衆議院

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第9号 令和6年6月6日(木曜日)

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令和六年六月六日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      大串 正樹君    城内  実君

      黄川田仁志君    小森 卓郎君

      中川 貴元君    中西 健治君

      長島 昭久君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      三谷 英弘君    宗清 皇一君

      柳本  顕君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 左近君

      山本 有二君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    階   猛君

      篠原  孝君    牧  義夫君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      青柳 仁士君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    河西 宏一君

      國重  徹君    赤嶺 政賢君

      玉木雄一郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     中川 貴元君

  岩屋  毅君     柳本  顕君

  越智 隆雄君     宗清 皇一君

  熊田 裕通君     山本 左近君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 貴元君     井上 貴博君

  宗清 皇一君     小森 卓郎君

  柳本  顕君     岩屋  毅君

  山本 左近君     熊田 裕通君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

六月四日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(志位和夫君紹介)(第一八七五号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、国民投票広報協議会その他国民投票法の諸問題を中心として自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元君。

船田委員 自由民主党の船田でございます。

 先週に引き続きまして、国民投票法附則第四条、これは「検討」の項目でありますが、その二号に係る問題として、国民投票運動における広告の在り方、あるいは広報協議会の在り方について議論が行われておりますが、今回は私が論点ごとに考えを述べてみたいというふうに思います。

 憲法改正国民投票制度は平成十九年に成立をいたしましたが、私はその起草段階から加わっておりました。そこにおきましては、特定公務員の運動の禁止、地位利用による勧誘の禁止、それから組織的多数人買収あるいは利害誘導の禁止、この三項目以外は原則自由というたてつけでまとめた次第であります。

 しかし一方で、メディアの勧誘広告や意見広告においては公平公正で賛否のバランスをできるだけ保つ、このために、広報協議会などを中心としまして一定の役割を担うということが盛り込まれました。その後さらに、インターネットの普及等によりまして新たな媒体における広告への対応が加わりましたので、改めて制度の在り方を議論する必要が生じました。

 先週の当審査会では、奥野委員から、放送広告とネット広告の在り方についてまとまったお考えを示していただきましたので、それに対応する形で私の考えを述べたいと思います。

 まず、放送広告についてですが、奥野委員は、勧誘広告は何人も、意見広告は政党に限り、全運動期間にわたり禁止であるとの考えを示されましたが、言論の自由、そして、先ほど述べました運動の自由、この観点からするとやはり厳し過ぎるのではないかな、こう思っております。

 私は、勧誘広告は投票日前二週間の禁止、それから意見広告については、民放連のCM考査など送り手の自主的な取組に委ねるとともに、一つは、放送局が定期的に今申し上げましたCM考査の状況を広報協議会に報告をすること、二つ目に、広告主にその明示の義務を課すこと、三番目としては、広報協議会において悪質なケースをチェックして是正を求めたりすることができるのではないか、このようなことを考えております。

 なお、広告も含めました投票運動の費用総額のチェックにつきましては、奥野委員が示された上限額の設定、それから収支報告書の提出に関する制度設計、極めて現実的には難しいと思っております。また、外国からの資金援助の排除も同様になかなか難しいことと思われます。

 しかし、先般のアメリカ大統領選挙や台湾の総統選挙、あるいは、かつての英国のEUからの離脱、いわゆるブレグジットの国民投票などで外国からの干渉があったということも歴史的な事実としてありますので、やはり、外国からの関与を受けさせない方法を議論する必要は十分にあるのか、そのように思っております。

 次に、ネット広告であります。

 奥野委員は、政党などによる勧誘、意見広告を禁止するとしておりますけれども、これも運動自由の原則から難しいと思われます。

 一方で、一つは、広告主に表示義務を課すこと、二つ目には、広報協議会がいわゆる掲載の基準、ガイドラインを策定してネット広告の適正化を目指すこと、三つ目には、ネット事業者が広告の回数などを広報協議会に報告をすること、こういったことは可能かと思われます。

 なお、広報協議会が作成する正規の正式な広報記事につきましては優先的にネットに掲載してもらうこと、また、ネット事業者が掲載したネット広告を一定期間保存する、いわゆるアーカイブの制度も、ネット広告の適正化のためには有益な方法であると思っております。

 なお、多くの皆さんからも指摘をいただいておりますけれども、フェイクニュースにつきましては、例えば、最近、有名人に成り済まして巨額の投資詐欺が発生するなど、その対策の必要性は高くなっております。

 そこで、一つは、広報協議会がフェイクニュースの典型の例示やその取扱いに対するガイドラインを示すこと、二つ目には、ネット事業者が影響の大きい投稿事例を協議会に報告すること、こういったことによってフェイクニュースを未然に防ぐこと、あるいは、国内のファクトチェック団体、実は、調べましたら、ファクトチェック団体も、国際認証を取得しているものが国内に三つほど誕生していると聞きました。そういったファクトチェック団体と協議会との連携も当然視野に入ると思っております。

 以上、奥野委員とは、直接的な広告禁止においては隔たりがあるものの、ネット広告の適正化、あるいは間接的な規制については共通項も見出せるものと考えています。これらの項目について、今後、各党間で真摯に話し合い、できるだけ早期に結論が見出せるように、お互いに努力していきたいと思っております。

 以上であります。

森会長 次に、本庄知史君。

本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。

 本日の議題の前に、前回、前々回と、国民民主党の玉木委員からたくさん御質問をいただいていますので、その回答から始めたいと思います。

 第一に、長期かつ広範に選挙が実施できない選挙困難事態において、選挙管理委員会が繰延べ投票の選挙期日、つまり投票日を正しく定めることが可能か、また、繰延べは何日間までなら可能かとのお尋ねがありました。

 まず、公職選挙法第五十七条第一項において、天災等により投票所で投票ができないときは、都道府県の選管は、直ちに繰延べ投票とする旨を告示し、更に定めた期日を少なくとも投票二日前に告示しなければならないとされています。

 つまり、選挙期日の繰延べと繰延べ後の期日は、玉木委員がおっしゃるように同時に判断、決定される必要はなく、発災時と投票前の二段階で判断され、決定されるということです。したがって、選挙困難事態であっても、選管が別の選挙期日を正しく定めることは十分可能であるというふうに考えます。

 その上で、繰延べ投票は、公選法上、何日以内に行わなければならないという定めはありません。ありませんが、都道府県の選管が投票を適正に行わせることが可能であると判断した時点で、更に期日を定めて投票を行わせるものとされています。

 憲法上、何日間まで繰延べ可能かは一概には言えませんが、例えば公選法第三十三条の二により、衆議院議員の補欠選挙では、任期満了に係る場合は最長で一年間、任期満了に係らない場合でも最長で七か月強、欠員が生じ得ることを想定しています。したがって、憲法上も、少なくとも七か月強ないし一年は繰延べ投票が認められるものと解せられます。

 第二に、繰延べ投票では、期日前投票や選挙運動が公示日から繰延べされた投票日まで長期間可能となり、かつ、その間、選管は職員被災で機能しないのではないかとのお尋ねがありました。

 まず、期日前投票については、公選法第四十八条の二第三項において、天災等により期日前投票所で投票ができないときは、期日前投票所を開かず、又は閉じるものとされています。したがって、天災等による繰延べ投票の場合には、必然的に期日前投票もできないと考えられます。

 他方、繰延べ投票における選挙運動期間については、これは玉木委員御指摘のとおり、公選法第百二十九条により、公示日から繰延べ投票の期日の前日まで選挙運動ができると解されており、この点は私も制度上の不備だと思います。ただ、これは法律改正事項であり、憲法改正事項ではありません。

 被災地の選管は職員も被災していて機能しないとの御指摘は、一九九三年の北海道南西沖地震の際に予定どおり衆議院総選挙が実施された奥尻町の例などもあり、一概には言えませんが、仮に御指摘のようなことがあれば、繰延べ投票によって対応するものと考えます。

 第三に、繰延べ投票によって、憲法違反の可能性のある議員不在の状況を生み出す判断を選管に委ねることの是非についてお尋ねがありました。

 選挙期日が議員任期内に公示されていれば、その後の繰延べ投票によって選挙期日が任期を超えたとしても、そのことが直ちに憲法違反であるとは言えません。したがって、選管に繰延べ投票の判断を委ねるとしても、問題があるとは考えていません。

 最後に、いわゆるスーパー緊急集会創設の場合の憲法改正の要否についてお尋ねがありました。

 まず、参議院の緊急集会が七十日超を想定していないとの見解には根拠がありません。衆議院の解散から四十日以内の総選挙実施、その後の三十日以内の国会召集を憲法が義務づけているのは、時の政権が衆議院を解散したまま恣意的に総選挙を実施しない、あるいは国会を召集しないといった権力濫用を防止するためであり、選挙困難事態のような緊急事態を前提としたものではありません。

 また、緊急集会が有する権能の範囲は、憲法第五十四条第二項の規定により、国に緊急の必要があると内閣が判断し、提案された案件である限り、法律の制定や予算の議決、さらには条約の締結の承認についても別段の制約はないと解されています。

 したがって、スーパー緊急集会なるものは創設するまでもなく、憲法改正の必要もないと考えます。なお、議員任期延長とは異なり、後日正当に選挙された衆議院の同意を必要とすることで、緊急時から通常時への復元力、レジリエンスも確保されており、制度的バランスも取れていると考えます。

 最後に、本日の議題である国民投票法に触れて、私の発言を終えたいと思います。

 御存じのとおり、岸田総理は、自身の自民党総裁任期中の憲法改正を掲げています。維新の会や国民民主党もこれに同調し、総裁任期中の憲法改正を求めています。しかし、総裁任期と憲法改正に一体何の関係があるのでしょうか。この審査会の中でも、合理的に説明できる議員はいないと思います。

 岸田総理の任期は今年九月三十日です。しかし、それより先に期限が来るのが、国民投票法の附則第四条に規定された諸課題です。この期限は、目途ではありますが、九月十八日です。岸田総理が掲げる政治日程と、法律に明記された期限と、どちらが優先されるべきかは論をまちません。

 かねて私たちが最優先課題としてきた附則第四条第二号、放送CM、ネットCM、資金規制、ネット等の適正利用、さらには広報協議会規程、事務局規程、広報実施規程など、国民投票法及び手続上の課題は依然として残されたままです。

 今の状況では、幾ら条文化作業や改正発議をしても、国民投票の実施は見通せません。議論の順序が全くあべこべです。まず、附則第四条について議論を深め、結論を得ることを提案します。森会長、御検討をお願いいたします。

 私からは以上です。

森会長 御要請の件については、幹事会等で協議をいたします。

 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の三木圭恵です。

 まず初めに、先週、自民党の井上委員から、緊急事態における選挙困難時の議員任期延長に維新案は憲法裁判所が関与することになっているが、その点に関して、緊急事態かどうかの判断は政治的判断になじむ事項である、緊急事態のときに裁判所にその情報を提供し、裁判所が状況を把握して、裁判所の判断を仰ぐということになると、緊急事態時に迅速な判断をやらなければならないときにそれが本当に適切なのかという御趣旨の御質問がありました。今日、井上委員はいらっしゃいませんけれども、済みません、お答えしたいと思います。

 国会議員は、言うまでもなく、国民に審判を仰ぎ、国政選挙の下、国会議員となり、その任期は憲法に定められたものであることを考えると、国政選挙を経ずにその任期を延長する緊急事態の場合、その政治的判断が仮に誤りであったケース、つまりお手盛りでいつまでも議員任期を延長するようなケースでは、誰がそれを止めるのかということが最大の論点になると考えます。その歯止めが、維新案では憲法裁判所ということになります。国会議員の任期延長、選挙期日特例について、その要件充足性を判断させるため、憲法裁判所の事後審査の対象であるとしたものです。

 緊急事態の宣言自体は、緊急事態の発生を一次的に把握し得る内閣が行うこととし、これに対する国会の承認は、緊急時における迅速な対応の必要性を重視して、事後的に要するとしています。憲法裁判所も事後審査の対象としているので、緊急事態宣言の発出時の対応の迅速な判断に影響を及ぼすことはないと考えます。

 以上が御質問に対する考え方です。御質問いただいたことで、より議論が深まることと感謝いたします。

 また、現在の憲法審査会では、条文案が参考資料としてお配りできないことが議論の深まりを阻害していると考えますので、是非、維新の会、国民民主党、有志の会でまとめました条文案をこの審査会でお配りして、議論のテーブルにのせていただくように、森会長にお願いをいたします。

 この憲法審査会では、およそ三年間にわたり、憲法、とりわけ緊急事態時における国会機能維持や国民投票について議論を積み重ねてきましたが、一向に何ら結論を得ることができません。その間に、デジタル技術は格段の進歩を見せました。生成AIの技術の目覚ましい発達は、我々に全く新しい世界を見せてくれるものであり、新しい可能性に無限の期待を寄せるものであると同時に、法によって対処しなければならないことが多く出現しつつあることを自覚しなければならないと思います。

 この憲法審査会において発言してまいりましたが、ヨーロッパにおいてはAI規制法案が、そしてアメリカにおいては人工知能、AIの安全性確保を図るため大統領令が出されています。諸外国が次々と法律を整備していく流れでございますが、ここでもやはり日本は一歩遅れていると言わざるを得ないと思います。

 そして、この憲法審査会では特に、偽情報、フェイクニュースに係るプラットフォーマーへの対応をどうするかということがまず取り上げられるべきと考えますが、EU、フランス、アイルランドなどで国民投票と選挙に関して適用される法律を制定していることなども参考にして、視野に入れるべきかと考えます。

 偽情報やフェイクニュースは、ふだんの国民の生活にも大きな影響を与えますが、とりわけ選挙や国民投票、そして戦争時などに、国家の行く末を左右しかねない影響力を持つため、安全保障上の重大な課題と言えます。

 以前にも発言しましたが、EUでは、デジタルサービス法の中で、違法コンテンツ対応や消費者保護強化等について、オンラインプラットフォーム事業者に対する規制の枠組みを定めています。特に、月間平均有効利用者数四千五百万人以上の事業者のうち欧州委員会が指定する巨大オンラインプラットフォーム事業者に対しては、透明性の確保や透明性報告の追加的義務などを課しています。デジタルサービス法の規定に反した場合、最高で前年度の総売上げの六%の罰金が科されます。

 偽情報に関連する規定の中で、選挙や国民投票に関するものとして、例えば、巨大なプラットフォーム事業者について、市民の議論、選挙プロセス及び治安に対する実際の又は予見可能な悪影響等についてのリスクの特定、分析、査定を行うこと、そういったリスクについて緩和措置を講ずることがプラットフォーマーに対して定められています。緩和措置の中には、ディープフェイクに対するマーキングによる区別が含まれます。

 フランスの情報操作との闘いに関する法律は二〇一八年に成立しておりますが、これは、選挙におけるフェイクニュースによる情報操作防止のための法律です。法の対象となる情報であるフェイクニュースを定義し、選挙期間内、投票日前三か月に当該情報が拡散されている場合、候補者等から求めを受けた裁判官は、プラットフォーム事業者に対して送信防止措置を命じることができます。裁判官は、申立てから四十八時間以内に停止に関する判断を行うこととなります。プラットフォーマーは、一、アルゴリズムの透明性確保、二、偽アカウント対策などの協力義務を負います。

 アイルランドでは、二〇二二年選挙改革法が成立し、国民投票と選挙に共通して適用されるオンライン情報に関する規定として、選挙委員会が偽情報等の監視及び調査を行い、ソーシャルメディアなどのオンラインプラットフォーム事業者に対し、削除通知、訂正通知、同委員会による調査中であることの表示命令、アクセス遮断命令等を行うことができる旨を定めています。

 オンライン環境において、プラットフォーム事業者が新たな統治者として機能し始めていると言っても過言ではないでしょう。プラットフォーム事業者自らが偽情報に対する取組を始めるよう働きかけをすることも必要ですが、日本はこれに対して指針を出しております。国政選挙に関しては選挙管理委員会が、国民投票に関しては広報協議会が主導して、フェイクニュースの定義、認定をする主体、認定の方法、認定した場合の措置などを決める必要性があると私は考えております。

 折しも、四日、政府は、国の技術革新、イノベーション政策をまとめた二〇二四年版の統合イノベーション戦略を閣議決定しましたが、深刻化する人手不足に対応するためにAIなどの最新技術の利活用を進める一方、生成AIによる偽情報の流布などを防ぐため、法規制の在り方を検討していく方針を盛り込みました。これまではAI事業者に安全性などへの考慮を求める指針を示してきましたが、強制力はありませんでした。今後は新たな規制を検討する方針を提示しています。偽情報に対する法規制は新たなステージに入ろうとしているのではないでしょうか。

 少し毛色が違いますが、例えば先日行われた東京十五区の補欠選挙では、演説の妨害行為などがユーチューブで拡散され、再生回数により利益を得ることができるため、ますますその妨害行為を増長させるということが起きました。このような案件でも、プラットフォーマーに動画などの削除要請ができれば、側面からの措置ではありますが、通常の静かな選挙が行われる一助になったのではないかと思われます。もちろん、候補者の演説を大音量や太鼓をたたいて阻害をする行為が実地で取り締まれるようにすべきであると考えます。

 以上、一日も早い条文案の議論、そして国民投票に対しては三つの宿題、これの審議、採決を求めまして、私の発言とさせていただきます。

 以上です。

森会長 会長に御要請のあった件については、幹事会等で協議をいたします。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 広報協議会等については、五月十六日に私は発言をさせていただいています。

 本日は、選挙困難事態における国会機能維持に関して、一、本審査会の我々の議論は参議院の緊急集会を軽視するものでないこと、二、全国民の代表の要請は選挙の一体性の原則とリンクしていること、三、選挙困難事態において繰延べ投票では対応できないことの三点について、発言をいたします。

 まず第一に、我々が議論している選挙期日、議員任期の特例の憲法改正について、参議院議員の緊急集会を軽視しているとの誤解が一部にあるようです。そこで、そのようなものでないことを具体的に申し上げます。

 前提として、参議院の緊急集会は、憲法五十四条の規定及びその趣旨に照らして、総選挙の実施が七十日程度の期間内に見通せる場合に対応する仕組みです。その上で、総選挙の実施が長期にわたって見通せないような場合、すなわち選挙困難事態への対応については現行憲法には規定はなく、いわば憲法の空白となっています。東日本大震災の経験や南海トラフ地震、首都直下型地震の被害想定に鑑みると、選挙困難事態が現実に生ずることは十分に想定されます。

 そこで、本審査会で、我々は、この憲法の空白に対応するための選挙期日、議員任期の特例を議論しているのであります。七十日程度の期間内に総選挙実施が見通せるときには、これまでと同様に参議院の緊急集会で対応するのであって、現在の機能、役割から変わることは全くありません。

 参議院の緊急集会が設けられた趣旨は、民主政治の徹底にあります。我々が議論している憲法改正も、選挙困難事態において、二院制国会を維持し、民主的統制の下で国の運営を行っていくためのものであり、趣旨は同様です。したがって、趣旨、目的を同じくする二つの制度が、総選挙実施が見通せるか否かという基準によって分けられる二つの場面に対応してすみ分けることになります。

 さらに、本審査会の議論では、参議院の緊急集会は衆議院の任期満了総選挙の場合にも開催できることを規定することも提案されています。

 このように、我々が考えている憲法改正は、参議院の緊急集会の役割や機能を縮小するようなものでは決してなく、むしろ拡充する方向で、参議院の緊急集会を軽視するとの指摘は全くの誤解であります。

 第二に、大規模災害によって選挙の一体性を欠くまま国政選挙が行われたとしても、被災地以外の国会議員は選出でき、全ての国会議員は全国民の代表であることから、これらの議員によって被災地の実態や意思を踏まえた判断がなされるために、問題がないとの意見があります。

 しかし、この全国民の代表については、芦部信喜先生を始めとする多くの憲法学者が指摘しているとおり、現在では、国民の意思と代表者の意思の事実上の類似を重視するという社会学的代表の考え方から、国政選挙が、全国津々浦々の全国民の多様な意思をできる限り公正かつ忠実に、いわばその縮図のように国会に反映させることを要請する憲法上の原理と理解されています。

 このような考え方を前提とすれば、例えば、現行の衆議院選挙における比例ブロックの複数にまたがる選挙区において総定数の一割を超えるほどの議員が選出できないような場合は、たとえ多くの選挙区において選挙の実施が物理的には可能だとしても、到底、国民の多様な意思をできる限り公正かつ忠実に国会に反映する選挙とは言えないと考えるべきです。大規模災害時こそ、憲法の大原則である二院制国会を維持し、衆参そろって難局に対処することが重要であります。

 衆議院は、任期が四年と参議院議員より短く、解散もあり、国民に近いとされる衆議院議員で構成されております。衆議院において、被災地選出議員が不在のままでも、他の地域から選出された議員らによって復旧復興を含むあらゆる政策を決定できるという考え方は、とても我々の肌感覚にも合致しませんし、多くの国民の理解も得られないのではないでしょうか。要するに、選挙の一体性を欠く選挙では、憲法上の全国民の代表の要請を満たすことができず、国民の選挙権行使の前提を欠いていると考えます。

 第三に、選挙困難事態において繰延べ投票制度では対応できないということについて意見を述べます。

 この論点は、これまで多くの委員から御発言があったところであります。そこで、私からは、適正な選挙の在り方とはどういうものなのかという観点から意見を申し上げます。

 繰延べ投票は、ごく限られた投票所で投票ができない場合は、短期間、投票を繰り延べるものであります。東日本大震災や阪神・淡路大震災の際も、繰延べ投票で対応せず、地方議員、長の選挙期日延期、任期延長のための特例法が制定されました。

 そもそも選挙は、選管などの選挙事務の執行や違法な選挙運動の取締りといった環境が整えられた上で、候補者やその陣営が選挙運動を通じて政策、考え方を示し、有権者がそれを理解した上で投票することが本来の姿であり、この一連の流れをセットで捉えるべきであります。この点、東日本大震災当時の状況を振り返れば、震災直後にまともな選挙事務や選挙運動などができないことは容易に想像できます。

 このように、選挙困難事態においても繰延べ投票で対応し、有権者が投票することさえできればよいという考え方は、選挙を極めて形式的、表面的に捉えるものであります。これでは、選挙運動における有権者と候補者との直接のやり取りという民主主義のプロセス、いわば選挙の実質的な要素が抜け落ちており、適正な選挙の実施とは到底言えません。

 本日は、選挙困難事態における国会機能維持に関する三つの論点について意見を申し上げました。国民の皆様や関係各位が本審査会での議論の趣旨や内容を正しく理解していただく一助となれば幸いでございます。

 そしてまた、要綱案をしっかり出すことによって、更に具体的な議論を進めていきたいと思います。

 以上で私の発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今月、六月二十三日は慰霊の日であります。住民を巻き込んだ地上戦で、軍民合わせて二十万人以上が犠牲になった沖縄戦から七十九年を迎えました。

 今日は、改めて沖縄の歴史と憲法について述べたいと思います。

 さきの大戦で沖縄は、本土決戦のための捨て石とされました。日本軍は、軍、官、民、共生共死の一体化という方針の下、住民を根こそぎ動員していきました。鉄血勤皇隊やひめゆり学徒隊など、中学生の年齢の少年少女たちまで動員し、男子学徒は戦闘の最前線へ、女子学徒は負傷兵の看護を担わされました。さらに、砲弾が飛び交う中で、ごうに避難している住民に軍の弾薬や食料の運搬を強制したのであります。

 沖縄戦の縮図と言われている伊江島では、乳飲み子を背負った女性にまで米軍陣地に切り込むことを強制しました。石垣島では、住民にマラリア生息地への移動を命じ、宮古島でも、餓死や病死で犠牲になる住民や兵士が相次ぎました。日本軍は、住民を守るどころか、方言をしゃべっただけでスパイだとみなし、更に住民を虐殺する事件が各地で起きました。

 国体護持を至上命題としていた第三二軍は、首里城の地下に構築した司令部が陥落するのを目前にした五月二十二日、多くの住民が避難していた本島南部へ撤退しながら、持久戦を継続することを決めました。狭い地域に住民と兵士が混在する極限状態の下で、住民は、米軍の攻撃だけでなく、日本軍からも砲弾の雨の中をごうから追い出され、泣きやまない赤ちゃんに手をかけることを強要されました。負傷兵に青酸カリが配られ、自決を強要されました。まさに、この世のありったけの地獄を集めたのが沖縄戦でした。

 沖縄だけではありません。戦前の日本は、ありとあらゆる者を軍事に動員して、侵略戦争に突き進み、アジア太平洋地域で約二千万人、日本国民約三百十万人もの犠牲者を出したのであります。

 この痛苦の反省から、日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、九条で戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定め、戦争につながる一切のものを排除することを求めているのです。

 凄惨な沖縄戦を経験し、戦後の米軍の直接統治下で虫けらのように扱われた県民が強く望んでいたのも、九条を持つ平和憲法の下に戻ることでありました。ところが、岸田政権は、この県民の願いに逆行し、南西諸島防衛を名目に再び沖縄を軍事要塞化する動きを強めています。石垣島や宮古島、与那国島、更に本島のうるま市にまでミサイル部隊の配備が進められています。

 政府は、陸自第一五旅団を師団に増強することを計画しており、このための訓練場を県内に新設することまで狙っています。米軍や自衛隊による空港、港湾を使った軍事演習も次々と行われています。

 さらに、日本政府は、米軍の辺野古新基地建設を推し進めるため、戦没者の血がしみ込み、遺骨が眠っている本島南部の土砂を埋立てに使おうとしています。断じて許されるものではありません。

 今、県民が求めているのは、憲法九条を生かした対話による平和外交であります。

 本土復帰から五十年を迎えた二〇二二年に玉城デニー知事が政府に提出した建議書は、政府がアジア太平洋地域において、平和的な外交、対話により緊張緩和と信頼醸成を図り、平和の構築に寄与することを求めています。

 沖縄県が今年三月に発表した地域外交基本方針は、二度と沖縄を戦場にしてはならないと強調し、県が主体的に、太平洋島嶼国との国際協力活動や海外自治体との友好関係を強化し、信頼醸成を図ることを掲げています。

 九条を持つ日本政府こそ、徹底した外交努力によって東アジア地域に対話の枠組みをつくり、軍事的緊張を緩和させることに力を尽くすべきだと改めて強調して、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木です。

 憲法審査会も、今日を除くと、今国会、あと二回となりました。起草委員会を速やかに設置し、条文案作りに着手することを繰り返し提案してきましたけれども、もう時間がありませんし、絶望的だと思っております。

 昨日、自民党の憲法改正実現本部は、今国会中の憲法改正原案の国会提出に向け、他党との協議を古屋本部長ら執行部に一任したと報じられておりますけれども、一方で、同日、自民党の浜田国対委員長は、まずは今ある法案を全て通す努力を優先すべきと発言されております。また、一昨日は、石井参議院国対委員長に至っては、国対担当の使命は政府提出法案を全て成立させることだ、条文案が出てきて法案審査に支障がないようしっかり対応したいとまで述べておられます。

 そこで、中谷筆頭に伺います。

 自民党の方針がばらばらではないでしょうか。今国会中の憲法改正原案の国会提出は、こういう状況では自民党としては諦めたということなんでしょうか。改めて中谷筆頭幹事の考えを伺いたいと思います。

中谷(元)委員 この件につきましては、審査会でも各党から御意見を出していただいて議論をさせていただいております。この議論を通じて、機が熟したというか、おおむね内容についてもまとまりができつつありますので、引き続きこの審査を通じながら議論を続けていくということと、あと、起草委員会の提案もございます。この起草委員会におきまして、今日、国民投票法の広報協議会の各論まで出てきておりますので、是非、起草委員会におきまして、緊急事態条項及び国民投票について議論をしていきたいというふうに思っております。

玉木委員 やる気がまだ僅かでも残っているのであれば、来週はせめて要綱形式で議論をしようではありませんか。もう時間はありませんし。もし今国会で、これは我々が心配する話じゃないんですが、改正原案の提出にすら至らないのであれば、それは自民党総裁としての責任を問われる話だと私は思いますね。発議なんというのは夢また夢です、これは。ですから、これは是非やっていただきたいと思います。

 私たち国民民主党が緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正条文案をまとめてから、もう一年半たちます。維新の会や有志の会の皆さんとともに三党派の共通条文を作ってからも、もう一年以上たちました。この間、自民党は何をしていたんでしょうか。二〇一八年に四項目のたたき台素案、この中にも緊急事態条項はありますけれども、非常に薄い条文ですね。これを提示してから六年以上経ても、条文案へのアップデートすらされていません。

 やるならやると覚悟を決めて、スケジュールを決め、戦略的に取り組んでいただきたいと思います。

 例えば、本気で今国会で憲法改正原案の国会提出を進めたいなら、野党案を上回るような政治改革案を出して、国会をもっと円満に運営すべきだったのではないでしょうか。今のようなざる法では国会が混乱するのは当たり前で、憲法改正に向けた戦略的な取組ができていないのではないかということについては苦言を申し上げておきたいと思います。

 次に、先ほど本庄幹事から回答がありました。感謝を申し上げたいと思います。こういう議論をしっかり詰めていくことが私は大事だと思うので、議員間の議論を更に深めていきたいと思います。

 御説明いただいたことに何点か、反論というか、こちらの考え方を申し上げたいと思います。

 まず、今、繰延べ投票で最大一年ぐらいまではできるんじゃないかという話がありましたが、では、なぜ東日本大震災のときにこの繰延べ投票を活用しなかったのかということです。今の説明だと選挙管理委員会に過大な負担を与えることになりますが、当時、選挙管理委員会は全く機能しませんでした。

 二〇一一年七月十三日、これは覚えていらっしゃいますかね、福島県選挙管理委員会が衆参の特別委員会に陳情を持ってきています。それは何かというと、一番最初に六か月、議員任期の延長をしましたが、それでは間に合わなくて、市町村で有権者の連絡先全てを把握できない、選管として選挙事務に人員を割けず、当面は実施できないということで、再延長を選挙管理委員会が求めてきたんです。これが、我々が想定する広範で長期にわたる大規模災害の現実なんですね。

 だから、理論上はあります、法律上は幾らでも考えることはできますけれども、有事に備えた備えをどうするのかということを考えるのが私たちの仕事なので、法律をこねくり回すことではないと私は思っているんですね。政治家としての判断と決断だと思います。

 もう一つ。やはり繰延べ投票というのは、あくまで地域限定的で、部分的で一時的だと思うんですね。

 さっき補欠選挙の話を出されました。確かに、補欠選挙で、例えば逮捕されたりとか悪いことをして捕まったりとかいろいろなことで議員が欠けることはあります。でも、それは極めて限定的です。だからそれが、我々が実は議論しているのは最初から違っていて、広範で、例えば東北ブロック全体、東海ブロック全体で選挙ができない、そういうときに、その判断を選管に委ねていいのか、あるいは、長期にわたって議員が欠けていいのか、同時活動原則や衆議院の優越や様々な他の憲法の規定との関係で矛盾は生じないのか、このことを問うているんです。

 そして、最後、究極、行き着くのは、地方議員と違うのは、参議院の緊急集会があるということだと思います。そこは、最後、戻ってきて、では、最後、参議院の緊急集会に内閣のある種提起でなされるありとあらゆる案件を処理することを与えていいのか。それは私は、憲法の拡大解釈過ぎるし、場合によっては、多くの人が心配する、時の内閣に過大な権限を委ねてしまうことになるのではないかと。

 だから、立憲主義の観点から、衆議院も参議院もしっかりと機能するようにしていこう、そして、後で北神さんからも説明があると思いますが、お手盛りになってはいけないので司法の関与をきちんと入れていきましょうということを我々としても提起しているわけであります。

 ですから、今の説明を聞いても、長期にわたって選挙の一体性が害されるほど広範に選挙が困難な事態、すなわち選挙困難事態に備えて、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長ができる規定をやはり憲法に設ける必要があるのではないかということを改めて申し上げたいと思います。

 最後に、国民投票法について一言申し上げたいと思います。

 前回私が提起した投票用紙にどう書くのかということは極めて重要な課題だと思うので、そのことに集中した審議を一度求めたいと思います。緊急事態条項について賛否を問いますと書くのか、あるいは、災害時等において国会機能の維持のための改正を問うのか、見出しのつけ方だけでも賛否は大きく異なると思います。そのことについての具体的なルールが定まっていませんので、是非そういう議論もしていただきたいと思います。

 最後に、与野党各党に呼びかけたいのは、国民投票広報協議会の機能に関して、フェイクニュース対策の話が今も出ましたけれども、私は、この憲法審査会の議論の現実を、変なあおりを入れずに、それぞれの支援者、有権者にしっかり伝えることが大事だと思っています。

 例えば、今の自民党の九条改正案によって、違憲論が全て解消され、自衛隊の権限が大きく拡大し、新たにできることが増え、パワーアップした自衛隊が登場するかのような説明も、これもフェイクですし、一方で、九条改正で旧帝国陸海軍が復活し軍国日本が復活するような説明も、これもフェイクです。

 ネット上のフェイクニュースを心配する前に、私たちが、極力扇動的な言葉や行動を控え、冷静な憲法論、法律論を展開することが最大のフェイクニュース対策になることを申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 先週の本審査会において、今日はいらっしゃらないと思いますけれども、井上委員より我が会派に対して、国会機能の維持における裁判所の関与の在り方について御質問がありました。

 有志の会として独自に主張してきた案では、これは今玉木委員からありましたけれども、国民民主党も基本的に同じだというふうに捉えていますが、まず、内閣が選挙困難事態の認定をした上で、これを議会が三分の二以上の議決で承認すれば国会機能の維持が発動するというものです。加えて、議員自らのお手盛りとならないように、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の申立てがあれば、最高裁判所により、本当に議員任期延長をするための要件が満たされたのかという判断がなされます。仮に満たされていないと決定したときには、国会に対し、議員の任期を終了させるべきことを勧告する仕組みとなっています。

 このように、我々の案では、最高裁判所の関与は、国会機能の維持が承認された後にいずれかの議院の総議員の四分の一以上による申立てがあった場合になされることになっています。したがって、御懸念のように、選挙困難事態の迅速な判断そのものには影響しないと考えます。

 なお、三会派の共同提案では、裁判所の関与が必要ということについては一致を見ているものの、詳細は今後の検討課題となっています。

 次に、国民投票広報協議会の事務に関して、協議会自らがファクトチェックを行うことは公権力による言論の自由への関与となるとの懸念が一部の委員より示されています。今日は、この御懸念のファクトチェックに係る論点を少し深掘りをしたいというふうに思います。

 実際にファクトチェックを行っている日本ファクトチェックセンターによれば、ファクトチェックとは事実の検証を意味し、不確かな情報、根拠のないデマ、陰謀論などが広がる中で、客観的、科学的な根拠に基づいて事実を確認し、拡散している言説が正確かどうかを判定するとあります。また、ファクトチェックとは事実を検証することで、意見を検証することではないことも強調されています。こうした定義は世界の標準となっています。

 以前も御報告しましたが、ドイツの連邦選挙管理委員会が、選挙過程全般に関係する偽情報を特定し、ファクトチェックサイトを通じて公表しています。この選挙管理委員会は、例えば二〇二一年の総選挙では、コロナの陰性証明を提出しないと投票できないとか、郵便投票は安全ではなく簡単に操作することができるなどの偽情報に対して、ファクトチェックを自ら行っています。

 また、オーストラリアでは、二〇一九年の総選挙により、連邦選挙管理委員会が投票者に対して、投票に影響を与えることを意図した偽情報又は虚偽情報の可能性を警告しています。その上で、情報源を確認して、十分な情報を得た上で投票できるようにすることを支援するためのメディアリテラシーキャンペーンを本格的に開始しています。例えば二〇二三年の先住民の地位に関する憲法改正の国民投票では、連邦選挙管理委員会は賛成票を集めるキャンペーンを行っているとか、連邦選挙管理委員会による先住民に対する有権者登録の推進は賛成票を集めるための動きであるとか、こういった偽情報に対して自らファクトチェックを行い、これを公表しています。

 その際、同管理委員会は、国民投票の賛否に関する主張を事実確認する責任はなく、いかなる形でも議論を検閲しません、しかし、私たちが実施する国民投票のプロセス、過程に関しては、私たちは専門家であり、オーストラリアの民主主義を守るために積極的に活動していますという主張も載せています。

 このように、オーストラリア、ドイツの選挙管理委員会は、選挙過程そのものをめぐる偽情報に限ってファクトチェックを行っています。

 他方、EUには対外活動庁という役所があるんですが、ここでは、偽情報対策専門サイトを立ち上げて、既に一万七千件を超えるファクトチェックを行っています。これは、ドイツ、オーストラリアよりも更に踏み込んで、選挙過程そのものの偽情報だけでなく、政策に関する事実関係をも対象にしています。

 以上のように、諸外国では、その言論の対象に違いはあれども、それぞれ、民主主義のプロセスを守る観点から、また安全保障の観点から、公権力が自らファクトチェックを行っています。

 また、考えてみたら、我が国でも、ALPS処理水関連をめぐって偽情報が中国から拡散された際、行政官庁である外務省がこれを否定する報道発表をし、Xにおいては「#STOP風評被害」とタグづけをして、事実上ファクトチェックを行っています。

 これは一例にすぎず、行政機関がこうした事実関係の説明を報道機関を通して発信していることには枚挙にいとまがありません。これは公権力の介入に当たるのか、私が主張しているファクトチェックとの本質的な違いがあるのか、偽情報の発信主体が外国政府あるいは外国勢か国民かによって異なるのか。

 具体的に、立法府の超党派の組織である国民投票広報協議会が事実を検証することに値するファクトチェックを行うことの議論を更に期待をしたいと思います。特に、いかなる事実検証の在り方であれば言論の自由への関与が生じるのかについて検討をする必要があるように思います。

 私は、現時点で、国民投票広報協議会が少なくとも国民投票の過程そのもの並びに明らかに外国勢を起源とする偽情報に対して事実を検証するのは当然のように思います。同時に、そのための専門家を広報協議会に招致するなどして、専門性、公平性、中立性を確保するための体制も整えるべきだと思います。

 日本の民間のファクトチェック団体は、その数も規模も体制も機能もまだまだ改善の余地があるという現実を冷静に見据えて、これらとの連携に加え、国民投票広報協議会自らも責任を持って偽情報対策の有効性を高めることが重要であると申し上げて、私の意見を終わります。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

中谷(元)委員 自由民主党の中谷元です。

 前回の審査会で岩谷委員から、客観訴訟の具体的な制度設計についてどのように考えているのかという御質問をいただきましたので、客観訴訟についてお答えをいたします。

 客観訴訟とは、法律で要件や手続を定め、制度が適正に運用されていることを保障しようとするものであり、私人の権利また利益の救済を目的とする主観訴訟とは異なり、その目的は公益の実現にあります。

 その典型例は、一票の格差の国会議員の選挙訴訟でありますが、それを例に取って説明をいたしますと、まず、原告となり得るのは、選挙効力に関して異議があるその選挙区の選挙人又は公職の候補者に限られること、第二に、選挙管理委員会を被告とすること、第三に、訴訟を提起することができる期間は、当該選挙日から三十日以内に限られていることとなっております。また、一審を高等裁判所、二審を最高裁判所として、二審制を取っているというのがその特徴になっております。

 したがいまして、客観訴訟の制度を創設する場合には、これを参考にしつつ、原告の範囲をどうするのか、被告をどうするのか、訴えを提起することのできる期間をどの程度にするのか、二審制とするか一審制とするかなどの論点を一つ一つ詰めていく必要があります。

 私といたしましては、現時点で、選挙期日、議員任期特例に関する判断は、緊急事態という特殊な状況に係るものでありまして、これを早期に確定をさせ迅速に対応する必要があろうという観点から、例えば、原告を一定数以上の国会議員に限るということ、そして、国を被告とすること、そして、訴えを提起することができる期間を選挙訴訟と同様に三十日以内に限ること、さらに、最高裁のみの一審制とすることを一案として検討を進めることが適当ではないかと考えております。

 いずれにしましても、客観訴訟を認めるかどうかは立法政策の問題であり、その具体的な制度設計は法律で定めることになりますので、今後とも引き続き議論を深めていきたいと思っております。

 次に、災害に強い選挙について言及をいたします。

 立憲民主党の逢坂幹事からは、選挙人の名簿の管理の在り方や他自治体との協力関係の構築などについて検討すべきとの御提案がありましたが、各会派からもその重要性を認める発言が相次いでいるとおり、災害に強い選挙の体制を整えるということについては全くそのとおりで、これを拒否する会派はないと思います。

 ただ、選挙の制度や運用等という話になりますと、所管としては、国会では政治改革特別委員会、政府では総務省が中心に取り組んでいく事項になりますので、私たち憲法審査会としては、その議論を見守りながら側面から支援をすることが適切ではなかろうかと思います。

 そして、災害に強い選挙の体制をできるだけ速やかに整備をしていくということは論をまちませんが、一方で、私たちが経験した東日本大震災、あるいは、南海トラフ巨大地震におきまして、また首都直下型の被害想定などを踏まえますと、長期にわたり広範な地域において適切に選挙が実施できないような事態は当然起こり得るわけでありますので、万が一のため万全の備えをしておかなければならない。その意味では、災害に強い選挙と選挙困難事態における国会機能の維持は矛盾するものではなくて、むしろ両立をさせておかなければならないものであると考えます。

 最後になりますが、昨年六月十五日の論点整理以降、この審査会におきまして、選挙困難事態における国会機能の維持、また国民投票法の広報協議会について、より具体的な発言、また議論を深める意見が数多く出されております。これらを踏まえて更に深掘りの議論を進めていくためには、改めて現時点における共通認識を整理をした上で、条文イメージ作成の土台となるような論点整理と、これについて基本的な考え方を示したいと考えております。

 先ほど玉木委員から、審査会での議論の成果があるのかと質問がありましたが、自民党の四項目のアップデートはこの審査会の議論を参考に行っております。

 大切なのは、反対の人も含めましてこの審査会で議論をすること、そして、みんなで案を作っていくということでありまして、それを踏まえて更に議論を深めるために、反対する会派も含めた全会派の参加の幹事懇談会、これを開催して具体的な原案起草作業につなげていきたいと、議論する場を設けることを提案をいたします。

 そして、あと二回だという話がありますが、憲法審は閉会中も審査が可能でありますので、このような審査会に与えられた権限を使いながら、具体的な議論をしていくこともできるということを申し述べまして、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

篠原(孝)委員 立憲民主党、略称民主党の篠原孝です。久方ぶりに発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 この数年、我が国は、非常事態なり緊急事態なり、こういった立法がメジロ押しだと思います。これは私は、国家の存立、国民の生命財産を守るためには必要なことだと思っております。皆さんお気づきだと思いますけれども、相当に、土地利用規制法とか、経済安全保障の中で特許の出願を国内に限定とか、最近では、地方自治体に対する国の指示権、セキュリティークリアランス制度、そして、私の関心のある分野ですけれども、食料供給困難事態対策法と続いております。緊急命令とか、政府にいきなり強力な権限を与えるものではなくて、それぞれの分野で平常時から穏やかに備えるという賢明な日本的手法であり、私は好ましいことだと考えております。

 そうした中で、最近の緊急事態、皆さんすぐ思い浮かばれるのは東日本大震災、そして二〇二〇年のコロナ感染症です。国会は一体どのように関与したのか。ちょっと記憶をたどっていただきたいと思います。

 前者では、国会は事後に国会事故調を設けて、二度と再びあのような大事故を起こさないようにということで報告書をまとめました。しかし後者では、突然、学校の休校とか、飲食店の休業とか、アベノマスクとか、今思うとちょっとおかしな対策も取られましたが、ほとんど国会は何もせず、拱手傍観だったのではないでしょうか。

 ほかの先進国では、こうしたときの法律を制定して、例えばドイツでは、余りマスクの習慣がないんですが、マスクを強制したら、穏やかなドイツ人ですけれども、デモ、暴動が起きております。

 確かに、緊急事態なら、やはり私は、行政が先であり、緊急命令の制度が先だと思います。

 この辺、国会図書館と立法考査室で去年の秋にまとめました「諸外国の憲法における緊急事態条項」というのを熟読しました。そうしたら、緊急命令の紹介が大半で、国会議員の任期延長とかいうのはほんの僅かです。OECD諸国では、英米の五か国と日本とノルウェーとベルギーだけが基本法がないということですね。

 ですけれども、どうしてそうなのかというと、つらつら考えてみますと、三・一一のとき、皆さん覚えておられますか、相当な被害である、ほかの国は、暴動が起きたりするんじゃないかとみんな心配していたんです。しかし、淡々と対応した日本人に、欧米社会はびっくら仰天したはずなんです。政府が変なことをしても、国会がぼうっとしていても、日本国民は賢いんです。だから、緊急事態の対処は国民自身が一番よく知っているんじゃないかと思います。

 だから、私は前にも申し上げたと思いますが、栄えある憲法改正の第一歩が緊急事態における国会議員の任期延長というのは、先の方にやってもいいと思いますけれども、今裏金事件でこれだけ政治が不信に陥っているときに、これは前、細野さんがちょっと言われましたけれども、それを我々の任期延長だなんと言ったら、国民はのけぞりますよ。そして、多分、国民投票でいろいろやっていますけれども、提案しても拒否されて、その後しばらく憲法改正ができなくなっちゃうんじゃないかと思う。僕はそれを心配して、余計なおせっかいをやっているわけです。

 初歩的な質問を小野さんにちょっとしますけれども、もう答える時間がないから、挙げなくたっていいです。

 大規模自然災害と選挙実施困難事態、今細かい議論をされていましたけれども、根源的なもので二つ分からないところがあるんですよ。

 選挙実施困難事態、我々から見れば常識かもしれませんけれども、しかし、誰が一体どのような形で手続して、誰が発議をしていくのか。

 それと、解散権と任期延長との整理が、私は頭の中でついていないんです。例えば、独善的な総理なんかが、首相がいたりしたら、野党勢力がぎゃあぎゃあうるさい、与党もそんな方に加担している、そんなんだったら、緊急事態であるにもかかわらず、さっさと議員資格を失わせて選挙を強行にやって、なびくような議員を圧倒的にした国会で好き勝手なことをする、これこそ私は緊急事態じゃないかと思います。

 ですから、私は、お願いですけれども、国会が危機的状況にあるときに、国会議員の任期延長とかその前に、解散権を行使してはならないという条項は絶対必要なんじゃないかと思う。多分、考えておられると思いますけれども。

 考えてみていただきたい。二〇一七年の秋、安倍首相は、国難突破解散と言って、国難と称して、だからそれを突破するためにわざわざ解散するんだと言って、国民をあおって解散されています。解散は総理の専権だということで、我々は二〇一二年の悪夢を思い出すわけですけれども、みんな止めたのに、野田総理はさっさとしてしまった。

 だから、こういうのを、任期延長と七条解散のことはじっくり考えていただきたいと思います。

 ですから、私から、憲法改正したいというこちら側の皆さん、いつもこっちを見ちゃ発言を聞いているんですけれども、たくさんしゃべられて非常に幸せだと思います、私はたまにしかできないんですけれども。

 そうしたら、実効性の高い提案をしたいと思います。寺田さんが前に言われました、コンセンサスを得られたものから順次改正していけばいいんだと。そのとおりだと思います。そういう点では、緊急事態条項はそれには入らないんじゃないかと思います。

 それで、今すぐに議論が深められるものとしては、石破さん、おられませんけれども、言っておられましたが、五十三条の臨時会の要求、これがあったら二十日以内に開催する。こういったことを、異論のないものはさっさとまとめて発議して、岸田首相にいい花道を提供するのが我々の任務じゃないかと思います。

 以上です。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。

 篠原先生、私も大変尊敬しておりますけれども、本当に、何か空気感が変わったなという感じがいたしました。立憲民主党さんの立場は、緊急事態条項、選挙困難事態における議員の任期延長というのは反対というお立場で、篠原先生の場合には、それを飛び越えて緊急政令で対応するということで、私もちょっと目が飛び出てしまったんですが。

 先ほど我々改正派の側に御質問いただきましたので御答弁いたしますと、我々も、恣意的に時の権力者が解散を打って選挙して都合のいい議会構成をつくるというのを、それはやはりやめるべきだろうということで、解散禁止というのは我々の案にも入っております。そういった権力の濫用が起こらないように。

 そして、あと、我々は、先ほど中谷幹事から御答弁もありましたが、司法のチェックというのもやはり大事だというふうに思っています。行政の側の権力濫用が起こらないような仕組みづくりをしていますので、これは是非、我々三会派でまた篠原先生のところに個別にレクに行っても結構でございますので、よく御理解をいただければと思いますし、また、立憲民主党の皆さんの中でも、党派としての、会派としての御意見は是非統一していただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 先ほど玉木委員からも、もう残りあと、今日が終わると二回しかないということで、私は、本当に憲法改正の発議に向けた準備が整うのかというと、もうこの段階に来ると、甚だ疑問というふうに思っています。

 先ほど本庄幹事の方から、岸田総理・総裁がおっしゃったことと憲法改正というのを別にリンクさせる必要はないんじゃないかというような御発言がありましたが、私はやはり、政治家としての言葉、特に公党の代表としての自民党総裁の言葉というのはめちゃくちゃ重いと思うんですね。ですから、これができなければ、私はやはり岸田総理は責任を取らなければいけない、それぐらいのものだと。我々もそういう気概でやっているんですね。

 ですから、中谷幹事にもこれは改めてお伺いしたいんですが、今国会ではもう発議できないということを本当に言い切るのか、それとも、今国会が終わったとしても、先ほどちょっとおっしゃっておりましたが、本気で閉会中も開催をして、ちゃんと今までの遅れを取り戻すのか。そのことは本気で言っていただかないといけない問題だというふうに思っています。

 そのような自民党の姿勢がずっと続いていると、これも余計なお世話かもしれませんが、憲法改正を期待する国民の信頼を更に失うことになってしまうんじゃないのかと思いますので、この点については、やります、やりますといつまでも言い続けるのではなくて、明確に、今これだけ遅れていますからこれだけのキャッチアップをしますということを是非おっしゃっていただきたい。

 そして、そのことについて岸田総裁も、全く触れないで、単にやります、任期中までにやりますと言っているだけであれば、これは、日本の政治が私は漂流していると思うんですけれども、言葉にやはり重みがないということだと思うんですね。パーティーをやるべきじゃないというふうに言っても実はやるつもりだったとか、やはりそういうこと全体が政治の信頼を失っているんだと思いますので、是非この点は、自民党そして岸田総裁にはしっかりとした対応をお願いしたいというふうに思います。

 残りの時間では、ちょっと奥野さんに、御質問というよりも確認をしたいというふうに思います。

 先週お配りいただいた、五月三十日付の一枚紙の、放送広告とインターネットの規制についての資料があります。その中で、ある程度御説明はいただいているんですけれども、資金規制の面ですね。

 この資金規制は様々内容があって、例えば、支出額が一千万円超の団体には収支報告書の提出義務があるとか、これを公表するとか、あるいは、支出金額の上限を五億円にすることとか、外国人等からの資金援助の禁止というものが定められているんですが、このポンチ絵を見ると、この資金規制というのは放送広告規制の中に書かれていて、有料ネット広告の方には入っていないようにお見受けするんですが、これはいかがなんでしょうか。ここは、それとも全体、ネット広告規制にも資金規制は入ってくるのか。そこをお答えいただきたいと思います。

奥野(総)委員 全体の資金規制ですから、全てにかかってきます。それで枠をはめて、ネットも含めてかぶせていこうと。なかなかネットの規制というのは難しいのは私理解していますから、資金面で縛っていこうということです。

小野委員 ありがとうございます。

 ただ、これは結構、実効性はどこまであるんだろうかというのが、私、難しいと思うんですね。

 例えば、このポンチ絵をちゃんと構図を見ると、放送CMだけにかかっているのかなというふうに私は理解していたんですが、そういった場合には、当然、電波というのは有限ですので、放送できるような事業者も限られていて、しかも、放送のCMの枠というのは時間的にも非常に制約がありますから、その中で資金的な規制をしていくというのは、そこにCMを打てる人たちも限りがあるので、ある程度これは規制をかけることができるかなと思うんですが、ネット空間というのはほぼ無限でもありますし、そういう中で収支報告書をどういう人たちに作ってもらうのかというと、無制限にわたって収支報告書をちゃんと見ていかなければいけないというような問題があって、CMの規制、これを有料ネットのところにも立憲民主党さんが言っているような規制をかぶせていくということは、かなりこれは執行可能性の面で難しいんじゃないのかなというふうに思っています。

 そういう中で、外国人の規制も、私はすごく、だから難しいと思っているんですね。よく、田舎に行くと、土地を外国人が買っているということをやはりやめさせようというようなことも言われていますが、これだって、基本的に、表には外国人が出てこなくて、日本人に資金を持たせて買わせているというようなことがあって、そういったものをどこまで本当に実効的に規制するというのも、非常に難しい話があります。

 ですから、これは先ほど船田幹事もおっしゃっていましたが、やはりそういった資金規制というのは非常に難しくて、資金を誰が出しているかということで規制を行うというのにはやはり一定の限界があって、その内容がフェイクかどうかというのをチェックするという、質的な適正性を保つというところに注力した方がいいんじゃないのかというふうに私は思っております。

 そういう意味では、先ほど、憲法改正の議論で、中身の議論、緊急事態条項の話というものと、それから国民投票法の改正というものについて両輪でやっていくということが私どもの考えではありますけれども、ただ、本当に自民党さんが、もう憲法改正の発議というものをこの通常国会中になかなかできない、そして、夏休み、夏期講習をやってでもやるということをやらないんだったら、私は、立憲民主党さんが言っているとおり、まだちょっとこのCM規制のところなんというのは詰め切れていない部分がありますので、ここを本気でやって、そして、立憲民主党さんもそこの投票環境のところは整ったねということで一気にスピードアップしていくことも必要なんじゃないのかと思います。

 残りの時間、多分余りないんですけれども、玉木さんがおっしゃった、テーマというのは本当に重要だというふうに思っていますので、私もこの点、ちょっとコメントさせていただきたいと思います。

 先週のやり取りを聞いていて、法制局長と玉木さんが議論をされていましたけれども、私はそれを聞いて、二〇二〇年の十一月一日に行われた、二回目の大阪都構想の住民投票を思い出したんですね。

 私、今話題になっていますが、都知事選に四年前出て、それが終わった後は支部長として活動していて、大阪の住民投票の手伝いにも行ったんですけれども、そこで感じたのは、住民投票のテーマが、大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票というテーマだったんですね。それに対して賛成か反対かを書く、マル・バツじゃなくて、書くというやり方だったんです。投票用紙に賛成を書くというふうになると、大阪市を廃止するというようなことがどうしても頭の中に入ってしまって、大阪都構想を実現するというテーマが伝わりにくいということもあったんじゃないかなというふうに私はそのとき感じていたんですけれども。

 そういう意味では、先ほど玉木さんがおっしゃったように、テーマをどういうふうに決めていくのかというところについては、これは法制局長が先週御答弁されたように、広報協議会でこれを議論して決定していくことになるというふうにおっしゃいましたが、非常に大事なテーマなので、この点も、これは憲法改正が成るかどうかということについて大きな分かれ道になると思いますので、玉木さんと同じように、議論していく必要があるかなというふうに思っています。

 最後に、現時点ではなかなか、憲法改正の発議にたどり着くというのは非常に難しくて、スピードアップをしなければいけないというふうに思います。残りの二回もそうですし、その先も、果たして岸田総理が、政治家として、そして自民党の総裁としておっしゃったことが本当にできるのかどうかということが問われていますので、是非、これは自民党の皆様、中谷幹事には努力をしていただきたい、そして、ちゃんと明確な言葉で示していただきたいというふうに思います。

 以上です。

玉木委員 篠原委員から質問か質問じゃないか分からない発言をいただきましたけれども、一応答えておきたいなと思います。

 今非常にセンセーショナルだったのは、議員任期を延長するよりも緊急政令でやった方がいいと。私は一つの考えだと思うんですね。

 ただ、立憲民主党の多くの方が反対するので、やはり国会中心主義で、常に立法府の方がきちんと動くようにした方がいいんじゃないかということもあって今の案を作っておりますけれども、緊急政令を認めるのであれば、やはりそれもちゃんと憲法に書かないと立憲的な統制が働かないのではないかなと思いますので、このことは申し上げたい。

 それで、多くの会派が一致したものをやった方がいいというのはそのとおりですし、だから、五会派である程度一致してきた国会機能の維持ということを我々は提案していて、多分、北神さんから条文が行っていると思うんですが、多分、御覧になっていないと思うので。その中には、いわゆる五十三条の改正案も入っております。

 我々、基本的なコンセプトは、緊急事態になったら、まず、閉会していたら国会は開くということ、開いていたら閉会を禁止すること。解散はできません。憲法改正の発議もできません。つまり、緊急事態におかしなことをしないような仕組みは全部入れてあるんですね。

 今、コンセンサスが得られるところからやったらいいという中で五十三条のことをおっしゃったので、立憲民主党として、五十三条の改正であれば、つまり、四分の一の要求があれば臨時国会を二十日以内に開かなければいけないという、二〇一二年の自民党憲法改正草案にも入っていた期限を入れるということは、これはもし賛同いただけるんだったら、そこからでも始めたらどうかなと。

 その意味でも、さっき中谷筆頭幹事からもありましたけれども、ほかの部分には反対でも、一部でも合意できるところがあれば、立憲民主党さんも加わっていただいて、ここはいいけれどもここは駄目だということを是非言っていただきたいなと。

 それで、法律でできるという立場だと思うんですが、私は法律でやるべきではないと思っています。何でかというと、三権分立の権力間のルールを決めるのは憲法に書くべきだと思うんです、これはルールなので。だから、もちろん国会法の改正でもできるというふうに言う人もいますが、三権分立でチェック・アンド・バランスだけれども、権力対権力の間を決めることは憲法にちゃんと書くべきだと思います。

 だから、もしそこで合意が得られるのであれば是非やっていきたいので、中谷幹事にもお願いしたいんですけれども、そういったところを中心に、立憲民主党さんにも是非議論に加わっていただきたいなと。

 ただ、懸念は、常に篠原さんの意見は立憲民主党の意見を代弁していないことが多いので、そこだけしっかり党内のコンセンサスを取っていただければと思います。

 以上です。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 篠原委員の御発言、大変衝撃的に受け止めまして、歓迎したいと思っております。

 我々は、なかなか進まなくて、賛成会派で進めるべきではないかと言っていたんですが、もどかしい思いをしながらも、こういう議論をしていると、立憲民主党さんからもここの部分が必要ではないかという御提案をいただくのを、大変歓迎いたします。確かに、議員任期の延長だけかという思いは私も持っておりますので、緊急政令の必要性あるいは解散の禁止、こういった論点についても、是非、立憲民主党さんとしての改正案を御提示いただいて、御議論に参加していただきたいと思います。

 それから、本庄委員がほとんど繰延べ投票で対応すべきではないかということで、一点だけ教えていただきたいんですが、小さい選挙、限定的な選挙区であれば分かるんですけれども、例えば参議院の全国比例なんかは、これは繰延べというのは可能なのかどうか、お考えを是非お聞かせください。

本庄委員 一定の条件、範囲の中では可能だと思います。

山田(賢)委員 可能。

 全国比例というのは確定しないので、参議院の全国比例がない状態となりますが、それでよろしいんでしょうか。

本庄委員 繰延べ投票にそういう制約はないと思いますけれども。

山田(賢)委員 繰延べ投票に制約がないということと、議員が選出されない状態で参議院の投票をやって、各都道府県の議員は出たけれども全国比例は選出されない、この状態を許容するか。ある意味で、例えば、東京都では全国比例に投票したんだけれども、東北では全国比例に投票できなかったということになると、全国比例の議員の議席が確定しないということになりますが、それを許容するというお考えでしょうか。

本庄委員 比例制度と選挙区制度は別の選挙制度だと理解しております。

山田(賢)委員 若干違和感がありますが、そういう御回答ということを確認させていただきます。

 私自身も各論で議論すべきと思っているので、是非条文に基づいて議論をしたいんですけれども、これは私個人の意見として、野党三会派さんが出されている条文に基づいて是非お聞きしたいんですが、今日時間がなければ、また今後、議論の中で深めさせていただきたいと思います。

 まず、三会派の案では、任期の延長が必要な要件として、衆参の選挙の実施が七十日を超えて困難な事態としていらっしゃいます。その根拠として挙げられているのが、参議院の緊急集会が対応するのが、衆議院の解散から総選挙までの四十日プラス総選挙から国会召集までの三十日を足した七十日ということだと承知しておりますが、ただ、参議院や衆議院の任期満了に伴う選挙については、七十日という日数は関係ないのではないかなと考えます。衆議院の任期が満了してからも七十日間は参議院の緊急集会で対応するというお考えなのでしょうか。

 もう一つ、衆議院の解散以外に任期満了時も緊急集会が対応するか否かという論点とは別の論点として、日数の妥当性についてやはり整理が必要だと考えております。

 私は、衆参いずれも、任期到来に当たって選挙の実施が困難と見込まれる場合には、任期到来日以降の延長を是非規定しておく必要があるのではないか、これが国会の機能維持に資するのではないかと考えます。個人の意見です。

 また、衆議院の解散については、七十日を超えないけれども、四十日を超えて選挙の実施が困難なケース、これは以前、小林委員からも提起されたと思います。この場合、四十日を超えても七十日を超えていなければ選挙実施困難事態にならないとすると、衆議院の任期延長はできないということになると思います。

 憲法五十四条一項は解散から四十日以内に選挙をしなければならないと規定していることから、衆議院の解散の場合の選挙の延長というものは、四十日を超えて選挙の実施が困難な場合とすべきではないかというふうに考えております。

 もう一つ論点としてあるのは、これはコンセンサスができているのかどうか。一旦解散によって失職した衆議員をもう一度復権させるのかどうかという論点。

 国会機能の維持の観点からは、確かに、緊急集会を超えて両院を機能させるためには、衆議員の復権、選挙ができない場合の復権も必要だろうと考えます。

 その際の議決を誰がするのかということで、三会派案によれば、衆参の三分の二以上の議決というふうになっていて、一旦失職した衆議員も、この議決を行う範囲においては任期が復活したものとみなすとされておるんですけれども、選挙を経ずに、一旦失職した者が自らを復権させる議決に加わっていいのかという論点はあろうかと思います。

 したがって、私は、これこそ緊急集会を機能させて、一旦解散によって失職した衆議員を復権させる場合には緊急集会の三分の二で対応するのも一つの案かなというふうに考えております。

 あと、さらには、いろいろ論点はあるんですけれども、解散の禁止と内閣不信任の禁止、これは表裏一体ではないかというふうに考えます。

 国会機能の維持という意味では、やはり解散権を縛って、それでも、与党も支持しないような内閣であれば不信任を出す、これも一つの考え方であろうと思いますけれども、この辺も十分議論が必要ではないかということを御提起申し上げて、今後の議論につなげさせていただきたいと思います。

森会長 今、山田賢司君から三会派に御質問がございました。

 取りあえず、玉木委員に代表して。

玉木委員 また整理して答えますが、一つ、小林幹事からも前回あったんですが、四十日以内にはできないけれども七十日以内には選挙ができるというケースについては、これはきちんと憲法に書いた方がいいと思います。だから、そこは我々もちょっと整理したいと思いますので。

 ただ、やはり大きな役割分担として、七十日までは緊急集会をフル活用して、そこを超えて長期にわたったら別の体系をきちんとつくっていくというふうに役割分担、短期で限定的で暫定的な緊急集会をやるところとそれ以外をきちんと切り分けるルールを憲法に書いた方がいいと思いますので、今おっしゃったところは我々も憲法に明記した方がいいと思っていますので、そこは修正も含めて考えたいと思います。

 残りはまた答えます。

井野委員 自由民主党の井野俊郎です。

 今国会の当審査会において、緊急事態における国会の在り方について熱心な議論が行われてきて、議論も深まってきたものと感じております。

 これまで、審査会の開催について、各党会派の先生方の努力に敬意を払うとともに、これまでの議論を前提に、私の意見を述べさせていただきます。

 選挙困難事態に関し、昨年六月一日、当時の立憲民主党中川筆頭幹事は、選挙困難事態の具体的な認定基準と認定の効果を策定していくことが必要だと思いますと述べられました。また、十二月七日には、奥野委員が、選挙に係るインターネット投票の導入及びインターネット選挙運動の規制緩和などの取組を進めることは言うまでもありません、しかし、これらの措置を講じてもなお、広範な地域で長期間選挙が執行できないような事態、いわば選挙困難事態が発生した場合には、衆議院を構成できず、国会中心主義を維持することができなくなってしまう場合があり得ますと述べられておりました。

 このように、選挙困難事態があり得るということについては、昨年までの本審査会における議論の一つの到達点であったと認識をしております。

 ところが、今国会において、同じ立憲民主党議員さんから、選挙困難事態は論理上、観念上あり得る、どのくらいの可能性なのか、いまだ説得力ある科学的検証は示されていないとの意見が出されるなど、これまでの同じ会派の議員の議論から後退し、具体的な対策などの議論が深まらない場面もありました。

 個人の意見があることは十分に承知をいたしておりますが、憲法審査会は、会派ごとに席が割り振られ、発言も会派順にするなど、ある程度会派の意見が整理され議論が行われなければならないと私は認識をしております。そうでなければ、当審査会は各議員がそれぞれの個人的見解を述べる場となり、議論は全く深まることなく、当審査会を見ている国民の憲法議論の理解も深まることはないと考えております。

 その上で、一部会派の議員が主張するように、選挙困難事態に対し、災害に強い選挙の構築によりその発生を防ぐことを検討すべきものであるとしても、それを議論する場は、選挙制度に関する政治改革特別委員会となります。当審査会では、そのような対策を講じてもなお発生し得る事態への憲法の空白を埋める議論をする場であることが、当審査会委員の共通認識であると考えております。

 これまで、中谷筆頭の提案する条文起草委員会の設置には至っておりませんが、今国会の自由討議を重ねる中で、国会機能維持に関し、五会派の中で意見の相違があった部分も徐々に埋まってきているものと認識しております。

 憲法議論は、各会派、各議員のそれぞれの意見があり、議論の収れんが難しい部分はありますが、少しでも憲法議論を深めるため、当審査会の議論を無駄にしないためにも、議論の到達点を次回以降の審査会で明確にピン留めをする必要があると考えております。その上で、反対会派による問題点の指摘を受け、更に議論が深まっていくことを期待をしております。

 緊急事態が発生してから拙速に議論し、議論が深まらないまま憲法発議をするのではなく、平時において十分な議論を尽くし緊急事態に備えることが、我々議員及び憲法議論のあるべき姿と考えております。

 討議の積み重ねを無駄にしない憲法審査会の運営を、是非、森会長、与野党両幹事にお願いし、私の発言とさせていただきます。

 以上です。

森会長 ここで中谷元君から、先ほどの小野泰輔君の御質問、問題提起に対する答弁がございます。

中谷(元)委員 小野議員の御質問で、自民党は本気かどうかということですが、私は本気です。

 昨日も、自民党で憲法改正実現本部、古屋委員が本部長ですが、開きました。参議院も出席をして、全党挙げて何とか憲法改正を実現しようということで、最終的に対応は古屋本部長に一任をいたしましたけれども、それを実行するということについては全力で取り組んでおります。

 ただし、改正できるかどうかというのは、この審査会の審議と、それから幹事会、運営は幹事会で決まりますので、やはりこれは各党の了承、了解の下に進めなければなりませんので、是非、この幹事会、先ほど幹事懇談会の提案もさせていただきましたけれども、閉会中も含めまして、先ほど発言したとおり全力を挙げて取り組んでいく所存でございますので、今後とも、審議をよろしくお願い申し上げます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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