第12号 令和7年2月18日(火曜日)
令和七年二月十八日(火曜日)午前九時二十三分開議
出席委員
委員長 安住 淳君
理事 井上 信治君 理事 齋藤 健君
理事 牧島かれん君 理事 山下 貴司君
理事 岡本あき子君 理事 奥野総一郎君
理事 山井 和則君 理事 三木 圭恵君
理事 浅野 哲君
伊藤 達也君 稲田 朋美君
岩田 和親君 国光あやの君
河野 太郎君 後藤 茂之君
小林 茂樹君 高木 啓君
田所 嘉徳君 田中 和徳君
谷 公一君 土屋 品子君
寺田 稔君 西銘恒三郎君
平沢 勝栄君 深澤 陽一君
古屋 圭司君 山田 賢司君
井坂 信彦君 今井 雅人君
大西 健介君 神谷 裕君
川内 博史君 黒岩 宇洋君
近藤 和也君 酒井なつみ君
階 猛君 藤岡たかお君
本庄 知史君 森山 浩行君
米山 隆一君 早稲田ゆき君
池下 卓君 梅村 聡君
奥下 剛光君 徳安 淳子君
西田 薫君 小竹 凱君
長友 慎治君 橋本 幹彦君
赤羽 一嘉君 大森江里子君
河西 宏一君 山口 良治君
櫛渕 万里君 田村 貴昭君
本村 伸子君 緒方林太郎君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
外務大臣 岩屋 毅君
財務大臣 加藤 勝信君
文部科学大臣 あべ 俊子君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
経済産業大臣
国務大臣
(国際博覧会担当)事務代理 武藤 容治君
国土交通大臣 中野 洋昌君
国務大臣
(内閣官房長官) 林 芳正君
国務大臣
(国土強靱化担当)
(防災担当) 坂井 学君
国務大臣
(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当) 三原じゅん子君
財務副大臣 斎藤 洋明君
政府参考人
(内閣官房内閣参事官) 齋藤 敦君
政府参考人
(内閣官房国土強靱化推進室次長) 丹羽 克彦君
政府参考人
(内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)
(経済産業省商務情報政策局首席国際博覧会統括調整官) 茂木 正君
政府参考人
(内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長) 北尾 昌也君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 高橋 謙司君
政府参考人
(内閣府男女共同参画局長) 岡田 恵子君
政府参考人
(こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君
政府参考人
(こども家庭庁支援局長) 吉住 啓作君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(消防庁国民保護・防災部長) 小谷 敦君
政府参考人
(法務省刑事局長) 森本 宏君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 渡邊 滋君
政府参考人
(外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長) 中村 仁威君
政府参考人
(財務省国際局長) 土谷 晃浩君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 望月 禎君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 井上 諭一君
政府参考人
(厚生労働省医政局長) 森光 敬子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 野村 知司君
政府参考人
(厚生労働省老健局長) 黒田 秀郎君
政府参考人
(厚生労働省保険局長) 鹿沼 均君
政府参考人
(経済産業省大臣官房商務・サービス審議官) 南 亮君
政府参考人
(経済産業省製造産業局長) 伊吹 英明君
政府参考人
(経済産業省商務情報政策局長) 野原 諭君
政府参考人
(資源エネルギー庁資源・燃料部長) 和久田 肇君
政府参考人
(資源エネルギー庁電力・ガス事業部長) 久米 孝君
政府参考人
(国土交通省鉄道局長) 五十嵐徹人君
予算委員会専門員 中村 実君
―――――――――――――
委員の異動
二月十八日
辞任 補欠選任
山田 賢司君 岩田 和親君
酒井なつみ君 森山 浩行君
藤岡たかお君 井坂 信彦君
池下 卓君 奥下 剛光君
西田 薫君 梅村 聡君
長友 慎治君 小竹 凱君
河西 宏一君 山口 良治君
田村 貴昭君 本村 伸子君
同日
辞任 補欠選任
岩田 和親君 山田 賢司君
井坂 信彦君 藤岡たかお君
森山 浩行君 酒井なつみ君
梅村 聡君 西田 薫君
奥下 剛光君 池下 卓君
小竹 凱君 長友 慎治君
山口 良治君 河西 宏一君
本村 伸子君 田村 貴昭君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
公聴会開会承認要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
令和七年度一般会計予算
令和七年度特別会計予算
令和七年度政府関係機関予算
――――◇―――――
○安住委員長 これより会議を開きます。
令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算、令和七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。
この際、お諮りいたします。
三案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣参事官齋藤敦君外二十五名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○安住委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美さん。
○稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。
今年は戦後八十年目の節目の年です。戦後七十年談話では、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません、また、謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります、この部分は、初めて戦後レジームからの脱却を掲げた安倍総理の談話の核心です。
私は、政治家になる前は地方の一介の弁護士ではありましたけれども、司法の場を通じて、東京裁判史観の克服、南京事件の百人斬りが虚偽であるとか、また、靖国参拝訴訟に携わってまいりました。その延長に今があります。歴史認識、そして戦後レジームからの脱却は、私の政治家としての原点でもございます。
戦後五十年の村山談話は、まさに戦後レジームと東京裁判史観そのもの、戦後六十年談話も、反省とおわび、残念ながら東京裁判史観を受け入れたものになっておりました。これらを上書きしたのが七十年談話です。
私は、十年前、党の政調会長として、この予算委員会で談話について質問をいたしました。安倍総理は、さきの大戦への反省、戦後の平和国家への歩み、今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のためにも更にどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを、英知を結集して新たな談話に書き込んでいく考えでありますと意気込みを語っておられました。そして、そのとおり、有識者会議を経て、七十年談話を発出したのです。
当時の国際情勢から、日本の歩みを日本の立場からたどり、無定見な謝罪からは決別し、百年先を見据えた未来志向のものとして高く評価できる内容です。
七十年談話で、村山談話、六十年談話の謝罪を終わらせ、百年先の日本のあるべき姿を示した以上、八十年談話でつけ加えるべきことはないと私は思います。
官房長官の七十年談話に対する評価と、八十年談話についての御所見を伺います。
○林国務大臣 戦後七十年談話は、発出に際して、当時、安倍総理がお述べになられたとおり、さきの大戦への道のり、戦後の歩み、二十世紀という時代を大きく振り返り、その教訓を胸に刻んで、戦後八十年、九十年、百年に向けてどのような日本をつくり上げるのか、世界に向けて発信したい、こうした考えの下で、できるだけ多くの国民と共有できるような談話としたもの、そういうふうに認識をしております。
石破内閣は、これまでの内閣総理大臣談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでまいります。
その上で、現時点で新たな談話を発出するか否かは決定をしておりません。今後の対応については、これまでの経緯も踏まえながら、様々な観点から考えてまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、国際社会が転換期を迎え、自由で開かれた国際秩序が揺らぐ中で、二〇二五年の様々な機会を捉え、世界の平和と繁栄に向けた未来志向の戦略的発信に努めていきたいと考えております。
○稲田委員 私は、ここで中途半端な談話を出すことは危険ですらある、このように感じます。
村山談話、六十年談話と安倍談話とは、全く違う、謝罪から決別したものになっています。戦後レジームからの脱却の旗の下で、未来志向で、将来世代に謝罪という宿命を負わせない、そして、歴史認識を二度と外交カードにさせないといった七十年談話に込められた安倍総理の思いを無駄にしないでいただきたいと思います。
官房長官、これで御退席を、ありがとうございます。
次は、財政についてお伺いいたします。
政府の地震調査委員会は、南海トラフの巨大地震が今後三十年以内に起きるを八〇%程度に引き上げました。その経済的被害は二百兆円を超えていると予想されます。さらに、様々な不確実性が高まっている世界において、日本を取り巻く安全保障環境は厳しく、仮に台湾有事になり、沖縄の一部でも戦闘状態に巻き込まれたり、シーレーンの安全性が損なわれれば、日本にとって死活的危機が訪れます。戦争の経済的被害は、トータルでGDP比一〇〇%から二〇〇%、災害を上回るインパクトになると言われています。
こうしたいわば経済、財政にとっての有事が将来に迫ってくる可能性がある以上、防災対策を怠らず、防衛力の抜本強化を行うことは当然ですが、大災害や戦争において大量の国債発行が可能なように、財政上の余力をつくっておく必要があります。財政余力の必要性はIMFからも指摘されています。
現在、各党との与野党協議が佳境を迎えています。来年からの減税や教育無償化も、今の国民の生活を守るために必要です。他方、こうした追加政策によって財政を悪化させないことも大事だと考えます。さらに、対外的な信認を損なわないという点も重要です。
リスクマネジメントとしての財政運営、追加歳出増に対する安定財源についてどのようにお考えか、財務大臣の御所見を伺います。
○加藤国務大臣 御指摘のように、まさに財政は、国民の生活、なりわいをいろいろな状況の中にあっても守るというところに私は目的の一つがあると思っております。そうした財政運営を行っていくに当たって、御指摘のような様々な不測の事態に十分耐えられる財政基盤を平時より備えることが不可欠であります。
また、予算編成に当たっては、従来から、真に必要な財政需要に対応するため、恒久的な歳出を増加させる場合には、安定的な財源を個別に確保することで対応してまいりました。
また、委員がお話ししていただきましたIMFのステートメントでは、財政余力が依然限られている中で、財政赤字の更なる拡大は回避すべきであること、また、いかなる拡張的な財政措置も、歳入の増加や予算における他分野の歳出削減で相殺されなければならないとされており、IMFにおいても安定財源の重要性を指摘されたものと理解しております。
金融環境の変化によって、利払い費増加の懸念への備えも求められる中、大災害や有事に備えた財政余力を確保する観点は大変重要であります。引き続き、経済あっての財政の考え方の下、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出歳入両面の改革を継続し、経済再生と財政健全化、この両立を図っていきたいと考えています。
○稲田委員 ありがとうございます。
経済と財政健全化の両立を図る、経済あっての財政、本当にそのとおりなんですが、それは、財政は二の次という意味ではなく、財政の適正な管理は国が行うべき最重要のリスクマネジメントであるということを忘れてはならない、このように思います。
さて、本日、第七次エネルギー基本計画が閣議決定されました。私は、脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟の会長として、リプレースと立地地域に寄り添う政策の推進を提言してきたところでございます。
今回のエネルギー基本計画では、ほぼ議連の提言が受け入れられたと評価をしております。再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立ではなく、再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極めて重要となるとしました。リプレースについても、同じ電力会社であれば別の原発の敷地内に建て替えを行うことも可能としました。
今回のエネルギー基本計画の意義と、立地地域にも寄り添うための方策について、経産大臣のお考えを伺います。
○武藤国務大臣 稲田委員におかれましては、リプレース議連を始めとして、立地自治体の最も多い福井の御地元で、大変これまでも御指導いただいてきたところです。
今回、エネルギーの第七次の基本計画を閣議決定したところでありますけれども、御承知のとおり、DXあるいはGXの進展によって電力需要増加が見込まれる中で、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況である、低いエネルギー自給率、あるいは火力発電への高い依存といった現状の課題を克服する観点でも、脱炭素電源の確保が求められていると承知をしております。
こうした背景を受け、第七次エネルギー基本計画では、特定の電源や燃料源に過度に依存しない、バランスの取れた電源構成を目指すとともに、脱炭素電源を確保するため、再エネと原子力について、先生おっしゃっていただいたように、二項対立ではなく、共に最大限活用していくという方針をお示ししたところであります。
これまでのエネルギー基本計画は、立地地域から、原子力発電の将来の事業性等の見通しに対する不透明性があるという御懸念の声があったとも承知をしているところです。今回の計画では、例えば原子力発電の最大限活用を示しており、御懸念の払拭につながることを期待しているところであります。
今後も原子力の利用を進めていく上で、立地地域の理解と協力は不可欠であります。立地地域の実情を踏まえつつ、関係府省庁が連携をし、地域振興や避難道路の整備を含む防災対策など、地域の持続的な発展に向けた取組を進めてまいります。
○稲田委員 大臣、ありがとうございます。
特に、避難道路について積極的な御答弁、感謝申し上げます。
さて、関西のエネルギーを支えている福井県の嶺南地方においては、地方創生に不可欠な北陸新幹線の関西延伸が最大の課題となっています。福井嶺南地方の原子力稼働によって関東よりも三〇%も安価な電力の恩恵を被っているのは、関西の方々です。敦賀や嶺北の福井県のほとんどは、その恩恵にはあずかっておりません。
小浜ルートを主張する人もいますが、昨年末の与党北陸新幹線整備委員会においては、最終的に小浜ルートに決定されたことが改めて確認され、小浜駅の調査費の増額が提案されました。嶺南地域の中心である小浜市を結ぶ新幹線の整備は、田中角栄総理の整備計画以来の地元の悲願でもございます。
また、先週から、着工五条件の一つである本格的な財源の議論も始まりました。北陸新幹線は、全線で想定を大幅に上回る乗客数を生み出し、北陸経済に大きな経済効果を及ぼしている極めて優良な公共事業です。北陸新幹線の費用対効果、BバイCや整備に伴う貸付料については、北陸新幹線全体の収益をしっかり反映し、北陸新幹線全体の収益を生かして整備を進めることが重要であると考えますが、大臣の見解を伺います。
○中野国務大臣 稲田委員にお答えを申し上げます。
北陸新幹線敦賀―新大阪間につきましては、関西と北陸の結びつきを更に強めるとともに、激甚化、頻発化する災害に対するリダンダンシーの確保といった重要な意義がございます。
平成二十八年度に、与党におきまして小浜・京都ルートとすることが決定をされ、昨年の八月、国土交通省及び鉄道・運輸機構から詳細な駅位置、ルートの案を公表したところでございます。
昨年の十二月には、与党整備委員会から中間報告がなされまして、その中では、安定的な財源の確保、費用対効果の在り方等について検討を速やかに行う必要がある旨が示されております。国土交通省としても、今後、与党の御議論も踏まえながら検討を進めてまいりたいと考えております。
特に、委員御指摘のとおり、北陸新幹線は、敦賀―新大阪間が整備をされることにより、東京―大阪間の全線開業が実現をすることになります。こうした意義もよく踏まえた検討を行いたいと考えております。
いずれにいたしましても、一日も早い全線開業に向けて、沿線自治体の皆様の御理解を得られるよう、鉄道・運輸機構とともに丁寧かつ着実に取り組んでまいります。
○稲田委員 ありがとうございます。
新幹線は、大臣もおっしゃったように、国土強靱化にも資するもの、しかも、つなげなければなりません。北陸新幹線の最後の一ピースである敦賀―小浜―京都―大阪の一日も早い着工認可に向けて、よろしくお願い申し上げます。
さて、夫婦の氏についてお伺いをいたします。
民法七百五十条の夫婦同氏の規定、これは、最高裁平成二十七年大法廷判決、令和三年の決定においても、その合憲性が確認をされているところです。いずれも、夫婦同氏、親子同氏、民法七百五十条の原則について、家族としての呼称、ファミリーネームの価値を認めたものだと思います。
私も、社会の基礎的、基本的な単位としての家族、そして、その呼び名としてのファミリーネーム、家族の同氏は、日本社会にしっかり定着をしていて、多くの国民の感情にも合致をしていると考えます。特に、親子、兄弟が同氏であることの意義は大きいし、また、家族単位、すなわち夫婦と氏を同じくする未婚の子とで作成されている戸籍の制度は、日本が世界に誇るべき制度として守るべきだと思います。
まず、夫婦同氏、親子同氏、すなわちファミリーネームの意義と戸籍の意義について、法務大臣にお伺いします。
○鈴木国務大臣 今、稲田先生御指摘の点でありますけれども、おっしゃったように、民法において、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すること、そして、婚姻中の夫婦の間に生まれた子は、父母の氏を称することを定めておりまして、氏、ファミリーネームは、個人の呼称の一部であるとともに、家族の呼称としての意義を有していると考えられます。
また、現行の戸籍ということでありますけれども、一組の夫婦、そして、これと氏を同じくする子が編製単位とされておりまして、日本国民の出生、婚姻、死亡等の親族的身分関係を登録、公証する唯一の公簿であります。そうしたことでありますので、真正な身分変動を登録し、公証する機能を有していると考えております。
○稲田委員 ありがとうございます。
一方で、現在、九五%の女性が婚姻により氏を変更している実態があります。女性の社会進出や晩婚化ということもあって、婚姻前の氏を使って築き上げてきた社会的信用や評価、実績、アイデンティティーなどが、婚姻を契機に氏を変更することによって損なわれてしまうといった不利益もあります。女性活躍にブレーキをかけているという指摘もあります。
最高裁においては、例外を認めない夫婦同氏が、憲法が保障する個人の尊厳と両性の本質的平等に反する、あるいは、婚姻の自由を定めた憲法二十四条一項に違反するかが争点となっております。
最高裁では、現行の夫婦同氏制度を合憲とはしておりますけれども、制度の在り方を、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄であるとして、最高裁から国会に真摯な議論をすべしとボールが投げかけられていると思います。
さて、政府の通称使用拡大、拡充の方針によって、運転免許、住民票、不動産登記簿の所有権欄、商業登記簿における役員欄など、公的な証明においても、通称、すなわち旧姓を括弧書きで、通称併記で使用が認められている場面が増えています。
現在、通称併記という形ででも認められていないもの、つまり、あくまでも本名のみというのはどのようなものでしょうか。また、本名なしの通称のみ、つまり、旧姓のみで、身分証明になり得るような公的な証明で表記できるものはありますでしょうか。男女共同参画局長に伺います。
○岡田政府参考人 お答え申し上げます。
政府においては、第五次男女共同参画基本計画に基づきまして、婚姻により改姓した人が不便や不利益を感じることのないよう、旧姓の通称使用の拡大や周知に取り組んできたところでございます。
こうした取組などの結果、現在では、住民票、マイナンバーカード、運転免許証、旅券の券面におきまして旧姓併記が可能となっており、これらに代表される主な公的証明書では、戸籍姓に加えて旧姓も記載できるようになっておりますが、旧姓のみの記載はできないと承知をしております。
また、令和二年度に実施しましたパブリックコメント等においては、例えば、クレジットカードの作成などについて、旧姓併記ができず、戸籍上の氏名を使用する必要があるとの意見が寄せられたと承知をしております。
○稲田委員 最高裁の令和三年の決定の反対意見、すなわち違憲であると指摘した裁判官からは、通称使用は、ダブルネームを使い分ける負担、また、個人識別誤りのリスク、コストを指摘しています。さらに、通称併記では、改姓による手続の煩雑さは解決できません。
資料の一を示します。今日私が指摘した論点を左側に、また、右に向かって、今出されているような案を表にいたしているところでございます。
私は、この問題を、現状維持か、また選択的夫婦親子別氏かの二者択一に考える必要はない。これは山下委員がこの場で質問されたとおりです。私自身は、民法七百五十条の夫婦同氏の規定を改正することなく、呼称としての婚前氏を法定する婚前氏続称制度を法務委員会等で提唱してまいりました。公的証明において、通称使用は括弧書きで拡大しても限界がある、さらに、ここまで広く公的証明に使われている通称に氏としての法的地位を正面から与えないと、法治国家としてはよろしくないと思っております。
ファミリーネームを維持した上で、社会において相当程度拡大している婚姻前の氏について、取引の安定、法治国家の責務として、通称ではなく法的な氏として位置づけるべきではないかと思いますが、法務大臣の見解を伺います。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘のところでありますけれども、旧姓の通称使用の拡大、これで全ての課題の解決ができるのかという論点、そこは解消されるわけではないという指摘があることも留意をすることが必要だと思っております。
同時に、氏に関する具体的な制度の在り方も、これは様々な意見があるのも事実だと思います。旧姓使用に法的根拠を与える制度についても、また同様かと思います。
そういった中にあって、家族の在り方の根幹に関わる問題でありますので、委員からの御提案も含めて、この立法府において、国会において建設的な議論が行われて、より幅広い国民の皆様方の御理解を得られるような形ということが理想ではないかと思っております。
○稲田委員 この問題は、家族の在り方、戸籍の在り方、ひいては国柄の問題でもあります。また、通称使用を拡大すればよいと割り切ることにも問題がある。通称という法律上の氏でないものが公的証明にどんどん使われ、しかも、公的証明の種類によって使い分けができることは、法治国家のあるべき姿ではなく、これが旧姓だけでなく、外国人の通称に拡大するようなことがあってはならない。しっかり最高裁からのボールを受け止め、国会において議論してまいりたいと存じます。
最後に、再審法について大臣にお伺いをしたいというふうに思います。
新憲法の下で八十年近く再審法が改正されなかった、これは、私は、立法不作為と言ってもよい状況だと思います。憲法下の手続保障、刑事司法における手続保障の観点からして、立法不作為と言っても過言ではない。その結果、袴田事件においては、事件から六十年という長きにわたって死刑囚として、そして今回、昨年無罪になったわけですけれども、これは憲法三十七条の迅速な裁判を受ける権利が侵害されていると言ってもいいと思います。
大臣は、今回、法制審に改正について諮問されるということですが、改正に向けた決意を伺います。
○安住委員長 鈴木法務大臣、時間が参りますので、手短にお願いします。
○鈴木国務大臣 再審のことであります。先生、大変いろいろな形で様々な御議論をリードしていただいていることに敬意を表させていただきたいと思います。
今回、こうした中で、諮問ということで、私の方でさせていただくこととなりました。再審制度の改正については、基本法である刑事訴訟法の改正に関わるものであって、刑事裁判実務に非常に大きな影響を及ぼし得るものであります。
そのため、まずは法制審において、様々な立場の専門家の皆様方に、再審請求事件の実情も踏まえつつ、幅広い観点から御議論いただきたいと考えておりますけれども、法務省といたしましては、法制審議会において充実した議論をいただけるよう、スピード感をしっかり持ちながら、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。
○稲田委員 期待しています。
ありがとうございます。
○安住委員長 これにて稲田さんの質疑は終了いたしました。
次に、今井雅人君。
○今井委員 立憲民主党の今井雅人でございます。よろしくお願いします。
最初に、二か月に迫りました大阪万博についてお伺いをしたいんですけれども、伊東担当大臣が御病気だということでございますので、今日、臨時代理になられました武藤大臣にお伺いしたいと思います。
伊東大臣におかれましては、本当に一日も早い回復をお祈りを申し上げております。
二月五日の予算委員会で、我が党の岡本あき子委員とのやり取りで、岡本委員から、大阪万博の運営費、千百六十億円ですね、これが赤字が出ても国は負担しないのかという質問をさせていただきましたところ、伊東担当大臣は、基本的にはこの枠内でということでやっておりますけれども、この先の話でありますから、それにつきましてはまたそのとき対応していきたいというふうにおっしゃっておられます。
これは、赤字になった場合には国でまた負担をする可能性もあるというふうに聞こえなくもないんですけれども、この点についての武藤大臣の御見解をいただきたいと思います。
○武藤国務大臣 伊東大臣の答弁に対する御質問をいただきました。
運営費における話ですけれども、御指摘の閣議了解において、「会場運営費は適正な入場料の設定等により賄うものとし、国庫による負担や助成は行わないこと。」とされております。
万博の運営費については、博覧会協会にて、運営費の収支予測を含む資金計画に基づき、入場券の売上げ状況や、民間企業からの協賛金、ライセンス収入等の動向を踏まえつつ、赤字にならない適正な範囲内で収支を調整していくものと承知しています。
政府といたしましても、運営費を含む万博の主要な費用の執行状況について、有識者を含む予算執行監視委員会も活用しながら、計画との乖離による費用の上振れが生じないよう、しっかりとモニタリングをしてまいります。
開幕をいよいよ間近にした現時点では、成功に向けて一丸となってチケットの販売促進等に全力で取り組むことで関係者間で一致していると認識をしております。赤字になるとは想定しておらず、そうならないように取り組むものと承知をしております。
○今井委員 現在の状況を申し上げると、直近で、目標千四百万枚に対して七百八十万枚しかまだ売れておりません。そして、先日、直近の毎日新聞の調査によりますと、万博に行きたいかということで、行きたいと思わないと言っている方が何と六七%もおられます。
私も万博は成功してもらいたいんですけれども、でも、いざというときにやはり備えておかなきゃいけないという意味で質疑をさせていただいておりますが、資料の最初のを見ていただきたいんですけれども、これはまさに今大臣が御答弁で言及されたことなんですけれども、平成二十九年の四月十一日の閣議了解のところで、四番目のところ、四ポツですね、「会場運営費は適正な入場料の設定等により賄うものとし、国庫による負担や助成は行わないこと。」と、国庫からお金は出しませんということが書いてありますので、もう一度確認しますが、この閣議了解というのは今も生きているという理解でよろしいですか。
○武藤国務大臣 閣議了解があることを踏まえて、適時適切に対応していくことと承知をしております。
○今井委員 そうなると、この文章を見る限りは、赤字がたとえ出たとしても国はお金が出せない、出さないということになりますが、その理解でよろしいですか。
○武藤国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、運営費の執行状況をしっかりモニタリングをしながら、万が一にも赤字が見込まれるような事態が生じるような場合には、博覧会協会も交えて関係者ともよく相談をする必要があるとは認識をしているところであります。
○今井委員 私は、この閣議了解の意味を確認しているんです。これは、赤字になっても国費は出さない、そういう文章に読めますが、そういう理解でよろしいですか。
○茂木政府参考人 御指摘の閣議了解でございますが、御指摘のとおり、これは、閣議了解の中で、会場運営費は適切な入場料の設定等により賄うものとして、国庫による負担や助成は行わないというふうにしております。もちろんこの閣議了解は現在も生きておりますので、これに基づいて私どもも様々な予算措置をしております。
赤字というのは突然赤字になるわけではございませんでして、その意味で、先ほど大臣が申し上げたのは、日々執行状況をモニタリングしながら赤字にならないように取り組む、そういうことを申し上げているという理解でございます。
○今井委員 答えていただいていないんです。
大臣、もう一回お伺いしますね。会場運営費に関して、国費による負担や助成は行わない、これでよろしいですね。
○武藤国務大臣 おっしゃるように、行わないというもので認識をしているところであります。
○今井委員 今、明快に言っていただきました。今の答弁では、たとえ赤字が出ても国庫から負担は出さないということになりますので、私は、赤字が出たときには、多分予備費とかで、今回議論している予算のところから出されると思いますので、ここは確認しておかなきゃいけないという意味で申し上げているんですけれども、今の答弁でよろしいですか。
○武藤国務大臣 伊東大臣の答弁についてですけれども、一応これは、当時のあれですけれども、赤字にならないような取組を進めることを前提とした上で、今後も適時適切に対応していく旨申し上げたものと承知をしているところです。
○今井委員 今、その質問から変わっていますから。この閣議了解の意味を。じゃ、もう一度確認しますね。先ほど答弁していただきましたけれども、もう一度。
会場運営費に関しては、国庫により負担や助成は行わないということでよろしいですね。大臣にお伺いしています。
○安住委員長 ちょっと速記を止めて。
〔速記中止〕
○安住委員長 速記を起こして。
武藤経産大臣。
○武藤国務大臣 閣議了解で決定するものと承知しています。
○今井委員 済みません、ちょっと今、答弁が分からなかった。閣議了解で決定するものとしているということは、この閣議了解を変える可能性があるということですか。(武藤国務大臣「閣議決定されたものとして」と呼ぶ)されたもの。もう一度、答弁お願いします。
○武藤国務大臣 閣議決定に記載されているとおりであります。
○今井委員 じゃ、ここはもう明快になりましたので、次の質問に参りたいと思います。
外務大臣にお伺いします。昨日、USスチールの買収についての質疑がありましたので、ちょっとそこで私はよく分からない点があったので、改めて確認をしたいと思います。
二月七日の日米首脳会談において、会談後、トランプ大統領は、彼らはUSスチールを所有するのではなく多額の投資をすることで合意したと。彼らはと言っていますから、彼らとは、つまりUSスチールと日本製鉄のことを指しているんだと思うんです。それから、石破総理は、買収ではなく投資だというふうにおっしゃっています。
まず、この買収ではなく投資だということの意味なんですけれども、これは単純に考えれば、株式を五〇%以上は保有しないという意味だというふうに私は理解しているんですけれども、会談の中でそういう合意がなされたという理解でよろしいですか。
○岩屋国務大臣 先般の日米首脳会談ですが、私はもちろん総理の隣で同席をしておりましたが、首脳同士の外交上のやり取りなので詳細は控えさせていただきたいと思いますが、冒頭、日本企業による対米投資を含む日米経済関係全体の話になって、その重要性を確認した後、USスチールの話になりましたが、そのやり取りを通じて、本件は、どちらかが一方的な利益を得るというような単なる買収ではなくて、日本の技術と資金を活用して米国に大胆な投資を行うことで、米国や世界が求める優れた製品を共に生み出すものであり、日米双方が利益を得るウィン・ウィンの関係になるものにしようという大きな認識において首脳間で共有したところでありまして、その出資割合などという詳細にわたる議論はありませんでした。
○今井委員 なぜこの質問をしているかといいますと、政府の皆さんがおっしゃっていることと企業側から出ている情報がちょっとずれているんですね。
具体的に言いますと、先ほど申し上げたように、まず、トランプ大統領は、彼らは合意したと言っていますから、二つの企業が合意したという意味でおっしゃっているんだと思うんです。そして、二月十日に林官房長官が、日本製鉄はこれまでとは全く異なる大胆な提案を検討しているというふうに企業側のことをお話しされているんですね。
ところが、これは報道が正しいかどうか分からないので確認しているんですけれども、二月十七日のテレビ東京は、日本製鉄は完全子会社化へということでアメリカ側に伝達をするという報道をしています。つまり、買収をするということを伝達するというふうに報道しています。
また、翌日のブルームバーグですけれども、ブルームバーグは、複数の関係者から取材したとした上で、この構想については両社は事前に知らされていなかった、つまり知らなかったんですという報道をしております。
一連のことを言うと、政府側と企業側の言っていることが全くずれているので、ここはどうなのかというのを確認したいんですが、これは多分、交渉をされているのは経産大臣だと思いますので、経産大臣にお伺いしたいんですけれども、日米の首脳会談をする前に両社あるいは日本製鉄さんと事前の調整、いろいろなお話合いというのはされた上で会談に臨んでいらっしゃるんでしょうか。
○武藤国務大臣 事前調整のやり取りがあったかという御質問だというふうに思います。
今回の日米首脳会談に先立ちましては、日本製鉄からは、本件を単なる買収と見ているのではなく、大胆な投資を行うことで、先ほどおっしゃっていただきましたけれども、米国や世界が求める優れた製品の生産を行い、日米がウィン・ウィンとなるような提案を検討していると事前に聞いていたところであります。
○今井委員 そうすると、テレビ東京とかブルームバーグの報道が間違っているということになると思うんですけれども、そういう理解でよろしいですか。
○武藤国務大臣 報道があったということは承知をしておりますけれども、その真偽についてはここで私どもとして確認しておりません、できません。
○今井委員 ちょっとここは、私は余り国がやはり民間の取引に口を挟むべきではないと思いますけれども、今回はアメリカから、アメリカ政府からの最初のそういう認めないというところから始まっていますから、日本側もある程度はやはり絡まざるを得ないということなんだと思うんですけれども。
そこで、ちょっと私はもう一つ見解をお伺いしたいんですけれども、元々これはバイデン大統領が大統領令で禁止をされたんですが、その根拠になるものは、国防生産法を根拠にしていらっしゃると思うんですね。ところが、今、トランプ大統領はどういう発言をされているかというと、心理的にも売却を許すことは考えられないと、感情論でおっしゃっているようにしか見えないわけです。
ですから、もちろん政治ですから、感情論というのは入るかもしれませんけれども、これからやはり、この案件だけではなくて、今後の例えば日本企業がアメリカの企業を買収したいというときに影響を及ぼす可能性があるわけですよ。ですから、この問題というのは、やはり法的な整理というのをちゃんとしておかないと、なぜアメリカ側はこうやって拒否をしているのか、それに対して日本はどういうふうにちゃんと理屈として主張するのか、何となく自分の国の企業を日本に買われるのはしゃくだから駄目なんだというのは、それはやはり理由にならないですね。
そのことをしっかりと国が、日本政府はトランプ大統領に申し上げないといけないと思うんですけれども、その点について外務大臣にちょっと御意見を伺えればと思います。
○岩屋国務大臣 バイデン政権のときは、最終的に、安全保障上の問題があるかのようなことをおっしゃっていたと思います。それについては、当時はブリンケン国務長官でしたが、私はお会いしたときに、それは同盟国に対していかがなものかということを申し上げました。
トランプ政権になって以降、トランプ大統領、いろいろな御発言がございます、委員御指摘の、彼らというのは一体何を指すのかということも含めて、その一々について予断を持って我々から申し上げることはできませんけれども、おっしゃるように、先般首脳会談で認識を共有したこの考え方というものを引き続きしっかりトランプ政権側に伝えていきたいと思いますし、恐らく、武藤大臣のカウンターパートになる商務長官もまだ承認されていないと思いますので、そういう陣容が整えば、政府としては、これは民間企業のことですので、委員おっしゃるとおり、政府が余り口を出すべきことではありませんが、米国政府とのコミュニケーションについては外務省もしっかりお手伝いをしていきたいと思っております。
○今井委員 これは法治国家同士の議論ですので、やはり法に基づいてしっかりやるべきだと思いますから、法に基づいていないのであれば、国としてしっかりとこの点は相手に主張していくということを是非やっていただきたいということをお願いを申し上げておきます。
続きまして、クールジャパン機構についてお伺いしたいと思うんですけれども。
これは二〇一三年の十一月に設立されています。私は、当時、経産委員会におりまして、このクールジャパン機構の法案、大反対をしておりました。根拠は、やはり官にこんなPEのような投資はできるはずがない、民間にこれは任すべきだということで反対をしていたんですが、その後十二年がたちまして、これは二十年間の限定ですので半分以上過ぎましたから、今がどうなっているかを確認したいと思います。
まず、経産省にお伺いします。このクールジャパン機構の直近三年間の損益と累計の損益を教えてください。
○南政府参考人 お答え申し上げます。
過去三年間のクールジャパン機構の損益ですが、令和三年度がマイナス七十八億円、令和四年度がマイナス四十七億円、直近、令和五年度末においてマイナス四十二億円をそれぞれ計上しております。
累計の損益につきましては、令和五年度末でマイナス三百九十八億円となっております。
○今井委員 すごいんですね。もう四百億も損が出ています。しかも、直近三期は全部マイナスです。
この仕組みというのは、長期の投資ですから、最初のところは経費だけかかるので赤字がずっと膨らむんですけれども、エグジットをしていくとそこから利益が上がっていく、だからプラスになっていく、こういうビジネスモデルですね。
では、そこで、その点についてどうなのかというのをお伺いしたいんですけれども、これまで、この前期までで、たしか、私によると十九件ほどエグジットしていると思うんですけれども、この前期までにエグジットした案件の件数、そして損益を教えてください。
○南政府参考人 お答え申し上げます。
クールジャパン機構の設立から令和五年度末までにエグジットを決定した件数は十八件となっておりまして、これらについて、エグジットによる損益はマイナス百四億円となっております。
○今井委員 そうなんですね。投資してエグジットしたのでも損が出ているという状態です。
そして、もう一つあります。現在もまだ数十件ほど案件があるわけですけれども、この案件も、会計基準によって、結局ビジネスがうまくいっていないというものに関しては減損処理をしなきゃいけないんですけれども、現在、今投資している案件で減損処理をした金額を教えてください。
○南政府参考人 お答え申し上げます。
令和五年度末時点の投資中の案件における減損計上額は、百一億円となっております。
○今井委員 そうなんです。今投資している案件でもうまくいっていないんですね。もう失敗だらけなんですよ。私が十年前に言ったとおりのことが起きています。これは本当に、なぜこういうことが起きているのかということを検証するには、それぞれの案件を一つずつ見ていかなきゃいけないんですね。
経産省にちょっともう一回お伺いしますが、先ほど、エグジットした案件の損益全体をおっしゃっていただきましたけれども、その各案件でそれぞれどれだけ損益が出たかということがほとんど公表されていないんですが、これはなぜですか。
○南政府参考人 お答え申し上げます。
公的資金の活用による透明性確保の要請に対して説明責任を果たしていくということは当然であると考えております。機構の損益計算書を含む年度決算の状況については、機構のホームページ等で公表しているところであります。
他方、エグジット済み案件の個別の回収額等の公表につきましては、今後、売却先企業が他の企業に転売等を行う際の自由な交渉を阻害するおそれがあることなどから、秘密保持契約の対象となっていることが通例であります。そのため、エグジット時点において、関係企業に対して開示に関する確認を行い、了解を得られた範囲で、私たち、公表をしているところであります。なお、分野別や時期別にまとめた上で収支を公表するなどの取組は既に実施しております。
引き続き、情報の秘匿性に留意しつつ、できる限りの情報開示を行ってまいりたい、そのように考えております。
○今井委員 これは、開示されているのは一件しかないんです。一件だけは五十数億円も利益が出ているんです。それだけは開示されているんですけれども、損しているやつは一件も開示されていないんです。こういう状況なんですね。
ですから、大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、これは、税金を出しているので、私たちはこれがちゃんとうまくいっているかをチェックしなきゃいけないんですけれども、その案件ごとの収支が分からないのにどうやってチェックするんですか。それは秘密保持契約で出せないというなら、そもそも、このプロジェクト自体がブラックボックスになってしまっているということでスタートしているからこんなことが起きているんです。だから、こんなことでは我々はどうやってチェックしたらいいんですか。これはやはり開示しないのは問題だと思いませんか。
○武藤国務大臣 今、先生から、一件開示されたと。事務方の方からは五件と聞いていますので、もしあれでしたらまた補足させます。
参考人からの答弁のとおり、先生もおっしゃられるように、公的資金の活用によるこういう透明性確保の要請に対して説明責任を果たしていくのは当たり前の話で、当然のことだというふうに私は承知しています。
一方で、ただ、売却先企業に関する売却価格については、通例、今事務方から話がありましたように、秘密保持契約の対象となっているところで、そういう点を踏まえると、やはりクールジャパン機構で、エグジットの時点において、関係企業に対して開示に関する確認を行い、了解を得た範囲でその公表をしている、これが一つのルールかなと思います。
また、クールジャパン機構のミッションである投資活動を円滑に行うために、民間における取引慣行への配慮も必要であるということで、引き続き、情報の秘密保持に留意をしつつ、できる限りの情報開示を行ってまいりたいと思います。
○今井委員 それでは我々はチェックできないので、やはり全部を公開していただくということをやっていただかなきゃいけないということを申し上げて、もう一点、これは実は二〇二二年に計画を下方修正していますが、その内容と修正した理由を教えてください。
○南政府参考人 お答えいたします。
二〇二一年五月に策定した機構の計画では、二〇二一年度の累積損益の目標額をマイナス二百五十七億円と計画していましたが、長引くコロナの影響等から、二〇二一年度末の累積損益はマイナス三百九億円となりまして、計画未達となったことを受けて計画を見直したものであります。
なお、直近の決算である二〇二三年度末においては、二〇二二年十一月に新たに作成した修正後計画の累積損益の目標であるマイナス四百七億円に対して、実績値が目標を上回る水準、マイナス三百九十八億円となっております。
○今井委員 うまくいっていないから下方修正したということなんですけれども。
大臣にお伺いしたいんですが、実はその後、令和六年度に八十億円新規で投資決定しているんですね。これだけうまくいっていない、しかも計画も下方修正している、なぜそういうものに税金を投じるんですか。
○武藤国務大臣 クールジャパン機構の令和六年度予算の計上をめぐって、令和四年十一月に策定をした投資計画の収益性目標を上回っていたため、令和六年度に必要な事業規模として二百九十億円を計画しました。その投資財源の一部として産業投資九十億円を要求し、財政制度等審議会にもお諮りをしたところ、特段の指摘を受けることなく了承されたところであります。また、クールジャパン機構の投資先の商材、サービスの利用企業はこれまでに六千社を超えて、地域自治体の首長さんからも新規投資に期待の声が寄せられているところでもあります。
こうした状況を踏まえつつ、令和六年度において、クールジャパン機構において政策性や収益性を踏まえて慎重に選定を進め、合計約八十六億円の支援決定を行ったところであります。
○今井委員 これは明らかに、下方修正した時点でうまくいっていないわけです。そこに新たに税金を投じるということが果たして妥当かということなんですよね。
KPIの中に民間投資を呼び込むというのがあって、確かに三千億円ぐらい民間の投資が入っているんですね。でも、これはよく考えてみてください。官民ファンドから出資をしているところで損をしているわけです。そうしたら、普通に考えれば、つき合っている民間の皆さんも損しているんですよ、普通に考えれば。一緒に投資しているんですから。もしそうだとすれば、政府が呼び水になったことで民間企業に損をさせているんです。それを、KPIでできている、できている、そうやって主張するというのは私は間違っていると思いますよ。しかも、この八十億円というお金を出すというところも非常に大きい問題だと思います。
そして、この官民ファンドをつくったときに、だんだんと民間の人たちがクールジャパンに出資をしてくれるので出資比率がだんだん民間の方が増えてきますというふうに説明されておられましたけれども、ちょっと、政府と民間の出資比率が最初の設立当時と現在、どうなっているか教えてください。
○南政府参考人 お答え申し上げます。
政府からの出資比率でありますが、発足当初の平成二十五年度は、民間投資八十五億円のところ、政府出資は三百億円でありまして、七七・九二%。令和五年度末時点では、民間投資百七億円のところ、政府出資は千二百三十六億円となっておりまして、九二%となっております。
ちなみに、先ほど先生もおっしゃったとおり、その他のところで三千億円出融資がございます。
以上であります。
○今井委員 全然、設立のときに説明していたことと真逆になっているんです。七八%ぐらいだったのが、何と今、官の割合が九二%を超えているというひどい状況です。ですから、官にやらせるとろくなことはないですということを申し上げてきたのがそのとおりになっているということを、ここでちょっと明らかにさせていただきました。
その上で、一つの問題点は、これだけ損失が出ているのに機構の人も誰も経営責任を取っていません。元々これをつくった経産省も誰も責任を取っていません。こういう無責任体質がこういうことを生んでしまうんだと思いますが、経産大臣、この点についてどう思われますか。
○武藤国務大臣 決して無責任とは皆さん思っていらっしゃらないのでこれまで来れていると思います。
官民ファンドによる投資成果の追求については、これは政府全体として取り組んでいく責務があると考えているところで、クールジャパン機構については、今、令和三年度決算において、累積損益の目標を下回った状況を踏まえて、令和四年十一月の財投分科会において、最低限達成すべき投資計画として、政策目的の実現を前提としつつ、収益性を確保するため、投資先の管理と資金回収の強化、あるいは案件組成や投資先への支援の強化、専門人材の確保と組織の効率化等から成る抜本的な経営改善策を打ち出したところでもあります。
クールジャパン機構については、政策性、収益性に関して四つのKPIが設定されています。収益性を含めて、現状ではいずれも目標を満たしているところであります。政策効果の最大化に向けて、適切に今後も対処していきたいと思います。
○今井委員 今説明されていなかったですけれども、誰も経営責任は取っていないんです。その上で、今回、ラピダスに一千億出資されるというふうにおっしゃっていますよね。これは、官民ファンドと形は違うんですが、出資という意味では一緒です。そして、民間のお金を呼び込むという意味でも同じです。
今回、予算計上されていますが、これはまだ、議決権をどれぐらい取るのかとか、何%ぐらいの株のシェアを取るのかとか、何も決まっていないんですね。この段階で一千億という数字だけが予算にぼんと上がってきているんですけれども、じゃ、この責任はどうやって取るんだ、中身はどうなんだと分からないままこの予算の審議をするというのは私は無理だと思いますけれども、いかがですか。
○安住委員長 武藤経産大臣、ちょっと時間が参っていますので、手短に。
○武藤国務大臣 じゃ、手短に。
今回、今国会に提出している次世代半導体製造事業者への出資等を可能とする法律案、これは支援対象事業者を公募プロセスを経て経済産業大臣が選定することになっております。この選定やその後の支援は、外部有識者にも確認をいただきながら、事業計画等を精査した上で、私の、経済産業大臣の責任で行うこととなります。
その責任を適切に遂行できるよう、マイルストーンを設定し、その達成状況等を確認しながら進めるとともに、進捗状況は国民に丁寧に説明してまいりたいと思います。
○今井委員 終わります。
○安住委員長 これにて今井君の質疑は終了いたしました。
次に、森山浩行君。
○森山(浩)委員 立憲民主党の森山浩行です。
私の方からは、立憲民主党の予算の修正案について、これまでるる議論をしてきておりますけれども、まずは、最近の世論調査を見ていても非常に国民の皆さんからの期待の高い、ガソリン税、軽油引取税の暫定税率の暫定がいつまで続くのかというところ、これをお願いしたいと思います。
○安住委員長 ちょっと速記を止めて。
〔速記中止〕
○安住委員長 速記を起こして。
では、再開します。加藤財務大臣。
○加藤国務大臣 平成二十一年度に、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税の暫定税率について一般財源化され、そして、平成二十二年の税制改正、これは当時民主党の政権下ではありましたが、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情などを踏まえて、期限のない当分の間税率として税率水準を維持されたという経緯があり、そして今に至っております。
その上で、昨年十二月に、自民、公明、国民民主の三党ではありますが、幹事長間で、いわゆるガソリンの暫定税率は廃止をする、具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされております。
また、令和七年度与党税制改正大綱でも、引き続き政党間で真摯に協議を行うこととされており、政府としては、その結果を踏まえた上で適切に対応していきたいというふうに考えています。
○森山(浩)委員 暫定であろうと当分の間であろうと、いつかなくなるというのはこれまでも前提なわけです。それをわざわざやめましょうよという合意をしてこの予算委員会の審議に来ているわけですから、国民の皆さんは非常にこれは期待をされていると思います。
しっかり期限を切っていただきたいと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされておりますので、その協議をしっかりと踏まえて対応していきたいということで、政府としてそこに何か期限を切るとかいうことは控えさせていただきたいと思います。
○森山(浩)委員 国の予算の使い方を決める予算委員会ですから、これをまたいで、まだ後でいいんだというふうにはならないと思いますよ。ここはしっかりと結論を出していただきたいと思います。
さらに、これに併せて、航空燃料を含む燃料油価格激変緩和補助金、これを縮小するという動きが出ております。昨年十二月、さらに今年一月十六日と段階的に縮小していくということになっておりますけれども、これは、計どのぐらいの額になりますか。
○安住委員長 ちょっと速記を止めてください。
〔速記中止〕
○安住委員長 では、速記を起こしてください。
資源エネルギー庁和久田資源・燃料部長。
○和久田政府参考人 お答え申し上げます。
航空機燃料についてでございますけれども、令和五年度につきましては、航空機燃料に対して四百九十五億円の補助をしているところでございます。
○森山(浩)委員 年間約五百億円です。
コロナのときに、皆さんも御記憶に新しいと思いますが、航空会社の皆さんが、他業種に行ったりとか、全然航空機が飛べないという中で、随分と赤字をためてこられています。これを立て直していくためにも、縮小というのは当面凍結をするべきかと思いますが、いかがですか。
○武藤国務大臣 森山委員から御質問いただきました航空機燃料の凍結という話でございますけれども、先ほど財務大臣からも話がありましたように、燃料油価格の激変緩和事業につきましては、これは永続的なものではなく、あくまで一時的、緊急的な対応として実施をしてきているところでもあり、出口に向けた対応が必要だということも大事なことかと思っております。
このため、昨年閣議決定された経済対策を踏まえて、昨年十二月から段階的に補助を縮小してまいりましたけれども、現在も、航空機燃料を含めて、一定の支援は継続しているところでもあります。ただ、額はだんだん小さくなってきている。
本事業の今後の扱いについてですけれども、原油価格などの状況を丁寧に見極めながら、適切に対応していきたいというふうに思います。
○森山(浩)委員 いきなり五百億の負担を強いるというような形になるわけですから、ここはやはり激変緩和ということをしっかり置いていただいてやっていただきたいというふうに思います。まずは凍結ですよ、この段階、物価も上がっているわけですから。
さて、高校無償化については、我々が提案をしております三千七百九億円、いわゆる実質的な所得制限を撤廃、また、私立高校に通う子供のいる世帯への支援額を四十五万円にということをほぼ丸のみというような形で報道されておりますので、これは評価をしたいと思いますが、具体に進めていただきたいと思います。
介護、障害福祉、幼稚園、保育園の従事者の収入アップへの見解ということで、昨日の早稲田議員の質問の中で、全産業の平均が三十四・七万円であるというような状況の中で、それぞれの皆さんの平均賃金、賃金格差としては、幼稚園の教諭については二十七・二万円、訪問介護員は二十八万四千円、保育士は二十七万一千円、介護職員は二十六万四千円ということで、六万円から八万円ぐらい毎月少なくなっているという状況でございます。
これは、今回の予算でそれぞれ工夫をして上げるんだというふうにおっしゃっていますけれども、何円上がりますか。それぞれお答えください。
○黒田政府参考人 まず、介護職員についてお答え申し上げます。
議員御案内のとおり、令和六年度の介護報酬改定におきまして、令和六年度二・五%、それから令和七年度二%の賃上げにつながるように必要な処遇改善加算が措置されておりまして、その旨が予算にも反映されているところでございます。
なお、平均給与は約三十万円でございますので、それに二%を機械的に当てはめますと、約六千円相当ということでございます。
○三原国務大臣 保育士の処遇についてでございます。
直近の令和五年賃金構造基本統計調査では、保育士は三十二・一万円と、全産業平均の三十六・九万円よりは低いものの、以前と比べ、その差額は縮小してきております。
その上、直近でも継続的に処遇改善を行っておりまして、令和五年には五・二%、令和六年度補正予算で一〇・七%の大幅な改善を実施し、令和七年度予算案でも、財源を確保した上でこれを反映しております。
改善によって、先ほど申し上げた三十二・一万円から更に引き上がるものと考えておりまして、金額というお尋ねでしたので、平均賃金を用いて機械的に計算いたしますと、五・二%が一・五万円、そして一〇・七%が三万円、合わせて四・五万円、三十二・一プラスということになります。
○望月政府参考人 私立幼稚園の子ども・子育て支援制度に移行していないものでございますけれども、私立高等学校等経常費助成費補助の幼児一人当たりの単価を増額いたしまして、経常費経費に対する支援拡充を考えてございます。
具体的には、令和六年度の二万五千百四十四円から、令和七年度予算案では、一・五%増の二万五千五百二十一円を想定しているところでございます。
○森山(浩)委員 それぞれ数字は出ているわけですけれども、これが運営費に回ったりとか、直接給料に反映されないというような実態もあるわけで、また、令和五年は五百三十九億円、令和六年は千八百九十二億円というような形で、補正予算で処遇改善を出しているというような事例もございます。
そういった単発でやっていくというよりは、ここまで上げるんだというようなことをしっかりと意識を持って、何年までには平均値、そして何年までには平均値を上回ってここまでというようなことをそれぞれ目標を持っていただきたいと思いますが、いかがですか。
○福岡国務大臣 御指摘のとおり、報酬改定で見込んでいる処遇に対して、ほかの民間産業の処遇がかなり伸びているということで追いついていかないんじゃないかという問題意識を示されているところでございます。
それに対しましては、処遇改善加算を取りやすくする環境整備であったり、また、昨年末成立しました補正予算等、これから支給が行われますから、その支給状況を見た上で、事業所の経営状況をしっかり見ながら必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
○森山(浩)委員 やりながら考えるという話で、こういった介護、保育あるいは幼稚園教諭といった人たちが、やりたいんだけれども、余りにも給料が低過ぎるということで選ぶことができないというような実態を踏まえますと、しっかりこれは目標を持って、ここから先はこうなりますよというようなことをやっていく必要があると思いますので、それぞれの大臣、よろしくお願いをいたします。
さて、中小企業社会保険料の負担の軽減ということで、我々の提案では、新たな雇用に対し社会保険料の二分の一ということになっておりますけれども、社会保険料負担百三十万円の壁というのが、雇い控え、百三十万円以下のアルバイトにしてもらおうかというような形で、企業、経営者の皆さんが雇い控えをしようかと考える原因になっているとは思われませんか。
○福岡国務大臣 御指摘のとおり、特に中小零細企業の方々にとっては、経営上、社会保険料を負担に感じていらっしゃる方もいらっしゃるというふうに承知をしております。
○森山(浩)委員 その問題意識は共有をしているということなんですが、「保険料肩代わり 八割還付」ということで、二月十八日、本日の東京新聞です。これは今朝の新聞ですので通告をしておりませんけれども、「年収の壁撤廃 企業の負担軽減案」ということで、この百三十万円の壁、百六万円の壁といった社会保険料のところに税金を入れてこれを補填をしようというようなことを検討されているというふうに報じられていますが、これは検討されているのですか。
○福岡国務大臣 報道については承知をしております。
今、様々な、そこについては政党間の協議もなされていますし、どのような形で成案を得るかということはまさに協議中というような状況でございます。
○森山(浩)委員 ということは、本委員会、二月五日、階委員の質問への答えということで、加藤大臣がおっしゃっています。
社会保険料を公費で賄うということは、社会保険料というのは、御承知のように、給付と負担の関係になっているわけですね、ですから、負担をこれだけすれば給付をこれだけ受けることができる、ですから、年金の場合には、例えば滞納があって払わなければ将来その分は年金額が下がる、こういう関係になっている、こういう状況の中で、まさにこれが相互扶助の考え方でありますけれども、そこに、負担の一部に一部公的負担を入れて下げるということは、公平の概念、あるいは正当の概念からどう捉えるのかというような答弁をされています。
これは、検討をするということは、この部分というのは撤回されているということでいいですか。
○加藤国務大臣 その考え方は、引き続き、私どもはそういう考え方に立っているところでございます。私どもは立っているところでございます。
その上で、今の話は、政府の中でとの御質問だと思いますけれども、報道ベースは承知をしておりますけれども、私どもとしては、まさに公的な税金の部分についてそういう形で対応するということについては、そもそもの保険制度そのもののありようからしていかがなものなのかという思いであります。
○森山(浩)委員 いかがなものなのかと言う人と、いかがなものではないと言う人が、政府の中に混在をしているということかもしれませんが。
昨日のここの議論では、企業への助成金という形ならばあるんじゃないかということで、中小企業の法人税の減免制度と併せて社会保険料を減免すべきという部分については前向きな御答弁などもありますけれども、保険料肩代わり、八割還付というようなことを検討するのであれば、我々が提案をしています、新たな雇用に対し社会保険料二分の一、中小企業への支援という形で公費を入れるということは問題ないのではないですか。
○福岡国務大臣 報道ベースでいろいろおっしゃられていますけれども、まず、社会保険料そのものというよりも、今どのような形で年収の壁について乗り越えていくかということについては、様々な、キャリアアップ助成金を含めて、年収の壁・支援パッケージというものがございます。そういったものを今後もどうやってやっていくかということの検討をされているということで、詳細は、今後進めていかれるものと承知しています。
○森山(浩)委員 いやいや、だから、二月五日の答弁だと、公費を入れることは検討しないというふうに聞こえているわけですね。こうおっしゃっている。それは変わらないとおっしゃっているけれども、検討していることはお認めになっているわけですから、これは検討に値するということでいいですね。
○加藤国務大臣 政府全体ということでいえば、財務省の立場は、従前の考え方は何ら変えているところでもございません。
それから、昨日の総理の答弁は、たしか、労働特別会計、これを活用するという今のスキームを更に広げていくという形での御説明であったというふうに考えております。
○森山(浩)委員 ということで、財務省としてはこれまでのスキームをということだけれども、政府内の検討という中で、公費を入れるという部分についてはいろいろな形を考えながら検討しているということですから、この二分の一についてはしっかり検討いただきたいと思います。
厚労大臣、文科大臣、こども大臣、結構です。ありがとうございます。
さて、災害対策についてでございます。
私は、この間、災害局長というようなことで、党の中でもこの仕事をしてまいりましたけれども、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策について、執行状況の後追いができていないという会計検査院の指摘に対して、チェックをするという形で変わってきていますけれども、特に、防災、あるいは減災、あるいは復興というような名前がつけば、全然関係ないようなものでも、なかなか、これはやめておいたらいいんじゃないかというような議論もしにくいという状況があります。
執行状況まで含めてしっかり今後もチェックをするべきだと思いますし、また、東北の震災復興についても、次のフェーズに入っていくわけでございます。そういった部分も含め、透明化を進めるべきと考えますが、いかがですか。
○坂井国務大臣 国土強靱化に関します対策の実施に当たりましては、各府省庁において、五か年加速化対策の閣議決定文書などに示されている内容の範囲内で施策を推進するよう、令和五年六月に内閣官房より通知をし、各省庁を通じて、各々が所管する事業について地方公共団体等にその旨周知がなされているところでございます。
これは、御指摘のように、平成三十年から令和二年までの三か年計画において会計検査院から指摘をされたことも入れて対応しているというところでございまして、ただいまは五か年加速化計画を行っておりますが、これの対策ごとの支出済みの額の状況について、細かく対策ごとに、国土強靱化年次計画、冊子もありますし、ホームページにも載せておりますけれども、そこでどのように幾ら使ったかということも公表しておりまして、引き続き、透明性の確保を図りながら、関係府省庁と国土強靱化の取組を着実に推進してまいりたいと思います。
○森山(浩)委員 ありがとうございます。
これについては、本当に隠れみのになるようなことがないように、しっかりと現場のために使うようにお願いしたいというふうに思います。
内閣府防災の増員、しかも倍増ということでございますから、人員も予算も大きくなるわけですけれども、百十人から二百二十人と倍増ということになりますが、この主な役割についてお知らせください。
○坂井国務大臣 御指摘のように、令和八年度中に防災庁を設置するということを見据えつつ、政府全体の災害対応を担う内閣府防災担当の体制を令和七年度から強化をする。そこには百十名から倍増するということとなっております。
具体的には、災害対応の司令塔機能を強化するため、次官級の防災監の新設と、先ほど申し上げたように、倍増、百十名増える予定となっておりますが、ここは、都道府県ごとのカウンターパートとなる職員など、地域防災力強化担当に充てるほか、避難生活環境の整備、官民連携や防災DXによる災害対応機能強化など、こういった重要課題について重点的に体制を強化することとしております。
○森山(浩)委員 四十七都道府県に連携担当を置くということでございますが、これは、政令市二十市についてはないんですよね。私は、防災の現場、災害の現場にずっと行っている中でいうと、二十政令市については、機材も、また職員の練度も、また二十政令市同士でのネットワークも含めて、なかなか経験の豊かな方も非常に多いという状況で、どこの現場でも助かっている。あるいは、政令市同士のネットワークで、都市部についてどんと入っていくというのができる体制ができてきています。
都道府県との連携担当と同じように、政令指定都市との連携担当を置くべきじゃないですか。
○坂井国務大臣 個人的には、今回、四十七都道府県に地域防災力強化担当を置く、そして、国側に置くと同時に、各都道府県の自治体側にも指定をした担当職員を置いていただくということで、今まで以上に国と県との連携が密接になるだろうということを大変期待をしているところでございます。
そして、その関係は、もちろん、政令市にも置けてそういう関係ができれば、私は個人的にもいいと思っておりますが、まずは四十七都道府県に置いていただいて、初めての取組でもございますので、置かせていただいて、そして作業をし、実績を上げることに注力をして、その中で、その状況等を勘案をしながら、指定都市についてもカウンターパートとなる職員を置く必要があるかどうか、それの方がより効果的かどうかということを判断をし、検討してまいりたいと思っております。
○森山(浩)委員 政令市にもしっかりヒアリングをしていただいて、担当を置いていただきたいというふうに思います。
南海トラフの地震支援自治体指定ということで、これは総務省が先日発表されました。静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、大分、宮崎、この十県に関してはカウンターパートをつけて、応援県という形でやりますよということで、私たちの大阪とか奈良とかいうことは入っておらぬわけですけれども、これは十県のみにした理由、総務省、お願いします。
○小池政府参考人 重点受援県の十県につきましては、中央防災会議幹事会が取りまとめた南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画において、被害想定を踏まえて指定されているものです。
これに基づきまして、自治体の代表等で構成される関係者会議及びワーキンググループにおいて協議の上、今回取りまとめた南海トラフ地震における応急対策職員派遣制度アクションプランにおいても、同じ十県を決定したところでございます。
○森山(浩)委員 ということは、十県以外については救援は来ないということを前提に準備をするべきということでいいですか。
○小池政府参考人 このアクションプランにおきましては、十県の重点受援県のほか、被害確認後応援都府県等の区分がございます。
被害確認後応援都府県等につきましては、被災状況によっては外部からの応援が必要になる可能性があることから、その場合には応援職員派遣の要請を行うようアクションプランに定めております。その要請があった場合には、重点受援県十県に対して即時に応援に入ることとはなっていない団体からの応援職員の派遣を調整することとしております。
○森山(浩)委員 これは見ていただいたら分かりますけれども、政令指定都市も、これは臨時応援県、政令指定都市というふうに入っていますから、坂井大臣、よろしくお願いします。
そして、総務省に来ていただいていますので、消防の救援体制についても同様でしょうか。
○小谷政府参考人 南海トラフ地震が発生した場合の消防の応援については、発生後直ちに全国規模で緊急消防援助隊を展開させられるよう、南海トラフ地震における緊急消防援助隊アクションプランを策定し、あらかじめ運用ルールを定めております。
このアクションプランでは、先ほどありました政府の南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画において重点受援県とされる十県に対する応援編成計画を定める一方、これら十県以外の都道府県に甚大な被害が見込まれる場合には、被災状況に応じて柔軟に応援先を変更することなどを定めております。
消防庁としては、本アクションプランを適切に運用し、被災状況に応じて迅速かつ臨機応変に対処できるよう努めてまいります。
○森山(浩)委員 南海トラフを題材としたシミュレーションドラマみたいなものでは、よく大阪が対象になっていたり舞台になっていたりするわけですけれども、いざというときにはメインのところには入っておらぬぞということであります。
坂井大臣、これを機に、この十県以外のところについては特に、自分たちでちゃんとやるんだぞというようなことをしっかり広報しなきゃいかぬのじゃないでしょうか。これまでのような形で、今は消防でしたけれども、警察や自衛隊もこれに準ずるということになってくると、本当に自分たちの町でやらなきゃいけないということになりますけれども、そこの辺はどのような考えでいらっしゃいますか。
○坂井国務大臣 今の質問の流れは南海トラフ地震に関してということでございましたが、我が国は大変災害が多い国でございまして、南海トラフ地震以外も、どのような災害がどこで起きるかということ、これは本当に分からない状況でございますので、こういった受援県であるかないかにかかわりなく、やはり一人一人が災害に対して備える自助の取組というのは大変重要であるということを多くの方に知っていただくということが大事だと思っております。
内閣府といたしましては、自治体と連携して、毎年、防災に関する様々な団体が集い、国民誰もが参加して防災を学べる「ぼうさいこくたい」の開催、防災週間や津波防災の日などの時期を中心とした各種訓練や啓発活動の推進、南海トラフ地震が発生した場合に必要な行動等について解説した映像資料やリーフレット、漫画冊子の作成、配付など、このような取組を行い、国民への普及啓発を実施をしているところでございます。
○森山(浩)委員 そういうのはアウトプット指標といいまして、これだけやっていますよ、啓発をやっていますよということですが、私は、先週にも地元の自治会の防災訓練とかに出ますと、自衛隊は三日で来ますよ、もしかしたら、長くても一週間以内には来ますよというような説明をしながら防災訓練をやっているわけですね。
でも、いざというときには来ないというようなことを事前に皆が分かっていないと、えっ、何でそんなことになるんだと、混乱やあるいは不安の原因になるのではないかと思います。これはいかがですか。
○坂井国務大臣 まさしく御指摘のとおりでございまして、政府といたしましては、三日とか、できる限り早くということになりますが、ただ、現実、現状次第ではそのとおりいかない場合も想定をしていただくことがありがたいということでございますので、その期間はそれぞれの地域で何とかやり過ごしていただくというか、乗り越えていただくという意識を持ってやっていただくということも含めて、これは広報をしていきたいと思っております。
○森山(浩)委員 アウトカム、ちゃんと届くようにというようなことについては今後も議論したいと思います。
二〇二五年日本国際博覧会、万博の、私を始めとして八十九名から、令和五年十二月六日、衆議院に予備的調査ということで数字を出していただきました。三千二百十三億というようなことで当時数字が出ているわけですが、それ以上の分については三分の一ずつでやると、先ほど今井委員の質問にもありましたけれども、ここからは、この一年余りで増えているんですか。
○安住委員長 これは武藤国際博覧会担当大臣代理か。
○武藤国務大臣 森山議員から提出されました予備的調査と比べますと、昨年の令和六年度の補正予算において、会場内の安全確保に万全を期するための費用が、約五十五億円追加をさせていただいたところであります。
また、全国的な機運醸成等に要する費用につきましては、令和六年度の補正予算並びに令和七年度の予算案において約六十二億円を計上しておりますが、これは、当初から計上することが見込まれていた費用の一部を具体化したものであります。
それ以外の会場建設費や日本政府館、途上国支援などの予算総額については、調査結果からの変更はございません。また、会場建設費を始めとして、大阪・関西万博の準備に必要な予算につきましては、今後、上振れることは想定をしておりません。
これは経産大臣でございました。
○安住委員長 森山君、間もなく時間ですから、まとめてください。
○森山(浩)委員 ありがとうございます。
経産大臣と万博大臣が一緒というのは、これはちょっといかがなものかなという気がしますよ。政府全体で取り組むというような形で、臨時代理というのでも、例えば官房長官じゃないかなと思っていましたけれども、しっかりと取り組んでいただかないと。
新年、関西の経済界の皆さんとお話をすると、複数から、赤字になったらどうするの、下を向いているという状況でしたし、また、券は売れますかと言うと、取引先から回ってくるかもしれないから、中小企業の社長たちは待っているんだというような話もありますので、しっかり売れるかどうかというのは考えた上でやっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。
○安住委員長 これにて森山君の質疑は終了いたしました。
次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。
立憲民主党は、先週、令和七年度予算に対する修正案のフレームを発表いたしました。ガソリン減税と給食費や高校の無償化、また、介護、福祉、保育の給料アップや百三十万円の崖対策など、実現を求める政策に係る三兆七千九百三十五億円の財源まできっちりお示しをしたものであります。
しかし、その中には基金の返納など一時的な財源も含まれるため、令和八年度以降の長期安定財源も別に用意をしなければいけません。
我々が長期安定財源になると考えているのは、一つは日銀ETFの活用で年間一兆二千億円、もう一つが本日議論します租税特別措置、大企業向け減税の抜本的な見直しで約一兆円。この二つだけでも毎年二兆円以上の長期安定財源が確保できると考えております。
まず、七千二百億円もの減税が行われている賃上げ促進税制について伺います。
七日の予算委員会でも議論したとおり、世の中が五%賃上げをしているときに、三%以上賃上げをしたら減税をするというのは、もはや政策の意義を失っています。財務省の分析でも、賃上げ税制が実際に賃上げにつながったかは確認できなかったと報告をされています。教育訓練費を増やしたり女性活躍のマークを取得すれば更に追加で五%、一〇%の上乗せ減税が受けられますが、そのコストも効果も分からないというずさんさであります。
財務大臣に伺いますが、賃上げ促進税制の廃止も含めた抜本的な見直しを令和八年度予算に向けて行っていただけるでしょうか。
○加藤国務大臣 まず、賃上げ促進税制でありますけれども、企業が支払う賃金は賃上げも含めて全額が損金算入できる中、構造的、持続的な賃上げの動きを広げていくことが日本経済が成長と分配の好循環を果たしていく上で欠かすことができないとの認識の下、賃上げを思い切った後押しをする異例と言ってもいい措置であります。
こうした措置である以上、政府としてもその効果検証は重要であると考えており、税制の効果だけ取り出すというのは、従前申し上げたように、税制の効果が賃上げにどういう影響を具体的に、定量的に及ぼしたかというのはなかなか難しいところではありますが、令和六年度税制改正における賃上げ促進税制の見直しに当たっては、有識者の方々からの助言なども踏まえ、令和四年度の申告事績に基づき、現行の税制の政策効果について統計的、計量的に検証した結果、例えば、一定の大企業について、既存の控除率の引下げや、より高い賃上げ率の要件を設けるなどの見直しにつなげたところであります。
中小企業向け措置も含め、今後、賃上げ促進税制の在り方については、この春の春闘の結果、年末にかけて明らかになってくる令和六年度の適用実態、さらには先般の会計検査院からの指摘内容なども踏まえ、実効的な効果検証を実施の上、今後、要望官庁、要望省庁などとも協議しながら検討していきたいというふうに考えています。
○井坂委員 ちょっと最後のところだけ。要は、令和八年度予算に向けて、今から一年間、抜本的な見直しも含めて、これは検討していただけるということでよろしいでしょうか。
○加藤国務大臣 今申し上げましたように、そうした点などを踏まえながら検討していきたいというふうに考えております。
○井坂委員 本来は令和九年度が抜本見直しの時期ですが、一年前倒しで見直しをしていただけるということで、よろしくお願いをいたします。
次に、研究開発税制について伺います。
こちらは九千五百億円もの減税が行われていて、しかも、そのうち九千億円が大企業向け減税であります。
配付資料を御覧をいただきたいのですけれども、日本とドイツと韓国で研究開発費が売上高の何%を占めるかというのを企業規模別に並べた、これは文科省の国立研究所のデータであります。
日本は、従業員一万人以上の大企業は研究開発費の割合が四・五%と非常に高く、一方、三百人未満の中小企業は僅か一・五%。一方、ドイツは、大企業も中小企業も同じ三・九%。また、韓国は、一千人以上の企業が三・五%で、百人未満の企業は四・一%と逆に多いわけであります。日本は、大企業は十分な研究開発をしているのに、減税の恩恵も大企業ばかりに行っています。
配付資料の下半分は、各国が研究開発を促進するために、補助金と減税のどちらを使っているかというグラフです。
各国とも直接支援の補助金と間接支援の減税をバランスよく使っていますが、日本だけが極端に減税に偏っています。減税は対象を選べないので、大企業ばかりが研究開発減税の恩恵を受けることになります。
財務大臣に伺いますが、大企業ばかりが使っている研究開発減税を思い切って削減をし、中小企業の研究開発を集中的に支援すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 研究開発税制は、大企業、中小企業にかかわらず、将来の経済成長の礎となる企業の研究開発投資を後押しをするものであります。現行、必ずしも大企業を優遇するものではなく、また、中小企業についても控除率の優遇がなされているところでございます。
令和五年度の実績で申し上げれば、適用額を見ると確かに大企業の数字が大きくなっておりますが、適用件数を見ると全体の七割が中小企業の利用ということで、中小企業においても幅広く利用されているものと思います。
また、適用額が大きいということは、逆に言えば、その企業は研究開発投資に積極的に取り組んでいるということでもあります。そのことをもって過度な優遇というのは言い切れないものと考えております。
研究開発税制の見直しに当たっては、御指摘の大企業、中小企業間の隔たりといった観点からも含め、今後、本税制の適用実績、研究開発の投資動向、さらにはEBPMの取組も含めた客観的なデータに基づいた実効的な効果検証の結果などを総合的に勘案しながら、適用期限が到来する令和八年度の税制改正プロセスの中で、要望官庁などともしっかりと協議をしながら検討していきたいと考えております。
○井坂委員 こちらはちょうど来年度末が見直しの時期なので、ちょっとこういう御提案をしているんです。
私は、今日の質問で優遇とは一度も言っていないと思います。
いろいろ考えて制度はつくったはずなんですが、御覧ください、このグラフの左上を見れば、やはり結果は、大企業はもう既にドイツや韓国なんかよりもよっぽど研究開発にお金を回しているんです。既にここまで研究開発をやっている大企業にまた九千億円もの減税をして、一方で、全然足りていない中小企業、もう見るからに低い、研究開発に回す割合が低い中小企業には僅か五百億円しか減税が回らないのが今の政府がやっている制度です。
これは、別に優遇した、そんなつもりはなくても、結果は偏っていますので見直す必要があると思いますが、大臣、このグラフをもう一度見ていただいて、答弁いただけますか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げた、まず、研究開発投資というのは、やはり、日本のこれからの経済成長をつくり出す上で大変な大事な原動力であり、これは大企業、中小企業を問わないというふうに思います。
そういう意味で、今委員の御指摘、むしろその比較をすれば、日本における中小企業における取組が弱いという御指摘だと思います。
そういった点も含めて、どういう形を取ることによって、より中小企業を含めて、日本全体の研究開発投資がより一層進んでいくのか、そういった点からも、先ほど申し上げた、適用期限が到来する令和八年度税制改正プロセスにおいて、またそれぞれの関係する官庁もございます、そういったところからも話をしっかり聞きながら、協議し、検討していきたいと思っております。
○井坂委員 大臣、是非、効果が明らかでない、あるいは役割を終えた巨額の大企業向け減税というのは大幅に削減をしていただいて、その財源をやはり国民とか、あるいは今大臣も足りないとおっしゃった中小企業向けの研究開発促進とか、そういうところに回していただきたいというふうに思います。
続いて、日本のAI戦略について経済産業大臣に伺います。
先週、パリで、AIアクション・サミットが開かれました。議長国のフランスは、今後数年間で十七兆円もの投資を集めて、三十五か所のAIデータセンターを建設すると発表しました。EUも、今後数年間で三十一兆円を投資し、大規模な開発拠点、AIギガファクトリーなどを建設すると発表しました。
一方で、規制の議論は余り行われず、倫理的で安全なAIを目指すサミット共同声明にはアメリカとイギリスが署名をしませんでした。マクロン大統領も規制を簡素化すべきと発言をし、これまでAIを規制してきたヨーロッパがAI推進に大きくかじを切ったことを印象づけました。
対するアメリカは、トランプ大統領になってAIへの投資を更に加速をしています。ソフトバンクやオープンAI社が立ち上げたスターゲート計画は、四年間で七十八兆円の投資を行い、アメリカ国内にAIインフラを整備をするとのことであります。超大型データセンターを二十か所建設し、その電力を賄う太陽光などの発電所を併設し、超大規模パラメーターの次世代AIを開発し、十万人の新規雇用を生み出すという計画であります。
世界でAIの開発競争が図らずも始まってしまっている中、日本政府もAIと半導体に十兆円の公的支援を行います。しかし、この十兆円で何をするかが全く決まっておらず、ソフトやシステムやインフラとしてのAI開発ではなく、半導体の製造という物づくり的な発想で十兆円の大半が使われるおそれがあります。
大臣に伺いますが、AI向けの予算をここは明確に分けて十分に確保すべきと考えますが、いかがでしょうか。
○武藤国務大臣 委員から今いろいろ御指摘をいただきました。現状、また、今後の生成AIの進展を考えれば、AI向けの支援が重要との認識は誠に共有するところであります。
一方で、AI向けでない半導体も、経済安全保障などの観点では日本にとっては安定供給が重要であり、AI・半導体産業基盤強化フレームでは、AI向けではない半導体も支援の対象に含まれているところであります。
その上で、このフレームで支援する個別事業は、産業競争力や経済成長につながること、そして経済安全保障上の重要性、公的支援がなければ投資が行えないことなどの観点に基づき決定をされるものであり、AI向けも非AI向けも、こうした観点から同じテーブルにのせて優先度を判断すべきと考えているところであります。
このため、あらかじめそれぞれに枠を設けることは考えておらず、現段階で、AI向けのみの支援規模を予見することは難しいのが今であります。
ただし、令和六年度補正予算と令和七年度当初予算を合わせた一・八兆円の予算で支援を想定している案件のうち、AIに関連し得る事業が多いのも、これも事実であります。
また、今後もAIの重要性が高まれば政府への支援を求めるAI案件も増加していくものと想定をされ、このため、AI関連の支援が多くを占め、十分な支援額を確保できるものと見込んでいるところであります。
○井坂委員 大臣が経済安全保障と。もちろん、半導体も私も大事だと思っております。ただ、経済安全保障という文脈からも、私は、日本国内のAI分野にこの十兆円から相当な額を投資をして、やることは何かというと、ソブリンAIを実現すべきだというふうに考えます。
ソブリンAIというのは、国家主権AIというべき意味で、日本でAIを開発して、データセンターも国内に置いて、他国の影響を受けずにAIを運用できるようにすることであります。
元々は、日本人のデータを学習して日本でAIを開発することで、日本の文化や言語あるいは常識や制度、こういったものを反映した日本人向けのカスタマイズされたAIというぐらいの意味でしたが、現在では、海外のサーバーに置かれたデータやAIにアクセスできなくなるリスクや、あるいは情報流出のリスクといった経済安全保障上の観点、そして、予算委員会でも出ましたデジタル赤字の解消、こういう文脈からもソブリンAIが重要になってきております。
大臣に伺いますが、今からAI分野に幾ら投資が回るか結局分からないわけでありますが、それを使ってソブリンAIを実現をするために、プロセッサー、AIモデル、それからAI用のデータセンター、そしてAI人材などについてきちんと目標を立てて、課題と解決策を明らかにすべきではないでしょうか。
○武藤国務大臣 自国のデジタルインフラや人材等を用いて開発するAI、いわゆるソブリンAIですけれども、産業競争力の強化や経済安全保障の確保等の観点からも重要であり、これはもう委員と問題意識を全く共有しているところだと思います。
有識者における意見交換、情報共有を経て、経済産業省が策定、更新している半導体・デジタル産業戦略においては、AIの利活用や開発、それを支えるデータセンター、半導体の設計、生産基盤を一体的に国内に整備することを目標に掲げています。
こうした目標がソブリンAIにつながっていくものと考えているところで、この目標の実現には、先端半導体の設計、あるいはAIモデルの開発等を担う高度な人材の育成、データセンター等の整備に必要な資金確保などの課題があるところです。
例えば、人材育成については、二〇二六年度末までにデジタル人材二百三十万人、これを政府一丸となって育成する目標を掲げるなど、関係省庁と連携をしながら、課題に対応した取組を進めてまいります。
その際、生成AIは黎明期のために技術の進展等に応じて随時更新していく必要はありますけれども、可能な限り具体的な目標を設定しながら進めてまいります。
○井坂委員 問題意識は大臣と共有しているところだと思いますが、しかし、それを本当に実現するために今日本で何が足りないのかということをやはり詰めて計画をしていかなければいけないというふうに思います。
一つ一つ参考人といきたいと思いますが、まず、プロセッサーの設計と開発についてであります。
アメリカ政府は、先月、AI用プロセッサーの輸出規制を発表しました。ロシアや中国や北朝鮮など元々プロセッサーの輸出規制はありましたが、今回は同盟国以外のその他多くの通常の国にも年間一千七百個しかプロセッサーを輸出しないという規制であります。AIをつくるために必須のAI用プロセッサーが、経済安全保障の上でも手に入るかどうか重要になってまいります。
政府は今ラピダスに巨額の投資をしておりますが、ラピダスは半導体を受託製造する会社であります。一方、今、世界一のプロセッサーを作っている米国のエヌビディアは、プロセッサーの設計をするだけで、工場を持たないファブレスと言われる会社で、日本はこの設計部分が現状非常に弱いです。
参考人で結構ですが、AI用プロセッサーを製造ではなくて設計、開発をするエヌビディアとかテンストレントのような企業を日本でどう育てるおつもりか、お伺いいたします。
○野原政府参考人 御指摘のとおり、半導体の設計は大変重要でございます。特に、トップ人材の育成のところが鍵になってまいります。
経済産業省が二〇〇〇年から実施してきた未踏事業という事業がございまして、この事業の中から輩出された方として、半導体の設計会社であるプリファードネットワークスの西川CEOでありますとか、東大でAIの人材育成をやっておられます松尾豊先生とか、この未踏事業から出てこられた方で、御出身でございまして、半導体の設計あるいはAI分野の人材育成にこれまでも取り組んできたんですけれども、更に強化していく必要がございまして、昨年十一月から三つの人材育成プログラムをスタートさせたところでございます。
テンストレントというアメリカの半導体設計のスタートアップがございますが、このテンストレントに御協力いただきまして、テンストレントに派遣して日本人の半導体設計人材を育成するプログラム、これをスタートいたします。それから、東大に松尾研がAIでありますけれども、半導体の設計については池田先生に同じような設計人材の育成プログラムを担っていただくこととしております。それから、半導体の設計ツールのアメリカの大手、ケイデンス、シノプシスに御協力いただきまして、半導体設計人材の育成プログラムも提供いただくということで、この三層の取組で半導体の設計人材のところを分厚くしていく取組をスタートさせたところでございまして、それによって日本でも将来のエヌビディアにつながるような半導体の設計スタートアップをつくっていきたいというふうに考えております。
○井坂委員 やはり微妙に半導体設計に寄るんですけれども、半導体設計も大事なんですが、是非、個別用途のニッチなAI用半導体だけでなく、まさにエヌビディアの次世代のやつを今世界中の設計会社が狙ってしのぎを削っているわけですので、日本にもそこに参戦をできる、そういう汎用のAI用のプロセッサーの設計ができる企業というのを、是非段階を踏んでつくっていただきたいというふうにお願いをいたします。
そして、次に、AI用データセンターについて伺います。
経産省は、AI開発に必要な国内の計算能力を二〇二七年度末に六十エクサFLOPS、これは処理速度を表す単位ですが、そこまで拡大をする目標を掲げています。また、昨年末に発表された脱炭素のGX二〇四〇ビジョンには、クリーンエネルギーの発電所を整備をして、その周辺にデータセンターを集積をしようという案が示されております。
いつまでも他国のデータセンターに情報を預けたまま日本政府や日本企業や日本人がAIを使い続けるわけにはいきません。国内各地にAI用データセンターを分散して整備する計画及びその用地と電源の見通しがあるか、参考人に伺います。
○野原政府参考人 委員御発言のとおり、二〇二七年度までに六十エクサFLOPSの整備を目指すという目標を掲げ、これは達成が大体見通しがついておりますが、更なるデータセンターの立地に当たって、豊富なデータ処理需要、地盤の強固さ、電力、通信ネットワーク、産業用水の充実などの考慮要素がございます。
GX二〇四〇ビジョンを今朝閣議決定したところでございますが、そこのビジョンにおいて、これらの考慮要素を踏まえて、レジリエンスと電力、通信インフラの有効活用の観点からデータセンターの立地促進策の具体化を進める方針を示しているところでございます。
この方針に基づきまして今後検討を加速させる中で、可能な限りより具体的な目標を設定してまいりたいと考えております。
○井坂委員 こちらも是非、まだ計画もありませんので、やはり実際につくっていかないと、これは時間のかかることですから、各国始めておりますので、日本でもやっていただきたいというふうに思います。
次に、AIを研究開発する人材についても伺います。
政府は、デジタル人材が二〇二六年度末までに二百三十万人足りなくなるという非常に大ざっぱな現状把握で、しかも来年までしか見通せておりません。特にAI人材について二〇二七年度以降にどれだけ必要なのかということをちゃんと考えて今から準備をしなければいけないと思います。
これも参考人で結構ですが、AI人材の質と量がどれだけ不足をするのか、見通しを持って備えるべきではないでしょうか。
○野原政府参考人 委員御指摘の点でございますが、独立行政法人の情報処理推進機構、IPAのDX動向調査二〇二四という調査があるんですけれども、これで各企業、日本企業の各レイヤーでどうAI人材が足りているか足りていないかというのを調べております。
例えば、AIツールで分析を行って自社の事業に生かせる従業員が十分いるという日本企業は一・五%しかいない。経営層も、AIに理解ある経営、マネジメント層が十分いる日本企業というのは一一・五%しかいないということなので、相当絶対量として不足しているというふうに考えられます。
政府全体では、AI人材も含めたデジタル人材の育成について、二〇二二年度から二〇二六年度まで二百三十万人育成するという目標を掲げております。
今日、デジタル人材だけれどもAIは一切分かりませんという人が必要とされているかというのはありますので、そういう意味では、相当程度の、この二百三十万人というのは、AIにも一定の知見を持っている人になるというふうには思いますけれども。
この二百三十万人の目標は、二百三十万人育成すれば自律的に十分な数が育つであろうという、クリティカルマスを超えるための基準として二百三十万人という一定の目標を掲げているところでございまして、達成に向けて関係省庁で取り組んでいるところでございます。
AIに関しては、それに比べまして、AI開発者に対する計算資源の調達支援で、三百人のAIのトップ人材の方が開発を実際にやっておられるのを支援しております。設計については、先ほど申し上げたように人材育成に取り組んでおります。
御指摘にもございますので、関係省庁と連携しつつ、可能な限り具体的な目標を設定できるように取り組んでまいりたいと考えております。
○井坂委員 答弁は幾つかまぶされましたけれども、要は、企業の中でAIが分かっている人とか、AIの分かる経営者、あるいはデジタル人材でAIも分かりますぐらいの人は、これはAIが広まってくればおのずと自然に出てくると思います。
私が今日問題にしているのは、やはりソブリンAIをつくる、そのための、本当にプロセッサーの設計ができるとか、AIモデル、今日はちょっと時間がなかったので省きましたけれども、AIモデルが実際につくれるとか、あるいはデータセンターが本当にちゃんと構築できるとか、そういう高度なAI人材が全然足りていないのではないかというふうに思いますので、まずその現状把握と、そして、足りないものは育てるか集めるかして集積するしかありませんので、やはりそれをやらないと、何かデジタル人材とか、AIもちょっと分かるデジタル人材なんということでお茶を濁していてよい状況ではないと思いますので、是非ともよろしくお願いをいたします。
そして最後、AIを推進する一方で、やはりAIの規制も重要であります。
一昨年の予算委員会では、私はクリエーターの著作権を守るためのAIルールについて質疑をいたしました。本日は、AIの軍事利用について、その規制について議論をしたいと思います。
特に、AIが自動的に敵を認識をして攻撃をする自律型致死兵器システム、これは日本が作らないのは当然として、全世界でこれを禁止をしなければ日本の防衛上も大変なことになります。
国連の事務総長は昨年、自律型致死兵器システムの禁止や規制に向けた法的拘束力のある文書を二〇二六年までに締結をするようにと各国に呼びかけております。しかし、二〇二三年十二月に国連で行われた自律型致死兵器システムへの対応を求める決議には、ロシアなど四か国が反対をし、中国やイスラエルなど十一か国が棄権をしたというふうに聞いております。
日本政府は、特定通常兵器使用禁止制限条約、CCWと省略をしますが、このCCWの会合で、自律型致死兵器システムの定義や規制の議論を進めるべきという立場であります。
外務大臣に伺いますが、CCWの会合において、自律型致死兵器の定義をやはりなるべく広く取って、人道法上の規制を幅広くかける議論を日本がリードをすべきと考えますが、いかがでしょうか。
〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕
○岩屋国務大臣 委員御指摘のように、AIは軍事の世界も決定的に変えていくんだろうと思います。精巧で高性能なロボットにAIが組み合わされば、すぐに自律型致死兵器システムができてしまう。すぐ先の話では、もう現実の話になりつつあると思っておりまして。
我が国は、国際人道法の原則は、新興技術を活用するものを含め、これはAIなどを指しているわけですが、あらゆる兵器に適用されるべきであるという意見書を国連に提出をしております。
したがって、今後のCCWでの議論におきまして、人間の関与が全く及ばないような完全自律型の致死性を有する兵器は開発しないという立場の下に、議論に積極的かつ建設的に参加していく考えでございます。
○井坂委員 今大臣がおっしゃったその答弁の部分、私が大変心配をして、今日議論したいと思っている部分であります。
大臣はこうおっしゃるんですね、人間の関与が全く及ばない完全自律型の致死兵器システムは作らないし、世界で禁止をするべきだ。これは日本が国連に提出した文書にもはっきりそう書いてあります。
心配なのは、全く及ばない、じゃ、ちょっとでも人間が関与すればいいのか。そして、今日、自律型致死兵器システムをやめましょうと議論しているんですが、おっしゃる、完全自律型はやめるけれども、自律型は日本も作るということなのか。そこはやはり大きな違いですので、参考人でも結構です、お答えいただきたいと思います。
○中村政府参考人 お答えいたします。
今委員からお尋ねのありました点でございますが、このようなタイプの兵器については、先ほど外務大臣から答弁がございましたような国際人道法の規律をきちんと適用するということに加えて、さらには、新興技術を用いた兵器システムというものが、ヒューマンエラーを減らしたり、省力化、省人化、こういった安全保障上の意義があるという点で、いわゆるトレードオフの関係にある中で、両方をバランスよく見ていかなければならないというふうに思っております。
その観点から、日本政府が、CCWの枠組みにおいて私どもが現時点で標榜しておりますのは、このような規制の対象として検討されるべきものというのは、まずは、一度起動すれば、操作者の更なる介入なしに標的を識別し、選択し、殺傷力を持って交戦することができる、こういう特徴を持ったものというのは是非その規制の対象として議論すべきだろうというふうに思います。
その上で、先ほども外務大臣から答弁のありました国際人道法との関係で申しますと、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性を有する兵器システム、これは開発する意図はないわけでございますけれども、加えまして、国際的に認められるべきではないものとして、性質上過度の傷害、無用の苦痛を与えるものですとか、本質的に無差別なもの、そういったものを規制すべきであるということを考えております。
○井坂委員 ちょっと端的にお答えいただきたいんですが、要は、完全自律型でなければ、日本は自律型致死兵器システムを開発もするし使用するとおっしゃっているんですか。
〔奥野委員長代理退席、委員長着席〕
○中村政府参考人 お答えいたします。
現時点において日本政府が開発する意図はないということを申し上げているのは、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性を有する兵器システム、ここに限定しております。
その他のものについては、現在、国連における議論というものがまだまだ収れんするに至ってはいないものですから、これについては各国の動向をよく見ながら議論に参加していきたいというふうに思っております。
○井坂委員 大変危うい議論だと思います。
終わります。
○安住委員長 これにて井坂君の質疑は終了いたしました。
次に、梅村聡君。
○梅村委員 日本維新の会の梅村聡です。
昨年まで参議院におりましたけれども、今日は、衆議院の予算委員会、初めてですので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速質問に入りたいと思いますが、私たち日本維新の会は、今、社会保険料を下げる改革、その中でも医療制度改革、ここが一番大きな目玉だということで取り組んでいるところでございます。
この医療制度改革の中でも、やはり基本的なベースとして私が必要だと考えていますのは、病院のいわゆるベッドコントロール、これを需要に合わせてきちんとやっていかなければ、枝葉のことを議論しても、きちっと社会保障費をコントロールしていくことは難しいんじゃないかな、このように考えております。
ちょうど昨年の令和六年度補正予算の中で、医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援、これが四百二十八億円計上されております。これは具体的にどういうふうな予算かといいますと、要は、医療需要に合わせて、例えば地域医療構想であるとか、あるいは、現実的にその分野の患者さんが少なくなってきたとき、そういった場合に病床を閉鎖する、あるいは転換する、こういうときに、やめられるときに一ベッド当たり四百十万四千円を支給する、こういう予算だと思います。
確かに、撤退する場合も、これは何もお金がかからないわけではなくて、やはりこういった予算があるということは、病院側も非常に評判がいいと聞いておりますし、こういったことをしっかり続けていくことは、私は、きちっとベッドコントロールしていくについては大事なことじゃないかなと考えております。
この四百二十八億円、昨年の補正予算ですけれども、これを逆算しますと、大体七千床から八千床ぐらいに当たる予算だと思います。一方で、では、中長期的にどれぐらいのベッドが対象になっていくかというと、例えば急性期の病床、これは病院で今五十七万床あると言われておりますが、この十年間で稼働率が五ポイント、全国平均で下がっております。つまり、五十七万床の五ポイントですから、二万八千五百床。ですから、あと残り二万床もやはりこういう予算を用意して、できれば、本当は令和七年度本予算の中にこれを加えて、しっかり使えるようにすべきだ、こう考えておるわけなんですけれども、厚労大臣、この辺り、いかがでしょうか。
○福岡国務大臣 御指摘のとおり、人口構造の変化を踏まえまして、将来にわたって効率的に病床整備を進めながら、地域ごとに必要な医療を確保していくということは非常に重要なことだというふうに思います。
御承知のとおり、これまでも地域医療構想に基づく病床の機能分化、連携を進めてきたところでございますが、御指摘がありましたように、医療需要の急激な変化を受けまして、昨年の補正予算で四百二十八億円の予算額を計上させていただいているところでございます。
引き続き、地域ごとに病床の効率的な運用を進めることは重要であると考えておりまして、まずは今般の令和六年度補正予算の措置を着実に執行して、必要な支援が行き届くように取り組むとともに、今後、その執行状況をしっかり丁寧に把握した上で、適切に対応してまいりたいと考えています。
○梅村委員 是非これは中長期的に取り組んでいただきたいなというふうに思っております。
これは財務省から見ても私は決してマイナスの予算ではないと思っておりまして、つまり、どういうことかといいますと、一ベッド当たり四百十万円ですから、仮に一万床にこれを使えば、四百十億円になるわけですね。一万床が、仮にこれが急性期等の病床ですと、大体一年当たりの医業収益は二千三百万円ですから、一万床でいけば二千三百億円、それだけ医療費は適正化される。このうちの四分の一が国費ですから、五百七十五億円。つまり、四百十億円入れることによって、五百七十五億円、国費から見れば支出が減る。
これがまた数年にわたって続いていくということからいえば、私は、やはりこういう予算の使い方をきちんと考えていくことが財務省さんから見ても非常に大事なことじゃないかなと思いますが、この点に関して、財務大臣、見解をお願いいたします。
○加藤国務大臣 まず、今回の補正の財政支援については、今厚労大臣からもお話がありましたように、新型コロナ後の受診行動の変容も含め、足下の経営状況の急変に直面する医療機関を支援する緊急的な措置として講じております。
他方で、御承知のように、医療介護総合確保基金というのが別途あって、これにおいては、いわゆる地域医療構想の実現に向けて、病床の減少を伴う病床機能の再編統合に取り組む機関に対して必要な支援を行う。長期的にはそちらの方で、今回は短期的な事情ということでやらせていただいたということで補正で対応し、地域医療構想の長期的なことについては引き続き必要だということで、令和七年度予算においても計上させていただいております。
その上で、医療費の削減という話でありますけれども、これは削減するためにしているわけではなくて、大事なことは、委員御指摘のように、必要な医療需要に合わせた必要な体制にどううまく移行していくのか、このことが大変大事だと思っております。まさにそれに資する緊急的な対応と、また長期的な対応を、それぞれ必要に応じて我々としても講じているところでございます。
○梅村委員 基金は、令和九年から新しい地域医療構想が始まりますので、そこで対応していく。
そうすると、今から七、八、九、この三年は、今申し上げた少し浮いた部分をどう対応していくかということについては、やはり本予算あるいは補正予算を含めて対応が必要ではないかなということ、これを是非指摘していきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
そして、病床の話に加えて、医療保険だけではなくて介護保険料も、やはり地元を回っていますと、余りにも高過ぎるんじゃないかという声をたくさんいただいております。
その中で、今日取り上げる話題なんですけれども、皆さんにも資料をお配りいたしました。昨日の朝日新聞の朝刊の記事を配らせていただきました。タイトルだけ読み上げますと、「介護度応じ 高齢者に「値付け」 施設から高額紹介料得る業者 横行」「入所者争奪 紹介ビジネス 望まぬホーム 動いた百十万円」という、ちょっとおどろおどろしいことが書いてありますけれども。
要は、今、有料老人ホーム、そういった施設に高齢者の方が、これは紹介業者が必ず悪いということでは決してございません。高齢者の方からしますと、どういう施設がいいかというのを選んでもらえるということでは、紹介業者の方は一定の役割を果たしていると思います。ただ、それが、老人ホーム側から手数料を払って、紹介業者から利用者、高齢者を融通してもらう、入所してもらう、こういうビジネスが今定着をしてきているわけなんですね。
その金額も、昨年の十一月から十二月に、厚労省からの要請で紹介業者二百十三者へのアンケート調査が行われています。このアンケート調査によりますと、利用者一人当たりの紹介料の最高額が百万円以上、一人高齢者を紹介するのに百万円以上を設定している業者が約三割、それから、介護度や医療必要度等を考慮して紹介料を決めている業者は約半数おられる。これは具体的に言えば、要介護一の方は手数料三十万円ですよ、要介護五だったら五十万円ですよ、医療が必要な方、高い方は、要介護度一だったら七十万円、要介護五だったら百万円ということで、実は、高齢者の病気の種類によって値づけをどんどんされてしまっている。
こういう状況があるんですけれども、こういった状況、厚生労働省はアンケート結果を踏まえて今どのように考えておられるのか、どのように対処していくべきなのか、お答えいただきたいと思います。
○福岡国務大臣 紹介事業者におきましては、高齢者の方であったり住まいの選択肢が多い都市部を中心に、高齢者やその家族に対して高齢者向け住まいの紹介を担っており、有料老人ホーム等と利用者を結びつける役割を果たす一方、御指摘がありましたように、不適切な手数料設定を行うことで公平性に疑念を持たれる事例が存在すると承知しています。
具体的には、御紹介ありましたように、昨年十二月に高齢者住まいの関係団体が紹介事業者を対象に実施した調査においては、各事業者の平均額は家賃の一、二か月相当の二十万円台が約半数であり、最高額が百万円以上の事例も、家賃が高額な場合や新規開設時の一時的な場合等でございました。一方で、がんの末期の方であったり難病患者さん等については、月額家賃と比べて高額な紹介料を設定している例も数例あったと承知をしております。
この調査結果を踏まえまして、まず、団体の行動指針に、医療の必要度や要介護度といった個人の属性に応じた金額設定を厳に慎むことを盛り込むなどの見直しが行われたところでございますし、あわせて、厚生労働省といたしましても、有料老人ホームによる不適切な紹介料の提案は指導対象になることを明確化したところでございまして、引き続き、自治体や関係団体と連携して指導徹底を図ってまいりたいと考えております。
○梅村委員 厚生労働省が自治体に向けて、きちっと指導するように、こういう通知を出している、これは私も承知をしているんですが、現実的には、紹介業者だけを見ても仕方ないところがありまして、記事にも書いてありますけれども、有料老人ホーム側が紹介業者にアプローチしているわけですよね。特定顧客の紹介料アップキャンペーン、百三十万円、業界最高水準、紹介手数料アップ、求む、何が求むか分かりませんが、求む、入居者様を御紹介ください、こういうチラシを作って紹介業者さんに送っているわけなんですね。
だから、これは有料老人ホーム側もきちっと対応しないといけなくて、今回の予算委員会でもさんざん議論になっていると思いますけれども、介護従事者の方の賃金。本来、この手数料は、そんな高い手数料を払うぐらいだったら、介護従事者の方の賃金にきちんと私は手当てできるんじゃないか、そういうふうに思っております。
それともう一つは、高齢者側から見ると、自分の一番最適な老人ホームに紹介してもらったと思いきや、家から五分のところの老人ホームは手数料が十万円だった、家から二時間のところは手数料が五十万円だった、そうしたら、紹介業者さんは五十万円の方に、当然これはオークションをかけられて、行ってしまうわけですね。だから、手数料は高齢者の方は払っていないんだけれども、高齢者の方も実は被害を受けている。ですから、これを何とかしなければいけないんじゃないか、こういう問題意識を私は持っています。
何でこういうことが横行しているかということを、もうちょっと業界の話をしますと、普通は、老人ホームと聞くと、入居代と月額の家賃を払って入っている、そう思われるんですが、実は、今の時代は、老人ホームの中に訪問看護、訪問介護、クリニックと。ですから、介護保険や医療保険でしっかり稼げる患者さんを入れるともうかるわけなんですよ。
私がちょっと、ある老人ホームの運営会社の資料を手に入れましたら、そこには売上げの約九割が、医療保険、介護保険から売上げが立っている。だから、フランチャイズをやってももうかりますよ、そういう資料が実は現実的にあります。
私は、何を申し上げたいかというと、普通の保険医療や介護保険を使っているクリニックや病院が手数料を払って患者さんを集めていたら、これは完全な療担違反になりますよ。だけれども、売上げの九割が医療保険、介護保険であるところは、幾ら手数料をやっても、高くなり過ぎたらちょっと指導するよというだけでは、私は、やはりこの国の医療保険や介護保険の財政を考えたときに、もう少し、例えば上限に規制を入れるとか何らかやらないと、この国の医療保険や介護保険はもたないんじゃないか、こういう問題意識を持っているんです。
やはりもう少し具体的に、厚労省としては、この辺り、きちっと規制をやるべきだ、私は上限規制を、きちんと金額を入れるべきじゃないかと思いますが、厚労省の見解をお願いしたいと思います。
○福岡国務大臣 有料老人ホームは、まず、委員御指摘ありましたように、高齢者の方が自由に選択する住まいであるという側面と、介護サービス等が提供される場という側面があって、その双方の側面から考える必要があると考えています。住まいとしては、高齢者の方御本人に多様な選択肢が提供され、御本人の意思で決定されること、介護サービスとしては、介護サービスの利用に当たって公平性や透明性が確保されることが大変重要であると認識しています。
この点、紹介事業者の方は、本来、高齢者の方を御本人が希望する住まいに結びつける機能を担うものであるんですが、今般の報道があった事例は、介護サービスの利用に不適切な形で関与したものと考えられます。
このため、昨年末、関係団体の行動指針の見直し、また、国の指導指針の見直し等を行ったところでございまして、まずはこれがしっかり適用されるように取組を進めていきながら、その状況や関係者の意見も踏まえながら、更なる対応の必要性については検討してまいりたいと考えています。
○梅村委員 第一歩を取り組んでいただいていることはよく分かっていますので、そこからもうちょっと、現状を見てきちんと対応を考えないといけないんじゃないかということを私は申し上げているので。
例えば、紹介業者さんは、さっきも申し上げましたように、紹介業者さんが悪いわけでは決してないわけです。だけれども、何で百万円とか百五十万円を払って老人ホーム側は高齢者の方を欲しがるのかといえば、それを回収できるからですよ。
つまり、手数料が高いことがほったらかしになると、そうしたらもっと介護保険や医療保険を使って稼いだれ、そうしたら元が取れるじゃないかということで、余計に、不適切だけじゃないですね、過剰な医療、介護が行われることによって、結局は保険料に跳ね返ってくる、あるいは税金に跳ね返ってくる。
だから、ここのモラルをきちんとするためには、私は、こっちの有料老人ホーム側に、そういった設定の手数料を払うことはもう駄目だ、これ以上の金額を払うことは駄目だということをやはり言うべきだ、そういう時期に来ているということを指摘しておきたいと思います。これは非常に大事なことだと思います。
そして、さらに、では、その高齢者の方を紹介業者さんはどこから手に入れるのかというと、これは病院側、病院の退院をいろいろお世話する医療ソーシャルワーカー、MSWと呼ばれていますけれども、この記事によりますと、紹介業者は病院のMSWに営業をかけ、飲食に連れていき、お車代を渡し、高級メロンを持参する。さらに、病院のMSWからはキックバックの引上げを要求されることもある。まさに医療や介護が非営利で、社会保障でやっているにもかかわらず、こういったお金を使って高齢者の方を集めている。
私は、病院側に、いや、MSWが勝手にお金をもらっているんだよというのでは済まない、やはりこういったことにも厚労省はきちんとメスを入れるべきじゃないかと思いますが、この点に関してはいかがですか。
○福岡国務大臣 医療機関における患者さんの退院支援に当たりましては、患者が適切な環境の下で療養を継続することができるようにするという医療法上の規定であったり、診療報酬における取扱い等から考えると、紹介業者さんからの金銭等の授受をもって特定の退院先に誘導することは適切ではないというふうに考えられ、医療機関においては、こうした視点に照らして適切な対応が必要だと考えています。
業界団体のガイドラインにおいては、医療ソーシャルワーカーの社会的信用の保持であったり信用失墜行為の禁止等が記載されておりまして、また、厚生労働省からお示ししております医療ソーシャルワーカー業務指針においては、患者さんの多様なニーズを把握した上で、退院後の利用可能な地域の社会資源の選定を援助すること等とされております。
紹介事業の健全な運用を図る取組と併せて、こうした指針等を周知して適切な運用を図るとともに、その状況や関係者の意見も踏まえながら、更なる対応の必要性については検討してまいりたいと考えています。
○梅村委員 問題点は理解をされている、ただ、今、指針を出すところにとどまっているということだと思います。
今日は一つの例をお示ししましたけれども、結局、医療保険や介護保険をめぐっては、営利がやってきたときに防ぐすべがないわけですよ。保険は使えば必ずお金が入ってきますから、そこを結局使われてしまう。ここに対してどういうふうな対応が必要かということを私は今日問題提起をしているわけですので、是非、このテーマを入口に、こういった営利が保険を使うということがビジネスになってきたときにどう対応するかということを、やはり厚労省は総合的に取り組んでいただきたい、このように思っております。
ここまで厚労省とやり取りをしていて、聞かれていた財務大臣にお聞きしますけれども、結局、医療保険も介護保険も、今、国民は保険料がとにかく高い、高い、何とかしてくれと。実際には、営利が近づいてきたら、そこからどんどんお金が流れていく。介護保険の場合は半分、医療保険の場合は四分の一が税なんですけれども、こういったことにやはりしっかり取り組む必要性、財務大臣側から見てどう感じられたか、少しお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 まず、最初におっしゃった紹介。
この紹介は、今は、有料法人に対して紹介業者が、介護が必要な方を紹介する。それから、従前にあったのは、看護師さんとか介護をされる方々の紹介というのもありまして、これも大変過度な紹介料を取っているということで、委員会等でも議論いただいたというふうに思っております。
まさにそうした紹介事業を通じて、本来、その事業者というのは、有料法人の場合は若干違うかもしれませんが、税や保険料で賄っているお金がそっちの方に移っていってしまう。このことについては大変大きな問題であり、しかも、今のお話であれば、知らないうちに、介護が必要な方が、本来適するところではなくて、紹介事業者側の都合であっせんされるということは全くよくないことだと思います。そして、その背景には、医療や介護サービスにおける様々な課題を今御指摘されておりました。
まさにそうした課題一つ一つ、これは厚労省において主体的に取り組んでいただきながら、やはり税ないし保険料、いただいている保険料をより有効に活用していくべく、我々としても取り組ませていただきたいと思います。
○梅村委員 これで終わりますが、やはり国民や患者さんのための制度をつくっていただきたい。手数料ビジネスだけがもうかる、これは人材紹介とかいろいろなこともそうですけれども、そういうことを、やはりどうモラルハザードを止めていくか、このことを是非私も一緒に考えていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○安住委員長 これにて梅村君の質疑は終了いたしました。
次に、山口良治君。
○山口(良)委員 公明党の山口良治でございます。
本日、予算委員会初めての質問に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
人口減少が進む日本にあって、次代を担う子供たち、また若者たちが希望を持って生き生きと成長し、活躍していくことこそが、日本の未来を開く一番の原動力であると思います。
そこで、本日は、若者支援、特に、社会の中で困難を抱えている若者への支援について質問をさせていただきます。
二〇〇〇年代前半、ニートや引きこもり、孤独、孤立など、若者たちが抱える問題が顕在化をし、これらの困難を抱える子供、若者への支援を総合的に行う枠組みを整備するために、子ども・若者育成支援推進法が二〇〇九年に制定をされました。制定より十六年を経ましたが、コロナやSNSの広がりなど、社会情勢が大きく変化をし、闇バイトの存在など、若者を取り巻く環境は、危険度を、ますます深刻化し、増しています。
いわゆるオーバードーズ、市販薬の過剰摂取は十代から二十代の若者の間で急増し、過去一年以内に市販薬の乱用経験がある高校生の割合は実に六十人に一人に上るというデータもあり、決して看過はできません。
その背景には、生きづらさを抱える若者たちの孤立の問題があります。虐待や貧困などに起因する子供時期の問題への取組が社会で注目をされる一方で、困難を抱えている若者の問題については、それぞれの自己責任であると捉えられ、社会の中で認知されにくいという現状もあるかと思います。
今こそこの法律の基本理念に立ち返り、困難な状況にいる若者を拾い上げ、実態を把握し、支援の手を伸ばしていくことが今政治に強く求められていると思います。
多様な困難さを抱える若者を早期に発見をし、個別の支援を進める上で、地域の特性やニーズに応じた取組が必要であり、地域に密着をした市区町村の役割が重要であります。
推進法は、自治体による子ども・若者計画の作成、また、子ども・若者支援地域協議会また若者総合相談センターの設置を努力義務としております。これらは支援連携の要となる重要な施策でありますが、市区町村での設置は、現状、十六年を経ても、いずれも僅かまだ六%から七%という程度に設置がとどまっております。
国から自治体への財政支援について、こども・若者支援体制整備及び機能向上事業を行っていただいておりますが、自治体からのニーズが高く、更に推進していくべきだと考えます。再来年の予算増額を視野にしっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、こども政策担当大臣の御見解をいただきたいと思います。
○三原国務大臣 こども家庭庁におきましては、子ども・若者支援地域協議会及び子ども・若者総合相談センターの設置促進のために、こども・若者支援体制整備及び機能向上事業により、センターや協議会が未設置である地方自治体へのアドバイザーを派遣するですとか、そうしたことを実施して、特に市町村レベルにおける総合的相談支援体制の確保、これを推進しているところでございます。
地域における子供、若者支援体制整備の推進に係る予算につきましては、令和六年度は五千四百四十三万円であったところ、令和七年度予算案では六千二百六十四万円を計上しており、自治体のニーズも踏まえ、増額をしているところでございます。
引き続き、地域における総合的な子供、若者支援が推進されますよう、地方自治体の取組をしっかりと支援してまいりたいと思っております。
○山口(良)委員 地方は、大変な財政状況の中で、財政面、人的不足など、様々な課題を抱えております。市町村への手厚い支援を国の主導で行っていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
次の質問に移ります。
子供から大人へと移行する年代の若者への支援において、切れ目のない支援が大変重要であります。例えば、中学校から高校への進学期、高校卒業時、また、中学、高校などの在学時から不登校や中退する子供、若者もおり、この移行期における制度の接続性、また在学時からの情報共有など、支援体制の構築が不可欠であります。
支援協議会は、市区町村を取り巻く環境、関係機関が協力をし、情報共有や支援の相互補完を果たすために、この移行期や早期把握にとっても非常に有効であります。
例えば、今、大阪の豊中市では、この支援協議会に教育委員会が積極的に関与し、課題を抱える子供や若者を継続的に支援する仕組みが取られております。また、静岡県富士市においても、教育委員会と同じ建物の中に若者総合相談センターが設置をされ、教育委員会が支援協議会と一体的に取組を進め、支援が途切れることがないよう、密な連携体制が取られていると承知しております。
他方、多くの自治体、また支援機関、NPOが子供支援、若者支援を進める上で、教育機関との連携の難しさを大変認識されていると伺っております。私の地元栃木県で、長年にわたって若者支援に取り組んでいらっしゃる民間支援機関の代表の方からも、再三、教育機関との連携がなかなか進まない、そういったお声をいただいております。
公立小学校、中学校は市町村、また、高等学校は都道府県が所掌していると思います。そうした中で、自治体、教育機関が支援協議会に積極的に関わることで、支援が切れ目なく行き届くような、そういうふうな仕組みを進めていただきたいというふうに思います。
初等中等教育を所管する文部科学省として、各自治体の教育委員会や学校が積極的にこの支援協議会に関わっていくことを推奨すべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、全国の教育委員会等に対して、例えば、子供、若者支援への取組推進を事務連絡等でしっかりと呼びかけていただく、こういったことに関して、文部科学大臣の御見解をいただきたいと思います。
○あべ国務大臣 山口委員にお答えさせていただきます。
困難を抱える若者は、本当に減るどころか増えている感もある中でございまして、委員の御指摘のとおり、切れ目のない継続的な、一体的な取組がまさに重要だというふうに思っております。
児童生徒の支援に当たりましては、教育、福祉の連携も含めまして、各関係当局が連携し、切れ目のない支援体制をしっかり構築することがまさに重要だと考えているところでございまして、文部科学省といたしましても、例えば不登校の支援に当たりまして、首長部局、また都道府県、市町村の教育委員会を含め関係機関がしっかりと連携した形で、不登校児童生徒支援協議会の設置を促進し、スクールソーシャルワーカーの配置充実を通じまして、また、教育委員会とまさに福祉機関との情報共有、さらには協議の推進などを進めさせていただいているところでございます。
文部科学省といたしましては、引き続き、こども家庭庁とも連携をさせていただきながら、御指摘の子ども・若者支援地域協議会との連携を含め、不登校支援を始めとした取組における教育委員会と関係機関の連携を促進してまいりたいというふうに思っております。
また、まさに委員がおっしゃるように、教育委員会と子ども・若者支援地域協議委員会が積極的に関わるための事務連絡、これもしっかりと出すべきだという御指摘もいただいたところでございまして、引き続き、各種の文書を通じまして、教育委員会と福祉部局の関係機関の連携をしっかり促進してまいりたいと考えているところでございます。
以上です。
○山口(良)委員 積極的な御答弁、大変にありがとうございます。
こういった地方に若者支援をしっかり進めていただこうという中で、今申し上げましたような様々な先進事例として成功している地域もあれば、なかなか進まないということで、全国的に様々違いが出てきております。どうか文部科学省もしっかりと、成功事例の横展開も含め、国を挙げて取り組んでいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
最後の質問になります。
自治体単位でのこの支援を進めていく枠組み、支援協議会は非常に重要でありますが、加えて、自治体任せにすることなく、地域の共助、つまり、地域が主体となって、地域社会のあらゆる様々なプレーヤーが資源を共有して、共に支え合い、若者の居場所づくりを進める、いわゆるローカルコモンズという支援形態が今始められております。
困難を有する若者は、孤立感や社会からの疎外感を感じることが多く、地域コミュニティーとの結びつきが一層重要となります。例えば、自治会長や民生委員、地域福祉協議会、地元の企業や教育機関、またNPOなどが運営協議会をつくって居場所づくりや支援に取り組むものであり、効果的、かつ、活動を継続的、持続的に進めていくことが可能というふうに考えられています。
若者が学び、成長し、就業機会を得るための支援の場が提供される上に、若者にとって、やはり地域という、知っている方がいたり顔が見える、そういった身近で受け入れやすい場合が多いということでございます。
例えば、自治会長さんが地域のリーダーの方たちと一緒になって、住民が積極的に関与していくことで、支援の受け手である若者が、自分は、この地域の中で、家族のような、本当に地域ぐるみの顔が見える中で受け入れられているんだ、そういうふうな実感、結びつき、つながりがしっかりと実感をしていただける。そうした地域全体に、若者の成長を応援する、支援する、そういった雰囲気をしっかりとつくり出していく。これは、上からだけでなく、自治体主導だけでなく、やはり地域を挙げてという、地域を主体にした取組でございます。
このローカルコモンズは、世界でもかなり今地域で実践をされております。さいたまの見沼区の堀崎町でもこのプロジェクトは進められており、厚労省の生活困窮者自立支援法の枠組みの中で、子供、若者の居場所づくりに取り組んでおります。
さらに、こども家庭庁が今年度補正で、こどもの居場所づくり体制強化事業を実施をし、大変有効に活用されている事業と喜ばれております。しかし、こども家庭庁のこの事業は、モデル事業という位置づけで、一年限りでございます。予算を使い切ってしまえば終わりと聞いております。大変残念でございます。
この居場所づくりは大変重要な施策であり、必要な予算を十分に確保する必要があると考えます。政府は、こども家庭庁の事業の継続、そして、厚労省の同予算の増額も併せて実施すべきと考えますが、御見解をいただきたいと思います。
○三原国務大臣 委員御指摘のローカルコモンズの例示のように、孤立感や社会からの疎外感を持つ、困難を有する若者の支援のためには、若者にとって身近で、受け入れやすく、そしてまた信頼できる場を地域の様々な関係者の方々が主体的に関与する形でつくっていかなければならないと思っております。
私自身も、先日、様々な困難を有する若者に寄り添う、住居やまた就労の支援などを進めているNPO法人のサンカクシャさんを利用する若者たちと意見交換をさせていただきました。この際、若者に安心できる場を提供しながら、働くところまでを見守り、そして支援する中で、地域や民間企業の方々としっかり連携をしながら時間をかけて伴走する、そうしたことが大変重要だなと改めて考えさせられました。
そうした若者支援に限らず、また幼少期を含めてあらゆる場面で、地域の中に安心できる居場所があり、そしてまた信頼できる大人がいる環境をつくるということ、こうしたことをしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
御指摘の、こどもの居場所づくり支援体制強化事業は、NPO法人等の民間団体が創意工夫して行う居場所づくりを検証するモデル事業というふうになっておりますので、この継続というのは、実施状況を踏まえて毎年度の予算編成過程の中で検討するものとなっておりますが、本事業を、好事例を横展開するような形、そうしたものをしっかりと引き継いで、居場所づくりを推進してまいりたいというふうに思っております。
○山口(良)委員 大変力強い御答弁、本当にありがとうございます。
言うまでもなく、若者は社会の宝であり、日本の未来そのものであります。全ての日本に住む若者たちが心から生まれてきてよかった、生きていてよかった、そう思えるような温かい、希望あふれる、そういう社会を実現していくことを心からお誓い申し上げて、私の質問を終わりにします。
大変にありがとうございました。
○安住委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。
次に、櫛渕万里さん。
○櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。
外務大臣、アメリカのヘグセス国防長官が、アメリカだけでは中国を抑止することができないと述べたという報道がありますが、アメリカは日本を本当に守ってくれるのですか。いかがですか。
○岩屋国務大臣 先般の日米首脳会談におきまして、米国は一〇〇%我が国防衛にコミットをするということを確認をすることができたところでございます。
○櫛渕委員 アメリカだけでは抑止できないという発言、大変重要だと思います。おっしゃられたように、日米首脳会談では日米安保条約第五条を確認したとしていますけれども、この国防長官の発言は矛盾していませんか。
日本がアメリカの核の傘に守られているのではなく、実際は、日本がアメリカの傘となり、沖縄の、南西諸島の軍事要塞化が進んでいるわけです。だとするならば、核抑止力の効果よりも、周辺国との間で偶発的な衝突が起こり、破滅的な事態に陥り、核戦争のリスク、このことをいかに回避するのか、これに現実的に向き合うべきではないでしょうか。
石破総理も大臣も、度々、戦後最も厳しい安全保障環境とおっしゃるように、東アジアも変化していますけれども、一方で、同盟とする国も実際大きく変化をしており、そのことを認識する必要があると思うんですね。
そうであれば、日本も独自の自主外交や安全保障のプランBを持つべきであり、私がまず提案したいのは、日本がせめて、来月、三月に行われる核兵器禁止条約の第三回締約国会議にオブザーバー参加をすべきだと考えます。日本の姿勢が変わり得るということを周知でき、それは中国や北朝鮮にもメッセージとなって、新しい対話や協議のテーブルをつくるチャンスになる可能性もゼロとは言えません。
日米首脳会談で確認された北朝鮮の完全なる非核化にしても、これは朝鮮戦争の終結、つまり平和体制への移行とセットでありますから、日米韓が拡大核抑止力の力で北朝鮮を脅すだけでは、非核化も平和プロセスも進まないんじゃありませんか。むしろ、六か国協議に代わる北東アジアの安全保障の協議の場をつくる、これを日本が主導してはいかがでしょうか。ここで拉致問題の解決も含めて、結局、対話しか選択肢はないはずです。
そして、中期的に北東アジアの非核化を目指す、すなわち、核の傘から非核の傘へと進めるアプローチ、このことを目標にすることによって、地域の緊張緩和と信頼醸成を生み、日本の独立と安全を守ることにつなげるという考え方があると思うんですね。
中央アジア五か国も、ASEAN十か国も、非核地帯を実現することで、核保有国からの核の使用や威嚇を防いでいます。アメリカと強固な軍事同盟を結ぶオーストラリアも、南太平洋非核地帯条約に参加をし、中国とロシアから核攻撃をさせない、こうした法的保障を得ています。
核兵器禁止条約の締約国会議の場では、こうした各国の核軍縮、核不拡散に向けた知見が集まり、NPT条約を補完するものとして具体的に機能しているんですよ。国益に反するどころか、外交的メリットの方が大きいと考えます。
そもそも、日本が唯一の戦争被爆国であり、核兵器の非人道性を最も世界に伝えるべき当事者であるというのは大前提です。
外務大臣、日本のオブザーバー参加は決断していただけましたでしょうか。そして、先日の予算委員会で私が求めた、被爆者やICANメンバーへのこの件についてのヒアリング、行いましたか。
○岩屋国務大臣 たくさんのことをおっしゃいましたので、うまくお答えできるかどうか分かりませんが、まず、安保条約の五条というのは尖閣に適用されるということを確認をしたところでございます。
それから、南西地域でのプレゼンスを日米が協力してしっかりキープしていこうというのは、まさに抑止力、対処力を強化することで紛争を防いでいこうという取組でございます。
一方、もちろん、外交による対話が最も大事だというふうに思っておりまして、それがためには、日米同盟のみならず、やはり多国間の枠組みが必要だと思っておりまして、例えば、先般ミュンヘンで開いた日米韓の枠組みなどもしっかり活用していかなければいけないと思っております。
それから、核禁条約については、これまでオブザーバー参加した国々が参加に至った経緯や、それから同盟国との関係、安全保障上の課題等々、検証を行ってまいりました。非常に難しい問題で、核廃絶へ向けての取組と我が国の安全上の確保という、その相克の中で答えを出していかなければいけないわけですが、三月上旬にも締約国会合が開催されるということでございますので、近く判断をしたいと思っております。
○櫛渕委員 外務大臣、被爆者やICAN当事者に声を聞くということのお答えはありませんでした。こうした現場の声を聞かないままに結論づけようとされているんでしょうか。そして、私も二度会議に行っていますけれども、ヒアリングを受けておりません。
そして、先ほどいろいろおっしゃっていましたけれども、オブザーバー参加の国々、先日のパネルでもお示ししましたが、直接政府とやり取りされましたか。そして、議長国であったオーストリアやメキシコ、こうした政府や、また国連軍縮部、こうしたところからも意見聴取したんでしょうか。こうしたところが日本のオブザーバー参加についてどのような見解を持っているのか、これも重要な点だと思います。
そして、こうしたお答えがないままに近々結果を出すということは私は断じて認められないと思います。特に、それぞれのオブザーバー参加した核の下の国がどのような貢献をしてきたのかというところこそ検証すべきです。
例えば、ドイツはこうも言っています。ロシアの核兵器は欧州における我々の安全保障にとって大きな脅威であり、ドイツは、日本と同様、攻撃的な核保有国が周辺に存在するという現実に直面している、しかし、このことで核兵器のない世界という目標が揺らぐことはなく、核兵器禁止条約の会議にオブザーバーとして参加することで、国際法、ひいては我々の共通の安全保障の強化に貢献することができる、特に、攻撃的な核保有国が国際システムを脅かしている現在、これは大変重要なことですと発信をしているんです。
大臣、これを日本としてどう受け止めますか。被爆の実相、そして核兵器の非人道性、これも大事です。そして、更に大事なのは、この認識を現実の安全保障の政策に反映させることだと考えます。是非、オブザーバー参加してください。法的拘束力も、締約国になる約束も求められることはありません。もう一度お答えください。
○岩屋国務大臣 これまで、被爆者の方々や過去にオブザーバー参加した議員を含め、残念ながら委員からはお話を伺っていないということだと思いますが、市民社会、あるいは国政の各政党、地方議会、地方自治体の方々とは、石破総理や私も含め、日頃から様々、要請をいただいたり、意見交換を行ってきております。それから、各国との関係も、公開情報のみならず、それぞれ個別に当たって情報収集をしているところでございます。
その上で、様々な点を総合的かつ注意深く考慮した上で、近く判断をしたいと考えております。
○櫛渕委員 今回、日本政府がオブザーバー参加しないという決断に至った場合には、昨年十月、日本被団協がノーベル平和賞を受賞するという発表があったときに、石破総理は真剣に検討すると言っているわけです。しかし、今のお答えのような検討プロセスや結論であるとするならば、結論ありきの単なる時間稼ぎであったということを厳しく指摘をしなければなりません。
被爆から八十年、広島、長崎の原爆投下で犠牲になった二十万人を超える人々と、今なお苦しんでいらっしゃる被爆者に対して、日本政府は新たな歴史を開いていただきたいんです。
最後、こちらを御覧ください。パネル二。先日公表された、核保有国を含む七か国の世論調査の結果ですけれども、その中で、私はびっくりしました。核兵器を廃絶すべきという世論が、核保有国の中でもおよそ半数に及んでいるんです。戦時中のロシアは除きますが。
私がNGOで核廃絶の活動をしていた折には、核保有国で原爆展をやろうと思っても、会場さえも貸してもらえませんでした。核兵器は日本の侵略戦争を終わらせたとする原爆投下の正当化、この議論が強く、そして世論も広くて、被爆の実相など耳も傾けてもらえなかったんですね。それが今や、二十年、三十年たって、核兵器を廃絶すべきという世論が核保有国でも広がり、核兵器禁止条約が生まれ、核被害者の証言と核の非人道性についての認識に世界が目を向ける、こういう姿勢に変わり、被爆者がノーベル平和賞を受賞するという時代になりました。
大臣、私は、人類は歴史を変えることができる、戦争も核兵器もなくすことができるという希望と勇気を核兵器禁止条約の締約国会議の人々と場からいただいています。
○安住委員長 櫛渕さん、時間が大幅に過ぎました。
○櫛渕委員 是非、最後、大臣、核兵器禁止条約のオブザーバー参加、決断をしていただくことを重ねて申し上げ、私の質問といたします。お願いいたします。
終わります。
○安住委員長 これにて櫛渕さんの質疑は終了いたしました。
次に、本村伸子さん。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
選択的夫婦別姓に関し質問をいたします。
今年は、選択的夫婦別姓の国会の請願が初めて出された一九七五年から五十年となります。結婚しても生まれ持った名字、名前で生きたいという願いはずっと後回しにされてきました。
戦前、戦争中、誰の人権も保障されなかった、とりわけ女性の権利は認められなかった大日本帝国憲法から、戦後、個人の尊厳が何よりも大切にされる今の日本国憲法に変わりました。
憲法二十四条一項は、結婚は、家父長的な家制度の下の戸主が決めるのではなく、二人の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを規定しています。
憲法二十四条二項では、「婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」というふうに書かれています。
憲法十三条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と書かれています。
選択的夫婦別姓の制度は、結婚して同じ名字になりたい、そういう人の思いも尊重される、そして、結婚しても生まれ持った名字と名前で生きたいという人の思いも尊重される、そういう制度です。憲法に合致していると考えます。
選択的夫婦別姓について、新日本婦人の会の皆さんがアンケート調査を行いました。この一月の二週間の間に三千九百七十九人の方が回答され、なぜ、結婚後、名字を選択できる制度を求めるのか、どのような負担があるのかなどの声があふれています。
具体的な声です。
二十代の方。つき合って十年の彼氏がいます、五年前に婚約し、いまだに法律婚をしていないのは、夫婦別姓が選べないからです、私たちに結婚をする自由を下さいという声です。
三十代の方。いろいろな場面で自分の名前を新しい姓で呼ばれることが続き、自分が自分でないような気がして精神的に不調を来すようになりました、現在、結婚十三年になりますが、いまだに自分が夫の姓であることに違和感がありますという声です。
別の三十代の方。私が私らしくいるために、今まで親や友達や先生や職場や、あらゆる場面で誰かに毎日のように呼ばれていた名前は自分とは切り離せないものです、大体女性側が被るこの理不尽、苦しみ、違和感を次の世代に引き継がせないでほしいという声です。
法務大臣は、結婚によって名字が変わることに関し、苦しみ、違和感、そして喪失感を抱える、そういう方々がおられることに関してどのように認識をされておられますでしょうか。
○鈴木国務大臣 今先生御指摘の、結婚によって名字を変えることに関して苦しみを抱える方々がおられるということ、まさにそうした婚姻によって氏を改める方にとっては、婚姻前の氏を引き続き使えないことによって婚姻後の生活において様々な不利益や支障が生じている、そういった声があるということは承知をしております。そして、そうした声にしっかりと十分耳を傾ける必要があると感じております。
○本村委員 結婚によって名字を変えることに苦しみや喪失感を覚える、そういう方々がいらっしゃる、その根源には何があると大臣はお考えでしょうか。
○鈴木国務大臣 一概にはどうと言うことはできないと思いますが、そうした苦しみの根源ということですが、選択的夫婦別氏制度の導入に賛成というか、そういったことを推進しようとする方々の御意見の中には、氏を含む氏名が個人のアイデンティティーに関わるものであるということを理由とするものがあるということについては承知をしておりますし、また、夫婦同氏制度が合憲であると判断した最高裁の平成二十七年の判決においても、氏を改めることによっていわゆるアイデンティティーの喪失感を抱くなどの不利益が生じることがあるということは否定ができないということが判示をされていると承知をしております。
○本村委員 自分が自分でなくなるような感覚に陥ってしまう喪失感、苦しさ、違和感、それは、名字と名前がセットである氏名が、人が個人として尊重される基礎であり、個人の人格の象徴であって、人格権の問題だから、人権の問題だからではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○鈴木国務大臣 人格権という話を今されました。
人格権ということでいえば、先ほど申し上げましたけれども、夫婦同氏制度が合憲であると判断をした最高裁の平成二十七年の判決ということになるかと思いますけれども、氏名について、社会的に見れば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものと判示をされていると承知をしております。
その上で、この判決では、氏は、婚姻及び家族に関する法制度の一部として法律がその具体的な内容を規律しているものであるから、氏に関する上記人格権の内容も、憲法上一義的に捉えられるべきものではない、そして、憲法の趣旨を踏まえつつ定められる法制度をまって初めて具体的に捉えられるものとされていると承知をしています。
そういった中において、現行の法制度の下における氏の性質、それに鑑みますと、婚姻の際に氏の変更を強制されない自由というものが憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとは言えないとも同時に判示をされているというのが、この最高裁における判示であると承知をしております。
○本村委員 最高裁の多数意見について、二〇一五年の判決についてお話がありました。この判決については、憲法から個人の権利を導き出そうとしていない、そして、女性差別撤廃条約、これについては無視をしている、そういう批判がある判決です。
そして、この判決に関して、最高裁判事であった泉徳治さんは、まず社会があり、社会の構成要素として家族があり、家族の中に個人があるという発想だ、個が見えない判決だ、個人の尊厳がまず最初に来るべきだというふうに批判をしていますけれども、本当にそのとおりだというふうに思います。
三原大臣にもお伺いをしたいというふうに思います。
人格権、人権保障は後回しにされていい問題ではないというふうに思います。選択的夫婦別姓を早期に実現して、二人とも人格的な利益、アイデンティティーを守られる制度をつくるべきだというふうに考えております。そして、憲法の個人の尊厳と本質的平等を実現するべきだというふうに思います。
三原大臣にお伺いしたいのは、夫婦同姓を義務づける今の制度の中で、九五%が夫の名字に妻が変えているという現実です。生まれ持った氏名に関する人格的利益を失い、夫との不平等状態に置かれるのは妻側だというのが大半の現実です。今のままであれば、性別による不平等を固定化、再生産することにつながるのではないかというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○三原国務大臣 委員御指摘のような思いをしていらっしゃる方がいるということは、私も一つの意見として受け止めたいと思います。
その上で、夫婦の氏に関する制度の在り方につきましては、国民の皆様の間に様々な議論、様々な立場からの御意見があり、より幅広い国民の皆様の理解を得る必要があると考えております。
引き続き、分かりやすい情報提供というものをしっかり取り組んで、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方について国民の皆様の理解が深まるよう取り組んでまいりたいと思っています。
○本村委員 人格権、人権の問題は後回しされていい問題ではありません。本来、一九九六年、法制審議会が選択的夫婦別姓の民法改正案要綱を答申し、二十九年になります。答申以降ずっと放置をされ続けています。個人が尊重されていない、人格的利益が失われている人たちが次々と生まれているのに、それを放置し続けております。
選択的夫婦別姓を早期に実現して、結婚する二人両方の人格的利益を守り、アイデンティティーを守り、個人の尊厳と本質的平等、個人の尊重を最も重視する、その憲法の方向に政治を変えるべきだというふうに思います。大臣、いかがでしょうか。
○安住委員長 もう時間がとうに過ぎていますので、今の意見で終わってください。
○本村委員 個人の尊厳が何よりも大切にされる法制度に変えることを強く求め、質問とさせていただきます。
ありがとうございました。
○安住委員長 これにて本村さんの質疑は終了いたしました。
―――――――――――――
○安住委員長 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。
令和七年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
なお、公聴会は来る二月二十五日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、明十九日午前八時五十五分から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二十五分散会