第15号 令和7年5月13日(火曜日)
令和七年五月十三日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 藤丸 敏君
理事 上野賢一郎君 理事 古賀 篤君
理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君
理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君
理事 梅村 聡君 理事 浅野 哲君
安藤たかお君 石橋林太郎君
草間 剛君 後藤 茂之君
佐々木 紀君 塩崎 彰久君
鈴木 隼人君 田畑 裕明君
田村 憲久君 中野 英幸君
根本 拓君 平口 洋君
広瀬 建君 深澤 陽一君
福田かおる君 向山 淳君
森下 千里君 吉田 真次君
池田 真紀君 大塚小百合君
大西 健介君 酒井なつみ君
鈴木 庸介君 宗野 創君
堤 かなめ君 中島 克仁君
長谷川嘉一君 宮川 伸君
山井 和則君 柚木 道義君
阿部 圭史君 池下 卓君
猪口 幸子君 福田 徹君
森ようすけ君 沼崎 満子君
浜地 雅一君 八幡 愛君
田村 貴昭君
…………………………………
厚生労働大臣政務官 安藤たかお君
厚生労働大臣政務官 吉田 真次君
参考人
(成蹊大学法学部教授) 原 昌登君
参考人
(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン副会長) 村上久美子君
参考人
(日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士) 水野 信次君
参考人
(全日本自治団体労働組合 総合労働局長) 林 鉄兵君
参考人
(一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部長) 鈴木 重也君
厚生労働委員会専門員 森 恭子君
―――――――――――――
委員の異動
五月十三日
辞任 補欠選任
長谷川淳二君 向山 淳君
深澤 陽一君 広瀬 建君
長妻 昭君 鈴木 庸介君
同日
辞任 補欠選任
広瀬 建君 石橋林太郎君
向山 淳君 中野 英幸君
鈴木 庸介君 長妻 昭君
同日
辞任 補欠選任
石橋林太郎君 深澤 陽一君
中野 英幸君 長谷川淳二君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
――――◇―――――
○藤丸委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。
本日は、本案審査のため、参考人として、成蹊大学法学部教授原昌登君、UAゼンセン日本介護クラフトユニオン副会長村上久美子君、日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士水野信次君、全日本自治団体労働組合 総合労働局長林鉄兵君、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部長鈴木重也君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず原参考人にお願いいたします。
○原参考人 おはようございます。東京の吉祥寺にある成蹊大学で労働法を担当している原昌登と申します。
今日は、こうした機会をいただき、誠にありがとうございます。
私は、労働法の中でも、ハラスメントの法律問題を中心に研究しております。論文を執筆するほか、実務との関わりでは、厚生労働省の職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会や、東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例に関する会議体などに委員として参加してきました。そこで、今回は、ハラスメントの問題を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。
お手元の配付資料を御覧ください。まず、配付資料の一のところです。基本的なことから確認いたします。
職場のハラスメントは、言うまでもなく、労働者の人格を傷つける許されない行為です。しかし、実態は多様で、人によってイメージも様々です。
法的なアプローチで考えますと、まず、1のように、被害者に対する民事上の賠償責任があります。加害者には、不法行為を行ったという責任が生じ得ます。また、企業など使用者にも、加害者の雇主としての使用者責任や、被害を受けた従業員の安全に対する配慮に十分でない点があった、すなわち安全配慮義務違反があったなどとして、賠償責任が生じ得ます。
また、2のように、刑法上の犯罪に当たる場合には刑事責任が生じる可能性もあります。
そして、3として、典型的な四種のハラスメントには防止措置義務の定めがあります。
そこで、一の(二)を御覧ください。
1に挙げた四つの類型、セクシュアルハラスメント、すなわちセクハラ、妊娠、出産に関するマタニティーハラスメント、つまりマタハラ、そして育児休業や介護休業などを理由とする育児介護ハラスメント、そしてパワーハラスメント、すなわちパワハラ、以上については、企業など事業主に防止措置義務が課されています。これらは、社会的に許されないものとして共通認識が醸成されてきた各ハラスメントについて、措置義務そして行政による指導などを実施するものです。
なお、セクハラは男女差別の禁止、マタハラと育児介護ハラスメントは育児や介護と仕事の両立、パワハラは働き方改革と、それぞれ大きな施策の中の一つとして、括弧内に挙げた法改正において措置義務化が図られてきました。その際、各ハラスメントの概念、つまり定義の明確化が必要になるわけですが、法律とそれを受けた指針で実施されています。
このように、防止措置義務を設けるということ、すなわち法制化をする意義としては、2を見てください。
まず、事業主の取組により、職場のハラスメントに関する啓発や対策が社会全体で進みます。同時に、ハラスメントをやってはいけないという規範意識も社会で醸成されます。なお、二〇一九年には、労推法だけでなく均等法、育介法も改正され、国、企業など事業主、経営者や役員、労働者の四者に、ハラスメントに関する責務規定、要は、問題への関心、理解を深めること、取組を進めていくことなどに関する努力義務が定められたことも、規範意識の醸成につながったと言えます。
それでは、二として、カスタマーハラスメント、すなわちカスハラの問題について申し上げます。
まず、実態は極めて深刻です。そこに挙げた厚生労働省の実態調査によりますと、過去三年間で十人に一人の労働者が経験したと答え、相談件数が増加したと答えた事業主が全体の四分の一近くもあったにもかかわらず、何も取組をしていない事業主が半数以上です。
また、カスハラは、いわゆるBトゥーCの関係だけでなく、企業間のBトゥーBの関係でも生じます。BトゥーCでは企業は主に被害者側となりますが、BトゥーBの場合、企業は被害者にも加害者にもなり得ますので、一層注意が必要となります。
次に、2にあるように、カスハラは労働者、顧客、事業主、この三者にとって大きな不利益であることを再度確認する必要があります。
まず、aの労働者の心身が傷つけられ、そこに挙げたような大きな悪影響があるわけです。また、bの顧客にも不利益が生じます。カスハラを見聞きすることによる精神的な苦痛ですとか、そういった不利益ですね。そして、cの企業など事業主にとっては、労働者の不利益は事業主にとっても大きな損失でありますし、また、b、顧客との関係でいえば、顧客満足度の低下といったことも懸念されます。ひいては、事業の継続も脅かされることになるでしょう。
資料の裏面、二ページ目に行きまして、3ですね、労働者が傷つくことを放置すれば、事業主は安全配慮義務違反の賠償責任を負う可能性もあります。
そうしますと、(二)の1にあるように、カスハラ対策は必要不可欠で、まさに喫緊の課題と言えます。しかし、現時点では防止措置義務の対象とはなっておらず、パワハラ指針で対策が望ましいとされるにとどまっています。やはり、何かよりどころがないと、企業として、また労使として、対策を進めにくいということは否めません。社会全体で対策を進めていくためには、法制化が不可欠です。
そこで、今回の改正法案の意義について見ていきます。カスハラに関するポイントは、大きく三点ございます。
まず、事業主への防止措置の義務づけですが、さきに見たとおり、措置義務化によって、社会全体での取組が実現できます。改正実現後は、指針で措置内容を明確にし、行政が様々な支援を行うことも不可欠です。
次に、カスハラを法律で定義づけることに意味がございます。そこに定義を抜粋しておきましたけれども、定義の明確化により、今後の事業主の取組や行政の指導が容易になります。これまで、厚生労働省がカスタマーハラスメント対策企業マニュアルなどで周知啓発に取り組んできた内容も意識されたもので、広く受け入れやすい定義と言えます。
なお、各事業主が法律をベースに社内規程などでカスハラを定義づけていくということは、カスハラではない正当な要求、クレームなどとカスハラの区別を明確にするという意味もあります。対策が進むことによって、正当な要求なども言いにくくなってしまうのではといった顧客、消費者などの不安に応えるものです。定義づけがしっかりなされることで、カスハラではない正当な要求には丁寧に対応しつつ、許されないカスハラには毅然と対応するといったことが期待できます。
最後に、3の責務規定、これはパワハラなどと類似の規定ですが、国、企業など事業主、経営者や役員、労働者に、顧客なども加えた五者を対象とした点が特徴的です。行為者になり得る顧客などに対して、法律を根拠に幅広い周知啓発が可能になります。例えば、消費者教育の充実化といった、厚生労働省のみならず、関係省庁が広く連携する際の基礎にもなると言えます。
それでは、三として、就活セクハラについて申し上げます。
これは、要するに、就職活動中の学生、すなわち就活生などは、まだ従業員ではなく、現行のセクハラ防止措置義務の直接の対象ではないということが背景にあります。他方で、就活生に対する非常に悪質な事例もしばしば報じられております。
そこで、カスハラと同じく、防止措置義務と責務規定によって、社会全体への周知啓発が進みます。企業が対策を進めれば、就活生も安心して就活に取り組めますから、採用活動の円滑化、企業にとっては人材の確保という効果も期待できます。これは、転職活動中の皆さんを守ることはもちろん、これからを担う若い学生たちの未来を守ることにもつながりますから、今回の均等法改正にも大きな意味があります。
最後に、四ですが、労推法の中に、何人も職場における労働者の就業環境を害する言動を行ってはならないこと、要するに、何人も職場のハラスメントを行ってはならないということについて、明文で盛り込まれることに意味があります。これはつまり、ハラスメントをやってはいけないという規範意識を更に強く後押しするもので、今後の様々な対策の基礎になると考えられます。
以上のように、今回の労推法、均等法等の改正の実現は、社会にとって極めて望ましいことであると考えております。
私からは以上です。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、村上参考人にお願いいたします。
○村上参考人 おはようございます。私は、UAゼンセン日本介護クラフトユニオンで副会長を務めております村上でございます。
本日は、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。
私ども日本介護クラフトユニオン、略称NCCUと申しますけれども、企業の垣根を越えて、全国の介護従事者で組織しております、日本では珍しい職業別労働組合です。現在、組合員数が八万七千名、私どもと労使関係のある法人が六十三法人でございます。
本日は、介護従事者、労働者という立場から意見を陳述させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず、女性の活躍推進の部分につきましては評価をしておりますので、本日はハラスメント対策に絞って陳述をさせていただきます。
遡ること二〇一八年の四月に私どもが実施しました、ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート、こちらの回答者で、実に七四・二%の方が何らかのハラスメントを受けていると回答してきました。
その現場の実態を重く見ました厚生労働省はすぐに検討委員会を立ち上げて、翌年には、介護現場におけるハラスメント対策マニュアルの作成など、様々な対策を講じてくれました。各自治体におきましても、ハラスメント研修に力を入れていただいております。そして、二〇二一年四月に、介護保険法運営基準に事業者のハラスメント防止措置の義務化が追加されました。この一連の迅速な対応につきまして、私どもといたしましては大変感謝をしております。
また、私どもも、労使関係のある法人とつくっております労使の会におきまして、利用者、家族からのハラスメント防止に関する集団協定を締結して、労使でハラスメント対策を行っているところです。
しかし、ハラスメント対策を行っているからといって、ハラスメントはなくなるものではありません。
めくっていただいて、資料の一ページを御覧ください。私どもの調査で、昨年、直近二年間で利用者、家族から何らかのハラスメントを受けたと回答した組合員が二割強になりました。
資料の二ページから四ページになりますけれども、具体的内容を、今日は抜粋をしてありますが、全部で千九十七例挙がってきました。
少しピックアップして読ませていただきますと、まず、二ページ目の右側の十二番、模造の日本刀のさやを抜いて見せつける、エアガンの見せつけなど威嚇行為をされる、サービス提供責任者。めくっていただきまして、三ページ右側の二十二番、殺してやると言われ、傘で目を突かれ暴行された、通所系介護員。それから、下の方の二十六番、体位変換時にお尻を触られる、髪を引っ張る、つねる、かまれる、唾を吐かれる、蹴られる、殴られる、理不尽なサービスを要求する、家政婦扱いされる、訪問系介護員。そして、二十八番、おい、おまえ、ズボン履かせろなど、自身が履けるにもかかわらず大声でどなる、履かせていると、びんたされ、大声で笑っている、入所系介護員。
というようになっておりますが、ただ、資料の五ページにございますように、二〇一八年以降、職場や法人の環境が変わったという回答が約四割。どのように変わったのかというと、相談窓口ができた、ハラスメント研修が行われるようになった・回数が増えたなどとなっております。ですので、国の対策を始め、各自治体の動き、私ども労使の対応というのは、少なからずハラスメント防止につながっているということです。
そして、今回、法律としてカスタマーハラスメント対策の強化が盛り込まれることになるわけで、介護保険法の運営基準より強い縛りになることはとても期待しています。中でも、職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて国民の規範意識を醸成するために、啓発活動を行う国の責務を定めるということについて、是非お願いしたいところです。
といいますのも、事業者や労働者がハラスメント予防に取り組んでいても、利用者、家族、顧客といったカスタマー自体の意識が変わらなければ、ハラスメントはなくなりません。介護の現場でも、契約書にハラスメントの禁止をうたっていて、契約時には納得されていても、サービスを開始するとハラスメントが発生するということがよくあります。
そして、資料の六ページ。ハラスメントを受けたとき、離職を考えた人は四割にも上ります。ハラスメントを受けて、実際に離職する人もいるわけですが、介護人材が大変不足している中で、防止できる離職は防止していかなければなりません。ですので、国が国民に対して啓発していただければ、ハラスメント防止の大きな力となります。そのためにも、この法律案が成立し、推進されることを期待します。
その介護人材ですが、介護業界から他産業への人材流出が止まりません。私どもの調査でも、資料の七ページにございますが、労働条件がよくなるなら介護業界ではない他社に転職したいと回答した人が、月給制組合員三〇・九%、時給制組合員二三%。その際、重視することは、賃金が圧倒的に高い選択率になっています。
その賃金ですが、今年の春闘もそうなんですけれども、二年連続で五%を超える高水準で推移しています。しかし、介護サービスは公定価格ですので、サービスに価格転嫁をすることができません。ですので、新たな処遇改善加算のようなプラスする原資がないと、他産業のような賃上げも不可能です。今後、他産業の賃上げが現在のペースで進んでいけば、賃金格差は更に拡大することは容易に想像できます。
資料の八ページを御覧ください。こちらは、先月、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと訪問介護事業所の管理者を対象に緊急アンケートを実施し、昨年の介護報酬改定以降の実態を調査した結果となります。
この中で注目していただきたいのは、訪問介護事業所では、前年と比べて事業所収入が減少したとの回答が五五・二%。その原因は、訪問介護員の人手不足により、依頼があっても受けることができなかったためが七三・三%と最も多く、訪問介護員の不足によりサービス提供を断ったことがある事業所も八九・四%に上りました。
また、資料の九ページ。人手不足により、必要とされるケアプランが組めなかったとするケアマネジャーは六八・三%となり、対応ができずに家族に介護をしてもらっている、四一・四%、何も対応ができなかった、一九・三%となり、介護サービスを受けることができていない利用者、つまり介護難民が存在することが明らかとなりました。
実際、介護が必要な方が訪問介護事業所にサービスを申し込んでも、対応するヘルパーがいないのでとお断りするケースや、施設など建物を建てたはいいんですが、働く介護員がいないため稼働させることができないケースというのも発生しています。その結果、介護保険料を払っているのに、なぜサービスを受けることができないんだと、事業所の管理者やケアマネジャーが利用者や家族から叱責されることがよくあります。このような理不尽なクレームの対応も行わなければならず、現場としても困惑している状況です。
今回の調査で浮かび上がってきた、必要なサービスを受けられない実態があることは、カスタマーハラスメントが発生する要因の一つであるとともに、受益者若しくは受益者となり得る者が保険料を負担している介護保険制度、その根幹を揺るがす事態であり、国は危機感を持って事態解消に向けて取り組んでいくべきであるとともに、介護保険制度は介護従事者の不足から制度の崩壊が始まっているということを今こそ真剣に考えるべきです。
では、どうすればいいのか。具体的には、介護報酬の期中改定を行うとともに、介護従事者不足を解消するために、更なる処遇の改善、これを早急に行う必要があると考えます。
この国の未来を考えたとき、増え続ける高齢者をどのように遇するのか、それによって国の品位が問われます。そして、その高齢者に必要な介護サービスを担う介護従事者の確保、定着をどうやって確実なものにしていくのかということをいま一度真摯に考えて取り組んでいく必要があると考えます。
以上で、私からの意見陳述を終了します。ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、水野参考人にお願いいたします。
○水野参考人 おはようございます。日比谷パーク法律事務所の弁護士の水野信次と申します。
私は、企業法務を専門としておりまして、日頃から民間の企業様から御相談をたくさん受けております。そうした経験に基づきましてお話をさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは、企業の支援のための指針、それと各種の制度の整備の必要性、それについて意見を陳述させていただきたいと存じます。
そのために、まず、女性活躍の推進と両立支援の推進のため、こうした制度のために明確な指針を政府が定めて、そのための制度を整備してこられた、そのことの成果としての好事例、そして先進的な取組をしている企業様について、株式会社マツキヨココカラ&カンパニー様と株式会社ダッドウェイ様、こちらのお取組について御紹介をさしあげたいと存じます。
その上で、ハラスメント対策の強化に向けて、明確な指針を政府に更に示していただくとともに、企業支援の制度、これについての整備をしていただきたく、お願いをさしあげたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元の資料の右下に一、二と通し番号をつけておりますので、そちらを参照していただきながら御説明をさしあげたいと存じます。
まず、めくっていただきまして、株式会社マツキヨココカラ&カンパニー様のお取組について御紹介をさしあげます。こちらは、プライム市場に上場しておられる会社様でございます。大企業のグループとしてのお取組をお示しさしあげたいと存じます。
二のページを御覧ください。こちらにおいて、同社の女性活躍推進の取組の全体像についてお示しをしてございます。今現在、既に女性管理職比率二五%、こちらまで高めておられます。国の指針としては三〇年に三〇%というところをお示しされておられますが、こちらに向けて着々と取組をしておられます。そうした各種の全体像がこちらのページで記載されてございます。
以下のページに、具体的な施策を幾つかお示しさしあげております。まず、チャレンジ店長、薬局長制度を導入されておられます。こちらにおいて、幾つかの各種の取組をしていることの事例をお示しさしあげております。
また、これの実績に伴って、四ページ以降に、どういった成果が上げられてきているのかということを実例としてお示しをさしあげております。十年で一〇・八%アップまで参りました。こちらも、政府の明確な指針とえるぼし認定制度、こちらの制度を活用した好事例であるというふうに認識しております。
五ページ目、更にめくっていただきまして、女性管理職の座談会。今度は、管理職がどういった形で意識を高めて取り組んでいくことができるのかについて、その悩みなどを共有するような、企業の中での取組について御紹介をさしあげております。
六ページ目では、具体的な取組についての事例についての御紹介でございます。
さらに、単独の企業だけではできない認識交流だとかを異業種の中でするような形としまして、七ページ目ですね、管理職候補者の異業種交流会などに派遣をしたり、各種の制度を活用している事例でございます。
また、八ページ目にお示ししているのが、今般取り組んでおられるメンター制度ですね。男性の上級の管理職の方が、新たに管理職になられた女性の方を支援するという制度でございます。
めくっていただきますと、こちらの九ページ目にも、取り組んでおられる事例についてお示しさしあげております。こちらについては、両立支援の推進に関しての厚生労働省様の制度を活用した事例でございます。
次に、株式会社ダッドウェイ様のお取組について御紹介をさしあげたいと思います。
ページが飛びまして、十六ページ目を御覧ください。こちらは上場企業ではございません。民間の企業でございます。従業員としては二百九名程度。それでも、ここに掲げられた全体像として各種の取組をせられて、女性の活躍また両立支援についての取組をしておられます。
こちらの会社様がこういった形で積極的に取り組んでこられたのは、もちろん経営者の方々の、創業者の社長様が、非常に意識の高い御夫婦でお取り組みになられたというところではあるのではございますが、やはり、政府の制度、こういったものを活用することができたということが一つの一因となっております。
めくっていただきまして、十七ページ、これは厚労省様のお取組、こちらの方で、両立支援の制度を活用したことで御紹介をいただいて、お褒めいただいたというようなことで、政府の資料にも掲げていただいております。それが十八ページにございます。さらに、十九ページ、こちらの方に、厚生労働省様のホームページに御紹介をいただいておる事例として掲げさせていただいております。
こういったことが、民間企業、上場企業ではない企業で、そのプレゼンスがないそういった企業様にも、政府の中でこういった形で取り上げていただくことがインセンティブになって、非常に頑張ってするモチベーションになっておられます。
このように、制度を準備し、指針を明確に定めることによって、女性の活躍の推進、今回の改正においても斬新的な形で更に指針を見直されておられるとは思うんですけれども、それについて、民間においてもこのような形で、しっかり取り組んでいって、追いつこうというふうな形で頑張っておられます。
他方で、これは、民間の自律的な取組だけでは、やはり費用の問題、また、どうやって取り組めばいいか、そういった知見の問題において不備がございます。とりわけカスタマーハラスメントに関しての取組に関しては、先般、厚労省様がガイドラインを示してくださいましたが、それについての取組に関してはまだ緒についたばかりで、どうしたらいいのかということは、各企業様においても非常に手探りな状態で、日々悩みを抱えておられます。
ですから、そのカスタマーハラスメント、ハラスメント対策について、今後、指針を示していただきながら各種の制度を整備していただくべく、お願いしたい点が五つございます。
まず一つ目が、明確な法的定義の定めをいただきたいというふうに考えております。確かに法律においてそういった定めがございますが、カスハラやセクハラの定義が民間の方々にとっては分かりにくい、具体的な対策を講じにくいということがございます。そのために指針を示していただきたいというふうに考えております。
またさらに、二つ目、悪質なハラスメント行為、先ほど御紹介事例もございましたけれども、非常に大変な思いを現場ではされておられます。そのための防衛手段、こういったものも御用意いただきたいというふうに考えております。具体的には、法制度、仮処分制度、こういったものが利用できる、そういったものについてまだ御理解が足りないです。ですので、そういったことを御紹介いただく、若しくは、例えば法制度として費用の支援をするだとか税額控除をするだとか、そういったことの対処をいただければというふうに考えております。
その点に関しまして、三つ目、これも独立してお願いしたいことではございますが、対策費用への税額控除、また助成金等の企業支援、そういったことを明確に定め、制度化していただきたいと存じます。具体的には、ハラスメント防止のための研修費用、また相談窓口の設置費用、システム導入費用など、そういったものへの税額控除、助成金等の支援をして、企業の取組を積極的に後押しいただきたく存じます。
また、先ほども申し上げましたが、実は、ハラスメントというものに関しましては、カスハラ、カスタマーハラスメントに関しては、特に訴訟など、紛争が長期化することがございます。企業様にとっては、それでたとえ勝訴を得ても、何かを得られるということは特になくて、それに、裁判に訴えてまでやるかということについては非常に消極的でございます。そうしたことから、そういった訴訟についても、政府の方で何らか支援する制度、そういった形で手当てをいただければというふうに考えております。
また、企業そのものが、先ほどの事例もございましたけれども、お客様の方が大事なゆえに、積極的な取組ができないという場合もございます。そうした観点から、公的な、第三者的立場から支援するような相談窓口、中立的、公的な相談窓口のような整備をしていただければというふうに考えております。
以上、五点のお願いを申し上げました。
私は、国費助成で国立大学に通わせていただきまして、また、日本育英会、中山報恩会という奨学金をいただいて、苦学生として、口にのりをしてまいりました。そうしたことから、公的支援制度、そういったものの重要性を大変認識しております。
つきましては、今回御紹介さしあげた企業様としては好事例ではあるんですが、このような会社様ばかりではない。従業員のために取組をしたいというふうに考えておられても、施設、費用だとか、そういったものに関してまだまだ十分な準備ができない、そういった企業様もございます。ですので、そういった企業様のお気持ちを酌んで、制度について積極的に御支援賜りたく、何とぞ御審議をいただければというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは以上です。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、林参考人にお願いいたします。
○林参考人 私は、全日本自治団体労働組合、略称自治労で総合労働局長をしております林鉄兵といいます。
本日は、呼んでいただきまして、ありがとうございます。
この三月末まで大阪市役所の行政職員でもありましたので、守秘義務に反しない範囲で現場の実態を御紹介しつつ、この法案に期待をすること、法改正の趣旨を実効性あるものにするためにどういったことが課題なのかについて、自治体の現場からの視点で御説明をいたします。
説明のポイントは、一ページでございます。
総務省や自治労の調査によれば、カスハラの実態は職員、地方公務員にとって厳しいものがあります。法案の成立を期待するものですし、民間企業等のみならず、公務の分野でも対策が進むこと、カスハラの被害がなくなるよう具体的な取組を望むものです。
他方、公務と民間の相違点としては、公権力の行使を背景としつつ、場合によっては私的領域に踏み込んで、生存権や命を守るためにやるべきことがございます。じゃ、そういうときにどうやって職員を守るかという点です。
また、市役所で、カスハラ行為者を立入禁止処分に仮にした場合には、ほかの市役所でサービスが受けられるわけではないという代替性の問題もございます。
代替性がないことの延長線にもなりますけれども、大声や居座りなど、行為そのものはカスハラに当たるのかもしれませんけれども、住民自身がコミュニケーションや発達などの障害があって、困り事を抱えているケースも考えられます。
法律や条例、制度や市役所自体に問題があって、主権者や住民たる立場で異議申立て、正当な是正要求をしている場合、例えば、高度成長期の公害被害やその対策です。こういったことが、どういうふうにバランスを取れたものにするのかという課題がございます。
法案の成立によってどういう社会を、どういう自治体の現場のありようを想定するのかといったイメージ合わせも、今後の委員会における審議の中でお願いしたいということで参りました。
では、二ページをお願いします。
総務省が地方公務員を対象にして、初めてのハラスメント調査を昨年末に実施をいたしました。実態を明らかにしたという点で、非常に重要であるというふうに考えています。カスハラについては、民間よりも多い割合で、受けたという回答内容になってございます。内容としては、威圧的な言動として、大声で責める、反社会的なつながりをほのめかす、精神的な攻撃としては、脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要などが挙げられます。
また、こちらは自治労の調査になりますが、公務におけるカスハラの特徴として、行為者が同じ人、よく来庁する特定の住民によるカスハラ行為を指摘しておきたいというふうに思います。これは、自治体の業務範囲は広く、税を支払っていることを背景に住民の多くが利害関係者となり得ることもありますが、組合員から現場で聞く話からすると、いわゆるハードクレーマーによる被害の報告がございます。
昨今、就職戦線では人材確保競争が激化していると言われますが、公務員の人気は低下傾向です。その中で休職者、退職者が増加していることは、カスハラだけが原因ではないとしても、持続的に一定の水準で行政サービスを提供するためには、憂慮すべき状況であるというふうに考えています。
では、三ページをお願いします。
民間企業等においては、契約自由の原則によって、例えば、あなたのような方はうちのお客さんではありませんので、二度と来ないでくださいと言うことが法律上は可能です、やるかどうかは別にして。
しかし、自治体や国の機関には、住民の権利保障の関係からも、こういったことは許されていません。自治体は、そもそも住民の皆さんが、町の会費として住民税を集め、自分たちで議会を持ち、施策や予算を決定、執行部が実施をする住民自治が制度のベースにあります。
ほかの自治体の保育所が充実をしているからそちらに申し込むということは、住居の移転をしない限り、基本的にはできません。仮に庁舎への出入りを遮断してしまえば、サービス提供に支障が出ることは容易に想像ができます。
こうしたことから、自治体におけるカスハラ対策は、徐々に進んではいるものの、個人を特定されないよう名札を平仮名表記にすることや啓発ポスターの掲示、録音、録画にとどまっています。その原因として、公務の持つ代替性のなさと住民の権利行使と職員の保護のバランスを比較考量し、どこまでなら制限できるのかが議論し尽くされていないことも一因ではないかと考えています。
二〇一六年に大阪市が大阪地裁に訴えた、多数回にわたる濫用的な情報公開請求を含む面談強要行為等の差止め請求は容認をされ、これらを理由とする損害賠償請求も一部認められています。判決では、市民の声制度を利用した質問状の送付を多数行った、応対に当たった職員に侮蔑的、脅迫的な発言、大声で暴言、独自の見解に基づく意見を延々と述べる、超過勤務や精神的な苦痛による体調不良を訴える職員がいる、五十三件の公開請求によって約八千三百六十枚の文書を交付したといった事実が裁判上認められています。
この事件ではありませんけれども、私自身も、ゴールデンウィークや正月前に、一件の請求で対象となる文書が数百枚や数千枚になるような案件を、現場の事務所や現場を統括する部署で対応したこともございます。その方は、自分の要望を聞いてもらえないことへの懲罰として、嫌がらせの手段として公開請求制度を悪用していたと受け止めています。公開手続をしたときも、閲覧のみで、コピーして持って帰ったのは二、三枚といったこともありました。
別の自治体の例ですが、公立図書館では、利用カードを提示せず貸出しを求め、予約冊数の制限を超える受取を要求、長時間カウンターを占拠、レファレンス対応の特定の司書を指名、一日に百五十冊を超える貸出し、返却を繰り返す行為という迷惑行為を継続していた住民がいました。教育委員会規則に基づいて入館禁止処分を行ったところ、処分の違法性と国賠法上の違法行為が争われたこともございます。
カスハラ行為を更に詳細に分類することで、多岐にわたる行政分野ごとで、実効性あるカスハラ対策として今後求められるであろう条例や規則、要綱改正などが見えてくるのではないかと考えており、そのためには、施行までに法律的な側面からの検討が必要であり、一定の時間や職員の体制も必要です。
最後、四ページです。
法案が成立すれば、雇用上の措置義務として、事業主がカスハラ対策をしなければなりません。公務における分野ごとの検討と同じように、分野ごとに業界団体を中心として検討がされるというふうに想定をしています。
その際に、労働者を守ることは前提として、利害関係者である消費者や合理的配慮を必要とする障害者の意見も受け止めて検討がなされるべきです。今回の法改正が、カスハラから労働者を守るものであって、正当なクレームを排除することや合理的配慮として求められる水準を後退させることにつながらないよう、今後、バランスの取れた制度設計が現場でなされるよう、附帯決議も含め、御検討をお願い申し上げます。
また、事業主が従業員に対してできることだけでは、限界がございます。図にしておりますけれども、濃い部分ですが、事業主ができることからはみ出している領域もカスハラ対策には必要です。継続的に取組が推進をされ、実効性のあるものとなるよう、業法や政省令の改正も含め、厚生労働省を中心とした関係省庁における取組の状況の確認や後押しもお願いしたいと思います。
最後になりますが、地方公務員の多くは、自分の町の住民の皆さんのお役に立てるよう、真面目に一生懸命、公務に取り組んでいます。
総務省の調査では、パワーハラスメントがあった職場の特徴として、人手が常に不足しているという回答が五割を超えています。このような状況でカスハラ対策を講じることになった場合に、単に、住民に対応する時間に上限を設ける自治体が出るのではないか、困り事を抱えた住民の訴えや要望をカスハラとして受け付けない、排除してしまうのではないかという懸念が拭えません。
仮に立入禁止処分をするのであれば、事前に有識者で構成する第三者的な委員会に諮問することや、電話や対応の打切り件数が年間でどれぐらいあるのかといった事後的な確認がなければ、行政の過剰規制は検証できません。
重ねてになりますが、公務も民間も、一方的ではない、バランスの取れた、かつ実効性のあるカスハラ対策が講じられますよう、法案の成立と厚生労働委員会におけます幅広な御議論をお願い申し上げて、私からの説明とします。
ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
次に、鈴木参考人にお願いいたします。
○鈴木参考人 おはようございます。経団連で労働法制本部長を務めております鈴木と申します。
本日は、労働施策総合推進法等の改正法案に対する経団連の考え方を意見陳述させていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
改正法案に賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。
初めに、基本的な考え方について申し上げたいと思います。
まず、ハラスメントにつきまして、こちらは、人権を侵害し、あってはならない行為です。とりわけ、最近クローズアップされておりますカスタマーハラスメント、こちらにつきましては、消費者などの行為者が社外にいる、企業の外にいるという特性から、対応の難しさがございます。
実際に、企業からは、業種、業態や商慣行に応じた判断基準、対応方法を整備することが難しいというお声、また、SNSで拡散されてしまうリスクがあるといった様々な声が寄せられており、対応に苦慮している実態がございます。
そのため、第一に企業の取組、第二に業界ごとの取組、第三に関係省庁の連携による顧客の意識、行動変容に向けた取組、この三つを併せて対策を強化する必要性を痛感しておりますところ、今回の法案提出は時宜にかなったものというふうに考えておるところでございます。
次に、女性活躍推進についてでございます。
経団連は、女性を始め、様々な働き手の人権を尊重し、多様な価値観を生かし、包摂してこそイノベーティブな付加価値を生み出せるという信念の下、DEI、とりわけ女性の活躍推進に力を入れております。
例えば、女性活躍推進法の施行の前、二〇一四年に女性活躍アクション・プランなるものを公表いたしまして、会員企業に対し、女性の役員、管理職登用等に関する自主行動計画の策定とその実行を求めてまいりました。
その後、二〇二一年には、役員に占める女性比率を二〇三〇年までに三〇%以上とする目標を掲げ、役員、部長、課長などの各職位に切れ目なく登用できるよう、女性社員を育成するタレントパイプラインの強化、また、多様な働き方の推進、そして組織風土改革に向けた企業支援などに取り組んでおるところでございます。
こうした取組によりまして、女性が働きやすい環境整備は着実に進展をしていると評価をしておりますが、一方で、L字カーブでありますとか、女性管理職比率、男女間賃金差異などの現状を見てみますと、取組は道半ばの状況にあり、これまで以上に女性活躍推進施策に取り組んでいかなければならない、このように思っているところでございます。
労働政策審議会では、そのような思いをしっかりと持って、他方で、業種、業態や企業規模による取組の難しさにも留意しながら、真摯に議論に対応してきたところでございます。
それでは、改正法案に盛り込まれております措置につきまして、特に重要と考えております五点に絞って申し上げたいと思います。
まず、労働施策総合推進法のカスタマーハラスメント防止対策についてでございます。
カスタマーハラスメントは、企業にとりましても喫緊の問題であり、社員を保護し、円滑に事業を運営していく観点から、カスタマーハラスメント対策を雇用管理上の措置義務とするということは必要な措置であると考えております。
加えまして、法改正に合わせて、カスタマーハラスメントの定義が明確化されるとともに、事業主が講ずべき措置内容が指針で示されることなどが盛り込まれており、企業といたしましても、格段に対策に取り組みやすくなるものと評価をしておるところでございます。
次に、就活等セクシュアルハラスメント防止対策の強化についてでございます。
就活やインターンシップ中の学生など、求職者に対するセクシュアルハラスメントにつきましては、過去にも企業で問題になった事例がありましたほか、三割の学生が就職活動中にセクシュアルハラスメントを経験したという調査もございます。就職をしたいという学生などの思いを踏みにじるような行為であって、その防止のため、事業主の雇用管理上の措置義務を設けることに賛成をいたします。
近年はインターンシップが普及しており、比較的長い期間、求職者と社員が接する機会も増えているところでございます。
経団連といたしましても、法案を成立していただきました後、説明会の開催などを通じ、企業に対し、就活等セクシュアルハラスメントの防止に向けた取組を強く働きかけてまいりたいと思っております。
次に、治療と仕事の両立支援対策についてでございます。
労働政策審議会で示された資料によりますと、通院をしている就業者の割合は約四割に上り、また、四人に一人が治療開始前に退職をしているところ、治療と仕事の両立支援の推進は非常に重要な課題であると認識をいたしております。
改正法案では、事業主に対し、両立支援に必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切、有効な実施を図るために、厚生労働大臣の定める指針の根拠規定を整備することとしています。
この努力義務規定の新設と法制上の指針の策定を通じて、両立支援対策の必要性が周知され、企業の対策が進むことを期待をしているところでございます。
続きまして、女性活躍推進法についてでございます。
改正法案には、女性活躍に関する情報公表義務の拡大が盛り込まれており、男女間賃金差異及び女性管理職比率の公表が労働者数百一人以上の事業者に義務づけられることとなっております。この二つとも、女性活躍における重要指標であり、必要な措置と考えております。
他方で、経営資源が限られる中小企業にとりましては、相当な負担が生じることが予想されますので、手厚い公的支援をお願いしたいというふうに思っております。
なお、企業における女性活躍推進は、各企業が自社の状況に応じた施策を選び、取り組むことが最も効果的であります。事業主の主体性を尊重した女性活躍推進法の枠組みは、今後も堅持をしていただきたいというふうに考えております。
最後に、女性の健康課題についてでございます。
女性活躍を更に推進する上で、女性特有の健康課題に対する支援はとても重要であり、一般事業主行動計画を策定する際、女性の健康支援について盛り込むよう事業主に促すことは適切であると考えております。
また、更年期症状や不妊治療、こちらは男性にも起こり得ることから、支援の取組を進める際には女性と同様の配慮が必要であり、企業として男女を問わず取り組んでいくことが有効、このように考えております。
この点に関し、労働政策審議会の建議では、女性だけでなく労働者全体を対象として取り組むことが有効であるということが明記されたところでございます。
経団連といたしましても、こうした観点から、引き続き企業の取組を促してまいりたいと思います。
以上が、主な措置についての考え方であります。いずれの措置も、社員が安全、安心して働き、女性が活躍してもらうため、あるいは求職者を守るため、大変意義のある見直しと受け止めております。
経団連といたしましても、多様な働き手のウェルビーイングの実現に向けて、引き続き取り組んでまいります。
私からの意見陳述は以上でございます。
ありがとうございました。(拍手)
○藤丸委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○藤丸委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。塩崎彰久君。
○塩崎委員 おはようございます。塩崎彰久でございます。
自民党を代表して、参考人の皆様に御質問させていただきたいと思います。
まず、五人の参考人の皆様には、本日、お忙しい中、カスタマーハラスメント対策を考える上で非常に示唆に富んだお話をありがとうございました。
私は、議員になる前は弁護士をしておりましたが、その当時は、まだカスタマーハラスメントという言葉は余り一般的じゃなくて、こうした場面のことを、悪質クレーマー対策とか不当要求対策、こうした言葉でくくっていたように思います。私も、何度も現場に危機管理弁護士として引きずり出されまして、テーブルの向こう側に暴力団風の男性がすごんでいたりとか、俺は元爆破テロリストなんだと名のる男性からどなられたりとか、いろいろなカラフルな思い出がございます。
今回の法律ができれば、こうした対応が、ある意味、従業員任せではなく、会社として安全防護をしていく措置、これを定めていくということになることは、非常に大きな一歩ではないかと思っております。ただ、大事なのは、会社としての管理措置の中身、そしてそれを定める指針でございます。
そこで、今日は、参考人の皆様に、この指針の中身としてどういったものを盛り込むべきか、どういった点を配慮すべきか、この辺りについて、時間の許す限り、お伺いをしていきたいと思います。
まず、原先生。原参考人は、まさにこの分野の第一人者として、今回のカスハラ対策の議論を牽引されてきたわけでございます。先生の御主張の中で、BトゥーCというお客さんからの、個人からのハラスメントだけじゃなくて、BトゥーB、ビジネス・トゥー・ビジネス、つまり取引先の企業の担当者から受けるハラスメント、こうした分野については、BトゥーCとは違う配慮が必要なのではないか、こうしたお話をいただきました。
確かに、個人の方であれば裁判で訴えるとかいろいろあっても、上得意のお取引先の担当者だと、なかなか言いたいことがあっても言えなくて我慢してしまう、そんな現場もあるのではないかと思っております。
原先生から見て、今回の指針の中で特に盛り込むべき点、BトゥーB、そうしたものの対応も含めてお話しいただければと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
カスハラに関する指針、具体化する上で非常に重要なものでありますけれども、私としましては、これまでのパワハラやセクハラに関する指針と大きく変わるものではないというふうに考えております。
ポイントになりますのは、大きく三つになります。事業主として方針を明確にした上で、それを研修等で周知啓発していくということ、そして二つ目が相談体制の整備、三つ目が発生時にしっかり事案を調べて対応していく、こういったことを中心とした指針を作っていくということになります。
あとは、今おっしゃったように、行為者が外部にいるということ、そういった特性については、労働政策審議会などの場において、公労使の中で専門的な見地も含めて議論をして、よりしっかりと作っていくということが必要だというふうに考えております。
○塩崎委員 ありがとうございました。
続きまして、村上参考人にお伺いしたいと思います。
村上参考人からは、まさに介護の分野における難しさについてお話をいただきました。確かに介護分野というのは、ある意味、福祉の現場でございますので、なかなか一般の、例えばコンビニのお客さんに対するような対応とは違う難しさがございます。参考人のお示しいただいた資料の中でも、こんな声がありました。認知症の利用者なので仕方ないと割り切って、優しい口調で触らないように伝えながらケアをしているが、やはり許せない気持ちはあるということでございます。
対象となるお客様、相手方が必ずしも心身共に万全の状態ではない福祉サービスの現実というものがある。その中で、カスハラの定義でもある、何が業務の性質上社会的に相当と認められる範囲を、許容される範囲を超えるものかどうか、ここの判断は非常に難しいのではないかと思っております。
村上参考人のこれまでの御見識、御経験に照らして、今回のカスハラ対策の指針、また、その後の運用において考慮すべき点があれば教えてください。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。
現場におきまして、やはり、先ほども言いましたけれども、利用者とその御家族の皆さんが、こういうことがハラスメントで、ハラスメントというのはいかなる場合でもあってはならないことだということを認識していただかないと、なかなかハラスメントというのはなくならないと思うんですね。
契約時にそういうことを言っても、やはりサービスが始まってしまうとハラスメントが起こる。そのときに、こういうことがハラスメントなんですよ、だからこれはやってはいけませんということを、大体がケアマネジャーの方だとか、あとは事業所の管理者の方がそういう利用者とか家族の方におっしゃるんですけれども、なかなか聞き入れてもらえない。自治体に言ったところで、自治体が、ちょっとそれはというふうにして逃げるパターンが結構あるらしいんですね。
ですので、指針の中では、利用者、家族に対するそういう周知とか啓発というものを、先ほども国の方がやるということはあったんですが、自治体の方がしっかりとそれをやっていただきたいということを非常に現場の方も言っておりますので、そういう文言も入れていただければいいかなというふうにして思います。
認知症に関しましては、やはり線引きが難しいというところがあるんですけれども、現場の方からすると、幾ら認知症だと分かっていても、嫌なものは嫌だし、やめてほしいことはやめてほしい。だから、駄目なものは駄目、そういうしっかりとしたことが言えない場合が結構あるんですよね。
そういうときは、やはり主治医の方と御相談しながら、こういうときは、こういう場面があるんですけれどもどうすればいいでしょうかという医療との連携というのが非常に重要になってくると思いますし、あとは、事業所の中での情報共有をやっていただいて、それで、こういうときはこういうふうになるから、そういうことはやらない方がいいよ、そういうコミュニケーションを取る、そういうことも非常に重要だと思いますので、認知症に関してはそういうことがちょっと言えるのかなというふうにして思いました。
以上です。
○塩崎委員 ありがとうございました。
やはり、線引き、現場ではなかなか難しいですよね。
さっき原参考人からは、指針において、事業所としての方針、そして相談体制、そして対応策、こういった三つの柱をお示しいただきましたが、特に介護現場だと、やはり個別のケースごとの限界事例が多いと思いますので、相談体制みたいなところもとても大事になってくるかもしれないなというふうに感じました。
続きまして、水野参考人にお伺いしたいと思います。
まさに弁護士として、こういう体制整備、お仕事として当たっていらっしゃる。その中で、先ほど、優れた事例を二つ御紹介いただきました。
水野参考人から既に、指針においてどういったことを盛り込むべきなのか御意見をいただいたところですが、その中で、先ほど、仮処分の利用についても、もう少し広く知っていただくべきじゃないか、活用されるべきじゃないか、こういうお話がありました。
仮処分がこういうカスタマーハラスメント対策においてどういうふうに活用できるのか、御存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、もう少しつまびらかに、どういうふうな場面で使えるのか、教えていただけますか。
○水野参考人 具体的に申し上げますと、ですから、まずは接近禁止の仮処分、近くに寄るな、例えば施設に入るなというような形での仮処分、そういった命令を裁判所からいただくことがまず考えられます。
あと、これもできるのではないかなというふうに考えておるのが、ちょっと私の資料の方で二十二ページにお示しをしておるんですが、例えばグーグルマップだとか、そういったところに匿名でいろいろなコメントを書くことが今できてしまいます。しかも、根拠のない間違ったような認識に基づいて、誤ったようなレビューを書かれて、それが悪評になってしまうということがございます。こういったことについて、これを削除する、そういったことでの仮処分命令とかというのがまたできるのではないかなと思っておりまして。ただ、これは実はなかなか難しいところでありまして、取組の仕方として、私ども、本当にどうやってやればいいのかというのも含めて知恵を絞っているところでございます。
ですので、このやり方について、具体的な、我々が各企業様の御相談を受けながら成し遂げたことだとか、裁判例としても、先ほど御紹介もありましたけれども、自治体様の大阪様の例も御紹介いただきましたが、それが実は知られていない。ですので、これをまず周知いただくため、ガイドラインにおいて盛り込んでいただくというのが一つのやり方ではないかなというふうに考えております。
以上となります。
○塩崎委員 ありがとうございます。
不当要求対応においても、やはり法的な対応、ここの、法的に何が許されるのか、できるのか、これを一つの対応の基準にしていくということがベストプラクティスだというふうにされておりましたが、今まさに水野参考人がおっしゃったように、そうした法的な手段をしっかりと活用して、法的にはどうなんだという視点、とても大事なのではないかと感じました。
次に、林参考人にお話を伺いたいと思います。
公務員に対する暴力、これは、古くからは行政対象暴力なんて言われて、大きな問題となってきたところでございます。やはり、おっしゃられた公務員の特殊性、契約だからといって打ち切るわけにいかない、代替性がない、こうした特殊性に照らして、我慢をされている公務員の方は大勢いらっしゃるのではないかと思います。
林参考人の御提案の中では、事業主だけじゃなくて、利用者や顧客、住民などへの要望、規制、こういったものも考えるべきではないかという御意見がありましたが、この点も含めて、指針作りに当たっての考慮のポイントを教えてください。
○林参考人 ありがとうございます。
先ほどの介護の例ともちょっと近いかもしれませんが、やはり、いろいろな住民の方がおられて、様々なことを想定しなければならないんだろうなというふうに思ってございます。役所の窓口は様々な方が来られますし、特に福祉の現場では、御家族も含めて、かなり困り事を抱えておられる、周辺の住民の方も困り事を抱えておられますので、丁寧に時間をかけて対応することが必要です。
ただ、その中で、カスタマーハラスメント行為に当たる行為を受けたときに、例えば、Aという職員を替えて、Bさん、Cさん、Dさんとかで、複数で対応しながら何とかその困り事を引き出すとか、解決策を見出すみたいなこと、丁寧な対応が求められてくると思いますので、ルールを作る中で、指針を作る中で、現場のそれぞれの状況に応じたふうにできるように、カスタマイズできるように、職員同士で意見交換をしながら現場で作り上げていくことが、ガイドラインはおおむね示したとしても、ボトムアップが重要なんだなというふうに思ってございます。
住民の皆さんに向けては、やはり役所を利用される様々なところで、あなたの行為はカスハラじゃないですかみたいなことをしっかり知っていただくこともそうですし、様々な教育の場面で、カスタマーハラスメント行為は許されない、全てのハラスメント行為は許されないみたいなことを、例えば地方議会で首長が宣言すること、決めることを住民の皆さんに知っていただくみたいな取組を地方自治体でもすることが必要だというふうに考えてございます。
以上です。
○塩崎委員 ありがとうございました。
林参考人がおっしゃられたように、事業主といっても、できることが限界があるんだとすれば、自治体レベル、政治レベルでも、引き続き、やはりカスタマーハラスメントはよくないことだということは、しっかりとメッセージを出していく必要があるんだろうというふうに思います。
申し訳ございません、鈴木参考人にも是非御意見を伺いたかったのですが、時間の関係で、この後の方に譲りたいと思います。
カスタマーハラスメントについては、多くの場合、民法上は不当要求、不法行為に当たりますので、損害賠償をして金銭補償を受けるという救済の手段は残されているわけでございます。ただ、実際には、ハラスメントを受けた当事者からすれば、金銭をもらったとしても癒やせない心や体の傷というのは残ってしまうわけでございます。だからこそ、事前にこれを防止していく、そして、いざ、そういう場面に出くわしたときには、一人で対応しないで複数対応していく、記録を残していく、こうした対応のノウハウを共有していくようなことがとても大事なのではないかと思っております。
本日の議論を通じて、カスタマーハラスメントが少しでもこの社会からなくなっていくことを祈念しまして、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。
本日、参考人の皆様には、本当に多様な知見をいただき、ありがとうございました。
まず、介護クラフトユニオンの村上参考人に伺います。
ハラスメントの壮絶な実例を聞き、また、陳述になかった実例も全部見せていただきましたが、やはりこれは何とかしなければいけないというふうに思います。
特に、訪問介護では、利用者さんのお宅にヘルパーさんが一人で行くため、何をされるか分からない上に、密室なので目撃証言とか証拠も得にくいのだというふうに思います。カスハラのおそれがある利用者さん宅には、例えばヘルパーさんが二人組で行く、訪問することによって、カスハラの抑止とか、何かあったときには証拠の記録などができないかというふうにも考えます。
現在、ベテランヘルパーが新人ヘルパーに同行指導した場合に支援金を出すという制度があります。この仕組みを応用して、カスハラのおそれがあるお宅に行くときにはヘルパー二人で対応して、その場合に同行する一人分の費用を助成するということについて、効果があると考えるか、お聞かせいただきたいと思います。
○村上参考人 ありがとうございます。
私どもは、以前から、ハラスメント対策として、例えば夜間の介護だとか、あと対応が困難な方に関しては二人体制にしていただいて、二人分の報酬をいただきたいということは要望しているところでございます。
現場からもそのような声は聞かれるんですが、現在、介護報酬、介護保険ですね、利用者とか、あとは家族の方が了解をすれば、そういう場合に限って二人分出ることになっているんですけれども、料金が二倍になりますので、なかなかオーケーをもらえないような状況なんですね。
現在でも、自治体によっては二人体制で補助金を出しているところもあります。例えば、二〇二二年に埼玉県のふじみ野市で訪問診療の医師の方が散弾銃で撃たれた事件があったんですけれども、その後、やはり埼玉県は、これは大変だということで、二人分の補助を出すようになりました。それから、兵庫県なんかでも一部補助を出していますし、東京都なんかでもカスタマーハラスメント対策強化事業ということで二人分出しております。
とはいえ、自治体によって、出しているところ、出さないところがありますので、国が一律にそういう補助をする仕組み、若しくは全ての自治体が補助をする仕組みがあれば、それはすごく助かると思います。
○井坂委員 ありがとうございます。
続いて村上参考人に伺うんですが、中には本当に命に関わるようなカスハラの事例も御紹介をいただいたわけであります。相談体制とか、そうした体制整備だけでなくて、本当にひどい事例に対しては接触禁止とか出入り禁止などの仮処分命令の申立てなど、カスハラを本当に実効的に抑止をする措置を、これは例示でもよいので、法律に明記をした方がよいのではないかと私は考えているんですが、そのことについての御見解を伺いたいと思います。
○村上参考人 介護の場合には、運営基準の中にサービス提供拒否の禁止というのがうたわれているんですね。正当な理由がない場合には、サービスを拒否してはいけないということになっています。ですが、カスハラに関しましては、正当な理由に当てはまりますので、事業者が様々な対策を講じてもハラスメントが収まらない場合には、契約を解除していいということになっています。
ただ、そうなった場合、利用者をそのままの状態にしておくわけにはいかないので、介護難民とかになってしまいますので、地域包括支援センターとか、あと行政とかと相談をしたり、地域ケア会議を開いて対応したり、あとは次の受入先を探したりと、非常にかなり苦労することは事実なんですね。
ですが、介護現場でもそうですけれども、外食サービスなんかでもそうですけれども、土下座の強要とか、テーブルをたたいたりだとか、脅しをかけてきたり、身体的暴力を振るってきたりとか、そういうことはあるわけですけれども、ハラスメントをやめてほしいと言ってもなかなかやめてもらえないような場合だとか、あと、長時間続くというようなことになりがちですので、介護の場合は、介護保険法の縛りがあってなかなか難しいかなと思うんですね。
ただ、一般的には、法律にそういうところまで書いてあった方が、事業者も仮処分申請というような毅然としたカスハラの抑止政策ができると思いますし、あと、従業員を守るという意味からも、そういうことはあってもいいのではないかなというふうにして思います。
○井坂委員 ありがとうございます。
村上参考人の資料、オレンジと緑のアンケートのグラフ、大変充実した資料をありがとうございます。
私がやはり気になったのは、カスハラで辞めたいと思ったことがある方が四割、これも本当に切実なんですが、労働条件がよくなるなら、しかも介護以外の仕事に転職をしたいという方、それだけでも三割いらっしゃる。じゃ、労働条件は何ですかというと、八割が要は賃金がいいところに行きたいということで、これも本当に切実な現状だというふうに思います。
この議論は私も厚労大臣と随分しているんですが、政府は、今のところの答弁は、昨年度の補正予算の処遇改善が夏頃に行われるので、その効果を見てから、足りなければ考えたいというところにとどまっております。
現場の実感として、言いにくいことも率直に言っていただきたいんですが、要は、私は、介護で働く人、福祉もそうですが、今すぐ追加の処遇改善をしなければ、本当に陳述していただいたように人材が流出をしてしまう、介護や福祉を担う人がますます足りなくなってしまうという危機感を持っているんですけれども、現場の実感としていかがでしょうか。
○村上参考人 先ほどおっしゃられたのは、介護人材確保・職場環境改善等事業のことだと思うんですけれども、介護職員に一人五万四千円ずつ支給しますよというやつですね。これは、五万四千円掛ける事業所の介護職員数が事業所に入ってくるんですけれども、介護職員以外にも支給できることになっていますので、対象者が増えれば一人当たりのもらえる額は少なくなるということとか、恒久的な支援策ではございませんので、通常の月額賃金に入れることもできないような状況。それからあと、介護助手の募集経費とか研修費にも使えますので、事業所の判断で、必ずしもそれが全額介護職員に行き渡るわけではないものなんですね。
ですので、私どもは、その効果は軽微なものだというふうにして思っています。その効果を秋ぐらいに確認して、そこから来年度予算で処遇改善分を確保して、来年春に介護報酬の改定ということなんですけれども、そんな悠長なことを言っている場合ではもう絶対にないです、現場では。
賃金が思うように上がっていかないという状況の中、物価高に対応するために他産業がどんどん上げていっているんですよ。そうなってきたら、介護業界から他産業に流出していくというのは本当に当然のことじゃないかなというふうにして思ってしまうんですね。
事実、二〇二三年には、介護保険制度が始まって以来、介護職員が減少しましたので、もう本当に、今国会で何らかの、処遇改善とか、あと訪問介護への支援とかも含めてやっていただかないと、本当に、介護保険制度、崩壊します。
以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。
本当に、いただいた資料にも、ケアプランを組めなかったというのが七割もあったり、その結果、結局家族に介護してもらっているとか、あるいはインフォーマルな形で何かしてもらっている、あるいは何もせず放置しているというのが六割ということで、単に業界とか賃金の話ではなくて、我々全員が介護サービスを受けられなくなり始めているという実態に対して、これは本当に、批判ではなくて、与野党を超えて、ちょっと今国会で何かしなければいけないというふうに思っております。
続きまして、今度は企業法務が御専門の水野参考人に伺いたいと思います。
陳述の中でこうおっしゃっていました。悪質なハラスメント行為に対する企業側の防衛手段について、できることは実はあるんだけれども、まだ企業側の理解が足りないんだというふうにおっしゃっていました。
そこで伺いますが、現状でも、悪質なハラスメントには、さっき申し上げた出入り禁止などの仮処分申立てができるわけですが、これをあえて、指針にちゃんとこういうことをできますよと明記をしたり、あるいは法律に例示として明記をすることの企業の現場から見た有効性についてどう考えられるか、教えてください。
○水野参考人 端的に回答申し上げます。明示すべきだと思います。
例示があることによって、ああ、これがいいんだというのは、はっきり申し上げると、解釈の指針にもなりますし、ほかの措置に対する可能性が広がります。ですから、まずは法律で例示していただくのがいいのではないかなというふうに考えております。
○井坂委員 ありがとうございます。
その際に、もちろん、カスハラを受けている従業員側としては、企業がそこまで毅然とした措置を取ってくれるようになるのはとてもありがたいことなんですが、一方で、企業、経営、運営している側からすると、もちろん守りたいんだけれども、要は訴訟、さっきおっしゃったような大変な訴訟をしなければいけない、むしろ書かれると必ずしなければいけないみたいになるのも、これもなかなか大変だという御意見もあるわけですが、だからこそ、水野参考人がおっしゃった企業側への支援、カスハラ対策、これは大変、守りの費用になるので全然利益が上がる話でもないですし、そこに対する支援が必要なんだというふうに我々も思っております。
次に、自治労の林参考人にも一問伺いたいと思うんですが、自治体というのは本当に難しいなと改めてお聞きをして思います。どこまでであれば住民の正当な権利としての異議申立てであって、どこからがカスハラで、しかも、これ以上ひどければ立入禁止や利用禁止までして構わないというような線引きが今ないのだというふうに思います。各自治体がこれを独自に法律の専門性を持って考えるというのは、大変無理があるようにも思います。加えて、民間企業と自治体でも、カスハラの内容と、そして許される対応は全く異なりますし、陳述にもあったように、自治体内でも業務ごと、部署ごとに全く異なるのだと思います。
そこで、林参考人に伺いますが、要は、厚労省が一律にカスハラはこうですというふうに対策の指針を作るのではなくて、例えば自治体の業務については総務省が、ちゃんと中身をよく分かっている総務省が指針を作る、ほかの、民間企業であれば例えば経産省、要は所管している省庁がちゃんと業界ごとに線引きの指針を作る必要があるというふうに聞いていて思うわけでありますが、林参考人の御見解をお願いいたします。
○林参考人 ありがとうございます。
委員御指摘の、まさにそのとおりだというふうに思っています。
自治体の場合で申し上げますと、例えば地方三団体もありますし、それぞれの、現場から出てきた人の意見も踏まえながら、総務省を中心としながら、現場の実態に応じた、ある程度ガイドラインが示されないと、現場の自治体は千七百八十八ありますので、迷ってしまうのではないかと思います。ほかの業界さんも同様だというふうに思っています。是非よろしくお願いいたします。
○井坂委員 ありがとうございます。
ちょっと本日質問できなかった両先生には大変申し訳ありませんでした。
やはりカスハラ対策、今回の法改正で一歩前進することは、我々も大変よいというふうに思っております。また、女性活躍についても一歩前進することについてはよいと思っておりますが、カスハラというのは、本当に深く議論をすればするほど、一言では言い表せない、権利とそして対応のバランス、さらには、実際にそれを行えるのかどうかという、実務的な、法的な、あるいは財政的な裏づけといったことをよくよく考えていかないといけないというふうに改めて認識をいたしました。
本日は本当にありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、梅村聡君。
○梅村委員 日本維新の会の梅村聡です。
今日は、五人の参考人の皆様、御説明ありがとうございました。
早速ですけれども、まず最初に原参考人にお伺いをしたいと思います。
これはもし学術的なデータとか御見識があれば教えていただきたいんですが、以前、我々がもっと若い頃は悪質クレーマーという言い方があったんですけれども、これが今、カスタマーハラスメントということで、相談件数なんかも伸びてきているというふうに認識をしております。これは、社会情勢その他でカスハラそのものが実際増えているのか、それとも、カスハラというものの認知が高まってきたから、ですから、統計を取ればカスハラが増えてきているようになっているのか、ちょっとどちらなのか、御見識があれば教えていただきたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
明確なデータはないというふうに認識しておりまして、つまり、カスハラに当たる行為は従来からあったというふうに思うんですね。ただ、これがハラスメントの問題、ハラスメントと言っていいんだというふうに意識が広まってきて、そういった形で、例えばカスハラを受けたと答える方が増えている、こういった状況かと思いますので、そもそもの行為自体が増えたか減ったかについて、明確なデータというのは難しいかなというふうに思っております。
○梅村委員 ありがとうございます。
私のいろいろな友人も、企業でそういう、いわゆる昔のクレーム対策をやっていましたら、そのときは、実はこのクレームの中にサービスを向上するためのネタがあるんだといって対応していた、そういう話を聞いたこともあるんですけれども、やはり時代が、そういったものを許すべきではないし、それは企業価値にも関わるんだということで、私も一定、カスハラ対策を法整備をして進めていくという必要性については感じております。
その中で、対策を進める中で、次は村上参考人と林参考人にお伺いをしたいんですけれども、じゃ、現実的にカスハラが生まれてきたときに、今回のこの法律もそうですが、そのものへの罰則というのは今ありませんよね。ですから、例えば刑法で暴行罪とか脅迫罪とか、そういったもので対応していくということはありますけれども、罰則がないままに、もちろん今回はそういう形を取っているわけですけれども、将来の課題として罰則に関してどうお考えになるのか、教えていただきたいと思います。
○林参考人 ありがとうございます。
実は、大阪の市役所の例でも、仮処分で来ちゃ駄目ということになった後に、半年ぐらいしてからまた来庁して、公開請求を大量にする、あるいは電話を一日に九本するみたいなことも、裁判所で認められて、認められたというか、事実として起きたので本訴に行ったということがありまして、仮に、できるのであれば、そういうことをやれば、せめて科料というか罰金というか、そういうのに一日当たりか一回当たり幾らとかいう金銭的なペナルティーを科すということがなければ、結局、仮処分を取っても、本当にそれがどこまで相手さんが聞いてくれるのかというのは課題としてあるのかなというふうに思ってございまして、委員御指摘のことが進めば、自治体も大変助かる面があるのではないかというふうに思ってございます。
○村上参考人 なかなか罰則というのは難しいのかなとは思うんですね。やはり要介護者の利用者さんだとか、あと家族の方というのは非常に難しいのかなとは思うんですが、程度によると思います。
先ほどの事例にもたくさんございましたけれども、やはり身体的にかなり痛めつけられるような、傷つけられたりだとか、先ほどの目を突かれたりだとか、前歯を折られた方もいらっしゃいますし、そういうようなときには、やはり何らかの罰則、先ほどおっしゃられたように罰金だとか、そういうものは科してもいいんじゃないかなというふうには思います。
○梅村委員 今後の検討課題として、私はやはり罰則というものは考えていくべきだと思っておりますので、また当委員会でも議論を進めていきたいと思っております。
それでは、村上参考人にもう一つお伺いをしたいんですけれども、私も地元の大阪で自分自身が医療をやる中で、先ほどから介護事業所の経営が非常に厳しいというお話があったと思うんですが、実はこれとカスハラは私は密接に関係しているんじゃないかなと思っていまして。
つまり、こういうカスハラがありましたといっても、事業主側からいえば、それは当然大事な利用者様ですから、そこは何とか我慢して、契約を切らないようにお願いしますよと。ちょっと言葉は悪いですけれども、貧すれば鈍するじゃないですけれども、やはり経営が苦しいという中で、カスハラがあっても、それを覆い隠すというか、そういう実態が私はあるんじゃないかなと感じているんですが、その辺り、ちょっとお伺いしたいと思います。
○村上参考人 まさにそのとおりです。
やはり、ちょっと何かあっても、事業所の管理者の方とか、あと経営者の皆さんは、ちょっとそこは我慢してとか、それぐらいはちょっと見逃してあげてよとか、そういうのは誰でもやっていることだから我慢しなさいとか、そういうふうに受け流されてしまうパターンが結構あるんですね。
ですので、そういうのも絶対よくないということは、やはりこの法律が決まりましたら、事業主の方たちも、ああ、そうなんだということが分かると思いますので、是非成立をさせていただきたいと思いますが、まさに先生がおっしゃるとおりでございます。
○梅村委員 ですから、カスハラそのものへの法整備と、それから、それに対応ができる、そういう企業環境をつくっていく、これは両輪がやはり必要じゃないかなと思っておりますので、また現場の皆さんにも、いろいろと御苦労はあるかと思いますけれども、頑張っていただく旨、お伝えいただければなと思っております。
それでは次に、水野参考人と鈴木参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほど水野参考人から、仮処分命令の申立て、これが使えるんだけれども、なかなか周知がされていないのでというお話がございました。先ほども井坂委員の方から、これを明示した方がいいのではないかというお話もありましたが、一方で、大きな企業からすれば、法務弁護士さんがおられたり、そういう専門の部署があって、それだったら裁判所を使って出入り禁止にしようかとか、それから接触禁止をしようかとかできると思います。
これまでは、むしろ、例えば何百回も電話してくるとか、朝から晩まで店先に居座るとか、何かこういう極端な例に関してこういうものが使われていたと思うんですけれども、これが利用できるんだということになりましたら、特に零細企業、こちらは、やはり弁護士さんを雇う費用とか手間とか、いろいろなことが実際には必要になってくるかと思うんですけれども、そういったものへの対応、先ほど費用という面がありましたけれども、それに加えて、やはり零細企業、これに関しては、こういうことが法制化されたらどういう対応の仕方があるのか、教えていただきたいと思います。
○水野参考人 確かに、仮処分として、対処の仕方としては、選択肢としてはあり得ます。ただ、先生御指摘のとおり、費用がかかります。これに関しましては弁護士会としても努力をしなくちゃならないところかもしれないんですが、零細企業様において取り組むことができるのかというと、恐らく費用的な負担というのがあると取り組むことが難しいと思いますので、仮処分に関して申し上げると、仮処分なものですから、仮処分命令の発令を受けるために担保の提供も裁判所に必要になります。そうしたことから、二重の負担になってきまして、そういった面での手当て、法的、公的な支援、それは必要だというふうに考えております。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
仮処分につきましては、私は、費用助成というのはあってもいいと思いますけれども、全面的に政策として進めるということについては、ちょっと慎重な意見を持っているところでございます。
と申しますのも、このカスタマーハラスメント対策、さきに申し上げましたとおり、企業、業界、そして顧客の三者が一体となって、重要なのは、中小も含めて足並みをそろえた取組というのが重要かと思います。
費用助成によって中小企業様は使われるところも出てくるとは思いますけれども、やはりお金だけでなくて、弁護士との折衝とか、人的な面でもなかなか中小企業様は限界があるという中で、大企業だけが使われるということになりますと、ちょっと足並みもそろわないというようなことにもなりかねないかなというふうに思っているところでございまして、そこら辺は慎重な対応が求められるテーマではないかというふうに私自身としては思っているところでございます。
○梅村委員 ですから、先ほども申し上げたように、これまでは、とにかくいかんともし難い方への対応としてありましたけれども、やはり、これが法律の中で、今回も、雇用管理上の必要な措置、ここの中にこの仮処分命令が入ってくると解釈はできるんですけれども、それに向けての環境整備、これがやはり非常に大事なことではないかなと思いますので、今日御意見をいただきまして非常に参考になりました。ありがとうございました。
それでは、最後になるかと思うんですけれども、原参考人にまた戻ってきてお伺いをしたいと思いますが、カスハラは、現場で起こるカスハラと、それから、最近よくあるSNSを使った、例えば、写真を撮られて、ここの会社は、お店はこういう対応だったとか、こういうものが実際に行われてきたときに、従業員からすれば自分の個人情報がさらされたりとか、こういう状況になってきております。
これに対して事業主が対応する体制をつくらないといけないといった場合に、SNSは現実的には非常に大変です。プロバイダーに開示をさせて、実際にそれを取り消させたりとか、それもなかなかこれまでのSNSの中では進めるのが非常に時間がかかったという状況がありますけれども、こういったSNS等で実際にされることに対応して、事業主はどこまでの対応が求められるのか、また想定されているのか、これを教えていただきたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
まさにそういったときに、従業員が一人で悩むわけではなくて、まず事業主に相談をし、それを受けて事業主として責任を持って進めていくために防止措置を義務づけるということかと思うんですね。
具体的には、まず行為者が特定できれば行為者に対するアプローチもあるかと思いますし、今おっしゃったプロバイダー等の手続などもあると思います。
また、そういった書き込みなどの前に、予防としまして、例えば、施設の中において無断の撮影ですとか、そういったものについてのルールを設けるですとか、そういったことを通して、そもそもそういったネットへの書き込みですとかアップロードが起きないような環境も事前に用意していくということ、こういった事前の対応、事後の対応を法的な責任として事業主に義務づけていくということ、これが今回の防止措置義務化の大きなポイントになるかというふうに思います。
○梅村委員 ありがとうございます。
今日はカスハラの質問をさせていただきましたけれども、私は実は自分の政党の中でハラスメント委員長というのをやっておりまして、これは非常に難しいんですね。というのは、ハラスメント一般の話になりますけれども、全てを解明しようと思えば全てを話してもらわないと駄目だ、一方で、それはやはり処分につながるのではないかということで、非常に難しいということなんですが、一方で、ハラスメントというのは、企業もそうだと思いますけれども、ピアレビュー、自分たちで取り組むという文化をつくっていくということもやはり非常に大事なことだと私は自分自身、今実感して感じておりますので、そういったことに資する法律になるように、当委員会でもこれから審議を進めさせていただきたいと思います。
今日は、五人の参考人の皆様、本当にありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
今日は、五人の参考人の皆様方には、大変お忙しい中、とても貴重な御意見を先ほど聞かせていただきまして、ありがとうございました。
私も、これまでほかの委員の皆様が質疑された内容を踏まえて、できるだけ重ならないように皆様にそれぞれお伺いをしたいと思うんですが、やはり今回、カスタマーハラスメントというものが非常に大きなトピックになっておりまして、これまで、今日、介護の現場、そして自治体の現場からも様々なお声を聞かせていただきましたし、本当に多くの方々からこのカスハラ対策の重要性と必要性を訴え続けてこられて、ようやくこの法案で具体的な法的措置が取られる、非常に大きな期待が集まっていると思います。
それを踏まえてちょっと質疑を何点かさせていただきたいと思うんですが、まず原参考人にお伺いしたいと思うのは、ハラスメント対策の必要性というのは、これまでも、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、あるいはマタハラ、ケアハラ、いろいろな言葉が生まれてくる中で、どの職場でも、どのような人にとっても、この対策が重要なんだという共通認識は誰もが持っていると思うんですね。
ただ、実際にこれまでなかなかこのハラスメント対策を効果的に取る環境がつくれてこなかったという課題があるからこそ、今回この法案が提案されているわけだと思うんですが、なぜこれまではなかなかそういった意識が醸成されなかったのかというところをまず伺いたいと思います。
加えて、今日、林参考人の資料の中に、重要な視点だと思うんですが、カスハラ、ハラスメント対策としての対抗策と住民や顧客の権利とのバランス、これはこの法律が成立した後も重要な論点になっていくと思うんですが、ここについての理解もしっかりと我々はしておかないと、グレーゾーンが過剰に広くては実効性がない法律にもなりかねませんので、その辺りへの配慮をどう考えていくべきなのか。
この二点について、原参考人の御意見を伺いたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
まず、特にカスタマーハラスメントに関する意識の問題なんですけれども、これまで歴史を振り返ってみますと、多分、セクハラならセクハラ、パワハラならパワハラについて問題が起こって、社会的にこれは許しておけないよね、そういった共通認識ができて、関係する法律を改正して対応してきた、こういった経緯があるわけですね。
そうしますと、カスタマーハラスメントに関しましては、それがそもそもハラスメントの問題だというふうな認識がされてきたということが新しいということがありまして、社会的に今、カスハラという問題があるということを広く共通認識ができたからこそ、そこで法改正によって事業主への義務づけを中心とした改正に立てるということがありますから、カスハラの問題は、カスハラがハラスメントであるということがそもそも認識されてこなかった、そういった認識が最近になって強くなってきたといったこと、これがあろうかと思います。
そのカスハラに関する意識が強まってきた背景には、例えばいわゆるパワハラ法制化ですとか、そういったことを通して、社会全体で広く、ハラスメントは駄目なんだ、こういった意識が強まっていく中で、カスタマーからのハラスメントも駄目ではないか、こういったことにつながってきたというふうに考えております。
二点目の、顧客ですとか、そういった利用者の方々の権利とのバランスですが、これは非常に重要なポイントかと思います。
一つ言えますのは、カスハラ対策をする根底には顧客の尊重があるということかと思うんですね。つまり、カスハラを野放しにしていては、カスハラをしない大多数の顧客に対して十分な対応ができなくなってしまいます。そこで、カスハラについてまず法律で定義づけを行って、それを受けて各事業主が定義づけを行い、これは許されない、見過ごせないカスハラだということをしっかり明確にすることによって、カスハラではない、受けるべき正当な要求ですとかクレーム、こういったものも明らかになってくる、浮かび上がってくるということがございます。
ですから、権利ということに関しましては、まずカスハラの対策をするということ自体、実は顧客の尊重、顧客のためにもなる、こういった意識を持つということが重要であるということと、カスハラの定義づけを法律をベースにより具体化していくことによって、カスハラではない、そういった正当な要求やクレームにはしっかり対応していく、こういった意識を醸成することが重要というふうに考えます。
○浅野委員 ありがとうございました。
今、後段の答弁の中でも、やはりバランスの重要性というのは私も本当に同じ認識を持っておりまして、経営者から見たときに、顧客の尊重と自分の職場で働く従業員の保護、このバランスが非常に重要で、ケース・バイ・ケースだとはいえ、やはりある種の明確な判断基準というのを持っておかなければいけないとは思うんですね。
今日これまで何人かの委員の方が触れておられましたけれども、仮処分の申立てのような、ある種、最終手段がここまで取れるんだという意識を持っておけるかどうかというのは、その判断の際の非常に強力な支持基盤になると思うんですね。
これまでのこの委員会の中で、村上参考人と水野参考人からは法律への明記の必要性があるということをおっしゃっていただきましたが、ほかのお三方についても、仮処分の申立てを法律に明記することに対する御所見を伺いたいと思います。
加えて、もし可能であれば、じゃ、それ以外の方法として、そういった指針、判断基準をどうすれば事業者、事業主、あるいはそれぞれの職場でしっかり伝えていけるのか、その方法とは何なのかというところについてもお三方に伺いたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
私は、仮処分のことに関して、法律の中に明記するということについては慎重に考えるべきというふうに思っておりまして。
つまり、これは現行法においても、悪質なケースについては仮処分を活用することができるわけですよね。ですから、そういったことに関して、例えば、法律を受けた指針ですとか様々な周知啓発の場において、そういった選択肢もあるということを周知する、これはやっていくべきというふうに思いますけれども、法律の中に仮処分もできるといったことを例示であっても書き込むということについては、慎重に検討するべきところがあろうかというふうに思います。これが、書き込むかどうかということでありまして。
具体化ということで申しますと、今の話ともつながってまいりますけれども、これは様々な形で周知していくことができるわけで、それは必ずしも法律の明文に書き込むということだけではなく、様々な形での周知啓発、これをいろいろな形で行政が工夫をしていくということがあろうかというふうに思います。
○林参考人 ありがとうございます。
仮処分、自治体のということになりますけれども、仮に明記をされた場合には、自治体の方はまずそのことは検討するんだと思います。県庁さんとか、出身の政令市であればそれなりに法的な知識を持った職員がいますので、仮処分に向けてはめちゃめちゃ手間かかるなとか、証拠集め大変やなとか、金かかるなとかいうようなことを思うと思いますが、小さい市町村のところがそれを見て、めっちゃハードル高いなというふうに受け止めるんじゃないかという気もしますので、仮に書かれるのであれば、法テラス的なことというか、その仕組みといいますか、中小企業さんも含めて利用できるようなことにしていかないと、ちょっとハードルとして高いのかなと思いますので、両輪なんじゃないかなというふうに思ってございます。
どういうふうに周知をしていくかということでお話しになりましたけれども、自治体の場合で申し上げますと、公の施設は様々な設置条例がございますので、その中に、仮に図書館であれば図書館条例に、迷惑行為をした人を退場とか入館禁止にできるというようなことを書きにいくとなれば、議会の中でしっかり住民の皆さんとも対話しながら、どういうような図書館にしていくかみたいなことが議論をされると思いますので。
自治体で申し上げますと、実効性を持って現地でしっかり考えていくことがされれば、自然とそういうことが仕組み化されていくのかなと思いますけれども、公務はとかく置いてきぼりになりがちですので、是非、総務省を通じて、各自治体にも促していただければというふうに思ってございます。
以上です。
○鈴木参考人 仮処分につきましては、先ほど申し上げさせていただきましたとおりでございますけれども、大企業と中小企業の取組に差が出てしまうというようなことも考えられるところなので、法律に明記するということについては慎重に考えるべき問題ではないかというように思っております。
一方で、最終的な実効性の確保という御指摘、大変重要だというふうに思っていることでございまして、例えば、行為内容によっては警察に通報して警察と連携して取り組むことができるというようなことを周知をしていくでありますとか、あるいは、カスタマーハラスメントに至るようなことになれば、サービスを場合によっては停止をするというようなことも広く顧客に周知をしていくことも可能であるというようなことを、周知していくということが一つ考えられるのではないかというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
○浅野委員 ありがとうございました。
今、お三方の御意見も踏まえて、あと、先ほど御発言されたお二人の御発言も聞いておりますと、仮処分命令の選択肢があるということを伝える必要性というのは、皆様、否定はされていないと思います。この法律への明記については少し意見が分かれているところはありますけれども、少なくとも、そこまで選択肢があるよというのをちゃんと伝えておかないと、実際にそのケースが起きたときに適切な対処をできなくなる可能性もあるのではないかなというふうに感じさせていただきました。
ちょっと次の質問に移らせていただきますけれども、もう一度、原参考人にお伺いしたいと思います。
先ほど、村上参考人の御発言の中で、利用者さんからのハラスメントを防止するためにはその御家族も含めた御理解が必要だ、さらに、その理解を広めるためには自治体などからの発信が重要だというふうにおっしゃいました。私もそのとおりだと思います。
これは実は私、ちょっと新しい観点かなと思っておりまして、今回のこの法律は、国や事業主に対して対応する義務、責務というのがかかりますけれども、今のケースですと、介護現場でハラスメントをしちゃ駄目よという意識を自治体が広める、でも、この自治体は事業主ではないわけですね。事業主ではないけれども、自治体がそういったことを地域住民に周知徹底をしてほしいという、こういう意見なわけです。
ですから、今回のこの法律の射程の中に含められるのかというところはこの後委員会でもしっかり審議をしていきたいと思いますけれども、この観点について、要するに、当事者やその該当する職場の事業主以外であっても、しっかり社会全体でハラスメントを撲滅していこうというメッセージをそろって出さなければいけないということだと思うんですが、この法律の検討もこれまで関わられてこられたというお立場から、その点についてはどのように考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
自治体ということに関して申しますと、大きく二点ポイントがありまして、国が、厚生労働省が各都道府県に置いています労働局を中心に、各都道府県において様々な周知啓発活動を展開していく、それに自治体が協力していく、こういった形が一つあろうかと思います。やはり、直接の名宛て人というよりは、労働局の様々な活動、PRを含めた活動に自治体が関わっていくということ、これが一つあろうかというふうに思います。
また、二点目としましては、自治体の中には、条例を制定し、その条例に基づき様々な活動を自治体独自で多く展開している、そういった自治体のケースもありますので、自治体については、国からのそういったアクション、働きかけということと、それから自治体自身の取組というこの二点によって、各地方自治体において活動、カスハラに関する周知啓発活動を展開していくということになろうかと思います。
更につけ加えますと、今回、労推法の改正の中で、規範意識の醸成、つまりこれは、何人も職場ハラスメントを行ってはいけないということに鑑み、国が周知啓発活動を行っていく、こういったことが明記されます。そうなりますと、何人もハラスメントを行ってはいけないということがより明確な形で示されますので、そういったこともベースに活用しながら活動を進めていくということになろうかと思います。
○浅野委員 時間が参りました。村上参考人には御質問できなかったんですけれども、随分とほかの委員から既に質問が出ておりましたので、大変参考になりました。ありがとうございました。
今、何人もやはりハラスメントをしてはいけないという意識を醸成することの重要性について、最後触れていただきましたけれども、私も全く同じ意識を持っております。
これまでは、パワハラ、セクハラという言葉を聞くと、自分たちの職場、身の回りの人間同士が行う、そういうハラスメント行為だというふうに思っておりました。それが顧客から受けたらカスハラという言い方に言葉が変わるだけであって、とにかく、同じ職場の相手に対しても職場外の人に対しても、誰に対してもハラスメントは駄目なんだ、こういうことをしっかり周知していかなければいけません。
もっと言えば、労働者の保護法制の中でこの議論をしておりますけれども、本来であれば、経営者であろうが被雇用者であろうが、そこは関係ないわけです。コンビニの店長さんでも郵便局の局長さんでも、全員が保護される対象であるべきなんですが、その点においてはこの法律はまだまだ課題がありますので、そのことを是非今後とも当委員会としても議論をしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、八幡愛君。
○八幡委員 れいわ新選組の八幡愛と申します。
労働施策総合推進法の改正案についての参考人質疑ということで、朝早くからお越しいただき、ありがとうございます。
そして、本日、ほかの委員と重複する部分で質問させていただくかもしれなくて、繰り返しの御答弁をお願いするかもしれないんですが、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、カスタマーハラスメント防止対策として、日本介護クラフトユニオンの村上参考人に質問させてください。
冒頭いただいた意見陳述で、想像を絶するような体験談なども御紹介いただきましたけれども、私も日本介護クラフトユニオンさんのホームページ、拝見させていただきました。そこで、御利用者、御家族様からのハラスメントに関するアンケートということで興味深く見させていただいたんですけれども、介護現場では利用者やその家族からどのようなハラスメントを受けて、その対応を把握するというための調査だったんですが、介護従事者を守るためにどういった対応が必要なのかという質問に対する記述式の回答もありました。
私自身も、議員になってから、医療従事者や介護現場で働く方からの陳情を実際たくさん受けるんです。やはり多いのが利用者の暴力とか誹謗中傷。本法律案によってカスタマーハラスメントの防止の効果があるという期待の声も聞いているんですけれども、やはり認知症とか障害とか、譫妄状態であったり、あとは精神的な不安定であったりで、突発的に暴力行為、本人がその意思がなくても手が出てしまったりとかというトラブルというのはたくさんあるみたいなんですが、先ほどのアンケートでも、ただでさえ人手不足で賃金が低賃金で悩んでいる現場で、更に自分たちは我慢しなければいけないのかという、多分、不満というか怒りみたいなものが大分積もってきているんだなというのをすごく感じます。
何とか解決しなければいけないなと私も思うんですが、様々な事情で起きてしまうトラブルについて、介護や医療現場の方、従事者を守ることは当然なんですけれども、行き過ぎると、身体拘束すべきだというような極論になってしまわないかなという、私自身のちょっと懸念としても一つあるんです。
これは非常に難しい議論だと思いますし、それぞれのケースによって違うとは思うんですが、それらについて、対策とか現場の受け止めなど、もしあればお聞かせください。お願いします。
○村上参考人 ありがとうございます。
身体拘束というのはちょっと考えられないかなとは思うんですね。
様々なハラスメント、何でこういうことになっているのかというのは必ず理由があると思うんです。先ほども言いましたけれども、認知症であれば、恐らく、認知症の方が何かハラスメントをするその前の段階で何かがあるんだと思うんですね。何でこの方はこういうふうなことになっているのかというのは、その方の生活歴だとか、過去どういうことをやってきたとか、その人の考え方というのがあると思うので、そういうのをヘルパーさんたちとか、あと管理者、また医師の方とかケアマネジャーさん、みんなで考えながら、一人一人丁寧に対応していくことが必要なのではないかなと思うんです。
やはり、我慢してしまっている、泣き寝入りをしてしまっているという方もたくさんいますので、相談窓口の設置とか、あとは絶対一人で抱え込まないような体制とか、そういうものは絶対必要になってくると思います。
今回このような法律ができるということで、非常に心強いと思います。現場の方も心強いと思います。介護保険法よりもかなり厳しくなりますので、それは期待しているところでございます。
○八幡委員 本当に、各現場で今も尽力されて、丁寧な、利用者さんに合わせた対応をされていると思うんです。本当に、そういった方々の話も聞くし、この法案が通ることによって心強いという言葉も聞かせていただいたので。
ですが、ただ一方で、現場からすると、やはり現場の不満の理由もあると思うんですよ。そこでやはり、低賃金であったりとか処遇が悪かったりとかということで、過去にも、全てとは言わないですけれども、そういう虐待問題があったりとか、それこそ閉じ込めてみたりとか、身体拘束したりとかという問題が社会問題として出てきていると思いますので、そこは併せて私たちは考えていかないといけないなと思いました。
先ほど御紹介させていただいたアンケートにも、やはり賃金の話も出てきていたんですね。自分たちは一生懸命頑張っているんだけれども、低賃金だから、地位の低い者のように簡単に扱われているから、暴力とかそういう不遇な目に遭っているんじゃないかというような指摘も見受けられました。
私は、政府に対する質問主意書で、全ての職業に貴賤はないかというものを出して、ないという答弁を取ったんです。その上で、では、なぜ介護とか医療、福祉現場で低賃金が問題視されて、働いている人たちが地位が低いと思いながら、そういう人たちがいるのかということを政府としてどう捉えているのかという質問も今出している最中ですので、これは、医療とか福祉の現場に限らず、清掃員とかもそうですし、それこそコンビニの店員さんもそうかもしれないですし、非正規雇用の方々も含めて、引き続きこの問題について向き合いたいと思います。
大変参考になりました。ありがとうございます。
続いて、女性活躍の推進について、これは五名の参考人の皆様に順番に質問させていただきたいと思います。
本法律の改正案では、いわゆるカスハラ対策の義務化や、求職者などに対するセクハラとかの防止策が盛り込まれておりまして、これは今日的な問題を解決する試みが見られるんですが、当然、従来から問題視されている職場におけるセクシュアルハラスメント、そして妊娠、出産、育児休業などに関するハラスメントの防止対策など、従来から指摘されている問題についても引き続き取り組んでいくべきだと私は思うんですけれども、そのためにも、特に女性、女性活躍推進法の有効期限、これを十年間延長するということも今回の法律案の中にも入っております。
我が国における男女間の賃金差ということが問題になっているんですけれども、長期的にこれは縮小傾向にあるんですが、国際的に見れば、依然として差異が大きい状態だとも指摘されております。
ここでよく話題になるものは、ジェンダーギャップ指数ですね。昨年六月の発表で、日本の順位、現在、百四十六か国中で見たときに百十八位なんです。二〇二五年、今年は日本が女性差別撤廃条約を批准して四十年の節目という年でもあります。ましてや、先進国とされている中で、私、この百十八位というのは正直ちょっと恥ずかしいなと思うんですけれども、皆様はいかがでしょうか。
また、それぞれの現場で、ジェンダーギャップの是正のために何か対策とかできることがあればお聞かせください。お願いいたします。
○原参考人 ありがとうございます。
まず、職場においては、ハラスメントの問題は徹底的に対応するということですね、ハラスメントの問題。
それから、まだ残る性差別の問題についても、法的にきちんと対応するところは対応していくということ、これが重要かと思います。
さらに、これは雇用、労働の現場だけではなく、幅広く、例えば教育ですね、小学校、中学校の段階から、そういったジェンダーの問題についても様々な形で子供たちに知ってもらう。こういったアプローチを組み合わせることを通して、できるだけ早くそういったものの解消を目指していくということが重要だというふうに考えております。
○村上参考人 ジェンダーギャップに関しましては、この順位を見る限り、日本もまだまだだなというふうな、それが感想です。
あと、介護現場では、女性の方が圧倒的に多い職場ですので、なかなかそういうジェンダーギャップというか、逆ジェンダーギャップといいますか、そういうところがあるんですけれども、賃金の格差も介護に関しましては特にございませんで、中途採用の方も多いですし、経験年数とか資格で上がっていくような業界でございますので、そういう賃金格差も特には発生していないというふうにして認識していますので、それは大丈夫かなというふうにして思います。
○水野参考人 今のデータを教えていただきまして、先生のおっしゃるとおりだと思います。これは、先進国としては恥ずべきことではないかなというふうに感じております。
それはそのとおりであるんですが、女性の躍進に関しての企業の取組というものは、やはり一番意識しています。今回、二社を取り上げさせていただいておるんですけれども、そういった形で、まず一番取り上げやすいのがやはりこの問題なのかなということで、着実に努力はされておられるというふうに感じております。
ただ、あのデータに関しては、おっしゃるとおりだと思います。
○林参考人 もちろん、問題だというふうに思ってございます。
賃金に絞ってお答えしたいというふうに思ってございます。自治体の多くで人事評価制度が入っていまして、その人事評価結果に基づく賃金反映等がなされていますが、この人事評価結果を男女別にどういうふうな分布になっているかということを、我が自治労の調査で、組合であったり職員に公開している自治体は三%にしかすぎません。
したがって、今、自治体で男女の賃金の差を職員に正規、非正規問わず公開していますけれども、本当のところ、どこに原因があるのかということを当局自身も何か分かっていないし、職員自身も格差がついているかどうかについて理解ができていない、把握できていないのではないかというふうに思っています。
もう一つは、やはり非正規問題なんだろうというふうに思ってございまして、会計年度任用職員の多くが初任給程度の賃金のところが上限ということになってございますので、そのことを改善していくことが自治体では求められているんだろうというふうに思ってございます。
以上です。
○鈴木参考人 女性活躍推進につきましては、やはり道半ばだというふうに痛感をしているところでございます。
対策としては総合的に考えないといけないというふうに思っておりますけれども、今回の法改正の中にもございますように、男女賃金差それから女性管理職比率、この公表というのが百一人以上は義務づけられるところでございまして、これを機に、しっかりと主体的に分析、取組を進めるということがまず基本的に重要ではないかというふうに思っています。
また、その背景としましては、やはり女性の方にどうしても育児、家事のしわ寄せが来ているということの実態もあろうかと思います。そこは、男性の育児休業の取得促進でありますとか、あるいはアンコンシャスバイアスの解消に向けた様々な取組をしていく必要があるというふうに思っておりまして、経団連としても取組を支援する活動を進めてまいりたいというふうに思っております。
以上でございます。
○八幡委員 皆様、ありがとうございます。
本当に女性が活躍できるようにしていかないといけないと私自身も思うんです。
というのが、私は今、三十七歳なんですけれども、同級生で働いている子たちが、賃金格差にも関わってくると思うんですが、昇給できないんですよね。同じ条件で男性と入っても、やはり別で呼び出されて、役所で課長とか部長とか上がっていくときに、これから結婚する予定はあるのかとか、あと、子供を産む予定はあるのかとかということを聞かれてしまう。
今の時代というのは、直接的にあなたは女だからというのは絶対タブーで、これはもう当然駄目なんですけれども、間接的な差別というか、間接的に外されていっているということで、すごく悩む女性も多いと思うんです。
その辺の理解を、是非もう一度、ちょっと一問、更問いで聞きたいんですけれども、鈴木本部長、経団連ですよ、経団連を代表して今日いらっしゃってくださっていると思うんですけれども、経団連というのは日本の企業の総本山だと私は思っているんですね、大企業を束ねていらっしゃる、見ていらっしゃると思うんですが。先ほどもありました、百一人以上には公開の義務というか努力義務が入っていると今回の法制案もありましたけれども、やはり、じゃ、九十九人以下の中小零細企業はどうなのかという問いもありますし、そこを別に経団連が決めることではないんですけれども、何か率先してもっとやっていただきたいななんて思うんですけれども、その辺り、いかがでしょうか。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
これに関しましては、まだ女性に対して補助的な仕事をアサインをするというような意識が残っているというような御指摘もあるところでございまして、繰り返しとなりますけれども、社会全体で、企業が主体となってアンコンシャスバイアスの解消といったことに取り組む必要があるというふうに思っておりまして、その点、繰り返しでございますけれども、経団連としてもしっかりと取組を進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○八幡委員 ありがとうございます。力強いお言葉、大変感謝いたします。
私、本当に、こうやって聞いていて申し訳ないんですが、もう国会の中が、まず見ていたらやばいですよね。全然女性活躍できていないというところ。だから、皆さんに今日いろいろな話を聞きましたけれども、やはり社会の縮図が国会の中だと私は思います。
厚生労働委員会というのはまだ女性が多いんですけれども、私はもう一つ、農林水産委員会に入っていますが、女性の数というのは全然違う、少ないですし。国会の中から変えていくということを、改めて皆さんと今日お話をさせていただいて、そして私は政治家として、女性活躍を目指すのであれば、まずは政治家に、政治に女性をもっと介入させるべきだとも思いますので、大変参考になりました。
今日は貴重なお時間をありがとうございました。
○藤丸委員長 次に、沼崎満子君。
○沼崎委員 公明党の沼崎満子です。
本日は、五人の参考人の方々からは大変な貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
早速質問に移らせていただきます。
全ての五人の参考人にお聞きしたいんですけれども、今回、カスタマーハラスメント、法制化されることによって、ちょっと大きな質問にはなりますが、それによって、何を一番、法制化で変わることを期待されているかということをそれぞれのお立場でお聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。
○原参考人 ありがとうございます。
一番大きなものは、各事業主が責任を持って取り組むということかと思うんですね。それによって、全ての職場においてカスハラ対策が進む。
それから、今まで悩んでいた従業員も、会社側に相談していいんだ、これはハラスメントと思っていいんだ、そういったことが事業主による周知啓発や相談体制の整備、事後対応等々によって進められていくということ、これが大きなことでありまして、そういったことが、ひいては社会全体のカスハラは駄目なんだという意識の醸成につながるということ、これが非常に大きなポイントかというふうに思っております。
○村上参考人 私は、やはり、事業主だとか労働者が一生懸命ハラスメント対策をやっても、でも、利用者とか家族とか顧客とか、カスタマー自体がそういうハラスメントであるという認識を持ってもらわないことにはハラスメントはなくならないと思っていますので、それを今度、国がそういう周知啓発をするということで、これは非常に期待しているところですし、やはり、国、社会全体の人たちが、みんながハラスメントはよくないことだということが分かるようになるということを非常に期待しているところでございます。
○水野参考人 我が国の企業は、はっきり申し上げて非常に真面目です。コンプライアンスというものに関しての意識は非常に高くございます。
ですから、法律で定められることについて非常に敏感で、それについては従っていこうという意識は非常に高くございますので、そういった意味で、企業から社会規範というもの、社会の意識というものが変わっていくのではないかなというふうに意義を感じています。
○林参考人 自治体の職員にとりましては、刑法より更に手前のところで、ここからは断っていいんだというラインが見えることというのは大変心強いんだろうというふうに思ってございます。
どこにラインを引くかというのはありますけれども、そのことで、これまで我慢していたことを、もうちょっと、ここからはカスハラに当たるのでお断りしますと言えるということは、非常に大きな進歩だというふうに思ってございます。
○鈴木参考人 ありがとうございます。
やはり、今までは個人的な問題ということで捉えがちな面があったというふうに思いますけれども、社会全体、企業、そして業界全体の問題として保護をしていくということの意識啓発が大いに進むというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
○沼崎委員 ありがとうございます。
それぞれのお立場でやはり観点が違うのだなという、何か、ここがすごく優先順位が高いということがあれば、そこを優先してというふうに思ったんですが、やはり幅広く対応していくことが必要なのかなと、五人の御意見をお伺いして、そのようにも感じました。
先日、介護事業者の方から、やはり介護業界のカスタマーハラスメント、非常に困っているというふうにお伺いして、これが人材流出の一つの原因にもなっているし、非常に人材不足が言われている介護業界で悪循環になってしまいますので、しっかり対応してもらいたいというような御要望もお伺いしていますけれども、その中で、やはり介護従事者の地位向上が非常に利用者さんの意識には大きな影響を与えているというふうに感じておられるというような御意見も伺いました。
その点に関して、地位を上げていく、そこの、どういったことを国として取り組んでいけばカスタマーハラスメント防止につながるような介護従事者の地位向上につながるか、そういった御意見がございましたら、お願いいたします。
○原参考人 ありがとうございます。
まず、今日もお話がありました介護業界におけるカスハラの問題、これに徹底した対応をしていくことによって、まずマイナスをできるだけゼロに近づけるということがあるかと思います。
その上で、労働条件、特に賃金面の向上、これは恐らく介護保険法制ですとか様々な観点も必要かと思うんですけれども、そういった公的な枠組み、これにも注目しながら、待遇、労働条件を向上させていく。つまり、できるだけプラスを増やしていく、こういったことを通して、介護業界について更にサポートを展開していくということが重要だと思います。
○村上参考人 私どもは、やはり処遇改善です。
全産業平均よりもかなり低い処遇で、このようなカスタマーハラスメントにも対応していかなければいけないという非常につらいこともたくさんあるんですけれども、やはり賃金が本当に低いですので、今年の賃上げもなかなか上がっていきません。
世の中では、五%を超えていて、一万五千円とか一万九千円のベースアップだとか言っていますけれども、私ども、本当にゼロ円とか三千円とか四千円とか、そのような感じになっているんですね。ですので、やはり処遇改善が一番だと思っています。
○水野参考人 おっしゃるとおり、賃金の問題が一番重要だと思います。
これは翻って言うと、非常に難しい問題ではあるんですが、やはり介護保険の方、要するにその支払いの原資となるもの、これについても考えていかなきゃならないのではないかなというふうに考えております。
○林参考人 私どもの調査では、例えば病院の看護師さんも、かなりひどいハラスメントにセクハラも含めて遭っていますので、地位向上は、おっしゃられたように賃金向上かもしれませんが、やはり、全ての職場でそういうことをしたらあかんということを意識醸成することがなくしていくことだと思います。
介護の地位向上となりますのは、やはりお金しかないのかなというふうに思ってございます。
以上です。
○鈴木参考人 まず、私どもも、処遇という意味では、賃金というのが大変重要だというふうに思っております。
経団連では、昨今、成長と分配の好循環ということで、ベースアップを視野に入れた賃金引上げということを広く呼びかけをさせていただいております。なかなか、介護職員の方は公定価格でございます。今回、皆様に本日お配りをしております経営労働政策特別委員会報告の中でも、公定価格の見直しの検討が必要ではないかということで、ちょっと一歩踏み込んで言及もさせていただいたところでございます。
以上でございます。
○沼崎委員 ありがとうございます。
私自身も、この介護、両親の介護を経験しておりまして、本当にないと困るんだというのを実感として痛感しておりますので、しっかり介護分野の賃金、処遇改善というところにも、皆さん、共通した御意見でございましたので、取り組んでいきたいというふうに思っております。
引き続いて、女性活躍と女性の健康問題というところで御質問させていただきますけれども、特に女性のがんというのが、非常に働く世代、比較的若い世代の方がなりやすいという点がございますので、私自身も、友人がやはり乳がんになって、働きながら治療をしている、こういう現状がございます。
その対応に関して、これからしっかり推進していただきたいと思いますけれども、実際には、そういう取組をしている現状がどの程度かということと、進んでいかない原因というのをどのようにお考えかということを鈴木参考人の方にお聞きしたいと思います。
○鈴木参考人 ありがとうございます。
まず、進んでいかない原因ということでございますけれども、やはり、まだまだ女性特有の健康課題についての、特に経営者の理解というのが不十分ではないかという問題意識を持っているところでございまして、ここは、経済界、そして国が率先して、その重要性を訴えていくということが重要だというふうに思っております。
また、女性特有の健康課題に限るわけではございませんけれども、両立支援のガイドラインを厚生労働省では作っておりますが、これはなかなかいい内容を書かれておりますけれども、なかなか知られていない、取組がされていないということがございますので、これをしっかりと促進していくということが重要ではないかというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
○沼崎委員 ありがとうございます。
女性がしっかり活躍していく上では、女性の健康課題というのは非常に重要だと思っておりますので、国の方としても、先ほどお示ししたガイドラインも出ているということですので、そこの普及啓発というところもしっかり取り組んでいきたいなというふうに思います。
引き続いて、特に今女性が、特有の問題というのも非常に働く上では多いと思うんですけれども、介護分野で、訪問介護などで、先ほども御質問がありましたけれども、一人で、特に女性が非常に介護士さんは多いという中で、対応が、非常に苦慮をしていると思いますが、現状でどういう対応を取られているのか、また、そういう対応を取る上で一番問題になっていることは何かというのを村上参考人の方にお聞きしたいと思います。
○村上参考人 カスハラに関してですか。(沼崎委員「そうです」と呼ぶ)はい。
やはり、女性が一人で対応するということで、ハラスメントに遭う場合が多いわけなんですけれども、事業所に例えば男性の職員がいれば、その方と替わってもらうだとか、あとは、例えば認知症の方なんかでも、この人にはハラスメントするけれども、この人にはしない、そういうこともあったりするんですね。そういう場合には担当者を替えてもらうとか、そういうような工夫をしながらやっています。
○沼崎委員 ありがとうございます。
やはり、そういう意味でも人手、あるいは職業に対する意識、女性じゃないと介護職をしないんだ、そういう意識も変えていく要請があるかなというふうに思いました。
カスハラの相談窓口を各事業所がしっかりつくっていくということも非常に重要になってくると思いますが、その点に関して、中小企業も含めて、事業所が相談窓口をつくっていくための工夫を、もし皆さんの中でお考えをお持ちであれば、お聞きしたいと思います。
○原参考人 ありがとうございます。
まず、各事業主において、カスハラは一人の問題ではなく会社側に相談していいんだということ、これをしっかり周知啓発するということ、これを前提としまして、具体的な窓口につきましては、これは様々な在り方があると思います。
そこで、法律を前提としまして、指針あるいはより具体的なレベルで行政の方から、こういった相談窓口の仕組み、いわゆるグッドプラクティス、こういったものを広めていくですとか、そういった形を通して、ベースとなる法律を根拠とした上で、より具体的な相談窓口の仕組みづくりについてのサポートをまさに伴走型で行政が展開するということが有益かというふうに思います。
以上です。
○村上参考人 介護の場合には、先ほども言いましたけれども、事業主の責務として、そういうハラスメント対策はしなければいけないことになっていて、そのうちの一つが相談窓口の設置なんですね。ですので、ほとんどのところでは、ハラスメントに特化しているわけではないですけれども、何らかの相談窓口は持っているはずです。
それで、もしつくれないというところがありましたら、例えば私どもと労使関係のあるところでございましたら、私どもは労働組合でございますので、こちらの方に相談してくださいということを言っております。
○水野参考人 今回御紹介差し上げた資料にもございますけれども、十一ページのところ、マツキヨココカラ&カンパニー様においては、この上から四つ目のところ、相談窓口の明確化ということで定めております。まずは、設置することだけではなく、これを明確に、窓口をここだよということでするような形をしているという取組もしております。また、十三ページ、ダッドウェイ様の取組においても、こういった形で、みんなの相談室という形でポータルサイトを設けておられます。
そこで、ただ、こういう形で相談窓口を設置するんですが、何が困るかというと、具体的な質問が来たときに、これはこういうふうにしましょうというソリューション、これが明確に今までなかったということでございます。
そういったことからすると、厚労省様が定められたガイドライン、これは非常に役立っております。さらには、ただ、こういうときどうなんだというところがまだ足りていないように感じております。ですので、また引き続き、御審議いただければというふうに考えております。
○林参考人 一番近い役所にそういう機能を設けるというのは、とてもいいんだろうなというふうに思ってございますが、それにはやはりリソースがかかりますので、そうしたことが必要ということであれば、是非、役所の体制面の充実もよろしくお願いしたいと思ってございます。
○鈴木参考人 相談窓口ということについては、二つアプローチがあるというふうに思っているところでございます。
一つは、業種、業態によってかなりケースも違うところでございますので、業所管官庁と業界団体が一緒になって基準を明確化し、そして、相談を受ける方の研修体制をしっかりとしていくということが重要だというふうに思っています。
一方で、やはり中小・小規模事業者様においては、なかなかそこまで難しいということもあろうかと思いますので、ここは公的な相談窓口ということの拡充ということも重要ではないかというふうに思っているところでございます。
○沼崎委員 ありがとうございました。
具体的な御提案も含めて様々御意見をいただいて、大変に参考になりました。
では、以上で質問を終わります。ありがとうございます。
○藤丸委員長 次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
最初に、五人の参考人の皆さん、それぞれにお伺いします。
ハラスメントは絶対あってはなりません。そして、対策はもちろん必要です。
今日は、原参考人からは、最初に、規範意識が醸成されてきた、そして啓発対策も社会全体として進んでいるという御指摘がありました。
しかし、日本のハラスメント法制というのは、四つのハラスメント類型ごとに雇用管理措置義務を定めているというところにとどまっているというふうに考えています。
村上参考人からは、対策を行っているからといってハラスメントがなくなるわけではないというお話もございました。
そこで、やはり、不当な嫌がらせというのは駄目ですよ、ハラスメントはしてはなりませんよという禁止の条項が必要ではないかと私は考えるんです。ハラスメントそのものをやはり法律によって禁止していくことが必要であると考えますが、参考人の皆さんの御所見をお伺いします。
○原参考人 ありがとうございます。
まず、ハラスメントをやってはいけないということに関しては、今回の労推法改正案の中で明確化が図られたということがありますから、これが実現すれば、ハラスメントをやってはいけないということがまさに社会全体の意識につながっていくということがあろうかと思います。
そういう意味で、禁止についてですけれども、例えば、罰則つきで禁止するといったことを考えますと、現在のハラスメントに関するアプローチは、民事、刑事の責任、それから事業主の防止措置義務、これを組み合わせる形でハラスメントがない職場づくりを目指して、完璧ではないかもしれませんが、成果が出てきている部分があるわけです。
そうなってきますと、新たに禁止規定を設ける場合には、そういった既存の民、刑事の責任ですとか、あるいは防止措置義務との関係、こういったものを法的に整理する必要がありますから、時間がかかりますし、また、時間をかけるべきことかと思うんですね。
ただ、そういった議論を中期的、長期的な観点で検討していくということは十分あり得るかと思いますけれども、まずはスピーディーに、例えばカスハラであれば、今回、カスハラ防止措置の義務化といったことを通して対策を打った上で、中期的、長期的な議論として検討していくということになるのではないかというふうに思います。
以上です。
○村上参考人 今回の法律が成立することによって、カスハラはやってはいけませんよということ、ある意味、禁止ということになりますので、この法律が成立することを祈っております。
○水野参考人 カスハラに関してにとどまらないんですけれども、今回、定義の中で、社会的に許容される範囲という、こういった社会通念に基づいた定義づけがされております。これについて禁止規定を設けると、恐らく行為の萎縮効果が生まれるのではないかなと思います。
ですから、今のような取組で、一歩前のところで、さらに、今の法制度の中で、例えば刑法犯、そういったもので処罰されるものに関しては明確に処罰していくという、この組合せの取組の方がよろしいのかなというふうには考えております。
○林参考人 基本的には原参考人のおっしゃっていたとおりだと思っていますが、自治体で申し上げますと、やはり今、地方議会の議員の皆さん方との関係でかなり困った事案もございますので、先生がおっしゃったように、全てのハラスメントは駄目なんだというようなことを、現場の中で、それぞれの立場で率先して考えていくことが必要なんだろうなというふうに思ってございますが、将来的には、そういう禁止条項も盛り込んでいくことも御検討いただければと思ってございます。
○鈴木参考人 例えばカスハラ、今回の改正では、事業主の措置義務が課されて、それを業種、業態ごとの連携で取り組むということで、まさに組織的な対応ということが期待できるところでございます。
一方の禁止ということになりますと、やはり個人的に対応しないといけないというようなことで、少し今まで構築してきたハラスメント対策というのが後退する可能性もあるのではないかというところを少し心配をしているところでございまして、法的な枠組みとしては、現行の法律が適切だというふうに考えているところでございます。
○田村(貴)委員 ありがとうございます。
二〇〇六年の男女雇用機会均等法改正で、セクハラに対する事業主の防止措置義務が導入されました。しかし、それ以降もハラスメントの相談は増え続けているわけなんですよね。ですから、やはり防護措置義務では限界があるというふうに私は考えます。
自治労の林参考人にお伺いします。非正規公務員のことについてです。
会計年度職員制度の下でも、妊娠を契機とする雇い止めとかマタハラがあちこちで起こっています。民間では、出産から一年以内の雇い止めは、これは禁止される、違法な不利益取扱いとして監督されています。公務の職場における不利益、差別について自治労の皆さんはいかが考えておられるか、教えていただきたいと思います。
○林参考人 ありがとうございます。
いただいた質問がちょっと広いので、何をお答えしようかなと悩んだんですが、やはり民間の労働法制が適用されずに、これは非正規だけじゃなくて正規も含めてですけれども、任用という法律の中で、とりわけ会計年度任用職員の皆さんについては毎年ごとの任用という中で、言われたような事態が起きているんだろうというふうに思ってございます。
じゃ、これを完全に民間の労働法制を適用するということで課題を解消しにいくということも、もちろん一つではあるんでしょうけれども、今のところは、この間の地方公務員制度の枠の中で様々改善を積み重ねてきたんだろうというふうに思ってございます。
自治労の問題意識としては、例えば、労働基準監督機能が首長とか人事委員会にあって、それは全然機能していませんよという実態がございますので、そうしたところからまず、抜本的に民間法制というよりは、手前でできることがまだあるんじゃないかなというふうに思ってございます。
以上です。
○田村(貴)委員 ありがとうございました。
続いて、同じく林参考人にお伺いしたいと思います。
参考人は、自治体の首長、議員によるハラスメントは目を覆うばかりの状況であるというふうにおっしゃっておられました。
昨日なんですけれども、兵庫県の齋藤知事と幹部職員がパワハラ研修を受けました。県の第三者委員会が三月に知事による複数の行為をパワハラと認定したことなどを受けて開催したというふうにされています。
今回の研修は、昨年十二月の時点で県の公益通報担当部署が齋藤知事に受講するように求めていたんですけれども、それから五か月たってようやく実現したというふうに報道されています。
私も、ようやくか、今になってかという思いもあるんですけれども、コメントがあれば、お伺いをしたいというふうに思います。
加えて、参考人がおっしゃる、首長ですね、市長や議員からのハラスメントについて、これは当然あってはならないと思うんですけれども、本当にゆゆしき事態がよく起こっています。これをなくすために必要なことは何であるかということを教えていただければと思います。
○林参考人 具体的に兵庫の件については、ちょっと何と申し上げていいのかあれですけれども、そもそも公職者、先生方もそうですけれども、公職者ですから、ハラスメント行為をすること自体が非難されるべきですし、自治体の職員にとって、首長は雇用主でもあります。議員さんも含めて、いずれも地域社会の有力者です。
特に、地縁、血縁が濃い市町村では、ハラスメントがあることを告発することというのは、職だけではなくて、身内や親族も含めた事案に発展する可能性もありますので、ちゅうちょせざるを得ないというのが現場の声なんだろうというふうに思ってございます。
現場でどういうことが求められるかと言われますと、例えば、市長会や町村会でハラスメント研修をしていただくとか、ハラスメント一掃宣言をしていただくこと、議会の皆さんについても、町議会ですね、議長会を中心に取り組んでいただくというようなことが要るんだろうと思っていますし、通報者の特定などを絶対にしない形で外部への通報窓口なんかを設けていただくことも一つなんだろうというふうに思ってございます。
○田村(貴)委員 我々も強く自覚しなければいけないというふうに思っております。
鈴木参考人にお伺いします。
経団連の会員企業でAGCがあります。AGCグリーンテック事件というのがありまして、男性で構成される総合職のみに家賃の補助があった、そして、女性の方々に対する適用がなくて、女性の職員の方が損害賠償を求めた訴訟で、昨年の五月、東京地裁が、これは間接差別と認めて子会社に慰謝料など三百七十八万円の賠償を命じたということなんですけれども。
こうした間接差別が今、雇用機会均等法による三要件以外の例として判決に出されたということなんです。この受け止めがあれば教えていただきたいのと、やはり三要件以外の間接差別もいろいろあるのではないかなと思います。これは、経営者の側として、やはり受け止めをしていただきたいと思うし、この点について解明もしていく必要があろうかと思いますが、こうした間接差別についていかがお考えか、教えてください。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
ちょっと個別案件については回答を差し控えたいというふうに思っておるところでございますが、間接差別についてお答えを申し上げたいと思います。
間接差別につきましては、例えば、福利厚生や家族手当における住民票の世帯主要件ですとか、転居を伴う転勤によって昇進などの処遇に格差問題が生じるのではないか、こういう声があるというのは承知をしているところでございます。
ただ、均等法の改正で七条において、先生御指摘のとおり、間接差別につきまして手当てされたわけでございますけれども、間接差別は、性別以外の事由を要件とし、男女比率等から実質的に性別を理由とする差別を行うおそれがある措置というふうに法律要件になっておりまして、これだけでは、予測がつかない、法的な安定性を欠くということで、法律の禁止する間接差別を省令で定めるということになったところでございます。
省令の改正の必要性があるかどうかというのは、検討はもしかしたら必要ではないかというふうに思っておりますけれども、ただ、労務管理上の影響ですとか、差別としてコンセンサスが得られるかというような観点で、これは慎重に検討すべき課題だというふうに認識をしております。
○田村(貴)委員 男女の賃金格差の是正については、我が党としても、この国会でも幅広く論議もさせていただきました。
そして、この間、日本経団連の方から、男女の賃金格差の実態についての公表があって、管理職における女性の割合とか、その他いろいろな男女の差別、差があることについて公表していくという今度の法律の提案になっています。
この法改正を受けて、今ある男女間の格差について、これは経営者側としては、どのように縮小していく、どのぐらいのビジョンを持っておられるかについてもお伺いしたいと思います。
○鈴木参考人 先生御指摘のとおり、今回、女性管理職比率、男女間の賃金差の公表ということが百一人以上の事業主に義務づけられたということでございます。
これは、実は大企業でも、そういった指標についての真の原因というのを探るということは難しいというような指摘もあるところでございます。いわんや中小企業においては、今までそういった分析もしたことがないというようなところもございます。
今年に入りまして、厚生労働省においては、簡易版の原因分析ツールというのを公表いたしました。また、七年度の予算においては、コンサルティングを行って伴走的に支援をするというような体制も取られるというふうに承知をしておるところでございます。
こういった女性活躍推進というのは、やはり、自ら経営者がリーダーシップを取って、我が事として捉えて、自主的、自律的に取り組んでいかないと、取組が何か形式化してしまっては法律の実効性を担保できないというふうに思っておりますので、国の支援等もしっかりしていただきながら、経団連としても、応援できるところをしっかりとサポートしてまいりたいというふうに思っております。
○田村(貴)委員 村上参考人から現場の生々しい報告を聞いて、私もかなりショックを受けました。私も、介護の危機の問題をこの委員会で何度も取り上げてまいりました。訪問介護報酬の引下げ、そして、職員においては低賃金、人手不足、まさにもう介護事業所がゼロないし一つしかないという自治体が増えていくという大問題に接しています。これに加えて、想像を超えるカスハラがあるということも今日お伺いしました。
介護の担い手をこうした状況でどんどん減らしていくということは、これはゆゆしき事態だというふうにも今日捉えましたので、カスハラも含めて、担い手が減っていく、大変危機に追い込まれているということも受け止めて、更に私たちは論議を深めていきたいというふうに思っています。
時間が参りました。以上で質問を終わります。
ありがとうございました。
○藤丸委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきました。誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
次回は、明十四日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会