衆議院

メインへスキップ



第8号 令和7年2月10日(月曜日)

会議録本文へ
令和七年二月十日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 安住  淳君

   理事 井上 信治君 理事 齋藤  健君

   理事 牧島かれん君 理事 山下 貴司君

   理事 岡本あき子君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 三木 圭恵君

   理事 浅野  哲君

      井出 庸生君    伊藤 達也君

      稲田 朋美君    井野 俊郎君

      国光あやの君    小寺 裕雄君

      後藤 茂之君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    田所 嘉徳君

      田中 和徳君    谷  公一君

      土屋 品子君    寺田  稔君

      中西 健治君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      三谷 英弘君    山田 賢司君

      今井 雅人君    大西 健介君

      神谷  裕君    川内 博史君

      黒岩 宇洋君    近藤 和也君

      酒井なつみ君    階   猛君

      藤岡たかお君    太  栄志君

      本庄 知史君    米山 隆一君

      早稲田ゆき君    渡辺  創君

      池下  卓君    高橋 英明君

      徳安 淳子君    西田  薫君

      臼木 秀剛君    長友 慎治君

      橋本 幹彦君    赤羽 一嘉君

      大森江里子君    河西 宏一君

      櫛渕 万里君    田村 貴昭君

      緒方林太郎君

    …………………………………

   外務大臣         岩屋  毅君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       加藤 勝信君

   厚生労働大臣       福岡 資麿君

   農林水産大臣       江藤  拓君

   国土交通大臣       中野 洋昌君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     林  芳正君

   国務大臣

   (国家公務員制度担当)  平  将明君

   国務大臣

   (防災担当)       坂井  学君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)         三原じゅん子君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  齋藤  敦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       松本 敦司君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋 謙司君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房長)            中村 英正君

   政府参考人

   (こども家庭庁支援局長) 吉住 啓作君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 熊谷 直樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮崎 敦文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 藤川 眞行君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  黒田 秀郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  間 隆一郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            谷村 栄二君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  杉中  淳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房上下水道審議官)       松原  誠君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  五十嵐徹人君

   政府参考人

   (国土交通省物流・自動車局長)          鶴田 浩久君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大和 太郎君

   予算委員会専門員     中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     中西 健治君

  小林 茂樹君     井出 庸生君

  高木  啓君     鈴木 隼人君

  深澤 陽一君     井野 俊郎君

  酒井なつみ君     太  栄志君

  藤岡たかお君     渡辺  創君

  池下  卓君     高橋 英明君

  橋本 幹彦君     臼木 秀剛君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     小林 茂樹君

  井野 俊郎君     深澤 陽一君

  鈴木 隼人君     高木  啓君

  中西 健治君     小寺 裕雄君

  太  栄志君     酒井なつみ君

  渡辺  創君     藤岡たかお君

  高橋 英明君     池下  卓君

  臼木 秀剛君     橋本 幹彦君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  三谷 英弘君     河野 太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和七年度一般会計予算

 令和七年度特別会計予算

 令和七年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

安住委員長 これより会議を開きます。

 令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算、令和七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣参事官齋藤敦君外二十四名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

安住委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木隼人君。

鈴木(隼)委員 自民党の鈴木隼人でございます。

 質疑の機会をいただいたことに感謝申し上げます。

 まず冒頭、本日は岩屋外務大臣にも御出席いただいておりますが、訪米、大変お疲れさまでございました。日米間の緊密な関係を深めていく上で、大変意義深い会談となったこと、心から感謝申し上げます。帰朝報告は石破総理から後日の本会議で行っていただくことと思いますので、本日は、別のテーマで質疑をさせていただきます。

 まずは、国際世論戦についてです。

 国際場裏において、我が国の国益を損するような世論戦が極めて活発に行われているのは御案内のとおりであります。はっきり言って、目に余る。その目的が、裏で糸を引いている団体の性質に鑑みて、第一に、我が国の国体をゆるがせにすること、第二に、我が国を国際的に孤立させることであるのは明らかなのであります。

 本日の私の持ち時間の前半は、この国際世論戦にいかに徹底的に対峙していくかという議論をさせていただきたいと思いますが、まずはその手始めに、政府としてこの国際世論戦の現状をどう認識しているのか、岩屋大臣の御認識をお聞かせください。

岩屋国務大臣 歴史問題や人権に関して、国際場裏において、我が国の考え方及び取組が正しく理解されていないと思われる場合、あるいは事実に基づかない見解が示されている場合には、適切でない内容はこれを訂正し、また、日本の考え方及び取組が正しく理解されるように、様々なレベルで関係者に丁寧かつ真摯に説明を行ってきております。

 今後も、国際社会において我が国の考え方及び取組が正しく理解されるように、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 昨年の秋、女子差別撤廃委員会は、我が国に対して、皇位継承における男女平等を保障するためという名目で、皇室典範の改正を求めてきました。我が国の中核ともいうべき皇室の伝統とともに守られてきたしきたりに対して何たる物言いか。噴飯甚だしいとはこのことであります。

 この件につき、岩屋大臣の受け止めと、これまでの対応についてお聞かせください。(発言する者あり)

安住委員長 御静粛に。

岩屋国務大臣 先般公表されました女子差別撤廃委員会、CEDAWといっておりますが、CEDAWによる我が国の女子差別撤廃条約の実施状況に関する第九回政府報告を受けた最終見解につきましては、我が国からの度重なる申入れにもかかわりませず、確定版として公表されている最終見解においても、皇室典範の改正に係る勧告が維持されております。

 この状況を踏まえまして、皇室典範に定める我が国の皇位継承は国家の基本に関わる事項でございますので、同委員会が取り上げることは適当ではない、皇位継承に関する記述は受け入れられず、削除されるべきであるという我が国の考え方を書面で提出し、また、同委員会のウェブサイトにも掲載をいたしました。

 さらに、今般、同委員会の事務を行っている国連人権高等弁務官事務所、OHCHRに対して、我が国が用途を特定して毎年拠出している任意拠出金につきましては、その使途からCEDAWを除外するということを伝達をいたしました。あわせて、本年度に予定されていたCEDAW委員の訪日プログラムの実施を見合わせるということを伝達をしたところでございます。

 繰り返し丁寧に我が国の考え方を真摯に説明してきたにもかかわらず、皇室典範に関する記述の削除要求が受け入れられなかったことは大変遺憾でございまして、そのことを重く受け止めて、政府としてこのような判断をいたしたところでございます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 これまでと比べて一歩踏み込んだ対応には感謝いたします。

 その上で申し上げますが、今回の事案は、我が国の国体の変革を図ろうとする企てであります。やっていいことと悪いことがある。今回の女子差別撤廃委員会による要求は、女子差別撤廃条約の締約国に対する審査の中で出てきたものです。すなわち、我が国がこの条約に加わっていることがあだとなり、かかる攻撃を招いているのが実情ではありませんか。

 私も、女子差別撤廃条約に加わることの意義は否定しません。しかし、条約に加わることと国体を守ること、一体どちらが大事なのか。私は、この女子差別撤廃条約の破棄も含めて、更に踏み込んだ対応が必要だと考えていますが、岩屋大臣はどうお考えですか。

岩屋国務大臣 今般の措置は、あくまでも、皇位継承の在り方、すなわち、我が国の根幹に関わる問題である事項に関して我が国の立場を明確に示すための対応でございまして、これまでどおり、この国連人権高等弁務官事務所あるいはCEDAWに対しての支援というものは続けることが適当ではないかというふうに考えております。

 この条約は、政治的、経済的、社会的その他あらゆる分野における女子に対する差別を撤廃し、女子による人権及び基本的自由の認識、享有及び行使を、男女の平等を基礎として確保するということを目的にしておりまして、締約国数は、現在、百八十九に達しております。

 この条約を締結したことは、我が国における男女平等を促進するという観点から、また、そのことに関する我が国の積極的姿勢を対外的に明らかにするという上で意義深いものであるというふうに考えておりまして、その条約の効力を失わせるということは、我が国としては適当ではないと考えているところでございます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 大臣の御答弁の内容については理解をいたしますが、私は納得しかねる部分がございます。

 この女子差別撤廃委員会を含め、国際場裏において示された意見書は、我が国においては勧告として紹介されます。この勧告という言葉は、原文を見ると、レコメンドという言葉が使われています。グーグルでレコメンドと検索すると、最初に出てくる日本語訳は、推奨するという言葉です。勧告と推奨では、随分と語感が違うと感じませんか。勧告という言葉の語感を改めてイメージするために、具体例を挙げます。

 労働基準監督署が出す是正勧告というものがあります。労働基準法違反が疑われる企業に対して、労働基準監督署は立入調査を行います。違法行為が認められた場合、労働基準監督署は、その企業に対して是正勧告を出します。この勧告に従わないと、更なる公権力の執行を受けるほか、刑事事件にまで発展することがあるのであります。

 どうでしょう。勧告というと、公権力の介入がちらつく、怖いものだという印象がありませんか。

 振り返って、原文にある言葉はレコメンドであります。これを勧告と表現するのは明らかにおかしいと思いませんか。国民の皆さんの誤解を招く表現だとは思いませんか。岩屋大臣の見解を伺います。

岩屋国務大臣 人権諸条約の委員会による総括所見については、様々な委員会によるこれまでの総括所見の仮訳との整合性や、多岐にわたる法令や専門用語、法令用語などを踏まえまして、可能な限り正確な訳の作成に努めております。こうした点を踏まえまして、レコメンデーションズを勧告と訳すことは適切だと考えているところでございます。

 法令用語辞典というのを見てみますと、勧告というのは、ある事柄を申し出て、その申出に沿う相手方の処置を勧め、又は促す行為をいうとされておりますので、勧告というものに強制力があるということではなくて、あくまでも勧め、促すということであろうと思いますので、これを勧告と訳すことは適切ではないかと考えているところでございます。

鈴木(隼)委員 大臣の御答弁自体はそういうものだと受け止めさせていただきますが、全く承服できないので、引き続き外務省とは意見交換をさせていただきたいというふうに思います。

 外務大臣への通告は以上となりますので、御退席をいただいて結構でございます。どうもありがとうございました。

安住委員長 では、退席して結構です。

鈴木(隼)委員 ここからは、林官房長官にお尋ねをいたします。

 国際世論戦や歴史戦を始めとする情報戦は、武力こそ使用しないものの、我が国への明確な攻撃であります。政府の中には、国際場裏において示された一意見にすぎないのだから、そこまで反応する必要なんてないだろうという見方をする人もいるでしょう。

 しかし、政府は勧告という強制力を伴うかのような表現を使い続け、マスコミはそれを大げさに拡散し、裏で糸を引く団体がマッチポンプで騒ぎ立てる。一面的な正しさで飾りつけ、あたかも正義であるかのように国民を洗脳する。そこから先は、社会規範が音を立てて変質、崩壊していく。精神的な中核を失った民族の存続は危ういものです。だからこそ、国体に関わるような事案については、その対応に一ミリの緩みも許されないのであります。

 現在も、省庁をまたがるような案件については内閣官房副長官補室が調整を行っていますが、基本は現場の省庁任せ。結果、全くもって十分な対応を取れていない。この実態をしっかりと認識した上で、国際世論戦や歴史戦を始めとする情報戦への対応について、内閣官房において、調整にとどまることなく、しっかりとした戦略を立てて、各省庁の対応を厳しく監督すべきだと考えますが、官房長官の見解をお聞かせください。

林国務大臣 今委員からお話のあったような問題は、御紹介いただいたように、複数の省庁にまたがります。内閣官房副長官補室が取りまとめて政府全体としての対応を行ってきた、そのとおりでございますが、内閣法に、内閣の重要政策に関する基本的な方針に関して企画立案、総合調整、これを内閣官房で行う、こうして書いてございます。

 官邸の司令塔的役割の下で政府一体となって取り組んでいくということでございますので、まさに補室任せにせずに、官房長官、副長官、特に政務の我々がしっかりと司令塔の役割を果たすという考えで取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(隼)委員 官房長官、そうであれば、しっかりと司令塔としての役割を果たしていただきたいと思います。

 国際世論戦は、読んで字のごとく、国際場裏における戦いであります。融和志向の外務省には、とてもじゃないが荷が重過ぎる。また、例えば、慰安婦像の撤去のような案件については、本来、外交ルートに加え、現場レベルで極めて機微な戦いを行う必要がありますが、それをやるにしても、中には外務省が立ち入るべきではない領域もあることでしょう。

 そう考えると、国に代わって国益を実現する民間の実動部隊の存在が欠かせません。現に、そういった活動を行っている民間団体は存在するのであります。しかし、彼らは手弁当で活動をしています。海外渡航には多額の旅費を要するし、場合によっては、生命の危険に直面するリスクすらあります。

 そういった国益を懸けて戦ってくれている数少ない団体を我々は大切にしなければなりませんし、もっともっと増やしていかなければならないと考えます。官房長官の見解をお聞かせください。

林国務大臣 政府として、国際社会で、やはり委員が先ほどおっしゃっておられたように、客観的事実に基づいて正しい認識が形成をされ、我が国の基本的な立場やこれまでの取組に対して正当な評価を受けることを強く求めて、いわれなき中傷、これには毅然と対応してまいります。

 今、委員からはいろいろな御提案もあったところでございますが、そういうことも念頭に置きながら、政府全体としてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(隼)委員 政府においては、今後、狭義の安全保障だけではなくて、こういった広義の安全保障についても危機感を持って体制を整備し、対策を検討していただけるよう、切にお願いをいたします。

 それでは、官房長官、御退席をいただいて結構でございます。ありがとうございました。

安住委員長 では、官房長官は退席してください。

鈴木(隼)委員 それでは、ここからがらっとテーマを変えまして、認知症施策について厚生労働省に伺います。

 町田市に就労型デイサービスを行っている介護事業者があります。利用者の方々からは、本当の自分でいられる唯一の時間だ、社会の役に立てているという実感があるなどと好評で、町田市以外の自治体でも同様のサービスを提供しようとしたところ、その自治体からは、デイサービス中の外出は許可しないと言われてしまいました。

 これまでも認知症サポートについてはそれぞれの地域性を踏まえた取組を行いましょうと言われてきましたし、その考え方も理解はできます。しかし、介護サービスに多くを依存している認知症の方にとって、提供されるサービスの内容や質が彼らの生活を大きく左右するのも事実であり、地域による不平等を訴える声は少なくありません。

 認知症の方へのサポートに関する自治体ごとの対応の違いをどう改善していくべきか、厚生労働省のお考えをお聞かせください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 認知症の人が孤立することなく、地域、社会、仲間とつながるコミュニティーがあり、生きがいや希望を持って暮らし続けることができるようにするためにも、認知症の人の多様な社会参加の機会を確保することが大変重要でございます。

 こうした観点から、介護サービス事業所が、事業所内で提供される機能訓練等に加えまして、事業所外でボランティア活動などの社会参加活動を組み込んで提供することが認められておりまして、厚生労働省において、こうした取組を実施する場合の留意点などを整理して自治体に周知をしているところでございます。

 現場の関係者や自治体からは様々な照会等をいただいておりまして、これらを踏まえて、地方自治体等との情報共有を更に充実させるとともに、好事例を全国に広げ、認知症の人の社会参加機会の確保に努めてまいります。

鈴木(隼)委員 是非そういった取組を前に進めていただきたいと思います。

 次に、法務省にお尋ねします。

 認知症の親の介護をしている方の中には、親の口座から介護費用の支払いができなくなったという経験をされた方もおられるはずです。認知症の方の財産管理については、成年後見人に担っていただくという選択肢も有力ですが、成年後見人の対応が厳格過ぎて使いづらいといった声も聞かれます。

 こういった現状について、法務省はどう考えておられるでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、現行の成年後見制度につきましては、本人にとって必要な範囲、期間で利用できないこと等から、より利用しやすい制度とすべきとの意見等があることは承知をしております。

 このような状況を踏まえまして、昨年二月、法務大臣から法制審議会に対して、成年後見制度の見直しについて諮問されたところでございます。

 現在、法制審議会におきましては、具体的な保護の必要性がある場合に、その範囲で制度の利用を開始し、その必要がなくなれば制度の利用を終了することを可能とするかという点も含めまして、幅広い論点について議論をされているところでございます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 是非議論を前に進めていただければと思います。

 法務省さんは、こちらで御退席をいただいて結構でございます。

 次は、再び厚生労働省にお尋ねをいたします。

 多くの病院や介護施設では、認知症の人にもしっかりとしたケアが行き届いていることと思いますが、中には、過度な身体拘束を行ったり、薬剤の過剰投与によって意図的にぐったりさせたりといったケースも報告されています。

 認知症の人の尊厳を尊重すること、認知症の人への正しい接し方などについて、専門職の方々も含め、改めて徹底すべきではありませんか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、認知症高齢者の増加が見込まれる中で、医療や介護の現場において、認知症の方の視点、立場に立って、尊厳を保持したケアが提供される人材を増やしていくことが大変重要でございます。

 厚生労働省におきましては、認知症に関する理解、行動心理症状に応じたケアを提供するための保健、医療、福祉の専門職に対する認知症対応力向上研修、それから、非薬物的介入を原則とした認知症の行動心理症状に対応する向精神薬使用ガイドラインの策定などの取組を実施してございます。

 こうした取組を通じまして、認知症ケアに携わる職員における認知症の理解を深め、認知症ケアの質の向上に取り組んでまいります。

鈴木(隼)委員 ありがとうございました。

 次は、福岡大臣にお尋ねをいたします。

 ある認知症の方の言葉で今でも忘れられないのは、外に出るのが怖かったです、認知症当事者は、世間では自分たちのことを人として扱ってもらえないと思っていますから、そうなると、家で死を待つだけの生活です、そんな暮らしが四、五年もたつと、身も心も朽ちてしまいますというものです。社会とのつながりを持ちながら暮らすことがいかに重要かと考えさせられます。

 そのためにも、社会の側の障壁を当事者目線で取り除いていき、認知症の人が安心して外出できる環境をつくることが重要です。現在、認知症官民協議会を通じて、各業界ごとにバリアフリー化の手引を作ってくれていますが、これは極めて有益な取組だと思います。

 こういった取組の現状について、福岡大臣、御説明いただけますか。

福岡国務大臣 御指摘のとおり、社会とのつながりは大変重要な観点でございまして、認知症バリアフリー社会の実現に向けまして、産業界を含めて社会全体で取り組んでいくということは大変重要なことでございます。

 この共通認識の下、日本認知症官民協議会が組織されておりまして、行政のみならず、経済団体や金融、交通、小売、医療、福祉などの業界団体、学会や当事者団体も含めて約百団体が今参画をしておられます。この協議会では、産業界の協力の下、認知症の方の生活に関わる業種向けに、認知症バリアフリー社会実現のための手引き、これも業種別にかなり細かく作成をされているところでございます。

 この手引を普及していくことは大変重要でございまして、官民一体となって行うことを通じて、各業界、業種における認知症への理解を深め、認知症バリアフリーの社会を実現してまいりたいと考えています。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 次も福岡大臣にお尋ねします。

 今御説明いただいたような取組に加えて大事なのが標識などのデザインです。例えば、トイレのマークがありますよね、青い男性のシルエットだったり、赤い女性のシルエットだったり。健常者は、あれを見れば、すぐトイレだと分かります。しかし、認知症の人は、あの絵を見ても、それがトイレを表していると認識できないんです。認知症の人が外出先で自分で判断して動けるような環境をつくる上では、社会のあらゆるデザインの見直しも必要なんです。

 福岡大臣、こういった課題を前に進めませんか。

福岡国務大臣 おっしゃるように、トイレの表示とか、大変分かりにくいものもあるというのは御指摘のとおりでございます。

 日常生活や社会生活を営む上で、障壁となるものを除き、自立した生活を送れるようにするということは大変重要なことでございます。

 このため、例えば、認知症の方が店舗で一日過ごしていただいて、ハード面での課題について考えていただいた御意見を企業の設備環境に生かすなどの取組も行われているところでございます。

 また、地域において、認知症の方の見守りを含む生活支援体制を整備するために、認知症の方の暮らしの手助けを行う認知症サポーターの養成、これも、今までの累計でいいますと約千五百六十七万人いらっしゃるということでございます。また、地域住民や地元事業者を巻き込んだ高齢者を見守るためのネットワークの構築、こういった地域の実情に応じた取組の支援を実施しております。

 引き続き、こうした社会環境の整備を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 各事業者における取組も大事なんですけれども、デザインということで考えると、やはりもうちょっとユニバーサルな取組も必要になってくると思いますので、是非いろいろな省庁を巻き込みながら、こういった課題を解決をしていっていただきたいなと。私も一生懸命サポートをさせていただきたいと思います。

 次も福岡大臣にお尋ねします。

 ある認知症の人の声を御紹介します。診断直後、病院の別室で、家族と一緒に、これからの心構えや様々な支援施策の説明、ピアサポートの紹介などを受けました、ピアサポートの集会に行くと、認知症の先達の皆さんから前向きな生き方や日々の工夫などの話を聞かせてもらい、認知症とともに生きる勇気をもらいましたと。

 このように診断直後からのサポートがその後のQOLに大きな影響を持ちます。まだまだサポートの人手が足りないようですが、福岡大臣、こういったサポートの充実に力を入れていきませんか。

福岡国務大臣 今御紹介いただきましたように、認知症の方やその御家族においては、診断直後は、認知症の受入れであったり、また、今後の生活の見通しなどについて大変大きな不安を抱えていらっしゃっておられまして、診断直後から適切な情報提供を行い、早期に心理面や生活面の支援につなげるということはとても重要なことだと考えております。

 このため、医療機関や地域包括支援センター等の関係機関が連携し、認知症疾患医療センター等の医療機関で認知症の方が相談支援を行うピアサポート活動の実施であったり、また、認知症カフェだったり本人ミーティングなど、認知症の方や家族が交流し、当事者同士がお互いに支え合う地域活動の更なる推進が求められていると考えております。

 昨年十二月に閣議決定いたしました認知症施策推進基本計画にもこうした取組の推進について盛り込ませていただいたところでございまして、今後、この計画に基づき、地方自治体においても計画の策定に努めることとされておりまして、こうした取組が着実に広がるようにしっかり支援を行っていきたいと考えております。

鈴木(隼)委員 是非よろしくお願いします。

 恐らく最後の御質問になるかと思います。事前に通告していた問いの二つを一つにさせていただきたいと思います。

 地元で、医師、歯科医師、薬剤師、いわゆる三師会の皆さんから、経営が非常に厳しい、このままでは地域医療が崩壊しかねない、これを真剣に考えてくれ、政府にちゃんと考えてくれというふうに指摘をいただいております。

 この点について、厚労省の受け止めと現状の対応をお聞かせください。

森光政府参考人 お答えさせていただきます。

 医療機関の経営状況につきましては、物価高騰や賃金上昇、それから医療需要の急激な変化などに直面していると認識しております。

 こうした中、令和六年度診療報酬改定で賃上げ等に関して一定の措置を講じた上で、昨年末に成立いたしました補正予算において、物価高騰に対する重点支援地方交付金の積み増しに加えまして、緊急的な支援パッケージによる医療機関への支援を盛り込むとともに、令和七年度予算案では、低所得者に配慮しつつ、医療機関の入院時の食事基準の引上げ等を行うこととしております。

 まずはこうした措置を着実に執行し、必要な支援が行き届くよう取り組むとともに、今後、補正予算等の効果や物価等の動向、医療機関の経営状況など、足下の情勢変化にも丁寧によく把握した上で適切に対応してまいりたいと考えております。

安住委員長 厚生労働省城医薬局長、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

城政府参考人 薬局の経営状況等についてお答え申し上げます。

 厚生労働省におきましては、医療経済実態調査によりまして保険薬局の損益等を把握しておるところでございまして、こういったものを使って診療報酬改定の基礎資料として活用しているところでございます。

 昨今の物価や人件費の高騰などの影響で、地域によっては、議員御指摘のように、経営に影響を生じている薬局があるというふうに承知をいたしております。こうした薬局への支援といたしまして、令和六年度の補正予算において措置されました物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を積極的に活用していただくよう、都道府県等にお願いをしているところでございます。

安住委員長 簡潔に。

城政府参考人 薬局については、引き続き、状況の把握に努めてまいりたいと考えております。

安住委員長 鈴木君、時間が来ています。

鈴木(隼)委員 以上で私の質疑を終了いたします。ありがとうございました。

安住委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。

 次に、太栄志君。

太委員 太栄志でございます。

 まず、岩屋外務大臣、この度の訪米、誠にお疲れさまでございました。トランプ大統領が第二期政権をスタートしたのが一月二十日、それから十九日後に日米首脳会談を行えたということで、これは調べてみたら戦後最速、二十一世紀でも最速だったということですね。そういった意味で、早い段階でそれぞれ新しい首脳同士が会談を行った、そのことにも意義があったと思っておりますし、まさに一番大事なこと、初めて同士、お互いの個人的な信頼関係をいかに築くか、そういった視点からも大変よいスタートだったというふうに評価をしております。この間、この首脳会談に向けて御尽力をされた政府関係者の皆さんに心からの敬意を表させていただきます。

 内容的におきましても、バイデン政権のときから、外交、安全保障、経済、それぞれ協力の基本的な枠組みをちゃんと受け継いでいく、継承していく、そういった意味でも意義があったと思っておりますが、いずれにしても、これからです、まさに。これからが日米関係の真価が問われる。これからまさに、長官以下の人事も決まっていきますね、アメリカは。そういった意味で、様々な政治案件も出てきますので、これからどう向き合っていただくのか、そういった視点から本日質疑をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず最初、お伺いしたいと思います。日本製鉄によるUSスチールの買収に関してなんですが、共同記者会見において両首脳は、買収ではなく投資だということでありましたが、これは、新しい、どういった枠組みになっていくのか。まさに買収と投資、これは同じ意味ではないのか。今後の方向性も含めて、同席されました大臣、御返答をお願いいたします。

岩屋国務大臣 今般の日米首脳会談については、追って総理から国会に対して御報告があろうかと思いますが、皆さんの御支援のおかげで何とか第一ハードルを越えることができたということに感謝を申し上げたいと思います。ただ、ハードルはこれからも続いていくと思いますので、気を引き締めてまいりたいと思います。

 お尋ねのUSスチールの件でございますが、今般の会談におきましては、両首脳は、日本企業による対米投資を含む日米経済関係の重要性、この大枠をまず確認をされました。その中で、共同記者会見において総理が述べられたとおり、このUSスチールの件は、どちらかだけが利益を得るということではなくて、そういう単なる買収ということではなくて、日本の技術と資金を活用して米国に投資を行うことで、米国や世界が求める優れた製品を共に生み出す、そうすることが大切だ、こういう認識を首脳間で共有をされたところでございます。

 具体的な中身については、個別の企業の経営判断に係ることでもありますので、政府の立場からコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、日本製鉄は本件を単なる買収と見ているのではなくて、大胆な投資を行うことで、米国や世界が求める製品の生産を行い、日米がウィン・ウィンになれるような提案を今検討していると承知をしております。

太委員 大臣、この案件、まさに経済安保上、また日米関係にとっても大変重要な案件でありますので、是非とも、引き続き、政府としてもしっかりと関与していただく、そのことが大事になってくると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次にお伺いしたいのが、防衛費の増額要求、防衛費の更なる増額の要求があったのかどうか。同席された外務大臣からまず御返答をお願いいたします。

岩屋国務大臣 防衛費の増額に対する具体的なお話はございませんでした。総理の方からこの間の我が国の防衛努力について詳しく丁寧に説明をしていただいて、基本的に御理解、評価を得たものというふうに受け止めております。

太委員 ですが、一方、この共同声明において、大臣、二〇二七年度より後も、以降も抜本的に防衛力を強化していくという記述があります。これは、更なる防衛費の積み増しをアメリカ側に約束したとも捉えることができますが、この点に関して、大臣、ちょっと詳しく御返答ください。

岩屋国務大臣 必ずしもそういうことではありません。そもそも、三文書の中にも、防衛力の充実強化は引き続いての課題だという趣旨の記述があったと思いますけれども、我が国としては、そこで、二七年で全部終わるということではなくて、引き続き充実を図っていくという趣旨のことを共同声明において述べているというふうに御理解いただければと思います。

太委員 分かりました。

 私も、確かに、防衛三文書の中での記載も含めて、これを了解しております。ただ一方、今の現段階というのは、二〇二七年度に向けてGDP比二%以内にするということで、国民の皆さんにも更なる御負担をお願いして今進めておるところでありますので、この記載を見ても、どうしても、もし新たな増額だったりとか政策変更が生じるのであれば、これはしっかりと国会審議で国民の皆さんに説明しなきゃいけない、また、理解していただかなきゃいけない、そういった案件でありますので、そこはちょっと御見解、これは防衛大臣でしょうか、ここに関して、その際にはしっかりと国会での審議をやっていただけるかどうか、その点、御発言をお願いします。

中谷国務大臣 具体的には、米側から防衛費の増額に係る要望が具体的にあったわけではございません。

 現在、二〇二七年度の防衛費の抜本強化、それと補完する取組を併せてGDPの二%を達するよう所要の措置を講じることとしておりまして、今後、この水準に達するように全力を挙げてまいるわけでございます。それ以降のことにつきましては、現在、そういう予定はいたしておりません。

太委員 中谷大臣、それ以降に関して、この記載だと誤解を生じかねないと思うんですよ。そういった意味で、それ以降に関してもしっかりと国会で審議していただける、国民の皆さんに御理解いただく、そういったことをしていただける、その点、御返答をどうかお願いいたします、防衛大臣。

中谷国務大臣 現在、二〇二七年度にそれを達するように全力を挙げて取り組んでいるわけでございますので、その必要がありましたら、当然、政府としても説明をしなければならないと思いますが、単なる防衛費の増額だけではなくて、あらゆる面での防衛力の抜本的増強という点で、今後とも努力してまいりたいと思っております。

太委員 では、どうか引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、思いやり予算、在日米軍の駐留経費負担に関して、この負担増しの要求があったのかなかったのか。その点、外務大臣、御返答をお願いいたします。

岩屋国務大臣 簡潔にお答えしますが、ありませんでした。

太委員 トランプ政権、今、同盟国に対しても強硬的な姿勢を取っているということで、例外なく我が国も、これからまさに負担増しということがあり得ると思いますので、可能性は高いです。そういった意味で、引き続きこの問題、防衛費の問題と併せて、しっかりと国会への説明もお願いしたいというふうに思っております。

 では、次に行きます。

 トランプ大統領は共同記者会見において、貿易相手国と相互に同様の課税を課す相互関税を導入する考えを明らかにしました。そして、今朝、トランプ大統領は、米国に輸入される全ての鉄鋼とアルミへの二五%の関税を発表しました。

 これに対して、日本に対して課す相互関税の具体的な品目について、今回、首脳会談において米側からの言及はあったのかなかったのか。そこを、外務大臣、相互関税に関してです。

岩屋国務大臣 これも端的にお答えしますが、いわゆる関税についてのお話はございませんでした。

太委員 なかったということで。まさに、米とか肉などの農水産物に対して課税が課されれば、これは重要な、日本経済へ影響は大きいです。そういった意味で、是非とも引き続きこの推移を注視していただきたいというふうに思っております。

 次に、パリ協定、WHO離脱に関する日本側からの何らかの発言が会談であったのかどうか。これも、同席された岩屋外務大臣、お願いします。

岩屋国務大臣 結論から申し上げれば、それについての話はございませんでした。

 日米関係の将来の在り方ということについて、安全保障、経済を中心に幅広く御議論をいただきましたけれども、特に、自由で開かれたインド太平洋を日米が今後とも中核となってしっかりと進めていこう、そういう大枠の話が中心でございました。

太委員 大臣、日本側からちゃんとそれを発信したかどうかというのが私の質問なんですよ。まず、それはありましたか。

 というのも、今大臣がおっしゃったFOIPにしても、自由で開かれたインド太平洋をつくっていくためにも、まさに多国間協定、これは共同声明にもちゃんと書いていますね、多国間協定に関しては、クアッドを含めてこれをしっかり推進していくと。ですが、一方で、パリ協定離脱、WHOからの離脱、この点に関して、そういったお考えを持っていたら、それこそしっかり発言すべきじゃないですか。

 大臣、その点に関して、発言がないというのはよくないですよ。お願いします。

岩屋国務大臣 今回は、言うまでもなく、石破総理とトランプ大統領との初の、初めての会談でございましたので、主に二国間関係や、そしてインド太平洋地域の諸課題を取り上げた会談でございました。

 日米両国、そして国際社会が直面する課題は実に多うございますが、今回の首脳会談では全てについて取り上げる時間はありませんでしたけれども、今後、会談は重ねられていくというふうに思いますので、他の諸問題についてもしっかり両国政府間で意思疎通を行っていきたいというふうに考えております。

太委員 大臣、これは、今大臣もおっしゃったとおりで、クアッドを含め多国間協定、多層的に進めていくということを共同声明でやっていますよね。それと関連していることなので、あえて質問していますので。全て、これは細かい案件じゃなくて、今どんどん米国が内向きになっていく中で、物すごく大事な案件ですので、私はこれをやっていただきたかった、残念だということをお伝えいたします。

 では、次に、今回の共同声明、岩屋外務大臣も物すごく大事にしてこられた、我が国としても物すごく大事にしてきた重要な概念、法の支配ですね。法の支配を基盤とするFOIP、自由で開かれたインド太平洋を堅持していくという話であったんですが、この法の支配という言葉、これがすっぽりと抜けているんですよね。これは大変深刻な問題だと私は思っておりまして、というのも、石破総理が訪米前に、予算委員会で、ここで、岡田克也議員との間で、法の支配の大切さというのを指摘されていて、しかも、石破総理が言っていたのは、首脳会談で米側と法の支配の重要性を確認する、そういうふうに答弁されていました。

 それでお伺いしたいのが、しっかりと首脳会談において法の支配の重要性を確認されましたか、岩屋大臣。

岩屋国務大臣 それは決して抜け落ちているということではなくて、法の支配は、言うまでもなく、自由で開かれたインド太平洋の中核的な理念でございます。今回の共同声明でも、そのことを堅持する、自由で開かれたインド太平洋を堅持するということを確認をしておりますし、力又は威圧によるあらゆる現状変更への試みに強く反対する旨を確認をしております。これはまさに法の支配の重要な要素であるというふうに考えているところでございまして、我が国として、法の支配を重視する立場には変わりはございません。

太委員 岩屋大臣、これはすっぽりと抜け落ちていますよ、確実に。大臣、そうじゃないですか。共同宣言にないんですよ、これは。

 いつからなくなったかというと、去年はずっとあったんですよね。まず、岩屋大臣と当時のブリンケン国務長官のとき、外相会談、昨年十月ですか、ありました。四月の日米首脳会談のときも、法の支配に基づくとありました。ですが、トランプ政権が誕生したのが一月二十日、その翌日にルビオ国務長官と岩屋大臣との会談、そのときも法の支配が抜け落ちているんですよ、見事に。抜け落ちました。抜け落ちています。大臣、抜け落ちているんですよ。

 今回も残念ながら、共同声明また共同記者会見でもなかったんですよね。これは意図的に抜かしたんじゃないか、そうとしか考えられませんので、ちょっと大臣、もう一度御見解。おかしいですよ、これは。抜け落ちていますよ。

岩屋国務大臣 私とルビオ国務長官との会談でも、法の支配ということを、私、直接申し上げましたし、そのときは文書を残すような会談ではありませんので、抜け落ちているという指摘は当たらないというふうに思っておりますし、今般、先ほど申し上げましたが、自由で開かれたインド太平洋、力による現状変更は認めないというのは、まさに法の支配の根幹でございますから、ワーディング上の変化というかはあったのかもしれませんが、基本的な考え方に全く変わりはないというふうに御理解をいただきたいと思います。

太委員 大臣、会談の中であって、大事だったら何で残さないんですか。これまで残していたんですよ、これまでは。トランプ政権がスタートするまでは。それが完全に抜け落ちています。大臣、抜け落ちているのに気づかない方がもっと問題ですよ。

 政府参考人に確認、事実関係。抜け落ちていないですか、共同声明の中に。一月二十一日の外相会談も含めて、ちょっと御見解をお聞かせください。これは大事ですので。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の日米首脳会談におきます事実関係につきましては、今、岩屋大臣から申し上げたとおりでございます。

 その上で申し上げますと、今年の一月の日米豪印、クアッドの外相会合におきます共同声明、ここにおきましても、法の支配、民主的価値、主権及び領土一体性が堅持され擁護される自由で開かれたインド太平洋の強化に向けた共通のコミットメント、これを再確認するというふうに明記されております。すなわち、トランプ政権との間でも考えをすり合わせているということでございます。

太委員 今私が言ったのは日米ですよ、日米。クアッドの話じゃないですよ。日米で確認できていないんじゃないですか、これは。確認できていますか。そこをお答えいただけますか、まず。日米の外相会談、首脳会談。

岩屋国務大臣 今も事務方から説明させていただいたとおり、トランプ政権発足後の初の外交の舞台が日米豪印の外相会談でございまして、そこにおいて、しっかり法の支配というのは確認をされております。

 したがって、その後の会談において、トランプ政権において、この法の支配という考え方が抜け落ちているということにはならないというか、そうではないというふうに思っております。

太委員 外務大臣、これは重要だったら書いてくださいよ。書いていないから、私、指摘しているのであって、ちょっとお願いします、外務大臣。

 これというのは我が国の平和にとって物すごく大事じゃないですか。中国の今の動き、どうですか。ロシアもそうじゃないですか。完全に法の支配を無視した動きに対して、だから、ずっとこれまでは、バイデン政権のとき、これまでの政権はずっと確認していましたよ。それはないことがおかしいと言っていますので。

 もうこれ以上、これは追及しませんが、どうか今後、次はいつですか、年内にももう一度首脳会談、トランプ大統領が来日する予定もありますよね、しっかりと書いていただく、大事だから書いていただく。これまでどおりですよ。特別なことじゃないです。これまでどおりにしていただきたいということで、これはお願いいたします。

 では、次に行きます。

 次に、日米2プラス2が早期に開催ということが共同声明で記載されて、これは物すごい大事だと私は思っていますので、そこへ向けて是非とも準備を進めていただきたいと思っていますが、ただ、じゃ、どうこれから同盟を深化させるか、そういった視点から考えたときに、日米の防衛協力の指針、日米ガイドライン、このことに関して、今回、首脳会談で何か言及はございましたでしょうか。お願いいたします。

岩屋国務大臣 ガイドラインという、何といいますか、今後のディテールについてまでは、初の首脳会談で議題になったわけではございません。ただ、両首脳は2プラス2の早期の開催を指示するということでございましたので、そのことも含めて、2プラス2という場も通じてしっかりと議論を行っていきたいと考えております。

太委員 是非とも、日米の関係を深化させる、そして、やはり我が国の抑止力を高めるためにも、特にこれは、前回改定してから十年たちますね。その間に反撃能力の問題が出てきました。本来であれば、日米の役割分担というのは大きく変わっていますよ、そういった中で、やはり新たな役割、任務、能力、しっかりと再調整していく。そういった意味で、防衛大臣も絡んでくると思いますが、是非とも、ガイドライン、そろそろこれは改定しないと手遅れになりますので、どうか、この点、進めていただきますようお願いいたします。

 次に移りたいと思います。TPPですね。

 TPP、今、CPTPPということで我が国が主導しながら、アメリカはトランプ政権のときに離脱をしました。ですけれども、一方、我が国政府は、バイデン政権のときにもずっと、ほぼ毎回、首脳会談のときにはTPPへのアメリカの復帰を要請してきましたが、今回の首脳会談、TPPに関して要請したのかどうか。それで、アメリカはどういった復帰要請に対する反応だったか。その点、教えてください。

岩屋国務大臣 何度も申し上げるようですが、初の日米首脳会談でございまして、いろいろ懸念されていたような課題もたくさんありましたので、まずは信頼関係をつくっていただいて、大枠について前向きな日米の関係をつくり上げるというのが目的でしたので、ディテールについてまで議論した会談ではございませんでしたけれども、共同声明にもありますとおり、自由で公正な経済秩序に支えられるインド太平洋地域の成長の共同での促進を追求することで一致をしたという記述とさせていただいております。

 CPTPPは、幅広い分野をカバーした高い水準の新たな共通ルールを世界に広めていく意義を有していると思っておりますので、我が国としては、この枠組みを活用して、自由で公正な経済秩序の拡大に引き続き取り組んでいきたいと思っておりまして、そういう考え方で米国に対してもしっかりと今後、意思疎通をしていきたいと思っております。

太委員 大臣、これは物すごく大事だと思っていまして、さっきから大事なことが多いんですが。

 大臣が先ほどからおっしゃっているように、FOIP、自由で開かれたインド太平洋を実現するためにも、今、アメリカはどんどん保護主義に走っていますね。そういう中で、どう自由主義を経済の面でも拡大していくのか。

 そういった意味で、やはりこのCPTPP、我が国がリードしてやっていますので、そこは大事だと思っていますので、是非とも今後も、次のまさに首脳会談。これはこれまでも言ってきたんですよ。もちろん最初だったということはありますけれども、是非とも今後しっかりと、アメリカの復帰へ向けて、実はトランプも、一度離脱表明した後、その一年後、USTRに対して、もう一度TPPに復帰できないかということを模索した時期もありましたので、不可能じゃないんです、これは。何とか、本気でやっていきましょう。お願いいたします。

 では、次に行きます。ここでちょっと一点お伺いしたいのが、石破政権の外交、安全保障政策の基本方針。その点に関して大臣からお話をいただきたいと思います。

 年末に私、アメリカへ行きました。そして、年明け、先月、台湾に行ってきたんですが、まさに両国の政府関係者といろいろと議論する中で、石破政権の外交政策というのがなかなか見えない、分からないという声を多く聞きましたし、特に私が今でも印象に残っているのは、石破総理はアメリカに行く前にまず中国に行くんじゃないかということを、真剣に不安を持っていらっしゃる方たちが何人かいたんですよ。

 そういった意味で、その点に関して、まさにこの外交を石破政権で担っている大臣から、石破政権の体系的な外交、安全保障の方針というところ、この御見解をお聞かせください。

岩屋国務大臣 既に、委員が御指摘になったような不安というものは払拭されているというふうに考えております。

 言うまでもなく、現行、ウクライナあり、中東あり、国際秩序が揺らいでおります。また、国際社会の分断が深まっております。我が国周辺の安全保障環境も戦後最も厳しいと言っていい状況にございます。

 その中で、石破政権としては、まず日米同盟を基軸にしていく、今後とも。そして、同盟国、同志国との連携を重視していく。多層的、多重的に同志国、同盟国との連携を積み重ねていく。そして、グローバルサウスを含む幅広い国際社会と連携をしていく。近隣諸国とは建設的で安定的な関係を築いていく。そのために、対話と協調の外交を積極的、戦略的に進めていく。これが、石破政権の基本的な外交政策だと申し上げてよろしいかと思います。

太委員 なかなかまだ分かりづらいですね、正直言いまして。

 といいますのも、岸田政権のときに、岸田総理、長らく、五年以上ですか、外務大臣をやっていて、就任当初おっしゃったのが、新時代のリアリズム外交。私は、岸田政権というのは、そういったしっかりと軸を持ちながら一貫した対外政策をやっていたというふうに評価しておりますが。

 私がここであえてそう言うのは、やはり今、本当に、国際情勢、これは相当厳しいですね。前のトランプ政権のときよりも更に厳しい。というのも、今、韓国が政変が起こってしまった、ロシアと北朝鮮がこれだけ急接近しているという中で、戦後、本当に確実に最悪な状況にある中で、どう我が国が国際情勢を冷徹に見据えて、パワーの分布というのをしっかりと分析をして、どう立ち位置を定めていくのか、そのことがまさに問われていると思っていますが、残念ながら、今の石破政権の一番問題なのは私は対中政策だと思っておりまして、その点、ちょっとお伺いしたいんです。

 昨年末、岩屋外務大臣、訪中されました。この訪中自体は私は大変意義深かったと思っていますし、その前が、当時の林外務大臣、一年半以上前ですね。一年半も日中で外務大臣がちゃんと相互に訪問して外相会談をやらない、これはある意味異常な状況でしたので、それを解消してくれた、それはよかったと思っているんですが、一方、そのときに外務大臣がおっしゃったのが、対中ビザの緩和ですね、この問題。これは、やはり私はタイミングが悪かったというふうに思っております。

 もちろん、中国といろいろな形のチャンネルで交流、人的交流も拡大していくということは物すごく大事ですし、私はこれはいつも外務委員会でもお話ししていますが、やはり我が国とアメリカは、中国に対しては、安全保障に関してはほぼ国益は合致すると思っています。ですけれども、一方で経済の問題、これは大分違いますので、そこは変にアメリカに引っ張られる必要は私はないと思っているから、そこはどう中国と共存していくのか、そこをしっかりと打ち立ててやっていくべきだと思っていますが、外務大臣、今回のこのビザ発行、条件緩和、これはなぜこのタイミングでやられたのか、その点に関してまず御説明をお願いします。

岩屋国務大臣 日中関係は、首脳同士で確認をしていただいたように、戦略的互恵関係を包括的に進めていく、そして建設的で安定的な関係を構築していくという方針で取り組んでいるところでございます。

 そのためには、国民同士の交流というか、ハイレベルも含めてですけれども、相互の往来を通じて問題あるいは懸案を一つずつ解決をしていく、協力と連携していける部分を一つずつ増やしていくという努力が必要だと思っております。

 査証については、昨年十一月三十日、中国は、日本人に対する短期滞在に係る査証の免除措置を再開をいたしました。これは当然、全国民が対象になるものでございます。こうした流れの中で、これは我が国独自の判断ですけれども、両国国民の相互理解増進、特に経済効果が大きく期待される観光の推進というものを勘案をいたしまして、許容できる範囲内の査証緩和措置を発表したところでございます。

 中身は、団体観光客は一回の訪日でこれまで十五日だったものを三十日間とより長く滞在ができる。そうすると、ゴールデンルートを外れた地域にも行っていただける可能性が増えてくる。それから、一定の経済要件、簡単に言うと、豊かな方々にはこれまで五年の観光有効査証を認めておりましたが、さらに豊かな方々に限定して十年間の観光数次査証を認めるということに方針としては決めさせていただきました。

 具体的なやり方については更に検討を加えていきたいと思っておりますが、我が国の観光振興あるいは我が国に対する理解増進に資するものとなってもらいたいと期待をしているところでございます。

太委員 外務大臣、人的交流、これは物すごく重要です。ですが、やはりタイミングなんですね。タイミングが私はよろしくなかったというふうに思っていまして、というのも、同じようなことを今中国はインドにもやっていますし、あとオーストラリアにもやっていますね。

 そういった意味で、その背景は、やはりトランプ政権の誕生、それを受けて、これから米中で緊張が高まっていく中で、あえて日本にすり寄ってきている。そこに対して、我が国としては、今、中国がまずビザを緩和されたというお話がありましたが、これはコロナ以前に戻しただけですよね。それに対して我が国として、私は、そこまでリアクションというのは本当に必要だったのか、必要じゃなかったというふうに思っています。

 というのも、もちろん、中国とのビザ緩和でインバウンドを引き寄せるとか、そういったことも大事ですよ。ですけれども、中国は、まさに米中関係の緊張の中で日本に対してアプローチをしている。これが一時的な対応だということは、これまでのずっと中国の行動を見ていたらそうじゃないですか。そこを我が国が軸足がないまま中国にすり寄ってしまっている。これが私は問題だと思っていますので、まずこの点が一つ。

 それともう一つ。やはりタイミングが悪いです。去年何がありましたか。シンセンで日本人の小学生が刺殺されたんですよ。そして、蘇州でもありましたね、お母さんとお子さんが刺されてしまう、そういった問題。中国で日本人がスパイ容疑で、合理的な理由がない中、ずっと拘束されています。これは幾つもまた相次いでいますよ。そういった案件。安全保障の問題でもあります。

 そういったときに、本来は、幾ら中国がすり寄ってきたといっても我々は毅然と対応しなきゃいけないときに、どうして軸足なくすり寄っていくのか。そこが私は問題だと思っています。そういった意味で、大臣、是非ともこれは改善していただきたいと思っています。

 あと、もう一つ。これは私、昨年の外務委員会でも質問しましたが、海外渡航危険レベルですね、これは変えられましたか。今どんな状況でしょうか、中国への海外渡航危険レベルですね。教えていただけますか。

岩屋国務大臣 様々なことを委員おっしゃいましたけれども、外交戦略というのは、何といいますか、皆まで言ってしまえばおしまいよというところがありますので、なかなか全てを説明できないところはございますけれども、委員が御指摘になった点なども様々、総合的に勘案して日中関係を進めているということを御理解をいただければというふうに思っております。

 それから、日中の外相会談におきましては、今委員が御指摘になったような問題始め、日中間の懸案事項については全て強く申入れを行っております。中国側もそれは受け止めてもらえたものというふうに私は考えております。今後、さらに粘り強く交渉を行っていきたいと考えております。

 それから、危険情報、渡航情報については、渡航、滞在に当たり特に注意が必要と考えられる国、地域に関して発出をしております。

 中国においては、一部の地域がレベル一、その他はかかっておりません。適宜、領事メールやスポット情報等も通じて臨機応変に情報発信や注意喚起を行ってきておりますが、今後とも、きめ細やかな情報発信を通じて在留邦人の安全確保に努めてまいりたいと思っております。

太委員 大臣、是非とも、これは本当に日本人の命に関わること、邦人保護、石破総理もずっと大事にされていることだと思っていますので、どうかそこは本当に改めていただきたいと思っていますし、渡航警戒レベルの問題、これは我が国だけですね、中国周辺の先進国で渡航警戒レベルゼロなのは我が国だけですよ。いいかげん、私は、これはしっかりと、中国への過度な配慮というのはおかしいですので、是非とも、おかしいです、本当に。どうかそこは見直していただきたい。中国に誤ったメッセージを送っていますので。と思っています、私は。そこを是非ともよろしくお願いいたします。

 次に、防衛大臣にお伺いしたいと思います。

 今回の日米首脳会談共同声明におきまして、台湾海峡の問題、大分踏み込んで見解を述べられたのはよかったと思っています。力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対すると。威圧によるということ、ここも含まれたということでありますが、今後、台湾海峡の平和と安定を守るために日米が協力していくということでありますが、それでは、日本と台湾、これから防衛協力をどう深めていくか、何か大臣の方で御見解がありましたら教えていただきたい。お願いいたします。

中谷国務大臣 台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえまして、非政府間の実務関係として維持していくという立場でございます。引き続き、台湾に対する我が国の立場を踏まえながら、適切に対応していきます。

太委員 特に、台湾と今、防衛当局間同士の情報共有というのがなかなか進んでいないということがあると思っていますので、平時から是非ともこれを進めていただきたいというのをちょっとお願いしたいということと、済みません、時間になりました。あと、拉致問題も、これはトランプ大統領は相当、米朝交渉に前のめりになっていますので、そこは我が国が、拉致問題を置き去りに絶対してはいけないですから、そこをしっかりとコミットしていく、関与していくということで、外務大臣、是非とも関わっていただきたいと思っていますし、外交、安全保障は、まさに国益をどう最大化していくか、党利党略は関係ないと思っていますので、是非とも、引き続き、両大臣の取組を進めていただきますよう、よろしくお願いいたします。

 以上となります。

安住委員長 これにて太君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。

 今日は農林中金の話を中心にやらせていただきたいと思いますが、その前に、ちょっと順番を入れ替えまして、今大変大きな問題となっています高額療養費の見直しの問題について、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 厚生労働省は、先週の金曜日、七日の午前に全国がん患者団体連合会の方々と面会をされたと思います。その中では、いろいろな要望があったと思いますけれども、その要望の中に、引上げ案の一時凍結を検討するようにという内容があったというふうに思います。

 まず確認ですが、その認識でよろしいでしょうか。直接お会いになった鹿沼保険局長にお伺いします。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 事務方として、先週金曜日に、全国がん患者団体連合会を始めとする患者団体の皆様と、お話をお聞きしました。あわせて、本日の午前中も、引き続き、もう一回お話をお伺いさせていただきました。

 その中で、患者団体の皆様方からは、高額療養費制度の持続可能性の確保の観点から見直し自体は理解をする一方で、今回の高額療養費の見直しについては、引上げについては一旦凍結を、再検討してほしいというお話がありました。

 その上で、検討に当たっては、長期に継続して治療を受けている方への配慮、これは多数回該当の方ですが、そういったところへの配慮、また、中間所得層への負担軽減、これは主に付加給付の話をされていました。また、検討プロセスの見直し、当事者の参画とか、そういったことが必要といったお話があったところでございます。

渡辺(創)委員 今御答弁にありましたが、きちんと、引上げ案の一時凍結を検討していただきたいという要望は、局長として受け止めているということだと思います。

 大臣にお伺いしますが、そういう要望があったこと、一時凍結を求めるというお話があったことは、局長からきちんと大臣に御報告されていますか。

福岡国務大臣 今局長が話しましたので重複は避けますが、先週金曜日及び本日お会いして、その内容については報告を受けております。

渡辺(創)委員 大臣にもう一回確認しますが、一時凍結ということが、いろいろ御説明はありましたけれども、まず前提として、それを検討していただきたいというのが強い要望である、その認識に大臣は立っていらっしゃいますか。

福岡国務大臣 まず、私もこの後のステップでお会いさせていただきますが、しっかり患者団体さんの声を踏まえながら、その上で、従来から申し上げていますように、そういった方々の思い、それと併せて、保険の持続性であったり、皆様方の保険料負担との兼ね合いもありますから、そういった中で、どういう解決がいいのか、引き続き模索していきたいと考えております。

渡辺(創)委員 我が党の酒井議員の質疑に対して、石破総理は、一番苦しんでいる方々の声を聞かずにこのような制度を決めていいとは思っていないとおっしゃっているわけですから。

 やはり、当事者の皆さんの強い要望のところを、恣意的に都合のいいところだけを切り抜いて、それで要望を聞いたというような形にすることは許されないと思います。重たい要望をきちんと受け止めるというところからきちんと取り組んでいただきたいというふうに思いますので、その点、お願いを申し上げます。

 この週末の報道によると、先ほど局長のお話にもありましたが、政府は、直近十二か月の間に三回以上限度額を超えた場合に、四回目以降の限度額を抑える多数回該当、これを加えていくという修正を検討しているというような報道が出ています。

 まず確認したいんですが、この多数回該当というのに当てはまるのは、高額療養費制度のどの程度のウェートに当てはまるか、事務方から御答弁いただければと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 済みません、ちょっと今手元に、大変恐縮ですが、今、その数字は持ってございません。

 その上で、週末、多分記者の方でいただいたのが、先週……(渡辺(創)委員「聞いたことに答えてください」と呼ぶ)いいですか。分かりました。

 では、以上でございます。

渡辺(創)委員 これは通告していますし、事務方から返答もいただいていますけれども、それをここで答弁できないということ自体が、ちょっと厚労省の姿勢がいかがなものかというふうに思いますが、ちょっと時間がもったいないので。

 もう一回答弁できますか。

安住委員長 ちょっと待って。

 答弁者はどうしたらいいの。何を希望ですか。

渡辺(創)委員 きちんと数字が出てくるなら答弁いただきたいというふうに思いますが。

安住委員長 では、ちょっと速記を止めてください。

    〔速記中止〕

安住委員長 速記を起こしてください。

 では、渡辺君、今の答弁は留保して、分かり次第答弁させますので、質疑を続行してください。

渡辺(創)委員 我々がちょっといろいろ試算したもので調べてみると、二割程度じゃないかと思うんですが、答弁は後ほど聞きますけれども、これだと、八割の方々は今の状況を克服することができなくて、二割の方々にしか当てはまらないということになるような気がします。

 先ほど局長の答弁にありましたが、今日午前中、患者団体と会われた中で、厚生労働省は、多数回該当、この見直しをやるという話を当事者団体の皆さんにされたようですけれども、これで本当にきちんと、困っていらっしゃる皆さんの救済になる、今日お話しされたということのようですから、大臣も水曜日に会われる予定だと思いますが、これで本当にきちんとした救済になる、大臣は責任を持ってそう言えるというお気持ちでいらっしゃいますか、今。御答弁いただきたい。

福岡国務大臣 報道等について今言及がありましたが、まだ私どもとして最終的にこうするということを、結論を得ているわけではございません。

 私も、水曜日にお会いした上で、様々な観点から結論を導き出していきたいと考えています。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 今の答弁を大事にしていただきたいと思うんですね。これでは、一部の皆さんを何とかカバーするという話にしかなりません。やはり一時凍結が必要だと思います。そのことまできちんと拡大して考えられるように引き続きの検討を続けていただきたいと思いまして、答弁がないままでありますが、この件については後の仲間に託して、次のテーマに行きたいと思います。

安住委員長 戻ってきたら答弁させます。

渡辺(創)委員 また分かったら、どこかで御説明ください。

 では、続けて、農林中金の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 農林中央金庫が巨額の赤字見通しを公表しています。農林中金は、二〇二四年度決算において、二〇〇八年のリーマン・ショック時を大きく超える一兆五千億超の赤字を計上する見通しとされてきましたが、先週金曜日、七日に、昨年四月から十二月までの九か月分の決算として新たな発表を行っています。この内容はどういう内容になっているでしょうか。農林水産省に確認します。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 先日、農林中金は、令和六年第三・四半期決算におきまして、約一・四兆円の赤字である旨を公表したところでございます。

渡辺(創)委員 一・四兆円の部分もありますが、最終的に三月期には赤字が二兆円に達するという話も出ているのではないかと思いますが、そのことは把握していませんか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 農林中金の赤字につきましては、その有する利益剰余金の範囲内で価格の低下した債券を売却する、いわゆる損切りをするということでございますので、今年度通期の赤字は、剰余金の範囲内の、約二兆円の範囲内に収まるというふうに考えております。

渡辺(創)委員 この件は五月から報道等も含めてずっと見ていますが、もちろん見通しですから、いろいろ変化する要素もあるのは分かりますが、小出しに小出しにというか、少しずつ額が膨らんでいって、いよいよこの段階で二兆円の可能性という話が見えてきたという状況のように見えています。

 資料一を御覧いただきたいと思いますが、農林中金の経営状況の推移を示しています。左が経常利益で、右側が当期純利益です。

 左側の二〇〇八年のところがリーマン・ショックで、その後、黒字が続いてきましたけれども、二〇二四年度の見通しが大きく落ち込んでいる赤の部分で、最終的には二兆円の赤字が視野に入るという状況です。表からは分かりませんが、この三十年というスパンで見ると、住専問題のとき、そしてリーマン・ショックに続く三度目の赤字転落ということになるかと思います。

 金融庁にお伺いをしたいと思いますけれども、やはりこれはかなりインパクトのある数字だという事態だと思うんですけれども、金融機関としての安定性や健全性等には課題がないのか、見解をお伺いいたしたいと思います。できれば大臣に。

加藤国務大臣 今、御質疑の中で、農林中央金庫の二五年三月期決算は、低利回りの外国債券の損失処理を主因として、多額の赤字が見込まれております。

 一方で、同金庫は、規制基準を、CET1というものなんですけれども、超える十分な自己資本を有しており、財務の健全性は確保されているという認識をしておりますが、金融庁としては、引き続き、農林水産省とも連携しながら、同金庫の健全性などについてはしっかりモニタリングしていきたいと考えています。

渡辺(創)委員 このニュースが最初に出てきた段階では加藤大臣は担当、所管ではなかったと思いますが、金融行政にも明るいお立場から、これを最初に聞かれたとき、どういう印象をお持ちになったでしょうか。

加藤国務大臣 最初というのは去年の春ぐらいだったと思いますけれども、農林中金が相当規模の赤字を出しているなという、ニュースに触れてそんな印象を持ちましたが、それ以上については、今こういう立場でございますから、これ以上申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

渡辺(創)委員 この二兆円水準というのは、今日は江藤大臣もお越しいただいていますが、江藤大臣や私が選出の宮崎県の一般会計は六千五百億ですから。そして、農水省の当初予算は二兆二千七百億ですので、ほぼそれに匹敵するような額の赤字が単年度で出るという話でありますので。

 金融庁にもう一つお伺いしたいと思いますが、この事態に、農林中金は一兆四千億円の資本増強を図るというふうにしています。この資本増強の原資はどのような形で調達されるというふうに把握をされているでしょうか。細かい説明は要りません。端的に、事務方からで結構ですので、御答弁ください。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、農林中央金庫におきまして出資及び劣後ローンを受け入れて資本増強を進めるということでございますけれども、この原資は系統金融機関からいただくというふうに承知をしております。

渡辺(創)委員 系統金融機関というのは、つまり、JAグループからその分の資金が出てくるということで理解しますが、それでいいですか。

伊藤政府参考人 そのように認識をしております。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 農林中金は、今は民間金融機関であるわけですが、他の金融機関とは異なって、農林中金法に基づいて設置されている協同組織金融機関です。全国の農林水産業に関わる、JAやJF、Jフォレストなどを構成する組合員の方々が貯金した資金が農協や信連などを通して農中に集まるということになります。もちろん、一次産業に関わらない准組合員の方々の資金も同じルートに乗るわけであります。

 農林中金は、二〇〇八年のリーマン・ショックの際にも、JAからの出資を元に一・八兆円の資本増強を図っています。赤字転落のたびにJAからの資本増強で損失処理をしているというふうに見えなくもないということかと思いますが、もちろん農林中金はJAバンクの中心ですし、グループの資金を運用して利益を上げて、その利益を奨励金等でJAグループに還元するという役割を持っているわけですし、その還元額も年間三千億に上ったりするわけですので、農林中金と会員であるJAの関係は極めて特別なものというのは分かります。

 ただ、通常はそういう助け合いもあるので、困ったときはという関係にあることは分かるんですけれども、これがほかのメガバンクであったら、なかなか、資本増強を図るというのは大変骨の折れる話だというふうに思うんです。

 今回、あるメガバンクの役員の方にお話を伺いましたが、そもそも、金融機関にとって、資本を毀損しないことというのが極めて重要なことということであって、裏返せば、増強しなければならないほど資本を毀損したというのは実に責任の重いことなのかなというふうにも受け止められるというお話を聞きました。金融機関が増資をしようとすれば、当然、常識的に考えれば株価だって下がるわけですから、それは株主にとっても望ましいことではないというのが普通の話だというふうに思います。

 金融庁にお伺いをしたいと思いますが、今回のJAによる一・四兆円超の資本増強をどのように受け止めているのか。答弁をする上で、金融機関にとって資本増強を図らなければならない事態というのはどのようなものか、また、他のメガバンクであれば同じような事態にどのような形で資本増強を図ることが考えられるのかということを踏まえて、御答弁をいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 個別金融機関の評価について申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、一般論といたしましては、金融機関が十分な資本を確保することは、健全性の観点から極めて重要であるというふうに考えております。

 したがいまして、増資をするということは、その観点からは望ましいということでございますけれども、その原因につきましてはそれぞれの金融機関において区々でございまして、今回のような損失を念頭に資本増強する場合もございますし、経営戦略上、資本を厚くするという観点から増強する場合もあるというふうに考えております。

 なお、御質問の三点目でございますけれども、他の株式会社である銀行などと比べて、今回、若しくは協同組織金融機関の増資についてどう評価するかということは、出資の対象者、可能なものも異なりますので、なかなか一概には申し上げられないと考えております。

渡辺(創)委員 ありがとうございます。

 今回の農林中金の巨額の赤字見通しというのは、リーマン・ショックのときと大きな違いがあるというふうに思うんです。リーマン・ショックのときは、メガバンクも含めて、金融機関が軒並み大変大きな苦労をしたという状況でありましたが、ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、今回は農林中金の独り負けという状態であるわけです。

 ほかのメガバンクは過去最高益に近い決算の見通しを上げていますし、資金運用という観点では共通項があるのがGPIFではないかというふうに思うんですけれども、ここも順調な運用をしているという状況ですね。これも金曜日の報道ですが、収益率四・二一%という数字を出しています。

 資料をお配りしていますので御覧いただきたいんですが、資料二は、農林中金と他メガバンクの収益構成を比較したものです。資料三は、農林中金と他メガバンクのバランスシートに計上されている有価証券の種類のバランスを比較したものです。

 御参照いただければと思いますけれども、農林中金の利益構造は、メガバンクで収益の四〇%強に当たる貸出金利息が、農林中金では僅か一二%しかない。もう一つの特徴は、他行が一〇%強である有価証券利息配当金が、農林中金は五〇%を占めている。さらに、有価証券売却益等が三〇%あることを踏まえると、有価証券関係の収益が全体の八〇%にも及ぶということです。

 引き続き、資料三を見ていただきたいと思いますが、これは各行が所有している有価証券の種類別の比率ですが、農林中金は、他行に比べて、外国債券への依存度が五四%、突出して高いということが分かります。

 農林中金はJAグループへの高く確実な還元を組織の使命としているわけですので、特別な事情はあると思いますけれども、この間、集まってくる資金を貸出しに回すことができなくて、そういうジレンマの中で、九〇年代の後半から国際分散投資の方針を進めて、リーマン・ショック後は、リスク性の高い投資を避け、安全性の高い長期債券への依存度を高めた。結果、低金利政策が続く中で、資産運用の軸を米国債中心の外国債に置くしかなかった。

 これでうまくいっていた時期もあったわけですが、二〇二二年以降に、欧米諸国の複数回にわたる利上げの結果、調達金利である短期金利が運用利回りの長期金利を上回る逆ざやが発生して、外国債券への依存度が高いことがあだになってしまって、含み損がどんどん拡大していった。さらに、経営判断としての損切りのタイミングを逃し続けて今の事態に陥ってしまったというのが、今回の事態を分析する状況じゃないかというふうに思うんです。

 ここでお伺いをしたいと思うんです。

 今お話ししてきた構造というのは、決して農林中金が当初から危険なかじ取りをしてきたという話ではないと思うんです。さっき言った事情等も含めればそういう状況にあったと思いますが、皮肉にも、リスクを避けた結果がこの状況を招いた。他メガバンク等と比べれば、やはり異質な特徴を持って、非常に特異なポートフォリオの構成になっていたことは、金融界の皆さんであれば周知の事実だったんじゃないかなと思うんです。

 金融庁にお伺いしたいと思いますが、金融庁は、メガバンクや農林中金、ゆうちょなど九つの金融機関を年間を通してモニタリングをされていると思います。リスクを分析されて、フィードバックレターなどで、指導監督する立場としてのコミュニケーションも常に取られていると理解をしています。

 素朴な疑問なんですが、農林中金のポートフォリオ等のリスク認識について、日頃のコミュニケーションの中で、こういうことに陥る可能性があるということを認識できていなかったのか。また、認識できていたのであれば、もちろん民間の金融機関の経営ですから、どこまで言えるかはあるかもしれませんが、そういうやり取りを農中との間でやっていたという事実はあるのかどうか。その辺、はっきりとお答えいただければと思います。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 今委員御指摘のとおり、金融庁では、農林中央金庫に対して、通年検査ということで、専担者を配しまして、年間を通じて重点的にモニタリングをするという金融機関に指定して対応しているところでございます。

 このモニタリングに当たってはでございますけれども、農林中央金庫のビジネスモデルが委員御指摘のとおり有価証券運用中心であり、市場環境の変化に対して脆弱な収益構造であるということを認識をしておりまして、米国金利が急上昇した二〇二二年よりも前から、ポートフォリオの分散化や収益源の多様化、有価証券運用に伴う金利リスク等の大きさに見合ったリスク管理体制の構築など、必要な改善を促してきたところでございます。

渡辺(創)委員 今お話があったように、二〇二二年から改善を促してきた。

 促してきたけれども、結果としてこういう事態に陥った、このことは、金融庁、どうお考えなんですか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 市場が相手でございますので、なかなか思ったとおりにならないということはございますけれども、先ほど申し上げたような観点で改善を促してきたところにもかかわらず、今回のような大幅な有価証券運用の損失が出たということは、大変遺憾に思っております。

渡辺(創)委員 ありがとうございました。

 話をちょっと前に進めたいと思いますが、今回の事態は五月に発覚をしました。農林水産省は、JAグループの出資による資本増強が決まると、時間を置かずに、九月二十七日には農林中金の投融資、資産運用に関する有識者検討会を設置しています。経営局長が主催ということで、七名の有識者で構成されていて、金融庁や農林中金も出席されていると思います。四回の会議を重ねて、先月二十八日に検討会の報告書をまとめています。

 迅速な対応というか、かなり急いだという感じがありますけれども、検討会設置の目的と狙いというのを改めて伺いたいと思います。農林水産省。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 委員おっしゃるように、逆ざやによって含み損が増嵩する中で、農林中金は、含み損によって毀損した資本をカバーするための資本調達を行う、それを行った上で、低利回りの資産の売却を行うことを決定したわけでございます。

 農林水産省といたしましても、農林中金の含み損が拡大していること、また、そういった運用の改善について、これまでも注視をしておりましたけれども、今年度巨額の赤字が発生する事態となったことを重く受け止めておりました。

 昨年八月の農林中金の増資発表によって対外的な信用不安というのはかなり解消されましたので、速やかに検証を開始いたしまして、農林中金の赤字により、意思決定についての組織的なガバナンス、又は、我々として重要な農業向けの融資についての体制等に関する農林中金の業務の見直しを行うという観点から、検証会を開催したところでございます。

渡辺(創)委員 ここで金融庁に念のために確認しておきたいと思いますが、この報告書はあくまでも、もちろん有識者の報告書でありますが、やり取りをする中では、農水省は同じ問題認識の中に立っているというふうに言っています。

 金融庁もずっと出席をしていたわけですけれども、これは金融庁も了解し、同じ認識に立っているのだと理解をしていいでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私もオブザーバーとして検証会には参加させていただいております。活発な議論が行われまして、報告書の内容については、私も、もっともだというふうに考えているところでございます。

渡辺(創)委員 有識者検討会の報告書を見ていくと、ポートフォリオ運営方針など、市場運用を含む農林中金の業務執行の意思決定を担う重要機関である理事会の課題を指摘しています。ほかのメガバンク等の金融機関では、金融の専門家や弁護士、会計士など様々な分野の社外取締役を積極的に登用しているということも触れていると思います。

 農水省に伺いますが、農林中金の理事構成はどうなっていますか。端的にお伺いします。

杉中政府参考人 農林中金の理事七名、これは全て、農林中金のいわゆる生え抜きの職員から理事に任命をされております。

渡辺(創)委員 今ありましたように、奥理事長を筆頭に七名の理事全ての皆さんが農林中金出身のプロパーということで、他のメガバンクと比べればかなり特殊という状況かと思います。

 単純比較はできないでしょうが、その他の銀行等は皆さん、過半に近いぐらいの社外取締役がいらっしゃいますし、二〇〇八年まで協同組織金融機関ということでは一緒であった商工中金も、今は十三名中七名と、過半を超えて社外の方々がいらっしゃるという状況です。

 検証委員会では、更に加えて、農林中金の理事七名のうち、市場運用の経験者が二名しかいないということについても触れております。これが、多様な専門性を有する理事会が適切に方針決定をできる体制になかったのではないか、それが必要ではないかという指摘をされているところかと思います。

 ただ、この件、ちょっと皮肉だなというふうに感じるのは、農林中金がこのような理事構成になっている理由というのは、農林中金法の二十四条の五の第一項で、理事の兼業制限を受けているという事情があるわけですね。これは、平成十四年の法改正で兼職、兼業を禁止したためだというふうに思います。会社法で外部取締役の推進を図るというのはこの法改正をやったよりも後の時期なので、こういう若干ちぐはぐな状況が起きているんだと思いますが。

 この規定が農林中金の理事構成を硬直化させてしまっているという認識を、そもそも、この法律にも精通している農林水産省ですから、そういう認識を元々持つことはできなかったんだろうかというのが素朴な疑問としてありますけれども、この辺りの問題認識は、農林水産省としては、今回の事態又は検討会の報告を受けるまで、自発的にはなかったんだろうか。検討会報告を受け止めるとなれば、法改正も当然必要になってくると思いますので、その法改正のイメージも含めて、御答弁をいただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、平成十三年の農中法改正前までは、主務大臣の認可により兼業、兼職が可能でございまして、実際には、会員団体である農協組織の会長などが理事に就任をしていた。同年の改正におきまして、金融が高度化しておりますので、理事の兼業、兼職を禁止することによって、金融の専門的知識を持った者に理事を限定しようという目的があったというふうに承知しております。

 一方、議員御指摘のように、令和元年の会社法改正で、上場企業においては社外取締役の設置が義務化されている。その点につきましては、検証会におきましても、複数の委員から、農林中金においても専門性の高い外部の見識を導入することが必要として、外部理事の重要性の指摘を受けたところでございます。

 農林水産省としては、報告書の提案を重く受け止めまして、兼職禁止の規定も含めまして、今後早急に必要な検討を進めていきたいと考えております。

渡辺(創)委員 この報告書の中では、ちょっと質問にはしませんけれども、ほかにも農林中金の組織体制の課題をいろいろ指摘していて、運用するフロント側とチェックをする側、それとそこに業務を委託している理事会の関係性において、システムとしては堅牢なシステムができているように見えるけれども、実態として、それが機能するような丁寧な運用というか、それがなされていたのかということを指摘しています。今日は聞きませんが。

 先ほども金融庁にも伺いましたし、農水省の立場からも分かると思うんですけれども、定期的にモニタリングをしているわけですね。そうであれば、恐らく、金融庁の皆さん等々が見れば、これはもしかしたら、組織の中でこういう課題を抱えてしまっているということがうかがえたんじゃないのかなという気もするわけです。もしそこがちゃんと機能するような状態になっていれば、もちろん、どこまでできるかの問題はあると思いますけれども、今回、二兆円水準の赤字を出すというようなことには至らなかったのかなと思いますので、その辺を、ちょっとここは指摘にしたいというふうに思います。

 あと、あわせて、報告書は、さっきも言いましたが、GPIFを比較対象にして、ファンドマネジャーのマネジメントに関する優秀な人材の育成の仕組み等もやはり着実に進めるべきだというふうに言っています。GPIFが極めて好調な成績を残している中ですので、この指摘はやはり重く受け止めていかなければならないんじゃないかというふうに思います。

 江藤大臣に、お待たせをいたしました、お伺いをしたいというふうに思います。

 一月二十八日に検討会の報告書を受領されていると思います。その際に、農林中金という名前に恥ずべきようなことだと思っている、検証内容を尊重させていただき、農林中金に対してしっかり指導をしていきたいというふうにコメントされたと報道等で出ております。

 大臣にお伺いをしたいんですが、この農林中金という名前に恥ずべきようなことということの含意といいましょうか、ここにはどんな思いが含まれているのか、御説明をいただきたいと思います。

江藤国務大臣 かなり強い言い方をしたなと思っておりますが、私が前の農水大臣のときに、A―FIVEというのがありました。非常に、これは出資を含めて、ファンドの形で農業を支えようというものでありましたが、出資先も見つからない、そして赤字も垂れ流す、民主党の皆さん方からも厳しい指摘をいただいて、これをやめてしまいました。

 そのとき以来、農林中金の幹部と会うときには、もっと農業部門の出資を増やすべきだ、法人化も進んでいる、そして流通や加工の段階でも非常にニーズは大きいんだ、どうして農林中金という名前であるのにそういうところに直接的な融資をしないんだということをずっと申し上げていました。

 ですから、私は名前が業務内容と合っていないということをずっと思っていたんですね。そして、この二兆円に近い赤字を出すということで、そしてまた、その資金の埋め合わせに、地方にもまたお願いしなければならない。こういったことは、私は恥ずべきことだと思いますよ。

 ですから、農林中金法をこの際しっかり改正をして、今御指示をいただいた理事の構成も含めて、それから出資先も、ちゃんとリスクマネーを取るような経営体制に私はなってほしいということで、省内で検討を進めてまいります。

渡辺(創)委員 私も、私は江藤大臣の隣の選挙区でありますが、今回質問するところは、正直いろいろ迷いがありました。

 特殊な存在とはいえ、民間の金融機関でありますので、法令違反が疑われるならともかく、純粋な経営の失敗という言い方もどうかと思いますが、という事態に対して、余り政治的プレッシャーが高まり過ぎるのも望ましくないと思う。

 ただ一方で、農林中金が運用している資金というのは、全国津々浦々の農林水産業に関わる方々が一生懸命汗をかいてためたお金であったりとか、厳しい環境だったり、自然環境も厳しい中で、こつこつとためたものを納めている、それが原資になっていっているわけですね。それは、農政に詳しい江藤大臣、宮崎県の中山間地の農家の皆さんがどんな御苦労をされているか、その思いを一番お分かりのところだというふうに思いますけれども。

 更に言えば、この農林中金を構成している会員である諸団体の皆さんというのは、日本の一次産業を中核的に構成している組織でありますから、ここにも、ある意味ではそこを支援するという形で、多様な形で、公の支援であったり公の資金というのも、間接的に会員の皆さんのところにはバックアップが行っているわけですので、やはり今回のことというのは極めて重要なことだと感じたところです。

 そういう農業者、漁業者や林業者の皆さんの思いというところを大臣はどうお感じになっているか、ちょっとそこも改めてお伺いをしたいと思います。

江藤国務大臣 これは、先ほど御指摘いただいたように、配当金であったり奨励金であったり、六十兆円近いお金を預かって、それを運用して、それが、八割近い農協は今赤字ですから、それの運営にしっかり役立っているということは間違いないと思います。

 しかし、それは信頼して預けているわけであって、やはり我々が、我々というのは、農業者、地方の農協組織、漁協組織、信連、林業もそうですけれども、そういった方々の御苦労が、何だか知らないけれども、遠いところにいる人が運用して穴が空いた、穴が空いたから埋めてくれ、それはないだろうというのは正直な気持ちだと思いますよ。

 やはり信頼の下に組織は成り立つものでありますから、農中もしっかり、地方あってこその組織であるということをこの機会に改めて自覚してもらいたいと思います。

渡辺(創)委員 ちょっと、この件で最後の質問にしようと思いますが、昨年、新基本法というか、改正基本法もできて、日本の農業も大きな節目を迎えました。今年は、間もなく基本計画が閣議決定しようという段階です。

 その中で、食料システム全体を強化していく上でも、農林中金を含むJAグループに期待される役割というのは、時代の変化の中での役割の変容も加味しながら、ある意味ではしっかり大きなウェートを占めているということは認識しなきゃいけないと思うんです。

 その中で、今回の赤字決算につながった理由というのも、るるお話ししたように、やはり農中が運用して大きく出た利益が、JA、本来的業務がなかなか赤字が続く中で、金融事業で成り立たせているという面があると思います。この構造について、農水省ではどのような認識をお持ちか。このままでいいのか、やはり何らかのことを考えていく方向を向かなきゃいけないのか。その辺、大臣の御見解はどうでしょうか。

江藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、八割方が赤字ですよ。しかし、集荷であったり出荷であったり、そういうことを整理統合して黒字に転換したところも一部あります、秋田の方で。ですから、そういう努力はしっかりやらなければいけないと思います。

 しかし、協同組合でありますから、こういう方々がおられるおかげで営農指導が行われるということもあります。これはお金にはなりません。相談相手になる、新規就農の人たちの指導をする、それから、災害が起こればJAの職員が真っ先に現場に駆けつけて、片づけから何からやるわけですよ。これも収益性とは全く関係がない。

 協同組合という意味合いも持ちながら、しかし、そこには経営という感覚も全くなくていいということではありませんので、やはり経営改善の努力は各地方のJAにおいてしっかりやっていただきたいというふうに思っておりますし、農林水産省としても応援をしたいと思っております。

渡辺(創)委員 本当に、今大臣から御答弁があったように、協同組合としての役割というのを、農政の方向性を更に強化し、転換も必要だという時代状況の中だからこそ、しっかり考えていく必要があるというふうに思います。

 本来は、この後、農中若しくは農業系統の投資をもっと農業分野に増やすという話を聞きたかったんですけれども、もう大臣が先ほどその方向性を御答弁されましたので、そこについては、この後、委員会等で議論させていただくことにつないでいきたいと思います。

 先ほどちょっと積み残しになりました高額療養費の件ですが、回答が用意されているようであれば、御答弁いただきたい。

鹿沼政府参考人 先ほどは大変申し訳ございませんでした。

 多数回該当そのものの数というのはちょっと私ども把握していないところがあるので、やや近似値という形でお許しをいただければ、年度における高額療養費の受給者数等を分母にして、あと、多数回該当というのは、過去十二か月の間に三回以上該当した人が、四回目以降、料金が引き下げられるというものですので、一年間の間に四回以上該当されている方を分子にして捉えますと、二割という数字になります。

 ただ、この場合、一回の方であったとしても、過去、要するに前の年度で対象になっていた方は多数回該当の可能性もありますので、近似値ということでお許しをいただけたらと思います。

安住委員長 渡辺君、間もなく時間が参ります。

渡辺(創)委員 今御答弁いただいたように、多分、僕らが試算した金額ベースで見ても、人数ベースで見ても、大体二割というのは、近似値とおっしゃいましたが、そういう数だと思います。

 八割と二割です。二割の皆さんだけを救済というかバックアップするということだけではなくて、やはり声を上げていらっしゃる、苦しい状況にある多くの患者さんたちが、分断が生まれないように、きちんと幅広く考えていくということは極めて大事だと思いますので、石破総理もああおっしゃっているわけですから、その総理がおっしゃっていることの本質的な意味をしっかりと捉えて厚労省には対応いただきたい、財務省の皆さんにもしっかり聞いていただきたいというふうに思いまして、それで質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

安住委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次に、徳安淳子さん。

徳安委員 日本維新の会の徳安淳子でございます。

 昨年十月に初めて当選をさせていただき、早速にこの場で質問させていただけることに、本当に、皆様、ありがとうございます。

 さらには、皆さんおっしゃっていたように岩屋大臣にも直接お疲れさまでしたと申し上げたかったんですけれども、おられないので、取りあえず、取りあえずというか、日本維新の会からのお話をさせていただきます。

 この度、石破総理、トランプ大統領の日米両首脳が初めて対面でお会いし、堅固な日米同盟を確認し、世界の平和と安定のために結束していくことを誓った意義は大きく評価をいたします。

 もちろん、真価が問われるのはこれからです。安全保障や経済、通商など、両国間、地域間、国際社会にまたがる広範な課題をしっかり手を携えて解決していくべく政府には尽力していただきたい、そう考えておりますし、責任政党である我が党も積極的に提案、協力してまいります。

 冒頭、まずそのように申し上げて、質問に入らせていただきます。質問は、身近なことをまず二点お尋ねしたいと思っております。

 一つ目、こども未来戦略に関してでございます。

 加藤財務大臣の財政演説にもありました、こども未来戦略に基づく子育て支援の本格実施、複数年度で計画的に取り組むこととしている重要課題への対応などに重点を置いて配分しているという令和七年度予算と言われておられました。

 子供たちの中には、しかしながら、虐待やネグレクトといった様々な環境に置かれている子供もおられ、今回は、児童養護施設や里親制度支援の予算に関して、三原大臣にお聞きをいたします。

三原国務大臣 こども未来戦略につきまして、児童養護施設等に入所する子供の学習環境整備等の支援強化ですとか、家庭養育環境を確保するための里親委託等の推進なども記載をさせていただいております。

 令和七年度予算案につきましては、こうした方針を踏まえまして、一時保護施設のお子さんは通学が困難な場合もあります、それで学校等と連携してリモート授業の実施、そのためにタブレットの学習が可能となるような必要経費を補助するとか、あるいは障害児の里親への訪問支援、障害児施設との連携によって支援を行うということで、障害児里親等支援体制強化事業というのも創設、これを盛り込んでおります。

 今後とも、御指摘のような子供たちへの手厚い支援に取り組んでまいりたいと思っております。

徳安委員 今、るるいろいろと施策を展開してくださるということで、増額されていっている部分もあるんですけれども。

 そうしますと、まず、施設から自立して就業していく、社会人として働いている方々、そういった方々の本当にしっかりと生活が成り立っているのかどうかという、その先の子供たちの実態などをどのように把握されているんでしょうか、お尋ねいたします。

三原国務大臣 社会的養護の元を巣立ってからのアフターケアということだと思いますが、御指摘のような、施設の入所を解除されて、社会的養護経験者につきましては、アンケート調査等を通じて、施設の退所後の生活費ですとか学費に不安を抱えていることが多い、生活が厳しく学校を中退する方の割合が高いことなどを課題として把握をしていたところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、令和四年の改正です児童福祉法、これによりまして、社会的養護経験者等の実情把握や自立のための必要な援助、これを新たに都道府県等の業務として法律上位置づけるとともに、児童自立生活援助事業といいまして、今まで十八歳ですとか二十二歳と言っていた、そういう年齢ではなくて、必要なときに必要な援助が受けられる、対象者の年齢要件を弾力化したということであります。そしてまた、虐待経験がありながらも今まで公的支援につながっていなかったという方も含めて、生活ですとか就労、自立の支援ということ、これを、社会的養護自立支援拠点事業、こうしたものも今年度から創設して施行をさせていただいております。

 令和七年度予算案では、都道府県等が支援対象者のニーズ把握を進めるための補助というものも盛り込んでおりまして、こうした取組を通じて国としても都道府県の実態把握というものに進めてまいりたいと思っております。

徳安委員 実際のところ、レクでお聞きしたときには、実態の把握というのがまだまだ途中で、なかなかしっかりと把握し切れていないというふうにもお聞きしました。

 そこが一番また大事なところかなと思うんですけれども、退所した後に、やはり、社会に出て、どれだけ普通に一般的な生活が送れているのかどうか、また、家庭を持って、子供を育てて、そういうことまでつながっているのかということも含めて、国全体でサポートしていくというのも大事なところだと思いますし、もう少しきめ細かい実態の把握。

 そして、次に、把握するための物すごい煩雑ないろいろな、つなげ方というのも大変難しいというのも聞いておりますけれども、そこのところもしっかりと施策展開していただいて。今までですと、今十八歳、二十二歳とおっしゃいましたけれども、十八歳でいきなり社会に出されて、その後、働くことができなくて、難しくて、結局、女性だったら風俗に行ってしまうとか、男の子だったらまた悪い仲間に引き込まれてしまって犯罪の方に行ってしまうとか、いろいろな事例も見ておりますので、そういう意味では、そういう子たちをもっともっとサポートできるように、できる限りのことをしていっていただきたいなと思っております。

 そして、この質問に関連しまして、こども未来戦略の全般的なこととして、政府は二〇三〇年までがラストチャンスとして、昨年は二〇三〇年くらいまでにこの予算を倍増させるという方針を示しておられます。

 このラストチャンスという言葉は、昨年六月四日の参議院内閣委員会で、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議にありまして、若年人口が急激に減少する二〇三〇年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスとしていることを踏まえて、中長期的に目指すべき少子化対策の具体的な目標設定を検討するともあります。

 前回の異次元の少子化対策との今回の違いや、またその評価、検証内容とともに、目標をどのように設定されておられるんでしょうか。意気込みも含めてお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、岡本(あ)委員長代理着席〕

三原国務大臣 委員おっしゃるように、少子化対策ということは喫緊の課題でありまして、まさに急速な少子化に歯止めがなかなかかかっていないという現状も承知をしておるところでございます。

 この要因には大きく、婚姻数の減少である、そしてまた夫婦の子供数の減少である、この二つが挙げられるというふうに思っております。

 そしてまた、婚姻数の減少に関しましては若者のライフデザイン支援ということが非常に重要になってくるとも思っておりますし、また、プレコンセプションケアということも、正しい知識を男女共に知っていただいて健康管理を促すというようなこともしっかりと検討を進めていかなければならないというふうに思っております。

 予算倍増ということでありますが、私も、着任以来、児童相談所の視察を始め、いろいろな支援をされている方々のお話を伺うことがたくさんありました。そうした中で、まさに今お話ししたような、今生まれてきてくれている子供たちの命を守るということがやはりとても重要なんだというふうに思っております。

 予算をしっかり倍増するということ、それは物すごく大切なことでありますが、その額ありきではなくて、今委員がおっしゃったような、非常に困難を抱えているお子さんたち、そういう方たちの声に耳を傾け、そうした方たちの施策を重点的にしっかりと行っていくこと、このことも非常に重要な少子化対策の一つにつながってくるのではないかというふうにも思っておりますので、これからもしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 ありがとうございます。

    〔岡本(あ)委員長代理退席、委員長着席〕

徳安委員 三原大臣から、本当に、全く私と同じ思いを持っておられるのかなと、やはり同年代でよかったなというふうに思うんですけれども、今の生まれている子供たちをどれほど大事にするかということが本当に大切だなというふうに思っておりますので。

 出生率が日本は一・二とか一・二六とか一・四とか、今、近年そうなっておりまして、御存じのとおり、先進国でもフランスの方では、一・八とか一・九近く戻してきているという政策は、やはり国において、おっしゃるとおり、倍増つけているんです、物すごい予算をつけてやっていますので、まさにそこの部分、遅れているんじゃないのかなとちょっと思ったりするんですけれども、是非やっていただきたいと思っております。

 今、子供の話をさせてもらったんですけれども、子供ばかりに優遇しているという先輩方からもお話がございまして、これからは年金制度のことをお尋ねしたいと思っています。

 国民年金が、今後更に増えていく高齢者への給付がもつのかどうかというのは懸念しておりまして、給付を受ける人数が増える一方で納税者が増えていかない少子化の時代、今まさにそうです。年金制度の現状と、時代に応じた制度設計に変更してきているのかどうか、厚労大臣にお聞きします。

福岡国務大臣 公的年金制度につきましては、二〇〇四年の制度改正において、将来世代の過重な負担を回避するという観点から、保険料の上限を固定した上で、その収入の範囲内で給付を行うこととし、長期的な給付と負担のバランスを確保するマクロ経済スライドの仕組みを導入したことで、将来にわたって年金制度自体が持続可能なものとなってございます。

 昨年の財政検証の結果では、前回に比べ、将来の給付水準の改善が確認されています。加えて、新たに個人単位の推計を行いましたが、特に女性の方の場合は、若年世代ほど厚生年金への加入期間が増加するため年金額が増加する傾向が確認をされています。

 厚生労働省としては、昨今の様々な社会経済情勢の変化も踏まえまして、ライフスタイル等の多様化の反映や、働き方に中立的な制度の構築、また、高齢期の所得保障、再分配機能の強化といったことを基本的な考え方といたしまして、引き続き、年金改正法案を今取りまとめに向けて作業を行っておりますので、丁寧に対応してまいりたいと思います。

徳安委員 本当に丁寧な対応を求めたいと思います。

 今のお話ですと、実際、国民年金だけで食べていけるのかという、二か月に一回、六万円ぐらいしか入ってこなくて、月三万円でやっていくという、本当に厳しい状態の先輩方をたくさん見ておりますし、そういう人たちを見て、また若い世代が、本当にこの先自分たちも払っていって大丈夫かな、自分たちの老後はどうなるのかなというふうなやはり心配も非常にあるから、消費に回さず貯金にしていくということもつながっていくところもありますので。

 是非、介護保険制度もそうなんですけれども、介護保険料も四十歳から天引きされていって、社会保険料、そして御高齢の方は年金から引かれていく。その介護保険料も少しずつ上がっていって、年金は上がらないので、どんどん手取りが目減りしていくということもあって、本当に何かいろいろと生活が大変というふうなこともお聞きしていますので、その辺、もうちょっと、またよく御覧いただいて、制度改革にも取り組んでいただきたいと思います。

 時間がないので次に行きます。不用額の考え方をお聞きいたします。

 特に近年、多額の不用額というのが計上されています。不用額は、歳出予算、計上した経費の金額のうち、結果として使用する必要がなくなった額のことですが、二〇二三年八月の日経新聞や朝日新聞掲載の、衆議院決算行政監視調査室によりますと、二〇二二年度の一般会計の概要から、不用額は十一兆三千八十四億円と過去最大、翌年度への繰越額は十七兆九千五百二十八億円で、過去三番目の多さでありました。不用額の内訳で一番多いのは物価高対策なども含めた予備費で、四兆円を超えていました。規模優先で査定や見積りが甘くなった面を感じます。

 不用額の考え方やその理由、減額に向けた取組をお聞きいたします。

加藤国務大臣 近年、特に令和二年度から五年度、今御指摘ありましたが、決算において多額の不用額あるいは繰越額が生じております。

 その背景として、一つは、令和二年度以降、コロナ対策、それからその後の物価高騰、こうしたなかなか見通しができないことに対して、国民の生活、命を守るということで万全な対応を図ってきた。一方で、支出の方は、例えば新型コロナの五類移行が行われるなど状況の変化もあった。そうしたこの時期特有の事情もあったのではないかと思っています。

 その上で、多額な不用額が発生したことを踏まえて、例えば令和四年度の決算で、新型コロナ、物価高騰等への対応のための予備費が二・八兆円の不用額を生じたことから、令和六年度当初予算においては、同予備費を、令和五年度当初四兆円だったものを一兆円にするなどの減額も努めてまいりました。

 一般論としてということになりますけれども、財務省としては、決算の状況も踏まえつつ、個別事業の予算計上、予備費も含めてでありますけれども、しっかりと予算査定を行って、経費の適切な見積り、今後とも更にそれに努めていきたいと考えています。

徳安委員 二〇二二年度というのは冒頭にも申し上げた十一兆を超えていまして、うち四兆千五百二十八億円というのが予備費の使い残しなんです。多額の予備費というのは、財政学者からも、使用目的が明確でなく必要性に疑問が残るという声も上がっております。

 しかも、二〇二二年度の決算剰余金は二兆六千二百九十四億円、半分は国債の償還に充てられ、残りの一兆三千億円を防衛費の増強に充てられています。苦しんでいる国民へ充てるのではないというのがすごく驚きです。

 その一部で、例えば先ほどお話に出ているような高額療養費で生命の危機に面している方々をどう救うとか、そのようなお考えがないのか、再度、財務大臣にお聞きします。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、それぞれ、特に私も厚労大臣をやらせていただきましたから、あのときは、もう本当にコロナ対応に万全をという、そうした多くの声もいただきながら、状況状況がいろいろ転々とする、それに対応していく、そのためには当初でなかなか予算計上できない経費もあった、このことは是非御理解をいただきたいというふうに思います。

 それから、防衛費の話もありましたけれども、これは別に、防衛費に回すために余剰をつくっているわけではなく、余剰に関してはしっかり決算出納期間も含めて国債の発行を調整をし、ぎりぎり今後の支払いに必要な額を常に残しながら、それが結果として防衛予算の中にも財源としての活用をする、こういう流れでございます。

 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、予算額、適正な規模をしっかり計上していくというのは基本でありますから、決算の状況あるいは様々取り巻く執行状況等も含めて、適正な査定に努めていきたいと考えています。

徳安委員 コロナが落ち着いた今というのは、巨額の予算計上をするというやり方を見直すべきであるというやはり指摘もありますので、大臣がおっしゃるとおり、緻密な検証がこれから必要なんじゃないかなと思っております。

 時間がないので、次の質問、各省庁の働き方改革というところで、いろいろと予算計上を拝見しておりますと、一般職の千百九十七人の超過勤務手当というのが十六億五十九万七千円となっていました。

 いろいろレクでお聞きしておりましたら、令和五年度の内容というと、十二億九千万円、決算ベースでいくと。二〇二二年度で十一億八千万と、大体十二億前後なんですけれども。毎年、大体、予算の計上が超過勤務手当は十六億を超えているんです。簡単に、人数掛ける単価で毎年計上している。

 普通であれば、決算の実績を見て翌年度の予算を決めていくというのが筋だと思うんですけれども、このままいくと毎年毎年そういう形でそごが生じて、三億、四億、違いが出てくるというのをやはり看過するというのも、もうちょっとしっかりと見直すということも必要なんじゃないのかなと思うんですが、財務大臣、いかがでしょうか。

平国務大臣 委員御指摘いただきましたけれども、今トレンドとして、定員と実数で、定員まではいかない、人手不足の中で対応しているということがありますので、かなりの変動が見込まれるということと、更に言うと、大規模災害への対処など、こちらでコントロールできない事象に対応している職員の残業が増えているということもあります。

 なので、全体を見て、デジタル化やAIの実装などで働き方改革を進め、全体の時間を、余り過度な残業にならないように取り組んでまいりたいと考えております。

安住委員長 徳安さん、間もなく時間が参りますので。

徳安委員 はい、一点だけ。

 働き方改革の今お話の中で、レクの中でもあったんですけれども、非常に効率化と、いろいろと改革に向けてやっていると。そのうちの一つに上司とのコミュニケーションがあるということをお聞きしまして、上司とのコミュニケーションとは何ですかとお尋ねしましたら、上司がその時間に帰らないので自分たちも帰れないという、余りにも昭和な時代な話をお聞きしました。まずは管理職の意識を変えていかなければ、やはり働き方改革、国家公務員の方もつながっていかないんじゃないのかなとつくづく痛感いたしましたので、そこも含めてしっかりと取組を進めていただいてと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

安住委員長 これにて徳安さんの質疑は終了いたしました。

 次に、臼木秀剛君。

臼木委員 国民民主党の臼木秀剛と申します。

 本日は、日本の物流問題について、少し大局的な視点から御質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は比例北海道ブロックの選出となるんですけれども、北海道内どこに行っても、今、産業を問わず、人手不足、人材不足というお声をお伺いをします。特に運輸、交通のドライバー不足は本当に深刻で、広い北海道で物を運ぶというドライバーの方々が足りないというお声は非常に深刻なものとなっています。

 その大きな要因の一つが、二〇二四年の四月一日施行となりました、働き方改革関連法案によってドライバーの時間外労働が年間九百六十時間に上限規制されたことによる、いわゆる二〇二四年問題、これが非常に大きな影響を与えているというふうにお聞きをしています。

 このままでは二〇三〇年には全国で約三五%の荷物が運べなくなるおそれがある、特に地方はより深刻な事態であるという民間試算もあることから、国の方でも、物流総合効率化法の改正等や物流革新の緊急パッケージの策定を行い、本年度予算においてもモーダルシフトの推進事業というものが入っております。

 ただ、このモーダルシフト、資料の一枚目におつけをしておりますが、現在トラックで多く運んでいるものを鉄道、内航船舶、航空に切り替えていこうというモーダルシフトについてですが、モーダルシフトという言葉自体は、一九八一年、私が生まれた年なんですが、旧運輸省が出した答申で初めて公式に取り上げられて以来、既に四十年以上がたっております。また、二〇〇一年策定の二次の新総合物流大綱でも、常にモーダルシフトを進めていくべきだということが取り上げられているわけです。

 しかし、資料の二ページを見ていただくと、済みません、少し字が小さいので分かりづらいんですが、下の表を見ていただきますと、一九八五年から二〇二二年まで、それぞれ各交通機関の分担率が記載されておりますが、トラックがずっと九割、そして内航船舶については八%から七%、そして鉄道は約一%、この構図は全く変わっておりません。

 ずっとこの三十年、四十年、モーダルシフトを進めようということを国の施策としてやってきたわけですけれども、この間、なぜこのようにモーダルシフトが進んでこなかったとお考えなのか、まずは国交大臣にお伺いをいたします。

中野国務大臣 モーダルシフトについての御質問を賜りました。

 委員も御指摘のとおり、モーダルシフト、かなり長い間、政策としては掲げ続けております。その時々のいろいろな、省エネであるとか地球温暖化であるとか、様々な角度で推進をしてきたものと承知をしておりますが、今まさに物流の二〇二四年問題というのもありまして、非常に重要な課題だと認識をしております。御質問ありがとうございます。

 なかなか進んでこなかったのではないかという御指摘であります。確かに、委員のデータ等も示していただきました。モーダルシフトを進める中での課題といたしましては、荷主や物流事業者等々からは、やはり、一つは、トラック輸送と比較をしてリードタイムが長い、あるいはモーダルシフトしたときに運送コストが増加する場合がある。あるいは、鉄道や船舶の利用を新たに検討する場合、どうしても希望するタイミングあるいは希望する枠、時間帯、こういうことを利用することが困難な場合がある。また、鉄道につきましては、特に近年、自然災害によりまして輸送障害というのも頻繁に発生をしており、結果的には荷主からの信頼も低下をしているということもあるのかなというふうにも思っておりますが、荷主や物流事業者からはこうした声を聞いているところでございます。

臼木委員 大臣、ありがとうございます。

 まさに今大臣がおっしゃったように、やはり、いろいろ考えたときに、トラックが荷主の皆さんにとっては使いやすい、勝手がよいというところが、この間進んでこなかった原因なんだと私も思っております。

 ただ、物流革新の緊急パッケージでは、鉄道貨物や内航海運の輸送量や分担率の倍増を掲げています。三十年から四十年間全く進んでこなかった、全くと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、なかなか進んでこなかったものを、この十年以内に倍増していかなくてはいけません。

 幾らトラックの皆さんの輸送量が減ったといっても、恐らく、これからも荷主の皆さんはやはり皆様が使いやすい方を選ぶということは余り変わっていかないんじゃないかとは思いますが。

 この十年以内に輸送量、分担率を倍増していくために、まずは、この十年間という目標がありますので、足下の政策として、本年度、事業案であったり予算案の中でどのような手直し又は改善を行ったのか、具体策があればお示しをいただきたいと思います。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 委員に御指摘いただきましたとおり、モーダルシフトをこれまで以上に強力に推進をしていこうということで、官民での議論を踏まえまして、令和五年十月に物流革新緊急パッケージが策定をされました。その中で、鉄道、コンテナ貨物や、フェリー、ローロー船等の輸送量を今後十年程度で倍増させることを目指すということにいたしました。それは委員御指摘のとおりでございます。

 これを受けまして、先ほどいろいろな課題があるということで述べさせていただきましたけれども、荷主等がモーダルシフトに取り組むための課題に対応するために、例えば、荷主や物流事業者が連携をしてモーダルシフトを進めるための計画を策定をする。そして、大型コンテナやシャーシ等、機材の導入が必要でありますので、こうしたことを支援をするということをやってまいります。

 また、四月に施行する改正物流法に基づきまして、荷主にも適切なリードタイムの確保等の措置を求めるということもしてまいります。

 そして、今、トラックの標準的運賃の引上げ、拡充等を行っておりますが、適正運賃の収受の浸透を図るということも行ってまいります。

 また、貨物鉄道におきましては、災害対応能力の強化や積替え施設の整備に対して支援を行うこと、こうした取組を通じましてモーダルシフトの促進に向けた環境整備にまさに取り組んでいるところでございます。

 さらに、従来のトラック輸送から鉄道と内航海運へのモーダルシフトに加えまして、航空機あるいはダブル連結トラック等の多様な輸送モードも活用した新モーダルシフトの推進に向けた対応方策を講じるということも今掲げておりまして、産業界や関係省庁とも連携をして、この目標の実現に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

臼木委員 ありがとうございます。

 今、各種、いろいろ施策をお話をいただきましたけれども、やはりちょっと、まだまだ、なかなかパンチが足りないのではないかな、強力に推し進めるというには少し弱いんじゃないかなというのが正直な感想です。

 少し視点を変えてお話をしたいんですけれども、モーダルシフトということで、先ほどお話もありました航空又は内航海運にも切り替えていくということですが、その中でも鉄道、これを少し取り上げさせていただきたいと思います。

 今、日本の鉄道貨物輸送市場は、日本貨物鉄道株式会社、いわゆるJR貨物が独占状態ではありますが、正直、皆様も御存じのとおり、同社の鉄道事業をめぐる状況は大変厳しいものにあります。これまでコスト削減、資源集中で、何とか今まで乗り切ってきたという感は正直否めないのではないかと思っています。

 ただ、鉄道政策につきましては、今年の一月末で、国鉄であった期間をJRになってから、民営化してからの期間が上回り、その民営化当時の経済社会状況から今大きく変容が、社会も変わってきています。

 今、JR六社が所有、管理している線路をJR貨物が使用料を払って利用する仕組みとなっていますが、この見直しなども含め、これからこの先、約五年程度につきましては、鉄道政策について大きな転換期にあると思っています。

 改めて、モーダルシフトを進めていくに当たって、物流網における鉄道貨物の優位性、意義についてどのようにお考えか、また、JR貨物をモーダルシフトの担い手としてどのように位置づけるのか、お考えがあればお聞かせください。

中野国務大臣 貨物鉄道は、全国ネットワークを活用した大量輸送機関であり、また、優れた環境性能を有することから、トラックドライバー不足への対応やカーボンニュートラル実現に貢献をすることが期待をされておりまして、貨物鉄道の輸送力を増強し、モーダルシフトを進めるということは、私も重要であるというふうに考えております。

 他方、先ほど申し上げた貨物鉄道の課題といたしまして、安定的な輸送を確保する上で、激甚化、頻発化する自然災害への対応能力の強化が必要であるというふうに認識をしております。

 このため、国としては、輸送力の増強や災害対応の機能強化などに向けまして、大型コンテナに対応したコンテナホームの拡幅や、代行輸送の拠点となる貨物駅の施設整備などについて支援を行っているところでございます。また、JR貨物の経営自立に向けた経営基盤強化のためには、機関車などの設備投資に対する支援を行っているところでございます。

 今後とも、こうした支援を通じて貨物鉄道が期待される役割を存分に発揮できるよう、国としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

臼木委員 ありがとうございます。

 非常に、これから鉄道貨物へ、様々なモーダルシフトの担い手としての機能を発揮していただくための施策、取り組んでいっていただきたいと思いますし、私もそこは是非協力をさせていただきたいと思います。

 なぜ私はこういった問題意識を持つようになったかというと、今、北海道新幹線の札幌延伸に伴い、並行在来線の経営分離の問題が起こっているからであります。予算委員会なので、個別の問題としてこれ以上細かい議論はしないようにしますけれども、北海道と本州内地をつなぐ鉄道の大動脈を、旅客維持か廃線か、それとも貨物専用かということで、今大変重要な議論がされているということを全国の皆様にも知っていただきたいと思います。

 本当にモーダルシフトを進めるという一方で、地域によっては鉄道網の維持が非常に厳しい状況になっています。北海道の問題だろうと今思われた方もおられるかもしれませんが、先ほどおっしゃいましたけれども、鉄道網は全国的なネットワークをきちんと維持してこそその力を発揮する、これは紛れもない事実であると思っておりますし、皆様方も、そして国交省もそのような認識でおられると思っております。

 また、先ほどいろいろありましたけれども、鉄道網が有する環境性能であったり、こういった部分については、やはりこれからモーダルシフトを進めていく中で無視することはできないと思っています。

 私としては、食料安全保障や防災、またGXや地方創生等、様々な政策的な意義で、ポリシーミックスで、モーダルシフト、また我が国の物流網の再構築を全国的、俯瞰的な視点から強力に進めていくことがこれから必要だと思っております。

 そこで、今日は農水大臣にもお越しをいただいておりますが、まず、食料安全保障上、作るということはもちろん運ぶことも大切だと私は思っています。特に、食料基地北海道と言われておりますので、こういう北海道からきちんと物を運び出すことができる、これはひいてはこの国の食料安全保障をきちんと確保していく上でも必要だと思っておりますが、こういった鉄道貨物の重要性について、是非、御見解を伺えればと思います。

江藤国務大臣 北海道は大変すばらしいところでありまして、日本全国の総農業生産の一四%を占めております。金額で一兆三千億、カロリーベースでは北海道だけで二一八%自給率ですから、まさにすさまじい、本当に羨ましいようなところでありますけれども。

 まさに、そこから道外にどうやって出すかということがとても大事で、船で今三分の二を運んでいただいています。三分の一は鉄道であります。そういう鉄道で運ぶ場合はコンテナになると思いますが、やはり生鮮食品はいかに鮮度を保つかということがとても大事なので、コンテナヤードの整備であったり、そしてトラックヤードの整備であったり、そういったものをやらなければなかなか難しいと思います。

 鉄道網だけではなくて、それを運び出すところ、それから降ろすところも総合的に整備することによって、鮮度を保ちながら、付加価値の高い農産物が道外に運び出されて、それが日本の食料安全保障に大きく寄与するというふうに考えております。

臼木委員 非常に力強いお言葉をありがとうございます。

 また、今日は防災担当大臣にもお越しをいただいております。同様の観点で、防災、災害対策としても、全国的なネットワークを維持するということは、これはやはり大切なことだと思っております。他地域との交通機能の寸断はなるべく避けるべきである、こういった意味で、既存のインフラも最大活用して防災ネットワークを築いていくことが大切だと考えておりますが、防災の観点から鉄道の意義についてお答えをいただければと思います。

坂井国務大臣 あくまで一般論としてお答えをしたいと思いますけれども、交通ネットワークは、災害時において、災害時の物資、人員輸送においても重要な役割を担っていると認識をしておりまして、この交通ネットワークの中に鉄道も当然含まれる、その一端を担うということだと認識しております。

安住委員長 臼木君、間もなく時間が参りますので、まとめてください。

臼木委員 今ほどずっとお話がありましたとおり、やはり全国的なネットワークをきちんと維持していくということは、私は大切なことだと思っております。是非、国土交通大臣におかれましては、モーダルシフトを進めていくに当たって、今言った北海道の海線の話もそうですけれども、全国的、俯瞰的な視点を持って積極的に議論を進めていただくとともに、今後の政策決定、また予算編成に当たっても、この考えを持ち、国民と国土を守り抜くために、しっかりと国内の基盤強化をやっていくということを是非お願いをしたいと思っております。

 これで最後の質問とさせていただきます。

安住委員長 では、手短に、時間が参っていますから。

中野国務大臣 鉄道物流について全国的な観点からしっかり議論が必要であるというふうにも思っております。しっかりと関係省庁と連携をして、モーダルシフトの推進に取り組んでまいりたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

臼木委員 では、以上で終了いたします。ありがとうございました。

安住委員長 これにて臼木君の質疑は終了いたしました。

 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、明日で発生から二週間を迎えますけれども、埼玉県八潮市の道路陥没事故、先週も様々取り上げられましたけれども、これについて質疑をさせていただきたいと思っております。

 まず、今回の事故で被害に遭われた方、またその御家族、そして、周辺住民を始めといたしまして、様々な影響が及んでいるわけであります。皆様に心からお見舞いを申し上げたいというふうに思っております。

 我が党といたしましても、国会議員、また地方議員、緊密に連携を取りながら、まずは原因究明と再発防止、当然、人命救助もありますけれども、また、周辺住民の支援に向けまして、先週、先々週と、政府、また県の方に緊急要請を行っております。

 さらに、それ以外の地域におきましても、元々問題になってまいりました下水道の老朽化対策の加速化、度々この国会でも取り上げられてまいりました。まさに党を挙げて取り組んでいるところであります。

 まず、本日、厚労大臣の方からお伺いをしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 地元の我が党の地方議員さんの方から、先ほども若干触れましたけれども、事故の影響によりまして、現場周辺で事業を営んでいる方が休業を余儀なくされている。テレビでも、報道のカメラにお店の看板が映ることがあるかと思いますけれども、あるいは、人出そのものが激減をして、商売にお困りの事業者の方もいらっしゃるというふうに伺っております。

 こういう言葉を聞くと、思い返せば、あのコロナ禍のときも似たような状況があって、御商売に大変大きな影響が及んだわけでございます。当時、休業等で雇用維持をされた多くの事業者が御利用いただいた制度が、いわゆる雇調金とよく呼ばれますけれども、雇用調整助成金でございました。

 しかし、今回はこの雇調金が使えるのか否か、現場でお話を伺っていくと、よく分からない、また、どこまで対象になるのか分かりにくいというお声もいただいております。

 我々は政治家ですので、ローメーカーでありますので分かるかもしれませんが、つまり、どういうことかというと、雇用調整助成金の制度趣旨を拝見いたしますと、最初に、経済上の理由による、こういう言葉が出てくるわけであります。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が対象となっておりますけれども、この経済上の理由には、今回のようなケース、つまり、老朽化した公共インフラによる事故の影響を受けたケース、これが含まれるのかどうか。是非、福岡大臣の口から明快に御答弁をいただきたいと思っております。

福岡国務大臣 まず、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げさせていただきます。厚生労働省としても、必要な支援はしっかり行っていきたいと考えております。

 その上で、御指摘の経済上の理由についてでございますが、例えば、道路陥没事故の影響によりお客さんが減少したということであったり、また、取引先が操業を停止したことなどによりまして事業主が事業活動の縮小を余儀なくされたなど、判断できる場合には、雇用調整助成金の対象となり得ると考えております。

河西委員 様々、条件や状況はありますけれども、なり得るということで今御答弁をいただきました。

 その上で、今ここで御答弁をいただいたとて、この制度を必要とされている方に直接すぐに届いているわけではございませんので、ちょっともう一度お伺いをしたいと思うんですが、雇調金は、御案内のとおり、事業者からの計画届の提出、また支給申請が必要でございます。

 埼玉県では、先週五日から、生活影響の相談窓口を設置して対応に当たっていただいております。こういった窓口で、正確に、また丁寧に御案内をいただくということが、当事者の方の安心につながっていくんだろう、また支援につながっていくんだろうというふうに思っております。

 そういう意味におきましても、いずれにせよ、対象となり得る事業者には漏れなく利用していただけることが大事かと思います。そもそも、雇用保険の制度であるということもありますので、是非、これは政府が、地元自治体やあるいは業界団体、ここと緊密に連携を取っていただきまして、プッシュ型で周知に努めていただきたいと思いますけれども、これも大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

福岡国務大臣 御指摘のとおり、プッシュ型で施策を周知していくということは大変重要なことだと考えております。

 今般の道路陥没事故に伴いまして、雇用調整助成金の対象となり得る事業主の方々が本助成金を漏れなく利用できるよう、埼玉労働局や管轄ハローワークに指示し、県、市、地元経済界等と連携しながら、本助成金の内容や相談窓口について積極的に周知を行ってまいりたいと思います。

河西委員 是非、ここは心を込めて、全力を挙げていただきたいというふうに思っております。

 福岡厚労大臣への御質問は以上でございますので、もしよろしければ、御退出いただいても結構でございます。

安住委員長 福岡大臣は退席して結構です。

河西委員 ここからは、国交省、中野大臣の方にお伺いをしたいというふうに思っております。

 まず、資料一、御用意をさせていただきました。

 これは度々皆様も御覧になっているグラフかもしれませんけれども、下水道管の標準耐用年数、五十年を経過した管渠というのは、令和四年度末の時点で全体の約七%ということであります。これが十年後には一九%、二十年後には四〇%ということでありますので、差引き、そしてまた平均をいたしますと、年約一・二%、あるいは一・六五%程度のペースで五十年経過の管渠は増加をしていくという計算になろうかと思います。

 一方、足下の下水道管の更新率は、これは年で〇・一五%程度というふうに伺っておりますので、つまり、老朽化のスピードの方がおよそ十倍速いということで、非常に厳しい現実だというふうに言わざるを得ないというふうに思いますが、だからこそ、どういう発想で今回のような事故を未然に防いでいくのかということが大事だというふうに思っております。

 そこで、国交大臣に伺いますけれども、しばしば課題として指摘される、更新スピードを上げていくことも当然重要でありますけれども、その上で、現に今回のような事故の再発防止を講ずるためには、よく国交省の方では、事前防災という考え方で、しっかり危ないところに公共事業を突っ込んで、そして実際の被害額を下げていくということ。これまでも成果を上げておられると思いますけれども、地下の空洞調査の活用、あるいはAIによる画像判定技術、これは様々、今、民間の事業者、スタートアップが開発にいそしんでおります。

 こういったことも含めて、点検と補修に力を入れていくことがとりわけ重要であるというふうに考えますけれども、大臣の見解を示していただきたいと思っております。

中野国務大臣 御質問にお答え申し上げます。

 今回の埼玉県の事故では、百二十万人に下水道使用の自粛をお願いするなど、非常に甚大な影響が生じているところであります。

 下水道施設の老朽化、委員がグラフで示していただいたとおり、今後更に進展をするということが見込まれる中で、このような事態を再び起こさないように、日頃から施設の点検と改築を徹底し、事故を未然に防ぐという予防保全が重要、これはまさに委員の御指摘のとおりだというふうに思っております。その際には、やはり新技術も活用し、そして下水道の老朽化対策を高度化、効率化をさせていくことが必要だと考えております。

 国土交通省としましては、さっき御指摘ございました、AIによる下水道管内の異常検知技術など新技術の開発や、道路を掘り返さずに、既存の下水道管を使用しながら管の内側から補強を行ういわゆる更生工法などの効率的な改築技術の実装を進めてきたところであります。

 さらに、例えば、今後五年程度でDXの技術を実装することを目指しまして、自治体向けの分かりやすいDXの技術カタログ、これを今年度中に取りまとめるなど、取組を着実に進めていきたいと思っております。

 今回の事故を受けまして、国土交通省では、大規模な下水道の点検手法の見直しを始め、施設管理の在り方などについて検討をするため、有識者による委員会を設置することにいたしました。有識者の委員会では、委員御指摘の新技術の活用も含めて御議論をいただく予定でありまして、今後とも、既存の技術も含め、優れた技術を有効に活用しながら、予防保全の考え方により、点検、その結果に基づく改築、これはまさに大事だというのは御指摘のとおりだと思いますので、しっかり推進してまいりたいと思います。

河西委員 是非ここはよろしくお願いをしたいというふうに思っております。

 先ほど私、地下空洞調査というふうに申し上げましたけれども、要は、コンクリートというのはある程度粘性が、粘りがありますので、空洞ができたからといって、すぐに陥没するわけではないわけであります。この地下空洞調査の限界というのは三メーターというふうに言われておりますけれども、こういったことも活用していくことも大事でありますし、あと、今急速に伸びております生成AI、いろいろな生成AIの技術を組み合わせることによって新しいそういった判定技術ができるということ、これも様々なスタートアップが取り組んでおりますので、是非ここも注目をしながら、またそこに効果的なワイズスペンディングで、予算を通していただきたいというふうに思っております。

 そこで、点検と補修の在り方について、次は政府参考人の方にお伺いをしたいというふうに思っております。

 今回破損した下水道管は、腐食するおそれが大きいとして国が五年に一回以上義務づけする法定点検、この対象外でありました。その一方で、埼玉県の判断で五年に一回の自主点検を実施していたというふうに承知をしております。

 この五年に一回以上の法定点検の対象を判断するに当たっては、材料、勾配、また高低差などの基準について、腐食のおそれが大きいというふうに判断をする場合はそのような法定点検の対象とするわけでありますけれども、やはり今回の事故を踏まえて、この対象を判断する基準を改めて見直していく必要があると考えますけれども、いかがでしょうか。

松原政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省においては、平成二十七年の改正下水道法に基づいて、下水道の維持修繕基準を創設し、全ての下水道施設について、適切な頻度で点検をすることといたしております。そのうち、腐食のおそれの大きい箇所については、五年に一回以上の頻度で点検をするということにさせていただいております。

 いずれにいたしましても、今回、国土交通省といたしましては、このような事故が起こったことを重く受け止めまして、事故原因の調査結果なども踏まえまして、委員御指摘の五年に一回以上の法定点検の対象範囲の見直しも含めまして、必要な対応、検討を実施してまいります。

河西委員 今の話は法定点検の対象をどうするかということなんですが、次は、ちょっと大臣にお伺いをしていきたいというふうに思っております。

 次にお伺いしたいのは、今回破損した箇所がどういう状態であるというふうに埼玉県の方で判断をしていたのかということについてであります。

 資料の二を御覧いただきたいんですけれども、令和三年度に、これは直接目視ではなくて、カメラで点検をしていたというふうに伺っております。

 点検の基準、これは様々ありまして、日本下水道協会の資料でありますが、腐食の状態については、今御覧になっていただいている二の赤いけい線のところの真ん中のところ、B判定、つまり、骨材露出状態であったというふうに判定をしている。これは報道でも取り上げられているとおりであります。

 その上で、実はこれだけではなくて、次の資料三なんですが、ここにフローと、下に赤い枠線がありますけれども、緊急度判定というものを最終的には行っていきます。腐食の状態、あるいは上下方向のたるみの診断、上の方のフロー図の二段目にありますけれども、そしてクラックが入っているかとか、こういった総合的な状態を踏まえて緊急度判定を行っていく。

 この緊急度判定がどうだったのか、令和三年のときにですね。これは埼玉県の方でも調査中ということでありますけれども、少なくとも、この一番上の区分一の重度、速やかな措置が必要だとは見極められていなかったということは承知をしております。ここが、今回の原因究明でありますとか、あるいは再発防止に当たって、今後、有識者の委員会で検討されていくということでありますけれども、重要な焦点の一つになり得るだろうというふうに思っております。

 要は、結果としてこれだけ深刻な事故が起きたにもかかわらず、これは大変残念なことでありますが、緊急度判定が区分一の速やかな措置ではなくて、区分二と三の中度、軽度の右側の対応の基準、ちょっとお読みいただけると分かるんですが、簡易な対応で当面はしのげる、こういうように、こういった形でみなされていたということでありまして、これは現場の人材不足、あるいは判断が甘かったのではないか、この点は指摘をせざるを得ないわけであります。

 そこで、国交大臣に伺いますが、今後の原因究明、令和三年度の調査時点からこの一月二十八日までに何が起きたのかということもありますので、今、直截的にはおっしゃれないかもしれませんけれども、まず、この判定基準は、公益社団法人日本下水道協会の検討委員会に国交省も加わって決めているというふうに伺っております。

 その決め方も、ちょっと、私、どうなのかなと、非常に大事な基準でありますので、思いますし、また、今回の事故の深刻さを踏まえて、いずれにしましても、国交省として、この判定基準の位置づけや考え方、さらには下水道管補修の優先順位のつけ方について、これは抜本的に見直す必要があるのではないか、このように思いますけれども、大臣、御答弁をお願いしたいと思います。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 今後、下水道の老朽化が更に進展をするということが見込まれる中で、今回の道路陥没事故のような事態が再び起きないように、再発防止策について速やかに検討を進めるということが重要であるというふうに考えております。

 先ほどの繰り返しになりますが、今回の事故を重く受け止めて、大規模な下水道の点検手法の見直しを始め、施設管理の在り方などについて検討するため、有識者による検討委員会を設置することにいたしました。委員会において何を御議論をいただくかということだと思います。

 内容は現在検討中ということではありますが、先ほど法定点検の対象基準の御指摘もいただきました。例えば、重点的な点検を実施する対象、点検に用いる技術などを想定しております。委員からは、判定基準の在り方や補修の優先順位ということでも御指摘をいただきました。委員の御指摘も踏まえて、この中身をしっかりと整理をしていきたいというふうに考えております。

 いずれにしても、国土交通省としては、県による事故原因の調査の結果、そして委員会での議論、これを踏まえながら、強靱な下水道を構築し、国民の安全、安心を確保するために、必要な対策をしっかりと検討、実施してまいりたい、このように考えております。

河西委員 ここは大事な点になろうかと思いますので、緊急度判定の在り方、これを是非検証し、また、新しい形にアップデートをしていただきたいというふうに思っております。二度と今回のような事故を起こしてはいけないということであります。

 恐らく最後の御質問になろうかと思いますけれども、最後の資料四を御覧になっていただきまして、これは目下の国土強靱化五か年加速化対策、下水道施設の老朽化対策、ここにも緊急度判定一というふうに出てくるわけであります。これは、次期中期計画の策定の方針、先日も大臣に御答弁いただきましたが、今回の道路陥没事故を踏まえて、今後の上下水道の老朽化対策を検討していくということであります。

 ただ、今資料を示したとおり、下水道管の老朽化対策のターゲットになっているのは、やはり緊急度判定の一のみとなっているわけであります。しかし、今回、先ほど申し上げましたように、一だ、緊急な措置が必要だというふうに見極められなかった。

 こういった点も踏まえながら、判定基準あるいは優先順位の見直し、これは当然といたしまして、いずれにしても、次期中期計画の策定においては、再発防止に向けて十分な安全マージンを取っていくこと、建設、インフラの世界は安全マージンを十分取っていくということが非常に大事かと思いますので、必要な事業をしっかり位置づけていただきたいと思いますけれども、改めて、中野大臣の答弁をお願いいたします。

中野国務大臣 国土強靱化の次期中期計画のところの御質問をいただきました。

 下水道は、改めてですが、国民の生活に直結する極めて重要なインフラでありますので、この老朽化対策をしっかりと行っていくということが喫緊の課題であります。

 現在実施中の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策におきましては、示していただいたとおり、点検の結果、緊急度の一、すなわち速やかに措置が必要と判定された下水道管の改築を進めているところであります。

 しかし、今回の道路陥没事故も踏まえまして、中長期的かつ明確な見通しの下、強靱で持続可能な下水道システムの構築に向けて、取組を更に進める必要があると考えております。

 二月五日の国土強靱化推進会議で示されました実施中期計画策定方針素案では、下水道の老朽化対策について、埼玉県八潮市での道路陥没事故も踏まえて検討することが位置づけられたところであります。

 委員の御指摘もしっかりと踏まえまして、関係機関と連携をして、六月めどの策定に向けて、下水道の強靱化に必要な対策が盛り込まれるようにしっかりと検討してまいります。

河西委員 公共インフラの老朽化対策、これは国民の命、また生活を守り抜く大事な施策でありますので、我が党としても全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げまして、時間が参りましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて河西君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 先日の日米首脳会談の共同声明は、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化とともに、日本、アメリカ、オーストラリア、インドといった同志国と緊密に連携していくことで合意をしています。看過できないのは、政府が安保法制で可能となった集団的自衛権の行使の適用範囲をアメリカ以外にも広げる検討を加速させていることです。

 中谷防衛大臣は、これまでに、日米豪の枠組みは同志国連携の中核だと述べておられます。自衛隊の吉田統合幕僚長も、豪州は同志国の中でも格別だと強調しています。

 こうした中で、政府は、安保三文書の一つ、国家防衛戦略で、有事の際、日米豪の三か国で軍事協力することを念頭に、自衛隊の部隊をオーストラリアにローテーション展開をさせる運用構想を打ち出しました。

 資料一を御覧ください。その運用に関する二〇二二年十二月の日豪2プラス2の合意内容です。これは防衛省作成の資料でありますけれども、ここには、赤線の部分、将来のF35を含む日本の戦闘機のオーストラリアへのローテーション配備を見据えた日本のF35による機動展開訓練の検討を加速すると書かれています。展開ではなく配備と明記されています。

 中谷防衛大臣、日豪2プラス2では、自衛隊のF35戦闘機部隊をローテーションでオーストラリアに配備することで合意したんですか。

中谷国務大臣 今、アジアの安全保障環境は非常に激変しておりますが、我が国とオーストラリアは、価値観、そして戦略目標、これを完全に共有をしておりまして、同盟国である米国とともに、平素から緊急事態まで切れ目なく自衛隊とオーストラリア軍と米軍が実効的に連携する体制を構築するということは、我が国の平和と安定を維持するために重要でございます。

 お尋ねの2プラス2で合意されたローテーション展開につきましては、例えば、定期的に自衛隊の戦闘機をオーストラリアに展開をして訓練を行うということを念頭に置いておりまして、これまでにも、将来のローテーション展開を見据えて、F35のオーストラリア展開訓練などに取り組んでまいりました。

 引き続き、オーストラリアでの共同訓練に取り組みながら、中長期的な目標として、ローテーション展開の具体的な在り方の検討を進めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 定期的に、そして一定期間とどまらせるというのは、これは事実上の海外配備ですよ。自衛隊は今まで、アフリカ東部のジブチに海賊対処を名目にして派遣はしていますけれども、訓練を理由にした海外配備はこれまでありませんでした。

 防衛省は、この日豪2プラス2の合意に基づいて、翌年の二〇二三年八月に、ローテーション配備を見据えた機動展開訓練を行っています。航空自衛隊のF35A部隊をオーストラリア北部のティンダル基地に派遣しています。この基地では、現在、何が行われているんでしょうか。

 パネルと資料の二を御覧いただきたいと思います。アメリカの施設技術司令部によるティンダル基地の図面です。これは、真ん中にニューボンバーエプロンと記されています。アメリカ軍は、核兵器を搭載可能なB52戦略爆撃機をここで六機も配備できる大型の駐機場建設を進めています。米軍の予算資料によれば、この駐機場は、日本円で百五十億円もかけて、二〇二七年後半に完成する計画だとされています。そして、その目的は、ティンダル基地での演習に参加する航空機を支援するためと同時に、中国に対する抑止力としているんですよ。

 こんな基地に、大臣、自衛隊をローテーションで配備して、アメリカ軍、オーストラリア軍とどんな訓練を行うんですか。どんなことを想定しているんですか。

 おととしの十月三十日の朝日新聞には、豪州軍への攻撃に集団的自衛権を行使して自衛隊が反撃することも視野に共同訓練すると報じられています。豪州軍攻撃に際して、自衛隊が集団的自衛権の行使、武力行使を行うんですか。そんなことを本当に考えているんですか。お答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 自衛隊の海外での訓練につきましては、いろいろな訓練を実施しておりますけれども、あくまでも、特定の国また地域を念頭に置いているものではございません。また、従来、日米、日米豪などの共同訓練等につきましては、やはり我が国の防衛上、抑止力また対処力を向上させるということも念頭に共同対処訓練を行っているということでございます。

田村(貴)委員 現にオーストラリアでいろいろなことをやっているじゃないですか。

 大臣は、二〇一五年六月十二日の衆議院特別委員会で、豪州への武力攻撃が発生し存立危機事態になれば集団的自衛権を行使できる、そのような見解も示されているではありませんか。それから、自衛隊の派遣、滞在について、今後検討と言っていますけれども、航空自衛隊F35A部隊は、もう既にローテーション配備を見据えた訓練でティンダル基地を使っています。そして、翌年の二〇二三年九月には、同基地所属のF35A部隊と姉妹飛行隊の関係も結んでいるではありませんか。大臣は、当時、安保法制では、法律上オーストラリア軍が明記されているわけではないが、存立危機事態などの要件を満たす場合には、日豪、日米豪の運用協力を進めることが可能になるとまで明言されています。

 ティンダル基地を使った共同訓練が、豪州への攻撃に集団的自衛権を行使して、そしてB52爆撃機と反撃を行うことを想定した訓練であることは違いありません。そうなれば、自衛隊は米軍の任務や機能を担わされて、日本はアメリカとオーストラリアが起こす戦争に巻き込まれるリスクを抱えるのではありませんか。それが増大するのではありませんか。

中谷国務大臣 存立危機事態におきましては、武力行使に要件が与えられておりまして、この三要件の第一要件には、我が国と密接な関係にある他国について、いかなる国がこれに当たるか、これはあらかじめ特定される性質のものではなくて、武力攻撃が発生した段階において個別的に、具体的な状況について判断されるということでございます。

 したがいまして、米国以外の外国、これに該当する可能性は現実的には相当限定されると考えますけれども、個別的状況に即して判断をされるということになります。

田村(貴)委員 でも、現にやっていることは、核兵器搭載のB52戦略爆撃機と一緒の共同訓練をやろうとしているわけなんですよ。これは重大ですよ。国会にも諮らず、そして国民にも知らされずに。これは本当に重大だと思います。

 防衛省が私の資料要求に対して提出された資料によりますと、安保法制の成立以降、航空自衛隊が実施した日米豪三か国の共同訓練は実に十五回にも上っています。また、現在も、今月の三日から、F35Aが初めて参加した共同訓練がグアム周辺で行われています。

 これらの訓練に核兵器を搭載可能とする米軍のB52は参加しているんですか。私の問合せに対して防衛省は、相手国との関係などを踏まえて公表していないと文書で回答されてきたんですけれども、そうなんですか。

中谷国務大臣 田村委員から、航空自衛隊が参加した日米豪三か国の共同訓練の実績を表した一覧表、このうちB52戦闘機が参加した実績の有無についてお尋ねをいただきました。防衛省からは、当該の一覧表のうち、米軍の参加部隊等については、相手国との関係を踏まえまして、記載をしているもの以外は公表しないと回答いたしております。

 その上で、共同訓練に参加した個々のアセットやその規模の内容につきましては、相手国との調整を始め、様々な要素を考慮して決定をしております。米軍は、グアム島において、航空自衛隊、オーストラリア空軍を招待して、定期的に日米豪三か国で共同訓練を実施しておりますが、委員がお示しの写真を含めて、日米豪三か国が、米軍B52爆撃機を含めて、グアム付近における訓練の機会、飛行したという実績はございます。

田村(貴)委員 私は、そこにまだ触れていないんだけれども。

 このパネルと資料を御覧いただきたいと思います。これは防衛省がもうホームページでB52と書いているじゃないですか。自衛隊の部隊訓練に関する資料ですよ。右上の写真、見てください。日米豪共同訓練とある箇所には、B52、戦術攻撃訓練などを行った、そういうふうに写真で紹介しているじゃないですか、公表しているじゃないですか。何で相手方があることから公表していないと言うんですか。

 この写真だって、これはアメリカからもらった写真を使っているんでしょう。分かっているんだから、ちゃんと事実を認めたらどうですか。B52が参加した日米豪の共同訓練、安保法制の成立後、少なくとも私の調査では七回にも上っています。二〇二一年二月の訓練時のもので、米軍から提供された写真も使って、防衛省はちゃんと発表しているじゃないですか。拒む理由は私は認められません。

 事実関係が明らかにならないので、委員長にお願いしたいと思います。安保法制成立以降、B52爆撃機が参加した日米豪三か国の共同訓練の実施状況を本委員会に資料として提出していただきたいと思います。委員長、お取り計らいをいただきたいと思います。

安住委員長 理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 大臣、核兵器禁止条約締約国会議への参加に政府はかたくなに背を向けています。一方で、核兵器搭載可能なアメリカのB52爆撃機と集団的自衛権の行使を想定した共同訓練を行うということなど、これは断じて許されない話ですよ。そのことを強くしておきたいと思います。

 次に、鹿児島県馬毛島の基地建設について伺います。

 先日の日米共同声明では、南西諸島の日米間の軍事プレゼンスの向上を明記しました。防衛省は、南西諸島の第一列島線のつけ根に位置する馬毛島を、日米同盟の抑止力、対処力強化の極めて重要な施設と位置づけ、米空母艦載機や航空自衛隊のF35B戦闘機の離発着訓練など、島全体を日米の活動拠点とする基地建設を進めています。

 資料四を御覧ください。私の資料要求に対して防衛省が提出した馬毛島基地建設の予算額と支出済額の一覧です。ようやく出されました。

 これによると、調査費を計上した二〇一二年度から二〇二五年度予算案までに積み上げた契約ベースの予算額、一番左ですね、これは累計で一兆二百二十六億円、その右、支出済額三千三百二十七億円になりますけれども、間違いありませんか。

 そしてもう一つ、この基地建設の総額、これはいまだに示されていませんけれども、一体幾らになるんですか。数字だけ答えてください。

安住委員長 中谷防衛大臣、間もなく時間が参りますので、簡潔にお願いします。

中谷国務大臣 出した資料は間違いございません。

 なお、総額につきましては、馬毛島における施設整備については、工事着手からまだ約二年しか経過していないということから、総事業費については現時点でお答えできないということを御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 一兆二百二十六億円、間違いないですね。これに航空自衛隊の費用、訓練施設経費を入れると、七億円を加えると、一兆二百三十三億円になるんですよ。一兆二百三十三億円になるわけですよ。もう青天井になっているじゃないですか。そして、これから幾らかかるかも分からない。こういう基地建設、認められませんね。

 それから、最後にです。基地建設計画には艦艇の停泊を目的とした係留施設などの港湾整備があります。西之表市への説明の中では、海上自衛隊の「ましゅう」や「おおすみ」などの大型な艦艇が使用できると想定していますけれども、このほか、イージスシステム搭載艦の使用も想定しているんじゃないですか、イージスシステム。大臣、いかがですか。

安住委員長 中谷防衛大臣、時間が参りましたので、簡単に。

中谷国務大臣 係留施設を計画をいたしておりますけれども、当該施設等については、補給艦の「ましゅう」及び輸送艦の「おおすみ」など大型の艦艇も使用できるということを想定をいたしておりまして、イージス艦等につきましては、まだそれにつきましての詳細についての決定は行っておりません。

安住委員長 田村君、時間が参りました。

田村(貴)委員 否定はしませんでした。重大であります。

 基地建設の中止を求めて、質問を終わります。

安住委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.