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第6号 令和7年2月18日(火曜日)

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令和七年二月十八日(火曜日)

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 議事日程 第六号

  令和七年二月十八日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説(令和七年度地方財政計画について)並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

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本日の会議に付した案件

 村上総務大臣の令和七年度地方財政計画についての演説並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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議長(額賀福志郎君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまヌーマン・クルトゥルムシュ・トルコ共和国大国民議会議長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

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 国務大臣の演説(令和七年度地方財政計画について)並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、令和七年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣村上誠一郎君。

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 令和七年度地方財政計画の概要並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 まず、令和七年度地方財政計画の概要について御説明申し上げます。

 本計画の策定に際しては、通常収支分については、地方創生や防災・減災対策、自治体DX、地域社会のDXの推進等に対応するために必要な経費の計上や、社会保障関係費、人件費の増加を適切に反映した計上等を行うとともに、引き続き生じる財源不足については、適切な補填措置を講じることとしております。

 これらの結果、地方の一般財源総額について、交付団体ベースで、令和六年度の地方財政計画を上回る額を確保するとともに、地方交付税総額を増額して確保しつつ、臨時財政対策債については、制度創設以来、初めて発行額が生じないこととしております。

 また、東日本大震災分については、復旧復興事業について、補助事業に係る地方負担分等を措置する震災復興特別交付税を確保することとしております。

 次に、地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 現下の経済情勢等を踏まえ、個人住民税特定親族特別控除の創設を行うほか、軽自動車税の種別割の標準税率に係る二輪車の車両区分を見直すこととしております。

 また、納税通知書等をエルタックスを通じて提供することを可能とする制度の創設等を行うほか、税負担軽減措置等の整理合理化等を行うこととしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨の御説明を申し上げます。

 令和七年度分の通常収支に係る地方交付税の総額について、十八兆九千五百七十四億円を確保するとともに、普通交付税の算定に用いる単位費用の改正等を行うこととしております。

 あわせて、令和七年度分の震災復興特別交付税について、新たに六百八十四億円を確保することとし、総額八百七十一億円としております。

 また、情報システム又は情報通信機器の整備に要する経費に充てるため地方債の特例を創設するほか、河川等におけるしゅんせつ等に要する経費に充てるための地方債の特例の期限を延長するとともに、公営競技納付金制度の延長を行うこととしております。

 以上が、令和七年度地方財政計画の概要並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

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 国務大臣の演説(令和七年度地方財政計画について)並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの地方財政計画についての発言及び二法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。吉川元君。

    〔吉川元君登壇〕

吉川元君 立憲民主党の吉川元です。

 立憲民主党・無所属を代表し、令和七年度地方財政計画及び地方税法等の一部改正案並びに地方交付税法等の一部改正案について、村上総務大臣に質問します。(拍手)

 来年度の地方財政計画は、一般財源総額、地方交付税総額共に高水準の伸び率で今年度を上回り、財源不足も縮小され、制度の創設以来初めて、臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債の発行がゼロになりました。

 一方、物価の高騰が続く現状において、地方財政計画に盛り込まれた自治体施設の光熱費や施設管理の委託料の増加等を踏まえた総額一千億円の物価高対応分は、今年度補正予算の重点支援地方交付金と合わせても不十分ではないでしょうか。また、今後、物価高が想定以上に進んだ場合、どのように対応するのか、お答えください。

 物価高は、もちろん家計を直撃しています。政府の燃料価格激変緩和補助金が発動されても、ガソリン等の平均価格は高止まりのままです。

 立憲民主党は、物価高対策の一環として、揮発油税、地方揮発油税の当分の間税率、いわゆる暫定税率分の廃止を打ち出しています。これに併せて、軽油引取税についても、地方税収の減収に対応しつつ、本則に上乗せされた当分の間税率、これを廃止する地方税法等改正案の修正を準備しています。修正案を提出した際、総務省としても真摯に検討していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

 地方税や地方交付税など、自治体の裁量で使途を決めることができる一般財源総額は、二〇二五年度から三年間、二〇二四年度の水準を維持するとした一般財源総額実質同水準ルールが適用されています。

 二〇一一年度のルール制定以降、交付団体の一般財源総額は一度も減額されず、地方にとって財政運営の予見性が高まりました。しかし、物価高や給与改定費の増加が今後も予想されます。さらには、一般行政経費において国の社会保障政策の補助事業が増え続ける中、地方独自の施策を保障する単独事業の財源が侵食され続けています。

 前年比で一般財源の総額を確保するにとどまらず、物価高、給与改定費、そして地方の単独事業費の伸びを保障する内容でルールの見直しを図るべきではありませんか。

 地方独自の税収だけで行政を運営できる不交付団体、例えば東京都では、十八歳までの子供への月五千円給付、高校授業料無償化の所得制限撤廃、公立学校給食の無償化、十八歳までの医療費助成などが先行して実施されています。これらの施策は、財政力に乏しい自治体では容易に実施できるものではありません。

 財政力の格差が、自治体の提供する子供、子育て支援、教育、福祉事業など、行政サービスの格差に直結しています。東京都の施策に問題はありませんが、この財政力格差に起因する自治体間のサービス格差を放置する限り、東京一極集中の是正や財政力の弱い地方での人口減少に対応できません。国が責任を持って、地方が提供するサービスの格差を解消し、公共サービスを充実させていくべきではないでしょうか。また、地方の財政力格差や税収の偏在是正について、今後どのように対応していくつもりなのでしょうか。

 いわゆる百三万円の壁の見直しによる交付税法定率分の減少額約二千億円について、国から補填措置が講じられていません。しかし、地方固有の財源である交付税の減収は、一時的な税増収で還元すべきではなく、恒久的な財源補填が講じられるべきではないでしょうか。また、今後、更なる壁の引上げによって交付税の法定率分が減少した際、国の責任で全額分を代替財源で確保するのでしょうか。お答えください。

 来年度の地方財政計画では、地方公務員の人件費が計上されています。この中には、非正規の会計年度任用職員の人件費も含まれているはずです。

 ただし、正職員の人件費は地方財政計画において給与関係経費として計上されるのに対し、会計年度任用職員の人件費は一般行政経費の単独事業の中に含まれています。そのため、地方財政計画上では措置がされても、実際には会計年度任用職員の給与改定を実施していない自治体が生じているのではないか。

 例えば、二〇二三年度に正職員の給与改定に準じて会計年度任用職員給与の遡及改定を実施した自治体は、全体の五六%にとどまっていました。今年度、二〇二四年度は正規と同様の給与改定がなされているのでしょうか。地方財政計画で措置されている給与改定を行わない自治体に対し、総務省はどのような対応を行っているのでしょうか。

 そもそも、二五年度の地方財政計画で措置されている人件費は、既に六十六・一万人に達した会計年度任用職員の全てに対して、給与、期末手当、勤勉手当、退職手当が積算されたものと理解していいのでしょうか。

 公立病院の経営状態が、新型コロナウイルス感染症の五類移行後、物価高騰の影響も受け、著しく悪化しています。二〇二三年度には、赤字病院の割合が前年度から二倍以上に伸びて全体の七割に達し、赤字合計額は前年度の約三・八倍、二千五百億円に膨れ上がっています。今年度の赤字病院数の割合、赤字合計額は、それぞれどの程度になると想定していますか。

 経営の悪化は医療従事者の処遇にも及び、人勧による賃上げが見送られ、さらには、給与削減すら提案されている公立病院も存在しています。

 補正予算で病院経営支援パッケージなどが準備され、来年度の地方財政計画では資金繰り支援として病院事業債の創設などが盛り込まれていますが、止血のための応急措置といった印象です。本来は診療報酬改定で対応すべきですが、それまでの間、更なる財政支援がなければ、地域の中核医療を担う公立病院の存続を危うくする状況にあると考えますが、大臣の認識をお聞かせください。

 デジタル人材確保についてお聞きします。

 来年三月末を移行期限とした自治体情報システムの標準化に際し、期限に間に合わない自治体が増加し、移行後のランニングコストの大幅増も見込まれています。このとき、自治体でもベンダーでも、デジタル人材の不足が大きな問題になっています。

 来年度、都道府県が市町村支援のためのデジタル人材を常勤職員として確保した際に、普通交付税が措置されます。IT技術者は民間企業の七割でも不足していると言われ、都道府県もその例外ではない現状、果たして市町村支援のための人材を都道府県が確保できるのでしょうか。幾つの都道府県で何人の人材を確保できると見込んでいるのか、お答えください。

 関連して、マイナンバーカードについて聞きます。

 今年度までの二年間、マイナンバーカード保有数上位三分の一の団体に交付税を割増しする利活用特別分が措置されていましたが、来年度は実施されません。

 この事業、任意取得のはずのマイナンバーカードの交付率を高めるための政策誘導ではないかと、昨年、予算委員会の分科会で質問しました。その際、カードの交付率が高いところほど財政需要が高くなるから交付税を割増しするという答弁でした。二年が経過し、交付率が高い自治体の財政需要は雲散霧消してしまったのでしょうか。明確にお答えください。

 これまで、行革、効率化の名の下、総務省は、自治体の判断といいながら、指定管理者制度やトップランナー方式の導入により、自治体業務の包括的な民間委託を推進してきました。しかし、民間実施率が九七%に達するごみ収集業務では、委託先の民間業者の人件費や燃料費が上がり、委託費が高騰しています。また、災害現場では、外部の民間業者では災害ごみの仮置場の運営が困難だと指摘されるなど、自治体の現業職員が圧倒的に不足をし、復旧復興に支障を来す事例が浮き彫りになっています。

 業務の民間委託が本当に効率的で、住民が必要なサービスを質的にも提供してきたのかどうかを検証し、自治体の直営によるサービス提供や職員配置の有効性を考えるときではないでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。

 来年度の臨時財政対策債の累積残高は約四十二兆円、交付税特別会計借入金残高も約二十五兆円。これらを含めて、地方の債務残高は来年度末で約百七十一兆円という高水準です。税収の伸びは、物価上昇や賃上げを背景に、地方税、交付税財源を名目値で押し上げてきたことが大きな要因の一つであり、今後も安定的に地方の財源が確保されていくのか、その保証はありません。また、金利上昇も地方財政に影響を与えます。

 地方財政の状況は依然として厳しく、引き続き交付税の法定率引上げを求めていくべきという認識を大臣はお持ちでしょうか。

 自治体は、地域の暮らしを根底で支え、住民に身近な多くの事業や事務を実施をしています。歳出ベースで見ると、国の四割に対し、地方が六割の事務を担っています。しかしながら、歳入ベースでは、総額ベースで地方税の割合は僅か四割にとどまったままです。

 この逆立ちした現象を解消し、地方が安心して独自の事業を展開できるような大胆な税財源の移譲、税体系の構築こそが、分権を促進し、石破内閣が掲げるいわゆる地方創生を促す鍵であると確信します。そのことを強く訴え、立憲民主党・無所属を代表しての質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 吉川議員から、十四の質問をいただきました。

 まず、物価高への対応についての御質問がありました。

 令和七年度地方財政計画においては、自治体施設の光熱費の高騰や自治体施設の施設管理等の委託料の増加を踏まえ、物価高対策として、前年度比三百億円増の一千億円を計上いたしました。

 これは、地方からの御要望に応えたものであり、地方からも一定の評価をいただいております。

 今後とも、物価の動向や国における対策などを注視しつつ、各自治体の財政運営に支障が生じないよう、適切に対応してまいりたいと考えております。

 次に、軽油引取税の当分の間税率の廃止についての御質問がありました。

 昨年十二月、自民、公明、国民民主の三党の幹事長間において、いわゆるガソリン暫定税率は廃止する、具体的な実施方法等については引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされております。

 令和七年度与党税制改正大綱においても、引き続き政党間で真摯に協議を行うとされており、政府としては、その結果を踏まえた上で、適切に対応してまいりたいと考えております。

 次に、一般財源総額実質同水準ルールについての御質問がありました。

 地方の一般財源総額については、閣議決定された基本方針二〇二四に基づき、実質的に同水準を確保することとされております。

 この基本方針に基づき、令和七年度地方財政計画においては、社会保障関係費や人件費の増加、物価高への対応を適切に反映した上で、一般財源総額について、交付団体ベースで、令和六年度を一・一兆円上回る六十三・八兆円を確保しました。

 今後も、基本方針に沿って、地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額を確保してまいります。

 次に、財政力格差に起因する自治体間のサービスの格差についての御質問がありました。

 財政力の格差については、地方からも、財政状況の違いが行政サービスの地域間格差につながっているとの意見をいただいているところであります。

 総務省としましては、与党税制改正大綱を踏まえ、拡大しつつある自治体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因、課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組むことが重要であると考えております。

 その上で、どのような地域でも一定水準の行政サービスを提供できるよう財源を保障することが国の責務であると考えており、地方交付税などの一般財源総額の確保に引き続き取り組んでまいります。

 次に、いわゆる百三万円の壁の引上げについて御質問がありました。

 今回の税制改正については、デフレからの脱却局面に鑑み、物価調整を行うものであることを踏まえて、特段の財源確保措置を要しないものと整理されたところであります。

 その上で、堅調な税収動向等を反映して、地方交付税の減収影響分を含めても、適切に地方財源を確保できたと考えております。

 また、いわゆる百三万円の壁の更なる引上げについては、三党の幹事長間で誠実に協議を進めることが確認されており、政党間で協議が進められるものと承知しております。総務省としても、誠実に対応してまいります。

 次に、会計年度任用職員の令和六年度の給与改定の状況について御質問がありました。

 令和六年度において会計年度任用職員の給与の遡及改定を実施又は実施予定とした団体は、令和七年一月時点において、千三百九十七団体、七八・一%となっております。

 次に、会計年度任用職員の給与改定を実施しない自治体に対する総務省の対応についての御質問がございました。

 会計年度任用職員の給与改定については、常勤職員に準じて改定することが基本であると考えており、自治体にその旨を要請するとともに、ヒアリングの機会等を活用して、適切な対応を行うよう促してきたところでございます。

 次に、地方財政計画における会計年度任用職員の給与についての御質問がありました。

 会計年度任用職員の給料、期末・勤勉手当、退職手当等の支給や給与改定の状況に関しては、昨年、全国の自治体に対して調査を実施しました。

 この調査等に基づき、令和六年人事委員会勧告に伴う給与改定に要する経費を積算し、所要額千四百七十二億円を地方財政計画の歳出に増額計上しているところであります。

 次に、公立病院の令和六年度の赤字病院数の割合及び赤字合計額の見込みについての御質問がありました。

 公立病院の経営状況については、令和六年度においても厳しい状況にあると公立病院関係者から伺っておりますが、公立病院の令和六年度における赤字病院数の割合及び赤字合計額を現時点で具体的に見込むことは困難でございます。

 今後とも、公立病院の経営状況を注視してまいります。

 次に、公立病院への財政支援についての御質問がありました。

 令和六年度の補正予算においては、他省庁の所管となりますが、公立病院も含めた医療機関への支援措置が盛り込まれております。また、令和七年度においては、公立病院の経営改善を促進するため、新たな地方債を創設することとしております。

 公立病院においては、これらの措置を活用するなどして経営改善に取り組んでいただくことが重要と考えております。今後とも、公立病院の実態なども踏まえつつ、関係省庁と連携して必要な措置を講じてまいります。

 次に、デジタル人材を確保できる都道府県の団体数と人数についての御質問がございました。

 デジタル人材については、今後数年間かけて、全都道府県で合わせて五百人程度が確保されるものと考えております。

 総務省として、全国的に人材の掘り起こしを行うとともに、採用ノウハウの提供を行うなど、引き続き支援してまいります。

 次に、マイナンバーカードの利用に係る財政措置についての御質問がありました。

 マイナンバーカードの利活用特別分の五百億円については、令和五年度及び六年度の二年間の措置として、地方財政計画に増額して計上したものです。

 令和七年度の、マイナンバーカードを利用した取組も含め、情報システムや機器等の整備について、デジタル活用推進事業債を創設し、地方債を発行できることとしており、必要な財政需要に適切に対応できるものと考えております。

 次に、自治体業務の民間委託についての御質問がありました。

 民間委託は、単にコストを削減するだけではなく、行政サービスをいかに効果的、効率的に提供するかといった点から実施されるものであると理解しております。

 行政サービスの質の確保も含めて、各自治体の議会の議論や住民の皆さんの意見を踏まえ、適切に対応していただくべきものと考えております。

 最後に、交付税率の引上げについての御質問がございました。

 令和七年度の概算要求においては交付税率の引上げを事項要求しましたが、国も極めて厳しい財政状況にあること、令和七年度の臨時財政対策債をゼロにした上で必要な地方交付税総額を確保することができたことなどにより、引上げを行わないこととしております。

 今後についても、国、地方共に厳しい財政状況にあることから、交付税率の引上げは容易ではありませんが、地方財源不足の状況を見極めつつ、地方交付税総額を安定的に確保できるよう、政府部内で十分に議論してまいりたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 黒田征樹君。

    〔黒田征樹君登壇〕

黒田征樹君 日本維新の会、黒田征樹です。

 会派を代表して、地方税法を改正する法律案等について御質問いたします。(拍手)

 まず、今月十四日、拉致被害者である有本恵子さんの父、有本明弘さんがお亡くなりになられました。心から御冥福をお祈りいたします。

 政府認定の拉致被害者のうち親世代で御健在なのは、横田めぐみさんの母、早紀江さんのみとなりました。拉致問題は何としても早紀江さんの御存命のうちに解決しなければいけません。そんな中で総理が打ち出した北朝鮮との連絡事務所の設置案に関して、めぐみさんの弟、拓也さんは、時間稼ぎにしかならないと明確に反対を表明されました。総理には、御家族の思いに寄り添った判断を求めたいと思います。

 日本維新の会も、微力ながら、あらゆる方策を尽くして、拉致被害者、特定失踪者の救出が実現できるよう、全力を注いでまいります。

 それでは、質問に移ります。

 まず初めに、全国の自治体で問題となっているインフラの老朽化について、総務大臣に伺います。

 先月二十八日、埼玉県八潮市内の県道で陥没事故が発生してから本日で三週間となりました。この事故の原因は下水道管の老朽化と言われておりますが、これは八潮市に限ったことではなく、日本全国どこでも起こり得る問題です。

 埋設から五十年を超え、標準的な耐用年数を過ぎている下水道管は、日本全国で約三万キロメートル、下水道管全体の約七%に及び、八年後にはこれが約九万キロメートルまで膨らむと言われております。

 下水道は市町村や都道府県などが管理することとされていますが、この状況が結果として事故につながったことについて、地方行政を所管する総務大臣はどのような問題意識を持っておられますか。お答えください。

 また、インフラの老朽化は下水道管のみではなく、高度経済成長期に集中的に整備された道路や橋梁、学校といったインフラが整備後五十年を経過し、今後一斉に更新の時期を迎えます。五年後の令和十二年には、半数以上の道路橋が建設後五十年を経過いたします。

 自治体が管理するインフラの更新には地方債を発行することとなりますが、既に市町村の経常収支比率は九割を超え、元利償還金の五割程度を交付税措置したところで、自治体財政の悪化は避けられません。地方財政計画における財政需要の見込みが甘いのではありませんか。お答えいただきたいと思います。

 次に、地方創生についてお伺いいたします。

 昨年末、「地方創生二・〇の「基本的な考え方」」が示されましたが、目新しい問題意識や解決策は見つからず、これではどのように地方の成長力を開花させるのかが分かりません。

 「基本的な考え方」には、政策にKPI、いわゆる数値目標を設定するとの記載がありますが、今までも同様にKPIが設定されてきました。地方創生に十年間で一・四兆円を投じながら、人口減少、東京一極集中に歯止めがかからないのであれば、このKPIが東京一極集中打破という最終目標につながっていないことは明白であります。この問題に対処せず、規模ありきで地方創生の交付金を二千億円に倍増させても、効果は見込めません。

 地方創生担当大臣、今までのKPIの設定方法は適切だったとお考えでしょうか。また、東京一極集中の打破に向けて、国としてどのような成果目標を設定しているのか、お答えいただきたいと思います。

 そもそも、東京一極集中は、政治、経済、文化の中心が東京にあり、アクセスのよさ、ビジネスチャンス、選択肢の多さから人、物、金、情報が集まるという、日本の構造的な問題に目を背けていては解決することができません。段階的に道州制で多極分散を目指すにしても、まずは二極化を実現するため、副首都制定に向けた議論を始めるべきだと考えますが、政府としての見解を求めたいと思います。

 次に、臨時財政対策債について、総務大臣に伺います。

 総務大臣は、地方交付税を受け取っていない自治体、いわゆる不交付団体は、少ないよりも多い方がいいと考えているのか、まず初めに認識を伺いたいと思います。

 令和七年度の地方財政計画では、臨時財政対策債、いわゆる臨財債の新規発行額が平成十三年度の制度創設以降初めてゼロになったこと、我々は非常に前向きに捉えております。今後も、臨財債の新規発行なしで地方財政を維持することができるよう、政府には前向きな努力を求めます。

 一方で、現在、臨時財政対策債の累積残高は四十兆円を超えております。政府は巨額の累積残高にどのように向き合うのか、お答えいただきたいと思います。また、今後、臨財債の残高を現行の水準以上に増やさないよう努力するべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

 臨財債は、元利償還金相当額に対して交付税措置がされるとはいえ、実態は自治体の借金です。自治体ごとに臨財債の元利償還金相当額を算入した基準財政需要額を基準財政収入額が上回れば、実質的には自治体が自主財源で臨財債を返済しなければいけません。これは、地域経済の活性化により税収増を目指す自治体に対して、不公平な措置ではないでしょうか。

 臨財債は、当初三か年の臨時措置として導入されましたが、現在に至るまで期限が延長され続けております。ある意味、不公平とも言えるこの仕組みを、総務省はいつまでそのままにしておくのですか。お答えいただきたいと思います。そして、今後、借換えを除いて、臨財債の発行を止めるべきだというふうに考えますが、お考えをお聞かせください。

 臨財債の発行が続けられてきた原因は、所得税や法人税、消費税などの一定割合から成る地方交付税の原資が不足してきたことであります。本来は抜本的な対策を行うべきでしたが、政府はこれまで負担の先送りを続けてきました。臨財債の新規発行額がゼロになった今こそ、根本的に法定率を引き上げて、地方の財源を恒久的に確保するべきだと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

 次に、百三万円の壁に関して、総務大臣にお伺いします。

 この壁を引き上げることは、働き控えの解消、生存権の保障、生活苦への対応など様々な意義があると言われており、我々も前向きに考えております。一方で、控除額の引上げに対する自治体の不安も払拭する必要があります。

 百三万円の壁を引き上げるため、政府は、個人住民税の給与所得控除額を十万円引き上げるとしております。普通交付税を受け取っている交付団体では、この控除の引上げで失った地方税額のうち、単純計算で七五%が普通交付税の形で当該自治体の手に戻ることになりますが、一方、地方税収の減収分を加味しても不交付団体である自治体は、減収分が何らかの形で戻るということはありません。

 政府は、控除の引上げが不交付団体となる自治体へ与える影響、これをどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。不交付団体へのこのような影響により、自治体が産業育成や環境改善など自らの魅力を磨くモチベーションをそぐ可能性も考えられますが、総務大臣はどのようにお考えでしょうか。お答えいただきたいと思います。

 百三万円の壁を百二十三万円まで引き上げるのはあくまで物価対応であり、地方全体として一般財源総額を確保したと総務省からは伺っております。しかし、今後、個人住民税の控除額を引き上げた場合、不交付団体はより大きな減収となり、交付団体と不交付団体で減収の幅に差が生じると思われますが、総務大臣はどのようにお考えでしょうか。加えて、仮に百三万円の壁を政府の主張する百二十三万円から更に引き上げたとして、自治体の財政再建への意欲をそぎ得る臨財債の発行をゼロのまま維持できますか。見解をお伺いいたします。

 一般論として、国が地方税の大枠を左右すれば、自治体が取ることができる政策の選択肢はおのずと狭まります。総務大臣は、税源移譲の必要性についてどのようにお考えでしょうか。税源移譲に向けた総務大臣の決意を伺います。

 次に、特別交付税について、総務大臣に伺います。

 特別交付税は、地方交付税全体の六%を占め、災害復旧や除雪、排雪、防災の備えなどで活用される、なくてはならない重要な制度であります。

 しかし、その算定方法がブラックボックスであると、その批判は絶えません。特別交付税の中には、算定によって自動的に金額が決まるものと、総務省や都道府県が特殊の財政需要を勘案して決めるものとありますが、その額はおよそ半々であると言われております。そして、後者に関して、国会議員が自治体から特別交付税に関する陳情を受け総務省につなぐことも、年度末によく見られる光景であります。

 このように、算定のプロセスが外部から見て分かりづらいことから、令和四年には、徳島県の石井町、板野町、つるぎ町が、特別交付税の減額が不当だとして、県を相手取って訴訟を起こしたこともありました。政府は、都道府県とも連携し、特別交付税の算定根拠の更なる明確化に取り組むべきだと考えますが、大臣の考えをお聞かせください。

 住民の命と安全を守るため、自治体が上下水道や道路の維持費用、そしてインフラを保全する最低限の財源に困らないようにすることは、地方交付税の重要な存在意義です。

 一方、令和七年度の地方財政計画には、二地域居住、関係人口の取組に係る特別交付税措置の創設、ふるさとミライカレッジに係る特別交付税措置の創設、事業承継人材等と地域企業とのマッチングに係る特別交付税措置の創設といった内容が盛り込まれております。

 地域ごとに処方箋が異なる地域活性化のための事業を特別交付税のメニューに盛り込んで国が支援することについて、総務大臣はどのようにお考えでしょうか。そもそも、これらのように地域を売り出す、そういった攻めの事業は、自治体が自主財源で行うべきだと考えますが、総務大臣の見解をお伺いいたします。

 最後に、統治機構改革について、総務大臣にお伺いします。

 人口減少社会を迎える中で、現在の都道府県制度、市町村制度で持続可能な行政運営はできません。実際に、全国の市町村では、周辺自治体に事務委託若しくは周辺自治体と事務組合で賄うなど、フルスペックの行政ができなくなってきております。そんな中で、市町村合併や広域的な財政調整を見据えて、段階的に道州制に向けた議論も始める必要があります。

 先日の総務委員会において、村上大臣は、個人的な見解と前置きした上で、現在千七百四十一ある市区町村の数について、人口が減少していく中で、将来的には三百から四百の市で済む、県庁も要らない、道州制も意味がないと述べられておりました。

 我々は、政府と国会の役割を、外交、安全保障、そしてマクロ経済などに絞り込み、権限と財源を大幅に地方に移譲する道州制を掲げております。その立場から、一層制は、権限、財源共に弱い市が直接中央政府と対峙しなければならず、地方への抜本的な分権が進まないように思われますが、今後の分権の必要性も含め、大臣のお考えをお聞かせください。

 考え方は様々あるにしても、人口減少社会を乗り切るために、都道府県の在り方、市町村の在り方に課題があるというところは一致していると思います。

 そこで、持続可能な日本の統治機構改革に向けて、実効性のある協議体を創設するべきだと考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 黒田議員から、十三問の御質問をいただきました。

 まず、下水道管の老朽化について御質問がありました。

 埼玉県八潮市における今回の道路陥没事故については、事故原因に係る調査が進められるものと承知しております。

 下水道事業については、全国的に、下水道管や施設の老朽化に伴う更新需要の増大などにより、経営環境が厳しさを増しております。

 各自治体の下水道事業が将来にわたり住民生活に必要なサービスを安定的に提供していくためには、中長期的な経営の基本計画である経営戦略を適切に策定、改定し、計画的に老朽化対策を進めていくことが重要と認識しております。

 次に、インフラの更新に関して、地方財政計画の財政需要の見込みが甘いのではないかという御質問がございました。

 公共施設等の老朽化に対して、長期的な視点を持って適正管理に取り組むことが重要であることから、総務省では、自治体に対して、公共施設等総合管理計画の策定を要請しているところであります。

 この計画に基づいて実施する取組に対して、公共施設等適正管理推進事業債により地方財政措置を講じており、令和七年度の地方財政計画において、事業費を二百億円増額して五千億円を計上しております。

 次に、普通交付税の不交付団体に関する認識についての御質問がありました。

 個々の自治体にとっては、地方交付税にできる限り依存することなく、自らの財源である地方税によって財政運営を行うことが理想的であると考えております。

 一方で、不交付団体数が増えるなどして財源超過額が大きく増加することは、自治体間の財政力格差が拡大するという課題もあると認識しております。

 次に、臨時財政対策債の残高と借換えを除いた新規発行の抑制についての御質問がございました。

 令和七年度の地方財政計画においては、制度創設以来初めて臨時財政対策債の発行額が生じないこととなっております。その結果、臨時財政対策債の残高は、令和七年度末で三・五兆円縮減することとなっております。

 引き続き、臨時財政対策債などの特例的な債務残高の縮減にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 また、令和八年度以降の臨時財政対策債につきましては、地方財政の収支の状況を踏まえつつ、自治体が、安定的な財政運営を行えるよう、令和八年度の地方財政対策に向けて適切に検討してまいります。

 次に、臨時財政対策債の元利償還金についての御質問がありました。

 不交付団体を含め、個々の自治体における臨時財政対策債の元利償還金の全額を地方交付税の基準財政需要額に算入し、確実に償還できるよう財源を保障しています。

 不交付団体においても、地方税収により、臨時財政対策債の元利償還金に必要な財源は確保されているものであります。

 今後、地方交付税を適切に算定することを通じて、自治体の財政運営に支障が生じないように対応してまいります。

 次に、交付税率の引上げについての御質問がありました。

 令和七年度の概算要求においては交付税率の引上げを事項要求しましたが、国も極めて厳しい財政状況にあること、令和七年度の臨時財政対策債をゼロにした上で必要な地方交付税総額を確保することができたことなどにより、引上げを行わないこととしています。

 今後については、国、地方共に厳しい財政状況にあることから、交付税率の引上げは容易ではありませんが、地方の財源不足の状況を見極めつつ、地方交付税総額を安定的に確保できるよう、政府部内で十分に議論してまいりたいと考えております。

 次に、個人住民税の給与所得控除額の引上げによる不交付団体への影響についての御質問がありました。

 普通交付税の算定に用いる基準財政需要額と基準財政収入額につきましては、交付団体と不交付団体の区別なく同じ算式により算定しており、結果として、基準財政収入額が基準財政需要額を上回ることとなった自治体が不交付団体となるものであります。

 このため、地方交付税制度を通じ、不交付団体を含め、自治体における標準的な行政サービスの提供に必要な財源が確保されるものと考えております。

 次に、いわゆる百三万円の壁の更なる引上げによる不交付団体や臨時財政対策債への影響についての御質問がありました。

 いわゆる百三万円の壁の更なる引上げにつきましては、三党の幹事長間で誠実に協議を進めることが確認されており、政党間で協議が進められていくものと承知しております。

 具体的にどのような内容となるかが分からない中で、臨時財政対策債への影響も含め、お答えすることは今の現時点では難しいものと考えております。

 次に、国から地方への税源移譲についての御質問がありました。

 自立した自治体運営にはその基盤となる地方税の充実確保は不可欠でありますが、国から地方への税源移譲については、国、地方とも厳しい財政状況にあることなどを踏まえて検討することが必要であると考えております。

 今後も、総務省としては、税源偏在性が小さく税収が安定的に、地方税体系の構築に取り組むとともに、地方税の充実確保に努めてまいりたいと考えております。

 次に、特別交付税の算定の明確化についてお答えいたします。

 算定の客観化、明確化を図るため、算定方法等についてできる限り省令に明記することに努めてきているところであります。

 令和五年度算定においては二十一項目を、令和六年度十二月算定においては二項目を新たに省令に規定し、自治体にも伝達したところでございます。

 今後とも、自治体の普通交付税の算定では捕捉できない特別な財政需要に適切に対応することを基本としつつ、その中で算定方法の客観化、明確化を図ってまいりたいと考えております。

 次に、地域活性化事業と特別交付税措置の関係についての御質問がありました。

 地方創生二・〇は、単なる地方の活性化策ではなく、日本の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現するための社会政策であると考えております。

 御指摘の地域活性化に関する事業などについては、地域活性化の取組として有効であること、限られた自治体において生ずる財政需要であることなどから、特別交付税措置を講じております。

 自治体が主体的に地域活性化に取り組めるよう、総務省として、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

 次に、道州制を始めとした統治機構改革と分権の必要性に関する御質問がありました。

 先日の発言は、人口が急減した状況において、五、六十年先を見て、今のシステムを前提としない様々な自治の在り方を考えていくことも必要じゃないかという意味で、ある程度の問題提起をしたものであります。

 地方分権改革は、引き続き着実に進める必要があると考えておりますが、道州制については、我が国の在り方に深く関わる問題であり、政府としては、国会における各政党間の議論や国民的な議論が必要になってくるものと考えております。

 最後に、統治機構改革に向けた協議体について御質問がありました。

 人口減少下においても自治体の行財政を持続可能なものとしていくため、現在、国、都道府県、市町村の役割の在り方を含め、どのような方策が考えられるか、研究会において議論を行っているところであります。

 研究会における議論の結果等を踏まえ、地方制度の見直しの検討が必要となり、総理から諮問が行われた場合には、地方制度調査会において調査審議が行われることとなるものと考えております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣武藤容治君登壇〕

国務大臣(武藤容治君) 黒田征樹議員にお答えをいたします。

 地方創生におけるKPIについてのお尋ねがありました。

 これまでの地方創生の取組により、全国各地で様々な好事例が生まれたことは大きな成果であると考えております。

 一方で、KPIについては、デジタル実装に取り組む自治体数や小さな拠点の形成数など順調に推移しているものもありますけれども、東京圏から地方への転出入の均衡など達成できていないものも見られます。

 このため、地方において地域の多様な関係者の知恵が十分に引き出されてきたか、国においてこれを十分に後押ししてこられたかについては、改善の余地が多分にあると考えております。

 今後十年間集中的に取り組む基本構想を本年夏に策定することとしており、東京一極集中の是正に向け、施策を具体化してまいります。この中で、適切なKPIについても議論をしてまいります。

 次に、副首都についてのお尋ねがございました。

 東京圏への過度な一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会を構築していくことが重要であると考えております。地方創生二・〇を令和の日本列島改造として、日本全体の活力を取り戻すべく進めてまいります。

 副首都制定に向けた議論についての御提案でありますけれども、政府といたしましては、東京圏への一極集中の主な要因として、進学や就職を契機とする若者や女性の転入超過が挙げられることを踏まえ、若者や女性にも選ばれる地方づくりが重要と考えています。

 また、東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散や、安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生、付加価値創出型の新しい地方経済の創生なども重要な論点と考えております。

 今後、総理を本部長とし、全閣僚を構成員とする新地方創生本部の下、産官学金労言から成る有識者会議などにおいて、地方創生二・〇の具体化に向け、しっかりと議論を進めてまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 向山好一君。

    〔向山好一君登壇〕

向山好一君 国民民主党・無所属クラブの向山好一でございます。

 地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず、石破内閣の基本認識について伺います。

 先日、二月七日に総務省が発表した家計調査によりますと、二人以上の世帯が消費に使った一世帯当たりの月間の平均額が三十万二百四十三円、実質で前年を一・一%減少したということです。賃金がそれなりに上がり、物価が上がっているにもかかわらず、消費額が減少しています。これは、手取りが上がっていないあかしではないでしょうか。個人消費が伸びないとGDPが伸びるはずがありません。

 さらに、二〇二四年のエンゲル係数が二八・三%まで上昇し、一九八一年以来の高水準になったということでございます。アメリカ一六%、ドイツ一九%、イギリス二二%、お隣の韓国は一二%、日本はOECD主要国の中で断トツ一位になっているわけであります。

 この家計調査は、国民負担が高くて、手取りが増えずに、物価高に苦しめられていながらも、毎日何とかしてやりくりしている、このような国民生活の実態を如実に映し出しているのではないでしょうか。この国民のSOSは、政府に届いているんでしょうか。

 この状況から抜け出すためには、現在四五・一%と高止まりしている国民負担率を下げる、つまり減税を実施することが必要不可欠だと思いますが、石破内閣にはこういった御認識がおありでしょうか。まずはお伺いいたします。

 次に、地方税法の改正について伺います。

 今回の改正の内容は、所得税の基礎控除等の百三万の壁を引き上げることに対応した改正になっております。しかし、その額は、私たち国民民主党が切実な声を受け止めて、手取りを上げる政策として掲げ、そして、昨年十二月十一日に三党で合意した、百七十八万円まで引き上げるからほど遠い、百二十三万円を前提としたものであります。これは国民への裏切りではありませんか。

 先週、街頭で街頭演説をしていますと、ある若い女性から歩み寄ってこられまして、切実な要望をお聞きいたしました。その方は母子家庭の母親で、毎日一生懸命働き月給が二十二万円、税金等の公的負担が差し引かれ手取りが十五万円程度、そこから家賃や光熱費、教育費などを支払って月八万円で生活しているとのことです。この物価高で、最低限の生活をしても足らないです、何とかしてほしいと切実におっしゃっておられました。

 厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査によると、令和三年度の数値で、一人親世帯の平均年収、就労収入が二百三十六万円。先ほどの話は特別なものではなく、国民生活のまさしく実態なのであります。

 今回提案されている個人住民税の減税額は年間一万円、月に換算するとたったの八百円程度にしかなりません。これでは全く国民の悲鳴に応えたことにならないのではないでしょうか。政府は、基礎的支出の物価上昇に対応したものと胸を張っておられますけれども、この案なら消費者物価上昇の対応にもならないのは明らかであります。

 改めて、住民税の基礎控除等の更なる引上げを政府に求めます。

 この国民民主党が求める百七十八万円までの引上げに対して、政府は、地方税の減税額が四兆円程度と試算し、国と地方を合わせた財源に大きな影響を与えると、ネガティブな情報を発信しています。しかし、果たしてそのとおりでしょうか。

 今年一月十七日に内閣府が発表した中長期の経済財政に関する試算を見てみますと、生産性上昇率が直近の景気循環の平均値〇・五%を想定した過去投影ケースで、国と地方を合わせた基礎的財政収支、プライマリーバランスが、来年度は少し悪化して四・五兆円の赤字となるものの、二〇二六年度からは平均して一・五兆円の黒字を予想しています。

 その中で、地方財政の収支を見てみますと、例えば、二〇二六年度が八・二兆円、二〇二七年度が八・五兆円、今後ずっと約八兆円程度の黒字を見込んでおられます。この試算は、所得税の控除額を百二十三万円まで引き上げることを織り込んだ数値であります。

 さらに、生産性上昇率の前提を過去四十年の平均値一・一%と想定する成長移行ケースとすれば、プライマリーバランスの黒字額は更に大きくなります。

 政府自ら、好調な税収を背景に国と地方を合わせた財政が相当に改善していくことを発表しているにもかかわらず、なぜその恩恵を国民に還元しないのでしょうか。御見解をお伺いいたします。

 さらに、百七十八万円まで引き上げた場合の地方税の減収に対し、地方公共団体の首長さんから、保育所サービスができなくなるのではないか、ごみ収集ができなくなる、あるいは福祉の切捨てになるのではないかといった懸念の声が上がっております。果たしてそのようなことが起こるのでしょうか。

 地方財政の仕組みとして、税制改正による地方税減収分は、基準財政収入の減少を通じて普通交付税で補填されます。結果として、臨時財政対策債が増加するかもしれませんが、基準財政需要額は確保される制度になっているんです。

 先ほど例示しました行政サービスの低下は、現行の財政ルールが変更される以外にはあり得ないことなんです。地方税の減税をこれ以上引き上げない要因の一つがそこにあるなら、極論や飛躍し過ぎた議論はやめていただきたいし、いたずらに住民の皆さんの不安をあおることはやめるべきだと思います。

 私たちは、理不尽な制度を提案しているわけではありません。ましてや、地方財政に悪影響を与えるようなことがないように対策を打つことが大前提であることは明確に何度も申し上げております。その上で、ちゃんと理にかなう、これまで取り組んでこなかった税制の是正を求めているのであります。政府に御見解を求めます。

 次に、地方財政の偏在化の是正について伺います。

 一月三十一日に公表された総務省住民基本台帳人口移動報告によりますと、二〇二四年の転出超過が四十道府県、東京都は約八万人の転入超過となっています。明らかに東京一極集中が加速しているのです。

 そのことの地方財政への影響は、財政偏在化の進展です。これまでにも、幾度となく、地方法人税の税制改正等でこの偏在化是正の取組をされてきました。しかし、令和四年度での数値ですが、全国での人口一人当たりの最大税収格差が、トップの東京都と比べると、個人住民税で二・五倍、固定資産が二・三倍、対策を打ってきたはずの地方法人二税は何と五・九倍と逆に広がっております。

 東京一極集中の是正は引き続きやらなければいけませんが、目の前の現実を直視すれば、地方財政の持続的安定化のためには税制上の更なる対策が必要になってきているのではないでしょうか。石破総理の看板政策でもある地方創生二・〇の前進のためにも、検討すべき時期に来ているのではないかと思います。御見解をお聞きいたします。

 次に、ふるさと納税について質問いたします。

 この制度は、平成二十年度に導入され、今年で十七年が経過いたしました。導入時の寄附額は八十一億円でしたが、令和五年度には一兆一千百七十五億円まで膨れ上がっています。その要因は魅力的な返礼品です。このことで、当初の趣旨、目的から逸脱しているのではないか、自治体の税収に大きな影響を与えているなど問題点が指摘され、制度の改善あるいは廃止などの要望が自治体からも出てきております。

 そこで、私から二点質問をいたします。

 毎年、年末になると、大手EC事業者から、テレビ等でふるさと納税を促すコマーシャルが流れます。これに私は違和感を覚えております。現在、ふるさと納税の五〇%、約五千億円が募集費用で失われています。そのうち、一二%がEC事業者への手数料等です。額にして一千億円以上、納税事務が営利目的に利用されていることになっているんです。

 国や自治体が、現在の民間が運営しているサイトと同様のサービスを行うことは難しいことではないように思います。貴重な税収の五割が返礼品、ポータルサイトの手数料、送料や広告費に消えている現状を改善すべきではないでしょうか。お考えをお伺いいたします。

 二つ目は、以前から指摘されている、高額納税者、つまり高額所得者ほど有利な制度になっている点です。

 総務省の試算では、二千円を除いた全額が控除される目安として、夫婦と大学生、高校生の子供二人の家庭で、年収三百万の家庭ではゼロです。一千万円で十四万四千円、二千五百万円で八十一万七千円となっています。これは、高額納税者が優遇され過ぎているのではないでしょうか。せめて、全額控除される上限額を設ける、例えば五十万円に設定するなどの税の不公平感の解消を行うべきではないかと強く思っております。御見解をお伺いいたします。

 最後に、軽油引取税について質問いたします。

 私ども国民民主党は、他党に先駆けて、ガソリン税のトリガー条項の凍結解除、つまり、暫定税率分の減税を訴えてきました。その背景は、ウクライナ紛争や円安等の影響で燃料費が高騰し、輸送費を含め、家計を圧迫している現状を鑑み、暫定的に始まり、五十年以上も続いている上乗せ分をやめるべきだという政策判断なんです。もちろん、物流に大きな役割を担っている軽油も同様の状況になっております。

 帝国データバンクが昨年末に発表した報告書によりますと、二〇二五年の見通しとして、一月から四月までに値上げが決まっている飲食料品は約六千品目、昨年の六割増です。年間では一万五千から二万品目が値上げされる見通しだということです。さらに、この値上げの要因の第一位が原材料費高の九三・二%、その次が物流費高の七八・四%。人件費四九・三%や円安一九・二%を大きく引き離し、値上げの大きな要因となっているものが物流費なのです。逆に言えば、物流費が下がれば大半の物価を下げることができます。

 その物流を担うトラックの燃料の大半が軽油です。しかし、軽油には、今なお一リットル当たり十七・一円の暫定税率が上乗せされています。ガソリンとともに軽油に課されている暫定税率の存在は、今や国民生活に直結する大きな問題となっています。国民のSOSに応えるために、暫定税率は即刻廃止すべきではありませんか。

 昨年末の三党合意の中には、いわゆるガソリン税の暫定税率は廃止すると明記しています。国民の皆さんは期待しているんです。三党合意の重みと国民の皆さんの悲鳴を真摯に受け止めるべきです。物価高騰への即効薬である軽油引取税の暫定税率の廃止を、ガソリンとともにいつ実施されるおつもりなのでしょうか。明確な御答弁を求めます。

 以上、地方の暮らしに根づいた質問を、税金を使う側じゃなくて、税金を納める側から行いました。国民生活を直視した誠意ある答弁を求め、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 向山議員から、八問の御質問をいただきました。

 まず、個人住民税における基礎控除等の更なる引上げについての御質問がありました。

 個人住民税においては、地域社会の会費的な性格や地方税財源への影響等を総合的に勘案し、給与所得控除の見直し等に対応する一方で、基礎控除は据え置くこととしております。

 自治体の首長さんからは税収減等を懸念する声が上がっていたと承知しておりますが、地方税財源への配慮について、地方からも一定の評価をいただいたものと考えております。

 今後につきましては、三党の幹事長間で誠実に協議を進めることが確認されており、政党間で協議が進められるものと承知しているところですが、総務省としても誠実に対応してまいりたいと考えております。

 次に、地方財政の状況についての御質問がありました。

 地方のプライマリーバランスについては、国と地方では、金融、経済、税制などの権限が異なることなどから、単純にその数値だけを捉えて比較することは難しい面があると考えております。

 その上で、地方財政については、財源不足額は引き続き一兆円を超え、巨額の特例的な債務残高も抱えているほか、今後も、社会保障関係費や人件費の増加、物価高などにより、厳しい財政状況が続くと考えているところであります。

 次に、いわゆる百三万円の壁の更なる引上げによる地方からの不安の声についての御質問がありました。

 一般論として申し上げれば、仮に減税によって地方税収が大幅な減収となることが見込まれる場合、地方財政全体の歳入が減少することとなりますので、歳入歳出両面の取組により、所要の財源を確保して対処する必要性が生じることとなると考えております。

 こうしたことから、地方からも、代替となる財源の適切な確保を求める声が上がるものと承知しております。

 次に、いわゆる百三万円の壁の更なる引上げに係る地方財政へ与える影響について質問がありました。

 与党税制改正大綱においては、仮に今後、これを超える恒久的な見直しが行われる場合は、必要な安定財源を追加的に確保するための措置を講ずるものとすると整理されたものと承知しております。

 今後につきましては、三党の幹事長間で誠実に協議を進めることが確認されております。

 御指摘の地方財政への影響なども含め、様々な論点について政党間で協議が進められるものと承知しておるところですが、総務省としても誠実に対応していきたいと考えております。

 次に、地方税の偏在是正についての御質問がありました。

 自治体などから、東京一極集中が続く中、行政サービスの地域間格差が過度に生じないよう、地方税の偏在の是正についての御意見をいただいております。

 総務省としましては、与党税制改正大綱を踏まえ、拡大しつつある自治体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因、課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、ふるさと納税による寄附の約五割が募集費用として使われている現状について、改善すべきではないかとの御質問がありました。

 ふるさと納税の募集に関し、自治体が過度な広報や宣伝を競い合うことなどにより多大な経費を支出することは、制度の趣旨に鑑みて、好ましくないと考えております。

 総務省としましては、寄附金の少なくとも半分以上が寄附先の地域で活用されるように、ふるさと納税の募集費用の総額は寄附金総額の五割以下とするなど、基準の見直しを行ってきました。

 また、制度の適正な運用を確保する観点から、昨年六月には、自治体が、ポイント等を付与するポータルサイト等を通じて寄附を募集することを禁止する見直しを行ったところであります。

 今後とも、各自治体と納税者の皆様の御理解をいただきながら、基準の見直し等について、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。

 次に、ふるさと納税制度における税額控除の額に上限を設定するなど、不公平感を解消すべきではないかという御質問がありました。

 ふるさと納税における特例的な控除額は、個人住民税所得割の二割が上限となっており、一定の制限を設けております。

 この上限については、平成二十七年度税制改正において、地方六団体からの要望を踏まえ、引上げを行ったものです。

 また、高所得者の方々がふるさと納税を通じて積極的に自らのふるさとや自治体を支援していただければ、それは地域の活性化に大きな効果を生むことにもつながると考えられます。

 今後とも、ふるさと納税制度が本来の趣旨に沿って適正に運用されるように取り組んでまいります。

 最後に、軽油引取税のいわゆる暫定税率の廃止についての御質問がありました。

 昨年十二月、自民、公明、国民民主の三党の幹事長間における、いわゆるガソリンの暫定税率は廃止する、具体的な実施方法等については引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされております。

 令和七年度与党税制改正大綱においても、引き続き政党間で真摯に協議を行うとされており、政府としては、その結果を踏まえた上で、適切に対応してまいりたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 向山議員より、減税による国民生活改善の必要性についてお尋ねがありました。

 まず、税財政の国民生活への影響を考える際には、負担面だけではなく、税収等を財源とした公的サービスによる受益面も併せて見る必要があるものと考えております。

 その上で、石破内閣においては、足下、物価高に苦しむ人々を支援しつつ、賃上げこそが成長戦略の要との認識の下、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の皆様の所得の向上を図ることとしております。

 具体的には、今般、御指摘の税制面において、物価上昇局面における税負担の調整等を行うこととしておりますが、税制以外でも、特に物価高の影響を受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じた物価高対策を後押しをする重点支援地方交付金を措置しつつ、賃上げの原資となる価格転嫁対策や生産性向上策を講じるなど、令和六年度補正予算も含め、総合的な対策を講じているところであります。

 政策手段には、予算、税制含め様々なものがありますが、今後とも、真に必要で効果的な政策を積み上げ、国民の皆さんの所得の向上を図ってまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 中川康洋君。

    〔中川康洋君登壇〕

中川康洋君 公明党の中川康洋でございます。

 私は、自由民主党の皆さんと公明党を代表して、令和七年度地方財政計画並びに地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、本日も大変に力強くお元気であろう村上総務大臣並びに関係大臣に御質問をいたします。(拍手)

 初めに、令和七年度地方財政計画について伺います。

 今回提出されました地方財政計画を見ますと、一般財源総額は、前年度を一・一兆円上回る六十三・八兆円を確保し過去最高額となるとともに、地方交付税総額についても、対前年度比〇・三兆円プラスとなる十九兆円を確保をいたしております。また、実質的に地方の赤字地方債である臨時財政対策債については、平成十三年度からの発行以来初めて新規発行額がゼロとなるとともに、交付税特別会計借入金についても、その残高の縮減に努めております。

 このように、来年度の地方財政計画は、確保すべきところは確保し、減らすところは着実に減らすというバランスのいいものとなっており、高く評価をいたします。特に、臨時財政対策債の新規発行額がゼロとなったことは、これまで一貫して地方議員の頃より臨時財政対策債の縮減を訴えてきた私としても、大変感慨深いものがあります。

 そこで、総務大臣に伺いますが、この地方財政計画については、地方自治体が今後も住民に対して安定的に行政サービスを提供し、地方の自主性を更に高めるという視点からも、この健全化の流れを今後も堅持し、更に加速していくべきと考えますが、いかがでしょうか。今後の地方財政健全化に向けた目標と、その達成に向けての大臣の決意をお伺いをいたします。

 次に、具体的事項について何点か伺います。

 初めに、地域医療提供体制の確保について伺います。

 新型コロナの五類への移行以来、主に地方の医療を担う公立病院は赤字経営となっているところがほとんどであり、全国に八百五十四ある公立病院のうち、令和四年から五年にかけて三四%だった赤字病院は七〇%に倍増、また、赤字合計額についても六百三十九億円から二千四百四十八億円へと四倍近くの増加、さらには、資金不足が生じている病院事業数も二十七事業から三十八事業と急増をいたしております。背景には、新型コロナ対応の財政支援の終了、物価高騰、人件費の増大などが考えられますが、そもそも、公立病院は不採算事業を担っており、採算が取れない実態があります。

 総務省は、来年度の計画の中で、病院事業の経営改善に向けた新たな地方債制度の創設、不採算地域や僻地における特別交付税措置の継続、拡充などを行いますが、公立病院全体の経営改善支援としては、いまだ不十分と言わざるを得ません。

 そこで、この地域医療提供体制の確保については、今後も現場の実態を注視し、地域医療の最後のとりでである公立病院の経営改善に向けた更なる具体策や息の長い支援が必要と考えますが、いかがでしょうか。総務大臣の答弁を求めます。

 次に、防災・減災対策の推進について、今回は、特に緊急浚渫推進事業費の拡充、延長等についてお伺いをいたします。

 この緊急浚渫推進事業費及び河川の河道掘削については、これまで原則として地方自治体の単費のみでしか実施できない事業であったため、私は、県会議員の頃より、国による支援の必要性を感じてまいりました。また、国政においては、二〇一七年の第百九十三国会での衆議院国土交通委員会始め多くの場で、この地方債の創設及び何らかの国による支援を提案をしてきた一人であります。ゆえに、この事業費及びその事業債が令和二年度に創設され、今回の地方財政計画で拡充、延長が決定されたことについては、大変うれしく感じております。

 そこで、まず総務大臣に伺いますが、大臣は、台風や豪雨などによる水害を未然に防ぐだけでなく、景観保全の面からも大変有効な事業であるこの緊急浚渫推進事業費の効果について、具体的にどのように評価しているのか、お伺いします。

 また、国土交通大臣においては、本事業の実施により、具体的に水害などの未然防止につながった好事例について御紹介をいただきたいと思います。

 さらには、今回の計画では、同じく国土強靱化及び緊急災害対応に資する事業として、緊急防災・減災事業費及び緊急自然災害防止対策事業費の拡充が示されておりますが、両事業は共に令和七年度までの期限であるため、更なる延長を検討すべきと考えます。総務大臣の答弁を求めます。

 次に、物価高への対応について、今回は、特に施設管理の委託料についてお伺いをいたします。

 今回、総務省は、自治体のサービス、施設管理などの委託料の増加を踏まえ、一般行政経費に対前年度比三百億円増の六百億円を計上いたしております。

 現在、多くの自治体では、ごみ収集や学校給食、さらには施設の管理、清掃など、その多くを民間委託や指定管理者制度などに委ねておりますが、私は、その委託先で働く人々の給与の引上げについても、今般の物価高騰、賃上げ局面の中、早急に取り組まなければならない重要な課題であると考えます。

 そこで、この物価高の対応における委託料の増加については、特に、その委託先で働く人々の給与の引上げも十分に加味し、今後も必要な対応を図っていくことが重要と考えますが、いかがでしょうか。総務大臣の答弁を願います。

 次に、地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、今回は、今日も多く質問が出ております、特に百三万円の壁に関連してお伺いをいたします。

 本改正案では、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応として、所得税の控除額については、基礎控除並びに給与所得控除を各々十万円引き上げ、百二十三万円とするとともに、個人住民税については、給与所得控除のみ十万円を引き上げることが明記をされております。

 私は、長く地方議会に身を置いてきた一人として、また、地方財政の自立性を最大限尊重する立場からも、この百三万円の壁の議論については、本来、国税と地方税は切り離して議論すべきであり、間違っても地方の財源に影響を与えるべきではないと主張をしてきた一人であります。ゆえに、今回の改正案は、地方の税財源に対して最小限の影響にとどまっている点は評価できるものと考えます。

 しかし、この百三万円の壁の議論については、昨年十二月十一日の三党幹事長合意において、百七十八万円を目指して、来年から引き上げるとされており、今後更なる議論が想定をされているところであります。

 そこで、この物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応、いわゆる百三万円の壁への対応については、仮に今後更なる議論が進んだとしても、地方には影響を与えないという力強いメッセージを発するのとともに、その姿勢を堅持することが重要と考えますが、地方自治及び地方の税財政を担う総務大臣のお考えをお伺いします。

 以上、本日は、令和七年度地方財政計画及び地方税に関連して、主に地方や地域の重要な課題についてお伺いしましたが、公明党は、今後も、党の特徴である現場主義とネットワークの力を最大限に生かし、地方目線、生活者目線の政策を提案していくことをお約束をし、自由民主党、また公明党を代表しての質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 中川議員から、六問の御質問をいただきました。

 まず、今後の地方財政健全化に向けた目標と、その達成に向けた決意についての御質問がありました。

 令和七年度の地方財政計画においては、前年度を上回る地方の一般財源総額と地方交付税総額を確保いたしました。また、臨時財政対策債について、制度創設以来初めて発行額をゼロとするなど、地方財政の健全化にも取り組むこととしております。

 しかしながら、地方財政は、巨額の特例的な債務残高を抱えているほか、今後も、社会保障関係費や人件費の増加、物価高により、厳しい財政状況が続くと見込まれます。

 今後も、必要な地方財源の確保とともに、特例的な債務残高の縮減など、地方財政の健全化にしっかりと取り組み、地方財政の持続可能性の確保に努めてまいりたいと考えております。

 次に、公立病院の経営改善に向けた支援について御質問がありました。

 総務省では、公立病院が不採算性医療や特殊医療などの地域医療にとって重要な役割を担っていることを踏まえ、必要な地方財政措置を講じてまいりました。

 令和七年度においては、公立病院の経営改善を促進するため、新たな地方債を創設するとともに、医療経営人材を養成するための研修を創設することとしております。

 今後とも、公立病院の実態なども踏まえつつ、持続可能な地域医療提供体制を確保するため、必要な措置を講じてまいります。

 次に、緊急浚渫推進事業の効果についてどのように評価しているかという御質問がありました。

 河川の氾濫などの浸水被害を防止するために、自治体が、単独事業として、河川などにおける危険箇所のしゅんせつを緊急的に実施することが重要であると考えております。

 緊急浚渫推進事業債については、これまで多くの自治体で活用されており、短い期間と少ない経費で効果的、効率的な水害の未然防止を図ることができているものと認識しております。

 次に、緊急防災・減災事業及び緊急自然災害防止対策事業の延長についての御質問がありました。

 近年、災害が激甚化、頻発化する中、自治体が防災、減災の対策にしっかり取り組めるよう、両事業債により、必要な地方財政措置を講じてきたところですが、両事業債共に令和七年度を期限としております。

 事業期間終了後の在り方については、自治体における防災・減災対策に関する取組や地域の実情、課題などを踏まえ、検討してまいりたいと考えております。

 次に、物価高への対応についての御質問がございました。

 令和七年度の地方財政計画においては、自治体施設の光熱費の高騰や自治体施設管理等の委託料の増加を踏まえ、前年度比三百億円増の一千億円を計上いたしました。

 また、光熱費、委託料の増加に対しても適切に対応するよう、自治体へ助言通知を発出しております。

 今後とも、人件費や物価高の動向などを注視しつつ、自治体の財政運営に支障が生じないよう適切に対応するとともに、通知の趣旨の徹底や状況の把握に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、いわゆる百三万円の壁の引上げについての御質問がありました。

 いわゆる百三万円の壁について、個人住民税においては、地方税財源への影響等を総合的に勘案し、基礎控除額を据え置くこととしております。

 また、所得税の見直しによる地方交付税の減収影響に対しても、適切に地方財源を確保しております。

 自治体の首長さんからは税収減等を懸念する声が上がっていたと承知しておりますが、地方税財源への配慮について、地方からも一定の評価をいただいているものと考えております。

 また、与党税制改正大綱において、仮に今後、これを超える恒久的な見直しが行われる場合には、必要な安定財源を追加的に確保するための措置を講ずるものとすると整理されたものと承知しております。

 今後につきましては、三党の幹事長間で誠実に協議が進められることを確認されており、政党間で協議が進められるものと承知しているところですが、総務省としても誠実に対応してまいりたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣中野洋昌君登壇〕

国務大臣(中野洋昌君) 中川康洋議員から、緊急浚渫推進事業の好事例についてお尋ねがありました。

 本事業については、多くの自治体から高い評価をいただいております。

 例えば、三重県の二級河川安濃川では、平成二十七年八月の台風第十五号により約三十戸の浸水被害が発生をした後、本事業を活用して、令和二年度から五年度までに約三万立方メートルの堆積土砂の撤去を行いました。

 その結果、令和六年八月の台風第十号では、平成二十七年の台風第十五号と同程度の降雨量を記録した大雨になりましたが、家屋浸水の被害はなく、本事業が家屋浸水を防ぐ効果を発揮をしたと承知をしております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 阪口直人君。

    〔阪口直人君登壇〕

阪口直人君 れいわ新選組の阪口直人です。(拍手)

 再びこの場に立つために費やした十年間、地域をくまなく歩きましたが、地方の疲弊、衰退、そして人口減少は本当に深刻です。

 地方税と地方交付税等を合わせた令和七年度一般財源総額は、交付団体ベースで約六十三兆八千億円。今年度よりも約一兆五百三十五億円増となっています。ただ、これは、所得税などの税収が増えたことによる自然増です。

 いわゆる所得税の百三万円の壁の引上げに伴う地方の減収は補償されず、交付税特別会計は、令和六年度までの繰延べ分二兆二千億円を含む二兆八千億円を令和七年度に償還することになっています。本来であれば税収増を反映して地方に配分できる地方交付税を減額して借金返済に使っており、物価高騰に苦しむ地方自治体を更に苦しめることになっています。

 村上総務大臣、繰延べ分を含む二兆八千億円を償還する理由は何なのか。今、目の前で苦しんでいる人々、未来を担う子供たちを支えることより優先されるべきことなのでしょうか。

 財務大臣に提案します。二〇〇一年から三年間の時限措置だった臨時財政対策債が二十五年も続き、交付金を減らしてきたことで、地方の衰退は加速しました。積極財政の考えの下、国債発行で地方交付金を増やし、臨財債という制度自身を見直してはどうでしょうか。

 小泉改革で切り捨てられ、約三十八兆円と税収が大きく減ったことで、民主党政権時代には支えられなかった地方の財政。税収が当時のおよそ倍になった今こそ、地方の創意工夫が発揮できる土台をつくっていこうではありませんか。

 次に、地方税について伺います。

 令和七年度分の税制改正の影響により、住民税非課税世帯はどの程度増えると推計しているのでしょうか。非課税世帯が増加しても、暮らしを守る住民サービスを継続する財政措置を強く求めます。

 最後に、財政規律派の方々に向けて、国債発行に関する考えを述べます。

 まず、国家予算の中に債務償還費を入れている国は日本だけです。大臣、お答えください。これは、国債をこれ以上発行できないように見せるトリックではありませんか。

 国債発行は将来へのツケといいますが、本当の将来へのツケは、不況を放置して人的資源を眠らせ、経済を停滞させ、国民の可能性を奪うことなんです。一人一人の大切な、二度とはない人生なんです。経済的理由で結婚や子供を持つことを諦めた若者たちの無念を思うと、国民を苦しめている現実を見ようとしない、変えようとしない政治家は、この場にいるべきではありません。

 政治の責任で、失われた三十年の政策を抜本的に改め、国債を活用した積極財政、とりわけ消費税廃止で、地方の、そして国民の努力を後押ししましょう。

 消費税を廃止した場合、年収が二百万から三百万の世帯で年間十八万円所得が増えます。しかし、いわゆる百三万円の壁を百二十三万円に引き上げても、同じ収入の世帯の所得増は年間僅か五千円です。百七十八万円に引き上げても、年収二百万円世帯は八万七千円、三百万世帯で十一万三千円増です。消費税廃止は、地方を守り、少子化を打ち破る上で、はるかに大きな効果があります。

 財政が好調なのであれば、今こそ、積極財政で、地方が引っ張る経済に変える土台をつくろうではありませんか。

 経団連やアメリカなど強いものにこびる政治を変えて、政治がずっと切り捨ててきた、必死に生きる一人一人の未来を守る政治に今こそ変える。私たちの強い決意と、全ての皆さんの理解と協力を呼びかけ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 阪口議員から、二問御質問をいただきました。

 まず、交付税特別会計借入金の償還についての御質問がありました。

 交付税特別会計借入金については、地方財政が極めて厳しい時期において、予定した償還を繰り延べてきました。令和七年度地方財政計画においては、こうした経緯を踏まえ、令和六年度までの繰延べ分と合わせて二・八兆円を令和七年度に償還することといたしました。

 一方で、社会保障関係費や人件費の増加、物価高への対応を適切に反映し、一般財源総額については、交付団体ベースで、令和六年度を一・一兆円上回る六十三・八兆円を確保しております。

 地方からは、一般財源総額や交付税総額を確保しつつ地方財政の健全化も図られていることについて、一定の御評価をいただいているところでございます。

 次に、令和七年度の税制改正の影響についての御質問がありました。

 個人住民税非課税世帯の数については把握しておりませんが、給与所得控除の最低保障額の引上げにより、新たに所得割が非課税となる方は百二十万人程度と見込んでおります。

 また、個人住民税額等を参照している各種制度については、令和七年度与党税制改正大綱において、所管省庁において検討し、その結果を踏まえ、必要な対応を行うとされたものと承知しております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 阪口議員より、臨時財政対策債の在り方について、まずお尋ねがありました。

 地方の財源不足について、仮に、国が赤字国債を追加発行して地方交付税を増額させ、その全額を賄うこととすれば、地方が地域の行政サービスを提供する主体であるとしてその責任を負うべきであることとの関係、また、地方に比べ著しく悪化している国の財政を更に悪化させるおそれがあることなどから、適当ではないと考えております。

 令和七年度地方財政計画においては、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行額について平成十三年度の制度創設以来初めてゼロとするなど、地方財政の健全化が大きく進んだところであります。

 引き続き、国と地方が責任を分かち合い、協力して経済再生と財政健全化を進めることにより、赤字国債や臨時財政対策債に依存することなく、必要な財源を確保していくことが重要と考えております。

 次に、債務償還費についてお尋ねがありました。

 委員御指摘の債務償還費については、国債の償還財源を確実に確保しつつ、償還のための財政負担を平準化するといった観点から、六十年償還ルールの下で、法律の規定に基づいて計上しているものであります。

 その上で、債務償還費を計上しているのは日本だけではないかとの御指摘については、主要先進国においては、六十年償還ルールのような償還財源の確保に関して毎年度適用される特別の制度はないものの、財政規律維持に関する基準等を法律等において規定しており、また、債務残高対GDP比も日本よりははるかに低い水準にあるものと承知していることから、国際比較に当たっては、こうした財政規律の維持に関する枠組み全体や債務残高対GDP比の動向を見る必要があると考えております。

 最後に、国債を活用した積極財政の実施や消費税廃止についてお尋ねがありました。

 まず、経済財政運営に当たっては、様々な不測の事態に十分耐えられる財政基盤を平時より備えることが不可欠であると考えております。

 その上で、政府としては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するため、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金、所得の増加を実現し、全国津々浦々に波及させ定着させるよう、予算、税制措置等を講じているところであります。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中において、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられていることから、政府として、消費税の廃止を行うことは適当ではないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 辰巳孝太郎君。

    〔辰巳孝太郎君登壇〕

辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、地方財政計画、ほか二案について質問をいたします。(拍手)

 村上総務大臣は、今世紀末に人口が半減すれば、現在千七百以上ある自治体は三百から四百で済む、極端なことを言えば、県庁も全部要らないし、道州制も意味がないとの発言を行いました。

 村上大臣にお聞きします。

 平成の大合併と三位一体の改革が、周辺地域の衰退をもたらし、暮らし続けることが困難な地域を拡大させたのではありませんか。我が国の急激な人口減少は、自民党政治の下での失政がもたらしたという認識はないのでしょうか。物価高騰による暮らしと営業の危機、保育、介護などケア労働者の確保、災害や事故への対応などに直面する地方自治体が、その第一の役割である住民福祉の向上を図ることができるように、国としての責任を果たすことに全力を傾けるべきではありませんか。

 埼玉県八潮市の道路陥没事故についてお尋ねします。

 トラックドライバーの一刻も早い救出作業に全力を尽くすことを求めます。

 問題の管路は、前回の点検では直ちに工事は必要ないとされていたのに、なぜ崩落したのですか。国は事故の原因を把握しているのですか。今回の崩落は、下水処理施設に近接する巨大口径の管路で起きました。ところが、国は、こうした巨大な施設に着目した点検の仕組みを設けていませんでした。なぜですか。

 国は、腐食のおそれが大きい箇所について、五年に一度の法定点検を義務づけています。しかし、実態は、法定点検を地方任せにしていたのではありませんか。これでは、危険な管路について国は状態を把握できないではありませんか。

 この陥没事故は、下水道事業の大規模、広域化と下水道事業に係る職員の削減、独立採算制による住民負担を推進してきた国の政策の結果ではありませんか。今回の事故に対する費用負担を利用者に転嫁することは許されません。国の責任で財政措置すべきと考えますが、いかがですか。

 自治体の職員数は二百八十一万人、三十年前と比べ四十七万人も減少しました。下水道職員数は、九五年の約四万七千人から二三年には約二万七千人へと激減し、災害や事故の際に対応できる技術力は失われています。各地の災害、老朽化対応で自治体の人的リソースが不足しているという認識は総務大臣にありますか。

 この間の地方財政審議会の意見では、これまで社会保障費の自然増を投資的経費や人件費の抑制で調整してきたが、今後それは困難になると指摘されています。地方の一般財源額を実質的に前年度と同じ水準に抑制するというルールは見直すべきではありませんか。

 深刻化する介護崩壊について聞きます。

 訪問介護報酬引下げの影響で、昨年の訪問介護を主に行う事業所の倒産は過去最高となりました。ところが、石破総理は、二月十四日、我が党の堀川あきこ議員の質問に、事業所が閉鎖されても近隣市町村でやっているなどと平然と答弁しました。余りにも無責任ではありませんか。

 介護事業所の相次ぐ閉鎖で、移住もできずに、望む介護が受けられない人はどうするのでしょうか。どこに住んでも安心して暮らせるよう、訪問介護の基本報酬、ヘルパーなどの介護職員の賃金の抜本的引上げこそ、今必要ではありませんか。

 最後に、森友学園公文書改ざん事件についてお聞きします。

 公文書の開示をめぐる裁判で、政府は上告を断念しました。まず、政府は、公開が当然の公文書開示のため、訴訟までせざるを得なかった赤木雅子さんに謝罪すべきではありませんか。

 私は、かつて参議院で、理財局と近畿財務局とのやり取りについては最高裁まで争う覚悟で非公表との内部文書を明らかにしました。今こそ政府は、隠蔽してきた公文書を包み隠さず提出し、国民の前に真実を明らかにするべきです。

 以上求めて、質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕

国務大臣(村上誠一郎君) 辰巳議員から、五問の質問をいただきました。

 答える前に、まだ私の真意がよく伝わっていないので、言わせていただきます。

 私が申し上げたのは、今世紀末に国民の人口が五、六千になったときに、今のシステムで千七百の市町村が成り立つかどうか。御承知のように、もう二〇四〇年問題というのがありまして、多分、近々、役場を構成できない地域も出てくるんじゃないかという気がしております。そういう中で、どのようにしたらこの国の行政、地方自治ができていくかということを、やはり今から真剣に考える必要があるんじゃないかということを実は問題提起したわけであります。(発言する者あり)ありがとうございます。

 まず、平成の大合併、三位一体の改革が人口減少をもたらしたのではないかとの御質問がありました。

 平成の大合併は、人口減少などの進展を背景に、地方分権を推進する上で、基礎自治体の規模、能力の充実を図るために、自主的な市町村合併を積極的に推進したものであります。

 また、三位一体の改革は、国から地方への税源移譲の実現や国庫補助金改革などを通じて、地方の自立や地方分権の進展に資するために行ったものであります。

 一方で、人口減少対策については、総務省も含め、政府一丸となってこれまでも取り組んできたところでありますが、引き続き、待ったなしの課題であり、地方創生二・〇の推進により、地域経済の好循環と持続可能な地域社会の実現に向けた取組を進めてまいります。

 次に、自治体が住民の福祉の向上を図るための国の責任について御質問がありました。

 総務省といたしましても、どのような地域でも一定水準の行政サービスを提供できるよう財源を保障することは国の責務であると考えており、地方交付税の財源保障機能を適切に発揮することが重要であると考えております。

 このために、令和七年度の地方財政計画においては、地方交付税を含めた一般財源総額について、交付団体ベースで、前年度を一・一兆円上回る六十三・八兆円を確保いたしました。

 引き続き、安定的に行政サービスを提供できるように、適切に対応してまいります。

 次に、埼玉県八潮市の道路陥没事故に伴う費用負担に係る財政措置についての御質問がありました。

 今回の道路陥没事故については、事故原因に係る調査が進められているものと承知しており、今回の事故に伴う具体的な費用負担の在り方については、まずは埼玉県を中心に検討されるものと認識しております。

 その財政措置について、具体的な費用負担の在り方が未定であるため、お答えすることは困難でありますが、一般論で申し上げますと、総務省では、下水道管路の建設改良費等に対して所要の地方財政措置を講じています。

 次に、自治体の人的リソースについての御質問がありました。

 公共施設等の老朽化や災害からの復旧復興に対応するためにも、特に技術職員の確保は重要な課題と認識しております。このために、都道府県等が平時に市町村支援を担い、災害時に派遣する技術職員を確保するため、必要な人件費に対して地方交付税措置を講じております。

 自治体の定員においては、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理に努めていただくことが重要と考えております。

 最後に、一般財源総額実質同水準ルールについての御質問がありました。

 地方の一般財源総額については、閣議決定された基本方針二〇二四に基づき、実質的に同水準を確保することとされております。

 この基本方針に基づき、令和七年度地方財政計画においては、社会保障関係費や人件費の増加、物価高への対応を適切に反映した上で、一般財源総額を確保いたしました。

 今後も、基本方針に沿って、地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額を確保してまいりたいと考えております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣中野洋昌君登壇〕

国務大臣(中野洋昌君) 辰巳孝太郎議員から、埼玉県八潮市の道路陥没事故についてお尋ねがありました。

 まず、今回の道路陥没事故の原因につきましては、今後、施設管理者である埼玉県において調査がなされるものと承知をしております。

 点検の仕組みにつきましては、下水道法に基づく維持修繕基準において、下水道管理者が、全ての施設について、構造や流入する下水の量などを勘案して、適切な時期に、適切な方法により行うこととしております。

 また、腐食するおそれが大きい施設の点検につきましては、国土交通省において、下水道管理者から点検結果や結果に対する措置状況について毎年聞き取りを行い、取りまとめて公表するとともに、異状が認められた箇所については、速やかに対策を講じるよう求めているところでございます。

 国土交通省としては、今回のような事態が再び起きないよう、今後、大規模な下水道の点検手法の見直しを始め、施設管理の在り方などについて有識者委員会で議論し、その議論も踏まえ、必要な対応をしっかりと検討、実施してまいります。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 辰巳孝太郎議員の御質問にお答えいたします。

 訪問介護についてお尋ねがありました。

 訪問介護は、人手不足や燃料代等の高騰などにより、厳しい状況にあると認識しており、処遇改善加算の更なる取得促進や、先般の補正予算による、地域の特性や事業所の規模等に応じたきめ細かい対策を着実に進め、地域で必要なサービスが確保されるように努めてまいります。

 なお、介護サービス事業所を閉鎖する場合には、他の事業所等を紹介するなど、利用者にとって必要なサービス提供が継続されるよう適切な配慮を行うこととされており、総理の答弁も、そのような配慮の下、近隣市町村の事業所などから広域的な介護サービスが提供されることを答弁したものと承知しております。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 辰巳議員より、森友学園事案についてお尋ねがありました。

 情報公開法は、不開示情報が記録されている場合を除き、開示しなければならない旨を規定しており、各文書の内容について、不開示情報が含まれるかを一つ一つ判断する必要があります。

 今後の開示、不開示の判断に当たっては、総理の指示を踏まえ、法令の規定にのっとりつつ、国民に対する説明責任の観点から適切に対応してまいります。

 最後になりますが、改めて、高い志と倫理観を持ち、真面目に職務に精励された赤木俊夫さんに哀悼の誠をささげます。(拍手)

副議長(玄葉光一郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   村上誠一郎君

       財務大臣   加藤 勝信君

       厚生労働大臣 福岡 資麿君

       国土交通大臣 中野 洋昌君

       国務大臣   武藤 容治君

 出席副大臣

       総務副大臣  冨樫 博之君


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