衆議院

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第1号 令和6年12月19日(木曜日)

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本国会召集日(令和六年十一月二十八日)(木曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 枝野 幸男君

   幹事 井野 俊郎君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 船田  元君

   幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君

   幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 浅野  哲君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      大野敬太郎君    上川 陽子君

      柴山 昌彦君    新藤 義孝君

      高市 早苗君    葉梨 康弘君

      平沢 勝栄君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    森  英介君

      山口  壯君    山下 貴司君

      山田 賢司君    五十嵐えり君

      岡田  悟君    奥野総一郎君

      重徳 和彦君    階   猛君

      柴田 勝之君    平岡 秀夫君

      藤原 規眞君    松尾 明弘君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    青柳 仁士君

      阿部 圭史君    岩谷 良平君

      平岩 征樹君    福田  徹君

      河西 宏一君    浜地 雅一君

      平林  晃君    大石あきこ君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

令和六年十二月十九日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 枝野 幸男君

   幹事 井野 俊郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 小林 鷹之君 幹事 寺田  稔君

   幹事 船田  元君 幹事 山下 貴司君

   幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君

   幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 浅野  哲君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      大野敬太郎君    柴山 昌彦君

      新藤 義孝君    高市 早苗君

      葉梨 康弘君    平沢 勝栄君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      向山  淳君    森  英介君

      山口  壯君    山田 賢司君

      五十嵐えり君    岡田  悟君

      奥野総一郎君    重徳 和彦君

      階   猛君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    平岡 秀夫君

      藤原 規眞君    松尾 明弘君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    青柳 仁士君

      阿部 圭史君    岩谷 良平君

      平岩 征樹君    福田  徹君

      河西 宏一君    浜地 雅一君

      平林  晃君    櫛渕 万里君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十九日

 辞任         補欠選任

  細野 豪志君     向山  淳君

  米山 隆一君     篠田奈保子君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  向山  淳君     細野 豪志君

  篠田奈保子君     米山 隆一君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 幹事井野俊郎君及び小林鷹之君同日幹事辞任につき、その補欠として山下貴司君及び上川陽子君が幹事に当選した。

    ―――――――――――――

十二月十六日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三四一号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 幹事の辞任及び補欠選任

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(今後の憲法審査会の議論の進め方)


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     ――――◇―――――

枝野会長 これより会議を開きます。

 幹事辞任についてお諮りいたします。

 幹事井野俊郎さん及び小林鷹之さんから、幹事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

枝野会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、幹事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの幹事辞任に伴い、現在幹事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

枝野会長 御異議なしと認めます。

 それでは、幹事に

    上川 陽子さん    山下 貴司さん

を指名いたします。

     ――――◇―――――

枝野会長 この際、御報告申し上げます。

 去る十三日の幹事会におきまして、お手元に配付のとおり「憲法審査会の運営に関する申合せ」を決定いたしましたので、私から申し上げます。

    憲法審査会の運営に関する申合せ

  憲法調査会以来の先例を踏まえ、次のように申し合わせる。

 一 会長が会長代理を指名し、会長の所属会派を除き委員数が最も多い会派の幹事の中から選定する。

 二 幹事の割当てのない会派の委員についても、オブザーバーとして、幹事会等における出席及び発言について、幹事と同等の扱いとする。

以上でございます。

 この際、この申合せに基づき、会長は、会長代理に自由民主党・無所属の会所属幹事船田元さんを指名いたします。

     ――――◇―――――

枝野会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、今後の憲法審査会の議論の進め方について自由討議を行います。

 本日の議事について申し上げます。

 本審査会には、総選挙を経て、憲法審査会の議論に初めて参加される委員も多く御出席のため、幹事会の協議に基づき、まず、衆議院憲法審査会における憲法論議の経過について衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、自由討議を行うことといたします。

 では、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局橘幸信局長。

橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。

 本日は、枝野会長を始め幹事会の先生方からの御指示によりまして、冒頭の御報告をさせていただくことになりました。どうかよろしくお願い申し上げます。

 私自身、二〇〇〇年一月以来、約四半世紀にわたって、各党各会派の先生方の御指導を頂戴しながら、衆議院及び各党の憲法論議を拝聴し、また、お手伝いをさせていただいてまいりました。本日の御報告は、門前の小僧よろしく、この間に見聞きしたことを踏まえて、客観的な事実関係を整理して御報告申し上げるつもりでございますが、至らざる点も多々あると思います。何とぞ御容赦くださいますよう、あらかじめお願い申し上げます。

 お手元に、吉澤事務局長ら衆議院憲法審査会事務局の皆さんと共同で作成させていただきましたスライド及び資料を配付させていただいております。これに沿って御説明申し上げたいと存じます。

 早速ですが、目次をおめくりいただきまして、スライド一ページを御覧ください。

 まず、衆議院憲法審査会における憲法論議の経過を御理解いただく前提として、二〇〇〇年一月に設置されました憲法調査会とそこでの運営ルールについて言及しておきたいと存じます。

 憲法調査会は、日本国憲法の下、憲法改正の発議権を有する国会に初めて設置された憲法論議の専門機関です。その背景には、国際的には、一九八九年のベルリンの壁崩壊や九〇年の湾岸戦争に始まる冷戦構造の終えんが、また国内的には、一九九三年の五五年体制の崩壊と八会派による細川連立政権の誕生に象徴される政党の流動化といった政治状況がございました。

 このように世の中が大きく変わる中で、改めて国家の基本法たる憲法を見詰め直そうと、一九九七年に、超党派の憲法調査委員会設置推進議員連盟が結成されました。その活動によって、二〇〇〇年一月、憲法調査会が設置されたのでございます。ただ、いきなり憲法改正の議論に進むのではなく、あくまでも調査専門の機関とされ、憲法改正の提案権などは持たないこととされたのでした。

 その調査会長に就いたのが、湾岸戦争時の外務大臣であり、同議連の会長でいらっしゃった中山太郎先生でございます。

 ここで、スライド二ページを御覧ください。

 中山会長は、憲法は政権を相争う政策論争を行う民主主義の土俵それ自体であり、その土俵づくりともいうべき憲法論議には与党も野党もない、国会議員一人一人が、国民代表として、政局を離れた静ひつな環境の下で大所高所からの議論を行うべきとの信念から、第一に、政局から一定の距離を持って運営すること、第二に、野党第一党の幹事を会長代理とし、会長とともに調査会運営に責任を持つこと、第三に、憲法の理念である少数意見尊重に鑑みて、基本的に数が物を言う国会ではあるが、少数会派の発言権をできるだけ保障することといった原則を打ち立てられました。

 これが後に中山ルールとか中山方式と言われる運営ルールですが、その根底にある基本的な考え方は、次のようなものでした。

 憲法論議、特に、その一つの到達点である憲法改正は、多様な価値観を有する人々、全国民の生活に影響するものであるから、それぞれが信ずる理想を追求しつつも、決してそれに拘泥してはならない、皆が少しずつ譲り合い、歩み寄りながら、妥協して作り上げていくものだという考え方です。中山会長のお言葉をかりれば、偉大なる妥協、グレートコンプロマイズの姿勢であり、これこそが合意形成の肝であると述べておられました。

 この中山会長を一貫して支えられたのが、歴代の会長代理である、民主党の鹿野道彦先生、中野寛成先生、仙谷由人先生、そして枝野幸男先生であり、与党筆頭幹事でいらっしゃった葉梨信行先生、船田元先生でした。中野寛成先生はこの中山ルールを、与党は度量を、野党は良識を持てと表現されました。

 恐縮ですが、再びスライド一ページにお戻りください。

 この中山調査会は、二〇〇五年四月に、五年間の調査結果をまとめた七百ページを超える報告書を発表しました。その中に、戦後六十年間制定されてこなかった最も基本的な憲法附属法規である憲法改正国民投票法、これを速やかに制定するべきであるとの提言が盛り込まれました。

 スライド三ページを御覧ください。

 この提言に基づいて設置されたのが、憲法調査特別委員会です。この特別委員長にも中山太郎先生が就任されました。

 この特別委員会で国民投票法制定に向けた議論を開始するに当たって、野党筆頭理事であった枝野先生は、憲法改正国民投票法は、形式的には法律の一つにすぎないが、その制定プロセス、すなわち制定過程における合意形成のプロセスは、近い将来の憲法改正の予行演習、リハーサルのようなものにしたいと考えました。この基本姿勢は、中山会長始め与野党の理事、委員にも共有され、委員会採決の最終局面までそのとおりに進んでいきました。

 しかし、二〇〇七年七月の参議院選挙を前にした与野党対立の政局に巻き込まれる形で、それまで築き上げてきた委員会の現場での合意は、同年四月十二日の特別委員会の採決直前に崩壊し、同日の採決は、与党による強行採決の形になってしまいました。枝野先生は、採決当日に、党内をまとめ切れなかった責任を取って理事を辞任されました。

 ただし、可決された法案の内容は、それまでの議論の過程で与野党が合意してきた事項をそのまま盛り込んだもので、自民・公明案と民主案を合体した併合修正案という珍しい形を取ったものでした。

 しかし、強行採決のしこりと、その直後の参議院選挙によるねじれ国会の誕生によって、その後四年三か月の長きにわたって衆議院の憲法論議は停滞することになりました。

 次に、スライド四ページを御覧ください。

 このような経緯を引きずりながらも、民主党への政権交代が行われた後の二〇一一年十月、国民投票法による改正国会法に定められていた憲法審査会がようやく始動することになります。

 初代の審査会長に就任した大畠章宏先生は、中山ルールを踏襲することを宣言し、まず、政界を引退されていた中山太郎先生を参考人として招致した上で、二〇〇五年の中山調査会報告書を復習、レビューするところから議論を始められました。

 この大畠審査会の基本姿勢は、再度の政権交代を挟んで就任された保利耕輔会長にも引き継がれました。選挙で中断した中山調査会報告書のレビューを続けるとともに、国民投票法制定の際に残されていた三つの宿題にも取り組んだのです。

 三つの宿題とは、一つ目は、憲法改正国民投票の十八歳投票権に合わせて、選挙権年齢も十八歳に引き下げること、併せて民法の成年年齢も引き下げること、二つ目は、憲法改正国民投票は主権者国民としての貴重な意思表明の機会であり、そもそも公務員制度それ自体の土俵でもあるのだから、公務員も、賛否の表明など一定の政治的行為ができるような法整備をすること、三つ目は、憲法改正国民投票以外の一般的な国民投票制度についても、現行憲法の下でどこまでが可能か検討すること、この三つです。

 このうち十八歳選挙権については、二〇一四年六月の国民投票法改正と翌二〇一五年六月の公選法改正の二段階の法改正を経て実現されました。さらに、成年年齢引下げのための民法改正案も、上川陽子法務大臣の下で二〇一八年に成立し、既に二〇二二年四月から施行されております。公務員の政治的行為についても、二〇一四年の国民投票法改正で措置されましたし、一般的国民投票制度についても、新たな検討条項が設けられています。

 次に、スライド五ページを御覧ください。

 その後、二〇一四年十二月の第二次安倍政権下での衆議院解散・総選挙、二〇一六年七月の参議院通常選挙などを挟んで、衆議院憲法審査会での憲法論議は大きな転換期を迎えることになりました。

 与党及び改憲に積極的な会派が衆参共に三分の二を超える勢力を獲得し、これを背景として憲法改正に大きな弾みがつくのではと期待する声が上がる一方、野党の一部には、これに反発する形で、憲法論議それ自体に強い警戒心が芽生えていったのでした。

 この時期の政治の現場での主な出来事を振り返りますと、まず、政府・自民党を中心とした動きとしては、解散・総選挙前の二〇一四年七月の憲法九条の解釈変更、それに基づく翌二〇一五年の平和安全法制をめぐる与野党の激しい憲法論議、二〇一七年五月三日の読売新聞紙上での安倍総理・総裁の自衛隊明記、緊急事態対応、教育充実の三項目御発言があり、そして、この三項目に合区解消・地方公共団体を加えた四項目の憲法改正の条文イメージたたき台素案が、翌二〇一八年三月の自民党大会で報告、了承されております。

 野党に目を転じますと、二〇一六年三月には、当時のおおさか維新の会が、教育無償化、憲法裁判所、道州制導入を始めとする統治機構改革の三項目の憲法改正原案を発表し、国民民主党も、二〇二〇年十二月に、デジタル時代の人権保障と統治機構の再構築を通じて、憲法の規範力を高めるための、憲法改正に向けた論点整理を発表しております。

 また、民主党、民進党におかれましても、二〇一七年総選挙直前の旧立憲民主党の結成と、その三年後の旧国民民主党との合流による新立憲民主党の誕生を踏まえて、その両者の憲法観をすり合わせ、確認した、憲法論議の指針といった基本的な文書が策定されています。この指針では、安保法制は違憲であること、自衛隊明記には反対であることを明確に打ち出すとともに、統治機構の分野では、臨時会召集期限の明記や解散権の制限、人権の分野では、知る権利や、同性婚、LGBTの人権などに言及されています。

 このように、この時期の憲法論議は、与野党の対決ムードの高まりの中で政治的、政局的なテーマとなっていきましたが、それと反比例するかのように、憲法審査会での議論は停滞し、その開催自体に汗を流さなければならない時代に入っていったのでありました。

 しかし、そのような中にあっても、森英介会長や佐藤勉会長の下、与野党の会長代理や幹事の先生方は、中山ルールを念頭に置きながらも、新たな与野党の向き合い方に腐心され、憲法公布七十年を機にとか、海外調査報告書を機にといったきっかけを探りながら、お互いに合意できるテーマを設定して、審査会の開催に向けて努力されたのでありました。

 この時期のもう一つのテーマとして、国民投票法の改正問題がございます。二〇〇七年の国民投票法制定から十数年を経る間に、公選法においては、在外投票システムの改善や共通投票所の開設、洋上投票の機会拡充など、投票環境向上のための法改正が次々と施されていました。投票や開票のシステムは国民投票法でも同じであり、同様にバージョンアップしていく必要性が認識され、提出から成立までかなり時間はかかりましたが、二〇二一年六月に、公選法並びの七項目改正案が成立しております。

 次に、スライド六ページを御覧ください。

 衆議院憲法審査会の議論において更なる転換点となったのが、二〇二二年の通常国会からの議論でした。

 再び会長職に就かれた森英介会長の公正中立、円満かつ筋を通した毅然たる運営方針の下、与党筆頭となってから三年余りの間、与野党合意に基づく審査会開催に腐心されてきた新藤義孝先生と野党筆頭に就任されたばかりの奥野総一郎先生との御協議によって、衆議院予算委員会が開会中の二月の段階から、毎週木曜日の定例日に憲法審査会を開催して、継続的に議論が行われるようになっていったのです。

 当時の新藤先生のお言葉をかりると、憲法審査会の開会自体がニュースになるようじゃ駄目だ、その議論の中身を国民に伝えてもらえるようにならないといけない。この時期の議論の転換を表した象徴的なお言葉だと拝察いたします。

 当時は、二〇二〇年の新型コロナウイルスの感染者発生から三年目に入っており、衆議院では、本会議のいわゆる間引き出席など、三密を回避しながら国会を機能させる工夫がなされていました。

 そこで、最初に議論の俎上に上ったのが、憲法五十六条一項の定足数を定める「出席」の概念にオンラインによる出席も含まれるのかといった論点でした。議員間討議や法制局による論点説明、参考人質疑を踏まえた上で、同年三月三日、審査会で次のような決議がなされました。

 憲法五十六条一項の「出席」は、原則的には物理的出席と解するべきではあるが、国会の機能を維持するため、緊急事態が発生した場合等においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、例外的にオンライン出席も含まれると解釈することができる、これが本審査会における議論の大勢であったというものです。詳細は資料1を御参照ください。

 この決議は、森会長から当時の細田博之議長に報告され、細田議長の指示で、山口議運委員長の下で議論が開始されました。そして、本年六月、その成果の一つとして衆議院規則が改正され、委員会レベルでのオンライン参考人が正式に認められることになったのでした。

 さて、一昨年の通常国会では、このオンライン審議の議論に続いて、緊急事態一般の議論に入っていくことになりました。同年二月二十四日のロシアによる突然のウクライナ侵略という事象を目の当たりにして、このような事態への備えに関する認識が多くの委員間で共有されていったからであります。

 そして、当時の審査会での議論は、次のような形で進んでいきました。

 まず、ステップ1、各委員からテーマ選定のための自由な発言をしてもらう。次にステップ2、その委員発言を整理して、共通の関心事項と思われるテーマを選定して、これについて議論を進める。そしてステップ3、当該テーマに関する議論の積み重ねを踏まえて、法制局及び審査会事務局に論点整理をしてもらう。ステップ4は、この論点整理を踏まえて、また、必要に応じて参考人質疑を行うなどして、更に議論を深めていくといったプロセスです。そして最終的には、ステップ5、この議論の結果、憲法改正が必要と判断されれば、具体的な条文案の作成に入っていくことになります。

 緊急事態条項については、法制局、審査会事務局による論点整理、参考人質疑とそれを踏まえた議論の深掘りの段階、今申し上げたステップ4まで進んでいきました。この論点整理の詳細は、資料2を御参照ください。

 その結果、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の委員においては、大規模自然災害や異常な感染症、テロや有事などの場合においても行政監視を始めとする国会機能を維持するために、長期間、国政選挙の実施が困難と見込まれる場合には、議員任期の延長や解散権制限を定めておくことが望ましいといった、いわゆる選挙困難事態における国会機能維持条項、この必要性が述べられ、速やかに条文案作成のステージに入っていくべきである、このような発言が相次ぎました。

 これに対して、立憲、共産の先生方からは、国会機能の維持に限ったとしても、そのような条項には濫用のおそれがある、国会機能の維持は現行憲法の参議院の緊急集会で対応可能であるとの意見が述べられたところです。

 他方、この時期のもう一つの重要なテーマに、ネットやデジタル化への対応問題があります。

 具体的には、国民投票の公正確保のために、放送CMをはるかに凌駕するに至ったネットCMや、SNSなどにおけるフェイクニュースなどにどのように対応していくべきか、そもそも規制できるのかといった議論です。

 加えて、このデジタル化やフェイクニュースの問題は、国民投票の場面に限らず、情報アクセス権やプライバシー権、情報的健康といった憲法上の人権保障の問題でもあることが認識されるようになってまいりました。

 これらの論点については、参考人として招致した、ネット社会と憲法の第一人者である慶応義塾大学の山本龍彦先生や、ネット業界、ファクトチェック団体の代表者の方々との質疑応答によって議論が深まりつつあるところです。

 最後に、スライド七ページを御覧ください。

 以上の議論は、今年の常会に入っても続けられました。すなわち、一方では、緊急事態における国会機能維持のための条文案の作成に関する議論が、他方では、国民投票法の議論やデジタル時代の人権保障の議論が唱えられ、活発な意見交換が行われてきているところです。

 以上、衆議院憲法審査会における憲法論議について、設置以来今日までの大ざっぱな流れを御報告させていただきました。

 お耳汚しで大変失礼申し上げました。御清聴ありがとうございました。(拍手)

枝野会長 橘局長、ありがとうございました。

 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

枝野会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に質問を行うことといたします。

 発言の中には、事実確認等のため、衆議院法制局当局に対する質疑を含めていただいても結構です。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内とします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元さん。

船田委員 自由民主党の船田元であります。

 自民党を代表しまして、今後の憲法審査会の議論の進め方等について意見を述べたいと思います。

 その前に、先ほど橘衆議院法制局長から、これまでの憲法をめぐる様々な議論と経過をお話をいただきまして、私も何回か登場いたしまして、大変身の引き締まる思いであります。また同時に、幾つものハードルがあり、それを一つ一つ乗り越えてきた、このことにつきまして、感無量の部分もありますが、同時に、新たに、身を引き締めてこの問題に対処しなければいけない、そういう新たな気持ちも湧き上がってまいりました。

 まず、国会での憲法論議においてよく取り上げられております、先ほどもお話のありました中山方式について、私の私見を申し上げます。

 中山方式は、憲法調査会長、憲法調査特別委員長を歴任された中山太郎先生が提示をされた理念、そしてこれに基づく運営を表すものであります。すなわち、憲法に関する議論に政局を絡めず、少数会派の声も尊重しつつ、与野党の別なくお互いに譲り合って合意形成を目指すものであると理解をしております。

 ただ、こうした理念にもかかわらず、例えば平成十九年の国民投票法の制定時における混乱を始めとして、憲法に関する議論がこれまで何度も政局に巻き込まれてきたことは、大いに反省をしなければなりません。

 この点について枝野会長は、先日の会長就任の御挨拶におきまして、この中山方式の本質に立ち返らなければいけない、こう発言されており、私もこれには賛同したいと思います。今後も政局から離れた静かな環境の下で憲法に関する議論が着実に行われることを期待し、私も会長代理として枝野会長とともに環境整備に努めていきたいと思っております。

 自民党は、党内の憲法論議として、平成十七年、そして平成二十四年、二回にわたりまして憲法改正草案をまとめてまいりました。

 その上で、現在、自民党が優先的に取り組むべき憲法改正のテーマとして掲げておりますのは、自衛隊の明記、緊急事態対応、地方公共団体や参議院合区解消、教育充実、この四項目でありまして、この四項目につきましては、平成三十年に、条文イメージたたき台素案として公表したところであります。

 ただ、この条文イメージは、完成された条文ではなく、あくまでもたたき台素案でありまして、憲法審査会における議論や各党、有識者の意見を踏まえ、幅広い合意を得て憲法改正原案の提出を目指すものと考えています。

 この四項目のうち、特に緊急事態対応につきましては、憲法審査会において議論が大きく進展をしております。

 具体的には、令和四年常会以降、議論が継続的に行われ、同年十二月に一度目、それから昨年六月に二度目の論点整理が行われました。さらに、さきの常会終盤におきましては、当時の中谷筆頭幹事が、五会派の共通認識の整理として、公明、維新、国民、有志の先生方のアドバイスを踏まえて作成した資料を配付し、選挙困難事態における国会機能維持条項に盛り込むことが考えられる事項の骨格について発言をされました。

 さらに、その後、中谷筆頭幹事から、これをより詳細にした資料が公表されております。この資料では、その内容が条文に近い形で提示されているとともに、今後議論すべき課題についても整理されておりまして、これまでの議論の到達点はほぼこの資料に集約されていると考えます。今後の審査会においては、まずこれを発射台として、このテーマについて優先的に議論を進めていくべきである、このように考えています。

 なお、先日、韓国で発出されました戒厳令、非常戒厳、これを引き合いに、緊急事態条項には濫用のおそれがあり、憲法に緊急事態条項を設けるべきではないと言われることもしばしばございますが、韓国の戒厳令と我々が行っている議論とは全く別物と考えています。

 我々が議論している、いわゆる議員任期の延長を中心とした緊急事態条項は、いかなる緊急時であっても国会機能を維持し、国民の生命、身体、財産を守るための法律の制定や予算の議決ができるようにするための仕組みをつくっていこうというものであります。韓国の戒厳令のように政治活動を禁止したり報道や集会を規制したりするといったものとは全く性質が異なります。

 さらに、国民投票法の議論も必要であると思います。令和三年改正の際に、投票環境の整備と投票の公平公正の確保について検討する旨規定されましたが、その検討期限が既に経過をしてしまいました。

 まず、投票環境の整備に関しましては、衆議院の解散により廃案となってしまいましたが、公選法並びの国民投票法改正を速やかに行う必要があると思います。

 また、投票の公平公正の確保につきましては、テレビCM、ネットを用いた広告や意見表明の在り方について様々な意見が出されております。

 私個人としては、テレビCMの禁止強化、運動費用の上限規制、ネットを用いた広告や意見広告の直接規制というよりも、国民投票運動はできるだけ自由にとの国民投票法制定当時の趣旨を踏まえまして、事業者等の自主規制や間接的な方法による規制を中心に検討すべきではないかと思います。その間接的な方法としては、例えば、民放各社からCM考査の状況を広報協議会に定期的に報告をしてもらうなどの方法も考えられます。

 また、フェイクニュースへの対応も含め、委員の皆様と議論を深めていきたいと思っております。国民投票の公平公正を確保する上で、国民投票広報協議会の役割は極めて重要であると思います。その役割や諸規程の整備についても議論を進めていきたいと思っております。

 衆議院憲法審査会では、ほぼ毎週の定例日開催が定着をし、丁寧な議論が積み重ねられてきていると思います。先ほど申し上げました選挙困難事態における国会機能維持条項のように、議論が煮詰まってきているテーマもございます。今後は、議論を拡散させることなく、テーマを絞って、精力的に議論を集約していかなければいけないと考えます。皆様の活発な、かつ建設的な議論を期待いたしまして、発言といたします。

枝野会長 次に、武正公一さん。

武正委員 立憲民主党、武正公一です。

 憲法審査会の運営、議論の進め方について申し述べたいと思います。

 国民投票法改正案に対して、立憲民主党は、附則第四条が求める法制上の措置には、国民投票の公平及び公正を確保するための措置を講ずるものとあることから、その点も法改正に盛り込むべきと主張してきた。法施行後三年の見直しを本年九月十八日に迎えたことから、最優先で取り組むべき課題と考える。

 ネット広告の飛躍的増加、ネットを通した世論操作、広告放送の量的自主規制を行わないとの民放連の発言などの事情変更を踏まえ、国民投票法改正案に次のような事項を検討すべきである。一、憲法改正案に対する賛否の勧誘のための広告放送の全面禁止、二、政党等による賛否の意見表明のための広告放送の禁止、三、政党等によるインターネット有料広告の禁止などである。

 さらに、選挙におけるネット、SNSによる誤・偽情報、いわゆるフェイク情報の拡散といった問題に対応するため、一、憲法改正案に関するタウンミーティングの開催、二、インターネット等を利用する方法による広報の二項目を広報協議会の事務に追加することも検討すべきである。また、フェイク情報の流布に対応するため、ファクトチェックを行う民間団体等と広報協議会との連携に関する規定についても検討すべきである。

 最近の選挙では選挙妨害や選挙運動用ポスターなどに関わる問題に対して法整備の必要性が指摘される一方、選挙運動や表現の自由の保障も重要である。そこで、表現の自由や選挙運動の自由の意義と、制約の可否や程度について、憲法の観点から議論すべきであると考える。

 次に、衆議院の解散に際し、時の内閣による恣意的な権限行使が繰り返されている。政府解釈では党利党略による解散権の行使は許されないとされており、このような恣意的な権限行使は、憲法上、到底許されるものではない。

 在外日本人選挙権訴訟違憲判決より、可能な限り在外投票の機会を確保すべきというのが憲法の要請と考える。しかし、今回の衆議院選挙の解散では、投票所入場券が届くのが特に大都市を中心に遅れて、期日前投票に影響が出、結果、投票率は戦後三番目の低さになり、在外投票率も一%台と言われる。解散から選挙期日までの期間が短いことは選挙権の行使に支障を生じさせており、国民の権利を侵害していると言える。

 立憲民主党は、衆議院の解散は、一、憲法六十九条に規定する場合のほか、二、直近の衆議院総選挙後に浮上した国政上の重要な争点について国民の判断を仰ぐべき場合などに限定することを提案する。加えて、衆議院を解散する場合には、内閣は解散の予定日と理由を衆議院に通知し、本会議で質疑を行うことを義務化することで、恣意的な解散を抑制することができると考える。以上の解決方法について議論を進めるべきである。

 さらに、憲法第五十三条による内閣の臨時国会召集は憲法上の法的義務であり、内閣は合理的期間内に臨時国会召集を決定しなければならないとするのが、政府、学説のいずれにおいても確立した見解である。ところが、諸内閣が臨時国会召集を放置する憲法違反の繰り返しが常態化している。同規定の趣旨を踏まえ、臨時国会召集の要求があった場合、二十日以内に臨時国会を開会するなど、必要な法制上の措置を議論するべきだ。

 また、憲法審査会の目的には、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査」がある。同性婚訴訟は、今年に入って三つの高等裁判所で違憲判決が出た。同性婚を認めない民法などの規定が憲法十四条一項の法の下の平等や二十四条二項の個人の尊厳と両性の本質的平等に反するとしたほか、福岡高裁では、十三条の幸福追求権にも反すると判断された。裁判所は同性婚の法制化を立法府に求めており、違憲判決が相次いでいることから、同性婚の法制化について国会で議論をすべきである。

 法人の人権については、八幡製鉄事件では、法人の人権享有主体性を権利の性質上可能な限り認め、法人は政治資金の寄附など政治的行為をなす自由を有するとしている。その上で、巨額の寄附による金権政治といった問題点への対処は立法政策で解決すべきものとしており、法律により企業の政治活動の自由を制限することは可能であると解される。また、南九州税理士政治献金事件では、強制加入団体による政治資金の寄附は目的の範囲外であるとしている。このような判例を踏まえ、法人の政治活動の自由に関し、今臨時国会でも衆議院予算委員会で石破総理の発言もあり、議論を深めるべきと考える。

 また、サイバー攻撃に対して常時パトロールを行う積極的、能動的サイバー防御が必要とされる一方、通信の秘密が制約される可能性も考えられる。通信の秘密を最大限保障する観点から、能動的サイバー防御の導入に際し想定される具体的事例と制約の可否について、ヒアリングや議論を行うべきである。

 信教の自由は個人の価値観の根源であり、手厚く保障されるべきである。一方、旧統一教会などの問題から、カルト宗教への対策の必要性も指摘されている。そこで、信教の自由に関する判例などに関するヒアリングを行い、信教の自由の制約の可否や程度について議論すべきである。

 ほか、立憲民主党憲法論議の指針の下に臨んでまいりたい。

 最後に、衆議院議員選挙も終え、憲法審査会の進め方は、新しい議員を多く迎え、各党各会派での意見集約、情報共有を前提に、党会派を代表しての意見を述べ、質疑を行い、憲法審査会での議論を丁寧に、そして闊達に進める必要がある。

 以上です。

枝野会長 次に、馬場伸幸さん。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 先ほど橘法制局長より、衆参両院における憲法審査会の原点となった超党派の憲法調査委員会設置推進議員連盟結成から今日まで二十七年間の憲法論議の経過について、るる御説明いただきました。ありがとうございました。

 議連の立ち上げから衆参両院での憲法調査会設置に奔走し、本院調査会の初代会長を務めた、私の師匠、中山太郎先生にいま一度思いをはせています。

 湾岸戦争当時外務大臣だった中山先生は、お金だけ出して人的貢献をしなかった我が国に対する諸外国の冷たい視線を痛感しました。その根因は施行から半世紀を経た旧時代の日本国憲法にあると考え、たまらず行動に移されました。

 中山先生が全国会議員に配付した議連の設立趣意書にはこう書かれています。憲法論議は国権の最高機関たる国会において党派を超えた全国民的立場でなされるべきであり、国家の基本問題について真摯に議論することこそが我々政治家に課せられた最大の使命だ。立法府に身を置く我々はこの言葉をかみしめるべきです。

 ほぼ開かずの扉状態だった本審査会も、ここ三年は、私たちの強いプッシュもあって相当数開催されるようになりましたが、中身は羅針盤のない航海のごときです。各会派の意見発表会から脱却できず、いざ意見集約に向けてアクセルを踏もうとすれば、特定野党がいわゆる中山方式を曲解、悪用し、ブレーキをかけてきました。

 弟子だった私が中山方式の真髄をはっきり申し上げます。中山方式イコール全会一致ではありません。中山先生が先頭に立たれていた当時は、まず憲法改正という列車をレールに乗せなければならないフェーズでした。中山方式は、時間をかけてでも中身の議論をするための紳士協定ですが、もはやフェーズは変わりました。レールに乗った列車を前に進めなければなりません。

 改憲につながるやり方は一切認めないと繰り返す共産党が存在する限り、全会一致は永遠に望めません。反対会派の意見に耳を傾けることは不可欠ですが、どこかで議論に区切りをつけ、多数決で結論を得ることが民主主義の原則です。

 中山方式が反映された本審査会の会長代理制度には、与野党双方が審査会の運営に責任を持つという思いが込められています。野党第一党として長らく会長代理の椅子に座ってきた旧民主党や立憲民主党の方々は、果たしてその責任を全うしてきたと胸を張れるのでしょうか。政局に絡めないとする中山方式を口にするなら、しっかりと責任を果たしていただきたいと思います。

 解散・総選挙もあり、本審査会での実質討議は六月十三日以来のことです。既に半年間の空白ができました。昨年十二月七日には、当時の中谷与党筆頭幹事から、改正原案の起草に向けた機関を創設する旨提案がありましたが、この一年、一ミリも進んでいません。今国会での審査会開催は、本日が最後です。放っておいたら、年明けの通常国会開会後も、予算審議が終わるまで審査会を開かないという立法府の因習から、少なくとも三月初めまで実質休眠状態になることは目に見えています。起草委員会の設置どころではありません。

 枝野会長を始め、皆さんに訴えます。衆議院憲法審査会規程によると、閉会中でも手続の必要なく開催ができます。悠長に通常国会の開会を待つのではなく、年末年始の閉会中も審査会を適時開いて、議論を前に進めようではありませんか。

 総選挙を経て委員の構成が変わっても、これまでの審査会での議論の積み上げを無にしてはならないことは言うまでもありません。

 本審査会での実質討議は、令和四年が一年間で二十回、五年が一年間で十九回、今年が本日を含めて十回、この三年間で計四十九回行われましたが、議論の大半が、非常事態時の国会議員の任期延長、国会機能の維持などを規定する緊急事態条項の創設に費やされたと認識しています。既に論点は出尽くしています。

 日本維新の会は、昨年六月、国民民主党、有志の会の皆さんとともに緊急事態条項の条文案を策定しました。この条文案について、西修駒沢大学名誉教授は、四月に上梓した著書「憲法一代記」で、非常に優れた規定方式だと高く評価され、これを土台に自民、公明両党が参画し、細部を詰めるのが最も妥当で最善の策であると指摘されています。方向性は、自民、公明両党と大きなそごがないと認識しています。

 私たちは、三会派の条文案を本審査会で議論の俎上にのせるように訴えてきましたが、条文案や資料の提出は認められないとの申合せにより、一年半塩漬けにされたままです。

 枝野会長には、是非、このような理不尽なルールは改め、直ちに起草委員会を設け、自民、公明だけでなく、立憲民主党など他会派にも緊急事態条項の条文案の合意形成に参画するよう差配していただきたく存じます。

 中山先生は、憲法論議には偉大なる妥協が必要だとも訴えておられました。議論に加わった会派の一部が納得できなくても、機が熟せば、民主的な多数決によって公明正大にゴールへの歩みを進めるべきです。

 一方、来年の結党七十年に向け憲法改正実現へ先頭に立たれている石破総理・総裁は、十月の臨時国会の所信表明演説で、国会発議の目標について、総理在任中と明言されましたが、なぜか今国会での所信表明演説と代表質問答弁では目標期限が消えました。釈然としません。

 この間、自民党は、本審査会長ポストを立憲民主党に明け渡しました。まさか憲法改正に白旗を上げたわけではないでしょうが、これまで同様、やるやるとポーズを繕うだけなら、党本部に高らかに掲げている憲法改正実現本部の看板をさっさと下ろしてください。そう責められたくないなら、いいかげん、行動で示していただきたい。

 本院は、少数与党となり、国会発議のための三分の二の賛成確保が厳しい情勢であることは承知しています。とはいえ、立憲主義、民主主義の根幹には国民主権があります。その国民主権を具現化することこそ、憲法改正の国民投票です。主権喪失の下で作られた憲法が抱える諸課題を乗り越え、憲法を国民の手に取り戻すときです。

 枝野審査会長は、十二日付毎日新聞のインタビューで、しっかりと建設的な議論ができるよう努力したいと決意を表明されました。党利党略によって建設的な議論が不当にブロックされる事態を招かぬよう、審査会長としての責務を全うしていただくよう強く求めて、私の発言を終わります。

枝野会長 次に、浅野哲さん。

浅野委員 国民民主党の浅野哲です。

 本日は、衆議院憲法審査会での初めての発言となりますので、まず一言御挨拶させていただきます。

 枝野会長、船田、武正両筆頭幹事のリーダーシップの下、委員各位の皆様と真摯かつ建設的な議論に臨んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先般の枝野会長の言葉をおかりすれば、日本国憲法は、国の在り方、統治の基本原理を定める根本規範であり、あらゆる法令の根拠となり基本を成すものです。重要な憲法を扱う場に立つ重責を深く感じるとともに、丁寧で慎重な議論を重ねていく必要性を改めて実感しています。

 ところで、直近の憲法審査会において主に取り扱われてきた事項として挙げられるのが、選挙困難事態における国会機能の維持、そして、国民投票に係るCM規制の在り方の二点です。

 国権の最高機関たる国会をいかに維持するか、そして、我が国の最高法規たる憲法の改正手続の公正性をいかに確保するか。いずれも、憲法の趣旨を変えるためではなく、あくまでも憲法の趣旨をいかに守るかという視点で議論が進められてきたものと承知をしています。

 まず、最も充実した議論を重ねてきた選挙困難事態における国会機能維持に関する議論についてですが、昨年六月十九日に発表させていただいた日本維新の会、有志の会、国民民主党三会派による憲法改正に向けた条文案、そして、この条文案を踏まえて自民党、公明党も入れた五会派の合意を得て六月十三日の憲法審査会で中谷筆頭幹事が提示したいわゆる中谷メモに基づき、今後、橘局長の言葉をかりれば、ステージ5、すなわち、要綱案の作成や条文化作業が本審査会で進められることを強く求めます。そのためにも、早急に起草委員会を設置して協議を開始することを求めます。

 なお、選挙困難事態における国会機能維持に関しては、参議院側から幾つかの課題が指摘されていることを受け、各論点について参議院の憲法審査委員と合同の審査会を開催するなどしながら、議論を深めていくことも提案します。

 他方、国民投票に係るCM規制の在り方については、本審査会での集中した議論が必要と考えます。

 二〇一六年の米国大統領選挙でのケンブリッジ・アナリティカ事件を始め、近年、国内外でも散見されているSNSやインターネット上でのフェイクニュースの流布を含めた世論誘導行為、あるいは第三者による収益化行動の顕在化、さらにはサイバー攻撃といったリスクが深刻化している現状は看過できません。広報協議会にファクトチェック機能を持たせるかガイドラインを作成する権能を持たせるなど、現実的かつ実効的な制度設計の議論を深めていきたいと思います。

 以上に申し上げたように、憲法審査会がこれまで積み重ねてきた議論の状況を踏まえれば、選挙困難事態における国会機能維持のための議論と国民投票に係るネットCM規制の在り方についての議論は共に引き続き本審査会で取り扱うべきであり、また、その重要性や緊急性を鑑みれば、憲法審査会は定例日である毎週木曜日に開催することを求めます。

 最後に、前回の発言の中で枝野会長は、中山方式に立ち返るとおっしゃいました。私もいわゆる中山方式の考え方に共感する者の一人であります。平成十二年から十七年まで開催された憲法調査会は、小委員会や公聴会を含め、延べ百三十六回開催されました。

 最終回であった平成十七年四月十五日、憲法調査会での報告書に関する採決前の発言の一部を引用します。「本調査報告書の作成を一つのスタートラインとして、本調査会が、憲法議論の深化と憲法改正手続法制の整備の役割を担う第二ステップに進み、充実した議論がさらに展開することを強く望みます。」これは、当時会長代行であった枝野会長の言葉であります。

 あれから約二十年を経て、憲法調査会は憲法審査会へとその名称と役割を変え、現在までに様々な議論が積み重ねられてきました。我々は、枝野会長の下においては、充実した議論を更に展開し、起草委員会設置や条文化作業等のネクストステップへ進む議論が行われることを強く望んでおります。

 それぞれの会派ごとに考え方の相違点があるのは当たり前ですが、そのような状況を前提としながらも、前向きな改憲議論をも避けず丁寧な議論と合意形成を毎週重ね続けていくことこそ憲法審査会のあるべき姿だと考えますので、枝野会長を始め、船田、武正両筆頭の今後の御尽力をお願い申し上げ、私からの発言とさせていただきます。

枝野会長 次に、浜地雅一さん。

浜地委員 会長、ありがとうございます。

 公明党の浜地雅一でございます。

 我々公明党としましては、これまでこの憲法審査会を含めて我が公明党の憲法議論を引っ張ってこられました北側副代表が引退をされまして、今回、私どもはオブザーバーという立場ではございますが、私はオブザーバーとして幹事会に参加をさせていただきます。

 甚だまだ力不足でございますけれども、しっかりと公明党の中でも議論を深め、これまでの伝統を承継しつつ、新しい憲法観も公明党でつくっていきたい、そのように決意をまず述べさせていただきたいと思っております。

 私は議員になって約十二年でございまして、その半分以上、この憲法審査会に所属をさせていただきました。当時はなかなかこの審査会の開催がなかったわけでございますけれども、特に、森英介会長になられ、そしてまた、コロナ又はウクライナの有事ということで、やはり社会の事象が変わってきたという中において、毎週この憲法審査会が開催をされることを大変喜ばしく思っております。

 そして、今回は少数与党と我々はなったわけでございますが、今回は会長が野党の枝野会長に替わられたわけでありますけれども、今日もしっかりと定例日に開催をいただいたことは、十二年前、私が国会に来たときに比べ、本当に前進をしているなというふうに実感をするところでございます。

 公明党の憲法に関する考え方は、加憲、いわゆる加える憲法という考え方であります。では、一切今までの条文を動かさず何か加えなければならないのかというと、そうではなく、当然、現在の憲法の基本でございます国民主権、そして基本的人権の尊重、そして平和主義というものを変えない、これは普遍の原理である。その上で、様々な社会の事象に合わせながら、検討すべきものがあればしっかりと検討し、加えていこうというのが我々の憲法観であります。

 ですので、コロナでなかなか国会機能が維持できなくなるのではないか、また、災害、そしてウクライナで起きました有事等で、国会の機能が果たせなくなるのではないかという社会の事象を我々は目の当たりにしました。

 私は、やはり、憲法五十六条一項の「出席」の概念、これを我が衆議院の審査会で一定の決議をしたことも評価をしたいと思っております。ただ、これについては、参考人のオンライン出席にとどまっておりますので、本当の意味でのスタートは、本会議につきましてもオンライン出席ができるような体制を整えていくことを我々憲法審査会でも進めていかなければいけないと思っております。

 その上で、選挙困難事態における国会機能維持、特に、国会議員の任期延長を含む議論を進めるべきであろうと思っております。

 前回の衆議院選挙のときに、私は九州比例区なんですが、ある大分県のところで挨拶回りをしましたら、我が党の党員、支持者ではない方だったんですけれども、挨拶をしましたら、前衆議院議員の浜地雅一ですと名のりました。何で前衆議院議員なんですかと。衆議院は、解散中は実は身分を失っておりまして、私はただの人でございますと話しましたら、その方が、じゃ、もし、ここで地震が起きたり何か起きたときには、国会に戻られて、また議論されるんですよねというふうに、実は一般の方が言われたわけでございます。

 ああ、なるほど、今の東日本大震災やウクライナの状況を見て、国民の皆様方の中にも、国会議員の解散中の権能であるとか、又は任期満了後の選挙中の権能については、やはり意識が高いんだなということを実感をいたしました。

 ですので、そういった観点でいいますと、各会派からもお話がありますとおり、選挙困難事態における国会機能維持の条項につきましては、かなりの論点整理が進められておりまして、もう条文案に近いものが進められております。これを私は速やかに行うべきであろう、そのように改めて皆様方に申し上げたいというふうに思っております。

 ただ、やはり、もう一つの論点としましては、中身も大事でございますが、国民投票法としての環境整備ということについても議論をすべきだと思っております。特に、令和三年国民投票法改正の検討事項についての議論を進めるべきであろう、そのように思っております。

 特に、広報協議会の在り方であります。広報活動の全般についての賛否の平等が法定をされているのが国民投票広報協議会でありますので、まずは、ここの機能を充実させること、これがどういったものがあるのかということを議論をすべきだと思っています。

 この中において、これは可能かどうか分かりませんが、この国民投票法、また、制定当時には想定をされていなかった、インターネットを用いた国民への情報提供や実施、そして、偽情報、誤情報を排除するための何らかの役割をこの広報協議会にも持たせられるかどうかについても議論をすることが大事であろう、そのように思っております。

 今述べましたとおり、国会議員の任期延長を始めとする国会機能維持としての緊急事態への対応、そして、やはり、国民投票を行っていくためには、いま一度、広報協議会を含めた議論の集積がまず最優先の課題であろう、そのように公明党会派としては思っております。

 最後に、その優先課題があった上で、別の論点を述べますと、公明党は以前、環境権というものを提案したことがございます。これにつきましては、よく、どうなっているんですかということを聞かれるんですけれども。

 私は、去年、COP28に政府の一員として行かせていただきましたが、気候変動や温暖化に対する国際社会の動きというものは大変激しいものがあるというふうに感じました。ですので、いま一度、この環境権というものを、まずは国会議員の任期延長、そして国民投票法の検討を行った上でございますけれども、行うべきであろうと思っております。

 ここで、一つ最後に申し上げたいのが、実はこの環境権につきましては、「国民は」で始まる主語、いわゆる国民の主観的権利やプログラム規定として捉えますと、実は、訴訟が乱発したというのがポルトガルで行った事例だというふうに聞いております。

 我が党の現在の代表であります斉藤現代表が憲法調査会の幹事のときに海外視察をしたときに、この環境権、どのような書きぶりがいいかということになりましたけれども、ポルトガルでは、元々国の責務として書いていたものを国民の権利として書いた後に訴訟が乱発をしたということであります。

 したがいまして、これも議論になったからでありますけれども、こういった環境権等につきましては、国民の主観的な権利ということではなく、「国は」で始まる、国に対する責務を課すような規定でなければならないというふうに思っております。

 繰り返しますけれども、これもまずは国会機能維持というのが大きなテーマでございますので、それをしっかりと皆様方の同意を得ながら、仕上げてから、この問題も取り組んでいきたい、そのように思っております。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

枝野会長 次に、櫛渕万里さん。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 れいわ新選組にとっては初めての衆議院憲法審査会での発言となります。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、この間、国民生活を取り巻く環境は大きく変化をしてきました。能登半島地震を始め多発する災害や新型コロナ感染症の蔓延、国際的な環境も厳しくなっています。さらに、三十年にわたる経済不況と物価高など、本来なら憲法に基づいた政治を行うべきであるのに、憲法を無視する政治によって国民は苦しみ続けています。反省すべきは自分たちであるはずが、改憲勢力は、あろうことか憲法に責任を押しつけ、その改正をたくらんでいます。

 我が党の山本太郎代表が度々述べるように、憲法改正を語る前に、今ある憲法を守れ、やるべきことをやれというのが本日の私の発言の趣旨です。

 いわゆる改憲勢力は、なぜ憲法審査会の開催に躍起なのでしょうか。それは、緊急事態条項を憲法に入れるためですか。

 帝国議会の憲法改正案委員会で、金森徳次郎憲法担当大臣はこう答弁しています。民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するためには、政府一存において行う措置は極力防止すべき。さらにはこうも言っています。非常という口実で憲法が破壊されるおそれなしとは言えない。もう一度繰り返します。非常という口実で憲法が破壊されるおそれなしとは言えない。

 一九四六年ですから、戦争という究極の緊急事態の直後であることはもちろん、一九四四年十二月の東南海地震、一九四五年一月の三河地震といった連続する大災害の渦中でもあります。しかも、コレラなどの感染症も深刻でした。この中で、緊急事態条項を否定する意思を金森大臣は国会で答弁したのです。

 戦争や災害、感染症を理由に緊急事態条項を導入することが許されるとは到底思われません。民主政治を徹底させるため、国会同意など事前にルールを定めておけば緊急事態条項も大丈夫だとの意見もありますが、本当にそうでしょうか。

 つい先日、韓国で戒厳令が発令されました。最終的には、国民や政治家の逮捕もなく、憲法に基づいた国会の決議で六時間後に戒厳令は解除されました。結果だけからすれば、事前に憲法に定めていた条項が役に立ったと見えなくはありません。

 日本維新の会の馬場元代表は、日本にも権力統制型の緊急事態条項を早急に憲法に導入すべきだと述べました。また、国民民主党の元憲法調査会長でもあった方も、今は民間人の方ですが、戒厳令解除規定を引き合いに出して、出口のところで韓国は食い止めた、入口のルール、出口のルールもないのは極めて危険だとし、日本にも必要と主張しています。

 しかし、今回の戒厳令は、一切の政治活動が禁止され、全ての言論と出版を統制し、違反したら令状なしに逮捕できる内容です。しかも、国会議事堂に兵士が突入し、窓を破って侵入したではありませんか。民主主義が踏みにじられる状況が続いたとき、果たしてチェック機能が働いたでしょうか。

 確かに今回は解除されましたが、次もそうだとは限りません。立憲主義を停止するのが緊急事態条項の本質である以上、立憲主義が定めたチェック機能が働く保証はどこにもないのです。ドイツでもフランスでも、緊急事態条項は濫用されてきた歴史があるのです。

 私は、前職のNGO時代に世界八十か国近くで活動してまいりましたが、制約のない権力が国民にとっていかに危険か、身にしみて感じることがありました。暴力で民主主義が踏みにじられる様子を見て、日本は絶対にそうなってはいけない、憲法を守り、民主主義を守っていくことが何より大切、そのように考えて政治家になった私からすれば、韓国の戒厳令を見て緊急事態条項が必要だとする結論は、全く理解不能です。

 それどころか、今だって日本では立憲主義は機能していません。衆参いずれかの四分の一以上が求めれば内閣は国会を召集すべきとする憲法五十三条に基づいた開会要求がたなざらしにされたこともありました。憲法に基づく立法府の要請を行政府が無視したのです。事実と異なる国会答弁を百十八回も行った総理大臣さえいました。憲法を無視し、国会にうそをつく日本で、緊急事態条項のルールが守られるなど、絵空事でしかありません。

 繰り返しになりますが、憲法改正を語る前に、今ある憲法を守れ、やるべきことをやれでしかないのです。

 では、今やるべきことは何か。この憲法審査会では、むしろ、生存権を保障する憲法二十五条が徹底されていないことを審議すべきでしょう。最も急がれるのは、三十年の経済不況と、能登の地震と豪雨の二重災害から国民を救うことです。能登では災害関連死が二百四十七人、これは十二月六日付の公表です。地震による直接死を上回る事態を招いています。避難生活の疲れやストレスだけでなく、医療や福祉の欠如による要因も指摘されており、圧倒的に政府の公的支援が遅くて規模が少ない。いまだ珠洲市では断水が続く地域もあるなど、水さえも飲めない。明らかな憲法違反です。

 また、生活保護の申請件数は、新型コロナが感染拡大した二〇二〇年から四年連続で増加していて、この十一年間で最も多くなっています。

 三十年の不況にコロナ、そして物価高の三重苦で国民が苦しむ中、消費税減税さえしていません。憲法二十五条一項に、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。しかし、それができていない。

 憲法審査会では、このように現行の憲法の規定が遵守されていない問題を徹底的に議論すべきでしょう。現行憲法さえ守れない者たちに憲法改正を論じる資格は一切ありません。

 私からは以上です。

枝野会長 次に、赤嶺政賢さん。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 憲法審査会は、憲法改正原案を発議し、審査することを任務としています。今、国民の多数が改憲を求めていない中で、改憲につながる憲法審査会は動かすべきではありません。

 問題は、自民党が国民の意思と関係なく審査会を動かし、改憲項目のすり合わせの場にしようとしてきたことであります。法制局から経過の説明がありましたが、二〇一五年六月四日の審査会で参考人として出席した三人の憲法学者が安保法制は違憲だと発言したのを機に、自民党は一年半の間、審査会を動かすことができませんでした。憲法を守れ、安保法制廃止という国民の怒りが広がるのを恐れたからであります。

 ところが、二〇一六年の参議院選挙後に、安倍首相が二〇一二年の自民党改憲案をベースに議論を進める意向を示したのを機に、自民党は審査会を動かし始めました。さらに、安倍首相は、二〇一七年五月三日の憲法記念日に、自衛隊を憲法に書き込む具体的な案を示し、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたいと期限を区切って改憲議論を主導してきました。その下で、自民党は、九条改憲を含む四項目の改憲原案をまとめ、審査会に提示して議論を進めようとしました。

 しかし、安倍首相が改憲に躍起になればなるほど、改憲に反対する国民の声は大きくなりました。安倍首相自身が、退陣を表明した記者会見で、国民世論が十分に盛り上がらなかったと認めざるを得ませんでした。

 ところが、岸田首相は、任期中に憲法改正を実現すると繰り返し主張し、国会に条文案の具体化を進めるよう呼びかけました。

 自民党は、ロシアのウクライナ侵略やコロナ感染の蔓延を奇貨として、九条改憲や緊急事態条項が必要だと主張し、改憲案の絞り込みを行おうとしてきました。国会議員任期延長の議論を先行すべきだという主張もありました。国民の支持はそれでも得られなかったのであります。

 この間の経過で重要なことは、自民党がどんなに改憲を叫んでも、改憲を望む国民の声は多数になっていないということです。昨年十一月三十日のこの審査会でも、当時の石破委員から、改憲に取り組んでもらいたいと考えている国民は七%しかいないという発言がありました。

 国民を無視し、最後まで任期中の改憲に固執した岸田政権は、自民党派閥の裏金問題に対する国民の怒りを前に退陣に追い込まれました。そして、今回の衆議院総選挙で、国民は自公与党の過半数割れという審判を下しました。自民党の改憲が国民の期待、国民の支持を得られていないことは明確です。にもかかわらず、政治権力を持つ側が改憲を喧伝し、国民に押しつけようとすることは認められません。改憲のための議論はやめるべきです。

 次に、憲法問題を国会はどう議論すべきかです。

 最大の憲法問題は、現実の政治が憲法の原則と乖離していることです。自民党政治の下で国民の基本的人権がないがしろにされている実態を、国会の予算委員会や各常任委員会で大いに議論すべきです。

 今問われなければならないのは、憲法の上に日米安保条約があり、その下で主権と人権が踏みにじられていることであります。それが端的に表れているのが沖縄です。沖縄では、米軍による事件、事故が繰り返され、県民の命や暮らしが脅かされています。

 昨年十二月、米兵が十六歳に満たない少女を誘拐し性的暴行を加えるという凶悪事件が発生しました。しかも、政府は、この事実を半年間も隠し、沖縄県にも伝えていませんでした。

 政府は、沖縄県や県民の強い反対にもかかわらず、辺野古新基地建設を強行しています。憲法が保障する民主主義や地方自治を根底から破壊するものにほかなりません。日本国憲法の下でこの沖縄の実態を放置し続けることが、どうして許されるのでしょうか。

 さらに、同性婚や選択的夫婦別姓、学費や教育費の無償化、貧困と格差、冤罪と再審請求、外国人の人権など、全てが憲法問題です。憲法の原則に逆行し踏みにじられている政治と社会の実態を放置することは許されません。

 私たちは、政治家は憲法を変える議論ではなく憲法に反した現実を変えるための議論をするべきだと重ねて強調して、発言を終わります。

枝野会長 次に、北神圭朗さん。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。よろしくお願いいたします。

 憲法審査会も新しい体制となりました。新しい体制でありますから、当然、新しい試みも期待されます。しかし一方で、長年、議論百出、しかし結論出ずという状態が続いてきたことを考えますと、白紙からではなく、前体制から継承すべきものは継承していくことを求めたいと思います。

 とりわけ、選挙困難事態における国会機能の維持については、それなりに濃密な議論を通じて審議を前に進めてきた自負があります。ただ、惜しむらくは、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の間では詳細に至るまでの合意ができながら、本審査会で具体案の議論ができなかったことです。

 我々五会派の問題意識は、大規模な災害などにより選挙ができない場合、国会の機能を可能な限り維持するためには、どうしても議員の任期の延長等の創設が必要ではないかというものです。

 これに対して反対派からは、災害とか言うけれども、広範な地域をまたがって、かつ長期にわたって選挙ができないほどの大規模のものは想定しにくい、仮にそんな奇想天外なことが起きても参議院の緊急集会で十分対応できる、新しい制度をつくればその濫用の危険性があるというふうに反論されております。

 緊急集会の開催期間については、一部の学者が云々する七十日間という制限は単なる目安であり、超えても何ら支障はない、また、参議院は確かに国会の半分しか構成していないけれども、緊急時に鑑み、長期間でも衆参合わせた国会としての機能を全面的に発揮できるんだ、以上のようなものだと理解しております。

 これに対して我々は、一つは、憲法五十四条一項を素直に読みますと、解散による衆議院の不在期間が最長で七十日間であることは明白である。二つ目には、緊急集会は、同条二項の両院同時活動の原則の例外であり、その活動範囲や開催期間は抑制的に解釈すべきである。三点目は、百歩譲って七十日間を超えて開催できるとしても、では、どこまで延長が可能なのか、その限度に関する合理的な基準が見当たらず、それこそ濫用を止める手だてがないというふうに考えております。

 要するに、改正を嫌がる余り、緊急集会に権限を与えようとする、しかし、権限を与えようとすればするほど、今度は条文解釈に無理が生じ、緊急集会の濫用に歯止めがかからない。護憲の信念が強いがゆえに、図らずも解釈改憲を許す。第九条をめぐる議論と似た、興味深い逆説的な心理現象だと理解しております。

 思い起こすべきは、一九四八年の第三回国会において、当時の吉田総理が、自分の思いどおりにならない衆議院を解散して、緊急集会を利用して予算の議決を図ろうとしたことです。緊急集会とて権力に濫用され得る、この事実にも注意を払うべきでしょう。

 それから、外に目を向ければ、先ほども話がありましたが、韓国の大統領が非常戒厳を発令した一連の出来事も、国会機能の維持を考えるのに参考になります。

 一つは、古今東西、危機が訪れる際には、どうしても行政権に権力が集中するということであります。あるいは、これを理由に自分の権力の強化を図ろうとする不逞のやからが出てくるおそれがあります。

 無論、日本国憲法には戒厳令の規定はありません。しかし、あの進歩主義、憲法学の大家である高橋和之先生でさえ、憲法に危機管理の規定を設けることには反対するが、本当に非常事態が生じたら超法規的措置を取るしかないと本審査会で発言されております。つまり、緊急時には、規定があろうともなかろうとも、行政への権力集中、少なくとも事実上の権力集中が必要だと、この憲法学者も認められているのです。

 こうしたことからすれば、ふだんから行政への権力集中を牽制するために、できる限り国会の機能を守る必要がありますよというのが我々の問題意識です。

 もう一つ、韓国の事例が参考になるのは、予想できない事態に対して、あらかじめ危機管理の手続を憲法に規定しておくことがいかに大事なことかということです。韓国憲法第七十七条五項には、国会が在籍議員の過半数の賛成により戒厳の解除を要求したときは、大統領はこれを解除しなければならないと規定されています。大統領の非常戒厳令に対する手続が明記されていたからこそ、国会はこれにのっとって非常戒厳の解除をすぐに行うことができたのです。

 これらのことを踏まえれば、緊急時に行政権の暴走を牽制する仕組みを憲法に明記することこそが、国会中心の民主主義を守ることにつながるのではないでしょうか。

 なお、維新、国民民主との三会派の共同提案においては、議員任期の延長などと併せて、憲法第五十三条の改正を盛り込んでいます。

 具体的には、国会の臨時会召集の要求に係る召集期限を二十日以内と明記しております。期限を切ることによって、確実に臨時会が開かれることを期するものであります。これも、緊急時にいかに国会を機能させるかという一貫した発想に基づくものであります。こうした論点についても、各会派の理解が得られやすい事項と思われますので、本格的に議論をする必要があります。

 最後に、そもそも我々本審査会の任務とは何か。

 前身の憲法調査会は、衆議院の規程第一条により、設置趣旨が「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うものとする。」にとどまっています。これに対して、本審査会の衆議院規程の第一条には、「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、」ここまでは趣旨は一緒なんですが、その後に、「日本国憲法の改正案の原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するものとする。」と規定されています。

 残念ながら、国民投票法は別にして、憲法審査会はいまだに憲法改正に向けた任務を果たしていません。是非、新しい体制の下で、中山会長がおっしゃった偉大なる妥協を発揮して、本審査会の任務をしっかりと遂げられるよう要請をして、私の意見といたします。

枝野会長 各会派一巡の意見陳述が終わりました。

    ―――――――――――――

枝野会長 次に、委員各位による質問に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの質問時間は答弁の時間を含まずに三分以内といたします。委員各位の御協力をお願いをいたします。

 質問時間の経過につきましては、おおむね三分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 私からは、選挙困難事態における国会機能維持条項につきまして、維新、国民、公明、有志の皆様がお話しになったとおり、これまでの憲法審査会の議論の積み重ねにより、要綱の作成、条文化作業に着手できるところまで来ていると考えます。

 本日配付の資料2のような意見の集約を踏まえ、本日、船田筆頭幹事が述べられたように、前国会会期末には当時の中谷筆頭から、個人メモという形ではありますが、国会機能維持条項の骨格が示され、さらにその後、より詳細化した、ほぼ要綱案ともいえる資料が六月末の自民、公明、維新、国民、有志の意見交換会においてオープンにされております。

 まさに、先ほど橘法制局長が述べたステップ4まで進んでおり、次のステップ5、具体的な条文案についての議論は十分に熟していると言ってよいと考えます。

 憲法審査会における今後の議論は、このような議論の成果を基にして進めていくべきであります。総選挙の都度、議論を振出しに戻すようなことは決してあってはならないと考えます。

 もちろん、選挙困難事態における国会機能維持条項の創設に反対のお立場の会派もあると承知しております。しかし、反対があるから議論をしないというのではなくて、賛否は別として、具体的な条文イメージを提示することにより、お互いにかみ合った建設的な議論を進めていくことがこの憲法審査会が果たすべき任務であると考えます。

 こうした議論の進め方への賛否につきまして、立憲、維新、国民、公明、有志の各会派の幹事、委員の皆様のお考えを質問させていただきます。

山花委員 まず、前提として、いわゆる選挙困難事態と呼ばれることについては、立法事実が確認できないということをこれまで逢坂委員の方から申し上げてきたと思います。

 つまり、釈迦に説法ですけれども、憲法の方が上位規範で、公職選挙法というのは下位の規範です。ところが、大規模災害などで選挙ができないという点については、現行の公職選挙法を前提に皆さん議論されているのではないでしょうか。すなわち、投票日を定めて、入場券を郵送して、その場所に足を運び、自書で候補者の氏名を記入するというやり方を前提に選挙が実施できないという議論をされているように見受けられます。

 このやり方だから、例えば、感染症が爆発的に流行しているときには密になってしまうであるとか、大規模な災害のときに避難所の投票ができないではないか、こういう議論だと思いますけれども、避難所、避難場所などでも投票できるような方法を模索することであるとかインターネット投票など、大規模災害のときでも公正な選挙が確保できるような仕組みを追求することがむしろ憲法上要求されていることと考えられます。

 これらを検討することが論理的に先行されるべきでありまして、この検討をした結果、どうしても無理だという話になったところで初めて立法事実があるという話になるのだと思います。その意味で、現時点で、私どもとしては、立法事実が確認できないということを申し上げているわけであります。

 緊急集会の話が出ておりますけれども、日本の場合、二院制が取られておりますので、参議院で、緊急集会で国会機能が維持できないという結論がもし出されるのであれば、その後に衆議院の憲法審査会で議論を行うというのが、日本国憲法の下での二院制の在り方、エチケットではないかと考えられます。したがって、衆議院で先行して議論すべき課題とは考えていないというのが立憲民主党としての見解であります。

岩谷委員 我々維新の会は、御提案させていただいております緊急事態条項を一刻も早く国民投票にかけるべきだ、発議をすべきだということを一貫して、変わっておりません。

 その上で、これまではいわゆる改憲勢力が三分の二を占めていたわけですから、これを強硬に進めれば、逆に反対される皆さんからは御批判をいただいたかもしれません。しかし、今度は逆に、三分の二を割り込んだことによって、憲法改正、あるいは緊急事態条項創設に関して反対されている会派の皆さんも共に責任を負った、より大きな責任を負ったというふうに認識しておりますので、今まで以上により真摯な議論をお願いしたいというふうに思います。

浅野委員 国民民主党としては、先ほども申し上げましたように、早急に起草委員会を設置をして、要綱案、条文案の作成作業に入るべきだということを主張しております。

 また、今、山花幹事の方が触れられました公職選挙法の部分については、我々はそれを全面的に否定するものではありませんけれども、今年六月十三日の憲法審査会において、一人の委員の方から、実際、過去には、選挙の一体性が確保できないような事態、ある一定の広範囲にわたって選挙が行えなかった、そういった事例も紹介がされました。やはり、こういったことを考えましても、憲法の中で選挙困難事態というものを正面から捉えて議論を進めていくことには大きな意義があると考えております。

浜地委員 公明党も、任期延長を中心とする国会機能の維持としての緊急事態、進めるべきだと思っております。

 先ほど、選挙困難事態の立法事実の話がありましたが、東日本大震災のときは、選挙を延ばしただけでなく、地方議員の任期も延ばしましたという現実がございます。これを、公明党としても、やはり一つの選挙困難事態の、仮にあれが国政選挙だったらそういう事態に当たり得るのじゃないかという話はさせていただいたところでございます。

 また、繰延べ投票についても、やはり、被災が起きると、選挙民だけでなく、選挙事務に携わる方も被災をされている状況も考えなければならないということも一言申し述べたいと思います。

北神委員 先ほど申し上げたとおり、国民民主党と維新とも共同提案、そして具体案を出していますので、是非それを中心に、起草委員会とかを創設して、私も、今、浜地委員が言ったような考えですけれども、立法事実とかにつきましては。これも、何度もこの委員会で議論をして、我々も、これはいろいろ意見の相違があるのかもしれませんけれども、決着はついているというふうに考えております。

 いずれにせよ、そう言っても水かけ論になりますから、やはり、具体案をちゃんと提出して、それに基づいて立法事実云々の話をまたすればいいというふうに思います。

山下委員 以上のように、具体的条文案に基づいてやるべきだという意見が多く述べられたということを前提に、枝野会長には、この審査会の進行、是非お取り計らいいただきたいと思います。

 以上です。

枝野会長 今の山下さんの御発言と違う御意見であった山花さん、何かございますか。

山花委員 繰り返しになりますけれども、国会機能の維持ということでいうと、昭和二十一年に帝国議会で、この憲法を作るとき、委員会がありました。そこで、金森国務大臣が、「特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、」と答弁されているわけで、これは、東京大空襲だとか、広島、長崎の原爆が落とされてから、まだそれほど月日がたっていないときのことです。

 緊急集会でやるのだというのが制憲意思だと考えられますから、先ほども申し上げましたけれども、参議院でまずこの議論を行っていただいて、それでどうしても無理だという話になってから衆議院でやるというのが二院制のエチケットであるというのは、スタンスとして変わっておりません。

津村委員 立憲民主党の津村啓介でございます。

 私たち立憲民主党は、立憲主義に基づいて権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与する立場で憲法審査会の議論に参加しております。

 憲法の議論を行う大前提は、憲法に書かれたルールを遵守することでございます。憲法を遵守した上で、憲法の規定ぶり、あるいは、憲法に規定がないことによって具体的な弊害が生じているという、いわば立法事実が本当にあるのかないのか、その共通認識が広く共有されて初めて憲法の議論の入口に立つと考えます。

 私からは一点、臨時会の召集要求と召集期限の明記について申し述べます。

 憲法五十四条では、衆議院総選挙後の特別会は、選挙の日から三十日以内に召集しなければならないとされています。これまで、総選挙後の特別会は、例外なく三十日以内に召集されてきました。

 これに対しまして、憲法五十三条後段は、衆議院か参議院の「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」とされておりますが、何日以内という期限は書かれておりません。

 立法において、一般に、期限を書かない場合は、直ちにとか、速やかにといった含意があると考えますが、五十三条後段は、そのようには運用されておりません。

 近年では、野党が臨時会の召集要求をしてから三か月経過した第百九十四国会において、要求テーマについての審議がなされることなく、冒頭解散が行われるということがございました。

 政府は、要求書送付の日から召集日の前日までの期間は九十八日間としておりますが、五十三条後段の趣旨からすると、要求に応じた審議ができるようになったのは特別会でしたので、要求書送付から特別会の召集日前日までの期間は実に百三十二日間となります。これは、憲法に明確な規定がないことを逆手に取った、極めて非立憲的な運用だったと考えます。

 ここで、自由民主党に質問いたします。

 自由民主党は、平成二十四年、二〇一二年四月二十七日に日本国憲法改正草案を発表されていますが、そこには、「要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。」という案文がございました。自由民主党は臨時会の召集期限について憲法審査会で議論の対象とすべきという立場と認識しますが、それでよろしいでしょうか。確認させてください。

船田委員 今、津村議員から御指摘いただいた点でございますが、平成二十四年の自民党の憲法草案でございます。この扱いにつきましては、確かに自民党の中でのオーソライズはしたものでございますが、その後、様々な検討を行いましたところ、この二十四年の草案については、ある意味では歴史的文書ということで凍結をしている、そういう現状にあります。そして、その後、我々は、先ほども申し上げましたけれども、四項目についての緊急に取り組むべき課題ということで、それを提案をしているという状況でありますので、平成二十四年の草案にはこだわらない、そういう状況、今自民党の中では対応しております。

 ただ、私個人的には、やはりこの問題については確かにいろいろな解釈がございますので、その点についてこの憲法審査会で議論することについてはやぶさかではない、皆様としっかり議論していきたいと思っております。

 以上です。

阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史でございます。

 私、今回の選挙で初当選をいたしましたが、これまで、厚生労働省の職員として、また国連職員として、危機管理政策を専門といたしまして、テロ対策、感染症の危機対応、紛争地帯での事態対処など、実際の事態対処の実務を担ってまいりました。

 危機管理の実務家としては、常に最悪のシナリオを想定して、国民の命を守るための政策を考えます。そのためにも、先ほど我が党の馬場議員が述べた緊急事態条項の創設は、机上の空論ではなく、一度でも事態対処の実務に携わり、国民の命に責任ある立場に就いたことのある方であれば、当然のように必要性を認識しているものと思います。

 危機管理の実務家として、これまで、そして本日も憲法審査会の議論を見てまいりましたけれども、やはり、概念や文言について、定義に曖昧な点が、すれ違っている点が見受けられるというふうに思っております。

 そのため、本日はお手元に、資料にまとめさせていただきましたのでお配りいたしました。緊急事態に類する概念、文言の整理についてです。これは、最近の憲法学における整理を反映したものです。

 憲法学上の整理は、緊急事態と非常事態、これは全く異なる概念でございます。また、それらに相当する緊急事態条項と国家緊急権も全く異なる概念であると言えます。

 緊急事態とは、平時の法制度、法運用とは異なる対応を必要とする事態を広く含む概念でございまして、平時の統治機構の下でその対応が行われ、立憲的統制が十分に機能する事態であります。

 非常事態とは、平時の統治機構をもってしては対処できない程度の緊急事態でありまして、憲法が定める機関が正常に機能し得ないときにどのように対処すべきかという、国の存立に関わる難問に応えるものといたしまして、まさに戦争で国の中枢が爆撃されて閣僚や議員がほとんど死んでしまうとか、散り散りになって連絡も取れないというような、より深刻な事態です。

 緊急事態条項とは緊急事態に際して用いられるものでございまして、国家緊急権とは非常事態に対して用いられるものというふうに解されます。緊急事態条項は、まさに立憲的統制として、憲法秩序の維持を目的として行われるものである一方、非常事態は憲法秩序の停止という効果がございます。

 先ほど自民党の船田元議員がおっしゃっていらっしゃいましたように、我々が議論している緊急事態条項とはまさに憲法秩序の維持を目的として行われるものであることを強調して、今後の議論を更に前に進めるべく、日本維新の会、国民民主党、有志の会の三会派の条文案を踏まえて、是非とも、起草委員会の設置に向けて、委員の皆様のお力添えを賜りたいと思っております。

 終わります。

枝野会長 恐れ入ります、この時間帯はどなたかに質問をしてくださいということで整理をいたしましたので、今後は御留意をいただきたいと思います。

阿部(圭)委員 はい。ありがとうございます。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 さきの特別国会から憲法審査会に所属させていただくことになり、本日が初めての発言となります。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 先ほどの法制局の御報告、大変勉強になりました。中山ルール、私もしっかりと理解しながら議論に参加をさせていただきたいというふうに思っております。

 この構成員の皆様の中には多く法曹御出身の皆様がおられると認識をしておりますけれども、私は、議員になるまでは二十六年間、大学の教育に携わってまいりました。専門は情報分野でございまして、学生時代に、今のような、情報分野が社会の根底に影響を与えるような、このような状態は全く想像しておらず、私自身も非常に驚きとともに思っているところでございます。

 その意味におきまして、先ほどの法制局の御報告の中で、ネットやデジタル化への対応問題がある、このような記述がございまして、憲法上の人権保障の問題でもある、このようなことが認識されるようになってきた、このようなことも述べられたところでございます。

 そこで質問させていただけたらと思いますけれども、この憲法上の人権保障の問題であるという部分に関しまして、自由民主党と立憲民主党の二つの会派に対しまして、現状どのようなお考えをお持ちであるのか、概略で結構ですので御教示いただけたらと思います。よろしくお願い申し上げます。

寺田(稔)委員 御質問ありがとうございます。

 国民投票におけますSNS、ネットの利用については、今年の五月の三十日の集中討議、また翌週六月六日の集中討議、二回連続して、国民投票をめぐる諸問題について集中討議が行われ、多くの論点が出されております。

 とりわけ偽・誤情報への対応、またフェイクニュースへの対応については、ファクトチェック機関をつくるべきであるという意見、これは与野党問わず出されたところでございまして、それを広報協議会自らが担っていくのか、あるいは民間機関と連携をしていくのかという点についてはまだ詰まっていないところでございます。今後、積極的にこうした論点も議論していくことができればと思います。

武正委員 先ほども申し述べましたが、立憲民主党は、ファクトチェックを行う民間団体等と連携をしていくんだと、先ほどは広報協議会についてということを申し述べましたが、こうしたフェイク情報の流布に対応するためにはそうした連携が必要であるということを申し述べております。

枝野会長 間もなく予定された時間になりますが、今三人の方から札が立っておりますので、このお三方の質問までやらせていただきたい。若干延びるかもしれませんが、御了解ください。

 札を立てていらっしゃる方と御答弁の方は、できるだけ手短にお願いをいたします。

寺田(稔)委員 質問の機会をありがとうございます。

 今申し述べたとおり、当憲法審査会においては、二回連続、集中討議の形で、国民投票における諸問題、とりわけSNS、ネットの利用について議論がなされ、表現の自由、名誉毀損、情報アクセス権、あるいはまた人権侵害等、多くの論点、また様々な困難な問題が内包していることも議論されたところであります。また、最近の各種選挙を見ても、ネット選挙解禁以来、SNSが大いに活用されていますが、必ずしもプラス面だけ生じていないことは御承知のとおりでございます。

 また、このネットの問題は、誹謗中傷、人権侵害、偽・誤情報、フェイクニュース対応といった諸課題、これは国民投票の場面にとどまらない、ネット全般に広がりを持つ大きな論点となっており、これは総務委員会始め各常任委員会等でも大いに議論されているところであります。そして、この国民投票法の世界においてはこの問題にどう対処すべきか、当憲法審査会で議論すべき重要課題となっております。

 そして、国民投票法に関しては、先ほども論点として出ましたとおり、さきの衆議院の解散で廃案となりました投票環境向上のいわゆる三項目案、これは開票立会人の選任要件の整備等の三項目案、既に公職選挙法では手当てがなされておりますが、これについても、国民投票法の改正として早急な対応が必要であります。

 そこで、憲法審査会を開催する何回かに一回は国民投票法をテーマとして着実に議論を進めていくべきと考えますが、この点についてどのようにお考えか、立憲民主党さん、そして公明党さんの両会派に質問いたしたいと思います。

武正委員 先ほども申し上げましたように、法施行後三年というような見直しの、本来の九月十八日も過ぎておりますので、最優先で取り組むべき課題というふうに考えております。

浜地委員 私は、要は、国会議員の任期延長を含む中身の問題と、あと、広報協議会はまだ規則が決まっていないという問題がございますので、これをどうするかなんですが、私個人としては、まずはやはり、今、任期延長、ここまで進んでおりますので、条文化作業をしっかりと進めていただいて、それである程度議題が決まってくる、その中においていよいよ改憲発議というものが現実味になってくるわけでございますので、その後早急に、広報協議会の在り方も含めて整えるということも一つの考えではないかというふうに思っております。

米山委員 それでは、私は、企業・団体献金と憲法の関係についてお伺いします。

 石破総理は、十二月十日の予算委員会での答弁で、八幡製鉄所政治献金事件判例を示して、企業献金を禁止することは憲法違反、企業、団体の献金を禁ずるということは、私は少なくとも憲法二十一条には抵触すると思っておると答弁いたしました。その後答弁を修正しておりますが、重要な問題ですので、企業献金を禁止する立法の合憲性について、法制局、自民党、維新、国民さんに見解をお伺いいたします。

 また、これと同じようで異なる問題に、我が立憲民主党提出の政治資金規正法改正案の政治団体の政治活動に対する寄附を可能とする条項についての問題がございます。自民党の方々はこれを抜け道として批判しておられますが、本来、営利を目的としている企業と、そもそも特定の政治的目的のために集まっている政治団体とでは、その趣旨が異なります。

 例えば、私を応援してくださる方が集まって米山隆一後援会をつくった場合に、その米山隆一後援会は、当然、私の活動を応援する様々な自由があり、その中には私に寄附する自由も入るんだと思いますし、個々人なら寄附ができるのに団体になったらできないというのは矛盾だと思います。

 そういう政治団体の活動を全面的に否定することが憲法上許されるのか、また、もしそういうことを許したら、政党活動もまた全面的に禁止することが許されることになってしまうと思いますので、それは、表現の自由、結社の自由を定める憲法二十一条に抵触する可能性があるかと思います。これも同じく法制局、自民党、維新、国民さんの御見解を伺います。

枝野会長 それでは、今後の進め方に関わる観点から、まず、橘法制局長から、答弁できる範囲で答弁をお願いします。

橘法制局長 米山先生、御質問、どうもありがとうございます。

 一般的な問題ではなく個別具体的な問題ではありますが、枝野会長からの御指示でございますので、お答えできる範囲内で御答弁させていただきます。

 あらかじめ申し上げなくてはいけないのは、私ども衆議院法制局は、与党、野党を問わずに、先生方から頂戴した御依頼に基づいて、徹頭徹尾、その会派の先生方のお立場に立って条文案を立案させていただくという国会の補佐機関でございます。法制専門職として、当然にその前提として、憲法問題を始めとする法解釈に関しては先生方に御助言申し上げることはございますけれども、それも、あくまでも各会派のお立場に立った上での問題であると。私どもに有権解釈権はございません。それをよろしく御理解いただきます。

 その上で、企業・団体献金の禁止の憲法適合性ですが、私どもは野党の先生方の御依頼で度々企業・団体献金の禁止法案をお手伝いさせていただいております。ということは、その立法政策を条文化する前提として、そのようなことは当然に憲法の許容する範囲内のものである、そのような解釈は成り立ち得る、そのようなものと考えています。

 さて、その上で、政治団体による寄附についてでございますけれども、現に、これまで提出された法案ですと、一定の政治団体を除く企業、団体からの献金についての禁止でございます。一定の政治団体を含めて禁止するということについてまで踏み込むということは大変に難しい問題であると思います。それは、先生が今御指摘されたとおりでございます。

 一般に、営利企業として定款所定目的の範囲内で政治活動を行う株式会社等とは異なり、政治団体の場合には、財産の移動それ自体もその政治的信条を実現する行為そのものである、政治活動そのものである、それと密接に関連するものとなりますので、より慎重な検討が必要となってくると思いますが、例えば、それに踏み込もうとした場合でも、政党や政治資金団体とその他の一般的な政治団体とを区別するのかどうか、政党本部と支部の間の資金移動まで対象とするのかどうか、全面的に禁止するのか、それとも上限設定などのように一部制限とするのかどうか、さらに、そのような政策を判断するときに立法事実はあるのか、弊害は現にデータとしてあるいは見込みとして立証できるのか、そのような必要性と合理性について、より慎重な検討をすることになるかと存じます。

 ただ、先生方には釈迦に説法ですけれども、いずれの問題についても、憲法論で結論が一義的に出るものではございません。あくまでも、立法政策としての適否の問題、それこそが先生方が御議論される最も本戦、主戦場というか、そういうことだと思いますので、憲法解釈だけで結論が出てくる問題ではないこと、これを前提として、生意気ながら御答弁させていただきました。

 以上です。

山下委員 まず御指摘したいのは、八幡製鉄所事件では、これは最高裁のサイトに出ているんですが、「憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する。」と最高裁が明言しているところであります。

 したがって、こうした憲法上の権利について一切の禁止が許されるのかどうかということに関しまして、石破総理が抵触のおそれがあると言うのは、これは正しいことであろうと思います。

 ちなみに、アメリカの憲法判断では、スーパーPACの献金規制に対して、表現の自由に違反するということで違憲判決が出されていることは、米山委員もよく御承知のところだと思います。

 そしてまた、政治団体と個人が違うのかということに関しましては、我々は、この最高裁にもありますように、企業、団体であれ、政治団体であれ、個人であれ、一定の自由を有するということを考えておりますので、その点からしても、そうした大きな区別はないであろうというふうに考えております。

 以上です。

青柳(仁)委員 ただいま山下委員から御発言のあった八幡製鉄所を基にした憲法の解釈、石破総理もおっしゃっていた件に関しましては、政治改革特別委員会や予算委員会等の中でも度々否定をされておりまして、この判決文というのは、企業・団体献金が持つ弊害、公共の福祉に抵触する弊害を指摘した上で、それらの措置は立法措置を行うべきだということが書かれておりますので、そういった一方的な憲法解釈は成り立たないと、私自身、日本維新の会としても考えますし、また、さきの政治改革特別委員会、衆議院の、理事会の中でも、内閣法制局からの答申として、明確に紙、文書の形でそれは否定されたところでありますので、その点をまず申し上げたいと思います。

 その上で、政治団体あるいは企業が献金を行えるかどうかということに関しましては、これはやはり、公共の福祉の観点でこれが適切かどうか、その形で考える必要があると思っております。

 そもそも、憲法が、企業・団体献金を考えるときには、表現の自由の中での政治的な見解あるいは行動の自由というようなものを認めているわけであって、これが寄附まで含まれるのかというところは疑義があるところであります。

 また、政治団体と企業とが異なるものであるということは一定理解するものの、政治団体であっても、例えば企業、団体から実際には政党に出される資金の仲介役になっているような場合というのは、これはやはり公共の福祉の観点から望ましくないということが考えられますので、そういった観点から、やはり、バランスの取れた議論を行っていくというふうに考えております。

 ちなみに、我が党といたしましては、先ほど橘法制局長からもお話ありましたとおり、衆議院の法制局とも議論をさせていただきながら、憲法上認められる範囲内で最も公共の福祉が満たせるような企業・団体献金の在り方というものを法案として今まとめております。是非、各党各会派の御議論、御理解をいただければと思っております。

 以上です。

浅野委員 これまでのそれぞれの御答弁の中で出てきました八幡製鉄所政治献金事件についての最高裁判決、そしてそれに対する解釈というのは、現時点でも賛否両論あります。

 この解釈について憲法審査会の中で議論することを我々は拒みませんけれども、一方で、紹介したいのは、熊谷組政治献金事件第一審判決というのがございまして、これはある種、熊谷組という企業が政治献金をしたことに対して、このような判決の趣旨を裁判所が言っています。

 会社が政党に対して政治資金を寄附することは、会社が有する経済力が個々の国民を圧倒的に凌駕するのみでなく、同じ産業界の会社が産業団体を結成して政治献金を寄附するときは、その影響力は個々の会社をもはるかに超えると考えているので、中段を略しますけれども、やはり、政治献金については抑制的であるべきである、しかしながら、会社による政治献金の寄附を具体的にどの限度で許容するかは、憲法の趣旨に反しない限り、一義的には立法に委ねられている、このような判決が出ております。

 ですので、先ほども出てまいりましたけれども、憲法論のみならず、政治資金規正法、公職選挙法の法律の中でもこの問題は議論されるべきものであると考えておりまして、我々としては、今、ほかの委員会でも審議がされております政治資金の問題については、あくまでも、与野党全ての会派の理解と協力が必要だという立場でありますけれども、初めに戻りますが、憲法審査会での議論については拒むものではございません。

 以上です。

福田(徹)委員 国民民主党の福田徹です。

 山花幹事の御意見に対して質問をさせてください。

 選挙困難にならないように、例えば災害時でも避難所で投票、オンライン投票、私も、その準備をすることはとても必要だと思います。

 一方で、ありとあらゆることには想定外があります。想定を超えた津波が来て大被害が起こったわけです。ですので、避難所での投票、オンライン投票、いわゆるそういう準備を整えつつも、それではクリアできない、想定外のことが起こったとき用に緊急事態条項が必要だと考えれば、立法事実があると思うのですが、山花幹事、御意見はいかがでしょうか。

山花委員 私は二つのことを申し上げていると思っているんですが、まずは、今言われるように、できる限り公職選挙法の方で対応するということが必要ではないかということです。そこまで当審査会で御議論があったということであれば、そうすべきということを、倫選特なりなんなりで検討してもらうということをやっていただいたらどうかと思いますけれども。

 そのことと併せて、もし想定外のという話になったときには、先ほど来申し上げておりますけれども、帝国議会における衆議院憲法改正委員会というところで、金森国務大臣が、そういうときは臨時会とか緊急集会でという答弁をしておりますので、現行憲法を作ったときはその前提でスタートしておりますから、そちらを活用すべきだということで申し上げているわけです。

枝野会長 予定した時間が経過をいたしました。

 これにて自由討議は終了いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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