第3号 令和6年4月18日(木曜日)
令和六年四月十八日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君
幹事 寺田 稔君 幹事 中谷 元君
幹事 船田 元君 幹事 逢坂 誠二君
幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 北側 一雄君
井出 庸生君 井野 俊郎君
井上 貴博君 伊藤 達也君
石破 茂君 稲田 朋美君
岩屋 毅君 越智 隆雄君
大串 正樹君 城内 実君
黄川田仁志君 熊田 裕通君
中西 健治君 長島 昭久君
藤丸 敏君 古川 禎久君
古屋 圭司君 細野 豪志君
三谷 英弘君 山下 貴司君
山田 賢司君 山本 有二君
大島 敦君 奥野総一郎君
城井 崇君 近藤 昭一君
篠原 孝君 牧 義夫君
谷田川 元君 吉田はるみ君
青柳 仁士君 岩谷 良平君
三木 圭恵君 和田有一朗君
大口 善徳君 河西 宏一君
國重 徹君 赤嶺 政賢君
玉木雄一郎君 吉良 州司君
北神 圭朗君
…………………………………
衆議院法制局長 橘 幸信君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
辞任 補欠選任
小野 泰輔君 和田有一朗君
北神 圭朗君 吉良 州司君
同日
辞任 補欠選任
和田有一朗君 小野 泰輔君
吉良 州司君 北神 圭朗君
―――――――――――――
四月十八日
憲法改悪を許さないことに関する請願(志位和夫君紹介)(第一一二七号)
は本憲法審査会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)
――――◇―――――
○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内といたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。
○加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。
国会法第百二条の六では、日本国憲法及びこれに密接に関連する基本法制についての広範かつ総合的な調査をし、憲法改正原案等を審査するために憲法審査会を設置するとされております。すなわち、憲法に関して広範かつ総合的な調査を行うだけではなく、その調査結果を踏まえて立案された憲法改正原案などを審査することも大きな役割として課せられているわけであります。
また、憲法改正原案を提出することができるのは国会議員とこの憲法審査会のみであり、政府にはその提出権はありません。憲法改正原案は究極の議員立法と言えるものであり、国民への発議は私ども国会議員に課せられた重要な使命であると認識をしております。
このような国会議員の使命を前提に、これまでの憲法審査会での議論の到達点を確認してみますと、緊急事態条項については相当程度議論が整理されてきていると認識をしております。
まず、緊急事態対応の必要性については、この間の議論を通じて共通理解が形成されてきていると言えます。議員任期延長に反対されておられる立憲民主党におかれても、大規模災害などにより七十日を超えて選挙ができないような緊急事態が発生し得ることは認められており、問題は、このような事態をどうやって乗り越えていくかということであります。
この点、参議院の緊急集会は、あくまでも両院制の例外であり、暫定的な制度であります。一定の期間内に総選挙の実施が見通せる場合には、参議院の重要な権能である緊急集会で対応すべきことは、これは当然であります。しかし、総選挙の実施が長期にわたって見通せないような場合に緊急集会で対応することまでは想定されていないと考えます。
昨日、愛媛、高知で震度六弱の地震が発生をしております。南海トラフ地震とは関連がないとのことでありますけれども、中央防災会議が発表している南海トラフ地震や首都直下地震の被害想定を見ますと、相当広範な地域において長期間選挙実施が困難となることが予想され、このような選挙困難事態においてこそ、二院制の国会を機能させることが重要であると思います。なお、平成二十五年の被害想定によると、三十年以内の発生確率は七〇%とされていることを想起する必要があると思います。
この際、改めて整理させていただくと、選挙困難事態が発生した場合への対応として直接に求められることは、選挙期日を延期する必要があるということであります。その上で、選挙を延期した間に国会議員が不在となることを避けるために議員任期を延長する、あるいは前議員の身分を復活する必要があるということとなります。
このように、緊急事態に対処することを念頭に置くと、前回、大口委員から問題提起があったように、まずは選挙期日を延期し、その上で議員任期を延長するといった論理構成が素直ではないかというふうに思います。
この点以外の国会機能維持策については、事務局の論点整理でも示されたように、議論は相当深まっており、参議院の緊急集会の位置づけ、対象事態、事態の認定主体、延長期間や閉会禁止、解散禁止の効果などについては、自民、公明、維新、国民、有志の五会派で見解の一致が見られているところであります。僅かに国会の議決要件及び裁判所の関与については見解の相違はあるものの、この間の議論を通じて、これらの点についても見解の一致が見られつつあるように思われるところであります。
国会機能維持については、維新、国民、有志の三会派の御努力により、これまでの議論を踏まえた条文イメージが既に公表されております。更に議論を深めていくために、そうした案をベースとしつつ、先ほど述べた新たな論点を組み込んだ案を起草すべく、幅広い会派で早急に条文起草作業に入るべきであると考えます。
前回、馬場幹事からの質問に答える形で、中谷筆頭から起草委員会の提案がありましたが、どういう形で起草していくかについて、早急に具体的な方策を決定すべきであります。来週にも幹事懇を開催し、しっかりと議論していただくことを両筆頭に改めて強くお願いしたいと思います。
他方、緊急政令に関しては、五会派の間でもいまだ若干意見が隔たっているようであります。すなわち、法律上の措置の整備によって対応できる、憲法に規定を設けるとしても災対法等の緊急政令制度の確認規定にとどめるべきとの意見がある一方で、憲法四十一条の例外として内閣に幅広い委任を認める緊急政令制度を設けるべきとの意見があります。
私は、これまでの災害対策法制整備の歴史を踏まえると、万が一の想定外の事態にも対応できるように万全の備えを行っていくべきではないかと考えております。同時に、新型コロナへの対応等を直接経験した中で強く感じたことは、憲法上に緊急事態対応の明文の規定があることによって、実際の運用の場面において法律上の強制的な措置を必要に応じてちゅうちょなく行使できる象徴的な意義もあるということであります。
この点に関して、昨年の海外調査で訪問したフランスのブドン教授から、憲法上の緊急事態条項があることが、法令、政令による柔軟な対応を支える精神的な根拠になる、そのため緊急事態条項が必要である旨の話があったと承知をしておりますが、趣旨を同じくするものだと理解をしております。
最後に、国民投票広報協議会について一言触れさせていただきます。
広報協は、国民投票運動の公平公正の確保に当たり、重要な役割を果たすものであります。前回の審査会においても、広報協規程の起草委員会を設けて早急に議論を開始すべきとの提案がなされておりました。緊急事態条項の条文化作業と並行して、これらの作業も車の両輪として積極的に進めていくべきであることを申させていただきます。
以上です。
○森会長 次に、奥野総一郎君。
○奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。
日本国憲法は、間もなく施行七十七年目を迎えます。これまでの運用を通じて、見直すべき点はないのか、例えば、統治機構が機能不全を起こしていないのか、想定されていなかった新しい人権にどう対処するのか、しっかりとした議論が必要だと考えています。
岸田総理は自分の総裁任期中に改正を実現したいと表明されていますが、そもそも何のために憲法改正を急ぐのか、総理の発言からは全く見えてきません。単に、安倍総理のときの改憲四項目をなぞっているだけのように見えます。改正自体が目的化していないでしょうか。
憲法記念日に毎年行われているNHKの世論調査では、改正が必要と答えた方が三五%、必要がないと答えた方が一九%、どちらとも言えないという方が四二%、これは昨年も一昨年も同じ割合であります。この数字を見る限りは、多くの国民はそれほど憲法改正の必要性を感じていないということだと思います。国民に具体的な憲法改正の必要性、立法事実が感じられていないからではないでしょうか。
例えば、九条改正については、当時の安倍総理は、自衛隊は憲法違反、この状況に終止符を打つことが私たちの責任だということをおっしゃっていましたが、自衛隊が憲法違反と考えている国民は、世論調査を見てもおおむね一割程度。立法事実はないと言ってよいのではないでしょうか。
参議院の合区解消についても、現在の自民党の案では定数増加をしなきゃいけない。各県、一割り振りますが、三倍以内の縛りが解けないので、定数増加という結論になってしまいます。
また、教育無償化も、憲法改正をしなくても可能な問題であります。
お試しで改憲をしても意味はありません。議論の結果、立法事実が認められるものについて、国民的な合意が得られるのであれば改正を考えるべきであります。それが、我々が言ってきた論憲というものであります。ここは時間をかけてじっくりと、国益にかなうよう、憲法の議論を進めてはいかがでしょうか。
これまでも、憲法審査会において、様々なテーマについて議論をしてまいりました。コロナ禍をきっかけとして、国会のオンライン審議についても議論をし、憲法を改正しなくてもオンライン出席が可能であるとの意見の取りまとめも、一昨年ですか、我々も賛成して行うことができました。
その後、ロシアのウクライナ侵略をきっかけとして、緊急時の国会機能の維持が議論の中心となりました。我が党も、ワーキングチームを設置して、現行憲法の考え方を尊重し、緊急事態条項には反対をしつつ、いかなる場合においても国会機能を維持するよう検討を加えてきました。
この検討結果の概要については、昨年、当審査会で私から述べましたが、再度趣旨だけを申し上げると、今ありましたけれども、災害等で選挙ができなくなる可能性については以下のとおりであります。
まず、平常時から、選挙に係るインターネット投票の導入及びインターネット選挙運動の規制緩和などの取組を前提として進めておきます。
しかし、これらの措置を講じたとしても、衆議院選挙時に大規模自然災害が発生し、広範な地域で長期間選挙が執行できないような事態、いわば選挙困難事態というものが発生した場合には、時の権力の濫用を防止するために、司法の認定、司法を絡めた形で認定をさせ、衆議院総選挙の延期を認め、そしてその間、参議院の緊急集会での対応を可能とするというものであります。
その際、参議院の緊急集会については、政府の活動に対して適切かつ実効的な監視、統制を行うことができるように、議員の側からですね、一定数の議員の要求に基づく集会決定や自律的集会を可能とした上で、さらに、従来限定的に解されてきた権限、案件を超える権限、案件を認めていくということになります。疑義のある通年の予算とかそういったものですね。ただし、緊急集会ですから、事後的な衆議院の同意が必要である点で、この権限はあくまで暫定的なものとなります。
なお、議員任期の延長については、任期延長された議員は選挙を経ておらず、その民主的正統性に疑義が残る中で、衆議院として暫定的な決定じゃなくてこれは正式な決定になってしまいますから、問題があるということであります。
緊急時の国会機能の維持に関しては、このほかにも、憲法五十三条に臨時国会の召集期限を定めるかどうか、きちんと期限を切って召集させるようにするかどうか、それから、解散権の制約ももちろん絡んできますし、有志の会もおっしゃっていましたかね、他の会派も提案されている憲法裁判所の関与も関係をしてきます。議論すべき論点は多岐にわたっており、現時点では条文の起草には至らないと考えています。
私は、緊急時の国会機能の維持だけではなく、憲法調査会以来の成果を踏まえて、数年単位の時間をかけて、憲法全般を見渡した議論が必要と考えています。
論ずべきテーマとしては、前国会で当方の階幹事が提案をした、自分に関する情報について適正な取扱いを求める自己情報コントロール権など新しい人権、ほかに新しい人権例としては、ここでは議論していませんが、環境権など様々ございます。
統治機構については、先ほどと重複しますが、欧州型の憲法裁判所を設けるかどうか、また、地方自治を充実させて一層の分権を進めるか否かなどが考えられます。
最後に、いわゆる附則四条について申し上げますが、毎回申し上げていますが、私は、提案者の意思として、この措置がなされるまでは憲法改正の発議はできないと答弁してきました。外国政府の干渉などを排除し、公正な投票結果が出る仕組みを整えておく必要があると考えたからであります。フェイクニュースとかいろいろなものもあります。こういったものをどう排除していくかということですね。
附則四条の定める施行後三年の期限は今年の九月であり、この国会期間中に、必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないということになります。憲法改正に真剣に取り組むのであれば、優先的に取り組むべき課題ですね。外国政府の干渉等によって原案が否決されるというようなことも想定しているわけでありますから、この辺はしっかりしておかなければいけないということであります。
以上のことから、改正のための改正を急ぐのではなくて、じっくり構えて、日本のあり得べき姿を考える憲法論議が必要と申し上げまして、私の発言とさせていただきます。
以上です。
○森会長 次に、青柳仁士君。
○青柳(仁)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青柳仁士です。
私は、今国会から憲法審査会に参加をさせていただいております。発言するのは二回目となりますが、これまでの議論を聞いていて、率直に疑問と違和感を感じております。
昨年まで予算委員会の理事を務めておりました。総理秘書官の更迭の件で、理事会が紛糾したことがありました。その際、全ての野党が反対する中で、与党だけが委員長職権によって委員会を開催するということがありました。当時、なぜこんな理不尽なことが国会でまかり通るのかと、今そこに座っておられる立憲民主党の逢坂当時野党筆頭理事とともに悔しさをかみしめたことを覚えています。
逆に、今は、なぜ自民党は同じことをこの憲法審査会ではやらないのかということを非常に疑問に思います。憲法審査会も、予算委員会と同様、委員長職権で開催できるのではないかと思います。このままでは、自民党総裁である岸田総理が約束した任期中の憲法改正は不可能であるということは明らかだと思います。
定例日以外の開催を昨年の国会で中谷筆頭幹事が約束しましたが、これまで一度も開かれていません。来週以降も定例日だけ開くつもりなんでしょうか。
同じように、中谷筆頭幹事から提案のあった条文の起草委員会も、これも、やろうと思えば委員長職権でも開けますし、約束ですから、各党の合意の下でも開催できると思います。これもなぜやらないんでしょうか。
緊急事態条項については、三会派案を既に発表済みです。今後の具体的な条文起草に当たって、五会派での合意のためならそれにこだわるものでもないということは繰り返しお伝えしてきたとおりです。今日にでも条文化作業に入るべきだと思います。
中谷筆頭幹事に質問しますが、来週までに第一回の起草委員会を実施するつもりはないのでしょうか。
委員長職権といいますけれども、結局は自民党の意思決定であるというのは、ここにいる誰もが分かっていることだと思います。総裁は了承している、筆頭幹事は約束したということであれば、ただやるだけではないでしょうか。先ほど加藤委員の方からも、早急に行うよう要請があったというふうに思います。
広く野党の意見を聞かなければならないのは、憲法の問題だけではありません。予算を始め、外交、安全保障、エネルギー政策など、国民や国家の一大事を決める議案や委員会はほかにもたくさんあります。憲法審だけが特別なわけではありません。
また、採決がいつまでも行われないこともそろそろ説明がつかないと思います。前回の衆議院選以降の、この憲法審査会が開かれて二年四か月間、自由討議、集中討議は三十六回、参考人質疑は五回開催されました。予算委員会でも、八十時間議論したら採決するという一定のめどがあります。
中谷筆頭幹事にお伺いしますが、どのくらいの質疑時間が積み上がって、どの程度の議論が行われたら採決すべきと考えているんでしょうか。めどをお示しください。
ここでやらないのであれば、自民党は今後、ほかの委員会でも、野党の反対意見が少しでも残る場合は、採決はやるべきではないと思います。
結局、自民党にとって憲法改正というのは、選挙で保守層を引きつけるだけの道具なのではないかというふうに感じてしまいます。反対する会派を言い訳にして採決から逃げ続けているだけのようにしか見えません。私だけではなく、初めて憲法審査会を見る多くの国民も同じ感想を持つと思います。党是として掲げる憲法改正から逃げ回る自民党の姿は、是非国民の皆様に見ていただき、本当にそれで支持が得られるのかどうか、自ら考え直していただきたいと思います。
逢坂幹事に御質問しますが、憲法審査会のNHK中継の提案は、これまでに立憲の委員からなされています。四月四日の幹事会において、我が党の馬場幹事から逢坂幹事に対して、幹事が交代したがNHK中継が必要との認識で間違いないかと問いかけたところ、逢坂幹事は前任の幹事から聞いていないので確認すると答えたと聞いておりますが、その確認は行われたのでしょうか。また、逢坂幹事もNHK中継は必要という認識でよろしいでしょうか。
憲法審査会に参加してみて、もう一つの違和感は、傍聴人のやじです。
先週、共産党の発言の際に、そうだそうだという声が聞こえてまいりました。私の席からだとよく聞こえます。我が党の馬場幹事の発言の際にはやじが聞こえてきました。
中谷筆頭幹事にお伺いしますが、特定の政党の応援をする行為は、この議場において許されるのでしょうか。許されない発言が繰り返された場合でも、それを放置するのが適切なんでしょうか。
憲法について様々な意見があることは、日本が成熟した民主主義国家である証拠であると思っております。現行憲法を全く変えたくないというのも、一つの尊重されるべき意見です。ただ、それが多数派かどうかというのは重要な問題です。
先ほど、奥野委員は、国民は憲法改正の必要性を感じていないと主張されました。しかし、特定メディアの任意の世論調査で国民の声を決めるというのは、この国のルールではありません。国民の声は、当然、一つではありません。何が多数派の声なのかを見定め、国家として意思決定を行うのは、まさに間接民主主義によって国民に選ばれた私たち国会議員であり、それが国会の本来の役割なのではないでしょうか。傍聴席に来た人だけが国会に直接声を届けられるという状態は、民主主義に基づく国会のルールの重要な部分を毀損していると思います。
最後に、玉木委員に御質問します。
玉木委員は、憲法九条二項の削除、自衛隊解釈の明記、自衛隊を戦力に位置づけることなどを主張されています。我が党内にも同様の意見がありますので、趣旨は理解できます。しかし、憲法改正には国民投票での過半数の賛成が必要であることを踏まえると、現実問題としてそのような憲法改正は実現できないのではないかと私自身は考えています。
これまでの憲法審査会での議論の最大公約数は、やはり自衛隊の明記ではないかと思います。そこで、例えば、自衛隊に対するシビリアンコントロールを重視して、仮に七十三条に自衛隊明記を行う条文案を取りまとめるとしても、国民民主党は反対するんでしょうか。つまり、九条二項に関わる憲法改正をあくまでも行うべきと主張されるのでしょうか。
以上、各委員への質問については、残り時間及び二巡目にて御回答いただけたら幸いです。
以上で終わります。
○森会長 それでは、ただいまの青柳君の御発言の中で質疑がなされましたけれども、若干発言時間が残されておりますので、まず、中谷筆頭から……(中谷(元)委員「最後、一巡してから」と呼ぶ)では、もうぎりぎりだから、一分ぐらいしかないから、後ほど、自由討議の中で、必要に応じて御答弁を願いたいと思います。
次に、國重徹君。
○國重委員 公明党の國重徹です。
緊急事態における国会機能の維持については、これまで活発な議論が行われ、論点は既に出尽くした感があります。前回の審査会で我が党の北側幹事から、今後は、具体的な条文案のたたき台を作成し、それを基に議論を深めていくべきだとの提案がありましたが、私も同じ意見です。
内容の賛否はさておき、具体的な条文案のたたき台を基に議論する方が、より建設的な議論になります。反対の点があれば、条文案のたたき台をベースに具体的に指摘していただいた方が、議論も深まり、国民にとっても分かりやすくなると考えます。改めて、条文案のたたき台の作成を進めるよう、私からもお願いを申し上げます。
次に、同性婚について意見を述べます。
二〇一九年以降、同性婚に関し、全国で六件の訴訟が提起され、地裁判決は全て出そろいました。先月十四日には初の高裁判決となる札幌高裁判決が下され、同性婚を認めていない民法等の規定について、憲法二十四条及び十四条一項に違反すると判断をしました。その上で、同判決は、「喫緊の課題として、同性婚につき異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる」と付言をしております。
先週から当審査会の実質審議が始まりましたが、これまでのところ、どなたもこの札幌高裁判決に言及されておりません。立法政策の在り方は他の委員会の所掌ですが、憲法論についてはこの審査会で発言し問題提起することも許されると思いますので、本日は同判決を踏まえた意見を述べたいと思います。
これまでの六つの地裁判決では、五つが、同性カップルの関係を保護する国の制度が一切ないことについて、十四条一項や二十四条二項に違反する、あるいは違反する状態だと判断し、残りの一つも、将来的に違憲となる可能性を指摘しました。しかし、二十四条一項については、六つの地裁判決の全てが、両性や夫婦の文言等から同項の婚姻は異性婚を指すもので、同項には違反しないと判断してきました。
これに対し、札幌高裁判決は、二十四条一項について新たな判断をしました。具体的には、「二十四条一項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えることが相当である。」としています。
私は、昨年、この審査会におきまして、二十四条一項をめぐる学説の状況について、多くの学説は、二十四条一項は同性婚を禁止しているのではなく、これを許容し、立法政策に委ねられていると解釈していること、さらに、最近では、立教大学の渋谷秀樹名誉教授が、二十四条一項について、今や同性婚の婚姻にも異性婚の婚姻と同程度に保障を与えているという見解を発表していることを述べました。
今回の札幌高裁の、二十四条一項が同性間の婚姻についても異性間の場合と同じ程度に保障しているという判断は、このような学説の動向と軌を一にするものと言えますが、司法がここまで大きく踏み込んだ判断をしたことに驚きました。最近の世論調査では半数以上が同性婚の法制化に賛成し、多くの自治体による同性パートナーシップ制度の創設が社会の変化を更に下支えをしています。こうした国民意識や社会の変化は、着実に司法の判断に影響を与えていると思われます。
加えて、最高裁判所の首席調査官を務めた経歴を持つ千葉勝美元最高裁判事が、本年二月に出版された「同性婚と司法」という著書の中で、憲法二十四条一項の両性、夫婦という文言は、当事者、双方という文言と同じものとして文理解釈することが可能であると述べており、注目を集めております。なお、千葉元判事は、同著において、価値観が対立する事例については、法原理機関としての司法が多数決原理とは離れて対応してきた旨を述べた上で、同性婚問題について、法原理機関としての最高裁大法廷判決による明確な憲法判断による解決が司法に期待されている点を強調されています。
立憲主義の歴史を振り返りますと、十九世紀には、ヨーロッパを中心に、法律の制定によって政府による人権侵害を防ぐという意味で、議会こそが人権保障の担い手とされてきましたが、二十世紀では裁判所による人権保障が主流となり、現在に至っています。千葉元判事の指摘は、このような立憲主義の歴史や違憲審査制の重要性に沿ったものと言えます。
しかし、少数者の権利保障は司法だけの役割ではなく、むしろ、まずは我々立法府こそが矜持を持って取り組むべき課題です。基本的人権の保障は日本国憲法の三大原理の一つであり、多数派原理に基づいて運営される国会も、憲法の規定にのっとって、少数者の権利を守る立法を行う責務を負っております。仮に、この責務を怠り、最高裁で国会の立法不作為を非難されることがあれば、それは立法府として恥ずべきことです。
さきの札幌高裁判決は、同性婚が根源的には個人の尊厳に関わる事柄であると指摘をしています。この判決を始めとする司法からのメッセージを踏まえ、国会は、最高裁の判決を待たずに、不利益を受けている方々の状況について理解を深めながら、真摯な議論と具体的な対策を進める必要があります。
その際、価値観が対立するテーマであるからこそ、性的指向や性自認に関する正しい理解を広げるとともに、社会の多様性がマイノリティーのみならず社会全体にとってどのような利益、価値をもたらすのかについても、国民に分かりやすい形で議論し、社会を対立と分断の渦に巻き込まないようにしていくことが重要になると考えます。
以上、緊急事態における国会機能の維持と同性婚についての私の意見表明といたします。
○森会長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
前回、岸田政権が日本国憲法に基づく平和国家としての理念を次々と壊していること、この現実を放置したまま改憲議論をすることは立憲主義の破壊であることを指摘いたしました。この点に関わって、先日行われた日米首脳会談について発言します。
アメリカのエマニュエル駐日大使は、会談に先立ち、産経新聞のインタビューに答えて、岸田政権が軍事費の国内総生産比二%への増強、敵基地攻撃能力の保有、長距離巡航ミサイル、トマホークの大量購入、殺傷兵器の輸出解禁に踏み切ったことを挙げ、岸田政権は二年間で、七十年来の日本の安全保障政策の隅々に手を入れ、根底から覆したと述べています。まさに、憲法に基づく国の在り方を根底から覆しているのが岸田政権です。
四月十日の日米首脳会談では、日米の指揮統制の連携強化、兵器の共同開発、共同生産、米英豪の軍事的な枠組み、AUKUSとの先端軍事技術での協力の推進を打ち出しました。
アメリカの軍事戦略に追従し、東アジア地域の軍事的緊張を激化させるもので、憲法九条に真っ向から反するものです。とりわけ、日米共同声明が、米軍と自衛隊の作戦及び能力のシームレスな統合を可能にするため、指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことは極めて重大です。
岸田政権は、安保三文書で、敵基地攻撃能力の行使を可能にし、その効果的な運用のため、日米間の協力を深化させるとしています。
敵基地攻撃能力を日米共同で行使するためには、攻撃目標の情報を一元的に集約し、攻撃に最適な艦船や戦闘機を瞬時に割り当てることが必要であり、指揮系統の一元化は不可欠です。指揮統制の連携強化は、自衛隊を米軍の指揮下に深く組み込み、日米が一体となって敵基地攻撃を行うためのものにほかなりません。
エマニュエル大使は、今回の連携強化は台湾有事を念頭にしたものだと明言しています。日米が台湾有事を想定した共同作戦計画の原案を策定したことも報じられています。そこでは、海兵隊は対艦攻撃ができるロケット砲を配備し、南西地域の島々を転々としながら中国艦艇への攻撃を続けるとしています。日本は、安保法制に基づく重要影響事態と認定し、自衛隊が米軍の輸送や弾薬の提供などの後方支援を行い、日米が一体となって中国と戦うというものです。既に日米統合演習では、この計画原案に基づき、自衛隊は仮の統合司令部を立ち上げて、インド太平洋軍司令部と作戦や指揮を調整したことも報じられています。
集団的自衛権の行使を具体化し、沖縄が戦場になることを想定して、日米が共に戦う体制を強化しようというものであり、憲法違反は明白です。
そもそも自衛隊は、七十年前に発足して以来、日米安保体制の下で米軍を補完する役割を担ってきました。指揮権は、その中核を成すものです。
アメリカは、一九五一年九月八日の日米安保条約の締結交渉で、有事の際には日本の軍事組織を米軍司令官の統一指揮の下に置くことを明記するよう求めていました。これに対し日本政府は、国民から憲法違反だと非難されることを恐れ、明文化せずに秘密裏に処理することを提案し、吉田首相が米軍に対し、有事の際に単一の司令官は不可欠であり、その司令官は合衆国によって任命されることを、指揮権密約に同意したのであります。このことはアメリカの公文書からも明らかとなっています。
この密約は、その後具体化されてきました。米軍再編の下で、横須賀基地の海上自衛隊だけでなく、陸自はキャンプ座間で、空自は横田基地で、米軍司令部と一体化されました。
二〇一五年の日米ガイドラインに基づき、平時から有事に至るあらゆる段階で日米の政策と運用を調整する同盟調整メカニズムがつくられました。日米共同作戦計画の策定、更新も進められています。
その上、今回の日米の指揮統制の更なる連携強化を公然と打ち出したことは、自衛隊を米軍指揮下に一層深く組み込み、米軍の手足となって海外で戦争することを宣言したものです。
この憲法九条に反する日米軍事同盟の歴史的大変質の危険な実態にメスを入れることこそ憲法尊重擁護義務を負う国会議員が果たすべき役割だと指摘して、発言を終わります。
○森会長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
前回申し上げたとおり、これからの進め方については、具体的なスケジュールと、そして具体的な改憲項目をイメージして進めることをまず提案したいと思います。
特に、九月の岸田総理の任期中までに発議までたどり着くということであれば、もう選択肢は一つしかなくて、それは五会派でおおむね意見が集約されました緊急事態における議員任期の特例延長規定を中心に、テーマを拡散させずに、起草委員会などをつくって条文案作りを進めていくべきだと考えます。
先ほど、維新の青柳委員から九条のことについての質問があったので、お答えしつつ考えを述べたいと思います。
まず、九条については、何度も申し上げているとおり、我が党としては改正に反対ではありませんが、自民党、まあ維新案もほぼ同じなんですけれども、提案されておられるいわゆる自衛隊明記論については、最大の問題である違憲論の解消につながらないということですので、法律的には残念ながらほとんど意味のないものだと思っています。本当に九条を変えるのであれば、もう一度これは自民党内においてもゼロベースで改憲案作りをやり直してはいかがでしょうか。
青柳委員にお答えしますと、シビリアンコントロールのことだけを書くのであれば、おっしゃったとおり、七十三条、「内閣」のところに書くべきだということは、かつてこの審査会でも私は発言をしておりますので。単なる、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とするということであれば、「内閣」の章に書けば十分だと思います。
ただ、今回、日米首脳会談でも明らかになったように、日本はアメリカのグローバルパートナーである、そして米軍と自衛隊の指揮統制、コマンド・アンド・コントロールですね、この肝のところをシームレスに統合するというところに踏み込むのであれば、やはり自衛隊を明確に、九条二項が禁止している戦力あるいは軍隊と位置づける必要が私はあると思います。
ここで、橘局長にまず確認したいんですけれども、現在の自衛隊は戦力に当たるのか、軍隊に当たるのか、現在の政府の解釈をお示しください。
○橘法制局長 玉木先生、御質問ありがとうございます。
政府解釈において、自衛隊が軍隊に当たるかどうかということについては、端的に言えば、軍隊の定義いかんによるというように述べられているものと拝察しております。
すなわち、日本国憲法九条の下におきましては、第一に、自衛隊の保持し得る実力は自衛のための必要最小限度のものに限定されているということ、第二に、交戦権も認められていないということ、このような厳しい制約が課せられているという意味においては、通常の諸外国の軍隊とは全くその性格を異にするものというように解されているところです。
他方、自国を防衛することを主たる任務とし、自衛の措置として武力行使を行う組織というような意味においては立派な軍隊であり、国際法上、ジュネーブ諸条約における軍隊の定義もそうですけれども、武力紛争に際して武力を行使することを任務とする組織一般を指す、このような意味での軍隊には当たるというように解されているところかと思います。
以上です。
○玉木委員 今の説明を聞いて、今度、予算規模十一兆円にもなんなんとする、そして米軍とまさにオペレーションなどにおいても統合していく、我が国の責任を持って任務に就いておられる自衛隊、そしてそれを支える国民の皆さんに、今の説明は分かりやすいでしょうか、説明できるでしょうか。
私は、ジュネーブ諸条約においては軍隊だけれども、国内法的に、つまり通常の観念で考えられる軍隊ではないし戦力でもないというこの説明は、もうやめるべきだと思います。そのことを政治家が堂々と国民の皆さんに語ることが政治家の役割であって、こういうことをむしろ政治家が避けて説明しなかったから誤解も含めて国民の中にいろいろな思いが広がっているので、それをきちんと国民の良識を信じて語り続けることが政治家の責務ではないかという思いで提案をさせていただいております。
これまでの解釈は、今、橘局長からもあったように、国際法での位置づけと国内法での位置づけを使い分けてきている。これが、我が国に対して攻撃があって、国内あるいは周辺でとどまるという自衛隊の活動の範囲の時代はよかったんですが、グローバルなパートナーになるんでしょう、であれば、自衛隊諸官の皆さんのこの活動に対して、そして自衛隊という組織、その行っている活動に対して、明確な法的な位置づけを与えることが政治の責任ではないでしょうか。
そこで、中谷筆頭幹事に伺いますが、仮に、今提案いただいている自民党の改憲案、いわゆる自衛隊明記案が通った際に、その通った後の自衛隊は戦力に当たるんでしょうか、軍隊に当たるんでしょうか、お答えください。
○森会長 時間が押しておりますので、後ほど、各位からの発言の後にまとめて答弁するようにしたいと思います。
○玉木委員 これは明確なので、是非それだけは。
○森会長 後ほど、自由討議の後で発言の時間を設けます。
○玉木委員 はい。では、後で伺いたいと思いますが。
変わらないんですよ。大騒ぎして、苦労して、多分、国民の中に物すごい反発もある中で改憲が仮にできたとしても、その明記された自衛隊は、依然として、九条二項との関係で、戦力なのかどうなのか、軍隊なのかどうなのか。でも、一方でグローバルなパートナーシップは進んでいく。こんな不安定な状態に自衛隊を置くべきではないということを申し上げて、時間ですかね。
○森会長 はい。
○玉木委員 はい、では、また。もうないんですか。はい。
○森会長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
先週の本審査会では、私から、緊急事態における議員の任期延長について、多数の会派との間で議論が煮詰まりつつある中、反対をされている立憲民主党さんからもそれなりにお考えを取り入れている旨発言をしました。こうしたことを受けて、いよいよ起草委員会を立ち上げて具体的な条文案の作成に入るべきだと申し上げました。ほかの会派よりも同様の意見が表明されたと受け止めております。
また、公明党の北側幹事より、一つは、衆議院議員の任期満了時に総選挙が行われる場合においても、国に緊急の必要があるときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができると憲法に明記すること。二つ目には、オンライン国会について、例えば毒性の極めて強い感染症の到来などにより国会議員が議場に参集できない場合には、情報通信技術を利用する方法等で会議に出席することができると明記すること。この二つについて御提案がございました。また、同党の大口委員より、その詳細についての御説明もありました。
まずは、以上の二点に関して、有志の会としての考え方を申し述べます。
一点目については、既に我々三会派の条文案に盛り込んでいます。現行憲法の第五十四条二項において、明示的には、解散された場合にのみ、「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」と規定しています。確かに、最近の憲法学の多数説は、解散の場合も任期満了時の場合も衆議院議員が不在となる点では同じであるので、解釈によって任期満了時にも認めるべきだとしています。しかし、他方、これまでの通説によれば、明文の根拠がないことや、衆議院議員の任期満了の期日は明らかであるため、内閣は必要な措置はその期日の前に講じることができるだろうということから、任期満了時に類推適用することに対しては否定的でした。
この点、阪口正二郎一橋大学名誉教授は、「憲法改正をよく考える」という本の第三章「改憲論と「生ける憲法」」という章の中で、憲法の条文には、文理上、明確で解釈の余地が余りないものと、曖昧で解釈の余地を残すものがあるとの見方を示しております。第五十四条二項は前者に属しているものであり、私は、やはり安易に解釈することは避けるべきだというふうに考えております。
第九条二項に、今も話題になったので触れますと、戦力をめぐる解釈もそうですけれども、条文の明示的な言葉や論理を余り軽んじることは法治主義にも関わる我が国の憲法論の悪い癖だと、有志の会としてこれまでも訴えてまいりました。
こうしたことから、我々三会派の条文案においても、条文上、明示的に、任期満了時でも緊急集会を求めることができるように改正をすることとしております。
二点目のオンライン国会についてでありますが、本件は一昨年の本審査会で議論され、森会長から当時の細田議長に報告がなされています。条文改正案の改正の議論に入る前に、まずは、その検討状況について早急に本幹事会に報告をしていただくのが順序だというふうに思います。
第五十六条一項は、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」となっていますが、この場合の「出席」という言葉は、例えば民間会社など一般の組織においては、会議などに物理的に参加する場合でもオンラインで参加する場合でも、一様に出席することであると既に社会通念上認められております。したがって、国民の傍聴する権利や危機管理上の条件さえ整えれば、私は例外的に解釈で読むことができるというふうに考えております。
先ほどの緊急集会の条文と異なるのは、五十四条二項では、解散時と明示しながらも、任期満了という本質的に異なる事象については全く触れていないので、後者を安易に読み込むことはできるだけ避けるべきだという考えです。いわんや、九条における、自衛隊は戦力でないとか、そういう想像力豊かな解釈論とも異なり、文理上、五十六条一項における「出席」という言葉に最近のオンライン技術における参加を読み込むことは十分可能だと思います。ただし、解釈で対応することが事実上難しいのであれば、改正によって明確にすることについてはやぶさかではありません。
そのほか、前回の審査会においては、自民党の中谷幹事よりは、先ほどの話、憲法への自衛隊の明記が必要だという御発言がありました。これは、余り詳しくは申し上げませんが、今まで申し上げてきたとおり、九条二項の戦力に自衛隊は当てはまらないという疑義、疑いを根本から払拭するに足りないというふうに考えています。また、地政学的に大きく世の中が変動している中、こうした政府解釈から生じる自衛権の範囲という本質的な問題について、いま一度検討すべきだというふうに考えます。
また、自民党の小林委員より、緊急政令制度を設ける必要性について発言がありました。これは、これまで議論を積み重ねてきた国会機能の維持でも国が対応できない、そういう事態を想定するものであります。危機管理上、こういう想定は必要かもしれませんが、おのずと議論の次元が異なってまいりますので、これももう少し検討を深める必要があるというふうに考えております。
もっと言えば、九条も緊急政令も、公明党さんを始め反対する会派がある中で、今回、果たして条文作成を目指すのが審査会の運営上賢明なのか。今国会、我々に残された時間も僅かであり、論点を拡散すれば、果たして岸田総理の約束どおり、憲法改正を任期中に実現することができるのか、首をかしげざるを得ません。
こうしたことを考慮すれば、やはり国会機能の維持に論点を絞って、起草委員会を早急に立ち上げ具体的な条文案作りを進めることを要請して、私の発言を終わります。
○森会長 ただいまの北神委員の御発言の中にありました、憲法審査会の総意として一昨年細田議長に申入れしましたオンライン国会の件については、私の方で確認をいたしまして、まずは幹事懇等で検討状況を御報告申し上げます。
―――――――――――――
○森会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。
一年半ぶりに憲法審査会に戻ってきて発言できますことを感謝申し上げます。
この間、本審査会においては、国権の最高機関である立法府として活発な議論が展開され、特に緊急事態条項については、昨年の臨時国会の討議の締めくくりとして、中谷元筆頭幹事から、今常会での具体的条文起草作業についての機関設置の提案がなされ、先週の審査会でも同様の発言がございました。
毎週、党派を超えて自由闊達、建設的な議論がなされてきた本審査会のありようが今後も継続し、更に深い建設的な憲法改正議論が加速され、早期に具体的条文起草作業に入ることを願っております。
本日は、衆議院における一票の格差について、投票価値の平等と民主主義の意義の観点から、改正の必要性について述べます。
最高裁は、投票価値の平等を憲法上の要請としつつも、それは、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現されるものとしています。
しかしながら、長年にわたる累次の最高裁判決により、投票価値の平等に重きが置かれ、選挙制度も十増十減など人口に着目した改正が積み重ねられてきました。その結果、衆参共に地域の声が国政に届きにくくなっているのではないでしょうか。特に、都会と地方の経済格差が都会への人口集中をもたらし、その結果、課題が多く過疎が進む地方において、その実情を知り代弁できる議員が減少し続けております。
衆議院では小選挙区と比例代表並立制が取られていますが、惜敗率で選出された議員はブロック代表ではなく選挙区の代表として行動する実情にあり、選挙区と比例区を一体として投票価値を考えなければ、実質的には不平等とも言えます。もちろん、国会議員は全国民の代表ですから、一旦選出された以上、選挙区に限らず全国に目配りすべきであるのは当然です。
最高裁、平成二十三年三月二十三日大法廷判決も、この選挙制度によって選出される議員は、いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり、相対的に人口の少ない地域に対する配慮はそのような活動の中で全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事項であって、地域性に係る問題のために、殊更ある地域の選挙と他の地域の選挙人との間に投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとは言い難いとしています。
しかし、選挙区の地域の課題や利害、地域の意見を離れての国政はあり得ません。議員及び国民の認識として、選挙区と結びついていること、有権者と結びついていることは民主主義の大前提であり、具体的な地元の事情が分かっている議員たちが集まって議論することによってこそ全国のための政策を生み出すことができるとも言えます。国民の代表であるためには、国民が参加しているという実感が持てること、そのためにも議員と有権者のきずなが大切です。
新井誠広島大学教授は、議員と国民の近接性、すなわちきずなは、民主主義にとって重要な意味を持っていると指摘されています。まさに、議員と国民との結びつきは、有権者の意思を国政に反映するために欠くことのできないものです。
既に我が党が発表している条文イメージ、たたき台素案では、参議院の合区を解消すべく、参議院議員の選挙において、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとしています。加えて、衆議院も含めた両議院の議員の選挙区について、人口のみならず、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案する旨を明記しています。
各選挙区から選出される議員と当該選挙区に居住する国民との結びつきに考慮するなど、近接性の要請を踏まえて、国会議員が公正かつ効果的な代表であるための改正を議論すべきと考えます。
以上です。
○逢坂委員 逢坂誠二でございます。よろしくお願いいたします。
先週、馬場幹事から私に質問がありました。先週の私の発言に馬場幹事からの質問に対する答えが多く含まれていると認識しておりますけれども、質問がありましたので、重複もありますけれども、お答えさせていただきます。
まず、我が党に対して改憲に反対の立場との認識があるようですが、改めて立憲民主党の立場を説明させていただきます。
立憲民主党の綱領に次の一文があります。「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。」。つまり、権力者の権力の濫用を抑制する観点から、過去も踏まえ、時代の変化などに合わせて憲法をよりよくするために、変えるべきところがあればひたむきに真面目に対応する、これが立憲民主党の基本姿勢でございます。
それから、中野寛成先生の言葉の受け止めについての質問がありました。
中野寛成先生は、私の尊敬すべき先輩の一人です。先日も私の予算委員会での質問に関して激励のメッセージをいただくなど、今も御指導をいただけることを本当にありがたく、心から感謝をしております。
与党には野党を包み込む度量が、野党にはそれに応える良識が必要、この中野先生の言葉は大変重たいものだと受け止めております。度量と良識、これは与党にも野党にも必要なものだと私は感じております。
今回、私が憲法審の筆頭幹事として協議に臨むに当たり、中谷筆頭と冒頭に次の二点を確認しております。一つ、憲法審は与野党筆頭間で協議をして進める。二つ、憲法全般についてしっかりとした議論を行う。この二点を確認して、筆頭間協議をスタートさせております。
私は、この間、ずっとこの確認を大切にして対応してまいりました。議論から逃げ回っているとの指摘がありましたが、ただの一度も、議論をしたくないと話したことはありませんし、訳もなく筆頭間協議を避けたこともございません。
ただし、裏金議員が憲法審のメンバーとして憲法議論を行うことの正当性については、大いに疑問を持っております。
憲法は、国会、行政、裁判所、これらの国家権力を縛るためのものであり、国家権力が国民の権利や自由を侵害できないように制約を課すことが憲法の根本趣旨です。私はこのような考え方に立脚しておりますが、裏金議員は政治資金規正法違反のおそれがあり、国会議員としての地位の正当性に疑念が持たれております。その議員が自分たちを縛る憲法を議論することは、主権者である国民にとって理解し難いことと考えます。
そこで、中谷筆頭に、裏金議員の裏金の額、使い道などの説明をお願いさせていただきました。裏金議員の皆さんも、やましいところがないのであれば、きちんと説明をして、私の懸念にも応えていただき、堂々と憲法審で議論すればよいと考えておりました。ところが、その説明は一切行われませんでした。
そうこうしているうちに、自民党独自の調査に基づき党内での処分が行われるとの報道が流れるようになりました。そこで、私から中谷筆頭に、裏金の説明に併せて、裏金処分議員の憲法審における扱いがどうなるのかをお尋ねしていた次第です。私から、裏金処分議員を憲法審から外してくださいなど扱いの具体的内容を要請したことはありませんが、中谷筆頭から、処分対象議員は憲法審から外れることになったとの連絡があり、今日に至っている次第です。
もちろん、なぜ裏金処分対象議員が五百万円で足切りなのかなど、自民党の処分基準についてはいろいろと疑問が残っております。衆院の予算委員会では裏金百万円以下の議員も理事を辞任したことを思うと、この憲法審にはまだ裏金議員が在籍しており、釈然としない気持ちです。
○森会長 傍聴人の方に申し上げます。御静粛に願います。
○逢坂委員 今後とも、憲法の諸課題について、落ち着いて、しっかりと議論をしたいと考えております。
なお、青柳委員からの質問に対しては、次回以降対応させていただきます。よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。
発言の許可をいただきまして、ありがとうございます。
まず、憲法審査会、二回目、自由討議ということなんですけれども、先週の憲法審査会の議論を聞いておりまして、まず第一に、スケジュールが立たない、期限の目標を決められない、これはよろしくないと強く感じます。是非、自民党の皆様には、この審査会の中でも、最大与党としてリーダーシップを持ってスケジュールをお示しいただきたく存じます。
それから、この余りにも膠着した状態、一人でも反対すれば絶対に前に進ませないというおよそ民主主義とはかけ離れたこの審査会の状態、これを国民の皆様に広く御覧いただきたいと思います。NHKでのテレビ中継、是非実現していただきたく、お願いをいたします。こちらの方は、NHKのテレビ中継、逢坂幹事の方から前回、確認をしておきますというお返事があったと思いますので、もし確認が済まれているのであれば、よろしくお願いをいたします。
それから、四か月も憲法審査会が開かれなかったということは、これは国会議員として深く反省するべきであると私は思っております。この遅れを取り戻すために定例会以外の日程でも開催をして遅れを取り戻すべきという意見を、馬場幹事そして小野委員から述べさせていただきました。
しかしながら、前回、先週開催をしてから、もう既に一週間がたってしまっております。先ほど加藤幹事の方から、来週、幹事懇で起草委員会の提案をしてそれを実現したいという趣旨の御発言があったと思うんですけれども、来週のいつ幹事懇を開かれるのでしょうか。来週の木曜日までに開催をお決めになって、木曜日までに、定例以外ででも、起草委員会の委員を決める、そこまでやっていただけないかなと思います。やはりそれぐらい急いでやらなければ、この起草委員会というものも会期終了までに実現しないんじゃないかというふうな心配を私の方から本当に述べさせていただきたいと思います。
この憲法審査会、私、ずっと出席をさせていただいておりますが、先週、北側幹事の方から、二〇二二年は一年間で二十回、昨年、二〇二三年は一年間で十九回、この二年で計三十九回の実質討議を行ってきた、議員任期延長について議論となった審査会の回数はこの三十九回のうち三十三回に及んでいるというふうな御発言がございました。もう論点は既に出尽くしていると言わざるを得ないという御発言がございまして、私も全くそのとおりだと思います。
まず、議論の中身というのは議員の任期延長に関してはもう出尽くしているので、この審査会の進め方の方を重点的に、どうやったらこれを決められるのかという決める方法、これを議論していただきたいんですね。真剣に、民主主義にのっとって多数決を行うのかどうかということを中谷筆頭幹事が度胸を決めてやっていただかないと、これは本当に前に進まないと思います。是非それをお願いしたいんです。
立憲民主党の逢坂幹事から、中谷幹事から突然、起草委員会ですか、のような御提案がございましたけれども、この憲法審、基本的には筆頭間で協議をしていくという話をしておりますので、改めて中谷幹事から御提案いただいた上で、筆頭間で取りあえずの整理をさせていただきたいと思いますというふうに先週述べられているんですね。これは筆頭間で今日までに何か提案と整理というのはついたのかということをまずお伺いしたい。
それから、日本維新の会は野党でございます。先ほど逢坂筆頭幹事の方から、与野党の筆頭幹事でとおっしゃいました。ただ、日本維新の会は、野党なんですけれども、立憲民主党の委員会運営にはとてもついていけないと考えております。
普通の委員会では与党筆頭、野党筆頭と言いますが、この憲法審査会においては、その枠組みというのはもう通用していないと私は思うんですね。野党の中でも、日本維新の会、そして国民民主党、有志の会はその野党のお話合いにも参加をしておりませんし、こういったいつまでたっても一つのことに対して結論を出せないような運営に関しては強く反対をするところでございますので、逢坂幹事におかれましては、野党の筆頭幹事だという言い方はもう今後しないでいただきたいです、本当に。
○森会長 傍聴人の方は御静粛に願います。
○三木委員 なので、立憲共産党を代表してと今、馬場幹事の方から言われましたが、本当に、立憲民主党と共産党の御意見だけを反映した野党幹事ということですので、そこら辺の方をちょっと強く、自民党、公明党の皆様方にも……(発言する者あり)失礼ではないと思います。強く申し上げておきたいと思います。
それから、今回、國重委員からも同性婚についての議論、そして、今回、階委員はもういらっしゃいませんけれども、デジタル立憲主義についての御提案、そして、小林委員からは緊急政令についての御提案もございました。
しかしながら、一つ一つ積み上げていかないことには、おもちゃ箱をひっくり返したみたいに、いつまでたっても、これは三十回以上も一つのことを議論しても結論が出せないような状況で次の議題に入ろうとしても全く次に進まないことは、もう火を見るより明らかなんですね。それぞれの価値観やそれぞれの議論の論点の違いというのは、本当に各党にとって違いがあるというふうに考えておりますので。
緊急政令、緊急財政処分に関しては、私も何回もこの審査会で発言をしてまいりましたし、議論をしたいというふうに思っております。デジタル立憲主義についても、生成AIについて、ヨーロッパが、EUがもう既に規制法案を作っていたりとか、アメリカが、バイデン大統領が大統領令を出したりとかしておりますので、本当に、喫緊の課題というのはたくさん残っております。
せめて今まで三十回も積み上げてきた議員任期延長に関して結論を出していただきたく、運営の方、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
以上です。
○北側委員 公明党の北側一雄です。
二点、確認といいますか、御質問したいと思います。一つは、今日も御発言いただいた、立憲の奥野委員に対してでございます。もう一つは、逢坂幹事にも、今後の運営ということでお尋ねを申し上げたいと思います。
今日の奥野委員の御発言は、恐らく前回の私の質問に対する御回答も含めていらっしゃったのかなというふうに思うんですが、要するに、緊急時における国会機能を維持しなければならないという観点で議員任期延長の問題が議論されてきたんですが、立憲民主党の皆様の考えとしては、一つは選挙困難事態、衆議院の解散から七十日を超えて選挙を実施することが困難であるという、この選挙困難事態というのはあり得るという認識に立たれたというふうに私は理解しました。
もう一点は、その場合には選挙期日を延期するんですよ、そして、参議院の緊急集会の権能を大幅に拡充をしていきましょう、こういう方向性が示されたと思うんですが、この選挙期日を延期するにしても、また緊急集会の権能を拡充するにしても、これは現行憲法とは違うわけでございますので、当然、憲法の改正が必要となってくる事項である、こういう認識をされたというふうに私は理解したんですが、それで間違いがないのかどうか、是非お答えいただきたい。
それと、逢坂幹事にお尋ねをしたいのは、先週も、そして今日も、多くの会派の人たちが、少なくとも五会派の人たちが言っていることは、この議員任期延長の問題についてはもう論点が出尽くしている、だから、これからはより具体的に、改正条項案のたたき台というものを提示をして、それを基に建設的な議論をしましょうと。賛否は別です、賛否は別として、たたき台としての改正条項案を基にして議論をする方が、より建設的な、例えば、ここが問題じゃないか、ここはこういう懸念があるんじゃないか、こういう指摘もできるわけでございますので。
たたき台を基にして具体的に議論をこの審査会で行っていくという提案を五会派はみんなしているわけです。それについてどう考えるかということについて、是非お答えをいただきたいと思います。
○森会長 北側君の質問時間、発言時間は三分ほど残っておりますので、奥野総一郎君、逢坂誠二君の順で御答弁を願います。
○逢坂委員 北側先生、ありがとうございます。
まず一つ、奥野委員の発言でございますけれども、立憲として、党内で全てを合意してその考えに立っているということは、全部合意しているということではありません。ただ、さほど認識は違わないだろうとは思いつつも、基本的には、奥野先生の意見ということであります。私は今回から立憲民主党の憲法調査会の会長も務めることになりましたので、私の責任で、党としての見解を出すときは出させていただきたいというふうに思っております。
それから二点目ですけれども、議員任期の延長については論点が出尽くしているということでございますけれども、私は必ずしもそう思っておりません。私は長い間選挙管理委員会の職員の仕事をさせていただきましたけれども、その観点から見ても、もう少しこれは議論すべき点があるだろうというふうに思っておりますので、その点については、次回以降、また整理をしてお話をさせていただきたいと思っています。
以上でございます。
○北側委員 奥野委員、是非御発言を。
○奥野(総)委員 ワーキングチームを座長としてまとめたものでありまして、一定の場合に選挙困難事態というのはあり得るという認識には立っています。その先、権限の強化については、法律でできるものと憲法でできるものについて慎重に精査をしていこうということでまとまっているということでありますので。そこで検討結果がそうなっているわけですね。そういう意味では、決まったこと。
○北側委員 要するに、いろいろな条件が整わなきゃいけないというのはいいんですけれども、少なくとも、解散の日から七十日、選挙困難事態がある、その場合には選挙期日を延期しますよ、そして参議院の緊急集会の権能は拡充しますよ、この二点についてやろうと思ったら、これは憲法改正が必要ですよね。その認識を問うているんです。
○森会長 北側君の発言時間は終了いたしましたので、簡潔に、奥野君、答弁願います。
○奥野(総)委員 論理的に、しっかり考えていきたいと思っています。
○石破委員 この審査会はもう少し長くやっていただけないものでしょうか、九時半から始めて十二時までやるとか。それは、議論がどうしても収束しないまま、深まらないまま、まだ発言御希望の委員もおられるようですが時間が参りましたのでみたいな、私はそれはいかがなものかと思っておって、もう少し時間を延ばしていただいて議論を深めて、今日はここまで行った、次の週はここまで行ったというふうに見せていかないと、この会は何なんだというふうに国民は思うのではないかと思います。幹事各位が大変な御努力の上にこういう会ができておることは百も万も承知ですが、是非更なる御努力を賜れればありがたいというふうに思っております。
我が党は、憲法改正実現本部というのがあって、古屋本部長の下に全国あちらこちらで憲法改正の集会を開き、そういう方面にある程度の知識がある議員と勝手に自分では思っているのですが、それが派遣をされるわけですね。
私も全国幾つかの場所に参りましたが、さて、そこにお集いの皆様方に、じゃ、どうやって関心を持っていただけるかという最初のイントロダクションは結構大事でして、我々の任期ももう半分以上過ぎたわけで、私は解散が総理の専権事項だとは必ずしも思っていないのだけれども、皆さん、いつだか分かりませんが総選挙がありますね、前回も投票していただきましたね、そのときにもう一つ何か投票しませんでしたかと言うと、みんな、えっとかと言うんですね。最高裁判所裁判官国民審査ってやりませんでしたかと。あっ、そういえばそんなものがあったと。あそこにずらっと並んだ裁判官の名前を一人でも知っていた人と言うと、まず一人も手を挙げない。ましてや、その判決の内容、少数意見も含めて知っていた方と言うと、まず絶対、誰一人手を挙げない。これを形骸化と言わずして何と言うか。
私たちは小学校のときから憲法を習って、三権分立、その仕組みというのを習いましたね。最高裁判所裁判官は国会の同意人事でも何でもない、それは内閣が決めるということになっているわけですが、さあ、どういう内閣が政権を持つか分からない。そうすると、国民審査に付すということになっているのだけれども、さてさて、それが、誰もとは言わないが、ほとんど知らない。じゃ、これは、権力におもねるとは言わないが、そういう裁判官がどんどん増えていったらどうするの、これはかなり危ないことではないかと言うと、ああ、そういえばそんなもんかという話になるのですね。
つまり、国民の方お一人お一人がこれって日本の統治の仕組みに自分たちが関わっているのだという認識を持っていただかないと、この憲法改正の議論は進まないと思っているのです。
昨年の九月の十二日だったと思いますが、最高裁判所の小法廷において、野党の議員の皆様方が起こされた、臨時国会を開催すると。当時の内閣、二〇一七年だったかな、内閣が、憲法の規定は、衆参いずれかの総議員の四分の一の要求があったときは内閣は臨時国会の召集を決定しなければならない、召集は陛下の国事行為なので、その手続という意味だと思いますが、と書いてあるが、いつまでということが書いてない、それが時の内閣が九十何日か延ばしてしまって冒頭解散ということだった、これは議員の権利が侵害されたので損害賠償ということで訴訟を起こされた。去年の九月の十二日の最高裁の判決はそれを認めなかった。しかし、憲法についての判断はしなかった。私はこの判決をかなり興味深く読んだのですね。
憲法の教科書、私どもが憲法を学んだのはもう五十年以上前の話ですが、そのときにこの条文についてどういうことが書いてあったかというと、衆参のいずれかの総議員の四分の一の要求によって臨時国会を召集しなければならないということは、少数会派の意見を尊重するということを定めたものであると。内閣は、議案がないとか緊急の必要を認めないとか、そういうことで開催をしないということをやってはならないということが憲法の教科書に書いてあった。私も五十年ぶりに読んでみましたが、そういえばそういうことが書いてあったというふうに思ったことでした。
ここにおいて、多数意見、つまり判決はそれを認めなかったが、憲法判断はしなかった。しかし、たった一人の行政法出身の裁判官の少数意見は、いや、そうではない、召集しないのは憲法に反するものであって、二十日以内に開催を決めなければならないというような少数意見がありました。
つまり、我々はここに何でいるかというと、個人としているわけではなくて、国民の権利の体現者としてここにいるわけであって、それが内閣の恣意によって臨時国会が開催されないというのは一体どういうことなのだということだと思います。
緊急事態における対応ももちろん大事なことだ、この点は早急に結論を得る必要があると思うし、憲法改正をしなければならないと思っている。しかし同時に、憲法には書いてあるのだけれどもそれが実現されないということをどう考えるかということも極めて大事なことであって、我が党の平成二十四年の憲法改正草案は、二十日以内に内閣は要求があったときは臨時会の召集を決定しなければならないと。
これは我々が野党のときに決めたことです。あれは野党のときのことだからねなぞという言い方をしちゃうと、野党のときの議論というのを誰も信用しなくなる。我々はいつも与党とは限りません。野党になることも当然あるのです。そのときにきちんと議論をしたこと、それを実現するために与党になる、それを選挙の際にお願いしているのであって、やはりそこは真摯に、与党と野党で一致できるものは何なんだということを見出していく。
そして、それはお試し改憲なんといういいかげんな話ではなくて、いかにして国民の権利を実現するか、いかにして議会において結論を出すべき議論をするかということ、私はそれをもっと重視すべきではないかと思っております。
私も三十八年議会に籍を置いておりますが、自分が自分の考えを実現するためにこの議会にいるのではない、選挙のときに信任してくださった方々の、あるいはしてくださらなかった方々も含めて国民の権利を体現するためにここにいるのだということをともすれば忘れがちなので、その点をもう一回考え直さねばいかぬと思っております。
何か感想めいたお話で恐縮ですが、今議論していることは議論するとして、何が国民の権利を実現することなのかということにもう一回立ち返るべきだと思っております。
なお、今日の議論を聞いておって、玉木委員のおっしゃったことというのは、我々が野党時代にまさしく議論をしておったことでした。自衛隊って何なんだということ、単に明記すればそれでいいということではない、そして、交戦権を認めないということは自衛権の否定にもつながるということ、そこをもっと深く議論をすべきだと思っております。
以上であります。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
もとより、憲法は第九十六条で改正について規定しています。憲法自身がその改正を所与の前提としている以上、国会で議論を尽くし、必要があれば改正を発議することは当然のことです。この点においては、改憲派も護憲派も、与党も野党も関係ありません。問題はその中身です。
その上で、本題に入ります。
先週、四月十一日の本審査会で、自民党の中谷筆頭幹事より、これまでの議論の到達点として三点、緊急事態条項、特に国会機能維持、憲法における自衛隊の明記、そして教育の充実について言及がありました。
私は、前回総選挙より二年半、本審査会での議論に参加してきましたが、中谷筆頭幹事が挙げた三点について意見を申し述べたいと思います。
第一に、国会機能維持、そのための議員任期の延長について。確かに議論は盛んですが、肝腎の立法事実について、認識が共有されているとは思えません。
そこで確認しますが、中谷筆頭幹事は、衆議院総選挙や参議院選挙の実施が全国の広範な地域で困難であり、かつ、それが相当程度長期間に及ぶ場合と述べておられますが、それは一体どういう状況でしょうか。
例えば、二〇一一年に発災した東日本大震災では、直後の首長、地方議員選挙が数か月延期されたものの、それは東北地方の被災三県内に限られた措置でした。一九九五年の阪神・淡路大震災でも、直後の首長、地方議員選挙が延期されましたが、延期は四十日余りで、かつ、兵庫県、神戸市など四つの被災自治体にすぎません。さらに、一九二三年、首都直下型の関東大震災、このときは明治憲法下の緊急勅令により府県議会議員の任期が延長されましたが、これも東京府、神奈川県、埼玉県など一部被災地にとどまっています。また、いずれの大震災でも国会機能は維持されており、震災後の国会議員の選挙も期日どおり実施されています。
こういった過去の事例も踏まえた上で、日本全国で長期間選挙が実施できない状況、国会機能が維持できない状況とは一体いかなる場合なのか、中谷筆頭幹事から具体的に御説明いただきたいと思います。
第二に、憲法における自衛隊の明記ですが、これも立法事実が示されていません。
私が昨年十一月に本審査会で申し述べたように、現在、自衛隊が憲法に明記されていないことによる法的、政策的支障は具体的に見当たらず、また、違憲論争に終止符を打つためであれば、それは仮に自衛隊を明記しても、行使する自衛権の内容などをめぐって、合憲の自衛隊か違憲の自衛隊かといった議論は今後も続き、改正の意味を成しません。
第三に、教育の充実に至っては、無償化も含め、憲法問題ですらありません。
教育を受ける権利を定めた憲法第二十六条が義務教育以外の教育の充実や無償化を禁じたものでないことは、文言上明らかです。むしろ、意欲と能力がありながら経済的な理由で義務教育以上の教育を受けられない子供たちは、第二十六条が規定する、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を侵害されていると解すことさえできます。いたずらに憲法問題として議論する時間と労力があれば、速やかに法律と予算で対応すべきです。
以上のとおり、中谷筆頭幹事が到達点とされている三点は、憲法改正や条文化作業はおろか、改正を必要とする立法事実すらはっきりしないものです。
憲法改正を主張される方々の御高説を伺っていると、何とかもっともらしい改正の理由を見つけようと、さながら改憲の青い鳥を探すかのごとくですが、そのために本審査会を毎週開催する意味がどれほどあるのか甚だ疑問です。
それでもなお開催することに意義があるとすれば、それは、現行憲法の遵守状況、とりわけ、合憲性、違憲性が問われている立法について本審査会で積極的に議論することであると考えます。例えば、先ほど國重委員も取り上げた同性婚、そのほかにも、昨年十月に最高裁が違憲判決を下した手術要件を伴う戸籍上の性別変更、あるいは、国会で議論し判断すべき事柄として最高裁から国会にボールが投げられたまま長年放置されている選択的夫婦別姓などが挙げられます。
こういった現実的な憲法課題について積極的に議論し国会における立法をリードしていくことも本審査会の重要な役割であるということを申し上げ、私の発言といたします。
○森会長 ここで、複数の委員からの御発言で御質疑のありました中谷元君から御答弁願います。
○中谷(元)委員 まず、青柳議員にお答えさせていただきます。
来週までに起草委員会を開けという御意見につきましては、もう既に起草委員会を提案をさせていただいております。まだ合意には至っておりませんけれども、今後さらに、幹事懇談会、できましたら毎週火曜日に定例で幹事懇談会を開催したいと思っておりますけれども、こういったことも提案をいたしまして、御出席、参加をいただくようにお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
大事なことは論憲でありまして、賛成も反対もしっかりとこの審査会の場で議論を続けていくということ、そして、じゃ、どのくらいまで質疑が必要かということにつきましても、具体的な数字は違いますけれども、やはり条文ベースでの議論が深まった時点で審査会の意思の決定ができるのではないかと思いますので、そういう点で更に煮詰めてまいりたい。
先ほど本庄委員からも具体的な質問がありましたが、一体、立法事実はということで。
昨日も、宿毛、愛媛県で地震がありました。災害は忘れた頃にやってくると申しますけれども、東日本大震災のときも、実際、福島で原子力事故が起こりまして、帰還困難、もう一年も二年も帰れないというような事故も起こっております。じゃ、こういう地域の選挙は一体どうしたらいいんでしょうか。非常に広範な地域で甚大な被害が生じた場合は、こういった広範性を満たすものと考えられますが、また今後、この審査会で、実際、その場合に選挙が実施することができるかどうか、具体的な例として議論をすることも必要でありますし、是非お願いしたいと思います。
それから、緊急事態の立法事実としては、国会というのは、国民の代表でつくる国の意思を表す場でありまして、いわゆるシビリアンコントロールなんですね。このシビリアンコントロールに空白の期間があっていいのか。例えば、自衛隊の出動の国会承認においても、一刻を争うときに、国会が、衆議院が開かれないということにおいては、まさにこの国の緊急事態における対応ができない一つの例でございますので、是非、こういった、選挙が実施が困難な場合にどうするかということもしっかり議論をしていただきたいというふうに思っております。
それから、筆頭間におきましては、それぞれお互いの立場も尊重し合いながら、憲法議論が進んでいくように努力をいたしております。私としましては、偏った一派だけではなくて、やはり全ての会派が参加できるように私なりに努力を重ねて、この審査の継続ができますように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
それから、自衛隊につきまして、私も防衛大臣をやりましたが、自衛隊が戦力かどうかという点につきましては、一貫として、憲法上の戦力ではないというふうにお答えをいたしております。
ただし、自民党の憲法改正案におきましては、自衛隊の機能、役割については定義をいたしておりますが、現状の意味が変わらないといっても、現状の自衛隊というのは我が国を防衛するための必要最小限の実力組織であることから、陸海空軍は戦力には当たらないんですけれども、我が国を防衛する実力組織であるということで憲法で保有が認められる自衛力である一方、その機能を果たしているということでございますので、憲法改正の時期にはこういった機能もしっかり書き込んでいけれるように、また議論をしてまいりたいというふうに思っております。
最後に、傍聴席からのやじを放置するか、適切かということでございます。非常に関心を持って御出席をいただいているのでありますが、憲法の議論というのは、静ひつな場で、落ち着いた環境で冷静に行うということが大事でありますので、傍聴人の皆様方には静かに議論を傍聴してほしいというふうに思います。
以上です。
○森会長 時間の関係で最後の御発言になりますが、逢坂誠二君。
○逢坂委員 まず、この憲法審の議論の中で、それは党としての考えかといったようなことが問われる場面があるわけですが、党としての正式見解については、今我が党の憲法調査会長を拝命しておりますので、私の下で整理すべき案件というふうに考えております。
それから、今日出されましたその他の質問については、議事録を精査した上で、来週以降、必要があれば対応したいというふうに思います。
なお、現時点で、中谷筆頭から、来週二十五日、憲法審の開催の提案を受けておりますので、筆頭間協議を続け、開催に向けて真摯に対応したい、そのように考えております。
以上です。
○森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。
この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十五分散会