衆議院

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第5号 令和7年3月26日(水曜日)

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令和七年三月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      上田 英俊君    上川 陽子君

      神田 潤一君    鈴木 貴子君

      棚橋 泰文君    寺田  稔君

      平沢 勝栄君    森  英介君

      山本 大地君    若山 慎司君

      有田 芳生君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    寺田  学君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    萩原  佳君

      藤田 文武君    小竹  凱君

      大森江里子君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   参考人

   (犯罪被害者支援弁護士フォーラム代表代行兼事務局長)           高橋 正人君

   参考人

   (大川原化工機株式会社元取締役)         島田 順司君

   参考人

   (日本大学大学院法務研究科教授)         藤井 敏明君

   参考人

   (社会福祉法人全国社会福祉協議会会長)      村木 厚子君

   参考人

   (追手門学院大学心理学部教授)          櫻井  鼓君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     山本 大地君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 大地君     河野 太郎君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 選択的夫婦別姓制度を直ちに導入することを求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第五三五号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第六六七号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(井出庸生君紹介)(第六六五号)

 元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(井出庸生君紹介)(第六六六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件(刑事手続に関する諸問題)


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に刑事手続に関する諸問題について調査を進めます。

 本日は、各件調査のため、参考人として、犯罪被害者支援弁護士フォーラム代表代行兼事務局長高橋正人さん、大川原化工機株式会社元取締役島田順司さん、日本大学大学院法務研究科教授藤井敏明さん、社会福祉法人全国社会福祉協議会会長村木厚子さん、追手門学院大学心理学部教授櫻井鼓さん、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、高橋参考人、島田参考人、藤井参考人、村木参考人、櫻井参考人の順に、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 ただいま御紹介にあずかりました弁護士の高橋正人と申します。

 私は、平成三十年に一度解散いたしました、あすの会のときに副代表幹事をやっておりまして、被害者参加制度の創設に深く携わらせていただきました。弁護士になって二十六年になりますけれども、ほぼ途切れなく被害者支援の仕事ばかりしてまいりました。今回は、犯罪被害者の立場からは、再審法について意見を述べさせていただきたいと思っております。

 幾つか論点がありますけれども、まず一番最初に申し上げたいのは、要件の緩和についてでございます。

 日本弁護士連合会は、確かに、現行法では、無罪などを言い渡すべき明らかな証拠がある場合、そういう場合のみしか再審の開始ができない、そこに対して、事実誤認があると疑うに足りる証拠があれば再審の開始ができるという改正法を案として提示しております。

 そもそも、罪を犯したことについて合理的な疑いを超える余地がない、その程度の立証があったからこそ、地裁、高裁、最高裁で有罪、無罪が決まったわけであります。地裁、高裁、最高裁に上訴するに当たっての要件というのは、まさに、罪を犯したことについて合理的な疑いがあるかどうか、これを審議するわけであります。これはまさに、今回、日弁連が改正案と言っている、事実誤認があると疑うに足りる証拠と同じことであります。

 そうしますと、同じ要件で再審の開始をするということは、結局のところは、四審制、五審制、六審制、七審制、八審制、九審制、永遠に審理が続くということであります。

 ということは、犯罪被害者の立場からしますと、いつまでたっても事件に区切りがつけられない、自分の人生に、事件に区切りをつけて、新たな一歩を踏み出したいと思っているのに、それが永遠に続くということであります。ひょっとしたら、自分が天寿を全うしてしまうそのときまでも、まだ確定しないかもしれない。これでは被害者に対して一生苦しみを与えることになりますから、この要件の緩和については、私は非常に反対でございます。

 犯罪被害者からすれば、いつ犯人が、被告人が収監されるか、あるいはいつ死刑が執行されるかについて、毎日祈るような気持ちで待っているわけであります。にもかかわらず、やっと有罪判決が最高裁で確定したのに、また最初からやり直しか、それも、しかも、無罪を言い渡すべき明らかな証拠がなくて、ただ単に今までと同じような上訴の要件だけで裁判をやり直すということになれば、生涯苦しみ続けることになるわけであります。ですから、このようなことについては、私どもは反対であります。

 そして、意外と法律家でも忘れている条文があります。それは憲法第七十六条第一項であります。何て書いてあるか。「司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と書いてあります。つまり、憲法上は最高裁判所と一つの下級裁判所があれば合憲なんです。つまり、憲法上は二審制でよろしいんです。

 にもかかわらず、今、法律で三審制になっています。それはなぜかといったら、慎重に審理をする、そのために、わざわざ、憲法で二審制と書いてあるものを三審制にしているわけであります。にもかかわらず、ここに更に四審制、五審制、六審制、七審制、八審制、永遠審を設けたら、私は、これは憲法違反の疑いが出てくると思います。

 そもそも、事件というのはどこかで社会的な決着をつけなきゃいけません。その決着がつかないで一生苦しみ続けるということは、言ってみれば、犯罪被害者等基本法第三条、犯罪被害者等は、その尊厳が重んじられ、尊厳にふさわしい処遇の保障を受ける権利があるという、その犯罪被害者等基本法にも反すると思います。

 したがいまして、被害者が一生苦しみを続けるようなこういう要件の緩和については、ちょっと言葉はきついかもしれませんけれども、主張自体、私は失当ではないかと思っております。

 次に、二番目、検察官の不服申立て権についてであります。

 不服申立て権、これを禁止するという案が出ておりますが、再審を開始するかどうかの第一審、あれは実は、法律をよく読みますと、合議である必要はないんですね。一人の裁判官で決定することも法律上は許されております。そうしますと、不服申立て権がないということは、たった一人の裁判官の判断だけで再審かどうかが決まってしまうということであります。これは、裁判官が非常に優秀で人格的にも優れているということが大前提になっていると思うんですが、実際は本当にそうなんでしょうか。

 私はいろいろな事件に携わってきました。物理の法則とか、あるいは数学的な能力、そういった基本的なことすらも理解していない、そういう裁判官も見てまいりました。特に性犯罪におきましては、ちょっと被害者の立場から見ると認知にゆがみがあるんじゃないかと思われるような裁判官すらたくさんおりました。そうしたときに、たった一人の裁判官が再審の開始を決定する、それで、これに対して不服申立てができない、本当にこれでよろしいんでしょうか。私は大変な疑問を持っております。

 そもそも、裁判官が優秀であり人格的にも優れている、そういう前提が私は誤っているのではないかと思います。裁判官に対する審査というのは、下級裁判官に対してはたった十年に一回だけ審議をするだけです。最高裁になりますと、もうほとんど機能していない国民審査制度しかありません。下級裁判官に対して再任拒否するのは三つしかないんです、理由は。一つは、眠っていた。二つ目、記録を読んでいない。三つ目、暴言を吐いた。当たり前です、こんなことは。内容については一切問わずに再任されます。

 もちろん裁判官の独立はありますから、係属中の裁判に対して介入すべきではありません。昔は、平賀書簡事件というのがあって、係属中の裁判官に対して、違憲判決を出そうとしたから、一審の所長が一先輩のアドバイスということで手紙を書いて、国会で大問題になりました。しかし、裁判が確定したらどうでしょうか。そうしたら、本当にその裁判の内容がよかったのか、正しかったのかどうか、裁判所の中で検証すべきではないでしょうか。

 裁判官に独立がある、独立があるのであれば、自浄能力がなきゃ駄目です。もちろん、こんな偉そうなことを言っていますが、正直言いまして、私どもが入っている弁護士会が一番自浄能力がありません。それは認めます。しかし、裁判所は判断権者なんですから、独立が認められている以上は自浄能力がなきゃ駄目です。それがないというところが非常に大きな問題だと思っております。それにもかかわらず不服申立て権を認めないというのは、いかがなものでしょうか。

 次に、日弁連の資料によりますと、不服申立てをした十七件のうち十二件で再審開始決定が確定したということであります。これは、逆に言いますと、五件は不服申立てが認められたということであります。不服申立て権がもしなければ、この五件は逆冤罪になります。

 被害者とすれば、Aさんが犯人だと思って執行されるのをずっと待っていた、ところが、ある日突然、この人は罪は犯しているかもしれないけれども、犯していないんだよと言われる。被害者は、亡くなった子供とか配偶者の墓前に何と報告するんでしょうか。こんなことが認められるのは、私は不正義だと思います。

 こういった日弁連の再審法の改正法というのは、被害者を本当に苦しめ続けることになります。ですから、再審法の改正に当たりましては、被害者の立場にもどうか配慮していただきたい、これが一番の願いであります。

 続いて、証拠の開示であります。

 証拠の開示については、私は賛成であります。早く証拠は開示してください。

 しかし、理由が全く違います。私どもが言っている証拠の開示を早くしてくれというのは、例えば、三十年たってから証拠を開示して冤罪だと分かった、じゃ、被害者はどうするんだ。もう時効になっているじゃないですか、真犯人は。もちろん殺人事件は、時効は廃止されました。しかし、三十年もたっていれば、もう証拠は存在しません。散逸しています。証人は死んでいます。事実上、捕まりません。被害者はどうすればいいんでしょう。今までこの人が犯人だとずっと思っていたのに、いや、もうあの人は無罪なんですよ、ひょっとしたら、真犯人はあなたの隣に座っているかもしれませんよ、あるいは、スーパーでにこにこして笑いながらあなたを通り過ぎているかもしれませんよ、こういう事態になってしまう。これは耐え難い。

 だから、一日も早く、本当に冤罪であるならば、記録を全部開示していただいて、早く冤罪かどうかを決めていただいて、真犯人を捕まえるための時間的な余裕をいただきたい。そういう意味で、記録は開示していただきたいということであります。

 ただし、条件付であります。性犯罪の被害者というのは、事実を隠して生活をしております。結婚する際にも言わないことが多いです。いつ再審で蒸し返されるかもしれないと思いますと、安心して生活することがとてもできません。

 刑法改正によって撮影罪、いわゆる盗撮罪ができました。この規定によると、検察官は性的画像を消去、破棄できるようになりました。再審になってそれらの客観的な証拠がない、無罪になるんでしょうか。いや、そうではない。だったら、性的画像を保存しておけばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そのような画像が世の中に存在しているということ自体が性犯罪の被害者にとっては耐え難い苦痛なんです。もし性的な画像を消去、破棄できないようにするのであれば、先ほどの刑法改正の趣旨に今度は反することになります。

 しかも、性犯罪は、不合理な否認をする人が非常に多いです。被害者は、加害者が有罪になっても、逆恨みして更に仕返ししてくるんじゃないかといつも恐れております。そういう加害者に限って、再審開始の乱発をいたします。被害者は一生おびえ続けなければいけません。

 したがいまして、性的画像については物理的に破棄し、再審開始決定に当たっての開示の対象からは物理的に除去していただきたい。これが条件付の証拠開示についての賛成であります。

 続きまして、裁判官の忌避と除斥ですけれども、これは当然であります。当たり前のことです。利益相反です。しかし、これを検察官の責任にしてはいけません。そもそも、この手だてをしてこなかったのは裁判所です。裁判所の私は手抜きだと思っております。

 五番目、再審請求手続の義務的死刑執行停止なんですが、これを認めたら、死刑執行を免れるために、再審請求が、再審開始のための請求が乱発されます。永遠に死刑が執行できないことになります。被害者は永遠に回復できません。こういった義務的な死刑の執行停止というのは、結局のところは、死刑制度を事実上廃止したいという死刑制度廃止派の隠れみのではないかと被害者からは見えます。

 そのようなわけで、要件緩和については、これは大反対、不服申立て権の禁止も大反対であります。そして、証拠の開示については条件付で賛成、除斥と忌避は当然、義務的死刑執行停止は死刑制度廃止と同じことですから、反対であります。

 以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、島田参考人にお願いいたします。

島田参考人 皆様、こんにちは。私は、島田順司と申します。

 五年前の二〇二〇年三月十一日に、私は突然逮捕されました。当時、私は、横浜にある化学機械メーカー、大川原化工機株式会社の海外担当の取締役でした。容疑は、大川原化工機が輸出した、牛乳を粉ミルクなどにする噴霧乾燥機、スプレードライヤーが生物兵器に転用可能な機械とみなされ、中国に不正に輸出したというものでした。警視庁公安部は、社長と、設計、開発を担った顧問の相島さんも同時に同じ容疑で逮捕いたしました。

 私たち三人は、逮捕の一年ほど前から、延べ九十八回にわたり警察の任意調査に応じてまいりました。また、その間、社員への聴取は延べ二百九十回にも及びました。そして、聞かれたことは全て正直に答え、輸出した噴霧乾燥機は生物兵器への転用は不可能であり、輸出規制には該当しないということを何度も説明しました。

 しかし、警察は、私たちを突然逮捕し、勾留、閉じ込め、家族、社員、社会からも分断いたしました。任意聴取の段階で、警察は私が話した内容を調書に記載せず、話してもいない言葉を記載しました。私は、警察を信用できなくなり、逮捕後の取調べに対しては全て黙秘することに決めました。黙秘する私に対し、警察は、弁護士に言われたから黙秘しているんだろう、弁護士の言うことを聞いて失敗した人を多く知っていると不安をあおりました。

 黙秘を行使しても、取調べは、三月の三十一日に起訴されるまで二十一日間、ほぼ毎日密室で続きました。そして、その間、録音、録画もなく、弁護士の立会いも許されなかったことはもちろん、メモを取ることさえ許されませんでした。警察は、話したいことはないのか、黙秘しているということは反省していないということかなどと何度も問いかけてきました。

 黙秘権の根拠は、憲法の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という条文だと弁護士さんから聞きました。しかし、警察は、黙秘権を行使したにもかかわらず、私に対して、自白、つまり不利益な供述を連日取調べで求めてきました。私は、弁護士さんもいなく、たった一人で連日の取調べをされ、自白を迫られている間、黙秘を続けることがこんなに苦しいのかと初めて分かりました。黙秘権の意味は何だったんでしょう。

 私たちが勾留されたのは、警察の留置所でした。そこでは番号で呼ばれ、まるで罪を犯した者であるかのように扱われました。移動する際には手錠と腰縄でつながれ、目を合わせるな、下を向けと大声でどなられ、奴隷のような屈辱的な扱いをされました。私たちの処罰は、逮捕の瞬間から始まっていました。その処罰は有罪判決を受けてから始まるべきだと思います。無罪の推定はどこに行ったんでしょうか。

 もちろん、メールも電話もできません。しかし、私たちは裁判所から接見禁止決定も出されておりましたので、会えるのは弁護士さんだけでした。私は、家族がどのような状態にあるのか心配でなりませんでした。

 このような毎日で、体力、精神力を削られ、早く出るためには罪を認めてしまうのが得策だと悩む日もありました。

 現在の法律では、起訴がされるまで保釈は請求できません。そこで、逮捕後二十一日で起訴されるとすぐに、弁護士さんに保釈請求を出していただきました。しかし、裁判所はこれを却下。理由は、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるというものでした。

 証拠隠滅のおそれといっても、警察は、大川原化工機を強制捜査してあらゆる資料を押収した上に、一年半にもわたる任意調査の調べでたくさんの調書を作っておりました。今更隠滅する証拠など何もないのです。裁判所は、社員と会わないという保釈条件もつけることができますし、保釈条件を破れば保釈を取消しできます。条件をつけた上でも、すぐに保釈してほしかったです。

 結局、保釈請求は五回も却下されました。毎回、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると言われました。そして、二〇二一年二月四日、六回目の保釈請求がとうとう認められるまでに、実に三百三十二日間も拘束されました。実行が不可能な証拠の隠滅のおそれを理由に、無罪を推定されているはずの被疑者に、これほど長く拘束し、人の自由を奪うということは、大きな人権の問題だと私は思います。

 逮捕から、六か月後、事件は急展開を見せました。二〇二一年七月三十日、初公判の四日前、突然、検察は公訴を取り消しました。つまり、犯罪ではなく、我々は無実だということです。結局、刑事公判は始まることなく終了いたしました。

 しかし、私たちと一緒に逮捕された同僚の相島さんは最後まで保釈が認められず、間違った起訴、勾留により劣悪な環境に拘束され続け、適切な病気治療もなされず、無実を知らされないまま、二〇二一年二月の七日、他界しました。

 また、私たちが起こした国家賠償請求訴訟に対し、東京地方裁判所は、昨年十二月二十七日、警察の逮捕や取調べ、そして検察の起訴が違法だと認め、国と東京都に一億六千万の賠償を命じました。裁判では、現役の警視庁公安部の捜査員が、捜査は捏造だと証言しました。

 このような冤罪事件を再発させないために、是非、国会議員の皆様には、早急に、このような不正義と悲劇を許してしまうような法制度を改正していただきたいと思います。

 まず、取調べのやり方ですが、私は、一年半の任意の取調べの間に三十九回の取調べを受けました。その間、私が何回も何回も供述した事実を警察は調書に記載しませんでした。私は事実を残す必要があると考え、録音しました。この結果、国家賠償請求訴訟で、私が明確に不正を否定しているということが立証できました。録音、録画は取調べの事実を明らかにする唯一の方法であり、捜査側にとっても何ら支障がないはずです。

 国会議員の皆様には、全ての被疑者、参考人に対するあらゆる検察、警察の聴取や取調べを録音、録画する法改正をお願いいたします。そして、早急に、メモさえ取れないということが起きないような制度改正をお願いいたします。また、少なくとも、全て聴取の録音、録画が実現されるまでの間、ICレコーダー等での録音を妨げない制度改正をお願いいたします。

 最後に、疑いがあるというだけで長期の身柄拘束を正当化し、接見禁止決定を出して家族とさえ接触を禁止し、精神的に追い詰め、自白を求める今の人質司法という制度を一日も早く是正していただきたいと思います。そのためにも、家族との接見を禁止する制度はすぐに廃止していただきたいと思います。

 そして、亡くなった相島さんを含め、私たちを勾留し続ける理由となった法律の文言、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」は削除していただき、無罪の推定が及んでいる人間を拘束しないという近代国家の原則に沿った内容に改正していただきたいと思います。

 そして、二度とこのような冤罪事件が起こらないよう、お願いいたします。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 藤井と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、令和三年六月に裁判官を定年退官いたしまして、翌年の四月から日本大学法科大学院で刑法と刑事訴訟法の講座を担当して三年になります。裁判官時代には司法研修所の教官というのも経験しておりまして、そのときの最も優秀な教え子の一人が篠田委員でございます。

 それでは、本題に入ります。

 本日は、元裁判官という立場から、冤罪が起こる原因、理由として考えられるものと、それを減らすための改善策について所見を申し上げます。

 冤罪という言葉には、罪がないのに罰せられることに限定する使い方もありまして、この場合には誤判という言葉と同じ意味になると思うんですが、本日は、罪がないのに疑われることも含めた広い意味で使わせていただきます。

 犯罪が起きたときに、適正な捜査、裁判を行って、有罪となった被告人には犯罪に応じた刑罰を科すということは、国家の責務だと思います。犯罪が放置されれば、国民の正義感は害されますし、社会的な不安も起こり、犯罪被害者は置き去りにされます。

 他方で、本当は犯罪と無関係な人を誤って捜査対象として有罪とすることは著しい人権侵害であり、あってはならないと思います。これでは、犯罪に関する国家の責務も果たされたわけではなく、犯罪被害者に対する救済にもなりません。

 冤罪が起こるそもそもの原因は、犯罪がないのに、あるいは犯罪に無関係なのに、捜査機関が間違って、人を被疑者として捜査を始めることだと思います。

 報道によりますと、島田さんの大川原化工機事件、あるいは次にお話しされる村木さんの郵便不正事件などにおいては、捜査機関が、よく言えばその責務を果たそうとして、悪く言えばその存在価値を示すために、もっと卑近な言葉を使えば手柄を立てようとして、誤った見込みに基づく捜査が行われたというふうに言われております。

 このような動機が捜査機関にない場合であっても、マスコミの報道などによって世間の注目を集める事件になりますと、捜査機関に向けた犯人を検挙せよという社会的プレッシャーは大変強くなりまして、そのために無理のある捜査が行われるという危険性もあると思います。

 冤罪が明らかになれば国民の捜査機関に対する信頼が損なわれますので、捜査機関におかれては、間違いの原因を検証し、対策をお考えになると思います。しかし、今述べたような捜査を開始する動機はなくなるわけではありませんし、人間はどうしても時に間違いを犯すことを免れないものでありますから、誤った見込みに基づく捜査あるいは無理のある捜査、その結果としての間違った起訴が行われる可能性はなくならないというふうに考えております。

 そこで、冤罪による被害をできるだけ少なくするためには、捜査対象となった人に自分で防御する手段を与えることだと思います。平成十八年から始まった被疑者国選弁護人の制度は大きな改善であって、現在、誤判であったと言われる事件のうちの多くは、そのような制度がなかった時代に起きたものであります。

 被疑者の段階で弁護人がついていても、防御の手段が不十分であれば効果は限定されます。捜査機関が収集した証拠に対するアクセスをある程度認めることや、弁護人が取調べに立ち会うことを検討する必要があると思います。これらが認められている国は少なくありませんが、我が国では認められておりません。

 捜査機関の誤った見込みに沿った虚偽の自白あるいは虚偽の供述が生まれますと、誤判につながる危険は大きくなります。

 平成二十八年の刑事訴訟法の改正で、取調べの録音、録画の制度が導入され、不適切な取調べによって供述を強要するような行為はそれだけ抑制されたと思います。しかし、録音、録画の下でも不適切な取調べが行われる場合のあることは、最近の幾つかの事件で明らかになっております。

 しかも、この制度は、対象事件に限定がある上、逮捕又は勾留された被疑者の取調べのみに適用されます。検察庁では、それ以外の事件でも録音、録画を実施する運用をされていまして、今後、身柄を拘束しない在宅事件の一部でも録音、録画を開始すると伺っておりますが、警察庁は消極的な姿勢です。

 制度として、録音、録画の対象を広げる必要があると思います。また、最高検察庁は、不適切な取調べを減らすように指導されていますけれども、最も効果があると考えられるのは、弁護人の立会いを認めることではないかと考えます。

 冤罪による被害を少なくするためには、被告人の保釈を積極的に認めることも必要と考えております。

 現在の裁判所の実務では、起訴された事実を認める被告人と比べ、否認している被告人に保釈が認められる割合は低く、保釈される場合でも、その時期は遅くなっています。このことが虚偽の自白や虚偽の供述を生む原因になっています。

 被告人には保釈を受ける権利がありますが、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは例外とされています。私は、大川原化工機事件についてある記者の方から取材を受けたことをきっかけに、この例外の解釈を改めて、保釈をもっと広く認める運用をすべきものと考えるようになりまして、そのことを提言した小論を、最近、大学の論文集に寄稿いたしました。

 詳しい内容を御説明する時間はありませんが、結論だけ言いますと、被告人は有罪判決を受けるまでは無罪と推定されるはずなのに、島田さんや村木さんのように無実の人が起訴された場合も含めて、事実に争いがあると、主張と証拠の整理が相当程度進むまでの間、罪証隠滅のおそれがあるという理由で数か月以上も勾留されるという実務の現状は、正当な理由がなければ身体を拘束されないということを保障する憲法三十四条の趣旨に反する疑いがあると考えております。

 誤判が生じて、刑が執行されてしまうことは最も深刻な冤罪です。ただ、我が国の検察官は、有罪判決が得られる高度の見込みがある場合に限って起訴する方針とされていますので、誤判が判明した事件でも有罪方向の証拠は相応に存在いたします。

 したがって、誤判を避けるためには、開示された証拠を十分に活用した有効な弁護活動が行われる必要があると考えます。捜査機関の収集した証拠の中には、被告人に有利な方向の証拠が存在することも少なくありません。

 有効な弁護活動には、優れた法廷技術が必要です。取り調べた証拠が同じでも、弁護人が主張をどのように組み立てるかによって裁判官の証拠評価は大きく変わる可能性があります。さらに、弁護人による反対尋問の技術によって、証人の証言内容、その信用性は大きく左右される可能性があります。

 過去に深刻な冤罪事件が発覚した際、裁判所では、事実認定にどのような問題があったのかを研究して、これを教訓として、判断の手法を改善してきました。しかし、捏造された証拠が提出されたり、被告人に有利な証拠が隠されたりすれば、正しい判断を行うことは困難です。現在、再審手続に関する法改正が検討されておりますが、再審手続にも証拠開示の制度が必要だと考えます。

 裁判官は、中立で公平な証拠の見方をしなければならず、そのように心がけていると思います。しかし、事実を否認する被告人に対しても有罪判決をする経験を重ねることによりまして、被告人に対する職業的なバイアスが裁判官に形成される危険性は否定できないと思います。

 国民の中から事件ごとに選ばれる裁判員には、このような意味のバイアスはございません。具体的な事件において、裁判官が裁判員と協働して真摯に意見交換をすることによって、その事件における職業的なバイアスの影響は相当程度まで回避できるのではないかと考えております。また、そのような経験を積み重ねることを通じまして、私は、裁判官が自らの職業的なバイアスを自覚することができる可能性があると考え、また、そのように期待もしております。

 本日は、どうもありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、村木参考人にお願いいたします。

村木参考人 今日は、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、十五年ほど前に、いわゆる郵便不正事件で逮捕されて勾留をされ、百六十四日拘置所で過ごし、一年三か月かけて無罪判決をいただきました。

 逮捕された最初の取調べで私が検事から言われたのは、取調べの期間は二十日、二十日の取調べの結果、あなたを起訴するかどうか決めますが、あなたの場合は起訴されることになるでしょう、私の仕事は罪を否認しているあなたの供述を変えさせることですと言われました。そういう形で始まった取調べでした。

 この事件を通じて、私自身は、密室の中でいかに不適正な取調べが行われているか、そこで作られる調書というのはいかに真実からかけ離れたものになるのか、それから、普通の市民がそういった取調べの場に置かれたときに本当に簡単に虚偽の自白や供述に追い込まれるのか、否認をすれば身体拘束が長期化をする、そのこと自体が虚偽の自白を迫る道具として使える、裁判官もそのことに無自覚だ、そして身体拘束がどれだけ被疑者、被告人の心身を痛めつけるかということを実感しました。

 幸い、私の事件はそういった取調べの実情等々も明らかになり、その事件の反省を基に二〇一六年に改正刑訴法が成立して取調べの録音、録画が義務化をされました。残念ながら、録音、録画の対象事件はごく一部、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限られましたし、また、身体拘束中の取調べのみが対象となっております。

 それでも、私は、この法改正には非常に大きな効果があるのではないかと大変期待をしていたんですが、その後も、プレサンス事件ですとか、先ほどお話があった大川原化工機の事件ですとか、参議院の大規模買収事件や五輪談合事件などで不適正な取調べの実態というのが次々に明らかになって、大変憂慮をしています。

 実際、検察にストーリーがあって、それに沿った供述を取調べで強制をする、とりわけ立場や性格の弱い人をまず責めて、そこで事実と異なる調書を作って全体の突破口にする、逮捕や勾留の長期化を示唆して脅す、罪が軽くなることを示唆して今度は供述を誘導する、人格否定、大声でどなる、机をたたく、そういったことをして精神的に追い詰めていく、心身の不調を訴える人をいつまでも保釈せず、本当に命を落とす人まで出たといったことが繰り返されています。本当に何も変わらないのかというふうに思わざるを得ません。

 特に、いわゆる人質司法ですが、自白の強要はもちろんですけれども、早く出たいがためにほかの人を陥れる供述を強要する道具にもなっているということは、私の事件のときもそうでしたけれども、プレサンスや五輪談合でも同じことが行われていて、本当に早くこの状況を何とかしてほしい、これは裁判官の方にも申し上げたいと思います。

 私がこういう経験をしたということもあって、事件の関係者、いろいろな事件の関係者にお目にかかることがよくあるんですが、皆さんが全く同じことを私に言われる。自分が事件に巻き込まれてみて初めて、この国の刑事司法というのはこんなことになっていたのか、それまで全然知らなかったということです。これは私が当時感じたことと全く同じです。こういうことが続いていくと、本当にこの国の刑事司法に対する信頼が失われていくのではないかというふうに思っています。

 こういったことを踏まえて是非私がお願いをしたいのは、まずは、全ての取調べの録音、録画、全ての事件、そして在宅や参考人の取調べも録音、録画をしてほしいということです。これがないと、何があったかというのを確認をすることができないわけですから、証明をするすべがないわけですから、まず、録音、録画の義務化の範囲を拡大をしてほしいというふうに思います。

 それから、録音、録画があってもひどい取調べが行われているということがだんだん明らかになってきています。これはなぜかといえば、表に出なければいい、ばれなければいいということがあるわけです。今の仕組みですと、例えば、調書を採用するかどうかというようなことが、調書の請求がなければ、ひどい取調べだったと訴えて、それを明らかにしていくすべがないわけですから、ひどい取調べを受けた、そういうことがあったといったときに、取調べの状況がきちんと検証してもらえる、見てもらえる、表に出してもらえるという仕組みを是非入れてほしいと思います。

 また、皆様からもお話が出ていますが、人質司法をなくすための仕組みの強化を是非お願いをいたします。

 刑訴法が改正をされたときに、録音、録画の仕組みは不十分なものではないかという議論は当時からありました。そのために、改正法を作ったときに附則の九条で三年後の見直しを決めております。このときに、附則では、取調べの録音、録画については、「被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取調べの適正な実施に資することを踏まえ、」、制度の在り方について検討を加えるというふうに言われております。

 これを受けて、実は、二二年に法務大臣が、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を設置をしてくださいました。この協議会の設置から三年近くがたとうとしているのですが、残念ながらやっと一巡目の議論が終わったというところで、私も役人ですから余りこういう言い方はしたくはないんですが、本当に熱心にやっていただいているとは言い難いゆっくりとしたペースで進んでおりまして、しかも、一般有識者、市民の参加がなく、かつ、マスコミの傍聴もできないというような状況で、申し訳ないですけれども、法務省の消極的な姿勢を非常に憂慮をしているところでございます。

 これだけ問題事案が次々と発生をしております。これ以上この問題が放置をされないように、是非立法府においてリーダーシップを取っていただきまして、法改正、運用の改善を早期に実現をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 次に、櫻井参考人にお願いいたします。

櫻井参考人 皆様、こんにちは。追手門学院大学心理学部の櫻井鼓と申します。

 私は、公認心理師、臨床心理士で、専門は犯罪心理学になります。本日は、このような場をいただきましてありがとうございます。

 私は、二十一年間、警察の心理職を務めまして、性加害も含む非行少年への援助、そして犯罪被害者等への支援に携わってまいりました。現在では、大学で引き続き犯罪被害者等の支援ですとか研究、そして捜査機関依頼の心理鑑定を行っております。ですので、犯罪被害に携わり始めまして二十七年になります。今日は、自験例ですとか研究を基に、性被害を受けた子供の刑事手続に関する課題につきまして意見を申し上げたいと思っております。

 初めに、子供の性被害の現状について御説明いたします。

 一つが、性的グルーミングによる手口が散見されるという点です。

 グルーミングと申しますのは、法律上は面会要求等罪になりましたけれども、心理学ではもう少し広く、わいせつ目的を持って若年者を手懐ける行為のことを指しております。

 特に、SNSやゲームを介したオンライングルーミングの問題というのは非常に大きいと思っております。同じ学校の生徒同士の自画撮り画像要求、それから、知的に課題を抱える子供が同級生からだんだん相手にされなくなって、SNSに関係を求めて被害に遭うということもあります。最近では、推し活、ゲームなど共通の趣味をきっかけとするものも散見されています。身近なアイドルであったり身近に注目されている人が発信しているSNS、それから、悩みを抱えている子供ですとか大人が集まると言われるオンラインゲームを介して知り合って、その後、コンセプトカフェですとかネットカフェで性被害に遭うというようなパターンです。

 また、現状の二つ目としまして、最近では、報道が活発になったという影響もあり、潜在化しやすかった男子の性被害、それから監護者性交等の被害の訴えが以前よりは上がってきているというのが体感でもございます。

 さて、被害におきましては、子供の脆弱性要因が働いています。加害者との立場の差、知的、発達障害などの障害がございます。しかし、それだけではありません。例えば、グルーミングを考えましても、子供がなぜ被害認識に至らないのか、なぜ会いに行くのかという点も疑問として残るわけです。もちろん、加害者の巧みな手口ということはございますが、資料の二に示します私の研究からも、子供の孤独感ですとか過去の傷つきが影響しているということが分かってきています。子供の性被害においては、こういった子供の特性や背景を踏まえた対応が必要になると言えます。

 さて、課題を三点申し上げたいと思います。

 一つ目が、聴取者の育成の課題です。

 専門的な話をしますと、心理学には共同注意という概念があるんですね。お母さんと子供とが一緒に指して、あれはなあにというふうに言うようなやり取りに表れるものです。人と人とが同じ対象に注意を向けている状態のことです。聴取におきましても、こうした互いの認識が必要になります。

 子供に話してもらうということは、擬似的にでも信頼していたグルーミング加害者、そして、虐待親との関係を心の中で断ち切って、あのねというふうに打ち明けてもらうものなんです。ですから、そのためには、聴取者が、子供の障害、トラウマ反応、そして臨床心理に関する知識を得て、関係づくりに努める必要があります。

 この点は当然のことでもあるんですけれども、現状ではまだ足りないというふうに言わざるを得ません。解像度を上げますと、更なる課題が見えてまいります。

 例えば、障害の有無について、常に捜査側が分かっているとは限りません。通常学級に所属している、日常会話に支障がない、こういったことがイコール知的障害がないということではありませんので、聴取者がある程度、障害について理解しているということが必要になります。

 それから、トラウマ反応につきましては、一般的な反応について知ることもそうですが、障害があると更に理解が難しくなります。

 被害時に、発達特性に由来する言動を取って、被害か否か疑念が抱かれるというケースがあります。身体障害者の場合も同様です。聴取者の分からなさから、被害に遭っていないように感じられて、二次的被害につながるということがあります。

 私は、ある裁判で、もちろん他の事情もあるでしょうけれども、残念ながら無罪という経験もいたしました。この理解の難しさについては、障害者の被害の実態についての実証研究が足りないということも影響していると思います。今後、国として研究が進み、実態をより明らかにする必要もあると感じています。

 それから、臨床心理の点です。

 私は、司法面接の専門家ではなく、あくまでも司法面接動画を鑑定してきた立場として申し上げますと、面接では子供との関係性が大切と感じられます。聴取というのは心と心のやり取りですので、プロトコル以外の部分でも、臨床心理の知見によって、子供との関係性がつくりやすくなったり、被害を受けた子供の心の動きを捉えやすくなる場面もあるというふうに感じています。

 以上から、聴取者の育成、研修を更に充実させることを望みます。

 さて、障害の問題に関連しまして補足を申し上げます。

 私は、法律は門外漢ですので、細かなところは御寛恕をいただきたいんですけれども、刑法第百七十六条一項第二号の心身の障害に該当する部分になります。障害が重い方の被害の見極めの難しさがあるというふうに感じております。

 重度の知的障害者の場合に、行為はあったことは確かだけれども、説明ができないために何があったのかが不明で、本人にも典型的なトラウマ反応は見られないということがあります。障害は被害の遭いやすさにつながりますので、障害に乗じた搾取が行われているのであれば、許されざることです。一方で、成人であれば、本人の自由な意思決定による結果の可能性も残しておりますので、被害か否かを見極めるのが困難な場合があります。今後の研究あるいは検討が必要と感じられる部分です。

 課題の二つ目に参ります。子供の証人出廷についてです。

 現状では、司法面接が行われていましても出廷をすることはありまして、その際に、ビデオリンク方式や付添人などの配慮がされていたとしても、子供の心理的負担は当然に大きくなります。初めての法廷の場で話せなくなる子供もいます。そうしますと、時には、なぜ子供が話せなかったのかについての心理専門家の意見を求められるということがあります。もちろん、依頼があれば、解離なのか回避なのかといったことなど、何が原因なのかを見極めることになりまして、私も実際に鑑定人として出廷したことがあります。

 ただし、そもそも心理的負担が大きいということにもう少し配慮があってもよいと感じられています。私は、大人の犯罪被害者の出廷時の付添人の経験もありますけれども、大人であっても負担は大きいものです。法廷という初めての場で、トラウマ記憶にもう一度触れざるを得ない子供への質問の仕方についてどうあるべきなのか、実施時間はどうなのかなど、反対尋問において配慮可能なことについての議論が必要と感じています。

 三つ目は、刑事手続と並行しての心理支援体制の充実についての課題になります。

 性被害による傷つきの大きさは、既に皆様御存じのことと思いますけれども、アメリカの調査などでは、戦闘体験を抑えて、最も衝撃が強いとする研究もあります。加えて、先ほどお話ししました孤独感や自己肯定感の低さを埋め合わせるべく被害に遭う子供は、仮にでも愛情や承認欲求が満たされる世界を再び求めるという問題もあります。被害防止はもちろんですが、被害に遭って初めて問題が顕在化するということもあり、再被害防止のための対策が重要になります。つまり、子供の関係希求に応え、子供に向き合って心理教育やケアを行う人が必須になるわけです。

 こういった子供に関わる機関の一つに、民間被害者支援団体があります。各都道府県に一つはある団体です。私も、現在、神奈川にある団体の登録カウンセラーとして活動を始めたところです。再被害防止の観点からは、早めに支援開始するのが望ましいと言えますが、東京にある被害者支援都民センターのように、非常勤心理職が働いており、刑事手続と並行したトラウマ専門の治療が提供できる体制と比べますと、地方の民間支援団体の心理的ケアの体制は弱いと言わざるを得ません。

 また、条例のあるなしによっても、公費で負担できるカウンセリング回数が異なるということもあります。各地域の実情に合わせつつも、全国どこでも同じレベルの心理支援体制を目指す必要があると感じています。

 性被害と申しますのは生涯にわたって影響を与えるものです。理不尽にも被害を受けた子供が刑事手続の中で更に傷つくことなく、子供の健やかな育ちのためにできることを検討していただければと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

西村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中野英幸さん。

中野(英)委員 自民党の中野英幸でございます。

 本日は、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中にもかかわらず、国会にまで御足労いただきましたことに心から感謝を申し上げさせていただきたいと存じます。

 せっかくの機会でございますので、私からも幾つか質問をさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをさせていただきたいと存じます。

 まず最初に、高橋参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 先ほどの意見陳述において、高橋参考人からは、犯罪被害者等の権利保護、心情の考慮といったことの必要性についてお話がございました。一方、異なる立場からの御意見として、藤井参考人、島田参考人、村木参考人から、被疑者、被告人の権利利益の保護の重要性があるという趣旨のお話がございました。

 高橋参考人は、犯罪被害者の代理人という立場で様々な経験をされ、また知見をお持ちだと思いますが、参考人の方々の御意見を、お話を聞いてどのように感じられたのか、また御意見を併せてお伺いさせていただきたいと存じます。

高橋参考人 では、ただいまの御質問にお答えいたします。

 島田様、あとは藤井先生、村木様は大体同じようなことをおっしゃっていたと思います。人質司法、これをやめるべきだ、黙秘権を保障すべきである、私も全くそのとおりだと思っております。冤罪は被害者にとっては二次被害です、真犯人が捕まらないんですから。ですから人質司法、これはやめるべきです。黙秘権もきちんと保障すべきです。

 じゃ、どうやって犯人を捕まえるんですかという話になります。意外と知られていないことがあります。民事の裁判部には知財部があります、知的財産部。さらには、医療集中部、医療専門部と、医療過誤を専門にやるところがあります。ところが刑事の裁判部にはありません。捜査機関はどうでしょうか。警察署には科捜研があります。検察庁はどうでしょう。科学捜査部はございません。起訴を独占する検察庁、最終的な判断権者である裁判所、そして、人生を最も左右する刑事部において科学捜査部がないんです。これが私は一番問題だと思っております。だから供述に頼ってしまうんです。

 ですから、理系に特化した部、それをきちんと検察庁、裁判所において設けるべきだと私は思います。そして、諸外国で当然に行われている盗聴、潜入捜査、そういったことを大いに認めていくべきだと思います。

 さらには、科学捜査に必要な予算、これをたくさんつけていただきたい、検察庁と裁判所に。特に検察庁ですね。そうでないと科学捜査ができません。供述に頼るなと言われても、頼らざるを得ないからそうなっているんです。

 しかも、冤罪というのは検察庁だけの責任じゃありません。そもそも、判断権者は裁判所じゃないですか。あなた方の能力の問題じゃないんですか。そこを自浄能力をきちんと持っていただかなければ、同じことが繰り返されてしまいます。緩い要件で再審法をやってみたところで、能力が変わらなければ同じことの繰り返しであります。

 したがいまして、そういった理系に特化した、そういった部を設けることが私は一番大切なことではないのかと思っております。

 一つだけ例を言いましょう。ある裁判官はこう言いました。子供を虐待したのは誰か。こう判決にありました、その子供は血液が固まりにくい、そういう先天的な異常があった、だから、自分で転んで血管が破綻した可能性がある。これを私が看護師とか医師に言いましたら、皆さん大笑いしていました。どのくらいレベルが低い話かです。

 私も、正直言いまして、司法試験に受かる前までは刑事と民事の違いを分かっていませんでした。特に、弁護士になって依頼者によく言われます。百万円借りたんだけれども、どうしても返せない、私は刑務所に入らなきゃいけないんですかと言われる。つまり、刑事と民事の区別が分からない。この程度のレベルなんです、さっきの話というのは。そのくらいのレベルの裁判官がその人の人生を左右している。

 ですから、もう少し理系に特化した勉強をしていただいて、そういう部を設けなければ、犯人も捕まえられないし、冤罪も起きて、被害者は二次被害を受ける、私はそう考えております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 私も、被告人の権利利益の保護を図ることは重要であると思いますが、他方で、実際に被害に遭われた方がいるということは忘れてはならず、そうした被害者に寄り添うこともまた重要であると考えております。皆様方のお話を伺い、また改めてその重要性を認識させていただいたところでございます。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 再審制度の在り方について、高橋参考人の御意見を伺いたいと存じます。

 先ほど高橋参考人から、犯罪被害者の立場から、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止することには反対であるという趣旨の御意見がございました。再審開始の決定に対する検察官の不服申立てについては、審理の長期化の原因となっており、再審公判において有罪立証をする機会があるのだからこれを禁止すべきだとの趣旨もございます。

 こうした指摘についてどのようなお考えがあるのか、また御意見があるのか、お伺いさせていただきたいと存じます。

高橋参考人 確かにただいま、再審開始の審理と、再審が開始されて再審公判と、二つに分かれております。これは形式的な意味でありまして、明らかに無罪と言い渡すべき証拠があったから最初からやり直しましょうということで再審の公判があるわけであります。

 しかし、それを幾らやってみたところで、先ほどから申し上げているように、判断する人、起訴する人の能力が高くなければ、結局同じことじゃないですか。結局、同じことを何度も何度も繰り返すだけなんです。

 ですから、再審公判があるからいいというのではない、要件を緩やかにすればよいという問題ではないんです。これは、起訴する人、判断する裁判官、その人たちの能力をもう少し高める、それが一番私は問題であると思っております。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 冤罪があってはならないということは当然でありますが、再審制度の在り方を考える上では、確定判決による法的安定性の要請と個々の事案の是正の必要性の双方を考慮しつつ、様々な角度から慎重かつ丁寧に検討する必要があると私は思っております。

 お話を伺いまして、そうした考慮に当たっては犯罪被害者の心情に配慮することが大切であることがよく分かりましたので、ありがとうございました。

 次に、藤井参考人、村木参考人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 私自身、被疑者、被告人の権利利益の保護は非常に重要であると考えております。

 その一方で、近年、トクリュウ、いわゆる匿名・流動型犯罪グループなどによる組織犯罪等が社会的な問題となっているところであります。こうした犯罪への対応策についてはどのようにお考えでいるのか、御意見を伺わせていただきたいと存じます。

藤井参考人 私は元裁判官でございまして、捜査について詳しくないので、参考になるお話ができるか分かりませんけれども。

 捜査の手法としていろいろなものがあると思うんですが、被疑者を逮捕して、身柄を拘束して、そこから供述を引き出すということだけが捜査の手法ではないと思います。もちろん、その供述によって証拠が得られる、あるいは関係者が判明するということがありますから、取調べが必要であること自体、否定するつもりはございません。ただ、余りにそれに偏っていて、どうも日本の捜査機関の捜査はそれ以外の面のいろいろな工夫なり技術が、もう少し磨かれた方がいいのではないかなというようなことは思います。

 先ほど御意見がありました科学的な捜査というのもそうでございまして、最近、地下鉄サリン事件の関係で、その科学捜査に当たられた方の本を読んだことがあるんですけれども、やはり、警察庁の中あるいは警視庁の中でも、取調べ部門、捜査部門は力点を置かれているけれども、科学捜査に当たるそういう専門家については割と、割とといいますか、日が当たらないところにあるというようなことも伺っておりますので、そういった点の充実は大変重要ではないか、そういうふうに考えます。

村木参考人 ありがとうございます。

 私の事件があった後で刑訴法の改正の議論をしたときにも、一番根幹にあるのは、やはり取調べと供述に頼り過ぎている今の日本の刑事司法の仕組みなんだろうということで、もう少し物理的な証拠とか科学的な証拠とかというものをどれだけ得られるようにしていくかという議論がされたと思います。

 私も、方向性としてはそういったところを充実をしながら、私の事件のときに非常に興味深かったのは、私は犯罪に関与をしていなかったんですけれども、取調べを受けた人のうち半分の人が、村木さんがその人と会っているのを見ましたとかという調書にやはりサインをしてしまっているんですね。本当に調書ってとてもそういうふうにリスクが高いものなので、やはりそこに頼るやり方はやめていかなければいけないということで、私も「科捜研の女」のファンでございますので、本当に科学捜査にもっと、そういった科学的な捜査に力点が置かれることは大変賛成でございます。

 ありがとうございます。

中野(英)委員 ありがとうございました。

 様々な御意見をいただき、大変に参考になりました。組織犯罪を始め、近年社会問題となっている犯罪への対応策について、今後具体的な検討は必要であろうと考えさせていただいております。私としても更に考えを深めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをさせていただきたいと存じます。

 本日は、本当に、いろいろな意味で参考人の皆様方に大変有意義な御意見をいただきましたこと、改めまして、五人の参考人の皆様方に感謝を申し上げさせていただきたいと存じます。

 ただいまの参考人の皆様方からいただきました知見を是非糧として、国民の利益にかなう委員会審議に役立ててまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをさせていただきたいと存じます。

 ちょうど時間となりましたので、私の方も以上で質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、篠田奈保子さん。

篠田委員 立憲民主党・無所属の篠田奈保子です。

 二十五年ほど弁護士として現場で働いてまいりました。まずは、島田参考人に御質問をさせていただきたいと思います。

 本日は、この委員会に御出席をいただき、本当に体験した方であるからこそ語ることができる苦しみをお話しをいただいたことに大変感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 島田参考人からは、全ての取調べに録音、録画を導入してほしい、それから、接見禁止、これについて廃止をしてほしいという御提案がありました。接見禁止については、事件と関係ない家族と面会を禁止する、この必要性は本当に乏しいものでありますし、一般の面会には警察官の立会いもありますから、罪証隠滅のおそれなども当然なく、こういった人権侵害は甚だ放置しておくわけにはいかないと私も思うところでございます。

 私がお伺いをしたいのは、弁護士として二十五年現場におりまして、国選弁護人としても多くの経験をしてまいりました。否認する被疑者でありますと、毎日接見をして取調べの状況をお伺いをしたりと、支援をしてきました。保釈をかち取ることは本当になかなか難しくて、本当に悔しい思いを重ねてまいりました。

 島田さんの事件の経過を見ますと、国賠事件の判決においても、警察官の虚偽によって、自己の認識と異なる調書に署名押印をさせられたことが指摘されております。自分が容疑を認めるような調書に署名したことにすら気づいておらず、弁護士の指摘によって、かなり時間が経過した後にそれに気づいたということをお聞きしています。確かに、法律の素人である被疑者が一人で取調べに対応して、読み聞かせをしてもらって署名押印するということに、やはり厳しさを感じています。

 取調べを受けている段階で、弁護人からこういった支援が受けられたらよかった、特に、弁護人の取調べの立会いであるとか、メモであるとか、そういったことについて御意見をいただければと思います。

島田参考人 私が経験した中で、一人で取調べを受けるという苦しさ、弁護士さんが横にいていただけるだけでも大分違うと思います。何も語らなくても、それだけで、自分が何を話しているのか、自分が何を話して何を聞かれたということもほとんど分からないような状態になってしまうので、立会いがあれば、かなり被疑者の心持ちといいますか、自分が何を話しているのかということは分かるようになると思います。

 それから、接見禁止、これは三百三十二日間の間、家族と会うことができなかった。それがやはり精神的なかなりの思いといいますか、先ほどあったように、それがために認めてというような、悩むこともありますので。そういうことで、家族とは禁止をするようなことはやめていただきたいと思います。

 録音、録画は、私は是非お願いしたい。先ほど申し上げたように、事実を明らかにする唯一の方法だと思いますので、何ら捜査側にも支障のないことなので、真実を明らかにする唯一の方法であるので、是非やっていただきたいと思っております。

 以上です。

篠田委員 御意見ありがとうございました。しっかりと承りました。

 次に、藤井参考人にお伺いをいたします。

 まず、私にお褒めの言葉を頂戴いたしまして、大変ありがとうございました。先生から教えを請うてからもう二十五年たちましたけれども、刑事司法、かなり変わりましたが、様々にまだ不備なところがあると思っています。

 先ほど藤井教授が御指摘をしておりました論文について、私も拝読をさせていただきました。プレサンス事件と大川原化工機事件において保釈が長期間認められなかったことについて、その反省の上に立って、「「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」について」というような論文でございました。この論文にまず敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 私は、この論文のすばらしいところは、裁判所の保釈の運用の実務についてしっかりとした反省に立っているというところ、保釈の運用をこれから改善する方向で大きく大きく効果のある論文であるというふうに思っております。多くの実務家や裁判官に是非この藤井論文について読んでいただき、裁判所の保釈の運用が変わることを私も応援をしたいと思っております。

 しかしながら、藤井教授が刑事裁判の実務の運用改善のためにこのような論文を発表していただいた努力を、私も立法府としてただただ応援するだけでは当然足りないというふうに感じております。

 先ほど指摘をされました憲法三十四条が定める人身の自由の保障との関係を踏まえて、やはり刑事訴訟法八十九条四号の法改正、これは先ほど島田参考人からも撤廃してほしいという御意見をいただきましたけれども、これを法改正する必要性が私としてはあるのではないかというふうに考えております。

 立法府の立場からの私の意見でありますけれども、例えば、保釈中のGPSを利用した電子監視制度など新たな制度の導入とのことも含めて、この法改正について可能であれば藤井教授の御意見をいただきたく、よろしくお願いいたします。

藤井参考人 ちょっとお言葉を返すようですけれども、GPSというのは逃亡のおそれを防ぐためのものなので、罪証隠滅には余り影響しないかとは思うんですが。

 今、罪証隠滅に関する八十九条四号の規定を削除すべきだという御意見もあったわけなんですが、私自身は、改正するということは考えられると思うんですが、削除まではちょっと、妥当かどうか疑問は持っております。

 といいますのは、私は、実はイギリスにちょっと、研究に二回ほど派遣させていただいたことがありまして、イギリスは大変保釈を広く認めるといいますか、被疑者の身柄拘束をかなり限定する。警察での身柄拘束は一日かそこらしか認めないという制度ですけれども、その上で、裁判官のところに連れていって、保釈をするかどうかの要件の判断で、犯罪の重さにもよるんですけれども、日本でいえば、罪証隠滅に相当するような規定はございます。ただ、もう少し具体的に、釈放すれば被告人が関係者に働きかけるなどして適正な裁判の証拠を阻害するおそれが高いというふうに裁判官が納得できるような場合、ちょっと正確ではありませんが、そんな規定になっていたと思うんですけれども、それと似たような罪証隠滅の文言にするということは考えてもよいかと思います。

 そもそも、この刑訴法でその規定が政府から提案されたときは罪証隠滅のおそれという文言だったんですが、それが国会の立法の過程で現在のように罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由となったんですけれども、文言が変わっても実務の用語としては短く罪証隠滅のおそれという形で通っておりますし、その要件だけで変わるかどうかというのは難しい、限界はあるとは思いますけれども、ただ、今申し上げたようなことを現時点では考えております。

篠田委員 御意見、大変ありがとうございます。

 削除に至らなくても、現状の法文を何らかもっと具体的なものに変えていく、それで保釈について原則保釈の運用をかち取れるような法改正をしていく、私もその必要性は痛感しているところでございますので、しっかりと参考にしてまいりたいというふうに思います。ありがとうございます。

 次に、村木参考人にお聞きをいたします。

 村木参考人が無罪判決を受けてから、先ほどお話ありましたように、取調べの適正化ということで録音、録画が進んだことは事実でございますけれども、まだ全面的な録音、録画には至っておりません。これについては、私たちがしっかりと課題として認識をし、進めてまいりたいと思います。

 その上でですけれども、やはり検察組織が村木さんの事件のときと同じような事件をまた度々繰り返しているその現状について、検察組織の在り方について是非、厚労省のトップにいた村木さんの方から、組織の在り方、今後どのように改善していけばこういった事案が減らせるのか、御助言をいただきたいと思います。

村木参考人 ありがとうございます。

 大変難しい御質問だと思うんですが、検察官は何か悪いことをしようと思ってこういうことをやっているわけでもなくて、やはり、捕まえて自白をさせて有罪にしたいという本能が働いているわけですから、一つは、ルールで縛ってあげる、録音、録画のように、やりたくてもできない仕掛けをきちんと見せてあげるというのが大事だと思います。

 それから、私が大変面白かったのは、事件から後で、よく法務省の方に検察はちょっと変わりましたかという御質問をすると、大体返ってくるのが、若い人は変わりましたというお答えなんですね。ですから、やはりインタビューにも技術があって、昔流の脅して机をたたいてというのでないやり方を取調べ官の方々にも身につけていただくための方法を、プロの方でもう少し考えていただくということが大事かと思います。

 それから、実は、あの事件があって法改正までやっていただいたんですが、私自身は、例えば検察から、あのとき何がありましたかという事情聴取をされたことはないんですね。ですから、やはり、本当に何か問題があったときにきちんと検証する、それから、できれば第三者が入って検証する、そして、そういうことを表に出して、一歩一歩どう変えるかというのを実践をしていく仕組みがないと、なかなか自分たちでおやりなさいは難しいのかなというふうに思っております。

 以上です。

篠田委員 大変参考になる御意見、ありがとうございました。

 航空事故などでは事故調査委員会が毎回開かれている、だけれども、このように冤罪事件が繰り返されてもそれを検証する第三者機関がない、私はそこも大変大きな問題だというふうに思っておりますので、しっかりと議論をして取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 私が刑事訴訟法を勉強したときに、平野龍一先生の昭和六十年の論文で、我が国の刑事裁判はかなり絶望的であるという言葉を一番最初にたたき込まれたときから、裁判員裁判が始まり、取調べの録音、録画が始まり、被疑者国選、全面国選が始まり、刑事司法は前進をしてきたというふうに思います。だけれども、まだ人質司法の問題、そして再審法の改正など、やはり手つかずの部分もたくさん残っていると思いますので、それらの課題につき、今日いただいた参考人の皆様の御意見を参考にしながら議論を進めてまいりたいと思います。

 本日は、大変ありがとうございました。

西村委員長 次に、金村龍那さん。

金村委員 日本維新の会の金村龍那でございます。今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 我々、国会において、参考人質疑といえば大半は法案に付随したものが大変多いものでして、今回のこういった、法案にかかわらず参考人をお招きして意見陳述をいただいて質疑をするというのは、実は私にとっても初の試みであります。当初はどうなるものかなと思っていたんですが、党内ではなく、こういった場で、国会の場でしっかりこうやって参考人をお招きして質疑する価値というものを既に感じております。そういった意味では、こういった機会を御提案いただいた立憲民主党さんには本当に感謝申し上げたいと思います。

 その上で、皆様から意見陳述をお聞きして、やはり、刑事司法について大きな課題を我が国は抱えていると実感をしています。一方で、そうはいっても、公平中立の立場でしっかりと議論もしていかなければならない、一方の側だけに偏ってしまうと、それはそれとして大きな課題を残してしまうという意味では、私も、苦渋の思いを持ちながら、公平中立の立場でしっかりと質疑をしてまいりたいと思います。

 その上で、藤井参考人に御質問させていただきます。

 今回、こういった試みの中で、御自身以外の四名の方の御発言をお聞きになられまして、特に御関心を持たれた御発言又は御意見や御感想があれば、まずお伺いさせてください。

藤井参考人 それぞれ四名の皆様のお話を伺って、大変強い印象を受けております。

 それとちょっとずれるかもしれませんが、この席は、元裁判官は被告席に立たされているなと思いまして、論文を書いていてよかったなと思いました。

金村委員 ウィットに富んだ御発言をありがとうございます。

 そういった意味では、皆様に御感想を是非お聞きしたいところではありますが、時間に限りもありますので、質疑を進めさせていただきます。

 私は、刑事司法手続にはやはり様々な立場の方が関わるため、感情は別にして、やはり中立な立場でしっかり声を紡いでいかなければならないと思っています。

 その上で、冤罪が起こる原因、さらには理由、そしてこれを防ぐためにはどうすればよいかということについて触れる中で、藤井参考人にお伺いしたいんですが、捜査対象となった人に防御する手段を与えるということが冤罪による被害を少なくする上で必要だとお話をされていたと思います。その具体的な方策として、弁護人が取調べに立ち会うことを検討する必要があるという御指摘をされていました。

 弁護人の取調べへの立会いを認めることについては、取調べの適正を確保するという重要な効果があるということは言うまでもないと思います。他方で、弁護人の立会いを認めることについては、捜査機関側から、取調べによる供述の獲得が困難になるなどの弊害や、我が国において認められている捜査手法を前提とすると、取調べが真相解明に果たす機能はいまだなお重要であるなどの指摘もあると存じています。

 そこで、お二つお伺いさせてください。

 一つは、藤井参考人御自身が裁判官として審理されていた事件で、警察や検察官による不適正な取調べにより虚偽の自白が作出されたと認められた事案、あるいは、そのような高度の疑いがあったというケースがどの程度あったのかということをお聞きしたいと思います。

 加えて、取調べの適正を求める弁護人サイドの指摘、他方で、先ほどお話ししたような捜査機関側の指摘を踏まえた上で、現在の刑事訴訟法の下で、弁護人の立会いを認めるというのは、直ちに制度化されるべきものなのか、それとも捜査手法を含め刑事訴訟手続全体を見直す中で議論していくべきものなのか、この辺りについてお伺いさせてください。

藤井参考人 まず、一つ目の御質問でございます。

 裁判官、元裁判官の守秘義務がございますので、具体的なことは申し上げられませんが、自分で最後まで担当する前に途中で異動してしまった事件で、後になって、あの自白は虚偽だったんだということが分かった事件というのはございます。

 それから、自分が担当している事件で、特に録音、録画ができて以降、高等裁判所で仕事をしておりましたときに、検察官の供述調書で、被告人の主観的な認識、故意とか目的とかいうものがありますが、それについて供述調書にはしっかりとあったように書かれているんですが、録音、録画が一審で調べられていたので、高裁でもそれを確認したところ、被疑者、そのときは被疑者ですね、被疑者はそんな認識があったと言っていないんですけれども、一生懸命、取調べの検察官は言ってもらおうとしていろいろな質問をされている。それで、最終的に調書にした段階では微妙に言ったような表現になっていて、それで間違いないねと言われて署名指印されているわけなんですが、これは、言っていないことが書かれているからその点は証拠に使えないねということで、一審はそれを是認、是認といいますか、その前提での判決をしていたんですが、それを破棄したという経験はございます。

 特に主観面で似たようなことがあるということは、よそでも耳にする場合があります。

 ただ、冤罪事件ってそんなにしょっちゅう起こっちゃ困るわけで、例えば、昨年亡くなった木谷さんがお書きになっている「違法捜査と冤罪」という本がございますけれども、そこで紹介されているのも、全部が全部、再審無罪の事件だけじゃなくて、一審で有罪で上訴審で破棄されたものも入っていますが、それも三十一件でございますから、全国で、それも昭和二十三年から最近までの三十一件でございますので、裁判官がそういった事件に遭遇する機会というのはそんなに多いことはないと考えております。

 以上です。

金村委員 ありがとうございます。

 改めて、冤罪が当たり前のように起こることなく、しっかりと刑事司法の中でできる限りこういったことが起きないようにしていくことを、我々も切に、しっかりと立ち会っていかなきゃいけないなと思っています。

 その上で、櫻井参考人に一つお伺いをさせてください。

 私、実は、国会議員になる前、十年間にわたって障害児支援の事業所を都内と神奈川県内に運営してまいりました。その中で、本当にやるせない思いというか、非常に無力感を感じたのは、実際に私が運営していた施設に通っていた児童が性被害に遭いました。御家族といろいろな話合い、行政、そして学校、そういったところで話し合う中で、どうしたらこういう問題を防げるのかというところが制度的にはなかなか答えがなくて、当事者である児童、そして御家族、様々、そのケースケースにおいて、一つ一つその御家族に合った答えをつくっていかなければならない。それは、性被害に遭った時点から、障害がある児童であっても、まさに人生が大きく変化していくわけですね。

 その中で、これはあえて刑事司法とは違う視点になるかもしれませんが、障害児が性被害に遭うケースというのは実は増えていると私は認識していまして、そういう意味では、抑止していくために必要なお知恵というか、アドバイスというか、プランというものがありましたら、是非この場で御披露いただきたいと思います。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 私自身も大変障害の問題は大きいというふうに感じておりまして、一つには、やはり性教育をきちんと行うべきだと思っております。この点は今までも言われているとは思うんですけれども、例えば障害児が通う学校の先生にも、その教育、研修、そういった機会が必要だと思っているんですね。

 例えば、そういった特別支援学校の先生方自身が障害をお持ちの先生がいらっしゃるということがあり、例えば、私はこういう場で、国会に来るのは実は初めてなんですが、講義ですとか講演の場というのは比較的多くいただいていて、そういった場でも、障害を持っておられる方がそれほど多くは参加していないという事実ですね。そうなると、もしかして、障害のない方々が知っている知識と障害を持っている方々が知っている知識の量というのが随分違うんじゃないかなというふうに感じています。ですので、やはり大人に対する教育も子供に対する教育も必要かなというふうに感じるところがあります。

 あともう一つなんですけれども、捜査機関の問題で、私は警察におりましたけれども、捜査機関というのは福祉的な観点というのはやはり弱いと思うんですよね。ですので、やはり研修を行って、そういった障害ですとか特性、そして福祉的な観点についてもやはり知識を入れていく必要があるんじゃないかなというふうに感じております。

 以上になります。ありがとうございました。

金村委員 ありがとうございます。

 障害児支援の事業を始めた当初、長年にわたって障害児支援をしてきた先生と呼ばれるような立場の人に、どうしたら性教育がきちんと障害児に伝わるのかというのをアドバイスを求めたときに、障害があっても性教育は実は理解度がしっかりあるというお話をいただいたんですね。当初、そんなことはないだろうと思っていたんですけれども、やはりきちんと伝える努力をし続けることで、性というものが障害児にとってもしっかりと理解できるという経験が私もございますので、そういった意味では、障害児に携わる立場の人たちがしっかりと性教育を理解することが入口なんだなということを、今お話を聞いて、再び理解させていただいた次第です。

 改めて、藤井参考人にお伺いさせてください。

 取調べの在り方については、やはりそれぞれのお立場から様々な御意見、物の見方があるということが、今日の参考人質疑で改めて私も理解した次第です。

 その上で、被告人の保釈を受ける権利の例外である罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由の解釈を改善すべきである、それについて論文を書かれたというお話がございました。これは恐らく大変難しい御意見であり、なかなか一口に御説明いただけるようなものではないのかもしれませんが、現在の解釈がどのようなもので、そして、どのように改善されるべきとお考えなのか、今後の議論のために藤井参考人の御意見をいただきたいと思います。

藤井参考人 詳しく御説明するには三十分ほどいただければと思うんですが、そういうわけにもいきませんので端的に言いますと、罪証隠滅のおそれの判断はいろいろな要素で裁判官は従来から考えてきたんですが、その中の一つとして、罪証隠滅行為をしたら裁判所の終局的な判断が誤ったものになる可能性ということを考えます。その可能性の検討が、従来、可能性があるかどうか分からないから、分からないときはあるものとするという、ちょっと平たく言うと、そういうことが裁判官がよく参照する文献に書かれておりまして、それによって、実務はこういうものだという頭で処理してきた時代があったと思います。さすがに現在はそこの部分の表現は変えられておりますけれども。

 では、具体的にどういう場合に罪証隠滅のおそれが残るかということで、一つだけ例を挙げますと、捜査の段階で、参考人を検察官が取り調べて、供述調書を作っている。供述調書ができていれば、では、罪証隠滅のおそれがなくなるかというところの事例として、その文献では、いや、公判廷で供述を覆すかもしれないから、罪証隠滅のおそれがあるんだ、そういう例が挙げられているんですけれども。あるいは公判廷で証人尋問しても、更にもう一回証人尋問するかもしれないから、罪証隠滅のおそれが残るとまで書いている場所もあります。

 ところが、日本の刑事訴訟法では、検察官が捜査段階で供述調書を作っているときには、供述した人が法廷で証人となって違った意見を言っても、元の供述の方が信用ができれば、その元の供述調書が証拠として使えるという、かなり検察官の作成した調書についての高い証拠能力が認められております。

 したがって、罪証隠滅行為、働きかけをして、公判廷で、仮に罪証隠滅に向けて偽証したとしても、裁判所はどっちが信用できるかを判断するわけですし、そもそも、被告人が保釈されて、その人に働きかけようとしても、それは保釈の条件として禁じられておりますから。もう接触しただけで保釈は取り消されるし、元々冤罪と主張しているというか、実際にそうだとしても、そうじゃないとしても、そういう行為が発覚すれば、保釈は取り消されるし、もう有罪も決まってしまいます。しかも、更に進めば、偽証まで教唆したということで、より重い罪になる可能性もある。

 だから、そんな簡単に罪証隠滅行為はしづらいし、仮にあったとしたって、裁判所が、その法廷で出てきた新たな証言を元の供述と比べて、どっちが信用できるか判断するわけですから、裁判所の終局的な判断が間違えるおそれがあるというのは、裁判所がそういう判断がちゃんとできないという前提の議論になるわけで、そんなことまで心配して、罪証隠滅のおそれがあるという判断を裁判官自身がするのは私はおかしいのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。

金村委員 まだまだ聞きたいことはありますが、時間になりましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、円より子さん。

円委員 国民民主党の円より子と申します。

 本日は、五人の参考人の方々から大変貴重な御意見を伺いまして、本当にありがとうございました。

 高橋参考人からの、犯罪被害者の方々のことを思うと本当に胸が痛みますし、そのために真犯人を何とか挙げたいという捜査のこともよく分かります。ただ、それで冤罪を起こしてはいけないのであって、何とか冤罪を起こさないような取調べをしていってほしいものだと思っておりまして、これから質問をさせていただきます。

 村木さんとは、私、参議院議員の時代に一緒に仕事をさせていただいておりまして、その仕事ぶりの、本当にいいお仕事をなさっておりましたので、その方が逮捕されるというニュースを聞いたときには本当に驚きまして、すぐさま、実は彼女に電話をいたしまして、逮捕されたらどんなひどい取調べがあるかもしれないけれども、絶対に自白なんかしちゃ駄目よと私、言ったんですね、その電話で。そのときに、やったこともないのに自白なんてするわけないんだから、円さん、安心してと彼女が言っていたんですが、実はその後、大阪で百五十日、百六十日かな、勾留される、もう大変なやはり取調べを受けたんだと思います。

 それで、実は私の知人も、東京の人なんですが、札幌の警察で取調べを受けました。そのときに、もちろん彼も自白はしなかったんですが、最初の日から弁護士がついていて、もちろん部屋が違いますけれども、例えば夜の十時、十一時、十二時ぐらいまで、もうずっと一日中拘束して、取調べをするときに、隣の待合室みたいなところで待っている弁護士さんが、九時過ぎているのにまだやっているのかと警察の人にちゃんとメモを入れてくれていたらしいんですね、ずっと。そういう形でいると、やはり、一人になってはいないんだ、孤独じゃないんだということがあって、力が湧くと言っておりました。

 それで、村木さんや島田さんのケースも、本当に過酷なケースを体験されて、もう本当にお気の毒だったというか、もう理不尽な思いをされたんだろうと思いますが、そうしたケースだけじゃなくて、様々な事件の取調べの中身を聞いておりますと、やはり警察や検察と対等の土俵で話をするのはとても困難な状況だと思うんですよね、ほとんどの人にとっては。

 供述調書は取調べ官の作文というふうに言われているとも聞いておりますし、脅しなどで自白を強要されるとか、誘導されてしまうことも多々あるように書かれておりますが、一体、その警察での取調べの時点からしっかりと弁護士がつくこと、先ほど申しましたように、すごく大事だと思うんです。村木さん、島田さん、そのケースは、最初の日から、警察の取調べのときから、弁護士さんはつけていらしたんでしょうか。そして、弁護士がやはり必要だということについてどう思われるか、お聞きしたいと思います。

村木参考人 ありがとうございます。

 弁護士、私の場合は幸いにも、職場の同僚から、非常に嫌な感じがするので、弁護士さんに早めに相談しろというアドバイスがありましたので、お願いをしたい弁護士さんという方には逮捕される前から会っていたというのが大変大きかったというふうに思います。

 日本は弁護士さんの立会いは認められていませんけれども、実際にやってみて、私が本当に弁護士さんの立会いの必要性を実感をしたのは、例えば、一番最初に、初めて逮捕されるので、この後何が待っているのかとか、自分にどんな権利があるのかというのが分からない。

 最初、これは被疑者としての取調べですと検事さんに言われて、本当に勇気を振り絞って、それはどういう意味なんでしょうかと聞いたら、黙秘権があるということですと言われたんですね。じゃ、聞かなかったらどうなったんだろうと非常に怖い思いをしましたし、やはり、自分の味方になってくださって、かつ、法的な知識のある人から、取調べで自分は何ができる、何をしてはいけないということが、あるいは、自分がやったことが後にどうつながるということをちゃんと教えてもらいたかったというのが一つあります。

 それから、やはり調書は、私の検事さんも、調書は検事の作文ですと御自分でおっしゃったので、本当に作文なんですが、やはり、サインをするときに、長い文章を見せられて、これが本当にどういう意味を裁判で持つのかが素人には分からないので、もう大変不安でした。そういう意味では、特に調書なんかにサインをするというときに、絶対にその調書を見てもらってアドバイスを受けたかった。

 それから、いろいろなことをたくさん長い取調べで言われて、私は、取調べが終わった途端、部屋に帰って、何を言われたか、聞かれたか、必死で記憶をたどってメモを起こしていったんですけれども、立会い、あるいは記録を取らせてもらうとかいうことが本当に欲しかったと思います。

 それから、これは本当に悪質だと思うんですが、何度かうその情報を与えられたんですね、取調べ中に。例えば、家宅捜査に入ったけれども、こんな証拠はなかった、でも本当はあったというようなことがたくさんあって、でも、検事さんがうそをついたかどうかというのは、その場にいた人しか分からないわけですから、きちんと弁護士さんが立ち会っていれば、そんなに簡単にうそをついたり、脅したり、机をたたいたりはできなくなりますから、そういう意味でも、是非、弁護人の立会いはお願いをしたいというふうに思います。

島田参考人 私ども、私を含め、社員、二百九十回、任意の聴取で呼ばれています。そのときには弁護士さんと相談していません。それで、私ども三人が、かなり、一年半の後半になって、やっと、先生、どうしたらいいんでしょうかということで、顧問の弁護士さんにお伺いしました。そのときに、やはり、今、村木さんがおっしゃられたように、かなりのことを、あっ、そうだったのかと。

 私、先ほど、刑事、訴訟のことも、民事も、訴訟がどうなるのかということすら私は分かりませんでしたので、弁護士さんが本当にいてくれるだけ、相談に乗ってくれるだけでかなり精神的にも楽になると思います。

円委員 お二方、ありがとうございました。

 それでは、幾つも用意していたんですが、ほかの議員さんからも同じような質問がありましたので、また別の質問をさせていただきます。

 村木さんが冤罪の被害に遭われた事件では、検察官がフロッピーディスクの内容を改ざんするという衝撃的な事実が判明いたしました。村木さんが偽の証明書作りに関わったという調書を検察側が事前に作成し、それにつじつまを合わせるためにフロッピーディスクの情報を検察官が改ざんしたという事件でございました。

 実は今、再審法を改正すべきだという動きが高まっておりますけれども、その大きな問題は証拠品の取扱いだと思うんですね。

 今国会で刑事デジタル法改正案が出ておりますが、デジタルな証拠も全て検察、警察が提出命令を出せるようになります。現在でも、強制捜査で押収した証拠品のリストは、一つ一つのファイル名をリスト化するなど細かい作業ではなく大ざっぱな分類になっており、何を押収されたのか、正確に把握することが困難になっております。押収した品物の中には事件には全く関係ないものも含まれることもあると思います。逆に、押収した品物の中の重要な証拠品、例えば、村木さんの事件のフロッピーディスクなどの品目は押収品リストにはありませんでしたよね。

 こうした証拠品の取扱いについて、村木さんの御見解を伺わせていただけますか。

村木参考人 ありがとうございます。

 私の事件ではフロッピーディスクの改ざんがありましたけれども、私が検事に質問したときは、フロッピーはないと言われました。証拠としても出てきませんでした。そういう意味では、家宅捜査をするのは警察、検察がやるわけですから、その証拠のきちんとした保全と、それから、やはり弁護側にきちんとそれが開示をされる。弁護側に開示をされないと裁判官の前にも出ていかないわけですから、証拠開示についてはもう一段、制度を強化をしていただきたいというふうに思います。

 前に御質問のあった、供述証拠に頼り過ぎるというところをなくすためにも、物理的な、客観的な証拠品がちゃんと法廷に出ていって、それを裁判官がちゃんと見られるというところまで持っていっていただくのは本当に大事かというふうに思います。

 ありがとうございます。

円委員 ありがとうございました。

 今の件についてと、それから、保釈がなかなか認められないということについて、藤井参考人からも、何とかそれを改善していきたいと思いますが、御意見ありましたらお伺いいたしたいと思います。

藤井参考人 証拠品の保全、大きな問題だと思いますが、もちろん、後になって、隠していたとか廃棄したというのが問題になれば大変信頼を失墜しますので、そういうことで、そういうリスクをできるだけ抑止するしかないかなという気はいたしますね。

 それから、もう一つが保釈の関係でございます。

 先ほど申し上げましたとおり、これまでの裁判実務が人質司法と批判されるようなものになっております。人質司法という言葉自体、裁判官は嫌う人が多くて、別に裁判官は自白させるために勾留していないよ、罪証隠滅のおそれがあるからやっているんだというふうに言うんですが。

 ただ、私が思うには、その罪証隠滅のおそれの解釈が現状のようなものだから、特に起訴後の保釈が認められないものですから、それを理由に、起訴前の取調べで、うその自白とか、ほかの人に責任を負わせる、捜査官が求めているような供述をしてしまうという、そういう仕組みはあると思いますので、そこは、是非、今回書いた論文も、実は裁判所の中にもいっぱい抜き刷りを配っておりまして、賛成だという御意見も伺っていますし、まあ、中にはちょっと難しいという方もありまして、そう簡単に一つの論文で世界が変わるとは思っておりませんけれども、私としては、これを一つのきっかけに運用が変わってもらいたいなというふうに希望しているところでございます。

円委員 村木さんの事件の後で録音、録画ができるようになりました。それでも、本当に、先ほども申されておりましたように、まだ、いまだに三%未満しか録音、録画というか可視化がされておりません。これを、全ての取調べに可視化をしていく、在宅でもしていくということが本当に大事かと思っておりますが、なかなか日本の司法では。オーストラリアなどでは、それによって逆に司法が大変信頼を持たれるようになった、警察の取調べも信頼が持たれるようになったと、可視化によってですね、言われておりますのに、日本ではなかなか進まないのはなぜだと思われますでしょうか。村木さん、お願いいたします。

西村委員長 村木参考人、時間が近づいておりまして、御協力をお願いします。

村木参考人 では簡単に。

 やはり、取調べと供述調書に頼ってきていて、ほかのやり方がなかなか分からないというか、そこへの恐怖感というのがあると思います。

 ただ、先ほど私は協議会の悪口を言ってしまいましたが、協議会でこの間議論をして、録音、録画を始めてみて余り大きな支障、問題はなかったということは協議会で明らかになっていると思いますので、次のステップへ進めるときかなと思っております。

円委員 今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 終わります。

西村委員長 次に、大森江里子さん。

大森委員 公明党の大森江里子でございます。

 五人の参考人の皆様には、大変お忙しい中、国会まで足をお運びくださいまして誠にありがとうございます。大変貴重な御意見、また御知見を拝聴させていただけたことに感謝申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 時間の関係上、五人の皆様全員には御質問できないこともあろうかと思いますが、初めにその点、おわびを申し上げます。

 まずは、櫻井参考人にお伺いいたします。

 先生は、警察組織において、犯罪の被害を受けた方やその御家族が負うトラウマへのケアですとか、二次被害を防ぐためのお取組をなさっていらっしゃると存じ上げておりますが、例えばなんですが、性犯罪の被害者におきましては、発生から裁判に至るまで長い期間を要した場合に、その時間の経過とともにどのような心理的な変化があるのかですとか、また、それに対してどのような御支援をなさっているのか、可能な範囲で結構でございますので、御教示いただけますと幸いでございます。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 性犯罪の被害者は、もちろん個別性がありますので様々ではありますけれども、やはり、事件、被害に直面することが大変に難しいということはあろうかと思います。ですので、しばらく時間がたってから例えば症状、反応が表れるという方がいらっしゃるので、支援というのは、直後も必要ですけれども、やはり、その直後に認識できないがために、もうしばらくたってからその支援の必要性が認識されて、そこからカウンセリングが開始されるというようなこともあると思います。

 ですので、気をつけていることとしては、支援制度を漏れなくお伝えをするということと、一回断られたとしても、そこで再び被害が潜在化、支援の必要性が潜在化してしまわないために、もう一度、そういった支援の必要性というのを、アタックをして、御本人に聞いて、そして、支援をもう一回開始するというようなことも必要かなというふうに感じております。

 ただ、やはり被害というのは大変長期化しますので、心理的な影響というのも長期化しますので、長い目で支援を続けていくということは必要かなというふうに感じております。

 以上になります。

大森委員 大変にありがとうございます。

 ちょっと続けてお伺いさせていただきたいのですが、性犯罪の被害者が子供ですとか大人の場合、また、先ほどお話を伺わせていただきました知的障害がある方によって、それぞれ、刑事手続上の配慮ですとか、様々方法が違ってくるかと思っておりますが、先生の方でお考えになっていらっしゃる、それぞれの方に合わせた配慮の仕方ということがございましたら、お伺いさせていただきたく存じます。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 特に子供の場合は、先ほど申しましたように、今は司法面接という手法も取られていまして、一回で聞き取って、なるべく記憶に触れないということも取り組まれているかと思います。

 大人の場合でも、性犯罪被害者はなかなか事件に直面するということは大変困難ですので、大人であったら何度も聞いていいということもないと思うので、なるべく、被害者については、何度も聞くことのないような工夫というのは必要かなというふうに感じております。

 以上になります。

大森委員 ありがとうございました。

 続きまして、高橋参考人にお伺いさせていただきたく存じます。

 高橋参考人は、刑事裁判において被害者参加制度が導入されておりますけれども、先ほども御紹介いただきましたけれども、実際の運用において制度の創設に大変大きく関わってこられた先生と伺っております。

 この被害者参加制度なんですけれども、現在の運用上の課題ですとか改善点などがもしもございましたら、お聞かせいただきたく存じます。お願いいたします。

高橋参考人 ただいまの質問は、待ってましたという質問でございます。

 実は、遺影の持込みの問題であります。今は、傍聴席で、前から二列目、A4の大きさに限られています。

 さて、被害者参加制度ができるとき、法制審議会のときに、岡村先生が、遺影もちゃんとバーの中に、検察官の隣に置きたい、そう言ったわけであります。そうしましたら、裁判所が何と答えたかというと、遺影は訴訟行為ができないんだから、だから参加する資格はないんだよと言われました。えっと私たちは思うわけです。

 そもそも、第一の被害者は誰なんですか、遺族じゃありませんよ、殺された人ですよと。殺された人に、殺した人間はこいつなんだということを見せてあげたい、だから一番参加しなきゃいけないのはその遺影なんだと。だから、遺影を参加させることが一番の目的なんじゃないか、被害者参加制度のということを言われたわけです。私もそのとおりだと思います。

 ですから、今、訴訟指揮で、傍聴席ですら遺影を否定する大阪地方裁判所の件もありました。とんでもない話だと思います。第一の参加者は殺された人なんです。ですから、遺影をバーの中に入れていただきたい。

 実は、こんな例がありました。フランスの例です。御存じかもしれませんけれども、フランスで日本人の女性が殺されました。一九九〇年代の話です。それで、向こうは、附帯私訴制度といって、日本で言うところの被害者参加制度がありました。御遺族が遺影を風呂敷に包んで、下の方に隠していたわけです。そうしましたら裁判長が、何を持っているんですかと聞く。いや、実はといって、恐る恐る遺影だと言ったんです。向こうは、一人の裁判官と、たしか九人の参審員、つまり裁判員だったと思います。何でそんなずっと持っているんですか、さっさと出しなさいといって、全ての裁判員に、参審員に見せて回したんです。このくらいやはり感覚が違うわけです。

 よく日弁連は、世界の潮流だから死刑を廃止しろと言うが、じゃ、あなた方の言っている被害者参加制度は世界の潮流に反していますよねと私はいつも思うんです。ですから、遺影をバーの中に入れさせていただきたい、これが一つの大きな希望であります。

大森委員 大変にありがとうございました。

 再び櫻井参考人にお伺いさせていただきたいんですが、今の被害者参加制度でございますが、被害者としては強い意思で、本当に、加害者に対しての思いも含めて、被害者参加制度というのを御利用されると思うんですけれども、ただ、他方で、被害者が無意識にトラウマを更に深刻にさせてしまうという可能性もないのかということをちょっと懸念しておりまして、それを避けるためにどのような配慮をするべきかということを教えていただけますと幸いでございます。

櫻井参考人 御質問ありがとうございます。

 法律上のことはちょっと私も詳細には分からないところがありますけれども、実は、私の性犯罪の被害者への経験ですと、皆様、どんなふうにイメージされるか分からないんですが、裁判に聞きに行きたいという方が少なからずおられるということなんですね。ですので、やはりその被害者、そして御遺族の場合もそうですけれども、ニーズをちゃんと聞いていただくということは工夫としてはあろうかと思います。

 被害者が、こういうところに、裁判に行きたくないんじゃないかとか、記憶に触れたくないんじゃないかというのは、あくまでもこちら側のイメージなんですね。そういったことがなくて、やはり真実を知りたい、公正に裁いてほしい、それは、被害者、御遺族というのは大変にありますので、そのために何ができるのか。そのためにはやはり、参加したいというニーズがあったら、それにちゃんと応えていく。

 もしそこで、法律上できるケアですとか、それから何か配慮があるのであれば、そういったことも最大限していただくというようなことが必要ではないかなというふうに感じています。

 ありがとうございます。

大森委員 ありがとうございました。

 被害者参加制度は、とても大切な制度だということをまた認識させていただきました。ありがとうございます。

 続きまして、村木参考人と島田参考人にお伺いをさせていただきたいのですが、本当に大変、あってはならない冤罪という被害に遭われまして、冤罪によって人生を大きく狂わされた方々へのその後の支援制度でございますが、現在、ほとんど整っていないようにも感じておりまして、制度的な補償ですとか、社会的な復権というんですか、そういう仕組みについて、御自身の御体験からどのような制度が望ましいというふうにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思っております。

村木参考人 大変難しい御質問なんですが、逸失利益のような金銭的な補償もあるでしょうけれども、皆さん、社会的な地位を結局失ってしまうというようなことがありますから、そういう面でのサポートが何かできるかどうかということだと思います。

 それから、少し感情的な言い方かもしれませんけれども、こういうことが次に起こらないようにしていただくというのが一番大事なことで、繰り返しこれが起こっていることが本当に痛みになるので、そこを是非早く改正してほしいと思っています。

島田参考人 私の場合は、逮捕されてすぐに役員を辞めました。それで、逮捕された後、会社も辞めました。その後、復帰することはありませんでした。かなり、やはり社会的な地位も失わざるを得なかった。

 それの回復ということは、私は、制度的な問題なので何とも言えません。ただ、そういう事情がありました。それだけです。

大森委員 大変にありがとうございました。

 改めまして、櫻井参考人にお伺いさせていただきたいのですが、冤罪の被害者も犯罪の新たな被害者であると思っております。その冤罪の被害者の方もトラウマを抱えてしまうと思っておりますが、そのことに対しても国の手厚い支援というのが必要ではないかと思っております。櫻井先生の御知見も含めた御意見をお聞かせいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 私は、経験上、冤罪の被害に遭われた方への支援というのはしたことがありませんので、あくまでも私が今考えられることということで申し上げますと、やはり、そういった方々に対する御支援というのも必要だというふうには感じております。

 やはり、そういった心の傷つきというのは大変大きいものがあると思いますし、信頼をなくすということもあると思いますので、できるだけの手厚い支援というのは必要かなというふうには考えております。

大森委員 ありがとうございました。

 もう少しだけ時間がございますので最後にお伺いしたいのですが、もう一度、済みません、櫻井参考人にお伺いしたいのですが、少し、ちょっと刑事事件と外れてしまって恐縮なんですけれども、もし身近な人が被害者になってしまった場合、周りの人が配慮すべきことなどございましたら、最後に御教示いただきたく存じます。お願いいたします。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 犯罪被害者、御遺族というと、多くの方が、何か自分には関係のないことだみたいな感じの、こういうことを思われてしまうんですよね。でも、本当に身近にいる、身近な問題である、そして、自分自身もそういうふうになるというような可能性を含んでいることですので、やはり我が事としてまず捉えるということが必要だと思っています。

 その上で、もし例えば知り合いの方が被害に遭われたというようなことが、いらっしゃったとしたら、捜査機関もそうですけれども、二次的被害を与えない、自責感を強めない、これはもう本当に必要だというふうに思っています。

 やはり、被害者、御遺族というのは、被害に遭った意味というのを求めるんですよね、心の中で。そういった中で、自分が悪かったかもしれないという心になる。ですので、そこをより強めないということは、近くにいる知り合いとしても、そして捜査機関としても必要じゃないかなというふうに考えます。

 ありがとうございました。

大森委員 大変にありがとうございました。

 皆様の貴重な御意見を拝聴できました。本当に感謝しております。大変にありがとうございます。皆様の御意見を参考に、また議論を深めさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日は、お忙しい中、こうして国会に来ていただき、そして、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、島田さんと村木さんにお伺いをしたいというふうに思います。

 冤罪という深刻な人権侵害の被害に遭いながらも、それでも、これからの刑事手続や司法を改善していこうということで本当に御尽力いただいていることに、心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 今では冤罪ということが明らかになっているわけですけれども、それでも起訴までされてしまったという中で、警察とか検察とかの取調べの様子を、時間帯も含めて、被疑者であるということの立場から逸脱した状況が本当にあったのではないかというふうに思っております。是非、具体的にお伺いをしたいというふうに改めて思います。

 そして、言っていないことまで調書に書かれてしまったというふうなお話もありましたけれども、具体的にはどのようなことを言っていないのに書かれたということがあるのかという点、教えていただきたいと思います。また、証拠の捏造などありましたら是非お聞かせいただければというふうに思っております。

島田参考人 私は、輸出した貨物は規制の対象外だ、こうこうこういう理由で規制の対象外だと何回も話しました。ただ、それを許可を得ないで出したんだろう、それを無許可というんだと言葉を変えて、確かに、許可を取っていないから無許可というんだと言われれば、ああ、そうかなと思ってそれにサインしてしまう。

 それから、私が話したことをだんだんだんだん誘導されて、まあ、それもそうだなと。あるいは交換条件を出される。こちらは認めるよ、こちらの文言は、でもこちらはそのまま残すからと言われると、仕方がないのかなというふうに、だんだんだんだんそういうふうな、追い詰められていって、最後に仕方なくサインしてしまうという実態がありました。そういうことです。

村木参考人 ありがとうございます。

 二十日間、毎日何時間も検事さんと向き合って、しかも、私から見たら全く違う方向で思い込んでいる検事さんと対峙するのは大変だったんですけれども、やはり何度も、どうしてあなただけみんなと違うんですか、あなたがうそをついているか、ほかの全員がうそをついているか、どちらかですよというふうに言われたり、それから、ずっと否定をしていると罪が重くなる、あなたのことを心配して自白を促しているんですよというようなことをずっと言われていく。それから、弁護士さんは無罪を安請け合いする人もいますよというようなことを言われる。だんだんだんだん不安になっていくというのは本当につらいことでした。

 それから、調書については、検事さんから、例えば、仮に、仮にあなたの部下がこう思っていたとしたらどうですかとか、仮にこんなことがあったらどうですかといって、そんなことがもしあるんでしたらこうですよねとお話ししたことが、仮にの部分がなくて事実として書かれてしまったりとか。

 それから、議員案件だと言われていた案件ですので、当時こういう法案を通したくて一生懸命議員根回しをしていましたという調書が幾つも取られているんですけれども、当時というのは事件より後なんですね。でも、当時と書いてしまうと、あたかもその事件の文脈で起こったように読めるように作られているとか、いろいろなことがあって、本当に調書というのは大変怖いものだというふうに思いました。

本村委員 だからこそ、録音、録画ということが必要だというふうに思いますし、弁護士さんが同席をするということも大切だということがよく分かったというふうに思います。

 村木さんは、御自身の被害もあり、法制審議会の部会にも参加されておられたというふうに思います。刑事訴訟法の議論なんかもされてこられたと思うんですけれども、そこで積み残された課題と今後の法改正の在り方についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

村木参考人 ありがとうございます。

 その頃の法制審の議論を思い出すと、やはり録音、録画で取調べの機能が損なわれるんではないかという御不安が大変関係者には強かったと思います。ただ、一部の事件とはいえ、この三年間、録音、録画をやってみて、録音、録画そのものは非常に中立的なものだということはこの三年ではっきりしたと思いますので、是非、録音、録画の拡大をまずやっていただきたいというのが私の願いです。

 当時、それと並んで課題になったのが人質司法の問題、もう少し運用をきっちりとするという、否認しているイコール勾留という運用を変えるということが一つと、もう一つは、証拠開示が、やはり検察、警察側が全部の証拠を持っている中で、なかなか無罪方向の証拠が開示されない問題をどうするかということが議論をされましたけれども、その課題はやはり今日でも残っているので、その辺りが刑訴法の改正の大きな柱になるかなというふうに思っております。

 ありがとうございます。

本村委員 ありがとうございます。

 続きまして、裁判官でもありました藤井さんにお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほども、大川原化工機の皆様、島田さんの被害については、裁判所が接見禁止命令などを出しておりました。裁判官が警察や検察の言いなりにならないためにどうすればよいというふうにお考えでしょうか。体制のことも含めて、裁判官が常時二百件事件を持っているですとか、そうしたことも含めて、是非お聞かせをいただけたらと思っております。

藤井参考人 言いなりになっていると言われると批判になるんですが、私は、罪証隠滅、接見禁止も同じような要件になっていますけれども、その解釈、運用の問題ではないかなと思っておりまして、それが、日本のシステムではキャリアシステムですから、先輩からどんどん伝承がされていくわけでございますが、特に若い、なりたての裁判官というのは実務は全然知らないわけで、これが実務だというふうに言われれば、ああ、そうだろうと思うし、仮に、ちょっとこれは保釈すべきだというふうに判断したら準抗告が検察官から出されて取り消されたというような経験がありますと、やはり自分が間違っていたのかなというような経験を積むことになってくるのかなというふうに思うわけで、そういうことが連綿と続いてきたところはあるのかなというふうに思います。

 体制については、二百件も私は持っていなかったような気がするんですけれども、裁判官が非常に忙しいというイメージをお持ちいただいていまして、確かに忙しいときは忙しいんですけれども、民事の裁判官と比べますと、刑事の裁判官はそんなに忙しくはないと思います。その時々によって大変忙しくなることもあります。大変時間が長くかかる事件が幾つか担当になりますと、私も経験がございますけれども、東京地裁の部の中で一番法廷に入っている時間が長かったということがあって、そういうことはございますが、それにしても、そんなに、それによって何か保釈の判断がおかしくなるとか、そういうふうには思ってはおりません。

本村委員 ありがとうございます。

 地方でいいますと、兼務の裁判官もいらっしゃるということで、体制整備も必要だというふうに思っております。

 そして、次にお伺いをしたいのが、高橋さんと櫻井さんにもお伺いをしたいというふうに思います。

 冤罪だったと分かった事件において、犯罪被害者の方をどういうふうに救済、支援をしていけばいいかという点、また、犯罪被害者の方が損害賠償を受けられないということが多くありますけれども、国が立て替えた上で加害者に求償する制度が必要だというふうに私は考えますけれども、御見解を伺いたいというのと、あと、犯罪被害者の方々、性暴力被害者の方が、PTSDなど中長期にわたって体調を崩して、生活上もかなりの困難を抱え続けておられます。

 犯罪被害者の方、また被害届を出していない被害者の方への中長期の経済的、医療的、心理的、精神的、生活上のケアと支援、この点について是非御意見を伺いたいというふうに思っております。

高橋参考人 まず、一点目の冤罪になったときの被害者の支援ですけれども、私はやったことはありません。というのは、三十年、四十年たってから冤罪になっていますから、もう被害者に接触しようもないし、接触すること自体が事件を思い起こさせて、それが間違っていたというふうに思っているわけですから、私が接すること自体が苦しめることになってしまうわけです。ですから、接しようがないんですね。だから、こう言ったら元も子もないんですが、支援のしようがないんです。ですから、冤罪は起こさないでください、もうそれしかないんです。

 次に、経済的支援ですけれども、ここは先ほど先生がおっしゃられたのと私は見解がちょっと違うんです。

 私は立替え払い制度は反対です。というのはなぜかといいますと、立替え払いというのは、結局のところ、裁判になったときにどのくらいの金額が賠償されるか、それを立替え払いする、そういう文脈で言われていると思うんです。こういう例を出したら失礼かもしれませんけれども、安倍総理が亡くなりました、その奥さんに何億という金額を補償することになってしまいます。あれは、裁判になったらば逸失利益は莫大です。ですから、別に安倍さんに限らず、大企業の社長が亡くなったら、それこそ何億と賠償するわけです。果たして、これは国民が納得するでしょうか。

 ですから、私は、立替え払いではなくて、本当にその被害を被って生活が苦しくなった人、例えば一家の大黒柱を亡くしたとか、そういう人に対して厚く補償をするというものが私は一番いいと思っているんです。

 そして、立替え払いというのは、言ってみれば、本当は加害者が負担すべきものを私たちの税金で負担することになる。何で加害者が負担しなきゃいけないことを私たちが負担しなきゃいけないんですかと。ですから、その理念自体が、私は、国民の理解が得難いと思っているんです。

 ですから、そういう理念ではなくて、本当に被害を受けて困った人に対して、社会連帯共助の精神で厚く保護していく。医療費も全てそれは無料にするとか、そして、生活が自立できるまで毎月毎月、年金という形でもどういう形でもいいですから、そういう形で払っていくというのが私は一番いいと思っているんです。

 ドイツが実はそういう制度なんです。ドイツは非常に合理的でありまして、そういうふうに毎月毎月分割で年金で払っていけば、仮に、亡くなった被害者の御遺族の方が亡くなれば、そこでもう払わなくて済むわけなんですね。ですから、国家の予算の観点からいっても有益なわけです。

 ですから、私の考え方としては、本当に困っている人に厚く補償する、そして、こう言っては失礼だが、お金をたくさんお持ちの方のところにはちょっと余り補償はしないように予算をうまく配分していくということによって国民の理解が得られるんじゃないかな、私はそう考えております。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 先ほども冤罪への支援ということをちょっと考えておりまして、私自身は、恐らく、冤罪を受けた方々、実は今日御発表されていた二人のお話を聞いて私自身も大変勉強になって、大変なやはり心理的な負担だということは私自身も勉強になりましたので、支援があってもよいというふうには感じています。

 ただ、冤罪ということを考えたときに、被害者支援の考え方として、支援も必要ですけれども、いかに被害を防止するかという観点も必要だとは思っておりますので、この場合には、やはり、被害をどういうふうに防止するのか、そこに力を注いで制度をしっかりとつくっていくということが大事じゃないかなというふうには考えました。

 先ほどもう一つ御質問いただきました性犯罪被害者への例えばPTSDの問題ですとか、大変傷つきが大きくて、中長期にケアが必要になります。先ほどの冒頭でも私申し上げましたように、私としましては、全国同じように支援が受けられるという、そこに是非力を入れていただきたいというふうに考えています。

 例えば、条例のあるなしによって、カウンセリングが十回、無料で受けられる回数が増えるということもあるんですね。これがないところとあるところでは違います。十回あったら随分違います。ですので、こういった、全国、例えば、ここの地域で被害を受けたらカウンセリングがいっぱい受けられるけれども、ここで被害を受けたらカウンセリングが受けられないというようなことはやはりあってはいけませんし、被害者というのは、元の生活に戻りたい、そこで生活をしたいということがあると思うんですね。

 例えば、子育て支援だってそうだと思うんです。子供を産んだらそこの地域で育てていきます、それが自然です。そして、それに対しての手厚い支援があるはずなんです。ところが、被害者というのは地域地域によって随分違います。ですので、私は、全国ある程度同じレベルで支援が進んでいくということを願っています。

 以上になります。

本村委員 貴重な御意見、本当にありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈と申します。

 本日は、大変御貴重な時間を頂戴し、誠にありがとうございます。

 早速、まず、島田参考人と村木参考人の、お二人の冤罪を受けた被害者という方へ質問をしていきたいというふうに思っております。長期にわたる拘束、そして、その間に経験された理不尽や御苦労について、こうして直接伺える機会をいただけたことに感謝をいたします。

 私が強く感じているのは、メディアが都合のいい部分だけを切り取って、それが全てかのように報じてしまう怖さというところもです。報道されない事実はなかったことにされてしまう。その偏った印象が、人であったり企業を深く傷つける結果になっていると考えます。また、逮捕イコール犯人と決めつけるような報道が今も繰り返され、無罪判決が出ても、そのときの偏見が消えることはない。報道が予断を生み出してしまう構造自体を見直す必要があるのではないかと考えております。さらに、逮捕のタイミングで現場に押しかけ、公開処刑のような映像を繰り返し流す報道というのは、世論を刺激し、事件を過剰にあおるような印象を受けました。そうした姿勢に、報道機関としての自律や責任を感じることもできなかったというところがあります。

 これは、政治に関しても同じかと考えます。日本にとって本当に重要な課題が報道の中で軽く流されていく一方で、誰かの失言や表面的なスキャンダルばかりが大きく取り上げられてしまう。こういったことは、人々が政治に関心を持たなくなるような空気をつくっていることに、私はメディアの責任が大きいと感じております。

 ここで島田参考人と村木参考人にお伺いしたいんですけれども、御自身が実際に報道の加害にさらされた立場として、当時の報道についてどのように感じられたのか。御家族を含め、また、その後、報道機関とどういうふうに向き合ってきたのか、率直なお考えであったり、その当時の御意見がございましたらいただければと思います。

島田参考人 実際に逮捕されたときに、私は、自宅に警察官が来て、警視庁の方に、また今日は警視庁で取調べをするということで、警視庁に着いた途端に逮捕されました。ただ、私どもの社長は、自宅に来て、それで本社に一度連れていかれて、本社を出てきたところでメディアが一斉に逮捕の写真を撮ったというのが事実です。

 そのメディア報道によって、かなり誹謗中傷をその日からずっと受け続けました。結果、売上げは四割落ち、社員はかなり心配し、その家族の方もかなり心配したと思います。よって、メディアによって我々はかなり傷つけられた。そういう思いで、逮捕イコール罪人というふうな報道がないようにしていただければと思います。

村木参考人 ありがとうございます。

 私も原則は一緒で、逮捕イコール罪人という扱いで、推定無罪ということが忘れられることが多いので、マスコミの方には是非そこを気をつけていただきたい。その際に、自分のときは非常に報道が過熱をしていたんですが、その素材になることは、検察側からのリークで材料が流れていって、マスコミに大きく出て、マスコミが押しかけてくるということだったので、こういったリークの問題も含めて、正しい報道の在り方というのを考えていってほしいと思っています。

 それから、もう一つだけ。マスメディアの怖さというのは、別に被害者だけじゃなくて、被害者、それから、冤罪の被害に遭った人だけではなくて、警察や検察もそうだと思うんですね。もし何か間違いがあったら、もう徹底的にバッシングをされる。そうすると、やはり間違いに気づいても引き返しにくくなる。やはりマスコミを意識して、なかなか引き返さないということが自分の事件のときはあったと思いますので、警察や検察に対するバッシングも含めて、公正な報道をお願いをしたいというふうに思っています。

吉川(里)委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 次に、今回の事件において、島田さんを含め、無実の方々が長期にわたって勾留されました。その中で、共に逮捕された相島静夫さんが、勾留中に進行性の胃がんを患い、保釈も認められずに亡くなられたという事実に強い衝撃を受けました。警察官が捏造だったと証言し、経産省も規制対象ではなかったと伝えていた中で、それでも逮捕、起訴が行われ、そして、命が失われた後も、担当検事は謝罪の気持ちはないと言い切っているという状況です。

 この国では、罪がない方が命を落としても、その判断を下した側が責任を問われることがありません。私は、この構造に深い違和感を感じております。島田参考人は、当事者として、こうした誰も責任を取らないまま人の命や人生が壊される構造について、どう受け止められていらっしゃいますか。また、捜査官や検察官は、本来どのように責任を果たすべきだったとお考えでしょうか。

島田参考人 できれば、今回の事件を検証、反省、再発防止の策を警察、検察独自でしていただきたかった。ただ、その期待も余り見込めないので、私は、ここに立つ必要がある、法なり制度で再発を防止していただくしかないと思ってここに立っております。

 以上です。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 私は、看護師の資格を持つ人間として、そういった医務室、医務部の在り方についても、やはり、採血データであったり、症状も訴えられていらっしゃったのに、そういった検査もなかなか行われなかったという状況がありますので、こういった在り方についても、しっかりと制度の見直しが必要であると考えております。

 次に、櫻井鼓教授にお伺いをしてまいります。

 児童の性的搾取について、先生の御著書などから性的グルーミングの問題について学びました。性加害を目的として子供や若年者に近づき、信頼関係を築いた上で心理的に支配をしていくというこの行為が、非常に深刻で深い問題だというふうに私は感じました。特に、SNSやメッセージアプリを通じて、子供たちが知らぬ間に加害者にもなってしまっているという現状に、子供を育てている一人の母親としても強い危機感を抱いております。

 今月、父親らが実の娘に性的暴行を加えた疑いで逮捕され、児童ポルノと見られる動画など約十五万点が押収されたという報道を目にしました。この事件は、近親者による深刻な暴行であり、幼少期からグルーミングされていた可能性がある被害者の児童の人生を考えると、厳格な処罰、再発防止、そして適切なケアが必要だと考えますが、櫻井鼓教授はどのような制度の改善が必要とされるのか、御意見を聞かせていただければと思います。

櫻井参考人 御質問ありがとうございます。

 一つは、先ほどもおっしゃっていただきましたように、やはり加害者が子供の場合が結構あるということで、現状は面会要求等罪というのは年齢制限もあるところ、子供同士の加害、被害の問題というのをやはりどういうふうに考えていくかという論点も一つはあろうかというふうに感じています。

 あと、それからSNSを使ったグルーミングの問題というのも非常に大きいわけですけれども、SNSそれからオンライングルーミングを使った加害、被害の問題の中で、やはり年齢を偽ってアカウントを使うことができてしまうという問題は結構大きいかなというふうに思っています。子供自身も、例えば家族のアカウントを使ってしまえば子供であっても年齢制限のあるゲームを使えてしまうということもありますし、SNSも同様かと思いますので、そういったSNSで年齢をどういうふうに本人と照合していくのかという問題はあるかというふうに思っています。

 あと、制度というわけではないんですけれども、家族の管理、意識、その辺りも少し問題かなというふうにも思っています。実は、最近NGOと一緒に共同研究をしまして、子供たちのオンラインゲームの管理がどういうふうに家庭でなされているかという項目を聞きました。そうしましたら、十三歳から十七歳までの未成年者の家庭であっても、家庭のルールがあるというふうに回答した子供たちというのは約五割だったということなんですね。ということは、半数が家庭でのルールはないというふうに回答しているということです。

 ですので、こういったグルーミングのきっかけに遭いやすい場所にどういうふうに会わせていかないかといいますか、家庭のルールをやはり作っていく、家庭の意識をつくっていくという必要もあるようには感じています。

 以上になります。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 次に、社会的、文化的な影響について伺いたいんですけれども、性犯罪の再発防止に関してなんですけれども、AVやポルノ、漫画、アニメなど性的なコンテンツが加害者の思考や行動に影響を与えることがあるのかどうか、こういったところに関して櫻井参考人に御意見を聞きたいと思います。

櫻井参考人 御質問ありがとうございます。

 研究としては私はそういった研究はしてはいないんですけれども、そういった研究があるということは知っておりまして、やはり、そういった暴力ですとか、そういった素材に触れますと、人というのはやはりそういった世界に親密になってしまうということはあろうかというふうに思っています。ですので、やはりある程度規制をかけていくという必要はあるというふうに考えます。

吉川(里)委員 性犯罪の中には、一定の者が再犯に及ぶケースがあると聞きます。先日、トルコ国籍の男性が執行猶予中に再び少女への性暴行を行ったとして不同意性交の罪に問われた事件が島田議員によって取り上げられ、話題となりました。

 先ほど少し専門ではないと櫻井先生からお伺いしましたが、御経験の中で、再犯に至る加害者の心理的な傾向や背景にはどのような特徴があるとお感じでありますでしょうか。また、再犯防止のために政府が取るべきアプローチについても御意見を伺えればと思います。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 私は、性加害ということでは少年に携わってきたという経験があります。性加害の子供たちというのを見ていると、やはり行動としてはエスカレーションするというふうには感じています。これが研究ベースでそういうふうに言われているかということはありますけれども、臨床経験としてはそうです。例えば、遠くから見ているものが徐々に近づいていって、そして身体接触に及ぶということがあると思うんですね。ですので、そういったエスカレーションしやすいということはあります。

 それから、子供であっても性的な加害の行為の要因というのは本当に様々で、例えば本当に好きな子に、はやされて、そしてキスをしてしまうというような行為もありますけれども、例えば体操着を盗むとかリコーダーを盗むというような、少し性的ではないようなところからでも性的な加害行為が認められるというような子供もいまして、本当に性加害少年、性加害者といってもその背景は様々だと思います。

 ただ、様々とは申しましても、一つには、やはり認知のゆがみというようなこともあると思いまして、例えば家族内の兄弟間の性加害、性被害というような場合でも、家族だからいいと思ったというようなことを述べる子供もいるんですね。ですので、そういった認知のゆがみというようなこともやはり原因だと思いますので、そういった治療ということがやはり専門的に進められていく必要があるように感じています。

吉川(里)委員 最後に伺いたいと思うんですけれども、性的グルーミングや児童への性犯罪に対して、日本の司法制度についてはどのような課題があるとお考えでしょうか。今後、改善が求められる点があれば是非具体的に、櫻井教授にお伺いしたいと思います。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 刑法が改正されたことで、性犯罪については、徐々にやはり捜査機関、それから刑事司法においても少しずつ認識は変わってきているのかなという感じはしています。

 課題としましては、私は本当に法律が門外漢ですので、これが可能かどうかなんですけれども、やはり年齢差の要件という、十六歳未満については五歳差の年齢差の要件があると思いますので、この辺りを今後どういうふうに考えていくのかというところは一つ論点としてはあろうかというふうに思っています。

 あとは、私が冒頭の十分でお話をさせていただきましたように、やはり障害者の問題はあると思いますので、例えば言葉がしゃべれない障害者の犯罪をどういうふうに認めていくかというようなところも論点としてはあるかなというふうに感じています。

吉川(里)委員 様々な貴重な御意見、大変ありがとうございました。

 子供を持つ母親の一人として、この法務行政に携わる一人として、しっかりといろいろな意見を加味して、正しい制度改正に取り組んでいきたいと思っております。

 本日はありがとうございました。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 どうも。日本保守党の島田です。

 本日はありがとうございます。

 まず、村木参考人に伺いたいんですけれども、冤罪というのは、真犯人を野放しにするという意味でも大変問題ですが、村木参考人のケースにおいては、真犯人というか、不正に手を染めてしまった係長が既に逮捕されているにもかかわらず、そして、自白しているのに、もっと上司まで立件して、政治家も絡んでいるという事件に仕立てて、そして出世を図ろうとか、そういう功名心が検察をとんでもない方向に動かしたという面が強いと思うんですけれども。

 村木さんの場合には、そういう権力犯罪の被害者であると同時に、その後、厚生労働省の事務次官を務められて、いわばそういう、どの省庁でもそうですけれども、厚生労働省によっても、やはり権力濫用に走ってしまうような官僚もいるでしょう。そういう人たちの暴走を防ぐために、御自身の経験も踏まえて、何らかの措置を取られたということがあれば教えていただきたいと思います。

村木参考人 ありがとうございます。

 少しこういう言い方をすると論理的ではないのかもしれませんが、やはり検察がどうしてああいうことをしたかということを考えたときに、一つは、やはり非常に同質性の強い人たちだけで組織が構成をされている、だんだん認知がゆがんでいく。私も、執行猶予がつけば大した罪じゃないでしょう、こう複数の検察官から言われたときには大変驚きました。

 そういう意味で、検察に限らず、役所もそうですけれども、同じメンバーでずっと何十年過ごす組織ですので、やはり外の目が入るということ、それから、録音、録画のように、中のことが透明性が確保できる、外から見ようと思えば見える状態にしておくという、この辺りが非常に大事なところかなというふうに思っております。

島田(洋)委員 ありがとうございます。

 今、吉川議員もメディアの加害行為に触れられましたけれども、そこで、高橋参考人に伺いたいんですが、たまたま、今日、ある全国紙を見ていたら、月刊「WiLL」という雑誌が、ある国政政党を名指しして、オウム真理教の再来と断言しているんですよね。オウムは、言うまでもなく、国家転覆を目指して化学兵器、生物兵器、それから銃器等も開発、整備して、無差別大量殺人に及んだとんでもないテロ組織であります。つい先頃も、例の地下鉄サリン事件の三十周年だったわけですけれども、そういうテロ組織と同じなんだというのを政党に対してレッテルを貼る。

 これは、オウムの犯罪を相対化して被害者を愚弄する行為でもあると思いますし、また、オウムと同じようなことになれば、じゃ、やられる前にやっちゃおうというような、倒錯した、恨みから変な行動に出る人間が出てこないとも限らないということで、被害者救済で活動してこられた立場から、こういうメディアの無責任な報道に関して何らか対処方、考えておられることがあればお願いします。

高橋参考人 確かに、メディアに関してはいろいろと言いたいことがあります。被害者側の方にメディアの方から接してくるときには、決してその被害者にとって悪いことは書かないんです。ただ、問題はそうでないときなんです。そうしたときに、じゃ、どうするのか。

 まるで被害者が加害者であるかのように書かれてしまうようなことが、結構、交通事故ではたくさんあります。でも、それに対して訂正記事はありません。私としては、そういう間違ったことを書いてあるのであれば、きっちりと反論権を、法律上、権利として制定してほしいと思っているんです。すなわち、間違ったことを書いた雑誌に対し、同じ字数で反論させてくれと。そういうことを、もちろん、被害者側に弁護士がつかないとなかなか難しいとは思いますが、そういった弁護士の費用も国の費用で出して、反論権を制度化するということが私は大切ではないかと思っております。

 もう一つは、何といってもメディアスクラム、これが一番、被害者にとっての最大の敵と申しますか被害なんです。ですから、せめて亡くなってから一週間ぐらいは一切取材しないでください、本当に取材するんだったらば、少し落ち着いてから取材してくださいと。

 そういうメディアスクラムがあるから、被害者というのは、メディアを毛嫌いするというか、取材には応じなくなるんです。メディアに報道してほしいという被害者もたくさんいるんです。でも、最初のメディアスクラムがあるから、もうそこで拒絶反応が出てしまうんです。ですから、そこのところも注意していただきたい、変えていただきたいと私は思っております。

島田(洋)委員 ありがとうございます。

 先ほど、安倍前首相の損害賠償、立替えという話になるとすごい金額というコメントもあったんですけれども、そこで藤井参考人に教えていただきたいんですけれども、安倍さんが亡くなって既に二年九か月がたとうとしている。なのに、いまだに公判が始まらないわけですよね。この場合、容疑者が現場で現行犯逮捕されているという状況にもかかわらず、二年九か月たっても公判が始まらない。公判前整理手続が難航しているとも伝えられるんですけれども、元裁判官でもあるお立場から、一般論でいいんですけれども、あれだけの重大事件が、これだけの時間、公判が始まらない、これはどういうふうに理解すればいいんでしょうか。

藤井参考人 具体的な理由はちょっと分かりませんが、一般的に、公判前整理手続が始まって、それに裁判所も思っていた以上に時間がかかってしまう、期間がかかってしまうということは、制度が始まった最初から感じておりました。裁判官は一様に考えていたように思います。

 それは一つには、証拠開示の手続に当初は時間がかかるケースがあった。検察官の方で収集された証拠を整理して開示されるわけですが、実際には検察事務官がその作業をされるわけですけれども、そんなに人が余っているわけでもない中で、時間を費やして、それから、その開示された証拠を当然弁護人の方で検討されて、被告人の言い分を踏まえて、どういう立場で主張を構成するかを検討しなければいけない。さらに、開示された証拠に加えて、被告人側の、弁護側の主張に合わせた、合わせたといいますか、沿う証拠がないかどうかの開示の請求も必要になってくる。そういう手続を踏んで、検察は、最初にどういう事実があったのか、どういう証拠を請求するのか、出しますが、弁護人の方で、それに対してどういう主張をするのかという、予定主張といいますが、これを準備されるのに結構時間がかかるケースがあります。

 それから、それと別に、そもそも起訴までに時間がかかることがあるのは、被疑者の精神状態について専門家の鑑定を得る必要がある、特に、重い事件、有罪になれば死刑もあり得るような事件になりますと、捜査機関は慎重に鑑定を専門家に依頼して行います。鑑定留置という普通の勾留と違った身柄拘束の制度を使いまして、じっくりと精神鑑定をやってもらう。そのようなことがいろいろ重なりますと、大きな事件の場合でも、そうでなくてもあり得ると思いますが、裁判が始まるまでに時間がかかってしまう、そういうことがあるのではないかというふうに考えております。

島田(洋)委員 ありがとうございます。

 安倍さんの裁判が始まらないというのは、今の御説明で一般的な枠組みはよく分かったんですけれども、非常にちょっと不信を感じることもあるので、今後ともこの場でも取り上げたいと思うんですけれども。

 それから、櫻井参考人に伺いたいんですが、北朝鮮による拉致被害者、これは、横田めぐみさんが十三歳で拉致された、有名ですが。もう一人、寺越武志さん、この方も十三歳で拉致されているんですよね。

 やはり拉致された人の心理を考える場合に、帰ってこられた地村保志さんが証言しておられて、私も同じ福井県の人間なので直接話を聞いたこともあるんですけれども、一番ショックを受けたことの一つが、北朝鮮で暮らしていて、日本の国会議員団が北朝鮮にやってきた、日本の新聞とか雑誌の翻訳をやらされていたのでニュースで知った、当然拉致問題を取り上げて北朝鮮に迫ってくれるだろうと思ったら、全く話題に取り上げなかった、これを見て、非常に、もう自分たちは見捨てられたんだという絶望感を感じたとおっしゃっているんですが。

 今、小泉訪朝直前の交渉記録二つ、外務省がないと言っていて、なぜないのかも分からないという無責任な対応をしていて、じゃ、当時の人間に聴取しろ、一体どんなことを北朝鮮と話し合って取り決めたのかと。

 ところが、岩屋外務大臣は、聞き取りをする気もないと言っておるわけですけれども、こういう対応も北朝鮮にいる拉致被害者に伝わっていると思うんですけれども、一体どういう心理的影響を被害者に与えるか、教えていただければと思います。

櫻井参考人 ありがとうございます。

 私自身は、そういったその事件の被害者への支援というのに携わったことがございませんので、あくまでも推測ということになります。

 ちょっと犯罪被害者の心理ということに置き換えて御説明をさせていただきたいと思うんですけれども、やはり、犯罪被害者というのは、自分自身がどこか見捨てられてしまったとか、それから自分の事件というのを忘れられてしまったですとか、そういったことに傷つきを得ると思います。

 ですので、支援をしてくれる人が中長期的にやはりずっと気にかけてくれて、心理的なケアであったりとか、付き添ってくれるとか、そういったことは求めていることがあると思いますので、もしかして、先ほどの件の方もそういった心理状態になる可能性もあるのかなというふうには推測いたします。

島田(洋)委員 先ほどのメディアの問題にも関係するんですけれども、島田参考人に伺いたいんですが、メディアの心ない報道で、特にこれはひどかったというような実例、あるいは、逆にこれは非常に勇気づけられたというような報道の事例とかがあれば、ちょっと御紹介いただければと思うんですが。

島田参考人 傷つけられた、勇気づけられた。

 実際に私は、逮捕後、十一か月捕まっていましたので、外でどういうふうな報道がなされているかということは全く分かりませんでした。保釈後、いろいろ聞いてみて、こんなことがあったよということで、先ほど申し上げたように、かなり前から当局が逮捕情報を流して、逮捕のその瞬間を報道したということで、かなり誹謗中傷がその後来たということは後で聞きました。

 ただ、その後、我々が起訴取下げになって冤罪だということが分かった後に、ある二、三の報道機関から、いろいろと実態を伝えたいということがありまして、その報道メディアには勇気づけられました。

島田(洋)委員 最後になるんですけれども、村木参考人に伺いたいんですが、村木参考人が不当な取調べ、拘束を受けている間の厚生労働大臣は舛添要一さんと長妻さんだったかと思いますけれども、この当時の大臣からどのような励ましというか、声がかかったのか、その辺り、もし伺えればと思いますけれども。

村木参考人 私も、勾留中、特に長妻大臣のときは、ずっと自分は勾留されていましたので、大臣の御発言とかはよく分からない部分があるんですが、大臣それから役所の対応というのは、捕まって、そういうことになっているので、司法の判断を待つという形で非常にニュートラルにやってもらえたと思います。そのことが一つの支えにはなったかなというふうに思っております。

島田(洋)委員 それでは、時間が来たようですので、これで終わります。

 どうもありがとうございました。

西村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、来る二十八日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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