一方、現状におきましては、品種開発には長期間を要していること、それから、開発後の迅速な普及に向けましても、例えば地域の気象条件等に即した栽培方法の検討であるとか、あるいはユーザーである実需者との連携強化が課題であるというふうに考えているところでございます。

 こういったことから、より速く、低コストで品種を開発できるように、AIやゲノム情報を活用した新たな育種技術の開発を進める、あるいは、開発の段階から普及を担う自治体や実需者を巻き込んで、生産現場での栽培適性あるいは実需者の評価を踏まえた品種開発を推進していく、こういうことが重要であるというふうに考えているところでございます。

池畑委員 今、ゲノム開発の話もありましたし、AIの話もありました。昔は私の祖父も改良センターの所長をやっていたという話を前回させていただきましたけれども、何十年もかけて新しい品種を作って、その頃には大体気象も変わってしまったり消費者の嗜好も変わってしまったりということがあったんですが、やはり今の人工知能とゲノム解析で分析しますと、かなり早い時間で品種改良ができるということでありますので、どんどん普及をさせていただきたいですし、政務の方にもお願いをしておりますが、後ほど答弁をいただきたいというふうに思います。

 次に、米の多収品種について、前回の委員会でも先ほどのようにお聞かせをいただきましたが、紹介したのはにじのきらめきですね、にじきら、これはかなり私たちもいい品種だというふうに思っておりますし、従来の品種に比べても二、三俵、かなり多く取れるということになっておりますが、一方、一番最初の方の質問にありましたが、小麦とか大豆について、改めて、どんな品種があって、どのような品種であるということをアピールしたいのかというふうに思いますので、是非、農林水産省の方からの見解をお聞かせいただきたいと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 麦あるいは大豆について、近年の品種開発の状況でございますが、例えば、小麦であれば、みのりのちから、これは北海道向けの品種でございます。また、西日本向けのびわほなみという品種がございますけれども、いずれも従来品種より一割ほど多収な品種として、これはいずれも農研機構で開発したところでございます。

 それから、大豆では四つの品種がございますが、そらみずき、そらみのり、そらひびき、そらたかくということで、通称そらシリーズと言っていますけれども、これは従来品種よりそれぞれ二割から五割多収な品種として、これも農研機構で開発をしたところでございます。

 今後も、こういった開発を積み重ねることで、更なる多収性品種の開発に取り組んでいく考えでございます。

池畑委員 ありがとうございました。品種の説明もいただきました。

 委員の皆様の御地元で今の名前をお聞きになられた方、おられますでしょうか。北海道ですから、みのりのちからなど随分知っておられる方もおられると思いますが、今のそらシリーズ、知っておられる委員の先生方、おられますでしょうか。

 是非、やはり、農研機構でいい品種ができましたら、それをまたどういうふうに普及していくかというのはかなり大事なことだというふうに思いますので、知っていただきたい一つの内容だというふうに思います。

 これまで、米、小麦、大豆の品種を多く担って、また作ってきていただいたと思いますが、民間がなかなか参入できない理由というのがあるというふうに思います。これは併せて質問させていただきたいと思いますが、三十五品種の純増の見込みを、官と民との割合で、これから単収向上の見込みをしていこうというふうに思われているというふうに思いますけれども、これは併せてお聞かせいただきたいんですけれども、民間が参入していない理由をどういうふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 まず、米、麦、大豆の品種開発につきまして、民間の参入が少ない理由でございますけれども、これは、研究者や研究施設に加えまして、やはり研究資金面でも長期間にわたって必要とされることがその一因だというふうに考えているところでございます。

 これにつきましては、今後、農研機構、それから民間との共同研究を通じまして、例えば農研機構が有する品種の特性情報、あるいは、先ほどのAIやゲノム解析などの先端技術を活用した新しい育種技術の利用を進めることで活性化を図っていくことが可能ではないかというふうに考えておりまして、是非そういう方向で進めていきたいというふうに考えております。

 それから、もう一つ御質問がありました、基本計画のKPIとして三十五品種の開発を進めるという点についてでございます。これは官と民でどういう分担なのかという御趣旨の質問であったかというふうに思いますけれども、農水省事業により開発を進めることとしておりますけれども、官と民がそれぞれ別々で取り組むということではなく、先ほど言いましたように、農研機構を始め産官学が連携して、しかも、対象としては広域のブロック単位ぐらいのエリアでの普及を念頭に置いて開発することを考えているところでございます。

 それから、開発する品種の単収向上が、それぞれしっかり図られるような形で開発を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

池畑委員 今までの農林水産省の方々の答弁を踏まえた上で、農研機構や県の試験場、公の機関によって優良な品種が開発をされていくというふうに思いますけれども、なかなか普及に至らない、そして、なかなか知っていただく機会が少ないということであるというふうに思っております。

 前回の委員会でも指摘をさせていただきました。今答弁もいただきましたけれども、九州農政局や近畿の農政局など、その地域に合った改良の普及の仕方というのは結構具体的にもっと進めていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、イノベーティブな品種改良をどのように進めていくべきか、副大臣の方からお聞かせいただきたいというふうに思います。

笹川副大臣 御質問ありがとうございました。

 委員の御指摘、それぞれ本当に、私も表面からうなずいていますし、心からもうなずいていますし、いろいろと御指摘いただいて本当にありがとうございました。

 いずれにいたしましても、品種改良の大切さというのは、今後引き続いて、多収性の問題、これはもちろんそうでありますし、同時にまた、これからの気候変動にどう対応していくのか、これも大切な観点であります。もう一つは、やはり災害に強い観点も必要かというふうに思います。

 私が環境大臣政務官のとき、富山に行ったときに富富富という新しい品種を御紹介いただきました。あれは、高温耐性プラス風に強い、強風に強い、倒れない、倒れにくい、そういった観点の中での品種改良ということでありました。やはり、地域地域にとってそれぞれ開発をするということも大切であります。

 ただ、やはり今おっしゃったとおり、食料安保の観点からいっても、せっかく開発したものを広く知ってもらって普及することも大事であるし、また、スピードも大事だというふうに思いますので、AIを活用し、ゲノム解析等の先端技術の活用、これも本当に大切な観点だというふうに思っております。

 引き続き、農研機構、さらには都道府県、そして民間、それから大学、産官学、これの連携というのは本当にこれからもますます重要になってくると思いますので、そういったことを踏まえた上での新品種の開発普及に取り組んでまいりたいというふうに思います。

池畑委員 副大臣、ありがとうございました。

 やはりスピード感、せっかくゲノム解析とAIでスピード感が出て、あとは人的な行動、活動が大事だというふうに思いますし、心よりうなずいていただきましてありがとうございます。しっかり我々も取り組んでいかれることを応援したいというふうに思いますし、具体的に活動もしていきたいというふうに思っています。ありがとうございます。

 次の質問に移らせていただきます。

 基本計画の中に、輸入依存度の高い化学肥料を使用しない有機農業は、国際情勢にも左右されにくく、農業生産体制の確立に資するものでありますというふうにあります。有機農業を指導できる普及指導員の育成についてお聞かせいただきたいと思います。

 この件は参議院でも質問がありました。予算が二十七億円から三十八億円に上がっておりますという質問でありましたが、今まで、普及センターは農政の末端で国の政策を実行してこられました。有機農業を普及センターが指導するには、有機農業が指導できる普及員制度が必要であるということで、いろいろと取り組んでいただいております。

 国の支援が不可欠だというふうに思っております。地元の上郡町でも、オーガニックビレッジを宣言して、町長が鋭意取り組んでおられるところであります。公としてはそのように頑張っていただいている状況でありますが、今回の有機農業、みどりの有機農業推進総合対策事業なんですけれども、地元の方々から、これが新たな仕組みになって、なかなか使い勝手が悪いというふうな御指摘を受けております。地元なんですが、十五年以上取り組んでおられます兵庫農漁村社会研究所のグループからも、なかなか使い勝手が悪いじゃないかという御指摘がありました。

 柔軟な見直しも含めて、地域での有機事業が円滑にうまく進むように、農林水産省の見解をまずお伺いしたいと思います。

江藤国務大臣 まず、有機農業推進事業について、使い勝手が悪いというのは大変よくないと思いますので、是非、具体的に聞き取りをさせていただきたいと思います。よかれと思ってつくったものが現場では余り有効でないということは間々あることでありまして、それについては、聞き取りをした上で、直すべきところがあればしっかり対応したいと思っております。

 やはりこれから、環境負荷が少ない。そして、日本は、この間、ロシアの侵略が起こったときには、カリが全く入ってこなくなって、カリのほとんどの輸入をロシアに頼っておりましたから、それからカナダに輸入先を変えて、かなり高コストになりました。こういうことを考えると、やはり有機で農作物を作るということは、環境配慮の上でも有効ですし、いわゆるコストを下げるという意味でも有効ですし、それから商品の付加価値を上げるという意味でも有効でありますので、百万ヘクタールという大きな目標でありますが、何としてもみどり食料システム戦略の中でこれは実現したいと思っております。

 そして、先生も御指摘いただきましたオーガニックビレッジも、各地、大変よくやっていただけていると思います。ただ、これも、二年目までしかないということについていろいろ御意見があります。三年目以降はどうしてくれるんだという話もありますので、これはまた検討課題の一つだろうというふうに思っております。

 そして、今後は、九年度に向けて、また水田政策を見直すということに併せて、新たな環境直接支払いの交付金、これを創設をしまして、非常に手間もかかる、それから収量も事によっては落ちてしまう、そしてなかなか売り先も見つからないということに対して、やはり交付金で応援するということが大事だと思っています。

 私の地元でも、一生懸命やっている青年はいるんですけれども、一生懸命ネットで調べたり、事によっては遠いところまで、旅費を使って指導を仰ぎに行ったり、いろいろ苦労しています。ですから、特にJAなんかには、有機をまだ経験していない、営農指導員がいないというのが現実でありますので、こういった相談先、それから、先進的な有機に対する指導ができるような知見を持った人間の育成、こういったものに農林水産省としていかに取り組んでいけるのか、これもしっかり検討してまいりたいと思っております。

池畑委員 大臣、ありがとうございました。

 有機農業の人的な資源の発掘が大事だというふうに参議院でも答弁をされておられました。今、二〇五〇年までに百万ヘクタールを目指すに当たって、やはり人材の発掘というのは大事なことだというふうに思いますし、これからどんどん予算をかければいいというわけじゃなくて、横のつながりで、どんな方が優秀かということも含めて、やはり技術的なものは残していかないといけないというふうに思います。

 データとしても、今有機に取り組んでいただいている七十代、八十代の方もたくさんおられます。誰かに何か教えてもらってやったわけじゃなくて、やはりこれがベストだということをやられていましたので、それもデータ化して、地域の方に残していくということも大事だというふうに思いますので、その辺も含めて活動を進めていただきたいというふうに思います。

 それでは、最後の質問に移らせていただきたいと思います。

 鳥獣被害の対策について質問させていただきたいと思います。

 鳥獣害対策として、先導的なスマート鳥獣害対策の普及の推進や、個体群管理、侵入防止対策、生息環境管理の三本柱に係る各施策を推進するというふうにされております。

 私も、何度も、この鳥獣害についての質問は、地元の皆さんと相談した上で質問させていただいてきました。神河町や佐用町では、猿害、猿の害が多くて、なかなか兵庫県でも、どういうふうに取り組んでいくかということを含めて、環境省の皆さんとも連帯をしながら活動してまいりましたが、いずれも現行で取り組まれている施策との印象も受けます。

 現行、施策を進めてきたにもかかわらずこのような課題が生じている要因について、政府はどのように考えておられるか、まず質問させていただきたいと思います。

前島政府参考人 お答えいたします。

 鳥獣害につきましては、やはり鳥獣の数が非常に増えているというところがまず一点ございます。また、それに対して捕獲が、必ずしも十分な数、追いついていないという部分もあろうかと考えております。また、鳥獣害に対して、捕獲だけでなく、例えば、柵で囲いますとか生息環境を整備する、そういうような総合的な対策を講じていく必要がある。こういったものを指令をしていく、コントロールしていく、コントロールタワーに当たるような方々が不足しているというようなこともございます。

 様々な要因があろうかと考えておりますので、こういったことについて総合的に対策を講じていく必要があるというふうに考えております。

池畑委員 ありがとうございました。

 鳥獣害対策の三本柱の一つであります侵入防止対策でありますが、集落の柵を設置する場合、皆様の御地元でもよく相談をされるというふうに思いますけれども、直接施工の場合は定額で、請負の施工の場合は二分の一となっておりますが、実態は直接施工がほとんどなんですが、高齢化が進んでおりまして、なかなか設置をする人もいないということが地元でも多く発生しております。

 適切な設置ができない場合も、請負の業者がやってくれるんじゃないかということもあるんですが、そこは自分たちで頑張ろうということでやるんですけれども、なかなか上手にできないという現状もあります。質問をさせていただく中で、やはり何千億という損害がある、そして、よく大臣もお話しでありますが、これから収穫をしようとしたときに、やはり一番精神的なダメージが大きいということもあります。是非、請負の施工の場面での補助率を上げることはできないかという地元の声がよくありますが、それも含めて、少し答弁をいただきたいと思います。

笹川副大臣 御指摘、私の群馬県でも、鳥獣害というのは非常に悩ましい課題であります。

 私の方は、平地の方であっても、今、鳥獣害というものは物すごく身近になってまいりましたので。特に問題とするならば、イノシシ、猿、鹿にとって、自治体の境界は全く関係ないんですよね。だから、群馬県でいうと、尾瀬というものをどう保全していくのかということになったときに、鹿の害は多いんです。ただ、鹿は、越冬地が、また違うところに行っているんですよね。暖かくなるとまた出てくるんですよ。だから、そういった中で、やはり複数自治体が連携をして対策を取っていくこと、これは大切なことだというふうに思います。

 今、集落の柵の施工については委員御指摘がございましたが、いずれにしても、直営、直接ということになりますと、どうやったらいいかやり方が分からないというのは、やはり農水省としてもホームページ等で、いろいろな形で発信はしておりますし、助言を行うことができる専門家を紹介する、農作物の野生鳥獣対策アドバイザー制度を設けて、その活用を推進するとか、るる制度はあります。

 ただ、問題点とするならば、やはり中山間地においては高齢化が進んできたということもありますし、同時にまた、請負業者についても、いわゆる建設業者も含めて、やはり人をどう確保していくかという課題もありますので、そういった進んできた課題についてどう対応していくのかということについては、我々自身も受け止めて、議論を深めていかなきゃいけないなというふうな認識でございます。

池畑委員 副大臣、ありがとうございました。

 我が党も、一緒になって、やはり農林水産業の発展に取り組んでまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 これで私の質問は終わります。

御法川委員長 次に、長友慎治君。

長友(慎)委員 国民民主党の長友慎治でございます。

 まずは、米の再生産可能な価格というものにつきまして、農水省にお尋ねをしていきたいと思います。

 政府が放出した備蓄米が早ければ今週末から店頭に並ぶということで、国民の皆さんは米の価格がどのくらいに落ち着くのかということに関心が高まっているところでございます。一方で、米農家さんとお話をすると、今の価格がやっと適正価格、生産者側からすると再生産可能な価格になってきた、これまでが安過ぎたんだ、なので、これまで赤字経営のところを兼業しながら続けてきたけれども、また米の価格が下がっていくということになると、米作りを続けていくことの意欲が湧くか分からない、そんな声を聞いているところでございます。

 そこで、農水省にお伺いしますが、米の適正価格は一体幾らだというふうに農水省としては考えているのか、見解を伺います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米の価格につきましては、民間の取引の中で決まってくるもので、国が一律に示すことは難しい問題ということで、適正価格を示すことは難しいというふうに考えておりますけれども、いずれにしても、生産者、消費者の方々、双方が納得がいくということが大事だと思っております。

 現在、生産から消費に至る食料システム全体で費用を考慮した価格形成を進めていく、こういった観点から、食料システム法案というものを提出させていただいております。法案を御審議いただき、成立した暁には、コスト指標、こういったものも作られるということになっております。

 そのうち、米につきましても、こういった適正な価格形成に関する協議会というものも既にございまして、その中で米のワーキンググループが設置されております。関係者の間で具体的な議論がなされているところであり、農林水産省としても後押しをしていきたいというふうに考えております。

長友(慎)委員 農水省としては、コストの指標はこれから出すことはできるけれども、いわゆる取引される価格、消費者価格等は生産者と消費者が納得いく形で決まっていくものだ、そういう見解だということは理解はしているんですが、実際、今、消費者価格という形で、大手のスーパー等、店頭で価格を見ていくと、精米した五キロの米が四千五百円とか五千円近くに上がっています。これがドラッグストア等になると、もう少し安い価格で売られているというものも見ました。

 今度は農家さんの方に聞いてみると、どのくらいが再生産可能な価格なんですかと教えていただくと、大体、玄米六十キロにおいてやはり二万五千円ぐらいは欲しいよねというふうにおっしゃいますし、これから農機具等を更新するようなタイミングの方は、六十キロ三万円ぐらいはないと厳しいかな、そういう声があるわけなんです。

 米の価格が安ければもちろん米農家は再生産ができず、高くなり過ぎれば消費者が米離れしてしまうということで、非常に難しい問題ではありますが、まさに消費者と生産者が納得して価格を決めていかなければなりません。

 そこで、一つ、また農水省に伺いますが、民主党政権時代に、主に主食用米に戸別所得補償制度を導入して、十アール当たり一万五千円を支払いました。その際、直接支払い分を見込んで米の価格が下がるのではないかと指摘があって、実際、米の価格も下がりましたけれども、そうであればなんですが、今、米の価格が上がっている現状におきまして、農家の所得も確保できて、そして消費者にとっては米の価格が下がって、両方にとってバランスが結果的に取れると考えられる戸別所得補償制度をまた米価が落ち着くまで導入する、そういう考え方があってもいいのではないかと思うのですが、農水省の見解を伺います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 旧戸別所得補償制度は、個々の販売農家の方々に主食用米の生産数量目標を割り当てて、それを守った生産者の方々に直接支払いをする、そういうものでございました。

 一方、現在は、行政による生産数量目標の配分は平成三十年以降廃止しておりまして、生産者の経営判断による米の作付ということになっておりまして、当時と状況は随分異なっている状況でございます。

 いずれにつきましても、水田政策という意味におきましては、現在、水田を対象として支援する水活の根本的見直しを含めた見直しということで検討を本格的に開始したところでございまして、今後、幅広い方々から御意見をいただくなどして、検討を深めていきたいというふうに考えています。

長友(慎)委員 米の生産者などと話をすると、今の価格なら営農意欲が湧くとおっしゃっているんですね、はっきり、明確に。しかし、またこれが下がっていくということになると離農するような可能性も出てくるという中で、逆に、今、意欲が湧いていらっしゃいますから、作付を増やそうという動きがあることは御承知のとおりだと思います。

 しかし、すぐに米の生産量を増やせるかというと、今、種もみが手に入りにくくなっております。すぐに増やしていこうと思っても、種もみが入らなければまた生産量は増やせないわけですよね。そこに対する対策というものが必要になってきて、農家さんに何人か話を聞いていくと、米の価格もすぐには収まらないんじゃないかという予測というか、考えを持っている方がいらっしゃいます。

 それで、もう一つ、更問いを農水省にさせていただきます。

 次期基本計画の案では、主食用や飼料米などを合計して米の生産量を二〇三〇年度に八百八十万トンにする、そういう目標を掲げていると承知をしています。ただし、何を栽培するかは農家の選択だとして、用途別の目標を示すのは困難だと昨日の参議院の予算委員会では大臣が答弁をされていらっしゃいました。現行計画では用途別の目標も示し、飼料用米は二〇三〇年度には七十万トンと示していましたけれども、現在、目標数を、生産数量の目標を示さない理由を教えていただけますか。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 現在、先ほど申しましたように、水田政策の見直しをやる中で、これからどうした内容にしていくかということでやっていく、検討していくということでございます。

 他方で、お米の、例えば主食用米、それから加工用米、輸出用、それから米粉用、飼料用、それぞれございますけれども、いろいろ需給状況によって、例えば、先ほどお話ございました、今年は主食用を増やしていこうとか、需給状況によっていろいろ変わるところがございまして、生産の中で代替的な関係にございますので、やはりお米全体として示すということが最適であるということで、今回、そういった示し方をさせていただいているところでございます。

長友(慎)委員 分かりました。

 いずれにしましても、米の適正な価格というものを国民全体で考えていく上では目標等がある方が議論もしやすいのかなと思いますので、またそこは引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 一つ、地元の生産者さん、米農家さんの話を聞いていると、今、農業機材、農機具の価格が非常に高いということで、不安を抱えていらっしゃいます。農家の経営を圧迫しているということでありますけれども、農水省が把握している現在の農業機材の物価上昇率についてお示しいただけますでしょうか。

深水政府参考人 お答えいたします。

 農産物と農業生産資材の物価動向を調査しております農業物価統計調査というのがございます。こちらで令和二年を一〇〇といたしました場合の農機具の物価指数につきましては、直近の令和七年一月では一一〇・九となっており、対前年同月比で三・八%の上昇、対前月比で一・一%の上昇となっております。

長友(慎)委員 対前年度で三・八%、四%近く上がっているということで、これは非常に経営に負担になっていると思います。昨日お話をした米農家さんは、農機具の更新のタイミングでは離農する人が出てくると思うということも実際におっしゃっていましたので、対策、支援が必要だと思います。

 当然、これは農機具だけじゃなくて、農業資材、肥料、またハウスの資材等も上がっている中で、米農家に限らず、畜産やハウス園芸など全ての生産者の皆さんが農業資材の高騰に苦しんでいらっしゃいます。

 日本の食料安全保障を考えると、再生産可能な所得、つまりは、農業で食べていける生活費、所得を補償する新たな直接支払い制度の導入を生産者は待ち望んでいらっしゃいます。農業を続けられる基礎的な所得を補償する仕組みが急務だと考えるわけなんですが、なぜなら、農業で生活費すら稼げていないという方がたくさんいらっしゃるわけです。若者の農業離れの原因にもなっています。

 ですので、米や麦、大豆であれば作付面積に応じて交付金を支払う、米であれば例えば十アール当たり二万円程度を払う、畜産の場合は畜種ごとに頭数に応じて交付金を支払う、このような農業全般が対象の包括的な直接支払い制度、これを我が党では食料安全保障基礎支払いという名前で検討を申入れをしているところでございます。

 農業を継続する人がこのままだと減り続ける、また、新規参入する人も増えないという状況の中で、食料安全保障基礎支払い、是非検討をいただきたいと思いますが、農水省の見解を伺います。

庄子大臣政務官 農家の所得をどう確保するかという観点は、委員御指摘のとおり、非常に重要だと思っております。

 そのためにも、いわゆる生産者の側の生産性をどう向上させるかということと、それから収益をどう徹底的に改善をしていくか、高収入の作物を作っていくかという側、そして、水活やゲタや、あるいはいろいろおっしゃっていただいている直接支払いといった、こちら側の支援をどう厚くするかというトータルで考えなければいけないというふうに思っております。

 所得補償につきまして、様々御意見がありますが、今日も議論になっておりましたとおり、我が国の直接支払いの農家の所得に占める割合は、EUやアメリカと比べても遜色のないレベルでもございますし、しかも、これは国民の皆様の税金が原資になっているという観点も踏まえて、慎重な検討が必要だというふうに認識をしております。

長友(慎)委員 分かりました。ありがとうございます。

 続きまして、食育、また農業体験の話に移りたいと思います。

 三月二十四日の農業新聞に、食育の目標の大半が未達だったという記事が一面に出ておりました。その中では、農林漁業体験を経験した割合というのが、二〇二五年度の達成目標が七〇%のところ、現状が五七%、また、産地や生産者を意識して農林水産物また食品を選ぶ割合が、八〇%目標のところ、現在では六七・五%ということで、来年度に目標達成するのが厳しい状況だというふうに私は認識したわけなんです。

 お手元の資料を御覧いただけますでしょうか。

 「大地の子」と書かれた、財光寺農業小学校、これは江藤大臣のまさにお膝元にある農業小学校になります。地域の子は地域で育てるというテーマの下、二〇〇九年から現在にわたって第十六期まで、農業小学校を大体毎年三十人から四十人の定員で募集して、ちょうど令和七年度は今まさに三月に募集をかけているところなんですけれども、十六年続けているものになります。

 財光寺農業小学校の兄弟校、姉妹校も、大王谷小学校というのが二〇一五年にできたりして、地元の子供たちにとっては、農業に親しむ環境がすぐ身近にあるんですね。

 どんな活動をしているのかというものを見ていただくと、四月の二十日に入学式、開校して十一月の秋まで毎月第一、第三土曜日を登校日という形にして、地元の農家の先輩方が指導をしていただくわけです。当然、登校日は必ず行かないといけないんですけれども、日頃の草取りだったり水まき、それは日常的に自分たちで責任を持ってやりましょうねということで、生徒一人当たりに九坪の畑が貸出しされまして、そこで、ナスやピーマン、トウモロコシ、ゴーヤー、いろいろな作物を育てるということを体験することができます。また、共同農園というところもありまして、そこでは、共同で作業をする喜びと、また苦労も体験することができるんです。

 このような農業小学校のような取組をしているところが全国にどのくらいあるのかということを農水省が把握しているか、伺います。

安岡政府参考人 お答えいたします。

 まず、財光寺の農業小学校の取組は、農水省でも優良事例として把握をしているところでございます。

 農業小学校という取組は一九八七年に神奈川で始まった取組というふうに承知をしています。三十年以上前から各地で行われているということでございます。

 我々が把握している範囲内でございますけれども、岐阜県などで今も取組が見られるほか、今御紹介のとおり、日向市内には二つあるというふうに承知をしているところでございます。

 網羅的には把握ができていないところですけれども、こうした作付から収穫まで一貫した取組ということで、各地域でいろいろな形で行われておりますので、我々も優良事例として把握をしているところでございます。

長友(慎)委員 優良事例ということで把握はしていただいているということなんですが、じゃ、どのくらい全国でこういう活動が行われているかというのは、把握が難しいのか分かりませんが、農水省としてはまだそこまでは及んでいないということなんですが。

 よく、農業体験とか一次産業の体験、例えばお米だったりすると、田植をする体験とか収穫をする体験というスポット的なワンポイントの体験は各地でやっていると思うんです。

 でも、私も、実は二年間、この財光寺農業小学校、大人生徒という制度があって、地域の大人も学べるんですね、行かせていただきましたけれども、学校なので朝の会があるんですね。そこで校長先生からいろいろな講義があって、そして、じゃ、熱中症に注意して畑で頑張りましょうという中で、みんなと汗をかいて農業のイロハを学んでいくんです。

 子供が十九畳の畑を全部管理するのは非常に大変なので、お父さん、お母さんと一緒にやって、汗を流して、そして卒業していくまでの間に、農家さんに対する敬意、リスペクト、また農業が大変だということも理解していくという非常に濃ゆくて大事な体験を私自身もさせていただきました。

 こういう文集をいつも卒業生は出されて、この中で感想が述べられているんですけれども、皆さん本当にこの農業小学校で学んだことが身になっているという感想があります。お配りした資料の最後を読んでいただきたいんです。それで持ってきたんですけれども、後書きに二見校長先生がまとめられていらっしゃいます。最初に、一期目に卒業されたAさん、名前はちょっと消させてもらっていますけれども、そこの文集の中にこういうふうに感想がありました。

 農業小学校に入るまでは、お店で野菜を買うときはもっと安くていいじゃんと思っていたのに、今ではもっと高くていいじゃんと思うようになりましたと。

 野菜の栽培体験を通して考え方が全く変わっていることがよく分かると思います。このAさんが実際に栽培体験をして、土を耕し、種をまいて、水やりをして、草取りをして、病気や害虫退治をして、いろいろなことを体験して、この体験の重みを理解した上で農家さんの御苦労や適正価格ということを身をもって学んでいくわけなんです。

 そこで、最後、江藤大臣にお聞きをしたいと思います。このような農業小学校、私は、もう是非、この財光寺農業小学校のようなモデルを、そのものを全国に国が責任を持って展開をしていけば、農業を大切にする国民を育てることができるのではないかと考えるんですが、最後、大臣の見解をお伺いします。

江藤国務大臣 大変いいと思います。九坪ですか、自分で管理をする、それは必ずうまくいくとは限らない、せっかく植えたけれども、収穫まで至らないということもあり得るわけですよ。それは、やはり残念かもしれないけれども、簡単に農作物はできないんだなという体験にもつながって、できなければできないなりの学びがあるということでありますし、できたらできたものに対する愛着がある。私なんかはおやじが農家の次男坊でしたから、子供の頃から梶木の実家の農家の手伝いをさせられていたので、ある程度の農業体験はありますから、そういうものはやはり身にしみています。

 ですから、子供の高い感受性、そして子供たちが将来の職業を選択する上で、農業に対するリスペクトだけではなくて、自分が生きる道の一つとして農業を選んでくれるような、そういう一つのきっかけになれば、それはすばらしいことでありますので、これは一つ、農林水産省の予算の中で、消費・安全対策交付金の中で使えるメニューがありますから、まだこの中で一億数千万しか使われておりませんけれども、是非、こういった予算も活用して、こういった取組が全国に増えるように私としても考えてみたいと思います。

長友(慎)委員 大臣、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

御法川委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 食料・農業・農村基本法の目的の達成に向け、今後どのような施策を打っていくのか。基本計画の策定が現在進んでおりますが、目的達成のためには、関連予算を含めた十分な予算の確保がまず求められるということは言うまでもありませんが、そのためにも、国民の理解の醸成、その取組の強化が何よりも大事なことだと考えております。

 その観点も含めて、以下、質問をさせていただきます。

 初めに、中山間の支援について。

 全国の耕地面積の約四割、総農家数の約四割、農業産出額の約四割を占めるなど、我が国の農業において重要な役割を担っている中山間地域、ここをいかに守っていくかは、食料安全保障確保の上からも極めて重要な課題であります。

 大臣所信において、生産性の向上に限界のある中山間地域等については、地域計画を軸に、地域農業を維持し、農地を守るための取組をより強力に支援すると述べられました。

 公明党では、先月二十八日に基本計画策定に向けての提言を行いましたが、その中で、中山間、棚田地域等における農業の振興と地域の共同活動の促進、多面的機能に着目した支援施策の充実を求めております。

 そこで、まず、今後、中山間の地域農業を維持し、農地を守るために、どのように取り組んでいくのか、お伺いをしたいと思います。

庄子大臣政務官 お答えいたします。

 我が国の農地の約四割を占める中山間地域をしっかり支えることの重要性、委員のおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 このため、本省といたしましては、おっしゃっていただいたとおり、地域計画に基づきます担い手の確保、育成や農地の適正利用の推進、あるいは、高収益作物の導入、現場のニーズに対応したスマート農業技術の研究開発、また、中山間地域におけます省力化に資する基盤整備、また、生産、加工、販売施設等の総合的な整備等を推進してまいりました。

 加えて、中山間地域等の直接支払いにつきましては、今般初めてネットワーク化加算あるいはスマート農業加算を措置いたしまして、二十四億円増となります二百八十五億円を計上しているところでございまして、今後も引き続き中山間地域農業の振興をしっかりと図ってまいりたいというふうに思っております。

角田委員 地元の中山間地域では、中山間地域直接支払制度の第一期から構成員が全く変わらず、同じ顔ぶれのままで、皆、高齢化が進み、後継ぎもいない。現状、令和七年度からの六期に乗れない可能性があるのは、二十四集落協定中、六集落協定と、四分の一の集落はこの制度から脱落せざるを得ないといいます。

 特に問題となっていることは、一つに集落の事務負担が重いこと、そしてもう一つが草刈りの負担です。残る集落もこのままでは五年後には活動を維持できなくなる可能性が大きく、これについては、作業を広域化しようにも、全ての集落が活動できなくなってしまってはそれもできません。

 このため、新たな人材を呼び込むにはどうしたらよいか様々検討する中で、受皿の一つとして労働者協同組合の設立も目指しておりますが、既に活動の維持が困難になっている中山間に新たな人材を呼び込み、定着を図る取組は待ったなしの課題であり、早急に対策を講じなければならないと考えます。

 中山間を守ることは、農地を守ることにとどまりません。水源を涵養し、水害や土砂災害を防ぎ、生物多様性を維持するなど、その多面的な機能が失われた際の損失は計り知れません。中山間を守ることの意義はもっと強調されなければならないし、国民の理解を得るための取組ももっと力を入れてやっていくべきと考えます。

 中山間を守ることは国民の安心と安全を守ること。その多面的機能に着目し、国民の理解を得つつ、その維持を図るために、より強力な支援を講じていくべきと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

庄子大臣政務官 お答えします。

 中山間地域の農業が有します、委員御指摘のとおり、水源涵養機能あるいは洪水防止機能、こうした多面的機能に加えまして、生物多様性を保全するといった重要な役割を果たしています。生物多様性は、一たび毀損されてしまえば回復することが極めて困難でございますので、こうしたことにしっかり留意をしていかなければいけないというふうに思っております。

 このため、農水省といたしましては、例えばホームページで様々な解説資料の掲載、小学校の副読本作成の支援、出前授業、各種イベントでのパネル展示やパンフレットの配布といったことを通じて、国民への普及啓発に取り組んでまいりました。

 また、中山間地域直接支払いの次期対策につきましては、先ほども御答弁をさせていただきましたが、令和七年度、二十四億円増の二百八十五億円を計上したところでもございます。

 さらに、水田政策につきまして、令和九年度に向けて、水田を対象として支援をしてまいりました現行水活を、作物ごとの生産性向上等への支援へと転換をする根本的な見直しを検討しているところでございます。

 中山間地域直接支払いについては、条件不利の実態に配慮し、支援を拡大する方向で検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

角田委員 続きまして、農業への国民理解、なかんずく都市住民の理解醸成ということに関して質問させていただきたいと思います。

 農業を守る、そのための国民理解醸成の一つの方向として、都市住民と農村との交流の促進があります。この点、農泊であるとか二地域居住の促進であるとか、いろいろと取組を進めようとしておりますけれども、特に子供のときに農業の現場に触れるということは極めて大事なことだろうと考えております。

 特に、高度成長期以降、農村部から都市への一方通行の人の流れが続く中で、田舎を持たない、農業の現場を知らない子供が増えております。私の住む町会、ここも、四十五年前ぐらいまでは家の裏に田んぼがあって、夏には蛍が舞っていたんですけれども、今は全てなくなって、家が立ち並んで風景も一変してしまいました。ここの住民は、北海道の出身であったり、東北であったり、四国であったりと、お盆や正月には子供たちを連れてそれぞれ田舎に帰省をしておりましたが、今、住民も皆、七十代、八十代となって、お盆や正月に家族、子供や孫が集まるのはこの町会、この場所になってしまっています。

 これから目指されるべきは、今までは、親は田舎、子供は都会、こうしたことから、これからは、親は都会、子供は田舎という流れを細々とでもつくり出して、その流れを太くしていくこと。これは非常に簡単ではありませんが、その方向へ一歩一歩、歩みを進めていかなければならないとも考えております。

 基本計画策定に向けて、公明党では、体験学習など都市と農村間の児童生徒の交流の促進を提言しております。児童生徒の体験学習の推進や、またオーガニックビレッジ宣言をしている市町村が今増えておりますけれども、有機米や有機野菜の域内の学校給食利用だけでなく、農地の少ない都市部の学校給食での活用を通じた産地との交流の活性化など、子供の頃から農業に触れる機会を増やしていく取組を進めていくべきと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

庄子大臣政務官 小さい頃から農業に触れるということは非常に重要だというふうに思っておりまして、農業を理解するということと直接つながりますし、また都市部と地方の交流ということにも通じますので、非常に重要だと思っております。

 農水省といたしましても、農山漁村体験機会の拡大を図るということを進めてまいりたいというふうに思っております。

 その一環として、一定期間、農山漁村に滞在をいたしまして、地元の児童生徒と交流をするということ、こうしたことについて是非進めたいというふうに思っておりますが、子ども農山漁村交流プロジェクトという取組がございまして、これは五つの府省連携の下でやっておりますけれども、令和三年度で申し上げますと、全ての公立小学校の約四割で取組を行っておりますので、こうしたものをしっかり育ててまいりたいというふうに思っております。

 加えまして、農山漁村の受入れ側の推進体制の整備、各種体験メニューの磨き上げ、また滞在施設や体験、交流施設等の整備、こうしたものも行っております。

 また、都市と地方間の児童生徒の交流を促進いたしまして、都市と農山漁村の相互理解に寄与できますように、他省庁と連携を一層密にしながら取り組んでいきたいというふうに思っております。

角田委員 是非とも、他省庁との連携も深めながら、取組の推進、ここは是非お願いをしたいと思っております。

 それから、農業を知る機会の創出ということについて、都市に暮らしている方が行きやすい場所に農業と触れ合う場所をつくっていくために、農業体験ニーズの高い大都市近郊への体験農場の整備、こうしたものも是非進めるべきではないかと考えております。

 これは、単に農業政策にとどまらず、観光政策でもあって、さらには農福連携の場づくり、障害者就労促進政策としても有効であり、政策的に整備を促進していくべきと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

前島政府参考人 お答えいたします。

 市民農園や体験農園など農業体験の場は、消費者が気軽に農産物の栽培や収穫などを体験する機会を提供するものとして、国民の農業に対する関心や理解の醸成に極めて有効だと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、こうした農業体験を通じて障害者の方々などが農業に関心を持ち、実際に農業での就労に結びついた取組として、例えば、埼玉県川越市のNPO法人土と風の舎が運営されている、こえどファームというところがございます。

 こういった取組を支援するため、これまで、市民農園に関する制度を整備し、都市住民による農地の利用機会を広げるとともに、ユニバーサル農園や滞在施設を備えたクラインガルテンなど、多様化するニーズに応じて、農業体験に必要な施設整備などに対する予算上の支援も行ってきたところでございます。

 農林水産省といたしましては、農業体験の場の整備は、喫緊の課題である関係人口の創出、拡大にも寄与することが期待されているところであり、今後とも、新たな基本計画の下、市民農園や体験農園の整備を一層推進してまいりたいと考えております。

角田委員 続きまして、農業法人の労働環境と人材確保ということについて質問させていただきたいと思います。

 担い手の減少に対応して、農地の集積、集約化や、機械やスマート農業技術等による省力化のための大区画化なども進めていかなければなりませんが、それとともに、農業法人の役割がますます今後重要になってくると思います。

 農業経営体数が減少する中で、農業法人は年々増加をしており、新規就農者のうち四十九歳以下の層では雇用就農が自営就農を上回るような状況になっております。

 農業を担う人がどれだけいるかについては、基幹的農業従事者数が用いられてきました。これが急減するから大変だという議論になるわけですけれども、農業がほとんど個人、家族経営だった時代はこの数字が農業の支え手の実態をほぼ表していたと思いますが、多様な働き方が目指されるこれからの時代に即した指標の在り方というものも検討されるべきではないかと考えております。

 農業を守るために生産性の向上ということが言われますけれども、生産性の分母となるのは労働者数あるいは労働時間、労働力です。

 農水省のホームページにある農業労働力に関する統計では、新規就農者については、新規自営就農者と新規雇用就農者の人数が毎年示されておりますが、その結果として、農業労働力全体のボリュームがどういうふうに動いたのかということについては、基幹的農業従事者の数のみが示されているだけで分かりません。農業の構造転換を図ろうとしているときに、生産性の要素として労働力がどれだけ確保されているのかが分かる、こうした指標もなければ、農業生産を維持するために今後どれだけの労働力が確保されなければならないのか、その確保のためにどのような手だてを講じればいいのかといった議論も深まらないのではないかと思います。

 その数字を基に、建設的な議論ができる指標として、基幹的農業従事者だけではなく、雇用就農者の数も含めた農業労働力の指標、これについても掲げていくべきと考えますが、この点について見解を伺いたいと思います。

庄子大臣政務官 近年、農業法人につきましては進展をしていただいておりますけれども、全販売額の約四割に今なっておりますし、加えて、経営耕地面積で申し上げても全体の四分の一までが農業法人ということになっておりまして、御指摘のとおり、基幹的農業従事者のみならず、雇用者を含めた農業労働力の指標を掲げていくということは重要なテーマだというふうに思っております。

 このため、次の基本計画におきましてですが、雇用者を含めた農業分野における生産年齢人口のうち四十九歳以下のシェアについて、今、農業分野では五四・三%でございますが、全ての産業のシェア率でいうと、この四十九歳以下のシェア率でいうとまだ低い方でございますので、全産業並みに引き上げていく、そういうKPIを設定をしていってはどうかということを検討しているところでございます。

角田委員 是非、検討を進めていただきたいと思います。

 その上で、農業法人の経営基盤の強化、雇用の確保が、日本の食料安全保障を確保していく上での大きな課題になっていると考えます。今後、若い人たちに農業に魅力を感じて入ってきてもらうためには、受皿としての農業法人、ここも魅力的でなければならないと考えます。

 農業法人の中でも、農地保有適格法人は家族農業から法人化したといったケースも多く、労働条件や雇用管理など不十分な面が多く、例えば、雇用契約も口頭のみであったり、就業規則も未作成、退職金制度もなく、人事評価も実施をしていないという法人がまだ多数あります。日本の農業の維持発展のためにも、選ばれる農業法人となるよう労働環境改善等の支援の充実、これも今後極めて重要と考えます。

 職場環境の整備改善のために農業法人に対して農水省としてどのように支援を行っていくのか、お伺いしたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 我が国の人口減少、特に生産年齢人口の減少が進む中、既に働き方改革に取り組んでいる他産業との人材獲得競争が激化しております。今後の農業に必要な人材を確保していくためには、委員御指摘のように、農業が選ばれる産業となるよう、労働環境改善を図ることが不可欠だと考えております。

 農水省では、農業現場における働きやすい環境づくりを推進するため、就業規則の策定や労働負荷軽減のための作業工程の見直しなど、それぞれの実情に応じた労働環境改善を行う農業法人等を支援する事業を実施しているところでございます。

 また、現在、農業の労働環境改善に向けた政策の在り方に関する検討会を開催しておりますので、この検討会の結果も踏まえて、労働環境改善を含めた農業の持続的な発展につながる取組を推進していきたいと考えております。

角田委員 やはりこれからの食料安全確保の上で、農業の魅力アップ、そのための様々な働く環境の改善、これについてもしっかりと取り組んでいただきたいということを要望いたしまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、八幡愛君。

八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。

 昨年、四半世紀ぶりに改正された食料・農業・農村基本法について、私はその場におりませんでしたが、こうして閣議決定を前に食料・農業・農村基本計画について質問ができる機会に感謝を申し上げます。よろしくお願いいたします。

 私、ちょうど二週間前の三月十二日、江藤大臣の所信表明について、食料自給率を高めると言いながらその目標がまだ設定されていないというので、ここで農水大臣として食料自給率の目標を是非聞かせてくださいと申したんですが、大臣は、今ここではまだ言えないけれども、しっかりとこの後発表しますとおっしゃいました。そして、その二日後、十四日に農水省の方から発表されたのが、カロリーベースでの食料自給率について四五%の目標設定。これは、現状が三八%に対して、例年どおりです。

 今回、これに加えて、新たに摂取熱量ベースの食料自給率五三%という目標値が設定されております。これは、平均摂取カロリーなどを参考にして、千八百五十キロカロリーを分母にどれだけ自給できているかを示すとのことで、現在、この計算でいくと、我が国は四五%で、ここについて五三%への向上を目指しますという計画が満を持して発表されたんですけれども、私の第一印象といたしまして、カロリーベースの自給率はこれまでの目標と変わっていない四五%なので、政府が目標値の見え方を気にして独自に新しい基準を設定して、摂取熱量ベースでは五三%と、目標値の数字を盛っただけなんじゃないかなと思ってしまいました。

 そもそも、分母が千八百五十キロカロリーというのも本当に足りているのか怪しいし、しかも、事前のレクチャーで確認させていただいたんですが、この摂取熱量ベースの食料自給率というのは日本独自の基準だそうで、今回この日本独自の摂取熱量ベースについてお聞きしたいと先週の金曜日に通告をさせていただいたんですけれども、昨日の参議院でも同じような質問がなされていたのを拝見しまして、きっと今日も政府参考人さんが御登場して、新基準を設けた前向きな理由をるるお話しくださると思うので、申し訳ないですが、ちょっと一問目は割愛させていただきます。済みません。

 ここで私が言いたかったのは、新しい基準を設けるのはいいんだけれども、そもそも国民に伝わりにくいし、何か数字をこねくり回したみたいな、見え方を気にするんじゃなくて、シンプルに国際基準である従来のカロリーベース自給率において、せめて五〇%を目指すなどの目標値を設定するべきだと思いました。三八%という食料自給率の低さという現実から目を背けてはいけないと思います。れいわ新選組は、早急にカロリーベースの自給率を五〇%に高めていくべきだと考えており、更に意欲的な目標を追求することを訴えております。

 そのためにも大切であります、新規就農支援についてお伺いします。

 今回の基本計画案では、担い手不足が問題化する中、新規就農支援についても様々な目標が掲げられております。

 江藤大臣はこれまで、予算委員会や記者会見などで、経営や資金を支援する新規就農者育成総合対策を受ける際の四十九歳以下という年齢制限の見直しに意欲を示されていたと思うんですけれども、農業従事者の高齢化や担い手不足の現状を考えますと、この年齢要件というのは私ももっと引き上げてもいいと思っています。

 そして、今日お伺いしたいのは、同じような支援の制度として、認定新規就農者制度というのがあります。これは、先ほど紹介した新規就農した人への支援金の枠組みではなくて、新規就農者を地域農業の担い手として、育成を目的としたプログラムとなっております。

 こちらの年齢制限は四十五歳未満となっているんですが、実際、やる気も体力も十分にあるのに、新規就農を決意したときには四十五歳を過ぎてしまっていて、この制度が使えず、諦めたんだという四十代後半の方の声を聞きました。当然、二十代とか三十代の若い世代の参画を想定しているからこその年齢制限だと思うんですけれども、日本の農業従事者の平均年齢が六十七・八歳ということを踏まえますと、四十代後半にもまだまだチャンスがあっていいなと私は思うんです。

 認定新規就農者制度、こちらの年齢制限も引き上げるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。お願いします。

杉中政府参考人 認定新規就農者制度でございますけれども、農業経営基盤強化促進法に定められておりまして、その中で、青年の定義として十八歳から四十五歳未満、また、青年以外は、六十五歳未満で一定の要件を満たす者となっております。

 これは、四十五歳以下とした理由でございますけれども、我が国の農業者は、六十五歳以上が大半でありまして、例えば四十歳代以下の基幹的農業従事者は約一割と、著しく年齢構成のバランスを欠いておりますので、基盤強化法において、四十五歳未満の就農者を青年として、特にその就農促進を図ることとしているところでございます。

 ただ、委員おっしゃるように、四十五歳以上の者であっても、担い手として活躍していらっしゃる方、これも多数いらっしゃいます。そこで、青年以外の就農者についても、四十五歳以上で一定の要件を満たす者、これは、商工業、他産業で経営管理の経験がある者など、多くの方が満たす要件だと思っておりますけれども、それについては認定新規就農者制度の対象となります。

 今後、四十五歳以上の人も含めて新規就農者を育成、確保できるよう、現場の声を踏まえつつ、制度運用の円滑化に努めていきたいと考えております。

八幡委員 青年の定義とかということもいろいろあると思うんですけれども、もう本当にそんなことを言っていられないというのが今の現状だと思いますので、是非、やる気のある方は経験問わず、おっしゃったのは、経験値があるというか、何か専門的な知識があったり資格があったりする方においては四十五歳以上でも大丈夫ということでしたけれども、そういう経験がない方にでもチャンスが与えられるような制度があればいいなと思いました。引き続き、現場の声を聞きながら、運用をよろしくお願いいたします。

 そして、今回の基本計画を読んでいますと、これから日本の農政は大転換を迎えるんだなと、わくわくするくらい様々な新しい取組が展開されております。掲げられている農業のスマート化とか効率化とかデジタル化なども私は一定否定はいたしませんが、現在この国の農政を支えてくださっている生産者への支援という目線がちょっと薄いというか、少し抜け落ちているのではないかなと思いました。

 今週の日曜日、三十日に、私も参加するんですが、令和の百姓一揆と題して、全国からトラクターが集まって、農家や従事者が東京の町をデモ行進されるということなんですけれども、こうした行動に至るという方々の声や現場の声を是非聞いて、個人で農業をされている方や中小零細の生産者たちが将来の展望が持てる支援を引き続き行ってほしいなと思います。

 そして、その観点から、地域計画と国の支援についてお伺いします。

 基本計画案では、規模の大小や個人、法人などの経営の形態にかかわらず、農業で生計を立てる担い手を育成、確保し、農地や水を確保するとともに、地域計画に基づいて担い手への農地の集積、集約化を推進するとしているんですが、この地域計画というのが、私、すごい大変だと思うんです。これは防災における避難計画なんかもそうなんですけれども、なぜなら、これは、その名のとおり、地域任せだからなかなか進まないんですね。当然、地域差によっても温度差というのもありますし、小さな自治体は、ただでさえ職員の人手不足や日常の業務に負担がかかっておりますので、地域計画などのようなことは結構後回しになってしまうという事例を聞きます。

 国の支援、マンパワーが必要ですし、そもそも、先ほども申し上げましたが、まずは実態を把握することの方が先だと思います。地域で営む農家の方々が今どういう苦しい経営をされているか、ヒアリング調査をした上で一緒に計画を立てていく。そのためには、国はマンパワーとして職員やプロフェッショナルを派遣して支援すべきだと考えるんですが、この地域計画として、初動五年で農業の構造転換を集中的に推し進めるというのを本気でやるんだったら、地域任せにせず、政府は具体的にマンパワーを派遣するなど地方を支援すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。お願いします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 地域計画ですけれども、人口が減少していく中で、将来、農地利用をどう適正に行っていくか、これについてやはり地域の農業者を始めとする関係者の皆様の話合いを経ないと、具体的な実効性のある土地利用というのを決めていけないというふうに思っております。これの話合いについては、委員おっしゃるように、非常に時間がかかるというのも事実でございます。

 地域計画は、一度策定をして終わるということではなくて、四月以降も話合いを続け、よりしっかりした内容にブラッシュアップして、地域農業を持続的に発展させていくということが必要だと考えております。

 また、委員御指摘のように、非常に市町村のマンパワーが不足している、これも事実でございます。そういう中で地域の話合いを円滑に継続していくためには、いわゆるアドバイザーをやっていらっしゃる方がサポートしている、これは有効な例がたくさんございますので、話合いを進めるアドバイザーの活用。また、そこに若者や女性が参加をしていただいてアドバイザーがサポートすることによって話合いが活性した事例がございますので、そういう事例の横展開。あと、市町村職員自体も経験がない人もおられますので、そのスキル向上のための研修。こういった支援を行っているところでございます。

 今後とも、農林水産省として、地域計画を更にブラッシュアップをして農地の適正利用がされるよう、各地域が活発な話合いを行っていくように丁寧に後押しをしていきたいと考えております。

八幡委員 おっしゃったことが全て実現すれば最高やなと思うので、この基本計画もそうなんですけれども、いいことばかり書いているだけなんじゃなくて、書きっ放しとか言いっ放しだけでなく、本当に具体的に少しでも前に進めていただきたいなと思いますので、是非力をかしていただきたいと思います。しっかりと計画を立てて、前向きに一緒に実現してまいりましょう。

 続いて、農福連携についてお伺いします。

 農福連携というのは、その名のとおり、農業と福祉分野の連携です。今後、農村の人口減少そして高齢化が急激に進行することが見込まれる中、障害者などが貴重な農業人材として活躍しながら地域農業の振興を目指すということで、近年、取組主体数は大きく増加しております。

 政府も後押しを進めていくとのことなんですけれども、今回の基本計画の中では、農福連携というのは、所得の向上や雇用創出のための事業と位置づけられています。この取組自体は私もすごくいいことだと思っておりまして、障害の有無に限らず、農業体験をすることで、自分自身が前向きになったり、自分の特性を生かせたり、まさに農水省がその目的として正式に文書も出しておられましたけれども、障害者などの農業分野での活躍を通じて、自信や生きがいを創出し、社会参画を促す取組であり、農林水産省では、厚生労働省と連携して、農業、農村における課題、福祉における課題、双方の課題解決とメリットがあるウィン・ウィンの取組である農福連携を推進するということです。

 じゃ、ウィン・ウィンのために具体的にどんな支援を国はするのですかと伺ったところ、障害者などが働きやすい環境の整備を図ることによって、就農促進や継続的な雇用、そして、障害者などが生きがいを持って農業に関する活動を行えるようにするという観点から、障害に配慮したトイレの設備とか、あとは休憩施設、バリアフリー化の整備の支援のほか、市町村、農業や福祉の関係者などが参画して農業経営体と障害者就労施設のマッチングなどを行う地域協議会の拡大、世代や障害の有無を超えた多様な人が農業体験を通じて社会参画を図るユニバーサル農園の普及拡大などを推進するなど、ソフト面やハード面において国からの助成が用意されているんですね。

 これも当然大切なことなんですけれども、農業における所得の向上と雇用の創出に枠組みされている割には、賃金についての記述がありませんでした。疑問に思ってレクチャーを受けたところ、基本的には、就労継続支援事業所のA型、B型からの派遣で、所属先の農業経営体との契約の中で従来の工賃にプラスして報酬が支払われるケースが多いということだったんです。そこの金額の設定にはルールはなくて、障害者の所得向上の枠組みに入れている割には、契約先の業者任せになっているんですね。

 業者によっては、もしかしたら上乗せしないかもしれないじゃないですか。このままだったら、就労継続支援事業所のA型、月収入平均八万六千七百五十二円、B型、月収入平均二万三千五十三円という安い給料、工賃で障害者などを農業に就労させることができてしまうという間違ったメッセージになってしまうんじゃないかなと、私は非常に危惧しております。障害者のやりがい搾取になりかねない。経済的自立が達成できない。

 そもそも、就労支援A型、B型の工賃のたてつけにも問題があると思っているので、私、これは、自分も所属しています厚労委員会でしっかりと訴えるとして、それはそれなんですけれども、やはり農水省として、障害者の社会参画を実現して所得を向上させる取組として農福連携を位置づけるならば、経済的自立が可能となるだけの金額を稼げるようにすることが不可欠だと私は思います。

 農福連携を進める上で、現場におけるソフト面、ハード面など様々な支援はありますが、本気で推し進めるなら、障害者の人件費についてこそ、国が財政支援を積極的にすべきだと考えるんですが、大臣、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 お気持ちはよく分かります。私の地元でも農福連携は大変進んでいます。そして、たとえハンディキャップがあっても、社会の一員として働いて、そしてお金を手にするということの意義は、お金の金額の多い少ないに、計り知れない価値があるというふうに思います。

 ただ、言われたように、今のA型、B型、金額もお示しをいただきました、二万三千円と八万六千円。これでは、なかなか自立というところには届きません。

 ですから、我々農林水産省として今までやってきたことは、受入れ側が受け入れやすい環境の整備。やはりハンディキャップがある方は、言っていただきましたが、トイレだったり様々な施設について特別な施設が要りますので、それについてはしっかり援助をしようということで、農福連携の推進に関与してきたわけでありますが。

 おっしゃるように、給与の上乗せの助成については、これが農林水産行政の上での命題なのか、それとも、厚生労働という考え方での社会福祉の向上という感覚での課題なのか、整理をしなきゃなりませんが、ただ、自分の気持ちとしては、このA型、B型だけじゃなくて、いろいろ、いわゆる障害者施設で働いている人たち、クッキーを作っているとか、キーホルダーを作っている人とか、そういう人たちはもっと金額が低かったりもするわけなんですよ。そういった方々の待遇改善については、やはり我々政治の立場にある人間が今以上に配慮しなければならないという気持ちは委員と同じように持っておりますので、これを農林水産の枠の中で、今の段階で、じゃ、予算をどこか割いて、上乗せで払いましょうというところは踏み込めませんが、大切な御指摘として受け止めさせていただきます。

八幡委員 大臣の思いが聞けたので、ちょっと安心をいたしました。まさに、そういうときこそ、農福連携なんだから、農水と厚労が一緒にやってくれよと私なんかは思うんですが。

 繰り返しますけれども、やはり人件費のサポートという形で農福連携を支援していかないと、障害者を安く就労させるという間違ったメッセージになってしまいます。心ある事業者だったら、そこにプラスアルファ賃金を乗せましょうとなるけれども、事業者任せというのは、やはりやりがい搾取の温床になると考えます。誰のためのウィン・ウィンなのか。今回こうやって質問させていただいたことで、しっかりとくぎを刺していきたいと思っております。

 残すところ僅かな時間ですが、最後に、予算確保ですね。私が農林水産委員会となってから再三、農水予算確保が必要だと申してまいりました。今年度の予算は二兆二千七百六億円、もう全然これは足りないですよね。

 先日の委員会でも他党から、別枠予算を措置するなど、従来の枠組みにとらわれず予算の確保を訴えるという質問が相次いでおります。そして江藤大臣も、それに対しては、必要な予算をしっかり要求していきたいんだと前向きな姿勢を見せてくださっていましたし、一部報道によりますと、自民党さんも、別枠でもいいから予算の拡充、これを政府に訴えるんだというような報道も見ました。

 我々れいわ新選組は、食料の生産確保が安全保障の要であることを踏まえて、減らされ続けてきた農業予算をまずは四兆円台に倍増する、農政においても政府支出による積極財政を実現することを掲げております。

 これはよく言われますけれども、国民の命を守るための国防ということで、今年度、過去最大の八兆七千五億円という防衛予算がついていますが、国内農業の振興こそが私は本当に安全保障だと思っています。膨大な防衛費の中から食の安全保障の予算を取れればいいとさえ思ってしまいます。

 有事に備えて食料を備蓄することの方が、トマホークを備蓄するより国民のためだと考えるんですけれども、農水の予算確保について、最後に大臣から何か一言いただけると幸いです。お願いします。

江藤国務大臣 安全保障は国が果たすべき大切な役割であります。それは、エネルギーの安全保障もあれば、それから、国を守る、防衛体制をしっかりと確立するための安全保障もあります。

 しかし、食料安全保障の中で、備蓄を増やすということについては、何度も申し上げましたが、米については、一・八か月分、百万トンめどで、大体年間五百億かかっているということが、果たして国民の理解を得られるかというと、人によっては、全然足りないじゃないか、ヨーロッパの国、例えばスイスなんかだと、半年以上持っている国もあれば、七か月以上備蓄している国もあるじゃないかというような御指摘もありますが、そういう国は、日本とまず地政学的な場所が違う。非常に、日本も海を隔てて難しい国と対峙していることは変わりありませんが、陸続きで地政学的に緊張関係にある国が多い、そして人口自体も少ないという事態もありますので、今後、備蓄についてどれぐらいの数字を示すかについては、国民的な議論を経なければならないと思っています。

 農林水産の予算については、これからしっかり、皆様方の御議論を通じて、基本計画も今までにないものがきっとでき上がると思います。これも、三月三十一日という期限を切らずに、必要であれば四月にまたぐようなことになっても議論を尽くしていきたいというのが私の考えであります。その結果によって肉づけができれば、これを目指す、これを達成する、KPIをやるんだということになれば、私は財政当局とも十分な交渉ができると思っておりますので、しっかり頑張ってまいりたいと考えております。

八幡委員 大臣のお考えをたっぷり聞かせていただいたんですけれども、高額医療費制度について、今、世論を受けて、一度通過した予算が衆院に戻ってくるという、これまでにあり得ないことが起きているんですよね。国民の声で政治が動くということが、今現在、本当に体現されていると思うんです。

 これを前向きに受け取るのであれば、日本における農政の予算確保にも柔軟な対応が期待できるのではないかなと、私と、今この質問を目撃してくださっている皆さんの希望に代えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 大臣、もうおなかがすいていると思いますけれども、もうすぐ終わりますので、一踏ん張り、よろしくお願いしたいと思います。

 世界が今大分変わってきていまして、トランプ大統領の出現によって大きく二つ変わってくると思うんですよ、特に食料安全保障に関して言えば。

 一つは、通商政策が変わってきて、今までみたいに自由に貿易するということはアメリカはもう協力しないということになっていますので、戦後、お金さえあれば食料なんか確保できる、こういう時代は終わりつつある。

 もう一つは、外交、安全保障の面で、私は二つ可能性があると思っているんですけれども、多分、可能性の高い方は、世界の、地球儀をいろいろな縄張に、幾つかの縄張に分けて、それぞれにジャイアンがいる、このジャイアンにお任せしたらいい、のび太は黙って静かにしておけという外交だと思うんですよ。だから、ウクライナはのび太になっちゃうんですよ、プーチンがジャイアンだから。そんな、おまえ、アメリカ、ヨーロッパの力なしで幾ら頑張ったってしゃあない、だからプーチンの言うことを聞けと。まあ大ざっぱに言うとですね。

 これは困ったことに、アジアでいうとジャイアンは誰になるかというと、これは恐らく習近平さんなんですよ。そうすると、台湾は、今まではアメリカも曖昧戦略で、場合によっては中国が侵略したら助けるという話だったんですが、これが必ずしもそうならないかもしれない。

 そういうことを考えますと、我が国は、ほとんど食料が太平洋も含めて海を通ってタンカーで運ばれてくるわけですから、いよいよこの食料安全保障というのが重要な課題になっているというふうに思っています。

 そういう中で、今度の基本計画の中に、いわゆる摂取熱量ベースの食料自給率というものを新しく設けた。これは私、去年、基本法の審議のときに、ふだんの食料自給率じゃなく、本当に極限状態になったとき、つまり輸入が全くできない、そういう状態を想定して、食料安全保障版の食料自給率というものを指標として設けたらどうかという話をしました。これがもしやそういうことで位置づけられているのかなというふうに思っているんです。

 つまり、今の食料自給率、平時の、いつも使っているやつは、分母の方には現在国民が食べている食料に応じて、分子で、どこまで国産で賄っているかという割合ですけれども、この摂取量の方は、必要最低限、まあ必要最低限というか、栄養分を含めてちゃんと良質な食料に基づいて国民が命をつなぐために必要なカロリー、千八百五十キロカロリーだ、これを固定する。これに対して分子で、どこまで国産で賄うのか。こういう指標だというふうに理解しているんですが、そういう理解で正しいのかどうか、お聞きしたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、現行の食料自給率に加えまして、一人当たりの必要な摂取熱量に対してどの程度国内生産が確保されているのかを示すために、国内に供給される食料から食品ロスを除いた熱量である摂取熱量を分母とし、国内で生産される食料の熱量を分子とする摂取熱量ベースの食料自給率というのを新たに設けたところであります。

 委員御指摘のとおりと申しますか、委員が御指摘になった点で申しますと、今回の一人当たりの必要な摂取熱量という部分に関しましては、平時における一人一日当たりの摂取熱量の最低値が平成二十二年の千八百四十九キロカロリーということであることを考慮いたしまして、これ以上低い値だとどうだということはなかなか言い難いんですが、ただ、過去の最低値で千八百四十九キロカロリーということを勘案しまして、今回、分母を千八百五十とさせていただいて、必要なエネルギーという形にさせていただいたところであります。

北神委員 指標の計算式はよく分かったんですけれども、何のためにこれを、趣旨として、なぜこういう指標を立てたのかということについてはいかがでしょうか。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 この指標につきましては、国民の皆様方に、食品ロスなどの削減についてまず御理解をいただくということもありますが、もう一方で、健康な摂取エネルギーがどの程度、平時の必要なエネルギーがどの程度国内生産で賄われているのかということを御理解いただくという観点でも設けさせていただいたところであります。

北神委員 大臣、私の発想は、これは余り共有されていないかもしれないんですけれども、やはり危機管理というのは、一番厳しい状況というものを想定して、そこで逆算をしていくというのが通常の発想だと。もちろん、非合理的な目標を立てるのはおかしいと思いますけれども、今申し上げたように、世界は大きく変わっている。

 例えばスウェーデンなんかは、ウクライナ戦争の後にパンフレットを国民に配っています。そのパンフレットに何が書いてあるかというと、皆さん、おうちで備蓄してくださいと。それも具体的に書いてあって、ジャガイモ、キャベツ、ニンジン、卵、ボロネーゼソースの缶詰、ブルーベリーとか、これは具体的に書いてあるんです。そのぐらい危機感がある。しかもスウェーデンというのは食料自給率一二〇%ですからね。それでも各家に備蓄というものを要請している。ロシアが北欧を攻めるというのは、中国が台湾を攻めるよりは私は確率が低い、かなり低いというふうに思っています。しかし、それでも彼らはそういう危機感を持っている。

 だから、この摂取量ベースの食料自給率も、目標が、今の四五パーから、五三%。本当はこれは一〇〇パーじゃないといけないんですよ。つまり、国民が生き延びるために国産で賄う、その今の発想でいうと、輸入が全く頼れないということを前提にすれば、一〇〇%じゃないといけない。

 そういう中で、大臣にお聞きしたいのは、平時の食料自給率の指標でいうと、みんな、お米離れしてパン食に行ってしまっている、したがって、お米を作るより麦を国産で作った方が食料自給率は上がる。しかし、これは、有事の際に果たしてそれでよいのか。

 単純化すると、白と黒じゃないというのはよく分かった上で申し上げているんですが、お米と小麦、全く輸入が途絶したときに、小麦は、私の理解では外国よりも三倍ぐらいのコストがかかる。ただ、お米に比べると単収量やコストは低い。低いけれども、現実的にはそれなりの作地面積がないと、そんな、とても国民を食べさせるわけにいかぬ。今、六百万トンの国民の需要に対して百万トンしか生産量はない。だから、そういうことを考えると、ある専門家たちに言わせると、二毛作も可能なお米の方が有事の際にはやはり大事だと。

 そういうことを考えると、やはり逆算していって、平時でもお米の生産量というのは非常に重要だというふうに考えますが、大臣、私は非常に大臣の見識を尊敬しておりますので、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

江藤国務大臣 大変興味深く聞かせていただきました。

 千八百五十というのを、ぎりぎりの数字、そして、ぎりぎりという数字は、最低という言葉を審議官も使いました。そして、平時という言葉を使いました。ということは、その裏側があるわけですよ。

 直接我々が国家的な危機をあおるようなことを言うことは適切ではありませんから、余り有事という言葉は使いたくありませんが、しかし、委員がおっしゃるように、有事の際にいかに国民の生命と財産を守るかということは、政治家としては考えなきゃいけない大変基本的な部分だと思います。

 確かに、生きる、飢えないということを考えたら、米が有効であることは間違いないと思います。ですから、今回の米の高騰だけではなくて、これから日本の安全保障を確立する上でも、バッファーとして有効である米の輸出を三十五万トン、これも様々な御意見があります。本当にそんなことができるのかという批判的な御意見もあれば、様々ありますが、しかし、今回、昨年で十八万トン、米の作付、生産量は増えました。そして、今年も多分十九万ぐらい増えるんじゃないかと言われています。ということは、米は、増産しようと思ったら、もちろん種もみがないとできませんけれども、しかし、生産余力としてはあるし、やはり作りやすいということは間違いない事実だと思います。

 ですが、国民の多様な要望に応えていくことも国家の一つの命題でありますし、食料自給率を上げる上では、輸入依存度の高いものについては国産でできるものはやっていくんだということも正しい政策でありますので、そこは、どうバランスを取っていくのか。有事のことを常に考えながら食料生産をやるのか、それとも、やはり食料自給率、そして海外依存度の低下を目指した農政の方向性でやるのか、非常に悩ましいところでありますが、両方同時に考えなければならない命題だというふうに思います。

北神委員 ありがとうございます。

 先ほども話があって、まさか私が、れいわ、維新さんと同じことを言うというのはちょっと自分でもびっくりしているんですけれども、やはり、防衛も大事ですけれども、食料がなければ兵糧攻めに遭ったときに全く立たない。二〇〇二年にブッシュ大統領がアメリカで、やはり、幾らアメリカが世界的な一番の軍事力を誇っていても、完全に食料で兵糧攻めされたら元も子もない、だから食料というのは防衛的な資源である、こういう演説をされています。

 また、余りうんちくばかり言ってもしゃあないですけれども、論語で、孔子が、政は何なのか、政治は何かというふうに問われたときに、食を足す、食料を生産する、それから兵を足す、防衛だと。それで、弟子が、そのうちどっちもできない場合、どっちを選ぶんですかと言ったら、兵を去る、やはり食料だということを言っていますので、もう時間が来ましたけれども、最後に、もう時間がないか、ありますか。

御法川委員長 まだ大丈夫。

北神委員 最後、こういうのを、八億円つけてシミュレーションというものを農水省でやろうとしていると思いますけれども、今私が申し上げたようなシミュレーションをされているかどうか、伺いたいと思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、来年度より、スイスも参考に、不測時の食料自給力をシミュレーションするモデルの構築に着手しようということで検討しております。先ほどの途絶時のような状況を想定したシミュレーションについても、このシミュレーションモデルの構築の中で検討してまいりたいと考えております。

北神委員 もう終わりですね。終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

御法川委員長 この際、鈴木貴子君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、れいわ新選組及び有志の会の七派共同提案による新たな食料・農業・農村基本計画に基づく施策の推進に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。岡田華子君。

岡田(華)委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    新たな食料・農業・農村基本計画に基づく施策の推進に関する件(案)

  地球規模での気候変動や国際情勢の不安定化などにより世界の食料需給及び貿易が不安定化する一方、我が国では農業者の減少・高齢化、農地の減少が進行している。こうした中で食料安全保障の確保に向けて国内の農業生産基盤を維持・強化することは、農業者のみならず、国民共通の重要かつ喫緊の課題である。こうした認識の下、政府は、改正食料・農業・農村基本法に基づく初めての食料・農業・農村基本計画の策定及び同計画に基づく施策の推進に当たり、左記事項に万全を期すべきである。

      記

 一 水田政策の見直しに際しては、水田活用の直接支払交付金など現行の水田政策の課題を整理・総括した上で、国内生産の増大、生産性向上、農業者の所得向上、農地の維持などの改正基本法の趣旨を踏まえて新たな水田政策を検討し、その具体化を図ること。その際、

  1 飼料用米、WCS用稲による耕畜連携など、優良な取組を行ってきた農業者の営農意欲を損なわない制度設計とすること、

  2 国産飼料の生産性向上を図るため、多収性品種中心の飼料用米に加えて、地域の気候、飼料の利用実態等を考慮して、青刈りとうもろこし等の生産振興を図ること、

  3 水田・畑、作物ごとの直接支払いも含めた農業所得の状況を調査し、営農意欲を損なわない制度とすること、

  4 産地交付金については、現状の活用状況を調査し、農業者、都道府県の取組に支障をきたさないようにすること、

  5 農地の維持のための支援策を講ずることによってもたらされる効果、他国における同様の制度の実施状況を十分考慮し、納税者の理解を図りつつ、直接支払制度の設計を行うこと、

  6 保水、洪水防止や生物多様性など水田の有する多面的機能は、国民全体に裨益する重要な機能であることから、水田における生産性向上に向けた支援を行いつつ、必要な水田面積の維持を図ること、

  などに留意しつつ、生産現場が混乱することがないよう、生産者をはじめ関係者の意見を丁寧に聴取し、合意形成に努めること。

 二 今後検討される新たな水田政策の下においても、米の生産・流通・備蓄政策全般について必要な検証を行うこと。

 三 中山間地域等直接支払交付金等の見直しにおいては、条件不利の実態に配慮し、共同の取組や農業経営に対する支払い等について、よりきめ細やかな支援を拡大すること。加えて、中山間地域においても稼げる農業を実現するべく、施策の充実・強化を図ること。

 四 食料安全保障の強化を図るため、麦・大豆等の国内生産の増大に資するよう、適地適作の観点も踏まえ、地域の判断の下で「汎用化」「畑地化」に向けた農業生産基盤整備を推進すること。

 五 食料安全保障の強化には、多収性や高温耐性、病害虫抵抗性等の特性を有する優良な新品種の開発及びその適切な利用が一層重要であることから、産官学の連携の下、知的財産の流出に留意しつつ、先端技術も活用した新品種の育成に継続的かつ安定的に取り組むこと。

 六 農林水産物・食品の輸出については、国内農業・食品産業の供給能力の維持・強化、所得向上に資するため、輸出額五兆円目標の達成を目指し、マーケットイン、マーケットメイクの視点に立ち、日本食レストラン・現地スーパー等と連携し需要開拓を進めるとともに、産地形成や品目団体の輸出力強化を図ること。米の輸出については、二千三十年に三十五万トンという意欲的な目標を達成するため、基盤整備や多収性品種、有機米の普及等により米の生産コストの低下及び付加価値の向上を図ることで国際競争力の高い産地の育成に取り組むこと。

 七 食料の価格形成については、肥料・飼料等の資材費、人件費、燃料費等の生産コストが上昇する中、これらの合理的な費用を考慮し、農業、食品産業等の食料システム全体の持続性の確保が図られる価格形成が、生産・加工・流通・小売・消費等の食料システムの幅広い関係者の合意の下で、適正に行われるよう実効性ある仕組みを構築すること。

   また、関係省庁や地方公共団体等と連携しながら、農産物等の生産・加工・流通・小売までの全ての食料システムの関係者において効率化・低コスト化を図ること。

 八 今後、多くの高齢農業者のリタイアが見込まれる中で、農業者世代の均衡を図り、農業者の年齢構成を持続可能なものとするため、担い手の育成・確保、円滑な経営継承を図るとともに、新規就農者の育成・確保に向けて就農準備資金・経営開始資金、雇用就農資金の交付や技術サポート体制の整備、退職者の就農促進、農業高校等の支援・整備など総合的な支援策を講ずること。また、就農準備資金等の支給対象年齢要件の引上げも含め検討すること。

 九 食料自給率の向上を図り、食料自給力を確保するためには、生産基盤である農地が適切に保全・管理されることが重要であることに鑑み、地域で策定された地域計画について不断の見直しを行い、家族経営・法人経営を問わず意欲ある担い手への農地の集積・集約化が進むよう支援すること。

   また、農業を副業的に営む経営体など多様な農業者については、農地の保全・管理に寄与する等、重要な役割を果たすだけでなく、農業水利施設の維持管理、農村社会・集落機能の維持、農業以外の多様な地域資源を活用した付加価値創出などの役割を果たすことが期待されることから、関係省庁、民間企業との連携を通じた、地域と関係企業等との結合の推進など、意欲的な取組を促進すること。

 十 農業生産活動は自然環境の保全等に大きく寄与する側面と環境に負荷を与える側面があることに鑑み、温室効果ガスの排出削減、生物多様性の保全及び有機農業の推進等みどりの食料システム戦略に示されたロードマップを実行し、環境と調和の取れた食料システムの確立を図ること。また、農業生産活動が与える環境負荷については、畑作中心の欧米諸国と、アジアモンスーン地帯における水田・稲作が中心のアジア諸国では、その発生状況等が異なると考えられることから、温室効果ガス削減の観点だけでなく、生物多様性の保全、土壌流出の防止等、様々な観点からの調査研究を推進すること。

 十一 国際的な原料調達競争の激化により、食品産業において、輸入原材料の調達リスクが増大していることを踏まえ、国内農業との安定的な取引関係の確立及び強化を促進するとともに、環境負荷低減に向けた取組を促進すること。また、輸入相手国の農業生産活動における人権状況に留意し、フェアトレードが確保されるための取組を推進するとともに、人権・栄養への配慮等に関する国際的なルール形成に向けた議論が進んでいることから、国際的なルール形成に積極的に参画し、併せて対応策の検討等に関して企業の取組を推進すること。

 十二 農福連携の推進に当たっては、障害者が貴重な農業人材として活躍できるよう、障害者等が働きやすい環境の整備を図ることにより、障害者等の就農促進や継続的な雇用を図るとともに、障害者等が生きがいをもって農業に関する活動を行うことを促進すること。

 十三 農村は、多様な地域資源を有する場であり、農村における地域社会の維持が農業の持続的な発展に不可欠であることに鑑み、農村における他産業の振興の意義に留意しつつ、地域資源を活用した伝統的な食品産業に係る事業活動を推進すること。また、農村の振興に当たっては、鳥獣害対策の強化が不可欠であることから、地方財政措置の拡充を含め、地方公共団体の取組の推進を図ること。

 十四 都市農業は、都市住民に農産物を供給する機能のみならず、都市の防災や、景観の保全、都市住民の農業に対する理解の醸成等の多様な機能を果たしていることに鑑み、その重要性を明確化すること。

 十五 農村は、その共同活動及び個々の営農活動によって、食料の安定的な供給を行う基盤であり、かつ、国土の保全、自然環境の保全等の多面的機能が発揮される場であることに鑑み、日本型直接支払制度の在り方について、その実施状況、効果も踏まえ、検討すること。

 十六 学校給食の無償化に当たっては、成長期にある児童・生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスのとれた豊かな食事を提供するという給食の意義に鑑み、地場産品や有機農産物、米粉の活用などを図るため、十分な財源の確保に努めること。

 十七 食料安全保障の確立が我が国喫緊の課題となる中、新たな基本計画を真に実効あるものとするため、所要の予算を確保すること。特に、食料安全保障の確保に向けた新たな政策に要する予算については、既存の農林水産予算のほか、別枠予算を措置するなど、従来の枠組みにとらわれず、政府全体で財源の確保に努めること。

 十八 昨年来生じている米流通の混乱について、その発生要因を分析し、流通、在庫状況の調査、関係者への情報提供の在り方等、必要な改善を行うこと。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣江藤拓君。

江藤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいります。

御法川委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

御法川委員長 次に、内閣提出、漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣江藤拓君。

    ―――――――――――――

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

江藤国務大臣 漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。

 漁業災害補償制度は、昭和三十九年の創設以来、中小漁業者の相互救済の精神を基調とした漁業共済事業の実施を通じて、漁業再生産の確保と漁業経営の安定に重要な役割を果たしてまいりました。

 一方で、我が国の漁業においては、近年の海洋環境の変化等によるサンマ、スルメイカ等の不漁など、漁業経営の不安定性の増加を踏まえた複合的な漁業への転換や、輸出も見据えた、国内外の需要に応じた養殖生産の推進が急務となっております。

 こうした状況を踏まえ、漁業災害補償制度の改善を図り、同制度が今後とも漁業経営の安定に資する役割等を着実に果たしていくことができるよう、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、漁業種類ごとに契約を締結する現行の方式に加え、二以上の漁業種類を一括して対象とする契約を締結することができる方式を創設し、共済事故の発生率の低下等を踏まえた掛金率を適用することとしております。

 第二に、共済の対象とならない漁業業種であっても、共済の対象となっている他の漁業種類と併せて副業的に営まれているものについては、共済の対象とする特約を追加することとしております。

 第三に、養殖共済において、契約全体での損害状況に応じた支払いに加えて、網生けすなどの養殖施設ごとの損害状況に応じて共済金を支払う特約を追加することとしております。

 このほか、漁業共済組合連合会への漁業施設共済に係る再共済に付す割合を引き上げる措置等を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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