衆議院

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第5号 令和7年2月25日(火曜日)

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令和七年二月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 井林 辰憲君

   理事 大野敬太郎君 理事 国光あやの君

   理事 小林 鷹之君 理事 阿久津幸彦君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 斎藤アレックス君 理事 田中  健君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石田 真敏君    伊藤 達也君

      上田 英俊君    大空 幸星君

      神田 潤一君    草間  剛君

      小池 正昭君    國場幸之助君

      高見 康裕君    田中 和徳君

      土田  慎君    長島 昭久君

      中西 健治君    根本  拓君

      根本 幸典君    平沼正二郎君

      広瀬  建君    福田かおる君

      福原 淳嗣君    古川 禎久君

      牧島かれん君    松本 剛明君

      森下 千里君    山際大志郎君

      安藤じゅん子君    江田 憲司君

      大西 健介君    岡田  悟君

      海江田万里君    川内 博史君

      階   猛君    柴田 勝之君

      末松 義規君    原口 一博君

      水沼 秀幸君    三角 創太君

      矢崎堅太郎君    萩原  佳君

      村上 智信君    岸田 光広君

      中川 宏昌君    西園 勝秀君

      山口 良治君    高井 崇志君

      田村 智子君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       加藤 勝信君

   財務副大臣        横山 信一君

   内閣府大臣政務官     西野 太亮君

   財務大臣政務官      東  国幹君

   財務大臣政務官      土田  慎君

   衆議院事務総長      築山 信彦君

   政府参考人

   (内閣官房令和5年経済対策物価高対応支援、令和4年物価・賃金・生活総合対策世帯給付金及び令和3年経済対策世帯給付金等事業企画室次長)       寺岡 光博君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        北尾 昌也君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  油布 志行君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 清田 浩史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           小谷  敦君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    高村 泰夫君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    土谷 晃浩君

   政府参考人

   (国税庁次長)      小宮 敦史君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            岡田 智裕君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           松原 英憲君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           宿本 尚吾君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     五十嵐 清君

  石田 真敏君     広瀬  建君

  伊藤 達也君     平沼正二郎君

  田中 和徳君     山際大志郎君

  土田  慎君     森下 千里君

  長島 昭久君     福田かおる君

  牧島かれん君     大空 幸星君

  松本 剛明君     根本  拓君

  原口 一博君     柴田 勝之君

  矢崎堅太郎君     安藤じゅん子君

  山口 良治君     西園 勝秀君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     東  国幹君

  大空 幸星君     牧島かれん君

  根本  拓君     松本 剛明君

  平沼正二郎君     神田 潤一君

  広瀬  建君     國場幸之助君

  福田かおる君     長島 昭久君

  森下 千里君     土田  慎君

  山際大志郎君     田中 和徳君

  安藤じゅん子君    矢崎堅太郎君

  柴田 勝之君     原口 一博君

  西園 勝秀君     山口 良治君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     小池 正昭君

  國場幸之助君     石田 真敏君

同日

 辞任         補欠選任

  小池 正昭君     草間  剛君

同日

 辞任         補欠選任

  草間  剛君     高見 康裕君

同日

 辞任         補欠選任

  高見 康裕君     伊藤 達也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

井林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する階猛君外一名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房令和5年経済対策物価高対応支援、令和4年物価・賃金・生活総合対策世帯給付金及び令和3年経済対策世帯給付金等事業企画室次長寺岡光博君、内閣府地方創生推進事務局審議官北尾昌也君、金融庁総合政策局政策立案総括審議官堀本善雄君、企画市場局長油布志行君、監督局長伊藤豊君、総務省大臣官房審議官清田浩史君、大臣官房審議官伊藤正志君、消防庁国民保護・防災部長小谷敦君、財務省主計局次長前田努君、主税局長青木孝徳君、関税局長高村泰夫君、国際局長土谷晃浩君、国税庁次長小宮敦史君、中小企業庁事業環境部長山本和徳君、経営支援部長岡田智裕君、国土交通省大臣官房審議官松原英憲君、大臣官房審議官宿本尚吾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井林委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。江田憲司君。

江田委員 おはようございます。

 まず冒頭、今回の所得税法等の改正案にも盛り込まれておりますグローバルミニマム課税についてお聞きをしたいと思います。

 これは、御案内のとおり、二〇二一年のたしか十月に、百四十か国以上参加してOECDで採択をされたルールでありまして、これでやっと国際的な法人税下げ競争に歯止めがかかるということで、私も画期的な合意だと評価をしているんですけれども、まず簡単に、事務方で結構ですので、このグローバルミニマム課税についてちょっと御説明していただけませんか。

青木政府参考人 お答えします。

 グローバルミニマム課税についてでございますが、いわゆる、先ほどおっしゃっていた国際的な各国の枠組みで決められたもの、二つの柱というのがございまして、そのうちの第二の柱と呼ばれているものでございます。各国で、一五%の税金を法人に対して各国で取るようにそれぞれの国内法を整備して、法人税の引下げ競争みたいなものに対応していくということでございます。

江田委員 であるにもかかわらず、早速、トランプ大統領は、先般、覚書を出しまして、このグローバルミニマム課税から事実上離脱をするということを表明をされました。一月二十日のことでございます。

 具体的には、この国際課税ルールがアメリカで効力を持たないことをOECDに関係閣僚から通知させ、これに基づく何らかの措置が行われる場合は、米国の課税権への侵害とみなして、保護措置のリストを六十日以内に作成するよう、これも関係閣僚に指示したということでございますけれども、これに対する、まず大臣の受け止めをお聞きしたいと思います。

加藤国務大臣 アメリカの動向について、本件も含めてですけれども、必ずしも具体的な中身が明らかになっていないということもあって、予断を持ってコメントすることは差し控えたいと思いますが、今委員御指摘のように、米国政府が国際課税に関する大統領覚書を公表した、このことは承知をしているところでございます。

 グローバルミニマム課税は、国際的に議論してきた仕組み、委員の御指摘のとおりであります、世界各国における税制面での公平な競争条件を確保し、グローバルに活躍する日本企業を後押しするということから、日本政府としても、制度の導入、特に二本目の柱、今主税局長から御説明いたしましたが、行うべきと考えており、今回法案を提出させていただきました。

 なお、引き続き、米国を含めた各国政府と協調し、我が国の立場をよく説明していきたいと考えています。

江田委員 具体的なことが明らかになっていないわけじゃないんですよね。アメリカでは何らの効力もこの合意は持たない、影響力も持たないことを明確にすると言っていまして、関係閣僚に、その旨をOECDに通知すると言っているわけですから、これは明らかに米国がこの国際ルールから離脱をするということでですね。現に前財務官の神田さんが、これを受けて、米国が入らないと全くこの合意は機能しないとまでおっしゃっているんですよ。ちょっと事態の深刻さの認識が足らないんじゃないですか、大臣。

加藤国務大臣 御承知のように、二つ、このグローバルミニマム課税で第一の柱と第二の柱がございます。第一の柱については、委員御承知のとおり、アメリカが賛意を示さなければこれは発効し得ないという状況にあること、このことは我々も十分承知をしております。一方で、今回出させていただいた第二の柱は、各国がそれぞれ対応するということでありますから、別にアメリカの同意がなくても、日本は日本として、既に欧州等では導入されているところでもございますから、これはできる。

 そういった意味で、先ほど御答弁をさせていただいたように、日本として日本企業を後押しする観点から、制度の導入は行うべきということで今回、法案を提出させていただきました。

 ただ、今後これを運用するに当たっては、各国ともよく協調して、また我が国の立場を説明していきたい、こう申し上げたところであります。

江田委員 これは、いずれにせよ、一定規模以上の多国籍企業を対象に、それが、どの国で一五%未満の課税で済まそうとしても、親元の会社の母国のところで一五%まで課税、かけられるということですから、例えばアメリカの多国籍企業についてといえども同じような適用がされるわけで、その点について、トランプ大統領はそこがアメリカの課税権を侵害するということでこういうことをしているわけで。

 そういうことを仮に、それはこの合意の効力は失わないというのは私も分かっています、このグローバルミニマム課税については。しかし、実際問題、アメリカは離脱することになり、かつ、保護措置のリスト、要はある意味でそれに対する報復措置を取るという意思を表明されたわけですからね。実際問題、アメリカという国の関係企業がトランプ政権下においてそういう措置を取ってくるということになれば、実際上の効力が失いかねないという。

 私はもう本当に残念で、せっかく国際的な法人税下げ競争に歯止めをかける、軽課税国への課税逃れを防ぐ、こういった措置が講じられたといっても、それが尻抜けになる可能性があると本当に意識していますので、大臣、アメリカ当局とこの件についてもしっかり意思疎通を図って交渉していただきたいと思うんですが、いかがですか。再度、求めます。

加藤国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、既に我が国からもいろいろな申入れをさせていただいておりますけれども、私の立場においても、我が国の立場あるいは今回のこうした税法の内容も含めてしっかりと説明し、理解を求めるべく、更に努力をしていきたいと考えています。

江田委員 是非よろしくお願いいたします。

 二つ目に、またトランプ政権が発足して懸念されることで、御承知のように、ホワイトハウスが、例の相互関税、トランプ大統領が表明されている相互関税につきまして、その対象条件というものを今月の十三日に発表いたしました。そこには、付加価値税を含む、米国の企業、労働者、消費者に対して貿易相手国が課す不公平、差別的又は域外課税については非関税障壁とみなして、報復関税というか相互関税を適用するということが明確に述べられているんですね。

 日本の場合は消費税ですね。明らかに、この消費税というものを非関税障壁と捉えて、これに対して相互関税をかける。アメリカは御承知のようにセールスタックスですから、これはやはり消費税はかかっておりませんね、全米ベースでは。

 更に言えば、これはヨーロッパも日本もそうですけれども、輸出企業には消費税の輸出還付金というのが交付されているけれども、アメリカはそれがないということで、多分、これは形を変えた輸出補助金だということでトランプ政権は問題視をしているのだろうと私は推測しますけれども、これに対する大臣の認識もまずお答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 御承知のように、我が国の消費税を含む付加価値税は、財やサービスの消費が行われる消費地国で負担を求める税ということでございます。今お話があったように、輸出の場合には、輸出においては免税となった上で、輸出企業において控除し切れなかった仕入れ時に支払った消費税額があれば還付を受ける、一方で、輸入国側で輸入時に課税するという仕組みであります。

 ただ、御指摘のように、アメリカは合衆国レベルでこうした税は導入していないということは確かにあります。しかし、その還付というのはあくまでも、今申し上げた付加価値税の体系の中で、消費地国で負担するという原則にのっとって、輸出されたものに関しては控除し切れなかったものを抜くということでありますから、何か特別の立場を与えているものではない、これはもう既に国際的にもそういう認識をされているところでございます。

 米国政府が表明した相互関税については、先ほど申し上げましたけれども、既に、日本が対象になるべきではないと考えている旨申し入れつつ、意思疎通を行っているところでございます。

 今後、調査して云々という流れになっておりますけれども、明らかになる措置の具体的な内容及び我が国への影響、これを十分に注視しつつ、適宜、日本の立場について必要な説明、また理解を求めるべく努力をしていきたいと考えています。

江田委員 トランプ大統領は、アメリカ・ファーストという旗印の下に、アメリカにとって損か得かということで、かなり強引な理屈をつけて相互関税も含めた対抗措置を講ずるという政権ですからね。確かに、付加価値税、消費税は世界を見渡すと百数十か国が採用した税制ですけれども、そんなことはものかはということで明確に、明示的に付加価値税ということがきた以上は、今後必ず日本にもそう言ってくると思うんですよね。

 日本は一〇%、ヨーロッパはもっと深刻ですよね、ヨーロッパは二五%とかそういう高税率の付加価値税をかけていますから、それに対抗して相互関税をかけるというと、相当な率の報復関税ということになると思いますから、本当に真剣に交渉していただかないと日本も例外にならなくなりますからね。

 具体的に、これに基づいて、アメリカ側から何か言ってきているということはあるんですか、日本政府に。

加藤国務大臣 私の知る限りは、そうした話は聞いておりません。

江田委員 今後、是非、こうした自由貿易を害するようなトランプ政権発足後の様々な二国間、多国間の懸念材料というのがありますけれども、そういうことについては毅然とした対応を取っていただきたいというふうに重ねてお願いしておきたいと思います。

 さて、今日は、なかなか、これまでもやってきたんですけれども、今の日本の財政状況についての認識が私と財務省との間で根本的に違うので、もう一度、復習の意味を込めて、基本論に立ち返ってお聞きをしたいんですね。

 私はもう十数年前から予算委員会等で、前日銀総裁、当時の黒田財務官が書かれた、二〇〇二年当時の国債格付引下げに伴う格付会社への意見、反論文書、今の財務省のホームページに掲載はされているんですけれども、そこで書かれている基本論ですね、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。もう一回言いますよ。日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないという原理原則をここではっきりと述べられているんですけれども、この自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないと書かれた理由を大臣から明確に述べていただきたいと思います。

加藤国務大臣 これは、平成十四年、二〇〇二年ですから、当時、各格付機関が日本の国債を引き下げてきている、これに対して、そうした動きに対する懸念というのが背景にあって出されたものと私は認識をしておりますが、この文書は、格付の理由についてより客観的な説明を求める中で、財政構造改革などの取組や当時の強固なマクロ経済の中では自国通貨建てのデフォルトは考えられないという旨を述べたものというふうに承知をしております。

江田委員 そこが違うんですよ。強固な経済のファンダメンタルズというのは二つ目の理由なんですね。よく読んでくださいね。ここに持っていますけれども、一、二と分かれているんですよ。一が、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。これは、一般理論というか基本原則なんですよ。ファンダメンタルズ云々は二に書いてあるんですよね。そこをはっきり認識していただきたいんですよ。

 これはもう何度聞いても曖昧にされるので、私なりの見解、前も述べましたけれども、なぜこういうふうに書いてあるかというと、まず、ギリシャなんかと違って、アメリカは当然ドル、日本は円、要は自国通貨建ての国債なんですよね。ギリシャが破綻したのは、ユーロ圏ですからユーロ通貨でしょう、ユーロでしょう。自分ではお金が刷れないんですよ。すなわち、通貨発行権を持たないんですよね、ギリシャは。日本やアメリカは、自国通貨建て、自国で要は通貨発行権があるというのが一つ目の理由。二つ目に、徴税権がある。とにかく財政が悪化して返済能力等々に疑問が生じた場合は、当然、日本も国税当局が徴税権で税金を徴収できる。この通貨発行権と徴税権という二つをもって、原理原則、一般論として自国通貨建ての国債のデフォルトは考えられない、そういうふうに黒田財務官というか当時の財務省は書いているという理解ですよ。

 そこはしっかり認識していただいて、次のステップ、経済のファンダメンタルズ論に行くということと私は考えていますけれども、もう一度、大臣の見解を求めます。

加藤国務大臣 政府としても財政再建を含めた構造改革は最重要の課題として取り組んでおり云々という文書は、ちょっと私、要旨しか今手元にないのでありますけれども、そこでも書かれているところというのはまずあると思っております。

 その上で、これらの文書は、財政運営に対する信認が損なわれるような事態が生じれば、金利の上昇等を通じて国債の償還などに様々な影響が生じる可能性まで否定しているものではないと認識をしております。

 当時の財務官であった黒田氏は、その後、日本銀行総裁としてではありますけれども、歴史的な経緯等を踏まえ、財政赤字や債務残高を全く考慮しない財政経済運営を行う場合、ハイパーインフレを生じるため、政府が中長期的な財政の持続可能性を高めつつ、物価安定目標の明確化をすることが重要と述べております。

 通貨発行権や徴税権を前提に自国通貨建てのデフォルトは考えないとした経済財政運営を肯定される見解は、黒田氏においても持たれていないものと考えています。

江田委員 本当に認めないよね、この定性的な理論を。これは今でも通用する定性的な理論ですよ。それをはっきり書いているということは、私ははっきり申し上げたいと思いますよ。

 今みたいな、ああだこうだ曖昧な総合的判断というのは次のステップにもしかしたらあるかもしれない理論だけれども、その点について言うと、配付している資料に、今度は二番目のステップというか理由という、ここに、二〇〇二年当時は、日本経済の強固なファンダメンタルズというふうに評しているわけですよ、二〇〇二年当時の日本の経済状況を、財務省はね。

 その数字を今に当てはめると、ここに配りました、そのファンダメンタルズとは何かというと、日本は世界最大の貯蓄超過国であると財務省は書いているわけですね。当時は千四百十八兆円が、今や二千百四十一兆円。そして、日本は世界最大の経常黒字国。当時は十一・四兆円、直近では二十・六兆円。債権国、対外純資産、百八十兆から、現在は四百十八・六兆円。外貨準備、当時は五十三兆円、今や、今のレートで百八十九・七兆円で、世界最高だ。

 もう格段にファンダメンタルズも強固になっておるわけですよ。どこが財政が破綻するんですか、どこが国債の信認が落ちて金利が急上昇して経済も財政も破綻するんですかと。私が橋本政権で総理にお仕えしているときからずっと財務省は、このままいくと国債の信認が低下する、財政が破綻すると言い続けてきた。あれから三十年、何にも起こっていない。それは、こういうバックグラウンドがあるからでしょう。そこの認識から始めないと。

 私は、もう何度も言いましたけれども、財政規律、財政再建も大事だと思っているんですよ。しかし、政治の責任は、とにかく、今、政策の優先順位は何なのか、今、財政規律や財政再建を叫ぶときなのか、そうじゃないだろう、今なら物価高に苦しむ国民生活を救うことなんじゃないか、守ることなんじゃないか、そのためには財政出動も必要なんじゃないか、減税も必要なんじゃないか、給付金や補助金も必要なんじゃないか、こういった優先順位を判断するのがトップリーダーの責任だと思われませんか、大臣。

 確かに、財務省が財政規律や財政再建を叫ぶのは職責ですよ。しかし、日本の政府の中には、外交、安全保障の論理もある、経済成長の論理もある、社会保障の論理もある、もちろん財政の論理もある。財政の論理を担うのが財務省なんだから、財務省が財政規律、財政再建を訴えるのは、むしろ職責だ。しかし、そういう全体を見渡した上で、今、国民のために、この国のために何が必要なのか、政策の優先順位を決めるのが、トップリーダー、総理大臣の役目なんだと私は思うので、だからそういう意味で私はこういうことをるる申し上げているわけですよ。

 今はもう、財政破綻する、国債の信認が落ちるような状況は全くないじゃないですか。大臣、もう一回見解を。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、この二〇〇二年のペーパーは、当時、外国格付機関が我が国の国債の格付を下げてきた、それに対するいわば反論として出されたものというふうに認識をしておりますし、また、委員御指摘の、じゃ、今がどうなのかといえば、やはり様々な財政の健全化に向けての努力も含めて、我が国の国債は安定的に消化されているという意味においては、そのとおりだというふうに思っています。

 また、政策の運営、もちろん財政の健全化というのも一方で大事な柱ではありますけれども、この石破政権においても、経済あっての財政ということ、これを明確にし、経済の成長をしっかり進める中において財政健全化も図っていく、まさにその両立を図る、こういう形で進めておりますので、委員おっしゃった、物の、ウェートの違いはあるかもしれませんけれども、考え方にそんなに大きな違いはないのではないかなと思っております。

江田委員 経済あっての財政、私もそう思いますよ。だから、こうやってるる申し上げているのでね。

 この裏側に書いてある、これはCDSのスプレッド、これも私は十年以上前からこの数値を出して当時の総理大臣や大臣にも見解を問いただしたことがあるんですけれども、残念ながら、CDSすら知らなかったですよ。本当に残念なことで、CDSも知らずに財政状況を語るなんて、財務大臣も総理大臣も知らないという残念なことがありましたけれども、今は皆さん御存じだと思いますけれどもね。

 クレジット・デフォルト・スワップというのは、簡単に言うと、国債がデフォルトしたときに損失をカバーする保険料みたいなものですね、保証料ね。これはずっと低位安定ですよ、日本は。ここに書いてあるように、G7諸国でもドイツに次いで日本は〇・二三、ドイツが〇・一五。これは低いほど安全ということですよ、国債が。〇・二三%ですよ。百万円の国債を買ったら二千三百円の保険料で全額補填、損失が保証されるんですよ。ギリシャなんかは、事実上、破綻するようなときには二〇〇%や二五〇%まで行っていたんじゃないですか。日本のこの数値がせいぜい高まっても一%ぐらい。

 ずっとこの三十年間、財務省は、国債の信認が落ちて金利が急上昇して財政も経済も破綻すると国民を脅し続けてきたけれども、その間、せいぜい一%、高くても一・五%、今は〇・二四%。ほぼ日本の国債は安全だとみなされて国債市場で取引されているということなんですよ。幾らるる理屈を述べたって、市場は正直、危険な日本の国債をこんな低保証料で取引しませんからね。こういうことで、財務省もやはりしっかりそういうことを率直に認めないからなかなか国民から財務省は信頼されていないと私は非常に懸念しています。

 是非とも、今の財政状況をしっかり認識をされて、加藤さんは財務大臣だから財務省の論理を述べるのはしようがないんだけれども、やはり石破さん、総理大臣たるもの、本当に経済あっての財政だとおっしゃるのなら、国滅びて財務省あり、国滅びて財政ありにならないように、しっかり努めていただきたいと私は思います。

 さて、今、教育の無償化だとか百三万円の壁だとか、いろいろな意味でも財源が必要だ、そうは言ってもという中で、財源論でちょっと幾つか御質問したいんですけれども。

 まず、昨年、為替介入、さっき名前を出させていただいた神田財務官はたしか三度にわたる為替介入をやったと思いますけれども、その総額と、多分そこで差益が顕在化したと思うんですよね、百五十円、百六十円の時代ですから為替介入することによって差益が顕在化したと思うので、その額をちょっと教えていただけませんか。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 令和六年度の為替介入の実績につきましては、四月、五月及び七月に実施いたしました円買い・ドル売り介入の合計額が約十五・三兆円となっております。

 これらの為替介入により生じる売買益につきましては、その金額を明らかにいたしますと、為替介入に伴う個々の取引の内容について様々な臆測を招きまして、市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから、お答えは差し控えさせていただきますが、これらの売買益を含む令和六年度決算剰余金は四・六兆円を見込んでいるところでございます。

江田委員 常にそういう答弁で明かさないんですけれども、大体推測できるんですよね。前回の財務金融委員会で私は、財務省の方から、レートは百四十七円ですけれども、今、百八十九・何兆円の外貨準備がある、含み益は幾らかと聞いたら、四十八兆円あると。それはあるんですよ、百十円当時、介入して、今、百五十、百六十ですから、四十八兆円、含み益があるわけですよ。

 そして、今、十五兆円とおっしゃいましたね、大体、為替介入額が。そうすると、推測するに、大体ドルの、満期になって、ドル国債、償還されている額は、これは答えられて、二十一・五兆円という答弁がありました。その二十一・五兆円ベースで、含み益が六兆円あるんですよ。ということは、三兆、四兆の利益が出ているということですね、新たに。

 平年度ベースよりも三兆、四兆の含み益が顕在化しているということになりますけれども、そのうちの七割とか幾らかは一般会計に繰り入れられるということなんですけれども、これが純増の財源としてあるということはまずはっきり申し上げた上で、私が前回申し上げたことは、いや、米国債を強引に売って為替介入しろとは言っていないんですよね。大体、さっきも言いましたように、二十一・五兆円分のドル国債が満期になって戻ってくるんですよ。それをなぜ円転して新たな財源に使わないんですかということですよね。TB、短期証券を償却した上でも、さっき言ったように、毎年六兆円規模の純差益が数年間にわたり出る。ですから、なぜ使わないのかと。それは為替介入になるからですね。

 これはこういうことですか。実際、円転すると為替市場に何らかの影響を及ぼすから、為替介入類似の効果があるからできないとおっしゃっているんですか。正確にちょっと答弁を求めたいと思います。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 外為特会が保有する外貨資産は、将来の為替介入等に備えて保有しているものでございます。満期を迎えた外貨証券をその都度少しずつ円転する場合でございましても、委員御指摘でございますけれども、外貨準備を取り崩して円貨に替えることは円買い・外貨売りの為替介入と実質的に変わらないことから、規模の大小にかかわらず適当ではないと考えてございます。市場で交換するということでございますので。

江田委員 正式な意味での為替介入じゃないけれども、そういうものは円転すると為替市場に影響するからとはっきり、実質上とかいう言葉でおっしゃいましたけれども、申し訳ないけれども、では、お聞きしますけれども、今後の為替介入のために二百兆円規模で要るんですか。そんな国あるんですか。

 ここははっきりお聞きしたいですけれども、二百兆円規模で外貨準備を持っているというのは、為替リスクもあるわけですよ。今は円安だから差益が出ている。しかし、一時八十円までいったらば為替差損が出るわけでしょう。こんな膨大な為替リスクを抱えながら、何で二百兆円持っているんですか。

 先進国を見てみると、イギリスだって、フランスだって、四分の一、五分の一の規模ですよ。カナダに至っては十分の一の規模ですよ。それはみんな、為替介入をやって膨らんだバランスシートは、平時に市場と対話しながら徐々に売っていくことでバランスシートを圧縮して、為替リスクを回避しているんじゃないですか。何で日本だけ、これだけ膨大な為替リスクを抱えながらこんなことをやっているんですか。その正当化理由を聞きたいんですよ、大臣。

加藤国務大臣 確かに、ここまで積み上がってきている背景には、これまで介入してきた結果としてこれだけの外貨資産を日本が所有しているというのは御指摘のとおりであります。

 どのぐらいの外貨資産を持っておくことが今後の為替介入等において必要なのかという議論、これはいろいろあると思いますけれども、ただ、当時、介入した頃から比べると、取引市場がどんどん大きくなってきている、一日の市場規模もたしか一兆ドルを超えているというふうに記憶をしております、超えているということ、そうしたことを考えると、今ぐらいの規模を持っておく、それから、かつて、これは中国でございましたけれども、かなり為替介入したそのボリューム感、そういったものを持つ、こうした規模を持っておく必要があるというふうに認識をしているところであります。

江田委員 中国だけですよ、そんなこと言っているのは。中国はドルペッグ、ある意味で固定相場制の変形ですけれども。

 いわゆる変動相場制においては為替介入は例外的に、常識じゃないですか。そんなものを二百兆持っているというのは、簡単に言うとアメリカにこびへつらっているとしか言いようがないですよ。本当にアメリカの顔色を見て、とにかく返ってきたドルの償還金をそのまままたドル国債に投資をして、アメリカの機嫌を取っている。こんなロールオーバー、こんなプラクティスをしている国はありませんからね。是非これを是正すれば、毎年六兆円規模で新たな、永久じゃないですよ、少なくとも数年間は六兆円規模で純増の財源が出るということははっきり申し上げたいというふうに思います。

 今いみじくもおっしゃったように、一日の為替取引というのは千兆円規模なんですよ、世界中で。一日ですよ。そのうち、円・ドル為替取引は、言いましたように百三十兆円規模ですから、十分、一年間かけて市場と対話しながら徐々に売っていけば、為替に影響しなくて六兆円が得られるということははっきり申し上げておきます。

 もう時間がなくなってきたので、最後、飛ばして、法人税について聞きたいと思いますけれども、私は従来からずっと、大企業が中小企業よりも法人税を負担していないのはおかしい、やはり、この日本においても担税能力に応じて負担能力の高い人から税金を取るというのが原則だと。

 にもかかわらず、自民党政治がつくってきた各種政策、減税措置によって、某携帯電話会社は、日経新聞が一面トップで書くように、繰り返す法人税ゼロ、一兆数千億円も利益を上げている企業が法人税を一円も払っていない、こういった事態を招来しているわけでありますけれども、こうした事態を、例えば、規模別に累進税率を導入して、超大企業には四〇%の税率にする、一方で中小企業は一〇%の税率で減税にする、こういった担税能力に応じた負担体系をつくっていけば、十兆円内外の新たな恒久財源が出ると訴えてきました。

 今日はこの話は前提として置いただけで申し上げますと、法人税増税をすると途端に出てくるのが、賃上げの足を引っ張るという議論なんですよ。これは都市伝説でして、経営者の方に聞いてください。今まで、とにかく法人税をどんどんどんどん下げてきたから、ああ、この程度の税率だったら利益を残してもいいな、だからもう賃上げもしない、設備投資もしない、逆に法人増税をすると、税金を取られるぐらいなら自社の設備投資、未来を切り開く設備投資をしよう、自社の社員の給料を上げようというのが普通なんですね。

 ですから、決して、法人増税は賃上げの足を引っ張ることはないし、少なくとも中立だと私は思っているんですけれども、大臣の見解を聞きたいと思います。

加藤国務大臣 我が国が法人税率を下げてきたのは、最初の国際課税とも絡む話でありますけれども、世界各国、法人税の税率を引き下げる、いわば競争みたいなことが起きてきている、そういった中で、我が国の企業を守るという意味においても法人税の引下げを図ってきたという経緯は確かにあります。

 しかし、一方で、そうした法人税を引き下げることによって我が国企業が設備投資や賃上げをしていくということを期待をしていたわけでありますが、残念ながら、その期待が果たされたのかというと、いろいろな経済要件もあったとは思いますが、結果だけ見ると必ずしもそうではない。

 そういった中で、今後の法人税の在り方については、与党税制改正大綱で、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、めり張りのある法人税体系を構築していくとされているところでございますので、政府としては、そうした考え方あるいは経済情勢変化、国際的な動向を踏まえながら、不断の見直しをしていく必要があると認識をしています。

江田委員 時間になりましたから最後にしますが、まさに今御指摘の与党の税制改革大綱でも、今後めり張りをつけた法人税増税について取り組むと書いてありますから、是非、私が申し上げた制度改革も含めて、前向きに、別に大企業をいじめるというんじゃないんですから、本当に、応分の負担をしてください、それで財源を生み出して社会保障の財源にしていく、教育の無償化の財源にしていく、そういったことを私は申し上げているので、是非前向きに取り組んで、具体的な成果を大臣に求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

井林委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私も通告させていただいておりますが、江田憲司議員と重なっているところはちょっと短めに、ないしは省略をしつつ、一方で、江田憲司議員が先ほど通告していながら質問できなかったところは拾わせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず最初に、昨年六月の所得税の定額減税、このことについてお尋ねをいたします。

 昨年六月に実施をした定額減税についてですが、源泉徴収事業者の給与担当者や税理士の方から、大きな負担だ、どうしてこんなに面倒なことをやらなきゃいけないのか、給付ならこんな面倒なことにならなかったのに、こういう怨嗟の声をたくさんいただきました。現場に多大なる事務負担をかけてしまうことは、財務省は、やる前から当然分かっていたことだと思います。

 その証拠としまして、資料一、お示しをしております。

 これは衆議院の経済産業委員会、二〇二〇年四月十五日の議事録でございます。このときはコロナ感染症の初期の頃でございまして、給付なのか、それとも減税なのか、こういう論争がございました。当時、住澤整官房審議官、官房審議官というのは主税局の審議官でございますね、後に主税局長になり、そして国税庁長官も務められた、この方の答弁であります。このときの答弁として、源泉徴収義務者において減税を実施していくためには、システムの改修を始めとした多大な事務負担、こういうのがある、こういうふうに、もうこのとき答弁しているわけなんですよ。

 しかし、多大なる事務負担があると分かっていながらやっちゃったというのは、これはもう確信犯で、非常に罪が重いと私は思います。さらに、給与明細で減税額の記載を義務づけるなど、政権が国民に恩を着せるために、その負担を現場に強いたということでもございます。

 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、私が聞いている昨年六月の定額減税に関する、大変だった、勘弁してくれ、こういう怨嗟の声、これを財務省及び国税庁ではどのように把握をされていますでしょうか。私は、現場に多大なる負担をかけたことに対する反省があってしかるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、源泉徴収義務者の方々を始めとする企業等の皆さんに多くの事務負担をお願いすることになった点、これは財務省としても十分認識をしておりますし、この場もおかりして、こうして御協力をいただいた各方面の皆さん方にはお礼を申し上げたいというふうに思います。

 また、今回の減税に関しては、様々な御質問、御意見もいただいております。コールセンターを通じて把握したものも含めて、しっかりと分析をし、今後の政策立案にも活用していきたいというふうに考えております。

櫻井委員 現場の方にお礼を言っていただくのはいいんですけれども、やはり、これは御迷惑をかけたわけですから、ごめんなさいの一言があっていいんじゃないでしょうか。

 それから、こんな面倒くさいこと、現場にとっては一円の利益にもならないわけですよね。むしろ、労働生産性が下がっちゃうわけですよ。政府は賃上げのために労働生産性を上げろ、上げろと言っているのに、一方で、政府の方が足を引っ張る、労働生産性を引き下げるようなことをやっていたら、賃上げだってなかなかしんどくなってきますよ。やはり、二度とやらないということを、しっかりと反省をしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、今回議論になっております、基礎控除、給与所得控除の引上げに伴う減税額についてお尋ねをいたします。

 今般の国会に上程されております所得税法等の改正案において、基礎控除額、給与所得控除額の引上げが提案をされております。

 そこで、まず、事実関係をお尋ねをいたします。

 所得階層ごとの、例えば、給与の額面で二百五十万円、五百万円、一千万円、二千万円の場合、それぞれ減税額は幾らになるのか、教えていただけますでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 二月四日に提出しました税制改正法案におけます基礎控除、給与所得控除の最低保障額の引上げに伴う減税額でございます。

 単身の給与所得者について、一定の社会保険料が控除されるものと仮定した上で、いずれも所得税と復興特別所得税の合計で、給与額面が二百五十万円の場合は約〇・五万円、五百万円の場合は約一・〇万円、一千万円の場合は約二・〇万円、二千万円の場合は約三・四万円となります。

櫻井委員 今御答弁いただきましたけれども、実はあらかじめ財務省にもお問合せをさせていただいておりまして、資料二ということでつけております。

 ここにありますとおり、やはり所得が多くなる方が減税額が大きくなるわけですね。それはそうですよね。累進税ですから、税率が高くなっていく人ほど、同じ十万円の控除でも、それ掛ける五%なのか、我々国会議員、そのほかに収入がなければ二千万超ということになりますから、三三%プラスの復興税なので大体三四%ぐらいになりますでしょうか、だから十万円掛ける三四%で三万四千円、こういうふうになるわけなんです。

 年収二百万、三百万の方が減税額は五千円です。でも年収二千万の方はその七倍ぐらいの三万四千円です。これはやはり金持ち減税と。テレビの報道なんかを見ていますと、二千万の人が幾ら減税になるかというのは余り報道されていないんですけれども、これは調べれば分かることですから、いや、こんなに差があるの、金持ちにはこんなに手厚い減税になるのというふうに国民の皆さんに知られたら、あれっと。しかも、一番減税額が大きくなりそうなところ、我々国会議員はちょうどその辺りですよね。主税局長もいらっしゃっていますけれども、主税局長もかなりこの恩恵を受ける側に立っちゃうわけですよね。何か、国会議員の国会議員による国会議員のための減税じゃないか、こんなふうに言われかねないんじゃないのかな、こんなふうにも心配をするんですけれども。

 大臣、いかがですか、これは。金持ち減税じゃないですか。

加藤国務大臣 確かに、この数字だけ見ればそうですが、他方で、一体この人たちがどれだけの税金を払っているのか、そこもしっかり見ていく必要がありますし、また、今回の基礎控除については、御承知のように、物価が上がっていく中において、基礎控除額は定額でありますから、結果として実質増税につながっていく、そこを解消する、こういったところで、物価上昇あるいは基礎的な物価というんでしょうか、そういったものの動向、これを見ながら、今回、基礎控除については十万円の引上げをさせていただいたというところであります。

櫻井委員 今、物価上昇とおっしゃいましたけれども、物価の中で一番上がっているのは食料品ですよ。これはやはり低所得の方に、エンゲル係数とよく言われますけれども、低所得者の方がよりこの物価高が直撃しているわけですよね。なのに、低所得の方には手薄く、そして高所得の方には手厚く減税をしてしまう。やはり、控除というやり方でやろうとするからこういう問題が起きてくるんじゃないでしょうか。本来であれば、給付つきの税額控除ということの方が皆さん平等にということになりますから、そっちの方がよっぽどいいと私は思いますし、少なくとも、それが技術的に事務的にまだちょっとできないということであれば、例えば食料品の消費税をゼロにするとか、こっちの方がよっぽど庶民のための減税になるんじゃないでしょうかね。

 これは、江田憲司議員から通告があったので、ちょっと大臣にもお尋ねをしたいんですが、今回のこのような金持ち減税よりも、食料品消費税ゼロ、こうした庶民のための減税の方が私はいいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 議員の今おっしゃった給付つき税額控除の話は、今やると、冒頭もおっしゃられた問題がそもそも顕在化するということなんですよね。だから我々、今回はということでいろいろ御負担をおかけした、こういう話をさせていただいたんじゃないかなというふうにまず認識をしています。

 それから、今回のはあくまでも、要するに、インフレの中において、それを調整しようということであります。定額だからこういうことが起きる。例えば消費税でいえば、消費額が増えることに応じて比率は一緒で増えていくわけでありますから、それは必ずしも同じではないというふうに考えているところでございます。

 一方で、消費税減税の話はいろいろ頂戴をしているところでありますけれども、総理も申し上げているように、社会保障全体を支える大事な財源ということで、それを減税することは適切ではないというふうに考えているところであります。

櫻井委員 給付つき税額控除、これは現場の事務負担になるんじゃないのかという御答弁だと思いますけれども、そうなんですよ。だから、やるのであれば十分な期間を置いてということと、もう一つ大事なのは、ワンショットじゃなくて恒久的にやるんですということであれば、それは、一回限りで将来にわたってその便益が及ぶわけですから、そうではない。ただ、昨年六月の定額減税はワンショットだったから、何で一回限りのことにこんなことをするんだったのか、こういう批判があるわけなので、一緒に議論されてしまうと、私はそれは違うというふうに思います。

 食料品だったら、その分、やはり食料品であったとしても消費額は高所得の方の方が多いというのは確かにそうですので、そうすると恩恵も高所得の方の方がちょっと多いんじゃないのかということはそうですが、とはいえ、エンゲル係数は低所得の方の方が大きいわけですから、所得税は累進的に上がっていくけれども、食料品については比率でいけば頭打ちになっていくわけなので、そこはやはり、まだましな方法ではないのかな、こういうことも申し上げておきます。

 ちょっと次の質問の方に移らせていただきます。

 今回、租税特別措置の適用状況の透明化ということも議題になっております。これは議員立法の提案者の方に御質問させていただきます。

 石破総理は、企業による政治献金について、禁止より公開ということを繰り返し発言をされております。この理屈に基づきますと、企業の負担である方の政治献金、これを公開していくということももちろん大事なことですけれども、それと併せて、企業がどんな便益を政策的に受けているのか、こちらについても公開されるべきというふうに考えます。

 資料三におつけしております、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書で、参考例として十八ページをつけておりますけれども、これの中ほどの方を見ますと、例えば、上から三つ目のところ、四十二条の十に該当する部分については、令和五年度のところを見ますと一件だけあって、それで、これで十五億円の適用額があるというふうな形で、一社で十五億円というのはすごいな、一体どんな会社なんだろう、何か裏があるのか、こういうふうにいろいろ勘ぐってしまうわけなんですよね。あらぬ勘ぐりを受けないようにするためにも、公平に、透明にやっているんですよというふうなことをしっかりと明らかにしていくためにも、やはりこうしたことについてもしっかり明らかにしていく必要があるのではないのか、こんなふうにも考えます。

 そこで、提案者に質問させていただきます。

 今回の、租税特別措置透明化法を改正して法人税関係特別措置ごとの高額適用額に係る法人の名称を国会の報告義務とする意義について、御説明をお願いいたします。

大西(健)委員 櫻井委員にお答えをいたします。

 我々の修正案では、国民の税制への信頼向上の見地から、企業・団体献金によって租税特別措置がゆがめられていないかを検証可能とするために、いわゆる租特透明化法を改正し、法人税関係の租特ごとの高額適用額に係る法人の名称についても国会報告事項の対象とするものであります。

 石破総理は、先ほど委員からも御指摘ありましたけれども、企業・団体献金で自民党が政治をゆがめたとは思っていないということを述べられておりますけれども、櫻井委員の御質問のとおり、企業の負担たる政治献金と企業の便益たる政治優遇の二つの実態が明らかになることで、初めて政治をゆがめていないかどうかということの検証が可能になるというふうに思います。逆に言えば、ゆがめた、ゆがめていない以前に、まだ検証可能な状況にすらないのが現状であります。

 我々は、企業・団体献金について、透明化ではなく禁止を求める立場ではありますけれども、石破総理が献金により政治がゆがめられていないと言うのであれば、少なくとも、企業の政治優遇たる租特によりどの企業が恩恵を受けているのかを可視化すべきだというふうに考えております。

 なぜここまで可視化の必要性を強調しているかといえば、先ほど委員からは一件で十億円という事例も御紹介いただきましたけれども、やはり、問題があるというものが、疑われる事例があるからだというふうに思っております。

 現状、租特が適用される企業の名称が分からず、検証の土俵にすら乗せられていないとはいえ、工夫をして検証を試みた例を申し上げますと、産業単位で集計を試みた二〇二一年四月二十二日付の東京新聞の記事では、減税額が大きい企業ほど自民党への献金額が多い傾向も判明していると指摘をされております。すなわち、やはり実際に献金により政治がゆがめられている可能性が疑われるわけであります。

 何度も申し上げますが、具体的にどの企業や団体が租特の恩恵を受けているのか分からなければ、企業・団体献金により、献金企業に対して政治の政策優遇を通して便益を図っているかを検証することすらできないのであります。本当に企業・団体献金が政治をゆがめていないというのであれば、その証明のためにも、租特が適用されている企業の実名を公表する必要があると考えております。それが相当な額の減税を与えることの国民に対する説明責任ではないかと考えております。

 以上です。

櫻井委員 御答弁ありがとうございます。

 減税だと企業名が公表されない、でも補助金だったら企業名は公表される、これも、効果としては同じなんですけれども、一方は公表しないというのはいかにもバランスが悪い、このようにも考えますので、是非この点についても委員の皆さんの御賛同をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、いわゆる一億円の壁についてもお尋ねをいたします。これも議員立法の方で、提案者にお尋ねをいたします。

 資料四をつけております。この資料、もう何度も国会で出てきているもので、非常に有名なグラフになっております。

 そして、岸田前総理もそして石破総理も、自民党の総裁選挙のときには、この一億円の壁、問題だ、これを解消するんだ、こういうふうに主張されておりました。しかし、現時点において、これを解消していこうという道筋は全然見えてまいりません。

 一億円の壁は全然見えないですけれども、岸田総理は三十億円の壁は何とかみたいなこともございましたけれども、しかし、それでは全然、対象になる方が非常に少ないわけでございまして、やはり、ちゃんと一億円の壁、しっかり真正面から取り組んでいく、そのことが必要だと考えるんですが、今の政権、石破内閣、そして前の岸田内閣、共にこうした自覚、そして能力が欠如していたのではないのか、こんなふうに思わざるを得ません。

 そこで、提案者にお尋ねをいたします。

 修正案では金融所得への累進課税導入を提案されておりますけれども、この一億円の壁問題の解消への効果はどのようにお考えでしょうか。

階委員 櫻井委員の質問にお答えします。

 一億円の壁という問題、委員御指摘のとおり、一億円を超えたところで所得税の負担率が下がってくるということでありまして、これも委員が御指摘のとおり、一昨年ですか、三十億円のところでは少し税率を見直したということがありました。しかし、これではまだまだ足りないということで、一億円を境に実効税率が下がってくるところ、これを解決していかなくてはいけない。そのために、まずは累進課税を金融所得にも導入したらどうかということが私たちの提案でございます。

 この累進課税を、今一律二〇%なんですけれども、どこからその二〇%よりも上の税率を適用していくかというところが、非常に微妙なところがあります。というのは、中間層におきましては、今NISAもありまして、こうした方々については、むしろ資産形成を促進していくということも考えなくてはなりません。したがって、余り低い金融所得の方々から累進課税で二〇を上回る税率を適用していくとなると、これは一つ問題なわけです。そこで、やはり一億円に近いところから累進課税を適用していくというのがいいのではないかということがあります。

 今回の提案というのは、まさに一億円の壁を越えて実効税率が下がるところ、ここを問題にして解決をしようというものですけれども、ここから先はまだ党内でも考え中のところなんですが、むしろ、金融所得課税はほかの所得と合算した総合課税にも移行すべきではないかというような議論もありまして、累進課税の先にはそうしたことも我々は視野に入れていく。

 総合課税を行うとどういうことがいいかといいますと、所得がうんと低い人、例えば所得が二百万の人は所得税が一〇%です。でも、金融所得は別途、独立で二〇%かかってくるということなわけでして、所得がうんと低い人になればなるほど、この金融所得課税の分離して二〇%というところが逆進的になっている。

 総合課税にすることによって、こうした方々も、合算するので一〇%ぐらいの課税で済むということになれば、なお一層、負担能力に応じた課税が実現できるということで、まずは累進課税、その後、総合課税ということについても検討していこうということで、今申し上げた累進課税については、これから一年ぐらいの間で、先ほど言った、どこから二〇%より上の税率を適用していくかということを詳細に検討した上で、具体的に制度設計をして運用に移していこうというふうに考えております。

 以上です。

櫻井委員 ありがとうございます。

 非常に、一億円の壁の問題について、これまでの政権、岸田内閣、石破内閣はなかなか手をつけられなかったところをしっかり切り込んでいこうということで、すばらしい提案だというふうに思います。

 続きまして、外為特会についてお尋ねをいたします。先ほど江田憲司議員からるる質問が取り上げられていたわけなんですけれども、私の方からは、もう少しマイルドな、その手前の話をちょっとさせていただきます。

 資料五につけておりますとおり、これは貸借対照表で、資料六の方は、これは報道資料ということで、二〇一〇年の十二月に財務省が出しているということで、これは、民主党政権時代にいわゆる事業仕分をいろいろやったときに、外為特会の在り方についてももう一回見直しましょうということで、このときに新たにルールを作ったわけでございます。ただ、それ以降、また大分事情も変わっておりますので、このとき、野田佳彦財務大臣のときに作ったわけなんですけれども、やはりそこから随分事情も変わっているので、もう一度見直す必要があるのではないのかということで、提案をさせていただきます。

 この資料六に示しておりますとおり、毎年度の外為特会の剰余金、これは三〇%以上というか、実際三〇%ですね、を留保して、残りを一般会計に繰り入れるというようなことをやっている。

 その理由として、負債が総資産の七割を下回っているから、こういうふうに言うんですけれども、じゃ、実際見てみるとどうなのか。この為替評価益を含めた資産を見れば、七割を上回っているわけなんですね。総資産は約二百兆円あるわけなんですけれども、その七割というと百四十兆円ですから、もう既に上回っているわけなんですよ。だから、そう考えれば留保する必要はないと私は考えるんですが、財務省の理屈では、この為替評価益、四十兆円あるのを、これを差し引いて百六十兆というふうに資産を見て、掛けるの七割とすると百二十兆に届かないからということで、まだ繰り入れるんだ、こういうふうに言っているわけなんです。

 でも、今の財政状況、それから今のこのバランスシートの状況を見ますと、わざわざ三〇%も留保する必要はないんじゃないのか、これも一般会計に繰り入れたらいいんじゃないのか、こういうふうに考えるわけなんですが、大臣、いかがでしょうか。これぐらいはいいんじゃないですか。

加藤国務大臣 端的には、委員お示しいただいた資料五で、令和三年は為替評価損が出ているんですね。それが、令和六年三月には確かに為替評価益が四十兆円になっている。まさに、その為替評価損益というのは為替レートによって相当大きく変動するわけでありますから、これをもって財務の健全性や一般会計への繰入れを判断するということが適切なのかという問題があるというふうに思っています。

櫻井委員 これは、要は円安がこれだけ進んだということで、百四円から百四十七円へ進んだ。今も百五十円前後で推移しているわけなんですけれども、今の、昨今の状況から見て、じゃ、円高に戻っていくのかというと、なかなかそういう状況ではないし、円が強いときは、別に外為特会はそんな出動する機会というか、外為特会って元々通貨防衛のためにあるわけなんですよね、自国通貨が強いときは別にそんな出番は出てこないわけなんですから、そこまで気にする必要があるのかということなんですよ。先ほど江田憲司議員からもありましたけれども、変動相場制を採用している国でこれほどの規模を持っている国もないわけなので、ですから、これはもう残りの三割も繰り入れたらどうかということも併せて申し上げておきます。

 あと、そもそも歴史を見ますと、日本はずっと円高で苦しんできた経過があって、そのときに、さすがに八十円とかになったら大変だからということで為替介入をやってきた。その間に積み上がってきたわけなんですけれども、その積み上がってきたドル資産を円に戻しちゃうとまた円高に振れちゃうから、それはまずいというので、ずっと抱え込んできたんだろうというふうに思います。ただ、今はもう時代は変わって円安局面で、円安で輸入物価が上がって、それは国民生活が大変だと言っているときに、ここまでため込んでおく必要があるんですかということも併せて申し上げたい。

 取り崩すときに、先ほど江田憲司議員からもありましたけれども、負債の方に政府短期証券を積み増しをして、それでその額を引き出すというようなことをやっていますけれども、そんなことをしていると、ますます負債の方が膨らんでしまって、それでまたいわゆる為替リスクをどんどん増やすことになってしまうんですよね。このバランスシートをもう少し圧縮するようなことも含めて考えるべきではないのかということを、ちょっと提案をさせていただきます。

 ちょっと時間が残り少なくなってきまして、あと二問ありますけれども、その二問については、BEPSの話とトランプ政権の消費税の見方というのは先ほど江田議員から質問が取り上げられておりますので、江田議員が取り上げなかった賃上げ税制についてちょっと質問させていただきます。

 賃上げ税制について、これは大体七千億円規模のものになっていますけれども、政策効果はどうなんでしょうか。

 これは財務省が、たしか去年、この政策効果について、おととしですかね、いろいろ調べておられたというのは承知をしております。この政策効果は確認できなかったというふうになっているわけなんです。そのメカニズムとしては、もうかった企業が賃上げをしました。それは輸出企業は円安ですからぼろもうけですよね。それで、だから賃上げしましょう、人手不足だし、人材確保のためにということで賃上げするんでしょうけれども、そうしたら何と減税までついてきた、何とおいしいことか、こういうことなんだろうと思います。

 ですから、この減税、七千億円もやっていて政策効果は確認できないというものを続けていくんでしょうか。もし政策効果があるとおっしゃるんだったら、岸田政権以来、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングとおっしゃっておられるわけですから、是非このエビデンスを示していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 その前に、外為の話をされていましたけれども、ちょっと混乱していて、要するに、内部留保益、これは円になっていますから、ここはもう既に確保されているわけでありまして、トータルのやつは外貨建てになっているのでこれは動いていくということと、それから、円高の局面だけではなくて円安の局面でも確かにこの間介入をさせていただきましたから、それはどっちにおいても対応しなきゃいけないということは是非申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、今、賃上げ促進税制のことでございましたけれども、確かに、企業が支払う賃金は賃上げ分を含めて全額が損金算入できているわけでありまして、その中で、構造的な、持続的な賃上げの動きを広げていくことが日本経済が成長と分配の好循環を果たしていく上で欠かすことができないとの認識の下、賃上げを思い切って後押しをするための異例の措置として講じたというのは御指摘のとおりでありまして、異例の措置である以上はしっかりその効果を検証していかなきゃいけないとは思っております。

 ただ他方で、経済全体の中で税制の効果だけ取り出して賃上げ判断への影響などを定量的に測ることは、これは大変難しいことだと認識をしております。

 令和六年度税制改正における賃上げ促進税制の見直しに当たっては、有識者の方々からの助言などを踏まえて、令和四年度の申告事績に基づき、現行の税制の政策効果についての統計的、計量的に検証をした結果、例えば、一定の大企業について、既存の控除率の引下げや、より高い賃上げ率の要件を設けるなどの見直しを行ってきたところでございます。

 今後の賃上げ促進税制の在り方については、今年の春闘の結果、あるいは年末にかけて明らかになってくる令和六年度の適用実態なども踏まえて、実効的な効果検証を実施した上で、今後、要望省庁などともよく協議をしながら、中身を検討していきたいと考えています。

櫻井委員 効果を今後とも検証していきたいとおっしゃいますけれども、これはもう十年以上やっているわけですよね。十年以上やっていて、まだ効果が検証できていない。だから、やはり政策効果はないんじゃないんですか。

 賃上げという目的はすばらしいんですよ、目的はすばらしいけれども、それをこの税制という手段でやるのが適当なのかどうなのか。日本の政策一般を見ましても、目的はすばらしいけれども、手段として全然適当じゃない、効果も上がっていないということがたくさんあるように思えてならないんですよ。その象徴がこれじゃないのかなというふうにも思うものですから。

 ほかの手段、例えば、給料が上がらない、特に低額所得の方で給料が上がらない、それは、年収の壁と言われる百六万円とか百三十万円、こういったところが一つ壁になっているんだったら、これを何とか撤廃する方向にこの七千億円を使った方がよっぽど賃上げ効果はあると思うんですよ。そういったことも含めて、是非御検討いただきたいというふうに思います。

 最後に、BEPSについてちょっとお伺いをいたします。

 資料をせっかく持ってまいりましたので、資料七になります。これはトランプ大統領の大統領令ですね、こういうのがついていて、これも就任のその日にされているわけなんです。

 二〇一五年三月十六日の参議院予算委員会、BEPSについて議論がありました。このとき、安倍総理は、租税回避ができるのは多国籍企業であり巨大な企業、日本の中でこつこつ頑張っている企業はそういう仕組みをとても活用することができない、正直者がばかを見てはならない、このように答弁をされているわけなんです。

 安倍総理のこの答弁、全く私はそのとおりだと思いますし、加えて申し上げるなら、やはりこのBEPSというのは、世界各国で法人税の引下げ競争もあった、その中で、法人税の引下げ競争をやれば、各国とも結局財政が厳しくなってしまって、いろいろな行政サービスに支障が出てくるということで、そういったことはなくしていきましょう、こういうことも一つ大きな理由だったというふうに思います。

 アメリカは実質的に離脱する動きを見せている中で、今後、BEPSの実効性を持たせるために、大臣、どのように進めていかれますでしょうか。最後に御答弁をお願いいたします。

加藤国務大臣 先ほど江田委員ともお話をさせていただきました。今回、先月、米国政府が国際課税に関する大統領覚書を公表したということ、これは我々もよく承知をしているところであります。

 その上で、我が国としては、今後、米国も含めて各国政府と協調し、今回、我が国はこうして法案も提出をさせていただいていますが、そうしたことも含めて、こうした対応の必要性、こういったことについてもよく説明していきたいと考えております。

櫻井委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

井林委員長 次に、矢崎堅太郎君。

矢崎委員 立憲民主党、千葉県第五区から選出をいただいております矢崎堅太郎です。

 今回も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、原案並びに修正案に対して大きく五問質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、一問目でありますけれども、ガソリン税等の当分の間税率についてお伺いをしたいというふうに思います。

 ガソリンの価格ですけれども、皆様も御存じといいますか、御案内のとおり、なかなか下がってまいりません。この結果として、やはり物流コストが上がって、それが価格に転嫁をされて物の値段が上がる、そしてまた国民の皆さんもガソリンを使うに当たっては高い値段で購入しなければならないということで、非常に家計を圧迫しているわけであります。この税率について、野党は廃止を求めているわけであります。

 先週、予算委員会でも、我が党の野田代表と石破総理とこの点について議論がありました。残念ながら、石破総理からは前向きな御答弁はなかったわけでありますけれども。

 そこで、加藤大臣にまずお伺いしたいんですけれども、野党の提案がある中で、なかなかこの税率廃止に踏み切れない理由についてお伺いさせていただければと思います。

加藤国務大臣 まず、ガソリン価格について申し上げれば、やはり世界市場の動向、それに加えて為替の動向等もあった結果として、今非常に高い水準になってきている。これに対して、我々政府としても、物価高騰を抑制するという観点からも、別途、補助金というんでしょうかね、を出させていただきながら、今、大体百八十五円のところで推移するように運用させていただいている。

 一方でそれをさせていただきながら、他方で、ガソリンの暫定税率の廃止については、自民、公明、国民民主、三党間で協議が行われているところでございますので、政党間の協議の具体的な内容について今政府としてお答えするのは差し控えさせていただいているところでございます。

 他方で、揮発油税等について暫定税率が廃止された場合、国、地方合わせて毎年約一・五兆円の税収が恒久的に失われることが見込まれているところでございますので、現下の財政事情を踏まえますと、国及び地方に生じるこうした恒久的な税収にどう対応していくかは大事な論点であると考えているところでございます。

 政府としては、政党間の協議の結果を踏まえて、先ほど申し上げたように適切に対応していきたいと考えています。

矢崎委員 今大臣から御答弁いただいて、約一兆五千億円必要になるというところで、なかなか、その財源の部分ということをお話ありました。

 そこでまたお聞きしますけれども、地方公共団体から、今回、この減税をした場合、地方揮発油譲与税が減少するということでありますけれども、これについて何らかの反応というものがあるかどうか、お聞きできればと思います。

伊藤(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十一月に開催された政府主催全国知事会議において、村井全国知事会長などから、軽油引取税の見直しの議論などに関連しまして、恒久的な減税となるのであれば、地方の減収分については恒久的な財源で対応し、地方財政への影響に十分配慮するよう要請されていると承知しております。

 また、財源も含めて丁寧に議論を進めていただきたい、住民に身近なサービスを担う自治体の財政運営に支障がないようにしっかりと対応されるべきであるとの意見があるものと承知しております。

矢崎委員 今、そうした財源の問題がございます。

 そこで、今回、修正案が出されておりますけれども、この修正案においてもガソリン税の廃止ということがうたわれております。

 そこで、修正案提出者の方にお伺いいたしますけれども、この財源の部分についてはどのようにお考えになっているか、お聞かせいただければと思います。

大西(健)委員 矢崎委員から、当分の間税率廃止に係る財源について御質問いただきました。

 そもそも論として、当分の間や暫定という名前の税金が五十年以上も存続して、また、一般財源化によって既に課税根拠も失われていることを考えると、税率を上乗せして徴収してきた分について財源を厳密な意味で用意しなきゃいけないのかということについては、私は個人的には疑問も感じるところでありますが、実際に、これまでの補助金と暫定税率の状況を鑑みれば、一月時点でのガソリン補助金の累計支出額が約六・六兆円に達しているのに対して、当分の間税率の廃止に必要な財源は、先ほど大臣の答弁にもありましたけれども、約一・五兆円と言われており、当分の間税率の廃止は十分可能だったというふうに考えております。

 その上で、我々もしっかり財源については考えさせていただいております。我々は、この税法修正案と併せて予算の修正案も準備をしておりますが、そこでは、さきの予算委員会における省庁別審査で我々が指摘をした、無駄な予算を削り、ガソリン税等の当分の間税率の廃止を含めた物価高対策の財源に充てることを考えております。そこでは三・八兆円という財源を示させていただいております。ただし、これらの財源はワンショットでありますから、令和八年度以降については恒久財源を手当てする必要があると考えております。

 まさに、この税法修正案の検討条項で掲げている、応能負担を求める税制改革や不合理な税制の見直し等に取り組むことなどによって必要な財源を確保していきたいと考えております。

矢崎委員 ありがとうございます。

 そうしますと、続きまして、先ほど地方の反応についてお聞きしましたけれども、地方に対する地方揮発油譲与税の額の減少について、地方公共団体の減収を補填するために必要な措置を講ずるというふうにされておりますけれども、この点についても、具体的にどのようにするのか、お聞きしたいと思います。

大西(健)委員 矢崎委員御指摘のとおり、地方から御懸念があるのは当然のことだというふうに思います。

 この点について、修正案では、「政府は、地方揮発油税の税率の特例の廃止に伴う地方揮発油譲与税の額の減少が地方公共団体の財政に悪影響を及ぼすことがないよう、当該額の減少に伴う地方公共団体の減収を補填するために必要な措置を講ずるものとする。」旨の規定を設けており、国の責任において地方の減収を補填することを明確にしております。

 具体的には、当面、地方特例交付金により減収を補填することを想定しており、その後は、国、地方の税財政全体の見直しの中で適切な措置を講じていきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、地域の住民サービスの低下を招くことがないよう、国が責任を持って対応することを徹底していきたいというふうに考えております。

矢崎委員 ありがとうございました。

 今、政府とそれから修正案と答弁をお聞きしまして、財源の問題ですけれども、私はやはり、今修正案の方の御答弁がありましたけれども、十分に対応できていけるのではないかなというふうに思っています。

 先週の予算委員会、我が党の米山議員と大臣と、この財源をどうするか、二者択一理論というんですかね、そのやり取り、私も拝聴いたしました。私は、米山議員が言っていることは大変分かりやすいなというふうに思って聞いていたんですが、今の財源の一兆五千億円でいえば、この部分をどうするのかと考えたときに、二つしかないというふうに思います。一つには、一兆五千億円、今の予算の中でそれをどこか削減をする、見合う分を削減をする、そしてもう一つには、やはり、でなければ国債を発行して賄う、この二者択一、どちらかということで大臣に質問されておりましたけれども、大臣は、予算編成過程についていろいろお話をされて、結局、どちらかということがなかったわけでございます。

 ですので、この件について、今私はこの財源は確保されるというふうに思いますけれども、今の修正案の答弁を踏まえた上で、大臣に再度、廃止についてどのようにお考えになっているかお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、廃止については、先ほど申し上げましたように、今三党間で協議が行われておりますので、その協議の結果を踏まえて適切に対応していきたい。ただ、この議論においては、一・五兆円の税収が恒久的に失われる、こういった課題があるということを申し上げさせていただきました。

 それから、米山議員との中で申し上げたのは、基本的に、ある政策をするためにある財源というのはありますけれども、その財源の議論の中で、例えば無駄を排するという議論だとすると、これは別に歳出をするからじゃなくて、無駄はそもそも下げなきゃいけないわけですよね。だから、無駄を下げた上において歳出を増やすということになると、米山議員の議論からすると、じゃ、その分はどこから持ってきたんですかというと、税収を増やすか、あるいは国債を発行するかしかない、そういったところにも帰着するので、結果的に、一個一個なかなかひもづけしていくことはできずに、トータルとして見た結果として今の財政状況になってきている、こういうことを申し上げたところであります。

矢崎委員 ありがとうございます。

 時間もありませんので、この件については、やはり、今後また議論をさせていただきたいというふうに思います。

 では、次の質問ですけれども、次は賃上げ促進税制についてであります。

 今、櫻井議員からもこういう議論がありました。その上で、まず一つ、提出者の方にお伺いしたいんですけれども、因果関係が不明確というふうにされておりますけれども、この点について具体的に御説明いただければと思います。

階委員 矢崎委員の御質問にお答えいたします。

 私、二月五日の予算委員会で加藤財務大臣に、この賃上げ促進税制の大企業と中小企業のそれぞれの適用実績を教えてほしいということを申し上げたときに、結構びっくりしたんですが、大企業の適用割合、大企業というのは日本の会社全体の〇・三%しかないんですけれども、その〇・三%、社数にすると一万社ぐらいの大体半分ぐらいが適用されているわけですよ。適用額が三千億円強だったと思います。中小企業は、残りの九九・七%、社数にすると三百三十七万社とかそんな数字だったと思います、そのうちの、賃上げ促進税制が適用を受けているのは七%ぐらいしかないんですね。適用額は、大企業がさっき申し上げましたとおり三千三百億円ぐらいで、中小企業が三千九百億円ぐらい。そんなに違いはないんですが、適用割合とか適用件数、非常に、全然違うわけですよ。

 大企業というのは、本当に適用されたことによって賃上げがされているのかというと、そんなことはないわけで、この税制がなくても、利益があるわけだから、十分賃上げはできるだろうというふうに我々は考えております。

 実際に、先ほど櫻井さんからも御指摘があったとおり、財務省が去年、分析結果を資料として出しているんですね。給与総額の伸び率についてのヒストグラム分析、計量分析というものを出しておりまして、それを見ますと、こういう記述があります。一定の仮定を置き、法人企業統計の個社データを用いた分析を実施、賃上げ税制の適用要件を満たす企業について、労働分配率が増加する傾向が見られたが、因果関係の特定には課題といったようなことで、やはり因果関係が財務省が分析してもよく分からない。

 むしろ、我々は、この後委員も御指摘になると思うんですが、やはり、中小企業の方が賃上げに苦慮している、そこをカバーしてあげるためには、賃上げ促進税制よりも、正社員を雇用した場合の社会保険料の減免といったようなことをして、正社員になれば給料は増えますから、そうしたことで賃上げは応援していくのが私たちはいいのではないかと考えております。

 以上です。

矢崎委員 ありがとうございます。

 因果関係不明確の部分が分かりましたので、この部分について大臣にお伺いをしたいんですけれども、このような因果関係不明確というところでいいますと、この賃上げ税制の部分のお金について、もっとほかの施策、賃上げをするためのほかの施策にやはり使った方がいいのではないかなというふうに思うんですけれども、その点についてお伺いをさせていただければと思います。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、今後の賃上げ促進税制の在り方については、本税制の適用状況や賃上げの状況、さらには、EBPMの取組を含め、客観的なデータに基づいた実効的な効果検証などを総合的に勘案して、透明性の高い議論によって検討していくことが重要だというふうに考えております。

 ただ、一方で、今回の賃上げ促進税制の背景にあるのは、これだけ企業が利益を持ちながら、それが賃上げにつながっていない、そこをどう進めていくのかということで取り組んできているところであります。ただ、それがどう実効性があるかどうかを我々も検証し、そして、大企業についてはより高い賃上げを助成していくように仕組みを変える等、いろいろなこれまでも対応をさせてきていただいたということでございます。

 確かに、経済現象ですから、この要因がこの結果に結びついているというのは、なかなか証明するというのは難しいということは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、ただ、現下、賃上げをしっかり進めていく、進める、こうした状況の中においては、しかも、中小企業、大企業を問わず幅広く波及させていく、こういった流れの中で、この税制をすぐに廃止するということは適切ではないというふうに考えています。

矢崎委員 今大臣からも、幅広く賃上げをしていくということからいいますと、やはり中小企業に対してもっと手厚く支援をしていく、いかなければいけないというふうに思います。

 そこで、前回、私もこの場で御提案をさせていただきましたけれども、例えば、企業の社会保険料の、その部分を軽減措置の財源に充てていくというようなことは、大臣はどのようにお考えになられていますでしょうか。

加藤国務大臣 社会保険料の軽減ということになると、基本的には厚労大臣等々という話になると思いますけれども、ただ、社会保険を運営する中で、公費負担と保険料負担はどうあるべきかという議論ということにもつながっていくのではないかなというふうに思っておりますので、そういった意味においては、これまでの議論の中で、公費負担、それぞれ、医療保険、介護保険、割合が決められてきた経緯もございます。それをやはり引き続きベースにして対応していくことが基本ではないかと思っておりますが、保険料そのものについては所管の担当大臣にお聞きをいただければと思います。

矢崎委員 是非、私といたしましては、賃上げ、幅広く引き上げる必要があると思います。今の御提案についても、やはりお考えをいただければなというふうに思います。

 それでは、続きまして、三つ目でございますが、防衛増税についてお伺いをしたいというふうに思います。

 この防衛増税については、前回もお聞きしましたけれども、今年度は、税制措置によって、所得税、法人税、たばこ税を財源とする部分を考えられているわけですけれども、私は、先ほど来お話をしておりますが、今の物価高の状況で、多くの国民の皆さんそして中小企業の皆さん、そうした皆さんが大変に厳しい生活を余儀なくされているという状況の中においては、やはり、防衛増税のここの部分、まさに議案になっている部分については廃止をした方がいいのではないかなというふうに思うんですけれども、その点について大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 それぞれ、御党を含めて出されている修正案等々について政府として具体的なコメントを申し上げるのは、従来から控えさせていただいているところでございますけれども。

 今回、政府として税制改正法案を提出し、防衛財源確保に関して、法人税、たばこ税に関する措置も盛り込ませていただいておりますが、これは、これまでも御説明させてきていただいたように、現下の安全保障環境が厳しさを増す中において、我が国自身の防衛力を抜本的に強化する必要がある、こういった認識の中で、その安定財源として、行財政改革の努力を最大限行った上で、それでも足りない約四分の一は、今を生きる我々の将来世代への責任として税制措置での御協力をお願いする、そういった趣旨でございますので、政府としては、今回の措置の必要性等について丁寧な説明に努め、国民の皆さんの御理解をいただけるよう、更に努力をしていきたいというふうに考えています。

矢崎委員 今大臣から御説明ありました。一方で、修正案の方には、この説明が不十分で国民の納得を得られていないということでございます。

 そこについて、修正案提出者の方に、どこの部分がそういうことになっているかということをお聞きしたいというふうに思います。

大西(健)委員 矢崎委員にお答えをいたします。

 初めに、我々も、現下の厳しい安全保障環境に鑑み、防衛力を強化するために必要な費用を計上すること、これ自体は否定をしておりません。ここでの論点というのは、その金額とその根拠というのが十分に説明されているかだということだというふうに思います。

 今回の法案では、法人税とたばこ税に関する防衛増税が盛り込まれていますが、防衛増税については、そもそも、前提となる総額四十三兆円規模の巨額防衛費自体が数字ありきであること、その必要性について国民が納得できる説明が十分になされたとは言い難い状況にあることを問題視しております。

 石破総理自身、総理になられる前には、最初から四十三兆円ありきの議論はおかしいということも述べられておりますし、参議院での答弁では、円安や物価高騰があってもこの四十三兆円という枠は変えないんだということを答弁されていますが、裏を返せば、積み上げの積算がないことを示しているということではないかというふうに思います。

 二〇二二年当時、岸田政権で決めた防衛力整備計画の、五年間で総額四十三兆円規模の防衛費の確保ということについては、これまでも予算委員会始め様々な場面で積算根拠に関する質疑がなされておりますが、政府からは非常に大ざっぱな数字しか提示されておらず、極めて現実的なシミュレーションを行った上で積み上げた数字と言いながらも、それを客観的に確認するすべもありません。その意味で、我々としては十分な説明がなされていないのではないかというふうに申し上げております。

矢崎委員 ありがとうございました。

 私もやはりそのように思います。防衛費の増額という部分についてはその必要性はありますけれども、しかし、今の国民生活を考えた上で、皆さんの生活を更に厳しくするような増税というものは、私は今の段階ではすべきではないのかなというふうに思います。そのことを是非大臣にも御理解をいただければなというふうに思います。

 それでは、続きまして、四つ目の質問に入らせていただきます。四つ目は、納税者権利憲章についてであります。

 これが新たに修正案では規定をされますけれども、この納税者権利憲章についてこれまで検討してきた経緯はあるのか、お伺いしたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘をいただきました納税者権利憲章でございます。一般に、納税者の権利義務を分かりやすい言葉で説明し、より多くの納税者に周知しようとする試みというふうに承知しております。

 この納税者権利憲章の制定を定める規定につきましては、平成二十三年税制改正法案に当初盛り込まれておりましたが、その後の与野党の協議を受けまして、当時の与党民主党より政府に対してなされた要請を踏まえ、法案から同規定を削除することとされたということでございます。

矢崎委員 今お話ありました、民主党政権のときにこれが検討されたということで、私も当時のまた新聞等を読みましたけれども、残念ながら与野党で折り合いがつかなかったということでありました。ですので、このことは是非進めさせていただければというふうに思うんですけれども。

 そこでお伺いしたいんですが、諸外国においてのこの憲章の制定状況を教えていただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の状況について網羅的に把握しているわけではございませんが、OECDの報告書によりますと、二〇二二年において納税者権利憲章を制定している国は、OECDに加盟する三十八か国のうち三十五か国というふうになっております。

矢崎委員 もう、そうしますと、日本を含めて三か国しか、まだ制定をしていないということになるわけであります。

 私は、やはり今、国民の皆さんが、派閥の裏金問題、これによって税に対して、税金を納めることに対して非常に不信感を持っているというふうに思います。そんな中で、国民の皆様には任意調査ですとか推定課税、そういうことも起こり得る、そういった中で、やはり、税金を納めていただくということに対しての信頼回復という意味でも、この憲章というものを制定していく意義があるのではないかというふうに思いますけれども、この点について大臣のお考えをお伺いさせていただければと思います。

加藤国務大臣 今、確かに、政治と金の問題、これは国民の関心も高く、また我々としても対応しなきゃいけない課題というのは認識をしておりますが、これは政治資金の話でございますので、今御議論させていただいているのは税の観点ということでございます。

 御指摘の納税者権利憲章の制定については、一般に、納税者の権利義務を分かりやすい言葉で説明し、より多くの納税者に周知しようとする試みと承知をしておりますが、我が国では、平成二十三年度税制改正法案の議論の中で、与野党協議の結果として、憲章の作成措置は見送られたという経緯があります。

 重要なことは、形式にかかわらず、実際に納税者の視点に立った利益の保護や利便性の向上に向けた措置を手当てするとともに、その内容をしっかりと説明していくことだと考えております。

 政府としては、平成二十三年度税制改正において、国税通則法を改正し、納税者が税の税額を求める更正の請求ができる期間を一年から五年に延長する、また、更正等により課税の増額といった不利益処分を実施する際の理由の付記など、税務手続の法定化を進めるとともに、スマホを含めた電子申告の推進など、納税者利便の向上のための様々な措置も講じてきたところであります。

 税制に対する国民の信頼を確保することは重要であると考えており、今後とも、納税者の利益の保護や利便性の向上等の観点も踏まえ、適正かつ円滑な税務執行、税務行政に取り組んでいきたいと考えています。

矢崎委員 今大臣から御答弁いただきました。確かにそういったことがあるかもしれませんけれども、しかし、国民の皆さんに分かりやすく、税に対して信頼を取り戻していただいて、きちんと納めていただく、そのためにもこの憲章というものは分かりやすく、アピール性があるのではないかというふうに思います。

 そこで、修正提出者の方にお伺いいたしますけれども、現時点で、この憲章の中身が、もしある程度、概略、概案でもいいんですけれども、ありましたら、御説明いただければと思います。

階委員 矢崎委員の質問にお答えいたします。

 委員から、先ほど重要な質問の答えがありました。OECDでは、既に三十八か国のうち三十五か国で納税者権利憲章が制定されていると。我々は、こういったものも参考にしながら、これから具体的に作業を進めていこうと思っているんですが、先日、私も予算委員会で石破総理に納税者権利憲章を制定すべきではないかということを申し上げたところ、石破総理も、具体的な条文案を示してほしいといったようなお話もありまして、私は、この問題というのは前に進める機運が高まってきていると思っております。

 今回、私どもの修正案の中では、納税者権利憲章にこういった内容を書き込むべきだというような条文は設けましたけれども、委員から今お尋ねのあったような、具体的な文言のレベルまでにはまだ到達しておりませんので、そこをこれから鋭意作業を進めまして、一刻も早く委員始め皆さんにお示しできるよう、これから努力してまいります。よろしくお願いします。

矢崎委員 ありがとうございます。

 やはりこの憲章については私も前に進めるべきだというふうに思いますので、是非、これについては委員の皆様にも御理解をいただければと思いますし、具体的に、更に提出者の方にも進めていただきたいというふうに思います。

 それでは、最後の質問になりますけれども、こちらについては、最後、租税特別措置の適用状況の透明化についてということで、今、この直前に櫻井議員の方からお話がございました。その点も踏まえまして、まず大臣にお伺いをしたいんですけれども、法人の名称について国会報告事項の対象とすることについて、私はやはり、先ほども議論がありましたけれども、献金の問題と優遇の問題が問題ないというのであれば、私もやはりこれは対象とすべきではないかと思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 租税特別措置の適用がある企業名の公表については、平成二十二年の租税特別措置透明化法の制定時に、適用実態調査の報告書において個別企業名まで公表する必要はないという整理がなされた経緯があります。

 その背景には、国が個別企業の税務情報を一方的に公表することにより、これは個別企業のですね、財務状況が類推されることで、企業がどういった分野でどの程度の規模の投資を行っているかなどの経営戦略上の情報が明らかになり、当該企業の競争力に不利益が及び得ることがあると考えられたところであります。

 こうしたデメリットを上回る公益上の必要性があるかどうか、これを考えていく必要があるというふうに考えております。

 また、公益上の必要性のバランスを考えていく上で、近年、租税特別措置の適用額が大きく増加している状況なども踏まえる必要はあると考えています。

矢崎委員 先ほどの答弁と同様の答弁なわけでありますけれども。

 そこで、今度は修正案提出の方にお伺いしたいと思うんですけれども、企業・団体献金によって租税特別措置がゆがめられているというふうに思われる事例がありましたら、御説明をお願いします。

大西(健)委員 矢崎委員にお答えをいたします。

 先ほど櫻井委員の質問に対してもお答えをいたしましたけれども、現状、租特が適用されている企業の実名が分からないために、厳密な意味で、企業・団体献金により租特がゆがめられているかの検証は不可能な状況にあります。よって、御質問の企業・団体献金により租特がゆがめられていると思われる事例も確かめることはできません。

 その上で、これも先ほども申し上げましたけれども、産業単位で集計を試みた東京新聞の事例では、減税額が大きい企業ほど自民党への献金額が多い傾向も見られるということがあります。すなわち、やはり、実際に献金により政治がゆがめられているかどうかの可能性が疑われ、法人の名称の報告を基に検証を進める必要が我々はあるというふうに考えております。

矢崎委員 私も、やはり検証をまずしていくことが大事だと思います。そのためにも、この透明化に更に一歩踏み込む改正というものは必要だと思います。

 そこで、また修正案提出の方にお伺いしたいと思うんですけれども、その中で、高額適用額に係る法人の名称についてその対象とするということなんですが、この適用額について、今の段階で何か考えられていることがあれば教えていただければと思います。

大西(健)委員 現行法上、法人税関係の租税特別措置については、高額適用額として、適用額の上位十社が国会報告事項とされております。そのため、実務的な負担にも鑑み、この上位十社について、法人の名称を併せて国会に報告させることを提案をしております。

 なお、現行法上、財務大臣が法人から集計する適用額明細書には適用法人の名称が記載されているため、上記の国会報告に関する事項のみを改正すれば事が足ります。具体的なイメージとしては、現状、法人コードという形で、要は匿名で適用額などが示されているところ、これをそのまま実際に企業名に置き換えることを想定しております。

 また、上位十社で一定の規模を占めていることも、十社という数値の一つの根拠となります。例えば、二〇二五年二月四日に財務省が公表した租特の適用実態についての調査結果では、企業の研究開発投資に応じて減税する研究開発税制について、上位十社の減税額が計二千四百十九億円、四分の一を占めております。

 ちなみに、十という基準は、現状の報告状況との実務的な負担を考慮して置いたものでありますので、税額等、ほかに一定の基準を設けることなど、幾つかの可能性を否定するものではないというふうに考えております。

矢崎委員 ありがとうございました。

 時間となりましたので、私の今回の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

井林委員長 次に、岡田悟君。

岡田(悟)委員 立憲民主党の岡田悟です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 所得税法等の一部を改正する案に対する質疑ということですけれども、冒頭、前回もお尋ねをしましたけれども、改めて、森友学園問題の文書、これについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 前回、私、質問いたしましたけれども、大臣の答弁によりますと、現在、文書は大体把握をし終えた、そして、開示、不開示の判断をするに当たってどういう作業をやっていくか等々精査をされているという答弁でしたけれども、現状、この精査の進捗についてまずお尋ねしたいと思います。

加藤国務大臣 私どもまた近畿財務局から出したものについては私どものところに戻ってきている、大体どのぐらいの分量かということを見定めた上で、どういう手順をすることによってより速やかな対応ができるか、今、中で鋭意精査をさせていただいているところでございます。

 どのぐらいの段取りでやれるかという開示時期の目途等については、今週中にも、お示しできるように事務当局に対しては精査を進めてほしいということは申し上げているところでございます。

 また、その結果を踏まえて、適時、国会等に対しても御説明をさせていただきたいというふうに思っています。

    〔委員長退席、国光委員長代理着席〕

岡田(悟)委員 今週中に目途を示すよう、公表の時期についてですね、という答弁をいただいたということで、ある程度、時期ははっきりしつつあるのかなというふうに思います。

 そして、従来も我が党を含め野党が要求をしているところではありますけれども、黒塗りにせず、しっかりと全文を公表していただきたいということなんですけれども、もちろん、これは、加藤大臣それから石破総理も予算委員会でおっしゃっているとおり、法律にのっとって、情報公開法などにのっとって公開をされるということは、当然、前提であると思います。そして、前回大臣が触れておられましたけれども、もちろん個人情報が守られるということも一般論としては当然だと思います。

 一方で、今回の森友問題のケースに関しましては、いろいろと考慮すべき点があると思います。例えば、亡くなられた赤木俊夫さんの妻の、配偶者の雅子さんは著書を、共著を出しておられます。「私は真実が知りたい 夫が遺書で告発 「森友」改ざんはなぜ?」というタイトルの本を出版されていて、この中で、亡くなられた赤木さんと近しくお仕事をされていた近畿財務局の職員の方々の氏名ですとか、あと、亡くなられた後の雅子さんとのやり取りが割と詳しく記述をされております。これはもう出版されているわけですから、もう既に公表された事実であるというふうに考えられますけれども、こういうところは黒塗りにする必要はないのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょう。

加藤国務大臣 一つは、何が既知なのかということも含めて、これからしっかり精査していかなきゃいけないと思っております。

 その上で、情報公開法においては、個人の氏名等により特定の個人を識別することができる情報は、個人に関する情報として、不開示情報とされております。一方、公務員については、個人に関する情報であっても、職務遂行に係る情報は、情報公開法第五条第二号から第六号までに掲げる不開示情報に該当しない限り開示されると承知をしております。公務員の氏名に関しては、氏名を公にすることにより公務員の権利利益を害することになるような場合などに不開示とされる場合もあると承知をしております。

 そうしたことを前提に、先ほど申し上げたように、現在、相当量の文書がある中で、どのような段取りがあればより効率的に作業を進めることができるか今検討しているところでございますので、今後、開示、不開示の判断に当たっては、先般の総理の指示も踏まえて、また、今申し上げたような法令の規定にものっとりつつ、他方、国民に対する説明責任を果たすという観点から、適切に対応していきたいと考えています。

岡田(悟)委員 公務員の皆さんの権利というのは当然守られるべきではあるということは前提として認識をしておりますが、一方で、事態の大きさ、そして、これまでに、赤木さん御自身が改ざんを指示されるなど経験されたことに対する記録はもう既に開示をされているというふうに承知をしておりますけれども、今回、開示をされるべき財務省そして近畿財務局内の文書というものは、一連の改ざんよりももっと以前の、土地の取得、価格の決定、ここに至る意思決定のプロセス、財務省内の意思決定の在り方から、改ざんを決める、そしてそれを指示がされ行われたというところまで、一連の森友問題の経緯全てが文書によって明らかにされるべきではないかというふうに考えます。

 その中で、財務省の中でも特に幹部の、重い役職にあった方々がどのような意思決定をされたのかということ、それは氏名も含めてですね。かつ、前から申し上げておりますとおり、これは財務省の中で起きた問題ではありますけれども、大本はやはり政治の問題、当時の政治状況の中で、ある面ではやむにやまれず改ざんが行われた、あるいは土地の取得等も行われたというふうに考えられるわけですから、文書の中に財務省の意思決定に影響を与えたと見られる政治家や国会議員及びその配偶者の氏名があれば、これも併せて公表されるべきであるというふうに思います。黒塗りにされるべきではないと思いますけれども、大臣、いかがでしょう。

加藤国務大臣 一般論という形で申し上げさせていただきますけれども、条文における公務員とは、広く公務執行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣や国会議員等も含むものと解されております。

 その者の氏名等の個人情報については、先ほど申し上げました情報公開法の規定に沿って開示、不開示が判断をされるもの、判断していくべきものと認識をしております。

 他方で、公務員等に該当しない、国会議員の、例えば親族の氏名等の個人情報については、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報等に該当しない限り、不開示となるものと承知をしております。

岡田(悟)委員 石破総理が、二月の六日ですか、この大阪高裁の判決に対して上告をしないというふうに決断をされ、表明されたことは大変大きな前進であるというふうに思います。

 そして、先日、予算委員会、川内委員の質疑を赤木雅子さんが傍聴にいらっしゃっていた。そして、石破総理とも面会をされています。雅子さんは、記者団に対して、すごく温かい気持ちを再び感じることができた、夫のために石破総理大臣は一〇〇%、できる限りのことをやり、文書の開示を進めてくれると思うというふうにお話しになっています。

 雅子さんの期待というのは大変強くなっているし、多くの国民も注目をしているところであると思います。大変重要な局面であると思いますので、是非、公表の決断、黒塗りなしの公表の決断を改めてお願いをしたいと思います。

 また、同時に、佐川、当時の、この問題の発覚時の財務省の理財局長ですね、当然皆さんも御記憶であると思います。私も、議員ではありませんでしたけれども、証人喚問等、リアルタイムでテレビ等で見ていたわけですけれども。発覚当時に理財局長でいらっしゃった、そして、文書は速やかに廃棄をしたと、たしか予算委員会で答弁をなさっていたと思いますけれども、その後、国税庁長官に二〇一七年七月に昇格をされたわけですね。普通に考えれば順当な人事なわけですけれども、当時、またこれの人事についても、確定申告の時期ということもあって、国民の皆さんから非常に強い批判があった。確定申告の時期はちょっとずれていますけれども、納税者から非常に強い非難があった。納税というのは国民の義務ですけれども、これにやはり不信感というものを高めてしまったという事態があったと思います。

 訴訟にも、佐川さんを相手取って雅子さんが訴訟されたわけですけれども、認諾という形で裁判自体を終えてしまうということで、今なお、事態の真相、それから佐川さんの説明責任は果たされたと言えない状況だと考えますので、この財務金融委員会におきましても佐川元国税庁長官の参考人招致を求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

    〔国光委員長代理退席、委員長着席〕

井林委員長 では、後刻、理事会で協議をします。

岡田(悟)委員 よろしくお願いをいたします。

 では、次の質問に移りたいと思います。

 NISAの投資枠の拡大について前回の質疑でお尋ねをいたしましたけれども、前回は、NISAの枠が拡大されたこともあり、外国株式に投資をする金融商品、投資信託の人気が非常に高まっている結果、外貨に日本の個人金融資産が転換をされ、これが円安につながっているのではないか、こういう指摘をしましたところです。

 これを防ぐといいますか、かつ、貯蓄から投資への本来の意義、国内の個人金融資産がしっかりと国内企業に回っていく、これを促進する一つの手段としまして、賛否両論はあるところではありますけれども、NISAにおいて国内株式あるいはこれに投資をする優遇枠を設置するということについて、メリット、デメリット、あるいは、市場関係者からもいろいろな意見が出ております、これを踏まえて金融当局としての見解を伺いたいと思いますけれども、いかがでしょう。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 NISAの投資枠の一部に、先生御指摘の、日本株又は日本株に投資する金融商品、これを優遇するような国内投資枠を設けるということでございますが、我々が承知いたしているところでは、市場関係者からは、国内企業への資金供給の促進に貢献し得るという意見がある一方で、分散投資を通じた資産形成というNISAの趣旨とは整合的ではないのではないかという意見もあると承知しております。

 また、このNISAに類似のイギリスのISAについてでございますけれども、これは英国の居住者向けの投資等に対する非課税の口座ということでございますが、昨年三月に、投資対象を自国株式に限定する、そういった投資枠の創設が提案されたのでございますけれども、その後、その提案については、制度が複雑になる、これを危惧する御意見、あるいは個人の資産形成には分散投資が重要であるという御意見が寄せられまして、同年十月に公表されましたイギリスの秋季予算において、同枠の創設は行わない、この旨が公表されているというふうに承知しております。

 金融庁といたしましては、国内投資枠を設けることにより国内企業への資金に貢献する可能性、これは、実際に資金を受ける国内企業の投資やあるいは経営の在り方あるいはそれを投資家たる国民がどのように評価するか、これ次第だというふうに考えておりますが、一方で、長期、積立て、分散投資を通じた家計の安定的な資産形成を促す、これがNISAの趣旨でございます。特につみたてNISAの趣旨でございますので、これと整合的でないというおそれが生じるということや、あるいは、制度がいたずらに複雑になりまして利用者の利便を損ないまして、かえってそうした国内投資枠あるいはNISA制度全体の活用が行われなくなるおそれがあるというふうに考えておりまして、したがいまして、金融庁としては、NISAについて当枠を設けること、これは慎重であるべきだというふうに考えております。

 他方で、先ほど御質問にもございました、NISAを含めまして資産運用立国の取組というのは、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現すること、このことでございますので、資金が国内企業の成長投資に回ること、これは重要だというふうに考えております。

 ただ、この点は、NISAだけではなくて、コーポレートガバナンスの改革の推進による企業価値の向上、あるいは、地方を含めた魅力的な投資先あるいは投資商品の発展、そういったものの施策を総合的に実施する、これが重要でございまして、この結果として、家計のみならず海外からの資金も含めて国内企業へ投資が向かう、そういうふうに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

岡田(悟)委員 ありがとうございます。

 メリット、デメリット、いろいろ考えられるわけですけれども、国内企業の魅力が高まって、おのずと投資家が投資をしたくなるようにしていくということが、確かに筋論といいますか、もっともなことだと思います。

 一方で、我が国の今の株式マーケットが果たしてオーガニックに形成され、企業価値をそのとおりに反映しているのかどうかということを考えますと、アベノミクスのスタート当初はGPIFのポートフォリオの見直し等があって、これは皆さんおっしゃらないと思いますけれども、市場関係者の間では、事実上の株価の下支えじゃないかという指摘もあり、かつ、日銀がETFをこれだけ買っているという状況はなかなか珍しいわけでして、日銀が国内の株価を支えるぐらいであれば、個人で買い支えた方がまだ健全なのではないかという気もいたします。

 それから、NISAの今の枠に更に国内投資枠を増やすということであれば、富裕層の方、お金のある方を優遇するというふうにも考えられますし、一方で、今の枠の中に日本株に限定した枠を作ってしまうと、投資家の自由度を狭めるということにもなりますから、いろいろな面があろうと思いますけれども、何とか国内の企業にお金が回る方法を是非考えていただきたいというふうに思います。

 次です。金融所得課税について伺います。

 我が党は、今回、修正案の中で、金融所得課税の累進化、そしてそれをいずれ総合課税にするということを提案をしておりますけれども、先ほども階委員から答弁していただきましたけれども、なぜこれを導入するのか、一億円の壁はなぜ解消すべきなのかという考え方の部分、改めてお話をいただければと思います。

階委員 岡田委員の質問にお答えいたします。

 我々、今回の修正案、全体的な考え方として、税の納得と信頼を取り戻し、能力に見合った負担を求めていくということが全体の考え方です。

 この能力に見合った負担が実現されているかどうかという観点から見た場合、今、一億円を超えると所得税の実効税率が下がっていってしまう、これは非常に問題なのではないか。やはり所得が多ければ多いほど負担能力が高いわけですから、それを実現するためには、一億円の壁の最大の原因である金融所得課税、これを見直さなくてはいけないということです。

 では、具体的にどうするかということなんですが、まずは、累進課税ということを考えなくてはいけないと思っております。

 この累進課税を行うことによって、今の一律二〇%という単一税率では、お給料とか事業の所得に比べると高所得者は税率が低過ぎるというふうに考えるわけです。したがって、累進課税ということで、ある一定の金融所得を上回ってきたところでは、二〇ではなくて三〇、あるいは四〇と段階的に上げていくということが一つ考えられます。

 ただ、先ほども申し上げましたとおり、これをどの段階から二〇を上回る税率にしていくかということは、中間所得層の資産形成、今委員もお取り上げになったNISAとの兼ね合いもありますので、そこは慎重に考えなくてはいけないということで、一年後の導入を目指して、これから詳細に制度設計を考えていきたいと思っております。

 あと、総合課税ということはその先に考えるべきことだというふうに思っておりますけれども、政府の方でも、二年ほど前でしたか、三十億を超えたところでは実質的な総合課税、これを導入されました。しかし、一部についてだけ総合課税というのも、これもちょっといかがなものかと。

 さっきも申し上げましたけれども、総合課税にすることは、負担能力の高い人にはそれに見合った負担を求められるというだけではなくて、所得がうんと低い方、こちらの方は、むしろ今の二〇%という分離課税で税率が重くなっている方もいらっしゃるわけですね。そこへの配慮という意味でも、総合課税というのは検討の余地があるのではないかというふうに思っておりまして、まずは累進課税、その後、総合課税、順番に検討していきたいと思っております。

 以上です。

岡田(悟)委員 階委員、ありがとうございます。

 やはり、応能負担、財政難ではあるけれども、個人金融資産も非常に大きくなっているという状況で、応能負担の原則というものをしっかりと徹底をしていくということは、これは与野党を超えて合意ができる方向性ではないかというふうに思います。

 大臣にもお尋ねをしたいんですが、いわゆる一億円というふうに指摘をされます所得税の負担等の格差について、是正すべきだと考えますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

加藤国務大臣 税制の在り方では、公平、中立、簡素、三原則の下、経済社会の情勢の変化などを踏まえて検討することが重要でありますし、今御指摘のいわゆる一億円の壁と言われる問題についても、今申し上げた三つの原則の中で、公平性に関わるものであります。

 政府としても、税負担の公平性を確保することは重要と考え、令和五年度税制改正において、金融所得を含め、極めて高い水準の所得を対象として、令和七年分所得から追加的に負担を求める措置を導入し、一定の対応を図ってきたところでありますので、まずは本措置の効果についてよく見極めていきたいと考えております。

 さらに、金融所得課税の検討に当たっては、今申し上げた税負担の公平のほか、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすることも重要でありますので、それらも含めて総合的に考えていく必要があるというふうに思っております。

岡田(悟)委員 ありがとうございます。

 財務当局としても富裕層への課税というのは、ゆっくりじわじわではあるけれども、進めてこられたというふうに認識をしております。

 話を金融所得課税に戻しまして、先ほどISAのお話がありましたけれども、イギリスでは金融所得課税の累進化が進められているというふうに承知をしております。その概要について、かつ、我が国でそれを導入する場合にどういう課題があると考えられるのか、お尋ねをしたいと思います。

青木政府参考人 お答えいたします。

 英国におきましては、金融所得にも累進税率が適用されており、給与所得などに、利子、配当、株式譲渡益などによる金融所得を積み上げまして、それぞれの所得ごとに定められている税率表に基づいてそれぞれの適用税率を決定しているというふうに承知をしております。

 一方、我が国におきましては、上場株式の譲渡益、配当等の課税方式が原則一律二〇%の分離課税、比例税率の対象とされていることにより、確定申告が不要な特定口座を活用できる制度となっており、納税者の利便性に貢献しているというふうに考えております。

 仮に、委員が御指摘されたように、例えば、金融所得に累進税率を適用する場合には、納税者自身の確定申告が必要となるため、この利便性も失われてしまうこととなり、この点も含めて考えていく必要があるものと考えております。

岡田(悟)委員 ありがとうございます。

 日本には確定申告をしない人が非常に多いということも当然課題であろうと思いますが、やはり平準化されていない税負担というものは解消していくべきであるというふうに思います。

 金融所得課税は今、現行、約二〇%、我が国では適用されているわけですが、もし仮にこれを、例えばですけれども、三〇%に一律引き上げた場合、税収はどの程度増えると見込まれるのか。これは単純計算等でも結構なんですけれども、もしお答えいただけるようでしたら、お願いしたいと思います。

青木政府参考人 お答えします。

 金融所得課税の税率を二〇から三〇に引き上げた場合の増収額でございますが、将来の株価や税率の引上げが投資家の行動それから株式の取引高に与える影響などについて予測をすることができないことから、特に譲渡所得については増収額を見積もることは難しいものと考えております。

岡田(悟)委員 ありがとうございます。

 マーケットは動きますから変動も大きいということだと思いますが、令和四年度の実績を基に推計をしたという数字も伺っておりますけれども、利子から得られた税収が一%当たり五十億円、そして、上場株式の配当から得られたものが四百億円というふうに伺っております。単純に一〇%とすれば、約四千五百億円というふうにも考えられるということですね。

 そして、外部の専門家の方に、株式の譲渡益から得られる税収も含めた、仮に三〇%にした場合の増収の金額というものの推計値を伺っていますけれども、約一兆三千九百億円、これはたしか令和六年度ベースであったかな、済みません、最近のということになると思いますけれども、二〇%から三〇%に引き上げれば一兆三千九百億円の増収が見込めるという試算もいただいているところです。

 一方で、NISA、昨年の一月から投資枠が拡大されましたけれども、拡大によって、これは減税ですから税収は減少となるわけですけれども、どの程度減収をしたのか、教えてください。

青木政府参考人 お答えします。

 令和五年度税制改正におけるNISAの抜本的拡充による改正減収額は、平年度でマイナス百五十億円と見込んでおります。

岡田(悟)委員 NISAは非常に注目も集め、かつ活用されている仕組みなわけですけれども、減収は約百五十億円、枠の拡大によって百五十億円の減収で済んでいるということ、一方で、先ほど申し上げました金融所得課税を一〇%引き上げれば一兆円とか数千億円の税収が見込まれるということで、例えばですけれども、一律の金融所得課税の率を引き上げる代わりにNISAを拡充して枠を増やすなど、何らかの形で、一億円の壁の解消のために、是非、我々も研究をしっかりしていきたいと思いますので、政府の方でも取組を是非進めていただきたいというふうに思います。

 次は、先ほど江田委員からもお尋ねがありましたけれども、グローバルミニマム課税についてお尋ねをいたします。

 いろいろと先ほどからお尋ねがあったとおりだというふうに思いますけれども、世界の約百四十か国弱の国と地域で、従来の法人税率の引下げ競争、これをある種決着をさせるということで、各国の、同志の枠組みで進めてこられたものと承知をしておりますけれども、これも、指摘がありましたとおり、今、トランプ政権で、関税など、今までの方針をどんどん変える、かつ、トランプさんの発言によって何がどう出てくるのか分からないという非常に困難な状況であるというふうに思いますけれども、先ほども江田委員から指摘がありました大統領の覚書など、今、アメリカ側からどういうふうな情報が発信されているということを日本政府として把握をしておられるのか、教えていただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 米国の動向について予断を持ってコメントすることは差し控えますが、先月、米国政府が国際課税に関する大統領覚書を公表したことは承知しております。

 この覚書には、グローバルタックスディールに係る前政権によるいかなるコミットメントも、米国議会による立法措置なしには米国においては効力を有さない、財務長官は、通商代表と協議の上、域外適用又は米国企業に不均衡な影響を与える外国の税制措置について調査し、取るべき保護手段などのオプションに関する助言を大統領に提出する旨が記載されておりますが、現時点ではその具体的な内容は明らかではございません。

岡田(悟)委員 資料としてはちょっとお配りをしていないんですけれども、日経新聞に掲載されましたイギリスのエコノミストという雑誌の記事が翻訳されて、この問題について触れているんですけれども、グローバルミニマム課税、これが適用されれば、税率の安い国の子会社がもし仮に日本にある場合、この子会社に一五%までの税を課すことができるというふうに理解をされていますけれども、これへの対抗措置として、アメリカが何か税率を二倍にして対抗する可能性を示唆したとか、あるいは、これは大統領ではなくてアメリカの議会で提案をされているということだそうなんですが、税率の引上げが銀行家から弁護士まではるかに幅広い外国人に打撃を与える可能性が高いというふうに記事では書いています。

 これはちょっと、通告を細かくしておりませんので、もし御存じであればということで、お答えいただける範囲で答弁をいただければと思います。

青木政府参考人 お答えします。

 私どもの方で把握しておりますのは、先ほど申し上げたアメリカの大統領の覚書でございます。

岡田(悟)委員 ありがとうございます。

 例えば、前回の一期目のトランプ政権においても、TPP、これはオバマさんが非常に進めてこられたけれども、トランプさんになって抜けられるということがありました。この枠組みも、アメリカがどのような形になろうと進めていかれるということだと思いますけれども、先ほど江田委員との質疑において、アメリカが抜けたとしてもこれは効力を持つというお話だったと思うんですけれども、アメリカにはGAFAとか非常に規模の大きい会社がありますけれども、果たしてアメリカが抜けても本当に効力を持つのかどうかという点、もし可能でしたらお答えをいただければと思いますけれども、いかがでしょう。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 このBEPSプロジェクトのものは二つ柱がございまして、先ほど大臣から御答弁差し上げましたけれども、第一の柱の方は、アメリカが参加しませんと発効しないというふうな形になっております。一方、今御指摘のありましたグローバルミニマムタックス、こちらの方は、各国の国内法制で対応するということでございまして、今回、税制改正法案の中にその対応の改正内容を盛り込んでおるところでございます。

岡田(悟)委員 法人税の引下げ競争というものが大変世界的な課題となって、こういう取組につながっていると思いますので、当然、我が国としてもこれは進めていっていただきたいと思いますので、その旨、改めて大臣から決意のほどを伺えればと思います。

加藤国務大臣 今、中身は主税局長から答弁したとおりでございます。これについて、私どもとしての立場等、しっかり、米国等含めて関係国によく説明し、理解を求めていきたいというふうに思っています。

岡田(悟)委員 是非よろしくお願いをしたいと思います。

 次は、前回の私の質疑において、政府の基金は執行額等がリアルタイムで国会や国民が非常にチェックをしにくい、予算委員会で質問が出たところ、答弁されて初めて執行状態が分かるというケースがあるため、これをリアルタイムで国会や国民が把握をできる状況にすべきではないかというふうに私がお尋ねをしましたところ、大臣からは、行政事業レビューの枠組みで行われているので、お話を含めて、担当大臣にも話しておきたいという答弁をいただきました。

 ちょっと、大臣同士、お忙しくていらっしゃると思いますので、直接お話しになっておられないかもしれませんが、事務方同士のレベルでも含めて、この基金の執行額の公表の見直し等、議論を始められるのかどうか、状況をお伺いできればと思います。

加藤国務大臣 先般申し上げたのも、財務省として基金の透明性の確保、検証等をしっかり行うということは重要という認識の中で、委員からのお話があって、基金の状況、これをリアルタイム、状況状況の中で分かるようにというお話でございました。これについては、もちろん事務局を通じて詳しいやり取りは伝えさせていただくと同時に、平大臣に対しても、そうしたやり取りがあったので検討してほしいということを申し上げたところであります。

岡田(悟)委員 大臣にもお伝えいただいたということで、是非これも進めていただきたいというふうに思います。

 そして、最後に、これはちょっと報道ベースになりますけれども、仮想通貨、暗号資産と言うべきなのかもしれませんが、これについて、金融庁が有価証券並みの金融商品と位置づけるため金融審議会において諮問することを検討しているというふうに報道されました。今の進捗状況をお答えをいただければと思いますけれども、いかがでしょう。

加藤国務大臣 ちょっと事務局がいませんで、私から説明をさせていただきます。

 金融庁においては、昨年秋より外部有識者による勉強会を開催し、本年六月までを目途に暗号資産に関する制度の検証を行っております。この勉強会では、現在は法令上、決済手段として位置づけられている暗号資産を投資対象として整理することが適切か否か等について、利用者保護等の様々な観点から幅広く御意見をお伺いしているところであります。

 現在、検証を終えているわけではありませんが、今後、金融庁としては、諸外国の状況も参考にしながら、また、現在進めている検証の結果に基づき、必要な対応を検討していきたいと考えております。

岡田(悟)委員 これで終わりますけれども、昨年にはDMMビットコイン約四百八十億円の暗号資産の流出があったという問題がありました。金融商品が投資しやすくなるということは極めて重要だと思いますが、投資家保護、これをしっかりと徹底した上で議論を是非進めていただきたいというふうに思います。

 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

井林委員長 次に、水沼秀幸君。

水沼委員 船橋、市川からやってまいりました立憲民主党の水沼秀幸です。本日も未来志向の議論ができればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は税がテーマというところで、先ほど、今、岡田委員からもありました、まずは、税の中の収入という部分、暗号資産について、続けてお伺いしたいと思います。

 今、岡田委員から指摘あったとおり、金融庁が暗号資産を、今まで決済手段というふうに考えていらっしゃったと思うんですけれども、今は金融商品として扱うということも検討していらっしゃるという報道がありますと。

 また、加藤財務大臣は、予算委員会の場において、必要な法整備をする、税務当局への報告義務の整備をするということを前提に暗号資産について議論を行っているというところであります。今し方御答弁もありましたとおり、今年の六月を目途に、今、様々な制度の検証を行うというふうにされて、外部の有識者を招いた勉強会も開催されているというふうに認識しています。

 今、御答弁にあったんですけれども、やはり、今回、この暗号資産というところ、トランプ大統領が就任したというところもありますし、世界的に見ても、そして日本国内を見ても、非常に関心の高いテーマだというふうに思うんですけれども、資金決済法に基づくものから金融商品取引法に基づくものへと移していくことを金融庁は検討しているのか、その最新の検討状況、いろいろな御答弁があったと思います、グラデーションがあると思います、最新の検討状況について、今お答えできる詳細な部分について、よろしければお答えいただきたく、よろしくお願いします。

加藤国務大臣 最新のというのは先ほど申し上げたことに尽きてしまって、それ以上、今何か結論的なことが出てきているわけではございませんので。

 先ほど申し上げましたように、当該勉強における議論、また諸外国の状況も参考にしながら、現在進めている検証の結果に基づき必要な対応を検討していくというのが金融庁の今のスタンスであります。

水沼委員 どうもありがとうございます。

 少し質問を変えたいと思います。

 例えば、暗号資産を金融商品取引法の対象とした場合、現在は総合課税になっていますけれども、そこから分離課税となることも想定していらっしゃるんでしょうか。また、現行の税制では、暗号資産の取引で生じてしまった損失を翌年以降に繰り越すことができません。しかし、与党の税制論議では、株式と同様に損失繰越控除を導入すること、仕組みを検討することがされているというふうに認識しています。

 金融庁における最新の見解も、この点についてもお伺いしたく、よろしくお願いします。

加藤国務大臣 今御指摘のありました暗号資産取引に係る課税につきましては、昨年末の与党税制改正大綱で、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、投資家保護のための規制等の必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に見直しを検討するとされたところであります。

 それを踏まえて、制度の検証の結果に基づき、七年度の与党税制改正大綱や業界団体などからの要望内容を踏まえつつ、税制改正のプロセスに沿って、暗号資産に係る課税方式の見直し等の適否も含め、必要な対応を金融庁としても行っていきたいと考えております。

水沼委員 ありがとうございます。

 これはちょっと質問通告等はない部分かもしれないんですけれども、例えば、今検討しているとおっしゃっていると思うんですけれども、グラデーションがあると思っています。今の資金決済法に基づくものがゼロだとして、金融商品取引法に基づくものが十だとしたら、このゼロから十のグラデーションでいうと今どのような検討状況かについてお答えできれば、大臣、お答えいただければと思います。参考人の方でも構いません。

油布政府参考人 まだグラデーションの状況などについて申し上げられるほど議論が成熟している状況ではないということでございます。

水沼委員 ありがとうございます。

 是非、関心度が高いテーマですので、しっかりと丁寧に、そして、だけれどもやはり充実した議論を行っていただければなというふうに思っています。

 この暗号資産をどのように活用し、我が国の発展に努めていくかというところなんですけれども、やはり、個人のスタンスとしては、不幸になる人を増やさずに税収を増やすための環境整備が非常に大切だというふうに考えています。その意味では、先ほど大臣の御答弁にもありました、しっかりと対応整備を、環境整備をしていくこと。

 それでいうと、今、昨今、暗号資産投資では大きな損失を被る個人投資家の方が出てきたことも皆さん御存じかと思います。その意味でも、利用者保護の必要性も高まっているというふうに考えています。だからこそ、金融庁の認識ですとか、今後、今検討している中に当たって、利用者保護に向けた最新の検討状況、取組状況を、こちら、参考人の方でよろしいので、お答えいただければと思います。

油布政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からも御発言ございましたけれども、暗号資産それから暗号資産に関連する取引の市場が健全に発展するためには、利用者保護等が図られ、国民から広く信頼を得られることが不可欠であるという指摘がございます。

 金融庁では、二〇一七年以降、資金決済法におきまして、暗号資産の交換を行う業者を登録制とする、あるいは、その後、日本の事業者に暗号資産流出事案が発生したことを受けまして、同法を改正いたしました。二〇二〇年以降、原則、利用者資産のオフライン管理を義務づける。さらには、二〇二三年以降、犯罪収益移転防止法等の改正によりまして、暗号資産交換業者に対しまして、送付人、受取人の情報を移転先の業者に通知する、いわゆるトラベルルールを義務づけるといった措置を順次講じております。

 今後の検討につきましては、今まさに私どもで検証を行っておるところでございますけれども、委員御指摘のように、暗号資産に関する利用者保護は大変重要と考えております。現在進めている検証の結果や諸外国の状況などを踏まえ、利用者保護の観点も十分に勘案しながら、適切な制度の在り方について検討してまいります。

水沼委員 ありがとうございます。今、るる取組を御説明いただきました。

 まさに、課題認識は同じかと思います。この暗号資産、いかんせん、すごく最新の技術を用いて、それをどう我が国の発展に生かすかというテーマですので、今まで想定し得なかったリスクというのも当然生じてくる可能性があると思います。是非そういった面もしっかりと含みおいていただいて、不幸になる人を増やさずに税収を増やすための環境整備というものを、取組を実施いただきたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、続いて、住宅リフォーム税制についてテーマを移します。

 まずもってなんですけれども、本税制に起因する想定減収額はどれぐらいで、また何人程度の適用申請があると今試算して、若しくは実績がありますでしょうか。制度全体と子育て支援に関する部分の両方について、政府参考人の方にお答えいただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅リフォーム税制につきまして、令和六年度の適用件数は、国土交通省によりますと、延べ八千四百件程度というふうに見込まれております。そのうち、子育ての対応の改修工事につきましては千六百件程度というふうに見込んでおるところでございます。

 また、この適用件数を基に減収額を試算いたしますと、その影響額は僅少ということで見込んでおります。

水沼委員 ありがとうございます。

 我が国の現在の子育て世帯数というのは、どれぐらいいるか皆さん御存じでしょうか。九百八十万人いるというふうにされています。この九百八十万全体を一〇〇とした場合、今千六百ということでいうと、本当に非常に少ない、一%にも満たない、〇・数%の世界になってしまっているという現状があると思います。

 それに関して、子育て支援に関する部分について併せて伺いますが、なぜこの工事費用相当額が五十万円を超えることが要件であるのか、参考人の方にお答えいただければと思います。

宿本政府参考人 お答えをいたします。

 子育て対応リフォーム税制でございますが、子育て世帯や若者夫婦世帯に対して、例えば転落防止手すりの設置や対面式キッチンへの交換といった、子育て対応のために行われる住宅の性能向上や居住環境の改善を図るリフォームを支援する観点から、令和六年度税制改正において創設をされたものでございます。

 対象工事額につきましては、住宅の性能向上などを行います類似の補助事業における同種のリフォームの平均工事額を参考に五十万円としたところでございます。

水沼委員 ありがとうございます。

 経緯は理解したんですけれども、もう少し柔軟性のある要件であるべきだというのが子育て中の当事者としての感想、素直な思いです。

 加えて、現在の説明を聞いて思うのは、なぜそもそもリフォームが要件なのかということです。リフォームというと親族と同居をするということが主に想定されていると思いますが、子育て世帯における親との同居率は低い現状があります。

 国立の人口問題研究所が昨年の四月に発表した全国家庭動向調査では、妻の年齢階層別に見た親、これは妻の親であってもパートナーの親であってもいいんですけれども、親との同居割合というのは、二十代でいうと七・九%、三十代で九・三%、四十代でも一四・四%、非常にこれは低い数字なのかなというふうに思っています。

 また、中古住宅を取得するということも想定しているのだと思いますが、それであるならば、なぜそもそも自分自身のライフスタイルに合わない住宅を買って、リフォームが必要な物件をわざわざ買う必要があるのかというふうなものも考えると、非常に、この中古住宅も購入物件は少ないんじゃないかなというふうに考えております。

 以上の現状を踏まえて、少数の子育て世帯にしか恩恵が行き渡らない税制を設ける理由を、加藤大臣、お答えいただければと思います。

加藤国務大臣 今、国交省から説明もありましたけれども、今回の子育て世帯等に対する住宅リフォーム税制等の拡充は、令和六年度税制改正大綱において、高校生年代の扶養控除の見直しと併せて行うものとされた子育て支援税制の一つであります。その中では、現下の急激な住宅価格の上昇等の状況を踏まえ、子育て世帯の居住環境の改善の観点から、子育て世帯及び若者夫婦世帯が行う一定の子育て対応改修工事を対象に加えるということにしたところでございます。

水沼委員 ありがとうございます。

 制度趣旨は理解しているんです。私が今問うているのは、どうして、恩恵が少ない、要は政策効果の低いというふうに見込まざるを得ないものについて、政策設定、税制を設けたかという部分についてお伺いしています。

加藤国務大臣 数としてはさっき申し上げたものを対象としてそもそも税制をつくっているわけであります。

 ただ、委員おっしゃるとおり、中古住宅、これは様々で、必ずしも子育て世帯に合ったものばかりではありませんから、しかし、仕事の関係とかいろいろな関係で限られた地域の中で探そうとすると、必ずしもフィットしないけれども買う、それを改修する、そうしたニーズも当然出てくるというふうに考えておりますので、そういったところを踏まえて、基本は国交省において御検討された中で、税制当局としても、こういう形で与党の税制大綱を踏まえて対応させていただいているということであります。

水沼委員 ありがとうございます。

 せっかく国のお金を使うのであれば、是非、政策効果の大きいことを実行していければなというふうに考えています。

 その意味では、子育て支援を目的とするのであれば、現在、賃貸暮らしで子供を育てている家庭への家賃補助こそ必要とする人が多いんじゃないかというふうに考えております。検討状況を含めまして、取組の現状を、参考人の方でいいのでお答えください。

宿本政府参考人 お答えをいたします。

 住まいは生活の基盤であり、子育て世代を始め、誰もが持家か賃貸住宅かを問わずに安心して暮らせる住まいを確保することは重要な課題であると認識をしております。

 賃貸住宅につきまして、一般的な家賃補助はございませんが、家賃の消費税が非課税とされているほか、国土交通省におきまして、低所得者を対象とした公営住宅の供給や、子育て世帯を含む住宅確保要配慮者への入居を拒まない住宅の確保などに取り組んでおります。また、子育てに対応したリフォームや省エネ性能の高い住宅に対する補助につきましても、賃貸住宅も対象に含めて実施をしております。

 引き続き、子育て世帯や若者夫婦世帯に対しまして支援を実施してまいりたいと考えております。

水沼委員 ありがとうございます。

 今聞かれたとおり、家賃補助はないという御答弁だったと思いますが、今の答弁にも表れているとおり、我が国の賃貸住宅への支援は弱いと言わざるを得ません。本件については、政府・与党の一員である公明党さんも、さきの総選挙において新たな住宅手当そして家賃補助の創設を重点政策として取り上げていらっしゃいましたので、共通の課題認識をお持ちかと思っております。

 また、現在、首都圏を始めとした住宅価格の高騰によって、今や中間層ですら持家の取得は困難になりつつあります。欧州の多くの国では公的な家賃補助制度が創設されています。是非参考にしていただき、手当の支給や支払った家賃の一定割合を例えば税額控除する等で、賃貸住宅で暮らす子育て世帯向けの政策も次年度以降政府で検討いただきたいと思っています。大臣の御見解をお伺いします。

加藤国務大臣 子育て世帯にとって様々な意味で住宅支援をしていく必要性、これは我々も十分認識をしております。

 そうした中で、先ほど国交省からも説明したような対応、あるいは、税という意味においては、家屋を購入すれば消費税は課されますけれども、家賃に対しては消費税が課されていないといった対応もさせていただいているところでございます。

 税という面で申し上げれば、こうした施策に加えて更なる税制上の優遇措置を導入する必要性、あるいは高額の家賃を払う高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなってしまうこと、そもそも所得が少なく納税額が少ない方々に対して効果が小さい、こういったところをどう考えるかといった課題もあるというふうには思っております。

 ただ、いずれにしても、先ほど申し上げたように、子育て世帯を含めて、住宅面も含めて、幅広い支援をしていくこと、これはやはり必要だというふうに考えております。

水沼委員 ありがとうございます。

 是非、来年という期限を決めた形で取組を進めていただければと思います。

 一方、その点において、立憲民主党が提出した修正案において追加された検討条項における奨学金の返済額を所得控除の対象とするということは、近年、大学生の奨学金利用率が増加している実態を踏まえると、少子化対策に有効であるというふうに考えます。

 修正案にて奨学金を所得控除の対象とした経緯を、提出者の方、教えてください。

大西(健)委員 水沼委員におかれましては、奨学金を借りて返済をされている世代に近い、世代の声を代表して御質問いただき、ありがとうございます。

 日本学生支援機構によれば、大学において奨学金を借りている学生は約半数とのことであります。また、奨学金利用者の借入総額平均は三百万円を超えているという調査結果もあります。

 貸与型奨学金を利用して大学等を卒業した場合、就職した後も長期間にわたり奨学金の返済に追われることになります。若いうちは就職後の給与も総じて低いため、当該給与から更に奨学金を返済することで可処分所得が引き下げられることになります。結果として、結婚や子育てに踏み切ることができないような環境に多くの若者が置かれていることになり、これは少子化の一因になっているというふうに考えております。

 したがって、我々といたしましては、奨学金の返済に追われる若年層を支えるため、返還免除制度の拡充や有利子奨学金の利子分の免除を始め様々な支援策が必要であると考えておりますが、その一つとして、税制において、貸与型奨学金の返済額の一部を所得控除の対象とすることで負担軽減を図る必要があると考えております。

水沼委員 ありがとうございます。経緯がよく理解できました。

 私自身の家庭も今、奨学金を返済している途中なんですけれども、やはり若年層の実態に沿ったすばらしい提案だなというふうに感じる一方で、それに伴う税収の低下というところも懸念しています。

 税収の穴埋め策についても教えてください。

大西(健)委員 様々な、我々、先ほども少し答弁をさせていただきましたけれども、税法の修正案の検討条項で掲げています応能負担を求める税制改革や不合理な税制の見直し、これを取り組むことによって必要な財源を確保していきたいと思います。

 また、検討条項の中では、相続税及び贈与税の累進強化ということも掲げさせていただいておりますので、そうしたことを通じて、世代間の不公平の是正、これを図っていければというふうに考えております。

水沼委員 ありがとうございます。

 今、大西さんからもあったとおり、例えば企業の内部留保というのは、二〇二二年度に五百五十五兆円となり、過去最高を更新したというふうに理解をしております。税は負担できる能力に応じて課税をするという応能課税の原則に基づいて、様々な穴埋め策も検討していくというのが非常に適しているのかなというふうに思いました。ありがとうございます。

 次に、今まさにありました相続税及び贈与税にテーマを移してまいりたいと思います。

 まず、前提として、日本の世の中で相続税を払っている人の割合、どれぐらいかというと、お亡くなりになられた方の九%です。ですので、つまりは、多くの人にとって相続税は発生せず、その意味では、これからするお話は、これまでの生活に、余り、ほとんどの人にとっては影響のない話であるということをお含みおきいただければと思います。

 我が国の相続税における最高税率は、一九八〇年代までは七五%、二〇〇二年までは七〇%でしたが、今は五五%にまで引き下げられています。その一方、我が国における金融資産の割合は、六十歳以上の方が六割以上保有しているという現状があります。

 持続可能な社会保障制度を維持するためには、現役世代の社会保険料の増大を抑えるために、公的医療保険の適用範囲を再度議論をするといったことなどに加えて、ベテラン世代同士の、世代内での支え合いの仕組みを再構築することも非常に有効であるというふうに考えています。

 今回のテーマは税ではございますが、社会保障と税の一体改革が極めて重要であり、様々な可能性を検討することで、現役世代の増大する社会保険料に歯止めをかける、そのことこそが、少子化対策、ひいては現在受け取っている人向けの年金対策につながってくるというふうに思料しています。

 相当に金融資産を保有している方々にもう少しだけ相続税及び贈与税を負担していただくこと、このことに関して、財務大臣の御見解をお伺いします。

加藤国務大臣 これまでの経緯、御承知だと思いますが、相続税、贈与税については、資産の再分配機能の回復を図る観点から、平成二十五年度税制改正において、相続税の基礎控除の引下げ、また、相続税、贈与税の最高税率の引上げなどを行ったところであります。

 こうした見直しや経済社会情勢の変化等に伴い、令和七年度予算案においては相続税収を三・五兆円と見込み、また、年間の死亡者数に占める課税件数割合は、令和五年、最新の実績では九・九%、改正前においては四%ちょっとという水準から、今九・九%ということになっているところでございます。

 相続税、贈与税については課税強化すべきという御指摘もございますが、再分配機能をどの程度発揮させるべきか、また、見直しによる国民生活への影響などをどう考えるかなどを踏まえ、税制全体の中で考えていくべき課題だというふうに認識をしています。

水沼委員 ありがとうございます。

 社会保障制度をどう維持していくかということなんですけれども、やはり小手先の改変ではなく抜本的な改革がどう考えても不可欠だというふうに考えています。

 例えばなんですけれども、現在の税率を各区分で一律五%引き上げた場合の増収見込み、税収の増金額を、概算でいいので、政府参考人の方、お答えください。

青木政府参考人 お答えします。

 税率を一律五%引き上げた場合について、一定の仮定を置いて機械的に試算いたしますと、相続税の増収額は〇・六兆円程度、贈与税の増収額は〇・一兆円程度でございます。

水沼委員 ありがとうございます。

 足し合わせると約七千億ということで、これは非常に大きな税額といいますか税収になるかなというふうに考えております。参考になりました。ありがとうございます。

 あわせて、修正案の提出者の方に、今回、相続税及び贈与税の累進性強化を検討条項として追加しているというふうに認識しています。この経緯についてお伺いしたく、よろしくお願いします。

大西(健)委員 水沼委員にお答えをいたします。

 この間、政府におかれましては給付の施策を数々取ってきておりますけれども、資産状況が考慮されにくいという難点があり、これを補うためには、相続税、贈与税の累進強化は必要であると考えております。

 例えばでありますが、政府はこの間の経済対策で住民税非課税世帯に対する給付を繰り返し実施してきましたけれども、給付対象を住民税非課税世帯に絞りますと、金融資産の多い高齢者に恩恵が及ぶ一方で、働いて住民税を納めていながらも生活が厳しいという、いわゆるワーキングプア層には全く支援が行き届かないという問題が生じます。

 具体例を挙げますと、例えば、東京二十三区在住の単身者の場合、給与収入が百万円を超えると、住民税の均等割が課税され給付対象から外れる一方で、多額の資産があり日々の生活に不自由をしていない高齢者であっても、所得が一定額以下であれば給付金を受け取ることができます。

 住民税非課税世帯は六十五歳以上世帯が四分の三を占めている一方で、国内で個人が保有する金融資産の六割以上を六十歳以上が保有しており、七十歳以上では貯蓄残高が平均で二千五百万円を超えているという調査もあります。また、近年では、八十歳以上の高齢者が被相続人となった相続は七割を超えており、いわゆる老老相続という問題も指摘をされております。

 このような社会情勢の変化を踏まえ、世代間の不公平を是正するため、税率構造や非課税措置の見直しなどにより、相続税、贈与税の累進性を強化することで、多額の資産を有する者に対して応分の負担を求めることが必要と考えております。

水沼委員 ありがとうございます。非常に納得をする答弁でございました。やはりこれだけ社会保障制度改革をどう考えていくかという中において、世代内の支え合いというところも大きく検討していくということが大切だなというふうに考えました。ありがとうございます。

 それでは、次のテーマに移らせていただければと思います。次のテーマは、中小企業対策についてお伺いしようと思います。

 中小企業の取組を後押しする税制に加えて、今現在求められているのは、適切な事業承継も我が国の中小企業の方々に向けての大きなテーマだというふうに考えております。

 中小企業庁によると、今年までに七十歳を超える中小企業、小規模事業者の経営者様の数は二百四十五万人いるとされています。そのうちの半数以上である百二十七万人が後継者未定の状態です。この状況が放置されると、事業承継が進まず、累計で六百五十万人の雇用と二十二兆円のGDPが失われる、これは日本全体で可能性が指摘されています。

 中小企業では、やはり経営者にノウハウや技術がどうしても集中してしまう傾向が特に強いため、早期の後継者育成ですとかMアンドAによる事業承継の促進というのが地域経済の活力を維持向上させるために急務となっています。

 昨年は、そういった中ではあるんですけれども、この中小企業のMアンドAによる事業承継のトラブルが残念ながら相次いでしまいました。売手側は期待していたような十分な経営支援を受けられず、多額の現預金が吸い上げられて、それで終わってしまうという事案が複数発生しています。具体的には、会社を買って、それで買った人がそこで運転資金を抜いちゃって、そのまま逃げてしまうというスキームです。

 中小企業は、オーナーが債務保証をしているケースがほとんどです。買手側に経営権が移ると、当初のオーナーは、債務、つまり借金も買手に移るというふうに当然のように考えますが、様々な理由をつけて経営者保証の名義変更を行わないままにされて、そして、その後倒産してしまった場合に負債を元の経営者が全て背負うというような事態となってしまっているのが、昨年複数発生した問題の論点です。債務は残っているのに運転資金だけ引き抜かれてしまって、その後音信不通になる、こうした買収は吸血型と呼ばれて、MアンドA市場が未成熟な中で混乱が目立っているというふうに感じています。

 会社を売る側は零細企業であるため、経験及び知識が不足しています。他方、買う側であったりですとか仲介をする方にとっては、百戦錬磨です。そういった中で、この情報格差を是正すべきだというふうに考えております。

 そのような中で、金融庁においては、先般、金融機関向けの監督指針を改正することについて発表しているというふうに認識しています。事業承継時における経営者保証の確実な移行に向けた取組について、現在の金融機関への対応状況についてお伺いしたく、参考人の方、よろしくお願いします。

伊藤(豊)政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御質問の中に、不良仲介業者といいますか、そういう方々をどうやって中小企業の中から排除するかという問題と、それからあと、経営者保証一般についての御質問もあったかと思いますので、二つに分けてお答えを申し上げたいと思うんですけれども。

 最初の点につきましては、これは金融機関がいかに中小企業に寄り添って事業の支援をしていくかという点でございまして、私ども、金融機関に対しては、事業者からなるべく相談を受けやすいように、また、金融機関が自分の取引先に対して、変な業者にひっかからないようによく伴走するようにということを繰り返し申し上げておりまして、そういった点、金融機関に対してこれからも強く促していきたいというふうに思います。

 それから、経営者保証でございますけれども、御指摘のとおり、経営者保証につきましては、事業承継またMアンドAの障害となり得るほか、思い切った事業展開それから早期の事業再生等の阻害要因にもなるといった様々な課題を生じさせているというふうに認識しておりまして、こうした点を踏まえまして、金融庁といたしましては、経営者保証に依存しない金融機関からの融資、こういう慣行の確立を進めておりまして、令和四年十二月に経営者保証改革プログラムというものを公表しております。

 このプログラムでは、金融機関に対しまして、経営者保証に関するガイドラインを浸透、定着するための取組方針、自分の金融機関がどういうふうな方針で経営者保証をつけているのかということを公表するように要請しておりますほか、新たな保証契約を締結する際にはどの部分が十分でないために経営者保証をつける必要があるのかというようなことをしっかりと説明をしてほしい、そして記録に残してほしいというようなことを要請をしております。

 さらには、委員の質問と直接関係をいたしますけれども、金融機関に対しまして、事業承継、MアンドA等を把握した場合、自分の取引先がMアンドAをするというようなことを把握した場合には、どうすれば経営者保証を解除できる可能性があるかということを事業者の方に説明するということを徹底するために、監督指針の改正を行った上で、金融機関団体のトップに対しまして加藤大臣から要請をしているところでございます。

 こうした取組の結果、まだ途上ではございますけれども、実際、経営者保証をつけない、さらには経営者保証が何で必要かということを説明するということを両方足しますと、ほぼ一〇〇%に近づいているという状況がございますけれども、引き続きこうした取組を続けていきたいというふうに考えております。

水沼委員 ありがとうございます。

 皆さん御存じのとおり、日本における中小企業数は九九%で、まさに日本の宝だというふうに思っています。だからこそ、この大切な思いですとか熱意をしっかりと適切に継承できるような環境整備を是非意識していただければと思います。

 あと、そもそも、MアンドA仲介業者というのは非常に手数料が高くて、平均の営業利益というのは三五%とも言われております。もちろん取引が成立しなければゼロでございます。だからこそ、ノルマや目標があるような仲介会社にとっては、積極的な買手、これはストロングバイヤーというんですけれども、これが尊重される風土が結果としてでき上がりやすいようなことは想像に難くないと思います。

 また、MアンドAの助言や仲介には業法が存在していないという根本的な課題もあります。このMアンドA、中小企業庁が運用するMアンドA支援機関登録制度には、昨年末時点で約二千八百事業者が登録されているんですけれども、そのうちの半数以上である千五百社が、実は五年以内に設立をした新興企業であるということで構成されています。そのような課題認識も含めまして、この中小企業への適切な事業承継に関する問題というのは、本当に日本にとって大きな、日本の発展に向けて大切なテーマであるというふうに思いますので、しっかりと今後も強く課題認識を持って継続的に取り組ませていただければというふうに思います。

 時間が迫ってまいりました。

 本日も、るる質問をすることによって、日本の発展、そして持続可能な社会保障制度の確立に向けて、また中小企業のしっかりとした継承、そして発展、成長に向けて、子育て世代や現役世代の当事者としての声もお届けしながら質疑をさせていただきました。今後も精力的に活動していくことをお約束申し上げて、お時間となりましたので、私の質問を終えさせていただこうと思います。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、三角創太君。

三角委員 立憲民主党の三角創太です。

 本日は、所得税法等の改正に係る質疑ということで、扶養控除の拡大に関連をいたしまして、大学生年代の子に係る控除の創設、所得控除の在り方について、その他法人税法上の特例措置などの税制に関して質疑を行わせていただきます。よろしくお願いします。

 まず初めに、高校生年代における扶養控除の拡大について伺います。

 今回の税制改正大綱では、大学生年代のお子さんをお持ちの親御さんに対する特定扶養控除の金額の引上げと控除額が逓減する仕組みの導入が盛り込まれているものと認識をしています。このことは、大学生のお子さんをお持ちの親御さんの負担軽減の観点から歓迎すべきものだと考えております。

 一方、高校生年代のお子さんをお持ちの御家庭においては、控除額の引上げどころか引下げの議論が行われているというふうに承知をしておりまして、保護者の方の間に不安が広がっています。

 まず、高校生年代の扶養控除についての今後の方針について、大臣より御説明をお願いいたします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 高校生年代の扶養控除につきましては、令和七年度の与党税制改正大綱におきまして、児童手当を始めとする子育て関連施策との関係、所得税の再分配機能などの観点や六年度税制改正大綱で示した考え方などを踏まえつつ、各種控除の在り方の一環として引き続き検討を行い、令和八年度以降の税制改正において、各種控除の在り方の一環として結論を得るものとされておりまして、政府としても、こうした考え方に沿って検討してまいりたいというふうに考えております。

三角委員 引き続き検討ということなんですけれども、少なくともこれまでは縮小の方向ということで議論がなされてきたというふうに認識をしておりますけれども、それはどういった経緯でこれまで縮小という方向性の議論がなされてきたのか、御答弁願います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 高校生年代の扶養控除の見直しについては、児童手当につきまして、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることとされたことを踏まえまして、令和六年度税制改正大綱において、十五歳以下の取扱いとのバランスを踏まえつつ、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期であることといった点に鑑み、児童手当と合わせて、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図るような見直しを行う方針が示されたという経緯がございます。

 なお、この方針に従いますと、扶養控除の金額自体は縮小することとなりましても、児童手当の拡充と合わせますと、全ての子育て世帯にとって受益が増加することとなります。

三角委員 ありがとうございます。

 少子化を食い止めるという観点から申し上げれば、今、児童手当の拡充を高校生年代までやるということだと思いますけれども、それと併せて、是非、高校生年代においても扶養控除を、今回、大学生で引上げをやった、やる方向性なわけでありますから、これと同様に引上げをする、更に言えば逓減をする形への切替えをするべきだというふうに私は思います。

 このままですと、例えば配偶者控除も、あるいは大学生の、今回控除見直しになりますけれども、ここは壁がなだらかになるんですが、一方で、高校生だけは百三万円で、いきなりそのまま壁が残ってしまうということになりまして、この点が非常に不公平ではないかなというふうに思うんですけれども、この点についての御意見を答弁願えればと思います。

加藤国務大臣 今回の大学生のアルバイト等に対する対応は、現下の厳しい人手不足の状況において、大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているという指摘があることから、今般の見直しで、ちょっと中身は申し上げませんが、導入をさせていただいたところでございます。

 その上で、高校生年代に対しても同様の仕組みを導入するかについてでありますが、一般的に、逓減消失型の控除制度は、納税者のみならず、年末調整を行う源泉徴収義務者である企業の皆さんの事務負担にも配慮する必要がある中で、高校生について、大学生における就業調整の課題がどの程度あるのか等のことも考慮する必要があると考えております。

 なお、高校生年代の扶養控除については先ほど主税局長から答弁させていただいたところでございますが、ただ、高校生については、児童手当を支給するという中において、どういう形で児童手当の支給と扶養控除のバランスをしていきながら全体としてその水準を上げていくか、こういう中で議論されたものと承知をしています。

三角委員 では、時間になりましたので、残りは午後やらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

井林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

井林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。三角創太君。

三角委員 先ほどの大臣の答弁で、大学生については児童手当などがないからこそ扶養控除の拡大もやっているというお話だったと思いますけれども、一方、大学生については、給付型奨学金の拡充ですとか、また第三子以降の学費無償化など、まだまだ不十分ではありますけれども、段階的に無償化が進んでおります。大学生の子供の世帯においては、各種無償化を進めても、扶養控除をむしろ拡大をしている、今回拡大をするということでございますので、そういう観点から申し上げますと、高校生だけ扶養控除を変更しないという説明にはならない、私はこのように思います。

 その上で、どうしても大学生と高校生の間の不公平を今後も維持されるんだということであれば、せめて、財政中立でもよいので、大学生の今回の制度改正と同様に逓減型の制度に切替えをすることで、高校生においても、年収の壁を感じずに、働き控えの解消につながるように、制度変更をしてもらえないでしょうかというところを大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 午前中の答弁で申し上げましたが、高校生で就業調整の課題がどの程度あるのか、逆に言うと、どこまで高校生の方に就業ということを求めていくのか、そういったところも含めて広く議論されるべきものなんだろうというふうに思っております。

三角委員 高校生について就業調整が行われているのかどうかということに関して、これは調べられていらっしゃるんでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 就業調整そのものということではないんですが、高校生のアルバイトの平均収入というのは五十・七万円程度だというふうに把握しております。

三角委員 分かりました。

 金額が百三万円に遠いという御説明だというふうに思いますけれども、百三万円を超えて働くお子さんも一定数は当然存在するというふうに思いますし、大学生年代とこの高校生年代を分ける必要性は私はないのではないかなということを申し上げておきたいと思います。

 次に、所得税の税額控除の課題について御質問いたします。

 各種控除が、今現時点におきましては、基礎控除だったり配偶者控除、扶養控除などを始めといたしまして、給与所得控除なども、ほとんどが所得控除と現状はなっております。その結果として、高所得になればなるほど、税金の削減幅が増えて控除される金額が大きくなるという逆進性が存在をしているという認識をしております。

 今般、百三万円の壁の問題に端を発しまして、これら控除の見直しの議論が行われておりますけれども、この際、財政中立を前提に、これら各種控除について税額控除に切替えを図るべきではないでしょうか。大臣の御意見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 高所得者ほど税負担の軽減額が大きい所得控除方式と比較して、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる税額控除方式の方が所得再分配の効果が大きいことは事実であります。

 ただ、所得控除は、個人の様々な事情を踏まえた担税力の減殺に対するしんしゃくや各種の政策上の配慮を行い、課税所得を調整した上で、同じ課税所得に同じ税負担を求める、横の、水平的な公平ですね、そういったものを担保しようとする仕組みであります。したがって、所得再分配効果の大小のみをもって、一概に所得控除よりも他の手法がより公平公正であると評価できるものではないと考えております。

 ただ、その上で、現行の税制においては、所得控除方式を維持した上で所得再分配機能を高める工夫として、基礎控除などにおいて控除を逓減、消失させる仕組みも設けられているところであります。

 今後の諸控除の在り方については、公平、中立、簡素といった観点や、経済社会の構造変化への対応など、様々な要素を踏まえて、幅広く検討していきたいとは考えています。

三角委員 税額控除を我々としてはやるべきだというふうに申し上げておりますけれども、所得控除を続けていく以上においては、いつまでたっても高所得者の方が控除額が大きいという問題は結局変わらないわけであります。今回百三万円の壁のように、引上げをしよう、制度をいじろうとしても、幾らに基準を新たにしたって、結局逆進性は引き続き伴ってくるわけでありますし、今回、与党などにおいては、ここで更に複雑な、二百万だったり五百万だったりという新しい所得制限をつけるという非常に複雑怪奇な制度をまたつくろうとしているということでありますけれども、税額控除であれば、所得の金額に関係なく、一律に、例えば基礎控除であれば五万円を所得税から引くという形にすれば、非常に分かりやすく、かつ公平な制度になるというふうに私は思います。

 仮に、基礎控除、今四十八万円ということでありますけれども、これを税額控除に切り替えて、財政中立のまま一本にするということだと、大体どれぐらいの控除額がその目安になるのかというのを答弁いただきたいというふうに思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得者の多くは年末調整により課税関係が完了するために、税務当局が保有するデータには制約がございまして、厳密な計算は困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 その上で、御参考までに、所得税の現行制度における基礎控除につきましては、減収見込額が全体で二・六兆円でございます。これを所得税の納税見込み者数五千六百万人で機械的に割ると、一人当たりの平均減収額は約五万円となります。

三角委員 今五万円というふうに数字を出していただきましたけれども、仮に五万円の減税額ということだと、基礎控除額四十八万円ですから、所得税率にして大体一〇%以下の方については減税になるということでございまして、また、私の方で試算をいたしますと、大体、サラリーマンの方であれば、年収六百五十万くらいの年収の方までは、仮に税額控除一本に切り替えた場合には減税になるということなわけでございます。

 日本の平均年収は四百六十万程度ということでございますので、多くの皆様にとっても税額控除への切替えというのは十分にメリットがあるものだというふうに思いますし、なおかつ制度の簡素化にもつながるということでございますので、是非切替えを提案させていただきたいというふうに思います。

 そして、さらに、我々は、税額控除への切替えを導入するのと併せて、給付つき税額控除の導入もやるべきだというふうに考えております。これは、改めて申し上げるまでもないですが、税額控除では所得税を引き切れない水準の、比較的低い所得の方に対する給付をセットで行うことで、所得再分配機能を拡充するものということでございますけれども、本制度導入について、民主党政権においては長期的な方針として決定をしていたということでございますが、現在の政府における、本制度の導入についてどのように考えているのか、大臣の答弁を願います。

青木政府参考人 お答えします。

 給付つき税額控除につきましては、財源確保という課題に加えまして、実務の面で、企業や地方公共団体の事務負担、現行制度では把握しておりません非納税者などの所得、世帯全体の所得の正確な把握といった課題がございます。

 また、制度面でも、所得は低いですけれども資産をたくさん持っていらっしゃる方の取扱い、それから生活保護などの他の低所得者支援制度との関係を十分に整理する必要があるといったことでございまして、様々な課題がございまして、その導入には慎重な検討が必要であるということを考えております。

三角委員 所得の捕捉が確かにできていない部分があるということの問題認識は、私も持っております。アメリカにおいては給付の不正受給などがこの制度において発生しているというのも伺っておりますけれども。

 例えば、現在のマイナンバーの制度において、課税最低限以下の方々に対する所得の把握というのは一体どれぐらい行われているのかというところを御説明願えればと思います。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 国税当局におけます所得の把握でございますが、これは申告書の記載を基にしておりますが、それだけではなくて、法定調書と申告書との突合などによって行っているところでございます。

 その中で、マイナンバーは、この法定調書との突合や名寄せなどをより効率的かつ正確に行うためのものですが、そもそも法定調書はカバーする所得の範囲が必ずしも網羅的でないという点に留意が必要と考えております。

 いずれにいたしましても、申告をされない課税最低限以下の方、これは元々、そもそも申告義務がございませんことから、国税当局において所得の把握が行われているわけではないということでございます。

三角委員 分かりました。

 そのような課題も確認をしながら、我々としても、更に具体的に、この給付つき税額控除についての提案を今後も行ってまいりたいというふうに思います。

 次に、教育訓練費に係る上乗せの税額控除の削減についてお伺いをいたします。

 本税額控除は、賃上げ税制が適用された企業に限定をして上乗せで適用されるものでございまして、企業が従業員に対する教育訓練費を増額すると、給与増加額に応じて一定割合の税額控除を追加で受けられることになっていると認識をしています。

 まずは、この制度が導入をされた趣旨について御説明願います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 賃上げ促進税制につきましては、平成二十五年度に創設されております。それ以降、措置の必要性、要件を検討し、所要の見直しを重ねてきております。

 教育訓練に係る上乗せ控除につきましては、人的な投資が生産性の向上やさらには持続的な賃上げの実現につながるという考え方の下で、平成三十年度の税制改正において導入されたものでございます。

三角委員 ありがとうございます。

 一方で、本来であれば、教育訓練費の伸びの範囲内において一定割合を税額控除とすべきところ、制度の適用要件は教育訓練費が伸びているかどうかということであるにもかかわらず、控除額の計算については給与増加額に一定割合を掛けることというふうになっております。その結果として、本制度を適用したある会社では、教育訓練費は僅か五万円しか増やしていないにもかかわらず、その二十倍に当たる一千万円の税額控除を受けている、こうした事例が生じております。

 全体として、このように教育訓練費の増加額を超えて税額控除を受けている企業数は、本制度が適用された全体のうち、何社中大体何社ぐらいなのか。また、教育訓練費の増加額を上回る税負担の軽減額の規模についても御説明願います。

青木政府参考人 お答えいたします。

 租税特別措置の透明化に関する法律に基づく適用実態調査がございます。こちらでは、賃上げ促進税制の適用額の申告は求めておりますが、上乗せ要件である教育訓練費の状況に着目したものとはなってございません。また、申告書の中からこれを抜き出した集計も行っておりませんので、我々として正確な数字を把握しているわけではございませんが、会計検査院が調査、報告をされていまして、平成三十年度から令和三年度の四年間で、教育訓練費の増加額を上回る上乗せ控除を受けたのは、上乗せ控除が適用されました一万二千八百六十一社のうち約七六%に当たります九千八百十二社、その上回っている控除額は二百十四億円というふうにされておるものと承知しております。

三角委員 今お伺いをしましたとおり、大変多くの企業が教育訓練費の増加額を上回って免税を受けているということでございます。

 本制度の導入当初においては、教育訓練費の増加が給与の増加と相関関係があるために、適用要件は教育訓練費を増加をさせることで、控除額の計算基礎の方は給与増加額にする、こういうずれを許容したというふうに聞いておりますけれども、この点はこの認識でよろしいでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 平成三十年度税制改正におきまして、教育訓練費の増加と給与の増加に相関関係があるということに着目して制度を導入しました。その際、控除を上乗せした場合でも、控除額はあくまで給与増加額の範囲内にとどまることから、特に問題がないということで判断をして、このような改正をしたところでございます。

三角委員 分かりました。

 現状として、この教育訓練費に関する控除を適用したことによって給与の増加というのがどれぐらい生じているのか、これについては検証はされていらっしゃるんでしょうか。お答え願います。

青木政府参考人 お答えします。

 令和六年度の税制改正プロセスにおきまして、教育訓練費の増加と給与の増加の関係を直接的に検証したわけではございませんが、令和四年度の事績を用いまして、実態把握に努めました。

 その結果、会計検査院からの指摘にもありますように、僅かな教育訓練費の増加でも上乗せ控除の適用が可能となっているということが明らかになりましたことを踏まえまして、その適用要件について、教育訓練費が給与総額の〇・〇五%以上支出されていることを新たに求めることにするなど、適用対象の法人数を絞り込むための見直しを行っておるところでございます。

三角委員 直近で要件を厳しくしたということは私も伺っておりますけれども、やはり、現状、五万円しか教育訓練費を増やしていないのに一千万円も税額控除を受けているというような企業がいるような状況でございますので、本制度、やはり企業の給与の引上げという趣旨にはかなっていない側面があるというふうに思いますし、不必要に税収を減らしている要因になっているというふうに私は感じますけれども、本制度について、制度趣旨に合致をするように、例えばですけれども、そもそも給与の増加額に掛け目をつけて税額控除額を計算するようなやり方に切り替えるとか、そういった見直しをすることはできないのか、この点、大臣に御答弁を願いたいと思います。

加藤国務大臣 令和六年度税制改正にて一定の見直しを行ったのは、今主税局長から答弁したところであります。まずは、この令和六年度改正の効果を含めた適用実態を確認していきたいと考えております。

 その上で、制度導入時の議論、さらには今般の会計検査院からの指摘事項も踏まえ、賃上げ促進税制の在り方について、要望省庁などとも協議しながら議論を深めていきたいと考えています。

三角委員 分かりました。

 それで、これに関連をいたしまして、今般、さきの委員会に提出をされました所得税法の修正案についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 修正案要綱に記載をされております給与等の支給額が増加をした場合の特別控除の廃止については、今、私から指摘をさせていただきました上乗せ控除の部分についても併せて廃止をするという認識でよろしいのか、修正案の提出者に御答弁を願います。

階委員 三角委員の御質問に対してお答えいたします。

 委員の御質問は、給与促進税制を廃止した場合に、先ほど来問題になっている教育訓練費による減税、これも廃止になるのかということでありますが、それは当然のことながら、いわば親亀と子亀の関係といいますか、親亀が賃上げ促進税制、子亀がその上に乗っている教育訓練費、これを増加した場合には、賃上げ部分について、より減税額は大きくなるというもので、両方一遍に廃止されるということです。

 ちなみになんですけれども、私、先ほど来の議論を聞いていて、どうも財務省の答弁が肝腎なことを避けているなと思って聞いていました。それはなぜかというと、委員は非常に鋭い指摘をされていて、教育訓練費が仮に一%増加したとして、そして、それによって給料が一〇%ぐらい増えたんだったら、一〇%分減税してもそれは別に構わないというお考えなんだと思うんですね。

 問題は、教育訓練費を一%上げたときに果たして賃上げがどの程度実施されているのか、ここがはっきりしないと、この税制というのは意味をなさないんじゃないかということなんですよ。会計検査院の調査結果、先ほど都合のいいところだけ触れていましたけれども、その調査結果を見ますと、訓練費が一%増えた場合給料はどれだけ増加しているのか。僅か〇・〇二から〇・〇四%しか増えていないんですよ。たったこれしか増えないのに、なぜ賃上げ減税額は、少しでも教育訓練費を増やすといきなり一五%ぐらいに増えるということが行われるのか。全くもって理不尽であって、当然のことながら廃止すべきだし、親亀の部分も含めて全部廃止すべきだと思っております。

三角委員 ありがとうございます。賃上げ税制本体の問題と併せて上乗せ部分についても削除すべきという修正案に私としても賛同したいというふうに思います。

 次に、中小企業倒産防止共済制度、いわゆる経営セーフティ共済についてお伺いをいたします。

 本制度においては、企業が掛金を拠出して加入をし、経営不振時の緊急貸付けなどにその資金が供与されていると認識をしております。この掛金は、現状は企業側において全額損金算入できるように租税特別措置において定められております。これは、同制度が緊急時の貸付けなど経営支援に資する公的な性格を有しているためであると認識をしています。解約する場合においても、入会後三年以上経過をした場合には掛金に対して一〇〇%の解約返戻金が受け取れると伺っております。

 一方で、近年では、この制度を悪用して、実質的に節税、保険商品のように利用している、こんな事例が出てきております。すなわち、利益の出た年に本制度に加入をして、損金計上を行って、三年以上経過をして利益の出なかった年に解約を行うことで、元金も保証されて節税メリットを享受をする、こうしたスキームでございます。

 これは、平成二十三年に掛金の上限を月額八万円から二十万円にまで引き上げたことがそのような不適正利用を後押ししてしまっている側面があるというふうに考えますけれども、まずは、なぜ平成二十三年においてこのような掛金額の引上げを行ったのか、答弁願います。

岡田政府参考人 お答えを申し上げます。

 中小企業倒産防止共済制度は、取引先企業の倒産により自らの連鎖倒産を防止するため、中小企業の相互扶助の精神に基づき創設された制度でございます。売掛金の回収が困難となった場合に、積み立てた掛金の最大で十倍まで共済金の貸付けを受けることが可能となっております。

 平成二十三年度に行いました掛金の引上げにつきましては、当時、取引先の倒産によって中小企業が回収できなくなる売掛金債権の額が高額化し、当時の貸付限度額では不足するものの割合が増加していた、これを踏まえまして、貸付限度額とともに掛金の引上げを行ったものでございます。

三角委員 経緯については理解をいたしました。一方で、この不適切な利用についてはやはりちゃんと規制をかけていかなければならないというふうに考えます。

 本制度について、このような不適切な事例といいますか、三年を経過をした後に、一〇〇%返ってくるようになってすぐに解約をしているような企業の数だったり解約金額というところについて教えてください。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年度の実績になりますけれども、任意解約があった三万二千五百七十件のうち、加入後三年目及び四年目で解約した件数につきましては一万七百七十五件、解約金額につきましては、推計となりますけれども、約五百十億円となっております。

三角委員 分かりました。

 これに対して、今般制度改正が行われまして、解約後二年は再度損金算入が受けられないようになったというふうに伺っております。しかしながら、この改正のやり方では、引き続き、一回限り節税をやりたいだったりとか、この期間の二年間を空けてもう一回節税をやりたい、これは防ぐことができないというふうに考えますけれども、この改正のみで本当に適正利用が行われるというふうにお考えでしょうか。

 また、この改正が去年の十月からのスタートということでございますけれども、現時点においてどの程度こうした不適正利用を防止できているのか、その効果について答弁願います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度においては、急激な景気悪化の下で、予期せぬ大型、多数の倒産による資金需要にも対応できるよう、掛金の損金算入措置により、加入者数の増加、維持を図っているところでございます。

 事業者の取引実態に即しまして、柔軟に加入、脱退が可能な制度としておりますけれども、安易な脱退、再加入を繰り返すことで節税するといった形で利用されないよう、制度の目的を維持しつつ、不適切な利用を防止するため、解約後、委員御指摘のとおり、二年間損金算入を不可とする改正を行ったものでございます。

 その効果につきましては、改正されてまだ間もないため、現時点では判断することが困難ではありますけれども、いずれにいたしましても、中小企業の経営安定化のため、今後も適切な形で本制度を運営してまいりたい、このように思っております。

三角委員 これは私からの提案なんですけれども、仮に本制度で三年後以降に解約をした場合において、過去に遡って損金算入を取り消すですとか、又はそれと同等の課税を解約年度に行うという制度を導入をするのはどうでしょうか。その場合の税収増加額についても、私の方で簡易的に試算をしましたところ、大体四百八十億円程度の増収が見込まれるというふうに計算をされました。

 是非とも、こうした更なる制度改正が、不適正利用を防止をしていく上でも適正な課税を行う上でも必要だと考えますけれども、この点についての大臣の御意見を伺いたいというふうに思います。

加藤国務大臣 今、中小企業庁から御説明がありましたように、この新しい制度は昨年十月一日以降の共済契約の解除から適用が始まったばかりでありまして、現時点で不適正利用の防止効果を判断するということはなかなか難しい状況にあります。

 今後、適用実態を把握する中で、状況の改善が見られないような場合には、改めて制度の在り方を検討する必要があるというふうに考えております。ただ、例えば、専ら資金繰りの都合で契約後三年後以降に解除する場合なども当然ありますので、そういったこともよく考えながらその際には検討していく必要があるというふうに思います。

三角委員 分かりました。

 資金繰りのチェック、本当に必要なのかということをしっかり検証していただければということを申し上げまして、私からの質問を終了とさせていただきます。

 ありがとうございました。

井林委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 まず冒頭、立憲民主党の所得税法等に対する改正案要綱における検討条項の追加ということで、階議員とかあるいは大西議員が先ほど説明した中で、特に金融所得課税についてお話をさせていただきたいと思います。

 この検討条項の中で、「一定以上の高額所得を有する者の実効税率が低位である問題を解決するため、当面、分離課税のまま累進性を有する税率構造とすることとし、将来において総合課税に移行すること。」とするということでございますけれども、更なる検討を我々の方でやっていく場合、階議員がおっしゃられたように、例えば一億円以上もうけている方々に二〇%ではなくて更に高率の分離課税を課すような政策が取られる場合、様々な諸課題もクリアしていかなきゃいけないなとも考えるんですけれども、具体的に質問です。

 今、令和四年度で、二〇%の分離課税の税収というのは二・二兆円ということでよろしいかということ、これは資料一に書いているとおり二・二兆円ということ。さらに、例えばもし一億円以上の所得を得ている方に対して三〇%分離課税を課すような場合というのは、準備として、非課税者の名寄せをするとか、あるいは突合するとか、そういうふうなことで様々なかなり準備がまた必要になるんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、個人の金融所得に係る国、地方合わせた税収について、収入可能な税収実績を基に推計いたしますと、令和四年度の利子税収は、お手元に資料、いただいていますが、〇・一兆円、上場株の配当税収は〇・八兆円、株式譲渡税収は一・三兆円となっておりますが、ちょっとそれ以上の分析は難しい、手元の資料の中で難しいということでもございます。

 それから、我が国においては、上場株式の譲渡益や配当等の課税方式が原則一律二〇%の分離課税、比例税率とされていることにより、確定申告が不要な特定口座制度を活用できる制度になっておりますが、仮に、委員御指摘のように、例えば二千万円を超える金融所得について三〇%の分離課税を課すという場合には、納税者御自身の確定申告が必要になるというふうに考えております。

 その上で、公正、適正な課税を担保するため、税務当局において個々の納税者の金融所得に関する情報を的確に把握できるようにしていく必要があります。納税者ごとの情報の名寄せが行えるよう、金融機関等に御提出いただく法定調書を拡充する等の対応も必要になるものと考えています。

末松委員 法定調書の拡充となると、結構、お金持ちの財産をかなり把握していくようなことにもなるので、そういった中で様々な議論を呼ぶ可能性もあるなということを考えながら、我々の方としてもしっかりとこの政策を考えていきたいと思っています。

 さて、次に、今、石破内閣が無駄遣いの阻止ということで、例えば公共事業の見直しとか、あるいは防衛費の査定を見直すとか、あるいは補助金を見直すとか、いろいろとやっておられることは非常に私もよろしいかと思うんですけれども、隗より始めよということで、私のちょっと今日問題としたいのは、自民党本部の借料、これが、財務省所管の土地については、私も二〇〇六年にその問題を取り上げたんですけれども、そのときはきちんと払っておられるということなんですけれども、その自民党本部に続いている土地、衆議院の土地、これは自民党さんがかなり利用しておられるということなんですが、それについてはただ借りをしている、衆議院は一切自民党さんから収入を得ていない、こういうことについて、これをちょっと取り上げてみたいと思います。

 二〇一一年に村越祐民議員が、衆議院の土地について自民党が利用しているけれども、ただ借りという形になっていますよということで、これを是正すべきだということを予算委員会で主張したんですけれども、この隣におられる大西健介議員も、衆議院の土地をただで借りているというのはおかしいということで、これは所管替えを行ってきちんと借料を払うべきだと要求もされておられます。これに対して当時の、二〇一一年、石原伸晃自民党幹事長が、衆議院と自民党の間で使用が合意されているとか、借料を払っていないことは全く問題ないと強弁されておられるんですね。

 そこで、衆議院の事務総長に私の方はお聞きをしたいんです。過去の答弁を確認するということなんですけれども、まず、衆議院と自民党の間で駐車場の使用協定というのがあったのかなかったのか。

 ちょっと、私がまずどんな場所かということを特定しないといけないですね。

 資料の二を見てください。横が自民党本部なんですね。黄色で囲ってある部分が衆議院の駐車場なんです。そこで、私の方で、この三をちょっと見ていただきたいんですけれども、これは私が自分で撮った写真なんですが、衆議院の事務局同行の下で撮りました。これが衆議院の、上も、土地で、自民党本部がもうすぐ横にあります。さらに、その下の写真が、黄色で引いてある、これが自民党本部と衆議院の土地の境なんですね。

 だから、とにかく車が勝手にどんどん置いてあるということなんですね。これは事実上、自民党さんが使っておられるんじゃないかというふうなことを私も感じているわけですけれども、ここで、自民党から一切衆議院は借料をもらっていない、これは事実かどうかというのを確認したいということ。

 あと、この駐車場については、大西議員と鬼塚事務総長との間で、二〇一三年、これは資料の七で、二段目なんですけれども、鬼塚事務総長が、この二段目に、「確かに、利用されている方の多くは自由民主党本部を利用される方でございますので、実際上、この便益は自由民主党が得ているということは、そのとおりでございます。」こういう形で認めておられるわけです。

 私自身も衆議院の配車の運転手さんと幾多、何回かいろいろと話を聞いてみると、自民党の衆議院議員や自民党関係の用事でしかあの駐車場は使っていない、自民党本部に用事がない野党議員が使用したことは見たことも聞いたこともないと。

 今どこにあるんだということなんですけれども、もう一回資料二を見ていただいて、この黄色い枠のちょっと右側が自民党本部入口ということで、大体そこを通っていかないと、そして衆議院のこの駐車場については入口があるんですけれども、これを全部塞いで、施錠してあって、通常は入れない、だから自民党本部の中で、本部の入口を通ってしかここは利用できないということで、我々野党も当然そんなのは使わないねということなんですけれども、これについて、事務総長、再確認をしていただきたいと思います。

築山事務総長 お答えさせていただきます。

 先生御指摘の土地は、先生が配付された会議録、資料七ページの大西先生との会議録にも記載されておりますとおり、今の自民党本部敷地と併せて、元々は議員会館附属建物用地とされていたものが、東京オリンピックに関連した道路整備の都市計画で従前の自民党本部が移転対象とされたため、昭和三十六年五月二十五日の議院運営委員会において、自由民主党本部受入れ用地とすることが決定されたものの、結果的に、都市計画道路のための必要な部分二百六十四坪を除いた千四百三十一坪のうち一千坪が自民党本部建設用地となり、残りの四百三十一坪は引き続き衆議院の所管財産として、議員会館附属の名称で台帳に記載されているものでございます。

 主に衆議院公用車の待機用駐車場として使用しているほか、参議院公用車、衆議院が発行する駐車ステッカーを掲示している議員及び秘書の車両、また各省各庁の公用車、大使館公用車、要人警護車両にも駐車を認めており、定期的に巡回を行い、衆議院公用車及び衆議院として駐車を認めている車両以外の車が無断駐車していないかを確認するとともに、利用実態の把握のために駐車台数を記録しておりますが、それらの車が自民党用務か否かまでは把握しておりませんので、位置的に自民党用務以外の車が駐車することは想像しにくいところでございますが、断言はできませんことを御理解のほど、よろしくお願いいたします。

 なお、自民党から使用料をもらっているのかという点につきましてでございますけれども、衆議院と自民党の間におきまして国有財産使用許可書の交付はしておりませんので、使用料の徴収ということは行われておりません。

 御指摘の土地につきましては、衆議院として、議会運営を迅速かつ円滑に行うため、また、路上駐車による国会周辺のセキュリティーの阻害や周辺道路の混乱を防止するために、衆議院公用車及び衆議院が発行する駐車ステッカーを掲示している車両等の待機用駐車場として使用しているものであり、特定の政党の利用を前提とした使用許可や使用料の徴収を行うことは想定しておりません。

 以上でございます。

末松委員 そういう議論というか、そちらでは言われていますけれども、鬼塚事務総長が、そういうことで、ほとんど自民党さんしか使っていないという話になっているし、特定の政党といったって、そこは私も確認してきたわけでありまして。

 ちょっと矛先を変えて、今、一九六四年から六十五年間、自民党本部で財務省の土地に対して払っている千坪の借料というのは、総計幾らぐらいになりますか。

加藤国務大臣 自民党本部敷地の貸付始期、これは昭和三十九年十月と聞いておりますが、から、貸付契約上、貸付料が確定しております令和九年九月三十日までの貸付料の総額は約三十八億円となっております。

末松委員 今、この三年間で、年間一・一六億円の契約がなされていると。だから、衆議院の土地が四百三十一坪なんですね、約四三%ですけれども、その広さで考えると、大体、六十五年間で、もし衆議院の土地の借料を自民党が払っていたと仮定したら、十六億円程度。だから、三十八億足す十六億円で約五十四億円程度の借料が本当は発生して、本来であれば払わなきゃいけなかったと私たちは思っているわけでございます。

 こういうことを、この前、資料六で、村越議員の中で、当時、民主党が政権党だったので、安住財務大臣が、自民党にも問題があるかもしれないが、長年この問題に何ら対応してこなかったとすれば、衆議院は相当重い責任を背負っているというふうに断言しておられるわけですね。

 だから、こういうことに対して、私、思うんですけれども、このまま何もしなかったら、永遠に自民党は衆議院の駐車場をただ借りし続けることになるんでしょうか。衆議院事務総長、ちょっとそこはどういうように考えておられるのか、お願いします。

築山事務総長 先ほども答弁させていただきましたけれども、衆議院から自民党に使用許可を出して使用料を徴収するということにはなりませんので、これをもし自民党に貸すという場合には、一旦国に返還手続というかそういうことをした上で、財務省から貸付けということにはなってまいります。

 御指摘の土地につきましては、衆議院といたしましては、国有地の適正な管理という観点から、先ほどの先生の写真にもありましたけれども、自民党の敷地との境界線の表示や看板の設置を行うとともに、定期的に巡回を行い、衆議院公用車等の待機駐車場としての用途に沿った適正な管理に努めているところでありますが、今後、議院運営委員会等において協議がなされ何らかの方向性が出ましたら、それに沿って対応させていただきます。

末松委員 国有財産法の十八条に、衆議院がもし自民党本部用に役立てている、まあ役立っているという事実関係、そうなんでしょう、適正な対価の支払いが必要じゃないかと誰しもそう思いますよ。それはおかしいんじゃないですか。何か、ほとんど、賃借契約がないからうちはただで使ってもらって結構なんですというのはおかしいんじゃないですか。国民感情からいって、これは許されませんよ。

 あと、さらに、国有財産法の九条の五では適正管理義務というのが発生しているわけだから、あなたがずっとこれ、去年、おととしで発覚した問題じゃなくて、もう十数年前からずっとやってきているわけですよ。何も衆議院はやらなかったんですよ。そうなった場合にはやはり、例えば、自民党が使っておられるということであれば、別にそうしたら、適切な形で借料をお願いするとか、あるいは、そうじゃなくて、台帳価格は、あの土地は四十一億円するというのを財務省から聞いたんですよ、ということであれば、民間に売却するのか、あるいはPFIという形で利用していくのか、様々な利用をまず衆議院が考えなきゃいけない立場なんですよ、国有財産法に基づけば。それは全くやる気がないんですか。

築山事務総長 済みません。

 昔の鬼塚事務総長の答弁にもありましたように、これは衆議院の公用車等の待機用駐車場として使っていて、自民党は反射的利益を得ているという答弁がその当時はなされておりまして、ただ、先生御指摘のとおり、国民感情から見て、これはいかがなものかというところは御指摘のとおりでございますので、今後、ちょっと何らかの対応を議運の先生方とも御相談させていただきたいと存じます。

末松委員 財務大臣にお伺いしたいんですけれども、国有財産法では七条と十条、私も見ましたけれども、国有財産の総括、管理というのは財務大臣にあるんですよ。だから、こういうふうな問題がずっと発生していて、知らぬ存ぜぬというものをやるんじゃなくて、きちんとそこは是正措置をやって、そういう検討も、総括的な責任があるわけですから、衆議院がそういうことを責任を果たしていない、元の財務大臣がそう言っているわけですから、それは、総括責任がある財務大臣としてもそこはきちんとアドバイスするとか、それを、利用を考えるということをやるべきじゃないですか。

 本来であれば、議院運営委員会の庶務小委員会が所管替えをしてということになるんでしょうけれども、まず財務大臣はこの総括の責任、国有財産の利用について、これについてどう思っているのか、お伺いします。

加藤国務大臣 国有財産法においては、各省各庁は、その所管する行政財産について、用途又は目的に応じて適正な管理を行わなければならないとされております。

 その上で、御指摘の行政財産については、所管する衆議院から、議会運営を迅速かつ円滑に行うため、主に衆議院公用車の待機駐車場として使用するとともに、定期的な巡回や看板設置等による管理を行っているとの説明を受けているところであります。その限りにおいては、用途又は目的に反することは確認はされていないと聞いているところであります。

 いずれにしても、御指摘の財産の管理の在り方については、まず、所管する衆議院において検討されるべきものと認識をしております。財務省としても、衆議院からの検討状況をよく聞いていきたいと思います。

末松委員 自民党、大臣の所属党がこういうのは、なかなか自分で、それはやりにくいと思いますよ、立場上。でも、だからこそ自ら身を正していくという姿勢じゃないと、国民としては、何だ、自民党がいつもああいうふうなことをしてただ借りしてもうけているのを財務大臣は黙っているのかと。もし庶務小で、今野党の多い、これで所管替えになっていったら、財務大臣は何も言わなかったのかと。

 国有財産法十条で、財務大臣は、各省各庁に対し、その所管に関する国有財産については、その状況に関する資料若しくは報告を求め、実地監査をし、又は用途の変更、用途の廃止、所管替えその他必要な措置を求めることができると。これは、総括責任である加藤財務大臣の責任じゃないですか。そこはまず自ら隗より始めよということをやっていくことが逆に、まあこんな、大自民党がみみっちいことをするんじゃなくて、そこはきちんと身を正して、やはり、信頼ある政党なんだということを強調する上でも、是非そこはそういう形でやるべきだと思うんですが、改めて御決意をお願いします。

加藤国務大臣 同じ答弁の繰り返しになってしまいますけれども、まさに衆議院において今の現状について私どもも説明を受けておりまして、その限りにおいては、用途又は目的に反することは確認されていない、先ほど事務総長からもその旨の答弁があったというふうに認識をしております。

 そして、衆議院において御検討云々というお話もございました。財務省としては、衆議院からの検討状況を聞くなど、引き続き注視していきたいと考えています。

末松委員 結局、そういった立場が、結局、この国は変わらないと。要するに、総括責任のあるところが動かない。本来であれば、衆議院にもうちょっときちんと適正管理をやれと言うべき立場が財務大臣だと思うんですね。

 これを繰り返してもしようがありませんから、私、財務委員長にちょっとお願いがございまして、結局、これは最後は議運委員長の中で、庶務小委員会でこれは決定されることになると思うんですけれども、こういった場合、是非、衆議院の行政財産から普通財産の方に所管替えしていただけるように委員会で要請があったということを議運委員長にお伝えいただければありがたいと思うんですが、いかがでしょうか。

井林委員長 理事会で協議をさせていただきたいと思います。

末松委員 そこは是非お願いします。

 ちょっと余った時間なので、別途、財金に関する話を続けます。

 我々も、給付つき税額控除というのを実現する場合、財務省として、所得の捕捉として、先ほど議論もございましたけれども、マイナンバーの利用が前提になるというふうに考えているんですけれども、マイナンバーの利用率が今そんなに高くはないということで、所得の捕捉は十分に把握できるとは考えていないという話もございましたけれども、マイナンバーの利用率というのは何%まで上がれば所得の捕捉が十分だというふうな判断になるのでしょうか。

加藤国務大臣 先ほどあった給付つき税額控除については、財源確保という課題に加えて、実務面では、企業や地方自治体の事務負担、現行制度では把握していない非納税者等の所得や世帯所得や、網羅的に把握していない金融所得等の正確な把握といった課題、制度面でも、所得は低いが資産を多く持っている場合の取扱い、生活保護などの他の低所得者支援制度との関係を十分に整理する必要があるといった課題も考えられるということを、この導入に当たって申し上げておりますけれども、いずれにしても、そうした課題があるというふうに認識をしております。

 マイナンバーの普及、活用が進めば、一定程度そうした課題にも改善するところはあるというふうに思っておりますけれども、それでも、例えば、預貯金口座へのマイナンバーの付番は任意であること等により、依然として金融所得等の正確な把握には課題があるものというふうに認識をしています。

末松委員 御答弁ありがとうございます。

 私が聞きたいのは、今財務大臣が言っておられた、一定程度のマイナンバーの普及率が進めば結構ここはできるようになるのではないかという、その一定程度というのはどのくらいですかと聞いていたんです。

加藤国務大臣 今、たしか、普及率六七%だというふうに認識をしております。

 ただ、その上で、全部がいったところで、先ほど申し上げたような課題があるということを申し上げたところでございます。

末松委員 ということは、その課題がやはり非常に重くて、所得の捕捉というのはこの国は非常に厳しいんだということを財務大臣自身も感じておられる、こういう理解でよろしいですか。

加藤国務大臣 そういった意味で、先ほど申し上げました実務面における問題、他方で制度面でそこをどう考えるかという課題も、一方で、先ほど申し上げたところでございます。それらを含めて議論していく必要があると思います。

末松委員 ちょっと最後の質問になりますけれども、今、立憲民主党でも、この横におられる江田議員を中心に、食料品、基礎食料品というか生鮮食品というのは税率をゼロ%にしてやろうということを今検討をしているところでございますけれども、外食や加工食品を現状のままの税率とした場合、その場合、税収の減少というのはどのくらいということになるんでしょうか。それを、質問を通告したところでございます。

青木政府参考人 お答えします。

 消費税につきまして、現在の軽減対象品目の範囲を維持しつつ軽減税率をゼロ%とした場合の減収見込額に比べまして、生鮮食品のみについてゼロ%とした場合の減収額は少なくなるものとは思われます。

 ただ、現在、消費税の申告におきまして、生鮮食品に係る消費税額などの内訳まで申告していただく仕組みとなっておりませんので、生鮮食品に限定して税率をゼロ%にした場合の具体的な減収見込額につきましては、確たることをお答えすることは難しゅうございます。

末松委員 そうすると、それを実施する場合は、生鮮食品とか、それの税率はゼロにするとして、それの何か報告が必要なのかしら。どういう仕組みであればそれが可能になるの。あるいは、逆に言えば、イギリスとかカナダとかあるいはオーストラリアとか韓国とか、そういった国も同じような問題を抱えているわけなんですけれども、それはどういう報告あるいはどういう仕組みで食料品ゼロというのを実現しているんですか。

青木政府参考人 お答えします。

 まず、どこで線を引くかというお話は、それぞれの国で法律などに定めて線を引いて実施しております。日本においても、食料品というところで線を引いて、まあ食料品とそうでないものというのは割とあれですけれども、生鮮食品と加工食品だと割と似たようなものというのが結構ございます。そこを、どこで線を引くかというのはまず一つ制度面での課題としてあります。

 減収額について言いますと、今、消費税で食料品を軽減税率にしている減収額というのは、計算はもちろんできるんですけれども、そこの中を更に分けて、生鮮と加工で分けたものについて計算するというのは、今、消費税の申告で、そこを分けて申告していただいているわけではないものですから、我々の方でなかなか計算することは難しいということをお答えしたところです。

末松委員 我々もこれから制度を勉強会でもつくっていかなきゃいけないと考えておりますけれども、私が言った質問は、加工食品は別に、レストランとかその辺で食べるのは今の税率ということを前提にしたら、生鮮食品だけをやったらどのくらいになるんだというのが私の質問なんです。よく聞いていませんでしたか。だから、そこはあなたの所感で結構だから、そこはちょっと言ってくれませんか。

青木政府参考人 お答えします。

 今は、食料品全体について軽減税率としております。その中で、議員が御指摘のとおり、どこかで加工とそうでないもので線を引くと申しましても、我々として、そこについて数字を持っておりません。申告で、そこを分けて申告していただいているわけではないので、なかなかそこを計算するのは難しいということを申し上げております。

末松委員 一応、我々もこれから検討していきますので、是非また御協力いただきたいと思います。

 質問を終わります。

井林委員長 次に、萩原佳君。

萩原委員 日本維新の会、萩原佳です。よろしくお願いいたします。

 では、早速ですが、質問させていただきます。

 済みません、ちょっと時間の関係上、順番を入れ替えて、最初に外国人旅行者の免税制度の改正についてお伺いをいたします。

 外国人旅行者向けの免税制度については、数々の不正、これが行われる事例が発生して、また、違反者に対して賦課決定を行ったとしても、ほぼほぼ全ての方が滞納されたまま海外に出国されている状況であったという事態に対応するために、外国人旅行者向け免税制度の見直しが図られ、そして、リファンド方式に制度を見直そうとされております。

 済みません、これもちょっと最初に質問の通告が漏れていたかもしれないので、もし分かればという形でいいんですけれども、現行の免税制度ですね。空港での税関検査の回避が可能であったりとか、国内での横流しや国内消費が可能であって、そもそもリファンド方式を採用しておけばよかったんじゃないのかなという話もあったかと思いますが、導入時に、リファンド方式、これを採用しなかった理由。そして、今回採用されるということは、採用されなかったボトルネックが解消されたのかなと思っておるんですが、解消されたというのであれば、その内容もお示しいただければと思います。もしお答えがお分かりになるのであれば、お願いします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、消費税の外国人旅行者向けの免税制度が導入された際には、今ほど電子化が進んでおりませんでした。今は電子化が進んでいて、当局が、外国人の旅行者の方が幾らお買物されたのかというのが瞬時に分かるようなシステムが導入されております。

 こういった中で、今回、御指摘のありましたような、外国に持ち出さずに免税を受けておられるような方が結構たくさんいらっしゃるというこの状態に鑑みまして、リファンド方式に改めさせていただいたところでございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 時代が追いついてきたというところと、そういう不正の事例が見られたということかと思います。ありがとうございます。

 それでは、まず、それを前提に、今回のリファンド方式、過去、空港で行われていたのは税関検査業務だけであったものが、そこに、観光客自身によるキオスク端末でのリファンド手続、これが加わることになるということですので、空港等で出国手続に手間が増えて混雑が想定されますが、この混雑に対してはどのように対応される予定でしょうか。

 そして、旅行者にとっては、一度預けた消費税、これが戻ってくるまでに一定タイムラグが発生することになり、ある意味不便をかけるということになるかと思いますが、どの程度で返還されるようなことを想定されているのか。そして、想定されている金額の総額も分かればお示しいただければなと。

 さらに、三つ目として、販売事業者側からすると、現行方式の場合は、帳簿登録は、最初から免税売上処理して完了であったものが、リファンドに伴う返金処理という手間、課税売上処理の取消しと免税売上処理の再計上、販売から九十日後までは経理処理が固まらないという手間が、手間というか負担ですね、これが発生することになると思いますが、これら業者に対しては一定配慮が必要であると考えますが、どのようなメニューを用意されているのか。

 以上三点ですか、お答えいただければと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、混雑の防止でございます。

 先ほど申し上げましたように、免税手続が電子化されておりますので、旅行者は、基本的には、出国時に空港に設置された専用の端末に旅券を提示することで、税関による持ち出し確認を受けることは可能となります。また、主要空港を対象に、空港内の一定のエリア内でオンラインで手続をすることや自動チェックイン機との連携などの検討、調整も進めておりまして、空港での混雑防止にしっかり努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、旅行者が消費税額の返金を受けるまでの流れにつきましてでございます。

 現在、返金事務を行う事業者において検討が進められているところでございますので、まだ確定しておるわけではございませんが、例えば、旅行者が免税店での購入の際などに、返金を受けるクレジットカードなどの情報を登録いたしまして、空港に設置された専用の端末で持ち出し確認手続を受けた後に、登録したクレジットカードなどに自動的に返金といった流れになるものと承知しております。

 返金事務を行う事業者の方で現在検討が進められておりますので、そういったものをよく見ながら、我々としても、できるような対応をしっかりしてまいりたいと思っております。

萩原委員 自動のところに関しては、自動チェックイン等々を使って、返金関係に関しては業者が今検討中と。

 あと、最後にお聞きした経理処理等々、そこのところが漏れているかなと思いますので、お願いします。

青木政府参考人 恐縮です。

 繰り返しになりますけれども、今、返金事業者の方で対応を検討されておるということなので、それに応じて、返金の流れみたいなものも最終的には確定してまいると思います。

 その上で、リファンド方式で、今回新しいシステムを入れるということで、先ほど御質問の中にも免税店に対する支援みたいなお話もあったと思うんですが、リファンド方式に対応するために、免税店がPOSシステムの改修が必要となる場合がございます。そうした免税店への支援として、国際観光旅客税収を活用したインバウンド受入れ環境整備に係る事業におきましてシステム改修の支援が可能となるほか、IT導入補助金におきましても、従来から、補助要件に合致する、免税制度に対応したITツールを導入する際に支援を受けることが可能な場合もあるというふうに承知しております。

萩原委員 POSの改修、IT導入補助金を使う等ではございますけれども、抜本的なシステム変更だと思いますので、是非、販売事業者の方にできるだけ手間がかからないような支援をお願いしたいなと考えております。ありがとうございます。

 ここで、税関で行われる検査についてお聞きしたいと思います。

 リファンド方式が採用されると、実際、国外に持ち出すときに、既に手元に物がないとリファンドを受けることができないという意味では、国内での横流し対策という意味では非常に有効であるなと考えますが、国内消費、これに関しては、そもそもその判断が難しい物品も少なくないんじゃないのかなと考えております。

 つまり、今回の免税、そもそもの思想として、消費税を課さなくていいとされるのが、加藤大臣も午前中の質疑でおっしゃっておりましたけれども、販売した商品の消費、これが国内ではない、国内で消費されない、使われないから消費税を課さないという、消費税の四要件に当たらないというところから、消費税を課さなくていいよというロジックがそもそもあると考えておりますけれども、税関では、どのようにこの消費、未消費の判断をしていく予定なのか。

 例えばお菓子とか、そういうパッケージがついているものというのは、空けていたら、使っているでしょう、食べているでしょう、あなたという話をできると思いますので、消費しているねという話ができると思うんですけれども、国内でのリサイクルショップとか、ああいうところで中古のブランド品とか買ったような場合、国外に持ち出すときというのは、そもそもどうやって、使っている、使っていないという判断をされるのかなと。今までは、袋に入れて、そこから出していたら駄目だよみたいな話があったと思うんですけれども、そういうパッケージもなくす予定だとお聞きしておりますので、このような国内の消費の判断、どのような想定をされているのか、どういう対応を図っているのか、現状の想定、これをお示しいただければなと思っております。

 また、今回のリファンド方式の採用ですね、今現状、どれぐらいのリファンド不要額が増えて、国内での消費増税に寄与すると考えられているのか。

 以上二点、お示しいただければと思います。

高村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現行制度ですけれども、空港等で免税購入者が出国する際に、税関において購入記録情報を用いて免税購入品の持ち出し確認を行っております。

 そして、委員御指摘のように、食品などの消耗品が国内で消費された場合については、消費税法第八条第三項に規定する、当該物品を輸出しないときに該当することとされておりまして、税関が免税購入者に対して、購入時に免除された消費税相当額の賦課決定を行うこととしております。こうした取扱いは、リファンド方式においても変わることはありません。税関としては、引き続き厳格に免税購入品の持ち出し確認を行ってまいる所存であります。

 そして、委員、食品が消費されているのをどのように判別するかというお問合せがありましたけれども、空いていたり中身が残っていたりという場合、御質問の場合につきましては、様々なケースが考えられることから、一概に回答することは困難ですが、一般論として申し上げると、食品の一部が消費されている場合などは、税関での持ち出し確認が認められないことになると承知しております。

萩原委員 ちょっと私の伝え方が問題だったのかも分からないんですけれども、食品は割と分かりやすいんじゃないんですかというところで、そうじゃないものですね、食品以外の物品の消費、未消費ってなかなか難しいんじゃないのかなと思っているので、そこに対してはどういうふうに、今後考えていきますということなのか。現状、例えばブランド品のバッグとか持って帰るというときに、明らかに使っているよね、手元に持っていますよねとかということがあれば、それは消費していますよねと私は思うんですけれども、そのようなケースはどういうふうに想定しているのかなというのが質問の趣旨です。

高村政府参考人 食品以外も含めてということですけれども、やはり様々なケースが考えられることから、一概に回答することは困難でございます。

 今後、税関での具体的な運用をよく検討してまいりたいと思いますし、関係省庁と連携しながら、旅行者や免税店への周知を行ってまいる所存でございます。

萩原委員 是非よろしくお願いします。

 もろもろお聞きしましたけれども、想定される課題とかあると思いますので、是非、出国前の外国人旅行者の方に気持ちよく出国していただく、そしてあと、国内で使っちゃいけないけれども使っているとか、そういうようなケースというのは厳格に対応していただいて、消費税を浮かすようなことはしないようにしていただくこと、厳しい対応をお願いして、この質問は終わります。

 続きまして、売上高百億円超を目指す中小企業の支援というところで、今回の改正案では、中小企業経営強化税制において、百億円超を目指す成長意欲の高い中小企業の思い切った設備投資を後押しするために、このような企業が行う一定規模以上の設備投資については、制度の対象資産に建物を追加する等の拡充を行って、その建物も含めて特別償却若しくは税額控除ができる措置を講じた上で、適用期限を二年間延長されようとしております。

 これに関連して四点お伺いいたします。

 まず一点目。今回の改正、なぜ百億円超を目指すとしたのか。別に、百億円でも、五十億円でも、百五十億円でもいいんじゃないのかなという気がしておりますので、そのための質問が一つ目です。

 次に、二点目。当該制度を利用可能な法人は、制度適用時に売上高十億円超九十億円未満の企業とされておりますけれども、大分メッシュが粗いというか、売上高十億円の企業と九十億円に迫るような企業では、大分企業としての物というか基盤が違って、一くくりにするには難しいような金額幅であるようなふうにも思えるんですけれども、このように広い幅を適用要件にした趣旨をお聞かせください。

 三つ目として、適用要件に、売上高百億円超を目指すための事業基盤、財務基盤及び組織基盤が整っていることとありますけれども、この目指すための各種基盤の具体的な内容や指針を設定しているのであればお答えいただければと思います。

 最後に、四つ目。税額控除限度額を超えた場合、繰越しが一年間認められる形になっておりますけれども、A類型とか従来のB類型と違って対象に建物が入ったこと、また、設備投資総額の上限設定額を六十億円とかなり巨額に設けていることから、かなり大きめの巨額投資を前提としていることが分かりますけれども、このような巨額投資がある場合、減価償却費の負担を考慮すると、一、二年間で所得が出ないようなケースも十分に想定されるんじゃないのかなと考えております。超過額の繰越可能期間は三年にすることも一定合理性があるという意味で、一年ではなく複数年というのも考え得るのではないのかなと考えておりますけれども、そこに関する御見解、以上四点お示しください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 まず、本拡充措置の考え方でございます。

 日本経済は、賃上げ率、国内投資共に三十年ぶりの高水準にあり、変化の兆しが見えつつありますけれども、その一方で、多くの中小企業は人手不足や物価高などの経営課題に直面しております。経済の好循環を全国の中小企業に行き渡らせるためには、中小企業の稼ぐ力を底上げしていくことが必要であります。

 その上で、売上高百億円という水準についてでありますけれども、売上高が百億円に達する企業は、直接輸出額、域内の仕入れ高、賃金水準、これらが一般的な中小企業と比べて高うございまして、地域のモデル企業として他の経営者に与える影響も大きいことから、売上高百億円という水準をメルクマールとして設定したものでございます。

 次に、適用対象についてであります。

 売上高百億円超を目指す上で、基本的に備えておくべき一定の財務基盤や組織基盤を有していると考えられる企業として、売上高十億円超を下限とさせていただいております。他方、高い目標に向けた挑戦、変化を後押しするという本税制の趣旨に鑑みまして、売上高百億円まで一定程度の挑戦が必須となる範囲といたしまして、売上高九十億円未満を上限とさせていただいているところでございます。

 さらに、適用要件となる各種基盤の具体的な内容についてであります。

 事業基盤は事業コンセプトや営業利益など、財務基盤は自己資本比率又はEBITDA有利子負債倍率、組織基盤は在庫や資金計画管理などを適切に実施できる体制の構築等を要件としているところでございます。

 最後に、税効果の繰越期間は一年とさせていただいております。申請事業者もこの期間を考慮して事業計画を策定いただくものと想定しておりますけれども、御指摘がございました、期間を長くすべきか否かにつきましては、今後の活用状況を踏まえ検討してまいる所存でございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 百億円にした理由が、影響が大きいというので、かなり定性的な御回答だったかなという気はしております。

 そして、十億円超九十億円のところに関しては、下限としてという話でしたけれども、やはり、十億円台の売上げを達成する企業と五十億円とかを超えるというのは、かなりハードルが違い過ぎるぐらい高いかなという気もしておりますが、投資を促進する、そういう意味では、法の趣旨としてはありはありなのかなという気はしております。

 また、百億円超を目指すための事業基盤等々に関しては、いろいろな複数の要素のうちをどう適用していくのかというところで、売上げを伸ばそうとすると事業投資が必要で、借入金が膨らんで利益が低いというケースも十分に考えられておりますので、そこら辺を全て総合的に勘案して、元々の経営力向上計画等の別の計画も必要だということだと思いますので、そこでカバーしていくということと思います。

 また、繰越期間については今後考えていくというところで、その点に関してもよろしくお願いいたします。

 今回の拡充、かなり力の入った施策かなという気もしておりますけれども、ただ、この制度が実際うまく使われたのかどうか、そして、その結果、中小企業の売上げが伸びていったかどうか等々は、どういうふうにその制度に対して評価するのか。制度のKPIをどういうふうに設定していくのかについても併せてお示しください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 売上高百億円超を目指す中小企業への支援についてのKPIということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、売上高が百億円に達する企業は、直接輸出高、域内仕入れ高、賃金水準が一般的な中小企業と比べて高く、地域のモデル企業として他の経営者に与える影響も大きいと考えてございます。そのようないわば百億企業は現在四千五百社程度、そのいわば予備軍となる売上高十億円から百億円までの企業は約九万社ございます。こうした成長企業が各地に次々と生まれてくるメカニズムを構築することが必要と考えてございまして、先週より、百億宣言の取組を開始しておるところでございます。

 このような企業や地域を取り巻く状況は様々であり、また、本拡充措置以外の要素もあるため、一概にKPIについて申し上げることは難しいわけでありますけれども、私どもとしては、より多くの経営者に訴求し、成長に向けてかじを切っていただくよう、売上高百億円の企業数をほぼ倍増、プラス五千五百社とするような姿勢でしっかりと進めてまいりたいと存じます。

萩原委員 KPI、設定するのは難しいとはいうものの、倍増、プラス五千五百社ですか、というところで、今、一定数値目標というところはあるのかなと思います。

 是非、どの補助金とは言いませんけれども、コロナのときに導入された補助金で、本当に効果があったのかなというのもかなりあって、どんどんその補助額も下げていったような補助金もあったと思います。そういうふうな補助金にならないように、補助金を出すわけではなく税額控除等で、内容が違うとは思いますけれども、是非、今回の税制の評価というのも厳しくしていただければ、より有用な支援策としていただければと思います。

 ここの問いの最後に、とはいいながらも、今回の税制改正の取組は中小企業強化税制によるものですけれども、成長を後押しするという意味では、この適用対象を資本金一億円以下の中小法人に限定する必要性というのはどこまであるのかなという気がしております。

 この投資促進税制の枠組み、中小企業の枠組みを取り払って、逆に売上高の方だけ残して、適用対象企業の売上高を、十億円超九十億円未満というふうな点、ここで設定して、資本金の一億円という考え方というのを、その枠を取っ払ってもいいのかなとも考えておりますが、それに関する御見解、お示しいただければと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中小企業経営強化税制につきましては、中小企業者を対象とした税制措置となってございます。

 今委員からも御指摘ございました、租税特別措置法において、中小企業者は資本金一億円以下等の事業者と定義されておりますため、仮に他の要件を満たしておったとしても、資本金が一億円超の企業については同法における中小企業者に該当しないことから、本拡充措置の適用対象外となるものと承知しております。

萩原委員 今、中小企業庁としてはそういう回答になるかなとは思いますが、是非、その枠を超えて、財務省の方でもそういう税制を御検討いただきたいなというところで、続き物にはなるんですけれども、中小企業、中小法人はこの資本金をベースに税制の枠組みを変えていっておりますけれども、そこについて、大きな三つ目としてお聞きしたいと思います。

 今の話もそうですし、あと、軽減税率、この話もそうですけれども、法人税法及び租税特別措置法においては、中小企業の担税力、競争力強化等の政策目的から、三十万円未満の減価償却資産の一括償却、若しくは繰越欠損金の適用年度の所得制限の不適用など、中小企業には様々な税負担軽減措置が講じられています。そして、中小法人に該当するか否かの判断に関しては、いわゆる中小法人の確定基準には資本金額又は出資金額が採用されることが多い状況となっています。

 ただ、会社の最低資本金制度、これが廃止されて久しいですけれども、そのときからより顕著になっているのは、資本金額の多寡は企業規模を測る尺度としては不十分であるということかなと考えております。しかも、資本金に関しては、法人の意思により、経済実態、これを変えることなく恣意的に変動させることもできてしまいます。そういう意味では、資本金額を基準とする中小法人の定義では、負担軽減の必要のない、どこからどう見ても大企業の法人も、意図的に資本金を一億円以下に抑えて、中小法人の税メリット、これをエンジョイするような形ができてしまうという状況にあります。

 もちろん、同じ減資といっても、損失処理減資と項目変更減資では大分意味合いが異なると思います。資本金を繰越欠損金に振り替えて、繰越利益剰余金、損失のところに振り替えて損失処理をするような損失処理減資を行って、結果として、資本金額、これが一億円以下になるという場合には一定理解はできるんですけれども、資本金を資本剰余金に振り替えるだけでの項目変更減資に関しては、完全に税メリットを取りに行っているだけじゃないのかなというふうに見受けられる法人も多いんですけれども、そのような、中小法人の確定基準に資本金額又は出資金額を採用している現状の問題点をどのように考えられているか、加藤大臣、どのように考えられているかをお答えいただければと思います。

加藤国務大臣 法人税法上、資本金一億円以下の法人を中小企業として扱って、各種中小企業向け租税特別措置が適用できるようにしていることに関して、委員の御指摘のように、資本金一億円超の企業が中小企業税制の適用を受けるために減資を行うこと等が報道等で取り上げられておりまして、この基準の妥当性については様々な御指摘があると承知をしております。実際、この基準が企業の経済合理性に反した減資を助長しているようであれば、見直しを検討していく必要があるというふうに思います。

 この間、法人税法においては、中小企業税制の適用について、資本金のみならず所得も勘案して中小企業税制の適用を判断する取組も進めてきたところでございます。具体的には、平成二十九年度税制改正において、大企業並みの所得を得ている中小企業については一定の中小企業税制の適用除外をする、今般の令和七年度税制改正においても、所得十億円超の中小企業に適用される特例税率を一五%から一七%に引き上げるといった対応が、また、地方税においても、減資による操作的な調整の問題に対応するため、令和六年度の税制改正で外形標準課税の対象法人についても一定の適用要件の見直しを行ってきたものと承知をしております。

 所得も含めて中小企業税制の適用を判断する見直しについては、減資だけでの調整をできなくするわけですので、実質的に大企業と言えるような中小企業の適用を除外するといった一定の効果はあるものとは思いますが、まだ、今申し上げた見直し、様々な見直しから日が浅いもの、また、これから見直すものもございます。こうした制度の施行状況をよく見極めて対応していきたいと考えております。

萩原委員 ありがとうございます。

 今おっしゃった、中小企業を一五パーから一七%に上げる、あと、三年間平均所得が十五億円を超えるようなところは中小企業の適用除外事業者とする話、あと、外形標準課税ですね、今年の四月一日以降の話だと思いますけれども、そういう形で一定の措置は取られておりますし、外形標準については、特に地方税に関しては一定措置は取られているのかなと思いますが、ただ、BS残というアプローチでいうと、PLというか、所得の十五億円というような話、若しくは、済みません、金額はど忘れしましたけれども、今回の税制改正で一七%に上げるというところに関しては、フローの面では捉えていると思うんですが、やはりストックの面というところに関しては、まだ法人税法及び租税特別措置法上は対応を取っていないのかなと考えております。

 そして、東京商工リサーチの二〇二一年の減資企業調査、これによると、二〇二〇年四月から二〇二一年三月末までに、資本金、これを減資した企業は三千三百二十一社で、一年前と比較して八百七十三社増えたと。また、その中で、特に資本金一億円超から一億円以下に減資した企業は九百九十七社というところで、前年と比べて四割増加しているような状況です。

 大臣がおっしゃったような対応は少し取ってはいるというものの、減資している企業、これが増加してきている。これに関してはどのように評価されているのか、御見解をお聞かせいただければと思います。

加藤国務大臣 この資本金一億円の基準については、執行の簡便性等の観点も踏まえて決定されてきたものであります。

 先ほど申し上げましたように、平成二十九年度税制改正等において、資本金だけではなく一定の所得も勘案して適用を判断する見直しを行ってきておりますが、更にこの基準を見直す場合には、執行の簡便性、課税の公平性の観点、また、企業の経営環境に与える影響、財政的な影響、これらも踏まえて検討していく必要があると考えております。

萩原委員 ありがとうございます。

 是非、財政的な影響を含めて考えていただければなと思います。

 担税力に乏しい本来の中小企業のみが軽減措置を受けられるようにするというのが一番大事かなと思っておりますし、単純な、資本金一億円とする基準ではなくて、外形標準課税で取られたような資本金及び剰余金の合計額のような形を取るとか、あと、上場の有無とか、売上げ、従業員数とか、恣意的な操作がしづらいような基準に見直すべきだと考えております。

 是非、今後の検討にそのような基準も考えていただければなと考えておりますが、この見直しについて、ちょっと繰り返しの答弁になるかもしれないんですけれども、加藤大臣、どのように、確定基準の見直しですね、その方向性も再度お示しいただければと思います。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、これまで取ってきた制度改正等のそうした施行状況もよく見極めながら、こうしたものは判断していきたいというふうに考えておりますし、また、その見直しをする場合には、先ほど申し上げた執行の簡便性、課税の公平性、さらには企業の経営環境に与える影響、財政的な影響等も踏まえて検討していきたいと考えています。

萩原委員 是非よろしくお願いいたします。

 現在、資本金が一億円以下の上場企業が大体三百社以上ある状況ですし、あと、上場企業と有価証券報告提出の義務がある非上場会社ですね、そこでいうと、やはり資本金一億円超から一億円へのタイプ別減資という意味では、本当に圧倒的に損失処理減資よりも項目変更による減資の方が多い現状ですよというのが、大東文化大学の布袋准教授の論文等でも示されております。そして、その数というのは増加傾向にあると。

 私も税務コンサルをしておる経験からすると、やはり、そういうルールになっていると、税務コンサルであるとか企業というのは当然節税を図ろうとするのは当たり前なんじゃないのかなと思っております。そういう意味では、そのような分かりやすい抜け穴になり得るような制度というところの見直しは図っていただいて、本来の法趣旨に立ち返るというか、法趣旨を果たすような税制の枠組みをつくっていただくことを要望して、時間が参りましたので、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、村上智信君。

村上(智)委員 日本維新の会の村上智信でございます。

 所得税法等の一部を改正する法律案に関しまして、早速質問に入らせていただきます。

 まずは、国際課税に関する質問であります。

 言うまでもありませんけれども、国際課税といいますのは、国境をまたぐ経済活動に関係しまして課税をするという話であります。そして、今回の法案でいいますと、法人税法の修正、改正をされることを提案をしております。

 グローバルミニマム課税という話になってくるんですけれども、このグローバルミニマム課税、国際的にOECDなどの場所において話合いをし、そして百四十か国以上が合意をして、これに取り組んでいこうという前向きな話だというふうに認識をしております。

 多くの国において法人税の最低税率を一五%に置きまして、そして、それより低いような税金をかけるような国がありましたら、多国籍企業の場合ですけれども、そうしたら、例えば、ほかの国、Aという国でそういうふうに一五%以下の法人税をかけている、その関係会社、親会社、子会社が日本にあった場合には、この一五%の差額、これを埋め合わせるように高い税金を日本の国内でもかけられるというような、このような制度を整えるというふうにしているという話なんです。

 この制度に関連して質問したいんですけれども、このグローバルミニマム課税の導入の狙いと、導入に至った経緯をお聞かせください。

青木政府参考人 お答えいたします。

 経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対応するため、二〇二一年の十月に、OECD、G20のBEPS包摂的枠組みにおきまして、国際課税ルールの見直しに関する二本の柱の解決策が合意されました。

 このうち、第二の柱であるグローバルミニマム課税は、国際的な法人税の引下げ競争を防止し、企業の税制面における公平な競争条件を確保するための仕組みであり、我が国企業にとってもメリットの大きい仕組みであると考えております。国際合意に基づき、各国でも国内法制により導入が進められております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 各国が法人税を下げる競争をしている、その裏にあるのは企業の誘致合戦だと思いますね。自分たちの企業がほかの法人税の安い国に移ったら困る、日本だったら日本で、日本の企業が法人税の低い国に移ってしまったら困ってしまう。ですから、このように、法人税の引下げ合戦があったけれども、それを防止するためにこのような国際的な合意をしたという話ですけれども。

 この議論は、実は、私は経済産業省で二十一年間働いておりましたので、そのときにもやはり同じ議論をしておりまして、やはり、国内の企業、日本にとどまってほしい、そういう思いもありまして、この法人税の引下げを、当時高かったものですから、引下げをしてほしいなという、そんなふうな意見がありまして、それで日本の中では法人税が下がってきた、こういうふうな話につながっていくというふうに私は理解をしております。

 しかし、予算委員会において石破総理が発言された内容ですけれども、そのとき、与党税制大綱を引用しながらこのようにおっしゃっているわけなんですけれども、法人税を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施する、このようにおっしゃっているわけなんです。

 このように、法人税を引き上げつつというふうに言いますと、せっかく今まで、日本の中に法人を、企業を、とどまっていただきたい、日本の中で活動していただきたい、そういうふうに思っていたにもかかわらず、このように法人税を上げるというふうに言いますと、また日本の企業がほかに出ていってしまうということを心配しなければならないかというふうに思うんです。

 そこで、質問いたしますけれども、日本が法人税を上げれば国際間の企業誘致合戦に負けてしまうというふうに思いますけれども、今後、法人税の引下げというのを本当に考えているのでしょうか。教えてください。お願いします。

横山副大臣 お答えいたします。

 法人税の引下げ競争につきましては、BEPSにおける第二の柱への取組によって一定の歯止めがかかるようになりました。また、例えば、イギリスでは法人税率の引上げが行われるなど、国際的な環境は変化しているというふうに考えているところであります。

 我が国の法人税の在り方は、先ほど委員から紹介がありましたように、二〇一〇年代、投資や雇用、賃上げの促進等を図るために税率を引き下げたという経緯がございます。その後どうなったかというと、企業では、収益が拡大したにもかかわらず現預金等が積み上がり続けているということが課題であるというふうに認識をしております。

 そこで、令和七年度与党税制改正大綱におきましても、現預金等の積み上がりが指摘されつつ、こうした振り返りを踏まえれば法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ずというふうに評価をされております。今後の法人税の在り方につきましては、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなどめり張りのある法人税体系を構築していくというふうにされています。

 政府としては、今後の法人税率の在り方について、このような与党税制改正大綱で示された考え方や、国際的な動向、経済情勢の変化等を踏まえながら検討していく必要があるというふうに考えているところです。

村上(智)委員 御答弁ありがとうございました。

 イタリアでは法人税が上がっているという話とか、確かにほかの国がどうしているかというのは非常に大事だと思います。結局、競争なものですから、ほかの国が上げているんだったら、日本も上げるということも考えていいのかもしれません。

 もし、そうやって国際情勢が変わってきたなと思うんでしたら、是非、OECDで、枠組みで今一五%としている法人税の最低の基準、これを上げるような方向で、国際的な議論を経た上で、ほかの国も巻き込んで上げるというふうにしてほしいなというふうな話が、まず一つ話をさせていただきたいこと。

 そして、もう一つ、今のお話にありました中で、企業の投資を促進する、そういうふうにしたかったのにもかかわらず、そうはならなかったという話をされました。

 この点も非常に重要な論点なんですけれども、法人税が高い方が企業が投資をもっとするんだろうか、投資をすればもっと景気がよくなるんだろうか、あるいは低い方が投資はするんだろうか、そういうふうなことはしっかり考えていかなければいけない論点でして、実際どうなったかというのを見るのも大事になるんですけれども。

 まず、法人税を上げた場合においては、企業においてはこんなことも考えられるわけなんですね。

 利益が出るんだから、利益が出たものを税金に取られるのはもったいない、高い税金だったらよりもっと持っていかれる、だから投資をいっぱいした方がいい、そうしたら将来にはつながるし税金は持っていかれない、だから高い方がいいんじゃないかという議論もありますけれども、これはしっかり稼いでいる企業の話であります。

 しかし、かつかつの財政収支、そしてさらに、ここで大ばくちをしたい、ばくちと言ったら失礼ですね、大きく投資をして会社を大きくしたいというふうに思った。そうすると、借金はしますけれども融資を受ける、融資を受けますとそれを返さないといけない、返すときには、返すための返済の資金というのは経費にできませんので、経費にできないということは、法人税を引いた後に残った金額で返済するしかない、そうなってきますと、やはり法人税が低くないと借金返済の資金ができないというふうになってきますので、そうなってくると、やはり法人税が低い方が投資はするんじゃないかな、景気もよくなるんじゃないか、このように一般的には言われているんじゃないかと私は思っております。

 この話の流れで、さらに、先ほど御回答いただいた話の中で、実際に会社の内部留保が今は増えてきていますという話を一般的に言う方もいらっしゃいます。だから、内部留保を増やしているんだから、結局、企業というのは投資をせずにお金をためるものなんじゃないか、そうだったら法人税を高くしていいんじゃないか、こういうふうな議論もいらっしゃいます。

 法人税を下げたことは結局投資に向かなかった、だから失敗じゃないか、こういうふうに言う方がいるんですけれども、しかし、内部留保というのは、財務諸表の中の貸借対照表の中の内部留保、これは現金や預金じゃない場合があるわけですね。そうじゃなくて、生産設備や建物を増やした、そういうことでも内部留保は増えた形になるわけですから、会社がどんどん大きくなっていったときには、必ず、生産設備も増やしますし建物を増やすという方向になりますので、むしろ、内部留保というのは増えていいんだ、会社は大きくなっているんだ、日本の経済にとっていいことが起こっているんじゃないか、そういうふうな目で見ていただけたらなというふうに思います。

 そして、繰り返しになりますけれども、諸外国との関係で、企業誘致合戦をしているわけなんですから、是非、法人税を下げる方向で企業誘致を、日本に企業をとどめる、こういう方向で考えていただくようにお願いを申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。

 さて、米国におきまして、トランプ大統領が一月に就任をいたしました。就任直後にトランプ大統領は多くの文書を発出しましたが、その中にはグローバルミニマム課税に関するものもあったというふうに聞いております。

 トランプ大統領は、景気刺激のために法人税を一五%まで下げる、こういうことを言及しているというふうに聞いています。一五%の法人税でありましたら、先ほどのグローバルミニマム課税との関係でいいますと、各国一五%を最低にしようと言っているので問題はないんですけれども、さらに、トランプ大統領は特別償却をしようと。企業がいろいろな設備を買ったとき、これの投資した金額を特別償却一〇〇%にしようというふうに、これも実際に言及しているというふうに聞いております。そして、こういうふうに一〇〇%の償却をしますと、実効的には一五%の法人税を下回ってしまう。ですから、アメリカの景気を刺激したいと考えているトランプ大統領は、このグローバルミニマム課税に対して反対であるというふうにお聞きをしております。

 このようにトランプ大統領が言い出すということは、アメリカ・ファーストを掲げる方なものですから、大変今後のことが心配されるんですけれども、ここで質問をいたします。

 米国のトランプ大統領は、グローバルミニマム課税を無効にしようとしているように見受けられるんですけれども、日本政府として米国にどのように対応していくのでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 米国政府の大統領覚書、公表されたものにおいては、グローバルタックスディールに係る前政権によるいかなるコミットメントも、米国議会による立法措置なしに米国において効力を有さない、米国企業に不均衡な影響を与える等の外国の税制措置について調査し、取るべきオプションに関する助言を大統領に提出する旨記載されておりますが、現時点ではそれ以上の具体的な内容が明らかになっているわけではございません。

 グローバルミニマム課税については、世界各国において税制面での公平な競争条件を確保し、グローバルに活躍する日本企業を後押しをするという観点から、政府としてもその制度の導入を行うべきと考え、今回、税法で法案を提出させていただいているところでございます。

 引き続き、米国を含めて各国政府とよく協調し、また、我が国の立場をしっかりと説明していきたいというふうに考えています。

村上(智)委員 御答弁ありがとうございました。

 アメリカの状況がそれほど詳しく分かっていないということでしたけれども、確かに、これからまた更に情報収集に努めなければならないと思います。

 トランプ大統領の手法を見てみますと、高いボールを投げて、そして相手の反応を見て、取れるものは取っていこう、そんなふうな交渉術なのかなというふうに思うものですから、そういうことでいえば、多分、あえて何も情報を出さずに、今、相手の反応を見ているところなのかもしれません。ですから、情報収集は大事ですし、また、相手の懐を探るような、そのような外交的な手腕が必要になってくるのではないかというふうに思います。

 そしてまた、大臣おっしゃっていたように、やはり、ほかの国との連携が大事だというふうに思います。今回、OECDの枠組みで百四十か国以上が既に参加しているわけですから、そのような枠組みを使って、是非、アメリカとの交渉において十分な成果を上げていただきたいなというふうに思っております。

 さて、グローバルミニマム課税の話以外にも、この国際課税については問題があります。

 先ほどの答弁にもありましたけれども、国際課税の第一の柱、第二の柱、こういうふうな言われ方をしておりました。このグローバルミニマム課税は第二の柱ですけれども、第一の柱についても質問をさせていただきたいんです。

 第一の柱については、グローバル企業グループ、非常に大きな売上げを上げているようなグローバル企業グループ、これへの課税というふうにお聞きしております。日本でも大きい企業は対象になるかもしれませんけれども、ぱっとやはり思い浮かぶのは、デジタルプラットフォーマーの企業ですね。

 例えば、しばらく前のニュースですけれども、二〇一九年、グーグルが、フランスで経済活動をしています、いろいろな販売をしている、しかし、グーグルというのは、欧州の、ヨーロッパにおける本社機能というのをフランスに置かずにアイルランドに置いているんですね。そのために、フランスでは法人税を払わずに、アイルランドの方で、低い税金で税金に対応しているということで、フランスの政府がこれを調べまして、そして、最終的に和解をしたというふうなことで、一千億以上の支払いをしたというふうに二〇一九年のニュースに書かれております。

 ほかにも、グーグル以外にもアップルとか、アメリカのIT企業はそういうところに関係してきますけれども、低税率国、タックスヘイブンなどに利益をとどめている、実際に活動した国に税金を落としていない、こういうことが批判をされております。このような問題、これがピラーワン、第一の柱ということになるんですけれども、このような問題についてお伺いしたいんです。

 では、質問いたします。

 国際課税の第一の柱について、日本はどのように対応するんでしょうか。教えてください。

加藤国務大臣 経済がデジタル化している中で、市場国に物理的拠点を置かずにビジネスを行う企業が増加し、市場国で適切な課税が行えないという問題が生じております。

 これに対して、欧州を中心に、各国独自のデジタルサービス税等が導入され、デジタル企業を多数有する米国との対立が深刻化しかねず、また、グローバルに活躍する企業にとっても、それぞれが独自にそうした税制を展開するということになるのは必ずしも望ましくないという状況になっておりました。

 委員御指摘の第一の柱、多数国間条約は、こうした状況に対応し、国際課税システムに安定性と確実性をもたらすため、デジタルサービス税のような各国独自の一方的措置を廃止するとともに、市場国に新たな課税権を配分するものであり、これまで国際的に議論されてきたものであります。

 日本としては、各国政府とよく議論し、引き続き早期の交渉妥結に向けた議論に貢献していきたいというふうに考えているところでありますが、ただ、条約承認が発効するには、ポイント数が高い米国、ここがどう判断するかということは非常に重要だということでございます。

村上(智)委員 御答弁ありがとうございました。

 第一の柱、この合意も是非目指していただきたいんですけれども、しかし、大臣に御回答いただいたとおり、アメリカの存在感が非常に大きくて、やはりトランプ大統領がこれに対してどう考えるかというのが非常に大切だというふうに思います。

 アメリカは、デジタルプラットフォーマー企業ということではGAFAなどを擁しておりますので、米国にとっても非常に国益に直結するような話になってくるかもしれません。トランプ大統領はアメリカ第一主義を掲げておりますので、そういうことで見ますと、かなり激しい反発、反応があるんじゃないかというふうに予想されます。先ほどの日経新聞の記事を紹介いたしますけれども、そのときは、二〇一九年、ちょうどトランプ大統領の第一期のときでして、そのときにやはりトランプ大統領が激しく反対をした、反応した、そういうことがその記事にも書かれておりました。

 しかし、非常に国益に直結することですので、多国間の枠組みなどを十分に活用していただいて、粘り強く交渉をしていただけたらというふうに思います。

 次の質問に移ります。次は、所得税に関係することになります。

 法案を見ましたら、十九歳以上二十三歳未満の子などに関連しまして、その扶養者に対する特別控除を創設したいとのことですけれども、今でも十九歳から二十三歳まで控除があります。子供がいたら親はその控除を受けるという制度は存在するんですけれども、今回の法改正において提案をされているのは、この金額を百五十万円まで増やす、子供が百五十万円まで働いても控除は受けられる、そしてさらに、それを超えたら、少し超えたら少し控除を減らす、少し増えたら少し控除を減らす、段階的に減らしていくということを提案をされております。

 そこで、この特別控除に関して質問をさせていただきます。

 十九歳以上二十三歳未満の子などに関連して、その扶養者に対する特別控除を創設する趣旨を教えてください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 現下の厳しい人手不足の状況におきまして、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘があるものと承知しております。

 このため、今般の見直しでは、十九歳から二十二歳までの大学生年代の子などの給与収入が百五十万円以下までである場合には、親などが特定扶養控除と同額の六十三万円の所得控除を受けられ、また、大学生年代の子などの給与収入が百五十万円を超えた場合でも、親などが受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組みを導入することとしております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 百三万円の壁が注目されておりましたけれども、親の収入が減るということで、崖になるという意味では、大学生世代の子供への控除、こちらの方が壁としては激しいのかなというふうに思っていまして、働き控えを解消するという意味で、今回の改正は人手不足の深刻さに応える提案だなというふうに思っております。

 説明を受けたところによりますと、百五十万円を超えた後、段階的に控除を減らすことによって、それまで親の収入ががくっと減っていたのが、だんだんと少しずつ上がっていくような、そんな形になるというふうな話をお聞きしておりまして、そうであるならば、子供も親の収入を気にせず働けるのかなというふうには思います。

 しかし、気をつけなければならないことがあります。制度として意味があるといっても、その制度が複雑であれば、それを納税者が理解するのも時間を要しますし、また作業するのにも手間が増えてしまうことになります。

 そこで、質問ですけれども、十九歳以上二十三歳未満の子などに関する、その扶養者に対する特別控除は段階的に逓減する仕組みとしていますけれども、企業における事務負担をどのように考えていますでしょうか。教えてください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 所得税制の見直しに当たりましては、源泉徴収義務者の事務に与える影響に配慮する必要がございます。この点、今般の見直しにおきましては、給与に係る源泉徴収については、令和七年分については年末調整時のみの対応とし、毎回の給与支払い時への反映は令和八年分からとすることとしております。

 それでも源泉徴収義務者の方々に御負担をおかけすることとなるため、改正法案の成立後、源泉徴収義務者を始めとする関係者の皆様の円滑な準備に資するよう、周知、広報を丁寧に行ってまいりたいと考えております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 実際に作業をする方が余り負担にならないように、年末にまとめてできるようにしていただいたというふうなことでありますし、また周知も取り組んでいただけるということで、それも大変助かるなというふうに思います。

 しかし、新しい制度というのはそれを覚えるだけで負担になるものですから、このことは先日の私の質問でも申し上げましたけれども、納税手続をより便利にするために、デジタル化、これを推進してほしいなというふうに思います。

 改めて同じ話をさせていただきますけれども、e―Taxの話になりますけれども、e―Tax、個人の方が使う、個人事業者が使う、その方は非常に充実してきていると思います。私も実際に使っていてそのように感じます。特に、マイナンバーカードが使えるようになりまして、また便利になったんだなというふうに思います。一方で、法人が使う方、このe―Taxはなかなか機能が充実しないというふうに感じております。ちょうどこの特別控除も法人が使う部分も出てくるんじゃないかと思いますので、是非そのような企業にとって使いやすいように、e―Taxで入力すれば、余り難しいことを覚えなくても入力すればうまくいくような、そんな仕組みをつくっていただきたいというふうにお願いをいたしまして、次の質問に移らせていただきます。

 次は、今回の所得税法の法改正、この中で、基礎控除を十万円引き上げるという話をいただきましたけれども、提案をいただきましたが、この理由については物価対策のためであるというふうに説明をお聞きしております。

 物価が上がれば、様々な法律に書かれてある金額に関わること、これをもう一度見直さないといけないということが出てくるんじゃないかと思います。例えば、手数料も増えるし国家資格の試験の受験費用など、挙げれば切りがないんじゃないかと思います。

 そこで、一つだけお聞きしますけれども、物価が上昇している現況に鑑みまして、政府における随意契約の金額、これは会計法第二十九条の三第五項において定めておりますけれども、これは見直さないのでしょうか。教えてください。

加藤国務大臣 少額随意契約の基準額については、昨年秋の経済対策においてその在り方を検討するとされたことなどから、既に見直しの検討を進めております。本年一月十七日に開催された財政制度等審議会の部会において、企業物価指数の上昇などを踏まえ、現行の基準額を引き上げることについては御了承いただいたところであります。

 これを踏まえ、現在、基準額の引上げに向けた予算決算及び会計令の改正手続を進めているところでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 物価高に合わせて政府の随意契約の金額を見直す方向であるという大変前向きな御答弁をいただきまして、誠にありがとうございます。

 これはまた別途総務省さんにお聞きしたところによると、政府の随意契約の見直し、これを行うのに合わせて、行われたら自治体においても随意契約の金額を見直すというふうな予定であるということは伺っております。

 これは、私の選挙区の自治体からも、こういうふうに困っているというふうな課題を突きつけられておりました。市町村が随意契約を手続をするのに当たって、物価がどんどん上がってきているものですから、それまでその金額でできていたこと、ちょっとした工事とかもできなくなった、困っているんですという話をお聞きしておりましたので、まさに今般、地方自治体の方まで随意契約の金額を見直していただけるということになりましたら、地方自治体の方においても行政の効率化という意味では非常に助かるんだという話になるかと思います。

 次の質問に移らせていただきます。次の質問は、消費課税の話です。

 外国人の旅行者向けの消費税の免税制度が、今般、返金方式に変更したい、そういう法案を提案いただいておりますけれども、これに関連して質問したいと思います。

 これはほかの先生もこの場所で質問していましたけれども、私からも非常に大事なので質問させていただきますが、外国人旅行者向けの消費税の免税制度を返金方式に変更しようとしておりますけれども、そもそも、こういうふうに返金方式に変更するというのではなくて、消費税の免税措置を廃止してもよいのではないかと思います。大臣のお考えをお聞かせください。

加藤国務大臣 国会でもそうした御議論も頂戴をしているところでございますが、そもそも外国人旅行者の免税制度は、外国人旅行者が一定の条件の下で購入する物品について、実質的に輸出取引と変わらないものとして消費税が免除される仕組みであります。OECD各国においても、本制度が導入されている国が大半であると承知をしております。

 また、この制度については、令和五年三月に閣議決定された観光立国推進基本計画においても言及されており、観光立国の実現に資する制度であるとも認識をしておりますし、各地方においても、こうした免税店もかなりの数となっているものと承知をしております。

 本制度については、今回のリファンド方式などの見直しを行ってきたところでございます。今後とも、外国人旅行者や免税店等への影響も考慮しつつ、関係省庁、業界団体などと緊密に連携して対応していきたいと考えております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 過去、観光立国に関係する話合いの中でそういう方針が決まったということもおっしゃっていましたけれども、状況はどんどん変わっておりまして、円安が大変進んでいる状況なものですから、観光立国、外国人の方に来ていただきたいという観点でいえば、これだけ円安が進んでいれば消費税ぐらいかけても大丈夫なのじゃないかというふうに思わざるを得ません。

 そして、外国人がどんどん来て、税関においてはその対応の手続をします。税関の職員をもしかしたら増やさないといけない、そんな事態にもなるかもしれません。しかし、税関の職員の給料を考えたときには、どこから職員の給料が払われるのか、どの税金なんだろうかというと、少なくとも外国人の消費税じゃないんですね。

 そういうふうに考えると、観光立国を進めていって外国人旅行者がどんどん来て、そして税関がどんどん大変になって、その費用を、消費税がもし駄目でも、例えば手数料を取るとか、そんなことぐらいは考えてもいいんじゃないのかなというふうに思うものですから、是非大臣におかれては再考をいただけたらと思います。

 さて、最後の質問に移ります。

 防衛力強化に関することですけれども、防衛力強化に関係しまして、今般、法人税の税率の四%の付加税を創設しようというふうにしております。これは、法律でいうと、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法、この第九条に書いておりまして、「当分の間、防衛特別法人税を課する。」というふうに第九条に書いております。当分の間ということなんですけれども、この点について質問させていただきます。

 防衛力強化に係る財源確保のために、法人税に関して税率四%の付加税を創設しようとしておりますけれども、当分の間の措置ということなんですが、防衛力強化のためには長期の措置が必要とも思われますけれども、どのように考えたらいいのでしょうか。教えてください。

青木政府参考人 お答えいたします。

 我が国の防衛力の抜本的な強化を行うために安定的な財源を確保するという観点から、令和七年度税制改正において、法人税について、令和八年四月より付加税率四%の防衛特別法人税を課すこととしております。

 その上で、この防衛特別法人税につきましては、防衛力を抜本的に強化し、その抜本的に強化された防衛力を安定的に維持していく必要がある限りにおいては措置するものでありますので、当分の間の措置としておるところでございます。

村上(智)委員 御答弁ありがとうございました。

 私はニュートラルに聞いているだけで、この税率をずっと維持するべきだ、当分の間はおかしいと言っているわけじゃないんですけれども、その点だけ最後に申し上げて、私の質問を終わりにします。

 誠にありがとうございました。

井林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党の田中健です。よろしくお願いいたします。

 私からは、まず、いわゆる年収百三万の壁についてお伺いをいたします。

 今改正法案では、所得税の基礎控除を一律に十万円引き上げ、給与所得控除の最低保障額を一律で十万円引き上げることで、百三万から百二十三万の引上げが提示をされていますが、先週、新たに自民党案が出されました。百三万の壁はなくなりますけれども、年収に応じて、新たに、五百万円以上は百二十三万円に、二百万円から五百万円は百三十三万円に、そして二百万円以上は百六十万円ということで、壁がつくられるようであります。

 提案しました宮沢税調会長は、二百万円については最低賃金で週四十時間働くケースを想定している、五百万円は全国の給与所得者の平均年収四百六十万円を意識している、生活が大変厳しい方への特例であるとの説明があったようでありますが、そもそも、この所得控除というのは、低所得者対策、低所得者救済という考えでよいのでしょうか。所得控除のそもそもの考え方を大臣に伺いたいと思います。

加藤国務大臣 所得税の各種人的控除を始めとする所得控除は、様々な事情により、納税者の担税力、これが減殺されることをしんしゃくして、これを調整するため、所得から一定額を差し引くということになっております。

 これらの人的控除等により構成される所得税の課税最低限は、生計費の観点、また、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めて総合的に検討して定められているものであります。

 現行の基礎的な人的控除については必ずしも低所得者支援を直接の目的にしたものではございませんが、今申し上げた生計費の観点から検討してきたという点においては、低所得者についても一定の勘案がなされてきたものと考えております。

    〔委員長退席、大野委員長代理着席〕

田中(健)委員 直接ではないが一定の勘案が含まれていると言うんですけれども、今回の改正法案の百二十三万への引上げは、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点と明確に示してありますが、低所得者対策ではないということで、改めて、大臣、よろしいでしょうか。

加藤国務大臣 今回、私どもが出している法案において、それぞれ、基礎控除また所得控除の定額部分、これを十万円ずつ引き上げておりますのは、定額という形になっている中で、物価が高騰することで結果的に実質負担が上がってくるのでそれを調整する、物価上昇分に応じて調整するという観点で提出をさせていただいたものでございます。

田中(健)委員 まさに今、定額という言葉がありましたが、前半の質疑の中でも、基礎控除は定額だという発言が加藤大臣からもありました。今回、年収制限を設けることで、案ではありますけれども、複数の壁をつくる、できるということは、税制の公平、中立、簡素といういわゆる三大原則から大きくずれる内容であるかと思いますが、この点からする考え方を、加藤大臣の見解を伺えればと思います。

加藤国務大臣 政党間協議の最中ということでございますので、政府の立場からコメントするのは控えさせていただいておりますが、基礎的な人的控除以外の所得控除についてはそれぞれの趣旨に沿って設けられているところでございます。

 先週、与党側から提案のあった案は、低所得者層の税負担に対する配慮を目的とされているものと承知をしております。

田中(健)委員 物価高で困っているのは低所得者の方だけではありません。私たちは、この百三万の壁は、全ての所得者、働く人たちが対象であるということを訴え続けてきました。対象を限定すべきでありませんし、拡大すべきでありますし、内容が不十分なのに加えて、制度がこの案では複雑過ぎるかと思っています。百三万の壁を引き上げようとしている中で、所得制限という新たな壁ができることにもつながります。

 加藤大臣から、もちろん、三党の今協議中であるということがありましたので、しっかりその協議を見守りたいとは思いますが、公明党さんからも、年収八百五十万を上限に、四段階で控除額を上乗せする案も提出をされています。我が党でもしっかりと議論をし、また、その案が、どちらの案が成立するか分かりませんが、提出された場合は、またしっかりこの委員会で議論も進めていきたいと思っています。

 引き続きまして、国税職員の定員確保について伺いたいと思います。

 国税庁は、二〇二四年六月までの一年間の税務調査で、富裕層の申告漏れ所得が総額六百五十五億円、また富裕層を含む全体の申告漏れ所得は九千九百六十四億円、追徴課税は千三百九十八億円という、いずれも総額が過去最高になったとの結果を発表しました。

 これら調査にはAIが大きな役目を果たしているということもお聞きしておりまして、まず問題の抽出というのはAIが行って、その抽出の結果を分析したり、また実地調査を行うのは人だということで、精通した税の役人の方たちがそれぞれ行うことで、役割分担で格段に効率を上げていると聞いています。

 AIが調査効率を上げる有効な施策の一つとなっているとはいえ、資料の一枚目にもつけさせていただきましたが、インボイスの導入により、個人の消費税申告、これは一番上のグラフですが、緑がそうですが、百六万から百九十七万と約倍増もしておりますし、直接これによって行政指導も必要となっておりますし、さらに、消費税の還付申告法人や新規の発生滞納額を見れば分かるように、滞納額も最高を記録しております。また、この滞納額の整理促進を進めるためにも人手が必要だという声が上がっています。

 何といっても、税務当局のこの対応における人員確保というのが必要であろうかと思っていますが、適正な、また公平な課税と徴収を実現するために、定員の在り方について加藤大臣の見解を伺います。

    〔大野委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 適正、公平な課税、徴収を実現していくためには、税務執行体制の強化を図っていくことが重要であります。

 令和七年度予算案において、消費税不正還付への対応、インボイス制度の円滑な実施への対応などを図るための所要の体制整備を盛り込み、定員で申し上げると、国税庁の定員は五十三名の純増となっているところでございます。

 今後も、適正かつ公平な課税、徴収を実現すべく、先ほどお話がありましたAI等、取り込めるものはしっかりと取り込み、業務の効率化を図りながらも、必要な定員を確保し、税務執行体制の強化に努めていきたいと考えています。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 是非、定員確保をしっかりと進めていただきたいと思うんですが、さらに、デジタル化そしてグローバル化に応えていくためには、人員確保と併せて、専門家の育成も必要とされています。現場からは、消費税の専門官、国際税務の専門官、審理の専門官や特別国税調査官などの増設の声も上がっています。これら機構の充実についてはどのように大臣は考えていらっしゃるか、伺います。

加藤国務大臣 経済のデジタル化、グローバル化が進んでいる中で、それに的確に対応して税制を適正に執行していくためには、先ほど申し上げた定員の確保と併せて、国税職員の機構の充実を図ることが重要であると考えております。

 令和七年度予算案において、機構面では、消費税の不正還付事案等を専門的に担当する消費税専門官、また、国際課税に係る調査等を専門的に担当する国際税務専門官など、所要の機構の設置を盛り込んでいるところでございます。

 先ほども申し上げましたが、引き続き税務執行体制の強化に努めてまいります。

田中(健)委員 この一年を見ても、海外当局との連携を強化して、複雑化する国際的な節税のスキームの調査に力を入れているということもお聞きをしています。ネットをやっている人は、香港のゲームのマフィア・シティというゲームをやったことある方がいらっしゃるかもしれませんけれども、この配信会社において十八億の追徴課税を行ったというのも、大変ネット業界で話題になっておりました。インターネットを利用した配信ビジネスなど新たなビジネスにおける税制の在り方や徴収の在り方、多岐にわたっておりますので、是非力を入れてしっかりと、歳入確保のための税制、そして税務署の在り方を進めていっていただければと思います。

 引き続きまして、相続税について伺いたいと思います。

 資料二、三を御覧ください。相続税の課税割合が、この間、増えております。二ページの資料の下の黄色の点線がそうであります。令和四年、九・六までしか記載がございませんが、令和五年では九・九%、そして、本年度は一〇%をこの課税割合が超えると言われています。百件相続があった場合、十件相続税が発生しているということになります。

 さらに、この黄色の点線ですが、昭和五十八年以前はありませんが、昭和の時代は一%、二%の時代もありましたが、バブル景気で最高七・九まで昭和六十二年に上がっていると思いますが、七・九まで上がり、その後、何度か基礎控除を引き上げて抑えてきました。六・八、六%で、以下で続いてまいりました。しかし、平成二十七年に、バブルは終わったとして、この基礎控除が引下げとなり、そして今に続いています。

 しかし、首都圏を始め、地価というのは今高止まりをしていますし、多くのマンション始め物件は首都圏においては大変高価なものとなっています。相続増税とこの当時言われたようですが、相続増税が行われて今年で十年となりますが、この十年をどのように評価をされているか、まず加藤大臣に伺います。

加藤国務大臣 今お話しいただきましたように、平成二十五年度の税制改正で、相続税の基礎控除の引下げや、相続税、贈与税の最高税率の引上げが行われ、資産の再分配の機能の回復を図ろうとしたところであります。

 今申し上げた狙いに関しては様々な評価視点があり得ると思いますが、例えば、亡くなられた方の数に対する課税件数の割合に注目した場合、今委員から御指摘いただいたように、見直し前はその割合が四%だったものが、見直しの結果、最新では九・九%となっておりまして、当初の目的であった再分配機能の回復は一定程度達成してきているのではないかと考えております。

 税制全体を通じた再分配機能が適切に確保されているかを考える上で、相続税が果たす役割は重要であります。引き続き、その在り方については不断に検討を進めていきたいと考えております。

田中(健)委員 何をもって再分配機能というのか大変相続税においては難しいかと思うんですけれども、現代における相続税の特徴ですけれども、相続税課税があった被相続人のうち約六割が課税価格一億円以下であります。さらに、相続税の課税割合が高い都道府県は、東京、愛知、神奈川と、首都圏を始めとした大都市であります。つまり、地価の高い大都市で家族のために家やマンションを購入して、そして家族が亡くなってしまうと、多くの割合で相続が生まれることになります。これは全国平均が一〇でありますから、首都圏に集中しますと更に相続税割合が増えています。

 そうしますと、富裕層と違って中間層の財産の多くは不動産などの非流動資産でありまして、課税される税金自体は少額であっても手持ちのキャッシュがありませんので、納税用の現金が手当てできずに、生まれ育った実家を泣く泣く処分しなければならないという声も聞いています。

 相続税は、私は富裕層に負担してもらう税というイメージがありましたけれども、大臣が言われましたように、再分配機能で広く薄く取って今に至るわけですけれども、一生懸命働いてきた庶民への課税になっているのではないかといった考えもできます。

 三ページの地価公示価格指数の推移と相続税の改正においても、やはり、基礎控除を下げたことによって、私は多くの、今一般の人にも相続というものが発生しているかと思っておりますが、相続税の負担の在り方や、基礎控除を下げて十年たつんですが、基礎控除の額の適正化については、大臣、どのような所見を持っていらっしゃるか、お聞きします。

加藤国務大臣 平成二十五年度税制改正において、先ほど申し上げた基礎控除の引下げ、最高税率の引上げなどを行いましたが、あわせて、これらの見直しによる負担増が想定される地価の高い都市部に土地を有する者の負担調整の観点から、居住用や事業用の宅地について課税価格を八〇%減額する小規模宅地等の特例の拡充等も同時に行っているところでございます。

 こうした観点から、基礎控除の引下げのみをもって納税者の負担が増しているかどうかというのは、今申し上げた点も加味して考えていく必要があると思っております。

 相続税の負担の在り方については、経済社会の構造変化に加えて、税制全体の中で相続税による再分配機能をどの程度発揮させるべきかといった視点も踏まえて考えていくべき課題と認識をしています。

田中(健)委員 私も、基礎控除が三千万が適正なのかというのは今ここで判断することはできませんが、しかし、十年たって、そして、相続税というものが身近になり、そして多くの人の負担にもつながっているということでありますので、是非、見直しというよりも、この間どのようなことが起きたのか、そして今どのような国民が負担に思っているのかということも検討をしていただければと思っております。

 さらに、関連しまして、非上場株の相続算定について伺いたいと思います。

 相続税法は相続財産を時価で評価すると定めておりますが、非上場株は取引の相場がなく、納税者が時価を算出するのは困難であります。国税庁は、評価額の算定ルールを財産評価基本通達に定めています。会社の規模及び株式の区分に応じて三種類の原則的評価方式と一種類の特例的評価方式のいずれかが適用されますが、方式の違いによって評価額の中央値に約四倍の差が生じることが、先日、会計検査院の調査で判明しました。

 会計検査院からは、株式評価の公平性が必ずしも確保されているとは言えないという指摘がされておりますが、どうしてこのような格差が起きてしまうのか、原因を伺いたいと思います。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 会計検査院の令和五年度決算報告におきましては、取引相場のない株式の評価について、評価会社の規模が大きいものほど株式の評価額は相対的に低く算定される傾向にあることから、株式評価の公平性が確保されているとは言えないとの指摘を受けたところでございます。

 この要因につきまして、会計検査院によりますと、大会社に適用される類似業種比準価額が下がる方向でこれまで評価通達が改正されてきたこと、また、評価通達の計算式が評価会社の業績等の実態を踏まえて株式を評価する方法として適切に機能していないおそれがあることなどが要因ではないかとされております。

 取引相場のない株式の評価につきましては、これまでも、社会経済の変化などに応じて、より実態に即したものとなるよう見直しを行い、その適正化に努めてきたところでございます。

 国税庁といたしましては、会計検査院の指摘も踏まえ、まずは必要な実態把握を行ってまいりたいと考えております。

田中(健)委員 規模の大きな区分の会社ほど評価額は相対的に低く算定されると説明がありました。これは前々から言われてきたことで、税の専門家である税理士の先生からも、会社の資産及び負債に基づいて算出する純資産価額方式の評価が適切なのかということと併せて指摘がされてきたことであります。

 今回、このような結果が出たことで、結果、無理をして人員を増やしたりして、類似業種比準方式の評価の格差を利用して節税策を取っているという企業も少なからずあるということも指摘をされています。そもそも、相続税の算定ルールにこの三種類の方式を取っている理由というのを伺います。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 財産の価額は、相続税等におきましては、相続税法の規定によりまして、財産の取得のときにおける時価によることとされております。これを受けて、国税庁では、各財産の評価方法を財産評価基本通達により具体的に定めているところであります。

 取引相場のない株式につきましては、時価を表象する市場価格がないため、理論上合理的と考えられる一定の方法を定めて評価することとしております。その一定の方法を定める際、取引相場のない株式の発行会社の規模は、上場会社に匹敵するものから個人企業と変わらないものまで様々であることから、財産評価基本通達では、一律の方法ではなく、発行会社の規模に応じた評価方式を定めているところでありまして、大会社につきましては、上場会社の株式の評価とのバランスを図ることが合理的との観点から、原則として類似業種比準方式、小会社については、個人事業者の財産評価とのバランスを図ることが合理的との観点から、原則として純資産価額方式、中会社については、大会社と小会社との中間にあるので、大会社と小会社の評価方式の併用方式により評価することとしているところでございます。

田中(健)委員 会社の規模によってその三つがあるというのは分かったんですけれども、先ほどの説明では、算定方式による格差が大きくなった背景には、純資産価額方式の計算式が見直されていないという影響があるということも今おっしゃってもらいました。つまり、類似業種比準方式というのは見直されてきた。

 これは、調べますと、一九九六年から二〇一七年にかけての評価は下がる方向でこれまで見直されてきましたが、どうして一方の純資産価額方式というのはこの間見直しがされなかったのか、お伺いいたします。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 財産評価につきましては、その時々の経済実態に合わせまして、適切な見直しを行ってきたところでございます。

 純資産価額方式につきましては、先ほど申し上げましたように、小会社について、個人事業者の財産評価とのバランスを図るという観点から採用されている方式でございまして、個人の純資産の見直しとも併せまして、必要な対応を行っているところでございます。

田中(健)委員 個人の資産によって見直しを図っていると言うんですけれども、比較として、今回問題になってしまったのは、類似業種比準方式は見直されてきたけれども、純資産方式が見直されてこなかったということだったので、これが見直されていれば特に差は生まれなかったと思うので、今回、是非必要な実態把握を行っていただきまして、評価の在り方が適切になるように検討を進めてほしいと思います。

 一点、追加で、レクを受けていたときに伺ったんですけれども、原則的評価方式、今説明をしてもらいましたが、配当還元方式、これがあるかと思うんですけれども、この還元率、これも、昭和三十九年の評価通達制度、当時の金利等を参考にするなどして設定されたとしておって、我が国の金利というのは長期的に低下をしてきているのに、これも見直されていないということをお聞きをしています。この見直しはなぜされないのか、お答えできればお願いします。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 各種財産評価の在り方につきましては、先ほど申し上げましたように、社会経済の変化などに応じて実態に即したものとなるよう見直しを行うという形で適正化に努めてきたところでございまして、引き続き実態の把握に努めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 まさに社会経済の変化によって変えなければならないんですが、配当還元方式は昭和三十九年の金利が参考にされている、だから高く評価されてしまうという指摘もありますので、是非、これについても実態把握を行ってもらって、今まさに次長が社会経済の変化に伴って変えてきたと言って、きていないからこそこういった差が生まれてしまうので、そこを検討、検証を進めてほしいと思います。

 済みません、時間がありませんので、引き続き、次に行きます。さらに、相続税に関連しまして、今度は事業承継税制について伺いたいと思います。

 資料の四でございます。

 相続税、贈与税の負担が障害となり円滑な事業承継に取り組めていないことを受けまして、この間、政府は、中小企業や小規模事業者の経営者に対して税負担を軽減することにより円滑かつ早期の事業承継を実現させることを目的として、事業承継税制が行われてきました。さらに、特例措置を設けて、その期限を二〇二七年末として、役員就任要件等の見直しもされてきたところであります。

 資料四の右の税制活用の推移を見ますと、一気に、二〇一八年、特例が設定されてから数多くの活用がされていることが明らかに分かります。コロナ禍で少し、一時減りましたけれども、二〇二三年度は五千件以上の活用がなされています。

 特例措置を受けた場合、五年経過以降に後継者が更に次の後継者へと贈与する猶予継続贈与をすれば、相続税が免除されます。つまり、猶予と免除が相互に続いていくことになりますが、理論的には、代々続いていけば、徳川十八代ではありませんけれども、ずっと代々続く限り相続税を払う必要がないという理解でよろしいでしょうか。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 代々というお話がございましたが、相続税は相続開始の時点の法令に基づき課されますので、将来の相続税について現時点において確たることを申し上げることはできませんが、現時点の制度で申し上げますと、現行の相続税の事業承継税制の適用を受けた場合、特例措置であれば株式の一〇〇%、一般措置であれば株式の八〇%の割合に相当する相続税について納税を猶予することができます。この納税猶予の適用を受けている後継者が、次の後継者に対して事業承継税制の対象となる株式の贈与をした場合には、その納税猶予の相続税は免除となるということでございます。

 代々、次の後継者が贈与又は相続により取得した株式について事業承継税制を適用する場合にも、猶予割合に応じた株式について、贈与税又は相続税の納税が、一定の要件の下、猶予され、免除されることとなるところでございます。

田中(健)委員 この事業承継税制はひとまず納税が猶予される制度でありますが、免除されるには更に条件を満たしていかなきゃならないと思っています。

 その中で、この相続税、贈与税を続けようと思うと、何とか会社の形態を守り、事業を継続することが必要でありますが、途中で規定の取消し事由が発生した場合は猶予されていた税額に利子を加算して納付することになりますが、これはどこまで遡ることになるのか、この利子負担についての見解を伺いたいと思いますし、なぜかというと、納税の猶予の打切りのリスクが相続又は贈与している間に生まれるんじゃないかということの考えでありますが、見解を伺います。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 事業承継税制の適用を受けている後継者が納税猶予の取消し事由が生じた場合には、猶予されている税額と利子税を納付しなければならないこととされております。

 納付の必要がある税額と利子税は、事業承継税制の適用を現に受けている後継者についてのものでありまして、かつて事業承継税制の適用を受けていた先代経営者が免除を受けた納税猶予税額は含まれないところでございます。

田中(健)委員 ありがとうございます。

 最後になりますけれども、四ページの図の経営者年齢の推移を見ていただければ分かると思うんですけれども、法人税の事業承継税制が始まった創設当時は、経営者の年齢のピークは六十代後半でありましたが、令和五年時の経営年齢のピークというのは五十代後半になって、なだらかになりつつあるのが分かります。他方で、七十代以上の経営者割合は依然として大きくて、コロナ禍とか物価高騰等、様々な経営環境の変化によりまして事業承継の具体的な検討が遅れているというふうにも見えます。加えて、今後、事業承継を本格的に検討していく六十代の経営者も、特例措置の創設時と同規模、これは横に引いてもらえば分かる、存在しています。

 今回、特例措置は、中小企業の円滑な世代交代を通じた生産向上という待ったなしの課題を解決するための極めて異例の時限措置というふうに位置づけられていますし、そういうふうに何度も説明も受けましたが、事業承継による世代交代の停滞や地域経済への影響はあってはならないと思っておりますので、この年齢構成を見てもまだこれから事業承継の必要性も高い中、今後、この事業承継の在り方について、今までの議論も踏まえてでありますが、大臣の見解を最後に伺えればと思います。

加藤国務大臣 今委員からいろいろお話をいただいたように、中小企業経営者の方々の円滑な事業承継を支援すること、これは大変大事でありますし、喫緊の課題であります。

 税制面においても、平成三十年から十年間の相続、贈与について事業承継税制における特例措置を講じてきたところであります。この特例措置は、後継者の承継時の税負担を実質ゼロとするなど、極めて異例の措置であり、与党税制改正大綱では、その適用期限は今後とも延長しないと明記をされております。

 事業承継を検討している中小企業経営者の方々には、特例措置が適用期限を迎える令和九年末までに本措置を活用し、早期の事業承継を進めていただくことを期待をしているところでございます。

 なお、令和七年度税制改正大綱においては、今後の事業承継の在り方について検討する旨も記載されているものと承知をしています。

田中(健)委員 ありがとうございます。大変重要な税制だと思いますので、今後とも見直しと、また活用をお願いしたいと思います。

 以上です。

井林委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 れいわ新選組の高井でございます。

 今日は四十分も時間をいただきまして、本当にありがとうございます。

 ただ、感謝を述べた後に、またいつも苦言を申し上げて恐縮なんですが、今日も主計局長には出席をいただけないということで、朝の理事会で与党筆頭から理由の説明はいただきました。ただ、ちょっと納得できるものではない。予算委員会があるので忙しいと。予算委員会はずっと主計局長は張りついていなきゃいけないということだったんですが、それであれば、加藤大臣だって、ずっと予算委員会は、答弁があろうとなかろうと張りついていらっしゃるわけで、しかも答弁もされているわけですから、何でそれで主計局長が来れないのか。

 やはり、何か主計局長はちょっと格上だみたいなことを国会までが認めてしまっているというふうになってしまうと思うので、是非、委員長、前も言いましたけれども、予算委員会のときは、防衛省の自衛官、制服組は呼ばないという理由を予算委員長が明確に話していただいて、それでみんなも納得して、質疑者も納得したということだと思いますけれども、今日の与党筆頭理事の説明で委員長も納得されますでしょうか。

井林委員長 これまでの慣例は事実として重みがあり、また、国会で充実した審議のために積み重ねてこられたものだと思いますので、これまでの慣例を尊重したいと思いますが、現在、主計局長の出席については筆頭間協議となっておりますので、委員長としては、まずは筆頭間の協議を見守りたいという考えでございます。

高井委員 慣例は、やはりちょっと古臭いものも多いんですよね。

 実は、ちょっと今、反対側で政治改革特別委員会をやっていて、私、今公職選挙法改正の質疑にも行っていたので、ちょっと間、抜けていたので、ひょっとして同じことを聞いたら申し訳ないということも一言謝っておこうと思ったんですが、公職選挙法改正もやはり非常に古臭い規定があって、ガラパゴス選挙制度だ、それを変えようと今努力していますので、国会の慣例というのは本当に一般の国民の皆さんはほとんど分からないし、理解不能なものが多いんですけれども、その最たるものがこの主計局長は答弁しないじゃないかなと思いますので、是非ここは筆頭間で精力的に協議いただいて、とにかく、慣例だというのであれば、前例にしないという一回でもいいから、是非。

 ちょっと私は、実は主計局長とは縁があってというか、私が落選する前、今からもう四年前に、私は厚生労働委員だったんですけれども、そのときも積極財政が必要だということを厚生労働委員会でずっと質問していたんですね。そうすると財務省は当然、担当委員会じゃないので次長が来られて、そのときの主計局次長が宇波さん、今の主計局長なんですよ。ずっと私、十三回、宇波さんと対決していまして、大分議論が深まった。その後、宇波さんは順調に出世されて主計局長になったので、今回更にまた議論を重ねることを楽しみにしていたんです。

 もちろん大臣に聞けばいいじゃないかということかもしれませんけれども、財務省にずっと根底からある緊縮財政という考え方、財政再建がやはり一番大事なんだ、その結果、日本経済はこんなに停滞をして国民生活は苦しくなっているという根本的な議論は、申し訳ないけれども、やはり、二年ぐらいで替わる大臣ではなくて、ずっと財務省で、特に主計局がずっと長かった宇波主計局長と私は議論したいと思いますので、是非これは、委員会の在り方として国会からの強い要請ということで、是非お願いしたいと思います。

 それでは、今日は四十分もいただいたので、全体的な、今回の法改正のみじゃなくて、日本の財政制度、税制制度について議論したいと思うんですが、ただ、一点、まずは具体的な質問をさせていただきます。

 ちょっと順番は変わるかもしれませんけれども、たばこ税、今回改正がありますけれども、実は、紙たばこと加熱式たばこ、まあ電子たばこなんて呼んでいる人もいるかもしれません、この二つで今まで税に差があったんですね。私は、これはいいことだと思うんですよ。

 というのは、紙たばこよりも加熱式たばこの方が健康リスクが低いんです。そういうデータがきちんとあって、しかも、東大の齋藤先生、准教授の研究によると、紙たばこを加熱式たばこに移行させれば健康リスクが減って、そして年間で五千億円の社会保障費が削減されると。今回、加熱式たばこを増税するんですけれども、それの増税分をはるかに上回る社会保障費の減少効果があるなんという研究もあるんですね。諸外国でも、加熱式たばこの方に誘導するためにあえて税率を下げて、むしろ税差を拡大している国が、イギリス、イタリア、ニュージーランドという状況なんですよ。

 それなのに今回、わざわざ逆行させて、加熱式たばこの税率を上げて紙たばことの差をなくす。よっぽど増税して財源が欲しいんでしょうけれども、私は上げるところが間違っていると思いますが、財務大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 今の委員の議論の前提として、加熱式たばこと紙巻きたばこの健康の影響という認識があるんだと思います。私どもとしては、厚生労働省においてその点について研究中と承知をしており、現時点で加熱式たばこの健康影響が少ないと断言できる状況にないとの見解である、これは厚労省がでありますが、と承知をしております。

 その下で、今回の加熱式たばこの課税方式の見直しは、市場シェアが拡大している中で、紙巻きたばこと同様の価格帯で販売され、かつ代替性が高いにもかかわらず、税負担が低くなっている実態があることから、同種同等のものには同様の税負担を求める消費課税の基本的考え方に沿って、紙巻きたばことの税負担差を解消することとされたものでございます。

高井委員 厚生労働省が研究して、もう影響に差はないといって、その上でやっているのかと思ったら、まだ研究中ということですよね。ほかの国では明らかに差をつけているし、かつ、民間の研究機関では三割健康リスクが減るんだという研究データもあるんですね。ですから、まず、少なくともせめて、厚生労働省の研究結果なりが出るまで待ってからやるというのが、やはり本来あるべき姿だなということを申し上げておきたいと思います。

 それでは、次に移りますが、これはちょっと、私の地元の埼玉県で起きた八潮市の道路陥没事故の件、本題からは少しそれますが、財政との関係も大きいので、ちょっとお聞きしたいと思います。

 今日は消防庁、総務省からも来ていただいていますけれども、今回、いまだにトラックのドライバーの方が救出されていないということで、本当に一日も早い救出をお祈りするばかりで、また、今回、救出活動に当たってくださった、そして今も当たっている八潮の消防団の皆さん、消防局の皆さんには、本当に心から敬意と感謝を申し上げます。

 ただ一方で、私が指摘したいのは、消防の連携というのが、果たして今の体制でいいんだろうか。

 実は、私も今回の事件で初めて知ったんですけれども、消防というのは、まず、都道府県とか政令市には特別高度救助隊、東京消防庁の場合は特にハイパーレスキュー隊という本当に世界でも精鋭部隊、訓練された部隊がいる、そして、都道府県や政令市にもそれに準じた体制があるんですが、残念ながら八潮市は政令市ではありませんから、お隣、さいたま市から応援も来たわけですが、ただ、その連携の在り方が、消防庁に聞くと、対等な関係だと言うんですね。都道府県と政令市とそれから市区町村の消防は、皆、横のつながりで、上下関係とか指示命令系統がないと。

 これは、地方分権だからいいような気もしますけれども、やはり消防という本当に人の命を預かるときに、それで機動的に対応できるのか。

 例えば警察だったら、やはり、警察庁があって、各都道府県警があって、その下に所轄の警察署がある、きちんとそういう体制がありますけれども、多分、全国にも、こんな何か、市区町村と国と都道府県がみんな対等みたいな組織は余りないと思うんですね。

 ですから、消防庁として是非、もっと連携、特に、現場の市区町村の消防局に支援する体制というのをもっと充実させるべきだと思いますけれども、いかがですか。

小谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の埼玉県八潮市における道路陥没事故は、一刻を争う事態だったことから、事故発生後、直ちに管轄の草加八潮消防局が陥没穴内部に進入して救助活動を行いましたが、陥没穴内部で断続的に土砂崩落が発生し、救助隊員の方が負傷するなど、陥没穴内部での直接的な救助活動が困難になったほか、深夜には道路地盤が広範囲で崩壊するなど、困難性が更に増す救助事案となりました。

 そのため、総務省消防庁より草加八潮消防局に対し、相互応援協定を締結している東京消防庁や、さいたま市消防局への応援要請を行うよう助言し、東京消防庁ハイパーレスキュー隊等が救助活動を支援したところでございます。

 また、総務省消防庁では、情報収集や関係者との調整のために職員を現地派遣するとともに、陥没穴内部、スロープの安全管理等の技術支援のために消防研究センターの土砂災害の専門家を派遣してまいりました。

 総務省消防庁としては、ドライバーの方の救出に向けて、引き続き、消防機関による救助活動を支援してまいりますとともに、今後、管轄の消防本部が今回の救助活動について検証していくと承知しておりますが、総務省消防庁としても、それらを踏まえながら適切に対応してまいります。

高井委員 こういうことをやりましたと。でも、細かいですよね。そういう連携では、やはりちょっと、人の命を救うという観点では、あるいは自衛隊との連携も含めて、ここは是非、この事件を機に、消防庁として、国がリーダーシップを取ったそういう連携体制というのを改めて考えていただきたいと思います。

 次は、国交省が担当だと思うんですが、今回、八潮市の陥没によって埼玉県の北部まで、私の選挙区はちょっと北の方なんですけれども、私の選挙区、埼玉十三区の市町も、今というか、もう終わりましたけれども、節水制限というか、下水道を使えない、使わないでくれという、これが百二十万人に影響が及んだということなんですけれども、何でこんなふうに、下水道の仕組みがそうなっていてしようがないのか、その原因、それから、そうはいっても同じことがまた起こり得ますから、こういったことが起こらないための改善策というのを教えてください。

松原政府参考人 お答え申し上げます。

 八潮市の道路陥没事故については、事故に巻き込まれたトラックドライバーの救出作業や応急復旧作業のため、埼玉県において関係十二市町の約百二十万人の住民の皆様に対して、一月二十八日から二月十二日までの間、下水道の使用自粛が要請されたところでございます。

 使用自粛の影響が広範囲に及んだ理由といたしましては、陥没箇所が終末処理場の近くに位置する下水道管であったことに加えまして、複数の市町村の汚水を集める基幹的な流域下水道で事故が起こったことが挙げられます。

 今回、このような事態が再び起きないよう再発防止策を講じることが重要であるため、国土交通省といたしましては、重点的に点検を行う対象、頻度、技術などの点検の在り方や、他の管理者とのリスク情報の共有などの在り方といった下水道の施設管理の在り方などを検討する有識者委員会を開催しているところでございまして、委員会での議論を踏まえて必要な対応を検討、実施してまいります。

高井委員 検討委員会が立ち上がったやに聞きますけれども、何か結論は、一年かかるんですかね、ちょっと遅くないですかね。でも、本当に、原因があるわけですね、百二十万に及ぶようなそのボトルネック的な部分だった、そういうところは優先して点検するとか、やはりそういうことが必要だと思いますので、是非、国交省では早急に、もうそんな一年もかけずに、ちょっと中間報告とか出して速やかにやっていただきたいと思います。

 あと、上水道なんですね。所沢市でまた昨日噴出するという事故が起きましたけれども、何で埼玉県がと思うんですけれども、実は、国が管理しているのは八割以上は修繕とかしているんですけれども、自治体管理の部分は六六%しかしていないというのを聞いています。これはやはり人手不足とか財政難、特に自治体では技術系の職員が減ってしまっているという現実がある。それと、この五年以内に修繕、撤去が必要なのが今、一万か所もあるということなんですね、点検の結果。しかし、これがまだ全然、特に自治体管理の部分はできていないわけですよ。

 道路の陥没だけで令和四年で一万か所以上あったということですから、本当に早急な課題だと思いますけれども、先日、埼玉県の大野知事が総理のところに財政支援をお願いに行って、総理から総務省に指示が下りていると思いますけれども、どのような財政支援を総務省としては埼玉県に行うお考えでしょうか。

清田政府参考人 お答えいたします。

 復旧に要する経費につきましては、総務省では、下水道の管路の建設改良費に対し下水道事業債を活用する場合、その元利償還金の一部に地方交付税措置を講じております。

 今、埼玉県では、現在開会中の二月定例会で補正予算が提案され、審議中とも伺っております。今後、埼玉県と連携し、この地方財政措置の活用について対応してまいりたいと考えているところでございます。

高井委員 これは本当に深刻ですよ。上下水道の維持、更改に三十年間で九十兆円かかるという試算がテレビなんかでもどんどん出ていますからね。一体、国交省、どうやって財源を調達して実施するんですか。

松原政府参考人 高度成長期に集中的に整備されてきた上下水道施設は老朽化が進行しており、維持管理や更新の費用の増加が見込まれるところでございます。

 このため、地方公共団体に対しましては、計画的な施設の更新や長寿命化を実施するための計画の策定を求めており、予防保全型メンテナンスへの転換によって、ライフサイクルコストの低減を図ることとしております。

 また、水道事業及び下水道事業の老朽化対策を高度化、効率化する観点から、DX技術の速やかな実装に向けて、地方公共団体向けの分かりやすいDX技術カタログの策定や、点検、調査等の施設管理に関する技術開発などの技術的支援を行っております。

 さらに、地方公共団体が行う維持管理のうち、施設の点検や調査、点検、調査結果に基づく計画的な改築、更新などの重要な対策については、財政支援を行っております。

 加えて、二月十四日に決定された国土強靱化実施中期計画策定方針では、上下水道の老朽化対策について、埼玉県八潮市での道路陥没事故も踏まえて検討することが位置づけられたところであり、国土強靱化実施中期計画に上下水道の老朽化対策に必要な施策が盛り込まれるよう、調整を進めてまいります。

高井委員 答えていただいていないんですよ。でも、それはしようがないですよね、財源の調達は国土交通省はできませんからね。通告で財務省と言っても財務省は受けてくれなくて、仕方なく国交省が今みたいな答弁をするしかないんですけれども。

 大臣、三十年間で九十兆円ですよ。そして、これだけ聞くと国交省だとまた言うかもしれませんので全般的に聞きますよ。例えば農業、令和の米騒動、これもやはり、減反政策で農業の予算をもう半分に減らしているんですよ。やはり、流通がどうとかいう問題は小さな話で、根幹的には、農業予算を減らしてきた、これが原因ですよ。それから公共事業、公共事業もまさに半分に減らしてきた。それから、学校教育だって、埼玉県の県立高校が今どんどん統廃合されているという話が、この間、おしゃべり会というのをやったら出たんですよ。これだって結局、教育予算、これが世界の中で、先進国の中で日本は一番低いわけですよ。

 こういう、とにかくお金を削れ削れと。それは結局、財務省が緊縮財政という考え方で、財政健全化をとにかく一番の目標に掲げてやるので、その結果、人が死んでしまう、あるいは生活に大きな影響が起こることが起こっているので、ここは、財務大臣、緊縮財政じゃなくて積極財政に転換しませんか。いかがですか。

加藤国務大臣 何を緊縮財政と定義されているか、ちょっと理解できないんですけれども、この間、予算は相当規模で拡大をしていますし、特に、私も厚労大臣をやっておりましたから、社会保障を中心に大きく増えてきている。まさにそれは国民の安心、安全を守るという意味において手当てしてきたというふうに私は考えているところでございます。

 最初の問題意識の、下水管始め道路、橋等々、様々な公共物が老朽化してくる、これに対してどう対応していくのか。あるいは、これから様々な、既にもう様々な災害等も起きているわけでありますから、そういったものに対して事前防災、国土強靱化、こういったものをどう対応していくのか。これについては、次の計画についても議論させていただくことになっておりますので、また、既に専門家の議論も始まっていると承知をしておりますので、それらを踏まえてしっかり対応させていただきたいと思っています。

高井委員 今私が申し上げたんですよ、緊縮財政。だって、農業予算は半分に減っているんですよ、ピークから。公共事業も半分に減っているんですよ。確かに社会保障費は増えていますよ。それはまあしようがない。トータルも増えているとおっしゃいますけれども、増え方がしょぼいんですよ。

 この間、予算委員会でやりましたけれども、政府の財政支出と日本のGDPの成長率というのは、日本じゃなくて世界は正の相関関係にある。その中で、日本は、世界の中で一番財政支出をこの三十年間増やしていないんですよ。それは増えていますよ、もちろん。徐々に徐々に増えてはいるけれども、だけれども、世界各国はもっと増やしているから、経済も成長して、そして、それで税収も増えて賄っているんじゃないですか。

 私も役所で、総務省で働いていましたから、総務省で、特にITなんか、これから力を入れなきゃいけないといって財務省に予算要求しても、シーリングといって、もう総務省の枠はこれで決まっているからほかのところを削れみたいな、自分たちの中から削って出してこいみたいな、そういう話。それを国交省とか農水省に求めたって、できないじゃないですか。やはりそこは、財務省が考え方を変えて、緊縮財政という予算を、とにかく国債をこれ以上発行させないという考えを改めていくということが大事で、そこはさっき江田憲司委員がもうさんざん説明していましたけれども、自国通貨建ての国債はデフォルトしないんだ、そういう理論があるわけで、それを財務省だって分かっているわけですから、こういったことをやっていく。

 私、実は、予算委員会の、この間、総理と加藤大臣とのやり取りを、私じゃない方がXでちょっと切り取って投稿してくれたんですよ。どういう場面かというと、税金というのは景気が悪いときには下げるんだ、これは中学校でも習う当たり前の話ですよ、それをやらないのは政治家と財務省の職務怠慢ですよという質問をしたら、それが何と千二百七十万表示、再生された。本当にびっくりするぐらいの数字。でも、なぜかそのポストは凍結されて、今見れないんですけれども、そのくらい爆発的に実は広がったんです。これはやはり、私は国民の声だと。

 今、財務省の前でデモをやっていますよね。全国各地に、財務省の前だけじゃなくて、大阪、愛知、新潟、香川、福岡、それぞれの場所でやっているんですよ。しかも、千人ぐらい財務省の前には来ている。私も今まで、総務省で働いていて、デモとか、総務省もよく来ていましたけれども、こんな規模の数が来る、これはちょっと無視できない、やはり国民の声だと思いますよ。

 大臣、ちょっと、通告していませんけれども、どうですか、デモの今の広がり。国民の声だと感じませんか。

加藤国務大臣 デモであり、今委員御指摘のような、物価が高騰している、特に食料品とか生活に密着した物品の価格が上昇している中で、生活が苦しい、こういった声、これは私たちもしっかり対応していかなきゃいけない。

 そのためにも特に低所得者に対する給付制度を行っていく、あるいは今回の措置においても、定額で決まっております基礎控除あるいは給与所得控除の定額部分、これが結果的に物価が上がる中で実質負担増になりますから、それを調整する、こういった施策一つ一つ進めさせていただいているところでございますし、また、電気代とかガソリン代に対する支援、これも進めているところでございます。

 同時に、これは一時的な対応でありますから、やはり根本的には、賃金が上がっていくということによって初めて全体が回っていく、それに対する施策も、いろいろここで議論されておりますけれども、賃上げを促進する税制あるいは生産性を上げるためのIT等に対する投資の促進、こういったことも適宜進めさせていただいているところでございます。

高井委員 そういう政策では不十分だから、あれだけの人が怒りを込めて。やはり千人があそこに集まるというのは相当なことですよ。これはやはりちゃんと重く受け止めなきゃいけないし。

 あそこにいらっしゃる方、私は行ったことはないけれども、恐らく、ネットとか見ていると、やはり積極財政という考え方に共鳴していただいているんですよ。

 この積極財政というのは、国会議員の、自民党の皆さんだって多くの方が支持する政策で、やはりそこの部分が、さっきの、だから、自国通貨建て国債はデフォルトしないと財務省が言っているというのをみんな知っているんですよ、今ネットでそういうのが見れるようになったから。あるいは、日本は、債務残高対GDP比は、それはG7で一番悪いけれども、世界の中でも悪いけれども、ほかの指標で見れば、江田憲司議員が言っていたCDS、クレジット・デフォルト・スワップで見れば、そんなに、〇・何%だということをみんな知っているので怒りの声を上げているわけです。

 特に、今日、江田議員が言っていました、日本は通貨発行と徴税権があるんだ、だから発行したって大丈夫なんだと。そのとおりじゃないですか。

 だから私も、本当に無限に国債を発行していいなんて、れいわは言っていませんからね、必ず上限はあるんですよ。だけれども、それはやはりインフレ率なんですよ。でも、今のような、この程度のインフレ率じゃないですよ。しかも、悪いコストプッシュインフレですから、本当のデマンドプルインフレではないので。本当の需要が供給を大きく上回るようなそういうインフレになったら、それは自動的に、例えば税率を上げるという、そういう形で減税したらどうですかと四年前に宇波主計局次長と議論したんですよ。だから、そういう議論を宇波さんともしたいし、そういう、やはり税率の上げ下げというのをもっと機動的にやるというのが、この間の予算委員会で私が質問して、それが千二百七十万再生にもバズったということなので、是非、やはり税を上げ下げする。

 法人税とか所得税は結構上げ下げするじゃないですか。何で消費税だけ全く上げる一方なのかということをちょっと議論したいと思うんですが、これは事務方で結構ですので、消費税、所得税、法人税、これを変更する場合にどのような手続が必要で、どのくらいの時間がかかりますか。

青木政府参考人 お答えします。

 税制改正の一般的なプロセスといたしましては、まず、税制改正要望も踏まえ、与党における御議論、それから政府部内での議論、有識者の御議論などを経て、最終的には、与党において与党税制改正大綱として取りまとめられ、その内容について政府でも閣議決定を行います。政府が提出しました改正税法が国会での審議、討論を経て成立すれば、法定された時点で施行されるという流れでございます。

 個々の改正が検討され始めてから施行されるまでにどの程度の期間を要するかは、その変更内容などによってまちまちであるため、一概にお答えすることは困難でございますが、例えば、消費税率を変更する場合でございます。これは、法律が決まるまでは今申し上げたプロセスです。その上で、改正を行うことが決まったとしましても、その影響は広く消費者に及ぶことから、十分な周知期間が必要であるとともに、全国の事業者におきまして、新たな税率に対応するためのレジ、システムの改修、新たな値段設定の検討、それに伴う値札の貼り替え、様々な影響が出ますことから、相当の準備期間が必要になると考えております。

 こうしたことから、これまでの消費税率の変更につきましては、改正法の公布から一年以上の準備期間を置いて行われることが一般的となっております。

高井委員 消費税だけ反論しても、海外では、イギリスは七日とか、ほかの国は一か月とかで、ドイツとかもやっているわけですよ。そのほかも、今の説明だと、だから、それぞれ所得税、法人税、消費税で別にプロセスは変わらないわけですよ。大体、年末の十一月ぐらいにまず政府で要望を出して、自民党で税調で協議して、予算案と一緒に審議される。だから一年単位でやっているみたいな。だけれども、これは国会が決めている単なるルールですから、別に憲法でそう書いてあるわけでもないし、だからこの点は変えるべきだ、制度を変えるべきだということを私は是非申し上げたい。

 その上で、もう一度財務大臣に聞きますけれども、所得税、法人税は税の上げ下げをやっていますよ、それは景気のよしあしに応じていろいろ。特に法人税なんかはしょっちゅう下げていますよ。消費税だけは全く減税の議論すら政府の中から出てこない。それはなぜですか。

加藤国務大臣 これは、従前から申し上げていますように、消費税については、急速な高齢化などに伴い、社会保障給付費が大きく増加する中において、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられていることから、政府としてはその引下げを行うことは適当ではないと考えていることによるものであります。

高井委員 その考え方を改めてください。景気が悪いときには税を下げる、景気がいいときに上げるという、まさに経済学の、中学生のときに習う基本中の基本を考えたときに、やはり消費税というのは一番消費にダイレクトに利く税ですから、そういう税を景気が悪いときに、安定財源だからといって、取りやすいからといって取るというのは、やはりこれは傲慢な態度で、そういう考え方で財務省がかたくなだからデモになるんですよ。国民の皆さんの怒りが爆発するわけですよ。是非これは御検討いただきたいと思います。

 それから、同じく国民の皆さんが財務省に対して怒っている理由は、私がこの予算委員会でも取り上げた、国債償還費が日本の場合、予算の中に一六、一五%ぐらい占めているわけです。国債を返さなきゃならないお金が要るから、六十年償還ルールというのを日本はやっているからそれを計上しているわけですけれども、これはもう世界中どこもやっていないじゃないですか。

 私がそう何度言っても財務省は、主要先進国ではやっていませんという答弁しかしないので、私はもう二か月前にこの委員会で、調べてくださいと。主要先進国以外だって幾らでもすぐ、財務省だったら、外務省に頼めば大使館が調べてくれますよ。私が総務省時代だって調べてくれましたよ、すぐ。財務省が言って調べないわけがないんだから、世界の債務償還費があるかないかなんて、こんなのすぐ分かることじゃないですか。何で調べないんですか。理由を教えてください。

前田政府参考人 お答えを申し上げます。

 各国におきます国債償還費の有無につきましては、先般お答え申し上げました、G5各国及びEUに加え、国会での御議論も踏まえまして、OECD加盟国の中で英語による資料が存在する国を中心に、現在、新たに十か国の調査を進めているところでございます。

 その上で、調べている限りにおきましては、日本と同様に債務償還費を計上しているという国は確認できてございません。

高井委員 そうですか。五か国が十か国増えて十五か国になりましたか。

 本当に、皆さん、私は総務省の下っ端のときも、外務省に連絡して、確かに総務省が、下っ端が頼むと二、三週間かかるんですけれども、例えば携帯電話料金はどうなっていますかとか外務省に言えば、各国大使館は調べてくれるんですよ。そんなルートを使わずに、何か英語の文献があるものとか、どう考えてもサボタージュだし。

 これは、重ねて言いますけれども、どう考えても世界中でないんですよ。一か国でもあったら絶対財務省は言いますから、調べてきて。こういう日本と同じ制度をやっている国が少なくとも一個はありますとか言いますよ。ないから、そうやって二か月もたって、十か国だけ調べたみたいなことがあるわけです。

 こんな、日本しかやっていない、世界二百か国以上あって日本しかやっていない、そういう債務償還費をわざわざなぜ日本だけが計上するのか。これは、財務大臣に明確に通告して、前回も予告しました。いきなり聞いても財務大臣は答えられないでしょうから、ちゃんとよく財務省の事務方と相談して、なぜ、一か国だけですよ、世界で日本しかやっていないその理由を教えてください。

加藤国務大臣 委員は債務償還費に限定してお話をされていますけれども、各国において財政健全化を図るためには様々な制度が入っているわけですよね。ですから、全体を見て議論しないと、この一点だけやっているかということ、これは余り全体を捉えていないのではないかなというふうに思います。

 その上で、もう六十年償還ルールについて一々申し上げることは省かせていただきますけれども、これも財政健全化の精神を体現するものとして定着したものであり、市場の信認を維持する観点から意義があると考えておりますし、今申し上げたように、各国においても、こうした債務償還費の形は取っていなくても、財政規律維持に関する基準等を法律において規定されているものと承知をしております。実際、各国、債務残高対GDP比は日本よりはるかに低い水準にあるというふうに承知をしているところであります。

高井委員 財務大臣が言っていることは何度も聞いています。

 もちろん、債務償還費だけで私は、だから日本は財政健全化だなんと言う気はないですよ。もちろん、各国はいろいろな、例えば法律にきちんと歯止めを設けているとか。だったら、日本だって法律で歯止めを設ければいいじゃないですか。世界各国がやっているんだったら、その方が大臣がいいと思うならやればいいじゃないですか。そういうやり方をやらずに、債務償還費というやり方で世界中で日本だけがやって、日本の予算の一五%も国債を返すために占めているんですよ、だからもうこれ以上国債は発行できませんねという、これはもう印象操作ですよ。国民の皆さんにそういうふうに見せようとしているという意図が明らかだから、私は質問しているんです。

 これは余り、今財務省デモをやっている人もまだ知らないと思いますよ。知ったら更にまた怒りの輪が広がると思いますよ。世界で一か国もやっていないというのは最近私が質疑をして分かったことなので、是非こういう考えを改めていただきたいし。

 あと、今、財務大臣はまた債務残高対GDP比のことを言いましたけれども、これももう、世界の指標の中では、まあもちろんね。この間の質問で、大臣はこう答えていたんですよ。なぜ債務残高ばかりを強調するのか、データの入手が比較的容易なため、財政状況を継続して把握できるから、かつ他国とも比較しやすいと。そういう理由、データが集めやすいとか、比較しやすいという理由だけで、世界で一番悪い数字、G7で一番悪い数字を、そういう単純な理由で、それだけを説明して、ほかの指標を説明しないじゃないですか。私が幾つか予算委員会で、五つか六つぐらい出している指標を、それを無視して、やはり債務残高対GDP比だけを主張するというのは私はおかしいと思いますけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 国債償還費については、まさに市場の信認を維持する観点から意義があるということを申し上げたところでございまして、私ども、これがあるから、今委員御指摘のように、何か、あるかないかによって財政の状況の違いというのを示そうとしているわけではございませんで、こういったことをしっかりやることが、まさに市場の信認を維持する観点からも大事だということを申し上げているわけであります。

 それから、様々な指標についても、ちょっと今手元に資料がないからあれですけれども、先般、例えば、こうやってみることについては、外貨建ても入っている方はどうそれを考えるか等々、あるいは、ある部分については民間の経済活動を反映したものである、こういったものである等々、御指摘をさせていただいたものと承知をしています。

高井委員 全く十分な反論をいただいていないので、これはまた引き続きこの委員会でやりたいと思います。

 最後に、時間なので、財務省設置法に、要は、財政の健全化、健全な財政の確保しか書いていないんですよ。日本経済の発展とか国民生活の向上、これは予算編成をやっている財務省は当然やるべきでしょうと言ったら、大臣の答えは、設置法に書くまでもなく当然優先すべきと。でも、それではやっていないように見えるから、国民の皆さんは怒って、設置法を改正すべきだと言っているんですから、それは明確にちゃんと設置法に書くべきじゃないですか。いかがですか。

加藤国務大臣 書いたからやっているように見えるかどうかということではなくて、実際に何をしているかで判断していただくんじゃないかなというふうに思います。

 そういった意味において、私どもも、様々な政策など御意見をいただきながら、経済あっての財政との考え方によって、今様々な政策課題に取り組んでいるところでございます。

高井委員 実際にやっていないから書いてくれというのが国民の声なんですよ。これは、政治がちゃんと書けば、財務省だって、考えを改めて、日本経済の発展とか国民生活の向上をやってくれる、だから設置法を改正すべきだ。これは非常に重要なテーマなのでこれからもやりたいと思います。

 ありがとうございます。

井林委員長 次に、田村智子君。

田村(智)委員 日本共産党の田村智子です。

 法案の質疑に入る前に、定額減税について一言だけ確認をいたします。

 今年の確定申告書には、今年限りで、定額減税という項目があります。既に定額減税分の控除を受けている会社員でも、医療費などの控除のために確定申告をすることがあります。その際に、定額減税の項目を記入しなかった場合、定額減税が反映されない納税額となってしまいます。インターネット上でも、不記載なら税金が増えるおそれがあるなどの情報が飛び交っています。

 確認いたしますが、定額減税を記入し忘れた場合、五年間は定額減税分の還付請求ができると思いますが、いかがでしょうか。

小宮政府参考人 お答え申し上げます。

 令和六年分確定申告において、特別控除額への記入を失念するなどにより定額減税の適用を受けていない申告書を提出した場合ですが、申告期限内であれば訂正申告、申告期限後であっても、法定申告期限から五年以内に更正の請求により定額減税の適用を受けることは可能でございます。

 なお、国税庁が提供する確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って入力していただければ、定額減税に関する事項の記入漏れや計算誤りのない確定申告書を作成していただくことができることとしております。

田村(智)委員 内閣府にも二点確認します。

 所得税額が定額減税より少ない場合、不足額給付金で穴埋めされます。しかし、不足額給付の請求は、五年も遡ることはできないんですね。確定申告の、今の御説明の更正の請求期間、これを考慮すれば、不足額給付の申請期間もできるだけ長く保障することが必要ではないでしょうか。

 そして、もう一点。この不足額給付について、私は、昨年のこの委員会で、白色申告の事業者が申請漏れとなることのないよう周知徹底を求めましたが、実は、申請方法や申請期限など、多くの自治体でいまだに決まっていません。制度が早く決定され、周知徹底されるよう自治体に働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。

寺岡政府参考人 二問いただきました。お答え申し上げます。

 まず、確定申告で定額減税が漏れており、その後修正された場合の対応についての御質問でございますが、政府としましては、確定申告で定額減税の記載が漏れていたからといって、直ちに不足額給付の対象外となるような運用を各自治体が行うとは想定してございません。

 不足額給付の実施内容は、今後、各自治体から周知されることとなると承知しておりますが、仮に御指摘のような事態が生じるような場合は、そうした実施内容の詳細を踏まえ、個別に自治体に相談するなど、御対応いただきたいと考えておりますが、政府としましても、各自治体の実態に応じ、可能な限り柔軟に対応してまいりたいと考えてございます。

 なお、給付金一般に通じることでございますが、予算措置として実施される関係上、一定の時期までに給付の可否は判断せざるを得ないということは御理解いただければと考えてございます。

 それから、不足額給付の案内についてでございますが、昨年十二月の補正予算成立後に、自治体に対して円滑な執行に必要な情報の提供を速やかに行っており、実際に、御指摘の事業専従者等につきましても、申請期日や申請方法を公表し支給を開始している自治体も既にあるものと承知してございます。

 その上で、多くの自治体においては、事業専従者も含めた不足額給付全体を一体として進める予定と承知しており、その際、具体的な申請期日や申請方法については、各自治体において令和六年分所得の把握状況などを踏まえた上で公表されるところ、御指摘の点についてもその中で明らかになるものと考えてございます。

 政府としましては、デジタルを活用した支援ツールを提供するなど、引き続き、可能な限り速やかな給付に向け、自治体に対する情報提供等、努力してまいりたいと考えてございます。

田村(智)委員 それでは、法案の審議を、質問に入ります。

 今回の税制改正について、法案審議のまず前提として、税の原則を確認したいと思うんです。

 財務省作成の「もっと知りたい税のこと」、これはインターネットでも読めます。ここには、税の原則として、公平、中立、簡素を挙げています。公平とは、経済力が同等の人に等しい負担を求める、経済力のある人により多い負担を求めると説明がされています。このいわゆる応能負担の原則は戦後の日本の税制の土台だというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 まさに税の三原則、今委員おっしゃった公平、中立、簡素、そういった意味での公平、これは、垂直的公平あるいは水平的公平というのがございますけれども、それぞれに応じてその公平を確保していく、大事な視点だというふうに考えております。

田村(智)委員 財務省の説明で、その公平ということが言われているわけです。

 先週二十一日の予算委員会で、消費税の逆進性が余りに強く、所得税、住民税、消費税、その他の税負担全体で見ると累進性が失われているということを指摘しました。

 資料を御覧いただきたいと思います。

 勤労者世帯の年収別税負担率、年収二百一万円から三百万円のところで、全体の負担率が一〇・八%。六百一万から七百万円でも同じ一〇・八%。七百一万から八百万で一〇・九%。

 改めてお聞きします。

 勤労世帯で所得八百万円まで税負担の累進性が全く失われている。これは財務省の言う税の公平から見ても異常だと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 たしかあのときも答弁させていただいたと思いますけれども、ちょっとこの、その他のところがどういうふうにされているか、よく……(田村(智)委員「資料に書かれているとおりです」と呼ぶ)いや、何が入っているかは分かっておりますけれども、どういう形で算出されているか、よく分かっておりませんので、この表自体を見て、直ちに何か評価しろと言われてもできないところは御理解いただきたいと思います。

田村(智)委員 そうおっしゃるのなら、是非財務省として資料を提出していただきたい。ここに書いてあるとおり、総務省の家計調査から算出しているんですよ。財務省として是非出してください。いかがですか。

加藤国務大臣 どうやって区分をしていくのか、あるいは所得税と住民税の、あのときの議論は、たしか委員が消費税と所得税のみの御反論をされておりましたが、住民税も考えて議論すべきではないかということを申し上げ、また、私どもとしても、五分位についての所得税、住民税そして消費税について数字を出させていただいていたというふうに承知をしているところでございます。

 また、公平といったときに、もちろん税の公平もありますけれども、受益の部分の面も含めて評価すべきものと考えております。

田村(智)委員 先ほど言われた五分位で見たときの税全体の負担割合、これは私たち日本共産党が予算委員会の要求資料として求めて出されたものなんですよ。ここでも、第一から第四まで、税の全体で見ると、やはり累進性はほぼ失われているような資料を財務省としても出してきているんです。

 私がなぜこれを問題にするのか、なぜ財務省としても出してほしいと言うのか、それは、所得再分配というのは税制にもその機能があるからなんですよ。応能負担、税負担の累進性というのは、税制の所得再分配が機能する、そのことによって格差を縮小する、これが非常に大切な役割だからなんです。税制全体でこの機能が失われている、税負担の累進性が失われている。

 じゃ、加藤大臣、ちょっとこの資料がとおっしゃるんだったら私は財務省として出してほしいけれども、税の累進性が失われているというのは異常だということでよろしいですか。税全体の負担の累進性が失われている、こういうことはあってはならないというふうに考えるということでよろしいですか。

加藤国務大臣 それぞれの税ごとに、例えば先ほどあった消費税については、確かにその負担のみを見れば、低所得者ほど収入に占める税負担の割合が高いという意味で逆進性を有しているものであります。

 ただし、先ほど申し上げたように、この消費税が社会保障の財源となっているという、そうした受益を見れば、そうした受益面は低所得者ほど手厚く、所得の再分配にもつながる面もあるから、負担、受益両面から見て評価すべきということを申し上げているところでございます。

田村(智)委員 今の、答えていないですよ。税全体の負担の累進性が失われているということは、これはよろしくないという認識なのかどうかを聞いています。

加藤国務大臣 税それぞれ目的がございますから、それぞれに応じてその基準というものを、あるいは税率が決められているものだというふうに思っております。

 ただ、今委員御指摘の、ここでも議論されておりますけれども、所得の高い人と所得の低い方のそれぞれの負担、それはよく見ていかなきゃならない、それはそのとおりだと思います。

田村(智)委員 先ほど読み上げた税の公平、財務省として掲げている税の原則からいっても、経済力が等しい人が同じぐらいの負担、経済力がより多い人がより多い負担と書かれているわけですから、それが失われていたら、税の原則から見て異常だというふうに言わざるを得ないわけですよ。そのことをはっきり認めないということ自体が私はおかしいと思う。

 それで、予算委員会のときにも、これは税制の問題としてはなかなか答弁していただけなくて、そして、社会保障の給付、ここで所得の再分配というのが行われている、そういう答弁があったわけです。

 だけれども、今、この消費税の税収が、税率を引き上げてきたことによって、所得税、法人税の税収を上回っているわけですよ、マクロで見ると。税収全体で見ると、消費税が所得税や法人税の税収を上回っている。そして、世帯や個人ごとで見れば、消費税の負担が重くなった結果、年収八百万円まで税負担の累進性がなくなって、税制の所得再分配の機能が失われているわけですよ。それでも、消費税は社会保障の財源だといって現状を問題視しない。これでは、低所得者への社会保障を低所得者の重い税負担で支えるということを当然とする自己責任論そのものだというふうに思うんですよ。

 消費税の負担が重いことを認める、だけれども社会保障で給付しているからと予算委員会でも加藤大臣は繰り返されましたよね。それは、所得の少ない人に重い負担を負わせて社会保障を担わせる自己責任論になってしまうんじゃないですか。いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、税の負担率という点から見ると、確かに消費税は逆進性があるということはそのとおりでありますけれども、その税の負担と受益、それを併せて勘案して見たときにどうかということ、そのことを申し上げているわけであります。

田村(智)委員 併せて勘案されたとしても、負担を重く低所得者に担わせて、その給付を低所得者にというのは、それはもう自己責任論そのものじゃないですか。そのものなんですよ。

 しかも、今問題にしている税制の所得再分配、やるべきこともやっていないですよね。

 所得一億円の壁、これは今日も問題になってきました。証券優遇税制によって、所得一億円を超えると税負担率はがくんと下がる。累進性どころか、所得税さえも激しい逆進性が生まれる。長年にわたって私たちは問題にしてきました。

 岸田前首相も石破首相も見直すと総裁選のときには言う。だけれども、延々と放置され、今回の法改正にも入っていない。なぜこういう税制の所得再分配でやるべきことを棚上げするのか、ここも問われなければならないと思いますが、大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 まず、その前に、先ほどの消費税のところも、確かに消費税、薄く広くという形で頂戴をしておりますけれども、それを超えるある意味での受益ということも、全体の中で、社会保障全体の中で、あるいは社会福祉全体の中でこういったことを実現をしているということ、そのことは是非御理解をいただきたいというふうに思っております。

 それから、一億円の壁については、これまでも御議論させていただいたように、今、たしか三十億のところについて、特に高額なところについて手当てをさせていただいたところでございますので、そうしたことがどういう形で、これからこれが進んでまいりますから、その点もよく踏まえながら、今後検討していきたいというふうに考えています。

田村(智)委員 今も社会保障と強調されたので、ちょっと一言言いたいんですけれども、では、その社会保障で安心の生活は保障されているかですよ。

 医療費の窓口三割負担というのは、別に、所得が少ない人も三割ですよ。災害のときぐらいですよね、それが減額、免除されるのは。経済的な理由での減額、免除制度というのはないですよ。国民健康保険の保険料、保険税は所得がゼロでも発生しますよ。子供の人数が多ければ多いだけ負担が重くなっていって、これは払えないというふうになっても、延納、分割、これしか認めない。ここも減額、免除というのはないですよ。認めないんですよ。こういう問題をそのままにしておいていいのかということも問いたいんです。

 そして、もう一つ私が問いたいのは、生計費非課税の原則に立つのかどうかということなんです。

 今回の税制改正では、課税最低限の引上げ、つまりは所得控除の引上げが焦点の一つとなっています。では、所得控除とは何なのか。国税庁の税務大学校の教官の研究論文「所得控除の今日的意義」、二〇〇五年に税務大学校論叢に掲載された所得税の人的控除の在り方についての論文ですけれども、こう書いてあります。担税力とは何かという点については、基本的には租税を負担する能力のことを指すものであり、憲法二十五条の生存権、すなわち健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する水準が担税力の有無を判断する基準として有意であることに恐らく異論はないであろう、このため、所得税の負担の在り方を考えるに当たっては、最低限度の生活を維持するために必要な部分を除いた残余に対して課されるべきであると。

 先ほどの議論の中でも大臣は明確に答弁されていたんですけれども、一応確認いたします、財務省に確認したい。所得税の所得控除の考え方は、生存権の保障する水準である最低生活費を除いて課税する、つまり、生計費非課税を原則としているということでよろしいでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 憲法二十五条の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかについては、立法府の広い裁量に委ねられており、ある施策単独のみによって健康で文化的な最低限度の生活を保障しなければならないと要請しているものではないと考えます。

 その上で、税制も憲法二十五条に反してはならないことは言うまでもありませんが、基礎控除については、高所得者や多額の資産を有する富裕層にも適用されることなども踏まえた水準の設定が必要であり、また、最低限の生活の保障は、税制のみならず、例えば生活保護を含めた他の施策と併せて実現されるものであるというふうに考えております。

田村(智)委員 ちょっとそれでは大臣にも確認したいんですけれども、生計費非課税という立場は取っていないんですか。所得税の控除、これは生計費非課税とは関係ないということになるんですか。先ほどの答弁と違うように思うんですけれども。

加藤国務大臣 ちょっとごめんなさい、そのさっきというところがちょっと確認できていないので、ごめんなさい。

田村(智)委員 先ほど田中議員の質問に対して、最低生活費に対して税金をかけないという趣旨の答弁をたしかされていたというふうに私は聞いていたんですが、違いましたか。

加藤国務大臣 多分、人的控除等に構成される所得税の課税最低限は、生計費の観点や、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めて総合的に検討している、そういう趣旨のこと。だから、生計費の観点を別に否定しているわけじゃありませんが、観点や、それから公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めて総合的に検討する、これが従前からの説明であります。

田村(智)委員 当然、生計費の観点が入るわけですし、国税庁の税務大学校の教官が、これは、憲法二十五条の生存権、これを保障する立場だと述べているのに、それを否定するような答弁を行うというのは私はいかがなものかというふうに思いますね。

 所得税で、最低生活費、この部分を除いて課税したとしても、生計費を考慮して課税をする、あるいは控除をするというふうにしても、消費税の増税によって、健康で文化的な生活とはとても言えないような状況にある人にも消費税の負担が重くのしかかる。そういう人ほど消費税の負担が重くのしかかる。しかも、今回、物価上昇に対応して所得税の基礎控除を引き上げるのに、物価高騰がそのまま税負担に反映する消費税については指一本触れない。

 私はそれは、生計費、ここに対する課税、最低限の生計費には課税をしないというこの原則に照らすと、著しく反するものになるというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、さっき申し上げたのは、所得税の課税最低限について御説明をさせていただいたということでございます。

 その上で、今委員御指摘があった、所得税について物価上昇対応を行うのなら消費税についても対応すべきとの御指摘でありますが、所得税については、基礎控除が所得に対する割合でなく定額で規定されているために、物価上昇時に所得に対する実質的な税負担が上昇するという課題があります。この税負担の上昇を抑えるために、基礎控除の額の物価に合わせた引上げにより、所得に占める基礎控除の割合を一定にすることが必要となる仕組みであります。

 他方、消費税については、金額ではなく率で定められているため、物価上昇時にも消費に対する税負担そのものは変化しない、そうした違いがあることを御理解いただきたいと思います。

田村(智)委員 その金額が最低生活費ということだと思うんですよね。そして、その最低生活費にも影響を与えているのが物価上昇なんですから、私は、やはりちゃんと、消費税も含めて、税の原則に立った議論、応能負担の原則、生計費非課税の原則、こうした原則に立って、税制の現状を徹底的に見直す議論が今こそ求められているというふうに思います。

 次に進みたいと思います。課税最低限の問題についてです。

 自民党が修正案を国民民主党に提示したけれども、与党の中でも意見が分かれるというふうに報道されていて、一体何が協議されているのか、国民にも国会にも全く見えません。法案審議とは全く違うところでの議論によって、法案の内容が大きく変わるかもしれないということなんですね。

 政府ないし与党からの修正があるのならば、修正についての時間を取った審議を私は行うべきだというふうに思います。これは朝の理事会でも発言をいたしましたが、この場でも要望しておきたいと思います。

 改めてお聞きします。本法案の課税最低限の引上げの目的、中身についてはいろいろあったんですけれども、目的を一言で言うと何でしょうか。

加藤国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、今般の基礎控除等の引上げは、所得税の基礎控除の額等が定額であることにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題に対応するため行うものであります。

田村(智)委員 九五年の引上げ以降の基礎的物価上昇分二〇%程度を引き上げるというのが、政府の今の法案の中身ということになりますよね。

 法案では、所得税の基礎控除が四十八万から五十八万円に引き上げられ、給与所得控除の最低保障額が五十五万円から六十五万円に引き上げられる。そもそもこの基礎控除を設けた意味、最低限度の生活を維持するために必要な部分、いわゆる最低生活費には課税をしないということだというふうに税務大学校では教えているわけですよね。つまり、納税者本人の最低生活費の一部ということだと思います。

 ならば、個人住民税の基礎控除について、物価上昇分を加味した改善も必要になるのではないでしょうか。総務省、お願いします。

伊藤(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 個人住民税における基礎控除につきましては、昭和三十六年以前においては所得税と同一としてきましたが、地方財政への影響等を考慮し、所得税減税による影響を遮断するため、昭和三十七年度から地方税独自に基礎控除額を創設した経緯がございます。

 基礎控除の引上げについて、地方公共団体の長などから個人住民税の減収による地方財源や行政サービスへの影響を懸念する声がある中、仮に基礎控除額を十万円引き上げた場合、地方で五千五百億円程度の減収が生じることとなります。

 このような状況等も踏まえて、個人住民税においては、できるだけ多くの住民が広く負担を分かち合うという地域社会の会費的な性格や地方税財源への影響等を総合的に考慮し、所得税と同様の措置として給与所得控除の見直し等については対応する一方で、個人住民税の基礎控除額を据え置くこととしております。

田村(智)委員 資料一をもう一度見てほしいんですけれども、年収一千万円までのところを見ると、消費税の次に負担が重いのが住民税になるんですよ。だから、消費税に指一本触れない、そして次に負担の重い住民税も手をつけない、これで、低所得の人だけでなく、中間所得層にとっても、果たして手取りが増えたと実感できるんでしょうか。

 物価上昇分を住民税の基礎控除にも反映し、引き上げるべきではないかというふうに思いますが、総務省、どうですか。

伊藤(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、所得税については、経済力のある人により大きな負担を求める累進性がある一方で、個人住民税は、できるだけ多くの住民が広く負担を分かち合うという地域社会の会費的な性格と、地方団体が提供するサービスの受益に応じて負担するという応益性の性格を有しており、一律一〇%の比例税率となってございます。

田村(智)委員 地域社会の会費的な性格というのは、それは所得税の基礎控除との五万円の差というのがこれまでの説明だったというふうに思うんですよ。ここでも、やはり最低生活費というところに税金をかけないという原則が揺らいでいるというふうに言わざるを得ないんです。

 所得税の扶養控除も人的控除です。最低生活費の一部というふうに考えられますが、今回、扶養控除の控除額を引き上げないのはなぜなんですか。

青木政府参考人 まず、基礎控除の部分について、最低生計費というお話をいただいています。そこにつきましては、繰り返しになるんですけれども、課税最低限、基礎控除は課税最低限の一部ですけれども、この課税最低限というのは、生計費の観点や公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性も含めて、総合的に検討して定められているということでございます。

 続きまして、基礎控除以外の配偶者控除、扶養控除などを今回どうして見直しをしていないかということでございますが、個人所得課税につきましては、七年度の与党の税制改正大綱におきまして、我が国の経済社会の構造変化を踏まえて、格差の是正、所得再分配機能の適切な発揮、働き方に対する中立性の確保、子育て世帯の負担への配慮といった観点から人的控除を始めとする各種控除の在り方について検討を行うこととされております。

 配偶者控除、扶養控除の額につきましては、この党税調における人的控除を始めとする各種控除の在り方全体の検討の中で議論していく必要があるものと考えております。

田村(智)委員 九五年のときには、所得税の基礎控除の引上げが行われ、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、これも引き上げたんですよ。個人住民税も、基礎控除だけでなく、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、これを引き上げているんですよ。

 やはり、私は、課税最低限がどうあるべきなのかと。最低限の生活費には課税しないというこの原則の議論が置き去りにされて、この三党の議論の中で、一体、額をどうするのか、こういう国民の見えないところで議論しているから、税制の原則が置き去りにされているというふうに言わざるを得ないんです。憲法が保障する最低生活費はどうあるべきなのか、課税最低限とはどういう原則に立つものなのか、そもそものところから検討して、消費税の負担も含めた税負担の在り方、これを国民の前で議論するべきだということを強く求めたいと思います。

 そして、この一連の議論の中で私がお示しした資料一について、財務大臣からよく分からないということが言われた。ですから、委員会としても、このように勤労者世帯の年収別税負担率を、これは総務省の家計調査から出すことは可能です、是非、本委員会に資料として提出していただきたい。協議をいただきたいと思います。

井林委員長 理事会で協議いたします。

田村(智)委員 次に、大企業の法人税について質問したいと思います。

 資料の二を見てください。法人税率の引下げ、あるいはグループ企業に大きな恩恵をもたらす受取配当益金不算入、連結、通算納税など、法人税は幾重にも減税の仕組みがつくられています。それ以外にも、租税特別措置による税額控除によって、二一年度が九千四百三十七億円、二二年度が一兆三千二百八十九億円、二三年度が一兆七千三百三十八億円と、大幅な減税となっています。この租税特別措置というのは、資料の赤と黄色の部分、ごく一部なんですけれども。これは、二〇二四年度には更に増えると考えられるんです。

 我が党は、一貫して、内部留保を膨張させている大企業への減税というのを厳しく批判してまいりました。最近では、政府税調も与党税制改正大綱も、近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ないとか、廃止を含めてゼロベースで見直す必要があるというふうに指摘をしているわけですね。

 では、こういう指摘は、今回の改正に反映されているんでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 今回の税制改正におきましても、租税特別措置につきましては様々見直しをしておりまして、その際には、これまでの政策効果の検証なども踏まえまして、見直しを行っているところでございます。

田村(智)委員 そうおっしゃるんですが、この租税特別措置で最も金額が多いのが研究開発減税なんですね。

 研究開発減税は、かつては研究開発費の増額に対する特別措置として導入されたんですが、今では、研究費を減らしても減税の恩恵がある総額制になっています。

 毎年国会に提出されている租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書、これを見ますと、毎年減税額トップ企業が断トツの減税額になっています。直近の報告書、第一位の企業が八百八十億円、第二位は三百六十三億円ですから、断トツ一位。これは毎年同じ企業だというふうに思われるわけですね。

 予算委員会でも、また今日もあったでしょうか、研究開発減税の透明性を高めるために企業名の開示が必要ではないかという質問がありました。少なくとも、このトップ企業について、私はもう公表したらいいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 租税特別措置の適用がある企業名の公表につきましては、平成二十二年の租税特別措置透明化法の制定時に、適用実態調査の報告書において個別企業名までは公表する必要はないという整理がなされた経緯がございます。

 その背景といたしましては、一般論として、国が個別企業の税務情報を一方的に公表することにより、財務情報が類推されることで、企業がどういった分野でどの程度の規模の設備投資を行っているかなどの経営戦略上の情報が明らかになり、当該企業の競争力に不利益が及び得ることがあるからだというふうに考えております。

 そのため、こうしたデメリットを上回る公益上の必要性があるかどうかを考えていく必要があるというふうに考えております。

田村(智)委員 過去の分も含めて公表できないというのは、いかがかなというふうに思いますよね。

 研究開発費が多いのは自動車や製薬などの製造業で、研究開発のインセンティブではなくて、こんなの当たり前にやっていることであって、単なる減税の恩恵を受けるための仕組みになっているのではないんでしょうか。

 政府税調の答申でも、研究開発減税を例に挙げて、政策減税は、こうした租税原則のゆがみを生じさせてなお、必要性や有効性があることが明確に認められるもののみに限定し、期限を区切って措置することが原則というふうに指摘をしているわけですよね。

 そうすると、この必要性や有効性の検証、これは国会でこそ行うべきだと思うんですよ。それに資する資料を提出していただきたい。いかがですか。

青木政府参考人 効果検証につきましては、様々、我々としても今取り組んで、税制改正の中で生かすべく勉強しているところでございまして、そういったものにつきまして、様々な形で勉強している中身につきまして、今回の、今日の審議の中でも賃上げ税制についての効果検証の中身を御議論していただいておりましたですけれども、そういった効果検証した結果につきましては、公表するなり、世の中にフィードバックをさせていただいているところでございますので、引き続き、また考えてまいりたいというふうに考えております。

田村(智)委員 皆さんがそうやって公表しなくても、有価証券報告書などを見れば大体分かるんですよ。我が党はそうやって見ていますよ。そして、この研究開発減税の断トツ一位はトヨタ自動車グループだということは、有価証券報告書から見ていけば分かるんですよね。これは周知の事実でもあると思いますよ。

 二月五日に公表された、トヨタ自動車、二〇二五年三月期第三・四半期決算、営業利益三兆六千七百九十四億円、今期末の見通しで、営業利益が四兆七千億円、内部留保は三十六・七兆円積み上がっていますよね。

 政府税調の答申も、企業の一つの目的が利益の最大化にあるとすれば、政策税制がなかったとしても利益をもたらす経済活動はおのずと行われるはずであり、そういったものを政策税制の対象とすることは費用対効果の観点からは正当化されません、こういうふうに指摘をしています。

 研究開発減税トップの八百八十億円。営業利益は五兆円規模の大企業にとって、まさに微々たるものです。

 財務大臣、どう思いますか。これは本当に研究開発のインセンティブになっていると思いますか。

加藤国務大臣 ここでも議論させていただいたように、やはり、研究開発というのは、我が国の経済を更に発展させていくためにおいては大変大事な要素であるというふうに認識をしておりまして、そうした特に我が国の経済成長に資する形での研究開発投資、これがしっかり進んでいけるような施策として、この税も含めて様々な対応を取らせていただいているところでございます。

 租税特別措置については、先ほどから答弁させていただいていますように、利用状況を踏まえつつ、その必要性そして政策効果、これらをよく見極めて、不断の見直しを行っていきたいと考えています。

田村(智)委員 政府税調でも与党の税制改正大綱の中でも、やはり、内部留保が賃上げにも回っていない、それから投資に回っていない。まさに研究開発なんていうのは、私は投資の一つだと思いますよね。新たな付加価値を生み出していくためにどうするのか、当然の企業活動だと思うんですよ。

 だから、内部留保が毎年毎年積み上がって、トヨタでいえば、自社株買いまでやっているんですよ、自社株買い。そういう企業に果たして研究開発減税が必要なんだろうかということなんです。賃上げ減税でも、トヨタは二番目の恩恵を受けています。租税特別措置全体の恩恵が特定企業グループに集中している。

 政策減税の必要性を検証するためには、企業名や減税総額、これを明らかにする資料、過去のものでもいいですよ、何かやはり、こういう国会の場に提出して、国会の場でみんなで検証できるようにすべきだというふうに私は思います。

 いかがですか。何らかの形で資料を出すことを検討しませんか、大臣。

加藤国務大臣 その資料というのは、租税特別措置の適用がある企業名の公表ということだというふうに受け止めさせていただきました。

 それについては、先ほど主税局長からも答弁させていただいたことに尽きるところでありますけれども、まさに、様々な経営戦略上の情報が明らかになり当該企業の競争力に不利益が及び得る、こういったデメリットを上回る公益上の必要性があるかどうか考えていく必要があるということを申し上げさせていただいたところでございます。

 特に公益上の必要性のバランスを考えていく中で、近年、租税特別措置の適用額が大きく増加してきている状況、こうしたことも踏まえる必要があるものと考えております。

田村(智)委員 これは、財務省がもし検討しているんだというんだったら、一体どういうふうに検討しているのか、それについても私は是非何らかの報告、これを求めたいというふうに思います。

 是非、委員長、お願いしたいんですが、企業名や減税総額、これは過去のものでもいいですよ、余り直近のもので影響を与えるというんだったら過去のものでもいい、また、企業に了解を取ってもいい、何らかの形で私は国会に出すべきだと思う。企業名が出せないというんだったら、財務省でこう検討してこういうふうに有効だということが言えるものを出していただきたい。

 何らかの報告書を委員会に出すことを求めたいと思いますが、委員長、取り計らいをお願いいたします。

井林委員長 理事会で協議いたします。

田村(智)委員 以上で終わります。

 是非、税の原則に立った議論、それから、大企業への法人税減税については、その有効性、必要性の議論、今後も是非行っていきたいと思います。

 終わります。

井林委員長 次回は、来る二十八日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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