衆議院

メインへスキップ



第2号 令和7年2月28日(金曜日)

会議録本文へ
令和七年二月二十八日(金曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 牧島かれん君

      河野 太郎君    小森 卓郎君

      西銘恒三郎君    安住  淳君

      阿部祐美子君    今井 雅人君

      齋藤 裕喜君    池下  卓君

      空本 誠喜君

   兼務 下野 幸助君 兼務 西園 勝秀君

   兼務 堀川あきこ君 兼務 吉良 州司君

    …………………………………

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     林  芳正君

   国務大臣

   (復興大臣)       伊藤 忠彦君

   国務大臣

   (領土問題担当)     坂井  学君

   国務大臣

   (防災庁設置準備担当)

   (経済財政政策担当)   赤澤 亮正君

   環境副大臣        中田  宏君

   厚生労働大臣政務官    吉田 真次君

   防衛大臣政務官      金子 容三君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       鷹箸 博史君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡  朋史君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  清水  巌君

   政府参考人

   (内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局審議官)          江浪 武志君

   政府参考人

   (内閣官房防災庁設置準備室次長)

   (内閣府政策統括官)   高橋 謙司君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        風木  淳君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        高杉 典弘君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大濱 健志君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     桜町 道雄君

   政府参考人

   (復興庁審議官)     瀧澤  謙君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     大村 真一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 田口精一郎君

   政府参考人

   (財務省主税局国際租税総括官)          細田 修一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森友 浩史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  真弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡本 利久君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    野村 知司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            谷村 栄二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   辻本 圭助君

   政府参考人

   (国土交通省海事局次長) 舟本  浩君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  服部 真樹君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 飯田 博文君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小田原雄一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房施設監) 茂籠 勇人君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 寺田 広紀君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大和 太郎君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  青木 健至君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  田中 利則君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           小野 功雄君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    石川  武君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        嶺  康晴君

   内閣委員会専門員     田中  仁君

   安全保障委員会専門員   飯野 伸夫君

   予算委員会専門員     中村  実君

   衆議院調査局第三特別調査室長           南  圭次君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     中野 英幸君

  今井 雅人君     齋藤 裕喜君

  池下  卓君     藤巻 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  中野 英幸君     鈴木 貴子君

  齋藤 裕喜君     阿部祐美子君

  藤巻 健太君     空本 誠喜君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     小森 卓郎君

  阿部祐美子君     今井 雅人君

  空本 誠喜君     阿部 弘樹君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     河野 太郎君

  阿部 弘樹君     池下  卓君

同日

 第二分科員下野幸助君、第四分科員堀川あきこ君、吉良州司君及び第六分科員西園勝秀君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和七年度一般会計予算

 令和七年度特別会計予算

 令和七年度政府関係機関予算

 (内閣、内閣府(内閣府本府)、復興庁及び防衛省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

牧島主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算及び令和七年度政府関係機関予算中内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。西園勝秀君。

西園分科員 公明党の西園勝秀です。

 私は、一九九五年に、国土交通省の前身である運輸省に入省しました。本日は、運輸省出身の大先輩であられます赤澤大臣に質問する機会を与えていただき、大変ありがとうございます。

 まず初めに、防災庁が取り組むべき事前防災とはどのようなものかについて伺います。

 私は、赤澤大臣がお書きになられた防災省創設に関する論文を拝読させていただき、大変感銘を受けました。この中で、赤澤大臣は、日本航空一二三便墜落事故、また阪神・淡路大震災で多くの貴い人命が失われた経験が原体験となり、あらゆる災いから一人でも多くの人命を救いたいという熱い思いが私の体の中で燃えていると表現されています。こうした思いを持つお方が防災庁の設置をリードしてくださることが大変心強く、赤澤大臣の防災立国にかける熱い思いに深く共感する一人として、本日は質問に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、復興庁に出向し、東日本大震災からの復興の教訓を取りまとめた復興政策十年間の振り返り、いわゆる復興政策十年史の編さんに携わってまいりました。被災地を回り、現地の皆様から様々な御意見を伺い、将来的に起こり得る南海トラフ地震などの大規模災害に備え、今、何をしなければならないのか、後世に何を伝えなければならないのか、本当に肌身で実感してまいりました。

 東日本大震災の復興政策を振り返る中で、今でも深く教訓として心に残っていることがあります。それは、東日本大震災の津波で当時の町長と職員計二十八人が犠牲となった岩手県大槌町旧役場庁舎の解体をめぐる議論です。大勢の方が亡くなられた庁舎を見るのがつらいという方々と、震災の遺構として将来の教訓を残すために残すべきだと訴える方々との間で意見が分かれ、町を二分する大きな議論となりました。津波でこれ以上ない辛酸をなめた被災者である現地の皆様が、更に一重、つらい選択を迫られる事態に追い込まれました。

 私は、語り部の方から多くのお話を伺いましたが、そのうちの数名の方がおっしゃっていたことが胸に刺さり、これまでずっと忘れられません。それは、本来であれば被災した皆が心を一つにして復興への歩みを進めていかなければならない、つらい思いを共有できる被災者同士だからこそ一緒に町づくりをしていきたい、それなのに、町長を始めとする役場の幹部が皆亡くなり、意思決定をする人がいなくなったために、被災者同士が語気を強めて言い争うような事態に発展してしまった、もし事前にルールがあればこのようなことにならなかったのではないかと思うとそれが本当につらいんですと肩を落としておっしゃっておられた姿でした。

 大槌町旧役場庁舎が解体されたのは、二〇一九年三月、東日本大震災から八年後です。被災後の復興の在り方を事前に決めていたとしたら、八年もの時間を費やす必要はなかったのかもしれません。この教訓を生かし、災害後の混乱を最小限に抑え、迅速で持続可能な復興を可能にする仕組みを構築するべきです。

 政府は、防災業務の企画立案機能を飛躍的に高め、平時から不断に万全の備えを行う、本気の事前防災に徹底的に取り組むとともに、災害発生時の司令塔機能を抜本的に強化するために、令和八年度中に防災庁設置に向けた検討を行うとしております。そのためには、現在、各省庁が担う防災業務を俯瞰的に捉え、国や自治体等が作成する各種計画が整合的に適切に実施されなければなりません。何が必要で、今、何が足りないのかを、防災庁は正確に把握する必要がございます。そして、司令塔として、政府の災害対応をリードしていかなければなりません。

 防災庁が取り組むべき事前防災とはどのようなものを考えているのか、御答弁をお願いいたします。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 災害に備える事前防災につきましては、物資の備蓄や訓練、避難生活環境の整備、防災DX、事前復興の推進などに取り組むことが重要と考えており、防災庁につきましては、これら防災業務の企画立案機能の抜本的強化に取り組むとともに、政府の災害対応の司令塔としての機能を担う組織としていきたいと考えております。

 また、防災庁設置までの間も、令和七年度から、都道府県とのカウンターパートとなる地域防災力強化担当を置かせていただきまして、自治体と連携し地域の防災体制を強化するとともに、事前防災対策総合推進費を創設いたしまして、関係省庁等が行う事前防災の強化につながる取組を促進することとしております。

 令和八年度中の防災庁の設置に向けまして、現在、有識者に集まっていただいたアドバイザー会議を開催をしておりまして、専門家の御意見をいただきながら、防災庁を中核として、国や自治体が連携して一体となった災害対策を効果的、効率的に実施できる組織づくりを進めてまいりたいと考えております。

西園分科員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁された事前防災の取組は本当に重要です。東日本大震災では、大量の瓦れきが発生し、その仮置場が不足していたことが原因で、復興が大幅に遅れました。広域災害にあっては、被災した自治体が単独で瓦れきの処理を行うのは不可能です。例えば、私が住む静岡市では、南海トラフ地震で発生が見込まれる瓦れきを仮置きできる場所は、想定される発生量に対して十分の一もございません。全国の自治体が同じような状況にあります。そのため、災害廃棄物の処理を被災自治体のみに負わせるのではなく、他県も含めた広域で行う仕組みが必要です。

 現在、環境省は、南海トラフ地震などの広域災害を想定し、自治体が連携して災害廃棄物の処理を担う地域ブロック協議会を全国八か所に設けています。災害時の広域連携を確実に実行するため、各都道府県のカウンターパートとなる防災庁の地域防災力強化担当がこの地域ブロック協議会の枠組みに参画し、その推進に取り組むべきと考えます。

 また、復興事前準備も、事前防災の中核を担う取組として重要です。例えば、応急措置や罹災証明書の発行、被災者情報の収集など、被災後に発生が想定される膨大な事務作業に事前に備えることで、被災後の職員の負担軽減を図ります。また、自治体における復興まちづくりに対応可能な人材を育成します。これにより、被災後、応急復旧と並行して同時に復興まちづくりに取りかかることで、復興までの時間短縮を図ることが可能となります。こうして行政の仕事が円滑に行われることは、被災者の負担軽減にも直結し、彼らの生活再建を強力に後押しすることにつながります。

 現在、国土交通省は、復興まちづくりのための事前準備ガイドラインを策定し、各市町村に事前復興まちづくり計画を取りまとめるよう促しております。大規模災害における被害を最小限に抑え、発災後の円滑な復興を図るため、平時から土地利用やインフラの復旧の方針を定める事前復興まちづくり計画は、事前防災の重要な要素です。しかし、その必要性が十分に認識されておらず、全国千七百八十八の全ての自治体のうち、それを策定しているのは、作業中を含め、僅か三%にとどまっています。

 先ほど御答弁いただいた各都道府県のカウンターパートとなる防災庁の地域防災力強化担当には、国土交通省と連携し、是非その推進を図っていただければと思います。

 事前復興まちづくり計画の策定に当たっては、住民が被る自然災害のリスクを最小限に抑えることが重要です。具体的には、ハザードマップを活用し、危険度の高い地域を極力避けるとともに、仮設住宅や復興まちづくりの適切な場所を選定することが求められます。

 しかし、全ての自治体が、洪水、土砂災害、高潮、津波、液状化などのハザードマップを一〇〇%作成できていないのが実情です。本気の事前防災を進めるというのであれば、まず最初にやるべきは、ハザードマップの整備だと思います。ハザードマップが生かされず、作成されていない自治体もある中、いま一度、ハザードマップの重要性を認識し、作成を周知させ、事前防災に生かすべきと考えますが、政府の御見解をお聞かせ願います。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 想定される地域のリスクと災害時に取るべき対応を可視化したハザードマップを作成、周知することは、災害による被害を軽減するために大変重要であると考えております。

 ハザードマップの種類により活用方法に違いはありますけれども、例えば津波とか洪水を念頭に置きますと、住民の防災意識を高めまして災害時の適切な避難行動につなげるといった役割が期待されるところでございますし、避難の実効性を高めるための防災訓練への活用、あるいは住民の土地利用とか住まい方の工夫とか事前復興や発災後の町づくり等での活用などが期待されるところでございます。

 引き続き、関係省庁とも連携しながら、ハザードマップの作成や活用について、御指摘を踏まえてしっかりと周知をしていきたいと考えております。

西園分科員 ただいまおっしゃったように、一口にハザードマップといっても、その種類は本当に多岐にわたります。それを作成するためには最新のデータや技術者の高度な知見が必要であり、予算もまた必要です。ハザードマップで危険な地域に区分されるとその土地の地価が下がるなどの理由から、ハザードマップの作成が困難なケースも多く見られます。大変な道のりであるとは思いますが、自治体に対し、どうかきめ細やかな御支援をお願いいたします。

 次に、防災庁設置に当たり、防災訓練を通じた課題のあぶり出しについてお伺いいたします。

 私は、役人時代、毎年秋に実施される防災訓練に参画し、多くの貴重な経験を積みました。訓練を通じて現場の状況を再現することで初めて気づく課題も多くあり、その重要性を改めて痛感した次第です。例えば、危機対応マニュアルが存在していても、実際に訓練を行うと、状況にそぐわず形骸化している部分があると判明したこともあります。また、部署間で役割が重複し、責任の所在が不明確なために対応が遅れるといった問題も少なくありませんでした。こうしたトラブルや行き違いを挙げれば、枚挙にいとまがありません。

 防災訓練を実施する目的は、こうしたリスクを最小化し、実効性のある防災体制を構築することにあります。そのためには、現行の防災体制の課題や不足している点を正確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。国や自治体、ボランティアを始め、全ての関係者が参加する防災訓練を実施し、その結果を分析しながら継続的に改善を図ることが求められます。

 防災庁の設置にあっても、こうした訓練を通じて明らかになった課題に的確に対応し、実効性のある防災体制を築くことが重要と考えますが、政府の御所見を伺います。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘をいただきましたように、防災訓練は、実災害での対応に備えるということと同時に、訓練を通じて得られた課題をそれぞれ改善につなげていくというためにも大変重要であると考えております。

 先ほど申しましたように、来年度から内閣府防災において設置を予定しております都道府県のカウンターパートとなる地域防災力強化担当につきましては、備蓄、ボランティアとの連携とかのほかに、こうした訓練の取組、これも大変重要だというふうに考えておりまして、自治体と連携して、防災の訓練を実施しながら、課題の把握や施策の改善に努めていきたいというふうに考えております。

西園分科員 ありがとうございます。

 ただいま御答弁にもあったとおり、自治体やボランティアとの連携、これが本当に鍵となってまいりますが、支援の実効性を高めるためには、具体的な連携の仕組みが求められると思います。その意味で、防災庁の設置に当たり、地域防災力強化担当を置く意義は大変大きいと思います。例えば、都道府県ごとのカウンターパートとなるこの地域防災力強化担当は、自治体やボランティアとどのように協力し、訓練や備蓄の強化を進めるのか。また、地域ごとに異なる課題に対応するための情報共有の仕組みや、訓練の成果を防災政策にどのように反映させるのか。

 こうした課題に対応するには、防災庁が司令塔となり、各省庁の職員が専門性を発揮しながら、政府全体で漏れなく、重複なく防災活動を進めることが求められます。特に、被災現場では混乱が生じるため、防災庁が被災自治体と緊密に連携し、必要な業務を各省庁に的確に指示する必要がございます。

 例えば南海トラフ地震が発生した場合、防災庁は被災自治体とどのように連携し、自衛隊やボランティアの支援をどのように調整するのか。現時点で想定している防災庁の役割や対応のイメージをお聞かせください。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 南海トラフ地震等の大規模災害により被災した自治体が機能を維持し、防災対応を適切に実施していくためには、各自治体における業務継続体制の確保、あるいは自治体同士の広域連携、官民連携の強化に向けた取組の推進が重要と考えております。

 このため、自治体間で応援を行う応急対策職員派遣制度、国による応援組織体制の整備、あるいは民間企業との連携協定の締結、また避難所運営等を担う地域のボランティア人材の育成研修等の取組を進めているところでございます。

 防災庁設置準備アドバイザー会議におきましても、あらゆる主体が連携した総力戦での災害対応、あるいは、プロである民間企業等による餅は餅屋の災害対応、官民連携のコーディネート機能の重要性などについて、有識者の先生方からも御意見をいただいているところでございます。

 こうした御意見も踏まえつつ、引き続き、様々な角度でいろいろな御意見をいただきながら、防災庁設置に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

西園分科員 ありがとうございます。

 災害時には、多くのボランティアが被災地に駆けつけ、復旧復興活動を支えています。その受入れ拠点として、災害ボランティアセンターが被災地の市区町村福祉協議会に設置されることが一般化しています。

 例えば、東日本大震災では、このセンターの設置により全国から集まった延べ約百五十万人のボランティアが適切に配置され、瓦れき撤去や炊き出し、心のケアなど、多岐にわたる支援が実施されました。さらに、学生や企業ボランティアが漁業支援を行い、ふんばろう東日本支援プロジェクトでは、被災者一人一人のニーズに応じた物資提供が行われました。

 また、熊本地震では、益城町ボランティアセンターが設置され、避難所での炊き出しや仮設住宅での見守り支援を実施しました。さらに、NPOや大学生ボランティアが、倒壊家屋の片づけを行うだけでなく、高齢者や障害者などの方々に寄り添い、精神的なケアも行いました。

 一方で、個人情報保護の観点から、行政が中心となって行わなければならない支援もございます。その一つが、在宅避難者への支援です。令和六年能登半島地震では、避難所に行かず自宅で避難生活を送られる方や、地域住民が自主的に開設した避難所に身を寄せておられる方が多数おられました。しかし、在宅避難者の状況把握が難しく、十分な支援が行き届かない課題が浮き彫りとなりました。今後、防災庁はこうした在宅避難者をどのように把握し、適切な支援を提供していくのか、政府の見解をお聞かせ願います。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 避難者の皆様の状況の把握に当たりましては、訪問等によるアウトリーチの実施や、被災者の方からの情報発信を行っていただく仕組み、あるいは民間支援団体との情報連携体制の構築、そうした枠組みの構築について、平時から検討を進めておくことが重要であると考えております。

 また、マイナンバーカードやマイナ保険証、スマホなどのデジタル技術を活用いたしまして、避難所に来た方のみならず、在宅とか車中泊の方も含めた被災者全体の情報を把握できる体制を整備していく必要があるというふうに考えております。

 避難生活の支援に当たりましては、場所、避難所から人、避難者のそれぞれの人への支援といったふうに考え方を転換していくことが重要だというふうに考えておりまして、避難所以外で避難生活を送る方も含めまして、避難者の皆様の状況把握をしっかりと行いまして、被災者一人一人に対して適切な支援が実施できるように、防災庁の設置に向けて議論をしていきたいと考えております。

西園分科員 御答弁ありがとうございます。

 ただいまおっしゃってくださったように、場所から人への支援に考え方を転換すること、これはとても重要なことだと思います。

 近年の大規模災害では、高齢者や障害者など要配慮者の避難生活が長期化し、適切な福祉サービスを受けられないケースが多発しています。例えば、東日本大震災では、福祉避難所の開設が遅れ、一般の避難所で適切な介護を受けられない高齢者が多数発生しました。また、熊本地震では、車中泊を余儀なくされた障害者が血栓症を発症する事例が相次ぎ、移動支援や見守りの必要性が改めて指摘されました。

 こうした状況を受け、公明党は、発災後に要配慮者への支援が後回しにされる課題を重く受け止め、災害のたびに福祉支援の充実に向けた対応を推進してきました。

 そして、昨年三月の参議院予算委員会で、当時の山本香苗参議院議員が、災害救助法の救助の種類に介護などの福祉支援が含まれていないことを指摘し、災害法制に福祉を明記するよう強く求めました。これに対し、当時の岸田文雄首相は、国会で初めて法改正に言及。その後、政府は、本年二月十四日、被災者支援の充実などを柱とする災害対策基本法改正案を閣議決定しました。

 そこで、厚生労働省にお伺いします。災害救助法に福祉の概念が取り入れられることで、在宅で生活する高齢者や障害者など要配慮者に対する支援をどのように行っていくのか、御見解をお聞かせ願います。

岡本政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、災害発生時におきましては、災害派遣福祉チーム、DWATの避難所への派遣につきまして必要な費用を国庫が負担するなど、災害時の福祉的支援に取り組んでいるところでございますが、被災者の中には、先生御指摘の、在宅でありますとか車中泊で生活を送られている方々もいらっしゃることから、こうした方々に対しても十分な支援を行っていく必要があると認識しております。

 災害救助法における救助の種類としまして福祉サービスの提供を追加することを内容とする改正法案が今国会に提出をされており、在宅や車中泊などの在宅被災者などへの相談支援に係る費用が国庫負担の対象となるものと考えております。

 在宅被災者等への支援を含め、今後とも、高齢者、障害者などの要配慮者への支援について着実に行えるよう、取組を進めてまいりたいと考えております。

西園分科員 ありがとうございます。要配慮者への支援、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、トイレカー、キッチンカーについて質問させていただきます。

 災害時の避難生活では、トイレ不足や衛生環境の悪化が深刻な課題となります。東日本大震災や熊本地震では、仮設トイレの不衛生さから排尿を控え、膀胱炎や脱水症状を引き起こす事例が発生しました。令和六年能登半島地震では、トイレ不足が問題となったことから、自治体や企業がトイレカーを派遣しました。水洗式で清潔に使用でき、バリアフリー仕様も可能なため、高齢者や障害者にも対応できます。今後の防災対策として、トイレカーの全国広域での配備が急務です。

 また、被災地では食料確保が大きな課題となり、食材を持ち込み、現地で調理できるキッチンカーが重要な役割を果たしています。移動可能な調理施設を有し、迅速かつ衛生的に温かい食事を供給できるため、被災者の支援に貢献します。災害時には栄養バランスも重要で、キッチンカーは多様な場所で柔軟に支援できるため、今後の防災対策には欠かせない存在です。

 トイレカーやキッチンカーの全国広域での配備については、令和六年度補正予算で新地方創生交付金の中に地域防災緊急整備型が創設されたと承知しております。地方公共団体からは、全国でトイレカー等の注文が殺到しており、予知された事業期間内に資機材の納入が完了しないのではないかという不安の声も聞かれます。どのように対応するのか、政府の御見解をお聞かせ願います。

高橋政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘をいただきましたように、昨年度の補正予算におきまして、新地方創生交付金、地域防災緊急整備型を創設いたしまして、避難所の環境整備、これを強力に推進していくこととしておるところでございます。現在、地方公共団体に対しまして事業計画の募集を行った上で、採択団体の決定に向けて審査を行っているところでございます。

 御指摘をいただきましたように、今回の申請では、トイレカーとかキッチンカーとか、能登半島地震でも活躍した災害対応車両につきまして多くの要望をいただいておるところでございますけれども、車両の生産に時間がかかる等の不安の声も私どももお聞きし、承知をしているところでございます。

 今後、採択団体を決定した上で、現場の声をよく伺いながら、事業の執行をしたものについても柔軟に進めてまいりたいというふうに考えております。

西園分科員 御答弁ありがとうございます。

 トイレカーの納入を危惧する自治体の声を是非聞いていただき、交付金の執行に当たっては、繰越手続などで柔軟な対応を取っていただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

 現在普及しているトイレカーは輸入車が大半だと思いますが、私は先日、トイレトラックを製造している日本の中小企業にお話をお伺いしました。トイレトラックについては、国内に統一した規格がないため、一部の部品は輸入に頼っているとのことでした。防災立国を目指す日本として、トイレカーについては国産車両での技術開発が進むよう、政府がリードすべきと考えます。

 また、防災立国を目指す大前提として、過去の災害の教訓を生かすことは当然のことと思います。その意味から、新たにできる防災庁は、復興庁を始めとする関係省庁、民間企業、団体、ボランティアなど、これまで復旧復興に携わってきた全ての人々が蓄積した教訓や知見に学び、それをベースに防災政策をつくり上げるべきと考えます。

 本気の事前防災を目指す赤澤大臣の防災庁設置に向けた意気込みをお伺いいたします。

赤澤国務大臣 西園委員の今日の御質問を聞いていて、本当にプロなんだな、ライフワークにされているんだなということを思いました。冒頭、運輸省の私の後輩であることも御紹介いただき、港湾技官としてお入りになったんですね、その後復興庁の参事官も務められて、本当に防災をライフワークとする先生の御質問、本当に全身耳で聞かせていただいていたところでございます。私も防災をライフワークとする政治家の一人でありますので、今日の御質疑をしっかり我々の中に取り込んで生かしていきたいというふうに思った次第であります。

 瓦れき処理をする土地が十分確保できていないとか、そういう問題は本当に大きな問題で、事前に解決しておくべきことと思いますので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 災害大国である我が国が防災技術の研究開発を進めることや、それから、復興庁に蓄積されているものを含め、これまでの災害対応の経験や知見、教訓をフルに活用していくことは極めて重要なことであるというふうに考えております。我々が想定しなきゃいけないという巨大な自然災害、南海トラフの巨大地震もありますし、首都直下地震、あるいは、地震学者の方たちに言わせると、こちらの方が早いかもしれないと言われている日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、さらには富士山噴火など、大規模自然災害の発生が懸念される中で、平時から万全の備えを行う本気の事前防災に取り組むとともに、政府の統一的な災害対応の司令塔としての機能を担う防災庁の設置に向けた準備を、全力で、スピード感を持って進めているところでございます。

 防災庁の組織づくりに当たっては、東日本大震災を含む過去の災害対応の知見や経験、教訓をしっかりと生かした上で、避難生活環境の改善、それから災害専門ボランティアの育成、防災教育の充実、官民連携の促進、防災DXの推進などに加えて、御指摘いただいた、私が昔に書いたものに、思いを込めて書いていましたが、防災技術の研究開発、社会実装、国際展開などの取組を強化することとしております。

 私からすると、本当に、瓦れきの中から迅速に生存者を見つけて助け出すようなロボットがなぜ災害大国の日本からまだ生まれていないのか、そういう問題意識はもう十年来持っているところでありまして、しっかり思いを形にしていきたいと思っています。

 防災庁の設置により、人命、人権最優先の防災立国を実現するとともに、我が国を世界一の防災大国とするべく取り組んでまいりたいと思っております。

西園分科員 赤澤大臣、大変ありがとうございます。赤澤大臣の防災立国にかける熱い思いを拝聴し、大変うれしく思います。

 赤澤大臣は、先ほどの防災省創設に関する論文の中で、国家国民を挙げて一刻も早く防災立国を実現することにより、日本国内で生まれ、いち早く実用化されて進化を遂げた世界最先端の我が国の防災技術が、災害に悩まされる世界中の国々に輸出されて我が国の国富を創造する、さらに超ハイスペックの防災技術と民生技術の相互転用により更なる異次元の国富が創造されるという展開が確実に期待できると述べておられます。私も全く同感でございます。

 高度経済成長期に技術立国として世界をリードしてきた日本がいま一度その技術力を発揮できる分野の一つとして、防災分野が挙げられると思います。南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害は、いつ起こるか分かりません。その大規模災害に備え、災害リスクを最小限に抑える防災技術の開発に国は全力を注いでいかなければなりません。

 それと同時に、国民の皆様の更なる防災意識の向上も、これらの大災害を乗り越えるためには絶対に必須です。防災庁が先頭に立って防災意識の啓発を進めていかれることを願い、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧島主査 これにて西園勝秀君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申出がありますので、これを許します。吉良州司君。

吉良分科員 有志の会の吉良州司です。

 今日は、私の大きな問題意識である経済的国力とは何ぞやということと、その経済的国力を回復するにはどうすればいいのかという問題意識を持ちながら、赤澤大臣と議論をさせていただきたいと思っています。常日頃から赤澤大臣の本当に高い見識に裏打ちされた活躍というものを敬意を持って見させてもらっておりますので、お互い知ってはいるけれども、こうやって公の場で議論することはなかったので、今日は本当に光栄だと思いますし、楽しみにしております。

 まず最初に伺いたいのは、経済財政担当大臣として日本経済の司令塔になっておられるわけですけれども、七年八か月も続いた安倍総理の下でのアベノミクス、このアベノミクスという経済政策に対する、政府として、又は場合によって自民党として、正規の総括といいますか評価、検証というのを聞いたことが残念ながらありません。私自身もこの問題については相当に高い関心を持っておりますので、これまで予算委員会で、岸田総理のときにもアベノミクスの評価についてお聞きしたりしたこともあります。ただ、その際の答弁というのは、正直言って、私自身が、得心、すとんとくるものではありませんでした。

 恐らく、政府の見解を聞けば、また同じような評価になるのではないかということを心配しておりますけれども、先ほど言いました、高い見識を持った赤澤大臣の活躍を期待しているという立場から、政府の見解プラス、もし、経済司令塔としての赤澤大臣の、個人的なといいますか、今の担当大臣としてで結構ですけれども、一歩踏み込んだ評価を聞かせていただければと思っています。

赤澤国務大臣 一九九〇年代のバブル崩壊以降、企業は、短期的な収益確保のために、賃金や成長の源泉である投資を抑制してきたということがあります。その結果、消費の停滞や物価の低迷、さらには経済成長の抑制がもたらされ、我が国経済は三つの低と言っていたかと思いますが、低物価、低賃金、低成長という悪循環に陥っていたというふうに思っております。

 こうした中、アベノミクスは、デフレでない状況をつくるということに成果を上げて、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向につながったというふうに認識をしております。他方、一人当たりの平均の実質賃金が伸び悩むとともに、個人消費も力強さを欠いていたという認識を持っておりまして、家計や企業のデフレマインドを払拭し、低物価、低賃金、低成長という悪循環から完全に抜け出すまでには至らなかったというふうに認識をしております。

 足下では、現在、国内投資や賃金に明るい兆しが現れてきておりまして、岸田内閣が進めてきた新しい資本主義などの取組を着実に引き継ぎ、更に加速、発展させることで、国民に根強くしみついたデフレマインドを払拭をし、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現してまいりたい、裏返せば、物価と賃金が上昇をし、経済が成長するという方向に移行していきたいということであります。

 御指摘の検証については、私どもとして、経済財政諮問会議において、専門的、中立的な知見を有する学識経験者の皆様なども参画する形で、絶えず政策の検証を行いながら、幅広く経済財政運営について議論しているという認識でございまして、今後ともこうした検証は続けてまいりたいというふうに考えております。

吉良分科員 何点かアベノミクスを好意的にといいますか評価する見解をいただいたわけですけれども、私から見れば、そもそもそこまでいい経済政策であったならば、またその成果が出ているのであれば、ある意味それを継承していけばいいわけで、ところが、それが、菅、そして岸田内閣となって、特に岸田内閣のときには、現在赤澤大臣も担当されておる新しい資本主義ということを前面に打ち出されたわけでありますので。

 先ほど、高く評価する一方、一人当たりの実質賃金が低迷をしていたということと、個人消費が伸び悩んでいたという見解も示されておりますけれども、私は、自民党内における、かつて自分たちが選んでいただいたリーダーが主導した経済政策、それをあからさまに批判をしたりということは、なかなか、特に日本の組織文化の中では難しいと思いますけれども、今言った、それまで賃金が伸び悩んでいた、個人消費が低迷していた、その原因が何であるのかということをきちっとやはり国民にも示して、その一端がアベノミクスが進めた政策にもあるんだということを明確にされた方がいいと思うんですね。

 これまで私が言い続けてきたことですけれども、実質賃金が伸び悩んでいるのはなぜか。今言いました、最近でこそ賃金は上昇しつつある。けれども、少し前までは、賃金は上昇しないけれども物価は上がり始めていた。最近も、賃金は上がっているけれども、それを上回って物価が上昇するので、実質賃金が横ばいだったり、場合によっては若干のマイナスだったり、こういう状態が続いているわけですね。私に言わせると、その最大の原因は、やはりアベノミクスのときに取られた異次元の金融緩和政策、それがもたらす行き過ぎた円安、そして円安がもたらす輸入物価の高騰、それがある意味あらゆる物価に上昇圧力をかけている、これが実態だと思っています。

 前回の予算委員会で私が申し上げた論点の一つが、これまで、これまでというのをいつ、何年何月までかという特定というのは非常に難しいんですけれども、かつて日本が貿易立国である、貿易の黒字を積み上げることで経済を向上させてきた、そういう成功体験があって、円安こそ国益というような意識が、政治家の全員とは言いませんけれども多くの政治家だったり、経済界だったり、そして国民の間にもあってですね。極端に言うと為替の投機筋も政府は絶対に円高を嫌がるということが分かっているので、しかも低金利だということになれば、安い金利で円を借りて、それをドルに替えて、そしてドルで高い利回りというか高い収益を得るために投資をする、我々が昔、商社時代に使っていた言葉はちょっと忘れましたけれども、キャリー取引をやっているというような状況があってですね。

 繰り返しますけれども、今はもう新しい資本主義に移行し、賃金も上昇するけれども、それ以上に物価が上昇するというように局面は変わったんですけれども、くどいですが、私は、円安こそ国益だという状況が変わってきているということも踏まえて、結果的に過度な円安を導く異次元の金融緩和というものが間違いだったんだということを政府から明確に国民に示していただきたいと思っているんですね。この点について、赤澤大臣の見解をお聞きしたいと思います。

赤澤国務大臣 まず、円安、円高の話がありましたが、為替の水準については、私の立場で申し上げると非常に不測の影響を与える可能性があるので、それは控えなければならないと思っています。

 その上で、幾つか先生がおっしゃったこと、経済という意味でいえば絡んでいるんだとは思いますけれども、基本的に私どもは、金融政策については、具体的な手法は日本銀行に任せるということがありまして、私ども、十数年前に結んだアコードの中で、持続的、安定的な物価目標二%ということは結んだ上で、日銀に任せてきているということになります。

 そして、円安と円高についてですけれども、円安についても、これは言うまでもなく、国内物価の上昇に影響するところはもちろんあるわけですけれども、輸出する企業にとってはプラスの面もある、また、国内の企業にとっては、原材料を輸入しているところにとってはむしろコストが上がっちゃうみたいな側面もあるということで、通貨が円安だから、円高に振れたからということで、その水準ごとに単純に何か我々が読める影響があるというものではないというふうに思っております。

 そして、これも先生御案内のことですけれども、輸出条件をよくする、貿易条件をよくするために通貨を誘導するようなことについては国際的に認められておらず、為替介入というのは、もちろん財務省の指示の下で日本銀行がやることはありますけれども、これはあくまで、投機的な動きとかがあったとき、それに対して、一定の牽制効果というか、そういうものを狙っているものであって、結果的に、金利が上がったり下がったりということの影響、円安とかにも影響があるかとは思いますけれども、私どもが何か、金利を操作するとか、あるいは、為替の水準を、一定の水準を目指して何か政策を打っているということではないという点については御理解をいただきたいというふうに思います。

吉良分科員 今、赤澤大臣が答弁された内容については、そのとおりだと思います。

 ただ、結果的に、アベノミクス時代の黒田日銀総裁が目指したものというのは、私に言わせれば、まず、賃金上昇がない状況の中でいきなり二%のインフレといいますか物価上昇を目指していく、これ自体、あえて日銀が国民の可処分所得を減らしていきますよと言っているようなものだったというふうに思っているんですね。おっしゃるように、政府自体が為替のレベルについて上げようだ下げようだというところまで意図していないと言えるかもしれません。ただ、私に言わせると、異次元、お金をじゃぶじゃぶに市場に出して、ある意味国債を日銀が買い続けETF等も買い続け、こういうことをやることによって円安に振れていくであろうことは経済界もそれから専門家もある程度分かるはず、予見ができるはずなんですね。

 そして、おっしゃったように輸出企業が円安によって潤うという側面もある、もう一つは逆に中小企業の原材料が円安によって上がるデメリットもあるということを大臣はおっしゃられましたけれども、質問通告の二番、三番にも実は関係してくるんですが、私の認識は、輸出企業が潤うという潤い方が一昔前とは違っているという、日本経済のある意味では構造変化なんですね。

 かつて円安が進んだときには、当然競争力が増しますので、輸出数量がどんどん増えていく、そしてその結果は、かつて安倍総理が目指したトリクルダウン、国内の輸出用製品を作っている工場がフル稼働して、その方々への賃金が潤沢に支給される、増えていく、部品メーカーへの、子会社、孫会社、ひ孫への発注が増えて事業所、工場が潤っていく。まさに円安によって日本国内の工場がフル稼働して、そしてそれはトリクルダウンとして地域地域に付加価値を落としていた。ただ、今の円安というのは、実は輸出数量はほとんど増えていない。それはもちろん全く増えていないわけではないですけれども、じゃ、何が円安によって企業収益を押し上げているのか。

 今の日本の輸出企業というのは、ほとんどと言っていいと思いますが、特に大手は多国籍化しています。現地法人を米州、欧州含めアジアにも持っていて、現地法人が売上利益を拡大していく、一〇〇%子会社であれば現地法人の収益を本社が丸々認識できる。そのときに、一ドル百円で一万ドルの利益を百万円で認識できるか。円安になって一ドル百五十円であれば、同じ一万ドルなんだけれども連結決算上は百五十万円として計上できる。このようにして海外の利益を本社の連結決算では認識できる、そのときに円安の方が、同じドルでは変わらないのに円貨に換算したら大きく膨らんでいく。これが実は今の円安による輸出企業へのプラス効果。

 二番とも関係してきますけれども、私の問題意識は、じゃ、海外の今言った連結決算対象となる現地法人の利益が、帳簿上では計上できるものの、それが日本の経済にどこまで貢献するような形で戻ってきているか。

 例えば配当であれば、これは正確な数字は実は統計上も出ていないんですけれども、財務省の方にも聞きました。ざくっと配当でいえば、半分ぐらいが戻ってきて、半分ぐらいは、現地の内部留保、また再投資に使われている。また、債券投資であれば、その金利益が複利として再投資されていく。それは恐らく、半分どころかもうちょっと再投資されているのではないかという結果、今言った、正確な統計はないんですけれども、ざくっと言って、海外で上がっている利益のうちの三分の一ぐらいしか日本に還流していない。

 今、日本の経常収支上の第一次所得収支が、去年が三十六兆ですか、おととしが三十五兆円となっていますけれども、それがあって初めて貿易収支、サービス収支等の赤字を補って、経常収支は黒字になっている。けれどもキャッシュフローで、最近はキャッシュフロー経営とよく言われますけれども、キャッシュフローで見た場合には、実は赤字の可能性が高い。それ自体が円安要因になる。

 しかも、今言ったように、連結決算上の本社の利益は確かに本社の利益なので、株価は上がっていきます、その会社の価値は高まっているわけですから。けれども、株価が上がれど上がれど、それがさっき言ったトリクルダウンにつながらない、日本の国内経済の活性化につながっていかない、こういう問題意識を持っているんですね。

 かつて、安倍総理の時代は、アベノミクスの成果として、よく株価がこれだけ上がったという話をされていました。けれども、私に言わせれば、株価というのは、一方では、現在の業績がいいとき、将来的な業績見通しが明るいとき、確かに上昇します。けれども、それがない場合であってもさっき言った異次元の金融緩和でじゃぶじゃぶに市場にお金が流れて行き先がないとき、また、今言ったように海外利益が企業収益を押し上げて上がっている、だから必ずしも国内の経済全体がよくなっているという指標ではないというのが私の株価の理解です。

 という意味で、最初の答弁の中で株価が上昇したということについての言及はなかったと理解しておりますけれども、先ほど大臣がおっしゃられた、円安、円高、それを政府があえて目標としたり調整しているわけではない、そこについては、先ほども言いました、きちっと理解するわけでありますけれども、結果として円安になっていた、私は円安誘導だったと見ていますけれども。その円安は、今言ったように、必ずしも国内経済を潤すものになっていない、企業業績だけはよくなってもですね。

 このことについて赤澤大臣はどう認識をしておられるのか、また、そのことについての場合によって問題意識があればお伺いしたいと思います。

赤澤国務大臣 吉良委員がいろいろな論点に触れられて、どれも非常に有意義で示唆に富んで、私も傾聴させていただきました。

 そんな中で、実は事務方が作った答弁にない話をちょっとさせていただきたいなと思ったのは、今、円安について、経済に与える影響ということで、かなり精緻な議論を吉良委員はされたんですけれども、じゃ、円高がかつてどう働いたかという部分でいうと、行き過ぎた円高という言い方があるのか、私がそれについて触れてはいけないので。

 ただ、産業空洞化、要は国内の生産拠点がかなり海外に出ていってしまうということを招いて、実は経常収支が黒字であることが委員も私も価値があることだと思っているという前提でお話をすれば、生産拠点の海外移転が円高で進んでしまったために貿易収支がかなり赤字化しやすい構造。昔は本当に貿易収支が隆々と黒を積み上げていたんだけれども、原油等の輸入を打ち消して黒だったものが、生産拠点の海外移転が進んでしまって非常に赤字になりやすいというのが一つの経常収支を考える上でのあれなので、そういう意味では一つ円安について悪い面ばかりではなくて国内回帰が期待できる部分があって、現にTSMCとかああいうものについて言うと日本国内の競争力が少し戻ってきているという部分もあると思うので、総合的に見ていく必要があると思います。

 そして、御指摘の第一次所得収支の黒字については、海外子会社の利益のうち、日本国内の親会社に配当として分配されない収益など、国内に還流せず海外において再投資されている部分も多いということは認識を全く共有いたします。

 その上で、重要なことは、先ほど申し上げたように、円安の結果、国内への外国からの投資が増えるような面もありますので、そういうことも全て含めて、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行を果たしていくことが重要であり、そこは好循環を生むということで、賃金が上がれば家計の購買力が上がって消費は増えますし、それが国内企業の売上げや業績につながれば、新たな投資、生産性向上ということで、また企業が次の成長段階に入って賃金が上がるというような好循環が期待できるということです。

 そのために、適切な価格転嫁の推進とか、生産性向上に向けて省力化、デジタル化投資を促進したり、人材、経営基盤を強化する事業承継やMアンドAなどの後押しを徹底的にやり、下請法の改正なども、御案内と思いますけれども、予定をしております。賃上げに向けた環境の整備に取り組んでいくということです。

 たまたま昨日あった新しい資本主義実現会議でも国内投資について議論したんですが、やはり、国内投資に長期的にコミットメントしろという強い有識者の方たちからの御意見があり、そして、成長を牽引できそうな中堅企業の創出、成長を加速するとか、新たな勝ち筋となる分野の挑戦の後押しとか、また、ボトルネックである産業用地と産業人材の不足への対応、さらには、AI、デジタル技術がもたらす、まさに産業構造のゲームチェンジ、ここで主導権を取れるように取り組んでいくべしなどの御指摘をいただいています。

 いろいろと委員がまさに御指摘のような円安の影響というのもありますが、為替について、特定の水準について物を申すことはいたしませんけれども、今申し上げたように、賃上げと投資が牽引する成長型経済にしっかり移行していく。これまで、比較的やはり人件費を抑えて利益を出すというコストカット型だったので、そこに重点を置いてしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

吉良分科員 今の答弁内容についても、基本的には納得をいたします。

 ただ、二点指摘させてもらいたいのは、一点目は、輸出は工夫のしようがあるんです。今大臣がおっしゃった輸出企業というのは、まず第一に、これも私はずっと言い続けていることですけれども、経済人材の中でトップレベルの人たちが輸出企業に入っていく、またそのトップがいる、なので、空洞化というのは本来決していいことではありません、ただ、輸出企業が生き残っていく、少なくとも利益は日本にもたらすという意味で、例えば現地投資といいますか海外投資という手段もあるし、それからサプライチェーンを、それこそ世界的にネットワークを組んでですね。また、昔と違って外貨を企業が保有できるので、円高のときはここのベンダーを使うとか、円安のときはここを使うとか、そういう輸出については工夫の余地があるんです。

 ただ、輸入については、最初の答弁でもおっしゃられましたけれども、まず、輸入原材料を使う中小企業のみならず企業、どうしようもないんですね、石油が上がるということについて。例えば小麦が上がる、食物の飼料が上がる、これも逃げようがない。国民も、実は、輸入物価が上がってあらゆる物価が上がっていく、これも逃げようがないんです。けれども、単純に考えて円高になって、断っておきますけれども、行き過ぎた円安も行き過ぎた円高もこれはなしですね。そこはある意味では市場原理に任せるべしと思っていますけれども。

 じゃ、自然の流れの中でどちらがいいかといえば、逃げ場がない、工夫のしようがない、その国民が円高によって輸入物価が下がり可処分所得が結果的に増えていく、日本に本拠を置く企業が原材料が安くなって経営が楽になる。これは、先ほど言った経済で一番大事な個人消費、国民の可処分所得が増えることによって個人消費が増えていく、そして、企業も余裕が出ることによって、原材料が低めになるわけですから、それによって余裕ができた分は設備投資をしていく、これがまさに経済の好循環になっていくんだろうというふうに思っています。

 もう時間が来ましたので、最後、言いっ放しになるというか、これは質問ではないんですけれども、また改めて議論したいと思っているのは、さっき言いました海外現地法人の活躍、利益が伸びているということもあって、日本の企業というかGNIは伸び続けている。GNIとGDPの差が第一次所得収支になっていて、実はここが伸び続けて、さっきも言いました、経常収支が何とか黒字になっているんですけれども、日本企業が伸び続けていく、GNIが伸びることもいいんだけれども、残念ながら、それが今、日本国内の経済に、さっき言ったトリクルダウン効果を必ずしも出していない。

 こういう中で、経済的国力とは何ぞやと。企業が稼ぎ出す力自体も経済的国力であれば、まさにGDPも国力である。これの相乗効果がプラスに出るような方策というのはないものなのかということを私は問題意識を持っていますので、もう今日は時間が来ましたので終わりますけれども、この点についてまた議論させていただければと思います。

 では、終わります。

牧島主査 これにて吉良州司君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。空本誠喜君。

空本分科員 日本維新の会の空本誠喜でございます。

 今日は、大臣、よろしくお願いいたします。

 防衛問題について取り上げたいと思いますが、その中でも、自衛官の皆さんの処遇改善、また、自衛官になろうと思っていらっしゃる若い方々に対する対策について、今日はしっかりと議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 私も、地元が呉市でございまして、呉の潜水艦とか護衛艦とかを毎日バスから見ながら高校に通っておりました。まさに自衛隊の町に生まれ育った人間でございます。また、これまで海田市駐屯地も選挙区でございまして、そこには自衛隊は陸上自衛隊旅団がございます。そういった意味では、いつも、陸上自衛隊であれば迷彩服の自衛官の皆様とか、さらには、呉の町であれば男性のセーラーの制服、こういったものを目にすることがございます。町中でもいつもそういう方がいらっしゃったという環境に育っております。

 その中で、やはり自衛官の皆さんが昔は本当に勇ましくて、今ももちろん勇ましいんですけれども、やりがいがあるというふうな思いであったというふうに感じておりますが、今、だんだん自衛官のなり手の方も少なくなってくるのではないかなと。

 そういうときに、今実は、地元から若手の自衛隊に入隊した方々をサポートしたいという団体もございます。配付資料、まず一番を見ていただきたいと思います。

 配付資料一の中に、「翼を守りたい!!」、これは海上自衛隊の御家族の皆さんが市民団体をつくって、ここに書いてありますが、ちょっと読みますね。

 去る四月二十日、伊豆沖百五十海里の海上に、海上自衛隊大村、小松島基地所属SH60Kが墜落しました。防衛省の発表によると、八名が搭乗していて、一名の方が死亡が確認されました。残念ながら、他の隊員は確認されておりません。

 この御時世、厳しい世界に航空学生に入隊する者も少なくなっています。特に、航空学生、航空機・操縦士課程を修業する者も少なくなっています。

 このような事故によって隊員の士気を落としてほしくありません。

 国防母ちゃんは、いても立ってもいられず、パイロット課程が修業するときに航空機を操縦するときにつける革の手袋を贈呈してあげたい。

 それも、その革手袋に、リターン・ツー・ベース、帰ってこいとの気持ちを込めて刺しゅうをして渡してあげたいと思いました。

 パイロットがいなくなったら、この国は丸裸になってしまいます。

 是非皆さん、若鷲、若いパイロットの愛称でございますが、この若鷲を応援してやってください。

 呉市市民公益活動団体、樹の音会という団体が若い自衛官の皆さんをサポートしていきたいなと。

 今回、事務方の方々と話しまして、こういった物品を最後の修了式に渡したい、これはできるのかできないのかという問合せをさせていただきまして、すぐには簡単にできないんじゃないかというところで、実は事務方の方がすごく考えていただきまして、その下に書いておりますが、これはヒアリングした結果でございます。自衛隊への物品寄附の申出に対する受領の判断としては、やはり、物品供与の理由、原因、また対象者の範囲とか、単価、金額、そして頻度、相手との関係性、利害関係があっちゃいけませんね、そういったことを総合的に判断した上で個別に考えていく、対応していくという御回答をいただきました。

 その際に、会計検査院の方に来ていただきまして、こういう物品を贈与することが駄目なのかどうか。高いもの、高額なものはさすがにお渡しすることはいけないと思うんですけれども、心を込めて、若い自衛官の方々を守ってあげたい、支えてあげたいというこの気持ち、これはどうしても届けたい、どうでしょうかと言ったら、会計検査院の方も、しゃくし定規ではなくて、やはりそういった判断を基に、礼儀的なものは、適正なものであれば、また利害関係とかこういった問題がなければ問題ないというふうな御見解もいただきました。

 実はこれは、航空パイロット、海上自衛隊の方が、今若手の方がやっている航空パイロットのグローブ、手袋なんですが、こういったものにちゃんと刺しゅうを入れて、戻ってこい、絶対戦争に行くな、そういう思いをかけてやっております。事務方の方がすごく考えていただきまして、本当にお礼申し上げますし、また、やはり家族会の方とかもたくさん入っていらっしゃいます。こういった方々が自衛隊を今守っている。

 そういったことを今まず大臣にお届けさせていただきまして、質問項目には入っていないんですが、大臣の御見解、少しいただきたいと思います。お願いいたします。

中谷国務大臣 自衛官の処遇改善について御質問また御指摘いただきまして、ありがとうございます。呉とか海田市の自衛隊につきましても日頃から御支援をいただいておりまして、感謝申し上げます。

 お尋ねの点でございますが、やはり、国民の理解、支援、応援なくして自衛隊の業務はできません。地元の皆様方の理解と御支援が一番大切でございまして、このようにサポートをしていただく、そして応援をしていただいているお気持ち、これを伝えるということも大切でございますので、いろいろルールはございますけれども、そういう皆様方の温かい気持ちが受け取れるように、こちらの方も配慮してまいりたいというふうに思っております。引き続きよろしくお願いいたします。

空本分科員 大臣、本当にありがとうございます。本当に心のこもった、自衛隊、若い方じゃなくても、家族会の皆さんもしっかり自衛隊の皆さんを支えておりますので、是非よろしくお願いいたします。私たちもしっかり支援していきたいと思います。

 そして、その中で、今回、事務局の方々にすごく頑張っていただきまして、いろいろなことを聞きました。じゃ、処遇改善、今回の、去年から始まっております自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する閣僚会議とか、その中での決定事項の基本方針、こういったものを読ませていただき、またそういう議事録も確認させていただきました。その中で、今いらっしゃる自衛官の皆様の処遇改善というのは、本当に、衣食住も含めて充実していこうというところは確認できたところでございます。

 その中で、実はアンケートも取っていらっしゃって、さらには、自衛官の処遇改善というような、リーフレット的な、パンフレットみたいなものを作っていらっしゃいます。こういったものを広く展開していただきたいと思っておるんですが、まず、現場からのアンケートの調査状況について、防衛省、今どうなっているか、事務方の方から御説明をお願いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 令和五年度に、営内者を対象としたアンケート調査をしております。委員御指摘の関係閣僚会議での施策であるとか、あるいは令和七年度予算、また設置法等改正は、そのアンケートの内容、隊員がどういうように思っているのかということを十分踏まえまして、施策化しているところでございます。

 具体的には、そのアンケートで隊員の要望が高かったものは、営舎内居室の個室化、また隊舎の建て替えや改修、老朽化した備品の更新、空調設備の整備、改修、あるいは厚生棟や生活隊舎における無線LAN環境の拡充。手当等以外についてはこういったところが要望があったものでございまして、こういったものについて、スピード感を持って取り組んでいるというところでございます。

空本分科員 今実は、自衛隊の中でも、防衛省さんの中でしっかりとアンケート調査を隊員の皆さんにされていらっしゃるということでございます。

 これらの情報については、先ほど申し上げましたが、自衛官の処遇改善といった冊子を私いただきまして、コロナ禍で大体どういうふうなところが不足しているのか、また、そこは充実してきたのかということは書かれております。若い方々が入隊したいなと思うようなものになってきつつはあると思うんですが、まだまだ充実が完全なるものではないかなと思っております。

 実は、去年九月に、北海道千歳の東千歳駐屯地第七師団を視察をさせていただきました。その中で聞いた話としましては、例えば、昼食の時間帯になるとWiFiが突然使えなくなってしまう。混雑していまして、そしてみんなが使っているので。そういう環境、やはり実態に即した形での環境整備ということも大事なのかなと。特に、若い方々は休憩時間になるとやはりスマートフォンとか携帯電話を見たいですよね。

 そういった意味で、そういったところの充実強化もちょっとお願いしたいなと思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 隊員の生の声を聞いていただき、また御指摘いただいて、ありがとうございました。

 WiFiの設置は今始めたばかりでございまして、逐次、陸海空共に配備をしておりますが、やはり好きなときに使えるということも必要でございますので、今後更に整備充実に努めてまいりたいというふうに思っております。

空本分科員 是非、環境整備、今回事務方からいただいた資料には、本当に事細かく調査されていまして、衣食住、特に住むところについてはすごく調査をされていらっしゃいます。そういった中で、今足りないもの、実際、陸海空でいろいろ調査されておりますので、こういったものをもう一回大臣も見ていただきましてフォローアップをいただけたら大変助かります。よろしくお願いします。

 その中で、食事の面でちょっと聞いた話なんですけれども、いっぱい食べられないといいますか、健康面も配慮されてやっていらっしゃるというのは聞いたんですが、やはり若い隊員の方々はいっぱい食べたいというところもございまして、食事面の環境整備というのはどうなっているか、大臣でも事務方でも結構でございます、よろしくお願いいたします。

嶺政府参考人 お答えいたします。

 食事についてでございますが、委員御指摘のように、現在でも、一日に摂取をすべきカロリー、栄養素を定めた栄養摂取基準がございまして、これに基づいて支給している。若い隊員はたくさん食べたい、そういう御指摘もあるところではあるんですが、まずは隊員が活動する上で必要な食事を支給します。その上で、毎日の食事の中では、一応、御飯の量は隊員自身が調整できるということになっております。それと、食事のメニューも少し選択、変えることができるように、これも取り組んでおります。

 隊員が満足できる食事を支給するということは極めて重要というふうに我々も認識しておりますので、栄養摂取基準を満たしながら、隊員が要望する献立とか、あと、地元産品を活用した献立、これを提供するという工夫等を今後も行ってまいりたいと思っております。

空本分科員 食事面については、健康管理を配慮しながら、献立、メニュー、そして分量、そういったものを決めているということで。実は、若い自衛官のお母さん方から、もっと食べさせてよという話もあったんですね。だけれども、実際、そういうこともちゃんとうちの方から伝えておきたいと思いますし、それは健康管理をしっかり見ているんだということで確認させていただきました。ありがとうございます。

 そして、配付資料三番目を見ていただきたいんですが、こちらも防衛省さんからいただいた資料でございます。

 こちらは、衣食住の衣、服装品、被服に関するものでございます。官品支給品、これが満足しているかどうかというものでございます。この中で、手袋とかワイシャツとか、また雨具とか作業服とかを見ると、やはり、外見上の制服とかはほぼ自前のもの、官給品を使っていらっしゃるということなんですが、実は手袋とかが、陸上自衛隊の場合は自費で、自分で買っているものが多い。やはりそういうところはちょっとフォローしてあげた方がいいのかなと思っております。

 特に、やはり作業性を考えたときには使いやすいものを自分で選択するであろう、その中でどういうものを選んでいるのか、そういったことを含めて調査をこれからもう一度していただきながら、そして、例えば、自衛官の皆さん、今使っている使い勝手のいいものにこういうものがあるんだよというアンケートを取ったりして、その中から何種類か選べるような、官給品もセレクションできるような形での被服の提供というのもあってもいいんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。大臣、お答えできれば、どうぞお願いいたします。

中谷国務大臣 私もかつて陸上自衛隊で勤務しまして、官品を支給をいただいたこともございます。

 御指摘のように、官品は一通りはそろいますけれども、非常に、手袋とか靴下とか、上等のものは市販の方が優れていますので、それに加えて支給以外の購入をする方もおられますけれども、やはりそういったことがないように、できるだけ官品で必要なものがそろいますように、質の向上も含めて今後検討していきたいというふうに思っております。

空本分科員 ありがとうございます。

 事務方から追加コメントがあったらお願いいたします。

嶺政府参考人 ただいまの大臣の御答弁に追加させていただきます。

 実は、我々、アンケート調査を行った後にいろいろと施策も打っておりまして、例えば靴下に関しましても、耐久性とか通気性を改善した上で、例えば二足支給を追加するとか、単価も実は千円まで上げるとか、あるいは手袋に関しましても、今までは軍手だったり白手袋だったりしたんですけれども、非常に単価の安いものだったんですが、これも革手袋を追加で支給するというようなこともやっておりまして、これも単価も非常に上がっておるというところです。

 我々としても、引き続き、こういう官品というのは非常に品質、数量を確保することが重要と思っておりますので、今後とも、生活、勤務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。

空本分科員 どうもありがとうございます。

 本当に、自衛官の皆さんが使いやすいもの、そして安全性を重視したもの、こういったものをお願いしたいと思いますし、その中で、やはり品質と価格の適正な確認は必要かと思います。ちゃんとやっていらっしゃるということも事務方からお聞きしておりますけれども、会計検査院の方として、この辺、どのような確認をされていらっしゃいますか。お答えください。

鷹箸会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院は、自衛官の衣食住に係るものも含めました防衛省における物品の調達に関する契約につきまして、仕様や契約方式、業者の選定、予定価格の積算、納入された物品の検収が適切に行われているかなどに着眼して、契約書、仕様書等の関係書類を確認するなどして検査を実施してきております。

 会計検査院といたしましては、防衛省における物品の調達に関する契約につきまして、今後も適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

空本分科員 まずは自衛官の皆さんの安全が第一でありますので、そういった意味で、性能面をしっかり見ていただいた上で、その中で適正な価格のものを調達する、それを確認いただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、自衛隊、これまでの話は、既に入隊された自衛官の皆さんの処遇改善でございます。その方々がほかのところに転職しないように環境整備をするということが今うたわれておりますけれども、もう一つ大事なものとしましては、自衛隊に自ら入隊しようという動機づけであります。

 実は、閣僚会議での基本方針を読ませていただいた上で、書いている内容は、この基本方針は全て、既に入隊された自衛官の皆様向けの処遇改善の指針だというふうに感じています。違うのかもしれませんが。

 その中でも、入隊の動機づけ。例えば、基本方針の十三ページに、自衛官等の採用を推進するための広報、募集を強化すると書いてあるんですが、これは募集の方法論なんですよね。方法論では若い方々が入隊されません。

 本質は何かというと、入隊してもいいんじゃないか、頑張りたいなと思う動機づけ、そして、入隊したときに我々は頑張れるというモチベーション、そういったものをここに提示することが大事で、この基本方針、また見直しもかかると思うんですけれども、そういった意味で、ちょっとこれは質問項目に入っていないんですが、この基本方針、若い方々が入りたいよと思えるような動機づけをするというところの改革というか改善というか、そういったところを追加していただきたいんですが、これは大臣、御検討をちょっとお願いできませんか。

中谷国務大臣 日本は志願制でありますので、入隊を本人が希望していただけるわけでありますが、やはり、国を守ることという目的をしっかり持つ必要がございます。私も自衛隊生活をしましたが、やはり最初の方は余りよく分からないんですね。実際に訓練をしたり教育を受けたり、そういう中で、国防の意識とか、また仲間とともに行動するとか、この組織の持っている意義を勤務しながら理解していっております。そこに何が必要かといいますと、自衛隊は非常に面白いところである、そしていろいろなことを体験できて、国を守るためのかけがえのない組織であって、そのために訓練しているんだということに気づいてまいりました。

 非常に、我々自衛隊の組織の重要性、こういうものは一番大切なモチベーションになりますが、これを教えるのはやはり指揮官、助教、教官でありまして、そういう訓練とか教育を通じながら、この国を守る意義を教えつつ、やはり入ってよかったなというふうに思えるように指導していくことが大事じゃないかなというふうに思います。

空本分科員 ありがとうございます。

 事務方から聞きたいんですが、時間があれば、あとお願いいたします。

 その中で、提案でございます。配付資料二を御覧いただきたいと思います。

 一つの提案でありますが、任期制の自衛官、二年とか三年勤められる自衛官の皆さんが任期中に、その任務の一環として、例えば大学の教養課程の単位を取得できる。これは文部科学省さんともいろいろ話をしているんですが、任期満了後、大学へ編入できる制度。こういったものを導入すると、ここに書いております、文科省さんとの連携によって、単位を取得する、そして、ある程度取ったら四年生大学を卒業できる。単位数も決めるとか。その中で大学のカリキュラムを入れていく、教養課程的なカリキュラムを入れていく。

 そうすると、効果として、書いておりますけれども、任期満了後、一般の大学の二年生若しくは三年生へ編入できる。そして、任期満了後に大学編入した学生さんがまた再び幹部候補生学校に入学、応募してくれる可能性も高いじゃないですか。そして、即戦力として頑張っていただける、こういうメリットもあるんじゃないかな。

 さらには、家庭の事情、経済的な事情等で大学進学を諦めた学生さんもいらっしゃいます、そういった方々へその機会を提供することもでき、また逆に、自衛隊に入れば様々な魅力があるよ、さっきおっしゃっていただきましたけれども、心身共に鍛えて心も体も健康になる、こういった様々なメリットがある。

 そういった意味で、防衛大学校は防衛大学校としての一つの位置づけがございます、それをリスペクトしながらも、こういう任期制の自衛官の皆様がセカンドキャリアとして大学に行ける仕組み、こういったものを組み入れてはどうか。

 まず、文部科学省さんから少しコメントをお願いいたします。

森友政府参考人 お答え申し上げます。

 若年自衛官のセカンドキャリアを見据えまして、大学進学を含めた多様な進路選択の機会が確保されることは望ましいことと考えております。

 文部科学省といたしましても、大学への編入学等にもつながる、通信制大学も含め、大学と連携した任期制自衛官の課程内外での学習機会の検討につきまして、防衛省における検討内容を丁寧にお伺いしながら、適切に協力をしてまいりたいと考えております。

空本分科員 本当にありがとうございます。協力的な御見解をいただきました。

 大臣、改めて、こういう任期制の自衛官の若い方々が大学へ行きたい、そういう思いをかなえてあげることはできないでしょうか。そういった意味で御検討はどうでしょうか。御見解をお願いいたします。

中谷国務大臣 この御提案は一石二鳥の非常にいい御提案だと私は感じました。非常に、自衛隊では人間性とか体力とか気力、そういうのを錬成できますが、その後大学に入って自らの学問に行くということは非常にいいお考えでありますので、これは関係省庁とも連携をいたしまして研究、検討してまいりたいというふうに思っております。

空本分科員 本当にありがとうございます。

 本当にうれしい言葉です。自衛官の皆さん、また御家族の皆さんなんかも、やはりこういう言葉は本当に心温まる言葉と感じております。私は、地元の自衛官の御家族の方、今日こういう質問をするんだよと先に伝えております。実はインターネットで見ていらっしゃるかもしれない。今の大臣のお言葉、皆さんの心にすごくしみてきたと思います。ありがとうございます。

 その中で、家族会とか遺族会、遺族の皆さん、こういった方々の支援というのが大事なのかなと思うんですが、いかがでしょうか。今どうなっているかを含めて、事務方の方からお願いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の家族会、遺族会等でございますけれども、自衛隊、自分の家族が自衛官であるという者を中心に家族会が成っておりますし、また、不幸にも事故等で亡くなられた家族を持つ人は遺族会ということになっております。

 家族会、遺族会については、我々防衛省全体として、常日頃から連絡を取りながら協力をお願いをしていますし、また、我々としては可能な限りの協力をしているところでございます。

空本分科員 ありがとうございます。

 その中で、いろいろ御家族の方々をカウンセリングされていらっしゃる方は、実は自衛隊若しくは防衛省の方なんですね。やはり第三者的な方がカウンセリングとか、こういういろいろな御意見を聞いてもらえるような場があったらいいのかなと思っております。

 またプラス、やはり国会議員、皆さん家族会に入ったらどうかな、そういうのを広報していただけたらうれしいかなと。私も家族会に入れていただいております。プラス隊友会も、また水交会の方も特別会員で入らせていただいていまして、皆さんとそういう触れ合う関係性。特に、家族会というのは今ちっちゃいんですね。逆に、家族の皆さん、そんなにたくさんお金は出せないよと言うんだけれども、周りからの支援がやはり必要なんですよね。家族会の方にも、国会議員若しくは地方議員、みんなみんな協力して、会員として入っていくことで議論できるので、是非入ってもらいたい。

 そういうふうな取組、いかがでしょうか。最後に大臣、よろしくお願いいたします。

中谷国務大臣 申すまでもなく、このことは大切なことでございまして、やはり愛情を持って見守っていただくということで、御子弟、父兄が我が事のように隊員を思っていただいているということは、本当にありがたいことでございます。

 特に、最近、核家族というか、非常に子供の数が減ってまいりましたので、大切な御子弟をお預かりしているという観点からも、多くの方々に家族会に入っていただいて、隊員さんと一緒に、また意思疎通を図りながら、この事業の拡大に努めていければよろしいんじゃないかなというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。

空本分科員 今日もたくさんの自衛隊の家族の皆さんが、多分インターネットで見ていただいていると思います。そういった意味で、今のお言葉は本当にありがたいと思いますし、是非とも、自衛隊出身の中谷大臣ですから、装備も大事ですが、やはりこういう周りからの支援、こういったものも大事なので。

 先ほど言いましたグローブも、事務方の方にどういう手続をすればいいかまたお聞きしたいと思いますが、実際、こういうグローブも皆さんからの心なので、そういったものを温かく受け取っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

牧島主査 これにて空本誠喜君の質疑は終了いたしました。

 次に、小森卓郎君。

小森分科員 今年も防衛分科会で質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、ウクライナ戦争について伺いたいと思います。今月の二十四日で開戦から三年が経過したということで、報道も盛んになされております。

 私、三年前、初めて分科会に立ったときにウクライナ情勢について取り上げさせていただきました。そのときは、三年前は分科会の開催は二週間前、二月十六日ぐらいで、今年と随分スケジュールが違うなというふうに感じますけれども、開戦の約一週間ぐらい前にこの場に立たせていただきました。思い返しますと、その時点ではまだ、ロシアが実際に武力行使を本当にするのかといったようなことについて、まさかそこまでしないだろうといったような受け止めが世の中で多く見られたところではあったんですけれども、私の方はそのとき分科会で当時のロシアの動向などについて御質問させていただいて、もし仮に戦争が始まってしまえば、東アジアの安全保障環境への影響など、日本にとっても他人事ではなくなるといったようなことについて申し上げさせていただきました。

 その後、残念ながらロシアが実際にウクライナに攻め込んでしまい、そして三年の年月が経過してしまっているわけであります。まず、開戦以降の動きについて、戦争、戦闘の状況について防衛省から説明をお願いします。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 三年以上にわたりウクライナ侵略を継続するロシア軍は、現在もウクライナ東部や南部において占領地を保持しつつ、各種のミサイル、無人機、多連装ロケットなどを使用しつつ、ウクライナ軍のみならず、後方の民間人や発電所などの民生インフラに対しても攻撃を行ってきております。ウクライナ軍は、こうしたロシア軍からの攻撃に対して無人機なども活用しつつ反撃するとともに、ロシア軍からのミサイルや無人機による攻撃に対し防空戦闘を継続しております。

 今般のウクライナ侵略においては、ロシアが侵略開始時から物理的な攻撃にサイバー攻撃を組み合わせて行ったと見られるほか、ウクライナ軍及びロシア軍の双方が無人機を積極的に活用するなど新たな戦い方も見られており、こうした点についても高い関心を持って注視していく必要があると考えているところであります。

小森分科員 ありがとうございました。

 今回のロシア・ウクライナ戦争は、情報技術などの変化が加速している時代でありますので、今、無人機の話そしてまたサイバー攻撃などについても言及がありましたけれども、戦闘の様相がこれまでと大きく変化をしてきているところであります。我が国の今後の防衛力の整備にも生かしていく必要があると考えますけれども、どのように反映させていくのか、答弁を求めます。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略は三年以上にわたっております。その間、ウクライナは陸上作戦、航空作戦等の各種の作戦を続けてきております。

 これを踏まえれば、例えば継戦能力の確保、すなわち弾薬等の持続性、強靱性の確保は重要な課題であると認識しております。あわせて、国内の防衛生産・技術基盤を維持強化することも重要であります。また、無人機などを活用した新しい戦い方に必要な装備品を取得するためには、民生の先端技術を含め、我が国として持てる技術を活用し、早期装備化の取組を積極的に推進していくことが重要であると認識しております。

 さらに、サイバーにつきましては、防衛省・自衛隊として、自らのサイバーセキュリティー能力を引き続き強化するとともに、我が国全体のサイバーセキュリティー強化に一層貢献していく考えであります。

 防衛省・自衛隊としては、引き続き防衛力の抜本的強化により我が国の抑止力、対処力を高めていく考えであります。

小森分科員 ありがとうございます。今、防衛産業の話も答えていただきました。後ほど取り上げさせていただきたいと思います。

 実際の戦いからの教訓というのは非常に貴重なものでございます。世界中が息を凝らして、目を凝らして、ウクライナでの戦いを見詰めて教訓を得ようとしている状況であるというふうに思います。今後の我が国の安全保障にとって、情報収集の重要性は強調し過ぎることはないというふうに考えております。ロシア・ウクライナ戦争に関する我が国の情報収集体制がどうであったのか、そしてその強化の必要性についてどう考えるか、答弁をお願いします。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略に関しましては、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為でありまして、侵略開始以前から現在に至るまで、電波情報、画像情報、人的情報、交換情報などのあらゆる情報源を活用して、関連動向の情報収集、分析を実施しております。

 防衛省といたしましては、このような厳しさと不確実性を増す安全保障環境を踏まえ、今般の防衛力整備計画では、指揮統制・情報関連機能に関し、前中期防衛力整備計画の約〇・三兆円から大幅に増加し約一兆円を計上するなど、情報収集、分析などに関する体制強化に取り組んでおります。平素から有事までのあらゆる段階においてシームレスに対応していくためにも、様々な手段を適切に活用し隙のない情報収集体制を構築することは不可欠と考えておりまして、引き続き全力を尽くしてまいります。

小森分科員 さて、アメリカのトランプ大統領の就任以降、今月に入ってから戦争の終結を模索する動きが国際的に活発であります。米ロの交渉、ヨーロッパ、ウクライナの関与、そしてまた国連の決議などと、毎日のように大きなニュースがメディアでも流れております。最近の動きも含めまして、こうした動きが今のウクライナ戦争に与える影響についてどう見ているか、答弁をお願いします。

田口政府参考人 御答弁申し上げます。

 現在、国際社会におきまして、まさに今御指摘がありましたとおり様々なウクライナをめぐる動きが行われておりまして、政府といたしましても、御指摘のありました影響の観点も含めまして、多大な関心を持って注視し、情報収集を行っているところでございます。

 国際社会においてまさに議論が進行している現在におきまして、御指摘の点も含めまして個別具体的に踏み込んでその影響についてコメントするということは差し控えたいと思いますが、その上で、我が国としては、米国、欧州を含む外国による外交努力が、国際社会の結束の下、長年にわたる戦闘行為の終結、さらには一日も早い公正かつ永続的な平和の実現につながることが重要、このように考えておりまして、引き続き、このような考えに基づき、米国、欧州を始めとする国際社会と緊密に連携していくという考えでございます。

小森分科員 ありがとうございます。

 停戦が実現するのかしないのか、また、それがどのような形で実現するかによって今後の世界の安全保障環境に与える意味合いが大きく異なってくる局面だというふうに考えております。そしてまた、仮に停戦が実現した場合には、停戦や平和の維持に我が国がどのように関わっていくのか、貢献できるのかなど新しい問題もたくさん出てくる、そういうような局面であるというふうに思っております。政府におきましては引き続き万全に対応いただくことをお願いしておきます。

 次に、二つ目のテーマとして、自衛官の充足についてお話をさせていただきます。

 世の中、大変な働き手不足となっておりますけれども、自衛隊も例外ではなく、むしろ、自衛隊員を含む公務員の給与は民間ほど柔軟に上げることができないという制約がありますので、今のように労働市場が売手市場になってしまうと真っ先に深刻な影響が出てくるところであります。

 まず、令和五年度における自衛官候補生の採用の状況、そして士の階級の充足率について伺います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国は深刻な人手不足社会を迎えており、令和五年七月末には高校新卒の有効求人倍率は過去最高の三・五二倍になるなど、民間も含めた人材獲得競争はより熾烈なものになっております。

 こうした中、令和五年度の士の採用計画達成率は約五〇%、その中でも特に自衛官候補生の採用計画達成率は約三〇%と大変厳しいものになりました。令和五年度末における自衛官全体の充足率、これは約九〇%ですが、このうち士について言いますと充足率は約七〇%になっております。

 このような厳しい募集環境の下、防衛力の抜本的強化のためには、その担い手である自衛官の確保が至上命題です。優れた自衛官を安定的に確保するため、令和の時代にふさわしい処遇を確立するとの観点から石破総理を議長とする関係閣僚会議が設置され、基本方針が取りまとめられました。現在、この基本方針に基づき各種の施策を実施又は検討しているところでございます。

小森分科員 令和五年度は、自衛官候補生で見ると、答弁いただいたように、計画に比べて三割しか人が採れていないというのが現状であります。数年前、平成元年度と二年度はそれぞれ九八%、一〇六%と、数年前まではほぼ一〇〇%採れていたわけでありますので、ここ数年で急速に悪化しているという状況であります。

 また、先ほど、士について約七〇%とお答えいただきました。七〇%弱だと思うんですけれども、三人いるべきところに二人しか士がいないというような状況でありまして、大変深刻だというふうに考えております。また、この数字につきましても、令和元年度から見ると一〇%ポイント下がっていると承知しておりますけれども、近年急速に悪化しているという大変危機的な状況にあることを改めて指摘しておきたいと思います。

 今局長からも御答弁いただきましたけれども、自衛官確保のための危機感を背景として、石破政権になって閣僚会議を立ち上げて、年末には基本方針を定めていただきました。過去に例のない三十三の手当の新設、引上げ等も来年度予算に反映していただくということで、しっかり取り組んでいただいておられるところであります。

 その中でも、生活、勤務環境の改善、先ほど空本委員からも質疑がありましたけれども、石破政権になる前からも取組を進めていただいておりまして、とりわけ三文書の改定以降大変加速して取り組んでいただいております。例えばトイレの洋式化ですとかあるいはエアコンの修理や設置ですとか、要望が強かったものについてかなり進んだ対応をしていただいておりますけれども、この改善が現在どのような状況なのか、答弁をよろしくお願いします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 全ての自衛官が士気高く任務に専念できる環境を構築していくため、社会の変化をしっかりと直視し、若い世代のライフスタイルに合った生活、勤務環境を構築していくということとしております。このため、防衛省では、委員御指摘のありましたように、国家防衛戦略や関係閣僚会議で取りまとめた基本方針に基づきまして自衛官の生活、勤務環境の改善を進めているところです。

 具体的に例を申し上げますと、営舎内居室の個室化につきましては、陸上自衛隊では令和七年度まで、海上自衛隊、航空自衛隊では令和十年度までに完成するということを目指して今進めているところでございます。また、駐屯地、基地内の厚生棟や生活隊舎における無線LAN環境の拡充につきましても、令和八年度までに完了させるべく、順次進めているところでございます。

 これらの関連事業として、令和七年度予算案では三千八百七十八億円を計上しております。引き続き、生活、勤務環境の改善にスピード感を持って取り組んでまいります。

小森分科員 ありがとうございます。

 私も、かつて、防衛予算の査定をする立場にあったり、あるいは防衛省の会計課長として要求する立場にもありました。正直申し上げて今の取組というのをもっと早くから実行しておかなければならなかったなというような思いはございますけれども、他方で、数年前と比べますと隔世の感、大変進んでいるというふうに思っているところであります。そしてまた、これで終わりではなく、基本方針でもありましたけれども、自衛官の俸給表、この本格的な改定というのも数年かけて行っていくというところだというふうにお聞きをしております。

 中谷防衛大臣に、自衛官の現在の充足状況への危機感、そしてまた処遇、生活環境等の更なる改善に向けた決意を力強くお願いしたいと思います。

中谷国務大臣 現在の若年自衛官の状況でございますが、令和五年度の士の採用計画達成率が五一%と非常に厳しい数字になっております。また、士の充足率が約七〇%ということで、このような厳しい募集環境の中で自衛隊が任務を果たす上においてはしっかりとした人的基盤を構築することが必要でございまして、これにつきましては、使命感を持って専念できるためには処遇改善、生活環境の改善、新たな生涯設計の確立ということが必要でございますので、七年度の予算案に四千九十七億円を計上しております。また、法律改正が必要なものもありますので、国会に法律改正を提出したところでございます。

 それから、名誉、社会的地位の向上ということでは叙勲ですね、叙勲の在り方の検討ということで、特に佐官とか将官クラスの若手が叙勲の対象になり得ていない部分もございますので、できるだけ全ての自衛官が誇りと名誉を得るためにもこのような叙勲の在り方について改善していくということなどなど、隊員の処遇、生活環境の改善に向けて基本方針がもう取りまとめられておりますので、これを着実に実行できるようにまた全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

小森分科員 御丁寧な答弁を大変どうもありがとうございました。是非、大臣のリーダーシップで更に力強く進めていただきたいと思います。

 この問題は、今後の自衛官の充足の確保もそうですし、自衛官の皆さんのQOLの改善など、そうした面からも非常に重要な問題であります。伝統的には装備品の充実などと比べて劣後してきてしまったという歴史がありますけれども、そのことはしっかりと反省した上で、人こそ自衛隊の力であるといった観点でよろしくお願いしたいと思います。

 次のテーマに移ります。先ほども出ましたけれども、我が国の防衛産業の課題について取り上げます。

 日本の防衛産業、大手企業の特徴としては、防衛売上げの額が欧米や中国に比べて低いこと、そしてまた防衛事業の売上げの比率も低いということが挙げられると思いますけれども、説明をお願いいたします。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のように、我が国の防衛産業は、冷戦後に欧米で起きたような大規模な再編統合が見られず、主要なプライム企業につきましては売上規模や防需比率においてばらつきが見られる状況でございます。

 具体的には、令和五年度におきまして、防衛関連の売上げは百億円台から四千億円台、そして防需比率につきましては数%から二〇%台といったばらつきのある状況でございますが、いずれにしましても、欧米の主要なプライム企業と比較すれば相対的に小規模となってございます。

小森分科員 ありがとうございます。かなり抑えめな表現で答弁していただいたんですけれども、額にしても比率にしても欧米の防衛産業から比べると圧倒的に低い状況でございます。

 防衛産業が競争力を今後マーケットしていくためには、スケールメリットを追求していくことも重要だというふうに考えております。この点、我が国の産業の場合、顧客が自衛隊のみであるということは大きな制約要因となっております。今後、装備品の海外移転を積極的に展開していくことを期待しております。

 装備品の海外移転は戦後しばらくは大きな制約はありませんでしたけれども、一九七六年の三木内閣以降から極度に厳しくなって、文字どおり自縄自縛を行ってきた歴史がございます。これを修正すべく、とりわけ過去十数年にわたって合理化する努力を続けてまいりました。直近では、おととし十二月に三原則の運用指針の改正など、取組を重ねてきているところでございます。

 近年の防衛装備移転の実績について伺います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一四年に装備移転三原則及びその運用指針が策定されて以降、有償での完成品の移転実績といたしましては、フィリピンへの警戒管制レーダーの移転、約一億米ドルでございます。それから、自衛隊が保有するペトリオットミサイルの米国への移転、約三十億円。この二件の契約がございます。

 また、現在、インドとの間で艦艇用アンテナの移転実現に向けて細部の調整を行っているところでございます。さらに、豪州との間で、豪州の次期汎用フリゲートの最終候補に我が国の「もがみ」型護衛艦の能力向上型である令和六年度型護衛艦が選定されたことを受けまして、関係省庁及び関係企業と緊密に連携の上、移転の実現に向けてオール・ジャパンの体制で取り組んでございます。

 我が国の優れた装備品の移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出する上で重要な政策手段でございまして、引き続き、装備移転円滑化基金の活用も含め、防衛装備移転を推進していく考えでございます。

小森分科員 フィリピン、そしてもうアメリカへの実績が出てきたということで、前進してきているなと思いますけれども、同時に抜本的に加速していく必要もあるものだというふうに思っております。ポイントは幾つかあると思うんですけれども、官と民の連携をより密にしていただくことが必要だと思いますし、そしてまた、政府の立場ではまだ言えない話だと思いますけれども、三原則あるいは指針について、将来、再度改定することも視野に入れて議論していく必要があるというふうに、私の意見として申し上げておきたいと思います。

 そうした中で、世界の動きは更に速くなっておりまして、昨年、アメリカそして欧州がそれぞれ初めてとなる国家防衛産業戦略というものを策定しています。日本では、一昨年ですか、防衛生産基盤強化法を制定するなど部分的に取組を進めてきていただいておりますけれども、これを更に充実させていただきたいというふうに思っております。

 先ほど指摘しました官と民の連携を強化していく上でも、欧米同様に、将来に向けた包括的な防衛産業戦略を示すいい時期ではないかというふうに思っております。我が国におけるこの策定の意義と必要性について、私の敬愛する金子防衛大臣政務官に御答弁をお願いします。

金子大臣政務官 私の敬愛する小森先生にお答えを申し上げます。

 国家安全保障戦略に示しておりますとおり、防衛生産・技術基盤はいわば我が国の防衛力そのものであり、その強化が不可欠でございます。この考えの下、防衛省では、防衛生産基盤強化法に基づきまして、防衛産業の国内基盤の維持強化、我が国が持つ科学技術、イノベーション力を結集した技術的優位性の確保、官民が一体となった装備移転の推進などを含む各種施策に取り組んでおります。

 現在、防衛予算の増加や政府による様々な施策も踏まえ、我が国防衛産業におきまして生産増強に向けた投資も進みつつあると認識しております。他方、そうした動きを持続可能なものとしていくことが重要であり、そのためには防衛産業が抱える課題を解決していくことが必要であります。

 小森先生御指摘のように、昨年来、欧米諸国は相次いで政府が防衛産業戦略を策定し、装備品等の生産能力の再増強を喫緊の課題として取り組む方針を示しております。

 防衛省といたしましては、御指摘の各国の取組を参考にしながら、防衛産業の中長期的な望ましい方向性を防衛産業戦略として示していきたいというふうに考えております。その検討過程におきましては、産業界や学術界との間で現状や望ましい方向性について丁寧に意見交換を積み重ねまして、産学官が同じ方向を向き、魅力的な防衛産業を実現していくことが重要というふうに考えております。

 今後とも、力強く持続可能な防衛産業を構築していくことに向けまして、経産省を始めとする関係省庁と一丸となって取り組んでまいります。

小森分科員 ありがとうございました。官民連携の必要性も含めて包括的に御答弁いただきまして、本当にありがとうございます。

 大臣からも一言、意気込みをお聞かせいただければと思います。

中谷国務大臣 先日、フィリピンに出張しまして、国防相会談を実施してきました。その際に、日本から供出をいたしました警戒管制レーダー、二基ありまして、二か所を視察してまいりましたけれども、フィリピン軍の若い兵士がまさにコンピューターをにらみながら南シナ海の状況を本当にリアルに見ていた現状を見まして、やはり装備移転をしてよかったなということを感じましたし、また、テオドロ国防大臣から、フィリピンの空を守り、そして南シナ海を含む地域の平和、安定に日本は非常に大きく貢献しているという話がありました。ですから、装備移転の意義というのは非常に大きくて、相手方にも共有されております。

 これからは、運用面での協力、装備の協働化、並びに情報の共有、例えば南シナ海の情報、こちらは日本近海の情報、こういう総合的な情報をしっかり把握しながら相手の動きをしっかり監視するということも必要でありますので、そのためには、日本の警戒管制レーダーというのは世界の中でも最も優れたものでございますので、このような装備移転が更に進んでいくように、基金の方も有効に活用しながら進めてまいりたいというふうに思っております。

小森分科員 同志国との連携の必要性も含めて、そしてまたフィリピンでの実地の御体験も含めて、大変どうもありがとうございました。

 最後に、災害派遣に関連してお伺いしたいと思います。

 昨年元日の能登半島地震、そしてまた秋の豪雨災害におきましては、石川県内の基地、駐屯地の自衛官の方のみならず、全国の部隊から献身的に貢献いただきまして、誠にありがとうございます。改めて感謝を申し上げたいと思います。なかなか長期の活動になってしまった、異例の長期だったと思います。そしてまた、入浴支援のみの期間も相当長かったといったような特色があったと思います。様々な点でいろいろな教訓を得られていると思います。

 私、意見としてちょっと申し上げたいんですけれども、政府全体として災害対応の振り返りをしてそれを公表しています。自衛隊の人たちももちろん内部的に取りまとめて生かしておられるんですけれども、普通の部隊活動とは違いますので、是非それも積極的に外に出していただいて、周りの機関の方たちの理解を得るということ、理解を進めていくということも大変大事だと思いますので、意見として申し上げたいと思います。

 最後に、鳥インフルエンザについて伺いたいと思います。昨年も、多数、鳥インフルエンザ対応で全国の自衛官の方たちが駆り出されたところでございます。聞くところによると、最近になって自治体からアウトソースを請け負うような事業者の方たちも出てきているというようなことでありまして、そうなりますと三要件の一つである非代替性というのが満たされにくくなってきているのではないかと思うんですけれども、その実態などにつきまして見解を伺いたいと思います。

小野政府参考人 お答えします。

 自衛隊の災害派遣につきましては、今委員からも御指摘のございましたように、都道府県知事からの要請を受け、緊急性、公共性、それから非代替性、この三要件を総合的に勘案して部隊の派遣を判断することとなっております。鳥インフルエンザの対応につきましては、民間事業者が出てくるということもございますので、この部分について、非代替性を判断する上で重要な考慮事項であるというふうに考えております。

 防衛省といたしまして、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、鳥インフルエンザの発生に伴う自衛隊の災害派遣が非常に多発をしている状況におきまして、これについて強い問題意識を持っており、自治体や農林水産省ともこうした問題意識を共有しながら、三要件に照らしまして災害派遣活動を適切に実施してまいりたいと思います。

小森分科員 どうもありがとうございました。

 今政府の中でも、防災庁の設置に向けた議論をこれから本格化させていくところであります。これまではどうしても最後のとりでというか、実力組織である自衛隊の力をおかりしながら防災そしてまた災害の対応ということに当たってまいりまして、とても大事なことだったと思うんですけれども、一方で厳しい安全保障環境の中で我が国を守る自衛官の方たちの本務がしっかりと発揮できるように政府を挙げて取り組んでいただきたいということを申し上げまして、時間が来たと思いますので、これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

牧島主査 これにて小森卓郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、堀川あきこ君。

堀川分科員 日本共産党の堀川あきこです。よろしくお願いします。

 まず最初に、饗庭野演習場での実弾演習事故についてお聞きをしたいと思います。

 二月三日、滋賀県高島市にある饗庭野演習場での実弾訓練で、百五十五ミリりゅう弾砲が場外へ飛んでいった可能性があるという事態となり、いまだに見つかっておりません。この件以前にも饗庭野では、二〇一五年以降、四回、実弾の場外着弾事故が起きています。

 先日、私は、この饗庭野演習場の周辺に住む方々を訪ねてきました。皆さん、怒りと恐怖を抱えておられます。ある方は、騒音がひどく震動もする、いつ自分の家に飛んでくるかという不安が常にあると。この方は演習場から十キロ離れたところに住んでおられます。また、別の方は、演習場を通る国道で車を走らせるとき、いつ角度を間違えてこっちに弾薬が向かってくるかと気が気でないということをおっしゃっていました。この間の相次ぐ事故があるからこそ、安全が保障されていないからこそ、出される声だと思います。五件もの事故が相次ぐ中で、饗庭野演習場での演習が住民の命と暮らしを脅かしているのは明らかです。

 防衛省はこの住民の声を重く受け止めるべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 今月三日に滋賀県の饗庭野演習場において、百五十五ミリりゅう弾砲が射撃中に一発弾着が確認できない事案が発生をいたしました。

 この点につきましては、地元の皆様には大変な御不安や御迷惑をおかけをいたしておりまして、特に住民の皆様には御不安を与えたということにつきましては、心からおわびを申し上げたいというふうに思っております。

 現在のところ部外からの被害の連絡はありませんけれども、弾着地につきましては、保安用地を含む演習場境界付近の内側と見積もっておりまして、現在も捜査中でございます。

 詳細につきましては調査中ということでございますが、このような事案が発生をし、地元の皆様に御心配をかけていることを大変申し訳なく思っておりまして、今後、早急に原因を究明をした上で、再発防止を徹底してまいりたいと考えております。

堀川分科員 再発防止を徹底したいとおっしゃっても、事故が繰り返されているのが現実です。

 お聞きしたいのは、ほかの演習場でも饗庭野のような着弾事故が過去に起きているのでしょうか。お願いします。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 饗庭野演習場以外の演習場における自衛隊による場外着弾につきましては、確認できる限りでは、平成十三年九月、福島県の白河布引山演習場における百五十五ミリりゅう弾砲FH70の実弾射撃訓練において、演習場外に着弾した一件がございます。

堀川分科員 ほかの演習場では一件だけと。九年間で五件という饗庭野の事故数は異常だと思います。このことを防衛大臣、どう認識されておられますか。

中谷国務大臣 今般の原因については調査中でありますが、誠にけしからぬことでありまして、やはり基本事項が守られていない、射撃を行う隊員のそれぞれの安全確認とか射撃要領とか基本事項がありますので、そういった基本的なことが守られていないということが、非常に、我々にとりましても、深刻に受け止めなければならない点でございます。

 今回の件の原因究明も含めまして、今後の再発防止策、真剣に踏まえまして、この実施に向けて全力を挙げて取り組みたいと思っております。

堀川分科員 あくまで人的ミスということが繰り返し主張されるわけなんですけれども、私は、なぜこんなに饗庭野で多発するのかという原因の究明が今求められているというふうに思うんです。

 資料の一を御覧いただきたいんですけれども、饗庭野演習場の広さですけれども、東西に六から七キロ、南北では四から五キロ、実弾訓練の射程距離は二・五から四キロという狭い演習場なんですね。

 この一覧には、これまでの事故で使用された弾薬の射程距離をお示ししています。二〇一五年の重機関銃は六・七キロ。二〇一八年、一九年、八十一ミリ迫撃砲は五・六キロ。二〇二一年の百二十ミリ迫撃砲は十三キロ。今回、百五十五ミリのりゅう弾砲は二十四キロという射程距離です。

 中部方面隊の演習場で、百二十ミリの迫撃砲や百五十五ミリのりゅう弾砲の実弾演習ができるのは饗庭野だけ、加えて、一年の稼働数が三百日を超えている演習場です。

 要は、饗庭野演習場は、狭い上に、すぐそばに民家もある、交通量の多い国道も通っているのに、そういう狭さを優に超える射程距離の実弾演習が密にやられている、こうした環境では、一歩間違えば、言うなれば、人的ミスがあれば場外に弾が飛んでいくというのは十分に起こり得ることだというふうに思うんです。

 この饗庭野という場所に要因があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に自衛隊の訓練は、その内容や規模、実施部隊、演習場などの使用状況などに応じて、それぞれ適した演習場などを使用して実施しておりまして、饗庭野演習場においても必要な訓練等を実施してきております。

 また、このような観点から、例えば、中部方面隊の部隊が実施する訓練であっても他の方面区にある演習場に赴いて実弾射撃訓練等を実施することもございます。

 今後、事故調査委員会における原因究明及び再発防止策を踏まえ、その着実な実施に努めてまいります。

堀川分科員 大臣にお聞きしたかったのですが。

 続いての質問です。

 この饗庭野で実弾演習をやることに限界があるというのは明らかだと思います。事故調査委員会、おっしゃいましたけれども、そのメンバーも自衛隊関係者のみということで、在り方として不健全としか言いようがありません。防衛省から独立した第三者委員会を立ち上げて、これまでの再発防止策の検証や、演習場に起因する要因について調査することを求めたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 先ほど答弁したように、訓練というのは、饗庭野演習場に限らず、全国での演習場で実施しているわけでございまして、その規模とか状況に応じて饗庭野を使っているわけでございます。

 現在、事故につきましての原因を究明をいたしまして、地元の部隊、また陸上自衛隊の総監部が今徹底して実態調査をして、原因を究明をしております。特に、長距離の射撃につきましては、構造的な特殊性からその取扱いには特別の配慮を要するために、専門的な知識、資料を有して、秘密保全に問題のない自衛隊において調査をしているというところでございます。

    〔主査退席、西銘主査代理着席〕

堀川分科員 もう五回も起きているので、構造的な調査をやるべきだということを改めて申し上げたいと思います。

 狭くて危険な饗庭野演習場での事故の一番の再発防止策は実弾演習をやめることだということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 続いて、安保三文書に基づく京都の軍拡計画についてです。

 京都の舞鶴にある海上自衛隊基地では、イージス艦や地方総監部の地下化など、敵基地攻撃能力の拠点としての具体化が進んでいます。イージス艦にトマホークを配備するための予算が来年度予算案でも計上されて、舞鶴にある二隻にも順次搭載をされていくと。しかし、こうした計画がほとんど舞鶴市にも住民にも知らされていません。

 お聞きしたいのは、イージスシステム搭載艦についてです。

 このイージスシステムは、二〇一二年、安倍政権のときに配備計画が断念をされたイージス・アショアの代替として、二〇一七年、菅政権の時期に導入が決定をされました。資料二に、このイージスシステム搭載艦について、他の艦艇との比較を示しています。一隻当たりの建造費が三千九百二十億、全長は百九十メートル、幅二十五メートル、基準排水量が一万二千トン。下に示しております海自最大のイージス艦である「まや」型イージス艦あるいは海自最大の護衛艦である「あたご」と比較しても、基準排水量や大きさ、経費など、どれも上回る数値になっております。ここにトマホークや一二式地対艦誘導弾、さらに、極超音速兵器の迎撃ミサイルなどが搭載をされていくと。大型化するのは日本海の荒波にも耐えられるようにと説明も受けました。

 このイージスシステム搭載艦、スーパーイージス艦とも呼ばれているようですが、イージス艦を上回る能力になるのではないでしょうか。

嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、本イージスシステム搭載艦の規模につきましては、既存イージス艦である「まや」型護衛艦と比べ寸法、排水量ともに大きくなっております。それに伴いまして、荒れた海象におけるような任務の継続性あるいは乗員の居住性等、そういう性能面からの点でも向上しているというところでございます。

堀川分科員 規模にしても性能にしてもこれまで以上だということだと思います。

 このイージスシステム搭載艦は、二七年度、二八年度と任務開始になるということですが、寄港が想定される港として、舞鶴を含む五つの総監部がある港が挙げられています。来年度予算案で舞鶴の港湾のしゅんせつ工事の予算が上げられておりますが、この港湾整備はイージスシステム搭載艦も寄港できるようにするものでしょうか。大臣、お答えください。

中谷国務大臣 令和七年度の予算案におきましては、大型艦艇の運用の効率性、安全性を確保する観点から舞鶴におけるしゅんせつ工事に係る経費を計上しておりまして、この工事の実施によりまして、これまでより大型の艦艇も接岸が可能ということで、これはイージスシステム艦のみならず、それ以上の大型艦も寄港できるということでございます。

 近年、北朝鮮のミサイルの技術が急速に進展しておりまして、射距離にしても目標を狙うことにしても精度が上がってきておりますので、我が国といたしましても、あらゆる事態に対応できるための装備、また訓練も必要でございます。

 こういう点におきまして、このしゅんせつ工事を通じまして大型艦も着港できる工事をしているということです。

堀川分科員 このイージスシステム搭載艦の入港が舞鶴にも可能になるということです。イージス艦二隻に加えて、イージス艦以上の能力を持つイージスシステムが寄港すると。舞鶴では敵基地攻撃能力の拠点化が一層進むということだと思います。

 続いて、基地内にある弾薬整備補給所についてお聞きをしたいのですが、ここにはUSオンリーと表記をされた技術支援室という部屋があり、そこにはアメリカのレイセオン社の技術者が出入りをしているということです。

 ちょっと時間の関係で次の質問を飛ばさせていただいて、その次の質問に移りたいのですが、このレイセオン社というのは、日本が今後トマホークを四百発購入する契約を結んでいるアメリカの軍需産業です。つまり、このトマホークの整備を舞鶴の整備場でやるということもあり得るのでしょうか。大臣、お答えください。

中谷国務大臣 自衛隊に配備されるトマホークの整備場所につきましては、現在検討中でございます。

堀川分科員 可能性があるということを否定されませんでした。

 この整備補給所には日本の企業の技術支援室もあり、レイセオン社からアドバイスを得ることもあると事前に回答がありました。トマホークは核弾頭も搭載できるものがあるというふうに言われておりますが、まさかとは思いますが、核が持ち込まれるようなことは絶対にあってはなりませんが、ないですね。確認をお願いします。

中谷国務大臣 我が国は、持たず、造らず、また持ち込ませず、認めないという非核三原則を堅持しておりまして、米国もこの非核三原則に係る我が国の立場、これはよく理解していることから、御懸念のような事態は想定をされません。

 その上で申し上げますと、トマホークにつきましては、現在米軍が使用しているもの及び我が国が取得しているもののいずれにつきましても、通常弾頭の精密誘導ミサイルでありまして、核弾頭を搭載するということはできません。

堀川分科員 唯一の戦争被爆国として、非核三原則の立場を堅持するべきだというふうに思いますし、今年は被爆八十年の年です。核兵器禁止条約の締約国会議も開催をされます。この立場をやはり堅持するべきだということを改めて私からも申し上げたいというふうに思います。

 この舞鶴の基地は、隣接する形で民家や公園があるんですね。地下化される総監部のすぐそばに移転を計画しているという保育園もあると地元の方からお聞きをしました。周辺住民や舞鶴市に十分な説明もなくこうした危険な計画が進んでいるということなんですけれども、少なくとも住民説明会はやるべきだということは求めておきたいというふうに思います。

 続いての質問に移ります。

 京都府精華町にある祝園弾薬庫についてです。

 今、全国で弾薬庫を増設する計画が進んでいますが、祝園は、予算規模も速度もほかの弾薬庫以上のものになっています。来年度、弾薬庫八棟の工事着工に入り、さらに、六棟の新設に向けての三棟の調査、設計予算が百九十七億計上をされております。この祝園弾薬庫は、陸上自衛隊基地ですが、海上自衛隊とも共用されることになるということです。

 舞鶴が敵基地攻撃能力の前線基地であり、そのバックヤードとしての祝園弾薬庫の拡張というのは誰の目にも明らかですが、祝園弾薬庫の周辺には、ここにも住宅地が広がって、国会図書館や精華町役場も近距離に位置をしています。

 私も現地に行きましたが、基地のフェンスを隔ててすぐのところに京都府立大学の敷地になっているところがあるんですね。畑がありました、農学部のキャンパスで。学生や教職員の姿も見えました。まさにそれくらいこの弾薬庫のすぐそばに暮らしがあり、学びの拠点があるということなんです。

 お聞きしたいんですが、一九六〇年に当時の防衛庁と精華町が交わした確認書について、当時の町民が、これは苦渋の決断で条件付で自衛隊の使用を認めることになったわけですが、その条件がこの確認書であり、大変重い意味があるというふうに思います。契約的意味合いはないというのが防衛省の見解ですが、そもそも、ここに書かれてある、弾薬の量を増やすときは事前に町と協議するとかいう内容は、確認書があろうがなかろうと、当然守られるべきだと思うんですね。

 資料三にその確認書の中身を提示しておりますけれども、これだけ危険な場所にある弾薬庫を増設をする、あるいは保管する弾薬の量を増やすというのが今進んでいる計画だと思いますが、隣接する精華町と京田辺市に事前に協議はされているのでしょうか。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘いただきました確認書でございますが、委員から御指摘があったとおり、当時の防衛省に対して精華町から御要望があり、それに対して回答するという形で記録しておるものでございます。

 この内容については、御指摘いただいたとおり、契約的な意味合いを持つものではないというふうなことで、この点については、精華町とも一致をしているところでございます。

 したがいまして、弾薬の貯蔵量等の変更に際しまして、必ずしも本確認書に基づく事前協議が必要なものではない、そういう認識でございます。

 他方、祝園分屯地における施設整備につきましては、防衛省から精華町それから京田辺市に対しては適時必要な御説明をさせていただいております。地元の自治体の方から大量な御質問をいただいておりますので、それに対しての回答というものも丁寧にさせていただいているところでございます。

 引き続き、地元の自治体と緊密に調整をしてまいりたいと考えております。

堀川分科員 今のは質問にお答えになっておりません。事前に町や市と協議をしているのかということを聞いています。町や市といろいろなやり取りをされていることは存じ上げておりますが、それは説明であって、協議ではありません。もう一度お答えください。事前に協議されているのでしょうか。大臣、お願いします。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、この確認書につきましては……(堀川分科員「確認書のことは聞いていません、事前に協議をしているのか」と呼ぶ)

西銘主査代理 二人でやり取りしないで。

田中政府参考人 いわゆる契約的な意味合いを持つものではないということで、この確認書に基づく事前協議が必要なものではない、そういう認識で町側とは認識が一致しているということでございます。

堀川分科員 これだけの弾薬庫の増設計画、事前に町や市と協議がないというのは、許されるべきではないということだというふうに思います。

 加えて、この間、現地の住民の方々が増設計画の住民説明会を何度も要望されておられます。先日も、近畿中部防衛局に対して、工事計画の説明でなく、弾薬庫の増設計画についての説明会を開いてほしいと要望をされました。しかし、開催を予定していないというのがこの間の回答です。

 これはなぜ開催されないのでしょうか、理由を教えてください。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 先ほども御説明をさせていただきましたが、この祝園分屯地における火薬庫の整備につきましては、累次にわたりまして地元関係自治体からの御要望、御質問に対して、文書による回答、これは精華町に対しては五回、京田辺市には一回行っております。

 今後、工事を実施するに当たりまして、まずは、分屯地外での工事車両の通行など、工事に伴い周辺地域に影響を与える可能性のある内容等について、近隣地区住民への説明を行いたいと考えておるところでございます。

堀川分科員 工事計画の説明ではなくて、増設計画そのものの説明会を要望しておられます。この住民の皆さんの声は受け止めるべきだということ、応えるべきだということを申し上げたいと思います。

 また、住民や自治体の方の大きな不安は、弾薬庫の増設がされていく中で、何か起きたときに住民の安全が守れるのかというところにあります。

 この間、先ほどもありましたが、防衛省は精華町や京田辺市と文書を通じて質問と回答のやり取りをされておりますが、その中で、精華町から次の質問がされています。保安距離がどれくらい確保されているのか、弾薬の搬出入ルートや日時は事前に地元自治体には通知するのか、弾薬の輸送中に敷地外で事故が起きたときどのような被害が生じるのか、地元自治体としての対応はどう想定すべきか、このような質問が精華町から出されています。

 これに対して、昨年一月三十一日付で近畿中部防衛局長から回答がされていますが、これはどういった回答でしたでしょうか。

茂籠政府参考人 お答えいたします。

 近畿中部防衛局長から精華町への回答の概要についてお答えをさせていただきます。

 まず、先ほど委員御指摘の八番に該当するものですが、具体的な保安距離は、自衛隊の能力が明らかになるおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただくことを御理解くださいとお答えしています。

 十五番につきましては、弾薬輸送の安全を確保する観点から、輸送の詳細に係るお答えは差し控えさせていただくことを御理解ください。

 二十五番につきましては、万が一事故が発生した場合、事故対応の形態はその時々の状況により変わるため一概にお答えすることは困難ですが、自衛隊内で完結するように努めます。

 次の二十六番につきましては、保管時と同様、意図しない火災等の事故が発生しないよう万全を期すことが重要と考えております。

 最後に、二十七番につきましては、何重にもわたる安全措置により、意図しない燃焼や爆発が起こらないよう万全を期していく考えです。

 このようにお答えをしているところでございます。

堀川分科員 住民の命を保障する根拠を何ら示していないというのは、住民の安全を軽視しているとしか言いようがありません。また、火災等の事故について聞いているんですけれども、発生しないように気をつけるということでは回答になっておりません。余りにもずさんな回答だと言わなければなりません。

 この二十五の回答で、敷地内で事故が発生した場合は自衛隊内で完結するよう努めるというふうにされていますが、これは自衛隊内で完結しなかった場合どうされるんでしょうか。

中谷国務大臣 自衛隊内で完結をしなかった場合には、地域の消防、救急といった部署と連携して対処することとなると考えております。

 現在も岩手県で大きな山火事が起こっておりますけれども、このような場合においても、官邸に対策本部を設けまして、あらゆる手段を講じて消防に努めるということでございますが、自衛隊内で完結しなかった場合には、地域の消防、救急といった部署と連携して対応するということになろうかと思います。

堀川分科員 地域の消防と連携をするというふうにおっしゃいましたが、事前に弾薬の搬出入ルートだったり日時も地元自治体には伝えない、その上で、弾薬の中身についても消防には伝えていないということを地元消防から確認をしています。いざ何かあったときに住民の命を保障するということが余りにも想定されていないし、根拠が示されていないということは明らかだというふうに思います。

 最後に、確認書の項目一つ目について、これは申し上げるだけになるんですけれども、「核兵器は将来に亘り絶対に貯蔵しないこと」と。これは確認書以前のこととして当然のことだというふうに思いますが、舞鶴と同様、絶対にあるべきではないということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

西銘主査代理 これにて堀川あきこ君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

西銘主査代理 次に、復興庁所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。齋藤裕喜君。

齋藤(裕)分科員 立憲民主党の無所属の齋藤裕喜と申します。

 本日は、伊藤大臣と二回目の質疑をさせていただきますが、よろしくお願い申し上げます。

 東日本大震災、原子力災害から十四年が間もなく経過しようとしております。第二期復興・創生期間が終了するに当たりまして、福島の現状を見ていただいて、大臣、何回も福島に足をお運びいただいていますが、現時点での所感をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

伊藤国務大臣 昨年の十月の大臣就任以降、先生がおっしゃっていただきましたが、福島県の各地を訪問させていただき、地元の首長の皆様方を始め様々な方からお話を伺い、復興の現場を見てまいりました。

 福島においては、復興の歩みは着実に進んできた一方で、市町村によってはいまだに多くの帰還困難区域を抱えるとともに、市町村ごとに、避難指示解除の時期等の違いから復興の状況はそれぞれに異なり、帰還、移住の促進、産業、なりわいの再生など、様々な課題に直面している福島の復興再生には中長期的な対応が必要であると認識をしております。

 第二期復興・創生期間の後の次の五年間は、復興に向けた課題を解決していく極めて重要な期間であり、引き続き国が前面に立って、被災者の帰還や生活環境の整備、産業、なりわいの再生などを一層進め、そしてまた、廃炉、除去土壌等の最終処分に向けた道筋をつけていく必要があると考えております。

 このため、被災地の皆様ともよく御相談をさせていただきながら、次の五年においてこれまで以上に力強く復興政策を推進することができるように、復興の基本方針の見直しを本年の夏までに行うこととしたいと考えております。

 引き続き、復興庁が司令塔となりまして、被災地に丁寧に寄り添いながら、福島の復興に責任を持って取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。

齋藤(裕)分科員 ありがとうございました。

 本日お配りしている資料の一枚目をまず御覧いただきたいと思います。

 二月二十七日、昨日の記事になりますけれども、福島民報新聞にはデータとともに掲載されておりましたが、皆さんに本日配付させていただきましたのは福島民友の記事になります。

 題が、被災地、心のケアが必要というふうになっておりまして、ちょっと記事の文面を読ませていただきますが、福島医大の研究班が原発事故で避難指示が出た五町を対象に行った精神健康の調査で、うつ病や不安症のハイリスクが疑われる住民の割合は、移住者が七・六%と帰還者の六・八%より高かった、いずれも全国平均三%より高い、そして、両者共に心のケアができる体制づくりが必要だとしております。

 五町については、大熊町、富岡町、双葉町、楢葉町の五町の住民約四百六十人にアンケートを取りまして、帰還者が百三十二人、移住者が三百二十八人を対象としたアンケートです。

 この記事にもありますが、教育や医療、交通、情報基盤などの町の発展については、双方ともまだ不十分ということで意識を持っていることがうかがえたというふうに書いてあります。

 この最後の記事に、福島医大の小林智之助教は、移住者の支援は被災地全体の復興を進めていく上でも不可欠だ、帰還者と移住者の共生的な発展が求められる、こういう記事が書かれているわけです。

 皆さん、なかなか、震災から十四年を今年は迎えますが、こういったことは御記憶というか考えたことも、今や風化をしつつある中でなかった人も多いかと思います。このことについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

桜町政府参考人 お答え申し上げます。

 被災者の心のケアについては、大変重要な課題だというふうに認識いたしてございます。

 様々な課題の中でそういう心のケアというものが生じてきているというふうに認識してございますけれども、先ほど大臣からもございましたように、避難者の帰還でございますとか、生活環境の整備、産業、なりわいの再生、こういったことを引き続き一層しっかり続けていくということが大事だというふうに考えてございます。

齋藤(裕)分科員 このことはなかなか今まで表に出てこなかったことでございまして、是非、ここにいる方々も全国の皆さんもしっかりと心に受け止めて、まだ現在進行形だ、まだ終わっていない、道半ばということを御認識いただければと思います。

 予算委員会ですから、いろいろまたお伺いしたいことがたくさんあるんですけれども、昨年の行政事業レビューについて、ちょっと皆さんにお伝えしたいことがあります。

 大震災の後に、復興に重点的に取り組む福島復興再生加速化交付金というものがあるんですけれども、有識者から、東日本大震災の復興に重点的に取り組む第二期復興・創生期間が来年度で終わることを踏まえ、交付金の拠出の在り方も見直すべきだ、こういう御発言がありました。

 これは、私は、福島県民を代表してお伝えさせていただきますと、本当に遺憾に思っております。まだまだ復興とは名ばかりのところも大変多い中でのこの発言は、私は本当に非常に心苦しい、心を痛めました。福島県民の人たちも、本来であれば、こちらから要望活動、福島県の方々が来ることすら私はおかしいと思っております。そのことを皆さんきっちり、しっかりと認識していただいて、これから私も国会で取り組ませていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 そして、もう一つ質問がございます。

 帰還困難区域が残る市町村の居住状況は、十四年となる中、居住人口はどのようになっているでしょうか。また、二〇一一年当時に住んでいた方々が原子力災害で避難を余儀なくされた現在、実際に自分の住まいに戻れた方、帰還された方々の割合はどのくらいでしょうか。さらには、現在、二十歳未満の子供の人数はどのくらいでしょうか。お答えをよろしくお願いいたします。

桜町政府参考人 お答え申し上げます。

 帰還困難区域が残る七つの市町村につきまして、現在の居住人口の合計は、震災前の人口に対して四六・七%でございます。

 東日本大震災による避難者につきまして、福島県から県内外への避難者数は、令和六年十一月の時点で約二・六万人となってございます。また、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町につきまして、帰還をされた人口の合計は、震災前の人口に対して五・一%でございます。

 さらに、現在の二十歳未満の人口につきましては、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、四町の合計で、現在の居住人口に対して八・五%となってございます。

齋藤(裕)分科員 皆さん、今の数字をお聞きしてお分かりのように、十四年が経過しようとしています。この十四年間の歩みをもってしてもまだ帰れていない、帰還できていない方々が本当に多くいらっしゃいます。震災当時の避難者は、福島県内だけで十六万人ほどおりました。それが、今おっしゃられた数字は、子供の数ですら、当時住まわれていた方々でさえ、本当に少ない人数しか戻っていない。これは、様々な御家庭の状況、就学の状況、医療や介護の状況を踏まえた上でのこの数値です。

 この状況をお聞きして、大臣、どのように感じておられますでしょうか。御答弁をよろしくお願いいたします。

伊藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 これらの地域では、先生がおっしゃったとおり、依然として帰還困難区域が残っているほか、避難指示解除までに時間を要したことから、戻らないと考えている避難者の方もいらっしゃり、住民の帰還が一部にとどまっていると認識をしております。

 また、先ほど御回答いただきました富岡町、大熊町、双葉町、浪江町の二十歳未満の人口についても、全国のデータと比較をすると下回る状況になっております。

 引き続き、住民の意向の丁寧な把握をしながら、二〇二〇年代をかけて帰還意向のある方々が全員帰還ができるように、特定帰還居住区域制度により除染やインフラ整備など避難指示解除に向けた取組が進まるように、しっかりとしていかなければならないと考えております。

 また、現時点で帰還意向がない方々でも将来の帰還の希望を持っていただけるように、既に避難指示が解除された地域を含めて、住まい、買物環境、教育、医療、介護といった生活環境の整備、そして産業、なりわいの再生、にぎわいの創出に引き続き取り組んでまいりたい、かように考えております。

 また、さらに、復興庁では、二〇二五大阪・関西万博におきまして、五月の十九日から二十四日にかけて、ビルド・バック・ベター、よりよい復興にをコンセプトに展示を行うこととしておりまして、被災地の復興しつつある姿を避難者の方々にも感じていただき、また、大勢の国民の皆様方にもお感じをいただいて、帰還に向けた希望を持っていただけるように、そしてまた、新たにそうした様子を見ていただきながら移住を考えていただけるような、そんな取組をしてまいりたいと考えております。よろしくお願いします。

齋藤(裕)分科員 御答弁ありがとうございました。

 こちらで皆さんにお聞きしていただきたいのが、復興特別所得税の問題がございまして、ちょっと復興庁とは少し違うのかとお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、令和五年度の税制改正大綱、令和四年十二月二十三日の閣議決定において、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として令和九年に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和九年度において一兆円を確保する、所得税額に対して、当分の間、税率一%の新たな付加税を課すと。こういう閣議決定をされているんですね。

 このことは、国民の方々、そして福島県民の方々は、ほとんど知らない方が多いです。このことについてどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。

細田政府参考人 お答え申し上げます。

 安全保障環境が厳しさを増す中、我が国自身の防衛力の抜本的強化は重要な課題であり、抜本的に強化された防衛力は、将来にわたり維持強化していく必要があります。

 そのための安定的な財源確保に当たっては、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一につきまして、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることとしております。

 この税制措置の具体的内容については、与党税制調査会で議論が行われ、防衛力の強化が個人に広く裨益するものであることを踏まえ、所得税も対象とすることとされまして、令和五年度与党税制改正大綱におきまして、所得税に税率一%の新たな付加税を課すとともに、現下の家計の負担増とならないよう、復興特別所得税の税率を一%引き下げる、そして、その際、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、課税期間を延長して、復興財源の総額を確実に確保することとされたところでございます。

 その上で、令和七年度与党税制改正大綱におきましては、所得税については令和五年度大綱等の基本的方向性を踏まえつつ引き続き検討するとともに、東日本大震災からの復旧復興に要する財源については引き続き責任を持って確保することが明記されているところでございます。

 こうした防衛力強化の必要性や復興財源の確保等につきましては、国民の皆様への丁寧な説明に努めてまいりたいと考えております。

齋藤(裕)分科員 今御答弁いただきましたけれども、これが閣議決定されたときなんですが、令和四年の十二月ですか、このことは本当に重要な問題でして、まだ福島が避難指示解除されていないエリアがたくさんあるにもかかわらず、この財源についてはしっかりと確保していくといいながら、新たな付加税を課す。今、税制措置とおっしゃいましたよね。これは新たな付加税なんですよ。こういうことを広く国民の方々、そして福島県の方々にしっかり丁寧に説明をした上で進めていただきたいと思います。そして、伊藤大臣、中田副大臣、こういった財源は福島県、宮城県、岩手県、被災三県と言われるところにしっかりと手当てをしていただけるよう、よろしくお願いいたします。

 続きまして、除染土についてです。

 先日、報道でもありましたけれども、双葉町の伊沢町長が、自分の町内でも処分を検討する、実証するという報道がありましたけれども、これはあくまでも個人的な考えだということをおっしゃいましたが、これは一方で、その背景には、この十四年間、国として、私、環境委員会でも質問させていただきましたが、私が質問した翌日に初めて閣僚会議が開かれた、この状況は私は看過できないと思っております。十四年間、福島の方々、特に中間貯蔵施設を引き受けていただいた双葉町、大熊町、ここに住んでいた方々にとっては、本当に涙も出ないぐらい悔しい思いだと思います。

 私はそのことをお伝えさせていただきますし、この除染土、まだ最終処分場も決まっていない中でどのようにこれから進めていかれるんですか。そして、私が質問させていただいた十二月からこの間、どういうことで進められてきたのか、お答えいただけますでしょうか。

中田副大臣 御答弁申し上げます。

 県外最終処分、これを実現をさせていくということに向けて、着実に努力をいたしているところであります。そのためには、最終処分量を低減をするということが重要でありまして、減容や再生利用の取組ということについてしっかりと図っていくということであります。

 環境省においては、これまで、二〇一六年に定めた方針に沿って、減容に関する技術開発、再生利用の実証事業等の取組、これを着実に進めてまいりました。

 今年度末までに策定をする予定の最終処分、再生利用の基準について、昨年の十月に放射線審議会に対して諮問を行いまして、その内容については、一昨日、二月二十六日に開催された放射線審議会において審議をされて、そして、これについて妥当であるという旨の答申を、これは昨日いただいたということになります。

 また、有識者の御意見を踏まえながら、これまで実証してきた技術の組合せについて検討しておりまして、最終処分場の構造、必要面積の複数選択肢、これを案としてお示しをしてございます。

 こうした取組の進捗も踏まえて、県外最終処分の実現に向けて、二〇二五年度以降の取組の進め方については有識者の御意見も伺いながら取りまとめているところでありまして、来年度以降も着実に取り組んでまいります。

 さらに、県外最終処分の実現について御指摘いただきましたけれども、再生利用の推進等に係る閣僚会議が設置をされておりますので、政府一体で必要な取組を責任を持って進めてまいります。

齋藤(裕)分科員 御答弁ありがとうございます。

 ただ、一つお願いなんですが、これだけ、十四年たつに当たって初めて閣僚会議が開かれるというのは、私は本当にちょっとスピード感がないと思っています。これは、政府の方々だけではなくて、私も今や国会議員の一人として、政局に関係なく、本当に震災、災害には対応していきたいと思いますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願いしたいと思いますし、ましてや、伊沢町長がこういう発言をされるまでに至ったというのは本当に申し訳なく、私は国会議員としても申し訳なく思っていますので、どうかこれから、歩みをスピード感を持って進めていただければと思います。

 そして、このことについては、いろいろNHKの、高校生の方々も千人アンケートとかを取っていますけれども、福島第一原子力発電所から首都圏は電気を送られていたんですよ。そして、事故に遭った。でも、その責任は福島県だけじゃないんですよ。やはり全国が一体となってこのことについては取り組まなければならない、そういうふうに皆さんにお伝えさせていただきます。

 そして、次の質問に移らせていただきますけれども、人口が極端に少なくなってしまった浜通りなんですが、まだ立ち入ることができないエリアとかも、医療や福祉や介護の問題があります。

 これは皆さんの資料に、お渡しさせていただいた一番最後の方に、医療や介護や福祉の施設の分布図がありますけれども、これはあくまでも開設したというところです。これをひもといていきますと、診療科目だったりとか診療時間であったりとかドクターの年齢だったりとか、いわき市、中核都市と言われるいわき市でさえ、ドクター不足、そして医師の高齢化、看護師不足、これは震災以降本当に人口動態が顕著でして、もう止められない。これをやはり、国の責任においてとおっしゃるのであれば、私は国の方々がもっとてこ入れをしなければならないというふうに思っております。

 このことについて御質問させていただきますが、どうかお答えいただけますでしょうか。この現状の課題について、どういうふうな解決がありますでしょうか。

森政府参考人 被災地域における医療、介護等の基盤についてのお尋ねでございますが、私ども、被災地域に住民の方が安心して帰還し生活できるようにしていくためには、医療、介護、福祉といった生活の環境の整備というのは非常に重要な課題であるというふうに考えております。

 厚生労働省におきましては、復興の基本方針等に基づき、福島県それから市町村等で策定される計画等に応じて、医療、介護、福祉施設の整備、事業再開、再開後の医療施設や介護施設の経営確保、こうした分野における従事者確保、いろいろな課題がございますが、こうした支援を行い、地域のニーズを踏まえた基盤整備を行っているところでございます。

 例えば、医療につきまして申し上げますと、二十三年度から地域医療再生基金を設置させていただいております。これで、福島県の避難地域等医療復興計画に基づく双葉郡等の医療提供体制の再構築に向けた支援を行ってきているところでございます。

 具体的には、地域の医療ニーズを踏まえ、福島県に対して被災地域の医療機関の新設、再開や運営等に関する財政支援を行っているところでございまして、さらに、六年度からは、新たに、中核的病院の整備、これに向けた調査、設計等についての財政支援も行っているところでございます。

 その上で、第二期の復興・創生期間、来年まででございますが、八年度以降においても引き続き、県、関係自治体、関係省庁とも連携し、地域のニーズも十分に伺いながら、適切な医療、介護、福祉サービスが確保されるよう、必要な予算等の確保を行ってまいりたいというふうに考えております。

齋藤(裕)分科員 今御答弁いただきましたけれども、足りないから、医療が、介護が、福祉が不十分ですから、質問をさせていただいたんですね。これは柔軟に、そして国の責任においてしっかりと取り組んでいただければと思います。

 残り、あと、時間も僅かとなってまいりましたので、質問を重ねてさせていただきますが、被災地の浜通り地区の農林水産業について御質問をさせていただきたいと思います。

 こちらは震災以後も風評被害が引き続き続いておりまして、そして、さらには、拍車をかけた担い手不足が重なります。今後、農林水産業の担い手を育成していくためには、経済的な支援と技術承継、そして新たな技術革新が必要だと思いますが、いかがでしょうか。御答弁をお願いします。

谷村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、やはり被災地の農林水産業の復興を加速させていくためには担い手の確保は大変重要でございまして、そのためには、将来に向けて、被災地域の農林水産業が、所得が確保できる、産業として発展する、そういう姿を見せていくということが大事だと思っております。

 農業においては、被災十二市町村において、十ヘクタール以上の規模となる形態の農地が約六割、うち法人形態の占める割合が約五割となるなど、規模拡大や法人化は進展しておりますし、参入した法人によって若い世代の方が雇用されるというふうな動きも出ております。

 今後、我々としては、農地の大区画化とか担い手への集積、集約化、さらには他の地域からの生産法人の円滑な参入のサポートなどを進めて、このような動きを更に後押ししていくということが大事だと思います。

 また、生産と加工が一体となった高収益作物の生産拡大の動きを更に推進するとともに、今後、スマート農業技術の研究や実装、市町村を超えた広域的な産地形成、ここに向けた施設整備等を支援することで、競争力の高い、省力的かつもうかる農業生産体系の構築というのが大事だと思っておりまして、こういうことを進めていきたいと考えているところでございます。

 風評についてのお話がございましたけれども、風評はやはり、消費者の評価というのは、相当程度、放射線があるから福島県産を避けるというのはかなり減ってきておると思いますが、これが流通事業者に対してちゃんと伝わって、流通でちゃんと扱われるようになる、これが大事だと思っております。その意味では、こういう消費者の評価というのをしっかりと流通業者に伝えていって、実際の棚での取扱いにつながるという動きをしていかなきゃならないと思っております。

 我々農林水産省といたしましては、福島県の農林水産物が有する高い品質などの強みであったり魅力を積極的に生かした生産、販売戦略、こういうものを促進することによって、福島県の農林水産物が選ばれる農林水産物になる、こうなるように、福島県等の関係自治体の方、地元の方々と十分意思疎通を図りながら、今後とも福島県の農林水産業の創造的復興を全力で支援していきたいと考えております。

齋藤(裕)分科員 引き続き、農林水産業は、壊滅的と言っていいか、本当に地元の方々は、福島県の方は苦労されていますので、どうか引き続き御協力をよろしくお願いいたします。

 最後の質問になりますけれども、福島県浜通り地域の産業、そして事業再開と新規産業創出について御質問をさせていただきたいと思います。

 今はなかなか、御承知のとおり、住民の方々が戻らない中で、新たな移住者もなかなか増えてこない。この中で、経済合理性がそもそも成り立たないんですね。人もいないし、わざわざ福島県に進出をして、莫大なコストをかけて、人件費をかけて、ましてや、人を雇用しようとしても、なかなか人材確保ができない、そういう土地に今はなってしまったんです。それを、この十四年間の歩みを振り返りながら、これからさらに新しく、五年間、またその先を見据えていく新たな新産業の創出が私は求められていると思っています。

 そして、経済合理性が成り立たないということは、例えば例を挙げれば新しい産業、デジタル産業を誘致するとか、データセンターを誘致するとか、そういったことを国が先頭に立ってやっていかなければならないと思っています。そして、今、ロボットとかを、イノベーション・コースト構想であったりとかF―REIとかいろいろありますが、そういった国の支援する機関とともにやっていく必要があると思います。

    〔西銘主査代理退席、主査着席〕

 そして、さらには、こういったところに、福島に進出していただける企業に対しては、例えば、デジタルでいえば、ハイパー償却というものを海外でやっています。そして、税制に対してもかなり優遇的な措置を設けるとか、ここ福島の土地においては、社会保険料、人がただでさえ、時給が高いんですよ、そういった中でも取り組まなければいけない、こういったことも受けて、これからどういうふうにしていただけるか。

牧島主査 申合せの時刻が来ています。

齋藤(裕)分科員 ありがとうございます。

 最後に、では、御答弁をお願いします。

牧島主査 時間が来ておりますので、簡潔に。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、福島の地において、新たな産業を呼び込み、イノベーションを活性化させて担い手を増やしていくことは非常に重要であると思っています。

 これから先の、次の五年間におきまして、イノベーションを更に活性化させるための方針をしっかりつくり上げて、産業の復興と担い手の拡大、こういったものに努めるようにまいっていきたいと思います。

齋藤(裕)分科員 本日はありがとうございました。

 復興庁の支所も浜通りにありますが、できれば、復興庁の復興局を浜通りに移管するとか、デジタル庁をやっていただくとか、いろいろ御協力をよろしくお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧島主査 これにて齋藤裕喜君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。下野幸助君。

下野分科員 それでは、今回、私も防衛大臣に二回目の質問となりますけれども、端的な御答弁をよろしくお願いしたいと思います。

 早速、まず一点目の防衛力整備計画の変更の根拠となるシミュレーションについてお伺いをしたいというふうに思います。

 令和四年、二〇二二年十二月に現在の国家安全保障戦略が策定されました。そこに記載されております我が国を取り巻く安全保障環境、この情勢認識については私もおおむね理解をしております。中国の軍事力の増強、あるいは北朝鮮における核とミサイルの開発、ロシアのウクライナ侵略、いずれも我が国にとって多大なる影響を持っております。

 そして、国家安全保障戦略の策定と同じタイミングで新たに国家防衛戦略が策定され、さらには、令和五年度、二〇二三年度から五か年の防衛力整備計画も定められております。この防衛力整備計画の策定により、平成三十一年度、二〇一九年度から五か年の中期防衛力整備計画が廃止されました。このときに、それまで、日本が限られた予算の中で合理的、効率的に防衛力を発揮していこうとする崇高な理念から大きく転じられたと考えております。

 以前は、中期防衛力整備計画には、人口減少と少子高齢化の急速な進展や厳しい財政状況を踏まえ、既存の予算、人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分し、効果的に防衛力を強化すると記載されておりました。

 そこで、今回、中期防衛力整備計画を廃止して新たに防衛力整備計画を定めて、防衛費が五年で四十三兆円というふうになっておりますが、その理由をお伺いしたいと思います。

 なぜかといいますと、シミュレーションによってこの四十三兆円は大きく変わるというふうに思います。そして、中期防衛力整備計画終了の時期を待たずして防衛費を増やす決断をしております。シミュレーション、これはどのようなタイミングでどのような内容で行っているのか、大臣、端的に御答弁願います。

中谷国務大臣 今般、国家安全保障戦略、これの策定を行いましたけれども、これは、相手方の能力、そして新しい戦い方、これを踏まえて、想定される事態への対応ということで能力評価を行いました。

 例えば、侵攻部隊によるミサイル攻撃、戦闘機等による航空攻撃、艦艇部隊による海上攻撃といった状況を想定しまして、自衛隊がどのように対応するか検証することを通じて、我が国への侵攻に対処するための、不十分な自衛隊の機能や能力の評価に加えて、宇宙、サイバー、電磁波の領域、無人アセットを用いた非対称の戦い方、ハイブリッド戦のような新たな戦闘様相を踏まえた将来の防衛力の検討など、シミュレーションや検討を行ったわけでございます。

 そうしたシミュレーションを通じまして七つの柱を出しまして、まず第一に、一二式の地対艦誘導弾能力向上型、第二に、〇三式中SAM改の取得などの統合防空ミサイル防衛能力の強化、第三に、無人アセットの取得を含む防衛能力の強化、第四に、護衛艦十二隻、戦闘機F35計六十五機、スタンドオフ電子戦の航空機一機など領域横断作戦能力の強化、第五に、指揮統制・情報機能、第六に、機動展開能力、第七に、弾薬、部品、施設の強靱化、持続性・強靱性といったことを導き出しまして、次期計画策定においてもシミュレーションを行いまして、その結果、どのようなものが必要かということを積み上げたわけでございます。

下野分科員 なかなか今の、七つの柱は理解するんですが、巨額な四十三兆円ということと今大臣が御説明いただいたことがなかなか、国民の皆様に御理解いただけるのかというと、もう少し国民の皆様に、この四十三兆円、つまびらかとは言いませんけれども、もう少し明らかにしてほしいなというふうに思います。例えば宇宙のこと、ハイブリッドということも、重々承知なんですが、そこに向けて具体的な予算というのもお示しをしていただければというふうに思います。

 ところで、この四十三兆円なんですけれども、精査すると、外貨関連、外国からの調達に使われる予算規模というのは、大臣、幾らぐらいになるんでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 整備計画期間中にどれぐらい為替の影響があるのかということについては、まず米ドル建ての外貨関連経費について申し上げますと、防衛力整備計画策定時の事業の所要額の積み上げに当たっては、防衛力整備計画と一体として編成を行った令和五年分について、令和五年度の為替レート、一ドル百三十七円を用いたほかは、令和六年度以降分については、令和四年度の為替レート、一ドル百八円を用いたところでございます。一方、令和七年度予算案の編成に当たっては、足下の為替相場が反映された一ドル百五十円という為替レートを使用しております。

 そして、歳出予算における外貨関連経費については、歳出予算の一割から二割程度にとどまっております。

 その上で、この外貨関連経費に関しましては、為替変動のみならず、物価や人件費の変動、それから装備品そのものの仕様の変更といった様々な要因が複合的に影響してございます。また、為替変動に関しましても、米ドル以外に十数か国の通貨の影響を考慮する必要があるとともに、所要経費を予算計上時に遡って割り戻す計算をする必要があります。

 したがいまして、単に外貨関連経費を整備計画上の米ドルの為替レートにより換算した場合の額とか、その額と令和七年度予算案における外貨関連経費との差額を算出したとしても、それはちょっと為替変動による所要経費の変化についての実態を表すものではないというふうに考えております。

 加えて申し上げますと、今年度は五か年の防衛力整備計画のうち二年度目の段階にございまして、現時点における足下の為替レート等の状況が計画期間中における全ての所要経費の変化に直接つながるものではないということを御理解いただきたいと思っております。

下野分科員 ただ、今の説明で私が納得いかないのは、現実、百八円想定で四十三兆円というのは組んでいてですね。ただ、昨年度は百三十九円、今は百五十円ということがございましたけれども。私、今ちょっと参考資料で出させていただいていますけれども、二三年度、四年度、五年度、三か年で予算額では四兆円規模というふうに数字は聞いているんですが、一兆円規模の為替の影響があるのではないんですか。

寺田政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、為替変動のみならず、物価とか人件費の変動とか、装備品そのものの仕様の変更といったいろいろな要因が絡んできてございます。そういうところも勘案しないと所要経費の変化の実態というものは表すことはできないのではないかというふうに考えてございます。

下野分科員 そうすると、為替だけではなくて物価高騰、人件費高騰とすると、更に、四十三兆円と言っていた部分が、実際にかけられる経費が、為替だけでも我々は一兆円規模と申し上げていますけれども、人件費あるいは資材費の高騰ということで、多大なる影響があると思うんです。

 大臣にお尋ねしたいのは、ここら辺の増加分はどのように対応されるんですか。

中谷国務大臣 これは、円安だけではなくて、物価上昇もありますし、資材価格もありますし、役務の費用の上昇、また、仕様の変更、装備品の他国の調達など、様々な要因が介在しておりまして、物価高とか円安のみで正確に算定することは非常に困難でございます。

 為替の影響について大まかな目安を申し上げますと、支出のうちで為替変動により直接的な影響を受けるFMSまた一般輸入の占める割合は一割から二割にとどまっております。円安を伴う為替レートの変動、国内外の全般的な物価上昇が生じている状況にあっても、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底するとともに、経費の精査、まとめ買い、長期契約のスケールメリットを生かした価格低減策の取組を行いつつ、見積もった経費の範囲内で所要の経費を収めるというように努力をしてまいっております。

下野分科員 ちょっと確認なんですが、ということは、今の、大臣、額はおいておいて、四十三兆円という基準があって、為替や物価や資材の高騰分であふれた分は、その分は削減するということでよろしいですか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛力整備計画に基づいて防衛力抜本的強化を実現するに当たっては、効率化、合理化を徹底するということがまず前提になってございます。また、毎年度の予算編成に当たっては、具体的な効率化、合理化策というものをいろいろと組み合わせて、一つでも多くの事業が効率化、合理化を図れますように、その時々の経済状況を踏まえて効率的な方策を検討してまいっております。例えば、装備品の製造とか一時整備を一括発注することでスケールメリットをいかに最大化することが可能であるかとか、いかに安価な民生品を活用できるか等々の効率化、合理化策を徹底的に検討いたしまして、四十三兆円程度の範囲内で毎年度の予算編成を行っているところでございます。

下野分科員 今説明があった、結局スケールメリットや合理化で四十三兆円は超えないということで、大臣、よろしいですね、そこだけ。

中谷国務大臣 四十三兆円程度という規模を挙げておりまして、数年かかるわけでありますので、この間におきましてもいろいろ状況変化がございます。そういう状況にあっても、防衛力の整備の一層の効率化、合理化を徹底するということで、あくまでも、この計画の抜本的強化、これを達成するという努力を続けてまいります。

下野分科員 この質問はこれ以上言いませんけれども、多額なお金を投じるということでございます。四十三兆円規模という言葉で大臣は濁されましたけれども。一方で合理化とスケールメリットを生かしてそこに抑えるという努力はしていくということでございますので、私、大変な危機感を持っているのは、例えば当時のレート百八円とか当時の人件費とか当時の資材価格とかなりかけ離れている状況で一割、二割といったらすごい額になってきますから、当時計画していた部分よりかなり予算が膨らむことが想定されますので、しっかりと合理化、スケールメリットを生かして遂行していただきたいと思います。

 それでは、ちょっと時間もないので二点目の質問に入らせていただきたいと思います。

 二点目のお話は、中期防衛力整備計画における装備等の合理化でございますけれども、端的にお伺いしたいというふうに思います。

 中期防衛力整備計画では、北海道及び九州以外に所在する作戦基本部隊が装備する戦車の廃止に向けた事業を着実に進めるということで、北海道以外に所在する作戦基本部隊が装備する火砲について、新編する各方面隊直轄の特科部隊への集約に向けた事業を着実に進めるということになりました。つまりは、北海道、九州以外の戦車をどうされたのかということ。

 また、もう一点、同じく中期防衛力整備では、偵察機、RF4の退役に伴い、航空偵察部隊一個飛行隊を廃止するとともに、空中給油・輸送機能を強化するため、空中給油・輸送部隊一個飛行隊を新編するとなっておりましたが、こういったことについて合理化をできたのかどうか、御答弁願います。

中谷国務大臣 前中期防衛力整備計画におきましては、例えば、基幹部隊の見直しで、北海道、九州以外に所在する作戦基本部隊が装備する戦車、これは廃止しました。そして、北海道以外に所在する作戦基本部隊が装備する火砲、これを集約を行いました。

 そういうことで、現行の防衛力整備計画においても、新しい領域を重視しまして、スクラップ・アンド・ビルドの徹底、組織・定員と装備の適正化の実施、また、重要な領域における、柔軟かつ重点的に配備するなど、そういった考え方で整備計画に反映をしているということでございます。

下野分科員 なかなか装備品一つ一つの必要性の判断は難しいと思いますが、今大臣がおっしゃられたとおり、合理的に推進をしていただきたいと思います。

 戦車はなくしたということなんですが、よくよく見ると機動戦闘車両とかに変わって残っているということもあったり、RF4は退役後に新たに無人偵察機部隊をつくっているというような形になっているというふうに思います。いま一度、効果的に防衛力を強化するについて、御見解を大臣にお伺いしたいというふうに思います。

中谷国務大臣 時代の変化に応じまして、機能的、そして所要の目的が達成する装備になるように、まさにスクラップ・アンド・ビルドということで、絶えず見直しを行いながら合理化を進めているということでございます。

下野分科員 それでは、三点目の質問に移りたいと思います。

 令和五年度から始まっています防衛力整備計画において、新たに記載された装備の必要性についてお尋ねをいたします。

 脅威圏内において各種電子妨害を行うスタンドインジャマー等の開発、同じく、南西地域への輸送における自己完結性を高める、輸送車両、コンテナトレーラーとか、荷役器材、大型クレーン、大型フォークリフト等などなど、多くの新装備が記載されております。

 なかなか一つ一つの装備を必要、不要ということは難しいと思いますが、こういった防衛力整備計画に記載されている装備品について、我々野党が厳しいチェックをして不要と判断した場合、あるいは新たなシミュレーションで調達が途中で不要となった場合、これらの装備品に対する支払いについてはどうなるんでしょうか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 通常、防衛装備品の契約に関しましては、例えば四年国債とか五年国債とか、長期間にわたって支払いを行うような契約になってございますので、契約したものに関してはそれはもう支払っていくという形になるというふうに思いますけれども、その時点その時点で、やはりいろいろと、スクラップ・アンド・ビルドですので、こういう装備品が必要ではないか、新たにこういうふうな装備品が必要ではないかということになりましたら、そういうものに置き換えていくというようなことは行われるものだというふうに認識しております。

下野分科員 先ほどの、よく大臣もスクラップ・アンド・ビルドと言われるんですけれども、一方で支払いは継続されるということで、途中、要するに大きな買物、装備を購入して、時代の変化に応じて変えなくちゃいけないとなった場合に、これは支払いだけ続いていくということになるんでしょうか。スクラップ・アンド・ビルドできるんでしょうか。

寺田政府参考人 一度契約したものに関しましては、それは支払いをしていくという形になるというふうに思いますが、その中で、いろいろな改善を加えていくとか契約の変更を行っていくというようなことはあるというふうに認識しております。

下野分科員 ちょっと今の説明は分からないんですよね。それなりの装備をしっかりと検討していかないとなかなか時代の変化についていけないというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 確かに、急速に科学技術が進展しておりまして、各国の装備も変化をしてきております。我が国の場合も、計画は立てておりますが、計画をした以上はこれは履行をいたしますけれども、その中で、改良したり、また新しい装備をくっつけたり、そのような中での変更というのはあり得るのではないかというふうに思います。

下野分科員 今回も、防衛費四十三兆円と言われておりますけれども、すごい額なんですが、それをしっかりと精査した上でやはり購入していかないと、なかなか時代、先ほど言われたとおり、情勢は変わっていきますから、ただ支払いだけ続いていって国民に税金を背負わせるということになります。

 一方で、私、ちょっと不思議なのは、先ほど、スケールメリットを生かして人件費とか外貨の膨らんだ分は頑張って努力しますと。数兆円規模なんですよね、恐らく、我々が換算しても。だから、そこら辺はしっかりと、数兆円規模のお金を精査していかなくちゃいけないということになろうか、この五か年でですよ、ということでございますので、国民の税金でもありますので、しっかりと戦略を立てて、そして、これは、長期の買物になる場合はそこまでしっかりと考慮した上で対応していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に変わります。

 AI兵器の運用について質問させていただきたいと思います。

 二月の十七日、この予算委員会で、我が党立憲民主党の井坂信彦議員から岩屋外務大臣にAIのことで質問があったんです。AIが自動的に敵を認識して攻撃をする自律型致死兵器システムについてなんですが、井坂議員から、人間が関与する自律型兵器システムであっても、日本が作らないのは当然として、全世界でこれを禁止しなければ日本の防衛上大変なことになると説明されました。

 これに対して岩屋外務大臣及び政府参考人の答弁は、一度起動すれば、操作者の更なる介入なしに標的を識別し、選択し、殺傷力を持って交戦することができる、こういう特徴を持ったものというのは是非規制の対象として議論すべきだろうというふうに思いますという答弁でした。これは言い直すと、人間が関与する形の自律型致死兵器システム、AI兵器は開発していくという方針にあると思われます。

 そこで、お伺いしたいのは、人間が関与するAI兵器というのは、どの段階で人間が関与することを想定しているのか、最終的な意思決定はどのような場面を想定するのか。大臣、よろしくお願いいたします。

中谷国務大臣 今、国際的に議論をされていることでございますが、LAWSという自律型致死兵器システム、これはCCWという特定通常兵器使用禁止制限条約の枠組みの下で議論をされておりまして、主要論点につきましては各国間でいまだ立場に隔たりがありまして、御指摘の人間の関与の在り方も含めまして、まだ検討をされているというところでございます。

 その上で、人間の関与の在り方について重要な点は、指揮官等が意図した形で兵器システムを運用できる状態を確保することであると考えておりまして、人間の関与というのは、兵器システムの使用に対する責任の明確化の前提となり得るものであり、また、兵器システムの意図しない動作を予防、是正する手段を確保するためにも重要でございます。

 この観点から、人間による責任ある関与の下で、指揮官等が使用する兵器システムに関する情報を十分把握をし、そして、国際人道法を含む国際法、国内法、安全保障の観点から適切な判断を確保することができる、こういうことが必要であると考えております。

 引き続き、人道と安全保障の視点を勘案したバランスの取れた議論を通じて、人間の関与の在り方について検討してまいりたいと思っております。

下野分科員 しっかりと、大臣、精査、そして、今言われたとおり、指揮官が意図的で、そして責任が持てる段階とおっしゃられました。やはりAIも学習していきます。その学習能力に対して、それ以上の知識を指揮官なり現場の責任者が持てていないと判断のつきようがないということになろうかと思います。人の命が懸かっているという部分において、指揮官のしっかりとした教養を高めるべく、この部分についてしっかりと制度、政策を進めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 さて、次の質問です。防衛大学校、防衛医科大学の予算増についてお尋ねいたします。

 令和七年度では、前年度比八十億円増加の二百九十四億円、あるいは防衛医科大学については前年度七十一億増の三百五十九億円ということで、それぞれ、一・三七倍、一・二五倍となっています。この理由について端的にお尋ねいたします。

寺田政府参考人 委員の御指摘のとおり、令和七年度予算案において、防衛大学校及び防衛医科大学校において予算を増額しております。

 そのうち、防衛大学校に関する予算につきましては、昨年、石破総理を議長とする関係閣僚会議において取りまとめられた基本方針を踏まえまして、生活、勤務環境の改善等を進めるため、学生会館の建て替えに関する経費十五億円、それから、空調設備の老朽更新に関する経費十億円等を計上しております。

 また、防衛医科大学校に関する予算も同様でございまして、医学生向け隊舎の建て替えに関する経費三十三億円、空調設備等の老朽更新に関する経費五億円等を計上してございます。

 今後とも、この基本方針を踏まえまして、防衛大学校、防衛医科大学校等の教育機関における生活、勤務環境の改善等を推進してまいりたいと考えております。

下野分科員 何でこういう質問をしたかというと、私も一回、どうして内容が増えたんですかと聞いたときに職員の方から、整備計画で増えますというたった一枚のファクスが来ただけだったんですね。それでは駄目だと思うんですよね。やはり、先ほど言われたとおり、最初からそういう丁寧な説明というのを求めたいと思いますので、大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 私も、国を守る自衛官、特に若者の方々、前回の質問でも言わせていただきましたけれども、しっかりと処遇改善はどんどんやっていっていただければというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 そして、もう時間が参りましたので、ちょっと最後の質問は割愛をさせていただきますけれども、最初の一番大事な四十三兆円の防衛費についての精査、これはしっかりとやっていただかなければなりませんし、規模という言葉でちょっとお茶を濁された感がありますけれども、これは国民の税金です。そして、為替の影響も受けてくる、人件費の影響も受けてくる、資材の高騰の影響も受けてくる、恐らく数兆円規模になってくる、そこの部分、削れるのであればしっかりと削っていただいて対応していただくということをお願いを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

牧島主査 これにて下野幸助君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧島主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。阿部祐美子君。

阿部(祐)分科員 今日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。また、多くの皆様方に御協力をいただいたことを心から感謝をいたします。

 私からは、まず、ギャンブル依存症対策についてお伺いをしたいと思います。

 まず初めに、違法オンラインカジノ、そして、合法ギャンブルを含めたギャンブル依存症です。

 二月二十日の予算委員会での我が党の本庄議員の質問にもあったように、違法オンラインカジノの利用者数は三百四十六万人に達し、昨日も、プロ野球七球団の選手十七人が利用していたということが報道されるなど、日本社会全体にこの問題が既に広がってしまってきております。元を絶つ手だてが必要であると考えます。

 サイトブロッキングを求める本庄議員の質問に対し、どのような考え方でブロッキングが可能か整理しているという御答弁もありましたけれども、これだけ連日問題になっている以上、少しは検討を進められたのではないかと思います。その後何らかのアクションを起こしたのか、まず政府参考人にお伺いをいたします。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 オンラインカジノサイトに関し、ブロッキングを含むアクセス抑止の在り方について検討の場を設け、有識者を交えて具体的な課題や論点を整理するとともに、事業者を始めとする関係者の意見を丁寧に聴取して、技術的課題や想定されるコストを含めて検討していくことを予定してございます。

 現在、この検討の場の立ち上げに向けまして準備をしているところでございまして、早急に検討を開始することができるように進めてまいりたいと考えているところでございます。

阿部(祐)分科員 ありがとうございます。

 早急にという言葉があったので、是非それは急いでやっていただきたいと思いますが、その間にも、やはりSNSだけではなくテレビやラジオなどでも、海外カジノを宣伝するCMや番組などが流れてきております。こうしたことを放置することなく、新たにカジノを行う人を増やさないように取り組んでいただきたいと思います。

 そのためには、サイトブロッキング以外にも、賭博や海外送金を規制する法律というのは既にあるわけです。現行法の運用も積極的に行うべきだと考えますけれども、直近の検挙状況をお伺いしたいと思います。また、警察庁では、カジノサイトの実態調査並びにアンケート調査、これも行っているはずですが、いつ頃までにまとめて、どのように活用していくのか、これも併せてお伺いしたいと思います。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 オンラインカジノを含むオンライン上で行われる賭博につきましては、海外において適法に運営されているものであっても、日本国内からこれを行うことは犯罪でございます。こうしたことにつきましては、治安課題上重要な問題であると認識しております。

 警察におきましては、オンライン上で行われる賭博事犯につきまして、賭客のみならず、決済代行業者やアフィリエイター等、運営に関与する者を検挙するなど、厳正な取締りを推進しております。その検挙状況につきましては、令和五年が十三件、百七人、令和六年、暫定値でございますが、五十九件、二百七十九人の検挙となっております。このうち、自宅のスマートフォンなどからアクセスして賭博を行ういわゆる無店舗型のものにつきましては、令和五年が五件、三十二人、令和六年、こちらも暫定値でございますが、五十二件、二百二十七人の検挙と、大幅に増加しております。

 また、消費者庁と連携いたしまして作成したポスターやSNSを活用した広報啓発を行うなど、オンラインカジノの違法性を周知する取組や関係省庁と連携した取組も積極的に進めております。

 今後とも引き続き、厳正な取締りと効果的な広報啓発を推進してまいります。

 また、実態調査でございますが、こちらは現在取りまとめ中でございまして、今年度中、三月いっぱいをめどに取りまとめた上公表いたしまして、こうしたものをしっかり活用して、捜査等々、広報啓発に役立てていきたいと考えております。

 以上でございます。

阿部(祐)分科員 積極的に行っていることは評価をしたいと思いますが、三百万人を超える利用人数から見れば、まだごくごく一部であろうかと思います。また、アンケート調査などでは平均投資額や年齢等の推計値も明らかにしていくということですので、これは後に述べるギャンブル依存症対策についても是非活用をしていただきたいと思います。また、賭客として検挙された人たちを相談や治療に積極的につなげる、こうしたことも是非やっていただきたいと思います。

 さて、今、違法オンラインカジノに注目が集まっているところではありますけれども、ギャンブル依存症に関する問題は、既存のギャンブルにおいても極めて深刻な状況です。

 二〇一八年に施行されたギャンブル等依存症対策基本法の第一条には、ギャンブル等依存症は、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせているとの認識が明示をされているところです。さらに、うつ病など他の精神疾患を招いたり、あるいは虐待や犯罪など、当事者以外の人たちにも被害を及ばせる、そうしたことが広がっております。

 NPO全国ギャンブル依存症家族の会による緊急アンケート結果によると、近年、当事者の低年齢化や負債の高額化が顕著です。当事者の割合は、二十代が二〇二〇年の二五%から二〇二四年の三四%に、五年間で四人に一人から三人に一人に増えています。また、相談者の借金平均額は、二〇二一年の五百六十一万円から二〇二四年には九百六十八万円、ほぼ倍増して、一千万円近くとなっております。あくまでも平均額です。

 さらに、当事者の三分の一に犯罪行為があったとも回答がなされております。内容は、横領や窃盗に続き、闇バイトなど。そして、闇バイトに加担していた人たちが何のギャンブルをやっていたか。これは複数回答ですが、最も多かったのはパチンコやパチスロの七三%、次いで競艇四〇%、競馬三三%です。違法なオンラインカジノも約一三%ありましたが、主な項目はいずれも既存のギャンブル、今のところ合法なギャンブルであることを重く受け止める必要があるかと思います。

 そこで伺います。

 今、違法カジノが注目をされておりますが、そもそも、基本法ができたにもかかわらずこの六年間でギャンブル依存症をめぐる事態は急速に悪化しているという認識、危機感を、ギャンブル等依存症対策推進本部長として、官房長官、共有していただけますでしょうか。

林国務大臣 今委員からお話のありましたギャンブル等依存症でございますが、御指摘があったように、当事者や家族の日常生活、また社会生活に支障を生じさせるものでありまして、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせる場合がある、そういうふうに認識をしております。

 公営競技というお話でございましたが、今、売上げの八から九割がインターネット投票によるものとなっている中で、オンラインで行われるギャンブルは、時間とか場所を選ばずにアクセスができる、それから、現金じゃないものですから、実際にお金を賭けているという感覚が乏しくなる。そういうことなど、依存症につながりやすい特徴がありまして、今御指摘があったように、低年齢化も進んでおる。

 こういう指摘があるということは承知をしておるところでございまして、年度内に決定予定としておりますギャンブル依存症の対策推進基本計画の変更案におきましては、ギャンブルのオンライン化への対応として、アクセス制限等の活用の促進、それから、インターネット投票データなどを分析して効果的な対策につなげる、さらには、クレジットカードなど後払い決済の見直しの検討等々、こういうことを盛り込む方向で検討しておるところでございます。

 また、若年者対策の強化ということで、SNSなどインターネット上で動画を活用することなどによりまして、若年者に向けた普及啓発の強化等に取り組むことにしております。

 依存症によって冒頭申し上げたような不幸な状況に陥る人をなくし、国民の健全な生活の確保等を実現するため、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。

阿部(祐)分科員 今御説明あったように、対策を進めていかれるということで、それは大変に期待をしているところです。

 ただ、本部長は、この見直しの作業、五回会議があったと思うんですけれども、何回出席をされましたか。

林国務大臣 今委員から会議ということがございましたが、これはギャンブル等依存症対策推進関係者会議というものでございます。ギャンブル等依存症である方やその家族を代表する方、それから関係事業者、有識者の方から構成されるものでありまして、今、久里浜医療センター名誉院長で顧問であられます樋口進先生に会長を務めていただいて、いわば有識者の皆様の御議論ということで、様々な御議論をいただいているものと承知をしております。

 私はこの会議には出席しておりませんが、議論の成果などについて必要な報告を受けているところでございます。

阿部(祐)分科員 この見直しというのは既に二回目になっております。三年前には一回見直しをしているわけで、そのときにも有識者の皆様方がいろいろな知恵を出していただいている。でも、結果として、依存症の問題というのは、更に、特にオンラインへの対応がある意味遅れたと私は思っております。それで依存症の問題はより深刻化している。

 是非これは、いろいろな知見を合わせて計画を立てましたというだけではなくて、結果に対しても責任を持てるような、チームとしてこれから動いていただきたいと思うんですね。その本部長として、私は、本部長にその陣頭指揮を是非執っていただきたいと思っております。

 そのためには、不十分なものが幾つもあると思っております。

 一つは、実態把握です。

 厚労省は、国民の娯楽と健康に関するアンケートを実施しておりますし、その中では、日本のギャンブル依存症の疑いがあるのは約一・七%、単純に成人人口に当てはめると二百万人弱となっているわけですけれども、これだけ多くの人たちが、先ほど申し上げたような多重債務ですとかあるいは虐待ですとか、そうしたリスクに直面し、あるいは犯罪に手を染めてしまうかもしれない。こうしたことの日本全体としての社会的損失がギャンブル依存症によってどれだけ大きなものになっているか、この全体の試算というのがなされているのかどうかというのをまず確認したいと思います。

江浪政府参考人 お答え申し上げます。

 ギャンブル依存症に関しましては、今御指摘ありました実態調査、先ほど警察の方からも御答弁がありましたようなオンラインカジノに関する調査、いろいろな調査が行われておりまして、そういったもので実態把握に努めておるというところでございます。

 社会的損失の総合的な把握ということになりますと、どういった手法があるのか、どういった方法があるのかということで課題があるものというふうには考えておりまして、まずは関係省庁や研究者の意見を聞いてみたいというふうに考えております。

阿部(祐)分科員 ギャンブル依存症によって、本当はギャンブル依存症に限る必要は私はないと思っているんですけれども、このギャンブル依存症、あるいはギャンブルがもたらす様々なネガティブな効果と言ったらいいんでしょうか、これについて全体像を把握していく、単に金銭的なものだけではなくて、じゃ、それがどのように自殺や犯罪に結びついていくのかということも含めた試算をしていけば、その予防のために、それをなくすためにどれだけの資源を投入できるのかということが考えられると思うんですね。是非、この問題を多角的、全体的に把握していただきたいと思います。こうした意味では、先ほどの警察庁の調査なども含めて検討して、先ほど検討するというふうにおっしゃっていただいたと思いますので、是非前に進めていただきたいと思います。

 二つ目は、相談、治療へのアクセス、これが不十分だと思うんですね。

 ギャンブル依存症の相談や治療につながっているのは今、年間どのくらいの人数になっているのか教えてください。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのギャンブル等依存症の相談ないし治療の件数でございますけれども、まず相談件数の方でございますけれども、精神保健福祉センターでは、令和五年度では延べ七千七百七十六件、各地域に設置されております保健所の方、こちらの方は令和四年度の数字でございますけれども、令和四年度で延べ二千七百二十九件という状況でございます。

 一方で、治療の方でございますけれども、令和五年度に依存症の専門医療機関に新規で受診をされたギャンブル等依存症の患者さんの数、こちらの方は三千二百九十七人という数字でございます。これは専門医療機関でございますので、もちろん身近なメンタルクリニックとかにかかっている方もいらっしゃるかもしれませんが、ここは済みません、ちょっと専門医療機関ということでお答えをさせていただきます。

 これらの相談件数、患者数はいずれも近年増加の傾向にあるというふうに承知をしております。

阿部(祐)分科員 ありがとうございます。

 それぞれの現場で大変努力をされていることと思うのですけれども、先ほどの推計から出てくる二百万人弱という人数からいえば、本当に一握り中の一握りしか相談あるいは治療になかなかアクセスできていない、こういった状況であると思うんですね。

 しかも、この数字というのは多分、今のお答えの中にはNPOなどの数字は入っていなかったと思うんですけれども、官民挙げてどういう支援体制があるのかということも把握をした上で、全体のパイを増やしていくという努力をすべきなのではないかと思います。

 特に、違法カジノによって多くの検挙者が出ているということは、それだけカジノあるいはギャンブルに関わっている人たちが急増している可能性もあるわけで、この新たに出てきた違法カジノ、オンラインカジノに関わった人たちの相談や治療のニーズというのは急速に大きくなるはずなんですね。これに是非対応していただきたいと思います。

 そこで問題になってくるのが三つ目の不足でありまして、予算が不十分というところです。

 推進本部におけるギャンブル依存症対策予算、これはお幾らになっていますか。

江浪政府参考人 内閣官房におきまして、ギャンブル等依存症対策に関する政府予算ということで取りまとめをさせていただいております。

 これにつきましては、関係省庁における普及啓発、あるいは関係者の連携を促進するような医療・相談体制の整備ということでございますけれども、令和七年度全体といたしまして、約八・八億円ということで取りまとめをさせていただいているところでございます。

阿部(祐)分科員 八・八億円という数字は各省庁の対策費用を足し上げた数字であろうかと思います。主には厚労省かなというふうに思ってはおりますけれども、推進本部としては二千万円で間違いないですよね。もし違っていたらお答えください。

 これで果たしてギャンブル依存症に対する対応が、あるいはその予防が十分にできるのか。ギャンブルは、合法的なものだけでも二十兆円の市場で、これを膨らますために多額の広告費が垂れ流されているといいますか、使われているわけです。そして、それに対抗するためのギャンブル依存症対策に、全省庁合わせても八・八億円、推進本部では二千万円。これで太刀打ちできるはずがないではないかと思うわけですよ。

 かつ、先ほども申し上げたように、推進本部という名前になっておりますけれども、先ほどの御答弁であったように、各省庁の様々な政策をある意味事務的に取りまとめるというだけの存在になってしまっている。それでは、各省庁が前年どおりの事業を行っていく、その足し合わせにすぎないということになってしまいます。その足し合わせにすぎなくて、その結果、ギャンブルの依存症がどんどん増えたとしても、それに対して、全体の把握をして、だったら減らすためにどういうことを新たにやっていかなければいけないのか、今やっていることが十分なのか、それを検証して、そして減らすための具体的なリーダーシップを取っていくということが推進本部ではできないということになってしまいます。

 このような形で推進本部と言えるのか。もっと予算をつけて、そして、各省庁に対して全体でこういうことをやって結果を出していこうという、そうした組織にしてほしいと思うんですけれども、本部長のお考えを伺いたいと思います。

林国務大臣 まさに今、阿部委員からお話があったように、各省庁の例えば予算でいいますと、八・八のうち八・四が厚労省分ということでございますが、本部の方は会議費用等でございますので、実務をやっているところにより多く予算を配分しているということだと思いますが、PDCAのようなものを回して横串を刺す、このために本部があるということでございますので、単にそれぞれがやっていることを合わせるということにとどまっておってはいけないというのもおっしゃるとおりでございます。

 やっていることが実効性を持ってどういうふうになっているのか、それから、世の中には新しいことがどんどん出てきますので、単に増減だけを見るのではなくて、そういう新しい事象にどう対応していくのか、先ほど若年層対策とかオンラインのお話もいたしましたけれども、そういうことも含めて、しっかりと横串を刺して、関係省庁が連携できるように、また予算の確保もしっかりやってまいりたいと思っております。

阿部(祐)分科員 カジノ管理委員会の年間予算は三十七億円あるんですよね。よくも悪くもオンラインカジノが隆盛の中、リアルカジノというのは赤字必至と言われております。この赤字必至のカジノ計画のための管理委員会三十七億円というのは、これは無駄の極致じゃないかと思うんですよね。

 それこそカジノ計画そのものを凍結して、まずは依存症対策にこのお金を使うべきではないかと思いますが、お考えがあれば教えてください。

林国務大臣 それぞれ法律等に基づいて事業をやっているわけでございますので、所要の予算は主計局の厳しい査定の下に成り立っている、こういうふうに一般的に理解をしておりますので、この性質の違うものを比べて多寡を論ずるというよりは、先ほど申し上げましたように、しっかりと確保しながらそれを有効に使っていくということではないかというふうに考えております。

阿部(祐)分科員 国民の生命財産を守る、その観点から、是非、この依存症対策にもしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 ギャンブルに関する質問は以上ですので、官房長官、御退席いただいても大丈夫です。

牧島主査 御退席いただいて結構です。

阿部(祐)分科員 ありがとうございました。

 次に、余り時間が残っていないのでどこまでできるかですけれども、国連調達について端的にお伺いいたします。

 日本の国連拠出金は世界第三位であるにもかかわらず、国連調達の金額が、二〇二三年で世界五十六位、全体の〇・三%にすぎません。四百兆円規模と言われるこの市場の中で、日本の存在感というのは大変薄くなっております。

 このことについて、現状認識と、それから対策についてお伺いをいたします。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 国連を始めとする国際機関は、途上国の支援等の活動実施のために物品・サービスを世界各国の企業から購入しております。

 国際機関の調達における日本企業の参入及び受注実績は、二〇二三年で七千二百十九万ドル、全体に占める割合は約〇・二九%、世界七十一位となっており、その拡大を図る必要があると外務省としても考えております。

 このため、外務省では、国際機関の調達への日本企業の参入及び受注の拡大を目的として、平成二十七年以降、日本企業を対象とした国連調達セミナーを毎年度開催しております。昨年一月に開催された国連調達セミナーでは、国連食糧農業機関、FAO及び国連工業開発機関、UNIDOの開発部関係者から国際機関入札参加及び受注獲得のための実践的かつ具体的なアドバイスを行っていただき、四十の企業及び団体が参加しました。その機会に、これらの国連関係者と希望する企業との間で個別相談も実施いたしました。

 コロナ禍以降、国連調達セミナーをオンライン開催としてきましたが、今年度については、三月に、国連児童基金、ユニセフの調達関係者を招き、対面形式で開催予定でございます。ユニセフは、国連の中でも大口の調達機関であるとともに、輸送について、十三機関を取りまとめた調達を実施しております。今般、対面形式でよりきめ細やかなセミナーを実施し、引き続き個別相談も実施することで、日本企業の調達受注拡大につながることを期待しております。

 外務省では、このほかにも、本省及び在外機関における日本企業支援窓口を通じて日本企業からの個別相談を受け付けております。いずれにせよ、引き続き、国連機関の調達への日本企業の参入及び受注拡大に向けた取組を実施してまいります。

阿部(祐)分科員 いろいろ努力されているのは分かるんですけれども、そのセミナーを始めてからも順位はどんどんと落ちていってしまい、また数字も落ちてしまっているんですよね。とすると、今までのやり方の継続では、なかなかこの先上がっていくことは難しいんじゃないかというふうに思っております。

 時間もないのでもう質問にはいたしませんけれども、やはりこれまでとは違ったアプローチが必要なのではないか、国際NGOなども含めて、違った関係、カウンターパートを見つけていく必要があるのではないかということを指摘させていただきます。

 海洋政策について、端的にお伺いいたします。

 日本の海洋面積は世界六位となっております。そして、それを支える国境離島の重要性は非常に大きいものがあると考えておりますが、その重要性をどのように認識しているのか。また、有人国境離島法ができて、これは二〇一六年の成立ですが、それ以降も離島人口は減少の一途をたどっております。この現状をどのように捉えているのか。ちょっと短めにお答えをいただけるとありがたいです。

高杉政府参考人 お答えいたします。

 国境離島は、我が国の領海や排他的経済水域の外縁を根拠づけるものでございまして、領海等の保全の観点から極めて重要であると考えております。

 中でも、有人国境離島地域におきましては、日本国民が居住していることによりまして、領海等の保全に関する活動の拠点として極めて重要な機能を有しているということから、住民の継続的な居住というものが非常に重要だと考えてございます。

 このため、政府におきましては、先生御指摘の有人国境離島法に基づきまして、関係省庁が連携して、産業の振興、航路、航空路運賃の低廉化などの住民の皆様の生活を支える施策を各地域の実情に応じて進めてきているところでございます。

 今後とも、我が国における有人国境離島地域の重要性を踏まえまして、引き続き、関係省庁と連携しつつ、法律に基づいて、有人国境離島地域社会の維持等に関する施策に取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(祐)分科員 ありがとうございます。

 大変重要な存在でありますが、国境離島法、これは時限立法なんですね。是非この継続と拡充が必要だと考えております。

 それからもう一つ、今日は宇宙政策についてもお伺いをする予定でしたが……

牧島主査 間もなくです。

阿部(祐)分科員 ちょっと時間的に厳しいので、これはビジネスとして宇宙政策が成り立っていくようにということを要望いたしまして、今日おいでいただいたのに申し訳ございませんが、これは要望だけにさせていただきたいと思います。

 国境離島法についてはもう答弁は無理ですかね。

牧島主査 あと三十秒です。

阿部(祐)分科員 はい。

 国境離島法の継続と充実について一言いただければと思います。

高杉政府参考人 お答えいたします。

 有人国境離島法につきましては、先生御指摘のとおり、平成二十八年四月に議員立法で制定されました法律でございまして、令和八年度末、令和九年三月三十一日までの十年間の時限立法となってございます。

 先ほど御説明いたしましたとおり、この法律に基づいて様々な施策を講じておりますが、本法は議員立法であることから、制定時と同様に、その延長等につきましては、立法府における十分な御議論を踏まえた上で検討していく必要があるものと認識してございます。

 以上でございます。

阿部(祐)分科員 以上です。

牧島主査 これにて阿部祐美子君の質疑は終了いたしました。

 次に、池下卓君。

池下分科員 日本維新の会の池下卓です。本日はよろしくお願いいたします。

 本日は、尖閣諸島につきまして御質問させていただきたいと思うんです。

 本年の一月二十四日、私、日本維新の会の国会議員団のメンバーとともに、尖閣諸島開拓の日、百三十周年記念式典に参加をさせていただきました。その際、改めて、この尖閣の歴史、そして現状というものを改めて感じさせていただいたんです。

 御承知のことかと思いますが、一八九五年、明治の二十八年に尖閣諸島が日本の領土に編入された翌年に、古賀辰四郎氏によって開拓というものがスタートいたしました。当時は、アホウドリの羽毛の採取であったりとかかつおぶしの製造というものに従事されまして、多くの日本人が住まわれていたという具合に聞いております。また、一九一九年、大正八年には、尖閣諸島魚釣島の付近で遭難した中国福建省の漁民三十一名を日本の国民が救助をいたしまして、全員中国へ無事に送還されたということです。その後、当時の中華民国から感謝状も届いています。その感謝状には、遭難場所を、日本帝国沖縄県八重島郡尖閣列島和洋島、現在の魚釣島と記載されています。しかし、一九七〇年代の初頭に、国連機関が、この東シナ海、尖閣付近におきまして石油が埋蔵されているという報告の後から、中国であったり台湾であったり、こういうところが領有権を主張し始めたということ、これが歴史的な事実であると認識をしております。

 式典では、石垣市の中山市長の方から、尖閣諸島の重要性、また現地の課題、こういったものに対しまして強い危機感を持っておられるという発言がありました。翌日には、海上保安庁の方からも、私、ブリーフィングを受けまして、本当に海上保安庁の皆さん、一生懸命働いていらっしゃるということを改めて確認させていただいたところです。

 そういう背景も踏まえまして、以下、質問させていただきたいと思うんですが、御承知のとおり、近年は、中国海警局の艦船によって尖閣諸島周辺の領海侵犯が多発しております。日本の漁船への威嚇行動も繰り返されていると聞いております。昨年は、三百六十五日のうち三百五十五日間にわたって、接続水域内において領海侵入が確認されたと。連続では、二百十五日も連続してあったという具合に聞いております。まさに日本の主権と漁業関係者の安全を非常に脅かす大きな事態だという具合に考えておりますけれども。さらに、昨今の物価上昇であったりとか石油価格の上昇によりまして、巡視艇の維持費であったり若しくは人件費、また装備の維持管理、こういったところにも非常に負担があるということも承知をしております。

 そこで、お伺いをいたします。尖閣周辺の警備体制を強化するに当たりまして、予算の増額、装備の近代化、こういったことが不可欠であると考えておりますけれども、日本の海上保安庁の強化に向けて、二〇二五年の予算、具体的にどのような形でやられていくのか、今後の推移も含めて御見解をお伺いいたします。

服部政府参考人 お答えいたします。

 尖閣諸島周辺海域においては、ほぼ毎日、中国海警局に所属する船舶による活動が確認され、領海侵入も相次いでいる等、我が国周辺海域をめぐる情勢は一層厳しさを増しております。

 こうした情勢を踏まえ、令和四年十二月に決定された海上保安能力強化に関する方針では、新たな脅威に備えた高次的な尖閣領海警備能力など、六つの海上保安能力を強化することとしております。また、このために必要な経費として、令和九年度における海上保安庁の当初予算額を令和四年度の水準からおおむね〇・一兆円程度増額することとされております。

 海上保安庁では、この方針に基づき、海上保安能力の強化を着実に推進しており、令和六年度補正予算及び令和七年度当初予算では、尖閣領海警備能力の強化として、大型巡視船の増強整備等に取り組むこととしております。

 引き続き、我が国の領土、領海を断固として守り抜くとの強い決意の下、必要な予算や人材の確保を含め、海上保安能力を一層強化し、我が国周辺海域の領海警備等に万全を期してまいります。

池下分科員 御答弁いただきました。

 私も現場の海保の皆さんとお話をいたしまして、非常に厳しい状況であるということは認識をさせていただきました。日本の国を守るという点につきましては、やはり政府の力というものは非常に大きな後ろ盾になると思っておりますし、人材の確保もそうです。そして、中国といいますのは大きな国でありますから、本当に物量の面で押し寄せてくるというのをありありと感じておりますので、しっかりと対策を詰めていただきますようよろしくお願いいたします。

 そして、加えて、尖閣諸島というのは先ほど申し上げましたように歴史的にも日本の領土であるということは周知の事実、まあ我々は周知の事実でありますけれども、ただ、我々、日本の国のスタンスといたしましては、中国との間に領有権問題は存在していないというのがそもそもの立場であると感じております。一方、中国といいますのは、歴史的な事実をねじ曲げてしまう、こういうことを今必死にやっていると感じております。一方的な主張を続けまして、国際社会に対しても非常にいろいろな手だてを用いて認識を広めようとしております。

 例えば、中国のAIですね、今回、予算委員会でもお話がありましたけれども、ディープシークというもので尖閣諸島はどこの領土だということで問いますと、中国の領土だということで表示されるということを聞き及んでいるわけです。やはり、我が国は、尖閣諸島を実効支配をしているんだという立場をしっかりと国内外にアピールする必要があるかと思っております。そうしなければ、国際的に中国の主張が広まってしまうと手遅れになってしまうという危機感を私は持っております。

 当然、今までも様々な、ホームページであったりとかイベントであったりとか、そういうことをされているということは存じ上げているものの、加えて、やはり国内だけでなく国外への周知活動もしっかりと今後行っていかなければならないと感じておりますけれども、この部分についての見解をお伺いしたいと思います。

岡政府参考人 御答弁申し上げます。

 尖閣諸島については、これまで、国内外において我が国の立場についての正確な理解が浸透するよう、内外発信の強化に努めてきているところでございます。

 具体的には、情報発信の拠点である領土・主権展示館での常設展示のほか、各種企画展の開催、各地における地方巡回展を行っております。この一月には、東京駅近くのKITTE丸の内において開催した巡回展では、八日間で五千人を超える多くの方々に御覧いただきました。また、展示館Xやデジタル展示館など、SNSの活用やウェブ上での情報発信の充実に努めているところでございます。

 国外に向けましては、民間シンクタンク等に委託いたしまして、国際セミナー等を開催しております。また、尖閣諸島周辺海域の情勢を含め、我が国周辺の領土、主権をめぐる情勢について、定期的にニュースレターの発信等を行っているところでございます。

 引き続き、このような取組を精力的に行っていくとともに、四月には領土・主権展示館のリニューアルを予定しております。リニューアルを機にこれまで以上に多くの方々に展示館にお越しいただけるよう、様々な機会を捉えて御来館、御活用を呼びかけているところでございます。

池下分科員 御答弁いただきました。

 そういうイベントの活用は非常に重要だと思っておりますけれども、歴史であったり、日本人の方の中で、尖閣に余り興味のない方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々にいかに来ていただいて歴史認識をしていただくのかということも非常に重要でありますし、先ほど言っていただいたニュースレターということもありましたけれども、こういうこともやはり、PDCAではないですけれども、しっかり、どれくらいの効果があったのか、その効果に基づいてこれからどうしなければならないのか、そういうところを計画的に実施していただきますようお願い申し上げたいという具合に思っております。

 先ほどの石垣島の式典に行かせていただいた際のお話をちょっとつけ加えてさせていただきたいと思うんですけれども、その際に、石垣市の中山義隆市長はこのように言われておりました。魚釣島に外来種のヤギが繁殖して、生態系を壊しているんです、こういう問題が発生していると。また、戦没者の遺骨収集のために上陸調査が必要であるということも訴えられておりました。しかしながら、残念ですけれども、現在、日本政府はこれまで上陸許可というものを出していないということを承知をしております。

 市が行った尖閣周辺海域の海洋調査の結果も発表されております。中山市長は、海上調査ではもう限界、上陸調査をした上で必要な対策を国に求めたいと言われておりました。次年度も同様の調査を行う準備を進めているという具合のことは承知をしています。ドローンを飛ばしてその現場を、魚釣島を見ていくということもされているということも言われておりましたけれども、日本政府が尖閣諸島を本当に実効支配しているという以上、適切な環境保全、歴史的遺産、この管理を行う義務があるのではないでしょうか。責任があるのではないでしょうか。

 このような生態系調査や遺骨収集のために上陸を、これはしっかりと政府は認めていただきまして、加えて、予算措置をするなどして、しっかりとこれは対策すべきではないかと考えますが、見解をお伺いいたします。

飯田政府参考人 環境省からお答え申し上げます。

 石垣市におきまして、上陸調査を希望する声があることは認識しております。

 尖閣諸島への上陸につきましては、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理という目的のため、原則として、政府関係者を除き何人も上陸を認めないという政府方針を踏まえまして、政府全体として対応がなされるものと認識しております。

吉田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 戦没者の遺骨収集、これにつきましては、旧戦域の状況を知る現地住民や帰還をした戦友等から得られた情報、各種の文献情報などから戦没者の遺骨情報を収集をして、確度の高い遺骨情報がある場合に実施をしているところでございます。

 尖閣諸島の魚釣島につきましては、これまで、尖閣諸島で遭難をしお亡くなりになった方の御遺骨に関して、石垣市から取り寄せたものも含めまして、文献を収集し調査を行ってまいりました。しかしながら、これまで調査した文献では、埋葬地点を特定ができる確度の高い情報が確認ができておりません。遺骨収集の実施には今至っていない状況でございます。

 今後も、新たな文献等の情報があればこれは調査を行うこととしておりまして、引き続き情報収集に取り組んでまいりたいと思います。

池下分科員 御答弁いただきました。

 環境省の方から、尖閣及び周辺海域におきましては、安定的な維持管理というお言葉もありました。そして、政務官の方から、確度の高い情報ということも御答弁をいただきました。

 最近は、問取りの際にお伺いをしたんですけれども、令和三年に石垣市の方から、行政標柱、柱を立てる申請があった、そのために要望書を出されている、けれども残念ながら上陸許可が出なかったということで承知をしております。

 ただ、先ほど環境省の方が言われたんですけれども、尖閣諸島の安定的な管理、そのために政府関係者の方しか上陸を認めていないということを言われておりました。

 ただ、厚労政務官もちょっと言われたんですけれども、遺骨収集のことに関しまして、私も幾つか文献を読ませていただいたんです。戦時中、日本の石垣島の方から台湾の方に船に乗って疎開をされる途中に、アメリカの戦闘機でその船が攻撃をされて、沈んだ船もあれば、魚釣島、尖閣の方に真水があるんだと言う乗組員がいらっしゃって、緊急避難をしたという事実があります。その中で、やはり多くの方が亡くなられています。特に、当時老人の方であったりとか、また体の弱いお子さん、年少の方であったりとかという方々の遺骨が魚釣島の中にまだ残っているというお話を聞いているわけなんですね。

 やはり、石垣島は、政府ではありませんけれども、行政関係の方々が担っておりますので、安定的な管理を脅かすということは、私はちょっと考えにくいのではないかなという具合に思っております。

 ですので、私、ちょっと心配しているのは、今、尖閣周辺に、先ほど申し上げましたけれども、中国海警がどんと押し寄せてきているという状況の中、中国へ気を遣っているのかなと思うわけなんですね。中国海警と日本の海上保安庁が両方とも、うちの領海だから出ていきなさいということを日本語と中国語で言い合っているということも聞いているわけなんですけれども、やはり、この事実があるわけですから、特に今、生態系が壊れてきているということもありますので、まさに安定的な管理というものができていない状況は間違いないと思うんですけれども。

 そこで、お伺いします。改めて、安定的な管理の基準というものは何か、もうちょっと具体的にお答えいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 魚釣島につきましては、国が取得、保有する以前から、所有者に無断で活動家が上陸する状況が発生したところでございます。

 このような状況を受けまして、政府としては、平成十四年に魚釣島等を賃借するとともに、尖閣諸島への上陸については、政府関係者を除き、原則として禁止してきたところでございます。この方針は、平成二十四年に魚釣島等を国が取得、保有して以降も変更してございません。

 いずれにいたしましても、具体的な上陸の申請がなされた場合は、この方針の下、個々のケースに応じて、その必要性や尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に判断することとなります。

池下分科員 御答弁いただきました。

 先ほどのお話にもあったんですけれども、通告じゃないんですが、ちょっと加えて、今御質問を追加でさせていただきたいと思うんですけれども。

 先ほども言いましたけれども、石垣市は行政なんですね。先ほど御答弁にありましたけれども、活動家が上陸をされた、そういうところで問題になったということでありましたけれども、これはそのパターンじゃないんですよね。今回、石垣の市長さんが言われているのは、やはり管理のために最低限必要なんだということを言われているわけですよ。事実的に、生態系も壊れてきているという事実があります。

 遺骨収集に関しましても、問取りで、答弁レクでちょっと聞かせていただいたんですけれども、特に戦後、民間の方が上陸をしてお捜しになられたということはあったとは聞いておるんですけれども、政府であったり行政であったり、こういうところが上陸して遺骨収集の捜索をされた事実はないという具合に聞いております。

 ですので、当時、戦後、民間でやられた。けれども、なかなか備品とか装備もないわけですし、やはり今回は、特に行政側からの要望ということがあるので、そこはしっかりと基準として考えていくべきじゃないかなという具合に思っております。

 私は、今御答弁がありましたけれども、安定的な維持管理、こういうものに関しまして明確な基準が不足しているのではないかなと思っております。また、判断の透明性、誰がどこで判断してんねんというところも、各省庁が集まって、内閣官房の方でやっているんですよということも聞いてはいるものの、やはりちょっと納得いかないなということで思っております。

 ですので、やはりこれは、上陸目的ごと、当然、誰が上陸するのか、これも大事ですよ、誰が上陸するのかということももちろん大事ですけれども、何のために上陸をするのかということもしっかりと判断材料に加えて、明確化をしていくべきではないかなということで思っております。

 そこで、お伺いをしたいんです。今後は、この尖閣、特に魚釣島の上陸許可に関するルール、これを改めて内閣官房の方が中心となって作っていただいて、沖縄県、石垣島、こういった地元の意見を反映しながら、各関係省庁と連携して、主導して検討、そして上陸の許可、こういうものを出していく必要があるかと思いますけれども、ちょっと通告はないんですが、内閣官房の方にお伺いをしていきたいという具合に思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島に政府関係者以外の者が上陸することにより近隣諸国、地域の者による領海侵入等を誘発するおそれがあるために、無用な混乱等が生じることを避け、我が国の尖閣諸島の有効な支配が妨げられないようにするとの趣旨から、政府関係者以外の上陸を原則として禁止するということは引き続き必要であると考えております。

 いずれにしましても、現時点においては石垣市あるいは石垣市長から具体の上陸申請はなされていないと承知しておりますけれども、具体の上陸の申請がなされた場合には、先ほど申し上げた方針に基づきまして、個々のケースに応じて、必要性や尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に判断するということで対応させていただきたいと思います。

池下分科員 済みません、ちょっと時間があるので、もう一回お伺いしたいと思うんですが。

 今、無用な混乱ということで言われたと思うんですね。当然、無用な混乱は必要はないかと思いますけれども、一方で、尖閣諸島はどこの国なんですか。石垣市とかから申請があった場合には具体的に検討しますということで言われましたけれども、これは石垣の市長さんもいろいろな公の場で、上陸したいんですよということで言われておりますけれども、申請があったら本当に具体的に検討されるのか。そして、改めて、さきの質問でも言いましたけれども、中国が領海侵入を繰り返していくということで、本当に日本の国の領土であると考えられているのか。この二点、もう一度お伺いします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島につきましては、我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いが全くなく、現に我が国はこれを有効に支配しておるという状況でございます。

 政府としては、繰り返しでございますけれども、尖閣諸島及び周辺海域の安定的な維持管理という目的のために、原則として、政府関係者を除き何人も尖閣諸島への上陸は認めないとの方針を取っているところでございます。

 この方針の下に、上陸を認めるか否かについて、個々のケースに応じて、必要性や尖閣諸島をめぐる状況等を総合的に判断してまいりたいと思っております。

池下分科員 ごめんなさい、何度も言いますけれども。

 有効に支配していると言いますけれども、有効に支配している、外から見ていますけれども、なかなかそういう具合には見えないという具合に思うんですよね。政府が上陸するんやったらオーケーですよという話でありましたけれども、じゃ、石垣市と政府が一緒に上陸するんやったらいけるんですか。お答えください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点では石垣市長あるいは石垣市からの具体の上陸申請はないとは承知しておりますが、仮にそのような、石垣市が政府と一緒に上陸したいという要望があった場合であっても、政府以外の者が尖閣諸島に上陸するということになりますので、個々のケースに応じてというところで判断をさせていただくということになると思います。

池下分科員 時間がなくなりますのでそこら辺にしておきたいと思いますけれども、残りは五分弱しかございません、二問お伺いをしておきたいと思うんですが、先ほど、私が冒頭で申し上げました、尖閣諸島開拓の日の式典に参加させていただいたということなんですけれども、私はこれは非常に重要な式典であると考えておりまして、これはやはり、国内、国外に尖閣は日本の領土ですよということをPRする、周知する非常に重要な場である、これは十二分に活用していかなければならないという具合に考えております。

 今回行かせていただいたんですけれども、政府の職員の方は来られておったんですけれども、残念ながら、大臣、副大臣、政務官、こういった方々は余りお越しになられていなかったということで思っております。ですので、今後で結構なんですけれども、石垣市の方から御招待がありましたら海外に、大臣が来たよ、副大臣が来たよ、政務官が来たよ、政務の三役が来たんですよということをしっかりとPRするためにも是非行っていただきたいと思うんですが、御見解をお伺いいたします。

坂井国務大臣 委員も御指摘をしていただいてありますように、尖閣諸島をめぐって、我が国の立場としては、領土権の問題は存在をしないという立場を取っております。

 一方で、この尖閣諸島開拓の日は石垣市が条例で定めたものでありまして、諸般の情勢を踏まえ、また勘案しつつ、適切に判断をし、現在は、内閣審議官であります内閣官房領土・主権対策企画調整室長が出席をしているところでございます。

 政務三役に招待状が来た場合ということでございますが、その場合も、領土問題が存在しないということを考え、またそのときの諸般の状況を勘案をし、適切に判断をしてまいりたいということでございます。

池下分科員 領土問題が存在しないという認識は承知をしておりますけれども、やはり、中国海警がたくさん来ているという事実は変わりございませんので、そういったことを含めて、しっかり日本の立場というものを主張していくことは必要だと感じておりますので、是非、そういう御招待があった場合には前向きに御検討いただければ大変ありがたいなと思います。(坂井国務大臣「ちょっとよろしいですか」と呼ぶ)どうぞ。

坂井国務大臣 出席をするという方法が適切かどうかはそのときにまた判断をするということでありましょうが、先ほど室長の方から御答弁いたしましたけれども、特に海外にしっかり周知をしていくという方法につきましては、私どもも懸命に考えているところでございますが、委員もすばらしいアイデアがあれば是非御教示をいただいて、教えていただきながら、これは大事なことでございますので、ここはしっかり特に海外に向けてアピールはしていきたいので、また御協力いただければありがたいと思います。

池下分科員 ありがとうございます。

 では、ちょっと時間がないので最後に一問だけなんですが、沖縄沖に中国が設置したブイについて最後にお伺いをしたいと思うんです。

 二〇二三年七月に発見されまして、二月に撤去されているということが確認されたということではありますけれども、長期にわたって放置してきたということは非常に重たいと思っております。その間に日本の情報が流出していないのか、非常に心配をしているところでありますけれども、そういう可能性はないのかということを一つお伺いしたい。

牧島主査 時間、もう間もなくです。

池下分科員 また、今後このようなケースが発生した場合、再び放置することがないように是非ともしていただきたい。本来ちょっと質問させていただきたいところなんですが、ちょっと時間がございませんので、是非要望させていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

牧島主査 これにて池下卓君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.