第3号 令和7年2月14日(金曜日)
令和七年二月十四日(金曜日)午後三時三十五分開議
出席委員
委員長 井林 辰憲君
理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君
理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 斎藤アレックス君 理事 田中 健君
東 国幹君 石田 真敏君
上田 英俊君 田中 和徳君
土田 慎君 長島 昭久君
中西 健治君 根本 幸典君
福原 淳嗣君 古川 禎久君
牧島かれん君 松本 剛明君
安藤じゅん子君 江田 憲司君
岡田 悟君 海江田万里君
川内 博史君 階 猛君
末松 義規君 長谷川嘉一君
原口 一博君 水沼 秀幸君
三角 創太君 矢崎堅太郎君
村上 智信君 岸田 光広君
中川 宏昌君 山口 良治君
高井 崇志君 田村 智子君
本村 伸子君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 加藤 勝信君
財務副大臣 斎藤 洋明君
財務大臣政務官 東 国幹君
財務大臣政務官 土田 慎君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君
政府参考人
(財務省主税局長) 青木 孝徳君
政府参考人
(国税庁次長) 小宮 敦史君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官) 河野 恭子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 田中 仁志君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 武藤 憲真君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
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委員の異動
二月十四日
辞任 補欠選任
水沼 秀幸君 安藤じゅん子君
田村 智子君 本村 伸子君
同日
辞任 補欠選任
安藤じゅん子君 水沼 秀幸君
本村 伸子君 田村 智子君
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二月十四日
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)
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○井林委員長 これより会議を開きます。
ただいま付託になりました内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣加藤勝信君。
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所得税法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○加藤国務大臣 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
政府は、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策、地域経済の好循環の実現、国際環境の変化への対応等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うため、本法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに特定親族特別控除の創設を行うこととしております。
第二に、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すため、中小企業経営強化税制の拡充を行うこととしております。
第三に、国際環境の変化等に対応するため、防衛特別法人税の創設等及び外国人旅行者向け免税制度の見直しを行うこととしております。
このほか、相続に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
この法律案が現下の我が国の経済社会に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○井林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
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○井林委員長 この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官伊藤正志君、財務省主税局長青木孝徳君、国税庁次長小宮敦史君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官河野恭子君、大臣官房審議官田中仁志君、大臣官房審議官武藤憲真君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○井林委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。
○上田委員 自由民主党の上田英俊です。
財務金融委員会にて質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
今回は、ただいま趣旨説明がありました所得税法等の一部を改正する法律案について、その周辺部も含めて質問をいたします。
私は、令和三年十月の総選挙の初当選であり、現在、二期目であります。最初に所属した常任委員会は厚生労働委員会でありました。議席のお隣は、厚生労働大臣を務められた加藤勝信現財務大臣でありました。今日まで御指導いただいておりまして、誠に改めて感謝申し上げます。
加藤先生との会話の中で、名ばかり管理職ならぬ名ばかり社会保険労務士の私が、厚生年金保険、健康保険といった社会保険制度の中での百三十万の壁について加藤先生の所見をお伺いしたところ、加藤先生は、百三十万の壁よりもむしろ百三万の壁のことを言っておられたことが大変強く印象に残っております。厚生労働行政そして税に精通された加藤大臣の前で質問することは全て見透かされているような気がいたしますが、緊張感を持って質問に入りたいというふうに思います。
税は政なり。税は政であります。日本では古来の律令制の下で租庸調があり、また、外国では恣意的な過酷な徴税が議会制度の発達に大きな影響を与えました。また、税は生なり。税は生活そのものであります。国税、地方税、直接税、間接税、所得税、消費税等様々な分類の方法がありますが、税とは何かということを考えた場合に、公平、中立、簡素を三原則とした、日本という社会で公共サービスを受ける対価であり、日本で安心して生活する対価であると認識をしております。
この法律案の改正については、個人所得課税、法人課税、消費課税、国際課税、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、そして期限切れ租税特別措置の延長が盛り込まれ、施行日を令和七年四月一日としております。今回は、個人所得課税に絞り、改めてその周辺部も含めて質問させていただきます。
まず、賃金について質問いたします。
政治の大きな役割の一つが、経世済民を図り、実現することと考えます。働く人一人一人が経済的に自立し、家庭、地域社会を構築するためには、労働の対価としての賃金が大きな比重を占めていると考えます。今日に至るまで、政労使、政府、労働界、使用者、経済界が協調し、賃上げに取り組んでまいりました。しかしながら、それを上回る物価上昇のため、実質賃金が低下しているものと認識をしております。
まず、今日に至るまで、名目賃金、実質賃金がどう推移しているのか、厚生労働省に伺います。
○河野政府参考人 お答えいたします。
毎月勤労統計調査の令和六年分結果速報によりますと、名目賃金の対前年比はプラス二・九%と三十三年ぶりの高い伸びとなった一方、消費者物価指数の高い伸びによりまして、実質賃金はマイナス〇・二%となってございます。
名目賃金は四年連続のプラス、実質賃金は三年連続のマイナスとなっておりますが、令和四年と令和五年の実質賃金は、それぞれ、マイナス一・〇%、マイナス二・五%であったのに対しまして、令和六年は、マイナス〇・二%と実質賃金のマイナス幅が縮小しているところでございます。
○上田委員 かつて厚生労働委員会であるとか予算委員会分科会で確認したところ、名目賃金は連続して上がっている、しかしながら実質賃金は連続して下がっている傾向ということを伺いました。もちろん、数か月かは実質賃金がプラスに転じたときもあったようでございますけれども、やはり、改めて、物価上昇を上回る賃上げといったものが必要なんだろうというふうに思います。
事業主や経営者の方々が賃金を上昇させている、名目賃金ではありますが、上昇している。そして、結果として、賃金だけではなくて、厚生年金や健康保険といった社会保険料も当然増加していくという形になるわけです。それは当然、厚生年金、健康保険の半額は事業主が負担しているということでありますので、事業主の方々の負担が増えているということであるけれども実質賃金はマイナスであるというのは、大変厳しい状況だろう、厳しい現実だろうかというふうに改めて認識をしております。
さて、実質賃金のマイナスが続く一方で、国庫に入る税収、先ほども本会議場でありましたけれども、所得、法人、消費税等の伸びが大変好調であるようであります。国庫に入る税収は好調のようですが、国の税収の推移はどうか、そして、その増収の要因をどのように分析しているのか、財務省にお伺いします。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
国の一般会計の税収につきましては、例えば、令和二年度決算と令和七年度予算の税収を比較しますと、六十・八兆円から七十八・四兆円へと十七・六兆円増加する見込みとなっております。
その内訳を見ますと、金融所得などに係る所得税、相続税、法人税が合計で十・四兆円増加しており、この間の税収増の大きな要因となっております。
ただし、これらの税目の税収はGDPの変動と必ずしも連動するわけではございません。円安等による企業収益の増や好調な株式市場などが影響していると考えられるため、今後どのように推移していくかは注意して見ていく必要があるというふうに考えております。
○上田委員 今ほどの答弁は、先ほどの本会議場で他党の質問の方々と多分実質的には同じなんでしょうけれども、扱っている数字が違っているというふうに認識をしておりますし、税収が好調だということは事実だというふうに改めて認識しております。
さてそこで、働く人一人一人の実質賃金はマイナス基調である一方で、国庫に入る税収は大変好調であると。国家は好景気であるけれども、その原動力、国家の原動力である働く人、労働者には、実感がないどころか、マイナスであるということであります。
そのギャップを解消するために、賃金を上昇させるという視点、政策だけではなくて、負担を軽減させる様々な支援策、例えば、円安基調でありますのでエネルギーが大変高いということでエネルギー高騰対策やそれに対する補助、各種政策等にも政府として取り組んできたと考えますし、今後も様々な負担軽減策が必要と考えますが、政府はいかなる政策を取ってきたのか、また、今後いかなる政策を考えているのか、財務省にお伺いいたします。
○斎藤副大臣 上田委員の御質問にお答えいたします。
御指摘のとおり、物価高が継続している中で、国民の皆様に暮らしが豊かになったと感じていただくためには、足下で物価高に苦しむ方々を支援しつつ、同時に、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現することが必要であります。
こうした観点から、政府といたしましては、当面の対応といたしまして、特に物価高の影響を受ける低所得者世帯向けの給付金や地域の実情に応じた物価高対策を後押しする重点支援地方交付金、電気・ガス料金負担軽減事業など総合的な対応を図ることとしており、こうした施策を盛り込んだ経済対策とその裏づけとなる補正予算を迅速かつ適切に執行してまいります。
同時に、その上で、持続的、構造的な賃上げに向けて価格転嫁の後押し、省力化、デジタル化投資の促進などの賃上げ環境の整備に取り組むとともに、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を引き出すため、複数年度で計画的に取り組むこととしているAI、半導体分野の投資促進やGX投資促進を官民連携の下で着実に進めるなど、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現を目指してまいります。
以上です。
○上田委員 ありがとうございます。
実質賃金が物価上昇を確実に上回る施策、政策を総動員すべきだというふうに認識をしております。
さて、税の三原則である公平、中立、簡素において中立とは何かと調べたところ、個人、企業の経済活動の選択をゆがめないと記されています。中立とは、個人、企業の経済活動の選択をゆがめないと書かれております。
最低賃金が上昇し続ける中、税の世界であるとかあるいは社会保険分野において壁と表現される金額、天井が存在し、最低賃金が上昇し続ける中で、壁と言われる額が同額、同じ金額であり続けることで、労働者は働く時間を調整する、労働時間を短くする、そして、そうした行為が労働力不足に拍車をかけているというふうに認識をしております。果たして中立と言えるのかどうかということであります。
特に社会保険の分野で被扶養配偶者と呼ばれる方々は、事業において貴重な労働力であるにもかかわらず、労働時間を短縮する、調整せざるを得ないというのが現実であり、経済社会において働いて賃金を得たい、稼ぎたいと思っているのに、壁があることでそれをちゅうちょさせているというのが現実であろうというふうに思います。やはり、果たして中立であるのか。
もちろん、壁の存在には理屈の世界があって、理由があって、一定の理解を示すものでありますけれども、やはり、デフレからの脱却、賃金上昇の局面において不断に、絶えず税と社会保険料における壁の見直しに取り組むべきと考えます。
社会保険料については所管外ということでありますけれども、造詣の深い加藤財務大臣の所見をお伺いしたいというふうに思います。
○加藤国務大臣 委員お話しのように、特に、人手不足が顕在化している中、働き方に中立的な制度を構築し、就業調整を行っている労働者が希望に応じて働くことができる環境づくりを進めていくということは非常に重要だと考えております。
パート等で働く方について、税について申し上げると、所得税の課税が始まることによる御本人の手取りの逆転は生じていない。また、配偶者の扶養に入っている場合についても、控除額を段階的に減少させる配偶者特別控除制度が昭和六十二年に導入されて以降、世帯全体で見た手取りの逆転も生じていない。既に税制を理由として就業調整をする必要のない仕組みとはなっているところでありますが、いろいろな事情の中で、これを一つのいわゆる壁として認識をされる方もいらっしゃる。
こうした仕組みについて、まず、税制においてはこうした形になっているということを、働いている方々また企業の方々双方に正確に御理解いただくことが重要だと考えております。
また、社会保障制度上の壁により就業調整をしている方がいらっしゃることは承知をしております。広く被用者保険を広げていくということも一方で求められているわけでありますけれども、社会保険制度においても、こうした就業調整に対する対応が重要だと考えます。
厚労省においては、年収の壁・支援強化パッケージの実施に加え、今般の年金制度改革における被用者保険の適用拡大を含めた制度対応に向けた検討が行われているものと承知をしております。
冒頭申し上げましたが、就業調整を行っている労働者の方々が希望に応じて働くことができるよう、関係省庁とも連携をしながら総合的に取り組んでいきたいと考えています。
○上田委員 ありがとうございました。
税の世界においてそういったことになっているということを、やはり広く国民に知っていただく必要があるんだろうというふうに思っております。
今ほどの質問とも関連いたしますが、具体的な話に入っていきたいというふうに思います。
今回の税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応として、所得税の様々な見直しの法案として提出されておりますが、その概要と考え方、そしてその必要性について財務省に確認をしたいというふうに思います。
○青木政府参考人 お答えします。
令和七年度の税制改正におきましては、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応として、所得税の基礎控除の額や給与所得控除の最低保障額が定額であることにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題に対応するため、物価動向を踏まえ、基礎控除の額と給与所得控除の最低保障額を十万円ずつ引き上げます。
また、現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘があることから、税制を気にせずに働くことができる仕組みを導入することとしております。
○上田委員 今ほどの答弁の中にもありましたけれども、大学生世帯の子供たちの学生アルバイトに関して、特定扶養控除ということで、給与収入を百五十万まで引き上げるということでありますけれども、もし、数字としてこのくらい増えるだろう、どの程度の人間が就業時間を増加するだろうというふうに見込まれているのか、分かっていたらお願いします。
○青木政府参考人 今回の見直しにおきましては、十九歳から二十二歳までの大学生年代の子などの給与収入が百五十万円以下までである場合には、親などが特定扶養控除と同額の六十三万円の所得控除を受けられ、また、大学生年代の子などの給与収入が百五十万円を超えた場合でも、親などが受けられる控除額が段階的に逓減する仕組みを導入することとしております。
今回の見直しによりまして、内閣府の政府経済見通しにおいて試算をなされておりまして、五十万人程度が就業時間を増加させるものと見込んでおるものと承知しております。
○上田委員 次の質問に行きたいというふうに思います。
今回の所得税法等の改正によって、先ほども本会議場でありましたけれども、給与所得控除、そして基礎控除が引き上げられるという試みであります。しかしながら、その結果として、当然、所得税でありますので源泉徴収をしなければならない、源泉徴収の義務者において、改正によって事務に与える影響が大きいのではないかというふうに思います。
今回の見直しにおいて、企業の源泉徴収事務に与える影響について、財務省としてどのような対応を取ってきたのか。また、これから、まだ当然明確ではありませんので、法案が通ったわけでもございませんので、どのような対応というものを考えておられるのか、財務省の所見を伺いたいと思います。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、基礎控除や給与所得控除を始めとする所得税制の見直しに当たりましては、源泉徴収義務者の事務に与える影響に配慮する必要がございます。
この点について、今般の見直しにおきましては、できる限り早期の物価調整を行うという観点から令和七年分所得から適用することとしながらも、給与に係る源泉徴収については、令和七年分については年末調整時のみの対応とし、毎回の給与支払い時への反映は令和八年分からというふうにしております。
それでも、源泉徴収義務者の方々への御負担は当然ございます。改正法案の成立後、源泉徴収義務者を始めとする関係者の皆様の円滑な準備に資するよう、周知、広報を丁寧に行ってまいりたいというふうに考えております。
○上田委員 今ほどの、給与所得控除と基礎控除、それぞれ十万円ずつ上げるということで、百三万の壁が百二十三万まで引き上げられるという法案であります。しかしながら、その一方で、政党間において更なる引上げに関する政党間協議が行われる場合、そうなると、ますます時期がずれていくことによって企業の源泉徴収事務への影響が出てくるのではないかというふうに考えますけれども、その辺りの財務省の所見を伺いたいというふうに思います。
○青木政府参考人 繰り返しになりますが、所得税制の見直しに当たりましては、源泉徴収義務者の事務に与える影響に配慮する必要があるというふうに考えております。
いわゆる百三万円の壁につきましては、昨年の十二月二十日に三党の幹事長間で、引き続き関係者間で誠実に協議を進めるということが確認されておりますので、合意を踏まえた対応につきまして引き続き政党間で協議が進められていくものと承知しておりますが、その際にも、源泉徴収義務者の事務に与える影響も重要な論点であるというふうに考えております。
○上田委員 さて、百三万の壁の引上げについて、法案では百二十三万ということでありますけれども、現在も政党間協議が行われているということであります。手取りが増えるということは大変結構なことでありましょうけれども、当然、その一方で、地方自治体から、税収はどうなるのかという話をよく聞きます。仮に百三万の壁を百七十八万まで引き上げた場合、結果として国そして地方の大幅な税収減を一体どう対応していくのかという声を聞きます。
今現在、地方自治体においては新年度予算編成の最終局面であって、税収の減少を懸念する自治体の声がありますけれども、その懸念をどのように払拭していくのか、総務省の所見を伺いたいと思います。
○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。
いわゆる百三万円の壁につきましては、個人住民税において、地域社会の会費的な性格や、地方税財源への影響等を総合的に勘案し、給与所得控除や特定扶養控除の見直し等に対応する一方で、基礎控除は据え置くこととしております。また、所得税の見直しによる地方交付税の減収影響についても、令和七年度地方財政計画において適切に地方財源を確保しております。
これらの対応につきまして、全国知事会からは、地方税財源への影響への配慮について深く感謝申し上げるとの声明が出されるなど、地方団体からも一定の評価はいただいたものと考えております。
今後につきましては、十二月二十日、三党の幹事長間で、十二月十一日に合意した内容の実現に向け、引き続き関係者間で誠実に協議を進めることが確認されており、合意を踏まえた対応につきましては政党間で協議が進められていかれるものと承知しており、総務省としても、必要に応じて誠実に対応してまいります。
○上田委員 いわゆる百三万の壁については、税だけではなくて、やはり、民間企業の様々な手当の支給基準にもなっているという話をよく伺います。百三万の壁は、税だけではなくて、むしろ企業の手当の支給基準となっているということの影響も大きいのではないかというふうに思います。
今回の見直しを踏まえて、今後、政府として、それぞれ、経済界に対して、手当等の支給水準を見直す、その働きかけを行う必要があるのではないかというふうに考えますけれども、厚生労働省の所見をお伺いしたいと思います。
○田中政府参考人 お答えいたします。
配偶者の収入要件がある配偶者手当につきましては、配偶者の就業調整の要因の一つになっている、こういう指摘がございます。このため、厚生労働省におきましては、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう労使で話合いを進めていただくべく、配偶者手当の見直し手順や留意事項を分かりやすく示した資料を作成、公表するとともに、それらの資料につきまして、経済団体に、各企業へ周知いただくように働きかけを行ってきたところでございます。
今般の税制の見直しも踏まえまして、今後とも、各企業における配偶者手当の見直しの検討が促進されますように、労使団体への周知等に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
○上田委員 国民負担であるとか国民負担率という言葉をよく聞きます。時には、五公五民だとか、江戸時代のような話も聞くわけでございますけれども、税だけではなくて、今ほどの厚生労働省所管の社会保険料、こういったものも見るということが大切なのではないかというふうに思います。
特に、健康保険であるとか厚生年金保険等において、いわゆる社会保障の給付として、現物給付であるとか現金給付という形で保険料の対価として還元されていますけれども、なかなかその意義というものが伝わっていないのではないかというふうに思います。社会保険料においては、まだ比較的、保険料と給付といった相関関係が分かりやすいわけでありますけれども、税においては、当然、一般財源という形で入ってきますので、受益と負担の関係がなかなか見えにくい部分もあるのではなかろうかというふうに思います。
そうであるがゆえに、やはり国民の方々に納得感を持っていただくということが大切だというふうに思いますけれども、受益と負担の関係について、より国民の方々に御理解をいただき、負担に対して納得感を持っていただくことが重要と考えますが、財務省の所見をお伺いしたいというふうに思います。
○斎藤副大臣 お答えいたします。
受益と負担の関係につきまして国民の皆様に納得感を持っていただくことが重要であるのは、まさに御指摘のとおりでございます。
例えば、我が国の社会保障制度ですが、自助、共助、公助を適切に組み合わせ、負担能力も踏まえて社会保険料を設定しつつ、税財源等も活用し、サービスに見合う形で国民の皆様に御負担をいただいており、これにより、年金、医療などの国民一人一人の多様なニーズに応じた支援等を提供することで、国民皆年金、皆保険という世界に冠たる制度を実現、維持してきていると考えております。
また、例えば、消費税は、全世代型社会保障を支える重要な財源と位置づけられており、その使途を明確化する観点から、消費税法において年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四経費に充てることが明記されているほか、毎年の一般会計予算の予算総則においても、消費税の収入が充てられる経費の範囲を明示し、社会保障四経費にのみ充てられることを示しているところです。
御負担をいただく国民の皆様一人一人に納得感を持っていただくことが重要であると考えておりまして、効率的かつ効果的な予算の策定、執行に引き続き取り組むとともに、公的サービスを支える税、保険料などの意義について国民の皆様の理解や納得感を得られるよう、分かりやすい説明に努めてまいります。
○上田委員 厚生労働省に対して質問させてください。
かつて、予算委員会分科会であるとか、あるいは厚生労働委員会において質問いたしました。再度質問したいというふうに思います。
国民皆保険、皆年金の中で、社会保険料の百六万円、百三十万の壁について、私はかねてから、極めて、税、社会保険料というものは簡素であるべきだ、分かりやすい、そうあるべきだというふうに考えて、シンプルに、期間限定として、百六万、百三十万の壁といったものを上げるのが一番分かりやすいのではないかというふうに訴えてまいりました。
確かに、社会保険料を適用することによって数十年後の年金は増えるかもしれないけれども、今、物価上昇のこの局面にあると、手取りの金額を増やすということが一番大切だ、そうした場合には百六万であるとか百三十万の壁を上げるということが即手取りにつながる、非常に分かりやすいのではないかというふうに思いますけれども、所見をお伺いしたいというふうに思います。
○武藤政府参考人 お答え申し上げます。
厚生労働省といたしましては、短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点から、被用者保険の適用拡大に取り組むことが重要であると考えておりまして、これまでも順次、適用拡大を進めてきたところでございます。
御指摘のあった基準のうち、まず、百六万円の壁として意識される月額八・八万円の基準につきましては、本賃金要件が就業調整の基準として意識されることや、あるいは、最低賃金の引上げに伴い、週所定労働時間二十時間以上とする労働時間要件を満たせば賃金要件を満たす地域や事業所が増加しているということを踏まえまして、次期年金制度改革において撤廃することを検討してございます。
また、百三十万円の基準につきましては、一時的な収入変動があった場合に、事業主証明による柔軟な被扶養者認定を行う取扱いを恒久化することなどを検討しているところでございます。
その上で、これらの基準を引き上げることにつきましては、これまで進めてきた被用者保険の適用拡大の方向と向きが逆になるものでありますので、労働者の所得等の状況によっては被用者保険に加入できなくなる者が増えることでありますとか、国民年金、国民健康保険に加入して自ら保険料を納めている者との公平性の観点からの課題も生じるため、慎重な検討が必要であるというふうに考えてございます。
政府といたしましては、当面の対応策として年収の壁・支援強化パッケージを策定しておりまして、引き続き、多くの事業者にパッケージを活用いただけるよう、様々な機会を捉えて周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。それと併せて、制度的な対応として、被用者保険の適用拡大などについて、引き続き、関係者の御意見を伺いながら、年金改革法案の取りまとめに向けて丁寧に検討してまいりたいと考えております。
○上田委員 終わります。
○井林委員長 次に、中川宏昌君。
○中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。
所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、通告に従い、質問をさせていただきます。
今回、いわゆる百三万円の壁の問題が提起をされまして、政府から、個人所得課税について改正案が出されております。百三万の壁の問題は、様々な課題が絡み合った複雑な問題であります。
現在の税と社会保障の在り方は、昭和三十年代に、サラリーマンのお父さん、専業主婦のお母さん、そして子供が二人という、いわゆる標準家庭というモデルを基につくられてきたものであります。また、一つのおうちに、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、子供たちという三世代での暮らしが多い時代でありました。
しかし、現代は、夫婦共働き、共育て、リモートなど、働き方は昔とは大きく変わっておりますし、孤立して生活をしている御高齢者も多くいらっしゃいます。
そして、この三十年間は、物価が上がらない、金利は上がらない、賃金は上がらないというこの三つのノルムがありましたが、コロナ禍を経まして、様々な要因から物価が上がり、金利がある世界になり、賃金も上がり始めてまいりました。
私は、少子高齢社会の劇的な進捗や人口減少、働き方やエネルギー問題など社会構造の激変を踏まえ、また、財政という大事な観点も入れて、税と社会保障の在り方を再構築するときだと思っております。
今回、百三万の壁の見直しで、現行の基礎控除四十八万円、給与所得控除五十五万円を、基礎控除五十八万円、給与所得控除の最低保障額を六十五万円とし、百三万円の控除を百二十三万円の控除とするとしておりますが、政府の考えにつきまして、何点か質問をさせていただきます。
今回、いろいろな壁について指摘がございますが、所得税の百三万円の壁、厚生年金の百六万円の壁、基礎年金である国民年金の百三十万円の壁、配偶者控除の百五十万の壁、配偶者特別控除の二百一万円の壁等々、議論をされております。今回の政府の提案は、この所得税が課せられる百三万円の壁について、百二十三万にするとのことでありますが、これは何を基準にしているかというところをお伺いするところであります。
国民の皆様にしっかりと御理解をいただくことが重要でありますので、御答弁につきましては、いわゆる一九九五年に設定をされました百三万円と最低賃金の上昇率を根拠とする百七十八万円との比較を交えて、分かりやすく御説明をいただきたいと思います。
○青木政府参考人 お答えいたします。
基礎控除などから成ります所得税の課税最低限につきましては、生計費の観点や公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて、総合的に検討されてきております。特に、基礎控除は原則として全ての納税者の方に適用される控除でございますので、全国の世帯が購入する財の価格などを総合した消費者物価指数が勘案されてまいりました。
今般の改正案におきましても、こうした過去の整理を踏まえまして、消費者物価指数が、最後に基礎控除を引き上げた一九九五年以降一〇%程度上昇し、今後も一定の上昇が見込まれること、また、生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価が二〇%程度上昇していることも勘案しまして、基礎控除の額を約二〇%、十万円引き上げることとしております。あわせて、給与所得控除の最低保障額につきましても、物価上昇への対応などの観点から、同額の十万円を引き上げることとしております。
なお、基礎控除が原則全ての納税者の方に適用されるものであるのに対しまして、最低賃金は給与所得者のごく一部のみの適用があるものでございますので、過去においても基礎控除の額を最低賃金に連動させたことはないというふうに認識しております。
○中川(宏)委員 御説明をいただきました。
今回、百三万の最初の部分で、十二月の人手不足のことが議論をされました。十二月になりますと、所得税の百三万の壁と学生年代の特定扶養控除の壁があり、大学生が働き控えをして、十二月に深刻な人手不足になるということでありました。
この百三万円の壁による年末の人手不足の問題につきまして、大学生について特定扶養控除がどうなるのか、もう一つ、専業主婦についての現行制度も含めて、御説明をいただきたいと思います。
○青木政府参考人 お答え申し上げます。
現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているという指摘がございます。
このため、今回の見直しでは、十九歳から二十二歳までの大学生年代の子などの給与収入が百五十万円以下までである場合には、親などが特定扶養控除と同額の六十三万円の所得控除を受けられ、また、大学生年代の子などの給与収入が百五十万円を超えた場合でも、親などが受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組みを導入したものでございます。
また、パートなどで働きます配偶者の方につきましては、従来より、パートなどで働く配偶者御本人には、所得税の課税が始まることによる手取りの逆転現象というのは生じておりません。また、パートなどで働く方の世帯全体についても、配偶者特別控除制度によりまして世帯の手取りの逆転現象は生じないこととなっておりまして、税制を理由とした就業調整をする必要のない仕組みとなっております。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。
今日は財務金融委員会でありますので、年金については所管外ですが、この百三万円の壁の議論を進めていく際には、年金については避けられない問題であると思っております。
百六万円は、まさに年金の問題であります。この問題は重要でして、線引きが難しい問題として議論をしているわけでありますけれども、一点、確認しておきたいことがあります。それは、誰しも、年を重ねまして、やがて年金をもらうことになります。そのときに、社会保険を払っていればいるほどいただく年金は増えるわけであります。ここの話が結構抜けているように思っております。年金の社会保険料を払うのは大変な負担でありますけれども、これはやがて自分に返ってくる。そういう意味では払い損ではないという部分について、政府からしっかりと御説明を願いたいと思っております。
そして、もう一つですが、この年金につきまして、若い皆さんは、どうせ払っていても自分たちが年金をもらえるときが来たときもらえないんじゃないかと思っている方が多いというのも、これは事実であります。
この年金ですけれども、これからの水準というのもあるかもしれませんけれども、払って、もらえないということはないということにつきまして、政府の見解を求めたいと思います。
○武藤政府参考人 お答え申し上げます。
前半の方の、将来の年金額が増加するなどのメリットがあるではないかという点についてでございます。
年収の壁を越えて被用者保険に加入した場合には保険料負担が発生することとなりますが、その一方で、御指摘のとおり、年金や医療の給付が充実するというメリットがございます。
この点、昨年の財政検証で新たに行いました個人単位の年金額の推計というのがございますが、特に女性の場合、若い世代ほど厚生年金への加入期間が増加するということになりまして、将来年金額が増加していくということが確認されたところでございます。
働く方が、いわゆる年収の壁を意識せず、希望に応じて働くことができる環境を整備していくことが重要でございまして、厚生労働省として、被用者保険に加入することのメリット等について、社会保険適用拡大特設サイトというものを設けておりますが、これらを通じて積極的に周知してまいりたいと考えております。
後段の、若い方に対しても政府はしっかり説明していくべきではないかという点についてでございますが、公的年金制度におきましては、給付につきましては、まず終身であること、かつ、物価等の変動に対応した形で給付が行われるということがございます。さらには、障害年金や遺族年金といった様々なリスクをカバーするということなど、民間保険とは異なる役割を持ってございます。
さらに、二〇〇四年の年金制度改正におきましては、将来世代の過重な負担を回避するという観点から、保険料の上限を固定した上で、その収入の範囲内で給付を行うということとしておりまして、長期的な給付と負担のバランスを確保するマクロ経済スライドの仕組みを導入したということでございます。これによって、我が国の年金制度は将来にわたって持続可能な制度となってございます。
また、年金受給額の見込額の具体的なイメージを持っていただくために、ライフコースの変化に応じて将来の年金受給見込額を簡単に試算できる公的年金シミュレーターの活用を促していきたいというふうに考えておりますし、先ほど申し上げました令和六年財政検証を踏まえた将来の年金額の見通しなどを国民に分かりやすく周知してまいりたいと考えております。
○中川(宏)委員 今、前段、後半といろいろ説明していただきましたが、そういった内容をしっかり周知していくこと、これも非常に大事なことでありますので、更に周知の方法を検討していただきまして、しっかり周知に努めていただきたいと思っております。
先ほどもお話をさせていただきましたが、今回、大学生が、年末に働きたいが百三万円が壁となり働けない、十二月商戦でお店などが働き手がいなくて困っているという声が多く聞かれました。
これは全く私の個人的な見解ですが、ここだけに焦点を当てて対応することであれば、慎重な検討が必要ですが、学生や専業主婦の方、年収が一定以下の人は、十二月に特別に課税しないという特例措置での対応もあったかと思います。しかし、これは様々な課題があります。
根本は、人口減少、少子高齢化、また、二〇三〇年以降は深刻な人手不足になること、認知症の方が一千万人を超えてくること、働き方も変わりまして、また、エネルギー問題、食料問題、安全保障環境の変化など、本当に複雑な、劇的な時代の変化の真っただ中にある日本を考えまして、税と社会保障の在り方を深く議論して、そして、議論から抜けがちな財政ということも重要視しながら、税と社会保障の制度を抜本的に見直していくことが大事だと思っております。
人口構成また経済構造の変化、食料、エネルギー問題、安全保障環境の変化の時代にこれからの税と社会保障の在り方をどうしていくかという点につきまして、財政当局の見解をお伺いしたいと思います。
○斎藤副大臣 中川委員にお答え申し上げます。
今御指摘いただきましたとおり、少子高齢化を始めとする人口構成や経済社会の構造の変化を踏まえまして、税制や社会保障制度を不断に見直していくことは、制度の持続可能性という観点からも非常に重要な課題でございます。
負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合う全世代型社会保障の構築など、税と社会保険料につきましては、相互の関係も踏まえながら検討すべき課題も当然ございますので、両者のあるべき姿については、関係省庁とも連携しながら丁寧な検討に努め、中長期的に持続可能な経済社会を実現してまいりたいと考えてございます。
○中川(宏)委員 次に、今回、外国人旅行者向け免税制度の見直しがありますので、この点につきまして何点かお伺いをさせていただきます。
今回、消費税の外国人旅行者向けの免税制度が、不正排除の観点からリファンド方式に見直しをされます。
昨年は、訪日外国人旅行者の数が約三千六百八十七万人、訪日外国人旅行消費額、これは八・一兆円になりまして、過去最高を記録をいたしました。
インバウンドが増えましたけれども、御案内のとおり、東京など首都圏に集中をしておりまして、政府におかれましても、インバウンドの経済効果を地方へという取組を強化していただいているところでございますが、なお一層、地方経済の押し上げにしっかりとつなげていかなければならないと思っております。
一方で、消費税の免税制度を悪用しまして、免税品を転売する行為や免税店による消費税の不正還付などの不正行為が残念ながら多く起きている現状であります。先般、財務省から伺ったところ、少なくとも、消費税相当額の納付がされることなく滞納となっていた金額が、令和四年、五年の二年間で約三十億円と推計をされておりまして、報道では百億近いのではないかと言われております。
これまでも、対策といたしまして、免税購入の対象者の見直しですとかブローカーへの対策、仕入れ税額控除の変更などはしてきましたけれども、今回、大きく制度を変えまして、リファンド方式にすることによって、これまでの消費税の免税制度を悪用した不正がどう防止されていくのかという点について、まずお伺いをさせていただきます。
○青木政府参考人 お答えいたします。
現在、消費税の免税の適用を受けまして、消費税相当額を支払うことなく国内で購入した物品について、国外に持ち出すことなく国内で転売することで本来負担すべき消費税を免れるという不正利用が確認されております。
リファンド方式におきましては、国内での物品の購入時点では消費税相当額を支払った上で、出国時に税関において購入物品の持ち出し確認を受けることで消費税相当額が返金される仕組みになります。
このため、国内で購入した物品を国外に持ち出すことなく国内で転売するという不正利用を防止する効果があるというふうに考えております。
○中川(宏)委員 このリファンド方式になることについて、知り合いの免税店の方にお話をお伺いしました。小売の免税店で一番大きいメリットは何かとお聞きしたところ、特殊包装が廃止されることとお伺いをいたしました。観光庁が、外国人旅行者や免税店双方に利用しやすい制度にすることで、免税店の負担を軽減しまして消費拡大につなげていくようにとの声を反映したものと伺っております。
また、商業施設や百貨店などでは、課税価格で販売をし、その日に返金する方法を取っていますので、リファンド方式の導入で業務が軽減をされます。いい面もある一方で、リファンド方式の導入で免税店での新たな負担が出るのではないか、こういったお声もお伺いをいたしました。
これは初期費用的なものでありますけれども、現行制度でも行われている、国が管理する免税販売管理システムの購入記録情報の提供は、多くの免税店で承認送信事業者が提供するシステムを使用しております。この承認送信事業者は、今回の改正でシステムの改修を行う、こういうふうに伺っております。この改修にかかった費用が免税店に価格転嫁されることはないでしょうか。また、免税店のPOSシステムの改修も必要となるようであります。
このリファンド方式の導入で、免税店でのメリットは何かということと、デメリットとして免税店に新たな負担が出る可能性があり、これらの免税店に対しまして何かしらの支援が必要だと私は考えますが、この取組につきましてお伺いをさせていただきます。
○青木政府参考人 お答えいたします。
今回のリファンド方式への見直しと併せまして、免税販売要件についても見直しを行うこととしております。
具体的に申しますと、消耗品の特殊包装要件を廃止することで、免税店にとってはそのための資材の調達や手間が不要となります。また、消耗品の購入上限額の廃止によりまして、免税店の売上げが伸びる場合もあるということでございます。こういったことで、免税店にとってもメリットや事務負担の軽減に資するものも多いというふうに考えております。
他方、リファンド方式に対応するために、免税店のPOSシステムの改修が必要となる場合があることも事実でございます。そうした免税店への支援といたしまして、国際観光旅客税収を活用しましたインバウンド受入れ環境整備に係る事業においてシステム改修の支援が可能となっておりますほか、IT導入補助金におきましても、従来から、補助要件に合致する免税制度に対応したITツールを導入する際に支援を受けることが可能な場合もあるというふうに承知しております。
○中川(宏)委員 是非、観光庁、経産省とも連携を取っていただきながら、しっかりとした対応ができるようにお願いをしたいというふうに思っております。
今回のリファンド方式では、外国人旅行者が免税分を受け取るのは、免税品の持ち出しが確認をされた後に、免税店から委託された承認送信事業者から免税購入者に対しまして消費税相当額を国外送金で還付される、このようにお伺いしました。また、財務省にお伺いをしたところ、この国外送金の手数料については免税購入対象者が支払うことになると想定されるということでありました。
手数料につきましては、事業者側が決めることになりますので、市場原理がしっかり働くと思いますけれども、外国人旅行者にとっては大きい話になります。また一方で、旅行客が帰国のときに、持ち出し確認のため、空港での手続、これが時間がかかるのではないかなど、幾つか懸念がある、こういった点もあるようであります。旅行客が不便だと感じてしまいますと、消費行動に影響が出ないか心配されるところであります。
リファンド方式の、今回の見直しで、日本では、外国人旅行者に、新たに還付金の国外送金の手数料や税関での手続等の負担が増えますけれども、この点につきまして、財政当局として、インバウンドの消費行動にどのような影響が出ると見ているのか。この点につきましてお伺いをさせていただきます。
○青木政府参考人 お答えします。
リファンド方式におきましては、出国時に免税購入品の持ち出しが確認されますと、消費税相当額が返金される仕組みでございます。
御指摘のとおり、返金の際に手数料が差し引かれる可能性はございますが、現在の制度におきましても、免税カウンターで免税手続を受ける場合などに手数料が差し引かれる場合もございます。そうしたことから、外国人の旅行者の方にとって、実質的な購入額がこれまでと大きく変わるものではないというふうに考えております。
また、免税手続が電子化されておりますので、旅行者の購入時の手続や出国時の税関における手続はこれまでと大きく変わらないことから、リファンド方式の導入によりましてインバウンド消費が大きな影響を受けるものではないというふうに考えております。
いずれにいたしましても、インバウンド消費の拡大は我が国の観光立国戦略におきまして重要な課題でありますので、リファンド方式の実施に向け、免税店の事務負担軽減、外国人旅行者の利便性向上、空港などでの混雑防止にも十分配慮しながら、引き続き、関係省庁や業界団体と緊密に連携して対応してまいりたいというふうに考えております。
○中川(宏)委員 今回、この見直しですけれども、不正排除の観点からということでリファンド方式が導入されるということで、実際に導入された場合に、空港での混雑対応、また承認送信事業者等のシステムの体制整備など、幾つか課題があるということは先ほど言わせていただきました。
このリファンド方式の導入時期ですけれども、来年の十一月となっております。不正防止の観点で見ますと、これは早期導入が必要かと思いますけれども、この導入時期について、なぜ来年の十一月からなのかという点について、御説明をいただきたいと思います。
○青木政府参考人 お答えします。
不正利用を早期に防止する観点からは、できるだけ速やかにリファンド方式への移行が行われることが望ましいところでございます。
他方で、リファンド方式への移行に当たりましては、免税店などの事業者や国税庁でのシステム改修が必要となり、相応の準備期間、改修内容の見通しが立ってから約一年半超が必要というふうに承知しております。
リファンド方式への移行時期につきましては、こうした免税店などでの準備期間や空港などの混雑防止確保といった観点を踏まえながら検討した結果、令和八年十一月というふうにしておるところでございます。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。
しっかりとこの導入がされるように、十一月ということでございますので、様々な対応をしていただきながら、混乱なきよう導入を進めていただきたい、このように思っているところでございます。
それでは、最後の質問になりますけれども、防衛力強化のための税制改正の重要性について、一点お伺いをしておきたいというふうに思います。
防衛力の強化は、日本を取り巻く安全環境の変化や今の国際情勢の中で考えれば、大変重要な取組であります。強化した防衛力は、将来にわたって維持強化していかなければなりません。そのためにはしっかりとした財源が必要であります。
これから、法人税、所得税、たばこ税などでの財政措置をするわけでありますけれども、これは、防衛省はもとより、財政当局といたしましても、この税制措置につきまして、国民の皆様に丁寧な説明を何度でもしていかなければならないと私は考えます。
防衛力強化のための税制改正の重要性につきまして、財政当局として国民の皆様にどのように説明をされていくのか、最後にお伺いをさせていただきます。
○青木政府参考人 お答えいたします。
安全保障環境が厳しさを増す中、我が国自身の防衛力の抜本的な強化は重要な課題であり、抜本的に強化された防衛力は、将来にわたり維持強化していく必要がございます。
そのために、毎年度約四兆円の追加財源の確保が必要となる中で、約四分の三は、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保など、あらゆる工夫を行うことにより賄うこととしており、それでも足りない約四分の一は、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることとしております。
今回の改正におきましては、法人税、たばこ税の措置の実施時期を決定したほか、所得税については引き続き検討することというふうになっておりますが、税制改正の内容につきまして、財務省のホームページやパンフレットなどを通じた周知活動を行っているところでございますが、今般の防衛力強化に係る税制措置についても、その重要性について、様々な機会を捉え、国民の皆様に丁寧に説明してまいりたいというふうに考えております。
○中川(宏)委員 時間になりましたので終わりにしたいというふうに思いますけれども、日本を取り巻く安全保障環境の変化はもう分かっているとおりでございますけれども、そのためになぜこの財源が必要かということにつきましては、防衛省また財務省としてもしっかり説明をしていっていただきたいとお願いを申し上げます。
時間になりましたので、終わりにします。ありがとうございました。
○井林委員長 次回は、来る十八日火曜日午後三時十五分理事会、午後三時二十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十六分散会