衆議院

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第2号 令和7年3月27日(木曜日)

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令和七年三月二十七日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 枝野 幸男君

   幹事 上川 陽子君 幹事 寺田  稔君

   幹事 船田  元君 幹事 山下 貴司君

   幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君

   幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 浅野  哲君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      井野 俊郎君    大野敬太郎君

      小林 鷹之君    柴山 昌彦君

      新藤 義孝君    高市 早苗君

      葉梨 康弘君    平沢 勝栄君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    三谷 英弘君

      森  英介君    山口  壯君

      山田 賢司君    五十嵐えり君

      岡田  悟君    奥野総一郎君

      重徳 和彦君    階   猛君

      柴田 勝之君    堤 かなめ君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松尾 明弘君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      青柳 仁士君    阿部 圭史君

      和田有一朗君    平岩 征樹君

      福田  徹君    河西 宏一君

      浜地 雅一君    平林  晃君

      大石あきこ君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  吉田はるみ君     堤 かなめ君

同日

 辞任         補欠選任

  堤 かなめ君     吉田はるみ君

    ―――――――――――――

三月十四日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(田村貴昭君紹介)(第五一七号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(「参議院の緊急集会」の射程)


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     ――――◇―――――

枝野会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、参議院の緊急集会の射程について自由討議を行います。

 本日の議事について申し上げます。

 まず、幹事会の協議に基づき、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、自由討議を行うことといたします。

 では、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局橘幸信局長。

橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。

 本日も、枝野会長を始め幹事会の先生方の御指示により、冒頭の御報告をさせていただくことになりました。

 前回同様、枝野会長のおっしゃる因数分解の御趣旨に沿って、先生方の御議論の分岐点を的確に抽出した論点整理となるよう心がけまして、御報告申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、お手元に、衆議院憲法審査会事務局の皆さんが、衆議院の事務方として公平、客観的な観点から、かつ、これまでの本審査会での御議論を踏まえた実務的な観点から、学説等を整理した力作、衆憲資百二号の補訂版を配付させていただいております。百二号というのは、二〇〇〇年発足の衆議院憲法調査会、いわゆる中山調査会以来の資料の通し番号でございます。ちなみに、第一号は、日本国憲法の制定過程に関する資料でございました。併せて、本日の御報告用にパワポスライドの資料も配付させていただいております。本日は、こちらに基づいて御報告をさせていただきたいと存じます。

 それでは、早速ですが、表紙と目次をおめくりいただきまして、資料一ページを御覧ください。

 まず、憲法五十四条の制定経緯について御報告申し上げます。

 GHQ草案の提示を受けて日本側が用意した三月二日案では、緊急事態における措置として、明治憲法八条の緊急勅令や七十条の緊急財政処分に倣った緊急閣令、今でいえば緊急政令の制度が七十六条に定められておりました。すなわち、衆議院の解散その他の事由により国会を召集することあたわざる場合において特に緊急の必要あるときは、法律又は予算に代わるべき閣令を制定することを得といった条文です。

 これに対して、GHQは、そのような事態への対応については事前に法律で授権しておけばよい、どうしても駄目な場合には内閣のエマージェンシーパワー、すなわち、不文の緊急措置権限で対処すればよいとして、七十六条を全文削除いたしました。

 これに対して、日本側は一貫して、不測の災害等に備える必要があること、エマージェンシーパワーのような不文の超憲法的な運用はかえって弊害が大きいこと、国会召集が不能な場合にはどうしても内閣による対応が必要なことを主張いたしましたが、GHQはあくまでも国会による対応を主張して、最終的に、参議院による国会権限の代行、すなわち、参議院の緊急集会で対処することとされたのでした。

 資料二ページを御覧ください。

 このことについて、当時の憲法担当大臣金森徳次郎は、憲法制定議会で次のように説明しております。緊急勅令は調法だが、国民の意思を無視できる制度とも言える、民主政治の徹底と国民の権利保護からすれば、非常の場合の暫定処置は、やはり、行政権ではなく国会が行うべきだ、衆議院は解散後七十日間は開けない状況にあるが、参議院は万年議会だから、衆議院が解散され、議会を開くことができない特殊な場合においては、国民代表である参議院の緊急集会という方法で対応することとしたといった趣旨の答弁です。

 以上の制定経緯からは、次のようなことが指摘できるかと思います。

 まず、災害等の緊急事態においては、内閣ではなく国会で対応するという国会中心主義の発想が明確に意識されていたこと、その際、解散後七十日程度不在となる衆議院に代わり、万年議会たる参議院に緊急事態への暫定処置を任せる方策を選択したこと、この二つでございます。

 次に、資料三ページを御覧ください。

 以上のような経緯で制定された憲法五十四条と、これに関連する国会法の条文を掲げております。

 まず、憲法五十四条第一項は、「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。」として、衆議院解散後の速やかなる総選挙の実施と速やかなる特別会の召集を規定し、衆議院不在期間ができるだけ短くなるようにしています。

 これを受けて、第二項では、まず、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」として、いわゆる両院同時活動の原則、すなわち、衆議院だけが活動する、あるいは参議院だけが活動するというのではなく、あくまでも両院そろって活動するという二院制に由来する原則を定めています。

 その上で、その例外として、「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」としているのでございます。

 このただし書の文章上のポイントは、緊急集会を求めることができるのは内閣であり、かつ、国に緊急の必要があるときに限られるということです。この緊急性の要件はかなり幅のある概念ですが、集会要求権が内閣にあることから、その判断は第一次的には内閣に委ねられていることになります。

 このように、緊急性の判断権と集会要求権が共に内閣にあることに関連するのが、その下に掲げている現行国会法の条文です。すなわち、九十九条で、緊急集会を求める際には、内閣は、集会の期日だけではなく、その審議対象となる案件を示すことが必要とされ、百一条では、この内閣が示した案件に関連のあるものでなければ、議員側から議案の発議はできないこと、さらに、百二条の二では、この緊急の案件が処理されれば、緊急集会はそのミッションを完了したとして閉会することが定められているということです。

 最後に、第三項では、緊急集会で取られた措置は臨時のものであって、次の国会で衆議院の同意が得られなければ失効するとの効力の暫定性が定められております。

 以上を踏まえて、参議院の緊急集会の射程に関する主な論点について、その議論の分かれ目を因数分解しながら、御報告をしてまいりたいと思います。

 資料四ページを御覧ください。

 まず、緊急集会が開催される場面については、五十四条一項、二項の条文上、解散時を想定した規定であることを前提とした上で、任期満了後の総選挙の場合に、一時的に衆議院は不在となるわけですが、このときに緊急集会は開催できるのかできないのかが議論されてまいりました。

 これについては、衆議院解散と任期満了という原因に違いがあるとはいえ、現に衆議院議員が存在せず、国会が召集できないという状況においては何らの径庭はない、すなわち、違いはないことから、直接適用はできなくても、類推適用は可能であり、緊急集会の開催はできるとする説が唱えられております。

 これに対して、類推適用を否定するものではないが、条文上は解散時のみと読むのが自然だから、むしろ任期満了時も開催できるように明文の規定を設けるべきとの意見も述べられております。

 次に、資料五ページを御覧ください。

 期間の問題については、一方では、先ほど見ていただきました憲法五十四条一項、二項の条文の連関構造、他方では、緊急事態の法理などを念頭に、幾つかの解釈が唱えられております。本日の議題に関する最大の論点と言ってもいいテーマかと存じます。

 そこで、この論点に関する学説分布について、一部に若干の誤解が見られるようですので、正確に御理解いただくために、総選挙実施が見通せる場合と、それが見通せない場合とに分けて、整理して御報告いたしたいと存じます。

 まず、これまでの多くの学説は、意識的か無意識的かは別として、総選挙実施が見通せる場合を前提にして、緊急集会の活動期間について論じてきたように思われます。資料五ページの(a)の欄や、衆憲資百二号の二十ページから二十二ページに掲げた諸学説です。

 文字どおり、五十四条一項、二項の連関構造を前提にして、緊急集会の集会要求期間、活動期間は七十日とか四十日に限定されると説かれてまいりました。これがまずベースラインとなる解釈かと存じます。

 これに対して、まさしく本審査会で先生方が御議論されてきたのが、選挙困難事態や議員任期の延長特例に関する御議論でした。これを契機として、憲法五十四条一項の定める期間内に総選挙実施がとても見通せないような場合においても、従来の学説が言うような期間限定がそのまま及ぶと考えるべきなのかどうかが論じられるようになってまいったと理解しております。これが、資料五ページの(b)の欄や、衆憲資百二号の二十二ページから二十七ページに詳細に掲げた諸学説です。

 すなわち、一方には、あくまでも、一つ、五十四条一項、二項の連関構造に照らして、文理上、期間限定を想定した制度であることは明確であることから、総選挙実施が見通せない場合であっても、当然に期間限定は及ぶ、二つ、そもそも緊急集会は両院同時活動の原則に現れた二院制の例外であり、例外規定は厳格に解釈されるべきとの法解釈の一般ルールに照らしても、そのように解釈すべきといった理由から、限定説が唱えられております。

 他方では、そもそも五十四条一項の本来的な趣旨は現政権の居座り防止にあること、また、五十四条二項には緊急集会の活動期間を直接に限定する文言はないこと、さらに、非常時においてはまず生き延びることが大事であり、そのためにはルールは可能な限りで守るしかないとする緊急事態の法理に鑑みれば、活動期間の限定はないと解すべきとの無限定説も唱えられております。

 なお、無限定説の代表的な論者でいらっしゃる早稲田大学の長谷部恭男教授は、次のようにもおっしゃっています。すなわち、総選挙実施が見通せるような場合には、条文の姿形を前提とすれば、原則として期間限定はあるのだろう、しかし、そのようなことは言っていられない場合には、期間限定はないということになるはずである、その結果、全体として煎じ詰めれば、期間限定はないということになる、このようなロジックです。条文の解釈とはどのようなものであるのかを示唆する、長谷部先生一流の深い洞察に基づいた御発言かと拝察いたします。

 次に、資料六ページを御覧ください。

 緊急集会において行使できる権限の範囲についてです。これを直接に規定する明文規定はございませんが、緊急集会は、二院制の例外として、緊急事態における国会代行機関として設けられたものですから、議論の出発点としては、全ての国会権限を代行し得ることがベースラインになるかと思われます。

 その上で、一つ、この国会の権限の中に衆議院のみの権限は入るのか、二つ、衆議院優越といった日本国憲法が採用する統治構造から限界はないのか、三つ、国に緊急の必要があるときという緊急性の要件から類型的に外れる権限はないのかといった観点から、その行使できる権限の限界が議論されてきたところです。

 この点については、まず、衆議院のみの権限とされる内閣不信任決議権の行使はできないこと、緊急性の観点などから憲法改正の発議はできないこと、そもそも選挙ができなければ国民投票だってできないわけですけれども、この二点についてはほぼ異論のないところかと思われます。

 しかし、その他の権限については意見が分かれています。一方では、強度の衆議院優越が認められている首班指名のほか、緊急性の観点などにも鑑みて、条約締結権や年間を通した本予算の議決は不可と解すべきとする限定説が唱えられております。他方では、暫定予算に限らず、本予算の議決や条約締結権にも特段の制約はないとか、首班指名についても認めざるを得ない場合もあり得るとする広範説も唱えられているところです。

 ちなみに、資料の末尾八ページに掲載している過去二回の実例を見ていただくと、そこで審議対象となった案件は、国会同意人事と、暫定予算及び日切れ法案の議決でございました。

 次に、資料七ページを御覧ください。

 案件の限定とは、国会法の条文のところでも言及した、内閣が示した案件に緊急集会の審議対象が限定されるかどうかという論点です。これについては、二つのレベルに分けて議論を整理することができるように思われます。

 一つは、このような審議対象案件の限定は憲法上の要請なのかどうかという点です。これについては、憲法上の要請であって、国会法の規定はそれを具体化しただけのものであるとする憲法制限説と、憲法上の要請ではなくて国会法レベルで政策決定した制限であって、国会法改正によって拡大可能という国会法自制説とがございます。

 もう一つは、仮に憲法制限説を取った場合でも、その運用の仕方によって案件限定をかなりの程度緩やかなものにすることができるのではないかという議論です。例えば、内閣が示す案件を包括的なものとすることや、内閣が示した案件との関連性を緩やかに解することなどです。ただし、このような運用による拡大については、そもそも、憲法制限説を取る以上、憲法が審議対象案件を制限している趣旨を没却しない程度にとどめることが必要との指摘もございます。

 最後に、憲法五十四条三項に定める暫定性については、学説では、衆議院不同意のときの効力について若干の議論が見られますが、本審査会におけるこれまでの先生方の御議論では、この論点についての大きな意見の対立はないように思われます。

 以上、参議院の緊急集会の射程について、本審査会におけるこれまでの議論の概要を、やや分析的な視点から、私見を交えずに御報告申し上げました。

 御清聴ありがとうございました。

枝野会長 ありがとうございました。

 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

枝野会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 発言の中には、事実確認等のため、衆議院法制局当局に対する質疑を含めても結構です。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元さん。

船田委員 自由民主党の船田元でございます。

 自由民主党を代表して、参議院の緊急集会の射程について意見を述べたいと思います。

 まず最初に、本日のテーマとなっている参議院の緊急集会の位置づけについてであります。

 憲法四十二条で定められておりますが、日本国憲法は二院制を大原則としています。憲法五十四条に規定された参議院の緊急集会は、参議院の重要な権能であることは間違いはありませんが、この大原則との関係でいえば、両院同時活動の原則の例外に当たるものであり、あくまで臨時的、暫定的な対応を定めた制度だと思います。

 この参議院の緊急集会が不測の災害への対応といった例外的な場合を想定して設けられたものであることは、憲法制定過程からも明らかであります。その意味においては、憲法五十四条は国会機能維持のための緊急事態条項とも言い得るかと思います。

 すなわち、当時のGHQとの交渉において、日本側は、不測の災害により緊急の立法や財政措置を講ずる必要が生じた場合などを念頭に、衆議院解散時における緊急措置を憲法上規定すべきであると一貫して主張してきたのに対しまして、GHQ側がなかなかその必要性を認めず、参議院の国会代行機能というものを提案するなどして、最終的には本規定が設けられたということであります。

 このことは、昭和二十一年の帝国議会における審議において、金森徳次郎憲法改正担当大臣が、民主政治を徹底する見地として、衆議院が解散され、急に議会を開くことができない特殊の場合において、参議院の緊急集会という方法をもって、予測すべからざる緊急の事態に対して暫定の措置を取り得る方途を規定した、そういう旨の答弁をしたことにも表れています。

 以上のような参議院の緊急集会の位置づけを踏まえまして、参議院の緊急集会の射程に関する主な論点について意見を述べます。

 まず、参議院の緊急集会が開催可能な場面についてであります。

 現行憲法の条文上は衆議院の解散時に限られておりますが、衆議院議員の任期満了の場合も、衆議院が不在になるという意味では衆議院解散の場合と同様であることから、類推適用が可能であるという考え方が有力であると承知をしております。当然、これを否定するものではありませんが、異なる解釈の余地がないとは言えないことから、任期満了時にも参議院の緊急集会の開催が認められる旨を憲法に明記すべきではないかと思っています。

 次に、参議院の緊急集会の期間についてであります。

 憲法五十四条は、一項において、衆議院解散後四十日以内の総選挙の実施と、総選挙から三十日以内の特別会の召集を規定しており、それに続く第二項において、衆議院が解散された場合に、国に緊急の必要があると認めたときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができることとしています。

 このように、憲法五十四条二項は同条一項を受けた規定である、いわゆる連関構造でありますが、そういう規定であることは文理上当然であり、参議院の緊急集会の活動期間は最大でも七十日程度と解釈するのが素直な考え方です。そして、このことは、近年、憲法審査会における議論を契機として意識的に議論されるようになってきました、総選挙の実施が見通せない場合についても妥当するものと考えられます。

 そもそも、参議院の緊急集会は二院制の例外であり、安易に解釈を拡大することは避けるべきです。したがって、衆議院が存在せず、参議院の緊急集会で対応する期間が七十日に限られないとしても、これを大きく超えることは憲法の想定を超えることになります。実定憲法が想定していない事態に対処するために解釈で何らかの結論を導き出そうとする姿勢や、こうした事態に対処するための制度設計を議論していくことは、憲法改正発議権を与えられている国会議員の責務だと考えています。

 次に、参議院の緊急集会の権限や案件についてであります。

 まず、権限については、参議院の緊急集会が国会の代行機関であることから、原則として国会の権能の全てに及ぶということは理解いたしますが、その上で、国に緊急の必要があるときとされていることから、一定の限界があることも当然認めなければならないと思います。具体的には、憲法改正の発議や内閣不信任案決議はもちろんのこと、内閣総理大臣の指名、条約締結の承認、本予算の議決についても、一般的には緊急性の要件を満たす場合は少ないのではないかと考えます。

 また、案件につきましては、参議院の緊急集会が、憲法の条文上、内閣の求めを前提としていることから、議員が発議できる議案等においては、内閣が示した案件に関連のあるものに限定されるのではないかというふうに思っております。

 以上、参議院の緊急集会の射程に関する主な論点について意見を述べましたが、これは、昨年の夏、自民党の憲法改正実現本部の下に設置されましたワーキンググループにおいて、衆参の温度差を解消すべく、六回ほどにわたりまして真摯に議論を行った結果、収れんした見解を踏まえたものであります。

 前回の選挙困難事態の立法事実、そして今回の参議院の緊急集会の射程ということで、二回にわたり、選挙困難事態における国会機能維持という大きなテーマについて議論を深めてまいりました。これを踏まえまして、各党内における衆参議員の間の意見の相違を解消していただくとともに、国会機能の維持のための具体的な制度設計についての議論を積極的に行い、各党各会派の共通認識を形成していくべきである、このことを御提案して、発言を終わります。

枝野会長 次に、武正公一さん。

武正委員 立憲民主党の武正公一です。

 前回、選挙困難事態に関する立法事実をテーマとしました。立憲民主党は、有権者の投票する権利の尊重並びに選ばれる側の居座りを許さないという点から臨みました。本日のテーマ、参議院の緊急集会の射程にも関係しますので、冒頭、選挙困難事態にも触れます。

 北海道南西沖地震に際しては、壊滅状態の奥尻島で選挙は行われました。東日本大震災のときに、福島県内の喜多方市議選、矢祭町長選、古殿町長選、玉川村長選、北塩原村議選、鮫川村議選では選挙が実施されました。昨年九月の石川県豪雨災害直後、被災地石川三区も衆議院選挙が行われました。投票率は輪島市で一〇%下がったものの、我が党の近藤和也衆議院議員など、選挙を経て、復旧復興のために引き続き取り組んだことも事実です。

 前回もこの場で申し上げたように、被災地の復旧復興のためにも、できるだけ早く代表者を選ぶ必要があると考えます。選挙実施が困難な場合は、国政選挙でも繰延べ投票で対応すべきと考えます。そして、国政選挙などでは一体性を憲法も要請はしていないこと、今、仮に東日本大震災と同じ規模の災害が衆議院議員選挙前に起きても、八割以上の衆議院議員を選ぶことができることから、選挙困難時の立法事実とするのは難しいと、前回、立憲民主党議員より述べました。取り組むべきは、いかに選挙困難時期にあっても選挙ができる体制を組むかです。

 平時においては、投票環境の整備が急務の課題です。選挙困難時を想定した有権者名簿など選挙データのバックアップ体制、インターネット投票、郵便投票の検討、拡充です。また、期日前投票の拡充、共通投票所の実施など、できることは今でもあるはずです。特に、投票日に指定された投票所以外に誰でも投票できる共通投票所は、令和六年衆院選時点で十五市十六町六村の二百二十六か所の設置にとどまっています。

 災害時に選挙区を離れて投票所を設けるためにも、二重投票を防ぐ仕組みをもって各自治体が共通投票所を設置することは有効ではないでしょうか。ちなみに、今、横浜市では、各区内の投票所全てを共通投票所にして、各投票所独自の有権者名簿を投票所間で共通化して無線で確認を行い、二重投票を防ぐシステムづくりが進められていると聞いています。

 その上で、憲法五十四条に言う緊急集会について述べます。

 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成するとされていて、いわゆる二院制を採用しています。元々、一九四六年二月十三日にGHQが日本政府に対して提示した総司令部案では一院制とされていました。これに対して、日本側が二院制の必要性を認め、現在の憲法の二院制になったという経緯があります。

 その二院制の機能や役割分担のレベルを超えて、制度として全く独自なものとして存在しているのが参議院の緊急集会制度です。これは、緊急事態に際して、大日本帝国憲法時代に天皇の緊急勅令や緊急財政処分で対処するとされていたものを、国会中心主義の貫徹という趣旨から、参議院の緊急集会をもって対応するとしたものです。

 金森国務大臣が、制憲議会で、戦前の緊急政令を認めないためにも、参議院の緊急集会を設けたと言っています。大日本帝国憲法下、一九四一年二月に法律をして一九四二年四月まで一年間選挙を延期したこと、そのちょうど一九四一年十二月には日米開戦に踏み切ってしまった反省にも立っていると考えます。

 諸外国の憲法には緊急事態に関する規定があるのに日本国憲法にはないという趣旨の発言もあったかと思いますが、各種文献でもこの緊急集会の制度は世界に類例を見ないものと評価されていることからも分かるように、他の国々とは違う形で制度設計していることから、他の国々と同様の規定を探せば日本国憲法に規定がないというのは当然のことで、緊急事態に際して対処すべき規定があるかという観点から検討すれば、緊急集会の条文がこれに当たるというのは明らかだと考えられます。先人たちは既に想定外の事態の規定を設けていたというわけです。

 憲法五十四条については、その趣旨に基づいて、参議院の緊急集会を適切に開催していくべきと考えます。特に、緊急集会七十日限定説を取らないということを前回も申し述べております。

 ところで、衆議院、参議院は、相互に独立して審議、議決を行う機関ですから、他の機関や他の院の干渉を排して行動できる、いわゆる自律性を持っています。

 所掌事項という言葉が適切かどうか分かりませんが、参議院の緊急集会というのは参議院にのみ認められた独自の機能であると言えます。したがって、参議院が緊急集会で対応できると判断する可能性のある事項について、衆議院側で緊急集会では対応できないという判断をすべきでないのはもちろんのこと、そもそも、参議院の緊急集会では対応できないことを前提として議論を進めることは、参議院の自律に対する干渉という評価もあり得るところであります。衆議院側として慎むのが二院制のエチケットであると考えます。仮に、参議院側が緊急集会では対応が困難であるという院の意思が示されることがあったとして、その時点で初めて衆議院側の議論がスタートされるべきと考えます。

 さらに、緊急集会の機能などについて、参議院議長の下、参議院改革協議会では、昨年六月の選挙制度専門委員会の答申を受けて、参議院の在り方論の柱項目の一つとして、緊急集会の機能の充実強化について今後具体的な議論を進めていくと伺っています。

 今後、衆議院憲法審査会で任期延長改憲の議論を行うことが憲法論的のみならず政治的にも妥当なのか、各党各会派で参議院側ともよく議論していただくことを求めて、私の意見を終わります。

枝野会長 次に、阿部圭史さん。

阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史です。

 先ほど橘法制局長の御説明の中で非常に重要な点がございまして、制定経緯だと思っております。

 明治維新以来、我が国は、フランスやドイツで採用されているような大陸法的な考え方を採用しています。一方、大東亜戦争後の占領軍であった米国は英米法を採用する国です。大陸法と英米法は根本的に異なります。

 戦後の憲法改正議論の中で、大陸法的な考え方を採用する我が国は、当初、GHQに提出した憲法草案第七十六条には、戦前の旧憲法と同様に、緊急時には立法や予算の権限を国会から内閣に移すことを明記することとしておりました。一方、英米法的考え方を採用する米国、GHQは、緊急事態における国家の対応権限については、明文上の規定がなくとも不文の原理として認められるとの見解で対処するよう我が国政府に促したことで、結果として、憲法草案第七十六条の日本国憲法への導入は見送られたという経緯がございます。

 しかし、当時の我が国政府は、自然災害が多い国情を考慮すると、不測の災害に対する措置は必要であるとGHQに訴え、ある意味妥協の産物として、日本国憲法では五十四条二項に参議院の緊急集会が定められたわけです。制定経緯からすれば、五十四条二項の定める「国に緊急の必要があるとき」とは、自然災害について述べていることが分かります。

 先ほどの橘法制局長の説明の中で、参議院の緊急集会の射程に関する論点が五つございました。これらについては、これまで多くの時間を割いて議論をされてきたものであり、論点は出尽くしているというふうにも考えられます。例えば、国会議員の任期延長は合意形成に最も近づいているテーマだと思います。その議論をいつまで繰り返すのでしょうか。前回の本審査会で我が党の馬場伸幸衆議院議員が述べたとおり、壊れたテープレコーダーのごとく議論を繰り返す意義は見出せないというのが実際のところであります。

 その上で、私から改めて二点述べたいと思います。

 一つ目。日本国憲法の制定経緯を見れば、参議院の緊急集会はあくまで自然災害しか想定していないことは明白だと思います。

 一方、我が国が直面する脅威は自然災害だけではありません。

 先日の三月二十日には、オウム真理教による地下鉄サリン事件から三十年を迎えました。将来、このような、首都東京の国家中枢で大規模テロがないとは限りません。

 武力攻撃事態については、例えば台湾有事について、台湾国防部は、中国人民解放軍による攻撃を想定した台湾軍の軍事演習、漢光演習について、立法院に説明するために今月十八日に出した文書の中で、中国による侵略の可能性がある年を二〇二七年であると言及したという報道もございます。

 感染症の蔓延については、感染症危機管理に私自身長年携わってきた人間として申し上げれば、COVID―19よりも病原性及び感染性がはるかに高い感染症が蔓延し、社会機能が停止することはあり得ます。

 このような状況に鑑み、二〇二三年六月に日本維新の会と国民民主党、有志の会の三会派がまとめた、国会議員の任期延長その他の国会機能維持に関する緊急事態条項の改正条文案では、緊急事態として五類型を定めています。武力攻撃、テロ・内乱、自然災害、感染症の蔓延、これらに匹敵する緊急事態の五つです。方向性は、自民、公明両党と大きな違いはございません。自然災害しか想定されていない現憲法の参議院の緊急集会では国民を守る体制として極めて不十分であり、緊急事態条項の制定が早急に求められます。

 二つ目。参議院の緊急集会とは、そもそも参議院が開会できることの前提に立った議論です。

 そして、我々三会派がまとめた緊急事態条項の改正条文案は、現在の五十四条二項の条文が衆議院の解散時のみ明記し、衆議院の任期満了時については定めがないことに鑑み、任期満了時における開催の明記も行っています。要するに、三会派の条文案も、あくまで憲法の定める参議院という統治機構が機能するという前提に立っています。すなわち、我々の緊急事態条項は立憲主義にのっとったものです。立憲主義とは、憲法の上に位置するものはなしということです。

 ここで改めて、最近の憲法学に即した緊急事態に類する概念、文言の整理を強調したいと思います。

 まずは、緊急事態と全く異なる概念として非常事態というものがあります。この緊急事態と非常事態に相当する概念が、緊急事態条項と国家緊急権であります。すなわち、緊急事態条項と国家緊急権は全く異なる概念であると言えます。

 緊急事態に用いられる緊急事態条項は、あくまで平時の統治機構の下でそれが行われ、立憲的統制が十分に機能するものです。その上で、平時の法制度、法運用とは異なる対応を必要とする事態のことであります。

 反対に、非常事態に用いられる国家緊急権は、平時の統治機構をもってしては対処できない程度の事態であって、憲法所定の機関、例えば参議院が正常に機能し得ないときにどのように対処すべきかというものであります。要するに、国家緊急権とは、立憲的統制を離れ、憲法秩序を停止するものです。具体的な事例として、戦争で国の中枢が爆撃され閣僚や議員がほとんど死んでしまうとか、散り散りになって連絡も取れないという事態のことでございます。

 我々が議論している緊急事態条項とは、まさに憲法秩序の維持を目的として行われるものであります。もちろん、我々国会は、最悪の事態を想定し、最終的には緊急事態を超えて非常事態についても議論せねばならない責務を負っているとも思います。しかしながら、これまで幾多の議論を重ねてきた緊急事態と緊急条項については既に論点が出尽くしております。

 我々は、起草委員会を設置し、三会派の条文案を土台に改正原案の作成に入るべきだと訴えています。議論を繰り返しているだけでは、国民から負託を受けた国会として何ら社会に対して価値を具現化していない状況であるため、国民に対して極めて不誠実だと言えるのではないでしょうか。是非とも、起草委員会の設置に向けて委員の皆様のお力添えをお願い申し上げます。起草委員会を見据えたネクストステップにつきましても、是非とも自民党と公明党についても御意見を賜りたいと思っております。

 終わります。

枝野会長 次に、浅野哲さん。

浅野委員 国民民主党の浅野哲です。

 本日の審査対象は、参議院の緊急集会の射程についてであります。

 私は、参議院の緊急集会について、開催できる期間、権限や案件の範囲、開催要件の三点について意見を申し述べます。

 まず、参議院の緊急集会は、憲法五十四条の一項と二項において、内閣が衆議院を解散してから特別国会を召集するまでの間に国に緊急の必要が生じた場合であり、かつ、内閣からの求めに応じて開催されることが定められています。

 そもそも、憲法五十三条の規定に基づけば、衆参両院の議員が存在する状況においては、内閣は、参議院の緊急集会ではなく、臨時会を召集しなければなりません。

 したがって、参議院の緊急集会を開催できる期間についての実体的要件は衆議院が解散されている状態であることと解することができ、その上で、憲法五十四条は解散の日から四十日以内に総選挙を行うことを求めていますから、参議院の緊急集会が開催できる期間は、内閣が衆議院を解散した日から四十日以内とすることが妥当だと考えています。

 一方で、大規模災害や武力衝突などが発生した場合など、総選挙の実施が一定期間見通せない場合については、緊急集会を開催できる期間を解散後七十日以内とする限定説と、期間は縛られないとする無限定説がございます。

 これについて、私たちは限定説を支持する立場に立っております。

 令和五年五月十八日の当審査会におきまして、我が党の玉木雄一郎委員からの質問に応じた長谷部参考人は、フランスの法学者モーリス・オーリウやイングランドのバッコーク判決などを引用しながら、無限定説の立場で、緊急事態の法理の正当性を説かれました。

 しかし、私たちは、緊急事態を理由にして準則の解釈を開いてしまうことは、立憲主義の観点から、できる限り避けるべきと考えます。

 さらに、憲法制定当時、参議院の緊急集会の開催が想定される期間についての答弁記録も残っております。

 昭和二十一年九月二十日の貴族院帝国憲法改正案特別委員会におきまして、当時大臣だった金森徳次郎は、つまり総選挙を行いますまでには三十日ないし四十日が要りましょう、また、その後始末をして召集いたしますために三十日くらい要るとすれば、およそ七十日、国会のないことを予想しなければなりませんと発言しています。

 少なくとも憲法制定当時から、参議院の緊急集会が開催され得る期間は、衆議院を解散してから特別国会が召集されるまでの七十日間程度は想定されていたと言えます。逆に、これを超えるような期間にわたって衆議院が不在となることは現行憲法の条文上明確でなく、改めて、選挙困難事態を規定する必要性があると考えています。

 次に、権限や案件の範囲について意見を述べます。

 憲法五十四条三項は、参議院の緊急集会により取られた措置の臨時性、暫定性を明らかにしています。衆議院の同意がもし得られなければその措置は失効するものであることを考えれば、その措置が臨時的、暫定的なものであっては意味を成さないようなものは、緊急集会で取られる措置の対象とすべきではありません。例えば、憲法改正発議や内閣不信任決議、内閣総理大臣の指名、本予算の議決、また他国との条約締結などは、緊急集会で取り扱う案件としては適切ではなく、二院制の下で行われるべきと考えています。

 最後に、緊急集会の開催要件についてであります。

 憲法五十四条では、先ほど来申し上げておりますが、衆議院が解散され、かつ、国に緊急の必要があるときと、緊急集会の開催要件を限定しています。

 一方、任期満了日の前後で大規模災害や武力攻撃など不測の事態が起こることも意識して、任期満了の直前であっても、衆議院を解散し、緊急集会を開催できる状況にしておくことなどの方策がこれまで取られてきた、考えられてきたと認識しています。また、任期満了前に大規模災害等の選挙困難事態が発生した場合は、五十四条を類推適用し緊急集会を開催することは可能とする意見も多数存在します。

 ただし、こうした理屈の下では、時の総理大臣による解散権の行使が必要以上に容易になったり、類推適用とはいえ、憲法に明記されている内容と異なる理由での緊急集会を容認し続けることになります。

 本来は、衆議院の解散と任期満了という任期の終了原因に違いがあるとはいえ、現に衆議院議員が存在しない状況、あるいは国会に召集されるべき議員が現存しないという点においては、何ら違いは認められないと考えます。新たな議員が選出されない原因が政権の意思に基づくものではなく大規模災害や武力攻撃などの不測の事態である場合には緊急集会を開催できることを、条文上も明確にしておくべきと考えます。

 なお、公職選挙法三十一条では、衆議院任期満了日と国会閉会日が近接している場合に、任期満了後の総選挙実施も許容されています。制度上、衆議院議員が不在となる場合が生み出され得る状況は、立法的な手当ての余地があると考えます。

 最高法規である憲法と公職選挙法、そして参議院の緊急集会を定めた国会法の関係性について検討の余地があることに付言し、私の発言を終わります。

枝野会長 次に、浜地雅一さん。

浜地委員 公明党の浜地雅一です。

 本日のテーマでございます参議院の緊急集会につきましては、当衆議院の憲法審査会では何度も議論をされてきました。ただ一方で、緊急集会の主体となります参議院の憲法審査会では、このテーマについて、衆議院側ほど詳細な議論はなされておりません。

 我が党でも先日憲法調査会を開催をしましたが、参議院側の議論を深めるべきとの意見が出ております。各党におきましても、参議院の憲法審査会でこの緊急集会の射程について議論を深めるよう働きかけていくことが必要と感じております。

 まずこの点申し上げました上で、緊急集会の射程について様々述べたいと思います。

 先ほど、橘法制局長からは、現憲法の制定過程におきまして、緊急政令、緊急財政処分に代えて徹底した国会中心主義を取ることになった、そのような報告がございました。まさに国会中心主義を取ったという経緯からしましても、選挙困難事態に陥った場合において国会機能の維持をどう図るのか、この議論というのは大変大事なものであるというふうに思っております。

 一方で、憲法は二院制を大原則とし、かつ、衆参両院の同時活動の原則を定めております。したがいまして、国会中心主義といいましても、二院が同時に活動することが憲法の要請する本来の姿であります。二院制の例外に当たります参議院の緊急集会は、やはり、衆議院が存在しない場合の、国会の代行機関として認められた例外的かつ暫定的な制度であると考えております。

 したがいまして、様々な論点についても、例外規定であると捉えた上で、厳格に解釈していく姿勢が大事であろうと思っております。

 その上で、まず、緊急集会の活動期間はどの程度と考えるべきか。五十四条一項、二項の条文の構造からしましても、七十日程度と考えるのが自然であり、また妥当であります。

 この点、総選挙の実施が見通せない場合には、緊急集会の活動期間を五十四条の文言にとらわれて考えるべきではない、すなわち、五十四条の趣旨は現政権の居座りを防止することであるので、選挙ができないときにはこの趣旨が当てはまらないという主張だと思いますけれども、では、際限なく緊急集会は開催できるのでしょうか。

 二院制の例外である以上は、やはり一定の限界はあろうかと思いますが、これに対する明快な見解は述べられておりません。選挙困難事態における緊急集会の活動期間についても、七十日間を大きく超えても許容され得るという明確な根拠がございません。やはり、明確な根拠がない以上、五十四条に示されました明文上の根拠を基に七十日間と考えることが妥当であると思っております。

 次に、緊急集会で行える事項、範囲についてであります。

 緊急集会を国会機能の代行と捉えたとしても、やはり、二院制又は衆議院の優越、五十四条の要件の一つでございます緊急性の要件から、その権能には一定の制限はあります。

 まず、内閣不信任はそもそも衆議院にのみ与えられた権能でございますし、また憲法改正も、緊急性の要件の観点から、その発議を参議院の緊急集会で行うことはできないのは明白でございます。さらに、衆議院の優越の観点から、本予算の先議権また議決権、また内閣総理大臣の指名も行うことはできないというふうに考えます。

 確かに、過去に行われました緊急集会では暫定予算も審議をされました。暫定予算が可能なら本予算も認められるのかという疑問は湧いてまいります。

 ただし、このときは、三月二日に本予算の予算案が衆議院を通過し、その後、参議院に予算審議が移った後の三月の十四日に衆議院が解散され、予算が不成立となりました。そのため、二か月間の暫定予算として、緊急集会で三日間暫定予算が審議をされたわけであります。すなわち、本予算については、衆議院の本予算の先議権には抵触しない形でこのときの緊急集会は開かれたということであります。

 したがいまして、暫定予算を緊急集会で審議した過去の事例をもって本予算の場合も緊急集会で案件とするということにはならないというふうに私は思っております。

 やはり、憲法上の要請でございます衆議院の優越や五十四条の緊急性の要件を超えるような案件を内閣が緊急集会に委ねることには一定の限界があろうかと思います。

 さらに、五十四条三項は、参議院の緊急集会で議決したものに関しまして、その後行われた総選挙後に召集された国会開会後十日以内に衆議院の同意を要件としております。十日間で緊急集会で議決した案件の当否を衆議院側が判断できる内容の案件であることが前提となります。

 通常の本予算を十日程度で果たして審議することができるのでしょうか。今国会でも、衆議院は、当初予算、本予算の審議に九十二時間を割いております。このことからも、やはり、本予算のような審議に一定の時間を要する案件まで緊急集会で行うことを憲法は予定していないというふうに思っております。

 では次に、国会法九十九条、百一条は、緊急集会で扱う案件を内閣が示した案件に限ると書いてございますけれども、これを、国会法を改正すれば、各議員は内閣が示した案件以外にも発議や質疑ができるのかという論点もございます。

 これは以前、当委員会で私も発言をさせていただきましたけれども、国会法を改正をし、緊急集会は内閣が示した案件に関連する事項に限るというふうに改正した経緯におきまして、当時の内閣憲法調査会第二委員会で海保参議院議事部長は、緊急集会を求める手続、緊急集会における議案の発議等の議員の権能についての規定を設け、はっきりと条理上緊急集会の本質と相入れないものを排除するというふうに書いております。

 やはり、この発言からも、参議院の緊急集会には一定の限界があるものだということを示唆したものであろうと思っております。

 時間になりましたのでここで発言をやめますが、最後に、冒頭申し上げましたとおり、この緊急集会におきましては、その主体となる参議院側の議論が深められることを期待をしまして、発言といたします。

 少々超過いたしました。大変申し訳ございません。失礼します。

枝野会長 次に、大石あきこさん。

大石委員 れいわ新選組の大石あきこです。

 直接的にこのテーマに入る前に、本日の衆議院憲法審査会が国会の外から大注目を浴びていますよね、緊急事態条項を強行採決するんじゃないか、そういううわさで注目を浴びていて、これは枝野会長が御自身で全く事実無根だとX投稿しないといけないぐらい注目をされている。

 でも、この国民のうわさというのは、あながち間違いとは言えないんじゃないでしょうか。だって、国民民主党の玉木代表が去年の四月にこう言っているんですよ。あけすけに種明かししているんですね。

 玉木さんのX投稿を読み上げます。四月二十五日の分。「自民党に二つお願いがある。一つは、緊急事態条項という呼び名を改め、「緊急時における国会機能維持のための憲法改正」と呼ぶようにしてもらいたい。私たちも気をつける。まずは、内閣の権能を強化する改憲ではなく、国会の機能を強化する改憲を優先してはどうか。その意味で「緊急政令」は最初の改憲項目からは外すことを提案する。」。

 ここで国民民主党の浅野幹事に質問したいんですけれども、この玉木さんの見解は今も国民民主党の見解だでよろしいでしょうか。

 さらに、維新の方が本日言ったことですね、国民民主党も入れた三会派で緊急事態条項をやるんだと。はよやれとおっしゃっているんですけれども、そのことと矛盾しないかということもお聞きしたいです。

 この玉木さんのおっしゃっていることというのが、結局は、緊急事態条項というのは随分響きが悪くなったんだ、だから呼び名を変えとこうな、緊急事態条項、緊急政令はラスボスやから取りあえず出すな、最後に取っとけという内容ですよね。

 これが改憲派の筋書であって、それを国会の外の国民は既に見抜いているということですから、審査会長はしっかりとその国民の意向を踏まえて、毎回開催しないことを強く訴えます。

 そして、大事なことは国民が何に怒っているのかなんですけれども、災害時とか有事だからこそ選挙をやれということじゃないですか。本日、立憲民主党さんもそのような趣旨でおっしゃっていたと思いますけれども。現憲法が既に備えている参議院の緊急集会をちゃんと使いながら、復元力がある緊急集会を使いながら、できるだけ速やかに衆議院選挙をしなければならないんだと。

 これは究極、戦争を意識されていると思うんですよ、本日も発言がありましたけれども、改憲派の方々は。これにおいても、究極、いつ戦争を終わらせるのかということを国民が決めなければいけないんですよ。それがさきの戦争の反省、教訓であり、現憲法の設計図なんですよ。それを壊して、内閣の独裁の、そして衆議院の独裁の歴史の再発を狙うというのが憲法違反であって、国賊です。

 国賊が本当に憲法を変えてしまう前に、有権者はそれらを監視しなければならないし、今選挙がまだ行われているうちに、そういう人たちを国会から追い出さなきゃいけないんです。

 さて、今回、直接のテーマが、参議院の緊急集会の射程です。

 改憲派の方々が緊急事態条項を必要とする理由として、参議院の緊急集会でできないことがあるという主張ですね。それに反論します。

 今日法制局の方がお示しになった資料と、そして各会派がお答えになった中で二点に集約されるのかなと思っているんですけれども、まず一点目の、参議院の緊急集会が平時に限られているという論についてです。

 これは例えば、衆議院の憲法審査会で自民党の新藤委員がこのようにおっしゃっています。まさに平時の制度です、緊急事態を想定したものでないことは明らかでありますとまで言っていて、何でやねんという話なんですけれども。

 この件は既に参議院の法制局が、平時に限られていないと説明済みです。去年の五月十五日の参議院憲法審査会で参議院の川崎法制局長が次のように述べられています。参議院の緊急集会の要件である国に緊急の必要があるときには緊急事態が含まれることは明らかであると思われます。

 そして、現在の法律もそれについていっていますよ。それを前提に、参議院の緊急集会が規定されています。例えば、現行の緊急事態法制として、災害緊急事態時などの緊急政令、武力攻撃事態などの場合の防衛出動の国会承認について参議院の緊急集会が既に規定されています。

 なので、これ以上これを議論する必要があるんでしょうか。

 前回、四十九回目の壊れたテープレコーダーと維新の馬場さんがおっしゃっていて、今日も維新の方がおっしゃっていたけれども、五十回目のテープレコーダー、議論する必要があるんでしょうか。

 新藤委員にお伺いしたいんですけれども、この法制局の見解を聞いてもまだ平時だと言いますか。それは何を根拠にしているのでしょうか。

 二点目に、参議院の緊急集会の七十日限定説に反論いたします。

 それは前回も申し上げましたが、参議院の緊急集会が七十日間しか開催できないと主張しているのはかなり少数派である、特に参議院憲法審では維新だけです。

 自民党の船田幹事に、先ほどおっしゃっていたことにも関わりますが伺いますけれども、私は自民党のホームページを拝見したんですね。昨日の時点でも載っていましたし。やはり七十日限定説を自民党自体が否定されていますよね。

 言っているのは去年の八月七日の自民党ホームページの記事で、読み上げます。憲法改正実現本部は八月七日、全体会合を開き、同本部の下に設置したワーキングチームからこれまでの議論の取りまとめについて報告を受けました。ワーキングチームは衆参の実務担当者等で構成。さらに、七十日限定説についてホームページにこう書かれているんですよ。「憲法五十四条一項に定める総選挙までの四十日間と特別国会召集までの三十日間を合わせた七十日間を緊急集会の活動期間として厳格に限定するものではないとしました。」と書いてあるんですね。

 ホームページでその後もワーキングをやっているのも全部見たけれども、この見解を変えますというのはなかったですよ。

 本日、船田さんが変わったようにおっしゃっているんですけれども、自民党内での衆参の見解で変わったのならその根拠と、変わった変遷のプロセス、それから、立憲の方もおっしゃっていましたけれども、参議院のルールですので、参議院への尊重という観点でも、どういう考えなのかをお伺いしたいです。

 最後に一点。前回、三月十三日の審査会で私が、今日も言っていますけれども、この任期延長改憲の議論は打ち切るべきだという主張を、維新の複数名の委員が、大石委員が言われたようにやはりこれは議論を打ち切って採決をすべきだなどと私の発言を悪用してきたんですけれども、明らかに文脈が違うし、採決すべきと言っていないし、それを平気で切り取るやり取りというのはチンピラそのものであって、この審査会の場にふさわしくないということは申し上げます。

 終わります。

枝野会長 ただいまの大石さんの発言の中で各委員に対する御質問がありましたが、それらについては、各会派一巡の発言の後、委員からの発言の冒頭に、浅野さん、それから維新さん、それから、個人名で来ていますので、新藤さん、船田さんにまずその段階でお答えをいただきますので、御準備をください。

 審査会運営についてのお申出については、幹事会で協議いたします。

 次に、赤嶺政賢さん。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 参議院の緊急集会を考える上で重要なことは、日本国憲法にこの規定が導入されたのは、内閣への権力の集中を排除し、議会制民主主義を徹底するためだということです。これは、かつて日本政府が国民の権利と自由を抑圧し、侵略戦争へと突き進んだ痛苦の反省に基づくものです。

 明治憲法は、緊急勅令や緊急財政処分、戒厳、非常大権など、行政府への広範な権限の集中を認めていました。当時の政府は、それを濫用し、戦争に反対する国民の声を弾圧するために用いました。議会で廃案になった治安維持法の重罰化法案を議会閉会後に緊急勅令によって成立させたことは、これを象徴するものです。

 法制局の説明にもあるように、敗戦後、当時の政府は、新憲法の制定に当たり、災害など緊急の必要を理由に、法律や予算に代わる閣令を制定できるよう盛り込もうとしました。しかし、明治憲法と同様の制度を復活させる規定は総司令部との交渉で退けられました。そうした中で取り入れられたのが参議院の緊急集会です。

 憲法制定議会で、金森徳次郎担当大臣は、緊急集会を定めた趣旨について、明治憲法の緊急勅令や緊急財政処分などによって民主主義政治の運用に遺憾な結果を生じさせたことから、民主政治を徹底するために、こうした規定を排除し、参議院の緊急集会を設けたと明言しています。緊急集会が憲法に導入された目的が、政府の独裁を排し、国民主権と民主主義を貫くことにあるのは明確です。

 もう一つ重要なことは、憲法が緊急集会の措置を一時的、暫定的なものだとしていることです。憲法五十四条三項は、参議院の緊急集会で取られた措置は臨時のものであり、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意が得られなければ失効すると明記しています。これも権力の集中と濫用を防ぐ上で重要です。

 憲法審査会で参考人として意見陳述をした長谷部恭男早稲田大学教授は、緊急時の対応は平時の制度と明確に区別すべきだと述べた上で、緊急集会を行い得るのは暫定的な臨時の措置で、権限にも限界があるからこそ、平時の状況が回復したときは可及的速やかに通常の制度へと復帰することができるのだと評価しています。

 その上で、長谷部参考人は、衆議院議員の任期延長は、選挙を経ていないにもかかわらず、国会に付与された全ての権能を行使し得るある種の国会が存在することになると指摘しています。その下で、緊急時の名をかりて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が制定されるリスクがある、衆議院と、それに支えられた政権の居座りを許し、緊急事態の恒久化を招くことになると述べています。

 政権を延命し、権力を維持するために濫用される危険性は極めて重大です。

 ところが、こうした憲法の成り立ちや専門家の指摘を無視して、緊急集会では長期にわたって総選挙ができない事態に対応できないなどと想定外の上に想定外を重ね、国会議員の任期延長の改憲が必要だという議論が繰り返されています。

 さらに、国会による法律を待ついとまがない場合を理由に内閣の緊急政令や緊急財政処分を盛り込む主張までされていることは、日本国憲法に緊急集会が導入された目的に真っ向から反するものだと言わざるを得ません。

 憲法に緊急事態条項を設け、国会の権限を奪い、内閣に権力を集中させるための改憲議論は、この歴史の反省と憲法の原則を根底から踏みにじるものであり、絶対に許されないと強調して、発言を終わります。

枝野会長 次に、北神圭朗さん。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私からは、緊急集会の期間について御意見申し上げます。

 まず、緊急集会は、憲法五十四条二項の両院同時活動の原則の例外であることから、その期間あるいは活動範囲については抑制的に解釈をすべきであると思います。

 その上で、同条一項を素直に読むと、解散による衆議院の不在期間が最長七十日であり、その範囲内で緊急集会の活動が限定されています。事務局の説明にありましたが、帝国憲法改正の審議における金森大臣の発言を見ても、七十日を念頭に置いていることが立法者の意思として示されています。

 百歩譲って、七十日を超えて活動できるとしても、ではどこまでこの例外状態の延長が可能なのかということについて合理的な基準が見当たらず、したがって、その濫用の、手だてもありません。

 以上三点から、緊急集会の活動期間は基本的に七十日間だと考えます。

 その反論としては長谷部恭男教授がどうやら理論的支柱となっているようでありますが、これを要約すれば、一つは、平常時と非常時とは明確に区分されるべきであり、後者の場合には七十日を超えることも許される。二つ目は、なぜ許されるかといえば、五十四条一項は単なる調整規定である、非常時には厳密にこだわらなくてもよいと。そもそも、七十日と定めている理由は、内閣が解散後いつまでたっても総選挙を実施しない、あるいは総選挙後いつまでたっても国会を召集しない、政権の居座りを防ぐのが目的であるだけの話だということです。

 この理論でいくと、内閣が単独で非常時宣言をして、七十日を超えて衆議院を召集しないことが決められます。もっと言えば、平常時にいつ戻るのかという判断も、これも内閣の一存で決まってしまいます。しかし、それこそ、衆議院が不在のままで政権の居座りを許してしまうのではないでしょうか。憲法が求める両院同時活動の原則の例外状態も、その間ずっと続いてしまいます。

 いま一つ、五十四条一項が単なる調整規定だという意味は、解散から総選挙までの四十日や総選挙から特別会召集までの三十日という数字には理論的根拠がないということです。

 確かに、そのとおりだと思います。しかし、まさに根拠がないがゆえに、憲法に一旦決められた以上は、政権の居座りを防ぐには、勝手な解釈を許さず、これを守るべきことは当然だと考えます。

 そもそも、具体的な数字というものにはほとんど解釈の余地はありません。これについて、阪口正二郎教授は、「憲法改正をよく考える」という著書でこう述べています。憲法の条文には、大別して、明確で解釈の余地が余りないものと、曖昧で解釈の余地を残すものとがあると原則論を述べた上で、五十四条一項は相当程度に明確な条文であり、解釈の余地は余りないと述べています。

 これに対して、長谷部先生はこの審査会で、フランスの公法学者であるモーリス・オーリウさんを取り上げて、次の旨発言しています。オーリウ先生は緊急事態の法理を構築した人、これは、日数などの規則について、平常時は一〇〇%守らないといけない、しかし、非常時はまず生き延びるのが大事だ、そのために必要な場合に可能な限りで守ることでいいんだと。

 確かに、生き延びることは大事です。しかし、より大事なのは、そうした国会機能が損なわれる非民主的な事態をできるだけ避けるために何をすべきかということであります。憲法改正の努力もせずに、非常時を理由に内閣の裁量と衆議院の不在を許してもいいのか。それとも、あらかじめ憲法に手続を規定して、いざというときにも国会の機能を発揮できるようにするのか。つまり、緊急事態の法理ができるだけ適用されないようにする知恵と努力が今問われているのではないでしょうか。

 逆に、七十日を超えてもいいという皆様は、長谷部先生が強調してやまない平常時と非常時の判断基準をどう考えているのでしょうか。それは国会が関与せずに、本当に内閣が勝手に決めていいのか。非常時が終了する判断も時の政権に任せるのか。説得力のある意見がいまだに聞こえてきません。

 以上、その条文の性質からして、日数の限定は権力濫用を防止するための重いものであることからして、五十四条一項は厳格に解釈されるべきものだと考えます。

 さらに、緊急事態の法理ができるだけ適用されないために、我々の案では工夫をしています。すなわち、七十日を超える選挙困難事態に対しては、国会機能を維持するために、憲法上、国会での事前の厳格な手続と事後の司法による関与を規定しています。

 最後に、少し角度を変えますが、長谷部先生が引用されたオーリウ先生の母国フランスでは、フランス憲法に非常事態措置権と戒厳令が規定されています。一昨年、本審査会による欧州派遣に私も参加させていただきましたが、そこで、パリ・サクレー大学のジュリアン・ブドン教授によりますと、緊急事態条項は過去にほとんど使われていないが、法体系の中に例外的な状態に対応するための制度が十分に用意されていることが重要であると述べていたことを申し添えて、私の意見とします。

    ―――――――――――――

枝野会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は三分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を考慮して全体で五分程度となるよう御配慮ください。委員各位の御協力をお願いを申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、それぞれおおむね三分経過時、五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせをいたします。

 まず、先ほど、一巡目の大石さんの発言の中で、四人の方に対する質問がございました。これにお答えいただける方がいらっしゃれば順次お答えをいただければと思いますが、先ほどの基準からしますと、最大でも二分程度で御答弁をいただければと思います。

 まず、浅野さん、お答えいただけますか。

浅野委員 先ほど、大石委員の方から二点御質問いただきました。

 昨年、二〇二四年の四月二十五日、玉木雄一郎委員がSNS上で発信した内容についての御質問でした。

 まず一点目ですけれども、緊急事態条項という呼び名を改めて、緊急時における国会機能維持のための憲法改正と呼ぶようにしてほしいという考え方について、これは党の方針、変わりないかという御質問でしたけれども、我々としては、厳密な表現については改めて確認をさせていただきますが、緊急事態条項という言葉を余り使っておらず、現在は、緊急事態における国会機能維持のための改正というふうに取り扱っていることから、現在もその方針は変わっていないと言えるかと思います。

 もう一点目の御質問ですが、これもSNS上で、緊急政令は最初の改憲項目からは外してほしいという提案、これは党の方針かということであります。

 国民民主党の中では、これまで、憲法改正の、特に緊急事態において必要な事項について、憲法改正が必要な項目について整理をしてきた中にこの緊急政令の必要性というのは含まれております。

 ただし、本日、日本維新の会の阿部委員の発言にも少しありましたが、いわゆる緊急事態と非常事態、この違いというものの整理、緊急政令を発動しなければいけない事態、要件などについてはまだ検討の余地があるというふうに考えておりまして、現時点では改憲項目の中に含めるにはまだ早いのではないか、そういった考え方を持っておりますので、これが現在の方針となっております。

枝野会長 次に、維新へのお尋ねがありましたが、青柳さんが御答弁をされるのでいいですか。

青柳(仁)委員 まず、我が党に対して御質問いただいた中で、壊れたテープレコーダーのような議論を打ち切ったらどうかという話については、我々は大変そのとおりだと思いますし、これをやめるということは、この場で皆さんで、なぜやめるのか、やめた結果どうするのかということを決めるということですから、ただ消滅するということはあり得ないと思っておりますので、採決とほぼ同義なのではないかなと思いますが。

 それ以前の話として、まず、我が党の議員に当てたものと思われますが、チンピラという御発言がございました。先ほどインターネットで定義を調べてみましたところ、一般市民に対してささいな理由で示威行為をする者、あこぎな行為をする者の俗称、暴力団の末端組員に顕著に見られる、やくざ社会において最低の意味を表すちんけと下っ端の意味である平との複合語だとされ、文字どおりの下っ端やくざを意味するものであるということです。我々、国民の皆様に選挙でお選びいただいてこの場に全員座っております。明確に下っ端やくざであるという者はいないわけでありまして、これは事実ではまずありません。

 そして、事実でないことをこの場で言うこと、これが誹謗中傷であり、また名誉毀損であるということは明らかでありまして、こういう学級崩壊のような会議をこの場で行うことが果たして正しいのかどうか、これは委員長、是非御検討いただきたいと思います。

 それからもう一つ、皆様に向けて、全議員に向けて国賊という言葉がございました。こちらは、同じように調べてみますと、自国に害をなす者、国に損害を与えたり国家の尊厳をおとしめたりする者を罵って言う言葉ということがあります。

 皆様、我々と同様の立場だと思います。こういった言葉を使われる方に対して正当な、しっかりとしたお答えをする義務がないと私は感じておりまして、お答えを差し控えさせていただきます。

枝野会長 ただいまの青柳さんの発言の中で、大石さんの発言の内容についてのお申出については、後刻、幹事会で協議をいたします。

 次に、新藤さん、御発言されますか。

新藤委員 それぞれの御意見を主張されることは結構だと思いますが、少なくともこの緊急事態に関わる議論は、私が筆頭幹事を務めておりました、たしか五年ぐらいだと思いますが、その間、各党から毎週のように、しかも何年間にもわたって議論してきたことであります。

 結局、我が国において、想定を超える事態が起きたときにどのような対処をなすか、この規定がない。世界各国の主要な憲法において、大半の憲法で定められているそういう緊急事態というのが我が国憲法には欠如しているではないか。ですから、この緊急事態について、どういうものを定めるべきなのか否かも含めて様々な議論をやってきたということであります。

 少なくとも、その中で、大規模自然災害や感染症の蔓延ですとか、テロやそして有事、こういったものが起きたときの事態に対して国会機能をどう維持していくか。そういう中で、国会議員が、もし衆議院が解散して、そのときに選挙ができなくなってしまったらどうするんだという議論になり、そのときに、要は緊急集会があるではないかということになったんですけれども、参議院の緊急集会は、衆議院の解散中にあって必要と認められたときであって、それは、衆議院がまた選挙によって復活するということを前提にした制度になっているわけであります。ですから、そういった意味での平時という言い方、これは通常の事態の範囲で想定されたものだということであります。

 ですから、これを超えた事態に対してどう対処するかということで、自民党、公明党、それから維新、国民、有志の会、五会派で論点整理をして、ほぼこの内容が、かなりのところが合意できているわけであります。

 ですから、これをどうやって今後作業していこうかということでやっていくさなか、また原点に戻るような議論が出てくるのは、私は大変残念だなと思っています。意見は御自由に言って結構ですが、他党の活動に対してやめてくれと言われても、私たちは必要があるからやっているわけであります。

船田委員 先ほど大石委員からは、私ども自由民主党の憲法改正実現本部ワーキングチームで議論をして取りまとめをしたことについての御質問でございました。

 具体的には、七十日間という点で、この七十日間は、活動期間を厳格に限定するものではないという表現はありますけれども、その表現は確かに我々のワーキングチームの取りまとめで出したものでございます。しかし、同時に、広範性要件とともに、長期性要件について、明確かつ限定的なものとなるよう更に深掘りの作業を進めていくということも記載をしておりまして、ここで言うところは、七十日というのを厳格に規定したものではなくて、七十日を超えていつまでも参議院の緊急集会が効力を発する、あるいは存在をするということがどうなのかということに対しては、やはり七十日が一つの目安であるというふうに考えた上での私どもの取りまとめであったということを記憶をしております。

 以上です。

枝野会長 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 自、公、維新、国民、有志の四党一会派の幹事会メンバーにお伺いいたします。

 国会審議を通じ確立している法令解釈のルールは、憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、論理的に確定されるべきものです。

 緊急集会の平時の制度説、七十日限定説は、憲法五十四条二項の「緊急」という規定の文言、戦前の反省からの権力濫用排除、並びに、第一項の四十日、三十日が内閣の居座り排除のためという規定の趣旨、GHQ草案にはない有事のために制定した立案者の意図や立案の背景にまるで即しません。

 それでもなお、平時の制度、七十日限定を訴えるのであれば、今、この場で、法令解釈のルールに基づき御論証ください。万一できないなら、次回までに文書で審査会に御提出ください。

 参議院では、まさにこの法令解釈のルールに基づく追及が立憲会派からなされ、維新を除く改憲派は、衆参で緊急集会の見解が分裂し、自民党に至っては、昨年八月の党見解で、衆院改憲派の主張を否定する見解がまとめられています。この自民党見解は、緊急集会が緊急事態条項であることを認め、計七十日間についても、活動期間を厳格に限定するものではない旨認めています。

 船田幹事は、自民党見解と衆院自民の見解の矛盾、不一致につき説明し、上記法令解釈のルールにのっとればどっちが正しいか、どっちが本当か、御説明ください。衆参の温度差は解消され、意見は収れんされたと本当にお考えでしょうか。

 最後に、改憲派の先生方の御主張は、資料百二号のミスリードによるものと推察いたします。緊急集会の重要な立法事実を示すGHQとの交渉記録について、資料百二号補訂版六ページ以下の記載は、一昨年のオリジナル版には全く存在していません。また、オリジナル版では、議員の主張がまるで憲法学者の見解であるかのように、平時の制度にすぎないという意見もありとの記載がありましたが、なぜか本日の補訂版では削除されています。

 さらに、衆議院法制局の資料は、本日の説明資料を含め、五十四条一項、二項についての独自見解、連関構造なるものを唱え、細切れ、ばらばらに学説が分類されています。もはや、学説の捏造と言われても仕方ありません。不偏不党の議会法制局の資料を疑うのは本意ではありません。しかし、その内容は、改憲派の先生方を容易にミスリードし得るものです。

 なお、当時の自民党新藤幹事による平時の制度説等の開陳とまさに同じ日に百二号オリジナル版が提出されていることは、偶然でしょうか。資料百二号が力作であることは誰もが納得するところですが、橘局長がおっしゃるところの公平で客観的な、私見を交えないものと本当に言えるでしょうか。

 改憲派の先生方の法令解釈のルールとはほど遠い御見解が資料百二号にミスリードされたものであるとするなら、残念至極であります。壊れたテープレコーダーがミスリードされた誤った議論を繰り返していたとすれば、それは悲劇以外の何物でもありません。新藤委員のおっしゃるところの原点に立ち返るべきであります。

 憲法審査会が本来の法解釈の議論の場に戻り、法の支配と立憲主義を確立する必要性を訴えて、私の意見といたします。

枝野会長 まず、藤原委員の発言のうち、本日提出されたものを含め、衆議院法制局が本審査会に対して提出をしている、あるいは説明をしているこれまでの議論の経緯その他の資料については、私の責任で中立、客観、公正なものとして提出をいたしておりますので、それについての一切の責任は私にあるということをまず申し上げておきたいと思います。

 次に、質問については二会派にできるだけ絞ってくださいということにもなっております。また、お話を伺いますと、質問内容、かなり緻密にわたっておりますので、四会派からそれぞれ次回までに文書で御回答いただくということの方が建設的かなと思いますが、いかがでしょうか。

 浜地委員、ここでお答えになりますか。

浜地委員 まず、今の見解に対して、私は、それは様々な御意見があって、法解釈のやり方はあるのは分かるんですけれども、もう一々それにお答えしません、公明会派は、次は。

枝野会長 お答えしないというお答えで、それはそれで結構だと思います。

 ほかの会派、どうしますか。ここでお答えになるか、あるいはお答えにならないか、あるいは文書で次回までにお答えになるか。

 自民党さんはどうしますか。

船田委員 全ては答えることにならないかもしれませんが、政府答弁がかつてございまして、法令の解釈というのは、法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立法者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮すべきであるというのが政府答弁であります。

 これに従えば、確かに法令というものの解釈は抑制的であるべきだと思いますけれども、同時に、立法者の意図、それは、例えば、GHQと渡り合った金森大臣の帝国議会での発言、あるいはその発言の裏にある意図、そういったものも酌み取る必要がありますし、立案の背景となる社会情勢としては、例えば、最近やはりパンデミックもございました。これからも起こらないとは限りません。それから、幾度にわたって大災害が日本では発生をしております。そういった社会情勢を考えた場合には、やはり緊急事態における国会の機能維持というのは大変重要なことであり、これは、学説をねじ曲げたり、学説の一部を取り上げたり、あるいは切り貼りをしたりということとは無縁のことである、私はそのように思っております。

 それからもう一つ、これは大石先生のときにもお答えしましたけれども、七十日間というのは、これは自民党として限定されていないじゃないか、こういう話でございますが、先ほど申し上げましたように、確かに七十日ぴったりということでは決してありませんけれども、七十日を超えて衆議院選挙が行われる可能性が少ない、あるいはない、こういうときには、参議院の緊急集会をいつまでもいつまでも延ばしてしまっていいのかということについては、やはり七十日というのが一つの目安であるということについて、これは自民党の中の衆議院議員も参議院議員も理解いたしております。

 私もそのワーキングチームの一員として全ての会議に参加をしておりましたけれども、この結論について参議院議員から異論が出たということはありませんで、了解をしているものでございます。

 以上です。

枝野会長 維新、どうしますか。お答えになりますか。

馬場(伸)委員 先ほど新藤委員からもお話がございましたが、この緊急事態条項については何年にもわたる議論をさせていただいております。

 我が党の考え方、見解については、この審査会において幾度も披瀝をさせていただいておりますので、それを御覧いただきたいと思います。

 見解の相違が藤原委員とあるのは当然のことでございまして、全く一緒であれば一緒の政党に所属しているのではないかと思われます。

 以上です。

枝野会長 国民、有志にもお尋ねになっていますね。

 じゃ、国民、どうしますか。

浅野委員 お尋ねの内容については、本日、私の発言の内容には、憲法条文及び法令等に対する我が党としての解釈、並びに、現在議論されております参議院の緊急集会の射程、あるいはこれまで議論をしてきた緊急事態、選挙困難事態に対する考え方が含まれておりますので、まずは本日の議事録を確認をいただきまして、また過去の議事録も確認をいただきまして、その上で、もう少し確認点を明確にしていただいて、また御質問いただければと思います。

枝野会長 北神さん、どうしますか。

北神委員 時間がないから、紙に書きますわ。

枝野会長 はい、分かりました。

小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。

 まず、参議院の緊急集会の射程に関する最大の論点であります期間について意見を述べます。

 参議院の緊急集会は、その制定経緯から見ても、国会機能維持のための緊急事態条項と言い得るものです。しかし、過去に金森大臣が、国会は衆議院解散後七十日間は開けない状況であると答弁していたように、天災等があったとしても、衆議院不在の期間が七十日を大幅に超過することは想定していなかったのではないでしょうか。

 仮に、現行憲法下で選挙困難事態が生じた場合には、緊急事態の法理により参議院の緊急集会で対応するという考え方があることは承知しておりますが、こうしたなし崩し的な解釈はあるべき姿とは言えないと考えます。やはり、憲法を改正して、選挙期日、議員任期特例を設ける方がより立憲主義にかなうものと考えております。

 ところで、前回の審査会は選挙困難事態の立法事実がテーマであって、立憲民主党の山花幹事から、現時点では立法事実は確認できないとの御発言がございました。その理由として、投票ができる地域で投票すれば八割強の議員は選出できる、投票ができない地域でも順次繰延べ投票を行っていくべき旨の発言をされております。武正幹事からも本日ございました。これは、投票できる地域で投票を行うことによって、定足数ぎりぎりの三分の一の議員でよいかどうかは別として、正式に衆議院が成立し両院で活動できるため、法律レベルの措置で対応できないケースは想定し難いとのお考えと受け止めさせていただきました。

 もしそのような立場であれば、大規模自然災害等の場合でも、衆議院が正式に成立するのでありますから、七十日を超えて参議院の緊急集会によって対応する場面はほとんどないこととなって、緊急集会の射程について、そもそも難しい議論をする必要はないのではないでしょうか。むしろ、憲法五十四条一項、二項の文理を離れた無理な解釈をするのではなくて、純粋に文理に即して素直に読むことこそ立憲民主党の主張に沿うものと考えます。

 そこで、立憲民主党の幹事の方にお伺いします。

 党として、そもそも選挙困難事態の発生は想定し得ないと主張していらっしゃるのか、あるいは、本当は選挙困難事態の発生が想定し得るけれども、それを表立って表明することを避けて、条文をやや無理に解釈して参議院の緊急集会で対応できると主張されているのか、いずれの立場であるのかお答えいただければと思います。

 仮に、そもそも選挙困難事態の発生は想定し得ないとの立場であるのであれば、それにもかかわらず、参議院の緊急集会の射程について、文理を超えて、緊急事態の法理のような観点から解釈するのはどのような理由からなのか、お答えいただければと思います。

枝野会長 どうしますか。立てていらっしゃるので、御自身の発言と併せて、後ほど。

 じゃ、今の御答弁は御自身の発言と併せて次に御発言いただきますので、先に青柳さん。

青柳(仁)委員 まず、先ほどから少しお話が出ておりますが、この議論、今日の御意見、皆様、委員からお伺いしていても、何かどこかで聞いたような意見が多いなというか、今までのこの審査会の中で既に述べられた意見が多いなというのが正直な印象でございます。

 そういった中におきまして、憲法改正そのものについて採決を行うのかどうか、全会一致なのかどうか、ここはいろいろ御議論があるところかとは思いますが、一方で、やはり論点をしっかりまとめて次に進んでいくということに関しては、これはやはり進めていくべきであるし、その意思決定に関しては必ずしも全会一致である必要はないのではないかなというふうに考えております。

 そういった観点で、例えば、前回の議論にありました緊急事態条項の立法事実に関する認識の相違、これは先週の議論を聞いていれば明らかなわけであります。それから、今回の参議院の緊急集会に関する見解、これも、先ほど藤原委員の方からありましたが、立法の意図であるとかその解釈、それから立法事実、これに関するものは割と明確なものとして、それぞれ違いも明らかにすることができるんじゃないかと思うんです。

 以前の審査会で中谷メモというものが出てきまして、まさにすばらしいペーパーだなと思いましたが、そういった事実関係、また、客観的に検証し得る事実関係というのをしっかりまとめた比較表を作成して、そして、その上で、どこの部分は今後議論をしないのか、そしてどの部分を議論するのか、ここを明らかにしていくことが必要であると思っております。

 それに関しまして、まず、そういった運営をお取り計らいをお願いしたいと思うんですけれども、委員長の方に。

 その上で、以前、我が党は、国民民主党、有志の会とともに、緊急事態条項の条文案を策定しました。方向性は、自民党、公明党両党と大きな乖離がありません。こういったものが、前回までの国会の、この審査会の中での一つの大きな成果として、ぎりぎりのところまで進んできていたという事実がございます。ですので、やはり条文起草委員会、これを早期に立ち上げる、その意思決定はこの場の採決でもよろしいのではないかと考えるんですけれども、そのことについて。

 それからもう一つ、それがもしもかなわないのであれば、各党の考える条文というのをこの場に出すべきだ、この意思決定も採決で構わないと思うんですけれども。

 これについて、我々とともに条文起草を行ってきました国民民主党、有志の会、それから、方向性がおおむね一致している自民党、公明党にお伺いしたいと思っております。

枝野会長 先ほどの藤原委員もそうだったんですが、幹事会では、ここでの質問は二会派を原則としてくださいということで申合せをしておりますので、徹底をお願いしたいと思いますが、今の点については短くお答えできるかと思います。順次お願いします。

浅野委員 青柳委員の御提案については、特に異論はございません。

北神委員 異論ないです。

船田委員 異論はありませんが、その取扱いについては、三者協議できちんと議論をして対応したいと思います。

浜地委員 今の御提案を含めて、党内で検討し、お答えをしたいと思います。

枝野会長 私へのお申出については、幹事会で協議をいたします。

 次に、山花さん。先ほどの質問に対する答弁も含めてお願いします。

山花委員 はい。

 先ほど小林委員から御質問をいただきました。選挙困難事態ということがなかなか我々としては想定しづらいのではないかというのは、前回申し上げたとおりであります。御指摘のように、そうであるとすると、緊急集会について、重みがそれほど重要でなくなるのではないかという御指摘はそのとおりだと思います。

 ただ、今日、参議院の緊急集会の射程ということで議論されておりますけれども、今日の提出いただいた衆議院事務局の資料でも、解散のときと任期満了のときと二つ挙がっておりますけれども、それ以外にもあり得るのではないかということが考えられます。

 これまで最高裁は、いわゆる一票の格差が争われた裁判で、公職選挙法の定数配分規定全体を違憲であると判断しながら、いわゆる事情判決の法理によって、選挙の効力については維持をするという解決を繰り返してきました。

 しかし、最高裁の大法廷、昭和六十年七月十七日の補足意見で、選挙を無効とするがその効果は一定期間経過後に初めて発生するという内容の判決をすることもできないではないという意見が出され、最近の下級審の判決でも、広島高判の平成二十五年ですけれども、同様のものも現れています。

 二〇一六年まで最高裁判所の裁判官を務められた千葉勝美元判事も、「違憲審査 その焦点の定め方」という著書で、猶予期間付無効判決について検討されています。いわゆる将来効判決が下されたにもかかわらず国会が是正行為を行わないと、その時点の到来とともに議員が存在しないということになりますから、それにより、どうやって対処をするかということについて、一九八五年五月の「法学教室」で佐藤幸治教授が検討しておりますけれども、参議院の緊急集会により暫定的な法改正を行い、それにより総選挙を実施するという方法を示唆しています。

 佐藤教授のアイデアだと、参議院の緊急集会で、当時は定数配分ですけれども、今だと一票の格差になると思います、その格差の是正を行って、その後に衆議院議員選挙を行うということになりますから、こういった可能性があるのだとすると、これは七十日の縛りがあると考えることの方が難しいのではないでしょうか。

 また、事後の同意は遡及しないものと考えますので、ましてや、この是正措置に基づいて選出された衆議院議員が不同意の意思表示をすることは、自らの正統性を否定することになりますから、あり得ないということは付言しておきたいと思います。

 本来、違憲判決が下されるということはあってはならないことですし、ましてや、違憲判決が放置されるなんということはあってはいけないことだとは思いますけれども、実際、合区であるとか定数減などには相当な政治的なエネルギーが費やされて時間がかかることは、私たちが経験していることですので、こうしたことも想定すべきではないかと考えております。

山田(賢)委員 冒頭に、是非、委員長に御提案をしたいと思うんですけれども、議事の進行の仕方ですね。我々は当然、少数会派にもひとしく発言の機会は与えられるべきだと思うんですが、質問をした方が、全部答えを入れると、その他の方々の発言の機会がなくなるので。ただ、議論を深めるということは大変いいことだと思っていますので、例えば、冒頭に各会派からの意見を開陳していただいて、その後は、質疑者を登録して、答弁時間も含めて割り振っていただくということが、議論が深まるのではないかということを御提案を申し上げたいと思っております。

 本日につきましては、まず、長い間議論をしてきて、緊急時における選挙困難事態、議員の任期延長につきましては、反対もあろうかと思いますが、賛成、反対、いずれの会派も立場ははっきりしていると思うんですね。様々な委員から御議論いただいておりますので、この辺はもう結論を出していくべきだと思っています。反対の方は、堂々と反対していただいて結構です。結論を出して前に進めるべきだと思っています。

 他方で、では何のために議論しているのかというと、改正原案を出すときに、この議員任期延長だけでよいのか。緊急集会の権限を強化する、これを明記するということもあろうかと思います。緊急政令が必要なのか、こういったことも含めて、どこまでの範囲で改正原案を出すのか。これを前提に御議論いただければと思っております。

 そこで、緊急時においても、警察、消防のみならず、行政機関というのはフル活動します。ただ、それは法律の範囲であって、法律が手当てしていない事態が起こった場合には、新たな立法が必要です。予備費で対応できないような支出が必要になれば、補正予算を成立させる必要があります。そのために立法機関としての国会を機能させないといけませんが、当然、統治機構の一翼を担う国会も、憲法の制約の範囲で、その権限を行使することになります。

 今日、橘局長から御紹介いただきました、長谷部参考人の緊急事態の法理、これは大変参考になります。赤信号を通過する緊急車両というのは、罰せられるべきではなくて、むしろ褒めたたえられるべきではないかという判決があったということです。これを憲法に置き換えると、憲法で規定していることに内閣は服するべきですけれども、もし法律がなかったときに、緊急時に対応しないといけない、このことを何でも超法規的措置でやっていいのか。この事例は、むしろ、このときはしようがないけれども、こういう事態があるから、あらかじめ通達、法律を定めておこうということであります。

 であるならば、我が国に置き換えて、内閣が何でもかんでも緊急政令を出すというのではなく、あらかじめ法律を定めておくべきであり、それができない緊急の事態においては権限を認めよう、これが緊急政令ではないかと考えております。それも、無制限に認めるのではなく、どういう場合に、誰が、誰の権限でもって政令を発するのか、そしてそれを議会がどうチェックするのか、こういったことを規定しておくことこそが、むしろ立憲主義にかなうのではないかと思っております。そして、国会を召集するいとまがないときには内閣に……。

 もう時間が参りましたので、終わらせていただきます。

枝野会長 ただいまの山田さんからの御発言のうち、私への申入れについては、幹事会でしっかりと議論させていただきます。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 先ほど山花委員が、選挙困難事態はほとんど想定されないけれども、七十日を超えた場合には緊急集会で対応されるという趣旨の御発言をされました。

 そのような事例というものが現実的にどれぐらいあるのかということはちょっとなかなか想定がしづらいところでありますが、その御発言を前提としてお伺いしたいと思います。

 今、私ども自由民主党は少数会派であります。少数の会派に信をおく内閣が、本来、衆参両院で熟議を尽くすべき事態にあるにもかかわらず、緊急事態が発生した場合に、与党多数の参議院の緊急集会で望む政策をどんどんと行うということが恒久化してしまうということについて、どのようにお考えでしょうか。

 そしてまた、緊急集会で対応している間は、内閣は職務執行内閣にすぎません。そして、その内閣の大部分は、もう既に議員の地位がない前衆議院議員ということになります。そのような内閣が長期間にわたって緊急事態に対応するということが果たして正当化されるのでしょうか。

 以上二点についてお伺いします。

山花委員 まず、幾つかのことが御質問であったと思いますけれども、先ほど私が七十日を超えるケースがあり得ると申し上げたのは、一つは、だから、衆議院の総選挙が行われたけれども、最高裁が事情判決の法理によらずに、あるいは、よったとしても将来効判決で無効とされたようなケースのことを申し上げたつもりでございます。

 また、先ほど衆議院の事務局の方から説明がありました上段の部分、通常選挙ができる場合には七十日という形で、最大で七十日ということになりますし、あと、参議院の緊急集会には、要件として、国に緊急の必要があるときという要件がございますので、そこのルールを厳格に守っていただければ、何か、あたかも緊急集会でいろいろなことが決められてしまうかのような御指摘でありましたけれども、そういったことは起こらないのではないかと考えております。

枝野会長 まだ御発言の御希望もあるようですが、予定していた時間が経過をいたしました。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、来る四月三日木曜日午前九時五十分幹事会、午前十時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


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