第22号 令和6年5月28日(火曜日)
令和六年五月二十八日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 古屋 範子君
理事 斎藤 洋明君 理事 田所 嘉徳君
理事 田中 良生君 理事 本田 太郎君
理事 湯原 俊二君 理事 吉川 元君
理事 中司 宏君 理事 中川 康洋君
井原 巧君 石田 真敏君
尾身 朝子君 金子 恭之君
金子 容三君 川崎ひでと君
国光あやの君 坂井 学君
田畑 裕明君 寺田 稔君
中川 貴元君 西田 昭二君
西野 太亮君 根本 幸典君
葉梨 康弘君 長谷川淳二君
鳩山 二郎君 古川 直季君
保岡 宏武君 柳本 顕君
おおつき紅葉君 岡本あき子君
奥野総一郎君 福田 昭夫君
藤岡 隆雄君 道下 大樹君
山田 勝彦君 阿部 司君
中嶋 秀樹君 吉田とも代君
平林 晃君 宮本 岳志君
西岡 秀子君 吉川 赳君
…………………………………
総務大臣 松本 剛明君
総務副大臣 馬場 成志君
総務大臣政務官 西田 昭二君
総務大臣政務官 長谷川淳二君
総務大臣政務官 船橋 利実君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 林 学君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 萬浪 学君
政府参考人
(総務省自治行政局長) 山野 謙君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(国土交通省大臣官房技術参事官) 西村 拓君
政府参考人
(国土交通省航空局航空ネットワーク部長) 蔵持 京治君
政府参考人
(防衛省大臣官房審議官) 米山 栄一君
総務委員会専門員 阿部 哲也君
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委員の異動
五月二十八日
辞任 補欠選任
尾身 朝子君 柳本 顕君
金子 恭之君 金子 容三君
岡本あき子君 山田 勝彦君
同日
辞任 補欠選任
金子 容三君 金子 恭之君
柳本 顕君 尾身 朝子君
山田 勝彦君 岡本あき子君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)
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○古屋委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する斎藤洋明さん外二名提出の修正案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
原案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官林学さん、内閣官房内閣審議官萬浪学さん、総務省自治行政局長山野謙さん、自治行政局公務員部長小池信之さん、国土交通省大臣官房技術参事官西村拓さん、国土交通省航空局航空ネットワーク部長蔵持京治さん及び防衛省大臣官房審議官米山栄一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○古屋委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉川元さん。
○吉川(元)委員 立憲民主党の吉川元です。
早速質問に入らせていただきます。
十四日の質疑で、総務省が検討の俎上にのせたとされる個別法の指示規定とその実施状況について総務省から資料が届けられました。見ますと、全部で三百六十二件にわたる指示規定が個別法に既に存在しているということであります。残念ながらこの中で実際に指示が行われたかどうかという実績は明らかにされておりませんが、少し確認をさせていただければというふうに思います。
この三百六十二件の指示規定、それぞれ、どういう場合に指示を行うことになるのかの要件が定められていると思います。それでもなお条文に規定されていない想定し難い事態が起こり得る、そういう認識なのかということを改めて伺います。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘の三百六十二件の指示でございますけれども、例えば事業活動の適正化のために設けたものなど様々なものがございますが、法制化に当たりましては、国民の生命等の保護に関する指示に関する法令について、法律上どのような場合でどのような要件の下で国の役割が求められ、指示が設けられているかという観点から検討を行いました。
新型コロナ対応におきましては、当時の感染症法では国が広域的な調整の役割を担うことが想定されていなかった、こういった中で国が調整の役割を事実上果たしたといった課題があることも認識されました。こうした課題を踏まえまして、国が果たすべき役割を明確化するため、感染症法等の改正が行われたものと承知しております。
このように、過去の感染症への対応について必要な検証が行われた上で個別法の見直しが重ねられておるところでございますが、事態が発生した時点においては、法的な根拠なく働きかけや対応が行われることにより、国と地方の役割分担や責任の所在が不明確になるという課題がございます。
これまでの経験を踏まえると、今後も個別法において想定されていない事態は生じ得るものであるため、こうした事態への対応の検討が行われ、個別法の改正が行われるまでの間において行われる国から地方への働きかけについて法律上のルールを明確化する必要があると考えているところでございます。
○吉川(元)委員 続けて伺いますが、この法案の本会議での大臣の答弁ですが、事態対処法等で定められている武力攻撃事態や存立危機事態などについては、それぞれ想定される事態について法律で必要な規定は設けられており、本改正案に基づく関与を行使することは想定されていない、こういう答弁を本会議場でされました。
ところが、先般の委員会で宮本委員の質問に対して、事態対処法等で定められている武力攻撃事態では本改正案に基づく関与を行使することは想定されていない、このように局長は答弁されたんですけれども、それに続いて、改正案は特定の事態を除外するものではない、こういうふうにも答弁をされておられます。これは今非常に曖昧になっておりまして、確認をさせていただければと思いますが、事態対処法等で想定する事態においては今回の法改正の中にある補充的な指示は行使しないということでよろしいんでしょうか。
○松本国務大臣 本改正案は、答申を踏まえまして、特定の事態の類型に限定することなく、その及ぼす被害の程度において大規模な災害、感染症の蔓延に類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例を設けるものであり、特定の事態を除外しているものではありません。
武力攻撃事態等への対応については、事態対処法制において必要な規定が設けられております。このため、本改正案に基づく関与を行使することは考えておらず、事態対処法制に基づき対応する考えであると理解しております。
○吉川(元)委員 今日は、内閣官房からも来ていただいております。事態室の方からのお話を少し伺いたいというふうに思います。今回の法改正は、指示する主体というのは、閣議決定が行われます、「各大臣は、」ということになっております。各大臣が指示を行うわけですけれども、内閣官房においてこれによって補充的指示を行うという考えはないということでよろしいんでしょうか。
○萬浪政府参考人 お答え申し上げます。
先ほどの総務大臣からの御答弁と同じ考えでございまして、お尋ねの武力攻撃事態等への対応につきましては、武力攻撃事態対処法等々の事態対処法制におきまして必要な規定を設けてございます。それがために本改正案に基づく関与を行使することは考えておりませんでして、事態対処法制に基づき対応するという考えでございます。
○吉川(元)委員 事態対処の関係については、事態対処法という個別法の中で全て規定をされているから今回の補充的な指示は行わない、対象ではないというお話でございますが、これについては理解したわけですけれども、ただ、大変不思議なのは、事態対処法の法制度では想定できない事態は存在していない、全て対応できるんだということなのであれば、感染症法、インフル特措法、災害対策基本法などでもそうした想定できない事態をなくしていくことは論理的には可能だというふうに考えるんですが、この点はいかがですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
災害や感染症の蔓延についてももちろん、個別法において備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定が設けられておりますが、これまでも、その時点における個別法では想定されていない事態が生じ、その都度災害対策基本法や感染症法等の改正が行われてきており、個別法の想定されていない事態が生じ得るものと受け止める必要があると考えております。
武力攻撃事態等への対応については事態対処法制において必要な規定が設けられており、このため本改正案に基づく関与を行使することは考えておらず、事態対処法制に基づき対応する考えであると理解しているところでございます。
○吉川(元)委員 ずっとそうなんですけれども、無理がやはりいろいろなところに出てくるんですよね。想定していないことを想定するというおよそ立法事実とは言えないようなものを基にして今回の法案が作られて、その無理がどこに出てくるかというと、今の答弁。事態対処法では使わないということは確認をさせていただきましたけれども、感染症法等々についてはなぜそれができないのかということについて明確な答弁がないというふうに私自身は思っておりますし、こうした補充的な指示というものの規定を置くことの必要性というものが私は全く感じられないということを指摘させていただきます。
その上で、次の質問に入っていきたいと思います。今日は余り時間がありませんので、確認したいことが多数ございますので、簡潔にお答えをお願いしたいと思います。
二百五十二条の二十六の五で国から自治体に対する指示は閣議決定を経て実施される規定となっており、国会への事前の報告や通知の規定がありません。委員会での大臣などの答弁では、地制調の審議において既存の危機管理法制では個々の権限行使に際しては義務づけることとはされていない議論がされ、それを踏まえたというふうになっております。しかし、今少し議論しました事態対処法では原則国会の事前承認を必要としておりますし、緊急で事前承認を得るいとまがない場合には国会の事後承認が必要とされている、そのように承知をしております。改めて伺いますが、なぜ国会関与の規定、とりわけ事前報告の規定を設けなかったんでしょうか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
補充的な指示は、権限付与が包括的に行われ、国会報告が義務づけられております例えば新型インフル特措法に基づく政府対策本部の設置や緊急事態宣言の発出等と異なりまして、国民の生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため講ずべき個々の措置に関し、個々の自治体に対して行われるものでございます。
これを考慮しますと、国会の御判断により求めに応じて適時適切に説明することは当然のことでございますが、個々の自治体への指示の都度国会承認や国会報告を義務づけるということは機動性に欠けるのではないかという地方制度調査会の議論は理解できるものと考えております。
答申を踏まえまして本改正案において国会承認等の規定は設けておりませんが、これも地方制度調査会で指摘されておりますように、補充的な指示が行使された場合には適切な検証が行われることが必要であり、その結果も含め、国会の求めに応じ適切に説明されるべきものと考えております。
○吉川(元)委員 今の答弁を聞きますと、再三にわたって機動性、機動性というお話が何度もされます。今回の改正案を見ますと、事前に国と地方で協議することが前提だから閣議決定で事足りる、答申にもそのような記述は存在しております。しかし、改正案には、国と地方による十分な事前協議、調整を義務づける条文は存在しておりません。指示に際して国会関与の規定を設けている事態対処法は、そういう意味でいいますと国会の事前の承認、いとまがない場合は事後の承認ということですが、その規定は設けられていない、その理由が機動性の問題だということでいうと、そういう規定を設けている事態対処法は機動性を無視している、そういうことになるんでしょうか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
先ほども申しましたように、個別の指示につきまして、既存の危機管理法制では個別の権限行使に際して義務づけることはされていないということもございます。包括的なものにつきましては、先ほど申しましたように、国会報告を義務づける規定が設けられているものと承知しております。今般の補充的指示につきましては、個別の措置につきまして所要の規定を置いたものでございます。
○吉川(元)委員 よく分からないですね。
もう一点、機動性に関して伺います。
機動性が問われるということは、緊急的な事態だということだというふうに理解をいたします。ところが、二百五十二条の二十六の五では、事態の緊急性という点について、この緊急性という言葉が存在いたしておりません。代わりにあるのは、事務処理に迅速な実施が必要な場合は指示を出すとしているだけであります。
自治法の二百四十五条の三の六、自治事務に対する関与の基本原則では、国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理が必要とされる場合以外は国は自治事務に関与、つまり指示できないということになっており、緊急という言葉が明記をされております。今回の改正は、従来の国の関与の原則の下にある、これは大臣が何度も答弁されてまいりましたが、緊急というこの言葉が今回の改正案の中にないということ、これをもって見ると、現行の関与の基本原則から外れているのではないか、原則の下にあると果たして言い切れるのか。なぜ緊急という言葉を省略したのか教えてください。
○松本国務大臣 今委員が地方自治法を御引用いただきましたが、地方自治法上の関与の基本原則は、自治事務の処理に関する指示については、国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合を除き設けてはならないとしており、緊急にとは、特に必要と認められる場合の例示として規定されております。
これは自治体に対する国等の関与を設ける場合の立法指針として規定されており、この立法指針にのっとって、個々の関与の規定において様々な法律の立法趣旨を踏まえ具体的な要件を定めることになるものです。
特定の事態における国民の生命等の保護のための国と自治体を通じた対策について定める災害対策基本法や新型インフル特措法では、この立法指針にのっとって、生命等の保護の措置について国の責任として指示を行う役割を果たす必要がある要件として、的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときと規定しており、同じく国民の生命等の保護が求められる様々な事態に対応するための本改正案の補充的な指示についても同様に、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があると認めるときとしているところでございます。
これは、これらの法律と同様に、地方分権推進計画や地方自治法上の関与の基本原則にのっとったものであり、適正な要件であると考えております。
○吉川(元)委員 感染症法関係等々を見ても迅速なという言葉を使っているから問題ないんだという御答弁でありますけれども、我々が今議論しているのは個別法ではなくて、一般法である自治法の議論をしているわけです。
自治法の世界の中で使われる言葉を、とりわけ今回の関与の基本原則の中にある、例示というふうに言われますけれども、緊急という言葉をなぜ使用しないのか。そこに何らか別の意図があるのか、そういうふうにも見られてしまうわけです。自治法の改正である以上、自治法の言葉でこれを語るべきであって、個別法の中に書いてあるから自治法の中に書くんだというのは、これは私は本末転倒の話だというふうに指摘をさせていただきますし、逆に言いますと、国会の関与を否定するほど機動性が問われながら緊急的な事態という表現をしない、これは私は論理矛盾を起こしているのではないかというふうに思いますけれども、この点はいかがですか。
○松本国務大臣 先ほども申しましたけれども、災害対策基本法や新型インフル特措法では、国民の生命等を保護するという立法趣旨から、的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときという要件を規定していると認識しております。
本改正案の補充的な指示につきましては、大規模な災害や感染症の蔓延とその被害の程度において類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に対応するための様々な国民の生命等の保護の措置の実施を確保するものであることから、同様に、措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があると認めるときという要件とすることが適切であると考えているところでございます。
○吉川(元)委員 いや、だとすれば、二百四十五条の三の六に書かれている緊急に自治事務の的確な処理が必要、これが自治法の中の言葉なんですよ、迅速になんというふうには書いていないわけですよ。機動性を云々して国会の関与がない状態で法案を提出する、つまり国会にいろいろ諮っているいとまがないという場合であればこれはできるんだというのであれば、なぜ緊急という自治法の中の言葉を使わないのか。改めて私は疑問に感じます。
関連して伺いますけれども、専門小委員会のヒアリングで全国知事会は、補充的な指示が安易に行使されることのないよう、事前に適切な協議、調整を行う運用の明確化を図るよう要望しております。今回の改正、関係条文はどこに反映されていますか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
全国知事会からは、御指摘のように、法制化に当たり、補充的な指示につきまして、事前に地方公共団体との間で十分な協議、調整を行うことにより安易に行使されることのないようにすることについて提言をいただいたところでございます。
この提言を踏まえまして、本改正案では、補充的な指示を行う際にはあらかじめ地方公共団体に対し資料、意見提出の求め等の適切な措置を講ずるように努めなければならないとしているところでございまして、これに対し全国知事会からは一定の御理解をいただいているものと考えております。先日の参考人質疑でも村井参考人から、一月に行った提言を踏まえて改正案に盛り込まれたと思っており、こういった点は高く評価しているという発言があったと承知しております。
なお、知事会からは、当該規定の下で補充的な指示の行使について運用の明確化をとの要望もいただいておるところでございまして、状況に応じて地方公共団体等と十分な協議、調整を行うことを各府省に周知することも含め、引き続き丁寧に対応してまいりたいと考えております。
○吉川(元)委員 村井知事が評価しているのは、全くなかったものが、資料の提出等々で一定、少しは入ったということで評価されているんだと私は勝手に推測をしております。本来求めているのは事前の協議あるいは調整の義務化だと思いますけれども。
結局、今回の法案を見ますと、資料の提出を求めるよう努める、つまり努力義務規定にとどまっている。ですから、逆に言うと意見の提出を求めなくても、出された意見あるいは資料についてどう応えるのか。努力義務という規定でありますから、聞かなくてもできるわけであります。地方から出された資料、意見に対してどう応えるのか、条文ではそのことは全く触れられておりません。この点についてはいかがでしょうか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、補充的な指示を行うに当たっては、あらかじめ自治体に対する資料、意見提出の求め等適切な措置を講ずるように努めなければならないとしております。
この規定は、答申において、まず国と地方公共団体の間で迅速で柔軟な情報共有、コミュニケーションが確保されるようにし、状況に応じて十分な協議、調整も行われるべきであると指摘されていることなどを踏まえて設けたものでございまして、地方公共団体から提出を受けた意見に対し、国の応答義務等は条文上特段規定をしておりませんが、本規定は事態の状況の適切な把握と講ずべき措置の検討を目的とするものでございまして、国は地方公共団体から提出を受けた資料、意見を十分踏まえた上で補充的な指示の行使について検討する必要があると考えております。
○吉川(元)委員 十分聞くのは当然のことだというふうに思いますが、必ず聞かなければならないという規定にもなっておりませんし、先ほど言いましたとおり努力義務というところにとどまっている、なおかつ、協議を行うという規定は、運用上云々というお話がありますけれども、規定自体が設けられておりません。これは地方の意見を聞かずにやれるのか、あるいは、意見を聞いても、意見は聞きましたということで国が一方的に指示を出すケースが存在し得るという理解でいいのか。その点についてはどのような場合か、どういうことになるのかということについて答弁をお願いします。
○山野政府参考人 お答えいたします。
ただいま答弁しましたように、今回の答申では、国と地方の間で十分な情報共有、コミュニケーションを図ることが事態への対応を実効的なものとする前提であるということで指摘があるところでございます。
このような前提に立ちながらも、例えば、当該事態における被害の状況、拡大のスピードなどによっては極めて速やかな対応が求められる場合も考えられるところでございまして、地方制度調査会でも、事態は多様かつ複雑であり、協議の主体を含め特定の手続を必ず取るようにというのは難しいのではないかといった議論があり、御指摘の規定はこうした議論を踏まえたものでございます。
実際にこの規定が適用されるような場面においては、通常、現場における状況や意見を考慮せず指示を出すということは現実的ではございませんので、法律が成立した際には、このような規定の趣旨を含め、法律の運用の考え方について各府省へしっかり周知を図ってまいりたいと考えております。
○吉川(元)委員 いや、だから、現実的じゃないとおっしゃるんだったら、実際はあり得ないと言うんだったら、なぜこれを努力義務のところに置いておくのか。ちゃんと義務の規定に置けばいいじゃないですか、あり得ないと言っているんだから。何でそれを努力義務のところにとどめているのか。その点はいかがですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
ただいま申しましたように、これは地方制度調査会でも議論されましたけれども、事態は多様かつ複雑であり、協議の主体を含め特定の手続を必ず取るようにということは難しいのではないか、こういった議論があったところでございます。
先日の参考人質疑におきましても、具体的にどのように情報共有、コミュニケーションを取るかは事態や状況によるが、具体的に参加する主体を特定し、特定の手続を必ず取ることを求めるような制度化は難しいのではないかという議論をしたということを、山本参考人の方から話があったところでございます。一方で、答申の基本的な考え方として、指示を的確に行うために国と自治体との間の情報共有とコミュニケーションを重視しているという認識が示されたと承知しておるところでございまして、こうした議論も踏まえまして私どもはこういった規定を置いたところでございます。
○吉川(元)委員 では、簡単に聞きますけれども、意見の提出とかあるいは資料の提出を求めずに指示が出されるということを想定しているんですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになりますが、国と地方公共団体の間で迅速かつ柔軟な情報共有、コミュニケーションが確保されるということが規定の趣旨でございます。補充的な指示を行うに当たっては、あらかじめ自治体に対する資料、意見提出の求め等適切な措置を講ずるように努めなければならないと考えております。
○吉川(元)委員 私が聞いているのは、努力義務で書かれていますから、努力義務ですからそうするよう努めなきゃならない、それは当然のことです、だけれども、場合によってはそういうことなしに指示をすることがあり得るということでいいんですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
これは努力義務を課されているわけでございますので、その努力義務に基づいて、国は地方公共団体から提出を受けた資料、意見を十分踏まえた上で補充的な指示の行使について検討する必要があると考えております。
○吉川(元)委員 これもよく分からないんですよね、今のお話を聞いていると。条文を読んでも、論理的に言えば、地方の意見を聞かずに指示を出すことが可能になっているとしか読めません。現実的ではないという答弁が先ほどありましたけれども、だとすれば努力義務ではなくてきちんと義務規定として置くべきだというふうに私は思いますし、ある意味でいうと、意見も聞かずに出される可能性がある条文を置くということは、先ほどから話をしておりますけれども、国の関与を必要最小限度にとどめた関与の基本原則にも逆行しているんじゃないのか、そういうことを指摘させていただきます。
どのような事態が指示の対象になるのか想定できない、おそれがあると判断すれば指示も出せる、国会の事前の関与も否定をされる、指示の要件は極めて曖昧。そう見ますと、あえて曖昧にして、いざというとき、どんなときにでも指示権を行使できるようにしておきたいということなんじゃないのか。そうなると、時の内閣の判断で国は地方に対して何でも指示ができてしまうようになってしまいます。これは大変危険ですし、私は地方自治の流れからいうと全く逆行する中身だというふうに思います。
実際問題として、地方の意見を聞くことなく指示権を行使できるということになりますと、新型コロナあるいは熊本地震、当委員会でも何度か指摘をされておりますけれども、国からの指示というのは全部とは言いませんけれども非常に重要な部分で大きな間違いを犯してきた、これが我々の経験だというふうに思いますし、その結果として間違いがそのまま、各自治体が頑張って、例えば熊本地震で避難先に指定された体育館に国が人を入れろというのを拒否したことによって命が救われたという事例がありますし、ここでも議論になりましたが、三十七度五分以上が四日間なんという、こんなむちゃくちゃな通知が出て、これで自治体は大混乱して、中には、そんなことを言っていたら本当に命が救えないということで自治体の判断で検査を続けようとしたところもあるというふうに聞いております。
そういうことを考えますと、事前に地方との間、当該自治体との間で協議することを抜きにして、あるいは意見は聞きおくだけにして指示を出されれば、かえって地方、そしてそこに住む住民の皆さんに混乱を招きますし、私は命や財産が危機にさらされるということを強く危惧しております。
前回の質疑で、補充的な指示権の創設を含んで新設される十四章の特例が現行法の国の関与の在り方と整合性を保っているのか、それともその原則の例外なのかについて尋ねました。大臣の答弁は、新たに設ける補充的な指示についても地方分権一括法で構築された国と地方の関係の基本原則の下で国が果たすべき役割を踏まえた限定的な要件と適正な手続を定めており、関与の基本原則との整合性は担保されていると。
先ほどもそういう答弁がございましたが、私にはやはり整合性が取れているというふうにはなかなか思えないわけであります。整合性が取れているというのであれば、関与の法定主義と関与の基本原則は補充的な指示権行使の際にも適用されているんだ、こういうことをきちんと周知していただきたいと考えますが、この点はいかがでしょうか。
○松本国務大臣 委員が御指摘をされました基本原則でありますが、地方自治法におきまして、国は法令に規定がある場合に限り自治体に対し関与を行うことができることとする関与の法定主義、国の関与を設けるに当たっては必要最小限度のものとするとともに自治体の自主性、自立性に配慮しなければならないなどとする立法指針としての関与の基本原則などが定められておりまして、補充的な指示は関与の法定主義にのっとって地方自治法に基づく関与として規定しているものでございまして、また、立法指針としての関与の基本原則にのっとって限定的な要件と適正な手続の下で行使されることを規定いたしているところでございます。
関与の基本原則のそれぞれにつきましてはこれまで御答弁申し上げてきたとおりでございますので、関与の基本原則にのっとって限定的な要件と適正な手続の下で行使されることを規定していると、繰り返しになりますが申し上げさせていただきたいと思います。
○吉川(元)委員 必要最小限度、そして自主性、自立性の尊重、法定主義、こうした基本原則、法定主義の原則、その下にあるということ、これをきちんと周知をいただきたいというふうに思います。
次に、現行法の二百五十条の七から十九で国地方係争処理委員会の設置に関する規定が置かれております。また、二百四十五条の八では代執行に関する規定も設けられています。これら係争処理や代執行に関する手続は補充的な指示権の行使の際にも適用されるのでしょうか。この点はいかがですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
補充的な指示は地方公共団体に対し法的対応義務を課すものであるため、地方自治法二百五十条の十三、一項の処分その他公権力の行使に当たる国の関与に該当します。このため、補充的指示は同項に基づく国地方係争処理委員会への審査の申出の対象になります。
また、補充的な指示の対象となる事務が法律上法定受託事務とされている場合には、地方自治法二百四十五条の八に規定されている、事務の管理、執行が法令の規定や各大臣の処分に違反している又はこれを怠っていること、代執行以外の方法によっては是正を図ることが困難であること、放置することにより著しく公益を害することが明らかであること、こういった要件を満たす場合に限り同条に基づく代執行の対象になります。
他方、指示の対象となる事務が自治事務の場合は同条の代執行の対象にはなりません。
○吉川(元)委員 自治事務は代執行の対象にはならないという答弁でございます。
過去、国会において自治事務に対する代執行については何度も議論になっております。代表的な答弁でいいますと、一九九九年の六月十日、衆議院行政改革に関する特別委員会の中で、当時の小渕総理は、この規定が一般的配慮義務を規定する趣旨にとどまり、今日、自治事務の中で代執行の対象となる事務はなく、また今後も法令の立案に当たりましては政府部内の対応として自治事務に対する代執行の規定を設けることは考えておりません、このように答弁されておられます。
今の答弁でいいますと、局長の答弁によると自治事務についてはないということでありますので、この点はしっかり確認をさせていただきたいというふうに思います。
ただ、法定受託事務はできるんだというんですけれども、私はこれもよく分からないんですね。法定受託事務で現行の代執行というのは、つまり、法定受託事務の個別の法律の中でこれをしなさいということが書いてあって、それをしない、指示を出して、やらないから代わって国が行うという代執行だというふうに思うんですけれども、今回の補充的指示というのは、個別法に根を持っていない、自治法の一般規定を使って指示を出すということでありますから、それの代執行というのは行き過ぎているのではないかというふうに私は思います。個別法の中に規定があるのであればまだしもですが、ないのに、一般法で規定されている補充的指示を使って代執行、これはやはりおかしいんじゃないかというふうに指摘をさせていただきます。
次に、補充的な指示が行われるのは、既存の個別法がそもそも想定していない、あるいは規定がない事態が対象になるということですから、自治体が実施する事務、これもこれまで経験したことのない、想定していない事態、私は想像できませんけれども、論理上はそういうことになろうかというふうに思います。
大臣はこれまでの答弁で、補充的な指示について、国が果たすべき役割を責任を持って行うためには国の責任を明確化する意義がある、これは今日も答弁されておりましたが、繰り返し述べられております。だとするならば、補充的な指示によって実施される自治体の事務、この経費については国が責任を負うもの、そう考えていいのかということ。さらに、どのような事務に対して指示が行われるのかすらあらかじめ想定できない事態で、いざ蓋を開けたら、必要とされる適切な人材が圧倒的に不足していることも考えられます。そういった人材の配置に対して国は責任を持って支援する、こういう理解でよろしいんでしょうか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
補充的な指示に基づく自治体の事務処理につきましては、事務の執行に要する費用や人材等の課題を含め、これは地制調の答申でも指摘されておりますが、国と地方の間で十分な情報共有、コミュニケーションを図ることが国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対応を実効的なものとする前提でございます。
その上で、補充的な指示に基づいて実施する事務については、これは自治体の財政状況にかかわらず確実な実施を確保する必要がございまして、事務の執行に要する費用や人材等の課題については丁寧に解決していく必要があると考えております。
このため、人材の確保については必要に応じて国や都道府県が自治体間の応援や職員派遣のための調整の役割を担い、また、財政措置については、指示の対象となる事務について、当該事務の性質や、自治体において既に行われている事務なのかどうか、指示によってどのような事務処理が必要になり、どの程度の規模の費用が必要になるのか、自治体がどのような財政状況にあるのか、こういったことに照らして適切に判断する必要があるものというふうに考えております。
○吉川(元)委員 そうやって言えば言うほど、今想定できていない事態に対する補充的指示で果たしてそういうことが国は的確に分かるのかと私は非常に疑問を感じざるを得ませんし、指示が出された当該自治体が、指示は出たけれどもやりようがない、お金もなければ人もいない、そういうことはもし仮に想定できない事態を想定した場合には十分あり得るというふうに思います。その都度その都度状況を見極めてというようなお話でございますけれども、そうではなくて、指示を出す以上は責任が国にあるわけですから、国が全てきちんと対応するという答弁を是非いただきたかったというふうに思います。
それに関連して、今回、国による応援の要求及び指示の規定が設けられており、原則として断れない、応諾義務が課せられております。現行の災害対策基本法では受入れ側が経費負担をすることになっていると承知しており、その場合は後に特別交付税で措置をされるというふうに理解しております。今回の改正は応諾義務を課す大変厳しい規定となっておりまして、最低でもここに係る経費は国が迅速に責任を持って負う、こう考えてよろしいんでしょうか。
○小池政府参考人 応援に要する費用につきましては、災害対策基本法等の個別法においては、当該個別法が想定している事務の性質や、応援により処理する事務の性質を踏まえ費用の負担者があらかじめ定められているところでございます。
一方で、本改正案は、個別法の規定では想定されていない事態における応援について定めるものであり、応援に要する費用の負担者については、実際に発生した事態や応援により処理する事務の性質等に照らして適切に判断する必要があるものと考えております。
また、職員派遣に要する費用につきましては、地方公共団体間の職員派遣についての一般的な根拠規定、地方自治法第二百五十二条の十七に基づき、職員派遣を受けた地方公共団体が当該職員派遣に要する費用を負担することとなります。
○吉川(元)委員 だから、当該自治体が負担をするということではあるけれども、それはきちんと後で特別交付税等々で措置をされるという理解でよろしいんですよね。
○小池政府参考人 お答えいたします。
そういった財政措置につきましては、実際に発生した事態ですとか応援により処理する事務の性質等に照らして適切に対応してまいりたいと考えております。
○吉川(元)委員 後でちゃんと払いますということを何で言えないんですかね。指示を出すわけでしょう、法的拘束力を持つ。別に自治体側が求めていなくても国が指示を出す、それについての費用の在り方等々について、それは言われた方は、先ほど言ったときは、法的拘束力がある以上はやらざるを得ないと。だけれども、そのお金はどうするの。後でいろいろ考えて、勘案して事態の性質を含めて見た上でやりますと言われたって、それはちょっと無責任にもほどがあると思いますよ、大臣。
責任を持ってやると言った以上、その点については国が責任を持つ、そういう答弁を是非お願いしたいと思います、大臣。
○松本国務大臣 ただいま公務員部長から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、応援に関する費用につきましては、それぞれ個別法が想定している事態の性質などを踏まえて費用の負担者があらかじめ定められているところもあるわけですけれども、本改正案では、応援により処理する事務の性質等に照らして適切に判断をする必要があると考えております。
これまでも対応をしっかり検討してまいりたいというふうに申し上げてまいりましたが、例えば今回の能登半島でも自治体の話をよく伺って財政的な支援については懸命に努めてきたところでございまして、適切に対応させていただきたいと思っております。
○吉川(元)委員 指示するんでしょう。国が責任を持たなきゃいけないから補充的指示権を設けると。何で、責任が国にあるんだといいながら、事財政の負担になるとそうやって曖昧な答弁しかできないのか。私は非常に不思議です。
もう時間が来ましたので終わりますけれども、今、実際に自治体は人がどんどん減らされて、技術職、現業職は圧倒的に不足しておりますし、各自治体でも財政はかつかつですよ。そこに法的拘束力がある指示を出す以上、財政については任せておけと、なぜそれが言えないのか。私は非常に疑問です。この点だけ指摘して、質問を終わります。
○古屋委員長 次に、阿部司さん。
○阿部(司)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部司でございます。
まず、今回、日本維新の会から本改正に関して修正案を提出させていただいております。そこで、法案の修正案の提出者にお伺いをしてまいりたいんですけれども、修正案の目的と効果についてお伺いをいたします。
○中司委員 ただいまの阿部司委員の質問に修正案の提出者としてお答えいたします。
本修正案では、各大臣が生命等の保護の措置に関する指示をした場合に、その旨及びその内容を国会に報告する規定を設けることとしております。
本修正案を提出した目的は、このような国の指示について、緊急時における迅速な対応という観点から地方自治法に規定することが是認されるとしましても、本来的にはこのような規定は個別法に定めることが望ましいことから、どのような場面でどのような指示があったのか、国会においても適切に検証し、個別法の制定や改正に関する議論につなげていくことにあります。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。しっかり国会が関与していくことが重要であると。政府のいわゆる恣意的な運用というものをしっかりと防いでいくとともに、何がしかの事態が生じたときに補充的指示権を行使した際にも、しっかりその後は検証して個別法の改正にしっかりつなげていくという意味でこの修正案が提出されたと理解をいたしました。
次に、修正案では、政府が生命等の保護の措置に関する指示をした際に、その旨及びその内容について報告することとしておりますけれども、具体的にどのような内容の報告を想定しているのか。また、報告の形式はどのような形になるのかについてお伺いをいたします。
○中司委員 お答えいたします。
まず、報告の内容ですが、その旨及びその内容とされていることから、指示を行ったということに加え、いつどのような事態において、どの地方公共団体に対し、どのような措置の的確かつ迅速な実施を確保するためにどのような指示を行ったか等について報告を求めることを想定しているところであります。
次に、報告の形式ですが、具体的には今後の運用の中で決まるものとは思いますが、国民の生命等の保護のための緊急対処の中で行われるものであることに十分配慮しつつ、迅速性を確保する観点から例えばオンラインの活用も検討いただきたいと考えています。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。具体的にどのような報告をどのような形で求めるのかという点について、明快な御答弁をいただいたと思います。また、オンライン、こちらの報告も緊急事態の際には迅速性を確保する点から活用を検討する必要があるということで、こちらも重要な点かと思います。
最後に、補充的指示権については地方分権と逆行するのではないか、こうした議論がこれまでも出てきましたけれども、国会が適切に関与していくことが望ましいという考え方からこの修正案が提出されたと考えておりますが、報告についてなぜ事前報告ではなくて事後報告とすることにしたのか、その理由について御答弁をお願いいたします。
○中司委員 お答えいたします。
本修正案の目的は、個別法の指示を補充するという今回の改正の内容を踏まえ、指示の行使後に事後報告させることとし、その後の国会における適切な検証と個別法の制定や改正に関する議論につなげていくことにあります。
他方で、事前報告を求めることについては、政府答弁にもあったように、緊急時において国民の生命等の保護のために迅速な対処が求められる場面で行政の機動性が損なわれる可能性も否定できないと考えております。
○阿部(司)委員 御答弁ありがとうございました。緊急時における機動性の確保、こちらを重視するからこその事後報告ということで承知いたしました。国会が適切に関与することで補充的指示権の運用が恣意的になることをしっかりと防いで、事後の個別法改正にもしっかりつなげていく上で本修正案は重要であると私も考えておりますが、是非委員各位にも御賛同を賜りたいと思います。
それでは、次の質問に移ってまいりたいと思います。
参考人質疑でも永田先生が指摘をされておりましたが、想定外の事態が起こってしまうことはあり得ますけれども、できる限り最悪の事態を予測して対策を講じて、後追い行政から先取り行政に転換をしていくこと、こちらが危機管理上非常に重要になってくると思います。そもそも、この補充的指示権が行使されるようなことにならないようにすることが非常に重要であると思います。
そこで、外国では、主にヨーロッパ、アメリカになってくると思いますけれども、この先取り志向を担保する取組としてオールハザード型のアプローチを採用して、大規模なナショナルリスクアセスメント、国家規模の様々なリスクをしっかりと洗い出して調査分析するというような取組を徹底的に行っていると言われておりますが、我が国でも実施をしていくべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○林政府参考人 お答えいたします。
政府におきましては、平素から、内閣官房や内閣府、関係省庁が連携をし、様々な事態を想定した検討、訓練を積み重ね、危機管理に万全を期しているところでございます。その中で、自然災害のほか感染症や武力攻撃事態等における国民保護につきましても、自治体や民間の関係者も交えた形で検討、訓練を行い、知見の共有や取組の実効性向上に努めているところでございます。
政府といたしましては、御指摘のように、危機管理におきましては様々な事態を想定した政府横断的な取組や自治体等との連携は極めて重要であると認識しておりまして、今後とも危機管理に万全を期すべく不断に検討、訓練を行ってまいりたく存じます。
以上でございます。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
ちょっと教えていただいたんですけれども、現在も内閣官房の国土強靱化室で脆弱性評価というものを行っているということで、大規模自然災害を対象に様々なリスクに関する調査検討をされている、このようにお伺いをしておりますが、やはり防災に偏重していると思うんです。我が国の危機管理は防災に偏重しているという指摘がなされております。いわゆる特殊災害、この前のコロナ感染症の対応についてもそうなんですけれども、この特殊災害に対する国民保護の体制というものがやはり弱いと言われております。こうした指摘がされております。
そもそも、我が国では有事に対する体制整備に関する議論が避けられてきたというか後回しにされてきたという歴史がありまして、阪神大震災だとか様々な大きな災害があったこともあって防災に偏重してきた。参考人質疑でも質問させていただきましたけれども、地震が起こったから地震の個別法の体制整備をしていく、津波が起こったからその体制整備をしていくという後追いでは、それ以外のハザードが発生すると全て想定外になってしまうと思うんですね。想定外をそもそもなくしていくことというのが非常に重要だと思うんです。
例えば核攻撃を最悪の危機と考えて危機管理体制を整備している国と自然災害中心の国では、危機への対処能力が大きく変わってくると思います。
私は、ある知事に聞いたんです。グレーゾーンの事態においてミサイル攻撃をされたら自治体にはなすすべがない、国民保護法が適用されないような事態における危機への対処は非常に難しいということをお伺いいたしました。是非、自然災害のみならず、今もやっているという御答弁でしたけれども、しっかりオールハザードの取組、体制整備を是非進めていただきたいと思います。
次の質問に参ります。補充的指示権が発動して事態対処に当たる際、指示の実行に必要な自治体間、官民における総合調整、こちらは国が責任を持って行うことになるのか、御見解をお伺いします。
○松本国務大臣 国が補充的な指示を行いますのは、自治体の区域を超える広域での対応が必要となる局面など、国が果たすべき役割を責任を持って果たすことが求められる局面でありまして、このような局面では、補充的な指示に基づいて自治体が講じる措置を含め、自治体の全般的な対応について国としてしっかりと調整の役割を果たす必要があると考えております。
また、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態においては、官民を通じた効率的、効果的な対応が図られるよう都道府県とも連携しつつ、国として必要な調整を行うことが求められると考えているところでございます。
○阿部(司)委員 ありがとうございました。
例えば県域をまたいだ救急搬送についても、医療政策を担当する県、消防を担当する市町村、実務を担当する医師会、病院協会等々、様々な主体が関わることになりますから、各県の医療体制も異なるわけであります。自治体に指示だけして丸投げということになれば国の責任放棄と言われても致し方ないような事態に陥るわけですが、新型コロナについては多かれ少なかれ国に対するそうした不信感があったと思いますので、是非万全を期していただきたいと思います。
最後に、自治体との調整、手続に関しては遺漏なきように行っていただきたいと思いますけれども、一方で、国家的危機に当たってスピーディーに対応しなければ国民の命と財産を守れない事態も容易に想像できます。そういった事態においては最終的に国のリーダーシップと責任で対応しなければならないということがあり得ると思いますが、その点について、大臣、是非覚悟を示していただきたいと思います。
○松本国務大臣 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態におきましては、国民の生命等を保護するために、国は、国が果たすべき役割を責任を持って果たす必要があると考えております。
本改正は、国民の生命等の保護を的確、迅速に行うため、国の地方への働きかけについて法律上のルールを整備するものであり、国が果たすべき責任を明確化する意義がございます。
本改正が成立した際には、新たに設けられる法律上のルールにのっとって、国が果たすべき責任を適切に果たしていく必要があるというふうに考えております。
○阿部(司)委員 しっかりと国が責任を果たす必要があるという御答弁、ありがとうございました。
私は、危機への対処能力を上げていくこと、これがそもそも重要だと思います。その上でちょっと一言申し上げておきたいのが、国の形、都道府県のような中間自治体にしっかりと法的資源ですとか財政的な資源、危機への対処能力を上げていくためのですね、道州制みたいなこともしっかり検討していく必要があると思いますので、この点も引き続き議論させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○古屋委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
今回の地方自治法改正案は、第三十三次地方制度調査会の答申を受けた改正とされておりますけれども、昨年十二月二十一日に答申が出され、今年三月一日に閣議決定が行われました。その間僅か七十日余りということが当委員会でも議論されてまいりました。この僅かの期間に総務省が法制局とどのようなやり取りを行い閣議決定に至ったのか、その間の変更点を全て出していただきたいと要求してまいりましたけれども、先日、私のところに、この法改正案の基になった昨年十二月二十日のドラフトと、それを法制局との関係や、省内で検討して最終的な閣議決定に向かった今年二月五日のドラフトが提出をされました。
この二月五日のドラフトから、今ここにありますけれども、二月二十九日、内閣法制局が決裁をして、三月一日に閣議決定された法案、こういうものができたわけでありますけれども、二月五日のドラフトとこの閣議決定した法案との間には、更に三点の変更箇所があります。
さて、今日は、そもそも十二月二十日から二月五日にどう変わったかということをお示しするために資料を配付しておきました。資料一の一を見ていただきたい。これが二月五日時点のドラフトでありますけれども、十二月二十日ドラフトとの変更点を、いわゆる見え消しにしたものであります。
まず、十四章の表題でありますけれども、元々昨年十二月二十日時点では、「大規模な災害、感染症のまん延その他これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例」となっていたものが、最初の一行、大規模な災害、感染症その他これらに類するの見出しが消えて、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態何がしとなっております。
まず、自治行政局に聞きますけれども、この最初の一行をなぜ落としたんですか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と普通地方公共団体との関係等の特例について規定する地方自治法第二編新第十四章につきましては、章名をこのように規定すると非常に長くなり分かりづらいということ、それから、同章の冒頭の第二百五十二条の二十六の三におきまして、当該事態を国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と総称する、こういうことにしているところから、法制作業における精査の中で現在の章名にしたところでございます。
具体的には、御指摘ございましたけれども、昨年十二月時点で、第二百五十二条の二十六の三の「大規模な災害、感染症のまん延その他これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」との規定について、二月時点で、範囲をより明確化する観点から、「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と修正しているところでございます。
この修正をこのまま反映しますと章名が一層長くなることから、総称である、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に変更したものでございます。
○宮本(岳)委員 端的に答えてくださいよ。
ならば、次の資料一の二を見ていただきたい。生命等の保護の措置に関する指示についての第二百五十二条の二十六の五のドラフトであります。
赤い字の二項は、知事会の意見を受けて加えられたことは分かりました。しかし、一項には手を加えた形跡はないんですね。ここは関与の法定主義に基づく条項である、こういう説明を受けました。
言うまでもなく、地方自治法第二百四十五条の二、「普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない。」というのが関与の法定主義と呼ばれるものです。
しかし、この第二百五十二条の二十六の五の第一項というものは、特定の類型も限定もしておりません。どのような場合にどのような要件で関与が可能になるのかについても、特定の類型に限定せずなどという答弁が繰り返されるばかりです。これでは到底、関与の法定主義とは言えないのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘の関与の法定主義、自治法の二百四十五条の二でございますけれども、普通地方公共団体に対する国等の関与については、法律又はこれに基づく政令の根拠を必要とするという規定でございますが、補充的指示については、関与の法定主義にのっとり、本改正案における地方自治法二百五十二条の二十六の五にその根拠を置いた上で、御指摘の事態の範囲については、大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態として、特定の事態の類型に限定することなく規定したものでございます。
○宮本(岳)委員 だから、とても限定したとは言えないと言っているんですよ。特定の類型に限定せずと今言ったじゃないですか。その一方で、前回の質疑で、事態対処法での想定外の事態について除外されるのかとの私の質問に、ついに山野自治行政局長は、特定の事態を排除しないとも答弁いたしました。
本会議質問でも前回の委員会でも議論してきた、総合的な防衛体制の強化に資する取組の空港、港湾に関する公共インフラ整備について、引き続きただしておきたいと思うんです。
資料二に、空港や港湾の円滑な利用に関する確認書を配付いたしました。左側が空港、右側が港湾であります。
こういう確認書を交わした特定利用空港、港湾について、自治体への回答として、平素とされている中には、大規模災害、北朝鮮による弾道ミサイル技術を利用した発射に対する対応、存立危機事態や重要影響事態、いわゆるグレーゾーン事態も含まれているとされております。事態対処法で有事とされる範囲の手前まで含まれるわけですね。
しかし、この枠組みは、有事手前、最後まで、これはあくまで話合いベースである、こう理解しておりますが、防衛省、それでよろしいですか。
○米山政府参考人 御答弁申し上げます。
今般、インフラ管理者との間で確認するに至りました円滑な利用に関する枠組みについてでございますが、あくまで空港法や港湾法等の現行の関係法令に基づきまして関係者間で連携し、円滑な施設の利用につきまして調整するための枠組みということでございます。したがいまして、今般の取組は、自衛隊、海上保安庁の優先利用といったものを目的としたものではございません。
○宮本(岳)委員 あくまで話合いベース、前回もそういう答弁でありました。優先利用を強制するものではないと。
今日は国土交通省にも来ていただいております。
まず、空港に関わって、航空局に聞きたい。
確認書には、民生利用に配慮しつつとか、連絡調整体制を構築し、円滑な利用に関する具体的な運用のための意見交換など、いわば話合いベースで円滑な利用に関しての確認書を交わす内容になっております。
これは、あくまで意見交換によってお互いの合意を形成し、自衛隊や海上保安庁による空港の円滑な利用を促進しようとするものであって、強制的に優先利用を自治体に押しつけられるものではないと思いますが、間違いないですね、航空局。
○蔵持政府参考人 お答えいたします。
今般の特定利用空港における円滑な利用に関する枠組みは、平素において自衛隊、海上保安庁による円滑な空港の利用が可能となるよう空港法等の既存の法令に基づき調整を行うものであり、自衛隊、海上保安庁の優先利用のためのものではございません。
○宮本(岳)委員 部局も根拠法も異なるので、同じ問いを港湾局にもいたします。
港湾施設についても、自衛隊や海上保安庁の円滑な利用は、あくまで個別法たる港湾法その他の関係法令を踏まえて、あくまで意見交換と管理者との合意ベースで進められるものであって、港湾管理者に指示をしたり命令するような枠組みではないと理解しておりますが、よろしいですか。
○西村政府参考人 お答え申し上げます。
今般、特定利用港湾において設ける円滑な利用に関する枠組みは、平素において自衛隊や海上保安庁による円滑な港湾の利用が可能となるよう港湾法などの既存の法令に基づき調整を行うものでございまして、自衛隊や海上保安庁の優先利用のためのものではございません。
○宮本(岳)委員 いずれも、あくまで管理者との合意ベースであって、指示や命令など強制はできないことが確認されました。
そして、前回の質疑で松本総務大臣も、優先利用のために補充的な指示を行使することは想定していないとも答弁されました。
しかし、本改正案の第十四章に新たに導入された指示など国と地方の関係の特例は、指示の行使についてもその類型を限定しておりません。これでは、いつ指示が出され、優先利用を強制されるかもしれないという不安が広がるのも当然だと思います。
同時に、先ほど防衛省や国土交通省に確認しましたけれども、今回の改正で新設される地方自治法二百五十二条の二十六の五を使って万一指示を行えば、せっかく積み上げてきた話合いベースの努力は水泡に帰するわけです。
大臣、そのようなことは、たとえ除外されていないにしても、本改正案に基づく関与の行使は想定すべきではないと私は思いますが、いかがですか、大臣。
○松本国務大臣 既に御答弁を申し上げているところでありますが、委員からお話がありました公共インフラ整備の取組は、平素における空港、港湾の柔軟かつ迅速な利用について、あくまで空港法や港湾法などの既存の法令に基づいて関係者間で連携し、調整するための枠組みを設けるものと承知をしておりまして、この枠組みは事前に既存の法律に基づいて関係者間で連携、調整するためのものでありまして、自衛隊、海上保安庁の優先利用のために個別法で想定されていない事態に備える補充的な指示を行使することは想定されていないものと理解をしております。
○宮本(岳)委員 是非そこは守っていただきたいんです。
しかし、住民にとっては、特定利用港湾、特定利用空港となるだけで大変危険性を感じる、心配されるわけですね。地方自治法の特例規定が話合いを覆すことは決してあってはならない。しかも、そうしたことを持ち込むのが今回の改悪だということを一貫して指摘をしてきたわけでございます。
次に、法案第二百五十二条の二十六の九で、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合には、国が職員の派遣のあっせんを行える、こういう仕組みが入っております。これは、これまでにない仕組みでありまして、私は、うまくいくとはとても思えないんですね。公務員部長に聞くんですけれども、なぜこういう規定を設けたんですか。
○小池政府参考人 これまで大規模災害等におきましては、例えば避難所の運営ですとか罹災証明書の交付に向けた住家被害認定などの大量の災害対応業務が短期間に発生するため、被災した地方公共団体単独での対応はそもそも困難であることから、多くの応援職員が被災団体に入って対応いただいてまいりました。
その上で、今回の改正は、地方制度調査会の答申を踏まえ、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護の措置を的確、迅速に実施するため、あらかじめ応援や職員派遣に係る必要な要件、手続を整備しているものでございます。
○宮本(岳)委員 しかし、続く二百五十二条の二十六の十では、職員の派遣義務まで定めております。この規定は、その所掌事務の遂行に著しい支障がない限り、適任と認める職員を派遣しなければならないとなっておりまして、自治体によっぽどのことがなければ職員派遣を迫るものになっております。
前回の質疑でも明らかにしたように、ダイヤモンド・プリンセス号の対応でも、また私自身が能登の被災地に入ってつかんできた現状を見ても、災害や感染症での派遣は協力ベースで行われてきたし、それで十分自治体の協力は得られている、こういう報告でありました。
聞きますけれども、総務省は自治体が職員派遣に非協力的だとでも考えているんですか。
○小池政府参考人 お答えいたします。
今の能登半島地震でも非常に多くの自治体の方に入っていただいておりまして、大変協力的にやっていただいているところでございます。
○宮本(岳)委員 そのとおりなんですね、立法事実がないという声が出ていますけれども。
こういう条文を入れるなら、政府は自治体の協力が不十分であると考えているとしか考えられませんし、また、協力が得られている災害や感染症対応ではなく、それこそ自治体の協力が得られないような類型の事態を想定したものではないのかとの疑念を持たざるを得ないわけであります。
さらに、法案は新たに情報システムの章を設けております。情報システムを有効に利用するとともに、他の普通公共団体又は国と協力して最適化を図るように努めるとされております。ここには、これまでの地方自治法二条にはなかった、新たに、国と協力してという文言が入れられております。
国は二〇二一年に地方公共団体情報システム標準化法を成立させました。地方自治体の情報システムを国の標準化基準に適合させることを義務づけてきたわけですね。現在、政令により定められたその対象事務は二十業務になっております。
資料三を見ていただきたい。二〇二一年四月十五日の衆議院での法案審議、我が党の本村伸子議員の総務委員会質問の会議録であります。本村議員が、全国の自治体が同じような情報システムにする標準化事務について、対象事務がどんどん拡大することになるのではないかと聞いたのに対して、赤線部は当時の高原自治行政局長の答弁です。「標準化法案においては、法令でほとんどの事務が定められているなど、自治体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務に対象を限定することとしております。」と答弁しておられるんですね。
このとき、なぜ自治体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務に対象を限定する必要があったのか、つまり、創意工夫を発揮する余地がもっと大きい事務についてはそうすべきではないという判断だったのか、ここを説明していただけますか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
御指摘のように、標準化法におきましては、法令でほとんどの事務が定められているなど、地方公共団体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務を対象としております。これは、事務処理の内容が各地方公共団体で共通し、統一的な基準に適合する情報システムを利用することが住民の利便性向上や行政運営の効率化に寄与する事務として政令で定める事務を標準化対象事務としたものでございます。
その内容ですとか範囲につきましては、これは地方公共団体の意見も伺っているわけでございますけれども、システム、業務の実態を十分に確認しまして、創意工夫を発揮する余地があるのかどうか、こういったものも含めて、事務の共通性等を精査の上、標準化対象事務を定める政令において定められたということでございます。
○宮本(岳)委員 創意工夫を発揮する余地がある事務、まさにそこに自治が表現されるからなんですね。利便性向上、行政運営の効率化に寄与する事務、自治行政局長、そうしか言いませんけれども、ここに今後の国の姿勢が表れているわけです。
ところが、メディアはそうは見ておりません。資料の最後、資料四を見ていただきたい。
昨日、五月二十七日付の読売新聞。「自治体システム共通化 政府方針 給付金や学校事務」という見出しが躍っておりますけれども、左側の記事の冒頭を見ていただいたら、赤線部、「政府はこれまで、「自治体の業務に口を出さない」ことを不文律としてきた。これが地方分権につながるとの解釈からだ」。
確認しますが、こういう立場で標準化の義務づけをできるだけ限定して、本村議員が指摘したように、どんどんどんどん拡大というようなことを抑えてきたのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
標準化につきましては、先ほども申しましたように、地方公共団体にとって創意工夫を発揮する余地の小さい事務を対象とすることとしておりまして、その内容につきましても、この考え方に基づいて対象を決めているものというふうに理解しております。
○宮本(岳)委員 余地の小さいものに限定したのは、自治、分権を保障するためだった、それも一つの理由だった、いいですね。
○山野政府参考人 お答えいたします。
地方団体の情報システムにつきましては、それぞれ地方団体の規模ですとか置かれた状況によって状況が異なります。これにつきましては、一番住民にとって最適なシステムであることが望まれるわけでございます。
一方で、標準化につきましては、行政運営の効率化、ひいては住民の利便性の向上、こういったものにつながるというものでございまして、そういった観点から標準化の事務を定めているということでございます。
○宮本(岳)委員 地方自治や地方分権について語らないんですね、自治行政局長が。
自治体が独自の施策に基づき進めようとしても、同一システム、鋳型にはまらないものを実施できなくなったら重大ですね。ところが、今政府は、この記事に出ていますけれども、ガバメントクラウド上で、給付金支給システムや学校事務システムは同じシステムを利用させることを検討しているという記事であります。記事は、「人口減で職員不足 効率化図る」と続けております。
しかし、給付金支給は、子供の医療費や給食費助成など、挙げられているのは地方自治に関わるものばかりです。行政運営の効率化と住民サービスをてんびんにかけることがあってはいけない。そういう認識は行政局長にはございますか。
○山野政府参考人 お答えいたします。
システムにつきましては、先ほども申しましたように、やはり住民の利便性の向上ということが究極の目標だというふうに思っております。その上で、行政運営の効率化ということも、これは重要なことでございまして、これら両方をどう達成していくか、そういった観点から検討が必要なものだというふうに考えているところでございます。
○宮本(岳)委員 自治体は既に、標準化法第四条二項で、国と連携を図りつつ、地方公共団体情報システム標準化を実施する責務を有するとされております。今度は、地方自治法でまで最適化を、努力義務とはいえ求められます。地方自治法では、事務等を限定もしていません。
情報システムについて、網羅的に国と協力が求められることになってくるのではありませんか、局長。
○山野政府参考人 お答えいたします。
情報システムにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、住民の利便性の向上、それから行政運営の効率化に資するということが最大の目的でございます。
地方自治体におきましては、それぞれの置かれた状況も異なります。私どもとしましては、そういった状況もよく踏まえながら、コミュニケーションあるいは情報共有をしながら、こういった標準化も含めてシステムの整備をしていく必要があるというふうに考えてございまして、そういった意味から、今回の規定が地方の自主性、自立性を損なうようなものではないというふうに考えております。
○宮本(岳)委員 住民の利便性を語るのであれば、自治体の職員を減らすように迫ってきたのは国であります。ところが、今度は、職員不足を理由にデジタル化を進め、デジタル化を機に自治体の住民サービスを後退させられることがあってはなりません。
それどころか、資料四の、読売も指摘するように、「システムを共通化すると、障害が起きた際の影響が広範囲に及んだり、一部のIT企業による寡占が進んだりする懸念もある。」、こういう問題をどう乗り越えるのか。これは、大臣の見解を最後にお伺いしたいと思います。
○松本国務大臣 情報システムを活用する意義については、局長からも御答弁を申し上げたとおりでございますが、それぞれ、様々な施策につきましては、大きなメリットと同時に克服すべき課題もあるものがあることは確かでありまして、それぞれの課題にはしっかり対応する必要があるかというふうに思っておりますが、今回、サイバーセキュリティーについて定めを置きましたように、システムの保全というのは大変大切な課題であると考えておりますので、障害の発生やその応急復旧などの対応についても、できる限りのことをするように努めていきたいと思っております。
○宮本(岳)委員 与党は今朝も、質疑終局、採決を口にいたしましたが、論外です。事態対処法がこの法の守備範囲に入るのか、除外されるのかをめぐる問題でさえ、言を左右にして答弁が定まりませんでした。与党推薦の参考人でさえ求められた、地方の声を聞くための地方公聴会も開催しておりません。このような状況での質疑終局、採決など断じて許されないことを指摘して、私の質問を終わります。
○古屋委員長 次に、西岡秀子さん。
○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。
本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。
早速質問に入らせていただきます。
まず、補充的な国の指示権について質問させていただきます。
先般行われました参考人質疑におきまして、永田参考人の方から、永田参考人は法案を評価する立場からの意見でございますけれども、危機対応として、危機のときには、それぞれの事情を持った地方自治体を総合調整するのは国しかないという陳述がございました。
一方で、コロナ禍で問題となりましたのは、国と地方の役割分担とともに、自治体間、都道府県と市町村の間の情報共有、特に保健所の業務において情報共有が課題となったというふうに認識をいたしております。
国の補充的な指示権の行使以前に、国の総合調整力が必要で、それが問われる局面が大変多いというふうに思いますし、コロナ禍で明確になりましたこの課題について、自治体間の横の連携強化にこの法改正が資するのかどうか、このことについての見解をお伺いさせていただきたいと思います。
○山野政府参考人 お答えいたします。
今般の新型コロナ対応におきましては、御指摘のとおり、情報共有、コミュニケーションの重要性が、国と地方公共団体の間だけでなく、地方公共団体相互間でも課題になったものと認識しております。この点、地方制度調査会の答申でも、事態への対応を実効的なものとするための前提であると指摘しているところでございます。
また、新型コロナ対応におきましては、保健所設置の市区単位を超えまして、都道府県による病床調整の必要性が生じ、また、その前提として、都道府県において重症患者の状況や人材の不足状況を把握する必要が生じたところでございます。
こうした課題を踏まえて感染症法の改正は行われておりますが、本改正案におきましても、このような課題を踏まえて、国だけでなく都道府県についても、基本的な対処方針を検討する等のため市町村に対し資料や意見の提出を求めることができることとするとともに、都道府県が直接処理する事務と保健所設置市区など規模、能力に応じて市町村が処理する事務について、国の指示によりまして都道府県が調整を行うこととするなど、地方公共団体相互間の情報共有、コミュニケーションや調整を適切に確保するための規定を設けることとしております。
これらの規定を活用しつつ、地方公共団体相互間の連携協力がより円滑に図られるものと考えているところでございます。
○西岡委員 今、法改正によって連携強化が図られるという御答弁がありましたけれども、先ほど吉川委員からも質問があった、次の質問でございますけれども、国の補充的指示権が行使された後の手続のプロセスが明確となっておりません。
補充的指示権が発動されるケースにおいては、自治体が現実的に対応できない事態が発生した場合と自治体サイドが国の指示権を受け入れられないケースがあるというふうに考えますけれども、判断をめぐっては事後に国と地方の係争処理制度が適用されるということは、先ほどの答弁で、審査の申出の対象となるという御答弁がございました。
この指示権行使の判断をめぐって、事後に国と地方の係争処理制度が適用される旨を明確化する必要があると考えますけれども、このことに対する見解をお伺いいたします。
○山野政府参考人 お答えいたします。
補充的な指示は地方公共団体に対し法的対応義務を課すものでございますので、地方自治法第二百五十条の十三第一項の処分その他公権力の行使に当たる国の関与に該当します。このため、同項に基づき、国の補充的な指示に不服がある地方公共団体は国地方係争処理委員会に対し審査の申出ができる、このことは地方自治法上明らかであるというふうに考えているところでございます。
○西岡委員 明らかであるということが、しっかり今御答弁がございました。また、明確化する必要があるということは重ねて指摘をさせていただきたいというふうに思っております。
続きまして、地制調の専門委員会における議論の中で、当時の全国知事会の会長から、国から地方公共団体というベクトルだけではなくて、現場の実態を一番よく分かっている地方自治体が主導権を握る場面も必要ではないかとの意見が出されております。
指示権行使以前に、危機に直面している自治体からの要請や意見の申出等の制度をつくり、規定することについては検討はなされたのかどうかということについて質問をさせていただきます。的確に現場の状況を把握する意味からも、地方から国へのベクトルも必要な仕組みではないかと考えますけれども、見解についてお伺いをいたします。
○山野政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、新型コロナ対応では、地方公共団体の自主性、自立性を発揮して行った取組が功を奏し、先進事例として全国に広がっていった局面もございました。
こうした点を踏まえまして、国と地方との間で十分な情報共有、コミュニケーションを図り、地方の実情をより適切に把握できるようにする観点から、本改正案では、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の特例として、国による事態対処に関する基本的な方針の検討や、国が直接講じる措置、あるいは地方公共団体に対する関与、こういった目的で国から地方公共団体に対し資料や意見の提出を求めることができるものとする規定を設けているところでございます。
地方公共団体から国に対する意見反映の仕組みにつきましては、既に、地方六団体による意見提出、国と地方の協議の場など様々な制度が設けられておりまして、これは地方制度調査会の専門小委員会にも資料が提出されまして、これらを踏まえて議論が行われたものでございます。
これは御指摘のとおり、国が現場の状況を的確に把握した上で適切な対応を行うためにも、現場の状況を把握している地方公共団体との間で十分な情報共有、コミュニケーションを図ることは極めて重要でございます。この点を含めて、改正法の運用について各府省に対してしっかり周知してまいりたいと考えております。
○西岡委員 現場の状況を一番よく分かっている地方自治体が主導権を握る場面も必要なのではないかという御指摘、大変私は重要な御指摘だというふうに思っておりますので、しっかり今御答弁いただきましたけれども、運用面でちゃんとやっていくということでございますけれども、この両方のベクトルがやはり重要だというふうに思います。特に地方自治体からのベクトルが重要だということを、また改めて指摘をさせていただきたいと思います。
続きまして、本改正案に、国による応援の要求及び指示についても盛り込まれておりますけれども、自治体に対する職員派遣義務については、例えば、自然災害の場面であれば、現状の課題でもある自治体における技術職員の不足の状況や、そもそも本来業務が増大し、業務を遂行する上でも人員不足の状況にある地方自治体の状況も踏まえまして、指示権が行使された場合に対応できる専門的な職員の確保など人員体制の整備が必要であると考えますけれども、平時からの地方自治体の人員体制の整備についての御見解をお伺いいたします。
○小池政府参考人 地方公共団体の定員については、各団体において行政の効率化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理に努めていただくことが重要と考えております。
近年では、一般行政部門の常勤職員は、防災などへの対応もあり、平成二十六年を境に九年連続で増加し、令和五年四月までの間で約三・四万人の増となっております。
総務省としても、地方公共団体の職員数の実態などを勘案して地方財政計画に必要な職員数を計上しており、令和六年度地方財政計画においては、職員数全体で約一・四万人の増としております。
特に、ニーズの高い技術職員につきましては、都道府県等が大規模災害時の中長期派遣要員を確保する復旧・復興支援技術職員派遣制度を令和二年度に創設し、登録された職員に係る人件費に対して地方交付税措置を講じてきたところでございますが、この取組を強化するため、令和五年度から始まっている定年引上げも踏まえ、地方交付税措置を拡充するとともに、技術職員の確保に計画的に取り組むよう要請しているところでございます。
関係省庁とも連携しながら、地方公共団体の人材の確保に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○西岡委員 次に、これまで委員会質疑の中で様々な議論が行われてきたわけでございますけれども、この地方自治法改正については、全国知事会や地方六団体からの提言ですとか意見、また全国の地方議会においては、慎重な審議を求める意見書が多数採択をされていることがございます。
これまでの質疑で、国の補充的指示権の行使以前に、しっかり国と自治体の事前協議、調整を明確に規定する必要性、また国会の関与の必要性、このことについて、私も質問の中で懸念点について指摘をしてきたところでございます。
これまでの質疑を通じてやはり明確となったことは、補充的国の指示権の行使は事前に自治体の意向を十分に踏まえること、これは明確に協議、調整を規定することだというふうに思いますけれども、十分に踏まえること、あくまで個別法に結びつけるための応急的な対応であり、その行使は必要最小限の行使にとどめ、また、拡大解釈や濫用されることがないということを明確化することが大変重要であると考えております。
先般の委員会においても松本総務大臣にこの件をお伺いいたしましたけれども、明確な御答弁があったというふうに私には認識ができませんでしたので、再度、行使に当たっては今申し上げた運用の理解でいいのかどうかということについて、松本総務大臣の明確な御答弁を求めたいと思います。
○松本国務大臣 これまでも申し上げてまいりましたけれども、本改正は、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命等を保護するため、国と地方が連携し、総力を挙げて取り組む必要があり、国は国が果たすべき役割を責任を持って果たす必要があることから、備えるべく御提案をさせていただいてきたところでございますが、あわせて、有識者の先生方からのお声でも、個別法の想定を超える事態が起きたときに、国の指示に関する規定がなく、制約のない判断につながることがあるのではないかといったような御意見もありまして、まさに関与の法定主義から、法で定めることに意義があり、国の責任かを明確化する意義があると考えて御提案申し上げているところでありますが、運用について、今委員から、自治体の意向を十分に踏まえること、応急的な対応であること、必要最小限の行使にとどめることなど御指摘がございました。
補充的な指示は、国が事態の規模、態様等を勘案して特に必要があると認めるときに、国民の生命等の保護を的確、迅速に実施するために講ずべき措置に関し、個別法に基づく指示ができない場合に限って、目的達成のために必要最小限の範囲で行使されるものと理解しております。
手続の説明に当たっては、あらかじめ自治体に対して資料、意見提出の求め等の適切な措置を講ずるよう努めなければならないこととしておりまして、国は、自治体から提出を受けた資料、意見を十分踏まえた上で補充的な指示の行使について検討する必要があると考えております。
また、補充的な指示が行使された場合には、国が責任を持って対応すべき事態であるにもかかわらず個別法による対応ができなかったことになりますので、そのような事態に対してどのように対応していく必要があるのか、事態対応全般についての検証が必要になると考えています。
法案が成立した際には、その施行に当たり、これらの点を含め、御指摘がありましたように、法律の運用の考え方について明確化し、各府省へ周知を図ってまいります。
○西岡委員 今の大臣の御答弁を踏まえますと、行使については十分自治体と事前に協議、調整をすること、また、必要最小限の行使にとどめ、拡大解釈や濫用されることがないことを明確化するということで理解をしてよろしいかどうか、再度御確認をいたします。
○松本国務大臣 今御指摘がございましたけれども、目的達成のために必要最小限の範囲で補充的な指示に関し行使をされる。また、手続の説明に当たって、国は、自治体から提出を受けた資料、意見を十分踏まえた上で補充的な指示の行使について検討する必要がある。そして、やはり事態対応全般についての検証が必要になるといったこと。委員から今御指摘がありましたように、法律の運用の考え方について明確化し、各府省へ周知を図ることを進めていきたいということでございます。
○西岡委員 自治体との事前の協議というものは、調整はもちろんしっかり行うということでよろしいでしょうか。
○松本国務大臣 これまでも自治体との間で情報共有、コミュニケーションを図ることが大切であるということは申し上げてきたところでございますが、国は、自治体から提出を受けた資料、意見を十分踏まえた上で補充的な指示の行使について検討する必要があると考えているところでございます。
○西岡委員 今大臣から御答弁いただきましたけれども、その中で、運用については指針を明確化していくという御答弁もございました。
何かどこか明確でない部分もあるんですけれども、必要最小限にとどめ、拡大解釈、濫用されることがないこと、また自治体の意見を十分踏まえるということについて、大臣から明確に御答弁があったというふうに理解をさせていただきたいと思います。
続きまして、DXの進展を踏まえた対応につきましてお伺いいたします。
令和七年度を期限とする標準準拠システムへの移行作業が遅れている自治体が百七十一団体、七百二システムあるという調査結果が三月にデジタル庁から発表されております。また、そのほかにも、五十団体、四百八十七システムについても引き続き移行期限の調査対象とされております。
政府は、標準化基本方針において、システムの移行において難易度が極めて高い自治体システムについては移行期限の先送りを認める方針を明記いたしました。移行期限に間に合わない原因については、ベンダーの撤退やベンダーの人的リソース不足などが挙げられております。
そのような中で、本改正案には、eLTAXの活用を拡大し、地方公共団体の長が指定する地方税以外の公金の収納事務を地方税共同機構に行わせることが盛り込まれております。
デジタル人材の確保が困難な地方の現場の負担の一層の増大が懸念をされております。自治体からの十分な意見を聴取すること、そして現場の状況を踏まえた十分な財政措置が不可欠であると考えますけれども、その方針につきましてお伺いをいたします。
○山野政府参考人 お答えいたします。
eLTAXを活用した公金収納の取組は、住民や事業者の利便性向上のみならず、地方公共団体にとって、公金収納事務の効率化、合理化につながるなど大きなメリットがあるものであり、これを積極的に推進しております。
他方、eLTAXを活用した公金収納の導入に当たっては、各地方公共団体においてシステム改修等の対応が必要になってまいります。
御指摘もございました。私ども、地方公共団体に対しeLTAXを活用するメリットをしっかり説明しつつ、各地方公共団体の検討状況や課題を丁寧に把握し、地方税共同機構と連携して、システム改修に係るベンダーとの調整に活用いただける資料を提供するとともに、必要な措置について検討するなど、きめ細やかに支援を行うこととしております。
また、御指摘ございましたが、地方公共団体におけるデジタル人材の確保、育成は重要なことだと考えております。このため、都道府県等における広域的な人材確保やDX推進リーダー育成に係る地方財政措置などに取り組んでいるところでございます。
各地方公共団体におけるeLTAX導入に向けた準備が着実に進められるよう、地方公共団体をしっかりと後押ししてまいります。
○西岡委員 eLTAXの活用に当たっても、しっかり現場の声をお聞きいただいて進めていただくことを要望させていただきます。
続きまして、本改正案には、サイバーセキュリティーの方針の策定、公表、及びこれに基づき必要な措置を講じることを義務づけることが盛り込まれております。サイバーセキュリティー対策については、大変重要な取組であることは当然のことでございますけれども、その前提となる、現状の、地方公共団体における情報セキュリティー体制整備の現在の状況と課題についてどのように認識しておられるのかということについてお伺いをさせていただきます。
○山野政府参考人 お答えいたします。
デジタル技術の進展に伴いまして、複雑化、巧妙化するサイバー攻撃によるシステム障害の懸念など、国民生活の様々な場面において情報セキュリティーに係るリスクが増大しているものと承知しております。
こうした状況を踏まえ、地方公共団体としても、情報セキュリティー確保に必要な対策を講じるとともに、セキュリティー分野にも精通した人材を含め、必要なデジタル人材を確保、育成することなどの体制の整備を図っていくことが重要であると認識しております。
また、現在、地方公共団体における情報セキュリティーについては、総務省において技術的助言として示しておりますガイドライン等を踏まえ、情報セキュリティーポリシーが策定され、これに基づき対策がなされているところでございますが、一部の団体ではセキュリティーポリシーが未策定のところもございます。こうした団体においても適切に対策を講じていただく必要があると認識しております。
○西岡委員 情報セキュリティーの人材不足に対する対応については、今回の答申の中で、情報セキュリティー分野の広域連携による対応という内容が盛り込まれておりますけれども、今後どのように対応していかれる方針であるか、また、地方公共団体が高度化、巧妙化するサイバー攻撃に対して対応していくために、政府として人材も含めた技術支援にどのように取り組んでいく方針であるか、また、サイバーセキュリティー確保に係る地方財政措置の拡充の方針について、併せてお伺いをさせていただきます。
○山野政府参考人 お答えいたします。
まず、現在、総務省では、人材の確保、育成については、都道府県等における広域的な人材確保やDX推進リーダー育成に対する地方財政措置、各種研修、訓練の提供や問合せへの助言等に取り組んでいるところでございまして、今後も支援を充実強化してまいりたいと考えております。
技術的支援につきましては、今般の地方自治法の改正案では、各地方公共団体において情報セキュリティー対策の方針の策定及び実施について定め、地方公共団体の情報セキュリティーの確保を図ることとしており、いずれの地方公共団体においても実効性のある対策を講じられるよう、情報セキュリティー確保への支援にしっかり取り組んでまいります。
また、セキュリティー確保に係る地方財政措置についてでございますが、地方公共団体におきましては、今後も、サイバー攻撃の高度化に伴い、情報セキュリティー対策を適切に実施し、また継続的に見直しをする必要があることから、地方公共団体における実態や御意見も踏まえながら、適切に対応してまいりたいと考えております。
○西岡委員 サイバー攻撃に対応するための技術支援は、日々刻々と技術が進歩をする中で、対策としても、高度化、巧妙化する攻撃に対して対応していかなければいけないということも踏まえて、人的な面も含めた技術支援と地方財政措置の拡充については、しっかりお取り組みいただくようにお願いを申し上げたいと思います。
時間が残り僅かとなりましたけれども、三つ目の法改正の柱として、地域の多様な主体の連携及び協働の推進ということで盛り込まれております。
指定地域共同活動団体につきましては、多様な主体として想定される自治会に代表される地域コミュニティーでございますけれども、現在、担い手不足から大変この地域コミュニティーが弱体化しているという現状がございます。その意味でも、地域コミュニティー活動の持続可能性の向上のための取組が大変重要だと考えております。
従来から、行政に協力する業務の負担軽減など、地域の実情に応じた見直しが求められておりますけれども、地域活動におけるデジタル技術の活用は地域活動の効率化や自然災害時にも大変有効であると考えますけれども、全国の好事例の展開ですとか、またデジタル技術活用のための地方財政措置が必要であるというふうに思いますけれども、このことについて併せてお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○山野政府参考人 お答えいたします。
自治会等は地域における共助の担い手として重要な役割を担っておりますが、一方で、御指摘のように、加入率の低下あるいは担い手不足等の課題があると認識しております。
このような中で、特に地域活動のデジタル化でございますけれども、若年層を含む多世代が自治会活動に参加しやすくなるための有効なツールであると考えられることから、今後、電子回覧板等のデジタルツールの活用の手引を作成し、市町村による自治会活動支援の取組を後押ししていくこととしております。
また、地域が抱える課題のデジタル実装を通じた解決の取組など、地域のデジタル化を推進するため、地域デジタル社会推進費を令和六年度の地方財政計画の歳出に計上しております。
こうした取組を通じまして、今後とも、自治会等が持続可能な形で活動を行うことができるよう対応してまいりたいと考えております。
○西岡委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
○古屋委員長 この際、休憩いたします。
午前十時四十九分休憩
――――◇―――――
午前十時五十七分開議
○古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
ただいま議題となっております内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する斎藤洋明さん外二名提出の修正案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○古屋委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。おおつき紅葉さん。
○おおつき委員 私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、政府案に反対、自民、公明、維新共同提出の修正案に賛成の討論を行います。
反対の理由の第一は、大規模な災害、感染症の蔓延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態におけるいわゆる補充的指示権などの特例は、想定できない事態をあえて想定したものであり、特例を規定するような法案の根拠となるべき立法事実がないことです。
第二は、いわゆる補充的指示権などの特例は、二〇〇〇年の地方分権改革一括法に基づき積み上げられてきた国と自治体との関係を対等、協力とした地方分権改革の成果を無にして分権への流れを逆行させ、憲法の保障する地方自治の本旨をも損ないかねないことです。
第三は、指示権発動の要件が極めて曖昧な上に、発動の手続は閣議決定のみとなっており、発動前の自治体からの意見聴取も努力義務にとどまり、国会の関与もないなど、濫用が懸念され、自治体への国の不当な介入を誘発するおそれが高いことです。
第四に、本来、大規模災害や感染症への対処においては自治体と国が連携協力することこそ大事であるにもかかわらず、補充的指示権、調整に関する指示、応援の指示のいずれも国が正しいとの前提で、国の一方的指示に従う義務を自治体に課すものであり、自治体側の主体性や自発性をも損ない、現場の的確な判断や対処を妨げかねないことです。
第五は、指定地域活動団体について自治体の長との癒着等が懸念されることです。
立憲民主党は、最低限、国の関与の原則の維持と緊急性の明記、自治体との事前協議、調整の義務化、国会の関与と事後検証の義務化、個別法の見直しを柱とする修正をすべきとの要求項目をまとめましたが、受け入れられなかったことから、政府案には反対といたします。また、国会への事後報告を求める三党共同の修正案については、不十分ではありますが、国会の関与に資することから、賛成いたします。(拍手)
○古屋委員長 次に、吉田とも代さん。
○吉田(と)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の吉田とも代です。
我々は、地方自治法の一部を改正する法律案について、全て賛成の立場から討論いたします。
令和二年から始まったコロナ禍は、三年以上の長きにわたり我々の生活に多大な影響を与えました。その一方で、国と地方の関係についても様々な課題を浮き彫りにしました。
我々が考える最大の課題は国と地方の責任や権限が曖昧な点であり、その一例が休業要請の発出です。新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき休業要請を出す場合、その権限と前提となる緊急事態宣言発出の権限とが、国と地方で分かれています。結果として、大阪府や東京都などの自治体で、主導権を国と地方のどちらが握るかで混乱を生じました。
コロナ禍のような緊急事態では、現場において瞬発的な判断と行動が求められます。責任や権限の不明瞭な点をそのままにすることは、結果的に首長の適時適切な判断を阻むと考えます。
その点で、全国的な対応が必要な事項については国が権限を明示的に持つべきです。また、本改正案は、国と地方の基本原則にのっとって、国民の生命等を保護するために必要な規定を設けるものであり、地方分権に逆行するものではないと思案します。
その上で、総務大臣は本改正案について、個別法で想定されていない事態において国には果たすべき役割があって、これを責任を持って果たす必要があると述べています。我が会派としても、個別法では対応が困難な事態における国の責任を明確にし、責任の不在を解消する観点から、本改正案の意義が認められると考えます。
一方で、我が国の緊急事態法制の本筋は個別法であることにも留意すべきです。補充的指示権行使後の個別法見直し義務については、本改正案で条文化はされていませんでした。しかしながら、必要となった国の役割を検証した上で個別法に反映するプロセスは、個別法を災害対応の中心に据える我が国にとっては重要なものと言えます。
我が会派は、このような考え方の下、補充的指示権の行使後に各大臣はその旨及び内容を国会に報告するものとする修正案を提出いたしました。この義務により、補充的指示権行使の効果や個別法の改正すべき点といった議論が国会において行われ、個別法への反映プロセスが活性化されることが期待されます。
政府には本修正案の趣旨を十分に踏まえるよう強く求め、我々の賛成討論といたします。
御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)
○古屋委員長 次に、宮本岳志さん。
○宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案に対する討論を行います。
本法案は、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断すれば生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するために国が地方自治体に指示をすることができる指示権を新たに導入するものであり、断固反対です。
戦前の中央集権的な体制の下で自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省から、日本国憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ団体自治と住民の意思に基づく住民自治を保障しました。しかし、歴代自民党政権は自治体の権限や財源を抑制し続け、地方分権一括法でも、地方分権を掲げ機関委任事務を廃止したものの、四割にも及ぶ広範な自治体の事務を法定受託事務とした上に、国による強力な関与の仕組みも法定し、さらに、自治事務に対しても国による是正の要求を可能としました。
本法案による指示権は、国による強制的関与が基本的に認められない自治事務にまで国が強く関与する仕組みとなっています。
しかも、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断する類型も基準も、大規模な災害、感染症の蔓延その他としているだけで極めて曖昧であり、さらに、発生のおそれがあるなどの判断は全て政府に委ねられています。国の恣意的判断を可能とするもので、極めて重大です。
審議では、個別法で想定されない事態が起こったときに指示するとしながら、想定される事態や個別法との関係についての検討内容も示されませんでした。それにもかかわらず審議を終わらせることは許されません。断固抗議します。本法案は廃案とすべきです。
第二に、本法案は、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断した下で、国による自治体職員の派遣のあっせんを可能とするものです。国の指示に基づく業務遂行のために自治体職員までも駆り出すことを可能とするものであり、重大です。
第三に、本法案は、他の自治体又は国と協力し情報システム利用の最適化を図ることを自治体の努力義務とするものです。政府はこれまでも、地方公共団体システム標準化や、国が構築するガバメントクラウドの活用を求めてきました。本法案は、今後国が進める情報システムの整備の取組に幅広く協力していくことを自治体に求めるものになります。地方公共団体システム標準化等は、情報システムの共同化、集約の推進によって、自治体は国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになり、地方自治を侵害しかねないものです。こうした問題を解決することなく自治体に情報システムの利活用を推進していくことには反対です。
修正案についても、閣法の問題を取り除くものではなく、反対です。
以上、討論といたします。(拍手)
○古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○古屋委員長 これより採決に入ります。
地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、斎藤洋明さん外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○古屋委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○古屋委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○古屋委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、斎藤洋明さん外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。藤岡隆雄さん。
○藤岡委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の事項について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。
一 本法によって創設する国と普通地方公共団体との関係等の特例の対象となる「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」については、国と地方公共団体の認識や対応に違いが生じることのないよう、当該事態に該当するか否かを判断する考え方を可能な限り明確にし、速やかに地方公共団体に周知すること。
二 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、当該事態に適切かつ効果的に対処できるよう、デジタル技術の積極的な活用や、地方公共団体への情報収集及び連絡のための要員の派遣などによって、関係地方公共団体との迅速かつ円滑な情報共有・意思疎通に努めること。この際、地方公共団体に過度な負担とならないよう十分に配慮すること。
三 生命等の保護の措置に関する指示を行うに当たっては、状況に応じて、あらかじめ関係地方公共団体等との協議を行うなど、事前に関係地方公共団体等と十分に必要な調整を行うこと。
四 生命等の保護の措置に関する指示については、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮し、個別法を制定又は改正するいとまがない場合であって、かつ、当該指示以外の措置では目的を達成することができないと認められる場合に限定してこれを行うようにすること。また、当該指示の内容は、目的を達成するために必要最小限のものとするとともに、地方公共団体の意見や地域の実情を適切に踏まえたものとすること。
五 生命等の保護の措置に関する指示を行った場合には、その旨及びその内容を速やかに国会に報告すること。また、当該指示について、同様の指示が再度行われることのないよう、地方公共団体等の関係者の意見を聴いた上で十分な事後検証を行い、その結果に基づいて、迅速に個別法の規定の整備に係る必要な法制上の措置を講ずること。
六 生命等の保護の措置に関する指示に基づき、地方公共団体が事務を処理する場合にあっては、これに要する経費の財源や必要な人材を適切に措置するなど、国が責任をもって当該地方公共団体を支援すること。
七 本法の規定に基づく応援や職員の派遣が行われる場合にあっては、これまでの災害時や感染症まん延時の事例も踏まえ、これに要する経費を負担する地方公共団体に対し、適切な財政措置等を講ずること。また、事態発生市町村等への応援や職員の派遣を適時適切に行うため、各地方公共団体における多様な職種の職員の充実を図ることや、都道府県・市町村の連携等による広域的な人材の確保及び活用の在り方について、必要な検討を行うこと。
八 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に的確かつ迅速に対処するためには、その前提として、地方公共団体の規模・能力に応じ、適切に権限が配分されている必要があることに鑑み、都道府県から指定都市等への権限移譲を始め、更なる権限移譲を推進すること。
九 公金収納のデジタル化に伴う各地方公共団体のシステム改修については、国が必要な財源を確実に措置するとともに、既に地方公共団体情報システムの標準化等により、地方公共団体に大きな負担が生じていることに鑑み、過度な負担を強いることとならないよう留意すること。
十 指定地域共同活動団体制度の創設に当たっては、行政財産の貸付や随意契約による事務委託に関して、弾力的な運用を可能とする特例を設けることに鑑み、指定に係る団体の民主的で透明性の高い運営その他適正な運営を確保するため、事前及び事後チェックを適確に行えるよう、地方議会が一定の役割を担うことも含め、市町村に対して必要な助言を行うこと。
十一 指定地域共同活動団体としての指定の有無にかかわらず、地域住民が中心となって形成され、地域課題の解決に向けた取組を持続的に実践する団体に対し、市町村が十分な支援を行うことができるよう、引き続き、適切な財政措置を講ずること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○古屋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○古屋委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松本総務大臣。
○松本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○古屋委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時十五分散会