衆議院

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第8号 令和6年5月30日(木曜日)

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令和六年五月三十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    伊藤 達也君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      城内  実君    黄川田仁志君

      冨樫 博之君    中西 健治君

      中村 裕之君    長島 昭久君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    三谷 英弘君

      山口  晋君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 左近君

      吉田 真次君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    階   猛君

      篠原  孝君    牧  義夫君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      青柳 仁士君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    河西 宏一君

      國重  徹君    赤嶺 政賢君

      玉木雄一郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     山口  晋君

  石破  茂君     冨樫 博之君

  越智 隆雄君     山本 左近君

  熊田 裕通君     中村 裕之君

  山本 有二君     吉田 真次君

同日

 辞任         補欠選任

  冨樫 博之君     石破  茂君

  中村 裕之君     熊田 裕通君

  山口  晋君     伊藤 達也君

  山本 左近君     越智 隆雄君

  吉田 真次君     山本 有二君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一六〇二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六〇三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六〇四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六〇五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六〇六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六〇八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一六〇九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六一〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一六一一号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六六三号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題を中心として自由討議を行います。

 本日の議事について申し上げます。

 まず、幹事会の協議に基づき、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、自由討議を行うことといたします。

 では、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局長橘幸信君。

橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。

 御指示によりまして、国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題について御報告をさせていただきます。

 まず、お手元配付の資料一枚目の資料目次を御覧願います。

 この資料目次にありますとおり、本日御報告申し上げます事項は、大きく三つの論点にわたっております。

 まず最初に、多くの先生方にとっては周知の事項かとは存じますが、総論として、国民投票広報協議会に関する基本的事項について御報告申し上げます。

 二つ目は、そのことを前提として、国民投票広報協議会に関連する国会法規の全体像について御報告申し上げ、国会法や憲法改正国民投票法に定められている事項のほかに、広報協議会規程といった法形式の下に細目的事項を定める必要があることを御理解いただければと存じます。

 三番目に、以上の広報協議会に関する事項以外に、これまで本審査会で議論となってきた国民投票法に関する主な論点について、分類、整理をして御報告を申し上げたいと思います。

 それでは、目次をおめくりいただきまして、資料1の、国民投票広報協議会の国民投票の手続上の位置づけを御覧ください。

 憲法改正原案が衆参両院で総議員の三分の二以上の多数で議決されますと、憲法改正原案は憲法改正案となり、両院議長はこの憲法改正案を官報で公示いたします。これによって、憲法第九十六条に定める憲法改正の発議が国民に対してなされることになるわけです。

 この憲法改正の発議が行われますと、衆参両院は速やかに、投票期日を定める議決をいたします。同時に、国会に国民投票広報協議会を設けることとされております。

 この広報協議会は、憲法改正を発議した国会自身によって設置される公的機関であり、国民に対する周知、広報を担うものです。国民投票の周知、広報の期間は六十日から百八十日、すなわち二か月から六か月という間で設定されますから、一般の選挙運動の期間と比べてはるかに長期間の広報活動を担うことになるわけです。

 他方、この国民投票運動期間における、その他の主体による国民投票運動は原則自由であり、一つ、公務員や教育者の地位利用による運動や組織的多数人買収といった悪質な行為の禁止や、二つ、期日前投票が開始される投票日前二週間に限っての国民投票運動のための放送CMの禁止などのような、必要最小限度の規制のみが定められています。

 発議前の国会での議論は丁寧に、そして発議後の賛否の運動は国民誰でも自由にというのが現在の国会法及び国民投票法の基本哲学とされてきたところですが、国民投票広報協議会の制度は、この発議後の自由な国民投票運動が正確な情報と賛否の意見双方を踏まえた熟議のプロセスとなるように、憲法改正を発議した国会自らが情報提供活動を行うものとして制度設計されたものでございます。

 次に、資料2を御覧ください。

 この資料は、国民投票広報協議会の組織と所掌事務を簡潔にまとめたものです。

 まず、広報協議会の組織及び議事手続についてですが、資料の左側にあるように、広報協議会は、憲法改正発議時の衆参議員各々十名、合計二十名から構成されます。その選任に当たっては、他の委員会等と同様に、数が大きな力を持つ国会の機関として、基本的には、各議院における各会派の所属議員数の比率により委員が割り当てられることとされています。

 しかし、憲法改正に反対の会派から一人も委員が選任されないこととなるときには、この原則に対する重大な例外として、当該反対会派からも委員を選任するよう配慮すべきこととされております。ここには、憲法論議においては少数の反対意見にも十分に配慮すべきとの思想が表れていると言うことができます。

 また、両院にまたがった特別の機関であることに鑑みて、その議事手続における定足数は、例えば裁判官訴追委員会などと同様に、衆参それぞれ七人以上の出席が必要とされるほか、議決も出席委員の三分の二以上の特別多数で行うこととされているなど、加重されたものとなっております。

 次に、この資料右側の所掌事務についてですが、国民投票には四つの事務が掲げられております。

 一つ目は、国民投票公報の原稿作成、二つ目は、投票所に掲示する憲法改正案の要旨の作成、三つ目として、広報協議会が自ら行ったり、また政党などに割り振って公費負担で行わせることとされている放送CMや新聞広告に関する事務があります。そして四つ目として、以上個別に掲げられている三つの事務以外の憲法改正案の広報に関するありとあらゆる事務がバスケットクローズとして掲げられております。この第四のカテゴリーには、例えば、ホームページやインターネットにおける広報活動、さらには説明会、すなわちタウンミーティングによる周知、広報活動などが入るかと存じます。

 この広報協議会による周知、広報活動の重要な特徴として、二つのことが指摘できます。一つは、法律の明文規定によって、憲法改正案について客観的、中立的に、かつ国民に分かりやすいような説明をするように求められていることです。二つ目は、憲法改正案に対する賛成意見、反対意見の分量、スペース、放送時間は完全に同等、平等でなければならないとされていることです。

 この二つ目の特徴は、極めて重要な事柄です。三分の二どころかそれ以上の圧倒的多数の賛成で憲法改正が発議された場合であっても、国民に対する周知、広報の場面においては、そのような国会での賛否の意見比率にかかわらず、完全に賛否イーブンで広報活動を行い、国民の意思形成に中立的であることが求められているからです。

 実は、この点については、国民投票法制定時に、賛否の所属議員数の比率によるべきとの反対意見も大変に根強くございました。しかし、与野党の責任者の先生方の粘り強い議論の結果、主権者国民の判断は、賛否いずれにも偏らずにフラットなベースラインからスタートして、熟議を経た上で判断してもらうべきとの発想から、このような制度となったところです。

 なお、この広報協議会には、その運営及び広報に関する事務を補佐するための、専門の国民投票広報協議会事務局が設けられることとなっております。

 次に、資料3を御覧ください。

 この資料は、広報協議会に関する国会法規の全体像を鳥瞰したものです。この表から御理解いただけますように、広報協議会に関する国会法規は三層構造になっております。

 まず、その組織の設置と委員、会長などの最重要項目については、国会に関する基本法、すなわち憲法附属法規でもある国会法に規定されております。その上で、その他の重要事項については、この国会法で別に法律で定めるとして委ねられたところの、憲法改正国民投票法で規定することとされており、同法においては、組織に関する事項と、所掌事務に関する事項、そして事務局の組織に関する事項が定められております。この概要については、ただいま資料2に基づいて御報告したとおりです。

 そして三つ目、三層目として、この国会法と国民投票法に定められている事項以外の細目的事項に関する定めとして、広報協議会規程、放送や新聞広告等に関する広報実施規程、そして事務局規程といった三種類の規程の整備が予定されています。

 これらの諸規程は、両院議長協議決定といった法形式で定められることになっております。この両院議長協議決定という法形式は、国会独自の法形式であり、一般に、両院議長が両院の議院運営委員会やその理事会に諮って定めることとされているものです。比喩的に言えば、法律の下で内閣が定める政令に当たるようなものと言えましょうか。

 そこで定めるべき事項の概要はこの表に掲げてあるとおりですが、広報協議会の組織に関する広報協議会規程や、事務局の組織に関する事務局規程については、現在及び過去に存在した両院にまたがった機関である、例えば、国会事故調に関する衆参両院の議運の合同協議会規程や、党首討論実施の場となっている衆参の国家基本政策委員会の合同審査会、これの根拠になっている常任委員会合同審査会規程、これら既存の諸規程などを参考にしたもので、ほとんどは事務的な事項と言えるかと思います。

 したがって、この規程整備における課題は、真ん中にある放送、新聞広告などの広報実施規程ということになるかと思われます。そこで定めるべき事項の内容については、前例となるものがないので今後先生方において詰めていただく必要がありますが、幾つかの論点があるように思われます。

 まず、どの程度詳細なものとしてこの両院議長協議決定を定めておくのか、すなわち、この両院議長協議決定では基本的な枠組みのみ定め、具体的な事項はその都度、その時々の広報協議会が定めるものとするのかどうか、また、現行の国民投票法には具体的に掲げられていないインターネット広告やタウンミーティングなどの規定も盛り込むのかどうかなどが議論となり得るかと思われます。

 なお、右下に付記しておきましたように、事務局規程との関係では、国会職員法や国会職員育児休業法などの関連規定の改正も必要となってまいりますが、これは技術的な事柄と言えます。

 次の参照条文のページを飛ばして、最後に、以上御説明してまいりました国民投票広報協議会以外の国民投票法に関する主な論点について御報告申し上げたいと存じます。

 資料4を御覧ください。

 国民投票法に関して議論すべき主な論点については、令和三年の国民投票法の改正、いわゆる七項目案の附則四条で論点整理の方向性が示されておりますので、これに沿って分類、整理をして御報告を申し上げたいと思います。

 まず、三年前のこの改正法の検討条項では、改正法施行の日から三年を目途に検討し、必要な措置を講ずるように定められているところでございます。その目途とされている期限が今年の九月に到来することを、あらかじめ付言しておきたいと思います。

 その上で、この検討条項では、検討項目は大きく二つの事項に整理されております。

 まず一つ目は、附則四条第一号に掲げられている、投票環境を整備するための事項です。七項目案では、共通投票所の設置や洋上投票の対象拡大、投票所に入ることができる子供の範囲の拡大など七項目の措置が講じられたわけですが、しかし、その後も公職選挙法では、日々、投票環境向上のための措置が続々と講じられており、国民投票法においても同様の措置を講ずることをこの条項は想定していたものでございます。

 既に二年前の四月に自民、維新、公明、有志の四会派から共同提案されている、いわゆる三項目案は、この七項目案に引き続くもので、これに関する措置を講じようとするものです。三項目とは、開票立会人の選任規定の整備、投票立会人の選任要件の緩和、ラジオによる広報放送にFM放送を追加する措置など技術的な措置が盛り込まれているところです。公職選挙法においては既に措置されている事項でございます。

 さて、もう一つの論点が、附則四条の第二号に掲げられている、国民投票の公平公正を確保するための事項です。この論点については、二〇〇七年の国民投票法制定後、今日まで約十七年間の間に、投票を取り巻く環境変化は著しいものがございます。これを背景に、本審査会においても、先生方から実に様々な御議論がなされてきているところです。四つに分けて分類、整理して御報告申し上げます。

 一つは、放送CM及びネットCMに関する事項です。

 まず、放送CMに関しては、先ほども述べました、期日前投票が始まる投票日前二週間の禁止だけでは不十分なのではないか、より実効的な何らかの法規制を導入する必要があるのではないかという御意見が一方にございます。他方では、できるだけ自由にとの立法当初の基本哲学を大事にしつつ、民放連の自主規制に加えて、広告の主な出し手である自分たち政党による自主的取組で対応するのが、自由な国民投票運動と公平公正な国民投票確保のバランスを取るための最適解ではないかとの御意見もあります。

 さらに、今や質、量とも放送CMを凌駕するに至っているネットCMについても、御議論がなされてきております。これについては、何らかの法規制を導入すべきという御意見と、ネットCMの出稿の仕組みの複雑さなどに鑑みると法規制は困難ではないか、それぞれの事業者に対して自主的取組を要請するにとどまるのが妥当ではないかといった御意見が述べられているところです。

 二つ目は、国民投票の公平公正が資金量の多寡によってゆがめられることのないように、国民投票運動のために支出される資金に関する規制の是非とその実効性確保に関する論点です。

 これについては、まず事前規制として、一団体当たりの支出金額の上限設定や外国人からの寄附禁止の措置を設けたり、また事後規制として、国民投票運動期間終了後に一定の団体に対して収支報告書の提出を義務づけるなどの法規制が提案されています。他方、これに対しては、その実効性に関して幾つかの問題点が指摘されているほか、できるだけ自由にといった国民投票法の基本哲学に照らして消極的な発言も述べられているところです。

 三つ目は、ネットCMに限らず、ネット空間で行われる憲法改正国民投票に関連した表現行為全般に関する論点です。

 特にフェイクニュース対策については、多くの委員の先生方から御発言がなされてきております。例えば、国民投票運動として行われる賛否の意見の表明については、一つ、その表現者の名称について表示義務を課すべきではないか、二つ、ネットの適正利用に関する努力義務を設けたりすることも必要ではないか、このような案が提案されてございます。また、これに対しては、そもそも、そのようなフェイクニュースが民主主義のプロセスに問題を与えているのは国民投票の場面に限らない、国政、地方の選挙も含めた幅広い議論が必要であり、必ずしも本審査会のみの議論で済ませることができるものではないのではないかといった御指摘もなされているところです。

 最後に、四つ目の論点として掲げましたのは、以上の三つの方策と重なり合いながら、本日前半で申し上げた、国民投票広報協議会による公的な広報活動、すなわち、客観的、中立的で、かつ賛否平等が法的に担保されている広報活動を充実強化することの必要性及び重要性についてです。

 具体的には、まず、1として、第一の論点整理で申し上げましたネットCM、そして、第三の論点整理で申し上げましたネット一般の表現行為に関して、それぞれが国民投票に関連して行われる場合には、その適正利用のためのガイドラインを広報協議会が作成することが必要ではないか、このような御意見が唱えられております。

 また、2としては、ネットにおける検索結果を表示する際に、公的な機関である広報協議会による情報発信を優先的に表示してもらうよう検索事業者に要請するなどの措置が唱えられております。

 さらに、3として、先ほども申し上げましたフェイクニュース対策の一環であるファクトチェック対策についても、その取組を強化すべきとの観点から、これに広報協議会が何らかの形で関与することができないかといった観点からの御議論がなされているところです。例えば、一方では、諸外国の事例などを踏まえて、広報協議会が自らファクトチェックを行うべきであるとの主張がなされています。他方では、広報協議会も公的な機関であり、言論市場に公権力が介入するとの批判を招かないようにするためには、民間のファクトチェック団体との連携を図るといった手法にとどめることが適切ではないかといった御主張もなされているところです。

 以上、大変に駆け足になってしまいましたが、国民投票広報協議会と、その他の国民投票法に関する主な論点について御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

森会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

森会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 発言の中には、事実確認等のため、衆議院法制局当局に対する質疑を含めても結構です。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷(元)委員 自由民主党の中谷元です。

 本日は、国民投票法におけるCM等の規制に関しまして、今後の論点整理に資するよう、今までの憲法審査会での議論を整理し、述べさせていただきます。

 第一に、CM規制の問題は、これまでも国民投票をテーマに何度も自由討議を行いましたが、民放連、日本インタラクティブ広告協会といった業界団体や憲法学者を参考人招致いたしまして意見を聞いた上で、議論を深めてまいりました。

 このテーマに関して当初主に議論されていたのは、国民投票における賛否の意見の量の問題であり、賛否いずれかの議論、意見が放送CMを通じて一方的に示されるということによりまして国民の議論がゆがめられるのではないかという懸念でありました。そこで、国民投票運動に係る資金の規制、また放送CMに関する規制強化といった法改正の議論が一部の会派から主張されました。

 一方、民放連からも参考人としてヒアリングを実施した結果、国民投票運動CMの取り扱いに関する考査ガイドライン、これを発表し、賛否の量も考慮に入れた自主規制を行うとの説明をしております。

 こうした取組を評価した上で、出し手側である政党も自主的取組を進めることにより、実効的な対策を模索していく意見もありました。

 また、そうした中で、インターネット、SNS、AI技術の発展、普及によりまして市場が拡大するインターネット広告についても何らかの規制を及ぼす必要があるのではないか、SNS等を用いた国民投票運動の在り方についても議論を及ぼす必要があるのではないかという意見もありました。

 また、インターネットにおける国民投票運動の在り方が議論されるにつれまして、国民投票運動の賛否に係る広告や情報の量の問題だけではなくて、質の問題にも注目が集まってまいりました。いわゆるフェイクニュースの問題でありますが、フェイクニュース対策の議論を概観いたしますと、三つのアプローチに分類できるという意見がありました。第一に、情報発信者、広告主に対してアプローチをする方法、第二に、SNSや広告の場を提供するプラットフォーム事業者にアプローチをする方法、第三に、拡散した偽情報を受容しないようにするために一般市民にアプローチをする方法、この三つであります。

 第一の発信者に対するアプローチとしましては、広告主の名称、連絡先の表示の義務づけを行う必要があること、第二のプラットフォーム事業者に関する規制に関しましては、維新の三木委員から、EUのデジタルサービス法の例を引きながら、大規模プラットフォーム事業者に対する法的規制の検討の必要性について意見が述べられました。一方で、事業者の自主規制に任せるべき、公的機関の関与の在り方としては、事業者の取組を後押しするためのガイドラインの作成にとどめるべきだという意見も有力でありました。また、こうした規制は、国民投票にとどまらず、選挙や言論空間一般に関わる問題であるために、憲法審査会にとどまらない幅広い議論が必要であるという意見も述べられました。

 そこで、憲法審査会では、広報協議会の充実強化といたしまして、この第三の、一般の人々が偽情報を見極め、受容しないようにするための方策につきましては、広報協議会が果たすべき役割に関する議論と絡めて次の意見が述べられました。

 一つ目が、ファクトチェックの充実強化策です。まず、広報協議会がファクトチェックを行うべきという意見がありますが、これに対しては、公権力の表現の自由への介入があるということで、慎重な意見も述べられております。そこで、ファクトチェックは民間の機関に任せ、広報協議会は民間のファクトチェック機関と連携をするにとどめるべきという意見も主張されているところであります。

 二つ目が、広報協議会による広報の充実強化策です。偽情報対策としても、広報協議会による正確で中立性が高い広報をより一層充実させることが有効であること、そのために広報協議会がインターネットやSNS等を利用した広報を行うべきとの意見が述べられております。こうした広報協議会による広報の充実強化につきましては、各党各会派の意見が一致しているのではないでしょうか。

 加えて、広報協議会の広報に容易にアクセスできるようにするためには、例えば、検索結果において広報協議会の情報発信が優先的に表示されるようにするといった措置が実施できないか検討すべきとの意見も述べられております。

 以上、CM規制に係る議論を概観してまいりましたが、私たちとしては、国民投票運動はできるだけ自由にという考えの下、法的な規制は極力避け、関係者の自主取組によりまして公平公正な国民運動を実施すべきという国民投票法制定時の議論を基本とすべきではないかと考えております。

 もっとも、事業者の自主的取組を後押しするための規定の新設や、広報の充実強化のための広報協議会の所掌事務の追加などに関する国民投票法の改正は検討に値すると考えます。そして、広報協議会が行う広報活動を具体化する広報協議会の諸規程案の整備も喫緊の課題であります。

 これらの課題につきまして、各党各会派の御主張も伺いながら、早急に取りまとめられるように、引き続き議論を深めてまいりたいと思っております。

 最後に、選挙困難事態における国会機能の条文化について意見を申し上げます。

 選挙困難事態における国会機能維持の条文化につきましては、各党から早急に条文起草作業に入るべきだという意見を多数いただいております。自民、公明、維新、国民、有志、この五会派の見解はほぼ一致しておりまして、共通の認識を基に、具体的な条文化を更に継続をし、議論をしていくべき段階になっておりまして、まさに機が熟してまいってきております。

 是非、反対の立場の意見を持った方も議論に加わっていただいて熟議をしていただきますように、この場をかりまして改めてお願いを申し上げまして、意見表明といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 私の方からは、国民投票法の抜本的改正の必要性について発言をさせていただきます。

 日本国憲法の第九十六条は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と定めております。この国民による承認手続を定めているのが憲法改正国民投票法ですけれども、憲法上の要請として、投票結果が民意を正確に反映させるような制度でなければならないということだと思います。

 私は、こうした観点から、令和三年五月六日の当審査会において、スポットCMの扇情的な影響力や、インターネット広告も含めCMに投じる資金の多寡が投票結果に与える影響等を踏まえ、CMや運動資金などについて一定の規制が設けられなければ、公平公正な国民投票の実施は期待できないという附則四条の趣旨説明を行いました。

 重ねて、その後の自由討議の中で、現行の国民投票法では、投票の公平及び公正は担保されていない、例えば外国政府なりが大量の資金でネット広告を打ち、投票結果を左右するおそれがあるとの懸念を示した上で、憲法九十六条の趣旨に鑑みて、提出者の意思として、私が筆頭提出者でありましたから、附則四条について、附則四条の措置がなされるまでは憲法改正の発議はできない、こう解するべきであるという答弁をしております。

 そして、附則四条の施行後三年の期限というのは本年九月十八日であります。目途と言っていますが、目途というのは見込み、めどでありまして、あえてこれを期限というふうに申し上げます。やらなくていいということではありません。

 今、紙を、ペーパーを一枚お配りしていますが、この我が党案、これは昨年十一月三十日にも同じものでお話をさせていただきました。先ほど、橘局長の論点の中にも我々の意見を多少取り入れていただいていますが、こういった内容を何回もこの場では説明をさせていただいています。

 そしてさらに、この原案、この我が党案の原案については、二〇一九年五月二十二日、五年前、国会に提出をしています。旧国民民主党玉木代表、それから階委員が中心になって取りまとめて、私は提出者の一人としてこれも関わっていますけれども、出したものが原案なんですね。ですから、もう五年もこういった内容について議論が定まっていないということであります。

 附則四条というのは、そもそもこの法案が先にあって、これをたたき台として、国民投票法の抜本的改正を目指すべく提案した条文であるというふうに私は理解しています。そして、五年たった今でも同じ内容を話さなきゃいけない。期限が迫る中、国民投票法の見直しの検討は進んでいないということだと思います。

 そして、重複になりますが、CM規制については、これまでも一定の議論は確かに行われてきました。放送CMについて、民放連の考査ガイドラインによって、意見表明CMについても取り扱わないこととするという自主規制が導入されるなど、評価される部分もありました。

 しかし、発議後から投票期日十五日前までは賛否の勧誘のためのCMも意見表明CMも自由に放送ができ、先ほど申し上げたような運動資金の多寡や外国政府の介入で投票結果が左右されるおそれがいまだ存在をしています。

 ということで、お配りしているこの紙、我が党の案にあるように、国民投票運動の全ての期間について賛否勧誘のためのCMを禁止し、また意見表明CMについても政党などについては全期間を禁止して、全て国民投票広報協議会の広報放送に委ねるべきではないでしょうか。

 それから、ネット規制についても、その影響力、放送以上に影響力があると思われますが、法的措置を影響力の大きさから見て講ずべきであると考えています。このペーパーにあるように、これは一部ですけれども、政党等は有料ネット広告を禁止、それから、ネット広告事業者には、国民投票広報協議会が定めたインターネット等の適正な利用のための指針に基づいて掲載基準を策定する努力義務を課する、また、国民広報協議会には、紙媒体だけでなく、インターネット等を利用する方法による憲法改正案の広報を義務づける、また、偽情報について、民間のファクト団体との連携も求めるというのがこの案であります。先ほど橘局長から御紹介があった部分も含まれています。などなど、ネットについても規制が必要であります。

 それから、運動資金規制については、ほぼほぼ議論が進んでいません。

 我が党案では、支出上限額の策定、収支報告書の提出義務、外国人等からの資金援助の禁止を規定することとしていますが、これを実現すれば、ネットも含めてCMへの支出が抑制されることになります。また、外国政府の干渉も一定程度防ぐことができます。

 この点に関しては、昨年十一月三十日の本審査会において、船田先生から、外国人の寄附については、やはりこれは禁止する方向で各党間、合意が得られるのではないかと前向きな発言をいただいています。また、同じく船田先生の発言として、主なプラットフォーマーに対して、運動期間中の回数やかけられた広告費などについて広報協議会に報告してもらうという発言もされています。これらはいずれも法改正事項なんですね。

 国民投票の当日における国民投票運動を認めるかどうかなど、ほかにも論点は様々ありますが、今私が述べたような点について、このペーパーにあるような点について、附則四条違反にならないように、早急に議論して結論を出すべきと考えます。

 なお、広報協議会に関する規程については、ただいま指摘をさせていただいたような国民投票法の改正と密接に関連することから、附則四条に基づく国民投票法改正の検討と併せて進められるべきと考えているところであります。国民投票法の改正の検討を急ぐべきであります。

 私は、憲法改正を、度々申し上げていますが、否定するものではありません。議論をしっかり尽くせれば国民投票法を使う場面もあり得ると考えて、民意を公平公正に反映させられるよう、この附則を提案させていただきました。この附則四条の定める期限が迫る中で、国民投票法の見直しこそ、憲法審査会の最優先の課題ではないでしょうか。是非、今日はその一部を御紹介しましたが、我が党案をたたき台として議論を進めていただきたい、これはずっと言ってきているんですけれども、お願いしたいと思います。

 なお、国会に提出されている公職選挙法並び、三項目改正案については、その成立だけでは、一号部分だけでは附則四条の要請を満たすものではないため、附則四条二号に基づく、今述べたような措置と一緒に、セットで審議を行うべきと考えています。

 私からは以上です。

森会長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の青柳仁士です。

 国会法などで定められた憲法審査会の権能とは、憲法に関する調査、改正原案の審査及び憲法改正国民投票の審査の二つであり、これらを並行して議論していくことは、憲法審査会の設置目的そのものです。

 まずは、CM規制など一部の議論が決着しない限り憲法本体の議論を先送りすべきであるといった極端な見解に流されることなく、憲法本体の議論と国民投票に関わる諸課題の議論の双方を同時並行で進めることを強く求めます。

 その上で、国民投票法に関する課題は、橘局長が説明された資料4にあるように、令和三年改正、いわゆる七項目案の附則四条の検討条項に規定されている事項に尽きると思っております。

 検討条項の冒頭、附則四条一号は、投票環境整備について、国民投票法を公選法並びにアップデートすることを規定しているものです。そこで、附則四条一号の要請に応えるため、令和四年四月、いわゆる三項目案が、自民、維新、公明、有志の四会派によって提出されました。この法案は、趣旨説明が行われた後、二年余り、全く審議が行われておりません。

 附則四条で目途とされている期限の今年九月が迫っています。内容的には全く党派性が入り込む余地のないものです。検討期間のめどが迫っている以上、争いのない項目から速やかに法制化し、合意ができていない事項は引き続き議論を深めていくのが、検討条項を提案した立場として責任ある対応ではないかと思います。国民投票の外形的事項である投票環境整備を進めつつ、国民投票の質に関する諸課題、すなわち投票の公正公平を確保するための事項に関し、早急に制度設計すべきです。

 国民投票広報協議会規程の整備の在り方については、各会派が度々問題提起し、昨年十一月末の当審査会で私も述べさせていただきましたが、大きな論点は、SNS等を利用したフェイク情報の流布や諸外国による選挙介入への対策の在り方に絞られていると考えています。

 国民投票は国民主権の発露であり、投票運動はできるだけ自由に、規制は必要最小限にが大原則であることは言うまでもありません。広告にせよ、ネット上の情報発信にせよ、法で過度に縛ることは政治的表現の自由を制約することにつながりかねず、自由と公正のバランスを踏まえた慎重な対応が必要となります。

 しかし、偽情報の発信、流布を野方図にしておけば、国民の投票行動に大きな影響を与え、公正な選挙の実現、すなわち民主主義の根幹が揺るがされかねません。官民の協働によるファクトチェックによってフェイク情報を特定し、根本から絶つ体制を早急に整えることが肝要です。

 検討すべき対策については、笹川平和財団がおととし二月に発表した、日本のサイバー安全保障に関する政策提言が参考になると思います。ここでは、ディスインフォメーション対策を行う情報収集センターを設置すること、選挙インフラを重要インフラに指定すること、情報操作型サイバー攻撃に対する積極的サイバー防衛を導入する体制を整備すること、ディスインフォメーションを防ぐための政府とプラットフォーマーによる協同規制を導入すること、メディアリテラシー教育の環境を整備することが提言されています。いずれも検討の余地はあると考えますので、議論の加速のため、同財団の専門家を当審査会に参考人として招くことも一考の価値があると思います。

 国民投票の公平公正に関する措置に関しては、橘局長の説明にもありましたように、放送CM、ネットCM、資金規制、ネット等の適正利用といった様々なものが想定されます。

 このうち、放送CMの公平公正については、当審査会と民放連の間での長いやり取りを経て、最終的に、民放連の自主規制ガイドラインにのっとって、放送各社が一般的な番組基準に加えて国民投票運動に特化した基準を定めることにより、おおむね量的な公平公正は確保できると考えます。

 ネットCMにおける公平公正については、当審査会の参考人質疑でも明らかになったように、全ての事業者をカバーできるものではないものの、ネット広告の分野の事業者団体である日本インタラクティブ広告協会、JIAAが自主規制のガイドラインを策定しており、加盟事業者がこれに従っていれば、ある程度の公平公正は保たれると考えられます。

 残る問題は、民放連が国民投票運動に特化したガイドラインを定めているように、JIAAにも国民投票運動に特化したガイドラインを定めてもらう余地はあるか、それは国民投票運動の公平公正に貢献し得るか、そして、JIAAに加盟していない事業者の広告に対しどのように公平公正を確保していくかの二点であると思います。

 JIAAの参考人質疑を含め、これらの問題を当審査会で明らかにしていくことを求め、発言を終わらせていただきます。

森会長 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一です。

 発言の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。

 本日は、憲法改正における国民投票広報協議会及び国民投票法に関する主な論点について、衆議院法制局より御説明がありました。

 そこで、私の方からは、昨今の急速な生成AIの進化を踏まえまして、AI時代において民主主義の基盤たる情報環境を健全たらしめるために必要な広報協議会の在り方や取組について、意見を申し述べます。

 今年一月二十一日、米国大統領選挙に向けたニューハンプシャー州の民主党予備選において、バイデン大統領に似せてAIが生成したと見られる声で、十一月の大統領選に向けて投票を温存することが重要だなどと呼びかける電話が数千件ともされる範囲にかかり、司法当局は先週二十三日、選挙を妨害したなどとして、五十四歳の政治コンサルタントを起訴しました。

 また、AI開発に携わる技術者からは、これまで二〇四五年頃と予想されていたシンギュラリティー、すなわちAIの知能が人間を超える技術的特異点は、生成AIの急速な進化により前倒しされ、そう遠くない将来に訪れるのではとの声も聞かれます。

 今や私たち人間は、著作物や発明などの議論に象徴されるように、映画や小説による問題提起にとどまってやや曖昧なままになっていた、人間とAIの境界線はどこかというテーマを、社会全体として突きつけられる段階に至ったと言えます。

 人間にあってAIにないものは何かと問われれば、今後、人間並みの知能を持つ汎用性人工知能、AGIが誕生したとしても、AGI自体が生命の尊厳や愛情を持つ可能性はほぼゼロであると指摘できます。この生命の尊厳とは、生への喜びや死への恐れであり、情報社会では、人をだまして傷つけることへの罪悪感と捉えることもできます。これは、人間がAIを適切に制御するために欠かせない資質であります。

 しかし、高度情報化社会では、生命の尊厳の希薄化が懸念をされております。例えば、AIは、幾ら偽情報を垂れ流そうが、罪悪感を抱きません。他方で、インターネットに偽情報を拡散させた人間もまた、送信ボタンをたった一回タップした程度の感覚はあっても、何千回、何万回と対面でうそをつきまくるほどの罪悪感にさいなまれることはありません。

 また、読売新聞とNTTの共同提言で、現代は、生成AIが自信たっぷりにうそをつく状態、また人間があっさりとだまされる状態に陥りやすいと指摘されるように、AIによって偽情報の拡散力は格段に高まりました。しかも、一度拡散された偽情報を完全に一掃することはほぼ不可能でありまして、動画や音声によるディープフェイクに至っては、仮にそれが架空の内容だと分かっていても、後遺症のように人間の思考に拭い切れない影響を残す可能性すらあります。

 こうした中、一昨年一月、慶応大学の山本龍彦教授、また東京大学の鳥海不二夫教授を始めとした有識者らが、情報的健康という概念を提唱いたしました。これは、食べ物は体をつくるが、情報は思考や人格をつくるという考えに立脚したもので、両先生は、共同提言において、民主主義の根幹を成す公職選挙や憲法改正国民投票などが行われる特別の期間においては、国民が多様な情報、意見にバランスよく触れ、フェイクニュース等に対して免疫、批判的能力を持つことが特に求められる、政府は、こうした特別の期間においては、他の一般的な期間とは異なり、デジタルプラットフォーム事業者等がユーザーの情報的健康に特に配慮することを促すなど、健全かつ熟慮的な言論空間の維持に努めることが求められると指摘をしております。

 また、日本を代表する漫画家、手塚治虫先生は、二十一世紀の子供たちへ託した遺作「ガラスの地球を救え」において、膨大な量の情報に一人一人が包まれる高度情報化社会では、どれとどれが必要な情報か、その選択法が大変難しい、正しい情報という言葉は誠に曖昧で、何が正しいのかということになると洞察をされた上で、とどのつまり、生命の尊厳を伝える情報が最も必要で、かつ重要な情報だと結論づけておられます。極めて鋭く、重要な視座であると思います。

 以上を踏まえまして、私は、AI時代において民主主義の基盤たる情報環境を健全たらしめるためには、いわゆるハードロー及びソフトローによる適切なAI制御の検討や、第三者機関等が情報コンテンツ自体に正確な発信者情報を付与するオリジネータープロファイル等の技術的対策の実現といった予防策の推進に加えまして、つまるところ、人間自身がフェイクニュース等に対する免疫、批判的能力を身につけるとともに、過激な内容で注目を集めて収益化を図るアテンションエコノミーをおのずと忌み嫌い、また、うそや誹謗中傷を許容しない、生命の尊厳を回復させ、情報を取捨選択する選球眼を養う必要があると考えます。

 そのためには、第一に、国民投票広報協議会の組織体制を整えるに当たっては、事務局に、AIが情報社会に及ぼす影響に関して造詣の深い専門家を招聘し、偽情報等の蔓延を念頭に置いた事前及び事後の対策について具体的に協議、検討すべきであります。

 第二に、制度や技術による予防策をもってしても偽情報等の拡散を完全に封じることは困難であるため、国民の偽情報への耐性を高める観点から、広報協議会は、憲法改正案に係る対面の説明会や討論会の重要性を積極的に発信するとともに、その活発な開催に努め、加えて、ファシリテーターを担う人材の育成、確保など、討論会等において、多様な意見が尊重され、国民の熟慮が深まり、相互理解が増進されるよう取り組むべきです。

 以上二点を御提言申し上げ、発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 まず、国民投票法について意見を述べます。

 私たちは、国民が改憲を求めていない中で、改憲のための国民投票法を整備する必要はないという立場です。

 現行の国民投票法は、第一次安倍政権の二〇〇七年に、安倍首相が、私の内閣で憲法改正を目指すと意欲を示す下で、自民党が改憲を進めるため、強行採決して作られたものです。

 その内容は、改憲案を通すために都合のよい仕組みとなっています。具体的には、最低投票率の規定がないこと、資金力の多い改憲派に広告が買い占められてしまうこと、公務員や教育関係者の意見表明や国民投票運動を不当に規制していることであります。広報協議会についても、協議会の委員は、改憲案に賛成した会派が圧倒的多数を占めることになります。広報や広告の内容も、改憲案の説明や賛成意見が大部分を占め、改憲を進めるために極めて有利な仕組みです。

 この根本的な問題を放置したまま協議会の規程を整備することは到底認められないと強く指摘しておきたいと思います。

 次に、政治改革と憲法についてであります。

 自民党の裏金事件は、派閥の政治資金パーティーを通じて、組織的に、大規模に、長期間にわたり、収支報告書の不記載、虚偽記載という政治資金規正法違反の犯罪行為を行っていたもので、民主主義の根幹を脅かすものです。

 国会の責務は、裏金が何に使われたのかを含め、事件の全容を解明し、金権腐敗政治の根を絶つ抜本的な改革を実現することです。その核心は、企業・団体献金の全面禁止です。

 自民党が、企業と癒着して財界、大企業の利益を優先し、国民生活を顧みないという政治の腐敗を生み出してきたことは極めて重大です。にもかかわらず、自民党は、金権腐敗政治の根源である企業・団体献金に一切手を触れない法案を押し通そうとしています。断じて容認できません。

 強調しておきたいのは、企業・団体献金は本質的に賄賂性を持つものであり、国民の参政権を侵害するものだということです。ここに重大な憲法問題があります。

 日本国憲法前文は、主権が国民にあることを宣言しています。その下で、第十五条は、公務員の選定を国民固有の権利であると規定し、国民個人個人に参政権を保障しています。国民個人個人が自ら支持する政党に政治資金を寄附し、政治献金をすることは、主権者としての参政権の行使そのものです。

 企業は主権者ではなく、選挙権、参政権を認められていないことは一目瞭然です。企業は、利潤の追求を目的とする営利団体です。したがって、企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待するものであり、本質的に賄賂性を持つことは明らかです。

 参政権を持たない企業が巨大な資金力によって政治に影響を与えようとすることは、金の力によって国民の参政権を侵害し、国民主権を揺るがすものであり、絶対に許されません。

 自民党は、企業・団体献金を正当化する根拠として、一九七〇年の八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決を持ち出しています。しかし、最高裁判決は、企業が政治的行為をなす自由を有することを認める一方で、「大企業による巨額の寄附は金権政治の弊を産む」と指摘し、「弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきこと」と述べています。

 既に六十年以上も前に企業・団体献金の弊害が指摘されていたにもかかわらず、温存し続けてきた結果、今の裏金事件を引き起こしているのであり、政治の責任は極めて重大です。

 自民党の裏金問題に対し、どの世論調査でも、企業・団体献金は禁止すべきだという国民の声が圧倒的多数となっています。私たち日本共産党は、一貫して企業・団体献金の全面禁止を主張し、自らも受け取っていません。政党助成金も受け取っていません。政党は、政治資金を国民に依拠して集めるべきであります。

 企業・団体献金によって国民の参政権が侵害され、政治がゆがめられている現実を正すことこそ私たち政治家に求められていると強く主張して、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 憲法審査会は、今国会、今日を除くとあと三回となりました。何度も申し上げますが、起草委員会を速やかに設置して条文作りに着手しようではありませんか、そろそろ。もう間に合わないと思います。絶望的だと思います。古屋先生、いらっしゃいませんかね。自民党としても熱心にいろいろな会をやっておられますけれども、物理的に、今のままだとできないと思いますよ、九月に。そこを具体的にどうするのかということをやはり示すべきだと思います。せめて要綱形式で議論することを始めることを提案いたします。

 今日も議論になっている国民投票法のネット規制等についてでありますが、これも私、もう何度も申し上げています。例えば、ケンブリッジ・アナリティカ事件はもう十回以上ここで取り上げていますが、ブリタニー・カイザーさんを呼べとか、もう何度も言って、しかし、全く進んでいません。全てが遅いんです。

 中谷筆頭には、改めて、改憲を本当に総理がおっしゃるとおりやるのであれば、そのスケジュールと戦略をやはり明示をしていただきたいなというふうに思います。

 以上申し上げた上で、橘局長に一点確認したいんですが、意外に国民の皆さんとも共有されていないのは、国民投票のときの投票用紙です。

 憲法改正に賛否を示すやり方については実は一定程度決められているんですが、余り共有されていないのであえて聞きますけれども、複数の改憲テーマがあった場合に、そのテーマごとに賛否を問う用紙を用意するのか、あるいは、条文ごとに用意するのか、ある程度テーマごとに用意するのか、そういったことは一体どうなっているのか。

 そして、この今日いただいた資料2にあるんですが、「協議内容」で、「複数案が発議された場合の区別のための投票用紙等の文言を含む。」というところがこの右側の「協議内容」のところに書いていますけれども、例えば、今我々ずっと議論してきている選挙困難事態における議員任期の延長規定等についてを、投票用紙に、選挙困難時における国会機能維持についてというふうに賛否を問うのか、あるいは緊急事態条項について問うのかという、その書き方によっては賛否がえらい変わってくると思うんですよ。それは、誰がどのように決めていくのか。

 そういった点について、投票用紙の様式も含めた在り方については現行規定でどのようになっているのか、そこを改めて御説明いただきたいと思います。

橘法制局長 玉木先生、御質問ありがとうございます。

 御質問には二つの論点が含まれているように思いました。まず、国民に憲法改正の発議をする際のマル・バツをつけてもらう単位がどのようなものなのかということ、それが複数あった場合に投票用紙はどのように調製されるのかということでございます。

 まず、前者の論点は、国民投票法制定時にも大変に議論になりました、いわゆる個別発議の原則と言われることに関する論点かと思います。

 すなわち、国会法六十八条の三には、「憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。」とされています。これは、最終的に国民に発議される憲法改正案にも当てはまるというふうに解釈されているところですけれども、内容において関連するかどうかということについては、今慎重に玉木先生もおっしゃいましたように、これは条文ごとではありません。よく、逐条ごとに提案するんだというふうに言われる方がいらっしゃいますけれども、それは違っております。条文ごとではなくて、条文の関連性、いわゆる内容における関連性ですから、条文全体の整合性を担保する観点から、テーマごとに憲法改正原案を構成するということであります。それがまず大前提です。

 国民投票法制定時にしばしば出された具体例でいえば、九条改正案と環境権追加の改正案を抱き合わせにして束ね法案にする、そのようなことはやめよう、別々に国民に提案して、それぞれマル・バツをつけてもらうんだということでございました。

 さて、その上で、それを国民投票の用紙にどのように表すかです。

 これは国民投票法にも規定がありまして、二以上の憲法改正案について国民投票を行う場合には、いずれの憲法改正案に係る投票用紙であるかを表示しなければならないという規定がございます。これが、今、玉木先生が言われた、二つの憲法改正案を発議した場合に、いわゆる投票用紙に、緊急事態条項に関するものなのか、国会機能維持に関するものなのか、その表現がまさしく問題になるわけです。この表現によって、国民に対してどの程度正確にその憲法改正の内容をお示しするのかということですから、これこそが広報協議会で議論されて、的確な名称をつけるという大きな問題になるかと思います。それが資料2の部分の記述でございます。

玉木委員 ありがとうございました。今、明確になったと思います。

 私もちょっと誤解していたんですけれども、条文ごとではなくて、テーマごとで投票用紙ができるということと、そのテーマの名前のつけ方はまさに広報協議会で議論するということなので、そこを具体的にどうしていくかというのは、結果にも大きな影響を与えるので、極めて重要なテーマだと思いますので、この点は改めて確認し、それをどうするのかということも実はここでしっかり議論をしておく。それも含めてやらないと現実的な憲法改正に至らないということは、問題提起をしておきたいと思います。

 残りの時間、まさに、選挙困難時における国会機能の維持については、前回も申し上げましたけれども、もう論点が尽くされているので、もう質問することはありません。

 ただ、前回、本庄幹事に質問したときに、前回欠席されていたので、もし時間があれば、後の時間でもいいので、三点前回聞いたので、お答えいただきたいなと思うのは、繰延べ投票で対応できるということについて、繰延べはいつまで繰延べができるのか。七十日を超えるのか、百日なのか、二百日か、三百日なのか、六百日なのか、どこまで繰延べ投票でいけるのかということが一点ですね。

 繰延べ投票はできると思います。これまでの国会答弁でも、憲法で定める解散から四十日以内のどこかでまず公示、告示をしておけば、現に行われる投開票日は四十日を超えていてもいいという答弁がありますから、四十日を超えても可能だとは思うんですが、ただ一方で、延ばしたその間はやはり議員が欠けるので、議員任期の延長はさすがに法律ではできないというところは、これは野田内閣の閣議決定でも明らかになっている。

 そうすると、またいつもの議論に戻ってきて、じゃ、七十日を超えて長期に議員がいないときに、参議院の緊急集会というところが、いわゆる、私が言うスーパー緊急集会というのは憲法改正しなくてもできるのかどうかという、いわゆる、立憲民主党さんが使っている言葉で射程の問題が出てくる。そこをやはりどう考えているのかということと、あと、やはり、繰延べ投票の場合は、それを延ばすという決定が基本的には選挙管理委員会なので、長期にわたって国会議員が欠けるという判断を選挙管理委員会に委ねるのは果たしていかがなものかということです。

 最後に、三点目で、これも、特に二〇〇三年以降大きな問題だと思うのは、さっき言ったように、四十日以内にスタートさえ切っておけば、何とか、最後は四十日を超えてもいいというんですけれども、スタートは切らなきゃいけないということは、形式的にも選挙はスタートさせなきゃいけないんですね。

 そうなると、投票日が先でもいいということなんですけれども、二〇〇三年以降、期日前投票が認められているので、公示、告示の翌日から投票ができるので、選挙困難事態ですよと言いながら、延ばしておきながら、一応、投票もできれば選挙もできることになっているので、そこは矛盾しないかということと、やはり、東日本大震災のことを考えても、職員の方も被災されているので、あるいは警察官も被災されているので、仮に選挙違反的なことがあったときに、おかしいと言われても警告を発することもできないということで、公正な実務ができるのかという観点があるので、この三点、後でまた、可能であれば答えていただければと思います。

 以上です。

森会長 本庄知史君に御質問がございましたけれども、後ほど、適切なときに御答弁願います。

 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 今日は、偽情報対策あるいは問題について、青柳さんと河西さんから大変いい話を聞かせていただきました。

 それで、これは玉木先生に怒られますけれども、私も前から何度も同じ話をずっとしてきたんですが、昨年十一月に、現行の国民投票法は十七年前に公表されていて、その後のインターネットにおける偽情報の氾濫については全く想定していないと指摘しております。当然、国民投票広報協議会の事務にも偽情報対策というのは含まれていません。

 本日は、一部の委員と共有する問題意識の中、最近の諸外国の偽情報をめぐる情勢と、我が国の民間ファクトチェック団体の実情についてお話をしたいと思います。

 まず、諸外国ですけれども、カナダでは、我が国とは異なって、外国干渉委員会というものがちゃんと政府にあります。カンショウというのは、映画鑑賞の鑑賞じゃないですよ、介入する方の干渉です。今月三日に公表した二〇一九年と二〇二一年のカナダの総選挙に関する報告書に、中国はカナダに対する外国干渉の際立った加害者であり、カナダの選挙における最大の脅威であると述べています。

 今月の七日に情報機関である安全情報局が公表した年次報告には、中国は不正な手段を用いて政府や学界、メディアなどの分野のあらゆるレベルで政策決定に影響を与えようとしていると警鐘を鳴らし、中国共産党と関係のある組織は、カナダの情報、技術、民主的制度及び海外在住のカナダ人コミュニティーに対する永続的な脅威であり続けているとも述べています。

 次に、欧州です。

 来月上旬に行われる欧州議会選挙をめぐって、ロシアが欧州議員への影響工作や偽情報の拡散などの選挙介入を活発化させていることが報道されています。また、EUでは、先月の三十日に、フェイスブックやインスタグラムを運営するメタという会社に対して調査を実施しています。その理由は、同社の偽情報対策が不十分であり、EUの法律に違反している疑いがあるということであります。

 最後に、台湾です。

 本年一月の総統選挙で大量の偽情報が出回ったことは、皆様も報道で御存じかと思います。台湾政府は、これも我が国とは異なり、こうした事態を事前に想定して、既に二〇一九年に偽情報対策を包括的に取りまとめています。これは、識別、検証、抑制、懲罰という四つの対策をファクトチェック団体やプラットフォーム運営者などと協力しながら取り組むという内容です。今般の選挙においても、この方針に従って偽情報対策を有効に実施しているようであります。

 このように、諸外国では、外国の介入によって選挙や国民投票において国民の意思がゆがめられないよう様々な対策が今なお強化されつつも講じられています。

 こうした中、本審査会では、一部の委員から、公権力の表現の自由への介入を許してはならないという考えから、専ら民間ファクトチェック団体との連携を提言する声が出ています。理屈としては一定理解できますが、我が国のファクトチェック団体の実情は正直心もとないと言わざるを得ません。

 世界のファクトチェック団体を研究する米国のデューク大学のリポーターズラブによりますと、本年五月現在、世界で登録されているファクトチェック団体の総数は四百三十六団体です。アジアだけでも八十団体を超えていますが、登録されている日本の団体は僅か四団体のみです。しかも、この中には、自らはファクトチェックを行わず、右から左へと大手メディアに依頼するような団体が一つ含まれます。では、ほかの三団体が精力的に効果的にファクトチェックをやっているかというと、これも首をかしげざるを得ません。

 これらの団体の一つ、ファクトチェック推進団体という団体なんですが、この担当者御本人が昨年二月十日に総務省で、プラットフォームサービスに関する研究会というのがあるんですが、自ら次のような問題点を指摘しています。

 一つは、海外の団体と比較してファクトチェックの絶対量が少ないという量的課題です。二〇二二年で日本は約二百五十件でしたが、台湾では千二百七十八件、韓国では九百五十一件であります。

 二つ目は、これらの団体の体制は、ファクトチェックに専念しているいわゆる専業の方がほぼゼロで、ほとんど学者さんなどが兼業でファクトチェックをやっています。資金面の課題も指摘をされています。

 三つ目は、団体の認知度が低いためなかなかファクトチェックが拡散されず広く行き渡らない、また、偽情報が出てからの対応が遅い、国際ファクトチェックネットワークに認証された団体が一つもないなどの認知度や信頼性の課題もあると指摘をされています。

 四つ目に、海外のファクトチェック団体と連携する余裕がない、国際連携ができていないことも指摘をされています。

 以上、当事者、担当者が我が国の民間ファクトチェック体制の厳しい状況をこのように指摘をしています。これに加えて、例えば、欧州における制裁金等の規制もなく、プラットフォーム事業者との本格的な連携も機能しているとは言い難い現状です。

 理屈はともかく、こうした現状の中で民間ファクトチェック団体との連携だけで偽情報対策が本当に機能するのか。確かに、我が国では、これまでは致命的かつ深刻な外国からの偽情報の脅威に直面していないのかもしれません。あるいは把握されていないだけかもしれません。いずれにせよ、諸外国で起こっていることが我が国で起こらない保証はありません。

 現に、ALPS処理水の放水に際しては、中国発の偽情報が多く出回っております。人工知能の翻訳機能が飛躍的に進歩していることなどを踏まえると、もう少し危機感を持つべきだと思います。

 憲法改正に関する国民投票は民主主義の根幹です。国民の自律的な意思が阻害されないために、我々も責任を持って、より積極的な姿勢で臨むべきだと考えます。

 なお、国民投票のこうした議論も大切ですが、何度も要請している憲法本体の非常時における国会機能維持に関する起草委員会の早期立ち上げを本日も求めて、私の意見とします。

 ありがとうございます。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 ここで、あらかじめ申し上げます。

 先週来の玉木雄一郎君の本庄知史君に対する御質問につきましては、来週答弁をなさるそうですので、御了解ください。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

井上(貴)委員 自由民主党の井上貴博です。

 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、緊急事態条項について、議員の任期延長、参議院の緊急集会について、前回までの委員の皆様方の発言を受けて再度確認したい事項がございますので、その点について発言をさせていただきたいと思います。

 昨今五年間でいうと、令和四年の二百八回国会から様々な分野において憲法改正の議論が行われてきました。私も令和四年に憲法審査会の幹事を務めさせていただきましたが、なかなか開かれなかった時期もございました。憲法審査会を毎回開くことになって、討議を重ねることによって、憲法改正に関する各政党会派の考え方が広く国民に理解されるようになってきたというふうに感じています。

 緊急事態条項については、令和四年、二百八回国会以降、合計二十二回行われてまいりました。これまで討議を重ねたことによって、自民、公明、維新、国民、有志の五会派が緊急事態条項についての憲法改正の方向性についておおむね意見が一致してきたというふうに感じています。

 前回五月二十三日、憲法審査会において小林幹事から発言がありましたように、解散後、国政選挙の実施が七十日を超えて困難であることが明らかになった場合は選挙期日、議員任期特例により対応し、解散後、国政選挙の実施が七十日以内に見通せる場合は参議院の緊急集会で対応すべきという共通認識が形成されております。

 昨日、憲法審査会で参議院軽視というような御意見が多少見受けられたというふうに感じましたけれども、参議院軽視という意見は当たらないというふうに感じています。そうあってはならないとも思います。

 その上で、参議院の緊急集会は、憲法五十四条三項の趣旨からも、二院制の例外として設けられた暫定的な措置であり、五十四条一項からは、参議院の緊急集会は衆議院不在の最大七十日間を想定していると考えられると思いますので、私も、解散後、国政選挙の実施が七十日を超えて困難であることが明らかな場合に、選挙期日、議員任期の特例を条文上規定して対応すべきだというふうに考え、小林幹事の意見に賛同いたします。

 他方で、五会派の中でも意見が分かれている点があります。それは、議員の任期の延長についての裁判所の関与の在り方であります。

 自公案では、内閣が提案し国会が承認をするということになっております。これは、緊急事態であるかどうかという判断は、情報を収集し、情報から総合的な判断で政治が責任を持って判断することがなじむものである、内閣、国会の政治的判断に委ねようとするものであります。これに対して、維新は憲法裁判所、国民と有志は最高裁判所の関与を必要とする案になっています。

 今申し上げたとおり、緊急事態かどうかの判断は政治的判断になじむ事項でありますし、裁判所の関与を必要とすると、緊急事態のときに判断材料を収集し、裁判所にその情報を提供し、裁判所が状況を把握して、裁判所の判断を仰ぐということになります。緊急事態下において迅速な判断をやらなければならない状況下の中で本当にそれが適切なのかということについて、維新、国民、有志の皆様方の御意見をいただきたいというふうに思います。

 立憲民主にお伺いいたします。

 本年一月一日、能登で大きな震災がありました。昨年から現在まで、およそ一年五か月という短い期間で、震度五以上の強い地震が三十一回も発生しています。

 逢坂幹事は、東日本大震災の際に政権を担当された民主党でおられ、当時、総務大臣政務官を務められたと承知しております。我々の細野委員から、仮に東日本大震災が起こったときに衆議院が解散をしていた場合に実際に選挙ができるかという質問に対して、東日本大震災を踏まえて、強い選挙の在り方を徹底的に議論すべきだったと回答されています。

 この点について、同日の北側幹事からも、東日本大震災当時、一番最初に総務省が急いでやった特別立法が選挙の期日を延ばす法律だった、私は阪神・淡路大震災の経験で、そのときに、選挙期日を延期する、任期を延長するという法律を作っている、東日本大震災が初めてではない、大震災が起こったときはこういう仕組みややり方でやるしかないという判断が総務省の中にはあったと思うという指摘がありました。

 五月十六日の憲法審査会において、逢坂幹事は、憲法といえども、決してすり減ることのない不磨の大典ではないというふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 逢坂幹事は、今までの御自身の経験を踏まえて、緊急事態下の議員延長について、本当は憲法改正が必要であると考えていらっしゃるのではないかというふうに、そのことについてお聞きしたいというふうに思います。もしそうでなければ、必要でないと回答されるのであれば、逢坂幹事は、どのようなときにどのような内容で憲法改正を必要と考えられるのでしょうか。

 緊急事態条項は、五会派が改憲、共産党は改憲反対と、これはある意味では分かりやすいというふうに思います。立憲民主のみが党内のコンセンサスが図られていない印象を持ちますので、この件について御意見を頂戴したいというふうに思います。

 私は、緊急事態条項については、五会派で共通認識を形成しており、既に議論は十分にし尽くされ、機は熟していると考えており、次また起こるかも分からない有事に備えるためにも、一刻も早く具体的に条文案を取りまとめて、今国会の閉会までに発議ができるような環境を整備していただきますよう切にお願い申し上げ、私の発言とさせていただきたいと思います。

森会長 ただいま井上貴博君の御発言の中で、維新、国民、有志の会、また、立憲に御質問がありましたけれども、既に時間が終了しておりますので、次回にでも御答弁をいただきたいと思います。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 先ほど河西委員が述べられたAIに対する問題意識、私も共有させていただきたいと思います。

 折しも、二十一日にEUでは、AIの開発や利用に関する規制を定めたAI法が成立しました。AI法は、人間の尊厳や民主主義、法の支配を守りながら、信頼できるAIの普及を目的にしています。そのために、巨大プラットフォーマーに法的義務を課すことにしています。

 こうした規制の流れを、これまでの憲法によって国家権力を縛るという立憲主義のアナロジーで、デジタル立憲主義と呼ぶようになってきました。AIを始めデジタル技術については極力規制しないというデジタル自由主義や、デジタル技術を国家の監視、管理の下に置くデジタル権威主義、こちらはいずれも両極端であり、問題があります。

 立憲民主党は、党名の示すとおり、デジタル立憲主義の立場に立って、バランスの取れた国民投票法改正案と、自己情報コントロール権、情報アクセス権、情報環境権、これらを保障するための憲法上ないし立法上の措置を提案していることをまずもって申し上げます。

 その上で、私からは、国民投票法にネットないしデジタル関連の規定を設ける必要性と、当該規制に関連して国民投票広報協議会が果たすべき役割について述べさせていただきます。

 先ほど奥野委員も述べたとおり、我が党は、国民投票法につき、附則四条一号の投票環境整備に関する改正だけでは不十分と考えています。附則四条二号の国民投票の公平及び公正の確保のため、放送CM規制や国民投票運動の資金規制はもとより、有料ネットCMの規制やフェイク情報対策などを盛り込んだ改正を行うべきと主張しています。

 前者については、政党等に対して有料ネットCMを禁止する代わりに、国民投票広報協議会がネットでも広報活動を行い、賛否それぞれの政党等の意見を公平に伝えるようにし、一般国民が容易にアクセスできるようURLを表示する工夫も行うこととしています。

 国民投票広報協議会によるネットを使った広報については、私が知る限り、大半の委員が賛同していると思っております。現在の国民投票法に明文の規定がありませんが、放送や新聞による広報においては、本日の資料3の参照条文の三ページにあるとおり、詳細な定めが置かれております。このことからすると、国民投票法を改正してネット広報の定めを置くべきであります。

 この点について、先ほど橘局長からは、そもそもこの規定を法律改正によらなくても行い得るという立場があるという御紹介がありましたけれども、今申し上げました条文のたてつけからして、私は法改正が必要だというふうに考えております。この点については、政党等の有料ネットCMの禁止規定とセットで具体的な条文案を検討すべきであると私たちは考えております。

 後者のフェイク情報対策については、国家権力が自らに不都合な情報の流通を阻害するデジタル検閲を行っているのではないかという疑念を国民が抱かないようにすることも考えなくてはなりません。その観点から、国民投票広報協議会が自らネット情報のファクトチェックを行うのではなく、民間のファクトチェック団体やSNS事業者からの問合せに対して必要な情報提供を行うことでフェイク情報の拡散を防ぐ、そういう間接的な手法が望ましいと考えています。この点については、まずは規制の方向性について各会派と早急に議論を詰めた上で、条文案の検討に移るべきと考えています。

 なお、こうした法的な規制とは別に、ネット広告事業者等の広告掲載基準に関するガイドラインや国民にネットの適正利用を促すガイドラインの策定を国民投票広報協議会が行うことも立憲民主党は提案しています。すなわち、ネットないしデジタル関連の規制において国民投票広報協議会の果たす役割は極めて大きなものがあります。

 他方で、橘局長の説明にあったとおり、国民投票広報協議会は衆参両院にまたがる組織です。前例のない国民投票広報協議会の権限を定める憲法改正案広報実施規程案なるものの検討に当たっては、衆参合同の組織で行う必要があるということも申し上げます。

 以上で私の発言を終わります。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 まず、大規模な災害、感染症の蔓延その他国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、地方自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案が本日の衆議院本会議で採決される見込みですが、課題は山積しているとの指摘もあります。このような制度改正は本来憲法を改正して対応すべき事柄であるということを指摘した上で、緊急時における国会機能維持条項の議論を収れんさせるべく、自民党、公明党に、以下お伺いをさせていただきます。

 まず、自民党の中谷筆頭幹事にお伺いいたします。

 先ほど、緊急時の国会機能維持条項の条文起草作業への参加を反対会派に改めて呼びかけられましたが、前々回の憲法審査会で、私に加えて、自民党の長島委員や山田委員等からも、賛成の五会派のみで条文案起草作業に入ることを中谷筆頭に提案させていただいております。

 この憲法審査会も、このままだと今国会はあと三回しかありません。時はこうしている間にも刻々と過ぎております。岸田総理がおっしゃる任期中の九月までの改憲を実現することを自民党が本気でお考えならば、改めて、賛成五会派のみでの条文起草作業を開始することを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

 あわせて、これも自民党を含む賛成会派の委員が求めている要綱案については、いつ提出されるとお考えなのか、与党筆頭幹事としてお答えいただければというふうに思います。

中谷(元)委員 大切なことは幅広い会派が協議の場で参加できるようにすることでありまして、条文起草作業に入ることも反対の会派もあろうと思いますけれども、そのような会派の方々も協議のテーブルには着いていただきたい。そして、熟議が大事だという点は申し上げました。今日も、立憲民主党の御意見を聞きますと、広報協議会等につきまして条文の提案等もありましたので、また引き続き呼びかけをいたしたいというふうに思っております。

 ただ、こういった時間的な制約等もございますので、ただいま御提案のありました五会派のみで検討すべきだという意見も、また検討させていただきたいというふうに思います。

岩谷委員 要綱案の提出については、いつ頃だとお考えでしょうか。

中谷(元)委員 これも協議が必要でございますので、幅広い会派の協議の場において要綱案を協議をしていきたいなというふうに思っております。

岩谷委員 賛成五会派のみでの起草作業というのも検討されるというお考えでありますが、もしこのまま、反対会派が参加しないからとの理由で起草作業を行わないとすれば、自民党はもう岸田総理の任期中の憲法改正実現という旗は降ろされた方がよいのではないかというふうに思います。

 続いて、自民党と公明党に、裁判所の関与として御提案の客観訴訟の活用についてお伺いしたいと思います。

 前々回、私は、現行の客観訴訟の仕組みは判断が確定するまでに時間がかかり過ぎるなどの問題点があると指摘をいたしました。また、先ほど自民党の井上委員が指摘されたとおり、現行の裁判所を前提としたときは、果たして適切な判断が可能なのかという問題もあります。それゆえ、我々維新の会は、衆参の国会議員も裁判官として加わった憲法裁判所という新しい機関で審査することを主張しているわけであります。

 現行の客観訴訟では時間がかかり過ぎるのではないかという私の指摘に対して、公明党の北側幹事から、裁判所は何日以内に判断しなければならないとするなど、制度設計で解決できるという趣旨のお話がありました。

 そこで、自民党及び公明党に、お考えの客観訴訟の具体的制度設計についてお伺いしたいのですが、例えば、現行制度と同じく、一審を高裁として二審を最高裁とする二審制を取るのか、それとも、結論を早期に出すべく一審を最高裁とする一審制を取るのか。また、原告適格について、広く国民一般に訴えを認めるのか、あるいは衆参の各国会議員の四分の一以上による訴えなどに限るのか。さらに、判決の効力について、拘束力を持たせるのか勧告的な効力にとどめるのか、拘束力を持たせるのならば、遡及効を持つのか将来効とするのか等々、細かい話にはなりますが、残された重要な論点でありますので、もし現時点のお考えがあれば、また次回以降でもお聞かせいただければと思います。

 以上で発言を終わります。

森会長 それでは、ただいまの御質問に対しては、またこれも改めて次回にでも御答弁をいただきたいと思います。

 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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