衆議院

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第21号 令和6年5月14日(火曜日)

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令和六年五月十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      木原 誠二君    岸 信千世君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      中山 展宏君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    古川 禎久君

      宮下 一郎君    宗清 皇一君

      山口  晋君    山田 美樹君

      江田 憲司君    小山 展弘君

      階   猛君    末松 義規君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      原口 一博君    沢田  良君

      藤巻 健太君    掘井 健智君

      竹内  譲君    中川 宏昌君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   参考人

   (長島・大野・常松法律事務所弁護士)       井上  聡君

   参考人

   (一般社団法人全国銀行協会会長)

   (株式会社三井住友銀行頭取CEO)        福留 朗裕君

   参考人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        村上 陽子君

   参考人

   (一般社団法人日本金融経済研究所代表理事)    馬渕磨理子君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     山口  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 事業性融資の推進等に関する法律案(内閣提出第五七号)


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、事業性融資の推進等に関する法律案を議題といたします。

 本日、本案審査のため、御出席いただいている参考人は、長島・大野・常松法律事務所弁護士井上聡君、一般社団法人全国銀行協会会長・株式会社三井住友銀行頭取CEO福留朗裕君、日本労働組合総連合会副事務局長村上陽子君、一般社団法人日本金融経済研究所代表理事馬渕磨理子君、以上四名の方々であります。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず井上参考人にお願いいたします。

井上参考人 おはようございます。

 国会の敷地内に入るのは、中学生のときの修学旅行以来でございまして、大変緊張しております。いろいろとお作法も分かりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。早速、現在法案が提出されております企業価値担保について、私の意見を申し述べます。

 まず、現状の課題についてです。

 資料の三ページを御覧ください。

 資金を借りようとする成長企業から見ますと、業容の拡大中は売上げよりも先に支出が増加しますので、資金需要は大きいと言えます。しかし、安定した換価価値を見込める不動産を持っていない場合には、資金需要に見合った融資を受けられないという課題があります。

 これに対して、成長企業に貸そうとする金融機関側からしますと、成長企業は業容拡大中でありますので、将来の収益性には期待できると言えます。しかし、事業の将来キャッシュフローを見込んで無担保で貸すにはリスクが大きいと感じるところです。

 次に、四ページは、成長企業と違って、成熟した企業についてです。

 日本にはオーナー経営者が高齢化した中小企業がたくさんありますが、そうした企業からしますと、成熟企業ですので事業収益は安定しています。しかし、家族が誰も経営を継がないような場合、従業員出身の役員、番頭さん役ですね、に新経営者になってもらいたいというわけです。しかし、オーナーでない役員に経営者保証を入れてもらうのは難しいものですから、何とかして、経営者保証なしで融資を継続してほしいという事情があります。

 これに対して、成熟した中小企業に貸している金融機関側からしますと、事業収益が安定しているとしても、オーナー経営者から非オーナーへの経営の引継ぎというのはビッグイベントになります。貸し手としては、そのようなビッグイベントに当たって、新たな担保を取らず、経営者保証も外して融資を継続するということには不安が残るということになります。

 次、五ページですが、これは中小企業融資とは異なって、比較的大規模なプロジェクトファイナンス、あるいはLBOファイナンスの調達側からの課題です。

 この手の大規模ファイナンスは、現在においても、個別資産の担保を積み上げて、ほぼ全資産を担保として行われております。ただ、個別資産担保の積み上げ方式による全資産担保というのは、一つ一つ契約を締結して対抗要件を備える必要があって、手間と費用がかかり、その負担の多くは債務者に帰せられるという問題があります。

 他方で、プロジェクトファイナンス、LBOファイナンスの金融機関側からしますと、この分野では、実務上、担保を実行する事態にはまずならないと言えますが、万が一のときに実行できるからこそ、交渉力を確保できるという面があります。しかし、通常、個別資産価値の総和よりも、事業価値、のれんなどを含む事業価値の方が大きい、生きている企業であれば普通はそうですので、個別資産担保をばらばらに実行しても、事業価値全体を実現できるかには疑問があり、その結果、万一、債務者に法的倒産手続が始まるというようなことになってしまうと、期待どおりの担保価値評価を受けられないおそれがあるという問題があります。

 こういった問題、課題に関して、六ページにありますように、比較的古くから、事業価値に着目した担保制度については検討されてきました。早いところでは、二〇〇〇年代初頭に金融法学会とか経産省の研究会などで検討がなされて、ここにあるように、成果が公表されております。

 ただ、その後、債権法改正という大きなイベントがあって、そちらにややシフトしたところもあって、やや検討がスローダウンしましたが、その後、二〇一八、一九年くらいからまた再び活発に議論がなされるようになり、ここにありますように、3以下、中小企業庁、金融庁、法制審、金融審といったところで事業価値に着目した担保制度の検討がなされておりまして、こういった形で検討結果が公表されています。

 私は、この4から7のそれぞれの委員あるいはメンバーとして議論に参加してまいりました。この最後に書いてある金融審議会、あるいはその上に書いてある法制審議会などの検討結果を受けて、今回法案として提出されたのが企業価値担保だと理解しております。

 それでは、その企業価値担保の利用価値ないし意義について、四点申し上げたいと思います。

 八ページにありますように、まず、何を担保に取っているのかということでございますが、これは総財産、それも将来取得する財産も含むということで、非常に包括的な担保ということになります。

 その一方で、債務者に広い処分権限が認められていますので、通常の事業過程で処分されたり消費されたりしたものがどんどん担保から外れていくということが認められています。

 それに加えて、この法案では、事業全体をまとめて換価処分するというような実行手続が整備されています。

 この三つの結果、担保権者というのは、全財産といっても事業活動の中で次々と入れ替わっていくものをつかまえているということであって、そうすると、個別資産価値の総和ではなくて、先ほど申し上げたように、それよりも大きな、のれんを含む企業価値を把握するというような設計になっているということです。

 したがって、この企業価値を守るということが担保権者の利益になるということになりますが、それとともに、企業価値を守ることが債務者の事業の継続にも役に立ち、労働者の雇用の維持にも資することになり、取引債権者の、取引相手を守るということにもなるわけでございまして、ここにこの担保の眼目があると理解しております。すなわち、利害関係人の間でウィン・ウィンの関係をつくるということになろうかと思います。

 二つ目。この担保は、担保権者に包括的な優先権を与えるというものでございます。ただ、それには二つの大きな穴が空いております。

 一つ目、企業価値担保の実行が開始されても、共益費用ですとか労働債権、こういったものは順次支払われていくことになります。また、裁判所の許可を得て商取引債権が取引相手に支払われるということになります。なぜ、担保権者を差しおいて、これらの無担保債権の方々に支払いがなされるのか。それは、その支払いによって企業価値が維持されるからということになっております。すなわち、この一つ目の穴というのが、先ほど申し上げたウィン・ウィンの関係をつくるために非常に重要な穴でございまして、包括的な担保に大きな一つの穴を空けているということになります。

 二つ目、企業価値担保の実行による事業譲渡代金のうち、全額が貸し手に行くのではなくて、一定額が債務者の清算手続又は破産手続を通じて残存する無担保債権者に支払われるという仕組みが導入されています。この二つ目の穴は、ただ、一旦事業譲渡をして、労働者の方も含めて譲渡先に移転してしまったときの代金、いわば空っぽになった債務者が受け取った代金をどう分けるかという話ですので、これは企業価値を向上させるというよりは、取り合い、すなわち担保権者と無担保債権者の間の取り合いの問題になります。ゼロサムの穴ということになります。

 ですので、私は個人的には、この穴を大きくし過ぎると、担保権の価値が失われ、貸せる金額が減ってしまうという問題があるので、私自身は、利害関係者の利害調整のためには、一つ目の穴に注目するのが大事であって、二つ目の穴を大きくしないことがむしろ重要ではないかと考えております。

 三つ目。九ページになります。対抗要件の具備については、債務者の商業登記簿への登記だけで足りるという非常に簡便かつ廉価な制度が想定されておりまして、不動産登記や特許登録などは要らないということになっています。

 ただ、私個人の意見としては、債務者が所有する不動産の不動産登記簿や債務者が保有する特許の特許登録原簿などを閲覧した人にもそれが企業価値担保を設定してある会社だということが分かるように、その権利者欄に債務者が企業価値担保設定済み会社であるよということを示すような、何か、アスタリスクとか米印とか、そういったフラッグを立てるような制度を、商業登記に連動させて自動的に付せられないかというふうに考えております。これは今回法案の中には入っておりませんし、私が考えていることではありますが、今後の課題として是非御検討いただければと思います。

 四つ目。債務者の経営権の確保。

 包括的な担保ではありますけれども、担保設定後も債務者の通常の事業運営には制約がないということになっておりまして、その点では、事業の経営の自由が通常の事業の範囲であれば確保されているということです。二つ目、経営者保証が原則禁止されるということで、首根っこを押さえられるということを回避できるような仕組みが導入されています。また、企業価値担保を設定したのに思ったほどお金を貸してくれないというような貸主との関係がある場合には、債務者に極度額設定請求権あるいは元本確定請求権というのが与えられておりまして、ほかの金融機関と交渉して後順位担保を設定してお金を借りる、あるいは、お金を借りて今の貸主にお金を返し、リファイナンスをして貸主を変えるというようなことができる仕組みを導入しているということになります。

 以上を踏まえまして、最後に、企業価値担保について、よくある疑問として、幾つか申し述べたいと思います。

 十一ページになりますが、一つ目。包括的な担保によって労働者の権利が害されるのではないかという点については、もう申し上げましたが、雇用契約上の雇用主の地位も担保の対象になる方が、労働者が事業から切り離されずに済むために、雇用がむしろ守られやすいのではないかと考えています。

 二つ目。担保権者が債務者企業の価値を根こそぎ把握してしまい、労働者、取引相手その他の一般債権者の利益が害されるのではないかという点については、申し上げたとおり、全資産が対象となっていても、優先性に穴を空ければよいのではないか。まさに二つの穴が空いているわけですが、先ほど申し上げたように、一つ目の穴が重要だと思います。

 三つ目。広範かつ強大な担保であって、担保権者が債務者に対して圧倒的な地位に立つことによって債務者の経営権が害されるのではないかという点については、確かに広範です、しかし、だから強大だとは限らない。すなわち、申し上げたとおり、債務者には通常の事業運営権限がそのまま残りますし、元本確定請求権あるいは極度額設定請求権といった対抗手段もあり、経営者保証が原則禁止されて、首根っこを押さえられにくい仕組みになっているということがございます。

 四つ目。これで本当にニューマネーが出るのか、添え担保にとどまってしまうのではないかという疑念については、これは取引銀行がニューマネーを出してくれなければ、これも申し上げましたように、他の貸し手に乗り換えるための対抗手段があるかどうかということがポイントになりますし、あとは、担保制度の外の問題ではございますけれども、金融機関同士できちんと公正な、適正な競争環境があるかどうかというのが非常に重要ではないかと考えております。

 次、十二ページを御覧ください。

 五つ目になりますが、不動産と異なって企業価値の評価は難しいので、なかなか使い勝手が悪いのではないかという疑問については、これは確かに、不動産に比べれば企業評価は難しいと思います。しかし、今問題にしているのは、不動産を持っていて、担保に入れられてお金をじゃんじゃん借りられる企業ではなくて、そういうものを持っていない成長企業、あるいは成熟企業、あるいはプロジェクトファイナンスなどで、どうお金を貸していくかということになりますので、そういうところとの関係でいえば、無担保融資と比べてそんなに難しい話ではないのではないか、MアンドAのときの企業評価と共通するのではないかというふうにも思います。

 六つ目。債務者破綻時には、その企業価値が失われて担保として機能しないのではないかという疑問、これについては、破綻時の債務者というのは、企業価値がゼロになったということではなくて、百残っているけれども借入金が百五十あるというような状態だと考えております。だとすれば、借入金を切り離して、この百の価値のある事業を生かしたまま百で売却して、その百を百五十の債権者で按分するのではなくて、担保権者が優先的にそこを取れるということであれば、やはりなお担保として機能する、意味がある担保になるのではないかと思います。

 最後、七つ目。企業価値担保の実行管財人は担保権者の利益のみを考慮するのではないかという点については、実行管財人は、法文上、全ての利害関係人に対し善管注意義務を負うということになっておりまして、実際にも、恐らく、私の想像では、現在、倒産実務を担っている弁護士などが管財人として実行を担うんだろうと思いますので、むしろ、債権者あるいは担保権者の思うとおりにはならない、適正な実行が裁判所の管理の下に行われる可能性がむしろ一般の担保と比べれば大きいのではないかというふうに考えております。

 私の意見は以上です。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

津島委員長 ありがとうございました。

 次に、福留参考人にお願いいたします。

福留参考人 おはようございます。

 この四月から全国銀行協会の会長を務めております三井住友銀行の福留でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 先生方におかれましては、日頃より銀行界に対し格別の御指導、御理解を賜り、この場をかりまして御礼申し上げます。

 また、この度は、事業性融資の推進等に関する法律案について、私ども銀行界の意見を述べる貴重な機会を頂戴いたしまして、重ねて感謝を申し上げます。

 現在審議されております法律案では、事業性融資、すなわち、不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資の推進に向け、無形資産を含めた事業全体を担保とする企業価値担保権が創設されることとされております。

 私ども銀行界としましては、企業価値担保権は、今までの保全の在り方を補完あるいは代替する有効な選択肢であり、銀行においては資金供給手段を、事業者においては資金調達手段を広げる一助になり得るものとして期待しているところであります。

 我々が想定する企業価値担保権の意義について、まず、大局的な視点から見た意義をちょっと御説明したいと思います。

 初めに、事業性融資を取り巻く状況として、我が国の経済環境を見てみますと、ポストコロナにおいて緩やかな経済回復が進んでおり、特に大企業においては、人手不足に対応するための省人化、省力化投資のほか、GXやサプライチェーン強靱化に関連した投資需要が旺盛であり、銀行による資金供給も大きく拡大しております。

 先行きにつきましても、直近の日銀短観によれば、今年度の設備投資計画は一九九〇年以来の高い伸びとなるなど、まさに失われた三十年が終わりつつあり、我が国がデフレからの完全脱却と再成長に向けて動き始めた。日頃、私も毎日のように様々な企業の経営者、トップとお話をさせていただいておりますが、まさにそういうときが来ているという実感が私にもございます。

 こうした中、中堅・中小企業金融については、コロナ禍における資金繰り最優先のフェーズから、新規開業や、既存事業とは異なる新事業、新分野に進出することで経営刷新を図る、いわゆる第二創業、そして事業承継向けの成長資金も含めた多種多様な調達ニーズが生まれるフェーズへとシフトしつつあると見ております。

 銀行界は、そうしたニーズに対し、リスクテイク能力を拡大し、経済の血液である資金を隅々まで送り届けることが強く求められるというふうに認識しております。企業価値担保権は、まさにそうした、いわゆる絶好のタイミングでその創設が検討されているところであります。

 並行して、銀行界では、不動産担保や経営者の個人保証に依存しない、事業性に着目した融資を推進してまいりました。

 二〇一三年九月に、金融庁より金融モニタリング基本方針が公表され、事業性評価に係るモニタリングが開始されました。全銀協としては、同年十二月に、日本商工会議所とともに経営者保証に関するガイドラインを策定し、お客様から個人保証をいただく際の自主ルールを設定しております。また、二〇二二年の十二月に政府より公表された経営者保証改革プログラムを受け、経営者保証ガイドラインの運用徹底を改めて図っているところであります。

 直近二〇二三年度上期の民間金融機関の新規融資に占める無保証融資の割合は四六・七%と、前年対比で約一三ポイント上昇、ガイドラインの適用が本格的に始まった二〇一五年対比では約三五ポイントの上昇となっており、着実に取組が進んでいるというふうに思っております。

 このように、銀行界では事業性融資の推進に取り組んでまいりましたが、不動産担保あるいは経営者保証によらずに融資することが困難なケースがあることも事実であります。更に一歩踏み込んだリスクテイクを行うためには、在庫などの動産を担保として活用することも検討されているところでありますが、有形資産に乏しい事業者においては有効な解決策とはならず、今回審議されております企業価値担保権はその解決策になる可能性があると見ております。

 このように、大局的な視点から見れば、タイミングの面においても、そして、これまで十分にカバーされていなかった空白地帯を埋めるという機能の面においても、企業価値担保権の創設は大きな意義があるというふうに認識しております。

 続いて、より具体的な視点から、銀行界として想定する、企業価値担保権の位置づけや活用方法について御説明いたします。

 まず、我が国の産業構造を見ますと、時代の変遷とともに徐々に変化しており、二〇二一年の経済センサスによりますと、全産業に占める非製造業の割合は、企業数ベースでは七八・二%、売上高ベースでは六九・五%に達しています。

 特にスタートアップはそうした傾向が強く、東京商工会議所によれば、二〇二二年時点の非製造業の割合が約九割となっており、その多くは必ずしも有形資産に恵まれた事業者ではないと見ております。

 また、日本企業の九九%を占める中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、中小企業庁によりますと、七十歳以上の経営者のうち約三割が後継者不在となっております。このように、事業承継問題が深刻化している中、経営者の親族や従業員、役員以外の第三者が事業を承継する第三者承継も一つの解決策と考えております。

 中小企業基盤整備機構によれば、同機構が関与した第三者承継は二〇二二年度に過去最高の千六百八十一件に達しているとのことですが、今後より拡大させる上では、経営者保証がネックの一つになるという声も聞かれます。

 企業価値担保権は、こうしたスタートアップ向けや事業承継時の御融資において有用な選択肢になり得、ひいては我が国のイノベーションの加速や中堅・中小企業における生産性向上につながるのではないかと考えております。

 有望なスタートアップが次々に生まれ、経済を牽引するまで成長するケースが続出している米国においては、企業価値担保権と似通った全資産担保を活用する融資慣行が定着しております。日米のスタートアップ市場に見られる差の背景の一つには、こうした担保制度及び融資慣行の違いもあるのではないかというふうに見ております。

 また、銀行の視点から見ますと、企業価値担保権を用いた御融資においては、借り手企業における事業の発展が銀行にとっての担保価値を向上させることになります。そのため、銀行サイドには、絶えず変動する事業の実態を継続的に把握するとともに、経営上の課題などに対して具体的な解決策や実行支援を行う、いわゆる伴走支援に我々のリソースを投入することに経済合理性が生まれます。それにより、業況が悪化する局面を含め、借り手に対してよりプロアクティブに効果的な支援を行うことが可能になるなど、銀行として本来あるべき姿を追求する上でも、有用な融資の取組になり得るのではないかというふうに考えております。

 このように、企業価値担保権は、様々な面で大きな意義があると考えられる一方、全く新しい取組であることから、官民が協力し、準備すべきことも多いと認識しております。

 例えば、この新たな枠組みを有効に機能させ、銀行の融資慣行に根づかせていくためには、法整備だけではなく、企業価値の評価を客観的、安定的に行うための手法の確立など、実務レベルの準備を進めていく必要があると考えております。こうした実務上の論点については、法案の成立後、施行までの期間に、金融庁を中心に議論していくものと認識しております。全銀協といたしましても、積極的に議論に参加していきたいというふうに考えております。

 また、我々銀行には、この制度を利用する立場として、企業価値担保権の設定、期中管理、実行に関する内部体制を整備する必要があるほか、何よりも、お客様の事業内容を理解し、その将来性を見極める目利き力をこれまで以上に磨いていく必要があります。

 本法案には、事業者や金融機関の取組を支援する事業性融資推進支援機関について認定制度を導入することなどが盛り込まれていると認識しております。こうした支援機関も活用しつつ、時間はかかるかもしれませんが、体制整備にしっかりと取り組んでまいります。

 以上、簡単ではございますが、銀行界の意見をお伝えいたしました。

 冒頭で申し上げましたとおり、足下の日本経済には、賃金、消費、企業業績の好循環の芽が見られます。物価や金利の上昇、大幅な賃上げ、GXなど、至るところでパラダイムシフトが起きつつあり、我が国はまさに、失われた三十年、そしてデフレからの完全脱却に向けた分水嶺にある、正念場にあるというふうに見ております。

 銀行界としては、企業価値担保権を活用しつつ、主要な資金供給者として日本の再成長を下支えし、日本経済に好循環が定着することに貢献してまいる所存でございます。

 改めまして、本日は発言の機会をいただきまして、御礼を申し上げます。

 私からは以上です。(拍手)

津島委員長 ありがとうございました。

 次に、村上参考人にお願いいたします。

村上参考人 おはようございます。労働団体の連合で副事務局長を務めております村上です。

 本日は、参考人としてお招きいただき、ありがとうございます。

 事業性融資の推進等に関する法律案について、働く者の立場から基本的な考え方を申し上げた上で、企業価値担保権の活用における担保権者等による伴走型支援、担保権実行における換価の方法、担保権設定時及び実行時の労働組合の関与、カーブアウト部分の水準、労働者保護全体に関わる課題の五つの項目について意見を述べさせていただきます。

 まず、基本的な考え方についてです。

 企業価値担保権は、労働契約を含む企業の総財産を目的財産にする、これまでにない制度です。労働契約は、働く人間と不可分の労働力を取引の対象とするもので、ほかの契約とは大きく性格が異なります。そのため、働く者の生命や健康、人格などに対して特段の配慮が必要であり、そうした労働者保護の観点に立った制度設計をしていただきたいと考えます。

 そして、事業の継続や成長発展には労働者による労務提供が必要不可欠であり、働く者が集う労働組合は、事業活動を展開する上での重要なステークホルダーでもあります。そのため、労働者や労働組合の理解と納得を得られるよう、制度全体を通じて、労働者や労働組合への事前の情報提供や丁寧な説明、協議といった仕組みの整備が必要と考えます。

 以上を踏まえまして、各論点について意見を申し上げます。

 一点目は、企業価値担保権の活用における担保権者や貸し手による伴走型支援についてです。

 企業価値担保権は企業の総財産を目的財産とすることから、担保権者等による借り手企業に寄り添った伴走型支援が可能となり、融資実務の改善が図られると金融庁は説明しております。

 担保権者等は、借り手よりも優越的な立場にあり、経営改善支援として様々な経営関与を行うことも考えられます。また、本法案では、信託会社を担保権者にすることで、与信者に制限を設けず、ベンチャー、再生ファンドなど、一般事業会社も含まれるたてつけとなっております。

 このように、金融機関以外の多様な貸し手の参入も見込まれる中で、ほかの制度よりも強い担保権を背景に人員整理や労働条件の引下げなどを迫られた場合、必要な資金調達を図ろうとする借り手が拒否することは極めて難しいのではないでしょうか。借り手企業で働く者が雇用や賃金などの不安を抱えたままであっては、本法案が目指す事業の継続や成長発展も到底見込めません。

 また、企業価値担保権の活用によって融資を受けるには、借り手企業は、自社の強みである知的財産や無形資産を把握した上で、具体的な事業計画などを貸し手に提出することが求められると考えられます。

 一方、貸し手は、借り手企業における現在の無形資産に関する開示情報を基に合理性を判断し、その将来性を含めて評価して、融資が実行されることになります。この際の融資条件として、融資前に解雇や労働条件の引下げなどを求めるといったことも懸念されます。

 こうしたことから、働く者が安心して働き続けられるよう、担保権者が行うべきでない指導や助言などについて下位法令等で明確に規定するなど、実効性の高い担保権者等に対する規律づけが非常に重要であると考えます。

 二点目は、借り手が債務不履行に陥り、担保権が実行される場合における換価の方法についてです。

 法案では、換価は事業譲渡によってするとされております。企業価値担保権は総財産を目的として設定されるものであり、その制度趣旨からしても、実行の場面において、事業の一体的な換価を原則とすることは当然です。このことは、金融庁の事業性融資ワーキンググループの報告書にも、「事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを原則とする」と明記いただいております。

 しかし、法案では一体的な換価を原則とすることが必ずしも明確になっておらず、実態として個別財産の換価がたやすく認められることになるのではないかとの大きな懸念を抱いております。

 通常の事業譲渡においても、例えば、一部の労働者の労働契約が承継されないまま譲渡元の不採算部門に取り残され、場合によっては解雇に追い込まれるなどの大きな不利益を被るといった事案も決して少なくないという現状がございます。企業価値担保権を活用した場合も、そうした事案が数多く生じることがないよう、一体的な換価を原則とすることを制度的にも明文化した上で、広く周知する必要があると考えます。

 また、他方の個別換価については、やむを得ない事由がある場合に限るといったような実体的な要件を設け、あくまでも事業の譲渡が困難である場合における例外であることを明確にすることが重要です。

 この点については、管財人が裁判所に許可を申し立てる際に、個別換価をせざるを得ない理由や労働組合等との協議状況などの記載を求める様式を示すといった対応を検討いただきたいと考えます。

 三点目は、労働者や労働組合の理解と協力を得るための手続関与の保障についてです。

 まず、設定時については、法案では、企業価値担保権を設定する場面において、担保目的財産に含まれる労働契約の当事者である労働者が関与できる手続は全く設けられておりません。事業の継続、発展を進めていく上で最も重要なステークホルダーである労働者に対して、担保権が設定されたことを勤め先から全く知らされないまま、後になって、商業登記簿の閲覧や担保権者による経営改善支援、また取引先などを通じて知った場合には、企業への信頼が大きく毀損しかねません。

 企業価値担保権の活用や将来の事業活動などについて労働者の理解と協力を得るためには、使用者からの事前の説明と誠実な労使協議を積み重ねる必要があります。こうしたことを踏まえますと、担保権設定時についても、労働者や労働組合等への事前の通知を努力義務で規定するなど、労使協議等を促進することが重要だと考えます。

 次に、実行時ですが、実行時については、法案の中でも設定時より労働者保護ルールが整備されていると受け止めております。しかし、これらは、実行手続に向けて対応の方向性が一定程度定まった段階における手続保障です。労働者保護の実効性を高めるためには、更に前段階での通知や労働組合等との協議が行われるべきと考えます。

 実行が検討される場面は、企業経営が行き詰まりを見せ、労働者としても雇用や労働条件に対する将来的な不安感が高まっているケースだと思われます。こうした場面において、早期に労働者や労働組合等との協議を行うことは、この先どうなってしまうのか分からないという先行きに対する不透明感の払拭や事業の継続に対する貢献にもつながるものと考えます。

 こうした実行前の労使協議については、担保権が実行手続開始決定の申立てをしようとする場合に、労働組合等との協議状況などの記載を求める様式を示すといった対応を検討いただきたいと考えます。

 四点目は、カーブアウトの部分の水準についてです。

 本法案の実行手続における共益債権等の随時弁済や事業の継続等に必要な債権の許可弁済の規定については、労働債権者を含む一般債権者保護につながるものと考えております。

 その上で、今回、カーブアウトを設けるとされておりますが、法案では、カーブアウトについて、実行手続終結後の手続を公正に実施するために必要な額と規定するにとどまり、具体的な額は政令に委任されています。

 実際に組入れがなされるのは、破産や清算手続に至った場面ですが、その際の労働債権者や商取引債権者などの一般債権者等の全体の弁済に充てられるものであることからすると、労働債権を始めとして必要な弁済が得られるかどうかは、カーブアウトの水準をどのように定めるかに大きく委ねられています。

 金融庁におかれては、一般債権者の保護をより強く図るとの趣旨が損なわれることがないよう、具体的な根拠を基に丁寧に検討いただくことを要望いたします。

 五点目として、労働者保護に関わる課題について申し上げます。

 企業価値担保権に限らず、ほかの担保権についても、従前より、倒産時等に労働債権が十分に確保できないとの課題があり、私たちは、労働債権の優先順位を更に引き上げることや、一部について別除権に優先させる制度を創設することを求めております。

 また、事業譲渡などの事業再編については、連合の加盟組合からも、労働者の雇用や労働条件にマイナスの影響が及ぶ事案が寄せられています。連合は、事業組織の再編における労働者保護に関する法律案要綱の考え方を確認し、あらゆる事業再編において、労働契約の承継や労働組合等への事前の情報提供や協議の義務づけの法制化を求めてきています。こうした法整備については、加盟組合からも実現を求める声が高まっています。

 しかし、倒産や事業再編時における労働者保護に向けた法整備は、残念ながら停滞しております。事業再編を行いやすくする法整備が進められていることや、倒産やMアンドAの件数が右肩上がりで増加していることからすれば、政府全体として、労働債権や事業再編時の労働者保護ルールについて真正面から議論していただく時期に来ているということを強く申し上げたいと思います。

 その上で、今回の法案に関しまして、二点申し上げたいと思います。

 一点目は、本法案と労働関係法令との関係についてです。

 担保権者や貸し手が労組法上の使用者に該当する場合があることのほか、事業譲渡がなされた場合における労働協約の取扱い、労働条件の変更、労働契約法十六条との関係などについて、考え方を整理し、明文化した上で、関係者に周知徹底を図ることが必要と考えております。

 その際、厚生労働省の事業譲渡等指針が参考になると思われますが、金融庁と厚生労働省との連携の下で、企業価値担保権の特殊性を踏まえた修正などを行っていただくこと、さらに、事業譲渡等指針の内容の更なる充実を図った上で、法令に格上げすることの具体的な検討にも着手いただくことを強く要望いたします。

 二点目として、事業性融資推進本部の本部員について申し上げます。

 今ほど申し上げたとおり、労働関係法令との関係は、今後の制度運用上も重要な課題であり続けます。本法案の中では、本部員として厚生労働大臣が条文上明記されておりません。必要な労働者保護がしっかりと図れるよう、厚生労働大臣も当初から継続して本部員に指定していくことが重要と考えます。

 最後になりますが、企業価値担保権のように労働契約が担保目的となることは、誰もがこれまで全く経験していないことであり、そのことだけを取りましても、労働者の不安や懸念は大きいものがあると考えております。本法案の検討に当たりましては、労働者や労働組合が事業活動の重要なステークホルダーであることを踏まえて、そうした思いの部分を含めて、労働者保護の観点から慎重な審議を行っていただきますようお願い申し上げます。

 以上で、私の意見陳述を終わります。御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

津島委員長 ありがとうございました。

 次に、馬渕参考人にお願いいたします。

馬渕参考人 おはようございます。経済アナリストの馬渕磨理子です。

 今日は、参考人としてお招きくださいまして、本当にありがとうございます。

 私自身は、年間百五十社以上のトップ企業、トップ経営者と取材をするということと、また、自身が昨年乳がんを患うまでは、地方に足しげく足を運び、年間百回ほど地方の中小企業の方々と交流を深める、そういう活動をしてまいりました。

 そうした中で、本日は、日本の現下の金融経済情勢と、事業性融資の活用について申し上げます。

 今、デフレからは脱却しつつある時期に、この本国会で事業性融資の推進に関する法案の議論が進んでいること、この時期が重なっていることに意味があると感じています。また、法案にも、国の責務として進めていくというこの文言に対しても、非常に力強いものを感じております。

 そこで、改めてデフレの正体、これは何なのか、失われた三十年の現状を数字で確認する必要があると思いますし、それが本法案を議論する上での本質上の問いになると考えています。

 デフレの正体は、貨幣愛だと結論づけることができます。それが、賃金、物価、金利の上昇は起きないと思う固定概念、つまりノルムにつながり、人よりも現金に価値を置いてきた時代、これがデフレの時代です。

 三ページ目にございますアメリカの状況、直近三十年までのデータをこちらにお示ししていますが、アメリカ経済というのは、名目GDPの方が実質GDPよりも大きく、毎年物価が上昇する、その結果、賃金も上昇してきた国です。一方、日本はアメリカとは真逆で、実質GDPの方が名目GDPよりも大きく、毎年値下げが起きる社会でした。そうしますと、利ざやが小さい企業は賃上げなどができない状況が続いています。

 また、一番右側の法人企業統計ですけれども、バブル崩壊からの三十年間というのは、企業の売上げは一千五百兆円で停滞しています。その中から賃金を払うわけですが、賃金も百五十兆円で横ばいです。一方、実は稼ぐ力は高まっていて、経常利益はバブルの絶頂期から一旦半減しますが、現在は右肩上がりで、九十五兆円まで増加しています。その三分の一に当たるものを配当に分配していて、現在、三十兆円のお金を配当に回しています。

 そして、右側の青いデータですけれども、これが現金の推移です。つまり、企業は稼ぐ力が高まったんだけれども、有望な成長投資先を見つけることができずに、現金を積み上げ、現在は二百九十兆円に積み上がっている状況です。これは、何かあったときに身を守れるものは現金だという貨幣愛が詰まっていった、高まっていった、こういった背景があると思います。

 ですので、粘着質なデフレ構造を、日本を変える場合には、それ相応のかなりのエネルギーが必要だと思っています。ですので、インフレも厄介なんですけれども、デフレへの処方箋の方が難解ではないかというふうに思います。

 続いて、四ページ目を御覧ください。

 デフレから脱却するために、金融緩和で、株式市場自体は過去の景色を塗り替えることができました。ただ、過去のバブル期との違いは、一九八九年台の日経平均の投資家の期待値は七十倍でした。つまり、コップにビールを注いだ場合、泡だらけだった時期がバブル期です。しかし、現在の日経平均の期待値は十六倍から十七倍、つまり、泡の割合は非常に薄いわけです。これは、中身が変わってきたというふうに理解することができます。

 では、五ページ目を御覧ください。何が変わったのか。

 これはアベノミクス以降の株価推移ですが、株価というものは、一株当たり利益掛ける投資家の期待値で決まります。そうしますと、アベノミクスがスタートした時期、日経平均の一株当たり利益は七百円、それに期待値が十五倍、掛け算されて一万円水準でした。そこから、二〇二四年は、一株当たり利益が二千二百円まで拡大し、期待値は十七倍、つまり、稼ぐ力は三倍ほどに拡大しています。こちらは、先ほどの法人企業統計で経常利益が拡大していることと重なると思います。

 ですので、我々は、過去のバブルと比較して物事を判断するのではなく、もう今の基準で生きていて、異なる基準でバブル期の高値を更新したということです。見るべきは未来、将来性だと思います。事業性融資というものは、未来を見る法案だというふうに感じております。

 続いて、六ページ目を御覧ください。

 未来のコミュニケーションの在り方として、アメリカの中央銀行、FRBと日銀のコミュニケーションを比較したいと思います。

 本法案では、経営者が金融機関に対して事業性の説明や密なコミュニケーションが求められるという法案になっていますけれども、例えばアメリカの中央銀行も国民に対して熱心にコミュニケーションを取っています。FRBの考えるアメリカの潜在成長率は一・八%であり、物価目標は二%を目指し、そして将来的には金利は二・六%にしたい、こういうふうなメッセージを、国全体が向かう方向性を国民全体に共有しているのがアメリカのFRBです。

 日本はこれまで、二番目のインフレ目標だけは長らく掲げてきましたが、潜在成長率や金利の水準については、もちろん言及できないほどに低かったわけです。しかし、植田日銀総裁が日本の潜在成長率を〇・七%程度だというふうに明言したことから始まり、そこからいかに二%を目指すのか、さらには、三月にはマイナス金利を解除し、金利を〇・一%というふうに移行しました。

 ですので、日本も、アメリカほどではないものの、日本の向かう方向性をようやく中央銀行としても明示できるような環境になってきた。これもデフレからの転換の兆しだというふうに感じております。

 では、七ページ目を御覧ください。

 そうしますと、日銀が今後、短期金利をどこまで引き上げるのかというところが論点になります。

 まだ、日銀としては、緩和的な状況が必要な経済環境だとおっしゃっていますが、何をもって緩和的なのかということなんですね。

 ここは、本来は、この図にお示ししましたとおり、中立金利、景気を冷やしもふかしもしない中立的な金利を議論するべきところなんですが、なかなかこの水準は、今、現段階でも専門家の中でも幅が広く言及できないというふうに話されています。

 そこで、日本の潜在成長率から短期金利の見通しを推測することができます。つまり、現在、日本の潜在成長率がおよそ〇・七%程度であるならば、それ以下の短期金利の水準であれば緩和的な状況と整理することができます。つまり、今現在〇・一%の金利が、〇・五%ぐらいまでは引き上げる可能性が十分にあり得るということになります。

 ここからは、事業性融資の活用について申し上げます。十ページを御覧ください。

 事業性融資は、不動産担保や経営者保証等によらず、事業の実態や将来性、無形資産を評価して融資を行うものです。

 こちらは内閣官房の資料を引用させていただきましたが、時価総額に占める無形資産の割合は、アメリカを代表するSP五〇〇は九〇%を占め、日経二二五は三二%と、明らかにこちらは差があります。これは、企業の競争優位を支え、イノベーションを生み出す根本的な要素である研究開発や人材、こういったところに重きを置いてこなかった日本経済の実態があるというふうに考えております。

 そして、次に、十一ページ目ですが、ここまで、いかに回収するか、労働者保護の観点については議論されてきましたので、私からは、マクロ環境から見た事業性融資の意義を申し上げます。

 メインバンクがはっきりしないケースが数多く見られますが、事業性融資によってメインバンクを明確化することで、迅速に経営改善と支援が可能になると考えます。

 また、企業価値というものは、金融機関のサポートで、実は減少したり増加もするわけです。能動的に支援することで、本来の貸し手と借り手の関係を再構築することに寄与する法案だと考えております。

 また、事業性融資を通じて、目利き力の醸成、こちらは金融機関の自社内にノウハウをもう一度積み上げていくこと。これが、地域経済、それから事業者の成長につながりますし、また、金融機関の収益力強化にもつながると感じています。

 さらに、審査能力に関しては、こちらは事例を積み重ねることで精度が高まることが想定されますが、例えば、VCやコンサル、また非財務情報の調査を行うリスク審査企業の助言も有効だと考えています。

 事業性融資は、審査時点に、これまでは有形資産を評価する、つまり、現金化ができるであろうというものを非常に重視した偏重型の貨幣愛、こうした日本経済の脱却につながるような法案だと思い、ある意味、日本のノルムを変えていく可能性があるというふうに希望を感じております。

 続いて、十二ページ目を御覧ください。

 本法案が成立した場合に、普及のポイントになるであろう点を御提案申し上げます。

 今回の事業性融資の活用想定のメインは、一つ目、スタートアップ、成長力のある企業、そして二つ目は中小企業の事業承継、さらには三つ目が事業再生なんですが、これに加えて、サテライト活用として、四つ目のゾーンであります上場新興企業の買収資金のファイナンス活用を提案したいと思います。

 実は、上場後に、時価総額が小さく行き詰まっている企業は数多く、これは日本の大きな社会課題の一つでありますが、まだ誰も手をつけていない現状があります。例えば、上場後に、ほかの企業から買収されたいが、しかし、キャッシュフローの回収能力から非常に慎重に判断されるケースが多いわけです。なので、MAの対象として、上場後の小型企業にこういったものを適用していく場合には非常に意味があるというふうな声も現場から聞いております。

 ですので、上場新興市場というのは、そもそも与信がありますし、金融機関とのリレーションであるとか財務情報の開示、四半期開示も行っておりますので、この辺りはモニタリングコストが低い企業ゾーンだというふうに理解することができますし、今、人的資本や非財務情報の開示もどんどん進めている企業ゾーンであります。

 ですので、ここが、もちろんメインの利活用ではないとは理解していますが、サテライトとして同制度の活用事例を増やしていくような観点から考察の余地があるのではないでしょうか。

 最後は、審査機能のサポートが可能な分野について申し上げます。

 融資とはリスクを取る程度は確かに異なるものの、エクイティー側の目利きや審査を参考にできると思います。VCや株式投資型クラウドファンディングという会社は、社内に審査機能があり、ノウハウが既に蓄積されています。

 また、売り掛け債権保証業とのデータ連携です。

 売り掛け債権保証というのは、売掛金の支払いを保証するものですので、取引先が倒産、支払いが行われなかった場合に、保証会社が支払いを行います。そうした場合、売り掛け債権を保証する企業としては、財務データに反映される前段階の動的データを、営業員を全国に配置し情報を収集していて、リスクを事前に把握するような業態です。ですので、取引情報であるとか何らかの遅延の情報、こういった情報に加えて、経営者の資質などモニタリングコストの部分を既に本業で行っていますので、金融機関の審査機能に寄与が可能だと考えています。

 このように、本業で既にそのものを回していくために、非財務情報であるとか動的データを把握しているような企業との連携は、モニタリングコストを下げる点から有用性が高いというふうに考えております。

 私からは以上となります。ありがとうございました。(拍手)

津島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

津島委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田美樹君。

山田(美)委員 おはようございます。自由民主党の山田美樹です。

 参考人の皆様におかれましては、本日、国会まで御足労いただき、そしてまた、貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げます。

 私からは、井上参考人に法制度について、そして、福留参考人に融資実務について質問をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 最初に、井上参考人にお伺いいたします。

 配付資料の六ページにもありましたとおり、企業価値担保権の議論は、金融審議会だけでなく、法制審議会など様々な場において行われてまいりました。井上参考人は、金融審議会、法制審議会の委員でもいらっしゃり、また、法制審議会よりも前の、二〇一九年の商事法務における研究会ですとか、中小企業庁の研究会の委員もお務めでいらっしゃったかと思います。

 これまでの間を振り返られまして、議論に長い時間がかかった背景にはどのようなハードルがあったのか、そしてまた、弁護士のお立場から見て、多様な関係者との間で十分な議論がされてきたとお考えでおられますでしょうか、お伺いします。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 一つ目の御質問で、どういう難しさがあったかということでございますが、担保制度というのは、債務者の責任財産の中でどの部分を特定の資金供給者に優先して提供するかという問題でございますが、それは裏を返せば、それ以外の債権者あるいは利害関係人にどの部分を残せるのかという問題でもありまして、その意味で、担保の設計においては取り合いの問題が避けられません。なので、私、先ほど申し上げたように、ウィン・ウィンの関係をどうつくるかというのが重要だというのは、その裏の問題として、どうしても、どこかを立たせるとどこかが泣くということになりがちなので、どういう形で線を引き、どういう利害関係を調整するのかというところに難しさがあったように思います。

 そのために、いろいろ時間をかけて議論してきたわけですけれども、どの程度議論すれば十分かというのは、なかなかこれは一概には言えませんが、先ほど御説明申し上げたように、この事業性担保については相応に、何度かの議論を、それも幾つかのフォーラムで重ねてきているというような経緯がございますので、かなり議論としては熟してきているのかなというふうに考えております。

 以上です。

山田(美)委員 ありがとうございます。多年の御尽力に感謝を申し上げます。

 そしてまた、今回の法整備に当たって、特に労働関係について、金融審議会において相当な議論がなされてきたと伺っております。労働団体さんの方からは、総財産を担保の目的にすることによって、労働者の権利が制約されるのではないかといった懸念の声があったということについては御説明をいただいたとおりですけれども、企業価値担保権の設定の際に労働組合への説明を求めるべきといった要望も寄せられていますが、これは、類似の制度との整合性などから見て、どのような対応が適切だとお考えでしょうか。

井上参考人 ありがとうございます。

 経営陣と労働者の間のコミュニケーションをよくするというのは、一般論として非常に重要なことだと考えています。ただ、この企業価値担保の設定というのは、先ほども申し上げましたけれども、それによって事業の制約を受けないという点と同様に、労働者との関係も特段変化が生じないというものでございまして、最終的には事業譲渡という形で労働者が別の会社に事業とともに移転させられるという面はなくはないんですが、それはむしろ、逆に言えば、重要な財産だけを担保に入れた場合と比べますと、重要な財産を労働者から切り離してどんどん切り売りされてしまう担保設定との比較では、むしろ私は労働者フレンドリーな制度ではないかと思っておりますので、一般論として、重要な財産に担保をつけるときに、労働者に対する情報提供あるいは通知というのは義務化はされておらず、その点では一般のコミュニケーションに委ねられるということからしますと、その比較で、この担保についてだけ何か特別な義務を課すという必要はないのではないかというふうには考えております。

山田(美)委員 御説明ありがとうございます。

 雇用契約上の雇用主の地位も担保の対象になる方が、事業から切り離されずに済むため、雇用が守られやすいということも確かにあろうかと思います。いずれにせよ、制度の趣旨ですとか類似の制度との整合性などについて、誤解のないように丁寧に周知をしていくことが重要だと感じております。

 続いて、井上参考人にまた引き続き御質問いたします。

 企業価値担保権の担保適格性について、先ほど資料の中でも御説明がございました。企業価値担保権は企業価値を担保とするものであって、不動産のように債務者が破綻しても価値が変わらない財産とは異なるため、債務者が破綻状態に陥り、担保権が実行される場合に、その価値はもう既に失われているということで、担保として機能しないのではないかというような声が寄せられているというお話がございました。

 先ほどの説明の中では、これは十二ページに、百残っているが借入金が百五十あるというような状況ということで御説明をいただきましたけれども、例えばスポンサー型の私的整理や民事再生、会社更生、債務者破綻時のときなどと比べてというような形で、またもう一段深く御説明をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、現在、通常、私的整理あるいは民事再生などで事業再生型の手続が行われているのと非常に近い部分があるのではないかと考えておりまして、いわば、実質破綻をしても、そういった手続で現在もよみがえる企業というのがございます。

 ということは、やはり、かなりの割合で事業価値が完全にゼロになっていない、借入金をきちんと取り分けて事業をスポンサーに譲渡すれば、なお価値がよみがえって、その対価というのを、倒産手続であれば極力平等弁済に充てるということですが、担保制度として、一定の穴を空けるにしても、担保権者がほかの金融債権者との関係では優位性を持って担保を取るということで機能するという場面があるのではないかというふうに先ほど申し上げたところでございます。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 恐らく、時間的に次が井上参考人に最後の御質問になるかと思いますが、企業価値担保権の活用促進に向けた課題についてお伺いをいたします。

 中小企業を始めとするビジネスサイドからの要請としましては、企業全体に対して担保権を設定するだけではなくて、事業単位で担保権を設定することができないか、そういうことが可能になればやりやすいんだけれどもというような御意見もあったというふうに伺っております。

 今般の法案では、第三者保護の観点から、対抗要件を商業登記簿への登記としており、事業単位での担保権を設定するには分社化しなければいけないというような制度設計になっておりますけれども、こうした中小企業からのニーズに何らかの方法で将来的に対応が可能かどうか、お伺いをいたします。

井上参考人 ありがとうございます。

 この点も随分議論した記憶がございますけれども、ニーズはあるかなとも思いますが、他方で、今まさに御指摘のように、対抗要件をどう備えるかとか、事業だけを単位にするとなかなか難しいところがほかにもございます。

 現に、日本で倒産手続というのは、事業ごとには設けられておりません。その意味では、事業ごとに法人の中で切り分けて、様々なコストを優先劣後の関係に分けていくというのは容易なことではございませんので、なかなかすぐには難しい、非常に複雑な制度になりかねないと考えてはおります。

 ただ、検討の余地はあろうかと思いますので、是非将来の課題としたいと思っております。よろしくお願いいたします。

山田(美)委員 井上参考人への御質問は以上でございます。ありがとうございます。

 続きまして、福留参考人に融資実務の観点から質問をさせていただきます。

 まずは、新制度の活用の見込みについてお伺いをします。

 米国、イギリスなどでは、かねてより研究開発や知的財産、データなどの無形資産への投資拡大を国家戦略として支援をしておって、無形資産投資が有形資産投資を上回ってきたという現実がございましたが、日本では依然として不動産担保、経営者保証に頼った融資が主流であろうかと思います。

 今般の法案に盛り込まれましたこの企業価値担保権は、企業の無形資産に光を当てるということで、これまでにない画期的な制度でありまして、きらりと光るアイデアですとかノウハウを持つ事業者にとっては新たな資金調達の道が開かれるということで、期待をしている向きも非常に多いかと思います。

 銀行業界として、企業価値担保権の活用の見込みをどのように御覧になっているでしょうか。また、業界として積極的に活用しようという御予定はありますでしょうか。お伺いします。

福留参考人 御質問ありがとうございます。

 ちょっと冒頭申し上げたこととかぶりますけれども、銀行界としては、この制度は、事業者と金融機関双方にとって、資金の調達、供給手段の選択肢を広げるものとして大変有意義な制度だというふうに考えております。

 これまでも、私どもの経営者保証ガイドラインに基づいて、経営者保証に依存しない事業性融資、一生懸命取り組んでまいりましたけれども、これを、今回の制度を活用することで、先ほど申しましたが、スタートアップのように、将来は有望で、事業は有望でも、財務基盤が未確立であったり、まだ脆弱であったりというところにも、これまでは無担保無保証では御融資が難しかった事業者に対して積極的に活用ができるような可能性が広がるということを期待しております。

 以上でございます。

山田(美)委員 具体的にどのぐらいのスピード感といいますか、どのぐらいの規模でこの活用が進んでいくというふうに見通しを持っておられますでしょうか。

福留参考人 やはり、先ほども申しましたけれども、どうやって担保を見るとか、どうやって評価するか、どうやって管理するかということを全部含めますと、やはり金融機関によっては、その対応能力は現時点ではまちまちだと思います。

 なので、例えばメガバンクとか大手地銀さんはすぐに対応できるかもしれませんけれども、金融機関によっては、最初から体制を整えなきゃいけなかったり、人材を育てたり、あるいは育成したり、あるいは採用するということから始めなければいけませんので、具体的にどのくらいのスピードというのは申し上げられませんが、まちまちで、金融機関によっては相応の時間がかかるということも考えられるというふうには思っております。

山田(美)委員 非常に誠実なお答え、ありがとうございます。

 次に、新制度のメリットと金融機関の支援の内容についてお伺いをいたします。

 先ほど、御意見の陳述の中で、企業価値担保権の活用が期待される場面として、スタートアップと事業承継を例として挙げられました。スタートアップについては、新制度によってエクイティー以外の資金調達の道が開かれるということは極めて重要だと思いますし、また、事業承継では、親族外承継が増加している中で、経営者保証によらない承継資金の調達を期待する声は本当に大きいと伺っております。

 こうしたケースで、銀行を始めとする金融機関は、借り手である事業者に対して伴走支援それから経営改善支援などを強化されると予想されますけれども、具体的にはどのような支援を行っていくつもりでいらっしゃるか、お伺いします。

福留参考人 御質問ありがとうございます。

 これも繰り返しになっちゃいますけれども、具体的に想定される事業者としては、スタートアップのように、先行投資を積極的に行う一方で有形資産に乏しいケースが多く、このような担保権を設定することによって、事業の優位性や成長性を適切に融資判断に織り込めるようになることが期待されています。

 あとは、この担保を活用することで、例えば、思い切った事業展開や事業承継を後押しする場面においても、経営者保証をいただかなくて済むケースがございます。そういうケースが増えていくのではないかというふうに思っています。

 あと、具体的な伴走支援の内容につきましては、金融面のサポートはもちろんのことですけれども、例えばコンサルティングですとか、業容拡大に向けたビジネスマッチングですね、お客様同士を紹介する、あるいは人材の紹介、あるいはDXの導入支援など、非金融サービスも含めて、これは会員各行が創意工夫の上、提供していくものというふうに考えております。

山田(美)委員 かなり具体的にいろいろと御説明くださり、ありがとうございます。

 やはり、新制度普及に当たって、融資をする側、される側の双方に、どのような場合にどの程度の規模感で資金調達していただけるのかというような、この具体的なイメージを示していくことが重要だと思いますので、是非そうした観点から新制度の周知を進めて、成功事例を積み上げていっていただければと思います。

 そして、御説明の中にもありました目利き力についてお伺いをしたいんですけれども、現状で、企業価値を適切に評価するための目利き力が銀行界にどの程度あるというふうにお考えかをお伺いしたいと思います。

 先ほど、各金融機関さんによって取組状況はまちまちだというお話もございましたけれども、既に取組を行っていらっしゃる方のところでどのようなことをやっていらっしゃるか、個別行の取組でも構いませんので、御紹介いただければと思います。いかがでしょうか。

福留参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、先ほど馬渕参考人の資料にも同じものがあったんですけれども、目利き力というのは金融仲介機能の源泉でございますので、そもそも、私ども、一生懸命これを磨き上げる努力をしてまいりました。例えば、地域金融機関においても、地域密着型のビジネスの特性を生かして、独自の、お客様と深い関係を構築することで目利き力を高めてきたものというふうに認識しております。

 現時点で、先ほども申し上げましたように、リソースあるいは知見がまちまちで、業界全体としてみんなが目利き力を有しているかどうかは一概に言えませんけれども、一つは、本法案に織り込まれております認定事業性融資推進支援機関を活用して、時間はかかるかもしれませんが、体制整備に取り組んでいく必要があると思っています。

 具体的な目利き力強化の取組については、例えば三井住友銀行では、まず、若手行員に向けた融資に関する体系的な研修制度を整えておりまして、営業店担当者の能力向上に長期的に努めております。それに加えまして、例えばスタートアップとか事業再生とかLBOなど、様々な分野に対応した専門の部隊を、これは特化した専門部隊を本部に配置しておりまして、彼らが営業店をサポートすることで銀行全体の組織として目利き力を発揮できる、そういう体制を整えております。

 もう一つ、目利き力を向上させるためには、このような継続的な努力も必要ですけれども、一番重要なのはお客様とのコミュニケーションをしっかり取ることで、例えば営業現場に出向くとか工場に足を運ぶとか、そういうことでお客様のことをよく知って、そして、お客様のために何ができるかということを考え抜くということが一番大事だと思っています。

 私、トヨタ自動車に在籍していたことがございます。そこで学んだことでもございますけれども、銀行員にとってもまさに現地現物が一番大事である、それが目利き力につながるというふうにも考えております。

 以上でございます。

山田(美)委員 非常に含蓄深いお言葉をいただきました。ありがとうございます。

 時間的に最後の質問になろうかと思います。

 企業価値担保権、総財産を担保に取る非常に強大な権利であるため、その貸し手が企業にリストラを迫るようなことが起きないかといったような不安の声もお伺いしたりしております。

 先ほど井上参考人の方から、こうした貸し手の権利が強くなり過ぎないために、設定者の経営の自由度を確保するために、例えば停止条件付の経営者保証ですとか、極度額設定請求権ですとか、設定者による元本確定請求など、制度上の仕組みというところについては御説明をいただきましたけれども、併せて、銀行さんの立場から、貸し手としての優越的地位を濫用するおそれがないかどうかというところをお伺いできればと思います。

福留参考人 ありがとうございます。

 御懸念の点としては、こうした本制度の趣旨から外れて、担保を設定していることを背景に、与信者が、銀行側が事業者に対して無理なリストラを迫るというような、優越的な地位の濫用を行うのではないかということだと思います。

 しかしながら、これは本担保に限定された話ではなくて、優越的地位の濫用というのは、これまでも、各金融機関においては、基本的な考え方の浸透、そして行内ルールの整備を進め、その防止に努めてきているものと理解しております。

 銀行としても、引き続き優越的地位の濫用防止に向けた取組を徹底していくとともに、本担保制度がその趣旨に沿って適切に適用されるように、あるいは運用されるように、業界内での周知と啓発に全銀協としても取り組んでまいります。

 以上でございます。

山田(美)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。

 四名の参考人の皆様におきましては、大変御多用のところ、今日は貴重なお話をお伺いしまして、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。私は四名の先生方それぞれお伺いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 私は、議員になる前に、前職は地方銀行に十八年勤務しておりました。そのうちの半分は融資実務をさせていただいたわけですが、今思い返してみますと、融資先の企業は様々でございまして、中小企業の経営者の皆様、様々な考え方、また手法で会社を経営されておりまして、経営者の経営方針ですとか、またリスクへの考え方、社会、経済、こういった捉え方もそれぞれの経営者によっては様々でございまして、経営者の考えですとか、また会社の将来を判断するのは非常に大変だったということを今思い返しております。その中では、成長する企業、また残念ながら軌道に乗れない企業など見てまいった次第でございます。

 その中で融資先からよくお伺いした声ですけれども、それは経営者保証をなくしてほしいという、この声は非常に多く聞かれたところでございます。仮に会社が倒産したときに個人財産がなくなってしまうですとか、また、数年間は自分で会社を新たに起こすこともできない、こんな話もお伺いしたところであります。

 今回、この日本の融資における経営者保証の慣行を改善するための推進法となりますけれども、私は、融資を実行する現場にいた人間の一人として、肌感覚で、この法案は非常に大事な法案だと認識をしております。

 そこで、幾つか御意見をお伺いさせていただきたいと思いますが、私は、大企業をイメージしてお話しするというよりも、むしろ中小企業をイメージしながらお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、経営者保証に依存しない融資がこれまで進んでこなかった理由につきまして、馬渕参考人、福留参考人からそれぞれお伺いさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほど福留参考人からも御提示いただきましたけれども、経営者保証に依存しない新規融資の割合ですが、二〇一四年度と直近の二〇二三年度の比較で、政府系金融機関の平均で一九%から約六一%、民間金融機関平均で一二%から約四七%と、徐々に伸びてきてはおりますけれども、これまで経営者保証に依存しない融資が伸び悩んできた理由につきまして、経営者側からの視点、また貸し手の金融機関からの視点、両方からそれぞれ御意見をお伺いさせていただきたいと思います。経営者側の視点といたしましては馬渕参考人からお伺いをさせていただきたいと思いますし、金融機関からの視点につきましては福留参考人からお伺いをさせていただきたいと思います。

馬渕参考人 ありがとうございます。

 経営者保証をしない形での融資の普及がなかなか進まなかったというところですけれども、やはり、中小企業の経営者の方々に地方に赴いてたくさんお会いしますと、そもそもファイナンスの知識を余り御存じでないケースが多いので、経営者保証が当たり前だと思っていらっしゃる方が非常に多いという現状があります。なので、この辺りは、やはり普及活動を含めてやっていく必要性があるということ。

 それから、一点、経営者保証が当たり前であるという社会的風土なんですが、ある意味、失敗を許さない社会だというふうに思っています。つまり、一度失敗したら立ち上がることができない、失敗した者は再度回帰することができない、そういう風土が日本にはあると思います。

 一方、アメリカに目を移しますと、何度もスタートアップで失敗したとしてもチャレンジし直すような経営者が多い中で、日本の風土というものも色濃く反映されているように思います。

福留参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、政府系金融機関と比べれば民間の全体の割合が低くなっていますが、取組は着実に進められているというふうに認識をしております。

 繰り返しになりますけれども、二〇一三年の十二月には、日本商工会議所とともに、経営者保証に関するガイドラインを公表しています。二〇二二年の十二月には、政府が公表した経営者保証改革プログラムを受けまして、ガイドラインの運用徹底を改めて図りまして、その結果、二〇二二年度から一三ポイント割合が上昇して、これは過去最大の伸びというふうになっています。

 一方、お客様の個別に見ると、この経営者ガイドラインで定めました三要件、法人と経営者の関係の明確な分離、区分。もう一つが財務基盤の強化、これがやはりしっかりしていないとということですね。あとは、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保、ちゃんと会社の中身を教えてくださいと。この三つの要件が充足していないと、やはり経営者保証の解除が簡単ではないケース、あるいは何か担保をいただくというケースがどうしても、多分お分かりになると思いますけれども、ございます。

 もちろん、銀行界としては、丁寧な会話をお客様と重ねながら、解除に向けた支援を何とかしていくとともに、今回審議されております企業価値担保権も新たな選択肢となりますので、これを有効に活用しながら、引き続き、おっしゃるとおり、経営者保証に依存しない融資の推進に取り組んでまいります。

中川(宏)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、経営者側から憂慮される点につきまして、井上参考人と村上参考人にそれぞれお伺いさせていただきたいと思います。

 金融機関としては、融資金の回収において、実態でいきますと、取り損ねが出ない範囲で融資する感覚があるのは事実だと思っております。私も実務でそうでありました。不動産の担保、また経営者保証、また保証協会の融資など、そういったことで保全をしてきたということでございます。

 今回、経営者保証に依存しない融資が進む前に企業価値担保権を設定して融資をしていく、こういう流れであると思いますが、事業者側からいたしますと、この企業価値担保権で会社経営にどのような影響が出るのかということを一番心配するのかな、こういうふうに思っております。

 井上参考人からは、先ほど御説明いただいた中で、よくある疑問ということで先ほど例示をしていただきましたけれども、仮に会社経営への影響がある場合に、経営者が一番懸念される点はどういうような点であるのかということを、井上参考人、村上参考人、それぞれから御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたように、担保制度というのは、利害関係人の利益をどのように調整するのかというのが非常に重要で、担保権者の力と、それから、債務者の事業の自由といいますか、経営権といったもののバランスの取り方も非常に難しいところで、新しい制度を設けようとすると不安があるというのもよく分かります。

 ただ、先ほど少し触れましたが、経営権にどの程度口出しされるのかということについて、全く何も制約を感じないということで果たして事業性融資の対話ができるかというと、なかなかそういうわけにもいきませんので、不動産の担保を取っているから、別に放っておいても、いざとなったら売れば回収できるよという融資と違って、より対話が必要になろうというふうには思います。それを面倒くさい、うっとうしいと思う債務者もいるかもしれませんが、それはむしろ、あえて対話を受け入れて、事業の改善に努めていただくという方向になっていけばいいなというふうに思っております。

 今回、参考資料として、私の配付資料の十四ページに、米英の全資産担保の実務のフローみたいなものの図を、これはある研究会の資料から抜き出してまいりましたが、こういった形で早め早めに対話を開始して、債務者も金融機関と話をしながら、そして、その中に弊害が出てくるような、いわば金融機関が優越的地位を濫用していろいろ口出しをするというようなことについては、別途、独禁法上、あるいは金融規制法上の優越的地位の濫用のルールでもって対応していく、しかし、対話はむしろ促進していく、こういった方向ではないかというふうに考えております。

村上参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 やはり心配な点としましては、恐らく伴走支援といったものがどのような内容なのかということかと思います。先ほど申し上げましたけれども、伴走支援という中で必要な支援をしていただくということは十分にあり得るとは思っておりますが、一方で、先ほども少し申し上げましたが、人員整理を求められるですとか、事業の転換で一部の事業について廃止をするといったようなことについて強く求められるといったようなことも心配があるのではないかと思われますので、そういったことからも、伴走支援とは何なのかということを、やはり一定程度の幅の中で明らかにしていただくことは必要かと思っております。

 また、企業価値をどのように測るのかということについて、金融機関側でも様々な指標を用いて測ってはいくわけですけれども、それが借り手側にもきちんと共有されて、コンセンサスが得られるのかというところも懸念というか心配するところでございまして、きちっと評価されているのかどうかというところの目線合わせといったようなことも重要ではないかと考えております。

中川(宏)委員 どうもありがとうございます。

 続きまして、済みません、福留参考人からお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回、企業価値担保権を使う、この新たな仕組みにおきましては、企業は銀行などの信託会社と信託契約を結びまして、事業全体を担保として設定をしてまいります。信託契約を基に、信託会社が指定した金融機関が企業に融資する、こういうことであります。

 このため、信託会社が、これまでより事業者に対しての関心が高まりまして、最適な経営改善支援等が行われることが期待をされます。貸し手、借り手の双方が、これまでより、より将来を見据えて事業に注力することになりまして、借り手の事業の着実な成長、また事業悪化の回避が図られまして、融資の着実な弁済につながる効果もこれから期待されるところであります。

 これまでの融資制度におきましても、決して事業に対する貸し手の関心がなかったわけではございませんけれども、伴走支援というお話も先ほどございましたが、企業価値担保権の活用が、事業性融資を推進するための緊密な関係が構築されるといっても、恐らく経営者側から見ましたら、先ほどもちょっとお話がありましたが、金融機関からの監視の目が強くなって、かえって自由に会社経営ができなくなるのではないか、こう思ってしまう経営者も中にはいらっしゃるかと思います。

 今回の法案では、経営者側がやりづらくなるのではという経営者の心配の部分でありますけれども、適度で適切な経営のチェックという部分も踏まえまして、金融機関側として御意見がございましたら、福留参考人から是非、お伺いをさせていただきます。

福留参考人 ありがとうございます。

 一般論になっちゃうかもしれませんが、御支援をしていく中で、お客様に対しては、定期的に財務情報や事業状況などに関して詳細な情報をお伺いして、事業計画などについて助言を行うことも想定されますけれども、ただし、こうした対応は、あくまでもお客様との信頼関係と合意、これが前提でございます。その上で、経営改善に向けたサポートを行うという趣旨でございますので、おっしゃったような、金融機関が一方的にお客様を監視するというものではないというふうに考えています。

 もちろん、銀行界としましても、本担保制度の趣旨を十分に踏まえまして、丁寧なコミュニケーションを通じて、信頼できるパートナーとして伴走支援を進めてまいりたいというふうに思っております。

中川(宏)委員 どうもありがとうございます。

 最後の質問になるかと思いますけれども、今回の法案で、金融機関側としては、事業をどう適正評価をしまして、先行きをどう判断していくのか。これまでも行ってきたかと思いますけれども、更に精度の高い評価をしていかなくてはならない、このように思っております。

 今回、評価の実効性を高めるために、金融機関の目利きの向上支援、このために認定支援機関の認定制度が導入をされるところであります。

 これは井上参考人から是非お伺いさせていただきたいと思いますが、数多くの融資案件がある中で、認定支援機関が全ての案件につきましてつまびらかに見ていくことは、物理的に大変なことだと思います。実際に、現在の融資制度でも、ある程度のガイドラインや目安がありまして、目利き業務の効率化、これが図られていると思いますが、これは、これまでの不動産担保など多くの事例からの予測で見立てができてきていると思っております。

 この認定支援機関がどのように金融機関また中小企業支援者の支援をしていけばいいのか、この点につきまして、御意見をお伺いできればと思っております。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 その御質問に私が答えられる能力というのは余りないのではないかと思いますが、いきなり最初からうまくいくものではないだろうとは思います。その意味では、経験を蓄積していって、どういったところに着目すべきなのかということについての知見を、貸す側、借りる側、それをアレンジする側、共に学んでいく必要があろうかとは思います。

 先ほどもちょっと御紹介申し上げましたが、米英では、全資産担保を使って企業に対する融資というのが広く行われていて、しかしながら、米というのは、レンダーライアビリティーにも代表されますように、レンダーの行動に関する厳しいペナルティーもございます。それをどうバランスをよく取っているのかということについて、やはり、いろいろ日本と違うところはもちろんあるわけですけれども、学ぶところも多いのではないかと思っておりまして、そういう形で、実際に行われている他の法域での経験というのも学んでいく必要があるのではないかと思っております。

 以上です。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わりにしたいと思いますが、改めまして、四人の参考人の皆様に、お忙しいところ御参加をいただいて、様々な御意見を伺わせていただきましたことに感謝を申し上げまして、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 私は、今から二十年ほど前は銀行で社内弁護士をしていまして、当時は銀行員向けに「銀行の法律知識」といった本を出して、そして、これからは不動産担保や保証に頼らない融資の時代が来るということなどもこの本の中に書かせていただいております。

 そういう中で、今回、事業性融資の推進というこの目的には私も賛成するところでありますが、その手段として企業価値担保権を設けることには懐疑的であるということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、先ほど馬渕参考人の方から事業性融資の活用対象ということで、四つのことを説明いただきました。この1から3のところは、この委員会でも馬場さんが質問したりして明らかになっているところですが、4のところはちょっと私にとっても耳新しいところでございましたので、この4の上場新興企業に対する事業性融資の場合に企業価値担保権をどのように活用するのかということについて御説明いただけますでしょうか。

馬渕参考人 御質問ありがとうございます。

 四つ目のケース、こちらはサテライト活用になるかと思いますが、上場した後の企業がどこかに買収されたいというケースもあるわけなんですが、そのときに、なかなかキャッシュフローを回収できないんじゃないかというところで、MアンドAが前に進まないケースがございます。

 しかし、上場している以上、審査、与信などもある一定あるわけですし、また、情報開示、金融機関とのコミュニケーションも非常に有益ですので、例えば、MアンドAというプロジェクトのときのみに企業に対して事業性融資の担保をつけて、MアンドAが完了して、あるいはいろいろな利益が分配できた後は、もうこの担保を解除していく、このような使い方ができるんじゃないかなというふうに考えてございます。

 ですので、そうしたことで、ある程度与信があり、そして金融機関とのコミュニケーションにも慣れている企業が活用することで、一つ成功事例として事例が出てくるんじゃないか、そういったことをイメージしております。

 以上になります。

階委員 今の点について、ちょっともう一つお聞きしたいんですが、そうすると、買収側の資金調達の手段として企業担保権を活用するということをおっしゃっているということでよろしいですか。

 今うなずかれたので、という前提でお聞きしますと、今回、企業価値担保権は債務者でなければ設定できないということになっていまして、企業買収する側は債務者じゃありませんので設定できないんじゃないかなと思うんですけれども、その点はどうなるんでしょうか。

馬渕参考人 ありがとうございます。

 買収する側ではなく、買収されたい側のときの与信に有効だと思っておりますので、その場合では担保権がつくのではないでしょうか。

階委員 済みません、ちょっと食い違っている。

 買収されたい側は、そうすると、資金調達をするわけですか、企業担保権を設定して。そこがちょっとよく分からない。買収する側が資金調達をするというのは分かるんですけれども、買収される側が資金調達をする、ここがよく分からないんですけれども、そこを教えてもらえますか。

馬渕参考人 買収する側ではなく買収される側の与信がつかない、だけれども、買収したい側の企業もあるわけですので、そこに対して資金ニーズが充てられないかという新しい提案にはなります。

階委員 買収したい側が企業担保権を利用しようとしても、その企業自体がお金を借りるわけではないので、担保権は設定できないんですよ。これが法律のたてつけなので、これ以上はもう議論しませんけれども、私は、今の点はちょっと疑問が解消されませんでした。

 その上で、馬場さんがこの間指摘した三つの局面、企業担保権が典型的に活用される場面、そこで考えてみますと、今度は連合の村上参考人にお尋ねしますけれども、中小企業とかスタートアップ企業がこの企業担保権を活用して資金を調達するということになるわけですよね。ところが、そういう企業で、実際問題、労働組合がどれだけ組織されているのかということが疑問になるわけです。そういった場合にどうやって従業員の権利を守っていったらいいのかということをお尋ねしたいと思います。

村上参考人 ありがとうございます。

 中小企業など、スタートアップ企業ですとかそういったところでの労働組合の組織率は極めて低いというのが現状ではございます。

 そうした中ですけれども、私ども、いつでも御相談いただければ労働組合づくりには支援をさせていただこうと考えております。

 法律の中で、やはり、どういったところから何を守るのかということになるかと思いますけれども、やはり設定時には、働く人たちにきちんとこういうことになったんだということを知らせ、また、実行時にも十分に協議をする、話合いをしていくということが重要かと思っております。

階委員 私は、連合さんの立場として、組合がある会社だけではなくて、すべからく労働者の権利は守るべきであると思うわけですよ。そうした場合、この企業価値担保権が利用される局面というのは、先ほど来申し上げているとおり、中小企業とかスタートアップで組合がない会社も多い、そういうところで労働者の権利をなかなか守っていくのが難しい場面も想定されるということですから、そもそも、この企業価値担保権の導入というのは、連合さんとして、これをこのまま進めていいのだろうかと思うわけですね。私としては、企業価値担保権の導入には連合さんとして反対すべきではないかと思うんですが、この点についていかがでしょうか。

村上参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 私ども、どのような融資制度が好ましいのかというところについて、何か定見を持っている、専門的な知識を持っているわけではございませんので、この担保制度についての、つくるべきでないとかつくるべきといったような考え方を持っているわけではございません。

 ただ、つくるのであれば、どんな形であれ、働いている方が保護される、権利をきちんと保障されるという制度づくりをしていただきたいということを申し上げているところでございます。

階委員 井上参考人にもお尋ねしたいと思います。

 企業価値担保権は、御説明があったとおり、企業をいわば丸ごと担保に取って、債権者の判断で担保権を行使して優先弁済を受けられるという意味で、いわばスーパー担保権という側面もあるのかと思っております。他方で、債権者が債務者と伴走して企業価値を高めていくツールにするという意味では、いわば抜かずの宝刀という側面もあると思っています。

 こうした相反する二つの側面があると思いますが、参考人の見解を伺いたいと思います。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 スーパー担保権であるとともに、抜かずの宝刀であると。

 この一つ目のスーパー担保権、これは包括的という意味ではおっしゃるとおりでございますが、先ほども申し上げましたように、大きな穴が空いていて、その穴を通じて取引債権者、労働者、その他の利害関係者の利害を調整するという側面がございますので、スーパー担保権と言えるかどうかにも考え方が分かれるところかなというふうに思います。

 ただ、抜かずの宝刀という面はおっしゃるとおりでございまして、こういう担保権をむやみやたらと振り回して、すぐに実行するということは元々想定されていないだろうと思います。

 繰り返しで恐縮ですけれども、この参考資料の十四ページのところに挙げました米英などで行われているフローで見ましても、平時から右にかけてだんだん経営がうまくいかない状況が進んでいく中で、直ちに実行ということではなく、モニタリングを強化していったり、対話を重ねて対応方針を検討、実施したり、財務リストラを経た上で、なお、どうもうまくいかない、それでもまずは、最初は恐らく任意の事業譲渡で、合意ベースでやるんだろうと思いますが、それでも債務者との関係がどうにもこうにもしようがなくなったときに、一番右の実行になるという意味で、対話は早く始まる、そういう意味では、事業者からしますと、金融機関とのやり取りは今までより増えるかもしれませんが、やはり実行というのは最後の手段というふうに考えております。

階委員 一つ目のスーパー担保権というところについては、穴があるので、果たしてそう言えるだろうかというようなことをおっしゃったと思います。

 その穴の話、先ほどの八ページに書かれていることだと思うんですね。その中でも二つ目の穴、ゼロサムの穴というのがあって、一定額が債務者の清算手続又は破産手続を通じて残存する無担保債権者に支払われる、この穴が大きいか小さいかによってスーパー担保権と言えるかどうかが変わってくると思うんですね。

 私が思うに、担保権者と一般債権者だったら、当然、担保権者の方が優先する、これが常識なんですけれども、その常識を一部変えようとしているのがこの条文というかこの規定だと思うんです。

 連合さんは、いわゆるカーブアウト部分というんですか、この部分で、退職金債権、三分の一までは共益債権で保護されているんだけれども、残りの三分の二もこのカーブアウト部分で保護するべきだというお考えを示していらっしゃるんですが、この点について、井上参考人はいかがお考えでしょうか。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、この二つの穴のうち一つ目の穴が重要だと思っておりまして、この穴を空けることで企業価値が維持され、むしろ保存されることによって、担保権者、債務者、労働者共にウィン・ウィンの関係がつくられると思っておりますので、こちらで利害を調整するということをベースに考えるべきだと思っていますので、二つ目の穴、今まさに御質問いただいたところについては、余り大きくない方がいいというふうに思っています。ここはもしかすると意見が異なるところかもしれません。

 そして、この穴については、逆に、逆にといいますか、どこに行くかというと、ここに書きましたように、全て残存する無担保債権者全体に行きますので、果たして労働者あるいはそれ以外のいわば弱者と呼ばれるような人に行くかというと、そういう制度にはなっておらず、広く様々な全ての無担保債権者に行きます。

 ですから、例えば、銀行その他の金融機関の債権のうち回収し切れなかった部分についても、同じように行きます。そうすると、二つ目の穴というのは、利害調整の、特に弱者との利害調整のツールとしても余り効率的なものではないというふうに考えておりますので、その意味では、この二つ目の穴に大きく期待するというよりは、一つ目の穴をどう活用していくかという議論をすべきではないかと考えております。

 以上です。

階委員 カーブアウト部分に余り期待すべきではないという考えが示されました。

 連合の村上参考人、いかがでしょうか。

村上参考人 ありがとうございます。

 カーブアウト部分について、大き過ぎるとかえって弊害が出るというところは、御主張はそれはそれとしてあるかと思っておりますが、しかし、私どもとしては、井上参考人がおっしゃったような二つ目の穴、一つ目の穴だけで十分かというと、やはり二つ目の穴も必要かと思っております。

 その点に関して、先ほども申し上げましたけれども、条文ではそれが一体どれぐらいになるのかということが分からないということがございまして、その部分について、労働債権者を含めた一般債権者の保護に一定程度応えられるような水準とすべきだと考えておりますし、その点について、審議の中でも明らかにしていただきたいと考えております。

階委員 仮にそこが大きくなったとしても、今、井上参考人がおっしゃったとおり、全ての一般債権者の配当原資になるわけでして、労働者だけに回るわけではないということも留意した方がいいと思います。

 そして、その上で、井上参考人にお尋ねしますけれども、企業価値を広く担保に取るということなんですが、今までもそういう制度は私はあったのではないかと。

 すなわち、企業価値というのは、その企業に遊休資産がないとすれば、将来生み出すキャッシュフローの総額を現在価値で割り引いたものだというふうに考えられると思います。

 この前提に立った場合、将来キャッシュフローの源泉である売り掛け債権や在庫商品、あるいはキャッシュフローが入ってくる預金口座、これを担保に取るというのが、ABLなどといって、今までもあった手法。これがなかなか使われてこなくて、事業性融資が推進されてこなかったわけですよね。

 私は、一足飛びに企業価値担保権を導入するよりも、今あるツールを有効活用する、これをまず先にやるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

井上参考人 ありがとうございます。

 ABLの利用が余り進んでいないというのはおっしゃるとおりだと理解しています。

 ただ、ABLというのは、英米でもそうなんですけれども、いわゆるボローイングベースのファイナンスに使われているものでして、売り掛け債権でいえば、それぞれのその時々の残高ベースで融資をする。その意味では、企業全体の将来キャッシュフローを現在価値に割り引いた形の融資にはなかなかつながりにくいところがございます。

 実際にも、この担保というのは、企業価値担保と違って、事業全体をまとめて実行するということにはならず、そのときに存在する債権をつかまえて換価処分する、回収するということになりますので、その意味でも、実行プロセスが全く異なります。

 そうすると、今回提案されている企業価値担保の方が、いわば、まさに先ほどから繰り返し申し上げている、穴をつくって仕入れその他の資金を払い出しながら事業全体を譲渡して、のれんを含めた事業価値を実現するという仕組みになっているのに対して、現在ある債権担保、あるいは在庫担保というのはそういった仕組みがないものですから、別のものとして考えた方がいいのではないかと考えておりまして、現在の担保を利用したABLも併せて推進していくべきだと思いますが、それをむしろ制度間で競争させながら利用を促進していくということの方が有効ではないかと考えております。

階委員 ABLよりもっと前からある古典的な担保で、株式担保というのもありますね。

 この株式担保の方が、私は、実行も簡単だし、なおかつ伴走型支援にも資するのではないか。すなわち、株式担保をもし持ったまま企業が潰れてしまえば、無価値になってしまうわけですよ。紙くずになってしまうわけですよ。ということを考えると、より企業価値を維持、あるいは高める、こういうインセンティブが湧くと思っていまして、伴走型支援というところに重きを置くのであれば、私は、株式担保、これは非常にシンプルな古典的なやり方ですけれども、そちらの方が優れているんじゃないかと思いますが、この点、井上参考人、いかがでしょうか。

井上参考人 ありがとうございます。

 ただ、株式担保というのは、今まさに御指摘があったように、肝腎の債務者が潰れたときは紙くずになってしまうという担保でございますので、担保権者にとってはほとんど魅力のない担保です。株式担保を取るという意味は、コントロールをある程度グリップを利かせる目的はあるんですが、換価価値によって債権を回収する意味はほぼゼロになります。

 それに比べますと、企業価値担保は、その株を発行している事業会社そのものの事業キャッシュフローをつかまえることになりますので、その点では、申し上げたとおり、事業自体を譲渡した代金を、いわばほかの金融機関を排除して優先的に回収できるという意味で、債権回収の観点から大きく異なるものだと思います。

 ですので、担保というのはあくまでも、債権者側から見ても使い勝手のよい、あるいは使う価値のあるものでなければいけないということからすると、株式担保が、今私が申し上げた、現在想定されている企業価値担保の代替手段にはならないと考えております。

階委員 私も、回収局面では全く当てにならないということを前提として聞いているわけですよ。ただ、金融庁は伴走型支援を進めるために企業価値担保権が必要だと言っているのであれば、伴走型支援ということに重きを置くんだったら株式担保の方が優れていますよということを申し上げました。

 その上で、全銀協の福留参考人にもお尋ねしたいと思います。

 今回の企業価値担保権を設定するとなれば、評価の段階から始まって、コストがかかります。また、信託会社を利用するとなれば、これもコストがかかります。他方で、融資から得られる金利収入、これは、異次元の金融緩和以降、微々たるものになってしまいました。

 このコストに見合う収益が得られないとなれば、幾ら立派な制度をつくっても利用されない、宝の持ち腐れになると思っていますが、この点はいかがでしょうか。

福留参考人 あくまでも仮定の話でございますが、金利水準をどのように設定するというのはケース・バイ・ケースですので、始まってみないと分からないと思います。

 今、現行ある様々な融資の案件においても、複雑性があったり私どもの方に手間やコストがかかるケースでは、その分、対価として金利を頂戴するというのは通常の銀行取引の中で行われていることですので、やってみて、いろいろなケースを見ながら多分金利水準も定まってくると思いますけれども、あるいは、それは各行の戦略にもよりますので、これだけコストをかける融資はやらないという銀行も出れば、コストをかけるけれども、しっかり金利を頂戴してこの事業を進めていく銀行も出てくるかというふうに思いますが、繰り返しますけれども、始めてみなければちょっと分からないという部分もございます。

津島委員長 階君、時間が経過しております。

階委員 はい。

 時間が参りましたので終わりますけれども、コストに見合った金利をいただくというようなお話もありました。ただ、ユーザーは、先ほど来申し上げているとおり、中小企業が中心になると思います。中小企業においては、信用保証協会に保証料を払って融資を受けた方がコストは安くなる可能性も十分あると思っておりまして、そことの競争関係から、やはり企業価値担保権の利用範囲は狭いのではないかと思っているということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久でございます。

 四人の参考人の皆様には、当委員会にお越しいただきまして、本当に感謝を申し上げます。

 皆様から意見陳述をいただきまして、もう既に各委員の皆さんから質疑をされ、お聞きしておりましたけれども、本当に、この法案というのは、非常に画期的であるとか、今までの法律案と違う印象を皆さん共有でお持ちなんですね。

 財務金融委員会も、委員会がずっとありまして、これが最後の法案になりまして、単なる新法ではなく、何かしら本当に画期的な法案でありまして、その内容に関してというよりも、どうしてこのような法案が金融庁から出てきたのかというところをぱっと質問したところ、それぞれの専門分野と別に、いわゆる討論する会、ブレーンストーミングする会として政策ラボというのが金融庁の中にあるらしくて、各担当者が担当する枠にとらわれず、その中で議論した政策が具体化したという、まさにボトムアップの法律案であります。

 ですので、恐らく若手の方から、これは推測なんですけれども、話が出てきたのは、それは面白いじゃないかということで、ボトムアップ的にこの法案が出てきたのではないかなと推測されるんですけれども、それゆえに、画期的ではありますし、今後の日本の経済や財務を支える上での起爆剤にもなり得るんですけれども、やはりどこかしら一抹の不安というのは拭えないし、各委員の皆様には、それぞれの問題点、課題とかを指摘していただいたと思います。

 やはり課題となるのは、企業の価値という無形資産に対する評価になると思います。借り手側は事業者の積極的な情報開示が必要となってくるんですけれども、貸し手の銀行側、金融機関側の目利きというのがやはり必要になってくると思うんですね。

 そこで、参考人の皆様方に御質問させていただきたいと思うんですけれども、本当にそれぞれのお立場で目利きに関してお話をいただいたんですけれども、まずは、ちょっと順番不同になりますけれども、井上参考人には、やはり担保法制の部会委員としていろいろな金融機関の方々とも対話をされてきたと思いますけれども、金融機関の目利きに対して、本当に、どのような対応をされるおつもりなのか、若しくは、井上参考人からそれぞれの金融機関にアドバイス的なものがあれば、お話をいただきたいと思います。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 金融実務、融資実務については、むしろ私が教えていただきたいようなところがございますが、目利き力という中には、何度も話に出ております企業評価の手法をどう整えていくのかというのは非常に大きいだろうと思います。

 これは、MアンドAのときに、大規模なものであれば非常に綿密なデューデリジェンスをして、時間をかけて評価をするということもございますが、中小企業のMアンドAなんかになりますと、そんなにコストも時間もかけられないということで、財務諸表その他を見て、営業利益から近々のキャッシュフローをおおむね算定した上で現在価値の評価をするというようなことも、簡易な形で行われているんだろうと思います。

 そういった事業規模、案件の大きさなどに応じて適切な企業価値をどう評価するかという手法がまず重要になってきますし、それ以外にも、その後のモニタリングの手法として何度も言及しております全資産担保の米英の実務なんかに近いような形で、どういう形で通常の融資関係の間でモニタリングをしていくのか、こういう意味での目利きというのも重要になってこようかと思います。

 これはすぐには身につけられるものではないので、既に身についている金融機関ももちろんあると思いますけれども、順次磨いていっていただきたいと私も心から思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 それでは、次は福留参考人にお聞きしたいんですが、全銀協の会長の立場でもあられますし、先ほどの御意見の中にも、金融機関の目利き力が必要だとおっしゃってもいただきましたし、支援機関を使いながらその力をつけていくということで、今までどおり財務のところを調べていくのは、それはもう一番のプロではございます。

 ただ、企業価値に関して、成長に対してどうかという、私は開業医でありまして、先進医療をやっていて、同時に先進医療の研究というのを自分の法人内でも進めていっているんですけれども、なかなか内容的に先進過ぎると余り理解されないことも多くて、そういった目利きというのも金融機関さんとしてはどのようにされるかということを教えていただければと思います。

福留参考人 ありがとうございます。

 そういった意味では、例えば今まさにおっしゃったように、医療関係は医療のことを、済みません、私ども三井住友銀行の例を申し上げますと、もうずっと十年やっていて、例えば出身大学も、医療の博士号を取った人等を採ったりとかそういうことをやって、各産業の専門家を育てるのも、先ほど申し上げました、専門部署をつくって営業店をサポートする部隊の中に、そういう産業別、あるいは、例えば今ですと半導体に詳しい人とか電気自動車の電池に詳しい人ですとか、そういう人たち、そういうことがよく分かるような専門部隊をどんどんどんどん育てたり採用したりして、そういう面でも、いろいろな範囲から目利き力の向上に努めているという部分もございます。

 あとは、大切な資質は、先ほど井上参考人がおっしゃったことに加えて、財務諸表ももちろんですし、技術を見る目ももちろんですけれども、口幅ったいかもしれませんが、経営者の方の資質を見る目、これも非常に大事で、これは訓練というか経験が必要になってくるんですけれども、そういう意味では、そういうことも含めて教育の徹底もさせていただいております。

 よろしいでしょうか。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、それぞれのお立場からこの目利きに関して御質問させていただいているんですけれども、先に馬渕参考人にお聞きして、それから村上参考人にお聞きしたいと思っています。

 馬渕参考人は、今回いただいた資料でも、御意見の中にも、十一ページに、四角の三つ目に、審査、目利き能力の醸成ということで、事業者の成長のために金融機関が事業者の目利き力が本当に重要となってくるということをおっしゃっていましたけれども、目利き能力の醸成というお言葉を使っていて、今、そういう目利き能力がそこまでないのではないかというか、新しい法案ですし、これからだと思うんですけれども、そういったところで、提言されることも含めて御意見をいただければと思います。

馬渕参考人 ありがとうございます。

 目利き力の醸成のところなんですが、今も現在、金融機関の皆様は審査を行っていらっしゃるかと思いますが、長らく続いた低金利の中でなかなか融資を積極的にできないという現状もある中で、少し目利き力が日本の金融機関の自社の中に蓄積できていないという傾向があるというふうに考えております。

 そうしたときに、目利き力自身は、私自身もスタートアップの資金調達の業務とかにも携わっておりますので、いかに融資をしていくのか、あるいは投資をしていくのかというときの判断のときに目利き力が非常に問われるわけです。そうしたときに、やはり金融機関だけの能力だけではない。つまり、経営者自身のコミュニケーション、対話というお話を井上先生も福留様もおっしゃっていらっしゃいましたが、経営者がオープンに情報を開示していくというところも目利き力につながるというふうに感じております。

 そこで、一点、先日お会いした中小企業の経営者の事例を御紹介したいんですけれども、お父様の代から事業を引き継いだ経営者なんですが、今現在、日頃融資を受けている金融機関向けに、一年間が終われば座談会を開き、皆様のおかげで、融資のおかげでどれぐらい企業が成長し、それから未来に向けてこんなチャレンジをしていきたいんだというお話をされると、連続的な融資が受けられるという事例があります。

 上場企業であれば、金融機関に対して密にコミュニケーションを取るというのは当たり前なんですが、中小企業の経営者でもう先進的な取組をされている事例がありまして、そうなりますと、金融機関の方々もやはり信頼を基に融資をしていくわけですので、共に目利き力というものは高めていくものだと思っていますので、金融機関、それから経営者、どちらもが対話していくというところで日本の目利き力というものが高まっていくんじゃないか、そのように考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、馬渕参考人の今の御答弁の中にも、借り手側の事業者の積極的な情報開示も必要だとおっしゃいました。この無形資産の中に、私の立場でいうと、医療法人といえども、医療法人という名前はついていますけれども、事業所でいうと、やはり小企業であったり小規模企業であったりするわけです。幾つかの医療法人を持っていて、関連をしますとかなりの、何十人、何百人になるのかもしれないんですけれども、それぞれの部分でいうと十名、五名とかという形になってくるんですね。

 そうなってくると、経営者である私自身の対話も必要なんですけれども、ここで村上参考人にもお聞きしたいんですけれども、例えば私は外科医であるんですけれども、外科というのは一人じゃできなくて、やはりコメディカルの方々とか、もう何十年も一緒にやっている職人とかいてるんですよね、プロがいてるんですよ。その人らの意見というのも私自身は積極的に聞いたりもしているんですけれども、この新たなる担保権の想定として、では、僕が借り入れしましたとなると、うちのスタッフはやはり不安を抱くと思うんですね。その中に、労働者の不安があってはいけないということを村上参考人もおっしゃっていただいたんですけれども、借り手側の事業者の積極的な情報開示の中に、やはり担保というか事業価値の中に、そこで働いている人というものが関連してくるんですけれども、村上参考人から、借り手側の情報開示でやはり労働者も含むべきだ、若しくは貸し手側も、経営者だけじゃなくて、そういった企業全体の対話が必要だという御意見がもしあれば、お願いいたします。

村上参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 企業価値をどのように測るかといったときに、やはり人的資本をどのようにして評価するのかということが大変重要だと思っております。どんな労働者がいて、どんなスキル、技術力を持った人たちがいるのかということや、その職場にきちんと定着できているのか、そういった環境にあるのかということも、企業の大きな価値の一つであると考えております。

 そういったところからすると、先ほど来目利き力の話がございましたけれども、企業価値を測る際に、何らか人的資本に関しても、どのように評価していくのかということに関しては、何も今のところ手がかりがないというところがございますので、何らかのガイドラインなどを示していく必要があるのではないかと考えています。

 以上です。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、ちょっとお話が面白過ぎて、十分時間があると思ったらあと五分になってしまいまして、私ももっともっと皆さんと対話をしていきたいなと思っていたところなんですけれども、ちょっと時間も限られてきたので質問も絞っていこうとは思うんですけれども、こういった、実際に目利きの機関というのが、現実、日本ではどうかなというところなんですけれども、具体的には、ベンチャーキャピタルだったりとか株式投資型クラウドファンディングには社内にも審査機能があるというのが馬渕参考人からいただいた十三ページにお示しいただいております。

 これは、ややもすれば、中小企業にとっては、そういった経営コンサルを使うことを考えても、やはり小規模企業だったり小企業だったら難しかったりして、コストも結構かかったりもするんですね。でも、やはり企業にとって必要だと思えば、小さな企業から大きな企業まで海外のコンサルが使われることになるんですけれども、こういった目利きのための企業を日本の中でも育てていくことも大事だと思うんですけれども、これは馬渕参考人からの御提案というかプレゼンなので、ちょっと馬渕参考人にその辺りをお聞きしたいと思います。

馬渕参考人 ありがとうございます。

 企業を審査していくときの目利き力を様々な外部に頼るという側面のお話かと思いますが、やはり、この法案が、立ち上がった時期、最初の立ち上がりの時期というのは、いろいろなパートナー企業の御知見とか御協力は必要かと思います。ただし、一点、今回の問題提起といたしまして、失われた三十年間に何が問題であったかというところは、やはり一番の重要であるコアの意思決定とか、あるいは企業の判断能力、判断基準を外部に頼り過ぎてきたという歴史があるというふうに感じています。

 そういった意味で、今回の事業性融資というのは、まずは、金融機関の立ち回りとしては、改めて、核心である審査能力を自社に蓄積させていく、そういう視座が、メリットがあるというふうに感じております。さらに、地域金融機関におきましては、やはり、最も地域を見てきて、最も地域の御事情を知っているのは金融機関であり、それは外部の人間ではないということも明らかです。ですので、いま一度この辺りの自負を取り戻していただきたい、取り戻してほしいという思いもございます。

 また、経営者の側も同じで、意思決定は自社の手の中にあるんだということなんですが、この間、三十年間、バブル崩壊以降、私たちは、日本経済や自社、そして自分自身に対しても自信を失ってきた経済だったと思います。そうしたときに、外部からこうあるべきだという経営論、これに萎縮してきた経済、これが日本経済そのものだったというふうに感じております。

 ですので、いま一度意思決定を自社に戻していく、これが日本の活力に必要だと考えていますので、今回の事業性融資の本質というのは、活用する企業も、そして活用していく金融機関も、本気でリスクを取り合って、そして成長のために手を携えるきっかけになると思っています。法律は枠組みであって、制度に本当に命を吹き込むのは、最後は現場だと思っています。なので、今お話しした関係者皆がリスクの意識当事者、リスクの意識を持つこと、これが経済を今後活性化させていく、そのように感じております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 もう既に時間となりつつあるみたいなので、最後、質問ではなくて。

 本日は、本当に皆様の御意見、ありがとうございます。やはりいろいろな不安や課題はあるものの、恐らくこの金融委員会のこちらの場にいる共通意識として、この法律案がどうなのかと不安ばかりではなくて、ポジティブに捉えて、日本ではやはり、ユニコーン企業であったりとかGAFAであるような、そういった企業がなかなか出てこない、これがその起爆剤になり得るのであれば、課題点を指摘して、今日皆さんからいただいた御意見を参考にして、議論を深めて、よりよい日本をつくっていきます。

 ありがとうございます。終わります。

津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 四人の参考人の皆さん、本日はありがとうございます。

 早速質問をします。

 事業性融資を考えるときに、不動産担保とか事業者の保証に依存してきたこれまでの融資慣行を変えていくということについては、私も大変大事なことだというふうに思っております。

 そこで、福留参考人と、それから馬渕参考人にお尋ねします。

 これまでの歴史を振り返りますと、金融庁も推奨してまいりましたリレーションシップバンキングの機能強化を始め、あるべき姿を提示されてきたんですけれども、期待する融資が広がりませんでした。先日、本委員会での審議で、金融庁の答弁では、いまだ道半ばと言われました。そして、事業の将来性を適切に評価できる能力の向上や体制整備については、まだ課題があると。

 福留参考人からは、目利き力とか、あるいは体制整備とか、企業との大事なコミュニケーションとか、数多くのキーワードがありました。全銀協としても事業性融資を推進していくということをおっしゃられたんですけれども、なかなかうまくいかなかったということについて、どのように御見解をお持ちでしょうか。

 同じ質問を馬渕参考人もお願いしたいと思います。

福留参考人 ありがとうございます。

 ちょっと先ほどと同じ回答になってしまうかもしれませんけれども、伸び悩んでいるかもしれませんが、私どもとしては、取組を着実に進めているという認識でございます。

 そして、これも繰り返しですけれども、個別にお客様、案件案件を見ると、やはり、経営者保証ガイドラインで定めました三つの要件、法人と経営者の明確な区分、次は財務基盤がしっかりしていること、そしてもう一つは透明性、しっかりと情報を開示していただく、この三つがやはりそろわないケースというのはまだまだございます。こういうケースで無担保無保証で御融資をするというのはなかなかまだハードルが高い部分がございますので、そこをどうやって埋めていくか。

 そういう面では、やはり、この新しい担保制度はそれを埋める一つのいいツールになるのではないかというふうに考えている次第でございます。

馬渕参考人 御質問ありがとうございます。

 融資慣行を変えようと思ってもなかなか変わらなかったというところかと思いますが、やはりこれは、先ほどお話しさせていただきました、長らく続く日本のデフレ下における貨幣愛がやはりしみついているかと思います。金融機関、そして企業、さらには個人、皆様にやはりこの貨幣愛が深くしみついている。これが今変わろうとしているこのタイミングでこの事業性融資の議論が国会で進んでいること自体に、非常に意味を感じています。

 融資慣行を変えるという意味合いで、やはり今回、金融機関そのものが、明らかに現金にひもづいた固定資産だけではなく無形資産まで、さらには事業全体を評価するとなれば、金融機関の評価軸から貨幣愛というものが脱却できるのではないか、そのように意義を感じていますので、今回の事業性融資から、融資慣行を変えられるような、世の基準というものが変わるインパクトというところの可能性を感じております。

田村(貴)委員 今度の事業性融資の法案の中には、企業価値担保権を設けて、その中に労働契約上の地位、労働協約も含まれるといったことが大きな議論になっているところであります。

 私は、やはりこれは今までの概念を変える、大きな変化になるというふうに思って、懸念もしているところなんですけれども、福留参考人にお伺いします。

 貸し手の側として、この担保権に労働契約上の地位を入れるということは、これは銀行、金融機関にとってどういう意味を持つのでしょうか。金融機関にとって、労働契約上の地位が入ってくることについては、メリットあるいはデメリット、何が想定されるのか。金融庁に聞いてもなかなかよく分からなかったので、率直にお伺いしたいなと思います。

福留参考人 済みません、金融庁にも分からなかったかもしれませんが、私どもも、法制度面については見解を申し上げる立場にはないと考えております。

 ただ、この制度は、金融審議会などの議論も踏まえまして、労働者保護の観点は、先ほどからもお話ありましたけれども、しっかり加味された制度設計になるというふうに認識しております。

 また、その適切な運用が行われるように必要な措置が取られるものと理解しておりますので、私どもは使う側でございますので、本制度の趣旨を十分に踏まえて、適切に保護が図られるようにしてまいるということでございます。

田村(貴)委員 労働契約上の地位が担保権として設定されることについて、労働者側としては、そこはしっかり明記してもらいたいと。法案では、そこが明記されていないといったところが今議論になっています。

 連合の村上参考人にお伺いします。

 連合は、企業価値担保権においては、ほかの制度よりも強固な労働者ルールが欠かせないというふうに御主張されています。当然のことだと思います。

 ところが、法文には強固な労働者ルールが条文として見受けられません。例えば、労働者は、企業価値担保権の設定において、同意を必要としていません。それから、自らの労働契約が担保権に入っているにもかかわらず、知らない間に設定されていきます。それは、期中においても、そして行使の間においても、知らされないずくになってしまうかも分かりません。

 ずっと、これを回避するために経営者と労働者のコミュニケーションが大事だということが言われています。しかし、全てが全てそういけばいいですけれども、経営者と労働者側がコミュニケーションを取られない場合なんというのは多々あるし、あるいは、あとガイドラインが示されるというけれども、そのガイドラインがどういうふうになっていくのか、そして、それを、どれだけ規制力を持っているのかということもなかなか見えないというふうに思います。

 今の段階で、企業価値担保権の中に労働協約が入るということは、労働者にとってみたら、どのような不都合が考えられるか、想定されるか。このことについて教えてください。

村上参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど井上参考人から、陳述の中でもございましたけれども、企業価値担保権は総財産を目的とするというところからすると、労働契約だけ除くといったことの方がむしろ、労働者だけ最後の実行の場面で取り残されるおそれがあるのではないかと思っておりまして、そのこと自体を、労働契約の使用者としての地位が含まれるというところについて問題視しているというよりは、そのことについてきちんと説明をいただきたいということを申し上げております。

 知らないままにそういうことになって、何の弊害もないのだというようなことの御説明はあるのですが、事業全体が担保に入っている、企業全体が担保に入っているんだといったこと、そして、そのことは通常の融資と同じであったり、あるいは伴走型の支援を受けて事業活動をしっかりと前向きにやっていけるんだということを、経営者の側からきちんと説明いただきたい。そのことが、労働者にとっては安心してこの会社でもっと頑張っていこうというふうに思えることになりますので、そういったことをきちんと言っていただきたいと考えております。

 そのほかには、期中管理の部分についても、そういった弊害は起きないんだということも会社の側からきちんと説明いただくということが必要ではないかと考えております。

田村(貴)委員 本当に、経営者の方から、会社の方から労働組合や労働者に対してちゃんと、担保を設定したといったところからの説明というのは当然あるべきだと思うんですけれども、それが法律でちゃんと書き込まれないと、やはり何を信用したらいいのかという思いもあるわけですね。

 私は、この間議論して、企業価値担保権について、債権譲渡についてはどうなのかということを聞きましたら、これは、債権譲渡は原則として自由であるというふうになっているという答弁でありました。

 これは、労働者が不利にならないようにしなければならないんですけれども、経営者が債権者の要求に往々にしてやはり屈してしまう、のんでしまうと。先ほど村上参考人が言われた人員整理とか、それから事業を廃止していくとか、既得権がなくなったり、あるいは労働者側の不利益につながることも想定されていくわけであります。

 担保権の実行について、労使のコミュニケーションが取れない、そして労働組合との話もできない、債務者と労働組合との話合いも法文上は入っていない。こうした下で、私はやはり、最悪の場合、いろいろな不利益が迫られるということも想定しなければならないと思いますが、このことについては、村上参考人、いかがお考えでしょうか。

村上参考人 ありがとうございます。

 期中管理についても、また実行の場面についてもですけれども、債権者側、金融機関側が、伴走支援などという中身についても、きっちり、一定程度に規律を持って行っていただきたいというところがございます。無理な人員整理などを迫るといったことがないといったようなことについてガイドラインなどで示していただいて、モラルある伴走支援をしていただきたいということがございます。

 また、実行時に関しても、今後どのようになっていくのかという見通しについても、しっかりと労働組合や、労働組合がなくても従業員の皆さん方にお話しいただくということは必要かと思っておりまして、そういったことを法文上書き込めない部分があったとしても、下位法令などで示していただいて、それを手がかりに、万一の際に労働者が会社側と話をできるような環境をつくっていただきたいと考えております。

田村(貴)委員 同じく村上参考人にお伺いします。

 事業性融資の推進に関する法律案に対する談話、連合の談話を読ませていただきました。法案は労働者保護の仕組みを形骸化させかねない重大な問題をはらんでいるということでありました。これを回避するためには、今参考人の方から、コミュニケーション、説明責任、それからガイドライン等々、法施行後の話があったんですけれども、この法案自体に対して、こういうふうにやはりあるべきだということがありましたら、それをちょっとこの場で教えていただけないでしょうか。法案自体に対する要望について、お願いします。

村上参考人 ありがとうございます。

 先ほどの意見陳述でも述べたのですが、まず、設定時に関しましては、労使のコミュニケーションを促進するということであれば、義務づけはできないといったところであるかもしれませんけれども、努力義務などで労働者への通知などを書き込んでいただけないかというふうに考えております。

 また、実行時の換価の部分について、原則が一体的な換価である、事業譲渡であるということを明確にしていただきたいと考えております。

 ここについて、私ども、事務局長談話というのを昨年も出しておりまして、それは、事業性融資のワーキンググループの報告書が出されたときの談話を出しておりますが、その際は、こういった、事業を解体せずに雇用を維持しつつ承継することを原則とするといったことを書き込まれたということについては、一定評価をする談話を出させていただきました。そのことが法文上明確に見られなかったということがございましたので、今年の三月にまた談話を出させていただいたところでございます。

 このことについて、原則と例外の関係はあるのだとしても、より例外の部分についての厳格な要件をつくっていただきたいと考えております。

 以上です。

田村(貴)委員 分かりました。

 井上参考人にお伺いします。

 不安要素がいろいろあるわけなんですけれども、日本労働弁護団の事業性融資の推進に関する法律案の慎重な審議を求める声明というところから、ちょっと引用させていただきます。

 企業価値担保権を有する金融機関は、総財産を担保とすることで設定者である事業者に対して極めて強い力を持つことになる。その際、設定者である事業者が、金融機関による経営合理化の指導を拒むことは難しく、それが労働者の人員削減、労働条件の不利益変更にわたる場合には労働者の地位、労働条件にも影響を与えることが考えられる、本来であれば、企業価値担保権者である金融機関に対し、労働組合から申し入れられた協議、交渉に対する応諾義務を課すなど、労働法的規制を導入することも考えられるが、同法律案ではそのような制度は導入されておらず、金融機関による経営指導等における労働者への影響について対処がどのようになされるか現時点では不明である。

 このような懸念が法文を見て述べられているわけですけれども、井上参考人はどのように受け止められますか。

井上参考人 御質問ありがとうございます。

 今回の企業価値担保は非常に新しい制度ですので、新しい制度の導入に当たって様々な不安が生じやすいというのはそのとおり、その意味では御懸念を持たれる方がいても不思議はないとは思います。

 ただ、何度も申し上げておりますように、この企業価値担保というのが本当にほかの担保と比べて債務者に対してそれほど強い力を持つものだろうかということを考えますと、私自身は、むしろ、何度も申し上げているように、優先性にも穴が空いておりますし、債務者にも対抗手段となるべき手段が幾つも与えられている、こういったことの多くは普通の担保にはないわけです。

 担保である以上、こういった包括的な担保でなくても、現状、債務者が担保として担保権者に差し出しているものは、多くの場合、その債務者企業にとって重要な資産、価値のある資産、金目のあるものに限られます。そうすると、そういったものを担保に取って融資をしているという現在の金融機関との比較で申し上げると、企業価値担保を取っている担保権を背景にした貸付人というのが質の異なるほど強い立場にあるとは思えませんので、私自身は、そういった御懸念は当たらないのではないかと考えております。

 一般論として、どの担保を取るにせよ、金融機関が横暴な要求をするということ自体は、これは避けるべきことなので、金融規制あるいは独禁法の規制といったことで対処していくということはもちろん引き続き必要だろうとは思っております。

田村(貴)委員 とはいいながら、融資というのは非常にシビアな世界の話だと思います。貸す側にとってみたら、貸倒れはしたくない、貸し損もしたくない。やはり、これは生きるか死ぬかの経営の問題にも関わってくる話だと思うんですね。

 福留参考人に伺います。

 労働弁護団は、総財産を担保とすることで設定者である事業者に対して金融機関は極めて強い力を持つことになるというんですけれども、例えば、担保権の実行において、従業員とか労働者側が望まない債権譲渡をするとか、あるいは、労働者側が不利益を被るような条件の要求とか、そういうことを貸し側が一緒になって要求するということはあるんでしょうか。どういうことが想定されるでしょうか。

福留参考人 ありがとうございます。

 ちょっと井上先生と繰り返しになるんですけれども、今言ったようなことは、普通に、不動産担保を取っていても起こり得る話でございまして、決して企業価値担保に限定された問題ではないというふうに私も思っております。

 そもそも我々は、各金融機関は、基本的な考え方の浸透、行内ルールの整備を進ませて、いわゆる、大きくいう優越的地位の濫用、これは厳に防止に努めてやってきているというふうに理解しておりますし、引き続き取組を徹底してまいります。

田村(貴)委員 時間が参りました。

 参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、また、御丁寧に質疑に対応いただきました。誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 次回は、来る十七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


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