衆議院

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第13号 令和7年5月7日(水曜日)

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令和七年五月七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 藤丸  敏君

   理事 上野賢一郎君 理事 古賀  篤君

   理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君

   理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君

   理事 梅村  聡君 理事 浅野  哲君

      安藤たかお君    大西 洋平君

      草間  剛君    小池 正昭君

      後藤 茂之君    佐々木 紀君

      塩崎 彰久君    鈴木 隼人君

      田畑 裕明君    田村 憲久君

      根本  拓君    長谷川淳二君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      福田かおる君    森下 千里君

      吉田 真次君    阿部 知子君

      池田 真紀君    大塚小百合君

      大西 健介君    酒井なつみ君

      宗野  創君    堤 かなめ君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      長谷川嘉一君    宮川  伸君

      山井 和則君    柚木 道義君

      阿部 圭史君    池下  卓君

      猪口 幸子君    福田  徹君

      森ようすけ君    沼崎 満子君

      浜地 雅一君    八幡  愛君

      田村 貴昭君

    …………………………………

   厚生労働大臣       福岡 資麿君

   厚生労働副大臣      鰐淵 洋子君

   防衛副大臣        本田 太郎君

   総務大臣政務官      古川 直季君

   厚生労働大臣政務官    安藤たかお君

   厚生労働大臣政務官    吉田 真次君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         中  裕伸君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     鳥井 陽一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       日向 信和君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   鷲見  学君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岸本 武史君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       井内  努君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 針田  哲君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 森田 治男君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 山本 茂貴君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     小池 正昭君

  大塚小百合君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  小池 正昭君     大西 洋平君

  阿部 知子君     大塚小百合君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 洋平君     塩崎 彰久君

    ―――――――――――――

五月七日

 従来の健康保険証を残すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇二四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇二六号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第一〇二七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇二八号)

 同(田村智子君紹介)(第一〇二九号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第一〇三〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇三一号)

 同(八幡愛君紹介)(第一一九二号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(新垣邦男君紹介)(第一〇三二号)

 同(福田淳太君紹介)(第一〇三三号)

 同(竹内千春君紹介)(第一〇四四号)

 同(菊池大二郎君紹介)(第一〇五五号)

 同(橋本幹彦君紹介)(第一〇六八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一〇九二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇九三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇九四号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第一〇九五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇九六号)

 同(田村智子君紹介)(第一〇九七号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第一〇九八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇九九号)

 同(三角創太君紹介)(第一二一四号)

 人権を保障する福祉職員の賃金と職員配置基準を引き上げることに関する請願(新垣邦男君紹介)(第一〇三四号)

 パーキンソン病治療研究支援及び医療費助成制度の改善に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第一〇四五号)

 同(尾崎正直君紹介)(第一〇四六号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第一〇四七号)

 同(小森卓郎君紹介)(第一〇四八号)

 同(宗野創君紹介)(第一〇四九号)

 同(寺田稔君紹介)(第一〇五〇号)

 同(中川宏昌君紹介)(第一〇五一号)

 同(上田英俊君紹介)(第一〇五六号)

 同(金子恵美君紹介)(第一〇五七号)

 同(田中健君紹介)(第一〇五八号)

 同(角田秀穂君紹介)(第一〇五九号)

 同(長友慎治君紹介)(第一〇六〇号)

 同(西川将人君紹介)(第一〇六一号)

 同(平口洋君紹介)(第一〇六二号)

 同(宮下一郎君紹介)(第一〇六三号)

 同(北神圭朗君紹介)(第一〇六九号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第一〇七〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第一〇七一号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一〇八〇号)

 同(鈴木貴子君紹介)(第一〇八一号)

 同(葉梨康弘君紹介)(第一一二三号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(馬場雄基君紹介)(第一〇五二号)

 同(坂本竜太郎君紹介)(第一一〇〇号)

 同(福原淳嗣君紹介)(第一一九三号)

 同(金子恵美君紹介)(第一二一五号)

 障害福祉についての法制度拡充に関する請願(酒井なつみ君紹介)(第一〇五四号)

 パーキンソン病の撲滅を目指すことに関する請願(田中健君紹介)(第一〇六四号)

 国立病院の機能強化に関する請願(西川将人君紹介)(第一〇六五号)

 同(杉村慎治君紹介)(第一一〇一号)

 同(安藤じゅん子君紹介)(第一一二四号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第一一二五号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第一一二六号)

 同(小山千帆君紹介)(第一一二七号)

 同(寺田学君紹介)(第一一二八号)

 同(八幡愛君紹介)(第一一二九号)

 同(山崎誠君紹介)(第一一三〇号)

 同(米山隆一君紹介)(第一一三一号)

 同(青山大人君紹介)(第一一五五号)

 同(荒井優君紹介)(第一一五六号)

 同(井坂信彦君紹介)(第一一五七号)

 同(石井智恵君紹介)(第一一五八号)

 同(石川香織君紹介)(第一一五九号)

 同(岡田華子君紹介)(第一一六〇号)

 同(岡本あき子君紹介)(第一一六一号)

 同(海江田万里君紹介)(第一一六二号)

 同(川内博史君紹介)(第一一六三号)

 同(吉良州司君紹介)(第一一六四号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第一一六五号)

 同(篠田奈保子君紹介)(第一一六六号)

 同(高松智之君紹介)(第一一六七号)

 同(たがや亮君紹介)(第一一六八号)

 同(堤かなめ君紹介)(第一一六九号)

 同(中谷一馬君紹介)(第一一七〇号)

 同(野間健君紹介)(第一一七一号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第一一七二号)

 同(福田玄君紹介)(第一一七三号)

 同(牧義夫君紹介)(第一一七四号)

 同(松下玲子君紹介)(第一一七五号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一一七六号)

 同(山岡達丸君紹介)(第一一七七号)

 同(笠浩史君紹介)(第一一七八号)

 同(新垣邦男君紹介)(第一一九四号)

 同(神谷裕君紹介)(第一一九五号)

 同(川原田英世君紹介)(第一一九六号)

 同(神津たけし君紹介)(第一一九七号)

 同(竹内千春君紹介)(第一一九八号)

 同(西川厚志君紹介)(第一一九九号)

 同(藤原規眞君紹介)(第一二〇〇号)

 同(升田世喜男君紹介)(第一二〇一号)

 同(松原仁君紹介)(第一二〇二号)

 同(柳沢剛君紹介)(第一二〇三号)

 同(屋良朝博君紹介)(第一二〇四号)

 同(柚木道義君紹介)(第一二〇五号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第一二一六号)

 同(亀井亜紀子君紹介)(第一二一七号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一二一八号)

 同(長友慎治君紹介)(第一二一九号)

 同(森田俊和君紹介)(第一二二〇号)

 同(山田勝彦君紹介)(第一二二一号)

 従来の健康保険証を使い続けられるよう求めることに関する請願(亀井亜紀子君紹介)

 (第一二一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

藤丸委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長山本茂貴君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣府食品安全委員会事務局長中裕伸君、消防庁審議官鳥井陽一君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官日向信和君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官巽慎一君、健康・生活衛生局長大坪寛子君、健康・生活衛生局感染症対策部長鷲見学君、労働基準局長岸本武史君、労働基準局安全衛生部長井内努君、保険局長鹿沼均君、防衛省大臣官房衛生監針田哲君、地方協力局次長森田治男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。酒井なつみ君。

酒井委員 立憲民主党の酒井なつみでございます。本日はよろしくお願いいたします。

 労働安全衛生法の法律の改正についてですけれども、まず冒頭、百日せきが国内において流行しておりますので、対策についてお伺いをしたいと思います。

 激しいせきを引き起こす百日せきの感染拡大が続いています。百日せきは、感染力が非常に高く、激しいせきが続く細菌性の感染症で、乳児期早期から罹患する可能性があり、乳児、特に新生児や乳児期早期では重症になり、死亡する場合もございます。

 資料一の新聞記事を御覧ください。三月に、東京都と兵庫県でそれぞれ、生後一か月の女の子が亡くなっています。どちらも治療薬が効きにくい耐性菌に感染していたとのことです。

 心より御冥福をお祈りします。また、御遺族に心よりお見舞いを申し上げます。命懸けで出産したお母さんのお気持ちを思うと、筆舌に尽くし難い悲しみだと拝察をします。

 下のグラフにあるとおり、百日せきは三月の後半から患者数は急激に増加をしており、全ての患者を把握するようになった二〇一八年以降で過去最多の状況となっています。さらに、本日の最新情報では、五週連続で過去最多、この一週間で二千百七十六人の届出があり、今年に入って累計一万一千九百二十一人と、既に昨年一年間の届出数のおよそ三倍となっていると報道されております。

 オーストラリアや欧米諸国など海外を見ますと、世界四十か国以上で妊娠後期の妊婦にワクチン接種を推奨しています。最近の厚生労働省の研究班により、国内でも、妊婦への三種混合ワクチン接種の安全性と乳児への百日せきに対する抗体の移行も確認されているとの報告もございました。

 日本産婦人科学会は、妊娠後期の妊婦に百日せき含有ワクチンを接種することで母体から乳児への移行抗体を増加させる、いわゆる母子免疫ワクチンが日本でも進むことを期待すると文書を出しており、私も同意します。

 日本においても妊婦への接種を推奨するなど、対策が急務だと考えますが、政府の取組をお示しください。

鷲見政府参考人 お答えいたします。

 百日せきは、二〇一八年一月から、感染症法に定める五類全数把握対象疾患として医療機関からの届出を受けているところでございます。先生御指摘のとおり、本年は第十七週時点で一万一千九百二十一例の届出を受けており、これは昨年の年間届出数、四千五十四例を超えていると認識しております。

 百日せき抗原含有ワクチンの乳児への接種につきましては、出生後の早期から百日せきによる重症化を予防することは重要であると考えておりまして、審議会での議論に基づき、令和五年四月より、予防接種法の定期接種における対象年齢を生後三か月から二か月に前倒したところでございます。

 一方で、三種混合の百日せき抗原含有ワクチンを妊婦へ接種することにつきましては、審議会におきまして、妊婦を対象とした臨床試験がなく、安全性が確立していないことから、引き続き科学的知見を収集することとされております。

 厚生労働省といたしましては、妊婦への接種につきまして、科学的知見を厚生労働科学研究等で収集した上で議論を進めるとともに、定期接種の呼びかけ、せきが持続する等、百日せきを疑う場合の受診や予防行動の呼びかけといった対応を継続してまいります。

酒井委員 定期接種は生後三か月から二か月に前倒しされましたけれども、今回のように、出生直後の新生児の死亡は防げないという状況になっています。そこに心を痛めて、妊婦さんへの接種を呼びかけるべきではないかという質問をさせていただいたところです。

 また、医療機関からは、三種混合ワクチンがなかなか入手しづらいという声も聞いています。厚労省に今朝問合せをしてみましたけれども、三種混合ワクチンは任意であるために、接種状況であったり流通状況を把握していないということでした。こちらにも課題があるというふうに思います。

 ワクチンの接種前の乳児の死亡そして重症化、これまで治療に使われてきた抗菌薬が効かないケースも各地で報告されています。ですから、ワクチン接種による予防が重要となります。

 資料二を御覧ください。現行の定期接種は、生後二か月から一歳代までの四回接種となっています。それ以降の追加接種は設定をされていません。赤線でマーカーをしていますが、日本小児科学会が推奨するスケジュールでは、就学前の追加接種と、十一歳から十二歳で定期接種としている二種混合を百日せきを含む三種混合へ変更するということを推奨をしています。

 政府は、この就学前の追加接種の定期接種化、それと十一歳から十二歳で打つワクチンを三種混合へと変更することを早急に検討するべきだと考えますが、厚労大臣に見解を伺います。

福岡国務大臣 御指摘がございました、就学前に現行の定期接種に加えて更に追加接種を行うことにつきましては、これまで審議会におきましても御議論をいただいておりまして、費用対効果が小さいことなどが課題とされているところでございます。

 また、学童期において定期接種化しております二種混合ワクチンを百日せきの抗原を含む三種混合ワクチンに変更することにつきましても、審議会において、重症化しやすい乳児に対する予防効果が大きくないということが課題とされております。

 いずれにしましても、引き続き、重症化しやすい乳児の予防に関する科学的知見を収集することとしておりまして、今後、収集した知見を踏まえた審議会での議論に基づいて、必要な対応を行ってまいりたいと思います。

酒井委員 費用対効果の面での検討はもちろん政府として必要だとは思いますけれども、感染拡大をしている局面において、どういうふうなメッセージを発出するかということはよく検討いただきたいと心からお願いを申し上げます。

 また、御家族から感染をするケース、そして医療機関で働く医療従事者がワクチンの免疫を獲得をすることも重要でして、妊婦や新生児を診察する医師や助産師を始めとする医療従事者へのワクチン接種を行うべきと考えますけれども、大臣の見解を伺います。

福岡国務大臣 医療従事者の方から妊婦であったり新生児への感染を予防することを含めました百日せきの院内感染対策につきましては、関係学会等のガイドラインにおきまして、妊婦であったり新生児を診察する医療従事者に三種混合ワクチン接種を行うことに加えまして、マスクの着用等の飛沫感染対策を行うことなどが示されているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、これまでも一般的な院内感染対策について周知をしてきたところでありますが、百日せきが飛沫感染により伝播することも踏まえまして、医療機関に対して、まずは適切なマスクの着用等の飛沫感染に対する基本的な対策に取り組んでいただくよう、引き続きお願いをしてまいりたいと思います。

 また、先ほどと繰り返しになりますが、重症化しやすい乳児の予防は大変重要だと考えておりますので、令和五年四月より予防接種法に基づく定期接種の対象年齢を生後三か月から二か月に前倒ししたところでございまして、引き続き着実に定期接種を実施してまいりたいと思います。

酒井委員 厚労省の研究では、妊婦さんへの接種によって、安全性が確認されていることや、生まれた赤ちゃんの臍帯血を検査をして、抗体がきちんとお子さんにも移行しているということが明らかになっています。私たちの納めている税金でこういった研究がされているということは、まずは周知をしていただきたいと思います。

 厚労省のホームページには、百日せきが感染流行しているという注意喚起はあるんですけれども、そういったページは御案内がありませんでした。そういったことも工夫をしていただいて、知っていれば予防ができたのにという、今、妊婦さんや出産早期の方々への意識啓発は是非力を入れていただきたいとお願いを申し上げます。

 次に、女性の健康課題に関する一般健康診断の検査項目等の検討について伺います。

 女性の健康課題として、骨粗鬆症があります。骨粗鬆症とは、骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。六十歳代の女性の三人に一人、七十歳代の女性の二人に一人が骨粗鬆であると言われています。女性にとっては身近な疾患です。

 資料三を御覧ください。厚生労働省第十四次労働災害防止計画の概要資料になります。中高年女性の転倒災害の発生率は職場においても二・五と極めて高くなっており、転倒災害のリスクは休業日数が一か月を超える重篤な災害になり得ると、厚労省も分析、説明をされています。

 このことから、労災予防としても骨粗鬆対策は重要であり、骨粗鬆検診を受けられるようにして、早期発見、早期治療を行うべきと考えています。

 資料四を御覧ください。健康増進法に基づく、自治体で行われる骨粗鬆症検診の実施率です。これは、全国で約六〇%にとどまっている状況です。また、検診の受診率は、二〇一八年から二〇二二年までが掲載をされておりますけれども、約五%と極めて低い状況になっています。

 厚労省は、健康日本21、第三次の計画で、二〇三二年度までに一五%まで検診の受診率を向上させると目標を設定していますけれども、どのように向上させていくのか、具体的な対策を伺います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 生涯にわたりまして生活機能の維持向上を図る観点から、個人が骨折のリスクを認識し、日常の活動を無理なく行えるよう支援することは極めて重要でありまして、健康増進事業におきましては、四十歳から七十歳、この女性を対象として、骨粗鬆症の検診を行っております。

 令和六年度より開始をいたしました国民健康づくり運動であります第三次の健康日本21におきましては、先生御指摘のように、新たな目標として、骨粗鬆症検診受診率に関しては、令和十四年度に一五%を掲げて周知啓発に取り組んでおります。

 具体的に申し上げますと、受診を促すために、ウェブサイトや女性の健康週間等のイベントを介して骨粗鬆症の予防について普及啓発を取り組んでおりますほか、健康づくりに取り組む企業や自治体の支援を行います運動として、平成二十三年から開始をしておりますスマート・ライフ・プロジェクト、このテーマに女性の健康を新たに追加するなどいたしまして、好事例の横展開を図っているところでございます。

 健康日本21、第三次の目標につきましては、令和十一年度を目途に中間評価を実施することとしておりまして、目標達成に向けた進捗状況や取組の評価、こういったことを行うこととしておりまして、更に効果的な推進を図ってまいりたいと考えております。

酒井委員 職域における健康診断での骨粗鬆症検診の実施率、受診率を把握しているでしょうか。

 また、安衛法では、中高年齢者の労災防止のための骨粗鬆症対策の視点は含まれているのか、伺います。

井内政府参考人 御指摘の骨粗鬆症に関する検診に関しましては、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の項目ではなく、事業者が任意で実施しているという形でありますので、実施率及び受診率は把握しておりません。

 なお、特に中高年齢女性については、骨密度の低下が中高年齢男性より顕著であり、転倒等による負傷の重篤度が高いという傾向があり、健康増進法に基づき、自治体が一定年齢の女性を対象として実施する骨粗鬆症検診の受診勧奨を職場において行うよう、リーフレットにより周知を行っているところでございます。

 また、高年齢労働者の労働災害発生率の高さは、業務に起因するリスクに、男女とも加齢に伴う身体機能の低下によるリスクが付加されることによるものと考えております。労働災害防止のためには、身体機能の低下を前提とし、作業環境の改善や適切な作業管理に取り組んでいただくことが重要であると考えており、今後、具体的な取組を指針に定め、事業者に促してまいりたいと考えております。

酒井委員 今答弁いただいたように、自治体で行われる検診を啓発しているということで、なかなか、職域における骨粗鬆症対策というところの視点が不足をしているなというふうに私は考えております。

 骨粗鬆症は、高年齢の方々の骨折の大きな原因であり、骨折に伴う長期療養、他の疾患の併発、ADLの低下、寝たきり、生きがいの喪失などにより、高年齢のQOLを大きく損なうとともに、社会的な支出を増大させるおそれのある疾患です。検査項目に骨粗鬆症検診を含めるように求めます。

 厚労省の検査項目等に関する検討会において、骨粗鬆症を検査項目に含めることを議論していることは承知をしておりますけれども、導入に至っておりません。労災防止の観点からも検査項目に加えるべきと考えますが、いつまでに決めるのか、大臣に伺います。

福岡国務大臣 労働安全衛生法に基づきます一般健康診断は、事業者に対しまして、常時使用する労働者を対象に年一回実施することを罰則つきで義務づけておりまして、必要がある場合には、その結果を踏まえ、労働時間の短縮等の就業上の措置を講ずることも義務づけているものでございます。

 このため、一般健康診断に新たに健診項目を追加する場合には、専門家や労使関係者による検討会、労働政策審議会での検討が必要になりますが、その際、検査によって検出できる疾患が、業務に従事することによって発生又は増悪するエビデンスがあるのかどうかといった観点から議論がなされるものというふうに承知をしております。

 御指摘の骨粗鬆症検診につきましては、女性の健康課題の一つといたしまして検討会の論点に上げられておりますが、現在行われております骨粗鬆症検診に関する研究、これの検討状況を確認後、改めて議論することになっておりまして、必要な準備を行った上で検討会において議論をしてまいりたいと思います。

酒井委員 人材不足の中、企業さんにとっても、骨粗鬆症による転倒などで一か月以上休業してしまうということは、大きな損失となるわけです。そして、この対策は、医療費や介護費を減らすということにも効果があるというふうに言われています。研究ではそういう発表もありました。ですから、やはり、厚労省としてきちんと労働者を守るということと、健康のためにできることというところで、しっかりと対策を進めていただくようにお願い申し上げます。

 時間の関係で、乳がんと子宮がん検診についても、項目の追加を必要と求める質問を考えておりましたけれども、要望にとどめさせていただきたいと思います。

 職場において健康診断を受けるときに、子宮頸がんや乳がん検診が受けられれば、機会損失を防げるというふうに思います。検診の受診率は低いですから、これからもそういった視点での取組を求めて、次の質問に移ります。

 職場のメンタルヘルス対策の推進についてです。

 この度の法改正で、ストレスチェックを全ての事業場で義務化することといたしました。労働者数五十人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合ですけれども、二〇二三年度の実績で三四・六%です。実効性を高めるためには、全国約三百五十か所に設置されている地域産業保健センター、地産保の体制拡充が欠かせませんが、施行までの三年間でどのように実効性を高めていくのか、行うことをお示しください。

井内政府参考人 ストレスチェックの実施義務の対象を五十人未満の事業場に拡大した場合に、新たに面接指導を受けることが見込まれる最大約四・五万人の労働者全員について、全国三百五十か所の地域産業保健センターにおいて、現在約八千人おられる登録産業医が対応することとしたいと考えております。

 実際に活動いただいている登録産業医は約六千人と承知しており、関係団体にも御協力をいただき、既に登録されている産業医の一層の協力や登録産業医の更なる拡充等をお願いしたいと考えており、成立後三年以内の施行に向けて、地域産業保健センターの体制の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、今後、高ストレス者の面接指導に効果的に対応するため、積極的に活動している地域産業保健センターの具体的な取組を収集し、好事例の水平展開を行う等、全国の地域産業保健センターの活動の活性化を図ってまいりたいと考えております。

 さらに、今後作成する五十人未満事業場向けマニュアルにおきましても、地域産業保健センターの効果的な活用方法についてもお示しし、施行までの三年間、周知を徹底してまいりたいと考えております。

酒井委員 全ての事業場での義務化ですから、周知をしっかりとしていただく、体制整備もしっかりと進めていただくようにお願いいたします。

 都道府県に設置されている産業保健総合支援センターの財源をお聞きしたところ、労働保険が財源となっているとお聞きしました。事業主へはこれまで以上の周知啓発を行い、労働者にとってももっと身近な場所となるべきだと考えています。特に、中小規模の事業所からの相談には、地産保が労働者にとって一元的なワンストップ窓口となり、医療機関や自治体、保健所等との情報共有、利用の促進を図ることを目指すべきと考えますが、大臣に見解を伺います。

福岡国務大臣 都道府県単位で設置しております産業保健総合支援センター、産保センターと呼んでおりますが、これは、産業保健関係者や事業者等を対象に、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策などの専門的研修等を無料で提供し、また、議員御指摘がありました全国三百五十か所に設置されております地域産業保健センター、地産保においては、産保センターの地域窓口として、地域の小規模事業者や労働者に対して、高ストレス者の面接指導などの産業保健サービスを無料で提供している機関でございます。

 産保センター及び地産保につきましては、都道府県等に保健所、医療機関、地産保、事業者団体等から成る連絡会議の場が設定されておりまして、情報共有を通じて相互の連携を深めるとともに、地産保自体の周知を進めているところでございます。

 こうした取組によりまして、医療機関、自治体、保健所等に産業保健に係る分野の支援の相談があった場合には、産保センターを介して地産保に適切につなげますとともに、産保センターや地産保に一般住民からの健康課題などの相談があった場合にも、しかるべき担当機関に適切につなげるようにし、引き続き、地域の事業主や労働者に身近に御活用いただけるように努めてまいりたいと考えています。

酒井委員 今大臣から答弁があったように、自治体との連携がますます重要になってくるかと思います。自治体や地産保にとっては、自治体や保健所と産業保健は別のものと認識を持っている方もいらっしゃるのではないかなと思います。働いている方も住民ですし、両者は連携を強化するべきだと思いますので、その視点での取組も三年間かけて行っていただくようにお願い申し上げます。

 また、厚労省の作っているメンタルヘルスポータルサイト、こころの耳も見させていただきましたけれども、このポータルサイトの活用、周知も促進をいただきたいと思います。

 続いて、高年齢労働者の労災防止の推進について伺います。

 今回の法改正により、高齢者の労災防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とします。資料五にあるように、厚労省は、労災防止対策、専門家による運動指導等、労働者の健康保持増進のために、エイジフレンドリー補助金というものを令和二年度から実施をしています。職場環境の整備には、事業所には金銭的負担も生じるため、このエイジフレンドリー補助金と一体での推進が欠かせないと思いますけれども、見解を伺います。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 高年齢労働者の労働災害の防止を図りますため、令和元年度に高年齢労働者の安全と健康確保に関するガイドラインを通達により策定いたしますとともに、令和二年度からエイジフレンドリー補助金を創設いたしまして、資金的余力のない中小企業に対する財政支援も組み合わせながら、事業者に対する取組の着手、定着を図ってきたところでございます。

 今般の改正におきまして、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善や適切な作業管理などを事業者の努力義務といたしまして、現行のガイドラインを参考に、法律に基づく新たな指針を策定することとしておりますが、これに併せまして、御指摘のとおり、エイジフレンドリー補助金による支援に取り組むことで、両者相まって、高年齢労働者の労働災害防止対策をより一層進めてまいりたいと考えております。

酒井委員 このエイジフレンドリー補助金は、昨年度は予定より早めに受付を終了していました。募集から受付終了までの期間を見ると、半年となっています。これはなぜかというと、交付事業者数は千二百四十者で、全ての中小企業の規模から見ると〇・〇三%にすぎないんですね。大変まだ活用は進んでいないです、活用事業者が少ないという状況ですけれども、予算に限りがあるということで、予算がちょっともうなくなってしまうということで早めに終了しています。

 効果を検証しつつ、拡大や更なる周知が必要と考えます。限られた予算の中で活用していただくわけですから、内容の改善も必要だと思います。例えば、このエイジフレンドリー補助金は、六十歳以上の労働者が常時一名以上雇用されていれば使える補助金ですけれども、人数をちょっと見直すなど検討が必要かと思いますけれども、大臣に見解を伺います。

福岡国務大臣 不断の見直しを行う必要性については、御指摘のとおりだというふうに思います。

 エイジフレンドリー補助金につきましては、補助金を交付した事業者へのアンケートを行いまして、労働災害防止効果を把握いたしますとともに、労働災害発生の状況を分析し、随時、これまでも補助内容の見直しを行ってきたところでございます。

 令和七年度におきましては、中小企業が専門家を活用しリスクアセスメントを行った上で、効果的な対策を講ずる際に要する費用の八〇%を補助する新たなコースを新設するなどによりまして、補助対象を拡大したり、また、予算規模の拡大も行ったところでございます。

 令和八年度以降についても、見直しを行いながら、効果的な使い道について、事業者への周知に努めてまいりたいと思います。

酒井委員 限られた予算の中で、多くの事業所に活用していただけるような取組を期待をしています。よろしくお願いいたします。

 続いて、資料六を御覧ください。資料六にあるとおり、年齢別の労働災害発生率を見れば、高年齢労働者に加えて、十九歳以下などの若年層も高くなっています。特に男性ですね。令和二年から令和五年の死傷年千人率でおおむね三・一から三・六と、五歳ごとの年齢群の中で高水準のまま推移をしていました。

 安全衛生教育を義務づけ、未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアルを策定をしていますが、現状では至っていないということです。実効性を高めると考えますが、今後の取組を伺います。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、若年の労働者は、経験年数が短いことから作業に慣れておらず、また危険に対する感受性も低いことから、労働災害に被災しやすくなっていると考えております。

 このような未熟練の労働者に対する労働災害を防止するため、厚生労働省におきましては、製造業を始めとする様々な業種におきまして、安全衛生の知識を分かりやすく身につけるための安全衛生教育マニュアルを作成し、公開しているところでございます。

 さらに、雇入れ時に実施することが事業者に義務づけられております安全衛生教育につきまして、基本的事項を短時間で網羅的に学ぶことができるような動画教材を開発をしまして、事業者が活用していただけるよう公開しております。

 こうしたことを通じまして、引き続き、事業者への指導等に取り組んでまいりたいと考えております。

酒井委員 次に、外国人労働者についても取り上げますけれども、大きな課題となっています。

 厚労省の第十四次労働災害防止計画では、八つの重点対策の一つとして、外国人の労働者等の労災防止の推進が上げられています。計画一年目の実施状況によれば、外国人労働者の死傷年千人率は二〇二三年実績で二・七と、依然、労働者平均二・三六より高くなっています。そして、特に改善の傾向も見られないというところが残念に思っていますけれども、製造業や建設業で働く人の多い特定技能や技能実習で突出していると言われており、言語や文化の壁も大きな要因だと考えられます。

 労働安全衛生教育を徹底するための通訳派遣や易しい日本語の研修、母国語に翻訳したマニュアルの整備、また、外国人労働者の相談窓口の整備などへの支援も強化するべきと考えますが、大臣に見解を伺います。

福岡国務大臣 御指摘がございました外国人労働者の災害発生率が高い要因といたしましては、就労する分野や従事する作業内容、経験年数が短いことによる未熟練といった元々あるリスクに加えまして、日本語の理解が不十分であること、コミュニケーション不足による職場の危険の伝達、理解が不十分なことといった、外国人の方の特性によるリスクが付加されることが大きいというふうに考えております。

 労働災害防止の責任は一義的には事業者にあるところでございますから、母国語への通訳や日本語の研修などは事業者が実施すべきものでございますが、厚生労働省といたしましても、事業者を支援するために、経験年数が短い労働者も含めた外国人労働者が作業に使用する機械等の危険性を直感的に理解し、不安全行動の抑止を図るためのイラストの開発を行ったり、また、母国語による安全衛生教育用のテキスト作成などの対策を行わせていただいているところでございます。

 さらに、東京に設置いたしました外国人特別相談・支援室におきまして、外国人を雇用する事業主及び外国人労働者からの、安全衛生に関し、全国からの相談に対応しているほか、外国人労働者が多い地域の都道府県労働局や労働基準監督署においては、外国人労働者からの相談に対応できる相談員を配置しているところでございます。

 こうした取組によりまして、外国人労働者の労働災害防止対策を更に進めてまいりたいと思います。

酒井委員 様々な取組をしてくださっていることも、今回の質問準備に当たって把握をすることができました。しかし、残念ながら、事業主さんや事業所にとっては、その対策が知られていないということも残念ではないかなと思います。しっかりと周知啓発、そして支援を強化していただくように引き続き取組をお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、厚生労働委員会の皆さんの御配慮で質問の時間をいただきましたこと、まず冒頭、感謝申し上げます。

 そして、私が本日取り上げたいのは、この委員会、労働安全衛生法の改正でございますから、PFOA、PFOS等の有機フッ素化合物の管理と、また、そこで働く方々の健康障害について取り上げさせていただこうと思います。

 私は現在、環境委員会に所属しておりまして、実は、五月の一日の日に、水俣病の慰霊祭、六十九年になります、最初の患者さんが一九五六年に確認されてから六十九年、来年七十年を迎えますが、その慰霊祭に水俣へと行ってまいりました。そこで感じましたことは、慰霊祭ですから、亡くなられた方への慰霊ではあるんですけれども、なおも続く健康被害に苦しむ方々について、ほとんど救済の手がないという現実であります。

 なぜそうなるのかということを考えると、実は、厚生労働省から環境省が分離して、主に水俣対策とともに発祥した省庁が環境庁、当時はでございますが、しかし、そのときに、厚生労働省が本来担うべき健康についての影響が私は大変手薄になったと思います。公害で認定される、極端なというか、症状の強い方は別ですが、長きにわたる水銀中毒がもたらす様々な症状について、私は医学的検証が本当に不十分だと思います。だから、いつまでも認定という線切りで分断されて、救済される人、されない人、多く裁判が起こる。もっと本当の意味で患者さんに寄り添って、その方を支援していく体制が私は改めて厚生労働省にも求められていると思います。

 そういう観点をお伝えしました上で、今回は、PFASの問題でも同じようなことがあろうかと思いますので、その観点から御質疑をさせていただきます。

 冒頭、大臣には一枚目を御覧いただきたいのですが、これは、PFAS、有機フッ素化合物の管理における水質に関する水道と環境の体系というのがございます。大臣も御承知のように、水道については、二年ほど前、環境省に移ることになって、ただ、今もって厚労省も水道水の管理等々には、共管してやっておられます。一方の環境中の公共用水や地下水については、これは環境省が測定することになっておりまして、その近年の測定が四月二十五日に、令和五年度公共用水域水質測定結果及び地下水質測定結果というもので発表をされました。

 大臣に一枚目をお示ししたのは、実は、PFOSとかPFOAは、二〇二〇年に水道管理項目となると同時に、環境についても同じような管理目標設定が作成され、要監視項目とただいまなっております。今後、水道については、水質の基準項目にもう一段持ち上げられるというところで今作業が進んでおりますが、そうすると、環境の方も伴って、例えば排水基準とかも出てまいります。

 極めて重要な発表だと私は思うので、大臣の御認識を問いたいのですが、開けて二枚目を御覧いただきますと、環境省による調査の推移から見る五十ナノグラムを超えるような地点が日本全国でどこほどあるかというものを経過表にしてみました。令和五年の近々のものは、測定した地域は二千七十八地点で、うち二百四十二がオーバーをしております。また、都道府県も三十九にわたり、二十二県でオーバーの観測がされ、そのほとんどが地下水というところになっております。

 これは令和三年から、先ほど言った要監視項目になりましたので検査数が拡大しておりますが、それのみならず、すなわち汚染の陽性スポットと見られるところの数が増えております。このことについて、まず大臣の御認識を改めて伺います。

福岡国務大臣 表にお示しいただきましたように、環境省において、本年四月二十五日に令和五年度の測定結果が公表されたところでございまして、その中におきまして、PFOAであったりPFOSの濃度が暫定的な指針値であります五十ナノグラム・パー・リットルを超えた地点が二十二都府県、二百四十二地点となったことについては承知をしてございます。

 この結果につきましては、水環境行政を所管します環境省が、水質汚濁防止法に基づき、都道府県等が公共用水域及び地下水の水質を調査した結果を取りまとめて公表したものでございまして、この調査結果に対しまして、厚生労働省としての評価をお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 私が伺いたかったのは、大臣、これを見て広がっていると思いませんか。ホットスポットになったところが多いという、本当に単純なことです。それゆえに、国民の多くが不安を持っています。

 また、数値につきましても、大臣にお手元、三ページ目の資料を見ていただきたいのですけれども、これは摂津、大阪で、最も高い二万六千ナノグラム・パー・リッター、地下水ですけれども、これまで測ってきた値の中で、環境省が測ったものとしても最も高い地下水の値が出ております。そして、実はもう既に、ダイキンという工場がありますが、そこではPFOS、PFOAは使用を止めております。しかし、地下水には高い値が残り、それは軽減もされておらない。すなわち、巡り巡れば、水、私たちの飲む水にも、土にも、大気にも、あらゆるところに広がるという実態で、それが健康被害を引き起こす可能性が高まったということと思っていただきたいです。

 私が冒頭申し上げたように、本日の質問は、健康被害がどうであるかということに焦点を合わせて聞かせていただきたいです。残留性が高いということなんです。消えない。フォーエバーケミカルと言われています、消えないから。そのことが及ぼす影響は、最終的には人体に来るわけです。だから、厚労省が関係ないとは全く言えないし、しっかりとここに目を凝らしていただきたいというのが一問目のお願いであります。

 そうした中で、食品安全委員会では、TDI、どのくらいの量を摂取すると体に毒性をもたらすかということで、昨年の六月二十五日に各々、PFOS、PFOA、二十ナノグラム・パー・キログラムという値を報告されました。これについては国民の中からも多くのパブコメが寄せられまして、アメリカに比べて大変高いとか、論文を恣意的に取捨選択している、すなわち、不都合な真実が書かれた論文は採用せず、自分たちで持ってきた論文でやっているのではないかというような指摘がございます。

 まず、食品安全委員会委員長にお尋ねしますが、私は、この前、環境委員会でもお尋ねしましたが、そういう国民からの声が出ること自身、最も信頼されるべき食品安全委員会の信頼性を損なうものなんだと思います。そして、なぜそういう声が出るかというと、九回、ワーキンググループといって議論をしたんですけれども、そのほかに、秘密会というか、明らかにされない会合を二十四回持っていた。このことが、もちろん議事録もないですし、メンバーは分かっていますけれども、要はやぶの中にしてしまうと、たとえ不正なことがなくても、李下に冠を正さずと申しますけれども、透明性が食品安全委員会の肝でございます。この二十四回について国民に明らかにしていただきたいが、いかがでしょう。

山本参考人 お答えいたします。

 御指摘の準備作業に係ります非公式会合の資料等の公開につきましては、参議院の環境委員会の理事会協議事項とされておりまして、川田議員を含む、当該委員会の理事会に対応して相談させていただいているところでございます。

 一方、準備作業は元々非公開との位置づけで調査会の委員に参加いただいているものであり、資料等を提出するに当たっては、委員の了解を得るなど、様々な作業が必要となっていることを御理解いただければ幸いです。

 しかしながら、できる限り速やかに提出できるよう、川田議員とも相談しつつ、対応させていただきたいと考えております。

阿部(知)委員 元々非公開にするから、余分な臆測というか、疑われるんですね。こういう科学的なことについて非公開にするというのは、私は、意味がない、ナンセンスだと思います。いろいろな意見があって、知見があって、それをオープンに、フェアに議論すればいいことなので、何か隠すからやましいと思われてしまうんです。

 食品安全委員会には、是非その当たり前のことを、これからもあることですから、私は、参議院の環境委員会に委ねてありますとか言わないで、食品安全委員会の信頼が問われているんだということを安全委員会委員長としては是非自覚していただきたいと思います。

 そして、どんな論文を取捨選択されたかという中で、私が委員長に是非お尋ねしたいのですけれども、今日、私が厚生労働委員会でこの問題を取り上げることとも深く関係しておりますが、住民等々の地下水や水道を通じた汚染はこれまでも各地で報じられ、吉備中央のような高い、活性炭を捨てた、そこから地下水を汚染して、それが水道に行ったなどの例もありますが、職業暴露、PFASやPFOAを作っていて、使っていて暴露された方々について、果たして、食品安全委員会では一体幾つぐらいの論文を精査されたでしょうか、委員長。

山本参考人 食品安全委員会の行う健康影響評価は、食品安全基本法第十一条において、人の健康に影響を及ぼすおそれがある生物的、化学的又は物理的な要因又は状態であって、食品に含まれ、又は食品が置かれるおそれがあるものが当該食品が摂取されることにより人の健康に及ぼす影響についての評価とされております。

 例えば農薬では、食品に残留する点については我々が評価しておりますが、使用する農家への影響につきましては農林水産省が評価しており、このような食品以外のリスク評価については、法令上、担当する省庁においてなされる仕組みとなっております。

 このように、食品健康影響評価自体は食品の摂取によるリスクを評価するものですが、当然、摂取した物質が体内においてどのように働き、どのような健康影響を示すかを評価するものでありますので、食品以外の経路から暴露したデータについても、有害事象との関係を評価するに当たり、有益なものも存在いたします。今回の評価におきましても、そのような職業暴露に関する文献が評価の参照文献に含まれております。

阿部(知)委員 今の質問は、評価された二百六十八件のうち、一体幾ら職業暴露の論文がありましたかということを伺っております。一つ、二つはあったでしょう。いかがですか。

山本参考人 この時点で数を全部挙げるということはちょっと難しくて、確かにそういう論文も評価の中には入っておりました。

阿部(知)委員 その程度のことでやらないでいただきたいんですね、それも隠れて。

 委員長、次のページを見てくださいますか。内閣府の食品安全委員会がるる述べられているリスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション。これは安全委員会の三つの柱ですよね。

 リスク評価のところでは、PFASに暴露される媒体におけるPFAS濃度についても、現時点では情報が不足しておりと。不足しているなら、集めたらいいじゃないですか。職業暴露の論文は、アメリカCDCでも既に九十二件、オーソライズされたものが出ております。私は、一生懸命、この間、これを国会図書館等々にも調べてもらいました。

 繰り返し、安全委員会で、例えばリスク管理は、高暴露者の把握等の必要性も含めと書いてあるんですから、必要性も含め、論文を見たらいいじゃないですか。なぜ見ないで結論を出すんですか。

 また、委員長は、すぐには答えられないと。そんな程度の認識で、申し訳ないけれども、健康評価はできないんだと思います。だって、一番高いところに暴露されるわけですよ。私は、そういう構え自身を国民が不信に思っているんだと思います。

 続いて、厚生労働大臣にお伺いいたしますが、今私が御紹介したのは、CDC、アメリカの健康管理のセンターと国立労働安全衛生研究所が、いわゆる査読の済んだ論文、二千五百七十四件から九十二件をピックアップして、これは職業暴露で、どんな職業の人がどんなPFAS、PFOAの濃度を示すか。

 例えば、私も読んでびっくりしましたけれども、スキーの板にも塗りますから、そこの労働者とか、もちろん、作っている製造工場の人もそうですけれども、私たちの身の回り、すごく多かったので、一九八〇年から二〇二一年までに、査読して、そして信頼に足ると思って分析に足るものが九十二件ございました。

 私は、安全ということを言うのであれば、最も高いところに暴露された人たちのことも含めてデータとして国民に伝えないと、高いか低いか、これは一点では言えません、血液は検査しませんとかいうのでは、国民の信頼は絶対にやってまいりません。

 大臣にお伺いしたいですが、今問題になっている労働安全衛生法のうち、これはPFAS、PFOAもそうですが、化学物質による健康障害のうち、いわゆる特化則、特別化学物質といって一番毒性が強かったり危険度が高いものによる健康被害以上に、実は、全体の、特化則以外のもので八割が、労働災害が起きている。すなわち、PFOS、PFOAは特化則の特別化学物質ではないですから、それ以外のところにある。そこで多くの問題が起きていて、そして既に論文も出ているということであります。

 今回の改正に当たっては、是非、厚生労働省として、そうした労働者別の被曝実態の論文、集めればありますから、お目通しをいただいて今後の管理に生かしていただきたいが、どうでしょう。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 PFOA、PFAS、PFOSに関する製造工程における人体への暴露に関しましては、例えば、過去の米国デュポン社の実態に関する論文などが著名であるというふうに承知をしております。そういった論文については私どもも拝読をしているところでございますが、今後とも、御指摘のような知見の集積を図っていくことが重要であると考えておりまして、様々なアンテナを張ってまいりたいと考えます。

阿部(知)委員 次にデュポンとか三井・ケマーズは取り上げますが、私が申し上げたいのは、それ以外の様々な職種の労働者の被曝を既にアメリカのCDCでは報告をしているということであります。是非、日本の疫学体制、これの立ち遅れと思いますし、それでは労働者を守れないので、担当部局としてもよろしくお願いしたいですし、論文については必要であればお届けいたしますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 今御答弁のありました、次の資料を見ていただきますが、PFOAの暴露について、実は、PFOAは、もちろん食品や水からも来ますけれども、工場等の過程では、空気、そして、水に溶けやすいので、飛び散って液化状になったもの、それが皮膚から吸収される、あるいは手にしたものから吸収されるという三つの経路がある。これは厚労省の方でも化学物質の管理においてこういう分類をしていらっしゃいますよね。吸入と、皮膚と、そして食べる、これは職場でもこういう分類をしているわけです。各々、どの物質がどのルートが多いかということもやってございますが、PFOAとて同じであります。

 今、高い被害が報告されているのは、PFOA等々の、最後の洗う過程というんでしょうか、使った器具を洗う過程で非常に濃い濃度のものを吸ってしまう、つけてしまう、手についてしまう等々で高濃度があると言われています。

 下にお示ししたのは、静岡の、いわゆる、今は三井・ケマーズという会社になっておって、元々デュポンの子会社というか関連会社でありましたが、デュポンはアメリカのワシントン工場とかいろいろなところで労働者のPFAS、PFOA、ここは特にPFOAです、濃度を測っております。

 ここにお示ししたのは、二〇〇四年から、そして日本では清水工場の二〇〇八年、九年、一〇年のものの中央値を述べてございますが、実は、二〇〇八年の最高値は八千三百七十ナノグラムでした。極めて高い。平均値で二千四十五、そして、これが八、九、一〇と続いております。二〇〇〇年にも同様な調査をしたところ、五千七百とか千五百とか三千とか、これは最高値というか個人値であります。いずれにしろ、私たちが日頃目にするものと違うオーダーのものがここには示されていて、そのことが後々どんな健康障害を及ぼすかを見ることが労働者の安全管理なんだと思います。

 大臣は、まだ大臣じゃなかった頃なので恐縮なんですが、令和四年に労働安全衛生法の改正があったときに、がんなどの遅発性の病態についてもフォローしていくという改正でありました。果たして、現在、PFOS、PFOAについて、こういう高い濃度を示す、示した、かつてでもあると思います、方について、遅発性の、そうしたフォローはなされているんでしょうか。恐縮です。お願いします。

井内政府参考人 現在でございますが、御指摘のPFOA、PFOSに関しましては、リスクアセスメント対象化学物質としておりますので、そのような個別の検査等の設定というのはございません。

阿部(知)委員 そうすると、何のために労働安全衛生法を改正したんですか、令和四年。リスクアセスメントはやって当然なんですね。危険物質にセーフティーデータ、安全データシートをつけて、そしてラベルを貼って、プラス、リスクマネジメントをして、それが体に入らないように、労働者の健康を害さないようにするわけです。でも、それだけじゃないんです。これは蓄積性があって、過去からそこに消えない物質としてあるので、そのことが発がん性を誘発するのではないかと言われているんです。

 自分たちがやった労働安全衛生法の改正にまともに向き合っていただきたい。なぜ今までそういう検査がなされないのか。極めて、私は本当に不誠実だと思います。

 続いて、もう一つですね。今のは三井・ケマーズですが、デュポン系ですね、もう一つはダイキン。先ほども取り上げましたが、これは大阪、摂津ですね。

 ここの労働者と周りで農業をやっている方と住民を三つに分けて調査したのが、次のインダストリアルヘルスという雑誌に最近パブリッシュされたものであります。ここでは、元作業員あるいは現作業員の血中の値は百九十二・六、農業をやっている方は七十・二、一般住民は五・〇。ここに明らかに差があるんです。一般住民と、土で野菜とかを作っている人、そして働いている人。

 私は、こういうデータこそ必要なんだと思うんですね。その地域の住民と、そして土をいじる人、漁に出る人もいるでしょう、プラス、中で働く人。今本当に深刻なアスベストの問題も、こうやって、工場の中、工場の外、工場で働いていた人、いずれも関係していました。汚染というのはそういう連鎖の中にありますので、このデータは、現及び元従業員が百九十二、高いんです、残存しているんですね。そして、この方たちをきっちりと健康フォローをすることが、いわば使っていた会社の役目だし、それから厚生労働省の役目だと思うんです。それで、血中濃度の半減期も、吸ったものと食べたものと皮膚からのものと、恐らく私は違いがあると思います。そういうデータも必要になります。それが労働者の安全管理だということだと思います。

 大臣には、私の御指摘、次のページを見ていただきますと、化学物質による健康障害防止対策等の推進、今回これが改正にかかっています。この中でPFOSとかPFOAは、GHSといって、一定の危険性のある物質、有害性が確認された化学物質としてリスクアセスメント対象物にもなっています。現状、このリスクアセスメントは五八%くらいしかなされていません。これは決めてもなされていない。

 そして、アセスメントの徹底と同時に、かつて暴露した方々の健康問題にしっかりと会社とともに相談して向き合って、データを私は残していただきたい。一つ一つ闇に葬らないで、それが労働者を守ることになるので。いかがでしょう、大臣。

福岡国務大臣 御指摘の調査研究は、京都大学の名誉教授の小泉昭夫先生らが工場の従業員らを対象に健康調査を行われたものであるというふうに承知をしています。

 この論文におきましては、PFOAを取り扱う業務に関わっていたと見られる元及び現従業員五人の血清中のPFOA濃度は、PFOAの取扱いをやめた後十二年経過しても高い値を示していたこと、これら元従業員、現従業員五人のうち三人に間質性肺疾患の症状又はその兆候が見られたこと、一方で、肺でのPFOA粒子の存在は確認されていないことなどから、PFOA暴露と間質性肺疾患の発症メカニズムの関係は明確ではなく、更なる研究が必要であることなどが報告されているというふうに承知をしています。

 今後も、いろいろなそういった調査についてはしっかり注視していく必要があると思っています。

阿部(知)委員 大臣の御認識のとおりです。でも、こういうデータが厚労省から出てこないということが、私は労働安全衛生行政としておかしいと言いたいんです。

 そして最後に、消防士の皆さんとそれから米軍基地で働く日本人従業員の問題を質問させていただきます。

 お手元の資料に令和六年PFOS等の含有消火薬全国在庫調査というのがあって、PFOSの方は既にもうない、ゼロですけれども、PFOAの方は、消防機関においても自衛隊においても、四万リットル、片っ方は、消防では七万リットル。すなわち、今も消防士さんたちは、一旦事あれば、こういうものを使わなくちゃいけない。なるべく使う順位をずらしますけれども、山火事とか災害が大きいときは、手元にあるものは使わなくちゃいけない。そこで、当然、暴露の問題が不可避に起きるわけです。

 このことについても、アメリカのCDCでは、こうした消防士さんたちの血中濃度の測定と、必要であれば、がん登録。がん登録というのは、がんになっているからじゃないんです。その後ずっとフォローしていくためのがん登録をしているということがCDCの報告であります。

 時間の関係でもう一つ言ってしまいますと、もう一つは、沖縄における全駐労、日本人従業員も米兵と同じように消火薬を使います。米兵については血中濃度の測定もなされますが、日本人従業員については、まだリストアップの段階です。

 この二つについて、恐縮です、まとめて御答弁ください、各々。

古川大臣政務官 お答えいたします。

 PFOSの血中濃度と健康影響の関係性については、どの程度の血中濃度でどのような健康影響が個人に生じるかについては明らかになっていないと承知しております。

 消防庁では、防護服や空気呼吸器の確実な着装など、消防隊員の安全管理上の留意事項を示した安全管理マニュアルを全国の消防本部に通知すること等を通じ、各消防本部において、労働安全衛生法等を踏まえ、適切な安全管理に努めていただいております。

 また、規制対象のPFOSを含有する泡消火薬剤を保有する消防本部に対し、非含有泡消火薬剤への切替えを要請しており、各消防本部において適切に対応を進めていただいているものと認識しております。

 関係省庁の検討状況を注視しつつ、引き続き、労働安全衛生法等を踏まえ、消防隊員の継続的な健康管理が図られるよう、関係省庁と連携して取り組んでまいります。

本田副大臣 お答えいたします。

 御指摘のPFAS血中濃度の測定につきましては、現時点でどの程度の血中濃度で健康影響が生じるか明らかになっておらず、血液検査のみをもって健康への影響を把握することは困難であるものと認識をしております。

 在日米軍基地に勤務する駐留軍等労働者に対しましては、一般の労働者と同様に、労働安全衛生法等の国内法令に従い、定期健康診断のほか、有害な業務に従事する者に対する特殊健康診断を実施しております。

 防衛省としましては、引き続き、関係省庁の検討状況を注視しつつ、必要に応じて適切な対応をしてまいります。

阿部(知)委員 特殊健診にはPFOSもPFOAも入っておりません。なぜ両方とも測らないでそういうことを言うんですか。守ってください、隊員を。

 終わります。

藤丸委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 労働安全衛生法の前に、年金法案の提出時期、そして障害年金の不支給について伺います。

 年金法案は、与野党で決めた重要広範議案、今年の最重要議案の一つであります。ただ出せばよいのではなくて、今国会中に衆議院と参議院を通さなければ意味がありません。

 大臣に伺いますが、年金法案の提出はいつになりますでしょうか。

福岡国務大臣 年金の改正法案につきましては、先日の与党の部会での御議論を経て、法案提出に向けた次の党内手続に移るものというふうに承知をしております。その党内の審議のスケジュールについては各党でお決めいただくことでありますが、担当大臣である私からも、これまでも幾度にわたりまして、党幹部に対して、党内の調整を速やかに進めていただくよう依頼をし続けているところでございます。

 引き続き、各方面での御理解を得て、最大限の努力を重ねて、できる限り早期に法案を提出できる環境整備に努めてまいりたいと思います。

井坂委員 参議院選挙や衆参ダブルが終わった後、秋以降は政局が流動化してしまって、こんな難しい法案は二度と通らない可能性があります。やはり、今国会で法案を通せるタイムリミットまでに出していただかなければ意味がありません。

 会期末から逆算して、衆議院と参議院で最低二週間ずつは審議が必要なので、遅くとも来週中には法案提出しなければ、今国会で年金法案は成立をいたしません。来週中に必ず年金法案を提出すると約束していただけますか。

福岡国務大臣 国会において早期に提出をするように御要請をいただいていることについては十分認識をしております。

 そういったお声も受け止めながら、私どもとしても、各党において速やかに法案審査をしていただけるようにお願いをさせていただいているところでございまして、引き続き、そういう努力を重ねてまいりたいと思います。

井坂委員 元々、年金法案の目玉は、就職氷河期世代以降の全ての現役世代の年金額を底上げする措置でありました。しかし、自民党内の議論で、この一番大事な目玉の部分が抜かれてしまっています。

 来週中に年金法案が提出をされれば、我々は、与野党で協議をして、就職氷河期、現役世代の年金底上げをもう一度入れ込んだ形で修正して法案を通したいというふうに考えております。議論や批判、与野党共に受け止めて、何としても、就職氷河期世代以降全ての現役世代の年金額を底上げしたいと我々は考えております。

 逆に、もし来週中に法案が提出されなければ、政府・与党には政権担当能力がない、社会保障の運営能力がないと判断し、厚生労働大臣の不信任、そして、野田代表は総理の不信任もあり得ると発言をしております。

 それだけでは済まず、七月の参議院選挙では、就職氷河期と現役世代の年金三割減を放置して底上げを阻止しているのは自民党の参議院議員だ、もう自民党の参議院議員を倒せ、こういう選挙になりますから、是非、そうならないように、必ず来週中に年金法案を提出をしていただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、障害年金の不支給の問題について伺います。

 共同通信の四月二十八日のニュースで、障害年金を申請して二〇二四年度に不支給と判定された人が、二三年度の二倍以上に急増して約三万人に上ると報道されています。

 参考人に伺いますが、障害年金の不支給が二〇二四年度に倍増したのは事実なのか、理由は何か、お答えください。

巽政府参考人 お答えいたします。

 障害年金の認定件数等につきましては、日本年金機構で集計を行った上で、障害年金業務統計として毎年九月に公表しておりまして、令和六年度の数値はまだ集計を終えていないと承知しております。

井坂委員 平時ならともかく、不支給が倍増しましたとあそこまで大々的に報道されて、九月まで実態把握せず、九月になったら、やはり不支給が倍増していましたでは、これは済まされない話であります。

 これは大臣に伺いますけれども、支給されるはずの障害年金が厚生労働省の判断で支給されなくなるということは、障害者にとって死活問題です。サンプル調査でも何でもいいので、不支給が本当に倍増したのかどうか、速やかに調査をしていただけませんでしょうか。

福岡国務大臣 障害年金の障害等級の審査に当たりましては、提出された診断書等を基に、それぞれの障害の状況や日常生活の影響等につきまして、障害認定医の意見も踏まえ、厚生労働省が定めた障害認定基準に当てはめ、個別に判断を行うこととしておりまして、こうしたルールにのっとって認定が行われているものでございます。

 障害年金の認定件数等につきましては、日本年金機構で集計を行った上で、障害年金業務統計として毎年九月に公表しておりますため、令和六年度の数値はまだ集計を終えておりませんが、御指摘ありましたように、様々報道もございました。令和六年度の認定状況について、抽出して調査を行うように指示をさせていただいたところでございまして、まずはその実態把握を行ってまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 今回、報道や社説では、障害年金センター長が新しくなって要件が厳しくなった、センター職員が判定する医師に不支給になるように誘導している、判定の客観性を担保すべきだ、こういうふうに書かれております。また、当事者団体は、障害年金の支給額について政府との協議を求めておられます。

 この不透明な基準による不支給というのは、これはもう支給額が少ない以前の問題、支給額ゼロということでありますから、以前の問題であります。また、国連の障害者権利委員会も、二〇二二年に日本政府に対して、障害年金の支給額について当事者団体と協議をすることというふうに勧告をしています。

 大臣に伺いますけれども、障害年金の判定基準、そして支給額について当事者団体と協議をしていただけないでしょうか。

福岡国務大臣 今般の障害年金に係る報道を受けまして、五月一日に、全国手をつなぐ育成会連合会が障害年金の判定に関する声明を公表し、今回の報道に関する事実確認と結果の公表等を求めていることについては承知をしております。そのほかの団体様からも様々な御意見があるというふうに承知しています。

 現時点で同団体からの直接の御連絡はいただいておりませんが、声明の内容についてもよくお話を伺うように事務方に指示をさせていただいているところでございます。

井坂委員 単に各団体から意見を聞く、ヒアリングをするというところを超えて、今ある年金部会というのは、やはり、先ほどお話をしたように、将来世代の底上げとか、あるいは厚生年金の適用拡大とか、三号被保険者とか、在職老齢年金とか、本当にいろいろなテーマがあって、この障害年金のことを話し合う時間がほとんど取れていないんです、実際に。また、今ある部会のメンバーの方は、これは必ずしも障害年金だけにお詳しい方ではありません。

 そこで、前回、高額療養費で専門委員会をつくっていただいたのと同じように、障害年金の議論をする会議体をこの際設けていただいて、そこに当事者団体が入っていただくという形をお願いをしたいのですが、まず御検討いただけますでしょうか。

福岡国務大臣 今御指摘ありましたように、どのような形で実効ある御議論がいただけるか、その在り方も含めて検討はさせていただきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 是非、高額療養費のときみたいに後手後手で結局やらざるを得なくなったということがないように、先に御判断をいただければというふうに思います。

 それでは、続いて、労働安全衛生法について伺います。

 今回の法改正では、労働安全衛生法の保護対象を労働者と同じ場所で作業する個人事業主に限定をしています。

 大臣に伺いますが、これは別に労働者と同じ場所でなくとも、労働者と類似の作業をしている個人事業者は労働安全衛生法の保護対象、規制対象とすべきではないでしょうか。

福岡国務大臣 労働者と異なる場所で作業する個人事業者等を法律に基づき保護の対象とすることにつきましては、仕事を注文する者の管理下にない、労働者と異なる場所においてまで、かつ、労働契約に基づく指揮命令関係もない中で、個人事業者等を保護する責任を注文者に負わせることが適当かどうかといった観点での課題がございまして、法令による保護、規制の対象にすることについては慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

 もっとも、個人事業者等が労働者と異なる場所で就業する場合につきましても、注文者が作業場所を指定するなど、注文内容が作業上の安全衛生に影響を及ぼすこともございます。

 このため、労働安全衛生法に基づきまして、注文者に対して、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないような配慮が適切に果たされるように、業所管官庁であったり関係団体とも連携しながら周知啓発に努めてまいりたいと思います。

井坂委員 大臣、慎重な検討がというふうにおっしゃいましたが、しかし、その検討の対象範囲内には、保護対象や規制対象にするということも排除せず、そこまで含んで検討はしていただけるということでよろしいでしょうか。確認だけお願いします。

福岡国務大臣 そういったことも含めて検討は進めてまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 次に、プラットフォーマー規制について伺います。

 安全衛生分科会の報告では、プラットフォーマーを含めた新たな働き方規制を諸外国の例も参考にしながら検討というふうに書かれています。

 ここで問題になるのが、例えば、配達などを行う個人事業主をプラットフォーマーが集めて、業務支援のためのアプリですよといってアプリを皆さんに持たせて、プラットフォーマーがその仕事の場を提供している、こういうパターンであります。

 アプリが、よくあるのが、AIとかを使って、各個人事業主、配達トラックを運転する個人事業主に仕事を割り当てて、あなたは荷物を何個持って、このルートを通って配達しなさいよと。しなさいよとは書いていないですけれども、推奨の形は取っておりますけれども、事実上、それ以外のことは許されないような表示がなされる例が多くあるというふうに聞いております。

 その結果、何が起こるかというと、要は、個人事業主といいながら、物すごい荷物をアプリの指示どおり持たされて、車のバックミラーが見えないぐらいトラックに荷物を積まされて、大変危ないんです、でも、それだけ全部積まないととても時間内に配り終えられないから、全部積んで、バックミラーが見えない状態で配達をしているんですと。こういう現状があるというふうに伺っております。

 そこまで来ると、アプリで業務支援というていは取っておりますけれども、プラットフォーマーが安全上問題のある仕事の振り方を個人事業主にしていると言っても過言ではないと思います。

 大臣に伺いますが、こうしたアプリによる業務支援の形を取って個人事業主の業務をコントロールしているプラットフォーマーも、労働安全衛生法の規制対象にすべきではないでしょうか。

福岡国務大臣 今、例を挙げられましたが、一口にプラットフォーマーといいましても、その態様は様々ございます。

 例えば、プラットフォーマー自らが受注者に仕事を請け負わせている場合においては注文者に該当し、労働安全衛生法に基づき、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならないこととなります。

 また、今回の改正で創設されます個人事業者等の災害報告制度におきまして、個人事業者等の災害発生場所における直近上位の注文者などが労働基準監督署への報告主体となることが想定をされておりまして、プラットフォーマーも、これに該当する場合には報告義務を負うこととなります。

 一方で、プラットフォーマーが利用者とサービス提供者をマッチングする場を提供しているのみであるなど、注文者に該当しない場合においては労働安全衛生法上の責務は生じませんが、アプリを通じた業務支援等が安全衛生に影響を及ぼすことも十分あり得ることでございます。

 このような場合には、安全衛生上必要な配慮を行っていただくことが重要だというふうに考えておりまして、改正法の成立後に、その趣旨をガイドラインなどによってお示しし、プラットフォーマーの事業団体などへの周知にも取り組んでまいりたいと思います。

井坂委員 ガイドラインや周知ということでお答えをいただきましたが、今年の六月にILOの総会が開かれて、そこでプラットフォーマー規制の議論がされるというふうに聞いております。

 最初に私が御紹介した分科会報告のとおり、やはり諸外国の規制の例も参考にしつつ、このプラットフォーマー、もちろんいろいろなケースがありますけれども、法律が想定していなかったことが今起こっていますので、日本でも法規制も含めて検討すべきではないでしょうか。

 最後、一言お願いします。

福岡国務大臣 御指摘ございました諸外国の例についても、しっかり注視してまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 次に、ストレスチェックについて伺います。

 労働者数五十人未満の事業所はストレスチェックの結果報告の義務化を検討できないか、また、義務化する前の間も、ストレスチェックを実施していない事業者の確認、そして、その監督や指導を徹底をしていただきたいと思いますが、参考人、いかがでしょうか。

井内政府参考人 現行の五十人以上の事業場にはストレスチェック実施結果を労働基準監督署に報告する義務が課されておりますが、有識者検討会及び労働政策審議会の検討結果を踏まえまして、負担軽減の観点から、五十人未満の事業場には課さないということとしております。

 その中に当たりましても、ストレスチェックが適切に実施されるよう、法案が成立した場合には、施行に向け事業者への周知を徹底するとともに、施行後、五十人未満の事業場に対し自主点検調査票を送付し、回収した結果を基に労働基準監督署が管内の未実施事業場を把握し、それを基に周知、指導を実施することを検討しております。

井坂委員 是非、未実施事業者への指導も徹底をしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、ストレスチェックの結果などのプライバシー保護に監督行政としてどう取り組むのか、また、労務人事部署のない中小零細企業に何らかの個別支援を考えていただけないか、お伺いをいたします。

井内政府参考人 労働安全衛生法により、医師などのストレスチェックの実施者が労働者本人の同意なくストレスチェックの結果を事業者に提供することは禁止されております。また、事業者は、実施者に提供を強要したり労働者に同意を強要するなど、不正な手段によりストレスチェックの結果を取得してはならない旨を通達で示しております。

 加えて、ストレスチェックや高ストレス者の面接指導の実施の事務に従事した者は、労働安全衛生法により守秘義務が罰則で課せられ、ストレスチェックの実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないということとなっております。

 これらの守秘義務等をストレスチェックに関わる者に周知するとともに、違反等の不適切な事例については指導を行ってまいりたいと考えております。

 中小企業の支援に関しましては、義務化に当たりましては、中小企業がストレスチェック制度を円滑に実施できるよう、施行までの十分な準備期間を確保した上で、高ストレス者の面接指導を無料で行う地域産業保健センターの体制整備、中小企業における実施体制、実施方法についてのマニュアルの整備等の対応を行うこととしてまいりたいと考えております。

井坂委員 あと、労働者がストレスチェックを受けなかったことや、あるいはストレスチェック及び面接指導の結果を理由とした不利益取扱いを防ぐために、こちらも周知と指導の徹底をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

井内政府参考人 事業者にはストレスチェックの実施義務が課されておりますが、労働者の受検については、メンタルヘルス不調で治療中のために受検の負担が大きい等の理由がある労働者もいることから、労働安全衛生法に基づく健康診断の受診とは異なり、労働者の側には受検する義務は課されておらず、個々の労働者が受検することは必ずしも強制されないものでございます。

 また、労働者が面接指導を申し出たことを理由とする不利益な取扱いを事業者が行うことについては、これを禁止する旨を労働安全衛生法第六十六条の十第三項に明記しております。

 このほか、ストレスチェックの実施に係る厚生労働大臣指針におきまして、労働者がストレスチェックを受けなかったことや、ストレスチェックの結果及び面接指導の結果を理由に労働者に対して不利益な取扱いを行うことについては、一般的に合理的なものとは言えないため、行ってはならない旨を規定しております。

 引き続き、こうしたことを周知徹底し、不適切な事例については指導を行ってまいりたいと考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 次に、高齢者の労働安全について伺います。

 今回の法改正で、高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置が事業者の努力義務になりました。

 高齢者の労災防止には転倒防止とか健康増進も重要ですが、やはり長時間労働が労災の増加につながるということは、厚労省のデータを分析した法政大学の研究などでも示されているところであります。体力が衰えている高齢者が毎日フルタイムで働けば、疲労や注意力低下で労災が起こりやすくなるのは当然であります。

 大臣に伺いますが、高齢者の労働安全のため、また、昨今問題となっている人手不足解消のためにも、高齢者が毎日フルタイムではなく、短時間や一日置きに働く、いわば全世代型のワークシェアをもっと進めるべきではないでしょうか。

福岡国務大臣 高年齢者の働く動機であったり、健康状態、加齢による身体機能の低下などについては、個々によって様々でございます。御指摘のように、短時間勤務であったり隔日勤務が合う方もいらっしゃれば、フルタイム勤務を希望される方など、ニーズは異なるというふうに承知をしております。

 このため、多様なニーズに対応した多様な雇用、就業機会を確保していくことが重要だと考えております。

 なお、高年齢労働者の場合、労働時間当たりで見ても、労働災害発生率が平均と比較して顕著に高くなってございまして、このことは、業種や職種によって異なる作業による労働災害リスクに加えて、加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因するリスクが付加されていることによるものだというふうに考えております。

 まず、こうした特性に配慮した作業環境の改善であったり作業手順の見直しなどを事業者の努力義務とした上で、高年齢労働者の労働災害防止のため、作業環境の改善等を行う事業主を支援する補助金などによりまして、対策の実施を促進してまいりたいと考えております。

井坂委員 今大臣が最後におっしゃった、高齢者の労災防止に係る費用を支援するエイジフレンドリー補助金、こちらは、転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース、それから、作業負担を軽くする機器を買う職場環境改善コース、労働者の健康増進のためのコラボヘルスコース、今年から新たに、リスクアセスメントを行う総合対策コースというのが設けられております。

 参考人に伺いますが、先ほど申し上げた話で、エイジフレンドリー補助金に、時短とかワークシェア、その準備のためのコースも追加をできないでしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 エイジフレンドリー補助金でございますが、これは高年齢労働者の労働災害の防止を目的といたしまして、つまずきやすい段差の解消ですとか、作業負荷軽減のためのリフトなどの補助機器の導入といった作業環境の改善に伴う、主にハード面の措置に要する費用に対して補助を行うという仕組みでございます。

 高年齢者の働く動機や健康状態、加齢による身体機能の低下などは個人によって様々であり、多様なニーズに対応した多様な雇用、就業機会の確保が重要であると考えております。

 そういった多様な働き方の中で、それぞれ、どのような働き方を選んでも安全に働けるようにすることが高齢者の労働災害防止のためには重要であると考えておりまして、こういった観点からは、労働災害リスクに加齢による身体機能の低下などの高齢者の特性に起因するリスクが付加される点に着目した補助対象の選定などが重要ではないかと考えております。

 御指摘の短時間ですとか隔日勤務といった働き方が合う方も当然いらっしゃると思いますので、そういった働き方が社内の労使の話合いによって広まっていくことは重要であると考えますが、補助制度としては、どのような働き方をするにしても必要な、主にハード面の措置に対して費用補助を行うということが費用対効果の観点からも適当ではないかというふうに考えているところでございます。

井坂委員 そうおっしゃらずに、是非検討していただきたいというふうに思います。

 ちょっと今日は時間がないので、本当は、ほかの先進国と同じく残業の割増し賃金、五割に設定して、一方で短時間労働者を雇うと得をするような制度を併設をすることで、もっと本当に短い時間ならばりばり働けるという人に労働参加をしてもらえるような総合的な制度の御提案などもしたかったわけですが、また次回に回したいというふうに思います。

 最後に、児童労働について伺います。

 児童労働、これは基本的に禁止されているわけでありますが、芸能分野だけ、例外的、例外中の例外として解禁をされております。

 ただ、ここの規制が決して十分ではありません。労働時間も非常に長いということで、しかも練習時間は労働時間に含まれていないとか、いろいろ問題があるわけであります。

 ちょっと時間がないので割愛をいたしますが、参考人にお伺いします。

 児童労働は、例外中の例外ということで、逆に規制の網から漏れてしまっているような部分があります。児童についても、メンタルケアですとか、あるいは労災保険、これを義務化をすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の映画や演劇の場面での児童労働、満十三歳未満の児童も含めて、行政官庁の許可を得た場合に限り、児童を映画の製作や演劇の事業に使用できるという仕組みでございますが、この仕組み自体が対象を限定的に絞っているものでございますけれども、さらに、この許可を得て、映画、演劇の事業において十三歳未満の児童を使用いたします場合には、メンタルケアですとか労災保険といった仕組みは、これは労働者として雇用されますので、同じように適用されるという考え方でございます。

 具体的には、労働者の心の健康の保持増進のための指針に基づきまして、事業者は各事業場の実態に即した形でメンタルヘルスケアの実施に積極的に取り組むことが望ましいとされておりまして、この対象が労働者である場合には、その年齢にかかわらず、この指針が適用されるものでございます。また、児童が個人事業者に該当する場合にも、個人事業者等の健康管理に関するガイドラインが適用されるということになっております。

 また、災害補償につきましては、労働者であれば、その年齢にかかわらず、労災保険が適用をされるということになっておりまして、こういったことの周知に努めてまいります。

井坂委員 本当は、例外中の例外の児童労働なので、大人と同じものがただ適用されますというだけでは不十分だと考えております。

 最後、大臣に端的に伺いますが、やはり児童労働の保護法のような追加の上乗せ規制が必要ではないでしょうか。最後、端的にお答えください。

福岡国務大臣 現行法におきましても、児童の修学機会と健康、福祉の確保には十分配慮してございますが、それで十分かどうか、不断の検証というのは必要かというふうに思います。

 法違反が疑われる場合であったり申告が寄せられた場合において、こうした年少者の保護規定が遵守されるように、労働基準監督署による監督指導等につきましても、引き続き徹底してまいりたいと思います。

井坂委員 終わります。ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、阿部圭史君。

阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史でございます。

 大臣、通告しておりませんけれども、まず、この連休中にあった出来事についてお伺いをしたいと思っております。

 大臣、パラオのペリリュー島への出張、大変お疲れさまでございました。終戦から八十年、さきの大東亜戦争から遺骨収集を加速するに当たっては、やはり大臣が現地を訪ねてしっかりと現場を見るというのは、すばらしいことだと思っております。

 約一万人の日本人の犠牲者を出したペリリュー島におきまして先般発見された集団埋葬地、これは大臣御覧になったと思いますけれども、これを含めて、しっかりと遺骨収集を頑張っていただきたいと思いますが、ペリリュー島を訪問した所感と、ペリリュー島以外に、やはり今後、この島、若しくはほかの戦地、重要になってくるのではないかということがございましたら、是非お聞かせいただきたいと思います。いかがでしょうか。

福岡国務大臣 実際、パラオ、ペリリュー島を訪問させていただきまして、いまだ、当時の武器であったり、そういった当時の戦いの跡が生々しく残る場所で、心から哀悼の誠をささげさせていただきました。

 そして、戦後八十年が経過をしております。ある程度、その集団埋葬地で、ここにあるであろうということが特定されている御遺骨については、一日も早く御帰還を果たしていただくことというのが政府としても最大の責務だというふうに考えております。

 現地での担当大臣との協議においても、今までもずっと調査を行っていますが、必ず現地の調査員の方も御同行いただくみたいなルールでいいますと、より頻度を上げるためには、先方のスタッフ等の確保、御協力というのも必要でございます。そういったことについても要請をさせていただき、快く御協力について御理解をいただいたところでございます。

 こうしたことを通じて、できる限り早期に御遺骨を祖国にお迎えできるような環境整備に努めてまいりたいと考えております。

阿部(圭)委員 ペリリュー島の取組はしっかりやらなきゃいけないと思いますけれども、それに加えて、もしその次と考えた場合には、どこかあるかということについてはいかがお考えですか。

福岡国務大臣 今、様々な公文書であったり文献を基に、蓋然性が高い場所、そういったことを特定をしてきております。そういったところを順次調査を進めていきながら、先ほども申しましたように、できる限り、一柱でも多い御遺骨につきまして御帰還を果たしていただけるように努めてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。是非頑張っていただきたいと思います。

 もう一つ、連休中のニュースで取り上げたいものがございまして、昨日のニュースで、トランプ大統領が医薬品に対する関税の措置、これは私も以前お伺いいたしましたけれども、この医薬品に対する関税措置について、今後二週間以内に発表すると述べたというふうな報道がございます。

 大臣、三点、端的にお答えいただきたいんですけれども、まず一点目、この情報は何らか政府間で得ているのかというのが一つ目。二つ目、厚生労働省として何らか対応を考えているのか、これが二点目でございます。三点目として、やはり、日米のこういった医薬品に関する協議ということを考えますと、八〇年代のMOSS協議を想定することが多いんじゃないかなと思いまして、そういった当時の日米間の、これは非関税障壁についてという協議でしたけれども、研究はされていらっしゃるのか。もし何か現時点でお答えできることがありましたら、お願いいたします。

福岡国務大臣 これまでも様々な報道がなされてきております。こうした様々な状況等については常に注視をさせていただいておりますし、関係省庁とも連携をしながら、情報の共有を図りながら、必要な対応については取ってまいりたいというふうに考えております。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 これは我が国全体に関わることですので、しっかりと研究を進めていただきたいと思っております。

 それでは、労働安全衛生法の改正案について伺います。

 今般の労働安全衛生法改正に際しまして、個人事業者等の業務上災害の防止や同じ場所で働く労働者の災害防止のために、個人事業者等を労働安全衛生法による保護対象、保護義務の主体として位置づけるというものでございますが、これは注文者と個人事業者等の両方に措置義務がかかるということですけれども、個人事業者は経済的な観点でも非常に脆弱な立場に置かれているというふうに理解をしております。

 そこで、大臣にお伺いいたします。

 労働安全衛生法改正に関連し、個人事業者等への安全衛生対策を行うに当たり、当該個人事業者等に過度な負担となることはないのでしょうか。

福岡国務大臣 御指摘ありましたように、今回の改定におきましては、個人事業者等に対しまして、危険有害な機械や業務による災害の発生を防止するため、機械の定期自主検査や特別教育の受講を義務づけております。

 御承知のとおり、個人事業者さんといえども、自ら現場に持ち込む機械のメンテナンス不足であったり危険有害業務に関する知識不足が原因で、同じ場所で働くほかの労働者に危険を及ぼすということは避けるべきでございまして、そのために必要不可欠な検査であったり教育に要するコストについては、是非御理解をいただきたいというふうに考えています。

 その上で、例えば、油圧ショベルの検査を検査業者に依頼する場合、二、三万円程度で実施することが可能でございまして、また、特別教育につきましては、足場の組立て等の教育を例に取りますと、一万円程度で受講することが可能でございますので、個人事業者等に対して過大な負担を課すことにはならないというふうに考えております。

 また、これらの費用も含みます請負金の費目等につきまして、労働安全衛生法に基づき、注文者に対し、安全衛生を損なう条件を付さないよう配慮することを求めているところでございまして、こうした配慮が適切になされるよう、業所管官庁であったり関係団体とも連携しながら周知啓発に努めてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 是非、過度な負担とならないように、もちろん、個人で安全義務を考えなければいけないところはそのとおりだと思いますが、しっかりと見ていただければと思います。

 次に、ストレスチェックについて伺います。

 今般、ストレスチェックについて、現在は当分の間努力義務となっている労働者数五十人未満の事業所についても実施を義務化するというものでございます。

 そもそも、私、疑問がございまして、このストレスチェック、何の目的でやっているんでしょうか。

福岡国務大臣 目的につきましては、労働者個人においては、自らのストレス状況についての気づきを促すとともに、事業者におきましては、高ストレスと判定された労働者に医師の面接指導の機会を提供すること、医師の意見を踏まえた就業上の措置等を講じていただくこと、集団分析、職場環境改善を通じまして、職場のストレス要因の除去に取り組んでいただくことによりまして、労働者のストレスを低減し、メンタルヘルス不調を未然に防止することでございます。

阿部(圭)委員 今おっしゃったように、個人には気づきを促すということで、そもそも、直接的にストレスチェックをやることでストレスを除去するというものではないんだろうなと思っておりまして。私も、厚生労働省の職員をやっていた際に、まさにストレスチェックを所管している役所ですけれども、ストレスチェックを行いました。そもそも、どのような意味があるのか、効果があるのか、個人としては余り実感もなく、効果も理解ができませんでした。

 ということもありまして、ストレスチェックは、そもそも意味があるものなんでしょうか。何らかの統計的な有意差があるというような結果があるんでしょうか。お願いいたします。

福岡国務大臣 多分、受け止めは人それぞれ、様々あるというふうに思います。

 私も、この法案審議をお願いするに当たりまして、ホームページ上に載っていますストレスチェックを自分で行ってみました。自分の今の置かれている状況を客観的に見ることができたという意味で、自分にとってはすごく有意義なものであったというふうに感じております。

 この効果につきましては、令和三年度に行いました調査事業の結果の中で、ストレスチェックを受けた労働者の七割から、自身のストレスが分かったことを有効とする回答が得られましたほか、医師の面接指導を受けた労働者の過半数から、対面で医師から面接を受けたことを有効とする回答が得られております。

 また、学術論文であったり研究報告書等におきまして、ストレスチェックと職場環境改善により、心理的ストレスの低下であったり生産性向上の効果が認められておりまして、これらは、いずれも統計学的に有意差があるというふうに考えております。

 これらの論文であったり研究報告書等の結果も踏まえまして、有識者検討会や労働政策審議会におきまして御議論いただき、職場環境改善と併せて心理的ストレス低下の効果が有意に認められていることに加え、ストレスチェックを通じて医師の面接指導を受けられる仕組みは事業場規模を問わず重要であることも考慮し、今般、労働者数五十人未満の事業場についても実施義務の対象とすることとしております。

 この制度につきましては、今後とも引き続き、効果検証については続けてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 大臣自らストレスチェックを行ったということで、同僚の国会議員からの非常に大変なストレスですとか、上司の総理大臣からのストレス、是非、また別途の機会にお伺いしたいと思っておりますが。

 今大臣おっしゃったように、有効という回答があったというような統計的な話があったということですけれども、今のお話を伺うと、ストレスをそもそも低減するというような統計的な有意差はなかったというふうに理解をいたしました。

 やはり、ストレスチェックをするというのは、最終的にはストレスを軽減するということなんだと思いますけれども、実施したことによる、これまでストレスチェックをやってきたことによる客観的な社会的な効果はどうだったんでしょうか。数値で是非お答えください。

福岡国務大臣 例えば、客観的な効果を数値で説明するものといたしまして、メンタルヘルス不調による休職者数であったり離職者数が考えられるというふうに思いますが、これらは複合的な要因が関わるものでございまして、ストレスチェック制度がこれらの増減に及ぼす影響を一概に申し上げることについては難しいと考えております。

 ストレスの低減には自身のストレスへの気づき等が重要であることを踏まえれば、今回の改正は、事業場規模にかかわらず、ストレスチェックを通じて医師の面接指導の機会を提供するものでありますことから、メンタルヘルス不調による休職であったり離職等の防止に一定の意味があるというふうに考えております。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 そうすると、ふわっと、効果があるかもね、社会的に離職者を減らすとかの効果があるかもねということで、やはりこういうのは、施策を実施するときには、因果関係はなかなか証明が難しくとも、相関関係ぐらいはあるんだということを言っていただかないと、そもそも税金をかけて施策をやっているわけですから、是非そこはしっかりと答弁をいただきたいなというふうに思っております。

 次の質問ですが、紙でストレスチェックをやっている場合もあると思いますし、デジタルインターフェースを使ってストレスチェックをやっている場合があると思います。大臣が今回されたのはデジタルの方なのかなというふうに想像いたしますけれども、やはり適時適切にやるということを考えると、デジタルで手頃にというのが大事だと思いますが、そのデジタルを活用したストレスチェックはどの程度の割合があるか、御存じでしょうか。

福岡国務大臣 御指摘ありましたように、ストレスチェックの実施方法につきましては、現場の実態に合わせて実施していただくため、ストレスチェックの実施等に関する事業者向けの大臣指針におきまして、紙又はデジタル媒体による調査票の両方をお示ししております。

 令和三年に厚生労働省が行った実態調査によりますと、ストレスチェックの実施形態は、約六割がウェブでの実施、約四割が紙での実施となってございます。

 また、ストレスチェックの実施につきまして、必ずしも自社でシステム開発を行ってデジタル技術を活用する必要はなく、外部委託も選択肢として考えております。とりわけ、今回義務化を検討してございます五十人未満の事業場におけるストレスチェックの実施につきましては、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部委託を推奨したいというふうに考えております。

阿部(圭)委員 外部委託を推奨したいということですが、それについて質問をいたします。

 五十人未満の事業場におけるストレスチェックの導入は、やはり経済的な負担、業務上の負担というのは大きいと思います。基本的に、体力のそこまで大きくない中小企業、五十人未満の事業場に負担をかけてはならないのではないかというふうに思っております。そもそも、本当に効果があるのかよく分からないというのを私も今答弁を聞いて思ったところでございます。

 いかなる経済的負担が生じることを想定していらっしゃるのか、また明確な答弁をお願いいたします。

福岡国務大臣 御指摘のとおり、事業場の負担感というのは大変重要なことだというふうに思います。

 今回義務化を検討しております五十人未満の事業場におけるストレスチェックの実施につきましては、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部委託を推奨することを考えておりますが、この実施を外部委託する場合には、ストレスチェック自体の費用は労働者一人当たり数百円から千円程度。高ストレス者に対する医師の面接指導の費用は、五十人未満の事業場につきましては、地域産業保健センターに依頼された場合は無償で実施する方針でございます。

阿部(圭)委員 是非、地域産業保健センターの活用も通じて、なるべく費用のかからないようにお願いしたいと思っております。

 次に、労働安全衛生法は関係ありませんが、保険外併用療養費制度と民間保険についてお伺いをしたいと思います。

 資料一を御覧ください。保険外併用療養費制度に関する全体像についての厚労省の資料でございます。

 皆さん、御覧いただいて分かりますように、黄色の部分に、評価療養、患者申出療養、選定療養と、三つ保険外併用療養費制度が列記をされています。評価療養と患者申出療養は保険適用、保険導入を前提としたものでございまして、一方で、選定療養は保険適用を前提としないものでございます。

 同じ保険外併用療養費制度でも、その趣旨は、この三つによって異なるわけですけれども、これらをまたがって移行した例がございます。それが右下の方に書いてあります、水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズというのがあります。これについてお伺いいたします。

 当初、この多焦点眼内レンズについては、評価療養の中の先進医療として申請があったと承知しておりますが、審査の結果、選定療養となったと認識しております。この評価療養から選定療養に移行した経緯について教えてください。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきました多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術につきましては、平成二十年の七月から先進医療として実施されておりましたが、その後、令和元年十二月に、先進医療会議におきまして保険導入に係る科学的根拠等の評価が行われ、有効性等が一般の水晶体再建術を上回るとは言えないということで、先進医療からの削除が妥当とされ、令和二年四月から対象外とされたところであります。

 一方で、この技術ですけれども、令和元年に、選定療養に追加すべき事例として提案があり、中医協で検討した結果、保険給付の対象としている白内障に対する水晶体再建効果に加え、眼鏡の装用率の軽減という快適性の向上をもたらすこと、また患者のニーズが相当程度あること、こういったことを理由にして、先進医療からの削除と同時に選定療養に位置づけたというものであります。

阿部(圭)委員 これは評価療養から選定療養にということですけれども、逆のバージョンがあるのかお伺いしたいんですが、選定療養から評価療養に移行した例がありますでしょうか。前例ですね。ないとしても、制度上、選定療養から評価療養に移行する場合というのは想定され得るのでしょうか。もし、大臣、お答えいただければ、お願いいたします。

福岡国務大臣 保険適用を前提とせず、患者さんの嗜好であったり選択による選定療養から、保険適用すべきか否かについて評価を行う評価療養へと移行する事例につきましては、現在想定しているものもございませんし、また、これまでもそのような事例については存在をしておりません。

 他方で、今後、仮に選定療養から評価療養への移行について検討すべきものが生じた場合においては、必要に応じて中医協において御議論いただくことになると考えております。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 それを踏まえた上で、公的保険と民間保険の区分けについて伺いたいと思います。

 医療の高齢化と高度化の影響で、どこまで公的保険で見るべきなのかという議論が、各党はもちろんのこと、医療界からも最近議論がなされております。

 そこで、民間保険の範囲について、まずお伺いいたします。

 医療保険法制上、患者の自己負担部分、三割を保障する民間保険を規制するものというのはあるんでしょうか。

福岡国務大臣 療養の給付を受けた際に患者さんが医療機関等に対して支払う一部負担金、いわゆる三割負担等に相当する部分につきまして、民間保険がそれを更に軽減することに対しまして、医療保険各法において規制は行っておりません。

阿部(圭)委員 じゃ、その上で、保険外併用療養費制度を含む国の医療保険制度がカバーする範囲全体の中で、民間保険の参入を規制している部分は何らか存在するんでしょうか。

福岡国務大臣 例えば、保険外併用療養の対象となります療養を受けた際に患者さんが医療機関等に対して支払う料金等につきまして、民間保険がそれを更に軽減するなど、民間保険が追加的な保障を行うことに対しまして、医療保険各法において規制は行っておりません。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、国が見ている医療保険制度全体の中で、特段、公的保険の範囲内で民間保険の参入を規制している部分は一切ないというふうに理解をいたしましたが、追加的に、それでよろしいでしょうか、理解としては。

福岡国務大臣 当然、保険ですから、金融庁がやっています保険業法のそこのルールの中ということでありますが、こちらの厚労省が所管している法律において規制するものはございません。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 次に、費用対効果について伺います。

 一般的に、費用対効果の悪い商品というのは店頭から駆逐されるものでございまして、例えば電器量販店の掃除機なんかでも、吸いが悪いものなんかはすぐに淘汰されたりすると思いますが、そういったものがあるわけです。これは市場の機能として非常に重要なわけですけれども、費用対効果評価、今やっておりますけれども、あくまで薬価を低減させるという施策にとどまっていて、保険適用をどうするかという議論にはなっていないということでございます。

 これは業界の反対があるということで聞いておりますけれども、具体的にどのような反対があるんでしょうか。

福岡国務大臣 我が国におきましては、現在、安全性、有効性などが確認され、必要かつ適切と認められます医薬品等を保険給付の対象とした上で、市場規模が大きかったり、又は単価の高い医薬品に限って、費用対効果を個別に評価し、その結果に応じて価格の調整を行っております。

 この費用対効果評価に関しましては、例えば、令和五年十一月に中医協で実施いたしましたヒアリングでは、国内外の製薬業の団体から、保険償還の可否に用いることや価格調整範囲の拡大につきましては、ドラッグラグであったりドラッグロス対策と相反するとの懸念などが示されているところでございます。

 いずれにしましても、医療保険制度は、医薬品や医療機器のイノベーションの推進と現役世代等の保険料負担への配慮、この両立を図ることが重要と考えておりまして、これを実現するために、更なる費用対効果評価制度の活用をすべく、引き続き、関係団体の御意見もお伺いしながら議論を進めてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、やはり、民間保険、費用対効果、いろいろなことをやる中で、人員も非常に限られておりますので、しっかりとそこを頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、猪口幸子君。

猪口委員 日本維新の会の猪口幸子でございます。

 本日は、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 阿部圭史議員と一部かぶってしまうんですけれども、労働者数五十人未満の事業所におけるストレスチェックが義務化されることとなりました。

 労働者のプライバシー保護の観点から、外部委託が適当と思われますが、費用負担、これは先ほど数百円から千円程度とお聞きしましたので、省かせていただきます。外部機関の質の担保が懸念されますが、どのような対応をするのでしょうか。また、プライバシー保護はいかになされるのでしょうか。質問いたします。

井内政府参考人 まず、費用負担は、御指摘ございましたように、ストレスチェック自体の費用は、労働者一人当たり数百円から千円、高ストレス者に対する医師の面接指導は、地域産業保健センターに依頼された場合は無償でということでございます。

 あと、外部機関の質の担保、プライバシーの保護ということでございますが、外部機関の質の担保やプライバシー保護につきましては、今後作成する事業者向けマニュアルの中で、関係者の意見も伺いながら、個人情報の保護体制に係る第三者認証情報などの、外部機関を適切に選択できるような参考情報などをお示しし、その周知を行い、適切な業者選定が可能となるようにしたいと考えております。

猪口委員 五十人以上の事業所について、今現状では、六割がネット、四割が紙というお話が先ほどありましたけれども、紙ベースの場合、どういうふうに実際やっているかといいますと、紙で従業員に書いていただいて、それを事業所が回収して、それを業者に送ります。そして、結果がまた事業所に返ってきます。そのときに、結果は個人に渡されますが、総合的な判断、一覧と、あと書いた紙は戻ってきます。ですから、担当者がそれを見ることができます。

 一番大事なことは、自由記載というところにその人の思いが書いてあって、それはかなりきちっと書く方がいらっしゃって、そこが、ストレスがあるかどうか、非常に判断が厳しいところで、それを事業所の担当者が見るということは、これは、プライバシーの保護、もしその担当者がパワハラ等を行っている場合は非常に危険を伴う可能性があります。

 ですから、紙ベースでやる場合の、その基になったものをどういうふうに処理するか、これはきちっと考えていただきたいと思います。それについて、通告はしていないんですけれども、何かお答えがあれば。

井内政府参考人 ただいま御指摘ございましたストレスチェック、高ストレス者の面接指導の実施の事務に従事した者は、労働安全衛生法により守秘義務が罰則つきで課せられており、ストレスチェックの実施について知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないということになっております。

 ここにつきましては、ストレスチェックに関する者に周知し、これからしっかりするとともに、違反等の不適切な事例については、しっかりと指導してまいりたいと考えております。

猪口委員 ネットであれば目に触れることがなく、そして該当者に適切な指示を下せるとは思うんですけれども、今の点については注意していただきたいと思います。

 続きまして、学校現場での教職員のストレスチェックはいかにされるのでしょうか。結果は学校長に知らされているのですか。学校医が児童生徒及び教職員の健康管理を行っている現状でどのように対応するのか、お示しください。

日向政府参考人 お答えいたします。

 学校現場での教職員のストレスチェックにつきましては、他の事業場と同様に、常時使用する教職員の人数が五十人以上の場合は義務、五十人未満の場合は努力義務となっております。

 文部科学省においては、教職員の人数が五十人未満の場合でもストレスチェックの実施を求めており、令和五年度においては、約九四%の学校で実施をされております。

 文部科学省としましては、学校における労働安全衛生管理体制の整備充実がなされるよう、引き続き教育委員会等に対して指導してまいります。

猪口委員 九四%という高い比率で実施されているということは安心しましたけれども、ある区の現状ですけれども、小中学校七十三校、児童生徒三万人に対して教職員二千人ほどで、教育委員会には一人の産業医、そして区全体では産業医一人、学校働き方改革推進産業医三人、トータルで五人という状況です。

 五十人未満の学校が非常に多い状況なんですけれども、五十人以上としても、都道府県の職員が派遣されて、そして市区町村の教職員が働いているという状況でトータル五十人以上となっても、市区町村の教職員のみを合わせて五十人未満と数えているようで、ですから非常に五十人未満が多くなるわけですけれども。

 五十人未満の学校の場合、学校医が児童生徒、教職員の健康管理を担っていますけれども、小児科医、内科医が開業の合間を縫って昼休みに健診等を行っていますけれども、内科医から見ると、内科医が児童生徒を診るというのも逆に不安があるんですけれども、小児科医が今度は児童生徒ではなくて教職員の健康管理、健診の結果を説明する、そういう状況がございまして、小児科医が、それをやるのに当たって非常に不安だ、そういった面があります。

 これについて、できれば、結局のところ、人材というか、それがない状態なので内科医も学校医としてやるんですけれども、産業医が全部そこに派遣されるということは財政的には非常に負担は大きいと思いますけれども、五十人未満のところでの産業医の活用をしっかりしていただきたいと思います。

 教職員は非常にストレスがあって、その教職員のストレスが子供への、児童生徒への影響が非常に大きいという状況なので、実施されているという状況ではありますけれども、実際に問題が起きたときに誰がそれを吸収していくかとなりますと、学校長なんですよね。だから、パワハラその他、いろいろな学校長とのやり取りの問題があるときは、非常に教職員にストレスがあります。

 学校医が名目上でいますけれども、機能している面と、全く教職員に対しては、児童生徒には機能していますけれども、教職員に対しての学校医の役割は非常に僅かなところですので、それを御理解いただいて、今後の教職員の健康管理ということを文科省でも考えていただきたいと思います。今日はありがとうございます。

 続きまして、また労働安全衛生法の改正のことについて質問しますけれども、今回の改正で、業種を問わず、労働者や個人事業者が混在する作業場所を管理する者に対して、自らと請負人が行う作業間の連絡調整等の必要な措置を義務づけることとありますが、多数の業種を問わない事業者が出入りする作業場所であれば、連絡調整を図ることは困難と考えられます。

 このような場合はどのように連絡調整を行えばよいか、具体的な方法を示していくことが厚生労働省には求められるのではないでしょうか。

    〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕

岸本政府参考人 お答えいたします。

 連絡調整の具体的な方法に関してでございますが、今回の改正におきましては、業種や職種に関係なく請負契約関係で接続されていること、混在作業に従事する作業従事者のいずれかが危険性又は有害性等を勘案して省令で定める作業を行っていることのいずれにも該当する場合には、混在作業が行われる場所を管理する事業者に対して連絡調整の義務が生じるという内容を盛り込んでいるところでございます。

 このような場合に、具体的にどのような連絡調整を行うことが適当であるかについてでございますが、既に連絡調整の義務づけが法律上ございます製造業の例で申しますと、機械を用いて荷の運搬等を行う場合の作業経路の制限や作業時間帯の制限、また、物体の落下のおそれがある場所への立入禁止、その場所で作業を行う時間帯の制限などを求めているところでございまして、こうした例も参考にしながら、法案成立をさせていただきました場合には、その施行に向けて、別の業種を念頭に置いた形で、通達などで具体的な方法をお示ししてまいりたいと考えております。

猪口委員 ありがとうございます。

 続きまして、我が国は、ILO第百五十五号条約、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約に批准していませんが、この条約はILOの基本条約の一つとして追加されるほど重要な条約でありながら、批准に向けた取組が遅れた理由は何でしょうか。厚生労働大臣にお願いいたします。

福岡国務大臣 ILOの第百五十五号条約は、令和四年のILO第百十回総会におきまして、新たにILO基本条約に追加することが決定されたものでございます。本年三月末時点では八十三か国が批准済みでございますが、G7ではイタリア以外はまだ全ての国が未批准となっております。

 その批准の重要性は以前より認識していたものの、本条約に規定されております義務と、我が国国内法令との整合性について検討を行う必要がございました。

 具体的には、本条約第十七条に規定されます、二以上の企業の同一の作業場における協力義務につきまして、建設業、造船業、製造業のみにしか協力に関する労働安全衛生法の規定が存在しないことが、批准に際して主な課題であるというふうに認識をしております。

 この点につきましては、労働災害の実態を踏まえまして、危険性の高い業種から優先的に対応されてきておりまして、建設業と造船業は昭和四十七年の安衛法制定当時より、製造業は平成十七年の安衛法改正により作業間の連絡調整等が義務づけられましたが、近年、産業構造であったり就業形態の変化に伴いまして、これらの業種以外でも混在作業による災害が発生しておりますことや、第百五十五号条約がILO基本条約に追加されたことにより批准の機運が高まってきたことから、今回の法案では、業種を限定することなく、作業間の連絡調整等を義務づけることとしたものでございます。

 法案が成立した場合には、批准に際しての課題を解決することができると判断したところでございまして、批准に向けた手続を進めてまいりたいと考えております。

猪口委員 ただいまのお答え、業種を問わずというところが非常によい姿勢だと思います。

 ただ、気になるのが、G7のうちイタリアのみ批准していたと。じゃ、それ以外の国はどうして、G7であるにもかかわらず、批准していなかったのか。ちょっとそれが知りたいところでございますが、通告していなかったので、お答えできなければ、済みません。

岸本政府参考人 申し訳ございません。イタリア以外のG7諸国が百五十五号条約未批准の理由については、ちょっと承知をしておりません。

猪口委員 ありがとうございました。

 最後の質問になりますけれども、今回の法改正で、個人事業者を含む作業従事役員等は、危険有害な業務に就く際、安全衛生教育の受講を義務づけ、罰則も設けられていますが、個人事業者に新たな負担を強いることとなるため、受講ができるよう費用等の負担を支援する必要があるのではないでしょうか。建設現場などでは、人手不足、そして資材の高騰で非常に厳しいという現場の声が聞こえておりますのですが、いかがでしょうか。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 個人事業者等といえども、自らが現場に持ち込む機械のメンテナンス不足や危険有害業務に関する知識不足が原因で、同じ場所で働く労働者に危険を及ぼすことは避けるべきであり、そのために必要不可欠な検査や教育に要するコストについては、御理解をいただきたいというふうに考えております。

 その上で、例えば、油圧ショベルの検査を検査業者に依頼いたします場合、二万円から三万円程度で実施することが可能であり、また、特別教育については、足場の組立て等の教育を例に取りますと、一万円程度で受講することが可能でございますので、個人事業者等に対して過大な負担を課すことにはならないのではないかと考えております。

 また、これらの費用も含みます請負金の費目等につきまして、労働安全衛生法に基づき、注文者に対して、安全衛生を損なう条件を付さないよう配慮することを求めているところでございます。こうした配慮が適切になされるよう、事業所管官庁や関係団体とも連携しながら周知啓発に努めてまいりたいと考えております。

猪口委員 ありがとうございました。

 引き続き、労働安全、よろしくお願いいたします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

長坂委員長代理 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案について審議が進められております。私が事前に通告した内容とほかの委員の皆様が質疑した内容、一部重複するところもございますけれども、整理のため、通告どおりに質問させていただきます。

 まず一問目ですけれども、今回、集団分析、職場環境改善の取組が推進されるということで、大臣にまずは大きな視点から伺いたいと思います。

 今般、安全衛生分科会報告の資料を拝見しますと、集団分析、職場環境改善については、適切な取組の普及を国、事業者、労働者、医療関係者において計画的かつ確実に進めていくことが適当だというふうなことが書いてあります。それはそのとおりだと思うんですが、これはまさに言うはやすし行うは難しということで、どのようにこれを進めていくかというのが問われているわけであります。

 まず大臣にお伺いしたいのは、これらの推進を具体的にどのように進めていくおつもりなのか、その要点について概略を御説明ください。

福岡国務大臣 ストレスチェック実施後の集団分析、職場環境改善につきましては、省令によりまして事業者の努力義務とされておりますが、有識者検討会及び労働政策審議会の議論では、現時点では、義務とすることは時期尚早であり、義務化については引き続きの検討課題とすることが適当であるとされました。

 今後、ストレスチェック制度は、集団分析及び職場環境改善まで含めた一体的な制度であることの事業者等への周知、また集団分析結果を活用しました職場環境改善の取組事例の収集、取りまとめ、また取組事例を含めた研修の実施などの対策を通じまして、取組を普及していく考えでございます。その具体的な内容や進め方につきましては、法案成立後に、労使団体であったり医療関係団体といった関係者と相談をしてまいりたいと考えています。

浅野委員 まだ時期尚早だという前提の上にこれから進めていかれるということなんですけれども、集団分析を実施した事業場の割合、十名から四十九名の従業員を抱える事業場では二二・六%、そして集団分析の結果を活用して職場環境改善を実施した事業場、十人から四十九名の事業場の割合は一七・三%ということで、まだまだその割合は伸び代があると言える状況なのかなというふうに思います。

 ただ一方で、じゃ、なぜ、それほどこの割合が伸びていないのかというところに目を向けていきますと、やはり五十名以下の小規模事業者においては衛生委員会などの設置義務がない。したがって、労使での調査や審議、報告や、労働者側が不安なく回答ができる環境の整備というものがまだまだ必要なのではないかというふうに思われます。

 この点についてどのように対応していくか、考えを伺いたいと思います。

福岡国務大臣 プライバシーの保護というのは大変重要な観点だというふうに思います。衛生委員会の設置義務がございます労働者数五十人以上の事業場では、ストレスチェックの実施方法につきまして、労働者が不安なく回答できるよう、プライバシー保護に関しまして、結果を事業者に提供するに当たっての本人の同意の取得方法、労働者への不利益取扱いの防止に関する周知方法などが衛生委員会の調査審議事項とされておりまして、その内容は労働者に周知されていることとなります。

 一方、委員が問題意識として示されました衛生委員会の設置義務がない労働者数五十人未満の事業場につきましても、省令で「安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。」とされていることから、有識者検討会の中間取りまとめにおきましては、労働者が安心してストレスチェックを受検できるように、関係労働者の意見を聞く機会を活用することが適当であるとされたところでございます。

 今後、五十人未満の事業場に即した実施体制、実施方法についてのマニュアルを作成する予定でございますが、関係労働者の意見を聞く機会を具体的にどのように活用するかにつきましても、関係者であったり専門家の意見を伺いながら検討し、マニュアルでお示しすることで周知を行ってまいりたいと思います。

浅野委員 このマニュアルの整備については、是非、現場の意見も取り入れながら、実効性の高いものを作っていただきたいと思います。

 先ほど来答弁の中にもありましたが、これは今回、集団分析、職場環境改善の普及促進を図る必要性は誰もが認めるところだと思います。一方で、衛生委員会等の設置義務がない、だからこそ意見を聞く機会を設けなければいけないというような指針を示して、そのためのマニュアルも整備するということが今大臣の口からも触れられました。

 であるならば、やはり将来的には、こうした環境を整えた先に、義務化により導入を促進していくことも検討する必要があるのではないかというふうに考えておりますが、義務化に対する考え方をいま一度確認させてください。

福岡国務大臣 ストレスチェック結果の集団分析とそれを活用した職場環境改善の義務化に関しましては、有識者検討会及び労働政策審議会の議論におきましては、取組内容が極めて多様であること等を踏まえますと、現時点では、何をどの水準まで実施したことをもって履行されたと判断することは難しく、義務化は時期尚早であり、引き続きの検討課題とすることが適当とされたところでございます。

 こうした議論を踏まえまして、集団分析、職場環境改善は引き続き事業者の努力義務といたしますが、ストレスチェック制度は、集団分析及び職場環境改善まで含めた一体的な制度であることの事業者等への周知であったり、集団分析結果を活用した職場環境改善の取組事例の収集、取りまとめ、取組事例を含めた研修の実施などの対策を進めつつ、その実施状況を見ながら必要な検討を行ってまいりたいと思います。

浅野委員 ちょっと更問いをさせていただきます。参考人でも結構ですが、今回、私もすぐに義務化すべきだとは考えておりません。ただ、検討はしていくべきだろうということを申し上げております。

 なぜかというと、集団分析とその分析結果を受けた職場環境改善の取組、これは、まず調査をして、その次に分析をして、その次に分析結果を踏まえた改善をする、こういう三つのフェーズに実は分かれております。今回、調査だけが義務化されることになったわけですけれども、集団分析、この分析に着目をしますと、既に五十人以上の事業場ではその普及率が六四・五%まで伸びているということで、集団分析自体は相当にケースも重なってきているのではないか。小規模な事業所ではまだ二二・六%という先ほど紹介した普及率なんですけれども、五十人以上の事業所に関しては既に半数以上、六割以上が実施をしているということで、ここについてはまず義務化の可能性が高い作業なのではないかというふうに思います。

 今回、集団分析と職場環境改善を一遍に議論しているわけですけれども、まずは分析というものに着目をして、これを義務化、加速する検討を行ってもいいのではないかと思うんですが、これに対して政府の見解を求めたいと思います。

    〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕

井内政府参考人 集団分析につきましては、職場環境改善とセットで効果を発揮するというふうに考えております。有識者検討会の議論では、集団分析だけ実施した場合には、管理職が神経をとがらせたりするなど、むしろマイナスが生じる場合もあるということで、集団分析をやればいいという誤解がないよう、一体的な制度で職場環境改善までもしっかりするということで、現時点で集団分析だけ義務化とするという判断は今回なされなかったというものでございます。

浅野委員 今の答弁、ある見方、立場から見ればそう見えるかもしれないんですが、やはり職場で働いている従業員の目線に立てば、集団分析をした結果、どのような解決策がふさわしいかということが分かった後、それをどうやればその職場で導入できるかどうかというのは、これはやはり労使の協議、様々な関係者の協議が必要なものかと思います。ですので、集団分析によって課題を具体的に示し、それをどう改善していくかを議論する環境を整えなければ、分析から職場環境改善のこのフェーズを一気に乗り越えることというのはそう簡単ではないと思うんですね。ですので、これは順序をしっかり守って、着実に進めていくべき課題かなというふうに思いますので。

 政府としては、セットでというような考えに今立っているということなんですが、実はこれ、じゃ、義務化をできるぞといったときに、セットで進めようとしたらしたで、それはそのときに新しい課題が見えてくることにもなりかねませんので、ここは是非分けて、ちゃんと段階を分けて考えていただきたいということをこの場では申し上げたいと思います。

 ちょっと時間もありますので、次の質問に移ります。続いて、高年齢者の労働災害防止について伺います。

 今回の改正法案は、事業者に対して、高年齢者の災害防止に必要な措置について努力義務を課すものと承知をしています。政府として高年齢者の就業を促進する中で、高年齢者が安心して活躍し続けるために、職場における高年齢者に対する安全衛生対策の強化は私も不可欠だと思います。

 今次改正において、事業者に対して、義務ではなく努力義務とした理由を改めて確認させてください。非常に重要だと思うんですが、なぜ努力義務なのか、伺います。

福岡国務大臣 高年齢労働者の労働災害の発生率の高さにつきましては、作業によります労働災害リスクに、加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因するリスクが付加されていることによるものと考えております。加齢によります身体機能の低下等につきましては、個人によって大きなばらつきがございますし、また、業種や業態によって、作業による労働災害リスクも、安全な作業の実施のために求められる身体機能等も様々であるというふうに考えております。

 このため、高年齢の労働災害を防止するために必要な取組はおのずと異なりますことから、まずは高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、適切な作業の管理等の幅広い取組を事業者の努力義務とした上で、各事業者が、個々の職場の作業環境や労働者の体力の状況等を踏まえて、高齢者の労働災害リスクを評価し、それらを踏まえた適切な措置を講じることができるように、新たに指針を定めていく予定でございます。

浅野委員 これは事前のレクのときも厚労省の方々と議論をさせていただいたんですが、これから高齢化社会にどんどん、もう既に入っておりまして、高齢者の労働者比率が高まっていく。その中で、世の中もう既に人手不足がかなり広がっております。高年齢者の方と経営者が労働契約を結んで雇用の延長をしたりだとか、あるいは新規採用をするわけですね。労働契約をした時点で、その高齢の労働者がどのようなことができるのか、そしてどのような労働に従事をしてもらうのかというのは、一定契約を結ぶわけです。この契約の範囲内で、その労働者が安全に、そして健康を維持しながら働ける環境を守るのは、これは経営者の責務ですね。

 ということで、労働契約上は、しっかりお互いの能力、そしてやってもらうべき仕事の範囲を決めているにもかかわらず、労働安全衛生を守るための経営者の責務というのは義務化ではなく努力義務だというところに、少し矛盾を感じるわけです。ですので、高年齢者の労働災害防止についても、今後、努力義務ではなく、義務への格上げを検討すべきだというふうに考えますが、ここに対する見解を伺います。

福岡国務大臣 委員の問題意識については理解をさせていただいた上で、先ほどもお答えしましたように、加齢による身体機能の低下であったり、作業による労働災害リスク、安全な作業の実施のために求められる身体機能は様々でございます。

 このため、高齢者の労働災害を防止するために必要な取組はおのずと異なりますことから、事業者に対して一律で特定の措置の実施を義務づけることができるかどうかについては、更に検討していくことが必要だというふうに考えています。

 今回、事業者に課すものは努力義務でございますが、これまで、高年齢労働者の労働災害の防止の取組を進めるため、エイジフレンドリーガイドラインにより事業者に求めてきた取組内容を参考に、法定の指針を定め、周知や指導に取り組んでいくこと、また、中小事業者に対しましては、エイジフレンドリー補助金を活用し、事業者が対策に要する費用の一部を支援していくことなどによりまして、様々な職場の実情に応じた労働災害防止対策が進むよう取り組んでまいりたいと思います。

浅野委員 今大臣も触れられましたエイジフレンドリーガイドラインというのがもう既にありまして、これに従って高年齢労働者の安全と健康確保が各事業所において図られることを今政府は進めているわけですね。

 申し上げたいのは、先ほど大臣の答弁の中では、様々な作業が、業種があり、職種があって、様々なリスクが各職場にある。それは本当に、一概には定義することができないというのはおっしゃるとおりなんですが、例えば、現場に合った高年齢者向けの安全衛生対策というのは、やはりその事業所、事業場を管理している経営者あるいは管理者が最もよく理解している。であるならば、一律に政府や行政が何かこれをやりなさいというふうに決めるのではなく、このエイジフレンドリーガイドラインに沿って、各職場において高年齢者の安全衛生を確保するための計画を立てなさいという指針であったりとか、こういったもの、こういったレベルで義務化をすることは十分に可能ではないかと、私は先日、厚労省の方にお話をさせていただきました。

 これを全否定はされなかったわけですけれども、一律にこういった作業をやりなさいというのは確かに難しいかもしれません。であるならば、あなた方の事業所、事業場の環境に合った対策、そしてその計画を立ててください、こういったことは十分に対応可能なのではないかなというふうに思うんですが、その点に関しての見解があればお願いします。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 法制の在り方として、御指摘のような、個々の措置義務を課すのではなくて、計画策定義務を課すというやり方はあり得るものと思います。ただ、計画策定義務という形で法制化いたします場合に、その中身に具体性がなくとも、計画を策定しているかどうかで義務違反かどうかを判断する仕組みになるものですから、どうしても、計画の中に最低限こういうことを盛り込まなければいけないというのをある程度明確に示すことが可能な段階でないと、なかなか計画策定義務を課すというやり方を取りながら実効性を確保することが難しいという面もあろうかと思います。

 そういう意味では、計画の策定義務という形を取るか、努力義務という今回の形を取るか、いずれにせよ、もう少し実践を積み重ねるなどして、どのような職場でどのような措置を取ることが必要かといったことについての実例や考え方を集積していくことが現段階では必要なのではないかというふうに考えております。

浅野委員 大臣も手を挙げられていましたが、同じですか、はい。

 であるなら、私も、努力義務でもう少しケースを重ねるか、このような計画策定義務を付するかというのは、両方議論があっていいと思うんですね。ただ、やはり、エイジフレンドリーガイドラインというものがもう既に政府の中にはあって、これを周知しようとしていて、今これがなかなか、普及率としては道半ばな状況なわけです。

 このガイドラインの中には、ある程度多岐にわたって、どのような配慮項目が必要かというのが既に明記されておりますので、このガイドラインというものに沿って計画策定を事業者に求めていくというのは、十分に可能なのではないかというふうに思います。もう時間の関係で今日はここまでにしますが、是非そういったことも今後検討していただきたいと思います。

 続いて、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進について伺います。

 個人事業者については、安全衛生経費の価格転嫁というのがこの委員会でもこれまで議論されてまいりました。個人事業者の安全衛生に関する費用のうち、必要な研修の受講費用など、受注した仕事を行うために必要になる費用について、個人事業者が注文者について適切に請求するために、どのような環境整備が必要と考えているでしょうか。

 例えば、何を安全経費として請求できるかというこの問いに対しては、個人事業者側と発注者側で双方の意見があるはずなんです。この仕事を受けるためにはこの研修が必要だとフリーランスの方は考えているかもしれないけれども、依頼をする側からしてみたら、この仕事が欲しいんだったら、このくらいの安全衛生スキルあるいは知識は身につけてから仕事を受けてくださいというような、双方の意見の衝突も考えられるわけです。

 ですので、何を安全衛生経費とすべきかという基準であったり、基準も含めた価格転嫁ガイドラインの内容の見直し、改良などは考えるべきではないでしょうか。

福岡国務大臣 今回の改正では、個人事業者等に対しまして、危険有害な機械や業務による災害の発生を防止するために、機械の定期自主検査をやったり、特別教育の受講を義務づけております。

 個人事業者等といえども、自らが現場に持ち込む機械のメンテナンス不足であったり危険有害業務に関する知識不足が原因で、同じ場所に働く労働者の方々に危険を及ぼすことは避けるべきでございまして、そのために必要不可欠な検査であったり教育に要するコストにつきましては、是非御理解をいただきたいと考えております。

 その上で、労働安全衛生法に基づき、注文者には、請負金の費目等につきまして、安全衛生を損なう条件を付さないよう配慮することを求めております。

 どのような費用が配慮すべき安全衛生経費に当たるかは、業務内容によって様々でありまして、一概にお示しすることは難しいですが、例えば建設工事の場合においては、業務に必要な資格であったり教育の取得等に要した費用のうち、受注した仕事に要する期間に相当する金額を注文者の負担として見積書上明示するような取組が、国土交通省主導の下、進められているというふうに承知をしております。

 このような例も踏まえながら、安全衛生確保の観点から、注文者が配慮すべき経費についての基本的な考え方を法施行に向けて整理をした上で、業所管官庁であったり関係団体とも連携しながら周知啓発に努めてまいりたいと思います。

浅野委員 是非そうした考え方をまとめていただいて周知をしていただきたいんですが、価格転嫁に関しては、公正取引委員会が公表している労務費の転嫁に関するガイドラインであったり、あるいは官公需に関わるガイドライン、指針といったものが既に政府からも出されていると思います。こことの整合性はもちろんですけれども、最近、いろいろな価格転嫁に対する指針やガイドラインが複数出ていますので、そこの情報の整理、一元化についても是非厚労省としては御検討いただきたいことを申し添えたいと思います。

 続いて、歯科健診について伺いたいと思います。

 令和六年十一月一日に公表された労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会の中間取りまとめでは、安衛法に基づく一般健康診断に歯科健診を追加することは困難であることと、一方で、歯周病と全身疾患との関連が示唆されていることから、口腔内の健康を保つことの意義があるという考えが示されました。

 まず政府に確認したいのは、歯周病と全身疾患との関連に対する相関関係は認識されていますでしょうか。

井内政府参考人 労働安全衛生法に基づく一般健康診断は、事業者に対し、常時使用する労働者を対象に年一回実施することを罰則つきで義務づけており、必要がある場合には、その結果を踏まえ、労働時間の短縮等の就業上の措置を講じることも義務づけているものでございます。

 この一般健康診断に歯科に関する項目を追加することについては、令和五年に立ち上げた有識者検討会において、歯科関係者からのヒアリングを行った上で、産業医学の専門家及び労使の代表が最新の医学的知見を基に検討を行いました。その中で、歯周病は、全身疾患との関連は報告されているものの、業務上の措置を必要とする疾患と関連するエビデンスが乏しいと判断されたと認識しております。

 以上から、今年一月の労働政策審議会の建議において、歯科に関する項目を法定健診項目に追加することに関しては、業務起因性又は業務増悪性、就業上の措置等のエビデンスが乏しいことを踏まえると困難であるとされた一方、労働者の口腔の健康保持増進は重要であることから、今後、好事例を展開する等普及啓発を強化することにより、歯科受診につなげる方策を検討することが適当であるとされたことから、今後、関係者ともよく相談し、この建議を踏まえた対応をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

浅野委員 今答弁の中にもありました、健康診断の中でどういう項目を診察すべきか、検査すべきかというものについては、業務起因性や業務増悪性というものに該当するかどうかというものがこの判断基準になっているというふうに伺いました。

 もう時間が来てしまいましたので次回に持ち越しますが、本当に業務起因性や業務増悪性のみに依存して健康診断項目を決めてよいのか。これから高齢化社会、高年齢労働者が増える中で、業務起因性や増悪性以外にも、労働者の健康を維持するために必要な項目というのを健康診断に含めていくべきではないか。この問題提起をさせていただいて、今日は質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、八幡愛君。

八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。

 本日は労働安全衛生法改正について二回目の質問ということで、前回、私は、アスベストの問題や高齢者の働く現場についての環境なんかについても質問したんですけれども、このように、この改正案というのは多岐にわたります。

 その中で、私が今回一番驚いたのは、健康障害防止対策等の推進というところの中に、大きな柱として放射性物質や放射線についての規定が入っていなかったことなんです。

 石破総理は、今国会の施政方針演説の中でも、原発を推進していくんだと明言をされております。原発推進をする中で労働安全衛生法を改正するならば、労働者の安全と健康を確保するためにも、放射性物質、放射線についての健康障害防止対策を盛り込むべきだと私は考えるんですが、なぜ今回、放射性物質や放射線のホの字も入っていなかったのか、教えてください。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正案におきましては化学物質に関する内容を盛り込んでおりますが、この中身としましては、化学物質を譲渡、提供する際の危険有害性情報の通知制度について、違反に新たに罰則を付すなど履行確保を強化することや、リスクアセスメント等をより的確に行うために、個人暴露測定の精度を担保することなどを目的とした内容を盛り込んでおります。

 これらの内容は、その実現のためには、政令や省令の改正では足りず、法律の改正が必要になるものでございます。

 他方、労働安全衛生法の体系におきましては、事業者に一定の措置を義務づける場合、政令や省令など下位法令の改正でもって具体的な規制の新設、改廃を行うことができる部分がございます。

 放射線による健康障害防止関係におきましては、最近の例で申しますと、令和三年に、放射線業務従事者の目の水晶体に受ける等価線量の限度を引き下げる等の省令改正、また、令和四年に、建設アスベスト訴訟に関する最高裁判決等を踏まえまして、実効線量等に関する周知義務の新設、放射線測定器の装着に関する注意事項等の掲示義務の対象者拡大、実効線量が高い箇所への立入禁止の対象者拡大等の省令改正を行ったところでございます。

 また、放射性物質の譲渡に関しましては、労働安全衛生法に基づくSDS制度ではなく、放射性同位元素等の規制に関する法律において譲渡規制や放射能標識の表示義務が定められておりますことから、今回の法案における化学物質関係の改正の対象にはなっていないものでございます。

 引き続き、放射線による健康障害防止については、法令の体系も踏まえまして、政省令でできること、あるいは他法令で担保されていることなども踏まえながら進めてまいりたいと考えております。

八幡委員 今回の化学物質による健康障害防止対策等の推進ということで、対象となる物質が増えたということは、私は当然これは評価をしているんです。

 先ほど御説明いただいたとおり、今回の改正項目には当たらないが、当然別枠でやっているんだということを先ほど長く御説明いただいたと思うんですけれども、これは理解しました。

 その上で、本改正案では、個人の暴露測定について作業環境測定の一つとして位置づける、そして適切な実施の担保を図るということはされているんですけれども、放射性物質、放射線についてもこの個人暴露測定の対象となっています。ですので、全く関係ないわけではないんですね。

 被曝線量の管理、これは労働安全衛生法を受けた電離放射線障害防止規則、通称電離則で規定されています。計画被曝状況における人、計画被曝というのは、例えば、原子力施設で働く人だけではなく、レントゲンや放射線治療、そういう方たちの医療機関であったり、あと、エックス線などを用いた検査、産業分野もそうです、そういった方々の放射線被曝線量というのは、一年間で最大五十ミリシーベルトを超えず、かつ、五年間で百ミリシーベルトを超えない被曝線量管理というものが行われております。女性においては、三か月で五ミリシーベルトですね。

 そんな中、二〇一一年三月に起きました福島第一原発の爆発事故です。その基準では到底作業ができませんから、放射性物質が多量に漏れるなどの事故が生じた場合など、緊急作業に従事する間における労働者の被曝限度というのは百ミリシーベルトにしようとなったんです。五年間で百ミリシーベルト以内と言っていたのに、緊急時だからオーケーとなってしまったんです。

 これだけでも当時私も驚いたんですけれども、さらに、それでも間に合いませんと。なので、特例緊急被曝限度として被曝限度を二百五十ミリシーベルトに引き上げたんですよね。これは、原発の冷却作業などを行う民間人作業者も、自衛隊や警察官などの公務員も、特例緊急作業においては二百五十ミリシーベルトまでオーケーとなってしまったんですが、当時の厚生労働省は、人体に影響が出ないぎりぎりの値だったと当時はおっしゃっておりました。

 そもそも、緊急時に被曝上限を引き上げざるを得ないような労働現場というのは、私はあり得ないと思うんです。労働者に大量被曝の犠牲を強いないと回っていかないような原発政策、こんなリスクのある原発をまだ推進するなんて、本当にどうかしていると思うんですよ。即やめるべきだと私は思います。

 今日は労働安全衛生法についてですから、大臣にお伺いしたいんですけれども、この労働者における被曝限度、緊急作業時百ミリシーベルト、特例緊急作業時二百五十ミリシーベルト、この基準こそいま一度見直すべきではないでしょうか。大臣、作業に当たる労働者の安全と健康を守るために、本当にこれは確保されていると思われますか。お願いします。

福岡国務大臣 労働者の被曝につきましては、放射線防護の国際的な基準の勧告を目的といたします国際放射線防護委員会によりまして、国際的に合意された科学的知見を踏まえ、全就労期間における被曝線量が一シーベルトを超えないことを基本原則として管理しておりまして、平常時につきましては、御紹介がありましたように、一年間五十ミリシーベルト、かつ、五年間百ミリシーベルトの線量限度を定めております。

 一方、非常時には平常時とは別に被曝限度を定めておりまして、原子力災害ではない事故では百ミリシーベルト、原子力災害時には百から二百五十ミリシーベルトまでの範囲で定める線量をそれぞれ上限としております。

 百ミリシーベルトは確定的影響の閾値とされている基準でございまして、二百五十ミリシーベルトは重篤な急性期の臨床症状があるという明らかな知見が認められない基準となっておりまして、いずれも国際放射線防護委員会が示す非常時の被曝限度である五百ミリシーベルトよりも低い基準となっております。

 なお、非常時の被曝線量があった場合には、全就労期間中の被曝線量が一シーベルト以内となるように、残りの就労期間中の線量限度を設定することとなっております。

 これらの仕組みによりまして、全就労期間で一シーベルトを超えないように被曝限度を設定することとなっておりまして、労働者の方々の安全と健康が確保されるように、指導を徹底してまいりたいと思います。

八幡委員 様々言っていただいて、世界の例とかも紹介していただいて、でも、私が聞いたのは、大臣に、作業に当たる労働者がこの基準で本当に安全とか健康とかを確保できるんですかと聞いたんですけれども、私が自分で聞いていてなんなんですが、それは安全と言えないわけですよ。

 だって、厚生労働省の資料によりますと、東京電力福島第一原発における事故後の作業従事者の方の労災認定の状況は、白血病五件、真性赤血球増加症一件、咽頭がん二件、甲状腺がん二件、肺がん一件。人間の体のことですから個人差もありますし、この情報だけが全てではないというのは当然なんですけれども、少なくとも、事故によって体に影響が出た人たちが確実にいらっしゃいます。

 そして、今私は緊急時の話をしていますが、平時による被曝線量を守っていても、この平時というのは年間五十ミリシーベルト、五年間で百ミリシーベルト、これを守っていても、人によっては白血病やがんの労災が認められている人もいます。もうここまで来ると、労働者の安全と健康の確保という目的は、原発推進をする上では成立しないんじゃないかなと私は思います。

 ですので、改めてお伺いしますけれども、電離則が規定する被曝線量の管理を遵守していたとしても、白血病やがんが労災認定されている場合がある、そして、原発事故後にも実際に病気になってしまった人たちがいらっしゃることに対して、大臣はどう受け止めておられますか。お願いします。

福岡国務大臣 重ねてになりますが、労働者の被曝限度は国際的に合意された科学的知見を踏まえた基準としておりまして、これは放射線被曝が人体に与える影響を十分に考慮した基準であると承知をしております。また、放射線障害に係る労災認定につきましても、原則として、国際的に合意された科学的知見を踏まえて認定基準を策定し、労災認定をしているところであります。

 ただし、御指摘がありました白血病につきましては、様々な要因がありますために原因確定が難しいことから、労災保険制度の趣旨に鑑み、労働者への補償の観点から、一般公衆の被曝限度を参考に認定基準を定め、業務以外の要因が明らかでない限りは給付の対象としているところでございます。

 このように、被曝限度と補償につきましては、趣旨であったり考え方が異なりますことから、それぞれに基準を設けることは妥当なものというふうに考えています。

 引き続き、放射線業務に従事する方々、労働者の方々の安全衛生や災害補償につきましては、それぞれ現行制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

八幡委員 私は何度も言っていますけれども、大臣に、どう思っているか、個人としてどう思っているか、聞きたかったわけです。

 だって、この場にいる人たちは、被曝しながら作業する人なんて絶対にいないわけですよ、私も含めてですけれども。だから、やはり人ごとじゃ駄目です。こういう質問をすると、めちゃくちゃ長い答弁が返ってきて私の持ち時間が削られてくる、これに対して腹も立つんですけれども。

 人ごとといえば、時間がないから早口でいきますけれども、これは政府に聞くんでしたっけ、大臣に答えてほしいんですけれども、何かまた起きたときに、特例で緊急作業で今二百五十はオーケーになっているけれども、三百五十、四百五十とぽこぽこぽこぽこ上げていくのかなという心配もあります。

 だって、というのが、この基準が決まったのは、二〇一五年の電離則の改正によって定められたわけですよ。これは何かというと、二〇一一年に起きた、福島原発事故が発生した、現場先行でやりました、その後に法令が追っかけて追認していきましたということが起きているんです。なので、今は大丈夫でも、また何か有事が起きたとか想定していなかったことが起きたとなったときに、またぽこぽこぽこぽこと人ごとになって基準を上げていくのかなと思って、私はすごく憤りを感じるわけですよ。

 だって、福島第一原発の事故の当時、いわゆる一Fというところ、毎時一千ミリシーベルトといったような高い放射線が出ている場所も存在したわけです。もう基準もくそもないわけですよ、こういうのは。

 だから、政府に改めて伺います。これからも、緊急時にこうやって被曝の限度を上げていく、そして法令で追認していくということはあり得るんでしょうか。そして、今の二百五十ミリシーベルトを更に上げる可能性はあるんでしょうか。お願いします。

井内政府参考人 仮定の御質問にお答えすることは難しいのでございますが、一般論で申し上げましたら、仮に水準をどうするかという場合、その時点の科学的な知見を踏まえ、労働者の安全と健康に配慮して検討がされるというふうに認識をしております。

八幡委員 当時、命を張って作業に行ってくださった人には本当に私は頭が下がる思いなんですけれども、本当にもうちょっと厚生労働省としてもしっかりと、人ごとにしないで考えていただきたいなと強く思います。

 そして、次の質問。

 最後、労災隠しの質問もちょっといろいろやりたかったんですけれども、労災隠し、例えば、去年の二月に、福島第一原発で廃炉作業をしていた方が階段で足を滑らせて転倒して、右足首を骨折したんですよ。それを隠していたんです。骨折でも隠すのに、放射性物質を伴う事故が起きた場合はどうなってしまうのかなと不安も残ります。

 これは福一に限らずですけれども、労災隠し、なかなかなくならないという感覚がありますが、政府としてどう対策されていくのか、簡潔にお願いします。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 労災隠しとは、労働災害の発生事実を隠蔽するため、労働安全衛生法に基づく労働者死傷病報告書を故意に所轄労基署長に提出しないもの又は虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告書を所轄労基署長に提出するものでございます。

 厚生労働省におきましては、労災隠しの排除を呼びかけるリーフレットのホームページへの掲載、事業者に対する各種説明会等の実施により、労働者死傷病報告の適正な提出について周知啓発を図りますとともに、労基署において労災隠し事案を把握した場合には、司法処分を含め厳正に対処するといった取組を行っているところでございます。

八幡委員 おっしゃるとおり、引き続き、東京電力を始めとするほかの電力会社の中でも労災隠し、被曝隠しなどがされないように、しっかりと政府として御指導をよろしくお願いいたします。

 これからも、燃料デブリを取り出す方、人を被曝させながら廃炉せなあかんという本当にとんでもない状況です。でも、それでも原発推進はやめられない、やめさせられない。この国は一体何がしたいのかなと、私、今回のこの質問を作ることに当たっていろいろ考えました。僭越ながら、私が国会議員になったという意味をやはりかみしめますね。このままじゃ駄目です、厚生労働委員会。なので、私も引き続き、この問題、被曝の問題はやっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 労働安全衛生法について質問します。

 今回の改正案では、ボイラー、クレーンなど、特に危険な作業を必要とする機械の製造時等検査を民間登録でできる範囲を拡大していきます。そもそも、移動式クレーンやゴンドラは落成検査もないので、国が関与する場面はなくなってしまいます。

 大臣は、参議院での答弁で、設計審査、製造時等検査に求められる知識経験が専門高度化していること、十分な知識経験を持つ民間検査機関が設計審査等を担う仕組みを整備しながら、行政職員が事業者への指導など権限行使を含む役割に注力できる環境を整え、より効果的に災害の防止、減少を図ってまいりたいというふうに答弁されたのであります。

 ボイラー、クレーンの審査、検査に求められる知識経験が高度化している。だとするならば、行政に知識経験を蓄積する必要があるんじゃないでしょうか。そうでないと、事故発生時の対応、そして原因究明に当たることができませんよね。民間検査機関に委ねれば、むしろ力量が後退するのではないでしょうか。いかがですか。

福岡国務大臣 先ほど、参議院での私が答弁したものを引用していただきました。

 例えば、クレーン等によります労働災害は、玉掛け作業中の事故を始め、機械自体の構造の欠陥によるものではなく、その取扱いの方法に起因するものが大変多うございます。

 近年の安全衛生行政における課題が、クレーン、ボイラー等の災害防止に加えまして、中高年女性を中心に多発しております転倒災害対策であったり、長時間労働による健康障害やメンタルヘルス対策、化学物質の自律的管理など多様化しておりまして、行政需要も増大、多様化していることに今回の措置は対応するものでございます。

 一方で、事業者の指導に必要な特定機械等の知識経験につきましては、従前から、研修機関での座学であったり、実機による実地研修の受講であったり、所属長や上司による事業場指導等によるOJTにより確保してきているところでございます。

 今後とも、引き続き労働災害の防止、減少に向けて、効率的に権限行使であったり職員の養成を図ってまいりたいと思います。

田村(貴)委員 業務量が増えているから行政機能を縮小するというのは、これはやはり行政の責任放棄につながりますよ。

 検査等の経験を積む機会を減らせば、後から問題が発生しても、どこに問題があるのか、それを見つけることさえも民間に頼らざるを得なくなってくる。それでは労働者の安全は守ることはできないと思います。こうしたやり方はやはり納得がいきません。

 次に、アスベストの被害者救済について質問します。

 現在、じん肺健康診断の実施手法や判定を定めたじん肺診査ハンドブックの改訂作業が進められています。改訂案では、じん肺の合併症である続発性気管支炎の判定について、たんの検査、膿性たんの判定に用いる喀たん中好中球エラスターゼ測定という判定方法が望ましいというふうに示されています。しかし、たんの成分検査は、検体の処理方法や測定までの手順について標準化されておらず、労災病院による研究結果でも、カットオフ値、つまり、陰性、陽性の境界値についても施設間でばらつきがあっています。感度、特異度とも、客観的指標とするには低いとの指摘があります。

 質問しますけれども、二つ分けて質問しますね。

 まず、たんの成分検査というのは、今度のハンドブックで必須とするんでしょうか。補助的な検査として望ましいと検査を求めるにしても、絶対条件としないことが求められますが、いかがでしょうか。

井内政府参考人 じん肺診査ハンドブックは、じん肺健康診断やじん肺の判定に使用するもので、昭和五十三年の発刊後、医療の進展、医学的知見の集積等を踏まえ、研究班が策定した改訂案を本年三月五日の労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会でお示ししたものでございます。

 今御指摘のありました、たんの好中球エラスターゼに関しましてですが、続発性気管支炎に関する総合的な医学的判断の一助になり得るものとして、膿性たんが持続する場合には検査して確認することが望まれると記載されていると認識をしております。この検査結果をもって合併症の有無が機械的に判定されるものではなく、あくまでも総合的な医学的判断で判定されることは従来と変わりないと考えております。

田村(貴)委員 また、この検査は、検査できる病院が三つしかありません。この検査結果を申請時に求められるならば、救えない人、そして切り捨てられる人が出てくるのではないでしょうか。

 しかも、この検査は、保険収載もされておらず、申請費用が高額になることも予想されます。検査が高額なためにアスベストの被害補償の申請ができない、そういう事態を招いてはいけないと思いますが、一体どうしますか。

福岡国務大臣 先ほども申し上げましたように、この検査の位置づけにつきましては、引き続きじん肺部会で御議論いただくことになります。そして、重ねてになりますが、これはあくまでも総合的な医学的な判断で判定されることは従来とは変わりはございません。

 いずれにしましても、じん肺の健康診断及び判定が適正に行われるようにしていきたいと思います。

田村(貴)委員 必須ではない、絶対条件ではないということですね。確認しました。

 じん肺診査ハンドブックの改訂案では、石綿肺の診断においてHRCT、高分解能CT検査で確認することが肝要など、胸部CTの有用性が強調された箇所が散見されています。しかし、厚生労働科学研究で行われた調査結果では、CTでは医師によって診断のばらつきが出るために、胸部CT検査は標準化されてはいません。

 厚労省は、従来、じん肺の審査については単純エックス線写真を用いてきました。CTはあくまで補助的検査として表現すべきであろうと考えますが、これはいかがでしょうか。

井内政府参考人 じん肺診査ハンドブックについては、昭和五十三年に発刊してから大幅な改訂が行われていないことから、医療の発展、医学的知識の集積等を踏まえた現状に即したものとするため、令和四年から六年度にかけて、じん肺健康診断とじん肺管理区分決定の適切な実施に関する研究において改訂案を作成していただき、令和七年三月五日の第二十六回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会において案を示したものであります。

 そこでのCT写真についてということでございますが、じん肺健康診断における画像はじん肺法第三条でエックス線写真とされており、御指摘の胸部CT写真については、通知にて、健康診断の際に参考資料として閲覧して、特にじん肺所見があると総合的に判断する場合に利用して差し支えないという扱いであり、今回のハンドブック改訂案でも、この取扱いを変更するものではございません。

 このように、胸部CT写真の取扱いについては一貫して補助的な位置づけとしているところであるが、改訂案の記載につきましては、医療の発展、医学的知見の集積等も踏まえつつ、引き続きじん肺部会で御議論いただきたいと考えております。

田村(貴)委員 続いて、建築物の改修、解体時のアスベスト調査について伺います。

 石綿が使用されている建築物の解体件数は近年増加しており、労働者の粉じん暴露防止対策は非常に重要な課題です。

 二〇二二年四月からは、一定規模以上の改修、請負金額百万円以上、そして解体工事、延べ床面積八十平方メートル以上は、石綿の有無を事前に調査し、その結果を都道府県に報告する制度が始まっています。

 事前調査結果の報告件数、そして指導作業所件数、また、制度設計当時の推定対象件数について説明してください。

井内政府参考人 石綿障害予防規則では、事業者に対して、建築物等の改修、解体工事を行う場合に、石綿含有の有無についての事前調査を行い、一定規模以上の工事において、その結果を労働基準監督署に報告すること、工事を行う際の暴露防止対策として、隔離措置、湿潤化等の粉じん発散防止……(田村(貴)委員「件数を聞いているので、件数だけで」と呼ぶ)はい、済みません、義務づけています。

 この規則に基づく労働基準監督署への事前調査結果の報告は、令和四年度は六十五万件、令和五年度は七十七万件でございます。また、石綿除去作業等に関して労働基準監督署が立入調査を行った件数は、令和四年は二千九百八十六、令和五年は三千二十三件でございます。制度設計当時に事前調査の報告件数として最大値として推計しました件数は、年間二百数十万件程度と考えておりました。

田村(貴)委員 制度設計当時の対象推計件数と今報告があった事前調査の結果、これは大きな開きがあります、乖離があります。

 国交省の建築物リフォーム・リニューアル調査報告では、二〇二二年度の百万円以上の改修工事件数は百九十一万余と推計されており、そして解体工事は建設リサイクル法による届出件数が二十万件弱ですから、合わせて、石綿の事前調査すべき件数は二百万件を超えるわけですよね。制度設計された当初の推計値に近い。しかし、実際届けられているものは六十万から七十万。本来調査されるはずの工事のうち三分の一あるいは四分の一程度しかされていないということです。これはちょっとゆゆしき事態ではないですか。

 調査をきちんと行っている事業者からは、有資格者による石綿含有調査をやるように言われているんだけれども、実際にはやっていない事業所がほとんどだ、そういうふうに語る方もおられるわけであります。事前に石綿の調査をしていない違法工事が常態化しているのではないでしょうか。どうなんでしょう。

井内政府参考人 当初の推計値と実際の報告件数が異なることについては、当時、最大限の数字として、国土交通省の建築物のリニューアル工事調査のデータを参考に見積もったものでございます。

 参考とした国土交通省の調査データには、石綿の事前調査の報告対象とならない工事も含まれている可能性があり、報告対象が推計より少ない可能性、本来報告を行うべき事業者が適切に報告を行っていない可能性、両方とも考えられると思います。

 その上で、いずれにいたしましても、我々といたしましては、しっかりと事前調査がルールにのっとって行われるよう、労働基準監督署による事業者への指導の徹底をしてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 徹底した指導は当然なんですけれども、やはり背中を押す対策というのも必要になってきます。

 石綿障害予防規則第三条一項に基づく建設物、工作物等の解体又は改修の作業を行うときの事前調査に係る違反件数それから送致件数、これは二〇二二年が百十七件、二〇二三年が百四十八件、送検件数は二〇二二年が三件で、二〇二四年は一件という状況になっているんですね。非常に少ない。

 事前調査の義務違反は、作業者だけでなく周辺住民の石綿暴露につながり、その影響は非常に大きいものがあります。悪質なものは起訴すべきなんですけれども、それもされていない。そもそも、義務である届出が三分の一程度しか行われていない、罰則も行われていない、これで制度が適切に運用されていると言えるんでしょうか。

 正直者ほどばかを見るということがあってはならないというふうに思います。これから解体のピークを迎えます。事前調査の徹底、そしてその把握に努めていくこと、これは当然ですよね。大臣に尋ねます。

 そして、解体予定の建築物、これをやはり事前に調査をしていく。ある意味、国交省とか環境省とかそれから厚労省で一緒になって、Gメンもつくって、ちゃんと建築物が大丈夫なのか。アスベスト除去対策をしなかったら、それは安上がりで楽なんですよ。でも、それは不法なんですよ。安全性が脅かされるんですよ。

 しっかりと監視して、チェックして、そして解体工事に対する支援それから補助を支給していく、こうしたことをやっていかないと、先ほどの数字の乖離は埋まらないんじゃないか、そう思うんです。大臣、いかがですか。

井内政府参考人 石綿障害予防規則により、事業者には、建設物の解体や改修等の工事に従事する労働者について石綿への暴露を防止する義務があり、それに要する費用は事業者が負担すべきというのが一義的にございます。

 一方、事前調査や石綿の暴露防止措置が適切に実施されるためには、工事の契約額の中に事前調査等に必要な経費が計上される必要があることから、規則では、工事の注文者の責務として費用等の条件について配慮すべきことを規定しており、注文者の配慮の下、適切な対策が講じられることが重要と考えております。

 このため、こうした注文者の責務について、環境省、国土交通省と連名でリーフレットを作成し周知を行っており、こうした取組を通じ、適切な費用負担により石綿暴露防止対策が講じられるよう、関係省庁と連携し取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 対策、支援を強く求めて、質問を終わります。

藤丸委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。

 個人事業者を労働安全衛生法の対象として位置づけたことは、建設アスベスト訴訟最高裁判決を踏まえたものであり、個人事業者の労働災害の防止対策のために必要なことです。また、ILOの中核的労働基準の百五十五条約批准のための国内法整備としての性格を持つものです。同時に、これを一歩として、更なる安全な労働環境を整備していく国の責任が改めて問われています。

 本法案に反対する理由は、移動式クレーンやゴンドラの製造時等検査を民間の登録機関が行えるようにするとしているからです。既に民間移管されているボイラーやクレーン等の製造時等検査は、設置段階で監督署の検査官が落成検査を行っています。一方、移動式クレーンやゴンドラは、特定の場所に設置するものではないため、落成検査そのものがありません。今回の法改正で、行政機関によるチェックなしに使用が認められることになります。

 また、既に移管されている特定機械の定期的な検査を行う登録性能検査機関では、法令違反による処分事例も発生しています。特に危険な作業を必要とする特定機械は、安全性能の確保のために、設置時、使用時の各段階における検査が義務づけられています。特定機械の検査の更なる民間移管は、安全性能の確保の後退につながりかねません。

 さらに、製造時等検査の民間移管は、求められる知識経験の高度化を理由に挙げています。しかし、検査監督に求められる知識経験が高度化すればするほど、検査監督権限を有する行政での知識経験の蓄積が必要です。検査の民間委託の促進で行政職員の専門性継承が難しくなり、行政の力量の後退は避けられません。労働安全衛生行政の重大な後退につながるものであることを指摘し、反対討論とします。

藤丸委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

藤丸委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 この際、本案に対し、長坂康正君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。池田真紀君。

池田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 個人事業者等が新たに労働安全衛生法の適用対象となることに鑑み、制度の理解不足に起因する法令違反が発生することのないよう、発注時における注文者・事業者からの説明を含め、個人事業者等に対する制度の周知徹底を図るとともに、研修等を実施する者に対して支援を行うこと。また、個人事業者等が法令を遵守していない場合には、注文者・事業者から個人事業者等に対して適切な説明等が行われるよう、必要な指導を行うこと。

 二 労働安全衛生法の適用対象となる範囲を明確化するため、作業従事者に含まれる者の範囲を具体的に明らかにすること。また、法令違反に関する労働基準監督署長等への申告制度について、作業従事者が申告したことを理由とした不利益取扱いが禁止されていることの周知徹底を図るとともに、取引停止等の不利益な取扱いがなされた場合は罰則の適用も含め、厳正に対処すること。

 三 新設される業務上災害報告制度を活用し、個人事業者等による災害事例の収集・分析を進めるとともに、適宜、災害防止対策に反映すること。また、報告を行った個人事業者等に対して、注文者・事業者が不利益な取扱いを行うことのないよう必要な監督・指導を行うこと。さらに、個人事業者等の過重労働による脳・心臓疾患及び精神障害事案の発生を防止するため、個人事業者等自身等が労働基準監督署に報告する仕組みの整備を通じ、個人事業者等の過重労働・過労死防止の一層の強化を図ること。

 四 労働災害防止の取組は現場の労使が一体となって協力・連携して行う必要があることを改めて徹底し、安全委員会や衛生委員会において労働者及び新たに対象となる個人事業者等の危険又は健康障害を防止するための対策等の重要事項について個人事業者等の意見を踏まえた十分な調査・審議が行われ、その結果を踏まえた対策が労働者のみならず個人事業者等にも周知徹底されるよう、適切な助言・指導を行うこと。

 五 個人事業者等が労働者と異なる場所で労働者と類似の作業を行う場合や、プラットフォーマーに対する安全衛生対策について、本法の施行状況を踏まえ、必要な検討を行うこと。

 六 個人事業者等が改正法に基づき受講する講習費用等の安全衛生経費が適正に価格転嫁されるよう、ガイドラインの策定を含め、関係省庁と連携し対策を実施すること。

 七 本法の内容と密接に関わるILO第百五十五号条約の早期批准に向けて、速やかに手続を行うとともに、その誠実な履行に向けて準備を行うこと。

 八 過重労働やハラスメントが原因の自殺を含む脳・心臓疾患及び精神障害による労災申請・認定件数が引き続き増加傾向にあることに対する強い危機意識を政労使で共有しつつ、残業時間や深夜・休日労働の一層の抑制による総実労働時間の短縮、勤務間インターバル制度の導入促進、ハラスメント対策の一層の強化に努めるとともに、直近の脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定基準の変更によって労災保険の特別加入者及び労働災害被害者の認定・救済がより適切かつ迅速に行われているかを検証し、公表すること。

 九 労働者数五十人未満の事業場におけるストレスチェックを適正に実施するため、ストレスチェック実施者等が秘密保持義務に違反している場合は、適切に対処すること。

 十 ストレスチェックを希望しないことや受検結果及び医師による面接指導の申出を理由とする不利益取扱いが行われることのないよう、事業者に対して必要な監督・指導を行うこと。

 十一 ストレスチェック制度の効果を高めるため、ストレスチェック項目の評価・検証を行うとともに、集団分析・職場環境改善の実施を計画的かつ着実に推進すること。また、集団分析・職場環境改善の在り方について、義務化の可否を含め、労使等の関係者の意見を聴きながら検討を進めること。

 十二 ストレスチェックの実施義務対象の拡大に鑑み、中小零細企業を支援するため、産業保健活動総合支援事業に関する体制整備を行うとともに、産業医・産業保健スタッフの育成に努めること。また、個人事業者等においても自身のストレス状況を把握しメンタルヘルス対策を講ずることは重要であることから、個人事業者等が労働者と同水準のストレスチェックを実施することができるような環境整備を図ること。

 十三 労働者数五十人未満の事業場におけるストレスチェックについては、事業者に過度な経済的負担及び業務上の負担が生じることのないよう、十分な準備期間を確保し、事業場の状況に鑑み、導入時期を慎重に検討するとともに、ストレスチェックを的確に行うことができるように支援すること。また、地域産業保健センターへの相談事例の増加に対応するため、相談しやすい環境を整備し、メンタルヘルスに一定の知見のある医師確保を積極的に行うために必要な措置を講ずること。

 十四 デジタル化の進展に伴い、デジタルを活用したストレスチェックによって適時適切に実施することができるようにする等、デジタルを活用した実効性を伴うストレスチェックの実施の在り方を示すこと。

 十五 職場のメンタルヘルス対策を一層推進するため、これまでのメンタルヘルス対策の効果を検証するとともに、ストレスチェック以外の方法についても検討すること。

 十六 職場のメンタルヘルス不調者の職場での早期把握のための研究等を行い、その取組の好事例等を各事業者に提供するよう努めること。

 十七 高ストレス者の面接指導について、小規模事業場の特性を踏まえ、小規模事業場の高ストレス者が安心して面接指導の申出をすることができる環境を整備すること。また、事業者が、面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置に関する医師の意見を聴いて、必要な措置を講ずるよう、事業者に対して指導の徹底を図ること。

 十八 産業医がその専門性を発揮し、独立的かつ中立的に活動できるような配慮を事業者に求めるとともに、事業者に対する産業医の勧告を尊重するよう指導すること。また、産業医の勧告を理由とした不利益取扱いの禁止を徹底するよう、事業者に対して指導の徹底を図ること。

 十九 産業医の選任義務のある労働者数五十人以上の事業場で産業医が選任されていない事業場に対して、その選任を促すとともに、産業医の解任を行ったことを労働基準監督署が把握することができる仕組みの検証を行うこと。また、労働者と同一の場所において作業を行う直接雇用されていない労働者や請負人等も含めた事業場における作業環境に関してもその事業場の産業医が勧告できることについて、早期に周知すること。

 二十 事業場において労働者と同一の場所において作業を行う作業従事者に対する安全衛生を事業場管理者が十分配慮し、そのために必要な対策をとるよう、周知・指導に努めること。

 二十一 化学物質の自律的管理制度への転換に伴い、譲渡・提供先への危険・有害性情報の確実な伝達と、リスクアセスメントに基づいた適切な措置が講じられるよう、事業者に対する周知の強化に取り組むこと。また、法令に関する知識や管理体制が必ずしも十分でない中小企業に対して、必要な支援を行うこと。

 二十二 成分名の一部を代替名表示することが認められる場合であっても、通知対象物による健康障害が発生するおそれがある際には、医師・労働基準監督署に対して、必要な情報が迅速に開示されるよう制度運用に万全を期すこと。

 二十三 化学物質の自律的管理制度への転換に伴い、危険・有害性情報の伝達が必要となる化学物質が増加することから、ラベル表示や文書の交付について、化学物質に関する知識が必ずしも十分でない作業従事者にとって、よりわかりやすい記載を検討すること。

 二十四 有資格者による個人ばく露測定の実施義務化について、労働者が化学物質にばく露する程度を最小限とするため、事業者に対し制度の周知徹底を図ること。また、事業者の取組状況を把握し、適宜、化学物質管理対策に反映すること。

 二十五 登録機関が実施する設計審査、製造時等検査については、引き続き検査による安全性の確保が適切に行われるよう、適宜立入調査を行い、必要な監査・指導を行うこと。また、特定機械等の主要構造部分の変更時には、変更届の提出と変更検査の受検を行うよう、周知に努めるとともに、必要な指導を行うこと。

 二十六 高年齢労働者の労働災害防止を図ることに鑑み、新たに公表する指針の周知に努めるとともに、高年齢労働者の特性や作業内容に応じた研修や講師の育成等を含めた事業者の取組を支援すること。

 二十七 身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因する労働災害のリスク評価の方法や身体機能の保持・増進、作業環境の改善、適切な作業管理等に係る具体策について、調査・検討を行うこと。また、本法の施行の状況を見つつ、高年齢労働者の労働災害防止対策の在り方について検討すること。

 二十八 身体機能の低下等の影響により労働災害の発生率が高い高年齢労働者の増加に伴って、労働災害による死傷者数に占める高年齢労働者の割合が増加している現状に鑑み、脳・心臓疾患の労災認定基準について高年齢労働者の特性に配慮し、適切に運用すること。また、会社が事業主証明を拒否するなど事業主証明を得られない場合においても労災保険の請求ができることを高年齢労働者に更に周知すること。

 二十九 芸能従事者の健康確保を図るため、芸能従事者の業務の特性を踏まえたガイドラインの策定等必要な対策を行うこと。また、一定の要件を満たせば使用することができる児童の労働環境について、実態を把握し、必要に応じて労働災害防止対策を講ずること。

 三十 重大な労働災害を発生させた企業については、特別安全衛生改善計画作成等の指示、勧告、企業名の公表などを確実に実施すること。また、個別事業場の法令違反に対して厳格に対応すること。

 三十一 本法の円滑な施行を確保するため、労働基準監督官、安全・衛生専門官の大幅な増員と、労働安全衛生を担当する行政体制の整備拡充を図り、労働災害の防止に即応できる態勢を確立すること。

 三十二 第十四次労働災害防止計画の政府目標の達成に向け、各種対策を講ずるとともに、各指標に対する政策評価に基づき追加対策を検討すること。特に、事業者の熱中症予防対策の実施を促進するために、熱中症予防に効果的な設備・機器の普及のための支援を図ること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

藤丸委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

藤丸委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、福岡厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福岡厚生労働大臣。

福岡国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

藤丸委員長 次回は、来る九日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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