第20号 令和6年5月22日(水曜日)
令和六年五月二十二日(水曜日)午前九時二十二分開議
出席委員
委員長 谷 公一君
理事 井上 信治君 理事 小林 史明君
理事 田中 英之君 理事 牧島かれん君
理事 岡本あき子君 理事 藤岡 隆雄君
理事 赤木 正幸君 理事 一谷勇一郎君
理事 河西 宏一君
今村 雅弘君 上杉謙太郎君
黄川田仁志君 小寺 裕雄君
橘 慶一郎君 谷川 とむ君
土田 慎君 土井 亨君
中川 郁子君 福田 達夫君
藤丸 敏君 堀井 学君
保岡 宏武君 柳本 顕君
山口 晋君 大西 健介君
坂本祐之輔君 中谷 一馬君
福田 昭夫君 吉田はるみ君
早稲田ゆき君 伊東 信久君
伊佐 進一君 浮島 智子君
高橋千鶴子君 田中 健君
…………………………………
国務大臣
(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当) 加藤 鮎子君
内閣府副大臣 工藤 彰三君
内閣府大臣政務官 古賀友一郎君
デジタル大臣政務官
兼内閣府大臣政務官 土田 慎君
文部科学大臣政務官 安江 伸夫君
政府参考人
(こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君
政府参考人
(法務省大臣官房政策立案総括審議官) 上原 龍君
政府参考人
(法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官) 中村 功一君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 吉田 雅之君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 浅野 敦行君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 田中佐智子君
政府参考人
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長) 辺見 聡君
衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君
―――――――――――――
委員の異動
五月二十二日
辞任 補欠選任
橋本 岳君 山口 晋君
城井 崇君 大西 健介君
中谷 一馬君 吉田はるみ君
同日
辞任 補欠選任
山口 晋君 橋本 岳君
大西 健介君 城井 崇君
吉田はるみ君 中谷 一馬君
同日
理事赤木正幸君同日理事辞任につき、その補欠として一谷勇一郎君が理事に当選した。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(内閣提出第六一号)
――――◇―――――
○谷委員長 これより会議を開きます。
この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。
理事赤木正幸君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
ただいまの理事の辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
それでは、理事に一谷勇一郎君を指名いたします。
――――◇―――――
○谷委員長 内閣提出、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案、いわゆる子供性暴力防止法案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人としてこども家庭庁成育局長藤原朋子さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官中村功一君、法務省大臣官房審議官吉田雅之君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官浅野敦行君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官田中佐智子さん及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大西健介君。
○大西(健)委員 おはようございます。立憲民主党の大西健介です。
本日は、質疑の機会を賜りまして、ありがとうございます。
私ども立憲民主党は、早い段階から日本版DBSの導入を提唱しておりましたので、この制度ができることは当然賛成であります。そして、初めから完璧な制度というのはありませんけれども、しかし、児童性暴力というのは、受けた児童が心身に生涯にわたって回復し難い傷を負うということを考えると、やはりできるだけ穴のない制度にしていかなければならないというふうに思っております。その意味で、今日は、穴になると思われる点を中心に質疑をしていきたいというふうに思っております。
まず、対象となる民間事業者の範囲についてでありますけれども、本法案では個人事業主が対象外となっています。フリーランスの家庭教師、ベビーシッターは、対象範囲の考え方の三要素、支配性、継続性、閉鎖性のいずれにおいても私はリスクが高いというふうに思います。
日本版DBS制度の導入で、対象業務に就けなくなった小児性愛的傾向を持つ人がフリーランスの家庭教師やベビーシッターに流れ込んでくる可能性というのは容易に想像がつきます。この点、マッチングアプリ等を介した家庭教師やベビーシッター等の個人契約が広く行われているという実態に即した仕組みをつくるべきではないかというふうに思いますが、改めて、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
個人が一人で行っている事業につきましては、従業員の研修や相談窓口の設置といった、事業者が児童対象性暴力等の防止等をするために講ずべき措置を講ずることが通常困難であること、また、事業主本人がその犯罪歴を取得することができてしまいますと、対象事業とは無関係の第三者から犯罪歴の提出を求められるなど、対象事業以外のところでその犯罪歴を悪用されるおそれがあること、こうした理由から、純粋に個人のみで行っている形態につきましては本法律案の認定対象事業に含めることは困難であると整理をしてございます。
この点、個人が一人で行っている事業だとしましても、それでもやはり対象にすべきという御意見、今の御指摘のような御意見もございますので、検討を進めてまいりました。例えば、ベビーシッターにつきましては、認可外保育事業所の取扱いを一部見直し、一定のマッチングサイト事業者を認可外保育事業者として届出対象として本法案の認定を受けることを可能とする方向で検討をしているところでございます。これによりまして、マッチングサイト事業者に登録したベビーシッターにつきましては、性犯罪前科の有無の確認等の措置、これを及ぼすことが可能になると考えております。
このように、現在の事業形態が個人一人で行っている事業であるからといって一律に対象としないということではなくて、現在個人が一人で行っている事業について、新たに事業化することにより対象とすることができるかといった点も含めて、施行までに検討を進めてまいります。
○大西(健)委員 今、大臣の答弁の中で、ベビーシッターのマッチング事業者を保育提供事業者とみなすことを検討しているという話がありましたけれども、似たような話としてフランチャイズ方式の学習塾というのがあります。
フランチャイズ方式の学習塾、大手の場合には全国に千を超える教室を展開しておられるところもあります。フランチャイズということになると形式的には個人事業主に当たるというふうに思いますが、このフランチャイズ方式の塾というのは対象になるんでしょうか。そもそも、本部で全ての教室に実効性あるチェックをするということもして責任を持つということもなかなか難しいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
フランチャイズ方式も含めまして、民間教育事業に該当する場合には本法律案の対象となるというのが大原則でございます。
その上で、認定の主体となる事業者は、申請する事業におきまして、対象業務の従事者に対する犯罪事実確認義務や防止措置などの認定事業者に求められる義務の履行が可能な事業者である必要がございます。このため、フランチャイズ契約につきましては、恐らくその契約内容によって様々違いがあり得ると思いますので、一概に申し上げることは難しいのですが、例えば、本部ではなく加盟店の方が、対象従事者の採用や任用などの人事権を有するなど、認定事業者の義務を履行する権限や体制を有する場合には、加盟店の方が認定申請を行うというふうに想定をしてございます。
○大西(健)委員 今の御答弁にもありましたけれども、それもそのとおりだと思いますが、レクのとき、私が聞いたら、例えば、大手の何教室もやっているところでも、○○塾の○○教室は対象になるけれども○○教室は対象にならないみたいな、こういうことが起こり得るというふうに聞きました。
もう一つ私が気になっているのは、私の知っている実例に、生徒に対するわいせつ行為で教員を懲戒処分になって、そして、その後、塾の講師になって再びわいせつ事案で逮捕されて、さらに、名前を変えて別の場所で自ら塾を開いていたという例があります。
本法では性犯罪歴の確認申請は事業者が行うことになっていますけれども、この仕組みでは、性犯罪歴のある者が塾の講師として雇ってもらうのは難しくなりますけれども、自ら経営者になって塾を開設することは可能、こういう理解でよろしいでしょうか。例えば、その場合、経営者である塾長は、特定犯罪前科があっても、自分は教鞭を執らないということにしておけば認定事業者になれてしまう、こういうことも排除できないというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
性犯罪歴のある者が学習塾を開業し、当該経営者が児童に技芸又は知識の教授を行わない場合でありましても、認定を受けた場合には、当該経営者が認定事業を行う事業所の管理者、実態を管理している管理者に該当する場合には、犯罪事実確認義務の対象になる、これは法律上規定がございます、考えられます。
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者である場合には、管理者の業務を含む対象業務に従事させないことなどの防止措置を講ずることが必要となります。これに違反した場合には、児童対象性暴力対処規程の遵守義務違反となりまして、認定取消しやその旨の公表が行われるほか、法人である場合には、その役員も含めて、取消しの日から二年間は認定を受けることができないこととなります。ですので、仮に当該経営者が認定取消し後に別の学習塾を起業したとしても、二年間は認定が受けられないという規制がかかります。
また、認定を受けた場合、脱法的な行動に出るということがあるのではないかというふうな御指摘もございました。これをどう防ぐのかということでございますけれども、認定制度におきましては、事業所の管理者ですとか教授をするという業務に従事をしていれば確認義務の対象になりますので、これを履行しない場合については当該義務違反になるわけでございます。例えば、何か第三者が管理者であるというふうなことを装って犯罪事実確認を行わないといった場合には、義務に違反したということで、認定取消しとなったり公表されたりということになるということでございます。
○大西(健)委員 管理者も対象になるという答弁はよかったというふうに思うんですけれども、ただ、DBSの認定を受けなければ塾は開けてしまうということ、これは防げないというふうに思いますし、それから、経営者なので、自分に有利な状況というのは幾らでもつくれるというふうに思いますので、そこはやはりリスクはあるんじゃないかと思います。
次に、対象となる犯罪について、本法では示談して起訴猶予となった事案や行政処分などが対象になっていない、これはやはり大きな問題だというふうに思っています。
まず、行政処分が対象となっていないという点について、教員性暴力等防止法及び児童福祉法が行政処分で教員免許や保育士資格を喪失した者をデータベースの対象にしていることからも対象とすべきだというふうに思います。そうでなければ、児童生徒暴力によって行政処分を受けて教員や保育士を続けられなくなった者が塾やベビーシッターに流れるということは防げないというふうに思いますけれども、この点についても、大臣、改めていかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
確認対象となる性犯罪歴につきましては、この制度が憲法で認められた職業選択の自由を事実上制約することになります。このため、この根拠は正確な事実に基づくものでなければならず、厳格な手続に基づき、裁判所が事実認定をした前科を確認の対象とすることとしてございます。
よって、懲戒を受けた者でありましても、前科がない以上は本法律案の性犯罪の確認対象とはなりませんが、本法案におきましては、性犯罪歴、前科の有無を確認する仕組みによる再犯対策のみならず、初犯対策にも対応ができるよう、子供と接する職員等に対する研修や、また、児童等への面談、児童等が相談を行いやすくする措置などの安全を確保するための措置を講じることについて事業者に直接義務づけるなど、予防策を徹底する内容としてございます。
○大西(健)委員 これは全体に関わることですけれども、確かに職業選択の自由を一部制限するわけですけれども、一番大切なのは、子供の安全、そして生涯にわたって回復し難い傷を負うということをやはり未然に防ぐということだというふうに思いますし、それから、その点においては、先ほども言いましたように、一方で、職業選択の自由を制限するんだ、憲法上の自由を制限するんだと言いながら、教員だとか保育士の資格喪失のデータベースの方はちゃんと運用されているわけですから。
ですから、この点について言うと、与党の、公明党の浮島先生も本会議でもおっしゃっていましたけれども、子供たちへの性暴力によって懲戒免職となり、教員免許を失効した者であったりとか、保育士資格を喪失した者が何事もなかったかのように塾で子供に接することは許されない、少なくとも日本版DBSと教員免許失効データベース及び保育資格登録取消しデータベースの連携が不可欠ではないか、これは浮島先生も指摘をされていました。
大臣、この点については、今すぐは仮に難しいとしても、これは制度の運用状況を見た上で見直しのときには是非検討すべきだと思いますが、その余地はあるということでよろしいですか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法案による犯歴照会の確認の対象と委員御指摘の両データベースの確認の対象は異なるということもありますし、また、確認の手続やその結果の取扱方法も異なってまいりますため、本法律案による照会と御指摘の両データベースの確認を一体として行うことは難しいと考えております。
一方で、本法案の成立後におきましては、事業者によっては、本法案による犯歴照会に併せて、教員免許失効データベース又は保育士資格登録取消し者データベースに基づく確認等を行う場合、要は三つともチェックする場合というのがあると考えられまして、そうした際の事業者の事務負担等に留意するということは大変重要な観点であると認識をしてございます。
このため、本法案による犯歴照会と両データベースを活用する際の利便性等につきまして、今後、よく現場のお話を聞きながら、運用上の工夫としてどのようなことができるか、関係省庁とも連携をしつつ、よく検討をしてまいります。
○大西(健)委員 今の答弁だと、事業者によっては、活用しようと思ったら活用できるという話ですよね。そうすると、やはり、さっきから言っていますように、何のためにこの法律をやるのかといったら、子供が生涯にわたって回復し難い傷を負うことを未然に防止するためにあるわけですから、できるんだったらやればいいじゃないですか。何でやらないのか、全然さっぱりよく分からないということだと思います。
それから、例えば、学校の管理者や教育委員会が、児童性暴力の事実があると思われるときに、必要な対応を行わなかったりとか、事実を隠蔽する場合には、これは通報義務違反になるというふうに思われますけれども、一方で、これは塾等の民間事業者の場合でも、評判を気にしたりとかして、示談に持ち込んだりとか、児童性暴力の事実を隠蔽して、問題を起こした講師に自主退職を迫ったりということが私は容易に想像できるというふうに思います。しかし、民間事業者の場合には通報義務がありません。そうなると、児童に対して性暴力を行った者が、また別の塾に移って、子供に接することができてしまいます。
大臣、この点、民間事業者に対しても告発や通報を義務づけるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案では、学校や、例えば児童養護施設などの行政措置によって児童が入所する施設のみならず、民間事業者や小規模の事業所まで幅広い事業者を対象としており、対象事業者の業態や規模、関係する子供の状況、事案の様態も様々であることから、子供や保護者の意向にかかわらず一律に通報を法律上義務づけるということまではしなかったところでございます。
一方で、本法案においては、児童対象性暴力等が行われた疑いがある場合の調査や被害児童等の保護及び支援の措置を義務づけておりまして、その過程においては、事業者は基本的に、被害を受けた児童等の保護者に対してその事実を伝えたり、調査の結果、犯罪事実があると認められる場合には所轄警察署に通報を行うなど、適切な場面で保護者や警察とも連携して対応することも大切になってくると思います。
子供や保護者の心情にも配慮しつつ、調査や保護に際してどのような対応を取ることが望ましいか等は、関係者の意見も聞きながら、今後しっかりと検討をして、ガイドライン等の形で明らかにしてまいります。
○大西(健)委員 これも今は警察等に適切に報告することが望ましいみたいな話がありましたけれども、だったら、義務づければいいんじゃないのかと。何回も言いますけれども、法案の目的は子供を守ることですから、だったら、そうすればいいんじゃないかというふうに思います。
次に、本委員会で、これは早稲田委員が取り上げられて、下着窃盗やストーカー規制法が対象にならないという答弁がありましたけれども、ちょっと同じような事例で、今日、資料をお配りしましたけれども、女性に体液をかけることで興奮を覚える異常な性癖を持つ人がいます。
新聞記事に、幾つかピックアップしてみましたけれども、女子高生に体液、県立高校教諭逮捕、電車内で中学生に体液をかけた疑い、小学校教頭逮捕、女児の靴に体液をかけた疑いで小学校教諭逮捕、こういうのがいっぱい検索すると出てくるわけですね。
こういうものは暴行罪とか器物損壊罪で処理をされているんですけれども、こういう事案は本法の対象になるんでしょうか。政府参考人から御答弁いただきたいと思います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法律案の対象犯罪でございますけれども、その前科を有する者の事実上の就業制限の根拠ともなるものでございます。このため、その範囲については、児童の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与える性犯罪ということで、人の性的自由を侵害する性犯罪、性暴力の罪を限定列挙しているというところでございます。
御指摘のありました暴行罪、器物損壊罪、その中で、体液をかけてというふうな一部の行為に着目して取り出すというふうな御提案かと思うのですが、暴行罪、器物損壊罪のうち一部の行為を抜き出して犯歴照会の対象にするということが非常に技術的に難しいということがございまして、この法律案の中の特定性犯罪には含まれていないということでございます。
○大西(健)委員 何回も言いますけれども、本法の目的は子供を性暴力から守るということですから、子供に体液をかけるような人を明らかに子供に近づけちゃいけないということは、これは当たり前のことではないでしょうか。
かつ、先ほどの御答弁の中に人の性的自由を侵害する云々というふうな話がありましたけれども、例えば体液をかけるという行為は、被害者にとって、インキとか泥をかけられた場合とは根本的に違って、被害者の性的な感情を害し、性的自尊心を深く傷つけているということは間違いないというふうに思います。
そうすると、先ほどからお話があるように、罪名が器物損壊罪だという形式的な理由だけで対象にしないということは、これでは子供を性暴力から守ることができないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
本法律案が目指すのは児童対象性暴力等を防止することであり、児童対象暴力等が行われるおそれを判断するための手だての一つとして、過去の犯罪事実確認、つまり、特定性犯罪についての犯歴確認を位置づけているところでございます。
この特定性犯罪の範囲につきましては、本法律案における確認の対象犯罪は、基本的に、該当する犯罪歴があるということ自体をもって、性暴力のおそれありとして、事実上の就業制限の根拠となるものでございます。そのことを踏まえまして、児童等の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与える性犯罪として、人の性的自由を侵害する性犯罪や性暴力の罪等を確認対象とすべきものとしてございます。
委員の御指摘は、性的な側面を持つ行為を可能な限り広く対象とし、おそれの端緒を少しでも幅広く捉えていくべきという御趣旨だ、そのように理解をしてございますが、犯罪歴を確認する対象の前科に含めることができるかどうかにつきましては、裁判所が犯罪類型ごとに事実を認定するものでございまして、その犯罪類型の、その犯罪の成立要件になっていない動機のあるなし、その動機のあるなし、例えば、今挙げていただいた例とかでいえば、性的な動機に基づくものなのかどうか、そういった動機あるなしによって切り分けるということが現実問題として難しいという問題がございます。特定の犯罪の一部の場合を対象とすることには、このように課題がございます。
一方で、本法案におきましては、この犯罪確認の仕組みに加えまして、性暴力等が行われる端緒を早期に把握するための措置を講ずるように求めてございまして、児童等への面談や相談等を通じて、当該児童に対する性暴力等が行われるおそれがあると判断した場合には必要な防止措置を講じることになるとともに、疑いがある場合には被害児童等の保護等を行うことになります。
こうした本法案の仕組みや総合的な取組も相まって、子供を性暴力からしっかりと守ってまいりたい、このように考えております。
○大西(健)委員 先ほど来言っていますけれども、体液をかける行為が性的動機がないというのはない、明らかに性的動機があるというふうに思いますし、この新聞記事、これだけ、もうこんな、昔の話じゃないですよ、二〇二二年とかのやつだけでもこれだけ、本当に一部ピックアップしてきただけですけれども、教師、学校の先生とかが体液をかけた事例で逮捕されているわけですよ。
大臣、じゃ、この人たちが、大臣はお子さんがいらっしゃいますけれども、自分の子供に接するような職業に就くことを大臣は容認するんですか。いかがですか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
私自身のちょっと個人的な思いというところはおきまして、先ほどちょっと言葉足らずのところがあったと思います。
犯罪の類型、例えば体液をかけるということで器物損壊というときに、器物損壊といった罪がある、罪となるということを裁判所が認定をする際のその具体的な内容につきましては、それをどのようにチェックしていくかということについては、かなり技術的な難しさがある。
先ほどちょっと、動機を見極めるのは難しいという理由で御説明してしまったのでちょっと分かりにくくなってしまいましたけれども、器物損壊に関して、具体的にどのように器物損壊したかということまでを類型を超えて更に具体的にチェックをかけていくということになってきますと、技術的にかなり難しいところが出てくるという問題があるため、一部の場合を対象とすることに課題があるということを申し上げました。
○大西(健)委員 次のページにつけておきましたけれども、先日、藤岡委員が参考人質疑で、日本版DBSの対象に下着窃盗やストーカーを含めてくださいというネット署名が一日で約二万筆になったということを取り上げました。資料としてお配りしましたけれども、現在これは三・二万筆を超えています。昨日の夕方ですけれども、要請活動があって我が党の泉代表がこの署名を受け取りましたけれども、こども家庭庁では藤原局長がお受け取りになったというふうに伺いました。加藤大臣のところにはこの署名、届いておりますでしょうか。御覧になっておりますでしょうか。
大臣、これが国民の声です。マイクをオフにすれば発言を制止することはできても、ネットに広がるこの国民の声は無視することができないと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
下着窃盗、またストーカー等を性犯罪の確認対象に含めるべきであるというネットの署名が多数集まったこと、承知をしてございます。また、昨日、私自身、委員会、国会対応で公務の都合がつかなかったため、代理として成育局長が伺いまして署名を受け取らせていただき、私は局長から報告を受けました。集まった多数の署名、三万二千五十六筆を持ち帰った局長から受け取りまして、私自身、その重みを感じたところでございます。
昨日、被害当事者の方、また臨床心理の専門家の方、NPOで被害者支援等の活動をされている方などの方々からのお話があったことも報告を受けてございます。その方々の声もしっかりと受け止めさせていただきました。
被害者の方にとって、下着窃盗やストーカー等は、先ほど委員がまさにおっしゃったとおり、その尊厳に関わる重大なものであると認識をしておりまして、断じて許されるものではないと思っております。是非、性暴力がない社会に向けて、そういったことも含めて努力をしていきたいという強い思いを述べさせていただきたいと思います。
○大西(健)委員 今、その重みを受け止めさせていただきましたという話がありましたけれども、ここでは、五月二十一日、衆議院第二議員会館、加藤鮎子大臣宛てに提出することが決まりましたと書いてありますけれども、今、公務の都合で御出席ができなかったということでありましたが、是非、今のそういうお話であれば、じゃ、改めてアポを取り直したら、また直接会ってお話を聞いていただくことはできますでしょうか。いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 はい。お声があれば、そのような調整をさせていただければと思います。
○大西(健)委員 日大の末冨先生によれば、英国のDBSでは、不起訴処分になった罪も確認対象となっているし、器物損壊罪なども含めて全てデータベース化しているそうです。
参考人質疑を含めて国会審議でこれだけの議論があったにもかかわらず、今後、この部分が抜け穴になって、性暴力被害に遭う子供が後を絶たないようなことがあれば、これは責任を問われることになるということを是非覚悟していただきたいというふうに思います。
次に、本法では、再犯は防げても、性犯罪の九割を占めている初犯は防げないという課題があります。初犯を防ぐためには様々な方策が必要だと思いますけれども、例えば、講師による生徒への性加害が問題になった進学塾大手の四谷大塚では、再発防止策として、カメラ設置とともに、講師採用に当たり心理テストや性格テストを活用するとしています。
米国では、教職員や児童福祉関連の職種に応募する際には、アベルテストという心理学評価テストを使用して、性的な性向や性的虐待の傾向を評価する取組が行われているそうですけれども、こうした心理学的評価テストの活用についてどう考えるか、こども家庭庁に伺います。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
性犯罪の九割は初犯と言われておりまして、初犯対策が重要であるということは、委員御指摘のとおりだと思います。
この点、本法律案におきましても、子供と接する職員に対する研修、児童への面談、児童が相談を行いやすくする措置などの安全を確保するための措置を講ずることについて事業者に義務づけるなど、予防策を徹底する内容となってございます。
また、子供の性被害防止対策を進める上で、本法案に基づく取組だけではなく、総合的な対策を各省庁において進めていくということも重要であると認識をしております。
その上で、御指摘をいただきました心理学的なテストの活用でございますけれども、海外などで性嗜好の検査として用いられている例がある、アベルテストというふうなこともございましたけれども、そういった事例があるということを認識しております。ただ、いわゆる性嗜好障害について、現時点では十分に実態が把握されていないということも事実でございます。
厚生労働省におきまして、性嗜好障害に関して調査研究が昨年度、今年度行われていると聞いておりまして、現在、その結果について取りまとめる段階にあるというふうに聞いております。
引き続き、こうした調査研究の結果なども踏まえながら、性被害の対策に有効な方策につきまして、関係省庁ともよく協力しながら、検討していきたいと思っております。
○大西(健)委員 もう一つ、被害を未然に防ぐという点で、子供への対応は可能な限り複数で行い、現場での死角を極力少なくすることが重要です。
この点、放課後児童クラブ、学童保育の入所児童数が今非常に増え続けていて、一施設当たりの入所児童数が四十人を超える学童保育の割合が全体の約四割になっていて、七十人を超えるところや百人を超えるところもあるそうです。これでは、指導員の目が全体に行き届かず、子供の安全を確保できないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
放課後児童クラブを利用する子供の安全を確保することは重要であると認識をしてございます。
本法案では、放課後児童クラブは民間教育保育等事業者に位置づけられていますが、地方自治体や関係団体とも連携をして、事業者制度への参加を働きかけ、より多くの放課後児童クラブが認定事業者となるよう取り組んでまいります。
また、四月二十五日に開催をしました関係省庁合同会議において取りまとめました総合的な対策、これを受けまして、放課後児童クラブ運営指針において、職員による児童虐待の禁止にとどまらず、さらに、児童生徒間の性暴力への対応について盛り込むよう指針の改正を検討しているところでございます。
あわせまして、委員御指摘のように、死角をなくす観点から、保育所等における性犯罪防止対策に係る設備支援を令和五年度補正予算において行っており、例えば、カメラを活用し、支援の内容を記録することにより、保護者からの確認依頼等に応える取組などに対して補助を行ってございます。
加えまして、昨年十二月に策定したこども未来戦略に、常勤職員配置の改善、これが盛り込まれているところでございまして、これらの施策により、放課後児童クラブを利用する子供の安全確保にしっかりと取り組んでまいります。
○大西(健)委員 時間になりましたから終わりますが、イギリスのDBSのCEO、エリック・ロビンソン氏は、日本のマスコミのインタビューに対して、制度構築に終わりはなく、誰をシステムに含めるか、どのような制度にするかなど、議論し続ける必要があると述べています。
私からもそのことをお願いを申し上げまして、質問を終わります。
○谷委員長 次に、吉田はるみさん。
○吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。
加藤大臣、今日は初めての質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。
私が衆議院本会議で、この日本版DBS、早く始めましょうと発言したのが二〇二三年五月九日。あれから一年です。時間がかかるだけ、相当内容は濃くなったんじゃないかなと私は期待していたんですけれども、ちょっと、たくさんの問題点があることを今日指摘させていただきたいと思います。あれから一年。この間にも、たくさんの子供たちの性被害、発生しています。本当に、一日の猶予もない。真剣に私たち国会議員は取り組まなければいけないのではないでしょうか。
まず、私も文部科学委員会に所属している委員の一人なんですが、大臣、この性被害、子供たちの性被害、一番多く発生している、ここが学校であるということ、御認識ございますでしょうか。
○加藤国務大臣 通告をいただいていなくて、正確な数値までを把握しているわけではないですけれども、より大変多く発生している現場の一つであることは間違いないと思います。
○吉田(は)委員 これは、ちょうど、内閣府の調査です。二〇二二年十一月のアンケート。二二・五%で、学校で一番多く発生している。であるから、学校でのこのDBS、性被害対策、これは一番重要であると私は考えています。是非、この点を踏まえて、DBS法案、充実させていただきたいと思うんです。
まず、お伺いしたいと思います。
先週、大規模社会福祉法人の理事長が児童買春の疑いで逮捕されたという報道がございました。これは実は、私の地元杉並区でも学童クラブ十一か所、放課後等居場所事業八か所、そして世田谷区にもあるという、まさに大規模社会福祉法人なんですが、その理事長、今回、このような児童買春で逮捕されたわけですけれども、今回の日本版DBSでは対象になるんでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
学校における職につきましては、その業務が子供に対する支配性、継続性、閉鎖性を満たすものについて対象にしたいと考えてございます。また、その判断に当たりましては、子供から見て当該業務が支配的、優越的であるかという観点も踏まえて検討しているところでございます。
対象とすべき職種は、下位法令で規定した上で本法律案の対象とする必要があることなどから、子供と接する状態など、学校の実務を踏まえつつ下位法令を適切に整備できるよう、法施行までに関係省庁と協議しながら検討をしてまいります。
また、学校の経営者や運営の事務職員につきましては、学校において児童等との接触を前提とする業務を行わない場合は、一般論として、対象にならないと考えられますが、日常的に児童等と接する者につきましては、実務を踏まえまして、支配性、継続性、閉鎖性のある業務を行う場合には対象にしてまいりたいという、こういう考え方で進めてまいりたいと考えております。
○吉田(は)委員 いやあ、やはり、これが問題点ですよ。よく分からない。もうこれで対象に、こうこうこうこう、こういう条件が当てはまったら対象になります、これは誰が判断するんでしょうか。なぜすっきり、皆さん、それは対象になりますと、子供の居場所に関わる全ての方と言い切ってよろしいんじゃないかと私は思います。
ちなみに、今、大臣、事務職員のことも御答弁いただきました。確かに、日常的には子供と接しないかもしれませんが、完全に隔絶されているわけではありません。運動会やいろんなところで、もちろん子供たちと接します。そのときに、一体、じゃ、判断者は誰なの。ちょっとやはり分かりにくい。とても分かりにくい。現場が混乱するという点を御指摘させていただきたいと思います。
そしてもう一つ、次の質問に移らせていただきたいんですが、これもちょっと先ほど大西委員も発言されていましたけれども、何の罪が分かるのかというところに関してお伺いしたいんですけれども、今回の日本版DBSでは、事業者に開示される情報、これは先ほど大臣も御答弁いただきましたように、特定犯罪のいずれかだけで、その内容は何かというと、拘禁、罰金、執行猶予、この別しか出ないんですよ。罪名は分かりません。かつ、これが児童に対する性犯罪だったのか、成人に対する性犯罪だったのか、こういうのが分からない。先ほど、イギリスのDBS、本家イギリスのDBSでは全て分かります。
これは私、特に児童への性犯罪であったら、現場はやはり知る必要はあると思うんですよ。どうやって必要な防止策を講じることができるんだろうかと思うんですが、これは分からない。拘禁でも、拘禁で一年なのか三年なのか十年なのか分からない。罰金も、百万円なのか五十万円なのか三百万円なのか分からない。これは私、問題だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
犯罪事実確認書には、対象事業者が児童対象性暴力等を防止するために必要な措置の実施に必要最小限の情報、これを記載することとしてございます。
具体的に申し上げますと、申請に係る従事者が特定性犯罪事実該当者であると認められない場合はその旨を、特定性犯罪事実該当者であると認められる場合は、その特定性犯罪事実該当者の区分、いわゆる拘禁刑か罰金刑か執行猶予の別を区分と申し上げていますが、その区分と、その特定性犯罪の裁判が確定した日などを記載することとしておりますが、対象前科に係る犯罪行為の具体的な内容ですとか、当該前科に係る裁判における具体的な量刑などにつきましては記載をしないこととしてございます。
個々の罪名の違いによって防止措置が大きく異なることは通常考えにくいですが、一方、拘禁刑であるか罰金刑であるか、また、拘禁刑である場合には、執行猶予を言い渡され、その期間を満了しているかどうかといったことによって行為の悪質さや責任の重さに違いがあり、これにより事業者が講ずる防止措置が変わるということも考えられることから、事業者が防止措置を講じるに当たって必要かつ合理的な範囲として、先ほど申し上げたように、拘禁刑、執行猶予、罰金刑であるかの別、これを犯罪事実確認書に記載することとしているところでございます。
○吉田(は)委員 ちょっとはっきりよく分からなかったんですけれども、それで大臣は、今の開示情報だけで足りるというふうにお考えですか。
○加藤国務大臣 例えば、こういった御意見もあるということでありますが、こども家庭庁が昨年実施した有識者会議におきましてヒアリングを行いましたところ、児童に対する嗜好を有するものの、十八歳以上の者に対する性犯罪に及ぶことによって児童に対する性的欲求を抑えようとする者ですとか、また、十八歳以上の者に対する性的欲求を、通報等されるおそれが少ない児童に対する性犯罪に及ぶことによって発散する者、そういった者もいることも考えれば、性犯罪者ごとの被害者の年齢が必ずしも一貫しているわけではないとの御意見を加害者治療の専門家の方からいただいたところでございます。
そのため、前科の被害者の年齢によって防止措置に違いが生じるとは考えにくいため、犯罪事実確認書の記載事項をもって事業者が適切な措置を講じることができるものと考えております。
○吉田(は)委員 ちょっとこれも、正直、私には同意できないところでございます。
もう一つ、イギリスのDBSと違うところは、こういった内容が明らかになった場合、新規採用では採用しません、イギリスでは。でも、日本の場合は、必要な防止策を講じれば採用の余地はあるということでよろしいんですよね。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
本法律案では、犯歴照会の仕組みによりまして、犯罪の事実の該当があったというふうな回答があった場合には、法律上のおそれありというふうに該当すると解釈をして、本来の業務に従事をさせないなどの防止措置を講ずる義務を生ずるというふうに解釈をしてございます。
○吉田(は)委員 いや、これも、はっきりとそういう犯罪歴がある、この中で、DBSで明らかになった人は採用しないというのが、私は、子供たちへの安心、そして保護者への安心ではないかと思います。どうぞ、この点、御検討ください。
先ほど、実際の罪名が分からないのは問題でないかという私の考えなんですが、例えばですけれども、児童買春、これは五年以下の懲役又は三百万円の罰金です。それに対して、これは十八歳以上も含まれます盗撮、これは一年以下の懲役又は百万円以下の罰金。当然、人としてちゃんと罪を償っていただきたいわけなんですけれども、罰金で済ませられるケースもあるというわけです、こういう犯罪であっても。そのときには拘禁刑ではないわけで、罪の重さが分からない、かつ、それが児童に向けられた性犯罪だったのかどうかが分からない。どちらも駄目です。それでも、やはりそこを私は押さえる必要性というのは非常に高いのではないかというふうに思います。
この点を指摘させていただいて、ちょっと、最後、一つ、先ほどの一番目の問いで、大規模社会福祉法人の理事長がチェック対象になるかどうかというところから一つ戻りまして、最後、質問させていただきたいんですが、こうした、実際にDBSチェックを行ったかどうか、その事業体が行ったかどうか、必要な人に行ったかどうか、それをチェックする人はどなたですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
まず、犯歴照会を行ったかどうか、行っていなかった場合には義務違反になるということでございますので、それをどのように監督をするのかというふうなお尋ねだと思います。
まず、本法律では二種類に事業者を分けておりますけれども、直接義務をかけている学校とか保育所のような、認可で規制を行っているようなグループ、この事業者については、それぞれの所轄の監督の仕組みが既にあります。例えば、保育所であれば都道府県等において監督が行われているわけですけれども、そちらの監督の中で、監査等で監督をしていただきます。
一方、塾など業法が全くないような事業者も含めて、この法律では広く対象となるということで、そのために、認定という新しい規制をつくります。この認定につきましては、内閣総理大臣が監督をする、すなわち、私どもこども家庭庁が監督をする、そういうふうな仕組みになってございます。
○吉田(は)委員 とすると、学校は、これは文部科学省あるいは教育委員会、どちらですか。そこに通達、指針、こういうものはもう出されているのでしょうか。あっ、出す可能性がある、ごめんなさい、まだですから、法案はできていませんけれども、法案が成立した場合にはどのような対応をするか、教えてください。
○藤原政府参考人 犯歴照会の確認自体につきましては、報告自体はこども家庭庁に対して行うということでございます。大変申し訳ありませんでした。
○吉田(は)委員 まだまだ詰めなければいけないところがあるのではないかなというふうに思いますので、一つ一つ、この議論を通じて明らかにしていき、一番大事なのは、やはり子供たちを守ることです。本当に、一度の性被害でどれだけ傷つくか。そして、一生その子の人生を左右するほどの傷になります。
私はやはり、今日の議論を聞いていても、日本は性犯罪また性暴力に甘いと言わざるを得ない。特に子供たち、本当に心の傷をつくりますので、私たち国会議員一丸となって、この日本版DBS、よいものにつくり上げていくようにやっていきましょうということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、岡本あき子さん。
○岡本(あ)委員 立憲民主党・無所属の岡本あき子でございます。
質問の機会をいただき、ありがとうございました。
子供性暴力防止法案、私たちは元々、これは早く構築するべきだとずっと求めておりました。これをまずはスタートさせる、このことに関しては、政府と一緒に取り組んでいきたいと思っております。
ただ、やはり課題がたくさんありますよね。課題に対して、シャットアウトではなくて、やはり課題を乗り越える、その姿勢でこども家庭庁には臨んでいただきたい、その思いで最後、質問をさせていただきます。
そもそもこの法律案、立法事実となった、教員とか保育士のところに法律を作るきっかけになったのは、一番最初は、マッチングアプリでベビーシッターを請け負っていた方が捕まった、そうしたら、元々もう数十回にわたっていろいろな子供に対してわいせつ行為があったというのが明らかになり、衝撃がありました。それから、今日、大西委員も例示をされましたけれども、学校で行政処分を受けたにもかかわらず、個人で学習塾、そういう形で子供に接する職に就いていて、そういう行為が事件としてあった、こういうことが発端になったのではないかと思います。
今回のこの子供性暴力防止法案、施行になりましたら、この立法事実となった事件、これは解決できるものでしょうか。大臣、お答えください。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
個人が一人で行っている事業につきましては、従業員の研修や相談窓口の設置といった、事業者が児童対象性暴力等の防止等をするために講ずべき措置、これを講ずることが通常困難であること、また、事業主本人がその犯罪歴を取得することができてしまいますと、対象事業とは無関係の第三者から犯罪歴の提出が求められるなど、対象事業以外のところでその犯罪歴を悪用されるおそれがあること、こういった理由等から、純粋に個人のみで行っている形態については本法律案の認定対象事業に含めることは困難と整理をしているところでございますが、この点、個人が一人で行っている事業についても、委員の御指摘のように、対象にすべきという御意見もございましたので、検討を進めているところでございます。
例えばベビーシッターにつきましては、認可外保育事業所の取扱いを一部見直し、一定のマッチングサイト事業者を認可外保育事業者として届出対象とし、本法案の認定を受けることを可能とする方向で検討をしているところでございます。これによりまして、当該マッチングサイト事業者に登録ベビーシッターについて性犯罪前科の有無の確認等の措置を及ぼすこと、これが可能になると考えております。
現在の事業形態が個人が一人で行っている事業であるからといって、一律に本法律案の対象としないということではなく、現在個人が一人で行っている事業につきましても、新たに事業化することなどによってその対象とすることができるかといった点も含めまして、施行までに検討を更に進めてまいります。
○岡本(あ)委員 検討を進めていただくということで、施行前にも検討結果が出て間に合うようにお願いをしたいと思います。
今ほどの御答弁で、今提案されている中身では元々立法事実となった事件、これは解決できないということも明らかになりました。結果として、先ほど吉田委員が指摘をしましたように、現場とすると学校が非常に多いよ、こういうところも含めて、学校あるいは保育園、これは先んじて議員立法を含めて法律ができてきました。ただ、根幹に関わる部分、それからデジタル化が進んでいく、あるいは個人事業主、働き方でもどんどん社会が、そういうのが増えていく中で、やはり、子供を守るという意味で、この法律が、今の法案の中では立法事実のあった事件が解決できないというのは非常にじくじたる思いでございます。後ほど仕組みを提案しますけれども、やはりこういう方々もちゃんと網羅できる仕組みを考えていってはどうかと思います。
続きまして、この間私たちずっと指摘をしておりましたストーカーそれから下着泥棒、それから示談による起訴猶予あるいは行政処分など、わいせつ目的での行為、法に触れた行為、この事実があるにもかかわらず犯歴としては対象外になるということは、やはりおかしいのではないかと思います。
資料一を御覧ください。昨日、大西委員も触れていただきました、まさに大臣の代理ということで成育局長が署名を受け取っていただきました。犯歴の中身では分からないというような御答弁があった、それから、前科がない以上は難しい、そういう御答弁、今まで多々ありましたけれども、難しいではなくて、あるいは煩雑だとか、そういうことが理由になるとすれば、非常に私とするとやはり、法律にかける志、ここを問わせていただきたいと思います。
窃盗という犯罪の名はつくけれども中身が分からないというのが今までの御答弁だったと思うんです。例えば、判決文が出るときに、多くは目的が、動機が書かれております。わいせつ目的なのか、あるいは、例えば、単にベランダに侵入して下着を取ろうと思ったのがわいせつ目的なのか、極端な話、経済的に非常に困って、たんすにある衣類を丸ごと窃盗して、転売をして、その中にたまたま下着が入っていたというものでは、同じ窃盗でも判決文によっては、やはりわいせつ目的で、そういうのが明らかになる場合があるんじゃないかと思うんです。
そういうところに踏み込む、あるいはそれを把握できる、判決文なんて公になっているものですよね。こういうのをしっかり精査をする、そういう御努力、これはできることなんじゃないかと思うんです。この点もお答えいただきたいと思います。こども大臣にお答えいただきたいと思います。今の設計ではできないけれども、でも、調べようと思うと公の文書でも調べられることがあるんです。やはりこれは、対象外になるというのはおかしいんじゃないでしょうか。その先どうするか、この点を大臣、お答えいただきたいと思います。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
本法律案が目指すところ、それは児童対象性暴力等を防止することでございます。児童対象性暴力等が行われるおそれを判断するための重要な手だての一つとして、過去の犯罪事実確認、つまり特定性犯罪についての犯歴確認を位置づけてございます。この特定性犯罪の範囲をどのように考えるかでございますが、本法律案における確認の対象犯罪は、基本的に該当する犯罪歴があること自体をもっておそれありとして事実上の就業制限の根拠となるものを想定しておりますので、それにふさわしい範囲であること、それを確認対象とすべきものとしているところでございます。
御指摘のような、下着窃盗やストーカー行為に係る犯罪もこれに加えるべきという御指摘について、本当に、委員の御指摘の意図、狙い、お気持ち、非常によく分かりますし、共有するところでございますが、例えば下着窃盗について考えますと、まず、一般的な窃盗罪の全体がこれらの性犯罪等と同様の犯罪とは、窃盗罪そのもの、その全体ですね、いろいろなものを盗むというところ、これだけでいいますと、これ全体は性犯罪と同様の犯罪とは考え難いところでございますので、窃盗罪全体ではなく、その窃盗罪全体に当たる行為のうち性的な動機に基づいて下着を盗んだ行為だけを抜き出して対象にしようとすると、おっしゃるとおり、動機を問題にすることになります。
しかし、動機は窃盗罪の成立要件ではありませんので、裁判所が一般的に動機を認定するわけではありません。そのため、前科情報を確認しても、窃盗罪の中から性的な動機に基づくものを切り分けるのが現実問題難しいという問題がございます。判決文に入ったりするんじゃないかということも私も想像したところでございますけれども、必ずしも、判決文にそういったところまで書かれているかというと、そうでもないというふうな専門家の声も聞いているところでございます。
なお、窃盗であれ、ストーカーであれ、仮に判決書の中に経緯等が書かれていたとしましても、そこに書かれているものが犯歴確認の対象とすべき行為に該当するかについて、それについて裁判所が判断しているわけではありませんので、結局、対象にすべき行為がなされたか否かを別途判断する必要が生じると考えられますが、それを誰がどのように判断をするのか、また、その判断の正しさについてどのように担保するのか、そういった点が別途問題になってくるものと考えられます。
こうしたことから、本法律案における確認の対象犯罪については、犯罪類型ごとに犯歴確認の対象とするかどうかを定めており、また、その対象となる犯罪は、基本的に、該当する犯罪歴があるということ自体をもって性暴力等のおそれありとされるような、事実上の就業制限、その根拠とするのにふさわしい範囲に限定している、そういう考え方でございます。
○岡本(あ)委員 こども政策大臣としては本当に残念な答弁です。これは、法務省が答弁をするのであれば、そういう考えは分かります。ただ、こども家庭庁で、この目的、子供を守るために法律を作るのであれば、私はやはり研究をしていただきたい、そう思っています。
時間がないので、資料二を御覧ください。
私たちは、やはり、あらゆる、子供に対するわいせつ動機、こういう行為に対しては、極力子供と接しないようにしていただきたい。そのためには、今御答弁で、様々課題、難題があると聞きました。
かえって、資料二で、先日、参考人で、寺町弁護士さんが提案をされました。子供に関わる職に就職する場合は、こども家庭庁の登録機関にエントリーをしていただきたい、これは事業者じゃなくて、働きたいという人。そこを、こども家庭庁で、法務省とで犯歴を照会をして、この方は犯歴がない、あるいは、犯歴だけを審査対象にするとまたいろいろな風評がありますので、子供のためにわいせつを働かない、そういうための研修を受けていただいて、研修を受けた人は登録をできる、犯罪履歴は当事者や事業者には行きません、そして、ここに登録できた人から採用してください、そういう仕組みにしてはどうですかという提案でございます。
犯歴を余り市中に飛び交わせない、そして、対象をとにかく広げる、そういう意味では一つのやり方だと思いますので、是非研究をお願いしたいということを指摘させていただきます。
最後、今日、法務省、来ておりましたが、言うだけにします。
買春、児童買春は今回犯罪歴になりますが、十八歳、十九歳を相手にした買春、買う側、これは一切罰則はありません。なので、ちょっと、本当は十五歳とか子供を相手にしたいんだけれども、その性欲を果たすために、十八歳、十九歳専門に、お金を払って買春をした場合は一切犯歴がつかない、罰金にもならない。こういうことは、売春防止法自体もそろそろ時代に合わせて性犯罪の目的の法改正をしていただきたい、このことを申し上げて質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○谷委員長 次に、伊東信久君。
○伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。
日本版DBS法案ということで、本法案は、五月九日に付託されてから、十六日は四名の参考人の方もお越しいただきまして、本日も含めて様々な議論がされました。本日採決ということですけれども、与党の質問が終わり、野党も、今、立憲民主党さんの質問が終わったわけなんですけれども。
SNSも含めて報道等を見てみますと、やはり、犯歴確認を義務づける対象から学習塾や認可外保育園などが外れたことを問題視する、刑期を全うした加害者の社会復帰の妨げになるという指摘もあったり、子育て中の人が利用しているサービスが犯歴の確認を義務化する対象から外れており、このままでは事件は防げない声、法案の実効性について様々な不安が上がっているわけなんですけれども、本当に、質疑する側からは、やはり問題点を網羅して質疑しているわけなんですけれども、残念ながら十分な答弁は得られていないなという感は、やはり報道を見ているとあるのかなという気はします。
そんな中で、質疑の中でまだ網羅されていないところを私から質疑させていただきたいわけなんですけれども、五月十四日にも質疑させていただいたわけなんですね。そのときに、子供を守るという立場から、犯罪を犯した方々のやはりフォローは必要ではないかなという話をさせていただきました。
公明党の浮島議員が、そもそもこれは病気なのでしょうかとか、病気と捉えたときにそれは治りますかというような質疑もされていましたし、こういったことに関連させていただきますと、精神科の医師には、こういった性暴力はやはり依存症と捉えて長期的なフォローが必要と考えている方もおられるということでした。
そうしたことに対する答弁でも、問取りでも、こうした嗜好と関係性というのはしっかりとしたエビデンスが確立しているわけではないんですが、やはり、国内でも国外でもこれを性的嗜好の障害として、治療法というのが存在します。
先ほど四名の参考人の方が十六日に来られたと申し上げましたけれども、その参考人質疑の際に、資料一でお示ししていますように、早稲田大学人間科学学術院の嶋田先生から、性犯罪加害者に対する治療的支援についてお話をいただきました。赤枠で囲っているんですけれども、諸外国において、いわゆる性欲をコントロールするために薬物療法が併用されているということです。
我が国では、一部の医療施設で限定的に行われている。つまり、我が国でも、限定的ですけれども、一部ですけれども、行われているということなんですね。
私も医師ですので、医師というのは病名があって治療をするわけなんですね。こういった法案がありますけれども、加害者の方に医師の方から来なさいと言うわけではなくて、やはり加害者もこれを止めたい、犯罪にしてはいけないと思われる方が治療に来られて、そこで薬物が使用されているのかなと考えるわけなんですけれども、一部の医療施設で限定的に行われている薬物療法、どのような薬物が使用されているのでしょうか。厚生労働省、お答えください。
○辺見政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、欧米諸国の一部において、性衝動の制御等を目的として、認知行動療法等の治療のほかに、抗男性ホルモン製剤による薬物療法が行われている例があるということは承知をしております。
一方、国内の性嗜好障害の患者に対して、その治療方法については、薬物療法も含めまして十分に実態が把握されていないところでございまして、厚生労働省におきましては、昨年度、国内外の性嗜好障害に対する治療などの情報収集を行うため調査研究を実施し、現在、研究班において、その結果を取りまとめているところでございます。
○伊東(信)委員 国外の話をしていただきましたけれども、済みません、今からの更なる問いをするのにちょっと確認ですけれども、今の御答弁の中で男性ホルモンを使っていると言ったんですか。男性ホルモンを阻害するやつですか、男性ホルモンを使っているとおっしゃったんですか。
○辺見政府参考人 お答え申し上げます。
抗男性ホルモン製剤を使用しているというふうに承知をしております。
○伊東(信)委員 ありがとうございます。
抗男性ホルモン剤ですよね。だから、男性ホルモンを抑えるという形ですね。
今調査をされているということなんですけれども、実は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、SSRIという薬も使われております。答えられる範囲で構わないんですが、抗男性ホルモン剤、つまり性ホルモンに関するお薬、若しくは、SSRIの本来の病名に対する適応というのはお答えいただけますでしょうか。
○辺見政府参考人 お答え申し上げます。
ちょっと手元に正確なデータがなくて申し訳ないんですが、基本的には抗うつのために使われているというふうに認識をしておりまして、性嗜好障害の治療ということは、薬事上、適応とはなっていないというふうに認識をしております。
○伊東(信)委員 適応外治療というところで、なかなかそういったところで役所の方も把握は難しいと。ただ、実際に、先ほど申し上げたように、強制的に行ってもらってその薬物を使用するというのは国内ではやはり考え難いので、その方々が治療目的で行かれてお薬を使うのであれば、このお薬を使う。
薬物の治療を使う場合と使わない場合の場合分けがあるわけなんですけれども、どのように把握されていますか。また、これを病気と捉えた場合、薬物療法薬を使用した際に、その効果というのは分析はされていますでしょうか。
○辺見政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございますが、性嗜好障害の患者に対して医療機関において薬物療法が行われているか、また、行われている場合にどのような薬物療法が行われているのかを含めまして、その療法については十分に実態が把握されていないところでございまして、厚生労働省における先ほど申し上げました調査研究を実施をし、現在、研究班において結果を取りまとめているところでございます。
いずれにいたしましても、性嗜好障害の治療等の対応につきましては、この報告を踏まえまして、こども家庭庁等の関係省庁と連携をして取組を続けてまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 次の問いが、この薬物療法は一部の医療施設で限定的にとどまっている、日本においては、海外では使われているのに。この理由なんですけれども、日本においてはなぜ限定的にとどまっているかというのは、今の御答弁だったら、まだ調査中だからというところなのか。薬物療法に関しての一部問題点が指摘されているからということなんでしょうか。
私の質問は、私も医師ですので、別に薬物療法を否定するべきものではないんですけれども、もちろん、疾患に対して、適応に使うべきというのはよく存じ上げて質問するわけなんですけれども、確認のために、厚労省が、日本において薬物療法は一部の医療施設に限定にとどまっている理由というのは把握はされていますでしょうか。
○辺見政府参考人 欧米の諸国の一部において、先ほど申し上げましたような抗男性ホルモン剤による薬物療法が行われている例があるということは承知をしておりますが、欧米諸国においてもその状態が一般的なものかどうかということについては、今のところ、ちょっと知見がございません。
また、国内についてでございますけれども、一般的に薬物療法が行われていない状況、全体として把握しているわけではございませんけれども、抗男性ホルモン剤による治療を行うことについて、性嗜好障害に対してこうした治療を行うことについて、現時点において、国内では薬事上の効能が承認されていないということが先生御指摘のようにございまして、こうしたことが理由の一つであるのではないかというふうに推測をいたします。
○伊東(信)委員 ありがとうございます。
SSRI、選択的セロトニン再取り込み阻害薬というのが、いわゆる抗うつ剤である。それを使って一部効果を出されている方もおられるのかもしれないですし、うつ病との関連性というのははっきりしていないので、ここでそれ以上の話はしないんですけれども。
いわゆる性ホルモンというのは、がんの治療にも使われるんですね、例えば前立腺がんであったりとか。今、男性ホルモンに関してお話ししましたけれども、女性ホルモンであれば、乳がんに使われる場合もあります。
こういった治療とは別に、いわゆるスポーツの中でこういった性ホルモンが使われることもあります。いわゆるドーピングというやつなんですね。ドーピングは何ゆえに禁止されているかというと、いわゆる筋肉増強をすると、それによってプレーのパフォーマンスが上がるから、プレーの公平性をという前に、そのプレーヤーの体を守るためにドーピングというのは禁止されています。
私、DCOといいまして、国内の全日本クラスの大会とか国際大会のドーピング・コントロール・オフィサーというのをやっておりました。
そのときに常々強調していたんですけれども、つまりは、性ホルモンも含めて、ホルモンというのは人間の体を調整するためにあるわけで、これは人間の体の中で調整しているわけで、当たり前のことですけれども、男性ホルモンをシャットアウトすると、じゃ、今度は女性化していくというわけですね。筋肉はむきむきなんですけれども、胸は女性の胸になってしまうということなんですけれども、男性ホルモンがカットされると、男性ホルモンが足らないぞとなるんですね、体の中で。そうすると、今度は男性ホルモンが増えていくんですよ。
つまり、男性ホルモンをカットするはずの薬が男性ホルモンを増やしてしまうことになってしまう。つまり、ネガティブフィードバックという機構なんですけれども、それゆえに、こういった性ホルモンも長くは効果がないということ。
あと、ホルモン療法の副作用として、やはり、ホルモンをカットすると、いわゆる更年期障害に似た症状が出るわけなんです。つまり、いら立ちとか、汗をかいたり眠らなくなったりとか、不安感がずっとつながるというところで、精神をコントロールするための薬物が逆に作用してしまう。
先ほど体を守ると言いましたけれども、ホルモンというのはいろいろなところに作用してくるので、血を固まりやすくするんですね。血を固まりやすくするということは、血栓症ができる。つまりは、有名なプレーヤーで、健康なのに急に心臓の不全で亡くなったりするというのは、こういったドーピングとの関連性が指摘されています。つまりは、若くして亡くなる方にこういったホルモンの過剰の摂取というのがあったからなんですね。
だから、つまり、こういった性ホルモンも、使うとなるとなかなかそう簡単ではなくて、専門的な医師が必要であるので、一部限定的なところも理解できるということです。
そういったところで、参考人の、嶋田参考人からの指摘にもあったんですけれども、いわゆる、じゃ、有効な方法として認知行動療法があるということです。
認知行動療法については、五月十四日の私の質疑で、中野大臣政務官、法務省の政務官から、刑事施設や保護観察所において認知行動療法に基づく性犯罪者処遇プログラムを実施している内容や、刑事司法手続を離れた者に対しても、地域社会においても継続的に支援を行っていくことも重要であるという話をしていただきました。
資料二を見ていただきたいんですけれども、資料二では大阪府の取組のことを書いてあるわけなんですけれども、再犯の防止という観点でお尋ねしたいんですけれども。
それに加えて、資料三も見ていただきたいんですけれども、これは、五月十六日、これも参考人質疑なんですけれども、日本大学の末冨参考人のやつですかね、これは。
加害者の方の治療ですとか社会復帰の支援では、この参考人が把握されているのは、最も継続的に大阪府が取り組んでいる、どのような自治体でも同じような丁寧な取組が必要とおっしゃっていただいているんですけれども。
政府が令和四年度に開発した地方公共団体が活用可能な性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドラインが各都道府県に提供されているということなんですけれども、このガイドラインの内容を政府から説明してください。
○上原政府参考人 お答えいたします。
性犯罪者等の再犯防止を図る上では、刑事司法手続を離れた者に対して地域社会において継続的に支援を行っていくことも重要と考えておりますが、この点につきましては法務省が関与できる範囲が限定されるため、地域住民に対して様々な行政サービスを提供する地方公共団体が果たす役割が重要と認識しているところでございます。
そこで、法務省は、地方公共団体が実施する性犯罪再犯防止の取組に対する支援といたしまして、令和四年度に、地方公共団体が活用可能な、委員御指摘の性犯罪の再犯防止に向けた地域ガイドラインを策定し、各都道府県等に提供したところでございます。
このガイドラインでございますが、性犯罪に関する基本的な知識、性犯罪をした者の円滑な社会復帰のために必要な支援、関係機関との連携の在り方などで構成されておりまして、保護観察所で使用されている認知行動療法に基づいた性犯罪再犯防止プログラムを地方公共団体に向け一部改定した、そういったプログラムが含まれているところでございます。
法務省としては、地方公共団体に対し、その活用を働きかけるとともに、支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○伊東(信)委員 ありがとうございます。
まずは法務省さんからガイドラインを作っていただいたということですね。ガイドラインがあって、先ほど申し上げたように、刑事施設内ではそういったプログラムがあったりする、仮に釈放された場合も、保護観察官からそういったプログラムの紹介があったりするということなんですけれども、本当に、大阪府ではこういった心理カウンセリングの支援を先駆けてやっているわけなんです。
ここで加藤大臣にお聞きしたいんですけれども、この大阪府の取組に対する評価というか御所見をお伺いできればと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
政府としましては、子供の性暴力防止に向けては、本法案に加え、総合的な対策が必要であると認識をしてございます。このため、四月二十五日の関係省庁合同会議で取りまとめました総合的な対策におきましては、委員御指摘の加害者更生に関する取組、これにつきましても一つの柱として新たに対策を盛り込んだところでございます。
委員から御紹介をいただきました大阪府の取組につきましては、痴漢や盗撮などをした人が再び同じ過ちを繰り返さないための具体的な対策を身につけられるよう、心理カウンセリングを行うものであり、刑事司法手続を離れた方も対象として支援を行うものと承知をしてございます。
国における加害者更生の取組としては、法務省が刑事施設や保護観察所において認知行動療法に基づく性犯罪者処遇プログラム等を実施していると承知をしてございますが、大阪府の取組のように、刑事司法手続を離れた方に対しましても、地域社会において継続的に支援を行っていくということも重要であると認識をしてございます。
○伊東(信)委員 ありがとうございます。
先ほどの薬物療法で、適応外の薬物が一部効果がある場合もあるという話をしたんですけれども、つまりは、様々な要素で、いわゆる性欲だけで片づけられない場合もあるというところで一部の薬物も使われていたのではないかなと、医師としてそれは解釈しました。
参考人の話から、自分がなぜこんな犯罪を犯しているんだという自分の行動パターンを理解することが必要であるという話がありました。この認知行動療法に基づいてその際の、つまり、認知行動療法の中でのいわゆる心理カウンセリングがあるということで大阪府の取組に対する評価を大臣からしていただいたわけなんですけれども、大臣も、今の御答弁を聞くと、大阪府の取組に対して前向きに捉えているというか評価をいただいていると思うわけなんですけれども、これは展開予定で構わないんですけれども、こういった心理カウンセリング、大阪でやっているような心理カウンセリングを、これは大阪が先駆けて自主的にやったわけなんですけれども、各自治体への展開予定とか、そういった御議論はあったりするのでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
大阪府の取組としましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、痴漢や盗撮などをした人が再び同じ過ちを繰り返さないための具体的な対策を身につけられるよう心理カウンセリングを行うものであり、刑事司法手続を離れた方も対象として支援を行うものといった独自の取組があると承知をしております。
再犯防止の対策につきましては、法務省において、必要に応じて地方公共団体とも連携しながら、取組を進めていくものと承知をしているところではございますが、こども家庭庁としましては、先ほど申し上げました関係省庁合同会議において取りまとめました総合的な対策の一つとして加害者更生に関する取組を行うこととしておりまして、こうした取組も含めて、子供の性暴力防止に向けた総合的な対策を推進をしてまいります。
今後も、その中で、国としても、各地域の先進的な取組等、それをしっかり参考とさせていただきながら、よりよい方策を検討し、加害者更生を含む子供の性暴力防止の取組をしっかりと進めてまいります。
○伊東(信)委員 各地域の取組を参考にしていただくと御答弁いただいたので、要は、今までの議論の中で、今日の質疑の中でも立憲の大西議員がされていましたけれども、いわゆる下着を盗む窃盗であったりとか、精液をかける器物破損とか、そういったところがやはり漏れ落ちてしまうという御指摘がありましたけれども、こういったところも、この心理カウンセリングの中で、今大臣がおっしゃっていただいたように、ある程度はカバーできると思うので、もし御参考にしていただければと思います。
実際、本法案で実効的なのは、法律案における犯罪事実確認の結果、内定が取り消された者など、子供に関する職業に就けなかった者がやはり出てくるわけなんです。更生、社会復帰という観点もあるんですけれども、やはりいわゆる依存症、アルコールとかも含めた依存症で、そこから離すというのが大事なんですけれども、それがずっと続けられるかどうかというのもなかなか簡単ではないと思うんですけれども、こういった子供に関する職業に就けなかった者に対する支援の必要性というのは、加藤大臣、どのように捉えられているでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
こども家庭庁が昨年実施した有識者会議においてヒアリングを行いましたところ、ちょっと長い引用になりますが、子供に接しないという手続が認知行動療法を用いた治療的視点には既に含まれており、性加害者を子供から遠ざけるということは、決して更生の機会を奪うものではなく、再犯防止の施策とも方向性としてかなりの程度一致しているのではないかといった御意見を加害者治療の専門家の方からいただいたところでございます。
そのため、本法案において講ずる措置は、事業者が子供の安全を確保するために定めているものでございますが、再犯防止、加害者更生とも方向性として共通点がございますので、更生に資する面もあり得ると考えております。
また、本年四月には、性犯罪の再犯防止に関する指導や性犯罪に係る再犯防止プログラムの充実など、新たに加害者更生の観点を加えて子供の性被害対策の総合的な取組を推進することとしてございまして、引き続き法務省とも連携をしながらこれらの取組を推進してまいります。
○伊東(信)委員 認知行動療法に関する心理的なやはりカウンセリングが必要ということで、また大阪府の取組に戻ってしまうわけなんですけれども。
本当に最後にお聞きしたいのは、時間になってきたので最後の御質問になりますけれども、やはり、とはいうものの、こういったモニタリングとか今後の運用のために、こういった犯罪を犯したことに関しての通報義務がある。学校にはもう既に通報義務が他の法律である。家庭内に対しても虐待に対する法律があるということなんですけれども、ただ、そこから漏れ落ちるところの通報義務というのはやはり必要ではないかなと思うんですけれども、それに対しての御答弁をお願いいたします。
○加藤国務大臣 本法律案におきましては、学校設置者等の対象事業者に対して、児童対象性暴力等が行われるおそれがあるときは防止措置を講じること等を義務づけるとともに、そのようなおそれを早期に把握するための措置などを義務づけているところでございます。
そして、これは、教育、保育等の各現場が子供に対する性暴力の防止のための措置をより適切に取ることができるようにしていくためには、まずは教育、保育等の現場において、性暴力の発生について未然予防のための措置を講じるとともに、その端緒を把握、調査し、対応策を主体的に考え、対応を図ることが重要であるとの考えに基づくものでございます。
性暴力等が発生したと思われる場合の通報義務を法律に規定すべきとの御指摘につきましては、まずは教育、保育等の現場において適切な性暴力の防止や児童の保護が図られる状況をつくり出していくということが重要であるという本法律案の制度目的を踏まえる必要があると考えております。
これに加えまして、学校や、例えば児童養護施設などの行政の措置によって児童が入所する施設につきましては、教員等や施設職員等による性暴力等が発生したと思われる場合の通報義務があると承知をしておりますが、本法律案では、そうした施設のみならず、民間事業者や小規模の事業者まで幅広い事業者を対象としておりまして、対象事業者の業態や規模、また関係する子供の状況や事案の様態も様々であることから、子供や保護者の意向にかかわらず、一律に通報を求めることを学校等と同列に考えることはできないことなどを踏まえまして、通報を法律上義務づけるということまではしなかったところでございます。
なお、本法律案の附則におきましては、施行後三年後の見直し検討規定を設けておりまして、御指摘の点も踏まえまして、制度をよりよくするための必要な措置につきましては、不断に検討してまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 とはいえども、ジャニーズの問題とかもあるので、しっかりと検討をお願いいたします。
終わります。
○谷委員長 次に、高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本法案は、与野党共に懸念が表明される重大な法案であります。本日の理事会で質疑終局が決められたことは極めて残念に思います。もっと議論が必要ではないかと思うんですね。不明点も多く、また、引き続き、ガイドラインの作成など、本委員会として必要な局面で審議を行っていくことを求めたいと思います。
では、質問に入ります。
資料の一枚目なんですが、各国における性暴力の発生件数の推移、二〇一五年から二〇一九年のものであります。二〇一九年の日本における性暴力の発生件数は六千三百五件、人口十万人当たり五件といいます。私はこれ自体多いと思うんですけれども、米国は四十三・五件、イギリスは二百六十五・六件と格段に多いわけですね。諸外国で性暴力加害者に対するDBS制度が先行している理由もここにあるのかなと思う反面、日本は表面化していない事件が多過ぎるからなのかとも思うんです。
大臣の認識を伺います。
○加藤国務大臣 御指摘いただきました各国における性暴力発生件数につきましての統計資料が存在することを承知してございます。
しかし、これが、性暴力を厳しく取り上げ処分する諸外国の姿勢を表しているかどうかにつきましては、各国のそれぞれの諸事情は各国で把握しているところもありますため、責任を持ってそこについてお答えできる立場ではございませんが、国の姿勢によってDBS制度が構築されてこなかったことに影響しているかどうかということも、承知をしているところではございません。
我が国におきましては、これまで、このような制度の構築は、縦割り行政の中でなかなか進まなかったものと認識をしております。こども家庭庁創設後は、こども家庭庁が司令塔となって、できるだけ早期の導入を目指して、本制度の検討を進めてまいりました。
いずれにしましても、子供に対する性暴力は断じて許されるものではないと考えております。
例えば、総合的対策の中で、被害者が相談しやすい環境整備を推進するなど、あらゆる子供への性暴力の防止が図られるよう、引き続き最大限の努力をしてまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 聞いたことに答えていただきたいんですが。
単純に比較してしまうと、日本はまだまだ性犯罪がほかの国よりも少ないねと見えるわけですよ。そうではなくて、表面化していない、よく氷山の一角という表現もされますよね、こともあるのではないかという問題意識があるのかどうか、簡単に言えば、そういうことを聞いています。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
委員の御指摘の、十万人当たり、日本は五件、また、米国は四十三・五件、イギリスは五十倍にも当たる二百六十五・六件と、物すごく差があるわけでございますが、これが、性暴力を厳しく取り上げて処分するという姿勢を表しているかどうかについては、ちょっと、そこまで把握しているわけではないので、責任を持ってお答えはできませんということを申し上げたいと思います。
○高橋(千)委員 残念でたまりませんね。
大臣、素直に答えていただければいいと思うんですよ。それは、諸外国の基準はいろいろあるかもしれないから、それは一概に言えない、当たり前じゃないですか。日本の大臣に、イギリスはこうだから、アメリカがこうだからということを聞いているんじゃなくて、単純に比較すれば少なく見えるけれども、それだけじゃ済まないんじゃないかという思いがあるから聞いているわけですよ。その一点も答えられないというのは非常に残念に思います。
次に進みますけれども、教員性暴力防止法においては、第十八条の二、通報についても、条文に明記されています。
具体的に、どのような仕組み、体制で、子供たちの性被害をキャッチしてきたのか、文科省に伺います。
○浅野政府参考人 お答えいたします。
教職員からの性暴力については、いわゆる教員性暴力等防止法により、相談を受けた教職員等や学校に対して、学校設置者や所管警察署等への通報義務が課されております。
さらに、事案の発見のため、学校設置者が児童生徒等及び教職員等に対する定期的な調査を行うことや、地方公共団体が通報及び相談を受け付ける体制整備等を行うこと等が法律により求められてございます。
これを受け、文部科学省におきましては、各教育委員会に対して、法に基づく措置に適切に取り組むよう、通知や会議等において、機会を捉えてお願いしているところであり、こうした中、各教育委員会におきましては、例えば、被害児童生徒からの聞き取り等、具体的場面を想定した教員研修の実施、児童生徒に対して定期的に学校を経由させない形で相談できるタブレットや手紙形式のアンケートを配付するといった対応等に取り組んでいると承知しております。
○高橋(千)委員 先日、性被害当事者らでつくる一般社団法人Springの皆さんからお話を伺いました。
最初は、性被害だと、子供の頃に受けたことを自覚できなかったこと、何年もたってから、突然息苦しくなるなど不調が訪れて社会生活が困難になったなど、性被害が子供の心身に与える影響の複雑さや重さについて改めて認識をさせられました。
NHKが、教員からの性暴力問題に、連続して、「クローズアップ現代」などで特集番組を放映してきました。二〇二〇年の十二月に、自身も性被害者であり、提訴もしている方なんですが、石田郁子さんの取組を紹介しています。
ネットを使ってのアンケート調査で、被害時の状況で一番多かったのはどこかというと、実は授業中だった。三一・五%であること。つまり、見えないところでではなくて、言葉がけの、わいせつな言葉のやり取りですとか、体に何でもないふりして触るとか、そういうところから始まっているということなんですよね。
なので、七七・九%が、最初の行為を被害と認識できなかったこと。それから、私が一番深刻に思ったのは、回答した百四十九名のうち、友達や親、ほかの教師に相談したと回答したのは十七件にすぎませんでした。それでも、共感してくれたとか、ほかの教師や校長先生が再発を防いだと答えてくれたのは更に少なくて、多くが、まともに取り合ってくれなかったということなんです。ここがやはり深刻だと思うんですよ。
それで、政務官に伺います。
私は、初動が大事だ、もみ消しがあってはならないと九日の本会議でも述べましたが、まず、文科省の現状認識として、実態は、今私が紹介したような調査に近いという認識があるでしょうか。どう受け止めているのか、伺います。
○安江大臣政務官 お答えを申し上げます。
令和四年度の人事行政状況調査によりますと、児童生徒性暴力等で懲戒処分を受けた事案の発生の場面は、勤務時間外、放課後、休み時間等が多いという結果となっております。
また、今委員が御指摘いただきましたような、許し難い、本当に許されないような実態につきましても、私自身も見聞をしたこともございますし、御紹介をいただいた、調査をした方のお話も直接伺ったこともございます。
その上で、委員から御指摘がありました、学校等が適切に対応しない事態を今後決して起こさないためにも、今御指摘もあった令和三年の議員立法、いわゆる教員性暴力等防止法を制定いただいたものと認識をしております。
この児童生徒性暴力等に関する学校の対応につきましては、当該法律におきまして、学校は、児童生徒性暴力等を受けたと思われるときは、適切かつ迅速に対処する責務を有するとされ、さらに、通報等を受けた場合におきまして、学校は、事実確認のための措置を講ずること、学校の設置者は、医療、法律等の専門的知見を有する者との協力を得つつ、調査を行うこと等が法律により求められております。
また、法律に基づく基本的な指針におきましては、あしき仲間意識や組織防衛心理からの事なかれ主義に陥って必要な対応を行わなかったりすることがあってはならないことを示してもいるところでもございます。
引き続き、児童生徒等の尊厳と権利を踏みにじる性暴力はいかなる理由であれ断じて許されるものではないという態度で、その根絶に向けて取組を徹底してまいります。
○高橋(千)委員 大変熱い答弁をありがとうございます。
先ほど政務官が紹介いただいた、令和四年度公立学校教職員の人事行政状況調査結果に係る留意事項について、これは今年の三月二十八日に出ているんですけれども、やはりその中でちゃんと認めているんですね。被害者やその保護者が望まなかったためって、えっ、被害者のせいにするのかなって思ったら、その後に、十分に検討することもなく犯罪に当たらないと判断したりしたことなどにより、教育委員会等が、学校から告発が適正に行われなかったことも考えられるためというふうに認めていらっしゃる。
やはり各段階で、学校に言ったけれども、あるいは教育委員会に言ったけれども、その先が届かなかったということがやはりあってはならない。しっかりと今お答えいただいたので、それを実践していただきたいと思います。
それで、実は三年たったから何かしらの調査が出たかなとか、通報が分かったかなって聞いたんですが、それは全く分かっていないというお答えでありました。
定期的な調査を行うということを指針に書いたわけですから、これは是非、どのような状態になっているのかということを公表していただきたい。今まだそれができていないというのであれば、今後必ずやっていただきたいと思いますが、お約束いただけるでしょうか。
○浅野政府参考人 いわゆる教員性暴力等防止法で定められていますような通報については、具体的な通報件数等については現在把握しておりませんが、令和四年度の人事行政状況調査において、令和四年度の公立学校教職員の児童生徒性暴力等に係る懲戒処分については、事案の発覚の要因として、警察からの連絡等、教職員への相談の割合が多いと承知しております。
そういった人事行政状況調査等も通じて、しっかりと状況のフォローアップをしていきたいと思います。
○高橋(千)委員 実は、ここはあとは要望にします、時間がないですので。ここをちょっと文科省とやり取りしたときに、通報する人が誰かといったときに、学校やあるいは教育委員会、生徒の相談をする係の方、そしてその保護者なんですね。児童生徒自身が通報するというのがないんです。だから、友達にしか相談できない場合もあるわけですよね。そういうこともちゃんと認める必要があると思うのと、いじめ問題などが起こったときに、必ず生徒に匿名で調査をしますよね。そうすると、本当に実態がよく分かるんだけれども、それが表に出てこないとか、そうしたことはもう絶対ないようにお願いしたいということを、是非御検討いただきたいということを要望しておきます。
それで、また大臣に戻るんですけれども、今の文科省とのやり取りを聞いていただいたと思うんです。そもそも、やはりきちんと性被害を把握して、適正に処分されていることがなければ、被害は繰り返されるわけなんですよ。
下手すれば、いつまでたっても初犯になるわけですよね。だから、本当に子供たちを守ることは、その初動がしっかりできなければできないと思うんですが、そのためにどのように取り組んでいくのか、決意をお願いします。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
委員御指摘のとおり、この法案、また今度新しく整える制度、仕組みにつきましては、そもそも、しっかりと初犯のところで押さえられていなければ確認することもできないという意味において、委員の御指摘、大変重要なものと受け止めてございます。
また、まず、御指摘の点につきましては、本年四月の関係府省で取りまとめましたこども・若者の性被害防止のための総合的な対策の中の柱の一つであります、加害を防止する取組として、改正刑法等による厳正な対処なども盛り込んでおりまして、政府として、子供への性暴力に対して厳しく対応をしてまいります。
また、本法案では、性犯罪歴、前科の有無を確認する仕組みによる再犯対策のみならず、初犯対策にも対応ができるよう、児童等への面談、また児童等が相談を行いやすくする措置などの安全の確保をするための措置を講じることを学校設置者等や認定事業者に直接義務づけることにより、適切に端緒を把握する内容としているところでございます。
いずれにしましても、繰り返しになりますけれども、この法案だけで全ての性被害を防止できるわけではありませんので、その前提に立つわけにはいかないので、子供たちを性犯罪から守るために、本法案の対象事業に該当しないものも含めて、関係省庁と連携して総合的な対策を推進することによって、あらゆる子供への性暴力の防止が図られるよう、最大限取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 しっかりお願いします。
時間が来ましたので終わります。
○谷委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 本日、最後の質問となります。よろしくお願いいたします。
今回の子供性暴力防止法案、足らざるところも多いんですが、私たち国民民主党としても、二〇二一年には、児童対象性犯罪等の防止を図るための児童福祉法の一部を改正する等の法律案を既に出しておりまして、この趣旨、目的と一致するということでありますので、法案については一日も早く成立していただきたいと思いますが、しかしながら、まだまだ懸念点や、また、今質疑の中でも様々な足らざる部分がありますので、それについて聞きたいと思っております。
まず、通告の前に、今の質疑の中での、一問確認をさせてもらいたいんですが、今回、刑法犯罪にとどまらず条例違反にも含まれるということをお聞きをしていますが、先ほど大西委員の記事の中に、体液を女性にかけたということで、この暴行罪や器物損壊罪は認められないということなんですけれども、その後に、これは条例違反でも逮捕されている、女性に下着を露出したということで記事が載って、同じ人がそれで逮捕されているんですけれども、この場合は対象になり得るんでしょうか。確認をお願いします。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
具体的な事案についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、本法律案におきましては、条例の中で、みだりに卑わいな言動を行うものとして政令で定める条例による犯罪ということを特定性犯罪の中に盛り込んでおりますので、それに該当すればかかってくるということになろうかと思います。
○田中(健)委員 そうしますと、この同じ方なんですけれども、前日に条例違反で逮捕されていまして、次の日に体液をかけてまた逮捕されているんですけれども、そうすると、条例違反では適用になるけれども、この体液をかけたのでは適用にならないということでよろしかったか、確認させてください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
条例に基づく前科ということであれば、先ほど申し上げました政令で定める必要がございますけれども、みだりに卑わいな言動を行ったということで、条例違反ということの前科であれば、性犯罪の犯歴対象になります。該当するというふうな回答の対象になります。
○田中(健)委員 つまり、これ、同じ方なので、しかも一日違いで同じことを繰り返しているんですけれども、つまり、リスクはあるということなんですね、こういう方は。
ですから、今回は、暴行ないしは器物損壊罪では特定犯罪には含まれないということなんですけれども、しかしながら条例では含まれるということなので、やはりこれはなかなか分かりづらいのと、そして、目的は、やはり子供を守るということ、何度も今日の委員会の中でも出ておりますが、是非この課題についても今後の検討課題にしていただいて、そして子供を守るにはどうしたらいいかということを進めていただければと思っています。
それでは、質疑を続けます。
今回の法案においては、民間の対象事業者、これも質疑で出ておりました、民間教育保育事業者であり、マッチング事業者自体は認可外の保育施設としての届出対象ではなかったわけですけれども、マッチング事業者についても法案の対象事業に取り入れると答弁がありました。
これ、対象事業者の変更というのは必要ないのか、また、工夫をすると言ったが、どのように工夫をするのか。今回の法案の中でどの部分でそこを対応できると読み取れるのか、伺います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
ベビーシッターのマッチングサイト事業者につきましては、児童福祉法上の認可外保育施設の取扱いを一部見直し、一定のマッチングサイト事業者を認可外保育施設として届出対象とし、本法案の認定を受けることを可能とする方向で検討をしているところでございます。
具体的に申し上げますと、利用者と個人のベビーシッターとのマッチングの場を提供している事業者、これにつきまして、従来は、本法案における民間教育保育等事業者の一つである認可外の居宅訪問型保育事業者には含まれないものとしてまいりましたが、マッチングサイト事業者と、そこに登録をしているベビーシッター、この両者の間で業務委託等の契約を締結をし、事業者が保育を提供する主体になっているという場合におきましては、認可外の居宅訪問型保育事業者に該当するものとして、今般、新たに整理をすることといたしました。
これによりまして、当該マッチングサイト事業者に登録したベビーシッターにつきましては、性犯罪前科の有無の確認等の措置を及ぼすことが可能になると考えております。
○田中(健)委員 マッチング事業のベビーシッター事業については確認ができましたけれども、これも先ほどありました、個人塾やピアノやファミサポなどにおいても同じ問題を抱えているんだと思います。
今、業務委託をすれば、今回、それを適用にできるようにすると言ったんですけれども、じゃ、同じように、個人の方がマッチングの登録を、例えば、塾であっても、家庭教師をやりたいといった場合、いわゆる人材派遣、人材紹介業の業者の人たちは対象になり得るんでしょうか。お伺いします。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
御指摘の塾、様々な業態を挙げてくださいましたけれども、家庭教師やピアノ教師等の登録を受け付け、利用者とマッチングする事業形態につきましても、当該マッチングを行う事業者がそこに登録している教師等との間で業務委託の契約を締結した上で、事業者が利用契約を保護者等と締結をし、知識又は技芸の教授の役務の提供主体になる場合は、当該事業者として民間教育事業の人数等の要件を満たせば、民間教育事業としての認定の対象になり得ると考えてございます。
一方で、単にマッチングサイトの運営のみを行い、マッチングの場の提供にとどまっている場合におきましては、知識又は技芸の教授を自らの責任の下で提供する事業者とは言えず、民間教育事業には該当しないと考えてございます。
知識又は技芸の教授を行う業態は様々な活動実態がありますので、どのような事業形態が該当するかといった考え方につきましては、今後、具体的に検討をし、ガイドライン等で示してまいります。
○田中(健)委員 ベビーシッターは、立法事実にもなっておりますので、かなり具体的に、そして検討を実質やると言っていただいているのと同じかと思うんですけれども、ちょっと少し、塾やそういった人たちに対する、家庭教師に対する取組はどうなるのか、今の答弁ではまだちょっと分かりづらい。この人はマッチング事業になるけれども、このマッチング事業者はならないと、どこで線引きをするのかというのが分かりませんので。
もちろん、子供を守るというのが第一義ですけれども、個人で家庭教師をやる人も、自分はそうでないということを知らせるためにどうやったらいいかということも課題だと思いますので、是非ここを検討していただきたいと思います。
そんな中で、参考人の末冨さんから中間団体についてのお話もありまして、これは前回の委員会の中でも質疑がありました。児童等に知識又は技芸の教授を行っていて、一定の要件を満たす場合は、民間教育事業者としての認定の対象となり得ると考えているということでありましたが、実際、この参考人から、子供食堂を営んでいる団体さんからは、中間組織を組織して、そこで各地の子供食堂が登録できるようにして、中間組織を経由して認可事業者となり、認可をもらう仕組みを考えているという発言まであったんですけれども、この事例の中の中間団体というのは、認可事業者となり得るんでしょうか。
○加藤国務大臣 中間団体が民間教育事業を運営する個人と業務委託を行う場合におきましては、当該中間団体が認定対象事業者になり得るかどうかにつきましては、当該中間団体の役割や組織の在り方について様々なものがあり得るため、一概に申し上げることは難しいと考えてございます。
具体的な事案を踏まえて、どのような組織体制であれば対象にできるかといった点も含めて、検討を進めてまいります。
○田中(健)委員 なかなか、子供食堂が業務委託を中間団体とするというのは現実的ではないと思うんですけれども、大臣は、個人事業主に関しては、こうも言っています。従業員の研修や相談窓口の設置といった、事業者が児童対象性暴力等の防止をするために講ずべき措置を講ずることが通常困難であるから認められないと。
しかし、中間団体や中間組織が、そういった窓口になって、ないしはそういう研修をしたり、そういうことを行えば、中間団体も認可事業者となり得る可能性はありますでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
中間団体が民間教育事業を運営する個人と業務委託を行う場合に当該中間団体が認定対象事業者になり得るかどうかということにつきましては、研修や相談窓口の設置だけではなく、犯罪事実の確認義務ですとか、また当該従事者に児童対象性暴力等のおそれが認められる場合に防止措置を行う義務等、認定事業者の義務が履行できるかどうかといった点も含め検討をしていく必要があると考えております。
当該中間団体の役割や組織の在り方につきましては、定義が定かではなく様々なものがあり得るため、認定の対象となり得るか否かについて一概に申し上げることは難しいと考えておりますが、個人が一人で行っている事業につきましても何らかの対策をすべきだという委員のような問題意識をお持ちの方のお声を伺っております。
私自身も理解をしてございますので、現在の事業形態が個人が一人で行っている事業であるからといって一律に本法律の対象としないということではなくて、具体的な事案を含めまして、どのような組織体であれば対象にできるかといった点も含めまして、中間組織に関しましてもしっかり検討を進めてまいりたいと考えております。
○田中(健)委員 是非、個人事業主の方も、また中間団体をつくろうと思っている方たちも、子供を守るためにどうしたらいいのか、そしてそれをしっかり伝えるにはどうしたらいいのかということを考えておりますので、検討していただくということですので、是非検討を進めていただきたいと思います。
さらに、本会議で私たちの西岡議員から、この日本版のDBS制度によって教育、保育等の現場から遠ざけたとしても、その対象外の職場で子供に対し加害を続ける可能性が懸念されることに対し、加害者を治療プログラムにつなげることや、また、子供に関わらない職業あっせんなどの総合対策の必要性というのを大臣に問いました。
大臣からは、四月に、新たな治療や加害更生という視点を加え、総合的な取組、また、法務省においては、受刑者等を対象とした処遇プログラムのほか、ハローワークと連携をした職業紹介などに取り組んでいるというふうな答弁がありました。
実際、参考人からも、小児性犯罪は日本においては依存症としての治療の対象にしておらず、保険適用も考えるべきではないかといった言及があったり、性的嗜好の変容は短期では困難であり、出所後の出口支援の必要性というものも述べられていました。
出所した後、自分で何とかするという考えではなくて、やはり依存症という視点も加え、長期の治療や社会の中で改善していくという場をつくっていく必要があると考えますが、これは厚労省からお聞きをしたいと思いますし、また、それをどのように再犯防止につなげていくのか、これは法務省に来ていただいておりますので、それぞれ答弁をお願いいたします。
○辺見政府参考人 議員御指摘の性依存症はいわゆる性嗜好障害のことと考えられるところでございますが、性犯罪者が必ずしも性嗜好障害を有しているとは限らないと認識をしているところではありますけれども、一般的に、刑務所等の入所中に医療的支援を受けていた犯罪者につきまして、出所前から再犯を防止するための措置を講ずるとともに、地域においても必要な医療等につながるということは重要であるというふうに認識をしております。
障害等を有する出所者につきましては、福祉的な支援等が必要な場合には、出所前から、地域生活定着支援センターが刑事施設や保護観察所等と連携しつつ、自治体の相談窓口や地域の福祉施設等につなぐ取組を行っており、こうした方が医療的な支援等も必要とする場合には、地域定着支援センター等が医療機関や精神保健福祉センター等につなぐという取組を行っているところでございます。
他方、性嗜好障害を有する方の中には、アルコール依存や発達障害を併存し、その治療を受けている方もいると考えておりますけれども、性嗜好障害については、その診断基準や治療方法等の実態が現時点では十分に把握されていないことから、昨年度、厚生労働省において、性嗜好障害に対する治療などの情報収集を行うため、調査研究を実施し、現在、研究班において結果を取りまとめているところでございます。
性嗜好障害の治療等への対応につきましては、この報告内容も踏まえまして、こども家庭庁や法務省などの関係省庁と連携して取組を続けてまいりたいと考えております。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
刑事施設や保護観察所におきましては、委員御指摘のとおり、性犯罪者に対して認知行動療法の手法を取り入れた性犯罪者処遇プログラムを実施しております。同プログラムにつきましては、これまでも効果検証の結果や諸外国における取組、外部有識者からの提言などを踏まえ不断の見直しを図ってきており、また、必要に応じて関係機関とも連携するなどしてその実効性がより高まるよう取り組んでおりまして、一定の成果を上げているものと考えております。
また、性犯罪者の再犯防止のためには、地域において必要な医療等の支援につなげることも重要であると考えております。保護観察所におきましては、治療等が必要な性犯罪者には、矯正施設収容中から医療機関等との調整を行っているほか、保護観察中も必要に応じ医療機関等と連携した処遇を行っております。
今後も、プログラムの更なる充実に取り組むほか、性犯罪者の立ち直りのため、切れ目なく地域での医療等を受けられるよう医療機関等との連携を図り、性犯罪者に対する再犯防止対策を進めていきたいと考えております。
○田中(健)委員 犯罪が起きないような環境づくりも大切かと思いますので、是非社会全体で知恵を絞って取り組んでいただければと思います。
以上で終わります。
○谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○谷委員長 これより討論に入ります。
討論の申出がありますので、これを許します。高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、子供性暴力防止法案に対する討論を行います。
子供が日常的に過ごす場での性暴力は後を絶ちません。わいせつ行為により教員が懲戒処分となった件数は二〇二二年度で百十九件、教員性暴力防止法に基づく教員免許状失効者に関するデータベースには既に二千四百九十八人が登録されています。
性暴力は、子供の尊厳を深く傷つけ、その人生に与える影響は計り知れず、決して許されない犯罪です。性被害当事者や家族らの声に応え、日本版DBSの制度は待たれていました。先行しているイギリスの制度などに比べても、限定的で不十分、課題もありますが、本制度を始めることが最大の抑止効果となることを期待して、賛成とします。
参考人質疑でも強調されたように、本法案が子供の最善の利益に照らしてどうなのかが問われていると思います。本法案は、学校設置者等及び民間教育保育事業者に対し、その教員等及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止に努めるとともに、被害児童等を適切に保護する責務を規定しています。被害に遭った子供たちの多くは、それを被害と認識することができず、また、嫌だと思っても、信頼する先生、あるいは力関係により、訴えることもできません。また、勇気を出して訴えても、学校等が取り合ってくれないことによって更に傷つくことになります。絶対に事実をうやむやにしない、子供が相談しやすい環境と体制づくりが急がれます。
性犯罪歴確認を行うことで、児童性暴力を行うおそれのある者は本来業務に就くことができなくなり、政府は事実上の就業制限と認めています。職業選択の自由との関係で、制限される範囲を限定的に絞ってはいますが、恣意的な運用にならないよう基準を明確に示すべきです。一方、限定したがために、犯罪事実確認等児童性暴力防止のための措置が義務づけられる施設とそうでない施設があって、これで全ての子供が守れるのかという強い懸念が出されています。子供への性暴力は絶対に許さないというメッセージを地域、社会と共有し、国が本気で取り組むときです。
なお、犯罪履歴は極めて機微な要配慮個人情報であって、膨大なデータベース化とその活用により、人為的ミスも含め漏えいや目的外利用などの重大な懸念が拭えません。厳格な制度設計、運用を求めます。
三年後の見直しに向けては、本人が犯罪歴のないことを証明する、いわゆるホワイトリストの研究、イギリス型のDBSに近い手厚い人員体制と予算確保にも取り組むべきです。
終わりに、子供自身がこれは性被害だと気づけることや包括的性教育をしっかりと位置づけること、ワンストップ相談支援センターの体制、予算の拡充、子供を見守る複数の目がある体制を社会全体でつくるために我が党も力を尽くすことを述べて、討論といたします。
○谷委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○谷委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案、いわゆる子供性暴力防止法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○谷委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、田中英之君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。藤岡隆雄君。
○藤岡委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。
一 民間教育保育等事業者が積極的に認定を受けることにより、その事業者に対する保護者の信頼を高めることとなるよう、事業者及び保護者の双方に対し、認定制度の周知啓発を図ること。
二 対象事業及び対象業務への該当性の基準、児童対象性暴力等が行われるおそれがある場合の防止措置に関する基準や具体例の明示、犯罪事実確認を行う前にこどもに接する業務に従事させる特例が認められる場合及びその場合に必要な防止措置の内容、調査の客観性の確保など、本法の運用に関する具体的な事項が下位法令やガイドラインに委ねられていることを踏まえ、これらの制定を早急に行うこと。また、制定に当たっては、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律や児童福祉法、これらの法律に基づく指針等との整合性を図るだけでなく、事業者、従事者やこどもの声を適切に反映するとともに、防止措置の濫用の防止を図ることに留意すること。その際には、性犯罪歴がある労働者に安全確保措置を講じる場合においても、雇用管理上の措置をとる際には労働法制等に従う必要があることが重要である点にも留意すること。
三 対象事業については、芸能事務所のように、主たる事業が教育ではなく、対象がこどもに限らない場合であっても、こどもを対象とする事業であれば広く含まれるようにすること。また、民間教育事業の要件に関し、「六月以上」とされている技芸又は知識を習得するための標準的な修業期間の短縮について検討すること。
四 ベビーシッターや家庭教師等のこどもを対象とする事業を営む個人事業主、マッチングアプリ経由等による個人契約やフランチャイズ方式も犯罪事実確認等の対象とする仕組みを早急に検討すること。また、医療機関を対象事業とすることについても検討すること。
五 犯罪事実確認については、特定性犯罪の範囲を下着窃盗、ストーカー行為やこどもに重大な影響を与える性暴力と解される行為等にも拡大すること、確認対象期間を延長すること、示談等により不起訴とされた場合や刑事事件には至らないものの懲戒解雇となった場合なども対象とすることについて検討すること。また、これらの検討に必要な知見が得られるよう、性犯罪の累犯性、余罪の状況などの特性や小児性愛を含む性嗜好障害の実態に関する調査・分析・研究を進めること。
六 本法の実効性を確保するためには、性加害の事実のもみ消しや加害者の自主退職による懲戒の回避を防止する必要があることを踏まえ、事業者等に告発・通報を義務付けることについて検討すること。
七 学校設置者等及び認定事業者が研修、相談、調査等の措置を講ずる体制を負荷なく構築することができるよう支援する仕組みを整備するとともに、こどもの安全・保護に関する責任者を任命する仕組み等を検討すること。特に、研修、相談、調査等については、公平性、透明性及び質の担保のため、第三者性の確保にも留意すること。
八 教員、保育士等の養成段階において、こどもに対する性暴力を防止するための教育を充実させること。
九 性被害を受けたこどもの人権を擁護するため、第三者機関を含む相談先の確保を推進するとともに、トラウマケアの充実を図るための方策について検討すること。
十 性暴力の根絶へ向けて、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動がとれるよう、発達段階に応じて着実な指導に努めること。また、こどもが性被害から身を守るために必要な知識を習得できるよう、こども向けの研修の充実を図るとともに、家族や教員等のこどもにとって身近な存在からの性被害もあり得ることを「生命(いのち)の安全教育」において強調すること。
十一 犯罪事実確認記録等が犯罪歴という要配慮個人情報を含み得ることを踏まえ、学校設置者等及び認定事業者が犯罪事実確認記録等の管理及び廃棄を適正に行うよう徹底するとともに、情報の漏えいを防止するための対策を講ずること。また、犯罪事実確認の方法については、イギリスで採用されている第三者機関「Ofsted」による確認の仕組みも参考にして、学校設置者等及び認定事業者への犯罪事実確認書の交付が不要となる仕組みを検討すること。
十二 本法に基づく規制が特定性犯罪事実該当者に対して事実上の就業制限を課すものであることを踏まえ、性犯罪の捜査及び立証に当たっては、誤った事実認定の防止に一層留意すること。
十三 学校設置者等及び認定事業者の採用内定者が内定を辞退した場合において、内定辞退後にその者の採用を検討する他の事業者にとっては、これが犯罪事実確認の結果に起因するものであるか否かが判別できないことを踏まえ、その者が偏見により就労を妨げられることがないよう、所要の周知啓発を図ること。
十四 性犯罪の加害者の再犯防止等に資するためにも、性嗜好障害の治療等のデータの蓄積など、科学的根拠の構築に必要な調査研究を進めること。また、加害者の改善更生及び社会復帰を支援するため、認知行動療法に基づく治療的支援を強化し、加害者更生プログラムの充実を図るとともに、加害者の受講を促進すること。
十五 本法が犯罪事実確認記録等という要配慮個人情報を含み得る情報を取り扱うこと等を踏まえつつ、本法の施行に万全を期するため、政府における執行体制を早急に整備すること。
十六 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による犯罪事実確認並びに教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律第七条第一項の規定によるデータベースの活用又は児童福祉法第十八条の二十の四第三項の規定によるデータベースの活用に関し、それらの補完・連携の在り方について、学校設置者等及び民間教育保育等事業者の負担を軽減するための方策にも留意しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
十七 児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について、本法の施行後三年の見直しを待たず、必要に応じ、不断の見直しを行うこと。
十八 民間教育事業における教授を行う者の人数等の要件を満たさない事業者等がいることも踏まえつつ、こどもの安全の確保は本法のみで全うできるものではないことに鑑み、こどもに対する性犯罪・性暴力対策の総合的な取組を進めること。
十九 以上の項目は、こどもが誰一人として性被害を受けることがないよう万全を期するという一貫した考えのもと取り組むこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○谷委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。加藤国務大臣。
○加藤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。
―――――――――――――
○谷委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○谷委員長 次回は、来る二十四日金曜日午前八時四十分理事会、午前八時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十五分散会