衆議院

メインへスキップ



第17号 令和6年5月9日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年五月九日(木曜日)

    午後二時五十八分開議

 出席委員

   委員長 谷  公一君

   理事 井上 信治君 理事 小林 史明君

   理事 田中 英之君 理事 牧島かれん君

   理事 岡本あき子君 理事 藤岡 隆雄君

   理事 一谷勇一郎君 理事 河西 宏一君

      今村 雅弘君    上杉謙太郎君

      黄川田仁志君    小寺 裕雄君

      橘 慶一郎君    谷川 とむ君

      土田  慎君    土井  亨君

      中川 郁子君    橋本  岳君

      福田 達夫君    藤丸  敏君

      堀井  学君    保岡 宏武君

      柳本  顕君    山田 賢司君

      城井  崇君    坂本祐之輔君

      中谷 一馬君    福田 昭夫君

      早稲田ゆき君    赤木 正幸君

      伊東 信久君    浮島 智子君

      山崎 正恭君    高橋千鶴子君

      田中  健君

    …………………………………

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)          加藤 鮎子君

   内閣府副大臣       工藤 彰三君

   デジタル大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    土田  慎君

   文部科学大臣政務官    安江 伸夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田  薫君

   政府参考人

   (こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君

   政府参考人

   (こども家庭庁支援局長) 吉住 啓作君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  橘 慶一郎君     山田 賢司君

  伊佐 進一君     山崎 正恭君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     橘 慶一郎君

  山崎 正恭君     伊佐 進一君

    ―――――――――――――

五月九日

 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(内閣提出第六一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(内閣提出第六一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

谷委員長 これより会議を開きます。

 本日付託になりました内閣提出、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。加藤国務大臣。

    ―――――――――――――

 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 児童や生徒に対する性暴力等の被害は、被害児童等の権利を著しく侵害し、被害児童等に対し生涯にわたって回復し難い心理的外傷その他の心身に対する重大な影響を与えるものです。

 児童等に対して教育、保育等の役務を提供する事業は、児童等の心身の健やかな育成に資することを目的としており、これらを提供する場において児童等の心身に重大な影響を与える性暴力等の被害を生じさせることは、その目的に反するものです。また、これらの事業は、被用者が児童等を指導するなどして支配的、優越的立場に立ち、継続的に密接な人間関係を持ち、親などの監視が届かない状況の下で児童等を預かり教育、保育等をするなど、特別な社会的接触の関係があるといった性質を有することから、児童等に対する性暴力等の発生に特別の注意を払うことが求められます。

 そこで、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する一定の対象事業者が、児童等に対する性暴力等の防止等をする責務を有することを明らかにするとともに、そのために講ずべき措置等について定めることとし、もって児童等の心身の健全な発達に寄与するものとして、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する対象事業者について、児童等に対する性暴力等の防止に努めるとともに、性暴力等の被害が生じた場合には、その被害児童等を適切に保護する責務を有することを明確にします。

 第二に、本法律案の対象事業者のうち、特に児童等に対する性暴力等の防止に関して高い社会的責任を有する学校設置者等に対し、児童等の安全を確保するための措置として、対象従事者への研修、児童等に対する性暴力等のおそれを早期に把握するための措置、性暴力等に関する児童等の相談を容易にするための措置の実施を求めるとともに、対象従事者による児童等に対する性暴力等が行われるおそれがある場合には、その者を対象業務に従事させないなどの防止措置を講じることを求めることとします。その際、対象従事者についての性犯罪前科の有無を把握することは、児童等に対する性暴力等の防止措置を講ずる上で重要な手だてであるところ、学校設置者等に対し、対象従事者についての一定の性犯罪前科の有無の確認を求めることとします。また、児童等に対する性暴力等の発生が疑われる場合の事実の調査、被害児童等の保護及び支援のための措置を講じることを求めることとします。

 第三に、本法律案の対象事業者のうち、学校設置者等以外の者については、学校設置者等と同等の措置を実施する体制が確保されている旨の内閣総理大臣による認定を受けることを可能とし、当該認定を受けた事業者に対しては、学校設置者等と同等の措置の実施を求めることとします。また、認定事業者については国が公表するとともに、認定事業者は認定を受けた旨を広告等に表示することができることとします。

 第四に、本法律案により児童等に対する性暴力等の防止等のための措置の実施が求められることとなる学校設置者等及び認定事業者に対し、申請に基づき、対象従事者についての一定の性犯罪前科の有無に係る情報を国が提供する仕組みを創設することとします。

 このほか、施行期日及びこの法律の施行に関し必要な経過措置等について規定するとともに、関係法律について必要な規定の整備を行います。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

谷委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官和田薫君、こども家庭庁成育局長藤原朋子さん、こども家庭庁支援局長吉住啓作君、文部科学省大臣官房審議官淵上孝君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日、子供たちを犯罪から守るという観点から御質問させていただきたいと思います。

 まず、かねてより学校において教師が教え子に対してわいせつ行為を行うという事件が繰り返されており、令和二年頃には文科省において、わいせつ教員を二度と教壇に立たせないようにと法制化を検討されましたが、様々な法制上の課題があるということで立法を断念されました。

 他方、法制上の課題はあったとしても、そんなことではやはり子供たちを守れない。学校という逃げ場のない空間で、本来尊敬し信頼すべき存在であるはずの教員から児童生徒が性被害に遭う、こういったことはあってはならないことであり、一刻も早くこれを止めなければならないという思いで、与党でワーキンググループを立ち上げ、議員立法を作成しました。その後、各党にも御賛同いただき、全会一致で教職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律を作成させ、わいせつ行為で処分を受けた教員についてのデータベースを構築し、教員免許を再交付させないような仕組みを構築させていただきました。その後、教員に加えて、保育士についても、改正児童福祉法において類似の仕組みが設けられたと承知しております。

 そこで、まず、わいせつ教員の防止法に関するデータベースについてお伺いをしたいと思っております。

 この法律、教職員等による児童生徒性暴力防止法の成立を受けて、文科省においては基本指針を作成され、特定免許状の失効者等のデータベースでは、当面、少なくとも四十年間分の記録を蓄積していくこととされましたが、この四十年とした理由をお聞かせください。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 議員立法で制定いただきました教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律に基づきます特定免許状失効者等に関するデータベースにおきましては、まず、この記録の対象が、児童生徒の人格の形成に直接携わる免許職種である学校の教育職員等であること、また、その中でも、記録されます情報は、児童生徒性暴力等に起因する懲戒免職等により免許状が失効、取上げとなった者に関する情報であること、また、このデータベースは、同法によりまして、学校の教育職員等の任命権者又は雇用者が教育職員等を任命又は雇用しようとするときに限り活用することというふうな仕組みとなってございます。

 こうした法制度上の仕組みを踏まえまして、過去に児童生徒性暴力等を行い教員としての適格性を有しない者が再び教壇に立って児童生徒性暴力などを行うといったようなことが決してないように、任命権者又は雇用者が適切な判断を行うために必要な期間として、当面、少なくとも四十年間という期間を設けて運用しているところでございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 同様に、改正児童福祉法に基づいて、児童生徒性暴力を行った保育士の過去の処分歴についても四十年のデータが掲載されていると伺っておりますが、これを四十年としている根拠について、こども家庭庁からお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育士のデータベースにつきましては、掲載される情報が性犯罪歴そのものではなく、児童生徒に対して性暴力を行い保育士登録を取り消された者の情報であること、また、確認を行う者については、保育士の任命又は雇用する者に限定をされるものであること、また、確認の結果を踏まえた措置が義務づけられるわけではなく、性暴力の防止の観点から、任命権者に対しまして適切に採用の判断をするための材料を提供する、このような制度趣旨を踏まえまして、教職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律に基づくデータベースと同様に、私どものこども家庭庁に移管をされた後ですけれども、保育士による児童生徒性暴力の防止に関する基本的な指針を定めておりまして、この中で、文科省におけるデータベースと同様に、当面、少なくとも四十年間はデータベースに記録することとしております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 保育士は保育士のデータベース、教員は教員のデータベースということで整備をされているんですが、例えば、幼保連携型認定こども園においては、幼稚園教諭の免許と保育士資格の両方の資格取得が必要でありますけれども、採用に当たって教員免許と保育士双方のデータベースを確認する必要があるのか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 幼保連携型認定こども園の保育教諭につきましては、原則として、幼稚園教諭免許状と保育士資格の双方を有することとされており、かつ、教職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律に基づく教職員に当たりますので、保育教諭を採用する際には双方のデータベースを確認する必要がございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 例えば、幼稚園の教員免許それから保育士資格の両方を保有している者が、幼稚園において教員として児童生徒性暴力を行った場合に、行政処分で教員免許を失効させられたとしても、刑事裁判で有罪にならなければ保育士の資格は取り消されず、保育士のデータベースにも反映されないのか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童生徒性暴力を行ったことを理由に懲戒免職や解雇となり幼稚園免許状が失効した者が保育士としての登録も行っている場合、保育士登録事務を管理する都道府県知事は、この事実確認を行った上で保育士登録を取り消すことが必要であり、取り消された者の情報は特定登録取消し者情報データベースに記録されるものというふうに承知をしております。

 また、保育士による児童生徒性暴力の防止に関する基本的な指針の中で、先ほど委員から御指摘いただいたようなケースですけれども、幼稚園教諭免許状と保育士資格を併有していて幼稚園の免許状が失効をした者について、免許の失効の処分に至った事実を基に保育士登録の取消しを決定できるように、教員免許所管部局と連携を行うようにこの指針の中で求めているところでございます。

 ただ、一方、実際の現場では、例えば、幼稚園の免許状と保育士の登録が異なる都道府県において管理をされているようなケースなどもございますので、恐らく、児童生徒性暴力を行っている免許状が失効した者の情報を的確にタイムリーに把握をするということに課題があるということが考えられます。

 このため、今後、教員の免許所管部局との連携を徹底していくとともに、児童生徒性暴力による免許状の失効、取上げに関する情報共有のより効果的な運用の方法については、個人情報の適正な管理の観点も含めて、文部科学省等とも連携をしてしっかり検討していきたいと考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 今、次に聞こうと思っていたこともお答えをいただいたんですけれども、要するに、保育士だけでやっているとか、教員だけでやっている場合は、兵庫県で保育士の資格を取って、東京で教員をやっていた教員資格を持っている人が、都道府県知事の連携がよければデータベースが反映されるけれども、こちらで教員免許を取り消された者あるいは保育士を取り消された者が直ちにこのデータベースに反映されるわけではないということなので、この情報連携をしっかりとやっていただきたいというか、情報共有を進めていただきたいということがお願いでありましたけれども、今、そのように進めていただくということですので、是非そのようにしていただければと思っています。

 さらに、今回の、今審議中の法案が成立して新たな仕組みが導入されることによって、例えば、幼保連携型の認定こども園では、教員資格のデータベース、保育士資格のデータベース、そして今回のDBSの三種類のデータベースを確認する必要があるのか。事業者の負担を考えると、ワンストップで確認できる仕組みが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘いただきましたように、例えば、例示として幼保連携型認定こども園というお話がございました。その場合であれば、二つのデータベース、それから今般御提案申し上げている子供性暴力防止法に基づく仕組み、この三つが係ってくるということは事実でございます。

 本法案における犯歴の前科の確認につきましては、事業者が国に対し申請を行った上で国が確認を行うこととしております。また、該当犯歴ありの場合には、この事実そのものに基づいて、該当者を対象業務に従事させないなどの措置を講ずることが必要となります。

 一方、二つのデータベース、教員のデータベース、保育士のデータベースでございますが、こちらのデータベースにおける確認については、事業者自身がデータベースを検索をして、即時に結果を入手、閲覧できる、そういうふうな仕組みになっております。また、行政処分歴ありという結果であった場合には、この情報を端緒にして、更に面接なども踏まえて、採用、不採用などの判断を行うものであって、本法案に基づく犯歴確認とは手続や情報の取扱いが異なるという面がございます。

 こういったことから、これらの確認につきまして、一つの照会で全てワンストップで完了するということは、なかなか制度的、技術的な課題があるというふうに考えておりますけれども、事業者にとっての利便性などの観点から、よく現場の意見も聞きながら、どういうことができるか検討していきたいというふうに考えます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 確かに、資格に関する行政処分のデータベースと犯罪履歴を照会する仕組み、それから照会の仕方などもルートが違うので、直ちに一緒にするということはできないんですが、やはり、運用する側の負担ということも考えて、効率的な運用ができるようにまた是非工夫をしていっていただきたいと思っています。

 今話が出ました犯歴照会に係るDBS。DBSって何の略かなと思って、データベースの略かなと思ったら、これは、ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス、犯歴の開示と該当者の就業を禁じる仕組みの略だということだったそうなんですけれども、これも含めて、DBS、DBSと普通に言っているので、よく知っていただけるように周知、またしていただきたいと思います。

 このDBS、これは、本制度の導入に当たっては、本元の英国、イギリスで行われているDBSを参考にしたというふうに言われているんですが、イギリスのDBSでは過去何年までの犯歴を掲載しているのか、教えていただけましょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 英国の子供関連事業従事者を対象にした犯歴等確認の仕組みにおきましては、性犯罪歴については無期限に確認できると承知をしております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 翻って、我が国が今導入しようとしているDBSですけれども、これは性犯罪歴の対象期間については、お配りしております資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですが、この対象期間について、実証データに基づき、子供の安全を確保するための必要性と合理性が認められる範囲を定めるとして、罪種にかかわらず、罰金刑は十年、拘禁刑は二十年としております。

 一方、この資料を見ると、拘禁刑については九四%がカバーされていて、罰金刑については九二%がカバーされているということになります。これは、残り六%であったり八%、これをどう見るかということなんですけれども、子供の安全を確保するという観点で、こども家庭庁としてはこれをどのように評価されているのか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 子供性暴力防止法案における性犯罪歴確認の対象期間でございますが、子供の安全を第一というふうにしつつ、この仕組みが事実上の就業制限になることから、憲法上の職業選択の自由を制約することとの関係整理ですとか、前科を有する者の更生を促す刑法の規定の趣旨、こういったことも踏まえて、子供の性暴力防止の目的に照らして許容される範囲というふうに設定をする必要がありました。

 そして、本法律案が前科の有無を事業者に確認させる理由は、この前科を有する者が同種の性犯罪の再犯に及ぶ可能性が高い、そういったリスクに基づいて考えるものでございますので、対象期間の設定におきましても同じように再犯のリスクに着目して定めるべきというふうに考えたところでございます。

 こういった背景がございまして、本法案の対象期間につきましては、再犯に至った者の実証データに照らして、集団として再犯の蓋然性が高い期間を犯歴確認の対象期間というふうに設定をいたしました。

 具体的には、過去五年分の各年度、性犯罪で有罪判決が確定をした者のうち、同種の前科があった者を拾いまして、直前の前科の判決確定から今回までの期間がどのぐらいあったか、こういった分布を検証しまして、これに基づいて、拘禁刑については刑の執行終了から二十年、罰金については十年という期間を確認の対象というふうにすることといたしました。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 よく、この法案の審議をするときに、職業選択の自由との関係というふうにおっしゃるんですけれども、職業選択の自由というのはあくまで経済的自由であって、もちろん軽視してはいけないんですけれども、子供の安全確保というのは身体の、生命を守るという観点なので、これは、比較すれば当然、経済的自由であるその職業選択の自由が優先するということにはならないと思うんですね。

 どう評価するかといったときに、九四%の固まりをカバーすればいいと考えるのか。子を持つ親の立場からすると、残りの六%だって実証データとして再犯を犯しているじゃないかということになるんですね。そうすると、二人だろうが何だろうが、こういう実例がある限りは、この実証データに基づいて、やっぱりここはカバーしないといけないんだというふうに考えるべきではないかというふうに我々はずっと主張してきたんですが、とはいえ、余りそこにこだわり過ぎていつまでたっても法案が成立しないというと、この九四%ですらカバーできないということなので、今回こういう形で運用を始められますけれども、是非今後とも見直しをしていっていただきたいというふうに思います。

 一方で、次に、執行猶予に関して、裏面に、資料の裏側ですね、執行猶予の実証データはますます怪しくて、この対象期間を十年としているんですけれども、まず、カバーしているのが、七六%しかカバーしていないと。先ほどの拘禁刑や罰金刑のように顕著な固まりというふうにもなっていないんですけれども、ここの十年未満を押さえれば大体顕著な再犯のところを押さえられるというものでもないんですね。

 今までこども家庭庁さんがおっしゃっている、実証データに基づく必要性、合理性、こういった観点から、この執行猶予に関する十年、これはむしろ二十年とするべきではないかと考えますが、お考えをお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法上、執行猶予につきましては、刑法二十七条でございますけれども、最長五年間の執行猶予期間が満了いたしますと、罰金の刑執行終了から五年というよりも短い期間になりますけれども、刑の言渡しの効力が消滅するというふうに規定をされてございます。

 執行猶予につきましても、先ほど御紹介いただいた拘禁刑、罰金刑のデータと同じデータですけれども、再犯期間のデータを検証いたしました。それが御提出いただいたグラフの二枚目のところでございます。

 このデータを見ますと、一万五千四百九十六人のうち、直近の前科が執行猶予であって再犯に臨んだ者約三百人について分布を見てまいりました。御紹介いただいたこととかぶりまして恐縮ですが、再犯までの期間が五年未満の者が一番大きく突出しておりまして大半を占めていること、その期間が十年未満までで約八割弱を占める、また、その後の一定の期間の経過で急激な低下が見られるような動きがなかったことが確認できました。

 これに加えまして、刑法三十四条の二が、罰金については五年で刑が消滅するということを規定しているのに対しまして、二十七条では、執行猶予についてこれよりも短い期間での刑の言渡しの効力が消滅するということになっていることとのバランスも踏まえまして、何とか我々刑法三十四条の二や二十七条を超えた期間を設定したいということで理屈を精査しました結果、執行猶予については十年というふうにさせていただいたという経緯がございます。

山田(賢)委員 そこはまたちょっと論理がおかしくて、刑法三十四条の二で決められている罰金刑五年、拘禁刑十年を超えて、実証データに基づく必要性、合理性で、拘禁刑については二十年、罰金刑については十年と、乗り越えていただいたわけですよね。それは、実証データに基づくから超えたんだという理屈なんですが、今の話だと、三十四条の二で、執行猶予や罰金刑と同じになっているからという話は、それは法律のたてつけ、法制度の仕組みに基づいて延長したという理屈になってしまうんですね。

 実証データに基づくんだったら、これは少なくとも二十年とか、私はもうずっと、全部永久にと思いますけれども、それが無理であれば、せめてこれを二十年にすることで九割ぐらいはカバーできるので、今これはそういう理屈で作られているんでしょうけれども、今後の見直しの中で、この執行猶予の取扱いについては、是非もっと精緻なデータ分析をして、見直しを図っていっていただきたいと思います。

 続きまして、DBS掲載対象とする犯罪の被害者について教えていただきたいと思います。

 まず、今回の法律は、子供を対象とする性犯罪だけではなくて、大人に対する性犯罪により有罪になった者も対象としておりますが、これはなぜなのか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案を提案する以前、昨年の九月には、有識者会議の報告書が取りまとめられたところでございます。この報告書の中には、被害者年齢による限定を設けないことが適当というふうに取りまとめの中で触れられております。

 具体的には、加害者臨床の学識者の方からは、性犯罪に及ぶ者の中には、児童に対する嗜癖、アディクションを有するものの、十八歳以上の者に対する性犯罪に及ぶことによって児童に対する性的欲求を抑えようとする者がいるですとか、十八歳以上の者に対する性的な欲求を、通報されるおそれが少ない児童に対する性犯罪の行為に及ぶ、それによって発散をする、こういった加害者の傾向があるというふうな御指摘がありまして、性犯罪者ごとにその被害者の年齢が必ずしも一貫しているわけではないというふうな御指摘がございました。また、本法律案の保護の対象は、幼児のみならず十八歳未満の者を基本的に想定しているところでして、その場合、十八歳未満の中の年長者と十八歳以上の者との間で、その性犯罪に及ぶ者にとっての違いがあると認め難いと。

 このような背景から、報告書の内容も踏まえまして、今般の法律案では、確認の対象とする性犯罪の前科としては、児童に対するものに限定をしないということといたしました。

山田(賢)委員 ちなみに、議員立法で成立させた教職員等による児童生徒性暴力の防止に関する法律では、教師という信頼をされる立場、支配的な立場を利用して、逆らい難いような弱い立場の児童生徒に対する性暴力を起こすような者を二度と教壇に立たせないという思いから、とにかく子供に対する性暴力というものを対象としました。

 それを受けて行われた改正児童福祉法でも、保育士に関しては、児童生徒に対する性犯罪、これを対象にしているというふうに伺っております。

 ここで警察庁にお伺いしたいと思いますけれども、警察庁さんでは、子供対象・暴力的性犯罪の出所者による再犯防止を図るための通達を令和五年七月七日付で発しておられます。

 この通達において、再犯防止措置を講ずる対象者は、性犯罪により受刑した出所者全体ではなくて、被害者が十六歳未満となる特定の性犯罪で受刑した者に限定されております。

 この趣旨についてお聞かせください。

和田政府参考人 警察では、子供を対象とした暴力的な性犯罪、具体的には、原則として十六歳未満の被害者に対する暴力的性犯罪を犯して刑事施設に収容され、出所した者につきまして、法務省からその出所情報の提供を受け、再犯防止に向けた取組などを実施しているところです。

 子供を対象とした暴力的な性犯罪に限定している趣旨としましては、こうした犯罪が子供の心身に深刻な影響を与え、保護者や地域住民に大きな不安感を与えるものであることから、これらの者が出所後に再び子供を対象とした暴力的な性犯罪を犯すことを防止するために必要な対応を行うこととしているものです。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 このように、教職員の免許、それから保育士の資格、さらには警察庁がその後の出所者に対する再犯防止措置で追いかけるのも、子供に対する性犯罪を行った者という形で捉えております。

 他方で、今回のDBS法案は、大人に対する性犯罪も入れている。まあ、広く取っていただく分にはそれは構わないんですが、先ほど来お話しいただいている、実証データに基づく必要性、合理性で、職業選択の自由等も考えて、最小限の規制というか必要性、合理的な範囲での規制という観点からは、大人に対する性犯罪をやったやつが子供に対して性犯罪をやっているデータが実証データとしてどれぐらいあるのか、こういったことも精緻に分析していただく必要があると思っています。

 そういったことを行って、対象犯罪をむしろ子供に対する性犯罪に絞ってでもいいので、データベースに掲載をするその過去の犯歴の期間、これを延ばすという考え方を取っていただけないかというふうに考えますが、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答え申し上げたことと少し重複いたしますけれども、犯歴確認の対象期間につきましては、先ほど述べましたように、憲法上の制約ということですとか、刑法の規定等の趣旨も踏まえつつ、かつ、そうはいっても、それを前提としつつですけれども、子供の安全を確保したい、実効性のある制度にしたいということで、できるだけ許容される範囲をしっかり設定をするということで、実証データを基に、二十年、十年という期間を設定したところでございます。この実証データの中には、被害者の年齢は区分せずにデータ分析をしたところでございます。

 なお、法務省の別の調査結果でございますけれども、十三歳未満の者に対する性犯罪の前科を有する者の再犯期間については、それ以外の年齢の者に対する性犯罪の前科を有する者の再犯期間と比べて、再犯に及ぶまでの期間が比較的短いというふうな報告もございまして、我々としては、被害者の年齢によって、その場合だけは期間を延ばすというふうな御提案は今回はしていないということでございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 確かに、どれだけデータベースに載っけたとしても、性犯罪の九割は初犯と言っているので、九割の部分は抜けてしまうので、データベースだけに頼るということはよくないので、まさにこの法律でつくられているような様々な防止措置、例えば、資格をなくすだとか、複数の人間で子供に接するだとか、あるいは、子供たちがSOSを発しやすくするような、コミュニケーションを取りやすい状況をつくる、そして、SOSや何かが出たときには真剣に受け止めて対処するといった総合的な取組をやっていく必要があると思いますので、また是非その辺もしっかりと運用していっていただきたいと思います。

 ちょっと観点を変えて、犯歴該当ありとなった既存の従業員の取扱いについてお伺いしたいと思います。

 本法案では、新たに雇用する従業員だけではなくて、子供に接する仕事に既に就いている従業員についてもデータベースで確認するということになっていると思うんですけれども、犯罪該当あり、犯歴の該当ありとなった従業員について、首にはできない、首にはできないけれども、首という言い方はよくないですね、解雇は大変ハードルが高いんだけれども、配置転換等の防止措置を講ずる義務が課せられていると思います。

 他方で、先日、四月二十六日ですかね、使用者による一方的な配置転換を違法とした最高裁判例が出されております。労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、使用者は、当該労働者に対し、個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと言われています。

 いわゆるジョブ型で、例えば、インストラクターとして雇ったとか、塾の講師として雇った。以前のこども家庭庁さんの御説明でいうと、犯歴があっても、解雇しないまでも、子供に接しない裏方の仕事、事務的な仕事に就かせるというのが一つの選択肢と言われたんですが、この判例でいうと、塾の講師あるいはインストラクターとして目的を限定して採用した、新たに採用するんだったら、犯歴ありだったら辞めてもらいますよという合意はできるでしょうけれども、その合意前の犯歴でもって新たに配置転換をするということは、この判例に照らして、やや疑義が生じるのではないかと思います。

 むしろ、こういった疑念が生ずることからも、この法律を作ることによって防止措置、この法律に基づく防止措置としての配置転換というのは許容されるのか、こういった配置転換を命ずることができるようになるのか、お考えをお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案におきましては、事業者は、教員等について、児童対象性暴力等のおそれがあると認めるときは、本来の業務に従事させないことその他の防止のため必要な措置を講じなければならないと義務づけております。

 この点、本法律案において、対象前科がありとされる場合、特定性犯罪事実該当者になる場合ですけれども、過去の性犯罪の再犯状況のエビデンスに着目して、先ほど来御説明申し上げました、期間にしても対象にしても、再犯のリスクをしっかり見た上で設定をしたという経緯がございます。

 したがいまして、その者をそのまま対象業務に従事をさせることは望ましくないと考えられますので、基本的には、その者を教員等としてその本来の業務に従事をさせないことという措置を講ずることが必要になるというふうに考えております。

 一方、御紹介いただきました四月の最高裁の判決、申し訳ありません、先生からいただいて今読んでおりますものの、詳細まで精査はできていないというのが正直なところなんですが、御指摘の配置転換の命令につきましては、個別の契約の、雇用の契約の内容によるものというふうに考えられます。契約の内容によりまして配置転換命令をすることができないケースがあるということは、恐らく否定はできないんだろうと思います。

 仮にそのような場合であっても、この法案の規律により、本来業務に従事させない等の措置を講ずる必要というものは生じるというふうに我々考えますので、じゃ、その制約がある中にあって、本来業務に従事させない措置、あるいはそれ以外の措置があるのかないのか、どのような措置を講じてもらえれば子供を守れるのかといったことについて、本日お示しいただきました判決文についてもよく精査をしながら、具体的に検討していきたいというふうに考えます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 まさに新しい判決が出ているので、この法案を作る前に出ていなかったものだから。ただ、こういう問題点というのは起こり得る問題で、本当に大丈夫なのかということ。

 もちろん、我々としても、子供を守るという観点から、性犯罪を行った人に子供に接してほしくないという思いはあるんだけれども、労働法制との関係、そういったところで、新たに雇う人は雇用契約の中で確認すればいいけれども、既に雇用してしまっている人のその雇用前の過去の処分歴、これでもって配置転換するということについて、やや、いろいろな疑念があるので、この辺もクリアにして、やはり運用する事業者の方々が戸惑わないように、しっかりと、ガイドラインなり、あるいは指針なりを出していっていただきたいと思います。

 他方で、こういう疑念があるので、犯罪歴の該当がありとなったんだけれども、解雇もできなくて、配置転換もできないまま、当該従業員が児童生徒に対して性暴力を行ってしまった場合、事業者はどのような責任を負うのか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者が取るべき措置につきましては、児童対象性暴力等が行われるおそれの具体的な内容に応じたものとなります。今後、このおそれの具体的な内容ですとか、その判断プロセス、あるいは把握したおそれに応じた防止措置の例などの詳細につきましては、実効的なものとなるように、関係者の御協力も得ながら検討し、ガイドライン等で示していくことを予定をしております。

 まずは、このガイドラインなども通じまして、把握した状況に応じた適切な措置が現場が混乱しないような状況の中で実施をされるようにしていきたいというふうに考えております。

 取られている措置がガイドライン等に照らして不十分である場合には、所轄庁による行政指導や、場合によってはそれに続く不利益処分の対象となるため、これらによって適切な措置の実施を担保していきたいというふうに考えております。

山田(賢)委員 不十分な場合は防止措置をちゃんと取るようにと指示していくというのはいいんだけれども、今、先ほどの判例を出したのは、やり過ぎちゃったら、これは違法だと言われてしまう、だからどうしたらいいんだということが問題になっているわけなんですね。

 なので、事業者に防止措置を講ずる義務を課すというようなふわっとした言い方じゃなくて、犯罪歴のデータベース、DBSに該当した人は子供に接する職務に就かせてはならないとか、法律でちゃんと書いてあれば、これは違法ではなくなって、その法律が違憲かどうかという問題はあるけれども、少なくとも事業者にリスクを転嫁しているような形ではなくて、ちゃんと法律に明記してあげるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 今般のこの法律案でございますけれども、対象事業の範囲が非常に広く設定をしてございます。いわゆる認可で既に規制のある学校ですとか保育所などの児童福祉施設から、全く業法のない学習塾など、民間の事業者に至るまで広く対象にしていること、そして、その現場の実務の実態はそれぞれ、様々、多様でございます。こういった中で、おそれの具体的な内容や、その判断プロセス、あるいは具体的な防止措置の例を事前に明確にこちらから機械的にお示しするということは難しいというふうに思っております。

 ただ、現場が混乱しないようにガイドラインで具体的な詳細を示していくことは重要なことでございますし、その場合には、十分な防止措置という観点も大事ですけれども、一方で、解雇権の濫用というふうに言われないかという御懸念もあろうかと思いますので、そういった労働法制の関係からも大丈夫なのかどうか、そういう意味では、現場と労働法制、あるいは関係省庁、こういった方々の御協力をしっかり得ながら、丁寧に検討していきたいというふうに考えます。

山田(賢)委員 是非よろしくお願いいたします。

 次に、またちょっと観点を変えて、今回は教育であったり子供に接する事業者に対する規制というか義務を課すという法律の体系になっているんですが、同じように、子供の安全を守るという観点から、子供が性被害に遭わないようにという観点から、特別養子縁組とか里親の受入先、これについても性犯罪とかそういうことに巻き込まれないようにしてくれという御要望なんかも伺ったりするんですけれども、現在、特別養子縁組や里親の受入先について性犯罪歴等の履歴を確認する仕組みはあるのか、お聞かせください。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 養親希望者や里親につきましては、養子縁組あっせん法及び児童福祉法において、児童の福祉に関し著しく不適切な行為をしたことなどを欠格事由としております。この欠格事由に該当するかについては、養親希望者や里親希望者の犯歴情報の確認などにより行うこととしており、具体的には、これらの者の本籍地の市町村に対して犯歴情報の照会を行っております。この犯歴には刑法などに規定されている性犯罪も含まれ、市町村からの情報提供により、養親希望者や里親希望者が欠格事由に該当すると判明した場合、養子縁組あっせんや里親登録を行ってはならないということにしております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 この部分もこの法律で手当てするわけではないですが、既にそういう仕組みがあるということが分かっただけでも、心配されている方にはこういう制度がありますということを是非また周知していただければと思います。

 他方で、今おっしゃっている犯歴というのは、やはり従来の制度ですから、刑の消滅に係るということだろうと思います。罰金刑で五年、拘禁刑で十年かかったら消滅をしてしまうということなので、もう少し更に、今後の法律とどういうふうに組み合わせていけるのかということも是非考えていただきたいと思います。

 あわせて、特別養子縁組や里親になる人だけではなくて、そのあっせんを行う事業者に対して、例えば、受入先となる方の犯歴を照会する仕組み、これを今回のDBSのような形で取り入れるということは検討いただけないか、お聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 里親と養子縁組のあっせんの養子縁組のあっせんにつきましてでございます。養子縁組のあっせんの機関につきましては、あっせんを行う前に面会等により養親希望者の適性の確認を行うとともに、里親と同様に、養子縁組あっせん法において、児童の福祉に関し著しく不適切な行為をしたことなど、養親希望者の欠格事由というふうにしているところでございます。

 こうしたことから、引き続き、養子縁組のあっせんと、里親もそうですけれども、これらのそれぞれの仕組みの中で適切に対応していくということとしておりまして、今回の子供性暴力防止法の対象の事業者ということには該当しないという整理をしてございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 テンポよくお答えをいただいたので、先に、飛ばした質問をちょっと戻って質問させていただきたいと思います。

 文科省さんにお伺いしたいと思うんですが、教員のデータベースに関して、先ほどの教職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律に基づいて、文科省さんの中で、児童生徒性暴力を理由に教員免許を失効させられた者の、特定免許状失効者等のデータベースを整備されていますけれども、これとは別に、官報情報検索ツールというものを提供されていると伺っております。この両者の違いについてお聞かせください。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止に関する法律に基づくデータベースにつきましては、これは児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効等した者についての情報が記録されております。また、同法で教育職員等を任命又は雇用する際に活用が義務づけられている、こういう点がございます。

 一方、官報情報の検索ツールでございますが、これは、例えば、成人に対するわいせつ行為など、児童生徒性暴力以外の者も含めて、教育職員免許法第十三条に基づき官報に公告された教員免許状の失効、取上げに関する情報を文部科学省が収集をして、教員の採用権者のうち、使用を希望する機関に配付をしているというものでございます。

 このいずれも、各採用権者における適切な採用に資するものと考えておりますが、記録される範囲がそれぞれ異なっている部分がございますので、両者を併せて活用することによりまして、採用希望者が過去の懲戒処分、仮に懲戒免職履歴等を秘匿していた場合にも、採用されることを防ぐといったことで有効なものと考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 教員免許の特定免許状失効者等のデータベース、それから官報情報検索ツールというのは、主に教員を採用するときに検索する、そういったデータベースだと伺っています。

 一方で、教員免許を取り消されて、再度、免許状を再交付する際には、また違うデータベースがあるというふうに伺っていますけれども、この法律が施行される以前というのは、教員免許は、単位を取得していたら、申請すれば、欠格事由に該当しない限りは、ほぼ自動的にというか、自動的と言ったらいけないかな、ほぼ障害なく免許が再交付されていた。ここが問題だということで、法律で、二度と教壇に立たせないという観点から、免許が再交付できない仕組みをつくっていただいたと思っております。

 先ほどの特定免許状失効者等のデータベース、官報情報検索ツール、さきの二つは違いは伺いましたけれども、今、教員免許の交付に当たって用いられる教員免許管理システムは、先ほどのデータベースとどう違うのか、お聞かせください。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁申し上げました児童生徒性暴力等に関するデータベース、あるいは官報情報検索ツール、これは教員を採用しよう、あるいは雇用しようとする場合に活用する、そういうデータベースでございますけれども、今お尋ねがございました教員免許管理システム、これは教育職員免許法に基づく教員免許の原簿を全国共通で管理できるように整備しているものでございます。

 このシステムは、都道府県教育委員会が、免許法に基づく免許状の授与、失効、取上げ、書換え、再交付などの様々な事務を処理するために用いるものでございまして、その中には、児童生徒性暴力等により教員免許状が失効、取上げとなった者の情報も含まれている、こういうものになってございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 これまでちょっとお伺いしてきたように、それぞれの法律の目的が違うとかそれぞれのデータベースの目的は違うんだろうけれども、教員だけで三種類のデータベースがあり、保育士があって、幼保連携型とかになると、これはまた今回のDBSというデータベースで、それぞれ目的が違うとはいえ、データベースが乱立しているような形になるので、できるだけ統合していただくように、先ほども申し上げましたけれども、この辺をちょっとよく考えていただきたいと思っております。

 いろいろ課題はあるから、では反対なのかというと、あるんだけれども、子供たちを守らないといけないという点では、もう皆さん一致していると思うんですね。なので、ここが駄目じゃないか、これを直せとか言っていると、いつまでたっても法律ができなくて、残念ながら見送ったりしていたら、今度は逆に、何で自民党は賛成しないんだということを言われてきたので、いよいよ、いろいろな課題はあるものの、やはりしっかり、今できることを法律として成立させて施行させて、少なくとも救える部分は救っていこう、こういう観点から是非賛成をしていきたいというふうには考えております。

 今後の運用の徹底、そして、見直しと言うとまたあれでしょうけれども、今後の制度の充実に向けた加藤大臣の決意をお聞かせください。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 児童や生徒に対する性暴力の被害は、被害児童等の権利を著しく侵害し、被害児童等に対し生涯にわたって回復し難い有害な影響を与える極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではありません。

 本法案は、先生から御理解をいただいている部分、大変ありがたく思っております。子供たちを性暴力から守る大変重要な施策でございまして、その導入に向けて最大限努力をしてまいります。

 もっとも、一方で様々な御指摘があるところでございまして、見直し検討規定を設けておりますので、この法律の施行後三年を目途として、施行の状況等をしっかり勘案しつつ、制度の在り方について必要な検討をしっかり行ってまいります。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 以上を申し上げて、終わらせていただきます。失礼します。

谷委員長 次に、黄川田仁志君。

黄川田委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 いわゆる日本版DBS制度の創設のための本法案は、我が国が子供たちを社会全体で守るという決意の表れでありまして、私は前向きな評価をしております。ただし、子供たちを守る子供ファーストの実現のためには、更なる制度や体制の充実が必要と考えております。本日は、その観点からこれから質問をいたしたいと思います。

 このいわゆる日本版DBSは、教員性暴力等防止法の制定や児童福祉法の改正のときに検討課題となりました。そして、ようやくこの度、本委員会に審議にかけられることになりました。まだ不十分な点はあるものの、日本版DBSを早くスタートすることが肝腎であると考えております。

 そして、本家のイギリスも、できるところから始めたというふうに聞いております。一九八六年に公立高校を含む公的機関に採用される者の犯罪歴チェック制度に始まりまして、一九九九年に内務省が保健、教育分野の子供に接する職業への就業禁止者管理リストを保持することが規定され、そこから十年以上かけて、二〇一二年に今のDBSチェック制度に行き着いたと聞いております。それでも、二〇一二年のDBSチェック制度創設当時は、リストに掲載された人数は数千人規模と少なかったとのことでございます。

 私が言いたいのは、本法案の日本版DBSをまず出発させる、これが大切であり、よしとしております。しかし、それで終わりではなく、今後に、先ほど山田先生もおっしゃいましたが、制度面や体制面で充実するよう努力し、育てていかなければならないというふうに考えます。

 そこで、まず、加藤大臣に質問をいたします。本法案における日本版DBS創設の意義と今後に対する期待をお聞かせください。

加藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 先ほど来より申し上げておるところと重なるところはございますが、児童や生徒に対する性暴力の被害は、被害児童等の権利を著しく侵害し、被害児童等に対し生涯にわたって回復し難い有害な影響を与える極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではありません。こども政策担当大臣として、また子を持つ一人の親として、かけがえのない子供たちの尊厳を守り、子供への性暴力等を防止することが必要だと感じております。

 本法案は、与党における丁寧かつ熱心な御議論を経て、政府として成案をまとめたものであり、学校や児童福祉施設などの学校設置者等や、また、学習塾などの民間の教育、保育等の事業者に、児童等に対する性暴力等を防止する責務があることを明確化した上で、事業者に対して、教員等の研修や児童との面談等の、子供の安全を確保するための措置を義務づけるとともに、その措置の一つとして、性犯罪歴の確認の仕組みを創設することとしております。

 これにより、学習塾などの民間事業者を含め、広く事業者の責務を明確化するとともに、再犯対策のみならず、初犯対策、予防策も講じる内容としており、実効性のある仕組みとなっていると考えております。本法案を起点として、子供に対する性暴力防止に向けた対策をしっかりと推進してまいります。

黄川田委員 ありがとうございます。

 大臣から、子供たちに対して生涯にわたって影響を及ぼすこの性暴力に対して、断じて許さないという決意を伺いました。

 その上で、やはり私も山田先生と同様に、犯罪事実確認の期間について質問がございます。

 先ほど、重なるところがありますが、山田先生からも紹介がありましたように、服役の場合の拘禁刑においては刑執行の終了等から二十年というふうになっております。私は、この二十年では短いというふうに考えておりますし、また、先ほども紹介がありましたように、執行猶予については裁判確定から十年、罰金以下は刑を終えてから十年ということで、これも私は短いというふうに考えております。

 先ほど、こども家庭庁からの説明がありましたように、教員性暴力等防止法における特定免許状失効者等のデータベースの情報の記録期間は、当面、最低四十年分となっております。また、児童生徒性暴力等を行ったことにより保育士の登録を取り消された者については、データベースの情報の記録期間は、同様に、当面、最低四十年分とされているところでございます。

 先ほど、こども家庭庁の説明でありますと、子供に対する性暴力を起こさせないための必要な期間として四十年ということであります。しかし、本法案におきましては、拘禁刑の場合でも刑の執行終了等から二十年としております。これについて、本法案と他のデータベースの情報記録期間である四十年間との違いは、どうしてこの差が生じているのか、御説明をお願いいたします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 犯歴確認の対象期間につきましては、子供の安全確保を第一としつつ、憲法上の制約あるいは加害者の更生を促す刑法の規定の趣旨、こういったことも踏まえながら、子供への性暴力防止の目的に照らして許容される範囲ということで、実証データに照らしまして、再犯の蓋然性が高い期間を設定をするということで、先ほど来御説明申し上げましたようなデータを精査をした結果、拘禁刑については、刑の執行終了から二十年経過するまでの期間を確認の対象とするというふうに、今提案をしている法律に規定がございます。

 一方、御紹介いただきました教員のデータベース、あるいはこれに倣った保育士のデータベースもそうでございますけれども、教員のデータベースにつきましては、少なくとも四十年保存するというふうにされております。

 この違いの関係でございますけれども、いわゆる教員性暴力防止法に基づく教員免許状の失効等の確認と本法案に基づく性犯罪歴の確認、この二つを比較をいたしますと、まず、対象職種につきましては、教員性暴力防止法については教員免許状を有する者に限られるのに対して、本法案は学習塾も含めた幅広い業務を対象としていること。確認を行う者について比較をいたしますと、教員性暴力防止法では教員としての任命、雇用をする者に限定をされるのに対しまして、本法案は教育、保育の事業者を幅広く含んでいること。また、その効果でございますけれども、法律上の義務につきましては、教員性暴力防止法ではデータベースを活用するということまでが定められているのに対しまして、本法案では犯罪事実確認の結果を踏まえた防止措置が義務づけられるということ。また、教員性暴力防止法のこの四十年でございますけれども、これが法律ではなく大臣指針に定められている、こういった顕著な違いがございました。

 このため、本法案においてその期間設定をどうするかという議論、これは与党における部会等でも本当に熱心に長期間御議論いただいたところでございますけれども、その結果、先ほど来御説明申し上げました実証データを基に、どのぐらいの期間まで超えられるかということを精査をした結果、先ほどの二十年というふうな御提案をさせていただいたという経緯がございます。

黄川田委員 犯罪事実確認について、山田委員の質問の中で英国のケースが少し取り上げられておりました。

 英国の場合は、先ほどの答えでは無期限と、照会、確認の年限は無期限であるという扱いになっているということでありましたが、英国以外、フランスやドイツ、韓国等、いろいろ調査されているというふうに聞いておりますので、参考までに、各国の、諸外国での犯罪事実確認期間についてどういうふうになっているのか、御説明をお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の制度でございますけれども、網羅的に把握しているものではございませんけれども、子供関連事業従事者を対象にした犯歴等確認の仕組みにおける性犯罪歴の確認の期間について把握できたものということでお答えをさせていただければと思います。

 例えば、英国は、先ほど来御説明申し上げましたように無期限でございます。また、フランスでは、十年以上の拘禁刑に処せられた罪では、出所してから三十年。ドイツでは、十四歳未満の性的虐待等の有罪判決を受けた者については、第一審の判決日から二十年間。韓国では、裁判所が発出する就業制限命令の期間となっておりまして、その上限は十年間というふうになっておりまして、国によって様々な期間設定がなされているというふうに承知をしております。

黄川田委員 ありがとうございます。

 国によって様々ということであります。そして、我が日本におきましては、二十年たつと再犯が少なくなるという実証データに基づくという理由、これについては承知しました。しかし、英国のように、特定犯罪について無期限という、期間にかかわらず証明書に記載する国もあるということであります。DBSの効果を高めるために、子供に対する性犯罪のリスクを可能な限り減じるべきだというふうに考えております。

 先ほど、実証データという話ではございますが、児童に対する性犯罪は犯行が見えにくいという性質もありまして、なかなかその実証データ、統計データに表れにくいということもございます。また、被害児童のことも考えて民事上示談にするなど、表に出てこない被害もあるわけでございます。ですので、この表に出ている実証データだけを頼りに児童や生徒に対して性犯罪を犯した場合の確認年限を考えるということでは、私はまだまだ不十分なのかなというふうに思っております。

 ですので、先ほど加藤大臣もおっしゃったように、児童や生徒に対して性犯罪を犯したら日本社会は絶対許さないというメッセージを強く打ち出すことが、子供たちを守るために大切であると私は考えております。

 政府参考人、どのように考えるか、よろしくお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、期間につきましては、ただいま御説明申し上げましたとおりでございますけれども、憲法の制約がある中ではありますけれども、実証データに照らして、再犯の蓋然性が高い期間ということで期間設定をさせていただきました。

 一方で、犯歴照会だけで子供を性犯罪から守ることはできません。特に九割が初犯というふうに言われている中で、社会全体で性犯罪を防止するということの機運を高めていくという、そういったメッセージというものは非常に重要だというふうに、委員の御指摘のとおり考えております。

 こういったことから、先般、四月の二十五日でございましたけれども、関係省庁合同会議を開催しまして、総合的な取組について取りまとめを行いました。

 その場では、総理にも御出席をいただきまして、総理からも、この法案を起点として、社会全体として、子供たちを性暴力から守る社会的意識を高めていくこと、また、この法案だけでなく、法案に加えまして、子供、若者の性被害防止に向けて、関係省庁で取り組むべき総合的な対策に基づき、更に取組を進めるべきことといった御発言をいただいたところでございます。

 こうした取組を通じまして、子供たちを性暴力から守るため、政府一丸となって、子供が安心して生活を送ることができるように万全を期していきたいというふうに考えます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 本法案は見直しの期間を三年というふうに定めておりますので、犯罪事実確認の期間についても、三年運用した後に、本当に子供を守れているのかどうなのかということを厳しく精査して、また考えていただきたいというふうに思います。

 次に、当法案の具体的な執行体制について確認したいと思います。

 犯罪事実確認記録等個人情報については、個人情報保護法の要配慮個人情報に該当いたします。したがいまして、通常の個人情報よりも厳格に管理しなければなりません。また、当該情報の目的外利用は当然禁止されているということであります。

 そこで、犯罪事実確認実施者が適切に情報管理ができているのかどうか、誰がどのようにチェックするのであるか、教えてください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案におきまして、犯罪歴を含み得る犯罪事実確認記録の管理につきましては、事業者に対しまして、管理責任者の設置など、適正管理措置を法律上義務づけることとしております。

 その実効性を確保するために、事業者に対し、情報の管理状況の定期報告を義務づけるとともに、こども家庭庁が必要に応じて立入検査等の監督を行うこととしており、情報の適正管理義務違反があった場合には是正命令の対象といたします。

 さらに、命令を受けた事業者は、是正措置を講じるまでの間は犯罪事実確認書の交付を受けられないこととしております。この場合、必要な犯罪事実確認ができない者を対象業務に従事させることができなくなりますので、事業の実施が困難となります。逆に言えば、是正をする担保にもなるというふうな言い方もできると思います。

 あわせまして、情報漏示、秘密を漏らすということですけれども、情報漏示につきましては罰則を設けておりまして、こうした仕組みによりまして、情報の適正管理を担保し、情報漏えい等の防止を徹底してまいります。

黄川田委員 ありがとうございます。

 また、当法案では、先ほどお話がありましたように、子供に対する犯罪が九割は初犯ということを鑑みて、未然防止の観点も取り入れられているということであります。子供たちの安全な環境を確保するために、学校設置者等は子供たちへの性暴力防止の関心を高めるために研修を実施するということになっております。

 これについて、形ばかりの研修にならないよう、実効性を担保しなければならないわけでございます。そして、そういうことで研修の義務を課された各施設において、研修内容も含め、適切な研修を実施しているのかどうか、またこれも誰がどのようにチェックをするのか、教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で、対象従事者に受講させる義務がある研修の内容や方法につきましては、今後、有識者や関係団体との協議の上、内閣府令等で定めることとしております。

 現在、昨年度の補正予算、経済対策を活用いたしまして、教育、保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための先進事例の把握の調査を開始したところでございまして、この中においても有識者等から情報収集を行いたいというふうに考えております。

 国として充実した研修素材を作っていくということは重要であるというふうに考えておりまして、対象事業者にはそれも用いていただくことで、実効性のある、一定の質の研修を受講していただけるように工夫をしていきたいというふうに考えております。

 また、この研修の義務の履行をどういうふうに担保していくのかというお尋ねもございました。

 学校設置者等につきましては、児童福祉法などの関係法律に基づく認可を背景とした監督の仕組みが既に整っております。したがいまして、それらによりまして、研修の受講を含めた義務の履行状況について、事業の所管庁、具体的には都道府県等でございますけれども、が監督を行い、監督といいますのは、例えば児童福祉法であれば、定期監査、報告徴収、立入検査、改善勧告、改善命令などがございます。

 また一方、認定事業者につきましては、研修の受講を含めて義務が履行されているかどうかを定期的に報告をさせるというふうに本法律案に規定をしております。業務委託なども活用しながら、こども家庭庁が監督を行うということを担ってまいります。しっかりと、こうした監督についても円滑に行えるように検討を進めていきたいというふうに考えております。

黄川田委員 この実施体制については、直前の二つの質問への答弁を聞く限り、当法案によってそれなりの枠組みはできているということを感じました。しかしながら、具体的に誰がどのように取り組むかという現場の執行体制については、検討しなければならないことがまだまだあるというふうに感じております。それは、このようにチェックをするというのは分かるんですけれども、本当に人員的にどうなのかというところも含めて不安があるというところでございます。

 現行のこども家庭庁の体制では、なかなかその辺が難しいというふうに思います。というのも、こども家庭庁の職員数は、内部部局の定員数、令和五年の段階では三百五十人で、現在は多少増えて三百八十四人ということで少しずつ人員を増やしているということでありますが、地方組織もないというところではあります。

 また、英国では、OFSTEDという、事業者そのものをしっかりと管理監督する機関があります。このOFSTEDという英国の機関においては、人員は三千八百人いて、事業者等を管理監督しているということであります。そして、DBSをカバーしているということであります。

 また、英国のDBS、これ自体にも、今、現段階では千三百人の職員で対処している、仕事をしているということでございますので、まずは始めるということが大切なのは分かりますが、イギリスの体制から比べてみると一桁足りないというところでありまして、今、個人情報の扱い、また研修の実施状況、これをしっかりとこの少ない人員で今御説明があったようにチェックできるのかどうかというところ、ここは課題があるのかなというふうに思わざるを得ません。

 そこで、OFSTED的な役割を担う新たな組織の検討も含めて、当法案に取り組むための体制の充実が必要と考えますが、政府としてどのように考えておりますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御紹介いただきましたOFSTEDあるいはDBS、我々も情報を収集しておりますと、かなり大きな規模で運営をされているというふうに承知をしております。

 イギリスでは、教育、保育の事業者の総合的な質を評価をする機関ということでOFSTEDがございまして、ここに事業者が登録をし、質の監査を受けられる仕組みがある。また、その登録の過程でOFSTEDがその者の、従業者の犯罪歴照会をDBSに行う、こういった機能を担っているというふうに聞いておりまして、御紹介いただきましたように、職員体制数千人規模というふうに聞いておりまして、質の監査という新たな役割を有する組織を我が国においてそのまま直ちにということは、なかなか課題が大きいかなと思っております。

 ただ、さはさりながら、本法律案を提案をして、また、これをしっかり円滑に施行するということを考えた場合に、執行体制は非常に重要な懸案であるというふうに考えてございます。

 具体的には、特定犯罪の事実の該当者への対応ですとか、あるいは公権力の行使に当たるような立入検査、監査のようなところについては、やはり、そうはいいましても、こども家庭庁において実施をするということになろうと思っております。限られた体制で効率的に執行するためには、可能な範囲で委託をしていく、民間団体に一部委託をするということも検討することが必要かなというふうに思っております。

 具体的には、認定申請の基本的なチェックですとか、確認が必要な場合の申請者のやり取りですとか、認定に関する通知、連絡、こういったものだったり、あるいは、逆に、事業者側から定期報告を受け取るときの基本的なチェックですとか、マニュアルに基づく問題のある事業者の抽出ですとか、そういった補助的な業務、それから、犯罪、犯歴の事実確認の交付の申請については、特定犯罪事実の該当者以外の場合についての事務、こういったものを想定しながら、どのような実務について委託ができるのかといったことについて具体的に検討していく必要があろうかというふうに考えております。

 また、委託だけではなく、実際に事業者の方がやっていただく手続について、オンラインで申請、提出をできるような仕組み、こういった工夫も必要だろうと思っております。事業者に対する負担軽減の観点からのオンライン化、あるいは管理体制のある委託先の活用、こういったものも含めながら、その上で、こども家庭庁において効率的かつ適切な執行ができるように、十分な体制の検討、構築をしてまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 ありがとうございます。

 様々な工夫が必要だということでございますが、それでも、やはりこのDBSを始めるに当たりまして、こども家庭庁自身の人員の充実というのは欠かせないものではないかというふうに考えております。これも先ほどお話ししましたように、三年の運用後の見直しがございますので、それも含めて、どのような形での体制の充実が図れるかということも一緒に考えていきたいというふうに思います。

 私は、以前、デンマークの社会・高齢者省を訪問しました。社会・高齢者省は、高齢化の問題や経済的弱者、障害や貧困、教育や健康面などの問題を抱える子供たちのための施策などを担当する省であります。

 この省の設置根拠となっているデンマークの社会サービス法では、様々な人権、個人の権利がある中で、子供の最善の利益が最重要視されるべきと明確に規定されております。まさに国を挙げて子供ファーストが徹底されておりまして、この考えの下、国内の様々な制度が整備されているということを見てまいりました。非常にすばらしい取組でありました。

 私は、日本のこども家庭庁にも、デンマーク同様に、子供の最善の利益を最重要視した取組をしてもらいたいと思っておりますし、日本版DBSもその観点から更に充実すべきであると考えております。そのための組織充実、他省庁との連携促進、予算の拡充が必要であるというふうに思っております。

 しかしながら、本家のイギリスのDBSも、できることから始めたということでございますので、本法律案においては辛うじて合格点でありますが、ちょっと上から目線でしたね、これから満点を目指して頑張っていただきたいというふうに思っております。

 日本は、こども基本法では、社会全体で子供の施策に取り組む旨記載をされております。本日質疑した各点について更に積極的に取り組んでいただくことをお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

谷委員長 次に、山崎正恭君。

山崎(正)委員 公明党の山崎正恭です。

 四国比例ブロック選出の衆議院議員でありますが、本日は本特別委員会での初めての質問になります。機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 貴重なお時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 本法案、子供性暴力防止法案につきましては、公明党としましても、何としても子供たちを性暴力から守るとの思いで、党内にプロジェクトチームを立ち上げ、専門家の皆さんからのヒアリングを始め、計十四回の協議を重ねてまいりました。私もその事務局長としましてこの問題に取り組んでまいりましたので、基本的なところの確認も含めまして、御質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、三月二十六日の本特別委員会において、我が党の浮島智子議員が、日本の子供の政策においては、一人も残さず全ての子供たちを性暴力から守り、一人であっても子供の尊厳が傷つけられることがないようにするということが前提であるとの認識についての質問に対して、加藤大臣からは、委員御指摘のとおり、誰一人として子供が性被害に遭うことのないよう、安全、安心を確保すべきことは当然であると考えており、こうした認識の下、子供性被害防止対策を更に推進してまいりますとの答弁がありましたが、具体的にどのように推進していくのか、大臣の認識をお伺いします。

    〔委員長退席、田中(英)委員長代理着席〕

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 誰一人として子供が性被害に遭うことのないように、安全、安心を確保すべきことは当然のことと考えております。

 そのため、本法案は、性犯罪歴、前科の有無の確認による仕組みによる再犯対策だけでなく、初犯対策にも対応できるよう、子供と接する職員等に対する研修、児童等への面談、児童等が相談を行いやすくする措置などの安全を確保するための措置を講じることを事業者に直接義務づけるなど、予防策を徹底する内容としています。

 また、本法案に基づく取組だけではなく、関係省庁が連携して総合的な対策、これを進めていくことが必要であります。こうした措置を講じることで、子供性被害防止対策を更に推進してまいります。

山崎(正)委員 この点につきましては、先ほど行われました本会議におきましても、浮島委員より、特定性犯罪事実該当者について、その期間二十年について、なぜ二十年で区切ったのかとの質問がございました。大臣からは、犯罪確認の対象期間は、この仕組みが事実上の就業制限であることから、憲法上の就業選択の自由を制約することとの整理、また、前科を有する者の更生を促す刑法の趣旨を踏まえつつ、子供の安全を確保するという目的に照らして許容される範囲との答弁がございましたが、これも、再犯者が前回の罪を犯してから何年後に再び罪を犯したのかというデータに基づき、大臣からの御答弁がございました刑法の更生の観点との中でのいわゆる落としどころの年数であると思いますが、先ほど来皆さんから御指摘があるように、そのデータに基づくと、どうしても二十年経過後に再犯を行った者が六%はいるわけでありまして、そういった点において、誰一人取り残さないという点におきまして非常に懸念されるところでございます。

 ここで少し、質問の順番を変更しまして、対象期間についてもう一問お伺いします。

 小児わいせつの再犯率は八割というデータもありますが、今回は拘禁刑と罰金刑という大まかな仕切りになっていますが、罰金刑が、刑の消滅が適用されていないにもかかわらず、十年しかできないという理由についてお伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 犯歴確認の対象期間でございますが、子供の安全確保を第一としつつ、この仕組みが事実上の就業制限になり得ることから、憲法上の自由の制約になることとの整理ですとか、前科を有する者の更生を促す刑法の規定の趣旨を踏まえて、子供への性暴力防止の目的に照らして許容される範囲ということで考えてまいりました。

 このため、犯歴確認の対象期間としては、再犯に至った者の五年間分の実証データを基に、再犯の蓋然性が高い期間を設定をするということで、前回の犯罪が拘禁刑の場合と罰金刑の場合とに分けて整理をして分析をした結果、罰金刑については、刑の執行終了から十年経過するまでの期間を蓋然性が高い期間ということで設定をさせていただいたということでございます。

山崎(正)委員 繰り返しになりますが、罰金刑においても、十年経過後に再犯を行った者が八%いるわけであります。本会議の答弁では、誰一人として子供が性被害に遭うことのないよう、安全、安心を確保すべきことは当然であると考えており、そのためにできる準備は、三年の見直しの検討規定を待たずに継続的に取り組んでいきたいとありましたので、誰一人取り残されることのないよう、子供たちを性被害から守っていけるよう、継続的な取組をお願いいたします。

 次に、子供性暴力防止法案における関係省庁との連携、特にデータ連携についてお聞きします。

 この点につきましても、我が党の浮島議員より、刑事事件にならなかったものの、子供への性暴力により懲戒免職となり教員免許が失効した者や保育士資格の登録取消しになった者が素知らぬ顔で学習塾やスポーツクラブなどで再び子供たちの前に現れるのを防ぐためには、今回の子供性暴力防止法案と教員免許失効データベース、さらには保育資格登録取消し者データベースとの連携、連結が不可欠との質問が先ほどの本会議でございましたが、この点につきましては、我が党のプロジェクトチームにおける専門家や子供に関係する各団体の皆様から強く要望された項目であります。前科の裏にある不起訴処分や示談により済まされた事案なども実際にはかなりあるのではないかという御指摘が多くございました。

 そこで、確認になりますが、今回の子供性暴力防止法案と教員免許失効者データベース、また保育資格登録取消し者データベースの連携の必要性に加え、刑事事件になっていない事案がかなりあるのではないか。子供を守るという点においては非常に穴になる部分であると思うんですが、今後の連携の可能性について大臣にお伺いします。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 データベースの連携につきましては、前科の有無にかかわらず、懲戒免職等になった場合には教員性暴力等防止法等の対象となり、教員免許や保育士資格の有無にかかわらず、特定性犯罪に係る前科を有する者は子供性暴力防止法の対象となるなど、子供性暴力防止法は教員性暴力等防止法等と相互補完関係にあります。

 子供性暴力防止法の円滑な施行や子供の性暴力を防止するための総合的取組を進める上では、委員御指摘のとおり、文部科学省を始め関係省庁の協力が不可欠でありまして、こども家庭庁が中心となりつつ、緊密に連携を取りながら進めてまいります。

 御指摘をいただきましたデータベースとの関係につきましても、どういったことができるか、文部科学省ともしっかりと連携をし、検討をしてまいります。

    〔田中(英)委員長代理退席、委員長着席〕

山崎(正)委員 これも先ほど来から御指摘があるように、行き過ぎてしまうと人権問題や個人情報の問題になってしまいますが、先ほど言いましたように、実際の、ヒアリングを行うと、現場からは、前科の裏にある不起訴処分や示談により済まされた事案など、子供たちに性暴力を行った者が多く実在するという観点からすれば、せめて子供性暴力防止法案とか公的なデータである教員免許証失効データベース、保育資格登録取消し者データベースの連携は最低限行ってほしいというのが、子供さんを預かる現場の皆さんからの切実な声でありますので、早期の連携実施に向けての協議をスピード感を持ってお願いしたいと思います。

 次に、子供性暴力防止法案において認定された民間教育保育等事業者から特定性犯罪の前科の有無の確認があり、その結果、前科ありとなった場合において、児童対象性暴力等の防止のための措置、教育、保育等の業務に従事させないなどを講じなければならないとなっていますが、この防止措置は必須となっていますが、厳密に言うと、罰則規定ではないというふうに承知しております。

 この場合、もちろん、確認の申請は民間教育保育事業者の方からしてきたわけですから、多くの事業者は、その結果を見て防止措置を当然守るのではないかと思われますが、ただ、昨今の社会全体で進む人材不足の流れの中で、罰則規定がないために、子供に関わる教育、保育等の業務に従事させてしまう事業者もいるのではないかとの心配の声が聞こえてまいります。

 この点についての認識はどうなのか、お伺いいたします。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 本法律案におきましては、事業者が、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときに、その者を教員等としてその本来の業務に従事させないことその他の児童対象性暴力等を防止するために必要な措置を講じなければならないこととしております。

 この点、本法律案において、対象前科ありとされる者、いわゆる特定性犯罪事実該当者の範囲は、過去の性犯罪の再犯状況等のエビデンスに着目し、再犯の蓋然性が高いと判断される者とされており、その者をそのまま対象業務に従事させることは望ましくないことから、基本的には、例示として規定しております、その者を教員等としてその本来の業務に従事させないことを講ずることが必要になるものと考えられます。

 いずれにしましても、子供に対する性暴力を防止するために、実効的な措置の詳細につきましては、御指摘の点も含めまして、関係者の協力も得ながら、今後ガイドライン等で示していくことを予定しております。

山崎(正)委員 罰則はありませんけれども、しっかりとこの必須について趣旨徹底をよろしくお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、対象業務の範囲についてお伺いします。

 こども家庭庁さんが作成した資料を見ますと、今回の対象業務例として、学校設置者等の義務機関においては、教員や保育士は当然のことながら、寄宿舎指導員などがあり、認定の教育保育等従事者機関では、放課後児童支援員や塾講師、スイミングクラブ指導員、ダンススクール講師などが挙げられています。

 あくまで例ですので、詳細についてはこれから対象業務を確定していくと思いますが、我が党のプロジェクトチームにおける議論においては、やはり対象の中に事務員やバス運転手、用務員なども入れるべきではないかという御意見がございましたが、今後どのような方向性で議論をしていくのか、お伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 対象業務でございますけれども、子供に対して支配的、優越的な関係に立ち、これが支配性という言葉でございます、それから、子供と継続的に直接密接な人間関係を持つ者、継続性というキーワード、そして、親等の監視が届かない状況の中で預かったり養護等をする場合、閉鎖性、こういった支配性、継続性、閉鎖性というふうな三点をメルクマールとして、こういった性質の業務に携わる職員については対象とすべきこと、さらに、この判断をするときには、子供から見てその業務が当該性格を有するかどうかということを踏まえるという方向で検討したいと思っております。

 対象事業における職種でございますけれども、その業務がこの支配性、継続性、閉鎖性を満たすものについては、できるだけ対象にしたいと考えております。

 その際、対象とすべき職種は下位法令で規定をした上で本法律案の対象とする必要があることなどから、子供と接する状態など、教育、保育業務の実務を踏まえながら、下位法令を適切に整備できるように、関係省庁とも協議をしながら鋭意検討していきたいと考えております。

山崎(正)委員 実は、私は元々が中学校の教員でして、二十四年間教育に携わってまいりましたが、先ほどの対象業務の範囲の考え方については、三観点、支配性、継続性、閉鎖性、これらを柱としながら、やはり大事なことは、先ほどもありましたけれども、よくよく現場の実態に即して、そして、今までの過去に起こった事案等も参考にしながら対象業務の確定を行っていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 次に、現在学校や幼稚園等で既に働いている現職者への対応についてお伺いします。

 今回の法案が成立した場合には、対象の義務機関である学校設置者等の現職者への性犯罪前科の有無の確認が行われると思いますが、まず、対象者が二百万人と言われていますが、現職に対しての犯歴の照会等をどのように進めていくのか、また、その結果で万一対象となり得る者が出てきたときにどのような対応を行うのか、お伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案では、新たに対象業務に従事する者のほか、施行時点で対象業務に現に従事している者についても、犯罪事実確認を行う対象従事者としております。

 施行時点で現職の教員等につきましては、業務を行わせるまでの確認を義務化してしまいますと、施行後一定期間、事業の実施が困難になることが危惧をされます。大規模な自治体など、事業者によっては教員等の人数が非常に多いケースもあると思います。こういったことを踏まえまして、これらの者の犯罪事実確認の期限は施行日から三年以内、政令で定める期間というふうに規定をしてございます。

 この結果でございますけれども、犯罪事実を確認した結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合には、基本的にその者を対象業務には従事させないという防止措置を、それは新規の場合と同様、措置を講じる必要があるというふうに考えております。

山崎(正)委員 先ほど、教育、保育などに従事させないということですけれども、実際には、これは学校現場なんかでは無理なのではないかなというふうに思います。やはり現実的に考えにくい。

 先ほどの質問と少し重なりますが、実際には、事務員さんだって、用務員さんだって、子供たちから大変人気があって、信頼されていて、子供たちから日常的に相談されている方もたくさんいますし、幼稚園等のバスの運転手さんでも子供たちから人気のある方もいるように、教壇には立たずに学校内で事務の仕事をするから、それで子供たちとの距離が取れて安全が守られるかといえば、やはりそうではないと思いますので、実際には、こういった学校や幼稚園の現職者でそれだけ多くの人数を想定されていないとは思いますが、やはり万が一出てきた場合には学校外での勤務等に就くといった点が子供たちの安全を守るという点においては重要だと思いますので、その点への配慮もよろしくお願いしたいなというふうに思います。

 次に、子供の安全を確保するために日頃から講ずべき措置についてお聞きします。

 これにつきましては、日頃から講ずべき措置として、教員等の研修、危険の早期把握のための児童との面談等が挙げられています。これは非常に重要な対策であると思いますが、そこで、この研修や面談についての効果検証は適宜行うべきだと考えます。さらに、きちんとそれを実施しているかということをどのように確認し、実効性を担保していくのか、お伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪、約九割が初犯と言われている中で、常日頃からの安全措置、これは非常に重要であるというふうに考えております。対象事業者が本法律案に規定する措置を適切に履行しているかどうかの監督につきましては、既存の法体系との関係を踏まえながら、実効性のあるものというふうにすることが必要でございます。

 この点につきまして、御指摘の研修、面談を含む安全確保措置全般の監督につきましては、まず、学校設置者等については、既に認可を背景とした監督の仕組みが整っているということがございますので、それらによって、各施設、事業の所管庁、都道府県等でございますけれども、が監督を行い、法律に基づく定期監査、報告徴収、立入検査、改善勧告、改善命令など、こういった監督を行ってまいります。

 一方、認定事業者につきましては、適切に安全確保措置を講ずることができる旨の認定を内閣総理大臣が行うという仕組みになりますので、認定基準を維持するための定期報告、適合命令等も内閣総理大臣が行うというふうになります。これらによりまして、具体的には、こども家庭庁におきまして、本法律案による定期報告、報告徴収、立入検査など、こういった監督を行ってまいります。

 このように、学校設置者等の所轄庁とこども家庭庁がそれぞれ、認可、認定に係る権限を背景としながら、分担、連携して監督を行っていくことで実効性を担保していきたいというふうに考えております。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 この点につきましては、局長からもお話がありましたように、やはり学校設置者等の義務機関と民間の事業者とではかなり取組の進め方が違ってくるのではないかなというふうに私も思います。

 学校や幼稚園といったところは、既にこういったことに慣れているというか、現在、国や県から、悉皆も含めた研修等について必ず行うということが定着していると思いますが、民間教育保育等事業者、認定機関の方は、今回、様々な業種、また経営規模も違うと思いますし、多様な事業者の方々がおいでの中、そして何よりも、数多くの事業者の認定希望があった場合に、本当に、適切な研修や面談といった子供の安全を確保するために日頃から講ずべき措置が行われているのかのチェック機能が働くのかという点につきましては、マンパワーの点からも、本当にできるのか、可能なのかという不安の声が届いております。

 先ほどの現職者二百万人の確認も含めて、やはり、先ほど黄川田さんからもお話がありましたけれども、体制の強化もしっかり行っていただきたいというふうに思います。

 報告をさせるということですけれども、本当に、民間の方に対する、しっかりとした履行を、報告だけでいいのか、抜き打ち検査等をするのか、また、若しくは、そういったことができていないんじゃないかといったことを通報するような機関を設置するなど、そういった取組も、今後進めていく中で必要になってくるのではないかというふうに思いますので、より充実した取組の実効性が担保されていくことをよろしくお願いいたします。

 次に、犯罪の九割と言われる初犯対策についてお伺いいたします。

 今回の法案につきましては、性犯罪の再犯リスクから子供たちを守るというシステムづくりでありますが、同時に、どう初犯を防ぎ、子供たちを性犯罪から守るのかが大変重要であります。

 そこで、初犯への取組について政府はどのような防止策を進めるのか、大臣にお伺いします。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 性犯罪で検挙される者のうち、約九割は初犯と言われていると承知をしており、議員御指摘のとおり、初犯対策は大変重要であると考えております。

 本法案におきましては、子供と接する職員等に対する研修、これを義務づけるほか、性暴力等が行われる端緒を早期に把握するための措置として、児童等への面談等、学校設置者等の方から能動的に端緒を把握しにいくための措置の実施、また、児童等が容易に相談を行うことができるようにするための措置、これらを講じることを求めております。

 特に、性暴力の被害につきましては、児童等が自発的に相談しにくい状況も考えられる中で、能動的な働きかけと児童等が容易に相談することができる環境づくり、この両面によって早期把握につなげたいと考えております。

山崎(正)委員 初犯への取組として、続いてお聞きします。

 将来、子供たちと関わる仕事に就こうとしている人に対して、早期から適切な教育、指導を行っていくことが重要だと考えます。

 そこで、現職になる前段階、つまり、教員や保育士等を目指している方々に対して、児童生徒に対する性犯罪を未然防止するためのプログラムなど、現状、どのような取組を行い、理解を深めているのか、お伺いします。

安江大臣政務官 お答えを申し上げます。

 教員免許を取得するための教職課程において、教授内容の基準となる教職課程コアカリキュラムでは、教職の意義及び教員の役割、職務の内容の事項の中で、教員の服務上、身分上の義務を理解することとされており、この事項等に関する授業科目において、児童生徒に対する性暴力の防止等についても取り扱われております。

 また、文部科学省では、令和四年四月の教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律の施行に合わせまして、教職課程を履修する学生が知っておくべき児童生徒性暴力等の定義や教育実習等での留意点に関する動画を作成をし、教職課程を置く大学等に対して活用を促しているほか、令和四年度に実施をした委託調査研究の中でも、各大学の教職課程で活用可能なICT教材を開発をし、大学等に提供しているところです。

 文部科学省としては、引き続き、各大学において、教員を目指す学生に対しまして児童生徒性暴力等の防止に関する教育が着実になされるよう取り組んでまいります。

藤原政府参考人 引き続きまして、保育士についてお答え申し上げます。

 保育士の養成段階につきましての取組は非常に重要でございます。

 保育士による児童生徒性暴力防止に関する基本的な指針、この中で、保育現場での児童に対する児童生徒性暴力を未然に防止していくために、保育士の養成施設が保育士養成課程を履修する学生に対して、例えば、法における保育士の欠格事由や信用失墜行為、保育士の専門的倫理に関する科目ですとか、性的虐待を含む子供虐待や子供の人権擁護に関する科目、また、子供の最善の利益を考慮した保育の基本的な考え方について定めた保育所保育指針に関する科目、こういった科目を通じた指導あるいは保育実習の事前指導の授業におきまして、児童生徒性暴力の防止に関する理解を深めるための取組を行うよう求めているところでございます。

 引き続き、全ての保育士が法の内容を理解し、児童生徒性暴力の防止に向けて適切に対応することができるよう取組を進めてまいります。

山崎(正)委員 ありがとうございます。

 現状、様々な取組が行われるとお聞きしましたが、非常に重要な取組でございます。

 先ほどお聞きしました、そういったことを起こさない根本的な取組とともに、本法案が成立後は、こういった法律が教員性暴力等防止法などとともにあるんだということを周知し、その発生予防に万全を期していただきたいと思います。

 次に、子供たちへの教育、特に障害のある子への教育の重要性についてお伺いします。

 私たちは、党のヒアリングの中で、日本知的障害者福祉協会からお話をお聞きしました。まず、実態として、法政大学の岩田千亜紀先生によると、障害のある子供は、そうでない子に比べて性暴力被害に遭う割合が約三倍にもなると言われており、欧米などの調査でも同じような結果が出ているが、日本では障害のある子供の性被害の実態はまだ十分に把握されていないとのことでした。

 また、知的障害などの障害がある場合は、被害を認識しづらく、起こったことをうまく伝えられないことも多いため、そういったことにつけ込んでくるとの指摘もございました。本日の本会議で浮島委員が紹介した事案もこれに当たると思います。障害児の支援をしている立場の人が加害に及ぶことが全国で起きているとのことでした。

 そういった中で、十年前から年に一、二回、子供たちへの性教育を開始され、性のことは互いのリスペクトの中で行う行為であることや、命の誕生は奇跡に近いこと、そして、自分と人を大切にすることは体を大切にすることやプライベートゾーンなどの知識を丁寧に教えていきながら、実際に被害に遭ったときには、性被害はつらいことだから、子供は悪くないからね、ここにいる大人に伝えてね、嫌だと言っていいんだよと、ノーと言えるスキルや人に助けを求めていいというスキルの練習を行われているとのことでした。そういった取組を十年間行ってきた中で今思うことは、障害児は被害に遭いやすい現状を考えると、年に一、二回では足りない、もっと日常的に行っていかなければならないとおっしゃっていました。

 そこで、性被害に遭わないための子供たちへの性教育、特に障害のある子供たちへの教育が重要であると考えますが、その現状と今後の取組についてお伺いします。

安江大臣政務官 お答えを申し上げます。

 文部科学省では、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないため、いわゆるプライベートゾーンを守ることや被害に遭ったときの対処方法等を盛り込んだ生命の安全教育の教材及び指導の手引を作成をし、全国の学校での取組を推進しております。

 教師用に作成をした指導の手引におきましては、障害のある児童生徒等に対する指導に当たり、その障害の状態等を考慮し、指導内容や指導方法を工夫することが必要であること等を盛り込んでいるほか、指導に当たっては、事前や事後に保護者にもその内容等を伝えることとしております。

 このほか、生命の安全教育の授業モデルを構築する事業におきまして、特別支援学校における好事例等の周知等を行っているところでもあります。

 引き続き、障害の有無にかかわらず、児童生徒が性犯罪、性暴力に対して適切な行動を取れる力を身につけることができるように、生命の安全教育を全国の学校で進めてまいります。

山崎(正)委員 次に、子供たちの性暴力に関する保護者への教育の重要性についてお聞きします。

 上智大学の齋藤梓准教授は、子供たちへの性暴力について、一回限りの性暴力も子供の人生に深刻な影響を及ぼす、特に信頼している大人からの性暴力は、育ちつつある社会性や他人、大人への信頼を崩してしまうと、その被害の大きさを訴えた上で、加害の方法は巧妙で、子供が自分で防ぐことは難しい、子供たちを守るためには保護者や環境を変えることと、保護者への教育の重要性を言われています。

 先ほどの質問で御紹介した日本知的障害者福祉協会の取組においても、子供たちへの性教育は大人と一緒に学ぶことになっており、保護者も一緒に学び、もし子供たちから性被害の話を聞いたら、怖い思いをしてつらいのは子供、大人は決して本人を責めないで、よく話してくれたねと伝えてほしいということを保護者にお伝えしているとのことでした。

 実際のケースにおいても、すぐに親に伝えることができなかったケースが見られるようで、子供とともに親への教育が重要との認識が現場からは多く上がってきております。

 そこで、子供たちを性被害から守るためには、保護者の教育や安全な環境づくりが非常に重要だと考えますが、その現状と今後の取組についてお伺いします。

安江大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まさに、山崎委員御指摘のとおりであります。子供を性被害から守るためには、学校だけではなくて、保護者や地域と一体となった取組が必要と考えております。

 このため、学校におきましては、生命の安全教育を行うに当たっては、保護者等の理解を得ながら推進することとしておりまして、具体的には、生命の安全教育の指導の手引におきまして、保護者に対して事前に授業の狙いや内容について伝えるといった保護者への対応を示すとともに、文部科学省のホームページにおきましては、保護者向けの啓発資料を公開をし、各学校での活用も促しているところです。

 また、地域ぐるみで子供の安全の確保が図られるよう、コミュニティースクールや地域学校協働活動の取組を推進するとともに、学校、通学区域の巡回や安全指導等を行うスクールガードリーダー、この育成支援等も通じ、性被害の防止も含めた見守り体制の整備も推進をしております。

 文部科学省としては、今回の法案も契機といたしまして、こども家庭庁を始めとする関係省庁や地方自治体とも連携をし、子供たちが性犯罪や性暴力に巻き込まれることなく、安全、安心に過ごすことができる社会の実現を目指して、より一層の取組を進めてまいります。

山崎(正)委員 次に、性犯罪防止に向けた研究、それを生かした対応についてお伺いします。

 この点につきましても、浮島委員から質疑の中で、WHOの判断基準であるICD10がバージョンアップされ、ICD11において、性嗜好の障害という大まかな診断概念に加えて、強迫的性行動症という診断概念が追加されたこと、また、我が国の医学においては、この分野の研究、治療が進んでいるとは言い難い現状があることなどの指摘があったと思いますが、我が党のプロジェクトチームによるヒアリング調査においても、事例の収集をしっかり行い、しっかりと性暴力に関するデータの把握と蓄積、分析を行い、犯罪防止や、依存的に子供たちに対して性暴力を繰り返す者に対する医学研究、そして治療の進展に取り組んでほしいとの意見が多くありました。

 そこで、性犯罪の事例の積み上げ、分析を行い、再犯防止等へとつなげていくといった研究に取り組んでいるのか、現状と認識についてお伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、加害者の更生といった観点についても、非常に重要な課題だと認識をしております。

 このため、先月二十五日に関係省庁合同会議で取りまとめたこども・若者の性被害防止のための総合的対策におきまして、四つ目の柱として治療、更生に関する取組を掲げ、実施をすることとしております。具体的には、厚生労働省や法務省におきまして、性嗜好障害に関する調査研究を実施するほか、再犯防止推進計画等に基づきまして、性犯罪再犯防止指導や性犯罪再犯防止プログラム、こういったものの充実を図ることとしております。

 こうした取組も含めまして、子供の性犯罪防止対策については、関係省庁会議を開催するなど、引き続き関係省庁と連携して取り組んでまいります。

山崎(正)委員 次に、再犯防止にも初犯防止にもつながる加害者治療についてお伺いします。

 小児性愛暴力の加害者治療に当たっている性障害専門医療センター、SOMECの精神科医福井裕輝医師によると、子供に性的な関心を持つ人は、男性が人口の五%、女性が一から三%いるといいます。相手は異性のこともあれば同性のこともあり、ただ、必ずしも子供に性的欲求を感じているとは限らず、性的欲求がなくても加害行為に及ぶ人もいるとのことです。

 小児性愛障害は、アルコールやギャンブル、買物などの依存症と脳のメカニズムは同じで、通常は欲求があっても前頭葉がブレーキ役となって行動をコントロールするようですが、一旦依存状態になると、脳のある部位が過剰に働き、脳の接続部位が破壊され、連携できなくなり、自分の意思ではやめられなくなってしまうとのことです。しかし、強制的にアルコールや小児などの対象から引き離すと、脳の神経細胞が回復し、少しずつ連携が取れるようになるようです。この部分が、本日の本会議で浮島委員が指摘していた、アルコール依存症の方を酒場で働かせてはいけないといった部分であります。

 また、子供と接する職場では、一般的な社会より子供への性的嗜好を持つ人が多く、後天的に小児性愛障害を発症することも加味すると、教職員の一、二割いると推測されると言われています。二十人の男性教員がいたら二人から四人程度、女性の場合はもう少し少ないだろうと考えられています。

 性嗜好障害の治療は日本では確立されておらず、診療ガイドラインもなく、保険適用にもなっていないため、診療を受けられる医療機関は極めて少ないのが現状です。

 そこで、福井先生が一つ紹介されているのが、犯罪を起こす前に小児性愛障害の傾向があるかどうかを判断するスクリーニング、アメリカではアベルテストと呼ばれているようですが、これを活用して未然に犯罪を防ぐことが欠かせないと言われています。アベルテストは、何百という質問に答えて子供への性的嗜好を判断するもので、生理学的指標も同時に取るため、本心を偽るとばれるようになっていて、精度が高いと考えられています。

 そこで、アベルテストなど、未然に防ぐことができるようなスクリーニングなどを将来的に活用していくことは重要だと考えますが、現段階での政府における調査研究状況をお伺いします。

辺見政府参考人 まず、御指摘ございましたアベルテストにつきましては、性嗜好の検査として海外で利用されている例があるということは存じ上げておりますが、詳細については承知をしておりません。

 一方、議員御指摘いただきましたように、性嗜好障害やその治療法などについては、現時点では十分に実態が把握されていないところでございます。このため、厚生労働省におきまして、令和五年度、性嗜好障害に対する治療などの情報収集を行うための調査研究を実施をし、現在、研究班において結果を取りまとめているところでございます。

 性嗜好障害の治療等の対応に当たりましては、当該調査研究の報告内容等も踏まえまして、こども家庭庁等の関係省庁と連携を図りまして、取り組んでまいりたいと考えております。

山崎(正)委員 最後に、子供たちを性犯罪から守るためには、本法案だけではなく、未然防止や環境づくりが重要で、関係省庁が一丸となって、総合的な取組が重要であると考えます。これらの課題解決のためには、加藤大臣が先頭に立って、こども家庭庁が中心となって推進していくべきだと思います。

 最後に大臣の決意をお伺いしたかったんですけれども、時間が終了いたしましたので、是非、それを要望といたしまして、よろしくお願いいたします。

 本日は大変にありがとうございました。

    ―――――――――――――

谷委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.