衆議院

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第1号 令和7年2月27日(木曜日)

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本分科会は令和七年二月二十五日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      小林 茂樹君    土屋 品子君

      川内 博史君    近藤 和也君

      徳安 淳子君    赤羽 一嘉君

二月二十六日

 小林茂樹君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和七年二月二十七日(木曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 小林 茂樹君

      土屋 品子君    金子 恵美君

      川内 博史君    近藤 和也君

      松下 玲子君    徳安 淳子君

      林  佑美君    赤羽 一嘉君

      山崎 正恭君

   兼務 上田 英俊君 兼務 加藤 竜祥君

   兼務 坂本竜太郎君 兼務 根本  拓君

   兼務 広瀬  建君 兼務 向山  淳君

   兼務 山口 良治君 兼務 佐原 若子君

   兼務 緒方林太郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       江藤  拓君

   環境大臣         浅尾慶一郎君

   農林水産大臣政務官    庄子 賢一君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           榊原  毅君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口  靖君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       堺田 輝也君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       佐藤  紳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           関村 静雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          深水 秀介君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  松尾 浩則君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  松本  平君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            前島 明成君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局農村政策部長)       神田 宜宏君

   政府参考人

   (林野庁長官)      青山 豊久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      森   健君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           今村  亘君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   辻本 圭助君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         山田  仁君

   政府参考人

   (環境省大臣官房地域脱炭素推進審議官)      大森 恵子君

   政府参考人

   (環境省大臣官房環境保健部長)          前田 光哉君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  土居健太郎君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            松本 啓朗君

   政府参考人

   (環境省環境再生・資源循環局長)         白石 隆夫君

   政府参考人

   (環境省環境再生・資源循環局次長)        角倉 一郎君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策統括官)           秦  康之君

   農林水産委員会専門員   千葉  諭君

   環境委員会専門員     野崎 政栄君

   予算委員会専門員     中村  実君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     金子 恵美君

  近藤 和也君     原口 一博君

  徳安 淳子君     林  佑美君

  赤羽 一嘉君     山崎 正恭君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恵美君     井坂 信彦君

  原口 一博君     松下 玲子君

  林  佑美君     徳安 淳子君

  山崎 正恭君     角田 秀穂君

同日

 辞任         補欠選任

  井坂 信彦君     川内 博史君

  松下 玲子君     近藤 和也君

  角田 秀穂君     中川 宏昌君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 宏昌君     赤羽 一嘉君

同日

 第一分科員根本拓君、広瀬建君、第四分科員山口良治君、緒方林太郎君、第七分科員上田英俊君、坂本竜太郎君、向山淳君、第八分科員加藤竜祥君及び佐原若子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和七年度一般会計予算

 令和七年度特別会計予算

 令和七年度政府関係機関予算

 (農林水産省及び環境省所管)


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     ――――◇―――――

小林主査 これより予算委員会第六分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算及び令和七年度政府関係機関予算中農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。江藤農林水産大臣。

江藤国務大臣 初めに、予算の基礎となっている農林水産施策の基本方針について御説明いたします。

 農林水産業は、国民に食料を安定供給するとともに、その営みを通じて国土の保全などの役割を果たしている、まさに国の基であります。

 先人から受け継ぎ、農林漁業者が守ってきた我が国の肥沃な農地と豊かな森や海は、国民の資産であり、かけがえのないものであります。

 しかしながら、我が国の農林水産業を取り巻く環境は、国際情勢の不安定化や自然災害、気候変動等の影響、人口減少や高齢者の引退による基幹的農業従事者の急減など、大きく変化しています。

 日本の農政は大転換が求められているとの自覚を持ち、生産基盤の強化、食料自給率、食料自給力の向上を通じた食料安全保障の確保に全力を尽くしてまいります。

 また、様々な環境の変化に対応するため、これまでの殻を破る大胆な政策転換にも挑んでまいります。

 改正基本法に掲げた理念の実現に向け、初動五年間で農業の構造転換を集中的に推し進められるよう、新たな基本計画を策定し、農地の大区画化、共同利用施設の再編、集約化、スマート農業技術の導入加速化など、施策を充実強化するなどにより、生産性向上や付加価値向上を通じた農林漁業者の所得向上を図ってまいります。

 我が国の農林水産業を生産者の皆様がやりがいと希望、夢を持って働ける産業としていくとともに、その生産基盤を次の世代に確実に継承していくことは、国家の最重要課題であります。

 そのために、様々な方々の声に耳を傾け、これらの課題に取り組んでまいります。

 次に、令和七年度農林水産予算の概要を御説明いたします。

 一般会計の農林水産予算の総額は二兆二千七百六億円であります。その内訳は、公共事業費が六千九百六十六億円、非公共事業が一兆五千七百四十一億円となっています。

 以下、農林水産予算の重点項目については、委員各位のお許しをいただき、御説明を省略させていただきます。

 御審議のほどよろしくお願いいたします。

小林主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま江藤農林水産大臣から申出がありました農林水産省関係予算の重点事項の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小林主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小林主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願いいたします。

 また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山崎正恭君。

山崎(正)分科員 公明党の山崎正恭です。

 本日は、委員長、理事の皆様に第六分科会での質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。昨年は農林水産委員だったんですけれども、今年は違っておりますので、このような機会を与えていただきまして、大変にうれしく思います。

 早速質問に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、今国会、農水委員会での目玉法案である食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場の一部を改正する法律案、非常に法律名は長いんですけれども、要は、持続可能な農業に向けた適正な価格形成についての法案であり、農業生産者の皆さんが本当に待ち望んでいる、注目度の高い重要な法案であります。

 これについて、まず何点かお伺いしたいと思います。

 私は四国比例ブロックの選出でありますが、衆議院議員になって今二期目。この四年間、高知、徳島、香川、愛媛、この四県を歩いておりますけれども、どの県の農業者からも、この適正な価格形成については、先ほど言いました期待の声と同時に、本当に実効性のある法律になるのかとの不安の声もございます。

 高知県のある四十代前半の農業生産者は、施設園芸で野菜を作っていますが、近年の重油の高騰、さらに資材の高騰でコストがどんどん上がる中で、販売価格は全く変わらない、この数十年ほとんど変わっていない、このままでは農業を続けていくことができないといった悲痛の声が上がっております。

 農業に関しては、こういったコスト負担を川上である生産者が一手に担っているとも言われております。まあ生産者がそう思っている、感じております。この構造を変えていかないと、持続可能な農業にならない、若い農業者の皆さんが農業を続けていくことができないと強く感じています。

 今の状況ではなかなかここから先の明るい展望を見出すのは厳しい、父親の代から両親が頑張ってきた農業だが、今の年齢のうちならまだ転職も可能なので、真剣に続けられるかどうか考えています、そういった若い農業従事者の皆さんからの声もお聞きしてまいりました。

 今回の法案名に卸売市場の一部を改正する法律案とあるように、農業生産物は主に卸売市場での取引で扱われています。以前は競りにより競売価格で決定していましたが、近年では相対取引がほとんどの状態です。

 ここ数年の相対取引で、生産原価を割り込む取引価格が横行しているという話もございます。また、生産原価を割り込まなくてもそれに近い価格での取引が多々あり、そのような状況の中で農業生産者の皆さんが苦しんでいるとも聞きます。先ほども申しました、思い描く収入が得られず、農業従事者は離職や廃業を迫られているようなこともあります。これは、米農家や野菜などを作る施設園芸農家しかり、畜産農家も同じ状態であるというふうに言われております。根本的に、生産物の価格を自分たちで決めることができないという、そういった構造にあるわけでございます。

 そんな中、待望の、令和五年八月に第一回適正な価格形成に関する協議会が発足し、昨年末までに六回の協議会が行われたと聞いております。そして、その間に農政の憲法と言われる食料・農業・農村基本法の大幅な改正が行われ、「持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない。」とようやく明文化されました。

 ここで、質問に入りたいと思います。

 まず、何といっても、やはり、今、食品等の取引の現状把握が重要であるというふうに思います。今回の法案の第三十四条に、農林水産大臣は、食品等の取引の適正化のため、食品等の取引の状況、取引条件に関する状況、その他食品等の取引の実態に関する調査を行うものとするとありますが、この実態調査については具体的にどのように行うのか、お伺いいたします。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 費用を考慮した価格形成につきまして、現在法案の最終調整を進めているところでございます。

 現在検討中の法案では、今御指摘のございました調査、食料の取引の状況ですとか、それから取引条件に関する協議の状況、こういった実態を把握するための調査を行うという方向で検討を進めてございます。

 また、その中身でございますが、生産、製造、流通、販売といった各段階の事業者間の取引を対象といたしまして、価格交渉ですとか商慣習といった取引上の課題、あるいは取引におけます費用の考慮などの状況の実態、こういったものを調査をしたいというふうに考えてございます。

 また、更なる詳細につきましては、今後とも、引き続き関係者とも協議をして、現場の実態を適切に把握できるように努めてまいりたいと考えてございます。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 取引や協議、中身と、かなり突っ込んだ内容で項目としては調査していただくんだなということがよく分かりました。ただ、非常に商業的な取引ですので、中には企業の秘密事項といいますか、取引の状況もありますし、それぞれの、各社の秘密事項等もあって、なかなか難しい面等もあると思うんですけれども、是非しっかりとこの状況調査をしていただきたい。

 先ほども言いましたけれども、やはり、農業生産者を今しっかりと確保していく、守っていくことが日本の非常に重要なポイントでもありますし、この法案のポイントでもあると思いますので、まず、この実態把握のところを、今まで以上に踏み込んで、より正確な実態を把握していただけたらというふうに思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 こういった問題に対する取組で、世界に目を向けますと、フランスが二〇一八年に農業者の所得向上を図るためエガリム法を公布して、二〇二一年にはエガリム2法を公布しています。

 エガリム法は、農業者と最初の購入者との間で書面での契約締結を義務化しています。その書面の記載義務事項の中に、価格及び生産コスト等を考慮した価格を自動改定できる決定方式又は価格の決定方式を入れなければならないルールになっておりますが、その決定方式の基となっているのが生産コストの指標でありまして、本法案でも、第四十二条で、認定指標作成等団体として、生産から流通までの各団体が参加してコスト指標を作ることになっていると思います。

 そこで、ちょっと一点だけ気になったのが、法案の第五十条に、コスト指標作成に当たった団体への、この団体の管理規制の中に、一つ、秘密保持義務というのがこの第五十条に含まれておりますが、この秘密保持義務というのは、一般の人から見たら、どんな秘密があるんや、何か隠しているんじゃないかみたいな、そんな質問なんかもあったんですけれども、ここで言われる秘密保持義務というのは具体的にどういった内容に義務が課されるのか、お伺いします。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 現在検討中の法案では、消費者の値頃感から小売価格が設定されまして逆算で取引価格が決まってしまうということから、取引において、通常、費用が認識されない品目というものがございます、こういうものを指定をいたしまして、この指定品目ごとに、認定した団体が費用の指標を作成してこれを公表するというような仕組みを検討いたしているところでございます。

 このコスト指標の作成のためには、関係事業者のコストに関する情報、こういうものを調査、収集する必要がございますが、これらは営業秘密に該当し得るような経営の情報でございます。このために、コスト指標を作成いたします認定団体の役職員等に対しまして、収集したコストに関する情報等について秘密保持を義務として課すという内容でございます。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 先ほどの議論とも関係する非常に重要なところでありまして、営業秘密のところまで踏み込んでいただけると実態がよく分かるということで、けれども、同じ業界の人たちにとったら他社の営業秘密が知りたかったりということで、そこは本当は知られたくない内容であったりするかもしれませんので、そういったところへ配慮した秘密義務ということがよく分かりました。

 しっかりとそういった秘密保持義務を守っていただきながら、何度も申しますけれども、より実態がきちっと解明されて、よりよいコスト指標が作られていくということが非常に重要なポイントになってくると思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 次に、食料の持続的な供給ができる食料システムの確立を図るためには、合理的な費用を考慮した価格形成が重要であり、生産現場の現状が確実に反映されなければなりません。これを非常に農業従事者の皆さん方は望んでおられます。

 そうなってきた場合、農産物の場合、地域ごとに異なる資材費や労務費、それから燃料油費、また諸経費の違い、そして自然環境の違いからきます収穫量の違いや、野菜なんかは、種まきをするところから始まって、収穫する時期も違います、リレー方式でやっていたり。そういったものの差などがコスト指標の作成時に適切に反映されるのだろうかというふうな疑問が農業従事者の皆様方からございます。

 こういった要素が今回盛り込まれていくのかというのをお伺いしたいと思いますし、あわせて、豊作や凶作といった指数は盛り込まれていくのか、その点についてお伺いしたいと思います。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、コスト指標につきましては、各品目ですとか各産地の実情、こういったものをきちんと踏まえて作成することが必要だろうというふうに考えてございます。

 このため、品目の差異はもちろんですけれども、作付の規模、経営規模ですとか、それから作付の時期、あるいは作付の体系と申しましょうか、露地なのか施設なのか、あるいは慣行栽培なのか有機なのか、こういったような実情をきちんと踏まえて、一定の産地、まとまりのある産地というものを念頭に置きながら、実情を踏まえたコスト指標を作成するということに注力をしていきたいというふうに考えてございます。

 具体的なコスト指標の作成の仕方につきましては、今後、現在私どもで行っております協議会の米ワーキンググループですとか野菜ワーキンググループ、ここで関係者と十分協議をして内容を詰めてまいりたいと考えているところでございます。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 地域ごとに、資材費や労務費や燃料費、諸経費など、かなり現状が違うと思うんですけれども、今回の法案を見ると、これは全国で一律でコスト指標を作っていくということになっていると思うんですけれども、そこに対する、農業従事者の皆様方からは、かなり地域ごとの差があるのに、本当にそれぞれのコストがそれで確実に反映されていくのか非常に不安であるというふうな声があります。もう少し産地や地域ごとに細かく指標を分けるべきじゃないかというふうな意見があるのも現場の声でございます。

 ただ、反面、細かく、例えば都道府県ごとに、産地ごとにコスト指標を作ったとしても、それを反映した価格ができたとしても、売られる場所、最後、売っていく場所は一つであったりしますので、そういった場合にどうなのかというふうな問題もありますので、これも非常に両面難しい問題をはらんでいると思うんですけれども、やはり、全国一律で一つの指標ということに対しては、少し粗いのではないか、大ざっぱなのではないかというふうに私も感じますし、そういったお声を聞くところでございます。

 難しい問題ではありますけれども、今回の法案の目的に照らしまして、真に農業生産者の方が持続可能な制度となっていけるように、今後、まずはこれでスタートしていただきまして、何か問題等が生じてきた場合にはしっかりと不断の見直しを図っていくというふうな視点も持って取り組んでいただけたらなというふうに思うところでございます。

 また、一つの意見として、現在の市場では、バイヤーと言われる方々が年間契約を行って、業者の皆様方から一定量契約している、しっかりこれを準備していくという契約になっていると思うんですけれども、例えば、先ほど言ったように、野菜なんかはリレー産地でいくので、最初のところでなかなか取れていなかった場合には、思い切って値段が高くても突っ込んで、量をかまえなければならないので、値段を上げて、そこで量を確保していく。ただ、だんだん、年間の中で動いていく中では、少し取れていくところであったとしても、取れていれば、そこで突っ込んだ分だけ、年間の契約量は決まっていますので、後半になったら若干値段を落としていく。そうなると、産地ごとに非常によかったところと厳しいところが出ていくという、そういった現在の商慣習の状況もあるというふうにも伺っておるところでございます。

 そういったところをしっかりと、そういったところでなかったら、これはなかなか難しいとは思うんですけれども、こういった現場での提案の声もあるということで、例えば、上限し過ぎてもバイヤーの方も大変だし、一番困るのは、最後それを買う消費者の皆さん方であります。そして、どんどんどんどん下がり過ぎても、もちろん生産者の方が困っていきますので、こういった提案も、例えば株式市場なんかで用いられています、いわゆるストップ高と言われるような、これ以上いったらとか、これ以上上がったらとか下がったらというふうなこともいいんじゃないかというふうな御意見もあります。

 これは、様々ほかの法律にも触れるということで、なかなか難しいというふうなことはございますけれども、そういったふうな意見も現場では出ておるということだけは知っておいていただけたらなというふうに思います。

 先ほど言ったようなために、あと、最近、やはりどこに行っても、昨日もそうでした、おとといもそうだったんですけれども、米の問題を聞かれます。もっと、米が足りるんだという状況だという、説明はしたんですけれども、しっかりと、もっときちんと、報告制、いわゆる食の安全を考えたら、様々な食料に対しても報告制も必要なんじゃないかというふうな声もあります。今回みたいなこの売り渋り、分からないですけれども、売り渋りじゃなかろうかと言われる状況の中で、それを起こさぬためにもしっかり報告させてほしいというふうなお声もあります。

 価格に直接関与していくということは、先ほども言いましたように、なかなか難しいと思いますけれども、やはり、消費者にとっても生産者にとっても、振り幅が余りにも大きいということは非常にこれは不利益になりますので、そういったことにならないように、今回、コスト指標を作って、そういったことを取り組んでくださると思うんですけれども、効果が出ない場合などは更なる強い一手も必要だと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、卸売市場での取引は、例えば、生産物の品質によってなんですけれども、高値とか中値とか安値とついています。これと今回のことは違うとは思う、そのまま一緒じゃないと思うんですけれども、今回作成されるコスト指標については、実際に市場においてはどのように活用されるのか、具体的に教えていただきたいと思います。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました卸売市場でございますが、需給事情、それから品質評価に基づきまして、価格を調整弁として、出荷された生鮮食品などを早急に売買する、そういった機能を持っているところでございます。

 そうした中で、この卸売市場においてコストの考慮を求めるというのは、やはり様々な課題があることは事実でございます。

 このため、まずは、卸売市場の開設者に対しまして、その卸売市場で取り扱われます指定品目、こういうものはどういうものがあるのかといったことですとか、そのコスト指標の公表を求めていこうというふうに考えてございます。

 また、その上で、運用上は、コスト指標を公表して考慮を求めた場合には、やはり売れ残りリスクというものが発生してまいります。このために、まずは、貯蔵性のあるタマネギですとかジャガイモといったこういう品目を念頭に置きまして、売れ残った場合には翌日に改めて取引をするですとか、それから、あらかじめ取扱数量を設定するですとか、市場でもきちんとコストの考慮がなされるような具体的な取扱いというものを、関係者とよく協議をして土台をつくってまいりたいと考えているところでございます。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 価格には、生産者から流通業者に渡るときと、流通業者から最後、販売価格と、大きく二段階あると思うんです。要は、全てを含めたコスト指標を作っていくというふうなことであるというふうに分かりました。

 しっかり、コスト指標からこういった価格にしてくださいというのではなくて、この商品にはこれだけのコストがかかっていますよということでそれに合わせた価格を求めていくというふうなシステムであるというふうにお伺いしました。本来ならば、それをいわゆる中値なんかにして、前後一〇%、二〇%ぐらいの中で動けるようになれば、変動幅も含めて最も適切な価格になっていくとは思うんですけれども、しっかりとした運用がなされていくことを期待いたします。

 次に、売手と買手が対等の立場ならば特に問題はないのですが、往々にして買手優位の取引が多いと聞きます。本法律案の重要な要素として現在の商習慣の見直しがありますが、その部分が法律案に直接出てきていませんが、その部分の実効性は担保されるのでしょうか。

庄子大臣政務官 実効性の担保について御質問いただきました。

 今、この法案は検討中でありますということを前提に申し上げますけれども、実効性を担保するために、事業者の努力義務を課すということを検討しております。例えば、持続的な供給に資する費用等を示して、取引条件に関する協議の申出があった場合には事業者は誠実に協議に応じること、また、例えば商習慣の見直しなど、持続的な供給に関する取組の提案があった場合に必要な検討及び協力を行うといったことを内容に盛り込むことを検討しております。

 こうした努力義務の行動規範といたしまして、主体的な判断基準を農林水産省の省令で今後定めていくということも想定をしておりまして、努力義務、判断基準に照らして、必要な指導助言等を実施し、実効性を担保してまいります。

山崎(正)分科員 ありがとうございました。

 次に、買手側には限りなく法的義務に近い努力義務とならなければ、なかなか商慣習の見直し、生産者の持続可能性につながっていかないと思いますが、公正取引委員会とも連携した適切な農水省の管理、指導、監視が必要と考えますが、具体的な対応についてお伺いします。

庄子大臣政務官 取引の状況や協議の状況といった取引実態につきまして農水省が調査を行いますが、努力義務の実施状況等に応じ、指導、勧告等の措置を講じる方向で検討してまいります。

 取組が不十分な場合のケースといたしましては、例えば、売手から価格交渉を申し入れたにもかかわらず協議に一切応じないとか、あるいは国による補助金等の支援措置を理由とした値引き要請を行うといった場合を想定をしておりまして、今委員御指摘をいただきましたとおり、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する事実を把握した場合につきましては、公正取引委員会に対して通知を行うこととしておりまして、しっかりと連携をして対応してまいります。

山崎(正)分科員 よろしくお願いいたします。

 次に、コスト指標の細分化された内訳の指標データが信頼できるものなのか否かの判断基準は農水省が認定、監督するとのことですが、細分化した内容の査定は可能なのでしょうか。

 生産から販売まで、各段階の関係者の納得や、何より消費者からの信頼を得るためには、透明性を持ったコスト指標となる必要があり、これが消費者理解のベースとなります。コスト指標の見える化の具体的方法をお伺いします。

江藤国務大臣 まず、委員におかれましては、極めて、法案の案ですけれども、読み込んでいただいて、様々な御指摘をいただきましたことに感謝いたします。大変参考になりました。

 まずは細分化の話ですけれども、全国一律でいいのかという御指摘もごもっともですし、トマトといっても様々なものがありますから、なかなか難しいです。ですから、最初は、納豆とか豆腐とか牛乳、これしかできないだろうということでありましたが、三年間の時間をかけて野菜にもウィングを広げたというのが今の状況であります。

 難しいのは分かっております。難しいけれども、やらなければなりません。ですから、まずは法案を作って、そして各流通の段階で、優越的地位の濫用であったりそういったものがあるということが明らかになれば、農林水産省に意見を言っていただいて、我々としては指導、勧告をするということもできますので、それによって、極端なバイイングパワーが発揮される、例えば何か災害があるとどこかの大手が今まで来たことのない地方の市場に来てがばっと買っていってしまうとか、そんなことも今は横行していますから、そういうようなことが行われないように、消費者にとっても生産者にとっても納得のいく水準、特に消費者の方々の納得を得ることがこの法案の成否を左右するのだと思っておりますので、しっかり設計していきたいと考えております。

山崎(正)分科員 ありがとうございます。

 大臣の本当に心のこもったお話で、生産者の皆様方も非常に心強かったんじゃないかというふうに思います。

 大臣、一点だけ、コスト指標団体の中に、やはり最終、消費者の理解が大事だということで、やはりこの中に消費者団体の代表なんかも入っていることが、コストについて理解して、広がるんじゃないかというふうな、そういった要望もございましたので、そういった要望でございますので、よろしくお願いいたします。

 済みません。実は、山間部の中で今頑張って農業をつないでいっている皆様方が鳥獣対策に苦労をされています。また、もう一点は、若い皆様方の中で、しっかりと、地球の環境問題も含めて、有機農法に取り組んでいきたいという若者の農業者もいまして、実は、そういったことについて今日はあと二問質問をしたかったんですけれども、ちょっと私の時間配分がまずくて、ここで終わってしまいました。また次の機会にしっかりと質問できたらと思います。

 どうも、最後までの御質問、今日、質問の機会を与えていただきまして、大変にありがとうございました。

 以上で終わります。

小林主査 これにて山崎正恭君の質疑は終了いたしました。

 次に、根本拓君。

根本(拓)分科員 根本拓でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、今般の備蓄米の売渡しについてお伺いいたします。

 政府は、今般、米価の高騰を受けて備蓄米の売渡しを決定いたしました。そこで、この背景と理由についてお伺いしたいと思います。

 具体的には、今回の米価の高騰の程度についての評価でありますとか、米価の高騰の原因についての分析、そして、それに対して、備蓄米の売渡しが打ち手として有効となることの理由について教えていただければと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米の生産コストにつきましては、令和二年に比べて肥料費が四割上昇するなど資材が高騰し、令和三年以降、生産費も上昇していたところでございます。

 こうした中、昨年九月以降、これまでにない集荷競争が発生し、生産コストの上昇もあって、産地段階の価格が上昇をしたところでございます。また、集荷競争が起こった結果、米の生産量が前年より多いにもかかわらず、集荷の大宗を担っている大手の集荷業者の集荷量が前年と比べて二十一万トン減となり、通常のルートでの米の供給に滞りが生じる、いわゆる流通の目詰まりというものが生じたところでございます。その結果として、小売段階での現在の米価ということになっているんだと思っております。

 このため、農林水産省といたしましては、不作時のように全体として米の供給不足が生じているものではないものの、円滑な流通に支障が生じているということでございますので、今回、買戻し条件を付した上で備蓄米の売渡しを実施する、こういったことをすることとしたところでございます。

 今回の備蓄米の売渡しにより、米の流通の目詰まりを解消し、需給、国民の生活の安定を図っていく考えでございます。

根本(拓)分科員 ありがとうございます。

 この米価の高騰というのは、去年の途中から既に始まっていたところではありますけれども、備蓄米の売渡しの決定というのはこの時期になったと。この時期になったことについての理由を大臣にお伺いしたいんですけれども、一部では遅いんじゃないかという批判もある中で、なぜこの時期の決定になったのかということについて教えていただければと思います。

江藤国務大臣 遅いという御批判はたくさんいただいております。消費者の方々からすれば、出すんだったらもっと早く出せばよかったじゃないかという気持ちはよく分かります。

 しかし、急激な上昇が起こったのは昨年の九月です。六月ぐらいから兆候はありましたが、兆候の段階で出せるはずがない、まずは。そして、九月の段階でも、私の地元の方々、その頃は大臣になっておりませんでしたから、いろいろな方々、私のところは畜産県ですけれども、米を作っている人はたくさんいますよ。これでやる気になった、これぐらいの値段であれば、まあ一生懸命米を作ろうと。人によっては、人に預けとったけれども土地を返してもらって、そして自分でまた米を作ろうというような声も聞きました。

 今、公明党の先生から合理的な価格形成の御質問をいただきましたが、米についても対象にする予定です、この法案においては。ですから、合理的な価格形成がもしされるのであれば、この価格上昇はいいと思っていたんですが、余りにもひどい。十一月末で一度出て、十二月末で出て、余りにも集荷業者に米が集まっていない。二十一万トン、何度も言いましたが。

 そういう状況で、やはり、政策を転換するのに大事なことは、エビデンスに基づくポリシーメイキングですよ。エビデンスがそろっていないのに、例えばスーパーの価格だけを見て、目的外というふうには言いませんけれども、備蓄米は、元々、価格に着目してためているものではありません。国民が、本当に米がない、食べ物がないというときに出すことを目的としておりますので、それ以外のところで出すことであれば、いわゆる食糧法において整合性があるのか、財政法上どうなのか、国有財産法上どうなのか、様々な法令に対して、これは全てのものは法律に基づいて運用されるべきものですから。

 ですから、検討を始めたのは、昨年の末ぐらいから検討を始めました。しかし、準備にはやはり時間がかかります。発表した時点で、どのようなスキームでどのようなものを対象にするのか、それはつくらなきゃなりませんから。遅かったという御批判は承りますが、しかし、全力で農林水産省の役人も努力した結果、今になったということはお分かりいただければと思います。

根本(拓)分科員 大臣、ありがとうございます。

 大臣も、会見で、胃に穴が空くほど悩まれたということをおっしゃっておりましたけれども、私個人としては、今回の決定が遅過ぎたということはないのではないかと思っております。

 というのも、今回の備蓄米の売渡しというのは、ある種、市場での価格形成に介入するような政策なわけですけれども、市場というのは思ったように動くほど甘いところではなくて、今回、備蓄米を売り渡すことによって大きな値崩れが起こることだってあり得ると思っております。

 特に、大臣がおっしゃったとおり、米というのは、今まで、米農家さんがコスト割れのような価格で売られているような米を作っているところがありまして、その米の値段がやっと上がってきたというところで、値崩れのリスクを取るというのは簡単なことではないと思っています。

 それでも、大臣がおっしゃったとおり、消費者の皆様、そして米政策の将来というものを考えて、慎重に慎重を重ねて、覚悟を決めてやった以上は結果にも責任を持つと会見で大臣がおっしゃった、その決断をなさったという大臣を見て、私としては、これが政治家の仕事なんだということを学ばせていただきました。

 消費者の皆さんの御負担というのは私自身も承知しているつもりですし、いろいろな御批判もあるかと思いますけれども、私としては、一人の若い政治家として、大臣、そして一生懸命この政策をお考えになった農水省の皆さんに、敬意をここで表させていただきたいと思っております。

 その上で、今回の売渡しについて更にお伺いしたいんですけれども、今回の売渡し、買戻し条件がついていまして、原則として一年以内に集荷業者から米を買い戻すということが予定されています。しかし、この買戻しについては、仮に、今回の売渡しに応じる方が望まないタイミングや価格での買戻しを強いられるということになれば、売渡しに応じた方が思わぬ不利益を負うということもあり得るように思われます。

 他方で、タイミングについては、一年以内という期限は、双方協議の上延長することも可能となっております。もちろん、価格については財政法など関係法令に基づいて決まっていきますので、この段階で価格水準なんかを示すことは難しいということは理解しておりますけれども、少なくとも、今回の売渡しに応じた方が望まないタイミングや価格での買戻しを強いられることはないという制度となっていることが制度の安定性に資すると考えておりますので、そのような制度になっているということでいいのかということを確認させていただければと思います。

江藤国務大臣 制度ではありませんが、運用ですので、しっかりとした運用をしたいと思っております。

 出すことも、二十一万トンはかなり思い切った数字だったんですよ。正直言って怖かったです、こんなに出して大丈夫なのかと。

 そして、更に難しいのは買戻しです。まさに委員が御指摘のとおり、マーケットは我々の思惑のとおりには動きません。ですから、どのようなことになるのか、非常に今でも胸がどきどきする思いはあります。

 ですから、基本的には価格が安定してからだということです。ですから、食農審からは一年、原則一年と言われましたが、私の判断で、一年を超えることもありということにいたしました。ですから、高いときに一年の期限が来たから買い戻すなんてやったら、逆に、今度は上げの圧力になってしまうじゃないですか。そんなことは到底できませんので、なかなか価格を国の力でコントロールすることは難しいですけれども、慎重に行っていきたいと思っております。

根本(拓)分科員 大臣、ありがとうございます。

 買戻しについては、今まさに大臣がおっしゃってくださったとおり、市場への影響、過度な値上がりを招くことにならないかといったような視点が大事になってくるんだと理解いたしました。

 大臣、まさに市場動向を見極めながら、価格は安定したかというところを見極めながら判断されていくということで、そういった柔軟な対応をしていただけると、買戻しに応じるような方も安心していただけるのではないかと思っております。

 加えて、別の視点からということになるんですけれども、昨年、備蓄米の提供に応じた農業者の方々から見れば、今回の備蓄米の売渡しによって、自分が提供した備蓄米というのが、そのときの売値、備蓄米を売ったときの価格よりもかなり高い価格で今回売り渡されるということもあり得ることから、そうした農業者の方が損をしたりとか取り残されたかのような感覚を持っているという声も聞いております。

 これは、最終的には備蓄米制度の信頼性にも影響してしまい得ると思われますので、そのような現場の声も踏まえて、備蓄米制度の制度設計自体についても継続的に検討することが必要だと考えております。これは、質問というより現場の方の声も踏まえた意見ということで申し上げさせていただきました。

 その上で、米価について更に質問を続けさせていただきます。

 今般、米の価格が急騰しておりますけれども、一方で、近年、多くの農家の方がコスト割れで主食米を生産してきたところがあると理解しておりまして、主食米の価格というのが安過ぎたということもあると思っています。

 しかし、去年成立した改正食料・農業・農村基本法においては、食料の価格形成に当たり食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、必要な施策を講ずること等が明記され、政府はこれを実現するための法改正も準備していると理解しております。

 そうであるとすれば、望ましい米の価格水準について、政府が具体的な額を示すのは難しいということは理解しておりますけれども、一方で、国としてコストを考慮した合理的な価格形成を目指しているということを勘案すれば、米の価格についても、少なくとも生産コストを上回る価格が望ましい、さらには、米の生産が持続可能になるための利益が農家に生ずるような価格が望ましいというところまで言っていただくことは可能であって、むしろ、そう言っていただくことが政府の施策の一体性を確保する観点からも望ましいと思われますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

江藤国務大臣 合理的な価格形成の法律においては、農業者の方々にも当然焦点を当てるんですが、生産、流通、加工、そして販売、そして消費者の方々まで入っておりますので、どこか一か所が裨益するというようなことがないようにしたいと思っています。

 ですから、当然、これからの食料安全保障を確立するという観点であれば、米に限らず、コスト割れでその産業が続くわけがないわけですから、それは、合理的な価格の形成というのは、生産コスト、家族労働費、様々なコストを乗せた上で、そして、家族経営でいえば、家族を養うことができる、子供を学校に行かせることができる、それぐらいの収入は当然確保されるべきだ、そういう理念は是非これは盛り込むべきでありますが、しかし、法律でありますので、法律の文言にそれをどういうふうに書くかというのは、多分御理解いただけると思いますが、かなり難しいと思いますけれども、しかし、その心はそこにあるということは御理解いただきたいと思います。

根本(拓)分科員 大臣、力強いお言葉をありがとうございます。

 私の地元でも、農業者の方たち、この点について大変心配しておられますので、今回の新法の制定も含めて、今大臣おっしゃってくださったとおり、コスト、それに十分な生活費、それを含む収益、そういうものがしっかりと確保できるような価格形成が目指されていくんだ、そういうことを大臣は趣旨としておっしゃってくださったと理解しておりますので、大変ありがたいお言葉をいただいたと思っております。

 さらに、米価について続けさせていただきたいんですけれども、農家の皆さんにとって困るのは、米の価格がこれまで低かったということとともに、価格が大きく変動してしまったということにあると理解しております。

 確かに、米の価格が大きく変動すると、必要な投資をするかどうか、さらには、そもそも農業を継続するかどうか、そういった判断が難しくなってくるんだと思います。

 また、先ほど申し上げた備蓄米の入札、契約後の価格の急騰から生じる備蓄米制度に対する不信感というのも、昨年、米の価格が大きく変動したことにそもそもの根本的な原因というのがあるように思われます。

 そこで、米の価格の変動を抑えて価格を安定させる政策として政府が進めていらっしゃるもの、検討されていらっしゃるものについてお伺いできればと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米の政策につきましては、平成三十年産より、国が、昔の、個々の農業者に生産数量目標を配分するという仕組みから、それぞれの農業者、産地が、需給動向を踏まえて、自らの経営判断で行うということで変わったわけでございます。

 その中で、今、価格が非常に高いというような御指摘を受けているところでございますけれども、例えば七年産米につきましては、国は、需給見通し、こういったものを出して、必要な情報提供を行っているところでございます。その結果、多くの主産県で、自らの判断で作付の増加ということで現在動いておられるということで承知しております。

 引き続き、私ども、重要なのは、丁寧な情報発信、こういったことを通じまして、需要に応じた生産の推進と円滑な流通の確保ということを図っていくことだと思っております。

 なお、米の価格の変動はどうしても生じます。そういったときには、ナラシ対策でございますとか収入保険でございますとか、こういった対策も措置しておりまして、こういった仕組みによりまして、生産者の経営の安定、こういったことを図ってまいりたいと考えております。

根本(拓)分科員 どうもありがとうございます。

 今言ってくださった情報のしっかりとした公表、コミュニケーションに加えて、今回のような米の価格の高騰が起こったときに、なぜそれが起こってしまったのかというような調査をしっかりしていくということも大事だと思っております。

 大臣の先ほどの御答弁でもありましたけれども、そういう調査によって今の価格高騰の原因がどこにあるのかということが突き止められたという一方で、じゃ、実際、集荷業者、誰が今米を出さずにいるのかとか、生産者、誰が今米を持ってしまっているのか、ここについてはまだ今農林水産省の方でも調査中であるんだと理解しております。

 そういった調査をやはりしっかりしていただくこと、そしてその結果を、公表をしっかりしていただくことによって、米の価格変動というのはある程度抑えられる。そういった、公表されると、皆さん、じゃ、今手元に持っていないでそれを出した方がいいかなというインセンティブも働いてくるかと思いますので、そういった公表の手法というのもしっかり使っていくということなのかなと考えております。

 さらに、その公表の仕方というのも、これはなかなか議論があることだと思いますけれども、一般的な形でふわっと公表するやり方から、特定の、例えば集荷業者さんが実は米を手元に持っているというような形で、ある種のサンクション的に公表をしていくというようなやり方まで、いろいろあるのだと思っております。公表をサンクション的に用いることについては様々議論があるところかと思っておりますが、そういった今まで用いていないような手法の活用も含めて、どうやって米の価格の安定を図っていくかということを検討していただければと思いますし、私自身も勉強させていただきたいと思っております。

 続きまして、米作りに関するスマート農業についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今般の改正食料・農業・農村基本法の下で、人口減少下における農業生産の方向性として、スマート農業技術の促進による生産性の向上が目指されることが明らかにされまして、また、食料・農業・農村基本計画骨子案においても、スマート農業技術等の開発、普及促進に重きが置かれていると理解しております。

 そこで、効率的な米作りに資するスマート農業の例について、何かあればお伺いできればと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、先端技術を生産現場に導入し、その効果を検証するスマート農業実証プロジェクトを令和元年度から実施してまいりました。

 その中で、米に関する個別のスマート農業技術の効果を検証しておりまして、例えば、直進アシスト機能つきの田植機で慣行に比べて作業時間が一八%削減される、それから、ドローンによる農薬散布では慣行の防除法と比べて作業時間が平均で六一%削減される、こういった効果が得られたところでございます。

 また、田植から収穫までの総労働時間につきましては、実証地区の平均で約一割の削減、地域によっては約二割の削減という効果が得られております。

 こうした技術の導入効果を生産現場に丁寧に伝えつつ、スマート農業技術の普及に努めてまいりたいと考えております。

根本(拓)分科員 ありがとうございます。

 今御答弁をいただきましたとおり、スマート農業技術といっても、皆さん、それがどう役に立つのかということを、やはり私の地元の農業者の方も十分に腹落ちしていない部分もあるかと思いますので、具体的な数字とともに説明をしていただくというのが一つ大事なのではないかなと思いました。

 そのスマート農業の流れの中で、農業機械というものについて少しお伺いをしたいんですけれども、農業機械、非常に今高度化が進んでいまして、コンピューターみたいだ、コンピューターをいじっているようだというふうに地元の農業者の方はおっしゃっています。そうやって便利にはなっているんですけれども、一方で、価格が高くてなかなか手を出せないという声も現場では聞きます。

 そこで、農業機械の購入への補助金の交付のほかに、このような状況への対応策としてどのようなものが考えられるでしょうか。この点に関しては、例えば基本計画骨子案においては、「共同購入等を通じて農業機械の低廉化を図るとともに、サービス事業者の育成・活用を通じた農業機械コストの低減(設備導入からサービス利用への転換)を推進」との記載がありますけれども、この骨子案の方針も含めて、対応についてお伺いできればと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 スマート農業機械は、効率的な農作業を可能とするメリットがある一方、価格が高い、こういったことで、その導入コストを下げることが重要と考えております。

 例えば全農では、農業機械の機能を絞った仕様を定め、最も条件のよい提案を行ったメーカーから大量に発注する、こういったことで価格の引下げを行う共同購入の取組が行われているところでございます。

 一方、特に共同利用に対しては、利用者間の調整が難しい、こういった課題もございます。こうした中、スマート農業機械を活用する農業支援サービス、こういったものを利用することで、機械の所有から利用へのサービス転換を促すことも重要であると考えております。

 このため、農業支援サービス事業体への税制、金融等の支援措置を講ずるとともに、農作業の受託、農業機械のレンタルを行う農業支援サービス事業体の事業拡大、こういったことに要する人材育成、機械導入の支援も行っているところでございます。

 引き続き、こういった取組を推進してまいりたいと考えています。

根本(拓)分科員 ありがとうございます。大量発注、そして大量購入というか共同購入については、JAのような事業体の役割というのが非常に重要であるというように思いました。

 あと、共同利用については、私も地元で今局長が御答弁いただいたことと同じことを聞いていまして、みんなで共有という形で買うとなかなか調整が難しい、下手するとけんかになるということで、なかなか共同利用というのは現実的ではないのかなと感じております。

 そこで、今御答弁をいただいたサービス事業者の育成、これが今後非常に重要になってくると思っておりまして、農業分野に限らず、今、産業全体として、サブスクリプションサービスというのが台頭してきていると。すなわち、局長もおっしゃったとおり、所有から利用という、これが世の中の流れであるんだろうというように理解しておりますので、農業の世界でもこの所有から利用への流れをつくっていくことによって現場の方々の負担軽減ということにつながっていくんだろうと考えております。

 一方で、サービス事業者の活用というのはまだまだこれからかなと思うところもありまして、だからこそ国としていろいろな制度を入れていらっしゃるというように今御答弁をいただいたところでありますので、この点、是非進めていただきたいと思いますし、私自身も普及に努めてまいりたいと考えております。

 続いて、スマート農業の実装というところなんですけれども、今いろいろ御答弁いただいたとおり、スマート農業を今後実装していこうとするためには、農家の側にも一定のITリテラシーというものが必要になってくると考えられます。

 一方で、御案内のとおり、農家の方、どうしても六十代、七十代の方が多くて、そういった高齢の方がいきなりITとかと言われてもなかなか正直しんどいところがある。中にはスマホを使っていないという方も結構いらっしゃいまして、私なんかも、LINEを交換しましょうと言っても、俺はそもそもスマホを持ってねえと言われてしまうということも時々ございます。

 そういった、なかなか、農業に従事されている方の年齢層を考えると、このITリテラシーの部分で苦労することもあるように思われまして、この農業者の方のITリテラシーの向上ですとか、ITリテラシーの低い方へのスマート農業に関する支援として、対応策があればお伺いできればと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、農業現場にスマート農業を実装するためには、それを使いこなす人材の育成というのが非常に重要でございます。

 このため、農林水産省としては、スマート農業に係る知識の習得に向けて、まず、やはり現場で研修、現地研修というのを実施して、スマート農業機器の働きを見てもらう、また、更に詳しく知りたい人には、スマート農業技術向けの学習用教材の公開を行っております。また、農業大学校などでスマート農業を学べるよう、スマート農業機械の導入などの取組の支援を行っているところでございます。

 実際に現地研修に参加した農業者からは、実際に体験できてよかったという声が聞かれておりますので、今後もこうした取組を通じて、実際にスマート農業というものを目で理解するということによって、意欲ある農業者などがスマート農業技術を学べるように取り組んでいきたいと考えております。

 また、議員御指摘のように、スマート農業技術は非常に高度化しておりますので、全てを農業者が理解するのは難しいということも事実でございます。そこで、先ほど答弁したように、専門性を持つ農業支援サービスを利用するということも非常に重要になってきておりますので、農業支援サービス事業体の育成を図るために、スマート農業技術活用促進法に基づく金融、税制面での支援や予算補助などを行っているところでございます。

根本(拓)分科員 ありがとうございます。

 現地研修なんかの機会については、まだまだなかなかそこにアクセスできないという方もいらっしゃるとも聞いておりますので、そういった回数をいかにいろいろなアクターの方と協力しながら増やしていくかということも課題かと思いますし、今御答弁いただいたとおり、自分が必ずしもできない方についてはほかの人に委ねる、そういった委ねる先の方を育成する、それがサービス提供者の育成という先ほどのお話につながってくるわけですけれども、そこも大事になってくるのかなと思いました。

 最後に、新しい技術の導入についてはスタートアップの方々の力を活用させていただくのも重要かと思われ、これは基本計画骨子案でも触れられているところです。

 確かに、農業の分野においてもスタートアップの方が多数参入しようとしていると理解しているんですけれども、他方で、そういった方々にお話を聞くと、技術について理解をしてもらったり、そもそも話を聞いてもらったりするハードルがなかなか高くて、導入までの道のりが長い、技術が確立してもそこから使ってもらうまでが大変だ、商業合理性だけでなかなか動かないというようなお話も聞くところです。

 そういった状況も踏まえて、このようなマッチングの課題を解決する方策として進めていらっしゃるものであるとか検討しているものがあれば、お伺いできればと思います。

堺田政府参考人 お答えいたします。

 食料、農業分野におきまして、有望な技術を展開するスタートアップが多く生まれていますが、委員御指摘のとおり、スタートアップの企業からは、ユーザーとのマッチングの機会がなかなか得られないという声がございます。技術の重要性についてユーザー側の理解が得られるように、マッチングの機会をつくっていくことが大変重要だというふうに認識しております。

 こうしたことから、農水省といたしましては、様々なマッチングの場の提供に努めておりまして、例えば、昨年十二月、農林水産省内におきまして、三十社のスタートアップが参加するマッチングイベントを開催しております。技術のユーザーあるいは金融機関など、オンラインを含めると五百五十名の参加がありまして、スタートアップからも、非常に有益な交流ができた、それから、こうした機会を今後もっと設定してほしいという声が聞かれたところでございます。

 こうした取組を通じまして、スタートアップとJA等のユーザー、この間のマッチングをしっかりと促進してまいりたいというふうに考えております。

根本(拓)分科員 どうもありがとうございます。

 今御答弁をいただいたとおり、まさにマッチングの機会をいかにつくり出すか、そして、そこにスタートアップは多分たくさん参加したいわけですけれども、ユーザーの方々がなかなか及び腰になる部分もあるかと思いますので、そこにいかにユーザーの方々を連れてくるか、これは農水省さんの方でも進められると思いますし、私自身、地元で、是非そういうところに参加したらいかがですかということを働きかけてまいりたいと思います。

 時間が来ましたので、これにて終了させていただきます。今日は質問の機会をいただき、ありがとうございました。

小林主査 これにて根本拓君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田英俊君。

上田分科員 自由民主党、富山県第二区選出の上田英俊でございます。

 今日は、予算委員会分科会にて質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今回は、農業問題、米を中心に質問いたします。

 日本は、御案内のとおり、人口減少の時代に突入いたしました。食料、農業という領域において、人口減少、少子高齢化とは一体何を意味しているのかということを考えた場合に、人口減少とは、日本人の胃袋の数が減ってくるということであります。そして、少子高齢化は、食べ盛りの世代がなかなか増えないため、胃袋の大きさが総体として小さくなることというふうに理解をしております。

 一方、日本とは対極的に、海外に目を転じると、私が小学生の頃は、世界の人口は四十億人と習いました。五十年後の今日、八十億人を超えています。約二倍となりました。では、地球は二倍になったのか。あるいは、生産基盤である農地、農業用水は二倍になったのか。もちろん、ノーであります。

 八十億人の内訳は、丸い数字でいうと、中国が約十五億人、インドが約十五億人であり、この両国は、御案内のとおり、この五十年間で圧倒的に経済力をつけてまいりました。また、かつては途上国と言われていた国々がグローバルサウスと表現されるように、これも経済力が強くなってきたということであります。

 多くの国々が経済的に豊かになることは、当然よいことであります。経済的に力をつけると、国籍を問わず、衣食住において、特に食において、質と量、共に高いレベルを求めることになるというふうに思います。

 結果として、生産基盤が整備されている、品種改良や大型機械の導入など、農業技術が向上するスピード以上に、食料増産のスピード以上に食料へのニーズが質、量とも求められる時代になりました。そして、その結果、食料争奪戦がより顕在化してきたというふうに認識をしております。買い負けるという表現も定着してきました。

 しかし、私は、このような認識に立ち、そこに日本農業の可能性、フロンティアといったものを見出せるというふうに確信をしております。日本の農家の方々の生産する農産物は安全、安心であり、トレーサビリティーもしっかりしています。そして、何よりも、おいしいということであります。農産物輸出額の伸びがこれを証明しています。

 そこで、質問いたしますが、二十五年ぶりに食料・農業・農村基本法も改正されました。この五年間を集中期間と位置づけておられます。

 今後の日本農業の可能性、そして成長が期待される生命産業としての農業をどのように構築していくのか、江藤農林水産大臣にお伺いいたします。

江藤国務大臣 大変大事な、スケールの大きい御質問をいただいたと思っております。

 確かに、日本の全体の胃袋は小さくなる、マーケットがシュリンクすることは、これは仕方がありません。しかし、世界の人口はこれからも増え続けるということであります。そして、経済が、習熟していくと、例えば中国だったら、淡水魚を食べていた人たちが、どうしても海の魚を食べたい、そして、豚肉を食べていた人が、牛肉を食べたいという、食の傾向も、より高付加価値のものに変化していく傾向が強いです。

 そういった中で、日本は、輸出にもやはり活路を見出していく必要がある。それは、農林水産行政として、農地の、いわゆる必要面積をしっかり確保しなきゃいけない、農地面積が減ることに歯止めをかけなきゃいけない。それには、売るマーケットがやはり必要だと。マーケットインという言葉をずっと言ってきましたが、これから先は、マーケットメイク、マーケットをつくっていくことにも努力をしていかなきゃいけないんだろうと思っています。

 ですから、生命産業というお言葉を今お使いになりましたけれども、食はまさに命をつなぐものでありますから、日本の食は、競争力は間違いなくある、間違いなくありますので、食料安全保障上、日本の農地をしっかり守り、そして担い手を育成し、そして海外のマーケットに行って、より付加価値の高いもので、よりゲイン、いわゆる利益、値幅を余計取れるような、そういった商流も開拓していくことが、これからの日本の農業にとっては未来を切り開く一つの道になるんだろうというふうに考えております。

上田分科員 ありがとうございました。

 次に、米について伺います。

 主穀作物とは何かと考えた場合に、米に限らず、小麦であるとかトウモロコシ、大豆等、その地域、その国には、必ず主穀作物といったものが存在いたします。

 また、主穀作物となるには理由があります。まず一つ目には、自然条件が適していること、その地域の気象条件に適合していることであります。そして次に、作付に過度な、べらぼうな手間がかからない。二十四時間三百六十五日、圃場や畑にいて生育を見守るということは、これは現実的にはできません。そして最後に、収穫量、品質、価格が安定し、生産者が継続して生産し、消費者にも理解をしていただいて継続して購入してもらうことができる、農業技術においても価格においても持続可能なものが主穀作物になると考えます。それが日本においては米であったと考えます。

 日本人の主食となる米については、戦後の食糧難を克服するための生産拡大の時代、食糧管理制度の時代、生産者米価、消費者米価が逆転する逆ざやの時代を経て、政府による直接管理が終わりました。そのことにより、米は商品になったというふうに認識をしております。政府による管理、統制されたものから、自由主義経済、資本主義経済下の商品となりました。商品でありますので、需要が高まれば価格は上昇いたします。供給が過剰になれば、商品がだぶつき、価格は下落いたします。それが市場の原則であります。価格は変動する、それが市場経済の原則です。

 しかし、だからといって、日本人の主食である米が、価格が大幅に上昇することを政府が、政治が見過ごしてよいのか、投機の対象となることを、市場経済ですからと放置していいのかということを考えた場合に、市場をゆがめないという考え方にも基づき、買戻しを前提とした備蓄米の売渡しは、私は適切であるというふうに認識をいたします。

 そこで、質問いたしますが、今後、備蓄米の引渡しを円滑に進めるには、そして消費者の食卓にきちんと届くには、全国各地に存在する備蓄米保管倉庫の出庫手続であるとか、あるいは物流の確保が大前提となってくると考えますが、農林水産省の取組についてお伺いいたします。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 政府備蓄米の保管等につきましては、農林水産省から民間事業体に業務を包括的に委託して実施しているところでございます。

 今後、政府備蓄米の買受けを受けた集荷業者への引渡し、こういったことに当たりましては、政府備蓄米の業務を委託している民間事業体を通じまして、各保管倉庫に対し、円滑な出庫がなされるよう協力を求めております。三月半ばには政府備蓄米の引渡しが開始できるよう取り組んでいるところでございます。

 また、今般売り渡される政府備蓄米につきましては、迅速に消費者に米が届くよう、町の飲食店、施設給食等に供給している米穀店以外のところにつきましては、原則として卸売業者が精米で販売していただく、こういうふうにしているところでございまして、こういった措置によりまして、実需者そして消費者の皆様方に米が確実に届くよう手続を迅速に進めてまいりたいと考えております。

上田分科員 ありがとうございました。

 さて、スーパー等での米の販売価格が上昇しております。

 先週末に地元に戻った際に、地元のJAの直売所を訪ねました。米はある。三十キロの玄米であるとか、精米された十キログラムの米もある。しかし、値段は二倍になっていました。

 農林水産省から先日取り寄せた資料によりますと、令和七年二月三日から九日までの販売価格が対前年比八九・七%高であります。昨日の報道によりますと、まだ上がっている状況であります。全く異常な状況であると言わざるを得ません。

 需要に合った供給が行われていれば価格は安定するということが市場原理です。昨年の夏以降、米を取り巻く状況は異様であり異常であるというふうに認識をしております。

 そこで、質問いたしますが、一昨年、昨年の米の生産量、需給量は順調であったと考えているのか。また、作況指数はどうであったのか。順調であったとするならば、今日の価格高騰の原因をどのように捉えているのか、お伺いいたします。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 令和五年産米は、作況一〇一、生産量六百六十一万トン、令和六年産は、作況一〇一、生産量は前年より十八万トン多い六百七十九万トンでございました。民間在庫と合わせまして、需要量を上回る供給量になっていたというふうに考えております。

 その中で、米の生産コストにつきましては、令和二年に比べて肥料費が四割上昇するなど、資材が高騰し、令和三年以降、生産費も上昇していたところでございます。

 こうした中、昨年九月以降、これまでにない集荷競争が発生し、生産コストの上昇もあって、産地段階の価格が上昇したところでございます。

 また、集荷競争が起こった結果、米の生産量が前年よりも多いにもかかわらず、集荷の大宗を担っている大手の集荷業者の集荷量が前年に比べて二十一万トン減と。こういった、通常のルートでの供給に滞りが生じる、いわゆる流通の目詰まりが生じたところでございます。

 その結果としまして、現在のような小売段階での米の価格の上昇につながっているというふうに考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、今回、買戻し条件を付した上で、備蓄米の売渡しを実施することとしたところでございます。こういった売渡しによりまして、米の流通の目詰まりを解消し、需給や国民生活の安定を図ってまいる、こういうふうに考えております。

上田分科員 答弁では、需要を上回る供給であった、流通の目詰まりであったというふうに理解をいたしました。

 私の生まれ育った富山県は、水の王国と言われています。水の王国である富山県は、昭和四十年代から土地改良事業によって、三反歩田の圃場の整備、今日では一町歩田を造られておりますけれども、圃場の整備であるとか農業用排水の整備が行われた水田単作地帯であり、そうした先人の尽力によるその財産を生かして、今日では農地の集積が進んでおりまして、多数の大規模法人、農事組合法人が大型の機械を動かし、農薬散布では、ラジコンヘリであるとか、あるいはドローン等を導入している県でもあります。

 私の町では、水田だけで五十ヘクタール以上耕作する農家も多く、毎年の異常気象に挑み、非常に頑張っております。

 そこで聞いた話でありますけれども、昨年秋以降、聞いた話でありますけれども、全国的に見たら一つの小さい地域の声かもしれませんけれども、大半の声は、昨年秋の収穫量は、米が取れなかった、少なかったという声ばかりでした。ヒアリングを私の町だけではなくて選挙区全域にも広げましても、取れたという声はほとんど聞こえませんでした。作況指数が示す数字と実際に流通する米の数字に大きなギャップがあるのではないかという声ばかりであります。

 そこで、質問いたしますが、作況指数の算定方法はどのように行っているのか。また、選別機のふるい目は何ミリであるのか。そして、その結果、全国の作況指数は幾つだったのか。もう一度確認させていただきます。

深水政府参考人 お答えいたします。

 作況指数は、実際に刈取り調査を行って把握いたしました十アール当たり収量を、その年の気象等を平年並みとみなして算出した平年収量で割って平年と比較したものでございまして、収穫量全体の多い少ないではございませんで、その年の十アール当たり収量の多い少ないを平年収量と比較して示しているものでございます。

 この作況指数は、農業者の方々の実感を踏まえたものとなりますように、各都道府県で農業者の方々が最も多く使用しているふるい目を使って算定してございます。例えば、富山県では一・九ミリを使って算定してございます。

 これの結果、令和六年産の全国の作況指数は一〇一となったものでございます。

上田分科員 その数字の取り方については説明を承りました。

 統計でありますので、やはり基準を変更していくということはなかなか難しいんだろうというふうに思います。ただ、今の答弁を聞いておりまして、なかなかすとんと落ちてこないというのが正直なところであります。

 今日、大規模農業法人という形態が当たり前となった時代において、もう大規模な企業、一つの企業体でありますので、より収益を向上させるために、高性能の機械といったものも導入されています。

 先週末、この質問に当たって、色彩選別機なるものも拝見させていただきました。そうした大規模農業法人は、一等米と二等米では当然価格差がありますので、一等米をより多くするために、収量は減少するけれども、色彩選別機も当たり前のように導入されています。

 そうした農業法人が全国的に増加する中、単純に米の大きさを選別する農家は減少し、ふるい目も今、部長からもありましたけれども、一・八五ミリから一・九ミリを多く採用している法人が大半であります。

 そこにおいて、どうもやはり農林水産省が示す作況指数と流通する数字とではギャップがあるのではないかというのが、富山県の一つの小さな地域ではありますけれども、どうも作況指数と現場とはギャップが、数字にギャップがあるのではないかというふうに考えております。この生産者の方々の、作況指数と現状にギャップがあるという声をどう捉えるのか。そして、ギャップを解消することが、まさしく需要に見合った供給のスタートラインになるのではないかと考えますが、農林水産省の所見を求めたいと思います。

深水政府参考人 お答えいたします。

 作況指数につきましては、先ほど申し上げましたとおり、各都道府県で農業者の方々が多く使っているふるい目を使っておりますけれども、一方で、供給量の基となります収穫量の方の調査につきましては、主食用に供給される可能性のある玄米の全量を把握するということを目的としております。

 このため、作況指数で使用しているふるい目ではなく、全国的に、一・七ミリのふるい目を使い、また、農産物規格規程三等以上の玄米を収穫量の基準としております。

 今申し上げましたような基準で収穫量を取っておりますので、農業者の方々の中には、議員御指摘のとおり、農業者の方々が使用しているふるい目で選別した収量が公表しているものよりも少ない、あるいは品質向上を目指して色彩選別機で選別された収量が公表値よりも少ないというふうに感じていらっしゃる方が一定程度いらっしゃるということは認識しているところでございます。

 ただし、これらの選別ではじかれました玄米につきましては、米穀事業者等の手によりまして再選別されまして、主食用に供給され得る、実際に供給されているところでございますので、主食用として供給される収穫量の全量の把握を目的としている本調査においては、把握が必要と考えているところでございます。

 このように、収穫量調査といたしましては、現在の基準での収量把握が適当とは考えておりますけれども、農業者の方々の中で、御指摘のとおり、ギャップを感じておられる方々がいらっしゃるということでございますので、どういった要因によりましてこうしたギャップが起こっているのかというようなことにつきまして、機会あるごとに、農業者の方々や関係団体と意見交換を行いながら、こうした調査の方法、結果等につきまして、丁寧な周知と理解の醸成に努めてまいりたいと考えております。

 今の時点では、統計の公表資料の中にも、ふるい目別の収量、あるいは収穫量につきましても、参考としては示させていただいておりますけれども、これだけではなくて、丁寧に御説明をしてまいりたいというふうに考えております。

上田分科員 統計部長の答弁は分かりました。

 もちろん、統計でありますので、同じ基準でもって毎年算定していくということだから、当然、基準になるし、参考指数になるということでありますけれども、どうもやはり、生産者の方々は、腑に落ちないよねというのが現場の声であります。しっかりと生産者の方々にも御理解をいただくような形で、引き続き取り組んでいただければというふうに思います。

 さて、需要と供給のバランスが取れることで、生産者の方々にも、安定した価格で、生産意欲を維持できる価格で生産に励めるということであります。生産活動が維持できる、少なくとも、毎年毎年赤字である、何のためにやっているのか分からないというのでは、ビジネスとして成り立たないということであります。少なくとも、赤字ばかりが続かずに生産できる価格であり、そして、何よりも、やはり、消費者の方々にも理解いただける価格であるということが主穀作物の姿だろうというふうに思います。

 今回の混乱が、生産の現場で、そして消費者の食卓で、米が引き続き投機の対象となって、相場のようになっていくということが一番不幸なことだろうというふうに思います。相場のような価格変動となることを大変強く危惧いたします。

 次に、圃場で生産されるものは主食用だけではないというふうに認識をしております。

 新規需要米として、別枠で飼料用米であるとか米粉用米なども生産されていますが、酒米と種子、富山県は日本一の種子の生産地でありますけれども、種子の扱いはどうなっているのか、確認させてください。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 酒米として使用されている五百万石あるいは山田錦、こういった醸造用玄米あるいは水稲の種子につきましては、数字といたしましては、私ども、米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針の中で、主食用米等として取り扱っているところでございます。

上田分科員 酒米というものは、当然、農林水産省、政府が力を入れている農産物の輸出の重点品目である日本酒の原材料でありますし、酒米を主食用米に使う農家はいないというふうに思います。

 また、種子は種子として当然使用されますので、なおかつ、出荷も種子組合を通じて出荷をしているということで、数量の把握といったものも可能であろうかというふうに思います。

 酒米と種子を主食用米と別枠で切り離す、取り扱うということが適切ではないかというふうに考えますが、農林水産省、直接の担当ではないかもしれませんけれども、一つの考え方があれば御教示いただければと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米政策につきましては、平成三十年産以降、生産数量目標の配分というものを廃止しております。そういうことですから、例えば、主食用米、酒米、種子、こういったいずれかにかかわらず、産地の判断で作付することが可能ということになっております。

 特に委員御指摘の酒米でございますとか種子というのは、用途や出荷先が相当程度固定化している、こういったことのため、それぞれの需要に応じた生産、販売というものが重要であるというふうに考えております。

 例えば、ある県におきましては、主食用米の生産の目安というものを策定しておりますけれども、その中で、酒米は全量、契約栽培で生産されている、こういったことから、主食用米の生産の目安から除いて算定するということをされておると承知しております。私どもも、産地で工夫して対応されることが望ましいというふうに考えております。

上田分科員 済みません、一つ教えていただきたいわけでありますけれども、今ほどの答弁からすると、産地のそれぞれの判断だということでありますので、地元から、例えば、農家の方々が酒米を作りたい、種子をやりたいということであるならば、地元の再生協議会等で主食用米と別枠の扱いにしてくれという形で理解を得るという考え方でよろしいですか。

松尾政府参考人 基本的には、委員御指摘のとおりだと思っております。

 私ども、指針の方で主食用米等と言っておりますのは、あくまでも数字の全体量として一つにまとめているわけでございまして、それぞれの作付ということであれば、産地の判断で対応していただくということでいいかというふうに考えております。

上田分科員 次に、米粉について若干お尋ねしたいというふうに思います。

 十年ぐらい前でしょうか、米の利用促進ということで米粉を考えてみようじゃないかということで、様々な品種で米粉にチャレンジをしたということであります。その際はやはり、製粉技術であるとか、値段もそんなに安くないよねということで、余り評判が芳しくなかったというふうに理解をしておりますけれども、当然、それから時代を経て、十年近くたっているというふうに思いますので、製粉技術も、あるいはまた、どのようなお米が米粉に向いているのかといったことも研究が進んでいるんだろうというふうに思います。

 そうした中で、国際情勢の中で、特に小麦について非常になかなか輸入しづらいよねということによって、小麦の代替品として米粉はどうだろうかという考え方もあるかもしれませんけれども、生産者が安心して米粉用米を作るためには、米粉そのものが市場から評価をされる必要性があろうかというふうに思っております。小麦の代替品ではなくて、米粉として市場に評価される、米粉でいいよね、ではなくて、米粉がいいよねというものが大切なんだろうというふうに思います。

 米粉の現状について、農林水産省の所見をお伺いしたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米粉につきましては、近年、令和三年度で四・一万トン、四年度で四・五万トン、令和五年度で五・三万トンと需要が堅調に伸びてきております。委員御指摘のとおり、いろいろな米粉の特性というものを御理解いただいている、こういったことが背景にあるというふうに考えております。

 そうした中、量販店でも米粉やその製品を定番の商品として見かけるようになったところでございます。

 農林水産省といたしましては、更なる需要拡大に向けまして、パン、麺、こういったものに適した専用品種の開発、普及、あるいは新商品の開発、あるいは利用方法の情報発信、あるいは製造能力の強化、こういったところに取り組んでおるところではございまして、引き続き需要の拡大に努力してまいりたいと考えております。

上田分科員 ありがとうございました。

 水田を水田として生かしていくために、やはり米粉の分野というのは伸ばしていかなければならない、伸びていく分野だというふうに思っておりますので、引き続き、研究も含めて、民間事業者等も含めて取り組んでいただければというふうに思います。

 最後に、普及事業について一点、質問させていただきます。

 私は、土地なし非農家でありますけれども、土地改良区の理事長をさせていただいております。国の支援をいただきまして、農地整備事業に取り組んでおります。

 そうした際に、これは当たり前でありますけれども、食料安全保障の視点も含んでいると思いますけれども、高収益作物というものを要求されます。これは当然だというふうに思います。

 しかしながら、高収益作物はなぜ高収益作物かというと、なかなか誰も作れないから高収益作物になっているんだというふうに思います。

 スマート農業の分野にしても、あるいはまた農事組合法人の規模拡大、収益の拡大にしても、高収益作物を導入するということは大変大切でありますけれども、その際、土壌が何が適しているのか、あるいはまた、スマート農業によって労働時間に余裕ができた、何を作ればいいのかねといった場合に、普及指導体制といったものを私は非常に大切だというふうに思っています。

 農林水産省として、普及指導事業の現状と重要性について、最後、確認させてください。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、これまで、農政の課題に対しまして、普及職員が直接、農業者に接するということで、技術、知識の指導等を展開してきたところでございます。

 令和五年四月時点で、三百六十一か所の普及指導センターで、七千百六十九人の普及職員が、現場に足を運び、普及指導活動を展開しているところでございます。

 今後、新たな食料・農業・農村基本法に基づきまして、例えば、スマート農業技術、あるいは農業支援サービスの活用でございますとか、みどりの食料システムの戦略に基づく活動、あるいは地域計画の実現に向けた合意形成、こういった普及職員に課せられた役割は今後ますます重要になっていると考えております。

 今後とも、都道府県との緊密な連携の下、着実に推進してまいる考えでございます。

上田分科員 ありがとうございました。

 終わります。

小林主査 これにて上田英俊君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子恵美君。

金子(恵)分科員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、岩手県大船渡市で発生いたしました山林火災では、大変多くの方々が避難指示を受け、厳しい状況にあるということであります。延焼し、そして鎮火のめどが立っていないということではありますけれども、同じ東日本大震災、原発事故の被災地の人間といたしましては、できるだけ早い鎮火というものを目指していただきたい、そう願ってやみません。

 このような災害は起き得るわけです。そして、大雪の被害というものもありました。農業者の方々は、今回、全国各地で、そしてまた、特に福島でも、そして青森でも被害を受けましたけれども、このようなときに、やはり離農とならないように、諦めないように、しっかりと国として支える、そういう仕組みというのが必要だというふうに思います。離農を防ぐ対策を万全にしていただきたいというふうに思っております。

 これは、済みません、通告はしておりませんが、大臣から何か一言、御決意があればお願いいたします。

江藤国務大臣 私の宮崎もよく台風等でやられるところであります。そういったところで、私がいつも皆さん方にお願いするのは、しっかり国も支えるから、くじけずに頑張ってくれということを申し上げています。ですから、今回の大雪では多くの人命も失われております。そして、農業施設も大きな被害を受けております。共済の入り方、収入保険の入り方は様々ではあると思いますが、それぞれの経営形態に合った支援をしっかり考えていきたいと思います。

金子(恵)分科員 是非お願いいたします。ありがとうございます。

 それでは、今日は備蓄米の関係で質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは米の流通の状況でありますけれども、先ほど来もう御質問されている方々がいらっしゃったというふうに思いますけれども、備蓄米の放出を決めて、それで、二月の十四日に買戻し条件付売渡しの詳細について公表されました。そして、十七日、十八日に集荷業者向け説明会、今後は、三月上旬に入札、三月中旬に備蓄米の引渡しというスケジュールがあるということは認識をしております。十四日以降、米の流通の状況に変化はあったのかどうか、お聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 私も、七日に予算委員会で大臣に質問させていただきまして、そのときは、価格の問題ではない、米の流通を改善するために備蓄米の活用を図ったというようなことを明確におっしゃってはいただいたのですが、実際に、先ほどほかの委員も質問されていたようではありますけれども、どのような状況でこのようなことが起きたかということはしっかりと調査をしてきたのかということも含め、その調査をした上で今回の備蓄米の放出ということの結論を得たのかどうか、それも含めてお伺いしたいと思いますし、今申し上げました、実際にどの辺の分析が行われているかということです。

 実際に、農水省としては多分、スーパーでの販売数量、価格のPOSデータでの調査を行ったり、あるいはスポット取引や先物を含めた取引の動向にも注視をされているというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 まず、調査につきましては、実際に今行っておりますので、二月の、もうすぐ下旬ですけれども、二月の下旬か三月の頭ぐらいには御報告ができるような状態になるのではないかというふうに思っております。ですから、調査に基づいて二月の十四日に至ったということでは、時間の系列的には違うということであります。

 ただ、一番私が思っていたのは、様々思いはあります、やはり、ポリシーメイキングをするときにはエビデンスが十分そろっていなければいけない、説明責任を果たす責任が私にはありますので。このようなエビデンスがあるのでこのような政策決定をしましたというものは、この段階でそろっていた。一番大きいのは、やはり、流通の段階で二十一万トンも足りない、昨年よりも十八万トン余計に生産していただいているはずなのに二十一万トン足りないというのは、一番大きなエビデンスだったというふうに思っております。

 スポットでは若干下がったような話も聞きますが、まだ量も少ないので、余り、全体の流れとして捉えるには全然不十分だと思っています。ただ、私も個人的には、様々な大手のスーパーの方々の社長さんや責任者の方々と、友人がいますので、そういう方に聞くと、買ってくれませんかという話は来ているということであります。中には、聞いたこともない人から言われるので、そんなつき合いのない人の米は、ちゃんと保管してあるかどうかよく分からないのでお断りしましたというような話も聞きました。

 ですから、全体としてのトレンドは変わったと思いません。特にスーパーの店頭なんかでは、もう在庫を抱えていますから、高い値段で買ったものを備蓄米が出るからといって値下げをするということは、なかなか商売上難しいということもあるのかもしれません。ですから、全体の流れとして下げのトレンドが始まったと思いませんが、しかし一定の動きは出ているというふうに考えております。

金子(恵)分科員 しかしながら、価格を適正化する、正常化するために今般の備蓄米放出ということではないということ、つまり、店頭価格をただ単に下げるというために備蓄米放出をするのではないというふうに、明確に二月の七日の予算委員会では答弁をされていました。ですので、結果として下がっていく、もちろん、量が増えれば下がるだろうというふうに、そういう見通しもされるわけですので、そういうことなんだろうというふうには思います。

 そこで、価格が上がるかもしれない、下がるかもしれない、そういう中で、作付の意向というのはどうなっていくのかということだと思うんです。

 今の段階では、農水省が行っている、毎年一月末、四月末、六月末時点での主食用米、戦略作物等の作付意向調査というものがありますけれども、現在、一月時点の作付意向調査ということで調査中だというふうに思います。そういうことであれば、今回の二月十四日の備蓄米放出の公表の前の段階なのかもしれませんし、そうしますと、当然、そのことがどのように影響を与えるかというのは分からないということになるとは思います。

 しかし、例えば、各都道府県が生産量の目安を公表しているということもありますし、昨日ですか、これはちょっとニュースで私は見たんですけれども、第一回の米産業活性化のための意見交換が農水省で開催されたということで、テレビでも報道されておりましたが、その中で、生産者の考え方なども、そしてまた、卸売業者もそうですし、集荷業者の方々のそれぞれの立場での意見というのも出ていたということでありますし、あらあら、農水大臣としては、やはり、今後作付はどうなっていくか、農業者の方々、現場の方々の作付意向はどうなっているかということの感触というのを持っていらっしゃると思います。お示しいただけますでしょうか。

江藤国務大臣 食糧部会の答申を受けまして、生産量は六百八十三万トンと見通しております。これを踏まえて、二十九のいわゆる道県については作付を増やすだろう、数量はあえて申しませんが、かなりの面積が増えるだろうという報告を受けております。

 しかし、これは一つの目安でありますので、これが、一月末時点の作付意向についてまとまり次第公表する予定でありますけれども、ここで出た予定の面積ほど増えるかどうかは、現場の御判断もありますのでまだ分かりませんが、ただ、トレンドとしては、昨年よりも主食用米の作付面積は増えるだろうというふうに予想しております。

金子(恵)分科員 増えるということは、これまで作っていたものが足りないということを、現場、生産者の方々の認識、そういう認識がある、そういう理解でいいのかということだと思うんですけれども、やはり、昨年の夏の品薄や民間在庫の低迷、そういうものが後押しになって、増産へかじを切る、そういう産地が出ているのではないか。だから、今ほどおっしゃっていただきました二十九道県が二四年度の実績より増加を見込んでいるというようなことで、そうすると、やはり今まで足りなかったということでしょうか。

江藤国務大臣 これは、今まで、平成三十年で生産数量目標の張りつけをやめました。ですから、それぞれどれだけ作るかということは、それぞれの生産地の方々が経営判断としてされることであります。

 やはり、今の高い小売の値段を見れば、将来に希望を持って、今よりかはもしかしたら備蓄米が出るのでもうちょっと落ち着くかもしれないけれども、今まで以上に、例えば二年前とか、そういう価格以上には売れるのではないか、そういう見通しを持った方が作付面積を増やそうということであって、今回は異常な状態のスタックだと私は考えておりますので、生産量が足りないから増産にかじを切るということではないと考えております。

金子(恵)分科員 あくまでも、どこかにスタックしているということ、滞留している、だからそこをしっかりと、先ほどから使われている言葉で言えば目詰まりしているので、それをしっかりと改善させるために備蓄米を放出ということだということでありますけれども。

 このタイミングというのは、もちろん、この放出について新聞社等が世論調査を行っているわけなんですが、朝日新聞が行った電話による全国世論調査によれば、備蓄米放出をよいとする回答が八〇%あったとのことです。そしてまた、共同通信社の全国電話世論調査によれば、備蓄米放出の政府の対応について、遅い、どちらかといえば遅かったとの回答の合計が八一・三%となっているということであります。これは二月の十七日の新聞報道等でございますけれども、世間の皆さんと言ったらいいか、恐らく、食料システムの川下、比較的、消費者とか小売業者の方々の反応としては、やはり、備蓄米の放出を評価するが、でも遅かったということになると思うんです。

 しかし、私は、大臣もとても悩みに悩んでこの判断をされたということはよく理解しておりますし、これは簡単な決断ではなかったというふうに思います、今まで全くやっていなかったことをやるということですので。

 しかしながら、大臣は、この放出の判断については、もうおっしゃっているんですが、今まで考えられなかったようなプレーヤーが市場に参入してきたこと、それから、昨年末から年明けにかけて役所の中で検討したというようなことも説明はされている。実際に農業者の営農意欲をそがないようにするというようなことで悩んだということでありますが、こういうことであれば、今まで考えられなかったプレーヤーが市場に参入してきたということも含めて、分かっている情報というのがあるわけですね。

 そういうことであれば、やはり、端境期に入る前、端境期、そして出来秋の段階、それぞれの段階で別の対応ができないのかどうかとか、そういうことをいろいろと検討をしてきたのかどうかということも伺っておきたいというふうに思いますが、いかがでしょう。

江藤国務大臣 私が大臣になったのは十一月ですから、その前のことについてはちょっと、前の人のことを言うことになりますので申し上げませんが、もちろん、閣僚に任命されてすぐ最初に議題に上ったのは、まず水田政策の根本的な改革、それから担い手の問題、そしてこの米の急激な値上がりですよ。これについて、なぜこんなことが起こっているんだということは、懸命に役所の人間も動いてくれましたし、私に情報の伝達もしてくれました。

 しかし、例えば最近になって、ああ、こういう人たち、例えば建設会社であったり全然異業種の人であったりというところまでは、その十一月の段階では私はまだ知り得るところではなかった。ただ、どこか新しい、ニュープレーヤーが参入しているんだろうということまでしか分かっていなかったというのが現実だろうと思います。

 ですから、どの段階でどのような努力をしてきたのか、情報分析をしてきたかということは、それはもう役所の諸君も一生懸命やってくれたと思いますが、ただ、こういう今まで経験したことのない事象が起こると、現実にはやはり後追いになってしまうということは御理解いただければありがたいと思います。

金子(恵)分科員 大臣に就任してからは全力で精いっぱい動いてきたというような、多分そういう言葉なんだというふうに思います。

 もちろん、これまでも、大臣を経験されていて、そしてまた、所属の党の、自民党の中でも農政については中心的なポジションをいつも持ち続けていらっしゃったわけですから、この流れというのは、問題点というのは恐らく把握できる、そういうお立場だったろうというふうに思います。その上でも、できること、できなかったこと、様々な判断の中で悩まれたということではあります。しかし、これだけ、米が足りない、いわゆる令和の米騒動とまで言われてしまっている、その理由というのは恐らくあるんだというふうにも思うんですね。

 ですから、ここはいろいろ賛否両論、いろいろな議論があって当然だというふうに思いますが、例えば、政府備蓄米を子供食堂や子供宅食などに無償で交付している、これを、八月と九月というのは政府備蓄米の配送は行わない運用をしていました。それは、夏季の気温上昇による米の品質低下を懸念していたということで説明を受けております。それも分からなくはないなというふうに思います。もちろん、食品の安全確保ということは当然のことだというふうに思うんですが、この子供食堂の中でやはり米が足りないという訴えは七月頃からあったということで、その中で、ちょうど夏休みの時期でもある八月あたりに米が届かないという話になってくると、やはりここは、米が本当に足りていないんじゃないか、そういう発信がなされてきてしまった可能性があるんです。

 それとともに、南海トラフ地震の注意報の発出とか、台風の上陸などによる米の買いだめ需要というのもあったということで、そういうものが重なってしまったというわけなんですけれども。

 実際に、これはもしの話ですけれども、もし、子供食堂等へ配送が安定的に七月、八月あたりに行われていて、せめて子供食堂などではしっかりと無償で交付されているものがあって、米は決してなくなってはいないんだ、ちゃんと対応できるんだというような、そういう発信ができていれば、もしかすると、端境期においても小売店での米の品薄の状況というのが穏やかだった可能性はないんだろうか、そういう考え方もあるんですが、大臣、何かこの件についてもしお考えがあればということと、それと、子供食堂、子供宅食等への政府備蓄米の無償交付、これは、現在はもちろん、そして今後も安定的に行われるということでよろしいでしょうか。

江藤国務大臣 子供食堂への備蓄米の提供については、私が前回大臣だったときに決めたものでありますので、思い入れも大変強いです。

 ただ、御理解いただきたいのは、昨年の夏にお届けできなかったのは、去年の夏だから届けなかったということではなくて、例年、夏場にはお届けをしておりません。ですから、昨年、特別、子供食堂に夏場にお米を届けなかったということではないということは御理解ください。

 そして、しかし、こういう事態になって、やはり子供食堂の方々から引き合いが増えています、物すごく。子供宅食ももちろん増えています。ということでありますから、今年については、ちょっとなかなか、カビが生えてしまうんじゃないかというおそれ、おそれですよ、もありますので、しっかりやはり品質を管理をした上でお渡しをしないと、子供たちや地域の方々にかえって御迷惑をかけますから、ちょっと工夫をしますけれども、方針としては、今年の夏場も御要望に応じて出したいなというふうに考えています。

金子(恵)分科員 済みません、品質管理はしっかりやりながら、夏もしっかりと配送する、無償交付するということでよろしいですね。

江藤国務大臣 そのとおりです。

金子(恵)分科員 いろいろなことが重なってしまっています。でも、やはり米の品薄感、どこかにはたまっているだろう、でも実際には消費者、国民の皆様のところには適正な価格で米は届かない、この状況、とにかくそれを改善していくために、全力で、本当にこれはしっかり取り組まなくてはいけないというふうに思いますが、ただし、そもそもがやはり米政策の問題というのはあったのではないか。前回、予算委員会の方で、本委員会の方でミニマムアクセス米の話もさせていただきましたけれども、我が国の米政策、水田政策、ここに何かやはり大きな問題があったとは言えるのではないかなというふうにも思います。その中で、子供には、やはり主食米、おいしいものを食べてもらいたいですから、しっかりと取組をしていただきたいということ、重ねて申し上げます。

 買戻しをする、これを条件としている売渡しですから、この時期というものをしっかりと考えながらやらなきゃいけないわけなんですね。それで、この買戻しは、原則として売渡しから一年以内で、随意契約で行い、双方協議の上延長することも可能というふうにされていますが、買戻し時期、期限の延長とかそういうものは何回でもできるということでよろしいんですか。

江藤国務大臣 私がこの放出で悩んだ一番の理由は、買い戻さなきゃいけないということですよ。

 まだ、私は、もちろん量に着目して今回放出するわけですから、余り価格についてメンションしたくはないんですが、買い戻す場合は価格にタッチすることになります。ですから、食糧法の理念からいうと、量についてはまだぎりぎり条文で読める部分はありますが、価格では読む部分がありません。そして、財政法上の問題もあります。そういうことを考えると、審議会の方からは一年を原則とするというふうに言われましたけれども、自分の判断で、一年を超えることはあるというふうに方向を変えさせていただきました。

 ですから、これがいつまで延びるかということは明示的には申し上げません、例えば二年とか三年とか十年とか。ただ、十年なんというのは非現実的ですから、もっと早い段階で市場価格が落ち着いてくれることを望んでいます、量を出すことによってですね。ですから、私が申し上げたいことは、落ち着くまでは買戻しはしないということを考えています。

 そして、生産者の方々から見れば、ある程度暴落してしまったような価格水準まで行っても買い戻さないということであれば不満でもありましょうし、高い水準で買い戻せば、まだ十分に下がっていないのに政府は買戻しに走ったなということを不満でありましょうし、ここも非常に悩んだ一つの理由なんですよ。出すという決断はある程度決断すればいいですけれども、じゃ、戻すときにどうするんだということは非常に難しい。

 委員の御指摘はしっかり胸に留めて行っていきたいと思っております。

金子(恵)分科員 分かりました。原則一年以内だけれども、二年になるかもしれないし三年になるかもしれない。

 ただし、政府の市場介入というのはあくまでも限定的でなくてはいけないということ、そしてまた透明性の高い運用を行うということ、そしてまた、今ほどもおっしゃっていただきましたけれども、買戻しとなれば米価を引き上げる方向に作用する可能性があるということですので、政府の市場への介入という、このことについては、やはりある意味、慎重にもならなくてはいけないし、そしてまた、さらには、価格と量、このことをしっかりと考えながらやっていかなくてはいけない、そして需要、供給のバランス、様々な観点からこの買戻しの時期というものも考えていかなくてはいけないのではないかというふうに思います。

 財政審ではやはり備蓄水準の見直しというものも言われてはきていますけれども、いずれにしましても、国民の皆様への食料の安定的な供給、この確保というのが大事でありますので、これから、必要であるこの政府備蓄米、しっかりと守っていかなくてはいけないですし、安定的な運営を是非お願いしたいというふうに思います。

 限られた時間でありますので、次に参ります。新規就農者育成総合対策でございます。

 私、とても重要な制度だというふうに思っておりまして、就農時四十九歳以下、そして親元就農の経営リスク条件等、いろいろな課題はあったかなと思います。

 今回、令和七年度からは、新規作物の導入等リスクのある取組を行う者という親元就農に関係する部分については、経営発展に向けた取組を行い、新規参入者と同等の経営リスクを負う者という書きぶりに変わっているということでありますので、特に親元就農についての経営リスク条件というのは変わってきたという認識でいいのかなというふうに思っています。

 しかしながら、やはり四十九歳というこの年齢の部分については、もうちょっと引き上げるべきではないか、そういう御議論もあります。このことについて、今後もしっかりと検討していくお考えがあるのかどうか。もちろん、予算については、いろいろなところでの議論があったとしても、令和七年度予算案は百七億円計上されておりまして、六年度予算からすると十一億円の増額となっておりますので、そこは評価をさせていただきたいというふうに思いますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

江藤国務大臣 これは多分私は十五年ぐらい、何とかならないかと思ってきた案件なので、再び大臣になれたので、ちょっと、やれてよかったなと思っております。私の地元でも喜んでいる人もたくさんいますので、まずはどれぐらい手が挙がるかを見たいと思っています。

 私の気持ちとしては、余り言うと後ろの連中が嫌がりますけれども、私としましては、平均寿命も延びておりますし、健康寿命も延びておりますし、そして、企業で働いて、例えば、六十年定年ですけれども、五十五歳で早期退職に応募を受けてがっつり退職金をもらって、それを農業につぎ込んでくれるような方が生まれることもいいなという気持ちはあるんですよ。

 ただ、今回、新規就農については予算の増額はしましたが、しかし、それを例えば五十五歳まで上げるだけのキャパがあるかというと、やはり応募してもらって承れないというのも非常にまずいので、まずは四十九歳というこの水準を守らせていただいた上で、この要件緩和の中でどれぐらい手が挙がり、どれだけ新規就農が増えるのか、まずは見させていただきたいと思っております。

金子(恵)分科員 ありがとうございます。

 大臣、新規就農者を増やしていく、そういう方向というのはいいわけですよね。もちろん、基幹的農業従事者がこれだけ減ってきているという状況の中で、できるだけこの制度を活用して、そしてできるだけ多くの方々に就農していただきたいという思いがあるということで、是非、私は、もうこの四十九歳という年齢制限というのは取っ払っていただきたいなと思います。もう少しこの年齢制限を、そのままではなく、しっかりと緩和していただきたい、こういう条件というものは徐々に取り除いていっていただきたい、そういう願いであります。

 気になっているのが、農水省としては、あるいは大臣のお考えとしてではありますけれども、農業者の確保の目標、どれぐらいの人数を確保しなくてはいけないのかということの議論をしっかりとやってきて、その上で目標を掲げていくというお考えがあるのかどうかなんです。それをもって、しっかりとやはりこの新規就農者育成総合対策というものも進めていただきたいというふうに思いますし、少し前に、決算検査報告における不当事項というのもありました。

 令和五年度の決算検査報告によりましては、これに関係した補助金について不当事項というのがあった。要就農継続期間にわたり就農を継続していなかった、そういう事例が出てしまった。これは残念な話。でも、もっと周りがちゃんとした情報を差し上げていれば、あるいは、やはり定着していくような、そういう環境づくりをしっかりと支える形でやっていけば、もしかするとこれは起こらなかった可能性もあるだろうとか、とても重要な制度であるにもかかわらず不当事項と言われてしまうと、残念でならないわけなんですね。

 これは、会計検査院から不当事項と言われたら、しっかりと改善しなくてはいけないのかもしれませんけれども、でも、どのような形でそれは改善されていくべきなのか。それはやはり、農業者の確保。目標数値もちゃんと設定して、その上で、それを目標に目指していくんだということを言うべきだと思うんです。

 残念ながら、次期基本計画、これには、農業者確保目標見送りへというようなことが言われているということで、この方向というのは本当ですか。

江藤国務大臣 まず、その報道は私も、読んではいませんが、報告は受けました。まだ検討中のことでありますので、それが正しいとも正しくないとも申し上げません。

 今、地域計画をしっかり作って、地域計画の下で、その地域の農地をどういう人が将来にわたって引き受けていくのかということが、三月三十一日に向けて議論が成熟しつつあります。それが一つのやはり目安になっていくんだろうと私は思っています。そういう白地になったところを引き受けてくれる人についても支援事業を用意しようということになっております。

 減ることは、残念ですが、これはなかなか止められない。職業選択の自由もありますし、無理やり就農しなさいということもできません。それをやはり止める一つの方策としてあるのが新規就農の事業だと思います。

 会計検査院の方から言われたことは非常に残念ですが、ただ、やはり、とても甘い考えを持って入ってきた人もいるのではないか。農業はやはり厳しいですよ。そして、最初に入ってくる段階で、しっかり就農を継続しなければこういったペナルティーがありますよということの周知徹底がしっかりできていなかったのではないかということは、やはり反省する余地だろうというふうに私は思っています。

 ですから、今後、金額的にも上げましたし、さらに、親元でも就農してくれる人が出てくるということであれば、そういった方々には、今後このような指摘を受けないように、内容について、継続ができなかった場合にはこういうことになりますよということについてもしっかり周知できるように努力をしていきたいと思います。

金子(恵)分科員 時間が参りましたのでもう終わりますけれども、農業者の確保目標見送りという報道というのは明確に正しいわけではないというようなお言葉ではありましたので、きちんと基本計画の中にこの目標をしっかりと入れていただく。もちろん、目標、KPI、それをしっかりと設けるというようなことでありますので、今の段階では骨子案の部分でありますけれども、しっかりとその方向を明確にしていただきたいというふうに思います。それをお願いいたしまして、私からの質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小林主査 これにて金子恵美君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小林主査 次に、環境省所管について政府から説明を聴取いたします。浅尾環境大臣。

浅尾国務大臣 令和七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について、その基礎となる環境政策の基本的な考え方を御説明いたします。

 まず、東日本大震災、原発事故からの復興再生の推進については、特定帰還居住区域における除染や家屋等の解体を着実に実施してまいります。また、福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けて、先般設置した閣僚会議の下、各府省庁が一丸となって、再生利用先の創出等に取り組んでまいります。さらに、放射線健康管理やALPS処理水に係る海域モニタリング、福島再生・未来志向プロジェクトを推進してまいります。

 また、環境省の不変の原点である、国民の安全、安心の確保のため、公害健康被害対策、PFAS対策、熊に関する対策を含めた鳥獣保護管理、一般廃棄物処理施設及び浄化槽の整備、そして東日本大震災からの復興、創生等に取り組むとともに、原子力規制を厳格かつ適切に実施するための予算を計上しています。

 気候変動対策については、二〇五〇年温室効果ガスのネットゼロの実現に向けて、新たな削減目標を設定し、地域、暮らしの脱炭素化を主導します。地域の観点では、地方公共団体が主導する地域脱炭素の取組等を通じて、地域と共生し裨益する再生可能エネルギーの導入を進めつつ、産業振興や防災力強化等を図ることで、地方創生にも貢献してまいります。暮らしの観点では、住宅、建築物等の脱炭素化の支援や、脱炭素につながる各主体の取組を促す国民運動、デコ活を通じ、脱炭素型の製品等の需要を喚起し、環境負荷を低減しつつ、持続可能で楽しく豊かな暮らしづくりとGX推進に取り組んでまいります。

 循環経済、サーキュラーエコノミーについては、モデルとなる地域の取組の支援などによる循環資源等を生かした豊かな暮らしと地域の実現、国内外一体の高度な資源循環ネットワークの構築等に取り組みます。また、甚大な被害をもたらした令和六年能登半島地震等により発生した災害廃棄物処理を推進するとともに、持続可能で強靱な廃棄物処理体制を構築すべく、災害廃棄物対策の体制整備、一般廃棄物処理施設や浄化槽の整備等を進めてまいります。

 自然再興、ネイチャーポジティブについては、民間等の活動により生物多様性の保全を進める自然共生サイトの認定促進や、国立公園における滞在体験の魅力向上の取組等を進めてまいります。

 国際関係については、JCMを推進し、アジアを始めとする世界全体のネットゼロの実現に大きく貢献してまいります。また、プラスチック汚染に関する条約交渉や企業の循環性情報開示のスキーム等の国際的なルール作りに貢献してまいります。

 加えて、公害健康被害対策、石綿健康被害の救済、エコチル調査、熱中症対策、PFAS対策、人身被害が相次いだ熊に関する対策を含めた鳥獣保護管理、ヒアリ等の外来種対策、希少種保全、動物愛護管理等の取組を進めてまいります。

 原子力規制委員会については、厳格な原子力規制活動を支える安全研究の推進及び放射線モニタリング体制の強化を図るとともに、原子力の安全確保に係る人材基盤の強化等に取り組みます。

 これらの施策を実行するための令和七年度環境省所管一般会計予算及び特別会計予算について申し上げます。

 一般会計予算に三千九十五億円余を計上しております。

 次に、特別会計予算につきましては、GX推進対策費四百十九億円余を含むエネルギー対策特別会計に二千三百六十七億円余、復興庁の東日本大震災復興特別会計に環境省関係予算として二千五百三十五億円余が一括計上されております。

 なお、環境省所管一般会計予算及び特別会計予算の主要施策については、お許しを得て説明を省略させていただき、委員お手元に資料をお配りさせていただきました。詳細は、お手元の資料を御覧いただきますようお願い申し上げます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

小林主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま浅尾環境大臣から申出がありました環境省関係予算の主要施策の説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小林主査 以上をもちまして環境省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小林主査 質疑に入るに先立ちまして、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。坂本竜太郎君。

坂本(竜)分科員 皆さん、こんにちは。坂本竜太郎でございます。自由民主党・無所属の会所属であります。

 所属会派はそれでありますが、私の選挙区は、この間、間もなく十四年を迎えようとしておりますが、全国の皆様方あるいは世界中の皆様方から大変な御支援を賜っております福島県の浜通り。今回、区割りの変更もございまして、茨城県境から宮城県境まで、かつての中選挙区時代と同じ選挙区に戻ったわけですけれども、そこから一名を選んでいただく小選挙区制の下で、その選挙区から送り出していただいた者でございます。

 そういった意味では、浅尾大臣始め環境省の皆様方には、この間、一貫して、我々のふるさとを取り戻すべく、最前線で様々なお力を賜っておりますことを、この場をおかりいたしまして感謝を申し上げる次第であります。

 今ほど、当初予算について、あるいはもろもろについて御説明ありましたが、今回の当初予算の中でも、私ども福島県に関します予算、相当額、しっかりと計上していただいておるところでございます。専ら、昨今、大変な話題にもなっておりますけれども、中間貯蔵施設関連の予算が大きく占めておるところでございます。

 まず冒頭でありますが、この新年度予算、予算審査の場でありますから、当初予算の全体の中で、福島に関する予算、そして、大変な正念場を迎えております、節目を迎えております中間貯蔵施設関係予算についての詳しい御説明を賜れればと思います。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 東日本大震災からの復興再生に向けまして、特定帰還居住区域等におきます除染、家屋等の解体、中間貯蔵施設事業等を着実に進めております。

 令和七年度予算におきましては、仮置場等におきます除去土壌等適正管理・原状回復等事業といたしまして百五十九億円、放射性物質汚染廃棄物処理事業等として四百十三億円、中間貯蔵関連事業として千四十五億円、特定復興再生拠点整備事業として百九十九億円、特定帰還居住区域整備事業として六百九十億円でございまして、計二千四百三十六億円を計上しております。

 特に、福島県内の除去土壌等の県外最終処分の実現に向けては、最終処分量を低減するため、除去土壌の再生利用や、全国での理解醸成活動等の取組に必要な予算を計上しております。

 引き続き、関係省庁とも連携しながら、必要な予算を確保の上、福島の復興再生を着実に進めてまいりたいというふうに考えております。

坂本(竜)分科員 ありがとうございます。しっかりと必要な予算は確保していただいているということは、もう一目瞭然であります。

 大事なことは、それだけ確保していただいた予算を実効性あるものにして、成果を上げていくというのは、ほかの予算の審査の中では求められる表現ですけれども、確実なものにしていく、しっかりと不安の払拭を図っていく、二十年先を見据えて責任を果たしていくという、その道筋が分かるような内容の予算の執行でなければ、あるいはそういった計上がされていなければ、もったいないどころか、むしろ今、逆効果でございます。予算はあるよ、でも、この先どうなっているんだ、誰が担保するんだ、一体どうなっているんだ、このままにされちゃうんじゃないか、様々な不安や思いが交錯しているのが事実でございます。

 先週の後半、週末以来、御承知のように、最も苦渋の選択を受け入れて、最も御苦労いただいております自治体の一つである、その首長である地元の福島県双葉郡双葉町の伊沢町長から、大変な思いの御発言があったとの一部報道がございました。

 まず、この時点では詳しく申し上げませんが、その後、浅尾大臣も週末の法定会議に臨まれていろいろなやり取りがあったことと、これも報道を通じて承知いたしておりますが、まず、どういった思いで、伊沢町長の、水面下での発言であろうと思いますけれども、私的なというか、個人的なというお断りが後々示されておりますけれども、そういった面も含めて、お受け止めについて、ちょっとお披露目いただきたいと思います。

浅尾国務大臣 御質問ありがとうございます。

 今御指摘のとおり、二月二十四日に開催された第三十回の原子力災害からの復興再生協議会に先立って、私も報道を拝見いたし、その前に拝見しましたので、伊沢双葉町長と面会をいたしました。

 面会の場では、町長から、中間貯蔵施設の立地自治体として、県外最終処分や再生利用への理解が十分に広まっていないことへの危機感を感じていることから、県外最終処分や再生利用の取組を着実に進めるとともに、全国的な理解醸成をより一層進めてほしいというお考えを伺いました。

 私も全くそのとおりだというふうに思っていまして、まさに、中間貯蔵施設を受け入れていただいた自治体の一つである双葉町長のこの思いを大変重く受け止めているところであります。

 面会の場でも町長にお伝えしましたが、理解醸成を含めて、県外最終処分に向けた取組について責任を持って進めてまいります。

坂本(竜)分科員 もういろいろな取組をしていただいているのは、私も承知はいたしております。

 土屋元復興大臣もおいででありますけれども、様々な皆さんのお力をいただいて、連携して、それぞれのお立場で積み上げてこられている。でも、見えない、一生懸命やっていただいている技術面についても、再生利用を進めるためにもいろいろなことを取り組んでいただいているけれども、見えな過ぎて、もうこの三月ではや十年を迎える。お約束の年限であります二〇四五年まであと二十年を切ってしまう。カウントダウンが始まる。そういう重要な節目であればこその思い、大変な覚悟の下の、まさに町長の言葉をかりれば、先鞭を切った発言をせざるを得なかったという理解もできると思います。重要なことです。

 今お話ありました、やっていただいている、やっていきます、これは、ずっとこの場でも、どんな場でも、総理の口からもおっしゃっていただいていますけれども、果たして、地元の方々がどこまでそれを、信用していないわけじゃないけれども、安心してその取組について一緒に歩むことができるかという在り方を、責任を持って、もうこの時点で見出していかなかったら、全ての努力が、進んでいるのでありますが、また別な課題が生じてきてしまって、また不健全な状況に振り回されてしまうようなこともないとは言い切れないわけでございます。

 その辺をどれほど受け止めていただいて、その思いや覚悟にどれだけ応えられるか。もう一歩、二歩、踏み出していただくべきだと思うんですけれども、今は、正式な、オフィシャルの、間違いがない確実な御答弁をいただいたと思いますけれども、政治家として、この環境行政の最高責任者として、浅尾大臣の生のお言葉をいただきたいと思います。お願いいたします。

浅尾国務大臣 最終処分に向けては、復興、再生利用ができる土壌をしっかりと、県外でも再生利用をしていかなければいけない。そもそものその基準というのが、放射能に関する様々な基準がしっかりと国民全体に、これがどれほど安心なものなのか、安全なものなのかということについて理解をしてもらう。そういったことも含めて、理解醸成を進めながら、着実に県外最終処分を進めていく、そういう決意でありますので、是非、委員の御協力もよろしくお願いいたします。

坂本(竜)分科員 その理解醸成に尽きるわけで、町長はそこに、近隣の首長さんの言葉をかりれば、一石を投じたということになっていますが、では、その理解醸成をどうやってやるんだと。口で言うのは簡単だし、皆さん取り組んでいただいておりますけれども、非常に難しいところであります。

 そんな中で、この安全性、確実性を一定程度担保する一つのプロセスとして、ちょうど時期を一にして、IAEAのグロッシー事務局長が現地を訪れ、大分、長期にわたって様々な取組に、現場、まさにその作業に一緒に加わっていただいたようなことが先週後半ございました。その後、浅尾大臣とも御会談なされたと伺っております。

 これはもちろん、今の課題であります除去土壌に関しての安全性を担保していく、あるいは再生利用についてのいろいろな御提言、昨年九月ですか、IAEAからもいただいておりますけれども、そういったもろもろなんかと併せて、また別途、ALPS処理水の海洋放出のモニタリング等の健全性、安全性についての話題もあったかと思いますが、グロッシー事務局長とどの程度まで踏み込んだやり取りがあって、それをもって、まさに国民の皆さん挙げての理解醸成、あるいは再生利用の促進、確実な県外搬出等々の道のりに持っていくことができるのか、その御覚悟のほどをお示しいただきたいと思います。

浅尾国務大臣 IAEAのグロッシー事務局長との会談では、今の、再生利用、最終処分の基準、県外最終処分に向けた今後の進め方、そして、ALPS処理水の海洋放出に関する追加的モニタリングについて意見交換を行いました。

 IAEAのグロッシー事務局長からは、特に県外最終処分に向けた再生利用の取組は、ここが一番大事なところですけれども、IAEAの立場から見ても正しい方向に進んでいる旨、改めて発言がありました。第三者の客観的な評価等が必要であればいつでも対応するというお言葉もいただきました。また、ALPS処理水に係る海域モニタリングについても、包括的な取組がなされていると評価をいただきました。

 情報発信の重要性についても認識を共有したところでありまして、有意義な会談でありました。二〇四五年三月までの除去土壌の県外最終処分の実現に向けて、また、客観性、透明性、信頼性の高いALPS処理水に係る海域モニタリングの継続実施に当たり、引き続きIAEAとも連携しながら取組を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。

坂本(竜)分科員 しっかりと、実績、成果あるいは信頼関係、共有、そういったものは図られているものと思いますけれども、それらを踏まえて、グロッシー事務局長のお言葉とかお立場と、やはり国民の皆さんの受け止め、ましてや地元の考えというか。何回も申しますけれども、除去土壌に対する不安じゃありませんよ、その時点でそのままにされてしまうんじゃないかという一抹の不安です。また、全然不安の意味合いが違いますけれども、その辺の全ての理解とか不安の軽減に資するものにいろいろと御工夫をいただきたいということを重ねてお願いをさせていただく次第でございます。

 これは私、通告していませんが、新年度の取組としては、予算の中で、これ、お金がかからない取組だと思うんですけれども、その時点の、二十年後を担っている世代に向けての理解醸成のために、今、無敵のツールでありますSNS等々を活用していくというお取組もあると伺っております。非常に有効だと思うんですが、これ、実は紙一重ですから。

 おとといか、政治改革の特別委員会で、まず一定程度の法改正は成立しましたけれども、先週、参考人質疑がございまして、私、自民党を代表させていただいて、東京都の選管の方や兵庫県の選管委員長あるいは総務省御出身で選挙制度、法令に詳しい参考人の先生方にお尋ねさせていただく機会をいただきました。SNSが本来の成果を発揮できているんであれば、これは好ましいことでありますけれども、全く想定していなかった状況にある。

 この課題について、SNSで発信していただいて理解醸成はありがたいんですが、今、パブリックコメントも募っていただいている期間だと思いますね、この件について。

 それと併せて、SNSの発信の仕方、そことの理解醸成には、大変な工夫というか大変な粘り強さというか、いろいろなことを想定して進めていただいた方がありがたいと思うんです。難しいことは申し上げませんけれども、いずれにしても、国民の皆さんの理解をいただくことと地元の皆さんの不安の払拭、別な作業になってしまうけれども、根源的には一緒だという難しい構図になっております。

 改めてでございますけれども、その辺も含めて、どういった覚悟で、そういった、きめ細かくこれから進めていただけるのかというのも御開陳いただければと思います。

浅尾国務大臣 委員御案内のとおり、SNSは大変有効なツールではあるというふうに思います。

 一方で、SNSにおける一つの特徴として、自分が好む情報をより見るということがあると思いますので、冒頭、先ほども申し上げましたけれども、正しい理解、放射能について正しい理解をしっかりと発信をして、自分がそういう理解、違うことを思っていたとしても、ちゃんと正しいところに行き着くような、そんなことも含めて、どういう発信の仕方がいいかということをやっていくことが重要だろうと思います。

 御指摘のとおり、SNSは有効なツールだと思いますけれども、自分が考えていないことになかなか行き着かないという特性がありますので、それが行き着くようなことも含めて検討していきたいというふうに考えています。

坂本(竜)分科員 地震におびえ、津波で家を奪われ、そして、ふるさとを着のみ着のまま追われた方々が大勢いるわけでございます。そして、この間、いわれなき風評、もっと言えば、そういったSNSも含めて、誹謗中傷にさらされるシーンもあった。そして、それだけの苦労をされているのに、この復興を前に進めるためにはどうしても避けて通れないんだ、除染せねば、その除染を確実に進めるためには置場を用意しなきゃいけない。

 またそこで、苦渋なんというものじゃない、人生も、これまでの伝統も、それぞれのおうちの、地域の、それをなげうってでも、三十年間という大きな時間軸を国にお任せした、信頼して託した、その三十年後の在り方について、十年たってまだまだ見えていない。特効薬はありませんから致し方ありませんが、このままではいても立ってもいられない。

 浅尾大臣にも、二十年後、今のお立場で責任を果たしていただきたいと申し上げることはできません。総理だってそうです。私らだって何とか、辛うじて、どういう立場であったって、その時点に何か責任を果たすような方向性、道筋ぐらいはつけなければ責任を果たせない、そういう思いで、皆さん、この瞬間、これまでもそれぞれのお役目を果たしてきていただいているものと思っております。

 そういう重要な局面にあるということをいま一度、もう一回思い起こしていただいて、きめ細かく、想定し得ないようなまた苦労を与えてしまうんじゃないか、不幸を招いてしまうんじゃないか、そこまで想定して、本当に粘り強い取組、見える形でお示しをしていただきたいと思うところでございます。

 これも余談で、通告していませんけれども、県外の理解増進に資するものだと思いますけれども、これは今朝の報道ですか、元々福島県外で除染が行われた除去土壌の取扱いについて、それぞれの市町村でしっかりとこれを進めていくんだ、その在り方についてというガイドラインが示されたとかなんとかという報道に接しております。

 これはちょっと、お尋ねするかどうかはあれですけれども、そういったものも、そういった国民の皆さんの住民理解、そして地元の皆さんの明るい兆しの方に何とかつながる要因になるのかどうか。是非そうしていただきたいと思うんですけれども、御担当者さんのお手元で、何かこの場でお示しいただけることがありましたらお願いしたいと思います。

白石政府参考人 まず、お答えする前に、先ほど私の発言の中で、特定帰還居住区域整備事業として六百九十億円と申し上げたところは、正しくは六百二十億円の誤りでございました。訂正させていただきます。

 先生御指摘ございました、今朝の報道にございますガイドラインでございますが、現在、福島県内の除去土壌の最終処分に向けて、再生利用それから最終処分に向けた基準省令、これも様々な場で検討を進め、放射線審議会にも諮問するなど必要な手続を進めておりまして、昨日、放射線審議会から基準案は妥当であると、これは福島県内の除去土壌についてでございます。

 さらに、昨日、同じ日でございますが、福島県外の除去土壌につきましても、その処分方策につきましてガイドラインの案を有識者会議に諮りまして、そこにつきましても御意見をいただきまして、これも年度内に取りまとめたいというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、今年、まさに中間貯蔵に搬入をしてから十年の節目の年でございます。様々な基準の取りまとめを行ってございますし、さらに、先ほどから理解醸成が大事であるという御指摘をいただきました。

 今後とも、様々な、フォーラムでありますとかあるいは現地視察の開催、こういったところもやりながら、理解醸成も進めてまいりたいというふうに考えてございます。

坂本(竜)分科員 いろいろやっていただいていますけれども、とにかく進んでいないという現実だけは間違いないので、残念ながらですよ、やっていないわけじゃないので、そこは踏まえていただいて、様々な取組をお願いしたいと思います。

 一旦お伺いしますが、これも根底でございます、やはり信頼であって、安全性に対する国の責任というのが、ほかの福島以外の原子力、これからまた新しい展開を迎える中にあって、どうやっても今まで以上にその原子力規制の面で責任を果たしていかなければならない。

 これも、何か報道によると、検査の手数料が間違っていたような報道がありましたけれども、そういった初歩的な、事務的なミスも含めて、しっかりと緊張感を持って、この国の原子力政策の在り方、原子力規制の在り方、信頼につながる部分、もって福島の回復にも、再生にもつながる部分があるわけでございますから、その辺の在り方も少し加味しながら、この新年度の予算と取組について、原子力規制委員会の方からお示しいただければと思います。力強いお言葉をお願いします。

山中政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省と教訓を踏まえまして設置された組織でございます。独立性、透明性を堅持して、厳正な原子力規制を遂行することといたしております。

 令和七年度予算案におきましては、原子力規制委員会が行う審査、検査の実施、規制の継続的な改善のための予算に加えまして、道府県が行います放射線の監視のための予算等を計上しております。東京電力福島第一原子力発電所事故調査分析につきましては予算を増額しております。

 引き続き、あのような事故を二度と起こさないために、一〇〇%の安全はないということを肝に銘じて、原子力規制行政に必要な予算をしっかりと確保しつつ、継続的な改善に取り組みながら、慢心することなく謙虚に規制業務を遂行してまいります。

坂本(竜)分科員 ありがとうございます。

 大体、最終時間帯となってまいりました。そういったものも含めて確実なものにしていっていただいて、国全体でこれを確立していっていただきたい、責任を果たしていただきたいと思います。

 本当は、浅尾大臣は原子力防災担当でもあられますから、そちらのお立場でもお伺いしたいところですが、またこれは別な分科会の取組でございますので、そこの思いも含めて、全体のこの取組についての覚悟をもう一回総合的に、もう一回、浅尾大臣の言葉で。

 あの伊沢町長が背負ってしまったようなことにさせない。地元もいろいろな受け止めになっている部分もある。これから長い、険しい道のりでありますけれども、とにかくみんなでやっていくんだ、もう一歩も二歩も近づいて、歩み寄ってやっていくんだという思い、覚悟と思いをお示しいただきたいと思います。

浅尾国務大臣 福島県、特に浜通りの皆さんが様々な思いを持っておられる、それを全国でしっかりと受け止めて、福島県の皆さんとしっかりと連帯をしていくということが一番大事なことだというふうに思っていますし、そのためには、まさに福島県の中の思いと全国の思いとの間に乖離があると思いますので、そこの理解醸成をしっかりと進めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

坂本(竜)分科員 以上で質問を終了させていただきます。頑張りましょう。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

小林主査 これにて坂本竜太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方分科員 よろしくお願いいたします。

    〔主査退席、土屋主査代理着席〕

 小林主査、よろしくお願いいたしますと言ったら交代されましたね。浅尾大臣、よろしくお願いいたします。

 今年の一月、我が地元福岡県北九州市までお越しいただきまして、ありがとうございました。

 北九州市ではPCBの処理を長らくやっておりまして、一回目の更新、そして二回目の更新ということで行った上で、昨年全て終わったわけでありますが、このPCBの処理、地元でもいろいろな意見がある中、やりおおせました。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

浅尾国務大臣 御質問ありがとうございます。

 御指摘の北九州市は、全国で初めてPCB廃棄物処理施設の立地を受け入れていただくとともに、令和五年度まで約十九年間、高濃度PCB廃棄物の処理に御協力をいただきました。北九州市での経験や技術を横展開することで、他の四地域でも事業を開始でき、全国的な処理体制を構築することができました。

 その間、二度の処理期限延長や、西日本エリア全体で発生するPCB廃棄物の一部受入れなどの要請に対しても御決断をいただき、昨年三月末で北九州市での処理を終えることができました。

 本年一月に武内市長と面会し、これまでの御協力について、感謝の意をお伝えいたしました。北九州市に、国内の高濃度PCB廃棄物の処理進展に大きく貢献いただいたことを、この場をかりて改めて御礼を申し上げます。感謝申し上げます。

 現在実施しております処理施設の解体撤去工事も、最後まで気を引き締めて対応してまいります。

 また、北海道室蘭と東京の事業所では、引き続き高濃度PCB廃棄物処理事業を実施しており、令和七年度末までの確実な処理を目指して、引き続き全力で取り組んでまいります。

緒方分科員 ありがとうございました。

 大臣訪問の際に、今年度の補正予算事業として、資源循環ネットワーク形成及び拠点の戦略的構築に関する調査事業への要望があったと承知をいたしております。北九州市はリサイクルの分野でとても頑張っております。もちろん、事業を今すぐこの場で決定するとか、そういうことではないことは分かっておりますが、是非御高配をいただきたいと思います。大臣から一言だけいただきたいと思います。

浅尾国務大臣 しっかりと北九州市の御要望も受け止めて、前に進めていきたいというふうに思っています。

緒方分科員 この事業、資料を拝見する限り、単なるリサイクルの拠点をつくっていくということならず、製造業につなげていくことを強く意識しているように資料の上で拝見をいたしました。この理解でよろしいでしょうか、環境省参考人。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の経済を循環経済へ移行させ、持続可能な成長を実現するためには、製造業に対する再生材の供給拡大を図ることが重要であると考えております。

 このため、廃棄物処理、リサイクル業から製造業へ再生材を供給するための物流網が十分ではなく、国内の再生材市場が未成熟であるといった課題に対応し、拠点となり得る高度なリサイクル施設の整備や資源循環の担い手から成るネットワークの形成などにより、動脈産業と静脈産業との連携を強化し、新たなサプライチェーンの整備を図る必要があると考えております。

 ただいまお話がありましたこの予算事業、この拠点に関する調査事業につきましても、こうした観点を踏まえて、動静脈連携をしっかり前に進める、そうした観点で進めてまいりたいと考えております。

緒方分科員 ありがとうございます。まさに我が福岡県北九州市、製造業、物づくりの町でありますので、こういったリサイクルとサプライチェーンをつくっていくという観点からは最適な場所であると地元選出として自負をいたしておりますので、是非よろしくお願いをいたしたいと思います。

 ちょっと質問を変えまして、次に、そのリサイクルのそれぞれの中身について環境省の参考人にお伺いしたいと思います。

 うちの町で、PET素材のリサイクル、これもやっているわけでありますが、現在、このリサイクルは、何となく、私が見ている限り、ボトル・トゥー・ボトルでやるのが主流であるように見えるんですね、いわゆる水平リサイクルの形ですけれども。ただ、この水平リサイクルは、徹底しようとすると物すごくエネルギーを要するということ、そして、歩留り落ちもかなり増えてくるということがございます。

 思うに、そういうことではなくて、PETという素材に着目をして、素材としてのライフサイクルをきちんと描いていく。必ずしもボトル・トゥー・ボトルではなくて、ボトルの後は、実は今、今日、私、ハンカチを持っているんですけれども、これはPET素材なんですね。こういった形で、必ずしもボトル・トゥー・ボトルではなくて、素材全体に目を向けて、そのライフサイクルを長く取るべきだというふうに思うんですけれども、環境省の御見解をお伺いしたいと思います。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 ペットボトルを含めまして、資源循環の推進に当たりましては、技術的可能性、経済的可能性や、環境負荷の低減効果を総合的に考慮して推進していくべきものと私どもとしても考えております。こうした考え方につきましては、循環型社会形成推進基本法に定める基本原則にも明記されているところでございます。

 こうした考え方を踏まえまして、分別収集されたペットボトル資源につきましては、これが適正にリサイクルされるよう、ボトルからボトルへの水平リサイクルのみならず、衣類や食品トレーなどへのリサイクルも含めて、総合的にそのリサイクルを推進していくことが重要である、このように考えております。

 こうした考えに基づき、環境省におきましては、令和七年度予算におきましても様々な支援措置を盛り込んでいるところでございまして、資源循環の取組を様々な角度から総合的に推進してまいりたいと考えております。

緒方分科員 実際、リサイクルの現場に行ってみると、私、こういうハンカチのようなものもありますし、あとランドセル、あれをPET素材で作っているのを見たんですね。結構、素材で見ていくといろいろな可能性があるんだなということに気づきました。特定の、ボトルだったらボトルの方に持っていかなきゃいけないというので何か無理して持っていこうとすると、そもそもエネルギーを要するし、そうではなくて、もっと広く素材全体として見ていくということを是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 もう一つ、リサイクルということで、金属スクラップについて取り上げさせていただきたいと思うんです。

 昨今、うちの地元では雑品屋と呼んでいるんですが、よく正体の分からない業者さんが、空き地みたいなところに何でも引き受けますということでそういう場所を設けて、何の許可を持っているかも分からないんだけれども、ここに持っていったら買い取ってくれますというような場所が全国あちこちにあります。余り特定の国籍の方をあしく言うつもりはないですが、そこで書いてある漢字を見ていると、どう考えても日本人が書いている漢字じゃないなというのが分かるわけですね。漢字で書いてあって、大体携帯番号だけが書いてあって、そこにみんな持ち込むんですね。私の地元でも結構あります。

 普通に考えると、リサイクル関係法令に従っている業者に比べると、コスト競争をすれば、当然、法令に従っていない人の方がコスト的にそれは条件のいいものを提示できるわけです。そうすると、正当に頑張っている業者からすると、持ち込む人が、あっちの方が高く買ってくれるからということでそっちに持ち込んじゃうということがあって、リサイクルの網が何か漏れが出ている感じが物すごくするんですね。

 こういうのは私はよくないと思うんですね。これは多分、今、副主査もうなずいておられまして、埼玉の御地元でもあるんじゃないかと思いますし、私の地元でもあります。もしかしたら、大臣の御地元の神奈川でもあるかもしれませんし。

 これは刑事法で取り締まるのか何で取り締まるのか分かりませんけれども、ともかく、こういうことを何らかの形で規制をかけるべきではないか。場合によっては、物が外に輸出で漏れていっている可能性だって大いにあるわけですよね。是非よろしくお願いしたいと思いますが、御見解をお伺いします。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました金属スクラップヤードの問題につきましては、私どもとしても大変強い問題意識を持っているところでございます。

 環境省が行いました地方自治体に対する調査では、金属スクラップ等を不適正に保管するヤードにおいて、公共用水域等の汚染、騒音、振動、火災の発生等も報告されております。こうした中で、一部の地方自治体では、こうした不適正ヤードに対して、金属スクラップ等の保管に関する規制を行う条例が制定されているところでございます。

 こうした中で、環境省では、昨年十月から、ヤード環境対策検討会、これを設置いたしまして、このような実態を踏まえ、有識者の皆様に御議論いただいているところであり、金属スクラップ等のヤードに関する環境対策について、どういった方策、対応が必要なのか、これにつきまして年度内に取りまとめを行う予定としております。

 その上で、今年は廃棄物処理法の施行状況を点検する節目の年でもありますので、この検討会の取りまとめも踏まえ、中央環境審議会において更に議論を行うこととしており、今後、金属スクラップ等のヤードに関する環境対策について、制度的にどのような措置を講じるべきか、更に検討を進めてまいりたいと考えております。

緒方分科員 年度内というのは、これは質問じゃなくて、六年度内ということでよろしいですよね。この年度内ですよね。そこでうなずいていただければ結構です。(角倉政府参考人「はい、今年度」と呼ぶ)はい、分かりました。ありがとうございます。

 続きまして、シップリサイクルについてお伺いをいたしたいと思います。

 シップリサイクルについては、条約が今年の六月に発効をいたします。実は、この条約の締結については、外務省の優先順位が低いところをぐっと上に上げさせて早く締結させたきっかけになったのが自分だったので、すごい思いがあるんですが。

 この条約が発効すると、今後世界的に船の解撤についてルールが確立していくわけですけれども、環境省にお伺いしたいと思います。日本として、船のリサイクルを推進していく意図がおありになりますでしょうか。環境省。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしても、使用済船舶のリサイクルはしっかり推進をしてまいりたいと考えております。

 ただいまお話、御指摘がありましたシップリサイクル条約が今年六月に発効する見通しとなっておりますし、その発効とともに国内担保法であるシップリサイクル法が施行されることとなっております。

 環境省におきましても、この法律の枠組みを活用して、関係省庁と連携し、安全で環境上適正な船舶の解体やリサイクルをしっかりと推進してまいりたいと考えております。

緒方分科員 これは、今世界中どこでやっているかというと、時々ネット上とかで見るとよく出てくるんですけれども、バングラデシュとかに行くと船の墓場と言われるところがあって、そして、もうそこにばっと船を乗りつけて、そして、ヘルメットもかぶらず、安全靴も履かず、Tシャツだけの若い人がバーナーでばあっと切っているというような、そういう船の墓場と言われるところがあって、それがシップリサイクル条約のきっかけになっているわけでありますが、是非こういうのをなくしていかなきゃいけないと思うし、日本でやることもいいと思うんですけれども、コスト的に大丈夫なのかなというふうに思ったりするんですけれども、そこら辺、見通しはいかがでしょうか。環境省。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 コスト的な問題もこれからしっかりと考えていかなきゃならない重要な課題の一つであると考えております。

 また、今後、国内の鉄鋼業における脱炭素化に向けた電炉転換の動きもございます。こうした中で、鉄スクラップの需要が拡大する見込みと私どもとしては考えております。船舶は高品質な鉄スクラップの安定的な供給源として期待されており、国内において船舶の安全で効率的な解体やリサイクル体制を構築していくことが重要である、このように考えております。

 こうした中で、先ほど来お話のありました資源循環ネットワーク形成及び拠点の戦略的構築に関する調査事業におきましても、船舶のリサイクルの観点も含めて、鉄リサイクル促進に向けた様々な課題について整理、分析を行ってまいりたいと考えております。

緒方分科員 ありがとうございます。

 この次、製造業としっかり絡めてという話をしようと思いましたが、その答弁がありましたので。

 そうなると、やはり経済産業省の役割というか存在が重要になってくるわけでありますが、こういったシップリサイクル、環境省として、リサイクルでやっていこうというときに、製造業とつないでいかなきゃいけないというときに、くれぐれも両省の中で、あれは環境省の事業ですからということで縦割りにならないようにしてほしいなという思いをすごく強く強く持ちます。

 経済産業省としてそういうことはしない、しっかりと、そういうリサイクルを行うのであれば、その話に加わって、そして、先ほど電炉の話がありました、電炉につなげていくような道筋もつけていただきたいというふうに思うわけでありますが、経済産業省。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今環境省から御指摘ありましたとおり、鉄鋼業の脱炭素化、これは重要でございますけれども、今後、一定程度高炉から電炉への転換が進んでいく中では、品質のよい鉄鋼原料となる鉄スクラップ、これを安定的に確保していくことが大変重要でございます。

 国内で使用済みの船舶、これを安全で効率的な方法で解体することができれば、不純物の混入が少ない、品質のよい鉄スクラップを回収することができるものと認識しております。

 先生御指摘のように、経産省としては、使用済みの船舶のリサイクルを含めて、品質のよい鉄スクラップの安定供給確保に向けまして、環境省を始めとする関係省庁とも緊密に連携しながら必要な対応を検討していく所存でございます。

緒方分科員 この件、最後に浅尾大臣に一言だけ。

 国務大臣として、リサイクルをやるんだと。そして、そのリサイクルをやった後、製造業につないでいくというところで、よく、鉄を語るときにシームレスということが語られますが、まさに仕組みとしてシームレスにならないように、国務大臣としても是非御留意をいただきたいと思いますが、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

浅尾国務大臣 御指摘のとおり、動脈産業、静脈産業、しっかりと融合させて資源として活用していくことが大変大事だというふうに考えておりますので、推進していきたいと思っています。

緒方分科員 ここまでが比較的きれいな議論でありまして、最後、ちょっとどたばた物を取り上げさせていただきたいと思います。

 山形県酒田市にある、あったかな、チェンジ・ザ・ワールド社という社があります。太陽光の小口販売で非常に拡大をして、販売預託の手法で拡大をして、そして二〇二三年二月だったと思いますが、破綻をいたしました。しかし、今、販売預託という言葉を使いましたが、販売預託自体が消費者庁の法律によって禁じられているにもかかわらず販売預託をやって、破綻した後、社長が逮捕されております。

 この販売預託の原則禁止が打ち出されていた二〇二〇年十月には、環境省はグッドライフアワード賞、これを与えております。そして、東北経済産業局J―Startup、これでも表彰をされております。被害に遭った方々の中には、環境省のお墨つきがあったと思ったというふうに言っておられる方がたくさんおられます。環境省そして経済産業省の答弁を求めたいと思います。

大森政府参考人 お答えいたします。

 株式会社チェンジ・ザ・ワールドにつきましては、グッドライフアワードの表彰時点では同社が法令に違反した事実は確認できませんでしたが、同社の破産や元社長らの逮捕を受けて、環境省では必要な対応を取ってきております。

 具体的には、同社の元社長らの逮捕を受けて、グッドライフアワードを受賞する取組として適切ではないと判断いたしまして、所要の手続を進め、令和七年一月に同社の取組について受賞の取消し措置を講じております。

 環境省が主催する表彰を受けた事業者が、その後、法律違反の疑いで逮捕されたこと、また罰金の略式命令が出されるような事態となったことは、大変残念であります。

 今後、事業者等に対する表彰等の審査に当たりましては、関係省庁とも連携を強化いたしまして、各種法令の遵守や事業の計画性等についてしっかりと確認してまいることとしております。

今村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のJ―Startup TOHOKUにおきまして、チェンジ・ザ・ワールド社の選定に当たりましては、地域経済界、金融機関、大学、行政等様々な主体から成る協議会で選定するとともに、重大な法令違反がないこと、財務、経営状況の健全性が確保されていること、破産手続を開始していないこと等について誓約書の提出を求めておりました。その上で、選定後に誓約事項に該当しなくなった場合は事務局へ速やかに報告することとされておりましたけれども、同社から事務局への報告はありませんでした。

 同社の選定プロセスには問題があったとは考えておりませんが、同社の表彰に関しましては、この記載、倒産した二〇二三年、令和五年三月に本プログラムのホームページから削除されております。

 それから、表彰を受けた事業者が、その後、法律違反の疑いで逮捕されたこと、罰金の略式命令が出されるような事態となってしまったことは、大変残念でございます。

 経済産業省としましては、事業者等に対する表彰、選定などの審査をする場合には、法令の遵守、事業の計画性、採算性等についてしっかりと確認をしてまいりたいと思っております。

緒方分科員 しかし、今言ったグッドライフアワードにしてもJ―Startupについても、これは販売預託の原則禁止が決まった後で、まだ法が施行されていないという状況でありましたが、経済産業省に至っては、販売預託禁止の法が施行後であっても、破綻直前三か月前に、経済産業省が関与したアクセラレータープログラムでチェンジ・ザ・ワールド社に特別賞を与えています。ここまで来るとさすがにひどいのではないかと思いますが、経済産業省、いかがでしょう。

今村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の民間の研修プログラムにつきましては、経営者や投資家などのアドバイザーがサポートを行い、スタートアップを育成するというものでございます。民間企業八社とともに経済産業省も、事業趣旨に賛同し、共催したものでございます。

 御指摘のこのプログラムにつきましては、参加者の取組の成果を評価する、そういう観点から表彰が行われ、民間有識者やアカデミアによる審査委員会が評価した結果、同社はソーシャルインパクト部門特別賞に選ばれております。

 表彰された時点では、やはり同社が法令に違反していた事実を把握しておりませんでした。同社が倒産しました二〇二三年、令和五年三月に本プログラムのホームページからは同社の情報が削除され、表彰が取り消されているところでございます。

 表彰を受けました事業者が、その後、法律違反の疑いで逮捕されたこと、罰金の略式命令が出されるような事態となったことは、大変遺憾でございます。

 経済産業省としましては、これらの表彰、選定などの審査をする場合には、法令の遵守、事業の計画性、採算性等につきましてしっかりと審査をしてまいりたいというふうに思っております。

緒方分科員 破綻三か月前ですよ。ちょっと悠長なんじゃないかなという気がしましたが。

 この質問をすると、必ず環境省も経済産業省もどっちも、残念という言葉を使うんですよね、残念という言葉を。

 残念という言葉というのは多義的なんですけれども、第三者的に見て、こんなことが起きた、残念でしたね、そういう意味で残念と言っておられるんですか、環境省。

大森政府参考人 お答えいたします。

 環境省が主催する表彰で、事業者が法律違反の疑いで逮捕されたということにつきまして、環境省としてこの事態を受け止めて、大変残念という判断をさせていただいているところでございます。

緒方分科員 そんなことは聞いていないでしょう。残念というのはどういう意味ですかと聞いているんです。残念ですねというのは、何か目の前で不幸なことが、出来事が起きて、第三者的に見て、ああ、残念でしたね、そういう意味ですかというふうに聞いているんです。もう一回。

大森政府参考人 お答えいたします。

 第三者的という意味ではなく、そこは環境省としてこの事態を受け止めておりますけれども、それについての評価というか、そういったことについて残念ということで受け止めさせていただいているところでございます。

緒方分科員 環境省は、では、この賞をお墨つきと信じてチェンジ・ザ・ワールド社の商品を購入し、損失を被ったことについては、それを残念だと言っているわけですけれども、ひとえに購入した者の責任に帰せられるというふうに思っておりますか、環境省。

大森政府参考人 お答えいたします。

 被害に遭われた方の御判断というのはいろいろ要因があるとは考えておりますので、そこについては、環境省がこの事業者に対して、表彰を受けた事業者が法律違反の疑いで逮捕されたことにつきましては、繰り返しになって大変申し訳ありませんが、残念ということを申し上げさせていただくにとどめさせていただきます。

緒方分科員 さっきから全然答えになっていないんですよね。残念という言葉が、意味が何ですかと聞いているんですけれども、いや、残念ですと。堂々巡りなんですよ。残念というのはどういう意味ですかというふうに聞いているんです。もう一回。

大森政府参考人 お答えいたします。

 このような事態になったということにつきまして、環境省としてこの事態を真摯に受け止めてはおりますけれども、それについて評価として残念ということで申し上げさせていただいているというところでございます。

緒方分科員 いや、さっきから答えになっていない。もう席に戻られるんだと思いますが、こうやって、環境省のお墨つきがあると思って、そして商品を購入し、損失を被った方がいる。環境省のお墨つきがあると思ったという人はたくさんいるわけですよ。それらの人々が損害を被ったのは、それはひとえに購入した人の御判断によるものであって、それらの人々の責任によるものだというふうに思いますかというふうに聞いているんです。

 もう先ほどのような答弁は要らないです。しっかりと、ばしっと答えてください。以上。

大森政府参考人 お答えいたします。

 被害に遭われた方の御判断につきましては、ここで個別についてどうこうというのを申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきます。

緒方分科員 じゃ、聞き方を変えます。

 そうやってチェンジ・ザ・ワールド社の商品を購入し、損失を被ったことに対して、環境省として、お墨つきを与えたと言われているわけですけれども、一切の責任を持っていない、有しないというふうに、そういうふうに断言できますね。

大森政府参考人 お答えいたします。

 責任という問題については、いろいろな意味を有する言葉だというふうに考えております。この場合の環境省の責任がどうであったかということとはちょっと別に、この場合の環境省としての受け止めというのは、大変繰り返しになって恐縮でございますけれども、残念ということでお答えさせていただいているところでございます。

緒方分科員 そろそろ質疑時間が来るのであれですけれども、私が残念というのは多義的ですよねと言ったら、それに対して答えずに、責任がありますかと言ったら、責任は多義的ですと。私が多義的だから定義をしっかりしてくださいと言うことに対して、あなたは一切答えないんですよ。

 最後、もう一回聞きます。残念というのはどういう意味ですか。残念だと思いますという答弁はもう要らないです。残念という言葉の定義について答えていただきたい。大森さん。

大森政府参考人 お答えいたします。

 このような事態になりましたということにつきましては、環境省として、これからいろいろな、先ほども申しましたけれども、これからの表彰の審査、そういったものについて、今回の経験を踏まえて、今後の審査の強化、対応の強化、そういったことにきっちり反映もしていきたい、そういった趣旨でございます。

緒方分科員 久方ぶりに全くかみ合わない質疑をさせていただきました。

 終わります。

土屋主査代理 これにて緒方林太郎君の質疑は終了いたしました。

    〔土屋主査代理退席、主査着席〕

小林主査 次に、林佑美君。

林(佑)分科員 日本維新の会、林佑美です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。最後までどうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に移らせていただきます。

 初めに、洋上風力発電について質問いたします。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの中でも、風力発電は太陽光発電とともに主力を担う位置づけとされており、特に洋上風力発電には大きな期待が寄せられております。

 四方を海に囲まれた我が国においては、洋上風力発電の設置箇所が数多く見込まれ、大量導入、コスト低減、経済波及効果が期待されることから、洋上風力は再生可能エネルギーの主力電源化の切り札とされています。

 洋上風力の導入目標については、令和二年に政府が策定した洋上風力産業ビジョンにおいて、二〇三〇年までに一千万キロワット、原子力発電所約十基分、二〇四〇年までに三千から四千五百万キロワット、原子力発電所約三十から四十五基分の案件を形成することを掲げております。

 昨年の国会では、再生可能エネルギー海域利用促進法の改正法が提出され、これまで領海及び内水のみであった案件形成の促進に加え、排他的経済水域における案件形成が可能となる内容となっております。洋上風力には着床式と浮体式がありますが、この改正を踏まえ、EEZの浮体式洋上風力発電が展開できることとなれば、今後は浮体式導入拡大が見込まれます。

 そこで、浮体式洋上風力発電の開発について、現状と今後の取組について伺います。あわせて、浮体式洋上風力発電の案件形成目標についてもお願いいたします。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 洋上風力発電は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札の一つとして、第七次エネルギー基本計画にも明記したところでございます。政府として、二〇三〇年までに一千万キロワット、二〇四〇年までに三千万から四千五百万キロワットの案件形成目標を掲げ、これまでに約五百万キロワットの案件を創出しております。

 今後、二〇四〇年の目標を達成していくためには、洋上風力発電設備の設置エリアを、現在の領海から、広大な排他的経済水域に拡大する必要があることから、今国会に内閣府が中心となって法律案を提出する準備をしておるところでございます。

 その際、水深の深い海域に設置可能な浮体式洋上風力の開発が重要となってまいります。このため、グリーンイノベーション基金を活用し、世界でいまだ運転実績のない大型風車を用いた大規模浮体式実証を実施するなど、低コストに量産化するなどの技術の確立を目指してまいります。

 また、昨年三月には、国内の発電事業者によって構成される浮体式洋上風力技術研究組合、FLOWRAと呼んでいますが、こちら、FLOWRAが設立されまして、発電システム等の確立に向けた調査、研究開発や標準化、規格化といった課題への対応を進めていくこととしております。経産省としても、こうした産業界の取組を後押ししておりまして、今月には、グリーンイノベーション基金によるFLOWRAへの支援案件を採択、公表したところでございます。

 加えて、国内外から洋上風力関連産業への投資を促すためにも、政府が浮体式洋上風力発電に特化した目標を掲げることは重要であると考えておりまして、今後、策定に向けた検討を行ってまいりたいと考えております。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 まだまだ、開発段階で越えないといけない課題はたくさんあると思いますが、設置可能海域をEEZとした場合、洋上風力発電のポテンシャルは大変大きく、さらに、大量生産の技術、海底の深い場所での係留技術、遠洋での風の状況観測などの開発など、海洋立国日本ならではの技術を確立できれば、日本の産業振興にも大きな期待が持てると思っております。先ほど御答弁にもございましたように、既に浮体式洋上風力技術研究組合が組織されているとのことですが、政府としてもしっかりとバックアップをよろしくお願いいたします。

 次に、排他的経済水域における環境アセスメントについてお尋ねいたします。

 政府が排他的経済水域における案件形成の促進を後押しすることで、海洋立国である我が国において、浮体式洋上風力発電の普及が進み、環境と経済が好循環となることが期待されます。一方、環境保全の観点からは、沖合における生物多様性の保全に十分な配慮が必要となると思います。

 改正法における新たな制度では、EEZで実施される事業は、環境省が早期段階から文献調査や環境データを中心とする環境調査を実施することとされています。通常の環境アセスメントで事業者が実施する配慮書手続については、合理性の観点から不要とされています。

 そこで、新たに導入されるEEZにおける洋上風力発電の環境調査について、環境省がどのような文献調査を実施する方針であるか、環境配慮の在り方に対する浅尾環境大臣の御見解を伺います。

浅尾国務大臣 御質問ありがとうございます。

 洋上風力発電は、再エネ主力電源化に向けた切り札であり、今後更なる拡大推進には、沿岸だけでなく、EEZにおいても案件形成に取り組むことが必要であります。

 その際、御指摘の、環境影響を回避、軽減し、生物多様性の保全を始め、適切な環境配慮を行うことが重要であることから、環境大臣による海洋環境の保全の観点からの調査実施などを盛り込んだ法律案を今国会に提出することを検討しております。

 具体的には、EEZにおいて、政府が洋上風力発電設備の設置を募集する区域を指定する前に、環境省が海洋に生息する鳥類等の文献情報や環境データを中心に調査等を行い、環境保全の観点から開発を避けるべき区域の有無を取りまとめる方針であります。

 環境保全を図りつつ、EEZにおける洋上風力発電の導入が円滑に進むよう、しっかりと進めてまいりたいと考えております。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 洋上風力発電の実施による環境に関わる科学的知見は十分な蓄積がないため、不確実性に対応するために、環境影響を把握するモニタリングと迅速なデータの拡充が重要であるともお聞きしております。環境への影響が十分に配慮される制度設計となるよう、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、電気自動車の充電インフラについてお尋ねいたします。

 我が国は、二〇二〇年十月に、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言いたしました。我が国のCO2排出量のうち、自動車からの排出量は約一五%を占めることから、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けて、自動車分野の脱炭素化も大変重要です。我が国は、二〇二一年策定のグリーン成長戦略において、二〇三五年までに乗用車新車販売で電動車一〇〇%を掲げております。

 そこでお尋ねいたしますが、この新車販売で電動車一〇〇%というのは、国産乗用車のみならず、輸入乗用車も含めて一〇〇%にするという目標でしょうか。また、現状、新車の乗用車販売のうち、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車といった電動車それぞれの内訳はどれくらいで、二〇三五年までにそれぞれ何%を目標にしようとしているのか、政府の見解を求めます。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、二〇三五年までに乗用車新車販売で電動車一〇〇%という目標、これを掲げておりますが、この目標には輸入車の販売も含めております。

 次に、電動車の内訳でございますけれども、二〇二四年の乗用車新車販売台数に占めます電動車の比率、これは約五七%まで増加しております。そのうち、EVは二%、プラグインハイブリッドは一%、燃料電池自動車は〇・〇二%、ハイブリッド車が五四%などとなっております。

 他方で、この二〇三五年の電動車販売目標の内訳は定めておりません。これは、自動車分野のカーボンニュートラルに向けては、完全な技術はいまだ存在しておらず、我が国は特定の技術に限定しない多様な選択肢を追求していく方針としていることを踏まえたものでございます。

 経産省としましては、二〇三五年電動車目標の実現に向けまして、引き続き、EVなどの購入支援や充電インフラの整備など、総合的に取り組んでまいります。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 EV車は二%ということで、まだまだ価格が高いから購入に至らないということもあると思います。購入補助も考えているということだったので、販売の促進の方もどうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、欧州の自動車メーカーのEV化計画について伺います。

 欧州の自動車メーカーの中には、二〇三〇年までに全ての新車をEVにするという目標を掲げている自動車メーカーもあります。一方、世界各国でEV販売が鈍化しており、EVの普及を進めている欧州地域でもEVの販売が伸び悩んでおります。このため、二〇三〇年までに全ての新車をEVにするという目標を見直した欧州の自動車メーカーもございます。

 このようなEVシフトの見直しの現状について政府はどのように受け止めているのか、政府の考えをお伺いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、欧州の一部の自動車メーカーにおいてはEVの目標の見直しなどの動きがあることは承知しております。一方で、欧州などでは、EVの導入を推進する政策の方向性に大きな変更はなく、進展速度に変化はあるとしても、グローバルにはEVの普及自体は今後も進むものと認識しております。

 我が国は、EV、合成燃料、水素など多様な選択肢の追求を基本方針としているところ、今後市場が拡大するEVでも勝つべく、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 カーボンニュートラル達成のためには、先ほども御答弁にございましたように、多様な選択肢を追求しながらもEVもしっかり進めていくということですので、日本の技術力で製造コストの削減やユーザーの利便性向上を進めていただき、二〇三五年までに乗用車の新車販売で電動車一〇〇%の達成をできるようにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 続きまして、サービスエリア、パーキングエリアの充電インフラ整備状況について伺います。

 充電インフラ整備促進に向けた指針では、高速道路の急速充電について、インターチェンジ付近の高速道路外のEV充電器の活用含め、おおむね七十キロ以上間隔が空かないようにしつつ、ユーザーを限定しない形で充電器を配備するとされております。

 電気自動車の場合、渋滞により、充電器のあるサービスエリア、パーキングエリアに入ることができず、バッテリー残量が減少し、電欠の心配など不安を感じながら走行することや、充電器のあるサービスエリア、パーキングエリアに入ったとしても、充電口数が少ないことにより長時間充電待ちをすることもあると考えられ、必要な場所に必要な充電器を整備していくことが不可欠であると思います。

 そこで、この指針において設置間隔をおおむね七十キロ以上間隔が空かないようにという結論に至った経緯と理由、また、複数口対応の充電器設置の方向性についてお尋ねいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 高速道路におきましては、道路上で電欠を起こさないような間隔で充電器を整備することが重要だと考えております。その整備を計画的に進めていくため、政府として、整備間隔の目安として七十キロという数字をお示ししたところです。これは、電欠の不安が生じないように、比較的出力が低い充電器や車両などで三十分充電した場合に走行可能と見込まれる距離を想定して設定いたしました。

 今後の整備の方針ですけれども、充電ニーズが高い場所の待ち時間を短くしていくため、複数口に対応した充電器の整備を促していく方針でございます。具体的には、充電インフラ整備に関する補助制度におきまして、複数口に対応した充電器の補助上限額を高く設定しております。こうした取組を通じて、複数口に対応した充電器の整備を促してまいりたいと考えております。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 高速道路では、渋滞などで途中電欠になるリスクも増えますし、夏だと熱中症、冬だと凍死するリスクもあり、通常の想定だけでは不十分だと思っております。充電器と車側の問題もあると思いますけれども、短期間で急速充電できる施設というものが必要と思いますので、これからも、ユーザー側のストレスのないインフラ整備をどうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、電気自動車の充電速度について伺います。

 充電速度の向上には、電気自動車の充電能力の向上及び充電器の出力向上の両面での対応が必要になってくると思います。

 まず、自動車側の充電能力の現状としましては、経済産業省の資料によりますと、日本の自動車メーカーの電気自動車は充電能力が百五十キロワットのものが最大となっている一方で、韓国やドイツの自動車メーカーの電気自動車では、倍以上となる三百五十キロワットの電気自動車も販売されております。

 電気自動車側の、充電能力の現状としましては、同じ経済産業省の資料によりますと、急速充電器でも九十キロワット以下の出力の充電器が大半を占めており、百五十キロワット対応の充電器は一%未満となっております。

 また、充電インフラ整備促進に向けた指針においては百五十キロワットの急速充電器の整備を強化するとしておりますが、欧米では三百五十キロワットの充電器の設置も始まっております。電気自動車のユーザーからも、急速、速度が遅いという声もあり、電気自動車の普及のためには充電速度の向上が必要になってくると思います。

 そこで、充電速度の向上に向けて、三百五十キロ級の超高速充電を可能にするために、電気自動車側の対応、充電器側の対応、それぞれどのように支援をしていくのか、見解をお願いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、高出力の充電器は短時間で大容量の充電が可能でありまして、移動経路の途中での充電といったユーザーの利便性、これを向上させるためには重要だと考えております。他方で、こうした充電器は設置費用や電気料金といったコストが非常に高くなり、ユーザーの充電料金にも影響します。このため、ユーザーが利用しやすい最適な出力の充電器を整備していくことが重要だと考えております。

 こうした中で、経産省としましては、車両の充電性能、充電器の費用などを踏まえて、当面は百五十キロワット級の急速充電器の整備を強化していく方針としております。

 車両側におきましては、充電性能の向上にもつながる全固体電池の開発支援を行っているところでございますし、引き続き、EVなどの利便性向上、更なる普及に向けて取組を進めてまいりたいと考えております。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 ユーザーの利便性から考えますと、ガソリンスタンド並みのネットワークで急速充電できることが理想だと思います。充電事業のコスト問題、先ほどお答えにもありましたけれども、充電事業のコスト問題などありますけれども、EVの台数の増加と将来的な技術革新で解決していく部分もあると思いますので、充電設備の設置箇所の工夫と思い切ったインフラ整備も必要だと考えております。

 やはり、インフラが整わない以上、EVに乗り換えようという気もなかなか起こりにくいと思いますので、充電インフラ、早急な整備とともに、将来の配置計画等を国民と共有していくことも必要だと考えますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、農林水産省に関して質問してまいります。

 みどりの食料システム戦略についての質問です。昨年十二月の臨時国会におきましても質問させていただいた内容に続けて質問させていただきます。

 江藤大臣の所信の御発言にもありましたように、環境と調和の取れた食料システムの確立が基本法の理念として新たに位置づけられたとされております。この実現に向けて、化学肥料、化学農薬の使用低減や有機農業の拡大、環境負荷低減の取組の見える化などの実施をしていかれるとあります。その中でも、化学肥料、化学農薬の使用低減や有機農業を拡大していくためにポイントとなるのは耕畜連携と考えています。

 特に、この耕畜連携というのは、耕種農家と畜産農家の連携が不可欠ではありますが、実際にこの連携は積極的に進んでいくのでしょうか。耕畜連携の課題や解消について、農水省の御見解を伺います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 化学肥料使用量の低減のためには、国内資源の利用拡大を進めていく必要があり、このうち、家畜排せつ物を用いる堆肥につきましては、委員御指摘の耕畜連携が成否の鍵を握るということになっております。

 耕畜連携は、まずは近場でのマッチングを図ることが重要であり、農林水産省では、地域ごとに堆肥の供給者リストをきめ細やかに公表することなどによりまして、近隣同士の耕畜連携を後押ししております。

 一方、畜産地帯と耕種地帯が離れている場合には、広域流通での連携が必要となります。このため、全国各地で、畜産農家と耕種農家、そして両者を結ぶ肥料製造事業者も参集したマッチングイベントを開催するとともに、広域流通に適した堆肥のペレット化に必要な施設の整備などに対する支援を実施してまいります。

林(佑)分科員 この連携については、農水省においては、マッチングプラットフォームを形成して、登録したい方、そして使用したい方が流通できるように、連携のマッチングの需要者と需要量などの公表もされております。マッチングプラットフォームの形成を含めて毎年アップデートも進んでおり、大変すばらしい取組であると思いますけれども、今後、堆肥の質についても求めていく必要性があるのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

関村政府参考人 お答え申し上げます。

 耕畜連携を更に推進するには、耕種側のニーズに合った質の高い堆肥を生産することが重要だと考えております。

 このため、農林水産省では、堆肥の高品質化に必要な攪拌機等を備えた堆肥化施設の整備、耕種農家が散布しやすいペレット化に必要な機械の導入、窒素やリンの含有量など堆肥の成分分析といった、ソフト、ハードの両面から支援を行っているところであります。

 引き続き、こうした取組への支援を通じまして、堆肥の品質向上や利用の拡大を図ってまいります。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 更なる耕畜連携が進み、畜産農家と耕種農家がウィン・ウィンな関係を構築して、循環型農業が進んでいくことを期待申し上げます。よろしくお願いします。

 続きまして、鳥獣被害についての質問に移ります。

 鳥獣による人身や農作物等への被害が多発しております。私の地元和歌山県における農作物の鳥獣被害額については、多くの支援策や地域の皆様の御努力の結果、減少傾向にあるものの、鳥獣被害は、一たび発生すると、営農意欲の減退や耕作放棄、離農増加など、被害額として数字に表れる以上に深刻な影響を及ぼすと言われております。

 令和五年度の和歌山県における被害割合は、果樹の生産が盛んな地域でもあり、果樹七六%、野菜一二%、水稲六%となっております。また、鳥獣の種類別に見ますと、被害額の大きいイノシシや鹿については前年並みの水準となっています。市長の定例会見によりますと、和歌山市においては、令和六年十一月までの被害相談件数は三百八十五件に及んでおりまして、今年度は特にイノシシの捕獲頭数が増えている状況です。

 一方、人身や農作物等の被害を及ぼすとはいえ、命は大変貴いものであり、地元では捕獲した後の対処に苦慮しているという声もあり、捕獲後の対処における制度的な課題も多くあると思っております。地元和歌山県では、狩猟者が、法で定められた方法で、捕獲後、処理施設まで搬出したり、各自治体の指導の下、処分したりすることもあるようです。この際、その処分費の負担が課題でもあるとお聞きしております。このような負担が重くのしかかる結果、狩猟の担い手不足につながっているのではないでしょうか。

 このような捕獲後の諸経費について、狩猟の担い手不足を解消するために、国としてどのような支援を行っているのでしょうか。

神田政府参考人 お答えいたします。

 鳥獣保護管理法や、同法に基づく国の基本指針によりまして、捕獲した野生鳥獣は、持ち帰って適切に処理するか、あるいは、生態系に影響を与えないような適切な方法で埋設を行うこととされております。

 このため、鳥獣被害防止総合対策交付金におきましては、焼却処理施設や減容化施設、ジビエ処理施設の整備への支援のほか、捕獲者への捕獲活動経費に対する国の支援単価につきましても、埋設、焼却処理、ジビエ処理施設への搬入に係る捕獲者の負担等も勘案して、それぞれ支援単価に差を設けております。

 農村地域における高齢化や人口減少の下で、鳥獣被害対策実施隊員等の捕獲の担い手の確保は喫緊の課題であると認識しておりまして、被害防止のための捕獲者につきましては、狩猟税の減免措置や、鳥獣被害防止特別措置法に基づいて、猟銃所持の許可更新時に技能講習を免除するといった制度的な負担軽減措置に加えまして、狩猟免許の取得に向けた研修会、講習会の開催や捕獲経験の浅い実施隊員へのOJT研修への支援等を行っているところでございます。

 引き続き、環境省とも連携しながら、捕獲の担い手の確保に努めてまいりたいと考えております。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 様々な、狩猟者に負担軽減措置をしてくださっているということで、引き続き支援策の充実をよろしくお願いいたします。

 続きまして、農作業の安全対策について質問いたします。

 日本農業新聞にも掲載がございましたけれども、農水省によると、令和五年は合計三百三件の農作業の事故の報告があり、内訳は、死亡が百六件、重傷が八十八件、軽傷、その他が百九件となっております。例年と同様、五月や九月などの農繁期に多くの事故報告があり、情報収集されていない事故を含め、多くの事故がこの時期に集中しているものと考えられます。

 今後の農作業の事故防止に関してですけれども、農水省は今月二月までを農作業安全研修実施強化期間としていると伺っております。これは、より多くの農業者に対して研修を実施した都道府県の方が農作業事故における死亡者数が大きく減少しているという分析結果を受けて、農業者が受講しやすい農閑期に重点的に研修を推進する取組であると承知しております。研修会開催に加え、ホームページ等での啓発も行われているようですけれども、多様な手法による効果的な啓発が必要ではないでしょうか。

 農作業安全総合対策推進の予算は、令和六年度は増額されたものの、僅か二千五百万円です。令和七年度の概算要求では六千六百万円となっておりますけれども、今後どのような取組を進めていくのか、現状認識と併せて、事故防止対策、農作業安全対策について、農水省としての御見解を伺います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 毎年、農作業事故が多く発生している中で、農作業安全対策の強化は喫緊の課題であります。

 農作業事故は農繁期に集中することから、今年度から、農繁期を迎える前の十二月から二月を農作業安全研修実施強化期間として設定しております。ポスター等で広く参加を呼びかけ、今年度は、昨年度の三倍以上となります約十六万人の研修参加者が予定されているところであります。

 また、春にはトラクター関係、夏には熱中症、秋には収穫機関係の事故が増加する傾向にあることから、毎月、今まさに注意すべき作業や安全な作業方法などを取りまとめまして、全国に約七千名育成した農作業安全に関する指導者やホームページ、アプリなどを通じて農業者にお示しをしているところであります。これらは、毎月、農業関係の専門紙にも掲載いただいているところであります。

 安全対策の予算は、委員御指摘の農作業安全総合対策推進事業として、令和六年度二千五百万円に加えまして、令和六年度補正予算におきまして、農業機械の安全教育実施体制緊急整備事業として三千五百万円を措置したところでありまして、充実を図ってきているところではありますけれども、これら予算を通じまして、例えば、座学だけではなく実技の面においても農業機械の安全教育体制を全国に整備していく、こういったことを引き続き取り組むことによりまして、農作業安全対策を積極的に推進してまいります。

林(佑)分科員 ありがとうございました。

 ポスターなどいろいろな周知方法によって、昨年と比べて三倍の十六万人が受講したということで、どうもありがとうございます。

 これからも、農作業安全対策の周知を徹底して、農作業、ゼロをしていけるように、私も後押ししてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

小林主査 これにて林佑美君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内分科員 川内でございます。

 尊敬する浅尾大臣とこうして相まみえることができまして、心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。小林委員長の御指導の下、しっかりと質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、実は、大臣、私の選挙区じゃないんですけれども、種子島のおばあちゃまから電話が昨年末ございまして、おうちが浄化槽らしいんですけれども、浄化槽の点検に業者の方が年に六回、二か月に一遍来る。年末に六回分、五万円請求されるんだと。そのおばあちゃんは、割といろいろなことを注意深く見ていらっしゃる方みたいで、その点検に来た業者の方が何をしているんだろうと見ていたら、ほとんど何もしないで帰っていく、それで五万円はあんまりじゃないかと。一か月分の年金がほとんどそれで持っていかれる。これは一体どういうことだと大変なお叱りをいただきまして、じゃ、ちょっと環境省さんに聞いてみますねということで、今日この機会をいただいたわけでございます。

 それで、私も浄化槽法とか浄化槽法の施行規則とか様々自分なりに勉強してみたんですけれども、浄化槽というのは、まず、四か月に一遍以上点検するようにということが書いてあって、最低でも年に三回点検しなさいということになっているみたいなんですけれども、ただし、必要がある場合には三回以上点検してもいいよということが施行規則に書いてあるということで。私、そのおばちゃんが言うことが正しいとするならば、ほとんど何もしないで帰っていって、業者の方が点検する場合にはお金を取るわけで、ほとんど何もしないで帰っていってお金を取るというのは、これは法令上問題があるのではないかというふうに思っておりまして。

 まず、確認なんですけれども、必要がないにもかかわらず保守点検と称して浄化槽の設置者から料金を徴収するという行為は、浄化槽法上の施行規則に違反するのではないか、そこからちょっと確認をさせていただきたいというふうに思います。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、浄化槽の保守点検回数につきましては、環境省の浄化槽法施行規則第六条におきまして、最低限必要な保守点検の回数が規定されているところでございまして、この回数を超えて法令に定める保守点検を行うこと自体は、この施行規則の規定に違反するものではないと考えております。

 ただ、先ほど来御指摘いただきましたとおり、保守点検に来て何もせずに帰るということにつきましては、まず、浄化槽法第八条におきましては、浄化槽の保守点検は、法令で定める技術上の基準に従って行わなければならない、このように規定されておりますので、仮に保守点検と称して何もせずに帰るような場合には、これは浄化槽法違反のおそれが高い、このように私どもとしては考えております。

川内分科員 そこで、質問なんですけれども、私も、鹿児島県の浄化槽の点検の状況についてはいろいろな人に聞いて、鹿児島県の場合は、結構、何かしょっちゅう点検に行っているみたいなんですよ。だけれども、ほかの都道府県についてはちょっと状況がよく分からないし、料金もよく分からないんですね。その種子島の私に電話をくれたおばちゃんの例でいうと、年に六回で五万円ですから一回約八千円ですよ、八千円。結構な値段じゃないですか、これ。

 全国の状況についてちょっと知りたいんですけれども、環境省さんとしては、全国で保守点検について、保守点検回数がどのくらい行われていて、料金がどのくらい取られているのかということについて把握をしていらっしゃいますか。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 保守点検の全国の実態につきまして、この実態把握につきましては、平成二十八年に報告書が取りまとめられました今後の浄化槽の在り方に関する懇談会、この議論に際しまして、年間の保守点検回数と維持管理費用の調査をさせていただいておりまして、その調査結果を踏まえた議論がなされているところでございます。この中で、保守点検の頻度の増加に応じて費用負担が増加するという事実は認められなかったとか、こうしたいろいろな分析をさせていただいているところでございます。

 ただ、これは、平成二十八年のこの懇談会の議論の取りまとめに際して実態把握をさせていただいたものでございまして、その後、直近では、保守点検については、保守点検がどのくらいされているのかということについては私ども調査させていただいておりますけれども、それぞれの地域で何回実際にされておられるのかとか、今御指摘いただいた点につきましては、そこは、直近では今把握はまだできておりませんので、ただいまの御指摘も踏まえまして、改めて、まず全国の保守点検の実施状況等の更なる実態把握について、調査の方法も含めて、改めて御検討させていただきたいと考えております。

川内分科員 是非お願いしたいと思います。

 ちなみに、その平成二十八年の実態把握の調査においては、料金などもその実態把握の中で把握をされていらっしゃるのでございましょうか。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 正確な、調査の時点については平成二十八年ということではなくて、今申し上げましたのは、この報告書を取りまとめたのが平成二十八年でございますので、この取りまとめ自身の議論は何年かにわたってやらせていただいております。その中での調査もさせていただいているということでございます。

 この調査の中で、保守点検の回数がそれぞれの都道府県で何回ぐらい平均されておられるのかとか、実際の保守点検費用がどうであったのか、維持管理費用は総体としてどうだったのか、こうした調査をさせていただいているところでございます。

川内分科員 ごめんなさい。費用も調査をしていたということでいいですかね。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 保守点検で実際に幾らかかっているのかとか、こういう調査もさせていただいておりまして、この平成二十八年の報告書の中でも、参考資料としてその結果は記載させていただいております。例えば、保守点検にかかる費用については、このときの報告書では、全国平均で一万六千九百三十一円だった、このように記載されているところでございます。

川内分科員 それは年間ということでございましょうか。

角倉政府参考人 お答え申し上げます。

 年間でございます。

川内分科員 そうすると、この種子島のおばちゃんのところはめちゃめちゃ高いじゃないかみたいな話になるので、やはり、ちょっともう一回、ここで一回御調査をいただく必要があると思うし。

 先ほど、技術基準に適合するようにというふうに教えていただいたんですけれども、施行規則によれば、駆動装置又はポンプ設備の作動状況の点検及び消毒剤の補給は、必要に応じて行うものとすると書いてあって。年三回以上行う場合は、まあ、ポンプなんというのはそうしょっちゅう壊れるものじゃないでしょうし、消毒剤の補給というのも、そんなにしょっちゅうしなければならないものでもないだろうというふうに思うので。

 情報の非対称性というか、事業者さんと浄化槽を設置しているおうちの方との間には大変な情報の非対称性があるので、契約するに当たって、いやいや、これはもう年間何回もやらなきゃいけないんですよと言われると、ああ、そうですかみたいな形で判こを押しちゃうみたいなこともあるんじゃないかなというふうに思うので。

 ちょっとこの辺については、しっかり実態調査をした上で、また今後、どういうふうに、これは多分、大臣、種子島のおばちゃんの例でいうと、一万六千円と五万円の開きって三万四千円もあるわけですよね。全国的に、じゃ、それはどういう形でやっているのかということが、ちゃんと調べて、もしかしたら大変な金額が余計に保守点検と称して取られているということにもなるかもしれないし。まだ分からないですよ、分からないですけれども。

 だから、そういう意味では、しっかりと環境省としてもお取り組みをいただきたいというふうに思いますが、大臣として、ちゃんとやるからというふうにおっしゃっていただきたいと思います。

浅尾国務大臣 川内委員には大変重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 今事務方の方からも答弁させていただきましたけれども、御指摘のとおり、この種子島の事例と全国平均とはかなりの乖離があるというのはそのとおりだというふうに思っておりますので、平成二十八年の取りまとめから時間も経過していることから、今後、まずは全国の保守点検の実施状況等の実態把握について、調査の方法をしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。

川内分科員 じゃ、お願いいたします。

 次に、水俣病のことに関してお尋ねをさせていただきたいと思いますが、令和七年度の予算案の中では、水俣病の、特に離島から治療に通う人々、水俣病被害者の皆さんが、離島からの交通費もかかるし大変なんだよという声が物すごく多くあって、今まで離島の加算というものをつけていただいていたわけですが、それを増やしてくださいよ、もうちょっと厚めにお願いしますよというような御要望があったわけですが、この離島加算について、令和七年度の予算案の中ではどのような反映ぶりになっているかということをまず教えていただきたいと思います。

前田政府参考人 お答えいたします。

 昨年七月に行われました伊藤前大臣と水俣病関係団体の皆様との懇談の場においていただいた御意見等を踏まえまして、令和七年度予算案におきまして、離島加算を現在の月額である千円から二倍の二千円に増額をすることとしてございます。

 以上です。

川内分科員 いろいろな物の値段が異常な高騰を見せておりますし、水俣病被害者の方々で離島に住まう方々というのは、地方は、大臣、公共交通機関がもうないんですよね、ほとんど。そうすると、親戚の若い子に頼んで車を運転してもらって、フェリーに乗って連れていってもらうとか、あるいはもう一晩泊まらなきゃいけないみたいなこともあって、物すごくお金がかかるんですよ。そうすると、千円を二千円にした、倍にしたぞというふうに今おっしゃられたわけですが、それではとてもとてもという声もあるんですね。

 だから、地域の声に、被害者の皆さんの声に十分に今後耳を傾けていただきたいというふうに思いますし、大臣、五月にはまた慰霊式があります。その慰霊式に御出席をいただくことはもちろんでございますし、十分に時間を取って、みんなの意見をよく聞いて施策に反映させていかなければならないというふうに私としては思いますが、大臣としてのお考えをお聞かせいただけますか。

浅尾国務大臣 二つ御質問いただいたということで、まずは、五月一日に熊本県水俣市で開催予定の水俣病犠牲者慰霊式については、国会等、諸般の事情が許せば参列、出席したいと考えております。

 その際は、慰霊式と併せて行われる水俣病関係団体の皆さんとの懇談について、昨年の反省も踏まえ、参加者の声を十分にお聞きすることができるよう、適切な時間を確保するようにしたいと考えております。

 あわせて、今、離島加算、先ほど事務方から御答弁させていただきました、千円から二倍の二千円に増額することとしておりますが、加えて、令和七年度の予算案と令和六年度の補正予算においては、医療、福祉、地域づくり、情報発信等や水俣病に関する総合的な研究の推進に計十七億円を計上しており、今年度と比べると約十億円の増となっております。

 引き続き、関係団体や皆様との意見交換を行いながら、水俣病対策の前進に取り組んでまいりたいと考えております。

 あわせて、離島加算の金額については、離島加算が設けられた経緯や、離島加算がない方々とのバランス等を総合的に勘案したものであり、御理解がいただけるよう、事務レベルの意見交換等を通じて丁寧に説明していきたいというふうに考えております。

川内分科員 ほかとの兼ね合いもあることは重々承知をしておりますが、ほかの方々も含めて、みんなが安心して、大分高齢化もしておりますし、安心して生活できる環境というものをつくることが、これは、裁判によれば、国にも責任があるよというふうに判決で判示をされておりますので、是非ともその辺、私どもも協力をさせていただきますので、よくよくお考えをいただければというふうにお願いをしておきたいというふうに思います。

 続いて、浄化槽もそうだし、水俣病も公衆衛生、社会環境の向上というものにつながるわけでございますが、今、私ども国会で取り上げております高額療養費の問題、今日、厚労省にも来ていただいておりますので、高額療養費の上限額引上げの問題について聞かせていただきたいというふうに思います。

 高額療養費の上限額を引き上げるという問題ですが、一般的に、経済学的には、需要と供給で、物の値段が上がれば需要は減退する、物の値段が下がれば需要は増えるというのが経済学的なごくごく一般的な、基本的な考え方なわけですけれども、そういうことでいうと、窓口負担、医療負担が、自費負担が増えれば、これは病院への受診、受療行動は減退するという理解でよろしいんでしょうか。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、受診の都度支払いが生じます窓口負担割合を見直した場合と、今回の高額療養費の負担限度額を見直した場合では、その影響が異なるのではないかといった指摘もあり、一概に申し上げることは困難であると考えております。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、患者負担と受診行動に一定の関係があると結論づける調査研究があることは承知してございます。

 高額療養費制度の見直しについて申し上げれば、例えば平成二十九年に七十歳以上の外来特例の見直しを行いましたが、その際にはマクロベースでの受診率への影響は観測されてございません。

 他方で、今回の見直しが実際の患者の方々の受診行動にどういう影響があるかについては、その分析方法も含めて検討する必要があると考えているところでございます。

川内分科員 だから、大臣は所管大臣じゃないから発言を求めませんけれども、どうなるか分からぬけれども取りあえず引き上げますわというのが、今回の高額療養費の上限額引上げの問題なんですね。一概には申し上げられないとか、どうなるかよく分かりませんけれどもみたいな御発言をされている。でも、厚生労働省科学研究費補助金、さっき、中間の中で発言で出てきましたけれども、厚労科研費補助金で研究者に研究していただいた研究報告の中では、負担が増えれば当然受診は抑制されるということが明確に書いてございますし、特に、低所得者あるいは子供たちにその影響が大きく出るということがその科研費補助金の報告書に書いてあることを知っていましたか。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 科研費の中でも、子供の医療に関する影響ということで、受診時の負担の違いによってどういう影響があるかという研究があるということは承知しているところでございます。

川内分科員 だから、大臣も、閣議の中で御発言いただきたいんですよ。

 例えば、二点、ちょっと事実確認をさせていただきますけれども、今回政府は多数回該当は据え置くことにしたんだ、修正案を作りましたよとおっしゃっていらっしゃるんですが、例えば、長期療養者で多数回該当に現在当たっていた方でも、保険者が替わった場合には多数回該当を外れる、リセットされてしまうということでよろしいですか。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、同じ保険者の場合につきましては、一年間の過去の中で何回多数回該当があったかということによりまして自己負担限度額が減少する、いわゆる多数回該当の制度がございますが、御指摘のとおり、高額療養費制度における多数回該当につきましては、就職あるいは退職などで加入する保険者が替わった、こういった場合には、新たに加入した保険者において改めて多数回該当となるかが判定されるということでございます。

川内分科員 もう一点確認させていただきたいと思いますが、同じく高額療養費制度の中での長期療養者の方で、多数回該当に当たっていたけれども、今おっしゃっていただいたように、今、退職とか転職とかとおっしゃられたわけですが、高齢者の方々の中で、七十五歳を境にして後期高齢者医療保険制度に移行するわけですが、後期高齢者医療保険制度に移行した皆さん方も多数回該当を外れる、リセットされるという理解でよろしいですか。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、同じ制度にとどまっている限りにおいては多数回該当のカウントというのはそのまま引き継がれます。過去一年間に何回だったかということによって上限額が下がります。

 また、この多数回該当については、高額療養費制度における多数回該当について加入する保険者が変わった場合、改めて判定されるということになりますので、後期高齢者医療制度に移行する場合につきましても、改めて多数回該当となるかが判定されるということになります。

川内分科員 昨日、おとといにかけて、研究者の方が、今回の政府案が実際に実施をされると多数回該当を外れる方が八万人ぐらい出てくるのではないかとか、あるいは、上限額が引き上がるわけですから、今までは高額療養費制度の対象になっていたけれども、上限額が引き上がることによって高額療養費制度の対象にならない方々が百万人以上出てくるのではないかとか、そういう、御自身のこれまでの研究の成果から推測というか類推をされていらっしゃいますが、厚生労働省としては、社保審に提出した資料、あるいは厚生労働省としての研究などの中で、そのような、今回の高額療養費制度の見直しを施行した場合にどのくらいの人々が影響を受けるのかということについて、数字を持っておらないということでよろしいですか。

榊原政府参考人 御指摘の報道については私どもも承知しておりますが、具体的に私どもの方で何か計算したとかそういったことは、私の承知している限りにおいてはございません。

川内分科員 私の持ち時間もそろそろ終わりなんですけれども、大臣は所管大臣じゃないけれども、私は、大臣とはずっと、途中から党は違うことになってしまいましたけれども、ずっと一緒にやってきた同志、仲間であるというふうに思っているんですけれども、閣議の中では所管じゃないことについても発言できるし、発言できるというのは、所管でないことについても閣議請議できるというのが従来の政府の見解でございます。

 したがって、今、大臣にお聞きいただいたとおり、この上限額見直しはどうなるか分かりませんよ、実際に施行した後もどのぐらいの人が影響を受けるかも分かりませんよ、だけれども、取りあえずやらせてくださいよというのは、政府として余りにも乱暴だというふうに思うんですよ。だから、もうちょっと、ここで一旦立ち止まって。

 私たちも、これは誤解があるんですけれども、永遠に凍結しろなんて全然言っていないですよ。医療費が増大していくことについては抑えなければならないということは、みんなの共通理解である。

 だから、この前、テレビのニュースでやっていましたけれども、日本は入院日数がえらい長いんです、諸外国に比べて。二十何日ありますと。それを一日、平均の入院日数を一日減らすだけで、七千億円、医療費が節約できますという研究者の方が御発言、テレビのニュースの中で言っていることですから、それこそ本当かどうかは分かりません、私も素人だし。だけれども、そういう研究もあります。あるいは、国会でもさんざっぱら言われていますけれども、OTC薬について見直しをしようとか、様々、医療費の見直しの方法はある。

 高額療養費制度というのは、最後の最後の、最も大事にしなければならない制度であるとするならば、大臣も、表で言ってくれなんて言わないですよ、閣議は非公開ですから、閣議の中で、今日、川内が言ったことは十分頭に入れて、踏まえて発言するからというぐらい、ちょっと最後、御発言をいただきたいんですけれども、どんなもんですか。

浅尾国務大臣 もうさんざん所管外ということを言っていただいておりますので、基本的には所管外のことでありますけれども、川内先生の問題意識、今の質疑を聞いて、よく理解をさせていただきました。

 特に、需要曲線、供給曲線のところは、命に関わるところは、多分、需要曲線が立っているというか真っ平らというふうに考えた方がいいんだろうというふうに思いますので、そこが、例えば水俣病は所管の方でありますけれども、そういった中で弱い立場の人にしっかりと寄り添っていくということが少なくとも水俣病については大事だというふうに思っておりますので、これをもって答弁とさせていただきたいと思います。

川内分科員 終わります。ありがとうございました。

小林主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

 次に、松下玲子君。

松下分科員 立憲民主党の松下玲子です。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、まず冒頭、予算委員会第六分科会の質問を作るに当たりまして、環境省への質問ということで、そもそも環境省はどんな役割を担っているのかな、どんな仕事をしているのかなというところを自分で調べてみました。

 まず、今はやりじゃないですけれども、AIに聞いてみました。すると、環境省の役割は、地球環境の保全、公害の防止、自然環境の保護などを目的として、環境行政の中心的役割を担う中央省庁ですという答えが出てきました。私、この中でも特に公害の防止について今日は質問をしたいと思って、準備をしてまいりました。

 そもそも環境省は、その前身の環境庁が、歴史を見てみますと、環境庁の設立の前ですね、歴史は、まさに日本の環境問題、公害の歴史であるというふうに思いました。

 一八九一年の足尾銅山鉱毒問題の国会の提起から始まりまして、明治時代の近代化政策とともに始まった大気汚染の歴史がございます。そして戦後、特に戦後日本の高度経済成長を支える、まさに経済活動が環境悪化を引き起こした、公害を引き起こしたという歴史的な背景の中で、一九七一年に環境庁が設立をされています。もうこちらにいらっしゃる皆様の前では釈迦に説法でございますが、各省庁の公害行政を一本化する環境庁が一九七一年に発足し、自然環境保全を全面的に扱う機関となっているんですね。

 ここでちょっと、また改めまして、環境省五十年史というのを拝見させていただきました。そこの巻頭言を紹介させてください。そこには、環境庁・環境省が、環境の保全こそは、行政が注力しないといけない最も国民に密接した政策課題だと信じて懸命に取り組んできたことが浮かび上がればいいなあと心から思います、力及ばずということはあるにせよ、いつも人々に寄り添うという気持ちだけは持ち続けたいと思いますというのが、環境庁一期生、元環境事務次官の西尾さんが巻頭言に書かれている言葉でございます。

 冒頭紹介させていただきましたのは、このいつも人々に寄り添うという気持ちを持ち続けていただきながら環境行政を担っていただきたいという思いで、以下、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今日は、公害の防止という視点から、有機フッ素化合物、PFASについてと福島原発事故について、また地球温暖化対策計画について、順に御質問をしたいと思います。

 まず、有機フッ素化合物、PFASについてです。

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、化審法で、製造と使用、輸入が禁止されているPFOSとPFOAに関して何点かお伺いいたします。

 私は、前職、武蔵野市長時代に、PFAS対策に自治体の長として取り組んでまいりました。武蔵野市というのは東京都の多摩地域の自治体なんですけれども、安全な水を安定的に供給する水道事業者として独自で水道事業を営んでおりますので、その立場から様々対策を行う中で、特に二〇二二年度から有機フッ素化合物、PFOS、PFOAの監視強化のため、測定回数を増やし、市民に検査結果も公表しています。

 また、地元の東京都多摩地域では、地下水がPFASに汚染されていることを知った市民がつながり、市民団体として、情報共有や実態把握、改善に向けた行政の行動を求めて活動もしています。武蔵野市と小金井の市議会では、PFASへの対策の強化を求める意見書も可決されています。

 私自身、武蔵野市長退任後も、地元の市民団体の皆様の活動や、その活動の中で、映画の上映会やトーク会、勉強会にも共に参加をするなどして、PFASへの対策に関心を持って取り組んでまいりました。

 そこで、まず一問目です。

 昨年十二月二十四日、専門家会議で、PFASのうちPFOSとPFOAについて、水道法上の水質基準に引き上げ、自治体や水道事業者に、定期的な水質検査と、基準値を超えた場合の改善を法律で義務づける方針を決めています。この専門家の会議で決まった方針は、今後どういった過程を経て法改正をするのか、スケジュールを教えていただきたいと思います。

松本(啓)政府参考人 御質問ありがとうございます。

 委員御指摘の、昨年十二月二十四日の専門家会議の後ですが、本年二月六日に開催した審議会におきまして、水道のPFOS及びPFOAの暫定目標値五十ナノグラム・パー・リットル、これにつきまして、水質検査、そして遵守義務のある水質基準への引上げ等の議論がなされ、おおむね了承されました。

 この方針について、昨日二月二十六日から三十日間のパブリックコメントの手続を開始したところでございます。

 パブリックコメントも踏まえまして、今春を目途に方向性を取りまとめて、その後、水道法に基づく省令、法律ではなくて、省令の改正を予定しているところでございます。

 以上です。

松下分科員 昨日からパブコメを取り始められて、私は法改正と言いましたが、省令を変える、なので、議会の議決は必要なく変えて、今後、水質基準にしていくということだと思いました。

 それに際して、現在の暫定的目標値をそのまま水質基準に用いること、五十ナノグラム・パー・リットルを、そのまま数字を維持しているその経緯を教えてください。

松本(啓)政府参考人 現在のPFOS及びPFOAの暫定目標値五十ナノグラム・パー・リットルですが、これは、令和二年頃の検討当時は、国際的にも評価が大きく動いている時期でございまして、毒性学的に明確な数値を設定することが困難なときでした。そのような中で、当時の評価の中で妥当と考えられる文献等を参考に、有識者会議での議論を経て、令和二年四月に、暫定目標値五十ナノグラム・パー・リットルが設定されました。暫定目標値という趣旨でございます。

 その後、令和五年から、食品等から摂取するものに関する健康影響の評価を独立した立場で科学的に実施します内閣府食品安全委員会におきまして、各国、各機関が参照した知見も踏まえて評価がなされて、昨年六月に、PFASに関する食品健康影響評価、これが取りまとめられました。

 この評価書におきまして、食品安全委員会により示された耐容一日摂取量というのがございます。これは、耐容一日摂取量と申しますのは、一生涯にわたって人が摂取し続けても健康への悪影響が出ないと推定される体重一キログラム当たりの一日摂取量のことでございますが、これに基づきまして水道水の基準値について検討しましたところ、結果として、現行の暫定目標値である五十ナノグラム・パー・リットルと同じ値となり、この値をもって水道基準へ引き上げるということが、二月六日の審議会において了承されたところでございます。

 引き続き、今春を目途に方向性を取りまとめるべく、検討を進めてまいります。

 以上です。

松下分科員 このPFASの対策について取り組んでいる市民の皆様の間では、暫定目標値をそのまま水質基準に用いる、五十ナノグラム・パー・リットルでは、これはちょっと甘いんじゃないかという声も聞こえてきます。昨日からの始まったパブコメ、三十日間ということで取られると今伺いましたので、是非、そのパブコメの中でもどういった意見が出てくるかを見ていただきたいと思います。

 PFASとPFOAは、人の健康への影響について、これは環境省が作成しているPFAS、PFOAに関するQアンドA集に記載があります。これは、人においては、健康に影響があると。コレステロール値の上昇、発がん、免疫系との関連が報告されています。しかし、どの程度の量が体に入ると影響が出るのかについて十分な知見はありませんとのことです。

 今回の定められる基準五十が、本当に人体に、健康に影響、健康被害を与えないのか、その辺りについては今後も引き続き研究を重ねていただきたいと思いますし、国際的に様々な知見に基づく基準値等の検討というのが進められていると思います。国内において、PFASとPFOAの摂取が主たる要因と見られる個人の健康被害が発生したという事例は現在のところ確認されてはいないようですが、これは、公害に値する、今後被害が発生した場合には公害にも値するというふうに私は考えますので、是非、この水質基準の値についても引き続き研究を重ねていただきたいと思います。

 そして、次、現在では製造や使用が禁止されているPFOSとPFOAは、様々な物質、土や水に含まれている事例が多々見られます。その実態調査や対策など、現状では自治体に任されておりますが、環境省がこれはやはりPFAS、PFOAの対策本部となって、健康被害防止に向けてより積極的に取り組むべきと考えますが、いかがですか。

浅尾国務大臣 PFAS対策については、地域の方々の不安の声などを真摯に受け止め、科学的知見を踏まえた対応を着実に進めてまいります。

 公共用水域や地下水におけるPFOS等については、調査、対策を一貫して行うことができる地方自治体が、地域の実情に応じて、調査地点を選定し、調査を進めるとともに、関係者と調整しつつ対応を検討することが効果的と考えています。

 また、PFOS等の土壌への吸着や地下水への移行等に係る科学的知見は十分得られていないと承知しておりますけれども、環境省では、令和五年中に、土壌中のPFOS等の溶出量及び含有量に関する暫定的な測定方法を自治体に周知いたしました。

 さらに、令和六年度補正予算において、水や土壌に含まれるPFOS等の対策技術の実証事業を実施することとしており、効果的、効率的な対策技術に関する知見の充実を進めてまいります。

 環境省としては、こうした取組を通じて、得られた知見を地方自治体に提供するなど、引き続き、技術的助言を通じて、地域の取組を支援してまいりたいと考えております。

 また、健康リスク低減の観点からは、飲用摂取を防止することが重要であり、水道におけるPFOS、PFOAの水質基準への引上げについて、先ほど申し上げましたように、今春を目途に方向性を取りまとめるべく、検討を進めてまいりたいと考えております。

松下分科員 PFAS対策は、国による広域的な対応が不可欠であると私は考えます。水質調査、除去費用に関する、今大臣から、地域の実情をよく知っている自治体がやるのが大事だ、もちろんそれはそのとおりだと思うんですけれども、財政的支援制度というのがこれは創設されることを私は望みます。そして、PFASの土壌、農畜産物等への影響を明らかにして必要な対策を進めることや、また、PFASの許容摂取量の検討を継続して行っていただきたいと思います。

 次に、福島原発事故に関連して御質問したいと思います。

 今年二月十八日に閣議決定された第七次エネルギー基本計画、東京電力福島第一原子力発電所事故、以下、福島原発事故と言います、その歩みの章があります。その中には、東日本大震災及び福島原発事故から間もなく十四年が経過しますが、事故の経験、反省と教訓を肝に銘じてエネルギー政策を進めていくことがエネルギー政策の原点である、安全神話に陥って悲惨な事態を防ぐことができなかったという反省を一時たりとも忘れてはならないと。

 この反省と教訓を肝に銘じているならば、危険な原発をなくしていくこと、エネルギー政策を転換すること、せめて、これまでの計画に掲げていた、原子力依存度の可能な限りの低減を目指していくべきだと私は考えます。

 これまでの原発は安全が大前提、事故が起きないことが大前提でしたが、悲惨な事故は起きてしまいました。そして、地震と津波による電源喪失によって原発は冷却機能を失ってしまいました。大気中に大量の放射性物質がまかれ、今もなお除染作業が続いています。一日も早い福島の復興を願い、原発事故に関して、以下何点か御質問をいたします。

 まず初めに、福島原発事故の総被害額を教えてください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の総被害額について、政府として定義したものはございませんが、賠償、除染、中間貯蔵に関する費用の見通しにつきましては、令和五年十二月の原子力災害対策本部決定におきまして、一定の蓋然性を有する試算として約十五・四兆円とお示しをしております。

 また、廃炉に必要な費用の見通しにつきましては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による有識者へのヒアリング等に基づきまして、一定の蓋然性を持った金額として約八兆円とお示しをしているところでございます。

松下分科員 これはやはり、事故の総被害額を政府としてもしっかりと押さえるべきだと私は思います。今のお答え、足すと二十三・四兆円になりますね。

 原発を止めた裁判官として、退官後も原発の本質と地震による原発の危険性を知ってもらおうと、沈黙を破り正義のために活動している樋口英明さんは、東京電力は、巨大企業であり、その売上げが年間約五兆円、そして利益は売上額の約五%で年二千五百億円、つまり、百年分の利益が二十五兆円であること。この福島原発の経済的損失は、健康被害が一切なく、今の御答弁の中にも健康被害についての金額は入っていなかったと思います、その賠償の必要がないことを前提に、最も控えめに見積もっても二十兆円。今二十三・四兆円とありましたので、つまり、二千五百億円の東電の利益の約百年分、一つの事故で巨大企業の百年分の利益が吹き飛んでしまうことになる。このような発電方法のコストが安いと言えるわけがないと樋口英明さんはおっしゃっています。

 原子力緊急事態宣言は今なお解除されておりません。ふるさとを追われて、帰りたくても帰ることができない帰宅困難区域の方がいらっしゃる現実に、これはしっかりと目を向けなければいけないと思います。

 帰還困難区域の除染がいつ終わる予定で、いつから住めるようになるのでしょうか。

 福島の環境再生はいつ可能なのか、教えてください。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原子力発電所の事故を受けまして、環境省は、環境再生の中でも、除染、それから中間貯蔵、汚染廃棄物の処理等の環境再生の取組を進めております。

 除染については、特定帰還居住区域におきまして、地元の皆様の御意見を伺いながら除染を進めているところでございます。それから、除去土壌については、法律に定められた国の責務でございます、中間貯蔵開始後三十年以内、すなわち二〇四五年三月までの県外最終処分の実現に向けて、これまで、二〇一六年に定められた方針に沿って、減容に関する技術開発や再生利用の実証事業等に取り組んでおります。

 これまでの取組の成果や、二〇二四年九月に公表されたIAEAからの報告書も踏まえまして、今年度中に、最終処分、再生利用基準の策定、それから最終処分場の構造、必要面積等に係る複数選択肢の提示を行うべく、取りまとめに向けた対応を進めております。

 県外最終処分の実現に向けまして、再生利用の推進等に係る閣僚会議が設置されたところでございますので、政府一体で再生利用先の創出等に向けた必要な取組を着実に進めてまいりたいというふうに考えております。

辻本政府参考人 残りの部分についてお答えいたします。

 帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域につきましては、二〇二三年をもって全ての避難指示が解除済みでございます。

 また、特定復興再生拠点区域外につきましては、二〇二〇年代をかけまして、帰還を希望する住民の方々に帰還いただけるよう、特定帰還居住区域の除染やインフラ整備の、避難指示解除に向けた取組を進めているところでございます。

 また一方で、除染、インフラ整備の進捗は地域によって様々でございます。また、避難指示解除の時期につきましても、これらの進捗を踏まえ、地元自治体と十分に協議して決定するものでございます。したがいまして、現時点で、避難指示解除の時期につきましては予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

 引き続き、帰還を希望する住民の方の可能な限りの早期の帰還に向けて、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと思います。

松下分科員 私は、原発事故後の福島が、いつ再生して、ふるさとに帰りたいと思っている人がいつ帰れるのかなというのを知りたいんですね。

 今、お二人からお答えいただいた中では、まだ、除染土壌等の最終処分の方法や場所は決まっていないということや、避難指示の解除もまだいつかは分からない。でも、出てきた数字は、二〇四五年までに何とかするということですか、あと二十年後。そして、帰還困難区域、そこに希望者が帰れるのは、二〇二〇年度中というのは、二〇二九年まで、あと四年ということでしょうか。もう既に事故から十四年が経過していますよね。更にそこから四年、また更に二十年という、これだけ長きにわたって、再生するのに、環境再生に時間がかかっているということで、今のお答え、お二人からだったので、ちょっと分かりかねる部分もあったんですが、私の理解でよろしいでしょうか。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれ二人別々にお答えしたのでちょっと分かりにくかったかもしれませんが、議員御指摘のとおりだというふうに考えてございます。

松下分科員 やはり、これは本当に、第七次エネルギー基本計画に書いてあるとおり、事故の経験、反省と教訓を肝に銘じるべきだと思うんですね。

 今を生きる私たちは、先人から引き継いだ豊かな国土を未来にわたって継承していく義務があると思っています。しかし、事故から十四年経過してもなお、帰還困難区域という広大な無人の土地が広がっているんですね。その広さは、これも樋口さんのお言葉なんですけれども、東京ドームの七千二百個分にも相当する。そして、再びの原発事故によって更に国土が汚染され、極めて多数の人の生活と国土を失ってしまう可能性がゼロではない以上、やはり、この原発というのは、私たちは地震列島の日本では相入れないものなんじゃないかと私は考えます。

 そこで、第七次エネルギー基本計画並びに地球温暖化対策計画に、これまでの方針を変えて、原発を活用し、推進することになった理由と経緯を教えてください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、福島復興と福島第一原発の安全かつ着実な廃炉は、我々経済産業省として最重要課題と考えております。復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立って全力を尽くして取り組む意思に変わりはございません。

 それで、エネルギー基本計画のことでございますが、DXやGXの進展によって電力需要の増加が見込まれる中で、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況でございます。低いエネルギー自給率や、あるいは火力発電への高い依存といった現状の課題を克服する観点でも、脱炭素電源の確保が求められております。

 こうした背景を受けて、第七次エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画では、特定の電源や燃料源に過度に依存しない、バランスの取れた電源構成を目指すとともに、脱炭素電源を確保するため、再エネと原子力について、この二項対立ではなく、共に最大限活用していく方針をお示ししたところでございます。

 これまでのエネルギー基本計画では、可能な限り原発依存度を低減する、また、必要な規模を持続的に活用すると記載されておりまして、これは、原発依存度が東日本大震災前の約三割から下がって、一方で必要な原発は活用していくという趣旨でございまして、この考え方は第七次エネルギー基本計画等においても変わらないものでございます。

 原子力に対する様々な御懸念の声があることを真摯に受け止めまして、それぞれの課題にしっかりと取り組み、丁寧に説明を行いながら、原子力を活用してまいりたいと考えております。

松下分科員 覚悟を持って廃炉をやり遂げるというお話でしたが、避難指示解除もまだ決まっていないんですよ。そのような中で、るる御説明ありましたけれども、もちろん、私自身も、二酸化炭素の排出削減というのは重要だという認識を持っています。ただ、原発というのは、発電時に二酸化炭素を排出しないという理由だけなんですね。それだけで最大限活用するというのは、一たび事故が起きたときの被害、放射性物質による大気汚染の被害の大きさ、また、除染にこれだけ時間がかかっていることを考えると、それは比べ物にならないはずだと私は思っています。

 やはり不思議なのが、公害対策の推進、健康被害を防ぐはずの環境省が、なぜその計画に再生可能エネルギーとともに危険な原発を、一たび事故が起きたらとても危険な、決して安全ではない、安全神話に陥るなと第七次エネルギー基本計画にも書いてあるんですよ、にもかかわらず、活用しようとしているのか、そこに矛盾はないのか、教えてください。

浅尾国務大臣 まず、地球温暖化対策については、地球温暖化対策推進法に基づき、総理を本部長とする地球温暖化対策推進本部が案を作成し、政府として閣議決定することとされております。今回、GX二〇四〇ビジョンやエネルギー基本計画と一体的に、整合を図りながら検討が進められてきたところであります。

 原子力発電については、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくというのが政府の方針であり、今般政府として閣議決定した地球温暖化対策計画にその趣旨が盛り込まれていても矛盾はないと認識しております。

松下分科員 先ほども私は言いましたが、二酸化炭素の排出削減は重要です。むしろ地球温暖化対策計画に示された温室効果ガスの削減目標では足りないよという声もたくさん私のところにも届いています。より高い目標を設定すべきであると審議会の中でも意見が出ていましたし、また、多数寄せられたパブリックコメントでも示されていました。気候危機の現実に向き合うエネルギー政策、気候変動政策とはちょっとこの計画はほど遠いんじゃないのというお声も、国際環境NGOからも届いています。そうした中で、たった発電時に二酸化炭素を排出しないという理由で原発を最大限活用するのは、やはり私は矛盾があると思います。

 今、大臣のお答えの中にも安全確保が大前提とあったんですよ。大前提が地震で崩れるんですよ。崩れたじゃないですか、福島原発事故で。地震で、津波で電源が喪失されたら、制御不能になったわけです。そして、目に見えない放射性物質がまき散らされて、これは、一たび事故後の対応を間違えたら、福島だけじゃなくて関東も東京も被害が、現に放射性物質の被害は当時ありましたから、そのことを思い出すと、本当にエネルギー政策の根幹に据えるのはやはりまかりならないと私は思います。

 先ほど御紹介いたしました元裁判官の樋口英明さんのお言葉です。今、日本で原発を維持することは、耐え難いほど正義に反するとおっしゃっています。安全神話は崩れました。安全確保大前提、これは勢いや思いだけではできるものではないんですね。地震が起きたら、じゃ、どうするのか。安全が確保できなかった場合に、それはやはり公害、原発事故の被害は災害でもあり公害でもあると思っています。

 冒頭私がお話をいたしました、いつも人々に寄り添うという気持ちを持ち続けたいという環境省五十年史の巻頭言、環境の保全こそ行政が注力しないといけない最も国民に密接した政策課題なんです。たとえ経済産業省がGXの名の下に原発を最大限活用しようと言ったとしても、ここは環境省が、公害の防止の観点からも、国民の安全、国土の保全の観点からも、原発は推進をしない、せめて、最初に、第六次までの計画に出していた、できるだけ原発をなくしていくんだという方針に変えていただきたいと要望して、私の質問を終わります。

小林主査 これにて松下玲子君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小林主査 次に、農林水産省所管について、引き続き質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。向山淳君。

向山(淳)分科員 自由民主党の向山淳でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私、新人議員でございますが、元々総合商社で働いておりまして、日本の国際競争力の低下ということを日々、ビジネスの中で焦燥感を持って感じていたというような根本的な課題意識がございます。

 食の世界においても、世界の人口、食料需要が増加する一方で、島国としての日本の人口が減ってきていて、バイイングパワーというのも落ちてしまっている。そんな中で、ウクライナ戦争が起きたときに、世界の生産量の四分の一を占める小麦の生産国であるウクライナとロシアの輸出が止まったゆえにアフリカ諸国が危機に陥るといった、そういったことを目の当たりにしまして、三八%の食料自給率の低さというのは、外部からのショックが起きたときに、我が国が非常に厳しい状況に立たされるんだということを痛感した次第であります。

 一方で、政治家として政治活動をさせていただくようになりまして、日々、選挙区を歩いて見えた景色というのは、ビジネスで考えていた又は机上の政策論として考えていた世界とは異なって、本当に日々、尽力をされておられる農家さん、酪農家さん、漁業者さん、林業者さんなど、本当に厳しい環境の中で、ぎりぎりで我が国の食を支えていただいているということを実感をしております。

 日本の食を守っていくということを考えたときに、北海道のような大規模の経営も、家族経営も、中山間地の条件不利地域も、どんな地域であっても、一軒一軒、生産をいただいている皆様が安心して生産できる環境というのが重要なんだということを痛感をしております。

 私は北海道選出の議員でございますが、食料自給率が二〇〇%を超えるという地域として、この日本全体の食料の安全保障における役割というのを十分に自覚した上で、職務に邁進をしてまいりたいというふうに思っております。

 その上で、まず、大臣にお伺いをいたします。

 江藤大臣の農水に対する深い御造詣であるとか思いというのは、日々、答弁であったり、党内の会議ということで感じているところでございますが、また、宮崎の御出身という中で、大変恐縮ではございますけれども、是非大臣からも、農政における北海道の位置づけということについて、農水省としての、いかがお考えかという御見解をお伺いしたいというふうに思います。

江藤国務大臣 新人で入ってこられたということで、これからよろしくお願いします。

 やはり、農業は、まさに地べたに足の着いた仕事ではありますが、しかし、ビジネス感覚が要らないのかと言われれば、決してそうではありません。やはり、経営というものに着目をしないとこれからの農業経営は難しいと思います。

 私ごとではありますが、私の次男坊が農業系大学校に行って、そして、今、農業をやるために研修中なんですが、北海道にも研修に行きました。その感想は、北海道の農家の人はよう働くわ、夜遅くも無人のトラクターが農地を走っていて、北海道はやはりすごいと。

 やはり、二一八%、カロリーベースで達成しているところであります。食料自給率三八%。四五%が目標です。これを達成するには、やはり、これから地球温暖化で気候の変動も変わっていきます。宮崎はマンゴーを作っているんですが、北海道でもマンゴーを作るようになって、マンゴーまで作られちゃうとちょっと参っちゃうなという気持ちもないではないんですが、適地適作ということも考えていただきながら、北海道は極めて優良で、有能な、食料自給率の向上にも、食料安全保障にも大きく貢献できる地区でありますので、是非現場をしっかり歩いていただいて、今おっしゃっていただいたように、家族経営であろうと、小規模であろうと、どのような経営形態であろうと、農業経営者をしっかりと支援していくことがこれから大事だと考えております。

向山(淳)分科員 誠に、大所高所からの御発言をいただきまして、ありがとうございます。

 以降、参考人の方に御答弁をいただくという予定でございまして、大臣、お忙しいことと存じますので……(江藤国務大臣「いいよ、いいよ。ちゃんと聞いていますよ」と呼ぶ)よろしいですか。ありがとうございます。

 それでは、続けさせていただきます。

 食料・農業・農村基本法の改定が二十五年ぶりに行われた中で、食料自給率の向上、そして安全保障の観点から、今も基本計画の改定ということが根本的に議論をされているものというふうに認識をしております。

 麦や大豆の本作化であったり、国内肥料の拡大であったり、又は、大規模化、輸出戦略、インフラの保全、様々な安全保障の強化に向けての多岐にわたる論点がある中で、私、今日は、今後二十年で基幹的農業従事者が百二十万人から三十万人と急減をするという可能性がある中で、次世代に向けた営農意欲をいかに維持していくかという観点で質問をしてまいりたいというふうに思います。

 農協の青年部の方々というのがおおむね同じぐらいの世代でございまして、いろんな方とお会いする中で、親元を継いでいく方、新規就農をしようと参入される方、様々な方がいらっしゃいますが、農業従事者の高齢化であったり、また担い手不足ということが著しい中で、こうした次世代を担う方々とどうやったら一緒に、稼げる農業、農林水産業ということをつくっていけるのかというのが非常に重要な観点になるのではないかというふうに思っております。

 その中で、最近、私の地元の今金町の農協の青年部長さんや、奥様のフレッシュミズという方々の皆さんがお越しになって、国営の緊急農地の再編整備事業の事業の成果報告というのにお越しになっていただきました。

 今金町とせたな町は、平成二十五年から令和九年までということの予定で国営事業を行っております。元々は、小区画で、排水が不良であったり、地耐力が不足しているという中で、機械作業効率が低かったところ、今回、大区画化、区画の整備ということや、排水の整備ということを行っているものであります。

 経過報告の中では、ブロッコリーだとかミニトマトだとか、高収益作物が、生産を拡大することによって農業収入が三・三九倍に増加をして、農業所得を確保することができたということであったり、又は、夫婦間で、今までトラクターに乗っているのはお父さんだけだったことなんですけれども、それが、大区画化することによって夫婦共に、女性の方は今まで草むしり専門と言っていたところが、御夫婦でICTのトラクターに乗ってというような作業ができることになったということで、女性も参画できる余地というのが広がって、奥様も意欲が上がったというようなお話がございました。

 本当に、周辺で離農するという方も非常に増えている中で、今後の農地集約に向けて計画を描いていけるんだというような言葉が非常に希望が持てるものだなというふうに思ったのと、また、重要なのは、お休みを取れるという展望が見えたというふうにおっしゃっていたことも非常に期待が持てるところだなというふうに思っております。

 こうしたお話を伺う中で、耕作放棄地というのも全国で増えていく中で、農業基盤整備の重要性というのを早期に対応していくことを非常に実感をしております。

 ここで、この当該地域の方々が気にされておりましたのは、この事業が令和九年度までの事業ということもありまして、国営事業が終了をしたら、今は整備に来てくださっている方が周りにたくさんいらっしゃって、何か困ったことがあったらすぐ相談をしているという中で、今後、事業としては終了をして、自分たちの足で立って営農を継続していくというときに不具合が生じたらどうしようといった、こうした事業終了時のフォローアップ体制ということを非常に気にされております。

 こうした点について、事業を終えて、これからもしっかりその方々が継続をしていけるという体制について、政府はどのような対応をお考えでしょうか。

前島政府参考人 お答えいたします。

 国営緊急農地再編整備事業による区画整理工事完了後は、不具合の有無を確認し、必要に応じて、補修などに関し、本事業で対応した上で引渡しを行っております。

 また、事業完了のおおむね二年前までに計画していた工事を終え、事業完了までの間に営農を開始していただく中で、不具合が生じることがあれば、同様に本事業で対応することとしております。

 このようにして、安心して営農できるよう、本事業の中で十分に対処してまいる考えでございます。

 なお、事業完了後、仮に更なる不具合が生じたという場合におきましては、現場の状況を踏まえまして、北海道及び町と調整の上、必要に応じて、農地耕作条件改善事業などによりまして支援をしてまいりたいと考えております。

向山(淳)分科員 御答弁ありがとうございます。

 こうした事業の引渡時から自立していく過程においても、しっかりとサポートをいただいた上で、後押しをしていければというふうに思います。

 今国会においても、土地改良法の改正という部分でも、農地中間管理機構が所有する農地も事業の対象に追加されるということであったり、又は、スマート農業を実現するための情報通信の基盤の整備というようなことも含めて、これから若い方々が就農していくに当たっての整理という部分でも非常に重要な取組が行われているというふうに承知をしております。

 ちょっと質問の通告と順番が前後するんですけれども、次に、酪農についてお伺いをいたします。

 私の地元の道南地域では、八雲町であるとか長万部町というところを中心に酪農も盛んであります。今般、報道で御承知のとおり、酪農家が二〇二四年の十月に初めて一万戸を切り、また六割が赤字と言われている中で、日本の酪農の生産基盤、危機を迎えていると言っても過言ではないかと思います。

 先ほど、お休みを取れるめどができたという喜びのお話がありましたけれども、この十二月に八雲の酪農家さんを回っていたところだと逆の話をされていまして、家族経営の農家さんとして本当に休みがないというところで、今までは休みがなくても稼げるのでお嫁さんも来てくれるという状況だったけれども、今は稼げない上に休みがないという中で、本当に苦しいんだというようなお話がありました。

 そのような中でも果敢に挑戦をしてくださっている酪農家さんもたくさんおられる中で、畜産クラスター事業ということで設備投資の後押しをしていただくのは、生産性の向上という面でも、若い従業員が就農するきっかけになるということでも、非常にありがたい制度だというふうに考えております。

 この事業を利用されている方々とのお話の中で、一点確認させていただきたいというふうに思っていることがございます。

 今はもう本当に、物価高騰の中で飼料が高騰しているという外部環境の激変があったかと思います。事業を採択していただく過程では、高い意欲を持って、高い目標を立てて計画を作っていって採択をされるという過程なわけですけれども、今の飼料価格の高騰であるとか、そういった事業環境が大幅に変化してしまったという状況において、当初立てていた計画どおりに進めていくと赤字だと分かっていても例えば頭数を増やさなければならないとか、又は、資金繰りが非常に厳しい中で銀行からも融資に難色を示されるといったような、非常に厳しい状況になりながらも、でも目標を達成しなければならないという非常にジレンマの中に置かれているというような悩みをお伺いしております。

 こうした畜産クラスター事業で、事業開始時に想定していなかった外部環境の大きな変化ということに対して国で柔軟な対応をしていくべきなのではないかというふうに考えているところですけれども、この点につきまして、農林水産省の御見解をお伺いいたします。

松本(平)政府参考人 お答えいたします。

 畜産クラスター事業につきましては、収益の向上、こちらを図るための事業であり、事業の実施に当たりましては、あらかじめ設定した収益性に関する成果目標、こちらについて達成いただくことが非常に重要でございます。

 一方、過去に畜産クラスター事業に取り組み、目標年度に成果目標を達成できない場合にありましても、地元の自治体、協議会による継続的な指導により目標達成を目指していただくことになります。この点につきましては、現場に対しましても丁寧に周知しているところでございます。

 なお、向山委員から御指摘のありました点でございますが、こちらは、一度現場の方に事情、実情を伺った上で、どのような対応ができるかにつきまして当方で検討してまいりたいと思っております。

向山(淳)分科員 また誠に酪農家の皆さんに寄り添った御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今、現場にもしっかり周知をしていきますというふうにおっしゃっていただいたところでございますが、きっと答弁としてはそういった答えが返ってくるだろうけれども、現場ではなかなか相談するとそうならないんだというようなお声もいただいておりました。是非、現場レベルでもこの周知をされるというところについて、改めてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、漁業についてもお伺いをさせていただきます。

 私の地元は函館でございまして、イカの町と呼ばれておりますが、今やイカがほとんど捕れないというような状況でございまして、サケ・マスなんかも含めて、今まで捕れていたものが捕れないという海洋環境の変化を痛感しておりまして、非常に地元の漁業者の方々は苦労されながら漁業を営んでおられるというような状況でございます。

 そんな中で、昨今、太平洋クロマグロの資源管理の協議のWCPFCにおいて、二〇二五年度以降の漁獲枠につきまして、三十キログラムの大型魚については現在の一・五倍に増やすということで最終合意をいただきました。資源量が回復傾向にあるということで、増枠は三年ぶりということですので、苦しい思いをしながら資源管理に御協力されてこられた皆様の御努力があって、本当に目に見えて資源が回復しているということは喜ばしいことなんじゃないかというふうに思っています。この結果を受けての漁獲枠の割当ての増加というところは、まだまだなりわいを成り立たせるには厳しい状況ではありますけれども、歓迎をされているところかと思います。

 一方で、津軽海峡のとりわけ南茅部地区などにおいては、予想以上に資源量の増加というのを漁業者の皆様が実感をしているというような状況にございます。

 具体的には、定置網に非常に多くのクロマグロが入ってしまっているという状況で、放流の手間が非常に大きく、ほかの魚の漁獲にも影響を与えてしまっているというような状況であります。ほかの私の地域の中で、各漁協、非常に厳しいんですけれども、南茅部の定置は、若手の人がどんどん入ってくるような活気のある地域であるんですけれども、やる気を非常にそいでしまうという中で、この放流の手間ということについて非常に懸念をしております。

 クロマグロの資源管理に関する支援事業ということで、必要な機器の導入の経費の支援であったり、また混獲回避のための休漁の支援といったことも取り組んでおられることというふうには承知をしておりますけれども、かなり想像していたよりも多いんじゃないかというような実態について、どう見ておられるのかというところと、また、イカを含むほかの資源についても捕食をマグロにされてしまっているのではないかという懸念を漁業者の方が持っておられるというこの状況について、政府が把握しておられる実態はどのようなところかということと、今後、調査を行ったり対応していくというお考えがあるかという部分について、お伺いをしたいというふうに思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 太平洋クロマグロに関しましては、御指摘のとおり、漁業者の皆様が厳格な資源管理に取り組んでこられた結果、資源が回復し、増枠も実現をしたというところでございます。ただ、この過程において放流や混獲回避などの取組にも御苦労いただいているというふうに承知をしているところでございます。

 今般の増枠を踏まえました国内配分におきましても、漁業種類ごとの近年の漁獲実績をベースとしつつ、特に大型魚につきましては、放流の負担の大きい沿岸漁業者に配慮といった考え方に基づいて配分を行ったところでございますし、また、御指摘がありました、放流の取組に対する作業経費でございますとか、混獲回避のために必要な機器の導入等について支援をしてきているところでございます。さらに、この度、定置網の放流作業支援の上限額の引上げも措置をしたという状況でございます。

 私どもといたしましては、こうした御苦労の取組に対しては、引き続きしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思っております。

 なお、イカを含むほかの資源への影響については、毎年度、水産研究・教育機構がクロマグロの胃の内容物の調査を実施をしているところでございますが、クロマグロの資源量の増加によってスルメイカが減少したという因果関係を示すデータはまだ得られていないという状況でございます。

 今後も、こうした調査を継続をいたしまして、資源への影響の可能性についても注意深く見定めてまいりたいと考えております。

向山(淳)分科員 ありがとうございます。

 ちなみに、函館は、イカのモニュメントがそこら中にあるぐらいイカにフォーカスをしているんですが、本当にイカが捕れないというのが深刻な状況でございまして、全国各地、海洋環境の変化がある中で、新しい挑戦を各所でされているということであると思いますし、又は、そうした資源管理と併せて新しい収益の柱というのも、つくり育てる漁業への転換も含めて、しっかり行っていかなければならないというふうに思っております。

 そして、少し、食そのものから、広い概念での交通という部分についてもお伺いをさせていただければというふうに思います。

 農業・農村基本法の改正においては、円滑な食料入手のための確保という観点から、幹線物流やラストワンマイルの食料の輸送手段の確保ということについても明記がなされました。

 その中で、私の地域のところでは函館から長万部という間が鉄路でつながっているんですが、今、北海道新幹線の札幌延伸の開業に伴って並行在来線の扱いとなりますので、そこの議論がされております。沿線の住民は非常に数は少ないという状況ですので、旅客としては恐らく採算性が合わないというような路線であるんですが、一方で、北海道と本州を貨物列車でつなぐという意味では、タマネギであるとか大豆であるとか、作物の輸送が滞れば全国の市場に影響が出るというような重要な幹線でもあります。

 二〇二四年問題でトラック輸送というのもなかなか限界がある中で、モーダルシフトということも言われております。重要な道路については国が主導して整備をしている中で、こうした並行在来線を含めて、この鉄路という部分について、旅客営業を中心とした考え方だけだとこの食料安全保障という観点では足りないのではないかというふうに懸念意識を持っております。

 こちらは国土交通省の方で政策として持っているというところだと思いますけれども、是非、食料安全保障という観点から、しっかりとした国の関与をお願いしたいというふうに思っております。

 この辺りの、今議論がなされている状況ではありますけれども、現状の認識についてお伺いをできればというふうに思います。

宮浦政府参考人 お答えいたします。

 北海道の道外への農産物輸送、船舶が大体三分の二、鉄道が三分の一ということで、やはり、貨物鉄道輸送を含めた多様な輸送手段を確保するということが非常に重要だというふうに認識してございます。

 ただ、一方で、この貨物鉄道輸送を含めた鉄道につきましては、北海道はかねがね、様々な議論が行われているというふうに伺ってございます。新幹線の高速化と札幌までの延伸、これと貨物輸送の両立を図るということで、国土交通省からもそういった考え方が示されておりまして、その認識の下に、北海道庁と国土交通省が共催で、鉄道物流の在り方の有識者検討会議を令和五年の十一月から行われているというふうに伺っております。

 私どもの北海道農政事務所もオブザーバーとして参加をいたしているところでありますが、この議論は様々な意見が交錯する非常に難しい議論であるというふうに理解をいたしておりまして、私どもも、食料安保の視点を含めて、多くの方々の理解が得られるような議論として取りまとめられるようになるように、思いを持って注視をしているというところでございます。

向山(淳)分科員 思いを持って注視をしていただいているということで、心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 御指摘のとおり、非常に様々な観点と、JRの経営も含めて難しい問題があろうかと思います。先ほどおっしゃっていただいたとおり、食料安全保障という観点では、北海道は島という中で道路ではつながっておりませんので、港湾の強化という部分もそうですし、鉄路ということについてもしっかり考えてまいりたいというふうに思います。

 新幹線では、最近、新鮮な野菜なりを載せて新幹線を使って輸送するということも、これはロット的には、どちらかというと時間を早めて高級なものをというような路線なのかもしれませんけれども、新しい取組についてもしっかりと後押しをしてまいりたいというふうに思います。

 最後に、いろいろな観点でお伺いをしてきましたけれども、様々な農作物の中でやはりお米というのが非常に重要な中で、輸出戦略であるとか需要の喚起策であるとかいろいろ議論がされておりますが、これは私自身の個人的な希望としての質問でございますが、私のおいっ子は小麦のアレルギーでございまして、米粉の活用ということについて、例えば避難所で米粉の備蓄の乾パンが、乾パンというかパンじゃなくて米粉パンでありますけれども、あるかどうかとかいうことも含めて、いろいろな米粉の用途というのはまだまだ世界的にも広がっていくんじゃないかというような感覚を持っております。

 是非、今の米粉に対する取組や今後の需要拡大策についてお伺いをできればというふうに思います。

庄子大臣政務官 米粉の需要拡大、非常に重要だと思っております。

 私も東日本大震災の地元でございますので、避難所等で大変困っておられた方々、たくさんおられました。

 農水省といたしましては、米粉の需要拡大を進めていくということは、食料安保の観点からも非常に重要な課題だというふうに認識をしております。

 米粉は、今御指摘がありました、小麦アレルギーを持つ方にとりましてはグルテンフリーの食材として非常に重要でございます。

 そこで、農水省といたしましては、ノングルテン米粉の認証制度の普及に向けた取組をしておりますほか、農林水産省が作っております、災害時に備えた食品ストックガイドというガイドブックがございますが、ここにおいても、アレルギー対応の家庭備蓄の例として、米粉や米粉製品について紹介をさせていただいております。

 米粉につきましては、アレルギー対応食品としてのみならず、米粉の特徴を生かした商品の開発の支援、利用方法の情報発信、また米粉製品の製造能力の強化といったことにも取り組んでいるところでございまして、引き続き、備蓄用の食品としての利用なども含めて、米粉の利用拡大を図ってまいりたいと思っております。

向山(淳)分科員 ありがとうございます。

 まだまだ米の需要については拡大が可能なのではないかというふうに思っておりますので、私もしっかりと取組をしてまいりたいというふうに思います。

 今日は本当に、若い人がどうやって今後も稼いでいけるというような、次世代に向けた農林水産業というのをつくっていけるのかという課題意識の下で、地元で伺ってきた声を中心にお伺いをしてまいりました。

 農業のICT化というところもそうですし、酪農での設備投資もそうですし、資源管理となりわいの調整というような様々な観点で、マクロの国としての戦略と、目の前で本当に日々、御苦労をされながら生産を続けておられる生産者の皆様と、しっかりこの間を埋めていきながらしていくのがこの農政の仕事なんだなということを私も日々学ばせていただきながら、営農している皆様が将来への希望を持って続けていける環境整備に努めてまいるということをお誓いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

小林主査 これにて向山淳君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、土屋主査代理着席〕

土屋主査代理 次に、広瀬建君。

広瀬分科員 お疲れさまでございます。一年生の広瀬でございます。

 本日は、多くの一年生議員がこうした分科会においてあちらこちらで質問の機会をいただいております。ありがとうございます。

 大臣におかれましても、長時間にわたり、誠にお疲れさまでございます。

 私は、大臣のお地元宮崎県の横の大分県選出の議員であります。九州全般には言えることですが、農林水産が盛んな地域でありまして、私の選挙区では、農業、酪農、畜産、林業、水産業と全ての分野がありまして、地元でも多くの方々との意見交換をさせていただいております。

 質疑に入る前に、少し自分のことをお話しさせていただければと思います。その上で、私なりに農林水産というものをどう見ているか、どう捉えているか、それを少しお話しさせていただいた上で、質疑に入らせていただければと思います。

 私は、昨年十月の総選挙で初当選をさせていただいた者ですが、その前は二十五年ほど民間企業に勤務しておりました。製鉄会社で、神戸製鋼という会社に勤務をしておりました。農林水産とは全く違う分野でありました。神戸製鋼在職時は、主に海外ビジネスの部署にずっとおりまして、その間、海外駐在も数か所、数か国経験をしております。中東であるとかアメリカなどにも長く家族とともに滞在をしておった、そんな経験を持っております。

 その経験から、我が国日本を考えるとき、見るときは、世界の中の日本、この眼鏡で物事を見る傾向にあります。そのときに思うのは、資源のない国である日本、少子高齢化待ったなしの国であるこの日本、そして、かつては技術大国であったが、そのときの輝きを再び今追い求めている国である日本というこの国が、まさに激動の国際社会でどう生き抜いていけるか、生き抜いていくためにはどのような存在感を出していけるのか、存在感を出していくためには国としてどの分野に注力をしていくべきなのかというようなことを考えます。

 これは、ある意味、攻めと守りをどう考えるかということでもあり、今日、今からお話しする農林水産についてもまさに当てはまることではないかと考えております。

 日本の農林水産には、多くの課題、それから難題と言ってもいいと思いますが、難題が多くございます。就業者の高齢化、若手のなり手不足、国内市場の縮小、様々ありますが、農林水産の風景もどんどんどんどん変わっていっております。そうした中で、日本の農林水産をどう守り続け、かつ、攻めというキーワードを意識しながら、国内はもとより海外の市場にどう目を向けていくのか、まさに攻めをどうやって農林水産業として打っていくのか、そんなことを考えたいと思います。

 そこまで申し上げた上で、本日は、輸出という言葉を一つの柱として、今から幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 まずは、米についてでございます。

 足下、国内の需要は七百万トンを切り、六百万トンの後半にあるというような状況です。よく言われることですが、毎年毎年約十万トンの国内の需要が減っていく、これが今の日本のお米を取り巻く大きな構図だと思います。

 国内需要が今後もしぼんでいく中で、おいしい日本の米の輸出を更に拡大し、販路を広げていくべきだと考えております。米生産が減少していくことは、それに応じて担い手が少なくなっていくことでもあり、食料自給率底上げという観点からも、大きな大きな問題、課題だと思われます。

 そこで、幾つか質問をしたいと思います。

 まず、国内需要が縮小していく中にあって、米生産を増やすべく輸出拡大をするために、販路や米製品の多角化につき様々な取組をされているかと思いますが、まずは、足下の状況、マクロ観を教えていただければと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米は、我が国で唯一自給可能な穀物であり、国内需要が減少する中で、輸出拡大によって新たな需要を生み出すことは極めて重要であると考えております。

 このため、二〇二〇年十二月に作成された農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略におきまして、米、パック御飯、米粉、米粉製品の二〇二五年の輸出額目標を百二十五億円と定め、市場開拓に取り組んできたところでございます。

 足下の輸出実績は着実に伸びております。二〇二四年の輸出額は、直近五年間で約二・六倍となる百三十六億円に到達しております。先ほどの実行戦略の目標を一年前倒しで達成したところでございます。

 引き続き、米の輸出の更なる拡大に向け、しっかり取り組んでまいりたいと考えています。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 今、米の輸出が伸びているというような話がありました。二四年の直近の話がありました。これは統計的に見ると、過去十年で見ても、米の輸出は、十年前、二〇一四年で四千五百トンだったものが、今の話で、二〇二四年、四万五千トンで百二十億、百三十億円レベルの金額になっている。まさに、この十年で、ざっくり言うと十倍ほどになっているということで、私はこれは本当に非常にいい方向、いい傾向にあるなと考えております。ただ、まだまだいろいろな策を打って、輸出を増やせる、輸出を拡大できるのではと思っております。

 今お話が少しありましたが、米粉だとか、それからパックの御飯等々、日本の米の製品としての輸出、いろいろあろうかと思いますが、まだまだいろいろな工夫ができるのか、まだまだいろいろな製品が作れるのか、この辺りについて、もし今イメージがあれば御教示をいただければと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 今後も引き続き米の輸出の拡大を図ることは非常に重要であると考えております。

 このため、まず、需要の開拓といったことを図るため、冷めてもおいしいという日本産米の特徴を生かし、輸出先国、地域のニーズを踏まえた非日系、新興国等への新たな販路、商流の開拓、それから、有機米、パック御飯などの付加価値を持つ商品の輸出促進、あるいは、日本食レストランやおにぎり屋など、日系外食店の海外展開の推進による日本産米の利用拡大に取り組んでいくということとしております。

 加えまして、供給力の強化、こういったことも重要であると考えております。低コストで生産できる輸出向けの産地を育成するため、農地の大区画化など基盤整備、農地の集積、集約化による分散錯圃の解消等の生産基盤の強化、官民を挙げた多収品種の普及、開発、スマート農業等と低コスト生産技術の導入、定着、こういったことで大規模輸出産地の形成を推進する。

 こういった両面の取組で、輸出の更なる拡大につなげてまいりたいと考えています。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 先ほど、大きなマクロ観を申し上げたときに、国内需要、毎年十万トン減少していくというような話をしました。基本的には、国内の生産規模が応じて減っていくというふうに理解をしておりますが、そういう状況下で米の輸出を更に広げていこうという辺り、この辺り、限界はあるのかどうかお尋ねしたいと思います。

 端的に言うと、米の輸出がこれからどんどんどんどん拡大し得るというときに、一方で、国内需要は満たしながら、生産規模をどこまで広げられるのか。これは現実的なところにもちろんなりますが、どのくらいまで輸出に回せる算段があるのか。その辺りについて、ざっくりとしたイメージでも結構ですので、数字をいただければと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国の主食用米の需要は、人口の減少、あるいは一人当たりの消費の減少により、毎年十万トンずつ減少しているところでございます。こういった中で、食料安全保障の確保の観点からも、やはり輸出を拡大していくというふうなことが大事だと考えております。

 なかなか数字的なイメージというのは難しゅうございますけれども、まず、国内の生産面では、やはり生産コストの低減というのが最も大きい課題だというふうに考えております。大区画化でございますとか、スマート技術の活用、品種の改良、こういったことで対応していくということが大事だというふうに考えております。

 現状、輸出が国内需要の減少を補うまでにはまだまだ至っていないところでございますけれども、私ども、足下の好調な輸出の伸びを更に加速すべく、各般の施策を総動員して対応していく考えでございます。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げた世界の中の日本という文脈で考えると、日本の米の輸出、これは大きな武器になっていくと私は本当に強く思っております。食料安全保障を考える上でも、これは非常に大事なポイントです。今後も是非、攻めの姿勢を失わずに、米の輸出、これに全力で取り組んでいただきたいと思いますし、その結果として日本のファンを増やしていければと思う次第であります。

 次のテーマに移らせていただきます。今も少し触れていただきましたけれども、大規模化若しくは法人化について少しお話をさせていただければと思います。

 日本の農業、特徴は、やはり小規模でやっているところが多い、それから高齢者農家が多いのが特徴だと思います。私の地元大分県でも、中山間地域が多く、地形的には必ずしも農業には有利な面は少ないというようなところがありまして、まあ不利な面が多いと思いますが、生産の効率性という観点からはハードルが高いところでの営農をされているところが多うございます。

 その一つの切り口として、大規模化若しくは法人化を更に進めることで効率化を図れるのかどうか、この点について少しお話をさせていただければと思います。

 質問でございます。

 大規模化、法人化は、先ほど申し上げたように、一つの大きな突破口と思われますが、課題と展望についてお聞かせいただければと思います。背景として、地元の方々と話をしていると、やはりある種の抵抗感を持たれている方々が少なくないというのがあります。理由は様々だと思いますが、やはり農業の効率を上げるという観点から、少し踏み込んだ御所見なり、政府としてどういう方向を打っていくべきだとお考えかということをお聞かせいただければと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 農業者の減少、高齢化が進む中で、農業法人は販売金額の約四割、経営耕地面積の約四分の一を担うまで拡大しておりまして、離農する農地の受皿として、農業法人の地域農業に果たす役割はますます重要になっていくというふうに考えています。

 一方で、委員の御地元を含めました中山間地域におきましては、平地地域と比べて、一定規模まとまった農地がない、また基盤整備が十分に進んでいないなど、法人化や大規模化の推進や地域外の農業法人の参入において様々な課題があるということは承知をしております。

 現在、各市町村で、将来の地域農業の設計図である地域計画を策定していただいているところでございますけれども、中山間地域においては地域内に受け手がいないという場合が非常に多いということも分かってきております。このため、農業法人や大規模に経営を行う担い手の農地集積、集約化を行うことや、地域外から新規就農者や農業法人などを呼び込むことを含めて、地域でしっかりと話合いを進めていただくことが非常に重要だというふうに考えております。

 このため、農林水産省といたしましても、地域計画に基づき、農地バンクによる集積、集約化を通じた法人の参入促進、様々な資金メニューによる新規就農支援、経営改善に必要な農業用機械、施設の導入支援等により、中山間地域においても新規参入、法人化、大規模化をしっかり支援していきたいというふうに考えています。

広瀬分科員 ありがとうございます。各自治体で進めていく地域の計画に応じてという話がありました。ありがとうございます。

 どうしても、日本の場合ですと、中山間地が多い地域、欧米等に比べると平地が少ないということで、農業、一般的にはやはり不利な面がある中で、今少しありましたが、ICT化を取ったりいろいろなアイデアを出して、日本の農業をますます強くしていくというようなことを、これは私たちも、一議員としてこれからもいろいろ考えながら、かつ、地域、地元の方々の意見を吸い上げながら、また皆さんとともに議論を深めていきたいと思っております。

 次のテーマに移らせていただきます。合理的な価格形成の法制化というテーマであります。

 今般の基本法改正において、合理的な価格形成の試みを進めると伺っております。これは、うまくいけば本当に画期的な試みなのではないかなと、私は非常に期待をしております。これが本当にできれば、日本の農業の底上げ、持続性維持という観点からメリットは非常に大きいと思いますので、私も、一議員としてではありますが、是非是非応援したいと強く思っております。

 一方で、実際に関係者全てが納得のいく価格形成というのは至難の業でありまして、相当ハードルは高いというのが現実だとは思っております。

 冒頭少し申し上げましたが、私も長い間民間企業におりました。こうした、いわゆるオープンブック形式と呼んでもいいと思いますが、オープンブック形式での商い、商売、農業を商いと言うのは少々不適切かもしれませんが、こうしたことは、理想としては追求されることが間々ありますが、なかなか思うように進まないのが実情だと思っております。これは、私、経験からも申し上げます。それは、その商いの全関係者、当然、ステークホルダーが皆、均等に利益を享受していると思えるような制度設計をしないといけないからですが、この制度設計がすこぶる難しいのはもう皆様御想像のとおりです。

 とはいえ、この試みというのは本当に崇高な試みだと思っておりまして、日本の農業、食の維持発展という観点からいいますと、国民的な賛同も得ながらやっていくことが制度づくりという意味では肝要かと考えております。

 その上で、幾つか質問をさせていただきます。

 まず、この制度設計を始めようとされた背景、そして、具体的にはどのような制度に向かおうとされているのか、御教示いただければと思います。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この背景でございますが、コロナ感染症ですとかウクライナ情勢などがございまして、肥料ですとか飼料、こういった資材価格が高騰したこと、それからエネルギーなども併せて高騰してきたところでございます。

 これに伴いまして、農林水産物を始めといたします食料の供給に要する費用というものが著しく上昇をいたしました。他方で、取引価格では転嫁がなかなか進まない状況が続きまして、食料を持続的に供給していくという上で懸念が生じていたところでございます。

 こうした中で、食料・農業・農村基本法の改正に当たりましても、食料の価格形成に関して、需給事情と品質評価を基本としながらも、新たに、持続的な供給に要する費用が考慮されるようにすべきという規定が置かれたところでございます。

 この基本法を踏まえた具体的な施策の検討ということで、一昨年の八月から、生産、製造、流通、販売、それから消費者の方々にも入っていただきまして協議会を開催し、議論を重ねてきております。この議論を集約化して、今、制度化を検討しているという状況でございます。

 その方向性でございますが、現在、最終調整を進めてございますが、取引条件自体は当事者間で決定するという基本は維持しながら、その上で、費用などを示して協議の申出があった場合には誠実に協議に応ずるなどの努力義務を規定いたしまして、必要に応じて指導、勧告等の措置を講ずるという方向で検討を進めているところでございます。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 この制度の対象について少し伺いたいと思います。

 指定品目があるというふうに伺っております。当然これはお米も入ろうと思いますが、ほかにどのようなものがあるのか。それと、この制度がうまく進むとして、これは進んでいってほしいと思いますが、今後、今決まっている指定品目があるとすれば、そのエリアが広がっていくようなことというのは考えておいてよいのかどうか。その点について、可能な限りで御教示いただければと思います。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 食料の取引におきまして、消費者の値頃感から、費用を考慮することなく小売価格を設定していますという話が協議会の中でも出てきてございます。小売価格を設定して、逆算で取引価格を決定するというような実情にあると。結果として、生産段階などではコスト割れといったような事態も品目によっては生じているというところでございまして、今お話のございました指定品目でございますが、こういう、通常、費用が認識されていない品目というものを指定をいたしまして、この費用の指標を作成また公表して、どれぐらいの費用がかかっているのかということを明らかにしていこうという考え方でございます。

 現在、米と野菜、飲用牛乳、豆腐、納豆を対象に、関係者と協議を進めてございます。まずは、これらの品目に関してコスト指標の作成を始めとして、この難しい制度運用の土台をしっかりとつくるということにまず傾注したいと思ってございまして、それから先のことは、まずここの部分をしっかりやってからというふうに考えているところでございます。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 このテーマでの最後の質問になりますが、ここは是非大臣にお伺いできればと存じます。

 この制度、今もお話ありましたけれども、制度をつくってその制度を運用していくというのは、これは本当に、できればすばらしいと思いますが、できるまでが、産みの苦しみというのが本当にあろうかと思います。これは恐らく相当労力をかけて、エネルギーをかけて、いろいろな関係者との調整事項が多くなると思いますので、本当にハードルは高いと思っておりますが、再三申し上げているとおり、これは是非応援したい制度設計だと思っております。

 大変だと思いますが、その中で、大臣のここにかける意気込みなり、思いをお聞かせいただければと思います。私、この合理的な価格形成というのは今般の基本法改正の一つの目玉だと思っておりますので、そういう観点から、是非大臣の思いなりをいただければと思います。

江藤国務大臣 広範な範囲から御質問いただきまして、ありがとうございます。

 まさに、食料・農業・農村基本法を改正する中で、食料安全保障と負けないぐらいの大きな柱。

 生産者は、作ることには一流なんですが、やはり価格形成に全く関与できない。そして、バイイングパワーを大いに発揮してしまう人たちがいる。例えば、大手の方々が、この産地で物が取れなくなると、今まで行ったことのない市場に行って、この値段にしてくれ、なぜなら小売でこの値段で売る予定だから、この値段で売ってくれないと買わないよ、その代わり全部買うと、全部さらって持っていってしまうとか、そういったやはり、オープンブックの話を今されましたけれども、なかなか難しいということは分かっています。

 これが、全ての流通の、生産、流通、加工、販売、消費者、全ての人が全く不満がない、みんなハッピーという絵を描くのは、これはまさに至難の業ですよ。どこかでやはり一番もうける人が出たり、どこかで一番割を食う人が出たり、そういうことはやはり商流の中では必ずある。だから、商売の世界でも工業の世界でも、下請法があったり、それは法律を作ってもしっかり守られない、大手の日産だって守らないというのが現状ですから、委員の御指摘はごもっともだと思います。

 しかし、このまま、生産者の方々が、ある意味、理不尽な価格でしか買い取ってもらえないという状況を放置していたら、食料安全保障の確保はできません。農業者がいなくなってしまいます。農業者がいなくなってしまったら、困るのは国民ですから。ですから、生産、流通、販売、そして消費者の方々も、今回、協議会をつくりましたが、消費者団体の方々にも入っていただきました。これは非常に画期的だったと思います。そして、非常に理解もしていただきました。

 ですから、難しいことは分かっております。フランスのエガリム法も苦戦しています。分かっておりますが、やらなければいけないので、挑戦していきたいと思っております。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 非常に力強いお言葉をいただきまして、本当にこれから大変な労力をかけての道のりになろうかと思いますが、是非、大臣のリーダーシップ、イニシアチブを取って、この制度設計、光が見えるようにやっていただければと思う次第であります。私も本当に応援したいと思っております。

 時間の関係もあります。次のテーマに移りたいと思います。林業でございます。

 日本の国土、森林面積、これは七割ですが、森林が多いことは日本にとっては大きな財産、資産であると強く考えております。この森林をこれからもしっかりと守っていくために、林業の持続性が問われております。切って、使って、植えて、育てるをモットーに、我が国の森林資源のサステーナビリティーを維持していくことは非常に肝要かと考えております。

 一方で、農産物同様、木材についても、今後の国内での需要増が大きくは期待されない中で、やはりこれも輸出を増やすためのいろいろな方策を考えたいと考えております。

 私は、先ほど申し上げたように大分県選出の議員でありますが、その中でも日田市に拠点を置いている者です。日田市は日田杉で有名な地域であります。多くの林業関係者と意見交換をすることはもちろん多うございますが、日田杉、もっと言うと日本の木材の強みは、若しくは差別化はどうなんだという議論をすると、実は皆さん、必ずしも明るい表情になるわけではなく、どちらかというと曇りがちな表情になることが、私はやはり気になることが多うございます。そういう観点からの質問になります。

 国際市場における日本の木材の競争力、差別化という観点から、付加価値をいろいろとつけていくアイデアがあろうかと思いますが、マクロ的な話ではありますが、現状、どのようなアイデアをつけてやっているのかについてお伺いをしたいと思います。

 それから、予算配分がなかなか足りないというような点があれば、どういった点で足りないのか、足りないのか足りているのかを含めてでありますけれども、その点についてお聞かせいただければと思います。

 一つの例でいきますと、例えば杉ですね、国内での生産量は大臣の宮崎県が一位でありまして、二位は大分県であります。そうした資産、財産がある中で、先ほど言ったように、国内の市場はなかなか余り期待できないという一方で、やはりこれをどんどんどんどん外に出せることになれば、林業全般的に活気づく、若い人たちも就業していくというようなことを思っておりますが、その観点から御教示をいただければと思います。

青山政府参考人 お答えいたします。

 戦後、先人たちの手によりまして造成された人工林の多くが利用期を迎えておりまして、委員からも御指摘いただきましたが、切って、使って、植えて、育てる、森林資源の循環利用を図っていくことが重要でございます。そのためには、国産材の需要拡大を図っていくことが必要であり、委員から御指摘もいただきました木材輸出にもしっかりと取り組んでいく必要がございます。

 木材輸出額は、近年増加傾向で推移しておりまして、二〇二四年は五百三十八億円を計上しております。品目では丸太が約五割を占めている状況でありますけれども、今後、更なる輸出拡大を図っていくためには、製材等の付加価値の高い製品をしっかりと輸出する方向へ転換していくことが重要でございます。

 このため、現在は、輸出先国の規制やニーズの調査、それから海外における展示会への出展やセミナーの開催、特に米国におきましては、米国製材規格委員会によりますヒノキ、杉構造材の設計強度の認可取得等に努めているところでございまして、今後とも、日本産木材製品の認知度向上とブランド化の取組を推進していきたいと考えております。

 予算は、いただきました予算の中でしっかりとこういった取組を講じていくことにしております。

広瀬分科員 ありがとうございます。

 このほか、実は私、水産業についてもお尋ねをしたかったんですが、もう時間も来ておりますので、ここでは割愛をさせていただきます。

 本日は誠にありがとうございました。私も、今いただいた様々な御所見、御意見を基に、また重ねて地元の皆様とお話をしながら、またいろいろ知恵なりを絞ってまいりたいと思います。

 今日はありがとうございました。終わります。

土屋主査代理 これにて広瀬建君の質疑は終了いたしました。

    〔土屋主査代理退席、主査着席〕

小林主査 次に、佐原若子君。

佐原分科員 れいわ新選組、佐原若子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、座ったままでの質問をお許しいただきまして、本当にありがとうございます。格段の御配慮に感謝申し上げます。

 大臣も、長時間の会議でお疲れのところ申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今日は、新選組の日なんだそうです。新選組のように私は鋭く切り込んではいけませんので、今日は勉強するつもりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、就農支援についてお伺いしたいと思います。

 まず、新たに農業を始めようという人たちへの支援策についてお聞きいたします。

 数日前、青森の農業者の集会に参加いたしました。新規就農者に対する経営発展支援事業の支援対象が四十九歳までだったそうです。五十歳の彼は支援を受けられなかったという話をお聞きしました。年金が支給されるのは六十五歳からで、今後は、自民案ですと、七十歳とも言われています。その間に農業をやろうという人たちを国が支えるお気持ちはないということでしょうか。

 私の地元、青森の移住者の約二五%、大臣の御地元の宮崎への移住者の約一五%近くが五十歳以上です。その中には、農業をされたいと思っている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。七十歳まで働く必要があるというのは、では、就農支援が四十九歳までというのはおかしいのではないかなと思いました。大臣はどうお考えになりますか、お伺いしてもよろしいでしょうか。

江藤国務大臣 親元就農自体は、親が農地を持っている、農機具を持っている、新規就農に比べてはるかに条件が整っている。ですから、新規就農の支援事業については対象にしないということで、ずっと親元就農自体を認めてきませんでした。

 もうこれは十四年か十五年ぐらい私も政治のテーマとしてずっと取り組んできた課題で、今度また再び大臣になりましたので、何とかこれをやりたいということで、まずは、親元であっても新たな挑戦をするというような要件は若干ありますけれども、機材を買ったり、壊したり、様々なことについても、撤去費用も含めて、対象にするということにいたしました。これは、大変評価をいただいております。

 お気持ちはよく分かります。午前中にも答弁したんですが、例えば、今、普通のサラリーマンの方々が六十歳が定年ということであれば、五十五歳ぐらいで例えば早期退職勧告を受け入れられて退職金を受け取られて、そのお金を持って農業に挑戦しようと、親元で。そういう方は非常に有効だと思います。そういう方も是非応援したいと思います。しかし、正直なところ、この今回の要件の緩和によって、どれだけの方々の手が挙がるのかまだ分からないんですよ。私の地元だけ見ておっても、かなり手は挙がりそうな感じです。

 ですから、まあ、お金は湧いては出てこないので、予算の枠内で募集をしたときに、全くその予算の枠から大きくはみ出てしまう方々の手が挙がったときには、やはりそれはそれでまた問題でありますので、決して、この四十九歳というものを、これからずっと先まで何が何でもという気持ちは私自身は実は持っておりません。だって、健康年齢が上がってきているわけですから。昔の七十歳は全然違いますので。

 これだけ労働人口が減ってくると、年を取った方々にも是非労働人口として頑張っていただきたいという気持ちは強いので、今すぐやりますというお答えはできませんが、そういう気持ち自体はないわけではありません。ありませんが、まずは、四十九歳という要件の下で親元就農の要件は緩めましたので、その実績を見た上でまた考えさせていただきたいと思っております。

佐原分科員 ありがとうございます。

 お考えはよく分かりました。でも、うれしいお話でしたよね。農業人口が減っていく中でそういった要望があるということは、お金が足りなくなるほどにそういう方が集まるということは、うれしいことだと思います。是非、積極財政出動で、たくさんの方に農業を継いでいただきたい、そう思いました。

 東北は米どころで、農家一世帯の作付面積も広いんですよね。高齢でそれを支えている方もたくさんいらっしゃいます。年齢で制限されず、就農される方々を広く支援する体制があれば、農業従事者が増えるのではないかなと思います。それと、女性の就農者も今、増えております。そういう方に特化したサポートはお考えではないでしょうか。

 本気で日本の安全保障の根幹にある農業の発展を考えておられるのであれば、そのような御配慮をいただけるとうれしいなと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

江藤国務大臣 先ほど申し上げましたが、高齢者の方でも元気な方はたくさんいらっしゃいます。ですけれども、これだけ平均年齢が上がってくると、やはり、税金を投入した分、政策効果はなるだけ欲しい。労働者の農業就労人口の平均年齢をできるだけやはり下げていきたい。それにはやはり、なるべくだったら若い人に就農していただきたい、そういう気持ちはやはり強くありますよ。決して、年を取った方々が新たな挑戦をすることを阻害するつもりはありません。

 そういうつもりはありませんが、ただ、これが例えば、私の息子も実は新規就農なんですよ。今ちょうどやっている最中なんですが、まだ二十八です。となると、多分、五十年ぐらい農業をやるでしょう。例えば、私が今六十四です。新規就農したとしても、多分、頑張って十年か十五年かぐらいかなという感じじゃないですか。ということであれば、新しく育てるということであれば、できる限り、やはり若い人にこの農業の世界に人生を託してほしいという気持ちはあります。

 女性だから特別に枠を設けるということは、これは逆差別にもなりかねませんからありませんけれども、女性の方々の新規就農は、私の宮崎でも大変増えています。特に有機をやりたいとか、そういう先進的な農業に挑戦する女性の方々は、非常にたくましい方がいっぱいおられるので、そういった方々がグループをつくって地域の農業を支えているという現実もありますので、そういった女性の方々も、この間、大会も開いたばかりですが、支援してまいりたいというふうに考えています。

佐原分科員 ありがとうございました。女性が増えているということはうれしいことで、また、若い方がたくさんいた方がいいという、ちょっと耳の痛い話でございましたけれども。

 次は、農業年金についてお伺いいたします。

 農業年金は、どのような方が、どのような手続で加入できるか教えていただけますでしょうか。

 岩手で農業に従事した方から伺ったのですけれども、農業年金に加入しようとしたんですが、手続の方法が煩雑で説明も難しく、諦めたとおっしゃっていました。私も目を通しましたが、難しくて分かりづらいものでした。その方は結局、国民年金だけを受給することになったそうです。

 国民年金が幾らぐらいか大臣は御存じでしょうか。それだけで暮らせるとお考えですか。私は国民年金ですので、月五万円でした。どのように、大臣、この年金で、是非、農業年金について簡略化していただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 平成二十二年から、年金の支給に代えて一時金を選択する仕組みを導入いたしました。これによって受給者の数は大幅に減少したわけですが、一人当たりの減少、支給額も減って、大体、月額一万円未満の方が七割であります。数字を答えろということであれば、そういうことであります。

佐原分科員 ありがとうございます。それはちょっと低いなと思います。やはりびっくりいたしました。

 最初にお話しいたしました就農支援と同様に、ちょっと第一次産業を支える人たちへの支援になっていないんじゃないかなというふうに感じます。もっと簡単に、困った人がいたら助けられるという制度、もう少し金額も上げていっていただいたらいいかなというふうに感じました。

 二月五日の予算委員会省庁別審査で赤澤経済財政大臣は、石破内閣が取り組む地方創生二・〇に基づく方針として、第一次産業の重要性をお示しになられました。そして、将来にわたり食料を安定供給できる農業の確立が必要であること、農業で生計を立て、効率的かつ安定的な農業経営を目指す方々の生産性と付加価値向上の後押しをすると述べていらっしゃいました。

 また、一月十五日、日本記者クラブでの石破内閣の国づくりについての会見で、二〇二〇年から二〇四〇年の二十年間で、日本の生産年齢人口が約一千三百万人減る見通しとのことでした。その対策の一つとして、高齢者も働き手として期待する旨を示しておられました。

 高齢者も働き手として国は期待しておきながら、そこに支援が少ないというのは、国の方針とは矛盾しているとはお考えになりませんか、大臣。お考えをお聞かせください。

江藤国務大臣 農業者に対して、お年寄りだから支援をする、若いから支援をしない、そういうことではないんですよ。

 年金は、年金制度ですから、掛金に準じて払われるということは委員も御理解いただけると思います。この年金は、平成十四年、厚生年金と統合したという話をさっきちょっとしました。このときに、大幅に受給者が減ったんですね。中には月々数百円の方もいらっしゃって、そういう方々にしてみれば、毎月数百円をもらうのは大変じゃないですか。そして事務手続上も、その手続があるのは、まあ面倒といえば面倒じゃないですか。双方の利害が一致して、これを一括して受け取るという選択をさせていただいたんですよ。

 ですから、この制度自体については、そういう一括受給ということで特例一時金というふうになっておりますので、支給事業の終了時に農林年金は解散することというふうになっております。

佐原分科員 ありがとうございました。

 農薬の問題についてお伺いいたします。

 二〇一九年に行われた国会議員の毛髪検査で、二十八人中二十一人の髪の毛から除草剤のグリホサートが検出されました。グリホサートという農薬は、植物だけに効果があり、人間や生態系に影響を及ぼさないと言われています。でも、それは本当でしょうか。

 近年、安全性、薬害について多くの国々で様々な議論がなされています。世界中で使用禁止や規制強化に踏み切る動きがある中、日本は逆に規制を緩和しております。放射能と同じで、将来にわたってどのような身体への影響があるか分からないからこそ慎重に取り扱うべきで、微量なら大丈夫という話で済むことではないと私は思っています。大臣はどのようにお考えでしょうか。

江藤国務大臣 農薬については御通告がなかったので私の知識の範囲内でお答えをいたしますが、グリコサートについては前々からいろいろな御意見があります。

 日本の農業の特質として、高温で多湿であるということがあります。非常に農作物を作る上ではいい条件でもある反面、非常に難しい、いわゆる病害虫から農作物を守る上では非常に難しい農業を強いられているという現実があります。

 このグリコサートですか、グリコサホートでしたかね、グリホサートか、済みません。グリホサートについては、米国ではどうだとか、ヨーロッパではどうだとか、そういった意見も私も聞いております。しかし、それぞれの国において安全の基準は違います。例えば、ちょっと若干話がそれますけれども、例えば蜜蜂なんかに使う、いわゆる蜜蜂の病気を防ぐための薬については、ヨーロッパで認可されているものが、逆に日本では認可されていなかったりするんですよ。

 それぞれの国の安全基準に基づいて、あくまでも科学的見地に基づいて農薬の使用基準については認可をされますので、日本においては、様々な、これは、私は化学の方は分かりませんけれども、化学的な知見を集めた上で使っても大丈夫だろうというふうに判断をされているものだというふうに理解しております。

佐原分科員 ありがとうございました。勉強になりました。

 また、日本では、ゲノム編集トマトの苗が学校などに配られたことがございました。ゲノム編集トマトは、長期的な健康障害について全く調査されていません。ゲノム編集技術の放出と食品応用には、厳格な検査と規制が必要だと思います。しかし、日本政府は、環境影響評価や食品としての安全性検査、表示も義務づけておりません。ゲノム編集トマトも、安全性確認の試験が行われていません。

 江藤大臣、このような食品、ゲノムトマトを身内に食べさせたいと思いますか。

江藤国務大臣 またまた全く御通告のない御質問でありますので……(佐原分科員「申し訳ございません」と呼ぶ)いやいや、別に責めはいたしませんが、基本的にまた私の知識の範囲内でお答えをいたしますけれども、後ろもよく答えられそうもないので。

 例えば、日本で作っているお豆腐、原料は大豆でありますね。これは多くを輸入に頼っておりますが、この輸入大豆については、遺伝子の操作をしたものは日本は入れておりません。

 ですから、私の知識の範囲で、学校給食にトマトですか、ああ、何か後ろから来ましたが、ちょっと私も少し勉強をしないとですね。これをちょっと読みますと、国内で届出されたゲノム編集技術により開発された農作物、GABA、高蓄積したトマトが二例あるということだそうです。

 まあ、自分の身内に食べさせたいかどうかというのが質問の趣旨だと思いますが、私も孫が二人おりますけれども、余り、どうですかね。そうでなければ、そうでない方がいいけれども、そうであったものを食べたとして、じゃ、けしからぬというふうになるかというと、そうでもないんですかね。済みません、ちゃんと答えられませんで。

佐原分科員 大臣、ありがとうございました。

 通告がなかったということで、大変失礼いたしました。

 私も孫が五人おりますけれども、やはり食べさせたくはないですよね。このゲノム編集のトマトというのは、葉っぱがいつ出るとか出ないとか、いつ赤くなるとか、実がなる等々、その勉強のために学校に配られたようなんですね。でも、子供は赤くなるとおいしそうだから食べちゃうと思うんですよ。そういうことであれば、私も余り孫には食べてほしくないなというのが、本当の気持ちでございます。

 だから、ゲノムトマトにしても、そういう遺伝子組み換えにしても、子供への影響を私は一番心配しております。子供が食べる給食こそオーガニックで国が補助して実現していってほしいと希望しております。農水省と文部科学省と力を合わせて進めてほしいと願っております。

 品川区では、十月から、全ての公立中学、小学校の給食の野菜をオーガニックに切り替えるそうです。区が一括購入するんですって。子供たちにも農業者にも優しい、こういう取組が全国に広がるといいなと思っております。

 消費があれば農業のオーガニック化が進み、国がオーガニックを推奨し、支援することで、実現できると思います。新たな農業への参入者がいるのではないか。先ほど大臣もおっしゃったように、女性の方がそうやってオーガニックの農業をしたいという方も増えているというのを伺いまして、大変うれしく思いました。ありがとうございます。

 次に、減反政策の問題についてお伺いいたします。

 お米の生産政策について調べてみました。二〇一七年までに、輸出用米を生産しても生産目標数量にカウントせず、つまり、輸出用米として米を生産していれば主食用米を生産しているとみなさず、生産調整を行っている、生産目標数量を守っているので、農家は戸別所得補償がもらえるという運用がなされていたことは、大臣、御存じですよね。

小林主査 質問ですか。

佐原分科員 はい、質問です、済みません。

 そのことを、生産目標数量を守っているので、農家には戸別所得補償が渡ったというような運用をされていたということを、大臣は御存じですよね。(江藤国務大臣「はい」と呼ぶ)御存じだということで。

 二〇一八年に、戸別所得補償と生産目標数量が廃止されました。産地交付金として今度は輸出補助金が交付されることになったんですよね、大臣。でも、大臣、私は素人ですけれども、こんな回りくどいやり方ではなくて、農家への直接戸別所得補償など、簡素化された受け取りやすい補償制度にしたらどうでしょうかと思いますが、大臣、いかがですか。

江藤国務大臣 まず、輸出補助金のことについてですけれども、何を指しておっしゃっているかは私は分かります、分かっておりますけれども、あえて言いません。日本は、基本の理念として、輸出補助金は出しておりません、WTO違反ですから。これはやっていないということになります。

 ただ、新規開拓需要米、輸出に限らず、例えばセルロースだったり、様々な用途が米にはあります、米由来のプラスチックですけれども。そういったものについて、新しい需要を開拓するものについては支援をするということをやっております。これが今の日本の米に対する支援の形です。

 そして、回りくどいやり方だというふうにおっしゃいますが、ヨーロッパやアメリカに比べて、総農業生産に占める国の補助金の総額の割合は六割を超えていて、アメリカよりも率的には多いんですよ。世間ではやはり日本の方が薄いと。後ろからがんと来ましたが、日本が六一で、アメリカが三五%ですから、アメリカに比べれば、農業所得に占める直接支払いの割合は、金額ベースでいうと高い。

 ただ、私も大臣になって何度も答弁しておりますが、あらゆる補助金の形、それから支援の形、そういったものについては、一度全て、例えば日本型直接支払い、様々ありますけれども、そういうものを一度テーブルにのせて検討し直そうということで、今作業中であります。

 ですから、ただ、例えば、今日の農業新聞ですか、ほかの政党の方々ですけれども、全ての農地に対して、べたづけで十アール当たり三万円ずつ払ったらいいじゃないかということをおっしゃっている政党があるようですが、それをやると三兆円要るんですよ、三兆円。

 そして、例えば、条件の悪いところについてはそういうことも必要かもしれませんが、既に国が多額のお金を入れて基盤整備をやって、生産基盤の整備を行った上で、生産性向上もなされて、非常に悠々と経営しているところもあるんですよ。あるんです。そういうところには、じゃ、べたづけで払うのかというと、税金を使う上でその有効性が問われるだろうということであります。

 ですから、回りくどいと思われるかもしれませんが、農政は、それぞれ、やはりどういうところでどういう手当てが必要なのか。例えば、野菜価格安定制度であれば、十四品目を指定しておりましたが、今は十五品目を指定するようになりました。それから、収入保険もつくりました。これも画期的なものですよ。まあ、最初の一年目の積立金が高いということで若干評判が悪かったので、一年目の金額を下げてみたり、カバーの範囲を少し狭めて保険金の内容を安くしたり、様々な工夫をしています。ですから、一つの政策で全てのところがカバーできるようなそういう単純なものではないというふうに思います。

 ただ、制度自体は、なるべく簡略で、簡潔で、使いやすいものであった方がいいということは多分間違いないんでしょう。ですから、まだまだ私も勉強が足りませんが、しっかり現場に寄り添った制度の構築に努力をしていきたいと思っております。

佐原分科員 大臣、ありがとうございました。

 大変よいお答えをいただきました。そのように即して是非行政を行っていただきたいと思います。

 続きまして、雪の害についてですが、今年は、私のふるさと津軽地方では、積雪が例年より多く、記録的な豪雪でした。この豪雪のせいでリンゴの枝が折れる被害もありましたし、そのリンゴの被害の状況も、農道の積雪により見に行くこともできない、対処することもできなかったということを聞いております。

 例えば、豪雪の原因として、近年、海水温度が上昇し、たくさんの水分が蒸発したせいで雪の量が多かったのではないかという見解があります。

 海水の上昇による影響は、陸奥湾のホタテの養殖業も深刻な影響を受けまして、ホタテの稚貝が死んでしまいました。その被害は深刻だったんですね。

 そして、海水温上昇の原因の一つに、原子力発電所からの温排水ですね。冷却水が温かくなって海に放出されるわけですよ。それも海水温上昇の一つの原因になるのではないかなと思って、農業の観点からも原発は停止してほしいなと思っております。

 原発は農業にとっても悪影響だと私は実感しておりますが、大臣はそのようにお考えではありませんか。

江藤国務大臣 また全く通告のない御質問なので、若干戸惑っておりますが。

 今の農業は、電力がなければやれない農業がほとんどであります。私の地元なんかは施設園芸が多いので、やはり今はヒートポンプとか、いわゆるそういうものを使っている農業も多いですから、電力なくしてやはりいかなる産業も成り立たない。これは難しい話ですよ。原発の温排水が海水温を上昇させるほどのロットがあるとはとても思えませんが、まあ、局所的には上がるかもしれません。しかし、これが農林水産業全体の生産性に負の影響を与えているというような評価はちょっと乱暴ではないかなというふうに私は思います。

 しかし、例えば車でも、排気ガスを吐きながら走っていますよね。でも、車がないとやっていけない。原発も、私もなければない方がいいと思いますよ。しかし、これだけ資源のない国、こういう国が、これから更に、ITなんかが発達して、情報処理に電力を大量に使うようになってくると、今の電力の生産量ではとても足りない未来がすぐ先まで来ている。

 そういう時代にあって、原発をなくすということが、じゃ、農業の生産にプラスの影響なのかというと、多分、負の影響の方が大きいんだろうというふうに私は思っています。

佐原分科員 ありがとうございます。

 先日、県議会の議員が私に、あんたは反対だと思うけれども、この雪は、原発をどんどんやって、どんどん電力を使って解かしたらいいと思うがどうだねみたいなことを言われたんですけれども、でも、地熱を使った融雪とか、あるいはペロブスカイトという湾曲するガラスによる太陽光パネルとか、様々な開発する要件があると思うんですね。

 今こそ、ジャパン・アズ・ナンバーワンだった時代をもう一度取り戻してほしいなと思うんですよ。新しいメイド・イン・ジャパンのすばらしい技術で、農業も、それから経済も、その失われた三十年を取り戻してほしい。そのためには、農業も一緒になって研究をして、新しい分野へと踏み出していったらいいのではないかななんて、夢物語かもしれませんが、私は本当にそう思っています。

 理想を追求することで、きっと文化は変わっていくんだと思うんですね。人々の生活も変わっていくんだと思うんですよ。まあそれはそれで、お互いに利点も欠点もあると思います。ありがとうございます。

 ところで、大臣、三月三十日に予定されている、百姓一揆という名のデモがあるのは御存じでしょうか。

 昔、我が町、弘前ですね、江戸時代後期に、鬼沢というところに藤田民次郎という若者が住んでおりまして、凶作と重税に苦しむ農民を救うために、百姓二千人を引き連れて、弘前城の城下になだれ込んでいったことがございます。

 民次郎は、百姓たちの苦しみを少しでも取り除いてやりたい一心で藩主へ直訴し、自らの命を懸けて藩主や役人を目覚めさせ、三年間の年貢の減免が実現され、備蓄米も放出し、百姓たちの危機を救いました。

 民次郎の行動は、今もなお義民として語り継がれています。

 大臣、備蓄米ってどうお考えでしょう。

 お米を食べたくても、今、お米がないですよ。備蓄米放出って言っていますけれども、どうして入札制度なんでしょうか。年間五千トン以上の仕入れ実績があるなどの条件をクリアした業者だけが入札して備蓄米を売り買いできる、それ、おかしくないですかね。現に困っている国民がいるんだから、直接国民に届けてくださればいいのではないかなと思うんです。

 大臣、本気で農業従事者を救い、日本の食料自給率を上げ、日本の豊かで安全な食を未来に残すお気持ちはおありでしょうか。このままですと、この令和の時代にまた百姓一揆が起こるような気がするんですね。

 農業従事者を増やし、日本の農業を国が支え、日本の食の未来が豊かでありますように願いまして、時間となりましたので、ここで質問を終えたいと思いますけれども、大臣、でも、一言、その一揆に対しての御意見とかがあれば教えてください。

小林主査 江藤大臣、短くお願いいたします。

江藤国務大臣 どのようなものになるか私は存じ上げませんが、声を上げる、国民がいろいろな場面をつかまえて声を上げることは当然保障された権利でありますし、そういった行動については尊重したいと思います。

小林主査 これにて佐原若子君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口良治君。

山口(良)分科員 公明党の山口良治でございます。

 本日は、この予算委員会分科会にて質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、昨年十月の衆議院選挙で比例区北関東ブロック、地元栃木県から国政に送っていただきまして、初当選の人間でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 現在、日本の農業を取り巻く環境、状況は大変に厳しく、人口の減少、また少子高齢化に伴って、基幹的農業従事者数は、二〇〇〇年の二百四十万人から二〇二四年には百十一万四千人まで減少し、六十五歳以上が全体の約八割、平均年齢は昨年時点で六十八・七歳と大きく高齢化が進行をしております。このような構造的な問題に加えて、生産資材の価格の高騰など、厳しい経営環境に直面をしている状況でございます。

 その中で、昨年、食料・農業・農村基本法が約二十五年ぶりに改正をされ、来月の策定を目指し、現在、次期基本計画の詰めの作業が行われているかと存じます。日本の食料安全保障の確保、また持続可能な農業の実現に向けて、農業に国民の皆様から今大きな注目が集まっております。

 そうした中で、我が党公明党は、今年一月から、国会議員また地方議員が、全国各地の農林水産業の現場を巡り、課題をお聞きし、そして政策立案に向けて生かしていこうという取組を開始させていただいております。私どもでは、農業キャラバンというふうな名称で、斉藤代表を中心に全国各地を今巡らせていただいております。

 そこで、本日は、そうした中でいただいた御意見も踏まえながら、様々な観点から、地域計画、また新規就農を中心にして御質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、冒頭になりますけれども、先月三十一日の予算委員会にて、江藤農水大臣は、いわゆる水張り五年ルールの見直しについて言及をされました。私も、選挙期間中より、栃木県内を始め、地域の農家の皆様から様々な御意見やこの見直しはできないかというお声もいただいてきました。

 そうした中で、この国会におきまして、江藤大臣の、様々苦慮されたかと存じ上げますが、予算委員会での御答弁の中で大きな転換をしていくという方向性が示されました。その後、農水省からは、水田政策の見直しの方向性についての概要が公表され、水田政策を令和九年度から作物ごとの生産性向上への支援へと転換をしていく、根本的に見直す検討を開始するということが発表されました。

 そうした中で、地元栃木の農業団体の皆様、また農家の皆様からも、期待の声とともに、様々不安の声もございました。そうした中で、具体の内容はこれから決まるものと承知をしておりますが、現場で意欲を持って農業に取り組んでこられた皆様、また、これから農業に取り組んでいこう、始めていこうという皆様に向けて、政治、政策の側の人間が、本当にそうした皆様に納得していただけるような説明、政策が強く求められていると思います。私自身も、政治家の一人として、この大切な大きな転換の中で、この重責を重く受け止めております。

 そこで、長年にわたって農政に関わってこられました江藤大臣の御決意、意気込み、こういったものを初めにお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

江藤国務大臣 まず、山口先生におかれましては、全国キャラバンをやっておられるということで、大変すばらしいお取組だと思います。

 先日、選挙で苦杯を喫してしまいましたが、前稲津衆議院議員が大臣室にお越しになりました。彼は、この水活の前回の見直しのとき、本当に、石を投げられても、罵倒されても正論を吐き続けて、現場を回り、意見を聞き、説得をしてくれた人ですよ。それの力もあって、今回、私がたまたま、また大臣になりましたので、稲津先生の思いも受け止めて今回の結論に至ったということで、ほんの数日前ですけれども、お会いすることができてとてもうれしかったです。稲津先生からも褒めていただきまして、よくやってくれたと言っていただけたので。

 もう今先生がおっしゃったように、納得していただけるかどうかが一番大事だと思います。農政の転換に当たって、農政の方向性が変わることについては、みんな、猫の目であるとか、いろいろすぐ批判をされます。しかし、転換をする以上は、更に生産意欲を高めるものであったり、そして自信を深めるものであったり、そういったものでなければならないんだということは基本だと思っております。

 ですから、今年度中、七年度中に方針は決定いたします。そして、九年から新しい水田政策、おっしゃったように、品目に着目した支援に移るわけでありますから、そうなれば、当然、既存の政策も見直しますので、その政策を見直した中で出てくるお金も幾分はあるでしょう。しかし、新たな政策に移行するに当たっては更に予算が必要になる場面も当然予想されますから、それについては予算を要求してまいります。

 今回も、江藤が大臣になったのに予算が二十億しか増えていないじゃないかと大分予算委員会で責められましたけれども、ただ、予算というものは、具体的な政策がないと予算要求はできないんですよ。ですから、基本法は改正いたしましたが、これから基本計画を作って、このような五か年にわたる構造改革をするという骨子を示せば財務省とも堂々とやり合えますので、是非、公明党の先生方のお知恵もかしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

山口(良)分科員 熱い、また力強い御答弁、大変にありがとうございます。

 農家の皆様が安心をしてしっかり農業に取り組んでいっていただける、そのためには、私も政治家の、議員の一人として現場に飛び込んで、皆様の声をしっかり聞いて、それをしっかり大臣に、また農水省の皆様にお届けをしていく、そうした寄り添った政策実現、これが何よりも大切だというふうに思います。私もその責任を担っていく一人として、しっかり汗をかいていくことを決意させていただきます。ありがとうございます。

 大臣、この後は政府参考人の皆様に御質問させていただきますので、大丈夫でございますから、ありがとうございます。(江藤国務大臣「ここにいます、ここに」と呼ぶ)ありがとうございます。済みません。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 地域における農業の新たな就農、担い手の受入れを進めていくために、重要となってくるのが、今、農地の利用の目標となる地域計画の策定でございます。来月末を目指しこの策定が義務づけられているかと承知をしておりますが、十年後に誰がどの農地の耕作をしていくのか、この目標地図の作成、農地の円滑な継承や集積、集約に向けて、この取組が非常に私は鍵を握っていると思います。

 この地域計画の策定においては、全国の自治体また各種関係機関等には大変な今御尽力をいただき、スピードアップをして何とかして来月に間に合わせようということで、策定のスピードが今上がっていると承知しております。限られたマンパワーや様々な地域の特有の課題などもあり、一方で、スムーズになかなかこの策定が進まないという地域もあると存じます。

 次期基本計画の骨子案の中には、このように掲げられております。国のリーダーシップの下でその分析、検証を行うとされ、さらに、地域計画を核とした産地づくりを推進するというふうに書かれております。この地域計画の実行に向けて、しっかりと国がリーダーシップを取っていくというふうになっております。

 今後、国は、この地域計画をブラッシュアップをし、農地の利用の構想や担い手確保にしっかりとつなげていくためには、より一層の自治体また農業委員会等への財政支援等も含めた支援が必要であるというふうに考えます。私も、地元栃木の農業関係者、また農協の皆様からも、同様の御要望をいただいております。

 そこで、質問させていただきます。この地域計画策定が遅れている地域また自治体が出てくると思いますが、今の策定の現状も含めて、それらの地域への支援、また、今後、地域計画の実行に向け、国としてどのような支援をしていくか、御見解をお伺いしたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 地域計画でございますけれども、本年度末までに全国で約二万一千地区で策定予定でございます。

 昨年十一月末の策定数は九百六十地区にとどまりますけれども、策定の一歩手前である目標地図の作成につきましては、全市町村の約七割で実施済みという報告を受けております。こうした市町村につきましては、公告手続を速やかに行い、策定を完了するように働きかけています。

 一方、委員御指摘のように、作業が遅れている地域もございます。我々としては、何としても期限までに作っていただけるよう、毎月、全国ウェブ会議というのを実施しておりますけれども、そこで市町村等の具体的な悩みに対するアドバイスを行うとともに、悩みを抱える市町村には農林水産省職員が訪問するなど、誠心誠意お願いをして、市町村の取組をサポートしているところでございます。

 また、来年度以降でございますけれども、地域計画の内容がかなり幅がありますので、集約化の方針が明らかになっているという地域につきましては、計画実現のための機械、施設の導入等の生産基盤の強化の支援、また、引き続き地域の話合いを行うことが必要な地域では、農業委員会の活動や新規就農支援を重点的に進めるなど、地域の実態に応じた細やかな支援を行って、計画の実現を目指したいと考えております。

山口(良)分科員 この地域計画には、様々な補助金の条件、要件として、この地域計画がしっかりと整備されているか、策定されているかということがひもづけをされているというふうに承知しております。何とかしてこの地域計画を仕上げなければ、様々な、いわゆるそういう状況の変化というか、補助金が申請もできない、そうした中で、この計画自体がある意味、粗雑なものになってしまったり、急ごしらえのものとなってしまってはならないというふうに考えます。

 ですので、ある意味、農家の皆様にとっては将来を決める大事な話合いの場でございますので、今、様々関係者の皆様には御尽力いただいておるかと思いますが、国からのもう一重の支援、バックアップをお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 この地域計画と関わりますが、地域計画の作成を通して具体的に見えてくるものが、集約がなかなか進まない農地、また、集約が進んだとしても、なかなか受け手がいない、そういった農地がどこなのか、どれぐらいあるのかということが明らかになってくると思います。今後十年間を目指して、それらの農地にいかに新規就農者を誘致していけるかが大事なポイントであります。

 令和七年度予算案では、そのための体制づくり、誘致の実践、就農前後の方々に対するトータルサポートなど、従来からの拡充が示されているかと承知をしております。

 新規就農者や担い手の誘致においては、地域の中のみならず、やはり人口減少しておりますので、どうしても地域の中からはなかなか出てこないということで、しっかり地域外からの積極的な誘致も必要となってくるかというふうに思います。例えば、なかなか担い手が見つからない農地で、スマート農業や有機農業の導入を促進するために活用していくなど、地域外の担い手を呼び込む事業も必要であると考えます。

 我が党の提案によりまして、六年度補正予算では、新規就農者への経営移譲や初期投資などを支援する補助金が計上され、また、七年度予算案では、総合対策を拡充し、担い手のいない農地に新規就農者を誘致をする事業が新設をされたかと、盛り込まれているかと承知しておりますが、この地域計画を通して見えてきた、担い手のいない農地への新規就農誘致に向けた国としての支援、具体的にどのように講じていくお考えか、御見解をお伺いいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、地域計画において、受け手のいない農地というのも明らかになってくるという実態がございます。そのため、地域計画実現に向けて、受け手のいない農地の中に新規就農を促進するエリアなどを設定をして、地域外も含めまして、就農希望者を積極的に呼び込む取組を進めております。

 そのため、農林水産省におきましては、委員御指摘があった令和七年度から、地域の関係機関による誘致体制の整備や研修農場の整備、農地の整備を一体的に支援するという予算を措置しております。また、新規就農対策の拡充として、就農に向けた研修資金や経営開始資金の交付、あと、経営発展のための機械導入を支援する予算等を措置しているところでございます。

 このような地域と新規就農者への総合的な支援を通じ、将来の受け手のいない農地の解消と、農業への人材呼び込みと定着を図り、地域計画の実現を後押ししていきたいというふうに考えております。

山口(良)分科員 ありがとうございます。

 地域計画を通して見えてきた担い手のいない農地へのしっかりとした対策、ありがとうございます。力強く進めていただきたいと思います。

 もう一方で、集約がしっかりと進んでいくと同時に、やはり日本の農地面積の約四割を占める中山間地域への支援というものも大事になってまいります。

 そこで、中山間地域等の直接支払い制度についての質問をさせていただきたいと思います。

 しっかりと大規模化を進め、生産性を上げていくと同時に、中山間地域、その中で、これまで小規模の農家の皆さん方が大変な思いで農業を営まれ、地域社会を支えてこられたことは忘れてはならないというふうに思います。

 地元栃木の農家さんから伺ったお話ですけれども、中山間地域等直接支払制度によるいわゆる買物支援などの、そうした生活支援に対する集落機能強化加算、こういったものを活用して、スーパーを買物だけでなく地域交流の場として活用していったり、ボランティアの確保、インターンの受入れといった人材確保も、この加算を通して支援をしているという地域があると。二三年度も五百五十五の協定が取り組み、加算が始まった二〇年度からは年々増えているというふうに伺っております。

 この集落機能強化加算とは別に、ネットワーク化加算、またスマート農業加算、こういった加算措置が設けられておりますが、生活支援に対する加算ではなく、あくまでも農村振興に対する加算となると思います。

 持続可能な地域社会の維持発展のためには、高齢者等に対する生活支援をますますしっかりとしていく必要があるかというふうに思います。

 この集落機能強化加算、非常に重要であります。この加算については、協定を結んでいる地域への経過措置を除き、新規での加算措置は廃止をされる方針というふうに認識をしております。

 今後も国として、生活支援を目的とした加算措置を継続、延長していく、若しくは他の加算措置で生活支援を対象としていくなど、何らかの措置を取っていくべきではないかと考えますが、見解をいただければというふうに思います。

前島政府参考人 お答えいたします。

 これまで集落機能強化加算を活用してきた五百五十五の集落協定につきましては、来年度からの第六期対策において、取組が継続できるよう、経過的な措置を講ずることとしているところでございます。

 一方で、集落機能強化加算につきましては、体制が脆弱な小規模協定の実施率が低いなど、集落協定の体制強化への効果が十分でなかったことなどが課題でございました。

 このようなことから、集落協定の体制強化に向けた加算措置につきましては、来年度からは、集落協定のネットワーク化や統合を支援するネットワーク化加算、リモコン式自走草刈り機等の導入などを支援するスマート農業加算に移行することとしております。

 なお、昨年末の段階で、来年度から新規で集落機能強化加算の活用を検討していた集落に対しましては、これまで、交付金の基礎部分の活用やネットワーク化加算への移行などの代替策の提案など、丁寧に対応してきたところでございます。

 これを受けまして、既に多くの集落で代替案が決定されたところでございます。引き続き、検討中の集落等に対しましてサポートを続けてまいる考えでございます。

山口(良)分科員 ありがとうございます。

 様々、地域の状況によってこの協定がなかなか機能しない、強化されないという課題があるということをお伺いいたしました。農家の皆様とともに地域社会の生活をしっかりと支えていく、これも非常に大事な農村振興の柱だというふうに思いますので、引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 次に、一方で、若手新規就農者の育成も重要でございます。

 私も、先週の金曜日、地元栃木の山口農園さん、私と同じ山口なんですけれども、親戚関係ではないんですけれども、そちらに行って様々お話を伺わせていただく中で、国として、新規就農総合対策として、四十代以下の農業従事者の拡大を目指して、今様々な施策を講じられていますが、次期基本計画では具体的な将来の農業者数の目標の設定が示されていない。

 そうした中で、生産性を向上させていく、ただ人を増やせばいいではない、それは当然大事なことでありますが、やはり、そうはいっても、日本の地形を考えると、先ほど申し上げました中山間地など、大規模化に向かない土地、農地もあります。そうした中で、人手が必要な作業や、そういった地域もあるかと思います。

 そういったところにもやはり若い就農者も必要かというふうに思いますので、次期基本計画の中にこういった目標が盛り込まれていないということで、若手の育成、確保、持続可能な農業の実現に向けた、ある意味KPIのしっかり設定ということで、是非、御検討いただければという部分と、特にその中でも四十代以下の年代の指標などをお示しいただければというふうに思いますが、御見解をいただければというふうに思います。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘されましたとおり、我が国の農業を持続可能なものとしていくためには、将来を担う若者の皆様方に就農いただくことが極めて重要であります。

 次期基本計画における目標につきましては、食料・農業・農村政策審議会企画部会でまさに議論をいただいているところでありまして、引き続き、関係の皆様方からの御意見をしっかり伺いながら、取りまとめに向けた整理を進めてまいりたいと考えております。

山口(良)分科員 ありがとうございます。

 若手就農者の国を挙げての育成に向けた目標感、しっかり共有していきたいというふうに思います。

 ちょっと時間もなくなってまいりました。

 続きまして、親元就農への支援継続や拡充について質問させていただきます。

 令和六年度補正予算で、新規就農者確保緊急円滑化対策として、親元就農を含む新規就農者の経営継承、発展に向けた支援、これが講じられました。これまでは、品目が違うものでなければならない、こういった要件だったものが、同じ品目であっても親元就農への支援をしていくという大きな見直しがされたこと、大前進ではないかというふうに思います。

 そうした中で、なぜ親元就農が大事かといいますと、元々その地域社会の中で農家を営んでこられた、しっかりとしたネットワーク、また地域社会に溶け込んでいる、中核となっているような農家さんの後継ぎが帰ってくるということで、その方が今後の地域のリーダーとなって、活性化、また様々な核となる人材として活躍していくことができる、そうした意味で親元就農をしっかり進めていくべきではないかと思います。

 キーワードはまさに営農意欲、こういったものを持った、いわゆる二代目、三代目、そうした若い親元就農が進むような、そうしたバックアップを国として進めていただきたいと思います。

 親元就農ですけれども、様々な要件もあるかと思います。そうしたものが、当然、生産性を上げていく、バージョンアップさせていく、これは大事なことでありますが、様々な要件があり過ぎますとなかなか広がらないという懸念もされますので、しっかりとした支援の効果の検証をした上で、今後、これは先の話になりますけれども、予算の増額や継続、拡充をしていっていただきたいと思いますが、御見解をいただければというふうに思います。

杉中政府参考人 委員御指摘のように、親元就農等についての予算の拡充をいたしました。

 現在、新規就農者については、特に四十九歳以下に着目した、いわゆる若年層が非常に少ないという、アンバランスになっているという課題がございますので、その是正を行うために、できるだけ四十代以下の方を対象として施策を実施しております。

 その四十九歳以下の意欲ある新規就農者を一層確保するという観点から、その裾野を広げるという観点で、親元就農や第三者継承を含めた新規就農対策を拡充いたしまして、初期投資への支援について、経営を承継する際に必要となる機械の修繕、あと老朽施設の撤去なども支援の対象に追加するとともに、補助を拡充した。あと、経営開始時の百五十万円の資金についても、親元就農する場合、親と同じ品目であっても経営のバージョンアップを行えば支援を受けられるということを明確に打ち出したところでございます。

 他方、五十歳以上の方につきましても、地域の担い手として非常に重要でございますので、長期、無利子である青年等就農資金の貸付けや、実践的な研修農場の整備などの農業技術の習得に向けた支援を行っているところでございます。

 農林水産省としては、これらの事業内容について現場に対して丁寧に説明を行うとともに、現場の実態や支援の効果を把握、検証しながら、効果的な施策の実施に努めていきたいと考えております。

山口(良)分科員 ありがとうございます。

 私も昨年、候補者ではありましたが、現場を歩く中で、親元就農したい、させたいんだけれども、やはりいろいろな要件でできないということで足踏みしているというか前に進まないという農家さんがたくさんいらっしゃいましたので、今回のこの大きな、裾野を広げるチャンスでございますので、しっかりと国の方で自治体やまた現場に周知していただいて、しっかり手を挙げられる農家さんがたくさんできるように御支援いただければというふうに思います。

 先ほど、あと、四十代ということで、しっかり若手のというお話がありましたが、やはり今、地方移住が広がる中で、五十歳以上の中高年の方々も、自分のキャリアを見直して、地方に戻って農業をやりたいという方も増えてきております。地方自治体によっては、五十歳から五十四歳を対象にして支援制度を追加して、拡充して、四十代だけでなくて五十代半ばまで支援していこうという地域もあると承知しておりますので、しっかりと、五十代もまだ人生百年時代の中では若い世代に入りますので、是非御支援の方をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 農村コミュニティーについても質問をさせていただきたいと用意しておりましたが、ちょっと時間もなくなってまいりましたので、ここは割愛をさせていただきたいというふうに思います。

 今日初めて私もこの予算委員会の分科会にて農業政策について質問させていただき、冒頭に農水大臣より、我が党の農水を担ってこられた稲津前衆議院議員のお話をいただいて、本当に農家の皆さんの中に飛び込んで、そして一緒になって、泥まみれになって、皆様と共に農業振興、日本の農業を支えてこられたという先輩のお話を大臣からお聞きすることができたことを、私は本当に今日、胸にしっかりと刻み込んで、これからの日本の農業の更なる発展のために、そして食料安全保障実現のために、食は国の基である、これをしっかりと担える政治家としてこれからも全力で汗を流し、頑張ってまいる決意でございます。この決意を申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 本日は大変にありがとうございました。

小林主査 これにて山口良治君の質疑は終了いたしました。

 次に、加藤竜祥君。

加藤(竜)分科員 遅くまでお疲れさまでございます。長崎二区選出の加藤竜祥でございます。

 本日は、このような機会を賜りましたこと、まずもって心から感謝申し上げる次第でございます。

 私のふるさと長崎県は、多くの離島、半島から成り、地形は複雑で急峻地が多く、耕地条件が決して恵まれているわけではありません。しかし、土地改良事業、畜産クラスター事業等の生産基盤強化に積極的に取り組み、生産性を高めた結果、二十年前と比べ、農業生産額が一〇%程度向上いたしております。一経営体当たりの農業収入も、十年前と比べて一二二%、向上しております。

 石破総理は地方創生二・〇を掲げておりますが、私の選挙区で地方創生を成し遂げるためには、基幹産業である一次産業を維持、成長させることが最も重要な課題であると捉えております。

 本日は、そうした観点から、地元の一次産業の声を届ける機会をいただいたことにありがたく思いながら、時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 まずは、合理的価格形成についてでございますが、近年の国際情勢の急速な変化により、生産資材の高騰はいまだ高止まりの状況でございます。我が国の食料安全保障強化の観点から、食料供給の根幹たる農家の方々が営農し続けていただくことが重要であり、農家のコストをいかに価格に反映させるかが農政の重要課題となっております。

 これについては、既に農水省の関係部会等により審議を重ねられ、今国会において食品等流通法、卸売市場法の改正案として提出されると認識をしております。国会審議の前で大変恐縮ではございますが、農家の方々の注目度は大変高い事項でございますので、触れさせていただきます。

 この法律案の対象となる品目の範囲はどうするのか、法案の趣旨に実効性を保つために国がどこまで関与すべきかといった大きな論点があることは承知いたしております。

 多くの論点の中で私が最も注目しているのは、コスト指標でございます。やはり、コストが適切に反映されているのかを客観的に判断すべき指標を設けなければ、合理的な価格か否かの判断はできません。問題は、その指標をどこまで詳細なものとするかでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、私の地元長崎二区は、中山間地や離島、半島といった急峻な地形が多く、営農の生産性が高いとは言えません。当然、大規模かつ機械化している農地とは生産コストが異なります。

 また、長崎県は、地理的に日本の最西端に位置し、主要消費地までの距離が遠く、輸送コストが都市近郊と比べて三、四倍以上かかり、大変重荷となっております。さらに、農産物の輸送は手作業が多く、労働時間が長いため、ドライバーの確保が難しくなっており、ガソリン価格の急騰も相まって、物流コストが最大のネックとなっております。この物流コストを下げるために地域で様々な工夫をしておりますが、物理的距離は何ともし難い問題でございます。

 そこで、お尋ねをいたします。

 合理的価格を形成するに当たって、農水省は、品目の範囲やコスト指標をどのように考えていらっしゃるのか。特に、コスト指標を判断するに当たって、農地の規模や状況、大消費地までの物理的距離を考慮するのか。御所見をお伺いをいたします。

宮浦政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員から御指摘ございました法案でございますが、現在、最終調整中でございます。

 法案の対象自体は食料全般でございますが、御指摘のございましたコスト指標、これは、消費者の値頃感から販売価格が決められて、逆算で小売業者などへの納入価格が決まるといったような、コストが認識されにくい品目、こういうものを指定しようというふうにしているところでございまして、こういった指定品目について、コスト指標を作って、費用を明らかにしていこう、こういうものでございます。

 指定品目の候補といたしましては、現在、米と野菜、飲用牛乳、それから豆腐、納豆に関して関係者間で協議を進めているところでございまして、このコスト指標につきましては、御指摘のとおり、各品目ですとか各産地の実情をきちんと踏まえて作っていく必要があるだろうと考えているところでございます。

 特に、産地の農地の規模ですとか、それから輸送距離、これはもう本当に産地に応じて様々でございます。当然、こういった実情をきちんと考慮する、また、御指摘のありましたとおり、どこまで詳細にするか、できるのか、こういったことにつきまして、引き続き関係者と十分協議をしていくという考えでいるところでございます。

 このほか、議員から輸送費のことがございました。今回は、費用を考慮した価格形成の柱とは別に、持続的な供給に資する事業活動を促すという柱を法案の中に立ててございます。その中では、流通の合理化に取り組む計画を作成して認定を受けた場合には支援措置を講ずるという措置も講じておりますので、輸送費の負担が大きくなっている実情を踏まえながら、きちんと対処できるような法案になるよう、最終調整を進めてまいりたいと考えているところでございます。

加藤(竜)分科員 明確に、そしてまた詳細に、ありがとうございました。

 東京などの都市近郊の農業と、私の地元長崎県を始め地方の農業では、生産コストが大きく変わってくるのは当然なんだろうと思いますが、物価高騰の中でも、条件不利地域において様々な経営努力をなされていらっしゃいます。どうか農水省には、こうした農家の思いに寄り添っていただいてコスト指標等を設定していただきますように、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、畜産についてお伺いをいたします。

 長崎県の農業産出額一千五百億円のうち、四〇%が畜産関係であります。しかし、生産資材の高騰に加えて、長崎県の畜産は、飼料を育てる農地面積に乏しく、輸入飼料の高騰の影響を大きく受けております。

 消費については、物価高騰に賃金上昇率が追いついておらず、国内の和牛消費が伸び悩んでいることで枝肉相場が低迷し、これにより肥育業者の買い控えが起き、子牛価格も影響を受けて、悪循環が生じています。これまでにない大変厳しい状況であるとの声を数多くいただいております。

 畜産を将来において持続可能な産業にしていくためには、まず、経営安定対策を充実させて、足下の物価高騰による収入減、経営の弱体化を防ぎ、国産飼料を増やす取組を推奨し、国内需要減に備えた輸出拡大に向けた取組を支援していくことが必要であると考えております。

 その中でも、国産飼料を増やす取組については、私の地元長崎県では、中山間地域が多く、飼料の需要は高いものの、効率的な飼料生産に苦労すると思います。一方で、遊休農地もあり、これを労働コストが比較的低い飼料の生産に利用できれば、飼料の自給化、調達コストの抑制につながると思います。

 そこで、農水省として、国産飼料の生産、利用を拡大していくために、耕畜連携を含めた飼料の地区内生産の環境整備が必要であると考えますが、御所見をお伺いいたします。特に、長崎県のような中山間地において飼料の国産化をどのように図っていくのか、お伺いをいたします。

松本(平)政府参考人 お答えいたします。

 持続的な畜産物生産を実現し、畜産経営の安定を図るためには、飼料生産基盤に立脚した生産に転換する、このことが重要と認識しております。

 このため、草地の整備等による牧草の収量、品質の向上、コントラクターなどの飼料生産組織の体制の強化、これらの取組を支援しているところでございます。

 特に、中山間地域におきましては、草地等を整備する場合におきまして面積要件を緩和、このほかに、必要な機械の導入への支援をしているところでございます。

 これらを通じまして、国産飼料の生産、利用の拡大を推進してまいる所存でございます。

加藤(竜)分科員 具体的な御回答をありがとうございました。

 飼料用作物の国内生産力を向上をさせ、耕畜連携を進めていくためには、生産性の高い農地が必要になってくると考えております。そのために必要になるのが、基盤整備事業や飼料生産に対する財政的な支援でございます。飼料用作物の生産拡大と畜産業の安定のため、万全の御支援を引き続きまたよろしくお願いを申し上げます。

 次に、新規就農者への支援拡充についてお伺いをいたします。

 我が国の食料安全保障に関わる大きな問題は、担い手の確保でございます。我が国の農業は、今後二十年間で深刻な担い手不足に直面すると予測がなされております。

 農水省のデータによれば、基幹的農業従事者は、ここ十年間で約百七十六万人から百十一万人と、大幅に減少しています。さらに、平均年齢も、二〇二五年には六十九・二歳と、高齢化が進行しております。特に中山間地域では、二〇二四年までに、人口が二〇一五年の四六%にまで減少し、高齢化率も五三・七%に達すると予測されております。

 そのような中、食料安全保障を強化するためには、もうかる農業を実現すること、このことが極めて大事になってくると思います。親や親族が農業で稼げるという背中を見せることで、子供が農業に意欲や興味を抱くきっかけになり、親も安心して子供に託すことができます。私も、この視点が担い手対策の大きな眼目であると思っております。

 さらに、安定して若い担い手を確保するためには、農水省でも農地の集約、規模拡大、スマート農業技術の導入といった多角的な対策をしておりますが、新規就農への直接の手厚い対策が必要であると考えます。

 特に、施設やノウハウを持つ親元就農や、何らかの事情で農業から離れなければならなくなった農業の知識や資産を受け継ぐ第三者継承の支援を充実させることが新規就農者の確保につながりやすいと思います。親や先代から受け継いだ施設を改修し、若い知見を生かしてIT化するなど、意欲とアイデアを持った若手就農者を歓迎するとともに、経営開始資金を組み合わせることにより、収入が不安定な就農初期のリスクをなるべく小さくすることが担い手確保につながると考えております。

 また、新規就農する場合には経営のリスクを負う点は、新規就農者でも親元就農でも第三者就農でも変わりませんし、農業の即戦力を確保するという意味では、農地、ノウハウ、機械や設備を引き継ぐ親元就農、第三者継承への期待は高いと思います。江藤大臣も、十二月六日の参議院予算委員会において、新規就農者への支援を大幅に見直すと御発言されました。

 そこで、お尋ねをいたします。

 農水省として、農業に新規に参入してくる若い担い手を増やすためにどのような支援が必要と考えているのか、特に親元就農や第三者承継への支援の拡充も含めて、若い担い手の確保への決意をお聞かせください。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 今後の農業を担う意欲ある新規就農者の確保、これは大変重要だと考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、様々な資金による支援のほか、就農相談会の開催、実践的な研修農場の整備等のサポート体制の整備、また、農業大学校、農業高校等における農業教育の高度化などの取組を支援をしております。

 さらに、委員御指摘のように、令和六年度補正予算から、親元就農や第三者継承を含めた新規就農を行うための拡充を行いまして、初期投資への支援について、経営を継承する際に必要となる機械、施設の修繕や、老朽設備の撤去なども支援対象に追加するとともに、国の補助上限を引き上げること、また、経営開始時の年百五十万円の資金支援につきましても、親元就農する場合、親と同じ品目であっても、経営のバージョンアップをすれば支援を受けられることを明確に打ち出すなどの対策を講じたところでございます。

 このような支援をしっかり行うことによって、次代を担う新規就農者の育成、確保に取り組んでいきたいと考えています。

加藤(竜)分科員 前向きな答弁、本当にありがとうございます。

 親元就農への支援の充実は、以前から地元でも大変希望の声が多かったので、大変今喜ばれている方も多くいらっしゃいます。農水省におかれましては、引き続き、新規就農への手厚い支援と、今回の支援の拡充について各自治体に丁寧にお伝えいただきますように、どうぞよろしくお願いをいたします。

 また、我が国の食料安全保障強化という観点からは、営農を継続していただくことが重要ですが、やむを得ない事情で離農しなければならない状況になった際に、周辺の生産者が離農者の生産基盤を誰かが引き継いでいかなければ、食料供給力が減退をいたします。限られた農地や生産基盤で食料の生産性を強化していくためには、生産基盤の規模拡大は必要であると考えております。近隣の生産者が生産性を高めるために離農者の生産を引き継ぐことは、食料供給の強化の面から重要であり、これに国が経済的支援をすることは国民全体の利益になると思います。

 そこで、お尋ねをいたします。

 離農者の生産を近隣の農家が引き継ぎ、既存生産者が規模拡大に向けた投資を行うことに対する国の支援について、どのように考えているのか、御所見をお伺いいたします。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 今後、農業者が大きく減少する中で、離農者の農地の受け手となる経営体を確保することは重要だというふうに考えております。

 現在、各市町村におきまして、将来にわたり地域の農地の適正な利用を確保するため、将来の農地利用の姿を明確化し、農地の集積、集約化を進める地域計画の策定を進めているところです。

 地域計画に基づき農地等を積極的に引き受け、規模拡大を目指す担い手を支援するため、令和七年度予算において、農地利用効率化等支援交付金において地域農業構造転換支援タイプを新設し、補助上限の引上げを行うとともに、リース導入を支援対象として追加するなど、農地の引受手となる農業者の負担軽減を図ることとしています。

 また、産地生産基盤パワーアップ事業では、後継者不在のハウスなどを新規就農者や担い手へ継承するために必要な再整備、改修を支援しております。

 今後とも、農地が将来にわたって継承されていくよう、意欲ある農業者の取組をしっかり後押ししてまいります。

加藤(竜)分科員 前向きな御答弁、ありがとうございました。

 次に、国境離島の水産業についてお尋ねをいたします。

 国境離島である対馬市や壱岐市では、水産業が主要な産業となっております。イカ釣り始め、クロマグロ、ブリなどの一本釣り、沿岸での定置網漁業、マグロや真珠の養殖業が盛んです。我が国の国境離島を守るためには、国境離島地域の社会を守り、人が住み続けるための国の支援が必要であり、水産業の振興が鍵となります。

 特に、壱岐のクロマグロについては、冬の大間、夏の壱岐と言われるほど高付加価値があり、対馬や壱岐の漁業者にとってクロマグロは重要な収入源であります。経済的に大変苦労しながら厳しい資源管理に協力いただいたことで、昨年末にはWCPFCでクロマグロの漁獲上限が増枠となりました。この結果により、大型魚の漁獲枠は約五〇%増加し、小型魚も約一〇%増え、まずはよい方向に向かっているのだと思います。しかし、今回漁獲枠が増えたとはいえ、一人一人にならすと、マグロ一本多く釣ることができるにすぎないそうです。

 強度の資源管理を収入の面で支えていたのが積立ぷらすです。今後も、クロマグロの強度資源管理を実施している漁業者向けに、通常よりも高い補填率が適用される特例措置、いわゆる強度資源管理タイプは継続されると伺っておりますが、積立ぷらすの今後の在り方に不安を覚える漁業者は多くいらっしゃいます。

 クロマグロの資源管理と積立ぷらすの今後の在り方、クロマグロの強度の資源管理に取り組む漁業者への支援につきまして、どのように考えているのか、水産庁の御所見をお伺いいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月のWCPFCの年次会合におきまして、太平洋クロマグロの漁獲上限の増枠が採択されたところでございます。今回の増枠は、全ての関係者の資源管理の取組、御苦労の結果というふうに認識をしているところでございます。こうした中で、増枠を踏まえた国内配分におきましても、沿岸漁業者への配慮をした考え方で行ったというところでございます。

 また、積立ぷらすは、このような資源管理に取り組む漁業者の経営安定に対して重要な施策でございまして、今後とも、持続的に機能するよう適切な実施に努めてまいることとしておりますし、また、御指摘のとおり、クロマグロについては引き続き強度資源管理タイプの対象とするということとしているところでございます。

 さらに、クロマグロの混獲回避の取組支援の方の拡充も行いましたし、さらに、漁獲対象を小型魚から大型魚に転換するための支援の導入といった措置も取らせていただいているところでございます。

 さらに、御指摘のとおり、離島の水産業の振興、これは様々な、多面的な意味で重要だというふうに考えております。このため、離島漁業再生支援等交付金によりまして、漁場の管理、改善や、漁場監視等の取組に対して引き続き支援を行っていくこととしているところでございます。

加藤(竜)分科員 前向きな御答弁を本当にありがとうございます。

 国境離島の水産業に携わる方々は、大きな経営的影響を受けながら、クロマグロの資源管理に取り組んでまいりました。積立ぷらすの件だけではなく、離島の水産業を支援することは国境を守るという国家的意義があるということを忘れずに政策決定してくださることを、これからも引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、有明海と橘湾の水産業についてお伺いをいたします。

 有明海、橘湾は、かつては宝の海と言われておりましたが、近年の海洋環境の変化により、漁獲量が減少し、捕れる魚種も大きく変わり、現場は悩まされております。そのような中、捕る水産業から育てる水産業に転換をして、カキやトラフグ、昆布、ワカメといった高収益な品目の養殖にチャレンジしておりましたが、深刻な赤潮被害が発生をして、漁業経営が軌道に乗らない状況であります。

 令和五年に橘湾で大量発生した赤潮では、トラフグやシマアジなどの養殖魚百十万匹がへい死し、最終的に被害額は約十一億でございました。令和六年六月から八月にかけて発生した赤潮では、長崎県内だけで十六億円の養殖魚のへい死被害が発生をしました。

 赤潮のような自然災害による営業補償は、基本的には共済制度により救済されるべきことは理解をいたしております。しかし、こうして毎年赤潮が発生し、甚大な被害に悩まされているようでは、漁業経営の見通しが立たないばかりか、水産業への意欲が低下しております。

 そこで、お尋ねをいたします。

 毎年のように赤潮被害に悩まされている有明海、橘湾の現状について、水産庁はどのように受け止めているのか。水産管理、赤潮の発生を早期に検知するためのモニタリング体制や被害緩和措置が必要であると考えますが、どのような御支援をしていくのか。お伺いをいたします。

森政府参考人 お答えいたします。

 長崎県におきましては、御指摘のとおり、橘湾等におきまして、令和五年、令和六年と連続して大きな赤潮被害が生じたというところでございます。こうした被害に対しましては、漁業共済でございますとか農林漁業セーフティネット資金等によりまして対応してきているところでございます。

 また、赤潮被害の軽減のためには、早期に赤潮の発生を予測するとともに、赤潮によります養殖魚のへい死を防ぐための避難区域の確保ですとか、生けすの大型化や足し網などの対策が重要だと考えております。

 長崎県におきましても、昨年九月に、県内の漁業者が赤潮対策に取り組んでいる鹿児島県の方に視察に行かれて、この事例も参考にしながら、モニタリングの強化ですとか生けすの大型化、足し網等の対策を検討しているというふうに承知をしております。

 農林水産省としましても、こうした取組に対する支援を含め、今後も養殖漁業者が意欲を持って養殖業の経営を継続していけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

加藤(竜)分科員 ありがとうございます。

 地元では、赤潮が発生しやすい夏の時期を避けて育てられるサーモンの養殖に取り組むなど、苦しい状況においても様々な工夫をされ、水産業を営んでいらっしゃる方もいらっしゃいます。水産庁が研究を進め、情報発信を積極的に行うことで、意欲ある漁業者を赤潮被害から守る取組を引き続きどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最後に、有明海再生に向けての取組についてお伺いをいたします。

 諫早湾干拓の問題について、非開門での解決ということで一定のめどがつき、国も、有明海再生のために十年百億円の有明海再生加速化対策交付金を決定し、現在、沿岸の各県と協議をしながら、有明海再生に向けた新たなステージが始まったと理解をいたしております。

 沿岸の漁業者の皆様方は、海底耕うん事業や藻場造成への支援強化、さらには養殖業のICT化といった取組への支援を求める声を伺っており、国による手厚い支援が有明海沿岸の漁業者の未来への希望となっております。

 そこで、お尋ねをいたします。

 農林水産省として、有明海再生に向けての思いを改めてお聞かせください。

江藤国務大臣 お父様は非常にこのことは中心的なお立場で取り組まれてこられて、私はお父様の下でずっと働かせていただいたので、私も大臣になってすぐに有明に行こうと思ったんですが、ちょうどその時期は、ノリで忙しい、今来られてもなかなか、かえって、こうだということなので、年が明けても、どうですかとお尋ねをしたんですが、まだ忙しいということでありますので、四月ぐらいに、一度関係者の方々が東京に来られて、大臣室にお越しになるそうです。それをまず承った上で、日を改めて現場にも伺いたいと思っておりますが、決して後回しにしているわけではないということだけは申し上げたいと思います。

 非常にこのことは、林農林水産大臣のときに私が副大臣で、ずっと有明の担当をしました、二年にわたって。それ以降も、原弁団の方々は毎年私の国会事務所をお訪ねするような関係性もずっと築いてきましたので、非常に思い入れが強いです。

 そして、いよいよ、開門によらない、非開門ということで司法の決着を見て、そして百億円の交付金ができました。この間、関係者の方々も来ていただきましたが、なかなか、それぞれ各県によって思惑も違いますし、使い勝手についても御意見がありました。

 ですから、せっかくの交付金が、ICTの導入も含めて、藻場の再生も含めて、経営改善も含めて、しっかりと有明の再生事業に資するように、現場の声を聞きながら、事業の実行をしてまいりたいと考えております。

加藤(竜)分科員 大変前向きで、そして現場に寄り添った御答弁を本当にありがとうございました。

 これからもしっかりと、有明海が再生できるように、私も現場主義を大事にしながら、地元の皆様方と協議をし、時間はかかるかもしれませんけれども、元の有明海、豊かな海に戻るように努力をしてまいりたいと考えております。

 時間も来ましたので、質疑を終わります。ありがとうございました。

小林主査 これにて加藤竜祥君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十八日金曜日午前八時より開会し、引き続き農林水産省及び環境省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後八時五分散会


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