第3号 令和6年4月8日(月曜日)
令和六年四月八日(月曜日)午後一時三十分開議
出席委員
委員長 小熊 慎司君
理事 熊田 裕通君 理事 斎藤 洋明君
理事 高木 啓君 理事 塚田 一郎君
理事 下条 みつ君 理事 西村智奈美君
理事 和田有一朗君 理事 山崎 正恭君
井出 庸生君 加藤 勝信君
金子 容三君 佐々木 紀君
櫻田 義孝君 杉田 水脈君
高鳥 修一君 中川 郁子君
山田 美樹君 山本 左近君
義家 弘介君 梅谷 守君
渡辺 周君 池下 卓君
鈴木 敦君 中川 宏昌君
笠井 亮君
…………………………………
外務大臣 上川 陽子君
国務大臣
(拉致問題担当) 林 芳正君
国務大臣
(国家公安委員会委員長) 松村 祥史君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 平井 康夫君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 千代延晃平君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 山碕 良志君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 濱本 幸也君
衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長 菅野 亨君
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委員の異動
三月二十一日
辞任 補欠選任
金村 龍那君 池下 卓君
四月八日
辞任 補欠選任
佐々木 紀君 金子 容三君
同日
辞任 補欠選任
金子 容三君 佐々木 紀君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
北朝鮮による拉致問題等に関する件
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○小熊委員長 これより会議を開きます。
北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平井康夫君、警察庁長官官房審議官千代延晃平君、総務省大臣官房審議官山碕良志君及び外務省大臣官房参事官濱本幸也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小熊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○小熊委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。塚田一郎君。
○塚田委員 自由民主党の塚田一郎です。質疑の時間を賜りましたことに感謝申し上げます。
私は、新潟県新潟市で生まれ育ちました。今から四十六年前、私が十四歳、新潟市立寄居中学校の二年生に在学していたときに、一つ下の学年に横田めぐみさんが十三歳で在学されていらっしゃいました。めぐみさんのお父さんの横田滋さんは日本銀行にお勤めで、転勤の関係で日本銀行新潟支店に転勤され、新潟小学校を卒業された後に寄居中学校に進学されたということであります。
めぐみさんはバドミントン部に所属されて、一生懸命バドミントンの練習をされていた。十一月十五日、練習からの帰宅途中、自宅目前で北朝鮮の工作員に拉致され、以来、四十六年の歳月が流れ、めぐみさんは現在五十九歳、北朝鮮のどこかで祖国への帰国を切望されていると思います。
当時、新潟県警の大捜索がありまして、私も同じ通学路を通っておりましたので、警察の方に事情を聞かれたことを今でもよく覚えております。我々にとっては、自ら、同じような思いで、もしかしたら自分もそういうことに遭ったのかもしれないという思いで子供時代を過ごしました。
拉致問題ということが分かるのに二十年以上かかり、さらに、二〇〇二年の小泉訪朝から二十二年の歳月が流れたわけであります。大変に大きな時間がたってしまいました。
私が国政を目指す一つの大きな理由は、拉致問題、この横田めぐみさんを含む全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するという思いでありますので、いまだにそのことが実現できていないことはじくじたる思いでありますが、政府には最優先課題としてしっかりと取り組んでいただきたい、このように思っております。
家族会、救う会は、昨年二月に、親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するならという前提で、我が国が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しないとの運動方針を示しました。さらに、本年二月二十五日には、同じ前提で、我が国がかけている独自制裁を解除することに反対しないとの運動方針を発表しております。
家族会代表の横田拓也さんは、三月四日、岸田総理と面会した際に、個人の立場では、北朝鮮への感情は怒り、憎しみ、敵対心、恨みしかありません、それでも、拉致被害者家族の親世代である有本明弘さんと横田早紀江が自分たちの家族との再会を実現させることを優先させるために大きく方針を変えた次第ですというふうに述べられております。まさに苦渋の決断をされたということでありまして、我々は真摯に受け止めなければなりません。
有本明弘さんが九十五歳、横田早紀江さんが八十八歳と、本当に解決への時間的制約が非常に切迫している状況を踏まえ、今回の運動方針を政府としてどのように受け止めているのか、林担当大臣に伺います。
○林国務大臣 御指摘がありました家族会、救う会、今後の運動方針につきましては、今お話がありましたように、先月、家族会、救う会から総理に直接手交された際に私も同席しておりまして、有本明弘さん、横田早紀江さんを始め御家族の皆様から、何としてでも肉親との対面を果たしたいという切実な思いを直接伺ったわけでございます。
そして、今、塚田委員からもお話のあった苦渋の判断だったという御発言を横田拓也家族会代表から直接お聞きしました。私といたしましても、もはや一刻の猶予もないという切迫感を改めて痛感して、拉致問題の解決に向けた強い思いの表れと、厳粛な思いで受け止めたところでございます。
御家族が御高齢となって、解決への時間的制約が切迫している状況であるということは御指摘のとおりであります。委員におかれましても、昨年五月に拉致議連の一員として家族会、救う会と共に訪米をされまして、米国の連邦議会議員や政府高官、有識者に対して拉致被害者の早期帰国の実現に向けて働きかけを行っていただいた。大変ありがたいことだと思っております。
時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であります。岸田総理は、何としても自分自身の手で拉致問題を解決するという強い決意を述べてきております。
私自身、担当大臣として、御家族の差し迫った思いをしっかりと共有しながら、全ての拉致被害者を必ず取り戻すという断固たる決意を持って、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
○塚田委員 是非、岸田内閣としても最重要課題と位置づけていただいておりますので、政府一丸となって拉致問題の一日も早い解決に向けて取り組んでいただきたいというふうにお願いをさせていただきます。
我が国は北朝鮮に対して国連安保理制裁に加えて独自の制裁を科しておりますが、どのような内容なのか、外務大臣、御説明いただけますでしょうか。
○上川国務大臣 我が国といたしましては、関連する国連安保理決議に基づく特定品目の輸出入禁止措置や資金移転防止措置等に加えまして、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取っており、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきております。
我が国といたしましては、引き続き、国際社会と協力しながら、関連安保理決議の実効性の向上に取り組んでいくとともに、日本として取っている措置の実施を徹底してまいりたいと考えております。
○塚田委員 今回、御家族、救う会が、我が国独自の措置を解除してでもという思いの新しい方針を述べられたわけでありますから、拉致問題を含む我が国懸案事項の交渉の進展によっては、国連安全保障理事会制裁決議に違反しない範囲で、我が国がこうした独自の制裁について我が国独自の判断で解除することは可能だと考えておりますが、いかがですか。
○上川国務大臣 北朝鮮への対応についてでありますが、御指摘の我が国自身の措置の在り方を含めまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けまして、何が最も効果的かという観点から不断に検討を行っていく考えでございます。
○塚田委員 検討していただいて、時が来たときには、当然、我が国独自の制裁ですので、我が国の判断で解除するということも交渉としては私はあり得ると思います。そこは深掘りはいたしませんけれども、そういう決意で政府には臨んでいただきたいと思います。
過去に、ストックホルム合意のときに一部の措置が解除されましたが、その経緯について御説明願います。
○上川国務大臣 二〇一四年の七月でありますが、北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げまして調査を開始することから、我が国は、同年五月のストックホルム合意に従いまして、北朝鮮との人的往来に関する措置を解除する、北朝鮮向けの支払い報告及び支払い手段等の携帯輸出届出の下限金額の引下げ措置を解除する、そして、人道目的の北朝鮮籍船舶の日本への入港を認める、こういった措置を取ったところでございます。
○塚田委員 過去も外交交渉の経緯でこうした我が国独自の措置については解除された経緯もありますので、そうしたことも踏まえて、時が来たときにはしっかり御判断をいただきたい、このように思っております。
日朝間の交渉の最大のてこは、日朝国交正常化後の経済協力だと言われております。日朝平壌宣言では、国交正常化交渉において経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議すると明記されておりますが、岸田内閣としては、この日朝平壌宣言の全ての文言の内容について、引き続き有効であるという認識でよろしいでしょうか。
○上川国務大臣 委員御指摘の日朝平壌宣言でございますが、これは、日朝双方の首脳の議論の結果として、日朝関係の今後の在り方を記載した両首脳により署名された文書であり、現在に至るまで北朝鮮側も否定しておりません。
我が国といたしましては、この日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す考えに変わりはございません。
○塚田委員 日朝国交正常化というのは最終ゴールでありますので、それ以前に、拉致問題、そして我が国の懸案事項である核、ミサイルといった問題についても解決していくことが当然前提となりますが、その基本となる日朝平壌宣言については引き続き堅持されていると理解いたしました。
岸田総理は、今日お立ちになるんですかね、今週から来週にかけて国賓待遇で訪米されます。核、ミサイル問題ももちろんありますが、拉致問題の解決については、日朝の首脳が直接話をしていただくことが非常に重要であり、米国の理解が不可欠であります。
横田拓也さんは、四月五日の外国特派員協会の記者会見で、拉致事件を強くアピールし、協力と支援をいただけるよう米国と約束してほしいというふうに述べられております。北朝鮮との交渉について、当然今回の日米首脳会談でも議題になると思いますが、岸田総理と共に訪米されると伺っております上川大臣に、どういった決意で臨まれるかをお聞かせいただきたいと思います。
○上川国務大臣 今般の岸田総理訪米に際しましては、私も諸般の事情が許せば訪米して首脳会談に同席することで準備をしているところでございますが、政治、安全保障、経済、人的交流等を含みます幅広い議論について意見を交わすことが想定されております。
拉致問題を含む北朝鮮をめぐる問題への対応のためには、我が国自身の主体的な取組に加えまして、米国や韓国を始めとする国際社会と緊密に連携することが重要と考えております。
こうした観点から、米国政府から拉致問題について一貫した理解と支持が表明されていることを高く評価しておりまして、私自身、二月の日米韓外相会合などの機会を通じまして、ブリンケン国務長官に対しましても謝意を表明しているところでございます。
米国政府との間におきましては、これまでも、北朝鮮との対話の道が開かれていることについて認識を共有しているところでありまして、総理訪米の機会などを通じて、引き続き、北朝鮮への対応について、米国と緊密に連携して対応してまいりたいと考えております。
○塚田委員 対北朝鮮での外交交渉においては日米の連携、日米韓の連携は大変重要だと思いますので、日米首脳会談においても、また、上川外務大臣にも、その点を踏まえて米国でしっかりと対応いただきたいというふうにお願いをさせていただきます。
私も長年、御家族の皆さんと訪米をしておりまして、最初の頃は拉致問題の認識はそれほど高くなかったんですが、今ではアメリカ政府、議会も日本の拉致問題は大体認識されていて、非常に協力的に対応いただけるような状況になりました。更にそれを深化していきたいと思っておりますし、何よりも解決に向けて引き続き頑張っていきたいと思います。
政府による認定拉致被害者についてお尋ねいたします。
警察庁では、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に係る方々を公表しており、特定失踪者問題調査会も特定失踪者を公表しております。先日、その特定失踪者のお一人である大澤孝司さんのお兄様から面会の御要請があってお会いしました。大澤孝司さんは間違いなく拉致被害者だと家族の皆さんも強く思われていて、なぜ認定が得られないのかという思いを強く持っていらっしゃいます。
特に、こうした拉致の可能性が高い方々が大勢いるわけですが、なぜ拉致と判断されないのか、この点について松村国家公安委員長にお尋ねいたします。
○松村国務大臣 北朝鮮による拉致被害事案が発生して長い年月が経過しているところでございますが、いまだに全ての被害者の帰国が実現しておりません。拉致被害者やその御家族も御高齢になられており、一刻の猶予も許されない状況であると認識いたしております。
警察におきましては、これまで、拉致容疑事案と判断している事案以外にも、塚田委員御指摘の大澤孝司さんの事案も含めまして、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるとの認識の下に、拉致の可能性を含めまして、事件、事故などあらゆる可能性を念頭に、所要の捜査、調査を進めているところでございます。しかしながら、これまでのところ、御指摘の大澤さん事案を含めまして、北朝鮮による拉致容疑事案と判断する証拠や関連情報を得るには至っておりません。
したがいまして、今後とも、被害者の御家族のお気持ちを十分に受け止め、全ての拉致被害者の一日も早い帰国の実現と、拉致容疑事案等の全容解明に向けまして、関係機関と緊密に連携を図りつつ、捜査、調査を推進するよう警察を指導してまいりたい、このように考えております。
○塚田委員 残念ながら拉致と判断されていない方が大勢いらっしゃるということですが、例えばどのような証拠や関連情報があれば拉致と判断され得るのか、御答弁いただけますでしょうか。
○千代延政府参考人 お答えいたします。
まず、北朝鮮による拉致行為とは、国内外において本人の意思に反して北朝鮮当局により行われた、主として国外移送目的拐取、その他の刑法上の略取及び誘拐に相当する行為と考えているところでございます。
その上で、どのような証拠等があれば拉致容疑事案と判断されるのかとお尋ねいただきましたけれども、これにつきましては、個別具体の事案に即しまして判断されるものでございますので、一概にお答え申し上げることは困難ではございますものの、警察におきましては、これまでの捜査、調査を通じまして積み上げた客観的な証拠や関連情報を総合的に判断し、十三件十九人を北朝鮮による拉致容疑事案と判断してまいったところでございます。
今後の捜査、調査の結果、北朝鮮による拉致行為があったことが確認された場合には、速やかに拉致容疑事案として判断することとなる、このように考えているところでございます。
○塚田委員 特定失踪者の方で拉致の疑いが濃厚だという方の思いは、拉致被害者と政府から認定されないと交渉の中で置き去りにされるのではないかという大変懸念を持っていらっしゃるんです。
私は常に、全ての拉致被害者を政府は救出すると言っているので、認定の有無にかかわらず、そんなことはないということを御説明しているわけですが、改めて、政府の立場で林大臣から、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保、即時帰国を目指すという方針を御説明いただきたいと思います。
○林国務大臣 大澤孝司さんのお兄様である大澤昭一さんには、拉致問題担当大臣就任直後の昨年十二月でございましたが、政府主催の拉致問題に関するシンポジウムの機会にお会いをいたしまして、切実な訴えを直接伺いました。
政府としては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するという認識の下で、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしてきております。
引き続き、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。
○塚田委員 そろそろ時間ですので次の質問はできないと思いますが、改めて、今日お話ししたとおり、拉致被害者の御家族は大変高齢化され、もう時間の猶予はありません。政府を挙げて一日も早い全ての拉致被害者の帰国に向けて全力で力強く取り組んでいただきますことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○小熊委員長 次に、中川宏昌君。
○中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。
北朝鮮による拉致問題について、政府は一貫して、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の重要課題として歴代総理が問題解決に全力で取り組んできておりますが、二〇〇二年の十月に五人の拉致被害者の方々が帰国した後、一人の拉致被害者の帰国も実現しておりません。北朝鮮の姿勢は国際社会から厳しい批判を浴び、日本国民の誰一人として納得がいかない状態にあり、本当に許せません。
先ほど塚田委員からもありましたとおり、本年二月二十五日、家族会、救う会として、今後の新しい運動方針が打ち出されました。それは、親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、我が国が人道支援を行うことと、我が国がかけている独自制裁を解除することに反対しないというものです。家族会、救う会として、事態の打開に向け、大きな、そして重い決断をされました。
その中で、昨年の運動方針では、北朝鮮への米支援に座込みをしてまで反対してきた私たちが、その実施に反対しないというところまで踏み込んだ、今年は、万景峰号入港反対デモを行った私たちが、その入港禁止を含む独自制裁解除に反対しないということを決めようと思う、被害者を一日でも早く取り戻すという緊急の目標があればこその決断だとしております。
家族会、救う会としては、更にこう続けております。もし、この期限内に全拉致被害者の一括帰国が実現しなかった場合、私たちは強い怒りを持って独自制裁強化を求める、北朝鮮が抱える食糧難などの人道問題と全拉致被害者の即時一括帰国という私たちの人道問題を一括して解決しようではないかと提案する。このように言っております。どんな思いで解決に向けてこの提案を決意したかと思いますと、胸が張り裂ける思いであります。
この悲痛な思いに対しまして政府としてどう応えていくのか、この点につきまして御見解をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 今御指摘のありました家族会、救う会、今後の運動方針につきましては、先月、家族会、救う会から総理に手交された際、私も同席いたしまして、有本明弘さん、横田早紀江さんを始め御家族の皆様から、何としてでも肉親との対面を果たしたいという切実な思いを直接伺いました。もはや一刻の猶予もないという切迫感を改めて痛感し、拉致問題の解決に向けた御家族や救う会の方々の強い思いの表れと、厳粛な思いで受け止めたところであります。
拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であります。岸田総理は、何としても自分自身の手で拉致問題を解決するという強い決意を述べてきておられます。
私自身、担当大臣として、御家族の差し迫った思いをしっかりと共有しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けまして全力で果断に取り組んでまいります。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。いま一重、この思いというものを重く受け止めていただきまして、あらゆる対策を講じていただきたいとお願いをしたいと思います。
家族会、救う会といたしまして、拉致問題の先送りや風化を図る策動に反対して、世論喚起と国際活動、情報収集で重点項目を挙げた上で、一つとして、我が国政府及び世論への訴え、二つ目として、国際連携の強化、三つ目として、北朝鮮内部への働きかけと情報収集活動として、運動を力の限り行うとしております。
我が国政府及び世論への訴えの中で、政府に救出のための戦略、戦術、道筋、工程表を具体的に明示するよう強く求めております。また、北朝鮮急変事態時などの緊急事態に備えて、救出プラン作成とそのための法的枠組みづくりを求めております。さらに、米国を始めとする各国政府が北朝鮮により強い圧力をかけるように、日本政府の一層の外交努力を求めるとしております。
また、国際連携の強化では、引き続き、米議会内外の有志との連携を強めていきながら、拉致問題を含む北朝鮮人権問題に積極的に取り組む韓国政府への働きかけを行う。さらに、北朝鮮における人権状況に関する国連調査委員会の報告書を最大限活用しまして、諸外国の家族とも協力し、拉致の非人道的実態を国際社会に広めるとしております。
そして、北朝鮮内部への働きかけと情報収集活動としては、北朝鮮の内部情報収集を強化するとしております。
これらの活動につきましてはとても重要であると思います。政府として、このような取組に対してどう支援し、また取り組んでいくのか、見解をお伺いしたいと思います。
○平井政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の家族会、救う会の今後の運動方針につきましては、拉致問題の解決に向けた御家族や救う会の方々の強い思いの表れと、厳粛な思いで受け止めているところでございます。
政府といたしましては、これまでも、拉致問題に関する国際連携や世論の喚起に向けて、政府主催のイベントの機会に御家族に御登壇いただくなど、家族会や救う会を始めとする関係団体と連携してきているところでございます。
今後とも、御家族の気持ちに寄り添いつつ、家族会、救う会を始めとする関係団体とも連携しながら、拉致問題の解決に向けて全力で果断に取り組んでまいります。
○中川(宏)委員 是非寄り添った対応をお願いしたいと思います。
二〇〇二年九月に当時の小泉首相が電撃訪朝しまして、翌月の十月に被害者五人が帰国を果たしました。このとき、当時のアメリカのブッシュ政権は、北朝鮮をテロ支援国に指定し、経済制裁など対決色を強めました。日本、アメリカを始め、北朝鮮の国内事情など、様々な要因により五人が帰国できました。今年、五人の帰国から二十二年になります。この二十二年、様々な取組を国際社会と共に行ってきましたけれども、いま一度、アメリカ、韓国などと更に踏み込んだ対策を講じることが大事で、政府としても力を入れているところと認識しております。
その上で、中国の協力が欠かせないと思います。今、国際社会におきまして人権問題が改めて極めて重要な課題になっております。ウクライナへのロシアの侵略や中東情勢を見ても、人権、人間の尊厳が危機的状況にさらされてしまっております。
さらに、北朝鮮とロシアが、昨年の首脳会談を始め、協力体制を強化し、北朝鮮が兵器を提供し、その見返りにロシアから軍事偵察衛星の打ち上げ技術を支援してもらっているという見方があります。国連安全保障理事会の状況の厳しさもあり、日米韓のより一層の結束が重要で、ロシアに対しても強く即時停戦、撤退を求めていくことが北朝鮮に対しての圧力になると思います。
その上で、日本として、国際社会の安定の基盤として法の支配への取組を更に進め、その中で中国とは忍耐強く対話をし、拉致問題解決に更に協力してもらうことが重要と考えます。
取組と御見解につきましてお伺いしたいと思います。
○上川国務大臣 拉致問題の解決のためには、我が国自身の主体的な取組に加えまして、委員御指摘の米国、韓国、中国を始めとする国際社会との緊密な連携も重要でございます。
米国、韓国との間におきましては、拉致問題の即時解決に向けてあらゆるレベルで緊密な連携を確認しておりまして、私自身、二月の日米韓外相会合におきまして、ブリンケン国務長官及び趙長官に対し、拉致問題について米韓から一貫した支持をいただいていることに改めて謝意を伝え、拉致問題を含みます北朝鮮の人権問題への対応について改めて連携を確認したところであります。
中国との間におきましては、昨年十一月の日中外相会談におきまして、王毅中国外交部長との間で拉致問題を含む北朝鮮情勢について意見交換をいたしました。国際場裏におきまして引き続き緊密に意思疎通していくことで一致したところであります。
引き続き、米国、韓国、中国を含む国際社会とも緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で活動してまいりたいと考えております。
○中川(宏)委員 ありがとうございます。
昨年の四月に北朝鮮に関する日米韓三か国共同声明を発表していただいて、その以降、今、上川大臣からもお話があったとおり、一致して緊密な連携が取れているということでございました。更に一重の緊密な連携の下に、少しでも一歩でも広く門が開けるように、大臣のお取組を是非ともお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、北朝鮮に向けた二波同時放送ですが、再三国会でも取り上げられておりますが、いよいよ令和六年度中にKDDI八俣送信所が廃棄される予定となっております。
北朝鮮による拉致問題は、政府といたしましても、先ほどから再三あるとおり、国政の最重要課題としておりますが、この二波同時放送について、特定失踪者問題調査会、特定失踪者家族会から、二波体制維持ができるようにするための送信機の更新を行うことと、もう一つ、三者協議に政府及び国会のしかるべき立場にある方が同席し、国益の観点から国際放送の今後の運用について検討することという要望が出されております。
能登半島地震におきましても情報伝達に支障が起き、様々な活動にも支障が出ましたけれども、切れ目のない情報伝達がどれだけ大事かということを改めて確認させられました。
二波同時放送の重要性を政府としてはどう認識しているのか。また、一時的に一波になったとき、北朝鮮からの妨害電波に対してどのような策で対応していけばいいのか。また、送信施設の建て替えがスムーズにいくように等、特定失踪者問題調査会、特定失踪者家族会にしっかりと寄り添って知恵を絞って対応していただきたいと思いますが、この点につきましてお伺いをさせていただきます。
○林国務大臣 御質問の「しおかぜ」の二波同時放送につきましては、一波体制でも二波体制でも電波が妨害される可能性はあるということでございますが、二波体制の方が北朝鮮において電波を妨害するために多くの手間がかかると想定されまして、電波妨害への対策として二波体制とすることには一定の効果があるというふうに考えております。
今般の送信設備の移行工事ですが、本年度後半に開始されまして、移行工事期間中は一時的に一波での送信になると聞いておりますが、この作業は、今後とも「しおかぜ」が二波体制で安定的に継続して運用できるようにするための必要な作業である、そういうふうに認識しております。
移行工事期間中に一時的に一波体制となった場合でも、「しおかぜ」が使用する周波数を状況に応じて変更することができるように、無線局を免許する中で複数の周波数を割り当てるなどしておりまして、拉致被害者等に向けた情報発信に支障が生じないよう、適切に対応してまいりたいと考えております。
また、「しおかぜ」の送信設備の移行工事につきましては、KDDI、特定失踪者問題調査会、NHKの三者間で協議が行われているものと承知しておりまして、当事者であるこれら三者間で協議を尽くしていただくことが何より重要と考えておりますが、政府として、「しおかぜ」の担う重要な役割等を踏まえまして、NHK等から適時に状況を確認しながら、機会を捉えて、二波体制による安定的な運用に向けた検討を促しているところでございます。
今後とも「しおかぜ」が安定的に運用されますよう、引き続き三者間による協議の状況を注視してまいりたいと思います。
また、北朝鮮向けラジオ放送ということで申し上げますと、政府自らが北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」及び「日本の風」を運営するとともに、特定失踪者問題調査会との間の業務委託契約を通じまして、「しおかぜ」の放送枠の中で「ふるさとの風」の放送を行うなど、調査会と連携してきておりまして、今後とも、北朝鮮向けラジオ放送の充実強化ができるようにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。
この御要望に対しましては、今お話があったとおり、あらゆる角度から検討を行っていただいているところでございますけれども、あらゆる検討を排除せずに、様々対応していただきながら御要望に応えていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
それでは、最後の質問になりますけれども、北朝鮮との対話についてお伺いしたいと思います。
岸田総理は、昨年五月二十七日の国民大集会で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人権問題、また、首脳会談を早期に実現するべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたいと御発言されたところ、その二日後、北朝鮮は外務次官の談話を出し、日朝両国に互いに会えない理由はないと応えました。
昨年十一月二十六日の国民大集会においても総理から首脳会談の早期実現について言及されましたが、この国民大集会から四か月後の先般三月二十六日、金与正氏が談話で、日本とのいかなる接触や交渉も無視して拒否すると発表しました。金与正氏は、前日の二十五日に、拉致問題は解決済みとの従来の立場を示したことに対して、林官房長官が会見で絶対受け入れられないと発言したことを批判し、過去二回の談話で首脳会談に前向きな姿勢を示してきたことについて、前提条件をつけずに首脳会談を望むとした日本の立場を歓迎しただけだとした上で、日本の立場は改めて明確になったので、日本とのいかなる接触も交渉も無視して拒否する、朝日首脳会談は我々の関心事ではないと発言しました。無責任極まりない姿勢であり、全く理解できません。
この北朝鮮の対応を受け、日本として、拉致問題の全面解決を図るためにどのように対話の糸口を見つけていくのか、お伺いをさせていただきます。
○上川国務大臣 北朝鮮側の発表の一つ一つにコメントすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、岸田総理も繰り返し述べられているとおり、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するという考えの下、日朝間の諸懸案の解決に向けて、首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていく、この考えに変わりはないと承知しております。
そのために、様々なルートを通じまして働きかけを絶えず行ってきているところでありますが、これ以上の詳細につきましては、御質問の点も含めまして、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと考えております。
○中川(宏)委員 ありがとうございました。
総理直轄のハイレベル協議でしっかりやっていくということ、これが非常に大事だと思いますので、被害者の皆様を救うというこの気持ちを、私どもも含めまして、一刻も早い帰国を目指してやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○小熊委員長 次に、渡辺周君。
○渡辺(周)委員 立憲民主党の渡辺でございます。
私は、党の拉致対策本部長を務めておりまして、本日は党を代表して西村さんと質問に立たせていただきます。
拉致問題を含め、ベールに包まれた北朝鮮の情報を得ようとすれば、重要なのは韓国と中国ということになるわけでございます。
韓国については、ここへ来て、前政権から現在の尹政権になって連携が大変うまくいっている。何よりも、拉致の問題について、これから韓国も共に協力していくという姿勢を示しております。大変ありがたいことに、既に二月から、韓国内にいる脱北者に対して聞き取り調査をする際には、日本の拉致被害者の情報、こういうものを見聞きしたかどうかということを韓国統一省の傘下機関は聞き取りを始めたということなんですが、少し懸念すべきは、他国のことですから、なかなか日本の政府がお話ししにくいと思いますけれども、あさって四月十日、韓国では総選挙が行われます。
韓国で行われる総選挙の最新の世論調査ですと、日本と関係改善をしてきた尹政権の与党国民の力よりも、野党、共に民主党と、反尹政権を標榜する祖国革新党という政党が支持を拡大している。韓国というところは、大統領選挙があったり国会の選挙があったりすると、政界の合従連衡が、政界再編がすぐ起きるところですから、非常につかみどころがないんですけれども、国会の勢力図が今のままいきますと、尹政権はなかなか厳しいのかな。
もちろん、政府関係からは、事柄の性質上詳細はと言うでしょうけれども、二元代表制ですので、大統領は変わらないけれども、議会における大統領を支える与党、野党の力関係に変化が生じる可能性がある。その場合、韓国の対北政策というよりも、対日政策ですね。今、非常に友好な関係を示している、そして北朝鮮には厳しい。
その北朝鮮も、金正恩の父親が造った祖国統一の碑をぶっ壊したり、あるいは、開城というところに共同の工場があった、事務所があったのを爆破してしまったり、非常に敵対政策を取って、祖国統一ではなくて、大韓民国、韓国は敵国なのであるという方針を打ち出しておりますが、こうした動きの中で、韓国の国会選挙がどのように対日政策、対北政策に影響を与えると見通していらっしゃるのか、その点について伺いたいと思います。
○上川国務大臣 まさに仮定の状況に関する御質問でございまして、また、他国の内政に関することでもございますので、日本政府としてお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、北朝鮮への対応についてでございますが、韓国を始めとする国際社会との緊密な連携は不可欠でございます。私自身も、本年二月の日韓外相会談及び日米韓外相会合におきまして、趙兌烈韓国外交部長官との間におきまして率直な意見交換を行ったところでございます。
引き続き、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を重ねてまいりたいと考えております。
○渡辺(周)委員 もちろん、まだ国会の院の構成も決まったわけではないので、なかなか仮定のお話はできないと思いますが、ただ、議会の構成がどうあれ、今、政府同士ではこの拉致問題についても一歩踏み込んだ形で協力が始まったわけでございます。何とかここは我々としてももっと大きなパイプにしていきたいと思います。
そこで、今ちょっと触れたんですけれども、韓国統一省の傘下機関は、二月から日本人拉致情報も脱北者からの質問項目の中に入れたということでございます。もうかれこれ二か月になりますが、今のところ、こうした聞き取り情報の中で、何かトピックスといいましょうか、耳寄りな、そして注意に値するような話はもたらされていますでしょうか。その辺はいかがですか。
○濱本政府参考人 お答え申し上げます。
金暎浩韓国統一相が、日本人拉致被害者に関する情報を脱北者から集める方針をプレスに向かって述べたということ、そのこと自体は承知しております。他方、韓国の取組につきまして政府として現時点でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
いずれにいたしましても、政府としましては、引き続き、韓国を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動していきたいと考えております。
○渡辺(周)委員 お答えしないじゃなくて、脱北者から聞き始めて、今のところ何かしら耳寄りな話はあったか、ないか。別に詳細なことは聞いていません。あったか、ないか。やはり希望がないと、何を調べているか分からない、何を聞いているか分からない。本当に調べてくれているのかどうか。そこについてはどうなんですか。ないならないと言ってください。
○濱本政府参考人 繰り返しになって誠に恐縮でございますが、韓国政府の取組につきまして政府として現時点でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
○渡辺(周)委員 だって、緊密に連携すると言っているんでしょう。緊密に連携しているんだったら、それぐらいの情報のやり取りはない方がおかしいんじゃないですか。大臣、いかがですか。
だって、せっかく韓国が、従来調査しなかった、北朝鮮から韓国に逃げてきた脱北者に、あなたは日本人の拉致の情報は何かありませんかということをこれからは聞いてくれる。二か月たって、ないならないでいいんです。だけれども、中身は言えないけれども、いろいろもたらされているとかがないと、本当にこういうことをやっているのかどうか。是非そこだけ。
そういう情報が出てこないと希望が持てない。そこはどうですか、大臣。どうせ同じ答えでしょう。繰り返して恐縮ですがというのは要らないです。繰り返し同じ話をしないように。大臣、いかがですか。
○上川国務大臣 韓国政府によります取組の詳細についてお答えする立場にはございませんが、政府といたしましては、今委員から御指摘の点も含めまして、各種の情報について、平素からその収集、分析に努めているところでございます。
今後の活動に支障を来すおそれがあることから、その具体的な内容についてはお答えを差し控えさせていただくと申し上げたところでございます。
○渡辺(周)委員 そういうふうに答えるなら少し納得がいくわけです。今みたいに、韓国政府のやっている取組については私らは知りませんみたいな話だから、それはおかしくないかと。それだったら、言葉だけの、そんな連携しているなんて言い方はやめた方がいいです。
何でもそうなんです。外交的な問題だから言えないことがあるのは分かっています。私たちも与党にいたことがありますから、経験したことはありますので、そんなことは百も承知なので。ただ、この質疑を見て、もし家族会の方だとか特定失踪者の御家族がいて、せっかく日本と韓国が、以前の文在寅政権のときにはなかったような動きになってきている。これは大事にして、本当に一縷の光でも見えるんじゃないか、光明が差すんじゃないか。
私たちもかつて、めぐみさんを最初に北朝鮮で見たという、北朝鮮を脱北したかつての北朝鮮の工作員の安明進に韓国に何度も会いに行きました。もちろん詳細は言えませんけれども、安明進と会った。向こうでいろいろな話もしました。その話は大使館の方にも当然伝えたから、いろいろな形で政府にはたくさん蓄積されていると思うんです。言えないことは分かっているけれども、そのストックがあって、そのストックの上で韓国の捜査当局あるいは国際社会に向かって、ここというときには情報を出していただきたいと本当に思うんです。
ここで時間を取りましたけれども、あわせて、産経新聞の二月六日の記事ですけれども、韓国に逃げた脱北者の八三%が外部の映像を視聴したことがある。外部の映像というのは、韓国のドラマなんかを見た。北朝鮮で見つかったら、最悪の場合は公開処刑される。こんなことでもあの国は平気で処刑するような恐ろしい国ですが、そんな中でも韓国の映像を見た、あるいは音楽を聞いたという方があるんです。
統一大臣の金暎浩さんは、大臣になる前はユーチューバーとしても対北政策について発信している。最近、ユーチューブで北朝鮮内部の映像が、私たちが手元に持っているような、会館にあるパソコンでもユーチューブで普通に見られるようになった。びっくりするのは、北朝鮮の脱北者が連れ戻された、あるいは、政治思想犯がそこで大変な取調べを受けている、こんな映像は今まで出たことがなかったんです。ところが、最近は、脱北者が持ち出しているのか、どういう手段か分かりませんが、西側でSNSを通して北朝鮮の実情をだんだん見ることができるようになった。ひょっとしたら、ユーチューブの再生回数によって収益になる。要は、極端なことを言えば、生活費になる、あるいは、懐に入ることによって金になるんだったらということで、相当規律も緩んでいるんじゃないかと思うんです。
それだけに、これから韓国も、外部から情報を注入して、それを拡散するということをやるということもこの統一大臣はおっしゃっていましたけれども、先ほども公明党の委員から出ていました、端的に答えてください。日本から発信している「しおかぜ」はだからこそ大事なんじゃないか、必要なんじゃないか。先ほど林担当大臣がおっしゃった促していますというのは、一か月前に私が予算委員会の分科会で質問したときと同じ答弁なんです。
北朝鮮にしてみると、二波を追いかけていて、電力の出力も厳しいあの国において二波をブロックできないから、だから二波で対応することが必要だと言っているんですが、もう一回伺いますけれども、だからこそ、何とか「しおかぜ」の二波体制は必要じゃないですか。もう一回確認します。いかがですか。
○林国務大臣 先ほど中川委員にお答えしたとおり、北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の重要課題であると認識しております。
「しおかぜ」でございますが、安定的な放送体制整備については、二波体制による安定的な運用に向けて、KDDI、特定失踪者問題調査会、NHKの三者間の協議の状況を注視しつつ、拉致被害者等に向けた情報発信に支障がないように適切に対応してまいりたいと考えております。
○渡辺(周)委員 もう一点。SNS社会の功罪の功の部分として、先ほど申し上げたような、USBを風船にくくりつけて送ったりして、昔は文書を書いて風船を送ったりもしていましたけれども、北の中に西側の情報を入れるということで、西側への憧れとか、北朝鮮で聞かされたことと全然違うじゃないかということで、実は、脱北してきた人たちが普通にユーチューブを上げているんです。韓国にいるユーチューバーが日本に旅行に来て、脱北者が見た日本旅行なんというのがいっぱいあるんです。脱北者の人たちが、金正恩のあんな十三歳の娘が後を継ぐのかみたいな、国内で言ったらそれこそ処刑されるようなことを平気でユーチューブの中で言っているんです。随分思い切ったことを言っている。脱北者の方々が韓国内でユーチューブを開設してしゃべっているんです。
例えば、先ほどは、韓国の機関がやっていることについてはお答えしないと言っていました。だけれども、これだけ情報がだだ漏れしていますから、韓国政府内の脱北者と韓国政府やNGOを通してでも我が国としてもどんどんパイプをつくっていったらいいと思うんですけれども、いかがですか、大臣。
○上川国務大臣 政府といたしましては、今委員御指摘の点も含めまして、各種の様々な情報につきまして平素から収集、分析に努めているところでございますが、今後の活動に支障を来すおそれがあるということでございまして、その具体的な内容につきましてはお答えを差し控えさせていただきます。
政府としては、引き続き、韓国を始めとする国際社会とも緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現のため、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいりたいと考えております。
○渡辺(周)委員 緊密に連携して情報を収集してと。この間五人の方が帰ってきてからもう二十二年たっているんです。その間誰も帰ってこないです。そのときに帰ってきた方々が北朝鮮にどのように拉致されて、どんな生活をしていて、どんな思想教育をされて、どういう工作員に仕立て上げられようとしていたか、こういうことはこの方々でないと分からないし、こんな非人道的なことが行われたということは、私は、ストックするだけじゃなくて、一遍どこかのタイミングで、世界に向かって北朝鮮という国はこんな恐ろしいことをする国だということをやらないと、世界の中で北朝鮮のこの問題はどんどん風化しますよ。
今、御家族の方々は、残念ながら横田滋さんも亡くなってしまった。残っていらっしゃる方々は親世代がお二人しかいない。有本さんと横田早紀江さんと。今、拉致で五人帰ってきた人たちもそれぞれお年になってきます。この方々の証言が最も大きな証拠ですから、私は、どこかのタイミングで世界に向かって出して、もう一度世界から糾弾されるような、北朝鮮という国の実像を世界に知らしめることも考えた方がいいのではないかと思います。
ちょっと長くなりましたが、もう一つは中国です。昨年七月に改定された反スパイ法というのがあります。鈴木英司さんという方が逮捕されました。本も出ています。
この方は、心当たりがなくて、一体何のことかというと、張成沢という金正恩のおじに当たる人が処刑された、こんな話を知っていますかということを中国で話をしたら、それが問題視されて、結局六年間も投獄された。日本の大使館はそういう意味ではいろいろ対応してくれたけれども、法の支配がないような国ですから、結果的に、何の容疑で身柄を拘束されたのか分からないまま、反スパイ法で捕まった。つまり、中国当局に一回目をつけられたら、中国の国家の安全に危害をもたらしたというこじつけで身柄拘束されるんです。
ですから、今からは、中国の研究者とかジャーナリストとか経済や金融のアナリストが中国の経済の実態はどうなんだということを調べただけで、下手をすると反スパイ法に引っかかる。
ましてや、中国経由で西側に、韓国やアジアのどこかの国を経由して脱北した人たち、中国にはたくさん朝鮮族も、私も行きましたけれども、北朝鮮の隣にもあります。そんなところもそうですけれども、例えば、何かしら情報収集しようとしたり、北朝鮮の国内の動きを探ったり、もっと言えば、脱北者の援護や救出をしようとしたら大変危険なことになるんです。張成沢の話をしただけで六年間投獄されますから。
この点について、反スパイ法について日本の政府はどう対応するのかということについて、また改めての委員会でもやりたいとは思いますが、北朝鮮情報を韓国ではある程度協調してやれるけれども、中国ではますます厳しくなる、こんな中で中国の反スパイ法の中でどうするか、どのようにお考えでしょうか。
○上川国務大臣 中国のいわゆる反スパイ法についてでありますが、これまでも中国側に詳細について説明を求めるとともに、法執行及び司法プロセスにおきましての透明性の確保を働きかけてきているところでございます。同時に、改定の反スパイ法の施行を受けまして、外務省の海外安全ホームページにおいては注意喚起の内容の更新を図るなど、在留邦人への注意喚起を行っているところでございます。
引き続き、中国側への働きかけを、在留邦人へのきめ細やかな情報発信、注意喚起を行いつつ、安全確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○渡辺(周)委員 警察にも伺いたいんですが、三月二十六日に、北朝鮮が、日本人のIT技術者に成り済ましてオンラインで業務を受注し、これが外貨稼ぎに使われている。つまり、ネット上ですから、オンライン上ですから分からない。それを見ながら、日本のIT技術者ということで契約を結んで、ただし、頻繁にアカウントを変えるとか口座も変えるとか、極めて怪しい段取りになっているようですが、こういうものを使って外貨稼ぎをしている。
今までは暗号資産を盗んだり、最近では、まさにロシアに武器を売って、ロシアで生産している数と同じぐらいのものが北朝鮮からロシアに行っているのではないかという分析もあるわけですけれども、あの国が何でこんなに何度も何度もミサイルを飛ばしてくるのか、何でそんなことができるかというと、とにかく非合法な金の稼ぎ方をしている。
是非、今挙げたような、日常に潜んでいる、IT技術者に成り済ましてオンラインで業務を受注して外貨を稼ぐ、こういう問題に対して、特殊詐欺というよりも、北朝鮮という国の国家を挙げた特殊詐欺みたいな話ですから、これからどう対応していくのか、どう見分けるように注意喚起するか、その点について警察に伺いたい。
○千代延政府参考人 お答えいたします。
手口に関する着眼点の部分でございます。
注意喚起の中で、例えば、不自然な日本語を用いるなど日本語が堪能ではない。また、そのためテレビ会議形式の打合せに応じないですとか、一般的な相場より安価な報酬で業務を募集しているなどの手口を紹介しているところでございます。
○渡辺(周)委員 それは是非徹底して、それはひょっとしたら北朝鮮の外貨稼ぎかもしれませんと警告をしっかりと出していただきたいと思います。
最後に、先ほど塚田委員も触れました、アメリカに行かれて当然拉致の問題も議題にされるということですけれども、訪米の帰りにバイデン大統領の親書を携えて北朝鮮に電撃訪問する可能性というのはありますか。ポーランドに行ったことを思えば、そのままアメリカから北朝鮮に電撃訪朝。これは、拉致の問題ではなくて、あくまでもバイデン大統領の親書を携えてまいりましたという理由で行くことは考えられないですか。そんな可能性はあるんでしょうか、いかがですか。
○上川国務大臣 北朝鮮との間の諸懸案解決と日朝間の実りある関係樹立は、日朝双方の利益の合致とともに、地域の平和と安定に大きく寄与する、こうした考えの下で、日朝間の諸懸案の解決に向けまして首脳会談を実現するという趣旨で、総理直轄のハイレベルで協議を進めていく旨を繰り返し総理は述べているところであります。
今委員の御指摘がございましたけれども、これ以上の詳細につきましては、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるということで、差し控えさせていただきたいと思っているところでございます。
○渡辺(周)委員 実は、三月十九日に岸田総理の日程が一日ぽっかり空いている、一部のマスコミが、この日に電撃訪朝するんじゃないかといって、ちょっと緊張が走っていたことがございました。何が起きるか分からない。ですから、今のお話を聞くと、ひょっとしたらアメリカの帰りに北朝鮮、平壌に行くことだって全くゼロじゃないのかなと思いました。
いずれにしましても、まず最初はとにかく対話をしなければ、とはいいながら、交渉したたかな北朝鮮にゆめゆめだまされないように、我々も、いろいろ注視をしながら、拉致問題解決については全力を挙げていくことをお約束申し上げまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○小熊委員長 次に、西村智奈美君。
○西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。
先ほど渡辺委員からもありましたとおり、二〇〇二年に五名の拉致被害者が御帰国なされてからもう二十二年、どなたもお帰りになっておられません。進展が見られない。本当に、関係者の皆さんは、一ミリも動いていないというこの状況に大変ないら立ちを持っておられることだと思います。
政府におかれては、私はやはり、この間の取組について検討し、検証し、そして再評価すべきではないかというふうに考えておりまして、その考えから二点質問したいと思っております。
一つは、昨年の五月に私が予算委員会で岸田総理に質問した、田中実さんと金田龍光さんについて伺いたいと思います。
繰り返しになりますけれども、このお二人が北朝鮮に入国していたというふうに、北朝鮮から日本に対して二〇一四年の時点で伝えたというような報道が、二〇一八年に共同通信でなされたわけであります。ところが、このときに二人の生存情報を非公表にするという判断を政府はいたしまして、このことについては当時の安倍総理も了承していたということが記事に記載はされておりました。
しかし、その後、二〇二一年八月、当時の拉致問題担当大臣であった古屋圭司議員、それから二〇二二年九月、斎木元外務次官がそれぞれインタビューに答えられて、そういった報告書が実際に北朝鮮から伝えられたんだけれども、それを受け取らなかった旨のことをインタビューで述べておられます。
私は、昨年の予算委員会で、このお二人がインタビューで話した内容は、政府として、事実ですかというふうに質問したんですけれども、岸田総理は、今後の北朝鮮との交渉に影響を与えるため答弁を控えるというふうに五回繰り返されました。
この答弁から確認をしたいと思います。総理は、このときに、ストックホルム合意以降、北朝鮮の特別委員会による調査などについて、北朝鮮側から調査報告の通報はなく、報告書も提出されていないと答弁しておられたんですけれども、報告書が存在していたという事実はありますか。
○上川国務大臣 ただいま委員からの御指摘にありました田中さんや金田さんを含みます北朝鮮による拉致被害者、また拉致の可能性を排除できない方につきましては、平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的内容や報道の一つ一つにつきましてお答えすることは差し控えさせていただいておりまして、この立場は引き続き維持すべきものと考えているところであります。
その上で申し上げるところでございますが、ストックホルム合意以降、北朝鮮の特別委員会による調査につきまして、北朝鮮から調査結果の通報はなく、報告書も提出されていないものと承知をしております。
○西村(智)委員 私の質問にはお答えいただいておりません。提出をしていないということは一旦ちょっと受け止めつつも、報告書が存在していたのかということについては、大臣も、また上川大臣もすり替えの答弁をされておられますし、肝腎のことになりますとやはり答弁を控えるということですね。
であるとすれば、この二〇二一年と二〇二二年の古屋議員及び斎木元外務次官は本当に悪影響を与えるような発言をしたのかどうかということなんです。お二人はその後の交渉に悪影響がないと思ったから、このような発言をされたのではありませんか。
○上川国務大臣 繰り返しになって大変恐縮でございますが、田中さんや金田さんを含みます北朝鮮による拉致被害者、また拉致の可能性を排除できない方につきましては、平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的内容や報道の一つ一つについてお答えをすることは差し控えてきておりまして、この立場は引き続き維持すべきものというふうに考えております。
その上で、日朝間のやり取りの詳細につきまして明らかにすることは、今後の対応に支障を来すおそれがあるということから、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
○西村(智)委員 もう一度だけ伺います。
古屋議員それから斎木元外務次官の発言は、その後の北朝鮮との交渉に悪影響になっているのでしょうか。
○上川国務大臣 北朝鮮に対しましては水面下を含めまして様々な働きかけを行ってきているところでございます。こうした取組を進めるに当たりましては、具体的なやり取りの詳細を明らかにいたしますと、例えば北朝鮮側が今後の日本側とのやり取りをちゅうちょするなど、意図しない影響が出る可能性は排除されないものであります。
全ての拉致被害者の安全確保また即時帰国、真相究明を目指すとの政府としての考え方の下、今後の北朝鮮とのやり取りに支障を来すおそれがあることから、その詳細についてのお答えを差し控えてきているところでございます。
○西村(智)委員 もちろん、北朝鮮が例えば交渉においてうそをつく可能性や謀略を謀るなどの可能性は十分考えられますし、それを踏まえた上で、今後、日本政府は、これからも、やってもらっていると思いますけれども、対応されているというふうに思います。
しかし、金田さんそれから田中実さん、この二人、実は日本国内に身寄りがいらっしゃらないというふうにも報道されているんですね。であるというこの背景、お二人の背景が、報告書を日本政府が受け取らなかったということにあるのであれば、これは私は本当に大変な問題だというふうに思います。
同時に、お二人あるいはお一人に一時帰国の意思もあるというふうに伝えられたということでもありまして、本当に、当時の政治判断だけでそういったお二人のお気持ちなどが一方的に封じられたということであれば、余りにも非人道的、冷酷な判断であるというふうに私は申し上げざるを得ません。
客観的に見て、お二人を日本政府は見捨てたのではないかというふうに見えるんですけれども、どうでしょうか。
○上川国務大臣 田中さんや金田さんを含めまして、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保そして即時帰国、真相究明を目指すというのが政府の考えでありまして、田中さんや金田さんを見捨てるという御指摘は当たらないと考えております。
政府といたしましては、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいる所存でございます。
○西村(智)委員 仮に田中さんや金田さんが御帰国なされたからといって、日本政府あるいは日本国民がそれで北朝鮮の拉致問題を幕引きにするなどということは誰も考えないですよ。私も新潟一区選出の議員です。横田めぐみさんが拉致された現場は選挙区です。そういった中で、同級生の皆さんも、本当に、一日千秋の思いで待っておられるわけです。仮にこれで幕引きされるなんということは絶対にないというふうに私は確信を持って申し上げることができます。
なおかつ、二十二年帰ってこられていない。外から見ると、やはり交渉が全く進んでいないという膠着状態がずっと続いているわけです。何か交渉の端緒を、糸口をつかむためにも、私はこのお二人に関する報告書をきちんと確認して、お二人の生存確認や意思確認などを是非していただきたいと思います。もうこれ以上答弁は求めませんけれども、是非お願いしたいと思います。
次に、これも私の、新潟県の話になりますけれども、大澤孝司さんの件について伺いたいと思います。
先日、お兄様の大澤昭一様、新潟県内の選出国会議員のところを全員回るんだというふうにおっしゃって、何とか拉致被害者として認定していただきたいという切なる御要請をお受けいたしました。お兄様も御高齢になっておられるんですけれども、当時二十七歳で行方不明になった大澤孝司さんも、もう既に七十七歳ということでございます。
林大臣は、認定の有無にかかわらず、先ほど上川外務大臣もおっしゃいましたけれども、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて、全力で果断に取り組むと所信を述べておられます。第二次安倍政権以降、全ての拉致担当大臣が同じような文言で所信を述べておられますけれども、この間、認定の有無にかかわらず、どのように拉致問題に取り組んでこられたのか、伺います。
○林国務大臣 平成二十五年一月に、拉致問題対策本部で拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策というのを決めております。この方針におきまして、「拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす。」と明記をしておりまして、その上で、二に列挙された八つの具体的施策というのがございますが、この方針の下で実施をされるものとされております。
この具体的なやり取りについて申し上げることは差し控えますが、政府としては、拉致被害者として認定された十七名の方以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下で、拉致問題の解決に向けた方針と具体的施策に基づきまして、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のため、全力を尽くしております。拉致に関する真相究明及び拉致実行犯の引渡しを追求し続けております。
私も、この職に就任直後の昨年十二月でございますが、大澤孝司さんのお兄様である大澤昭一さんを含めて、拉致の可能性を排除できない行方不明者の御家族ともお会いして、切実な思いを伺ったところでございます。
今後とも、御家族の気持ちに寄り添って、情報提供そして要望の聴取などなど、丁寧な対応に努めてまいりたいと思っております。
○西村(智)委員 認定ということに関して申し上げれば、田中実さんが拉致被害者として認定されたのが二〇〇五年、松本京子さんが認定されたのが二〇〇六年、それ以降、もう二十年近く、どなたも、一人の新たな認定もなされておりません。
そういう前提で、今大臣からどういうふうに取り組んできたかをお答えいただけなかったのは本当に残念ですけれども、これから具体的に交渉するという場合に、どういう交渉のやり方になるのか、大澤孝司さんの名前の入った名簿が交渉のテーブルの上に一緒にのって、対象ということになるのかどうか、教えてください。
○上川国務大臣 政府といたしましては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしていく考えでございます。
それ以上の詳細につきましては、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあることから、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと思っております。
○西村(智)委員 差し控える答弁ばかりですと、本当にこの拉致問題対策特別委員会の意義というものにも関わってまいりますので、是非、お話しいただけるところは御答弁いただきたい。
今日は本当に残念でしたけれども、果敢な、まさに果敢な取組を強く求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○小熊委員長 次に、和田有一朗君。
○和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。
随分といろいろな議論が続きました。そして、聞く側もお答えになる側も真剣勝負でございます。非常に大事な時期の拉致特だと私も思っております。ここで我々がお聞きすること、皆さんがお答えになること一つ一つが大変大事な意味を持っていると思いますので、私のような者が聞かせていただくのも、非常に知識も浅はかですし、あれですけれども、しっかりとお聞きしたいと思うんです。
もう既にいろいろな議題が出てまいりました。そんな中で、先ほどお話しになりました金田さんも田中実さんも、私の小学校、中学校の先輩でございます。有本恵子さんは、私にとりまして、私は学部は早稲田ですけれども、大学院は神戸市外国語大学、有本恵子さんが、大学と大学院で違いますけれども、学校という枠で見れば先輩に当たります。他人事とは当然私も思えない。
そういう中で、今、この拉致の問題は非常に剣が峰に差しかかってきていると思います。
その中で、まず最初に、北朝鮮との交渉の現状であったり交渉方針についてお伺いをいたします。
○上川国務大臣 我が国の一貫した方針でありますが、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものでございます。
岸田総理も繰り返し述べているとおりでありますが、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与する、そうした考えの下、日朝間の諸懸案の解決に向けて、首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルで協議を進めていく考え、この考えに変わりはございません。
そのために、様々なルートを通じまして働きかけを絶えず行ってきているところでありますが、これ以上の詳細につきましては、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにすることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
○和田(有)委員 拉致、核、ミサイルを包括的に、そして首脳会談を目指す、こういう言葉だったんですが、その中で、一昨年十月二十三日の国民大集会で、岸田総理は、拉致問題は時間的制約のある人権問題だ、そういうことを申し上げられました。そして、報道ベースですが、櫻井よしこさんとのインタビューを受ける中で、拉致問題は別次元として扱うものなんだという表現をなさいました。
それを受けて、昨年の二月に、家族会、救う会の皆さんは、断腸の思いでしょうけれども、親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、我が国が人道支援を行うことに反対しないという運動方針を決めました。ここから、拉致問題というのは別次元だということにステージが動き始めるんだと私は思うんです。そうなると、今度は、その方針を持って、家族会や救う会の皆さんもアメリカに渡り、米政府や議会にその方針を説明し、理解を得ていく。
昨年の五月二十七日の国民大集会で、今度は、岸田さんは、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできないと表現を強めた上で、首脳会談を早期に実現して、私直轄のハイレベルな協議でやっていく、こういう発言に至るわけです。今外相がお答えになった流れです。その中で、そうすると、僅か二日後に、今度は北朝鮮からボールが返ってくる。こうやってずっとキャッチボールが始まっていくわけです。動いていなかったかのように見える交渉が動いていくわけです。
その中で、今年三月になって、突然北の言動が変わり始めます。いろいろなことで、言葉は悪いですけれども、我々からいうと難癖をつけ始めるわけです。しかし、よく精査をしてみると、目の前におられる林長官にせよ、総理にせよ、言っていることは何一つ変わっていないんです。実は変わっていないんです。
ということは、これは何だろうと私、素人目で考えてみると、要するに、この慌ただしい北朝鮮の動きというのは揺さぶりをかけてきているのではないかと私は個人的に思うんです。そういう状況がある中で、やはり今私たちは安易に譲歩はしてはいけない、基本線として絶対に譲歩はしちゃいけない、そう思うんですね。
そういう中で、しかしながら、前に話を進めていくためには、いろいろなタイミングを計らなければいけませんし、また枠組みもつくっていかなければならないと思うんです。例えばの話、一括して全員の被害者が救出されるならば人道支援は行ってもいい、そうならば、そのタイミング、枠組みというのもつくっていかなければならないと私は思うんですが、そういう考えについていかがお考えになりますでしょうか。
○上川国務大臣 政府といたしまして、今委員の方から御説明があったことに係る北朝鮮側の意図とか狙いについてということで御質問があったかと思いますが、そういうことにつきまして述べる立場にはないということでありまして、コメントすることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
○和田(有)委員 交渉中、交渉のことでありますから、機微なことですから、あした行きますよとか、それは当然、そんな答えはあるわけないですし、こう言ったらこうでしょうということはないでしょうけれども、やはりありとあらゆることを想定して、受け止められる状況というものはつくっていただきたい、このように思うんです。
一点、ちょっと私、せっかくこの場に来たので聞いてみたいなと思うことがありまして、せんだって、FIFAワールドカップアジア予選で、北朝鮮では、日本のサッカー選手は伝染病が蔓延しているから来てもらっちゃ困る、こういうことで別のところに行って試合しよう、こういう話が出てきました。
先ほどの渡辺委員の質問の中でも、北朝鮮に行くんじゃないですかという話が出ましたが、総理が北朝鮮に行くとなったら、伝染病のことはどう彼らは言うんでしょうかね。こんなことを質問にするのかとお叱りを受けるか分かりませんが、何かこのことについて思うことがありましたらお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 仮定に基づいた北朝鮮側の対応についての御質問でございまして、政府としてお答えする立場にはございません。
○和田(有)委員 そうでしょうけれども、急遽、今日ワクチンを総理が打っておられたら行くんだろうということになってしまいますから、そんな話はどうでもいい話でございます。
そこで、これは交渉事でありますから、交渉をしている中でいろいろな情報のやり取りが当然あると思います。向こうからもたらされる情報とこちらが出す情報というものが当然行き違うこともあるだろうと私は思うんですね。
それは、何でこんなことを言うかというと、かつて、生きているはずの人のことを死んだと言い、そして、全く違う人の骨まで出してくるというような国ですから、そういう意味で、そういう相手と交渉するわけですから、まさにこちらが持って臨んでいる情報と向こうの情報が食い違ってくることがある、そういうときにどう対処するのか、きちっとシミュレーションが当然できていると思うんですが、その点についていかがでありましょうか。
○上川国務大臣 今の御質問につきましても、そういう場合にはどうなのかという、ある意味では今後の対応についての御質問、まさに仮定の質問ということでございますので、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
○和田(有)委員 推して知るべしの答弁でありますが、しかし、そういったことも前提として物事は構えておかなければならないということを私は申し上げたいのであります。
そこで、今の話、お聞きしている部分の最終的な私の確認なんですけれども、岸田さんがもしも訪朝するなら、いや、訪朝せずしてどこか第三国で会うかも分からない、そういうときに、別次元の段階として、この拉致問題というのは核、ミサイルとは別次元だという状況になってきておりますから、私はそう取るんですけれども、そうじゃない、そうとも言い切れない、何にもお答えにならないでしょうけれども、そうなったときに、訪朝をするために、あるいはトップ会談をするために人道支援をする、独自制裁解除をするという譲歩を一部分であっても先に行うことはないですよね。そのことを確認したいんです。
もう一点、北朝鮮が認定あるいは認定にかかわらず全ての被害者を返すならば、返してきたならば、別次元の扱いとして人道支援や独自制裁解除を行うというメッセージを発出することが私は必要ではないかと思うんです。
私どもの党も、日本維新の会も党の一つの考え方を出しました。今回三項目にまとめたんですけれども、その中で、我が党は、拉致問題が解決する場合、核とミサイル問題の解決に先行して、北朝鮮に対する人道支援を検討するという、私たちは党の方針案を出しました。これは、言葉は悪いですけれども、食い逃げされちゃいかぬということです。
とにかく、人道支援や独自制裁解除というのは、訪朝するために、トップ会談をするための作業ではない、日朝国交正常化のための作業ではない、そのことを確認したいんですが、いかがでしょうか。
○上川国務大臣 まず、我が国の一貫した方針ということで改めて申し上げたいと存じますが、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すというものでございます。
その上で、仮定の状況についての御質問についてお答えすることは差し控えさせていただきますが、これまで、岸田総理御自身、条件をつけずにいつでも金正恩委員長と直接向き合う決意を繰り返し述べてきているところでございますが、これは、北朝鮮との間の諸懸案の包括的な解決に向けまして、相互不信の殻を破り、金正恩委員長と直接向き合う決意をより明確な形で述べたものと承知をしております。
そうした方針の中で、これまでも、またこれからもしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○和田(有)委員 次の質問に移ります。
総理はこれまで特定失踪者の家族の方にはお会いになったことはございません。なぜでしょうか。その点についてお伺いをいたします。
○林国務大臣 政府といたしましては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在する、こうした認識の下で、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保そして即時帰国のために全力を尽くしております。
その中で、拉致被害者の認定を含めて、北朝鮮側に反論する材料を与えないよう対応しているところでございまして、拉致の可能性を排除できない行方不明者の方々の御家族に対しては、拉致問題担当大臣である私がお会いしてお話をお伺いさせていただいております。要望の内容等については総理にも報告をしております。
今後とも、御家族の気持ちに寄り添って、丁寧な対応に努めてまいりたい、そう考えております。
○和田(有)委員 おっしゃる意味は分かるんですけれども、特定失踪者の御家族の皆さんも、私たちは置いていかれているのではないかというような思いに駆られることもある。そういう意味で、担当大臣がお会いになって、寄り添って、その気持ちを総理にも伝える、こう申し上げましたが、より一層、御家族の皆さんに寄り添っていただきたい、気持ちを酌んでいただきたい、このように思います。
次に移ります。先ほども出ましたが、「しおかぜ」の放送のお話でございます。
先ほども渡辺先生が随分と細かく御説明なさいましたけれども、「しおかぜ」を放送しているのはKDDIの八俣送信所ですか、ここの機械でやっているわけですね。実は、KDDIが使っている機械を「しおかぜ」が使って、出すというようなことなんですけれども、先ほど何波あって何波という説明までしてくださいましたので、私はもうしませんけれども、設置から三十六年たって、百キロワットの二つのやつをもう閉じて一つにしようか、こういう話で。
世界で見ると、電気通信連合というもので分かる周波数というのは、BBCは二百五十八波もある、VOA、アメリカは四百六十三波、中国は七百六十三波、KBSは百九波、日本、NHK、九十一波。ちなみに、台湾も十一台の機械で放送しているそうです。
やはり二波でやるから妨害電波が出ても届く、先ほど御説明があったとおりでございまして、そういう状況がある。この二波を、二台の機械を更新しようと思ったら、二機で十二億円程度だそうですね。A、B、C、D、E、F、Gとあって、FとGというものが対象なんですけれども、この十二億円程度、政府が追加補助金というものをNHKに出して、それで造り替えるというか更新するのが私はいいのではないか。
十二億円、それは我々庶民から見たら大きなお金ですけれども、国家でこの大事業をやろうとする中では、私はやはりあってしかりお金ではないかと思うんですが、その点、いかがでございますでしょうか。
○林国務大臣 「しおかぜ」の送信設備についてでございますが、短波放送施設を所有、管理するKDDI、それからこの施設の賃借人であり免許人の特定失踪者問題調査会、そして同様に施設の賃借人であるNHKの三者間の取決めに基づき運用されていると承知しておりまして、当事者であるこれら三者間で協議を尽くしていただくということが何より重要だと考えております。
政府としては、「しおかぜ」の担う重要な役割等を踏まえて、三者間の協議の状況を注視しつつ、拉致被害者等に向けた情報発信に支障がないように適切に対応してまいりたいと考えております。
また、政府においては、自ら北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」及び「日本の風」を運営するとともに、特定失踪者問題調査会との間の業務委託契約を通じまして、「しおかぜ」の放送枠の中で「ふるさとの風」の放送を行う等、調査会と連携してきておりまして、今後とも、北朝鮮向けラジオ放送の充実強化ができるようにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○和田(有)委員 ただ、先ほどの議論の中にもありましたけれども、この放送機器の話は、単に「しおかぜ」だけの話ではないと私は思うんですね。日本が世界に対してアピールをし、工作活動をしていく、そういう作業にとっては大変大事な機器だと思うんです。そういう意味も念頭に置いて、国際放送のための機械の整備というものはやっていくべきだ。
十二億円ですからね。それは、何度も言うように、我々個人から見たら途方もないお金ですけれども、この日本国が国際社会で名誉ある地位を占めていき、問題解決をするためには、やはりあってしかりお金だと思うんですよ。十二億円をつけて、新たな機械を政府が整備するというか、そういうことをやっていただきたい、このように私は思います。
もう一つ、この「しおかぜ」のことでお聞きしますが、「しおかぜ」の番組の中では、総理はマイクを握っていらっしゃらないと思うんです。やはり、総理自らマイクの前に立って、そして、「しおかぜ」の中で、拉致被害者の方に、認定、未認定、それはラジオですから、誰でも聞けるんですから、全ての人に対して話しかける、そして、我々はあなたたちを見捨てていない、必ず連れて帰るということをマイクの前に立って語るべきだと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 北朝鮮内への情報伝達手段が限られている中で、拉致被害者等の日本人、北朝鮮市民、そして北朝鮮当局に対して、日本政府や日本国民、さらには国際社会からのメッセージを伝達する手段として、北朝鮮向けラジオ放送は極めて効果的であると考えております。
こうした観点から、日本政府は、自ら北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」を運営してきておりまして、その中で、国民大集会での挨拶等の岸田総理の肉声を発信してきております。また、朝鮮語での放送である「日本の風」においても、岸田総理の発言を翻訳して発信してきております。
さらに、特定失踪者問題調査会との間の業務委託契約を通じまして、「しおかぜ」の放送枠の中でも「ふるさとの風」の放送を行っておりまして、岸田総理の肉声を放送いただいておるところでございます。
今後とも、調査会と連携して、ラジオ放送による北朝鮮内への情報発信を積極的に行ってまいりたいと考えております。
○和田(有)委員 そういう、集会でしゃべったことを流すとかどうこうではなしに、マイクの前に立って、相手を思いながら、そして相手に語りかけるということが私は大事だと思います。是非とも、総理にはマイクの前に立って、何なら生放送で、あれは生放送じゃないんでしょうけれども、テープに取ってやるんでしょうけれども、やはり相手を思いながら、北の大地にとどめ置かれている皆さんに向かってしゃべりかけるということを是非ともやっていただきたいということをお願いしておきます。
最後の質問に入ってくるんですが、前回の拉致特でも、私、いろいろなことを聞こうとして、いろいろなことをお伺いすると、この法律に基づいたらあっちの役所です、このことはあっちの役所ですとたらい回しにされる。まるで何か昔の区役所か何かに行って、何か聞いたらあっちに行ってくださいということを言われているみたい。どうも聞いていると、法律の仕組みが今のこの状況の中でのものになっていないような気がする。
拉致被害者救出に向けたきちっとしたトータルな法律を整備していく必要があると思うんですが、まず、この点についてどうお考えになりますでしょうか。
○林国務大臣 拉致問題は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題でありまして、拉致という未曽有の国家的犯罪による被害者を救出することは、法律の規定の有無にかかわらず、国としての責務であると認識をしております。
その上で、拉致被害者の救出を直接的に規定しているものを申し上げますと、まず、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律、この第二条第二項におきまして、「政府は、北朝鮮当局によって拉致され、又は拉致されたことが疑われる日本国民の安否等について国民に対し広く情報の提供を求めるとともに自ら徹底した調査を行い、その帰国の実現に最大限の努力をするもの」とされております。
また、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律第三条一項でございますが、「国は、安否が確認されていない被害者及び被害者の配偶者等の安否の確認並びに被害者及び被害者の配偶者等の帰国又は入国のため、最大限の努力をするものとする。」こういうふうに規定をされております。
こうした規定を踏まえて、政府としては、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するべく、全力で果断に取り組んでいるところでございます。
○和田(有)委員 「最大限の努力をするもの」というふうにそこには書かれているんですね。しかし、今まで最大限の努力をしてきたんだろうか。
私も、市会議員になったときですからもう二十五年前ですか、小泉訪朝のまだもっと前から、有本さんの御両親、まだお母さんは御存命でした、一緒に街頭に立ってやってきましたけれども、はっきり言って、国家は、この国は何をしてきたんだと、私はずっと、私も思ってきたし、恐らく拉致被害に遭われた家族の皆さんも思ってきたし、多くの国民、心ある国民は思ってきたんだと思うんです。
責任は一体誰にあるんだ。それは、連れ去ったやつが一番悪いんですよ、北朝鮮が悪いに決まっている。しかし、ここまでこの問題を放置してきた、放置しないと言うかも分からないけれども、解決に努力が足りていなかった責任は一体誰にあると思いますか。
私は、全て何もかも政府だとかなんとか言いたくない。でも、拉致担当や、そういったことを言っていろいろなことを聞いても、この問題はあっちですねと言ってきたこの国の責任というのは、私は重いと思うんです。
さらに、私たち国民一人一人にも私は問題があると思っていますよ。私たちがもっと真剣に国民として意識を持って、政府に向かってこうやって言い、助けてあげなきゃいけないじゃないかと、これが本来の私たち国民に向けられる姿と。
私は国会議員である前に国民です。私にも問題があったと思う。でも、政府も無策だったと思う。その点の責任についていかがお考えになりますか。最後に聞かせてください。
○小熊委員長 時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に。
○林国務大臣 二〇〇二年に五名の拉致被害者が御帰国されて以来、一人の拉致被害者の御帰国も実現していないということは痛恨の極みであり、誠に申し訳なく思っております。
今の委員の御指摘を重く受け止めて、引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて、全力で果断に取り組んでまいります。
○和田(有)委員 終わります。
ありがとうございます。
○小熊委員長 次に、笠井亮君。
○笠井委員 日本共産党の笠井亮です。
拉致問題解決のための外交努力について質問いたします。
北朝鮮が核・ミサイル開発を続けていることは国連安保理決議に反するものであり、我が党は強く抗議し、その中止を強く求めるものであります。
困難は大きいが、軍事的対抗の悪循環から、朝鮮半島問題の対話による平和的解決に方向転換することは、国際社会の責務であります。その中で、日朝間には二〇〇二年の日朝平壌宣言があります。拉致問題解決の上でも、対話再開に向けた外交努力が強く求められております。
そこで、まず、林拉致問題担当大臣と上川外務大臣にそれぞれ伺いますが、この日朝平壌宣言は現在も両国首脳による合意と理解してよろしいでしょうか。
○上川国務大臣 日朝平壌宣言は、日朝双方の首脳の議論の結果として、日朝関係の今後の在り方を記した両首脳により署名された文書でありまして、現在に至るまで北朝鮮側も否定しておりません。
我が国といたしましては、この日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルという諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指す考えに変わりはございません。
○林国務大臣 ただいま外務大臣からお答えしたとおりでございます。
○笠井委員 日朝関係は、紆余曲折はありますが、まず、二〇〇二年の首脳会談で確認をして、二〇〇四年の首脳会談で再確認をされた日朝平壌宣言に基づいて、お話がありました、核、ミサイル、拉致、過去の清算を包括的に解決して、国交正常化を図ることが唯一の理性的解決の道だと考えます。この到達を踏まえた対話再開に向けた外交努力を強く求めたいと思います。
この点で、昨年から今年にかけて、先ほど来ありますように、日朝間の接触の時期が注目をされております。
そこで、林大臣、これまでも様々な難しい外交交渉を重ねられてきた御自身の御経験をお持ちで、数々の御苦労も体験されてきたと思います。私自身は、野党である日本共産党の議員ですが、これまで五十数か国を訪れる中で、国際会議、政府間の会議にも出席する機会があって、各国政府関係者とも話し合う機会がありました。
その中で感じてきたことなんですが、林大臣、もちろん外交交渉の道というのは決して容易なものではない。様々なことがあるという中で、双方にとって相手の側が意に沿わない態度を取るということが当然起こり得るというふうに思うんですけれども、大臣、どのようにお考えでしょうか。
○林国務大臣 外交交渉に関わるお尋ねでございますので、まずは外務大臣からお答えをさせていただければと思います。
○上川国務大臣 現在の状況に至っている背景でございますが、様々な要因がございまして、今後の展開につきましても予断することは困難でございますが、我が国といたしましては、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指すとの方針に変わりはございません。
○笠井委員 今後の予断とかいうことではなく、林大臣に伺いたいんですが、もちろん外交交渉ということについての道というのはなかなか容易でないけれども、その中で、双方にとって相手の側が意に沿わない態度を取るということは当然あり得ますよねということは、どんなふうにお考えかをちょっと伺いたいんですが。外務大臣としての御経験がありましたら。
○林国務大臣 あくまで個人的な見解ということで、せっかくのお尋ねでございますので。
そもそも立場が全く一致しておるということであれば交渉も必要ないということでございますので、意に沿わないということが適切な表現かどうか分かりませんが、この違いを何とか一致に近づけていくというのが外交交渉であろうか、こういうふうに理解しております。
○笠井委員 そうした、双方にとって相手の側が意に沿わない態度を取るというような、一致すれば外交交渉は要らないんだという話でしたが、そういうような外交交渉の場合に、それを真実と道理の尊重に立った話合いで解決しながら進むというのが、やはり国と国との責任ある交渉だというふうに思うんですけれども、この点は、林大臣。では、両方に伺っていいですか。
○上川国務大臣 岸田総理も繰り返し述べているところでございますが、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものであります。そうした考えの下で、日朝間の諸懸案の解決に向けて、首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルでの協議を進めていく、こうした考えを持って、今後とも変わりなく進めていきたいというふうに思っているところであります。
政府としては、そのための働きかけを引き続き行っていく考えでありますが、今後の交渉におきましての対応方針につきましては、事柄の性質上、明らかにすることについては差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けまして、全力で取り組んでいく所存でございます。
○笠井委員 今の点、林大臣からも伺いたいと思うんですが、併せて林大臣に伺いたいんですが、相手の態度が気に入らないからと、安易に交渉を打ち切ったりとか、あるいは力の政策に訴えたりするということは、やはりお互いに慎むべきだというふうには思うんですけれども。
具体的、個別に入ってくると日朝間でいろいろなことがあると今外務大臣もおっしゃったと思うんですが、交渉の考え方の問題として、どのように担当大臣としてはお考えでしょうか。
○林国務大臣 これも外交交渉に関することでございますので、外務大臣からお答えをさせていただければというふうに思いますが、一般論でということで先ほど来お尋ねでございます。
あくまで一般論ということでございますと、相手の立場、先ほどのお問いかけにあったような、真実と道理の尊重に立っているか、相手が自分側の方をどう思っているかというのは、なかなか個別の交渉によって違う場合があるわけでございますので、要は、最後、先ほど申し上げたような、いろいろな意味で違いがあるということでございますので、何とかこの違いを埋めていくということに尽きるのではないかというふうに思っております。
○笠井委員 違いを埋めていくということになりますと、今申し上げた質問でも問いかけさせていただいたんですが、そういう埋めていくためには、やはり安易に交渉を打ち切ったりとか、片方が、双方の問題だと思うんですが、力の政策に訴えるということをお互いに慎むということは当然必要だということになりますよね、林大臣。
○林国務大臣 違いを埋めるために何が有効なのかということは、不断に考えていかなければならないことであろうと思います。
○笠井委員 岸田総理御自身が、施政方針演説で、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現して、日朝関係を新たなステージに引き上げるために、また、日朝平壌宣言に基づき、北朝鮮との諸問題を解決するためにも、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めてまいりますと述べられております。
日朝間に接触の機会があり、北朝鮮側の動きもある中で、やはり日朝間の対話を粘り強く働きかける外交努力というのがいよいよ重要になっていると考えます。
そこで、最後に、三大臣にそれぞれに御質問をいたしますが、共通する質問なんですけれども、拉致被害者家族会代表の横田拓也さんは、四月五日、日米首脳会談を前にした記者会見で、拉致された自分の家族やきょうだいとの再会を果たせず他界された親世代が何人もいます、家族会が結成された当時、最前線で声を上げていた親世代で存命なのは、有本恵子さんの父親、明弘さんと、めぐみの母、早紀江の二人だけとなり、厳しい状況です、残された時間がないのです、こういうふうに訴えておられます。まさに、本当にこのことは大事なことで、やはり政治の場でもしっかりと受け止めなければならない大きな、大事な点だと思います。
さらに、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない特定失踪者も多数おられます。私自身、約二十年消息不明の方の御親族から要請書を受け取ったこともあり、昨年十月二十一日には、私も出席した、都庁前広場での、早期再会の実現を訴える、支援団体、特定失踪者問題調査会の集会では、今井英輝家族会会長が、拉致問題には命の期限があります、こう痛切に訴えておられました。
拉致のいずれの事案も発生から既に四十年以上が経過し、被害者御本人も高齢化し、平均年齢は七十五歳に迫っているという現状です。まさに時間的制約がある下で、三大臣、林大臣、上川大臣、そして松村委員長、それぞれ一刻も早く拉致問題を解決する御決意について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 二〇〇二年に五人の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の御帰国も実現していないということは痛恨の極みであり、誠に申し訳なく思っております。
御家族の方々からは、長年にわたる苦しみと悲しみを直接お伺いしてきておりますが、拉致問題の解決にはもはや一刻の猶予もないという切迫感を痛感しているところであります。
今お話がありましたように、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であります。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでまいります。
○上川国務大臣 まさに二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が御帰国されて以来、二十二年の月日がたちました。この間、一人の拉致被害者の御帰国も実現していないということについては胸が痛む思いでございます。
とりわけ拉致被害者の御家族も御高齢となる中であります。時間的制約のある拉致問題につきましてはひとときもゆるがせにできない人道問題というふうに認識をしております。
私自身、二〇〇六年でありますが、この衆議院の拉致問題特別委員会の委員の皆様と共に、新潟県の横田めぐみさんの拉致現場を視察したところでございます。あれから既に時間がたっているところであります。そのときに現場を拝見させていただいて、十三歳のめぐみさんが独りぼっちで連れ去られるという状況を想像しただけで胸が苦しくなる思いでございます。また、その御家族の思いも、非常につらい中でこの間活動していらっしゃるということを大変重く受け止めているところであります。
日本の中での取組はもちろん、何といっても米国や韓国を始めとする国際社会と緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現する、この目標に向かって、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
○松村国務大臣 北朝鮮による拉致容疑事案が発生して長い年月が経過しておりますが、いまだに全ての被害者の帰国が実現しておりません。拉致被害者やその御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、もはや一刻の猶予も許されない状況であるとまず認識をいたしております。
現在、警察におきましては、合計十三件十九人を拉致容疑事案と判断するとともに、拉致の実行犯等として、北朝鮮工作員等合計十人について、逮捕状の発付を得て国際手配をしているところでございます。
また、これらの事案以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるとの認識の下に、現在、八百七十一名について、鋭意所要の捜査や調査を進めているところでもございます。
今後とも、被害者や御家族のお気持ちを十分に受け止め、全ての拉致被害者の一日も早い帰国の実現と、拉致容疑事案等の全容解明に向けまして、関係機関と緊密に連携を図りつつ、捜査、調査を推進するよう警察を指導してまいりたい、このように考えております。
○笠井委員 三大臣の決意を伺いました。
二〇〇六年の当委員会からの、新潟県、横田めぐみさんの拉致現場の視察、私もそのとき御一緒したと思いますが、まさに、今、日朝関係の改善は、拉致問題という時間的制約のある国際的な人道問題の解決の上でも急務であります。
もはや一刻の猶予もない拉致問題解決のためにも、アメリカ頼みではなく、日本独自の主体的取組の働きかけが本当に必要になっている。日朝平壌宣言に基づく対話による諸懸案の包括的解決への外交努力を重ねて求めて、今日の質問を終わります。
○小熊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時三十四分散会