衆議院

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第3号 令和7年12月4日(木曜日)

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令和七年十二月四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 武正 公一君

   幹事 上川 陽子君 幹事 寺田  稔君

   幹事 葉梨 康弘君 幹事 船田  元君

   幹事 松尾 明弘君 幹事 山花 郁夫君

   幹事 米山 隆一君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 浅野  哲君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      大野敬太郎君    鬼木  誠君

      加藤 勝信君    小池 正昭君

      柴山 昌彦君    新藤 義孝君

      田野瀬太道君    長島 昭久君

      中谷  元君    平沢 勝栄君

      古川  康君    古川 禎久君

      細野 豪志君    森  英介君

      山口  壯君    若山 慎司君

      五十嵐えり君    大串 博志君

      岡田  悟君    奥野総一郎君

      黒岩 宇洋君    篠原  孝君

      柴田 勝之君    竹内 千春君

      津村 啓介君    藤原 規眞君

      山岸 一生君    吉田はるみ君

      阿部 圭史君    池畑浩太朗君

      和田有一朗君    福田  徹君

      福田  玄君    河西 宏一君

      浜地 雅一君    平林  晃君

      大石あきこ君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月四日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     若山 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  若山 慎司君     小池 正昭君

同日

 辞任         補欠選任

  小池 正昭君     西村 康稔君

    ―――――――――――――

十二月四日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八九号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(今後の議論の方向性)


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     ――――◇―――――

武正会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、今後の議論の方向性について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内となっております。

 質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて七分以内となりますので、御留意願います。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元さん。

船田委員 自由民主党、船田元でございます。

 まずは、この臨時国会におきまして、去る九月に実施されました海外派遣報告ができたことに感謝を申し上げたいと思います。

 また、国民投票法改正の方向性ということについて、各党の検討状況を先週の幹事懇談会で発表していただいたことは大変有意義であったと感じております。その結果、国民投票法改正の方向や広報協議会の新たな役割について、幾つかの方向性が出てきたなというふうに認識をしております。

 各党の共通点を列挙してみますが、まず、広報協議会が改正案の中身を、オールドメディアも含めて、正確に、平易に、しかも広く十分に行うことが、いわゆるフェイクニュースを駆逐する手段として極めて重要であるということが確認されました。これは、海外調査を行った欧州の例から見ても明らかであります。

 さらに、改正案の広報に当たっては、あらゆるSNS媒体に掲載をするほか、対面の説明会をきめ細かく実施することが求められるということも多くの党から指摘をされました。

 次に、広報協議会の新たな機能として放送、ネット等に関する一定の規制措置を付与すべきであるけれども、表現の自由とのバランスを考えますと、広報協議会も公権力の一つであり、広告主や記事の出し手に対して間接的な働きかけにとどめるべきではないかという意見が多かったと思います。

 具体的には、国民投票運動における放送CMに関しては、フェイクニュースや誹謗中傷あるいは賛否の量の極端な偏りを避けるために、放送局が自主的に行ういわゆるCM考査の実情を広報協議会と情報交換することによって、ファクトチェックの機能や賛否の量的バランスが保たれるのではないかということも議論されました。

 また、ネットの利用に関しては、広報協議会が、既存のファクトチェック団体やプラットフォーマーとの情報交換を通じて、出し手に対するプラットフォーマーの自主的な働きかけを促すことが可能ではないだろうか。さらに、予想される偽情報をあらかじめ列挙するという、いわゆるプレバンキングの手法も有効ではないかということが多くの党から指摘をされました。

 また、広報協議会が記事の出し手に対し、その記事が広告や意見表明であること、あるいは氏名であるとか所属政党などの表記を義務づけること、これはイギリスで行われているインプリントという制度でありますが、そういうことによって放送やネットにおける一定の秩序を保つことができるのではないかということも議論されました。

 なお、外国勢力の放送やネットへの介入は、禁止も含めて厳格な対応をすべきではないかということも多くの党が指摘をしております。

 以上のように、広報協議会におけるこれらの新しい機能を付与するために、広報協議会規程など関係諸規程の整備は不可欠でありますが、早い段階で衆参の認識や考え方を共有することも大変重要であるという議論が多くなされました。

 さらに、公職選挙法並びの投票環境向上に係る三項目につきましては、できる限り早期の法整備を実現すべきであるということも多くの党が指摘をしております。

 以上のように、各党の考え方や方向性もかなり煮詰まってきておりますので、これらについては、次期通常国会の早い段階、少なくとも前半において成案を得るということは十分に可能ではないかと考えております。

 なお、後半国会におきましては、まず、議員任期延長を含む緊急事態条項について、参議院も含めた各党合意を取り付けつつ条文化に着手していきたいと考えております。

 また、他の項目、例えば九条関係、自衛隊の存在をどのように規定をするかということ。あるいは、臨時国会の召集期限について、五十三条でございますが、いずれかの総議員の四分の一以上の要求があった場合、内閣は臨時会を召集しなければならぬとなっておりますが、現在はその期限が規定をされておりません。例えば二十日以内など、そういった期限を設けることはどうかということも議論になると思います。また、解散権の条件ということで、現在、内閣不信任案が可決された場合に解散を選択するという制度はございますけれども、七条解散も慣例として存在をしております。その七条解散のときに、どのような理由で解散をするのかを説明する義務をつけるのかどうかということも議論になるかと思っています。また、国政調査権の一層の充実、あるいは個人情報の保護、環境権などの新しい権利なども、改正をしたり追加をするという方向性が出てくると思っております。こういった議論を鋭意煮詰めてまいりたい、このように思っております。

 なお、これらの作業を前向きに進めるためにも、私が先週十一月二十七日の幹事懇談会で提案いたしました条文起草等に関する小委員会をこの憲法審査会の中に設置することは有益だと考えており、今後各党間で大いに議論していただきたい、このように思っております。

 以上です。

武正会長 次に、山花郁夫さん。

山花委員 立憲民主党の山花郁夫でございます。

 言うまでもなく、憲法改正のためには衆参両院での三分の二以上の賛成が必要です。近年、与党だけで三分の二を占めるということがありましたけれども、戦後八十年の歴史を見ると、これは歴史的に極めて希有な事態と言えます。一般的には、野党第一党が賛成していなければ、両院での三分の二の合意形成は難しいと言えます。法律と違って、憲法というのは、どんな考え方の内閣であったとしても、どの政党が政権を担ってもそのルールの下で政治を行うという、いわば与野党に共通するルールだけに、三分の二要件というのは、与野党一致で共通認識が形成されることが求められているものと言えます。

 国民投票法を制定するに際しては、このような事情を意識しながら立案したものでした。すなわち、将来的に憲法の改正が発議されることがあるとすれば、与党、野党の垣根なく共通認識を形成して成案を作成していくというプロセスが重要になることから、その手続法である憲法改正国民投票法も同様に、与野党で真摯な議論を行って共通認識を形成し、成案を得ていこうという努力がなされました。衆議院憲法調査特別委員会において、最終的には不本意な形での採決となりましたが、ぎりぎりまでその努力がなされたもので、船田会長代理はその当事者でもあらせられます。

 国民投票法成立当時から、国民投票の賛否の勧誘に関わるCM規制について議論がありました。私たちは、民放連が制定当時と異なる答弁を後にしたことから、問題意識を持っているところです。

 制定から時がたちまして、テレビ、ラジオはオールドメディアと呼ばれるようになり、テレビ、ラジオよりもSNSの方が社会的影響力は大きくなっており、偽・誤情報対策については当審査会でも議論をしてまいりました。さらに、諸外国において、選挙の際の外国からの干渉などの問題も、当審査会でも先日、衆議院の海外調査において報告を受けたところです。

 広報協議会については幹事懇談会で議論が進んでいますが、国民投票法については、その他にも議論すべき論点があると考えています。この点については、前回改正時に附則四条に盛り込まれているテーマもあります。附則四条には、法律の施行後三年を目途に、検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずることとなっているところ、既に三年以上経過しており、立憲民主党としては、今後の審査会でも附則に規定されたことについて重点的に議論がなされるべきと考えます。

 前回の改正時には、私と当時の新藤筆頭との間で相当な時間をかけて折衝を行いました。当時も、公選法並びの改正という比較的技術的な内容の改正が提案されていました。CM規制等の問題も同じ国民投票法の改正案であることから、採決を行うのであれば、立憲民主党の問題意識を盛り込めるものは改正法に編入してほしいという当方の立場との乖離を埋めることに相当なエネルギーを費やしたことが思い出されます。

 最終的には、附則に落とし込むことにより、双方の合意を形成することができました。対立した形での採決とならなかったことについては、当時の新藤筆頭幹事にも敬意を表したいと思います。ただ、その後に、附則で規定した事項についての議論が加速化することがなかったというのは残念に思います。

 国民投票法は手続について定めるものですが、どの党の案がベースになったものだという色がついてしまうと、改憲派に有利なルールだとか護憲派に有利なルールだというレッテルが貼られてしまって、手続の正当性に疑義が生じるおそれがあります。その意味で、私たちも立憲民主党としての法案の形で党内的には整理しているところでありますけれども、これを対案的に提出しようということではなくて、論点について考え方を提起しつつ、各党各会派に御理解をいただいてコンセンサスをつくっていきたいと考えております。将来的に多くの与野党のコンセンサスが形成されて憲法改正が発議されたという事態を想定し、国民投票で過半数を得ることを視野に入れると、どの党の案がベースになったという色がつかないことが大事だと思います。

 かつて、当時の中山太郎憲法調査会長とルクセンブルクに国民投票の視察に行ったことがあります。EU憲法批准の可否に関する国民投票でした。議会では圧倒的な多数が賛同していたにもかかわらず、国民投票の結果は僅差なものでした。政党色であるとか内閣に対する審判のような色がつくと思わぬ結果となるということをフランスで中山先生と、飛行機の中継地ですけれども、語り合ったことが思い出されます。

 このような事例を教訓として、国民投票での過半数を視野に入れると、発議される憲法改正案は、どこの党の主張であったということが希釈されていることが必要で、起草委員会というアイデアはこのような文脈で語られてきたはずです。現状ではそのようなアイデアになじむ状態ではないというだけではなくて、憲法改正の我が党案のようなものを主張されている党があるとすれば、これまでの憲法調査会以来の知見を踏まえたものとは言えず、国民投票での過半数獲得の阻害要因となるということは指摘しておきたいと思います。

 なお、議員任期延長に関連して、総選挙を全面的に停止しなければならないという立法事実を確認できない旨再三申し上げてまいりました。

 少し角度を変えて説明したいと思います。

 公立中学校で、男子生徒の髪型は丸刈りでなければならないという校則があったとします。法の下の平等という観点からすると、この校則を違憲無効なものであるとして、男子学生の髪型についての規制をなくすというのが適切な是正措置と考えられます。これに対して、女子学生の髪型も丸刈りでなければならないという校則を新たに作成して男子学生、女子学生の不平等を解消するという方策を取るべきでないことは言うまでもありません。

 そこで、大災害の場合です。東日本大震災のようなケースでも、八割強の地域は選挙の執行が可能でした。一割強の地域の執行が困難であることを理由として衆議院選挙を全面的に不能だと論じることは、比率において上回る地域の選挙権行使の機会を停止することにより平等を確保しようとするもので、女子学生を丸刈りにするのと同じように、投票の権利を侵害、制限する方向で平等を実現する方策と言えます。繰延べ投票の方法を活用することが適切な解決方法だということを改めて申し上げて、発言といたします。

武正会長 次に、馬場伸幸さん。

馬場委員 日本維新の会、馬場伸幸です。

 私は、初当選以来十三年間、この憲法審査会に身を置いています。ここまでの憲法審査会の活動を振り返ると、何も決められない審査会であると言わざるを得ません。いつまで自由討議の名の下で議論ばかり続けるのでしょうか。まとめる気がないとしか思えません。

 憲法審査会は議論して結論を出すのが使命であり、結論を出せるものから出していくべきです。我々が憲法改正案を発議しない限り、国民は主権行使の機会を奪われたままです。これでは、立法府の不作為と批判されても仕方ありません。議論を尽くした上で最後は結論を出すのが民主主義です。憲法審査会は、結論を出さずに議論を重ねる大学の講義とは違います。我々政治家は、決める政治を行わなければなりません。

 先日、結党時から憲法改正を目標に闘ってきた我々日本維新の会と、同じく、結党以来、日本国憲法の自主的改正を党是に掲げてきた自民党が連立を組みました。連立政権合意には、一、九条改正に関する両党の条文起草協議会を設置すること、二、緊急事態条項に関する両党の条文起草協議会を設置し、令和八年度中に条文案を国会に提出すること、三、可及的速やかに憲法審査会に条文起草委員会を常設すること、四、憲法改正の発議のために必要な制度について制度設計を行うことを明記しています。既に両党間では条文起草協議会が設置され、二回にわたり会議を開催するなど、合意の実現に向けて精力的に議論を重ねています。

 翻って本審査会はどうかというと、この三年間、その大半を緊急事態条項の議論に費やしてきました。自民、維新、国民、公明、有志の五会派ではおおむね方向性は一致しており、六月十二日の幹事会でようやく骨子案の提示にこぎ着けました。それでもまだ単なる骨子案、しかも幹事会での提示にとどまっています。

 もはや論点は出尽くしており、これ以上議論を繰り返す意義は見出せません。したがって、本審査会の下に条文起草委員会を速やかに設置し、残された課題である緊急政令の議論と併せて、この骨子案を土台に早急に憲法改正原案の作成に着手すべきです。

 十一月二十六日の参議院憲法審査会では、我が党の片山大介議員が条文起草委員会の設置を訴えましたが、国民民主党以外の会派からは案の定、反対意見ばかり示されました。周回遅れの参議院では当然かもしれませんが、本審査会においてさえ、先週の幹事懇談会で船田筆頭幹事から条文起草委員会設置の提案があった際にも、時期尚早だとの声が聞かれました。

 立憲を始めとする反対会派も、議論を前に進めることに抵抗している勢力と国民からみなされることは本意ではないはずです。是非御賛同をいただきたいと思います。

 加えて、一部会派は、衆参で主張が食い違っているという状況にあります。足下の党内もまとめられないようでは、改正原案の提出など夢のまた夢です。各会派とも衆参で歩調を合わせるよう、しっかり党内で調整していただきますよう、僭越ながらお願いいたします。

 我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最悪の状況にあります。しかし、危機的状況が目前に迫っているにもかかわらず、現在の九条の下では、集団的自衛権の全面行使など、主権国家として当たり前に認められていることができません。これでは、自分で自分の手足を縛っているようなものです。

 我が党は、九月十八日に「提言 二十一世紀の国防構想と憲法改正」をまとめ、一、九条二項削除による集団的自衛権行使の全面容認、二、国家固有の権利である自衛権の明記、三、国防軍及び軍人の地位の明記、四、文民統制の明記、五、軍事裁判所の明記、以上五項目について憲法改正を行うこととし、現在、党の憲法改正実現本部において条文案作りを進めています。

 喫緊の課題である九条をめぐる議論を加速させ、速やかに条文起草委員会において憲法改正原案の作成に着手すべきです。

 国民投票法については、次々に課題が出てくるからといって、全ての課題が解決してからと引き延ばしていては永遠に結論が出せません。まずは、倫選特において全会一致で可決された三項目について速やかに採決すべきであります。

 また、広報協議会規程については、事務的な項目が大半であり、いつまでも漠然と議論するのではなく、憲法審査会事務局及び法制局に速やかに原案を作成してもらい、成案を得るべきです。

 最後に、国民の命と暮らしや国家の主権を守るための基本法たる憲法に不断に向き合い、時代に即したものに作り上げていくことは、立法府に課せられた重大な責務です。

 衆参とも、いわゆる改憲勢力が三分の二を割り込み、立憲が憲法審査会長ポストを握っている現状では、発議への道が険しいことは重々認識しています。しかし、そのときに備え、我々は、九条及び緊急事態条項を中心に粛々と条文案の作成に着手しており、一刻も早い国民投票の実施に向け、改憲論議の先頭に立っていく覚悟であることを申し上げて、発言を終わります。

武正会長 次に、浅野哲さん。

浅野委員 本日は、今後の憲法審査会の進め方について、来年の通常国会を見据えつつ意見を申し上げます。

 第一に、来年以降も憲法審査会の定例日には原則として審査会を開催することを基本とすべきと考えます。

 今国会もほぼ毎週の開催が実現したところですが、今後も、憲法に関する議論を一過性とするのではなく、国会による継続的な自己点検プロセスとして位置づけ、継続することは重要な役割だと考えます。来年以降もこの流れを後退させることなく、憲法論議の日常化を図ることが国民の信託に応えるものであると考えます。

 第二に、偽情報対策やインターネット、SNSにおける情報の偏在への対応については、引き続き重点テーマとして取り組むべきと思います。

 先日の海外調査や有識者の意見陳述でも明らかになったとおり、フェイクニュース、マイクロターゲティング、フィルターバブルなどは、民主的な意思形成過程そのものをゆがめ得る課題です。他方で、表現の自由や知る権利を保障する憲法の趣旨を踏まえれば、国家が個々の表現内容に過度に踏み込むことには慎重でなければなりません。

 したがって、規制強化すべきか否かという二項対立論ではなく、プレバンキングやインプリント表示、既存メディアとの連携強化、そしてプラットフォーム事業者の自律的取組と一定の法的義務づけをどう組み合わせるかという多層的なアプローチを今後も継続して検討していく必要があります。

 第三に、こうした情報空間をめぐる議論を踏まえた上で、国民投票法の見直しについて申し上げます。

 国民投票法や選挙制度は民主主義を支えるインフラであり、そのルールの信頼性こそが憲法改正手続の正当性の前提となります。その上で、来年の通常国会に向けては、一定の取りまとめを行うべき論点と、継続的に調査検討を深めていくべき論点を意図的に仕分けて議論を進めることを提案します。

 前者、すなわち来国会で取りまとめを目指すべき論点としては、投票日前一定期間における政党等によるネットCMの取扱い、広報協議会による公的広報をネット空間でも確保する仕組み、広告主の表示義務や外国資金の関与を排除するルールなど、透明性と公正さを高めるコア部分が挙げられます。これらは、表現の自由との調整に十分配慮しつつも、比較的幅広い合意が得られやすい領域であり、来年の通常国会において部分的であっても改正案の形にまで議論を前進させるべきテーマであります。

 他方で、アルゴリズム規制やマイクロターゲティングの規制の在り方などは、技術の変化が速く、各国でも模索が続いている分野であり、中期のアジェンダとして位置づけ、海外動向や専門知見を踏まえつつ検討を重ねることが現実的であろうと考えます。

 第四に、選挙困難事態における国会機能維持条項の検討について申し上げます。

 自然災害や感染症の蔓延、武力攻撃事態などにより予定どおり選挙を実施できない場合に国会の機能をいかに維持するかという課題は、民主主義の根幹に関わる問題です。

 先国会において、与野党五会派の間で検討してきた骨子案が幹事会の場で共有されました。今後は、この骨子案を土台として、必要最小限の任期延長にとどめることや厳格な発動要件と期間の限定を明確にすることなど、権力の延命装置とならないための歯止めを組み込んだ条文化作業へと段階を進めるべきです。

 これは、国民主権と議会制民主主義を守るための防波堤を平時のうちに用意しておく作業にほかなりません。来年の通常国会の中で少なくとも一度は具体的条文案のたたき台をテーブルにのせることを共通の目標として共有したいと考えます。

 第五に、これらの国民投票法改正や選挙困難事態条項の検討を前に進める上で、衆参両院の憲法審査会の連携を強化する必要があります。

 国民投票制度や国会議員の任期に関わるルールは、本来、二院制の下で整合的な設計が求められる分野であります。次期通常国会の早い段階で、両院の憲法審査会長及び幹事の間で、優先的に議論すべきテーマや論点整理の方向性について認識の共有を図るべきと考えます。

 第六に、憲法改正条文案の起草に向けた小委員会の設置について、建設的に議論を進めるべきと考えます。

 起草委員会は、これまでの審査会における調査や議論内容を踏まえ、論点を整理し、条文素案として見える化するための技術的、準備的な機能を担うべきと考えます。例えば、国民投票法の一部改正や選挙困難事態における国会機能維持条項といった一定程度議論が積み重ねられた論点については、起草に向けた条文案を形成するプロセスにも堪え得るものと考えます。また、そうした起草作業そのものが、国民の皆様に憲法改正の具体像と論点を分かりやすく提示し、冷静な判断材料を提供することにもつながります。

 結びに、来年の通常国会においても、現行憲法の規範力を維持しつつ、時代の変化に対応した制度整備を進めるため、本日申し上げたような具体的ステップを与野党を超えて前に進めていきたいと考えております。一層の議論の深化をお願い申し上げ、私の意見表明といたします。

 以上です。

武正会長 次に、河西宏一さん。

河西委員 公明党の河西宏一です。

 私からは、今後の議論の方向性に関連し、以下三点について申し述べます。

 第一に、公明党の憲法改正に関する姿勢についてであります。

 我が党は、本年の参院選重点政策で、いわゆる選挙困難事態など緊急事態における国会機能の維持について、緊急集会が参議院の基本的かつ重要な権能であることを踏まえながら、国会議員の任期延長ができる要件、手続をどう厳格かつ明確に定められるのかを含め、更に議論を積み重ねるとし、また、憲法九条と自衛隊については、加憲は検討されるべきとの立場から、憲法九条一項、二項は今後とも堅持するとした上で、我が国最大の実力組織である自衛隊について、自衛隊法等の法律だけではなく、憲法が定める統治機構の中に位置づけることについて検討を進めるとしています。

 その上で、我が党の斉藤鉄夫代表は、先週の全国県代表協議会におきまして、現実的な外交防衛政策と憲法改正を政策の柱の一つに据えるとし、憲法改正に向けては、緊急事態条項の創設や自衛隊の憲法上の位置づけについて議論を加速させると明言しました。これを踏まえて、党憲法調査会においても、衆議院、参議院の垣根を越えた議論を前に進めるべきだと考えております。

 第二に、先週の幹事懇で議題となりました、国民投票法に関する広報協議会の事務及び公選法並びの投票環境向上に係る法整備についてであります。

 我が党の調査会においても、やはり、ファクトチェックは、広報協議会が分かりやすい正確な広報に努めるなど、間接的な関与が望ましいことは一致をしております。なお、広報の一環として行うプレバンキングにつきましては、その有効性を認めつつも、誤情報やフェイクニュースを例示する際、どういった内容を選定するのか、その基準も含めて慎重な検討を要するとの意見がありました。

 広報協議会による広報活動は、客観的かつ中立的であるとともに、憲法改正案に対する賛成意見、反対意見の分量、スペース、放送時間は公平かつ平等であることが法的に義務づけられております。この点に照らし、適切な手法を模索しなければなりません。

 また、インターネット広報やタウンミーティングなどの説明会について、広報実施規程を整備する必要がある点、加えて、公選法並びで投票環境を整備するいわゆる三項目案の法改正について、他の議論に引きずられて先送りするのではなく、立法府として結論を出す必要がある点も、党の考え方として確認をいたしました。

 ただし、参議院の憲法審査会では衆議院ほど具体的な議論に至っていない実態から、衆参で温度差があることも事実であります。この点については、党内議論を加速させるとともに、参議院の議論の深化を期待したいと思っております。

 第三に、条文起草等の小委員会に関する御提案についてであります。

 先週十一月二十七日の幹事懇において、自民党の船田幹事より、衆議院の憲法審査会の中に条文起草等に関する小委員会を設置してはどうかとの御提案がありました。

 当該小委員会は、自民党の方を座長として基本的に幹事会派で委員が構成され、オブザーバー会派も折に触れて参加をすることができる、ただし、議論のテーマは、議員任期延長を含む緊急事態条項や国民投票広報協議会の規程を始め、その他のテーマも視野に幹事会派で決めるとの御趣旨であったと理解をしております。

 建設的で生産的な憲法議論そのものは全く否定をするものではありません。その上で、この在り方について、二点、衆議院法制局に確認をさせていただきます。

 まず、従前の小委員会は幅広い会派で委員を構成されてきたと承知をしておりますが、どのような経緯等を踏まえたものなのか。また、小委員会の設置という憲法審査会の重要な意思決定に係る議決について、野党第一党が反対するなど賛否が大きく分かれた先例はあるのか。御答弁をお願いいたします。

橘法制局長 河西先生、御質問ありがとうございます。

 まず、二〇〇〇年一月の衆議院憲法調査会設置以降の衆議院での小委員会設置の経緯について御説明申し上げます。

 憲法調査会時代には、日本国憲法に関する個別論点についての専門的、効果的な調査を進める、このような観点から、調査三年目に入った二〇〇二年二月、委員十六名から成る基本的人権小委員会や政治機構小委員会など、四つの小委員会が設置されております。

 また、憲法調査特別委員会になってからも、自民、公明及び民主党から提出された二つの国民投票法案を集中的に審査するといった観点から、二〇〇六年十月、委員十四名から成る法案審査小委員会が設置されております。

 いずれの小委員会でも、幹事又は理事会派のほか、オブザーバー会派を含めた小委員の割当てがなされたところでございます。

 次に、設置議決の際の各会派の賛否の状況ですけれども、いずれも当時の共産党及び社民党は反対されておりますが、与党会派はもちろん、野党第一党の民主党など幅広い会派の賛成の下で設置されたところでございました。

 以上、事実関係について御答弁させていただきました。

河西委員 ありがとうございました。

 今御答弁がありましたように、従前の小委員会については、委員を幹事会派に限定した先例はなく、設置も与野党の筆頭間の合意を経た上で行われていたものと理解をし、それが当審査会の伝統であると承知をしております。

 条文起草を念頭に置いた小委員会は、憲法改正の具体的なイメージを国民に示す機能を持ちます。そして、国会が有する憲法改正の発議権は、内閣総理大臣の指名権、法律の議決権、財政の監督権、条約の承認権、弾劾裁判所の設置権と並ぶ国会の主要な権能であり、衆参総議員の三分の二という幅広い合意を得なければ発議できない大変重たい権能であります。これらの伝統や理念を十分踏まえた上で、小委員会の在り方や設置について、後世の評価に堪え得る、見識に基づいた御議論また御判断を期待申し上げます。

 まずは、我が党といたしましては、与野党の両筆頭の御議論を見守りつつ、その上で主体的に判断をしてまいりたいと考えております。

 以上です。

武正会長 次に、大石あきこさん。

大石委員 れいわ新選組の大石あきこです。

 この憲法審査会ですけれども、こんなの毎週開いちゃいけないですよ。今、高市総理の発言で国際的緊張も高まっていますので、そういうところで毎週毎週憲法を早く改悪するんだみたいな話をして余計に国際的緊張を高める、そのセンスが分かりません。

 先月、高市総理が台湾有事は存立危機事態の可能性が高いとおっしゃっていて、そのことがずっと今なお尾を引いていて、今なお撤回されていません。これは早く撤回しなきゃいけません。元内閣法制局の長官も、存立危機事態の可能性というのは法的に無理なんだということをおっしゃっていますよね。存立危機事態の可能性が高いというのは集団的自衛権の行使を前提にしているんですけれども、では、誰なのか、台湾と日本を考えても法的に無理である、日本とアメリカの集団的自衛権行使を考えても法的に無理であると元内閣法制局の長官がおっしゃっていますので、そういったことを撤回しないという非常にまずい状況の中で、こういった改憲のために毎週毎週開催するというのはやってはなりません。

 前向きに進めようじゃないかと言われている国民投票法も、この国民投票法というのは正式名称は日本国憲法の改正手続に関する法律で、憲法を変えるための法律ですよね。そんなことを毎週議論するべきではないですよね。特に、今、国際的緊張が高まっていて、高市総理が緊急事態条項の緊急政令までやり出す、憲法九条まで変える、そういう文脈の中で絶対開いてはいけません。

 そして、そういった緊急事態条項で独裁条項を入れたいとか憲法九条を変えたいとか、そういうことが目的化しちゃっているから、いろいろななし崩しというものが起きます。

 通常国会が六月まで開かれていましたけれども、憲法審査会も毎週のように開かれてしまいましたが、そのときも、六月十二日、最終盤ですね、いきなり改憲五会派が衆参まとまっていないのに改憲骨子案を幹事会で出してくる。七十日限定説という参議院の緊急集会について、その説がまとまらない中で生煮えのまま出してくる。そういったこともなし崩しだから行われましたし、先日十一月二十七日に憲法審査会の幹事懇談会という、こういった開かれた場ではなく少しクローズドなんですけれども、そういったところの場で、SNSの偽情報が主なテーマだったのに、最後のその他という議題のところで、しれっと自民党の幹事から、改憲の起草委員会をつくりたいんだ、オブザーバー理事は排除したいんだという提案をいきなりしてきて、そういうなし崩しでやり逃げみたいなやり方というものは、やはり改憲を目的化しているからこそこういったやり逃げが起きるのであると思いますので、改憲を目的化したことはやめてください。

 そして、二〇二五年の通常国会でも話されてきた改憲の中身は、基本的には衆議院の任期延長ですね。これは既に違憲提案だということは論理的に出し尽くしております。それを何度も何度も、馬場さんがおっしゃるには十三年間もそういった論理的に破綻して違憲と確定しているものをやり続けること自体が問題なのであって、何も進まない会というよりは、そういった違憲提案はやめてください。

 質問ですけれども、会長にお伺いしたいです。

 先ほど言いました十一月二十七日の幹事懇談会で、その他という議題でしれっと改憲の起草委員会をつくりたいんだということを自民党の幹事から出されたんです、オブザーバー理事も入れない形でと。オブザーバー理事は、れいわ新選組の大石、私もですから、なぜそんな排除したものをしれっと最後の議題で言って、それがそのまま通ってしまうんじゃないかと非常に不安になったんです。その場でも会長に、これはどういう意思決定で決めていくんですかとお伺いしたら、これはあくまで提案ですのでという言葉を繰り返されたと記憶しております。

 これは大問題だと思うんですけれども、本日申し上げた文脈で毎週開いてはいけない、国際的緊張が高まっている情勢の中で、高市総理の言う緊急事態条項や改憲をどんどん進めるための小委員会をオブザーバー理事を排除で進めていく、こういったことをどこで意思決定で決めるおつもりか、会長にお伺いしたいです。

武正会長 大石委員の質問でございますが、提案があったということだけ幹事懇の場では申し上げております。それ以上でもそれ以下でもございません。

大石委員 私としては、どういう意思決定で決まるか。例えば、私は憲法審査会も出ているし、オブザーバー理事として幹事会、幹事懇も参加させていただいておりますが、その場で議論されて決まるのならば、どういう決め方をされるのかとか、もうすぐ決まってしまいかねないとか、まだ分かるわけですよ。でも、その他で出されて何か御意見はありますかと言われて、そんなの反対に決まっているじゃないですかというのが先週で、でも、これはどうやって決めるんですかに対しては、今武正会長がおっしゃったようなあくまで提案ですのでを繰り返されたんです。でも、それではやはり困るんですよ。国民にとっても困るんですよ、大変なことなので。

 緊急事態条項の改憲が進んでしまうのかというのは非常に関心事なので、その意思決定プロセス、どうやって決めるのかを教えてください。

武正会長 申し上げますが、今日もそれぞれまたこれについて触れられて、各党の意見も述べられている。憲法審査会の場というのは丁寧に、そしてまた合意形成を重んじるということで進めているということでございます。

 以上です。

大石委員 終わります。

武正会長 次に、赤嶺政賢さん。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私はこれまで、憲法審査会は動かすべきではないと繰り返し強調してきました。それは、何よりも国民が改憲を求めていないからです。にもかかわらず、国会が改憲議論を喧伝し、国民の機運を盛り上げるというのは本末転倒であり、許されません。

 問題は、国民の意思とは無関係に高市政権が改憲議論をあおっていることです。

 高市首相は所信表明演説で、自身の総理在任中に改憲発議を実現するため議論を加速するよう国会に呼びかけました。さらに、代表質問への答弁では、少しでも早く改憲の国民投票が行われるよう取り組むと述べました。憲法尊重擁護義務を負う総理大臣が国会の議論に介入し、国民に改憲を押しつけようというものであり、幾重にも許されません。

 八年前、安倍首相は、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたいと語り、期限を区切って改憲を推し進めようとしました。岸田首相も石破首相も任期中の改憲を掲げてきました。その下で自民党は憲法審査会を動かし、改憲議論を前に進めようとしてきました。しかし、どれだけ自民党が改憲を叫び、どんなに憲法審査会を動かしても、改憲を望む国民の声は大きくならなかったのです。この事実を直視すべきであります。連立政権合意に基づいて条文起草委員会を設置しようとする動きもありますが、国民が望んでいないにもかかわらず改憲議論を強引に進めることは絶対に認められないことを強く指摘しておきます。

 今、国会でやるべきは、改憲の議論ではなく、憲法の原理原則をじゅうりんする政治を正すための議論です。

 看過できないのは、台湾有事をめぐる高市首相の発言です。高市首相は予算委員会で、台湾海峡で米中が武力衝突すれば、どう考えても存立危機事態になり得ると答弁しました。日本が攻撃されていないにもかかわらず集団的自衛権を発動してアメリカとともに中国に対し武力を行使するというもので、断じて容認できません。

 台湾問題は当事者間の話合いを通じて平和的に解決されるべきものです。中国による軍事的威嚇や武力の行使は当然許されません。同時に、日本やアメリカが軍事介入することは絶対にあってはなりません。日本政府はこれまで、いかなるケースが存立危機事態に当たるのか、特定の地域を挙げて説明することはしてきませんでした。高市首相の答弁は、従来の政府見解からも逸脱し、地域の対立と緊張を高めるものであり、速やかに撤回すべきです。

 重大なのは、台湾有事を想定して日米一体での軍事体制の強化が日本全国で進められていることです。最も顕著なのが沖縄です。

 防衛省は、沖縄本島から宮古島、石垣島、与那国島の離島に至るまで自衛隊のミサイル部隊の配備を進め、敵基地攻撃が可能な長射程ミサイルの配備も検討されています。相手国の艦船や戦闘機を攻撃するために、殺傷能力のある攻撃型無人機の大量導入も進められています。

 米軍も沖縄で体制強化を進めています。海兵隊は、南西諸島の島々を移動しながらミサイルで艦船を攻撃する沿岸海兵隊を発足させました。九月に行われた国内最大級の日米共同訓練、レゾリュート・ドラゴンでは、石垣島で米軍と自衛隊のミサイルシステムを連携させて戦闘訓練が行われています。

 こうした下で、県民は沖縄が再び戦場になるのではないかという危機感を強めています。一たび有事になれば真っ先に攻撃の対象になるのは米軍基地や自衛隊基地が集中する沖縄であり、犠牲になるのは県民です。沖縄に戦火を呼び込む動きは断じて容認できません。

 政府がやるべきは、対立と緊張を高める軍備強化ではなく、憲法九条に基づく外交努力に全力を尽くすことです。九条は、国家間の争い事を絶対に戦争にしないことを求めています。軍事に軍事で対抗すれば際限のない軍拡競争と緊張の激化を招き、行き着く先は戦争という破滅の道でしかありません。戦争ではなく平和の準備を進めることこそ私たち政治家の責任であり、そのための議論こそ予算委員会や各常任委員会などの場で大いにやるべきだと強く申し上げて、発言を終わります。

武正会長 次に、北神圭朗さん。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私からは、国民投票における偽情報対策と表現の自由との関係について申し述べたいと思います。そのために、諸外国における外国勢力による介入への対応事例を示し、その背後にある考え方を浮き彫りにし、最後に、国民投票広報協議会が偽情報に対して、あえてファクトチェックという言葉は使いませんが、事実を示す行為について論じたいと思います。

 言うまでもなく、表現の自由が極めて重要なのは、個人の自己実現のみならず、選挙など、民主的な意思決定の健全性を守るために自由な情報に基づく対話が不可欠だからであります。その前提には、公の場で自由に議論することにより必ず真理が虚偽に勝ち、最も合理的な結論に到達するという、信念までいかなくても強い期待があるからだと思います。

 しかし、一方で、巨大プラットフォーマーの運営するSNS等により、この前提、この信仰、この期待が圧倒的な情報量を前にして危機に瀕している現実にも目を向ける必要があります。本当に真理が虚偽に勝っているのか、合理的な結論に至っているのか。実際、各国の多くは、自分たちの選挙等が外国勢力に操作されていることを認め、これに対策を打ってきています。その際、偽情報を通じた外国勢力の介入を国家安全保障の問題として捉えた上で、表現の自由を尊重しつつも一定の制限をかけているように見受けられます。

 例えば、米国では、二〇一八年九月に、連邦レベルの選挙における外国政府等の干渉に対して制裁を課す大統領令が発出されています。選挙結果が出てから四十五日以内に、偽情報の発信など、当該選挙に干渉があったかどうかを国家情報長官が調査し、その後四十五日以内に司法長官と国土安全保障長官が制裁発動の是非を判断することになっています。制裁対象者は米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止されます。

 また、英国では、二〇二三年七月に制定された国家安全保障法において初めて外国干渉という犯罪が設けられました。これにより、投票や言論の自由といった民主主義に不可欠な基本的権利を妨害する行為が違法となりました。同法第十六条は、外国勢力が関与する選挙犯罪に対して、通常の刑罰ではなく、起訴状による正式裁判という重たい刑罰を適用することを規定しています。

 カナダやオーストラリアにおいては、外国勢力による選挙過程を妨害する試みを阻止するため、警察、諜報機関、外務省などがメンバーとなったタスクフォースを組織しています。

 さらに、フランスでは、二〇一八年に情報操作との闘いに関する法律を制定しています。これは、選挙の公正性を確保し、外国だけではなく国内勢力による情報操作をも抑止することを目的に、選挙期間における偽情報の拡散防止制度及び即時停止制度を整備するものです。事例が公表されていないので適用例の数はよく分かりませんが、法律上、虚偽情報の拡散に対して裁判所が差止め命令を出すことが可能となっており、選挙中という期間に限って表現の自由を平時より制限できる内容となっています。

 なお、偽情報対策とは直接関係ありませんが、国家安全保障上、選挙をどのように位置づけているのかという観点から、もう一つだけ米国の例を挙げます。

 米国では、国土安全保障省という役所が、元々、重点的に保全する対象として、軍事産業基盤や金融サービス、政府施設等、十六分野を重要インフラとして指定しています。それが二〇一七年には選挙そのものを重要インフラに指定したのです。これにより、同省は、要請があった場合、選挙管理当局に対してサイバーセキュリティー支援等を優先的に提供できるようになりました。

 我が国では、そもそも選挙に対するこういった発想が希薄のように思います。

 これら諸外国の背景にある考えを総括すれば、確かに、公正な選挙を確保するために、表現の自由は議論等を通じて合理的な結論を導き出す極めて重要な基本的権利ではある。しかし、特に外国勢力からの偽情報は、その敵対的な意図とSNS等の圧倒的拡散量によって本来の国民の声をもあるいは左右し、あるいはかき消し、ひいては投票結果をゆがめることもあり得る。したがって、外国勢力による偽情報の流布を一定制限することは、逆説的に国民の表現の自由並びに健全な民主主義過程という極めて重要な公共の利益を外国から守るという安全保障上の要請である。こうした考え方から、表現の自由を制限する際に用いられる明白かつ現在の危険の基準を十分に満たしていると考えているのではないでしょうか。

 これは、寛容な社会を守るためには、不寛容な、寛容でない人たちに対しては寛容であってはならないというカール・ポッパーの逆説をほうふつとさせる論理展開です。

 最後に、こうしたことからいえば、国民投票広報協議会が外国からの偽情報に対して客観的事実を指摘することは表現の自由との関係からも十分許されるのではないかと考えます。

 というのも、今申し上げたとおり、諸外国の事例では、刑罰や差止め命令といった規制でさえ表現の自由と民主主義を守るという安全保障上の観点から一定の正当化がなされています。そうであるならば、削除や罰則を伴わず、あくまで客観的事実の提示にとどまる活動は、より穏やかな手段として一層許容される余地が大きいと考えられるからであります。

 いずれにせよ、今後も本審査会で、諸外国の事例を踏まえ、偽情報対策について安全保障の観点からも検討を加えるべきであることを訴えて、発言を終わります。

    ―――――――――――――

武正会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言がある方は、名札を立てていただきたいと思います。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。

 本日は、今後の議論の在り方として、国民投票広報協議会の役割とその限界、また、広報協議会関係の法規の整備、また、令和三年の国民投票法改正時の検討条項に対する考え方を中心に発言いたします。

 御承知のとおり、SNS、ネット上のフェイクニュースは選挙を始めあらゆる場面で問題となっており、その巧妙化も指摘されています。しかし、国家の基本法たる憲法を改正するための賛否を問う国民投票の公平性、公正性が害されるようなことはあってはならず、いわゆるアテンションエコノミーのビジネスモデルで金銭的利益を得る目的でフェイクニュースあるいは偽・誤情報を流布するという行為は、選挙という局面のみならず、憲法改正の国民投票という局面においても防ぐべきものと考えます。

 また、フェイクニュースへの対応も含めて、広報協議会が果たす広報の役割は重要であります。具体的には、広報協議会が、信頼できる国会に設置される公的な機関として、憲法改正に関する正確で分かりやすい情報を広く発信していくことが求められます。

 この点につきましては、既に本審査会においても、放送、ネットに関する議論として、広報協議会に、インターネットの適正利用に関するガイドラインの作成とその公表、プラットフォーム事業者からの報告聴取、民間ファクトチェック団体との連携といったことを行わせてはどうかなどの諸提案がなされてまいりました。これらの提案については、現行法で規定されております広報協議会の所掌事務の広報の範囲、すなわち、広報の範囲でどこまで対応することが可能なのかを意識して議論を進めていくことが肝要であります。

 一方、広報協議会は、国会から憲法改正の発議がなされた後に設置される臨時かつ期間限定の組織であります。そのため、そこに置かれる事務局も同様に期間限定のものとなります。これまで想定されてきた広報の枠を超えるような高度な専門性が求められる業務を主体的に行うことが果たして可能なのかという観点からの議論も必要となってくるものと思います。

 また、広報協議会が実際に機能するためには、国民投票法十七条により、その運営の細則、事務局組織などの事項を定める規程を含む関係法規を整備する必要があります。広報協議会に置かれる事務局については広報協議会自体の権限や役割に連動してその体制また定員が定まることとなりますが、議論はまだそこまでには至っておりません。

 関係法規の検討に当たっては、衆参の足並みをそろえることも大切なことでありますが、事務的また技術的なものも多いため、ひとまず衆議院側で進めることが可能な部分については作業を進めていければと思います。

 次に、令和三年の国民投票法改正時の検討条項では、検討課題として、公選法並びの投票環境整備と、国民投票の公平公正の確保の二点が示されております。

 このうち、投票環境整備については、公選法では対応済みのいわゆる三項目に関して、国民投票法も同様に改正することに異論はない旨の発言が各会派からもこれまでにございました。この三項目については、自民、維新、公明、有志の四会派で三年前の令和四年に共同提出した法案があり、本審査会で趣旨説明を聴取いたしましたが、昨年の衆議院の解散で廃案となっております。各会派とも内容に異論がなければ、速やかにこの法案を再提出し、成立させることが必要なものと考えます。

 いわゆる緊急事態条項についてでございますが、これまでも多くの議論がなされ、そして、六月十二日には五会派共同提案が幹事会で配付されました。残された論点もまだございます。選挙困難事態の認定に当たっての広範性、長期性の二要件の具体化など、今後更に議論を進めていくべきと考えます。

 以上でございます。

松尾委員 立憲民主党の松尾明弘です。

 私からは、まずは、国民投票法の改正に関連して、立憲民主党の見解を追加で申し上げたいと思います。

 先ほど来各委員からも御指摘がありましたけれども、近年新たに顕在化している論点として、外国勢力による国民投票に対する不当な干渉を排除するための制度的な措置が挙げられます。先週の幹事懇談会においても、自民党の平将明議員から外国勢力が選挙や国民投票に影響を与え得る具体的な事例について解説がありました。こうした問題を踏まえ、国民投票法上どのような規制や歯止めを設けるべきか、我が国の民主制度を守る観点から早急に議論を深める必要があります。

 外国勢力の目的は、改憲を推進することでも阻止することでもなく、国内の分断をあおり、民主主義に対する国民の信頼を揺るがすことにあると指摘されています。その意味でも、この問題を未解決のまま国民投票を実施することは我が国社会に重大なリスクをもたらすと言わざるを得ません。

 その上で、本日の議論で自民党の船田会長代理から提示されました条文起草等に関する小委員会の設置についても触れたいと思います。

 条文起草委員会とは、本来、憲法審査会において改正すべきテーマや方向性に一定の共通理解が形成された後、その合意に基づいて具体的な条項案を作成するための機関であるべきです。ところが、今回提案されたように、対象となる条文、条項を広く列挙し、その中から必要の要否を検討するといった方法を取るのであれば、審査会の本来のプロセスを逆転させ、合意形成よりも先に条文作成作業を進めようとするものであって、適切なプロセスとは言い難いと考えます。まずは審査会として、どの論点について改憲が必要とされるのか、その妥当性をきっちりと議論し、共通認識を形成することが不可欠です。

 議員任期延長に関しては、参議院の緊急集会が存在する以上、改憲を正当化する理由とはならないと考えます。さらに、議員任期の延長は、国民の選挙権という重大な権利を侵害し、国民主権原理にも背くものであると考えられます。したがって、議員任期延長を目的とするような条文起草委員会を直ちに設置することは認められないと考えております。

 なお、仮に、いつか何らかの条文作成について合意された段階において条文起草委員会を組成するとしても、いわゆる中山方式に従い、少数意見を反映させることを重視して、この構成員には現在幹事会にオブザーバーとして参加されているような会派の方々も参加するべきであることを付言いたします。

 一方、本憲法審査会におけるこれまでの議論においては、憲法解釈をゆがめ、立憲主義の理念を軽視したような発言が散見されることを懸念しております。立憲主義とは、言うまでもありません、政治権力の独裁や恣意的な支配を憲法や法律によって統制しようという原理であって、民主主義国家の憲法において不可欠な前提となるものです。したがって、この憲法審査会で議論するに際しては、立憲主義に基づきこの機能を一層強化する、若しくは、人権保障をより一層実現するといったテーマを優先して行うべきです。

 具体的には、以下のようなテーマが挙げられると考えております。

 第一は、衆議院の解散権についてです。

 選挙で選ばれた議員の任期を強制的に終わらせる以上、そこには相応の正当な理由が求められます。憲法や法律のどこにも総理の専権事項とは明記されていないにもかかわらず、政権の都合で恣意的に行使されている現状は是正すべきです。

 なお、この点に関し、立憲民主党は、本年、解散権濫用防止の法案を提出しております。

 第二に、憲法六十二条が定めている国政調査権についてです。

 国権の最高機関としての国会の役割は、立法にとどまらず多岐にわたります。国政調査権は議会による行政監視の要ですが、現行の予備的調査制度には強制力もなく、実効性に課題が残っています。また、調査権の発動が多数派の意向に委ねられている。この現状の是非についても議論が必要です。

 第三に、LGBTQの方々の人権保障、特に、同性婚に関しては、高裁レベルでも違憲判決が相次いでおり、唯一の合憲判決の中でも立法府の対応が求められております。個人の尊厳を守り差別を解消するための法的措置は社会的な要請も極めて高く、喫緊の課題です。

 第四に、憲法九十二条、地方自治についてです。

 住民に身近な行政は地方が担うという補完性の原理に立ち返れば、条例制定権や財政自主権といった自治の基盤に対し法律による一律の縛りが適切か否か、立法事実に基づいた再検討が必要です。

 以上のように、立憲主義の深化が必要であるような論点、人権保障のための論点、新しい人権、そういったものに関する論点こそ本審査会が優先的に取り組むべき課題であると申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 本日のテーマにあります今後の議論の方向性について、まず私の考えを述べた上で、立憲民主党の山花幹事に一点質問させていただきたいと思います。

 まず、我が党としては、九条改正、緊急事態条項の創設、統治機構の改革、教育の充実などを憲法改正の主要テーマと位置づけております。このうち、九条改正と緊急事態条項については先般の自民党との連立政権合意書にも盛り込ませていただきました。九条改正については、我が党が九月にまとめた提言の中でも言及しております。

 戦後八十年を経て、国際情勢、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変化しております。その中で、戦後の憲法制定時とは全く状況が異なってしまったことを踏まえますと、我が国の平和と主権を守るためには我が国の国防体制を見直さなければいけないと思っております。特に、自衛力、抑止力を明確にするために、憲法にフルスペックの集団的自衛権の行使や国防軍などを明記し、現実的な憲法を構築すべきと考えます。

 また、議員任期延長を中心とした緊急事態条項については、自民、維新、国民、公明、有志の五会派では方向性を一致しておりまして、六月に骨子案が幹事会において提示されました。さきの常会では、国会の機能維持という観点から、臨時会召集期限の明記や、先ほど松尾幹事からもありました解散権制限についての議論もされました。これらについて立憲民主党さんも憲法改正の検討の必要性について御発言されました。

 その中で、山花幹事にお伺いさせていただきます。

 一巡目で馬場幹事からもありましたが、条文起草委員会ではこの二つのテーマを含めた幅広いテーマを議論することができると思っております。条文起草委員会を設置して立憲民主党が御提案のテーマを含めて是非とも一緒に議論に加わっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 なお、残り二分半ほどありますけれども、御答弁は一分程度でまとめていただきまして端的に答えていただければ、後半戦にまた山花幹事のお言葉をいただいてお話をさせていただきたいと思いますので、一分程度にまとめていただければ幸いでございます。

山花委員 先ほど少し古いルクセンブルクのお話をいたしましたけれども、何年前でしたか、英国のEU離脱であるとかイタリアの国民投票など海外調査をしてきて、政党とか内閣の審判みたいな色がつくといけないというのは当審査会で当時は共通認識だったと思います。

 私は、もし国民投票まで見据えたときには、例として適切かどうか分かりませんが、賀詞奉呈のように、例えば、御在位何周年でお祝いしましょうねというのを各党各会派が申し合わせて、ただ、その書いた文章は誰が書いたのか分からないみたいな形にすることが適切だと思っています。ですので、現状はまだそういうところまで、各会派がこれでいきましょうということにはなっていないので、時期尚早であるということを申し上げているところです。

池畑委員 ありがとうございます。

 今幹事からお話がありましたこれまでの審査会における議論を通じて条文起草委員会で取り扱うテーマは具体的に提示されておりますので、機は熟していると我々は考えております。その中で、憲法は国の最高法規であると思います。憲法の正統性と安定性を確保するためにも、国民の皆様の合意と信頼を得て改正を行うことが必要不可欠であると考えております。

 速やかに条文案を国民の皆様にお示しして、幅広い国民の皆様の理解を、そして参加を促すという次のステップに進んでいきたいと思っておりますので、しっかりと議論を進めていきますし、この委員会にも参加していただきたいと思います。

 以上で私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

福田(徹)委員 国民民主党、福田徹です。

 今日は、今後の憲法審査会の進め方について、成長するという視点で意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、十八年前に医師になったばかりの頃は何にもできませんでした。一方で、テレビドラマでは私と同じぐらいの年齢の若い救急医がすごい手術をして命を救っている。私は早く一歩でも近づきたいと、毎日毎日練習練習練習。練習したいけがの患者さんが来ないので、目の前に患者さんがいると想定して、想像しながらまねごとをして練習しました。そうやって、今日よりあした、あしたよりあさって、一日一歩必ず何か成長できることを大切に十八年間過ごしてきたつもりです。

 日本国憲法は、一九四七年、昭和二十二年五月三日に施行されています。今から七十八年前です。我が国が終戦後今日まで、戦争を起こさず、巻き込まれず、一人の戦死者も出していないことに憲法の存在というのは物すごく大きなものであったと考えています。

 一方で、憲法は七十八年間、一文字も変わっていません。その間、日本は成長しました。日本国民も成長しました。世界も成長しました。そして、我が国を取り巻く外部環境が明らかに変化してきている。私は、これからも憲法で我が国が守ってもらえて、そして成長できるように、一緒に憲法も成長させたい、そう思っています。

 私が最初に確かめたいことは、国民は憲法改正を望んでいるのか、そうではないのか、それを今の憲法審査会で判断したいと思っています。本会では、国民は望んでいる、国民は望んでいないという真逆の意見が出ていて合意が得られていないと思うんです。新聞社を始め民間の調査結果を目にすることがよくあります。ですので、まずこの点において事実、データ、調査の妥当性等を議論して合意を得るのはいかがでしょうか。

 そして、私たち国民民主党はこれまでも起草委員会の設置を求めてまいりました。二〇二三年六月十九日には、国民民主党、日本維新の会、有志の会の三会派で憲法改正条文案を共同で公表しております。また、本年六月十二日には、憲法審査会の幹事会において、自民党、公明党、国民民主党、日本維新の会、有志の会の五会派で、国政選挙が困難となる事態における議員任期の延長等を盛り込んだ骨子案を配付したところです。

 主要な論点は既に出そろっていると思います。これ以上論点整理の段階にとどまるのではなく、具体的な条文案を提示し、それに対する賛否や修正意見を交わすという生産的な段階へ進むべきだと考えています。そして、よりよい憲法を作ることができないかという議論に進みたいと思っております。

 そして、本日も何名もの委員から御意見が出たように、具体的な条文案を出すことは、今よりも国民の関心を高める効果があると考えています。

 私は友人や支援者に私が質疑する委員会の日程を伝えて見ていただいているのですが、この憲法審査会に関しては、何を話しているのか、何を目指しているのか分かりづらい、こういう意見を聞くことが少なくありません。一方で、具体的な条文案を知っていただくことで憲法に対する国民の意識が高まり、世論が醸成され、私たちの議論が今よりも国民に近いものになる、そう信じています。

 憲法は憲法審査会だけで作るものではありません。国会だけで作るものでもありません。憲法は日本国民全員で作るもの、そう思っております。憲法審査会が今よりも国民に開かれたものになること、そして、我々の議論が国民にとって信託に値するものになること、そして、国民の皆様にも自分事として捉えて参加していただけること、これを願っています。そして、未来に向かって国と国民と憲法が共に成長できることを願い、発言とさせていただきます。

 ありがとうございます。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 立憲の山花幹事に御質問したいんですけれども、今、国民民主党の委員の方から大事なお話がされたかなと思って、それも質問に絡むので、先にコメントしたいなと思うんです。

 憲法を成長させよう、社会を成長させようという御意見ですけれども、立憲主義があって、違憲提案だったりとか論理的に成立し得ないこと、それは高市総理の発言に見られるような台湾海峡有事が存立危機事態だとか、論理的に成立し得ないことを成長させていくというのはやってはいけないことだと私は思いますよ。

 それで、成長ということでいえば、よりよい憲法が実現できる社会こそが私たちの社会の成長ではないでしょうか。私がこの憲法審査会で望むのは違憲審査です。山花さんにも違憲審査を提案してやっていただけないかと思うんです。

 例えば、リーマン・ショックで二〇〇九年ぐらいから非常に生活保護の世帯が仕方なく増えちゃったんです。そのときに自民党が野党で、二〇一二年前後にすごい生活保護のバッシングをしたんですよ。芸能人の方の身内が生活保護を受けていて、そんなのおかしいんだみたいな。おかしくないんですよ。なのにそのバッシングをして、すごい生活保護バッシングが沸いたんです。それで自民党が与党に返り咲いた一つの契機にもなりましたし、自民党自身が偽情報とバッシングをすごく展開して生存権を侵害したわけです。その流れに乗った方が総理をやったり財務大臣をやっているという状況自体がこの社会の成長、発展を妨げているのではないかと思います。

 今年、最高裁で生活保護が違法であったという判定が出ましたけれども、だけれども、まだ切り下げるわけです。やはり違憲審査を充実して、このようなことをやっちゃいけないんだ、みんなが社会でセーフティーネットがあってよりよく生きられるための審査、これが成長できる憲法審査会の在り方ではないかと私は思いました。

 山花幹事にお伺いしたいです。そういった形で違憲審査を充実していただけないでしょうか。

 それから、今残念ながらやられているのは逆の方向で、任期延長改憲でしたよね。二〇二五年の通常国会でほぼそうでしたし、最後の六月十五日に改憲骨子案を急に出されるというようなことを筆頭の立憲という野党として止めていただきたいんです。

 七十日限定説というのが大きく崩れた通常国会だったと思っています。なので、最後の改憲骨子案も衆参まとまっていない中で改憲骨子案を出していて、参議院の緊急集会七十日限定説というのが崩れているということをもう少し立憲の中でも、これは違憲提案で論理的に成立し得ないんだから、これは議題にしてはいけないというふうにやっていただけないでしょうか。

山花委員 まず一点目ですけれども、違憲審査という言い方が適切かどうかはありますけれども、当審査会は日本国憲法の運用に関する調査権限も担っておりますので、具体的にこういう課題がということで御提案いただければ一つのアイデアとして検討することもあろうかと思いますので、御提案いただければと思います。

 二つ目は、先ほどの私が申し上げたこととも関連するんですけれども、やはり、賛否いろいろある中で、言わせないというわけにはいかないと思います。私は、論理的に議論を闘わせて、それで説得をしてというのがこの場所での私どもの役割だと思っておりますので、その点については引き続き議論させていただきたいと思っています。

大石委員 あと一分あるんですけれども、七十日限定説が、もうこだわらないよとおっしゃっている事態で、その改憲五会派の改憲の立法事実は崩れていると思うんですけれども、まだ進めなきゃいけないんでしょうか。七十日限定説についてはどうお考えでしょうか。

山花委員 七十日に限定されるかされないかという議論は、選挙ができないような事態というのがあるかどうかということと関係しています。

 つまり、選挙困難事態というのがあるということになると七十日の枠では収まらないよねという議論になると思うんですけれども、私たちはその前の段階のそもそも選挙困難、要するに全面的に選挙をストップしなければいけない事態があるんだろうかということについて議論させていただいているわけで、その前の段階のところの議論をさせていただいていると認識しています。

大石委員 ありがとうございます。

中谷(元)委員 自由民主党の中谷元です。

 私は、一年前まで与党筆頭幹事でありましたが、選挙困難事態における国会機能維持については、前任の新藤元筆頭幹事から引き継いで、令和四年の常会以降、四年にわたって継続的に審査会、幹事会で議論を進めてきましたが、本当に熟議に熟議を重ねまして、自民、維新、国民、公明、有志、この五会派の骨子案を取りまとめをしまして、昨年の六月十三日の審査会において、私から改正案の骨格を整理した資料を配付しまして、その内容を説明させていただきました。

 あれから一年半になりますが、その後、更に各党との協議が進められまして、本年六月十二日に船田筆頭幹事を始め五会派の先生から条項骨子案が幹事会で配付され、船田筆頭幹事から説明されましたが、私が昨年六月に配付した資料よりも条文案に近くなっておりまして、五会派共同提案という形で示され、審査会で議論できる画期的な重要な提案となっております。

 もはや機は熟しました。今や国会が国民に提起すべき段階となっておりまして、今後は早急に幹事会、条文起草委員会を設置して、審査会に提案して審査していく段階に来ておりますので、今こそ緊急条項の改正案を提起して国民投票にかけるかどうかをこの審査会で条文を基に審査すべき段階にあると思います。

 また、自衛隊の明記の問題も課題となるものであります。

 私も一年間防衛大臣を務めましたが、自衛隊の存在は憲法に明記されておらず、日本国憲法九条に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という条文が残されております。自衛隊は国を守る組織であることが明記されておりません。

 現実には命を懸けて国防の任に就いている自衛官がいるわけでありまして、彼らが自信と誇りを持って胸を張って国防の任に就くことができるためにも、この条文を改正して自衛隊を明記すべきではないかと思っておりますので、これも早期に起草委員会において条文案を作成して審査会に提示すべきではないかと思っておりますので、皆様方の御理解と審査をお願いいたします。

 そして、もう一つ検討し得る条項として、私の個人的な発言でありますが、憲法二十四条があります。これは、同性婚について、現在それを認めないとする民法、戸籍法の規定があります。

 これは、法の下の平等を定めた憲法十四条一項や憲法二十四条に違反するものとして国を訴えた訴訟が全国で六件起こされており、うち五件については高裁でいずれも違憲とする判決が下されております。

 憲法二十四条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると書かれており、素直に読めば、日本の憲法は同性婚を想定していないという解釈になり、憲法二十四条は同性婚反対派にとっては錦の御旗になっております。

 同性婚について日本で認められていない現状では、パートナーが亡くなっても遺産相続ができなかったり、入院の際に家族として扱われないなどの不具合が実際に出ております。また、民法、戸籍法の規定がなければ誰も婚姻の申請や提出ができないのであります。

 現在、同性婚は法定化されておらず、一部の自治体では、公営住宅の入居の申込み、公営病院における治療の同意や面会、住民票の記載において異性間のカップルと同様な扱いとしておりますが、あくまでもこれは例外的に認めたものであり、かつ全国的な広がりには至っておりません。

 また、いわゆるパートナーシップ制度を設ける自治体が増えておりますが、その効力は婚姻と同等ではありません。すなわち、養子縁組によって子育てをしようとしてもカップルの一方にしか親権は認められない、配偶者控除等の税制優遇措置を受けられない、相続の場面で親族として扱われない、在留資格の審査において異性婚カップルよりも不利に扱われるといった不利益が生じておりまして、同性カップルの方がこれらを解消するために、同性婚を正面から認めるような憲法改正及び法整備が必要ではないかと考えております。

 このような点で、これから憲法改正に向けましてこの場におきまして引き続き議論が行われますが、この審査会しかこの議論がありません。各党の皆さん、今、機は熟しておりますが、憲法改正に賛成が六八%、護憲が三割、つまり三分の二を切っております。制定されて八十年近く条文の一言一句も変わっていないが、世の中はどんどん変わってきておりますので、是非この審査会で積極的に憲法の議論を行っていただき、改正していただきたいと思います。

 以上です。

五十嵐(え)委員 立憲民主党・無所属の五十嵐えりです。

 私から三点申し上げたいと思います。

 一点目、まず緊急事態条項についてです。

 自民と維新の連立合意書にもある緊急事態条項の条文起草委員会の設置や八年度中の国会提出については、明確に反対いたします。

 議員任期延長の憲法改正は、かつては衆議院の任期満了時には緊急集会が開けないからという理由に始まり、その後、解釈上、任期満了時にも開催できることが可能であるということが明らかになると、今度は、緊急集会の活動期間が憲法五十四条一項の七十日に限られるという七十日限定説や、緊急集会の権能は極めて制限されるという権能限界説などが理由にされてきました。

 しかし、昨年の八月七日、自民党の憲法改正実現本部ワーキングチームは、衆参で意見が分かれていた議員任期延長改憲について、七十日間を緊急集会の活動期間として厳格に限定するものではないということと、緊急集会は原則として国会の権能の全てに及び、権利行使の範囲は緊急性の要件を満たすかで判断されるべきということを取りまとめております。

 さきの通常国会、六月十二日の衆議院憲法審査会でも、先ほど来、この検討課題というメモを幹事会で配付されたということが各委員からも発言がありましたけれども、その後の審査会で自民党の船田筆頭幹事が緊急集会の活動期間は七十日に必ずしも縛られないと明言しておりますし、そもそもその前の段階の幹事会で配付されたメモの選挙困難事態の認定というところで、先ほど来議論がありますけれども、広範性と長期性という要件がありますけれども、七十日限定説を否定するということは、この長期性の要件を否定するということでもありますので、いずれにせよ、七十日限定説というのは認められないということを自民党の方からも発言がございます。

 権能限定説についても、参議院の憲法審査会でも、自民党の佐藤筆頭幹事の質問に対して参議院の法制局長が、緊急集会は国会の権能を代行するものであり、その権能は広く国会の権能に及ぶとし、予算や条約など衆議院の優越事項がその権能の制約に当たるということはないということを答弁されております。既に参議院の憲法審査会では、憲法改正をしないことを前提に、参議院の緊急集会を万全に機能させるための課題への対応などが議論されております。

 つまり、これまでの国会を経て、議論の中で、緊急集会の憲法改正の論拠は完全にないということはもう既に結論が出たものと認識しております。それにもかかわらず、なぜ自民と維新は何事もなかったかのように緊急事態条項の条文起草委員会の設置を求めているのでしょうか。

 七十日限定説や緊急集会権能限定説が完全に崩壊している今、任期延長改憲の理由がないということがこれまでの結論として明らかになったはずです。まずこのことを明確にしておきたいと思います。

 二点目に、自民と維新の連立合意書にもあります憲法九条についてです。

 戦後八十年、憲法九条の下で専守防衛の理念が果たしてきた役割は非常に大きいと考えます。この憲法九条の価値と意義を深く認識し、専守防衛を堅持し、対話と国際協調を重視した平和的かつ現実的な外交、安全保障政策を推進するためにも、憲法九条の改正には反対いたします。また、こうした憲法九条を事実上死文化させるおそれのある自衛隊明記の改憲についても反対の立場であることを申し添えます。

 三点目、最後に、憲法五十三条、臨時国会召集要求です。

 今年四月二十四日の衆院憲法審査会で臨時会の召集期限に対する議論がなされ、私も、コロナ禍に政府がコロナ対策を放置し、臨時会を召集しなかった責任が重大であると指摘いたしました。

 しかし、その半年もたたない九月十日、野党九党、今度は実に衆議院の過半数をも超える議員が石破内閣に対し臨時会の召集を要求したにもかかわらず、実際に召集されたのは十月二十一日。四十一日間臨時会は召集されませんでした。その間、自民党はより時間のかかるフルスペックの総裁選を行い、政治的空白が長期化し、その間、全国で豪雨災害等が発生しました。もしあのまま自民と維新の連立協議が更に長引いていたら国会はどうなっていたのかという疑問が残ります。自民党の総総分離という議論にもありますように、誰が総理であっても臨時会は憲法に基づく内閣の義務として速やかに召集されなければならなかったはずです。

 こうした内閣の憲法違反を許さないためにどうすべきか、先ほど船田幹事からも憲法に二十日以内と明記するかという議論もあるというようなお話もありましたけれども、大前提として、四月二十四日の憲法審査会でも指摘したように、歴代政府の五十三条の解釈、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集しなければならないという解釈に対して、まず内閣がどのような準備をしていたから開会できなかったのかというその事実についてしっかりと明らかにすることが必要だと考えます。本審査会でのしっかりとした議論を求めます。

 以上です。

武正会長 まだ御発言の御希望もあるようですが、予定していた時間が経過いたしました。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


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