衆議院

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第15号 令和6年5月21日(火曜日)

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令和六年五月二十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 長坂 康正君

   理事 あかま二郎君 理事 泉田 裕彦君

   理事 小林 茂樹君 理事 武井 俊輔君

   理事 城井  崇君 理事 白石 洋一君

   理事 三木 圭恵君 理事 國重  徹君

      青山 周平君    畦元 将吾君

      石橋林太郎君    石原 正敬君

      尾崎 正直君    大西 英男君

      菅家 一郎君    木村 次郎君

      小林 鷹之君    小林 史明君

      小森 卓郎君    佐々木 紀君

      櫻田 義孝君    田中 英之君

      高木  啓君    谷  公一君

      谷川 とむ君    冨樫 博之君

      土井  亨君    中曽根康隆君

      中根 一幸君    中村 裕之君

      西野 太亮君    藤井比早之君

      武藤 容治君    森 由起子君

      柳本  顕君    山本 左近君

      吉田 真次君    石川 香織君

      枝野 幸男君    小宮山泰子君

      神津たけし君    伴野  豊君

      馬淵 澄夫君    谷田川 元君

      赤木 正幸君    漆間 譲司君

      高橋 英明君    伊藤  渉君

      日下 正喜君    高橋千鶴子君

      古川 元久君    福島 伸享君

      たがや 亮君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    石橋林太郎君

   国土交通大臣政務官    尾崎 正直君

   参考人

   (一般社団法人建設産業専門団体連合会会長)    岩田 正吾君

   参考人

   (東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授) 堀田 昌英君

   参考人

   (全国建設労働組合総連合書記長)         勝野 圭司君

   参考人

   (上智大学法学部教授)  楠  茂樹君

   国土交通委員会専門員   國廣 勇人君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     西野 太亮君

  金子 俊平君     中曽根康隆君

  小島 敏文君     吉田 真次君

  高木  啓君     木村 次郎君

  古川  康君     森 由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     高木  啓君

  中曽根康隆君     畦元 将吾君

  西野 太亮君     石橋林太郎君

  森 由起子君     石原 正敬君

  吉田 真次君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     山本 左近君

  畦元 将吾君     金子 俊平君

  石原 正敬君     柳本  顕君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     古川  康君

  山本 左近君     冨樫 博之君

同日

 辞任         補欠選任

  冨樫 博之君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     小島 敏文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

長坂委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人建設産業専門団体連合会会長岩田正吾君、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授堀田昌英君、全国建設労働組合総連合書記長勝野圭司君及び上智大学法学部教授楠茂樹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、岩田参考人、堀田参考人、勝野参考人、楠参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず岩田参考人、お願いいたします。

岩田参考人 よろしくお願いいたします。

 この度は、発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

 我々、建設産業専門団体連合会、以降、建専連は、建設業における専門工事業団体の連合会組織であり、全国三十四団体、五万三千会員を有する、建設現場における、主に下請となる業種の連合体組織であります。夏には全国を回り、ブロックごとに組織されている各地区建専連とともに地方整備局などとの意見交換会を行っており、地域の抱える問題とも向き合ってまいりました。また、これまでに、民間発注者の方々や役所の方々を始め、いろいろなお立場の方とお話をさせていただきました。

 そのことを踏まえて、本日、建設業界の抱えてきた問題を、職人目線で、会を代表し、お話しさせていただきます。

 初めに、日本の専門工事業界の実態について御説明いたします。

 まず、欧米諸国と比較すると、日本の技能者の賃金は大幅に低く、日本国内においても、全産業平均値より、年収では七十七万安く、労働時間では六十八時間多く働いている状況にあります。若い担い手も、両親や先生と相談し、他産業や地場の元請と比較したときに、処遇が悪い専門工事企業に目を向けなくなっており、加速している技能者の高齢化と併せて、技能者数の減少に歯止めがかからない状況となっています。さらに、このことは、円安の傾向もあり、外国人労働者を確保していく上でも、苦戦する状況に進むのではと危惧しております。

 なぜ専門工事企業が処遇改善に踏み切れないのか。その大きな要因は、労務費を含む請負価格が安定しないことにあります。

 建設業は、これまで、発注者と元請はもとより、元請と下請契約にあっても、総額一式契約により、決まった金額、工期で収めていくことを正として進めてきました。そのことにより、受注者側である元請、下請が協力し、知恵を絞って、何とかその金額で収めようと努力し、新たな工法、技術を開発し、現場の生産性を高めてきたのは周知の事実であります。

 ですので、総額一式契約そのものを否定するわけではありませんが、仕事の量が減ったときに、労務費を含んでいるにもかかわらず、その内訳を気にしていられなくなり、総額のみにこだわり、黙っていれば仕事が欲しいだろうから下げてくるだろう、また、下げなければ仕事がもらえないというマインドが建設業界上位から下請まで広がり、その契約行為を進めてきた結果、必要な労務費をも削って、安値競争の原資に組み込まれるようになりました。

 それがいわゆるダンピングです。ダンピングは元請だけではありません。下請にもあるのです。

 これまで現場で知恵を出して高めてきた生産性も、そのコストに当然のように組み込まれ、競争するわけですから、新たな知恵が出ない限り赤字になるわけです。そうならないように、直用工には固定給を抑えて、出せるときには賞与で調整したり、重層下請構造へと進む体質になってしまいました。

 これが請負価格の変動に対し我々の知恵であり、生き残るための方策として長年にわたりしみついてきました。このような状態なので、先を見込んで賃上げした企業ほど調整弁に余裕がなくなり、倒産の危機に直面することになります。

 このような状況の中で、働いた日数の給与であること、給与が安く不安定であること、通勤時間は長いのに賃金に反映されないこと、休暇が少ないことなど、技能者の現状は、まさに国がやろうとしている担い手確保のための賃上げや働き方改革の妨げになっているわけです。

 このような現状を長きにわたり国交省とも協議を重ね、持続可能な建設業に向けた環境整備検討会の場で先生方に議論をしていただき、その提言の下、中央建設業審議会で標準労務費を勧告していただく方向となりました。標準労務費という処遇改善に必要な相場観を示し、不当に低い請負代金による請負契約の禁止と連動した取組に対し、画期的で、まさに今必要な法律であると業界を挙げて大変期待をしているところであります。

 このような動きに対し、もらえないから払えないと言ってきた我々建専連会員企業も、もらえたらしっかり払おうやないかということを申し合わせました。

 そして、CCUSレベルごとの年収を公表いたしました。その目的は、何年働いてこの資格を取れば最低でも年収幾らもらえるんだというキャリアパスを見える化することでした。労務比率の高い職種を中心に、八職種十団体で先行設定いたしました。このことにより、CCUSは入らされていた資格から入りたい資格へと変わり、加入が加速すると信じております。

 技能者の賃金を下支えする仕組みは、欧米にはそれぞれの国に応じたものが構築されていますが、日本では、これまで述べた理由により、できませんでした。しかし、今回の建設業法改正により、可能となる兆しが見えてくるわけです。また、標準労務費の制度が導入されることで、政府からの賃上げ要請に対応する環境が整備されることになります。払わなければ人は来ない。払うための準備は進んできております。是非とも早期の本制度の実現をお願い申し上げます。

 また、これらの取組を、より実効性を持たせるためのお願いを申し上げます。

 一つ目は、公共工事はもとより、民間工事においても標準労務費がしっかりと担保されるよう、チェック体制を強固な形に整備していただくことをお願い申し上げます。

 二つ目は、これらの取組には民間発注者からの理解が最も重要です。これまで民間発注者の方々は元下間の問題であると言ってこられましたが、中建審において、民間発注者委員の方も、労務費の価格転嫁はやむなしとおっしゃられました。大変感謝いたしております。

 しかし、民間発注者の方々も販売価格への転嫁に苦慮されており、既に契約している工事については、その契約額の範囲で何とかやってくれという状態にあると聞いております。これでは賃上げに数年かかってしまいます。

 我々も、元請団体と協力し、しっかりと説明し、理解していただけるよう汗をかいてまいる所存ですが、国からも、数年後では賃上げ要請の対応が遅れる、標準労務費の創設はもとより、サプライチェーンが一体となって、今、価格を上げ、賃金を上げるんだというようなマインドとなるような働きかけをお願い申し上げます。その上で、建設業法、独禁法、下請法、労働法など関係する法律を総動員して、不適切な行為には関係省庁が連携して対処していただくことをお願い申し上げます。

 発注者の方々に労務費の蛇口を開いていただかないことには、原資となる水は流れてきません。是非ともお願い申し上げます。

 三つ目ですが、その上で、建設Gメンの立入調査などの指導時に、建設現場の所長、工事長、契約窓口となる方々に対し、プライスを評価する価格のみの競争から、現場での働き方を確認してもらうなど、持続可能性を考え、技能者を雇用、育成する優秀な企業への評価、すなわち、質の競争へとマインドを変えていくような指導内容としていただくことも併せてお願い申し上げます。

 我々も、建設業法を身近なものとし、コピーを持って現場と対峙し、交渉の盾として生かして、労務費を競争の原資にしないようお願いしてまいる所存でございます。

 以上三点、お願い申し上げます。

 また、これらの政策が実現した暁には、まずは全産業平均の処遇改善を目指し、これから若い方々に選ばれるために欧米並みの賃金を目指し、技能者が安定した未来予想図の描ける業界へ、また、働いてほしい業界から働きたいと思える業界へ変われるよう、一層努力してまいります。

 最後になりますが、国の賃上げの取組に強く賛同し、深く感謝を申し上げ、また、世界に負けない日本づくりをお願い申し上げ、建専連の意見とさせていただきます。

 貴重なお時間をありがとうございました。(拍手)

長坂委員長 ありがとうございました。

 次に、堀田参考人、お願いいたします。

堀田参考人 おはようございます。東京大学の堀田でございます。

 本日は、参考人として発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私は、土木分野の建設マネジメントを専門といたしております。これまで、本法律案にも関連しております、国土交通省の持続可能な建設業に向けた環境整備検討会並びに中央建設業審議会の委員として、これまでの議論に参画してまいりました。そちらでの議論、それから、これまでの建設マネジメント分野の知見を踏まえまして、本法律案について意見を申し述べさせていただきます。

 まず初めに、今回の法律案を一言で申し上げますと、建設市場のルールに関する大きな構造転換である、このように捉えております。以下、個別の点につきましては、法案の概要に沿いまして二点、労働者の処遇改善、そして働き方改革と生産性向上について意見を申し上げます。

 まず第一に、労働者の処遇改善についてでございます。

 我が国の建設市場においては、労働者の賃金下支えの仕組みが極めて脆弱であった。このことが、建設技能者を始めとする労働者の賃金水準の停滞を招き、現在の担い手確保の問題につながっているということは、様々な事実をもって言えると思います。

 しかし、そもそも、例えば資材価格が高騰して工事費用が上昇したときに、その分を労務費へのしわ寄せによって調整しようといったことが行われてはいけないわけです。企業が受注競争をする際に、自社の労務単価を削って、それを競争の原資とするようなことがあってはいけない。それができてしまったら、それを皆がやらざるを得ませんので、全体の賃金水準が下がってしまいます。しかし、そんなことができてしまうようなルールを持った市場に、多くの若い方が入ってくださらないわけでございます。

 確かに、賃金水準は市場において労働需給に基づき決定されるべきというのが原則ではありますけれども、他の資本主義経済の国々においても、社会のエッセンシャルワーカーである建設労働者が全く賃金下支えの仕組みを持っていないかといいますと、まさに逆なわけでございます。米国、フランス等、多くの国で賃金下支えの仕組みが整備されております。スイスについては、法案の参考資料で、私どもの過去の調査結果も御紹介いただいております。

 スイスは、ドイツと同じように、マイスター、熟練技能者が社会から高く評価、尊敬され、建設分野も多くの若者が担い手になることを望んで選んでいる、そういう国です。ここでは、建設会社は、全国建設労働協約に基づく賃金以上の支払いが義務づけられております。その水準は、地域ですとか職業資格の有無、経験によって定められておりまして、熟練度が上がっていくに従って高い賃金が得られる、そういう仕組みがございます。公共工事、民間工事を問わず、この水準を下回る労働契約を結ぶことは事実上できません。また、専門の監査機関があり、労働者の労働条件等が技能労働者一人一人のレベルで遵守されているかどうか、きちんと確認をしています。公共工事においては、労働条件等が遵守されていると証明してもらえなければ、そもそも入札に参加することすらできません。

 先ほど、本法律案は市場のルールの大きな構造転換であると申し上げましたけれども、賃金下支えの仕組みの導入がどうして産業構造の転換につながるのかという点でございます。

 スイスでもそうであるように、労務単価を各企業の判断で削ることができないような市場では、建設企業は無理な価格で受注するということをしなくなります。見積りの実効性が高まり、価格は下から決まっていく。すなわち、下請企業から元請企業へ、元請企業から発注者へ向けて適正に積み上がることによって決まっていきます。さらに、企業が労務単価で競争ができなければ、あとは生産性で競うしかなくなります。したがいまして、生産性向上のインセンティブが自然に生まれることにもなります。

 このような理由で、今回、法律案で標準労務費という新たな仕組みが提案されていることは、非常に意義の大きいことであるというふうに考えます。もちろん、新しい仕組みを有効なものとしていくためには、今後検討を続ける必要のある事項も数多くあると思います。

 そのうちの一つをこの場で指摘させていただきたいと思いますけれども、中央建設業審議会基本問題小委員会で標準労務費の基本的な考え方を提案しておりますけれども、その中に、技能労働者の能力、資格や経験等に応じた賃金支払いの実現、これを目指して検討すべきと書かれております。

 先ほど御紹介したようなスイスの能力、資格に応じた賃金水準ですとか、あるいは米国における非常に細かい賃金水準のカテゴリー分けですとか、幾つか仕組みが異なる点があるとはいえ、参考になる他国の事例が数多くあるのではないかというふうに考える次第です。標準労務費という仕組みが、我が国の制度、文化、そして現場の皆様の生の声を十分に反映したものになることを期待してございます。

 続きまして、第二に、働き方改革と生産性向上についてでございます。

 まず、建設業において、従前、課題とされてきました長時間労働について、著しく短い工期による契約締結、いわゆる工期ダンピングについては、これまでの発注者、注文者に対する規制のみならず、受注者にもその規制範囲を広げるということでございまして、その内容に賛同いたします。

 工期の適正な設定が重要であるという指摘は多くなされてきましたけれども、これまでは、ともすれば、建設現場における労働者の労働時間管理については、まずは元請企業が最大の責任を有するという考え方が高じて、元請企業の取組のみに期待する、そういった風潮が当初はあったようにも感じられます。

 しかしながら、二〇二四年四月の上限規制の適用が近づくにつれ、これは個社の取組、とりわけ受注者の取組だけでは解決できる問題ではない、受発注者を含めた全ての関係主体が連携しなければ解決しないのだという理解が共有されてまいりました。とりわけ工期は、受発注者が対等かつ双務的な関係に基づいて合意すべき事項であって、両者の協力は必要不可欠であると考えます。

 生産性向上への取組につきましては、事業を行う際の様々な段階、すなわち、調査設計、入札契約、施工、維持管理といった段階の間でより緊密な連携を図ることによって、手戻りを少なくして、結果として事業全体で生産性向上が実現する、そういったシナリオを描く必要があると考えます。とりわけ、国土交通省直轄工事におけるBIM、CIM原則適用など、事業や工事の様々なデータあるいはその情報を一気通貫で共有するための枠組み、プラットフォームが重要ではないかと思っております。例えば、維持管理段階で構造物に変状が見られたときに、施工時やあるいはその設計のときに遡って原因を分析する、そして、その結果をもって迅速、適切な修繕につなげていくといったことを一つの環境、プラットフォームで行えるようにする必要があると思います。

 今般の法改正では、まさにこのような情報通信技術を活用することによって、監理技術者、主任技術者が複数の近接する現場に配置されることを可能にする内容が含まれております。実際の運用に当たっては、適正な施工確保が行われるよう、しっかりと検証が行われる必要があると考えますけれども、これからの来るべき建設業を実現する、その仕組みの一端を担うのではないかと期待しております。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

長坂委員長 ありがとうございました。

 次に、勝野参考人、お願いいたします。

勝野参考人 全国建設労働組合総連合、全建総連で書記長を務めております勝野と申します。

 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私どもは、建設技能者、一人親方、事業主等を組織している団体であります。四十七都道府県にある五十三の加盟組合で構成をされ、全国で約六十一万の組合員が加入をしている産業別の労働組合であります。

 組合員の主な従事先は、大きく三つに分類をされております。一つは、個人の施主からじかに仕事を請け負う町場と言われる現場、もう一つは、ビルやマンション建築や公共土木工事などゼネコン等が元請となっている大規模現場、もう一つは、住宅企業が元請となる現場でありまして、職種は、建築大工を始めとして建設業に従事する方々が幅広く加入をしている団体であります。

 今般の建設業法等の改正につきましては、技能者の処遇改善、そして建設業の将来を支える担い手確保や育成に資するものであり、持続可能な建設業の実現に向けて極めて重要である、そのように認識をし、期待をしているところであります。

 こうしたことから、本日は、この法改正に賛成の立場で発言をさせていただきたいと思います。

 今回の建設業法の改正案では、労働者の処遇改善、四月から適用された建設業への時間外労働の上限規制、資材価格高騰などに適切に対応するために、適正な請負代金、工期が確保された見積り、請負契約等が規定される内容となっております。

 労働者の処遇確保を建設業者に努力義務化し、中央建設業審議会が労務費の基準として標準労務費を作成、勧告、著しく低い労務費、著しく短い工期による見積りや見積り依頼の禁止、原価割れ契約の禁止を受発注者の双方に導入することで、適切な労務費等の確保や賃金行き渡りを担保するとしています。公共、民間工事のいずれにも適用され、下請契約も含めて対象となり、新しい取引のルールが導入をされることになります。

 工事請負契約を規制する建設業法の中で、公共工事だけでなく民間工事を含めてルール化が図られることは、賃金の原資となる労務費の削減によるダンピングを防止し、適正な現場従事者の賃金、単価を確保するために有用であるというふうに認識をしております。

 また、新たに、公正な評価に基づく適正な賃金の支払い、労働者の適切な処遇を確保との、労働者の賃金支払い、処遇確保についても明文化がされております。

 発注者保護から制定された建設業法に労働者の賃金支払い、処遇確保等について明文化されたことは、建設業法の体系の中で労働政策、社会政策等の実現を図り、建設工事の適正な施工、建設業の健全な発展を目指す具体的施策として高く評価できるものと考えております。

 そして、建設業法に明文化をされております労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価については、建設業共通の制度インフラとして二〇一九年から官民一体となって取り組んでおります建設キャリアアップシステムの更なる活用に向けた具体的な方向性も示されたものと理解をしているところであります。

 一方、こうした法改正が行われた場合であっても、その実効性が確保されなければ、十分な効果は得られないと考えております。

 著しく低い労務費の基準となる標準労務費の作成につきましては、早期に相当程度の工種、職種を対象とする必要があり、労務単価の水準については、働き方改革関連法への対応を含め、週休二日を基準として、現場従事者の処遇改善が十分に図ることのできる金額設定が必要であると認識をしております。

 著しく低い労務費等による契約禁止の実効性確保につきましては、重層下請構造となっている建設業の元請、下請関係では、受注側である下請企業は、取引関係上、非常に弱い立場に置かれていることを踏まえ、下請、現場従事者に不利益やしわ寄せがされないように、運営面において特段の配慮が必要と考えます。

 工事発注者への周知、理解等につきましては、国土交通大臣等の許可行政庁が違反発注者に対して勧告、発注者名の公表等を行えるようになりますので、実効性が伴う形での運用が求められると考えます。

 既に、公共工事におきましては、入契法、品確法等で担い手確保、処遇改善の取組を進められており、今回の入契法改正案では、その取組を更に加速化、牽引する内容であると認識をしておりますが、国だけでなく、地方公共団体においても取組等が徹底されることが重要であります。

 今回の建設業法の改正により、民間工事を含め、建設工事の請負契約における新しいルール化が図られ、標準労務費、適正な工期等が現場施工を担う下請、現場従事者まで確保されることは、現場従事者の賃金単価の引上げ、処遇の改善、担い手確保、育成、働き方改革対応に必要な施策として非常に期待をしているところであり、法令に基づき、着実かつ実効ある運用ができるかが極めて重要なポイントであると認識をしております。

 建設業は、この間、処遇などにおいて他産業の後塵を拝していた部分があると承知をしておりますが、今回の法改正を契機として持続可能な建設業が実現するよう、私どもとしましても、引き続き、先生方の御支援を賜りながら、国土交通省や業界団体とも連携を密に、組織の総力を挙げて取り組んでまいりたい、そのように考えているところであります。

 最後に、この改正法案が早期に成立し、施行していただくことをお願い申し上げて、発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

長坂委員長 ありがとうございました。

 次に、楠参考人、お願いいたします。

楠参考人 よろしくお願いいたします。上智大学の楠でございます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 以下、一法律学者として、所見を申し上げます。

 建設請負契約は、一つの工事を取っても比較的中長期の契約になりますし、下請関係については、契約が長期にわたり繰り返される継続的な取引関係が一般的と言えます。

 中長期的な取引関係において重要な視点は、パートナーシップの構築です。今回の建設業法の改正は、令和三年十二月に政府が公表したパートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージが重要な背景となりました。そして、これに経済界が呼応する形で展開されたパートナーシップ構築宣言、そして、これに向けた一連の取組によって経済界のコンセンサスが形成されたと言えるでしょう。

 こうした政策的なトレンドの中で、令和四年の八月、国土交通省に、私が座長を務めた持続可能な建設業に向けた環境整備検討会が立ち上げられました。同検討会の取りまとめが公表されたのが令和五年三月。これを受けて、中央建設業審議会と社会資本整備審議会とが共同で開催した基本問題小委員会で関連するルールの見直し等がなされ、その取りまとめを受けて、政府法案が作成されるに至りました。

 建設業法の改正案の内容は多岐にわたりますが、労働者の処遇改善、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革と生産性向上の三つの軸で構成されていますので、これらそれぞれについて所見を申し上げます。

 まず、労働者の処遇改善についてですが、どの産業にも共通しますが、とりわけ建設業においては、現場の担い手、働き手の処遇の改善が魅力ある業界の形成に不可欠です。私たちの検討会においても、持続可能な建設業の発展という視点から、単に目先の効率性のみに拘泥せず、長期的視点からその適正な在り方を契約や労務という観点から検討してまいりました。厳しい工期の設定や天候リスクの影響等で労働環境が悪化することも多々あり、とりわけ下請取引においては、交渉力の格差から、需給バランスの変化によるしわ寄せを受けやすい一方で、恩恵を受けにくいという構造的な問題が存在します。この構造こそが魅力ある建設業の形成の阻害要因であります。

 建設業は、官公需はもちろんのこと、民需であっても社会基盤形成の基幹産業です。労務環境の改善が最重要課題と考えます。そして、労務環境改善という観点からは、業者としての下請の保護のみならず、会社内部の規律、すなわち確実な賃金の支払いもまた重要になってきます。

 下請関係については独禁法の特例法である下請代金支払遅延等防止法が射程となりますが、建設請負契約については建設業法が専属的にこれを扱います。また、建設業法は業法ですので、その中で、受発注者双方に対して、建設工事の完成を請け負う業務たる建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的に、様々な政策的手法を盛り込むことができます。

 こういった点を踏まえて、今回の改正法案は、建設業者に対する労働者の処遇確保の努力義務化、国による当該処遇確保に係る取組状況の調査、公表、労務費等の確保と行き渡りのための中央建設業審議会による労務費の基準の作成、勧告、受注者における不当に低い請負代金による契約締結の禁止といった内容のものであり、いずれも建設業法の趣旨に沿った、また時宜にかなった改正であると考えます。

 一点注意したいのは、不当に低い請負代金による契約締結の禁止ですが、これは独禁法の不当廉売規制と異なり、賃金の行き渡りの観点から、政策的規制であるということです。言い換えれば、特定の業者が独占的地位を目指して廉売を行うことを問題にする独禁法とは異なり、労務環境軽視につながる廉売、共倒れ的な廉売を防ぐことに狙いがあるものです。

 次に、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止でありますが、令和三年の施策パッケージでは、中小企業等が賃上げの原資を確保できるよう、取引事業者の全体のパートナーシップにより、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できることは重要であるとの認識が示されています。その後も資材や労務費の高騰は深刻で、その影響が中小企業に深刻な影響を与えており、その一つの象徴的な例が建設業と言えます。

 費用高騰局面においては、取引事業者間に力の格差が大きいと、中小企業がしわ寄せを受けます。受注者が中小企業であった場合には、発注者は契約を盾に費用負担を拒むと、資材高騰のあおりをもろにかぶることになります。発注者が中小企業の場合、受注者側から費用負担を事後に押しつけられる危険があります。一般論で言えば、請負契約である以上、当初の契約条件どおりでの履行をすることが契約上求められますが、どうしても弱い立場の業者の負担に帰着することになる傾向があります。

 このようなゆがみに対して、今触れました施策パッケージ公表後、独禁法を所管する公取委は顕著な動きを見せてきました。こうした資材負担の拒絶、交渉それ自体の拒絶に対して、独禁法上の不公正な取引方法の一類型である優越的地位濫用規制違反のおそれがあることを指摘し、その観点からも、各種調査結果の公表や、問題のある事業者名の公表など、行政処分に至らない段階での様々なアドボカシーと呼ばれる各種の唱道活動を展開してきました。対象となった事業者や業界は、各種ステークホルダーからの厳しい評価も伴い、コンプライアンス活動をこれまで以上に積極的、真剣に取り組むことを求められることになります。この効果は、これまでのところ、大きな成果を上げているのではないでしょうか。

 建設業法は、その十八条で「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。」と定めており、その後に発注者の地位の不当な利用に係る規制が置かれていることからも分かるとおり、独禁法の優越的地位濫用規制とその趣旨においてパラレルに考えることができますが、法制史的に言えば、一九五三年に独占禁止法が改正され、そこで不公正な競争方法が不公正な取引方法と改められ、優越的地位濫用規制が導入されたわけでありますが、それは一九四九年に制定された建設業法の関係する規定をモチーフにしたという見方もできます。

 これら二つの法律は、互いに成長、進化する関係にあると言え、こうした公取委の動きに呼応する形で建設業法も現代的課題に対処すべきであると考えます。

 こうした観点から、請負代金や工期に影響を及ぼす事象がある場合の受注者から注文者に通知することの義務化、資材価格変動時における請負代金等の変更方法の契約書の記載事項としての明確化、そして、注文者に対しての、当該リスク発生時の、誠実に協議に応ずることの努力義務化といった内容の、今回提出された建設業法改正法案に賛成いたします。

 そして、三つ目の軸である働き方改革と生産性向上について所見を申し上げます。

 そのための重要な視点として、従来はワーク・ライフ・バランスのような労働者の生活環境の改善と生産性向上とは別の問題として議論されがちだったと思いますが、この二つは非常に密接にリンクしているのではないかと考えます。

 例えば、睡眠時間の確保や適切なインターバルの組み込みは集中力の低下による事故発生のリスクの低下を実現しますし、労働効率の向上にも資するという考え方はアカデミックにも普及しているものだと思います。

 意見としては、報酬の確保のためにできるだけ労働時間を短期に集中させたいという声もあるようですが、労働者個人のインセンティブと社会全体への影響を切り離して考える必要もあろうかと思います。完全に自由市場に任せてしまうとトータルで大きな弊害が生じてしまうかもしれない、そういった観点から、労働に関わる諸ルールが設けられる必要があります。

 建設業においては、契約の自由に労働環境の在り方を全て委ねてしまうことは、かえって労働者を苦しめることにもなりかねません。もちろん、その在り方の詳細は個別の議論に委ねなければなりませんが、少なくとも、今回の改正法案にあります長時間労働を抑制するための受注者における著しく短い工期による契約締結の禁止については、安全性等労働環境の観点からも、社会基盤整備の観点からも、妥当な改正内容ではないかと思います。

 なお、生産性向上の観点からは、ICT技術の活用に関わる現場管理の合理化は当然の要請ですので、併せて提案されております、ICT活用に関連する一連の改正についても、時代の要請であり、その機能面からいっても妥当なものだと考えます。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

長坂委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

長坂委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高木啓君。

高木(啓)委員 自由民主党の高木啓でございます。

 本日は、業法の改正に当たって、四人の参考人の先生方から貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。

 先生方のお話を聞いておりまして、まず、今回の法改正に当たっては、皆さん、労務費、そして人に対する手当、そうしたものが、ある意味でしっかり盛り込まれて、そして一歩前進なんだという意味で、おおむね好意的にお受け止めをいただいているということが分かりまして、私も大変心強く思った次第であります。

 今までも、建設業の労務費の問題あるいは業界全体としての様々な課題というのは、私たちも様々な場面で指摘をしてきたんですが、なかなか全体の構造が非常に複雑であるということ、あるいはまた資材の問題や労働単価というものについては、その時々の社会情勢あるいは経済情勢というのもありますので、まさに、特に公共工事における入札の問題などについては、非常に、生き物のように常に変わっているというふうに思っていたので、今回、法改正の中で、特に労務費に焦点を当てた改正、そして働く者をしっかり守っていくんだということは、まさに今、時宜にかなっていることというふうに私たちは考えているわけであります。

 そこで、まず岩田参考人に御質問をさせていただきたいと思うんですが、標準労務単価の設定というのが極めて大事だというお話がございました。他の先生方からも、労務費というのは価格競争の対象にすべきではないんだと。これはそのとおりだというふうに思います。ですから、労務費を削って全体の帳尻を合わせていく、こういうやり方は本当にやめるべきなんだろう、こういう考え方の中から、標準労務単価の設定、これは本当に大事なことだというふうに思います。最終的に働く者にしわ寄せが行くような制度であってはいけないんだということに対して、私も本当に全面的に賛成をしたいと思うんです。

 ただ、今まで、過去三十年ぐらい、我が国は非常に長期のデフレに悩んでいたわけでありまして、マクロ経済的には、長期のデフレが労務費を抑制してきた、あるいは賃金の上昇を抑えてきたという側面があったというふうに思うんです。だから、我が国は一日も早くデフレ脱却を果たさなければいけない。そういう意味では、建設業界が人手不足の今こそ、私は、一つのモデルとして、業界内のやはり高圧経済をつくっていかなきゃいけないんだ、こういうふうに思うわけであります。

 そこで、まず最初に、今回の法改正による公共工事発注のルールや仕組みの改善に対して、長期的な視点も含めて、この先、最も期待することは何なのかということをまず伺いたいと思います。

 そしてもう一つ、済みません、岩田参考人に併せてお伺いするんですが、労務単価を上げていくためにも、私は、技術者の資格制度というものをより充実すべきだというふうに常々思っておりました。国交省は、国土交通省登録資格という制度で積極的に民間資格を活用するということをしているんですが、しかし、それでもまだ十分ではないと思います。

 したがって、例えば、一例なんですけれども、いわゆる建設工事をする最初の場面で、墨出しさん、建築測量技術者、あるいは、造園業に属するような街路樹剪定士という業界内資格がありますが、あるいは道路工事に必須の舗装施工管理技術者などというのは、私は、本来、国家資格であるべきだというふうに思うんですが、資格の充実についてどのように考えられるのか、この二つのことをお伺いさせていただきたいと思います。

岩田参考人 最も期待すること、長期的な視点でという御質問なんですが、やはり価格の安定にあります。

 価格が安定しないことには、やはり我々、労務色が強い職種は、請負のほとんどが労務賃金になっていますので、競争という、後でまた出てこようかと思うんですが、著しくだとか不当という基準がどうなるんだとか出てくると思うんですが、私自身は、一〇〇%だと思うんです。労務費を見積りして、それを計上した金額、ここから削るということになりますと、設計労務単価にしても、一つの調査価格をまた削っていくことになるということになりますので、見積りした金額、それで競っていく。

 それで、中身はどうするかというと、やはり生産性で競っていくということが私は正しいルールじゃないかなと思いますので、まず価格を安定させて、その上で生産性を競っていく。

 また、価格が安定した暁には、発注者の方も、より多く賃金を払っているんだというところに出したいと思いますので、そういうような処遇の競争といいますか、お金が安定した暁に、処遇をよくしているところに発注をするというような、そういう仕組みであってほしいなというふうに思います。

 それと、資格についてなんですけれども、資格、非常に私も、道路、造園、細かいところまでは把握はしていないのですが、資格を取る上で問題であるのは、私は、資格制度というのは、今、マーケットが全て担っているといいますか、財源のないまま、教育ですとか試験とかを委託としてやっているわけですけれども、この資格ということに対して教育、財源を持ってやはりやるべきだ。

 ヨーロッパ、アメリカの視察も私も行ってきました。行ってきて、やはり何十億という財源を持って、徒弟制度であるとかユニオンであるとか、教育をしているわけですね。それは財源があるからできて、日本を見ますと、その教育機関というものが非常に少ない。富士の教育センターというものがありますけれども、それを建てるときにも、業界総出でやらないといけない。地域のサテライトには、近くにはそういうものがなかなか少ない。それは、サテライトとして機能していても、自前でやっているわけですね。

 そういうところへ財源を投下していっていただいて、その上で資格を強化していくということが重要ではないかなというふうに思います。

 ちょっと、お答えになったかどうか分からないんですが、以上です。

高木(啓)委員 ありがとうございました。

 続きまして、法律の専門家として楠参考人に伺いたいんですが、中央建設業審議会でも議論になっていると思うんですけれども、今回の法改正で、適切な価格転嫁の対策の一つとして、スライド条項の設定と適切な運用というものが表明をされているわけであります。

 スライド条項の受注者負担率というのは従前から議論になっていたと思うんですが、一%とか一・五%とか、このことについて、この受注者負担率の在り方というか、これはあるべきなのか、ない方がいいのかということでいえば、業界の方からすれば、ない方がいいと言うに決まっているんですけれども、このことに対して楠参考人はどのようにお考えになるかということがまず第一。

 二つ目は、スライドの価格転嫁に対して、これはスライドも、応札した際の落札率というものがスライドであっても掛けられるわけですね。ですから、スライドで価格転嫁をしていこうというときに、最後まで最初の落札率が掛かっていくということが適切なのかどうか。そのことについて、二つお伺いさせていただきたいと思います。

楠参考人 どうもありがとうございました。

 最初の質問に関しまして、負担というものを受注者がすべきかどうかなんですが、これは元々の請負契約という発想からすれば、当然受注者が負担するということですが、これは公共という前提であれば、当然その発注者が責任を持ってその公共工事を完成させるということになりますので、発注者負担が妥当だというふうに考えています。ですので、その一%とか二%が妥当かというのはなかなか難しいところでありますが、少なくとも、原則発注者の方が負担することが公共においては妥当だと考えております。

 二番目に関しましては、スライド条項については、これは落札率を掛けるべきなのかということですが、私は掛けるべきでないと考えております。

 以上です。

高木(啓)委員 明確な御答弁を本当にありがとうございました。

 引き続いて、堀田参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 建設業の労働生産性を上げるために、先生、かつてのインタビューか、たしか記事で読ませていただいたんですが、書類作成時間の削減とか書類作成工期の新設というようなお話をされておりまして、私は非常に納得感のあるお話だなと思いました。これはDX以前に、もう書類を減らしてくれというのは、皆さんの、日本全国の多分願いだというふうに思っていますので、非常に意を強くしたところであります。

 堀田参考人、さらに、社会資本整備、維持管理に関する中長期計画策定の必要性ということも御提言をされておりまして、私はこれは非常に大事な御提言だというふうに思います。私は、なぜこうした中長期の見通しが建設業界やあるいは社会全体にとって必要なのかということを先生のお口から、この国土交通委員会の場で是非述べていただけないかなと。これは多分、いわゆる公共工事を含めて、予算の当初予算化ということも含めて、私はこの中長期化というふうにおっしゃられたんだと思うんですけれども、その点も含めて先生の御意見を聞かせていただきたいと思います。

堀田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず初めに、労働生産性についてですけれども、書類作成に関わるいろいろなその手間、これを受発注者共同で連携することによって減らすことができないか。これは様々なところで既に指摘がされていまして、先行的な取組として、地方公共団体ですとか、あるいは直轄工事においても、こういったことを工期に算定すべきである、当然かかる時間であるというようなことの取組が進んできていまして、これは様々なガイドライン等にも反映されつつありますので、今後も、この取組が進んでいくことと思います。全体の生産性向上に非常に資するものだというふうに考えます。

 一言つけ加えることができるとすれば、書類が増えるのはどうしてなのか。そもそもの理由として、様々な御指摘がされていますけれども、例えば、書類が、その内容の確度が低ければ、それを担保するために、また様々な付加的な書類を用意しなくてはいけない。そういったことが言われています。

 いろいろな情報を、きちんと確度よく、また、コミュニケーションを通じて関係主体でその情報を早期に共有することができるとすれば、そもそも要らなくなる書類もあるのではないか、そういった議論も、今回の御指摘いただいた提言の中では議論をさせていただいたところです。

 それから二つ目の、中長期計画についてでございますけれども、こちらも、社会資本整備、社会基盤整備のサイクルというのは非常に長期にわたるということでございます。長期にわたってインフラに対してどういうニーズがあるか、これをしっかりと社会で合意をして、それに向けて準備をする。この準備をするにも非常に長い時間がかかる。そうすれば、計画も、きちんと早期にそれを立てておかなくてはいけない。計画に基づいて、それが、ひとりでに計画ができるわけではありませんので、その計画を実現するための建設業における体制、これを整えるためにはどうすればいいか。これも、やはり非常に長い時間がかかるということでございますので、中長期計画、これを持つのは、インフラのユーザー側にとっても、あるいはそれを供給する側にとっても、非常に重要なことかなというふうに考えてございます。

 以上です。

高木(啓)委員 ありがとうございました。

 最後に、勝野参考人に伺いたいんですが、今回、処遇改善に対して、標準労務費の勧告がなされる。これは、かねてから全建総連さんがおっしゃられていた公契約条例とか、あるいは公契約法の趣旨というか考え方に、ある意味合致をするんだろうというふうに思っているんです。

 私は、その中で、やはり入口のところでそういうルールが作られたとすれば、出口面で、それがきちんと行われているのかどうかという、その検査とか審査とかというものも必要なんだろうというふうに思っていて、社会保険労務士さんたちは、労働条件とか、あるいは雇用も含めて、労働法規の遵守も含めてですけれども、そういうものを審査、検査をする労働条件審査という制度を持たれています。

 出口面で、公共工事において、全部とは言わないですけれども、そういう幾つかの工事をモデル的に、社会保険労務士さんが持っていらっしゃるこういう制度、労働条件審査のような制度で、最後、検査をしていくというような考え方もあると思うんですが、その点について御意見があったら、是非聞かせていただきたいと思います。

勝野参考人 ありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、発注者が見積もった労務費が現場で働く従事者にそのまま行き渡る、この考え方は、私ども全建総連がかねてより取り組んできた公契約条例、公契約法の精神を体現をしている中身だというふうに理解をしております。そうした点で、今回の業法の改正については、大変大きな評価をさせていただいているところであります。

 御指摘のとおり、労働条件調査等についても、これも非常に重要な御指摘だというふうに思っております。まずは、公共工事の現場でしっかりとモデルを定めていただいた上で調査をし、それを公表していく、こういう取組が私は大変重要だなというふうに思っているところであります。

 以上です。

高木(啓)委員 時間が参りましたので、これで終わります。誠にありがとうございました。

長坂委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 立憲民主党の白石洋一です。

 今日は、四人の参考人の皆様、貴重な御意見を誠にありがとうございます。そして、私から幾つか質問させていただきます。

 今回の法改正で大事なところというのは、まず、労務費に関する基準が設定されて、これに違反したらいけない。まず、ここの部分の実効性のところをどう確保していくのかというところだと思っています。

 そして、特にこの業界というのは多重下請になっています。ですから、下請の下の方に行けば行くほど弱い立場であるという構造の中で、先ほどの標準労務費を下回っていないか、これを下回っていたら禁止だ。さらにもう一つは、資材費が高騰して、契約条件を見直してほしいという、その申入れに対して、ちゃんと協議を発注者側が受け入れてくれるか、ここの部分の実効性ということもあると思うんですね。

 しかし、この実効性を確保する上で、労務費の積算のところの見積りにしても、さらには、その協議の受入れにしても、関係者しか知り得ない、非常に機微に触れる部分ですから、ここの部分、どうして、じゃ、建設Gメンが知ることになったのかというところが気になると思います。

 これを下請の業者さんが通報したということが分かってしまったら、次の仕事をくれないとか、ずっともう出入り禁止になったり、そんなこともやはり心配しないといけないというのが、弱い立場である下請の立場だというふうに察します。

 そこで、質問なんですけれども、まず勝野参考人、そしてその後、岩田参考人の方々から、順番にお伺いしたいんですけれども、この実効性の確保で、弱い立場である、その情報がどうして漏れたのか、このことによって仕打ちを、仕返しを受けないような配慮というのを、政府にどのような制度、やり方で求めるのか。例えば、匿名での通報、あるいは定期的な巡回、こういったことのやり方について、標準労務費の確保や契約条件変更の協議の受入れがちゃんとなされているか、ここのところの担保の仕方について、要望をお伺いしたいと思います。

勝野参考人 ありがとうございます。

 建設業法の中では、下請業者に対しての不利益取扱いの禁止が規定をされているわけでありますけれども、元請等に対して、その周知徹底を更に国の方でしっかりと図っていただくことがまず第一かなと思っております。

 その上で、相談窓口体制の拡充でありますとか、国による具体的な指導、迅速な指導結果の公表等をお願いをしたいと思っておりますけれども、先生御指摘のとおり、不利益の中には、これを言ったら次の仕事がやはりもらえなくなってしまうという、そういった点が一番、非常に大きな要素としてあるというふうに思っておりますので、匿名性の担保ということも私自身は非常に重要な点だというふうに理解をしているところであります。

 以上です。

岩田参考人 非常に難しい問題であるとは思うんですが、やはりこれは通報ということになろうかと思います。

 これは、今までは曖昧だったもの、通報しても、うまく協議をしてくれという形で着地点を見出していたわけですけれども、今回は法律ができる。先ほど申し上げましたように、建設業法を持っていって、こういうことなんですと。著しくだとか不当という言葉があれども、余り処置をやり過ぎたらまずいですよ、コンプライアンス違反になる、元請さんもコンプライアンスを守れと言ってきたじゃないですか、業法が変わるんです、そういうことをしっかりと説明しながら、どうしても聞いてもらえないところは、団体で、地方整備局なり御相談をしていきたいなというふうに思います。

白石委員 ここは大事なところなので、堀田参考人そして楠参考人、先生方も、もしコメントがあれば、お願いします。

堀田参考人 ありがとうございます。

 それで、一人一人の技能労働者の労働条件等が遵守されているかを確認するということが大事なのかなというふうに思います。

 例えば他国における例でありますような、一人一人の賃金台帳の開示ですとか、そういったレベルでの確認がされていれば、そういった問題はそもそも起きない、通報する必要もないということでございます。

 我が国において、一人一人を、全ての工事を網羅するような、そういった仕組みを一気につくるのは、構築するのはなかなか大変だと思いますけれども、先ほど申し上げました幾つかの国では、全数調査が当たり前になっているような、そういった国々もございます。

 特に我が国においては、CCUSを始めとして、関連する技術開発も進んでおりますので、いろいろな工夫の余地があるのではないかというふうに考えます。

 以上です。

楠参考人 優越的地位濫用や、例えば下請法違反とか、これは公正取引委員会が所管していますけれども、恐らく同じ問題を抱えていると思うんですね。それについて公取委なりがどう考えているのかというのは非常に参考になるのかなと思いますし、あと、先ほど堀田参考人もお話しになったように、きちんとそこを調査していくということを徹底すれば、その分、今おっしゃったような問題というものは起きにくいのかなというふうに思っています。

 以上です。

白石委員 ありがとうございます。

 そして、次の質問なんですけれども、今回の法改正で、適正な工期というのも確保しなさい、いわゆる工期ダンピングは禁止ということはありますけれども、でも、この工期について言えば、そもそも二〇二〇年七月に工期に関する基準が作成、そして適用されている。もう四年前に工期に関する基準というのはあるわけですね。

 これがあるのにもかかわらず、今回の法改正に至ったということで、建設業界内で、工期に関する基準があるということ、この周知の度合いというのはどのような状況でしょうか。これは岩田参考人と、そして勝野参考人にお願いしたいと思います。

岩田参考人 我々専門職種は、工期の基準というのは始まりから終わりまでを規定していまして、我々はその中のパートパートをやっていますので、これが適正な工期ですよというものは、我々の経験値で今まで御提案をして、下からボトムアップで上げていくような、それが適正工期だと理解をしているんですけれども、受けた元請さんからすると、いや、これは、例えば一週間でやらないといけない、かかりますよというものを、五日でやれ、人を入れたらできるだろうというようなことで今まで何とか乗り切ってきた。

 ここには、非常に難しい問題ですが、生産性が低下する、人をたくさん入れれば低下する、十人で一週間かかるものを、二十人入れて四日ぐらいでやるということになりますと、ロスが相当出ますので、それでもロスが出てもやれというような中で今まで来ましたので、適正工期がどこかというのは、我々からすると、言った工期をしっかり守っていただきたいということしか言えないという、全体工期に対して、我々はなかなか全体を把握するのが難しい。

 ちょっと、お答えになったかどうか分からないんですけれども、以上です。

勝野参考人 ありがとうございます。

 工期に関する基準は、先生御指摘のとおり、従前から策定はされていたわけでありますけれども、業界内においてそれが十分周知をされているとは言い難いのではないかというふうに認識をしております。

 また、工事発注者について、民間工事の発注者、住宅などの個人の発注者には、ほとんど周知、浸透がされていないというふうに考えております。

 施策の実効性を確保するためには、国からは、そうした意味で、あらゆる機会を通じて幅広く周知を図っていただくことが重要であるというふうに考えております。

 以上です。

白石委員 ありがとうございます。

 次は、多種多様な工種の労働者が、様々な雇用形態や賃金形態で従事しているこの業界です。そこで見積りをする、そして積算をしていくというふうになると、非常に複雑で、そんな中で標準労務費を確保していくというこの作業量、先ほど堀田参考人からもありましたけれども、準備に非常に手間がかかるという問題はあると思うんですね。さらに、改正建設業法による規制が入ってきて、大変作業量としては増えるというふうに思います。

 そこで、特に一人親方とか零細の建築業者さんを抱えていらっしゃる勝野参考人にお伺いしたいんですけれども、これを簡易にする、この作業量を軽減するために、どのような制度あるいは政府への施策を求めたいというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

勝野参考人 ありがとうございます。

 標準労務費の工種、仕様等が細分化をし複雑化をすると、とりわけ小規模事業者の事務負担については増加をする可能性は十分あるというふうに思っております。

 標準労務費の作成に当たりましては、過重な事務負担が生じないように配慮をしつつも、全ての現場従事者の処遇改善が図られるよう工夫をしていただきたいというふうに考えているところであります。

 答えになっているかどうか分かりませんが、以上であります。

白石委員 それでは、最後の質問になると思います。

 生産性の向上というのも、この法案の中でうたわれています。生産性を向上するためにICTを活用してくださいということなんですけれども、これも、言うはやすく行うは難しだと思うんですね。それをどうやってしていくのかということは、やはり課題になると思うんです。

 そこで、四人の参考人の方々にそれぞれお伺いしたいんですけれども、生産性の向上、これをどのように成し遂げるのか、そこに対して、どういう施策、政府への制度的な支援というのが要望されるのか、この点について御意見を賜りたいと思います。

岩田参考人 私の職種は鉄筋工事といいまして、ほとんど人が組み立てていく、体の骨になる仕事なんですけれども、それについても、形作っていくのに結束という手作業の、針金で結ぶという作業があるんですが、これについてもロボット化が進んできております。

 ただ、我々業界団体内の会員がそれを今手がけているわけですが、非常に初めの初期投資に苦労しているということですので、そういうITC化を図る上で、財源のない我々労務職種に対しての助成金など、ちょっとそこを手厚くしていただければというふうに思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 ICTの活用については、先ほど申し上げたことの一部重複になるかもしれませんけれども、例えば、これまで、設計の段階、それから施工の段階、維持管理の段階で、様々なICT活用による効率化が図られてきました。しかし、必ずしも、それぞれのその段階の中でとどまっていて、段階をつなぐような、そういった取組がなかったために、例えば設計の段階でBIM、CIMのモデルを作ったとしても、施工の段階でまたそれを一から作り直さなくてはいけないような状況もあって、これは、更に連携をすることによって全体の生産性を向上させることができるのではないかというような指摘がされて、そういった取組も一部始まりつつありますので、是非そういった取組が広がることを期待しております。

勝野参考人 建設現場におけるICTの利用につきましては、生産性向上の観点からも必要であるというふうに考えております。

 一方で、とりわけ小規模事業者につきましては、システムの利用でありますとか機器の購入等のコストが負担になるということも想定をされることから、適切な環境整備に向けて、財政的な支援の拡充ということを是非お願いをしたいというふうに思っております。

 以上です。

楠参考人 このICTの活用に関しましては、項目としては働き方改革とセットで出てきているということからも分かるとおり、労働者の労務効率を図るということが大事な視点かなと思っております。

 それから、発注者に関しましては、これは省庁横断的にいろいろ工夫しながらやっていくべきだと考えております。

 以上です。

白石委員 これにて終わります。本日は誠にありがとうございました。

長坂委員長 次に、三木圭恵さん。

三木委員 日本維新の会・教育の無償化を実現する会の三木圭恵でございます。

 今日は、参考人の四名の皆様、本当においでくださいましてありがとうございます。貴重な御意見を聞かせていただきました。

 今回の建設業法の改定に関しましては、発注者、受注者共に意識改革が必要だということで、発注者も、受注者がいなければ仕事が成り立たない、また受注者も、極度に仕事がもらえないのではないかという心配を排除して仕事に当たっていくということが大切なんだなというふうに考えます。

 技能者の置かれている立場はもう様々でございます。多重下請構造であったり、一人親方がいらっしゃったり、そういった各々の立場に寄り添った解決方法を今後もっと詳しく考えていかなければならないと思っております。

 それで、まず最初に楠教授にお伺いしたいと思います。

 楠教授は独禁法の専門家ということで、建設業法と独禁法の関係性についてもう少し詳しくお話しいただけるでしょうか。

 例えば、今回の建設業法における、資材の高騰について協議の場を設けるということになっておりますが、この規制における建設業法と独禁法の違い、関係性についてお伺いしたいと思います。

 また、建設業法と独禁法の関係でありますが、元下請間に関しては建設業法が適用されるということですが、それ以外に関しては、独禁法が入ってもいいし、建設業法が入ってもいいということであろうと思うんですけれども、いわゆる二重規制になっている部分があるというふうに楠教授が維新の会の勉強会でおっしゃっていた部分なんですけれども、これについて、ここら辺の議論について、今後、国交省の中でどういうふうに議論を進めていくべきだというふうに先生が御見解をお持ちかということをまずお伺いしたいと思います。

楠参考人 どうもありがとうございました。

 建設業法を読むと、地位の不当利用に関する規制があるんですね、十九条の三とか四とか。これはまさに、独禁法の優越的地位濫用規制と非常にパラレルに考えることができます。

 ただ、十九条の三とか四に違反した場合にどうなるのかというと、これは事業者が独禁法違反になるのであれば、これは独禁法の話になってしまって、発注者が官の場合には、官に対する何らかのアクションという形になるんですけれども、その辺が非常に曖昧になっている部分があるのが現状です。

 資材負担の交渉の義務づけというものに関しては、これは元々、公取委は、優越的地位濫用規制というものの運用の中でいろいろ行っているんですね。ですので、そういった地位がありながらも、交渉に応じないとか、その交渉を拒絶するとか、費用負担しないとかいった場合には、独禁法上の問題がありますよと。これも行政処分ではなくて、あくまでもアドボカシーという観点から、調査して公表するといったレベルにとどまっているので、公取委が正式に何か手続を行ったかというと、なかなかそうは言えないんですけれども、そういった形で運用しているのが独禁法なんですね。

 建設業法に関しましては、これは地位の優劣というものではなくて、あくまでも、そういう受発注者の関係の中できちんとそういうふうな交渉を行いましょうというふうな考え方で進めていますので、地位の不当利用の部分とそうでない部分というのは、両方あるということで認識しております。

 以上です。

三木委員 ありがとうございます。

 地位の不当な、上からの圧力というか、そういうものがあれば独禁法で、そういったものではなくても、対等の関係であっても協議の場というものを設けなければならないというのが建設業法ということで理解はしたのでございますが、建設業法の場合は、十九条の六、行政上の強制執行というものは勧告のみで罰則はないというふうに承知しております。

 これは、今後、独禁法のように、違反行為に係る売上げの一%を課徴金で取るとか、そういったような、金額に関してはまた別でございますけれども、もう少し罰則的なものを付した方がよいと思われるかどうかについても教えていただけますでしょうか。

楠参考人 協議に応じないという場合は受発注者両方になりますので、受注者であれば建設業者になりますので、建設業者としての建設業法の対応になると思うんですね。ただ、発注者の場合は、例えば官とか、あるいはディベロッパーとかいうふうな、建設業者じゃない事業者に対して建設業法が何らかの行政処分を行うことができるかという議論になると思うんですね。そのときに、更に課徴金となるとなかなかハードルがあって、それはそれ相応の議論を詰めていかないといけない課題だと思っております。

三木委員 ありがとうございます。

 建設業法と独禁法の関係性についてももう少ししっかりと明確にしていった方がいいなと私自身は思っておりますし、教授もそのようなお考えかというふうに拝察をいたしました。ありがとうございます。

 それでは次に、ダンピングについてお伺いしたいと思います。

 令和元年に法改正がありまして、注文者に対して、著しく短い工期による請負契約の締結というのは禁止をされたと思っているんですけれども、工期に関する基準が示されたことの効果というものが今いかほど出ているか。現段階では、発注者が規制に反して著しく短い工期で請負契約を締結した場合は国土交通大臣が勧告できるけれども、余り実績として聞いたことがないような気がしております。受注者の方は、やはり仕事がもらえないと困るというような下地があるのではないかというふうに考えております。

 そして、今回、それで受注者の方もこれが禁止になったわけですけれども、受注者によるダンピングというのは、契約相手が発注者であって、発注者にもメリットがあるため、当事者からの通報というのがなかなか期待できないのではないかなと思うのですけれども、これに関しまして、岩田参考人と勝野参考人から御意見をお伺いしたいと思います。

岩田参考人 先ほどもあったんですけれども、工期について、請けてしまうと、その中でやるという体質がしみ込んできたわけですね。先ほど言ったように、生産性を低下させてでもとにかく間に合わせるということを優先してきましたので、実際には今のところ、じゃ、現状はどうなのかというお問いだったと思うんですが、なかなかそこは変わっておりません。

 ですので、お願いしたいのは、発注者の方々に、働き方も変わって人も減ってきているということもありますので、是非とも工期をしっかりと取っていただけるようにお願いをしたいと思います。

勝野参考人 ありがとうございます。

 工期によるダンピング等につきましては、先生御指摘のとおり、正確な統計等はありませんけれども、肌感覚で申しますと、十分に周知はされていないものだというふうに理解をしております。

 いずれにしましても、ダンピングが労務費削減の一番大きな要因だというふうに考えておりますので、その点に対する取組が必要だというふうに認識をしております。

三木委員 ありがとうございます。

 その際に何かもっと国に求めることというのは、今回の法改正によって受注者もそういったことを禁止されたわけですけれども、それ以上に何か国に望むことというのはございますでしょうか。同じく。

岩田参考人 発注者の方に、工期を取っていただけるマインドづくりをお願いしたいと思います。

勝野参考人 工期だけでなくて今回の賃金の問題も含めてになろうかと思いますけれども、民間の発注者に対して大臣始め許認可行政庁が勧告、公表できるというようになるわけでありますので、とりわけ民間の工事発注者に対する勧告、公表ということが重要になるというふうに思っております。

三木委員 ありがとうございます。

 そういったところもしっかりチェックしていけるような法整備をやっていきたいなというふうに考えております。

 次に、堀田参考人にお伺いをいたします。

 先ほど外国の例を教えていただいたんですけれども、スイスの例。アメリカとかフランスの例もあるというふうにおっしゃっておりました。公共工事において自社施工の割合を要求されるというふうに聞いております。例えば、アメリカにおいては一〇%から三〇%は自社施工、フランスでは七〇%以上とされているようでございますけれども、この制度について日本も取り入れていくべきなのかどうなのかということを、御所見としてお伺いしたいなと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 自社施工の割合につきましては、我が国の重層下請構造の形成過程と非常に大きな関係があると思っております。

 これまでも、いろいろな時代の変遷上、自社施工の割合というのは我が国においても変遷してきたと。先ほど岩田参考人から、その推移についても御紹介があったかと思います。

 自社施工を上げて、それぞれの個社で管理できる直用の割合を増やすということは、生産性向上、それから働き方のみならず、様々な観点でメリットがあるというふうに考えてございます。

 そのためのインセンティブづくり、これも、環境整備も非常に重要ではないかというふうに考えております。

 ありがとうございます。

三木委員 それでは、次の質問に移りたいと思うんですけれども、また堀田参考人と勝野参考人にお伺いしたいと思います。

 公契約において、団体契約、国内の法令等により定められた労働条件に劣らない労働条件を、関係労働者に確保する条項が含まれるよう措置を取ることを規定する公契約における労働条項に関する条約に、日本は批准をしておりません。その反面、幾つかの地方公共団体では、公契約に係る業務に従事する労働者等に受注者が支払うべき賃金の下限額に関する規定、賃金条項を有する公契約条例を定めているところがございます。

 地方と国でこういったばらばらの対応をしているということになりますけれども、国の方は、こういった制度、条約を批准をして、国も公契約における定めを設けるべきだと考えていらっしゃるかどうか、ちょっとお伺いをしたいと思います。堀田参考人と勝野参考人に。

堀田参考人 ありがとうございます。

 公契約の考え方につきましては、米国等にも既に先例がありまして、日本においても、委員御指摘のとおり、先例がございます。

 国においてその考え方を適用すべきかどうかということでございますけれども、今般の法改正に含まれている標準労務費の考え方というのは、ある意味におきまして、公契約で定められているような賃金下支えの仕組み、これを、同じ機能を持たせることが可能なのではないかというふうに考えてございます。

 以上です。

勝野参考人 ありがとうございます。

 まず、それぞれの地方自治体で公契約条例という形で制定をされているのが、私どもの調査によりますと、今、全国で八十六の自治体で制定をされているというふうに把握をしております。

 ただ、そのうち賃金下限額が設定をされている、いわゆる賃金条項型の公契約条例は三十の自治体で制定されており、着実に広がりを見せているというふうに考えているところであります。

 全建総連としては、建設業は地域産業でもありますので、こうした地域での好循環をつくり出していくための取組ということは進めていきたいと考えております。

 同時に、国においても基本的には必要だというふうに考えているところであります。

 以上です。

三木委員 ありがとうございます。

 最後になるかと思うんですけれども、資材高騰が起きたときに契約変更などを行っていくということでございますが、資材高騰というのはやはり全国的に一律に起きていくことだというふうに思います。

 こういったケースは、国が方針を出していくとか、そういったことを期待するという声はおありかどうかというのを、全四人の参考人の皆様にお伺いしたいと思います。国はどういった対応をするべきだとお考えでしょうか。

長坂委員長 委員の持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

岩田参考人 やるべきだと思います。

堀田参考人 既に物価調査、労務費調査が行われているように、これが広がることを期待しております。

勝野参考人 まずは、実態を正確に把握をした上での対応ということが必要だと思っております。

楠参考人 より徹底することを求めたいと思います。

 以上です。

三木委員 ありがとうございました。質疑を終わらせていただきます。

長坂委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 本日は、建設業法及び入契法の改正に際し、四人の参考人の皆様から貴重な御意見をいただきました。大変にありがとうございます。

 まず、私、この四月に、堀田参考人の新しい建設マネジメントの在り方についての提言に関するインタビュー記事を拝見をいたしました。

 建設事業は、発注者、設計者、施工者などが互いに連携しながら一つの建造物を造り上げていく中で、これまではコストや時間や品質がマネジメントの主な管理対象であったが、今後はそこに、現場の技能労働者など一人一人の労働時間などを管理するところまで広げていく建設マネジメントの考え方、また、新たな一つの職能としての建設ディレクター的な存在の必要性などが論じられておりまして、大変参考になりました。

 これは、一つ一つの現場において、各工程の工期や、働き方、賃金、契約の在り方にも及び、重層下請の問題解消にもつながるのではないかと思うのですが、こうした新たな建設マネジメントの在り方について、まず、堀田参考人にその可能性についてお伺いしたいというふうに思うのと、あと、勝野参考人、そして岩田参考人の御所見をお伺いできればというふうに思います。

堀田参考人 私どもの提言につきまして御意見いただきまして、ありがとうございます。

 建設マネジメントの考え方、これまで、やはり施工管理を中心として、コストですとか品質ですとか時間、そういったことが管理指標として当然受け止められてきたわけですけれども、マネジメントというのは、その実態を明らかにして、それを見える化をして、望ましい姿に向かってどういう施策が必要かを考える、これがマネジメントだというふうに思いますけれども、その主要な指標として何を捉えるかということが非常に重要である。今回、私どもの提言では、それを、働き方自体を非常に重要な評価指標、管理指標だと捉えようということでございます。

 実際にそれを実現するためにどうすればいいかということでございますけれども、一つには、施工実態の見える化、これを徹底するということが一つかというふうに思います。これを指標化するために、そもそもデータ、情報は必要ですけれども、一人一人の建設技能者を始めとした労働者がどういった働き方をしているかということのデータというのは、実はそれほど十分に整備されているわけではない。一方、作業日報等々のいろいろな仕組みというのは既にたくさんありますので、こういったものを十分に、これ以上に活用することによって、こういった新しいマネジメントが可能になるのではないかというふうに考えます。

 以上です。

勝野参考人 現場の施工を担う下請事業者は小規模事業者でありますとか一人親方が多い、そうした実情がございますので、まずは、そうした方々が今回の法改正の内容を理解をして、適正な工期や標準労務費等を見積りや契約に反映できるような、そうした分かりやすい資料の作成を是非国にはお願いをしたいというふうに思っているところであります。

 以上です。

岩田参考人 就業履歴としてCCUSがこれから稼働してまいりますので、それを基にしたしっかりとした評価システムというものを対価に変える、ここまでの流れが必要ではないかと思います。

日下委員 次に、建設事業における工程管理、もの決め工程は大変重要で、納期の遵守、品質確保、コスト削減に向けて、具体的な建設作業に入る前に決めておく必要があると思います。

 契約にも関連するものと思いますが、先日、ある鉄工所を構成する鐵構工業会の方から、鉄骨製作図の製作において、もの決め工程どおりに承認、確定がなされず、製作図の手戻り、工程の遅延が頻発している、そのため、業務量が増加し、費用もかさむわけですが、その負担は鉄工所等鉄骨ファブの負担とされているとの窮状をお聞きしました。

 今、一例を申し上げましたが、こうした各工程間の根詰まり、ボトルネックとなりがちな部分を解消していくこと、また、しわ寄せによる負担への対価の支払いなど、今後の技能労働者の処遇改善を進める上でも大切な要素になると思うのですが、堀田参考人と楠参考人の御所見を伺いたいと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 工程間の連携についてですけれども、ただいまの鐵構工業会についての事例を御指摘いただきましたけれども、関連するところでは、例えば、鋼橋、メタルの橋におきまして、設計と施工を連携しようという取組が始まっているというふうに承知してございます。

 元々、鋼橋の設計については、設計の図面、それをそのとおりに製作することができない原寸という仕組みがございますので、それはできなかった。しかし、設計の方で十分に製作の段階を考慮して、製作の図面の中に原寸という考え方、製作のいろいろなプロセスを踏まえたような形で設計を行えば、より設計と製作、それから施工の連携が図れるのではないか、そういった取組、i―Bridgeという取組というふうに伺っていますけれども、こういうことが始まっていると聞いております。

 先ほど、冒頭にも申しましたような、各段階間の連携、こういったことの好例なのではないかなというふうに伺っております。

楠参考人 最も重要な視点というのは、コミュニケーションの在り方だと思うんですね。設計、施工であればその間のコミュニケーションが大事ですし、大型の工事であれば早い段階で、施工業者が設計の段階で関わるといったような形のコミュニケーションの場というものの充実というのが大事だと思っております。

日下委員 今、コミュニケーションの大切さというか、いろんな設計、発注から元請、また下請に流れていく、その関係者がそれぞれの工程の業務を見ながら、そういう会議というか打合せを十分に行っていく、コミュニケーションを取っていく、そこから仕事が始まっていく。途中から無理な工程で話をされるんじゃなく、最初の段階でそれぞれが集まって、そういう場が設定されるということが非常に望ましいと思うんですけれども、これについて、堀田参考人と、そして岩田参考人にお伺いしたいというふうに思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 港湾分野の直轄工事の取組が参考になるかなというふうに思っております。

 国交省の港湾局においては、働き方改革の一環としまして、工程表、これを発注者がどのように想定しているかというような情報を契約前から開示するといったような、そういう取組を近年始めていらっしゃいます。これによって、応札者は、どういったことが工程上想定されているかということを念頭に置きながら契約をすることもできますし、また、その契約後にも品質確保調整会議という会議を設けて、受発注者間でその後生じる様々な状況に対して工程の調整を行う、そういった取組をされていらっしゃいます。

 昨年の報道ですけれども、休日確保評価型試行工事、工期指定の試行工事ですけれども、これについては四週八閉所を達成した工事が九〇%ということで、前の年から三六ポイント上昇したという報道がされてございます。一例かというふうに考えます。

岩田参考人 やはり、コミュニケーションが一番、全てだと思います。ただ、計画段階でのコミュニケーションというのは、やはり一家ですので、グループになっていますので、現場の所長の下になじんだ仲間が一緒に、これはこうしようということをやってきているわけですが、変更があった場合に、やはり一番重要なのは、そこはコミュニケーションが重要だ。ただ、コストが絡んでくる問題でありますので、ぎゅうぎゅうの非常に非常に苦しいお金の中ではそんなことを言っている余裕もなくなってしまうので、そういう意味においても、標準労務費には大変期待をしております。

日下委員 次に、勝野参考人とそして岩田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、勝野参考人から、いわゆる一人親方、技能労働者の皆さんについては、従事先は大きく三つに分類される、一つは、個人の施主からじかに仕事を請け負う町場という現場、そして、ゼネコン等が元請となっている大規模現場、そして三つに、ハウスメーカーが元請となっている現場ということでした。

 この度の建設業法等の改正によって、建設業の担い手を呼び込むためにも、時間外を減らし、休日を確保する働き方改革や仕事に見合った賃金の確保、標準労務費の導入ということもございましたが、そしてまた年間を通した仕事の平準化など、様々な施主や現場がある中で、こうした課題を乗り越えるべく、改正案が示されたわけでございます。

 この改正案について、私も、ゼネコン、サブコン等で現場管理等を行ってきた友人がいますので話を聞いてみましたら、そのとおりだ、よくできているというふうな評価、私もこれはしっかり進めていくべきだと思うんですけれども、その評価の一方、天候とかに左右される仕事の平準化、また、職人さんたちの気質ということも含めて、働き方改革なんだけれども、もっと働きたいという方もいらっしゃったりする、そういうようなことも含め、現実にワークするのか、簡単なことではないとの声も伺いました。

 この度の改正に当たり、その実効性を確保するために、現場の目線で、運用上、ここは特に力を入れてもらいたいという、長年続いてきた商慣習もございますけれども、忌憚のない御意見をいただきたいと思います。勝野参考人、岩田参考人、お願いします。

勝野参考人 ありがとうございます。

 実際に、元下関係の中では、圧倒的に今下請側が取引上弱い立場にあるというふうに思っておりますので、先ほども申し上げましたけれども、まずは、不利益に対する禁止の規定をしっかりと、やはり下請側が通報しやすい環境整備をつくっていただきたいということと同時に、発注者から直接工事を請け負う元請企業の責任の明確化でありますとか、国交省の建設Gメンの体制の拡充、国による実態調査、結果の公表など、下請が適正な見積りや契約ができる環境の整備を是非お願いをしたいというふうに考えております。特に、民間の発注者に対する取組ということが重要だというふうに考えているところであります。

 また、標準労務費、賃金の確保については、請求権をしっかりと発生をさせるということが重要だ、必要であるというふうに考えております。そのために、標準工事の請負約款を改定をしていただいて、契約条項の中に、標準労務費を基準とした労務費の支払い、こうしたことでありますとか、契約の変更、追加協議、変更協議に応じること等々を盛り込んでいただきたいというふうに考えているところであります。

 以上です。

岩田参考人 やはり、今の手取りが少ないので、日給月給であるという状況をベースにしますと、働きたいということになると思うんですが、所得を減らさず、増やして、休めますよ、社会保険に入りましょうというようなことになれば、そこを目指すべきだというふうに思います。

日下委員 時間も参りましたので終わりたいと思いますけれども、しっかり、技能労働者が夢を持ってというか、希望を持って入ってこられる業界になっていくように私も全力で働いてまいりますので、よろしくお願いします。

 今日は本当にありがとうございました。

長坂委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 国民民主党の古川元久です。

 本日は、参考人の皆様方には、大変お忙しい中、また早朝から大変貴重なお話をしていただきまして、本当にありがとうございました。皆様方、この法案には大きな意義があるというところは共通しておられたんじゃないかなと思います。

 建設労働者の現場、建設産業の現場の状況というのは、私もいろいろ地元などで聞いていても本当に大変な状況で、仕事はないわけじゃないですよ、あるけれども、しかし、資材は上がるし、働き手はどんどん減るし、また、かつ、その中で環境をよくしていかないと労働者も維持できないという、本当に、あちらを立てればこちらは立たずという、そういう状況の中で、本当に、現場で皆様方、日々御尽力いただいていることに心から改めて敬意を表したいと思います。

 その上で、最初に、岩田参考人と勝野参考人のお二人に、まさに現場を分かっていらっしゃるお二人だと思いますから、ちょっと、少し大きな話でお伺いしたいんです。

 令和十年度、今は令和六年ですから、もうあと四年ですけれども、今、建設労働者が大体二十四万人不足するという推計なんですが、ただ、私なんかの感覚ですと、今労働者の皆さん方も、この間はかなり高齢化が進んできた。でも、みんな元気な方が多かったんですけれども、しかし、さすがに、今二〇二五年問題と言われていて、要は、団塊の世代の皆さん方がみんな後期高齢者になっていくという時代に入ってきますと、やはり今まで頑張ってきた団塊の世代の皆さんが多かったので、さすがに建設現場の、特に現場を考えると、後期高齢者になると、なかなかこれは幾ら頑張ってもという、そういう状況になってくる。

 一方で、これから高齢化といっても、前期高齢者の人たちは、もう団塊の世代の後ですから、これはどんどん減っていく状況。かつ、事前に今日用の資料でいただいて、また日頃から全建総連の皆さん方からいただいている資料なんかでも、若い人たちはほとんど新たに入ってきていないような状況。しかも、今は、若年労働者がどんどんどんどん減っている中で、各産業取り合いで、しかも、いろいろな転職サイトとかがあって、今は若ければ本当に、ちょっとつらかったり嫌なことがあったら、ほかに職を探そうと思えば幾らでもある。しかも、結構な金額のあるような報酬が得られるような仕事が増えていますから、ますます今建設産業に従事したり入ってこようという若い人が減っている厳しい状況の中で、あと四年後のところで二十四万人減少という、ちょっとこれは推計が、本当に働き方改革できちんと上限規制とかをちゃんとやったときに、本当にこれは現場は回るのかなと。だから、もし本当に現場が回るような状況にしようと思ったら、とてもこの不足数は、二十四万なんていう不足数じゃなくて、もっと不足するということになるんじゃないのかな、ちょっとこの推計が結構甘いんじゃないかな、私はそういう感覚を持っているんです。

 感覚的なところでいいんです、是非ちょっと岩田さんと勝野さんの感覚をお聞かせいただけますか。

岩田参考人 不足といいますか、どこまでこの取組が進むかということによると思うんですね。どこに目線を置くかということだと思うんですけれども、三Kなのにこの所得というものから、よその産業をより上回るような、三Kだからこの所得というところを目指さないと、日本の若い方々は来ないのではないかという、そこは大きく危惧をしております。

 それと、その穴埋めになっている外国人労働者、私の職種であっても、もう一八%は外国人なんですね。そこにあっても、国際競争の中でどうなるのかというのは非常に不安、危機感を感じていますので、三Kだからこの金額ということで、日本人にも外国人にも選んでもらえるような業界を早く目指すべきだというふうに感じております。

勝野参考人 ありがとうございます。

 総務省の調査でも、かつて建設業の就業者が、一九九七年は六百八十五万人いたわけでありますけれども、それが二〇二三年には四百八十三万人で、三〇%減少している。そのうち、技能労働者は四百五十五万人から三百四万人ということで、これは就業者を上回る三七%も減少しているという総務省の統計調査もございます。

 加えまして、二〇二〇年の国勢調査で申しますと、職種ごとの調査が出ているんですが、二〇一五年と比較をして、左官工は一八・七%の減、大工職は一五・八%の減、型枠大工は一一%の減ということで、大半のいわゆる基幹職種と言われたものがやはり減少しているということは、私自身もひしひしと感じているところでありますし、加えて、組合員さんを含め現場で働く皆さんがやはり高齢化をしているということは、大変現場で働く人たち自身も危惧をしているところであります。若い人が入ってこないということに対する危機感というものは、相当やはり高くなっております。

 そうした点で、今回の標準労務費を含む建設業法の改正に対する期待というのは、やはり現場従事者の処遇改善という意味で大変大きなものがあるというふうに考えているところであります。

 以上です。

古川(元)委員 私も本当に期待していますし、何とかそうしないと、先ほど岩田参考人がおっしゃったように、本当に、例えば私も、今の夏の暑い中、建設工事の方は、やはりクーラーがない中だと、本当に熱中症の危険を押して仕事をしなきゃいけない。そんな苦労をしなくても、クーラーの利いているところでそれなりの給料を取れる職がある中で、本当によほど、ほかと比べて、今、ただでさえも水準がほかの全産業に比べても低い。これを標準にするくらいでは、とてもこれは若い人なんか来ないんだと思うんですね。

 すごくやはり魅力があるぐらいのところの水準にまで、そういう水準に、これは今回のは本当に大きな一歩だとありますが、しかし、今も例えば申し上げた、あと四年で、これは国内人材でも一万人確保するという、その足らなくなる分を補うのに国内で一万人、外国人八万人というんですけれども、あと四年で、そういうふうに、それだけの人が国内外から建設産業の方に来るような状況が本当にこれはできるのか。

 方向は、今回の私は法案で進んでいくと思いますけれども、よほどこれは、今回でも、かなりそういう標準労務費の制度で設定するとか、いろいろ前進はありますけれども、ただ、本当にこれがすぐにでも、ちゃんときちんとそこが守られるとか、そういう実効性を担保できるような形をつくらないと、なかなかやはり本当にこれから足らなくなってくるというのか、やはり現実には確保できなくなるんじゃないかなと僕は危惧をしているんですね。

 そこの中で、やはりその一つのポイントになるのが、これは堀田参考人にちょっと確認をさせていただきますけれども、やはり能力とか資格に応じた賃金支払い、スイスとかほかのところのように、それこそマイスターとか、そういうことが大事だと言われているんですけれども、やはりそこのところは、これは建設キャリアアップシステム、これをやはり活用する、そのことをお考えになっているというふうに捉えていいんですか。

堀田参考人 ありがとうございます。

 御指摘のとおりでございます。

 日本においても、建設技能者のいろいろな就業履歴が蓄積されていくことによって、それぞれの建設技能者がどういうスキルを獲得したのか、これが見える化されていくということが非常に重要であると思いますし、それは様々な水準を定めるにも活用されるべきかというふうに考えます。また、それを実際に行うことができるとすれば、CCUSの更なる活用というのが考えられるのではないかというふうに思います。

 以上です。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 そうしたら、勝野参考人に伺いたいと思いますけれども、全建総連は、この建設キャリアアップシステムの普及促進をしておられるわけなんですが、普及は順調に進んでいるというふうに今の現状を見ておられますか、どうですか。

勝野参考人 現行で申しますと、既に百四十万人を超える技能者の方々が技能者カードを取得をしていただいているというふうに考えておりますので、ほぼ半数、五割の水準に取得が行き渡っているというふうに考えております。

 ただ、その多くがやはり野丁場、ゼネコンの大規模現場で働く方の取得が進んでいる一方、町場でありますとか住宅現場での取得がまだやはり十分ではないという認識をしておりますので、その点について、全建総連としてもしっかり取り組んでいきたいというふうに考えているところであります。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 それでは、岩田参考人と勝野参考人に、この建設キャリアアップシステムを続けてお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど岩田参考人の方から、これまでは建設キャリアアップシステムが入らされる資格というのから、入りたいという資格になってきたというお話があったんですけれども、本当に、そういう現場の人たちにとって、技術者にとって、そういう資格になってきているんでしょうか。

 まだ、何か、私の感覚だと、やはり入らされるというか、それは、働く人たちもそうですし、また事業者の方も、やれやれと言われているからやっているみたいな感じのレベルにとどまっているような、私はそういう感覚を持っているんですけれども、いかがでしょうか。

岩田参考人 今現在はそうです。そのための標準労務費であって、その標準労務費のお金が、水が流れてくることによって、CCUSで評価をして、それが対価に変わるという流れができますので、そういう意味で標準労務費への期待は大きい。

 CCUSに登録していなければ、そもそも評価ができないので、対価に変えられないということになりますので、技能者はこぞって入ってくるのではないかということを大きく期待しております。

勝野参考人 今回の改正の中でも、「労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価」という文言が盛り込まれているところであります。これ自身は、先ほども申しましたが、建設キャリアアップシステムを指しているものだというふうに理解をしているところであります。

 先ほど言いました技能者カードを取得する、同時に、能力評価のためのレベル判定の取組も現在進めているところでありますので、技能者カードを取得をし、レベル判定で能力評価を受け、現場でしっかりと就業履歴を行っていく、こういうことがしっかり行われていくことが私は重要かなというふうに思っているところであります。

 以上です。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 それでは、皆さんに、四人の方に、建設キャリアアップシステムの件で、最後、お伺いしたいと思いますが、岩田参考人がおっしゃったように、現状はそうあって、だけれども、まだそこまで至っていないという。

 私は、一番最初のときから、やはりシステムにちゃんと登録したら、ちゃんとそこに、きちんとまず先についてくる、これからついてくるというんじゃなくて、ちゃんとそこは何らかの形で、きちんとレベルに応じて、ここで示された金額は義務づけるものじゃないというんですけれども、ちゃんとそれを払わなきゃいけないという、やはりここが先にあって初めて本当に入りたいシステムになるんじゃないか、そういう仕組みにちょっとしなきゃいけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

長坂委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

岩田参考人 なかなか、やはり請負ですので、その金額が下りてこない限り、我々企業も、その対価になかなか変えられないということになろうかと思いますので、そのための業法改正と理解しています。

堀田参考人 CCUSのレベル別年収をきちんと実現するために、標準労務費を適切に設計することが必要だと思います。

勝野参考人 私も、CCUSを基盤として、しっかりと処遇改善につなげていくということが重要だと思っております。

楠参考人 法律においてきちんとしたコミットメントを行うことが大事だと思っています。

 以上です。

古川(元)委員 ありがとうございました。終わります。

長坂委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見を承りました。ありがとうございます。

 どんどん聞きたいことが出てきちゃって分からなくなってきているので、早速質問させていただきます。

 まず岩田参考人に伺います。

 建設工事は、本当に多岐にわたる工程と様々な専門職の組合せなのだと思います。そうした中で、今回の法案は、標準労務費を中建審が示すことや、労働者の処遇改善のため建設業者に努力義務を課し、国がその取組状況を調査、公表し、中建審に報告するとしております。

 岩田参考人は、総価一式の請負契約が慣例である建設業界の特徴からいって、賃金を一定水準にすることが難しいということをこれまでも主張してこられました。今回の法案はそこを変えることが期待できるでしょうか。

岩田参考人 大きくできるというふうに理解しています。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 同じ質問を勝野参考人にも伺いたいと思います。

勝野参考人 私もできるというふうに思っております。

高橋(千)委員 はい、分かりました。期待が募るわけでありますけれども。

 あわせて、勝野参考人に伺います。

 先ほど来議論がされているキャリアアップシステムの活用の問題なんですけれども、全建総連として、これまでもキャリアアップシステムの活用を重視して、強く要望されてきました。一方、このキャリアアップがどう加点され賃金に反映されるのか、つまり、そのための原資がないと現実的ではないわけですよね。

 例えばキャリアアップをインセンティブにしようとかいっても、レベルフォーの人ばかり集まっちゃうとかとなると、その分取れるんですかということにもなるわけですよね。その点、どのようにお考えになっていらっしゃるか。

勝野参考人 先ほども申し上げましたが、カードの取得だけではなくて、レベル別の能力判定ということが非常に重要になっていると思っておりますので、両輪の取組として現在進めているところであります。

 その際、やはりしっかりと能力に応じた処遇に改善されていくということが重要だというふうに思っておりますし、加えて、レベルワンからレベルフォーまで、同様にしっかりと就業が履歴をされていく、そういう仕組みを全ての現場で整えるということが重要だというふうに考えております。

高橋(千)委員 全ての現場でレベルワンからフォーまで整っていくことが、要するに、それに見合う賃金が得られる体制が伴うということがどうしても必要なわけですが、その点、もう一言。

勝野参考人 昨年の六月に、国交省におかれましては、建設キャリアアップシステムのレベル別の年収を公表していただきました。こうした取組を、公共、民間、全ての発注者に周知、理解を図って、技能、経験に応じた処遇の改善、工事発注金額への反映等について、サプライチェーン全体での合意形成を進めていく必要があるというふうに考えております。その点でも、今回の業法の改正は有用であるというふうに理解をしております。

高橋(千)委員 レベルごとの目標といいましょうか、これだけの収入が得られるよというのが示された。先ほど岩田参考人もお話ししてくださったんですが、まだ現実は乖離があるわけですよね。何としてもそこに近づけるために仕組みをつくっていかなければならない、このように思っております。

 そこで、今度は堀田参考人に伺いたいんですけれども、建設マネジメントの立場から、諸外国のルールについてお話をいただきました。私も昨年、UITBB、建設インターの、労働組合の国際組織ですけれども、ミカリス書記長らと懇談したことがあって、キプロスの出身の方なんですけれども、多重下請構造の話は世界どこでも共通だよというふうにおっしゃいました。その上で、やはり公共工事を下請に出す場合、条件を付した契約書でなければそもそも受注ができない。だから、一定の基準より下げては絶対いけないのだと。

 このお話をされて、公契約法に近いものなのかなと思って聞いていたのですが、今度の法案がそこに近づいたのか、あるいは超えたのか、是非先生の御意見を。

堀田参考人 ありがとうございます。

 標準労務費が導入されれば、委員御紹介のような他国の仕組みに近づいてくるのではないかというふうに考えます。

 ある意味で、ヨーロッパ型、スイス、フランス等の仕組み、これは労働協約がベースとなって、これが一般拘束力宣言を持つことによって全体に実効性が適用されるということ。

 一方、米国においては、デービス・ベーコン法、これは基本的には公契約と同じような考え方で、政府の公共調達において適用される。しかしながら、米国においても、これは公共工事だけに適用されるとはいっても、その水準が民間工事にも波及しているので、同様な効果を持つ。

 こういったことで、仕組みが、有効に働くメカニズムは異なるかもしれませんけれども、それぞれの社会で、そういうことが実現しているという現状があるかと思います。

 日本においても、標準労務費あるいはCCUSの活用もあるかもしれませんけれども、こういったことを通して、しかるべきシステムを構築していくべきだというふうに考えます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 次に、楠参考人に伺いたいと思います。

 参考人は、中建審の委員ですとか検討会の座長を務めてこられたということであります。

 そこで、具体に伺うんですけれども、二十条になると思うんですが、著しく低い額による建設工事の見積りの禁止というふうな表現がされているんですよね。それで、下回ってはいけないというのではなく、著しくという言葉がついていて、そこが非常に曖昧で、どの程度を指すのかな、著しくなければいいのかなとか、いろいろな不安が出るわけなんです。先生、どのようにお考えで。

楠参考人 独禁法にも、不当廉売規制の中で二つあって、著しく原価を継続して割った場合と、あと、不当に低い対価と、二つ分けているんですね。

 ですので、言葉の使い方としては、二つ分けられるものだと思うんですけれども、先ほどおっしゃったように、著しくなければいいのかという話になってしまいますので、やはりその辺は、ある程度の基準というものを出していかないといけないとは思うんですね。

 ただ、明確に出してしまうと、これは国交省の説明にあったと思うんですけれども、下限に張りつくというおそれもありますので、その辺は今後また詰めていかなきゃいけない課題なのかなと思っております。

高橋(千)委員 確かに、基準が必要だけれども、下限に張りついてはまずいと。おっしゃるとおりだなと思っておりました。

 同じように、著しく短い工期というのもありますけれども、これは同じ考えでよろしいでしょうか。

楠参考人 著しく短い工期の著しさというものは、実際には、総合評価といいますか、様々な要素を考慮して判断することだと思いますので、なかなかその基準作りが難しい一方で、法の明確性というのも大事ですので、その辺のバランスかと思っております。

高橋(千)委員 今、先生がお示しいただいた趣旨が本当に現場に浸透していけばいいなと、このように思って聞いておりました。

 それでは、岩田参考人に伺いたいと思います。

 先ほど来、建設業は他産業よりも賃金が低く、就労時間も長いということをるるお話がありましたし、担い手確保が大きな課題となっているわけです。

 それで、四月から働き方改革の一般則が適用されたわけですが、現状では日給月給のために、週休二日としても、休みが増えた分、年収が減る、現状のままではということで、非常に不安の声が上がっていると。

 ですから、繁閑の多い建設工事をなるべくやはり平準化して、月給制に近づけていくということが必要かなと思うんですが、その点での御意見をいただければと思います。

岩田参考人 日給月給という仕組みで、仕組みといいますか、形になっていますので。

 現場が、では、全て休んでいるかというと、休んでいないところもあります。大手から順にやっていっていますので。だから、職人は空いている現場に行くんですね。それで所得を確保している、それで所得をキープしている状況なので、早くこの制度をつくっていただいて、お金が下がらないような仕組みにしていただくことによって働き方も変わるのではないかと期待しています。

高橋(千)委員 実際には、埋め合わせといえばあれなんでしょうかね、そういう働き方が実際にはあるということで、改善を図っていきたいというお話でありました。

 あわせて、岩田参考人に伺いたいと思うんですが、ICTの活用で、いわゆる緩和というんでしょうか、現場での技術者、専任の技術者がかけ持ちでも可能になるということと、営業所の専任技術者が、同じように、かけ持ちしてもよいことになる。特に現場の場合は二時間まで離れてもよいということになっていて、ICTがあるんだからいいんだということなんですが、元々それが必要だった理屈からいって、安全性とか、そういう問題は大丈夫なのかなとちょっと心配もありますので、伺えればと思います。

岩田参考人 我々、技能者の団体ですので、技術者の制度については非常にお答えしにくいところはあるんですが、現実、我々の処遇改善等を行っているように、技術者もやはり現場の処遇改善を進めない限り、人は来ないんじゃないかなというふうに思います。

 お答えになったかどうか分からないですけれども。

高橋(千)委員 そうですね、なかなか、不足しているので、駄目とは言えないんだという声も聞こえています。ただ、それでやはりぎりぎりのところなのかなと思っているので、これ以上の緩和はどうなのかなという思いで聞かせていただきました。

 それでは、堀田参考人に伺いたいと思うんですが、資材高騰が労務費へのしわ寄せにならないように、契約前と後の協議を努力義務というふうに書きました。これは、コロナの中やその後の資材高騰の話を聞いていて、本当にこれ、しわ寄せにならないようにするべきだと思うし、大事だと思うんですが、これに実効性を保たせる、実効性をできるようにするためにどんなことができるでしょうか。御意見を伺います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 二つ考えられるかなと思います。

 一つは、受発注者間で適切なリスク分担ができるような、そういった契約の形態ということを考えることができると思います。先ほど来、総価契約が一般的であるという我が国の建設市場の特徴について御指摘がありましたけれども、総価契約だけが唯一の契約形態ではございませんので、建設市場においても、様々なリスクを受発注者間で適切に分担する、そのやり方はいろいろな方式が考えられてございます。そういったことの検討、導入が考えられるかと思います。

 もう一つは、先ほどの標準労務費等の仕組みで言われていますように、要するに、労務費の下支えがあれば、仮に資材価格等が高騰したとしても、そこから調整をするということがそもそもできないという仕組みであれば、そういうことは起こらないわけですので、そのやり方と併せて考えるということがよろしいのではないかというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 最後に、楠参考人に伺いますが、今回の国の役割というか、これが適切に働いているのかを調査、公表、報告というのまで初めてやるんだよということをおっしゃっていて、今の体制の中で本当にできるのかなという懸念もあるんですが、どのようにお考えでしょうか。

楠参考人 これに関しましては、公正取引委員会が積極的にこの問題に対して動いておりますので、公取委との連携を図るとか、下請に関しても、そういうふうに公取委、中小企業庁との連携を図る形で行っていくべきかなと思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 なるほどなと思って聞いたのと同時に、いろいろな心配点もまだ少し残っているかなと思いますが、今日は、これを参考にさせていただいて、次の、明日の質問にしたいと思います。

 ありがとうございました。

長坂委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 無所属の四人で会派を組んでいる有志の会の福島伸享と申します。

 四人の先生方、本日はどうもありがとうございます。

 まず一点目、岩田参考人からお聞きしたいんですけれども、先ほど御説明の中で、請負価格が不安定な中で、総額一括契約が慣行としてあって、黙っていれば価格は下げてくるだろうと、安値競争になっているという話がありました。

 総額一式契約、これは、書類としては読んだことはあるんですけれども、もうちょっとその実態を詳しく教えていただきたいなと思うんですね。というのは、今回、改正法の二十条一、二項で、著しく低い労務費等による見積りの提出や見積変更依頼の禁止というのが掲げられておりますが、この条文が出れば、この一括総額契約方式というのは本当になくなるのかと。堀田先生からは、建設市場のルールに関する大きな構造転換であるという話もありましたけれども、この現状の、今の総額一式契約がなぜ広まっていて、この条文でそうした慣行は本当に変わり得るのか、その辺りについて教えてください。

岩田参考人 総額という、分かりやすく言ったんですけれども、総価一式という形は変わることはないと思うんですね、建設業法で規定していますので。

 その内訳といいますか、国が処遇改善に必要であろうというような相場観を示すということで、請負価格の一定基準を中建審で示すということになっていますので、その基準を著しく下回るというようなことにはならないようにするというのが今回の取組というふうに理解しておりますので、総価一式は、やはり、そういう契約であるからこそ生産性を高めてきた歴史もありますので、その総額がどこが適正か。忙しいときに上がって低いときには下がる、これをやめようということが、基準を示そうというのが今回の標準労務費であるというふうに理解していますので、期待をしております。

福島委員 ありがとうございます。

 そのときに、標準的な労務費というのが一番問題になって、先ほど来、各議員から建設キャリアアップシステムのことについて質問がなされております。

 私も、このシステムができたときに、私の周りにも友人たちで多くの建設関係の方がおりまして、集まって酒を飲みながらこの話を聞くと、大体皆さんがこんなの意味ないよと、否定的な意見を言う方が大部分であります。

 先ほど岩田さんからも率直なコメントをいただけたと思うんですけれども、ただ、そうはいっても、技能に応じて、技術に応じてそれなりのランクづけがされて、その賃金がもらえるのであれば、皆さん、そうかといって受け入れるんだと思いますし、先ほど、入らされる資格から入りたい資格へという話が岩田参考人からありましたけれども、でも、私は、これの一番の欠点は、やはり法的な裏づけがないことだと思うんですね。

 本来、今回の建設業法の中で、建設キャリアアップシステム的なものを法定化するなり何らかの根拠があればいいけれども、結局、見積りの際の参照価格になっているだけで、実際それが働く人の賃金に係るかどうかの保障が法律上何もないことが問題なんじゃないかなと思っておりまして、ある程度の法律上の位置づけが必要じゃないかと思うんですけれども、その点について、まず、勝野参考人と岩田参考人からお伺いしたいと思います。

勝野参考人 私どもも建設キャリアアップシステムを積極的に取り組んでおりますが、しっかりと法的にも位置づけていただくということは必要だというふうに思っております。

岩田参考人 今まではお金に変わらなかったので、入っても一緒だということだったので、やはり、法的な裏づけというのは私も必要ではないかなというふうに思います。

 それも、タッチするというところまでやはり義務づけて、そうしないと、持っているだけで、どこの現場にいたか分からない、履歴が分からないので、それを実行しているところ、これはもう、スーパーゼネコンさんを筆頭に、先導してここまで入ってきましたので、その方々へのインセンティブもないことも問題だと思います。

 ですので、一例として、建設業退職金制度というのがございますので、これを、レベルごとに応じて掛金を変えていくだとか、その辺のところを御検討いただければなと。加入が加速するのではないかなと思います。

福島委員 ありがとうございます。

 ただ、私は、今回の法改正のときに、この役所が作っている資料を見ても、どこにも建設キャリアアップシステムが出てこないんですね。でも、今日は四人の参考人の先生方皆さんが共通してCCUSの話を挙げている以上は、私は何らかの法律的な位置づけを与えた方がよかったんじゃないかなと思っております。明日、法案審議、私じゃないので、そのことは政府には申し上げませんけれども。

 もう一点は、資材高騰に伴う労務費のしわ寄せ防止策として、資材高騰等が起きたときには受注者は注文者に請負代金等の変更を協議できるとなっておりますが、法律を読むと、注文者は誠実に当該協議に応ずるよう努めなければならないということなんですね。

 先ほど堀田先生からは、受発注者間でリスク分担とか労務費の下支えの仕組みが必要だという話がありましたけれども、ただ、条文上、誠実に応ずるように努めなければならないという条文だと、これは、実行されるのは非常に難しいと思うんですよね。誠実というのは心の問題なので、法律上のかちっとした概念じゃなくて、しかも、応ずるように誠実に努めなければならない。受けたいんだけれども、ちょっと難しいので我慢してというのも、誠実に応ずるように努めたことになり得ると思うんですけれども、本当にこの条文で実効性があるのかどうか、堀田参考人の御意見を伺いたいと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 誠実な協議に応じたかどうかの判断は、これは個別に判断がされるべき事項だというふうには思いますけれども、先ほど、少し申し上げました実効性の観点からいいますと、この条文にもちろん期待すべきことも多々ありますけれども、一方で、またそれとは違う方法によって受発注者間のリスク分担を適正にしていくということもあり得るかなというふうに思います。

 例えばということですけれども、オープンブック方式といった契約方式がありますけれども、これについては、例えば、資材価格が高騰すれば、その高騰分のリスクというのは基本的には発注者の方に、精算方式ということですので、総価契約と比較すればより多く委ねられるということですけれども、そういったような様々な契約方式が現在提唱されておりますし、使われてもおりますので、そういったことと組み合わせることが必要なのかなというふうに思います。

 以上です。

福島委員 同じ点をちょっと楠先生にもお伺いしたいんですけれども、この「誠実に当該協議に応ずるよう努めなければならない。」という文言だと、独禁法的なところも運用が難しいだろうし、建設業法に基づく行政指導とか、そういうのも誠実に努めなければならないという、非常にこれはハードルが高いように思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

楠参考人 誠実に応じる義務というのは、地位の格差というものを前提にしない議論なんですね。

 もし地位の格差があった場合には、例えば、地位の不当利用に関わる建設業法の規定とか、あるいは、独禁法の規定とかいうものが適用される可能性がありますので、その法運用をどうするかという論点になるかと思います。ですので、二つの構造になっているということで理解しております。

福島委員 つまり、地位の上下を考えていない条文になっているというのは、私は実際は違うと思う。実際は、地位の上下があるからこそ条文の規定が必要なのに、やはりそこはちょっとずれがあるんじゃないかなというふうに思っております。

 その関連で、私、いろいろ地元でも、様々な人から無理難題な、優越的地位の濫用とも思われるような取引実態を、知人や支援者から相談を受けることがよくあります。そのときに、独禁法があってこういう条文があるから、それは明らかに独禁法の、あるいはガイドラインに違反するような事態だからと言うんです。ただ、私、茨城県の水戸というところに住んでおりますけれども、地方だと、公取の役割というのはやはり見えないんですよね。公取の事務所があるわけでもないですし、どこで何をやっているのか分からなくて。少ない人数で公取さんが頑張っていることは、この間、私、トラックの話でもこの建設の話でも直接公取からお聞きをしているんですけれども、ただ、そこはすごい弱いと思うんです。

 あと、一方、建設Gメンとか、これも全国で百三十五人。ほかには、トラックGメンもあれば下請Gメンもありますよね。ただ、トラックGメンとか下請Gメンとか建設Gメンというよりも、やはり一番私は効くのは公取だと思うんですよ。公取というのはある意味の経済警察みたいなものですからね。だから、私は、縦割りでトラックGメン、下請Gメン、建設Gメンとやるよりも、この多くは独禁法に違反しないにしても、そこに関わる事例を扱うわけですよね。例えば、私は、公取と全部併任をかけて、全部公取と連名で国交省やあるいは中小企業庁が対応して、一括してやるような仕組みがあった方がいいし、公取から呼び出されると、やはりみんなびびるわけですよ。建設GメンとかトラックGメンだと、何か、仲間内の業界のお仲間みたいに思われるところもあるので、私、そういう各省の連携のやり方があると思うんですけれども、その点、どうお考えか、楠参考人にお伺いしたいです。

楠参考人 おっしゃるとおりかと思います。

 ただ、建設業法上、下請法と建設業法の関係というのがありますので、今の法令でいいますと、下請に関しては建設業法が対応することになっていて、そうすると、国交省なり都道府県がきちんと動かないとその問題が解消されないので、そうであるならば、公取と連携するような形の法規制というものがあっていいのかなと思っております。

福島委員 その取引関係というのは、ほかに建設といってもいろいろな業があって、運輸と絡む建設とか、産廃と絡む何とかとか、実際の業は多種多様で、取引というのは別に業法を意識して行うものだけじゃないと思うんですね。

 だから私は、そうした、中小、下請、孫請の会社の取引慣行に関する窓口というのはとにかく一本化した方がいいし、それが見える化した方がいいし、よく相談窓口というのは県とかにあるんですけれども、やはり、それは国の人たちがやってくれるという意識が大事だと思うので、そうしたものをつくった方がいいのかなと思うんですけれども、その辺りはいかがでしょうか。

楠参考人 おっしゃるとおり、そのリソースというものは効率的に運用した方がいいですので、公取の持っているリソースをきちんと使えるような体制というのは大事かと思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 私は、そもそものこうした問題が起きる根幹というのは、建設業の多重下請構造と、あと、最上位の発注者、元請、ゼネコンが寡占状態にあるという、上が寡占状態で、下はもうひたすら膨大な数があるからこそ、下の方の競争が激しくなって安値合戦になっているという、その産業構造そのものにあると思うんですね。

 先ほど堀田参考人から、今回の改正は建設市場のルールに関する大きな構造転換を促すという話があったんですけれども、果たして、今回の法改正でそうした産業構造そのものが変わる契機になるのか、あるいは、その産業構造を前提にした上で適切な賃金を確保する制度になるのか、その産業構造の変化との関係でこの法案をどう評価されるか、堀田参考人に御意見をお伺いしたいと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 価格がどのように決定されるかというその構造、これを一つ例に取りますと、申し上げましたように、標準労務費のような仕組みがきちんと整備されれば、これは見積りが、下請から元請、元請から発注者というふうに適正に積み上がっていく、それによって価格が決まる。

 一方、仮に、そうじゃない、上から決まる市場があればどうなるかというと、発注者が提示した価格を見て、元請企業はそれができるかどうかを決める。それは、発注者から契約した金額が参照点となって、その金額を基にして、これしか原資がないんだからということで一次下請に契約がされて、その一次下請は、この契約金額しか原資がないんだからということで二次下請に流れていく。いわゆる価格が上から決まっていく、そういうサプライチェーン上の構造もあり得るかと思います。

 我が国の建設市場がどちらかということは、なかなか判断は難しいことだとは思いますけれども、この上から決まっていく構造、下から決まっていく構造ということについて言えば、今回の法改正は、まさに下から価格が適切に積み上がって決まっていくということの契機になるのではないかなというふうに考える次第です。

福島委員 私がお聞きしたかったのはちょっと違う視点でありまして、本来、普通の産業であれば、競争が激しくなって価格が安くなると、淘汰されて産業構造の転換が進むはずなのでありますけれども、なかなか建設業はそうならない、それがいいか悪いかは別にして、進まないわけですね。

 今回のこの仕組みを入れるのは、ある意味、価格を固定するわけだから、産業構造の転換を遅らせることにもなるかもしれないとも理論上は見えるわけですけれども、その辺りについて、建設産業の構造転換に今回の法案が資するのかどうかという点について、もう一度お聞きしたいと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。重要な御指摘だというふうに思います。

 先ほども少し申し上げましたけれども、今回の改正の、一つ関係するのは、生産性向上にもこういった改正がつながるのではないか、そういうことがあるかと思います。

 建設産業がずっと保護されているままで、技術革新も起きずに、生産性も上がらずにというようなことであってはいけない、これはやはり共通した認識ではないかというふうに思います。今回の法改正は、またそういった観点からも、産業構造の転換を促す可能性があるのではないかというふうに思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 労務費を固定することで、むしろ生産性の競争が起きて適切な産業になるという答弁だったかと思います。

 どうもありがとうございます。

長坂委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組のたがや亮です。

 参考人の皆様におかれましては、本日は、お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。

 私はいつもラストバッターですので、質問も出尽くしちゃうということで、毎回、変化球的な質問が多くなろうかと思いますが、是非とも頭の体操だと思っていただいて御答弁いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 まずは、全ての参考人の皆様にお伺いをいたします。

 二〇二四年の問題について、公共事業なども担う建設業界が衰退することは、将来的な日本の公共インフラの衰退を生じさせてしまう危惧があり、早急に対応しなければならないということで審議されている本法案ですが、大変評価できるものであると思うのですが、法律や制度だけでは効果に限界があるのではないか、更なる活性化のためには、担い手が積極的に建設業界に参画できるよう、国による公共事業の予算措置などを含めた、建設業界にとっての血液である、ちょっと生々しいですが、お金の供給が何よりも特効薬と思いますが、お考えをお聞かせください。

岩田参考人 請負に税金を突っ込むということですか。(たがや委員「公共事業等々を増やす」と呼ぶ)公共事業という意味ですね。

 やはりそこは非常に難しいと思うんですが、新しい産業に、例えば半導体ですとか、国費を入れたりして工事をやっていますので、現実、そういうところは請負の金額も安定している、高い、適正であるということになってあろうかと思いますので、そういう物件もあってもいいのではないかなと思います。

堀田参考人 ありがとうございます。

 先ほど、中長期計画のお話がございましたけれども、社会においてインフラストラクチャーがどの水準でどのように供給されるべきかというような、こういう長期的な計画、ビジョンといったようなことは是非とも社会において必要だと思いますし、それを実現するために、しっかりとそのためのリソースを確保していくということも大事なのではないかというふうに考えます。

勝野参考人 日本の建設投資のおおむね四割を占める公共投資、公共工事は、建設業で働くその雇用を守り、そこに働く人の生活を守る、そういう点からも非常に重要な点だと思っておりますので、その金額は、やはり一定の維持というものが必要だというふうに思っております。とりわけ、やはり地方における役割というのは大きいものがあるというふうに考えております。

楠参考人 公共事業に対してきちんとお金を払うということは、まさに社会のコンセンサスがあるのが前提だと思うんですね。それをきちんと図っていくことが大きな話だと思います。

 具体的な話としては、例えば、低入札調査基準価格とか最低制限価格とか、そういった具体的な入札契約における様々な仕組みというのを機能させることが大事だと思っております。

たがや委員 ありがとうございます。

 続きましても全ての参考人の皆様にお伺いします。

 そもそも論になりますけれども、建設業は民間の事業だけでは立ち行かない状況の中で、年間公共事業費を、ピーク時の一九九八年の十四・九兆円と二〇二二年の八・一兆円を比較すると、約四五%減にまで削減をされてきました。

 建設業に人が従事したくなるという新四K、すなわち、給料がよく、休暇が取れ、希望があり、格好がいいを目指している中で、それに立ち塞がるのが財務省というのは言い過ぎかもしれませんが、財務省は、予算措置をするどころか、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会において、以下のように指摘をしています。資材価格高騰に関して、資材価格はこれまでも継続的に上昇してきた、事業の効率化によって対応するのは基本だと指摘した。そしてまた、財政審の分科会において、公共事業の費用便益分析で将来の人口減少の影響が考慮されていないとの意見があった。ということは、今後も含めて公共事業は無駄が多いと言っていることに等しいことであり、公共事業費の更なる削減を示唆していると思います。

 この財政審における事業者の無駄が多いとする議論の中身や、財務省の、予算を削り更なる民間努力を促す、そういった指摘についてどのように思われるか、参考人の皆様の率直な御意見をお聞かせください。

岩田参考人 国民を守るものがインフラといいますか、有事に逃げ込むところはやはりそういう建物。そういう建物はやはりしっかり予算を確保して建てていっていただきたいなというふうに思います。

堀田参考人 公共事業における費用便益分析等において今後の人口動態等を十分考慮すべきというのはそのとおりかと思いますが、実際の分析においてそれらが行われていないというふうには必ずしも考えてございません。

 先ほどの繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、将来にわたるインフラに対する社会的な需要にしっかりと応えられるような、そういう体制を国として整備すべきではないかと思います。

勝野参考人 先ほども申し上げましたとおり、公共投資は必要なものだという理解の下に、優先順位をどのように考えていくのかという点については、しっかりとそれぞれの地域なり国でやはり論議をしていただくということが大切だろうと思っております。

楠参考人 これはなかなか難しい問題もあるんですけれども、公共事業に関しては、ジェットコースターみたいに急に増やしたり減らしたりというのは必ずしもよくないと思っていて、本当に、九〇年代のいわゆる内需拡大のときにがあっと公共工事を増やして、二〇〇〇年代に入って急に減らしたということで、建設業者がどんどんいなくなってしまって、今度災害が起きたらどうするんだということで、担い手がいないという。

 これというのは、ある程度計画をきちんとしていかないといけない話だと思うんですけれども、どうもその時々の風潮というか、世相によって急に増えたり減ったりするという、これが一番いけないことかと思っております。

たがや委員 ありがとうございます。

 続きましても、全ての参考人の皆様にお伺いをいたします。

 これもちょっと法案とは直接関係ないかもしれませんが、担い手不足を加速させる要因の一つとして、昨年十月からインボイス制度の導入によってベテランの一人親方の廃業が日本各地で相次いで、技術の継承などが懸念されております。

 そこで、お伺いします。インボイス制度導入は業界にとって悪影響を及ぼす一つの要因である、そのようにお考えでしょうか。

岩田参考人 必要だと思います。

堀田参考人 インボイス制度そのものについて、この場で意見を申し述べる立場にはございませんけれども、一方で、いかなる制度であっても、一人親方の方を始めとして、この建設業で働くことを希望される方がきちんと働ける、そういった仕組みが整備されるべきだというふうに考えます。

勝野参考人 全建総連の組合員さんの中には、多く一人親方の方がいらっしゃいます。これまで免税業者ということで仕事をされてきた方が、今回のインボイスの導入によって、登録をしなければいけない、又は登録をしない、そういう選択をされた組合員さんが多くいらっしゃいます。

 そうした中で、非常に今回の導入が大きな影響を与えたということについては御指摘のとおりだというふうに考えておりますので、全建総連としても適切な見直しが必要だというふうに考えているところであります。

楠参考人 事実として、中小の事業者さんが苦しい状態に追い込まれることは存在していると思うんですね。ですので、一人親方の社会的意義というのもありますので、そういった事業者の、何らかのケアというものも同時に行うべきだと考えております。

たがや委員 ありがとうございます。

 次の質問は、岩田参考人と堀田参考人にお伺いをいたします。

 世界パンデミックや戦争、紛争、円安による輸入資材の価格高騰、コンテナ不足、燃料費高騰などによるウッドショックに限らず、様々な資材不足への対策として、輸入に頼らない資材の国内供給力強化がそれらの解消の一助になるか、お伺いをいたします。

岩田参考人 海外に頼っているとそういうことが起きるので、国内でも、バランスの問題だと思うんですけれども、必要かと思います。

堀田参考人 建設資材の需給につきましては、これまでも様々なショック要因がありまして、そのたびにいろいろな分析や対策が講じられてきたかというふうに思います。

 もとより、建設資材は非常に地域性の強い資材が多いということもありまして、まさに長期的にそういった供給体制が可能かどうかというのは課題として既に挙げられているかと思います。非常に重要な問題だと思います。

たがや委員 ありがとうございます。

 次の質問は、堀田参考人、楠参考人にお伺いをいたします。

 私の地元で、自治体に対して担い手三法の改正に関してアンケートを行った結果、入札方法が多岐にわたることになったため、技術系の職員が不足しており、対応ができないことが課題であり、懸念であるとの御意見が多数ありました。このような人材やノウハウ不足に悩む自治体の懸念点をどのように解消すればよろしいでしょうか。

堀田参考人 ありがとうございます。大変重要な御指摘かというふうに思います。

 地方公共団体において技術系の職員の数が減少しているというのは、これはそのとおりでございまして、一方で、多様な入札契約方式ということで、様々な課題に対処できるような新しい仕組みが提案はされているものの、それらが十分に活用されていない、メリットを十分に発揮できていないという現状もそのとおりかと思います。

 例えばということですけれども、国土交通省さんの方では、そういった多様な入札契約方式の導入を、地方公共団体の皆様を支援するような、そういうモデル工事、あるいはその試行の取組も、いろいろなところでされていらっしゃいます。そういったことも一つなのかなとも思います。

楠参考人 おっしゃるとおり、地方自治体は人が足りない中で、品確法は総合評価だということで、なかなか実は進まないんですね。

 人は減らす、仕事は増えるという状況で、現場に出られないなんという話をよく聞くんですね。ですので、なかなか総合評価方式というものを全面的に採用するというのができない中で、どうして、どうやってその品質を確保するのかといった方法が模索されるわけですね。

 ですので、考え方としては、極端に一般競争ばかりやるのでなくて、場合によっては指名競争とか、そういう形で品質を維持するという方法もあるかと思います。

たがや委員 ありがとうございます。

 次の質問は、岩田参考人、堀田参考人にお伺いをいたします。

 私の地元は千葉の外房で、十七市町村ありますけれども、一番大きなところでも人口八万七千人程度で小規模事業者が中心の地域です。今回の法改正で、ICTなど新技術の導入促進がうたわれていますが、こういった地域において、新技術に対応できない地方の小規模事業者も多く存在すると予想されますが、小規模事業者にも新技術を活用できるようにするためには、何かいい方法はあるでしょうか。

岩田参考人 地域地域の問題があろうかと思うんですけれども、やはりそれは、こういうやり方があるということがなかなか広まっていかないことに問題もあると思いますので、是非ともその辺は、いい例をどんどん広報していくということが重要ではないかというふうに思います。

堀田参考人 小規模事業者によるICT活用の好事例という、今事例がいろいろと蓄積されてございます。ライトICTですとか様々な呼び方がございますけれども、そういった知見が共有されていくということが有効かなというふうに思います。

たがや委員 ありがとうございます。

 参考人の皆様、本日はありがとうございました。質問を終わります。

長坂委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十分散会


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