衆議院

メインへスキップ



第3号 令和7年11月26日(水曜日)

会議録本文へ
令和七年十一月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 工藤 彰三君

   理事 小林 史明君 理事 新谷 正義君

   理事 土田  慎君 理事 大西 健介君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 空本 誠喜君 理事 鈴木 義弘君

      伊藤 達也君    小池 正昭君

      小森 卓郎君    坂本竜太郎君

      鈴木 英敬君    関  芳弘君

      世耕 弘成君    西野 太亮君

      西村 康稔君    萩生田光一君

      細野 豪志君    牧島かれん君

      武藤 容治君    今井 雅人君

      大島  敦君    岡田 克也君

      鈴木 岳幸君    高松 智之君

      田嶋  要君    福森和歌子君

      丸尾 圭祐君    山岡 達丸君

      東   徹君    西田  薫君

      丹野みどり君    河西 宏一君

      福重 隆浩君    佐原 若子君

      辰巳孝太郎君    吉良 州司君

      平岩 征樹君

    …………………………………

   経済産業大臣       赤澤 亮正君

   文部科学大臣政務官    清水 真人君

   経済産業大臣政務官    小森 卓郎君

   国土交通大臣政務官    永井  学君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房審議官)       向井 康二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 田口精一郎君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   籾井 圭子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           河野 太志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           奥家 敏和君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房エネルギー・地域政策統括調整官)           佐々木雅人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   辻本 圭助君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局地方創生担当政策統括調整官)

   (経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策統括調整官)     宮本 岩男君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局首席国際博覧会統括調整官)           松山 泰浩君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            小林 大和君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        和久田 肇君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    山下 隆一君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            坂本 里和君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            山崎 琢矢君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           藤田 昌邦君

   経済産業委員会専門員   花島 克臣君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  谷田川 元君     高松 智之君

  藤巻 健太君     西田  薫君

同日

 辞任         補欠選任

  高松 智之君     谷田川 元君

  西田  薫君     藤巻 健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

工藤委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、経済産業省大臣官房審議官河野太志君外十六名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

工藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

工藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。丹野みどり君。

丹野委員 おはようございます。国民民主党、丹野みどりでございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、中小企業の人手不足対策について伺ってまいります。

 二〇二五年版の中小企業白書によりますと、日本の中小企業のおよそ六割が人手不足だということで、経営課題としてこれを認識されています。特に、サービス業、建設業、運輸業、介護福祉分野で深刻化しているわけですけれども、まずは、大臣、国としてこうした状況をどう認識されていますでしょうか。

赤澤国務大臣 おはようございます。

 中小企業、小規模事業者は、雇用の七割、付加価値の五割を占める日本経済の屋台骨であり、地域において投資と賃上げを担う大変重要な存在であるというふうに認識をしております。

 他方、御指摘のとおり、現時点でも約六割の中小企業が人手不足の問題に直面しておりますが、さらに、これからの二十年で千五百万人の生産年齢人口が減少する、全労働者の中の二割ぐらいということで、労働供給制約は今後一層、加速度的に深刻化していくものというふうに認識をしております。

 こうした中では、政府全体として、まず、女性やシニアが働きやすい環境整備を進め、労働参加を一層促進するということ、そして、短中期的には、中小企業のDX化等による生産性の向上を強力に支援していくことが重要。あわせて、長期的には少子化対策ももちろん講じていかなければなりません。こんな中でも、経済産業省が担う生産性の向上が人手不足対策に極めて重要であるという認識をしております。

 このため、経済産業省としては、現状維持ではなく、稼ぐ力強化と賃上げの好循環の実現に向け、事業再構築、生産性向上、事業再編に取り組む中小企業、小規模事業者の皆様を徹底的に支援をし、必要な連携と再編を含め、強い中小企業への行動変容を促してまいりたいというふうに考えてございます。

丹野委員 御答弁ありがとうございます。

 今大臣が言っていただきました、原因がやはり幾つかあるんですよね。まず、絶対的に人が減っている、これは人口減少と高齢化であります。そのほかに挙げられておりますのは、例えば、賃金ですとか待遇がよくないとか、今お話がありましたが、デジタル化がやはり進んでいなくて効率が悪い、生産性が低いとか、いろいろな要素が複合的になっているかなと思うんですけれども、次の質問です。

 経済産業省として、こうした人手不足に対してどういった施策を実際に行っていますでしょうか。課題としているその原因と、そしてそれに対する施策ということで、セットで教えていただければと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、御質問の人手不足の要因につきましては、先ほど委員にも挙げていただきました中小企業白書の分析において、労働力人口の減少に加えまして、若年層を中心としまして特に首都圏への人口流出が起こっていること、さらには大企業との賃金格差があること、さらにはデジタル化の遅れに伴って業務の効率化が遅れていること、こういったことが示されております。委員御指摘のとおり、人手不足の要因は複合的であるというふうに考えてございます。

 ただ、こうした要因に共通し、かつ、根底に流れる課題としては、やはり省力化の促進、さらには販路拡大、そういった中小企業の生産性向上を通じて稼ぐ力を強化できるか、さらには、それによって持続的な賃上げの実現につなげていけるのか、こうしたことが課題であるというふうに認識しております。

 このため、政府としましては、中小企業の方々が新しい事業、さらには高付加価値の事業に展開することを支援をします新事業進出補助金、さらには、DX化、さらにはAIの導入、そういったものを支援しますIT導入補助金、あとは、ロボットさらには清掃機、そういった省力化製品、サービス、そういったものを企業の方々が導入をされるときに支援をします省力化投資補助金、こういった施策を準備しまして、中小企業の生産性向上を徹底的に支援をしておるところでございます。

丹野委員 御答弁ありがとうございます。

 今いろいろ教えていただきました支援対策、そういった支援対策の実効性について、どういった評価をされていますでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの続きになりますけれども、先ほど申し上げました新事業進出補助金、これにつきましては今年度から受付を開始してございます。これまでに約三千件の申請をいただいてございます。

 また、先ほど申し上げたIT導入補助金、こちらは令和二年度以降で約三十六万件の申請をいただいておりまして、御活用いただいた事業者の労働生産性が向上したという結果が出ております。

 さらに、省力化投資補助金、こちらは令和六年度以降、昨年度以降で約八千件の申請がなされております。御活用いただいた事業者からは、従業員の負担が軽減されて、より高付加価値なほかの業務にリソースを割けるようになった、こういった声をいただいております。

 さらに、事業者のニーズを踏まえた運用改善にも注力をしておりまして、具体的には、元々、汎用製品をカタログから選択するカタログ型から始めたわけですけれども、今年度から新たにオーダーメイドに対応しまして一般型というものを開始しまして、更なる利便性の向上を図っているところでございます。今後とも、必要に応じて不断の見直しを図ってまいります。

 また、こうした支援策をより多くの事業者にお届けしていくことも必要でございます。このため、商工会、商工会議所、こちらは全国で約二千百ございます、年間約四百万件の相談対応をさせていただいております。さらには、よろず支援拠点、これは全国四十七の都道府県に一か所ずつ設置をしてございますが、年間約三十万件の相談対応をしてございます。さらには、税理士さん、さらには中小企業診断士さん、こういった認定経営革新等支援機関、こちらは約三万社が認定されてございますが、そういった支援機関でワンストップの情報提供、さらには伴走支援といったものを行っているところでございます。

丹野委員 御答弁ありがとうございます。

 今お話を伺った伴走支援をしっかり実行していただきたいと思っておりますが、ちょっと要望なんですけれども、我が党がずっと訴えております年収の壁の問題、百七十八万円に引き上げるという話なんですが、これは、手取りを増やすのはもちろんなんですけれども、やはり労働力の投入という意味においても、是非とも検討していただきたいなと強く併せて要望いたします。

 さて、人手不足対策について様々伺ってまいりましたけれども、実は、私、今回提言したいことがあるんですね。それは、人手不足を解消するために、改善するために、法人税を改正すべきというものでございます。ちょっと御説明がこの後続きますけれども、御容赦ください。

 現行の法人税法では、企業が人を別の会社に無償で送り込むと経済的利益の供与とみなされまして、これは寄附金扱いになるんですね。このため、損金に入れることができずに、税金を払うことになってしまいます。これが人材支援の障壁になっているのではないかという御提案でございます。

 詳しく御説明していきます。

 まず、資料の一から御覧ください。これは釈迦に説法で恐縮でございますけれども、まず、企業の会計、その計算と用語になります。会計は、収益から経費を引いて利益を計算します。次に、法人税を計算するときの計算と用語ですけれども、税務上は、益金から損金を引いて所得になる。この所得に対して税金をかけるわけですね。

 収益と益金はほぼ同じ意味なんですけれども、経費と損金が同じではないという、ここがポイントになります。これを頭に入れて、資料二を御覧ください。

 これは法人税法二十二条なんですが、一番、所得、益金から損金を引いた額、これに法人税をかけますよと。これはいいんですね。二番です。益金に入れるのは、資産を売った場合、これは分かりますね。そして、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供云々とあるんです。なので、税金の計算はこうしますよと。最初の益金のところなんですね。

 売上げがあったらもちろん入れる、これはよく分かるんですけれども、問題は無償の場合なんです。無償で上げたから、当然売上げがないんですね。お金が入ってきていないんだけれども、益金に入れる。これは本当にちょっと気持ち悪いんですけれども、ないものを入れるわけですね。

 どういう考えかというと、普通、ビジネスにおいて、ただということはないでしょうと。そうすると、普通何かしたら絶対売上げがある、お金が入ってくるから、無償提供というのは後で分かるよねみたいな話になって、本来入るはずの額をまずは益金に入れる、これが大事なわけですね。

 次に、資料三になります。法人税法第三十七条、寄附金を損金に入れちゃいけませんよという内容です。

 寄附金だろうが拠出金だろうが見舞金だろうが、ネーミングが何であっても、お金はもちろん寄附金になりますし、人材を送ることも経済的利益の供与に当たるので、とにかく全て寄附金とみなします、損金に入れちゃいけませんということなんです。

 ただ、寄附をする相手によっては、多少損金に入れてもいいですよというのがあります。これが、まず、大きく分けて三つあるんですが、一番、国に対して寄附をする場合は損金に入れてもいい、それから、二番、日赤みたいなところに入れる場合はちょっと損金計算できる、しかし、三番、民間への寄附は一円たりとも入れちゃいけない、こうなっているんですね。

 なので、民間への寄附はいけないので、今現状どうしているかというと、企業さんが研修という名目で人を送り込んでいます。寄附金は損金に入れられないんだけれども、研修費だったら損金に入れられるので、あくまでも送っているんです、その形で。しかし、これは苦肉の策ですし、限界があるかなと思うんですね。

 なので、人を送ると寄附金である、しかし、こういう場合は例外ですよというのがあります。それが資料四になります。

 法人税の基本通達です。これは、九―四―一と九―四―二、法的拘束力はありませんが、皆さん守っていらっしゃるんですね。

 どういうことが書いてあるかというと、もう潰れる、倒産する、こういうときは救わないと、うちのビジネスにも火の粉がかかってくるし、これは救わなきゃいけないよねというときに人を送る、これは寄附じゃないよね、そういう通達なんですね。

 これは例外事例なんですけれども、このような倒産しそうな緊急事態では遅いわけですよ。人手不足は慢性的で、かつ長期的な支援が必要なわけですね。なので、企業を支えていく人が必要。よく企業の体質改善とか言いますけれども、お困り事が何か分からないとか、解決法が分からないとか、省力化、DXといいますけれども、DXをやる人がいないとか、そういう状況なわけですね。なので、本当に人がいなくて困っている中小企業に大企業ですとか余力のある企業が人材を送る、そういうことも必要かなと思うわけですね。

 そこで、私、提言が今回ございます。この法人税法における寄附金という言葉の扱いを定義し直すのはどうかなと思うんですね。

 自分の会社のサプライチェーンであって、我が社にも火の粉がかかるから送らなきゃいけない、こういうのはあります。あとは、例えば元気なシニアを送っていただいて、若い男性が、子育て中の男性が早く帰れるようにするとか、DXに詳しい人を送るとか、補助金申請を書く詳しい人を送るとか、あとは、直接取引はないんだけれども、これからの企業の在り方として人材支援をしていくんだ、そういう価値観があってもいいんじゃないかなと思うわけです。

 なので、こういった足かせになっているようであれば、法人税の寄附金の扱いというのを見直すのも一考かなと思っております。

 ただ、ちょっと自己矛盾するようではございますけれども、ずっと言ってきましたけれども、税制改正ですね、これをすれば人材不足が、人手不足がすぐに解消するとは正直思っておりません。やはり複合的でございます。ただ、一つはあるかなと思うんですね。

 私の課題感というのは、やはり中小企業の圧倒的な人材不足なんですね。先ほどもありました、DXしよう、省力化しようと思っても、DXの説明を聞きに行く人とか実際にやる人がいない、補助金がいっぱいありますと言っても、補助金の申請を書く人がいないんですね。でも、お困り事、企業体質を考えようと言っても、共通用語がないし、どうやって改善していいか分からない。本当にそういう現場が困っていて、そういう中で歯を食いしばって、日本の中小企業の皆さんは本当に一生懸命仕事をしてくださっている。

 なので、やはり人がいない状況において、労働力をより本当に真剣に確保していく、それは元気なシニアでもいいし、女性の労働力でもいいし、そういうところをうまく活用していくべきだと私は思っております。

 だからこそ、最後の質問になります、経産省、国として、労働力をもっともっと本当に有効に活用して、日本全体として経済を強くしていく、そういう方策を用意してほしいと思っているんですけれども、お考えをお聞かせください。

赤澤国務大臣 委員と問題意識を共有をするものでございます。

 大企業から中小企業への人材派遣に関する法人税の見直しについては、御提案の趣旨は理解をいたしました。実際にそうした御要望の声があるかを含めて、まずは実態やニーズの把握に努めさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、委員御指摘のとおり、中小企業の人手不足への対応は極めて重要な課題です。冒頭申し上げたとおり、これから二十年で更に二割、千五百万人、生産年齢人口が減りますので、経済産業省としても、中小企業、小規模事業者に寄り添い、プッシュ型の伴走支援体制を一層強化してまいります。

 経済産業省では、本年六月に、人手不足が深刻な十二業種ごとの省力化投資プランを策定をし、関係省庁と連携しつつ、省力化に資する支援施策の周知、優良事例の情報提供等を行っております。

 今後、同プランを踏まえ、商工会、商工会議所や中小企業団体中央会、地域の金融機関など、全国二千を超える支援機関において、デジタル支援ツールを活用したサポート等、人手不足に対するきめ細かな伴走支援を強化していきたいと思います。

 委員のおっしゃる、何が問題か分からないとか、あるいは分かったとしてもデジタル導入をする人手がいないとか、そういうことに寄り添って、何とか解決をしていきたいと思います。

 また、今般閣議決定された総合経済対策においては、中小企業、小規模事業者に支援が行き届くよう、プッシュ型支援を一層強化すべく、よろず支援拠点における生産性向上を支援するセンターの新設、あるいは商工会、商工会議所等の支援機関の体制強化、そして関係機関が連携した伴走支援のモデル創出などの取組を取りまとめたところでございます。

 こうした取組を着実に実行し、強い中小企業への行動変容を促し、強い経済につなげてまいりたいというふうに考えております。

丹野委員 どうもありがとうございました。

 この人手不足、労働力確保というテーマについては引き続き質問してまいります。

 ありがとうございました。

工藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 一年ぶりの質問に立たせてもらっております。委員長を始め各関係の皆さん方に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 まず初めに、大臣は、今回の所信を述べられた中で、米国の関税措置や、米中欧を始め各国による自国優先の大規模な産業政策の展開など、自由主義経済に代わる新たな国際秩序が生まれようとしていますと述べられているんですね。産業政策は一義的には自国優先の考え方は、昔も今もこれからも変わらないんじゃないかと考えるものです。これについて、赤澤大臣の御所見と、新たな国際秩序とは何を指しているのか、それを踏まえて我が国の産業政策の方向性を伺いたいと思います。

赤澤国務大臣 冷戦以降、貿易障壁の引下げが各国相互の利益になるとの共通理解に基づいて、ルールベースの多角的自由貿易体制が世界的に広まり、世界全体の経済発展に貢献をしてまいりました。

 他方、近年では、自由貿易の推進が各国間の収支不均衡を拡大させたとの批判や、特定国への経済的な依存がもたらすリスクへの懸念が高まっております。そうした中にあって、自由貿易のメリットは維持しつつも、こうした新たな課題に対応し得る新たな国際秩序が問われているという状況だと思います。

 特に、米国ですけれども、覇権国が新たな通商関係を構築しようとする中においては、米国との関税交渉の、まさにその例のように、交易条件やビジネスの予見性という観点から、我が国が他国、地域に劣後しないように、交渉を通じて全力でその担保をしながら、安定した国際経済秩序に向け、一方で自由貿易と法の支配の取組を進めるという、いわばハイブリッドな通商戦略を展開していき、CPTPPなどにより信頼できる国々と互恵的な市場を拡大し、日本にとっての成長機会を確保していく必要があるというふうに考えております。

 そうした成長機会を確保するためにも、日本経済の競争力を強化をし、日本企業の稼ぐ力を高め、物価高を上回る賃上げにつなげ、強い経済を実現していくことが必要と考えております。

 そのため、成長戦略の肝である危機管理投資を進め、AI、半導体、量子、バイオなどの戦略分野を中心に、大胆な設備投資や研究開発の促進などを通じ、官民の積極的な投資を引き出してまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 十一年前にTPPがすごく国会の中でも盛り上がったんですね。これは四年前に、四年ぶりに、落選していたものですから、三期目当選したときに、内閣府に照会をかけて、TPPはどうなりましたかと聞いたら、コロナがあったので、なかなか貿易の輸出入も含めてデータがまだ寄せ切れていないと。一年後にまた同じ内閣府の担当に尋ねたら、難し過ぎて専門家でも分からないんだ、こういう話なんですね。

 今大臣が答弁されましたCPTPP、昔はTPP11とかと言っていたと思うんですけれども、何であれだけ国会で大騒ぎした中で、メリットがあるのかデメリットがあるのかよく分からない自由経済貿易圏をつくろうとしたわけですね。

 では、十年前の、例えばASEANの国に日本が輸出をしている金額と、ASEANの国から日本に来た輸入の金額、それを差し引くと、圧倒的に日本の方が多かったんです。でも、十年たったら、ASEANの国から来るものの方が多くて、貿易赤字になっている。ということは、日本でお金を外に出していますよということですね。

 ましてや、トランプ政権になって一五%の関税。大臣が担当のときに汗をかいておられたのは、遠くの方で見ていたのは、承知しているんですけれども、地元の企業さんで、あるメーカーさんが、一五%アメリカで関税をかけられるから、下請なのか、孫か、ひ孫なんでしょう、部品を供給している企業さんに、一五%コスト削減しろ、こういうふうに迫るわけですね。そういうことが実際に行われているかどうか。私は聞いただけの話ですから。では、それを調査できているのかという話なんです。

 だから、自由貿易をどんどん推進していって、それをベースにするのは結構なんですけれども、日本だって自国の産業を守ろうとしたら、米だとかコンニャクだとか、関税をかけているんです、砂糖も含めて。これは農産物です。

 だから、関税が全て悪いという考え方じゃなくて、やはり自国の産業を守っていこうというふうに考えるのであれば、やはり今までとはちょっと違う産業政策の方向性を見せていかないと、中小零細も含めて、零細と今言わないんだな、小規模事業者、みんなやめていきますよ。まあ、それは次のところでお尋ねするんですけれども、その辺の考え方を少し変えていく考えが大臣におありかどうか、お尋ねしたいと思います。

赤澤国務大臣 必ずしも御通告のあった御質問ではありませんが、私の思うところをお答えをしたいと思います。

 一九八五年ぐらいから、経済について言うと、政治は基本的に余り関与するなと。分かりやすく言ってしまうと、世界中の経済活動やら経済主体が、世界で一番原材料の安いところで原材料を買って、一番人件費の安いところで組み立てて、一番大きな市場で売りまくる、それをもうみんなが自由にやるのがいいんだという方向に世界経済全体が動いたということだと思うんですね。

 その結果、今まさに委員が御指摘のように、例えばトランプ大統領は、その結果、我が国の貿易赤字がすごく膨らんだことは、これは不公正で許せないのだという明確なお考えをお持ちなんですね。そこをまさに直そうとして今関税政策を打ち出されたということで、そういう意味で、その大きな流れが本当に変わりつつあります。

 我が国においても、ASEANについての貿易額の話、私、ちょっと手元に数字を持っていませんが、これは、今申し上げたように、政治は極力、産業政策というふうなもの、あるいは行政も含めて、打ち出さずに、自由に経済をやってもらうんだ、その結果、貿易赤字が増えようが、それは国民にとってみれば、より安くていいものが外国から入ってきて、国民生活が向上するし、全体としての利便みたいなものが増えているんだという理解の下でずっとやってきたわけです。ということが、やはりそれではちょっとおかしくないかという話で、今すごく揺り戻しに遭っているということだと思います。それが一点目、申し上げておきたいことです。

 二点目は、一五%の関税を下請にという話は、これはもう、ストレートにそれをやられるようだと、大事な中小企業、たまったものではありませんので、私どもはしっかり監視をして、そういうことのないように。

 逆に言えば、日本企業の製品の中では、例えば、鉄鋼、アルミなんかは、競争力がすごくあるものですから、一五%の関税を例えばそのまま課されても、現地の、例えば米国への輸出なら、米国側が負担してくれるというようなことも現にないわけではないです。ただ、全体として発注が減ってくるとか、影響が後で出るかもしれませんが、そういうことも含めて、下請にしわ寄せするようなことのないようにしっかりやっていかないといけないという問題意識も委員御指摘のとおりだと思います。

 今回の日米交渉ですけれども、二百以上ある国の中でほぼ唯一我が国が、一切自国の関税は下げずに、米国側に二五の自動車関税、相互関税を一五に下げてもらっていますので、そういう意味では、委員おっしゃるように、米の関税とかも含めて守るべきものはしっかり守るという交渉は、我が国についてはできたものだというふうに思っています。

 最後に、ちょっとまとめですけれども、産業政策について言うと、委員がおっしゃっていたように、確かに一時期、産業政策、極力やるな、政治、行政は経済に口を出すなという中で、金利も下がり、みんな豊かになるから戦争は起きないはずなのだというあれでやってきたんですけれども、実際にウクライナの戦争が起こり、ガザでもああいうことになり、いろいろな意味で、ちょっと本当に、世界の秩序あるいは産業政策についての物の考え方がかなり移り変わる、そういう感じになっているというふうに思います。

 御指摘は重く受け止めます。

鈴木(義)委員 では、二番目の質問に絡むんですけれども、大臣は、中小企業、小規模事業者が生産性を上げて賃上げの原資を獲得しというふうに述べておられるんですね。では、なぜ中小企業、小規模事業者の生産性が上がらないと考えているのか、問題がどこにあるのかというのが分からないと、打つ手が見出せないと思うんですね。そこのところ、どうお考えになっているか。

赤澤国務大臣 中小企業、小規模事業者の労働生産性が伸び悩む要因としては、長引くデフレの中で、コストカットによって利益を得る、低物価、低賃金、低成長のコストカット型経済となっていたこと、それから二番目に、付加価値の向上や省力化に資する投資が伸び悩んだことなどが挙げられると思っています。

 成長型経済への移行に向けては、強い中小企業への行動変容を促し、現状維持ではなく、変化に挑む企業や人が報われる形に軸足を移していく必要がございます。そのためには、中小企業の生産性向上への支援は極めて重要と考えております。

 そのため、経済産業省では、ものづくり補助金等の生産性向上、省力化投資支援を措置してきておりまして、今後も引き続き支援していくことを今般の経済対策にも盛り込んだところでございます。加えて、価格転嫁、取引適正化の徹底や、事業承継、MアンドA等による経営基盤の強化等を通じて、あらゆる層の中小企業、小規模事業者を支援してまいります。

鈴木(義)委員 ちょっと私と認識が違うんですけれども。

 地元を回っていたときに、中小零細企業の製造業だとかサービス業だとか、行った先で必ず、どうですか商売と聞くんですね。一つは、中小零細というよりは、今は小規模事業者という言い方をするんですけれども、生産性が上がらないなと。

 なるほどなと思ったんです。ロットが小さくて納期が短い。それに対応しようとすると、結局、設備投資もできませんよね。では、人材育成だといったって、あるメーカーさんから、新しい商品を作るから設備投資してくれと、何千万もかけて設備投資しました。仕事が出てきたのは二年間、三年目になったら、申し訳ない、この商品はもう売らないからおたくにはもう発注しませんよと言われたら、それが実際現場で起きている話なんですよね。

 それで中小企業の生産性が上がらないといったって、その元請さんの話を聞いて、じゃ、自分のところもやってみましょうとやったら、もう発注がない。これ、じゃ、どうするという話になるじゃないですか。

 あるところの企業さんは、いや、それでもうちはそこの会社、メーカーさんについていくんだという社長さんもいらっしゃいました。いや、もう二度とあそこの会社の仕事はやらないという話も聞くんですね。だから、やはり、その辺をどこまで政治で関与できるかというのは、これは難しいんですけれども。

 あともう一つ、これは私の認識なんですけれども、G7のプラザ合意から円高政策を取られたがために、海外にどんどん日本の企業が出ていきました。そこで作った安いものが逆に日本の国内に入ってくることによって、同じ品質だったら安い方をみんな消費者は買います。

 だって、リストラされて、ボーナスカットされて、給料も下げられて、それが一義的な原因であって、じゃ、一ドル七十五円のときにメーカーさんは何をやったかというと、円高対応に、あなたのところでもっとコストダウンしろとやったんです。今日、一ドル当たり百五十五円ぐらい、円安に戻っていますけれども、じゃ、その七十五円のコストでやっていたものが百五十五円になったら、倍に戻してくれているのかといったら、全然そんなことはない。

 だから、人を寄せたいといっても、賃上げもできないし設備投資もできないというのが、今、中小でも、中のところはまだいいんでしょうけれども、小規模の事業者になると、自分の代で終わり、閉めちゃうところがもうどんどん出てきています。それが今の日本の経済の状況かなと。数字上ではすごくもうかっているように見えるんですけれども、実際に地域を歩いてみると、もうこれ以上やっていられない、赤字になる前にやめるというところもありますしね。

 例えば、これは一つの考え方で、それをできるかどうか分かりませんけれども、海外からいろいろな、鋼材も含めて安い材料が入ってきます。でも、一つも、全部とは言わないんですけれども、JIS規格を取らなくても日本に流通するんです。そういう素材でいいからという、納め先のところがそういうオーダーをしてくると、日本の国内のメイド・イン・ジャパンの鋼材じゃないとうちは駄目というメーカーさんもいれば、いや、安ければ何でもいいんですよと。

 そこはJIS規格を取っていないんです。安いですよ。でも、十年前と比べればどんどん品質が上がってきて、日本のメーカーで造っているメイド・イン・ジャパンの鋼材と海外のものも余り変わらなくなってきている。では、どっちを選ぶといったら、余り鋼材の質の話をメーカーさんが言わなければ安い方を買うと。じゃないと利幅が取れないから。それが今の日本の経済の状況じゃないかと私は思うんですね。

 だから、一番のところでお尋ねしている、国際的秩序とは何ですかというところを問いかけたり、自国の産業を守っていこうとして産業政策をやろうとするのか、そこのところが今問いかけられている時代に入ってきている。経済安保だとかなんとかと言って、それは守るけれども、それ以外はどうぞ好きにやってくれ。いや、そこがみんなやめていけば、サプライチェーンがずたずたになるだけの話です。

 それでいい、経済安保できますかという、そこの岐路に立たされているんじゃないかと思うんですけれども、最後に、時間がもうあと少ししかないので、大臣の所見をいただきたいと思います。

赤澤国務大臣 まず、問題意識は非常に重たいものだと思って受け止めさせていただきます。

 その上で、私自身が思うこととしては、やはり、デフレの中で、比較的借金はしない方がよい、借金をするとどんどん重くなる、インフレのときと違う、じゃ、ちょっと投資もしづらいなということで、余り、中小企業にしてみても、成長をさほどしないで、でもやっていけるという状況にかなり慣れていたということがあるのかなと。

 だから、消費者の側も、物価上昇なんかないんだというデフレマインドで、欧米と全く物価が上がり始めたときの反応が違って、欧米だと、物価が上がると、もっと上がる前に買っておこうというので消費が刺激されたりするんですが、日本の場合は、上がると、また下がるのを待って買おうというので、消費が控えられちゃったりみたいなことが起きるのと同様に、企業においても、やはり余り成長志向がなかったんだと思うんです。

 今委員がおっしゃったような、例えば、三年、元請に言われて作ってみたけれども、そこでもう用なしと言われたみたいな話は、中小企業の、特に、下請という言葉が今いいのか、受託取引ということかもしれませんけれども、その側も、やはりそういう感じの扱いを受けないように、投資をして、少しでも成長して、競争力のある商品をより作る、あるいは品ぞろえをちょっと豊富にして、これは駄目と言われても、じゃ、ほかに売り込める物を持つとか、何かしらやはり成長志向に変えていくことが大事かなということを思っていまして。

 そういう意味で、今、このインフレの状況になってきました。お金を借りてでも設備投資をやろうという機運が当然出てきますし、投資も百兆円を超えて大分増えてきております。今百十兆円ぐらい、足下はなっているかもしれませんが。

 そういう流れを捉えて、少しでも競争力のある中小企業に成長していただこうということで、そういう方向を一生懸命応援をすることで、中小企業がサイズ、規模の点でも、あるいは売上げとかの点でも成長し、売られる商品は競争力が増し、いろいろな意味で、元請との関係でも少しずつでも強い立場を獲得していただいて、企業が全て日本経済の発展に、繁栄に力をかしてくださるような方向を目指して今、経済政策をやらせていただいているということでございます。

鈴木(義)委員 最後になりますけれども、小売店でも中小・小規模事業者も怖いんです。怖いから価格転嫁や値上げができない。そこのところを是非酌んでいただいて、産業政策、頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

工藤委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩です。

 まず、赤澤経済産業大臣におかれましては、経済再生担当大臣として、米国との厳しい関税交渉において、毎年五兆円を超える関税が我が国に課せられる可能性があったにもかかわらず、二兆円以上を削減できたということについては、党派を超えて高く評価されるべきものであり、改めて敬意を表したいと思います。ありがとうございました。

 一方で、赤澤大臣は、関税は残っているものの、厳然たる事実であり、様々な影響を適切に対応していく必要があると御発言をされており、実際に、中小・小規模事業者の皆様からは、米国関税措置への影響を懸念をするといった声が聞かれております。こうした影響を緩和するべく、資金繰り支援や生産性向上のための各種補助金、中小企業等の販路拡大等の支援等、迅速に対応していただきたいと思います。

 以上の点も含め、早速質問に入らせていただきます。

 高市総理は、今月四日の衆議院本会議で、賃金上昇を伴った持続的、安定的な物価上昇の実現は道半ばであると述べられました。

 総理のお言葉どおり、我が国の経済状況は依然として厳しい状況に直面をしております。人手不足や物価高を背景に、今年の春闘では、大企業が二年連続で五%台の賃上げを達成しました。その一方で、我が国の雇用を支える中小企業の賃上げ率は、経営者の皆様の最大限の御努力をしていただいておりますが、含み資産などを多く有する大企業に比べ伸び率は低く、この格差は持続的な賃上げの実現にとって大きな課題であります。さらに、実質賃金は九か月マイナス基調から抜け出せておらず、国民の皆様の暮らしは日に日に苦しくなってきております。

 物価高に苦しむ国民生活を断固として守り抜くとともに、エネルギー価格の高騰や円安、さらには関税の影響で疲弊している我が国の産業基盤を維持強化するためにも、経済産業省の役割は極めて重要だと言えます。

 そこで、赤澤大臣にお伺いをいたします。

 我が国の産業の維持強化という重大な課題に対して、経済産業大臣としてどのような認識をお持ちでしょうか。そして、その解決に向けて、経済産業省として具体的にどのような取組を進め、どのような決意を持って臨まれるのか、お伺いをいたします。

赤澤国務大臣 国民の皆様が直面している物価高への対応は、まさに高市内閣の最優先課題でございます。また、強い経済の実現に向け、我が国の産業の維持強化を通じ、日本経済の供給力を強化することも重視をしております。

 まず、物価高への対応として、与野党合意を受けて、ガソリン、軽油への補助金の拡充を行い、順次、暫定税率廃止と同水準の引下げを実現するほか、寒さの厳しい冬の間、電気・ガス料金支援を行うこととしております。これに加えて、官公需も含めた価格転嫁、取引適正化の徹底と、生産性向上、省力化投資等の取組を通じて、物価上昇を上回る賃上げを実現をしてまいります。

 また、強い経済実現に向けた成長戦略の実行に当たっては、危機管理投資が肝でございます。重要な戦略分野であるAI、半導体、量子、バイオなどを中心に、大胆な設備投資や研究開発の促進などを通じて、官民の積極的な投資を引き出してまいります。

 こうした内容を盛り込んだ総合経済対策が先週二十一日に閣議決定されたところであり、経済産業省としても、経済対策の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

福重委員 赤澤大臣、御丁寧な答弁をありがとうございました。

 今回の総合経済対策につきましては、物価高対策において公明党の主張も随所に取り上げていただきまして、感謝しております。

 一方で、高市総理の思いで大変規模が大きくなったとの報道もございます。これにより日本の財政の信用が失われ円安が進んでおり、それがかえって物価を押し上げ、さらには中小企業の経営が悪化するのではないかという懸念も出てきております。この件についての赤澤大臣の御見解をお伺いいたします。

赤澤国務大臣 まず、物価高について対応していくためには、円安は御案内のとおり輸入物価を押し上げるというようなところがございますので、これについては、為替の水準について私が何か言うことは申し上げませんが、いろいろな意味で、物価対応をしていく上では注視をしていかなきゃいけない部分だと思います。

 そういう意味で、物価高と逆方向に高市政権が力を入れなきゃいけない部分というのは、これは明確に二つあるんですけれども、一つは供給力の強化です。これは、総需要と総供給の関係で考えれば、総供給を強化していく、供給力を強化する。繰り返し所信表明でも経済対策でも総理がおっしゃっているのは、まさにここをやっていくことが物価を抑えていく決め手になるということで、その中身がまさに危機管理投資であり、強い経済をつくっていくということである。

 もう一つは、輸出の強化ですね。我が国の競争力のある製品を、輸出を大幅に増やしていく、コンテンツとかそういうものも含めてですね。そのことが物価を抑えていく方向に働くということで。

 対策自体、経済対策の規模が大きいと、いきなりそれでまたいろいろな意味で円安がというような御議論はあるかと思いますが、二つあるお答えとしては、供給力の強化と輸出を増やすということに力を入れていくことで物価も抑えていくという方向にしっかり経済政策、財政政策を運営していきたいということだと思います。

福重委員 参議院選挙が終わって四か月、本当に物価高に苦しんでいる国民の皆様のことを思うときに、やはり即効性の物価高対策が最重要であると私は思っております。

 そういった中で、基金の積み増しや大型な基金の新設など、不要なものも含まれているのではないかという懸念を私は持っております。是非、マーケットを注視しながら、優先順位をつけて必要なものから実行することで適切な規模にする観点も必要ではないかと考えておりますので、実力大臣であられる赤澤大臣の御手腕に御期待を申し上げたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 この質問は以上でございます。

 次の質問に入ります。

 石破前総理は、米国による関税措置を国難と位置づけ、オール・ジャパンで臨んでいかなければならないと与野党六党首による協力を要請されたように、これは国家の最重要課題でした。政府は、関税措置に対応するため、総合対策タスクフォースを設置し、当時の林官房長官と赤澤経済再生担当大臣が共同議長としてその中心的な役割を果たされました。これまでの米国政府要人との交渉実績と人間関係を踏まえれば、赤澤経済産業大臣の就任はまさに最適任であると確信をしております。今後の交渉におかれましても、引き続きの御活躍をお祈り申し上げる次第でございます。

 そこでお伺いいたしますが、今後の米国との交渉において、外務大臣、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣、さらに関係する閣僚を含めた政府全体の連携体制はどのように構築されていくのでしょうか。特に、各閣僚の担当範囲と役割分担、そしてそれらを束ねる連携体制について、経済産業大臣としてどのように構想され、主導されるおつもりなのか、御答弁をお願いいたします。

赤澤国務大臣 その前に、ちょっと一言だけ。

 物価高対策について、問い一と問い二の答えを併せて考えていただくとありがたく、経済対策で、痛みが生じている国民の今苦しい状況には即効性のあるものを手を打っていき、また、あと、いろいろ、全体として、経済対策全体が大き過ぎないかという話があったので、中長期的にしっかり、供給力の強化と輸出の増加等で物価高に必ずしもつながらないような方向で展開をしていきたいということを申し上げた次第でございます。

 今の御質問にもお答えをいたします。

 私自身は、前政権で関税措置に関する日米協議を担当したことも踏まえ、茂木外務大臣とともに、投資イニシアチブを中心とした合意の実施に係る具体的な取組や米国との調整を推進をしてまいります。

 より具体的には、茂木外務大臣は、合意の実施を含めた米国との調整の全体を総括されます。城内日本成長戦略担当大臣は、日米間の合意の国内における進捗管理や、国内産業への影響を踏まえた必要な支援に関する総合調整を御担当されるものと認識をしております。

 政府の連携体制について申し上げれば、豊富な知識経験をお持ちの茂木大臣や城内大臣と協力をし、三人の連携により、より多くの成果を上げていきたいと考えてございます。合意の実施を通じた両国の相互利益の促進に取り組むことで、日米同盟の更なる強化と経済安全保障の確保、そして我が国の経済成長の大幅な促進に貢献してまいります。

福重委員 物価高対策に対しての総合経済対策の立て分け、ありがとうございました。私どもは、物価高対策に関しましても、公明党として更なる議論をして、しっかりとまた意見を述べさせていただきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 今の答弁は、本当に明確なる御答弁をありがとうございました。大臣が、投資イニシアチブだとか、様々そういったことを交渉の中で御経験をされてきておりますので、最適任だと思っております。本当に、このことが日本の国益にもプラスになるように、しっかりと工程も組みながら大臣に目くばせをしていっていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 この質問は以上でございます。

 次の質問に入ります。

 石破前政権では、米国関税措置への影響に対して、自動車、鉄鋼など基幹産業に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、緊急対応パッケージを整備しました。公明党は、このパッケージを着実に進めるよう強く要望してまいりました。具体的には、相談体制の整備、影響を受ける企業への資金繰りを始めとした支援の強化、雇用維持と人材育成、国内消費喚起策の強化と国民の暮らしの下支え、産業構造の転換と競争力強化の五つの柱からの施策であります。

 それぞれ具体的な対応を取っていただいておりますが、相談体制の整備や、ジェトロや日本政策金融公庫など、相談窓口を設置し、事業者への対応をされております。影響を受ける企業への資金繰り支援を始めとした支援の強化においては、公庫のセーフティーネット貸付けの利用要件の緩和等による資金繰り支援や、中小企業の生産性向上を支援する補助金の優先採択などを実施しております。

 この経済産業省の施策の中で、これまで実際に事業者からどのような相談の声が上がっているのでしょうか。また、重要なことは、実際にこの緊急対応パッケージにおいて事業者の経営基盤への支援につながっていくことがポイントであります。現場からは、着実に取組を継続してほしいなどの声もあると承知しております。補助金の採択件数を含め、これまでのそれぞれの実績についてお伺いをいたします。

赤澤国務大臣 日米関税交渉を通じて、委員にも御紹介いただきました、五兆円超毎年課されるはずの関税を二兆円超削減をし、日本経済への影響を緩和させるとともに、他国に負けない交易の条件や予見可能性を確保したことについて、一定の御評価をいただいているものと考えています。

 米国と第三国の合意と日米の合意を一概に比較することは困難でありますが、他国に負けない交易の条件という点からあえて一つ御紹介申し上げれば、例えば自動車については、今回の合意の結果を見れば、韓国の税率は、米国は元々課していなくて、韓国から自動車を輸出して〇%だったものが一五%になりますが、我が国は二・五%から一五%、上乗せ幅でいうと一二・五%に小さくとどめることができた上、台数等でいうと本当に、輸出のライバルであります韓国と比べると、二・五%交易条件がよくなったというところがあります。

 一方で、依然として一定の関税率が残っていることも厳然たる事実であり、様々な影響に適切に対応する必要があります。

 政府としては、これまで、四月に策定された米国関税措置を受けた緊急対応パッケージに基づき、全国約一千か所に相談窓口を設置し、これまで約七千七百件の御相談を承っています。御質問ですが、事業者からはどんな声があったか。関税の影響を受けて受注が停滞をしている、あるいは、今後の業績に悪影響を及ぼす懸念があるといった声が多く聞かれたところであります。

 また、こうした声を踏まえ、米国関税の影響を受けた中小事業者に対して千二百二十件の資金繰り支援を行うとともに、生産性向上を通じた競争力強化を図るため、ものづくり補助金で二百七十二者、新事業進出補助金で五百九十者の優先採択を現に行ったところでございます。

 先週二十一日に米国関税措置を含めた我が国を取り巻く現状に対応するための総合経済対策が閣議決定されたところ、引き続き、我が国の産業や雇用に与える影響を把握、分析し、対応に万全を期してまいります。

福重委員 先ほども御評価させていただきましたけれども、最恵国待遇というような形でかち取った赤澤大臣の交渉力に心から本当に敬意を表します。ありがとうございます。

 そういった中にあって、やはり相談の中では、景気が停滞しているというような意見や、それから、悪影響があるというような厳しい意見が上がってきているというのも事実でございます。そういった中にあって、千二百二十件の資金繰りや、ものづくり補助金やそういったものに伴走型で支援をしてくださっている、頑張っていただいている、これは本当に大事なことだと思います。ただ、本当に予断を許さず、しっかりと万全の体制でこの問題に関しては政府として対応をしていっていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 この質問は以上でございます。ありがとうございました。

 次の質問に入ります。

 今年五月、党の米国関税措置対策本部の同僚議員とともに地元の大手自動車メーカーや取引先企業に訪問をいたしました。このメーカーは、国内で生産する自動車のうち、北米市場への販売が多くを占め、現地生産もしているものの、関連部品の多くを日本やメキシコから調達しているため、関税による打撃は免れないと不安の声を吐露しておりました。

 この訪問直後、私は予算委員会で、こうした取引先の中堅企業や小規模事業者、いわゆるティア1、ティア2の企業が置かれている厳しい経営環境について、当時の武藤経産大臣に質問をいたしました。武藤経産大臣からは、プッシュ型で、情報収集を行い、中小・小規模事業者への負担を、しわ寄せを注視していく、金融支援を含め、現場の実態に即した効果的な対策を講じる方針と御答弁をいただきました。

 地元の大手自動車メーカーに部品供給をしているティア1の部品メーカーの代表は、ティア2やティア3など、取引企業の業績悪化が想定される懸念を示しておられました。

 一方、このティア1の事業者は、部品メーカーも提案できなければ勝てないとして、コンピューターによる部品の設計、開発技術を活用し、部品の軽量化や原価低減を強化してきた、この取組は関税措置の影響を低減し、必要性は更に増している、さらに、関税が結果的に原価低減につながる開発を加速させているとも述べておられました。

 このように、ティア1の事業者を始め、現場では、本当にこの困難をどのように乗り越えていくか真剣に考え、事業の改善に取り組んでおられます。

 また、米国関税措置の影響により、今後、米国市場において値上げが進んだ場合には、米国市場が縮小する可能性も考えられる。それにより、日本からの輸出台数が減少し、国内の部品供給体制が縮小する可能性があります。国内産業の空洞化が進んだ場合、地域経済や雇用への大きな影響も懸念されております。

 こうした厳しい状況下で、事業者はこの事業を乗り越えようと懸命に取り組む中、政府も継続した支援に具体的かつ全力で対応していただきたいと思いますが、米国による関税政策の影響が特に大きいと想定されている自動車産業に対する支援にどのように取り組むのか、御見解をお伺いいたします。

赤澤国務大臣 自動車産業は我が国の基幹産業であり、部品メーカーを含めて広範なサプライチェーンを有しておりますので、雇用を含め、地域経済において本当に重要な、極めて重要な役割を果たしています。

 米国と第三国の合意と日米の合意を一概に比較することは困難でありますが、他国に負けない交易条件という意味からいえば、先ほど申し上げたように、韓国との関係だと、関税が二・五%むしろ我が国にとってはハンデが減るというか、なって、いい部分もあるということです。

 ただ一方で、依然として一定の関税率が残っていて、自動車産業では引き続き関税の支払いによる損失が生じています。また、今後、米国市場において値上げが進んだ場合には、米国市場が縮小する可能性も考えられます。これらの影響は、大企業のみならず、中小企業を含むサプライチェーン上の様々な企業に大きな影響を与える可能性がございます。

 こうした影響を緩和すべく、自動車業界からの声も踏まえ、また委員からのいつも御指摘を踏まえて、来年度の概算要求、税制改正要望では、自動車部品サプライヤーなどへの伴走支援を行うミカタプロジェクトの予算を増額をする、また、国内市場の活性化等のための車体課税の抜本見直しなどを要望しているところでございます。

 今後とも、米国関税が我が国の自動車産業や雇用に与える影響を把握、分析しつつ、必要な対応策を機動的に講じてまいりたいと思います。

福重委員 御答弁ありがとうございました。

 地元に帰ると、やはりミカタプロジェクトの支援というのは大変にありがたいという声も聞いております。そういった意味での増額要求をされているということでございますけれども、是非頑張っていただきたいと思いますし、車体課税は非常に国民からの要望も強い要望でございます。今後の税制改正の問題もあると思いますけれども、しっかりと我々は応援していきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 国、地方自治体から民間の請負契約においても、物価高騰に対応するため、価格変動条項や再協議条項の導入が進んでおります。

 特に建設業界では、資材価格や労務費の上昇に応じた契約単価の見直しが重要視されております。建設業界では、資材価格の高騰が続き、鋼材や生コンクリートなどの建設資材は二〇二〇年比で三、四〇%上昇しているところもございます。円安やウクライナ情勢、物流費の上昇が主な要因と言われております。

 価格変動条項は、一定条件の下、自動的に契約額を見直す仕組みであり、再協議条項は、条件変化があれば当事者が協議する義務を定める仕組みであります。経済産業省は、原材料費や人件費の契約後の変動に応じて契約単価を見直すため、これらの条項の活用を推奨しております。

 建設業を始め製造業など、民間対民間の取引形態においては、発注元、元請企業があり、来年一月から中小企業受託事業者と名称が変わる予定ですが、中小受託事業者が負担を強いられないことが最も重要であります。民間対民間に範を示すためにも、まずは国や地方自治体による発注を適正に行っていくことが必要であると考えます。

 経産省は官公需で二つの仕組みを推奨しておられますが、実効性が伴わなければ何の意味もございません。経産省として実効性、実態性についてどの程度把握されているのでしょうか。御答弁をお願いいたします。

坂本政府参考人 委員御指摘のとおり、価格交渉や価格転嫁の徹底を民間企業に呼びかけている国や地方自治体自身が率先して取り組むことは極めて重要だと考えております。

 そのため、経産省では、官公需法に基づきまして、毎年度閣議決定をしております国等の契約の基本方針におきまして、国、地方自治体に対して、物価上昇に伴うスライド対応、御指摘の価格変動条項に当たるものや、期中改定、再協議条項に当たるものについて適切に設定することを求めております。

 こうした措置を含めまして、官公需における取引適正化が適切に実施をされるよう、関係省庁とも協力をし、文書による周知に加えまして、全国十六のブロックごとに説明会を開催するなど、受注事業者において価格交渉を行う担当者への周知徹底に努めてきております。

 さらに、毎年度、国や自治体の各組織において、こうした措置の導入状況について調査をいたしまして、全ての回答結果を機関ごとに公表をしております。令和五年度における、スライド条項について運用しているという回答、組織の割合は七三・八%、再協議条項につきましては三二・一%の導入状況でございました。

 これらの仕組みの導入につきまして一層徹底されるよう、今後とも財務省、総務省などとも連携をし、実施状況のフォローアップに努めてまいります。

福重委員 この問題は政府の本気度が問われると思いますので、是非一体となって頑張っていただければと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 高市総理は、公共工事の国、地方自治体からの民間への請負契約単価を、物価上昇等を踏まえて適切に見直すと述べられました。これは、民間取引においても同様に中小企業の適切な価格転嫁が不可欠であることを示していると認識しています。

 中小企業庁においては、エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を整えるため、二〇二一年九月より、毎年九月と三月を価格交渉促進月間として設定しております。この取組の最大の目的は、価格転嫁を徹底し、それが中小企業における賃上げの原資となることだと思っております。

 各月間終了後には、多数の中小企業に対して、主な取引先との価格交渉、価格転嫁等の状況についてのフォローアップ調査を実施し、価格転嫁率や業界ごとの結果、順位づけ等の結果を取りまとめるとともに、状況の芳しくない発注者に対しては事業所管大臣名での指導助言が実施されております。

 最新の調査は九月に行われておりますが、まだ集計中と聞いております。前回三月の調査結果において、回答及びその回答に対する中小企業庁としての対応、フォローアップや、発注企業に対する指導助言した件数、最低評価と言われる「エ」となった企業数について御答弁をお願いいたします。また、最低価格「エ」となった企業について中小企業庁としてどのような対応をされているのか、また、ペナルティーなどの適用状況があれば、併せて御答弁をお願いいたします。

坂本政府参考人 今御指摘をいただきました今年三月の月間のフォローアップ調査の結果、価格交渉が行われた企業の割合は八九・二%となりました。一方、コスト全体の転嫁率は五二・四%にとどまっておりまして、改善傾向にはあるものの、道半ばの状況であるというふうに認識をしております。

 中小企業庁といたしましては、本調査の結果に基づきまして、発注者ごとの交渉、転嫁また支払い条件の状況について、ア、イ、ウ、エの四段階に整理をいたしました発注者リストの公表を行っております。三月の調査で最低評価「エ」となった企業につきましては十五社でありましたが、いずれも代金の支払い条件について最低評価となったところでございます。

 こうした調査結果を踏まえまして、状況の芳しくない発注企業に対しましては、初めての試みといたしまして、迅速な状況改善を求める注意喚起を約百社に対して行っているところでございます。

 また、九月の月間の調査結果なども踏まえまして、状況が改善しない場合には、関係省庁とも連携をし、業所管大臣名での指導助言も実施したいというふうに考えております。

 また、こうした取組を進める中で、取適法に違反をするような端緒情報が得られた場合には、公正取引委員会とも連携をし、法にのっとり、厳正に対処をしてまいります。

福重委員 よろしくお願いいたします。

 次の質問に入ります。

 高市総理は、成長戦略の要が危機管理投資であるとし、リスクや社会問題に対して、先手を打って供給力を抜本的に強化するとしておられます。

 一方で、日本の産業構造を支えている中小企業、中堅企業からは、この成長の原動力の中に自分たちの稼ぐ力の強化や参入機会をしっかり得られるのだろうかという不安と期待が入り交じったものの声が聞こえます。地方経済を担っておられる中堅・中小企業が成長の機会を得られるよう、きめ細かな補助金、税制優遇などの制度設計が不可欠であります。

 先日、我が党の政策要望懇談会において、全国商工連合会様より貴重な御意見を頂戴いたしました。全国商工連合会の試算によると、売上高一兆円を超えると正規雇用が八割になるというデータがあるとのことです。地方の中堅・中小企業の成長は、地域経済の波及効果や地域の雇用の創出、さらには良好な地域コミュニティーの形成等、地方創生の実現において極めて重要な視点であります。

 ちょっと飛ばしますけれども、特に研究開発税制に関しては、私の地元の中小企業を始め、地域の雇用と経済を支えている中堅・中小企業の研究開発投資を力強く後押ししていくものであり、税額控除の繰越控除の措置の導入や、赤字であっても研究開発を頑張る中小企業を応援するための税制措置、例えば固定資産税の軽減などを行うべきではないかと思いますが、御見解をお願いいたします。

宮本政府参考人 地域の持続的発展に向け、若い世代がやりがいを持って活躍し、十分な所得を得られる雇用が必要であり、地方に質の高い投資を呼び込むことが重要であります。

 そのため、経済産業省では、地方で大胆な賃上げを伴う大規模投資を後押ししてきたところであります。

 同時に、投資の受皿となる産業用地の整備も両輪で進めていく必要があると考えております。その点につきましては、産業構造審議会でも今御審議をいただいているところでありまして、今後、必要な政策を講じてまいりたいと思います。

 また、委員御指摘の中堅・中小企業向けの研究開発税制につきましては、令和八年度税制改正要望において、戦略技術領域への重点化等の中堅・中小企業に対するインセンティブ強化を要望しております。

 さらに、赤字や利益が少ない企業も含めた中小企業における研究開発を一層後押しするために、中小企業が研究開発に係る設備を取得した場合の固定資産税の特例措置の創設についても経産省として要望しております。

 こうした取組を通じまして、政府一体となって若い世代が活躍できる環境を地方につくり出してまいりたいと考えております。

福重委員 研究開発税制は非常にいろいろなところからの要望が強いですけれども、やはり中小企業も利活用できるように是非後押しをしっかりしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ちょっと時間の関係上、二つ飛ばさせていただいて、東京の一極集中による地方の若者の人材不足の取組について質問をいたします。

 政府そして我が党は、長年にわたり地方創生を最重要政策として位置づけ、その実現に総力を挙げて取り組んでまいりました。

 しかしながら、若年層を中心とした東京一極集中の流れはいまだ是正されたとは言えず、コロナ禍では一時的に鈍化の兆しが見られたものの、再び加速している状況です。地方における若者の人材不足は、地域経済の活力を維持する中で最大の課題であります。

 ちょっと飛ばします。

 この深刻な事態を打開するため、経済産業省として進めてきた中小企業の政策や賃上げの流れを更に発展させ、若者が、地方でこそ働きたい、地方でこそ成長できると実感できるような魅力ある産業の創出と雇用の確保について、今後どのような具体的かつ強力な政策を講じていくお考えがあるのか、明確にお示しください。

 加えて、企業が従業員のために行っているランチ補助は、従業員一人当たり月三千五百円までは非課税となっておりますが、この非課税限度額は約四十年間変わっておりません。

 公明党は、参議院選挙でもランチ代補助の限度額引上げについて訴えてきたところでございます。福利厚生の充実は、若者を始めとする従業員の雇用定着や、給食事業者、弁当販売事業者にも波及し、地域経済の活性化にも資すると考えられることからも、このランチ代補助の限度額の引上げを是非お願いしたいと思いますが、御見解をお伺いいたします。

宮本政府参考人 委員御指摘のとおり、地域の持続的発展に向け、若い世代がやりがいを持って活躍し、十分な所得を得られる雇用が必要であり、地方に質の高い投資を呼び込むことが重要と考えています。

 そのため、経済産業省では、大規模投資補助金において、地方で大胆な賃上げを伴う大規模投資を後押ししてきたところであります。本事業では、賃上げに関する要件を設定した上で、補助事業者が自ら設定した賃上げ目標を達成できなかった場合には、未達成率に応じた補助金の返還を求める形としてきております。

 結果として、直近に行った公募では、採択者の賃上げ目標の中央値が三年間で二〇%を超える水準で設定されております。

 このように、大胆な賃上げを伴う大規模投資を各地で生むことを通じ、地方での賃上げの機運を醸成することで、若者にとって魅力的な環境をつくり出してまいりたいと考えております。

 また、従業員への食事支給に係る所得税非課税限度額については、御指摘のとおり四十年間以上限度額が据え置かれており、経済産業省としては、令和八年度税制改正で限度額の引上げを要望しているところであります。

 今後、与党税制調査会で御議論いただくものと承知しております。

福重委員 今、皆さんから、与野党を超えて、上げよう、一万円やろう、そういうような大きなエールをいただきました。政治が一丸となって応援をさせていただきますので、是非この分野の、経産省として一歩も引かず頑張っていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

工藤委員長 次に、佐原若子君。

佐原委員 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 では、質問させていただきます。

 まず、質問の前に、大臣の所信にありました、強い経済の基本にあるものの認識を共有したいと思います。

 先般、閣僚から、原子力潜水艦の必要性を排さない趣旨の発言がありました。核の平和利用を定める原子力基本法に反するものではないですか。私は、ここに強い懸念と反対の意を表します。

 現在、原子力基本法に準じた平和利用は、経済産業省が所管する産業分野での各国との覚書にも明記されています。被爆国である日本が維持してきた平和国家としての信用を失う近日来の動向は、私たちの安心、安全な暮らしを壊すものであり、許せません。平和な国際関係があってこそ、経済が潤滑に回り、暮らしが安定することは、昨今の事態でも明白です。

 大臣の御認識をいただければと思います。

赤澤国務大臣 原子力基本法において、原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとしております。

 自衛隊の艦艇の推進力としての原子力の活用については、これまでも議論があったものと承知をしておりますが、エネルギー政策の観点から原子力政策を所管している経済産業省としては、その点についてお答えすることは差し控えたいと思います。

佐原委員 そうですよね。そういうことになると思いますが、でも、私たちは、やはりまず政治家は、日本国内の国民を守るということを第一義的に考えていかなければならないと思います。ありがとうございました。

 では、次に、エネルギー政策に関連する質問に移ります。

 十一月十七日、フランスから、関西電力が所有する高浜原発用のMOX燃料が到着しました。日本では使用済核燃料は全量再処理を基本としていますが、使用済みMOX燃料についても同様に全量再処理とするのでしょうか。お伺いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルの推進を基本的方針としております。このため、使用済みMOX燃料につきましても、再処理することが基本的方針と考えております。

 こうした国の方針を踏まえて、各原子力事業者におきましても、使用済みMOX燃料についても再処理する方針を示して、原子炉等規制法に基づく設置許可を取得しているものと承知しております。

佐原委員 それでは、使用済みMOX燃料はどこで再処理をしますか。六ケ所村ですか。ほかの場所ですか。お伺いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 使用済みMOX燃料につきましては、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設、あるいはフランスのオラノ社のラアーグ再処理工場で試験的に再処理を実施した実績があり、技術的には再処理が可能だというふうに承知しております。

 一方で、商業用の再処理施設での再処理を実現する上では、使用済みウラン燃料に比べてプルトニウムが多く含まれるため硝酸に溶けにくいなどの課題があり、現在、その克服に向けた研究開発を進めているところであります。

 このため、現時点で再処理を行う場所を具体的に決める段階にはございません。

佐原委員 分かりました。

 私、フランスのラアーグに行ったことがありまして、そこで怒れる母たちという方が、ここの子供たちが白血病になったのはあなたたち日本人のせいだからねというふうに言われました。まさにそれを、毒性の高いMOX燃料をそこにまた委託するわけですよね。原発というのは、やはり余り人を幸せにしませんねと思います。

 それでは、時期や規模というのは検討が進んでいるわけですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 使用済みMOX燃料の再処理につきましては、二〇三〇年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めている段階でありまして、繰り返しになりますけれども、現時点で再処理を行う場所を具体的に決める段階ではございません。

 本年二月に閣議決定した第七次エネルギー基本計画では、国際連携による実証研究を含め、二〇三〇年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、商業用施設での再処理技術の研究開発を進めるに当たっての想定として、開発成果を六ケ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要なデータの充実化を進める旨の方針を明記いたしました。

 こうした国の方針を踏まえて、電気事業者は、フランス・オラノ社との国際連携により使用済みMOX燃料の再処理実証研究を行うこととし、現在、使用済みMOX燃料をフランスに輸送するための輸送容器の準備などを進めていると承知しております。

 国におきましても、使用済みMOX燃料を商業用施設で再処理する場合に、各工程において設備、運用両面で必要になる対策の洗い出しなどの研究開発を進めております。

 二〇三〇年代後半を目途に技術を確立することができるよう、しっかりと取り組んでまいります。

佐原委員 ありがとうございました。

 かつて、六ケ所村再処理工場に続く第二再処理工場の計画が検討されていました。いろいろと資料を調べていますが、私の手元にある資料では、二〇〇六年の段階で、二〇一〇年頃までに第二再処理工場の検討準備を始めるとあります。しかし、それ以後、第二再処理工場の議論は、現在に至るまで記録としては見当たりません。検討は中止されたと考えてもいいのでしょうか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘いただきました、二〇一〇年頃から検討を開始するとされておりますのは、二〇〇五年に原子力委員会が取りまとめた原子力政策大綱における記載が基になっておるものというふうに承知してございます。

 一方で、この検討が行われた二〇〇五年当時とは、原子力を取り巻く環境は大きく変化したというふうに認識しております。

 具体的には、二〇〇五年当時、使用済燃料の年間発生量は、六ケ所再処理工場の年間処理能力であります八百トンウランを上回ることが想定されておりました。そうした状況の中で、六ケ所再処理工場の年間処理能力以上に発生する使用済燃料については、中間貯蔵した上で、六ケ所再処理工場に続く再処理工場での再処理を想定してございました。

 一方、現在は、二〇〇五年当時と比較して、原子力発電所の稼働基数や政策目標における電源構成に占める原子力発電所の割合は大きく異なっております。この結果として、想定される使用済燃料の年間発生量も大きく減少し、六ケ所再処理工場の年間処理能力を一定程度下回ると想定される状況になりました。

 このため、六ケ所再処理工場の長期利用を行うことで、原子力発電所の運転で今後発生する使用済燃料に加えて、現在貯蔵中の使用済燃料についても、順次、再処理することが可能と考えられます。

 以上を踏まえまして、本年二月に閣議決定した第七次エネルギー基本計画におきましては、六ケ所再処理工場の安全性を確保した安定的な長期利用を行い、中間貯蔵された使用済燃料は同工場に搬出するという方針を示すとともに、そのために必要なメンテナンス技術の高度化、サプライチェーン、技術の維持などについて官民で対応を進めることといたしました。

 その上で、核燃料サイクル政策における六ケ所再処理工場に続く再処理施設の在り方につきましては、六ケ所再処理工場の稼働状況、原子力発電所の稼働状況とその見通し、これを踏まえた核燃料の需要量や使用済燃料の発生量等を総合的に勘案しながら、引き続き、資源エネルギー庁において検討してまいります。

佐原委員 お答えありがとうございました。

 核燃料サイクルの実現には、まずは六ケ所再処理工場の正常な稼働が条件と言えます。一九九七年の完成予定から二十七回のトラブルで延期が繰り返されています。この時点で、既にこの計画は破綻していると言えませんか。「もんじゅ」も廃炉が決まったと思います。延期が繰り返される中で、ほかの方法は検討されていないのでしょうか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、我が国は一貫して、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルの推進を基本的方針といたしております。その中核であります六ケ所再処理工場の竣工は、必ず成し遂げるべき重要課題と考えております。

 一方で、同工場は、ガラス溶融炉のトラブルへの対応や新規制基準への審査対応などの理由で、竣工目標を二十七回見直しております。このように竣工遅延が続いてきた現状について、国として真摯に受け止めております。

 昨年八月の二十七回目の竣工延期に当たっては、これまでの審査長期化の理由について、日本原燃は、国の指導の下で、産業界とも議論を重ねまして、再処理工場はいわゆる一品物で、発電炉と異なり参考となる審査前例がなく、また、設備物量が原発の六倍から七倍と膨大であるという特有の難しさがある中で、原子力規制委員会の審査への対応において、課題の的確な把握や進捗の管理に問題があったと分析しております。

 こうした強い反省の下で、日本原燃では、審査上の課題を徹底的に分析した上で、原子力規制委員会に対し、審査対応の全体計画を示し、審査の論点や進め方について共通認識を持ちつつ、計画的に対応を進めております。また、電力、メーカーは、再稼働審査の経験者を日本原燃に約百名派遣し、体制の抜本的な強化を図っております。

 国としても、使用済燃料対策推進協議会の幹事会をおおむね四半期に一度開催し、きめ細かな進捗管理を行うとともに、審査、検査の進捗に応じて追加的な人材確保を機動的に調整しております。引き続き、同工場の竣工に向けて、官民一体で責任を持って取り組んでまいります。

佐原委員 再処理工場は大変ダーティーなと核施設の中でも言われていて、安全に運転させるとおっしゃいましたけれども、稼働させること自体が放射能をまき散らすという認識はもちろん皆様あると思うんですけれども、二〇〇六年にアクティブ試験を行った、そのときに、海洋及び昆布、それから尾駮沼、そういったところでトリチウムなどが出、昆布からはプルトニウムが検出され、そして、試験の結果、再処理工場は地震の補修工事もできないぐらいに、レッドセルといって、入ったらやばいよという部屋、死んじゃうよみたいな、高度に放射能汚染された場所もできました。そういった中で、私としては、新聞記事がありまして、先日も被曝事故があったんですね、そういったことを考えても、これは無用の長物ではないかと思うんですよ。

 かつて高木仁三郎先生が私に、日本の官僚は優秀だから、造ってはみるけれども動かさないよとおっしゃって亡くなりました。賢かったんですよね、皆さん。これは本当に必要なものなのだろうか。私としては、次世代に被曝のリスクを背負わせたくありません。自分の孫や子が青森に住んでおります。私としては凍結してほしいところです。そして、凍結、中止になったとしても、立地する地域には、これまで背負ってきた負担への対価を支払うべきだと思っています。

 三十年近くも先の見えない計画を抱える施設が立地する地域の方たちは、ずっと不安を抱えています。再処理工場で何が起きたのか、どう対処したのか、今後のスケジュールは、それについて誰がどう議論をしているのか、誰にでも分かりやすく、資源エネルギー庁のホームページなどで随時報告していただけますか。

 六ケ所の件に限らず、原子力発電は日本の政策、国策によって進められた事業です。企業に丸投げするのではなく、国が最後まで責任を持って管理監督すべきです。いま一度、原発及び関連施設と国との関係を確認していただきたいです。この点の御認識はいかがですか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、政府といたしましては、再処理事業を含めた原子力事業の運営は、事業者自らの責任の下で担っていくものと考えております。一方、原子力の利用に当たっての様々な課題に、国も責任を持って取り組むことが必要だというふうに考えております。原子力基本法におきましても、国は、事業者が再処理や使用済燃料の貯蔵容量の増加などの対策を円滑かつ着実に実施できるよう、必要な施策を講ずることとされております。

 その中で特に重要な取組が、六ケ所再処理工場の竣工であるというふうに考えております。本年二月に閣議決定された第七次エネルギー基本計画におきましても、同工場の竣工延期が続いてきた状況を真摯に受け止めること、その竣工は確実に成し遂げるべき重要課題である旨を明記してございます。

 その上で、日本原燃では、同工場の竣工に向けた進捗状況と、原子力規制委員会と共有した審査対応の全体計画を、同社のホームページで毎月公表する取組を行っております。

 また、国といたしましても、使用済燃料対策推進協議会の幹事会をおおむね四半期に一度開催しておりますけれども、審査対応の進捗状況や必要な人材確保などの対策について、日本原燃、全原子力事業者の参加の下で具体的な検討を行っております。その資料及び議事要旨は資源エネルギー庁のホームページで全て公表し、透明性を確保した形で取組を進めてきているところでございます。

 引き続き、同工場の竣工に向けて、審査対応の進捗管理、人材確保などについて官民一体で責任を持って取り組んでまいります。

佐原委員 ありがとうございました。

 業者に任せるのではなくて、国がきちんと管理していただきたいと思います。ありがとうございます。

 十月二十八日に新聞に載ったんですけれども、十月二十四日に作業員の方が、フィルター交換作業中に工場内で放射能濃度が急に上昇して、放射性物質を吸い込んだ可能性があるということが報道されました。六ケ所、またその近隣では、自分たちの故郷、地元にある施設で事故があれば不安です。大きな施設の中で何がどうなっているのか、事故の影響は外には広がらないのか、たとえ知らない方であっても体に影響を受ける被害を受けているということがあれば心が痛みます。みんなそういう気持ちを抱えて生きているんだと思うんですよ。三十年近くそれが続いている、命に関わることが自分たちのふるさとで起きている、そういうことに関してどのようにお感じになるでしょうか。お答えいただきたいと思います。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の日本原燃での内部被曝の事象についてお尋ねいただきました。

 日本原燃からは、協力会社の作業員の方の放射性物質の体内取り込みについて、内部被曝の評価を行った結果、身体に影響を与えるものではなかった、体内取り込みに至った原因を分析し、再発防止策として実技訓練や教育資料の改善、さらに他の事業部への水平展開を実施するというふうに聞いております。

 原子力関連施設は、安全性の確保を最優先に運用されていくことが必要であります。資源エネルギー庁としても、同社に再発防止策の徹底を指導してまいります。

佐原委員 そのように徹底して行っていただきたいと思います。

 減容といいますけれども、放射性物質は消えることがありません。どこかに移るだけですよね。そのことで放射能の量を減量するために再処理をするというのは意味が分かりません、はっきり言って。何のために、環境を汚してまでしなければならないのか。プルトニウムだって四十四トン、海外にありますよね。これ以上作ってどうするの、そう思います。

 「もんじゅ」が止まっているから、それをエネルギーとして確保するなんということは、「もんじゅ」も、何十年も発電もせずに、ナトリウム爆発をして駄目になったわけですけれども、本当に先が見えない原子力。もちろん、CO2を発電時には出さないとか、そういうことはあるかもしれませんが、私は、原発も再処理も本当にやめてほしい、そう思います。やめた上で、三十年間我慢してきた地方には、ちゃんといわゆる経済的な支援は必ずしてほしいと私は思います。

 次に、データセンターと電力需要の関係についてお尋ねします。

 私は、三月二十六日もこのテーマで質疑いたしました。資源エネルギー庁からは、エネルギーミックスで進めているという御説明でしたが、技術の向上による省エネ、企業への省エネを促すことも必要です。海外でも、政府がデータセンターのエネルギー効率の評価をし、中国、シンセンでは評価基準に至らない企業は補助金が支給されないというペナルティーが科せられます。

 日本でもベンチマークがありますが、ペナルティーはないですね。現状で、企業へのベンチマーク設定は効果を上げていますか。今後は効果を上げるための施策は何かありますか。お伺いします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 データセンターは、産業競争力の観点で重要でございますが、同時に電力需要増加の要因となり得るため、その省エネを進めることが重要でございます。

 現在、省エネ法のベンチマーク制度において、各事業者が保有するデータセンターのエネルギー効率の平均値について、二〇三〇年度に目指すべき水準を設定しております。ベンチマークの目標水準は、上位一から二割の事業者が満たす野心的な値を設定してございまして、最新二〇二三年度の達成率は約一五%でございます。

 このほか、省エネ法に基づきまして、新設のデータセンターが満たすべきエネルギー効率基準を新たに設定する予定でございます。

 また、GX戦略地域に入居するデータセンター事業者に対しては、今申し上げた当該基準の遵守を求めることも考えてございます。こうした規制に加え、更なるエネルギー効率の改善に向けて、ポスト5G基金等を通じて、光電融合技術等の研究開発に対する支援も行ってございます。

 こうした措置を通じて必要な投資を促すことで、データセンターのエネルギー消費効率の更なる改善を進めてまいりたいと考えております。

佐原委員 ありがとうございます。

 三月二十八日に、情報処理の促進に関する法律、特別会計に関する法律の一部を改正する法案、ラピダス法案審査の折、参考人として、クラウド、AI、GPUサーバーなどを提供する、さくらインターネットの田中社長がお話をされました。

 我々個社の話でいうと、自然エネルギーを使い続けるということを選択したい、業界の代表として申し上げますと言いました。しかし、これから大量に出てくるというふうなことだったんですけれども、自然エネルギーだけで維持ができるのかというのは、本当に国家的なアジェンダかなというふうに思っていますというふうなお話をされました。

 地球、生命を守るという企業の社会的な責任を背負う企業は一社だけではありません。いろいろな企業広告をざっと見ても、それはお分かりになると思います。こうした企業の意思を尊重することは、持続性のある経済産業政策ではないでしょうか。原発に依存せず、自然エネルギーの主力電源化への投資支援の強化、省エネの導入の支援を積極的に行う、それを目指していくお考えは政府はお持ちでしょうか。

赤澤国務大臣 DXやGXの進展により電力需要増加が見込まれる中、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況にあります。また、低いエネルギー自給率や火力発電への高い依存といった課題を克服する観点でも、脱炭素電源の確保が不可欠です。

 このため、需要サイドでは徹底した省エネ等を進めるとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れた電源構成を目指しつつ、再エネか原子力かといった二項対立的な議論ではなくて、脱炭素効果の高いこれらの電源を共に最大限活用していくというのが政府の方針でございます。

 具体的には、省エネについては、事業者や家庭の徹底した省エネを推進するとともに、今後の電力需要増加の主たる要因の一つとされているデータセンターの省エネを進めてまいりますし、また、再エネについては、地域との共生や国民負担の抑制を図りながら、導入拡大を進めてまいります。

 原子力は安全性の確保と地域の理解が大前提であり、様々な御懸念の声があることを真摯に受け止め、それぞれの課題にしっかりと取り組み、丁寧に説明を行いながら、原子力の活用に努めてまいりたいというふうに思っています。

佐原委員 ありがとうございました。

 通告していませんが、対米投資のことでお尋ねしたいことがあります。

 アメリカに対して八十兆円の投資を行うということで、私は、円をドルに替えて支払うということについて、日本は外貨準備高が高いですから、莫大な額をドルに替えるということは、更なる日本の円安を……

工藤委員長 既に時間が経過しております。

佐原委員 はい。

 でも、これには大きなトラップが仕組まれているのが分かったんですよ。企業がやるわけですよね。企業にそれを委ねるということで、日本の国内の中小企業を守ることができるのか。

 この続き、お伺いしたいことがあったんですが、残念です。時間ですので、やめます。

 ありがとうございました。

工藤委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。

 私は、当委員会で何度も万博の問題を取り上げて質問をしてまいりました。とりわけ、万博会場のメタンガスの爆発事故や特定メディアに記者証を発行しない問題など、この当委員会での取上げで一定改善した問題もあります。

 政府は、大阪・関西万博の成果の検証とレガシーの継承の具体化について検討を進める、こうしておりまして、万博の運営に協力した事業者がその工事費の未払いで苦しんでいる問題、これが同時にあると思うんですね。私は、この問題の解決なしに、成果もレガシーもないと思っております。

 そこで、大臣に確認したいと思うんですが、万博の華とされているのが参加国のパビリオンです。当万博では、何か国のパビリオンで未払いが起き、一次下請以降の何者がその影響を受けているのか。また、大臣の下に万博検証委員会というものが設立をされましたけれども、この未払い、これも検証の対象に含まれるということでよろしいでしょうか。

赤澤国務大臣 海外パビリオンの支払い問題について、政府としては、民民の問題であるため全く関与しないとの立場は取っておらず、引き続き、博覧会協会及び関係行政機関とも連携し、個別の契約の問題解決に向け後押しをしてまいります。

 経済産業省は、御指摘の影響や事業者の訴えている被害額をつまびらかに把握できる立場にはございませんが、その上で申し上げれば、これまで政府において海外パビリオンの支払い問題に関する相談を受けたパビリオンの国の数は十一か国でございます。

 なお、経済産業省において、本件に関し直接、事業者から相談を受けた者は二十一者になります。

 御指摘の成果検証委員会は、大阪・関西万博における一連の成果の取りまとめや社会実装、記憶の継承についての今後の取組について、関係者も交えながら検討を進めていくものでございますが、同委員会での議論の内容については現在検討しているところでございます。

 また、万博のレガシーの議論とは別に、既に、海外パビリオンの解体工事を進めるに当たり、建設工事の下請代金の支払いの適正化や契約書面の交付を始めとする法令遵守徹底について、博覧会協会から参加国及び解体工事業者に周知するなど、同様の課題が生じないように取り組んでおります。引き続き、円滑に解体工事が進んでいくよう、政府としても注視をしてまいります。

辰巳委員 今あったように、十一か国のパビリオン、分かっているだけで二十一の業者が未払いの影響を受けているということですよね。多くの業者が苦しんで、今もいるわけなんです。

 この問題は決して民間と民間の問題ではないと、これは大臣もおっしゃったんですけれども、私は、未払い業者、元請ですね、これは明らかに建設業法違反で、行政官庁から本来は、勧告や指導や処分がされないケースがあると思うんですね。それにもかかわらず、されていないことが問題だと思うんです。

 経産省、万博協会は、これら未払いの問題については相談窓口を設置したとも言っているんですけれども、今必要なのは、法律に基づいた対応で、未払いを起こしている悪徳業者を取り締まって下請業者を救済することやと私は思っているんですね。そういう意味でも、民間と民間の問題ではないということなんですよ。

 建設業というのは多重下請構造であるがゆえに、下請業者の権利や利益が侵害されやすい。そのため、建設業法で、建設業者の資質の向上や建設工事請負契約の適正化等を図るための規制を定めております。

 最上位にある元請に関しては特別な責任を課して、とりわけ一定の工事金額以上の工事を下請に発注する元請は、特定建設業許可が必要となり、工事全体が適切に行われることへの監督責任がとりわけ伴うということなんですね。大臣も運輸省、国土交通省出身ということですから、よく御存じだと思うんですね。

 ところが、ルーマニア、セルビア、ドイツ、マルタのパビリオン建設の元請、同じ元請ですよ、いずれのパビリオンでも未払いを発生させている会社があるんです。これはGLイベンツという会社なんですけれども、全体を監督するどころか、まともに設計図を作らない、工事内容に変更があり、その際、下請が求めても、契約書を交わさずに口頭で済ます、クライアントが、クライアントというのは国ですね、参加国ですね、気に食わないからと工事を何度もやり直しさせる、挙げ句の果てには、工事が終わってから契約解除を下請に突きつける。これは、特定建設事業者としての資格が余りにも欠落していると私は言わなければならないと思うんです。

 私は、未払いされた事業者の方々の声をたくさん聞いてまいりました。未払いの結果、売れるものは全部売った、いつまで会社がもつか分からない、この事件、未払い以降全く笑っていないという、本当に悲痛な声を私は聞いてきました。

 マルタのパビリオンでは、このGLイベンツ社は、確定図面を示さずに、塗装内容の指示もしない中で、工事は難航したと言われております。それは、GLイベンツが受け持つ他国のパビリオンでも言われており、ルーマニア・パビリオンでも、図面はいいかげんだし、工事が始まってから変更だらけで、全部で百か所くらいやったと。要するに、やり直し工事をさせていくわけですね。

 そこで、国交省に確認をしたい。不明確な施工内容でやり直しをさせた費用については、下請に負担をさせてはならないんじゃないですか。いかがですか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 建設業法令遵守ガイドラインでは、やり直し工事を下請負人に依頼する場合には、やり直し工事が下請負人の責めに帰すべき場合を除き、その費用は元請負人が負担することが必要としております。

 より具体的には、元請人は下請工事の施工に関し下請負人と十分な協議を行い、また、明確な施工指示を行うなど、下請工事のやり直し、手戻りが発生しない施工に努めることはもちろんであるが、やむを得ず、下請工事の施工後に、元請負人が下請負人に対して工事のやり直しを依頼する場合には、やり直し工事が下請負人の責めに帰すべき理由がある場合を除き、当該やり直し工事に必要な費用は元請負人が負担する必要があるとしております。

辰巳委員 今読み上げていただいたのはガイドラインにあるんですけれども、今の部分でいうと、建設業法第十九条第二項、第十九条の三に違反するおそれがある、第二十八条第一項第二号に該当するおそれがある、こうされている部分なんですね。これはもちろん、確定図面すらないわけですから、下請に責任があるはずはありません。元請の責任なんですね。

 セルビア館では、GLイベンツ社の現場担当者が持っていた図面は契約時の図面とは違っていたので、想定外の作業が起き、ドイツ館でも、図面変更があったけれども、下請の会社には共有されずに着工後に判明した。つまり、この業者は現場の指導監督が全くできていないわけですね。

 GLイベンツの下請のA社は、様々な変更が必要となる中で追加工事が必要になった。元請の承認も受けた上で、元請の承認も受けたんですよ、追加工事。契約書を交わそうとしたわけですよ。これは追加契約書というのがあります。現場のGLイベンツの社員が分かりましたと手書きでサインしている、それもちゃんと添付をされている追加契約書なんですね。これを下請が作った。ところが、GLイベンツ社は、最終的にはこの追加契約にサインすることを拒否したわけですね。期限が迫っている、追加工事をやらなきゃいけない、仕様変更は日常茶飯事に発生をして、それに発生する追加費用、今申し上げたように、これは一切払われていないままで、工事を完了させれば必ず支払うというGLイベンツの現場の職員の言葉を最後まで信じて完工させたけれども、結局支払われずに今に至るということなんです。

 国交省、もう一度確認します。このように、元請人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合は建設業法違反となる、よろしいですね。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 建設業法令遵守ガイドラインでは、元請負人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合は建設業法に違反するとしております。

 より具体的には、追加工事等が発生しているにもかかわらず、例えば、元請負人が発注者との間で追加・変更契約を締結していないことを理由として、下請負人からの追加・変更契約の申出に応じないような行為等、元請負人が合理的な理由なく一方的に変更契約を行わない行為については、建設業法第十九条第二項に違反するとしております。

辰巳委員 明確な違反ですよね。今、答弁がありました。

 続けて聞きます。その追加工事等の費用を下請人に負担をさせることも建設業法第九条の三に違反するということでよろしいですね。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 建設業法令遵守ガイドラインでは、追加工事等の費用を下請負人に負担させることは、建設業法第十九条の三に違反するおそれがあるとしております。

 より具体的には、下請負人が追加工事等を理由にした請負代金又は工期の変更の協議を申し出たにもかかわらず、元請負人が理由を告げることなく協議に応じない等して、当該追加工事等を下請負人に負担させたことにより下請代金の額が当初契約工事及び追加工事等を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第十九条の三の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあるとしているところでございます。

辰巳委員 はっきり答弁していただきました。

 建設業法は、適正及び円滑な工事施工のためには元請の監督責任を重要視して、その責任を明確にしているんですね。たとえ、直接的には元請の責任ではない、下請同士の賃金の未払いであっても、建設業法四十一条の二において、元請が立替え払いをすることを許可行政庁が勧告することができる、そういう規定すらあるわけですね。しかし、今回はその元請が未払いを起こしているわけですから、本当に悪質なんですよね。

 無許可営業という重大な違反の疑いも私は指摘をしたいと思います。

 建設業法第三条及び施行令第一条には、二つ以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならないとしています。本店以外の営業所とは、常時建設工事の請負契約を締結する事務所とされております。

 なぜこのような規定が置かれたのかということでいうと、複数の都道府県にまたがる営業所における建設業の営業に関する許可及び監督については、規制の実効性、事務の効率性の観点から、行政運営上、適切ではないからですね。まあ、普通でいったら東京都とか大阪府の許可があるんですけれども、二つまたがる都道府県でやっていたら、東京都が大阪まで行ってということではなくて、広い監督をしなきゃならないので大臣許可が必要だということなんですね。

 さて、GLイベンツ社は、本社は東京なんですね。ただ、万博会場近くのATCビルに営業所を構えて、そこで請負契約業務を行っていたということを私は業者から確認をしております。GLイベンツは、大臣許可を受けていましたか。

永井大臣政務官 御質問にお答えします。

 お尋ねのありましたGLイベンツジャパンは、東京都知事から建設業の許可を受けている建設業者であり、国土交通大臣の許可は受けておりません。

 建設業法第三条第一項、今委員からも御紹介ありましたけれども、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合は国土交通大臣の許可を受けなければならないとされています。

 このため、例えば、都道府県知事の許可業者が二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業している場合は、建設業法の規定に違反することとなりますので、許可をした都道府県知事において指導監督を行い、その是正を促すこととなります。

辰巳委員 これは大変なことですよ。無許可営業ですよね。数億円単位の工事を請け負っている会社が無許可営業であること、これは放置できないですね。

 無許可営業の場合は、建設業法に基づき、第二十八条第三項で営業停止処分、第三十一条で報告徴収、立入検査、指導を行うことができるとされています。また、建設業法第四十一条一項で、国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は第二十七条の三十七の届出のあった建設業者に対して、建設工事の適切な施工を確保し、又は建設業の健全な発展を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができるとしております。

 東京都がという話がありましたけれども、これは、本当に大臣許可を取っていないんだから、きちんと国土交通省も含めて、東京都が第一義的に指導するという話かもしれませんけれども、これはきちんと対応していただきたいと思うんですね。

 さて、経産省なんです。大手ゼネコンはパビリオンではなく大型リングなどを受注して、参加国が独自で建設するパビリオンの建設はそもそも業者がいないということになって、大阪府市や万博協会が必死に請け負ってくれる業者を探したという経緯があります。

 万博協会が作成したチラシには、海外パビリオンの建設に係る御協力のお願いとして、出展国又は元請施工者からの依頼が届いた際には積極的な受注協力をいただけますと幸いです、そういう文言が躍っておりました。

 経産省、確認します。今回、この万博協会が海外の参加国に提供したリストの中に未払いを起こした業者も入っているんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

赤澤国務大臣 BIEにも承認されている特別規則第二号第十条において、開催者から参加各国に対し、パビリオンの建築等に関わる事業者のリストを参考として提供するよう定められていることに従い、博覧会協会が登録を希望する事業者を広く募集し、希望する事業者の連絡先等の一覧表であるサプライヤーリストを参考として提供していたものと承知をしております。

 同リストは、参加国以外には対外的に公表しないことを前提に事業者を広く一般に募集したものであり、また、企業活動に悪影響を与えない観点からも、対外的な公表はしていないものと承知をしております。

 そのため、個別事業者についてお答えは差し控えますが、リストには国内外の大手事業者も含めて多数の事業者が掲載されており、問題になっている十一か国の元請事業者についても、一部の事業者が掲載されていると承知をしております。他方、繰り返しになりますが、同リストは、希望する事業者の連絡先等の一覧表をまとめたものであり、博覧会協会が特定の個社をあっせんする性格のものではないという認識をしております。

辰巳委員 大臣、そう言われるんですけれども、やはり責任は伴うと思うんですよね。下請事業者がこのような不当な対応を受けていることに、やはり経産省も真剣に動いてもらいたい。法にのっとった対応が必要だと思っています。

 建設業法第四十二条の二には、こうあるんです。中小企業庁長官は、中小企業者である下請人の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、元請人若しくは下請人に対してその取引に関する報告をさせ、又はその職員に、元請人若しくは下請人の営業所その他営業に関係ある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

 中小企業庁長官、報告、立入検査、やっていただきたい。いかがですか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、建設業法第四十二条の二において、中小企業庁長官は、中小企業者である下請負人の利益を保護するため特に必要があると認めるときに、報告徴収や立入検査をさせることができると規定されてございます。

 そもそも建設業法における下請保護規定につきましては、建設行政を所管する国土交通省若しくは都道府県が一義的な運用を担っているということでございます。

 本件につきましては、既に国土交通省や都道府県によって事案が認識されていること、それから、その一部については調査や行政指導が行われることを踏まえて、まずは国土交通省や都道府県における対応を注視してまいりたいと思ってございます。

辰巳委員 今、ちょっと確認したいんですけれども、一義的には国交省がやる。ただ、今の今まで、私がこの国会で質問するまで東京都は動いていないですよ。無許可営業で全く動いていないですよ。今長官がおっしゃったのは、一義的にはやるんだから、これからやるんだという認識があるということですね。国交省、ちゃんと動くということでよろしいですね。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 この案件につきましては、御指摘の企業につきましては東京都の許可ということになっておりまして、許可行政庁である東京都において適切に判断されるものと承知しております。

辰巳委員 東京都がちゃんとやっていないから今質問しているわけなんですけれども、国会でこれだけやられたわけだから、これは動かざるを得ないということだと思うんですね。

 さて、GLイベンツ社は、来年九月十九日から愛知・名古屋で開催されるアジア・アジアパラ大会の競技会場設営や運営等の業務を随意契約で請け負っております。

 スポ庁、どういう経緯でGLが受け取ったのか、紹介していただけますか。

清水大臣政務官 お答えいたします。

 大会組織委員会に確認をしましたところ、大会組織委員会はGLイベンツSAと本年一月に大会のパートナーシップ契約に関する覚書を締結をしており、協賛のランクとして最上位のプレステージパートナーに位置づけられ、このため、会場の設営、運営分野サービスの供給優先権を付与されておりました。

 大会組織委員会とGLイベンツSAの子会社であるGLイベンツジャパンは、供給優先権に基づき、本年四月に競技会場設営、運営業務の委託契約を随意契約で締結したものと伺っております。

 以上です。

辰巳委員 随意契約、金額は幾らですか。紹介していただけませんか。

籾井政府参考人 お答え申し上げます。

 愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会とGLイベンツの契約金額でございますが、六百三十億円と承知しております。

辰巳委員 このプレステージパートナーなんですけれども、だから随意契約で六百三十億なんですが、プレステージパートナーになるために協賛金が必要なんですね。スポンサー料を払ってくれ、これが条件になっているんですよ。これが二十二億円だということなんですよね。

 GLイベンツが複数の下請業者に対して未払いを起こしたことが大々的に報道されたことから、これは組織委員会も無視できなくなり、GLイベンツから事実関係の報告書を受け取っております。これは、所管は文科省ですね。文科省はこの報告書を当然見ておられるという認識でいいですね。

清水大臣政務官 お答えいたします。

 大会組織委員会に確認したところ、大阪・関西万博においてGLイベンツジャパンに未払いの報道があったため、同社に対し、事実関係を速やかに文書で報告するよう求めたものと伺っております。なお、大会組織委員会とGLイベンツジャパンが締結している契約内容におきましては、守秘義務が課されているため、報告の内容については、国土交通省や経産省への確認は行っていないということでありました。

辰巳委員 今もう答弁していただいたんですけれども、つまり、組織委員会の職員というのは、文科省、総務省、経産省の出身者が行っているわけですよね。当然、今回、経費が膨れ上がるということで、今審議されているのかもしれませんけれども、国費として数百億円規模のものを入れようじゃないかという話も出てきているわけですよ。

 六百三十億円の請負契約をしたこのGL社がまさに未払いを起こしていると、報告書を出しているんだと。だけれども、その報告書には一方の説明しかないじゃないですか。GLの説明しかないじゃないですか。下請業者の説明なんて全くないじゃないですか。それでオーケーなんて本来できるはずないじゃないですか。何で経産省やあるいは国交省にGLが今どうなっているのかというのを文科省は聞かないのかということなんです、聞いていないという話ですけれども。

 これは、私、調べてみてびっくりしたことがあるんですよ。ドイツとセルビア館の下請業者があるんですが、今、三億二千八百万円の未払い代金をGLイベンツに求めて提訴しています。その訴状の中でこうあるんです。アジア大会名古屋への多額の協賛金を支出したばかりのタイミングのため、現時点では請求を支払うだけの資力はない。

 二十二億円の協賛金を払ったら六百三十億円の事業が請け負える。ところが、その二十二億円を払っているから万博工事の下請業者には今払えないんだといってGLイベンツが未払いを起こしているんですよ、これは。むちゃくちゃな話ですよ、これは。これが事実ならば、GLイベンツが未払いを起こした要因の一つにアジア大会への協賛金支払いがあるということなんですよ。

 大臣、経産大臣、下請業者が泣かされている、六百三十億円の巨大案件のために下請が未払いで泣かされている、こんな特定建設業者は許せないと私は思います。許せないと思いますけれども、大臣、いかがですか。

赤澤国務大臣 個別の事業者や既に訴訟に発展している事案についてお答えすることは差し控えたいと思います。

 その上で、海外パビリオンの支払い問題について申し上げれば、政府としては、民民の問題であるため全く関与しないとの立場は取っておりません。引き続き、博覧会協会及び関係行政機関とも連携をし、個別の契約の問題解決に向けて後押しをしてまいります。

 次の大型イベントにおいてこうした問題がないよう、大阪・関西万博における知見を共有すること等を通じて、御指摘の愛知アジア大会の万全な運営の準備やその過程での適切な取引関係の確保に協力してまいりたいと考えています。

辰巳委員 引き続き質問してまいります。絶対許せない。

 ありがとうございました。

工藤委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 本論に入る前に、通告していないんですけれども、通告していないというのも、先ほどの鈴木義弘議員と大臣との議論の中でちょっと気になる発言があったので、確認をしたいと思っております。

 私の意訳ですけれども、議論の中で、政府の介入を最小化して市場原理を徹底した結果、世界的にいろいろな混乱や紛争が起こり、そしてウクライナ、ガザ、戦争につながっている、というか、ウクライナ、ガザもその一つであるといったような趣旨の発言を先ほど議論の中でされたと思っているんですね。

赤澤国務大臣 流れを、議事録をきちっと確認をしていただきたく。

 私は、一九八五年以降、経済に対して政治が極力介入しないのがよい、いわゆる新自由主義とか、そういう動きが出てきた。そういう中で、どこの経済主体も、一番安いところで原材料を買い、一番人件費の安いところで組み立て、世界最大のアメリカ市場で売りまくるというようなことをやった。その考え方がいいとされた理由が、それをやれば金融についての利子とかも下がっていく。現に、世界的に利子は低い状態になっていったと思います。要するに、経済の摩擦みたいなものが少ないわけですね。

 しかも、その上で、みんなが豊かになるから戦争はもう起きないんだというような物の考え方で、そういう考え方が進んできたけれども、しかしながら国際紛争が実際に起きてしまっているということを踏まえて、新自由主義的な考え方では駄目ではないかという考えを、おっしゃるような動きが出てきている。

 そういう動きというのが、まさに世界秩序を、今までの一九八五年以降続いてきた新自由主義の考え方では駄目じゃないか、それをどう直していこうということを考える中で、産業政策とかも新たに出てきたり、あるいは、私自身の解釈では、トランプ大統領の関税政策なんかも出てきているところがあるというふうに理解をしていると申し上げました。

 何か、新自由主義が戦争につながったなんということを申し上げたことは一言もございません。

吉良委員 議事録を確認しますけれども、今言った中で、ウクライナとガザと言葉にされませんでしたか。(赤澤国務大臣「しました」と呼ぶ)しましたよね。

 だから、先ほどというか今大臣がおっしゃったことについては一つの考え方だと思っています。私は、この後議論をやりますけれども、政府が介入し過ぎていることが失われた三十年の最大の原因だというふうに思っていますので、その考え方は基本的には受け入れませんけれども、ただ、ここは外務委員会でもないので、これ以上突っ込みません。

 私自身の問題意識としても、資本主義が、また市場原理が徹底されれば、底上げされて、人々の暮らしが、多くの人が豊かになるということで、ある意味では、市場原理主義、新自由主義と大臣はおっしゃられましたけれども、それが進んできた。

 ただ、私の問題意識としても、それが格差、分断を生み、その格差、分断が不満を呼び覚まし、その不満が政治に現れたときに、民主主義の機能不全にまで陥ってしまっている、そして極右政党が出てくるというようなことになっているという問題意識は持っています。

 ただ、私が取り上げたかったのは、その経済的な理想が必ずしも理想じゃなかった、けれども、そのことと、特にウクライナとガザということを名指しといいますか例に挙げられたけれども、この二つの紛争は全く次元が違うという思いを持っていたので、あえて取り上げさせてもらいました。

 前半の大臣のコメントについては、私とは違いますけれども、それは一つの考え方、認識だろうということは思っています。

 その上で、本論に入らせていただきます。

 私の今日の質問の問題意識は、株価が五万円を超える、積極財政ということの期待感もあって株価がある意味では高騰、暴騰している、けれども、一方で、一般国民の生活は、よく言われるように、賃金が仮に上がっていたとしても、物価高に負けて、生活実感として株価が上がるような豊かさは全く感じられないどころか、かえって苦しい状態が続いている、このギャップが一体どこに起因するのかということ、それに対しての政府の対応が、今やろうとしている対応が果たして正しいのか、そういう問題意識で質問をしたいと思っています。

 まず、今私自身が申し上げました、株価高騰と、それから、一般生活者の、豊かさの生活実感がないどころか、逆に苦しいという生活実感がある、このギャップについての認識と、それはどこからくると大臣は考えておられますか。

赤澤国務大臣 今日は比較的、委員の皆様から通告がない質問が結構来るなと……(吉良委員「これは通告しています」と呼ぶ)ああ、そうですか。追求する経済的国益とは何かという御質問かなと思ったんですが、今のは私の感じでは受け止めはちょっと違いましたが、聞かれたことについてお答えを……(吉良委員「それだったら、いいですか」と呼ぶ)はい。

吉良委員 質問通告の中で、現在の株価高騰と、物価高による一般生活者の生活苦のギャップということについて質問通告していますけれども。

赤澤国務大臣 それでは、そのことについてお答えをしたいと思います。

 株価はやはり、株主さんが、いい株だな、いい株を買ったなと思えば上がっていくわけで、配当とかそういったものが高い企業とか、あるいは将来性とかいろいろ見込んで、株主の御判断で上下するようなものだろうと思うんですね。経済状況もいろいろ関係すると思います、国全体における。総じて申し上げれば、企業が多くの利益を生み、そして、その中で株主に対していいことをする、配当とかを含めて、ということであれば株価は上がっていくものだと思います。

 その中で、やはり国民が、実際、物価高に負けないような賃金あるいは所得を得られていない部分というのは、企業の過去の、数十年の投資行動の中で、内部留保等は積み上がってはいるものの、しかしながら、設備投資とか人件費、特に人件費ですね、人的投資と言われるものに必ずしも熱心とは言えなかったという状況があると思っています。

 そういう意味では、言い方を変えれば、労働分配率が低いというような言い方もできるかもしれませんし、企業にしてみれば、株主からの評価を上げるためにやっていることで株価は上がっているものの、必ずしもそれが人的投資とかにつながっていないということかなというふうに思います。

吉良委員 ミクロの答弁をされたというふうに思っていますけれども、私自身はマクロの視点で捉えたいと思っています。

 GDP、GNI、第一次所得収支の推移という資料を配らせてもらっています。大臣、ありますか。

 二〇二四年速報値でいきますと、日本人と日本企業が世界のどこであれ稼ぎ出した所得の総和であるGNIが六百四十九兆円、一方、国内で稼ぎ出したというかつくり出した付加価値の総和であるGDP、これが六百八兆円、その差が四十一兆円あるんですね。つまり、所得と付加価値ですから必ずしも一緒ではないんですけれども、実際、日本以外で稼ぎ出した所得が四十一兆円あるということなんですね。

 今、何で円安で株価ががんと上がるかというのは、もう大臣とかここにいらっしゃる皆さんには釈迦に説法になりますけれども、今はもう円安になったからといって輸出数量が増えるわけではない。けれども、海外に直接投資をしている、その海外子会社が利益を上げる。仮にトヨタ・アメリカが一万ドルの利益を上げれば、一ドル百円であれば本社の連結決算上百万円の利益として計上できる、これが一ドル百五十円であれば百五十万円で計上できる。円安による帳簿上の水膨れが可能なわけですね。実は、この四十一兆円というGNIとGDPの差は、まさに海外で稼ぎ出しているお金、それが円安によって膨らんでいる。

 企業業績は世界中のどこで稼ごうとも企業の業績ですから、そこに対する信認があれば、期待感があれば、将来への期待があれば、株に投資されて上がるのは当然ですけれども、今の日本の実態、現状というのは、この表を見ても分かるように、その海外でもうけた利益が国内の生活者の豊かさにつながらない、安倍総理が目指したトリクルダウンが起こらないというところに最大の問題があって、先ほど言いました、株価高騰と、それから生活実感としての豊かさがないということのギャップだと思っているんですね。

 なお、それに加えて、先ほど言った四十一兆円の利益というか差、これは事実上、第一次所得収支、つまり配当と金利収益の和、足し算になっているんですけれども、残念ながら、帳簿上はその利益を計上できても、キャッシュフロー上はほぼ三分の二が再投資されて、日本に舞い戻ってきてはいないんですね。

 だから、こういう中で、今言った企業の利益、それも海外で稼いだ利益が幾ら増えても、日本の生活者の豊かさにつながらない。

 赤澤大臣がトランプ関税で随分苦労された、そこの御苦労に対しては多としますけれども、政府がやろうとしていることは、GNIを増やすことに一生懸命背中を押しているんですよ。けれども、今言ったように、GNIを幾ら押しても残念ながら広く国内に住む生活者の豊かさにつながらない、この経済構造、産業構造になっている中で、いまだに政府はというか、申し訳ないけれども自民党政権は、企業を後押しすればそれが国益になる、生活者の豊かさにつながると信じ込んでいるのではないか。

 もうちょっと言うと、大臣は苦労されましたけれども、トランプ関税、仮に二七・五%のままであれ、頑張ってかち取られた一五%であれ、二・五のままであれ、直接投資しますよ。

 日本の高度成長というのはどういう時代だったか。それは、毎年毎年所得が増える、その家計数が増えていたのが日本の高度成長時代ですよね。それを先進国の中で唯一やっているのがアメリカですから。高度成長ではないにしても、移民、その移民の子供たちがつくり出す家計、家庭、貧しいところはやはり物価高に負けている面はありますけれども、それでも所得が増えていく、家計数が増え続けているのがアメリカですから、大臣もさっき言いました、大きなマーケットにどうしても、それを狙っていくという話がありましたけれども、行くんですよね。

 もう一つ言うと、私の持論ですけれども、輸出企業というのは社員も経営者もむちゃくちゃ優秀です。ですから、円高耐性ももう備えている。円高になれば直接投資をする。世界中にサプライチェーンを構築して、円高のときはこのベンダーから買う、円安だとこのベンダーから買う。そうやって、どんな状況になろうと必ず生き残っていく、必ず利益を出す、それができる人たちなんですよ。できる企業なんですよ。私もどっぷりその世界に浸っていましたから。そういうところとまたつき合っていましたから。だから、悪いけれども、優秀だからそういうところを後押しする必要は全くないんです。自分で生きていくんです。

 だから、政府としてやるべきは、TPP、CPTPP含めて、日本企業が不利にならないイコールフッティングを、これだけは整えていかなければいけないけれども、個別産業、個別業界、個別企業を後押しする必要なんか全くない。そんな暇があったら、もう寝ても覚めても、日本国内の生活者の生活向上に、生活者がどうやったら豊かになるか、そこにあらゆる国家の経営資源を使っていくべきだというのが私の持論であります。

 いっぱい質問通告していましたけれども、最初に余計な話をしたこともあって、大臣、いかがですか。

赤澤国務大臣 なかなか一本調子でいくことではなくて、個別企業の応援をする必要なしというようなこともおっしゃったんですけれども、やはり、海外に進出していくに当たっては、いろいろな障害もあれば、あと民間ではなかなか取り切れないリスクとかもあるので、そこは国内でも、委員の御議論もいただきながら、いろいろな選択を組み合わせてやっていくということになるんだと思います。

 私自身は、やはり、輸出企業については、新規輸出一万者支援プログラムとか、これまでトライをなかなかできなかった方たちを応援する取組とかも含めて、かなりいろいろなことをやっていく必要があると思いますし、一方で、国内の物価高で苦しんでいる国民、あるいは物価高で苦しんでいる企業、応援をしっかりやっていくということも当然必要だと思いますので、その辺は、いろいろな委員の御意見もいただきながら、一番ベストと思えるものを選んでやっていきたいと思います。

吉良委員 先ほど、円安というのは水膨れ、円安で水膨れするという話をしましたけれども、もはや円安イコール国益という時代は終わっています。物価高で困っているのも、最大の原因は輸入物価の高騰ですから。

 そのためには金利を上げなきゃいけない。もちろん、その話をすると日銀の専管事項だと言いますけれども、最後に一つだけ言いっ放しで終わりますけれども、金利が低いとはどういうことか。政策金利が〇・五のままで推移するとはどういうことか。これは、ビジネスの観点から見ると、あるプロジェクトをやる、ある新事業をやるときに、一%のリターンの新事業が、一%のリターンのプロジェクトが成立するということですよ、〇・五%で借りればいいんだから。一%のリターンしかない、そんな事業が、プロジェクトがあちらこちらで成立するような国で生産性とか力強い経済とかが成り立つはずがないんですよ。

 強い経済、生産性を上げて強い企業をつくっていくには、五パーぐらいの金利は平気で払いながら、しかも人件費も物価高に負けないぐらいどんと払いながら、それでもそれ以上の高い収益を上げていく、そういう企業だけが生き残らないと強い経済なんかできないですよということを申し上げまして、もう既に時間が来ていますので、また、今期はこれでこの臨時国会は終わりだと思いますので、通常国会でやらせてもらいたいと思います。

 ありがとうございました。

工藤委員長 次に、平岩征樹君。

平岩委員 平岩征樹でございます。

 質問の機会を本日いただきまして、ありがとうございます。

 赤澤大臣におかれましては、多岐にわたる喫緊の課題の中、経済政策のかじ取りを担われ、心より敬意を表します。

 今日は、日本経済が抱える構造的な課題を乗り越えるための具体的な道筋を、構造的、産業政策的な観点を中心に質問させていただきます。

 まずは、日本経済の現状認識から伺います。

 先般、内閣府から公表されました二〇二五年七月から九月期の国内総生産、実質GDPの速報値は、年率換算で一・八%のマイナス成長でありました。これは六四半期ぶりのマイナス成長、マイナスであり、国民の間にも景気後退への懸念が生じています。

 このGDPマイナスという結果について、大臣の基本的な認識と、日本経済の現状をどのように評価されているのか、まずはお伺いいたします。

赤澤国務大臣 委員御指摘のとおり、二〇二五年七―九月期の実質GDPは、前年比年率マイナス一・八%、六四半期ぶりのマイナス成長となりました。輸出や民間住宅投資が減少したことが寄与しております。一方、民間企業設備投資は増加をし、民間最終消費支出も緩やかに増加するなど、よい面も見受けられるところです。

 日本経済は、賃上げや国内投資が約三十年ぶりの高水準となり、名目GDPも初めて六百兆円の大台を超えるなど、明るい兆しが現れております。他方で、人口減少や少子高齢化という構造的要因に起因する供給面での制約が顕在化する可能性もあり、新たな成長型経済に移行できるかの分岐点にあるとの認識を持っております。

平岩委員 今お答えいただいたとおりだとは思うんですけれども、一方で、人口減少、労働力不足、中小企業の生産性低迷、設備投資の停滞、エネルギーコストの構造的な高止まり、そしてデジタル化の遅れといった、日本経済が長年抱えてきた構造的な課題が複合的に影響を与えた結果ではないかと深く危惧しております。

 結局は、この点を克服しなければ持続的な成長軌道への復帰は困難であると考えておりまして、大臣はこれらの構造的脆弱性についてどのような認識をお持ちでしょうか。また、日本経済の成長を最も阻害している、優先課題と考えているものがあればお示しいただき、それぞれ具体的にどのように取り組んでいるか、お伺いいたします。

赤澤国務大臣 一つ前の発言で、私がマイナス一・八%を前年比年率と言ったようでありまして、前期比年率マイナス一・八%なので、申し訳ございません、訂正させていただきます。

 今の御質問にお答えをいたします。

 日本経済を振り返ると、人口減少に伴う将来悲観やデフレマインドの広がりを背景に、企業が短期的な収益確保を優先する、まあコストカット型ということだと思いますが、日本国内における研究開発投資、設備投資、人的投資の成長投資が諸外国に大きく後れを取ったこと、これが経済成長が停滞した構造的要因の一つと認識をしております。

 一方で、先ほど申し上げたように、足下では、ここ数年の積極的な産業政策の効果もあり、賃上げや国内投資が約三十年ぶりの高水準となるなど、日本経済に明るい兆しが現れています。

 この機を逃すことなく、成長戦略の肝である危機管理投資として、AI、半導体、量子、バイオなどの戦略分野を中心に、大胆な設備投資や研究開発の促進などを通じ、官民の積極的な投資を引き出していきたいと考えております。

 人口減少下で深刻化する労働供給制約、これは我が国が抱える最大の問題の一つだと思いますが、これに対応し、中堅・中小企業の稼ぐ力を強化することが重要であり、官公需も含めた価格転嫁の徹底に加えて、生産性向上、省力化投資の支援や、事業承継、MアンドA等による経営基盤の強化等に全力で取り組んでまいります。

 こうした取組を通じて、日本経済の供給力を強化をし、日本企業の稼ぐ力を高めて物価上昇を上回る賃上げにつなげ、強い経済を実現してまいりたいと考えてございます。

平岩委員 構造的課題を把握をして一つ一つ対応していくということが重要と思いますので、是非進めていただきたいと思います。

 次に、国際競争力とサプライチェーンの強靱化について伺います。

 七月から九月期は、輸出も前期比一・二%のマイナスとなって、外需が成長の足を引っ張る形となりました。その背景には、御存じのように、世界的な景気減速に加え、米国における関税引上げなどの地政学リスク、貿易摩擦の影響が日本産業にもいよいよ顕在化し始めているのではないかとの指摘があります。

 経産省として、この米国関税引上げ等の影響が業種別にどの程度顕在化しているのか、定量的、具体的にどのように把握されているのか、お伺いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 米国の関税引上げの影響ですけれども、統計分析から得られるマクロな定量情報は、様々な要因がその数値に影響を与えることから、米国関税措置の影響のみを抽出することは困難でありますので、個別の企業から得られる定量的、定性的な情報も得ていくことで影響の全体像をできるだけ把握していくことが重要と考えております。

 その上で、輸出入の現状を示す貿易統計によりますれば、二〇二五年四月から直近の十月の対米輸出の総額は前年同期比で九・二%減少しております。中でも自動車の対米輸出については、前年同期比で輸出額が二〇・六%減少となっております。また、自動車メーカー六社が第二・四半期決算において発表している米国関税影響額を合計すると、二・五兆円を超える金額になるものと承知しております。

 引き続き、定量情報と定性情報の両方を収集、分析して、我が国の産業や雇用への影響に対応を万全を期してまいりたいと考えております。

平岩委員 こうした地政学リスクが高まる中で日本企業が国際競争力を維持強化していくためには、なかなか従来の取組では不十分ではないかと思っています。

 経済産業省として、サプライチェーン強靱化、国内投資促進、そして海外展開支援、これに今後どこまで踏み込んで具体的かつ強力な支援策を講じていくお考えか、是非大臣の答弁をお願いします。

赤澤国務大臣 各国が、自国内への戦略分野の投資を促すなど、産業政策を活発化させています。そうした中で、強い経済の実現のためには、我が国も供給力の強化や輸出拡大も含めた経済産業政策や成長戦略の重要性が高まっていると思っています。

 経済安全保障の観点からは、レアアースや半導体等の重要物資のサプライチェーンが特定の国へ過度に依存しないように、サプライチェーンの強靱化、多様化を図ってまいります。

 また、国内投資を促進するため、先週二十一日に閣議決定された総合経済対策に基づき、AI、半導体、あるいは量子、バイオ、航空、宇宙、エネルギー、GXなど、戦略分野を中心とする成長投資を強力に促進をしてまいります。国内における高付加価値型の設備投資を促進するため、戦略分野への予算措置や大胆な設備投資減税の創設に向けて、関係省庁と調整を進めていくこともいたします。

 輸出拡大を含む海外展開支援のため、成長著しいグローバルサウス諸国との連携強化による市場の取り込み、地域を支える中堅・中小企業の海外展開を支援してまいります。

 これらの多角的な政策を講じることにより、日本企業の競争力を高め、強い経済を実現してまいりたいと考えております。

平岩委員 それでは次に、大臣が所信の中で全力で応援するとされています、中小企業の生産性向上と賃上げ促進についてお伺いします。

 経産省はDX、GXへの投資促進を掲げていますが、現場では、積極的にIT、省エネ投資が進む企業と手が回らない企業に分かれています。特に中小零細企業においては、各種支援制度の利活用がそもそも不得意、不得手なところが少なくありません。

 日本経済の地力を高めるためにも、中小零細企業にそうしたDX、GX投資を、その果実を享受してもらう必要があると思いますが、こうした取り残されている、この表現が適切かどうか分かりませんが、がどれくらいいると認識しているのか、また、それら多くの中小零細企業に対しどの政策手段を強化していくのか、お伺いいたします。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、資金さらには人材の不足を背景にしまして、デジタル化、さらにはGX、省エネへの対応が遅れている中小企業、小規模事業者の方々は存在するということは認識しております。こうした課題に対応するため、様々な施策を講じているところであります。

 例えば、デジタル化の支援におきましては、中小企業、小規模事業者の方々の生産性の向上を目的としまして、DX化の推進、さらにはAIの導入、そういったものを支援するIT導入補助金、こういったものを措置しております。

 一方で、今委員から御指摘がありましたように、そうした補助金による支援を講じましても、補助金による支援制度を知らない、さらには、御存じであっても申請にハードルを感じておられる、こういった方々がおられるということを承知しておりまして、そういった方々に対しては、やはりきめ細かい伴走支援が大切だというふうに考えてございます。

 そのため、例えば、デジタル化の伴走支援としましては、よろず支援拠点で、DX化、AI導入を含めた、そういった経営課題の相談、さらには、中小企業基盤整備機構、こちらにIT経営サポートセンターというものを設置しまして、無料でのお悩みのオンライン相談、さらには、地域DX推進ラボ、こういったものを通じて、地域金融機関、そういったところの伴走支援みたいなものを強化をしているところでございます。

 さらに、省エネDXにつきましても、省エネの専門家が中小企業に対してアドバイスを行います省エネ診断、さらには地域の金融機関を含む省エネ支援体制の強化、こういったものを行っておりまして、引き続き、中小企業のデジタル化、GX、省エネ投資を支援してまいりたいと考えてございます。

平岩委員 私も以前、中小企業のコンサルをやっておりましたが、なかなかそういう届かないところがやはりあると思うので、そこをプッシュ型、またおっしゃった伴走型で是非御支援いただければと思います。

 次に、米国関税の上昇、エネルギーコストの高止まり、物流コストの増加など、様々なコストプッシュの要因が中小企業の賃上げ原資を圧迫しています。

 実質賃金プラスを達成するためにも、政府として中小企業の賃上げ原資の確保を後押しする、これは追加的な施策が必要だと考えますが、大臣、具体的な考えをお伺いいたします。

赤澤国務大臣 米国関税や物価高などの厳しい環境に直面する中小企業、小規模事業者が生産性を上げて賃上げ原資を獲得し、賃上げにつなげていくことが、我が国の経済成長にとって極めて重要です。企業の成長や生産性の向上により稼ぐ力を高め、強い中小企業を目指して経営を行っている中小企業を全力で応援をしてまいります。

 まずは、賃上げの原資を確保するために、官公需を含めた価格転嫁、取引適正化を徹底してまいります。具体的には、前の国会で成立をしました取適法、中小受託取引適正化法と、振興法、受託中小企業振興法の来年一月の円滑な施行に向けた準備と現行法の厳正な執行等に努めてまいります。

 加えて、今般の経済対策も踏まえ、更なる生産性向上、省力化投資の支援や、事業承継、MアンドA等による経営基盤の強化、これまで以上にきめ細やかな、委員からも頑張れと言っていただいた伴走支援、そういったもの、あるいは重点支援交付金の活用など、賃上げ支援のための政策を総動員してまいります。

 こうした取組を通じて、強い中小企業への行動変容を促し、張り切った人が報われる社会、現状維持ではなく、変化に挑む企業や成長を目指す人が報われる形に軸足を移してまいりたいと思っております。

平岩委員 ちょっと時間がないので、次に進みたいと思います。

 次は、国民生活と企業活動に直結するエネルギーコストについてお伺いします。

 政府は電気・ガス料金補助の再実施を総合経済対策に盛り込んでいますが、まずは、この支援策の恩恵を高圧契約や特別高圧契約を利用する中小零細企業にも確実に行き届かせることが可能か、どの契約形態まで補助が対象となるのか、制度設計の具体を御説明ください。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の電気・ガス料金支援は、低圧、高圧で受電する電気の使用者、都市ガスの使用者に対して使用量に応じた支援を行うものでございます。

 具体的には、電気、ガス事業者が電気やガスを供給する際に政府の指定する値引きを実施していただくこととし、値引きを実施した事業者に対して、販売量等の報告を受けた上で、値引き原資を補助する仕組みとしております。これにより、中小零細企業も含め、低圧、高圧の電気の使用者は、申請などの手続を行うことなく、迅速かつ確実に料金の値引きが受けられる仕組みとなってございます。

 さらに、特別高圧で受電する中小企業については、地域の実情に応じた支援を実施していただけるよう、今回の経済対策において拡充された重点支援地方交付金の推奨メニューとしてお示ししております。

 また、電気、ガス支援事業の内容について皆様に御理解いただけるよう、周知、広報にも取り組んでまいります。具体的には、既に電気、ガス事業者に対して文書による周知を行ったほか、今後、経済産業省のホームページでの周知に加え、特設サイトでの周知などにも取り組んでまいります。

平岩委員 補助金はあくまでも一時的な緩和策であって、電源構成の偏り、送配電コストの増加、そして再エネ賦課金など、制度的要因によるエネルギーコストの構造的な高止まりを解消しなければ、毎年補填を続けることになります。

 これは最後の質問になりますが、補助金に依存しないためには構造的コスト要因の改革が不可欠で、持続可能かつ安価で安定的なエネルギーコスト構造の改善についてどのように実行していくのか、優先順位、ロードマップを、是非大臣、お願いいたします。

赤澤国務大臣 エネルギー政策については、安定供給と脱炭素の両立に向けた取組を進めながら、エネルギーコストにも十分配慮することが重要であり、こうした考えの下、エネルギー政策を推進をしております。

 エネルギーコストとしては、例えば燃料費など様々な費用が考えられますが、二〇二二年のロシアによるウクライナ侵略等による世界的な燃料価格の高騰や円安の影響により、LNGや石炭等の輸入価格が高騰し、電気料金を上昇させる要因になっておりました。

 今後、DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、質と価格の両面で安定した電力の供給を実現していくことが重要というのは御指摘のとおりでございます。

 このため、特定の電源や燃料源に過度に依存しないよう、バランスの取れた電源構成を目指しつつ、燃料価格の影響を受けにくい再エネや原子力を最大限活用するなど、エネルギーコストの上昇に強い経済構造への転換を進めてまいりたいと考えてございます。

平岩委員 時間となりましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

工藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.