衆議院

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第18号 令和6年4月26日(金曜日)

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令和六年四月二十六日(金曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      加藤 竜祥君    岸 信千世君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      中川 貴元君    中谷 真一君

      中山 展宏君    西野 太亮君

      藤丸  敏君    藤原  崇君

      古川 禎久君    宮下 一郎君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      若林 健太君    江田 憲司君

      階   猛君    末松 義規君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      原口 一博君    沢田  良君

      藤巻 健太君    掘井 健智君

      日下 正喜君    中川 宏昌君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   内閣府大臣政務官     神田 潤一君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      井上 俊剛君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 原嶋 清次君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           増田 嗣郎君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  英利アルフィヤ君   中川 貴元君

  大野敬太郎君     中谷 真一君

  木原 誠二君     西野 太亮君

  竹内  譲君     日下 正喜君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     英利アルフィヤ君

  中谷 真一君     大野敬太郎君

  西野 太亮君     加藤 竜祥君

  日下 正喜君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

四月二十六日

 消費税率五%への引下げに関する請願(志位和夫君紹介)(第一一九四号)

 消費税率五%以下への引下げとインボイス制度の廃止に関する請願(志位和夫君紹介)(第一一九五号)

 消費税率の引下げを求めることに関する請願(大石あきこ君紹介)(第一一九六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総合政策局政策立案総括審議官堀本善雄君、企画市場局長井藤英樹君、監督局長伊藤豊君、証券取引等監視委員会事務局長井上俊剛君、総務省大臣官房審議官原嶋清次君、法務省大臣官房審議官松井信憲君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房審議官増田嗣郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。本日もよろしくお願いします。

 ちょっと、質問に先立って、円安のことについて大臣の認識をお伺いしたいんですが、今の円安はマネーゲームに基づく一時的なものなのか、それとも、構造的な要因に基づく中長期的に続くものと見ているのか、その辺りを教えていただけますか。

鈴木国務大臣 今の円安の背景について多くを申し上げることは、場合によっては市場に影響を与える可能性がありますので控えたいと思いますが、マーケットトークも含めて言われておりますことは、やはり日米の金利差というものが意識されているのではないか。そういうことを考えますと、こうした今の金融情勢がどれぐらい続くのか、短期で終わるのか、それとも長期に及ぶのか、そういうところの判断にかかってくるんだ、そういうふうに思います。

 ただ、為替の水準というのは、金利差、それはかなり重要な部分を占めますけれども、そのほかにも、国際収支でありますとか物価の動向でありますとか、そういう経済指標、それから市場参加者のセンチメントでありますとか、それに基づく投機の動き、そういうものも複雑に混じり合って形成されると思います。しかし、重要な部分であります金利差が意識されているということ、これが言われておりますので、これは金融政策がどの程度日米で続くのかということによってくるのではないか、そういうふうに考えております。

階委員 これからゴールデンウィークで海外に行かれる方も多くなると思うんですよ。ニュースなどでも報道されていますけれども、非常に円安で海外に行ったときに買えるものが少ないということで、大変、一般の方もこの円安の影響は出ているということで、ここは断固たる措置を取っていただければと思っております。

 円安による物価高という中で今政府が検討しているのは、少子化対策加速化プランの財源三・六兆円のうち一兆円について、子ども・子育て支援金という新たな負担金を徴収する法案を提出して、参議院で審議をしているわけです。

 しかしながら、立憲民主党では、今の円安、物価高の折、国民に新たな負担を求めなくてもいいのではないか、それ以外の方法で財源を捻出すべきではないかということを考えまして、たどり着いたのが、パネルを用意しております、日銀のETFを政府の特別会計が簿価で買い取って、そこに入ってくる年間一兆円以上と見込まれる分配金を活用するというものです。

 これについて、岸田首相は十六日の国会答弁で、ETFの分配金収入は日銀の国庫納付金の一部として一般会計の歳入に計上され、国の一般財源として既に活用されていると述べられました。しかしながら、ETFの分配金収入は、確かに国庫納付金の一部として一般会計の歳入に結果的には計上されますが、それは決算の段階であって、当初の予算の段階では、政府が行う事業の財源としては見込まれていません。

 その証拠をお示しします。二ページ目を御覧になってください。

 これは、調査室にも御指導いただきながら私の事務所で作ったものですけれども、平成三十年以降の政府予算の中で見積もられている日銀の国庫納付金、これはオレンジで示したもの、そしてその隣が試算ということで、我々の事務所で試算したものであります。

 この紫の部分がETF分配金を見込んだもの、そしてブルーの部分が、信託財産株式というのは過去に銀行から買い取った株の売却益などです。そして、緑の部分は、日銀が大量に持っている国債の利息収入から得られるものということで、それぞれの収益に対して必要な経費、これを差し引いたものを試算額として計上しております。詳しくは、下の注一、注二を御覧ください。

 その上で、実績値というのが三本目の棒グラフで、我々の試算とどう違うんだろうかということで、ここで、令和四年度、右から三つ目のところですね、ここに着目いただきたいんですけれども、当初予算案で見積もっていたのは〇・九兆円。ところが、実績値は一・九兆円ぐらいということで、実際には一兆円ぐらい上振れしたということがありました。

 今回、令和六年度、一番右ですけれども、当初予算では一・一兆円となっておりますが、恐らく、我々が試算しているところだと一兆円ぐらいは余るだろう。つまり、ETF分配金部分は、ほぼ予算段階では見積もられていないということを我々としては試算しているわけです。

 令和五年度、その一つ手前のものですけれども、令和五年度についてはもうすぐ実績値が出てきますけれども、この令和五年度も、我々の試算値では、ETFの分配金収入というのはほとんど予算段階では見積もられていないというふうに分析しております。

 そこでお尋ねしたいんですけれども、ETFの分配金収入は一般財源として既に活用されているというふうに岸田首相は答弁されていたわけですけれども、今お示ししたとおり、分配金収入は予算段階で見込んでいないと思われます。ですので、岸田首相の答弁は誤りであり、撤回すべきではないかと思いますが、大臣の見解をお願いします。

鈴木国務大臣 階先生の御指摘は、日本銀行の納付金に関しまして、予算額と実際の納付額との間に乖離がある、この乖離はETF分配金収入によるものではないか、そうであるならば、予算額からの上振れは、税収や税外収入が上振れた場合と同じように特例公債の発行減額に充てられる可能性があり、必ずしも一般財源として何らかの使途に活用されているわけではないという御趣旨である、そういうふうに受け取らせていただきました。

 お示しをいただきました子ども・子育て支援金制度の対案につきまして、その財源でありますが、ETF分配金を活用したスキームについては、財政法との関係でありますとか、日本銀行の金融政策の独立性との関係の問題もありますが、これは取りあえず横に置いておきまして、御指摘の点についてのみ申し上げますれば、まず、事実関係として、日本銀行からの納付金については、予算の時点からETF分配金収入も見込んでおりまして、予算と実際の納付額との乖離、これは、ETF分配金収入を見込んでいないことによるものではないわけであります。

 また、決算において、予算上の見込額から上振れが生じることも想定されますが、日本銀行は多額の国債や外貨資産等を有しておりまして、国庫納付金の水準は、金利や為替の水準に大きく影響をされるものであります。特に昨今では、円安の影響というものが大きく、この影響を受けていることと承知をしておりまして、上振れは、こうした金利や為替の水準の変動の結果として生じたものであると思います。

 さらに、仮に上振れ額を新たな使途に充てるといたしましても、その分、特例公債の発行額を減額できなくなることから、結局は特例公債の発行に依存することとなることということを踏まえますと、新たな財源とは言えないのではないか、そのように考えます。

階委員 まず、予算段階で見込んでいるというお話だったんですが、客観的な実績を見ますと、一兆円のギャップがあるんですね。見込んでいるんだったら、こんなにギャップは出ないはずです。

 それと、もし見込んでいるんだったら、もうすぐ結果が出ますこの令和五年度、当初予算段階では〇・九兆円だったものが、実績の段階では国庫納付金はさほどこれと変わらないということを大臣はおっしゃっているということでいいですか。

鈴木国務大臣 確かに、当初予算と決算を見てみますと、令和四年について言えば、一兆円程度乖離がございます。その乖離につきましては、これは当初予算にETFの分を入れていないということではなくて、先ほど申し上げましたとおり、多額の国債あるいは外貨資産等、これに対する金利や為替の水準によって国庫納付金が影響を受けるわけでありまして、一兆円の差があるわけでありますが、昨今におきましては、やはり円安の影響でこのような差が出たということだと理解しています。

階委員 今日、日銀は政策決定会合で来てもらえませんでした。本当だったらここは日銀にただすところだと思うんですけれども、外貨の円安による含み益が出たり含み損が出たりという部分がありますよね。そこは、一旦は収益として計上しつつも、たしか引当金として同じ額だけ、例えば含み益が出たら、その額は利益として計上するんだけれども、同じ額だけ引当金としても計上している、そして相殺されているということだったと思うんですけれども、違いますかね。

鈴木国務大臣 正確に答えられるかどうか分かりませんが、利益の半分を入れるということで整理されていると理解をしております。

階委員 ですので、我々は、そこは多少の変動要因はあるとしても、でも、ギャップの大宗を占める部分はETFではないかということを申し上げているわけですよ。

 もし、ETFを最初から見込んでいる、予算段階で見込んでいるということであれば、その積算根拠、これを国会に出してほしいんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 予算におきましては、やはり保守的に、堅いところを見なければいけないということが一般的な傾向としてあると思います。

 しかし、積算するからには、責任を持ってしなければいけませんので、どういうことでこういう数字を見積もったのかということはお示しできると思います。

階委員 では、理事会に提出をお願いします。

 委員長、お取り計らいをお願いします。

津島委員長 理事会にて協議をいたします。

階委員 それで、結局、国庫納付金が予算段階より上振れしたとしても、その分は決算の段階で国債の発行抑制とかに充てられるんだというお話を私は昨年も伺ったことがあります。それはそのとおりだと思うんですけれども、国債の抑制に充てるということは、そもそも、本来、ETFの分配金収入というのが見込まれていたにもかかわらず、当初予算ではそれを使わないで、最後、余っている部分を借金の返済に充てるということで、国会の議論を経ずに借金の返済に充てていることだと思うんですよね。なので、私としては、財政民主主義の観点から、ちょっとこれはおかしいのではないかと。

 まず、憲法八十五条という条文がありますよね。この八十五条によって、国費を支出することは国会の議決に基づくことを必要とする、これに反していますし、また、今回やろうとしているのは、少子化対策を行うためだということで国民に負担を求めておきながら、その結果浮いたETFの分配金収入という財源を財務省の裁量で借金返済などに充てるということを可能にしているわけであって、これは、一般財源の活用というよりは、むしろ流用とか悪用の類いではないかというふうに思うんですね。

 こうしたことをやるよりも、今、円安、物価高で苦しんでいる中で、なるべく国民の負担を減らす、どうせ上振れが一兆円も見込まれているわけですから、この部分については、新たな財源として予算段階から子育ての部分に充てるということをやる方が正しいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 現実として、昨今は円安がかなり急激に進んでいるという中におきまして、結果として、意図をしたわけではありませんけれども、決算段階で一兆円余りの乖離が出たということは事実でありますが、それは、先ほど来申し上げていますとおり、これは結果としてそういうのが出たということでございます。過去を遡ると、その逆があったのかどうか分かりませんが、かなり乖離幅がないときもあった、そのように承知をいたしております。

 いずれ、結果として生じたこの差については公債発行を減額をするというのは、これは財政健全化の立場からしても正しい処置の仕方である、そういうふうに考えます。

階委員 国庫納付金というのはETF以外にも様々な要因によって変動しますから、当初の段階から国庫納付金を正確に見積もることは困難だということは理解します。

 ただ、一方で、分配金収入というのは、前回もお話ししましたけれども、ほぼ一兆円以上、株価が今より三〇%ぐらい下がっても一兆円ぐらい確保できるわけですね。この部分については別枠で管理して財源に充ててもいいんじゃないかというふうに思うわけですよ。それは、国民の負担を求めるよりも、そちらの方が得策だと思うからです。

 財源の問題だけではなくて、ETFを日銀から切り離して国が持つ、政府が持つということは、今岸田政権でやろうとしている資産運用立国にも整合するんじゃないかと私は思っていますよ。

 なぜかというと、三ページを見てください。この三ページの表題の下、「企業と投資家の建設的な対話の促進により、中長期的な企業価値向上を促すため、「共同保有者」の範囲を明確化」ということで、「企業と投資家の建設的な対話の促進」とあるんですが、日銀は今、東証プライムの時価総額の約七%を占める大株主です。しかし、日銀は自ら企業と建設的な対話は一切していません。株主総会の議決権行使を含めて、投資運用業者に丸投げしているわけです。

 日銀が巨額のETFを保有し続けることは、政府の資産運用立国方針と整合しないと思うんですが、この点はどうですか。

鈴木国務大臣 資産運用立国と日銀の巨額のETF保有ということの整合性ということでございますが、資産運用立国実現プランでは、投資に関わる各主体に対する働きかけを通じまして我が国経済の成長と国民の資産所得の増加を目指しておりまして、このうち、投資先企業との対話を行う機関投資家に対しては、中長期的な企業価値の向上に向けた建設的な対話を行うよう促しているところでございます。

 日本銀行ではETF買入れ要領というのがあると承知をしておりまして、そのETF買入れ要領におきましては、ETFの運用会社に対して最新のスチュワードシップ・コードの受入れ及び実施の状況を報告することを求めているものと承知をいたしております。そして、ETFの運用会社において、そのETFに組み入れられた株式の発行体企業との建設的な対話など、スチュワードシップ活動が行われているものと考えております。日銀が直接、上場企業に対していろいろ物を言うのではなくて、この間にありますところの運用会社がそうしたことをするということが日銀のETF買入れ要領に書いてある、そういうふうに理解をしております。

 こうしたことを踏まえますと、日本銀行がETFを保有する場合でありましても、その運用会社のスチュワードシップ活動の実質化を通じまして中長期的な企業価値向上を促しているという点において、資産運用立国に関する施策と整合的である、そのように考えます。

階委員 今おっしゃいましたけれども、日銀が保有するETFは、一般の顧客にもそれは売っているわけですよね。一般の顧客と同じような立場で日銀はスチュワードシップ・コードを守ってもらっている、受け身の立場です。別に日銀が特別に投資信託運用会社に指示しているわけでも何でもないんです。一般の顧客と同じで受け身なんですよ。それがいいのかということです。建設的な対話ではないんじゃないかということですよ。

 私は、ある有識者の方から意見を聞いていて、そういうのはやはり、物言わぬ株主によって企業のガバナンスがゆがめられているということをお聞きしています。

 これに代わって、本当に資産運用立国を目指すんだったら、やはり私どもの案のように、政府の方で買い取って、場合によっては、投資信託のままじゃなくて、それを現物株に、いわゆる現引きをして、そして積極的に対話をしたり、あるいはいろいろとガバナンスについて物を言っていく。今の大問題である賃上げとか少子化対策、脱炭素社会構築といったことについて、企業が積極的に貢献することで企業価値を高めていくような誘導をするということも選択肢としてあり得るんじゃないかということを考えています。

 そのような見地からも、日銀が保有しているETFというのは、資産運用立国にとってそれほどプラスになっていなくて、政府は買い取って、企業と対話する条件を整えるべきではないかと思うんですけれども、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 日銀が持っておりますETFを政府が買い取るということでありますが、それにつきましては先ほど、ちょっと横に置いておく、こう申し上げましたけれども、財政法上の関係でありますとか、あるいは日本銀行の金融政策の独立性、これは日銀の金融政策の中でETFというものを買い込んでいるということでございますので、そういう点の問題があるということも申し上げたいと思います。

階委員 そういう問題とは別に、日銀が保有し続けているこの害悪、株式市場に対する害悪というのが存在するということを私は言っているわけです。物言わぬ株主によって、対話が促進されず、企業のガバナンスがゆがめられるということも言っているわけです。それを是正するための方策として政府が買い取るというのは、私は正しい方向性ではないかというふうに思っています。

 それと、この対話の促進ということで、三ページの下の方に米印がありまして、ちょっと私の方で下線を引きましたけれども、「配当方針や資本政策の変更といった、企業支配権に直接関係しない提案を共同して行う場合等を想定」というふうになっていますね。この場合は共同保有者に該当しないということを明確化するそうです。

 そうすると、大量保有報告書の提出が免除されて、今まで以上に投資家サイドの配当方針や資本政策の変更、すなわち配当の引上げとか自社株買いなどを求める行為がやりやすくなるわけです。これでは、いわゆる株主利益を優先する株主資本主義を助長しかねないのではないかということを考えます。

 そもそも、岸田政権は、新しい資本主義を掲げて、株主資本主義ではなくて、株主のほか、従業員や顧客やサプライヤーや地域社会など、多様なステークホルダーに配慮する公益資本主義を志向していたのではなかったのでしょうか。一体、資産運用立国は、株主資本主義とステークホルダー資本主義、どっちを目指しているんでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 新しい資本主義、これを金融面から推進する資産運用立国実現プランでありますが、これは、我が国の家計金融資産の半分以上を占めます現預金が投資に向かい、それが企業価値の向上につながり、その恩恵が家計に還元されることで、また更なる投資や消費につながっていくという、成長と分配の好循環を実現することを目指しております。

 この好循環の実現を目指すに当たりましては、企業は短期的な株主利益を追求するのではなくて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指して行動することが重要と考えます。

 こうした観点から、政府では、これまでもスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードを策定をいたしまして、機関投資家や上場企業に対して、企業の中長期的な企業価値の向上に向けた自主的な行動を促してまいりました。特に、コーポレートガバナンス・コードにつきましては、上場企業は、株主のみならず、顧客や従業員を含む多様なステークホルダーとの協働に努めるべきことということを明記をしているところでございます。

 このように、資産運用立国は、株主資本主義や公益資本主義といった特定の考え方に完全に一致するものではありませんけれども、先生御指摘と同様に、企業の中長期的な成長の実現に向けて、従業員や取引先なども含んだ多様なステークホルダーの関与、これを重視するものである、そのように考えます。

階委員 とはいっても、さっき三ページの下線部分、指摘したとおり、配当方針や資本政策の変更、すなわち配当の引上げとか自社株買いの提案がしやすくなるわけですね、今までより。それともう一つ、五ページ目なんですけれども、投資運用業者の参入促進ということで、投資運用業に参入しやすいように、ミドル・バックオフィス業務、これを外部委託ができる。

 私も金融機関でコンプライアンス部門にいましたので、これを見たときは驚いたんですね。コンプライアンスの仕事をするのに、会社にいなくて仕事ができるのかと。いろいろな現場の実情を知ったり、あるいはコミュニケーションを頻繁に取ったりしながら問題ないかどうかをチェックするわけですよ。外部にそれがあったとして、本当に必要な情報が得られるのか。そして、外注するということですから、お金を払う、払われる関係になるわけですね。委託先は委託元に対して、いわば頭が上がらなくなって言うべきことを言えなくなる、こんなことも危惧されるわけですよ。

 それに加えて、六ページ目を見てください。コンプライアンス人材を外注するということで、外注する場合は、その外注先には投資運用関係業務受託業者に登録するということが求められるわけですけれども、そうして登録された業者に委託する場合は、六ページ目の左側の下線を引いているところ、今までですと、例えばコンプライアンスですと、その執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員又は使用人、これを置く必要があったところが、これからは、その業務の監督を適切に行う能力を有する役員又は使用人ということで、監督を適切に行えればいいというんですよ。

 でも、私は、監督を行うためには、そもそもコンプライアンスが何たるか、あるいは様々な法令上の知識とか、これがないと監督はできないと思うんですね。逆に、適切な監督を行う能力があるということであれば、ほぼ今までと変わらず、必要となる十分な知識及び経験を有する人を置くということになりますから、何もこんな法改正をする必要はない、今までどおりでいいんじゃないかと思うんですが、この点どうですか。

鈴木国務大臣 今回の法律の改正案におきまして、ミドル・バックオフィス業務、これを委託をできるということにしたわけでありますけれども、これは、投資運用業者の新規参入を促進するという観点がございます。適切な品質が確保されたミドル・バックオフィス業務を受託する専門の事業者について、任意の登録制を導入をして、投資運用業者が登録を受けた事業者に当該業務を委託する場合には、委託元の投資運用業者の体制整備に関する要件、これを緩和する措置を講ずることとしております。

 これによりまして、登録を受けた事業者にコンプライアンス業務を委託する投資運用業者においては、自前でコンプライアンス部門や担当者を設置することは不要とする一方におきまして、委託先のコンプライアンス業務の監督を適切に行う能力を有する役員等の確保を求めることといたしております。

 この当該役員につきましては、適切な者が選任されるよう、必要な能力等を監督指針等において定めてまいりたい、そのように考えているところであります。

津島委員長 階君、申合せの時間が経過しております。

階委員 はい、分かりました。

 これで終わりますけれども、要するに、大臣もおっしゃったとおり、投資運用業者に新規参入をしやすくすると、競争が激しくなるわけですね。競争が激しくなると、パフォーマンスをより多く上げなくちゃいけない、投資収益をより稼がなくちゃいけないということで、より企業に対する圧力ということにもつながって、株主資本主義が更に進むことになる。

 やはり、この法案については、公益資本主義とはかけ離れている、我々が目指すところとはかけ離れているということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。立憲民主党の原口一博です。

 冒頭、委員長並びに理事にお礼を申し上げたいと思います。

 先日、この委員会で、日銀法二十九条、ここの整理について、法務省が本当に不十分な答弁をしたために、所管は財務省であるに決まっている、そして、日銀法二十九条、あんなことが行われているというんだったらあり得ない、統計は取ったことがないとかいう訳分からぬ答弁を、どうぞ見事にさばいていただきまして、ありがとうございました。冒頭、お礼を申し上げたいと思います。

 また、質問に入る前に、昨日、松原仁議員が、外国人パーティー券の購入、これは、外国人から私たち政治家が献金も含めてお金をもらうということは禁止されているんですよ。パーティー券も駄目です。何か、上川外務大臣、ほとんど答弁にならない答弁でしたけれども、まさか総理並びに外務大臣、外国人パーティー券を買ってもらっているんじゃないでしょうね、そこは確認をしておきたいと思いますが、まあ、鈴木財務大臣はそういうことはないと思いますが、ないですよね。

鈴木国務大臣 記憶の限り、ありません。

原口委員 いや、そこはないと言い切ってほしいんですよ。だって、これは法律違反ですからね。まあ、通告していないから、いいです。

 そこで、ちょっとさっきの階財務金融部門長の質問に加えて、私たち立憲民主党は、明確に公益資本主義を目指しています。株式資本主義はノーです。財務大臣、そろそろもう、舶来の、アメリカのグローバリストの言うようなルールを日本でやるのはやめませんか。今回の岸田首相のスピーチが外国人のスピーチライターに寄っているように、この法律を見ていると、どうも我が日本の中から出てきたような法律に見えないんです。

 元々これがどういうことで始まったかというと、ちょうど一年前の今日、岸田首相は経済財政諮問会議でこうおっしゃっています。二千兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する資産運用立国日本を実現していくこととし、鈴木大臣において政策プランを関係省庁一体となって策定してくださいと、鈴木大臣にお願いされているんです。ちょうど一年前の今日です。

 これはどういう意味ですか。家計金融資産を開放し、皆さん、開放という言葉が来たら何を思い出すべきかというと、対日要望書ですよ。対日要望書で、日本は開かれた国なのに、閉じていると。貿易を開け、TPPを開け、金融を開けでやってきた、その文言なんですよ。日本の金融資産というのは閉じているんですか、金融担当大臣。

鈴木国務大臣 昨年四月二十六日の経済財政諮問会議での総理の発言の中で開放という言葉があったわけでありますが、二千兆円を超える我が国の家計金融資産の過半、これはもう御存じのとおり現預金でありまして、アメリカでありますとかイギリスと比較いたしまして、家計金融資産の伸びが低い水準にとどまっているというのが現状であります。

 こうした中で、政府としては、貯蓄から投資への流れを加速して、金融市場を通じて、家計の投資が企業価値の向上につながり、それが資産所得の増加という形で家計に還元される、成長と分配の好循環の実現を目指すことが重要だと考えているところでございます。

 開放という総理の言葉でありますが、ただいま御説明した考え方のうち、家計金融資産の過半を現預金が占める状況、その状況を変えて、より多くの資金を投資に振り向けることを目指す趣旨として表現されたのではないか、そのように理解をいたしております。

原口委員 いや、とんでもない認識だと思うんですね。

 昨日、金融庁とやり取りする中で、家計金融資産の二千百四十一兆円のうちの現預金が一千百二十七兆円であると。今金融担当大臣が御答弁なさったように、五三%が現預金です。しかし、皆さん、日本人の四人に一人は資産さえ持っていないんですよ。

 しかも、もうアメリカ、イギリスの猿まねするのはやめませんか。アメリカはどうなっていますか。昨日か、統計が出ていたけれども、アメリカのクレジット負債、一兆ドルを超えているんですよ。そういう国は金がないんですよ。そこで株式資本主義をやったらどうなりますか。我が国のこの預金もそこに食われるんじゃないですか。それをやりやすくするのがこれです。

 今階議員がおっしゃった、このミドル・バックオフィスについても、こういう資産運用会社が日本は少ない。でも、資産運用会社は手数料を取るわけですよ。それを多くすれば多くするほど、国民、それを頼む人の利益は減るわけです。

 だから、ちょっと財務大臣に伺いたいのは、僕はROE至上主義というのはもうやめるべきだと思うんです。これはずっと政権のときも戦ってきた。最低でもROAにすべきだと思うんですけれども、金融担当大臣の基本認識をお伺いします。

鈴木国務大臣 日本の金融のあるべき姿ということにもつながるんだと思いますが、政府といたしましては、新しい資本主義の考え方に基づきまして、短期的な株主利益の追求ではなくて、投資家と企業との建設的な対話を促進して、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を通じた成長と分配の好循環、これを実現していくことが重要だと考えております。

 こうした中で、政府はこれまでも、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードを策定いたしまして、機関投資家や上場企業に対しまして、中長期的な企業価値の向上に向けた自主的な行動、これを促してまいりました。特にも、コーポレートガバナンス・コードにおいては、上場会社は、株主のみならず、顧客や従業員等を含む多様なステークホルダーとの協働に努めるべきこと、これを明記しているところでございます。

 また、企業評価とROEについて申し上げますと、企業の評価基準につきましては様々な指標が存在するものと理解をしておりますが、どのような指標につきましても、中長期的な企業価値を測る上で絶対的なものとは言えず、いずれか一つの指標のみを重視すること、これは適切でないと考えます。

 ROE、すなわち自己資本利益率については、会社の経営効率を測る指標として普及しているということは承知しておりますが、個々の企業の置かれた状況に応じて、その数値の持つ意味合い、これが異なりますために、一律の評価水準を示すことも適切ではない、そのように考えているところであります。

原口委員 私は、ROEではなくてROAにすべきだ、最低でもと言ったわけですよ。何となれば、自己資本比率を株価で割ると、要するに、今おっしゃっている、短期の株を上げればいいというふうになるわけです。

 そんな中長期でやるんだったら、税制をやったらどうですか。アメリカはこれがありますよ。一年以内の株式売買に対するキャピタルゲイン課税、アメリカは最大で三九・六%ですよ。それに地方政府税が入るわけです。三九・六ですよ。短期の投機的マネーをやるなというのがアメリカの中にあるわけです。これが公益資本主義なんです。マネーというのは、育むマネーが必要なんですよ。貪るマネーを皆さんのこの法案は増進する法案、株式資本主義を更に最大化する。

 この一年間、ブラックロックのCEOに随分会っておられますね。

 さっきのバックオフィスについても、これはファイアウォールがなきゃいけないでしょう。外注すること自体がおかしいと、階議員の質問、そのとおりですよ。ファイアウォールができるんですか。右の投資会社、左の投資会社、そのバックオフィスは両方見られるわけですよ。このファイアウォール、皆さん、徹底的になくなっているんじゃないですか。日銀法の二十九条のところもそうですよ。今回のこの法律も、どこかで漏れているんじゃないかと思うぐらい、変なんですよ。

 そこで、このブラックロック、去年、ジャパン・ウィークス二〇二三というので、総理、鈴木大臣御参加のイベントが九月二十五日から十月六日まであるわけです。被災地には十五分ぐらいしかおられない総理が何回もお出になって、鈴木大臣もお出になって、これ、主催者だけ言いますね、日本証券業協会、日本経済新聞、PRI事務局、日本経済新聞、日本証券業協会、ブルームバーグ、ブラックロック、ブラックロック、日本政府と、後援をされている。

 そこで、李下に冠を正さずということで、今日は証券等監視委員会にも来ていただきました。私は、このときに株価が変な動きをしているんじゃないかということで、今日は全国放送ですから特定の企業の名前は言わぬけれども、証券等監視委員会にはもう資料を差し上げています。私は、市場の公正性をちゃんと担保するためには、特定の、しかも、世界の千七百兆円を持っているんですよ、この人たち。そこに師事するような、そこが先生であるかのような法律を出してくるかと僕は思うんです。

 証券等監視委員会、この間の、今申し上げましたジャパン・ウィークスですね、二〇〇三年秋以降の株価の動き、あるいは僕が示した、企業名はおっしゃらなくていいです、特定グループが、その間に大変な株の出来高を示している。普通、こういう動きはしないんですよ。そして、株価も高騰している。このとき、この間この委員会で言った、熊本にある中国系の浙江財閥がつくった企業に対して一兆二千億入れるというのは、このときは公になっていないんです。この後なるんですよ。

 李下に冠を正さずということで、余りにも怪しいと思うんですが、証券等監視委員会の見解を聞きたいと思います。

井上政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員の御質問は、ジャパン・ウィークスの開催期間中、総理の御発言等により価格形成に影響を与えた銘柄はないかというお尋ねかと考えております。

 まず、特定の行為の特定の銘柄の価格形成への影響の有無についてコメントすることについては、円滑な市場監視を行う観点から差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、証券取引等監視委員会では、日本取引所自主規制法人等の自主規制機関とも連携を図りつつ、個別銘柄に係る株価動向についても、価格形成に影響を与える様々な要因を分析の上、注意深く監視を行っております。そうした中で、仮に法令違反に該当する事実があると疑われる場合には、必要に応じて、より深度ある調査、検査を行わせていただくことになります。

原口委員 SESC、応援していますので頑張ってください。

 そこで、さっき、大臣はこういう答弁ですけれども、あれも入れたらどうですか。政府税調、僕も政府税調の会長代行をやっていたけれども、超高速取引、例えば、国際投機取引税、もう過去何回も提案されましたね。これをやったらいいじゃないですか。つまり、短期のマネーが日本で暴れることを防ぐ。

 皆さん、投資立国と言われているけれども、ほかの国から何と言われていると思います。日本は投機マネーヘブンと言われているんですよ。投機マネーのヘブン。ここはもうゆるゆるで、しかも、政治家も外国人がパーティー券を買うような人たちだから、何でもやれるんです、暴れようと思ったら日本で暴れればいいんですとまで言われているんですよ。やめようじゃありませんか、日本を売るの。

 そこまで言うと言い過ぎになるからあれだけれども、少なくとも、投機マネーが日本で暴れないようにするというのは、アメリカもやっていることを日本は何でやらないんですか。

鈴木国務大臣 原口先生が具体的に御提案になられました、例えば税制などにおいて対応するということでございますが、例えば、金融商品の保有期間の長さに応じまして課税の在り方を変えること、これは、金融取引におけます課税の中立性を損ない、売買時期の判断や商品の選択に税制がゆがみを与えてしまうおそれがある、そのように考えます。

 やはり、慎重な議論、慎重な検討が必要である、そういうふうに思います。

原口委員 いや、びっくりしますね。だから投機マネーヘブンと言われるんじゃないですか。

 さっき、大臣、おっしゃいませんでしたか、中長期で企業を育んでいくと。何で貯金が悪いんですか。吐き出させるのはやめてください。今、補欠選挙をやっているけれども、そこでみんな何と言われていると思う。岸田さんの言うのと反対をやっておきましょうと言われているんですよ。それぐらい信頼をなくしているんですよ。何で投機マネーを、アメリカでやっていることを日本でやらないんですか。

 円安対策についても申し上げます。

 岸田首相がアメリカに行ってなさることは、この円安を何とかしろという話だったと思いますが、先日、末松委員の御質問に対して、アメリカの国債をアメリカとの関係で売れないわけではないという趣旨の御答弁をなさいました。あれは外為特会についておっしゃっているんですね。

鈴木国務大臣 そういう御質問であったと理解して、外為特会のことについて答えたわけであります。

原口委員 百八十九兆円ある外為特会のうちの実際の普通預金の部分というのは二十兆円ぐらい、一日の五十兆ぐらいの取引のうち、市場介入できるマックスは三兆円ぐらいというふうに言われています。残りのところを、この間この委員会で、もっと詳しく開示してくださいと言ったけれども、どの国かというのは言えないと。私が推測するに、ほとんど米国債。日本がアメリカのいろいろなファイナンスをやっているわけです。

 大臣、いいですか、皆さん、いいですか。こういう法律を通せば、日本のお金はどこに行きますか。デフレの日本に来ますか。外に行くんですよ。これはアメリカと協調介入しないといけませんよね、実質は。だから、勝手に売ったりはできないという僕は認識を持っているんですが、そこをもう一回お聞きします。

鈴木国務大臣 外為特会が保有いたします外貨資産でありますが、外国為替相場の安定を目的として、将来の為替介入等に備えて保有しているものである、そういう性格がございます。そういう性質に鑑みまして、米国債の保有額を含めた詳細な内容を明らかにすること、これは金融為替市場に不測の影響を与えることになりかねませんので、お答えはできないということであります。

 この売買についてですね。(原口委員「はい」と呼ぶ)米国債の売買についての私が末松先生に御答弁したことだと思いますが、外為特会が保有する外貨資産の運用については、まず流動性を確保することとの目的に基づきつつ、将来の外国為替等の売買等に備えた運用を行っているものであるので、米国との関係で売却できないといったことはない、そういうふうに答弁をさせていただいたと思います。

原口委員 今お答えになったことは僕が今言ったことで、その先を聞きたいんです。つまり、でも、アメリカと協調介入しないと実は上がりませんねと、そこは事実でしょう。

鈴木国務大臣 今、三十四年ぶりの円安水準になっているということで、大変いろいろと政府の対応が注目をされているわけでありますが、為替介入について具体的な見解を申し上げること、これは必ず市場に不測の影響を及ぼすことになりますのでコメントはいたしませんけれども、先週、アメリカに行ってまいりまして、その折のところをちょっと紹介させていただきますと、よろしいですか。

 まず、日米韓財務大臣会合の共同声明で、最近の急速な円安及びウォン安に関する日韓の深刻な懸念を認識しつつ、既存のG20のコミットメントに沿って、外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議をする、そういうような合意に至りました。

 また、G7のコミュニケでは、日本の主張を踏まえて、為替レートの過度の変動は望ましくないということを含む、従前のコミットメントを再確認しております。

 したがいまして、政府としては、こうした合意ということを踏まえて、関係通貨当局、これと密接に意思疎通を図りつつ、万全の対応を取ってまいりたいと思っております。

津島委員長 原口君、申合せの時間が経過しております。

原口委員 質疑時間が来ましたのでもう終わりますが、最後に一点。

 これ、利益相反、資産運用に関するタスクフォースメンバー、ブラックロック・ジャパンのCEO、入っていますね。それから、ワクチンの被害のやつ、これも厚労省から昨日取ったけれども、五十万以下とか五百万以下って、この委員会の委員はみなし公務員ですよ。刑法に優先するわけないじゃないですか。僕は、この基準というのが極めて変だと思う。だから、総務省はここをちゃんとチェックしてほしい、行政評価してほしい。

 そして、もう一つは、何と、ワクチンのリスク評価をする、リスクコミュニケーションする河野太郎大臣が、二億回打っても死亡者はゼロだということを言い切っている。どれだけの人が亡くなっていると思っているんですか。総務省行政評価局に調査を依頼をしたいと思います。

津島委員長 総務省原嶋大臣官房審議官、時間が経過しておりますので、極めて簡潔な答弁をお願いいたします。

原嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありましたワクチン承認などの政策決定に関わる審議会委員の利益相反につきましては、厚生労働省におきまして、ワクチン関連企業からの寄附金、契約金を受け取っている委員について、審議又は議決に参加させないなどの規定を設けるといった取組が行われているものと承知しております。

 また、新型コロナウイルス感染症への対策につきましては、リスクコミュニケーションの在り方を含めまして、これまで政府におきまして検証が行われてきているところでございます。これらも踏まえまして、本年六月の政府行動計画の改定に向けた作業が進められているものと承知しております。

 こうしたことから、総務省といたしましては、現時点におきましては、直ちに調査する必要があるものとは考えておりません。引き続き、状況を注視してまいりたいと考えております。

原口委員 終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 今日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 まず最初に、所得税の定額減税について、先にちょっと質問させていただきます。

 この六月に行われます所得税の定額減税については、源泉徴収事業者の負担が重いということは、二月の所得税の審議の中でも、この本委員会で指摘をさせていただいたところではございます。

 そこで、お尋ねをいたします。源泉徴収事業者が六月の源泉徴収において定額減税を反映させないで行った場合、すなわち、いつものとおり五月と同額の源泉徴収を行った場合、これは所得税法の違反になるとは承知をしておりますが、所得税法上、罰則はありますでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の定額減税につきましては、法令上、源泉徴収義務者は、令和六年六月一日以後最初に支払う給与等の源泉徴収から定額減税を行うこととされております。この点、委員お尋ねのように、源泉徴収義務者が六月の定額減税を実施せず、年末調整に定額減税を先送りした場合につきましては、税法上の罰則は設けられてございませんが、源泉徴収義務者においては、法令に従い、適切に定額減税に係る事務を実施していただく必要があると考えてございます。

櫻井委員 罰則はどうなっていると言いましたか。

星屋政府参考人 税法上、罰則はないということでございます。

櫻井委員 一応法律違反だけれども、罰則はないんですよ。では、もう年末調整で済ませた方が手間も省けていいじゃないかというふうに考えてしまいがちです。しかも、私もそうですけれども、同僚議員の皆さんも私設秘書を雇われているかと思います。源泉徴収、これはちゃんと調整しなきゃいけないんです。

 では、厚生労働省に今日来ていただいておりますけれども、六月の源泉徴収において、定額減税を反映させないで年末調整に先送りをした場合、これは、所得税法の違反にはなるけれども、所得税法上の罰則はない。では、労働基準法上の罰則はあるのかどうか、これを確認させてください。

増田政府参考人 お答えを申し上げます。

 労働基準法第二十四条第一項におきまして、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないこととされ、その例外として、法令に別段の定めがある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができるとされているところでございます。

 この法令に別段の定めがある場合には所得税法に基づく所得税の源泉徴収などが該当いたしますが、税法に基づき、六月の給与での源泉徴収から定額減税をしなければならないとされている労働者に関して、これを先送りして年末調整で定額減税をすることは、六月の賃金から税法に定められた本来の源泉徴収額より過大な税額を控除することになると考えられます。

 こうした過大な税額の控除につきましては、労働基準法第二十四条第一項の例外の要件である、法令に別段の定めがある場合に該当すると評価することはできないことから、同条違反になるものと考えられます。

 なお、労働基準法第二十四条第一項違反の罰則につきましては、同法第百二十条によりまして、三十万円以下の罰金と定められているところでございます。

櫻井委員 ですから、この六月の定額減税、ちゃんと源泉徴収事業者がやらないと、所得税法上の罰則はないけれども労基法上の罰則はあるということですので、同僚議員の皆さん、是非気をつけていただきたいというふうに思いますし、源泉徴収事業者の皆さんも、大変な事務負担があろうかとは思いますけれども、是非適切にやっていただきたいということを御案内申し上げます。

 ですが、やはり今、私も地元を回っていても、源泉事業者の負担は重い、大変だ、何でこんなことをやるんだ、年末調整でいいじゃないかという怨嗟の声もたくさん聞いております。

 このことについては、二月の審議のときにも申し上げましたけれども、資料一でつけております衆議院の経済産業委員会、二〇二〇年四月十五日に、住澤整主税局長、現在は国税庁長官をされておりますけれども、この答弁の中で、源泉事業者の負担は大きい、しかも、フリーランスの方々への還元は確定申告ですから、翌年の二月になっちゃうわけですよね、だから非常に遅くなってしまう。だから、減税か給付か、どっちがいいですかという話になれば、給付の方がずっといいんだ、そういう答弁をされているんですよ。にもかかわらず、そして、我々野党が給付の方がいいでしょうというふうに提案申し上げたにもかかわらず、減税を強行したというのが今回のことでございます。

 大臣にお尋ねしますけれども、やはり、住澤主税局長当時、今、国税庁長官の答弁は正しかったんじゃないですか。間違っていたのはどっちなのかということです。私は、今回の減税、同じ還元をするのであれば、給付でやればよかったというふうに思いますけれども、こうした天下の愚策を二度とやらないように、ちゃんと今回のことについてはてんまつを記録して、末代まで教訓として伝えることを御提案申し上げますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今回の定額減税の実施に当たりましては、企業などの皆様に一定の事務負担、これをお願いすることになることにつきましては、財務省といたしましても十分に認識をしているところであります。

 今般の減税に関しまして、源泉徴収義務者の方々を始めとする関係者の皆様については、例えば、給与支払い者向けに定額減税専用コールセンターを設置するなど、でき得る限り寄り添った対応をするよう取り組んでいるところですが、そこでいただきました問合せの内容につきましては、国税庁に報告され、保存をしております。

 財務省としては、コールセンターを通じたものを含めまして、今回の減税に関していただいた様々な御質問や御意見についてしっかり分析をして、今後の政策の立案にも活用してまいりたいと思います。

櫻井委員 コールセンターを設置したりとか、余計な事務費をかけているわけですよね。こうしたことも含めて、一体余分に幾らかかったのか、そして事業者の方々にどれほどの負担をお願いしたのかということもしっかり記録に残していただきたい。そして、今後の政策づくりに反映させていただきたい。天下の愚策は二度と繰り返さないようにお願い申し上げます。

 続きまして、投資詐欺対策について取り上げさせていただきます。

 資料の二の方では、SNS型投資詐欺、ロマンス詐欺も一緒に載っているんですが、これは警察庁の資料でございます。ここに来て、この青い棒グラフがSNS型投資詐欺ということなんですが、急速に増えてきております。

 資料三につけておりますのは、これはテレビのニュース画面でございますが、テレビ朝日に載っていて、これは池上彰さんという元NHKの著名なジャーナリストの方が偽広告に使われてしまっている、自分は全然やっていないにもかかわらず、偽広告で、投資詐欺を勧誘する広告塔に使われてしまっているということで、このニュース番組は、本物池上彰さんが偽物池上彰を追及する、そういう取組だったわけなんですけれども、これを見ていただいたら、新NISAに最適とかというふうに、新しい制度ができると、それに乗っかって投資詐欺はどんどん増えてきちゃうわけですよ。

 政府が投資促進政策を打ち出すと、それに乗っかって投資詐欺も増える、そういうことが起きているのではないのか、大変心配をしております。

 そこで、大臣にお尋ねをしますが、投資促進を推進する前に、投資詐欺対策、それから防止と取締り、これを図る必要があると考えますが、大臣の、投資詐欺対策の必要性をどのように認識されているのか。もし、投資詐欺対策が必要だというふうに意識されているのであれば、どのように取組を進めておられるか、お答えをお願いいたします。

鈴木国務大臣 私も、いろいろな報道を通じまして、こうした成り済ましの投資詐欺というものが急増しているということを承知をしておりまして、実際に被害に遭った方々もおられるということで、こういうことは絶対に許せないということが私の認識でございます。

 そして、どういうことをやっていくかということでありますが、金融庁におきましても全く同じ認識をしているわけでありまして、事実、金融庁に寄せられる詐欺的な投資勧誘に関する情報の件数、これは近年大きく増加をしております。また、詐欺事案に関する相談も多数寄せられておりまして、こうした状況がございます。

 国民の資産形成への関心が高まる中で、安心して投資等を行うことができる環境を整備する観点からも、投資詐欺対策、これは重要なものと考えておりまして、金融庁といたしましては、従来から、投資詐欺による被害を防止する観点から、金融庁のウェブサイトやSNS、パンフレットやリーフレットの発行を通じた注意喚起、SNS事業者と連携したSNSのページにおける金融庁の注意喚起の表示、ウェブサイトにおける注意喚起ページの相互リンクなどを通じた関係省庁や金融事業者団体との連携といったことを行ってきているところであります。

 金融庁として、関係省庁や事業者団体、SNS事業者との連携を強化しながら、引き続きまして、投資詐欺被害の防止や金融トラブルの対応のための相談窓口の強化等、拡大をしております投資詐欺に対しスピード感を持って対応をしていきたい、そのように考えております。

櫻井委員 今、注意喚起とかいろいろな対策をやっていますということなんですけれども、いかにも手ぬるいんですよね。先ほど原口議員からも、質問の中で、日本はもうやりたい放題、規制とかそういうのが、取締りが緩いからやりたい放題だという話がありましたけれども、こちらについてもやりたい放題になっちゃっているわけですよ。

 ちょうど昨日、神戸地裁で、SNS上の偽広告、投資詐欺に遭ったということで、アメリカのIT大手メタ社に対して損害賠償請求をする、そんな訴えが提起をされたというのが新聞のニュースに載っておりました。これは日経新聞の記事ですけれども、その中で、ネット規制に詳しい一橋大学の生貝直人教授は、民事訴訟による責任追及はプラットフォーマーに偽広告対策を促す上で意義がある、ネット広告の審査は非常に甘い、これが問題だということも指摘をされているわけです。

 これは、先週のプロバイダー責任制限法、情報流通プラットフォーム対処法案というのを総務委員会でやっておって、私もそこで質問させていただいたんですけれども、やはり、偽広告があちこちで出回っている、ここをばしっと止めていかないといけないというふうに思うわけです。

 本日は金融商品取引法の審議でございますが、これの三十一条の三の二に違反したら、二百条で一年以下の懲役又は百万円の罰金というのがございます。これは、金融商品取引を行うことができる者以外の者が広告とかそういうのを出しちゃいけませんよ、表示をしちゃいけませんよ、こういうことになっているんですけれども、これはもちろん、投資詐欺の事業者が、まあ詐欺を事業者と言うのかどうか分からないですけれども、投資詐欺を行おうとする者が広告を出す、それは出す方も悪いんですけれども、それを受けて広告として載せる方も悪いと思うんですね。

 これは、載せちゃった方、媒体の方は、幇助というか共犯に当たるんじゃないのか。つまり、三十一条の三の二に違反するんじゃないのかと思うんですが、大臣、どう考えますか。やはり、広告掲載に当たって、金融取引の事業者として登録をされているかどうかぐらいの有無は審査して当たり前だと思うんですよね。これは、金融庁のホームページを見たらすぐ分かることです。それを行ったら、やはり業務上の過失というふうに捉えられて、損害賠償責任なり刑事的な責任も問われることになるんじゃないでしょうか。

 この点、金融商品取引法の観点から、大臣、御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 櫻井先生の御質問が、そういう詐欺的なものをウェブ上に載せる方も同罪ではないかということで、それの規制はどうかということでありますが、それは刑法上の、個別個別のことによって対応しなければいけないんだと思います。

 いずれ、ウェブ上に記載する、この投資詐欺に限らず、犯罪に加担することの取扱いを刑罰的にどうするかということは、所掌外でありますので私から申し上げることはできませんが、ケース・バイ・ケースで、ケースを見ながら考えるべきことであろう、そういうふうに思います。

櫻井委員 いやいや、所掌の範囲ですよ。だって、金商法、金融担当大臣の所掌ですよね。今まさにこれを担当大臣として審議しているのに、所掌外というわけにいかないでしょう。取締りを実際やるとかというのは警察なり検察の所掌ということになりますけれども、この法案を担当している大臣として、いやいや、それは、広告を発注する詐欺グループももちろん悪いけれども、それを一緒になって載せている媒体だって悪いでしょうということは言ったっていいんじゃないですか。是非お願いいたします。それぐらい厳しいのでやらないと、結局やりたい放題の日本になってしまっていますよ。

鈴木国務大臣 目指すべきものは、そういう詐欺的な行為はあってはならないことだと思います。これは、いろいろな事案のケースがあると思いますので、そういうケースを見て判断をするということになるんだと思います。

 そういう中で、金融庁として、そういうものを罰則の対象にできる範囲というものがあるということについて、しっかりと検討、ケース・バイ・ケースで見ていかなければいけないんだと思います。

櫻井委員 いやいや、だから、一橋大学の生貝教授も言っているわけですよ、民事訴訟における責任追及、プラットフォーマーに偽広告対策を促す上で非常に意義があるというふうにおっしゃられているわけなんですよ。まさにここを大臣として、やりますと。民事だけじゃなくて刑事、刑事でやったら、民事でも話が進みやすくなるわけですから。アメリカもヨーロッパもそうやってちゃんと規制しているのに、日本だけ野放しになっちゃっているんですよ。大臣、もう一言踏み込んで、ちゃんと取組を進めますと言ってくださいよ。いかがですか。

鈴木国務大臣 幇助に当たるようなものについては、これは警察できちんと対応するもの、そういうふうに考えます。

櫻井委員 金融担当大臣として、警察でちゃんと対応するとおっしゃっていただきましたので、そのように進めていただきたいと思います。

 それでは続きまして、先ほど階議員からも質問のありましたミドル・バックオフィス業務の外部委託のことでございます。特に、コンプライアンスについてです。

 私、非常に懸念するのは、やはり外注しちゃうと、投資をやっている会社から仕事を、コンプライアンスの業務を受けるわけですよね。そうすると、厳しいことを言うと仕事を切られてしまうんじゃないかと思って、やはり忖度とかしてしまうんじゃないのか。

 実際、例えば会計監査の世界では、今から二十年ちょっと前ですけれども、エンロン事件という大きな事件があって、五大監査法人の一つであったアーサー・アンダーセン、これは破綻しているわけなんですよね。このときにも、エンロンのやっている、ある種、粉飾決算といいますか、会計操作について、アーサー・アンダーセンが見抜けなかったのか、さらには、知っていたけれども言わなかったのか。やはり、エンロンは非常に大きなお客さんだから、そこを忖度してしまったんじゃないのか。

 これは、独立性の問題が非常に大きな問題としてあると思うんです。これは一体どうやって確保するのか。会計監査については、このエンロン事件があったから、その後、監査法人の中でもダブルチェック、トリプルチェックをするような体制をして、一社の大きなお客さんであっても、一社のために監査法人全体がひっくり返るようなことになっちゃいけないというような、いろいろな取組をやっているけれども、果たして、こちらのミドル・バックオフィスの外部委託の方は、そういう仕組みがちゃんとできているのかどうなのか、その点についてお答えをお願いいたします。

鈴木国務大臣 委託を受けるミドル・バックオフィス業者の独立性、これは御指摘のとおり重要なことだろう、こういうふうに思います。

 今回の法律改正では、ミドル・バックオフィス業務の受託業者の質、これを確保するために、役員等が業務の執行に必要な専門性を有していることなどの適切な業務管理体制の整備でありますとか、事業年度ごとの事業報告書の提出を義務づけることとしております。

 具体的な体制整備の内容につきましては、今後、政令あるいは府令等において定めてまいりますけれども、御指摘の委託元からの独立性の確保につきましては、例えば、業務運営に必要な情報を適切に委託元の投資運用業者から受ける体制を確保すること、そして逆に、委託元に対して適切なコンプライアンスを確保するために必要な指摘を行える体制を確保することなどは、受託業者がその専門的見地から業務を行い、全体として適切な業務運営体制を維持する上で重要なことだと考えます。

 委託元の資産運用業者に対しましても、コンプライアンス業務の委託先である受託業者からの意見や指摘に対して適切に対応しているかなどにつきましては、しっかりとモニタリングをしていきたい、こういうふうに考えているところであります。

津島委員長 櫻井君、時間が経過しております。

櫻井委員 時間になりましたので終わりますけれども、まさに日本人の、日本の貴重な資産、これを守る方向で是非取組を進めていただきますようお願い申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて櫻井君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。

 今回の金商法の改正のうち、資産運用の高度化、多様化というのが法案の目的で掲げられているんですけれども、そこで、総理の掲げた新しい資本主義の一環で策定されました資産所得倍増プラン、ここと関連があると思いますので、家計の金融資産、その内訳をちょっと資料一に提示しているんですけれども、日本の場合は大体もう半分以上の五四・二%が現預金で、アメリカは一二・六、欧州三五・五と、現金、預金の割合が日本の場合はかなり高くて、一方、株式とか投資割合になりますと、日本は二割弱、欧米ですとやはり三割から五割強というところで大分差がありまして、欧米の水準に近づけたいということで、この資産所得倍増プランを想定されていると理解しているんです。

 それで、資料二に、その環境整備のための目標があるんですけれども、まず、投資の経験者を倍増したい、令和九年度末までにNISAの口座数を倍増して三千四百万口座にして、第二に、額の倍増、同じく九年末までに買い付け額を倍増して五十六兆円にするというところで、実際、新しいNISAの制度は好調のようなんですけれども、政府が何ゆえに投資経験者を増やし、投資を増やし、家計の資産運用収入を増やそうとしているか、その理由と、なぜ預貯金ではなくリスクのある投資によって資産形成を行おうと考えているのか。そしてまた、国民が安心して投資にお金を回すには信頼が重要になってくるんですけれども、その信頼確保のために政府はどのように考えてはるのか。大臣にお伺いいたします。

鈴木国務大臣 投資はリスクを伴います。しかしながら、我が国の家計金融資産の過半は現預金でありまして、アメリカ等と比較して家計金融資産の伸びが低い水準にとどまっております。

 こうした中で、政府としては、貯蓄から投資への流れを加速をして、金融市場を通じて家計の投資が企業価値の向上につながり、それが資産所得の増加という形で家計に還元される成長と分配の好循環の実現を目指すことが重要であると考えております。

 一方、国民が安心して投資を行えるような環境整備、これもその前提として重要であると考えます。政府としては、令和四年に策定した資産所得倍増プランでありますとか、先般三月十五日閣議決定いたしました安定的な資産形成に関する基本方針などに基づきまして、国民の皆さんに安心して資産形成に取り組んでいただけるよう、金融リテラシーを身につけていただくための金融経済教育の充実、安心して金融商品を購入できるようにするための金融機関における顧客本位の業務運営の確保などに取り組んでいるところでございます。

伊東(信)委員 とはいえども、やはりリスクはつきもので、それを国としてどう捉えているのかということになります。

 本来だったら具体的な数値目標についてもお尋ねしようと思ったんですけれども、法案の方に入って、具体的に法案との関連性を考えていきたいと思うんです。

 まず、投資運用業者の参入促進ということで、この新規参入促進策を二つ捉えていまして、一つは、投資運用業者が業務の受入れに関する業務を登録業者に委託すると人的な構成要件が緩和、二つ目は、実際の投資実行権限を全ての運用業者に完全委託ということなんですけれども、二つの改正を併せますと、この業者は企画立案というファンド運営機能に特化することができるということなんです。

 では、現状の投資運用業者において、どのような課題があって、今回の内容の改正に至ったか。また、改正後、どんな適切な競争環境をイメージするのか。両方、大臣にお尋ねします。

鈴木国務大臣 まず、投資運用業者でありますけれども、これは、家計から委託を受け、投資資金の運用を行い、その成果を家計に還元する役割を担っております。政府といたしましては、国内外からの新規参入の活性化を通じまして、事業者間の競争を促して、業界全体としての運用力の向上を図ってまいりたいと考えております。

 こうした中で、我が国の投資運用業者の新規参入が増えない要因の一つとして、法令遵守等のためのミドル・バックオフィス業務に関する体制整備の負担が重いということが指摘をされております。また、海外では、こうした業務を外部委託することが一般的に行われていると承知をいたしております。

 そこで、全体としては適切な業務運営体制を維持しつつ、体制整備の負担軽減等を図るため、当局による監督を受けるミドル・バックオフィス業者へ外部委託を行う場合、参入要件の緩和等の措置を講じることといたしております。

 こうしたことが個人への好影響につながるということでございまして、投資運用業者の新規参入の促進に加えて、アセットオーナーシップの改革によります、年金基金がどの投資運用業者が優れているかを見極める力の強化、大手金融グループにおけます投資運用業者の専門性の向上、運用人材の育成、確保等を通じた運用力の向上など、そうした取組や新しいNISAの活用促進による市場への投資資金の流入の増加などが組み合わさることによりまして、投資運用業者において、個人のリスク許容度に見合ったよりよいリターンをもたらす運用でありますとか、金融商品の組成に向けた創意工夫が促進されると考えております。

 こうした投資運用業界全体の運用力の向上によりまして、個人に対して、こうした良質な金融商品、サービスの提供が促進され、個人の安定的な資産形成に裨益するものと考えているところです。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

伊東(信)委員 現状の課題があって、今の改正で促進するであろうということなんでしょうけれども、やはり、いろいろなリスクの方も考えないけないわけで、この改正のうち、これを受託する業者の任意登録制度というのがあるんですけれども、それが投資運用関係業務受託業という名前がつけられていまして、この登録業者は当局の監督を受けます。登録していない方の業者は、委託元の投資運用業者がしっかり管理するということで、実態上、質を確保するためには、監督当局のモニタリングがきちんと機能して、無登録の投資運用関係業務受託業に外部委託する場合は、委託元の投資運用業がしっかりとモニタリングすることが必要なんですけれども、この辺り、しっかり確保していかなければいけないんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 ミドル・バックオフィス業者は、投資運用業者の委託を受けまして、法令遵守でありますとか計理などを担うことから、これらの事業者の質の確保、これは投資者保護の観点から重要であると考えます。

 そのため、金融庁では、登録審査の際に、適切な業務の質が確保されるよう、役職員が業務の執行に必要な専門性を有しているか等について、しっかりと確認をすることといたしております。さらに、登録後におきましても、継続して業務の質が十分確保されるよう、事業報告書など法令上提出が義務づけられている書類の確認を行いつつ、必要に応じて、ヒアリングを通じて実態把握を行うなど、しっかりとモニタリングをしてまいります。

伊東(信)委員 これは、法案の概要を見ていると、そういったところも入っていると思いますし、レクでもお聞かせいただいたんですけれども、しっかりと、本当に問題の起こらないようにやっていただくことが肝要かなと思うんです。

 それでは、その次の大量保有報告制度の改正に関してお聞きするんですけれども、結局、企業と投資家の建設的な対話を促進すると、中長期的な企業価値の向上、この企業価値が向上したら恩恵が家計に回ってくるということなんでしょうけれども、機関投資家になるとは思うんですけれども、株を大量に持っていて、大量保有報告をするかしないかのルールが今までちょっと曖昧だったことで、企業との建設的な対話、すなわちエンゲージメントに萎縮効果をもたらしていたということがあったみたいなんですけれども、この改正によってそのエンゲージメントがやりやすくなるという効果が期待されると思うんですけれども、それによる投資リターンへの影響、家計への恩恵について、具体的な数値を挙げていただきたいんですけれども、困難だと思いますけれども、どんな恩恵があると考えておられますか。お聞かせください。

鈴木国務大臣 中長期的な企業価値向上に向けまして、企業と投資家との間の対話の実効性を高めること、これは重要なことであると考えます。

 近年、パッシブ運用が拡大しておりまして、投資家が対話を行う必要がある企業が増加をしている中で、対話に係る投資家側の質的、量的なリソースの不足を補うために、協働で対話の促進に向けた環境整備を進めていく必要があります。また、こうした協働での対話は、企業側にとりましても、個別の対話と比較をして、効果的かつ効率的であるとも考えております。

 一方で、現状、大量保有報告書の提出が求められる共同保有者には、こうした協働で対話を行う投資家が含まれるのか、法令上不明確であることが指摘されております。このため、今般の改正法案では、配当方針や資本政策の変更など、企業支配権に直接関係しない提案を企業側に実質的に強制しない態様で他の投資家と共同して行うなどの一定の場合には、共同保有者には該当しないことを明確化することといたしました。

 これによりまして、協働で実効的な対話を通じた投資先企業の中長期的な企業価値向上が図られることで、その恩恵が資産所得の増加という形で家計にも還元され、日本経済全体の成長にも寄与していくものと考えております。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

伊東(信)委員 しっかりとそのところを期待はしたいとは思うんですけれども、法案の今後の運用を見ていきたいとは思っているんですけれども。

 次の質問をします。

 公開買い付け制度の改正についてなんですけれども、この公開買い付け制度は、現在の規定では、市場外取引や立会い時間外の市場内取引などが対象とされていましたけれども、この考え方を変えて、立会い時間内の市場内取引についても公開買い付け制度の対象とすることとしていまして、政府は近年の企業買収の、これは企業買収の現状に鑑みてこの危機意識を持ったと思うんですけれども、どのような危機意識を持ってこの改正をしたのか、大臣にお伺いします。

鈴木国務大臣 現在、市場内取引は公開買い付け規制の対象となっておりませんが、企業買収の多様化が進む中、二〇二一年に発生をいたしました、約二か月という短期間のうちに市場内取引を通じて三分の一超の株式が取得された非友好的買収事例に関係をして、被買収会社による買収防衛策の発動の是非を争う裁判におきまして、投資判断に必要な情報、それから時間が一般株主に十分に与えられていなかったとの指摘がなされるなど、企業支配権に重大な影響を及ぼす市場内取引についても透明性を向上させることが喫緊の課題であると認識をした次第であります。

 加えて、こうした市場内取引は、諸外国においては、現在、既に公開買い付け規制の対象とされております。これらを踏まえまして、今般の改正案では、資本市場の一層の透明化、公平性の確保を図るため、公開買い付け規制を改正をいたしまして、市場内取引を規制の対象にする措置を講じることといたしました。

 こうした資本市場の透明性、公平性の一層の確保を図ることを通じまして、日本の資本市場の魅力向上に努めてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 大臣の答弁は、恐らく私が資料三に例示を示しています東京機械製作所事件について、これだと思うんですけれども、これはアジア開発キャピタルによる日本の企業の株式の取得だったんです。

 それでは、外国の企業、政府によっての株式取得についてお聞きしたいんですけれども、これは、国内外の資本を問うことなく買収者側のルールが置かれているわけなんですけれども、これが金商法なんですけれども、特別な法律のない会社については会社法で規定されまして、外国の企業や政府といった外国資本が国内企業の株式を大量に取得する場合は、金商法、会社法のほかに外為法が関係してくるんです。

 これは資料四に入れているんですけれども、敵対的な買収以外にも、外国資本のいいところを取るという目的もあったりもするわけなんですけれども、この金商法が改正されたとして、この三つの法律の規制を併せて考えた場合、ベストな形になり得るのか。グローバルな環境変化もあると思うんですけれども、今後絶えず見直しが必要となってくると思うんですけれども、どのような観点を考えているのか、財務大臣及び法務省にお聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 金融商品取引法におけます公開買い付け規制は、資本市場の公平性、透明性を確保して、企業支配権に重大な影響を及ぼす場面において株主に平等な売却機会を提供するという観点から設けられた規制でありまして、外国資本によるか否かにかかわらず、一定の閾値を超える株式の買い付けを行う場合に一律に適用されるものであります。

 今回の公開買い付け規制の改正は、こうした規制の適用を変えるものではなくて、諸外国の規制との整合性も踏まえつつ、資本市場の一層の透明化、公平性の確保を図るために行うものであります。

 また、外為法につきましては、我が国経済の健全な発展を図るため、投資自由ということを原則としつつも、国の安全等の観点から必要となる最小限の業種を指定をして、外国投資家による一定の投資に際し事前届出を求めることとしております。当該届出については、国の安全等に与える影響の程度など、財務大臣及び事業所管大臣が審査することとなり、問題があると認められる場合には取引中止の勧告、命令等を行うことが可能な制度となっております。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 会社法においては、外国の企業や政府による株式の取得について特段の制限を設けておらず、また、国内外の株主を区別していないところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 この公開買い付けにつきましては、本当は、三分の一ルールと三〇%と、この三・三%の違いはどのようになったかということもお聞きしたかったんですけれども、あと本当に時間が一、二分になったので、申し訳ないですけれども、八、九を飛ばしまして、最後の資産運用立国実現プランについてお聞きしたいと思います。

 資料七に書いているんですけれども、去年の十二月に、政府が資産運用立国実現プランというのの中に金融・資産運用特区というのをつくりました。今年の夏頃に具体的な金融・資産運用特区のパッケージが公表される予定と承知しています。

 資料八にありますように、以前から世界に開かれた国際金融センターの実現を目指してオール・ジャパンでやっていまして、私の地元大阪でも国際金融都市OSAKA戦略というのを、これは資料九にありますけれども、掲げてきました。

 このプランに盛り込まれた金融・資産特区に対して、大阪府と大阪市が提案書を提出して手を挙げております。海外の投資資産を大阪としては盛り込むとともに、ワンストップサポートセンターの設置とか、金融系外国企業への拠点設置補助金、地方税軽減制度、外国人高度人材向けの生活環境整備といった取組があるんですけれども、本当に、国に対しても、こういった取組と一体として、二十三項目の規制緩和や七項目の税制措置など、グローバルスタンダードを引き続き意識しつつ、様々な具体的提案をさせていただいているんです。

 最後に、金融・資産運用特区の取組における本法案の位置づけについての御説明と、どの程度この大阪の提案が反映されるか分かりませんけれども、金融・資産運用特区のパッケージを通じた世界に開かれた国際金融センターの実現への意気込みについてお伺いしたいと思います。

津島委員長 鈴木金融担当大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 まず、法案で盛り込まれた改正事項も、それから金融・資産運用特区も、いずれも昨年十二月に策定した資産運用立国実現プランに基づく資産運用立国実現という共通の目的を有する施策であると考えております。

 具体的には、例えば法案のうち資産運用業の国内外からの新規参入と競争の促進を目的とする制度的対応につきましては、金融・資産運用特区への資産運用業者の進出も後押しする施策として、特区に応募した各自治体からもその実現を期待をする声をいただいているところでございます。

 金融庁は、世界に開かれた国際金融センターの実現に向けまして、これまでも努力をしてきたところでございますが、例えば金融行政の英語対応でありますとか在留資格の緩和、ビジネス、生活面での環境整備に取り組んでまいりました。

 今後創設をいたします金融・資産運用特区では、こうした措置に加えまして、意欲ある自治体と協働して、英語対応が可能な行政サービスの拡大、投資対象となる成長分野の支援など、対象地域におけますビジネス、生活環境等の更なる改善、充実を図っていくこととしているところでございます。

伊東(信)委員 力強い答弁をありがとうございます。

 終わります。

津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の埼玉の沢田良です。

 金商法の改正案について、前半からいろいろな角度で各委員の質疑が続いておりますが、私は大きな方向性として歓迎したいというふうに考えております。

 金融という大きなこの市場において前向きに入口を広げていくということは、我が国が、やはり成長が止まっている、低成長ということをずっと言われている中において、チャレンジというか攻めていく、こういう姿勢として私たちは必要だというふうに考えております。

 本日は、私が日頃から申し上げております透明性であったり公平性の観点、また、DX推進などについても意見を言わせていただければというふうに思っております。

 鈴木財務大臣、津島委員長を始め理事、委員の皆様、金融庁の皆様、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 我が国は、資本市場の活性化に向けて、資産運用の高度化、多様化及び企業と投資家の対話の促進を図りつつ、市場の透明性、公平性の確保のための提案ということになっておりまして、まさに、全て必要な項目かなというふうに考えるんですけれども、まず一番最初の部分として、日本の投資運用業の問題点を含めてどのように考えているのか、金融庁の方から教えてください。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 投資運用業者は、家計からの投資資金の運用を行い、その成果を家計に還元する役割を担うものであり、インベストメントチェーンを通じた成長と分配の好循環を推進する上で、投資運用業の高度化を図っていくことが重要だというふうに考えてございます。

 日本におきましては、資産運用会社数の推移を見ると、近年は横ばいで推移してございまして、新規の特色ある資産運用会社の参入が欧米諸外国と比べまして少なく、また、資産運用残高を比べますと、諸外国と比べて、経済規模比で見た資産運用残高も少ないものというふうに認識してございます。

 このため、国内外からの新規参入の活性化を通じ、内外の資産運用業者において競争が促進される環境を整備し、投資運用業の高度化ですとか多様化の取組を進めていくことが必要だというふうに認識してございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 やはり、金融庁の方からもいろいろ情報をいただいたんですけれども、資産運用残高であったり、それが対GDP比でどれぐらいあるのか、また資産運用会社数というところ、分かりやすくまとめていただいたものを見させてもらって、日本が七・二兆ドル資産運用残高があって、これは対GDP比ですと一・四倍、それに対して資産運用会社数が四百五社。アメリカが五十兆ドル、GDP比が二・一倍で、資産運用会社数が一万四千八百六社。イギリスが十三・五兆ドルの、四・三倍の、千百社。フランスが五・七兆ドルの、一・九倍の、七百八社。シンガポールに関しては四兆ドル、これは九・四倍、大変大きい数字になります、これは千百八社。香港が四・六兆ドル、これも十二・五倍、千九百七十九社というふうに考えると、我が国のGDP比における資産運用残高というのはちょっと低いのかなというところと、資産運用会社数に関しては、我が国よりもGDP比で圧倒的に小さい国が運用している金額もかなり低いにもかかわらず、会社数も少ないと。

 これが見えることで言うのは、やはり開かれた環境がなかったのかなと同時に、いい意味でいえば、安定して、少ない会社が安心した環境の中で運用していただけていた、そういった意味での規制ということについては、ある一定数効果はあるのかなと。

 先ほど詐欺の話がちょっと出ましたけれども、最近ディープフェイクなんという言葉もやはりちまたではすごく言われていまして、サイバー攻撃の一つとして、もうまさに、例えば、鈴木大臣の顔をそのまま映像として流して、声もそのまま流してしまうようなものがもう出回っていて、私も最近、岸田総理をちょっとやゆするような、本会議での答弁みたいなのがユーチューブでちょっと上がっているんですね。

 それで、ああ、こんなに何かちょっと分からなくなってきているのかなというのに、さらに、新しい情報をいただいたのは、これは複数でもできるらしいんですね。

 例えば、客観的にこれをオンラインでやった場合に、私と財務大臣以外が全員ディープフェイクというようなことも技術的にできてしまうということが、それにおいて、会社によって、何億円振り込んでくれみたいなことを会社の議決で決めたかのようにして振り込ませたなんという案件が世界ではあるという話をちょっとサイバー防御の専門の方からこの前教えていただいたときに、やはりちょっと怖いなと思いつつ、ただ、広げていくという作業については、私はやはりどんどん広げていくべきだというふうに思っております。

 その中で、日本のこういった資産運用会社数が少ないということは、ある種、いろいろなノウハウであったりとか、広がりに対しての対応策、こういったところはやはり日本がちょっと遅れている部分にもなるのかななんというふうには思うんですけれども、現状の日本の資産運用業の高度化、多様化ということを進めていこうということの取組を具体的にどのように取り組んでいくのかというところと、また、その結果、例えば、雇用とか賃金の部分でもどのような効果が生まれるのかなど、大臣の方で見えている景色があったら、ちょっと共有いただければというふうに思います。

鈴木国務大臣 投資運用業者は、家計からの委託を受けて、そして投資資金の運用を行って、その成果を家計に還元する役割を担っておりまして、インベストメントチェーンを通じた成長と分配の好循環を推進する上で、投資運用業の高度化を図っていくこと、これは重要であると考えます。

 そのためには、国内外からの新規参入の活性化を通じまして、既存の投資運用業者を含む事業者間の競争が促進される環境を整備をして、業界全体としての運用力の向上でありますとか、特色ある運用商品、手法の多様化を目指す必要があると考えます。こうした競争の促進によって、資産運用業に携わる人材の育成、厚みの向上にもつながるものと考えております。

 こうした観点から、今般の改正法案では、投資運用業の参入障壁として指摘されております体制整備の負担軽減等を図るため、当局による監督を受けるミドル・バックオフィス業者への外部委託を行う場合について、参入要件の緩和等の措置を講ずることといたしました。

 また、今般の法律案の措置に加えて、アセットオーナーシップの改革によります、年金基金等がどの投資運用業者が優れているかを見極める力の強化、大手金融グループにおける投資運用業者の専門性の向上、運用人材の育成、確保等を通じた運用力の向上などの取組でありますとか、新NISAの活用促進による市場への投資資金の流入の増加などが組み合わさることによりまして、投資運用業者の競争条件が整備をされ、運用力の高度化や多様化につながるものと考えております。

沢田委員 まさにいろいろな角度で、これから、企業であったり個人の方を応援することの幅を広げていくと。

 我が日本維新の会も、よく規制緩和ということを声高に上げているんですけれども、確かに、規制を緩和すると怖いこともいっぱいありますし、新しいチャレンジには、確かにいろいろなリスクであったり、こうなったらどうしようということもあるんですけれども、まずは競争できる環境を広げることで、そこから、徐々に徐々に、何を締めていくべきなのかということが、日本の経済を後押ししていくスタンダードになってくれればなというふうには個人的には考えております。

 今大臣からもいただいたんですけれども、いわゆる資産運用会社というものが、今までは、運用というところ、企画立案と投資の実行をやるところと、いわゆるミドル・バックオフィスというものを全部一元化して動いていたというところを、どういうふうに分けてやるのかという話なんですけれども、まさに今の時代のちょっと議論をしたいなと思いまして、今回は、企画立案と投資の実行、まずこの運用のところも分けられるよということ、ミドル・バックオフィス、ここも分けることができるよという話で、よりやりやすい環境をつくっていこうということなんですけれども。

 私、やはり、これだけAIというものが私たちの暮らしに意識をされ始めると、まさにここというのは、例えば、企画立案はAIにやらせる、投資実行は人間がやる、ミドル・バックオフィスの半分もAIがやるみたいな、一元化しても、実はそんなに大きな規模感でなくてもやれてしまうようなことを想定していかないと、多分、海外とか、新しい事業体をどんどんどんどん認めていくような国では、そういう動きが私は始まっていっておかしくないというふうに思うんですね。

 そういうことをまさに今後視野に入れていただいて、積極的にAI活用であったり、DXの推進、これを今回のことにもどんどんどんどん巻き込んだ議論にこれから深めていっていただきたいなと思うんですけれども、これはあくまで大臣の感覚的なものでも構わないんですけれども、そういった方向に流れていくときに、大臣としては推していくものなのかどうかという御意見をいただければと思います。

鈴木国務大臣 投資運用業、これは潜在的に、御指摘のとおり、AIの活用やデジタル化を通じた高度化の余地、これは高いと考えております。そして、事務の効率化、合理化や、特色ある運用方法の開発などを通じまして、家計を始めとする投資家へよりよい商品を組成していくことが可能となる、そういうふうに思います。

 今回の改正法案におけるミドル・バックオフィス業務を受託する事業者に係る任意の登録制の創設及び運用権限の全部委託の解禁は、いずれも投資運用業に係る分業をやりやすくするものでありますけれども、これによって、AIの活用やデジタル化に強みを持つ事業者が、その強みを生かして自らが得意とする分野の業務について効率的で特色あるサービスの提供がやりやすくなる、そのように考えております。

 今後でありますが、AIの活用やデジタル化が更に進展すれば、投資運用業を含む金融ビジネスが大きく変わる可能性があると考えております。

 金融庁として、引き続き、今後のAIやデジタル技術の動向等を注視をして、その強みやリスクを理解した上で、投資運用業についても高いレベルにおけます投資者保護と利便性の高いサービスの両立、この実現に向けまして、制度整備やモニタリング能力の向上に努めていきたいと思っております。

沢田委員 ありがとうございます。是非、これからもう一歩、二歩進むところに、我が国が、やはり、事業者全体がそこに乗り遅れていかないように、賃上げ税制みたいな、賃金を上げてくれると税金を下げるよみたいな、こういうインセンティブのつけ方も含めて、AIであったりDXをどんどん推進していくようなこの金融の、特に事業者の方々、こういったところを支援できるように、何か大臣の方からもこれから御提言いただければというふうに思っております。

 ちょっと時間が短くなっているので、最後の質問の手前で、ちょっと一個飛ばすんですけれども、今回、非上場有価証券の流通活性化ということで、私はこれはすごくいい取組だなというふうに思っております。

 ただ、これは、プロの投資家、いわゆる特定投資家というものが関わっていくということで、プロの投資家だけが参加できるということへの問題であったりとか、また、プロ投資家に限定する理由というものがあったら、ちょっと金融庁の方から教えてください。

井藤政府参考人 非上場企業ですけれども、これは一般に、事業、財務基盤が十分に確立されておらず、また、財務内容について、外部監査による第三者からのチェックや、それに基づく十分な開示がなされていない、また、その株式の流通の場が整備しておらず容易に転売することが難しい、こうした要因から、こうした企業への投資につきましては、金融リテラシーですとかリスク許容度などが求められるものでございまして、プロ投資家による投資が中心であるものと考えてございます。

 一般投資家におきましても、投資資金の性格やリスク許容度に応じまして、投資信託等を通じて、プロ投資家を通じた取引を行うことが可能となってはおります。

 また、非上場有価証券の投資に適するプロ投資家の範囲につきましては、二〇二二年七月でございますけれども、従前の要件以外に、実証事業の結果を踏まえまして、新たに年収、職業経験、保有資格、取引頻度を勘案するよう見直しを実施しておりまして、投資者保護に支障のない範囲で適切に拡大してきているところでもございます。

沢田委員 私は個人的に、この非上場有価証券、流動性を高めていくということが一番大事なのかなというふうに思っておりまして、やはり、市場参加者が増えれば増えるほど、当然、私はここで一番心配なのがやはり情報だと思うんですね。上場している証券に比べて、非上場の有価証券については、情報の完全性というか、そこら辺の、すごく、正しいものが出るかというところの心配事というのは常につきまとうところではあると思うんですけれども、最後は投資家自身がリスクを背負って自己資金でやっていくということになったときに、やはり、より多くの方がここに関わっていただくということになればなるほど流動性が高まって、結果として監視の目も強くなる。

 今ですと、X、ツイッターみたいなもので、やはり、粉飾っぽいものが出たりすると物すごいたたき方をしているということを見ると、今、物言う株主というのが、もう一人一人が言えるような時代になってきているなというふうに思うんですね。

 ちょっと最後の質問をさせていただくんですけれども、私は、是非、非上場有価証券の流動性を高めていくためにも、一般投資家の参加を含めて、やはり環境整備をより後押ししていく必要があるというふうに考えるんですけれども、大臣、最後、一言いただければと思います。

津島委員長 鈴木金融担当大臣、申合せの時間が経過しております。

鈴木国務大臣 非上場企業、これは一般的に言いますと、事業、財務基盤が十分に確立されておらず、財務内容について、外部監査による第三者からのチェック、それに基づく十分な開示がなされていないほか、その株主の流通の場が整備されておらず、容易に転売することが難しいことなどから、非上場企業への投資については、高い専門性や金融リテラシーが求められていると考えております。

 こうした特性を踏まえますと、一般投資家が非上場株式への投資を容易に行えるようにすることにつきましては、投資家保護の観点を十分に踏まえた慎重な検討が必要であると考えております。

 一方、一般投資家であっても、企業の取組等への共感に基づき、一定の金額内での投資が可能な投資型クラウドファンディングや、地域に根差した企業ごとに組成されたコミュニティー内で、当該企業の非上場株式の取引を行う株主コミュニティー制度を通じて、投資家保護に支障のない範囲で非上場株式に投資すること、これは可能となっております。

 今後も、引き続きまして、スタートアップ企業等への成長資金の供給促進と、一方において投資家保護、このバランスを踏まえながら、非上場株式の流通促進に向けた取組を進めてまいりたいと思います。

沢田委員 大臣、ありがとうございました。

 でも、是非、流動性を高める方も応援いただければと思います。よろしくお願いします。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 法案の質問に入る前に、一つ確認をしておきたいことがあります。

 四月一日に、二〇二三年分の消費税の確定申告期間が終了しました。昨年十二月末時点で、インボイス発行事業者の登録件数は百九十八万五百五十七者でありました。そのうち、消費税の確定申告書を提出した者の数についてお答えいただけますか。

鈴木国務大臣 消費税の確定申告、これは四月一日に終了しておりますが、御指摘のインボイス発行事業者の登録を受けている個人事業者によります令和五年分の消費税確定申告の件数につきましては、現在、国税当局において、本年五月末までに公表できるよう集計中でありまして、現時点においてお示しすることができないということを御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 もう三週間たっているわけですよね。おおよその数ぐらいは分かりませんか、お答えいただきたいと思うんですけれども。

 それと、インボイス登録をしていない消費税課税事業者を足した個人事業者で、消費税の確定申告書を提出した者の数だったら出せるのではありませんか。その点についてはいかがですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 確定申告に係る件数につきましては、例年五月末に公表しておりまして、現在、国税当局におきまして集計中でございますので、現時点でお示しすることはできないということは御理解いただきたいと思います。

田村(貴)委員 何もお答えできないんですか。

 これは大事な問題なんですよね。インボイスの制度発効に伴って、例えば、免税業者の方が元請とか取引先から要請されて課税業者として登録はしたんだけれども、課税業者としての自覚がない方がおられるのではないか、相当数いるのではないかということをこれまでも指摘してまいりました。

 それが多いということになりますと、制度の浸透が進んでいないということになりました。鳴り物入りで始まったインボイス制度ですけれども、これは財務大臣の責務にも、岸田内閣が進めたことの問題にもつながる話であります。

 私が今日申し上げた、インボイス登録した個人事業者で、そのうち消費税の確定申告書を提出した、この関係の数字の資料を直ちに出していただきたいと思います。

 津島委員長にお願いしたいと思います。このことを取り計らっていただきたいと思います。

津島委員長 理事会で協議いたします。

田村(貴)委員 財務省、速やかに提出していただきたいと思います。なぜならば、この税の根幹に関わる、そしていろいろな問題が起こっている中で、そうした状況をしっかりと審議するのが国会の役割であり、そして国政のチェック機能であるのが私たち議員に求められているからであります。

 それでは、金融商品取引法改正案のうち、非上場有価証券の流通活性化について質問します。

 この改正の目的は、スタートアップ企業等による資金調達を円滑化させるとしています。本改正で何がどう変わるんでしょうか、説明していただけますか。

井藤政府参考人 今般の法改正におきましては、非上場有価証券の仲介業務に特化する金融商品取引業者につきましては、金融商品取引業者に課せられる規制のうち、自己資本規制比率に関する規制、兼業規制、金融商品取引責任準備金の積立てを課さないこととしているほか、改正法案に基づく政令におきまして、資本金要件を五千万円から例えば一千万円に引き下げること、こうしたことを考えてございます。

田村(貴)委員 つまり、現状でも登録している証券会社は同じ業務ができるということですよね。しかし、非上場株式の取引が活発にならないから、要件を緩和すると。

 大手証券会社のホームページを見てみますと、大抵、スタートアップ企業への支援に積極的であることをアピールしています。事業として証券会社が成り立つ、もうかるとなるならば仲介するはずですよね。なぜ証券会社が非上場株式の仲介に熱心ではないのか、説明できますか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、非上場有価証券の仲介につきましては、上場株式の仲介と比べまして取引規模が小さく、取引頻度も低く、また、非上場株式は譲渡制限株式が多く、取引に係る事務が煩雑であり、また、発行企業に情報開示義務がない中で、証券会社としてその株式の仲介を行うことの是非の十分なチェックに加え、仲介後のフォローを行う必要があるというふうに承知してございまして、こうした中、上場株式等を中心に取り扱っている既存の証券会社が非上場有価証券の取扱いを活発化しようとする動きというのは、現状、余り見られていないということでございます。

 しかしながら、こうした中、スタートアップ企業に対してソフトウェア等のサービスを提供している従来の証券会社とは異なる企業などが、非上場有価証券の仲介業務を併せて提供できるようにすることも重要でございまして、今般の改正法案では、そうした観点を踏まえまして、登録要件等の緩和を盛り込んでいるところでございます。

田村(貴)委員 情報開示義務がないというようなお話もありましたけれども、資本金要件が緩和することで、リスクの高い商品を用いて、もうけ本位の業者が増えるのではないか、こういう懸念があります。

 経済産業省のスタートアップ・ファイナンス研究会では、資金供給の可能性を広げるということだけでなく、投資家保護、真にスタートアップの成長に資する資本構造になるのか、市場の公正性や効率性といった観点に配慮すべきであり、むやみに規制緩和を図ることは適切でない、そういう意見が出されています。特に、一般投資家がスタートアップに直接投資を行うことは慎重に検討すべきで、基本的には投資信託やファンド等のゲートキーパーを通じて行うべき、こういう意見が出されています。

 資料をお配りしています。

 金融庁の「「未公開株」等被害にあわないためのガイドブック その「もうけ話」、大丈夫ですか?」。このガイドブックの右のページ、左の方に赤線を引いていますけれども、「未公開株や社債の販売ができるのは、登録を受けた証券会社と未公開株や社債の発行会社だけ。その他の者が行う勧誘は法律違反の可能性大です。」ここまで書いているわけなんですよね。何でこういう提案が今されてきているのか。

 一般投資家がスタートアップに直接投資を行うことは慎重に検討すべき、これらの意見について大臣の見解をお伺いします。

鈴木国務大臣 スタートアップ、これは一般に、新しく設立された、そして急成長を目指す非上場企業でありますが、こうした非上場企業は事業、財務基盤が十分に確立されておらず、財務内容について、外部監査による第三者からのチェックやそれに基づく十分な開示がなされていないほか、その株式の流通の場が整備されておらず、容易に転売することが難しいことなどから、非上場企業への投資については、高い専門性や金融リテラシー等が求められると考えます。

 こうした特性を踏まえますと、金融庁としては、一般投資家がスタートアップへの投資を容易に行えるようにすることについては、投資家保護の観点を十分踏まえた慎重な検討が必要であると考えているところであります。

田村(貴)委員 金融リテラシー、高い専門性を求められるといったところは、当然の話であります。

 非上場株式等の売買の対象には、特定投資家、プロ投資家が入ってきます。鈴木大臣、鈴木大臣は御自身がプロ投資家の要件を満たされているとお考えになっていますか。

鈴木国務大臣 そのようには考えておりません。

田村(貴)委員 特定投資家、いわゆるプロ投資家の基準が、二〇二二年に大幅に緩和されています。

 資料二を御覧いただきたいと思います。

 特定投資家の要件は、個人の投資家について、取引経験が一年以上であれば、年収一千万円以上で特定の知識経験を認められるとプロ投資家になれる。ここで言う特定の知識経験の範囲ですけれども、配付資料の右下に書きました。「その他の者で、左記と同等以上の知識・経験を有する者」とある。個人投資家がこの基準を満たしているかどうかを判断するのは、これは一体誰になるんですか。証券会社ですか、金融庁ですか。

井藤政府参考人 まず、法令上、先生おっしゃるとおり、一定の要件に該当する個人につきましては、金融商品業者等への申出によってその適合性の判断がなされた上で、特定投資家への移行が可能となってございます。

 その要件につきましては、先生がお示しいただいた表のとおりでございますので割愛しますけれども、その申出に基づきまして……(田村(貴)委員「誰が決める」と呼ぶ)証券会社の方で適切に、その適切性についてまずは判断するということだと考えてございます。

田村(貴)委員 特定の知識経験の判断は証券会社に委ねられているということなんですね。これは恣意的な判断が入る余地があるということですよ。

 同じく局長、鈴木大臣は取引経験を除いてこの要件を満たしていると考えますか、大臣について。

井藤政府参考人 鈴木大臣がどのような御資格を御個人でお持ちかということまで存じてございませんので、この場では何とも、私自身、確たる答弁はしかねますけれども、特定の知識というのは、そこに書いてございますとおり、「金融業に係る業務に従事した期間が通算一年以上の者」、「経済学又は経営学の教授・准教授等の職にあった期間が通算一年以上の者」、「次の資格を有し、その実務に従事した期間が通算一年以上の者」でございまして、具体的には、証券アナリスト、証券外務員、FP技能士、中小企業診断士というものが掲げられてございまして、また、経営コンサルタント業に従事した期間が、で、「その他の者で、左記と同等以上の知識・経験を有する者」ということでございますので、おのずとその同等性が判断される範囲というものは限定されるものというふうに考えてございます。

 また、典型的には、例えば、海外におきまして先ほど言及した資格と同等の資格を持たれている方が該当するようになるというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 書いてあるのはこれだけなんですよ。「その他の者で、左記と同等以上の知識・経験を有する者」と。

 鈴木大臣、鈴木大臣はプロ投資家の要件に入るんです。そして、特定投資家の要件に合致するんです。なぜならば、金融担当大臣、金融行政に一番精通している方ですから。そういうことになるんですよ。

 取引経験は除外すると、立法府である国会、特にこの財務金融委員会の所属議員も、プロ投資家としての要件を満たしていると言われる可能性も出てくるわけなんですね。日々、金融行政を審議して、こういう法律案件について可否を下す、そういう専門的な審議をしているからです。証券会社から言わせてみたら、本当にたくさんの方がプロ投資家の要件になるんじゃないかと。

 金融審議会に提出された資料によりますと、特定投資家の基準を緩和したことで、二〇二〇年末の登録者はたった九十二人だったものが、潜在的な投資家は約百万人程度に増加したとのことであります。そこまでプロ投資家の要件を緩和している状況で売る側の基準を緩め過ぎると、投資被害が生まれるリスクが高まってくるのではないですか。いかがですか。

井藤政府参考人 顧客から特定投資家への移行に係る申出を受けた場合は、金融商品取引業者等におきましては、形式的な要件を満たす場合であっても、更にその上で、適合性の原則に基づき、そうした高齢の投資者の知識、経験、財産の状況に照らして適合性を判断することとされてございまして、金融庁といたしましては、金融商品取引業者の適切な業務運営が確保されるよう、しっかりと監督してまいるということで、そのような懸念に対してしっかりと対応してまいりたいというふうに考えてございます。

津島委員長 田村君、時間が経過しております。お願いします。

田村(貴)委員 はい。

 未上場株式の話を持ちかける方も規制緩和ですよ。そして、プロの投資家がこういう株式を買っていく。投資家の保護の検討もしないで、一般人をプロとしてリスクの高い金融商品を売りつける、そういう仕組みを緩和すれば、投資詐欺のリスクを高めるだけだということを指摘して、質問を終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。

 金商法の改正法案についてお伺いしてまいります。

 政府は、家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる成長と分配の好循環を実現していくことが重要であるとしまして、これまで、所得倍増プランやコーポレートガバナンス改革等を通じ、インベストメントチェーンを構成する各主体に対する働きかけを行い、新NISAなどの家計に向けた取組や、金融商品販売会社や企業や金融資本市場に向けた取組を行っております。

 資産運用立国の実現に向けて、今回の法改正により、国民の資産所得が増加し、日本の経済の確実な成長に向けて進められているわけですが、まず、今回の法改正で資産運用がどのように進むのか、また、それによって日本の経済の成長にどう寄与していくのか、鈴木金融担当大臣に考えをお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の改正法案では、家計からの投資資金の運用を行い、その成果を家計に還元する重要な役割を担っている投資運用業につきまして、その参入障壁として指摘されている体制整備の負担軽減等を図るため、ミドル・バックオフィス業務の外部委託によります参入要件の緩和等の措置を講じております。こうした取組による国内外からの投資運用業者の新規参入の活性化を通じまして、既存の投資運用業者を含む事業者間の競争が促進をされて、業界全体としての運用力の向上が図られていくものと考えております。

 加えまして、投資運用業者の運用力向上を通じて、投資先企業の企業価値向上の恩恵がより多くの家計に還元されるようになるとともに、更なる投資や消費につながる成長と分配の好循環を実現することで、日本経済全体の成長にも寄与していくものと考えております。

中川(宏)委員 大臣、ありがとうございました。

 今回、この体制整備をするわけですが、私は、投資する側の人のことも非常に大事だと思っていまして、国民一人一人の資産形成につなげていくには、この資産運用の恩恵が、富裕層だけでなくて、低所得者層ですとか、また金融弱者層向けの支援策の必要性、これもあると思いますし、また、国民が金融商品について正しく理解をしていくこと、これも委員会では度々議論されておりますけれども、金融経済教育を拡充、こういったことも一体的に進めていかなければ非常にいけないんじゃないかというふうに考えているところでございます。

 今回の改正では、家計金融資産の運用を担う資産運用業等の改革といたしまして、投資運用業、また、大量保有報告、公開買い付け等に関する制度の整備を行います。

 金融審議会の議論でもありますように、既に欧米を中心とする海外の多くの運用会社では分業化が進みまして、運用の企画立案をする業者がファンドの運営機能に特化をしまして、運用やバックオフィスとミドルオフィスの業務を資産運用受託業者へ外部委託する形態が一般的となっております。日本は、これまでファンドの運営機能に特化することができず、投資運用業者にとってコンプライアンスのための業務や計理業務などの負担が重く、世界各国と比べて投資運用業者数が少ないという一つの要因となっておりました。

 今回の改正で、投資運用業の分業化ができることで企画立案また投資実行の資産運用会社などが増え、投資運用業者間の競争が促進されることによる活性化、また、投資運用業者の登録要件の緩和なども行われまして、これらにより新規参入が増えると予想をされているところであります。

 多様な会社が参入することで、運営や管理、コンプライアンスの水準が保たれるのかという心配があります。例えば、投資運用業者からミドル・バックオフィス業務の委託を受ける任意の登録業者が仮に複数の投資運用業者から業務を受託した場合に、情報管理また利益相反等は問題にならないのかということなどが言われているところであります。

 この点も含めまして、挑戦するプレーヤーを過度に萎縮させない範囲で、行き過ぎない競争環境と投資運用の質の確保のために、バランスの取れた規制、また監督、法の執行の確立が重要だと考えますが、この外部委託市場を健全に拡大していくための取組についてお伺いをさせていただきます。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、投資運用業者からミドル・バックオフィス業務を受託する事業者について任意の登録制度を導入いたしまして、投資運用業者が登録を受けた専門の事業者に当該業務を委託する場合に参入要件を緩和することとしてございます。

 今般の措置ですけれども、ミドル・バックオフィス業務を受託する専門の事業者を任意の登録制とすることにより過剰な規制とならないものとする一方で、登録を受ける事業者は、金融庁による登録審査や登録後のモニタリングを通じて適切な品質の確保、維持を図り、投資者保護が損なわれないようにするほか、ミドル・バックオフィス業務に関し適切な品質が確保された事業者への委託を活用した投資運用業者の新規の参入を促すということでございます。

 金融庁といたしましては、今般の改正を通じまして、御指摘のようなバランスの取れた規制、監督ということをいろいろと考えてございまして、こうした中で、ミドル・バックオフィス業務の市場、あるいは投資運用業というものが健全に拡大していくことを期待してございます。

中川(宏)委員 ありがとうございます。

 バランスの取れた規制をやっていく中でも、多様な事業者の参入によるリスク管理体制の具体的な内容につきまして、より明確な指針を出していくことも必要であると思いますし、また、市場関係者へ情報提供また意見聴取なども積極的に行っていただきまして、透明性、公平性を確保していくということも必要かというふうに思いますので、その点につきましても御留意いただければというふうに思っております。

 今回の改正によりまして、資産運用の業界として、それぞれ投資運用会社の役割に変化が出ると予想されまして、資産運用にどのような影響が出てくるかを見極めていく必要があるかと思います。法律改正の効果の検証を厳密に見ながら、必要な場合には的確に対処していくことが必要であるというふうに思っております。

 金融庁としては、どのようなデータをどう分析していくのか、また、状況の見極めをどのぐらいのスパンで見ていくのか。法律改正による影響についての検証体制についてお伺いをさせていただきます。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案の附則でございますけれども、政府は、この法律の施行後五年を目途といたしまして、改正法案の施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは、規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされてございます。

 その際、投資運用業者の参入状況やミドル・バックオフィス業者の活用状況について、定性的な分析だけではなく定量的な分析も行い、今般の法律改正の効果を検証してまいりたいというふうに考えてございます。

中川(宏)委員 続きまして、先ほど櫻井委員からもございましたけれども、投資詐欺についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 投資する方の金融リテラシーは様々であるというふうに言われておりますが、近年、大規模な投資詐欺のニュースが流れております。

 日本の中での投資詐欺についてでありますが、金融庁によりますと、二〇一九年の一月から二〇二〇年六月にかけての投資詐欺についての相談件数は二桁でありましたけれども、二〇二一年の七月から九月には一千八百三十三件まで大きく伸び、これは、相談件数だけではなくて、被害ありの人数も比例して大きく増加をし、詐欺的投資勧誘にひっかかった人が近年増加傾向をたどっていることが推測をされるところであります。

 投資詐欺の被害者の多くが御高齢者で、退職金など老後資金を持っている、また、投資商品に対する知識が乏しい、高金利時代を知っているだけに、元本保証と高利回りをちらつかせるとひっかかりやすいといったことなどがその理由として挙げられております。ふだん人に余り接しない独居老人などは、たまたま勧誘に現れた人に親切にされたため、でたらめな投資商品を購入して被害に遭うというケースもございました。

 ところが、近年の状況を見てみますと、高齢者よりも、若年の方の方が被害に遭うというケースが増えているという分析もあります。市場の監視強化やメディアによる啓発も、これは大変重要であると思いますが、本質的な部分でいきますと、金融リテラシーの向上が何より大事だと考えます。

 ある識者の指摘によりますと、安定的な資産形成の重要性の理解と浸透のための金融リテラシー向上に向けて、低年齢のうちからお金や金融商品を理解する力を育てることで、自分らしく生活するという力を養うことに力点を置いていただき、貯蓄を投資に回すという偏った教育にならないように関係者の方には肝に銘じていただきたい、こういった指摘もあるところでございます。

 投資詐欺の防止を強化するために、金融リテラシーの向上という観点も含め、政府の取組についてお伺いをさせていただきます。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 金融庁の金融サービス利用者相談室に寄せられた詐欺的な投資勧誘に関する情報の受付件数は、昨年度では約八千五百件ということで、非常に増えてきておりまして、委員御指摘のとおりでございます。

 金融庁といたしましては、従来から、投資詐欺対策として、金融庁のホームページやSNSを利用した注意喚起に加え、パンフレットやリーフレットの発行、SNS事業者とも連携の上、SNSのページに当庁の注意喚起のリンクを張りつけ、事業者団体のホームページにおける注意喚起ページの相互リンクといったような取組を行っておりますけれども、委員御指摘のとおり、投資詐欺などの金融トラブルに巻き込まれることなく、着実に資産形成を進めていただくということのためには、金融リテラシーの向上に向けた取組を強化する必要があると考えているところでございまして、今月五日に設立いたしました金融経済教育推進機構における教育内容といたしまして、家計管理や消費生活の基礎、社会保障、税制度、資産形成といった内容のみならず、投資詐欺などの金融トラブルへの対応方法など、金融経済に関わる幅広い観点を取り入れて、若年層も含めて、広く金融リテラシーの向上を進めていきたいと考えているところでございます。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 今言われたことにより、金融リテラシーの向上を進めていただきたいんですが、あわせまして、投資詐欺の手口は今巧妙化しております。常に最新の情報を把握して対応していく必要があるのではないかというふうに思っております。そういう視点でいきますと、金融庁におかれましては、情報収集体制の強化、また分析力の向上に努めるべきだと思います。

 そうしたことをしていきながら、金融庁と関係省庁がしっかりと連携をしまして、情報共有、また共同調査などもやってもいいと思います。こういったことを行いまして、投資詐欺の被害防止に向けた取組を推進をしていっていただきたいこと、また、投資詐欺の被害者保護、これもしっかりやっていただきたい。

 また、先ほどもありました、金融リテラシー向上のための取組を推進していくための体制、これをもう一回しっかりと見直して、具体的な役割分担、また連携方法、これを今よりも更に明確にしていただいて、投資詐欺がなくなっていく環境、これを是非つくっていただきたいと強く要望をさせていただきます。

 時間となりましたので、二問残しましたけれども、次回また質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案について、集中的に質問させていただきたいと思っております。

 まず、お手元にお配りした資料を御覧いただければと思います。

 岸田政権は、昨年十二月に、成長と分配の好循環の実現を目指しまして、資産運用立国実現プランを策定いたしました。これまでも政府は、資産所得倍増プランによって、貯蓄から投資へをスローガンに掲げて、NISAの抜本的拡充による家計の安定的な資産形成を図るとともに、コーポレートガバナンス改革を通じて企業の成長力の強化を図るなど、様々な施策に取り組んできたと承知をしております。

 そこで、まず初めに、資産運用立国の実現に向けたこれまでの取組やその成果と、今回の法案の位置づけについて、副大臣の見解をお聞かせいただければと思います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 新しい資本主義の下で、我が国の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで更なる投資や消費につながる、成長と分配の好循環を実現することが重要と考えております。

 そのため、これまでも、一昨年公表いたしました資産所得倍増プランや、昨年に公表したコーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラムに基づき、本年一月から新しいNISAを開始、今月には金融経済教育推進機構を設立するとともに、金融機関における顧客本位の業務運営の確保や中長期的な企業価値の向上に向けた施策の推進等を進めてまいりました。

 さらに、昨年十二月には、こうしたことを含む形で資産運用立国実現プランを策定し、家計金融資産等の運用を担う資産運用業とアセットオーナーシップの改革も含め、インベストメントチェーンを構成する各主体に対する働きかけを行う施策に取り組んでいます。

 今般の改正法案は、この資産運用立国実現プランで掲げた施策のうち法律の改正が必要なものについて制度的手当てを行うものであり、投資運用業の参入促進、非上場有価証券の流通活性化や大量保有報告制度の対象明確化等について所要の改正を行うものであります。

 金融庁としては、今般の法改正による措置も含め、着実に施策を推進し、資産運用立国の取組を通じた成長と分配の好循環の実現に向けて具体的な成果を上げていきたいと考えております。

宮下委員 それでは、具体的施策についても質問させていただきたいと思います。

 この資料の右上、資産運用業・アセットオーナーシップ改革に関しましては、投資運用業者の運用力の向上を図るために投資運用業者の参入を促進することとしております。その狙いはどのようなものであって、今回の改正法案で実際に日本の投資運用業者の運用力が向上するのかという点、また規制緩和によって業務の適正性の確保に懸念が生じることはないのか、この二点についてお伺いをしたいと思います。

神田大臣政務官 お答えいたします。

 投資運用業者は、家計からの委託を受け、投資資金の運用を行い、その成果を家計に還元する役割を担っております。政府としては、国内外からの新規参入の活性化を通じて事業者間の競争を促し、業界全体としての運用力の向上を図ってまいりたいと考えております。

 こうした観点から、今般の改正法案では、投資運用業の参入障壁として指摘されている体制整備の負担軽減等を図るため、ミドルあるいはバックオフィス業務の外部委託による参入要件の緩和等の措置を講じることといたしました。また、今般の改正法案の措置に加え、新NISAの活用促進によるマーケットへの投資資金の流入が増加していく中で、アセットオーナーシップの改革を通じた投資運用業者に対する見極め力の強化、あるいは大手金融グループにおける運用力向上やガバナンス改善、あるいは体制強化のためのプランの策定などの取組によって投資運用業者の競争環境を整備することで、運用力の向上につながると考えております。

 また、宮下先生お尋ねの業務の適正性の確保につきましては、今般の措置に基づき投資運用業者がコンプライアンスに係る業務などを登録を受けた事業者に委託する場合であっても、委託元の投資運用業者は引き続き金商法等の規制を遵守し、顧客に対する受託者としての忠実義務や善管注意義務等を負うとともに、緩和された体制整備に関する要件の下でも委託先を適切に監督する必要があります。

 したがって、今般の改正によっても、全体として見れば、法令上求められるコンプライアンスの水準が緩和されるものではありません。金融庁としては、投資運用業の登録審査や登録後のモニタリングにおいてミドル・バックオフィス業務を外部委託する場合も含め、その業務の適正性が十分に確保されているか、しっかりと確認してまいりたいと考えております。

宮下委員 次に、この図で見ますと右下に当たりますが、企業の持続的な成長、金融資本市場の機能の向上に関連して伺いたいと思います。

 まず、大量保有報告書でありますけれども、この制度は、株券等の大量保有に係る情報が経営に対する影響力や市場における需給の観点から重要な情報であることから、市場の透明性、公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対して一定の開示を求めるものと承知しております。

 この制度では、複数の投資家が共同して株主としての議決権を行使すること等を合意している場合には、法令上は共同保有者として保有割合が合算され、大量保有報告が求められるものですが、今回の法案でその範囲の明確化を図ることとしています。

 そこで、この改正の趣旨とその内容に加えて、こうした範囲の明確化がいわゆるアクティビストのような者にとって有利となる懸念はないか、すなわち、複数の者が暗黙裏に協調して経営に影響力を及ぼすような議決権の行使を行うなどの規制逃れが防止できるのかという点についてお伺いをしたいと思います。

神田大臣政務官 お答えいたします。

 中長期的な企業価値向上のために投資家による企業との対話の実効性を高めることが求められる中で、投資家側の質的あるいは量的なリソースの不足を補うとともに、企業側の効率性の向上を図るために、複数の投資家による協働での対話の促進に向けた環境整備を進めることが重要と考えております。

 一方で、現状、大量保有報告制度における共同保有者の範囲が法令上不明確であることが、こうした協働での対話の支障となっていると指摘されています。このため、今般の法案では、配当方針や資本政策の変更など、企業支配権に直接関係しない提案を企業側に裁量を与える態様で共同して行うなどの一定の場合には、共同保有者には該当しないことを明確化することといたしました。

 この点、先生御指摘のいわゆるアクティビストは、一般的には、企業支配権に関係する提案をする者や、あるいは、例えば企業側が提案を受け入れない場合に株式の追加取得を示唆するなど、経営陣に自らの提案の受入れを迫る者などを指すと承知しておりますが、こうした者は、先ほど申し上げた一定の場合には該当せず、引き続き保有割合の合算が求められる共同保有者に該当することとなります。

 その上で、近年では、共同保有者の立証が困難であることを利用して、いわゆるウルフパックと呼ばれるような、複数の者が暗黙裏に協調して株券等を取得していることが疑われる事例もあるとも指摘されています。

 このため、複数の投資家が潜脱的に大量保有報告書の提出を行わない場合など、市場の公正性を脅かしかねない事例に適切に対応すべく、投資家間における役員の兼任関係や資金の提供関係など、一定の外形的事実がある場合に共同保有者とみなす規定を改正法に基づく政令において整備する予定となっております。

宮下委員 続いて、公開買い付け制度についてお尋ねをいたします。

 この制度は、一定割合を超える上場株式等の買い付けに対し、買い付け目的等について事前の開示を求め、全株主に平等な売却機会を与えるものと承知しております。

 今回の法案では、これまで規制の対象ではなかった市場内取引を対象に追加するとともに、公開買い付け規制の閾値を三分の一から三〇%へと引き下げることとしております。

 そこで、この改正の趣旨とともに、過剰な規制強化として投資家にとって日本の市場の魅力が損なわれることにはならないか、この二点についてお伺いをしたいと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、市場内取引は、先生おっしゃるとおり、公開買い付け規制の対象とはなってございませんが、企業買収の多様化が進む中、近時、約二か月という短期間のうちに市場内取引を通じて三分の一超の株式が取得された非友好的買収事例が発生し、被買収会社による買収防衛策の発動の是非を争う裁判におきまして、投資判断に必要な情報、時間が一般株主に十分与えられていなかったとの指摘がなされるなど、企業支配権に重大な影響を及ぼす市場内取引に対する透明性の向上が喫緊の課題であると認識してございます。加えて、こうした市場内取引は、諸外国においては現在既に公開買い付け規制の対象とされてもございます。

 こうしたことを踏まえまして、今般、諸外国の規制との整合性も踏まえつつ、資本市場の一層の透明性、公正性の確保を図るため、公開買い付け規制を改正し、市場内取引の規制を対象にする措置を講ずることとしたものでございます。

 また、閾値につきましては、現行法では議決権の三分の一を超える株券等を取得する場合に公開買い付け規制が適用されることとなってございますが、これは、株主総会において三分の二以上の議決権が求められる特別決議を阻止することができる企業支配権への影響を考慮した水準となってございます。

 一方で、議決権の過半数を有するなどの支配株主がいない場合の東証上場企業の株主総会について、近時の議決権行使の実態を見てみますと、大多数の企業におきまして実際に行使されている議決権は九割未満でございまして、三分の一ではなく三〇%の議決権を保有していれば特別決議の阻止が可能な状況であるほか、半数近くの企業におきましては実際に行使される議決権は六割程度でございまして、三〇%の議決権を保有していれば通常決議の可決又は阻止が可能な状況であることでございまして、公開買い付け規制の水準もこうした実態を踏まえたものとする必要があるというふうに考えてございます。

 このような実際の議決権行使の割合ですとか諸外国の水準を考慮いたしまして、公開買い付け規制が適用されるか否かの閾値を議決権の三分の一から三〇%に引き下げる措置を講じることとしたものでございます。

 このように、今般の公開買い付け規制の改正案は、諸外国の規制との整合も踏まえつつ、資本市場の一層の透明性、公正性の確保を図るものでございまして、過剰な規制には当たらず、むしろ我が国資本市場の魅力向上に資するものであるものというふうに考えてございます。

宮下委員 スタートアップ、非上場株式に関する施策についても質問を用意しておりましたが、他の先生方の質疑でも明確になったと思いますので、最後に、資産運用立国の実現のために必要なことということで、今回の改正法案を踏まえつつ、事業者に対して実効的な検査監督を行うことが重要だということを踏まえまして考えますと、具体的に増加が予想される投資運用業者への対応でありますとか、ミドル・バックオフィス業の監督などの新たな業務にきちんと対応することも求められるところであります。

 こうした検査監督の実務を担う金融庁及び財務局の機構及び定員について、積極的な体制強化を図るべきと考えますけれども、副大臣のお考えを、決意をお聞かせいただきたいと思います。

井林副大臣 お答え申し上げます。

 資産運用立国実現のためには、委員御指摘のとおり、参入要件の緩和等を通じて増加が予想される投資運用業者やミドル・バックオフィス業務の登録事業者について、実効的な登録審査やモニタリングを行うとともに、無登録業者による詐欺的な投資勧誘の防止も含めた金融市場の信頼性の確保にしっかり取り組んでいく必要があると考えております。

 金融庁としましては、これまでも効果的、効率的な検査監督に取り組んできたところですが、今般の改正を踏まえ、増大する業務に必要な機構・定員の要求を行う等、引き続き金融庁及び財務局における体制の強化に努め、投資者保護に努めてまいりたいと考えております。

宮下委員 終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて宮下君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時二十二分開議

津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 ただいま議題となっております内閣提出、金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

津島委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 立憲民主党会派を代表して、本法案に反対の立場から討論を行います。

 約三年前、私は、資本主義の在り方につき、誠に正鵠を得た文章に接しました。以下、その一部を引用します。

 近年、国内外において、成長の鈍化、格差拡大、一国主義、排他主義の台頭、国家独占経済の隆盛など、資本主義の価値が揺らいでいる。要因の一つが株主資本最優先にある。近年、苛烈な競争や利益第一主義の下で、金融資本とりわけ株主資本に焦点が当たっている。その結果、適切な分配政策の欠如が起こっている。こうした現状を打破するため、我々は、新たな資本主義の形として、人的資本を大切にする人財資本主義、更に多種多様な主体に寛容な全員参加資本主義を実現しなければならない。何よりも、分配政策の強化が不可欠である。

 お気づきになった方もおられるでしょう。この文章は、令和三年六月、首相になる前の岸田氏が立ち上げた、自民党議員百四十五人が参加した、新たな資本主義を創る議員連盟の設立趣旨を述べたものです。しかし、岸田首相の政策は、ここからどんどんずれてきており、今回の法案はその象徴です。

 第一に、本法案は、投資運用業者の新規参入促進策を盛り込んでいます。これにより、投資運用業者は、投資家保護に不可欠なコンプライアンス部門を外部委託し、投資収益の極大化に注力できるようになります。新規参入により競争環境が激化すれば、外部委託業者への圧力は強まり、顧客に対する不当な勧誘が増え、建設的な対話と称して投資先の企業に対する配当引上げや自社株買いの要求が強まることが想定されます。これは、岸田氏が三年前に目指していた、多種多様な主体に寛容な全員参加資本主義とはかけ離れたものではないでしょうか。

 第二に、本法案は、非上場株などの換金を容易にする方策を盛り込んでいます。その理由として、いわゆる小粒上場を防ぐことを挙げています。

 しかしながら、時価総額の大きい企業だけが上場に値するという考え方は、株主資本最優先のものと言わざるを得ません。本来は、小粒上場であっても公募増資などで資金を調達し、持続的に成長できるようにするのが株式市場の役割です。株式市場は企業から資金を奪う場ではなく、企業に資金を供給して育てる場であるはずです。

 東京証券取引所によると、昨年の配当や自社株買いによる株主還元額は三十兆円を超えたのに対し、新株発行に伴う資金調達額は一兆円程度にすぎません。こうした株式市場のゆがみを是正するのが先決ではないでしょうか。

 もはや、首相就任前に岸田氏が唱えていた新しい資本主義は古い資本主義に逆戻りしており、国民の金融資産は、相続によって地方から都会へ、そして、本法案の資産運用立国ならぬ資本運用業立国を推し進めることによって、海外へと分配されかねません。

 立憲民主党が政権に就けば、日本銀行と政府がこっそり独占しているETF分配金の活用を含め、適切な分配政策を実現するとともに、株主優先の資本主義を改め、従業員、顧客、仕入れ先、地域社会など、多様なステークホルダーの利益を尊重する公益資本主義に転換していくことをお約束し、私の反対討論を終わります。

 以上です。(拍手)

津島委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、金融商品取引法等改正案に反対の討論を行います。

 本法案では、特定投資家、プロ投資家を対象にして、未公開株式等に限定した仲介業務を行う第一種金融商品取引業者の新規参入を促すために、登録要件の規制緩和を行います。

 登録要件である資本金基準を五千万円から一千万円に引き下げるとしていますが、そもそも、未公開株式等の仲介業務で利益が出るのであれば、このような規制緩和がなくても、証券会社が取引を活発に行うはずです。参入条件を緩和すれば、コンプライアンスの低い業者の参入を増やすことになりかねません。

 未公開株など非上場有価証券は、有価証券報告書などの情報開示がなく、価格評価が非常に困難であり、極めてリスクの高い金融商品です。仲介業者の基準も緩めて未公開株式の流通の活性化を図るなど、本来の株式市場の制度の趣旨に反するものと言わざるを得ません。

 しかも、今回の目的は、特定投資家、プロ投資家向けに非上場株式等の売買を仲介するというものです。二〇二二年の内閣府令により、広範な個人投資家が事実上プロ投資家として扱えるよう改悪されているため、多くのアマチュア投資家が巻き込まれる懸念が高まります。

 現在、年間所得一千万円以上で、知識経験に基づく判断能力があると金融業者が判断すれば、プロ成りとされます。そのようなプロ投資家は約百万人いるとされ、既にターゲットにされています。

 プロ投資家の基準を緩めた上に、今回、仲介し販売促進を狙う証券会社の基準まで緩めると、一般の個人投資家がリスクの高い取引に巻き込まれる危険性が当然高まります。詐欺が横行すれば、市場への信頼を損ないます。このような金融市場の規制緩和は行うべきではありません。

 そのことを申し上げて、本法案に反対し、討論とします。(拍手)

津島委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

津島委員長 これより採決に入ります。

 金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

津島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、塚田一郎君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。馬場雄基君。

馬場(雄)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 投資運用業者によるコンプライアンスなどミドル・バックオフィス業務の投資運用関係業務受託業者への委託により、当該業務の執行について必要となる十分な知識及び経験を有する役員又は使用人が不要となる結果、コンプライアンス管理等の態勢が弱体化して顧客に不利益が及ぶことのないよう、当該業務の監督を適切に行う能力を有する役員又は使用人が備えるべき資質を監督指針などで明確に定めること。

 二 投資運用関係業務受託業者の業務品質の向上を図るため、受託業務量が過大となることや委託元である投資運用業者から不当な圧力を受けることを防ぐとともに、委託元に対し業務上必要な情報提供を随時求めることができるよう必要な措置を講じること。

 三 投資運用業への参入促進策の実施においては、競争環境が激化した場合であっても「顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に業務を遂行する義務」の徹底が図られ、他者を上回る投資収益を上げることを目指して投資先に関わる多様なステークホルダーの利益を犠牲にすることがないよう、投資運用業者に対して適切な監督を行うこと。

 四 非上場株式の流通活性化策の実施においては、一般投資家が売り手の場合、買い手の特定投資家等との間の情報や知識の格差によって不利益を被ることを防ぐとともに、いわゆる小粒上場がその後の成長停滞の原因となっている現在の株式市場を改革し、上場を果たした企業に更なる成長資金を供給するという本来の株式市場の機能を向上させるため、必要な措置を検討すること。

 五 「資産運用立国」に係る政策を進めるに当たり、短期的な株主利益を重視するのではなく、企業を取り巻く多様なステークホルダーの利益を重視することで長期的持続的な株主利益の実現を目指していくという考え方が我が国に定着するよう努めること。

 六 本法に基づく制度の運用に当たっては、国民の財産を保護し健全な投資環境を守るため、金融経済教育や国民からの相談体制の拡充等を通じて、詐欺的な投資勧誘等に基づく被害を防止し、実効性のある検査及び監督が円滑に実施されるよう、金融庁及び財務局において必要な機構・定員を確保し、引き続き投資者保護に万全を期すこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

津島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

津島委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして、配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

津島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

津島委員長 次回は、来る五月八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十四分散会


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