衆議院

メインへスキップ



第13号 令和7年2月20日(木曜日)

会議録本文へ
令和七年二月二十日(木曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 安住  淳君

   理事 井上 信治君 理事 齋藤  健君

   理事 牧島かれん君 理事 山下 貴司君

   理事 岡本あき子君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 三木 圭恵君

   理事 浅野  哲君

      伊藤 達也君    稲田 朋美君

      国光あやの君    河野 太郎君

      小寺 裕雄君    後藤 茂之君

      小林 茂樹君    高木  啓君

      田所 嘉徳君    田中 和徳君

      谷  公一君    土屋 品子君

      寺田  稔君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    深澤 陽一君

      古屋 圭司君    山田 賢司君

      今井 雅人君    大西 健介君

      神谷  裕君    川内 博史君

      黒岩 宇洋君    近藤 和也君

      酒井なつみ君    階   猛君

      中島 克仁君    藤岡たかお君

      本庄 知史君    米山 隆一君

      早稲田ゆき君    東   徹君

      黒田 征樹君    徳安 淳子君

      中司  宏君    西田  薫君

      岸田 光広君    許斐亮太郎君

      西岡 義高君    橋本 幹彦君

      森ようすけ君    赤羽 一嘉君

      大森江里子君    西園 勝秀君

      佐原 若子君    田村 貴昭君

      緒方林太郎君

    …………………………………

   総務大臣         村上誠一郎君

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   財務大臣         加藤 勝信君

   文部科学大臣       あべ 俊子君

   厚生労働大臣       福岡 資麿君

   農林水産大臣       江藤  拓君

   経済産業大臣       武藤 容治君

   国土交通大臣       中野 洋昌君

   環境大臣         浅尾慶一郎君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     林  芳正君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 坂井  学君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)         三原じゅん子君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     城内  実君

   外務副大臣        藤井比早之君

   外務副大臣        宮路 拓馬君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  桝野 龍太君

   政府参考人

   (内閣官房グローバル・スタートアップ・キャンパス構想推進室内閣審議官)  藤吉 尚之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          七澤  淳君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  佐藤 則夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 阿久澤 孝君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        大森 一顕君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        風木  淳君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  檜垣 重臣君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    谷  滋行君

   政府参考人

   (こども家庭庁支援局長) 吉住 啓作君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            湯本 博信君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    霜田  仁君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    宇波 弘貴君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局長)          茂里  毅君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          望月  禎君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       井上 諭一君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 哲雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡本 利久君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口  靖君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          深水 秀介君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            前島 明成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    南   亮君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         木原 晋一君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房上下水道審議官)       松原  誠君

   政府参考人

   (国土交通省国土政策局長)            黒田 昌義君

   政府参考人

   (国土交通省物流・自動車局長)          鶴田 浩久君

   政府参考人

   (環境省大臣官房地域脱炭素推進審議官)      大森 恵子君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  土居健太郎君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  植田 明浩君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 寺田 広紀君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    石川  武君

   予算委員会専門員     中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     小寺 裕雄君

  酒井なつみ君     中島 克仁君

  池下  卓君     東   徹君

  徳安 淳子君     黒田 征樹君

  西田  薫君     中司  宏君

  長友 慎治君     岸田 光広君

  橋本 幹彦君     森ようすけ君

  河西 宏一君     西園 勝秀君

  櫛渕 万里君     佐原 若子君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     高木  啓君

  中島 克仁君     酒井なつみ君

  東   徹君     池下  卓君

  黒田 征樹君     徳安 淳子君

  中司  宏君     西田  薫君

  岸田 光広君     許斐亮太郎君

  森ようすけ君     西岡 義高君

  西園 勝秀君     河西 宏一君

  佐原 若子君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  許斐亮太郎君     長友 慎治君

  西岡 義高君     橋本 幹彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和七年度一般会計予算

 令和七年度特別会計予算

 令和七年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

安住委員長 これより会議を開きます。

 令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算、令和七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣参事官桝野龍太君外三十五名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

安住委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小寺裕雄君。

小寺委員 自由民主党、小寺裕雄でございます。

 質問に入る前に、一言申し上げます。

 我々は、いたずらに予算を人質に取って衆議院の予算通過を遅らせたり、あるいは年度内成立を阻むということはしない、立憲民主党の野田代表が十七日の予算委員会でおっしゃった言葉です。

 しかし、昨日、参考人への聴取方法について折り合いがつかない事態が生じたことを受け、結果として委員会は開かれず、七時間もの総理出席による集中審議が空転いたしました。(発言する者あり)

安住委員長 御静粛に。

小寺委員 国民生活にとって大事な予算審議であります。熟議を重ね、しっかり結論を出す。時間を空費することなく我々は議論を前に進めるべきだと申し上げて、質問に入らせていただきます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 二〇二二年の六月、再開発に伴い文教堂が閉店して、赤坂かいわいから書店がなくなりました。実は、同じ年の五か月前に、赤坂Bizタワーの地下にあったTSUTAYAも閉店しています。現在はスーパーになっているところです。

 この近くで本を買い求めようとすると、溜池山王交差点近くのブックスフューチャーまで行くか、地下鉄溜池山王駅通路のところにある、ほんたすという会員制の無人店舗くらいでしょうか。永田町まで行くと、都道府県会館に改造社がありますが、皆さんは、この辺りで本を買おうとするときはどうしておられますか。もちろん、ネットは別にしてです。

 このように赤坂かいわいで起きているような町から書店が消える現象は、実は全国各地で起きていることです。

 では、なぜ書店の数はこれほど減少しているのでしょうか。スマホの影響であったり、アマゾンなどネット書店の台頭、読書離れなど、様々な理由が考えられますが、書店を取り巻く状況についてどのような認識をお持ちでしょうか。武藤大臣にお尋ねしたいと思います。

武藤国務大臣 小寺委員から、今の書店を取り巻く環境について御質問をいただきました。

 書店は、地域において多様なコンテンツに触れることができる場というふうに承知をしています。読書は、多様な価値観を学ぶことで創造性を育むことにつながります。また、コンテンツ制作の観点から考えますと、日本が強みを持つソフトパワーの源泉として漫画や小説の役割は大きい。まさにこうしたコンテンツの流通の場としても書店は重要だというふうに認識をしているところであります。

 他方、活字離れやネット書店の拡大などにより、町中にある書店は近年激減していることは私自身も承知をしております。約四分の一の自治体から書店がなくなっており、こうした現状に強い危機感を持っているところであります。

 こうした危機感から、昨年三月ですけれども、経済産業省に書店活性化プロジェクトチームを立ち上げ、一月に、書店活性化のための課題を取りまとめたところであります。

小寺委員 今お話しいただいたようなところでありますけれども、私の方からつけ加えるとすると、二〇〇三年ぐらいがピークであった書店の数は約二万八百八十店舗、それが二〇二三年には一万九百十八店舗、まさに半減しています。市場規模は、一九九六年がピークで二兆六千億、去年は紙と電子媒体を合わせて一兆五千七百億、紙媒体だけですと約一兆五十六億円、毎年五%ずつ減少している現状があります。

 実は、私はかつて書店を経営しておりました。今から四十年近く前、最初が、二十五歳のときに四十坪で開店しました。一九八六年から二〇〇四年までの十八年間、とてもいい時代でした。書籍だけではなくて、レンタルビデオやCD、ゲームソフトなども取り扱っていましたので、一番いいときには、三店舗で年商十億円を超えておりました。毎週月曜日には少年ジャンプが何百冊も売れましたし、男性向け週刊誌や写真週刊誌も本当によく売れた時代でした。二〇〇〇年ぐらいがターニングポイントだったように思います。

 書籍と同じように、CDやゲームソフトもだんだん売れなくなっています。それにつれて、書店はもちろんのこと、CDショップやゲームショップ、あるいはレンタルビデオ店もどんどんなくなっています。レンタルビデオも、ネットフリックスなどに顧客を奪われています。この委員室にも、恐らく、CDを買ったことのない人やビデオを借りたことのない人がおられるのではないでしょうか。

 書店に戻しますと、書店のビジネスモデルはまさに危機に瀕しています。中小の独立書店にとって、週刊誌等の雑誌とコミックの売上げが経営の柱でしたが、スマホに取って代わられてしまいました。象徴的なのが駅前の書店です。かつては、どこの駅前にも、規模はさほど大きくはないけれども、店頭はいつも立ち読みでごった返しているような書店がありました。雑誌を買うことが習慣としてある人たちは、定期的に書店に立ち寄り、ついでに書棚を見て面白そうな本を買うといったようなルーティンがなくなり、書店は主要な顧客を失っていったのです。

 あわせて、ネット書店の台頭です。買い求める書籍が決まっている人や、仕事に必要な書籍を急いで欲しい人たちにとっては、ネット書店の便利さは、リアルな書店と比較すると圧倒的な差があります。現在、ネットで販売される書籍の割合は約二〇%ですが、書店の数が毎年減少しているのですから、その割合は今後ますます高まっていくことでしょう。

 雑誌離れでもう一つ象徴的なことを申し上げますと、近くローソンとファミマからは、雑誌がこの三月からなくなっていきます。全ての店舗からではありませんが、かなりの店舗からなくなるのではないでしょうか。以前は雑誌目当てのお客さんがたくさんいたのですが、とにかく雑誌が売れないこと、また、物流二〇二四年問題とかが相まち、縮小、撤退が決まりました。雑誌を扱う問屋である取次ぎも、雑誌を運ぶ運送屋さんも、実は赤字です。

 リアルな書店が厳しいという話をさせていただいておりますが、書店だけが厳しいわけではありません。出版社も厳しいことに変わりはありません。昨年一年間で倒産した出版社は二十四社、三十八社が休廃業ないしは解散しています。現在、六百七十五社ある出版社のうち、三分の一以上が赤字経営という報告があります。書籍や雑誌を書店に卸す取次会社も赤字経営、一部の大手出版社を除いては、出版業界全体が危機に瀕しているのです。

 そうした中、私は、町に書店を残さなければならないと考えていますし、書店を残すためには様々な形で支援をしなければならないと考えています。

 去る二月七日付の読売新聞を御覧になった方もおられると思いますが、一面のトップに、「書店振興 官民で」という大きな見出しつきで、書店に関する記事が掲載されていました。あわせて、三面では消えていく書店の現状を、十八面と十九面では書店活性化に向けた様々な提言が掲載されていました。

 私は、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の事務局長を務めさせていただいておりますが、議員連盟で積み重ねてきた議論と読売新聞の提言はほぼ同じ方向性であるというふうに考えています。

 なぜなら、議員連盟の名称にあるように、書店は、私たちにとって、本を通じて知識や教養をつなぐ機会を提供してくれる地域の文化拠点であり、書店を守ることが日本の文化を守ることにつながると考えているからです。目的もなく、時間潰しにふらりと入った書店で偶然に手に取った一冊の本との出会いが、その後の人生に大きな影響を与え、職業選択に大いに役立ったというような機会を提供してくれるのが書店なのです。

 皆さんも振り返ってみれば、子供のときから学生時代を通じて、自宅の近くに行きつけの書店があったのではないでしょうか。しかし、全国各地で書店が減少している現状においては、私たちが経験してきたように、歩いて、あるいは自転車で書店に行って気軽に立ち読みをしたり、本を探したりといった経験をしたことがない子供たちがどんどん増えており、読書離れに拍車がかかっています。幼少時から絵本を手に取り、活字文化に親しむためには、生活圏に書店が必要なのです。

 ところが、現実はどんどん望ましくない方向に向かっています。ネットやSNSを利用する時間が増えた結果、読書の時間が減っています。ネットの既存メディアに対する影響は恐ろしいぐらいで、若者は既に地上波のテレビをほとんど視聴せず、ユーチューブやティックトックを見ています。

 また、かつては通勤途中によく見られた電車内で新聞を折り畳んで読む光景は、今では全員がスマホの画面を見ている状況です。そうした影響もあり、一月末日をもって夕刊フジは休刊となりました。また、東京中日スポーツは、デジタル配信に全面移行し、紙媒体の販売を取りやめとなりました。

 鉄は熱いうちに打てという言葉があるように、子供の頃から本に親しむ機会を増やすことで、今こそ読書離れを食い止める必要があると考えます。教育の現場でもこうした危機感が共有され、子供や生徒が本を好きになるように、読書離れを少しでも食い止めるような取組は行われているのでしょうか。

 そこで、読書離れに対する認識とその対策についてお伺いします。

茂里政府参考人 お答え申し上げます。

 一か月に一冊も本を読まない子供の割合であるいわゆる不読率は、一貫した上昇傾向はないものの、小学生八・五%、中学生二三・四%、高校生四八・三%と、年齢が上がるごとに高くなり、不読率の低減、これを図る必要があると考えております。

 第五次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画では、社会全体で子供の読書活動を推進する必要があるとしており、乳幼児からの読書習慣の形成を促す取組や、探求的な学習活動等で学校図書館の利活用を促進する取組の充実を図ることとしております。

 同計画を踏まえまして、文科省におきましては、発達段階に応じた読書活動の先導的なモデル事業や、幼稚園等の学校等における子供の読書活動を推進するための優れた取組の表彰、あるいは民間団体における読み聞かせなど、読書活動への助成などを推進しているところでございます。

 これらの施策を通じまして、引き続き読書活動に関する取組を進めてまいりたいと思います。

小寺委員 ありがとうございました。

 実は、結構取り組んでいただいているのは承知しておりますし、それなりの成果が現場で出ていることも承知をしております。

 しかしながら、状況は、今申し上げたように、どんどんどんどん危機的な方向に向かっているというふうに認識をしておりますので、より一層の取組を求めたいというふうに思います。

 先ほどから申し上げておりますが、読書離れに歯止めをかけるには、幼少期からの本に親しむ機会を増やすことが大切であります。

 私の地元、東近江市というところでは、乳幼児健診、いわゆる四か月健診のときに絵本がプレゼントされます。ブックスタートという事業ですが、その狙いは、赤ちゃんと保護者がゆっくり向き合って絵本を開くことの大切さを伝え、楽しく触れ合う時間を持つきっかけづくりとなることを願って実施することとなっています。

 絵本は、言語力や感性、理解力を発達させるものとして極めて重要であると言われています。絵本や本の読み聞かせを幼い子供たちに経験する機会を与え、本が好きな子供たちを増やしていくことが大切なのです。

 かつて、ショッピングセンター内にある私の店舗でも、店内の休憩スペースをお借りして、ボランティアで読み聞かせをされている方をお招きし、月に一度、読み聞かせ会を行っていました。

 出版文化産業振興財団では、読書アドバイザーという資格を持った人たちが活動しており、こうした貴重な読書推進人材に活躍の場を提供するような支援策を取るべきであります。

 また、子供たちに読書の楽しさを伝える専門家を育て、そうした人材を派遣するような取組を進めることがあってもよいのではないでしょうか。

 そして、読売新聞の提言にもありますが、学校教育現場で読書の楽しさや大切さなどを教えるといった読書教育を充実させる必要があります。読書活動に熱心な教員を育て、読書の大切さを子供たちに教える仕組みづくりを行うべきです。

 あわせて、学校図書館の充実も、司書の配置も含めて考えるべきであります。食育の指導に栄養教諭が当たるように、読書教育の指導に学校図書館の司書が当たるような仕組みを、現状も取り組んではいただいておりますが、更に推進すべきであるというふうに考えます。

 活字離れが進むからこそ、時間はかかるかもしれませんが、読書教育を通じて本を愛する子供たちを増やす取組をするべきであるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それと、議員連盟で世界各国の書店に対する支援策を勉強しているときに、フランスと韓国の支援策はすばらしいことを知りました。昨年末の議員連盟の総会にもフランス大使館の方に来ていただき、フランスの文化というものに対する支援策のスケールの大きさと考え方の違いに驚かされました。

 そこで、フランスや韓国など諸外国の文化政策や書店に対する支援策、またその予算規模等はどうなっているのか、お尋ねしたいと思います。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりですが、諸外国では、書籍の購入促進や書店への経営支援を行っている例がございます。

 例えば、フランスでは、若者の文化へのアクセスを容易にし、芸術文化活動を促進する目的で、若者に対してカルチャーパスを配付しまして、書籍の購入などを促進しております。また、韓国では、公共、学校図書館が図書を購入する際に地域の書店を優先するよう勧告したり、書店に関する基礎調査、文化行事等の支援、書店に対するコンサルティングなど、書店の経営支援を行っているところでございます。

 これらのような書店の支援を重視している国々について、二〇二三年度より調査研究をしているところでありますが、我が国としての書店振興の在り方に関する検討の一環としまして、今後も諸外国の動向についてフォローしてまいりたいと思っております。

小寺委員 ありがとうございました。

 これはなかなか申し上げにくいことに我々の立場からはなるんですけれども、世界中の各国が書店や文化芸術に莫大な予算をつぎ込んでいる中で、我が国だけが全く何もしていないというふうなことを申し上げるつもりはありませんが、余りの予算規模の開きがあることに、率直に申し上げて大変驚いています。

 文化庁の調査によると、令和五年度で比較いたしますと、国民一人当たりの予算規模で申し上げますと、フランスと韓国は、日本の十倍以上の予算を書店の支援や読書推進も含めた文化的な事業に使っています。

 それと併せて、消費税の軽減税率の適用です。韓国やイギリスは非課税ですし、ドイツやフランスでも、標準的な税率に対して半分以下あるいは四分の一程度の税率しか適用されていません。日本でも非課税にした方がとはとても申し上げることはできませんが、もう少し諸外国に負けないレベルの支援策が必要であります。

 読売新聞の記事によりますと、日本は、文化庁の予算で総額で一千百十七億円、一人当たりに直しますと八百九十九円の文化的歳出予算額ということであります。それに対して、今例に出してあるフランスでは六千六百七十六億円、一人当たりにしますと九千八百十二円、韓国も四千九百五十四億円で、一人当たり九千六百三十円となっております。アメリカだけが八百三十八円というふうに日本より低い金額でありますが、ドイツもイギリスも、それなりの金額が実は文化的予算として出されています。

 そして、あわせて、我が国の状況を考えるときに欠かすことができないのが図書館との連携です。私は、地方にとって、先ほどから何度も申し上げているような読書好きの子供を増やすためには、そして地方の書店を守るためには、各地域の図書館と書店の連携が肝になると考えています。

 実は、今朝の読売新聞の二面に、全国千七百十八市町村のうち二百五十六の町村、一五%には、書店も図書館もない町村がどんどん増えてきているという記事が掲載されていました。そのうち、北海道が四十二町村、福島が二十一町村ということであります。

 そこで、武藤大臣にお尋ねしますが、諸外国の施策と比較して、我が国の現状をどのように思われますか。そして、図書館との連携を含めた我が国の書店に対する支援策がどうなっているのか、お尋ねしたいと思います。

武藤国務大臣 小寺委員もおっしゃられたように、私も、テレビの報道でしたか、パリの本屋さん、いわゆるここがまさにジャパン・カルチャーの起源みたいになって、そこの本屋さんを見ながら日本語を覚えるフランス人の子供たちというのを見たことがあります。まさに我々もそれぞれに応じた支援策がこれからも進めていかれるものと承知をしております。前大臣からも引継ぎ書の中でしっかりとここを私もいただいておりまして、それぞれの我が国の実情に応じた支援策を今後検討していきたいというふうに思います。

 また、具体的にちょっとお話を申し上げておきますと、昨年十月に、既存の中小企業政策を紹介するため、書店の経営者向け支援施策の活用ガイドを取りまとめ、公開をしたところです。この中で、店舗改装や広告掲載を支援する補助金を始めとする各種制度も紹介しているところでもあります。

 令和六年度補正予算を活用しながら、経営支援について、書店のデジタル化を進めていく、また、返本の抑制ですとか、棚卸し作業の効率化ですとか、万引き防止措置などを通じて収益性の向上を図る実証事業も行っていく予定であります。

 さらに、先ほど委員がおっしゃられたように、書店等の関係機関と図書館の連携、協働を促進するモデル事業ですとか、事例集の普及等を文部科学省が進めているものと承知をしているところであります。

 こうした取組に加え、関係各省と連携をしながら、経済対策に記載をしました書店活性化プランを策定し、具体的なアクションを進めていきたいと思います。

小寺委員 ありがとうございました。

 せっかく書店PTをつくっていただいて、提言書の内容に沿っていろいろ事業を進めていただいておりますので、これからも更なる御支援を是非お願いしたいというふうに思います。

 それから、地方にとって肝となるのは図書館と書店の連携であるというふうに申し上げましたが、実は、もう一つ重要なことがあります。それは、具体的に取り組むのは全国の各自治体ですから、首長の理解があるかどうかということに実は懸かっています。

 全国の自治体では、独自に支援策に既に取り組んでいただいている事例がありますので、幾つか紹介させていただきます。

 市町の図書館に本を納入するとき、できるだけ地元の書店で調達をしようとしても、地元の書店にとってはとてもハードルの高いことで、決して簡単なことではありません。なぜなら、図書館で本を貸出しをするためには、貸出し、返却をするためのバーコード、図書館の名前が入った管理用シール、それから本全体を保護するようなカバーなどの装備一式の費用負担を求められたりするからです。

 鳥取県では、県立図書館が本を購入するときには、原則地元書店から購入するなどして、図書館と書店との共存を図っています。同様の取組は、山形市や大分県の宇佐市でも行われています。

 また、北海道の幕別町では、図書館で購入する年間四千冊の本を地元の書店から購入することとしながら、今し方お話しした図書館用の装備を二つの福祉事務所が請け負う仕組みを構築されました。図書館と書店、そして福祉事務所が連携をして、予算が地域内で循環する仕組みと障害者の雇用を生み出すという先進的な幕別モデルとして確立しておられます。同様の取組は、同じく留萌市でも行われています。

 また、コロナ禍では、コロナウイルス感染症対策の地方創生臨時交付金を活用した事例として、図書カードを十八歳以下の子供に送られた事業が全国の自治体で行われました。

 また、関連する事業として、これはまた少し違いますけれども、熊本県書店商業組合は、商店街等売上回復支援事業費補助金を活用して、三〇%上乗せのプレミアム図書券を販売されたりしています。

 各自治体のトップに地域の書店を支援することの必要性について認識してもらうことが具体的に書店への支援につながるため、首長さんに対する理解を深めることが必要だということも併せて意見として申し上げさせていただきます。

 先ほどから何度も繰り返し申し上げていますが、地方の書店が減少することは地方文化の衰退につながり、ひいては都市と地方の知の格差につながりかねません。石破政権が掲げる地方創生の観点からも、書店への支援は重要です。

 現行の交付金制度、いわゆる地方創生推進交付金を活用する事例として、私の地元、滋賀県でも、令和七年度予算の中に、中小企業等への支援による地域経済活性化事業として一億七千五百万が予定されており、商工会議所や商工会といった商工団体を通じて、書店への支援を含めた形で実施される経費に対して助成をすることになっています。もちろん、県議会の承認が必要なことは言うまでもありません。

 こうした取組は、先ほど御紹介いただいたフランスやドイツで行われているカルチャーパスに通じるもので、書店サイドにも子供たちにもとても効果があります。フランスなどでは、書店で本を買うだけではなくて、コンサートチケットであったり、あるいは美術館へ行ったり、そうした文化的なことまで含めると、一人当たり大体数万円の予算がカルチャーパスで与えられるというふうに伺っています。

 是非国が予算をつけて事業立てをし、自治体は地域の実情に応じた形で効果的に事業を実施していくような仕組みで、地域の書店を支援するようにしてもらいたいものであります。

 最後に、お隣の韓国では、ネット書店の台頭で一時はかなり減少した書店が、先ほど来申し上げている国や自治体の様々な支援策を受けて、増加に転じています。

 具体的には、二〇〇三年に三千五百八十九店舗あった書店は、二〇一五年には二千百六十五店舗まで減少しました。そして、それが二〇二一年には、何と二千五百二十八店舗まで回復したのです。増えた多くの店舗がまさに日本の地方に求められる中小の独立書店であり、そうした特色ある書店が中心となって地方の文化を支える仕組みができており、まさに地方創生のかがみだと言えます。

 そこで、地方創生の観点から、書店の活用策についてどのように考えるか、お尋ねしたいと思います。

安住委員長 小寺君、時間がもう終わりなので、最後に答弁でいいですか。

 内閣府地方創生推進事務局の大森審議官、簡潔に答弁をして、それで終了ということにさせていただきます。

大森(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 地域の書店振興は、地方創生の観点においてもやはり重要であるというふうに認識しております。

 このため、新しい地方経済・生活環境創生交付金によりまして、例えば、地域の書店を含む商店街や中心市街地の活性化の取組を支援することが可能であり、自治体の創意工夫に基づく取組を後押ししてまいりたいというふうに考えております。

小寺委員 終わります。ありがとうございました。

安住委員長 これにて小寺君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 二月四日に引き続いて、今日も質問の機会をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 ちょっと気になったんですが、先ほど小寺委員ですか、冒頭に、昨日の予算委員会、開かれなかったことがあたかも野党の責任のような、これはとんでもない発言だと思いますよ。この予算委員会の前提の問題について、予算を提出して、審議、円滑にする責任がある与党、そちらに、誠意のない対応をしたことを、これは責任転嫁も甚だしい。改めて先ほどの発言には抗議を申し上げたいと思います。

 こんなことで時間を費やすのはもったいないので早速質問に入りたいと思いますが、私からは、先週二月十四日、野田佳彦代表が公表いたしました政府予算に対する立憲民主党の修正案、「家計が第一 ムダな予算を生活応援へ」についてと、また、昨日、我々、議員立法、高額療養費患者負担額上限引上げ凍結法案を衆議院に提出をいたしましたので、関連して質問させていただきたいと思います。

 まず、政府予算に対する修正案、「家計が第一 ムダな予算を生活応援へ」。

 これは資料の一枚目でございます。右側が財源確保。前回もお話ししましたが、私は野田佳彦代表の御指示を受けて、本気の歳出改革作業チーム、総勢八十人余り、一週間で洗い出し、そして一週間で深掘り。ここにもお示ししてあるように、突然増えた一般予備費の財源であったりとか無駄な見せ金基金の活用、こういった内容で、財源確保に三・八兆円。そして、その一方で、我々が目指す政策実現、これは左側になりますが。ガソリン、軽油価格の引下げであり学校給食無償化。こういったことを責任ある立場で具体的にお示しをさせていただいておるわけであります。

 冒頭、加藤大臣にお尋ねしたいわけでありますが、我々の、来年度当初予算に対する、政府予算に対する修正案フレーム、分かりやすくお示しをさせていただいております。加藤大臣、よく見ていただけましたでしょうか。その上で、我々の修正案に対して見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 御党が出された修正案、概要という形のペーパーしか手元にございませんでしたが、それについては出された直後にしっかりと見させていただきました。

 その上で、今も表はお出しになっておられますけれども、政策実現と財源確保を併記する形で、具体的に予算修正案を御提案いただいたこと、これは国会審議において真摯に政策論議を行っていただく上で大変意義のあることと考えております。

 ただ、その上で、予算については、私ども必要と思う予算を計上させて出させていただいているという、まずそれが一つあります。それから、恒常的な政策に必要な場合には安定的な財源ということを申し上げておりますので、その辺をどうお考えになっているのかなど、幾つか思うところはございますけれども。

 いずれにしても、党派を超えた合意形成を図るために、与党、野党共に、中長期的な政策の方向性や制度の持続可能性についてそれぞれのお立場で議論が展開され、国民の納得と共感が得られていけるよう、我々政府としてもしっかりと対応させていただきたいというふうに考えております。

中島委員 我々も明確にこういう形で、財源も確保しながら、そして、我々が目指す政策、財源確保の上で、真摯に与野党協議、しっかりと受け止めて、そして前へ進めていただけるよう改めてお願いいたします。

 そして、ここに示している、額は大きいものを示させていただいていますが、本気の歳出改革作業チーム、先ほど言った総勢八十名近い、十五チームですよ、十五チーム。

 ここにはなかなか、まだ引き続き精査が必要ということも、そういう内容もあって、例えば、政府広報費について見ると、予算が四十五億円。四十五億円で、これはユーチューブ再生回数が百回程度。私のユーチューブだって多いときは五百回とか千回いきますよ。ティックトックは五十万回いったこともありますよ。四十五億円の予算をかけて再生回数が百回程度。こういったものとか、あと、介護プロフェッショナルキャリア段位制度、これはもう十年前から始まっていますが、今、受講数が激減しているんですよ。今、我々、介護、障害福祉処遇改善、人材確保の法案も出して、予算修正も求めていますが、これは地域医療介護総合確保基金から予算が出ていると思います。これはまだ、一体幾ら、それを請け負っているシルバーサービスにどのぐらいの国の予算が行っているか今精査中でありますけれども。

 この作業チームが二週間でここまで掘り下げた。

 財務大臣、予算を編成するお立場として、こういう細かい無駄のチェック、これは与党も含めてですよ、与党も含めて、やられていますか。こういう無駄の抽出、こういった作業をもしされていないのなら、これはちゃんと反省していただきたい。いかがでしょう。

加藤国務大臣 今の水準が細かいとは私は思いませんで、それぞれ、一つ一つベースになってやっていただいているんだと思います。

 私ども予算編成に当たっては、各省庁から要求のあった各種の事業について、その要求内容の説明を受ける中で執行状況や政策効果等を確認するとともに、EBPMの手法を取り入れた行政事業レビューシートを積極的に活用して政策効果を確認するなど、政府の施策あるいは予算が効率的、効果的に行われるよう努めているところでございます。

中島委員 与党さんも含めて、我々、今回私も大変勉強になりました。長妻昭代表代行、無駄を見出すプロフェッショナルですよ。レクを受けて、その観点。我々はやはり、無駄な、そして、つらつらとただただ積み増されて毎年のようにやっている、出されているような、こういったことをやはりしっかりチェックしていかなきゃいけない。我々作業チームは、この予算で終わりじゃないですから。引き続き、まだ額もはっきりしていない、うやむやになっているようなものを、今後更に精査を含めて各委員会等で取り上げてまいりたいと思いますので、これも真摯に受け止めていただければと思います。

 続いて、高額療養費患者負担額引上げに関して、これは資料の四枚目ですね。一昨日、島根の丸山県知事、高額療養費見直し、死に追いやる決定、戦後最大の汚点、国家的殺人未遂だとまで発言されておるんです。

 この内容について、福岡大臣、島根の丸山知事からこのような御指摘を受けてどう受け止められているか、まずお答えいただきたいと思います。

福岡国務大臣 まず、様々なお声については真摯に受け止めなければいけないというふうに思っております。

 その上で、私どもとしては、今回見直しを決するに当たりまして、受診抑制が起こりませんように、所得の低い方の上げ幅は低くする、そして所得の高い方の上げ幅は大きくするということで、過度な受診抑制が起こらない、そういう制度設計にさせていただいています。

 引き続き、必要な医療がしっかり地域で受けられるように取組を進めてまいりたいと思います。

中島委員 全く受け止めが的外れだと言わざるを得ないですよ。

 今日も、全国がん患者団体連合会、また、JPA、日本難病・疾病団体協議会、もう毎日、連日国会に足を運んで、高額療養費患者負担引上げ、これがどういう影響を及ぼすか。本当、目の前の命に関わる問題を、今、患者受診に影響がないように。これまでの質疑で大分浮き彫りになったと思いますよ。

 私、前回、二月の四日、石破総理もおられましたが、これは改めて前提で確認しますけれども、今回、昨年の政府の骨太、六月にも入っていなかった。そして、八月の概算要求にも入っていなかった。それが突如として、十一月中旬、社会保障審議会医療保険部会、他のテーマと一緒に俎上に上げられ、そして、当然ながら、審議会のメンバーには当事者の方は入っていなかった。なおかつ、当事者団体からヒアリングもしなかった。そして、先日、川内委員の質疑でもつまびらかになりましたが、引上げ率に関して、厚生労働省は最大で一五%、でも、三段階目には七三%になるということも審議では明かされなかったですよね。

 これが、二月の四日も確認しましたが、福岡大臣、丁寧な、適切なプロセスを経て今に至っている、今でもそういう認識ですか。私は全くプロセスが間違っていると思いますが、福岡大臣は、丁寧な、適切なプロセスを踏んで今に至ると認識されておるんでしょうか。

福岡国務大臣 まず、様々な見識を有する専門家の方々に議論を行っていただく、これについては、過去の様々な見直しと比べても遜色のない、充実した審議を行っていただいたというふうに考えております。

 その上で、国会でも御指摘がありましたように、当事者の方々をお聞きすべきだというお声をいただいて、私も患者団体の皆様から直接お声を聞かせていただきました。

 今後、また、様々な検討の過程においては、そういった患者団体様のお声を聞く、そういったことも当然検討に付していかなければいけないと考えております。

中島委員 今になってもそんな認識ですか。

 加藤大臣。加藤大臣は昨年末、この内容を福岡大臣と折衝して合意されましたよね。加藤大臣といえば、長年、何回も厚生労働大臣も務められた。このプロセス、まず、いろいろ問題があるんですが、今私がつらつら話をしたプロセス、それを知った上で合意されたんですか。

加藤国務大臣 ちょっと、おっしゃるプロセスの中にいろいろなことが入っておりました。その個々具体的なこと、どういう形で審議をしているかとか、どういう声を聞いているかというところまで、当然私ども承知しているわけではございませんが。

 ただ、その流れで申し上げますと、そもそも、全世代型社会保障を構築していく観点から、一昨年末に改革工程というのが出されて、その中に、検討すべき課題の一つに入っているということは御承知のとおりだと思います。それを踏まえて、改革工程を実施するというのは、たしか、骨太の中にはそういう書き方をしていたと思いますが。

 それで、昨年秋以降、厚労省の審議会や与党において議論を重ねた上で、昨年末の大臣折衝で厚生労働大臣から具体的な見直しの制度設計について御提案をいただき合意をした、こういう経緯であります。

中島委員 今ちょっと与党議員もと言いましたけれども、この内容を、このプロセスも踏まえて、与党議員も認めたというプロセスが、今、丸山知事が、戦後最大の汚点、死に追いやる決定だと。

 加藤厚生労働大臣時代、この高額療養費制度のこともよく承知しておったと思いますから、そのときは気がつかなかったとしても、百歩譲りますが、この予算委員会で、明らかにこの決定プロセスが間違っている、このことを真摯にしっかり受け止めて、まず前提としていただきたいと思います。

 ちょっとまだ質問はたくさんありますので次に行きますが、先週の十四日、福岡大臣、患者さん団体、当事者団体とお会いしましたよね。そして、今回の高額療養費負担上限引上げの政府方針、これに対して修正案を示されました。一言で言うと、多数回該当は今回除外するという内容だったと思います。

 しかし、このような微修正で、今回の見直し、引上げ幅は変わらないわけですから。引上げ幅は変わらないですよね。年収五百、六百十万だったかな、の方は、現行八万円だけれども十三万円に上がるわけですよね、三段階。

 ここはちょっと政府参考人に確認したいんですが、この修正案において上限額が予定どおり引き上げられた場合、現状では、その多数回該当に当たる方は二割と言われておりますが、この多数回該当の対象となる方は、政府の修正案ではどのくらいになると試算されているのか。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 まず、先生のおっしゃられた二割という数字につきましては、私ども、多数回該当の数字そのものは取っておりませんので、近い値ということで、この委員会でもお示しをさせていただきました。

 その上で、今回の見直しにより対象数がどのように変化するかという点につきましては、現行のレセプトデータでは個々の患者の所得を正確には把握できておりません。また、高額薬剤の一層の普及の影響も含めて全体に考えなければならないということで、具体的な数字が幾つかということを推計することは困難だと思っております。

 ただ、三回にわたる制度の見直しの中で自己負担限度額が引き上がる方というのはいらっしゃいますので、患者によっては、これまでであれば自己負担限度額に到達していたけれども、見直しにより限度額に到達しないという方もいらっしゃると思いますが、数字についてはちょっと把握はできておりません。

中島委員 そんなことで、微修正ですから。普通考えれば、今八万円の方、それが十三万円になって、今よりも高額、上限が、例えば月々十万になった。その方々は高額療養費制度の対象にならなくなるんですよ。多数回該当も受けられなくなるんですよ。現状二割だと言っている、これが明らかに、この多数回該当に当たる方は減るじゃないですか。下手したら一割弱。そういう試算もしないで、何か予算委員会で野党から責められたからちょっと修正します、そんな内容じゃないですからね。

 もう一点、ちょっと政府参考人に確認いたします。

 今回の高額療養費制度、いわゆる付加給付のある方と国保とか協会けんぽの方はまさに直撃を受ける。付加給付がある方、これも、このまま見直しが実行された場合、今までも格差があるのに更にその格差が広がる。この格差対策、どのように考えられておられるのか、お尋ねしたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 先生の問題意識、恐らく、協会けんぽや国保では付加給付が実施されていない一方で、健保組合や共済組合では実施されているところもあるということをおっしゃられているのではないかと思っております。

 付加給付自体、それぞれの保険組合の自治による取組をしていることで実施をされているところでございますが、それぞれ今回の高額療養費の見直しの趣旨を踏まえながら、各保険者の財政状況、保険料の水準、そういったものを勘案し、その水準についてそれぞれ御議論、御検討されるものだというふうに承知をしております。

中島委員 全然対策取ってもないし、対応しようともしていないじゃないですか。これで、今回三段階目に行ったら更に格差は広がるんですから。

 厚生労働省共済の方は、年収五十三万円未満の方は自己負担額二万五千円ですよね。二万五千円ですよ。年収が高い方は若干上がりますが、最高でも五万円ですよ。十三万円になる方と、付加給付のある方の差がまた更に広がる。健保組合、調べましたが、組合によって若干違いますが、平均すると大体二万円から二万五千円が上限です。そういう対応をしっかりしていただかなければなりません。

 資料の二枚目になりますが、政府が先週金曜日、十四日に示した一部修正案に対する全がん連の要望でございます。一言で言うなら、これでは駄目ですと。この内容では、ここに書いてありますから読みません、時間ありませんから。改めて、一部修正では不十分、一旦凍結を要望せざるを得ないと。多分お会いになったときもそのように聞いたんじゃないかと思います。

 そして、今日は、この委員会の前に、婦人科の先生、ヒアリングもさせていただきました。がんや難病の方々だけではなくて、不妊治療に関わる方々、こういった方々も、この高額療養費制度、利用されている多くの方がおられるんですよ。今回の高額療養費制度、患者負担引上げ、まあ制度維持もありますが、子供、子育てへの拠出、本末転倒な状況になりますよ。この高額療養費を、患者負担を引き上げた場合、不妊治療を諦めてしまう方も多数出てくるという宋先生のお話でありました。

 こういう状況をしっかり受け止めていただいて、我々、昨日、三枚目、健康保険法等の一部を改正する法律案、通称高額療養費自己負担引上げ凍結法案、提出をさせていただきました。同時に、予算修正、最初にお示ししたフレームですね。我々が実現したい政策課題、二百億円ですから。それにも応じないようだったら、我々、この議員立法、今、与野党伯仲。

 そして、この内容、ちょっと後で時間があれば詳しく御説明いたしますが、これは当たり前のことを書いてありますから。

 政令改正をするに当たって、長期にわたり高額療養費の支給を受けた者の療養に必要な費用の負担の家計に与える影響、高額療養費の支給を受けた者の必要かつ適切な受診に与える影響について考慮することを新たに規定する。そして、配慮するに当たっては、長期にわたり高額療養費の支給を受けた者の生活実態に関する調査を行い、事前に長期にわたり高額療養費の支給を受けた者その他関係者、当事者の方々の意見を聞かなければ政令を改正してはいけませんという内容です。

 これは与党の皆さんだって、他の野党の皆さんだって、だって極めて当たり前のことですから。それを今回していなかった。これを提出したわけでありますから、是非しっかり受け止めていただきたいと思います。

 この内容、先ほど決定プロセスに私問題があると言いましたが、まさにここの新たに規定する部分が抜け落ちているということ、福岡大臣の見解を伺いたいと思います。

福岡国務大臣 まず、御党の提出の法案の取扱いについては国会で御議論いただくべきところでございますが、近年、高額な薬剤の登場等によりまして医療費全体の倍のスピードで伸びておりまして、高額療養費の総額は十年前と比べて約八千億円増加しております。

 平成二十七年以降、高額療養費の見直しを行っていないために、自己負担以上に保険料負担が増大しておりまして、今後もこうしたペースで増加し続けた場合、制度の持続可能性が維持できるのか、現役世代を中心に保険料負担はどうなるのかといった大きな課題がございまして、先送りすることなくこの制度を見直すことは必要だと考えております。

 その上で、私も患者団体様の皆様方とお会いさせていただいた中で、高額療養費に年四回以上該当する方の自己負担額の見直しを凍結し、据え置くこととさせていただいたところでございます。これは、患者の皆様と被保険者の皆様双方の声に応えるぎりぎりの案が今回の修正案だというふうに考えております。

中島委員 全然違います。

 患者さん団体の声はもう先ほどお伝えしましたし、私たちは見直し自体を否定しているわけではないんですよ。見直しに当たって医療のセーフティーネットを保ちつつ、そして、先ほど不妊治療にも影響があると。そして、前に私言ったように、社会環境。そして、私は医者でもありますから、疾病構造、治療方針の変化。こういった状況を鑑みて、我々は、丁寧に慎重に、そんな矢継ぎ早に多数回該当だけを何か減らすとかそういうのじゃなくて、改めて、この医療のセーフティーネット、高額療養費制度、この様々な変化に対応する抜本的な見直しが必要だと。

 だから、ここは、こんな矢継ぎ早にやって、そして上限を引き上げて何とか取り繕うなんてことではなくて、一旦凍結して、その上で、ちゃんとしたプロセスを踏んで、我が国のセーフティーネットを守ろうじゃないですか。大臣、御答弁をお願いします。

福岡国務大臣 まず、この大切なセーフティーネットである高額療養費を次の世代までしっかり守っていくということは同じ思いでございます。

 その上で、やはり保険料負担、今回、国費だけではなく、現役の方々の保険料負担にも大きく跳ね返ってくることでございますから、そういった方々の負担感、そして長期で療養されている方々の思い、そういった思いを満たす案として、政府案として修正案を出させていただいているところでございます。

中島委員 このまま突っ込むようなことになったら、セーフティーネットは保たれませんからね。保たれませんから。

 そして、我々は、やみくもにここを止まれと言っているわけではなくて、様々な変化に対してこれからのセーフティーネットをどう守るか、それを時間をかけて丁寧なプロセスを踏めと言っている。それを否定するなら、大臣の、政府の方が、先ほど丸山知事、本当にそういうふうに、これから三段階上がっていく段階でずっと言われ続けますよ。

 そして、加藤大臣。私たちは、この高額療養費制度を維持していくために、もっとやるべきことがあるだろうと。維新の皆さんもよく言っている、OTC類似薬、この保険適用外、適用から外すこと。そして、生活習慣病などの慢性疾患、この包括報酬制。さらに、これは度々審議会でも言われていますが、外来管理加算。こういったものを、だらだらだらだらやらない、実行しない。そして、もう極めつけは、私の本丸、政策の一丁目、かかりつけ医の制度化。これも何か、かかりつけ医の制度整備、もう肝を抜き取られて、事前登録も認定制も包括報酬も抜き取られた。

 こういうことこそが、本来、少子高齢化、人口減少、我が国の医療制度を、保険の入口をストップしたまま、ゲノム解析とかで高額な医療費、それはこういう状況になりますよ。

 本来の医療制度改革は、今まさに言ったOTC薬の類似品の保険適用除外とか、かかりつけ医の明確な制度化、保険から抜け落ちたところをかかりつけ医がしっかりサポートしていく。こういう医療ビジョンを示すのが本来の患者さんのための、そして、高額療養費制度は、そういった改革の中で最後のとりでとしてしっかり守っていく。この姿勢が我々が目指している医療制度改革です。

 加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 私どもの中で、今おっしゃったところ、かかりつけ医制度については厚労大臣時代いろいろ御議論させていただきましたけれども。今回の全世代型社会保障構築の観点から、一昨年末に閣議決定された改革工程表、この中には、薬剤保険給付の在り方の見直し、かかりつけ医機能が発揮される制度整備など、多岐にわたる改革項目が盛り込まれており、関係省庁と連携しながら、これを一つ一つ着実に検討し、進めていくことが必要だというふうに考えております。

 今後も少子高齢化が進む、あるいは今、高額な薬とかあるいは治療をこれからどんどん取り込んでいく必要がある、こういった中で、やはり現役世代の保険料の負担が今増加傾向にありますから、こういったことにもしっかり配意していかなければなりません。

 そういった意味で、全ての世代が安心できる持続可能な社会保障制度を構築していくためには、ほかの改革を実施すればこれをしなくていいという議論ではなくて、一つ一つの改革、これを一つ一つ積み重ねていく、こうした姿勢が必要であるということは是非御理解いただきたいと思います。

安住委員長 中島君、時間ですから、まとめてください。

中島委員 もう終わります。

 今の政府では、少子高齢化、人口減少、二〇二五年問題、多くの国民の不安を払拭する医療制度改革、社会保障制度改革はできないと改めて確信をいたしましたので、我々、しっかりと国民の皆様に安心できる医療制度改革案を今後明確に示してまいります。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、本庄知史君。

本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。本日もよろしくお願いいたします。

 まず、昨今の治安、犯罪問題ということで、ミャンマー拠点の犯罪組織の件についてお伺いします。

 ミャンマーのカレン州、少数民族が押さえている、そして政府、軍政の力が及ばない地域で、中国系マフィアだと思われる犯罪集団が拠点を構えて、そして一万人以上の外国人を監禁し、日本を含む海外に対して詐欺電話などを行っている、こういう報道などが出ております。

 配付資料をお配りしておりますが、資料の一ですけれども、これはそのKKパークと言われる拠点の写真です。

 都市、町のような状況ですね。ここに一万人以上外国人が、拉致なのか、監禁なのか、されているということですね。報道あるいは支援団体の情報によれば、日本人も三十人以上、あるいはそれ以上いるという情報も伝えられています。

 そこで、政府にお伺いをしたいと思いますが、そのうちの千二百人がタイに引き渡されたという情報も今あります。監禁あるいは解放されている日本人の数、安否、あるいは犯罪組織の背景や活動の全容など、現時点において政府はどこまで実態を把握できているのか。これは外務省、そして警察庁から御説明をお願いします。

岩本政府参考人 ただいま委員から御指摘のありました事案に関しまして、現時点で外務省が把握している日本人は、タイ警察により拘束された成人五名、そして保護された未成年者二名ということになっております。なお、このうち成人四名と未成年者二名は既に帰国しておりまして、残る成人一名は引き続きタイにおいて勾留中でございます。

 また、犯罪組織の背景、そして犯罪の概要については、現在、外務省としましても、関係国等から情報収集を行っているところでございます。

 今月十七日には、タイ政府と我が国を含む関係国等との間で会議も開催されまして、ここで情報共有を行いました。また、今後の連携等についても確認しているところでございます。

谷政府参考人 お答えをいたします。

 今般、高校生二名がタイ当局によって無事保護されて日本に帰国したということでございまして、タイ国境近くのミャンマー国内の地域でございますけれども、政治的な情勢から、現地当局を通じての把握は必ずしも容易ではないところでございまして、警察としては、事件捜査における関係者の供述などを通じて状況把握に努めてございます。

 当該拠点につきましては、日本国内に対する詐欺の拠点になっている可能性があると見ておりますほか、ほかにも滞在している日本人がいるという可能性があると見ております。また、拠点の運営につきましては、様々な外国人犯罪組織が関与しており、高校生がオンラインゲームを通じて知り合った人物からタイへ出国することを誘われたことなどからも、日本人の関与もうかがわれるというふうに見ております。

 警察としては、外務省等とも連携しつつ、引き続き更なる実態把握に努めてまいりたいと思います。

本庄委員 国外、しかもミャンマーという、なかなか直接やり取りのできない地域での犯罪ということで、全体解明が難しいということは私も一定理解します。

 しかし、解放された、保護された高校生のうちの一人はタイの大使館に相談をして帰ってきたというようなこともありました。私は、やはり日本政府としての取組が必ずしも十分ではないというふうに思うんですね。これは下手したら数十人、あるいは百人単位の日本人が一万人の中に含まれている可能性もあるし、そして、大規模に日本に対して犯罪行為が行われてきたという可能性もあるわけです。

 そこで、林長官、お伺いしたいんですけれども、外務省、警察庁、それぞれ努力はされていると思いますが、私は、もうちょっと政府として、官邸主導、あるいは官房長官や総理も中心になって、この案件についての実態把握や邦人保護、そして組織犯罪対策などに具体的に取り組んでいくべきだというふうに思います。

 現在、そして今後の取組について御説明をいただきたいと思います。

林国務大臣 このミャンマーの事案でございますが、今、両省、外務省、警察庁から説明したように、タイを始めとする海外の捜査機関等と連携して、実態把握に努めてきております。その上で、拘束、又は保護された日本人の帰国等につきましては、在外公館を通じて適切に対応してきております。

 やはり、今御指摘があったように、ミャンマーはこういう状況でございますこともありまして、こうした国を始めとする海外において、日本人が関与する形で特殊詐欺の犯行拠点が摘発される事例が増えております。政府としては、関係国と連携して、引き続き取締り及び邦人保護を強化してまいりたいと思っております。

 それから、こうした海外での特殊詐欺等に日本人が加担させられるということがないように、注意喚起も一層強化してまいりたいと思っておりまして、そうしたことで、横串を刺して、政府を挙げてやってまいりたいと思っております。

本庄委員 非常に抽象的な一般論だと思いますね。

 例えば、最近タイに入国したけれども連絡が取れなくなったような家族や友人はいませんかというような連絡ダイヤルを開設するとか、何らか具体的な方法で情報収集をする、日本自身として、タイと連携云々ではなくて。私はそういった努力も必要だというふうに思いますし、国民の皆さんに対する注意喚起も足りないと思いますね。

 官房長官、いかがですか。もう一度御答弁をお願いします。

林国務大臣 今、両省、警察庁と外務省から説明をしたとおりでございますが、先ほど委員からも御提案もございましたので、そういうことも念頭に置きながら、注意喚起も含めて、これはやはり横串を刺していかなければならないと思っておりますので、一層、いろいろな意味で強化をしてまいりたいと思っております。

本庄委員 ありがとうございます。

 こういった案件、元をただせば、クーデター後のミャンマーの不安定な政情、そこが根源にあるわけで、そういう意味では、こういった今起きていることへの対応ももちろん大事なんですけれども、ミャンマーの平和とか民主化、こういったことに対する根本的な取組もお願いしたいと思います。でないと、また地域、場所を変えて同じような事案が発生するというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、違法オンラインカジノの規制の問題について、今の話ともちょっとつながるんですけれども、お伺いをしたいと思います。

 まず、警察庁によれば、昨年、二〇二四年の違法オンラインカジノの摘発は二百七十九人、一昨年の百七人から二・六倍に大きく増えています。オンラインカジノの利用者数は日本国内で三百四十六万人、三百万人を超えている、こういった民間団体の推計もあります。最近は、卓球のオリンピック選手ですとか、あるいは吉本のタレントさんなど、有名人もいろいろな形でニュースになっているということですが、違法とは知らなかったというようなコメントも多く見受けられます。

 林長官とは、実は一年前の内閣委員会で、この問題について二十五分議論しました。残念ながら、議論した一年前よりも、状況はよくなるどころか悪くなっているというふうに思います。

 今のオンラインカジノをめぐる現状を官房長官はどういうふうにお考えになっていますか。官房長官はギャンブル等依存症対策本部長でもあります。この問題に対して総括的に責任を負う立場でもありますので、所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 まず申し上げなければいけないのは、オンラインカジノですが、海外において適法に運営されているものであっても、日本国内からこれを行うということは犯罪となる、これを徹底していきたいと思っております。

 我が国では、アクセス数の増加、依存症の問題等、今先生からもお話がありましたように指摘をされておるところでございますので、その対策は非常に重要な課題であると認識をしております。

 去年もやり取りさせていただきましたけれども、こうした状況を受けまして、警察における取締りを強化しておりまして、検挙件数の増加にはつながっておるわけでございます。

 そして、この問題、警察の取締りにとどまらず、やはり関係省庁が連携をして、先ほど申し上げましたけれども、オンラインカジノの違法性、これを周知すること、それからさらに、オンラインカジノへのアクセスや決済手段、これへの対策を併せて進めていく必要がある、そういうふうに認識をしております。

本庄委員 お取組はされているんだと思いますが、やはり不十分だからこれだけ増えているし、三百万人を超える人たちがこれだけアクセスしてプレーしているという現状は看過できないと思うんです。

 官房長官は、今、アクセスの話をされました。アクセスをしない、遮断をするという意味で一番効果のあるのはサイトブロッキング、つまり見ることができない、これが一番だと言われていまして、海外ではこういった手法を取り入れている国もあります。

 一方で、日本では何年もこの議論が続いていて、総務省がいろいろな理由を並べては、できない、憲法上の支障があるなどなどと述べているんですが、総務省政府参考人、今その検討状況はどうなっていますか、ブロッキングについて。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 オンラインカジノの対策につきましては、総務省といたしましても極めて重要な課題であると認識しておりまして、オンラインカジノサイトへのアクセスを制限するサービスの普及、取組など、できるところから対策を講じているところでございます。

 御指摘のいわゆるサイトブロッキング一般につきましては、通信の秘密を侵す行為に当たりまして、これまでも様々な関係者から指摘がなされており、例えば、問題ない情報まで国民が閲覧できなくなる、いわゆるオーバーブロッキングを完全に回避することが技術的に困難であり、国民の知る権利を強く制約するおそれがあるなどの課題が指摘されているところでございます。

 現在、こうした課題を念頭に置きつつ、有識者から意見を伺うとともに、ブロッキングに関する諸外国の取組状況などにつきまして調査を行っているところでございまして、これらを踏まえまして、総務省としても、今後、何らかの検討の場を設けるなど、議論を進めていきたいと考えているところでございます。

本庄委員 一年前も同じような答弁でした。そして、一年前に議論したときは、当時の河野大臣から指示があって着手しているということなので、もうかれこれ二年ですよ。いつその結論を出せるんですか。明確にしてください。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁申し上げたとおり、様々な課題がありつつも、今委員御指摘のとおり、オンラインカジノに対する対策は急務となっております。

 そのような状況を踏まえまして、今、私どもの方も精力的にいろいろな方々の意見を聞いている段階でございまして、繰り返しになりますが、なるべく早い段階で何らかの検討の場を設けて、有識者の意見を積み重ねながら、この問題に対する対策を進めていきたいと考えているところでございます。

本庄委員 もう話にならないですね。違法行為、犯罪行為がこれだけ数年にわたって指摘をされ続けているのに、まだ検討の場すらつくっていないんですか。やる気がないという結論ですね。私はそのように捉えました。

 それで、いろいろな通信の秘密という話がありましたけれども、内閣法制局長官も答弁していますよ。憲法十二条、十三条の規定からして、公共の福祉の観点から必要やむを得ない限度において一定の制約に服すべき場合があると。当然だと思いますよ、これは。野放しにしていいはずがありません。犯罪者や犯罪行為に通信の秘密が認められるわけがないですね。

 そのことを指摘した上で、別の分野ですけれども、ブロッキングをしているという事例があります。児童ポルノです。

 資料の二を御覧いただきたいんですが、政府や行政がやっているわけではありませんけれども、民間団体などを介して情報収集をし、そして、違法な児童ポルノにアクセスできないようにするということが今も現に行われています。

 この内容について、簡単に、総務省、説明してください。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 ブロッキングにつきましては、電気通信事業法における通信の秘密を侵害する行為でございますが、児童ポルノにつきましては、児童の権利に関する取り返しのつかない著しい侵害が既に発生しており、他の方法では十分に保護できない状況下におきましては違法性が阻却される、そういった整理の下、民間事業者の自主的な取組として開始され、現在も引き続き実施されているものと承知しております。

本庄委員 私も曲がりなりにも法学部を出て、多少憲法もかじりましたが、何が違うのか理解できませんでした。

 なぜ、児童ポルノはサイトブロッキングができて、そして、オンラインカジノはサイトブロッキングができないんですか。明確に答えてください。

安住委員長 湯本総合通信基盤局長、簡潔に。

湯本政府参考人 児童ポルノにおける法的な整理につきましては先ほど答弁申し上げたとおりでございますが、オンラインカジノにおきましては、こうした児童ポルノにおける整理も踏まえつつ、どのような考え方で整理すべきなのか検討する必要があると考えているところでございます。

本庄委員 現状を聞いているんじゃなくて、考え方の違い、そして、児童ポルノができて通信の方ができないかもしれないと考えている根拠を教えてほしいんです。いかがですか。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどのちょっと繰り返しになりますが……(本庄委員「違いを教えてください」と呼ぶ)

 現在、正直、オンラインカジノの対策につきましては、実際、諸外国でも取組が進んでいるところでございます。私どもとしましては、諸外国ではどのような考え方でブロッキングが可能になっているかというのを踏まえながら今整理しているところでございまして、今現在、その違いも含めて、どんなことかというのを有識者の方に聞いている段階でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。

本庄委員 村上総務大臣、聞いておられたと思うんですね、通信の所管の担当大臣ですが。長年、犯罪行為に関わる問題で指摘を受けてきた。それがまだ、考えの整理もできていない、議論の場もつくられていない、もう二年も三年もたっている、いつできるか分からない。こういう状況じゃよくないと思うんですね。

 是非、大臣にきちっとリーダーシップを取っていただいて、そしてこの問題、つまり、オンラインカジノについてサイトブロックも含めた強いアクセスの制限をかける、このことについて速やかに結論を出すというふうに答弁していただけませんか。

村上国務大臣 本庄さんも法学部出身でいらっしゃるからよく分かると思うんですが、SNSの規制についても、なかなかやってみて難しいのは……(発言する者あり)ちょっと黙って聞きなさい。違法性をどこでラインを引くかということなんですよね。

 それで、今、多分、局長が答弁しているのは、児童ポルノはもう完全に公序良俗違反だから、文句なしにやはりシャットアウトできるだろう。今回の、確かにオンラインカジノも違法性があるんだけれども、ただ、気をつけなきゃいけないのは、ほかの、全部をシャットダウンする危険性がある、だから、その危険性を排除しながらどうするかということを考えているんじゃないかと私は思いました。

 ただ、おっしゃるとおりなので、私も大臣になるまではこの問題について知らなかったので、早急に対応するように一生懸命努力させますので、御理解いただきたいと思います。

 以上です。

本庄委員 結論を本当に出してもらいたいと思います。できないという結論もなくて、引き続き検討、調べますの状況が続いているんですね。是非よろしくお願いしたいと思います。

 官房長官、聞いておられたと思いますが、このオンラインカジノ対策は、今、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の一部として、見直し作業が進められています。三月末にこの見直し、計画変更が出るというスケジュールで来ていますが、残念ながら、サイトブロッキングについては全く言及がないという状況で、このままだと、今後三年間また何もしないという基本計画が続くということが懸念されるんですね。

 是非、まだ間に合いますので、サイトブロッキングも含めた強いアクセス制限を検討する、対応していくんだということについて、もう一度しっかり議論していただけませんか。いかがでしょうか。

林国務大臣 現在、先ほど申し上げました警察による取締りの強化に加えて、SNSなどを活用したオンラインカジノの違法性の周知、また、フィルタリングの導入等によるアクセス対策、それから決済事業者に対する要請、こういうものをそれぞれ推進しておりまして、今お話のありましたギャンブル依存症対策推進基本計画の変更案、今申し上げたような取組を新たに明記するということにしております。

 ブロッキングについては今御議論いただいたとおりでございますが、こうした今私が申し上げたような取組を着実に進めるということとしておりますが、引き続き、何が実効的なのかという対策、対策に対する検討、これを更に進められるように努力をしていきたいと思っております。

本庄委員 しっかり答えを出していただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 では、このテーマはここまでですので、総務大臣、ありがとうございました。御退席ください。

安住委員長 総務大臣は退席して結構です。

本庄委員 ありがとうございました。期待しております。

 さて、予算案修正の財源確保についてお伺いをしたいと思います。

 立憲民主党提出の予算修正案のフレーム、これは先ほど中島委員からも御説明がありましたけれども、私も配付資料としてお手元にお配りをしております。

 資料の四ですが、詳細は踏み込みませんが、責任ある政党として、増税や負担増なく、具体的な財源を確保した上で、国民の命と暮らしを守るために必要な新規政策を提案しています。

 今、政党間協議も行われていると承知しておりますが、是非、いいものはいいということで取り入れていただきたい、これは与党に対するお願いになるのかもしれませんが。そして、改むるにはばかることなかれだと思うんですね、お立場は分かりますが。是非、そういった柔軟な対応を期待したいと思います。

 その上で、私も取り上げましたグローバル・スタートアップ・キャンパス基金、このことについてまずお伺いしたいと思います。

 これは二年連続、補正予算で計六百三十六億円を措置しておりますが、令和五年度、二〇二三年度末までの支出は二千四百七十万円にとどまっているという答弁が二月六日の予算委員会でありました。

 そこで、文科省にお伺いしますが、それ以降、つまり今年度ですね、支出額や、あるいは今年度末の残高見込みはどんな状況でしょうか。

安住委員長 文部科学省井上科学技術・学術政策局長、簡潔に。

井上政府参考人 お尋ねの基金につきまして、令和六年度は、人件費等に約一億三千万円を執行する見込みとなってございます。また、令和六年度末時点での本基金の残高は、約六百三十四億五千万円となる見込みでございます。

本庄委員 実は、今年度の支出見込額は五十億だったんですね。それが一・三億ということです。結局、六百三十六のうち六百三十四億数千万まだ残っているという状況ですね。

 三年たっているんです、大臣。基金ルールは遡及はしないということは承知しています。ただ、財務大臣は前回こう答弁しているんですね。いわゆる基金ルールの趣旨も踏まえて、必要な場合には国庫返納を含めた対応を行う、基金の不断の見直し、これは大変大事なことだと。趣旨、そして不断の見直しなんですね。

 しゃくし定規に、基金三年ルールの枠を一ミリはみ出ているから対象外だとするのではなくて、実態を見て、そして、ちょうど今、予算の審議もしている最中なので、これはいろいろな予算対応が可能ですから、是非、この国庫返納に対して財務省として対応していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今お話がありましたように、執行状況、基金残高については承知をしております。

 事業を所管する内閣官房、文科省において責任を持って執行管理を行っていくことが重要でございますし、そうしたことも踏まえながら、私ども、先ほどおっしゃっていただいた、一般論として申し上げたところでありますけれども、基金ルールの趣旨、あるいは事業の中身、執行状況を精査し、基金を所管する大臣、行革大臣とも連携しながら、必要な場合には国庫返納を含めた対応を行う、不断の見直しを行っていく、こういう姿勢で引き続き対応していきたいと思っています。

本庄委員 このキャンパス構想の責任者は、もちろん担当大臣は城内大臣ですけれども、決定した会議体の議長は官房長官です、統合イノベーション推進会議。

 これは三年間お金が全く使われず、事業も進んでいない、こういう中で三年たっています。決定機関の長として、この見直しについて是非大きな判断をしていただきたいと思いますが、官房長官、いかがですか。

林国務大臣 イノベーションを進めるために、大学や企業など様々な主体がやはり密接に連携して、新たな価値を共創する基盤が必要である。イノベーションエコシステムを分野横断的に、国内に閉じない形で戦略的に形成することが重要でありまして、私が議長を務めております統合イノベーション戦略推進会議の場において、こうした世界の最高水準のイノベーションエコシステムのハブ、これを戦略的に構築するということで、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想を検討しているところでございまして、昨年八月に基本方針を取りまとめて、更に具体的な検討を進めているところでございます。

 この基金の執行ですが、組織文化、そして制度が異なる海外機関との調整等に時間を要しているということは事実であると思いますが、運営法人の設立や関連施設の開所に先立って支出できるように基金を設置したものでありまして、基本方針を踏まえつつ、速やかな執行、着手に向けて検討を進めまして、この構想の実現に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。

本庄委員 見せ金で積んだ金が、今や死に金になっているんですね。もう三年です。

 今、事業が遅れているというお話が若干ありましたが、遅れている理由は何なのかということですね。

 私、前回の質疑でも取り上げましたが、元MITメディアラボ所長で、今、推進室でエグゼクティブアドバイザーを務めておられる伊藤穣一さんの問題がネックになっているという話がある、そして、新藤大臣が訪米した際にMITからそういった指摘も受けている、こういう話がありますので、そのときの議事録を開示していただきたい、予算委員会に提出していただきたい、こういうふうにお願いをしておりますが、これはいまだに出てきていないんですね。

 城内大臣、一体どうなっているんでしょうか。

城内国務大臣 お答えいたします。

 御指摘の文書につきましては、海外大学とのやり取りのため、相手方のある文書でございまして、また、第三者に対する言及等もございますので、慎重に確認を行っているところでございます。

 なお、伊藤穣一さんにつきましては、この方の経験や知見を踏まえて、あくまでもアドバイザーとして有益な助言をいただいているところでありまして、海外大学との交渉において同氏の存在が障壁になっているということはございませんので、民間人であるこの方の名誉をちょっと不当に傷つけるような報道等もございますが、それは誤解であるということを申し上げたいと思います。

 いずれにしましても、今申しましたように、相手方である海外大学とも、今現在、当該文書についての連絡を取り合っているところでございますので、速やかに確認を進めた上で、最終的に判断したいというふうに考えております。

安住委員長 時間が参っていますので、まとめてください。

本庄委員 議事録について開示できないということですが、国会では、そういった障害はないというふうに副大臣は答弁しました。そして、審議官は臆測だと答弁したんですね。もしその答弁が事実と反する、つまり、そういった発言がMIT側からあったとすれば、これは虚偽答弁になりますから。

 そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

安住委員長 これにて本庄君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西健介君。

大西(健)委員 大西健介です。よろしくお願いします。

 これまでの質疑の中で、ちょっと私、気になったことがあるので、まずそのことをお聞きしたいと思うんですが、先日、本委員会で、いわゆる現役自衛官、制服組の出席、答弁を求める、そういう質疑がありました。そもそも、国民民主党の理事も合意の上、理事会で決めたことについて、委員長の議事運営を誹謗中傷するというのは論外なことでありますけれども、安住委員長も言われたように、文民統制の重みに鑑み、背広組が防衛省の組織として責任を持って答弁するというのは、これは長い間積み上げてきた国会のルールであります。

 今日は、お手元に昭和三十一年の船田防衛庁長官答弁というのをお配りしております。これは、赤で囲った部分を見ていただきたいんですけれども、政治優先という中で、制服の者を呼ばなければどうしても真相がはっきりしないというような必要性がない限りは内部部局長が責任を持って答弁する、これが慣例である、こういう答弁なんですね。

 中谷大臣に確認をしたいんですけれども、政府は現在でもこの見解を維持しているということで間違いありませんでしょうか。

中谷国務大臣 自衛官の国会答弁の必要性についてはあくまでも国会において御判断される事項でありまして、御指摘の予算委員会でのやり取りについては政府として見解を述べる立場ではございません。

 確かに、昭和二十八年から三十四年にかけて行われた例がありますけれども、いずれにしましても、自衛官の国会での答弁につきましては国会において判断される事項であると認識しております。

大西(健)委員 私が聞いているのは、もちろん国会で判断するんですけれども、時の防衛庁長官が、今言ったように、内部部局長が責任を持って答弁しているんだということを言っておられるんですね。これは変わらないですよね。ということでいいと思うんですけれども。

 ただ、野党の委員じゃなくて、ある与党の幹部が国会の質問で次のように述べているんです。私は軍事専門家たる自衛官が国会においてきちんと証言ないし答弁することが正しい立法府による文民統制の在り方だと思っています、制服を着た者が国会に来ないことが正しい文民統制だとは私は全く思っておりませんと。

 中谷大臣、これはどなたの発言か分かりますか。分からないんだったら分からないと。

安住委員長 分からないと言っているから、質疑を続けてください。

大西(健)委員 では御紹介しますけれども、これは令和五年二月十五日、この予算委員会で石破委員が質問をされているんですね。

 中谷大臣、石破総理の発言は先ほどのいわゆる船田防衛庁長官答弁と明らかに異なっているというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 当時の石破委員であったものの答弁につきましては承知をいたしておりませんが、いずれにしましても、国会の御判断で決定されることでございまして、政府としては見解を述べる立場にはございません。

大西(健)委員 いや、何度も言っているように、それは国会が決めることなんです。ただ、ここで船田防衛庁長官はそのようにはっきりおっしゃっているわけですよね。ですから、石破さんが言っていることとは全く異なっている。

 今年は戦後八十年でありますけれども、過去の戦争の反省の下で先人が積み上げてきたこのルールというのは、私は軽視すべきじゃないというふうに思います。

 総理は自衛隊の最高指揮官でもありますので、これは一体政府としてどうなのかという考え方を是非整理をしていただいて委員会にお示しをしていただきたいというふうに思いますけれども、委員長、お取り計らいをよろしくお願いします。

安住委員長 理事会で協議します。

大西(健)委員 防衛大臣はここまでで結構です。

安住委員長 防衛大臣は退席してください。

大西(健)委員 次に、トランプ大統領は、国際刑事裁判所の関係者を制裁する大統領令に署名をしました。ICCに加盟する七十九か国の国と地域はこれを非難する声明を出しているんですけれども、しかし、最大の分担金を拠出していて、そして、今、所長は赤根智子所長、日本人の方でありますけれども、日本はこの非難声明に名を連ねませんでした。ちなみに、赤根所長は愛知県の旭丘高校の卒業生なんですけれども。

 この日本の対応というのは、法の支配を重視する我が国の立場と明らかに異なっていて、国際社会に誤ったメッセージを与えることになると思いますけれども、外務省、いかがでしょうか。

藤井副大臣 御指摘の有志国声明に関する我が国の対応につきましては、様々な要素を総合的に勘案した上で決定いたしたものでございます。

 我が国は、重大な犯罪行為の撲滅と予防、法の支配の徹底のため、世界初の常設国際刑事法廷であり、元最高検検事で我が国出身の赤根智子氏を所長とする国際刑事裁判所、ICCを一貫して支持してきておるところでございます。そのICCが独立性を維持し、安全を確保しながらその活動を全うできることが大切でございまして、米側とは様々なレベルで意思疎通を行ってきているところでございます。

 引き続き、米側やICC、他の締約国と意思疎通を行いながら、適切に対応していく考えでございます。

大西(健)委員 今、副大臣の答弁のように、ICCを我々はしっかりと擁護しているというんだったら、やはり非難声明にしっかり名前を連ねるのが当然だと思いますし、先日も日米首脳会談の話がこの委員会でもありましたけれども、我々としては、法の支配というのを重視しているというのが日本の立場ですから、それに対して、今みたいなことに関して日本が知らぬふりをするというのは、これは国際社会に私は誤ったメッセージを送ることになると思いますので、是非ともこれは考え直していただきたいというふうに思います。

 副大臣、ここまでで結構です。

 次に、十八日に閣議決定された第七次のエネルギー基本計画についてお聞きをしたいと思います。

 この基本計画では、福島第一原発事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが、引き続き、エネルギー政策の原点とうたわれていますけれども、一方で、第四次から第六次の計画の中には掲げてあった、可能な限り原発依存度を低減するという文言が削除をされています。

 十四年たっても福島第一の廃炉の展望は見えないままですし、被災地の復興、地元の復興も道半ばなのに、この方針転換というのは福島の反省と教訓を無視するものとのそしりを免れないと思いますけれども、経産大臣、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 大西委員から御質問いただきまして、今回、七次のエネルギー基本計画についてであります。

 福島は、我々経産省としても、決して忘れることなく、いつも念頭に置きながら、原子力政策を含めエネルギー政策を進めていかなくてはいけません。

 今回、パブリックコメントに対しまして、政府案に対しては、賛否双方の意見、原子力、再エネ、火力などの広範な論点について様々な御意見をいただいたところであります。

 その上で、原子力に関する御懸念の声も真摯に受け止めなければならないと考えております。その旨は、計画に追記する修正等を行った上で閣議決定を行ったところです。ただし、計画の大枠、例えば、電力需要増加が見込まれる中、これまで以上に脱炭素電源の確保が必要であり、再エネと原子力を共に最大限活用といった方針については、これまで審議会等の場で議論を尽くしてきた内容でありまして、政府案を維持することといたしました。

 原子力に対する様々な御懸念のあることを真摯に受け止めながらも、それぞれの課題にしっかり取り組んで、丁寧に御説明をしながら、原子力の活用を進めていきたいと思っております。

大西(健)委員 要は、福島第一原発事故以来十四年間ずっと、この間の第四次から第六次の計画の中では可能な限り原発依存度を低減すると言ってきたのが消えたというのは、これはやはり大きいと思うんですよね。

 さっきも言ったように、まだ福島第一の廃炉も全く展望が見えていない。あるいは、例えば核のごみと呼ばれる高レベル放射性廃棄物の処分の課題、これも全く解決していない。そういう中で、先ほど言ったように、計画の中では、この福島の反省と教訓を肝に銘じて、これがエネルギー政策の原点だと言っているのに、これが変わってしまうということはどうしてなんですかということに対して、私は今の御説明というのは全く説明になっていないと思うんですけれども、もう一度そこを明確にお答えいただきたいと思います。

武藤国務大臣 DXやGXの進展によりまして電力需要が増加が見込まれる中で、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況であることは今までも御説明をしてまいりました。その上で、脱炭素電源を確保するため、再エネと原子力を共に最大限活用していく方針を示したところであります。

 今おっしゃられた福島の反省も踏まえて、今後、既存の原子力発電所が運転期限を迎えながら、供給力が大幅な喪失が見込まれるという中で、リードタイムを考慮しつつ脱炭素電源を確保していくためには、原子力発電所の建て替えも必要になると考えてきているところであります。

 次世代革新炉への建て替えにつきましては、一昨年の二月に閣議決定をしたGX基本方針でもう既に出ているところでありまして、大きな方針転換ではありません。

 そして、今の大西委員のお尋ねですけれども、原発依存度、震災前の約三割から下がってきている一方で、必要な原発は活用していくという考えは第七次のエネルギー基本計画においても変わっていないと思っております。

大西(健)委員 電力需要が高まっていくんだ、それは分かります。それを、では再エネではなくて、あえて原発でやりますということに関して、今の説明というのは説得力あるものには私は思えないというふうに思います。

 これだけの政策の大転換をやるに当たって、では幅広い関係者の参加するプロセスというのが十分に確保されているんだろうかということについても、私は疑問があります。ちなみに、この計画の決定に当たってはパブリックコメントというのも行われていますけれども、この受付期間がどれぐらいの受付期間があったのか、それから意見の総数、また、そのうち原子力を最大限に活用するという方針に否定的な意見がどれぐらいあったのか、これは政府参考人の方からお答えください。

木原政府参考人 お答え申し上げます。

 第七次エネルギー基本計画については、昨年の十二月二十七日から本年一月二十六日まで、三十一日間にわたってパブリックコメントを実施しまして、四万一千四百二十一件の御意見をいただいております。これまでのエネルギー基本計画では、第四次エネルギー基本計画では一万八千六百六十三件、第五次エネルギー基本計画では千七百十件、第六次エネルギー基本計画では六千三百九十二件の御意見をいただいてございます。今回の意見数は、震災以降では最多と認識しております。

 そして、パブリックコメントにおいては、提出された意見の多寡ではなくて、提出された意見の内容に着目するものとされていることや、提出された意見の中には、無記名のもの、複数企業が加盟する団体のものなど、様々な形態のものが含まれることから、意見の賛否の数に着目した定量分析は行っていないところでございます。

 なお、資源エネルギー庁では、この四万を超える全ての意見について精査を行いまして、寄せられた意見を三百五十五個の主要な意見に区分しまして、その区分ごとに具体的な意見を例示して回答する形でパブリックコメントの結果を取りまとめて、公表してございます。

大西(健)委員 今の説明はよく分からなかったんですけれども、では、原発に対して否定的な意見は全体のうちでどれぐらいだったんですか。多かったんですか、少なかったんですか。半分だったのか、三割だったのか、おおよそでいいので答えてください。

安住委員長 木原政策統括調整官、簡潔に。

木原政府参考人 繰り返しになりますが、このパブリックコメントにおいて、意見の多寡ではなくて、提出された意見の内容に着目するということでございまして、意見の賛否の数に着目した定量分析は行ってございません。

 この点に関しましては、行政手続法の解釈として、その考慮は提出意見の内容に着目して行われるものであって、提出意見の多寡に着目するものではないというふうにされておりまして、過去の裁判例でも同様の考えが示されているところでございます。

大西(健)委員 私は別に、意見の多寡だけに注目すべきだというふうには思っていません。ちなみに、今朝の報道だと、このパブコメに生成AIによる大量投稿があったんじゃないかという記事も出ていました。

 ですから、逆に言うと、だからこそ、パブコメをやったからそれで広く意見を聞いたんだという話には私はならないというふうに思っていまして、だから、実質的に幅広い意見を聞くために、より丁寧な合意形成のプロセスが求められるんじゃないか、こういうふうに思います。それが今回のこの七次計画の決定に当たって本当になされたのかについては、私は疑問を持っています。

 計画では、電源構成に占める原発の割合を二〇四〇年に二割程度にすることとしていますけれども、これを達成するためには、建設中も含めた全部で三十六基のほとんど全てを動かさなきゃいけません。しかし、実際には再稼働は進んでいませんし、先ほども言いましたけれども、高レベル放射性廃棄物の処分の課題、これも残ったままです。老朽化して廃炉になる原発も出てきます。新設する場合には、計画から稼働までには二十年近い年月が必要です。

 そう考えると、全部動かしても達成できないこの二割程度という計画自体が現実的とは言えない。このままでは、パリ協定で定めた一・五度目標、これとも整合しないというふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

武藤国務大臣 パブリックコメントに対しては、今事務方の方からもお話しさせていただきましたけれども、政府案に対する賛否双方の意見、これは原子力、あるいは再エネ、火力等も含めて広範囲な論点について様々な意見をいただいたところであります。

 その上で、原子力に関する御懸念、これはもう真摯に受け止めなければならないと私自身も考えておりますし、今おっしゃられた最終処分の問題ですとか、様々なまだ残された課題も、これを前に進めていかなくてはいけないということであると思います。その旨を計画に追記する修正を行った上で、先ほど申したとおり閣議決定をいたしたところで、今後とも丁寧に議論を進めていかなくてはいけないと思いながら、国民の理解を得ながら進めさせていただければというふうに思っております。

大西(健)委員 今、全く答えていないんですけれども、私が言っているのは、原発二割というのがそもそも非現実的な計画じゃないですかと言っているんですね。

 それから、計画で示された二〇四〇年度の電源構成、火力は三から四割と高い割合で維持されている一方で、再エネは、一応主力電源にはなっているものの、比率は四から五割程度に抑えられている。このままでは、G7サミットでの二〇三五年までの電力システムの完全又は大宗の脱炭素化という目標とも整合しないということだと思います。

 火力発電については、石炭、石油、天然ガス、アンモニアや水素の混焼の内訳というのも全く示されていない。例えば、私の地元の碧南火力で実証実験が行われているアンモニア混焼、これを私どもは期待していますよ。あるいは苫小牧でやっているCCS。では、これをどれだけ進めて、どれほどのCO2削減を見込んでいるのか。これは、火力の内訳が全く書かれていないので不明です。

 火力を維持しながら脱炭素化を実現する道筋をどう描いているのか、これを経産大臣、分かりやすく説明していただけますか。

木原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、原子力に関しましては、原子力比率を二割、設備利用率を十三か月運転と三か月での定期検査で八割と仮定して計算しますと、三十一から三十四基程度となります。それから、近年の稼働実績を踏まえた設備利用率は七五%と仮定すると、三十三から三十六基ということになります。

 これは、原子力規制委員会により新規制基準に適合すると認められた原子力発電所を再稼働し、加えて、安全性確保を大前提とした定期検査の効率化、運転サイクルの長期化などにより設備利用率を向上させること、また次世代革新炉の開発、設置など、様々な取組によって達成可能な水準だと考えてございます。

 あわせて、火力発電所のお尋ねがございましたが、更なる技術革新というのは不可欠でございまして、決して容易に到達できる水準ではないですが、SプラススリーEのバランスを取りながら、国民の皆様の御理解をいただきながら、ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、次世代革新炉、水素、アンモニア、CCSの導入などを真剣に取組を進めていこうと考えてございます。

大西(健)委員 今の説明を聞いても全然現実的じゃないし、私は七次エネルギー計画について聞きますよと言っているのに、大臣が、火力の脱炭素化をどうやって図っていくのかというのも満足に答えられないし、それから、原発についても、どうやってこれは二割にするんですか、ほとんど、今全部の原発を動かしてもこれは達成できないんじゃないですかということについても満足に答えられないということが、私はこの七次計画のことを物語っているんじゃないかなというふうに思います。

 今日はちょっと時間もないので、経産大臣、ここまでで結構です。

安住委員長 経産大臣、退席して結構です。

大西(健)委員 私は、やはりこれだけ大きな政策転換が十分に国民に説明がないまま進められていることには強い違和感を感じています。

 次に、がらっとテーマを変えて、保育について質問したいと思いますけれども、こども家庭庁は、令和七年度予算の中で、五十数年ぶりになる一歳児に係る保育士の配置改善を盛り込んでいます。

 このニュースには、関係者の皆さんからも初めは喜びの声が上がりました。ところが、一歳児の保育士配置について六対一から五対一に改善した場合に加算が行われることになったものの、その要件が厳し過ぎるために、加算が受けられる施設がかなり限定されてしまうことが懸念をされています。

 処遇改善加算一、二、三の全てを取得していることが条件になっていますけれども、処遇改善加算二の取得率は七割程度と言われています。特に問題なのは、職員の平均経験年数が十年以上という条件です。平均十年以上を満たす施設というのは、全体の五割程度と見られています。一歳児は窒息事故などのリスクも高く、経験年数が若いところこそ手厚い保育体制が必要です。さらに、小規模保育の場合には、一人新卒がいるだけで平均が下がるので、条件を満たすのは難しくなってしまいます。

 今まさに保育施設では新年度の採用を進めているところでありますけれども、立憲民主党は七日に、平均年数十年以上という要件の撤廃を求める緊急要請をこども家庭庁に対して行いました。これは運用の問題ですから、大臣の決断一つで変えることができます。

 三原大臣、是非、十年要件の撤廃とともに、できるだけ多くの施設が加算を受けられるようにしていただけませんでしょうか。

三原国務大臣 今月の七日に、御党の子ども政策部門の皆様から、一歳児の配置改善に関する加算措置の条件緩和を求める緊急要請をいただきました。

 御指摘の一歳児の配置改善は、三歳児や四、五歳児の配置改善より多くの保育人材が必要となるため、まずは、基準の見直しではなく、保育の質の向上や職場環境、処遇改善等の観点から、一定の要件を満たす事業所への加算措置により対応を進めるものとなります。

 一定の要件のうち、平均経験年数十年以上の要件につきましては、保育事業所の平均経験年数はおおむね十一年であることを踏まえ、それよりも低く設定しているものであります。小規模保育事業者につきましても、職員の平均経験年数は十年を超えております。

 まず、一歳児の配置改善は五十数年ぶりでありますので、政府案として、この形で令和七年度から一歳児の配置改善加算を着実に実施し、保育現場における職員配置の改善、これを進めてまいりたいと思います。

 その上で、本要件の在り方につきましては、加算の取得ですとか実際の配置の状況等を踏まえてまた考えてまいりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 平均が十年ということですけれども、やはり、これを満たしているのは半分ぐらいなんですね。

 私は地元が愛知なんですけれども、もう既に多くの県、愛知県がそうですけれども、一歳児に加配している場合には県独自の人件費補助というのをやっているんです。でも、実際に加算が受けられる施設は一部なのに、国の加算ができたから、もう県のやつは要りませんよねということになったら、踏んだり蹴ったりになっちゃいます。

 私は、保育士が定着せずに経験年数が低いのは、そもそも現場の負担が重いのと、やはり保育士の処遇が低いからですよ。ですから、立憲民主党は、予算の修正に保育士の処遇改善、これを入れていますけれども、これが喫緊の課題であるということを是非大臣に再度申し上げておきたいと思います。

 三原大臣、ここまでで結構です。

安住委員長 三原大臣、退席して結構です。

大西(健)委員 次に、たばこ増税について伺いたいんですけれども、我々は、防衛力強化には反対ではありませんけれども、数字ありきで、国民に納得できる説明のない防衛増税には反対しています。

 政府は、防衛増税のうち、たばこ増税で約二千億円の税収を見込んでおり、令和八年から一年で加熱式と紙巻きの税差をなくすことにしています。加熱式たばこは、半年ごとに二十円から五十円、一年で一気に最大で一箱百円値上がりすることになります。我が国では加熱式たばこの普及が進んでおり、喫煙者の四割を超えています。私はたばこは吸いませんけれども、これだけ急激に変わるとやはり影響は大きいと思います。

 紙巻きについても、令和九年度以降、三年かけて、一本〇・五円ずつ上げていくということですけれども、加熱式の愛好者の方が、紙巻きを吸っている人よりも値上げを機にたばこをやめる人が多いんじゃないかというふうに思います。

 過去にも複数回にわたってたばこ税が引き上げられてきましたけれども、たばこ税収はおおよそ二兆円から二・三兆円の範囲内で推移が続いていて、税収増にはつながっていないんですね。ですから、加熱式たばこを急激に値上げすれば、むしろ需要が減って、見込んだ税収が得られないんじゃないかというふうに思いますけれども、加藤大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今回のたばこ税の見直しによる税収は、御指摘のように二千百五十億円としております。足下のたばこ消費量がまず自然に減少している、こういったことを前提とした上で、税率引上げ等の見直しに伴う需要減少も織り込んで、見直しを実施した場合のたばこ税収と実施しなかった場合のたばこ税収との差額を計算したということでございますので、そうした見通しに立って算出しているということでございます。

 また、今回の見直しにおいては、委員からもお話がありましたが、加熱式たばこの課税方式の見直しを二段階、その後、たばこ税率そのものの引上げを一本当たり〇・五円ずつ三段階で行うなど、一回当たりの引上げ幅を小幅とするなど、需要への影響にも配慮しているところであります。

大西(健)委員 じゃ、見込みどおりいかなかったらどうするんですか。そうしたら、これはやはり所得税にしわ寄せが行くんじゃないですか。

 私は、ガソリン税の減税は遅いのに、たばこ税の増税は何でこんなに急ぐのかと。私は、加熱式たばこの税差の解消ももう少し時間をかけてやった方がいいと思います。

 最後に、先日私も取り上げた外国人旅行者への消費税の免税ですけれども、これは、この間、自民党、公明党を代表して、本会議で自民党の議員がやめた方がいいと言いました。オーバーツーリズムが問題に今なっていて、もう完全にフェーズが変わっているんです。政府は、不正を防止するためにリファンド形式に変更すると言っていますけれども、システム構築や設備整備にも多額の費用がかかるんじゃないですか。

 これはもう与野党一致しているんですから、やめれば二千億円の財源が出てきます。是非、与野党しっかり話し合って、前向きに、これはやめることを検討することを是非求めまして、私の時間は終わりましたので、これにて終わらせていただきます。

安住委員長 これにて大西君の質疑は終了いたしました。

 次に、東徹君。

東(徹)委員 日本維新の会の東徹でございます。

 まず、我が国の安全保障に関連することについて質問をさせていただきます。

 我が国の、日本の安全保障の環境は戦後最も厳しいということを毎年これは言われておるわけでありますが、中国が設置する海洋ブイについてです。

 このブイが確認されたのは令和五年の七月ですけれども、今年二月十一日、海上保安庁が、沖縄県尖閣諸島周辺の我が国のEEZ、排他的経済水域内に設置されている中国のブイがなくなったということを明らかにいたしました。少なくとも一年七か月放置されていたことになるわけですけれども、これは中国が自ら撤去したということで間違いないのか、確認いたします。

宮路副大臣 お答えいたします。

 東シナ海の我が国EEZに設置されたブイについては、海上保安庁が、現場海域において中国側が当該ブイを回収したことを確認しております。

 また、中国外交部も、御指摘のブイが元の場所での作業任務を終え、科学的な観測の実際の必要性に基づき、当該ブイについて、自主的かつ技術的な調整を行ったという旨を対外的に説明していると承知しております。

東(徹)委員 これは中国政府ですけれども、ブイの撤去について、任務が完了したというふうに言っているわけですけれども、ということは、設置されたブイには何か情報を取るための機能があったというふうに思うわけです。

 その任務が終了して、このブイも用がなくなったということで撤去したんだと思いますが、ブイにどのような機能があったのか、これは調査したんですか。

宮路副大臣 ブイの機能について御質問をいただきました。

 中国が東シナ海及び与那国島南方の我が国EEZ内に設置したブイについては、政府として、現場海域での情報収集を始め、様々な角度から調査、分析を行っているところでございます。

 また、海上保安庁において、これらのブイの上部に気象観測機器と見られるものを確認しており、中国外交部は気象観測のために用いるものであると説明していると承知しておりますが、中国側の意図等について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと考えております。

東(徹)委員 もう一度確認します。

 ブイの中身がどうなっているのかとか、水中、見えない部分ですね、水中の部分はどうなっているとか、こういったことは調査、確認しているんですか。

宮路副大臣 繰り返しになって恐縮ですが、御指摘のブイについては、我が国EEZ内に中国が設置したものであり、政府として、現場海域での情報収集を始め、様々な角度から調査、分析を行っているところでございますが、中国側の意図等について予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきます。

東(徹)委員 僕が聞いているのは、日本がちゃんと調査したんですかと。これは時間がないので、端的にお答えいただきたいんですね。

 きちんと内部であるとか、そして水中の部分であるとか、調査したのかどうかだけでも答えてください。したか、していないかだけ。

安住委員長 宮路外務副大臣、質問の趣旨に沿って答弁してください。

宮路副大臣 調査したかということについては、先ほど来御答弁させていただいているとおり、様々な角度から調査、分析を行っております。

東(徹)委員 こういう答弁だと、国民は安心できないですよ。やはりきちんと調査したんだということぐらいはちゃんと国民に示さないと、国民は不安になるばかりですよ。

 尖閣沖にブイを設置したのは二〇二三年七月ですから、今月撤去するまで一年半かかっているわけですね。これと同じように、まだ残っている与那国島の南方のブイですけれども、これは、一年半以上かけて、中国の任務が完了したと撤去するまで待つんですかということなんですね。様々なデータを取られて、我が国の安全保障上もこれは問題がありますよ。

 そもそも、中国は、他国のEEZ内で無断で海洋調査を行うのは国連海洋法条約違反ですから。しかも、昨年の尖閣沖での領海侵入、これは四十二日ですよ。そして、今年に入ってからも、二日、三回にわたって領海侵入をしています。別件ですけれども、いまだに中国は、日本産の水産物、これも輸入すら再開していません。

 残っている与那国島の南方のブイですけれども、これは、林官房長官、即時撤去を強く求めると記者会見で言っていますけれども、撤去を求めるだけではなくて、撤去されないんだから、我が国が自ら撤去することを是非やるべきだと思いますが、官房長官、どうですか。

林国務大臣 外務大臣の代理ということでお答えしたいと思います。

 中国側に対しては、東シナ海の我が国EEZ内に中国が設置していたブイにつきまして、首相、外相レベルを始め、即時撤去を強く求めてまいりました。

 昨年十二月、与那国島南方の我が国のEEZ内でブイが新たに確認されたことは極めて遺憾でございます。このブイの設置は、今委員からもお話がありましたように、国連海洋法条約との関係で問題になるものでありまして、一方的な現状変更の試みは全く受け入れられないわけでございます。これは、昨年十二月の日中外相会談で、岩屋大臣から王毅外交部長に対して、これら二つのブイの即時撤去を求めております。

 この与那国島南方の我が国のEEZ内で設置が確認されているブイについても、引き続き、あらゆる機会を捉えて即時撤去を強く求めてまいります。

 こうしたブイを設置したことに対して、関係国がどこまで物理的な措置を取ることが国際法上許容されるかについては、国連海洋法条約に明確な規定がございません。これまでそういった事例の蓄積も見られないということでございまして、国際法上の基準が不明確な中で、様々な観点から総合的な判断が求められるところでございますので、関係省庁間で連携して検討の上、可能かつ有効な対応を適切に実施してまいります。

東(徹)委員 日本のやっていることは、撤去してくれということを求めて、向こうは、ブイを設置していろいろな情報を集めて、結局、情報が集まってもう用がなくなったからこれは撤去します、これが尖閣沖だと思いますし、今回の与那国島のブイも同じことだと思うんですね。またこれは調査が終わるまで、任務が終わるまで、林官房長官、待つんですかということです。

 林官房長官は、たしか昨年九月の総裁選挙に出るときも、ブイを撤去するんだというふうなことをおっしゃっていたと私は記憶しています。だからこそ、林官房長官に、是非、官房長官なんですから、これは撤去してもらいたい、即刻撤去すべきだというふうに思うんです。

 これは、中国にもうちょっと、いついつまでに撤去しなかったら、日本側で撤去するぞということぐらい言ったらどうですか。

林国務大臣 先ほども申し上げましたように、国連海洋法条約上、物理的な措置をどこまで取るかというのは必ずしも明確な規定がないという状況でございますので、様々な観点から総合的な判断が求められるということでございますので、関係省庁間、これには当然外務省も含まれるわけでございますが、可能かつ有効な対応を適切に実施していかなければならないと思っております。

東(徹)委員 同じような答弁ばかりで、全くこれは進まないですよね。

 ブイを撤去することができなくて日本の国を守ることができるのかと本当に思うわけですよ。これは中国が言っているんですけれども、日本のEEZ内にブイを設置することは国際法に合致すると中国は言っているわけですよね。そうであるならば、我が国も中国のEEZ内に、今度は逆にブイを設置したらどうですか。

 総裁選の際には、林官房長官は、関係閣僚会議を立ち上げるというふうなこともおっしゃっていましたよ。是非やはりそういうことも考えてやられたらどうかと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 総裁選のときは、たしか今おっしゃっていただいたところを申し上げたという記憶がございますが、いずれにいたしましても、国際法上許容されるか国連海洋法条約に明確な規定がないということに加えて、先ほど申し上げましたが、事例の蓄積がないということでございます。

 したがって、先ほど申し上げましたように、関係省庁間で連携するということを申し上げたとおりでございますが、可能かつ有効な対応を適切に実施してまいります。

東(徹)委員 事例の蓄積がないということですけれども、それだったら、私が言うように、中国はブイを日本のEEZに設置しているわけですよ、じゃ、日本も中国のEEZに設置をして、撤去すべきだと言うんだったら、お互いに撤去しようよというようなこともやられたらどうかというふうに思うわけです。答弁はいいです。

 続きまして、万博のことについてお伺いをさせていただきます。

 石破総理は、トランプ大統領の来日時期について、万博期間中が候補というふうな発言をされました。ということは、万博会場にトランプ大統領をお呼びしようということなのかなというふうにも思ったりするわけです。

 万博の示す未来社会を是非トランプ大統領に体験していただきたいというふうに思うわけですけれども、トランプ大統領の万博会場訪問について、政府の見解をお伺いいたします。

宮路副大臣 万博についてお尋ねでございます。

 さきの日米首脳会談において、石破総理は、トランプ大統領と大阪・関西万博をめぐっても意見を交わしたところです。トランプ大統領は、米国館の内容を始め、万博に関心を強く持たれていたというふうに承知をしております。

 トランプ大統領の訪日時期等については現時点で決まっておりませんが、いずれにせよ、近い将来に訪日が実現するようにアメリカ側とも意思疎通をしてまいりたいと考えております。

東(徹)委員 ということは、僕がお聞きしているのは、トランプ大統領は万博に来られるんですかということをお伺いしているんですけれども、いかがですか。

宮路副大臣 トランプ大統領の訪日時期等については現時点で決まっておりませんが、いずれにせよ、近い将来に訪日が実現するように意思疎通を行ってまいりたいと考えております。

東(徹)委員 全然お答えいただけないのが非常に残念ですね。

 万博会場に来てくださいというオファーはするんですか。

宮路副大臣 トランプ大統領の訪日については、アメリカの考え方もある、つまり、相手のあることでございますので、様々なミッションを帯びた上での訪日ということになると思いますので、その中で適切に判断されるものと考えております。

東(徹)委員 ちゃんと、私も通告しているんですから、それに沿ったような形で答弁をお願いしたいと思います。

 チケットの購入について質問させていただきますけれども、昨年十二月にも経産委員会で大臣に質問させていただきました。やはり高齢者の方というのは、なかなか一人で行きにくいんですよ。しかも、今回のチケットの買い方は難しいし、パビリオンの予約も難しいんです。だから、高齢者がもっと行きやすいようにするためには団体旅行なんですね、団体で行けるように。団体で行くんだったら行こうかという人も結構おられるんですね。ところが、団体旅行はなかなかないんですよ。私も団体旅行でやろうかなと思って旅行会社に聞いたら、なかなかやってくれないんですよ。それだけ大変なんです。

 だから、団体旅行で行けるように、是非、武藤大臣に、やりやすいように考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安住委員長 武藤経済産業大臣、時間が間もなく来るので、簡潔に。

武藤国務大臣 では、簡潔にまとめさせていただきます。

 東委員の御指摘、代理店というのかな、団体旅行の販売、これは極めて重要だということは、この前の、前国会からも御提言いただきましたとおり、私自身も共有しているところであります。

 今月に入ってから、旅行代理店において団体旅行の販売に向けた動きが従来よりも活発になってきているというのは事実だというふうに思います。博覧会協会からそういうふうに聞いておりますけれども、チケット販売を更に増やしていくためには、博覧会協会と旅行代理店がまた更に密に連携をしながら取組を強化していくべきだと考えておりまして、経済産業省としても、必要な働きかけを更に行ってまいりたいというふうに思っています。

 以上です。頑張ります。

東(徹)委員 是非旅行代理店の話をもっと聞いていただいて、団体旅行がもっと増えるようにしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

安住委員長 これにて東君の質疑は終了いたしました。

 次に、中司宏君。

中司委員 日本維新の会の中司宏です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 持ち時間は十六分しかありませんので、二倍速ぐらいでやりますので、答弁も簡潔にお願いいたします。

 まず、今期予算委員会から省庁別の審査方式が採用されました。委員長の御尽力の中で、委員会本来の質疑も一定充実したことと感じています。また、一昨日から国会改革の協議会もスタートいたしまして、言論の府としての国会のあるべき姿に向けて、我々日本維新の会もしっかりと改革に取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、初めに、終戦八十年ということで、進まない海外の戦没者の遺骨収集について、これは大事なことだと思いますので、我が会派の奥下委員に引き続いてお聞きいたします。

 献身的な御努力をしてくださっている関係者の皆さんには失礼かもしれませんけれども、戦後八十年の年月を経てなお海外での遺骨収集が遅々として進んでいない、このことに、正直なところ、痛みと同時に無念さが伝わってまいります。

 資料一を御覧ください。

 各方面に、合わせて百十二万人以上の御遺骨がいまだ帰還していません。これは海外だけでなくて、国内の硫黄島、そして沖縄においてもしかりであります。

 先輩議員諸氏の御尽力によって平成二十八年に制定された遺骨収集法、これによって国の責務と定められまして、集中実施期間も延長されています。海外の中で、海底に眠られ、あるいは相手国との関係の中で収容不可能な地域を除いて、収容可能とされる御遺骨は五十九万柱とされています。しかし、法の制定後も、残念ですけれども、年間八百柱相当の収容しか進んでいません。

 今進めないと、ますます損傷が激しくなって、高齢化が進む遺族の元に返せなくなります。国の行く末を案じて無念のうちに亡くなられた方々をお弔いし、お迎えするのは当然の責務であります。誰一人残さず、最後の一柱に帰還していただくまでは、明確なルールや目標を定めて、成果が上がるように取り組むべきだと私は考えます。どうでしょうか、大臣、お答えください。

福岡国務大臣 我が国の戦没者の遺骨収集は、戦後間もなくの開始以来、確度の高い情報について順次調査を行ってきておりまして、現在まで三十四万柱余りの収集につなげてきたところでございます。

 かつては、旧戦域の状況を知る現地住民であったり、また、帰還した戦友の遺骨情報等によりまして、可能な限り遺骨収集を実施してまいりましたが、当時を知る方もかなり少なくなってこられておりまして、また、地形も変わっていく中で、遺骨収集の難易度は高くなってきております。

 こうした状況に対応するために、厚生労働省では、民間団体との協力による情報の掘り起こしであったり、海外の公文書館での情報収集、現地での聴取調査など、関連情報の一層の収集と精緻な分析を進めてきたところです。

 こうした情報を基に、平成二十八年以降、遺骨収集推進法に基づく集中実施期間である令和十一年度までに、政府が保有する約三千三百か所の埋葬等に関する情報等につきまして御遺骨の有無を確認する現地調査を実施しておりまして、その結果を踏まえて御遺骨を収集することとしております。

 現在では、一部の地域を除きまして、コロナ禍前と同程度に実施できておりまして、例えば、昨年九月にパラオ諸島のペリリュー島において、資料調査等で得られた情報に基づく現地調査により集団埋葬地が確認され、現在までに十九柱相当の御遺骨が見つかるなど、成果が上がってきております。

 本年は、御指摘がありましたように、戦後八十年の節目を迎えます。引き続き、集中実施期間に一柱でも多くの御遺骨を収集できるよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

中司委員 しっかり取り組まれるということですけれども、八十年の節目というよりも、もうタイムリミットでしょう、恐らく。決意を持って臨んでいただきますようにお願いいたします。

 次に、行き過ぎた家族、親子分離について二点ですね。

 まず、一点目ですけれども、SBSとAHT、いわゆる乳幼児揺さぶられ症候群、若しくは乳幼児頭部外傷などの虐待事案に関連して伺います。

 児童への虐待は、当然ながら、決して許されることではありません。虐待の疑いがあれば、まずは安全を確保するために一時保護の手続が取られるのは当然のことであります。

 しかし、一方で、無実の母親や養育者が誤って虐待を疑われて裁かれて、親子が引き離されるということも、同時に許されることではありません。それは、疑われた養育者だけではなくて、親子分離によって子供にも深刻な影響を及ぼして、結果として子供を守ることにならないからであります。

 先月は横浜地裁で、また昨年十一月には大阪高裁で、児童虐待を問われた刑事裁判で相次いで無罪判決がありましたが、資料二にありますように、日弁連刑事弁護センターの報告によりますと、虐待に関する無罪判決が、平成二十六年以降、令和四年までに全国で二十三件あったといいます。

 日本の刑事裁判の有罪率は九九・九%と言われる中にありまして、無罪が異常に多い、このことについて、大臣、どう考えられますか。

三原国務大臣 AHTといった虐待による乳幼児頭部外傷が疑われた事例の刑事裁判におきまして、その保護者が無罪となった事例が一定数あることは承知をしております。それらの事例において、結果として親子が分離される期間が生じたこと、これは重く受け止めてございます。

 一方、児童相談所におきまして、子供の安全確保等が必要な場合にはちゅうちょなく一時保護を行う必要があり、その判断は、子供の最善の利益を考慮し、適切なものであるべきと考えております。

 虐待による乳幼児頭部外傷が疑われた事案への児童相談所における具体的な対応の考え方につきましては、都道府県等にお示ししている子ども虐待対応の手引きにおきまして、AHTが疑われる場合の医師による診断は、多角的な意見を得るため、複数診療科のセカンドオピニオンを受けることが重要であること、また、虐待に関する判断は、医学的診断だけでなく、児童相談所の調査による養育環境などを踏まえた社会診断等を加え、総合的に判断すること等を示しております。

 こうした考え方に基づき、児童相談所において適切な対応が行われるように、引き続き、手引の周知ということにも徹底してまいりたいと思っております。

中司委員 セカンドオピニオンの導入とか、去年の三月、こども家庭庁の子ども虐待対応の手引きが改定され、そういうことで見直しが行われたということでございます。

 しかし、大臣、改定の際に、冤罪が多発していることの検証とか、冤罪によって権利が侵害された、あるいは親子分離をされた方々に十分なヒアリングができたのかどうか、それをお伺いします。

三原国務大臣 今御指摘いただきました子ども虐待対応の手引きにつきましては、関係医学会、弁護士、当事者やその御家族からもAHTに関する様々な見解がある中で、これまで特定の医学的所見のみを記載していたということについて見直しの御要望をいただいておりました。

 そうした関係者の御意見なども踏まえまして、令和六年三月に手引を改正し、虐待による乳幼児頭部外傷が疑われた事案への児童相談所における具体的な対応の考え方を示すとともに、この手引からAHTに関する医学的所見の例示を削除したところでございます。

 改正後の手引に基づいて、児童相談所において適切な対応が行われるように、この手引の周知徹底をしっかりと行ってまいります。

中司委員 よく理解をしていただいて、しっかりと徹底していただきたいと思います。

 冤罪のために、いわれなく子供と引き離された母親ですけれども、胸が張り裂けそうでつらかった、こう話しておられます。

 当然ながら、子供を虐待から守るのが第一義であります。この国会で提案される児童福祉法の改正案では、一時保護児童への面会制限がより厳しくなるというふうに聞いておりますが、冤罪とか誤った親子分離をこれ以上生まないように、総合的な見地に立った対応をお願いしておきます。

 次に、もう一つ、親子の分離を引き起こす事案として、成年後見制度に関するトラブルについて伺います。

 成年後見は、認知症や障害により判断能力が十分でない方々の権利や尊厳を守る上で非常に大事な制度だと思います。

 成年後見制度に関する問題の解決を目指す後見制度と家族の会には、後見制度の利用者から様々な事案が寄せられています。家族による虐待を疑われて、文書の提示とか説明も何もなくて、突然親が連れ去られた、あるいは、一方的に施設に入所させて、家族を面会させないというケース。また、中には、親がだびに付されてお骨になって返されるまで所在を知らされなかった、そんなケースもありまして、人権侵害と言えなくもありません。

 こうした親子分離を引き起こす事案以外にも、後見人が家族以上に権限を持っていることや、一旦決まった後見人を替えることができないことによるトラブル、こんなことも多いと聞いております。

 資料三は、これは後見人による不正事例ですけれども、グラフの赤い部分が司法書士や弁護士などの専門職であります。件数、被害額はほぼ横ばいとなっています。

 高齢化率の進展に比べて後見人制度がそれほど普及しないのは、こうしたトラブルとか様々な課題への対応が十分ではないと、後見制度に対する家族の不安というものが払拭されていないからだと考えております。

 令和八年に成年後見制度の見直しが検討されていますけれども、どういう方向で改定されるのか、大臣に伺います。

鈴木国務大臣 今先生御指摘の成年後見制度でありますけれども、御指摘の点のような様々な課題というものが指摘をされていると承知をしております。その中には、代理権が広過ぎるといったことや、あるいは終了についての話といったこともあろうかと思います。

 そういった中で、こうした様々な御指摘を踏まえて、現在、成年後見制度の見直しに関して、法制審の部会において、例えば成年後見人の権限を必要な範囲に限定して付与する仕組み等々、様々な幅広い論点からの議論がされている状況であります。

 制度の見直しに当たっては、様々な方からもいろいろな御意見を伺いながら、議論をいただきながら、様々な多様な意見を踏まえた充実した議論を我々としては期待をしているところでございます。

中司委員 関係者の声を十分に聞いていただいて、先ほど述べたような親子分離が、そうした問題が繰り返されることのないように、高齢者そして障害者を支えてきた家族との関係、これを置き去りにすることのないように、そうした視点を十分に踏まえた制度の見直しを行っていただきたい、そういうふうに要望しておきます。

 最後に、特殊詐欺についてお聞きします。

 先日、私の自宅の電話に、総務省電波監理審議会からと称しまして、自動音声で、二時間後にこの電話は使えなくなりますよという電話がありました。これまでに三回かかってきていますが、発信元を調べると、海外のフリーダイヤルらしいんですね。

 個人情報を言葉巧みに聞き出す手口で、千三百万円の被害に遭われたケースも報道されています。堂々と官庁名をかたるということで、悪質だと思います。

 資料四にありますように、残念ながら、昨年は過去最高の被害額がありました。しかも、認知件数では高齢者が六五・四%。これはもう異常事態、非常事態ではないでしょうか。

 明らかに高齢者がターゲットでありまして、あらかじめブロックするなどの対応ができずに被害に遭うケースが多いと考えます。注意喚起などはやっていただいているとは思うんですけれども、残念ながら、ターゲットになっている高齢者にはそれが十分に伝わっていないのではないかと思います。きちんと届くような工夫をしていただきたい。

 不審電話とみなされる国際電話をシャットアウトすることとか、身近に相談センターを設けることとか、迅速に摘発を行うなど、何か踏み込んだ手段を講じることができないのか、公安委員長にお伺いいたします。

坂井国務大臣 警察では、被害防止の観点からと取締りという観点からと、二方面から対応しております。

 御指摘のように、国際電話を使ってというものが多いということでございますから、犯人からの電話を直接受けないよう、国際電話の着信ブロックを利用することについて、今まで以上に、高齢者を始め被害者となっている方々に届くように、我々も、広報啓発をしていくということであったり、また、今は国際電話を使ったそういうパターンですが、詐欺の手口が非常に変化をしてまいりますので、タイムリーな情報発信をやっていく。

 そして、取締りにつきましても、匿名・流動型犯罪グループの指示役や首謀者の検挙に向けて、特殊詐欺連合捜査班を活用した、全国警察が一体となった迅速かつ効果的な捜査を今行っておりますし、また、海外当局とも、捜査共助等の推進による海外拠点の積極的な摘発等を行っております。

 そして、総務省におきましてもこういった取組を進めているということを聞いておりますし、引き続き、こういった関係省庁等とも連携をしながら、こういった対策を強力に推進するよう、警察を指導してまいりたいと思っております。

中司委員 総務省から何か答弁していただくことはありますか。

安住委員長 総務省湯本総合通信基盤局長、時間が参っていますので、簡潔に。

湯本政府参考人 お答え申し上げます。

 外国からの発信を含む不審電話への対応につきましては、海外からの着信制限、また各種の迷惑電話への対応策を活用することが効果的だと考えております。

 固定電話の国際電話の発着信を停止する不取扱いセンターの周知を進めていくとともに、今後、不取扱いセンターの体制強化を行ってまいりたいと考えているところでございます。

中司委員 特殊詐欺の非常事態であるということをしっかりと認識をしていただきたい、そして、撲滅に向けて取り組んでいただきますように要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて中司君の質疑は終了いたしました。

 次に、森ようすけ君。

森(よ)委員 国民民主党の森ようすけでございます。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。通告に従いまして質問をさせていただきますので、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、賃上げに向けた労務費の価格転嫁について取り上げたいと思います。

 私たち国民民主党は、手取りを増やすということで、百三万円の壁の引上げ、そしてガソリン税の暫定税率の廃止、こちらにただいま力を入れているところでございます。ただ、手取りを増やすためには、根本となる賃金を上げていくことも重要でございます。政府としても、中小企業に対する価格転嫁の促進など、賃上げに力を入れていると承知しております。

 そうした中で、価格転嫁も一定程度進捗はありますが、現場の声は、原材料費などと比べて、労務費の価格転嫁が進んでいない、認識が広がっていない、こうした声が広がっているところでございます。

 例えば、産業別労働組合のUAゼンセン、こちらがアンケートを行ったところ、原材料費でしたりエネルギーコストの価格転嫁と比べて、労務費の価格転嫁は、改善傾向にあるものの、まだまだ悪いというような結果が出ております。また、労務費の価格転嫁が進まない理由として、企業努力で吸収すべきという慣習がまだ残っていることでしたり、取引先を替えられるリスクがあるといった声も寄せられているところでございます。

 そして、機械、金属産業を中心とした産別であるJAMも昨年十月にアンケートを行いまして、そこでも、労務費の転嫁指針の存在が価格交渉の担当者にまだまだ知られていないということでしたり、金型の保管料、部品の保管料が転嫁できず、請求できずに困っているといった要望が出ているところでございます。

 そこで、まず質問ですけれども、社会全体で賃上げを加速させるためには、労務費の価格転嫁を広げることが重要でありますが、現場からはこうした声が上がっているところで、なかなか労務費の価格転嫁が進んでいないというのが現状だと思います。春闘が本格化する中で、政府としての労務費の適切な価格転嫁への取組方針、そして意気込みを教えていただけますでしょうか。経産大臣、お願いいたします。

武藤国務大臣 森委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 まさに中小企業庁が直近に実施した調査におきましても、労務費の転嫁率は、若干改善しつつはありますけれども、原材料費、またエネルギーコストを含めたコスト全体に比べて転嫁率はまだ低い、そういう状況、課題があると認識をしているところです。

 経済産業省では、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針、これの産業界への周知に取り組んできているところでありますし、また、公正取引委員会の調査によれば、指針の認知度が昨年五月末時点で約五〇%と、道半ばであります。より一層の周知というものが大変大事なことだと思っておるところであります。

 先月、石破総理から関係大臣に対して、価格転嫁を阻害する商習慣の一掃に向けて、労務費指針の遵守も含めて取り組むよう指示があったところであります。経済産業省としても、関係の業界団体に対して、私自身が先頭に立って、労務費指針の周知も含めて働きかけていきたいと思っております。

 これに加えまして、公正取引委員会と連携して、労務費を含む価格交渉をより徹底する方向で下請法改正の検討を進めているところであります。中小企業の賃上げ原資の確保に向けて、関係省庁とも密に連携しながら価格転嫁を推進してまいりたいと思います。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 指針の普及徹底でしたり、下請法を含めて、しっかりと力を入れて、是非とも一緒に協力しながら進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、民間企業に賃上げ、価格転嫁をお願いする中で、官公庁が発注する公契約においても価格転嫁に積極的に取り組んでいくということが必要だと考えております。特に、複数年契約の案件においては、契約期間中の価格の改定でしたり物価上昇に対応ができずに、企業側に負担を強いているという実態もあるかというふうに思います。

 契約期間中であっても、民間企業からの労務費の価格見直しの要請に柔軟に対応して、価格上昇分を適切に反映することが必要ではないでしょうか。隗より始めよということで、国が率先して民間の賃上げを後押ししていくべきだと考えているところでございます。

 一方で、昨年五月の内閣委員会において、我が党の浅野哲議員からの質疑に対して、複数年にまたがる情報システムの開発に関して契約変更が行われたものというのは二千九百九十三件のうちたった二件しかない、こういった答弁が政府からあったところでございます。公共工事以外の役務については、まだまだ契約変更の事例が少ないのが現状だと思います。

 そうしたところ、令和六年度の中小企業者に対する契約の基本方針において、従前から変わりまして、労務費に関して、契約変更も含めて、価格転嫁に適切に対応することとされていると思います。

 そこで、また経産大臣に質問ですけれども、この基本方針の規定の変更があった今年度、令和六年度において、官公需、とりわけ複数年契約の案件に関して、価格転嫁はどれだけ進んでいるのでしょうか。民間企業に賃上げを要請する中で、行政としても積極的に価格転嫁を進めていくべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員からお尋ねのございました複数年度契約における労務費の転嫁の状況等につきましては、先ほど委員から御紹介がありましたとおり、先般、浅野議員に対して答弁申し上げた調査がございます。

 それ以降の調査は今行っておりませんけれども、足下、先ほど大臣からも申し上げました中小企業庁の調査、価格交渉促進月間における官公需における価格転嫁の実態、これは初めて調査をさせていただきましたけれども、公表させていただいた内容は、コスト上昇分に対する価格転嫁率は五五・八%ということで、更なる取組が必要な状況と認識してございます。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 こうして指針の改定も行ったわけですから、しっかりフォローアップも行って、政府として価格転嫁がどれだけ進んでいるかということを積極的に示すことで民間企業の賃上げを後押ししていく、こうした取組を是非期待させていただければと思います。ありがとうございます。

 ここまで賃上げについて触れさせていただきましたが、社会全体の賃上げの実現のためには、価格転嫁の促進だけではなくて、足腰の強い経済をつくっていくことも必要だと思います。そのためには、生産性の向上はもちろんですけれども、日本経済のドライバーになるような、外貨を稼いでくる新たな成長産業を生み出していくことが重要です。

 成長産業としてデジタル化、DXが着目されていますが、環境領域も大きなポテンシャルがあると思っております。環境分野ではカーボンニュートラル、GXが注目されているところですが、このGXに注目がされがちなんですけれども、サーキュラーエコノミーであったりネイチャーポジティブであったり、こうした分野も含めた環境政策の三本柱というのが非常にポテンシャルのある分野だというふうに考えております。

 そこで、成長産業としての環境政策について質問させていただければと思います。

 まず、GX、気候変動について取り上げますが、GXといえば、エネルギーであったり、鉄鋼、化学、セメント、紙みたいな重厚長大産業の話についつい行きがちなんですけれども、地域における脱炭素化、こうしたことも大事だと思います。

 環境省においては、脱炭素先行地域としてGXの社会実装を地域単位で進める取組をしているわけですけれども、現時点で百七市町村、八十一のプロジェクトが選定されております。地域特性に応じたGXの取組を進めることで、脱炭素化はもちろん、地域の産業競争力の向上や地方創生につながるすばらしい取組だと認識しております。

 ただ、この方向性はよいと思う一方で、選定されたプロジェクトのよしあしというものをしっかり目利きすることが必要だと思います。目利きをした結果、よいプロジェクトというものを二〇五〇年に向けて全国展開をしていく、そしてまた、海外にもこうしたプロジェクトを展開していくというようなニーズ、取り組んでいくことが大事だと思います。

 そこで、環境大臣に御質問ですけれども、脱炭素先行地域の取組が進んでいるところの採択事例の評価、検証、こういったものはどういうふうに行っていくのでしょうか。成功事例を発掘し全国展開するのはもちろん、パッケージとして海外展開することで、この地域脱炭素が外貨を稼ぐような成長産業になるというふうに思っているんですけれども、今後の方針についてお伺いいたします。

浅尾国務大臣 森ようすけ委員にお答えいたします。

 委員におかれましては、環境省にも勤務され、環境行政に大変熟知されておりまして、御質問ありがとうございます。

 御質問の脱炭素先行地域は、これまで八十一提案を選定し、伴走支援をしております。その評価、検証については、有識者による評価委員会において、毎年度、二酸化炭素削減状況などの取組の進捗状況についてフォローアップを行うとともに、今年度からは、地方創生にも留意した中間評価を実施しております。

 これらの取組を通じて、例えば、北海道の石狩市では、洋上風力発電等の導入による再エネ一〇〇%の産業団地を整備し、データセンター等の誘致や開所が既に始まっているなど、好事例が複数確認されております。

 環境省では、こうした事例から得られる成果やノウハウを見える化し、情報発信を強化することで、地域の脱炭素の全国展開を図るとともに、地方創生にも貢献してまいります。

 加えて、御指摘の国際展開については、国内と海外の自治体との連携を基盤に、我が国の優れた脱炭素技術の輸出や国際的な脱炭素の輪の拡大に向けて取り組んでおります。今年度は、脱炭素先行地域に選定された自治体も十一団体が参加し、アジア等での脱炭素のプロジェクトの実現に取り組んでおり、引き続き、我が国の知見と技術の海外展開を推進してまいりたいと考えております。

森(よ)委員 ありがとうございます。

 中間評価もされているということなんですけれども、これまでどおりの評価、検証ではなくて、本当にいい、すごく磨かれたきれいなプロジェクトをつくって、それを展開していくということを是非力強く進めていただきたいなというふうに思っているところでございます。

 ただ、GX、カーボンニュートラルに関しては、やはりまだまだ盛り上がりが足りていないなというところが認識でございます。何か燃えたぎるような熱量でしたり熱狂というのを、このGXの分野でつくっていきたいというような思いでございます。

 やはりまだまだ実ビジネスとしてGXが確立されていないことだったりとか、マネタイズできていないということが、どうしても、ちょっとふわふわしたGXになりつつある。仕方ないことだとは思います。水素、アンモニアでしたりCCUSみたいな、重厚長大産業の技術開発が着目されがちなんですけれども、やはり長期的な取組であるために、足下においてなかなか現実味が湧きにくいというところがあると思います。

 そうした中で、GXの機運を高めるためにも、足下においてクライメートテックの領域の成功事例をつくっていくことが大事ではないでしょうか。

 例えば、熱中症予防のウェアラブル端末という事例がございまして、カナリアという製品がございます。これは腕時計型のデバイスでございまして、体の深部体温を測ることによって、熱中症のリスクが高まったときに警告音を出してくれるというようなサービスでございます。

 これは様々な業界で実は活用されていて、例えば建設現場であったりとか、あと、熱中症のリスクの高い電力業界であったりとか製油所、こうした現場で使われているところでございます。また、官公庁、自治体でも広がっていて、自衛隊でしたり、消防隊員、また学校の部活動でもこうした熱中症のウェアラブル端末というのが広がっているところでございます。海外展開も実は進んでいて、スペインの警察であったりフランスの航空会社にも輸出されていて、こうした足下において広がっている取組というのもGXにおいてはあるところでございます。

 そこで質問ですけれども、こうした事例のように、足下での気候変動関連ビジネスの成功事例、海外展開事例がある中で、長期的なGXの足がけとして、足下におけるクライメートテック領域の成功事例をつくっていくことこそが、GXへの機運、投資意欲が高まっていくというふうに考えております。長期的な視点だけではなくて、足下でのビジネス展開にも政府として着目、注力すべきだと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

浅尾国務大臣 御指摘のとおり、地球温暖化対策技術のビジネス展開を足下で現在進行形で進めて、できるだけ早期に排出削減を実現していくことは大変重要であるというふうに考えております。

 環境省では、地球温暖化対策技術を有するスタートアップを含む事業者に対し、公募型の技術開発支援や、脱炭素化支援機構による資金の供給を行うなどの施策を取り組んでおります。例えば、環境省で技術開発を支援してきたAIスマート空調や、壁や窓と一体になった太陽光発電などが近年社会実装化されつつあります。

 二〇五〇年ネットゼロの実現に向けて、引き続き、関係省庁と連携しながら、地球温暖化対策技術のビジネス展開を強力に後押ししていきたい、こういうふうに考えております。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 AIスマート空調でしたり、壁と一体となった太陽光パネルというのはすごく魅力的だと思うので、これをしっかり、国内だけに留めるのではなくて、しっかり海外に移して外貨を稼いでいく、こうした取組を是非期待したいと思います。

 あと、スタートアップについては、私自身も、環境省を辞めた後、会社を立ち上げてスタートアップをした経験がございますので、しっかり力を入れて共に取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、ネイチャーポジティブについて取り上げたいと思います。

 これはGXと比べるとまだまだ認知が広がっていないんですけれども、生物多様性の損失をストップさせて自然を回復軌道に乗せること、これがネイチャーポジティブと言われています。このネイチャーポジティブに企業が取り組むことが新たな付加価値として評価される動きが、世界の国で、日本でも広がっているところでございます。

 日本は山と海に囲まれて自然資本が豊かですので、先行しているカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーに追随するような大きなビジネスポテンシャルがこのネイチャーポジティブにはあるのではないかというふうに考えております。

 企業サイドの動きとしては、TNFD、自然関連財務情報開示タスクフォース、こういう動きがございまして、日本の加盟企業は百三十社を超えていて、世界にも率先した取組が企業において進んでいるところでございます。国としても、こうした生物多様性、ネイチャーポジティブに関する予算事業を含めて、是非後押しをしていただきたいと思います。

 ちょっと質問を一つ飛ばさせていただきまして、このネイチャーポジティブ経営は、リスクへの対応と機会を捉えた事業開発、この二つの側面があるところでございます。

 要すれば、守りと攻めがあるわけなんですけれども、守りのリスク対応については、経済活動は自然資本に依存しているわけなので、こうした自然資本が失われることによって、経済活動が損なわれてしまう。例えば、飲料メーカーにとっての水資源というのが一番分かりやすいと思うんですけれども、この自然資本を損なうことは企業経営にとってマイナスに働くので、リスクへの対応として、自社でしっかり保全に取り組むことであったり、自然が損なわれるリスクに対応した代替手段を日頃から考えておく、戦略として持っていくということがこの守り、リスクへの対応でございます。

 ただ、成長戦略としては、攻めの取組を進めることが重要だと考えております。ネイチャーポジティブは、生物多様性のCOPであったりとか、国際的に、世界全体で取り組まれるものなので、やはりカーボンニュートラルと同じように、国際的なニーズが約束されたマーケットだと思うので、こうした分野に攻めで取り組んでいきたいと思っております。ただ一方で、国内における事例は、守り、リスクへの対応に比較的偏っているのかなと現状は思っているところでございます。

 そこで、大臣に御質問ですけれども、新たな機会を捉えた事業開拓の事例として、具体的にどういったものがあるんでしょうか。また、海外展開も含めた成長産業をネイチャーポジティブでつくっていくために、是非先駆的な後押しをお願いしたいんですけれども、大臣の御見解をお伺いします。

浅尾国務大臣 御指摘のとおり、ネイチャーポジティブの取組には、リスク対応の側面があります。他方、企業にとって、単なるコストアップだけではなくて、自社の企業価値向上につながるチャンスでもあると考えております。

 環境省では、こうした考えに基づき、関係省庁と連携し、昨年三月、ネイチャーポジティブ経済移行戦略を策定して、その実現に向けて取組を進めております。

 また、ネイチャーポジティブにおける事業開拓の事例としては、例えば、植物由来の飼料を活用した水質汚染等の環境負荷の小さい養殖技術、つまりは、植物由来のタブレットがあるので、魚の餌を配るよりは残渣がないという意味で水質汚染が少なくなるといったようなものとか、地域の繊維資源等を活用した、プラスチックに代替するセルロースファイバー樹脂等の技術を活用した事業などが進められております。

 こうした産業技術が国際的な市場競争において有利になるよう、ルールメイキングや市場創造に向けた取組を戦略的に進めるとともに、ビジネス機会の具体例の発信も含め、我が国企業のネイチャーポジティブに向けた取組を後押ししていきたいというふうに考えております。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 やはり情報発信もしていくというのがすごく大事だと思いますので、ネイチャーポジティブ、GX、地域脱炭素というのがよりもうかるビジネスだということを民間にしっかりアピールしていく、それがひいては脱炭素、長期的な取組にもつながっていくと思いますので、是非とも期待させていただければと思います。

 成長産業としての環境政策の可能性について質疑をさせていただきましたが、環境政策においては、安全、安心を確保することも重要なことでございます。私も新卒で環境省に入省しましたけれども、最初に先輩方から教えていただいたのは、公害問題、人の命と環境を守る、この環境省の原点について最初に教わったところでございます。そうした観点における環境政策についても、最後、触れたいと思います。

 近年、一部の地域で化学物質のPFASが検出されております。調査では、全国十四か所で基準値を超えるPFASが水道水から検出されております。その中でも、二〇二〇年から四年連続で基準値を超えた市町村として、岐阜県の各務原市、岡山県の吉備中央町、この二か所がございます。水道水は生活に欠かせないものですから、地域住民からは不安の声が上がっているのが現状でございます。

 国交省の予算事業で、浄水処理施設の整備補助というものが行われておりますが、資本単価要件、人口規模要件が設けられておりまして、PFASが検出されていても、この要件を満たさないと補助を受けることができない、こうしたような現状が起きております。

 各務原市では、要件を満たさないので、国からの補助金が使えずに、自主財源として、来年度から二年契約で総事業費十七億円のPFAS処理施設の専用施設を建設する、こうした計画がなされているところでございます。

 一般的な水道施設の整備補助であれば資本単価の要件が設けられるのは理解はできるんですけれども、PFASというのは、市町村がコントロールすることができない外圧によるものでございますし、突発的、緊急的なものでありますから、なかなか通常の要件と同じにする理屈もないのかなというふうに考えているところでございます。

 また、二〇二六年度からは水質基準の検査の義務化も進む中で、基準値を超えるPFASが出てくる地域が今後増えてくる可能性もあるというふうに思っております。

 そこで、国土交通大臣に質問ですけれども、安全で安心な水道水の安定供給を全国で確保するためにも、そしてPFASの問題を解決するためにも、資本単価要件、人口要件を緩和することが必要だと考えますが、御見解をお伺いいたします。

安住委員長 中野国土交通大臣、間もなく時間が参りますので、簡潔にお願いします。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 水道事業の経営に要する経費につきましては水道料金収入により賄うということがあくまで原則でございますが、その上で、地形や水源等の条件により施設整備費が割高となるなど、経営条件が厳しい水道事業者等、委員御指摘の資本単価要件や人口要件を満たす水道事業者を対象に、現在、PFAS対策として行う施設整備への財政支援を行っているところでございます。

 そして、これも委員御指摘ございましたが、環境省において、今、PFASのうち、水道水中のPFOS及びPFOAについて、専門家の意見を伺いながら、令和七年春を目途に、水道水質基準への引上げを含め、その対応の方向性を取りまとめる予定と聞いておりますので、国土交通省としましては、引き続き、PFASに関するこうした状況を踏まえながら、必要な対応を検討してまいりたい、このように考えております。

安住委員長 森君、時間が来ました。

森(よ)委員 ありがとうございます。

 実際に不安に思われている地域の方々もいますので、積極的に検討を是非進めていただければと思います。

 私からの質疑は終わらせていただきます。ありがとうございます。

安住委員長 これにて森君の質疑は終了いたしました。

 次に、西岡義高君。

西岡(義)委員 国民民主党の西岡義高です。

 質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私からは、まず、我が国のインテリジェンス機能について質問いたします。

 現在日本が置かれている安全保障環境は極めて厳しいものになっていると認識しております。中国による領空侵犯や領海侵入、北朝鮮による核・ミサイル開発といった軍事活動だけではなく、安全保障の対象は経済や技術などにも及んでおり、サイバー攻撃や情報戦が行われております。このような情報戦は、有事と平時の境目がはっきりあるわけではなく、表立って目に見えない分、しっかりとした基盤整備を行い、正確な情報をいち早く収集することはもとより、カウンターインテリジェンス、防諜機能を常に高めていくことの重要性が増していると認識しております。

 そこで、質問いたします。

 内閣情報調査室の来年度予算は約三十七・七億円、コロナ禍であった令和二年度から三十五億円程度で推移していたものが増えはしましたが、現在のインフレ状況を鑑みるに、ほぼ同水準かと思われます。また、法務省の、内外の情勢に対応する公安調査庁の情報収集、分析能力の強化、これについての予算も、コロナ禍で三十一億円程度だったものが約三十二・六億円と、これもまた内閣情報調査室と同様な状況かと思われます。

 昨年は、訪日外国人がコロナ前を超えて三千六百八十七万人と、過去最高という状況になっております。また、今年は万博も開催されることから、更に多くの外国人がやってくることが想定されます。そのような状況下において、コロナ禍と変わらないような予算規模で、果たして十分なカウンターインテリジェンス、防諜機能を発揮できるのか、政府の見解をお聞かせください。

鈴木国務大臣 西岡先生の御質問、公安調査庁の関係ということで、まず私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 先生御指摘のように、今、非常に安全保障環境、極めて厳しい状況の中でありますし、そういった中で国民生活の安心、安全をしっかり守っていくためにも、こうした情報の収集、分析は極めて重要であります。

 そして、先生も御指摘のように、今年は万博も行われますし、そういった状況の中で、私どもといたしましては、今年度の予算案においても、骨太の方針等の政府の方針に基づいて、対日有害活動関連情報、サイバー関連情報、経済安全保障関連情報の収集、分析の強化、そして大規模国際イベント関連動向の情報収集の強化等を着実に推進するために必要な経費を計上しているところであります。

 御指摘のような様々な環境の変化はありますけれども、そういった中で、私どもとしては、限られた予算、これを最大限有効にかつ適切に活用をして、人的情報、ヒューミントも含めた情報の収集、分析を行って、適時適切に関係機関に提供するということで、情報貢献を行っていきたいと思っております。

西岡(義)委員 ありがとうございます。厳しい状況という御認識はあるということは理解いたしました。

 今、日本は、スパイ天国とやゆされるような状況にあると認識しております。確かに、特定秘密保護法ですとか重要経済安保情報保護法など、特定の情報を保護するための法整備は進んできていると思っておりますけれども、スパイ行為自体を取り締まれるスパイ防止法が存在しておりません。

 スパイ行為は、そのスパイが直接情報を盗むだけでなく、善良な一般人に近づき、例えば特殊詐欺のかけ子や受け子のように、人を介してスパイ活動を行ったりもします。また、先月には外務大臣の議員宿舎の部屋に侵入者があるというような事件もあったばかりでございます。

 LGBT理解増進法のときの議論ですとか、現在議論されている選択的夫婦別氏制度の議論の中では、日本だけが遅れている、諸外国並みに法整備をという声がよく聞かれますけれども、スパイ防止法もほかの先進国ではきちんと整備されており、日本が遅れているという状況にあります。緊急性においては、私はこちらの方がより高いのではないかと考えています。

 同盟国から信頼して情報を渡していただけるよう、より一層の信頼関係を築くためにも、また、我が国のために働くインテリジェンス機関の方の安全のためにも、スパイ防止法の議論を進めていくべきと考えておりますけれども、政府のお考えはいかがでしょうか。

七澤政府参考人 お答えいたします。

 政府としましては、我が国において外国情報機関による情報収集活動等が行われているという認識に立ちまして、カウンターインテリジェンスに関する取組を強化するなど、必要な対策を講じているところでございます。

 その上で、いわゆるスパイ防止法の必要性等につきましては様々な議論があると承知しておりますが、国の重要な情報等の保護を図ることは極めて重要でございますので、引き続き必要な取組の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

西岡(義)委員 是非これは進めていただきたいと思います。

 孫子の兵法にも、百戦百勝は、善の善なる者にあらず、戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なりとあります。戦わずして勝つことが最上とし、その状況をつくるための情報の大切さを説いています。戦争を起こさせない、そのためにも、是非、スパイ防止法の議論を進めていっていただければと思います。

 次の質問に移ります。

 農業と福祉の連携、いわゆる農福連携について質問いたします。

 農福連携は、福祉の側から見れば、障害者の方の就労先確保となり、社会参画を促し、そこでの活躍を通じて、自信や生きがいにつながるものであります。また、農業家側から見れば、なり手不足と言われる中での労働力の確保、休耕地等の解消にもなり、また、食料自給率の改善にもつながってまいります。

 イタリアでは、元麻薬常習者の立ち直りのために、元麻薬常習者を集めてブドウ農園で働かせているワイナリーなどもあります。農福連携は、障害者だけでなく、犯罪をした者などの立ち直り支援、居場所のない若者の社会参画支援、高齢者の生きがいづくり、様々なその対象を広げていける、そういった可能性に富んだ取組だと私は考えています。

 そこで、我が国におけるこれまでの農福連携の取組の状況と、今後どのように広げていくのか、そのビジョンを大臣からお聞きしたいと思います。

江藤国務大臣 お答えさせていただきます。

 大変大事な御指摘だと思っております。障害のある方々は、中には一つの個性だというふうに言われる方々もおられますが、御家庭も含めて、御本人も含めて、なかなかやはりつらいことであることは間違いないと思います。そして、自分が疎外されていない、社会の一員であるということを自覚する、そして生きがいを感じる場としても、農福連携の場はありがたいです。

 幾らスマート農業をやっても、やはりどうしてもマンパワーを使わなきゃいけないのが農業の宿命でございまして、そして、これだけ高齢化が進んでくると、なかなか収穫期にお年寄りを、声をかけても、出てくれる方も減っています。ですから、これから、今御指摘あったように、障害のある方だけではなくて、あらゆる社会の中で支援を求めている人、そういう方々が農業の現場に参加していただくことが非常に大事なことだと思っております。

 現在の状況を申し上げますと、四年間で三千六十二件増加をいたしました。令和五年度で、ちょっと古くて申し訳ないんですが、七千百七十九件ということになっております。事業者の方々も大変積極的に、いろいろ御苦労はあるとは思いますけれども、パニック障害であったり適応障害であったり様々ありますけれども、これだけ増えております。

 基本法の中にも、この理念を初めて書かせていただきました。ですから、これから、もう一度申し上げますが、障害者だけではない、社会的に支援を必要とする方々、そういう方々が農業の現場に参加してくれることを非常に期待しておりますし、支援してまいりたいと考えております。

西岡(義)委員 ありがとうございます。

 是非この取組をどんどん広めていっていただきたいと思うんですけれども、今後、農福連携を広げていくためには、農業と福祉という異なる業種、また、それぞれの持つ事情、障害の方であったり、様々な状況があると思います。そういった方々を、農業と福祉がつながっていくためには、やはり間に入ってマッチングをしていくということが重要なポイントとなってくると考えておりますけれども、よりよいマッチングを進めていくための具体的な取組があれば、教えていただけませんでしょうか。

前島政府参考人 お答えいたします。

 農福連携の取組を広げていくためには、委員御指摘のとおり、地域事情に精通した市町村やJA、社会福祉協議会などが協力して、農業者と障害者就労施設をつなぐなど、地域単位でのマッチングなどの仕組みをつくっていくことが重要と考えております。

 このため、農林水産省におきましては、市町村、農業や福祉の関係者などが参画する地域協議会の取組の拡大を推進するとともに、この地域協議会を中心にいたしまして、農作業の繁忙期など地域の農業の実情や福祉サイドの希望などを考慮して、マッチングや請負単価設定などを行う取組を後押しするほか、障害をお持ちの方の特性に応じた適切な作業分担の方法など、農福連携の実践手法などを現場でアドバイスする専門人材の育成に取り組むこととしております。

 今後とも、農福連携の取組が地域で広がりを見せていくよう取り組んでまいりたいと考えております。

西岡(義)委員 ありがとうございます。

 もう一つのマッチングについて伺いたいと思います。

 最終的に、でき上がった作物や製品は、商品として市場に出さなければなりません。そこで付加価値をしっかりとつけて収益を上げていく、そこまでつながって、ようやく一つの事業として成り立っていくと思います。

 その出口の部分、市場とのマッチング、そこの部分での取組であったり、また、付加価値を増していくための取組について、具体的に何かあればお聞かせください。

前島政府参考人 お答えいたします。

 農福連携を推進する上では、農福連携についての消費者の認知度を高めて、商品の販路をしっかりと確保していくことが重要であると考えております。

 このため、農林水産省におきましては、障害者が生産行程に携わった食品等の農林規格であるノウフクJASの制定、普及によりブランド化を推進するとともに、農福連携に取り組む事業者に対する商品開発やパッケージ改良に係る支援、食品企業、小売企業等を対象とした、農福連携により生産された食品などの商談会の開催などの支援を行っているところでございます。

 また、企業や消費者の認知度を高めるため、昨年初めて、十一月二十九日をノウフクの日に制定いたしまして、厚生労働省などの関係省庁や都道府県などと連携して、農福連携に関するイベントを全国四十三か所で行うなど、農福連携の更なる普及啓発に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、農福連携の取組が広がっていくよう取り組んでまいりたいと考えております。

西岡(義)委員 ありがとうございます。

 様々な取組をされていることで、より一層広がっていくことを私も応援していきたいと思います。外で自然に触れ合いながら共同作業を行う農業は、福祉の分野においても効果が高いものと考えております。来年度の予算は減らされているというように認識しておりますけれども、我が国が抱えている幾つかの課題を複合的に解決していく取組だと思いますので、是非より一層の拡大を進めていただければと思います。

 次の質問に移ります。

 教職員の精神疾患による休職者数の増加について質問いたします。

 文部科学省の調査で、令和五年度の教職員の精神疾患による病気休職者の数は七千百十九人と、前年度から約一〇%増え、三年連続で過去最多を更新するような状況になっています。それに伴い、在職者に占める精神疾患の割合も増加しているという状況であります。

 来年度の教職員の定数改善がプラス五千八百二十七人とありますけれども、定数改善を上回る精神疾患による休職者が出ているといったような状況になっております。働き方改革を進めているにもかかわらずこのような状況になっていることは、非常に懸念を抱いているところであります。

 教職員という仕事は、児童生徒、保護者、校長などの上司、教育委員会など、多くの人々の評価の目にさらされる特殊な職場環境にあると思います。そのような環境にもかかわらず、先生個人が孤立しやすい、そういった特殊な仕事でもあると考えております。一層の働き方改革の推進というのもありますけれども、その働き方改革も、時短、これに偏重しており、現場で時短ハラスメントであったり仕事の持ち帰りが増えてしまわないかということも懸念をしております。

 教職員の精神疾患による休職者について、現在の状況をどのように捉え、また、今後どのように改善していくのか、大臣のお考えをお示しください。

あべ国務大臣 委員がおっしゃるように、今、本当に教師のメンタルヘルス対策は喫緊の課題でございます。私、委員が小学校の方でも護身術の方の指導でかなり入られているということもお聞きいたしました。そういう委員でありますから、多分現場の状況は一番よくお分かりなんだというふうに思っているところでございます。

 私ども、学校の働き方改革の更なる加速化と、学校の指導、運営体制の充実に総合的に取り組んでいかなければいけないと思っておりまして、これに加えまして、令和五年度からメンタルヘルス対策に対しての調査研究事業を実施いたしまして、専門家などと協力をしながら、効果的な取組の研究と事例の創出に取り組んでいるところでございまして、全国的な展開に向けまして、令和六年度補正予算及び令和七年度の予算におきましてもこの経費を計上させていただいているところでございます。

 引き続き、教師の皆さんが心身共に健康な状態で児童生徒と向き合うことができるよう、様々な観点から教師のメンタルヘルスに取り組んでまいります。

西岡(義)委員 ありがとうございます。

 やはり教師の精神疾患というのは子供たちに与える影響も大きいと思いますので、しっかり取り組んでいただければと思います。

 労働衛生の観点から伺いたいと思います。

 労働安全衛生法では、五十人以上の事業場においてはストレスチェックや産業医の選任が義務づけられておりますけれども、小中学校の多くは五十人未満の事業場であり、これらは努力義務でしかありません。

 現在の学校現場で、ストレスチェックであったり、産業医が選任されているのか、このような実施状況について、実情をお聞かせください。

望月政府参考人 学校におけるそれぞれの教員のストレスチェック、あるいは衛生委員会等の労働安全衛生環境の観点からの御質問でございますけれども、おっしゃるとおり、五十人未満の学校におきましては、ストレスチェックというのは努力義務となってございます。

 これは我々も、先ほど大臣から答弁させていただきましたけれども、教師が子供たちと向き合うことができる、そうした心の環境あるいは体の環境というものを整えるために、できる限りストレスチェックを多くの人に受けていただき、健康な形で子供たちと向き合えるという形の環境をつくっていただくよう指導助言を進めているところでございます。

西岡(義)委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が迫ってまいりますので、引き続き精神疾患に関しては取組をしていただくということで、次の質問に行きたいと思います。

 教職調整額の引上げについて質問させていただきます。

 現在の四%から、六年かけて一%ずつ引き上げて一〇%まで増額するという方針となりましたが、余りにも、ちょっと数字的にはしょぼい内容にがっかりしているという次第でございます。

 教員不足が深刻化しておりますが、今やどの業界も人手不足、人材の奪い合いの状況です。教職員という仕事に魅力を感じてもらい、多くの優秀な人材に集まってもらわなければならないのに、これでは若い人たちに魅力を感じてもらえないのではないかと思います。

 教職員という仕事に手を挙げてもらうためにも、私は、段階的ではなく、一気に一〇%まで引き上げるべきと考えますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

安住委員長 手短に。時間が終了していますから。

あべ国務大臣 お気持ちは分かりますが、しっかり頑張りますので、よろしくお願いします。

西岡(義)委員 時間が参りました。ありがとうございました。

安住委員長 これにて西岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、西園勝秀君。

西園委員 公明党の西園勝秀です。

 昨年の選挙で初当選し、初めての予算委員会での質問となります。お時間を頂戴し、感謝申し上げます。

 私は、学生時代に土木工学を専攻し、国土交通省へ入省してから様々な仕事に携わらせていただく中、港湾の建設基準の改定の際には、学識の先生方や技術者の皆様の御助力を頂戴しながら、事務方の責任者としてその編さんをさせていただきました。

 一人の土木技術者として現在の日本のインフラについて強い危機感を持ち続けてまいりましたので、本日はその観点からの質問を幾つかさせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 一点目にお伺いしたいのは、先日、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故についてです。

 まず冒頭、運転手の方の一日も早い救出を心からお祈り申し上げます。また、現場で救出や復旧に当たってくださっている全ての皆様、埼玉県、八潮市、そして国土交通省を始めとする関係の皆様の大変な御尽力に対し、深く敬意を表します。

 この事故は下水道管の中で発生した硫化水素による下水道管の腐食が主な原因と見られています。

 下水道法施行令第五条の八第四項では「下水の貯留等により腐食するおそれのある部分にあつては、ステンレス鋼その他の腐食しにくい材料で造り、又は腐食を防止する措置が講ぜられていること。」とされています。

 国土交通省に伺います。八潮市で破損した下水道管はこの基準に沿って造られていたのでしょうか。御答弁をお願いいたします。

松原政府参考人 お答えいたします。

 下水道法施行令第五条の八につきましては、排水施設及び処理施設に共通する構造の基準を定めているものであり、地方公共団体はこれを参酌して、条例で基準を定めることとなっております。

 この構造基準は平成十六年四月に定められたものであり、一方、八潮市の道路陥没箇所における下水道管路は昭和五十八年に整備されたものであることから、当該構造基準は適用されていないというものでございます。

西園委員 ありがとうございます。

 今、大変重要な指摘がございました。現行の構造基準が施行されたのは平成十六年四月で、事故が起きた八潮市の下水道管が整備されたのはそれよりも以前であることから、現行基準の規定は適用されていないということですね。例えるなら、建築基準法違反とはならない旧耐震基準で造られた住宅と同じ状況にあるということかと思います。

 では、旧基準で造られた下水道管路の延長は全国でどれくらいあるのでしょうか。御答弁をお願いいたします。

松原政府参考人 お答えいたします。

 令和四年度末時点で、全国の下水道管路の総延長は約四十九万キロございます。このうち、委員御指摘の構造基準が施行される前、すなわち平成十六年三月までに整備された管路の延長は約三十八万キロであり、この割合は全体の約七六%に当たります。

 なお、これらの管路につきましても、構造基準の施行後に改築工事に着手したものにつきましては、構造基準が適用されることになります。

西園委員 ありがとうございます。これだけの下水道が旧基準で造られ、破損する危険性が高い地域が多くあるということですね。点検の優先度が高いのは、この旧基準で造られた下水道であるのは間違いないと思います。

 また、今回八潮市で道路陥没が起きた場所は砂が多い地盤とされています。一般的に、砂地盤で地下水位が高い箇所は、液状化のリスクが高く、土砂の流動性が高い地域とされています。

 明日、国土交通省で、大規模な下水道の点検手法の見直しなどについて有識者を交えた検討会が行われると伺っております。大規模災害を防ぐためにはそちらが優先であることは間違いございませんが、先ほど御答弁いただきました旧基準の三十八万キロでしたかね、その下水道管の点検方法についてもしっかりと御検討いただきたいと思います。

 また、その際には、液状化ハザードマップで危険度の高い地域をまずは御確認いただき、優先的に点検を行っていただければと御提案を申し上げます。

 また、下水道の点検は五年に一回以上とされていますが、今回の八潮市のケースでは、令和三年に検査をしたときには補修が必要とは判断されず、検査をクリアしております。

 しかし、検査後三年で今回の事故が発生しました。もし三年目で検査を行っていれば、破損を見つけられたかもしれません。今後更に老朽化が進展すれば、下水道管の強度は加速度的に劣化します。

 それらの意味で、再発防止の観点から、特に旧基準で造られた下水道管については、五年に一回以上の検査の頻度ではなく、例えば三年に一回以上など、検査の頻度や内容を見直す必要があるのではないかと私は考えます。

 これらの点について、国土交通省の御見解をお聞かせ願います。

松原政府参考人 お答えをいたします。

 下水道法に基づく維持修繕基準でございますが、全ての施設において、構造や流入する下水の量などを勘案して、適切な時期に、適切な方法により行うこととしております。このうち、下水の流路の高低差が著しい箇所など、腐食のおそれの大きい箇所については、五年に一回以上の頻度で点検することとしております。

 国土交通省といたしましては、今回の事故が起こったことを重く受け止めまして、このような事態が再び起きないよう、今後、重点的に点検を行う対象や頻度など、大規模な下水道の点検手法の見直しを始め、施設管理の在り方などについて、委員が先ほど御指摘いただきました有識者委員会、明日開催いたしますが、この委員会で議論をすることとしておりまして、その議論や、議員が今御提案いただいたような内容も含めまして、必要な対応をしっかり検討、実施してまいります。

西園委員 前向きな御答弁ありがとうございます。検討会で有意義な議論が行われ、最適な点検方法が見出されることを切に望みます。

 次に、自治体が行う下水道整備に対する国の予算補助について伺います。

 下水道の管理は各自治体が行っており、主要な管渠については設置又は改築に要する費用の半分を国が補助し、半分は自治体が負担しております。

 しかし、各自治体はその予算の確保に苦労しているのが実態です。私の地元は静岡県ですが、浜松市からも国の財政支援を強く求める要望をいただいております。また、自治体は技術系職員の不足にも直面し、インフラの老朽化対策が後回しとなっているケースがほとんどです。このような現状がある限り、個々の自治体任せでは十分な老朽化対策は難しいと思われます。

 その上で、国土交通省にお伺いいたします。自治体が行う下水道整備に対する国の財政的支援、技術的支援はどうなっているのでしょうか。現在の取組状況と今後の方針についてお聞かせください。

松原政府参考人 お答えいたします。

 下水道施設を適切に維持管理、更新していくことは大変重要であり、国土交通省では、予防保全型の施設管理を推進するためのガイドラインの策定や、点検、調査などの施設管理に関する技術開発など技術的支援に取り組むとともに、維持管理のうち、施設の点検や調査、その点検、調査結果に基づく計画的な改築更新などの重要な対策につきまして財政的な支援を行っております。

 また、人口減少により職員や料金収入が減少する中、下水道事業を持続可能なものとするためには、広域連携や官民連携など事業運営の基盤強化に加えまして、分散型システムの活用、リダンダンシーの確保など、地域の特性に応じた適切な施設管理が重要であり、これらの取組を推進するためのガイドラインを策定するなどの技術的支援を行ってきたところでございます。

 さらに、施設管理、老朽化対策を高度化、効率化していくためにDX技術の活用も重要でございます。このため、地方公共団体向けの分かりやすいDX技術カタログを今年度中に取りまとめるなど、DX技術の速やかな実装に向けて取組を進めることとしております。

 国土交通省においては、引き続き、今回の道路陥没事故を踏まえつつ、必要な技術的、財政的支援を行い、強靱で持続可能な下水道システムの構築に取り組んでまいります。

西園委員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁くださったように、財政難や技術者不足に悩む自治体にどうぞお力をおかしください。よろしくお願い申し上げます。

 次に、次期国土強靱化中期計画について伺います。

 埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は日本全国に大きな衝撃を与えましたが、これは老朽化インフラがもたらす事故の氷山の一角にすぎません。被害者が出なかったため大きなニュースにはなりませんでしたが、一歩間違えれば人命に関わる大事故となる事例が全国で多発しています。

 私は、国土交通省に二十八年四か月勤務する中、全国各地でこうした事例をたくさん見てきました。

 お手元の資料を御覧ください。これは鹿児島港の岸壁付近で起きた陥没事故の写真です。長さ十五メートル、幅十メートル、深さ三メートルにわたり地面が陥没しています。これは、矢板岸壁が腐食し、穴が空いたことで内部の土砂が海へ流出し、空洞化した結果、陥没が発生したものです。原因は老朽化です。幸いこの事故では人的被害はありませんでしたが、もし貨物船の荷役作業中に発生していたら、人命に関わる大事故となっていたでしょう。

 日本のインフラは、高度経済成長期に集中的に整備され、多くが耐用年数を迎えています。二〇一二年の笹子トンネル崩落事故は老朽化が引き金となった典型例です。地方自治体も危険性を認識しつつ、予算不足で対策をしたくてもできない状況にあります。現在の予算配分では全国で大事故が頻発するおそれがあると私は大変危惧しております。

 今我が国は、抜本的な国土強靱化が不可欠です。国土の強靱化は、ハード面だけではなくソフト面も重要です。二〇二三年に名古屋港がサイバー攻撃を受け、三日間機能が停止し、多大な経済損失が発生しました。サイバーセキュリティーの強化も急務です。

 石破総理大臣は所信表明演説で、国土強靱化中期計画に関し、おおむね十五兆円程度の現在の五か年加速化対策を上回る水準が適切と御答弁されました。しかしその後、八潮市の道路陥没事故が起き、下水道の老朽化対策が喫緊の課題とされたところです。私は次期五か年の中期計画の予算規模は二十兆円でも足りないと考えております。

 中野国土交通大臣と加藤財務大臣のお二人にお伺いいたします。

 下水道を含むインフラの老朽化対策を次期中期計画にどのように反映させるのか、ソフト施策はどうするのか、それらの予算規模はどの程度か、御見解をお聞かせいただきたいと存じます。

中野国務大臣 西園委員にお答え申し上げます。

 専門的な御知見で、様々重要な御指摘をいただきました。ありがとうございます。

 国土強靱化実施中期計画、先日策定方針が決定されたところでございまして、その中では、下水道の老朽化対策について埼玉県八潮市での道路陥没事故も踏まえて検討することが位置づけられたなど、インフラ老朽化への対応に取り組むということとされております。

 また、御指摘のソフトの対策につきましても、ドローンやロボットなどデジタル技術をフル活用し、ハード、ソフト対策を一体的に推進をしていくということが重要であると考えております。

 先ほど来お話に出ておりました、あした、対策検討委員会というものが第一回が開催されますので、この議論も十分に踏まえまして、下水道を含めたインフラ老朽化対策に必要な対策を実施中期計画に盛り込むという、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

 予算規模につきましては、ちょっと現段階ではなかなかお答えするのは難しいんですけれども、施策の評価、資材価格の高騰等を勘案し、おおむね十五兆円程度の事業規模で実施中の現在の五か年加速化対策を上回る水準が適切との考えに立ち、関係省庁と連絡しながら、本年六月を目途に策定できるよう取り組んでまいります。

加藤国務大臣 今までお話しいただいたように、老朽化が進んでいく、他方で、近年、地震、大雨などの自然災害も頻発化、激甚化をしております。国民の生命と財産を守り抜くため、防災・減災、国土強靱化、この取組を進めることは国の重大な責務と認識をしております。

 先般の法改正を受けて国土強靱化実施中期計画を定めることになっておりますが、令和八年度からの実施中期計画については、総理の施政方針演説で、委員御指摘のように、施策の評価や資材価格の高騰などを勘案し、おおむね十五兆円程度の事業規模で実施中の五か年加速化対策を上回る水準が適切との考え方が示されたところでございます。

 現在、国土強靱化推進会議において、本年六月をめどとして、実施中期計画の策定に向け議論が行われていると承知しております。

 引き続き、必要な施策を実施するための予算をしっかり確保できるよう、財務省としても検討してまいりたいと考えています。

安住委員長 西園君、時間が参りました。

西園委員 中野大臣、加藤大臣、大変ありがとうございます。

 六月に中期計画をまとめられるということでございます。その際には、二十兆円というお言葉を聞けることを切に望みます。

 答弁を、終わらせていただきます、大変ありがとうございました。

安住委員長 これにて西園君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐原若子さん。

佐原委員 れいわ新選組、佐原若子です。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は東北ブロック選出の議員として、東北の皆様のお話を聞いてまいりました。東北には、電力会社で働く方、行政で働く方もたくさんいらっしゃいます。そして、今も、福島第一原発事故によって約二万五千人の方が避難されています。政策に意見を上げたくても上げられない方のお声も現地でたくさん聞いてまいりました。東北の皆さんの命が懸かった声を政治に反映するために、本日は質問のお時間をいただきました。よろしくお願いいたします。

 まず、福岡厚生労働大臣にお尋ねします。

 東日本大震災の被災者の方の国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険における一部負担金、利用者負担金及び保険料の特例減免措置に関する予算ですが、令和二年度で六十億円、執行額が五十六億円、令和五年度で予算四十六億円、執行が四十二億円、今年度予算では二十九億円と縮小しています。

 これに関係しまして、東京電力福島第一原子力発電所事故、以下、福島原発事故と申し上げます、に伴う避難指示区域等における被保険者等の一部負担金、利用者負担及び国民健康保険料、介護保険料の減免措置について、令和四年四月八日付で厚生労働省、復興庁から発出された令和五年度以降の財政支援取扱いについてお尋ねします。

 避難指示の解除に伴い段階的に支援打切りをしていますが、なぜ医療支援を打ち切るのでしょうか。軍拡よりも人々の命と健康のために予算を拡大すべきと思います。大臣はいかがお考えですか。お答えください。

福岡国務大臣 東京電力福島第一原発事故によりまして設定されました避難指示区域等に東日本大震災の発災当時居住されていた方を対象として、医療、介護保険の保険料、自己負担の減免措置を実施してきたところでございます。

 この措置につきましては、令和三年の第二期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針におきまして、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行うとされたところです。

 これを踏まえまして、被災者の方々の実態を把握している関係自治体の御意見を丁寧にお聞きした上で、十分な経過措置を確保する観点から、避難指示解除から十年程度で特例措置を終了すること、急激な負担増とならないよう激変緩和措置を講じる観点から、複数年かけて段階的に見直すことなどの方針を令和四年に決定したものでございます。

佐原委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣、福島の現状を御存じでしょうか。こちらのフリップを御覧ください。

 東日本大震災では、東日本一都九県が十万人当たりの震災関連死亡者数が八・〇人であるのに対して、福島県は百十五・七人、差は歴然としています。阪神・淡路大震災の十六・七人と比較して、その差は歴然としています。

 また、放射線による影響は、年月を経てから症状が表れる晩発性の障害もございます。そして、長期にわたる避難生活による生活習慣、心身へのストレス、それらから慢性的な疾患が増えていることが福島県の健康調査からも報告されています。ですから、一生にわたってフォローするべきだと思うのです。

 さらには、解除されても、放射線量が高く、帰りたくても帰れない方も多くいらっしゃいます。

 医療支援打切りの判断は、どなたが、どのようなチームで決断されましたか。大臣にお尋ねいたします。

福岡国務大臣 この特例措置につきましては、被保険者間の支え合いの下、応分の負担をしていただくことが基本の社会保険にありまして、避難指示区域等に居住されていた方が避難等により保険料や自己負担の支払いが困難となることに配慮し、経済的な支援を目的として行ってきたものでございます。

 その中で、避難指示解除後も長期間にわたり減免措置が継続されているところ、被保険者間の公平性の観点も踏まえまして、被災者の生活実態を把握しておられます関係市町村の御意見を丁寧にお聞きした上で見直すこととしたものでございます。

 一方で、この特例措置の終了後も保険料等の支払いが困難な方に対しては、各自治体の判断による減免であったり徴収猶予制度も設けられてございまして、個々の実情に配慮した取組が行われるよう、自治体とも連携して対応してまいりたいと考えております。

佐原委員 大臣、ありがとうございました。

 この見直しについては、令和三年三月九日に閣議決定されました。その際に、第二期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針という文書が出されています。そこには、被保険者間の公平性の観点から、大臣がおっしゃったように、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行うとしています。

 被保険者間の公平性とは、具体的に御説明いただけますか。

福岡国務大臣 医療保険であったり介護保険制度は、被保険者全体の相互扶助で支えられている制度でございまして、応分の御負担をいただくことを基本としております。

 その中でも、避難指示解除後も長期間にわたり減免措置が継続されるとすると、例えば、避難先の自治体において長期間にわたり減免を受けられる避難民の方と、受けられない当該自治体の住民の方との間で不公平感が生じるという課題がございます。

 そうした意味で、被保険者間の公平性を確保する観点から、被災者の生活実態を把握しておられる関係市町村の御意見を丁寧にお聞きした上で見直すこととしたものでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 しかし、憲法第十四条に示されている法の下の平等は、合理的理由のある差別は認められる相対的平等でなければならないとあります。現行の政府の方針、大臣がおっしゃった方針では、絶対的平等ではないでしょうか。第十四条に反していると思いませんか。

 平成二十三年、医療費援助の開始時には、入院患者と在宅等療養の患者との間の公平性を図る必要を指摘しつつも、被災者の医療の確保の観点から、厚生労働省は入院時の標準負担を免除しました。

 この前例のように、相対的な平等の観点での医療の支援は私は必要と思いますが、福岡大臣も必要だとは思いませんか。

福岡国務大臣 まず、被災地で大変苦しんでおられる方々については、十分その心情については配慮していかなければいけないと思います。

 その上で、関係自治体の御意見を丁寧にお聞きした上で、避難指示解除から十年程度の期間を設けて特例措置を終了することであったり、複数年かけて段階的に見直すことなど、また、先ほども申しましたように、その中でも困っていらっしゃる方々につきましては、各自治体の判断による減免や徴収猶予制度も引き続きできるということ、そういったことできめ細かに対応していきたいと考えております。

佐原委員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたけれども、放射線障害は晩発性の障害もございます。福島第一原発事故で被災された方とそうでない方の医療の保障を同一線上で考えることはおかしいと思います。

 医療支援に当たっては、一世帯当たりの収入が六百万円を超える場合は対象外という条件も加えられました。高収入のため支払いができるからとされていますが、国のエネルギー政策のために被災し、その影響の可能性も否定できないのですから、医療のための費用を自分の収入から捻出させることは公平ではないと思います。

 公平性という観点から、福島原発事故で被災された全ての方を対象とすべきではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

福岡国務大臣 公平性の考え方は、先ほども申しました、避難した先で保険料減免を受けられる方と、そこの当該自治体にお住まいの払っていらっしゃる方、また、そこの当該地域にまたほかの地域から移ってこられた方については保険料が発生しておられますから、そこで減免される方との公平感、そういったものを考慮した上で、ただ、先ほど申しましたように、現場の方の御負担感も感じながら、十年かけて、そして段階的にやっていく、そういった形でやっていきたいということでございます。

佐原委員 福島県では、被曝の影響から県民を守るために継続して健康診査を行っています。これが現場の認識ではないでしょうか。国は現場を見ていないのではないですか。福島の原発事故はなぜ起こったのでしょうか。国策の誤りだと思います。国が責任を持って行うべきではありませんか。能登もそうですよね。国が手を差し伸べるべきことがもっとあるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

 医療費免除のための免除証明書について、今年度で打切りになる方のお宅では、同じ家に住みながら、保険者の処理と、厚生労働省からの自治体等への通達の違いから、有効期限が二月二十八日までの方と三月三十一日までの方がいたり、一か月分の期間修正の手続も被災者自身が行わなければならない、また、そのこと自体が多くの方に周知されていないという状態です。命、健康を担う機関として業務体制の見直しを徹底するべきだと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

福岡国務大臣 済みません、ちょっと質問の趣旨が十分に理解できなかったんですが、そもそも社会保険というのは相互扶助の中でやっているわけでございまして、その中で御負担をいただく。ただ、先ほど申しましたように、当該地域の事情につきましては、関係自治体と十分御相談、お話をしながら進めてきているということでございます。

佐原委員 ありがとうございます。

 関係自治体と連絡をしているのは分かりますが、その不手際で様々な障害が生じていて、施行する時期が違っていたり、いわゆるそういう平等性というか、厚生労働省からの自治体への通達というものをもっとしっかりとしていかなければならないのではないかなと思うんですよ。

 分かりますよ、公平性とか、それはね。だけれども、手順としての、手続上の問題があるということは、やはりそれはしっかりとやっていただきたいなということでございます。

 大臣の御地元はたしか佐賀県ですよね。二〇二四年十二月十八日付の佐賀新聞では、佐賀新聞が玄海原発を擁する佐賀県で行った世論調査で、原発をゼロにすべきという回答が前年から六・一ポイント上昇と報じられています。このことは、福島原発事故から時間がたっても原発への不安が募っていることを示していると思います。

 被災者の方への医療費の減免打切りは、みんなが楽しく暮らせる国を目指すことに逆行していませんか。いま一度、命に関わる支援をお考えの上、継続的で現実的な支援を予算に組み込んでいただけませんか。大臣のお考えをイエスかノーでお答えください。

福岡国務大臣 重ねてのお答えになりますが、十分な期間を設けて当該自治体とも調整の上、行わせていただいているということでございます。

佐原委員 分かりました。

 続いて、武藤経済産業大臣にお尋ねします。

 日本のエネルギー政策について、石破首相は昨年の総裁選で原発をゼロに近づけていく最大限の努力をすると述べられました。しかし、今回のエネルギー基本計画で原発回帰に転じてしまいました。原発を最大限活用すると明記しています。それは国民への裏切りとは言えませんか。

 国の原発推進政策は、結果として日本の産業育成の偏りを生んできました。かつて世界のトップランナーであった日本の省エネ技術を持つ企業は、外国の企業に追い抜かれていきました。

 しかし、今、メイド・イン・ジャパンの、変形可能な太陽光パネル、ペロブスカイトがあります。それですと、都心のビル壁面にも装着できます。福島や遠方の北海道、東北、北東北からわざわざ電力を運ばずに、都心で電力の地産地消も可能です。今度こそ、次世代の国産再生エネルギーを技術として世界に貢献できるのではないでしょうか。省エネといいながら自然を破壊するメガソーラーや巨大風力発電よりも、小水力発電や地熱利用など、本気で脱原発を考えていただきたいと思うのですが、どうお考えでしょうか。

武藤国務大臣 佐原委員にお答えをさせていただきます。

 DXやGXの進展によりまして電力需要の増加が見込まれる、こういうものの中で、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況であります。今委員がおっしゃっていただいたように、ペロブスカイトという、いわゆる太陽光の新しい型もございます。これは、脱炭素電源を確保するため、再エネも原子力も、二項対立ではなくて、共に最大限活用していかなきゃいけないという前提で、我々は方針をお示ししたところであります。

 そういう意味で、原子力についても今日もいろいろ質問をいただきました。いろいろな、様々な御懸念の声があることも真摯に受け止めながら、それぞれの課題にしっかり取り組みながら、丁寧に説明を行いながら原子力も活用していかなきゃいけないと思っております。

安住委員長 佐原さん、間もなく時間なので、まとめに入ってください。

佐原委員 はい、分かりました。

 こちらを御覧いただきたいと思います。昨年の経済産業委員会で武藤大臣と共有させていただきました、経済産業省のミッション、ビジョン、バリューの言葉です。その提案は、世界に誇れるか。その取組は、国民に誇れるか。その行動は、自分に誇れるか。経済産業省のスタッフの皆さんの声を集めて、この言葉が掲げられたそうです。

 しかし、彼らの熱いパッションが何か大きな権力によって潰されていってしまうような私は気がしております。今はまだ日本の子供たちはエネルギーを選択することはできません。だから、私たち大人が責任を持って選択していかなければならないと思います。未来に誇れる日本を志している皆さんと、日本の潜在的なパワーを生かし、未来の子供たちに誇れる安心できる日本を一緒につくっていこうではありませんか。

 間もなく、二〇一一年三月十一日の東日本大震災の日にちが近づいてまいります。この震災で犠牲になられた方々への追悼の意を込めて質問をさせていただきました。

 今日は本当に、大臣、ありがとうございました。

安住委員長 これにて佐原さんの質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 異常な米の価格高騰が続いている問題について質問します。

 業者間での先月の相対取引価格は、全ての銘柄の平均で前年同月より六九%も上昇、五か月連続で最高値を更新しています。福岡県産ヒノヒカリは九九%、二倍に跳ね上がっています。国民みんなが高い米に苦しんでいます。

 私は昨年四月の農林水産委員会で米の在庫がなくなる可能性を指摘しましたが、需給は逼迫していないと政府は手を打ちませんでした。夏には実際、店頭から、スーパーから米が消えたんです。我が党が備蓄米の活用を含めて緊急対応を求めたにもかかわらず、もうすぐ新米が出回ると言って、また手を打たなかった。そして、新米が店頭に並んだら、価格が上昇して歯止めがかからない状況となっています。

 江藤大臣に伺います。

 国民が主食の米が買えずに、そして高くて食べられない事態に至った責任をどう受け止めておられますか。当時の農水大臣は政府備蓄米の放出というのは大きな混乱が起こると否定されましたけれども、ようやく備蓄米の放出を決めました。米が不足しているという認識はございますか。

江藤国務大臣 先日の委員会でも申し上げましたが、現下の状況におけるあらゆる事象に対する責任は私が負う覚悟は、それはいたしております。

 そして、米がないのか、この日本の国にないのかと言われれば、そうではないと思います。作況も一〇一でした。

 そして、平成三十年にいわゆる生産数量の割当てをやめました。そして、農家の方々が自主的に国内の需要の量を見ながら生産をしてきました。そして、ずっとうまくいってきました。

 しかし、去年の八月に南海トラフの緊急地震情報等が出て、御家庭でも混乱が起こり、買いだめも起こり、そして九月から急速に米の値上がりが起こりました。このような事態は誰も多分想定できなかったんだろうと思います。私もびっくりしました。

 そして、私の代になって備蓄米を出すということにいたしましたが、このことによって、いわゆる流通でスタックしている分、これについて解消ができれば、すぐに価格が下がるとは申し上げません。というのは、小売の方々、スーパーも含めて……(田村(貴)委員「ちょっと質問と違います。不足している認識はありますかと聞いた。もういいです」と呼ぶ)

 不足しているという認識は……

安住委員長 ちょっと、座りながらやり取りしないで。

 手短に。

江藤国務大臣 店頭では足りないという事実はありますが、日本全体に米自体がないという認識は持っておりません。

田村(貴)委員 その認識が違うということで、このパネルと配付資料を御覧いただきたいと思います。

 一年間の主食用米の需要は七百五万トンとされました。これに対して収穫量は六百六十一万トンで、このグラフにあるように、四十四万トン、これは農林水産省の資料ですよ、足りていないんですよ。民間在庫量で見ても同期間で四十一万トン少なくて、米が不足しているのは明らかなんですよ。だから店頭からお米が消えたんですよね。不足しているにもかかわらず、政府は主食用米の生産抑制策を取っています。

 そして、二〇二四年から二〇二五年の需要見通し、今度は逆に、このグラフのオレンジ色のところ、急激に下がっていますね。六百七十四万トン。実に三十一万トンの需要が下がると見込んでいます。コロナ禍のときよりも需要が下がる、これはおかしいんじゃないですか。昨年夏から、POSデータによるスーパーでの米の販売数量は、この高騰にもかかわらず減っていません。需要量が三十一万トンも減るなどあり得ないではありませんか。日本食ブームもあって、昨年の訪日外国人旅行者は、一年で一千百八十万人も増えて、三千六百八十七万人と大幅に増えています。需要が急落するなどあり得ません。

 大臣、需要に供給が追いついていないから、米の流通量が減って価格高騰を生んでいるのではありませんか。いかがですか。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 需要の見通しについての御質問がございました。

 昨年の、五年七月から六年六月までの一年間の需要見通しについては、七百五万トンの実績となったところでございますけれども、本年、昨年の六年七月から今年の七年六月の需要見通しにつきましては、本年一月三十一日の食糧部会でも御議論いただきまして、一人当たりの消費量の減少、人口減少の傾向に加えまして、価格が昨年よりも上昇している、最近の販売量は前年より減少している、こういったことを踏まえて、六百七十四万トンとする基本方針は適当との答申をいただいておるところでございまして、こういったもので見通しているところでございます。

田村(貴)委員 では、何で米がこんなに高騰しているのかということなんですね。

 JAなどの集荷量が二十一万トン減少していることに対して、江藤大臣は、投機目的の業者が言ってみたらスタックしているということも述べておられます。しかし、二十一万トンの米というのは、例えば東京ドームにその二十一万トンを敷き詰めたら高さ六メートルになるんですよ、それほどの量なんです。それを、今出てきた業者がどこか買って、そして冷蔵倉庫もないところにこれだけ備蓄できるわけないんですよ。それは本当に一部の現象面なんです。単に需要に対して生産量が足りないということなんです。まず、出発点としてこの点を認めるべきではないかと思います。

 お米不足を認めないんですよね。なぜ認めないのか。備蓄米を放出しないといけない。放出するとどうなるか。米価が下がる。そうしたら生産者が困る。でも、その生産者に対しては、政府は直接支援をしたくない。だから、どこかに問題がある、何かのせいにする。そういうやはり詭弁的な考え方は私はよくないと思います。変えていかないといけないんです。

 政府は、備蓄米二十一万トンを放出すると決めました。しかし、不足分を解消するには至らない可能性があります。放出した米は調達に苦しんでいる小さなお米屋さんにちゃんと届くんでしょうか。そのことについて聞きたいと思います。

江藤国務大臣 できるだけ早く消費者の方々のお手元に届けるようにするために、集荷業者の方々にお米をお渡ししますが、それから、いわゆる卸の方々にはすぐ精米していただくということを要件とするということにしております。精米すれば賞味期限は一か月しかありませんから、持っていても意味がありませんので、ですから、ここでスタックすることがないということであります。しかし、町の小さなお米屋さんにおいては精米する能力を持っていらっしゃいますので、そういう方々については例外にしたいと思っております。

田村(貴)委員 買い受けたお米は流通に回すかも分からないけれども、元々持っていたお米を惜しんで持っていたとするならば、これは変わらないことになるんですね。そうしたところに監視をしたりとか追跡したりとかすることはするんでしょうか。いかがですか。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 今回販売します備蓄米につきましては、集荷業者から卸への販売、あるいは卸からの販売というものをきちんとひもづけて報告していただくということにしております。

 加えまして、通常の販売数量あるいは在庫量につきましては、また別途、私ども、毎月きちんと報告徴求で数字を取りまして公表しておりますので、そういった両面で対応していきたいと考えております。

田村(貴)委員 お米の需要に供給が追いついていないのは事実であります。価格高騰が続いて、さらには店頭からまた米が消えることになる。それを回避するためには米の増産へと切り替えていく必要があります。

 お米の生産者は今どういう状況にあるか。この四半世紀で百二十一万人も稲作農家が減りました。次の資料とパネルを御覧いただきたいと思います。お米の農家は、この四半世紀で三分の一に激減しています。緑の部分ですね。そして、茶色の部分、基幹的農業従事者の減少幅よりも大きいわけです。そして、この二十年間で、八百万トン以上あった生産量は二百万トンも減少して、作付面積は四十万ヘクタール減少しました。なぜこうなったのか。お米を作って生計が成り立たないからではありませんか。

 農林水産省、営農類型別経営統計調査で二〇二三年の水田作経営の農業所得というのがありますが、これは幾らになっていますか、数字だけ答えてください。

深水政府参考人 お答えいたします。

 二〇二三年の水田作経営の農業所得は、米を販売している経営体全ての平均で九万七千円、また、農業の所得が主である主業経営体で見ますと二百七十万円となってございます。

田村(貴)委員 米農家は年収九万七千円ですよ。時給なら百円です。二〇二二年は年収一万円です。時給十円だったんです。米農家は、ずっともう十年こういう状況で来ているんですね。米を作って飯が食えねえ、多くの方がおっしゃいます。こういう状況で後継ぎができないのは当然ではありませんか。

 帝国データバンクが、今年一月に米作農業の倒産、休廃業、解散動向を発表しました。大臣、御存じですね。高い米価のさなかであっても、赤字が常態化したことによって、米農家の倒産、廃業が過去最高、最多、前年比二割増と急増しています。こういう状況、大臣はどう御覧になっていますか。

江藤国務大臣 何といっても、生産基盤を守らなければいけない、そして農業者を守らなきゃいけない、それが農林水産省として目指すべき方向性だと思っています。このような現象が起こっていることは非常に、よいことであるはずがない、決して好ましいことであるはずがないと思っております。

 いわゆる倒産件数は六件です。二割ということでありますが、六件は昨今の生産費の上昇なんかでこういうことになったということも考えられます。それから、あとの三十六件は休業であったり解散であったりします。これはやはり、後継ぎがいないとか担い手がいないとか、そういった構造的な問題もありますので、様々な政策をいろいろ検討いたしまして、このようなトレンドが止まるように努力をしていきたいと思っております。

田村(貴)委員 江藤大臣、生産者は本当に厳しい窮状下にあります。大臣は、就任後、農政の大転換が必要だ、必要な予算、これを確保することが不可欠と繰り返し述べてこられました。しかし、その江藤大臣の下で来年度の農林水産予算は僅か〇・一%増、二十億円しか増えていません。

 加藤財務大臣、聞いてくださいね。軍事費は三年間で三兆三千億円上げているんですよ。農林水産予算、全然足りないじゃないですか。大臣の言われる、大転換と言うけれども、これだったら農家の所得を増やすわけにいかないんですよ。

 農水省にお伺いします。二〇一〇年、第二十二回食料・農業・農村基本政策審議会企画部会に農林水産省が提出した資料があります。食料自給率五〇%が達成された場合の財政負担試算、ここでは、戸別所得補償、経営安定対策に年間総額幾ら必要だと試算されていますか。数字だけ答えてください。

山口政府参考人 お答えいたします。

 約一兆円程度と記載されております。

田村(貴)委員 食料自給率を五割に引き上げたら、国が一兆円あとお金をつけなきゃいけないと。お米だけで五千億円、小麦そして大豆その他で五千億円です。価格保障、所得補償というのは、もう海外では行われています。しっかり予算措置をしなければ駄目じゃありませんか。食料自給率五割を目指さないといけないじゃありませんか。

 農家は展望を見出せないでいます。今、米価は少し高いけれども、いつまでも続かない、そしてまた下がるであろうと。展望を持ってもらうためには、国民が安心してお米を買うことができるためには、やはり政府がしっかりと財政措置をする、そして増産に踏み切る、そして生産者を国が直接支援する以外にないと私は考えますが、大臣の大転換というのは、そういう方向性があって大転換じゃないんですか。いかがでしょうか。

安住委員長 江藤農林水産大臣、間もなく時間が来ますので、簡潔にお願いします。

江藤国務大臣 構造の改革でありますから、これまでの政策を全てテーブルの上にのせて再検討することは当然だと思っております。

 ですから、これから、私は、前の大臣のときにも戸別所得補償全体について否定的なことを言ったことはありません。ただ、その内容については十分に検討しなければなりません。ヨーロッパ並みということはよく言われますが、それが果たして可能なのか。

 そして、予算の総額についていろいろ御指摘をいただきましたが、これから基本計画を作ります、基本法に基づいて。それによって何をするか具体的に決まりますので、それによって必要な予算は堂々と要求してまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 食料自給率を増やして農家を直接支援する、そのことを強く求めて、今日の質問を終わります。

安住委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後十分、よろしくお願いいたします。

 加藤大臣、よろしくお願いいたします。

 まず、先般の本会議でも中西健治議員の方から質問がありました、税収弾性値についてお伺いをいたしたいと思います。

 これは、GDPが一増えたときに、じゃ、税収がどれぐらい増えるかということなんですが、中西議員も御指摘しておられましたが、過去四十八年の平均値を取っているということなんですね。けれども、これは普通に考えると、制度改正要因を外せば、長期で見れば、大体一の周辺に落ち着くんですよね。大体一の周辺のところに落ち着いていくはずなんです。そうすると、今の計算方法だと、正しく税収を判断するのに適当な指標になっていないのではないかと思いますが、大臣の答弁を求めたいと思います。

加藤国務大臣 後年度影響試算のことでお話をいただいていると思います。

 これは、国の中期的な財政の姿を示すために、名目GDPは所与のものに対して、税収弾性値というものを試算することによって税収を見ていくということでございます。

 本年一月に公表した令和七年度の後年度影響試算では、昭和五十一年度から直近令和五年までの期間、今言われた四十数年かな、の平均的な税収弾性値である一・二、従前は一・一だったんですが、用いたところであります。

 これは、ショックを受けて経済が後退したり、また回復する過程においては税収弾性値が大きくなる傾向が見られること、分母となる名目成長率が小さい場合、税収弾性値が大きな振れを示す傾向が見られることなどを踏まえて、こうした影響をならすために、長期間にわたって計数を参照したところでありますので、まさにそうしたこれまでの流れを見ながら、税収弾性値というものを試算をさせていただいているということでございます。

緒方委員 なので、要するに、今年度どれぐらい税収が出るんですかというこの税収弾性値、予算を審議する際の資料で出てくるわけですけれども、それを見ても、どうなるんだということが分かる指標にはなっていないですよねということを聞いています、大臣。

加藤国務大臣 今年度の税収というか毎年度の予算の税収については、こうした税収弾性値というものを使っているわけではないことは御承知のとおりであります。税目ごとに、予算編成時点までに判明している各税目の足下の課税実績や、上場企業等への個別のヒアリング結果などを踏まえて試算を行っております。その際、様々なデータを勘案しながら丁寧な見積りを行っております。

 年度中の景気動向や外部経済要因に応じて実際の税収見積りが上振れする場合も下振れする場合もあることは御指摘のとおりでありますので、引き続き、税収見積りの精度、この向上を図っていきたいと思っております。

緒方委員 制度改正要因とかもきちっと織り込みながら、もう少し短期の税収弾性値を出すべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 税収弾性値は、マクロ的です、数字。税収をマクロ的に見るという見方も決して否定はしませんが、私どもは、消費税は、法人税は、所得税は、そしてそれぞれの要因を細かく見ながら積算をさせていただいているということで、各年度の税収見積りはそういうやり方をやらせていただいているということであります。

緒方委員 けれども、これは今説明を聞いても、どうせ一・一とか一・二しかならないわけであって、そうすると、何となく、それぐらいしか税収は増えないのかなというふうにみんな思っちゃうわけですよね。

 私、それがいいとか悪いとかじゃなくて、何でこんなふうにしているのかなというのをちょっと想像してみたんですけれども、低めに見せておきたいというふうに、財務省の中にそういう思いがあるのかなというふうに思うんですよ。

 何でかというと、どうせやってくる補正予算に対応しなきゃいけないので、その上振れ分を残しておかなきゃいけないので、こういう税収弾性値とか、どれぐらい税収が上がりますかというのを低めに見積もっているということではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。

加藤国務大臣 例えば法人税について申し上げれば、景気回復局面においては、前年度には欠損法人として納税していなかった企業が黒字化をして納税を開始する場合があることから、同様に黒字化で、停止していた配当を再開する場合もあるということで、その年度のみ税収の伸び率が名目経済成長率を大きく上回る場合がある、そうしたことは事実だというふうには思います。

 ただ、そうしたことも踏まえながら、先ほど申し上げた、予算編成時点に判明している各税目ごとの足下の課税実績、上場企業等への個別のヒアリング結果、こういったものを踏まえて税目ごとに積算を行うとともに、法人ごとのデータを用いて、今申し上げた繰越欠損金の影響なども加味しているところでございます。

 さらに、上場企業が開示している配当予想、政府経済見通しにおける翌年度の生産、消費の見通しなどを踏まえ、配当税収の伸びを見積もるなどの取組を行っているところでございます。

 引き続き、先ほど申し上げたように、見積精度の向上には努力をしていきたいと思っております。

 なお、補正予算のための財政余力を残すためという御指摘がありましたけれども、そういうことではなくて、真摯にその年度の税収見積りを行っているところでございます。

緒方委員 私、予算編成の文化について考えるんですけれども、何となく、全ての予算編成が、補正予算が必ず来るということを前提に全てが動いているということが、結構、諸悪の根源なのではないかと思うんですね。

 毎年、補正予算と次年度の当初を一体編成するのが常態化しているんです。その結果、今の税収弾性値の話から少し外れますけれども、補正予算に緊要性が欠けるものが多く含まれる。編成するときに、当初に入れようと思ったんだけれども、補正で面倒を見ますからというのが常態化しているというのもあるんだろうと思うんですね。つまり、当初予算という玄関先をきれいにしながら、当初に入れられないものを補正に織り込んでいるということです。

 例えば、費目ごとに見ていったんですが、例えば中小企業対策費というのは当初ではほとんどつかないんですね。そして、ほぼ補正で見ている。つまり、霞が関の中にそういう緩やかな共通理解があるということですよ。中小企業対策費なんというのは、当初でつけずに補正でつけるからそれでいいだろう、そういうことじゃないですかね。

 おかしいと思いませんか、大臣。

加藤国務大臣 まず、毎年度の予算編成においては、予算事業の中身、見積りをよく精査した上で、年度中に必要になる経費を計上する、補正予算は、財政法第二十九条の規定にのっとって、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出に充てるために編成するというこの観点に立って、取組をさせていただいているところでございます。

 確かに、委員がおっしゃっているように、例えば、概算要求で要求した事業が、結果的に進行年度の補正予算において同様の事業について予算措置がなされている例があるということは、そのとおりであります。

 ただ、そのような事業については、あくまでも補正予算の要件である緊要性が認められ、事業の必要性などを精査した上で、そうした補正予算において予算措置を行っているということでございます。

緒方委員 私が尊敬してやまないある財務大臣経験者が、七、八年前に、おい緒方、最も効果のある行革って何だと思うと私に聞いたことがあります。何ですかと聞いたら、最も効果のある行革というのは、補正をやらないという前提で当初予算を組むことだ、そうすれば、本当に必要なものだけを予算に入れる真の査定が始まると言っていました。

 大臣、思いを共有いたしませんか。

加藤国務大臣 どなたがおっしゃったか、ちょっと今、顔を思い出しながら思い出していたところでございますけれども、先ほど申し上げたように、各年度においての予算は、まさにその当該年度に必要なものを計上する、こういう姿勢でこれまでも取り組んできたところでございますし、引き続き、補正予算があるということを前提とするのではなくて、当該年度に、当該というか、例えば今では令和七年度についてお願いをしているわけでありますから、当該年度に必要な予算、それをしっかり計上するということで取り組んでいるところでございます。

緒方委員 最後の質問にします。

 その観点から、石破総理が昨年の総選挙の最中に、昨年度補正を超える規模をコミットしたというのは、これは最悪だったと思っています。各役所に、プラス十三兆円の予算要求をしていいのだという、そういう誤解を与えていると思います。あれはまずかったというふうに思いませんか、加藤大臣。

加藤国務大臣 総理の御指摘でありますが、総理が昨年十月の段階で、補正予算について、昨年を上回る旨の発言をされたことは承知をしておりますが、これは、三年間の岸田内閣の取組により、デフレ脱却に向けた歩みが着実に進み、高付加価値創出型経済への移行のチャンスを迎える中で、また、きちんとした積み上げを前提にということを再三言われた上で、それを確実にするためには岸田内閣が講じてきた昨年を上回る規模が必要ではないかという、めどの発言をされたものであります。

緒方委員 終わります。

安住委員長 これにて緒方君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日午前八時五十五分から委員会を開会し、集中審議を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.