第4号 令和5年11月14日(火曜日)
令和五年十一月十四日(火曜日)午前九時二分開議
出席委員
委員長 田野瀬太道君
理事 池田 佳隆君 理事 尾身 朝子君
理事 永岡 桂子君 理事 山田 賢司君
理事 森山 浩行君 理事 柚木 道義君
理事 金村 龍那君 理事 浮島 智子君
井出 庸生君 勝目 康君
木村 次郎君 岸 信千世君
小寺 裕雄君 小林 茂樹君
柴山 昌彦君 鈴木 貴子君
高木 啓君 中川 貴元君
中曽根康隆君 中村 裕之君
根本 幸典君 船田 元君
古川 直季君 三谷 英弘君
宮内 秀樹君 柳本 顕君
山口 晋君 山本 左近君
義家 弘介君 荒井 優君
梅谷 守君 菊田真紀子君
白石 洋一君 牧 義夫君
吉川 元君 早坂 敦君
藤巻 健太君 堀場 幸子君
平林 晃君 鰐淵 洋子君
西岡 秀子君 宮本 岳志君
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参考人
(国立大学法人東京農工大学学長) 千葉 一裕君
参考人
(東京大学教育学研究科教授) 隠岐さや香君
参考人
(国立大学法人東京医科歯科大学学長) 田中雄二郎君
参考人
(福島国際研究教育機構理事長) 山崎 光悦君
文部科学委員会専門員 中村 清君
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委員の異動
十一月十四日
辞任 補欠選任
上杉謙太郎君 木村 次郎君
西岡 秀子君 斎藤アレックス君
同日
辞任 補欠選任
木村 次郎君 高木 啓君
斎藤アレックス君 西岡 秀子君
同日
辞任 補欠選任
高木 啓君 柳本 顕君
同日
辞任 補欠選任
柳本 顕君 中川 貴元君
同日
辞任 補欠選任
中川 貴元君 上杉謙太郎君
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本日の会議に付した案件
国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
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○田野瀬委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、国立大学法人東京農工大学学長千葉一裕君、東京大学教育学研究科教授隠岐さや香君、国立大学法人東京医科歯科大学学長田中雄二郎君及び福島国際研究教育機構理事長山崎光悦君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、まず千葉参考人にお願いいたします。
○千葉参考人 皆様、おはようございます。東京農工大学学長の千葉でございます。
本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案の御審議に当たり、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。田野瀬委員長を始め、衆議院文部科学委員会の委員の皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。
私からは、まず、東京農工大学がどのような大学であるかにつきまして最初に御説明した後、意見を述べさせていただきたいと思います。
本学は、来年、二〇二四年に創基百五十周年を迎えます。すなわち一八七四年、明治七年に、大学の二本の柱である農学及び工学分野がそれぞれ別の教育研究機関として、共に現在の新宿御苑の地に生まれました。その後、両機関は組織の改編や設置場所の変遷を経て、今から七十四年前に現在の東京都府中市と小金井市にキャンパスを置く東京農工大学となって一体化し、発展を続けています。
開学当時より、農学系では日本の食料や森林などの自然資源の生産、供給という極めて重要な課題を担い、工学系はその時代における日本経済の屋台骨の一つであった養蚕、生糸、織物生産の基盤となる学問領域をつかさどる役割を果たしました。そして、その後の織機の製造、利活用に端を発する高度な技術は、現在の日本の自動車、繊維、化学産業等としての発展にもつながったことは広く知られているところです。
このような沿革の中、本学は現在、農学、工学分野が一体となり、さらには国際社会との強固な連携の中で、日本の産業力強化と、それを支え次世代を担う人材の育成に向け、常に先を見越した新たな取組を意欲的に進める国立大学の一つとなっています。
私自身は、二〇二〇年に第十四代の東京農工大学の学長に就任しております。現在、学長としての役割に加え、文部科学省科学技術・学術審議会大学研究力強化委員会の主査を拝命し、日本全体の大学の研究力の強化に向け、大学、研究機関等にとどまらず、企業経営者等を含む多くの有識者の皆様の協力を得ながら検討を進めているところです。
さて、国立大学は法人化後、既に二十年を経過しようとしておりますが、この間、国立大学はその自律化に向け、更なる努力を重ねています。すなわち、学問の自由を重んじ、闊達な意見交換や柔軟な発想に基づく研究活動に邁進する中で、優れた学術成果を上げ、同時に、次世代を担い社会を牽引する人材を輩出するという大学本来の役割を、自らの意志と強い信念に基づき実行することに国立大学は全力で取り組んでいるところです。
東京農工大学も、国立大学の一つとしてその使命を真摯に受け止め、教育、研究、社会とのつながりを基盤に鋭意取り組んでいます。
第一に、教育に関する活動においては、学生の未来価値の拡張というビジョンを掲げ、知識社会の牽引者となる人材を輩出し、学生が生涯誇りに思える大学として発展し続けることを目指しています。大学が育てる人材は、人を引きつけ、一歩先の世界を見据え、共に目指す力を発揮できるよう、未来志向の教育研究基盤の強化に重点を置いています。
第二に、研究力強化に向けて、世界を牽引する新分野、新概念を創生し、卓越した知の創造の推進に取り組んでいます。研究活動を通じ、世界とのネットワークを広げつつ、未来を担う人材の個性の尊重と才能の発見など、研究力と教育の質向上は不可分の関係にあることも強く認識しています。
そして第三に、社会とのつながりを強く意識しています。大学は、社会のこれからのあるべき姿を提案、先導し、これを地域から全国、さらには世界に波及させるための中心的な役割を担っており、社会的インパクトにつながる科学的発見や技術革新への挑戦を連続的、発展的に推進しなければなりません。それは、単に学術的あるいは経済的な発展だけではなく、地球の持続性や心身共に豊かな社会の実現、生きがいの創出そのものにつながる、大変重要な目標にもつながるものです。
このような大目標を実現するために、今、大学はガバナンスの強化と大学経営の自律化が極めて重要であると考えます。
大学の自律化と経営基盤強化に関することですが、大学への期待と役割はますます大きくなる中、更に大学が未来を担う公共財としての位置づけを踏まえると、常に大学は、自ら何をなすべきかについて責任を持って考え、実行しなければなりません。私たちは、それこそが大学の自律的な姿勢そのものであると確信しています。当然のことながら、大学運営の観点からも、より強固な基盤の上に、教育研究環境の整備、質的向上を発展的に図る必要があります。
すなわち、東京農工大学では、ガバナンス改革を全力で進めることの重要性を認識し、鋭意取り組んでいるところです。私たちが考えるガバナンスとは、社会に耳を傾け、大学全体で共有した決定事項や合意内容を速やかに組織全体の機動力に転換することです。自分の考えを正しく正確に伝える、教職員との丁寧な対話を重ねることによって、全体の理解や協力を引き出すなどの努力がそこに必要であることは言うまでもありません。
当然のことながら、法人の長である学長はこの先頭に立つわけですが、同時に、ビジョンや目標を示して組織を牽引すること、すなわち、大学が教育研究や社会との関係性からあるべき姿を見据え、構想する力、提案する力が重要です。
また、大学執行部内での緊密な連携によって、法令遵守、研究倫理、研究成果の発信や情報、安全管理など、社会から信頼を得る基盤を強化するとともに、大学運営参画意識を広く組織全体に徹底することも不可欠です。
これらの活動を支える極めて重要な要素の一つが、財政基盤構築に対する自律的な取組です。大学が独自のビジョンを示し、それを教職員ほか社会のステークホルダーと共有しながらしっかりそこに向かうためには、自らの構想に基づく中長期的な財政戦略が明確でなければなりません。
学問の自由を確固たるものとする中、研究力や経営力の基盤となる人材の確保は教育の質保証や大学ミッション達成のために必須ですが、これも財政的な見通しがなければ、挑戦的、発展的な取組が困難となります。そのために、知を新たな価値として具現化する取組は重要ですが、目の前に見える短期的なもの、あるいは目的が限定的なものだけでは、大学の中長期的な経営基盤強化という観点では必ずしも十分ではないと考えます。
すなわち、大学の財政基盤強化に向け、私たちは、大学の研究力を駆動力として、総合知による国際社会的課題の解決に邁進する大学群を形成し、ここで生まれる知を世界の産業、社会実装へと展開することによる外部資金の大幅な拡大を、大学の教育研究基盤の持続発展的な強化につなげたいと考えています。これは、これからの国際社会の求める産業や人材の次なる姿を見極め、日本あるいは海外の大学が連携してその中核となる事業開発や事業運営にも直接関与し、ひいては日本全体の国際的求心力を更に飛躍的に高めることにつながるものと考えます。
この先進的、波及的取組を着実に、そして迅速に進めるためには、時代の変化を先取りした新たな制度の改革は是非ともお願いしたいことだと思います。
例えば、東京農工大学では、今年度から、一部の規制緩和をしていただいたことを受け、認定ファンドを組成することが可能となり、民間のみからの出資によるファンドを独自に発足することができました。また、大学からの直接出資によるコンサルティング企業の創設もできるようになったことを受け、私たちは、これまでにはない全く新しいスキームの国際事業開発体制を提案し、国内外の企業、海外の大学や政府関係者に理解を求め、具体化できる運びとなりました。
長期借入金や債券発行できる費用の範囲拡大も大変ありがたいことです。同時に、社会から多様な形で財政的な支援をお受けする道が開かれることは、大学としても今まで以上に強い覚悟と責任感を持たなければならないことを認識すべきであると考えます。
すなわち、様々な形で財政的にも御支援いただく関係者との強い連帯と目標を共有し、オープンな意思決定のプロセスによる信頼と求心力の獲得は必須です。
そして、この新たな体制をより実効性の高いものにするためには、大学が目先の利益だけを考えることや、事なかれ主義、周囲に流されるような判断基準を避ける勇気も必要です。時代の流れ、社会の動きを感知しながら、大胆な発想と行動を許容する、法人の長としての覚悟も本当に重要なことであると改めて感じている次第です。
今般、このような背景の中、更なる緩和措置を御検討いただけることは、まさに社会のニーズと大学の自律的な発展を促す上で非常に有用なことであると思います。
大学は、国、国民からの期待にしっかり応えることを基軸に、更に活力を増し、国際社会の中でより大きな役割を長期的にしっかり果たすため、大学が経営力強化、財源確保の観点でも最大限努力しなければならないと考えます。
このような大きな使命とともに困難な課題が山積する中、学長としての思いは、最終的には、やると決めたらやり抜く覚悟、ぶれない精神に基づく決断によって結果責任を負わなければならないということです。多くの選択肢の中から、あるいは全く新しい考えを生み出し、その実効性を検証するためには、これまで述べた大学経営の困難、課題点を共有できるネットワークの構築や、客観的な観点から忌憚のない意見交換ができる、より柔軟で機動的な体制整備、人間関係の構築も重要であると思います。
私自身も、決して自分の経験や価値基準だけで判断することのないよう、日頃から教職員や学生、大学執行部、経営協議会、学長選考・監察会議、監事、あるいは外部有識者との意見交換を重視して大学経営に注力しています。そして、大学が社会の変化に対応しながら、よりよい方向に発展できるかどうかは、最終的には、その法人の長である学長の信念と責任ある判断、行動こそが重要であることを認識しています。社会の変化に柔軟に対応した大学経営をより適正、公正に進めるための体制整備は有効なものとなりますが、それにも増して何よりも、その有効な運用には、責任を負う者のビジョンや信念に基づくことが必須です。
よりよい大学づくりに向け、様々なお立場や分野等で御協力いただいている関係の皆様にはここに改めて感謝申し上げるとともに、一大学の学長としては、大学人として、社会の期待に応えられる大学であり続けたいとの思いをますます強めているところです。
以上、まとめますと、国立大学経営力強化に向け、法人の長である学長等がより広い観点から大学の方向性を明確化し、さらには、自律性を高めた経営裁量の拡大により財政基盤強化を図ることを目指した今回の制度改革は、時宜を得たものであると考えます。
以上、本案について、私の考えるところを申し述べさせていただきました。
本日は、大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。(拍手)
○田野瀬委員長 ありがとうございました。
次に、隠岐参考人にお願いいたします。
○隠岐参考人 皆さん、おはようございます。
本日は、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。ここの衆議院文部科学委員会の皆様、そしてここまで私を導いてくださった方々の全てに、心からお礼を申し上げます。
さて、私は東京大学の教員ではありますが、今日はどちらかというと一人の研究者として発言をしています。また、近年、国際学術会議という国際機関の、科学の自由と責任に関する委員会の委員を昨年より務めておりますが、その関係で、国際的な学問の自由についての議論に触れた者として、今日は意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、今回の国立大学法人法の改正でございますが、現場の教員としては、急に降ってきたという性質のものでございます。確かに、法案には、管理運営の改善、教育研究体制の整備及び充実のためと書いてありました。ですが、それはいつも常に大学が心がけていることのように思います。つまり、立法事実がよく分からないというのが個人的な気持ちであります。
そして、法案を拝見したところ、どうしても、今日、やむにやまれず、意見を言わずにいられないというふうな点を見つけました。それは、この法案に大きな問題点があるということです。
問題点というのは、資料の三ページを御覧ください。この法案は、トップダウン経営と大臣の承認という二つの要素を掛け合わせています。この片方だけなら、まだ何とかなるでしょう。しかし、この両方というのは非常に問題があると私は考えています。特に、この形というのは、民主主義的な先進国の大学には見られない、そのような構造であるからです。つまり、憲法第二十三条の学問の自由を損なうのではないかというのが、私の最も大きな懸念でございます。
では、少し詳しく、改正法案の主な内容を見ていきたいと思います。
四ページの資料を御覧ください。まず、こちらの法案ですが、特定国立大学法人、準特定国立大学法人に、中期目標、中期計画及び予算、決算に関する事項等の決議、決定権を持つ運営方針会議を置くとなっています。
最近、CSTI、つまり総合科学技術・イノベーション会議が最終まとめを九月頃に出しまして、その中では、こういった合議体というか、トップのそういう運営方針会議のようなものを置くのは国際卓越研究大学、つまり、大学ファンドをもらう大学だけだというふうに書かれていたように思います。我々もそのような気持ちでおりました。しかし、急に、それに関係がない大学にもこれが降ってくる。そして、申し上げたように、この会議には、トップダウンと大臣の承認という二つが組み合わさっているというところが非常に問題だと感じています。
あと、では、なぜ文科大臣の承認が問題かといいますと、これは言ってしまえば、政府の介入を可能にする仕組みであるからです。もちろん、今は何か事情があって、これが必要だと考える方が多いのかもしれません。しかし、十年後、二十年後はどうでしょうか。これが、ある種の、大学にとっての弱点にならないでしょうか。それを私は申し上げたくて、ここに参りました。
あと、もう一つ問題と感じる点がありまして、それは財務制度でございます。財務制度が柔軟にいろいろなものを運用できるようになる、それはすばらしいことだと思います。その必要があるタイミングに来ているのだと思います。しかし、そこでトップダウンということの問題が生じてまいります。つまり、今までは土地等の貸付けなどは許認可制だったわけですけれども、これからは、個別的な認可の廃止で、計画による届出制になります。つまり、柔軟な財産運用ができるわけでございますけれども、例えばサークル等のグラウンドの利用といったことに対して、これまでのようにうまくやり取りができるんでしょうか。そこが気になっております。
といいますのも、例えば、五ページ目を御覧ください。日本の国立大学というのは、現在、下からの牽制の機能がほとんど働かないようになっております。監事による上からの牽制、経営協議会による横からの牽制、教育研究評議会による下からの牽制、これはありますが、いずれも現場の教職員や学生にとって遠い存在です。このような有様ですと、非常に、トップダウンになってしまうと、研究、教育、医療の現場と大学執行部の亀裂や対立が生まれることが懸念されます。実際にSNS等では、そのような状況に不満を持つ学生のつぶやきが見られます。
ここで我々が、ではどうするべきなのかと考えるために、これまでの大学改革でお手本にされていた米国の状況、アメリカの状況を見てみましょう。
アメリカの大学は確かにトップダウンです。歴史的な経緯があって、そうなっています。しかし、トップダウンというのは、当然ながら、教員等の雇用において問題を生みやすいわけです。アメリカの場合は、理事会が完全に外部の人で構成されていることもあり、そして教員を自由に解任できるようになっていました。しかし、それゆえに大きな問題も生じました。例えば、昔の話ですけれども、進化論を教えた教員を解雇するというようなことが起きたわけです。それに対して、やはり研究の自由のためにはあってはならないことですので、教員たちが立ち上がり、大学横断型の組合を活性化させる、そういったものをつくって一世紀以上闘ってきたという経緯があります。つまり、幾多もの裁判闘争を経て、トップダウンだけれども、ボトムアップの仕組みが利くというふうな形でうまく釣合いが取れています。
実際に、そして大学のガバナンス体制を見てみますと、七ページを御覧ください。ちょっと早口で申し訳ないです。カリフォルニア大学では、例えば、学生や教職員の代表が学長を選ぶところにまで関わるという仕組みが入っています。
特に、八ページを御覧ください、チャンセラー、これは学長と訳されていますが、その選考委員会の中に学部生、院生、同窓生、基金代表、職員代表までが入っています。もちろん教職員も入っています。つまり、ボトムアップで、かつ社会に開かれた議論が可能な仕組みが大学の中にアメリカの場合は備わっているわけです。この部分を欠いたまま、日本でトップダウンの構造をつくってしまうことは危険だと私は考えます。
アメリカについてですけれども、九ページ目を御覧ください。九ページ目にありますように、アメリカの大学では、トップダウンだけではなくて、共同統治、つまりシェアドガバナンスの原則というものが根づいております。これは、詳細は読んでいただければお分かりになると思いますが、各教員なりアドミニストレーターなり理事会なりがそれぞれ役割を持ってガバナンスに参加するということです。そして、これらの構成要素を成す方々の十分なコミュニケーションが大事にされています。このような部分を視野の外に置いたまま学長のリーダーシップや大学経営論だけを考えるのは、言ってしまえば、ブレーキを欠いたまま車を造るようなもののように私は考えます。
同じようなことは、ほかの国の大学を見ても言えることです。例えば、ドイツの例を十ページ目に掲げておきました。ドイツの場合は更に民主的な仕組みが徹底されておりまして、というのも、ヨーロッパの場合は、アメリカと違って、外部の理事会が教員を任命したりするということはしなくて、基本的には教授団の自治というところから大学が始まっていますので、仕組みが全く違います。それもあって、御覧のとおり、大学の大事なことを話し合うのが、大学評議会という学内の合議機関があるんですけれども、学内の議会みたいなものですね、そこに教職員、職員、そして学生の代表が入っています。そして、この学長の任命についても、十ページ目の下のところを御覧ください、これは政府の資料だと思うんですけれども、大学評議会の推薦を受けて学長は任命されるとなっています。
同じようなことが、より中央集権的だと言われるフランスでも見られます。フランスの場合は、管理運営評議会というところが学長を選びますし、大学のいろいろなことは、三評議会というふうな、十一ページにありますように、三つの評議会が決めるのですけれども、そこに必ず教員、職員、学生、学外者を含む人々の代表が入っています。
フランスの教育法も十二ページにつけておきました。この中に見られますように、かなり教職員そして学生など学内者の割合が多くなっております。数は、是非、御関心があれば数えていただければと思います。
十三ページ目は参考レベルですので、特に深くは言及いたしません。フランスの中央集権的なシステムの情報です。
さて、私がここまでちょっとテンション高く申し上げるのは理由がありまして、先ほど申しましたように、私は国際的な学問の自由についての議論を日々聞いております。
この度、ちょっとこれは学問の自由度指標と訳しちゃったんですけれども、学問の自由度指数と言った方がいいと思います。ちょっと、間違いではないですけれども、よりよい言葉として指数というふうに訂正していただければ幸いです。
学問の自由度指数という、いわばランキングのようなものが近年開発されております。ジェンダーギャップ指数の学問の自由版と思っていただければ幸いです。この学問の自由度指数において日本は〇・五八、これは、下から三〇%から四〇%の集団に相当します。つまり、余りよろしくないという、残念ながらそういった現状があります。
少し時間が押しておりますので、ページを飛ばして、十七ページを御覧ください。この学問の自由度指数の構成なんですけれども、五つの基準で点数がつけられています。このうち、上から三番目、大学等の組織自治というところの数字を御覧ください。これが一・七三、かなり日本は低い値となっているのです。この数字、今は余り知られていませんが、このような評価基準ができていますので、そのうち、日本の例えば大学間の協力の信用査定なんかに使われる可能性がありまして、全く無視していることはできないのではないかと私は考えます。
つまり、まとめに入りますが、十八ページを御覧ください。日本の学問の自由度というのは、最悪とまではいかないですが、よくない状態と評価されています。そして、今回の国立大学の法人法改正というのは、言ってしまえば、政府の介入を増やし、もちろん、今ここにいらっしゃる皆さんが何か悪意があってそうなっているとは思わないんですが、十年後、二十年後を考えてください。未来を考えていただきたいんです。未来の世代において、例えば問題のあるようなことが起きないか、そして、日本の学問の自由度を更に下げていくきっかけとならないかというのが、私がここで本当に声を張り上げている一番の理由でございます。
つまり、アメリカの大学のトップダウンなだけをまねるだけではいけないのです。アメリカのトップダウンというのは、ボトムアップの激しい動きがあってこそ成り立っているものです。
つまり、我々は今、いわばアメリカの百年前のような状況をつくろうとしているわけですから、これから訴訟が続くかもしれません。そしてまた同じことを繰り返して、百年後にはよくなっているかもしれないですけれども、でも、今はそういうことをするときでしょうかというのが私の申し上げたいことです。つまり、ほかの民主主義的な先進国の大学にあるようなボトムアップの仕組みづくりを無視したまま、この法案を通していいのか。
それから、ボトムアップの仕組みというのは大事です。それは、創造的な研究、イノベーションのために必要だということが、大学人ならば直感的に分かっていると思います。もちろん大学の関係者じゃない方もいらっしゃるので、ここで私はそれが必要だと。もし質問があれば、是非聞いていただきたいと思っております。
つまり、現行の国立大学法人法の改正法案は、重要な疑念を生む部分があるんです。疑いを生みます。疑いを生んで、私の周りの人々は非常に不安がっていますし、怒っている人もいます。それなのに、急速に採択されようとしているんです。
大学というのは公共信託の場です。公共信託というのは、つまり、社会から託されている、信じられ、託されているということです。大学は、自由な知を追求する使命を社会から託されています。そして、現在のみならず、未来の世代にも責任を負っています。私たちの子供が通う大学、そういったものを考えなければいけないのです。
そして、これは国立であろうが私立であろうが変わりません。これはアメリカの議論でもそうだったということです。アメリカには私立の大学がたくさんありますが、ヨーロッパには余りないんですけれども。
つまり、何が言いたいかというと、特定の時代の政府や私企業の意図を反映した研究や教育をしているというふうに疑われるようなことがあってはならないのです。そういった条件、そういうふうな疑いを生むような条件は、未来の世代のためにも徹底して排除しなければならないと私は考えます。さもなくば、研究と教育の本当のクオリティーを保つことは、現場の教員としては難しいと思います。
それなので、本当にこのような貴重な機会をいただいたことに改めてお礼を言いますとともに、本当に心からのお願いです。自由と民主を掲げる全ての党の皆様、もちろんそれ以外の党の皆様にも、憲法第二十三条の学問の自由の守護者になっていただきたいと思います。
学問の自由というのは、主観的な権利としての側面、つまり、個人の研究や自由だけではなくて、客観的な権利としての側面、組織の自律的な意思決定を国が保障する権利のことも意味しています。そうでないと、個人の権利や自由は守れないからです。安心して学生や教員が自分のやりたいことをやる、そういった環境を実現するお手伝いを是非してください。もちろん我々も必死で頑張りたいと思います。是非、この叫びを、思いを聞き届けていただければありがたいと思っています。
お時間をいただき、そして聞いていただき、本当にどうも皆さんありがとうございました。(拍手)
○田野瀬委員長 ありがとうございました。
次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人 おはようございます。東京医科歯科大学の田中でございます。
この度は、本学と東京工業大学との統合について、その点も含みます国立大学法人法の一部を改正する法律案について御審議いただいておりますことに心から御礼を申し上げます。
私、その該当する大学の当事者でございますので、私の陳述は、法人統合及び大学統合についてということでお話をさせていただきたいと思います。
お手元にありますような資料の一ページ目にあるのが東京工業大学と医科歯科大学のキャンパスの写真でございますけれども、次のページを御覧いただけますでしょうか。統合に至る経緯を簡単にお話しさせていただきます。
令和三年、今から二年前になりますけれども、秋に本学から東京工業大学の方に打診し、令和四年の春に統合形態について東京工業大学から御提案があり、ここに記されているとおりの経過で、八月九日から法人としての協議を開始して、十月には基本合意書を締結し、そして本年の一月に新大学の名称候補を公表させていただきました。
次のページを御覧ください。その統合形式ですけれども、先行事例としては一法人複数大学というのもありましたけれども、私どもが選択したのは一法人一大学、つまり、東京医科歯科大学と東京工業大学が一つの新しい大学になるということでございます。
次のページにその理由が書かれています。まず、一法人一大学として考えた最大の理由は、シナジー効果ということであります。両大学には重なる学部がほとんどないことから、統合に対する抵抗といいますか、そういったものもより少なく、一緒になることのシナジー効果の方が大きいと考えたからです。また、一から組織を見直すことができて、自由でフラットな文化、これはこれから私の陳述で再三出てくる言葉ですけれども、の組織を創造して、チャレンジしやすい環境をつくれると考えました。
次のページ、資料五ページを御覧ください。統合に至った背景について御説明させていただきます。
これまで両大学は、指定国立大学法人として、広く理工学及び医歯学に関する知見を創出して、そして自在に応用できる人材を育成し、産業の発展や医療の進歩に貢献してきたと自負しております。
しかし、今、私たちは、これまで想像し得なかった地球環境の悪化、それからコロナに代表される新興・再興感染症の世界的流行、少子高齢化の急速な進行など、様々な課題に直面しています。こういう地球規模の課題や、さらに今後起こり得る未知の問題の解決に向けて、両大学は、その知を結集して大きな役割を果たすことを社会から期待されていると認識しております。
次の六ページを御覧ください。社会からの期待というのは様々な形で測ることができると思いますけれども、一つの側面として、大学発ベンチャーの業種別割合を見てみました。
ここにありますように、これは、見にくいんですけれども、過去五年間の大学発ベンチャーの数が年々伸びていることを表していますが、分野別に見ると、下の棒グラフにありますけれども、バイオ、ヘルスケアが三〇%、東京工業大学との統合によって得られる領域はおよそ八〇%を占めるというふうになりまして、これだけを見ても、やはり社会のニーズというのはこういう組合せにあるのではないかというふうに考えた次第です。
その次のページ、七ページを御覧ください。統合の目的です。
これまでの実績、伝統、東京工業大学が百五十年、医科歯科大が百年になりますけれども、その伝統と先進性を生かしながら、統合によって、かつてどの大学もなし得なかった新しい大学の在り方を創出したいと考えました。そして、両法人の統合と新しい大学の設立を実現して、国際的に卓越した教育研究拠点として社会とともに活力ある未来を切り開くという決意を固めました。
どのような大学を目指すかについては、資料八ページに記載させていただきました。
まず第一は、それぞれの大学が行ってきた、とがった研究を更に推進するということであります。
第二は、部局等を超えて、理工学、医歯学、さらには、リベラルアーツ、人文社会科学のみならず、芸術を含む様々な学問領域を自由な発想で結合した総合知によって、コンバージェンスサイエンス、異分野融合科学を展開することであります。
三点目として、この総合知に基づいて未来を切り開く高度専門人材を輩出して、社会に貢献するということであります。
四番目は、新大学の在り方、組織文化として、全ての構成員に対して多様性、包摂性、公平性を持つ、そういう文化を創出して、その文化の下で、世界に開かれた知の創造と人材育成の場をつくっていきたいと考えました。
資料九ページを御覧ください。ここでは、新大学のキーワードであるコンバージェンスサイエンスについて御説明させていただきます。
スライドの下にありますように、現在、東京工業大学も東京医科歯科大学も、グリーンエネルギーから再生医療まで幅広く先端的な研究を推進しております。この二つの大学が統合することによって、統合時には、地球環境科学、生成AI医歯学、量子医歯科学のような、地球環境やウェルビーイング、トータルヘルスケアといった地球課題に直結する科学を創造することができると考えています。
さらに、その未来は私たちの予期しないような課題が生まれてくると思いますけれども、それに対しても、柔軟な組合せで新しい学術領域をつくって、社会とともにそれを解決していきたい、そういう存在になりたいと考えております。
資料十ページです。こういうコンバージェンスサイエンス、分野を超えた学問の融合というのはいろいろな形で生まれてくると思います。既に多くの大学で医学部と理工学部を持っておりますけれども、私たちはそれを更に進めたいと考えました。
スライド下に総合研究院というのがありますが、これはいわばボトムアップの研究院でありまして、研究者同士が自然に交流して自然発生的に新しい異分野融合の研究が生まれること、それを意図したものであり、それを大学として応援することを考える、その研究院であります。
しかし、他方、スライド上にあるような未来社会創成研究院では、そのときの大学が重点領域と考えた分野に研究者が集まるようにインセンティブを用意して、医工連携を始めとする異分野融合の研究を時代に即して促進してまいりたいと考えています。
さらに、両研究院から、社会実装に近づいたものは、今度は新産業創成研究院の場で産業界とともに実用化を図っていきたいというふうに考えています。
このような形でコンバージェンスサイエンスを実現していきたいと思っております。
資料十一ページは、そのコンバージェンスサイエンスの代表的なものとしての医工連携を生み出すことについての仕組みです。
私たちは、もちろん大学病院を持っております。大学病院は、現状は、率直に申し上げると、診療報酬に依存する今日の医療、診療と研修ですけれども、だけで、ほとんど精いっぱいな現状があります。
新大学では、明日の医療を支える研究と人材育成を別会計にすることを考えています。別会計の財源は、産学連携を始めとした様々な外部資金に求める構想であります。
次のページ、資料十二ページを御覧ください。新大学が目指す組織文化についてお話しさせていただきます。
新大学では、従来の日本の大学が陥りがちであった閉鎖的で階層的な組織文化を完全に払拭したい、本来アカデミアが持つ自由でフラットな人間関係を構築することは極めて重要であると考えています。その上で、精神の余裕を取り戻した多様性に富む構成員による、広く社会に開かれた創造空間を構築したいと考えています。
その実現に向けて、まず第一は、全ての構成員がその専門性と役割を尊重していくということであります。そして、その結果として自律と協調が実現できると考えております。
二点目は、試行錯誤を恐れずイノベーションに挑戦することを奨励していくことということであります。
三点目は、構成員のウェルビーイングです。これは、大学構成員自身の余裕と自発性が重要であり、余裕があるところに自発性が生まれ、結果として大学の知の創出の源となるというふうに考えています。
資料十三ページを御覧ください。構成員にチャレンジを求める以上、大学も常に変わり続ける組織でありたいと考えています。時代に先駆けた研究、教育、経営ポートフォリオの不断の見直しを行い、そのポートフォリオに基づいた研究教育組織の改革、財務戦略の策定、病院事業の変革が重要で、それを実現するために、学内の教育研究現場からの学長へのフィードバック、社会情勢を踏まえた経営の観点からの理事長へのフィードバックが重要だと考えております。
次のページを御覧ください。これは非常にビジーなスライドですけれども、要は、両大学が統合することで、職員数や経常収益は二倍の規模となり、研究実績なども国立大学のトップファイブに入るものになります。しかし、我々が目指しているのは、一プラス一が二になることではなく、三にも四にもなることであります。
資料十五ページを御覧ください。私も東工大に行くことが多いわけですけれども、東工大に参りますと、二二〇〇年までの未来年表があり、未来から今を考えて研究するという姿勢がよく分かります。他方、医科歯科大学は、目の前の患者さんから問題意識を抽出して研究がスタートします。いわば、今から未来を考えるという考え方です。
このように、東工大のバックキャストと医科歯科大学のフォアキャストの視点が融合することで、単に理工学と医歯学が交わる以上の効果を期待しています。そして、社会とともに課題を解決していきたいと考えております。
最後のページで、東京科学大学の名称候補についてお話しさせていただいて、私の陳述を終わりたいと思います。
元々、高度成長期を考えてみますと、便利な生活を希求する科学というものがあって、科学は幸せをもたらすものという認識でした。これからは、地球と調和し、人々がウェルビーイングな生活を送るための新たな価値を生み出す科学、こういったものが求められると考えています。これを、先端的な理工学と医歯学に加え、人文社会科学を含む多彩な分野が融合するコンバージェンスサイエンスを展開することで達成したいと考えております。また、科学の発展を担い、科学に興味を持つ多様な人々を引きつける大学でありたいとも考えております。
このような大学の目指す方向を端的に表す名称として科学を選び、本拠地を置く東京を名称に冠しました。そして、世界に伍する大学を目指す以上、英語名称であるインスティテュート・オブ・サイエンス・トーキョーがむしろ一般的に流布するような、そういう大学になりたいと考えております。
以上が私の陳述でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○田野瀬委員長 ありがとうございました。
次に、山崎参考人にお願いいたします。
○山崎参考人 皆さん、おはようございます。福島国際研究教育機構、F―REI理事長の山崎でございます。
本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案の御審議に当たり意見陳述の機会を頂戴し、誠にありがとうございます。田野瀬委員長を始め、委員会の皆様方に心より感謝申し上げます。
さて、まず、私のバックグラウンドを少し御紹介をさせていただき、意見陳述の糧としたいというふうに思います。
平成二十六年四月から昨年三月まで私が八年間学長を務めた、その大学改革の概要について最初に少し述べさせていただきます。
金沢大学は、各地域に設置されている国立大学と同様に、戦前のナンバースクール、第四高等学校を中核として、当時の医学専門学校、高等師範学校、高等工業学校などが母体となって昭和四十二年に設置をされました。現在では、収容定員約一万余名の中規模総合大学でございます。
国立大学法人化後、平成二十年には、社会のニーズを即応的に取り入れ、より戦略的に教育研究活動を展開するため、それまでの八学部二十五学科・課程から、文系、理系、そして生命系の三学域十六学類から成る学域・学類制の教育システムへと、また同時に、三研究域十四学系から成る教員組織へと、教教分離と言われる制度改革を行いました。
平成二十六年の学長就任後、グローバル人材育成のための教育改革と研究力強化、そしてそれらを支える徹底した国際化を目標に掲げて、その具体の改革プランの概要をYAMAZAKIプランとして公表をし、教職員とそのプランの共有に心を砕きながら日々の大学運営に当たっておりました。
教育改革では、共通教育改革、グローバル人材育成、そして教育組織改革を推進してまいりました。
特に教育組織改革では、文理融合型教育による総合知を獲得させるため、令和二年四月から四つ目の学域、融合学域をスタートをさせて、知識集約型社会を担う人材育成を開始いたしました。具体的には、アントレプレナーシップ教育をその中核に据え、社会の変革を先導するイノベーター養成を目指す先導学類、数理、データサイエンス、AIを観光ビジネスに生かす観光デザイン学類を設置をし、数理、データサイエンスを基盤としながらも社会科学も学ぶスマート創成科学類を設置をし、百名の入学定員増も実現しながら、文理融合教育を加速させております。
大学院教育にも力を注ぎました。
こうした教育システム改革をスピード感を持って実施するには、学生定員の移行や担当教員の配置換え、居住スペースの確保など、現場の教職員との納得感のある合意形成、ガバナンスを利かせた大学運営が必須でございます。
一方、研究力強化では、先鋭分野の強化と異分野融合研究を推進をし、ナノ生命科学分野において、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIに地方大学では初めての採択を受け、ここ六年半で八十名を超える研究者集団となるナノ生命科学研究所を拠点化いたしました。また、その後も、四研究所、三研究センターを新設して、研究グループ形成を戦略的に推進をし、金沢大学の強い研究分野を更に強くして研究所や研究センター化を進めることで、中規模大学ながら、特定の研究分野を次々と重点化、そして着実に支援していく、世界レベルの研究拠点化を目指すことができております。
こうした改革と同時並行で、研究に専念できるリサーチプロフェッサー制度の導入や、若手教員の積極的な登用、そして教員評価の処遇への反映など、教職員の待遇改善にも力を注ぎました。
これらの改革を遅滞なくスピード感を持って実施できた背景には、金沢大学が推進してきた教育組織、研究組織の大くくり化による柔軟な組織改編と、学長のリーダーシップの下での戦略的に大学を運営できるガバナンス体制構築が功を奏したと理解をしております。
さて、国立大学法人の成長と歴史、変遷を概観してみますと、平成十六年に国立大学法人に移行したことにより、最初は渡し切りの運営費交付金の独立した運営が始まって、その中期目標、中期計画期間の第一期では、目的積立金が、ちゃんと本当に次の年に送り込んで、各法人は、またもらえるのかどうか、使えるのかどうかということに一喜一憂したということを記憶しております。
また、第二期中目、中計の期間に入って、運営費交付金の毎年一律の予算カットとともに、競争的資金による事実上の補填が常態化をし、エネルギー費の高騰とも重なって、多くの国立大学では教育研究機能の低下を来し、それがボディーブローのように利いてきて日本の研究開発力低下を招いたと理解しております。
こうして、全大学の改革を促進するため、国立大学法人法の改正によって学長権限の強化を図ってきた結果、残念ながら、複数の大学で、学長の独断専行に起因し、大学運営が機能不全の状態に陥ったことは皆さんも御承知のとおりでございます。それがまた発端となって、前回の、監事やそれから学長選考・監察会議に学長への一定の牽制機能を持たせる法人法の改正が行われてまいりました。
同時並行的に、多様なステークホルダーから信頼されるガバナンスを構築するための、国立大学法人のガバナンスコード策定も行われました。私自身、当時、国立大学協会副会長のお立場にあって、このガバナンスコード策定に自ら関わってまいりました。そこでの大きな論点の一つは、学長選挙を実質的に廃止する議論でございました。
直近の動きは、皆さんも御承知のとおり、十兆円ファンドの運用益を原資に国際卓越研究大学数大学を選定、支援して、二十五年間の間に複数大学を世界ランキングトップテンあるいはトップファイブに食い込ませようという施策でございます。私自身も、その選定や、選定後の成長、改革ぶりを見守る十名のアドバイザリーボードメンバーの一人を務めております。
もう一つは、この施策と両輪を成すと言われる、地域中核、特色ある研究大学支援総合パッケージによって、おおよそ二十五大学を選定、支援して、十年間伴走支援するという取組でございます。こちらの方は、公表されておりますとおり、事業推進委員会委員長も務めさせていただいております。
これらの事業に関わる機会を通して、教育そして基礎研究の重要性を改めて認識させていただくとともに、加えて、それらの成果を生かした産業界との連携や社会貢献が大学活動の充実に非常に重要な意味を持つということを改めて実感をしているところでございます。例えば、大学がステークホルダーとともに産学共同研究やスタートアップ創出に取り組むことによって大学を発展させ、そしてまた社会課題を解決していくことは、大学の活動やリソースの充実に直結するといった取組を継続的に発展させ、学外のパートナーとの信頼関係を深め、継続的な関係を築いていくことの重要性をまた改めて実感して認識しているところでございます。
こうした経験を踏まえまして、今回の法改正、特に私は運営方針会議設置に関する意見を述べさせていただきます。
国際卓越研究大学の制度設計に関する検討の中で、合議体が必要という議論が発端となって今回設置が法制化される運営方針会議というのは、多様な知見、経験を有する者が大学運営に参画して意思決定する仕組みでもあり、学長のガバナンスあるいはリーダーシップを支援する方策として有効に機能するものと期待をいたします。学長一人だと実現しにくい大胆な改革を後押しするという意味で、学長のリーダーシップを支え、国立大学法人の発展を加速するというために必要であると考えます。
大学統治の現場では、大胆な組織改編などを伴う大学改革は、たとえ大学の発展を目指す内容であっても、既得権を守ろうとする部局の責任者やその構成員の反対を伴うのが通常でございます。逆に、部局や構成員がこぞって賛同する施策は、もはや改革施策ではなく、周回遅れの施策である可能性もございます。
大胆な改革案であればあるほど、学長や役員は、現場の構成員やいろいろなステークホルダーとの意見交換などを通して、構成員の改革への理解促進に努めねばなりません。役員会決定を経て強権的に改革を先導することは制度上不可能ではありませんが、現場がついてこなければ、その改革は効果を発揮せずに徒労に終わってしまうことでありましょう。
大切な改革であればあるほど、わくわくする目標を掲げ、構成員の理解を得て、大きなエネルギーを生かし、その改革を推進したいものであります。運営方針会議で大方針を示し、その意義、効果を構成員と共有することで初めて、学長の真の統率力、リーダーシップが発揮できて、ガバナンスの利いた大学運営が可能になるというふうに考えます。
最後に一つだけ、今回の改正で懸念事項を申し上げます。
運営方針会議の設置が義務づけられる特定国立大学法人は、国際卓越研究大学だけに限定するのではなく、ある一定規模以上の総合大学を対象とするとございますが、その線引きが国立大学群を将来にわたって二分する可能性があるなということを心配しております。
一方で、必要に応じて運営方針会議の設置を文部科学大臣に申請することも併せて可能とする、それを準特定国立大学法人と呼称するとございます。この名称は、かつての一期校、二期校の区分を想起させ、国立大学群を更に区分する可能性も否定できません。
線引きをどこにするかを政策上定めるとしながら、それでいて、自ら申請も可能とするならば、国立大学群を将来にわたって分断するリスクを抑制するために、運営方針会議を設置する大学群全てを一つの名称、特定国立大学法人と呼称するということを御提案申し上げて、私からの意見陳述とさせていただきます。
御清聴ありがとうございます。(拍手)
○田野瀬委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○田野瀬委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。
○井出委員 おはようございます。
四人の先生方、今日は、お忙しいところ、お時間をつくっていただきまして、誠にありがとうございます。井出庸生と申します。
大学のガバナンス改革に私が期待することは、一つは、お話がありました経営基盤の強化。このことは、先ほど先生方のお話の中で、運営費交付金が減らされた時期があって、平成二十七年以降は横ばい。何とか文部科学省の方もそこに意識をしているところですが、いろいろな大学、また外国を見てきた際に、自己資金を獲得するというところも日本の大学全体がもう少し目を向けてもいいのではないか、そのためのしっかりとした経営体をつくっていただきたいという思い。
それともう一つは、大学が開かれた場であってほしいということを強く思っております。このことは、日本の大学が外国人の教員の方が少ない、また、日本人の学生が海外に行くことが、今、何とか外に出てくれということを言っておりますが、ある研究者の方に言われたのは、一旦外に出てしまうと国内での研究者同士との人脈が途絶えてしまって、日本の研究、大学院ですとか研究室の採用は極めてその人脈によるところが大きい、外国の人が来るはずがないだろうというようなことを率直に言われまして、そこを、もっと開かれた採用形態、誰にでも開かれた研究室、大学院であってほしいということは言われておりまして、開かれた組織をつくっていただきたい。
それともう一つは、少し関連するかもしれませんが、ハラスメントの問題。昨今、セクシュアルハラスメントですとか性暴力に対して厳しく対策をしていこうと、教育関係に対してそうした法律も学校現場ではできておりますし、文部科学省も各大学にはそうした調査をしたり、セクシュアルハラスメントの分については一定の前進が見られていると思っております。しかし一方で、これは二十年近く前の古い調査になりますが、大学におけるハラスメントの半分はいわゆるパワハラ、研究費が認められないとか、研究の機材が使わせてもらえないとか、また、学生が教授の手足となって使われるというようなところ。これは中国から日本で研究している女性の研究者に言われたんですが、博士課程の学生は、外国であれば一人前の研究者として扱われる、教授の部下ではないんだ、そういう体質を直すべきではないかということを言われまして、そうした三点の問題意識を持っております。
今回の法案で、運営方針会議をつくる、その中で一つ、外部の人材を入れていくと。私は、そのことは、今私が申し上げた三つの問題意識ですとか、あと、皆さんのそれぞれの意見陳述の中でも、外部の理事を入れて大学の重要なことに関わっていく。外部人材を入れるということは私は極めて重要なことではないかと思っておりますが、外部人材を入れることに対する期待ですとか懸念ですとか、そこを千葉先生と隠岐先生にそれぞれ伺いたいと思います。
○千葉参考人 ありがとうございます。
それでは、まず千葉からお答えいたします。
外部人材を入れることの意味ですけれども、御指摘のとおり、大学がより広い視点を持って、未来志向で大学の中をよりよい方向に変えていくというときに、大変重要な御意見をいただけるということを期待しております。
ただ、外部人材が入ればいいというだけではなくて、大事なことは、その方たちを受け入れられる大学としての本質的な構造というか、考えをしっかりと持っている必要があると思います。ただ外部の方が入って、そこで意見をいただいたというだけでは、実質的になかなか大学が動かない部分が多いのではないか。
どういうことを申し上げたいかと申しますと、そういう方たちにしっかりと耳を傾け、変えるべきところは変えなければいけない。では、それを受け止めて、大学が変わっていこう、そういう考えを大学の中にしっかりと文化として根づかせなければいけないということです。
これは、産学連携を始めて既に二十年以上たっておりますので、ある程度進んでいる部分もあるのですが、私の印象では、もっとその部分を、大学の中の人間も意識を変えなければいけない。そういうところに誘導していく責任ある立場にある者が法人の長である学長等であるというふうに思っておりますので、是非ともそういう機会を本当に有効な形にするという、その姿をお示しできるかどうかがこれからの大学のありように懸かっていることではないかなというふうに思います。
以上でございます。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
外部人材を経営に入れるということについて、私も基本的には前向きに捉えております。
ただ、現状の国立大学が、基本的にボトムアップで意見を上げる仕組みというのが非常に足りないので、つまり、私は今、平の教員ですけれども、例えば投票をするなり、あるいは経営に関わるといった機会はないわけですね。だから、全く経験はないんですけれども、学生に至っては更になくて、そうすると、外部の方が来て、十数名の理事と一緒に話してとなると、非常にいびつな構造にはなると思います。
つまり、外部の方は来ていただくべきなのだけれども、それはやはり、大学の主な構成者である学生と教員の十分な参加、つまり、我々が参加しているという感覚が実感できる状態になってこそ、外部の方の意見も生きると思います。そうでないと、例えば外部の方が新しいアイデアを幾ら持っていらっしゃったとしても、やはり、例えば東京の人が九州に行って、改革するぞというふうに行って余りうまくいかないことがあるじゃないですか。私は広島に行ったこともあるんですけれども、東京から来やがってじゃないですけれども、変な言い方ですけれども、やはり事情を知らないと上から目線でいろいろ言っちゃうんですよね。そういうことが起きやすくなるんじゃないかというのは懸念します。
なので、下からの強い、例えば東京大学はそれなりに学生は活発なんですけれども、それだけにいろいろな気持ちが渦巻いているわけですね。そういうものを受け止めた上で外からの意見が入るというふうな、新陳代謝が起きるような状況じゃないと、やはり外から来た方がいらしてもうまくいかないんじゃないかなというふうに思っています。
先ほど議員の先生がおっしゃった人脈云々についてですけれども、実は分野によってかなり違いまして、国内人脈がなくても別に、私は歴史分野ですけれども、それなりに就職はしているというか、むしろ、外国で博士号を取った人が一番強いというふうな状況になっていまして、逆にそれがちょっと難しい問題を生んでいるという部分もあります。なぜかというと、外国にまで行って、特に文系の分野で博士号を書けるほどの英語力なり、私はフランス語ですけれども、そういうのを長い間修業できる人というのはお金持ちに限られてくるんですね、やはり親がそれなりに余裕があって。なので、国内で地道に頑張って、それで、それなりの語学力もあるけれども、留学する資金はないというような人が研究者になれないというふうな未来につながりそうだということを懸念しています。
ですので、難しいんですけれども、大学によってもかなりいろいろな分野ごとに慣行があって、私も理科系の研究室のことだとかは、実は、科学の歴史なので、自然科学の歴史の研究者で文系と理系の真ん中の領域なんですけれども、かなりやはり閉鎖的な研究室があるとも聞いています。
ハラスメントについても、どこかの大学で女子学生が更衣室をなかなかつくってもらえなかったと。何か、理系の分野で着替えをするらしいんですね。そのときに、男子学生がほとんどなので更衣室が欲しいという声すら上げられなかったという話を聞いて、あっ、そんなことがあるんだと思ったりしたんですけれども。
ちょっと済みません、話がそれましたが、かなり状況が多様だということはこの場をかりて御説明させていただきます。
御質問に対する答えは、先ほどのとおりでございます。
ありがとうございます。
○井出委員 私が伺ったのは一研究者の方の御意見でございますので、先生の御指摘、分野によって多様な状況があろうかというのはそのとおりかと思います。
外部人材の登用についてはお二人とも前向きで、懸念点については表現の仕方は違いましたが、事情を知らないとですとか、本質的な部分を理解をいただかないとというようなところもあったのかなというふうに思います。
次に、山崎参考人に伺いたいんですが、最後にありました、一期校、二期校の国立大学の序列をそのまま助長するのではないか、また、中規模大学として近年改革をして進められてきた中で、先生の、これは今年の五月の大学研究強化委員会の中でお話をされていたんですけれども、文科省が進めている改革についても、もっといろいろな自由度、自由度があっていいということを強くおっしゃっていたと伺っておりますが、その点について少し先生の思いを聞かせてください。
○山崎参考人 御質問ありがとうございます。
あの当時は何を思い浮かべてそう申し上げたか、正確に記憶はないんですけれども、いろいろなことがやれるというふうに思っております。お金がないのは確かなので、稼げと言われて、みんな稼ぐ方向に行っているんですけれども、そうはいいながら、やはり背中を押してくださるような何か仕組みがあるともう少し頑張れるかなというふうに私は思います。
先ほどの話にもちょっと触れさせていただいてもいいですかね。例えばWPIというのは、最低、外国人研究者を三分の一以上雇用しなさいというような仕組みを入れて、多くの大学では外国人研究者がどんどん増えてきている状況にあるというふうに理解をしております。そういった中から、経営層にもその中の代表が加わるということは自然な形だとは思いますが、どこかからトップダウンでぴゅっと連れてくるというのは、先ほどの懸念の事項の中にもあったとおりかなというふうに思ったりもします。
国際化とかというのはやはりかなり今は進んでいるというふうに御理解をいただいた方がいいかなというふうに思いますので、是非現場に足を運んでいただいて御覧いただくと、私はいろいろ納得いただけるんじゃないかなというふうに思います。そんなところですけれども。
ありがとうございます。
○井出委員 ありがとうございます。
もう大分時間も終盤になってまいりましたが、私は、今日の先生方のお話を伺っていて、一番少し議論をしなきゃいけないなと思ったのは、隠岐先生のおっしゃる、ボトムアップの仕組みがないというところは非常に重要な問題提起だと思いました。
それから、学問の自由については、複数の先生方から御指摘がございました。私が今見ていてそこを少し懸念しているのは、先生方のお話にもありましたが、運営費交付金と競争的資金のバランス、そこが実質的に非常に大きいのかなと。
私は、文部科学省、まあ政治、政治というものはすごく成果を求めがちではないかなと思いますが、文部科学省が学問に成果を求めたい気持ちも分かるんですけれども、基礎研究を守っていく、学問の基盤を守るとりでが文部科学省である、そのことは党派問わず多くの先生方にも御賛同をいただけるのではないかと思います。
最後に、今度新しい東京科学大学に向けて今準備をしている田中先生に、今私が申し上げたところも、一生懸命私もお手伝いはさせていただきたいと思いますが、その辺りも含めて、大学にかける思いを一言いただきたいと思います。
○田中参考人 ありがとうございます。
改革にかける思いというのは非常に熱いものがあってのことなんですけれども、私がやはり思うのは、やはり一人では改革できない、ましてや統合ですから、東京工業大学の益学長と一緒に改革をするわけなんですけれども、その二人でもできなくて、やはり多くの両大学の構成員の賛同を得て進むことが一番大事だと思っていて、情報共有に心がけております。
情報共有に心がけている手段としては、学内の説明会を頻繁に開催したりしておりますけれども、その中で、自由でフラットと申し上げましたけれども、そういう雰囲気が徐々に醸成されていくのではないか、その上で総合知が開いていくのではないかというふうに考えて、結果としては、社会とともに社会課題を解決していく大学になっていけるのではないかと期待しておりますし、頑張りたいと思っております。
○井出委員 終わります。
どうも先生方、ありがとうございました。
○田野瀬委員長 次に、菊田真紀子君。
○菊田委員 おはようございます。立憲民主党の菊田真紀子でございます。
今日は、四人の参考人の方々から、それぞれの立場、そしてまた御経験を基にした貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。
まず、運営方針会議の設置について伺いたいと思います。
私たち立憲民主党の部会で、文部科学省から、この運営方針会議の設置を検討することになった契機、これを尋ねたところ、資料が提出されました。その資料によりますと、令和四年二月一日に総合科学技術・イノベーション会議がまとめた「世界と伍する研究大学の在り方について 最終まとめ」と、令和五年六月十六日に閣議決定された「成長戦略等のフォローアップ」が契機とされておりましたが、どちらも国際卓越研究大学のみを対象としていたわけでございます。
しかし、今回の改正案では、理事が七人以上で一定の要件を満たす国立大学法人に対して運営方針会議の設置を義務づけることとされておりまして、国際卓越研究大学以外の大学も対象とされております。これまでの議論から逸脱している、かなり唐突な変更ではないかなというふうに私は思うんですけれども、四人の参考人全員にお尋ねしたいと思います。
法案がこのような内容となって国会提出となるということを、いつお知りになったでしょうか。
○千葉参考人 私自身が知り得たのはごく最近でございます。お答え、それだけでよろしいでしょうか。(菊田委員「結構です」と呼ぶ)はい。
○隠岐参考人 しっかりと覚えていないんですが、ツイッター、今はXです、十月の十三日にツイートをしていまして、その十月十三よりは少し前、十月の初めぐらいに知って驚いていたという感じかと思います。
○田中参考人 統合に関する法案が審議される可能性があるということは十月ぐらいには存じ上げていましたけれども、法案の全貌について承知いたしましたのは報道を通じてでございます。
○山崎参考人 現場から離れていますので、少し注目していなかったせいもあるかもしれませんが、私が知ったのは先週でございます。
○菊田委員 四人の参考人の皆様が、やはりつい最近になってこの内容についてお知りになったということでございまして、全国の大学の関係者、ほとんどの方々がそういう状況なんだろうというふうに思います。
日がたつにつれまして、大学の自治が侵されるのではないかということで、大学関係者から声が上がるようになっています。十兆円の大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学のみを対象とするのであればともかく、今回想定している大学は五つとはいえ、国際卓越研究大学以外の大学まで広げるのであれば話が違うんじゃないか、こういう声が上がるのは私は当然だというふうに考えます。
これは、大学の在り方を本当に大きく変える問題でありまして、本来、中教審でしっかりと議論されるべきではなかったかというふうに思いますが、なぜか中教審での議論がなされていません。
今回の法案提出のプロセスをどのようにお考えなのか、改めて隠岐参考人にお尋ねします。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
私も本当に、中教審など決まったステップを踏んでこういった提案がなされると思っていましたので、非常に驚き、あと周りで怒っているという人も多いんですが、非常に衝撃を受けております。
例えば、学術会議の改正法案のときは、少なくとも五か月ぐらいは議論していて、それでも急だというふうな受け止め方が現場ではありましたので、今回特に、ちょっと先ほど上がっていて余り話せなかった部分もあるんですけれども、運営方針会議の委員が三名で、学長と三名で構成で、それが、大臣の承認を得た後、学長が任命、解任だとか、そういう部分を例えば私はかなり問題視しているんですけれども。
これはなぜ問題かというと、運営方針会議が、いわばちょっと学長の側が忖度をするふうなことを余儀なくされる仕組みのように見えるんですね。それを例えばつくるというのは、何かよほど強い学長の側の要望があったなら、ひょっとしたらとは思わなくもないですが、それでも問題だというのが私のさっきの主張でして。
というのも、この構造というのは、ちょっと言葉がきついですけれども、ちょっと戦前の大学に似てしまうんですよね。トップダウンというのは、トップが自由に動けるためにトップダウンなのであって、つまり、トップのすごく自由に動く人たちが、下はすごい反発するかもしれないけれども、縦横無尽に動き回っているというのが例えばアメリカなんかの大学のイメージで、州とか政府が関わる部分というのは、少なくとも大臣が関わるというのはないんですね。
戦前のドイツが、大学は公務員というか、大学は国の機関で、かなり本当に、ある種、大臣が、大臣というか、任命があって、みんな公務員として忠誠を誓うみたいな感じだったらしいんですけれども、その仕組みがナチス・ドイツの台頭をやすやすと許したというふうな反省もあって、現在ドイツは非常に変わっているということもありますので。
トップダウンで、かつ、トップの人が特定の政府にひもづくか忖度するという構造は非常に気になるんですね。まずいんじゃないかということを思っています。
ちょっとついでに質問以外のことを申し上げましたが、このような重要な構造、つまり、どういう理由があってこのように歴史的にも問題視されかねない構造がつくられたのかというのを、この短さで何でこれが提案されたのというふうなことを本当に強く思っています。この法案は、もっと慎重に、それこそ一年、二年かけて論じるべきような問題が含まれていると思っております。
以上でございます。
○菊田委員 ありがとうございました。
私もそう思います。非常に拙速で、踏まれるべきステップが踏まれていない、飛ばされている、そして大学関係者の多くの理解と納得が得られていない、こういう状況でありますので、十分に慎重審議が行われるべきだということを改めてこの場で申し上げたいというふうに思います。
そもそも、運営方針会議で決定されております中期計画や予算、決算そのもの自体について、文部科学大臣の認可、承認が今回必要となって、元々必要になっていますけれども、その上更に、運営方針委員の任命に文部科学大臣の承認まで本当に必要なんでしょうか。運営方針委員の任命に文部科学大臣の承認を必要とすることは、私は、大学の自治、学問の自由を大きく損なうことになるのではないかというふうに懸念をいたしております。
隠岐参考人は意見陳述の中でもお話しになっておられますけれども、この点、非常に重要な点でございますので、文部科学大臣の承認を必要としていることについて、改めて御意見を伺いたいと思います。
○隠岐参考人 改めての御質問ありがとうございます。
先ほどちょっといろいろ先走って申し上げましたが、やはり非常に大学の自治、学問という点について問題があると思っております。
元々、承認で、任命ではないので問題が少ないではないかという意見をお持ちの方もいらっしゃるのかもしれないのですが、ただ、本来、先ほど申し上げたように、トップダウンにするんだったらトップは自由にしなきゃいけないということかと思うんですね。そこを履き違えてはいけない。
あと、これまでの教育の歴史の中で、教育委員会の教育委員長を文部科学大臣が、これは承認、任命の両方ですけれども、やるという仕組みだったのが、最近、地方分権の絡みでなくなった。やはりそれは何らかの問題を指摘する人がいたからだと理解していまして、こういう教育研究機関に関して大臣クラスの方の承認を挟むというのは、非常に慎重に扱わないと後々問題が出てくるリスクがあることだと思っています。
個人的には、トップダウンは変え難い時代の趨勢があるとしたら、この承認の部分は今回はなくすべき、あるいは法案自体をちょっと撤回していただくべきだというぐらいのことを思っています。
以上です。
○菊田委員 ありがとうございました。
運営方針会議の委員には大学外部の人が今度選ばれるということなんですけれども、大学の歴史や特徴をよく理解していなかったり、あるいは在学生や教職員との日常的な交流がない人が、年に数回だけ会議に来て発言をし経営に口出しをするということに関しまして、私は違和感も持つわけでございます。
先ほど、隠岐参考人は、下からの牽制が機能不全しているというふうにも述べられておりますけれども、運営上うまくいっているときはいいんですけれども、何か問題が起こったり不祥事が起こったときの責任者は一体誰なのか、非常に不明確なのではないか、この点も懸念されますけれども、この点について御意見を伺いたいと思います。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
確かに、責任者がよく分からない、つまり、問題が起きたときに責任者が分からないというのは私も思っていたことでして、運営方針会議は学長が任命をして、ただ、学長の選び方に意見を言う、あと、学長に何か不祥事があったときに解任事由に該当する場合の勧告を行うでしたか、そういったことがあるんですが、この三人と学長の上下関係というか、責任者、責任がどうなっているのかというのが全く、現場からはもちろん何も分かっていませんし、例えば外部の方がよかれと思って行った改革で問題が起きた場合に、結局、どうするんだろうというのが全く分からないという感じがあります。
本当に、つまり、責任を持って、せめて同窓生だったりとか、あるいはそれこそアメリカの大学だったら、理事会というのは、出資している、ある種、企業か何かの経営者だったりとか、要は、大学の財源に関して運命共同体というか、そういう人が関わっている場合が多いと思うんですけれども、そうでもないですから、外から来て何か意見を言って、駄目だったね、バイバイにならないかなというのは心配しています。
以上です。
○菊田委員 ありがとうございました。
私、本会議でも取り上げたんですけれども、選択と集中という国の方針、これが余りに偏り過ぎているために、やはり、短期的な成果とか、それから経済波及効果にどうしても偏重してしまっているのではないかというふうに思います。
頂上を目指すためには裾野をぐんと広げていくということが本来重要ではないかというふうに思うんですけれども、筑波大学の研究チームが、高額な研究費を少人数に集中して投じるよりも、少額でも多くの研究者に配分する方が国全体として画期的な成果を効率よく出せる、こういう分析結果を発表しているわけですけれども、今の国の大学政策についてどのようにお考えか、四人の参考人全てにお聞きしたいと思います。
○千葉参考人 御質問ありがとうございます。
御指摘の点、非常に大事な観点だと思っております。
非常に競争力が重要になる分野というのは確かにございまして、そこに一定の経営資源を投入するという考え方は大事なことは事実です。ただし、御指摘のとおり、裾野が広くないと、実はそういう競争力というのも出てきませんし、それから、誰もが予想しなかった意外な成果を出していく上では、非常に広い裾野がないといけないというふうに思っております。
これは大学の中でもそうでございまして、例えば、本学が財政的なところを独自の考えで強化したいというのは、決して一定の分野だけを強化するのではなくて、広く、基礎研究を進めている教員の、その基盤を固めるというところに還元する仕組みというのを同時につくらなければいけない。そういう意味での財政力あるいは経営力の強化が必要だということを考えて、自らの判断で進めているところです。
また、これは日本全体の大学においても私はとても大事なことだと思っております。日本の国立大学のシステムというのはかなり特異的なもので、数多くの国立大学、これは大きさも違いますし、分野も違います、それから地理的な条件も違います。これが一体となって日本全体を支えていくという、その姿をしっかりとつくっていくというところが一番大事だというふうに思っておりまして、単にその中の幾つかだけが日本を支えているという観点ではなくて、日本は、多様性のある大学が全体で大きな力を発揮している、こういうところを目指していくということが非常に重要ではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
そうですね、選択と集中の姿勢を確かに強め過ぎていると思うと同時に、やり方として、全部ある中で選択と集中としているのがまずいと思います。
というのも、恐らく、何か選択と集中をしないような配分というのを取っておいて、それ以外の部分で選択と集中というふうにやるのが、比較的うまくいっている国のやり方かというふうに理解しているんですね。ドイツを念頭に置いているんですが。
つまり、メッセージとして、大丈夫です、基礎研究は絶対に、そんなにすごい額じゃないかもしれないけれども、満遍なく配分しますよと。だけれども、研究とイノベーションをちょっと分けていた方がいいと思うんですね。
だけれども、この部門では完全に我が国はこれで、例えば今度はAIに投資しますから是非才能ある人来てくださいというふうに、二階建てで、選択と集中をするフェーズとそうじゃないレイヤー、レイヤー二つですかね、そういう形でやるべきであったのではないかということを思っています。
なので、選択と集中が完全に悪とは言わないんですが、全部、選択と集中にすると、多分、持続可能ではない研究環境になると考えています。
以上です。
○田中参考人 国際卓越研究大学に、選に漏れましたけれども、応募のプランを作っていたときに、これが実現したらこんなにすばらしい研究ができるんだ、こんなにすばらしい教育ができるんだということを夢に描いたことを覚えておりますけれども、そのときに同時に考えましたのは、国際卓越研究大学に仮に選ばれたとしても、地方の大学から例えば教員をリクルートする、そうやって発展するというモデルではなくて、例えばクロスアポイントメントのような形で、元々その研究者がいた大学と新しい大学が一緒に発展する道を模索したいというふうに考えておりました。このようなバランスが必要じゃないかと思っております。
○山崎参考人 今、現場を離れて眺めてみると、当時やっていたことは、私がやったことは、多分今の言葉にある程度当てはまるなというふうに思いながらも、全体としてはやはり稼げる分野とそうでない分野があるので、稼げる分野でしっかり稼ぎながら、でも、国立大学でないと守れない研究分野があるというふうに理解をして、例えば、今、哲学もうまくやるともうかっちゃうんですけれども、そうでない仏教、哲学、宗教とかといったら、なかなか普通の私立大学にはないんですね。国立大学こそそういう分野を守るという、一例ですけれども、というのが私の基本的な運営のスタンスでありました。
そうはいいながら、やはり全体のお金が、私は、諸外国と比較したときに、高等教育機関に投入されている税金が少な過ぎるなというのが第一印象で、ちょっと話がそれますけれども、先月、今の立場で、前復興大臣のお導きで、アメリカのハンフォードというワシントン州にある国立の研究所、PNNL、パシフィック・ノースウエスト・ナショナル・ラボラトリーという、DOEというエネルギー省の配下の大規模な研究機関を見学する機会をいただきました。今度協定をさせていただくんですが、余りにもその規模の大きさ、予算のでかさ、施設整備のすばらしさに圧倒されて、これで日本が勝負できるのかなというふうに、やはりそういう思いを非常に抱きましたので。
是非、今の議論も大事なんですが、国立大学だけではなくて、高等教育に対する予算を今の二倍、三倍ぐらいにしていただくと、多分いろいろなことがうまく回るだろうと。あっちのお金を削ってこっちにつけるとかとやっているから、こんな議論をしなきゃいけないのかなと個人的には思っております。
以上です。
○菊田委員 終わります。ありがとうございました。
○田野瀬委員長 次に、西岡秀子君。
○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。
今日は、千葉参考人、隠岐参考人、田中参考人、山崎参考人、大変お忙しい中にお出かけをいただきまして、大変いろいろな教えをいただいた、貴重なお話をいただきましたこと、まず心から御礼を申し上げたいと思います。
また、今日の質疑の順番につきましては、私がちょっと別の委員会で質疑が予定をされておりますので、日本維新の会からの御協力をいただいたことに御礼を申し上げて、質問に入らせていただきたいというふうに思います。
まず、この法案の中身に入る前に、国立大学の法人化から二十年目となるということでございますけれども、この法人化の評価というものは、いろいろな評価があるというふうに思います。当時の有馬文部大臣は、運営交付金が減少していったことを含めて失敗だったというようなお話もされているというふうにお伺いをいたしておりますけれども、それぞれの参考人がこの法人化についてどのようなお考えを持っているかということについて、まずお伺いをさせていただきます。
○千葉参考人 ありがとうございます。
法人化、二十年になろうとしているところでございます。様々な意見があるのは存じ上げておりますが、私としては、やはり、世界の情勢あるいは日本の情勢が大きく変わる中で、国立大学も考え方を変えなければいけない部分はあったのだというふうに思っております。そういうこともありまして、法人化ということを一つの契機に、どう変わっていくべきかということをしっかり考え、模索しながら次のありようを考えていくという、その大きな機会になったということは間違いございません。
その一方で、確かに二十年前までは、大学の基盤的な研究の在り方、あるいは研究室の雰囲気とか教員の毎日の過ごし方とか、そういうものが明らかに今とは変わってきているのではないか。場合によっては、非常に今多忙を極めて、自由な発想を、何か新しいことを考える、発想を持って考える時間が減っているのではないかということも危惧しております。
そういうことに対して、では、次の一手としてどうすればいいか。やはり過去に戻って物を考えるだけではなくて、やはり、ここが変わってしまって、そこがとても大事だということは認識しているので、では、それをどうやってもっといい形に変えていかなければいけないか、そういう形で前向きに捉えていきたいというふうに思っております。
以上でございます。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
そうですね、国立大学法人化については、私は当時、大学院生だったんですけれども、当時既に自分の名前で反対する文書を出版したこともあるような人間ですので、一貫して批判的でした。ただ、批判的といっても、全く見方が変わっていないわけじゃないんですけれども、一番のコアは、やはり稼げるのが大事のような価値観に大学が流されてしまうんじゃないかというのが、若いときの一番の関心だったと思います。一番やはり就職難の直撃した世代でもありますし、同年代は結局、何だかんだ理由をつけられて非常勤講師をずっと続けているという人も多いんですね。
あとは、やはり当時反対だった理由は学費の問題でして、国立でなくなる、元々日本の国立大学は奇妙に学費が高かったんですけれども、ほかの国だと無料に近いところも一部残っていますので、フランス、ドイツはたしかまだそうなんですね。なので、学費がもっと上がるんじゃないかということを懸念していました。
私は母子家庭の出でございます。なので、学費が上がるということは、自分の将来が大きく変わるということを意味しています。実際に、現在、地方の国立大学、あるいは東京大学でも、例えば地元の出身者が増えていまして、遠くから入学する方というのが減っているのではないか、ましてや、大学院に行く人は更に減っているんじゃないかということをとても懸念しています。
ですので、法人化の中でもちろんよくなった部分もあるとは思うんですけれども、根本的な大学の在り方に、やはり、稼げる、あるいはお金持ちの人が来れる場に大学をする、そういう何かモチベーションが働きやすくする部分がなかったか、そこを本当に改めて考えていただきたいなと思っております。
以上です。
○田中参考人 お答えさせていただきます。
私は、この二十年というのは社会環境が非常に停滞した時期でもあったので、全てを法人化のせいにすることはできないというふうに考えています。ですから、逆に、停滞する中で各大学に裁量権がある程度与えられた法人化というのを私自身は評価しております。
以上です。
○山崎参考人 私も、今の田中先生と同じ感覚ですけれども、大学は自由度を得たというふうに思います、経営の自由度も含めてですね。
なので、まだそうはいいながら、最初の頃、私どもは、自由度を上げたからと言われながら、学長として見ると、手も足も縛られて池に投げ込まれた状態であるということをよく言ったんですけれども、少しずついろいろな規制は緩和されつつあるので、私は、そういう観点から、まだまだいろいろなことを緩和していただくと、学生定員管理とか、学科を変えるとか、学部を変えるとか、いろいろなモチベーションがあるんですね、大学経営上は。そのときに、結構ハードルは高いので、更にいろいろな自由度が与えられると、もう少し自主的な経営、自主的な運営が可能になっていくんじゃないかというふうに前向きに捉えたいというふうに思っております。
さりながら、さっき申し上げたように、予算は削られていますので、そこのところは非常に厳しいなという感覚は持っております。
以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。
それぞれの参考人のお立場で、大変有意義なお話を聞かせていただいたというふうに思います。
続きまして、先ほど菊田委員からも質問があったこととちょっとダブりますけれども、隠岐参考人の方から、この法改正における問題点という中で、トップダウンと文科大臣の承認が両方あるということが大変この合議体では懸念があるというお話があったわけでございますけれども、このことによって政府の介入の可能性、懸念があるということに対しまして、まず隠岐参考人からお話を聞いた後、あと三名の参考人からもこのことに対する御意見をお伺いしたいというふうに思います。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
私はまさにそのように申し上げまして、どのように例えば学長がこの運営方針会議でまず三名を選ぶのかというところから気になるんですね。普通だったらそこまで疑うことはないよと言われそうなんですけれども、先日やはり学術会議の任命拒否問題で大変騒動がありましたので、そういった、何というか、どういう事情で、承認が拒否されたみたいなことが例えばあったとして、どうなるのか。大学の運営に混乱があるのではないか。あるいは、元々そういうことを想定して学長が人を、つまり、そうならないように学長が人を選ぶようにならないかということが一番気にかかっています。
現役の学長の先生方は、いや、そんなことないよとおっしゃるかもしれないですが、私が考えているのはやはり仕組みというかシステムの問題でして、例えば、今の在任の先生方が大丈夫でも、五年後はどうか。
今日は偶然、私、参考人の中で恐らく一番若いので、この法案のてんまつを見届けなければならないということから、リスクを気にしているということです。何といっても、こういった忖度の感情が経営層に生まれないかというのが一番の懸念となります。
以上でございます。
○千葉参考人 ありがとうございます。
私自身、大学の役割として考えることがございまして、確かに、文科大臣の承認あるいはトップダウンという観点で、何か自由を制約されてしまうのではないかとか、そういう懸念というのは考え出すとあり得ることにはなるんですけれども、私は、大学というものは、その次元を超えた形で、もっと大きな視点で、大学がどうあるべきか、あるいは、国を更に発展させるときに大学というものの未来の役割というのはどういうものであるべきかということを、自ら考え、発信する。
逆に言えば、大学から文科省なり文科大臣にも提言していく。こういう形にすればもっとよくなるはずです、私たちはそれをやる意思があるんですということを積極的に発信していくというのが、私はこれからの大学の役割ではないかというふうに思っていますので、そういう殻も打ち破るという役割を大学が担っていくべきだというふうに思っています。
以上です。
○田中参考人 文科大臣の承認、即、政府の介入というふうにはちょっとなかなか、学長をやっている立場とすると考えにくいんですけれども、むしろ私は、運営方針会議は、例えば学内委員と学外委員の比率にも特に制約がなく、三人以上ということで、特に人数の制約もかなり自由度が高いものと理解しておりますので、そうだとすれば、その人選によっては、非常に大学にとってはポジティブな会議になり得るというふうに思っております。
以上です。
○山崎参考人 例は違うんですけれども、今、監事の任命というのが文部科学大臣任命になっていて、私どもが推薦をするという形になっていますので、そこで問題が起きたことは多分過去にはなかったことというふうに思っています。
そういう感じで、現場が挙げる人に対して文部科学大臣が拒否されるというようなことが余り私どもには想定ができにくいんですが、むしろ、田中先生がおっしゃったように、やりたいことがあれば、あるいは、やらねばならぬことが各大学法人にあるとすれば、それについてやはり加勢をしてくださる方をしっかりとお選びして、こういう理由でこの人なんだということを御説明申し上げれば、そんな懸念は払拭できるんじゃないかなと。
そしてまた、大学の中だけでは、運営会議だけではなかなか後押ししてもらえないことも一緒になって頑張れるんじゃないかなという、私はむしろ期待感を持っております。
以上です。
○西岡委員 ありがとうございます。
続いての質問ですけれども、先ほど山崎参考人から御指摘があったことなんですけれども、今回、本来は、卓越大学の十兆円ファンドをめぐって、その対象となる大学に義務づけられていた合議体の設置が、特定国立大学法人という枠と、希望すれば準特定国立大学法人という枠組みができることによって、そこに区分をされることによって、私自身は、希望する大学が、設置を申請した大学と申請しない大学というものが、例えばいろいろな補助金を含めてそこに差ができてしまうのではないかとか、そういう区別ができるということが私も大変懸念をされる点なのではないかというふうに思っておりますけれども、このことについて、それぞれの参考人の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
○田野瀬委員長 それでは、順序、順番に行かせていただきますが、持ち時間がありまして、大変恐縮なんですけれども、簡潔にお答えいただけたら大変ありがたいと思っております。
○千葉参考人 区別についてというところについては、できる限りそれがないように、柔軟な形でというものが望ましいと思います。
○隠岐参考人 区別をつけて、むしろ押しつけられるような大学が出るという印象を持っていましたので、手を挙げる方式にするんだったら、まだましだったのかなと。つまり、区別は確かに意味がないと思います。
○田中参考人 指定国立大学は何番目になっても指定国立大学であることは変わらないので、後から手を挙げたら準とつくのはどうかなというふうに思っております。
○山崎参考人 もう申し上げる必要はないかなと思うんですけれども、僕は、予算とかの配分に未来、将来、区別がされると困るなということをちょっと懸念をして、ああいう発言をさせていただきました。
○西岡委員 時間となりましたので、質問させていただきまして、本当にありがとうございました。
以上で終わります。
○田野瀬委員長 次に、平林晃君。
○平林委員 公明党の平林晃と申します。
本日は、四人の参考人の先生方、大変お忙しい中、国会まで足をお運びをいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。大変にありがとうございます。
〔委員長退席、池田委員長代理着席〕
先ほど御挨拶でも申し上げましたけれども、現在、私、衆議院議員にならせていただいておりますけれども、今回統合の議題に上がっております東京工業大学を二十四歳で修了いたしまして、二年前の五十歳で退職するまで、二十六年間は大学の教員を務めてまいりました。山口大学に勤務をしている間に国立大学の法人化を経験をいたしまして、その前後で、配分される研究費の減少、これを如実に体験をいたしました。また、自分の専門分野に限らず、中国が台頭していき、日本の研究力の相対的な低下、地位の低下というものも如実に味わってきた一人であります。
この経験から私が本日先生方にお伺いしたいのは、日本の研究力の回復、これを回復の軌道に乗せていくにはどうしたらいいのか、その観点から見たときに、今回の改正、それをどのように位置づけられるのか、この点を中心に参考人の先生方に、それぞれに質問をさせていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
では、最初に千葉参考人にお聞きできればと思います。
先生は、東京農工大学を修了され、食品会社に勤務された後にまた出身の大学に戻られ、教員としてのキャリアを積んでこられたと伺っており、令和二年四月からは現在の学長を務めておられるということでございます。
貴学には知人の教授がおりますので、非常に身近に感じてきておりまして、チャレンジ精神に富む大学であることは知っておるつもりでしたけれども、今回、様々な資料を拝見して改めて、多岐にわたる挑戦をしてこられたということを知りました。
中でも、ちょっとびっくりいたしましたのが、キャリアチャレンジ制度。これはすごいなと思ったんですが、早く教授になりたい准教授が手を挙げて、五年間は教授と称することができ、研究に集中できるが、その期間で約束の成果を出せなければ准教授に戻らされると。ひっくり返りそうになりました。元大学の教員の感覚としては、あり得ないように感じました。でも、あり得ないからこそ、挑戦者は必死になって成果を出せるように頑張るのではないかというふうに思います。これが教員の成長のチャンスにもなり、大学全体としても活気が出てくると考えます。
また、教育と研究の分離的考えの脱却、この点に関しましても興味を覚えました。大学には、通常、研究担当や教育担当という副学長がおられるのはよく見てまいりましたけれども、それらをまとめて教学担当とされて、一定の権限をその配下の組織に与えられると。与えることによって、何でもかんでも全教授が絡むというようなことはせずに、関与しない教員に時間を与えて、研究に専念、より取り組む時間を与える、こういう趣旨であると感じました。これもなかなかできることではないなというふうに感じた次第でございます。
また、先ほどお話にもありましたけれども、大学の認定ファンド、これも創設をしておられるということで、こうした様々な取組が功を奏して博士課程定員が常に充足をされている、この点も、本当にすばらしいと思う状態を生み出されているのではないかなと思います。
こうした変革の根底にある考え方、これは、千葉学長の本年五月の大学研究力強化委員会における御発言、大学自身が大きな考え方の変革をしないと難しい、このように発言しておられますけれども、ここでお聞きします。
農工大、この二、三十年で大きくプレゼンスが変わってきたと思います。にもかかわらず、このように危機感を持って、変革をしないと難しいと感じてこられた。これは、何がそこまで強く思わせたのかということ。また、その上で、改革を実行していくに当たって非常に強く心にしておられること。また、その上で、今回の法改正また国際卓越大学院制度、こういったものが先生のお考えにのっとってどう位置づけられるのか。これらの点について伺えればと思います。
〔池田委員長代理退席、委員長着席〕
○千葉参考人 大変ありがたい御質問をいただきまして、恐縮でございます。
こういう東京農工大学のような中規模な大学、今話題になっている理事七名以上の大規模な大学とは違うスケールの大学ではございますが、農学、工学という、まさに今時代が求めている分野の中核を成す、そういう領域の大学となっております。そういうこともございまして、私たちのような中規模の国立大学のありようというのは、実は、国際卓越研究大学の在り方、あるいは日本全体の国立大学群がどうあるべきかということを国民の皆さんにも知っていただき、非常に身近に感じていただきながら、未来を、希望を持っていただけるような、そういう姿を示すべきだというふうに思っております。
そういうことで、特に私たちがどこのカテゴリーになるためにとかという形ではなくて、今私たちができる最大限のことは何かということを考えております。
冒頭御質問いただきました、世界と戦えるような研究力、どうするかということもその一つでございまして、もちろん、もっと多くの資金をいただければ、もっとハイレベルな研究ができますというようなことはすぐに思いつくことなんですが、そうではなくてもできることはないだろうかということを考えたときに、若い研究者の人たちがもっと伸び伸びと自由に研究ができたら、そのうちの何%かは将来すごい研究者になってくれるだろうということを期待したわけです。
要するに、代々続く、教授に何年仕え、准教授になってという、そういうパターンもあるんですけれども、そうではなくて、今、三十歳、三十五歳のときに思いっ切りやりたいという人たちが手を挙げて思う存分研究ができる体制というのをつくろう、これがキャリアチャレンジの基本的な考えでございます。
そういう研究者は、五年間で成果が出なくて、また准教授に戻ってしまったらどうしようなどということは心配しません。もっと発展しよう、その間の時間をもっと有効に利用しようとする、そういう精神が働くんですね。
これがとても大事で、私は、大学というのは、実は、二十代に差しかかる若者から、二十代の非常に貴重な、特に日本にとっては大事な大事な年代の人を預かっているところだと思っています。いわば日本の未来を預かるところですので、その人たちが意欲的に、また、その人たちがまだ自分では発見できていない才能を発見できる場にできたら、これはまさに、日本を支える、世界と伍する研究が生まれてくる場になるのではないか。これを日本中に参考にしていただいて広げられたら、そういう思いで進めております。
ありがとうございます。
○平林委員 ありがとうございます。
続きまして、田中参考人にお伺いできればと思います。
今回は、伝統ある指定国立大学法人二校が統合をされるということで、東海国立大学機構のように一法人二大学ではなくて、一法人一大学をつくられると、強い覚悟を感じております。だからこそ、私も、本当に新しいものを築いていただきたい、このように御期待を申し上げます。
医工連携、これまでも様々な主体が長らく取り組んでまいりました。私自身、MRIの高速化、CTの低被曝化、糖尿病データ解析などのテーマに取り組むことにより、医工連携の現場に身を置いてまいりました。そうした経験で感じたことのあること、これは、まさに医学と工学との間の壁ということを感じてまいりました。
ある意味、ちょっとこれは言い過ぎかもしれませんけれども、受注、発注の関係のような、そういった、本当にこれは言い過ぎかもしれませんけれども、上下関係のようなものも感じてきたところも事実でございます。この壁を乗り越えることによって新しい地平を切り開いていただきたい、このように考えております。
では、そのために何が必要かということなんですけれども、益学長は中央公論の中でこう述べておられます。予想の範囲内のことをやるのに統合は必要ない、おっしゃるとおりだと思います。これに対して田中学長も、今思いつかない何かが出てこないと成長、成功にはつながらない、おっしゃるとおりです。
その上で、では、どうしたらいいのか。これは、私は、今までにないタイプの人材を育てることであるというふうに考えております。それを可能にする教育体制の構築、教育プログラムの設計であると思います。工学を分かる医学者、医学を分かる工学者、こうした横断的人材を陸続と育てることにより、医学と工学の壁なんてなかったかのように軽々と乗り越えていただき、新しい地平を当然のように切り開き、予想だにしなかったイノベーションが生まれるのではないかと考えております。
そこで、お聞きいたします。
今回の統合、まずは研究面から始まるということは認識をしておりますけれども、教育面での統合の第二段階、この点に関しまして、田中学長の現在の御構想を伺います。
○田中参考人 御質問ありがとうございます。
全部が確定していることではございませんので、個人的な意見も入っていることを御了承いただきたいと思いますけれども。
まず、教育面では、横断的な、つまり、例えば、医学部を出て工学部の大学に行くであるとか、それから工学部を出て医学部の大学に行く、そういったようなクロスオーバーができることをまず一つ目指しております。
あともう一つは、学士編入学枠を拡大することによって、工学部を出て医学部に入れる、あるいは医学部を出て工学部に入れる、こういったようなことができるような形も将来の課題として考えております。
やはり、壁があるのは、一つの大きな理由は、医師の側が忙し過ぎるという問題があると思うんですね、患者さんに呼ばれました、何しましたと。そういうことで、やはり少し余裕を持ちたいということで、臨床系の教員、患者さんを診る教員に関しては人数を増員したいというふうに考えております。この結果、壁がだんだん取れていくことを期待しております。
以上でございます。
○平林委員 ありがとうございます。
では、続きまして、山崎参考人にお聞きできればと思います。
山崎参考人は、金沢大学で学長をお務めになられ、多くの変革を成し遂げてこられたということでございます。この点において私が特に注目いたしますのは、金沢大学、地方国立大学であるという点でございます。私も、先ほど申し上げたとおり、地方国立大学の勤務の経験がございます。その上で、極めてその存在は重要であるというふうに思っております。その点に関しましては、恐らく山崎参考人も同じ御意見ではないかというふうに思います。
ところが、現在、地方国立大学、元気があるとはなかなか言いづらい状況にあると感じております。金も時間も将来のポストもない、そんな厳しい危機的な状況を私の研究者仲間からも聞いているところでございます。
先生は、二〇二一年十月の「IDE 現代の高等教育」において、一機関での成果の結実には限界がある、地域連携プラットフォームの枠組みを活用しながらというようなことを述べておられますし、本年五月の委員会においても、大学一個では駄目なんだから地域ごとに束になって頑張ろう、このことも述べておられます。これは非常に大事な意見なのではないかなというふうに思います。
これらの点を踏まえまして、地方の国立大学がこれから元気を取り戻していくために今後何を目指していくべきか、そのために、先生が述べておられる、群を成す、束を成す、この点に関して先生の御意見を伺えればと思います。
○山崎参考人 御質問ありがとうございます。
各地域には、それぞれ特色ある産業が根づいているというふうに理解をしております。それを更に、東京とか大都会ではないところでしっかりと根づいているものを拡大、拡張、そして発展をさせるということが、地方国立大学群の重要な役割、トップに挙げてもいいかもしれないというふうに思っています。そういう意味で、人材育成をして地域にしっかり供給するということも大事ですし、あわせて、やはり新しい分野を開いていくということも国立大学の大事な役割じゃないかなと。
そういう意味で、一大学ではなかなかできない、あるいは一学部、一研究科ではなかなかできないことを、やはりみんなで相談しながら、どこを伸ばす、どこなら日本一になれる、あるいは世界水準になれる、もしかしたら世界トップも握れるかもしれないというような可能性をやはりみんなで議論をしながらしっかり育てていくという、何というかな、アンダーグラウンドなところのいろいろな活動から盛り上がっていかないと、何か、トップだけで何かしたら、学長同士が話合いをしたら新しい産業が生まれましたとは僕はならないと思うので、やはり、草の根運動じゃないですけれども、いろいろな研究者を巻き込んで、ボトムアップみたいなことをしっかりと各大学が、大学群がやっていかないと、それが達成できないんじゃないかな。それが未来の日本の世界的な競争力の強化、復活につながるというふうに信じております。
以上です。
○平林委員 非常によく分かりました。新しい地平を切り開くために、しっかりと大学が連携して取り組んでいっていただきたい、そのことを私もしっかりと応援していきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
大変ありがとうございました。
○田野瀬委員長 次に、堀場幸子君。
○堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。
本日は、四人の先生方、本当にありがとうございました。なかなか分かりづらいこともたくさんあったことがちょっとクリアになってきたかなというふうに思っております。
私ども日本維新の会でこの法案について課題だなと思っていること、大きなものの一つは、ガバナンスが保てるのかという議論だと私は理解をしています。
今回の法案は、経営と執行する部分を分離していこうという、千葉先生の表現で言うと、経営と教学の分離ということだと理解をしております。
今回、運営方針会議というものが新しくできるということなんですけれども、これが本当に機能するのかなというのが一つの疑問だというところで、質問をさせていただきたいなと思っています。
今回、組織図、東北大学さんの組織図を見させていただいたんですけれども、結構複雑な組織になっているのではないかなというふうに思っております。これだけいろいろなものをつくって、更に運営方針会議というものができるということについて、これでどのようなガバナンスが維持されるのかなということをお尋ねしたいと思います。
一番最初に山崎参考人にお尋ねしたいと思います。
参考人のお話の中で、戦略的なガバナンスという表現がありました。そしてまた、組織がこれだけ複雑化することによって現場のコンセンサスが難しくなるのではないかなという課題について、この二つ、まずはお答えいただければと思います。
○山崎参考人 御質問ありがとうございます。
微妙なところもあるかなというふうに個人的には思っていますけれども、ある規模以上の大学にこれを義務づけるとなっておりますので、そこの大学でどんどん学長のリーダーシップが発揮できている分には、私は、もしかしたら無用かもしれないなという気持ちもちょっとだけありますけれども、いろいろな改革を大きな大学がセクターを超えてやっていこうとすると、必ず反対があるものなんですね。
それはやはり、先ほども申し上げた既得権というのがあって、何となく今のままがいいというふうに思い込んでしまう構成員がおられることは確かなので、そこを一歩踏み出して、みんなで頑張るぞ、私たちの競争相手は隣の大学ではなくて世界の大学だということをやはり認識をされて頑張っていただくためには、やはり外からもう一押ししてくださるような仕組みがあると、多分、学長あるいは総長と呼ばれる方々は頑張れるんじゃないかなというふうに思っています。
そのときに、やはり両方大事だと思うんですね。そうはいいながら、新しい改革を、大胆な改革をやろうとすると、やはりボトムアップでは出てこないと思うんですけれども、だけれども、構成員の皆様あるいは部局のマネジメントをやっていらっしゃる長という方々のやはりしっかりとした理解とサポートがないと、最後はどんな改革でも現場に落ちていくというか、現場からやっていかないと物事は進まないので。そこのところに現場の理解もなく強制的にやるというのはやはり駄目だと思いますので、そこをするときの、中だけの議論ではなかなかそこが収まらなくてやめちゃったというケースは往々にしてありますので、そういったところは、今回の制度をうまく、さっき人選の話もありました、うまく自分たちの改革にとって必要な方をお選びすることで加速できるんじゃないかな、そういう期待感を非常に持っております。上手に使いませんかという感じであります。
以上です。
○堀場委員 ありがとうございます。
今までの国立大学法人法の中では、やはり学長のリーダーシップというものを目指していたと思っていて、あれ、今回は会議体ができるんだな、どっちに行くのかなという、そこのちょっと分かりにくさがあったんですけれども、今の山崎先生のお話だと、やはり学長と一つのチームになって進んでいく、そして、外部の声も入れながら内部の声も、両方聞ける学長という立場の方が推進していくということなんだろうなというふうに理解をさせていただいたところでございます。
そしてもう一点、今日、千葉先生のお話の中で非常に印象的だったなと思ったのが、オープンな意思決定、そしてビジョンの明確化、それを明確にすることで大学自体の変革というものが進んでいくんじゃないかということがお話の中にありました。それと、経営と教学の分離というのは最初の資料の中にも表現として非常に多くあったのが、私どもが思っている、経営と、執行していく、実際に運営していくところの分離をしていくことで非常に前に進むんじゃないかなという、ガバナンスが利いてくるんじゃないかなという議論だったと思います。
こういった観点から、ガバナンスをやっていく、大胆な改革をやっていく中で、このオープンな意思決定とビジョンの明確化というところが、何かどうしてもやはり大学全体のコンセンサスとの関係があるのかなというふうに思っているので、ここの部分をもう少し詳しく教えていただければと思います。
○千葉参考人 ありがとうございます。
本学では、教学とそれから経営を分離するということを自主的に考えて、先進的に実行いたしました。この部分で、今御指摘のように多くの懸念点があるということも我々認識しておりました。
教学というのは要するに教育と学術でございまして、やはり、自分たちの基礎研究をやる環境、それから大事な教育環境をしっかり守りたいというものがございます。一方、経営側の方は、じゃ、それを持続するためにどうやって財政的な面も含めてうまく回るようにしなければいけないかということで、実は、短期的な視点と長期的な視点というもの一つ見ても、違うところを見ることがございます。ということで、そのまますぐに折り合いがつかないということが往々にして発生する、あるいは発生するだろうと思いました。
ということで、今、学長直下に、経営の責任者と教学の責任者、要するに三人が常に意見をすり合わせる。そのときに、教学側が、例えば、もっと経営はお金を用意してくださいというような一方的な物の考え方はしないようにというようなことを私は重々関係者に伝えております。要するに、相手の立場を考えた上で、ではどうやれば教学に対して一定の資金が連続的に導入できるだろうかということも含めて相手側との折衝をする、そういう形で進めております。
それから、私自身は、このシステムを入れることに先立ちまして、ほぼ全ての事務職員あるいは希望する教員と直接対話をするという機会をつくっております。これは一つの例ですけれども、そういうようなことで、学長のガバナンスといいますと、非常に、上からただ落とし込むように考えがちなんですが、そういう体制を考えれば考えるほど現場との対話というものがますます重要になってきておりまして、それを実施しながら、実際に前向きに動くようにしているということでございます。
以上です。
○堀場委員 ありがとうございます。
やはり、こういうガバナンスとか改革とか、そして新しいものをチームで目指す、そういうときには、直接的な対話及び情報、意見、そういったものの積極的な交換が必要なんだなというふうに理解をさせていただきました。つまり、コンセンサスをどうやって取っていくのかというのが非常に重要なんだろうなと思っております。
次は、隠岐参考人にお尋ねしたいと思います。
今、やはり、ボトムアップかトップダウンかみたいな二元論的なお話があったかと思うんですけれども、そうではなくて、対話であったり情報共有とか意見の交換を活発にすることで、一番下で頑張っていらっしゃる現場の声が届くのではないかというようなお話もございました。
そして、もう一方で、多様な財源の確保ということで、私自身も大学院まで行っていますけれども、非常にお金がかかって、非常に大学院の進学というのは厳しいなというのを身をもって感じていた一人なので、この財源の確保ということについて私は結構こだわりがあるんですけれども、その二点について、隠岐参考人、思いを聞かせていただければなと思います。
○隠岐参考人 御質問どうもありがとうございます。
そうですね、現場では、確かに、トップダウンとボトムアップの二元論ではないというふうな感覚はあるのかと思います。つまり、本当に優れた人格の方が学長先生になられて、本当にいろいろなところに足を運んでおられるという場面を私も見ております。それはすばらしいですし、現実はそうだといっても、ただ、問題は、そうすると学長の個人の資質次第になってしまうというところです。つまり、学長という方が、もちろん毎回そういう人を選ぶようにというふうに、選ばれればいいんですけれども、そうじゃないときもあり得る。もしものときにも問題が起きないようにシステムを組むべきだというのが私の考えです。
やはり長い歴史を持って大学を運営してきた国、アメリカはやや若くて、十八世紀ぐらいからで、ヨーロッパは一二〇〇年ぐらいから大学があるわけですけれども、そういった国で個人の人格に依存しないような対話の回路をつくっているというのは、私はやはり考慮すべき点であると思っております。
だから、決して、今日御一緒した学長先生を信頼しないというわけじゃないんですけれども、本当にすばらしい方だけではないという現実もありますので、このように申し上げる次第でございます。
あともう一点の財源の確保については、本当に話題を振っていただき、ありがとうございます。
多様な財源というところで、ちょっと研究費のことかあるいは学費のことかで、実はちょっと分かっていないところもあるんですけれども、大学がいろいろなところから財源を手に入れるべきという意見、問題についてどう考えるかということでしょうかね。
それはもちろん、そうであれば望ましいと思うのですが、若干気になりますのは、例えば大学ファンドについて、私は余り好意的でないことを結構発言してきた人間なので、そこに話をつなげますと、誰がどう責任を取るのかというのが例えば分からない財源をどう考えればいいのかという問題はずっと関心を持ってきました。
つまり、大学がファンドを用意して、運営して、それで問題が起きるなら大学の責任なんですけれども、国民の皆様から預かった十兆円を運用して、預かる方も非常に何か神経を使うというのか、非常にストレスが大きいんじゃないかなと思ったりもしますし、それが二十五年後にどうなっているんだろうというのはいつも思っています。
その意味で、できればもう少し、公的な財源、これは難しいところで、ヨーロッパの大学はほとんど州だとか国家に頼っていて、アメリカはかなり民間ですかね、イギリスとアメリカが税金に頼らない仕組みをつくったということなんですけれども、イギリスとアメリカはかなりやはり借金漬けになる学生が結構出てきまして、そこの問題というのをやはりもう少し見極めた上でないと、余り税金に頼らない大学というのを主張しても、後がちょっと難しいんじゃないかなということを思っております。
私の方からは以上でございます。
○堀場委員 ありがとうございます。
やはり日本でも奨学金に非常に苦しんでいる子供たちというのはいっぱいいらっしゃって、それが少子化の一つの原因じゃないかなということも考えている。そういった観点から考えて、いろいろな意味で財源の確保というものは、私たちは寄附税制をもう少し、もっと緩和することで寄附の文化の醸成とか、そういったことも言わせていただいているところなので、やはり多様な財源の確保というのはこれからもっと議論していくべきなのかなというふうに今感じさせていただきました。
ちょっと田中参考人にお尋ねしたいんですけれども、うちの、我が党の金村龍那議員が非常に強く名前についてこだわっているところがありまして、やはり世界に打って出る大学になるんだという強い決意があるのであれば、ちょっとこの名前はどうなんだという議論がありまして、それについて一言いただきたいのが、お願いが一つです。
もう一つ、私の方から、新しいこういった科学的な大学というのは、理科人材の育成というものが非常に今言われておりまして、初等中等教育の中でそれらの人材育成をしようということになってはいるんですが、その全ては、大学における理系、科学的な進歩を目指していくというところでの理科人材の育成で、高校、そして中高小と、人材の育成ということでいろいろ議論があるんですけれども、今私たちが改革を目指して、中学校の特に理科の教育はもう少し改革が必要なんじゃないかなと思っているところなんですが、そういった初等中等教育における理科人材の育成ということについても一点、お言葉を頂戴できればなと思います。お願いします。
○田中参考人 まず、名前のことなんですけれども、東京科学大学は評判は二分しておりまして、どちらかというと年齢の高い方にはそれなりに評価はいただいているんですけれども、若い方には余り評判がよろしくないんですね。それはなぜかと考えてみますと、やはり科学に対するイメージがかなり違うんじゃないかなと思うんですね。
昔の、昔というか、ある程度の年齢、私もそうですけれども、年齢以上では、「鉄腕アトム」とか「ドラえもん」とかそういうので、科学というのは何となく身近で幸せにしてくれるものというイメージがあったと思います。ところが、若い人たちは、環境汚染とか、何か科学の負の面にかなりやはり注目するようになっているというふうに考えておりまして、この科学のイメージを一新したいと考えて、東京科学大学という名前にして頑張りたいと思っております。
それから、あともう一つ、理科人材ですけれども、まさに今申し上げたとおりで、やはり、科学というものがすばらしいものなんだということを示す、そういうことを東京科学大学としてやっていくことが初等中等教育にもいい影響を与えるんじゃないか。要するに、夢のあるもの、夢をつくっていくものなんだということを科学で示したいと思っております。
以上でございます。
○堀場委員 ありがとうございました。
終わります。
○田野瀬委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本(岳)委員 四人の参考人の先生方、本当に今日はありがとうございます。貴重な御意見をお伺いいたしました。
私は、大学の在り方をやはり検討するときには、お金の問題、経費の問題、これは国の責任です。ちゃんとそれを皆さんが心配ないように保障するのは当然だと思いますけれども、やはり、大学の自治、学問の自由という、憲法二十三条からくるこの大原則をまず第一に考える必要があると思うわけです。
改めてその原則がどのようなものかということで、この「註解日本国憲法」というようなものも最近学ばせていただいたんですけれども、日本国憲法は、一般的な思想の自由と区別して学問の自由というものをわざわざ書いているんだと。旧憲法にはそういうものはなかったんですね。旧憲法は、学問の自由というよりも国家のための学問という性格が強かった、こう書かれています。
なぜ学問の自由という形でわざわざ特記したのか。幾つか理由が挙がっていますけれども、その中に、学問上の進歩及び新発見は一般の常識的な世界観から見れば奇異に感じられることが多く、常に世間の常識的な見方から反対され、場合によっては迫害されるのであるが、やがて真理の力によって説得せずにはいなかったということが人類の歴史的経験である以上、この歴史的な経験を謙虚に尊重すべきであることとこの本には書いてあるわけですね。だから、世間的にはそれは何のための研究かよく分からぬようなことでもそれが大化けをする、そういうものが大体歴史の教訓なんだと。
その点でも、私は、やはりピアレビューというような形でちゃんと研究を評価するということは当然のことだと思いますけれども、この大学の自治、学問の自由に関する先生方のまずお考え、四人の参考人、順々に手短に聞かせていただきたい。
○千葉参考人 大変重要な部分であり、大学そのもの、大学の本質であるというふうに認識しております。それを守るために様々な施策で大学は努力をすべきだというふうに思っております。
○隠岐参考人 御質問どうもありがとうございます。
学問の自由について、本当に大事なことだと思っていますし、あと、先ほどちょっと、この機会をかりて資料にあったことを紹介させていただきますと、私の考えも入っていますので、十五ページを御覧ください。御覧になれる方は御覧ください。
現在、実は、世界中で学問の自由の後退ということが起こっているという認識があります。これは世界中の二千人以上の専門家を動員して行っている評価による、先ほども紹介した、学問の自由度指数、ちょっと指標と書いてしまいましたが、指数の結果です。二〇一二年から二〇二二年の間に多くの国が、このグラフの右下のところ、これは十年間で学問の自由度が後退したという国を示しています。日本はぎりぎり、かなり頑張っているという印象です。これが次第に悪くなると、例えば左下の方にある、一番悪いのは、たしか東アジアだと北朝鮮なんですけれども。
要は、何が言いたいかというと、学問の自由というのは、単なる大学だけの問題ではなくて、いわば、ある種の民主主義社会の自由の上限を測るものとして理解できるということです。そのような説がかなり出てきていまして、表現の自由の後退と学問の自由の後退はかなりの程度連動しています。
それですので、私は、研究を自由にするというのも大事だと思っているんですけれども、大学が自由な場である、つまり、気にせずに、私も今日、若くもないですけれども、ほかの先生方ほど経験のない身でここで発言させてもらえる自由、これが本当に、民主主義の国だなという実感を持っております。こういった形で、それぞれの立場から自由を示していけるような状態というのがやはり大学の関係者には必要ですし、もちろん、社会のほかのセクターでも同じように民主主義を守るために必要なことだと思っています。
以上でございます。
○田中参考人 学問の自由の根源的な必要条件は余裕だと思っております。ですから、新大学でも構成員が余裕を持てるようにというふうにうたっておりますけれども、余裕のためには財政的なものも必要になりますので、是非御支援をいただきたいと思っております。
もう一度繰り返しますけれども、やはり余裕のないところに発想の自由は生まれない、そういうふうに考えております。
○山崎参考人 皆さんとそんなに変わった意見を持っているわけじゃないですけれども、さりながら、今おっしゃったように、特に文系の一部だと紙と鉛筆があればできちゃうという考えもあるんですけれども、理系だとやはり環境がないとできないので、幾ら自由と言われても、環境はやはり自分で築かなきゃいけないです。それはやはり、競争的資金を取りに行かなきゃいけない。それはピアレビューなので、はやりでない研究をやると大体疎外されるんですよね。それは世の常なんです。認められない。というか、こんな変わったことをやって役に立つのみたいな感じになってしまうので。やはり我々のピアレビューする世界にもそういう自由度がない部分があるので、なかなか難しい問題。
根本に立ち返って、みんなで尊敬し合いましょう、認め合いましょうというのは、精神としてはあると思うんですけれども、現実にはなかなか難しい部分があって、さっき私が哲学とか宗教という話を持ち出しましたけれども、同じだと思うんですね。やはり誰かが守らないと自由は守られない、勝手にできるものじゃないなというふうに、学長経験者からとしてお答えさせていただきます。
以上です。
○宮本(岳)委員 学問の自由を否定される方はいらっしゃらないと思います。
余裕が必要だというお話もございました。本当に、基盤的経費で、運営費交付金で、余裕があるだけのお金を皆さんにたっぷりと保障するというのが本来の道だと思うんですよ。それをぎりぎりと、お金が欲しければこういうことをやれ、こういう話になっているから、なかなかトップダウンはあってもボトムアップが利かないということになっていると思うんですね。
それで、先ほど隠岐参考人が、ボトムアップが学術研究にいかに不可欠か、機会があったら語りたいとおっしゃいましたので、是非語っていただけますか。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
ボトムアップが本当に必要だというのは、二種類ありまして、一つは、恐らく研究者の方なら御存じかと思いますが、若い世代ほど新しいテーマとか変わった発想を持っているということは結構往々にしてあるわけです。もちろん、年配の方はないとは申しませんが、ただ、そういうのを経て、責任のある立場になっていらっしゃるから、余り奇抜なことをわざわざする必要もないということがあると思うんですね。
しかし、トップダウンで、例えば、でもうちの大学は今度この分野に力を入れるからというのを言われちゃうと、活躍の場がなくなる、減るような若手が出てこないかということも思うわけですね。なので、ボトムアップで、今度、今これが面白いんだと。
それから、例えば、ダイバーシティーだとかという、ちょっと研究じゃないように思われるかもしれないですけれども、結構今の科学の研究というのは、倫理的責任感というのを大事にするような雰囲気というのがあるんですね。そういうものを取り入れて新しい発想でやっていこうというような若手というのがいまして、そういうことが例えばそのときの大学の方向に合わなかったりということが起きると、その若手は外に出ていってしまうということになるわけです。
私は文系と理系の間の領域にいるんですけれども、やはり日本でなかなかできない研究があるなと。あと、さらに、人社系の方になると、明らかに、例えばマイノリティーの問題でとか、LGBTQだとか、LGBTQの健康なんというと文理両方になりますけれども、そういった問題を日本で研究しづらいので外国で就職したというふうな例が私の周りにあります。なので、ボトムアップで、どういう動きがあるかというのを上げていくというのがもっと強くならないと、大学としても豊かにならないというふうに私は思っています。
二つあると申したもののもう一個なんですけれども、もう一つはイノベーションの関連のことでして、研究とイノベーションを私はちょっと分けているんですけれども、イノベーションをするためには雑多な意見があった方が跳ねるものが出やすいという理論がございます。それは、いわゆる科学技術を使ったイノベーションでも、そうじゃないイノベーションでもそうなんですけれども。
欧米の最近のイノベーションの動向で、例えば、ボトムアップの、市民との対話を使って新しいアイデアをつくるだとかというふうなことがかなり奨励されているんですね。実際に、地球温暖化によい措置を取るためには、やはり、それこそ意思形成が不可欠なので、トップがCO2削減と言って走っても、結局国民がついてこなかったらうまくいかなくて、地球の環境にもダメージですので、そういった状況を起こさないためにも、イノベーションをするためには、ボトムアップの意思決定というか、ボトムアップでいろいろな知見を入れていって研究につなげることが不可欠だという議論がございます。
ですので、新しいことをするために、両方とも同じことを言っていますが、研究のためには研究者だけが大事じゃないという話もしています。研究者の中でもボトムアップが必要ですけれども、面白い研究のためには、実は市民の方、外部の方にも関わっていただくということは望ましくて、それは特にイノベーションのために生きるというふうに理解しております。
○宮本(岳)委員 ボトムアップがいかに大切か、必要か、よく分かりました。
今度のこの法案というのは、やはり、国立大学のありよう、これから先の国立大学が本当に国民の要請に応えていけるかどうかに関わる重大な法案ですから、真剣な議論、慎重な審議が必要だと思うんですね。
それで、四人の参考人の方々、いろいろ表現は違いますけれども、ボトムアップは要らぬとか、リーダーシップだけでいいという方はいらっしゃらないんです。どなたも、リーダーシップもボトムアップも必要だということをおっしゃる、重点はいろいろ差があると思いますけれども。
そういうときに、今もそういう努力をされていると思うんですね、各大学。ところが、リーダーシップというものを、じゃ、なぜ、最終的なリーダーシップをこれほどはっきりさせなきゃならないのか、そして、いざとなったら文部科学大臣が承認せずというような仕組みまで入れる必要があるのかと、大変私も不思議に思っておったわけでありますが、一つ思い当たるものがございまして。
実は、今年の八月二十五日に、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議というものが開かれております。防衛力の抜本的強化を補完して、それと不可分一体のものとして研究開発を進める、このことを閣議口頭了解して、文部科学大臣以下全ての大臣が参加をして、内閣官房で議論がされ、その中で、実は、要するに、全ての省庁は最終的には防衛体制の強化に協力させるということが話し合われているわけですよね。
ですから、やはり最後は、日本学術会議もそういう話でありましたけれども、デュアルユースという形で軍事研究に是が非でも協力させたいという政権の意向があるのではなかろうかと危惧するわけでありますけれども、この点について、隠岐参考人のお考えをお聞かせいただけますか。
○隠岐参考人 御質問ありがとうございます。
私はちょっとその点は詳しくはないのですが、ただ、確かに、こういうふうな体制にしますと、デュアルユースに何らかの例えば意見を持っている、そもそもそういう学長が選ばれづらくなっている現状はあるかと思うんですけれども、さらに、構成員が余り納得しない状態で学長がそういった方向を推し進めることのブレーキはないような構造だとは思っております。
その意味で、確かに、もしそういうことがあり得るとしたら、知り合いの自然科学の研究者でも、非常に、自分の分野の研究が自分の思想信条を超えた形で使われないかということを懸念している人はいますので、もしそのようなことになったら、かなり大学の中は混乱するのではないかということは危惧されます。
○宮本(岳)委員 最後ですけれども、あと残った三人の学長様、前学長様に、まさにデュアルユースという形で軍事研究をというこの要請について、皆様方はこれはやるべきとお考えか、そういうものはやはりありがたくないとお考えか、イエスかノーかでお答えいただけますか。
○千葉参考人 デュアルユースにつきましては、大変難しい問題だということは皆様御承知のとおりでございまして、科学技術において、一つの技術において、それをどちら側かということを区分けすることがほとんどのものはできない。要するに、それをどう扱うかという倫理観とか見識に関わっていることですので、それはまさに大学がしっかりとそこを考えていく重要な要素になっているというふうに思っております。
○田中参考人 一番問題となるのは、知らない間に使われていたということだろうと思うんですね。ですから、そういうことがないようなやはり仕組みを考えなければいけないと思います。
○山崎参考人 初めから軍事目的という名を打ってこの研究開発をということであれば多分どこの学長も反対するだろうと思いますが、過去の例を見ると、例えば、戦闘機のあれがテフロンになったとか、電波でいろいろするものがステルスになっちゃったとか、元々、例えばテレビの電波の二重を防ごうとか、いろいろな目的で民間で開発された技術ですよね。塗装でですね。それから、最近でいうとカーナビなんかもそうなんですよね。だから、そうはいいながら、上手に民生品にしっかり使われているものもあるので、微妙だなというのが私の立場ですね。
なので、最初から言われたらもちろんみんなで断ろうよというのがありますけれども、知らぬ間にと今おっしゃったけれども、知らぬ間ではないと思うんですけれども、民間ユースも考えると、そうでもないなと。巨額が投じられて、国民の皆様にその技術がしっかりと生活の中に入り込んでいくのであれば、それもありかなというふうに、微妙でございます。
お答えになっていないんですけれども、以上です。
○宮本(岳)委員 四人の参考人の先生方、誠にありがとうございました。御意見を踏まえて、慎重な審議が必要だと思っております。その決意を申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○田野瀬委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
次回は、明十五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会